(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】有機化合物、発光デバイス用ホスト材料、発光デバイス、発光装置、発光モジュール、電子機器、
(51)【国際特許分類】
C07D 491/048 20060101AFI20240419BHJP
H10K 50/16 20230101ALI20240419BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240419BHJP
【FI】
C07D491/048 CSP
H05B33/22 B
H05B33/14 B
(21)【出願番号】P 2020552173
(86)(22)【出願日】2019-10-07
(86)【国際出願番号】 IB2019058508
(87)【国際公開番号】W WO2020079524
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2018197429
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】山口 知也
(72)【発明者】
【氏名】木戸 裕允
(72)【発明者】
【氏名】吉住 英子
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 哲史
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-110223(JP,A)
【文献】特開2015-021007(JP,A)
【文献】特開2018-127402(JP,A)
【文献】米国特許第02669517(US,A)
【文献】国際公開第2014/199637(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAPlus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(G0)で表される有機化合物。
【化1】
(一般式(G0)中、Qは、酸素または硫黄を表し、Ar
1は、置換もしくは無置換のナフタレン環、置換もしくは無置換のフェナントレン環、及び置換もしくは無置換のクリセン環のうちいずれか一を表し、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素または総炭素数1以上100以下の基を表し、R
1及びR
2の少なくとも一方は、ジベンゾチオフェン環を有する。)
【請求項2】
一般式(G0)で表される有機化合物。
【化2】
(一般式(G0)中、Qは、酸素または硫黄を表し、Ar
1は、置換もしくは無置換のナフタレン環、置換もしくは無置換のフェナントレン環、及び置換もしくは無置換のクリセン環のうちいずれか一を表し、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素または総炭素数1以上100以下の基を表し、R
1及びR
2の少なくとも一方は、一般式(u1)で表される構造を表す。一般式(u1)中、αは、置換もしくは無置換の炭素数6以上25以下のアリーレン基を表し、nは、0以上4以下の整数を表し、A
1は、置換もしくは無置換のジベンゾチオフェン環を表し、*は、一般式(G0)中における結合部を表す。)
【請求項3】
請求項1または2において、
前記Ar
1は、一般式(t1)乃至一般式(t3)のいずれか一で表される、有機化合物。
【化3】
(式中、R
3~R
24は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1以上6以下のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3以上7以下のシクロアルキル基、及び置換もしくは無置換の炭素数6以上30以下のアリール基のうちいずれか一を表し、*は、一般式(G0)中における結合部を表す。)
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一において、
一般式(G0)は、一般式(G1)で表される、有機化合物。
【化4】
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一において、
一般式(G0)は、一般式(G1-1)乃至一般式(G1-4)のいずれか一で表される、有機化合物。
【化5】
(式中、R
3~R
8及びR
17~R
24は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1以上6以下のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3以上7以下のシクロアルキル基、及び置換もしくは無置換の炭素数6以上30以下のアリール基のうちいずれか一を表す。)
【請求項6】
一般式(G0)で表される有機化合物を有する、発光デバイス用ホスト材料。
【化6】
(一般式(G0)中、Qは、酸素または硫黄を表し、Ar
1は、置換もしくは無置換のナフタレン環、置換もしくは無置換のフェナントレン環、及び置換もしくは無置換のクリセン環のうちいずれか一を表し、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素または総炭素数1以上100以下の基を表し、R
1及びR
2の少なくとも一方は、ジベンゾチオフェン環を有する。)
【請求項7】
一般式(G0)で表される有機化合物を有する、発光デバイス用ホスト材料。
【化7】
(一般式(G0)中、Qは、酸素または硫黄を表し、Ar
1は、置換もしくは無置換のナフタレン環、置換もしくは無置換のフェナントレン環、及び置換もしくは無置換のクリセン環のうちいずれか一を表し、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素または総炭素数1以上100以下の基を表し、R
1及びR
2の少なくとも一方は、一般式(u1)で表される構造を表す。一般式(u1)中、αは、置換もしくは無置換の炭素数6以上25以下のアリーレン基を表し、nは、0以上4以下の整数を表し、A
1は、置換もしくは無置換のジベンゾチオフェン環を表し、*は、一般式(G0)中における結合部を表す。)
【請求項8】
請求項6または7において、
前記Ar
1は、一般式(t1)乃至一般式(t3)のいずれか一で表される、発光デバイス用ホスト材料。
【化8】
(式中、R
3~R
24は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1以上6以下のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3以上7以下のシクロアルキル基、及び置換もしくは無置換の炭素数6以上30以下のアリール基のうちいずれか一を表し、*は、一般式(G0)中における結合部を表す。)
【請求項9】
請求項
6乃至8のいずれか一において、
一般式(G0)は、一般式(G1)で表される、発光デバイス用ホスト材料。
【化9】
【請求項10】
請求項
6乃至9のいずれか一において、
一般式(G0)は、一般式(G1-1)乃至一般式(G1-4)のいずれか一で表される、発光デバイス用ホスト材料。
【化10】
(式中、R
3~R
8及びR
17~R
24は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1以上6以下のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3以上7以下のシクロアルキル基、及び置換もしくは無置換の炭素数6以上30以下のアリール基のうちいずれか一を表す。)
【請求項11】
請求項1乃至5のいずれか一に記載の有機化合物を有する、発光デバイス。
【請求項12】
請求項1乃至5のいずれか一に記載の有機化合物を含む発光層を有する、発光デバイス。
【請求項13】
請求項1乃至5のいずれか一に記載の有機化合物と、燐光材料と、を含む発光層を有する、発光デバイス。
【請求項14】
請求項6乃至10のいずれか一に記載の発光デバイス用ホスト材料を含む発光層を有する、発光デバイス。
【請求項15】
請求項6乃至10のいずれか一に記載の発光デバイス用ホスト材料と、燐光材料と、を含む発光層を有する、発光デバイス。
【請求項16】
請求項11乃至15のいずれか一に記載の発光デバイスと、
トランジスタ及び基板のうち少なくとも一方と、を有する、発光装置。
【請求項17】
請求項16に記載の発光装置と、
コネクタ及び集積回路の少なくとも一方と、を有する、発光モジュール。
【請求項18】
請求項16に記載の発光装置と、
アンテナ、バッテリ、筐体、カメラ、スピーカ、マイク、及び操作ボタンのうち少なくとも一つと、を有する、電子機器。
【請求項19】
請求項11乃至15のいずれか一に記載の発光デバイスと、
筐体、カバー、及び支持台のうち少なくとも一つと、を有する、照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、有機化合物、発光デバイス用材料(発光素子用材料ともいう)、発光デバイス(発光素子ともいう)、発光装置、発光モジュール、電子機器、及び照明装置に関する。
【0002】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本発明の一態様の技術分野としては、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、記憶装置、電子機器、照明装置、入力装置(例えば、タッチセンサなど)、入出力装置(例えば、タッチパネルなど)、それらの駆動方法、またはそれらの製造方法を一例として挙げることができる。
【背景技術】
【0003】
有機エレクトロルミネッセンス(EL:Electro Luminescence)現象を利用した発光デバイス(有機ELデバイス、有機EL素子ともいう)の研究開発が盛んに行われている。有機ELデバイスの基本的な構成は、一対の電極間に発光性の有機化合物を含む層(以下、発光層とも記す)を挟んだものである。この有機ELデバイスに電圧を印加することにより、発光性の有機化合物からの発光を得ることができる。
【0004】
発光性の有機化合物としては、例えば、一重項励起状態を発光に変換する化合物(蛍光性化合物、蛍光材料ともいう)や、三重項励起状態を発光に変換する化合物(燐光性化合物、燐光材料ともいう)が挙げられる。特許文献1では、燐光性化合物として、イリジウムなどを中心金属とする有機金属錯体が開示されている。
【0005】
燐光性化合物を用いて発光デバイスの発光層を形成する場合、燐光性化合物の濃度消光や三重項-三重項消滅による消光を抑制するために、他の化合物からなるマトリクス中に該燐光性化合物が分散するようにして形成することが多い。この時、マトリクスとなる化合物はホスト材料、燐光性化合物のようにマトリクス中に分散される化合物はゲスト材料と呼ばれる。
【0006】
燐光性化合物をゲスト材料とする場合、ホスト材料に必要とされる性質は、該燐光性化合物よりも大きな三重項励起エネルギー(基底状態と三重項励起状態とのエネルギー差)を有することである。
【0007】
また、一重項励起エネルギー(基底状態と一重項励起状態とのエネルギー差)は三重項励起エネルギーよりも大きいため、大きな三重項励起エネルギーを有する物質は大きな一重項励起エネルギーをも有する。したがって、上述したような大きな三重項励起エネルギーを有する物質は、蛍光性化合物を発光物質として用いた発光デバイスにおいても有益である。
【0008】
有機ELデバイスは、薄型軽量化が容易である、入力信号に対し高速に応答可能である、直流低電圧電源を用いて駆動可能である等の特徴を有し、表示装置に好適である。
【0009】
また、有機ELデバイスは、膜状に形成することができるため、面状に発光を得ることができる。よって、大面積の発光デバイスを容易に形成することができる。このことは、LED(発光ダイオード)に代表される点光源及び蛍光灯に代表される線光源では得難い特色であるため、有機ELデバイスは、照明装置等に応用できる面光源としての利用価値も高い。
【0010】
また、個人認証、不良解析、医療診断、セキュリティ関連など、様々な用途でイメージセンサが用いられている。イメージセンサは、用途に応じて、用いる光源の波長が使い分けられている。イメージセンサでは、例えば、可視光、X線などの短波長の光、近赤外光などの長波長の光など、様々な波長の光が用いられている。
【0011】
発光デバイスは、表示装置及び照明装置に加え、上記のようなイメージセンサの光源としての応用も検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の一態様は、新規な有機化合物を提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、耐熱性の高い有機化合物を提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、発光デバイスに用いることができる新規な有機化合物を提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、赤色の光または近赤外光を発する発光デバイスに用いることができる新規な有機化合物を提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、発光デバイスにおいて、発光物質を分散させるホスト材料として用いることができる新規な有機化合物を提供することを課題の一とする。
【0014】
または、本発明の一態様は、発光効率の高い発光デバイスを提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、駆動電圧の低い発光デバイスを提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、長寿命の発光デバイスを提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、耐熱性の高い発光デバイスを提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、赤色の光または近赤外光を発する新規な発光デバイスを提供することを課題の一とする。
【0015】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。本発明の一態様は、必ずしも、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。明細書、図面、請求項の記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様は、一般式(G0)で表される有機化合物である。
【0017】
【0018】
一般式(G0)中、Qは、酸素または硫黄を表し、Ar1は、置換もしくは無置換の縮合芳香環を表し、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素または総炭素数1以上100以下の基を表し、R1及びR2の少なくとも一方は、正孔輸送性の骨格を有する。
【0019】
本発明の別の一態様は、一般式(G0)で表される有機化合物である。
【0020】
【0021】
一般式(G0)中、Qは、酸素または硫黄を表し、Ar1は、置換もしくは無置換のナフタレン環、置換もしくは無置換のフェナントレン環、及び置換もしくは無置換のクリセン環のうちいずれか一を表し、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素または総炭素数1以上100以下の基を表し、R1及びR2の少なくとも一方は、正孔輸送性の骨格を有する。
【0022】
正孔輸送性の骨格は、置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、置換もしくは無置換の縮合芳香族炭化水素環、及び置換もしくは無置換のπ過剰型の縮合複素芳香環のうちいずれか一であることが好ましい。
【0023】
本発明の別の一態様は、一般式(G0)で表される有機化合物である。
【0024】
【0025】
一般式(G0)中、Qは、酸素または硫黄を表し、Ar1は、置換もしくは無置換の縮合芳香環を表し、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素または総炭素数1以上100以下の基を表し、R1及びR2の少なくとも一方は、縮合環を有する。
【0026】
本発明の別の一態様は、一般式(G0)で表される有機化合物である。
【0027】
【0028】
一般式(G0)中、Qは、酸素または硫黄を表し、Ar1は、置換もしくは無置換のナフタレン環、置換もしくは無置換のフェナントレン環、及び置換もしくは無置換のクリセン環のうちいずれか一を表し、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素または総炭素数1以上100以下の基を表し、R1及びR2のうち少なくとも一方は、縮合環を有する。
【0029】
縮合環は、置換もしくは無置換の縮合芳香族炭化水素環、及び置換もしくは無置換のπ過剰型の縮合複素芳香環のうちいずれか一であることが好ましい。
【0030】
縮合環は、ジベンゾチオフェン骨格、ジベンゾフラン骨格、及びカルバゾール骨格のうちいずれか一を有する、置換もしくは無置換の縮合複素芳香環であることが好ましい。
【0031】
縮合環は、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、トリフェニレン骨格、及びフェナントレン骨格のうちいずれか一を有する、置換もしくは無置換の縮合芳香族炭化水素環であることが好ましい。
【0032】
本発明の別の一態様は、一般式(G0)で表される有機化合物である。
【0033】
【0034】
一般式(G0)中、Qは、酸素または硫黄を表し、Ar1は、置換もしくは無置換の縮合芳香環を表し、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素または総炭素数1以上100以下の基を表し、R1及びR2の少なくとも一方は、正孔輸送性の骨格を有し、R1及びR2の少なくとも一方は、一般式(u1)で表される構造を表す。一般式(u1)中、αは、置換もしくは無置換の炭素数6以上25以下のアリーレン基を表し、nは、0以上4以下の整数を表し、A1は、置換もしくは無置換の炭素数6以上30以下のアリール基、及び置換もしくは無置換の炭素数3以上30以下のヘテロアリール基のうちいずれか一を表し、*は、一般式(G0)中における結合部を表す。
【0035】
本発明の別の一態様は、一般式(G0)で表される有機化合物である。
【0036】
【0037】
一般式(G0)中、Qは、酸素または硫黄を表し、Ar1は、置換もしくは無置換のナフタレン環、置換もしくは無置換のフェナントレン環、及び置換もしくは無置換のクリセン環のうちいずれか一を表し、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素または総炭素数1以上100以下の基を表し、R1及びR2の少なくとも一方は、正孔輸送性の骨格を有し、R1及びR2の少なくとも一方は、一般式(u1)で表される構造を表す。一般式(u1)中、αは、置換もしくは無置換の炭素数6以上25以下のアリーレン基を表し、nは、0以上4以下の整数を表し、A1は、置換もしくは無置換の炭素数6以上30以下のアリール基、及び置換もしくは無置換の炭素数3以上30以下のヘテロアリール基のうちいずれか一を表し、*は、一般式(G0)中における結合部を表す。
【0038】
一般式(u1)中、A1は、一般式(A1-1)乃至一般式(A1-17)のいずれか一を表すことが好ましい。
【0039】
【0040】
一般式(A1-1)乃至一般式(A1-17)中、RA1~RA11は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1以上6以下のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3以上7以下のシクロアルキル基、及び置換もしくは無置換の炭素数6以上30以下のアリール基のうちいずれか一を表す。
【0041】
一般式(u1)中、αは、一般式(Ar-1)乃至一般式(Ar-14)のいずれか一を表すことが好ましい。
【0042】
【0043】
一般式(Ar-1)乃至一般式(Ar-14)中、RB1~RB14は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1以上6以下のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3以上7以下のシクロアルキル基、及び置換もしくは無置換の炭素数6以上30以下のアリール基のうちいずれか一を表す。
【0044】
上記本発明の一態様の有機化合物のそれぞれにおいて、一般式(G0)中、Ar1は、一般式(t1)乃至一般式(t3)のいずれか一を表すことが好ましい。
【0045】
【0046】
一般式(t1)乃至一般式(t3)中、R3~R24は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1以上6以下のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3以上7以下のシクロアルキル基、及び置換もしくは無置換の炭素数6以上30以下のアリール基のうちいずれか一を表し、*は、一般式(G0)中における結合部を表す。
【0047】
本発明の一態様の有機化合物は、一般式(G1)で表されることが好ましい。
【0048】
【0049】
一般式(G1)中、Qは、酸素または硫黄を表し、Ar1は、置換もしくは無置換の縮合芳香環(または、置換もしくは無置換のナフタレン環、置換もしくは無置換のフェナントレン環、及び置換もしくは無置換のクリセン環のうちいずれか一)を表し、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素または総炭素数1以上100以下の基を表し、R1及びR2の少なくとも一方は、正孔輸送性の骨格または縮合環を有する。
【0050】
本発明の一態様の有機化合物は、一般式(G1-1)乃至一般式(G1-4)のいずれか一で表されることが好ましい。
【0051】
【0052】
一般式(G1-1)乃至一般式(G1-4)中、Qは、酸素または硫黄を表し、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素または総炭素数1以上100以下の基を表し、R1及びR2の少なくとも一方は、正孔輸送性の骨格または縮合環を有し、R3~R8及びR17~R24は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1以上6以下のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3以上7以下のシクロアルキル基、及び置換もしくは無置換の炭素数6以上30以下のアリール基のうちいずれか一を表す。
【0053】
または、本発明の一態様は、縮合芳香環が縮合したフロキノキサリン骨格を有する、発光デバイス用材料である。または、本発明の一態様は、フロキノキサリン骨格のフラン環に縮合芳香環が縮合した構造を有する、発光デバイス用材料である。本発明の一態様の発光デバイス用材料は、赤色または近赤外光を発する発光デバイス用材料であることが好ましい。本発明の一態様の発光デバイス用材料は、発光デバイス用ホスト材料であることが好ましい。本発明の一態様の発光デバイス用材料は、発光デバイス用電子輸送性材料であることが好ましい。
【0054】
本発明の一態様は、上記いずれかの構成の有機化合物または発光デバイス用材料を有する、発光デバイスである。
【0055】
本発明の一態様は、一対の電極間に有機化合物を含む層を有し、有機化合物を含む層は、上記いずれかの構成の有機化合物または発光デバイス用材料を有する、発光デバイスである。
【0056】
本発明の一態様は、一対の電極間に有機化合物を含む層を有し、有機化合物を含む層は、発光層を有し、発光層は、上記いずれかの構成の有機化合物または発光デバイス用材料を有する、発光デバイスである。
【0057】
本発明の一態様は、一対の電極間に有機化合物を含む層を有し、有機化合物を含む層は、発光層及び電子輸送層を有し、発光層及び電子輸送層のうち少なくとも一方は、上記いずれかの構成の有機化合物または発光デバイス用材料を有する、発光デバイスである。
【0058】
本発明の一態様は、上記いずれかの構成の発光デバイスと、トランジスタ及び基板の一方または双方と、を有する発光装置である。
【0059】
本発明の一態様は、上記の発光装置を有し、フレキシブルプリント回路基板(Flexible Printed Circuit、以下、FPCと記す)もしくはTCP(Tape Carrier Package)等のコネクタが取り付けられたモジュール、またはCOG(Chip On Glass)方式もしくはCOF(Chip On Film)方式等により集積回路(IC)が実装された発光モジュール等の発光モジュールである。なお、本発明の一態様の発光モジュールは、コネクタ及びICのうち一方のみを有していてもよく、双方を有していてもよい。
【0060】
本発明の一態様は、上記の発光モジュールと、アンテナ、バッテリ、筐体、カメラ、スピーカ、マイク、及び操作ボタンのうち少なくとも一つと、を有する電子機器である。
【0061】
本発明の一態様は、上記の発光デバイスと、筐体、カバー、及び支持台のうち少なくとも一つと、を有する、照明装置である。
【発明の効果】
【0062】
本発明の一態様により、新規な有機化合物を提供できる。本発明の一態様により、耐熱性の高い有機化合物を提供できる。本発明の一態様により、発光デバイスに用いることができる新規な有機化合物を提供できる。本発明の一態様により、赤色の光または近赤外光を発する発光デバイスに用いることができる新規な有機化合物を提供できる。本発明の一態様により、発光デバイスにおいて、発光物質を分散させるホスト材料として用いることができる新規な有機化合物を提供できる。
【0063】
または、本発明の一態様により、発光効率の高い発光デバイスを提供できる。本発明の一態様により、駆動電圧の低い発光デバイスを提供できる。本発明の一態様により、長寿命の発光デバイスを提供できる。本発明の一態様により、耐熱性の高い発光デバイスを提供できる。本発明の一態様により、赤色の光または近赤外光を発する新規な発光デバイスを提供できる。
【0064】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。本発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。明細書、図面、請求項の記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1A、
図1B、
図1C、
図1Dは発光デバイスの一例を示す断面図である。
図2Aは発光装置の一例を示す上面図である。
図2B、
図2Cは発光装置の一例を示す断面図である。
図3A、
図3Cは発光装置の一例を示す断面図である。
図3Bは発光デバイスの一例を示す断面図である。
図4A、
図4Bは発光装置の一例を示す断面図である。
図5Aは発光装置の一例を示す上面図である。
図5Bは発光装置の一例を示す断面図である。
図5C、
図5Dはトランジスタの一例を示す断面図である。
図6A、
図6B、
図6C、
図6Dは電子機器の一例を示す図である。
図7A、
図7B、
図7C、
図7D、
図7E、
図7Fは電子機器の一例を示す図である。
図8Aは自動車の外観の一例を示す図である。
図8B、
図8Cは自動車の車内の一例を示す図である。
図9A、
図9Cは生体認証機器の一例を示す図である。
図9Bは光源の一例を示す図である。
図9Dは非破壊検査機器の一例を示す図である。
図9Eは電携帯電話機の一例を示す図である。
図10は構造式(100)に示す有機化合物の
1H-NMRチャートである。
図11A、
図11Bは構造式(100)に示す有機化合物の紫外・可視吸収スペクトル及び発光スペクトルである。
図12は実施例の発光デバイスを示す断面図である。
図13は発光デバイス1の電流密度-輝度特性を示す図である。
図14は発光デバイス1の電圧-輝度特性を示す図である。
図15は発光デバイス1の輝度-電流効率特性を示す図である。
図16は発光デバイス1の電圧-電流特性を示す図である。
図17は発光デバイス1の輝度-外部量子効率特性を示す図である。
図18は発光デバイス1の発光スペクトルを示す図である。
図19は発光デバイス1の信頼性試験の結果を示す図である。
図20は発光デバイス2、3の電流密度-輝度特性を示す図である。
図21は発光デバイス2、3の電圧-輝度特性を示す図である。
図22は発光デバイス2、3の輝度-電流効率特性を示す図である。
図23は発光デバイス2、3の電圧-電流特性を示す図である。
図24は発光デバイス2、3の輝度-外部量子効率特性を示す図である。
図25は発光デバイス2、3の発光スペクトルを示す図である。
図26は発光デバイス2、3の信頼性試験の結果を示す図である。
図27は構造式(113)に示す有機化合物の
1H-NMRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0066】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0067】
なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、同様の機能を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
【0068】
また、図面において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0069】
なお、「膜」という言葉と、「層」という言葉とは、場合によっては、または、状況に応じて、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能である。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能である。
【0070】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の有機化合物について説明する。
【0071】
[本発明の一態様の有機化合物の構造]
本発明の一態様は、フロキノキサリン骨格またはチエノキノキサリン骨格に縮合芳香環が縮合した構造を有する有機化合物である。また、本発明の一態様は、フロキノキサリン骨格またはチエノキノキサリン骨格に縮合芳香環が縮合した構造を有する発光デバイス用材料である。当該発光デバイス用材料は、特に、赤色または近赤外光を発する発光デバイス用の材料であることが好ましい。また、当該発光デバイス用材料は、発光デバイス用のホスト材料または電子輸送性材料であることが好ましい。
【0072】
キノキサリン骨格は、ピラジン環にベンゼン環が縮環した構造である。したがって、フロキノキサリン骨格またはチエノキノキサリン骨格を用いることで、フロピラジン骨格またはチエノピラジン骨格を用いる場合に比べて、π共役系を伸長させ、最低空軌道準位(LUMO準位)を深くし、エネルギー的に安定にさせることができる。また、LUMO準位を深くすることで、三重項励起準位(T1準位)を低くすることができる。また、フロキノキサリン骨格またはチエノキノキサリン骨格に、縮合芳香環が縮合していることで、当該縮合芳香環を有さない場合や、単環の芳香環が縮合している場合に比べて、π共役系を伸長させ、LUMO準位を深くし、エネルギー的に安定にさせることができ、また、T1準位を低くすることができる。これらのことから、本発明の一態様の有機化合物は、発光波長が長波長(例えば赤~近赤外)である発光デバイスに好適に用いることができる。
【0073】
発光波長が長波長の発光物質は、T1準位が低く、LUMO準位が深い傾向にある。したがって、本発明の一態様の有機化合物は、発光波長が長波長である発光物質と組み合わせて用いることが好適である。発光波長が長波長である発光物質をゲスト材料として用い、本発明の一態様の有機化合物をホスト材料として用いることで、発光デバイスの発光効率を高め、駆動電圧を低くすることができる。
【0074】
また、ピラジン環を有する有機化合物は、ピリミジン環を有する有機化合物に比べて、ガラス転移温度が高く、耐熱性が高い特徴を有する。本発明の一態様の有機化合物は、フロキノキサリン骨格またはチエノキノキサリン骨格(つまり、ピラジン環を有する骨格)に縮合芳香環が縮合した構造を有するため、フロピリミジン骨格またはチエノピリミジン骨格に当該縮合芳香環が縮合した構造に比べて、耐熱性が高く、かつ、発光波長が長波長である発光デバイスに好適な有機化合物である。
【0075】
車載向けなど、高温環境下で用いられる発光デバイスには、高い耐熱性が求められる。また、ガラスフリットを用いた封止工程など、製品の作製工程中に高温がかかる場合にも、発光デバイスには、高い耐熱性が求められる。これらのことから、発光デバイスに用いる材料には、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上、さらには120℃以上であることが求められる場合がある。本発明の一態様では、有機化合物のTgを100℃以上、さらには120℃以上とすることができるため、高い耐熱性が求められる発光デバイスに好適な材料を提供できる。
【0076】
本発明の一態様の有機化合物は、例えば、発光デバイスにおいて、発光物質を分散させるホスト材料として用いることができる。
【0077】
また、本発明の一態様の有機化合物は、電子輸送性が高いため、発光デバイスにおいて、電子輸送性材料として用いることができる。
【0078】
具体的には、本発明の一態様は、一般式(G0)で表される有機化合物である。なお、以降の一般式で表される構造の有機化合物だけでなく、当該構造の発光デバイス用材料も、それぞれ、本発明の一態様である。
【0079】
【0080】
一般式(G0)中、Qは、酸素または硫黄を表し、Ar1は、置換もしくは無置換の縮合芳香環を表し、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素または総炭素数1以上100以下の基を表し、R1及びR2の少なくとも一方は、正孔輸送性の骨格を有する。
【0081】
本発明の別の一態様は、一般式(G0)で表される有機化合物である。
【0082】
【0083】
一般式(G0)中、Qは、酸素または硫黄を表し、Ar1は、置換もしくは無置換のナフタレン環、置換もしくは無置換のフェナントレン環、及び置換もしくは無置換のクリセン環のうちいずれか一を表し、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素または総炭素数1以上100以下の基を表し、R1及びR2の少なくとも一方は、正孔輸送性の骨格を有する。
【0084】
R1及びR2の少なくとも一方が有する正孔輸送性の骨格は、置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、置換もしくは無置換の縮合芳香族炭化水素環、及び置換もしくは無置換のπ過剰型の縮合複素芳香環のうちいずれか一であることが好ましい。
【0085】
縮合芳香族炭化水素環は、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、トリフェニレン骨格、及びフェナントレン骨格のうちいずれか一を有することが好ましい。
【0086】
π過剰型の縮合複素芳香環は、ジベンゾチオフェン骨格、ジベンゾフラン骨格、及びカルバゾール骨格のうちいずれか一を有する縮合複素芳香環であることが好ましい。ジベンゾチオフェン骨格を有すると、ジベンゾフラン骨格またはカルバゾール骨格よりも、発光デバイスの信頼性を高めることができる。カルバゾール骨格を有すると、ジベンゾチオフェン骨格またはジベンゾフラン骨格よりも、発光デバイスの発光効率を高めることができる。
【0087】
本明細書等において、縮合複素芳香環は、カルバゾール環、ジベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環のみならず、ベンゾカルバゾール環、ジベンゾカルバゾール環、インドロカルバゾール環、ベンゾインドロカルバゾール環、ジベンゾインドロカルバゾール環、ベンズインドロベンゾカルバゾール環、ベンゾナフトチオフェン環、ベンゾナフトフラン環のように、環構造中にカルバゾール骨格、ジベンゾチオフェン骨格、またはジベンゾフラン骨格を有する縮合環(すなわち、カルバゾール骨格、ジベンゾチオフェン骨格、またはジベンゾフラン骨格にさらに環が縮合した縮合環)も含めるものとする。
【0088】
本発明の別の一態様は、一般式(G0)で表される有機化合物である。
【0089】
【0090】
一般式(G0)中、Qは、酸素または硫黄を表し、Ar1は、置換もしくは無置換の縮合芳香環を表し、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素または総炭素数1以上100以下の基を表し、R1及びR2の少なくとも一方は、縮合環を有する。
【0091】
本発明の別の一態様は、一般式(G0)で表される有機化合物である。
【0092】
【0093】
一般式(G0)中、Qは、酸素または硫黄を表し、Ar1は、置換もしくは無置換のナフタレン環、置換もしくは無置換のフェナントレン環、及び置換もしくは無置換のクリセン環のうちいずれか一を表し、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素または総炭素数1以上100以下の基を表し、R1及びR2のうち少なくとも一方は、縮合環を有する。
【0094】
R1及びR2の少なくとも一方が有する縮合環は、置換もしくは無置換の縮合芳香族炭化水素環、及び置換もしくは無置換のπ過剰型の縮合複素芳香環のうちいずれか一であることが好ましい。
【0095】
縮合環は、ジベンゾチオフェン骨格、ジベンゾフラン骨格、及びカルバゾール骨格のうちいずれか一を有する、置換もしくは無置換の縮合複素芳香環であることが好ましい。
【0096】
なお、前述の通り、本明細書等において、縮合複素芳香環は、カルバゾール環、ジベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環のみならず、カルバゾール骨格、ジベンゾチオフェン骨格、またはジベンゾフラン骨格にさらに環が縮合した縮合環も含めるものとする。
【0097】
縮合環は、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、トリフェニレン骨格、及びフェナントレン骨格のうちいずれか一を有する、置換もしくは無置換の縮合芳香族炭化水素環であることが好ましい。
【0098】
本発明の別の一態様は、一般式(G0)で表される有機化合物である。
【0099】
【0100】
一般式(G0)中、Qは、酸素または硫黄を表し、Ar1は、置換もしくは無置換の縮合芳香環を表し、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素または総炭素数1以上100以下の基を表し、R1及びR2の少なくとも一方は、正孔輸送性の骨格を有し、R1及びR2の少なくとも一方は、一般式(u1)で表される構造を表す。一般式(u1)中、αは、置換もしくは無置換の炭素数6以上25以下のアリーレン基を表し、nは、0以上4以下の整数を表し、A1は、置換もしくは無置換の炭素数6以上30以下のアリール基、及び置換もしくは無置換の炭素数3以上30以下のヘテロアリール基のうちいずれか一を表し、*は、一般式(G0)中における結合部を表す。
【0101】
本発明の別の一態様は、一般式(G0)で表される有機化合物である。
【0102】
【0103】
一般式(G0)中、Qは、酸素または硫黄を表し、Ar1は、置換もしくは無置換のナフタレン環、置換もしくは無置換のフェナントレン環、及び置換もしくは無置換のクリセン環のうちいずれか一を表し、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素または総炭素数1以上100以下の基を表し、R1及びR2の少なくとも一方は、正孔輸送性の骨格を有し、R1及びR2の少なくとも一方は、一般式(u1)で表される構造を表す。一般式(u1)中、αは、置換もしくは無置換の炭素数6以上25以下のアリーレン基を表し、nは、0以上4以下の整数を表し、A1は、置換もしくは無置換の炭素数6以上30以下のアリール基、及び置換もしくは無置換の炭素数3以上30以下のヘテロアリール基のうちいずれか一を表し、*は、一般式(G0)中における結合部を表す。
【0104】
一般式(u1)中、A1は、一般式(A1-1)乃至一般式(A1-17)のいずれか一を表すことが好ましい。
【0105】
【0106】
一般式(A1-1)乃至一般式(A1-17)中、RA1~RA11は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1以上6以下のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3以上7以下のシクロアルキル基、及び置換もしくは無置換の炭素数6以上30以下のアリール基のうちいずれか一を表す。
【0107】
一般式(u1)において、炭素数6以上25以下のアリーレン基としては、フェニレン基、ナフタレンジイル基、ビフェニルジイル基、アントラセンジイル基、フェナントレンジイル基、トリフェニレンジイル基、9H-フルオレンジイル基、9,9-ジメチルフルオレンジイル基、9,9’-スピロビフルオレンジイル基などが挙げられる。
【0108】
一般式(u1)中、αは、一般式(Ar-1)乃至一般式(Ar-14)のいずれか一を表すことが好ましい。
【0109】
【0110】
一般式(Ar-1)乃至一般式(Ar-14)中、RB1~RB14は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1以上6以下のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3以上7以下のシクロアルキル基、及び置換もしくは無置換の炭素数6以上30以下のアリール基のうちいずれか一を表す。
【0111】
上記本発明の一態様の有機化合物のそれぞれにおいて、一般式(G0)中、Ar1は、一般式(t1)乃至一般式(t3)のいずれか一を表すことが好ましい。
【0112】
【0113】
一般式(t1)乃至一般式(t3)中、R3~R24は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1以上6以下のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3以上7以下のシクロアルキル基、及び置換もしくは無置換の炭素数6以上30以下のアリール基のうちいずれか一を表し、*は、一般式(G0)中における結合部を表す。
【0114】
一般式(G0)で表される有機化合物のうち、一般式(G1)で表される有機化合物がより好ましい。これにより、有機化合物のT1準位をより低くすることができる。
【0115】
【0116】
一般式(G1)中、Qは、酸素または硫黄を表し、Ar1は、置換もしくは無置換の縮合芳香環(または、置換もしくは無置換のナフタレン環、置換もしくは無置換のフェナントレン環、及び置換もしくは無置換のクリセン環のうちいずれか一)を表し、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素または総炭素数1以上100以下の基を表し、R1及びR2の少なくとも一方は、正孔輸送性の骨格または縮合環を有する。
【0117】
一般式(G0)で表される有機化合物のうち、一般式(G1-1)乃至一般式(G1-4)のいずれか一で表される有機化合物が特に好ましい。
【0118】
【0119】
一般式(G1-1)乃至一般式(G1-4)中、Qは、酸素または硫黄を表し、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素または総炭素数1以上100以下の基を表し、R1及びR2の少なくとも一方は、正孔輸送性の骨格または縮合環を有し、R3~R8及びR17~R24は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは無置換の炭素数1以上6以下のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3以上7以下のシクロアルキル基、及び置換もしくは無置換の炭素数6以上30以下のアリール基のうちいずれか一を表す。
【0120】
なお、一般式(G0)、一般式(G1)、及び一般式(G1-1)乃至一般式(G1-4)において、R1及びR2が有する総炭素数1以上100以下の基としては、置換もしくは無置換の炭素数1以上6以下のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3以上7以下のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6以上30以下のアリール基、及び、置換もしくは無置換の炭素数3以上30以下のヘテロアリール基などが挙げられる。ただし、R1及びR2の少なくとも一方は、上述した正孔輸送性の骨格または縮合環を有する。
【0121】
また、一般式(G0)、一般式(G1)、一般式(t1)乃至一般式(t3)、一般式(G1-1)乃至一般式(G1-4)、一般式(u1)、一般式(A1-1)乃至一般式(A1-17)、及び、一般式(Ar-1)乃至一般式(Ar-14)の「置換もしくは無置換のX」(Xは各種環、骨格、基など)において、Xが置換基を有する場合、当該置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基のような炭素数1以上7以下のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、8,9,10-トリノルボルナニル基のような炭素数5以上7以下のシクロアルキル基、及び、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基のような炭素数6以上12以下のアリール基等が挙げられる。
【0122】
一般式(t1)乃至一般式(t3)、一般式(G1-1)乃至一般式(G1-4)、一般式(A1-1)乃至一般式(A1-17)、及び、一般式(Ar-1)乃至一般式(Ar-14)において、炭素数1以上6以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、2-エチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基等が挙げられる。
【0123】
一般式(t1)乃至一般式(t3)、一般式(G1-1)乃至一般式(G1-4)、一般式(A1-1)乃至一般式(A1-17)、及び、一般式(Ar-1)乃至一般式(Ar-14)において、炭素数3以上7以下のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-メチルシクロヘキシル基、2,6-ジメチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0124】
一般式(t1)乃至一般式(t3)、一般式(G1-1)乃至一般式(G1-4)、一般式(u1)、一般式(A1-1)乃至一般式(A1-17)、及び、一般式(Ar-1)乃至一般式(Ar-14)において、炭素数6以上30以下のアリール基としては、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、メシチル基、o-ビフェニル基、m-ビフェニル基、p-ビフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、フルオレニル基、9,9-ジメチルフルオレニル基、スピロフルオレニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基、フルオランテニル基等が挙げられる。
【0125】
一般式(G0)、一般式(G1)、及び、一般式(G1-1)乃至一般式(G1-4)において、R1及びR2が有する総炭素数1以上100以下の基における、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数3以上7以下のシクロアルキル基、及び、炭素数6乃至30のアリール基の具体例は、上述の記載をそれぞれ援用できる。また、当該総炭素数1以上100以下の基、及び一般式(u1)における、炭素数3以上30以下のヘテロアリール基としては、カルバゾリル基、ベンゾカルバゾリル基、ジベンゾカルバゾリル基、インドロカルバゾリル基、ベンゾインドロカルバゾリル基、ジベンゾインドロカルバゾリル基、ベンズインドロベンズカルバゾリル基、ジベンゾチエニル基、ベンゾナフトチエニル基、ジベンゾフラニル基、ベンゾナフトフラニル基などの1価の基が挙げられる。
【0126】
本発明の一態様の有機化合物の具体例としては、構造式(100)~構造式(117)に示される有機化合物を挙げることができる。ただし、本発明はこれらに限定されない。
【0127】
【0128】
【0129】
[本発明の一態様の有機化合物の合成方法]
本発明の一態様の有機化合物の合成方法としては種々の反応を適用することができる。一般式(G0)で表される有機化合物の合成方法を以下に例示する。以下では、一般式(G0’)で表される有機化合物の合成方法の一例について説明する。なお、一般式(G0’)で表される有機化合物は、縮合芳香環が縮合したフロキノキサリン誘導体または縮合芳香環が縮合したチエノキノキサリン誘導体であり、一般式(G0)で表される有機化合物の一態様である。
【0130】
【0131】
一般式(G0’)において、Qは酸素または硫黄を表し、Ar1は、置換もしくは無置換の縮合芳香環を表し、R1は、炭素数1以上100以下の基を表し、かつ、R1は、正孔輸送性の骨格または縮合環を有する。
【0132】
≪一般式(G0’)で表される有機化合物の合成方法≫
まず、合成スキーム(A-1)に示すように、メチルオキシ基またはメチルチオ基で置換されたアリールボロン酸(a1)と、アミノ基とハロゲンで置換されたキノキサリン誘導体(a2)と、をカップリングして、中間体(a3)を得た後、中間体(a3)と、亜硝酸tert-ブチルとを反応させ、環化させることで、縮合芳香環が縮合したフロキノキサリン誘導体または縮合芳香環が縮合したチエノキノキサリン誘導体(a4)を得る。なお、合成スキーム(A-1)においてY1がハロゲンの場合、さらにハロゲンを含む芳香環のボロン酸(Y3-(α)n-B2)をカップリングして得られた中間体(a5)もキノキサリン誘導体(a4)と同様に以降の反応に用いることができる。
【0133】
【0134】
合成スキーム(A-1)において、Qは酸素または硫黄を表し、Ar1は、置換もしくは無置換の縮合芳香環を表し、Y1はハロゲンまたはハロゲンを含む芳香環を表し、Y1は1つまたは2つであり、Y2はハロゲンを表し、Y3はハロゲンを含む芳香環を表し、Y3は1つまたは2つであり、αは、置換もしくは無置換の炭素数6以上25以下のアリーレン基を表し、nは、0以上4以下の整数を表し、B1及びB2は、それぞれ、ボロン酸、ボロン酸エステル、または環状トリオールボレート塩等を表す。なお、環状トリオールボレート塩は、リチウム塩の他に、カリウム塩、ナトリウム塩を用いてもよい。
【0135】
合成スキーム(A-1)において、一般式(a4)及び一般式(a5)で表される有機化合物は、合成スキーム(A-2)に示すように本発明の一態様の有機化合物の原料である。
【0136】
次に、合成スキーム(A-2)に示すように、合成スキーム(A-1)で得られた、縮合芳香環が縮合したフロキノキサリン誘導体または縮合芳香環が縮合したチエノキノキサリン誘導体(a4)と、ボロン酸化合物(b1)と、をカップリングさせることにより、一般式(G0’)で表される有機化合物を得ることができる。
【0137】
【0138】
合成スキーム(A-2)において、Qは酸素または硫黄を表し、Ar1は、置換もしくは無置換の縮合芳香環を表し、R1は、炭素数1以上10以下の基を表し、かつ、R1は、正孔輸送性の骨格を有し、Y1は1つまたは2つのハロゲンを表し、B3は、ボロン酸、ボロン酸エステル、または環状トリオールボレート塩等を表す。なお、環状トリオールボレート塩は、リチウム塩の他に、カリウム塩、ナトリウム塩を用いてもよい。
【0139】
合成スキーム(A-1)、(A-2)において用いた、メチルオキシ基またはメチルチオ基で置換されたアリールボロン酸(a1)、アミノ基とハロゲンで置換されたキノキサリン誘導体(a2)、及びボロン酸化合物(b1)は、様々な種類が市販されているか、あるいは合成可能であるため、上記一般式(G0’)で表される、縮合芳香環が縮合したフロキノキサリン誘導体または縮合芳香環が縮合したチエノキノキサリン誘導体は、数多くの種類を合成することができる。したがって、本発明の一態様の有機化合物は、バリエーションが豊富であるという特徴がある。
【0140】
以上、本発明の一態様の有機化合物の合成方法について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、他の合成方法によって合成してもよい。
【0141】
以上のように、本発明の一態様の有機化合物は、耐熱性が高く、赤色の光~近赤外光を発する発光デバイス用材料(特にホスト材料や電子輸送性材料)として好適である。本発明の一態様の有機化合物を用いることで、赤色の光~近赤外光を発する発光デバイスの発光効率を高めることができる。また、本発明の一態様の有機化合物を用いることで、赤色の光~近赤外光を発する発光デバイスの寿命を長くすることができる。また、本発明の一態様の有機化合物を用いることで、赤色の光~近赤外光を発する発光デバイスの耐熱性を高めることができる。また、本発明の一態様の有機化合物を用いることで、赤色の光~近赤外光を発する発光デバイスの信頼性を高めることができる。
【0142】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。また、本明細書において、1つの実施の形態の中に、複数の構成例が示される場合は、構成例を適宜組み合わせることが可能である。
【0143】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光デバイスについて
図1を用いて説明する。本実施の形態では、可視光または近赤外光を発する機能を有する発光デバイスについて説明する。
【0144】
[発光デバイスの構成例]
≪発光デバイスの基本的な構造≫
図1A~
図1Dに、一対の電極間にEL層を有する発光デバイスの一例を示す。
【0145】
図1Aに示す発光デバイスは、第1の電極101と第2の電極102との間にEL層103が挟まれた構造(シングル構造)を有する。EL層103は、少なくとも発光層を有する。
【0146】
図1Bに、EL層103の積層構造の一例を示す。本実施の形態では、第1の電極101が陽極として機能し、第2の電極102が陰極として機能する場合を例に挙げて説明する。EL層103は、第1の電極101上に、正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115が順次積層された構造を有する。正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、及び電子注入層115は、それぞれ、単層構造であってもよく、積層構造であってもよい。第1の電極101が陰極で、第2の電極102が陽極の場合、積層順は逆になる。
【0147】
発光デバイスは、一対の電極間に複数のEL層を有していてもよい。例えば、発光デバイスは、n層(nは2以上の整数)のEL層を有し、(n-1)層目のEL層とn層目のEL層との間に電荷発生層104を有することが好ましい。
【0148】
図1Cに、一対の電極間に2層のEL層(EL層103a、103b)を有する、タンデム構造の発光デバイスを示す。また、
図1Dに、3層のEL層(EL層103a、103b、103c)を有する、タンデム構造の発光デバイスを示す。
【0149】
EL層103a、103b、103cは、それぞれ、少なくとも発光層を有する。
図1C、
図1Dに示すタンデム構造のように複数のEL層を有する場合であっても、各EL層に、
図1Bに示すEL層103と同様の積層構造を適用することができる。EL層103a、103b、103cは、それぞれ、正孔注入層111、正孔輸送層112、電子輸送層114、及び電子注入層115のうち一種または複数種の層を有することができる。
【0150】
図1Cに示す電荷発生層104は、第1の電極101と第2の電極102に電圧を印加したときに、EL層103a及びEL層103bのうち、一方に電子を注入し、他方に正孔(ホール)を注入する機能を有する。従って、
図1Cにおいて、第1の電極101に第2の電極102よりも電位が高くなるように電圧を印加すると、電荷発生層104からEL層103aに電子が注入され、EL層103bに正孔が注入される。
【0151】
なお、電荷発生層104は、光の取り出し効率の点から、可視光または近赤外光を透過する(具体的には、電荷発生層104の可視光または近赤外光の透過率が、40%以上である)ことが好ましい。また、電荷発生層104は、第1の電極101や第2の電極102よりも低い導電率であっても機能する。
【0152】
なお、EL層同士を接して設けることで、両者の間に電荷発生層104と同じ構成が形成される場合は、電荷発生層を介さずにEL層同士を接して設けることができる。例えば、EL層の一方の面に電荷発生領域が形成されている場合、その面に接してEL層を設けることができる。
【0153】
タンデム構造の発光デバイスは、シングル構造のデバイスに比べて、電流効率が高く、同一の輝度で光らせる場合に必要な電流が少ない。そのため、発光デバイスの寿命が長く、発光装置や電子機器の信頼性を高めることができる。
【0154】
発光層113は、発光物質や複数の物質を適宜組み合わせて有しており、所望の波長の蛍光発光や燐光発光が得られる構成とすることができる。また、発光層113を発光波長の異なる積層構造としてもよい。なお、この場合、積層された各発光層に用いる発光物質やその他の物質は、それぞれ異なる材料を用いればよい。また、
図1C、
図1Dに示すEL層103a、103b、103cは、互いに異なる波長の光を発する構成であってもよい。この場合も各発光層に用いる発光物質やその他の物質を異なる材料とすればよい。例えば、
図1Cにおいて、EL層103aが赤色と緑色の光を発する構成とし、EL層103bが青色の光を発する構成とすることで、発光デバイス全体として白色発光する発光デバイスを得ることが可能となる。また、1つの発光デバイスは、同じ色を呈する発光層またはEL層を複数有していてもよい。例えば、
図1Dにおいて、EL層103aが第1の青色の光を発する構成とし、EL層103bが黄色または黄緑色の光と、赤色の光と、を発する構成とし、EL層103cが第2の青色の光を発する構成とすることで、発光デバイス全体として白色発光する発光デバイスを得ることが可能となる。
【0155】
本発明の一態様の発光デバイスにおいて、EL層で得られた発光を一対の電極間で共振させることにより、得られる発光を強める構成としてもよい。例えば、
図1Bにおいて、第1の電極101を反射電極とし、第2の電極102を半透過・半反射電極とすることにより、微小光共振器(マイクロキャビティ)構造を形成することで、EL層103から得られる発光を強めることができる。
【0156】
発光デバイスにマイクロキャビティ構造を適用することで、同じEL層を有していても異なる波長の光(単色光)を取り出すことができる。そのため、異なる発光色を得るための、画素ごとに異なる機能層の形成(いわゆる、塗り分け)が不要となる。従って、高精細化を実現することが容易である。また、着色層(カラーフィルタ)との組み合わせも可能である。さらに、特定波長の正面方向の発光強度を強めることが可能となるため、低消費電力化を図ることができる。
【0157】
なお、発光デバイスの第1の電極101が、可視光または近赤外光に対して反射性を有する導電膜と可視光または近赤外光に対して透光性を有する導電膜との積層構造からなる反射電極である場合、当該透光性を有する導電膜の膜厚を制御することにより光学調整を行うことができる。具体的には、発光層113から得られる光の波長λに対して、第1の電極101と、第2の電極102との電極間距離がmλ/2(ただし、mは自然数)近傍となるように調整するのが好ましい。
【0158】
また、発光層113から得られる所望の光(波長:λ)を増幅させるために、第1の電極101から発光層113の所望の光が得られる領域(発光領域)までの光学距離と、第2の電極102から発光層113の所望の光が得られる領域(発光領域)までの光学距離と、をそれぞれ(2m’+1)λ/4(ただし、m’は自然数)近傍となるように調節するのが好ましい。なお、ここでいう発光領域とは、発光層113における正孔と電子との再結合領域を示す。
【0159】
このような光学調整を行うことにより、発光層113から得られる光のスペクトルを狭線化させ、色純度の良い発光を得ることができる。
【0160】
但し、上記の場合、第1の電極101と第2の電極102との光学距離は、厳密には第1の電極101における反射領域から第2の電極102における反射領域までの総厚ということができる。しかし、第1の電極101や第2の電極102における反射領域を厳密に決定することは困難であるため、第1の電極101と第2の電極102の任意の位置を反射領域と仮定することで充分に上述の効果を得ることができるものとする。また、第1の電極101と、所望の光が得られる発光層との光学距離は、厳密には第1の電極101における反射領域と、所望の光が得られる発光層における発光領域との光学距離であるということができる。しかし、第1の電極101における反射領域や、所望の光が得られる発光層における発光領域を厳密に決定することは困難であるため、第1の電極101の任意の位置を反射領域、所望の光が得られる発光層の任意の位置を発光領域と仮定することで充分に上述の効果を得ることができるものとする。
【0161】
第1の電極101と第2の電極102の少なくとも一方は、可視光または近赤外光に対して透光性を有する電極とする。可視光または近赤外光に対して透光性を有する電極の近赤外光の透過率は、40%以上とする。なお、可視光または近赤外光に対して透光性を有する電極が、上記半透過・半反射電極の場合、当該電極の可視光または近赤外光の反射率は、20%以上80%以下、好ましくは40%以上70%以下とする。また、これらの電極の抵抗率は、1×10-2Ωcm以下が好ましい。
【0162】
第1の電極101または第2の電極102が、可視光または近赤外光に対して反射性を有する電極(反射電極)である場合、反射電極の可視光または近赤外光の反射率は、40%以上100%以下、好ましくは70%以上100%以下とする。また、この電極の抵抗率は、1×10-2Ωcm以下が好ましい。
【0163】
≪発光デバイスの具体的な構造≫
次に、発光デバイスの具体的な構造について説明する。ここでは、
図1Bに示すシングル構造を有する発光デバイスを用いて説明する。
【0164】
<第1の電極及び第2の電極>
第1の電極101及び第2の電極102を形成する材料としては、上述した両電極の機能が満たせるのであれば、以下に示す材料を適宜組み合わせて用いることができる。例えば、金属、合金、電気伝導性化合物、及びこれらの混合物などを適宜用いることができる。具体的には、In-Sn酸化物(ITOともいう)、In-Si-Sn酸化物(ITSOともいう)、In-Zn酸化物、In-W-Zn酸化物が挙げられる。その他、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、スズ(Sn)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、イットリウム(Y)、ネオジム(Nd)などの金属、及びこれらを適宜組み合わせて含む合金を用いることもできる。その他、上記例示のない元素周期表の第1族または第2族に属する元素(例えば、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr))、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)などの希土類金属及びこれらを適宜組み合わせて含む合金、グラフェン等を用いることができる。
【0165】
なお、マイクロキャビティ構造を有する発光デバイスを作製する場合は、第1の電極101を反射電極として形成し、第2の電極102を半透過・半反射電極として形成する。したがって、所望の導電性材料を単数または複数用い、単層または積層して形成することができる。なお、第2の電極102は、EL層103を形成した後、上記と同様に材料を選択して形成する。また、これらの電極の作製には、スパッタリング法や真空蒸着法を用いることができる。
【0166】
<正孔注入層及び正孔輸送層>
正孔注入層111は、陽極である第1の電極101からEL層103に正孔を注入する層であり、正孔注入性の高い材料を含む層である。
【0167】
正孔注入性の高い材料としては、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等の遷移金属酸化物、フタロシアニン(略称:H2Pc)や銅フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の化合物等を用いることができる。
【0168】
正孔注入性の高い材料としては、4,4’,4’’-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’-トリス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’-ビス(N-{4-[N’-(3-メチルフェニル)-N’-フェニルアミノ]フェニル}-N-フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5-トリス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)、3-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6-ビス[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3-[N-(1-ナフチル)-N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等の芳香族アミン化合物等を用いることができる。
【0169】
正孔注入性の高い材料としては、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4-ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N-(4-{N’-[4-(4-ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル-N’-フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly-TPD)等を用いることができる。または、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(略称:PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリ(スチレンスルホン酸)(PAni/PSS)等の酸を添加した高分子化合物等を用いることもできる。
【0170】
正孔注入性の高い材料としては、正孔輸送性材料とアクセプター性材料(電子受容性材料)とを含む複合材料を用いることもできる。この場合、アクセプター性材料により正孔輸送性材料から電子が引き抜かれて正孔注入層111で正孔が発生し、正孔輸送層112を介して発光層113に正孔が注入される。なお、正孔注入層111は、正孔輸送性材料とアクセプター性材料とを含む複合材料からなる単層で形成してもよく、正孔輸送性材料とアクセプター性材料とをそれぞれ別の層で積層して形成してもよい。
【0171】
正孔輸送層112は、正孔注入層111によって、第1の電極101から注入された正孔を発光層113に輸送する層である。正孔輸送層112は、正孔輸送性材料を含む層である。正孔輸送層112に用いる正孔輸送性材料は、特に正孔注入層111の最高被占有軌道準位(HOMO準位)と同じまたは近いHOMO準位を有するものを用いることが好ましい。
【0172】
正孔注入層111に用いるアクセプター性材料としては、元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を用いることができる。具体的には、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムが挙げられる。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。その他、キノジメタン誘導体、クロラニル誘導体、ヘキサアザトリフェニレン誘導体などの有機アクセプターを用いることができる。電子吸引基(ハロゲン基やシアノ基)を有する化合物としては、7,7,8,8-テトラシアノ-2,3,5,6-テトラフルオロキノジメタン(略称:F4-TCNQ)、クロラニル、2,3,6,7,10,11-ヘキサシアノ-1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT-CN)、1,3,4,5,7,8-ヘキサフルオロテトラシアノ-ナフトキノジメタン(略称:F6-TCNNQ)等を挙げることができる。特に、HAT-CNのように複素原子を複数有する縮合芳香環に電子吸引基が結合している化合物が、熱的に安定であり好ましい。また、電子吸引基(特にフルオロ基のようなハロゲン基やシアノ基)を有する[3]ラジアレン誘導体は、電子受容性が非常に高いため好ましく、具体的にはα,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[4-シアノ-2,3,5,6-テトラフルオロベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[2,6-ジクロロ-3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)ベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンアセトニトリル]などが挙げられる。
【0173】
正孔注入層111及び正孔輸送層112に用いる正孔輸送性材料としては、10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質が好ましい。なお、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものも用いることができる。
【0174】
正孔輸送性材料としては、π電子過剰型複素芳香族化合物(例えばカルバゾール誘導体、チオフェン誘導体、フラン誘導体など)や芳香族アミン(芳香族アミン骨格を有する化合物)等の正孔輸送性の高い材料が好ましい。
【0175】
カルバゾール誘導体(カルバゾール骨格を有する化合物)としては、ビカルバゾール誘導体(例えば、3,3’-ビカルバゾール誘導体)、カルバゾリル基を有する芳香族アミン等が挙げられる。
【0176】
ビカルバゾール誘導体(例えば、3,3’-ビカルバゾール誘導体)としては、具体的には、3,3’-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール)(略称:PCCP)、9,9’-ビス(1,1’-ビフェニル-4-イル)-3,3’-ビ-9H-カルバゾール、9,9’-ビス(1,1’-ビフェニル-3-イル)-3,3’-ビ-9H-カルバゾール、9-(1,1’-ビフェニル-3-イル)-9’-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:mBPCCBP)、9-(2-ナフチル)-9’-フェニル-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:βNCCP)などが挙げられる。
【0177】
カルバゾリル基を有する芳香族アミンとしては、具体的には、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、N-(4-ビフェニル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9-フェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCBiF)、N-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:PCBBiF)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4-(1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、4-フェニルジフェニル-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)アミン(略称:PCA1BP)、N,N’-ビス(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N,N’-ジフェニルベンゼン-1,3-ジアミン(略称:PCA2B)、N,N’,N’’-トリフェニル-N,N’,N’’-トリス(9-フェニルカルバゾール-3-イル)ベンゼン-1,3,5-トリアミン(略称:PCA3B)、9,9-ジメチル-N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]フルオレン-2-アミン(略称:PCBAF)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-アミン(略称:PCBASF)、PCzPCA1、PCzPCA2、PCzPCN1、3-[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA1)、3,6-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA2)、3,6-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-(1-ナフチル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzTPN2)、2-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]スピロ-9,9’-ビフルオレン(略称:PCASF)、N-[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N-(4-フェニル)フェニルアニリン(略称:YGA1BP)、N,N’-ビス[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニル-9,9-ジメチルフルオレン-2,7-ジアミン(略称:YGA2F)、4,4’,4’’-トリス(カルバゾール-9-イル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)などが挙げられる。
【0178】
カルバゾール誘導体としては、上記に加えて、3-[4-(9-フェナントリル)-フェニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCPPn)、3-[4-(1-ナフチル)-フェニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCPN)、1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)、4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、3,6-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)-9-フェニルカルバゾール(略称:CzTP)、1,3,5-トリス[4-(N-カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9-[4-(10-フェニル-9-アントラセニル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CzPA)等が挙げられる。
【0179】
チオフェン誘導体(チオフェン骨格を有する化合物)及びフラン誘導体(フラン骨格を有する化合物)としては、具体的には、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P-II)、2,8-ジフェニル-4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-III)、4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-6-フェニルジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-IV)などのチオフェン骨格を有する化合物、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾフラン)(略称:DBF3P-II)、4-{3-[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]フェニル}ジベンゾフラン(略称:mmDBFFLBi-II)等が挙げられる。
【0180】
芳香族アミンとしては、具体的には、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα-NPD)、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(略称:TPD)、4,4’-ビス[N-(スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-イル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-N-{9,9-ジメチル-2-[N’-フェニル-N’-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)アミノ]-9H-フルオレン-7-イル}フェニルアミン(略称:DFLADFL)、N-(9,9-ジメチル-2-ジフェニルアミノ-9H-フルオレン-7-イル)ジフェニルアミン(略称:DPNF)、2-[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]スピロ-9,9’-ビフルオレン(略称:DPASF)、2,7-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]-スピロ-9,9’-ビフルオレン(略称:DPA2SF)、4,4’,4’’-トリス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:1’-TNATA)、TDATA、m-MTDATA、N,N’-ジ(p-トリル)-N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)、DPAB、DNTPD、DPA3B等が挙げられる。
【0181】
正孔輸送性材料としては、PVK、PVTPA、PTPDMA、Poly-TPDなどの高分子化合物を用いることもできる。
【0182】
正孔輸送性材料は、上記に限られることなく公知の様々な材料を1種または複数種組み合わせて、正孔注入層111及び正孔輸送層112に用いることができる。
【0183】
<発光層>
発光層113は、発光物質を含む層である。発光層113は、1種または複数種の発光物質を有することができる。発光物質としては、青色、紫色、青紫色、緑色、黄緑色、黄色、橙色、赤色などの発光色を呈する物質を適宜用いる。また、発光物質として、近赤外光を発する物質を用いることもできる。また、複数の発光層に異なる発光物質を用いることにより、異なる発光色を呈する構成(例えば、補色の関係にある発光色を組み合わせて得られる白色発光)とすることができる。さらに、1つの発光層が異なる発光物質を有する積層構造であってもよい。
【0184】
発光層113は、発光物質(ゲスト材料)に加えて、1種または複数種の有機化合物(ホスト材料、アシスト材料等)を有することが好ましい。本発明の一態様の発光デバイスは、1種または複数種の有機化合物として、実施の形態1で示した、本発明の一態様の有機化合物を有することが好ましい。また、1種または複数種の有機化合物として、本実施の形態で説明する正孔輸送性材料及び電子輸送性材料の一方または双方を用いることができる。また、1種または複数種の有機化合物として、バイポーラ性材料を用いてもよい。
【0185】
発光層113に用いることができる発光物質として、特に限定は無く、一重項励起エネルギーを可視光領域または近赤外光領域の発光に変える発光物質、または三重項励起エネルギーを可視光領域または近赤外光領域の発光に変える発光物質を用いることができる。
【0186】
一重項励起エネルギーを発光に変える発光物質としては、蛍光を発する物質(蛍光材料)が挙げられ、例えば、ピレン誘導体、アントラセン誘導体、トリフェニレン誘導体、フルオレン誘導体、カルバゾール誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾキノキサリン誘導体、キノキサリン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、フェナントレン誘導体、ナフタレン誘導体などが挙げられる。特にピレン誘導体は発光量子収率が高いので好ましい。ピレン誘導体の具体例としては、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ビス[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6FLPAPrn)、N,N’-ビス(ジベンゾフラン-2-イル)-N,N’-ジフェニルピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6FrAPrn)、N,N’-ビス(ジベンゾチオフェン-2-イル)-N,N’-ジフェニルピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6ThAPrn)、N,N’-(ピレン-1,6-ジイル)ビス[(N-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン)-6-アミン](略称:1,6BnfAPrn)、N,N’-(ピレン-1,6-ジイル)ビス[(N-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン)-8-アミン](略称:1,6BnfAPrn-02)、N,N’-(ピレン-1,6-ジイル)ビス[(6,N-ジフェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン)-8-アミン](略称:1,6BnfAPrn-03)などが挙げられる。
【0187】
その他にも、5,6-ビス[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-2,2’-ビピリジン(略称:PAP2BPy)、5,6-ビス[4’-(10-フェニル-9-アントリル)ビフェニル-4-イル]-2,2’-ビピリジン(略称:PAPP2BPy)、N,N’-ビス[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニルスチルベン-4,4’-ジアミン(略称:YGA2S)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)トリフェニルアミン(略称:2YGAPPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPA)、4-(10-フェニル-9-アントリル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)、4-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPBA)、ペリレン、2,5,8,11-テトラ(tert-ブチル)ペリレン(略称:TBP)、N,N’’-(2-tert-ブチルアントラセン-9,10-ジイルジ-4,1-フェニレン)ビス[N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン](略称:DPABPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPPA)、N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPAPPA)等を用いることができる。
【0188】
また、三重項励起エネルギーを発光に変える発光物質としては、例えば、燐光を発する物質(燐光材料)や熱活性化遅延蛍光を示す熱活性化遅延蛍光(Thermally Activated Delayed Fluorescence:TADF)材料が挙げられる。
【0189】
燐光材料としては、有機金属錯体、金属錯体(白金錯体)、希土類金属錯体等が挙げられる。これらは、物質ごとに異なる発光色(発光ピーク)を示すため、必要に応じて適宜選択して用いる。
【0190】
青色または緑色を呈し、発光スペクトルのピーク波長が450nm以上570nm以下である燐光材料としては、以下のような物質が挙げられる。
【0191】
例えば、トリス{2-[5-(2-メチルフェニル)-4-(2,6-ジメチルフェニル)-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル-κN2]フェニル-κC}イリジウム(III)(略称:[Ir(mpptz-dmp)3])、トリス(5-メチル-3,4-ジフェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz)3])、トリス[4-(3-ビフェニル)-5-イソプロピル-3-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(iPrptz-3b)3])、トリス[3-(5-ビフェニル)-5-イソプロピル-4-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:Ir(iPr5btz)3])、のような4H-トリアゾール骨格を有する有機金属錯体、トリス[3-メチル-1-(2-メチルフェニル)-5-フェニル-1H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz1-mp)3])、トリス(1-メチル-5-フェニル-3-プロピル-1H-1,2,4-トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:[Ir(Prptz1-Me)3])のような1H-トリアゾール骨格を有する有機金属錯体、fac-トリス[1-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-フェニル-1H-イミダゾール]イリジウム(III)(略称:[Ir(iPrpmi)3])、トリス[3-(2,6-ジメチルフェニル)-7-メチルイミダゾ[1,2-f]フェナントリジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(dmpimpt-Me)3])のようなイミダゾール骨格を有する有機金属錯体、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1-ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス{2-[3’,5’-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ピリジナト-N,C2’}イリジウム(III)ピコリナート(略称:[Ir(CF3ppy)2(pic)])、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIr(acac))のように電子吸引基を有するフェニルピリジン誘導体を配位子とする有機金属錯体等が挙げられる。
【0192】
緑色または黄色を呈し、発光スペクトルのピーク波長が495nm以上590nm以下である燐光材料としては、以下のような物質が挙げられる。
【0193】
例えば、トリス(4-メチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppm)3])、トリス(4-t-ブチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)3])、(アセチルアセトナト)ビス(6-メチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppm)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(6-tert-ブチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[6-(2-ノルボルニル)-4-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(nbppm)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[5-メチル-6-(2-メチルフェニル)-4-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(mpmppm)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス{4,6-ジメチル-2-[6-(2,6-ジメチルフェニル)-4-ピリミジニル-κN3]フェニル-κC}イリジウム(III)(略称:[Ir(dmppm-dmp)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(4,6-ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(dppm)2(acac)])のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体、(アセチルアセトナト)ビス(3,5-ジメチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr-Me)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(5-イソプロピル-3-メチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr-iPr)2(acac)])のようなピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体、トリス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(ppy)3])、ビス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(ppy)2(acac)])、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(bzq)2(acac)])、トリス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(bzq)3])、トリス(2-フェニルキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(pq)3])、ビス(2-フェニルキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(pq)2(acac)])、[2-(4-フェニル-2-ピリジニル-κN)フェニル-κC]ビス[2-(2-ピリジニル-κN)フェニル-κC]イリジウム(III)(略称:[Ir(ppy)2(4dppy)])、ビス[2-(2-ピリジニル-κN)フェニル-κC][2-(4-メチル-5-フェニル-2-ピリジニル-κN)フェニル-κC]のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体、ビス(2,4-ジフェニル-1,3-オキサゾラト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(dpo)2(acac)])、ビス{2-[4’-(パーフルオロフェニル)フェニル]ピリジナト-N,C2’}イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(p-PF-ph)2(acac)])、ビス(2-フェニルベンゾチアゾラト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(bt)2(acac)])などの有機金属錯体の他、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:[Tb(acac)3(Phen)])のような希土類金属錯体が挙げられる。
【0194】
黄色または赤色を呈し、発光スペクトルのピーク波長が570nm以上750nm以下である燐光材料としては、以下のような物質が挙げられる。
【0195】
例えば、(ジイソブチリルメタナト)ビス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(5mdppm)2(dibm)])、ビス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(5mdppm)2(dpm)])、ビス[4,6-ジ(ナフタレン-1-イル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(d1npm)2(dpm)])、トリス(4-t-ブチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)3])のようなピリミジン骨格を有する有機金属錯体、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)2(acac)])、ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)(ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)2(dpm)])、ビス{4,6-ジメチル-2-[3-(3,5-ジメチルフェニル)-5-フェニル-2-ピラジニル-κN]フェニル-κC}(2,6-ジメチル-3,5-ヘプタンジオナト-κ2O,O’)イリジウム(III)(略称:[Ir(dmdppr-P)2(dibm)])、ビス{4,6-ジメチル-2-[5-(4-シアノ-2,6-ジメチルフェニル)-3-(3,5-ジメチルフェニル)-2-ピラジニル-κN]フェニル-κC}(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト-κ2O,O’)イリジウム(III)(略称:[Ir(dmdppr-dmCP)2(dpm)])、(アセチルアセトナト)ビス[2-メチル-3-フェニルキノキサリナト-N,C2’]イリジウム(III)(略称:[Ir(mpq)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(2,3-ジフェニルキノキサリナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(dpq)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[2,3-ビス(4-フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Fdpq)2(acac)])、ビス{4,6-ジメチル-2-[5-(5-シアノ-2-メチルフェニル)-3-(3,5-ジメチルフェニル)-2-ピラジニル-κN]フェニル-κC}(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト-κ2O,O’)イリジウム(III)(略称:[Ir(dmdppr-m5CP)2(dpm)])のようなピラジン骨格を有する有機金属錯体や、トリス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(piq)3])、ビス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(piq)2(acac)])、ビス[4,6-ジメチル-2-(2-キノリニル-κN)フェニル-κC](2,4-ペンタンジオナト-κ2O,O’)イリジウム(III)のようなピリジン骨格を有する有機金属錯体、2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-ポルフィリン白金(II)(略称:[PtOEP])のような白金錯体、トリス(1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:[Eu(DBM)3(Phen)])、トリス[1-(2-テノイル)-3,3,3-トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:[Eu(TTA)3(Phen)])のような希土類金属錯体が挙げられる。
【0196】
発光層113に用いる有機化合物(ホスト材料、アシスト材料等)としては、発光物質のエネルギーギャップより大きなエネルギーギャップを有する物質を、一種もしくは複数種選択して用いることができる。
【0197】
発光層113に用いる発光物質が蛍光材料である場合、発光物質と組み合わせて用いる有機化合物としては、一重項励起状態のエネルギー準位が大きく、三重項励起状態のエネルギー準位が小さい有機化合物を用いるのが好ましい。
【0198】
一部上記の具体例と重複するが、発光物質(蛍光材料、燐光材料)との好ましい組み合わせという観点から、以下に有機化合物の具体例を示す。
【0199】
発光物質が蛍光材料である場合、発光物質と組み合わせて用いることができる有機化合物としては、アントラセン誘導体、テトラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、クリセン誘導体、ジベンゾ[g,p]クリセン誘導体等の縮合多環芳香族化合物が挙げられる。
【0200】
蛍光材料と組み合わせて用いる有機化合物(ホスト材料)の具体例としては、9-フェニル-3-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:PCzPA)、3,6-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:DPCzPA)、PCPN、9,10-ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、N,N-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:CzA1PA)、4-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:DPhPA)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPA)、N,9-ジフェニル-N-{4-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]フェニル}-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPBA)、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPA)、6,12-ジメトキシ-5,11-ジフェニルクリセン、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’-オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン-2,7,10,15-テトラアミン(略称:DBC1)、CzPA、7-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-7H-ジベンゾ[c,g]カルバゾール(略称:cgDBCzPA)、6-[3-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン(略称:2mBnfPPA)、9-フェニル-10-{4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)-ビフェニル-4’-イル}-アントラセン(略称:FLPPA)、9,10-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2-tert-ブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:t-BuDNA)、9,9’-ビアントリル(略称:BANT)、9,9’-(スチルベン-3,3’-ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS)、9,9’-(スチルベン-4,4’-ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS2)、1,3,5-トリ(1-ピレニル)ベンゼン(略称:TPB3)、5,12-ジフェニルテトラセン、5,12-ビス(ビフェニル-2-イル)テトラセンなどが挙げられる。
【0201】
発光物質が燐光材料である場合、発光物質と組み合わせて用いる有機化合物としては、発光物質の三重項励起エネルギー(基底状態と三重項励起状態とのエネルギー差)よりも三重項励起エネルギーの大きい有機化合物を選択すればよい。
【0202】
励起錯体を形成させるべく複数の有機化合物(例えば、第1のホスト材料、及び第2のホスト材料(またはアシスト材料)等)を発光物質と組み合わせて用いる場合は、これらの複数の有機化合物を燐光材料(特に有機金属錯体)と混合して用いることが好ましい。
【0203】
このような構成とすることにより、励起錯体から発光物質へのエネルギー移動であるExTET(Exciplex-Triplet Energy Transfer)を用いた発光を効率よく得ることができる。なお、複数の有機化合物の組み合わせとしては、励起錯体が形成されやすいものがよく、正孔を受け取りやすい化合物(正孔輸送性材料)と、電子を受け取りやすい化合物(電子輸送性材料)とを組み合わせることが特に好ましい。なお、実施の形態1で示した本発明の一態様の有機化合物は、LUMO準位が低く、電子を受け取りやすい化合物として好適である。なお、正孔輸送性材料及び電子輸送性材料の具体例については、本実施の形態で示す材料を用いることができる。この構成により、発光デバイスの高効率、低電圧駆動、長寿命を同時に実現できる。
【0204】
発光物質が燐光材料である場合に発光物質と組み合わせて用いることができる有機化合物としては、芳香族アミン、カルバゾール誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、亜鉛やアルミニウム系の金属錯体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、キノキサリン誘導体、ジベンゾキノキサリン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、ピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、フェナントロリン誘導体等が挙げられる。
【0205】
なお、上記のうち、正孔輸送性の高い有機化合物である芳香族アミン(芳香族アミン骨格を有する化合物)、カルバゾール誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体(チオフェン誘導体)、ジベンゾフラン誘導体(フラン誘導体)の具体例としては、上記に示した正孔輸送性材料の具体例と同じものが挙げられる。
【0206】
電子輸送性の高い有機化合物である、亜鉛やアルミニウム系の金属錯体の具体例としては、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、トリス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq3)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq2)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等が挙げられる。
【0207】
この他、ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。
【0208】
電子輸送性の高い有機化合物である、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、キノキサリン誘導体、ジベンゾキノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体の具体例としては、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(略称:OXD-7)、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CO11)、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、3-(4-tert-ブチルフェニル)-4-(4-エチルフェニル)-5-(4-ビフェニリル)-1,2,4-トリアゾール(略称:p-EtTAZ)、2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm-II)、4,4’-ビス(5-メチルベンゾオキサゾール-2-イル)スチルベン(略称:BzOs、バソフェナントロリン(略称:Bphen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、2,9-ビス(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(略称:NBphen)、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq-II)、2-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq-II)、2-[3’-(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mCzBPDBq)、2-[4-(3,6-ジフェニル-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2CzPDBq-III)、7-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:7mDBTPDBq-II)、及び6-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:6mDBTPDBq-II)などが挙げられる。
【0209】
電子輸送性の高い有機化合物である、ジアジン骨格を有する複素環化合物、トリアジン骨格を有する複素環化合物、ピリジン骨格を有する複素環化合物の具体例としては、4,6-ビス[3-(フェナントレン-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mPnP2Pm)、4,6-ビス[3-(4-ジベンゾチエニル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mDBTP2Pm-II)、4,6-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mCzP2Pm)、2-{4-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PCCzPTzn)、9-[3-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-9’-フェニル-2,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:mPCCzPTzn-02)、3,5-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリジン(略称:35DCzPPy)、1,3,5-トリ[3-(3-ピリジル)フェニル]ベンゼン(略称:TmPyPB)などが挙げられる。
【0210】
電子輸送性の高い有機化合物としては、ポリ(2,5-ピリジンジイル)(略称:PPy)、ポリ[(9,9-ジヘキシルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(ピリジン-3,5-ジイル)](略称:PF-Py)、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(2,2’-ビピリジン-6,6’-ジイル)](略称:PF-BPy)のような高分子化合物を用いることもできる。
【0211】
TADF材料とは、三重項励起状態をわずかな熱エネルギーによって一重項励起状態にアップコンバート(逆項間交差)が可能で、一重項励起状態からの発光(蛍光)を効率よく呈する材料のことである。また、熱活性化遅延蛍光が効率良く得られる条件としては、三重項励起準位と一重項励起準位のエネルギー差が0eV以上0.2eV以下、好ましくは0eV以上0.1eV以下であることが挙げられる。また、TADF材料における遅延蛍光とは、通常の蛍光と同様のスペクトルを持ちながら、寿命が著しく長い発光をいう。その寿命は、10-6秒以上、好ましくは10-3秒以上である。
【0212】
TADF材料としては、例えば、フラーレンやその誘導体、プロフラビン等のアクリジン誘導体、エオシン等が挙げられる。また、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、スズ(Sn)、白金(Pt)、インジウム(In)、もしくはパラジウム(Pd)等を含む金属含有ポルフィリンが挙げられる。金属含有ポルフィリンとしては、例えば、プロトポルフィリン-フッ化スズ錯体(略称:SnF2(Proto IX))、メソポルフィリン-フッ化スズ錯体(略称:SnF2(Meso IX))、ヘマトポルフィリン-フッ化スズ錯体(略称:SnF2(Hemato IX))、コプロポルフィリンテトラメチルエステル-フッ化スズ錯体(略称:SnF2(Copro III-4Me))、オクタエチルポルフィリン-フッ化スズ錯体(略称:SnF2(OEP))、エチオポルフィリン-フッ化スズ錯体(略称:SnF2(Etio I))、オクタエチルポルフィリン-塩化白金錯体(略称:PtCl2OEP)等が挙げられる。
【0213】
その他にも、2-(ビフェニル-4-イル)-4,6-ビス(12-フェニルインドロ[2,3-a]カルバゾール-11-イル)-1,3,5-トリアジン(略称:PIC-TRZ)、PCCzPTzn、2-[4-(10H-フェノキサジン-10-イル)フェニル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PXZ-TRZ)、3-[4-(5-フェニル-5,10-ジヒドロフェナジン-10-イル)フェニル]-4,5-ジフェニル-1,2,4-トリアゾール(略称:PPZ-3TPT)、3-(9,9-ジメチル-9H-アクリジン-10-イル)-9H-キサンテン-9-オン(略称:ACRXTN)、ビス[4-(9,9-ジメチル-9,10-ジヒドロアクリジン)フェニル]スルホン(略称:DMAC-DPS)、10-フェニル-10H,10’H-スピロ[アクリジン-9,9’-アントラセン]-10’-オン(略称:ACRSA)、等のπ電子過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香環を有する複素環化合物を用いることができる。なお、π電子過剰型複素芳香環とπ電子不足型複素芳香環とが直接結合した物質は、π電子過剰型複素芳香環のドナー性とπ電子不足型複素芳香環のアクセプター性が共に強くなり、一重項励起状態と三重項励起状態のエネルギー差が小さくなるため、特に好ましい。
【0214】
なお、TADF材料を用いる場合、他の有機化合物と組み合わせて用いることもできる。特に、上述したホスト材料、正孔輸送材料、電子輸送材料と組み合わせることができる。
【0215】
また、上記の材料は、低分子材料や高分子材料と組み合わせることにより発光層113の形成に用いることができる。また、成膜には、公知の方法(蒸着法や塗布法や印刷法など)を適宜用いることができる。
【0216】
<電子輸送層>
電子輸送層114は、電子注入層115によって、第2の電極102から注入された電子を発光層113に輸送する層である。なお、電子輸送層114は、電子輸送性材料を含む層である。電子輸送層114に用いる電子輸送性材料は、1×10-6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質が好ましい。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものも用いることができる。本発明の一態様の発光デバイスは、電子輸送層114に用いる電子輸送性材料として、本発明の一態様の有機化合物を有することが好ましい。
【0217】
電子輸送性材料としては、キノリン骨格を有する金属錯体、ベンゾキノリン骨格を有する金属錯体、オキサゾール骨格を有する金属錯体、チアゾール骨格を有する金属錯体等の他、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、キノリン配位子を有するキノリン誘導体、ベンゾキノリン誘導体、キノキサリン誘導体、ジベンゾキノキサリン誘導体、ピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、その他含窒素複素芳香族化合物を含むπ電子不足型複素芳香族化合物等の電子輸送性の高い材料を用いることができる。
【0218】
電子輸送性材料の具体例としては、上記に示した材料を用いることができる。
【0219】
<電子注入層>
電子注入層115は、電子注入性の高い材料を含む層である。電子注入層115には、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)、リチウム酸化物(LiOx)等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を用いることができる。また、フッ化エルビウム(ErF3)のような希土類金属化合物を用いることができる。また、電子注入層115にエレクトライドを用いてもよい。エレクトライドとしては、例えば、カルシウムとアルミニウムの混合酸化物に電子を高濃度添加した物質等が挙げられる。なお、上述した電子輸送層114を構成する物質を用いることもできる。
【0220】
また、電子注入層115に、電子輸送性材料とドナー性材料(電子供与性材料)とを含む複合材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子供与体によって有機化合物に電子が発生するため、電子注入性及び電子輸送性に優れている。この場合、有機化合物としては、発生した電子の輸送に優れた材料であることが好ましく、具体的には、例えば上述した電子輸送層114に用いる電子輸送性材料(金属錯体や複素芳香族化合物等)を用いることができる。電子供与体としては、有機化合物に対し電子供与性を示す物質であればよい。具体的には、アルカリ金属やアルカリ土類金属や希土類金属が好ましく、リチウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、エルビウム、イッテルビウム等が挙げられる。また、アルカリ金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物が好ましく、リチウム酸化物、カルシウム酸化物、バリウム酸化物等が挙げられる。また、酸化マグネシウムのようなルイス塩基を用いることもできる。また、テトラチアフルバレン(略称:TTF)等の有機化合物を用いることもできる。
【0221】
<電荷発生層>
図1Cに示す発光デバイスにおいて、電荷発生層104は、第1の電極101(陽極)と第2の電極102(陰極)との間に電圧を印加したときに、EL層103aに電子を注入し、EL層103bに正孔を注入する機能を有する。
【0222】
電荷発生層104は、正孔輸送性材料とアクセプター性材料(電子受容性材料)とを含む構成であっても、電子輸送性材料とドナー性材料とを含む構成であってもよい。このような構成の電荷発生層104を形成することにより、EL層が積層された場合における駆動電圧の上昇を抑制することができる。
【0223】
正孔輸送性材料、アクセプター性材料、電子輸送性材料、及びドナー性材料は、それぞれ上述の材料を用いることができる。
【0224】
なお、本実施の形態で示す発光デバイスの作製には、蒸着法などの真空プロセスや、スピンコート法やインクジェット法などの溶液プロセスを用いることができる。蒸着法を用いる場合には、スパッタ法、イオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法、分子線蒸着法、真空蒸着法などの物理蒸着法(PVD法)や、化学蒸着法(CVD法)等を用いることができる。特にEL層に含まれる機能層(正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層)及び電荷発生層については、蒸着法(真空蒸着法等)、塗布法(ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、スピンコート法、スプレーコート法等)、印刷法(インクジェット法、スクリーン(孔版印刷)法、オフセット(平版印刷)法、フレキソ(凸版印刷)法、グラビア法、マイクロコンタクト法等)などの方法により形成することができる。
【0225】
EL層103を構成する機能層及び電荷発生層の材料は、それぞれ、上述の材料に限定されない。例えば、機能層の材料として、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)、中分子化合物(低分子と高分子の中間領域の化合物:分子量400乃至4000)、無機化合物(量子ドット材料等)等を用いてもよい。なお、量子ドット材料としては、コロイド状量子ドット材料、合金型量子ドット材料、コア・シェル型量子ドット材料、コア型量子ドット材料などを用いることができる。
【0226】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0227】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光装置について
図2~
図5を用いて説明する。
【0228】
[発光装置の構成例1]
図2Aに、発光装置の上面図を示し、
図2B、
図2Cに、
図2Aの一点鎖線X1-Y1間及びX2-Y2間の断面図を示す。
図2A~
図2Cに示す発光装置は、例えば、照明装置に用いることができる。発光装置は、ボトムエミッション、トップエミッション、デュアルエミッションのいずれであってもよい。
【0229】
図2Bに示す発光装置は、基板490a、基板490b、導電層406、導電層416、絶縁層405、有機ELデバイス450(第1の電極401、EL層402、及び第2の電極403)、及び接着層407を有する。有機ELデバイス450は、発光素子、有機EL素子、発光デバイスなどということもできる。EL層402は、実施の形態1に示す、本発明の一態様の有機化合物を有することが好ましい。例えば、発光層のホスト材料及び電子輸送層の材料の一方または双方として、当該有機化合物を有することが好ましい。
【0230】
有機ELデバイス450は、基板490a上の第1の電極401と、第1の電極401上のEL層402と、EL層402上の第2の電極403とを有する。基板490a、接着層407、及び基板490bによって、有機ELデバイス450は封止されている。
【0231】
第1の電極401、導電層406、導電層416の端部は絶縁層405で覆われている。導電層406は第1の電極401と電気的に接続し、導電層416は第2の電極403と電気的に接続する。第1の電極401を介して絶縁層405に覆われた導電層406は、補助配線として機能し、第1の電極401と電気的に接続する。有機ELデバイス450の電極と電気的に接続する補助配線を有すると、電極の抵抗に起因する電圧降下を抑制できるため、好ましい。導電層406は、第1の電極401上に設けられていてもよい。また、絶縁層405上等に、第2の電極403と電気的に接続する補助配線を有していてもよい。
【0232】
基板490a及び基板490bには、それぞれ、ガラス、石英、セラミック、サファイア、有機樹脂などを用いることができる。基板490a及び基板490bに可撓性を有する材料を用いると、表示装置の可撓性を高めることができる。
【0233】
発光装置の発光面には、光取り出し効率を高めるための光取り出し構造、ゴミの付着を抑制する帯電防止膜、汚れを付着しにくくする撥水性の膜、使用に伴う傷の発生を抑制するハードコート膜、衝撃吸収層等を配置してもよい。
【0234】
絶縁層405に用いることのできる絶縁材料としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウムなどの無機絶縁材料が挙げられる。
【0235】
接着層407としては、紫外線硬化型等の光硬化型接着剤、反応硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、嫌気型接着剤などの各種硬化型接着剤を用いることができる。これら接着剤としてはエポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、イミド樹脂、PVC(ポリビニルクロライド)樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)樹脂、EVA(エチレンビニルアセテート)樹脂等が挙げられる。特に、エポキシ樹脂等の透湿性が低い材料が好ましい。また、二液混合型の樹脂を用いてもよい。また、接着シート等を用いてもよい。
【0236】
図2Cに示す発光装置は、バリア層490c、導電層406、導電層416、絶縁層405、有機ELデバイス450、接着層407、バリア層423、及び基板490bを有する。
【0237】
図2Cに示すバリア層490cは、基板420、接着層422、及びバリア性の高い絶縁層424を有する。
【0238】
図2Cに示す発光装置では、バリア性の高い絶縁層424とバリア層423との間に、有機ELデバイス450が配置されている。したがって、基板420及び基板490bに比較的防水性の低い樹脂フィルムなどを用いても、有機ELデバイスに水などの不純物が入り込み寿命が低減することを、抑制することができる。
【0239】
基板420及び基板490bには、それぞれ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)樹脂、ポリアミド樹脂(ナイロン、アラミド等)、ポリシロキサン樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ABS樹脂、セルロースナノファイバー等を用いることができる。基板420及び基板490bには、可撓性を有する程度の厚さのガラスを用いてもよい。
【0240】
バリア性の高い絶縁層424としては、無機絶縁膜を用いることが好ましい。無機絶縁膜としては、例えば、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、窒化アルミニウム膜などを用いることができる。また、酸化ハフニウム膜、酸化イットリウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化ガリウム膜、酸化タンタル膜、酸化マグネシウム膜、酸化ランタン膜、酸化セリウム膜、及び酸化ネオジム膜等を用いてもよい。また、上述の絶縁膜を2以上積層して用いてもよい。
【0241】
バリア層423には、少なくとも1層の無機膜を有することが好ましい。例えば、バリア層423には、無機膜の単層構造や、無機膜と有機膜との積層構造を適用することができる。無機膜としては、上記無機絶縁膜が好適である。当該積層構造としては、例えば、酸化窒化シリコン膜と、酸化シリコン膜と、有機膜と、酸化シリコン膜と、窒化シリコン膜と、を順に形成する構成などが挙げられる。保護層を無機膜と有機膜との積層構造とすることで、有機ELデバイス450に入り込みうる不純物(代表的には、水素、水など)を好適に抑制することができる。
【0242】
バリア性の高い絶縁層424及び有機ELデバイス450は、可撓性を有する基板420上に直接形成することができる。この場合、接着層422は不要である。また、絶縁層424及び有機ELデバイス450は、硬質基板上に剥離層を介して形成した後、基板420に転置することができる。例えば、剥離層に、熱、力、レーザ光などを与えることにより、硬質基板から絶縁層424及び有機ELデバイス450を剥離した後、接着層422を用いて基板420を貼り合わせることで、基板420に転置してもよい。剥離層としては、例えば、タングステン膜と酸化シリコン膜とを含む無機膜の積層構造や、ポリイミド等の有機樹脂膜等を用いることができる。硬質基板を用いる場合、樹脂基板などに比べて、高温をかけて絶縁層424を形成することができるため、絶縁層424を緻密で極めてバリア性の高い絶縁膜とすることができる。
【0243】
[発光装置の構成例2]
図3Aに、発光装置の断面図を示す。
図3Aに示す発光装置は、トランジスタと発光デバイスとが電気的に接続されてなるアクティブマトリクス型の発光装置である。
【0244】
図3Aに示す発光装置は、基板201、トランジスタ210、発光デバイス203R、発光デバイス203G、発光デバイス203B、カラーフィルタ206R、カラーフィルタ206G、カラーフィルタ206B、基板205等を有する。
【0245】
図3Aでは、基板201上にトランジスタ210が設けられ、トランジスタ210上に絶縁層202が設けられ、絶縁層202上に発光デバイス203R、203G、203Bが設けられている。
【0246】
トランジスタ210、及び、発光デバイス203R、203G、203Bは、基板201、基板205、及び接着層208によって囲まれた空間207に封止されている。空間207は、例えば、減圧雰囲気、不活性雰囲気、または樹脂で充填された構成を適用できる。
【0247】
図3Aに示す発光装置は、1つの画素が、赤色の副画素(R)、緑色の副画素(G)、及び青色の副画素(B)を有する構成である。
【0248】
本発明の一態様の発光装置は、マトリクス状に配置された複数の画素を有する。1つの画素は、1つ以上の副画素を有する。1つの副画素は、1つの発光デバイスを有する。例えば、画素には、副画素を3つ有する構成(R、G、Bの3色、または、黄色(Y)、シアン(C)、及びマゼンタ(M)の3色など)、または、副画素を4つ有する構成(R、G、B、白色(W)の4色、または、R、G、B、Yの4色など)を適用できる。
【0249】
図3Bに、発光デバイス203R、発光デバイス203G、及び、発光デバイス203Bの詳細な構成を示す。発光デバイス203R、203G、203Bは、共通のEL層213を有し、また、各発光デバイスの発光色に応じて、各発光デバイスの電極間の光学距離が調整されたマイクロキャビティ構造を有する。EL層213は、実施の形態1に示す、本発明の一態様の有機化合物を有することが好ましい。例えば、発光層のホスト材料及び電子輸送層の材料の一方または双方として、当該有機化合物を有することが好ましい。
【0250】
第1の電極211は、反射電極として機能し、第2の電極215は、半透過・半反射電極として機能する。
【0251】
発光デバイス203Rは、赤色の光の強度が強められるよう、第1の電極211と第2の電極215との間が光学距離220Rとなるように調整されている。同様に、発光デバイス203Gは、緑色の光の強度が強められるよう、第1の電極211と第2の電極215との間が光学距離220Gとなるように調整され、発光デバイス203Bは、青色の光の強度が強められるよう、第1の電極211と第2の電極215との間が光学距離220Bとなるように調整されている。
【0252】
図3Bに示すように、発光デバイス203Rにおいて導電層212Rを第1の電極211上に形成し、発光デバイス203Gにおいて導電層212Gを第1の電極211上に形成することで、光学調整を行うことができる。さらに、発光デバイス203Bにおいて、導電層212R及び導電層212Gとは異なる厚さの導電層を、第1の電極211上に形成して、光学距離220Bを調整してもよい。なお、
図3Aに示すように、第1の電極211、導電層212R、及び導電層212Gの端部は、絶縁層204に覆われている。
【0253】
図3Aに示す発光装置は、発光デバイスから得られた発光が基板205に形成された各色のカラーフィルタを介して射出されるトップエミッション型の発光装置である。カラーフィルタは、可視光のうち特定の波長域を通過させ、特定の波長域を阻止することができる。
【0254】
赤色の副画素(R)では、発光デバイス203Rからの発光が、赤色のカラーフィルタ206Rを介して射出される。
図3Aに示すように、発光デバイス203Rと重なる位置に赤の波長域のみを通過させるカラーフィルタ206Rを設けることにより、発光デバイス203Rから赤色発光を得ることができる。
【0255】
同様に、緑色の副画素(G)では、発光デバイス203Gからの発光が、緑色のカラーフィルタ206Gを介して射出され、青色の副画素(B)では、発光デバイス203Bからの発光が、青色のカラーフィルタ206Bを介して射出される。
【0256】
なお、1種のカラーフィルタの端部には、ブラックマトリックス209(黒色層ともいえる)が設けられていてもよい。さらに、各色のカラーフィルタ及びブラックマトリックス209は、可視光を透過するオーバーコート層で覆われていてもよい。
【0257】
図3Cに示す発光装置は、1つの画素が、赤色の副画素(R)、緑色の副画素(G)、青色の副画素(B)、白色の副画素(W)を有する構成である。
図3Cにおいて、白色の副画素(W)が有する発光デバイス203Wからの光は、カラーフィルタを介さずに発光装置の外部に射出される。
【0258】
なお、発光デバイス203Wにおける第1の電極211と第2の電極215との間の光学距離は、発光デバイス203R、203G、203Bのいずれかと同じであってもよく、いずれとも異なっていてもよい。
【0259】
例えば、発光デバイス203Wから発せられる光が色温度の低い白色光であるなど、青色の波長の光の強度を強めたい場合には、
図3Cに示すように、発光デバイス203Wにおける光学距離を、発光デバイス203Bにおける光学距離220Bと等しくすることが好ましい。これにより、発光デバイス203Wから得られる光を所望の色温度の白色光に近づけることができる。
【0260】
図3Aでは、各色の副画素が有する発光デバイスに、共通のEL層213を用いる例を示したが、
図4Aに示すように、各色の副画素が有する発光デバイスに、それぞれ異なるEL層を用いてもよい。
図4Aにおいても、上述のマイクロキャビティ構造を同様に適用できる。
【0261】
図4Aでは、発光デバイス203Rが、EL層213Rを有し、発光デバイス203Gが、EL層213Gを有し、発光デバイス203Bが、EL層213Bを有する例を示す。EL層213R、213G、213Bは、共通の層を有していてもよい。例えば、EL層213R、213G、213Bは、互いに発光層の構成が異なり、他の層は共通の層であってもよい。
図4Aにおいて、発光デバイス203R、203G、203Bが発した光は、カラーフィルタを介して取り出されてもよく、カラーフィルタを介さずに取り出されてもよい。
【0262】
図3Aでは、トップエミッション型の発光装置を示したが、
図4Bに示すように、トランジスタ210が形成されている基板201側に光を取り出す構造(ボトムエミッション型)の発光装置も本発明の一態様である。
【0263】
ボトムエミッション型の発光装置では、各色のカラーフィルタを、基板201と発光デバイスとの間に設けることが好ましい。
図4Bでは、基板201上にトランジスタ210を形成し、トランジスタ210上に絶縁層202aを形成し、絶縁層202a上にカラーフィルタ206R、206G、206Bを形成し、カラーフィルタ206R、206G、206B上に絶縁層202bを形成し、絶縁層202b上に発光デバイス203R、203G、203Bを形成する例を示す。
【0264】
トップエミッション型の発光装置の場合には、基板201として遮光性の基板及び透光性の基板を用いることができ、基板205として透光性の基板を用いることができる。
【0265】
ボトムエミッション型の発光装置の場合には、基板205として遮光性の基板及び透光性の基板を用いることができ、基板201として透光性の基板を用いることができる。
【0266】
[発光装置の構成例3]
本発明の一態様の発光装置は、パッシブマトリクス型またはアクティブマトリクス型とすることができる。アクティブマトリクス型の発光装置について
図5を用いて説明する。
【0267】
【0268】
図5A、
図5Bに示すアクティブマトリクス型の発光装置は、画素部302、回路部303、回路部304a、及び回路部304bを有する。
【0269】
回路部303、回路部304a、及び回路部304bは、それぞれ、走査線駆動回路(ゲートドライバ)または信号線駆動回路(ソースドライバ)として機能することができる。または、外付けのゲートドライバまたはソースドライバと、画素部302と、を電気的に接続する回路であってもよい。
【0270】
第1の基板301上には、引き回し配線307が設けられる。引き回し配線307は、外部入力端子であるFPC308と電気的に接続される。FPC308は、回路部303、回路部304a、及び回路部304bに外部からの信号(例えば、ビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等)や電位を伝達する。また、FPC308にはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていてもよい。
図5A、
図5Bに示す構成は、発光デバイス(または発光装置)及びFPCを有する発光モジュールということもできる。
【0271】
画素部302は、有機ELデバイス317、トランジスタ311、及びトランジスタ312を有する画素を、複数有する。トランジスタ312は、有機ELデバイス317が有する第1の電極313と電気的に接続されている。トランジスタ311は、スイッチング用トランジスタとして機能する。トランジスタ312は、電流制御用トランジスタとして機能する。なお、各画素が有するトランジスタの数は、特に限定されることはなく、必要に応じて適宜設けることができる。
【0272】
回路部303は、トランジスタ309、トランジスタ310等を含む、複数のトランジスタを有する。回路部303は、単極性(N型またはP型のいずれか一方のみ)のトランジスタを含む回路で形成されてもよいし、N型のトランジスタとP型のトランジスタを含むCMOS回路で形成されてもよい。また、外部に駆動回路を有する構成としてもよい。
【0273】
本実施の形態の発光装置が有するトランジスタの構造は特に限定されない。例えば、プレーナ型のトランジスタ、スタガ型のトランジスタ、逆スタガ型のトランジスタ等を用いることができる。また、トップゲート型またはボトムゲート型のいずれのトランジスタ構造としてもよい。または、チャネルが形成される半導体層の上下にゲートが設けられていてもよい。
【0274】
トランジスタに用いる半導体材料の結晶性についても特に限定されず、非晶質半導体、結晶性を有する半導体(微結晶半導体、多結晶半導体、単結晶半導体、または一部に結晶領域を有する半導体)のいずれを用いてもよい。結晶性を有する半導体を用いると、トランジスタ特性の劣化を抑制できるため好ましい。
【0275】
トランジスタの半導体層は、金属酸化物(酸化物半導体ともいう)を有することが好ましい。または、トランジスタの半導体層は、シリコンを有していてもよい。シリコンとしては、アモルファスシリコン、結晶性のシリコン(低温ポリシリコン、単結晶シリコンなど)などが挙げられる。
【0276】
半導体層は、例えば、インジウムと、M(Mは、ガリウム、アルミニウム、シリコン、ホウ素、イットリウム、スズ、銅、バナジウム、ベリリウム、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、及びマグネシウムから選ばれた一種または複数種)と、亜鉛と、を有することが好ましい。特に、Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、及びスズから選ばれた一種または複数種であることが好ましい。
【0277】
特に、半導体層として、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む酸化物(IGZOとも記す)を用いることが好ましい。
【0278】
半導体層がIn-M-Zn酸化物の場合、In-M-Zn酸化物を成膜するために用いるスパッタリングターゲットは、Inの原子数比がMの原子数比以上であることが好ましい。このようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn=2:1:3、In:M:Zn=3:1:2、In:M:Zn=4:2:3、In:M:Zn=4:2:4.1、In:M:Zn=5:1:6、In:M:Zn=5:1:7、In:M:Zn=5:1:8、In:M:Zn=6:1:6、In:M:Zn=5:2:5等が挙げられる。
【0279】
回路部303、回路部304a、回路部304bが有するトランジスタと、画素部302が有するトランジスタは、同じ構造であってもよく、異なる構造であってもよい。回路部303、回路部304a、回路部304bが有する複数のトランジスタの構造は、全て同じであってもよく、2種類以上あってもよい。同様に、画素部302が有する複数のトランジスタの構造は、全て同じであってもよく、2種類以上あってもよい。
【0280】
第1の電極313の端部は、絶縁層314により覆われている。なお、絶縁層314には、ネガ型の感光性樹脂、ポジ型の感光性樹脂(アクリル樹脂)などの有機化合物や、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン等の無機化合物を用いることができる。絶縁層314の上端部または下端部には、曲率を有する曲面を有するのが好ましい。これにより、絶縁層314の上層に形成される膜の被覆性を良好なものとすることができる。
【0281】
第1の電極313上にはEL層315が設けられ、EL層315上には第2の電極316が設けられる。EL層315は、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層等を有する。EL層315は、実施の形態1に示す、本発明の一態様の有機化合物を有することが好ましい。例えば、発光層のホスト材料及び電子輸送層の材料の一方または双方として、当該有機化合物を有することが好ましい。
【0282】
複数のトランジスタ及び複数の有機ELデバイス317は、第1の基板301、第2の基板306、及びシール材305によって、封止されている。第1の基板301、第2の基板306、及びシール材305で囲まれた空間318は、不活性気体(窒素やアルゴン等)や有機物(シール材305を含む)で充填されていてもよい。
【0283】
シール材305には、エポキシ樹脂やガラスフリットを用いることができる。なお、シール材305には、できるだけ水分や酸素を透過しない材料を用いることが好ましい。シール材としてガラスフリットを用いる場合には、接着性の観点から第1の基板301及び第2の基板306はガラス基板であることが好ましい。
【0284】
図5C、
図5Dに、発光装置に用いることができるトランジスタの例を示す。
【0285】
図5Cに示すトランジスタ320は、ゲートとして機能する導電層321、ゲート絶縁層として機能する絶縁層328、チャネル形成領域327i及び一対の低抵抗領域327nを有する半導体層327、一対の低抵抗領域327nの一方と接続する導電層322a、一対の低抵抗領域327nの他方と接続する導電層322b、ゲート絶縁層として機能する絶縁層325、ゲートとして機能する導電層323、並びに、導電層323を覆う絶縁層324を有する。絶縁層328は、導電層321とチャネル形成領域327iとの間に位置する。絶縁層325は、導電層323とチャネル形成領域327iとの間に位置する。トランジスタ320は、絶縁層326によって覆われていることが好ましい。絶縁層326をトランジスタ320の構成要素に含んでいてもよい。
【0286】
導電層322a及び導電層322bは、それぞれ、絶縁層324に設けられた開口を介して低抵抗領域327nと接続される。導電層322a及び導電層322bのうち、一方はソースとして機能し、他方はドレインとして機能する。
【0287】
絶縁層325は、少なくとも半導体層のチャネル形成領域327iと重ねて設けられる。絶縁層325は、一対の低抵抗領域327nの上面及び側面を覆っていてもよい。
【0288】
図5Dに示すトランジスタ330は、ゲートとして機能する導電層331、ゲート絶縁層として機能する絶縁層338、ソース及びドレインとして機能する導電層332a及び導電層332b、半導体層337、ゲート絶縁層として機能する絶縁層335、並びに、ゲートとして機能する導電層333を有する。絶縁層338は、導電層331と半導体層337との間に位置する。絶縁層335は、導電層333と半導体層337との間に位置する。トランジスタ330は、絶縁層334によって覆われていることが好ましい。絶縁層334を、トランジスタ330の構成要素に含んでもよい。
【0289】
トランジスタ320及びトランジスタ330には、チャネルが形成される半導体層を2つのゲートで挟持する構成が適用されている。2つのゲートを接続し、これらに同一の信号を供給することによりトランジスタを駆動してもよい。または、2つのゲートのうち、一方に閾値電圧を制御するための電位を与え、他方に駆動のための電位を与えることで、トランジスタの閾値電圧を制御してもよい。
【0290】
トランジスタを覆う絶縁層の少なくとも一層に、水や水素などの不純物が拡散しにくい材料を用いることが好ましい。これにより、絶縁層をバリア層として機能させることができる。このような構成とすることで、トランジスタに外部から不純物が拡散することを効果的に抑制でき、発光装置の信頼性を高めることができる。
【0291】
絶縁層325、絶縁層326、絶縁層328、絶縁層334、絶縁層335、及び絶縁層338としては、それぞれ、無機絶縁膜を用いることが好ましい。無機絶縁膜としては、例えば、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、窒化アルミニウム膜などを用いることができる。また、酸化ハフニウム膜、酸化イットリウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化ガリウム膜、酸化タンタル膜、酸化マグネシウム膜、酸化ランタン膜、酸化セリウム膜、及び酸化ネオジム膜等を用いてもよい。また、上述の絶縁膜を2以上積層して用いてもよい。
【0292】
なお、発光装置を構成する各種導電層に用いることができる材料としては、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタル、またはタングステンなどの金属、またはこれを主成分とする合金などが挙げられる。またこれらの材料を含む膜を単層で、または積層構造として用いることができる。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、チタン膜上にアルミニウム膜を積層する二層構造、タングステン膜上にアルミニウム膜を積層する二層構造、銅-マグネシウム-アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜上に銅膜を積層する二層構造、タングステン膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜または窒化チタン膜と、その上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にチタン膜または窒化チタン膜を形成する三層構造、モリブデン膜または窒化モリブデン膜と、その上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にモリブデン膜または窒化モリブデン膜を形成する三層構造等がある。なお、酸化インジウム、酸化錫または酸化亜鉛等の酸化物を用いてもよい。また、マンガンを含む銅を用いると、エッチングによる形状の制御性が高まるため好ましい。
【0293】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0294】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の電子機器について図を用いて説明する。
【0295】
電子機器としては、例えば、テレビジョン装置、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機、生体認証機器、検査機器が挙げられる。
【0296】
本発明の一態様の電子機器は、表示部に本発明の一態様の発光装置を有するため、発光効率が高く、信頼性が高い。
【0297】
本実施の形態の電子機器の表示部には、例えばフルハイビジョン、4K2K、8K4K、16K8K、またはそれ以上の解像度を有する映像を表示させることができる。また、表示部の画面サイズとしては、対角20インチ以上、対角30インチ以上、対角50インチ以上、対角60インチ以上、または対角70インチ以上とすることができる。
【0298】
本発明の一態様の電子機器は可撓性を有するため、家屋もしくはビルの内壁もしくは外壁、または、自動車の内装もしくは外装の曲面に沿って組み込むことも可能である。
【0299】
また、本発明の一態様の電子機器は、二次電池を有していてもよく、非接触電力伝送を用いて、二次電池を充電することができると好ましい。
【0300】
二次電池としては、例えば、ゲル状電解質を用いるリチウムポリマー電池(リチウムイオンポリマー電池)等のリチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、ニカド電池、有機ラジカル電池、鉛蓄電池、空気二次電池、ニッケル亜鉛電池、銀亜鉛電池などが挙げられる。
【0301】
本発明の一態様の電子機器は、アンテナを有していてもよい。アンテナで信号を受信することで、表示部で映像または情報等の表示を行うことができる。また、電子機器がアンテナ及び二次電池を有する場合、アンテナを、非接触電力伝送に用いてもよい。
【0302】
本実施の形態の電子機器は、センサ(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、においまたは赤外線を測定する機能を含むもの)を有していてもよい。
【0303】
本実施の形態の電子機器は、様々な機能を有することができる。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付または時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)を実行する機能、無線通信機能、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出す機能等を有することができる。
【0304】
図6Aにテレビジョン装置の一例を示す。テレビジョン装置7100は、筐体7101に表示部7000が組み込まれている。ここでは、スタンド7103により筐体7101を支持した構成を示している。
【0305】
表示部7000に、本発明の一態様の発光装置を適用することができる。
【0306】
図6Aに示すテレビジョン装置7100の操作は、筐体7101が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機7111により行うことができる。または、表示部7000にタッチセンサを備えていてもよく、指等で表示部7000に触れることで操作してもよい。リモコン操作機7111は、当該リモコン操作機7111から出力する情報を表示する表示部を有していてもよい。リモコン操作機7111が備える操作キーまたはタッチパネルにより、チャンネル及び音量の操作を行うことができ、表示部7000に表示される映像を操作することができる。
【0307】
なお、テレビジョン装置7100は、受信機及びモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができる。また、モデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0308】
図6Bに、ノート型パーソナルコンピュータの一例を示す。ノート型パーソナルコンピュータ7200は、筐体7211、キーボード7212、ポインティングデバイス7213、外部接続ポート7214等を有する。筐体7211に、表示部7000が組み込まれている。
【0309】
表示部7000に、本発明の一態様の発光装置を適用することができる。
【0310】
【0311】
図6Cに示すデジタルサイネージ7300は、筐体7301、表示部7000、及びスピーカ7303等を有する。さらに、LEDランプ、操作キー(電源スイッチ、または操作スイッチを含む)、接続端子、各種センサ、マイクロフォン等を有することができる。
【0312】
図6Dは円柱状の柱7401に取り付けられたデジタルサイネージ7400である。デジタルサイネージ7400は、柱7401の曲面に沿って設けられた表示部7000を有する。
【0313】
図6C、
図6Dにおいて、表示部7000に、本発明の一態様の発光装置を適用することができる。
【0314】
表示部7000が広いほど、一度に提供できる情報量を増やすことができる。また、表示部7000が広いほど、人の目につきやすく、例えば、広告の宣伝効果を高めることができる。
【0315】
表示部7000にタッチパネルを適用することで、表示部7000に画像または動画を表示するだけでなく、使用者が直感的に操作することができ、好ましい。また、路線情報もしくは交通情報などの情報を提供するための用途に用いる場合には、直感的な操作によりユーザビリティを高めることができる。
【0316】
また、
図6C、
図6Dに示すように、デジタルサイネージ7300またはデジタルサイネージ7400は、ユーザが所持するスマートフォン等の情報端末機7311または情報端末機7411と無線通信により連携可能であることが好ましい。例えば、表示部7000に表示される広告の情報を、情報端末機7311または情報端末機7411の画面に表示させることができる。また、情報端末機7311または情報端末機7411を操作することで、表示部7000の表示を切り替えることができる。
【0317】
また、デジタルサイネージ7300またはデジタルサイネージ7400に、情報端末機7311または情報端末機7411の画面を操作手段(コントローラ)としたゲームを実行させることもできる。これにより、不特定多数のユーザが同時にゲームに参加し、楽しむことができる。
【0318】
図7A~
図7Fに、可撓性を有する表示部7001を有する携帯情報端末の一例を示す。
【0319】
表示部7001は、本発明の一態様の発光装置を用いて作製される。例えば、曲率半径0.01mm以上150mm以下で曲げることができる発光装置を適用できる。また、表示部7001はタッチセンサを備えていてもよく、指等で表示部7001に触れることで携帯情報端末を操作することができる。
【0320】
図7A~
図7Cに、折りたたみ可能な携帯情報端末の一例を示す。
図7Aでは、展開した状態、
図7Bでは、展開した状態または折りたたんだ状態の一方から他方に変化する途中の状態、
図7Cでは、折りたたんだ状態の携帯情報端末7600を示す。携帯情報端末7600は、折りたたんだ状態では可搬性に優れ、展開した状態では、継ぎ目のない広い表示領域により一覧性に優れる。
【0321】
表示部7001はヒンジ7602によって連結された3つの筐体7601に支持されている。ヒンジ7602を介して2つの筐体7601間を屈曲させることにより、携帯情報端末7600を展開した状態から折りたたんだ状態に可逆的に変形させることができる。
【0322】
図7D、
図7Eに、折りたたみ可能な携帯情報端末の一例を示す。
図7Dでは、表示部7001が内側になるように折りたたんだ状態、
図7Eでは、表示部7001が外側になるように折りたたんだ状態の携帯情報端末7650を示す。携帯情報端末7650は表示部7001及び非表示部7651を有する。携帯情報端末7650を使用しない際に、表示部7001が内側になるように折りたたむことで、表示部7001の汚れまたは傷つきを抑制できる。
【0323】
図7Fに腕時計型の携帯情報端末の一例を示す。携帯情報端末7800は、バンド7801、表示部7001、入出力端子7802、操作ボタン7803等を有する。バンド7801は、筐体としての機能を有する。また、携帯情報端末7800は、可撓性を有するバッテリ7805を搭載することができる。バッテリ7805は例えば表示部7001またはバンド7801と重ねて配置してもよい。
【0324】
バンド7801、表示部7001、及びバッテリ7805は可撓性を有する。そのため、携帯情報端末7800を所望の形状に湾曲させることが容易である。
【0325】
操作ボタン7803は、時刻設定のほか、電源のオン、オフ動作、無線通信のオン、オフ動作、マナーモードの実行及び解除、省電力モードの実行及び解除など、様々な機能を持たせることができる。例えば、携帯情報端末7800に組み込まれたオペレーティングシステムにより、操作ボタン7803の機能を自由に設定することもできる。
【0326】
また、表示部7001に表示されたアイコン7804に指等で触れることで、アプリケーションを起動することができる。
【0327】
また、携帯情報端末7800は、通信規格された近距離無線通信を実行することが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。
【0328】
また、携帯情報端末7800は入出力端子7802を有していてもよい。入出力端子7802を有する場合、他の情報端末とコネクタを介して直接データのやりとりを行うことができる。また入出力端子7802を介して充電を行うこともできる。なお、本実施の形態で例示する携帯情報端末の充電動作は、入出力端子を介さずに非接触電力伝送により行ってもよい。
【0329】
図8Aに自動車9700の外観を示す。
図8Bに自動車9700の運転席を示す。自動車9700は、車体9701、車輪9702、フロントガラス9703、ライト9704、フォグランプ9705等を有する。本発明の一態様の発光装置は、自動車9700の表示部などに用いることができる。例えば、
図8Bに示す表示部9710乃至表示部9715に本発明の一態様の発光装置を設けることができる。または、ライト9704またはフォグランプ9705に本発明の一態様の発光装置を用いてもよい。
【0330】
表示部9710と表示部9711は、自動車のフロントガラスに設けられた表示装置である。本発明の一態様の発光装置は、電極及び配線を、透光性を有する導電性材料で作製することによって、反対側が透けて見える、いわゆるシースルー状態とすることができる。表示部9710または表示部9711がシースルー状態であれば、自動車9700の運転時にも視界の妨げになることがない。よって、本発明の一態様の発光装置を自動車9700のフロントガラスに設置することができる。なお、発光装置を駆動するためのトランジスタなどを設ける場合には、有機半導体材料を用いた有機トランジスタ、または酸化物半導体を用いたトランジスタなど、透光性を有するトランジスタを用いるとよい。
【0331】
表示部9712はピラー部分に設けられた表示装置である。例えば、車体に設けられた撮像手段からの映像を表示部9712に映し出すことによって、ピラーで遮られた視界を補完することができる。表示部9713はダッシュボード部分に設けられた表示装置である。例えば、車体に設けられた撮像手段からの映像を表示部9713に映し出すことによって、ダッシュボードで遮られた視界を補完することができる。すなわち、自動車の外側に設けられた撮像手段からの映像を映し出すことによって、死角を補い、安全性を高めることができる。また、見えない部分を補完する映像を映すことによって、より自然に違和感なく安全確認を行うことができる。
【0332】
また、
図8Cは、運転席と助手席にベンチシートを採用した自動車の室内を示している。表示部9721は、ドア部に設けられた表示装置である。例えば、車体に設けられた撮像手段からの映像を表示部9721に映し出すことによって、ドアで遮られた視界を補完することができる。また、表示部9722は、ハンドルに設けられた表示装置である。表示部9723は、ベンチシートの座面の中央部に設けられた表示装置である。なお、表示装置を座面または背もたれ部分などに設置して、当該表示装置を、当該表示装置の発熱を熱源としたシートヒーターとして利用することもできる。
【0333】
表示部9714、表示部9715、または表示部9722はナビゲーション情報、スピードメーター、タコメーター、走行距離、燃料計、ギア状態、空調の設定などを表示することで、様々な情報を提供することができる。また、表示部に表示される表示項目及びレイアウトなどは、使用者の好みに合わせて適宜変更することができる。なお、上記情報は、表示部9710乃至表示部9713、表示部9721、表示部9723にも表示することができる。また、表示部9710乃至表示部9715、表示部9721乃至表示部9723は照明装置として用いることも可能である。また、表示部9710乃至表示部9715、表示部9721乃至表示部9723は加熱装置として用いることも可能である。
【0334】
また、本発明の一態様の電子機器は、光源に、本発明の一態様の発光装置を有するため、発光効率が高く、信頼性が高い。例えば、可視光または近赤外光を発する光源に、本発明の一態様の発光装置を用いることができる。また、本発明の一態様の発光装置は、照明装置の光源に用いることもできる。
【0335】
図9Aは指の静脈を対象とした生体認証機器であり、筐体911、光源912、検知ステージ913等を有する。検知ステージ913に指を載せることにより静脈の形状を撮像することができる。検知ステージ913の上部には近赤外光を発する光源912が設置され、下部には撮像装置914が設置される。検知ステージ913は近赤外光を透過する材料で構成されており、光源912から照射され、指を透過した近赤外光を撮像装置914で撮像することができる。なお、検知ステージ913と撮像装置914の間に光学系が設けられていてもよい。上記機器の構成は、手のひらの静脈を対象とした生体認証機器に利用することもできる。
【0336】
本発明の一態様の発光装置を、光源912に用いることができる。本発明の一態様の発光装置は、湾曲した形状に設置することができ、対象物に対して均一性よく光を照射することができる。特に波長700nm以上1200nm以下に最も強いピーク強度を有する近赤外光を発する発光装置であることが好ましい。指や手のひらなどを透過した光を受光して画像化することで静脈の位置を検出することができる。当該作用は生体認証として利用することができる。また、グローバルシャッタ方式と組み合わせることで、被写体に動きがあっても精度の高いセンシングが可能となる。
【0337】
また、光源912は、
図9Bに示す発光部915、916、917のように、複数の発光部を有することができる。発光部915、916、917のそれぞれは、発光する波長が異なっていてもよい、また、それぞれを別のタイミングで照射することもできる。したがって、照射する光の波長や角度を変えることにより異なる画像を連続して撮像することができるため、複数の画像を認証に利用し、高いセキュリティを実現することができる。
【0338】
図9Cは手のひらの静脈を対象とした生体認証機器であり、筐体921、操作ボタン922、検知部923、近赤外光を発する光源924等を有する。検知部923上に手をかざすことにより手のひらの静脈の形状を認識することができる。また、操作ボタンにより暗証番号などを入力することもできる。検知部923の周囲には光源924が配置され対象物(手)を照射する。そして、対象物からの反射光が検知部923に入射される。本発明の一態様の発光装置を、光源924に用いることができる。検知部923直下には撮像装置925が配置され、対象物の像(手の全体像)を取り込むことができる。なお、検知部923と撮像装置925の間に光学系が設けられていてもよい。上記機器の構成は、指の静脈を対象とした生体認証機器に利用することもできる。
【0339】
図9Dは非破壊検査機器であり、筐体931、操作パネル932、搬送機構933、モニタ934、検知ユニット935、近赤外光を発する光源938等を有する。本発明の一態様の発光装置を、光源938に用いることができる。被検査部材936は搬送機構933で検知ユニット935の直下に運搬される。被検査部材936には光源938から近赤外光が照射され、その透過光を検知ユニット935内に設けられた撮像装置937で撮像する。撮像された画像は、モニタ934に映し出される。その後、筐体931の出口まで運搬され、不良品が分別されて回収される。近赤外光を用いた撮像により、非検査部材内部の欠陥や異物などの不良要素を非破壊で高速に検出することができる。
【0340】
図9Eは携帯電話機であり、筐体981、表示部982、操作ボタン983、外部接続ポート984、スピーカ985、マイク986、第1のカメラ987、第2のカメラ988等を有する。当該携帯電話機は、表示部982にタッチセンサを備える。筐体981及び表示部982は可撓性を有する。電話を掛ける、或いは文字を入力するなどのあらゆる操作は、指やスタイラスなどで表示部982に触れることで行うことができる。第1のカメラ987では可視光画像を取得することができ、第2のカメラ988では赤外光画像(近赤外光画像)を取得することができる。
図9Eに示す携帯電話機または表示部982は、本発明の一態様の発光装置を有していてもよい。
【0341】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【実施例1】
【0342】
(合成例1)
本実施例では、本発明の一態様の有機化合物の合成方法について説明する。本実施例では、実施の形態1の構造式(100)で表される10-[(3’-ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ナフト[1’,2’:4,5]フロ[2,3-b]キノキサリン(略称:10mDBtBPNfqn)の合成方法について説明する。
【0343】
【0344】
<ステップ1;7-クロロ-3-(2-メトキシナフタレン-1-イル)キノキサリン-2-アミンの合成>
まず、3,7-ジクロロキノキサリン-2-アミン2.49g、2-メトキシナフタレン-1-ボロン酸2.38g、炭酸セシウム3.90g、1,4-ジオキサン46mL、及び水23mLを、還流管を付けた三口フラスコに入れ、内部を窒素置換した。フラスコ内を減圧下で撹拌することで脱気した後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(略称:Pd(PPh3)4)1.38gを加え、80℃で6時間撹拌し、反応させた。
【0345】
反応後の溶液を、ジクロロメタンにより抽出処理し、残渣を得た。その後、得られた残渣を、ジクロロメタン:酢酸エチル=50:1を展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的のキノキサリン誘導体を得た(黄色固体、収量2.89g、収率70%)。ステップ1の合成スキームを(a-1)に示す。
【0346】
【0347】
<ステップ2;10-クロロナフト[1’,2’:4,5]フロ[2,3-b]キノキサリンの合成>
次に、ステップ1で得た7-クロロ-3-(2-メトキシナフタレン-1-イル)キノキサリン-2-アミン2.89g、脱水テトラヒドロフラン90mL、及び、氷酢酸90mLを三口フラスコに入れ、内部を窒素置換した。フラスコを-10℃に冷却した後、亜硝酸tert-ブチル3.0mLを滴下し、-10℃で1時間、0℃で18時間攪拌した。所定時間経過後、得られた懸濁液に水400mLを加え、吸引ろ過することにより、目的のキノキサリン誘導体を得た(黄白色固体、収量1.63g、収率64%)。ステップ2の合成スキームを(a-2)に示す。
【0348】
【0349】
<ステップ3;10mDBtBPNfqnの合成>
さらに、ステップ2で得た10-クロロナフト[1’,2’:4,5]フロ[2,3-b]キノキサリン1.63g、3’-(4-ジベンゾチオフェン)-1,1’-ビフェニル-3-ボロン酸3.29g、リン酸三カリウム5.48g、tert-ブチルアルコール1.42g、ジエチレングリコールジメチルエーテル(略称:diglyme)60mLを三口フラスコに入れ、内部を窒素置換した。フラスコ内を減圧下で撹拌することで脱気した後、酢酸パラジウム(II)(略称:Pd(OAc)2)0.10g、ジ(1-アダマンチル)-n-ブチルホスフィン(略称:CataCXium A)0.32gを加え、140℃で31時間半撹拌し、反応させた。
【0350】
所定時間経過後、得られた懸濁液を吸引ろ過し、水、エタノールで洗浄した。得られた固体をトルエンに溶かし、セライト、アルミナ、セライトの順で積層した濾過補助剤を通して濾過した後、トルエンで再結晶することにより、目的物を得た(黄色固体、収量2.19g、収率69%)。
【0351】
得られた黄色固体2.19gを、トレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製条件は、圧力2.7Pa、アルゴンガスを流量15mL/minで流しながら、340℃で固体を加熱した。昇華精製後、目的物の黄色固体を収量1.48g、収率68%で得た。ステップ3の合成スキームを(a-3)に示す。
【0352】
【0353】
ステップ3で得られた黄色固体の核磁気共鳴分光法(
1H-NMR)による分析結果を下記に示す。また、
1H-NMRチャートを
図10に示す。この結果から、本実施例において、構造式(100)に示す10mDBtBPNfqnが得られたことがわかった。
【0354】
1H-NMR.δ(CDCl3):7.47-7.50(m,2H),7.60-7.62(m,2H),7.67(t,3H),7.78-7.80(m,3H),7.85-7.90(m,4H),8.07(d,1H),8.13(d,2H),8.19-8.23(m,4H),8.49-8.51(m,2H),9.39(d,1H).
【0355】
次に、トルエン溶液中の10mDBtBPNfqnの紫外・可視吸収スペクトル(以下、単に「吸収スペクトル」という)及び発光スペクトルを
図11Aに示す。横軸は波長、縦軸は吸収強度及び発光強度を表す。なお、吸収スペクトル、発光スペクトルともに、測定は室温で行った。
【0356】
吸収スペクトルの測定には紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用いた。トルエン溶液中の10mDBtBPNfqnの吸収スペクトルは、10mDBtBPNfqnのトルエン溶液を石英セルに入れて測定して得られた吸収スペクトルから、トルエンを石英セルに入れて測定して得られた吸収スペクトルを差し引いて算出した。また、発光スペクトルの測定には蛍光光度計((株)浜松ホトニクス製 FS920)を用いた。トルエン溶液中の10mDBtEPNfqnの発光スペクトルは、10mDBtBPNfqnのトルエン溶液を石英セルに入れて測定した。
【0357】
図11Aより、10mDBtBPNfqnのトルエン溶液では、387nm付近及び406nm付近に吸収ピークが見られ、422nm付近及び443nm付近(励起波長:292nm)に発光波長のピークが見られた。
【0358】
次に、10mDBtBPNfqnの固体薄膜の吸収スペクトル及び発光スペクトルを測定した。固体薄膜は石英基板上に真空蒸着法にて作製した。また、薄膜の吸収スペクトルは、基板を含めた透過率と反射率から求めた吸光度(-log
10 [%T/(100-%R)]より算出した。なお%Tは透過率、%Rは反射率を表す。吸収スペクトルの測定には、紫外可視分光光度計(日立ハイテクノロジーズ製、U-4100)を用いた。また、発光スペクトルの測定には、蛍光光度計((株)浜松ホトニクス製 FS920)を用いた。なお、吸収スペクトル、発光スペクトルともに、測定は室温で行った。得られた固体薄膜の吸収スペクトル及び発光スペクトルの測定結果を
図11Bに示す。横軸は波長、縦軸は吸収強度及び発光強度を表す。
【0359】
図11Bの結果より、10mDBtBPNfqnの固体薄膜では、397nm付近及び418nm付近に吸収ピークが見られ、514nm付近(励起波長:400nm)に発光波長のピークが見られた。
【0360】
本発明の一態様の有機化合物、10mDBtBPNfqnは、赤色及びそれよりも長波長側のエネルギーで発光する燐光材料に適したホスト材料であることがわかった。10mDBtBPNfqnは、可視域の発光物質(蛍光材料、遅延蛍光材料、または燐光材料など)と共に用いるホスト材料や、発光物質としても利用可能である。
【0361】
また、10mDBtBPNfqnの示差走査熱量測定を行った。測定には示差走査熱量測定装置(株式会社パーキンエルマージャパン製、Pyris 1)を用いた。測定は、-10℃から350℃までの範囲を40℃/minの速度で昇温させた後、350℃で3分間保持し、その後350℃から-10℃までの範囲を100℃/minの速度で降温させることにより、1サイクルとした。なお、本実施例では、3サイクルの測定を行った。そして、3サイクル目の昇温時の結果からガラス転移温度(Tg)は、126℃であることがわかった。従って、本実施例で合成した10mDBtBPNfqnは、耐熱性の高い材料であることがわかった。
【0362】
10mDBtBPNfqnのTgは126℃であるため、発光デバイスの耐熱性を高めることができる。
【0363】
10mDBtBPNfqnは、一般式(G0)におけるAr1が無置換のナフタレン環である場合の一例である。Ar1がナフタレン環であることで、T1準位を低くでき、LUMO準位を深くできるため、赤色及びそれよりも長波長側のエネルギーで発光する材料に適したホスト材料を合成できたと考えられる。
【0364】
10mDBtBPNfqnは、本発明の一態様の有機化合物において、正孔輸送性骨格または縮合環として、ジベンゾチオフェン骨格を有する場合の一例である。ジベンゾチオフェン環を有することで、化学的安定性が高く、耐熱性の高い有機化合物を合成できたと考えられる。
【実施例2】
【0365】
本実施例では、本発明の一態様の発光デバイスを作製した結果について説明する。具体的には、実施例1で説明した10-[(3’-ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ナフト[1’,2’:4,5]フロ[2,3-b]キノキサリン(略称:10mDBtBPNfqn)(構造式(100))を発光層に用いた発光デバイス1の構造、作製方法、及び特性について説明する。
【0366】
本実施例で用いる発光デバイス1の構造を
図12に示し、具体的な構成について表1に示す。また、本実施例で用いる材料の化学式を以下に示す。
【0367】
【0368】
【0369】
≪発光デバイス1の作製≫
本実施例で示す発光デバイス1は、
図12に示すように基板800上に第1の電極801が形成され、第1の電極801上に正孔注入層811、正孔輸送層812、発光層813、電子輸送層814、及び電子注入層815が順次積層され、電子注入層815上に第2の電極803が積層された構造を有する。
【0370】
まず、基板800上に第1の電極801を形成した。電極面積は、4mm2(2mm×2mm)とした。基板800には、ガラス基板を用いた。第1の電極801は、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法により、70nmの膜厚で成膜して形成した。なお、本実施例において、第1の電極801は、陽極として機能する。
【0371】
ここで、前処理として、基板の表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。その後、10-4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板を30分程度放冷した。
【0372】
次に、第1の電極801上に正孔注入層811を形成した。正孔注入層811は、真空蒸着装置内を10-4Paに減圧した後、1,3,5-トリ(ジベンゾチオフェン-4-イル)ベンゼン(略称:DBT3P-II)と酸化モリブデンとを、DBT3P-II:酸化モリブデン=2:1(質量比)とし、膜厚が80nmとなるように共蒸着して形成した。
【0373】
次に、正孔注入層811上に正孔輸送層812を形成した。正孔輸送層812は、N-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:PCBBiF)を用い、膜厚が20nmになるように蒸着して形成した。
【0374】
次に、正孔輸送層812上に発光層813を形成した。ホスト材料として、本発明の一態様の有機化合物である、10mDBtBPNfqnを用い、アシスト材料として、PCBBiFを用い、ゲスト材料(燐光材料)として、(アセチルアセトナト)ビス(2,3-ジフェニルキノキサリナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(dpq)2(acac)])を用い、重量比が10mDBtBPNfqn:PCBBiF:[Ir(dpq)2(acac)]=0.8:0.2:0.1となるように共蒸着した。なお、膜厚は、40nmとした。
【0375】
次に、発光層813上に電子輸送層814を形成した。電子輸送層814は、10mDBtBPNfqnの膜厚が30nm、2,9-ビス(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(略称:NBphen)の膜厚が15nmとなるように順次蒸着して形成した。
【0376】
次に、電子輸送層814上に電子注入層815を形成した。電子注入層815は、フッ化リチウム(LiF)を用い、膜厚が1nmになるように蒸着して形成した。
【0377】
次に、電子注入層815上に第2の電極803を形成した。第2の電極803は、アルミニウムを蒸着法により、膜厚が200nmとなるように形成した。なお、本実施例において、第2の電極803は、陰極として機能する。
【0378】
以上の工程により、基板800上に一対の電極間にEL層を挟んでなる発光デバイスを形成した。なお、上記工程で説明した正孔注入層811、正孔輸送層812、発光層813、電子輸送層814、電子注入層815は、本発明の一態様におけるEL層を構成する機能層である。また、上述した作製方法における蒸着工程では、全て抵抗加熱法による蒸着法を用いた。
【0379】
また、上記に示すように作製した発光デバイスは、別の基板(図示せず)により封止される。なお、別の基板(図示せず)を用いた封止の際は、窒素雰囲気のグローブボックス内において、紫外光により固化する接着剤を塗布した別の基板(図示せず)を基板800上に固定し、基板800上に形成された発光デバイスの周囲に接着剤が付着するよう基板同士を接着させた。封止時には365nmの紫外光を6J/cm2照射し接着剤を固化し、80℃にて1時間熱処理することにより接着剤を安定化させた。
【0380】
≪発光デバイス1の動作特性≫
発光デバイス1の動作特性について測定した。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0381】
図13に、発光デバイス1の電流密度-輝度特性を示す。
図14に、発光デバイス1の電圧-輝度特性を示す。
図15に、発光デバイス1の輝度-電流効率特性を示す。
図16に、発光デバイス1の電圧-電流特性を示す。
図17に、発光デバイス1の輝度-外部量子効率特性を示す。
【0382】
表2に600cd/m2付近における発光デバイス1の主な初期特性値を示す。
【0383】
【0384】
図13~
図17及び表2に示すように、発光デバイス1は、発光効率が高いことがわかった。
【0385】
また、発光デバイス1に2.5mA/cm
2の電流密度で電流を流した際の発光スペクトルを、
図18に示す。
図18に示すように、発光デバイス1は、発光層813に含まれる[Ir(dpq)
2(acac)]の発光に由来して、680nm付近に最大ピークを有する発光スペクトルを示した。
【0386】
次に、発光デバイス1に対する信頼性試験を行った。信頼性試験の結果を
図19に示す。
図19において、縦軸は初期輝度を100%とした時の規格化輝度(%)を示し、横軸は駆動時間(h)を示す。なお、信頼性試験は、電流密度を75mA/cm
2に設定し、発光デバイス1を駆動させた。
【0387】
信頼性試験の結果より、発光デバイス1は、高い信頼性を示すことがわかった。これは、本発明の一態様の有機化合物である、10mDBtBPNfqn(構造式(100))を発光デバイス1の発光層に用いたことによる効果といえる。
【0388】
発光デバイス1で発光層に用いた10mDBtBPNfqnとPCBBiFとは励起錯体を形成する組み合わせである。本発明の一態様の有機化合物において、正孔輸送性の骨格としてジベンゾチオフェン骨格を有することで、HOMO準位が深くなる、正孔輸送性が低くなる、または励起錯体が形成されやすくなることが考えられ、それにより、発光デバイスの信頼性を高めることができたと示唆される。
【実施例3】
【0389】
本実施例では、本発明の一態様の発光デバイスを作製した結果について説明する。具体的には、実施例1で説明した10-[(3’-ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ナフト[1’,2’:4,5]フロ[2,3-b]キノキサリン(略称:10mDBtBPNfqn)(構造式(100))を発光層に用いた発光デバイス2及び発光デバイス3を作製し、特性を測定した結果について説明する。
【0390】
本実施例で用いる発光デバイス2、3の具体的な構成について表3に示す。なお、発光デバイス2、3の構造は発光デバイス1(
図12)と同様であり、作製方法については実施例2を参照できる。また、本実施例で用いる材料の化学式を以下に示す。
【0391】
【0392】
【0393】
≪発光デバイス2及び発光デバイス3の動作特性≫
発光デバイス2、3の動作特性について測定した。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0394】
図20に、発光デバイス2、3の電流密度-輝度特性を示す。
図21に、発光デバイス2、3の電圧-輝度特性を示す。
図22に、発光デバイス2、3の輝度-電流効率特性を示す。
図23に、発光デバイス2、3の電圧-電流特性を示す。
図24に、発光デバイス2、3の輝度-外部量子効率特性を示す。
【0395】
表4に1000cd/m2付近における発光デバイス2、3の主な初期特性値を示す。
【0396】
【0397】
図20~
図24及び表4に示すように、発光デバイス2、3は、発光効率が高いことがわかった。
【0398】
また、発光デバイス2、3に2.5mA/cm
2の電流密度で電流を流した際の発光スペクトルを、
図25に示す。発光デバイス2、3は、発光層813に含まれる、ビス{4,6-ジメチル-2-[5-(5-シアノ-2-メチルフェニル)-3-(3,5-ジメチルフェニル)-2-ピラジニル-κN]フェニル-κC}(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト-κ2O,O’)イリジウム(III)(略称:[Ir(dmdppr-m5CP)
2(dpm)]の発光に由来して、650nm付近に最大ピークを有する発光スペクトルを示す。具体的には、発光デバイス2では650nm付近、発光デバイス3では649nm付近に、最大ピークを有する。
【0399】
次に、発光デバイス2、3に対する信頼性試験を行った。信頼性試験の結果を
図26に示す。
図26において、縦軸は初期輝度を100%とした時の規格化輝度(%)を示し、横軸は素子の駆動時間(h)を示す。なお、信頼性試験は、電流密度を75mA/cm
2に設定し、発光デバイス2、3を駆動させた。
【0400】
信頼性試験の結果より、発光デバイス2、3は、高い信頼性を示すことがわかった。
【0401】
本実施例において、発光デバイス2では、発光層813に、N-(4-ビフェニル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9-フェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCBiF)を用い、発光デバイス3では、発光層813に、N-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-N-[4-(ジベンゾフラン-4-イル)フェニル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:FrBBiF-II)を用いた。PCBiFのHOMO準位は、-5.26eVであり、FrBBiF-IIのHOMO準位は、-5.42eVである。本発明の一態様の有機化合物である、10mDBtBPNfqnを発光層813に用いる場合、どちらと組み合わせて用いても、良好な特性の発光デバイスを作製できることがわかった。このことから、10mDBtBPNfqnと組み合わせて用いることができる材料(アシスト材料)のHOMO準位の好適な値の範囲は広く、アシスト材料の選択の幅が広いことがわかった。
【実施例4】
【0402】
本実施例では、一般式(G0)における正孔輸送性の骨格または縮合環の置換位置(R1またはR2の置換位置)によって、LUMO準位とT1準位にそれぞれ差が生じるかを計算により求めた結果について説明する。
【0403】
本実施例では、構造式(C1)~(C4)で表される有機化合物について、計算を行った。
【0404】
【0405】
分子軌道計算には、量子化学計算プログラムとしてGaussian09を使用した。基底関数に6-311Gを用い、汎関数にB3LYPを用いて、各分子の一重項基底状態(S0)及び最低三重項励起状態(T1)における構造を最適化した。
【0406】
計算により得られたLUMO準位とT1準位(波長)の値を、表5に示す。
【0407】
【0408】
表5に示す通り、構造式(C1)~(C4)で表される有機化合物は、いずれもLUMO準位が深く、T1準位(波長)は600nm付近であることがわかった。特に、構造式(C2)は、LUMO準位が最も深く、T1準位が低い(波長が長い)ことがわかった。
【0409】
本実施例の結果から、本発明の一態様の有機化合物は、LUMO準位が深く、T1準位が低いため、発光デバイス(特に、赤色または近赤外光を発する発光デバイス)に好適であることが示唆された。
【実施例5】
【0410】
(合成例2)
本実施例では、本発明の一態様の有機化合物の合成方法について説明する。本実施例では、実施の形態1の構造式(113)で表される12-[(3’-ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]フェナントロ[9’,10’:4,5]フロ[2,3-b]キノキサリン(略称:12mDBtBPPnfqn)の合成方法について説明する。
【0411】
【0412】
<ステップ1;7-クロロ-3-(10-メトキシフェナントレン-9-イル)キノキサリン-2-アミンの合成>
まず、3,7-ジクロロキノキサリン-2-アミン2.70g、10-メトキシフェナントレン-9-ボロン酸3.27g、炭酸セシウム4.22g、1,4-ジオキサン50mL、及び水25mLを、還流管を付けた三口フラスコに入れ、内部を窒素置換した。フラスコ内を減圧下で撹拌することで脱気した後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(略称:Pd(PPh3)4)0.75gを加え、80℃で11時間撹拌し、反応させた。
【0413】
所定時間経過後、析出した固体を吸引ろ過し、水、エタノールで洗浄した。その後、ジクロロメタンを展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的のキノキサリン誘導体を得た(黄色固体、収量3.30g、収率68%)。ステップ1の合成スキームを(b-1)に示す。
【0414】
【0415】
<ステップ2;12-クロロフェナントロ[9’,10’:4,5]フロ[2,3-b]キノキサリンの合成>
次に、ステップ1で得た7-クロロ-3-(10-メトキシフェナントレン-9-イル)キノキサリン-2-アミン3.29g、脱水テトラヒドロフラン100mL、及び氷酢酸100mLを三口フラスコに入れ、内部を窒素置換した。フラスコを-10℃に冷却した後、亜硝酸tert-ブチル3.1mLを滴下し、-10℃で1時間、0℃で24時間撹拌した。所定時間経過後、得られた懸濁液に水400mLを加え、吸引ろ過することにより、目的のキノキサリン誘導体を得た(黄色固体、収量2.52g、収率82%)。ステップ2の合成スキームを(b-2)に示す。
【0416】
【0417】
<ステップ3;12mDBtBPPnfqnの合成>
さらに、ステップ2で得た12-クロロフェナントロ[9’,10’:4,5]フロ[2,3-b]キノキサリン1.19g、3’-(4-ジベンゾチオフェン)-1,1’-ビフェニル-3-ボロン酸1.58g、リン酸三カリウム2.19g、tert-ブチルアルコール0.76g、ジエチレングリコールジメチルエーテル(略称:diglyme)27mLを三口フラスコに入れ、内部を窒素置換した。フラスコ内を減圧下で撹拌することで脱気した後、酢酸パラジウム(II)(略称:Pd(OAc)2)15mg、ジ(1-アダマンチル)-n-ブチルホスフィン(略称:CataCXium A)48mgを加え、150℃で15時間撹拌し、反応させた。
【0418】
所定時間経過後、得られた懸濁液を吸引ろ過し、水、エタノールで洗浄した。得られた固体をトルエンに溶かし、セライト、アルミナ、セライトの順で積層した濾過補助剤を通して濾過した後、トルエンにて再結晶することにより、目的物を得た(黄色固体、収量1.25g、収率56%)。
【0419】
得られた黄色固体1.24gを、トレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製条件は、圧力2.6Pa、アルゴンガスを流量10mL/minで流しながら、380℃で固体を加熱した。昇華精製後、目的物の黄色固体を収量0.85g、収率69%で得た。ステップ3の合成スキームを(b-3)に示す。
【0420】
【0421】
ステップ3で得られた黄色固体の核磁気共鳴分光法(
1H-NMR)による分析結果を下記に示す。また、
1H-NMRチャートを
図27に示す。この結果から、本実施例において、構造式(113)に示す12mDBtBPPnfqnが得られたことがわかった。
【0422】
1H-NMR.δ(CDCl3):7.47-7.50(m,2H),7.60-7.69(m,4H),7.78-7.94(m,9H),8.12(s,1H),8.15(s,1H),8.19-8.23(m,3H),8.50-8.52(m,2H),8.65(d,1H),8.81(d,1H),8.85(d,1H),9.49(s,1H).
【符号の説明】
【0423】
101:第1の電極、102:第2の電極、103:EL層、103a:EL層、103b:EL層、103c:EL層、104:電荷発生層、111:正孔注入層、112:正孔輸送層、113:発光層、114:電子輸送層、115:電子注入層、201:基板、202:絶縁層、202a:絶縁層、202b:絶縁層、203B:発光デバイス、203G:発光デバイス、203R:発光デバイス、203W:発光デバイス、204:絶縁層、205:基板、206B:カラーフィルタ、206G:カラーフィルタ、206R:カラーフィルタ、207:空間、208:接着層、209:ブラックマトリックス、210:トランジスタ、211:第1の電極、212G:導電層、212R:導電層、213:EL層、213B:EL層、213G:EL層、213R:EL層、215:第2の電極、220B:光学距離、220G:光学距離、220R:光学距離、301:第1の基板、302:画素部、303:回路部、304a:回路部、304b:回路部、305:シール材、306:第2の基板、307:配線、308:FPC、309:トランジスタ、310:トランジスタ、311:トランジスタ、312:トランジスタ、313:第1の電極、314:絶縁層、315:EL層、316:第2の電極、317:有機ELデバイス、318:空間、320:トランジスタ、321:導電層、322a:導電層、322b:導電層、323:導電層、324:絶縁層、325:絶縁層、326:絶縁層、327:半導体層、327i:チャネル形成領域、327n:低抵抗領域、328:絶縁層、330:トランジスタ、331:導電層、332a:導電層、332b:導電層、333:導電層、334:絶縁層、335:絶縁層、337:半導体層、338:絶縁層、401:第1の電極、402:EL層、403:第2の電極、405:絶縁層、406:導電層、407:接着層、416:導電層、420:基板、422:接着層、423:バリア層、424:絶縁層、450:有機ELデバイス、490a:基板、490b:基板、490c:バリア層、800:基板、801:第1の電極、803:第2の電極、811:正孔注入層、812:正孔輸送層、813:発光層、814:電子輸送層、815:電子注入層、911:筐体、912:光源、913:検知ステージ、914:撮像装置、915:発光部、916:発光部、917:発光部、921:筐体、922:操作ボタン、923:検知部、924:光源、925:撮像装置、931:筐体、932:操作パネル、933:搬送機構、934:モニタ、935:検知ユニット、936:被検査部材、937:撮像装置、938:光源、981:筐体、982:表示部、983:操作ボタン、984:外部接続ポート、985:スピーカ、986:マイク、987:第1のカメラ、988:第2のカメラ、7000:表示部、7001:表示部、7100:テレビジョン装置、7101:筐体、7103:スタンド、7111:リモコン操作機、7200:ノート型パーソナルコンピュータ、7211:筐体、7212:キーボード、7213:ポインティングデバイス、7214:外部接続ポート、7300:デジタルサイネージ、7301:筐体、7303:スピーカ、7311:情報端末機、7400:デジタルサイネージ、7401:柱、7411:情報端末機、7600:携帯情報端末、7601:筐体、7602:ヒンジ、7650:携帯情報端末、7651:非表示部、7800:携帯情報端末、7801:バンド、7802:入出力端子、7803:操作ボタン、7804:アイコン、7805:バッテリ、9700:自動車、9701:車体、9702:車輪、9703:フロントガラス、9704:ライト、9705:フォグランプ、9710:表示部、9711:表示部、9712:表示部、9713:表示部、9714:表示部、9715:表示部、9721:表示部、9722:表示部、9723:表示部