(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】不動態化剤を用いて多層材料をリサイクルするための分離流体、方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B29B 17/02 20060101AFI20240419BHJP
【FI】
B29B17/02 ZAB
(21)【出願番号】P 2020566892
(86)(22)【出願日】2019-05-31
(86)【国際出願番号】 EP2019064180
(87)【国際公開番号】W WO2019229235
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-30
(32)【優先日】2018-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513187106
【氏名又は名称】ザペラテック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(72)【発明者】
【氏名】マルクス シュルツェ
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/169801(WO,A1)
【文献】特許第7148519(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 17/00- 17/04
C08J 11/00- 11/28
B09B 1/00- 5/00
B09C 1/00- 1/10
B32B 1/00- 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの金属層と、1つのさらなる層とを含有する多層系を分離するための分離流体(330)であって、水と、カルボン酸と、カルボン酸塩と、不動態化剤との混合物を含み、前記不動態化剤が、リン酸塩、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、又はそれらの混合物であり
前記カルボン酸が、いずれかの比率の水混和性カルボン酸であり、2.0~8.0のpKa値を有し、そして、
前記カルボン酸塩が、水に可溶性であり(20℃では水100gあたりカルボン酸塩10gを超える溶解度)、6.0~13.0のpKb値を有する、
分離流体(330)
(但し、アルカリ金属水酸化物を含む分離流体(330)を除く)。
【請求項2】
前記カルボン酸が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸若しくは酪酸、又はそれらの混合物からなるC1~C4脂肪酸の群から選択される、請求項1に記載の分離流体。
【請求項3】
前記カルボン酸塩並びに前記不動態化剤の対カチオンが、金属カチオン又は錯カチオンであり、前記金属カチオンが、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニウムのうちの1つである、請求項1または2に記載の分離流体。
【請求項4】
前記カルボン酸塩が、前記用いられたカルボン酸の対応するルイス塩基である、請求項1または2に記載の分離流体。
【請求項5】
前記不動態化剤が、20℃で水100gあたり0.01gより大きな水溶解度を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の分離流体。
【請求項6】
前記混合物の成分が、20~70重量%のカルボン酸と、最大5重量%の不動態化剤と、0.05~10重量%のカルボン酸塩と、30~70重量%の水とを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の分離流体。
【請求項7】
複層材料(10)における金属層(30)の、さらなる層(20、40)からの分離のための方法であって、
請求項1~6のいずれか1項に記載の分離流体(330)を含む槽(310)内に前記複層材料(10)を配置すること、
を含む、方法。
【請求項8】
前記分離流体(330)を前記複層材料(10)の成分と共にふるいにかけること又は濾過すること(240)のうちの少なくとも一方と、その後、前記金属層(30)からの金属の第一の画分及び前記さらなる層(20、40)からのプラスチックの第二の画分を得るために選別すること(260、280)とをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記分離が、20℃~90℃の温度で実行される、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記分離流体が、1.5~5のpH値を有する、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記複層材料(10)が、少なくとも1つの金属層と、少なくとも1つのさらなる層(20、40)とを含む、請求項7~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの金属層(30)と、少なくとも1つのさらなる層(20、40)とを含む複層材料(10)を含む包装材料(300)をリサイクルするための方法であって、
請求項1~6のいずれか1項に記載の分離流体(330)を含む槽(310)内に前記包装材料(300)を配置して、前記金属層(30)からの金属片と、前記さらなる層(20、40)からのプラスチック片と、残りの成分との混合物を生成すること(260)、
を含む、方法。
【請求項13】
前記金属片及び前記プラスチック片を選別(280)及び分離して、金属粒子を生成することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
複層材料(10)から作製された包装材料のリサイクルのための装置であって、
請求項1~6のいずれか1項に記載の分離流体(330)を有する槽(310)と;
前記包装材料(300)を前記槽(310)内に輸送するための輸送装置と;
前記分離流体(330)と前記包装材料(300)との組み合わせから分離された材料を取り出す(240)ためのふるい/濾過装置(350)と、
を含む、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの金属層と、少なくとも1つのさらなる層とを含む多層材料をリサイクルするための分離流体及びその使用、方法並びに装置を含む。この分離流体は、少なくとも1つの金属層を化学反応から保護する不動態化剤を含有する。
【背景技術】
【0002】
積層体又は多層材料の分離のためのマイクロエマルジョン分離流体の使用は、例えば、互いからの多層材料中の層の分離を教示している本出願者による特許出願の国際公開第2012/101189号パンフレットから、公知である。この国際公開第’189号の開示の実施例は、光電池モジュール内で使用される多層材料の分離を対象にして行われている。
【0003】
食品包装中で用いられる積層体のリサイクルを改善するための要件が、議論されている。例えばMario Abreuによる「The recycling of Tetra Pak aseptic cartons」(www.environmental-expert.comに掲載)という文献は、この問題を広範囲に議論しており、セルロース組織のリサイクルが可能であるが、アルミホイルからのポリエチレンの分離が可能でないことを特筆している。
【0004】
米国特許第5,421,526号明細書(Tetra Laval)は、金属、プラスチック、そして適宜、紙等の個々の材料成分を、金属、プラスチック、そしてことによると紙又は厚紙の層を含む積層包装材料の廃棄物から再生する方法を教示している。これらの層は、この廃棄物を、ギ酸、酢酸、プロパン酸、酪酸及び他の類似の揮発性有機酸から選択される有機酸又は有機酸混合物で処理することにより互いから分離される。この特許の方法は、酢酸の引火点(80%濃度で約60℃)を超える高温(80℃)で実施され、多量のエネルギーを必要とするだけでなく、安全性のリスクも加わる。用いられる混合物は、酢酸が高濃度(80%)であるため、高度に攻撃性である。この混合物は、アルミニウム成分を攻撃し、水素の生成を引き起こすことに加え、この工程で再生されたアルミニウムの量の損失にもつながるであろう。
【0005】
欧州特許出願第0543302号明細書(Kersting)は、アルミホイルをPEホイル等のプラスチックホイルから分離して、アルミニウムのリサイクルを可能にするための方法を教示している。この積層体は、低級脂肪酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、ギ酸、ブタン酸)の20%溶液中に配置され、100℃まで10~20分間加熱される。この方法は、好ましくは密閉槽内で実施されて、液体を沸点で、及び/又は沸点を超えて操作する。加えて、溶液が冷却されると、減圧が生じ得る。アルミニウム及びプラスチックホイルの形態の廃棄材料全体が、この溶液と一緒に、各充填サイクルの間に加熱及び冷却されるため、欧州特許第’302号に記載されたこの方法の産業的実行可能性には疑問がある。これは、大きな槽では十分に急速に実施することが困難になる可能性があり、莫大な量のエネルギーを必要とする。
【0006】
米国特許出願公開第2004/0129372号明細書(Huang)は、少なくとも1つの浸透性層が積層されたホイル層を含むホイル積層材料のための分離方法を記載している。米国特許出願公開第’372号の分離方法は、分離流体をホイル積層材料中に浸透させ、積層体の異なる浸透性層の間のアルミナ中間層を溶解することにより作用する。この実施例で用いられる分離流体は、アルミナのような非貴金属を溶解することで周知の硝酸であり、その結果、残留するプラスチック又は紙の層が別々の手法で単離され得る。この文書に開示された分離方法は、アルミニウムが貴重な材料の流れ(material stream)であるという事実にも関わらず、アルミニウムの損失をもたらし、容易に再生することができず、このため米国特許出願公開第’372号に概説された分離方法は、経済的欠点を有する。
【0007】
同様に中国特許出願第104744724号明細書は、アルミニウム・プラスチック積層体のための分離流体、及びこの分離流体を利用することによりプラスチック層からのアルミニウム層の分離を実行するための方法に関する。この分離流体は主に、40~200部のギ酸と5~10部のジクロロメタンとを混合することにより調製され、さらに1~4部の非イオン性界面活性剤も含有する。この出願の分離流体は、揮発性が高く、環境に有害である成分も含有する。
【0008】
中国特許出願第103131042号明細書が、アルミニウム-プラスチック多層材料を分離するための別のタイプの分離剤に関する。このタイプの分離剤は、ギ酸とエタノールとを4:1~1:4の容量比で混合することにより調製される。分離剤を用いることによるアルミニウム-プラスチック複合膜のためのこの分離方法は、以下のステップ:分離剤と水とを混合して分離流体を得るステップと、浄化されたアルミニウム-プラスチック複合膜を分離流体に浸漬するステップと、取り出して浄化し、遠心分離して乾燥させるステップとを含む。アルミニウム-プラスチック分離膜が、分離流体及び水から混合された溶液中に浸漬されると、アルミニウム-プラスチック複合膜中のアルミニウムとプラスチックが、効率的に分離され得る。この中国特許出願第’042号に記載された実施例では、50~80℃の温度が、用いられる。このような条件では、分離剤が可燃性であり、アルミニウムを攻撃し、安全上のリスク及びアルミニウムの損失が生じる。
【0009】
米国特許出願公開第2002/0033475号明細書(Bejarano)は、長期包装用Tetra Brik(登録商標)無菌紙パックのリサイクルのための合成処理組成物を開示している。この特許出願に開示された組成物は、乳酸、酢酸ナトリウム、セルロース酵素、α-アミラーゼ酵素、マルトース酵素、クエン酸及び活性炭を含む。この組成物は、紙、ポリエチレン及びアルミニウムで構成された多層材料を分離するのに用いられる。
【0010】
国際特許出願の国際公開第03/104315号パンフレット(Massura)は、紙、アルミニウム及び/又はポリマー膜を含む複層を有する複合材料のためのリサイクル方法を教示している。この方法では、複合材料は、層の間で用いられる接着剤の特徴に応じて、クロロホルム、テトラヒドロフラン、キシレン、プロトン性カルボン酸、又は水のような異なる溶媒で処理される。しかし、この方法におけるハロゲン化媒体のような有機溶媒の使用は、負の環境的影響を有する。
【0011】
金属層を含有する多層材料を剥離するための先行技術で採用されたアプローチは、酸性の酸化条件下での水溶性金属塩へのベアメタルの部分的又は完全な溶解である。この反応の例示的な表現は、式(1)で与えられる:
2Me(s)+6HA→2Me3++6A-+3H2(g) (1)
(式中、Meは、周期表の第13族(ホウ素族)の金属を表し、HAは、プロトン性ルイス酸を表し、A-は、ルイス酸の対応するアニオンを表す)。この一般的反応は、標準水素電極(SHE)の電位と類似(半貴金属)の、又はより負(非貴金属)の標準電極電位(E0)を有する、周期表の第13族の金属以外の非貴金属又は半貴金属にも成立する。
【0012】
金属層を含む多層材料のためのこの酸性の酸化金属溶解アプローチは、(i)産出流れの中の金属のこの部分的又は完全な損失が、リサイクル工程の全体的効率を低減する、(ii)酸性の酸化金属溶解の下での水素ガスの生成は、爆発からの保護を必要とし、安全上の問題がある、(iii)遊離される水素ガスの起源であるプロトンの結果としての損失は、適切な手法でこれらのプロトンを分離流体に戻すことにより補填されなければならない、という技術的及び経済的欠点を有する。この補填が、この工程で必要となる化学物質の投入量を増加させることになる。
【0013】
本出願人の同時係属特許出願である国際公開第2018/109147号パンフレットは、金属層及び少なくとも1つのプラスチック層を含む多層材料のリサイクル工程を記載している。多層材料のリサイクルを可能にするためにこの出願で用いられる分離流体は、金属層の溶解を減速させるためにリン酸及びアルカリ金属水酸化物を含有する。これらの反応性化学物質の取り扱いは、特定レベルの安全対策を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本文書は、上記の欠点を低減する少なくとも1つの金属層を含む多層材料のリサイクル工程を記載している。本文書に開示された分離流体は、多層材料の剥離に成功した後に多層材料中の金属層を直接不動態化させ、それにより剥離された金属層がさらなる分解に対して保護される。この不動態化方法を利用すれば、リサイクル工程での金属の損失が低減され、副生物である水素の量が減少されて、対応する酸残渣のアニオンへのプロトン性ルイス酸の連続的な転換が停止される。本文書のリサイクル工程は、リン酸及び水酸化ナトリウムのような強酸又は塩基等の化学物質の取り扱いに関与したリスクを低減する。それゆえ、本文書のリサイクル工程に必要な安全対策は、現在の最先端技術で用いられるものよりも少ない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
複層材料における金属層の、少なくとも1つのさらなる層からの分離のための分離流体及びその使用が、本開示で教示されている。この方法は、複層材料中の層を分離するために、分離流体を含む槽内に複層材料を配置することを含む。分離流体は、水と、カルボン酸と、カルボン酸塩と、不動態化剤との混合物を含む。
【0016】
不動態化剤が、剥離後の金属層表面の不動態化をもたらし、これにより金属層のさらなる分解を防止する。
【0017】
カルボン酸は、多層包装材料の剥離を担い、水混和性カルボン酸である。用語「水混和性カルボン酸」は、いずれかの比率の水で水混和性になるカルボン酸と理解されなければならない。このカルボン酸は、2~8のpKa値を有する。一形態において、pKa値は、3~5の間である。これらの基準に適合するそれらのカルボン酸は、C1~C4脂肪酸、即ちギ酸、酢酸、プロピオン酸及び酪酸である。非限定的にアクリル酸又は3-クロロプロピオン酸等、脂肪酸と見なされないが水混和性及びpKaの基準に適合する他のC1~C4酸もまた、本発明により開示される。本発明の一形態において、ギ酸又は酢酸が、用いられる。より大きな脂肪酸(C5及びそれ以上)は、いずれの比率でも水と混和性がないことが知られており、例えば吉草酸は、水100gあたり約5gの水溶性を有する。それゆえC5以上の脂肪酸の使用は、充分な親水性置換基により水溶性が調整される場合のみ可能である。さらに、C5以上の脂肪酸は、他の層に蓄積する、即ちポリマー層に取り込まれる可能性があり、エネルギーを要する乾燥手順によってのみ、取り出すことができる。加えて、異なるカルボン酸の混合物が可能であり、その場合、剥離の性能は、混合物中で最も酸性であり最大量を有するそのカルボン酸に左右される。
【0018】
カルボン酸塩は、分離流体のpH値を改変し、水に可溶性である(20℃では水100gあたり10gを超えるカルボン酸塩の溶解度)。カルボン酸塩は、6~12のpKb値を有する。一形態において、カルボン酸塩のpKa値は、8~10の間である。
【0019】
カルボン酸塩の対カチオンは、金属カチオン又は錯カチオンのいずれかであり得る。金属カチオンは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属から選択される。他の金属対イオンは、用いられる対イオンが可溶性カルボン酸塩を形成し、そして剥離工程又は不動態化工程のいずれも妨害しない限り、用いられ得る。錯対カチオンは、1種超の原子、例えばアンモニウムイオン(NH4
+)を含む。
【0020】
選択されたカルボン酸塩は、用いられるカルボン酸に対応する。一形態において、カルボン酸は、酢酸であり、それゆえカルボン酸塩は、ナトリウムの酢酸塩であり得る。これらが一緒になって、酢酸ナトリウム-酢酸緩衝系を形成する。
【0021】
異なるカルボン酸塩に加え、溶液のpH値を正しい方向に改変する非カルボン酸塩の混合物もまた、可能である。
【0022】
本発明は、カルボン酸塩の物質状態(液体又は固体)により限定されない。本発明の一形態において、カルボン酸塩は、固体である(20℃で)。カルボン酸塩は、20℃未満の融点を有していてもよく、このため一般に液体であると記載されよう。
【0023】
不動態化剤は概して、リン酸塩、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、又はこれらの塩の混合物である。一形態において、不動態化剤は、アルカリ金属カチオンのリン酸二水素塩である。リン酸塩、ホスホン酸塩及びホスフィン酸塩のモノアニオン形態の化学的基本構造は、以下の式により与えられる:
【化1】
【0024】
概して不動態化剤は、リンのオキソ酸、即ちリン酸、ホスホン酸及びホスフィン酸のモノアニオン塩の非エステル、モノエステル又はジエステルである。不動態化剤の置換基R1~R6は、Hに加え、C1~C4アルキル鎖、即ちメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル及びtert-ブチルであり得る。これらの置換基は、不動態化剤の、水への高い可溶性を可能にする。他の置換基は、不動態化剤の水溶性が維持される限り、使用され得る。高親水性である他の置換基としては、オリゴ-、ポリエチレングリコール又はアデノシン三リン酸塩(ATP)のような生物模倣型リン酸塩が挙げられる。通常、置換基対R1+R2及びR5+R6は、同一置換基を有する。しかし、置換基対R1+R2及びR5+R6の中の異なる置換基の混合物もまた、用いられ得る。一形態において、不動態化剤は、リン酸二水素塩である。
【0025】
加えて、リンのオキソ酸のモノアニオン塩のエステル混合物は、適切な不動態化剤である。一例は、リン酸エステルのモノエステルとジエステルとの混合物であるClariantのHordaphos(登録商標)製品である。これらのエステル混合物は、モノアニオン塩への転換後に、適切な不動態化剤になる。強い腐食阻害剤のHordaphos(登録商標)MDGBは、アルキル鎖長が2~4の間であるリン酸のモノアルキルエステルとジアルキルエステルとの水混和性混合物であり、そのような適切なエステル混合物の代表である。
【0026】
不動態化剤の対カチオンは、金属カチオン又は錯カチオンであり得る。金属カチオンは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属から選択される。他の金属対イオンは、それらが可溶性不動態化剤を形成し、そして剥離工程又は不動態化工程を妨害しない限り、用いられ得る。錯対カチオンは、1種を超える原子、例えばアンモニウムイオン(NH4
+)を含んでいてもよい。
【0027】
選択された不動態化剤で得られる溶解度は、20℃で水100gあたり0.01gを超えなければならない。一形態において、溶解度は、20℃で水100gあたり1gより大きくなければならない。
【0028】
リン酸一水素二ナトリウムのようなリンのオキソ酸のジアニオン塩は、これらの塩の塩基性が通常、非常に高く、これらの物質が開示された分離流体の別の原材料、即ちカルボン酸と反応するため、不動態化剤として用いられない。例示的な選択されたリン酸一水素二ナトリウムとカルボン酸との反応は、リンのオキソ酸の対応するモノアニオン塩及びカルボン酸塩を誘導し、両成分とも既に本明細書に開示された発明に含まれている。しかし、適切な置換様式によるリンのオキソ酸のジアニオン塩のpKb値の著しい改変により、そのような不動態化剤の使用が、可能になる。
【0029】
一形態において、選択された不動態化剤は、置換基R1及びR2が水素であり、対カチオンがナトリウムである、モノアニオン性リン酸塩である。これが、不動態化剤としてリン酸二水素ナトリウムを生成する。
【0030】
不動態化剤は、6.0~13.0のpKb値を有する。pKbは、pKa+pKb=14によりpKa値として表すこともでき、そのため不動態化剤も同様に、1~8のpKa値を有する。
【0031】
本発明は、不動態化剤の物質状態(液体又は固体)により限定されない。本発明の一形態において、不動態化剤は、固体である(20℃で)。不動態化剤は、20℃未満の融点を有していてもよく、このため一般に液体であると記載されよう。
【0032】
多層材料の金属表面を不動態化するという特色は、以下の2つの例示的等式により最良に例証され得、ここで式(2)は、アルミニウムとリン酸との一般的な金属不動態化反応を表し、式(3)は、金属としてのアルミニウムと、カルボン酸としての酢酸と、不動態化剤としてのリン酸二水素ナトリウムとによる、開示された発明のより詳細な化学作用を示す:
2Al(s)+2H3PO4(l)→2AlPO4(s)+3H2(g) (2)
Al+CH3COOH+NaH2PO4→AlPO4(s)+CH3COONa+1.5H2(g) (3)
式(2)及び(3)は、アルミニウムが多層包装材料中で用いられる最も共通する金属中間層であるために選択されている。しかしこれらの等式は、アルミニウムへの保護を限定するものではない。式(2)及び(3)はまた、銅、スズ、鉛、亜鉛に加え、金属合金に対しても成立する。
【0033】
式(3)における酢酸とリン酸塩不動態化塩との組み合わせへの、式(2)におけるリン酸の置き換えは、強い無機酸であるリン酸が酸性度のより低い酸である酢酸に、そして危険性を有さない不動態化塩であるリン酸二水素ナトリウムに交換されるため、有害性が低い化学物質をもたらす。
【0034】
不溶性金属リン酸塩、ホスホン酸塩又はホスフィン酸塩は、金属層の表面に堆積され、薄い不動態化層を形成して、ベアメタルをさらなる酸化溶解から保護する。この薄い不動態化層の化学構造は、金属層の金属、用いられる不動態化剤及び不溶性塩の沈殿の条件に依存する。
【0035】
分離流体の化学組成物は、厳密な単一成分を混合することにより得ることができる。しかし同一の得られた化学組成物は、原材料(前駆体)を混合し、その後、反応させてこの文書に開示された分離流体の化学物質を提供することにより、実現され得る。例えば、酢酸のようなカルボン酸及びリン酸を水酸化ナトリウムのような塩基の正しい量と混合することにより、その後の化学反応がカルボン酸塩(この場合、酢酸ナトリウム)及び不動態化剤の塩(この場合、リン酸二水素ナトリウム)と、水と、残留するカルボン酸との混合物を生じることは、理解されよう。そのような工程もまた本開示に含まれるものとする。
【0036】
この方法は、カルボン酸及び/又は不動態化剤の前駆体がベアメタルと反応して(式(1)参照)、適切なカルボン酸塩及び最終的な不動態化剤を形成する事例も含むものとする。そのような事例のベアメタルは、不動態化剤及びカルボン酸塩のための原材料を得るために捧げられる多層材料の金属層の一部でもあり得る。
【0037】
カルボン酸塩の前駆体は、ワンステップ反応により本発明で開示されたカルボン酸塩に転換され得る化学物質として理解される。そのようなワンステップ反応は、本発明はこれに限定されないが、カルボン酸と塩基との反応(中和)、カルボン酸と非貴金属とのレドックス反応、又は対応するカルボン酸塩へのカルボン酸の電気化学的変換であり得る。
【0038】
不動態化剤の前駆体は、ワンステップ反応により本発明で開示された不動態化剤に転換され得る化学物質として理解される。そのようなワンステップ反応は、本発明はこれに限定されないが、リンのオキソ酸と塩基との反応(中和)、リンのオキソ酸と非貴金属とのレドックス反応、又は対応する不動態化塩へのリンのオキソ酸の電気化学的変換であり得る。
【0039】
分離流体は、現在の最先端技術で知られるものよりも環境への有害性が低い成分を有しており、例えば前述の中国特許出願を参照されたい。前記特許出願に関係して、以下に説明される通り本文書の分離流体は、検出可能な引火点を呈さないため、有機原材料の揮発性はより低く、化学物質の放出及び爆発のリスクが最小限に抑えられる。さらに塩の使用が、揮発成分である成分の数を低減し、これにより分離流体の化学的取り扱いリスクにおける複雑さを低減する。
【0040】
本出願の分離流体はまた、強い無機酸又は塩基を含まず、これにより酸と塩基との中和反応による強度の温度上昇をもたらす可能性があるそのような化学物質の使用に関与する取り扱いリスクを低減する。
【0041】
本文書内の不動態化方策の記述は、金属損失の低減及び化学物質投入の低減という観点から、リサイクル工程の全体的効率を上昇させる。
【0042】
本発明で開示された分離流体は、20~70%のカルボン酸と、0.05~10%のカルボン酸塩と、最大5%の不動態化剤と、30~70%の水との重量パーセント値を有する。一形態において、分離流体は、30~50%のカルボン酸と、0.5~5%のカルボン酸塩と、最大0.02~2%の不動態化剤と、40~60%の水との重量パーセント値を有する。カルボン酸の重量%範囲は、最適化された剥離性能を担い、約50重量%のカルボン酸で最大を示す。カルボン酸塩の量は、分離流体のpH値を調節し、このため混合物中のカルボン酸の量に結び付けられる。不動態化剤の重量%は、金属層の負荷の度合い及び厚さに加え、不動態化剤の分子サイズパラメータに強く依存する。パラメータの全てが、動態化工程により被覆されるべき金属層の金属表面のサイズにより強く影響を受ける。それゆえ用いられる不動態化剤の重量%の実際の下限は、決定され得ない。水の重量%は、充填して100%にする残りの原材料である。
【0043】
剥離後に金属層を被覆して不動態化をもたらす不溶性金属リン酸塩、ホスホン酸塩又はホスフィン酸塩の形成は、pH依存性である。非常に酸性の条件下では、不溶性金属リン酸塩、ホスホン酸塩又はホスフィン酸塩の形成は、可能でなく、例えばリン酸アルミニウムは、強酸中にわずかに可溶性である。本発明で開示された分離流体のpH値は、それゆえ1.5~5の間である。本発明の一態様において、好ましいpH値範囲は、2~3.5の間で選択される。1.5のpH値未満では、不動態化は、依然として作用しているが、より高いpH値ほど効果的でなく、先に言及された欠点が深刻になり、この工程はもはや経済的でなくなる。5より高いpH値は、分離流体の剥離性能を低減することにつながる。それゆえpH値は、その後の合理的な剥離時間と効率的な不動態化とで均衡をとるように分離流体を調整しなければならない。
【0044】
この方法はまた、分離流体を複層材料の成分と一緒にふるいにかけ/濾過して、分離液から複層材料の成分を回収すること、並びにその後、金属層からの金属の第一の画分及びポリマー層からのプラスチックの第二の画分を得るように選別することを含み得る。本発明の幾つかの形態において、異なる種類のポリマーの第三の画分が、得られる可能性がある。これが、複層材料からの材料のリサイクルを可能にする。得られたポリマーは、押出され得、金属は、金属片の形態で再生され得る。
【0045】
本開示はまた、汎用性飲料容器等の包装材料から、さらなる層としてのポリマー成分及び金属層としての金属成分をリサイクルするための方法を教示する。
【0046】
包装材料をリサイクルするための装置もまた、開示される。この装置は、分離流体を有する槽と、複層材料を槽内に輸送するための輸送デバイスと、分離流体と包装材料との組み合わせから分離された材料を取り出すためのふるい/濾過デバイスとを含む。
【0047】
本開示で用いられる用語「多層材料」が、材料の幾つかの層を含む物体を包含することを意図することは、理解されよう。単一層の厚さに制限はない。例えば金属層は、ホイルとして存在することができ、又はさらなる層の1つの上に金属化されることのみも可能である。金属層は、標準水素電極(SHE)のものと類似又はそれより負の標準電極電位(E0)を有し、通常は半貴金属、又は非貴金属として知られる金属である。金属層はまた、合金で構成され得る。そのような合金は、非貴金属の間の合金であり得るが、非貴金属と半貴金属又は貴金属の間の合金でもあり得る。
【0048】
さらなる層という用語は、液体による浸透性がある全ての材料に及び、一形態においてポリマー及び/又は紙の層である。
【0049】
材料の幾つかの層の非限定的な例としては、層が互いに積層された、結合された、若しくは貼付けられた物体、又は材料の1つが材料の別のものに堆積され得る物体が挙げられる。複層材料は、飲料容器で知られる板紙層を含み得るが、板紙層を含む必要はない。多層材料の他の例は、例えば軽食の包装及びパウチの包装に用いられる全種類の包装材料である。
【0050】
非限定的態様において以下に記載される方法は、飲料又は食品容器中の積層体のリサイクルに使用される。しかし、この方法が、他の適用で用いられる他の積層体のリサイクルにも用途を見出し得ることは、理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】本開示の分離流体及び方法を用いてリサイクルされる無菌包装中で用いられる積層体の1つの例示的実施例を示す。
【
図2】本開示の教示を利用した方法のフロー図を示す。
【
図3】本開示の教示を利用したリサイクルのための装置の概観を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
次に、本発明を図面に基づいて説明する。本明細書に記載された発明の態様及び形態が例示に過ぎず、特許請求の範囲の保護範囲を限定しないことは、理解されよう。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物により定義される。本発明の一形態又は態様の特色が本発明の異なる形態若しくは複数の形態、及び/又は態様の特色と組み合わせられ得ることは、理解されよう。
【0053】
図1は、無菌包装中で用いられる積層体10の非限定的な例を示す。積層体10は、アルミニウム層30に結合された第一のポリマー層20を含み、そのアルミニウム層も順次、第二のポリマー層40に結合されている。結合剤が、異なる層の間で用いられている。そのような結合剤としては、エチレン/アクリル酸コポリマー及び/又はポリウレタン接着剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
積層体10は、本発明の一形態において、果汁及びミルク等の飲料に加えてトマトピューレ及び類似の流体のためのスタンドアップパウチに用いられるもの等、無菌包装中で用いられる。類似の包装が、軽食等の他の食品及び化粧品にも用いられる。幾つかの用途において、ポリマー層の1つは、一方の側に、又はさらに両側に、例えば製品の説明を印刷されている。
【0055】
本発明の1つの非限定的な例において、ポリマー層20は、低密度ポリエチレン(LDPE)で作製され、ポリマー層40は、ポリエチレンテレフタレート(PET)で作製される。金属層30は、アルミニウムで作製される。これは、本発明を限定するものではなく、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド又はポリエステル等の他のポリオレフィン又はプラスチックが、用いられ得る。同様に金属層30は、アルミニウム合金又は別の金属であり得る。
【0056】
幾つかの種類の包装は、単一のポリマー層20のみを金属層30と共に含む。例えば製造の不良品が、単一ポリマー層20と金属層30のみを有していてもよい。他の種類の包装材料は、同一ポリマーで作製された2つのポリマー層20及び40を含む。本開示の教示はまた、これらの種類の多層材料に適用可能であり、言及された多層材料に制限されない。
【0057】
図3は、本開示の多層積層体10のリサイクルのためのリサイクル工場の例である概観図を示す。
図3に示された工場が単に例示であり、本発明を限定するものではないことが理解されるであろう。多層積層体10は、上記のとおり組み立てられている。
【0058】
リサイクル工場は、多層積層体10で作製された包装材料のベール50を切断及び破砕する切断又は破砕装置300を含む。切断又は破砕装置300に続いて、槽310の内容物をかき回しかき混ぜる、攪拌器320を備えた槽310がある。槽310は、分離流体330と、分離流体330を槽310に分配するための流体ディスペンサ340とを含有する。
【0059】
材料は、ふるい装置350内で分離流体330からふるいにかけられてよく、その後、ふるいにかけられた材料は、洗浄機360内の水で洗浄される。ふるいにかけられた材料から成分を分離するための第一の選別ステップは、湿式選別機370において、例えば浮遊-沈積分離又は遠心分離技術の利用により、湿潤環境で実行され得る。これにより、概ね2つの材料の流れ(material stream)が生じる。上記に概説された積層体10の非限定的な例において、2つの材料の流れ(material stream)の一方は、実質的に低密度ポリエチレンであり、材料の流れ(material stream)の他方は、アルミニウムとPETとの混合物を含む混合流れである。この2つの材料の流れ(material stream)は、必要に応じて、さらなる洗浄ステップで洗浄され得る。
【0060】
得られた2つの材料の流れ(material stream)は、乾燥ユニット380で乾燥されてよく、次に乾燥選別ユニット390で精製されてよい。乾式選別は、例えば混合流れからアルミニウム及びPETを抽出するために、例えば風力選別又は電磁気に基づく技術により、実施され得る。この選別(湿式又は乾式)が要件に応じて単一の装置でも、又は2つより多くの装置でも実行され得ることが理解されるであろう。
【0061】
分離流体330は、流体リサイクル装置355内でリサイクルされて、大部分が濾過により不純物を浄化され、消費された化学物質が補充される。洗浄水もまたリサイクルされて、水リサイクル装置365内で洗浄水を浄化する。リサイクルは、クロスフロー濾過技術、逆浸透及び/又は液-液抽出を包含し、洗浄水から分離流体330の化学物質の少なくとも一部の再生を可能にする。
【0062】
図2は、
図3に示された装置の中で用いられる積層体10のリサイクルのための方法の概要を示す。積層体10は、包装材料のベール50としてまとめて回収される。積層体10は概して、ベール50の中で一緒に圧縮されて、体積を減少されているであろう。積層体10は、廃物採取及び/又は加工工場で洗浄されて、いずれかの食品残物を除去されていてもよい。ベール50は、リサイクル工場に到着すると最初に、ステップ200におけるサイズ減少のために切断及び破砕装置300に入れられる。切断/破砕された積層体10のバッチはその後、槽310に投入される。攪拌器320は、ステップ210で積層体10を槽310内で分離液300と混合して、混合物を生成する。
【0063】
ステップ230において、積層体10と分離流体330との混合物が、所定の処理時間、例えば4時間の間、さらにかき混ぜられ、かき回されて、構成要素の層、即ちLDPEの第一のポリマー層20、アルミニウムの層30、及びPETの第二のポリマー層40(上記の非限定的な例で)の中への多層積層体10の分離をもたらす。概して、分離流体330の効果は、LDPEの第一のポリマー層20及び/又は第二のポリマー層40及び金属層30を剥離して、金属層30から金属片を、そして第一のポリマー層20及び第二のポリマー層40からポリマー片を生成することである。これは、所与の温度、例えば20℃~90℃で、典型的には30分~300分の処理時間で、実現される。この方法の一形態において、所与の温度は、70℃である。汎用飲料用紙パックのためのこの方法の別の形態において、所与の温度は、30℃~50℃であろう。温度及び工程時間の選択は、主としてポリマー材料及び接着性結合剤の種類に加え、剥離される単一層の厚さに依存する。エチレン/アクリル酸コポリマーから得られた結合剤と一緒に結合されている層は、約40℃で剥離し、ポリウレタン接着剤から得られた結合剤による層は、約70℃で剥離する。
【0064】
分離流体330と、分離された材料、即ちLDPEと、アルミニウムと、PETとの混合物が、槽310から取り出されて、ステップ240においてふるい350でふるいにかけられて、固体材料を取り出すことができ、この固体材料は、第一のポリマー層20からのLDPEと、第二のポリマー層40からのPETと、金属層30からの金属片の大部分とを含む。分離流体330はその後、装置355によりリサイクルされる。リサイクルは、ステップ245の濾過、及びステップ246の消費された化学物質の補充により実行される。リサイクルされた流体はその後、流体ディスペンサ340に戻される。装置355内の濾過ステップ245は、それまでふるい分けられていない金属片をはじめとする分離流体330からの固体不純物の実質的に全てを取り出す。
【0065】
ステップ240でふるい分けられた固体材料は、ポリマーとアルミニウムとの混合物である。得られた材料は、ステップ250で洗浄機360において洗浄され、その後、湿式選別ステップ260で湿式選別機370において浮遊-沈積分離又は遠心分離技術を利用して、大部分としてLDPEを含む軽い材料と、大部分としてアルミニウム及びPETを含む高密度の材料とに選別される。軽い材料及び高密度の材料は、ステップ270(軽い材料)及び271(高密度の材料)で別々に乾燥される。乾燥された高密度の材料はさらに、ステップ280で乾式選別機390において風力選別又は電磁的技術を利用して選別されて、アルミニウムに富む材料及びPETに富む材料を得る。選別(湿式又は乾式)が要件に応じて1ステップで、又は2ステップ超で実行され得ることが理解されるであろう。
【0066】
洗浄水は、ステップ255において水リサイクル装置365で処理される必要があり、その後、洗浄水もまた再利用される。これらの処理は、通常の濾過及びクロスフロー濾過技術、逆浸透及び/又は液-液抽出を伴う複数の濾過ステップを含み、洗浄水から得られた少なくとも幾つかの化学物質を回収して、再利用のために流体リサイクル装置355に移行させることもできる。一形態において、水リサイクル装置365は、逆浸透を組み合わせた液-液抽出ユニットを含む。
【0067】
LDPEに富む材料は、ステップ290で顆粒に押出され得る。金属片は、リサイクルのためにステップ291でペレットに圧縮され得る。同様にPETに富む材料は、ステップ292で運搬のために圧密化され得る。後処理ステップ290、291及び292は、例えば押出し又は圧縮機により、装置395で実施され得る。
【0068】
槽310で用いられて流体ディスペンサ340から運ばれた分離流体330は、水と、カルボン酸と、カルボン酸塩と、不動態化剤との混合物を含む。カルボン酸は、例えばいずれかの比率の、ギ酸、酢酸、プロピオン酸及び酪酸等の水混和性C1~C4モノカルボン酸である。カルボン酸塩は、例えば用いられる対応するカルボン酸のナトリウム塩である。例として、酢酸が水混和性モノカルボン酸として用いられる場合、酢酸ナトリウムが用いられることは、理解されよう。この場合、適用される不動態化剤は、好ましくはカルボン酸塩から発生した同じ対イオンを共有するリン酸二水素ナトリウムである。水は、本発明の一形態において、脱イオン化されている。主にカルボン酸は、金属層が結合された層を透過し、その後、多層材料の接着層からアルミニウムを剥離する。不動態化剤は、上記に議論された通り、アルミニウム溶解の副反応を制御するために添加される(式(1)参照)。
【0069】
分離流体330は、20℃~90℃、及び1.5~5のpH値で保持される。実際の値は、投入される積層体10又は包装材料中の他の多層材料の特性に応じて選択される。通常、低pH値が、分離の性能に好適であるが、アルミニウムの溶解をもたらす副反応にも好適である。理想的には本開示の方法は、金属層30の解離を最小限に抑えながら、処理時間内で金属層30からの金属、又は第一のポリマー層20及び第二のポリマー層40からのポリマーの充分に高い収率を実現する。アルミニウムの溶解は、気体水素の生成も誘導し、それは爆発の危険性を意味するため、金属層30の最小限の溶解は、安全性の理由から重要である。さらに工程の全体的経済性は、より少ないアルミニウム損失及び必要な化学物質投入により改善される。それゆえ、pH値が分離流体330に対して調整されて、後の合理的剥離時間と効率的不動態化の間で均衡をとらなければならない。
【0070】
分離流体330は、分離流体330中に溶解されるアルミニウムの量を制御するために、不動態化剤のリン酸二水素ナトリウムを含有する。アルミニウムは、pH値を調整することにより、適切な条件下でリン酸アルミニウムとして沈殿する。リン酸アルミニウムは、微細分散された固体であり、ステップ245で液体から濾別され得る。
【0071】
不動態化剤は、アルミニウム表面にリン酸アルミニウムの薄い不動態化被覆層を導入する。これらの表面リン酸塩は、阻害剤として作用し、一部はアルミニウム表面をカルボン酸からのさらなる化学的攻撃に対して不動態化する。反応生成物は、固体形態のリン酸アルミニウム、又は気体形態の水素として分離流体330から離れる。不動態化剤は消費され、補充されなければならない。この補充は、他の化学物質の補充と並行して、ステップ246の間にリサイクル装置355で行われる。
【0072】
包装で用いられた複層材料の他の例
包装材料中で用いられる他の複層材料の非限定的な例としては、コーヒーの包装及び飲み物の包装の中で用いられるLDPE(=低密度ポリエチレン)/アルミニウム/PET、又はコーヒーの包装及びペットフードの包装の中で用いられるPP(=ポリプロピレン)/アルミニウム/ポリエステル積層体、又は工業用の顆粒原材料の包装若しくは歯磨き粉チューブの中で用いられるLDPE/アルミニウム/LDPEが挙げられる。別の例は、通常はLLDPE(=直鎖状低密度ポリエチレン)/アルミニウム/LLDPEで構成される無菌汎用飲料用紙パックの内部部分(ポリマー及びアルミニウム)である。
【実施例】
【0073】
組成物の例と対応する適用例(実験室スケール)
以下に列挙された組成物は、単に適切な配合の例であり、本発明の限定ではない(全て重量パーセント値)。各組成物に対応する以下に列挙された例は、単に適切な適用の例であり、本発明の限定を意図するものではない。
【0074】
【0075】
実施例1-1
60gのLDPE/アルミニウム/PET材料(フレーク、1cm2、飲料用スタンドアップパウチから)が、1kgの分離液(組成物1)と共に70℃でかき回される。アルミニウムからのLDPEの脱離が、2時間後に完了し、アルミニウムからのPETの脱離が、4時間後に完了する。
【0076】
実施例1-2
30gのLDPE/アルミニウム/PET材料(フレーク、3cm2、軽食の包装から)が、1kgの分離液(組成物1)と共に70℃でかき回される。アルミニウムからのLDPEの脱離が、2時間後に完了し、アルミニウムからのPETの脱離が、4時間後に完了する。
【0077】
実施例1-3
60gのLDPE/アルミニウム/PET材料(フレーク、2cm2、歯磨き粉のチューブから)が、1kgの分離液(組成物1)と共に70℃でかき回される。アルミニウムからのLDPEの脱離が、2時間後に完了する。
【0078】
実施例1-4
PP/アルミニウム/PETフレーク(1cm2、ホイル及びコンバータの会社から得られたコーヒーの包装と同様の積層体試料)の3枚の単一切片が、20gの分離液(組成物1)と共に70℃で振とうされる。アルミニウムからのPP及びPETの脱離が、5時間後に完了する。
【0079】
実施例1-5
30gのLLDPE/アルミニウム/LLDPE+LLDPE材料(フレーク、10cm2、無菌飲料用紙パックの内部部分)が、1kgの分離液(組成物1)と共に40℃でかき回される。LLDPEからのアルミニウムの脱離が、2時間後に完了する。
【0080】
実施例1-6
20gのOPA/アルミニウム/LLDPE材料(フレーク、1cm2、ガストロノミックなビール貯蔵のための大容量パウチ)が、1kgの分離液(組成物1)と共に70℃でかき回される。OPA及びLLDPEからのアルミニウムの脱離が、5時間後に完了する。
【0081】
実施例1-1~1-6は、本発明の範囲内の分離流体組成物1で処理され得る異なる包装材料を明らかにしている。
【0082】
【0083】
実施例2-1
PE/アルミニウム/PETフレーク(1cm2、ホイル及びコンバータの会社から得られたコーヒーの包装と同様の積層体試料)の5枚の単一切片が、20gの分離液(組成物2)と共に70℃で振とうされる。アルミニウムからのPE及びPETの脱離が、1時間後に完了する。
【0084】
【0085】
実施例3-1
PE/アルミニウム/PETフレーク(1cm2、ホイル及びコンバータの会社から得られたコーヒーの包装と同様の積層体試料)の5枚の単一切片が、20gの分離液(組成物3)と共に70℃で振とうされる。アルミニウムからのPE及びPETの脱離が、10時間後に完了する。
【0086】
組成物1~3は、異なるカルボン酸を含む配合を示す。
【0087】
【0088】
実施例4-1
PE/アルミニウム/PETフレーク(1cm2、ホイル及びコンバータの会社から得られたコーヒーの包装と同様の積層体試料)の5枚の単一切片が、20gの分離液(組成物4)と共に70℃で振とうされる。アルミニウムからのPE及びPETの脱離が、8時間後に完了する。
【0089】
組成物4は、カルボン酸塩である酢酸カリウムの対カチオンとしてのカリウムと、不動態化剤であるリン酸二水素カリウムとを含む配合を示す。
【0090】
【0091】
実施例5-1
PE/アルミニウム/PETフレーク(1cm2、ホイル及びコンバータの会社から得られたコーヒーの包装と同様の積層体試料)の5枚の単一切片が、20gの分離液(組成物5)と共に70℃で振とうされる。アルミニウムからのPE及びPETの脱離が、6時間後に完了する。
【0092】
【0093】
実施例6-1
PE/アルミニウム/PETフレーク(1cm2、ホイル及びコンバータの会社から得られたコーヒーの包装と同様の積層体試料)の5枚の単一切片が、20gの分離液(組成物6)と共に70℃で振とうされる。アルミニウムからのPE及びPETの脱離が、3.5時間後に完了する。
【0094】
組成物1、5及び6は、異なる量のカルボン酸を含む配合を示す。
【0095】
【0096】
実施例7-1
80gのLDPE/アルミニウム/PET材料(フレーク、1cm2、飲料用スタンドアップパウチから)が、2kgの分離液(組成物7)と共に70℃でかき回される。アルミニウムからのPE及びPETの脱離が、4時間後に完了する。
【0097】
【0098】
実施例8-1
PE/アルミニウム/PETフレーク(1cm2、ホイル及びコンバータの会社から得られたコーヒーの包装と同様の積層体試料)の5枚の単一切片が、20gの分離液(組成物8)と共に70℃で振とうされる。アルミニウムからのPE及びPETの脱離が、4時間後に完了する。
【0099】
組成物1、7及び8は、異なる量のリン酸二水素ナトリウムを不動態化剤として含む配合を示す。
【0100】
【0101】
実施例9-1
PE/アルミニウム/PETフレーク(1cm2、ホイル及びコンバータの会社から得られたコーヒーの包装と同様の積層体試料)の5枚の単一切片が、20gの分離液(組成物9)と共に70℃で振とうされる。アルミニウムからのPE及びPETの脱離が、2時間後に完了する。アルミニウムフレークは、腐食の最初の兆候を示した。
【0102】
【0103】
実施例10-1
PE/アルミニウム/PETフレーク(1cm2、ホイル及びコンバータの会社から得られたコーヒーの包装と同様の積層体試料)の5枚の単一切片が、20gの分離液(組成物10)と共に70℃で振とうされる。アルミニウムからのPE及びPETの脱離が、3時間後に完了する。
【0104】
組成物1、9及び10は、異なる量の酢酸ナトリウムをカルボン酸塩として含む配合を示す。
【0105】
【0106】
実施例11-1
PE/アルミニウム/PETフレーク(1cm2、ホイル及びコンバータの会社から得られたコーヒーの包装と同様の積層体試料)の5枚の単一切片が、20gの分離液(組成物11)と共に70℃で振とうされる。アルミニウムからのPE及びPETの脱離が、4時間後に完了する。
【0107】
【0108】
実施例12-1
PE/アルミニウム/PETフレーク(1cm2、ホイル及びコンバータの会社から得られたコーヒーの包装と同様の積層体試料)の5枚の単一切片が、20gの分離液(組成物12)と共に70℃で振とうされる。アルミニウムからのPE及びPETの脱離が、4時間後に完了する。
【0109】
【0110】
実施例13-1
PE/アルミニウム/PETフレーク(1cm2、ホイル及びコンバータの会社から得られたコーヒーの包装と同様の積層体試料)の5枚の単一切片が、20gの分離液(組成物13)と共に70℃で振とうされる。アルミニウムからのPE及びPETの脱離が、3時間後に完了する。
【0111】
【0112】
実施例14-1
PE/アルミニウム/PETフレーク(1cm2、ホイル及びコンバータの会社から得られたコーヒーの包装と同様の積層体試料)の5枚の単一切片が、20gの分離液(組成物14)と共に70℃で振とうされる。アルミニウムからのPE及びPETの脱離が、4時間後に完了する。
【0113】
組成物1、11、12、13及び14は、リン酸、ホスホン酸及びホスフィン酸のナトリウム塩の形態の異なる不動態化剤を含む配合を示す。
【符号の説明】
【0114】
10 多層材料
20 第一のポリマー層
30 金属層
40 第二のポリマー層
50 ベール
300 切断又は破砕装置
310 槽
320 攪拌器
330 分離流体
340 流体ディスペンサ
350 ふるい装置
355 流体リサイクル装置
360 洗浄機
365 水リサイクル装置
370 湿式選別機
380 乾燥ユニット
390 乾式選別ユニット
395 後加工