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特許7475275二重特異性抗原結合分子及びその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】二重特異性抗原結合分子及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20240419BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240419BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240419BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240419BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240419BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240419BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240419BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240419BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20240419BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240419BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240419BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240419BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240419BHJP
   A61K 35/54 20150101ALI20240419BHJP
   A61K 35/74 20150101ALI20240419BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/46
C07K16/28
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/30
C12P21/02 C
A61K39/395 U
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P37/04
A61K45/00
A61K48/00
A61K35/54
A61K35/74 A
A61P43/00 111
【請求項の数】 62
(21)【出願番号】P 2020542329
(86)(22)【出願日】2019-02-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 US2019017251
(87)【国際公開番号】W WO2019157308
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2022-02-08
(31)【優先権主張番号】62/628,088
(32)【優先日】2018-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】エラーマン, ディエゴ
(72)【発明者】
【氏名】ユンッティラ, テーム ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ロンバナ, トワイラ ノエル
(72)【発明者】
【氏名】スラガ, ディオニュソス
(72)【発明者】
【氏名】シュピース, クリストフ
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-514314(JP,A)
【文献】特表2017-503480(JP,A)
【文献】特表2013-543384(JP,A)
【文献】特表2017-527522(JP,A)
【文献】特表2014-526895(JP,A)
【文献】Ulrich Brinkmann et al.,MABS,2017年,Vol. 9, No. 2,p. 182-212
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
A61K
A61P
UniProt/GeneSeq
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一価のアーム及び二価のアームを含む二重特異性抗原結合分子であって、
(a)前記一価のアームがCD3に特異的に結合可能なFabを含み、前記FabのC末端が第1のFcサブユニットのN末端に融合しており、前記Fabが以下のHVR:
(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3
(iv)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(v)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び
(vi)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3
を含み、
(b)前記二価のアームが、それぞれがHER2に特異的に結合可能なFabB1及びFabB2を含み、前記FabB2のC末端が前記FabB1のN末端に融合しており、前記FabB1のC末端が第2のFcサブユニットのN末端に融合しており、前記FabB1及び前記FabB2がそれぞれ、以下のHVR:
(i)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(ii)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(iii)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-H3
(iv)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(v)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び
(vi)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3
を含み、かつ
(c)前記第1のFcサブユニットは前記第2のFcサブユニットと会合して、Fcドメインを形成
前記Fab B1 及び前記Fab B2 のそれぞれの一価の結合親和性(K )が、表面プラズモン共鳴により測定して20nM~50nMであり、前記Fab の一価のK が、表面プラズモン共鳴により測定して10nM~100nMである、二重特異性抗原結合分子。
【請求項2】
(a)前記FabがVH領域及びVL領域を含み、前記VH領域は、配列番号7に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記VL領域は、配列番号8に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
(b)前記FabB1がVHB1領域及びVLB1領域を含み、前記VHB1領域は、配列番号24に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記VLB1領域は、配列番号27に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ
(c)前記FabB2がVHB2領域及びVLB2領域を含み、前記VHB2領域は、配列番号24に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記VLB2領域は、配列番号27に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、
請求項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項3】
(a)前記VH領域が配列番号7のアミノ酸配列を含み、前記VL領域が配列番号8のアミノ酸配列を含み、
(b)前記VHB1領域が配列番号24のアミノ酸配列を含み、前記VLB1領域が配列番号27のアミノ酸配列を含み、かつ
(c)前記VHB2領域が配列番号24のアミノ酸配列を含み、前記VLB2領域が配列番号27のアミノ酸配列を含む、
請求項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項4】
一価のアーム及び二価のアームを含む二重特異性抗原結合分子であって、
(a)前記一価のアームがCD3に特異的に結合可能なFabを含み、前記FabのC末端が第1のFcサブユニットのN末端に融合しており、前記Fabが以下のHVR:
(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(iv)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(v)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び
(vi)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3
を含み、
(b)前記二価のアームが、それぞれがHER2に特異的に結合可能なFabB1及びFabB2を含み、前記FabB2のC末端が前記FabB1のN末端に融合しており、前記FabB1のC末端が第2のFcサブユニットのN末端に融合しており、前記FabB1及び前記FabB2がそれぞれ、以下のHVR:
(i)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(ii)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(iii)配列番号37のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(iv)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(v)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び
(vi)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3
を含み、かつ
(c)前記第1のFcサブユニットは前記第2のFcサブユニットと会合して、Fcドメインを形成
前記Fab B1 及び前記Fab B2 のそれぞれのK が、表面プラズモン共鳴により測定して20nM~50nMであり、前記Fab の一価のK が、表面プラズモン共鳴により測定して10nM~100nMである、二重特異性抗原結合分子。
【請求項5】
(a)前記FabがVH領域及びVL領域を含み、前記VH領域は、配列番号7に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記VL領域は、配列番号8に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
(b)前記FabB1がVHB1領域及びVLB1領域を含み、前記VHB1領域は、配列番号41に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記VLB1領域は、配列番号49に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ
(c)前記FabB2がVHB2領域及びVLB2領域を含み、前記VHB2領域は、配列番号41に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記VLB2領域は、配列番号49に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、
請求項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項6】
(a)前記VH領域が配列番号7のアミノ酸配列を含み、前記VL領域が配列番号8のアミノ酸配列を含み、
(b)前記VHB1領域が配列番号41のアミノ酸配列を含み、前記VLB1領域が配列番号49のアミノ酸配列を含み、かつ
(c)前記VHB2領域が配列番号41のアミノ酸配列を含み、前記VLB2領域が配列番号49のアミノ酸配列を含む、
請求項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項7】
一価のアーム及び二価のアームを含む二重特異性抗原結合分子であって、
(a)前記一価のアームがCD3に特異的に結合可能なFab を含み、前記Fab のC末端が第1のFcサブユニットのN末端に融合しており、前記Fab が以下のHVR:
(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(iv)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(v)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び
(vi)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3
を含み、
(b)前記二価のアームが、それぞれがHER2に特異的に結合可能なFab B1 及びFab B2 を含み、前記Fab B2 のC末端が前記Fab B1 のN末端に融合しており、前記Fab B1 のC末端が第2のFcサブユニットのN末端に融合しており、前記Fab B1 及び前記Fab B2 がそれぞれ、以下のHVR:
(i)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(ii)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(iii)配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(iv)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(v)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び
(vi)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L3
を含み、かつ
(c)前記第1のFcサブユニットは前記第2のFcサブユニットと会合して、Fcドメインを形成し
前記Fab B1 及び前記Fab B2 のそれぞれのK が、表面プラズモン共鳴により測定して20nM~50nMであり、前記Fab の一価のK が、表面プラズモン共鳴により測定して10nM~100nMである、二重特異性抗原結合分子。
【請求項8】
(a)前記Fab がVH 領域及びVL 領域を含み、前記VH 領域は、配列番号7に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記VL 領域は、配列番号8に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
(b)前記Fab B1 がVH B1 領域及びVL B1 領域を含み、前記VH B1 領域は、配列番号33に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記VL B1 領域は、配列番号25に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ
(c)前記Fab B2 がVH B2 領域及びVL B2 領域を含み、前記VH B2 領域は、配列番号33に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記VL B2 領域は、配列番号25に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、
請求項7に記載の二重特異性抗原結合分子
【請求項9】
(a)前記VH 領域が配列番号7のアミノ酸配列を含み、前記VL 領域が配列番号8のアミノ酸配列を含み、
(b)前記VH B1 領域が配列番号33のアミノ酸配列を含み、前記VL B1 領域が配列番号25のアミノ酸配列を含み、かつ
(c)前記VH B2 領域が配列番号33のアミノ酸配列を含み、前記VL B2 領域が配列番号25のアミノ酸配列を含む、
請求項8に記載の二重特異性抗原結合分子
【請求項10】
一価のアーム及び二価のアームを含む二重特異性抗原結合分子であって、
(a)前記一価のアームがCD3に特異的に結合可能なFab を含み、前記Fab のC末端が第1のFcサブユニットのN末端に融合しており、前記Fab が以下のHVR:
(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(iv)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(v)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び
(vi)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3
を含み、
(b)前記二価のアームが、それぞれがHER2に特異的に結合可能なFab B1 及びFab B2 を含み、前記Fab B2 のC末端が前記Fab B1 のN末端に融合しており、前記Fab B1 のC末端が第2のFcサブユニットのN末端に融合しており、前記Fab B1 及び前記Fab B2 がそれぞれ、以下のHVR:
(i)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(ii)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(iii)配列番号43のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(iv)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(v)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び
(vi)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3
を含み、かつ
(c)前記第1のFcサブユニットは前記第2のFcサブユニットと会合して、Fcドメインを形成し
前記Fab B1 及び前記Fab B2 のそれぞれの一価の結合親和性(K )が、表面プラズモン共鳴により測定して20nM~50nMであり、前記Fab の一価のK が、表面プラズモン共鳴により測定して10nM~100nMである、二重特異性抗原結合分子。
【請求項11】
(a)前記Fab がVH 領域及びVL 領域を含み、前記VH 領域は、配列番号7に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記VL 領域は、配列番号8に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
(b)前記Fab B1 がVH B1 領域及びVL B1 領域を含み、前記VH B1 領域は、配列番号44に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記VL B1 領域は、配列番号48に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ
(c)前記Fab B2 がVH B2 領域及びVL B2 領域を含み、前記VH B2 領域は、配列番号44に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記VL B2 領域は、配列番号48に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、
請求項10に記載の二重特異性抗原結合分子
【請求項12】
(a)前記VH 領域が配列番号7のアミノ酸配列を含み、前記VL 領域が配列番号8のアミノ酸配列を含み、
(b)前記VH B1 領域が配列番号44のアミノ酸配列を含み、前記VL B1 領域が配列番号48のアミノ酸配列を含み、かつ
(c)前記VH B2 領域が配列番号44のアミノ酸配列を含み、前記VL B2 領域が配列番号48のアミノ酸配列を含む、
請求項11に記載の二重特異性抗原結合分子
【請求項13】
第2の抗原結合部分及び/又は第3の抗原結合部分の一価の解離速度が、10 -3 /秒~10 -1 秒である、請求項1~12のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子
【請求項14】
第2の抗原結合部分及び/又は第3の抗原結合部分の一価の解離速度が、10 -2 /秒~30 -2 /秒である、請求項13に記載の二重特異性抗原結合分子
【請求項15】
第1の抗原結合部分の一価のK が20nM~80nMである、請求項1~14のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子
【請求項16】
第1の抗原結合部分の一価のK が40nM~60nMである、請求項15に記載の二重特異性抗原結合分子
【請求項17】
前記FcドメインがIgG Fcドメインである、請求項1~16のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項18】
前記IgG FcドメインがIgG又はIgGFcドメインである、請求項17に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項19】
前記FcドメインがヒトFcドメインである、請求項1~18のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項20】
前記Fcドメインが、Fc受容体への結合を低下させる、かつ/又はエフェクター機能を低下させる1つ以上のアミノ酸置換を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項21】
Fc受容体への結合を低下させる、かつ/又はエフェクター機能を低下させる前記1つ以上のアミノ酸置換がN297(EU付番)に存在する、請求項20に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項22】
前記第1のFcサブユニット及び前記第2のFcサブユニットがそれぞれ、N297Gのアミノ酸置換を含む、請求項21に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項23】
Fc受容体への結合を低下させる、かつ/又はエフェクター機能を低下させる前記1つ以上のアミノ酸置換が、L234、L235、及びP329(EU付番)からなる群から選択される、請求項20に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項24】
前記第1のFcサブユニット及び前記第2のFcサブユニットがそれぞれ、L234、L235、及びP329からなる群から選択されるアミノ酸置換を含む、請求項23に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項25】
前記Fcドメインが、前記第1のFcサブユニットの前記第2のFcサブユニットとの会合を促進するように構成された改変を含み、前記第2のFcサブユニットのCH3ドメインにおけるアミノ酸残基を、より大きなサイズの側鎖体積を有するアミノ酸残基で置き換えることにより、前記第1のFcサブユニットのCH3ドメイン内の空洞に位置可能な前記第2のFcサブユニットの前記CH3ドメイン内に突出部を生成し、前記第1のFcサブユニットの前記CH3ドメインにおけるアミノ酸残基を、より小さなサイズの側鎖体積を有するアミノ酸残基で置き換えることにより、前記第2のFcサブユニットの前記CH3ドメイン内の前記突出部が位置可能な空洞を前記第1のFcサブユニットの前記CH3ドメイン内に生成する、請求項1~24のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項26】
前記第2のFcサブユニットの前記CH3ドメインが、T366(EU付番)のアミノ酸置換を含み、前記第1のFcサブユニットの前記CH3ドメインが、T366、L368、及び/又はY407(EU付番)の1つ、2つ、又は3つ全てのアミノ酸置換を含む、請求項25に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項27】
前記第2のFcサブユニットの前記CH3ドメインが、T366Wのアミノ酸置換を含み、前記第1のFcサブユニットの前記CH3ドメインが、T366S、L368A、及び/又はY407Vの1つ、2つ、又は3つ全てのアミノ酸置換を含む、請求項26に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項28】
第3の抗原結合部分の前記C末端が、ペプチドリンカーを介して第2の抗原結合部分の前記N末端に融合している、請求項1~27のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項29】
前記ペプチドリンカーが5~20アミノ酸長である、請求項28に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項30】
前記ペプチドリンカーが5~20アミノ酸長であり、配列番号50のアミノ酸配列を含む、請求項28に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項31】
請求項1~30のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子をコードする、単離核酸。
【請求項32】
請求項31に記載の単離核酸を含む、ベクター。
【請求項33】
請求項31に記載の単離核酸、又は請求項32に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項34】
前記宿主細胞が哺乳動物細胞である、請求項33に記載の宿主細胞。
【請求項35】
前記哺乳動物細胞がチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項34に記載の宿主細胞。
【請求項36】
前記宿主細胞が原核細胞である、請求項33に記載の宿主細胞。
【請求項37】
前記原核細胞がE.coli細胞である、請求項36に記載の宿主細胞。
【請求項38】
請求項1~30のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子の作製方法であって、請求項3337のいずれか一項に記載の宿主細胞を培地で培養することを含む、方法。
【請求項39】
前記方法が、前記宿主細胞又は前記培地から前記二重特異性抗原結合分子を回収することを更に含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
請求項1~30のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子をコードする単離核酸のセット。
【請求項41】
ベクターのセットであって、前記セットの各ベクターが、請求項40に記載の単離核酸のセットのうちの単離核酸を含む、ベクターのセット。
【請求項42】
宿主細胞のセットであって、前記セットの各宿主細胞が、請求項40に記載の単離核酸のセットのうちの単離核酸、又は請求項41に記載のベクターのセットのうちのベクターを含む、宿主細胞のセット。
【請求項43】
前記宿主細胞が哺乳類細胞又は原核細胞を含む、請求項42に記載の宿主細胞のセット。
【請求項44】
前記哺乳類細胞がCHO細胞である、又は前記原核細胞がE.coli細胞である、請求項43に記載の宿主細胞のセット。
【請求項45】
請求項1~30のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子の作製方法であって、請求項4244のいずれか一項に記載の宿主細胞のセットを培地で培養することを含む、方法。
【請求項46】
前記方法が、前記宿主細胞のセット又は前記培地から前記二重特異性抗原結合分子を回収することを更に含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
請求項1~30のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子、及び細胞傷害性剤を含む免疫複合体。
【請求項48】
請求項1~30のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子、及び薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤を含む、組成物。
【請求項49】
前記組成物がPD-1軸結合アンタゴニスト又は追加の治療剤を更に含む、請求項48に記載の組成物。
【請求項50】
それを必要とする対象において、HER2陽性癌を処置する又はその進行を遅延するための医薬であって、請求項1~30のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子を含む、医薬。
【請求項51】
HER2陽性癌を有する対象において、免疫機能を増強するための医薬であって、請求項1~30のいずれか一項に記載の二重特異性抗原結合分子を含む、医薬。
【請求項52】
前記HER2陽性癌が、細胞1個当たり200,000コピー以上の平均コピー数にてHER2を発現する腫瘍細胞により特徴付けられる、請求項50又は51に記載の医薬。
【請求項53】
前記HER2陽性癌が、乳癌、胃癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、腎癌、膀胱癌、膵癌、前立腺癌、肝癌、頭頸癌、黒色腫、卵巣癌、中皮腫、グリア芽腫、子宮体癌、及び骨肉腫からなる群から選択される、請求項5052のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項54】
前記二重特異性抗原結合分子が、0.01mg/kg~10mg/kg、0.1mg/kg~10mg/kg、又は1mg/kgの投与量での対象への投与のために製剤化される、請求項5053のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項55】
前記二重特異性抗原結合分子が、対象への、PD-1軸結合アンタゴニスト及び/又は追加の治療剤と組み合せた投与のために製剤化される、請求項5054のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項56】
前記PD-1軸結合アンタゴニスト又は追加の治療剤が、前記医薬の投与と同時に、前記医薬の投与前に、又は前記医薬の投与後に投与される、請求項55に記載の医薬。
【請求項57】
前記PD-1軸結合アンタゴニストが、PD-L1結合アンタゴニスト、PD-1結合アンタゴニスト、及びPD-L2結合アンタゴニストからなる群から選択される、請求項55又は56に記載の医薬。
【請求項58】
前記PD-1軸結合アンタゴニストが:
(i)MDX-1106(ニボルマブ)、MK-3475(ペムブロリズマブ)、MEDI-0680(AMP-514)、PDR001(スパルタリズマブ)、REGN2810(セミプリマブ)、及びBGB-108からなる群から選択されるPD-1結合アンタゴニストである;
(ii)MPDL3280A(アテゾリズマブ)、MDX-1105、MEDI4736(デュルバルマブ)、及びMSB0010718C(アベルマブ)からなる群から選択されるPD-L1結合アンタゴニストである;又は
(iii)抗体又はイムノアドヘシンであるPD-L2結合アンタゴニストである
請求項57に記載の医薬。
【請求項59】
前記二重特異性抗原結合分子が、皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与、局所投与、経口投与、経皮投与、腹腔内投与、眼窩内投与、移植投与、吸入投与、髄腔内投与、心室内投与、又は経鼻投与のために製剤化される、請求項5058のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項60】
前記対象がヒトである、請求項5059のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項61】
HER2陽性癌を処置、又はその進行を遅延するためのキットであって、
(a)請求項48又は49に記載の組成物と、
(b)前記組成物を使用して、それを必要とする対象のHER2陽性癌を処置、又はその進行を遅延するための取扱説明書を含む添付文書と、
を含むキット。
【請求項62】
前記HER2陽性癌が、細胞1個当たり200,000コピー以上の平均コピー数にてHER2を発現する腫瘍細胞により特徴付けられる、請求項61に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願には、ASCII形式にて電子的に提出されており、その全体が参照することにより本明細書に組み込まれる配列表を含む。2019年2月6日に作製した上記ASCIIのコピーは、名前が50474-162WO2_Sequence_Listing_02.06.19_ST25であり、サイズが293,645バイトである。
【0002】
本発明は概して、二重特異性抗原結合分子、その組成物、及び、癌などの疾患の処置方法に関する。
【背景技術】
【0003】
患者の特定の細胞型間での、細胞どうしの接触を操作することは、様々な病状を処置するための有望なアプローチを示している。例えば、それぞれが異なる標的抗原に特異的な2つのアームを有する二重特異性抗原結合分子(例えば、二重特異性抗体)は、免疫細胞を標的細胞と接触させるための能力の開発が行われている。このような二重特異性抗体は、癌などの様々な障害での有望性を示しており、強力な腫瘍標的細胞の免疫媒介殺傷が、臨床試験で観察されている。腫瘍特異性を付与するために、二重特異性抗体の腫瘍標的化アームが、腫瘍細胞で過剰発現する抗原を標的とするように設計されている。
【0004】
既存の二重特異性抗体は、健全な組織に対する短い半減期及び毒性を含む、いくつかの制限を有する可能性がある。標的抗原の腫瘍細胞過剰発現に依存する二重特異性抗体は多くの場合、健全で、通常量の抗原を発現する非腫瘍細胞を殺傷する。このような、オンターゲット・オフ腫瘍効果は、対象が許容する最大投与量を制限することにより、二重特異性抗体の治療指数を制限する。したがって、当分野においては、標的細胞又は組織に対する選択性が向上した、二重特異性抗原結合分子(例えば二重特異性抗体)の開発に対する、満たされていないニーズが存在する。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、一価のアーム及び二価のアームを有する二重特異性抗原結合分子(例えば、一価のアーム及び二価のアームを有するT細胞依存性二重特異性(TDB)抗体に関する。
【0006】
一態様では、本発明は、一価のアーム及び二価のアームを含む二重特異性抗原結合分子であって、(a)一価のアームが第1の抗原結合部分を含み、第1の抗原結合部分のC末端が第1のFcサブユニットのN末端に融合しており、(b)二価のアームが第2の抗原結合部分及び第3の抗原結合部分を含み、第3の抗原結合部分のC末端が第2の抗原結合部分のN末端に融合しており、第2の抗原結合部分のC末端が第2のFcサブユニットのN末端に縮合しており、かつ(c)第1のFcサブユニットが第2のFcサブユニットと会合してFcドメインを形成し、第1の抗原結合部分が第1の標的抗原に特異的に結合可能であり、第2の抗原結合部分及び第3の抗原結合部分がそれぞれ、第2の標的細胞抗原に特異的に結合可能である、二重特異性抗原結合分子を特徴とする。いくつかの実施形態では、第1の標的抗原は、CD3などの活性化T細胞抗原であり、かつ/又は、第2の標的細胞抗原は腫瘍抗原(例えばHER2)である。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、(a)対象の腫瘍細胞にて、及び(b)対象の、少なくとも一種の非腫瘍細胞にて発現する。
【0007】
いくつかの実施形態では、腫瘍細胞に対する非腫瘍細胞の、腫瘍抗原コピー数の比は、1:10~1:1,000(例えば1:100~1:200)である。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原コピー数は、非腫瘍細胞にて10~10個、そして、腫瘍細胞にて10~10個である。
【0008】
いくつかの実施形態では、腫瘍細胞(例えば、HER2陽性腫瘍細胞)での腫瘍抗原コピー数(例えば、平均の腫瘍抗原コピー数、例えばHER2コピー数、例えば平均のHER2コピー数)は、細胞1個当たり、10より大きい(例えば細胞1個当たり10~10個、又は、細胞1個当たり10~10個)いくつかの実施形態では、腫瘍抗原コピー数(例えば、平均の腫瘍抗原コピー数、例えばHER2コピー数、例えば平均のHER2コピー数)は、腫瘍細胞(例えば、HER2陽性腫瘍細胞)1個当たり200,000個以上である。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原コピー数(例えば、平均の腫瘍抗原コピー数、例えばHER2コピー数、例えば平均のHER2コピー数)は、非腫瘍細胞(例えば、非癌性細胞、例えば健常な細胞)1個当たり200,000個以下である。
【0009】
いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分及び/又は第3の抗原結合部分の一価の結合親和性(K)は、10nM~100nM(例えば、20nM~90nM、30nM~80nM、40nM~60nM、例えば25nM~55nM)である。一実施形態では、第2の抗原結合部分及び/又は第3の抗原結合部分の一価の結合親和性(K)は、20nM~50nMである。一実施形態では、第2の抗原結合部分及び第3の抗原結合部分の一価の結合親和性(K)は、20nM~50nMである。
【0010】
いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分の一価のKは、表面プラズモン共鳴(例えば、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴)を使用して測定した、Fabフォーマットにおける第2の抗原結合部分のKであり、第3の抗原結合部分の一価のKは、表面プラズモン共鳴(例えば、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴)を使用して測定した、Fabフォーマットにおける第3の抗原結合部分のKである。
【0011】
いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分及び/又は第3の抗原結合部分の一価の解離速度は、10-3/秒~10-1/秒(例えば、10-2/秒~30-2/秒)である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分の一価のKは、10nM~100nM(例えば、20nM~90nM、20nM~80nM、30nM~70nM、又は40nM~60nM)である。
【0012】
上記実施形態のいずれかにおいて、第1の抗原結合部分は、可変重鎖(VH)領域及び可変軽鎖(VL)領域を含むFab分子(Fab)であることができ、第2の抗原結合部分は、可変重鎖(VHB1)領域及び可変軽鎖(VLB1)領域を含むFab分子(FabB1)であり、かつ/又は、第3の抗原結合部分は、可変重鎖(VHB2)領域及び可変軽鎖(VLB2)領域を含むFab分子(FabB2)である。したがって、いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、VH領域及びVL領域を含むFabであり、第2の抗原結合部分はVHB1領域及びVLB1領域を含むFabB1であり、第3の抗原結合部分は、VHB2領域及びVLB2領域を含むFabB2である。
【0013】
いくつかの実施形態では、VHB1及びVHB2は、少なくとも95%の配列同一性を共有している。加えて、又はあるいは、VLB1及びVLB2は、少なくとも95%の配列同一性を共有している。加えて、又はあるいは、VHB1及びVHB2は、少なくとも95%の配列同一性を共有しており、かつ/又は、VLB1及びVLB2は、少なくとも95%の配列同一性を共有している。
【0014】
いくつかの実施形態では、VHB1領域及び/又はVHB2領域は、Kabatの付番システムに従った、N54、D98、F100、及び/又はY102の少なくとも1つ、2つ、3つ、又は4つ全ての残基において、アミノ酸置換を含む。例えば、VHB1領域及び/又はVHB2領域は、以下の残基:Kabatの付番システムに従った、N54E、D98A、D98T、F100A、及び/又はY102Vの1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つ全てにおけるアミノ酸置換を特徴とし得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、VLB1領域及び/又はVLB2領域は、Kabatの付番システムに従った、N30、Y55、及び/又はH91の少なくとも1つ、2つ、又は3つ全ての残基において、アミノ酸置換を含む。例えば、VLB1領域及び/又はVLB2領域は、以下の残基:N30S、Y55E、及び/又はH91Aの1つ、2つ、又は3つ全てにおけるアミノ酸置換を特徴とし得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2、又は、(c)配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H3の1つ、2つ、又は3つ全てを含むVHB1領域を特徴とする。いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号17に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号17に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号17に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号17に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号17に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号17に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号17のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB1領域は、以下のHVR:(a)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-L2、又は、(c)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VLB1領域は、配列番号18に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号18に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号18に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号18に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号18に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号18に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VLB1領域は、配列番号18のアミノ酸配列を含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、VHB1は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB1は、以下のHVR:(d)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号17に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号17に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号17に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号17に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号17に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号17に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み、VLB1領域は、配列番号18に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号18に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号18に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号18に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号18に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号18に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VHB1領域は配列番号17のアミノ酸を含み、VLB1領域は配列番号18のアミノ酸配列を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、VHB2領域は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2、又は、(c)配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号17に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号17に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号17に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号17に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号17に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号17に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号17のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、以下のHVR:(a)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-L2、又は、(c)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、配列番号18に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号18に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号18に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号18に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号18に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号18に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、配列番号18のアミノ酸配列を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、VHB2は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB2は、以下のHVR:(d)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号17に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号17に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号17に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号17に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号17に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号17に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み、VLB2領域は、配列番号18に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号18に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号18に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号18に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号18に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号18に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は配列番号17のアミノ酸を含み、VLB2領域は配列番号18のアミノ酸配列を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、VLB1領域及び/又はVLB2領域は、H91にアミノ酸置換を含む。例えば、いくつかの実施形態では、H91残基が、無極性側鎖を有するアミノ酸で置換されている。いくつかの実施形態では、VLB1 領域及び/又はVLB2領域は、H91Aのアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、VLB1領域及び/又はVLB2領域は、Y55にアミノ酸置換を含む。例えば、いくつかの実施形態では、Y55残基が、酸性側鎖を有するアミノ酸で置換されている。いくつかの実施形態では、VLB1領域及び/又はVLB2領域は、Y55Eのアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、VHB1領域及び/又はVHB2領域は、F100及び/又はY102にアミノ酸置換を含む。例えば、いくつかの実施形態では、F100残基及び/又はY102残基が、無極性側鎖を有するアミノ酸で置換されている。いくつかの実施形態では、VHB1領域及び/又はVHB2領域は、F100A及び/又はY102Vのアミノ酸置換を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、VLB1領域及び/又はVLB2領域は、1つ以上の易罹病性固定残基、例えば、N30Sのアミノ酸置換を含む1つ以上の易罹病性固定残基を含む。加えて、又はあるいは、VHB1領域及び/又はVHB2領域は、1つ以上の易罹病性固定残基、例えば、N54E、D98A、及びD98Tからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換基を含む、1つ以上の易罹病性固定残基を特徴とし得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H2、又は、(c)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-H3の1つ、2つ、又は3つ全てを含むVHB1領域を特徴とする。いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号24に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号24に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号24に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号24に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号24に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号24に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号24のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB1領域は、以下のHVR:(a)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L2、又は、(c)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VLB1領域は、配列番号27に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号27に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号27に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号27に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号27に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号27に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VLB1領域は、配列番号27のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗HER2二重特異性抗原結合分子(例えば、4D5 H91A-1Fab-IgG TDB)である。
【0023】
いくつかの実施形態において、VHB1は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB1は、以下のHVR:(d)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号24に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号24に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号24に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号24に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号24に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号24に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み、VLB1領域は、配列番号27に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号27に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号27に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号27に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号27に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号27に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VHB1領域は配列番号24のアミノ酸を含み、VLB1領域は配列番号27のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗HER2二重特異性抗原結合分子(例えば、4D5 H91A-1Fab-IgG TDB)である。
【0024】
いくつかの実施形態では、VHB2領域は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H2、又は、(c)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-H3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号24に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号24に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号24に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号24に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号24に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号24に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号24のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、以下のHVR:(a)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L2、又は、(c)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、配列番号27に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号27に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号27に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号18に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号27に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号27に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、配列番号27のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗HER2二重特異性抗原結合分子(例えば、4D5 H91A-1Fab-IgG TDB)である。
【0025】
いくつかの実施形態では、VHB2は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB2は、以下のHVR:(d)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号24に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号24に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号24に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号24に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号24に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号24に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み、VLB2領域は、配列番号27に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号27に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号27に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号27に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号27に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号27に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は配列番号24のアミノ酸を含み、VLB2領域は配列番号27のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗HER2二重特異性抗原結合分子(例えば、4D5 H91A-1Fab-IgG TDB)である。
【0026】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H2、又は、(c)配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-H3の1つ、2つ、又は3つ全てを含むVHB1領域を特徴とする。いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号33に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号33に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号33に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号33に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号33に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号33に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号33のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB1領域は、以下のHVR:(a)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L2、又は、(c)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VLB1領域は、配列番号25に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号25に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号25に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号25に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号25に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号25に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VLB1領域は、配列番号25のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗HER2二重特異性抗原結合分子(例えば、4D5 D98A.F100A.Y102V-1Fab-IgG TDB)である。
【0027】
いくつかの実施形態において、VHB1は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB1は、以下のHVR:(d)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号33に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号33に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号33に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号33に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号33に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号33に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み、VLB1領域は、配列番号25に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号25に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号25に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号25に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号25に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号25に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VHB1領域は配列番号33のアミノ酸を含み、VLB1領域は配列番号25のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗HER2二重特異性抗原結合分子(例えば、4D5 D98A.F100A.Y102V-1Fab-IgG TDB)である。
【0028】
いくつかの実施形態では、VHB2領域は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H2、又は、(c)配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-H3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号33に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号33に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号33に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号33に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号33に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号33に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号33のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、以下のHVR:(a)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L2、又は、(c)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、配列番号25に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号25に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号25に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号25に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号25に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号25に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、配列番号25のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗HER2二重特異性抗原結合分子(例えば、4D5 D98A.F100A.Y102V-1Fab-IgG TDB)である。
【0029】
いくつかの実施形態では、VHB2は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB2は、以下のHVR:(d)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号33に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号33に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号33に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号33に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号33に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号33に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み、VLB2領域は、配列番号25に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号25に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号25に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号25に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号25に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号25に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は配列番号33のアミノ酸を含み、VLB2領域は配列番号25のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗HER2二重特異性抗原結合分子(例えば、4D5 D98A.F100A.Y102V-1Fab-IgG TDB)である。
【0030】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、又は、(c)配列番号37のアミノ酸配列を含むHVR-H3の1つ、2つ、又は3つ全てを含むVHB1領域を特徴とする。いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号41に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号41に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号41に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号41のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB1領域は、以下のHVR:(a)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、又は、(c)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VLB1領域は、配列番号48に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号48に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号48に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VLB1領域は、配列番号48のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗HER2二重特異性抗原結合分子(例えば、4D5 Y55E.H91A.N54E.D98T-1Fab-IgG TDB)である。
【0031】
いくつかの実施形態において、VHB1は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号37のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB1は、以下のHVR:(d)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号41に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号41に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号41に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み、VLB1領域は、配列番号48に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号48に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号48に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VHB1領域は配列番号41のアミノ酸を含み、VLB1領域は配列番号48のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗HER2二重特異性抗原結合分子(例えば、4D5 Y55E.H91A.N54E.D98T-1Fab-IgG TDB)である。
【0032】
いくつかの実施形態では、VHB2領域は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、又は、(c)配列番号37のアミノ酸配列を含むHVR-H3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号41に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号41に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号41に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号41のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、以下のHVR:(a)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、又は、(c)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、配列番号48に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号48に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号48に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、配列番号48のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗HER2二重特異性抗原結合分子(例えば、4D5 Y55E.H91A.N54E.D98T-1Fab-IgG TDB)である。
【0033】
いくつかの実施形態では、VHB2は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号37のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB2は、以下のHVR:(d)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号41に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号41に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号41に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み、VLB2領域は、配列番号48に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号48に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号48に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は配列番号41のアミノ酸を含み、VLB2領域は配列番号48のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗HER2二重特異性抗原結合分子(例えば、4D5 Y55E.H91A.N54E.D98T-1Fab-IgG TDB)である。
【0034】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、又は、(c)配列番号43のアミノ酸配列を含むHVR-H3の1つ、2つ、又は3つ全てを含むVHB1領域を特徴とする。いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号44に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号44に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号44に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号44のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB1領域は、以下のHVR:(a)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、又は、(c)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VLB1領域は、配列番号48に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号48に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号48に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VLB1領域は、配列番号48のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗HER2二重特異性抗原結合分子(例えば、4D5 Y55E.H91A.N54E.D98T.Y102V-1Fab-IgG TDB)である。
【0035】
いくつかの実施形態において、VHB1は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号43のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB1は、以下のHVR:(d)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号44に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号44に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号44に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み、VLB1領域は、配列番号48に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号48に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号48に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VHB1領域は配列番号41のアミノ酸を含み、VLB1領域は配列番号48のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗HER2二重特異性抗原結合分子(例えば、4D5 Y55E.H91A.N54E.D98T.Y102V-1Fab-IgG TDB)である。
【0036】
いくつかの実施形態では、VHB2領域は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、又は、(c)配列番号43のアミノ酸配列を含むHVR-H3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号44に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号44に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号44に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号44のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、以下のHVR:(a)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、又は、(c)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、配列番号48に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号48に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号48に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、配列番号48のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗HER2二重特異性抗原結合分子(例えば、4D5 Y55E.H91A.N54E.D98T.Y102V-1Fab-IgG TDB)である。
【0037】
いくつかの実施形態では、VHB2は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号43のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB2は、以下のHVR:(d)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号44に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号44に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号44に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み、VLB2領域は、配列番号48に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号48に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号48に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は配列番号44のアミノ酸を含み、VLB2領域は配列番号48のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗HER2二重特異性抗原結合分子(例えば、4D5 Y55E.H91A.N54E.D98T.Y102V-1Fab-IgG TDB)である。
【0038】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、又は、(c)配列番号37のアミノ酸配列を含むHVR-H3の1つ、2つ、又は3つ全てを含むVHB1領域を特徴とする。いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号41に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号41に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号41に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号41のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB1領域は、以下のHVR:(a)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、又は、(c)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VLB1領域は、配列番号49に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号49に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号49に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VLB1領域は、配列番号49のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗HER2二重特異性抗原結合分子(例えば、4D5 N30S.Y55E.H91A.N54E.D98T-1Fab-IgG TDB)である。
【0039】
いくつかの実施形態において、VHB1は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号37のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB1は、以下のHVR:(d)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号41に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号41に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号41に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み、VLB1領域は、配列番号49に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号49に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号49に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VHB1領域は配列番号41のアミノ酸を含み、VLB1領域は配列番号49のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗HER2二重特異性抗原結合分子(例えば、4D5 N30S.Y55E.H91A.N54E.D98T-1Fab-IgG TDB)である。
【0040】
いくつかの実施形態では、VHB2領域は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、又は、(c)配列番号37のアミノ酸配列を含むHVR-H3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号41に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号41に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号41に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号41のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、以下のHVR:(a)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、又は、(c)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、配列番号49に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号49に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号49に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、配列番号49のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗HER2二重特異性抗原結合分子(例えば、4D5 N30S.Y55E.H91A.N54E.D98T-1Fab-IgG TDB)である。
【0041】
いくつかの実施形態では、VHB2は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号37のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB2は、以下のHVR:(d)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号41に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号41に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号41に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み、VLB2領域は、配列番号49に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号49に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号49に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は配列番号41のアミノ酸を含み、VLB2領域は配列番号49のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗HER2二重特異性抗原結合分子(例えば、4D5 N30S.Y55E.H91A.N54E.D98T-1Fab-IgG TDB)である。
【0042】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、又は、(c)配列番号43のアミノ酸配列を含むHVR-H3の1つ、2つ、又は3つ全てを含むVHB1領域を特徴とする。いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号44に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号44に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号44に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号44のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB1領域は、以下のHVR:(a)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、又は、(c)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VLB1領域は、配列番号49に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号49に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号49に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VLB1領域は、配列番号49のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗HER2二重特異性抗原結合分子(例えば、4D5 N30S.Y55E.H91A.N54E.D98T.Y102V-1Fab-IgG TDB)である。
【0043】
いくつかの実施形態において、VHB1は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号43のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB1は、以下のHVR:(d)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号44に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号44に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号44に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み、VLB1領域は、配列番号49に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号49に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号49に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VHB1領域は配列番号44のアミノ酸を含み、VLB1領域は配列番号49のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗HER2二重特異性抗原結合分子(例えば、4D5 N30S.Y55E.H91A.N54E.D98T.Y102V-1Fab-IgG TDB)である。
【0044】
いくつかの実施形態では、VHB2領域は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、又は、(c)配列番号43のアミノ酸配列を含むHVR-H3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号44に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号44に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号44に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号44のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、以下のHVR:(a)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、又は、(c)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、配列番号49に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号49に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号49に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、配列番号49のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗HER2二重特異性抗原結合分子(例えば、4D5 N30S.Y55E.H91A.N54E.D98T.Y102V-1Fab-IgG TDB)である。
【0045】
いくつかの実施形態では、VHB2は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号43のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB2は、以下のHVR:(d)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号44に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号44に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号44に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み、VLB2領域は、配列番号49に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号49に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号49に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は配列番号44のアミノ酸を含み、VLB2領域は配列番号49のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗HER2二重特異性抗原結合分子(例えば、4D5 N30S.Y55E.H91A.N54E.D98T.Y102V-1Fab-IgG TDB)である。
【0046】
いくつかの実施形態では、上記実施形態のいずれかの二重特異性抗原結合分子は、以下のHVR:(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、又は、(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3の1つ、2つ、又は3つ全てを含むVH領域を特徴とする。いくつかの実施形態では、VH領域は、配列番号7に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号7に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号7に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号7に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号7に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号7に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VH領域は、配列番号7のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VL領域は、以下のHVR:(a)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、又は、(c)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VL領域は、配列番号8に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号8に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号8に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号8に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号8に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号8に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VL領域は、配列番号8のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗CD3二重特異性抗原結合分子(例えば、抗CD3/HER2 1Fab-IgG TDB、例えば、40G5c CD3結合ドメインを有する抗CD3/HER2 1Fab-IgG TDB)である。
【0047】
いくつかの実施形態では、VHは、以下のHVR:(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLは、以下のHVR:(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VH領域は、配列番号7に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号7に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号7に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号7に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号7に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号7に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み、VL領域は、配列番号8に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号8に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号8に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号8に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号8に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号8に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VH領域は配列番号7のアミノ酸を含み、VL領域は配列番号8のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗CD3二重特異性抗原結合分子(例えば、抗CD3/HER2 1Fab-IgG TDB、例えば、40G5c CD3結合ドメインを有する抗CD3/HER2 1Fab-IgG TDB)である。
【0048】
別の態様において、本発明は、一価のアーム及び二価のアームを含む二重特異性抗原結合分子であって、(a)一価のアームがFabを含み、FabのC末端が第1のFcサブユニットのN末端に融合しており、Fabが以下のHVR:(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(iv)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(v)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び、(vi)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含み、(b)二価のアームがFabB1及びFabB2を含み、FabB2のC末端がFabB1のN末端に融合しており、FabB1のC末端が第2のFcサブユニットのN末端に融合しており、FabB1及びFabB2がそれぞれ、以下のHVR:(i)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(iii)配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(iv)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(v)配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び、(vi)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含み、かつ、(c)第1のFcサブユニットが第2のFcサブユニットと会合してFcドメインを形成する、二重特異性抗原結合分子を特徴とする。いくつかの実施形態では、(a)FabはVH領域及びVL領域を含み、VH領域は、配列番号7に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VL領域は、配列番号8に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(b)FabB1はVHB1領域及びVLB1領域を含み、VHB1領域は、配列番号17に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLB1領域は、配列番号18に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(c)FabB2はVHB2領域及びVLB2領域を含み、VHB2領域は、配列番号17に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLB2領域は、配列番号18に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、(a)VH領域は配列番号7のアミノ酸配列を含み、VL領域は配列番号8のアミノ酸配列を含み、(b)VHB1領域は配列番号17のアミノ酸配列を含み、VLB1領域は配列番号18のアミノ酸配列を含み、(c)VHB2領域は配列番号17のアミノ酸配列を含み、VLB2領域は配列番号18のアミノ酸配列を含む。
【0049】
別の態様において、本発明は、一価のアーム及び二価のアームを含む二重特異性抗原結合分子であって、(a)一価のアームがFabを含み、FabのC末端が第1のFcサブユニットのN末端に融合しており、Fabが以下のHVR:(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(iv)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(v)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び、(vi)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含み、(b)二価のアームがFabB1及びFabB2を含み、FabB2のC末端がFabB1のN末端に融合しており、FabB1のC末端が第2のFcサブユニットのN末端に融合しており、FabB1及びFabB2がそれぞれ、以下のHVR:(i)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(iii)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(iv)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(v)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び、(vi)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含み、かつ、(c)第1のFcサブユニットが第2のFcサブユニットと会合してFcドメインを形成する、二重特異性抗原結合分子を提供する。いくつかの実施形態では、(a)FabはVH領域及びVL領域を含み、VH領域は、配列番号7に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VL領域は、配列番号8に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(b)FabB1はVHB1領域及びVLB1領域を含み、VHB1領域は、配列番号24に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLB1領域は、配列番号27に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(c)FabB2はVHB2領域及びVLB2領域を含み、VHB2領域は、配列番号24に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLB2領域は、配列番号27に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、(a)VH領域は配列番号7のアミノ酸配列を含み、VL領域は配列番号8のアミノ酸配列を含み、(b)VHB1領域は配列番号24のアミノ酸配列を含み、VLB1領域は配列番号27のアミノ酸配列を含み、(c)VHB2領域は配列番号24のアミノ酸配列を含み、VLB2領域は配列番号27のアミノ酸配列を含む。
【0050】
更に別の態様では、本発明は、一価のアーム及び二価のアームを含む二重特異性抗原結合分子であって、(a)一価のアームがFabを含み、FabのC末端が第1のFcサブユニットのN末端に融合しており、Fabが以下のHVR:(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(iv)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(v)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び、(vi)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含み、(b)二価のアームがFabB1及びFabB2を含み、FabB2のC末端がFabB1のN末端に融合しており、FabB1のC末端が第2のFcサブユニットのN末端に融合しており、FabB1及びFabB2がそれぞれ、以下のHVR:(i)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(iii)配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(iv)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(v)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び、(vi)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含み、かつ、(c)第1のFcサブユニットが第2のFcサブユニットと会合してFcドメインを形成する、二重特異性抗原結合分子を特徴とする。いくつかの実施形態では、(a)FabはVH領域及びVL領域を含み、VH領域は、配列番号7に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VL領域は、配列番号8に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(b)FabB1はVHB1領域及びVLB1領域を含み、VHB1領域は、配列番号33に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLB1領域は、配列番号25に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(c)FabB2はVHB2領域及びVLB2領域を含み、VHB2領域は、配列番号33に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLB2領域は、配列番号25に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、(a)VH領域は配列番号7のアミノ酸配列を含み、VL領域は配列番号8のアミノ酸配列を含み、(b)VHB1領域は配列番号33のアミノ酸配列を含み、VLB1領域は配列番号25のアミノ酸配列を含み、(c)VHB2領域は配列番号33のアミノ酸配列を含み、VLB2領域は配列番号25のアミノ酸配列を含む。
【0051】
別の態様において、本発明は、一価のアーム及び二価のアームを含む二重特異性抗原結合分子であって、(a)一価のアームがFabを含み、FabのC末端が第1のFcサブユニットのN末端に融合しており、Fabが以下のHVR:(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(iv)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(v)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び、(vi)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含み、(b)二価のアームがFabB1及びFabB2を含み、FabB2のC末端がFabB1のN末端に融合しており、FabB1のC末端が第2のFcサブユニットのN末端に融合しており、FabB1及びFabB2がそれぞれ、以下のHVR:(i)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(iii)配列番号37のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(iv)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(v)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び、(vi)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含み、かつ、(c)第1のFcサブユニットが第2のFcサブユニットと会合してFcドメインを形成する、二重特異性抗原結合分子を特徴とする。いくつかの実施形態では、(a)FabはVH領域及びVL領域を含み、VH領域は、配列番号7に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VL領域は、配列番号8に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(b)FabB1はVHB1領域及びVLB1領域を含み、VHB1領域は、配列番号41に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLB1領域は、配列番号48に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(c)FabB2はVHB2領域及びVLB2領域を含み、VHB2領域は、配列番号41に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLB2領域は、配列番号48に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、(a)VH領域は配列番号7のアミノ酸配列を含み、VL領域は配列番号8のアミノ酸配列を含み、(b)VHB1領域は配列番号41のアミノ酸配列を含み、VLB1領域は配列番号48のアミノ酸配列を含み、(c)VHB2領域は配列番号41のアミノ酸配列を含み、VLB2領域は配列番号48のアミノ酸配列を含む。
【0052】
別の態様において、本発明は、一価のアーム及び二価のアームを含む二重特異性抗原結合分子であって、(a)一価のアームがFabを含み、FabのC末端が第1のFcサブユニットのN末端に融合しており、Fabが以下のHVR:(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(iv)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(v)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び、(vi)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含み、(b)二価のアームがFabB1及びFabB2を含み、FabB2のC末端がFabB1のN末端に融合しており、FabB1のC末端が第2のFcサブユニットのN末端に融合しており、FabB1及びFabB2がそれぞれ、以下のHVR:(i)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(iii)配列番号43のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(iv)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(v)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び、(vi)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含み、かつ、(c)第1のFcサブユニットが第2のFcサブユニットと会合してFcドメインを形成する、二重特異性抗原結合分子を特徴とする。いくつかの実施形態では、(a)FabはVH領域及びVL領域を含み、VH領域は、配列番号7に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VL領域は、配列番号8に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(b)FabB1はVHB1領域及びVLB1領域を含み、VHB1領域は、配列番号44に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLB1領域は、配列番号48に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(c)FabB2はVHB2領域及びVLB2領域を含み、VHB2領域は、配列番号44に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLB2領域は、配列番号48に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、(a)VH領域は配列番号7のアミノ酸配列を含み、VL領域は配列番号8のアミノ酸配列を含み、(b)VHB1領域は配列番号44のアミノ酸配列を含み、VLB1領域は配列番号48のアミノ酸配列を含み、(c)VHB2領域は配列番号44のアミノ酸配列を含み、VLB2領域は配列番号48のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗CD3/HER2二重特異性抗原結合分子(例えば、抗CD3/HER2 1Fab-IgG TDB、例えば、40G5c CD3結合ドメイン、及び2つの4D5 Y55E.H91A.N54E.D98T.Y102V HER2結合ドメインを有する抗CD3/HER2 1Fab-IgG TDB)である。
【0053】
更に別の態様において、本発明は、一価のアーム及び二価のアームを含む二重特異性抗原結合分子であって、(a)一価のアームがFabを含み、FabのC末端が第1のFcサブユニットのN末端に融合しており、Fabが以下のHVR:(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(iv)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(v)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び、(vi)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含み、(b)二価のアームがFabB1及びFabB2を含み、FabB2のC末端がFabB1のN末端に融合しており、FabB1のC末端が第2のFcサブユニットのN末端に融合しており、FabB1及びFabB2がそれぞれ、以下のHVR:(i)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(iii)配列番号37のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(iv)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(v)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び、(vi)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含み、かつ、(c)第1のFcサブユニットが第2のFcサブユニットと会合してFcドメインを形成する、二重特異性抗原結合分子を提供する。いくつかの実施形態では、(a)FabはVH領域及びVL領域を含み、VH領域は、配列番号7に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VL領域は、配列番号8に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(b)FabB1はVHB1領域及びVLB1領域を含み、VHB1領域は、配列番号41に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLB1領域は、配列番号49に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(c)FabB2はVHB2領域及びVLB2領域を含み、VHB2領域は、配列番号41に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLB2領域は、配列番号49に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、(a)VH領域は配列番号7のアミノ酸配列を含み、VL領域は配列番号8のアミノ酸配列を含み、(b)VHB1領域は配列番号41のアミノ酸配列を含み、VLB1領域は配列番号49のアミノ酸配列を含み、(c)VHB2領域は配列番号41のアミノ酸配列を含み、VLB2領域は配列番号49のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗CD3/HER2二重特異性抗原結合分子(例えば、抗CD3/HER2 1Fab-IgG TDB、例えば、40G5c CD3結合ドメイン、及び2つの4D5 N30S.Y55E.H91A.N54E.D98T HER2結合ドメインを有する抗CD3/HER2 1Fab-IgG TDB)である。
【0054】
別の態様において、本発明は、一価のアーム及び二価のアームを含む二重特異性抗原結合分子であって、(a)一価のアームがFabを含み、FabのC末端が第1のFcサブユニットのN末端に融合しており、Fabが以下のHVR:(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(iv)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(v)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び、(vi)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含み、(b)二価のアームがFabB1及びFabB2を含み、FabB2のC末端がFabB1のN末端に融合しており、FabB1のC末端が第2のFcサブユニットのN末端に融合しており、FabB1及びFabB2がそれぞれ、以下のHVR:(i)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(iii)配列番号43のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(iv)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(v)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び、(vi)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含み、かつ、(c)第1のFcサブユニットが第2のFcサブユニットと会合してFcドメインを形成する、二重特異性抗原結合分子を特徴とする。いくつかの実施形態では、(a)FabはVH領域及びVL領域を含み、VH領域は、配列番号7に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VL領域は、配列番号8に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(b)FabB1はVHB1領域及びVLB1領域を含み、VHB1領域は、配列番号44に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLB1領域は、配列番号49に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(c)FabB2はVHB2領域及びVLB2領域を含み、VHB2領域は、配列番号44に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLB2領域は、配列番号49に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、(a)VH領域は配列番号7のアミノ酸配列を含み、VL領域は配列番号8のアミノ酸配列を含み、(b)VHB1領域は配列番号44のアミノ酸配列を含み、VLB1領域は配列番号49のアミノ酸配列を含み、(c)VHB2領域は配列番号44のアミノ酸配列を含み、VLB2領域は配列番号49のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗CD3/HER2二重特異性抗原結合分子(例えば、抗CD3/HER2 1Fab-IgG TDB、例えば、40G5c CD3結合ドメイン、及び2つの4D5 N30S.Y55E.H91A.N54E.D98T.Y102V HER2結合ドメインを有する抗CD3/HER2 1Fab-IgG TDB)である。
【0055】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、FcドメインはIgG Fcドメイン(例えば、IgG又はIgG Fcドメイン)である。Fcドメインは、ヒトFcドメインであることができる。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、Fc受容体への結合を低下させる、かつ/又はエフェクター機能を低下させる1つ以上のアミノ酸置換を含む。例えば、いくつかの実施形態では、Fc受容体への結合を低下させる、かつ/又はエフェクター機能を低下させる1つ以上のアミノ酸置換は、L234、L235、及びP329からなる群から選択される1つ以上の位置におけるものである(例えば、第1のFcサブユニット及び第2のFcサブユニットはそれぞれ、L234A、L235A、及びP329Gのアミノ酸置換を含む)。いくつかの実施形態では、Fc受容体への結合を低下させる、かつ/又はエフェクター機能を低下させる1つ以上のアミノ酸置換は、N297におけるものである(例えば、N297G)。いくつかの実施形態では、Fc受容体はFcγ受容体である。いくつかの実施形態では、エフェクター機能は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)である。
【0056】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、Fcドメインは、第1のFcサブユニットの第2のFcサブユニットとの会合を促進するように構成された改変を含む。いくつかの実施形態では、第2のFcサブユニットのCH3ドメインにおけるアミノ酸残基を、より大きなサイズの側鎖体積を有するアミノ酸残基で置き換えることにより、第1のFcサブユニットのCH3ドメイン内の空洞に位置可能な第2のFcサブユニットのCH3ドメイン内に突出部を生成し、第1のFcサブユニットのCH3ドメインにおけるアミノ酸残基を、より小さなサイズの側鎖体積を有するアミノ酸残基で置き換えることにより、第2のFcサブユニットのCH3ドメイン内の突出部が位置可能な第1のFcサブユニットのCH3ドメイン内に空洞を生成する。いくつかの実施形態では、第2のFcサブユニットのCH3ドメインは、T366のアミノ酸置換を含み、第1のFcサブユニットのCH3ドメインは、T366、L368、及び/又はY407の1つ、2つ、又は3つ全てにおけるアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、第2のFcサブユニットのCH3ドメインはT366Wのアミノ酸置換を含み、第1のFcサブユニットのCH3ドメインは、T366S、L368A、及び/又はY407Vの1つ、2つ、又は3つ全てのアミノ酸置換を含む。
【0057】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、第3の抗原結合部分のC末端は、ペプチドリンカーを介して第2の抗原結合部分のN末端に融合している。ペプチドリンカーは、5~20アミノ酸長(例えば、5~10、10~15、又は15~20、例えば5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20アミノ酸長)であることができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは配列番号50のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、配列番号55に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号55に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号55に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号55に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号55に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号55に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、配列番号59に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号59に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号59に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号59に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号59に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号59に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、配列番号63に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号63に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号63に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号63に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号63に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号63に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、配列番号83に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号83に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号83に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号83に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号83に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号83に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、配列番号85に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号85に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号85に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号85に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号85に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号85に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、配列番号87に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号87に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号87に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号87に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号87に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号87に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、配列番号89に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号89に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号89に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号89に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号89に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号89に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは配列番号51のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、配列番号56に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号56に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号56に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号56に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号56に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号56に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、配列番号60に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号60に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号60に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号60に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号60に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号60に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、配列番号64に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号64に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号64に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号64に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号64に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号64に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、配列番号84に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号84に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号84に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号84に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号84に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号84に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、配列番号86に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号86に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号86に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号86に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号86に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号86に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、配列番号88に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号88に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号88に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号88に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号88に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号88に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、配列番号90に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号90に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号90に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号90に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号90に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号90に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。
【0060】
別の態様において、本発明は、前述の態様のいずれかの二重特異性抗原結合分子をコードする単離核酸を特徴とする。
【0061】
別の態様において、本発明は、前述の態様のいずれかの二重特異性抗原結合分子をコードする単離核酸を含むベクターを提供する。
【0062】
別の態様において、本発明は、前述の態様のいずれかの二重特異性抗原結合分子をコードする単離核酸を含むベクターを含む宿主細胞(例えば、単離宿主細胞)を提供する。いくつかの実施形態では、宿主細胞は哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞)である。別の実施形態において、宿主細胞は原核細胞(例えば、E.coli細胞)である。
【0063】
別の態様において、本発明は、前述の態様のいずれかの二重特異性抗原結合分子の作製方法を特徴とする。いくつかの実施形態では、方法は、培地内で、上述した宿主細胞のいずれか(例えば、前述の態様のいずれかの二重特異性抗原結合分子をコードする単離核酸を含むベクターを含む宿主細胞)を培養することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、宿主細胞又は培地から二重特異性抗原結合分子を回収することを更に含む。
【0064】
別の態様において、本発明は、前述の態様のいずれかの二重特異性抗原結合分子をコードする単離核酸のセット(例えば、前述の態様のいずれかの二重特異性抗原結合分子をコードする2つ、3つ、4つ、又はそれ以上の単離核酸を含むセット)を特徴とする。いくつかの実施形態では、単離核酸のセットは、第1の単離核酸及び第2の単離核酸を含み、第1の単離核酸は、二重特異性抗原結合分子の第1アームの1つ以上のアミノ酸配列をコードし、第2の単離核酸は、二重特異性抗原結合分子の第2アームの1つ以上のアミノ酸配列をコードする。
【0065】
別の態様において、本発明は、ベクターのセットを提供し、セットの各ベクターは、単離核酸のセットの単離核酸を含み、前述の態様のいずれかの二重特異性抗原結合分子をコードする単離核酸のセット(例えば、前述の態様のいずれかの二重特異性抗原結合分子をコードする2つ、3つ、4つ、又はそれ以上の単離核酸を含むセット)。
【0066】
別の態様において、本発明は、宿主細胞のセット(例えば、単離宿主細胞のセット)を提供する。いくつかの実施形態では、セットの各宿主細胞は、単離核酸のセットの単離核酸を含み、前述の態様のいずれかの二重特異性抗原結合分子をコードする単離核酸のセット(例えば、前述の態様のいずれかの二重特異性抗原結合分子をコードする2つ、3つ、4つ、又はそれ以上の単離核酸を含むセット)。いくつかの実施形態では、セットの各宿主細胞は、単離核酸のセットの単離核酸を含むベクターを含み、前述の態様のいずれかの二重特異性抗原結合分子をコードする単離核酸のセット(例えば、前述の態様のいずれかの二重特異性抗原結合分子をコードする2つ、3つ、4つ、又はそれ以上の単離核酸を含むセット)。いくつかの実施形態では、宿主細胞のセットは哺乳類細胞(例えばCHO細胞)を含む。いくつかの実施形態では、宿主細胞のセットは原核細胞(例えばE.coli細胞)を含む。
【0067】
別の態様において、本発明は、前述の態様のいずれかの二重特異性抗原結合分子の作製方法を提供し、方法は、前述の態様の宿主細胞のセットを培地内で培養することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、宿主細胞のセット又は培地から、二重特異性抗原結合分子を回収することを更に含む。
【0068】
別の態様において、本発明は、前述の態様のいずれかの二重特異性抗原結合分子及び細胞毒性剤を含む免疫抱合体を特徴とする。
【0069】
更に別の態様では、本発明は、前述の態様のいずれかの二重特異性抗原結合分子を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤を更に含む。例えば、いくつかの実施形態では、組成物は医薬組成物である。いくつかの実施形態では、組成物は、PD-1軸結合アンタゴニスト又は追加の治療剤を更に含む。
【0070】
別の態様において、本発明は、薬剤として使用するための、前述の態様のいずれか1つの二重特異性抗原結合分子を特徴とする。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書で記載される二重特異性抗原結合分子は、細胞増殖性障害(例えば癌)又は自己免疫性障害の処置又は進行の遅延を必要とする対象における、細胞増殖性障害(例えば癌)又は自己免疫性障害の処置又は進行の遅延に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、前述の態様のいずれかの二重特異性抗原結合分子は、細胞増殖性障害(例えば癌、例えばHER2陽性癌)又は自己免疫性障害を有する対象における、免疫機能の増強に使用するためのものである。
【0071】
別の態様において、本発明は、障害の処置又は進行の遅延用の薬剤の製造における、前述の態様のいずれかの二重特異性抗原結合分子の使用を特徴とする。別の態様において、本発明は、障害を有する対象における、免疫機能を増強するための薬剤の製造における、前述の態様のいずれかの二重特異性抗原結合分子の使用を特徴とする。いくつかの実施形態では、障害は、細胞増殖性障害(例えば癌、例えばHER2陽性癌)、又は自己免疫性障害である。
【0072】
更に別の態様では、本発明は、障害の処置又は進行の遅延を必要とする対象における、障害の処置又は進行の遅延方法であって、該方法が、対象に、前述の態様のいずれかの二重特異性抗原結合分子を投与することを含む方法を特徴とする。別の態様において、本発明は、障害を有する対象における免疫機能の増強方法であって、該方法が、対象に、前述の態様のいずれかの二重特異性抗原結合分子を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、障害は、細胞増殖性障害(例えば癌、例えばHER2陽性癌)、又は自己免疫性障害である。
【0073】
別の態様において、本発明は、障害の処置又は進行の遅延を必要とする対象における、障害の処置又は進行の遅延方法であって、該方法が、(a)腫瘍細胞でのHER2の発現を測定する(腫瘍細胞はHER2を、細胞1個当たり200,000コピー以上の、平均コピー数にて発現する)ことと、(b)対象に、前述の態様のいずれかの二重特異性抗原結合分子を投与することと、を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、障害は、細胞増殖性障害(例えば癌、例えばHER2陽性癌)、又は自己免疫性障害である。
【0074】
別の態様において、本発明は、障害を有する対象における免疫機能の増強方法であって、該方法が、(a)腫瘍細胞でのHER2の発現を測定する(腫瘍細胞はHER2を、細胞1個当たり200,000コピー以上の、平均コピー数にて発現する)ことと、(b)対象に、前述の態様のいずれかの二重特異性抗原結合分子を投与することと、を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、障害は、細胞増殖性障害(例えば癌、例えばHER2陽性癌)、又は自己免疫性障害である。
【0075】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、癌は、乳癌、胃癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、腎癌、膀胱癌、膵癌、前立腺癌、肝癌、頭頸癌、黒色腫、卵巣癌、中皮腫、グリア芽腫、子宮体癌、及び骨肉腫からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、癌は、HER2陽性癌(例えばHER2陽性乳癌、HER2陽性胃癌、HER2陽性結腸直腸癌、HER2陽性非小細胞肺癌、HER2陽性腎癌、HER2陽性膀胱癌、HER2陽性膵癌、HER2陽性前立腺癌、HER2陽性肝癌、HER2陽性頭頸癌、HER2陽性黒色腫、HER2陽性卵巣癌、HER2陽性中皮腫、HER2陽性グリア芽腫、HER2陽性子宮体癌、又はHER2陽性骨肉腫)である。
【0076】
いくつかの実施形態では、HER2陽性癌(例えばHER2陽性乳癌、HER2陽性胃癌、HER2陽性結腸直腸癌、HER2陽性非小細胞肺癌、HER2陽性腎癌、HER2陽性膀胱癌、HER2陽性膵癌、HER2陽性前立腺癌、HER2陽性肝癌、HER2陽性頭頸癌、HER2陽性黒色腫、HER2陽性卵巣癌、HER2陽性中皮腫、HER2陽性グリア芽腫、HER2陽性子宮体癌、又はHER2陽性骨肉腫)は、細胞1個当たり少なくとも200,000のコピー数(例えば、平均コピー数)(例えば、細胞1個当たり少なくとも250,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも300,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも400,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも500,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも600,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも700,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも750,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも800,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも900,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも1,000,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも1,200,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも1,500,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも2,000,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも2,500,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも3,000,000のHER2のコピー、又はそれ以上、例えば、細胞1個当たり200,000~3,000,000のHER2のコピー、細胞1個当たり250,000~2,500,000のHER2のコピー、細胞1個当たり300,000~2,000,000のHER2のコピー、細胞1個当たり400,000~1,500,000のHER2のコピー、若しくは、細胞1個当たり500,000~1,000,000のHER2のコピー、例えば、細胞1個当たり200,000~1,000,000のHER2のコピー(例えば、細胞1個当たり200,000~250,000のHER2のコピー、細胞1個当たり250,000~300,000のHER2のコピー、細胞1個当たり300,000~400,000のHER2のコピー、細胞1個当たり400,000~500,000のHER2のコピー、細胞1個当たり500,000~750,000のHER2のコピー、若しくは、細胞1個当たり750,000~1,000,000のHER2のコピー)、又は、細胞1個当たり1,000,000~3,000,000のHER2のコピー(例えば、細胞1個当たり1,000,000~1,500,000のHER2のコピー、細胞1個当たり1,500,000~2,000,000のHER2のコピー、細胞1個当たり2,000,000~2,500,000のHER2のコピー、若しくは、細胞1個当たり2,500,000~3,000,000のHER2のコピー))にてHER2を発現する腫瘍細胞を特徴とする。
【0077】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、二重特異性抗原結合分子は対象に、約0.01mg/kg~約10mg/kg(例えば、約0.1mg/kg~約10mg/kg、例えば約1mg/kg)の投与量で投与される。
【0078】
いくつかの実施形態では、PD-1軸結合アンタゴニスト及び/又は追加の治療剤が対象に投与される。いくつかの実施形態では、PD-1軸結合アンタゴニスト又は追加の治療剤は、二重特異性抗原結合分子の投与前に、又はこの後に投与される。いくつかの実施形態では、PD-1軸結合アンタゴニスト又は追加の治療剤は、二重特異性抗原結合分子と同時に投与される。いくつかの実施形態では、PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニスト(例えばアテゾリズマブ(MPDL3280A)、YW243.55.S70、MDX-1105、MEDI4736(デュルバルマブ)、及びMSB0010718C(アベルマブ))、PD-1結合アンタゴニスト(例えばMDX-1106(ニボルマブ)、MK-3475(ペムブロリズマブ)、CT-011(ピディリズマブ)、MEDI-0680(AMP-514)、PDR001(スパルタリズマブ)、REGN2810(セミプリマブ)、及びBGB-108)、並びに、PD-L2結合アンタゴニスト(例えば、抗体又はイムノアドヘシン)からなる群から選択される。
【0079】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与、局所投与、経口投与、経皮投与、腹腔内投与、眼窩内投与、移植投与、吸入投与、髄腔内投与、心室内投与、又は経鼻投与される。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は皮下投与される。別の実施形態において、二重特異性抗原結合分子は静脈内投与される。
【0080】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。
【0081】
別の態様において、本発明は、(a)前述の態様のいずれかの二重特異性抗原結合分子を含む組成物;及び、(b)組成物を対象に投与して、障害(例えば、細胞増殖性障害(例えば癌)、又は自己免疫性障害)を処置、又は障害の進行を遅延するための取扱説明書を含む添付文書を含むキットを特徴とする。いくつかの実施形態では、本組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤を更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0082】
図1】SKBR3細胞及びMCF7細胞による、HER2タンパク質の相対的な発現を示すイムノブロットである。
図2】様々な一価のHER2 TDB(IgG TDB)分子による、SKBR3細胞(白色の正方形)及びMCF7細胞(黒丸)の相対的殺傷の用量反応曲線を示すグラフである。データは、平均±標準偏差として表される。図2Aは、野生型4D5 IgG TDB抗体(トラスツズマブ)による標的細胞殺傷の用量反応曲線を示すグラフである。図2Bは、4D5抗体バリアントのY55E.Y102V-TDBによる標的細胞殺傷の用量反応曲線を示すグラフである。図2Cは、4D5抗体バリアントのY55E.D98A.F100A.Y102V-IgG TDBによる標的細胞殺傷の用量反応曲線を示すグラフである。図2Dは、4D5抗体バリアントのD98A.F100A.Y102V-IgG TDBによる標的細胞殺傷の用量反応曲線を示すグラフである。図2Eは、4D5抗体バリアントのH91A-IgG TDBによる標的細胞殺傷の用量反応曲線を示すグラフである。図2Fは、4D5抗体バリアントのY100A-IgG TDBによる標的細胞殺傷の用量反応曲線を示すグラフである。
図3】1Fab-IgG TDB形式、フォーマットの例示的な三価抗体の略図である。この抗体は、2つの抗HER2結合部分を有する二価のアーム、及び1つの抗CD3結合部分を有する一価のアームを特徴とする。
図4A】フローサイトメトリーにより定量化した、野生型4D5 IgG TDB抗体と比較しての、様々な1Fab-IgG TDB抗体の、SKBR3に対する結合を定量化する用量反応曲線を示すグラフである。黒色の下向き三角形は、野生型4D5 IgG TDB抗体(トラスツズマブ)を表し、黒色の正方形は、4D5抗体バリアントのH91A-IgG TDBを表し、黒色の上向き三角形は、4D5抗体バリアントのD98A.F100A.Y102V-IgG TDBを表し、白色の下向き三角形は、4D5抗体バリアントのY102V-IgG TDBを表し、白色の菱形は、4D5抗体バリアントのY55E.Y102V-IgG TDBを表す。
図4B】フローサイトメトリーにより定量化した、野生型4D5 IgG TDB抗体と比較しての、様々な1Fab-IgG TDB抗体の、MCF7に対する結合を定量化する用量反応曲線を示すグラフである。黒色の下向き三角形は、野生型4D5 IgG TDB抗体(トラスツズマブ)を表し、黒色の正方形は、4D5抗体バリアントのH91A-IgG TDBを表し、黒色の上向き三角形は、4D5抗体バリアントのD98A.F100A.Y102V-IgG TDBを表し、白色の下向き三角形は、4D5抗体バリアントのY102V-IgG TDBを表し、白色の菱形は、4D5抗体バリアントのY55E.Y102V-IgG TDBを表す。
図5A】経時的に、カスパーゼ3/7活性により定量化した、野生型4D5 IgG TDB抗体に対する、様々な1Fab-IgG TDB抗体の結果としてのSKBR3細胞におけるアポトーシスの誘発を示すグラフである。黒丸は野生型4D5 IgG TDB抗体(トラスツズマブ)を表し、白色の正方形は4D5抗体バリアントのH91A-IgG TDBを表し、黒色の三角形は4D5抗体バリアントのD98A.F100A.Y102V-IgG TDBを表し、白色の三角形は4D5抗体バリアントのY102V-IgG TDBを表し、白色の菱形は4D5抗体バリアントのY55E.Y102V-IgG TDBを表す。データは、平均±標準偏差として表される。
図5B】経時的に、カスパーゼ3/7活性により定量化した、野生型4D5 IgG TDB抗体に対する、様々な1Fab-IgG TDB抗体の結果としてのMCF7細胞におけるアポトーシスの誘発を示すグラフである。黒丸は野生型4D5 IgG TDB抗体(トラスツズマブ)を表し、白色の正方形は4D5抗体バリアントのH91A-IgG TDBを表し、黒色の三角形は4D5抗体バリアントのD98A.F100A.Y102V-IgG TDBを表し、白色の三角形は4D5抗体バリアントのY102V-IgG TDBを表し、白色の菱形は4D5抗体バリアントのY55E.Y102V-IgG TDBを表す。データは、平均±標準偏差として表される。
図6A】CELLTITER-GLO(登録商標)アッセイにより測定した、野生型4D5 IgG TDB抗体に対する、50ng/mLの様々な1Fab-IgG TDB抗体でのインキュベーションに対応するSKBR3細胞における細胞傷害性を示すグラフである。最初の棒(左側)は、野生型4D5 TDB抗体(トラスツズマブ)を表し、2番目の棒は4D5抗体バリアントのH91A-IgG TDBを表し、3番目の棒は4D5抗体バリアントのD98A.F100A.Y102V-IgG TDBを表し、4番目の棒は4D5抗体バリアントのY102V-IgG TDBを表し、5番目の棒(右側)は、4D5抗体バリアントのY55E.Y102V-IgG TDBを表す。データは、平均±標準偏差として表される。
図6B】CELLTITER-GLO(登録商標)アッセイにより測定した、野生型4D5 IgG TDB抗体に対する、50ng/mLの様々な1Fab-IgG TDB抗体でのインキュベーションに対応するMCF7細胞における細胞傷害性を示すグラフである。最初の棒(左側)は、野生型4D5 TDB抗体(トラスツズマブ)を表し、2番目の棒は4D5抗体バリアントのH91A-IgG TDBを表し、3番目の棒は4D5抗体バリアントのD98A.F100A.Y102V-IgG TDBを表し、4番目の棒は4D5抗体バリアントのY102V-IgG TDBを表し、5番目の棒(右側)は、4D5抗体バリアントのY55E.Y102V-IgG TDBを表す。データは、平均±標準偏差として表される。
図6C】CELLTITER-GLO(登録商標)アッセイにより測定した、野生型4D5 IgG TDB抗体に対する、50μg/mLの様々な1Fab-IgG TDB抗体でのインキュベーションに対応するMCF7細胞における細胞傷害性を示すグラフである。最初の棒(左側)は、野生型4D5 TDB抗体(トラスツズマブ)を表し、2番目の棒は4D5抗体バリアントのH91A-IgG TDBを表し、3番目の棒は4D5抗体バリアントのD98A.F100A.Y102V-IgG TDBを表し、4番目の棒は4D5抗体バリアントのY102V-IgG TDBを表し、5番目の棒(右側)は、4D5抗体バリアントのY55E.Y102V-IgG TDBを表す。データは、平均±標準偏差として表される。
図7A】フローサイトメトリーにより定量化した、野生型4D5 IgG TDB抗体(トラスツズマブ;黒色の三角形)と比較した、SKBR3細胞に対する、様々な1Fab-IgG TDB抗体の結合を定量化する用量反応曲線を示すグラフである。白色の三角形は4D5抗体バリアントのY55E.H91A-1Fab-IgG TDBを表し、正方形は4D5抗体バリアントのY100Aa-1Fab-IgG TDBを表し、丸は4D5抗体バリアントのH91A.N30A-1Fab-IgG TDBを表す。
図7B】フローサイトメトリーにより定量化した、野生型4D5 IgG TDB抗体(トラスツズマブ;黒色の三角形)と比較した、MCF7細胞に対する、様々な1Fab-IgG TDB抗体の結合を定量化する用量反応曲線を示すグラフである。白色の三角形は4D5抗体バリアントのY55E.H91A-1Fab-IgG TDBを表し、正方形は4D5抗体バリアントのY100Aa-1Fab-IgG TDBを表し、丸は4D5抗体バリアントのH91A.N30A-1Fab-IgG TDBを表す。
図8】CELLTITER-GLO(登録商標)アッセイにより測定した、SKBR3細胞に対する、様々な1Fab-IgG TDB抗体の細胞傷害性を定量化する用量反応曲線を示すグラフである。白色の正方形は4D5抗体バリアントのH91A-1Fab-IgG TDBを表し、黒色の正方形は4D5抗体バリアントのY100Aa-1Fab-IgG TDBを表し、丸は4D5抗体バリアントのH91A.N30A-1Fab-IgG TDBを表す。データは、平均±標準偏差として表される。
図9】4D5 H91A-1Fab-IgG TDB抗体に対する、4D5 IgG TDB抗体の細胞傷害性を比較する用量反応曲線を示すグラフである。SKBR3細胞とMCF7細胞における、4D5 IgG TDB抗体により誘発される細胞傷害性を、それぞれ黒丸と黒色の正方形により表す。SKBR3細胞とMCF7細胞における、4D5 H91A-1Fab-IgG TDB抗体により誘発される細胞傷害性を、それぞれ、白色の三角形と白色の正方形で表す。データは、平均±標準偏差として表される。
図10】90個の乳癌細胞株における、ErbB2 RNA発現のRNA-seq分析の結果を示すグラフである。低ErbB2発現、中ErbB2発現、及び高ErbB2発現細胞株として、細胞株を分類した。
図11A】低ErbB2発現細胞株(MDA-MB-436、PC3、MCF7/neo-cl3、MDA-MB-231、LS1034、及びHT55)、中ErbB2発現細胞株(MDA-MB-453、MDA-MB-175-VII、JIMT-1、及びMKN7)、並びに、高Erb2発現細胞株(MDA-MB-361、SKBR3、BT474-M1、SK-OV-3、及びKPL4)における、50ng/mLの濃度での4D5 IgG TDB抗体の細胞傷害性を示すグラフである。データは、平均±標準偏差として表される。
図11B】低ErbB2発現細胞株(MDA-MB-436、PC3、MCF7/neo-cl3、MDA-MB-231、LS1034、及びHT55)、中ErbB2発現細胞株(MDA-MB-453、MDA-MB-175-VII、JIMT-1、及びMKN7)、並びに、高Erb2発現細胞株(MDA-MB-361、SKBR3、BT474-M1、SK-OV-3、及びKPL4)における、50μg/mLの濃度での4D5 IgG TDB抗体の細胞傷害性を示すグラフである。データは、平均±標準偏差として表される。
図11C】低ErbB2発現細胞株(MDA-MB-436、PC3、MCF7/neo-cl3、MDA-MB-231、LS1034、及びHT55)、中ErbB2発現細胞株(MDA-MB-453、MDA-MB-175-VII、JIMT-1、及びMKN7)、並びに、高Erb2発現細胞株(MDA-MB-361、SKBR3、BT474-M1、SK-OV-3、及びKPL4)で培養したヒトCD8T細胞の活性化における、50ng/mLの濃度での4D5 TDB抗体の効果を示すグラフである。T細胞の活性化は、CD69及びCD45の二重発現により測定した。データは、平均±標準偏差として表される。
図11D図11A~11Cに表す細胞株のそれぞれによる、HER2タンパク質発現を示すイムノブロットである。
図12A】低ErbB2発現細胞株(MDA-MB-436、PC3、MCF7/neo-cl3、MDA-MB-231、LS1034、及びHT55)、中ErbB2発現細胞株(MDA-MB-453、MDA-MB-175-VII、JIMT-1、及びMKN7)、並びに、高Erb2発現細胞株(MDA-MB-361、SKBR3、BT474-M1、SK-OV-3、及びKPL4)における、50ng/mLの濃度での4D5 H91A-1Fab-IgG TDB抗体の細胞傷害性を示すグラフである。データは、平均±標準偏差として表される。
図12B】低ErbB2発現細胞株(MDA-MB-436、PC3、MCF7/neo-cl3、MDA-MB-231、LS1034、及びHT55)、中ErbB2発現細胞株(MDA-MB-453、MDA-MB-175-VII、JIMT-1、及びMKN7)、並びに、高Erb2発現細胞株(MDA-MB-361、SKBR3、BT474-M1、SK-OV-3、及びKPL4)における、50μg/mLの濃度での4D5 H91A-1Fab-IgG TDB1Fab-IgG TDB抗体の細胞傷害性を示すグラフである。データは、平均±標準偏差として表される。
図12C】低ErbB2発現細胞株(MDA-MB-436、PC3、MCF7/neo-cl3、MDA-MB-231、LS1034、及びHT55)、中ErbB2発現細胞株(MDA-MB-453、MDA-MB-175-VII、JIMT-1、及びMKN7)、並びに、高Erb2発現細胞株(MDA-MB-361、SKBR3、BT474-M1、SK-OV-3、及びKPL4)で培養したヒトCD8T細胞の活性化における、50ng/mLの濃度での4D5 H91A-1Fab-IgG TDB抗体の効果を示すグラフである。T細胞の活性化は、CD69及びCD45の二重発現により測定した。データは、平均±標準偏差として表される。
図12D図12A~12Cに表す細胞株のそれぞれによる、HER2タンパク質発現を示すイムノブロットである。
図13】HBL-100細胞における、4D5 H91A-IgG TDB抗体(正方形)及び4D5 H91A-1Fab-IgG TDB抗体(丸)の細胞傷害性を定量化する用量反応曲線を示すグラフである。
図14A】経時的な、HBL-100細胞における、様々な濃度の4D5 H91A-IgG TDB抗体の細胞毒性を定量化する用量反応曲線を示すグラフである。黒丸は、5,000ng/mLの用量の4D5 H91A-IgG TDBを表し、白色の正方形は、500ng/mLの用量の4D5 H91A-IgG TDBを表し、黒色の上向き三角形は、50ng/mLの用量の4D5 H91A-IgG TDBを表し、白色の下向き三角形は、5ng/mLの用量の4D5 H91A-IgG TDBを表し、白色の菱形は、0.5ng/mLの用量の4D5 H91A-IgG TDBを表し、黒色の菱形は未処置対照を表す。
図14B】経時的な、HBL-100細胞における、様々な濃度の4D5 H91A-1Fab-IgG TDB抗体の細胞毒性を定量化する用量反応曲線を示すグラフである。黒丸は、5,000ng/mLの用量の4D5 H91A-1Fab-IgG TDBを表し、白色の正方形は、500ng/mLの用量の4D5 H91A-1Fab-IgG TDBを表し、黒色の上向き三角形は、50ng/mLの用量の4D5 H91A-1Fab-IgG TDBを表し、白色の下向き三角形は、5ng/mLの用量の4D5 H91A-1Fab-IgG TDBを表し、白色の菱形は、0.5ng/mLの用量の4D5 H91A-1Fab-IgG TDBを表し、黒色の菱形は未処置対照を表す。
図15A】下にあるイムノブロット及び棒グラフにより示される、左から右に向かって、HER2の量を増加して発現する細胞株における、4D5 H91A-IgG TDB及び4D5 H91A-1Fab-IgG TDBの殺傷効果を示す、ひとまとまりのグラフである。
図15B】相対的なHER2発現のIHC及びFISH検出アッセイの結果を示す一続きの顕微鏡写真である。
図15C】4D5 H91A-1Fab-IgG TDBによる、図15Bで特性決定される細胞の殺傷を示すグラフである。
図16】MCF7細胞、HT55細胞、及びHER2増幅KPL4細胞における、HER2タンパク質発現を示すイムノブロットである。
図17】ヒトPBMCを補充したマウスにおける、様々な用量の4D5 H91A-1Fab-IgG TDB抗体又は野生型4D5 TDB抗体での処置にわたる、KPL4腫瘍体積を示す格子状プロットである。確立したKPL4腫瘍を有するマウスは、0日目に指示用量にて、単回静脈内投与を受けた。格子内の各パネルは、パネルのヘッダーにより表されるように、1回の用量群を表す。黒色の太い実線は、各用量群に対する、適合した腫瘍体積を表す。太い破線は、ヒスチジン緩衝液ビヒクルを受けた対照群に対する、適合した腫瘍体積を表す。白丸が付いた破線は、個々の動物を表す。黒丸が付いた実線は、研究から取り除かれた動物を表す。水平な灰色の破線は、500mmの腫瘍体積をマークする。
図18】ヒトPBMCを補充したマウスにおける、様々な用量の4D5 H91A-1Fab-IgG TDB抗体又は野生型4D5 IgG TDB抗体での処置にわたる、HT55腫瘍体積を示す格子状プロットである。確立したHT55腫瘍を有するマウスは、0日目に指示用量にて、単回静脈内投与を受けた。格子内の各パネルは、パネルのヘッダーにより表されるように、1回の用量群を表す。黒色の太い実線は、各用量群に対する、適合した腫瘍体積を表す。太い破線は、ヒスチジン緩衝液ビヒクルを受けた対照群に対する、適合した腫瘍体積を表す。白丸が付いた破線は、個々の動物を表す。黒丸が付いた実線は、研究から取り除かれた動物を表す。水平な灰色の破線は、500mmの腫瘍体積をマークする。
図19】ヒトPBMCを補充したマウスにおける、様々な用量の4D5 D98A.F100A.Y102V-1Fab-IgG TDB抗体又は野生型4D5 IgG TDB抗体での処置にわたる、KPL4腫瘍体積を示す格子状プロットである。確立したKPL4腫瘍を有するマウスは、0日目に指示用量にて、単回静脈内投与を受けた。格子内の各パネルは、パネルのヘッダーにより表されるように、1回の用量群を表す。黒色の太い実線は、各用量群に対する、適合した腫瘍体積を表す。太い破線は、ヒスチジン緩衝液ビヒクルを受けた対照群に対する、適合した腫瘍体積を表す。白丸が付いた破線は、個々の動物を表す。黒丸が付いた実線は、研究から取り除かれた動物を表す。水平な赤色の破線は、500mmの腫瘍体積をマークする。
図20】SKBR3細胞における、4D5 H91A-1Fab-IgG TDB抗体(黒丸)及び4D5 D98A.F100A.Y102V-1Fab-IgG TDB抗体(白色の正方形)の細胞傷害性を定量化する、用量反応曲線を示すグラフである。データは、平均±標準偏差として表される。
図21A】高HER2発現細胞株(n=20)の4D5 H91A-1Fab-IgG TDB抗体による殺傷を示すグラフである。高HER2発現細胞株は、Erb2 RNAの高発現を特徴とする。データは、平均±標準偏差として表される。
図21B】高HER2発現細胞株(n=20)の4D5 D98A.F100A.Y102V-1Fab-IgG TDB抗体による殺傷を示すグラフである。高HER2発現細胞株は、Erb2 RNAの高発現を特徴とする。データは、平均±標準偏差として表される。
図22】4D5 H91A-1Fab-IgG TDB抗体に対する、4D5 D98A.F100.Y102V-1Fab-IgG TDB抗体による高HER2発現細胞株の殺傷の、相対的潜在能を示すグラフである。データは、図20A及び20Bから誘導する。
図23A】中HER2発現細胞株(n=12)の4D5 H91A-1Fab-IgG TDB抗体による殺傷を示すグラフである。SKBR3細胞の殺傷を、陽性対照として提供する。中HER2発現細胞株は、Erb2 RNAの中発現を特徴とする。データは、平均±標準偏差として表される。
図23B】中HER2発現細胞株(n=12)の4D5 D98A.F100A.Y102V-1Fab-IgG TDB抗体による殺傷を示すグラフである。SKBR3細胞の殺傷を、陽性対照として提供する。中HER2発現細胞株は、Erb2 RNAの中発現を特徴とする。データは、平均±標準偏差として表される。
図24】4D5 H91A-1Fab-IgG TDB抗体に対する、4D5 D98A.F100.Y102V-1Fab-IgG TDB抗体による中HER2発現細胞株の殺傷の、相対的潜在能を示すグラフである。データは、図22A及び22Bから誘導する。
図25A】低HER2発現細胞株(n=12)の4D5 H91A-1Fab-IgG TDB抗体による殺傷を示すグラフである。SKBR3細胞の殺傷を、陽性対照として提供する。低HER2発現細胞株は、Erb2 RNAの低発現を特徴とする。データは、平均±標準偏差として表される。
図25B】低HER2発現細胞株(n=12)の4D5 D98A.F100A.Y102V-1Fab-IgG TDB抗体による殺傷を示すグラフである。SKBR3細胞の殺傷を、陽性対照として提供する。低HER2発現細胞株は、Erb2 RNAの低発現を特徴とする。データは、平均±標準偏差として表される。
図26】4D5 H91A-1Fab-IgG TDB抗体に対する、4D5 D98A.F100.Y102V-1Fab-IgG TDB抗体による低HER2発現細胞株の殺傷の、相対的潜在能を示すグラフである。データは、図24A及び24Bから誘導する。
図27A図27Bで試験した2つのペプチドリンカーの位置及び配列を示す略図である。各ペプチドリンカーは、遠位Fabの定常重鎖(CH)領域のC末端を、近位Fabの可変重鎖(VH)領域のN末端に融合する。図27Bにおいて、DKTHTGGGGSGG(配列番号52)を白色の正方形で表し、DKTHT(配列番号50)を黒丸で表す。
図27B】DKTHTリンカーを有する4D5 H91A-1Fab-IgG TDB抗体(黒丸)に対する、DKTHTGGGGSGGリンカーを有する4D5 H91A-1Fab-IgG TDB抗体(白色の正方形)の、MCF7細胞への結合を定量化する用量反応曲線を示すグラフである。データは、平均±標準偏差として表される。
図27C】DKTHTリンカーを有する4D5 H91A-1Fab-IgG TDB抗体(黒丸)に対する、DKTHTGGGGSGGリンカーを有する4D5 H91A-1Fab-IgG TDB抗体(白色の正方形)による、SKBR3細胞の殺傷を定量化する用量反応曲線を示すグラフである。データは、平均±標準偏差として表される。
図28A】経時的な、SKBR3細胞によるpAKTS473及びpHER3の発現における、抗HER2-CD3 1Fab-IgGの効果を示す一続きのイムノブロットである。
図28B】抗HER2-CD3 1Fab-IgG、抗HER2-CD3 IgG TDB、及びトラスツズマブでの処置に対応する、SKBR3細胞の生存能を定量化する用量反応曲線を示すグラフである。
図29A】BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴を使用して測定した、直接不動化したヒトHER2(細胞外ドメイン;Novus Biologicals)に対する、野生型4D5 Fabの結合動態を示すセンサーグラムである。野生型4D5 Fabサンプルは、3倍希釈で0.27nM~200nmの濃度とした。
図29B】BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴を使用して測定した、直接不動化したヒトHER2(細胞外ドメイン;Novus Biologicals)に対する、4D5 Y55E.Y102V-Fabの結合動態を示すセンサーグラムである。4D5 Y55E.Y102V-Fabサンプルは、3倍希釈で0.27nM~200nmの濃度とした。
図29C】BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴を使用して測定した、直接不動化したヒトHER2(細胞外ドメイン;Novus Biologicals)に対する、4D5 D98A.F100A.Y102V-Fabの結合動態を示すセンサーグラムである。4D5 D98A.F100A.Y102V-Fabサンプルは、3倍希釈で0.27nM~200nmの濃度とした。
図29D】BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴を使用して測定した、直接不動化したヒトHER2(細胞外ドメイン;Novus Biologicals)に対する、4D5 H91A-Fabの結合動態を示すセンサーグラムである。4D5 H91A-Fabサンプルは、3倍希釈で0.27nM~200nmの濃度とした。
図30A】BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴を使用して測定した、直接不動化したヒトHER2(細胞外ドメイン;Novus Biologicals)に対する、4D5 N30S-Fabの結合動態を示すセンサーグラムである。4D5 N30S-Fabサンプルは、3倍希釈で0.27nM~200nmの濃度とした。
図30B】BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴を使用して測定した、直接不動化したヒトHER2(細胞外ドメイン;Novus Biologicals)に対する、4D5 N54E.D98T-Fabの結合動態を示すセンサーグラムである。4D5 N54E.D98T-Fabサンプルは、3倍希釈で0.27nM~200nmの濃度とした。
図30C】BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴を使用して測定した、直接不動化したヒトHER2(細胞外ドメイン;Novus Biologicals)に対する、4D5 N30S.N54E.D98T-Fabの結合動態を示すセンサーグラムである。4D5 N30S.N54E.D98T-Fabサンプルは、3倍希釈で0.27nM~200nmの濃度とした。
図31A】BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴を使用して測定した、直接不動化したヒトHER2(細胞外ドメイン;Novus Biologicals)に対する、4D5 N30S.Y55E.N54E.D98T.Y102V-Fabの結合動態を示すセンサーグラムである。4D5 N30S.Y55E.N54E.D98T.Y102V-Fabサンプルは、3倍希釈で0.27nM~200nmの濃度とした。
図31B】BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴を使用して測定した、直接不動化したヒトHER2(細胞外ドメイン;Novus Biologicals)に対する、4D5 N30S.N54E.D98T.F100A.Y102V-Fabの結合動態を示すセンサーグラムである。4D5 N30S.N54E.D98T.F100A.Y102V-Fabサンプルは、3倍希釈で0.27nM~200nmの濃度とした。
図31C】BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴を使用して測定した、直接不動化したヒトHER2(細胞外ドメイン;Novus Biologicals)に対する、4D5 N30S.H91A.N54E.D98T-Fabの結合動態を示すセンサーグラムである。4D5 N30S.H91A.N54E.D98T-Fabサンプルは、3倍希釈で0.27nM~200nmの濃度とした。
図32A-32K】BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴を使用して測定した、ヒトHER2に対する4D5 IgG TDB抗体の結合動態を示す一続きのセンサーグラムである。図32Aは、野生型4D5 IgG TDBの結合動態を示すセンサーグラムである。図32Bは、4D5 H91A-IgG TDBの結合動態を示すセンサーグラムである。図32Cは、4D5 Y55E.H91A-IgG TDBの結合動態を示すセンサーグラムである。図32Dは、4D5 Y55E.D98A.F100A.Y102V-IgG TDBの結合動態を示すセンサーグラムである。図32Eは、4D5 D98A.F100A.Y102V-IgG TDBの結合動態を示すセンサーグラムである。図32Fは、4D5 H91A.D98A.F100A.Y102V-IgG TDBの結合動態を示すセンサーグラムである。図32Gは、4D5 Y55E.H91A.D98A.F100A.Y102V-IgG TDBの結合動態を示すセンサーグラムである。図32Hは、4D5 Y55E.Y102V-IgG TDBの結合動態を示すセンサーグラムである。図32Iは、4D5 Y102V-IgG TDBの結合動態を示すセンサーグラムである。図32Jは、4D5 H91A.Y102V-IgG TDBの結合動態を示すセンサーグラムである。図32Kは、4D5 Y55E.H91A.Y102V-IgG TDBの結合動態を示すセンサーグラムである。
図33A】4D5 Y55E.H91A.N54E.D98T.Y102V-1Fab-IgG TDB(ロット1)抗体(白色の正方形);4D5 Y55E.H91A.N54E.D98T-1Fab-IgG TDB抗体(黒色の正方形);4D5 Y55E.H91A.N54E.D98T.Y102V-1Fab-IgG TDB(ロット2)抗体(白色の下向き三角形);又は、4D5 H91A-1Fab-IgG TDB抗体(黒色の上向き三角形)による、SKBR3細胞の殺傷を定量化する用量反応曲線を示すグラフである。
図33B】4D5 Y55E.H91A.N54E.D98T.Y102V-1Fab-IgG TDB(ロット1)抗体(白色の正方形);4D5 Y55E.H91A.N54E.D98T-1Fab-IgG TDB抗体(黒色の正方形);4D5 Y55E.H91A.N54E.D98T.Y102V-1Fab-IgG TDB(ロット2)抗体(白色の下向き三角形);又は、4D5 H91A-1Fab-IgG TDB抗体(黒色の上向き三角形)による、MCF7細胞の殺傷を定量化する用量反応曲線を示すグラフである。
図34A】フローサイトメトリーにより測定した、SKBR8細胞に対する、様々な1Fab-IgG TDBバリアントの結合を定量化する用量反応曲線を示すグラフである。白色の正方形は4D5 Y55E.H91A.N54E.D98T.Y102V-1Fab-IgG TDB(ロット1)抗体を表し、黒色の正方形は4D5 Y55E.H91A.N54E.D98T-1Fab-IgG TDB抗体を表し、白色の下向き三角形は4D5 Y55E.H91A.N54E.D98T.Y102V-1Fab-IgG TDB(ロット2)抗体を表し、黒色の上向き三角形は4D5 H91A-1Fab-IgG TDB抗体を表す。
図34B】フローサイトメトリーにより測定した、MCF7細胞に対する、様々な1Fab-IgG TDBバリアントの結合を定量化する用量反応曲線を示すグラフである。白色の正方形は4D5 Y55E.H91A.N54E.D98T.Y102V-1Fab-IgG TDB(ロット1)抗体を表し、黒色の正方形は4D5 Y55E.H91A.N54E.D98T-1Fab-IgG TDB抗体を表し、白色の下向き三角形は4D5 Y55E.H91A.N54E.D98T.Y102V-1Fab-IgG TDB(ロット2)抗体を表し、黒色の上向き三角形は4D5 H91A-1Fab-IgG TDB抗体を表す。
図35A】一価の高親和性結合を有する抗HER2-CD3 IgG-TDBの結合及び活性を示す略図である。
図35B】一価の低親和性結合を有する抗HER2-CD3 IgG-TDBの結合及び活性を示す略図である。
図35C】抗HER2-CD3 1Fab-IgG TDBのアビディティにより、適切な親和性(一価のKDが20~50nM)における二価のHER2結合が、HER2を過剰発現する細胞に非常に結合することをもたらすことを示す略図である。
図36】HER2細胞外ドメイン(ECD)の結晶構造を提供し、異なるHER2抗体が結合する領域を強調している。
図37】38E4v1 4D5-H91A 1Fab-IgG TDBによるSKBR3標的細胞の殺傷(白丸);40G5c 4D5-H91A 1Fab-IgG TDBによるSKBR3標的細胞の殺傷(黒丸);38E4v1 4D5-H91A 1Fab-IgG TDBによるMCF7標的細胞の殺傷(白色の正方形);及び、40G5c 4D5-H91A 1Fab-IgG TDBによるMCF7標的細胞の殺傷(閉じた正方形)を定量化する用量反応曲線を示すグラフである。
図38A】HER2発現細胞の存在下及び不存在下にて試験した、4D5 H91A 1Fab-IgG TDB及び4D5 IgG TDBが誘発する、HER2独立性のT細胞活性化のレベルを示すグラフである。
図38B】二価の抗CD3 OKT3の存在下及び不存在下にて試験した、4D5 H91A 1Fab-IgG TDB及び4D5 IgG TDBが誘発する、HER2独立性のT細胞活性化のレベルを示すグラフである。
図38C】カニクイザルに、H91A 1Fab-IgG TDB又はビヒクル対照を投与した2日後及び8日後に測定した、炎症(C反応性タンパク;CRP)、T細胞の活性化(リンパ球の辺縁趨向)、並びに肝臓損傷(アラニン及びアスパルテートアミノトランスフェラーゼ;ALT及びAST)に対する血液マーカーを示す一続きのグラフである。
図38D】20mg/kg及び3mg/kgの用量でH91A 1Fab-IgG TDBを投与したカニクイザルからのELISAにより検出した、PKパラメータを示すグラフ及び概要表である。
図38E】投与をし、示した希釈液を用いて、健常なドナーPBMC及びSKBR3細胞に24時間曝した7日後及び14日後における、H91A 1Fab-IgG TDBカニクイザル血清量を示すグラフである。新鮮な4D5-H91A 1Fab-IgG TDB(対照)の希釈液を使用して、平行実験を行った。
図39】4D5抗HER2 Fabバリアントの結合親和性における、様々なアミノ酸置換の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0083】
I. 定義
「約」という用語は、本明細書で使用される場合、当業者であれば容易に理解するそれぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書での「約」の値又はパラメータへの言及は、その値又はパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(かつ説明する)。
【0084】
「親和性」は、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の、合計の非共有性相互作用の強度を指す。別途の指示がない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」とは、結合対のメンバー(例えば、抗体と抗原との)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子Xの、そのパートナーYに対する親和性は一般に、平衡解離定数(K)により表すことができる。親和性は、本明細書に記載される方法を含む、当技術分野で公知の一般的な方法によって測定することができる。結合親和性を測定するための具体的な例証的かつ例示的な実施形態が、以下に記載される。
【0085】
本明細書で使用する場合、本明細書で使用する用語「に特異的に結合する」又は「に対して特異的な」とは、生体分子を含む分子の不均質な集団の存在下において標的の存在を決定する、標的と抗体の間の結合といった、測定可能であり再現可能な相互作用を意味する。例えば、標的(これはエピトープであることができる)に特異的に結合する抗体は、他の標的に結合するよりも高い親和性、アビディティで、より容易に、及び/又はより長い持続時間でこの標的に結合する、抗体である。一実施形態において、抗体が無関係の標的に結合する程度は、例えば、放射免疫測定法(RIA)によって測定される、抗体の標的への結合の約10%未満である。特定の実施形態において、標的に特異的に結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、又は≦0.1nMの平衡解離定数(K)を有する。特定の実施形態において、抗体は、異なる種由来のタンパク質間で保存されるタンパク質上のエピトープに特異的に結合する。別の実施形態において、特異的結合は、排他的結合を含み得るが、それを必要としない。
【0086】
「抗体」という用語は、本明細書では最も広い意味で使用され、それらが所望の抗原結合活性を呈する限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を含めた(これらに限定されない)、様々な抗体構造を包含する。
【0087】
「抗体断片」とは、インタクトな抗体が結合する抗原に結合する、インタクトな抗体の一部分を含むインタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’);二重特異性抗体;直鎖抗体;一本鎖抗体分子(例えばscFv);及び、抗体断片から形成した多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
「抗原結合部分」とは、標的エピトープ、抗原、リガンド、又は受容体に特異的に結合する化合物又は分子の一部を意味する。抗原結合部分を特徴とする分子としては、抗体(例えばモノクローナル、ポリクローナル、組み換え、ヒト化、及びキメラ抗体)、抗体断片又はその一部(例えばFab断片、Fab’2、scFv抗体、SMIP、ドメイン抗体、二重特異性抗体、低分子抗体、scFv-Fc、アフィボディ、ナノボディ、並びに、抗体のVH及び/又はVLドメイン)、受容体、リガンド、アプタマー、並びに、識別された結合パートナーを有する他の分子が挙げられるが、これらに限定されない。「親和性成熟」抗体とは、改変を有しない親抗体と比較して、1つ以上の超可変領域(HVR)に1つ以上の改変を有し、そのような改変により抗体の抗原に対する親和性が改善される抗体を指す。
【0089】
本明細書で使用する場合、例えば、二重特異性抗原結合分子の一価のアームとの関係における、用語「一価の」とは、1つの抗原結合部分を有する分子又はその一部(例えば、抗原結合分子の一部、例えば、二重特異性抗原結合分子の2つのアームの1つ)を意味する。したがって、一価の分子又はその一部は、正確に1つの抗原に対して特異的に結合可能である。二重特異性抗体の二価のアームの2つの抗原結合部分のうちの1つの、「一価の結合親和性」又は「一価のK」(例えば、1Fab-IgG TDBのHER2抗原結合部分のうちの1つ)とは、一価の形態における、即ち、2つの異なる抗原に対して特異的に結合可能な二重特異性抗体の一価のアームとしての、又はFab分子としての、抗原結合部分の結合親和性を意味する。
【0090】
本明細書で使用する場合、例えば、二重特異性抗原結合分子の二価のアームとの関係における、用語「二価の」とは、それぞれが1つの抗原に特異的に結合可能な、2つの抗原結合部分を正確に有する分子又はその一部(例えば、抗原結合分子の一部、例えば、二重特異性抗原結合分子の2つのアームの1つ)を意味する。したがって、二価の分子又はその一部は、同一抗原上の2つの抗原又は2つの異なるエピトープ(例えば、1つの腫瘍細胞の表面に発現する2つのHER2抗原)に特異的に結合可能である。
【0091】
「表面抗原分類3」又は「CD3」という用語は、本明細書で使用されるとき、別途指示されない限り、霊長動物(例えばヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)等の哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然CD3を指し、例えば、CD3ε、CD3γ、CD3α、及びCD3β鎖を含む。この用語は、「完全長」のプロセシングされていないCD3(例えば、プロセシングされていない、若しくは修飾されていないCD3ε又はCD3γ)、並びに細胞内のプロセシングから得られるCD3の任意の形態を包含する。本用語はまた、例えばスプライスバリアント又はアレリックバリアントを含む、CD3の天然に発生するバリアントも包含する。CD3としては例えば、長さが207アミノ酸であるヒトCD3εタンパク質(NCBI参照配列番号NP_000724)、及び、長さが182アミノ酸であるヒトCD3γタンパク質(NCBI参照配列番号NP_000064)が挙げられる。
【0092】
用語「抗CD3抗体」及び「CD3に結合する抗体」とは、抗体がCD3の標的化において、診断及び/又は治療剤として有用であるような十分な親和性を有して、CD3に結合可能である抗体を意味する。一実施形態では、無関係の非CD3タンパク質への抗CD3抗体の結合の程度は、例えば、放射免疫測定法(RIA)によって測定されるとき、CD3への抗体への結合の約10%未満である。特定の実施形態において、CD3に結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、又は≦0.001nM(例えば10-8M以下、例えば10-8~10-13M、例えば10-9~10-13M)の解離定数(K)を有する。特定の実施形態において、抗CD3抗体は、異なる種に由来するCD3間で保存されたCD3のエピトープに結合する。
【0093】
用語「Fc領域」又は「Fcドメイン」は、本明細書で同じ意味で用いられ、定常領域の少なくとも一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を意味する。この用語は、ネイティブ配列Fc領域とバリアントFc領域を含む。一実施形態において、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、又はPro230から、重鎖のカルボキシル末端までに及ぶ。しかし、Fc領域のC末端リシン(Lys447)は、存在していてもよく、又は存在していなくてもよい。この用語は、C末端切断(例えば、Hu,et al.,Biotechnol.Prog.2017,33:786-794 and Jiang,et al.,J.Pharm.Sci.2016,105:2066-2072に記載されている、例えばΔGK切断)を有するものなどの、切断Fc領域を包含する。本明細書で特に指示がない限り、Fc領域又は定常領域のアミノ酸残基の付番は、Kabat et al,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に記載されている、EUインデックスとも呼ばれるEU付番システムに従う。本明細書で使用する場合、Fcドメインの「サブユニット」とは、二量体のFcドメインを形成する2つのポリペプチドの1つ、すなわち、免疫グロブリン重鎖のC末端定常領域を含み、安定した自己会合が可能なポリペプチドを意味する。一実施形態では、IgG Fcドメインのサブユニットは、IgG CH2及びIgG CH3定常領域を含む。
【0094】
「フレームワーク」又は「FR」とは、超可変領域(HVR)残基以外の可変領域残基を意味する。可変ドメインのFRは、一般的に、FR1、FR2、FR3及びFR4の4つのFRドメインからなる。したがって、HVR及びFR配列は通常、VH(又はVL)の以下の配列に現れる:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
【0095】
用語「完全長抗体」、「インタクトな抗体」、及び「全抗体」は、本明細書で同じ意味で用いられ、自然抗体の構造に実質的に等しい構造を有する、又は本明細書で定義されるFc領域を含有する重鎖を有する抗体を意味する。
【0096】
「ヒト抗体」とは、ヒト若しくはヒト細胞により作製した、又はヒト抗体レパートリー若しくは他のヒト抗体コード化配列を利用した、非ヒト源由来の抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体である。このヒト抗体の定義は特に、非ヒト抗原結合残基を除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリを含む当技術分野で既知の種々の技術を使用して産生され得る。Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581(1991)。Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985);Boerner et al.,J.Immunol.,147(1):86-95(1991)に記載されている方法も、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である。van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.,5:368-74(2001)もまた参照のこと。ヒト抗体は、抗原投与に応答してこのような抗体を産生するよう改変されているが、その内在性遺伝子座は無能になっているトランスジェニック動物、例えば免疫化ゼノマウスに抗原を投与することによって調製することが可能である(例えば、XENOMOUSE(商標)技術に関する米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号を参照のこと)。例えば、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により生成するヒト抗体に関する、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3562(2006)もまた参照のこと。
【0097】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」とは、ヒト免疫グロブリンVL又はVHフレームワーク配列の選択にて、最も一般的に生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVL又はVH配列の選別は、可変ドメイン配列のサブグループから行う。一般に、配列のサブグループは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication 91-3242,Bethesda MD(1991),vols.1-3におけるようなサブグループである。一実施形態では、VLに関して、サブグループは、上記Kabat et al.におけるようなサブグループκIである。一実施形態では、VHに関して、サブグループは、上記Kabat et al.におけるようなサブグループIIIである。
【0098】
「ヒト化」抗体とは、非ヒトHVR由来のアミノ酸残基、及びヒトFR由来のアミノ酸残基を含むキメラ抗体を意味する。特定の実施形態において、ヒト化抗体は、非ヒト抗体の可変ドメインに対応する全て又はほぼ全てのHVR(例えばCDR)、及びヒト抗体の可変ドメインに対応する全て又はほぼ全てのFRにおける、ほぼ全ての少なくとも1つ、通常2つの可変ドメインを含む。ヒト化抗体は、場合により、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含んでいてもよい。抗体、例えば非ヒト抗体の「ヒト化形態」とは、ヒト化を受けた抗体を意味する。
【0099】
本明細書で使用する場合、用語「モノクローナル抗体」とは、実質的に均質な抗体の母集団から得られる抗体を意味する。すなわち、母集団を含む個々の抗体が、可能性のあるバリアント抗体(例えば、天然に発生する変異を含有し、又はモノクローナル抗体の調製中に生じ、このような変異が通常少量存在する)を除いて同一である、及び/又は同一のエピトープに結合する。異なる決定基(エピトープ)に対して異なる抗体を典型的には含むポリクローナル抗体の調製と比べて、モノクローナル抗体の調製における各モノクローナル抗体は抗原の単一の決定基に対するものである。したがって修飾語「モノクローナル」は、実質的に均質な抗体の母集団から得られる抗体の特性を示し、任意の特定の方法による抗体産生を必要とするものとして解釈されるべきではない。例えば、本発明において使用するモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組み換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全て又は一部を含むトランスジェニック動物を利用する方法作を含むがこれらに限定されない様々な技術により作製可能であり、このような方法、及びモノクローナル抗体を作製するための他の例示的な方法は、本明細書で記載されている。
【0100】
「天然抗体」とは、様々な構造を有する、天然に発生する免疫グロブリン分子を意味する。例えば、天然IgG抗体とは、2つの同一軽鎖、及びジスルフィド結合した2つの同一の重鎖からなる、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端まで、各重鎖は、可変重ドメイン又は重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)を有し、続いて3つの定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3)を有する。同様に、N末端からC末端まで、各軽鎖は、可変軽ドメイン又は軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)を有し、続いて定常軽(CL)ドメインを有する。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの種類のうちの1つに割り当てられることができる。
【0101】
「超可変領域」又は「HVR」との用語は、本明細書で使用される場合、配列において超可変性であり(「相補性決定領域」又は「CDR」)、及び/又は構造的に所定のループ(「超可変ループ」)を形成し、及び/又は抗原に接触する残基(「抗原接触」)を含有する抗体可変ドメインのそれぞれの領域を指す。一般的に、抗体は、6個のHVRを含み、VHに3個(H1、H2、H3)、VLに3個(L1、L2、L3)含む。本明細書における例示的なHVRとしては、
(a)アミノ酸残基26-32(L1)、50-52(L2)、91-96(L3)、26-32(H1)、53-55(H2)及び96-101(H3)で生じる超可変ループ(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987));
【0102】
(b)アミノ酸残基24-34(L1)、50-56(L2)、89-97(L3)、31-35b(H1)、50-65(H2)及び95-102(H3)に存在するCDR(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda,MD(1991));
(c)アミノ酸残基27c-36(L1)、46-55(L2)、89-96(L3)、30-35b(H1)、47-58(H2)及び93-101(H3)で生じる抗原接触(MacCallum et al.J.Mol.Biol.262:732-745(1996));並びに
【0103】
(a)、(b)及び/又は(c)の組合せ、HVRアミノ酸残基46-56(L2)、47-56(L2)、48-56(L2)、49-56(L2)、26-35(H1)、26-35b(H1)、49-65(H2)、93-102(H3)及び94-102(H3)が挙げられる。
【0104】
本明細書で別途示されない限り、可変ドメイン中のHVR残基及び他の残基(例えば、FR残基)は、Kabat et al.,(上記参照)に従って本明細書において番号付けされる。
【0105】
用語「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の抗原への結合に関与する、抗体の重鎖又は軽鎖のドメインを指す。天然の抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれVH及びVL)は、一般的に、同様の構造を有し、それぞれのドメインは、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)と、3つの超可変領域(HVR)とを含む。例えば、Kindt et al.,Kuby Immunology,6th、W.H.Freeman and Co.,page 91(2007)を参照のこと。抗原結合特異性を与えるには、単一のVH又はVLドメインで十分であり得る。更に、特定の抗原に結合する抗体は、その抗原に結合する抗体からのVH又はVLドメインを使用して相補的VL又はVHドメインのライブラリをそれぞれスクリーニングして、単離されてもよい。例えば、Portolano et al.,J.Immunol.150:880-887(1993)、Clarkson et al.,Nature 352:624-628(1991)を参照のこと。
【0106】
「免疫抱合体」とは、細胞傷害性剤を含むが、これに限定されない1つ以上の異種分子(複数可)に抱合される抗体である。
【0107】
「単離された」抗体は、その自然環境の構成成分から分離された抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動法(IEF)、キャピラリー電気泳動法)又はクロマトグラフ(例えば、イオン交換若しくは逆相HPLC)によって決定される、95%又は99%を超える純度に精製される。抗体精製の試験方法を参照するには、例えばFlatman et al.,J.Chromatogr.B 848:79-87(2007)を参照のこと。
【0108】
参照ポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、最大の配列同一性パーセントを達成するように、配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入した後に、かついかなる保存的置換も配列同一性の一部とは見なさずに、参照ポリペプチド配列内のアミノ酸残基と同一である候補配列内のアミノ酸残基の割合として定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するためのアラインメントは、当技術分野の範囲内の様々な方式で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大アラインメントを達成するのに必要な任意のアルゴリズムを含め、配列をアラインメントするのに適切なパラメータを決定することができる。しかしながら、本明細書での目的のために、アミノ酸配列同一性(%)の値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して生成される。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.の著作であり、ソースコードは、ユーザ文書と共に米国著作権庁(U.S.Copyright Office,Washington D.C.,20559)に提出されて、米国著作権登録番号TXU510087として登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech,Inc.,South San Francisco,Californiaから公的に利用可能であり、又はソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX V4.0Dを含めたUNIXオペレーティングシステムで使用する場合はコンパイルしなければならない。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定され、変動しない。
ALIGN-2がアミノ酸配列比較に用いられる状況下で、所与のアミノ酸配列Bへの、所与のアミノ酸配列Bとの、又は所与のアミノ酸配列Bに対する所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(あるいは、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、又はそれに対するある特定のアミノ酸配列同一性%を有するか、又は含む所与のアミノ酸配列Aと表現され得る)は、以下のように計算される:
分率X/Y×100
【0109】
式中、Xは、配列整列プログラムALIGN-2によって、そのプログラムのAとBとのアラインメントにおいて完全な一致としてスコア化されたアミノ酸残基の数であり、Yは、B中のアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、Bに対するAのアミノ酸配列同一性(%)は、Aに対するBのアミノ酸配列同一性(%)と等しくはならないことが理解されるだろう。別段特に明示しない限り、本明細書で使用される全てのアミノ酸配列同一性(%)の値は、直前の段落に記載されるようにALIGN-2コンピュータプログラムを使用して得られる。
【0110】
本明細書で使用する場合、用語「易罹病性固定」(及び、そのあらゆる文法的誘導形態)とは、例えば、アミド分解又は異性化を受けやすいアミノ酸残基を、比較的不活性なアミノ酸残基で置き換えることにより、又は、脱アミノ化又は異性化を受けやすい残基に隣接するアミノ酸を、比較的不活性なアミノ酸残基で置き換えることにより、抗体の化学的安定性を増強するように構成された(例えば、アミド分解及び/又は異性化の速度が低下した)アミノ酸置換を意味する。アミド分解を低下させるための易罹病性固定の例としては、アスパラギンの、セリン又はグルタミン酸での置換(例えばN30S又はN54E)が挙げられる。異性化を低下させるための易罹病性固定の例としては、アスパラギン酸の、アラニン又はスレオニンでの置換(例えばD98A又はD98T)が挙げられる。
【0111】
「単離された」核酸とは、その自然環境の構成成分から分離された核酸分子を指す。単離された核酸は、元々その核酸分子を含む細胞に含まれているが、その核酸分子が、染色体外に存在するか、又はその天然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する核酸分子を含む。
【0112】
「抗CD3抗体をコードする単離された核酸」とは、抗体の重鎖及び軽鎖(又はそれらの断片)をコードする1つ以上の核酸分子を指し、単一のベクター又は別個のベクター内のそのような核酸分子(複数可)を含み、そのような核酸分子(複数可)は、宿主細胞内の1つ以上の場所に存在する。
【0113】
「ベクター」という用語は、本明細書で使用される場合、連結している別の核酸を増殖することができる核酸分子を指す。この用語は、自己複製する核酸構造としてのベクター、及び導入される宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターを含む。特定のベクターは、それらが機能的に連結されている核酸の発現を指示することができる。そのようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」と称される。
【0114】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、及び「宿主細胞培養物」という用語は同じ意味で用いられ、外因性核酸が中に導入されている細胞を指し、そのような細胞の子孫を包含する。宿主細胞としては、「形質転換体」及び「形質転換細胞」が含まれ、これらには、初代形質転換細胞及び継代の数に関わらず宿主細胞に由来する子孫が含まれる。子孫は、親細胞の核酸含有量と完全に同一でなくてもよいが、変異を含んでいてもよい。元々の形質転換された細胞についてスクリーニングされるか、又は選択されるのと同じ機能若しくは生体活性を有する変異体子孫が本発明に含まれる。
【0115】
「添付文書」という用語は、そのような治療製品の適応症、使用法、投薬量、投与、併用療法、禁忌症、及び/又はその使用に関する警告についての情報を含有する、治療製品の商業用パッケージに通例含まれる指示書を指すために使用される。
【0116】
「薬学的製剤」という用語は、その中に含有される活性成分の生物学的活性が有効となるような形態であり、かつ製剤が投与され得る対象に許容できない毒性を有する追加の成分を含有しない、調製物を指す。
【0117】
「薬学的に許容される担体」は、対象にとって無毒である、活性成分以外の薬学的製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体としては、緩衝液、賦形剤、安定剤、又は保存剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0118】
本明細書で使用されるとき、「投与する」とは、ある投薬量の化合物(例えば、本発明の抗CD3抗体若しくは本発明の抗CD3抗体をコードする核酸)又は組成物(例えば、医薬組成物、例えば、本発明の抗CD3抗体を含む医薬組成物)を対象に与える方法を意味する。本明細書に記載される方法に用いられる組成物は、例えば、筋肉内、静脈内、皮内、経皮的、動脈内、腹腔内、病巣内、頭蓋内、関節内、前立腺内、胸膜内、気管内、鼻腔内、硝子体内、膣内、直腸内、局所的(topically)、腫瘍内、腹膜内、皮下、結膜下、小胞内、経粘膜、心膜内、臍帯内、眼球内、経口、局所的、局所的(locally)、吸入、注射、注入、持続注入、標的細胞に直接的に流す局所灌流、カテーテル、洗浄、クリーム、又は脂質組成物で投与することができる。投与方法は、様々な因子(例えば、投与される化合物又は組成物、及び処置される状態、疾患、又は障害の重症度)に応じて多様であり得る。
【0119】
本明細書で使用される場合、「処置」(及び「処置する」又は「処置すること」などのその文法上の変形)とは、処置されている個体の自然経過を変更することを目的とした臨床介入を指し、予防のために、又は臨床病理の経過中に行われ得る。所望の処置効果として、限定されないが、疾患の発生又は再発の予防、症状の軽減、疾患の任意の直接的又は間接的な病的状態、転移の予防、疾患の進行率を下げる、疾患状態の軽減又は緩和、回復又は改良された予後が挙げられる。いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、疾患の発症を遅延させるために、又は疾患の進行を遅らせるために使用される。
【0120】
本明細書で使用されるとき、障害又は疾患の「進行を遅らせること」とは、疾患又は障害(例えば細胞増殖性障害、例えば癌)の発達を延期する、妨げる、減速させる、遅滞させる、安定化させる、及び/又は延滞させることを意味する。この遅延は、処置されている病歴及び/又は個体に応じて時間の長さが異なり得る。当業者に明らかであるように、十分な、又は著しい遅延は、事実上、個体が疾患を発症しないという点で予防を包含し得る。例えば、転移の発症などの末期癌を遅延させることができる。
【0121】
「低下させる」又は「阻害する」とは、例えば、20%以上の、50%以上の、又は75%、85%、90%、95%、若しくはそれ以上の全体的な減少を生じる能力を意味する。特定の実施形態では、低下させる、又は阻害するとは、抗体Fc領域によって媒介される抗体のエフェクター機能を指すことができ、そのようなエフェクター機能は、具体的に補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)、及び抗体依存性細胞食作用(ADCP)を含む。
【0122】
「対象」又は「個体」は、哺乳動物である。哺乳動物には、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト、及びサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、並びに齧歯類(例えば、マウス及びラット)が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、対象又は個体はヒトである。
【0123】
「障害」とは、哺乳動物を問題の障害に罹患しやすくする病態を含む慢性及び急性の障害又は疾患を含むがこれらに限定されない、処置から恩恵を受け得る任意の状態である。
【0124】
「細胞増殖性障害」及び「増殖性障害」という用語は、ある程度の異常な細胞増殖に関連する障害を指す。一実施形態では、細胞増殖性障害は癌である。一実施形態では、細胞増殖性障害は、腫瘍である。
【0125】
「癌」及び「癌性」という用語は、典型的には細胞の無秩序な成長によって特徴付けられる、哺乳動物における生理学的状態を指すか、又はこの状態を説明するものである。この定義には、良性及び悪性癌が含まれる。「早期癌」又は「早期腫瘍」は、浸潤性又は転移性ではなく、病期0、1、又は2の癌と分類される癌を意味する。癌の例としては、乳癌、胃癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、非ホジキンリンパ腫(NHL)、B細胞リンパ腫、B細胞白血病、多発性骨髄腫、腎癌、前立腺癌、肝癌、頭頸癌、黒色腫、卵巣癌、中皮腫、神経膠芽腫、胚中心B細胞様(GCB)びまん性大型B細胞リンパ腫(DLBCL)、活性化B細胞様(ABC)DLBCL、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ系白血病(CLL)、辺縁層リンパ腫(MZL)、小型リンパ性白血病(SLL)、リンパ形質細胞性リンパ腫(LL)、ワルデンストレームマクログロブリン血症(WM)、中枢神経系リンパ腫(CNSL)、バーキットリンパ腫(BL)、B細胞前リンパ球性白血病、脾臓辺縁層リンパ腫、毛様細胞性白血病、脾臓のリンパ腫/白血病、脾臓びまん性赤脾髄小型B細胞リンパ腫、毛様細胞性白血病異型、α重鎖病、γ重鎖病、μ重鎖病、形質細胞骨髄腫、骨の孤立性形質細胞腫、髄外性形質細胞腫、粘膜関連リンパ組織の結節外辺縁層リンパ腫(MALTリンパ腫)、結節辺縁層リンパ腫、小児結節辺縁層リンパ腫、小児濾胞性リンパ腫、原発性皮膚濾胞中心リンパ腫、T細胞/組織球豊富型大型B細胞リンパ腫、中枢神経系の原発性DLBCL、原発性皮膚DLBCL(脚型)、老年者のエプスタイン・バーウイルス(EBV)陽性DLBCL、DLBCL随伴慢性炎症、リンパ腫肉芽腫症、原発性縦隔(胸腺)大型B細胞リンパ腫、血管内大型B細胞リンパ腫、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)陽性大型B細胞リンパ腫、形質芽球性リンパ腫、HHV8随伴多中心性キャッスルマン病にて生じる大型B細胞リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫とバーキットリンパ腫との間の特徴を有する、分類不可能な大型B細胞リンパ腫、又は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫と古典的なホジキンリンパ腫との間の特徴を有する、分類不可能な大型B細胞リンパ腫が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、癌はHER2陽性癌(例えば、HER2陽性乳癌又はHER2陽性胃癌)である。
【0126】
用語「HER2陽性」癌は、通常量よりも多くのHER2を有する癌細胞を含む。HER2陽性癌の例としては、HER2陽性乳癌及びHER2陽性胃癌が挙げられる。任意に、HER2陽性癌は、2+若しくは3+の免疫組織化学(IHC)スコア、及び/又は、≧2.0のin situハイブリダイゼーション(ISH)増幅を有する。
【0127】
「腫瘍」という用語は、本明細書で使用される場合、悪性であるか良性であるかにかかわらず、全ての腫瘍細胞の成長及び増殖、並びに全ての前癌性及び癌性の細胞及び組織を指す。「癌」、「癌性」、「細胞増殖性障害」、「増殖性障害」、及び「腫瘍」という用語は、本明細書で言及される場合、相互排他的ではない。
【0128】
本明細書で使用される「腫瘍抗原」という用語は、腫瘍細胞上に提示される抗原として理解され得る。これらの抗原は、分子の膜貫通及び細胞質部分と結合していることが多い細胞外部分とともに細胞表面に提示されることがある。これらの抗原は、腫瘍細胞によりのみ提示され、通常細胞によっては決して提示され得ない。腫瘍抗原は、腫瘍細胞上にのみ発現されるか、又は通常細胞と比較して腫瘍特異的な変異を表すことがある。この場合、それらは腫瘍特異的抗原と称される。腫瘍細胞及び通常細胞により提示される腫瘍抗原がより一般的であり、それらは腫瘍関連抗原と称される。これらの腫瘍関連抗原は、通常細胞と比較して過剰発現される場合がある、又は通常組織と比較して腫瘍組織の構造が小さくないことから腫瘍細胞中で結合する抗体にアクセス可能である。
【0129】
「有効量」の化合物、例えば、本発明の二重特異性抗原結合分子又はその組成物(例えば医薬組成物)は、特定の障害(例えば細胞増殖性障害、例えば癌)の、測定可能な改善又は予防などの、所望の治療的又は予防的結果を達成するのに必要な、少なくとも最小量にて存在する。本明細書における有効量は、患者の疾患状態、年齢、性別、及び体重、並びに個体における所望の応答を誘発する抗体の能力などの要因に応じて異なり得る。有効量はまた、治療上有益な作用が、処置の任意の毒性作用又は有害作用を上回るものでもある。予防的使用の場合、有益な又は所望の結果には、疾患の生化学的、組織学的、及び/又は挙動的症状、その合併症、並びに疾患の発症中に現れる中間病理学的表現型を含む、疾患のリスクの排除若しくは低減、疾患の重症度の軽減、又は疾患の発生の遅延などの結果が含まれる。治療的使用の場合、有益な又は所望の結果には、疾患に起因する1つ以上の症状の減少、疾患に罹患している者の生活の質の向上、疾患の処置に必要な他の薬剤の用量の減少、別の薬剤の効果の増強(例えば、標的による)、疾患の進行の遅延、及び/又は生存期間の延長などの臨床結果が含まれる。癌又は腫瘍の場合、有効量の薬物は、癌細胞の数を減少させ、腫瘍サイズを低減させ、癌細胞の末梢器官への浸潤を阻害し(すなわち、ある程度遅らせるか、又は望ましくは停止し)、腫瘍転移を阻害し(すなわち、ある程度遅らせるか、又は望ましくは停止し)、腫瘍成長をある程度阻害し、及び/又は障害に関連する症状のうちの1つ以上をある程度軽減する効果を有し得る。有効量は、1回以上の投与で投与され得る。本発明の目的に関しては、薬物、化合物、又は医薬組成物の有効量は、予防的又は治療的処置を直接又は間接的のいずれかで達成するのに十分な量である。臨床分野において理解されるように、薬物、化合物、又は医薬組成物の有効量は、別の薬物、化合物、又は医薬組成物と併せて達成されても、されなくてもよい。したがって、「有効量」は、1つ以上の治療剤の投与に関連して考慮される場合があり、単一の薬剤は、1つ以上の他の薬剤と併せると望ましい結果が達成され得るか、又は達成される場合、有効量で与えられるとみなされ得る。
【0130】
「PD-1軸結合アンタゴニスト」という用語は、PD-1シグナル伝達軸上のシグナル伝達に起因するT細胞機能障害を除去するように、PD-1軸結合パートナーとその結合パートナーのうちの1つ以上との相互作用を阻害し、結果として、T細胞機能が復元又は増強される分子を指す。本明細書で使用される場合、PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-1結合アンタゴニスト及びPD-L1結合アンタゴニスト、並びにPD-L1とPD-1との間の相互作用を妨害する分子(例えば、PD-L2-Fc融合体)を含む。
【0131】
本明細書で使用される場合、「PD-1結合アンタゴニスト」とは、PD-1と、PD-L1及び/又はPD-L2などのその結合パートナーのうちの1つ以上との相互作用から生じるシグナル形質導入を低下、遮断、阻害、抑止、又は妨害する分子である。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のPD-L1及び/又はPD-L2への結合を阻害する。例えば、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体及びその抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、小分子アンタゴニスト、ポリヌクレオチドアンタゴニスト、並びにPD-1と、PD-L1及び/又はPD-L2との相互作用から生じるシグナル形質導入を低下、遮断、阻害、抑止、又は妨害する他の分子を含む。一実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-L1又はPD-1を介してTリンパ球及び他の細胞上で発現される細胞表面タンパク質により又はそれを介して媒介される負のシグナルを低減し、これにより、機能不全のT細胞の機能不全状態を軽減する。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは抗PD-1抗体である。特定の態様では、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載のMDX-1106(ニボルマブ)である。別の具体的な態様では、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載のMK-3475(ペムブロリズマブ)である。別の具体的な態様では、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載のCT-011(ピディリズマブ)である。別の具体的な態様では、PD-1結合アンタゴニストは、MEDI-0680(AMP-514)である。別の具体的な態様では、PD-1結合アンタゴニストは、PDR001(スパルタリズマブ)である。別の具体的な態様では、PD-1結合アンタゴニストは、REGN2810(セミプリマブ)である。別の特定の態様では、PD-1結合アンタゴニストはBGB-108である。別の具体的な態様において、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載されるAMP-224である。
【0132】
本明細書で使用される場合、「PD-L1結合アンタゴニスト」は、PD-L1と、PD-1及び/又はB7-1などのその結合パートナーのうちの1つ以上との相互作用から生じるシグナル形質導入を低下、遮断、阻害、抑止、又は妨害する分子である。いくつかの実施形態では、PD-L1結合拮抗薬は、PD-L1の、その結合パートナーへの結合を阻害する分子である。具体的な態様では、PD-L1結合拮抗薬は、PD-L1の、PD-1及び/又はB7-1への結合を阻害する。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体及びその抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、小分子アンタゴニスト、ポリヌクレオチドアンタゴニスト、並びにPD-L1と、PD-1及び/又はB7-1などのその結合パートナーのうちの1つ以上との相互作用に起因するシグナル形質導入を低下、遮断、阻害、抑止、又は妨害する他の分子を含む。一実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1又はPD-1を通して、Tリンパ球及び他の細胞にて発現する細胞表面タンパク質により、又はこれを通して媒介される、負のシグナルを低減し、機能障害性T細胞の機能障害性を低下させる(例えば、増強エフェクターが抗原認識に対して応答する)。いくつかの実施形態では、PD-L1結合拮抗薬は、抗PD-L1抗体である。特定の態様では、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載されるYW243.55.S70である。別の特定の態様では、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載のMDX-1105である。更に別の特定の態様において、抗PD-L1抗体は、本明細書で記載される、MPDL3280Aとしても知られているアテゾリズマブ(CAS登録番号:1422185-06-5)である。更に別の特定の態様では、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載されるMEDI4736(ドルバルマブ)である。また別の具体的な態様では、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載されるMSB0010718C(アベルマブ)である。
【0133】
「プログラム死リガンド1」及び「PD-L1」という用語は、本明細書において、天然配列PD-L1ポリペプチド、ポリペプチドバリアント(即ち、PD-L1ポリペプチドバリアント)、並びに天然配列ポリペプチド及びポリペプチドバリアントの断片(これらは、本明細書において更に定義される)を指す。本明細書に記載されるPD-L1ポリペプチドは、ヒト組織型から、若しくは別の源からなど、多様な供給源から単離されるか、又は組換え法若しくは合成法によって調製されたものであり得る。
【0134】
「天然配列PD-L1ポリペプチド」とは、対応する、自然界に由来するPD-L1ポリペプチドと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0135】
「PD-L1ポリペプチドバリアント」又はその変化形は、本明細書に定義されるPD-L1ポリペプチド、一般的には活性PD-L1ポリペプチドであって、本明細書に開示される天然配列PD-L1ポリペプチド配列のいずれかに対して少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有することを意味する。そのようなPD-L1ポリペプチドバリアントには、例えば、天然アミノ酸配列のN末端又はC末端に1つ以上のアミノ酸残基が付加又は欠失されたPD-L1ポリペプチドが含まれる。通常、PD-L1ポリペプチドバリアントは、本明細書に開示される天然配列PD-L1ポリペプチド配列と少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%のアミノ酸配列同一性を有するだろう。通常、PD-L1ポリペプチドバリアントは、少なくとも約10アミノ酸長であり、あるいは少なくとも約20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、281、282、283、284、285、286、287、288、若しくは289アミノ酸長、又はそれ以上である。任意で、PD-L1ポリペプチドバリアントは、天然PD-L1ポリペプチド配列と比較して1つ以下の保存的アミノ酸置換、あるいは天然PD-L1ポリペプチド配列と比較して2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個以下の保存的アミノ酸置換を有する。
【0136】
「PD-L2結合アンタゴニスト」という用語は、PD-L2とその結合パートナーのうちのいずれか1つ以上、例えば、PD-1との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、又は妨害する分子を指す。いくつかの実施形態では、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2の、その結合パートナーのうちの1つ以上への結合を阻害する分子である。具体的な一態様において、PD-L2結合拮抗薬は、PD-L2のPD-1への結合を阻害する。いくつかの実施形態では、PD-L2拮抗薬は、抗PD-L2抗体、その抗原結合フラグメント、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、及びPD-L2とその結合パートナーのうちのいずれか1つ以上、例えば、PD-1との相互作用に起因するシグナル伝達を低減、遮断、阻害、抑止、又は妨害する他の分子を含む。一実施形態では、PD-L2結合拮抗薬は、機能障害性T細胞の機能障害性を低下させる(例えば、抗原認識へのエフェクター応答を増強する)ように、PD-L2を介してTリンパ球媒介シグナル伝達で発現された細胞表面タンパク質によって、又はそれを介して媒介される、負の共刺激性シグナルを低減させる。いくつかの実施形態では、PD-L2結合拮抗薬は、イムノアドヘシンである。
【0137】
II 組成物
一態様では、本発明は部分的に、二重特異性抗原結合分子(例えば二重特異性抗体)に基づく。特定の実施形態において、二重特異性抗原結合分子は、第1抗原(例えばT細胞抗原、例えばCD3)に特異的に結合可能な一価のアーム、及び、2つの更なる抗原(例えば腫瘍抗原、例えば2つのHER2抗原)に特異的に結合可能な二価のアームを有する。例えば、二価のアームは、それぞれが、標的抗原(例えばHER2)に特異的に結合し、多量の標的抗原を発現する細胞に対する二重特異性抗原結合分子のアビディティを増加させることができる、2つの抗原結合部分を含むことができる。本発明の二重特異性抗原結合分子は、例えば、細胞増殖性障害(例えば癌)若しくは自己免疫性障害を処置する、若しくはこれらの進行を遅延させるために、又は、このような障害を有する対象における免疫機能を増強させるために、有用である。
【0138】
本発明の1Fab-IgG TDBは、少量の標的化腫瘍抗原を発現する細胞(例えば通常又は健常なヒト組織の細胞)を救助しながら、高い潜在能を有する標的化腫瘍抗原を過剰発現する腫瘍細胞を、選択的に殺傷する。選択性は、腫瘍抗原を過剰発現する細胞における、高い標的密度に対する、2つの低親和性抗腫瘍抗原Fabアームのアビディティに基づく。細胞を過剰発現する腫瘍抗原に対する選択性が増加することにより、TDBのオンターゲット副作用が緩和される。例えば、HER2を標的化腫瘍抗原として使用することで、HER2に対する一価の高親和性結合を有する抗HER2-IgG TDBは、HER2を過剰発現する細胞、及び、低量のHER2を発現する細胞の両方に結合する。このTDBの治療指数は、高いHER2密度による、HER2を過剰発現する細胞におけるより高い活性に基づく。TDBの多くの用量において、高親和性IgG1 HER2-TDBは、低量のHER2を発現する細胞に影響を及ぼす可能性があり、それ故、通常の組織におけるオンターゲット・オフ腫瘍自己免疫のリスクを有する(図35A)。HER2結合アームに、より低い親和力を持たせるように改変を行うことにより、HER2を過剰発現する細胞、及び低量のHER2を発現する細胞の両方における、より低い結合及びTDB活性がもたらされるが、選択性は改善しない(図35B)。適切な親和性(一価のKが約20~50nM)における二価のHER2結合により、抗HER2 1Fab-IgG TDBのアビディティによって、HER2を過剰発現する細胞への結合性の高さがもたらされる。アビディティの効果は高いHER2の密度に左右されるため、1Fab-IgG TDBは、低量のHER2を発現する細胞、例えば、通常の、又は健常なヒト組織の細胞には結合しない。細胞結合は、TDBのT細胞活性をリクルートする能力と相関するため、抗HER2 1Fab-IgG TDBは、HER2を過剰発現する細胞のみを選択的に殺傷し、通常の組織における、オンターゲット・オフ腫瘍自己免疫のリスクが低下する(図35C)。
例示的な二重特異性抗原結合分子
【0139】
一態様では、本発明は、一価のアーム及び二価のアームを有する、単離された二重特異性抗原結合分子(例えば二重特異性抗体)を提供する。例えば、一態様において、本発明は、一価のアーム及び二価のアームを有する二重特異性抗原結合分子であって、(a)一価のアームが第1の抗原結合部分を含み、(b)二価のアームが第2の抗原結合部分及び第3の抗原結合部分を含む二重特異性抗原結合分子を提供する。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分のC末端は第1のFcサブユニットのN末端に融合し、第3の抗原結合部分のC末端は第2の抗原結合部分のN末端に融合し、第2の抗原結合部分のC末端は第2のFcサブユニットのN末端に融合する。いくつかの実施形態では、第1のFcサブユニットは第2のFcサブユニットと会合して、Fcドメインを形成する。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、第1の標的細胞抗原に特異的に結合可能であり、第2の抗原結合部分及び第3の抗原結合部分はそれぞれ、第2の標的細胞抗原(例えば、同一のエピトープにおける、又は、第2の標的細胞抗原の異なるエピトープにおける)に特異的に結合可能である。
【0140】
第1の抗原結合部分は、可変重鎖(VH)領域及び可変軽鎖(VL)領域を含むFab分子(Fab)であることができ、第2の抗原結合部分は、可変重鎖(VHB1)領域及び可変軽鎖(VLB1)領域を含むFab分子(FabB1)であることができ、かつ/又は、第3の抗原結合部分は、可変重鎖(VHB2)領域及び可変軽鎖(VLB2)領域を含むFab分子(FabB2)であることができる。したがって、場合によっては、第1の抗原結合部分は、VH領域及びVL領域を含むFabであることができ、第2の抗原結合部分は、VHB1領域及びVLB1領域を含むFabB1であることができ、第3の抗原結合部は、VHB2領域及びVLB2領域を含むFabB2であることができる。VHB1及びVHB2は、少なくとも95%の配列同一性(例えば95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性)を共有してよい。加えて、又はあるいは、VLB1及びVLB2は、少なくとも95%の配列同一性(例えば95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性)を共有してよい。
【0141】
1Fab-IgG分子とは、第1の抗原結合部分、第2の抗原結合部分、及び第3の抗原結合部分を有する二重特異性抗原結合分子を意味し、第1の抗原結合部分は、VH領域及びVL領域を含むFabであり、第2の抗原結合部分は、VHB1領域及びVLB1領域を含むFabB1であり、第3の抗原結合部分は、VHB2領域及びVLB2領域を含むFabB2であり、VHB1及びVHB2は、少なくとも95%の配列同一性(例えば95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性)を共有し、VLB1及びVLB2は、少なくとも95%の配列同一性(例えば95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性)を共有する。1Fab-IgG分子は、第1の標的抗原に結合する第1の抗原結合部分を含む一価のアーム、並びに第2及び第3の抗原結合部分を含む二価のアームを有し、第2及び第3の抗原結合分子はそれぞれ、第2の標的細胞抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、1Fab-IgG分子は、一価のアームがT細胞の表面にて抗原に特異的に結合し、二価のアームの抗原結合部分のそれぞれが、第2の標的細胞(例えば腫瘍細胞)の表面にて抗原に特異的に結合する1Fab-IgG T細胞依存性二重特異性分子(1Fab-IgG TDB)である。標準的な二価のIgGフォーマットを有するTDB(IgG TDB)と同様に、1Fab-IgG TDBは細胞溶解T細胞をリクルートして、標的化した抗原を発現する細胞を殺傷する。
【0142】
例えば、抗CD3/HER2 1Fab-IgG TDBは、CD3(例えば、T細胞の表面におけるCD3分子)に特異的に結合する一価のアーム、及び、それぞれ、HER2(例えば、腫瘍細胞の表面におけるHER2分子)に特異的に結合する2つの抗原結合部分を有する二価のアームを有する。二価のアーム上の2つの抗原結合部分が同一のエピトープに結合することができる、又は、二価のアーム上のそれぞれの抗原結合部分が、同一抗原上の異なるエピトープに結合することができる。一実施形態では、二価のアームは4D5と同じエピトープに結合する。一実施形態では、二価のアームはHER2のドメインIVに結合する。一実施形態では、CD3に対して特異的な、一価のアーム上の抗原結合部分は40G5c Fabであり、HER2に対して特異的な、二価のアーム上の2つの抗原結合部分のそれぞれは、4D5 Fabのバリアントである。特定の実施形態を本明細書で例示する。
【0143】
本発明の二重特異性抗原結合分子は、多くの場合、(例えば、T細胞を活性化して、低量の腫瘍抗原を発現する健常な細胞ではなく、腫瘍細胞にエンゲージすることにより)健常組織への損傷を低下させる、高密度の抗原(例えば腫瘍抗原)を優先的に発現する細胞に対する感度の増加を提供することができる。したがって、いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、(a)対象の腫瘍細胞にて、及び(b)(例えば、腫瘍細胞における発現よりも低い密度で)対象の、少なくとも一種の非腫瘍細胞にて発現する。いくつかの実施形態では、腫瘍細胞における腫瘍抗原のコピー数に対する、非腫瘍細胞における腫瘍抗原のコピー数の比は、1:2~1:1,000,000(例えば1:3~1:500,000、1:4~1:100,000、1:5~1:50,000、1:6~1:40,000、1:7~1:20,000、1:8~1:10,000、1:9~1:5,000、1:10~1:1,000、1:20~1:500、1:50~1:400、又は1:100~1:200、例えば1:2~1:10、1:10~1:20、1:20~1:50、1:50~1:100、1:100~1:200、1:200~1:300、1:300~1:400、1:400~1:500、1:500~1:600、1:600~1:700、1:700~1:800、1:800~1:900、1:900~1:1,000、1:1,000~1:5,000、1:5,000~1:10,000、1:10,000~1:50,000、1:50,000~1:100,000、1:100,000~1:500,000、又は、1:500,000~1:1,000,000、例えば約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、約1:10、約1:15、約1:20、約1:25、約1:30、約1:35、約1:40、約1:50、約1:60、約1:70、約1:80、約1:90、約1:100、約1:125、約1:150、約1:175、約1:200、約1:300、約1:400、約1:500、約1:1,000、約1:10,000、約1:100,000、又は約1:1,000,000)である。
【0144】
いくつかの実施形態では、非腫瘍細胞における腫瘍抗原のコピー数は、10~10(例えば、10~10、10~10、10~10、10~10、10~10、10~10、10~10、10~10、10~10、10~10、10~10、10~10、10~10、10~10、又は、10~10、例えば約10、10、10、10、10、又は10)である。いくつかの実施形態では、腫瘍細胞における腫瘍抗原のコピー数は、10~10(例えば、10~10、10~10、10~10、10~10、10~10、10~10、10~10、10~10、10~10、10~10、10~10、10~10、10~10、10~10、又は、10~10、例えば約10、10、10、10、10、又は10)である。
【0145】
いくつかの実施形態では、腫瘍抗原のコピー数は、非腫瘍細胞にて10~10、及び腫瘍細胞にて10~10(例えば、非腫瘍細胞にて10~10、及び腫瘍細胞にて10~10、非腫瘍細胞にて10~10、及び腫瘍細胞にて10~10、非腫瘍細胞にて10~10、及び腫瘍細胞にて10~10、非腫瘍細胞にて10~10、及び腫瘍細胞にて10~10、又は、非腫瘍細胞にて10~10、及び腫瘍細胞にて10~10)である。
【0146】
いくつかの実施形態では、腫瘍抗原コピー数(例えば、平均の腫瘍抗原コピー数、例えばHER2コピー数、例えば平均のHER2コピー数)は、非腫瘍細胞にて10~2.0×10、及び、腫瘍細胞にて少なくとも2.0×10である。
【0147】
本発明の抗原結合分子により結合される腫瘍細胞は、細胞1個当たり少なくとも200,000(例えば、細胞1個当たり少なくとも250,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも300,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも400,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも500,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも600,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも700,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも750,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも800,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも900,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも1,000,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも1,200,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも1,500,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも2,000,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも2,500,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも3,000,000のHER2のコピー、又はそれ以上、例えば、細胞1個当たり200,000~3,000,000のHER2のコピー、細胞1個当たり250,000~2,500,000のHER2のコピー、細胞1個当たり300,000~2,000,000のHER2のコピー、細胞1個当たり400,000~1,500,000のHER2のコピー、若しくは、細胞1個当たり500,000~1,000,000のHER2のコピー、例えば、細胞1個当たり200,000~1,000,000のHER2のコピー(例えば、細胞1個当たり200,000~250,000のHER2のコピー、細胞1個当たり250,000~300,000のHER2のコピー、細胞1個当たり300,000~400,000のHER2のコピー、細胞1個当たり400,000~500,000のHER2のコピー、細胞1個当たり500,000~750,000のHER2のコピー、若しくは、細胞1個当たり750,000~1,000,000のHER2のコピー)、又は、細胞1個当たり1,000,000~3,000,000のHER2のコピー(例えば、細胞1個当たり1,000,000~1,500,000のHER2のコピー、細胞1個当たり1,500,000~2,000,000のHER2のコピー、細胞1個当たり2,000,000~2,500,000のHER2のコピー、若しくは、細胞1個当たり2,500,000~3,000,000のHER2のコピー))のコピー数(例えば、平均コピー数)にて、HER2を発現し得る。上述のHER2発現特性のいずれかを有するHER2陽性腫瘍細胞は、本発明の抗原結合分子の結合時に、ほとんど、又は全くHER2が発現しない(例えば、細胞1個当たり200,000未満のHER2のコピー、例えば、細胞1個当たり0~200,000のHER2のコピー、細胞1個当たり0~150,000のHER2のコピー、細胞1個当たり0~100,000のHER2のコピー、細胞1個当たり0~50,000のHER2のコピー、細胞1個当たり0~20,000のHER2のコピー、細胞1個当たり0~10,000のHER2のコピー、細胞1個当たり0~5,000のHER2のコピー、又は、細胞1個当たり0~1,000のHER2のコピー)非腫瘍細胞と比較して、T細胞により優先的に殺傷される(例えば、選択的に殺傷される)ことができる。
【0148】
腫瘍抗原コピー数(例えば、平均の腫瘍抗原コピー数、例えばHER2コピー数、例えば平均のHER2コピー数)は、当該技術分野において公知の、又は本明細書で記載される任意の好適な手段を使用して定量化することができる。例えば、HER2コピー数は、フローサイトメトリーによる蛍光定量化を使用して(例えば、既知の当量の可溶性蛍光分子数の分子(MESF)のビーズを使用して)定量化することができる。
【0149】
いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分及び/又は第3の抗原結合部分の一価の結合親和性(K)は、10nM~100nM(例えば、20nM~90nM、30nM~80nM、40nM~60nM、例えば25nM~55nM)である。一実施形態では、第2の抗原結合部分及び/又は第3の抗原結合部分の一価の結合親和性(K)は、20nM~50nMである。一実施形態では、第2の抗原結合部分及び第3の抗原結合部分の一価の結合親和性(K)は、20nM~50nMである。
【0150】
いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部分及び/又は第3の抗原結合部分の一価の解離速度は、10-3/秒~10-1/秒(例えば、10-2/秒~30-2/秒)である。
【0151】
いくつかの実施形態では、第1の標的抗原は、CD3などの活性化T細胞抗原である。様々なT細胞抗原結合部分が当技術分野において既知であり、本発明の一部として使用するのに好適である。例えば、本発明の特定の実施形態において、好適な第1の抗原結合部分は、例えば、その全体が本明細書に参照として組み込まれている米国特許出願公開第2015/0166661号に記載されている、抗体クローン40G5c、又はその断片及び/若しくはバリアントである。特定の実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号1のHVR-H1、配列番号2のHVR-H2、配列番号3のHVR-H3、配列番号4のHVR-L1、配列番号5のHVR-L2、及び配列番号6のHVR-L3を含む抗CD3 Fab(例えば40G5c)である。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、配列番号7のVH及び配列番号8のVLを含む抗CD3 Fab(例えば40G5c)である。40G5cのアミノ酸配列もまた、表1に示す。
【0152】
【0153】
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分は、ヒトCD3ポリペプチド、又はカニクイザル(カニクイザル)CD3ポリペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、ヒトCD3ポリペプチド又はカニクイザルCD3ポリペプチドは、それぞれ、ヒトCD3εポリペプチド又はカニクイザルCD3εポリペプチドである。いくつかの実施形態では、ヒトCD3ポリペプチド又はカニクイザルCD3ポリペプチドは、それぞれ、ヒトCD3γポリペプチド又はカニクイザルCD3γポリペプチドである。CD3に結合する更なる抗原結合部分(例えば、Fab分子)は、当技術分野において既知であり、例えば米国特許出願公開第2015/0166661号に記載されており、本発明の一部として使用するのに適合することができる。
【0154】
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分の一価のKは、250nM以下のKで、ヒトCD3εポリペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、抗CD3抗体は、100nM以下のKで、ヒトCD3εポリペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、抗CD3抗体は、15nM以下のKで、ヒトCD3εポリペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、抗CD3抗体は、10nM以下のKで、ヒトCD3εポリペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、抗CD3抗体は、5nM以下のKで、ヒトCD3εポリペプチドに結合する。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部分の一価のKは、10nM~100nM(例えば、20nM~90nM、20nM~80nM、30nM~70nM、又は40nM~60nM)である。
【0155】
いくつかの実施形態では、第2の標的細胞抗原は腫瘍抗原である。
【0156】
腫瘍抗原はHER2であり得る。HER2に結合する、好適な第2及び/第3の抗原結合部分は、抗体4D5、又はその断片及び/若しくはバリアントである。4D5、及びその置換バリアントのアミノ酸配列を表1に示し、これらは例えば、その全体が本明細書に参照として組み込まれる米国特許出願公開第2015/0166661号に記載されている。一実施形態では、第2及び/又は第3の抗原結合部分は、抗体4D5(トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標);Genentech,Inc.,South San Francisco,CA)として知られている、そのヒト化版;Molina,et al.,Cancer Research 2001,61(12):4744-4749)と同じエピトープに結合する。一実施形態では、第2及び第3の抗原結合部分は、抗体4D5と同じエピトープに結合する。
【0157】
一実施形態では、第2及び/又は第3の抗原結合部分は、抗体2C4(ペルツズマブ(PERJETA(登録商標);Genentech,Inc.,South San Francisco,CA)として知られている、そのヒト化版;Franklin et al.Cancer Cell 2004,5:317-328)と同じエピトープに結合する。一実施形態では、第2及び第3の抗原結合部分は、抗体2C4と同じエピトープに結合する。
【0158】
一実施形態では、第2及び/又は第3の抗原結合部分は、抗体7C2(米国特許第9,518,118号)と同じエピトープに結合する。一実施形態では、第2及び第3の抗原結合部分は、抗体7C2と同じエピトープに結合する。
【0159】
図36は、HER2 ECDの結晶構造を提供し、異なるHER2抗体が結合する領域を強調している。4D5は、細胞膜に最も近いタンパク質領域である、HER2のドメインIVにおけるエピトープに結合する。2C4は、hu4D5が結合する領域から50オングストロームの距離である、HER2のドメインIIにおけるエピトープに結合する。7C2は、hu4D5により結合されるHER2領域から100オングストロームの距離である、HER2のドメインIにおけるエピトープに結合する。
【0160】
一実施形態では、第2及び/又は第3の抗原結合部分はHER2のドメインIVに結合する。一実施形態では、第2及び第3の抗原結合部分はHER2のドメインIVに結合する。一実施形態では、第2及び/又は第3の抗原結合部分はHER2のドメインIIに結合する。一実施形態では、第2及び第3の抗原結合部分はHER2のドメインIIに結合する。
【0161】
一実施形態では、第2及び/又は第3の抗原結合部分はHER2のドメインIに結合する。一実施形態では、第2及び第3の抗原結合部分はHER2のドメインIに結合する。
【0162】
一実施形態では、第2の結合部分はHER2のドメインIVに結合し、第3の抗原結合部分はHER2のドメインIに結合する。
【0163】
一実施形態では、第2の結合部分はHER2のドメインIVに結合し、第3の抗原結合部分はHER2のドメインIIに結合する。
【0164】
一実施形態では、第2の結合部分はHER2のドメインIIに結合し、第3の抗原結合部分はHER2のドメインIに結合する。
【0165】
いくつかの実施形態では、上記実施形態のいずれかの二重特異性抗原結合分子は、以下のHVR:(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、又は、(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3の1つ、2つ、又は3つ全てを含むVH領域を特徴とする。いくつかの実施形態では、VH領域は、配列番号7に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号7に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号7に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号7に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号7に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号7に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VH領域は、配列番号7のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VL領域は、以下のHVR:(a)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、又は、(c)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VL領域は、配列番号8に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号8に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号8に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号8に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号8に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号8に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VL領域は、配列番号8のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗CD3二重特異性抗原結合分子(例えば、抗CD3/HER2 1Fab-IgG TDB、例えば、40G5c CD3結合ドメインを有する抗CD3/HER2 1Fab-IgG TDB)である。
【0166】
いくつかの実施形態では、VHは、以下のHVR:(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLは、以下のHVR:(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VH領域は、配列番号7に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号7に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号7に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号7に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号7に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号7に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み、VL領域は、配列番号8に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号8に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号8に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号8に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号8に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号8に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VH領域は配列番号7のアミノ酸を含み、VL領域は配列番号8のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗CD3二重特異性抗原結合分子(例えば、抗CD3/HER2 1Fab-IgG TDB、例えば、40G5c CD3結合ドメインを有する抗CD3/HER2 1Fab-IgG TDB)である。
【0167】
いくつかの実施形態では、VHB1領域及び/又はVHB2領域は、Kabatの付番システムに従った、N54、D98、F100、及び/又はY102の少なくとも1つ、2つ、3つ、又は4つ全ての残基において、アミノ酸置換を含む。例えば、VHB1領域及び/又はVHB2領域は、以下の残基:Kabatの付番システムに従った、N54E、D98A、D98T、F100A、及び/又はY102Vの1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つ全てにおけるアミノ酸置換を特徴とし得る。
【0168】
いくつかの実施形態では、VLB1領域及び/又はVLB2領域は、Kabatの付番システムに従った、N30、Y55、及び/又はH91の少なくとも1つ、2つ、又は3つ全ての残基において、アミノ酸置換を含む。例えば、VLB1領域及び/又はVLB2領域は、以下の残基:N30S、Y55E、及び/又はH91Aの1つ、2つ、又は3つ全てにおけるアミノ酸置換を特徴とし得る。
【0169】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2、又は、(c)配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H3の1つ、2つ、又は3つ全てを含むVHB1領域を特徴とする。いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号17に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号17に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号17に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号17に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号17に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号17に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号17のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB1領域は、以下のHVR:(a)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-L2、又は、(c)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VLB1領域は、配列番号18に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号18に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号18に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号18に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号18に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号18に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VLB1領域は、配列番号18のアミノ酸配列を含む。
【0170】
いくつかの実施形態において、VHB1は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB1は、以下のHVR:(d)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号17に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号17に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号17に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号17に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号17に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号17に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み、VLB1領域は、配列番号18に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号18に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号18に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号18に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号18に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号18に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VHB1領域は配列番号17のアミノ酸を含み、VLB1領域は配列番号18のアミノ酸配列を含む。
【0171】
いくつかの実施形態では、VHB2領域は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2、又は、(c)配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号17に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号17に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号17に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号17に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号17に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号17に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号17のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、以下のHVR:(a)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-L2、又は、(c)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、配列番号18に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号18に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号18に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号18に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号18に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号18に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、配列番号18のアミノ酸配列を含む。
【0172】
いくつかの実施形態では、VHB2は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB2は、以下のHVR:(d)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号17に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号17に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号17に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号17に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号17に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号17に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み、VLB2領域は、配列番号18に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号18に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号18に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号18に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号18に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号18に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は配列番号17のアミノ酸を含み、VLB2領域は配列番号18のアミノ酸配列を含む。
【0173】
いくつかの実施形態では、VLB1領域及び/又はVLB2領域は、H91にアミノ酸置換を含む。例えば、いくつかの実施形態では、H91残基が、無極性側鎖を有するアミノ酸で置換されている。いくつかの実施形態では、VLB1 領域及び/又はVLB2領域は、H91Aのアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、VLB1領域及び/又はVLB2領域は、Y55にアミノ酸置換を含む。例えば、いくつかの実施形態では、Y55残基が、酸性側鎖を有するアミノ酸で置換されている。いくつかの実施形態では、VLB1領域及び/又はVLB2領域は、Y55Eのアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、VHB1領域及び/又はVHB2領域は、F100及び/又はY102にアミノ酸置換を含む。例えば、いくつかの実施形態では、F100残基及び/又はY102残基が、無極性側鎖を有するアミノ酸で置換されている。いくつかの実施形態では、VHB1領域及び/又はVHB2領域は、F100A及び/又はY102Vのアミノ酸置換を含む。
【0174】
二重特異性抗原結合部分のいくつかの実施形態において、VLB1領域及び/又はVLB2領域は、1つ以上の易罹病性固定残基、例えば、N30Sのアミノ酸置換を含む1つ以上の易罹病性固定残基を含む。加えて、又はあるいは、VHB1領域及び/又はVHB2領域は、1つ以上の易罹病性固定残基、例えば、N54E、D98A、及びD98Tからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換基を含む、1つ以上の易罹病性固定残基を特徴とし得る。
【0175】
二重特異性抗原結合分子は、第2及び/又は第3の抗原結合部分の軽鎖の残基H91における変異(例えばH91A)を特徴とし得る。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H2、又は、(c)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-H3の1つ、2つ、又は3つ全てを含むVHB1領域を特徴とする。いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号24に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号24に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号24に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号24に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号24に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号24に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号24のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB1領域は、以下のHVR:(a)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L2、又は、(c)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VLB1領域は、配列番号27に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号27に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号27に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号27に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号27に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号27に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VLB1領域は、配列番号27のアミノ酸配列を含む。
【0176】
いくつかの実施形態において、VHB1は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB1は、以下のHVR:(d)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号24に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号24に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号24に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号24に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号24に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号24に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み、VLB1領域は、配列番号27に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号27に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号27に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号27に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号27に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号27に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VHB1領域は配列番号24のアミノ酸を含み、VLB1領域は配列番号27のアミノ酸配列を含む。
【0177】
いくつかの実施形態では、VHB2領域は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H2、又は、(c)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-H3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号24に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号24に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号24に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号24に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号24に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号24に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号24のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、以下のHVR:(a)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L2、又は、(c)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、配列番号27に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号27に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号27に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号18に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号27に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号27に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、配列番号27のアミノ酸配列を含む。
【0178】
場合によっては、VHB2は以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB2は、以下のHVR:(d)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号24に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号24に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号24に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号24に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号24に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号24に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み、VLB2領域は、配列番号27に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号27に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号27に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号27に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号27に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号27に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は配列番号24のアミノ酸を含み、VLB2領域は配列番号27のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗HER2二重特異性抗原結合分子(例えば、4D5 H91A-1Fab-IgG TDB)である。
【0179】
別の場合において、二重特異性抗原結合分子は、第2及び/又は第3の抗原結合部分の重鎖の残基D98、F100、及びY102における変異(例えばD98A、F100A、及びY102V)を特徴とし得る。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H2、又は、(c)配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-H3の1つ、2つ、又は3つ全てを含むVHB1領域を特徴とする。いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号33に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号33に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号33に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号33に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号33に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号33に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号33のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB1領域は、以下のHVR:(a)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L2、又は、(c)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VLB1領域は、配列番号25に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号25に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号25に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号25に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号25に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号25に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VLB1領域は、配列番号25のアミノ酸配列を含む。
【0180】
いくつかの実施形態において、VHB1は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB1は、以下のHVR:(d)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号33に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号33に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号33に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号33に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号33に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号33に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み、VLB1領域は、配列番号25に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号25に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号25に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号25に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号25に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号25に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VHB1領域は配列番号33のアミノ酸を含み、VLB1領域は配列番号25のアミノ酸配列を含む。
【0181】
いくつかの実施形態では、VHB2領域は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H2、又は、(c)配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-H3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号33に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号33に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号33に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号33に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号33に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号33に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号33のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、以下のHVR:(a)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L2、又は、(c)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、配列番号25に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号25に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号25に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号25に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号25に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号25に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、配列番号25のアミノ酸配列を含む。
【0182】
いくつかの実施形態では、VHB2は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB2は、以下のHVR:(d)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号33に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号33に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号33に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号33に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号33に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号33に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み、VLB2領域は、配列番号25に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号25に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号25に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号25に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号25に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号25に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は配列番号33のアミノ酸を含み、VLB2領域は配列番号25のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗HER2二重特異性抗原結合分子(例えば、4D5 D98A.F100A.Y102V-1Fab-IgG TDB)である。
【0183】
別の実施形態において、二重特異性抗原結合分子は、第2及び/又は第3の抗原結合部分の軽鎖の残基Y55及びH91、並びに重鎖の残基N54及びD98における変異(例えばY55E、H91A、N54E、及びD98T)を特徴とし得る。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、又は、(c)配列番号37のアミノ酸配列を含むHVR-H3の1つ、2つ、又は3つ全てを含むVHB1領域を特徴とする。いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号41に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号41に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号41に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号41のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB1領域は、以下のHVR:(a)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、又は、(c)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VLB1領域は、配列番号48に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号48に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号48に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VLB1領域は、配列番号48のアミノ酸配列を含む。
【0184】
いくつかの実施形態において、VHB1は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号37のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB1は、以下のHVR:(d)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号41に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号41に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号41に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み、VLB1領域は、配列番号48に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号48に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号48に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VHB1領域は配列番号41のアミノ酸を含み、VLB1領域は配列番号48のアミノ酸配列を含む。
【0185】
いくつかの実施形態では、VHB2領域は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、又は、(c)配列番号37のアミノ酸配列を含むHVR-H3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号41に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号41に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号41に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号41のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、以下のHVR:(a)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、又は、(c)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、配列番号48に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号48に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号48に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、配列番号48のアミノ酸配列を含む。
【0186】
いくつかの実施形態では、VHB2は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号37のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB2は、以下のHVR:(d)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号41に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号41に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号41に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み、VLB2領域は、配列番号48に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号48に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号48に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は配列番号41のアミノ酸を含み、VLB2領域は配列番号48のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗HER2二重特異性抗原結合分子(例えば、4D5 Y55E.H91A.N54E.D98T-1Fab-IgG TDB)である。
【0187】
別の実施形態において、二重特異性抗原結合分子は、第2及び/又は第3の抗原結合部分の軽鎖の残基Y55及びH91、並びに重鎖の残基N54、D98、及びY102における変異(例えばY55E、H91A、N54E、D98T、及びY102)を特徴とし得る。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、又は、(c)配列番号43のアミノ酸配列を含むHVR-H3の1つ、2つ、又は3つ全てを含むVHB1領域を特徴とする。いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号44に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号44に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号44に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号44のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB1領域は、以下のHVR:(a)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、又は、(c)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VLB1領域は、配列番号48に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号48に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号48に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VLB1領域は、配列番号48のアミノ酸配列を含む。
【0188】
いくつかの実施形態において、VHB1は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号43のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB1は、以下のHVR:(d)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号44に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号44に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号44に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み、VLB1領域は、配列番号48に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号48に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号48に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VHB1領域は配列番号41のアミノ酸を含み、VLB1領域は配列番号48のアミノ酸配列を含む。
【0189】
いくつかの実施形態では、VHB2領域は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、又は、(c)配列番号43のアミノ酸配列を含むHVR-H3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号44に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号44に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号44に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号44のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、以下のHVR:(a)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、又は、(c)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、配列番号48に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号48に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号48に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、配列番号48のアミノ酸配列を含む。
【0190】
いくつかの実施形態では、VHB2は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号43のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB2は、以下のHVR:(d)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号44に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号44に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号44に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み、VLB2領域は、配列番号48に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号48に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号48に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号48に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は配列番号44のアミノ酸を含み、VLB2領域は配列番号48のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗HER2二重特異性抗原結合分子(例えば、4D5 Y55E.H91A.N54E.D98T.Y102V-1Fab-IgG TDB)である。
【0191】
別の実施形態において、二重特異性抗原結合分子は、第2及び/又は第3の抗原結合部分の軽鎖の残基N30、Y55及びH91、並びに重鎖の残基N54及びD98における変異(例えばN30S、Y55E、H91A、N54E、及びD98T)を特徴とし得る。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、又は、(c)配列番号37のアミノ酸配列を含むHVR-H3の1つ、2つ、又は3つ全てを含むVHB1領域を特徴とする。いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号41に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号41に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号41に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号41のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB1領域は、以下のHVR:(a)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、又は、(c)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VLB1領域は、配列番号49に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号49に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号49に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VLB1領域は、配列番号49のアミノ酸配列を含む。
【0192】
いくつかの実施形態において、VHB1は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号37のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB1は、以下のHVR:(d)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号41に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号41に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号41に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み、VLB1領域は、配列番号49に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号49に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号49に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VHB1領域は配列番号41のアミノ酸を含み、VLB1領域は配列番号49のアミノ酸配列を含む。
【0193】
いくつかの実施形態では、VHB2領域は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、又は、(c)配列番号37のアミノ酸配列を含むHVR-H3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号41に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号41に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号41に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号41のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、以下のHVR:(a)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、又は、(c)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、配列番号49に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号49に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号49に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、配列番号49のアミノ酸配列を含む。
【0194】
いくつかの実施形態では、VHB2は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号37のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB2は、以下のHVR:(d)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号41に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号41に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号41に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号41に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み、VLB2領域は、配列番号49に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号49に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号49に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は配列番号41のアミノ酸を含み、VLB2領域は配列番号49のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗HER2二重特異性抗原結合分子(例えば、4D5 N30S.Y55E.H91A.N54E.D98T-1Fab-IgG TDB)である。
【0195】
別の実施形態において、二重特異性抗原結合分子は、第2及び/又は第3の抗原結合部分の軽鎖の残基N30、Y55及びH91、並びに重鎖の残基N54、D98、及びY102における変異(例えばN30S、Y55E、H91A、N54E、D98T、及びY102V)を特徴とし得る。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、又は、(c)配列番号43のアミノ酸配列を含むHVR-H3の1つ、2つ、又は3つ全てを含むVHB1領域を特徴とする。いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号44に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号44に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号44に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号44のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB1領域は、以下のHVR:(a)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、又は、(c)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VLB1領域は、配列番号49に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号49に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号49に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VLB1領域は、配列番号49のアミノ酸配列を含む。
【0196】
いくつかの実施形態において、VHB1は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号43のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB1は、以下のHVR:(d)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB1領域は、配列番号44に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号44に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号44に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み、VLB1領域は、配列番号49に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号49に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号49に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、VHB1領域は配列番号44のアミノ酸を含み、VLB1領域は配列番号49のアミノ酸配列を含む。
【0197】
いくつかの実施形態では、VHB2領域は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、又は、(c)配列番号43のアミノ酸配列を含むHVR-H3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号44に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号44に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号44に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号44のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、以下のHVR:(a)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、又は、(c)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3の1つ、2つ、又は3つ全てを含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、配列番号49に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号49に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号49に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLB2領域は、配列番号49のアミノ酸配列を含む。
【0198】
いくつかの実施形態では、VHB2は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号43のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB2は、以下のHVR:(d)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は、配列番号44に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号44に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号44に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号44に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み、VLB2領域は、配列番号49に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号49に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号49に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号49に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHB2領域は配列番号44のアミノ酸を含み、VLB2領域は配列番号49のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗HER2二重特異性抗原結合分子(例えば、4D5 N30S.Y55E.H91A.N54E.D98T.Y102V-1Fab-IgG TDB)である。
【0199】
いくつかの実施形態では、VHB1及び/又はVHB2は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB1及び/又はVLB2は、以下のHVR:(d)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号30のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB1及び/又はVHB2は、配列番号30に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、又は配列番号30の配列を含み、VLB1及び/又はVLB2は、配列番号31に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、又は配列番号31の配列を含む。
【0200】
いくつかの実施形態では、VHB1及び/又はVHB2は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号34のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB1及び/又はVLB2は、以下のHVR:(d)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB1及び/又はVHB2は、配列番号35に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、又は配列番号35の配列を含み、VLB1及び/又はVLB2は、配列番号25に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、又は配列番号25の配列を含む。
【0201】
いくつかの実施形態では、VHB1及び/又はVHB2は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号37のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB1及び/又はVLB2は、以下のHVR:(d)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB1及び/又はVHB2は、配列番号39に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、又は配列番号39の配列を含み、VLB1及び/又はVLB2は、配列番号40に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、又は配列番号40の配列を含む。
【0202】
いくつかの実施形態では、VHB1及び/又はVHB2は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号37のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB1及び/又はVLB2は、以下のHVR:(d)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB1及び/又はVHB2は、配列番号41に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、又は配列番号41の配列を含み、VLB1及び/又はVLB2は、配列番号42に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、又は配列番号42の配列を含む。
【0203】
いくつかの実施形態では、VHB1及び/又はVHB2は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号37のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB1及び/又はVLB2は、以下のHVR:(d)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB1及び/又はVHB2は、配列番号41に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、又は配列番号41の配列を含み、VLB1及び/又はVLB2は、配列番号27に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、又は配列番号27の配列を含む。
【0204】
いくつかの実施形態では、VHB1及び/又はVHB2は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号43のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB1及び/又はVLB2は、以下のHVR:(d)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB1及び/又はVHB2は、配列番号44に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、又は配列番号44の配列を含み、VLB1及び/又はVLB2は、配列番号45に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、又は配列番号45の配列を含む。
【0205】
いくつかの実施形態では、VHB1及び/又はVHB2は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB1及び/又はVLB2は、以下のHVR:(d)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB1及び/又はVHB2は、配列番号24に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、又は配列番号24の配列を含み、VLB1及び/又はVLB2は、配列番号40に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、又は配列番号40の配列を含む。
【0206】
いくつかの実施形態では、VHB1及び/又はVHB2は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号37のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB1及び/又はVLB2は、以下のHVR:(d)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB1及び/又はVHB2は、配列番号41に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、又は配列番号41の配列を含み、VLB1及び/又はVLB2は、配列番号25に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、又は配列番号25の配列を含む。
【0207】
いくつかの実施形態では、VHB1及び/又はVHB2は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号34のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB1及び/又はVLB2は、以下のHVR:(d)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB1及び/又はVHB2は、配列番号46に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、又は配列番号46の配列を含み、VLB1及び/又はVLB2は、配列番号40に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、又は配列番号40の配列を含む。
【0208】
いくつかの実施形態では、VHB1及び/又はVHB2は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB1及び/又はVLB2は、以下のHVR:(d)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB1及び/又はVHB2は、配列番号47に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、又は配列番号47の配列を含み、VLB1及び/又はVLB2は、配列番号40に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、又は配列番号40の配列を含む。
【0209】
いくつかの実施形態では、VHB1及び/又はVHB2は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB1及び/又はVLB2は、以下のHVR:(d)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB1及び/又はVHB2は、配列番号30に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、又は配列番号30の配列を含み、VLB1及び/又はVLB2は、配列番号25に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、又は配列番号25の配列を含む。
【0210】
いくつかの実施形態では、VHB1及び/又はVHB2は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB1及び/又はVLB2は、以下のHVR:(d)配列番号53のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB1及び/又はVHB2は、配列番号24に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、又は配列番号24の配列を含み、VLB1及び/又はVLB2は、配列番号54に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、又は配列番号54の配列を含む。
【0211】
いくつかの実施形態では、VHB1及び/又はVHB2は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB1及び/又はVLB2は、以下のHVR:(d)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB1及び/又はVHB2は、配列番号24に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、又は配列番号24の配列を含み、VLB1及び/又はVLB2は、配列番号48に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、又は配列番号48の配列を含む。
【0212】
いくつかの実施形態では、VHB1及び/又はVHB2は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB1及び/又はVLB2は、以下のHVR:(d)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB1及び/又はVHB2は、配列番号33に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、又は配列番号33の配列を含み、VLB1及び/又はVLB2は、配列番号25に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、又は配列番号25の配列を含む。
【0213】
いくつかの実施形態では、VHB1及び/又はVHB2は、以下のHVR:(a)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び、(c)配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含み、VLB1及び/又はVLB2は、以下のHVR:(d)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、VHB1及び/又はVHB2は、配列番号33に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、又は配列番号33の配列を含み、VLB1及び/又はVLB2は、配列番号31に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、又は配列番号31の配列を含む。
【0214】
別の態様において、本発明は、一価のアーム及び二価のアームを含む二重特異性抗原結合分子であって、(a)一価のアームがFabを含み、FabのC末端が第1のFcサブユニットのN末端に融合しており、Fabが以下のHVR:(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(iv)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(v)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び、(vi)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含み、(b)二価のアームがFabB1及びFabB2を含み、FabB2のC末端がFabB1のN末端に融合しており、FabB1のC末端が第2のFcサブユニットのN末端に融合しており、FabB1及びFabB2がそれぞれ、以下のHVR:(i)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(iii)配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(iv)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(v)配列番号15のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び、(vi)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含み、かつ、(c)第1のFcサブユニットが第2のFcサブユニットと会合してFcドメインを形成する、二重特異性抗原結合分子を特徴とする。いくつかの実施形態では、(a)FabはVH領域及びVL領域を含み、VH領域は、配列番号7に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VL領域は、配列番号8に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(b)FabB1はVHB1領域及びVLB1領域を含み、VHB1領域は、配列番号17に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLB1領域は、配列番号18に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(c)FabB2はVHB2領域及びVLB2領域を含み、VHB2領域は、配列番号17に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLB2領域は、配列番号18に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、(a)VH領域は配列番号7のアミノ酸配列を含み、VL領域は配列番号8のアミノ酸配列を含み、(b)VHB1領域は配列番号17のアミノ酸配列を含み、VLB1領域は配列番号18のアミノ酸配列を含み、(c)VHB2領域は配列番号17のアミノ酸配列を含み、VLB2領域は配列番号18のアミノ酸配列を含む。
【0215】
別の態様において、本発明は、一価のアーム及び二価のアームを含む二重特異性抗原結合分子であって、(a)一価のアームがFabを含み、FabのC末端が第1のFcサブユニットのN末端に融合しており、Fabが以下のHVR:(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(iv)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(v)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び、(vi)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含み、(b)二価のアームがFabB1及びFabB2を含み、FabB2のC末端がFabB1のN末端に融合しており、FabB1のC末端が第2のFcサブユニットのN末端に融合しており、FabB1及びFabB2がそれぞれ、以下のHVR:(i)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(iii)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(iv)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(v)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び、(vi)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含み、かつ、(c)第1のFcサブユニットが第2のFcサブユニットと会合してFcドメインを形成する、二重特異性抗原結合分子を提供する。いくつかの実施形態では、(a)FabはVH領域及びVL領域を含み、VH領域は、配列番号7に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VL領域は、配列番号8に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(b)FabB1はVHB1領域及びVLB1領域を含み、VHB1領域は、配列番号24に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLB1領域は、配列番号27に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(c)FabB2はVHB2領域及びVLB2領域を含み、VHB2領域は、配列番号24に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLB2領域は、配列番号27に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、(a)VH領域は配列番号7のアミノ酸配列を含み、VL領域は配列番号8のアミノ酸配列を含み、(b)VHB1領域は配列番号24のアミノ酸配列を含み、VLB1領域は配列番号27のアミノ酸配列を含み、(c)VHB2領域は配列番号24のアミノ酸配列を含み、VLB2領域は配列番号27のアミノ酸配列を含む。
【0216】
更に別の態様では、本発明は、一価のアーム及び二価のアームを含む二重特異性抗原結合分子であって、(a)一価のアームがFabを含み、FabのC末端が第1のFcサブユニットのN末端に融合しており、Fabが以下のHVR:(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(iv)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(v)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び、(vi)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含み、(b)二価のアームがFabB1及びFabB2を含み、FabB2のC末端がFabB1のN末端に融合しており、FabB1のC末端が第2のFcサブユニットのN末端に融合しており、FabB1及びFabB2がそれぞれ、以下のHVR:(i)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号19のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(iii)配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(iv)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(v)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び、(vi)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含み、かつ、(c)第1のFcサブユニットが第2のFcサブユニットと会合してFcドメインを形成する、二重特異性抗原結合分子を特徴とする。いくつかの実施形態では、(a)FabはVH領域及びVL領域を含み、VH領域は、配列番号7に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VL領域は、配列番号8に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(b)FabB1はVHB1領域及びVLB1領域を含み、VHB1領域は、配列番号33に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLB1領域は、配列番号25に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(c)FabB2はVHB2領域及びVLB2領域を含み、VHB2領域は、配列番号33に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLB2領域は、配列番号25に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、(a)VH領域は配列番号7のアミノ酸配列を含み、VL領域は配列番号8のアミノ酸配列を含み、(b)VHB1領域は配列番号33のアミノ酸配列を含み、VLB1領域は配列番号25のアミノ酸配列を含み、(c)VHB2領域は配列番号33のアミノ酸配列を含み、VLB2領域は配列番号25のアミノ酸配列を含む。
【0217】
別の態様において、本発明は、一価のアーム及び二価のアームを含む二重特異性抗原結合分子であって、(a)一価のアームがFabを含み、FabのC末端が第1のFcサブユニットのN末端に融合しており、Fabが以下のHVR:(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(iv)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(v)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び、(vi)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含み、(b)二価のアームがFabB1及びFabB2を含み、FabB2のC末端がFabB1のN末端に融合しており、FabB1のC末端が第2のFcサブユニットのN末端に融合しており、FabB1及びFabB2がそれぞれ、以下のHVR:(i)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(iii)配列番号37のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(iv)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(v)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び、(vi)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含み、かつ、(c)第1のFcサブユニットが第2のFcサブユニットと会合してFcドメインを形成する、二重特異性抗原結合分子を特徴とする。いくつかの実施形態では、(a)FabはVH領域及びVL領域を含み、VH領域は、配列番号7に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VL領域は、配列番号8に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(b)FabB1はVHB1領域及びVLB1領域を含み、VHB1領域は、配列番号41に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLB1領域は、配列番号48に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(c)FabB2はVHB2領域及びVLB2領域を含み、VHB2領域は、配列番号41に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLB2領域は、配列番号48に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、(a)VH領域は配列番号7のアミノ酸配列を含み、VL領域は配列番号8のアミノ酸配列を含み、(b)VHB1領域は配列番号41のアミノ酸配列を含み、VLB1領域は配列番号48のアミノ酸配列を含み、(c)VHB2領域は配列番号41のアミノ酸配列を含み、VLB2領域は配列番号48のアミノ酸配列を含む。
【0218】
別の態様において、本発明は、一価のアーム及び二価のアームを含む二重特異性抗原結合分子であって、(a)一価のアームがFabを含み、FabのC末端が第1のFcサブユニットのN末端に融合しており、Fabが以下のHVR:(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(iv)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(v)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び、(vi)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含み、(b)二価のアームがFabB1及びFabB2を含み、FabB2のC末端がFabB1のN末端に融合しており、FabB1のC末端が第2のFcサブユニットのN末端に融合しており、FabB1及びFabB2がそれぞれ、以下のHVR:(i)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(iii)配列番号43のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(iv)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(v)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び、(vi)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含み、かつ、(c)第1のFcサブユニットが第2のFcサブユニットと会合してFcドメインを形成する、二重特異性抗原結合分子を特徴とする。いくつかの実施形態では、(a)FabはVH領域及びVL領域を含み、VH領域は、配列番号7に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VL領域は、配列番号8に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(b)FabB1はVHB1領域及びVLB1領域を含み、VHB1領域は、配列番号44に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLB1領域は、配列番号48に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(c)FabB2はVHB2領域及びVLB2領域を含み、VHB2領域は、配列番号44に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLB2領域は、配列番号48に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、(a)VH領域は配列番号7のアミノ酸配列を含み、VL領域は配列番号8のアミノ酸配列を含み、(b)VHB1領域は配列番号44のアミノ酸配列を含み、VLB1領域は配列番号48のアミノ酸配列を含み、(c)VHB2領域は配列番号44のアミノ酸配列を含み、VLB2領域は配列番号48のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗CD3/HER2二重特異性抗原結合分子(例えば、抗CD3/HER2 1Fab-IgG TDB、例えば、40G5c CD3結合ドメイン、及び2つの4D5 Y55E.H91A.N54E.D98T.Y102V HER2結合ドメインを有する抗CD3/HER2 1Fab-IgG TDB)である。
【0219】
更に別の態様において、本発明は、一価のアーム及び二価のアームを含む二重特異性抗原結合分子であって、(a)一価のアームがFabを含み、FabのC末端が第1のFcサブユニットのN末端に融合しており、Fabが以下のHVR:(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(iv)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(v)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び、(vi)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含み、(b)二価のアームがFabB1及びFabB2を含み、FabB2のC末端がFabB1のN末端に融合しており、FabB1のC末端が第2のFcサブユニットのN末端に融合しており、FabB1及びFabB2がそれぞれ、以下のHVR:(i)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(iii)配列番号37のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(iv)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(v)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び、(vi)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含み、かつ、(c)第1のFcサブユニットが第2のFcサブユニットと会合してFcドメインを形成する、二重特異性抗原結合分子を提供する。いくつかの実施形態では、(a)FabはVH領域及びVL領域を含み、VH領域は、配列番号7に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VL領域は、配列番号8に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(b)FabB1はVHB1領域及びVLB1領域を含み、VHB1領域は、配列番号41に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLB1領域は、配列番号49に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(c)FabB2はVHB2領域及びVLB2領域を含み、VHB2領域は、配列番号41に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLB2領域は、配列番号49に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、(a)VH領域は配列番号7のアミノ酸配列を含み、VL領域は配列番号8のアミノ酸配列を含み、(b)VHB1領域は配列番号41のアミノ酸配列を含み、VLB1領域は配列番号49のアミノ酸配列を含み、(c)VHB2領域は配列番号41のアミノ酸配列を含み、VLB2領域は配列番号49のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗CD3/HER2二重特異性抗原結合分子(例えば、抗CD3/HER2 1Fab-IgG TDB、例えば、40G5c CD3結合ドメイン、及び2つの4D5 N30S.Y55E.H91A.N54E.D98T HER2結合ドメインを有する抗CD3/HER2 1Fab-IgG TDB)である。
【0220】
別の態様において、本発明は、一価のアーム及び二価のアームを含む二重特異性抗原結合分子であって、(a)一価のアームがFabを含み、FabのC末端が第1のFcサブユニットのN末端に融合しており、Fabが以下のHVR:(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(iv)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(v)配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び、(vi)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含み、(b)二価のアームがFabB1及びFabB2を含み、FabB2のC末端がFabB1のN末端に融合しており、FabB1のC末端が第2のFcサブユニットのN末端に融合しており、FabB1及びFabB2がそれぞれ、以下のHVR:(i)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(iii)配列番号43のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(iv)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(v)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び、(vi)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含み、かつ、(c)第1のFcサブユニットが第2のFcサブユニットと会合してFcドメインを形成する、二重特異性抗原結合分子を特徴とする。いくつかの実施形態では、(a)FabはVH領域及びVL領域を含み、VH領域は、配列番号7に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VL領域は、配列番号8に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(b)FabB1はVHB1領域及びVLB1領域を含み、VHB1領域は、配列番号44に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLB1領域は、配列番号49に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、(c)FabB2はVHB2領域及びVLB2領域を含み、VHB2領域は、配列番号44に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLB2領域は、配列番号49に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、(a)VH領域は配列番号7のアミノ酸配列を含み、VL領域は配列番号8のアミノ酸配列を含み、(b)VHB1領域は配列番号44のアミノ酸配列を含み、VLB1領域は配列番号49のアミノ酸配列を含み、(c)VHB2領域は配列番号44のアミノ酸配列を含み、VLB2領域は配列番号49のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、抗CD3/HER2二重特異性抗原結合分子(例えば、抗CD3/HER2 1Fab-IgG TDB、例えば、40G5c CD3結合ドメイン、及び2つの4D5 N30S.Y55E.H91A.N54E.D98T.Y102V HER2結合ドメインを有する抗CD3/HER2 1Fab-IgG TDB)である。
第2及び第3の抗原結合部分を融合するペプチドリンカー
【0221】
いくつかの実施形態では、本発明の二重特異性抗原結合分子は、第3の抗原結合部分のC末端が、ペプチドリンカーを介して第2の抗原結合部分のN末端に融合している構造を特徴とする。ペプチドリンカーは、5~20アミノ酸長(例えば、5~10、10~15、又は15~20、例えば5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20アミノ酸長)であることができる。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、可変重鎖ヒンジ領域の天然アミノ酸配列(例えばDKTHT;配列番号50)である。あるいは、いくつかの実施形態において、ペプチドリンカーはGSGリンカー(配列番号51)を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、GSGリンカー及びヒンジ領域(例えば配列番号52)を含む。
【0222】
SGリンカーを含む、及び含まない、第2及び第3の抗原結合部分重鎖を含む例示的な重鎖ポリペプチドのアミノ酸配列を、表2に示す。
【0223】
【0224】
特に、本発明の二重特異性抗原結合分子は、配列番号50のアミノ酸配列を含むペプチドリンカーを特徴とし得る。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、配列番号55に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号55に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号55に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号55に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号55に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号55に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。別の場合において、抗原結合分子は、配列番号59に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号59に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号59に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号59に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号59に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号59に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。あるいは、抗原結合分子は、配列番号63に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号63に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号63に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号63に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号63に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号63に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、配列番号83に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号83に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号83に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号83に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号83に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号83に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。別の場合において、抗原結合分子は、配列番号85に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号85に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号85に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号85に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号85に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号85に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、配列番号87に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号87に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号87に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号87に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号87に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号87に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、配列番号89に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号89に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号89に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号89に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号89に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号89に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。
【0225】
別の場合において、ペプチドリンカーは配列番号51のアミノ酸配列を含む。抗原結合分子は、配列番号56に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号56に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号56に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号56に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号56に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号56に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、配列番号60に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号60に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号60に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号60に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号60に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号60に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、配列番号64に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号64に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号64に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号64に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号64に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号64に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、配列番号84に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号84に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号84に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号84に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号84に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号84に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、配列番号86に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号86に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号86に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号86に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号86に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号86に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、配列番号88に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号88に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号88に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号88に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号88に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号88に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、配列番号90に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、配列番号90に対して少なくとも96%の配列同一性、配列番号90に対して少なくとも97%の配列同一性、配列番号90に対して少なくとも98%の配列同一性、配列番号90に対して少なくとも99%の配列同一性、又は配列番号90に対して100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。
Fcドメイン
【0226】
本発明の二重特異性抗原結合分子は、Fcドメインを特徴とし得る。Fcドメインは、IgG Fcドメイン(例えばIgG又はIgG Fcドメイン)であることができる。例えば、FcドメインはヒトFcドメインであることができる。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、Fc受容体への結合を低下させる、かつ/又はエフェクター機能を低下させる1つ以上のアミノ酸置換を含む。例えば、いくつかの実施形態では、Fc受容体への結合を低下させる、かつ/又はエフェクター機能を低下させる1つ以上のアミノ酸置換は、L234、L235、及びP329からなる群から選択される1つ以上の位置におけるものである(例えば、第1のFcサブユニット及び第2のFcサブユニットはそれぞれ、L234A、L235A、及びP329Gのアミノ酸置換を含む)。Fc受容体は例えば、Fcγ受容体であることができる。したがって、本発明の二重特異性抗原結合分子は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を低下させるように構成することができる。
【0227】
場合によっては、Fcドメインは、第1のFcサブユニットの第2のFcサブユニットとの会合を促進するように構成された改変を含む。二重特異性抗体の「ノブインホール」工学的設計を利用して、ノブを含む第1アーム、及び第1アームのノブが結合することができるホールを含む第2アームを生成することができる。本発明の多重特異性抗体のノブは、一実施形態において、一価のアーム(例えば抗CD3アーム)であることができる。あるいは、本発明の多重特異性抗体のノブは二価のアーム(例えば抗腫瘍アーム)であることができる。本発明の多重特異性抗体のホールは、一実施形態において、一価のアーム(例えば抗CD3アーム)であることができる。あるいは、本発明の多重特異性抗体のホールは二価のアーム(例えば抗腫瘍アーム)であることができる。二重特異性抗体は、免疫グロブリンクロスオーバー(Fabドメイン交換又はCrossMabフォーマットとしても知られている)技術を使用してもまた改変することができる(例えば、国際公開第2009/080253号;Schaefer et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,108:11187-11192(2011)を参照のこと)。二重特異性抗体は、抗体Fcヘテロ二量体分子を作製するための、改変静電ステアリング効果(国際公開第2009/089004A1号);2つ以上の抗体若しくは断片の架橋(例えば、米国特許第4,676,980号、及びBrennan et al.,Science,229:81(1985)を参照のこと);又は、ロイシンジッパーを使用して二重特異性抗体を産生すること(例えば、Kostelny et al.,J.Immunol.,148(5):1547-1553(1992)を参照のこと)によってもまた作製することができる。
【0228】
第2のFcサブユニットのCH3ドメインにおけるアミノ酸残基を、より大きなサイズの側鎖体積を有するアミノ酸残基で置き換えることにより、第1のFcサブユニットのCH3ドメイン内の空洞(例えば、ホール)に位置可能な第2のFcサブユニットのCH3ドメイン内に突出部(例えば、ノブ)を生成することができ、第1のFcサブユニットのCH3ドメインにおけるアミノ酸残基を、より小さなサイズの側鎖体積を有するアミノ酸残基で置き換えることにより、第2のFcサブユニットのCH3ドメイン内の突出部(例えば、ノブ)に位置可能な第1のFcサブユニットのCH3ドメイン内に、空洞(例えば、ホール)を生成することができる。いくつかの実施形態では、第2のFcサブユニットのCH3ドメインは、T366のアミノ酸置換を含み、第1のFcサブユニットのCH3ドメインは、T366、L368、及び/又はY407の1つ、2つ、又は3つ全てにおけるアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、第2のFcサブユニットのCH3ドメインはT366Wのアミノ酸置換を含み、第1のFcサブユニットのCH3ドメインは、T366S、L368A、及び/又はY407Vの1つ、2つ、又は3つ全てのアミノ酸置換を含む。
【0229】
本明細書で列挙される例のいずれかにおいて使用するための、本明細書で記載される二重特異性抗原結合分子又は他の抗体は、以下のセクション1~6に記載する特徴のいずれかを、単独で、又は組み合わせて有することができることが、明示的に企図されている。
【0230】
1. 抗体親和性
特定の場合において、二重特異性抗原結合分子は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、又は≦0.001nM(例えば10-8M以下、例えば10-8~10-13M、例えば10-9~10-13M)の平衡解離定数(K)を有する。
【0231】
一例において、Kは、放射標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される。一例において、RIAは、目的の抗体及びその抗原のFabバージョンを用いて実施される。例えば、抗原に対するFabの溶液結合親和性は、非標識抗原の滴定系の存在下で、最小濃度の(125I)標識抗原によりFabを平衡化し、次いで、結合した抗原を抗Fab抗体でコーティングしたプレートで捕捉することにより測定する(例えばChen et al.,J.Mol.Biol.293:865-881(1999)を参照のこと)。アッセイのための条件を確立するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を、50mMの炭酸塩(pH9.6)中5μg/mlの捕捉用抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩コーティングし、続いて、室温(約23℃)で2~5時間、PBS中2%(w/v)のウシ血清アルブミンによってブロッキングする。非吸着性プレート(Nunc番号269620)中、100pM又は26pMの[125I]-抗原を、目的とされるFabの段階希釈液と混合する(例えば、Presta et al.,Cancer Res.57:4593-4599(1997)における抗VEGF抗体Fab-12の評価と一貫する)。次に、目的とするFabを一晩インキュベートするが、このインキュベーションは、平衡が達成されることを確実にするために、より長い期間(例えば、約65時間)継続し得る。その後、混合物を、室温でのインキュベーション(例えば、1時間)のため、捕捉プレートに移す。次に、溶液を除去し、プレートを、PBS中0.1%のポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))で8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μL/ウェルのシンチラント(MICROSCINT-20(商標);Packard)を添加し、プレートを10分間TOPCOUNT(商標)ガンマカウンター(Packard)で計数する。最大結合の20%以下をもたらす各Fabの濃度を、競合結合アッセイに使用するために選択する。
【0232】
別の一例によると、Kは、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定される。例えば、BIACORE(登録商標)-2000又はBIACORE(登録商標)-3000(BIACORE(登録商標),Inc.,Piscataway,NJ)を使用するアッセイは、固定化抗原CM5チップを約10応答単位(RU)で用いて25℃で行われる。1つの事例では、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIACORE(登録商標),Inc.)は、供給業者の指示に従って、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミドヒドロクロリド(EDC)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いて活性化される。抗原をpH4.8の10mMの酢酸ナトリウムによって5μg/mL(約0.2μM)に希釈した後、5μL/分の流量で注射し、カップリングされたタンパク質の約10応答単位(RU)を達成する。抗原の注入後、1Mのエタノールアミンを注入して、未反応の基をブロックする。動態測定のため、Fabの2倍連続希釈物(0.78nMから500nM)を、約25μL/分の流量で25℃で0.05%のポリソルベート20(TWEEN-20(商標))界面活性剤(PBST)を有するPBS中に注射する。会合速度(kon)及び解離速度(koff)を、単純な1対1ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)Evaluation Softwareバージョン3.2版)を使用して、会合センサーグラム及び解離センサーグラムを同時に適合することによって、計算する。平衡解離定数(K)は、koff/kon比として算出される。例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865-881(1999)を参照のこと。上記表面プラズモン共鳴アッセイによるオンレートが10-1-1を超える場合、オンレートは、ストップトフローを備えた分光光度計(Aviv Instruments)、又は撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM-AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)などの分光計で測定される場合に、増加する抗原濃度の存在下で、25℃で、PBS中20nMの抗-抗原抗体(Fab型)(pH7.2)の蛍光発光強度(励起=295nm;発光=340nm、16nm帯域通過)の増加又は減少を測定する蛍光消光技法を使用して決定することができる。
【0233】
2. 抗体断片
特定の場合において、本明細書において提供する二重特異性抗原結合分子は、1つ以上の抗体断片を含む。抗体断片としては、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)、Fv、及びscFv断片、並びに以下に記載する他の断片が挙げられるがこれらに限定されない。特定の抗体断片の総説としては、Hudson et al.,Nat Med.9:129-134(2003)を参照のこと。scFv断片の参照には、例えばThe Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag,New York),pp.269-315(1994)中のPluckthunを参照のこと;また、国際公開第93/16185号;並びに米国特許第5,571,894号及び同第5,587,458号も参照のこと。サルベージ受容体結合エピトープを含み、インビボ半減期が増加したFab及びF(ab’)の議論には、米国特許第5,869,046号を参照のこと。
【0234】
二重特異性抗体は、二価であっても又は二重特異性であってもよい、2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、欧州特許出願公開第404,097号、国際公開第1993/01161号、Hudson et al.,Nat Med.9:129-134(2003)及びHollinger et al.,Proc Natl Acad Sci USA 90,6444-6448(1993)を参照のこと。三重特異性抗体及び四重特異性抗体については、Hudson et al,Nat.Med.9:129-134(2003)にもまた記載されている。
【0235】
単一ドメイン抗体とは、抗体の重鎖可変領域の全部若しくは一部、又は軽鎖可変領域の全部若しくは一部を含む抗体断片である。特定の場合において、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,MA,例えば、米国特許第6,248,516号を参照のこと)。
【0236】
抗体断片は、本明細書に記載されるように、組み換え宿主細胞(例えばE.coli又はファージ)による、インタクトな抗体のタンパク分解、及び産生を含むがこれらに限定されない各種技術により製造可能である。
【0237】
3. キメラ抗体及びヒト化抗体
特定の場合において、本明細書において提供する二重特異性抗原結合分子はキメラ抗体である。ある種のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号;及びMorrison et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984)に開示されている。一例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、又は非ヒト霊長類、例えばサルに由来する可変領域)及びヒト定常領域を含む。更なる例において、キメラ抗体は、クラス又はサブクラスが親抗体のそれらから変更している「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体には、その抗原結合断片が含まれる。
【0238】
特定の場合において、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。一般的に、非ヒト抗体をヒト化すると、ヒトに対する免疫原性は低下するが、親非ヒト抗体の特異性及び親和性は維持される。通常、ヒト化抗体は、HVR、例えばCDR(又はその一部)が非ヒト抗体に由来する1つ以上の可変領域を含み、FR(又はその一部)はヒト抗体配列に由来する。ヒト化抗体は所望により、ヒト定常領域の少なくとも一部もまた含む。いくつかの場合において、ヒト化抗体のFR残基の中には、例えば、抗体の特異性又は親和性を維持又は向上するために対応する非ヒト抗体(例えばHVR残基が由来する抗体)で置換されるものもある。
【0239】
ヒト化抗体及びその作成方法は例えば、Almagro及びFransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)で確認され、更に、例えばRiechmann et al.,Nature 332:323-329(1988);Queen et al.,Proc.Natl Acad.Sci.USA 86:10029-10033(1989);米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号、及び同第7,087,409号;Kashmiri et al.,Methods 36:25-34(2005)(特異性決定領域(SDR)グラフトに関する記述);Padlan,Mol Immunol.28:489-498(1991)(「表面再構成」の記述);Dall’Acqua et al.,Methods 36:43-60(2005)(「FR再構成」の記述);並びにOsbourn et al.,Methods 36:61-68(2005)及びKlimka et al.,Br.J.Cancer,83:252-260(2000)(FR構築のための「誘導選択」アプローチの記述)に詳しく記載されている。
【0240】
ヒト化に用いるヒトフレームワーク領域としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:「ベストフィット」法を用いて選択したフレームワーク領域(例えば、Sims et al.J.Immunol.151:2296(1993)を参照);重鎖又は軽鎖可変領域の特定の亜型のヒト抗体コンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992);及びPresta et al.J.Immunol.,151:2623(1993)を参照);ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域又はヒト生殖細胞系フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)を参照);並びにFRライブラリのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(例えば、Baca et al.,J.Biol.Chem.272:10678-10684(1997)及びRosok et al.,J Biol.Chem.271:22611-22618(1996)を参照)。
【0241】
4. ヒト抗体
特定の場合において、本明細書において提供する二重特異性抗原結合分子はヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野において既知である様々な技術を使用して産生することができる。ヒト抗体は通常、van Dijk及びvan de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.5:368-74(2001)及びLonberg,Curr.Opin.Immunol.20:450-459(2008)に記載されている。
【0242】
抗原投与に対して応答するヒト可変領域を有する完全なヒト抗体又は完全な抗体を産生するために修飾したトランスジェニック動物に免疫原を投与することにより、ヒト抗体を調製してよい。そのような動物は通常、内在性イムノグロブリン遺伝子座を置き換える、又は染色体外に存在する、若しくは動物の染色体中に無作為に導入したヒトイムノグロブリン遺伝子座の全部又は一部を含有する。そのようなトランスジェニックマウスでは、内在性免疫グロブリン遺伝子座は通常不活性である。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の概説については、Lonberg,Nat.Biotech.23:1117-1125(2005)を参照のこと。例えば、XENOMOUSE(商標)技術について記載した米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号;HUMAB(登録商標)技術について記載した米国特許第5,770,429号;K-M MOUSE(登録商標)技術について記載した米国特許第7,041,870号;並びにVELOCIMOUSE(登録商標)技術について記載した米国特許出願公開第2007/0061900号もまた参照のこと。そのような動物により産生された完全な抗体のヒト可変領域を、例えば異なるヒト定常領域を組み合わせることにより、更に修飾してよい。
【0243】
ヒト抗体はまた、ハイブリドーマに基づく方法によっても作製され得る。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株が説明されている。(例えば、Kozbor J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987);及びBoerner et al.,J.Immunol.,147:86(1991)を参照のこと。)ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されるヒト抗体はまた、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3562,2006にも記載されている。更なる方法としては、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の産生について記載)及びNi,Xiandai Mianyixue,26(4):265-268(2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマについて記載)に記載されるものが挙げられる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)はまた、Vollmers and Brandlein,Histology and Histopathology,20(3):927-937(2005)及びVollmers and Brandlein,Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185-91(2005)にも記載されている。
【0244】
ヒト抗体は、ヒト由来ファージディスプレイライブラリから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによっても生成され得る。次いで、そのような可変ドメイン配列は、所望のヒト定常ドメインと組み合わされてもよい。抗体ライブラリからヒト抗体を選択する技術について以下で説明する。
【0245】
5. ライブラリ由来抗体
本発明の二重特異性抗原結合分子を、所望の活性(1つ又は複数)を有する抗体に対するコンビナトリアルライブラリをスクリーニングすることにより単離することができる。例えば、ファージディスプレイライブラリを生成し、所望の結合特性を保有する抗体に関してそのようなライブラリをスクリーニングするための様々な方法が当該技術分野で公知である。そのような方法は例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2001)で確認され、例えば、McCafferty et al.,Nature 348:552-554;Clackson et al.,Nature 352:624-628(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1992);Marks and Bradbury,in Methods in Molecular Biology 248:161-175(Lo,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2003);Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299-310(2004);Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073-1093(2004);Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467-12472(2004);及びLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1-2):119-132(2004)で更に説明されている。
【0246】
ある種のファージディスプレイ法では、VH及びVL遺伝子のレパートリーはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により別々にクローニングされ、ファージライブラリ内で無作為に再結合され、次いでWinter et al.,Ann.Rev.Immunol,12:433-455(1994)に記載されているような、抗原結合ファージに対してスクリーニングすることが可能である。ファージは通常、一本鎖Fv(scFv)断片として、又はFab断片としてのいずれかで、抗体断片をディスプレイする。免疫化源からのライブラリは、ハイブリドーマの構築の必要なしに、免疫原に対して高親和性の抗体を付与する。あるいは、ナイーブなレパートリーを(例えばヒトから)クローニングして、Griffiths et al,EMBO J,12:725-734(1993)に記載するような任意の免疫付与を行わずに、単一源の抗体を、広範囲の非自己抗原及び自己抗原にすることができる。最後に、ナイーブライブラリはまた、Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381-388(1992)に記載されるように、幹細胞からの再配列されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、ランダム配列を含有するPCRプライマーを使用して高度可変CDR3領域をコードし、インビトロで再配列を遂行することによって、合成的に作製することができる。ヒト抗体ファージライブラリについて記載する特許公報としては、例えば:米国特許第5,750,373号、並びに米国特許出願公開第2005/0079574号、同第2005/0119455号、同第2005/0266000号、同第2007/0117126号、同第2007/0160598号、同第2007/0237764号、同第2007/0292936号、及び同第2009/0002360号が挙げられる。
【0247】
ヒト抗体ライブラリから単離した抗体又は抗体断片は、本明細書におけるヒト抗体又はヒト抗体断片とみなされる。
【0248】
6. 抗原結合分子バリアント
特定の場合において、本発明の二重特異性抗原結合分子のアミノ酸配列バリアントが企図されている。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的性質を改善することが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体をコードするヌクレオチド配列中に適正な修飾を導入することによって、又はペプチド合成によって調製されてもよい。そのような修飾は、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基の欠失、及び/又は挿入及び/又は置換を含む。最終構築物に到達するように、欠失、挿入、及び置換を任意に組み合わせてもよいが、但し、その最終構築物が、所望の特徴、例えば、抗原結合性を有することを条件とする。
【0249】
特定の実施形態において、本発明の二重特異性抗原結合分子は、正しい重/軽鎖対形成を容易にするための、VH/VL領域、及び/又はCH1/CL領域における、1つ以上の変更を含む。いくつかの実施形態では、本発明の二重特異性抗原結合分子は、二重特異性抗原結合分子の2つのアームのヘテロ二量体化を容易にするための、Fc領域内における1つ以上の変更を含む。VH/VL領域、CH1/CL領域、及び/又はFC領域におけるそのような変更は、その全体が参照として本明細書に組み込まれる、国際特許公開第2016/172485号に記載されている。
【0250】
A. 置換、挿入、及び欠失バリアント
特定の場合において、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗原結合部分バリアントが提供される。置換による変異誘発に関して目的とする部位には、HVR及びFRが含まれる。保存的置換は、表3において、「好ましい置換」の見出しの下に示される。より実質的な変化は、表3において、「例示的な置換」の見出しの下に提供され、またアミノ酸側鎖クラスを参照して以下に更に記載されるとおりである。アミノ酸置換は、目的の抗体中に導入され得、その産物は、所望の活性、例えば、保持/改善された抗原結合、減少した免疫原性、又は改善された抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)若しくは補体依存性細胞傷害(CDC)についてスクリーニングされ得る。
【0251】
【0252】
アミノ酸は、共通の側鎖特性に従ってグループ分けされてもよい。
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖の配向に影響を与える残基:Gly、Pro;又は
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0253】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴うことになる。
【0254】
ある種類の置換型バリアントは、親抗体(例えば、ヒト化抗体又はヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基を置換することを伴う。一般に、更なる研究のために選択される得られたバリアント(複数可)は、親抗体と比べて、特定の生物学的特性(例えば、親和性の増加及び/又は免疫原性の低減)における変更(例えば、改善)を有し、かつ/又は実質的に保持された親抗体の特定の生物学的特性を有することになる。例示的な置換型バリアントは、例えば、本明細書に記載の技術などのファージディスプレイに基づく親和性成熟技術を使用して簡便に生成され得る親和性成熟抗体である。要するに、1つ以上のHVR残基が変異され、バリアント抗体がファージにディスプレイされ、特定の生物活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。
【0255】
改変(例えば、置換)は、HVR中で、例えば、抗体親和性を改善するために行われてもよい。そのような改変は、HVR「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセス中に高頻度で変異を受けるコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury,Methods Mol.Biol.207:179-196(2008)を参照のこと)、及び/又は抗原と接触する残基内で行われ得、結果として得られるバリアントVH又はVLが結合親和性について試験される。二次ライブラリを構築し、それから再選択することによる親和性成熟が、例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,(2001))に記載されている。親和性成熟のいくつかの事例では、多様な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリング、又はオリゴヌクレオチド指向性変異誘発)のいずれかによって、成熟のために選択される可変遺伝子に多様性が導入される。次いで、二次ライブラリが創出される。次いで、このライブラリは、所望の親和性を有する任意の抗体変異体を特定するためにスクリーニングされる。多様性を導入するための別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4~6個の残基)をランダム化する、HVR指向性アプローチを含む。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異誘発又はモデリングを使用して、具体的に特定されてもよい。特に、CDR-H3及びCDR-L3が、しばしば標的化される。
【0256】
特定の場合において、置換、挿入、又は欠失は、そのような改変が抗体の抗原に結合する能力を実質的に低減させない限り、1つ以上のHVR内で生じ得る。例えば、結合親和性を実質的に低減させない保存的改変(例えば、本明細書に提供されるような保存的置換)が、HVR中で行われてもよい。そのような改変は、例えば、HVR内の抗原接触残基の外側であってもよい。上述のバリアントVH及びVL配列の特定の事例では、各HVRは、改変されていないか、又は1つ、2つ、又は3つ以下のアミノ酸置換を有するかのいずれかである。
【0257】
変異を標的とし得る抗体の残基又は領域の同定のための有用な方法は、Cunningham and Wells(1989)Science,244:1081-1085によって記載されるように、「アラニンスキャニング突然変異生成」と呼ばれる。この方法では、一残基又は一群の標的残基(例えば、Arg、Asp、His、Lys、及びGluなどの荷電残基)が特定され、中性又は負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニン又はポリアラニン)によって置き換えられて、抗体の抗原との相互作用が影響を受けたかどうかが決定される。更なる置換が、初期置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸位置に導入されてもよい。あるいは、又は加えて、抗体と抗原との間の接点を特定するための抗原-抗体複合体の結晶構造。そのような接触残基及び隣接残基は、置換の候補として標的とされるか、又は除去されてもよい。バリアントは、所望の特性を有するか否かを判定するためにスクリーニングされてもよい。
【0258】
アミノ酸配列挿入として、1個の残基から100個以上の残基を含むポリペプチドまでの長さ範囲のアミノ末端及び/又はカルボキシル末端の融合、並びに1個又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入が挙げられる。末端挿入の例として、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入バリアントとしては、酵素(例えば、ADEPTのための)又はポリペプチドへの抗体のN末端若しくはC末端の融合が挙げられ、これは抗体の血清半減期を増大させる。
【0259】
B. グリコシル化バリアント
特定の場合において、本発明の抗原結合分子を改変して、抗体がグリコシル化される度合いを増加又は低下させることができる。本発明の抗体へのグリコシル化部位の付加又は欠失は、1つ以上のグリコシル化部位を創出するか又は除去するように、アミノ酸配列を改変することによって簡便に達成され得る。
【0260】
抗原結合分子がFc領域を含む場合において、Fc領域に付着した炭水化物を改変することができる。哺乳動物細胞によって産生された天然抗体は、典型的には、N結合によってFc領域のCH2ドメインのAsn297に一般に結合される分岐状の二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al.TIBTECH 15:26-32,1997を参照のこと。オリゴ糖には、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、並びに二分岐オリゴ糖構造の「ステム」のGlcNAcに結合したフコースが含まれ得る。いくつかの事例では、特定の特性が改善された抗体バリアントを作製するために、本発明の抗体中におけるオリゴ糖の修飾が行われ得る。
【0261】
一例では、Fc領域に(直接又は間接的に)付着したフコースを欠く炭水化物構造を有する抗原結合分子バリアントが提供される。例えば、そのような抗体におけるフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%、又は20%~40%であってよい。フコースの量は、例えば、国際公開第2008/077546号に記載のMALDI-TOF質量分析によって測定される、Asn297に結合した全ての糖構造(例えば、複合体、ハイブリッド、及び高マンノース構造)の合計に対するAsn297での糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定される。Asn297は、Fc領域内の約297位(Fc領域残基のEU付番)に位置するアスパラギン残基を指す;しかし、Asn297はまた、抗体における小規模な配列変異に起因して、297位から約±3アミノ酸の上流又は下流、すなわち、294~300位の間に位置してもよい。そのようなフコシル化バリアントは、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号、及び同第2004/0093621号を参照のこと。「脱フコシル化」又は「フコース欠損」抗体バリアントに関する刊行物の例としては:米国特許第2003/0157108号;国際公開第2000/61739号;同第2001/29246号;米国特許第2003/0115614号;同第2002/0164328号;同第2004/0093621号;同第2004/0132140号;同第2004/0110704号;同第2004/0110282号;同第2004/0109865号;国際公開第2003/085119号;同第2003/084570号;同第2005/035586号;同第2005/035778号;同第2005/053742号;同第2002/031140号;Okazaki et al.J.Mol.Biol.336:1239-1249(2004);Yamane-Ohnuki et al,.Biotech.Bioeng.87:614(2004)が挙げられる。脱フコシル化抗体を生成可能な細胞株の例としては、タンパク質フコシル化で欠失したLec13 CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533-545(1986);米国特許出願公開第2003/0157108A1号;及び国際公開第2004/056312A1号,Adams et al.,特に実施例11において)、並びにα-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞などのノックアウト細胞株(例えば、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004);Kanda,Y.et al.,Biotechnol.Bioeng.,94(4):680-688(2006);及び国際公開第2003/085107号)が挙げられる。
【0262】
例えば、抗体のFc領域に付着した二分枝オリゴ糖がGlcNAcにより二分されるバイセクトオリゴ糖を含む、抗原結合分子バリアントが更に提供される。そのような抗体バリアントは、低減されたフコシル化機能を有しても、及び/又は改善されたADCC機能を有してもよい。そのような抗体バリアントの例は、例えば国際公開第2003/011878号;米国特許第6,602,684号;及び米国特許出願公開第2005/0123546号に記載されている。Fc領域に付着しているオリゴ糖内に少なくとも1つのガラクトース残基を含む抗体バリアントも提供される。そのような抗体バリアントは、改善されたCDC機能を有し得る。そのような抗体バリアントは、例えば、国際公開第1997/30087号、同第1998/58964号、及び同第1999/22764号に記載されている。
【0263】
C. Fc領域バリアント
特定の例において、1つ以上のアミノ酸修飾が、本発明の抗体のFc領域内に導入され得、それによりFc領域バリアントを生成され得る。Fc領域バリアントは、1つ以上のアミノ酸位置においてアミノ酸修飾(例えば置換)を含むヒトFc領域配列(例えばヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4 Fc領域)を含んでよい。
【0264】
特定の場合において、本発明は、全てではないが、いくつかのエフェクター機能を有することにより、インビボでの抗体の半減期が重要ではあるが、特定のエフェクター機能(補体及びADCCなど)が不要又は有害である用途に望ましい候補となる抗体バリアントを企図する。インビトロ及び/又はインビボ細胞傷害性アッセイを行って、CDC及び/又はADCC活性の低減/欠乏を確認してもよい。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実行して、抗体がFcγR結合を欠く(故にADCC活性を欠く可能性が高い)が、FcRn結合能力を保持していることを確実にし得る。ADCCを媒介するための初代細胞であるNK細胞が、FcγRIIIのみを発現する一方で、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞内でのFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-492(1991)の464頁、表3にまとめられている。対象の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom,I.et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:7059-7063(1986)を参照のこと)、及びHellstrom,I et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:1499-1502(1985);米国特許第5,821,337号(Bruggemann,M.et al.,J.Exp.Med.166:1351-1361(1987)を参照のこと)に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ法が用いられ得る(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA;及びCYTOTOX 96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイ(Promega,Madison,WI)を参照のこと))。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核球細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。あるいは、又は更に、対象の分子のADCC活性は、例えば、Clynes et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:652-656(1998)に開示されているように、動物モデルにおいてインビボで評価することができる。C1q結合アッセイを実行して、抗体がC1qに結合することができないためにCDC活性を欠くことを確認してもよい。例えば、国際公開第2006/029879号及び同第2005/100402号に記載されているC1q及びC3c結合ELISAを参照のこと。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを実施してよい(例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996);Cragg et al.,Blood.101:1045-1052(2003);及びCragg et al.,Blood.103:2738-2743(2004)を参照のこと)。FcRn結合及びインビボクリアランス/半減期決定も、当該技術分野で既知の方法を使用して行われ得る(例えば、Petkova et al.Int’l.Immunol.18(12):1759-1769(2006)を参照のこと)。
【0265】
低減したエフェクター機能を有する抗体には、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、及び329のうちの1つ以上の置換を有する抗体が挙げられる(米国特許第6,737,056号及び同第8,219,149号)。そのようなFc変異体としては、アミノ酸位置265、269、270、297及び327の2つ以上が置換されたFc変異体が挙げられ、残基265及び297をアラニンに置換した、いわゆる「DANA」Fc変異体(米国特許第7,332,581号及び同第8,219,149号)を含む。
【0266】
FcRへの結合が向上又は低下した特定の抗体バリアントについて記載されている。(例えば、米国特許第6,737,056号;国際公開第2004/056312号,及びShields et al.J.Biol.Chem.9(2):6591-6604(2001)を参照のこと。)
【0267】
特定の場合において、抗体バリアントは、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298、333、及び/又は334位(残基のEU付番)での置換を有するFc領域を含む。
【0268】
いくつかの場合において、例えば米国特許第6,194,551号、国際公開第99/51642号、及びIdusogie et al.J.Immunol.164:4178-4184(2000)に記載されているように、C1q結合及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)の変化(すなわち向上又は低下のいずれか)をもたらすFc領域内で変化が起こる。
【0269】
半減期が増大し、胎生Fc受容体(FcRn)への結合が向上した、母体IgGを胎児に移行する役割を果たす抗体(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)及びKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))は、米国特許出願公開第2005/0014934A1号(Hinton et al.)に記載されている。これらの抗体は、FcRnへのFc領域の結合を向上する1つ以上の置換基を有するFc領域を含む。そのようなFcバリアントとしては、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、又は434、例えばFc領域残基434の置換の1つ以上において置換を有するものが挙げられる(米国特許第7,371,826号)。
【0270】
Fc領域バリアントのその他の例に関係するDuncan&Winter,Nature 322:738-40(1988)米国特許第5,648,260号;同第5,624,821号;及び国際公開第94/29351号も参照のこと。
【0271】
D. システイン改変抗体バリアント
特定の場合において、システイン改変抗体、例えば抗体の1つ以上の残基がシステイン残基により置換されている「thioMAb」を作製するのが望ましい場合がある。特定の例において、置換された残基は、抗体の利用しやすい部位で生じる。これらの残基をシステインで置換することにより、反応性チオール基が抗体の接触可能部位に配置され、抗体を他の部位、例えば薬物部位、又はリンカー/薬物部位と結合させ、本明細書で更に記載する免疫抱合体を作製するのに用いられる場合がある。特定の例において、以下の残基のうちの任意の1つ以上を、システインで置換することができる:軽鎖のV205(Kabat付番);重鎖のA118(EU付番);及び重鎖Fc領域のS400(EU付番)。システイン改変抗体は、例えば米国特許第7,521,541号に記載されているように作製してよい。
【0272】
E. 抗体誘導体
特定の例において、本明細書に提供される抗体は、当該技術分野で既知であり、容易に入手可能な追加の非タンパク質性部分を含有するようにさらに修飾され得る。抗体の誘導体化に好適な部分としては、限定するものではないが、水溶性ポリマーが挙げられる。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレン(propropylene)グリコールホモポリマー、プロリプロピレン(prolypropylene)オキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、並びにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性のため、製造時に有利であり得る。ポリマーは、いずれの分子量のものであってもよく、分岐状であっても非分岐状であってもよい。抗体に結合するポリマーの数は異なり得、2つ以上のポリマーが結合する場合、それらは同じ分子であっても異なる分子であってもよい。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/又は種類は、改善される抗体の特定の特性又は機能、抗体誘導体が定義された条件下である療法に使用されるかなどを含むが、これらに限定されない、考慮すべき事項に基づいて決定され得る。
【0273】
別の例において、放射線への曝露によって選択的に加熱され得る抗体及び非タンパク質性部分の抱合体が提供される。一例において、非タンパク質性部分はカーボンナノチューブである(Kam et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:11600-11605(2005))。放射線は、いずれの波長のものであってもよく、これには、限定するものではないが、通常の細胞を傷つけないが、抗体-非タンパク質性部分に近接する細胞が殺滅される温度まで非タンパク質性部分を加熱する波長が挙げられる。
【0274】
F. 免疫抱合体
本発明はまた、化学療法剤若しくは薬剤、成長阻害剤、毒素(例えばタンパク質毒素、微生物、菌類、植物若しくは動物由来の酵素活性毒素、若しくはこれらの断片)、又は放射性同位元素などの1つ以上の細胞毒性剤にコンジュゲートした二重特異性抗原結合分子を含む免疫抱合体も提供する。
【0275】
一例において、免疫抱合体は抗体薬剤抱合体(ADC)であり、抗体が、これらに限定されるわけではないが、マイタンシノイド(米国特許第5,208,020号、同第5,416,064号、及び欧州特許第0425235B1号を参照のこと);モノメチルオーリスタチン薬剤部分DE及びDF(MMAE及びMMAF)などのオーリスタチン(米国特許第5,635,483号、同第5,780,588号、及び同第7,498,298号を参照のこと);ドラスタチン;カリケアマイシン又はその誘導体(米国特許第5,712,374号、同第5,714,586号、同第5,739,116号、同第5,767,285号、同第5,770,701号、同第5,770,710号、同第5,773,001号、及び同第5,877,296号;Hinman et al.,Cancer Res.53:3336-3342(1993);並びにLode et al.,Cancer Res.58:2925-2928(1998)を参照のこと);ダウノマイシン及びドキソルビシン等のアントラサイクリン(例えばKratz et al.,Current Med.Chem.13:477-523(2006);Jeffrey et al.,Bioorganic&Med.Chem.Letters 16:358-362(2006);Torgov et al.,Bioconj.Chem.16:717-721(2005);Nagy et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:829-834(2000);Dubowchik et al.,Bioorg.&Med.Chem.Letters 12:1529-1532(2002);King et al.,J.Med.Chem.45:4336-4343(2002);及び米国特許第6,630,579号を参照のこと);メトトレキサート;ビンデシン;ドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル、テセタキセル、及びオルタタキセル等のタキサン;トリコテセン;並びにCC1065を含む1つ以上の薬剤に結合している。
【0276】
別の例において、免疫抱合体は、本明細書に記載されるように、酵素活性毒素又はこれらの断片に結合する抗体を含む。これらは以下に限定されるわけではないが、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、エキソトキシンA鎖(緑膿菌からのもの)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、αサルシン、シナアブラギリのタンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウのタンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、ツルレイシ阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン(enomycin)、並びにトリコテセンを含む。
【0277】
別の例において、免疫抱合体は、放射性原子に複合され、放射性抱合体を形成する、本明細書に記載される抗体を含む。放射性抱合体の作製のために、種々の放射性同位元素が利用可能である。例としてはAt211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びLuの放射性同位元素が挙げられる。放射性抱合体を検出のために使用する場合、それは、シンチグラフィー研究のための放射性原子、例えば、tc99m若しくはI123、又は核磁気共鳴(NMR)画像法(別名、磁気共鳴画像法、MRI)のためのスピン標識、例えば、再びヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン、若しくは鉄を含んでもよい。
【0278】
抗体及び細胞傷害性剤の抱合体は、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、アジプイミド酸ジメチルHCl)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン2,6-ジイソシアネート)、及びビス-活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)などの多様な二官能性タンパク質カップリング剤を使用して作製され得る。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta et al.,Science 238:1098(1987)に記載されているように調製することができる。炭素-14で標識された1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体への抱合体化のための例示的なキレート剤である。国際公開第94/11026号を参照のこと。リンカーは、細胞内において細胞毒性薬物の放出を容易にする「切断可能リンカー」であってもよい。例えば、酸に不安定なリンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、感光性リンカー、ジメチルリンカー、又はジスルフィド含有リンカー(Chari et al,Cancer Res.52:127-131(1992);米国特許第5,208,020号)を使用してよい。
【0279】
本明細書における免疫抱合体又はADCは明確に、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホEMCS、スルホGMBS、スルホKMUS、スルホMBS、スルホSIAB、スルホSMCC、スルホSMPB、及び市販の(例えばPierce Biotechnology,Inc.,Rockford,IL.,U.S.Aから)SVSB(サクシニミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート)を含む架橋剤により調製した抱合体を企図するが、これらに限定されない。
【0280】
III. 組換え方法及び組成物
本発明の二重特異性抗原結合分子は、例えば、その全体が本明細書に参照により組み込まれている、米国特許第4,816,567号、及び米国特許出願公開第2013/0078249号に記載されている、組み換え方法及び組成物を使用して作製することができる。一実施形態では、本明細書で記載される二重特異性抗原結合分子をコードする単離核酸(例えばポリヌクレオチド)を提供する。このような核酸は、二重特異性抗原結合分子のVLを含むアミノ酸配列、及び/又はVHを含むアミノ酸配列(例えば、二重特異性抗原結合分子のいずれかのアームの軽鎖及び/又は重鎖)をコードすることができる。更なる実施形態では、そのような核酸を含む1つ又は複数のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。
【0281】
本発明の二重特異性抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドは、1つのポリヌクレオチド分子として、又は、同時発現する複数の(例えば2つ以上の)ポリヌクレオチドとして、発現することができる。同時発現するポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドは、例えばジスルフィド結合、又は他の手段により会合し、機能性二重特異性抗原結合分子を形成することができる。例えば、抗原結合部分の軽鎖部分は、抗原結合部分の重鎖部分、Fcドメインサブユニット、及び任意に、別の抗原結合部分を含む二重特異性抗原結合分子の部分とは別のポリヌクレオチドによりコードすることができる。同時発現する際、重鎖ポリペプチドは軽鎖ポリペプチドと会合して、抗原結合部分を形成する。別の例において、2つのFcドメインサブユニットのうちの1つ、及び任意に、1つ以上の抗原結合部分を含む二重特異性抗原結合分子の部分は、2つのFcドメインのサブユニットのうちのもう片方、及び任意に抗原結合部分を含む、T細胞活性化二重特異性抗原結合分子の部分とは別のポリヌクレオチドによりコードすることができる。同時発現する際、Fcドメインサブユニットが会合して、Fcドメインを形成する。
【0282】
特定の実施形態において、本発明の単離ポリヌクレオチドは、第1及び第2の抗原結合部分、並びに2つのサブユニットからなるFcドメインを含む、二重特異性抗原結合分子の断片をコードする。一実施形態では、本発明の単離ポリヌクレオチドは、第1の抗原結合部分、及びFcドメインのサブユニットをコードする。別の実施形態では、本発明の単離ポリヌクレオチドは、第2の抗原結合部分の重鎖、及びFcドメインのサブユニットをコードする。より特定の実施形態においては、単離ポリヌクレオチドは、Fab重鎖が、FcドメインサブユニットとC末端ペプチド結合を共有しているポリペプチドをコードする。更に他の実施形態では、本発明の単離ポリヌクレオチドは、第3の抗原結合部分の重鎖、第2の抗原結合部分の重鎖、及びFcドメインのサブユニットをコードする。いくつかの実施形態では、第2及び第3の抗原結合部分の軽鎖は同時発現し、重鎖領域と会合してFabドメインを形成する。
【0283】
さらなる実施形態では、そのような核酸を含む宿主細胞が提供される。1つのそのような実施形態において、宿主細胞は、(1)二重特異性抗原結合分子の少なくとも1つのVLを含むアミノ酸配列、及び二重特異性抗原結合分子の少なくとも1つのVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、又は、(2)二重特異性抗原結合分子のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクター、及び、二重特異性抗原結合分子のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクターを含む(例えば、これらで形質転換されている)。一実施形態では、宿主細胞は真核細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又はリンパ系細胞である。一実施形態では、二重特異性抗原結合分子の作製方法であって、抗体の発現に好適な条件下にて、上述したとおりに、二重特異性抗原結合分子をコードする核酸を含む宿主細胞を培養することと、任意に、抗体を宿主細胞(又は宿主細胞培養培地)から回収することと、を含む方法を提供する。
【0284】
二重特異性抗原結合分子の組み換え作製のために、例えば上述した、二重特異性抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを単離して、宿主細胞で更にクローニング及び/又は発現するために、1つ以上のベクターに挿入する。そのような核酸は、従来の手順を使用して(例えば、二重特異性抗原結合分子の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)、容易に単離し、配列決定することができる。
【0285】
二重特異性抗原結合分子をコードするベクターのクローニング又は発現に好適な宿主細胞としては、本明細書で記載される原核細胞又は真核細胞が挙げられる。例えば、抗体は、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能が必要とされない場合に、細菌中で産生され得る。細菌での抗体断片及びポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5,648,237号、同第5,789,199号、及び同第5,840,523号を参照のこと。(また、E.coliにおける抗体断片の発現について記載している、Charlton,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ,2003),pp.245-254も参照のこと。)発現後、抗体は、可溶性画分中で細菌細胞ペーストから単離され得、更に精製され得る。
【0286】
IV. 薬学的製剤
所望の純度を有する二重特異性抗原結合分子、任意に、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態の、薬学的に許容される担体、賦形剤、又は安定剤と混合することにより、本発明の二重特異性抗原結合分子の治療用製剤を、保存のために調製する。製剤に関する一般的な情報については、例えば、Gilman et al.(eds.)The Pharmacological Bases of Therapeutics,8th Ed.,Pergamon Press,1990;A.Gennaro(ed.),Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,Mack Publishing Co.,Pennsylvania,1990;Avis et al.(eds.)Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications Dekker,New York,1993;Lieberman et al.(eds.)Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets Dekker,New York,1990;Lieberman et al.(eds.),Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems Dekker,New York,1990;and Walters(ed.)Dermatological and Transdermal Formulations(Drugs and the Pharmaceutical Sciences),Vol 119,Marcel Dekker,2002を参照のこと。
【0287】
許容される担体、賦形剤、又は安定剤は、レシピエントに対し、使用される用量及び濃度で非毒性であり、これらにはリン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、若しくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、若しくはリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、若しくはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、若しくはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);並びに/又はTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、若しくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0288】
本明細書の製剤は、2つ以上の活性化合物、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものも含有し得る。そのような薬剤の種類及び有効量は、例えば、製剤中に存在するアンタゴニストの量及び種類、並びに対象の臨床的パラメータに依存する。
【0289】
活性成分はまた、例えば、コアセルベーション技法によって、又は界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ-(メチルメタシレート)マイクロカプセル内に、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロ乳濁液、ナノ粒子、及び名のカプセル)中、又はマクロ乳濁液中に取り込まれ得る。そのような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.,1980に開示されている。
【0290】
徐放性調製物を調製してもよい。徐放性調製物の好適な例としては、アンタゴニストを含有する固体の疎水性ポリマーの半透性マトリクスが挙げられ、このマトリクスは、成型品、例えば、フィルム又はマイクロカプセルの形態にある。徐放性マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸とγ-L-グルタミン酸エチルとのコポリマー、非分解性エチレン酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)などの分解性の乳酸-グリコール酸コポリマー(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドから構成される注射用ミクロスフェア)、並びにポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
【0291】
インビボ投与に使用される製剤は、滅菌されなければならない。これは、滅菌濾過膜を通す濾過により容易に達成される。
【0292】
V. 治療方法
本発明の二重特異性抗原結合分子(例えば、第1抗原に特異的に結合可能な一価のアーム、及び2つの第2の抗原に特異的に結合可能な二価のアームを有する二重特異性抗原結合分子)、又はそれらの組成物のいずれかを、本明細書で記載される治療方法のいずれかで使用することができる。
【0293】
一態様では、薬剤として使用するための二重特異性抗原結合分子が提供される。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書で記載される二重特異性抗原結合分子は、細胞増殖性障害(例えば癌)又は自己免疫性障害の処置又は進行の遅延を必要とする対象における、細胞増殖性障害(例えば癌)又は自己免疫性障害の処置又は進行の遅延に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、前述の態様のいずれかの二重特異性抗原結合分子は、細胞増殖性障害(例えば癌)又は自己免疫性障害を有する対象における、免疫機能の増強に使用するためのものである。特定の実施形態において、本発明は、個体に、有効な二重特異性抗原結合分子を投与して、エフェクター細胞(例えばT細胞、例えばCD8+及び/又はCD4+T細胞)を活性化する、エフェクター細胞集団を拡張(増加)させる、標的細胞の集団(例えば、本発明の二重特異性抗原結合分子により認識される第2の標的細胞抗原を発現する細胞の集団)を減少させる、及び/又は、標的細胞(例えば標的腫瘍細胞)を殺傷することを含む、細胞増殖性障害又は自己免疫性障害を有する個体における免疫機能の増強方法で使用するための二重特異性抗原結合分子を提供する。
【0294】
本発明は、細胞増殖性障害(例えば癌)、又は自己免疫性障害などの障害の処置用、又は進行の遅延用の薬剤の製造における、本発明の二重特異性抗原結合分子の使用を特徴とする。更なる実施形態では、薬剤は、細胞増殖性障害又は自己免疫性障害を有する個体に有効量の医薬品を投与することを含む、細胞増殖性障害又は自己免疫性障害を処置する方法において使用するためのものである。1つのそのような実施形態では、本方法は、例えば、以下に記載されるような、有効量の少なくとも1つの追加の治療剤を対象に投与することをさらに含む。更なる実施形態において、薬剤は、エフェクター細胞(例えばT細胞、例えばCD8+及び/又はCD4+T細胞)を活性化する、エフェクター細胞集団を拡張(増加)させる、標的細胞の集団(例えば、本発明の二重特異性抗原結合分子により認識される第2の標的細胞抗原を発現する細胞の集団)を減少させる、及び/又は、標的細胞(例えば標的腫瘍細胞)を殺傷するためのものである。
【0295】
更なる態様において、本発明は、障害の処置又は進行の遅延を必要とする対象における、障害の処置又は進行の遅延方法であって、該方法が、対象に、前述の態様のいずれかの二重特異性抗原結合分子を投与することを含む方法を提供する。一実施形態では、方法は、そのような細胞増殖性障害又は自己免疫性障害を有する対象に、有効量の二重特異性抗原結合分子(例えば、一価の抗CD3アーム及び二価の抗腫瘍細胞抗原アームを有する二重特異性抗原結合分子)を投与することを含む。1つのそのような実施形態では、本方法は、例えば、以下に記載されるような、有効量の少なくとも1つの追加の治療剤を個体に投与することをさらに含む。
【0296】
別の態様において、本発明は、障害を有する対象における免疫機能の増強方法であって、該方法が、対象に、前述の態様のいずれかの二重特異性抗原結合分子(例えば、一価の抗CD3アーム及び二価の抗腫瘍細胞抗原アームを有する二重特異性抗原結合分子)を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、障害は、細胞増殖性障害(例えば癌)又は自己免疫性障害である。特定の実施形態において、方法は、有効量の二重特異性抗原結合分子を投与して、エフェクター細胞(例えばT細胞、例えばCD8+及び/又はCD4+T細胞)を活性化する、エフェクター細胞集団を拡張(増加)させる、標的細胞の集団(例えば、本発明の二重特異性抗原結合分子により認識される第2の標的細胞抗原を発現する細胞の集団)を減少させる、及び/又は、標的細胞(例えば標的腫瘍細胞)を殺傷することを含む。
【0297】
いくつかの実施形態では、本明細書において提供する二重特異性抗原結合分子、その組成物、及び使用方法は、乳癌、胃癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、非ホジキンリンパ腫(NHL)、B細胞リンパ腫、B細胞白血病、多発性骨髄腫、腎癌、前立腺癌、肝癌、頭頸癌、黒色腫、卵巣癌、中皮腫、神経膠芽腫、胚中心B細胞様(GCB)びまん性大型B細胞リンパ腫(DLBCL)、活性化B細胞様(ABC)DLBCL、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ系白血病(CLL)、辺縁層リンパ腫(MZL)、小型リンパ性白血病(SLL)、リンパ形質細胞性リンパ腫(LL)、ワルデンストレームマクログロブリン血症(WM)、中枢神経系リンパ腫(CNSL)、バーキットリンパ腫(BL)、B細胞前リンパ球性白血病、脾臓辺縁層リンパ腫、毛様細胞性白血病、脾臓のリンパ腫/白血病、脾臓びまん性赤脾髄小型B細胞リンパ腫、毛様細胞性白血病異型、α重鎖病、γ重鎖病、μ重鎖病、形質細胞骨髄腫、骨の孤立性形質細胞腫、髄外性形質細胞腫、粘膜関連リンパ組織の結節外辺縁層リンパ腫(MALTリンパ腫)、結節辺縁層リンパ腫、小児結節辺縁層リンパ腫、小児濾胞性リンパ腫、原発性皮膚濾胞中心リンパ腫、T細胞/組織球豊富型大型B細胞リンパ腫、中枢神経系の原発性DLBCL、原発性皮膚DLBCL(脚型)、老年者のエプスタイン・バーウイルス(EBV)陽性DLBCL、DLBCL随伴慢性炎症、リンパ腫肉芽腫症、原発性縦隔(胸腺)大型B細胞リンパ腫、血管内大型B細胞リンパ腫、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)陽性大型B細胞リンパ腫、形質芽球性リンパ腫、HHV8随伴多中心性キャッスルマン病にて生じる大型B細胞リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫とバーキットリンパ腫との間の特徴を有する、分類不可能な大型B細胞リンパ腫、又は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫と古典的なホジキンリンパ腫との間の特徴を有する、分類不可能な大型B細胞リンパ腫などの癌の処置のために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書において提供する二重特異性抗原結合分子、その組成物、及びその使用方法を、HER2陽性癌(例えばHER2陽性乳癌、又はHER2陽性胃癌)の処置のために使用する。
【0298】
本発明は更に、平行して投与される、又は複合レジメンの一部として投与される、二重特異性抗原結合分子を、1つ以上の追加の治療剤(例えば1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又はそれ以上の追加の治療剤)と共に投与することを含む、併用療法を提供する。一実施形態において、二重特異性抗原結合分子は、BCL-2阻害剤(GDC-0199/ABT-199など)、レナリドミド(REVLIMID(登録商標))、PI3Kデルタ阻害剤(イデラリシブ(ZYDELIG(登録商標))など)、アゴニスト、例えば、活性化する共刺激分子、例えば、CD40、CD226、CD28、OX40(例えば、AgonOX)、GITR、CD137(TNFRSF9、4-1BB、若しくはILAとしても知られている)、CD27(例えば、CDX-1127)、HVEM、又はCD127などに対して作られる、アゴニスト抗体など、拮抗薬、例えば、抑制共刺激分子、例えば、CTLA-4(CD152としても知られている)、PD-1、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7-H3、B7-H4、IDO(例えば、1-メチル-D-トリプトファン(1-D-MTとしても知られている))、TIGIT、MICA/B、GITR(例えば、TRX518)又はアルギナーゼなどに対して作られる、拮抗薬抗体など、イピリムマブ(MDX-010、MDX-101、若しくはYERVOY(登録商標)としても知られている)、トレメリムマブ(チシリムマブ若しくはCP-675,206としても知られている)、ウレルマブ(BMS-663513としても知られている)、MGA271、TGFベータに対して作られる拮抗薬、例えば、メテリムマブ(metelimumab)(CAT-192としても知られている)、フレソリムマブ(GC1008としても知られている)、LY2157299k、及びキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)の養子移入、例えば、ドミナントネガティブTGFベータ受容体、例えば、ドミナントネガティブTGFベータII型受容体を含むT細胞の養子移入から選択される1つ以上の生物学的修飾物質と同時に投与される。
【0299】
特定の実施形態において、生物学的改変剤はPD-1軸結合アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、PD-1軸結合アンタゴニスト又は追加の治療剤は、二重特異性抗原結合分子の投与前に、又はこの後に投与される。いくつかの実施形態では、PD-1軸結合アンタゴニスト又は追加の治療剤は、二重特異性抗原結合分子と同時に投与される。いくつかの実施形態では、PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニスト(例えばアテゾリズマブ(MPDL3280A)、YW243.55.S70、MDX-1105、MEDI4736(デュルバルマブ)、及びMSB0010718C(アベルマブ))、PD-1結合アンタゴニスト(例えばMDX-1106(ニボルマブ)、MK-3475(ペムブロリズマブ)、CT-011(ピディリズマブ)、MEDI-0680(AMP-514)、PDR001(スパルタリズマブ)、REGN2810(セミプリマブ)、及びBGB-108)、並びに、PD-L2結合アンタゴニスト(例えば、抗体又はイムノアドヘシン)からなる群から選択される。
【0300】
加えて、又はあるいは、本発明の二重特異性抗原結合分子は、(例えば、細胞増殖性障害、例えば癌を有する対象の処置方法の一部として)1つ以上の化学療法剤と共に同時投与することができる。
【0301】
更なる態様において、本発明は、HER2陽性癌の処置方法を提供する。一実施形態において、方法は、HER2陽性癌を有する個体に、有効量の本発明の二重特異性抗原結合分子、例えば、二価のHER2アーム及び一価の抗CD3アームを有する1Fab-IgG TDBを投与することを含む。特定の実施形態では、抗HER2アームは、有効量で患者に投与された際に、許容される毒性プロファイルを有する。一実施形態では、許容される毒性プロファイルを有する1Fab-IgG TDB分子の抗CD3アームは、低親和性抗CD3抗原結合部分である。一実施形態では、許容される毒性プロファイルを有する1Fab-IgG TDBの抗CD3抗原結合部分は、40G5cである。
【0302】
特定の実施形態では、HER2陽性癌は、HER2陽性乳癌又はHER2陽性胃癌である。HER2陽性癌(例えば、HER2陽性乳癌又はHER2陽性胃癌)は、細胞1個当たり少なくとも200,000のコピー数(例えば、平均コピー数)(例えば、細胞1個当たり少なくとも250,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも300,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも400,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも500,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも600,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも700,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも750,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも800,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも900,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも1,000,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも1,200,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも1,500,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも2,000,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも2,500,000のHER2のコピー、細胞1個当たり少なくとも3,000,000のHER2のコピー、又はそれ以上、例えば、細胞1個当たり200~2,000,000のHER2のコピー、細胞1個当たり300,000~1,500,000のHER2のコピー、細胞1個当たり400,000~1,200,000のHER2のコピー、又は、細胞1個当たり500,000~1,000,000のHER2のコピー、例えば、細胞1個当たり200,000~1,000,000のHER2のコピー(例えば、細胞1個当たり200,000~250,000のHER2のコピー、細胞1個当たり250,000~300,000のHER2のコピー、細胞1個当たり300,000~400,000のHER2のコピー、細胞1個当たり400,000~500,000のHER2のコピー、細胞1個当たり500,000~750,000のHER2のコピー、若しくは、細胞1個当たり750,000~1,000,000のHER2のコピー)、又は、細胞1個当たり1,000,000~3,000,000のHER2のコピー(例えば、細胞1個当たり1,000,000~1,500,000のHER2のコピー、細胞1個当たり1,500,000~2,000,000のHER2のコピー、細胞1個当たり2,000,000~2,500,000のHER2のコピー、若しくは、細胞1個当たり2,500,000~3,000,000のHER2のコピー))にてHER2を発現する腫瘍細胞を特徴とすることができる。
【0303】
一実施形態では、抗HER2二重特異性抗原結合分子は、HER経路を標的化する1つ以上の追加の治療剤と同時投与される。一実施形態では、HER経路を標的化する治療剤は、EGFR阻害剤、HER2阻害剤、HER3阻害剤、及び/又はHER4阻害剤から選択される。一実施形態では、HER2 TDB(例えば1Fab-IgG TDB)は、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))、T-DM1(KADCYLA(登録商標))、及びペルツズマブ(PERJETA(登録商標))から選択される、1つ以上の追加の治療剤と同時投与される。一実施形態では、抗HER2/CD3二重特異性抗原結合分子は、トラスツズマブと同時投与される。一実施形態では、抗HER2/CD3二重特異性抗原結合分子は、T-DM1と同時投与される。一実施形態では、抗HER2/CD3二重特異性抗原結合分子は、ペルツズマブと同時投与される。一実施形態では、抗HER2/CD3二重特異性抗原結合分子は、トラスツズマブ及びペルツズマブと同時投与される。一実施形態では、抗HER2/CD3二重特異性抗原結合分子は、T-DM1及びペルツズマブと同時投与される。
【0304】
上記の併用療法は、併用投与(2つ以上の治療剤が同じ又は別の製剤に含まれている)、及び本発明の二重特異性抗原結合分子の投与が、追加の治療剤(1つ又は複数)の前、同時、及び/又は後に発生することができる、個別投与を包含する。一実施形態では、抗CD3抗体の投与及び追加の治療剤の投与は、互いの約一カ月以内、又は約1、2、若しくは3週間以内、又は約1、2、3、4、5、若しくは6日以内に行われる。
【0305】
本発明の二重特異性抗原結合分子(及び/又は任意の追加の治療剤)は、皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与、局所投与、経口投与、経皮投与、腹腔内投与、眼窩内投与、移植投与、吸入投与、髄腔内投与、心室内投与、又は経鼻投与を含む、任意の好適な手段により投与することができる。例えば、いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は皮下投与される。別の実施形態において、二重特異性抗原結合分子は静脈内投与される。いくつかの実施形態では、皮下注射により投与される二重特異性抗原結合分子は、静脈内注射により投与される同一の二重特異性抗原結合分子ほど、患者内で毒性応答を示さない。投薬は、投与が短期であるか長期であるかに部分的に応じて、任意の好適な経路、例えば、静脈内又は皮下注射などの注射によるものであってもよい。単回又は様々な時点にわたる複数回投与、ボーラス投与、及びパルス注入を含むが、これらに限定されない様々な投薬スケジュールが、本明細書では企図される。
【0306】
本発明の二重特異性抗原結合分子を、良好な医事に合わせた方法で製剤化、投薬、及び投与することができる。この文脈における考慮の要因には、処置されている特定の障害、処置されている特定の哺乳動物、個々の対象の臨床的病態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与のスケジュール管理、及び医療従事者に既知の他の要因が含まれる。二重特異性抗原結合分子は、必ずしもではないが、任意に、問題の障害を予防又は処置するために同時に使用する1つ以上の作用物質と共に、製剤化される。有効量のそのような他の作用物質は、製剤中に存在する抗体の量、障害又は処置の種類、及び上述の他の要因に依存する。これらは、一般に、本明細書に記載のものと同じ投薬量及び投与経路によって、又は本明細書に記載の投薬量の約1~99%、又は適切であると経験的/臨床的に決定される任意の投薬量及び任意の経路で使用される。
【0307】
疾患の予防又は処置に関して、(単独で、又は、1つ以上の他の追加の治療剤と組み合わせて使用する場合の)本発明の二重特異性抗原結合分子の適切な用量は、処置される疾患の種類、疾患の重症度及び経過、二重特異性抗原結合分子が予防又は治療目的で投与されているか否か、治療歴、患者の臨床歴及び二重特異性抗原結合分子に対する応答、並びに主治医の自由裁量に応じて左右される。二重特異性抗原結合分子は、一度に、又は一連の処置にまたがり、患者に好適に投与される。
【0308】
一般的な提示として、ヒトに適用する二重特異性抗原結合分子の治療上の有効量は、1回以上の投与によるか否かに応じて、患者の体重1kg当たり、約0.01~約100mgの範囲になるであろう。いくつかの実施形態では、使用する二重特異性抗原結合分子は例えば、1日当たりの投与において、約0.01~約45mg/kg、約0.01~約40mg/kg、約0.01~約35mg/kg、約0.01~約30mg/kg、約0.01~約25mg/kg、約0.01~約20mg/kg、約0.01~約15mg/kg、約0.01~約10mg/kg、約0.01~約5mg/kg、又は約0.01~約1mg/kgである。一実施形態では、本明細書で記載される二重特異性抗原結合分子はヒトに、1~21日目のサイクルにおいて、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、又は約1400mgの用量で投与される。用量は、注入物などの、単回用量で、又は複数回用量(例えば、2回用量若しくは3回用量)で投与されてもよい。数日間又はそれ以上にわたる反復投与において、状態に応じ、処置は通常、疾患症状の所望の抑制が生じるまで続けられる。抗体の1つの例示的な投薬量は、約0.05mg/kg~約10mg/kgの範囲である。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、若しくは10mg/kg(又はこれらの任意の組み合わせ)の投与量の1種以上を、対象に投与してよい。そのような用量は、断続的に、例えば、毎週、又は3週間毎に投与されてもよい(例えば、患者が、約2回~約20回、又は例えば、約6回用量の抗CD3抗体を受容するようにする)。最初の多めの投与量、それに続く一回以上の量の少ない用量を投与してよい。この治療の進行は、従来技術及びアッセイによって容易に監視される。本発明の前述の態様のいずれかに関するいくつかの実施形態において、対象、患者、又は個体はヒトである。
【0309】
VI. キット
1つ以上の本明細書で記載した組成物(例えば、二重特異性抗原結合分子、及び薬学的に許容される担体の1つ以上のいずれかを含む組成物)、並びに、組成物を対象に投与して、障害(例えば、細胞増殖性障害(例えば、乳癌、胃癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、非ホジキンリンパ腫(NHL)、B細胞リンパ腫、B細胞白血病、多発性骨髄腫、腎癌、前立腺癌、肝癌、頭頸癌、黒色腫、卵巣癌、中皮腫、神経膠芽腫、胚中心B細胞様(GCB)びまん性大型B細胞リンパ腫(DLBCL)、活性化B細胞様(ABC)DLBCL、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ系白血病(CLL)、辺縁層リンパ腫(MZL)、小型リンパ性白血病(SLL)、リンパ形質細胞性リンパ腫(LL)、ワルデンストレームマクログロブリン血症(WM)、中枢神経系リンパ腫(CNSL)、バーキットリンパ腫(BL)、B細胞前リンパ球性白血病、脾臓辺縁層リンパ腫、毛様細胞性白血病、脾臓のリンパ腫/白血病、脾臓びまん性赤脾髄小型B細胞リンパ腫、毛様細胞性白血病異型、α重鎖病、γ重鎖病、μ重鎖病、形質細胞骨髄腫、骨の孤立性形質細胞腫、髄外性形質細胞腫、粘膜関連リンパ組織の結節外辺縁層リンパ腫(MALTリンパ腫)、結節辺縁層リンパ腫、小児結節辺縁層リンパ腫、小児濾胞性リンパ腫、原発性皮膚濾胞中心リンパ腫、T細胞/組織球豊富型大型B細胞リンパ腫、中枢神経系の原発性DLBCL、原発性皮膚DLBCL(脚型)、老年者のエプスタイン・バーウイルス(EBV)陽性DLBCL、DLBCL随伴慢性炎症、リンパ腫肉芽腫症、原発性縦隔(胸腺)大型B細胞リンパ腫、血管内大型B細胞リンパ腫、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)陽性大型B細胞リンパ腫、形質芽球性リンパ腫、HHV8随伴多中心性キャッスルマン病にて生じる大型B細胞リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫とバーキットリンパ腫との間の特徴を有する、分類不可能な大型B細胞リンパ腫、又は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫と古典的なホジキンリンパ腫との間の特徴を有する、分類不可能な大型B細胞リンパ腫などの癌))を処置する、又はこれらの進行を遅延させるための添付文書を含むキットを、本明細書において提供する。いくつかの実施形態では、癌はHER2陽性癌(例えば、HER2陽性乳癌又はHER2陽性胃癌)である。加えて、又はあるいは、キットは、組成物を対象に投与して、自己免疫性障害を処置する、又は進行を遅延させるための添付文書を含んでよい。
【実施例
【0310】
以下は、本発明の方法及び組成物の例である。上述の概要を考慮すると、様々な他の実施形態が実施され得ることが理解される。
【0311】
実施例1材料及び方法
遺伝子の合成
Fab
軽鎖及び重鎖可変ドメインの遺伝子合成により、抗HER2(4D5-8;Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.1992,89:4285-4289)Fabのバリアントをコードする遺伝子を得た。Expi293TTM細胞内で、30mLのスケールで抗HER2.4D5 Fab及びバリアントを作製し、抗Flag親和性樹脂を使用して、バッチで精製した。3xPBS洗浄工程の後、Fabを50mMのリン酸(pH3.0)で溶出し、20xPBS(pH11.0)で中和して、フィルタにかけた。全てのFabは≧95%の純度であり、質量分析により確認した。
【0312】
IgG TDB及び1Fab-IgG TDB
前述(Dillon et al.,MAbs 2017,9:213-230)のとおりに、ノブ(抗HER2.N297G.ノブ(4D5-8及びバリアント);Kelley and O’Connell,Biochemistry 1993,32:6828-6835)、及びホール(抗CD3.N297G.ホール(別に明記されない限り、40G5c))半抗体を生成した。1Fab-IgG TDB構築物に関して、抗HER2 Fab(E1-T225)用のコード領域を直接、抗HER2.ノブ配列のコード領域に先行させ、これらの間にG4SGGリンカー有り、及び無しで、合成した。
【0313】
1Fab-IgG TDBのルシフェラーゼ融合
ルシフェラーゼ(AAG54095.1)K18-D185用の成熟タンパク質配列のC末端を、抗HER2.hu4D5軽鎖に融合した。ルシフェラーゼ軽鎖融合がある、及びない、抗HER2.hu4D5 Fabは、BIACORE(登録商標)T200(GE Healthcare)及び以下に記載の方法を用いると、HER2に対する同様の結合動態を生み出した。
【0314】
抗体の発現及び精製
IgG TDB、1Fab-IgG TDB、及び1Fab-IgG TDBのルシフェラーゼ融合物を、以下のとおりに作製した。半抗体である抗HER2.hu4D5.ノブ及びバリアント、並びに抗CD3.40G5c.ホールを、≧1LにてCHO細胞内で産生し、MAbSelect SuRe(GE Healthcare)により精製した。半抗体からの、二重特異性IgG TDB、1Fab-IgG TDB、又は1Fab-IgG TDBルシフェラーゼ融合物の組み立てを、Junttila et al.,Cancer Res.2014,74:5561-5571;Spiess et al.,Nat.Biotechnol.2013,31:753-758に記載のとおりに実施した。
【0315】
HER2のウェスタンブロット分析
Cell Signaling Technology細胞溶解緩衝液を使用して、細胞溶解物を生成した。BCAアッセイ試薬(Pierceカタログ番号23228及び23224)を使用して、タンパク質を定量化した。40μgのタンパク質をSDS-PAGEゲルにロードし、検出のためにHER2抗体(Dakoカタログ番号A0485)を使用した。
【0316】
免疫組織化学法(IHC)
Ventana DAB検出と共に、Ventana Ultraview-Benchmarkシステムを使用して、抗Her-2/neu(Ventana Medical Systems,clone 4B5,Tuscan,AZ)ウサギモノクローナル一次抗体を含む、5μmのホルマリン固定した、パラフィン埋め込み組織サンプル及び組織マイクロアレイ(TMA)サンプルにて、HER2に対する免疫組織化学法を実施した。ASCO-CAPが推奨する、臨床HER2スコアリングガイドラインを使用して、染色結果を0、1+、2+、又は3+としてスコア付けした。
【0317】
蛍光in-situハイブリダイゼーション(FISH)
プローブ
細胞株TMAの分析のために、Core Diagnosticsより市販されている、FDA認可HER2 FISHプローブ(PathVysion,Abbott Molecular)を使用した。PathVysion HER-2 DNA Probeカクテルは、2つの標識したDNAプローブからなる。HER2遺伝子全体にまたがるLSI HER2プローブを、SpectrumOrangeにて標識する。CEP17プローブをSpectrumGreenで標識し、染色体17のセントロメアに位置するαサテライトDNAにハイブリダイズさせる(17p11.1-q11.1)。CEP17プローブを含めることにより、HER2遺伝子の相対的なコピー数を測定することができる。
【0318】
アッセイ
TMAブロックの5μm厚のFFPEセクションを、変更を加えた前述したFISH分析に通した。56℃で一晩インキュベーションした後、スライドを、それぞれ5分間、CitroSolvで3回洗浄して脱パラフィン化し、2回のアルコール洗浄により脱水して空気乾燥させた。続いて、FFPEセクションを、Pretreatment試薬(Abbott Molecular,IL)で30分間、80℃でインキュベーションし、プロテアーゼII(Abbott Molecular,IL)で処理した後、水、及び一続きのエタノールで更に処理した。次に、乾燥したスライドを76℃にて、6分間プローブにより同時変性させ、一晩37℃にてハイブリダイゼーションした(ThermoBrite;Abbott Molecular)。ハイブリダイゼーション後の洗浄、及び対比染色を、前述のものに類似の方法で行った。
【0319】
コンピュータ駆動式イメージングシステム(BioView Duet,BioView Ltd.)を装着した蛍光顕微鏡を使用して、断面を確認した。各サンプルからの、最小で50個の非重複腫瘍細胞を、HER2及びCEP17ハイブリダイゼーションシグナルに対して計数した。スライドの分析のために、現在のHER2スコア付け基準及びガイドラインを使用した。細胞株が、2以上の、HER2:CEP17比率を有する、又は、2未満のHER2:CEP17比率を有し、細胞内の細胞核1個当たり6を超えるシグナルの平均HER2コピー数を有する場合、細胞株をFISH陽性であるとみなした。2未満のHER2:CEP17比率、及び、細胞核1個当たり4未満のシグナルの平均HER2コピー数を有するサンプルを陰性とみなし、2未満のHER2:CEP17比率、及び細胞核1個当たり4~6のシグナルの平均HER2コピー数を有するサンプルを、両方に取れるものとみなした。
【0320】
細胞HER2結合アッセイ
1Fab-IgGのルシフェラーゼ融合物の細胞結合-直接結合アッセイ:
96平底白色滅菌組織培養処理プレート(Thermo Scientific;カタログ番号136101)に細胞(SKBR3:ウェル当たり40,000個、MCF7:ウェル当たり200,000個)をプレーティングし、一晩接着させた。次に、細胞を結合緩衝液(PBS+3% BSA+0.05%アジ化ナトリウム;pH7.2)で洗浄し、結合緩衝液中の、様々な濃度(0.002nM~100nM)のTDBルシフェラーゼ融合タンパク質を各ウェルに添加した。次にプレートを4℃で4時間インキュベートし、その後、結合緩衝液で3回洗浄した。最後の洗浄の後、50μLのルシフェラーゼ基質(New England Biolab,カタログ番号E3300L)を含有する20μLの結合緩衝液を、各ウェルに添加した。Perkin Elmer Envision Plate Readerでルミネセンス値を読み取った。GraphPad Prismモデルの「One Site-Specific Binding」を使用して結合データを適合させ、抗体の結合親和性を測定した。
【0321】
1Fab-IgGのルシフェラーゼ融合物の細胞結合-競合結合アッセイ:
上述のとおりの細胞をプレーティングし、洗浄した。競合結合を測定するために、固定濃度のTDBルシフェラーゼ融合タンパク質(15nMの4D5-WT、又は50nMの4D5-H91A)を、結合緩衝液中で、濃度を増加させたTDB(0.007nM~400nM)と混合し、細胞に添加した。プレートを4時間、4℃にてインキュベートし、上述のとおりに読み取った。GraphPad Prismモデルの「One Site-Fit Ki」を使用して結合データを適合させ、抗体の結合親和性を測定した。
【0322】
フローサイトメトリーによる細胞結合
50μLのFACS緩衝液(1% BSA、PBS中の2mM EDTA)内の96ウェル丸底プレート内で、ウェルあたり100,000個の細胞にて、MCF7及びSKBR3細胞をプレーティングした。試験物品を、50μg/mL又は10μg/mLのいずれかにて開始して、FACS緩衝液内で1:5に連続希釈し、氷上で30分間、細胞と共にインキュベートした。FACS緩衝液で細胞を2回洗浄し、FACS緩衝液中で、1:200希釈にて、100μLのAlexa 647 Goat Anti-Human IgG,Fcγ Fragment(Jackson ImmunoResearch No.109-606-098)に再懸濁し、氷上で30分間インキュベートした。ヨウ化プロピジウム(PI;eBioscience #00-6990-50)を1:100希釈で含有する100μLのFACS緩衝液に細胞を再懸濁し、BD FACSCaliberで分析した。
【0323】
血液細胞の分画
リンパ球分離培地(MP Biomedicals)を使用して、健常なボランティアの血液からヒト末梢血単核細胞(PBMC)を分離した。ヒトCD8単離キット(Miltenyi Biotec No.130-094-156)を使用して、ネガティブ選択により、CD8細胞を抽出した。
【0324】
T細胞の活性化
BD Biosciences(San Jose,CA)から、フローサイトメトリー細胞染色用の抗体を全て入手した。平底96ウェルプレート(BD)内で、試験物品の存在下において24時間、ヒトPBMC及び標的細胞(10:1の比)をインキュベートした。インキュベーション後、細胞を新しいV底96ウェルプレートに移した。細胞を抗CD8-FITC、抗CD69-PE、及び抗CD25-APCで染色した。フローサイトメトリーにより、CD69及びCD25の表面発現をCD8+T細胞で検出した。CD8+CD69+CD25+の割合をT細胞の活性化として報告した。HER2とは独立したT細胞の活性化を測定するために、TDB又はOKT CD3抗体と共に24時間、Jurkat-Dual NF-κΒ/IRF受容体細胞(Invivogenカタログ番号 jktd-isnf)を37℃でインキュベートした。各ウェルから10μLの上清を取り除き、白色で底が透明の96ウェルプレートに添加した。100μLのQuantiluc溶液を(Invivogen)回収した上清に添加し、Perkin Elmer Envisionプレートリーダーでプレートを読み取った。
【0325】
インビトロアポトーシス
培養培地内で、ウェルあたり10,000個の細胞で、底が透明の黒色96ウェルプレート(Corning No.3904)に標的細胞をプレーティングして、37℃、5% COインキュベータに一晩配置した。試験物品、50,000個の精製したCD8細胞、及び1:1000のカスパーゼ3/7試薬(Essen No.4440)の1:1000希釈液を、予めプレーティングした細胞に添加し、Incucyte zoomに配置した。4時間ごとに、40時間にわたり画像を収集し、1mm当たりのアポトーシス事象の数を分析した。
【0326】
細胞生存能
10% FBS、ペニシリン(100U/mL)、ストレプトアビジン(100μg/mL)、及びL-グルタメート(0.2mM)を補充したRPMI内で細胞を増殖させ、コンフルエンスにした。PBS系細胞解離培地を用いて細胞を解離させ、底が透明の黒色96ウェルプレートに、ウェル当たり10,000個の細胞の密度でプレーティングした。4日目に培地を廃棄し、プレートをPBSで2回洗浄した。100μLのCELLTITER-GLO(登録商標)発光細胞生存能試薬(Promegaカタログ番号G7570)を添加し、取扱説明書に記載のとおりに、照度計上でプレートを読み取った。
【0327】
乳癌細胞増殖
CD8細胞をエフェクターとして、3:1(エフェクター:標的)の比で使用した。CELLTITER-GLO(登録商標)発光細胞生存アッセイ(Promega)を使用して、乳癌細胞増殖/生存能を検出した。アッセイのために、ウェルあたり15×10個の細胞を96ウェルプレートにプレーティングし、処理前の細胞付着のために一晩インキュベートした。
【0328】
インビボ有効性
メスNODスキッドガンマ(NSG)マウスを、Jackson Laboratoryから入手した。マウスにて、ヒトPBMCをエフェクター細胞として使用した。リンパ球分離培地(MP Biomedical,LLC,Salon,Ohio)を使用して、健常なドナーの血液からPBMCを精製し、-80℃にて冷凍保存した。マウスに移植する前に、PBMCを解凍して、RPMI培地含有の10% FBS中で、37℃、5% CO2にて一晩培養した。腫瘍細胞播種の1日後に、100μLのHank’s平衡塩溶液(HBSS)緩衝液の体積で、マウス1匹当たり10×10個の細胞の濃度で、PBMCをマウスに腹腔内播種した。HER2増幅乳癌の処置における有効性を評価するために、右胸部乳房脂肪パッドに皮下投与を行うことで、動物にHBSS/MATRIGEL(登録商標)内の3×10個のKPL-4腫瘍細胞を播種した。HER2低発現腫瘍の処置における活性を評価するために、HBSS内の5×10個のHT55腫瘍細胞を動物に皮下播種した。図の一覧に示すように、0日目において、単回投与処置を静脈内投与した。
【0329】
カニクイザルの安全性及び薬物動態(PK)研究
11匹のメスカニクイザル(Macaca fascicularis;投与開始時の年齢及び体重は、24~60ヶ月、及び2~5kgの範囲)を無作為に、3つの群に割り当てた。動物は、2mL/kg/時間の体積で、1時間の静脈内注射により、ビヒクル対照(N=3)、又は3mg/kg(N=3)にて抗HER2-CD3 4D4-H91A 1Fab-IgG TDB、又は20mg/kg(N=5)にてTDBを受けた。動物の、痛み又は苦痛のあらゆる異常及び徴候を、1日2回監視した。更なるエンドポイントは、食物摂取、体重、身体検査、体温、呼吸速度、及び心拍数を含んだ。
【0330】
PK分析
研究を通して、様々な時点でカニクイザルの血液を収集し、薬学動態を評価した。血液を室温で少なくとも30分間、凝固させた。収集から1時間以内に、サンプルを2~8℃にて、約1500~2000xgで遠心分離した。分析のために、輸送されるまで、血清-60℃~-80℃にて保管するように収集した。GRIP ELISA(Yang et al.,Journal of Immunological Methods 2008,335:8-20)により、血清PKサンプルを分析した。血清濃度-時間プロファイルを使用して、非区画分析(WinNonlin、バージョン5.2.1;Pharsight Corporation,Mountain View,CA)を使用し、以下のPKパラメータを推定した:血清濃度-時間曲線(AUC)、抗体クリアランス(CL)、及び観察される最大血清濃度(Cmax)の下での面積として定義される、合計の薬剤曝露。各動物を個別に分析し、各投与群の結果を平均±標準偏差(SD)としてまとめた。
【0331】
臨床での病状
投与前段階の間、並びに研究の2日目及び8日目に少なくとも2回、凝固試験のために、抗凝血物質のクエン酸ナトリウムを含有する、又は、血液学試験のために、カリウムEDTAを含有するチューブに、血液を収集した。
【0332】
BIACORE(登録商標)
抗HER2 Fab又は抗HER2/CD3 T細胞依存性の二重特異性(TDB)抗体の結合動態を、BIACORE(登録商標)T200又は8K機器(GE Healthcare)で表面プラズモン共鳴を使用して測定した。37℃で30μL/分の流速で、かつ、10mM HEPES(pH7.2)、150mM NaCl、0.05% Tween20、及び1mM EDTAのランニング緩衝液(HBS-EP緩衝液)を使用して、全ての動態実験を実施した。ヒトHER2細胞外ドメイン(ECD;Sino Biologicals 10004-H08H若しくはNovus Biologicals NBP1-94702)、又はカニクイザルHER2 ECDを、アミンベースのカップリングにより、CM5センサチップ上に不動化した。ヒトHER2 ECDに関して、0.27~200nMの範囲の、3倍希釈系列の抗HER2 Fab又はTDBを使用して、結合を分析した。カニクイザルHER2 ECDに関して、87.8~1000nMの範囲の、1.5倍希釈系列の抗HER2 Fabを使用して、結合を分析した。180秒の注入時間、続いて300秒の解離時間及び、50mM HClを用いた表面の再生を使用して、HER2を結合するためのセンサーグラムを記録した。定常状態結合モデルを使用して動態及び結合定数を計算した、カニクイザルHER2への4D5 Fabバリアントの結合を除いて、1:1ラングミュア結合を使用して、抗体に対する抗原結合を観察したセンサーグラム全てを分析した。カニクイザルHER2に対する弱い親和性を測定するためには高濃度のFabが必要であるが故に、緩衝効果を防止し、正確な測定を確実にするために、実験前に、Fabバリアント全てを、HBS-EP緩衝液にバッファー交換した。4D5バリアント全ての質量を、質量分析法により確認した。
【0333】
実施例2.抗HER2/CD3 IgG TDBのHER2親和性は、HER2過剰発現細胞に対する選択性にではなく、殺活性に直接的な効果を有する
各結合アームに対して一価である、抗HER2/CD3二重特異性抗体は、HER2増幅したインビトロ及びインビボ乳癌モデルにおいて、ロバストな活性を有することが示されている。しかし、IgG TDBフォーマットは、通常のHER2陽性ヒト上皮細胞と同様に、少量のHER2を発現する細胞株に対する、低レベルの活性もまた保持する。オンターゲットオフ腫瘍活性のリスクを最小限にするために、HER2増幅細胞に対する、抗HER2/CD3 TDBの選択性を増加させることにより、HER2標的化TDBの治療指数を増加させることが望ましい。最初に、HER2増幅細胞に対するIgG TDBの選択性における、HER2親和性の影響を調査した。0.3~213nMの範囲のFabとしての一価の結合親和性を有する抗HER2 4D5の複数のバリアント(表4)を生成した。全てのバリアントに関して、親和力低下の主たる要因は、解離速度(k)の増加(即ち、より速い解離速度)であった一方で、会合速度(k)は変化しないままだった。
【0334】
【0335】
一次選択性試験のために、SKBR3及びMCF7をモデル細胞株として使用した。SKBR3はHER2増幅乳癌細胞株である一方で、MCF7は、培養した心筋細胞などの、非癌性細胞で検出される量と同様の少量のHER2を発現する乳癌細胞株である(図1)(Junttila et al.Cancer Res.74(19):5561-5571,2014)。SKBR3及びMCF7細胞における、HER2の細胞膜コピー数はそれぞれ、細胞1個当たり2×10個、及び細胞1個当たり1.5×10個と報告されている(Aguilar et al.Oncogene 18(44):6050-6062,1999)。HER2結合親和性が低下することにより、SKBR3及びMCF7細胞株の両方において、抗HER2 IgG TDBの殺活性が徐々に低下した(図2A~2F)。HER2に対して49nM以上の親和性を有するIgG TDBにより、殺活性は実際的に消滅した。同様の活性レベルが、SKBR3及びMCF7細胞で観察された。まとめると、一価のHER2親和性は、抗HER2/CD3 IgG TDBの活性において重要な役割を果たすが、HER2を過剰発現する細胞に対する選択性には影響を及ぼさなかった。
【0336】
実施例3。HER2を過剰発現する細胞に対する選択性における、二価の低親和性HER2結合の影響の特性決定
一価の4D5親和性バリアントをベースにして、二価のHER2結合及び一価のCD3結合(1Fab-IgG TDBフォーマット)を有する抗体を構築した(図3)。SKBR3細胞(図4A及び7A)、並びにMCF7細胞(図4B及び7B)に対する細胞結合について、並びに、SKBR3及びMCF7細胞のアポトーシス(図5A及び5B)並びに殺傷(図6A~6C、及び8)を媒介する能力について、1Fab-IgG TDBを試験した。複数の4D5 1Fab-IgG TDBバリアントは、野生型4D5をベースにする一価の高親和性HER2アームを有する対照IgG TDB(トラスツズマブ)と比較して、SKBR3及びMCF7細胞に対して同様の結合を示した(図4A及び4B)。Y55E.H91A、Y100aA、又はN30A.H91A置換(それぞれ、172、213、及び353nMの一価のK)により、一価の高親和性HER2 IgG TDBフォーマットと比較して、1Fab-IgG TDBフォーマットにおいて、実質的に低下した細胞結合がもたらされた(図7A及び7B)。低い結合は、実質的に低下した、SKBR3細胞の殺傷を反映した(図8)。1Fab-IgG TDBフォーマットにおける、Y102V及びY55E.Y102V置換(それぞれ、0.3及び2.6nMの一価のK)により、対照IgG TDBと比較して、SKBR3及びMCF7細胞株の両方に対して、同様の結合がもたらされた(図4A及び4B)。細胞結合に一致して、Y102V及びY55E.Y102V 1Fab-IgG TDBバリアントは、低HER2発現MCF7細胞の殺傷における実質的な潜在能を示した。このことは、これらの改変が、HER2を過剰発現する細胞に対する選択性を改善しなかったことを示唆している(図5A、5B、6B、及び6C)。
【0337】
2つの4D5バリアントである、D98A.F100A.Y102V及びH91A(それぞれ、23及び49nMの一価のK)は、MCF7細胞に対する最小限の結合のみを示しながら、SKBR3細胞に対して高い細胞結合を維持した(図4A、4B、5A、及び5B)。この細胞結合は、殺活性にて反映された。特に、D98A.F100A.Y102V及びH91A 1Fab-IgG TDBバリアントは、SKBR3細胞の強力なアポトーシス及び殺傷を誘発したが、非常に高濃度(50ng/mL~50μg/mL)であるにもかかわらず、低HER2発現MCF7細胞の殺傷を媒介することはできなかった。一価の高HER2親和性HER2-IgG TDBのインビトロ活性は、約10ng/mLの濃度にて飽和することが報告されている(Junttila et al.Cancer Res.74(19):5561-5571,2014)。これらの結果は、従来の抗体に対して増強された1Fab-IgG TDBのアビディティにより、HER2を過剰発現する細胞の選択性を増強することが可能であることを示唆している。選択性の増加をもたらした一価の親和性(K)のウィンドウは、Fabとして測定すると、20~50nMの範囲であった。親和性の低下が小さいと選択性が改善されず、親和性の低下が大きいと、TDBの潜在能が著しく損なわれる。
【0338】
実施例4。HER2を過剰発現する細胞に対する1Fab-IgG TDBフォーマットの増強された選択性の特性決定
4D5のH91A-1Fab-IgG TDBバリアントを選択して、インビトロ活性を更に分析した。一価の高HER2親和性IgG TDBと比較して、SKBR3における4D5 H91A-1Fab-IgG TDB活性はほぼ同一であったことを、用量反応研究は示した(図9;それぞれEC50 6.9及び6.3pM)。IgG TDBとは対照的に、MCF7細胞に対しては、あらゆる投与量の1Fab-IgG TDBにおいて、活性は見られなかった(図9)。90個の乳癌細胞株を適宜、高(>400nRPKM(100万個のマッピングした読み取り当たりの、転写長さ1キロベース当たりでの正規化読み取り))、中(50~400nRPKM)、及び低(<50nRPKM)に分けた。HER2-RNA発現をベースにするHER2発現細胞は、Klijn 2015に報告されている(図10;Klijn et al.Nat.Biotechnol.33(3):306-312,2015)。選択性研究を、変更可能なHER2発現量で、15個の細胞株に拡張した。高用量レベル(50ng/mL)において、一価の高HER2親和性IgG TDBに対して、T細胞の活性化とHER2発現との間には、明確な相関は見られなかった(図11A~11D)。はっきりと対照的に、H91A親和性バリアント1Fab-IgG TDBを試験したときに、最も高いHER2発現量を有する細胞株においてのみ、T細胞の活性化が誘発された(図12A~12D)。同様に、標的細胞の殺傷は、1Fab-IgG TDB分子を有する高HER2発現細胞株に限られたが、高HER2親和性IgG TDBは、高用量レベルにて使用した場合に、低HER2発現細胞の殺傷の誘発においてもまた、広範囲にわたって活性であった(図11A~11D、及び12A~12D)。50ng/mL用量の対照IgG TDBにより、低HER2発現細胞のT細胞の活性化及び殺傷が誘発された一方で、50μg/mLの1Fab-IgG TDBは、低HER2発現細胞の生存能に影響を及ぼさなかった。したがって、HER2に対する対照IgG TDBと比較した、1Fab-IgG TDB分子の選択性の改善は、1000倍以上であると計算された。
【0339】
活性を、肺、皮膚、及び胸組織に由来するヒトの非癌細胞株で、更に試験した。フローサイトメトリーにより試験した非癌性細胞の全てにおいて、低量のHER2発現を確認した。表5は、これらの細胞の特性決定、並びにIgG TDB及び1Fab-IgG TDBの結合を示す。
【0340】
【0341】
H91A親和性バリアント1Fab-IgG TDBは、≦5μg/mLの濃度で、試験した8つの細胞のいずれに対しても、アポトーシス活性を示さなかった。HBL-100細胞で培養した1Fab-IgG TDBとIgG TDBとの用量反応曲線の相対比較により、H91A-1Fab-IgG TDBとは対照的に、H91A-IgG TDBは、低HER2発現HBL-100細胞を殺傷することが示される(図13)。動態アッセイにより、経時的に、HBL-100殺傷におけるH91A-IgG TDBの用量依存が確認され、更に、H91A-1Fab-IgG TDBが誘発する殺傷が、70時間にわたって最小限であることが示される(図14A及び14B)。これらの結果は、1Fab-IgG TDBのインビトロ潜在能は、高HER2発現細胞株の殺傷における、一価の高HER2親和性IgG TDBに類似していることを示している。しかし、1Fab-IgG TDBは、試験した低HER2発現細胞株の全てにおいて、検出可能な活性を有しなかった。このことは、1Fab-IgG TDBがHER2を過剰発現する細胞に対して選択的であることを示唆している。
【0342】
H91A親和性バリアント1Fab-IgG TDBの活性に必要なHER2発現量の閾値を、次に調査した。様々なHER2発現プロファイルを有する13個の標的細胞株を用いる1Fab-IgG TDBのインキュベーションの際に、細胞1個当たり200,000を超えるHER2分子のコピー数にてHER2を発現する標的細胞において、殺傷が観察された(図15A)。特に、≧489nRPKMのHER2 RNAを発現する全ての細胞株(即ち、≧290,579のコピー数にてHER2を発現する細胞株)において、ロバストな殺活性が検出された。≦260nRPKMのHER2 RNAを発現した全ての細胞株(即ち、≦146,208のコピー数にてHER2を発現する細胞株)において、最小の活性が検出された。Quantum-Alexa647 MESFビーズを使用するFACSにより、各細胞株に対するHER2コピー数を定量化し、結果を下表6にまとめている。
【0343】
【0344】
臨床的に確認されたHER2診断試験に対して活性を更にベンチマークし、患者の選択に使用した。試験した細胞株のうちの20個の細胞から、H91A親和性バリアント1Fab-IgG TDBを使用すると、IHC 3+、FISH+細胞株においてのみ、実質的な殺活性が確認された(図15B及び15C)。
【0345】
実施例5。HER2を過剰発現する腫瘍に対する、1Fab-IgG TDBのインビボ選択性の評価
H91A親和性バリアント1Fab-IgG TDBのインビボ活性を評価した。ヒトPBMCを補充したNSGマウスに、HER2増幅KPL4腫瘍又はHT55腫瘍を移植した。これは、MCF7細胞と同様のレベルのHER2を発現した(図16)。H91A-1Fab-IgG TDBは、0.5~5mg/kgの単回用量に応答して用量退行を誘発した(図17)。一方で、一価の高HER2親和性IgG TDBは、0.05mg/kgの用量にて退行を誘発した。これらは、1Fab-IgG TDBが約10倍未満でインビボにて活性であることを示す。インビトロの結果に基づき予想されるように、HT55腫瘍の処置において、より低い活性が検出された(図18)。一価の高HER2親和性IgG TDBは、0.1mg/kgの単回用量にてHT55腫瘍の退行を誘発した。H91A-1Fab-IgG TDBは、≦50mg/kgの用量にて、HT55腫瘍の処置におけるあらゆる抗腫瘍活性を有しなかった。両方の分子が、HER2増幅腫瘍の処置において非常に強力であることを、これらの結果は示し、HER2増幅癌でのHER2の発現レベルに基づき、前向きな治療指数を指示する。H91A-1Fab-IgG TDB HER2 TDBは、通常の、低量の(例えば、通常のヒト組織に類似した)HER2を発現する腫瘍と比較して、HER2増幅腫瘍に対して、100倍以上のインビボ選択性を示した。
【0346】
実施例6。増強された選択性に対するHER2親和性の調整
1Fab-IgG TDBフォーマットにおける改善された選択性を示した2つの4D5バリアントである、D98A.F100A.Y102V及びH91A(それぞれ、23及び49nMの一価のK)を、更なる特性決定のために選択し、HER2を過剰発現する細胞に対する最大の選択性を達成するのに最適な親和性を同定した。SKBR3細胞に対するインビトロ用量反応アッセイにおいて、D98A.F100A.Y102V及びH91Aバリアントは、ほぼ同一の活性を示した(図20)。両方の分子が、HER2増幅KPL4腫瘍異種移植片の処置において、0.5mg/kgの用量でのロバストな抗腫瘍活性を示した(図17及び19)。高濃度(50ng/mL)の1Fab-IgG TDBバリアント、H91A-1FabIg(図21A、23A、及び25A)、並びにD98A.F100A.Y102V(図21B、23B、及び25B)を用いて、高、中、又は低レベルのHER2を発現する複数の細胞株を処置することにより、インビトロ活性アッセイを延ばした。細胞株の応答はおおむね、両方の分子と同様であった。しかし、H91Aバリアントと比較して、D98A.F100A.Y102Vバリアントの潜在能が高いというはっきりとした傾向が観察された(図22、24、及び26)。この傾向が低HER2発現細胞にて検出可能であったため、49nMの一価のKでHER2に結合する4D5 HVRにおけるH91A置換が、HER2を過剰発現する細胞に対して最大の選択性をもたらすことが測定された。
【0347】
実施例7。リンカー配列長さの効果の特性決定
二価の重鎖HER2結合及び活性における、抗HER2Fabを融合するリンカー配列の長さの効果を定量化するため、2つのリンカー配列を試験した(図27A)。以前の実験における全ての1Fab-IgG TDB分子は、遠位Fabの上部IgG1ヒンジに由来する天然DKTHT配列(配列番号50)を含む、延長されたリンカー配列(DKTHTGGGGSGG、配列番号52)、続いてGGGGSGG延長(配列番号51)を含んだ。延長されたリンカー配列を、天然DKTHT配列(配列番号50)のリンカーを有する1Fab-IgG TDB分子と比較した。リンカーの影響を、H91A-1Fab-IgG TDBを使用して試験した。SKBR3又はMCF7細胞に対する結合の差は、観察されなかった(図27B及び27C)。SKBR3殺傷におけるインビトロ用量反応、及び広範な細胞株活性スクリーンは、バリアント間でのほぼ同一の活性を示した。延長されたリンカーに対して、天然リンカーバリアントは、KPL4及びHT55腫瘍異種移植片の処置において同様の性能であった。HER2に対する一価の親和性が、23nM~49nMのKの範囲である抗HER2 1Fab-IgG TDBは、好ましい活性プロファイルを示すことを、これらのデータは示唆している。これらの研究において、HER2を過剰発現する細胞に対する最大の選択性は、H91A 4D5バリアントを使用して達成された(49nMのK)。
【0348】
実施例8。T細胞とは無関係な、トラスツズマブの抗シグナル伝達効果は、HER2に対する二価の親和性結合を有する1Fab-IgG TDB分子において弱められる
HER2増幅癌細胞において過剰発現したHER2にトラスツズマブを結合させることにより、制御緩和されたHER2-HER3複合体により示される、体質性リガンド独立性PI3Kシグナル伝達のロバストな干渉がもたらされる(Junttila et al.Cancer Res.74(19):5561-5571,2014)。1Fab-IgG TDB分子は、二価の形態でHER2に結合する。1Fab-IgG TDBと共にインキュベーションするSKBR3細胞のインビトロ処理により、HER3リン酸化の検出可能な影響なく、一時的な非耐久性のpAKTの減少がもたらされて(図28A)。更に、一価の高HER2親和性IgG TDBも、二価の低HER2親和性1Fab-IgG TDBも、実質的にSKBR3細胞の増殖/生存能に影響を及ぼさなかった(図28B)。まとめると、HER2への二価の低親和性結合は、HER2増幅細胞の増殖を阻害しない。
【0349】
実施例9。4D5抗体バリアントの、易罹病性固定バリアントとの組み合わせ
4D5抗体親和性バリアントの安定性を高めるために、易罹病性固定を導入した。アミド分解を低下させるために、4D5軽鎖残基N30をセリン残基で置換し(N30S)、4D5重鎖残基N54をグルタミン酸残基で置換した(N54E)。異性化を低下させるために、4D5重鎖残基D98を、アラニン残基(D98A)及び/又はスレオニン残基(D98T)で置換した。野生型4D5 Fab及びその親和性バリアント(4D5 Y55E.Y102V-Fab、4D5 D98A.F100A.Y102V-Fab、及び4D5 H91A-Fab;図29A~29D)、易罹病性固定バリアント(4D5 N30S-Fab、4D5 N54E.D98T-Fab、及びN30S.N54E.D98T-Fab;図30A~30C);並びに、易罹病性固定の親和性バリアント(4D5 N30S.Y55E.N54E.D98T.Y102V-Fab、4D5 N30S.N54E.D98A.F100A.Y102V-Fab、及び4D5 H91A.N30S.N54E.D98T-Fab;図31A~31C)の結合親和性を、BIACORE(登録商標)により定量化した。
【0350】
易罹病性固定を有する4D5親和性バリアントを生成し、特性決定した。各4D5 Fabバリアントの分子量(MW;ダルトン)を質量分析により測定し、凝集度をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により定量化した。結果を下表7に示す。観察された値と予想された値とのMWの、観察された差は、C末端リジンクリッピングに関連した。
【0351】
【0352】
一価の4D5アームを抗CD3(40G5c N297G)アームと会合させることにより、4D5親和性バリアントのバリアントをIgG TDB抗体にフォーマットした(例えば、その全体が本明細書に参照により組み込まれている米国特許出願公開第2015/095392号を参照のこと)。BIACORE(登録商標)により、抗体のヒトHER2への結合を試験した。結果を図32A~32Kに示し、下表8にまとめる。
【0353】
【0354】
H91A.D98T.F100A.Y102V-IgG TDB、Y55E.H91A.D98A.F100A.Y102V-IgG TDB、又はY55E.H91A.Y102V-IgG TDBバリアントでは、結合は検出されなかった。一般に、K値が低い(結合親和性が強力である)ことが、より遅いオフ速度と大いに関連した。IgG TDBフォーマットにおいて、Fabフォーマットと比較して、約2倍弱い親和性が観察された(表9及び10)。しかし、K比(4D5バリアントのKを4D5野生型のK割ったもの)を使用する場合、結果は、IgG TDB又はFabフォーマットのいずれかにおけるH91Aバリアントに対して、100~200の比較的一定の値となる。
【0355】
【0356】
Fabフォーマット内に4D5バリアントのパネルを生成し、IgG TDB(表9)又は1Fab-IgG TDBフォーマット(表10)のいずれかにおけるスクリーニングのための、一定範囲の親和性を得た。親和性及び動態は、H91Aバリアントで最も望ましいものであったため、このバリアントにおいて可能性のある分子の易罹病性の除去を行った。易罹病性は、HVR-L1の軽鎖位置N(30)T、並びにHVR-H2の重鎖位置N(54)G、及びHVR-H3のD(98)Gに含んだ。目的は、可能性のあるD(98)G異性化、並びに、可能性のあるN(30)T及びN(54)Gアミド分解を防止することであった。まず、合理的な設計を使用して、バリアントをスクリーニングした。しかし、図38に示すように、親和性の弱いバリアントを、高親和性バリアントと組み合わせても、予想した親和性は得られず、2つ又は3つのバリアントを組み合わせても、予想不可能な結果が得られた。例えば、Y55Eは典型的には、親和性を3.5~20倍弱めたが、ある場合においては、親和性の小さな増加がもたらされた。H91Aは親和性を91~163倍弱め、Y102Vは、親和性を増加させたか、変化させなかったかのいずれかであった。したがって、N30S.N54E.D98A/Tを使用して小さなマトリックスを試験し、分子の易罹病性を固定した。N30Sを使用して、HVR-L1における、可能性のあるアミド分解を防止した。これは親和性にほとんど、あるいは全く効果を有しなかった。N54E.D98Tは親和性を0.07nMまで増加させたため、約50nMのKを達成するために、親和性を弱める変異が必要であった。易罹病性固定に加えて、親和性変異Y55E、H91A、及び/又はY102Vを使用して、H91Aに対して同様の動態を有する2つのバリアントを同定した(表10)。4D5 N30S.Y55E.H91A.HC-N54E.D98T-Fabは3つ全ての易罹病性の固定を特徴とする一方で、4D5 Y55E.H91A.HC-N54E.D98T.Y102V-Fabは2つの易罹病性固定残基を特徴とする。これらは共に、約50nMのKを有する。別のバリアントの4D5 N30S.Y55E.H91A.N54E.D98T.Y102V-Fabは、均一でわずかに速いオフ速度を示し、70nMのKを有した。
【0357】
【0358】
表11に示すとおり、カニクイザルHER2(3.3nM)に対する、野生型4D5 Fabの一価の親和性は、ヒトHER2(0.3nM)よりもおよそ10倍弱かった。4D5 H91A-Fab親和性バリアント、及び易罹病性固定バリアントは、カニクイザルHER2に対して300nMを超える一価の親和性を示す(表12)。しかし、カニクイザルバリアント4D5 H91A-Fab及び4D5野生型の、カニクイザルHER2タンパク質に対するKの比率は、およそ100~200であり、ヒトフォーマットで観察されたものと同様の範囲内であった。
【0359】
【0360】
実施例10。4D5易罹病性固定親和性バリアントの特性決定
更なる特性決定のための、いくつかの4D5易罹病性固定親和性バリアントを選択した。Y55E.H91A.N54E.D98T及びY55E.H91A.N54E.D98T.Y102Vバリアントを、天然(短)リンカーを有する1Fab-IgG TDB抗体内にフォーマットし(ヒンジ;DKTHT)、用量反応アッセイでH91A-1Fab-IgG TDBと比較し、SKBR3(図33A)又はMCF7(図33B)標的細胞の殺傷を定量化した。各ウェルに、1.5×10個のSKBR3又はMCF7標的細胞を播種し、1:3のエフェクター:標的比で、PMBC由来CD8エフェクター細胞と同時培養した。結果を下表12にまとめる。
【0361】
【0362】
4D5 Y55E.H91A.N54E.D98T-1Fab-IgG TDB及び4D5 Y55E.H91A.N54E.D98T.Y102V抗体の、SKBR3細胞(図34A)及びMCF7細胞(図34B)への結合もまた、フローサイトメトリーによって特性決定した。概して、SKBR3細胞及びMCF7細胞に対する細胞傷害性及び結合の観点から、4D5 Y55E.H91A.N54E.D98T.Y102V-1Fab-IgG TDBは、4D5 H91A-1Fab-IgG TDBに類似していた。
【0363】
実施例11。細胞結合親和性
細胞ベースの親和性に対する、二価のHER2エンゲージメント、又はアビディティの寄与をより詳しく理解するため、SKBR3、MCF7、及び、トランスフェクションにより、MCF7に相当する量にてカニクイザルHER2を発現する細胞に対する、4D5-WT 1Fab-IgG TDB及び4D5-H91A 1Fab-IgG TDB分子の見かけの親和性を測定した(表13)。4D5と、一価のFabとしての親和性減衰4D5-H91Aバリアントとにおいては、164倍の差があったにもかかわらず、1Fab-IgG分子のSKBR3細胞に対する、細胞ベースの結合親和性は、直接の細胞結合、又は競合結合アッセイにより測定されるように、相当するものであった。SKBR3細胞で発現したHER2に対する4D5-H91A 1Fab-IgG TDBの見かけの親和性は、1.5~5nMの範囲であり、これは、BIACORE(登録商標)により測定した一価のFab親和性と比較して、約10倍高かった。一価のFabの低親和性は、細胞との関係における、HER2への二価の結合により媒介されるアビディティにより損なわれる可能性があることを、この結果は示唆している。対照的に、4D5-H91A 1Fab-IgG TDBは、MCF7、又はHER2を発現する細胞に対する実質的な結合は示さなかった(直接細胞結合においては、共にKが>100nMであり、競合結合においては結合は検出されなかった)。このことは、これらの細胞における少ないHER2コピー数は、二価のHER2のエンゲージメントには不十分であることを示唆している。結果を表13にまとめている。
【0364】
【0365】
TDBが媒介する標的細胞殺傷における、CD3結合親和性の効果もまた評価した。低親和性40G5c抗CD3アームを有する4D5-H91A 1Fab-IgG TDB(「40G5c 4D5-H91A 1Fab-IgG TDB」;CD3 約50nMのK)を、高親和性38E4v1抗CD3アームを有する類似の4D5-H91A 1Fab-IgG TDB(「38E4v1 4D5-H91A 1Fab-IgG TDB」;CD3 約1nMのK)と比較した。高HER2発現標的細胞株のSKBR3を使用するインビトロ細胞殺傷アッセイにおいて、40G5c 4D5-H91A 1Fab-IgG TDBは、38E4v1 4D5-H91A 1Fab-IgG TDBと同様の、標的細胞殺傷の潜在能を示した(図37)。対照的に、低HER2発現標的細胞MCF7を使用する類似のアッセイにおいて、38E4v1 4D5-H91A 1Fab-IgG TDBは、40G5c 4D5-H91A 1Fab-IgG TDBよりも標的細胞殺傷において一層、実質的に強力であり、このことは、細胞殺傷能力が非常に小さいことを示した。下表14にまとめたこれらの結果は、低い抗CD3結合は、4D5-H91A 1Fab-IgG TDBの、多量のHER2を発現する細胞を選択的に殺傷する能力を劇的に向上させることを示している。
【0366】
【0367】
実施例12。高用量の4D5-H91A 1Fab-IgG TDBは、HER2と独立性したT細胞の活性化をもたらさない
Fc領域におけるN297G置換により、FcγR結合がTDBで弱められている。高濃度において、TDBが標的とは独立したT細胞の活性化を誘発しないことを確認するために、Jurkatレポーター細胞株を使用した(図38A)。HER2発現細胞の存在下においてレポーター細胞をTDBで刺激した際に、ロバストなシグナルが検出された。4D5-WT IgG TDBも、4D5 H91A 1Fab-IgG TDBも、HER2の不在下でT細胞を活性化しなかった。多量のTDBがヒトPBMCにスパイクされた(図38B)。二価の抗CD3(OKT-3)は、≧10ng/mLの濃度にてT細胞の活性化を誘発したが、100μg/mLの濃度では、T細胞の活性化は検出されなかった。このことは、TDBフォーマットも、高濃度にてHER2とは独立したT細胞の活性化を誘発しないことを示す。
【0368】
実施例13。4D5-H91A 1Fab-IgG TDBは限定的な薬理活性を有し、カニクイザルにて十分許容される
カニクイザル(カニクイザル)組織は、ヒトの通常組織と同様に、低量のHER2を発現する。4D5-H91A 1Fab-IgG TDBは、低度から中度のカニクイザル-HER2を発現する細胞に、実質的に結合しない、又はこの細胞のアポトーシスを誘導しない(表13)。4D5-H91A 1Fab-IgG TDBの忍容性を試験するために、単回投与忍容性試験を設計し、カニクイザルにおける薬力学活性(PD)及び薬学動態(PK)を試験した。3mg/kg(n=3)及び20mg/kg(N=5)用量レベルで低速静脈内注射により、メスザルに投与をした。忍容性/PK/PDは、臨床観察、臨床化学、血液学、サイトカイン、及びPKを含んだ。組織病理学は分析に含めなかった。臨床観察において、試験物品関係の変化は検出されなかった、又は最小限に検出された(体重、心拍数、温度、呼吸速度)。典型的なTDB関連薬理学及び臨床病状応答(Bargou et al.,Science 2008,321:974-977;Lutterbuese et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.2010,107(28):12605-12610)は、著しく存在しなかった(図38C)。C反応性タンパク(CRP;炎症の急性反応体及びマーカー)の量は、バックグラウンドの量にて維持された。高いTDB用量にもかかわらず、リンパ球辺縁趨向、肝臓酵素(アラニン及びアスパルテートアミノトランスフェラーゼ;ALT及びAST)上昇、又は末梢血サイトカイン(図示せず)は検出されなかった。これらを合わせると、4D5-H91A 1Fab-IgG TDBは高用量レベルにて十分耐用性であり、カニクイザルにおいて限定的な薬理活性を示した。
【0369】
TDB曝露は、試験した用量レベル、及び通常のPK特徴の両方で確認された(図38D)。曝露はほぼ用量に比例して、最後に評価した時点まで維持された(14日間)。TDBがカニクイザルにて不活性化されていないことを確認するため、20mg/kgのTDBを投与した7日後、及び14日後に収集したサンプルから、血清のアリコートを回収し、血清希釈液を使用して、健常なドナーヒトT細胞を使用して、SKBR3細胞のインビトロでの殺傷を媒介した(図38E)。未希釈のサンプルにおいて測定したTDB血清の濃度はそれぞれ、7日目のサンプルで193μg/mL、14日目のサンプルで65μg/mLであった。高(1μg/mL)濃度にて新鮮なTDBを使用する平行殺傷アッセイで達成した最大活性と比較して、投与の14日後の血清を100倍に希釈すると、同様のレベルのSKBR3殺傷を誘発した。これは通常、活性を飽和させるのに十分である。これらを合わせると、通常のカニクイザル組織における低HER2発現は、低量のHER2を発現する通常の組織にて、T細胞の活性化又はオフ腫瘍T細胞活性をトリガするのに十分ではないことを、このデータは示唆する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A-B】
図11C-D】
図12A-B】
図12C-D】
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
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図26
図27
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図29
図30
図31
図32A-D】
図32E-H】
図32I-K】
図33
図34
図35A
図35B
図35C
図36
図37
図38A-B】
図38C
図38D-E】
図39
【配列表】
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