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特許7475276FGF21バリアント、融合タンパク質及びそれらの適用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】FGF21バリアント、融合タンパク質及びそれらの適用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20240419BHJP
   C07K 14/50 20060101ALI20240419BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240419BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20240419BHJP
   C07K 14/605 20060101ALI20240419BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240419BHJP
   C12N 15/16 20060101ALI20240419BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240419BHJP
   A61K 38/18 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
C12N15/12
C07K14/50 ZNA
C07K19/00
C07K16/00
C07K14/605
C12N15/13
C12N15/16
C12N15/62 Z
A61K38/18
A61P3/10
A61P3/00
A61P3/06
A61P3/04
A61P1/16
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020542967
(86)(22)【出願日】2019-01-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 CN2019073686
(87)【国際公開番号】W WO2019154189
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2021-11-10
(31)【優先権主張番号】201810129589.3
(32)【優先日】2018-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515014990
【氏名又は名称】サンシャイン・レイク・ファーマ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SUNSHINE LAKE PHARMA CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Northern Industrial Area,Songshan Lake,Dongguan,Guangdong 523000,China
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】チャオ・チェン
(72)【発明者】
【氏名】シュシャン・リン
(72)【発明者】
【氏名】ユ・リ
(72)【発明者】
【氏名】シャオフェン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】ウェンジア・リ
(72)【発明者】
【氏名】リャン・リウ
(72)【発明者】
【氏名】ジェン・フ
【審査官】斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/065439(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/074123(WO,A1)
【文献】特表2014-527986(JP,A)
【文献】特表2012-525847(JP,A)
【文献】特表2008-511323(JP,A)
【文献】特表2015-533483(JP,A)
【文献】特表2020-509761(JP,A)
【文献】HECHT, R. et al.,Rationale-Based Engineering of a Potent Long-Acting FGF21 Analog for the Treatment of Type 2 Diabetes,PloS one,2012年,Vol. 7, Issue 11,e49345
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1に示すアミノ酸配列と比較してアミノ酸置換を含むFGF21バリアントであって、
前記FGF21バリアントのアミノ酸配列において、前記アミノ酸置換は、
アミノ酸置換がS167Hである167位のアミノ酸置換(i)と、
アミノ酸置換がL98Rである98位のアミノ酸置換(ii)と、
アミノ酸置換がP171A又はP171Gである171位のアミノ酸置換(iii)と、
アミノ酸置換がR175L、R175P又はR175Hである175位のアミノ酸置換(iv)と、
を含
FGF21と比較して、標的タンパク質との相互作用を直接増強し、in vivoでその生物学的活性を直接増強する、
FGF21バリアント。
【請求項2】
前記アミノ酸置換がG113R; L114Q及び/又はR135Cからなる群から選択される1つ又はそれ以上のアミノ酸置換を更に含む、請求項1に記載のFGF21バリアント。
【請求項3】
前記アミノ酸置換が、以下の組合せのアミノ酸位置:
a) L98R、S167H、P171A/G及びR175L/P/H;並びに
b) L98R、G113R、L114Q、R135C、S167H、P171A/G及びR175L/P/H
のいずれか1つから選択されるアミノ酸置換を含む、請求項1に記載のFGF21バリアント。
【請求項4】
配列番号3~4及び配列番号35~37のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のFGF21バリアント。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のFGF21バリアントを含む融合タンパク質。
【請求項6】
IgG定常領域ドメイン又はその断片を更に含む、請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
IgG定常領域ドメイン又はその断片が配列番号5又は6のアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
前記FGF21バリアントのN末端が、前記IgG定常領域ドメイン又はその断片のC末端に直接的又は間接的に結合されている、請求項6又は7に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
配列番号10~14のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項5~8のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
GLP-1受容体アゴニスト部分を更に含む、請求項6~8のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
前記GLP-1受容体アゴニスト部分が、配列番号15又は配列番号28のアミノ酸配列を含む、請求項10に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
前記IgG定常領域ドメイン又はその断片及び前記GLP-1受容体アゴニスト部分を含み、前記GLP-1受容体アゴニスト部分のC末端が、前記IgG定常領域ドメイン又はその断片のN末端に直接的又は間接的に結合されている、請求項10又は11に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
前記IgG定常領域ドメイン又はその断片、前記GLP-1受容体アゴニスト部分、及び前記FGF21バリアントを含み、前記FGF21バリアントのN末端が、前記IgG定常領域ドメイン又はその断片のC末端に直接的又は間接的に結合されている、請求項10~12のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
配列番号17~18のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項10~13のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項15】
請求項5~14のいずれか一項に記載の2つ以上の融合タンパク質を含むタンパク質多量体。
【請求項16】
ホモ二量体である、請求項15に記載のタンパク質多量体。
【請求項17】
請求項1~4のいずれか一項に記載のFGF21バリアント又は請求項10~14のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードする単離した核酸分子。
【請求項18】
請求項1~4のいずれか一項に記載のFGF21バリアント、請求項5~14のいずれか一項に記載の融合タンパク質又は請求項15若しくは16に記載のタンパク質多量体、並びに任意選択により1つ又はそれ以上の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項19】
代謝性疾患の処置での使用のための請求項1~4のいずれか一項に記載のFGF21バリアント、請求項5~14のいずれか一項に記載の融合タンパク質又は請求項15若しくは16に記載のタンパク質多量体。
【請求項20】
前記代謝性疾患が、糖尿病、肥満及び脂肪肝から選択される、請求項19に記載のFGF21バリアント、融合タンパク質又はタンパク質多量体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、2018年2月8日に出願した中国特許出願第201810129589.3号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、代謝性疾患の処置に使用され得る、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)バリアント、融合タンパク質及び/又はそれらのタンパク質多量体に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、糖尿病の処置のための薬剤の3つのカテゴリーがある:経口小分子薬、インシュリン及びGLP-1受容体アゴニスト薬である。小分子薬の長期処置は、明らかな副作用をもたらし、糖尿病後の血糖コントロールが十分ではない。インシュリンによる糖尿病の処置は、複数回の注射(少なくとも1日1回)を必要とし、個々の投与量の違いによって低血糖が容易に誘発される。単一のGLP-1受容体アゴニストは、第一選択薬ではなく、糖尿病の異常な代謝によって引き起こされる心血管系の合併症に効果が限られている。
【0004】
グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)は、小腸上皮細胞によって分泌されるインクレチンのタイプである。それは膵β細胞を刺激してインシュリンを分泌し、患者のインシュリンバランスを維持する。天然のGLP-1はin vitroで2分間までしか生きられず、したがって薬剤として適さない。ここ数年、Eli Lilly社、Novo Nordisk社、GSK社を含むいくつかの会社が、血糖降下薬の長期作用GLP-1クラスを得るためにこのタンパク質を変換しようと競合してきた。II型糖尿病には、2つの主な特徴がある:抹消インシュリン耐性及び膵臓のベータ細胞のグルコース依存的インシュリン分泌の障害である。代謝性障害は、様々な複雑な因子によって引き起こされることが多く、複数の代謝経路の処置が更により可能性があると考えられる。
【0005】
FGF21はFGF(線維芽細胞増殖因子、FGF)ファミリーのメンバーの1つに属する。1976年の最初のFGF(FGF1又はaFGF)の発見以来、ファミリーの22個のメンバーがヒトの体で発見された。FGFの生物学的機能は非常に多様である。これまでのところ、研究により、FGFが細胞分化、増殖及び代謝を含む一連の生理学的活性の制御に関与することが見出された。FGF21遺伝子は、Nishimuraらによって初めてクローニングされた。2005年になって、FGF21の生物学的活性が新しい代謝制御因子として初めて明らかにされた。そのフォローアップ研究は、FGF21が、肝臓によって分泌される因子として重要な代謝制御に関与することを見出した。
【0006】
近年、FGF21は血糖制御の非常に良好な機能を有することが見出された。FGF21は、脂肪細胞によるグルコースの吸収を促進し、インシュリン感受性を増強することができる。同時に、インシュリンと比較して、FGF21は低血糖等の副作用を引き起こさず、膵β細胞を効果的に保護し、膵β細胞の再生及び修復を促進することができる。更に、その有糸分裂活性の欠如により腫瘍リスクの可能性をもたらさず、それはFGF21に非インシュリン薬としてII型糖尿病の有望な処置の大きな可能性を与える。別の態様では、インシュリンによって間接的に媒介されるGLP血糖降下薬とは異なり、FGF21自体がGLUT1受容体も刺激し、細胞へのグルコースの輸送を促進することができる。したがって、FGF21自体がI型糖尿病の処置のための薬剤となる可能性を有する。
【0007】
糖尿病の標的化に加えて、FGF21は良好な脂質低下作用も有し、脂質酸化を改善し、脂質分解及びケトン体生成を制御し、それにより体の脂質異常を改善することができる。それは脂質低下薬の可能性がある。体重増加及び血中脂質によって引き起こされる心血管疾患も、糖尿病患者の重大な合併症である。FGF21は、血糖をコントロールしながら体脂肪異常を十分に制御することができ、糖尿病合併症の発生を効果的に防止することができる。それは、単一の脂質低下薬及び非アルコール性脂肪肝を標的化する薬剤である可能性もある。
【0008】
しかしながら、FGF21はドラッガビリティにおいて大きな課題にも直面する。一態様では、FGF21は短い半減期を有する。その半減期は、マウスモデルでは約1時間だけである(Xuら、2009年)。その理由は、FGF21が体内でプロテアーゼによって急速に分解されるからであり、in vitroで凝集体を形成するその傾向は免疫原性ももたらし、半減期の延長の助けにならない。別の態様では、FGF21はin vivoで限定された生物学的活性を有し、その血糖降下能及び脂質低下能は、単独で利用可能な薬剤にするのに十分な強さではない。これらの要因により、これまでのところFGF21に基づく抗糖尿病薬は利用可能ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第94/20069号
【文献】国際公開第93/15722号
【非特許文献】
【0010】
【文献】M. Butler (IRL Press, 1991年) 及びSambrookら、Mammalian Cell Biotechnology: A Practical Approach
【文献】Wischke & Schwendeman, 2008年, Int. J. Pharm. 364:298~327ページ Freiberg
【文献】& Zhu, 2004年, Int. J. Pharm. 282:1~18ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
血糖及び脂質を低減するその生物学的活性を増強するため、in vivoでその作用を増強するためにFGF21を改変し、標的タンパク質とその相互作用を増強する必要がある。これまで、FGF21と標的タンパク質の相互作用を直接増強し、in vivoでその生物学的活性を直接増強する改変は見出されていない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一態様では、本発明はFGF21バリアントを提供する。FGF21バリアントのアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸配列と比較して1つ又はそれ以上のアミノ酸置換を含み、1つ又はそれ以上のアミノ酸置換は167位のアミノ酸置換を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、167位のアミノ酸置換はS167Hである。
【0014】
いくつかの実施形態では、1つ又はそれ以上のアミノ酸置換は、98位、171位、175位、113位、114位、及び135位からなる群から選択される1つ又はそれ以上の位置にアミノ酸置換を更に含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、1つ又はそれ以上のアミノ酸置換はL98Rのアミノ酸置換を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、1つ又はそれ以上のアミノ酸置換はP171A又はP171Gのアミノ酸置換を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、1つ又はそれ以上のアミノ酸置換はR175L、R175P又はR175Hのアミノ酸置換を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、1つ又はそれ以上のアミノ酸置換はG113Rのアミノ酸置換を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、1つ又はそれ以上のアミノ酸置換はL114Qのアミノ酸置換を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、1つ又はそれ以上のアミノ酸置換はR135Cのアミノ酸置換を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、1つ又はそれ以上のアミノ酸置換は、以下の組合せのアミノ酸位置のいずれか1つから選択されるアミノ酸置換を含む:a)L98、S167及びP171; b)L98、S167、P171及びR175;並びにc) L98、G113、L114、R135、S167、P171及びR175。
【0022】
いくつかの実施形態では、アミノ酸置換は、配列番号3~4及び配列番号34~37のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0023】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載のFGF21バリアントを含む融合タンパク質を提供する。
【0024】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、IgG定常領域ドメイン又はその断片を含む。いくつかの実施形態では、IgG定常領域ドメイン又はその断片は、IgG4 Fcドメインを含む。いくつかの実施形態では、IgG4 Fcドメインは、配列番号5又は6のアミノ酸配列を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、FGF21バリアントのN末端は、IgG定常領域ドメイン又はその断片のC末端に直接的又は間接的に結合されている。いくつかの実施形態では、FGF21バリアントのN末端は、IgG定常領域ドメイン又はその断片のC末端に第1のリンかーによって結合されている。いくつかの実施形態では、第1のリンカーは配列番号7又は8のアミノ酸配列を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号9~14及び配列番号26~27のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、GLP-1受容体アゴニスト部分を含む。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体アゴニスト部分は、GLP-1類似体を含む。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体アゴニスト部分は、配列番号15又は配列番号28のアミノ酸配列を含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、IgG定常領域ドメイン又はその断片及びGLP-1受容体アゴニスト部分を含み、GLP-1受容体アゴニスト部分のC末端は、IgG定常領域ドメイン又はその断片のN末端に直接的又は間接的に結合されている。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体アゴニスト部分のC末端は、IgG定常領域ドメイン又はその断片のN末端に第2のリンカーによって結合されている。いくつかの実施形態では、第2のリンカーは、配列番号7又は8のアミノ酸配列を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、第2のリンカーは、IgG定常領域ドメイン又はその断片、GLP-1受容体アゴニスト部分、及びFGF21バリアントを含み、FGF21バリアントのN末端は、IgG定常領域ドメイン又はその断片のC末端に直接的又は間接的に結合されている。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体アゴニスト部分のC末端は、IgG定常領域ドメイン又はその断片のN末端に第2のリンカーによって結合され、FGF21バリアントのN末端は、IgG定常領域ドメイン又はその断片のC末端に第1のリンカーによって結合されている。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は配列番号16~18のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0030】
別の態様では、本出願は、本明細書に記載の2つ又はそれ以上の融合タンパク質を含むタンパク質多量体を提供する。いくつかの実施形態では、タンパク質多量体はホモ二量体である。
【0031】
別の態様では、本出願は、本明細書に記載のFGF21バリアント又は本明細書に記載の融合タンパク質をコードする単離した核酸分子を提供する。
【0032】
別の態様では、本明細書は、単離した核酸分子を含むベクターを提供する。
【0033】
別の態様では、本明細書は、ベクターを含む細胞を提供する。
【0034】
別の態様では、本明細書は、FGF21バリアント、融合タンパク質、又はタンパク質多量体を調製する方法を提供する。方法は、FGF21バリアント、融合タンパク質、又はタンパク質多量体の発現及び/又は形成を可能にする条件下で、本明細書に記載の細胞を培養する工程を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、方法は、発現及び/又は形成されたFGF21バリアント、融合タンパク質、又はタンパク質多量体を回収する工程を更に含む。
【0036】
別の態様では、本明細書は、FGF21バリアント、融合タンパク質又はタンパク質多量体、並びに任意選択により1つ又はそれ以上の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0037】
別の態様では、本明細書は、代謝性疾患の処置のための医薬の製造におけるFGF21バリアント、融合タンパク質又はタンパク質多量体の使用を提供する。いくつかの実施形態では、代謝性疾患は、糖尿病、肥満及び脂肪肝から選択される。
【0038】
本開示の他の態様及び利点は、以下の詳細な説明から当業者に容易に理解される。本開示の例示的な実施形態のみが示され、以下の詳細な説明に記載される。当業者によって認識されるように、本開示は当業者に、本発明の精神と範囲から逸脱することなく開示された特定の実施形態を改変させることができる。したがって、本出願における本明細書の図面及び説明は、単に例示であり、制限するものではない。
【0039】
本出願における本発明の特定の特徴は、添付の特許請求の範囲に示される。本出願における本発明の特徴及び利点は、例示的な実施形態及び以下に詳細に記載する図面を参照することによってより理解され得る。図面の簡単な説明は以下の通りである:
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1は、一実施形態における本出願のタンパク質多量体の概略図を示す図である。
図2図2は、一実施形態における本出願のタンパク質多量体の概略図を示す図である。
図3図3は、本出願の融合タンパク質S5、S4、S2、S1及びS7のβklothoへの結合能を示す図である。
図4図4は、本出願の融合タンパク質S6、S4、S2及びS7のβklothoへの結合能を示す図である。
図5図5は、本出願の融合タンパク質S8、S7及びS1の血糖低下作用を示す図である。
図6図6は、本出願の融合タンパク質S8、S7及びS1の肝臓の保護作用を示す図である。
図7図7は、本出願の融合タンパク質S1及びS2の血糖低下作用を示す図である。
図8図8は、本出願の融合タンパク質D1及びD2の血糖低下作用を示す図である。
図9図9は、本出願の融合タンパク質D1及びD2のトリグリセリド(TG)を低減する作用を示す図である。
図10図10は、本出願の融合タンパク質D1及びD2の総コレステロールを低減する作用を示す図である。
図11図11は、本出願の融合タンパク質D2の血糖低下作用を示す図である。
図12図12は、本出願の融合タンパク質S2及びD2の精製の結果を示す図である。
図13図13は、本出願の融合タンパク質S2、D3及びD2の精製の結果を示す図である。
図14図14は、本出願の融合タンパク質D3及びD2の血糖低下作用を示す図である。
図15図15は、本出願の融合タンパク質S2、S1、S7及びS3の血糖低下作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本出願の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明に具体化され得る。しかしながら、本出願の実施形態は例示的な方法でのみ与えられると理解されるべきである。当業者には、本出願の本質及び範囲内で様々な変更及び改善がなされることが明らかである。
用語の定義
【0042】
ヒトFGF21野生型配列は、NCBI参照配列番号NP_061986.1の209アミノ酸を含有し;成熟FGF21配列は181アミノ酸を含有し、FGF21野生型が含有するリーダー配列を欠損する。本出願では、用語「天然のFGF21配列」は、通常、配列番号1のアミノ酸配列を有する成熟ヒトFGF21配列を指す。
【0043】
本出願では、用語「FGF21バリアント」は、通常、天然のFGF21のアミノ酸配列と比較して1つ又はそれ以上のアミノ酸残基の付加、欠失及び/又は置換を含有するポリペプチドを指し、基本的にFGF21の少なくとも1つの性質を依然として有する。FGF21バリアントは、天然又は非天然のアミノ酸を使用することによって天然のFGF21ポリペプチドの特定の位置で改変され得る。改変は、特定の位置に1つ又はそれ以上の保存又は非保存アミノ酸の挿入、置換又は欠失、並びに特定の位置に非アミノ酸構造の導入を含む。本明細書に記載のFGF21バリアントでは、FGF21バリアントのアミノ酸残基は、以下のように配列番号1の配列に番号付けされる。
HPIPDSSPLL QFGGQVRQRY LYTDDAQQTE AHLEIREDGT VGGAADQSPE SLLQLKALKP GVIQILGVKT SRFLCQRPDG ALYGSLHFDP EACSFRELLL EDGYNVYQSE AHGLPLHLPG NKSPHRDPAP RGPARFLPLP GLPPALPEPP GILAPQPPDV GSSDPLSMVG PSQGRSPSYA S (配列番号1)
【0044】
本明細書に記載のFGF21バリアントは、N末端トランケーション、C末端トランケーション若しくは内部欠失、又はこれらの任意の組合せであり得るアミノ酸の欠失も含み得る。N末端トランケーション、C末端トランケーション及び/又は内部欠失を含むこれらのバリアントは、本出願において「欠失バリアント」又は「断片」と呼ばれる。用語「欠失バリアント」又は「断片」は、本出願において交換可能に使用され得る。断片は天然に存在するものであっても(例えばスプライスバリアント)又は例えば遺伝的な手段によって人工的に構築されてよい。
【0045】
本出願では、用語「IgG定常領域ドメイン」は、通常、抗体重鎖定常領域、ヒンジ領域及び抗体軽鎖定常領域を含むポリペプチドドメイン又はポリペプチド断片を指す。抗体は、IgG抗体、例えばIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4サブタイプの抗体であってよい。
【0046】
本出願では、IgG定常領域ドメインの用語「断片」は、通常、IgG定常領域ドメインの一部を指すが、その活性の少なくとも一部を依然として維持する。例えば、断片は、CL、CH1、ヒンジ領域、CH2及びCH3の1つ又はそれ以上のドメイン又は断片を含み得る。
【0047】
本出願では、用語「Fcドメイン」は、通常、抗体のヒンジ領域、CH2及びCH3定常領域部分からなるドメインを指す。本出願では、IgG4 Fcドメインは、配列番号5又は配列番号6のアミノ酸配列を含み得る。
【0048】
本出願では、用語「GLP-1」は、通常、HAEGTFTSDV SSYLEGQAAK EFIAWLVKGR Gのアミノ酸配列を有する生物学的に活性なGLP-1(7~37)を指す。本明細書で使用する場合、「天然のGLP-1配列」は、天然のGLP-1(7~37)配列を指す。
【0049】
本出願では、用語「GLP-1類似体」は、通常、GLP-1の天然の生物学的活性を保持する類似体を指す。例えば、本明細書に記載のGLP-1類似体は、1~10(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10)アミノ酸置換(例えば保存アミノ酸置換)、欠失又は天然のGLP-1配列への挿入を導入することによって得られたポリペプチドを含み得る。GLP-1類似体は、GLP-1の天然の生物学的活性を維持しながらin vivoでGLP-1の半減期を延長することができる。いくつかの実施形態では、GLP-1類似体は、配列番号15又は配列番号28のアミノ酸配列を含み得る:
HG8EGTFTSDVSSYLEE22QAAKEFIAWLVKGG36G (配列番号15)。
HG8EGTFTSDVSSYLEE22QAAKEFIAWLVKGRG (配列番号28)。
【0050】
本出願では、用語「GLP-1の生物学的活性」は、通常、GLP-1によって誘導される様々な生物学的作用、例えば、インシュリン分泌の刺激、グルカゴン分泌の阻害、胃内容排出の阻害、胃又は腸運動の阻害、及び体重減少の誘導等を指す。GLP-1の最大の特徴は、低血糖と関連するリスクなく、インシュリン分泌を刺激できることである。
【0051】
本出願では、用語「保存アミノ酸置換」は、この位置でのアミノ酸残基の極性又は電荷にほとんど又は全く影響がないように、非天然の残基(すなわち野生型FGF21ポリペプチド配列の所与の位置に存在しない残基)によって置き換えられた天然のアミノ酸残基(すなわち野生型FGF21ポリペプチド配列の所与の位置に存在する残基)の残基を含むことができる。保存アミノ酸置換は、一般に生物系合成によるよりも化学ペプチド合成によって組み込まれる、天然に存在しないアミノ酸残基も含む。これらは、ペプチド模倣体、及びアミノ酸部分の他の反転形態(reverse form)も含む。
【0052】
天然に存在するアミノ酸残基は、共通の側鎖特性に基づき以下のクラスにグループ分けされ得る:
(1)疎水性残基:ノルロイシン、M、A、V、L、I;
(2)天然の親水性残基:C、S、T;
(3)酸性残基:D、E;
(4)アルカリ性残基:N、Q、H、K、R
(5)鎖の方向性に影響する残基:G、P;及び
(6)芳香族残基:W、Y、F。
【0053】
保存置換は、同じカテゴリーの別のメンバーと交換されるこれらのカテゴリーの1つのメンバーを含み得る。
【0054】
いくつかの保存アミノ酸置換はtable 1(表1)に示す:
【0055】
【表1】
【0056】
例えば、保存アミノ酸置換のいくつかの例は、Table 2(表2)に列挙され、0より大きな値は、2つのアミノ酸間の置換が保存アミノ酸置換であることを表す。
【0057】
【表2】
【0058】
本発明の融合タンパク質を形成する場合、必ずではないが、リンカー又はコネクターが使用され得る。リンカーが存在する場合、その化学構造は、主にスペーサーとして機能するためフレキシブルであり得る。リンカーは、ペプチド結合によって共に結合されたアミノ酸から構成され得る。本発明のいくつかの実施形態では、リンカーは、ペプチド結合によって結合された1~20個のアミノ酸からなる。例えば、1~20個のアミノ酸は、20個の天然のアミノ酸から選択される。いくつかの実施形態では、1~20個のアミノ酸は、グリシン、セリン、アラニン、プロリン、アスパラギン、グルタミン及びリジンから選択される。いくつかの実施形態では、リンカーは、空間的に遮られない複数のアミノ酸からなる。例えば、空間的に遮られないアミノ酸は、グリシン及びアラニンであり得る。リンカーは、例えば、(G)3-S、すなわち「GGGS」、(G)4-S、すなわち「GGGGS」及び(G)5-S、すなわち「GGGGGS」から選択され得るGリッチポリペプチドであってよい。いくつかの実施形態では、リンカーは、GGGGSGGGGS、GGGGSGGGGSGGGGS又はGGGGSGGGGSGGGGSAを含む。他の好適なリンカーは、GGGGGSGGGSGGGGS、GGGKGGGG、GGGNGSGG、GGGCGGGG及びGPNGGを含む。本明細書に記載のリンカーは、任意の長さ又は組成のリンカーであり得る。
【0059】
上記のリンカーは例示であり、本明細書に開示のリンカーはより長くてもよく、他の残基を含有してもよい。本明細書に記載のリンカーは、非ペプチドリンカーであってもよい。例えば、アルキルリンカー、例えば-NH-(CH2)S-C(O)-、式中s=2~20が使用され得る。これらのアルキルリンカーは、限定はされないが、低級アルキル(例えばC1~C6)、低級アシル、ハロゲン(例えば、Cl、Br)、CN、NH2又はフェニルを含む任意の非立体的に隠された基によって更に置換され得る。例示的な非ペプチドリンカーはポリエチレングリコールリンカーであってもよく、リンカーは100~5000kD、例えば100~500kDの分子量を有する。
【0060】
本出願では、「1つ又はそれ以上」の「それ以上」のアミノ酸置換は、通常、1つより多くのアミノ酸の置換を指す。例えば、1~30、1~20、1~10、1~5、又は例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30個のアミノ酸の置換。
【0061】
本出願では、「第1」及び「第2」は、説明を区別する目的のためだけであり、他の意味を持たない。
【0062】
本出願では、用語「含む(comprising)」は、通常、特定された特徴を指すが、他の要素を除外しない。
【0063】
本出願では、用語「タンパク質」及び「ポリペプチド」は交換可能に使用され、広い意味では、2つ又はそれ以上のアミノ酸、アミノ酸類似体又はペプチド模倣サブユニットからなる化合物を指す。2つ又はそれ以上のサブユニットはペプチド結合によって結合され得る。いくつかの実施形態では、2つ又はそれ以上のサブユニットは他の結合、例えば、エステル、エーテル、アミノ基等によって結合され得る。タンパク質又はポリペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含有しなければならず、タンパク質又はペプチド配列を構成し得るアミノ酸の最大数に制限はない。本出願では、用語「アミノ酸」は、通常、アミノ酸のD及びL光学異性体(例えばグリシン、そのD及びL光学異性体)、アミノ酸類似体及びペプチド模倣体を含む天然及び/又は非天然又は合成アミノ酸を指す。
【0064】
本出願では、用語「二量体」は、通常、タンパク質-タンパク質相互作用の形態を指す。例えば、それは2つの関連サブユニットから構成されるタンパク質-タンパク質複合体を含み得る。本出願では、用語「相同二量体」は、通常、2つの同一のサブユニット、例えば単量体から構成される二量体を指す。
【0065】
本出願では、用語「相同性」又は「同一性」又は「類似性」は交換可能に使用され、通常、2つのペプチド若しくはタンパク質間、又は2つの核酸分子間の配列類似性を指す。相同性は、比較目的のために並べられ得る各配列の位置を比較することによって決定され得る。比較された分子の配列の位置が同じ塩基又はアミノ酸によって占められる場合、これらの分子はその位置で相同である。配列間の相同性の程度は、配列によって共有されるマッチ又は相同位置の数によって異なる。「関連しない」又は「非相同性」配列は、比較される配列間に40%又は25%より低い同一性があることを示す。
【0066】
本出願では、ポリペプチドのアミノ酸配列同一性を指す場合、用語「少なくとも80%配列同一性」は、通常、各参照配列に対する少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%配列同一性を指す。
【0067】
本出願では、数値と関連して使用される場合、用語「約」は、通常、示した値より5%低い下限及び示した値より5%高い上限を有する範囲内の数値を含む。
【0068】
本出願では、用語「融合タンパク質」は、通常、2つ又はそれ以上のタンパク質又はポリペプチドの融合によって得られるタンパク質を指す。2つ又はそれ以上のタンパク質又はポリペプチドをコードする遺伝子又は核酸分子は結合され、融合遺伝子又は融合核酸分子を形成し得る。融合遺伝子又は融合核酸分子は、融合タンパク質をコードし得る。融合遺伝子の翻訳は、少なくとも1つの特性又は融合前の2つ又はそれ以上のタンパク質又はポリペプチドのそれぞれさえも有する単一のポチペプチドを産生する。組換え融合タンパク質は、生物学的研究又は治療のための組換えDNA技術によって人工的に作製される。本出願では、融合タンパク質及び組換え融合タンパク質は交換可能に使用される。本明細書に記載の融合タンパク質は、通常、少なくとも2つのドメイン、2つのドメイン間のリンカー、及び任意選択により第3の成分を含む。組換え融合タンパク質の生成は当技術分野で公知であり、通常、第1のタンパク質又はポリペプチドの自己コードcDNA配列から停止コドンを除去する工程を含む。第2のタンパク質のcDNA配列は、次いで、ライゲーション又はオーバーラップ伸長PCRによってインフレームで結合される。DNA配列は、次いで、細胞によって単一のタンパク質に発現される。タンパク質は、2つのオリジナルタンパク質又はポリペプチドの完全な配列、又はいずれかのほんの一部のみを含むように工学的に作製され得る。
【0069】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈がはっきりと他に示さない限り複数の参照を含む。例えば、用語「薬学的に許容される担体」、「その薬学的に許容される担体」は、1つ又はそれ以上の薬学的に許容される担体、又はそれらの混合物を含む。
【0070】
本出願では、用語「組成物」は、通常、2つ又はそれ以上の物質の組合せ、例えば活性剤と他の不活性又は活性化合物との組合せを指す。
【0071】
本出願では、用語「医薬組成物」は、通常、組成物がin vivo又はin vitro又はex vivoのいずれかで診断又は治療用途に好適であるように、不活性又は活性担体と組み合わせた活性剤を含む。
【0072】
本出願では、用語「治療有効量」は、通常、対象において治療効果を産生するのに必要な最小用量の活性成分を指す。例えば、II型糖尿病、肥満、又はメタボリックシンドロームを示す又はかかりやすい患者にとって、又は疾患の発症を防止する目的において、「治療有効量」は、上記の障害と関連する又は上記の障害によって対抗される病態、疾患進行、又は生理的条件を誘導する、緩和する、又は引き起こすことができる用量を指す。本出願では、用語「対象」又は「患者」はヒトであってよいが、非ヒト動物であってもよく、より具体的にはイヌ、ネコ等などの伴侶動物、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ等の家畜動物、又はラット、マウス、ギニアピッグ等の研究室動物であってよい。
【0073】
本出願では、「XnY」の表現は、配列中のアミノ酸残基の置換を記載する場合、配列中n位の残基Xが残基Yによって置換されることを示す。例えば、「R175L」のアミノ酸置換は、配列中175位の残基Rが残基Lによって置換されることを示す。
【0074】
FGF21バリアント
FGF21は、in vivoで限定された生物活性を有し、その血糖低下能及び脂質低下能は、それを単独で利用可能な薬物にするのに十分強くはない。血糖及び脂質を低減するその生物活性を増強するため、FGF21を改変し、標的タンパク質とのその相互作用を増強し、したがってin vivoでその作用を増強することが必要である。
【0075】
本出願の発明者らは、驚くべきことに、ヒトFGF21の特定のバリアント形態が、その標的に結合するFGF21の能力を著しく増強することができることを発見した。
【0076】
一態様では、本出願はFGF21バリアントを提供する。FGF21バリアントのアミノ酸配列は、配列番号1に示したアミノ酸配列と比較して1つ又はそれ以上のアミノ酸置換を含み、1つ又はそれ以上のアミノ酸置換は167位のアミノ酸置換を含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、167位のアミノ酸置換はS167Hである。
【0078】
いくつかの実施形態では、1つ又はそれ以上のアミノ酸置換は、98位、171位、175位、113位、114位、及び135位からなる群から選択される1つ又はそれ以上の位置にアミノ酸置換を更に含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、1つ又はそれ以上のアミノ酸置換はL98Rのアミノ酸置換を含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、1つ又はそれ以上のアミノ酸置換はP171A又はP171Gのアミノ酸置換を含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、1つ又はそれ以上のアミノ酸置換はR175L、R175P又はR175Hのアミノ酸置換を含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、1つ又はそれ以上のアミノ酸置換はG113Rのアミノ酸置換を含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、1つ又はそれ以上のアミノ酸置換はL114Qのアミノ酸置換を含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、1つ又はそれ以上のアミノ酸置換はR135Cのアミノ酸置換を含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、1つ又はそれ以上のアミノ酸置換は、以下の組合せのアミノ酸位置のいずれか1つから選択されるアミノ酸置換を含む:a)L98、S167及びP171; b)L98、S167、P171及びR175;並びにc) L98、G113、L114、R135、S167、P171及びR175。
【0086】
いくつかの実施形態では、アミノ酸置換は、配列番号3又は4のアミノ酸配列を含み、配列番号26~27が含まれる。
【0087】
一態様では、本出願は、配列番号2のアミノ酸配列を含むFGF21バリアントを提供する。
HPIPDSSPLLQFGGQVRQRYLYTDDAQQTEAHLEIREDGTVGGAADQSPESLLQLKALKPGVIQILGVKTSRFLCQRPDGALYGSLHFDPEACSFRELLEDGYNVYQSEAHX2X3PLHLPGNKSPHRDPAPRGPAX4FLPLPGLPPALPEPPGILAPQPPDVGSSDPLX5MVGX6SQGX7SPSYAS (配列番号2)、
式中、X1はL、R、D、E又はKであり; X2はG又はRであり; X3はL又はQであり; X4はR又はCであり; X5はS、C、R又はHであり;及びX6はP、C、G又はAであり; X7はR、H、P又はLであり;ここで、FGF21バリアントは、天然のFGF21と比較してX1~X7から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、天然のFGF21のアミノ酸配列は配列番号1に示される。
【0088】
いくつかの実施形態では、FGF21バリアントは、天然のFGF21と比較して167位(X5)及び/又は175位(X7)にアミノ酸置換を少なくとも含む。例えば、天然のFGF21配列(配列番号1)に基づき、FGF21バリアント(配列番号2)は167位(X5)のアミノ酸置換、175位(X7)のアミノ酸置換又は167位(X5)及び175位(X7)のアミノ酸置換を少なくとも含む。
【0089】
167位のアミノ酸置換は、S167H、S167C及びS167Rから選択され得る。175位のアミノ酸置換は、R175L、R175H及びR175Pから選択され得る。いくつかの実施形態では、167位のアミノ酸置換は、S167H、S167C及びS167Rから選択され、175位のアミノ酸置換はR175L、R175H及びR175Pから選択される。いくつかの実施形態では、167位のアミノ酸置換はS167Hであり、175位のアミノ酸置換はR175L、R175H及びR175Pから選択される。特定の実施形態では、167位のアミノ酸置換はS167Hであり、175位のアミノ酸置換はR175Lである。
【0090】
特定の実施形態では、本明細書に記載のFGF21バリアント(例えば、配列番号2のアミノ酸配列を有する)は少なくとも、98位(例えば配列番号2のX1)及び/又は171位(例えば配列番号2のX6)のアミノ酸置換を含む。例えば、天然のFGF21配列(配列番号1)に基づき、FGF21バリアント(配列番号2)は少なくとも、98位(X1)のアミノ酸置換、171位(X6)のアミノ酸置換又は98位(X1)及び171位(X6)のアミノ酸置換を含む。
【0091】
98位のアミノ酸置換は、L98D、L98R、L98E及びL98Kからなる群から選択され得る。171位のアミノ酸置換は、P171A、P171C及びP171Gからなる群から選択され得る。いくつかの実施形態では、98位のアミノ酸置換は、L98D、L98R、L98E及びL98Kからなる群から選択され、171位のアミノ酸置換は、P171A、P171C及びP171Gからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、98位のアミノ酸置換はL98Rであり、171位のアミノ酸置換はP171A及びP171Gからなる群から選択される。
【0092】
特定の実施形態では、本明細書に記載のFGF21バリアント(例えば配列番号2のアミノ酸配列を有する)は167位及び/又は175位(X7)のアミノ酸置換、並びに98位(例えば配列番号2のX1)及び/又は171位(例えば配列番号2のX6)のアミノ酸置換を含む。例えば、天然のFGF21配列(配列番号1)に基づき、FGF21バリアント(配列番号2)は少なくとも、167位(X5)のアミノ酸置換及び98位(X1)のアミノ酸置換を含む。別の例では、天然のFGF21配列(配列番号1)に基づき、FGF21バリアント(配列番号2)は少なくとも、167位(X5)のアミノ酸置換及び171位(X6)のアミノ酸置換を含む。特定の実施形態では、天然のFGF21配列(配列番号1)に基づき、FGF21バリアント(配列番号2)は少なくとも、167位(X5)のアミノ酸置換、171位(X6)のアミノ酸置換及び98位(X1)のアミノ酸置換を含む。特定の実施形態では、天然のFGF21配列(配列番号1)に基づき、FGF21バリアント(配列番号2)は少なくとも、175位(X7)のアミノ酸置換及び98位(X1)のアミノ酸置換を含む。特定の実施形態では、天然のFGF21配列(配列番号1)に基づき、FGF21バリアント(配列番号2)は少なくとも、175位(X7)のアミノ酸置換及び171位(X6)のアミノ酸置換を含む。特定の実施形態では、天然のFGF21配列(配列番号1)に基づき、FGF21バリアント(配列番号2)は少なくとも、175位(X7)のアミノ酸置換、98位(X1)のアミノ酸置換及び171位(X6)のアミノ酸置換を含む。特定の実施形態では、天然のFGF21配列(配列番号1)に基づき、FGF21バリアント(配列番号2)は少なくとも、175位(X7)のアミノ酸置換、167位(X5)のアミノ酸置換及び171位(X6)のアミノ酸置換を含む。特定の実施形態では、天然のFGF21配列(配列番号1)に基づき、FGF21バリアント(配列番号2)は少なくとも、175位(X7)のアミノ酸置換、167位(X5)のアミノ酸置換及び98位(X1)のアミノ酸置換を含む。特定の実施形態では、天然のFGF21配列(配列番号1)に基づき、FGF21バリアント(配列番号2)は少なくとも、175位(X7)のアミノ酸置換、167位(X5)のアミノ酸置換、171位(X6)のアミノ酸置換及び98位(X1)のアミノ酸置換を含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のFGF21バリアント(例えば配列番号2のアミノ酸配列を有する)は、113位(例えば配列番号2のX2)、114位(例えば配列番号2のX3)、及び/又は135位(例えば配列番号2のX4)のアミノ酸置換を更に含む。113位(X2)のアミノ酸置換はG113Rであり得る。114位(X3)のアミノ酸置換はL114Qであり得る。135位(X4)のアミノ酸置換はR135Cであり得る。
【0094】
特定の実施形態では、本明細書に記載のFGF21バリアント(例えば配列番号2のアミノ酸配列を有する)は、167位及び/又は175位(X7)のアミノ酸置換、及び/又は98位(例えば配列番号2のX1)及び/又は171(例えば配列番号2のX6)のアミノ酸置換、並びに113位(例えば配列番号2のX2)、114位(例えば配列番号2のX3)及び/又は135位(例えば配列番号2のX4)のアミノ酸置換を含む。
【0095】
特定の実施形態では、天然のFGF21配列(配列番号1)に基づき、FGF21バリアント(配列番号2)は、167位(X5)、175位(X7)、98位(X1)、171位(X6)、113位(X2)、114位(X3)及び135位(X4)のアミノ酸置換を含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のFGF21バリアントは配列番号3~4及び配列番号34~37のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0097】
融合タンパク質及びタンパク質多量体
別の態様では、本出願は、本明細書に記載のFGF21バリアントを含む融合タンパク質を提供する。融合タンパク質は、IgG定常領域ドメイン又はその断片を含んでよく、IgG定常領域ドメイン又はその断片はFGF21バリアントと融合し融合タンパク質を形成する。
【0098】
IgG定常領域ドメインの断片はIgG定常領域ドメインの一部であってよいが、少なくともその活性の一部を依然として保持する。いくつかの実施形態では、IgG定常領域ドメイン又はその断片はIgG4 Fcドメインを含む又はIgG4 Fcドメインである。
【0099】
いくつかの実施形態では、IgG4 Fcドメインは、配列番号5又は配列番号6のアミノ酸配列を含み得る。特定の実施形態では、FGF21バリアントは、リンカーによってIgG定常領域ドメイン又はその断片に融合されている。例えば、FGF21バリアントのN末端は、IgG定常領域ドメイン又はその断片のC末端に直接的又は間接的に結合されている。いくつかの実施形態では、FGF21バリアントのN末端は、第1のリンカーによってIgG定常領域ドメイン又はその断片のC末端に結合されている。第1のリンカーは、GGGGSGGGGSGGGGS (配列番号7)又はGGGGSGGGGSGGGGSA (配列番号8)のアミノ酸配列を含み得る。
【0100】
特定の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号26及び配列番号27のいずれか1つのアミノ酸配列を含み得る。
【0101】
特定の実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質はGLP-1受容体アゴニスト部分を更に含む。GLP-1受容体アゴニスト部分は、GLP-1類似体を含み得る。いくつかの実施形態では、GLP-1類似体は配列番号15又は配列番号28のアミノ酸配列を含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、本明細書に記載のFGF21バリアント、IgG定常領域ドメイン又はその断片及びGLP-1受容体アゴニスト部分を含む。特定の実施形態では、GLP-1受容体アゴニスト部分のC末端は、IgG定常領域ドメイン又はその断片のN末端に直接的又は間接的に結合されている。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体アゴニスト部分のC末端は、IgG定常領域ドメイン又はその断片のN末端に第2のリンカーによって結合されている。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体アゴニスト部分のC末端は、IgG定常領域ドメイン又はその断片のN末端に第2のリンカーによって結合され、FGF21バリアントのN末端は、IgG定常領域ドメイン又はその断片のC末端に第1のリンカーによって結合されている。第1のリンカー及び第2のリンカーは、それぞれ配列番号7又は配列番号8のアミノ酸配列を独立して含み得る。
【0103】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、配列番号16~18のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0104】
別の態様では、本出願は、本明細書に記載の2つ又はそれ以上の融合タンパク質を含むタンパク質多量体を提供する。いくつかの実施形態では、タンパク質多量体はホモ二量体である。例えば、タンパク質多量体は、本明細書に記載の2つの同一の融合タンパク質から構成され得る。特定の実施形態では、タンパク質ポリマーの2つ又はそれ以上の単量体(すなわち、本明細書に記載の2つ又はそれ以上の融合タンパク質)は、主に非共有結合相互作用及び/又は互いにジスルフィド結合によってタンパク質ポリマーを構成する。
【0105】
本明細書に記載のFGF21バリアント、融合タンパク質、タンパク質多量体又は組成物(例えば、医薬組成物)は、代謝性疾患を処置するために使用され得る。代謝性疾患は、糖尿病、肥満及び脂肪肝から選択される。いくつかの実施形態では、代謝性疾患は糖尿病、例えばII型糖尿病である。他の実施形態では、代謝性疾患は肥満である。他の実施形態は、代謝性状態又は代謝性障害、例えば脂質異常症、高血圧、脂肪肝、例えば非アルコール性脂肪性肝疾患(NASH)、心血管疾患、例えばアテローム性動脈硬化症、及び加齢を含む。
【0106】
核酸分子、ベクター及び細胞
別の態様では、本出願は、本明細書に記載のFGF21バリアント又は融合タンパク質をコードする単離された核酸分子を提供する。
【0107】
核酸分子は、RNAの形態、又はDNAの形態であってよく、DNAはcDNA及び合成DNAを含む。DNAは、二本鎖又は一本鎖であり得る。本出願のFGF21バリアント又は融合タンパク質をコードするコード配列は、遺伝子コードの重複又は縮重の結果により異なり得る。核酸分子は、タンパク質のコード配列のみ;タンパク質のコード配列及び他の部分のコード配列、例えばリーダー配列又は分泌配列又はタンパク質前駆体配列;タンパク質のコード配列及び非コード配列、例えばイントロン又はタンパク質等のコード配列の5'及び/又は3'非コード配列を含み得る。したがって、用語「タンパク質をコードする核酸分子」は、タンパク質又はポリペプチドのコード配列を含むだけでなく、他の部分のコード配列及び/又は非コード配列も含み得るそのようなポリヌクレオチドを包含する。
【0108】
いくつかの実施形態では、単離した核酸は、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24及び配列番号25のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0109】
別の態様では、本出願は、本明細書に記載の核酸分子を含むベクターを提供する。ベクター(例えば、発現ベクター)は、通常、エピソームとして又は宿主染色体DNAの一部として宿主生物において複製され得る。通常、発現ベクターは、所望の核酸分子によって変換されたこれらの細胞の検出が可能であるように、選択可能なマーカー、例えばテトラサイクリン、ネオマイシン、及びジヒドロ葉酸還元酵素を含有し得る。例えば、pcDNA3.4ベクター。
【0110】
別の態様では、本出願は、本明細書に記載のベクターを含む細胞(例えば宿主細胞)も提供する。細胞は、例えば哺乳動物細胞(例えば、CHO、NSO、HEK293、又はCOS細胞);細菌細胞(例えば、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescence));又は真菌若しくは酵母細胞も提供を含み得る。特定の実施形態では、細胞はHEK293細胞又はCHO細胞である。
【0111】
別の態様では、本出願は、本明細書に記載のFGF21バリアント、本明細書に記載の融合タンパク質又は本明細書に記載のタンパク質多量体を調製する方法も提供する。方法は、FGF21バリアント、融合タンパク質又はタンパク質多量体の発現及び/又は形成を可能にする条件下で本明細書に記載の細胞を培養する工程を含む。特定の実施形態では、方法は、発現及び/又は形成されたFGF21バリアント、融合タンパク質、又はタンパク質多量体を回収する工程を更に含む。目的の核酸分子を含有するベクターは、周知の方法によって細胞(例えば、宿主細胞)に移行され、そのような方法は細胞のタイプによって異なる。例えば、塩化カルシウム変換は原核細胞で一般に使用されるが、リン酸カルシウム処置又はエレクトロポレーションは他の宿主細胞で使用され得る。一般に、細胞培養生産性を最大にする原理、方法、及び応用技術はM. Butler (IRL Press, 1991年)及びSambrookらによって編集されたMammalian Cell Biotechnology: A Practical Approachの研究に見出される。
【0112】
別の態様では、本出願は、本明細書に記載のFGF21バリアント、本明細書に記載の融合タンパク質又は本明細書に記載のタンパク質多量体、及び任意選択により1つ又はそれ以上の薬学的に許容される担体、アジュバント又は賦形剤を含む組成物(例えば、医薬組成物)を提供する。組成物は、治療有効量の本明細書に記載のFGF21バリアント、本明細書に記載の融合タンパク質又は本明細書に記載のタンパク質多量体を含み得る。
【0113】
薬学的に許容される担体、アジュバント又は賦形剤は、好ましくは、使用した投与量及び濃度で対象に非毒性である。
【0114】
組成物は、例えば組成物のpH、重量オスモル濃度、粘度、透過性、色、等張性、におい、無菌性、安定性、溶解又は放出率、吸収又は浸透を変更、維持又は保存するための製剤を含有し得る。好適な組成物製剤は、例えば投与の意図された経路、送達の様式、及び所望の投与量(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences参照)に基づき、技術者によって決定され得る。
【0115】
FGF21バリアント、融合タンパク質又はタンパク質多量体組成物は、非経口送達のために選択され得る。或いは、組成物は、吸入のため、又は消化管、例えば経口的による送達のために選択され得る。そのような薬学的に許容される組成物の調製物は当業者に公知である。
【0116】
非経口投与が考えられる場合、本明細書で使用のための組成物は、所望のFGF21バリアント、融合タンパク質又はタンパク質多量体、及び薬学的に許容されるビヒクルを含有するパイロゲンフリー、非経口的に許容される水溶液であり得る。非経口注射に特に好適なビヒクルは、無菌蒸留水であり、FGF21バリアント、融合タンパク質又はタンパク質多量体は好適に保存された滅菌等張溶液中に製剤化される。更に別の調製物は、注射用微粒子、生分解性粒子、ポリマー(例えば、ポリ乳酸又はポリグリコール酸)、ビーズ又はリポソーム等の物質との所望の分子の調製物を含み得る。物質は、制御又は持続放出産物として提供され、次いで蓄積注射によって送達され得る。ヒアルロン酸も使用され、循環の延長期間の促進に影響する。所望の分子を導入する他の好適な方法は、移植可能な薬物送達デバイスを含む。
【0117】
一実施形態では、組成物は、吸入のために製剤化され得る。例えば、本明細書に記載のFGF21バリアント、融合タンパク質又はタンパク質多量体は、吸入のための乾燥粉末にされ得る。FGF21バリアント、融合タンパク質又はタンパク質多量体の吸入溶液も、エアゾール送達のための噴霧剤により製剤化され得る。更に別の実施形態では、溶液は微粒化され得る。肺の投与は、化学的に改変されたタンパク質の肺送達を記載する国際公開第94/20069号により記載される。
【0118】
特定の製剤が経口的に投与され得ることも考えられる。本出願の一実施形態では、この方法で投与されるFGF21バリアント、融合タンパク質又はタンパク質多量体は、固体投与剤形、例えば錠剤及びカプセル剤の製剤化に一般に使用される担体有り又は無しで製剤化され得る。例えば、カプセル剤は、消化管の生物学的利用能が最大で、プレシステミック分解が最小となる時点で製剤の活性部分を放出するように設計され得る。FGF21バリアント、融合タンパク質又はタンパク質多量体の吸収を促進する他の物質が含まれ得る。希釈剤、香料、低融点ワックス、植物油、滑剤、懸濁剤、錠剤崩壊剤、及び結合剤も使用され得る。
【0119】
別の組成物は、FGF21バリアント、融合タンパク質又はタンパク質多量体と、錠剤の調製に好適な非毒性賦形剤の有効量の混合物を含み得る。液剤は、錠剤を滅菌水又は別の好適なビヒクルに溶解することによって単位投与剤形に調製される。
【0120】
例えば持続送達又は制御送達製剤中にFGF21バリアント、融合タンパク質又はタンパク質多量体を含む製剤を含む、他のタイプのFGF121バリアント、融合タンパク質又はタンパク質多量体組成物も提供される。様々な他の持続送達又は制御送達ビヒクル、例えばリポソーム担体、生分解性粒子又は多孔質ビーズ、及び蓄積注射を調製する技術も当業者に公知である(例えば、医薬組成物の送達のための多孔質ポリマー微粒子の制御放出を開示する国際公開第93/15722号、並びに細粒/微粒子製剤及びその使用について考察するWischke & Schwendeman, 2008年, Int. J. Pharm. 364:298~327ページ、及びFreiberg & Zhu, 2004年, Int. J. Pharm. 282:1~18ページを参照)。本明細書に記載する場合、ヒドロゲルは、持続送達又は制御送達製剤の例である。
【0121】
in vivoで投与されるFGF21バリアント、融合タンパク質又はタンパク質多量体組成物は通常、滅菌されたものでなければならない。これは、滅菌フィルター膜によるろ過によって達成され得る。組成物が凍結乾燥される場合、この方法による滅菌は凍結乾燥及び復元の前又は後に実施され得る。非経口投与のための組成物は、凍結乾燥形態又は溶液で保存され得る。更に、非経口組成物は通常、皮下針によって穴をあけられるストッパーを有する静脈内注射用の溶液バッグ又はバイアル等滅菌吸込口を有する容器に封入される。
【0122】
組成物に製剤化されると、それは滅菌バイアル中に溶液、懸濁液、ゲル、乳剤、固体として、又は乾燥粉末又は凍結乾燥粉末として保存され得る。そのような製剤は、すぐに使える形態又は投与前に復元を必要とする形態(例えば凍結乾燥形態)で保存され得る。
【0123】
特定の実施形態では、本出願は、単一用量の投与単位を産生するためのキットに関する。キットは、それぞれ乾燥タンパク質を有する第1の容器及び水含有製剤を有する第2の容器の両方を含有し得る。本出願の範囲は、単一チャンバー前充填シリンジ及び多チャンバー前充填シリンジを含むキットも含む(例えば、液体投与のシリンジ及び凍結乾燥粉末のシリンジ)。
【0124】
医薬組成物の投与経路は、例えば経口投与;静脈内、腹腔内、脳内(脳内実質)、脳室内、筋肉内、眼内、動脈内、門脈又は病巣内注射による;持続放出系(注射もされ得る)による;又は移植装置による等、公知の方法と一致する。所望であれば、組成物は、ボーラス又は持続注入により、又は移植装置により投与され得る。
【0125】
或いは又は更に、組成物は、所望の活性成分が吸収又は封入されたフィルム、スポンジ又は他の好適な材料の移植によって局所的に投与され得る。移植装置が使用される場合、装置は任意の好適な組織又は臓器に移植され、所望の活性成分は拡散、徐放ボーラス又は持続投与によって送達され得る。
【0126】
組成物は、代謝性疾患を処置するために使用され得る。いくつかの実施形態では、代謝性疾患は糖尿病、例えばII型糖尿病である。他の実施形態では、代謝性疾患は肥満である。他の実施形態は、代謝性状態又は代謝性障害、例えば脂質異常症、高血圧、脂肪肝、例えば非アルコール性脂肪性肝疾患(NASH)、心血管疾患、例えばアテローム性動脈硬化症、及び加齢を含む。
【0127】
別の態様では、本出願は、以下の実施形態も提供する:
1.配列番号1に示すアミノ酸配列と比較して1つ又はそれ以上のアミノ酸置換を含むFGF21バリアントのアミノ酸配列であって、前記1つ又はそれ以上のアミノ酸置換が167位のアミノ酸置換を含み、167位の前記アミノ酸置換がS167Hである、FGF21バリアントのアミノ酸配列。
2.1つ又はそれ以上のアミノ酸置換が、98位、171位、175位、113位、114位、及び135位からなる群から選択される1つ又はそれ以上の位置にアミノ酸置換を更に含む、実施形態1のFGF21バリアント。
3.1つ又はそれ以上のアミノ酸置換がL98Rのアミノ酸置換を含む、実施形態2のFGF21バリアント。
4.1つ又はそれ以上のアミノ酸置換がP171A又はP171Gのアミノ酸置換を含む、実施形態2又は3のFGF21バリアント。
5.1つ又はそれ以上のアミノ酸置換がR175L、R175P及びR175Hのアミノ酸置換を含む、実施形態2~4のいずれか1つのFGF21バリアント。
6.1つ又はそれ以上のアミノ酸置換がG113Rのアミノ酸置換を含む、実施形態2~5のいずれか1つのFGF21バリアント。
7.1つ又はそれ以上のアミノ酸置換がL114Qのアミノ酸置換を含む、実施形態2~6のいずれか1つのFGF21バリアント。
8.1つ又はそれ以上のアミノ酸置換がR135Cのアミノ酸置換を含む、実施形態2~7のいずれか1つのFGF21バリアント。
9.1つ又はそれ以上のアミノ酸置換が、以下の組合せのアミノ酸位置:
a) L98、S167、及びP171;
b) L98、S167、P171及びR175;並びに
c) L98、G113、L114、R135、S167、P171及びR175
のいずれか1つから選択されるアミノ酸置換を含む、実施形態1~8のいずれか1つのFGF21バリアント。
10.配列番号3~4及び配列番号34~37のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、実施形態1~9のいずれか1つのFGF21バリアント。
11.実施形態1~10のいずれか1つのFGF21バリアントを含む融合タンパク質。
12. IgG定常領域ドメイン又はその断片を更に含む、実施形態11の融合タンパク質。
13. IgG定常領域ドメイン又はその断片がIgG4 Fcドメインを含む、実施形態12の融合タンパク質。
14. IgG4 Fcドメインが配列番号5又は6のアミノ酸配列を含む、実施形態13の融合タンパク質。
15. FGF21バリアントのN末端が、IgG定常領域ドメイン又はその断片のC末端に直接的又は間接的に結合されている、実施形態12~14のいずれか1つの融合タンパク質。
16.FGF21バリアントのN末端が、IgG定常領域ドメイン又はその断片のC末端に第1のリンかーによって直接的又は間接的に結合されている、実施形態15の融合タンパク質。
17.第1のリンカーが配列番号7又は8のアミノ酸配列を含む、実施形態16の融合タンパク質。
18.配列番号9~14及び配列番号26~27のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、実施形態11~17のいずれか1つの融合タンパク質。
19.GLP-1受容体アゴニスト部分を更に含む、実施形態11~18のいずれか1つの融合タンパク質。
20. GLP-1受容体アゴニスト部分がGLP-1類似体を含む、実施形態19の融合タンパク質。
21. GLP-1受容体アゴニスト部分が、配列番号15又は配列番号28のアミノ酸配列を含む、実施形態19又は20の融合タンパク質。
22. IgG定常領域ドメイン又はその断片及びGLP-1受容体アゴニスト部分を含み、GLP-1受容体アゴニスト部分のC末端が、IgG定常領域ドメイン又はその断片のN末端に直接的又は間接的に結合されている、実施形態19~21のいずれか1つの融合タンパク質。
23. GLP-1受容体アゴニスト部分のC末端が、IgG定常領域ドメイン又はその断片のN末端に第2のリンカーによって結合されている、実施形態22の融合タンパク質。
24.第2のリンカーが配列番号7又は8のアミノ酸配列を含む、実施形態23の融合タンパク質。
25. IgG定常領域ドメイン又はその断片、GLP-1受容体アゴニスト部分、及びFGF21バリアントを含み、FGF21バリアントのN末端が、IgG定常領域ドメイン又はその断片のC末端に直接的又は間接的に結合されている、実施形態19~24のいずれか1つの融合タンパク質。
26. GLP-1受容体アゴニスト部分のC末端が、IgG定常領域ドメイン又はその断片のN末端に第2のリンカーによって結合され、FGF21バリアントのN末端が、IgG定常領域ドメイン又はその断片のC末端に第1のリンカーによって結合されている、実施形態25の融合タンパク質。
27.配列番号16~18のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、実施形態25又は26の融合タンパク質。
28.実施形態11~27のいずれか1つの2つ又はそれ以上の融合タンパク質を含むタンパク質多量体。
29.ホモ二量体である、実施形態28のタンパク質多量体。
30.実施形態1~10のいずれか1つのFGF21バリアント又は実施形態11~27のいずれか1つの融合タンパク質をコードする単離した核酸分子。
31.実施形態30の単離した核酸分子を含むベクター。
32.実施形態31のベクターを含む細胞。
33.実施形態1~10のいずれか1つのFGF21バリアント、実施形態11~27のいずれか1つの融合タンパク質又は実施形態28又は29のタンパク質多量体を調製する方法であって、FGF21バリアント、融合タンパク質又はタンパク質多量体の発現及び/又は形成を可能にする条件下で、実施形態32の細胞を培養する工程を含む方法。
34.発現及び/又は形成されたFGF21バリアント、融合タンパク質、又はタンパク質多量体を回収する工程を更に含む、実施形態33の方法。
35.実施形態1~10のいずれか1つのFGF21バリアント、実施形態11~27のいずれか1つの融合タンパク質又は実施形態28又は29のタンパク質多量体、並びに任意選択により1つ又はそれ以上の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
36.代謝性疾患の処置のための医薬の製造における実施形態1~10のいずれか1つのFGF21バリアント、実施形態11~27のいずれか1つの融合タンパク質又は実施形態28又は29のタンパク質多量体の使用。
37.代謝性疾患が、糖尿病、肥満及び脂肪肝から選択される、実施形態36の使用。
38.代謝性疾患の処置での使用のための実施形態1~10のいずれか1つのFGF21バリアント、実施形態11~27のいずれか1つの融合タンパク質又は実施形態28又は29のタンパク質多量体。
39.代謝性疾患が、糖尿病、肥満及び脂肪肝から選択される、実施形態38のFGF21バリアント、融合タンパク質又はタンパク質多量体。
40. 代謝性疾患を処置する方法であって、治療有効量の実施形態1~10のいずれか1つのFGF21バリアント、実施形態11~27のいずれか1つの融合タンパク質又は実施形態28又は29のタンパク質多量体を患者に投与する工程を含む方法。
41.代謝性疾患が、糖尿病、肥満及び脂肪肝から選択される、実施形態40の方法。
【実施例
【0128】
本出願は以下の実施例によって更に理解されるが、それは本開示の実施例にすぎない。本出願は、例示した実施例による範囲に制限されず、単に本発明の単一の態様を例示することを意図する。機能的に等価な任意の方法が、本発明の範囲内に含まれる。上記の説明及び図面から、本明細書に記載のものに加えて本発明の様々な改変が当業者には明らかである。これらの改変も本特許請求の範囲の範囲内である。
【0129】
(実施例1)
融合タンパク質S1~S8の発現ベクターの構築
【0130】
【表3】
【0131】
目的遺伝子は、Suzhou Genewiz Biological Technology株式会社によって合成された。目的遺伝子の5'端は、順にヒトIgG4のFc、リンカー及びFGF21バリアントを含有し、目的遺伝子によってコードされる融合タンパク質S1~S7のアミノ酸配列はTabel 3(表3)に示される。目的遺伝子及びベクタープラスミドpcDNA3.4の配列は、37℃でエンドヌクレアーゼHindIII及びEcoRI(TAKARA社、Japan)によって消化され、消化産物は、製造業者の指示に従ってGel Extraction Kitを使用して精製及び回収された。精製された目的遺伝子は、製造業者の指示に従ってDNA Ligation Kit Ver2.1(TAKARA社、Japan)を使用してベクターとライゲートされ、16℃で1時間インキュベートされ、組換え発現プラスミドが得られた。
【0132】
上記の組換え発現プラスミドで、コンピテントセルDH5aを形質転換させ、細菌はアンピシリンプレートにコートされた。プレートの単クローンが採取され、1mlのLB培地(ペプトン10g/L、酵母エキス5g/L、塩化ナトリウム10g/L及びアガー2%、抗生物質含量100μg/mL)中で培養され、プラスミドが抽出された。Guangzhou Aiji Biotechnology株式会社によるシーケンシング及び検証後、一連の検証された正確な発現ベクターはInvitrogen Plasmid Kitによって抽出され、制限酵素PvuI(TAKARA社、Japan)によって消化された。直線化後、産物は、エタノール沈殿法によって精製及び回収され、将来の使用のために-20℃に保存された。
【0133】
(実施例2)
融合タンパク質S1~S8の発現
HEK293F宿主細胞(Invitrogen社、Freestyle 293F)は、293 Expression Mediumによって蘇生された。細胞密度が約1×106個の細胞/mLになると、宿主細胞はトランスフェクトされた。約3×107個の細胞がトランスフェクトされ、実施例1で調製された直鎖状発現ベクターは37.5μgであった。細胞は、FreeStyle(商標) MAX Reagent Transfection Kitによってトランスフェクトされた。トランスフェクション後、細胞は30mLの293 Expression Medium中で培養された。培養の2日目に、形質転換細胞に対してゲネチシンG418(merck社)によるスクリーニングが開始された。培地は、細胞の増殖に応じて3日ごとに置き換えられた。選択の約14日後、耐性クローンが出現し、拡大できた。細胞継代密度は約0.5×106個の細胞/mLであった。得られた混合クローンは、293 Expression Mediumによって継代培養された。細胞生存率が約90%になると、細胞培養液が回収された。
【0134】
(実施例3)
融合タンパク質S1~S8の精製
実施例2で調製した細胞培養液は、200gで10分間遠心分離され、上澄み液は8000rpmで30分間遠心分離され、上澄み液が回収された。回収された細胞培養上澄み液は、Protein Aクロマトグラフィー(EzFast Protein A Diamond, Bestchrom社)により親和性精製にかけられた。平衡溶液は、20mM PBS、0.15M NaCl、pH7.4であった。溶離液は、pH3.2の0.1Mクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液であった。標的溶離液は、標的吸収ピークで回収され、PBS緩衝液で透析され、質量分析のための試料にした。質量分析検出分子量は、理論分子量と一致し、それらはホモ二量体形態であった。同時に、回収された試料は、還元及び非還元後に10% SDS-PAGE電気泳動によって検出された。融合タンパク質S2は例として取られ、その精製結果は図12に示される。1番目のバンドはタンパク質分子量マーカーであり、5番目のバンドは融合タンパク質S2の発酵上澄み液であり、6番目のバンドは精製された融合タンパク質S2であり、7番目のレーンは還元された融合タンパク質S2である。
【0135】
(実施例4)
融合タンパク質の標的への結合能を検出するためのELISAの方法
まず、10μgのβKlothoタンパク質(AVIVA SYSTEMS BIOLOGY社)が10mlのタンパク質コーティング溶液(pH9.6の炭酸緩衝液)に溶解された。混合後、100μLの混合物がELISAプレートの各ウェルに添加され、4℃に終夜置かれた。次いで、コーティング溶液は除去され、PBST溶液によって4回洗浄された。200μLのブロッキング溶液(100mlのPBS溶液に添加された5gのスキムミルク粉末)が各ウェルに添加され、37℃でインキュベートされた。2時間後、ブロッキング溶液は除去された。異なる濃度の100μLの融合タンパク質試料が各ウェルに添加された。次いで、プレートはジップロック(登録商標)バッグに密封され、37℃に置かれた。2時間後、各ウェルはPBST溶液で4回洗浄された。100μLの抗ヒトIgG4 Fc-HRP(1/1000)(Abcam社)が添加され、37℃で1時間インキュベートされた。最後に、各ウェルはPBST溶液で4回洗浄された。100μLの高度に感受性のTMB基質が添加され、2分後、50μLの停止溶液(2M H2SO4)が添加され、反応を停止した。各ウェルのOD値は、マイクロプレートリーダーによって測定された。
【0136】
結果は、図3及び図4に示される。図3は、融合タンパク質S7の標的への結合能が、濃度の減少により著しく減少することを示す。S7と比較して、融合タンパク質S1/S2/S4/S5の標的への結合能は、167位及び/又は175位でのアミノ酸置換の増加により著しく増加する。100μg/mL~0.8μg/mLの濃度範囲のS1/S2/S4/S5の標的への結合能は高レベルで維持され、167位及び175位が標的結合能に密接に関連することを示し得る。図4は、融合タンパク質の標的への結合能が113位、114位及び135位でのアミノ酸置換の増加により高レベルで維持することを示す。
【0137】
(実施例5)
融合タンパク質の標的への結合能を検出するためのフォルテバイオ(fortebio)の方法
各融合タンパク質試料は、緩衝液(0.1gのBSAが100mlのPBS緩衝液に添加され、完全に溶解するまで攪拌され、20μLのTween20が添加され、混合された)によって40nMに希釈され、試料プレートの各ウェルに添加された。ビオチン化βKlotho(25nM AVIVA SYSTEMS BIOLOGY社)タンパク質のストレプトアビジンのプローブとの結合後、各融合タンパク質への結合状態は、親和性検出システム(OCTET RED 96 SYSTEM)によって自動的に検出された。結果は、Table 4(表4)に示される。KD値が低くなると、融合タンパク質の標的への結合能が強くなる。Table 4(表4)は、融合タンパク質S7と比較して、融合タンパク質S1の標的への結合能は、167位のアミノ酸置換の添加により大きく改善されることを示す。175位のアミノ酸置換の更なる増加後、例えば融合タンパク質S2は標的への結合能がS7の結合能より2倍強い。
【0138】
【表4】
【0139】
(実施例6)
融合タンパク質D1~D3の発現ベクターの構築
【0140】
【表5】
【0141】
まず、上流断片(GLP-1の一部を含む)及び下流断片(Fc-FGF21)は、PCR増幅によって得られた。PCR増幅手順は以下の通りである: 98℃で5分間前変性; 98℃で10秒間変性; 56℃で10秒間アニーリング; 72℃で5秒間又は10秒間伸長; 30サイクル繰り返し;及び72℃で8分間伸長。PCR産物は、次いで1.0%アガロースゲル電気泳動によって検出され、上流及び下流断片がOMEGAゲル回収キットを使用して回収された。得られた上流断片及び下流断片は、SOE PCRによって全長シークエンスにかけられた。SOE PCR増幅手順は以下の通りである: 98℃で5分間前変性; 98℃で10秒間変性; 56℃で10秒間アニーリング; 72℃で15秒間伸長; 30サイクル繰り返し;及び72℃で8分間伸長。次いで全長標的遺伝子が、Gel Extraction Kit(OMEGA社、America)によって回収された。
【0142】
目的遺伝子及びベクタープラスミドpcDNA3.4の配列は、37℃でエンドヌクレアーゼHindIII及びEcoRI(TAKARA社、Japan)によって消化され、消化産物は、製造業者の指示に従ってGel Extraction Kitを使用して精製及び回収された。精製された目的遺伝子は、製造業者の指示に従ってDNA Ligation Kit Ver2.1(TAKARA社、Japan)を使用してベクターとライゲートされ、16℃で1時間インキュベートされ、組換え発現プラスミドが得られた。
【0143】
上記の組換え発現プラスミドで、コンピテントセルDH5aを形質転換させ、細菌はアンピシリンプレートにコートされた。プレートの単クローンが採取され、1mlのLB培地(ペプトン10g/L、酵母エキス5g/L、塩化ナトリウム10g/L及びアガー2%、抗生物質含量100μg/mL)中で培養され、プラスミドが抽出された。シーケンシング及び検証後、一連の検証された正確な発現ベクターはInvitrogen Plasmid Kitによって抽出され、制限酵素PvuI(TAKARA社、Japan)によって消化された。直線化後、産物は、エタノール沈殿法によって精製及び回収され、将来の使用のために-20℃に保存された。
【0144】
実験に使用したプライマーは以下の通りである:
上流断片(GLP-1部分を含有する)の増幅プライマー:
プライマーAUZ-F: cccaagcttgccgccaccatgaccagactgaccgtgc (配列番号29)
プライマーlfc1-R: gccgtacttgctctcagatccaccgcctccgcttc(配列番号30)
下流断片(Fc-FGF21)の増幅プライマー:
プライマーlfc1-F: gcggaggcggtggatctgagagcaagtacggcccc (配列番号31)
プライマーfgf21-R: ccggaattctcatcagctggcgtagctagggct (配列番号32)
SOE PCRプライマー:
プライマーAUZ-F: cccaagcttgccgccaccatgaccagactgaccgtgc(配列番号29)
プライマーfgf21-R: ccggaattctcatcagctggcgtagctagggct(配列番号32)
【0145】
(実施例7)
融合タンパク質D1~D3の発現
HEK293F宿主細胞(Invitrogen社、Freestyle 293F)は、293 Expression Mediumによって蘇生された。細胞密度が約1×106個の細胞/mLになると、宿主細胞はトランスフェクトされた。約3×107個の細胞がトランスフェクトされ、実施例6で調製された直鎖状発現ベクターは約30μgであった。細胞は、Expi Fectamine 293 Reagent Transfection Kitによってトランスフェクトされた。トランスフェクション後、細胞は30mLの293 Expression Medium中で培養された。培養の2日目に、形質転換細胞に対してゲネチシンG418(merck社)によるスクリーニングが開始された。培地は、細胞の増殖に応じて3日ごとに置き換えられた。選択の約14日後、耐性クローンが出現し、拡大できた。細胞継代密度は約0.5×106個の細胞/mLであった。得られた混合クローンは、293 Expression Mediumによって継代培養された。細胞生存率が約90%になると、細胞培養液が回収された。
【0146】
(実施例8)
融合タンパク質D1~D3の精製
実施例7で調製した細胞培養液は、200gで10分間遠心分離され、上澄み液は8000rpmで30分間遠心分離され、上澄み液が回収された。回収された細胞培養上澄み液は、Protein Aクロマトグラフィー(EzFast Protein A Diamond, Bestchrom社)により親和性精製にかけられた。平衡溶液は、20mM PBS、0.15M NaCl、pH7.4であった。溶離液は、pH3.2の0.1Mグリシンであった。標的溶離液は、標的吸収ピークで回収され、PBS緩衝液で透析され、質量分析のための試料にした。質量分析検出分子量は、理論分子量と一致し、それらはホモ二量体形態であった。同時に、回収された試料は、還元及び非還元後に10% SDS-PAGE電気泳動によって検出された。融合タンパク質S2は例として取られ、その精製結果は図12に示される。1番目のバンドはタンパク質分子量マーカーであり、2番目のバンドは融合タンパク質D2の発酵上澄み液であり、3番目のバンドは精製された融合タンパク質D2であり、4番目のバンドは還元された融合タンパク質D2である。
【0147】
(実施例9)
db/dbマウスモデルにおける融合タンパク質S1/S7/S8の血糖低下及び肝臓保護効果の研究
db/dbマウスモデル(Model Animal Institute of Nanjing University)における融合タンパク質の効果が研究された。実験の間、精製された融合タンパク質は10mM PBSによって希釈された。db/dbマウスは、無作為に、溶媒群、S7群(配列番号26)、S1群(配列番号9)、及びS8群(配列番号27)を含む4つの群に分けられた。各db/dbマウスは、40nM/kgの相当する融合タンパク質を注射された。投与容積は10ml/kgであった。各融合タンパク質は9匹のマウスに注射され、2週間の間週に1回投与された。血糖の変化が投与後に観察された(結果は図5に示す)。S8群と比較して、投与後1日目及び2日目に、S1群は急激な血糖低下作用を示したが、S1群はより安定な血糖低下作用を示した。S7群と比較して、S1群はより良い血糖低下作用を示した。
【0148】
投与2週間後に、マウスは屠殺され、それらのアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の血中レベルが測定され(結果は図6に示される)、肝臓機能への薬物の保護作用が評価された。データは、S7群及びS1群が、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)のレベルを著しく低減したことを示した。この低減は肝臓への保護作用を示す。
【0149】
S1群がS7群よりも、血糖の低下及び肝臓の保護により良い作用を示すことが見られた。
【0150】
(実施例10)
db/dbマウスモデルにおける融合タンパク質S1/S2の単一の血糖低下作用効果の研究
db/dbモデルマウス(Model Animal Institute of Nanjing University)は、無作為に、ビヒクル群、S1群(配列番号9)、及びS2群(配列番号10)を含む3つの群に分けられた。各db/dbマウスは、40nM/kgの相当する融合タンパク質を注射された。投与容積は10ml/kgであった。各融合タンパク質は9匹のマウスに注射され、1回投与された。血糖の変化が投与後に観察された(結果は図7に示される)。図7に見られるように、ビヒクル群と比較して、S1群とS2群の両方が血糖を著しく低下できることが見出され、S2群は比較的良い血糖低下作用を示した。
【0151】
(実施例11)
db/dbマウスモデルにおける融合タンパク質D1/D2の血糖低下及び脂質低下効果の研究
db/dbモデルマウス(Model Animal Institute of Nanjing University)は、無作為に、ビヒクル群、D1群(配列番号16)、及びD2群(配列番号17)を含む4つの群に分けられた。各db/dbマウスは、30nM/kgの相当する融合タンパク質を注射された。投与容積は10ml/kgであった。各融合タンパク質は9匹のマウスに注射され、2週間の間週に1回投与された。血糖の変化が投与後に観察された(結果は図8に示される)。図8に見られるように、融合タンパク質D1とD2の両方が強い血糖低下能を示した。
【0152】
最初の投与後14日目に、血清トリグリセリド(TG)の結果は図9に示され、総コレステロール(TCHO)の結果は図10に示される。結果は、融合タンパク質D1及びD2がトリグリセリド及び総コレステロールの低減に著しい作用を有することを示した。
【0153】
(実施例12)
ob/obマウスモデルにおける融合タンパク質D2及びデュラグルチドの血糖低下効果の研究
ob/obマウスモデル(Model Animal Institute of Nanjing University)における融合タンパク質の効果が研究された。実験の間、精製された融合タンパク質は10mM PBSによって希釈された。マウスは、無作為に、ビヒクル群、10nmol/kgによるD2群(配列番号17)、20nmol/kgによるD2群(配列番号17)、20nmol/kgによるデュラグルチド群(Lily社)を含む4つの群に分けられた。投与容積は10ml/kgであった。各融合タンパク質は9匹のマウスに注射され、3週間の間週に2回投与された。試料は、各投与の前に採取され、血糖の変化が検出された。結果は図11に示される。結果は、融合タンパク質D2がデュラグルチドよりもより良い血糖低下作用、及びより安定な血糖低下曲線を有することを示した。
【0154】
(実施例13)
発現ベクタープラスミドX1の構築
目的遺伝子は、Suzhou Genewiz Biological Technology株式会社によって合成された。目的遺伝子の配列はTable 3(表3)に示される。目的遺伝子及びベクタープラスミドpcDNA3.4の配列は、37℃でエンドヌクレアーゼHindIII及びEcoRI(TAKARA社、Japan)によって消化され、消化産物は、製造業者の指示に従ってGel Extraction Kitを使用して精製及び回収された。精製された目的遺伝子は、製造業者の指示に従ってDNA Ligation Kit Ver2.1(TAKARA社、Japan)を使用してベクターとライゲートされ、16℃で1時間インキュベートされ、組換え発現プラスミドが得られた。
【0155】
上記の組換え発現プラスミドで、コンピテントセルDH5aを形質転換させ、細菌はアンピシリンプレートにコートされた。プレートの単クローンが採取され、1mlのLB培地(ペプトン10g/L、酵母エキス5g/L、塩化ナトリウム10g/L及びアガー2%、抗生物質含量100μg/mL)中で培養され、プラスミドが抽出された。Guangzhou Aiji Biotechnology株式会社によるシーケンシング及び検証後、一連の検証された正確な発現ベクターはInvitrogen Plasmid Kitによって抽出され、制限酵素PvuI(TAKARA社、Japan)によって消化された。直線化後、産物は、エタノール沈殿法によって精製及び回収され、将来の使用のために-20℃に保存された。
【0156】
【表6】
【0157】
(実施例14)
融合タンパク質発現ベクターのトランスフェクション及び細胞での発現
HEK293F宿主細胞(Invitrogen社、Freestyle 293F)は、293 Expi Mediumによって蘇生された。細胞密度が約1×106個の細胞/mLになると、宿主細胞はトランスフェクトされた。約3×107個の細胞がトランスフェクトされ、実施例13で調製された直鎖状発現ベクターは約30μgであった。細胞は、Expi Fectamine293 Reagent Transfection Kitによってトランスフェクトされた。トランスフェクション後、細胞は30mLの293 Expression Medium中で培養された。培養の2日目に、形質転換細胞に対してゲネチシンG418(Merck社)によるスクリーニングが開始された。培地は、細胞の増殖に応じて3日ごとに置き換えられた。選択の約14日後、耐性クローンが出現し、拡大できた。細胞継代密度は約0.5×106個の細胞/mLであった。得られた混合クローンは、293 Expression Mediumによって継代培養された。細胞生存率が約90%になると、細胞培養液が回収された。
【0158】
(実施例15)
回収された細胞発酵培地からの融合タンパク質の精製
実施例14で調製した細胞培養液は、200gで10分間遠心分離され、上澄み液は8000rpmで30分間遠心分離され、上澄み液が回収された。回収された細胞培養上澄み液は、Protein Aクロマトグラフィー(EzFast Protein A Diamond, Bestchrom社)により親和性精製にかけられた。平衡溶液は、20mM PBS、0.15M NaCl、pH7.4であった。溶離液は、pH3.2の0.1Mグリシンであった。標的溶離液は、標的吸収ピークで回収され、PBS緩衝液で透析され、質量分析のための試料にした。質量分析(Accurate-Mass Q-TOF LC/MS, Type G6530, Agilent Technologies社)検出分子量は、理論分子量と一致し、それらはホモ二量体形態であった。同時に、回収された試料は、還元及び非還元後に10% SDS-PAGE電気泳動によって検出された。結果は図13に示される。図13のバンド1~10は、順にSPC、S3、D3、S2、マーカー、DTTによって処理されたSPC 、DTTによって処理されたS3、DTTによって処理されたD3、DTTによって処理されたS2及びマーカーである。
【0159】
(実施例16)
db/dbマウスモデルにおける融合タンパク質の血糖低下及び脂質改善作用の研究
db/dbマウスモデル(Jiangsu GemPharmatech株式会社)における融合タンパク質D3及びD2の効果が研究された。実験の間、精製融合タンパク質は10mM PBSによって希釈された。実験要件を満たすdb/dbマウスは、無作為に、溶媒群、融合タンパク質D3群及びD2群を含む3つの群に分けられた。各db/dbマウスは、10nM/kgの相当する融合タンパク質を注射された。投与容積は10ml/kgであった。各融合タンパク質は9匹のマウスに注射され、2週間の間週に1回投与された。血糖、体重、及び食物摂取の変化が投与後に観察された(結果は図14に示される)。ビヒクルコントロール群と比較して、それは血糖低下活性を有する。
【0160】
(実施例17)
ob/obマウスモデルにおける融合タンパク質の血糖低下及び脂質改善効果の研究
ob/obマウスモデル(Jiangsu GemPharmatech株式会社)における融合タンパク質の効果が研究された。実験の間、精製された融合タンパク質は10mM PBSによって希釈された。実験要件を満たすdb/dbマウスは、無作為に、コントロール群(PBS緩衝液のみ)、S2、S1、S7、S3及びSPCを含む6つの群に分けられた。各db/dbマウスは、20nM/kgの相当する融合タンパク質を注射された。投与容積は10ml/kgであった。各融合タンパク質は8匹のマウスに注射され、1回投与された。血糖、体重、及び食物摂取の変化が投与後に観察された(結果は図15に示される)。コントロール群と比較して、S1、S2及びS3は投与24時間後に弱い血糖低下作用を示し; S1、S2、S3及びSPCは投与48時間後に強い血糖低下作用を示し(P<0.001、P<0.05)、S2の血糖低下作用は120時間維持されたが(P<0.01、P<0.001)、他は投与後96時間までのみ維持され、S1は血糖低下範囲がわずかに優れていた。S7は、72時間で強い血糖低下作用を示した以外の他の時間では著しい血糖低下作用を示さなかった。
【0161】
前述の詳細な説明は、説明及び例示のために提供され、添付の請求項の範囲を制限することを意図しない。本出願に列挙された実施方法における様々な変更は当業者に明らかであり、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価なスキームの範囲内でもある。
図1
図2
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【配列表】
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