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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】粘弾性ダンパ
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/08 20060101AFI20240419BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
F16F15/08 E
E04H9/02 301
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021011925
(22)【出願日】2021-01-28
(65)【公開番号】P2022115364
(43)【公開日】2022-08-09
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】花井 厚周
(72)【発明者】
【氏名】安並 卓嗣
(72)【発明者】
【氏名】村上 翔
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-210980(JP,A)
【文献】特開2007-308939(JP,A)
【文献】特開2005-133533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/08
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一取付板と、
前記第一取付板を間において互いに対向する一対の第二取付板と、
粘弾性体と、前記粘弾性体の両側に設けられる一対のフランジと、を有し、前記第一取付板と一対の前記第二取付板との間にそれぞれ設けられ、一対の前記フランジが前記第一取付板及び前記第二取付板にそれぞれ接合される複数の粘弾性ダンパユニットと、
を備え、
複数の前記粘弾性ダンパユニットは、前記第一取付板の厚み方向から見て、互いに重ならない位置に配置される、
粘弾性ダンパ。
【請求項2】
前記第一取付板に接合される一方の前記フランジは、前記第一取付板を厚み方向から見て、前記粘弾性体と重なるネジ穴を有し、
一方の前記フランジは、前記第一取付板を貫通して前記ネジ穴にねじ込まれるネジ部材によって前記第一取付板に接合される、
請求項1に記載の粘弾性ダンパ。
【請求項3】
前記第一取付板の厚み方向から見て、前記第一取付板と一方の前記第二取付板との間に設けられる前記粘弾性ダンパユニットと、前記第一取付板と他方の前記第二取付板との間に設けられる前記粘弾性ダンパユニットとが、交互に配置される、
請求項1又は請求項2に記載の粘弾性ダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘弾性ダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
梁に設置される制振装置が知られている(例えば、特許文献1~3参照)。特許文献1には、制振装置として、粘弾性体を用いた粘弾性ダンパが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-256577号公報
【文献】特開平9-221836号公報
【文献】特開2008-175004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、粘弾性ダンパでは、一般に、要求される減衰力に応じて、粘弾性体が受注生産される。そのため、粘弾性ダンパが設置される構造物に応じて、粘弾性ダンパの減衰力を自由に調整することが難しく、汎用性に欠ける。
【0005】
本発明は、上記の事実を考慮し、粘弾性ダンパの減衰力を調整可能とし、粘弾性ダンパの汎用性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の粘弾性ダンパは、第一取付板と、前記第一取付板を間において互いに対向する一対の第二取付板と、粘弾性体と、前記粘弾性体の両側に設けられる一対のフランジと、を有し、前記第一取付板と一対の前記第二取付板との間にそれぞれ設けられ、一対の前記フランジが前記第一取付板及び前記第二取付板にそれぞれ接合される複数の粘弾性ダンパユニットと、を備え、複数の前記粘弾性ダンパユニットは、前記第一取付板の厚み方向から見て、互いに重ならない位置に配置される。
すなわち、請求項1に記載の粘弾性ダンパは、第一取付板、一対の第二取付板、及び複数の粘弾性ダンパユニットを備えて構成されている。また、粘弾性ダンパユニットは、粘弾性体と、粘弾性体の両側に設けられる一対のフランジとを有して構成されている。
【0007】
請求項1に係る粘弾性ダンパによれば、一対の第二取付板は、第一取付板を間において互いに対向する。この第一取付板と一対の第二取付板との間には、粘弾性ダンパユニットがそれぞれ設けられる。
【0008】
粘弾性ダンパユニットは、粘弾性体と、粘弾性体の両側に設けられる一対のフランジとを有し、一対のフランジは、第一取付板と第二取付板にそれぞれ接合される。これにより、第一取付板と一対の第二取付板とが相対移動すると、一対のフランジの間の粘弾性体が変形し、振動が低減される。
【0009】
ここで、本発明では、第一取付板と一対の第二取付板との間に設ける粘弾性ダンパユニットの数を増減することにより、粘弾性ダンパの減衰力を調整することができる。したがって、粘弾性ダンパの汎用性を高めることができる。
【0010】
また、複数の粘弾性ダンパユニットは、第一取付板の厚み方向から見て、互いに重ならない位置に配置される。これにより、例えば、第一取付板を貫通するネジ部材によって、第一取付板の両面に粘弾性ダンパユニットを容易に接合することができる。したがって、粘弾性ダンパの汎用性をさらに高めることができる。
【0011】
請求項2に記載の粘弾性ダンパは、請求項1に記載の粘弾性ダンパにおいて、前記第一取付板に接合される一方の前記フランジは、前記第一取付板を厚み方向から見て、前記粘弾性体と重なるネジ穴を有し、一方の前記フランジは、前記第一取付板を貫通して前記ネジ穴にねじ込まれるネジ部材によって前記第一取付板に接合される。
【0012】
請求項2に係る粘弾性ダンパによれば、粘弾性ダンパユニットの一対のフランジのうち、第一取付板に接合される一方のフランジは、第一取付板を厚み方向から見て、粘弾性体と重なるネジ穴を有する。この一方のフランジは、第一取付板を貫通してネジ穴にねじ込まれるネジ部材によって第一取付板に接合される。
【0013】
ここで、例えば、粘弾性ダンパユニットのフランジと第一取付板とをボルト接合することが考えられる。この場合、ボルトの頭部又はナットが粘弾性体に干渉しないように、フランジの外周部を粘弾性体よりも外側へ延出させる必要があるため、フランジが大型化する。
【0014】
これに対して本発明では、第一取付板を厚み方向から見て、フランジのネジ穴が粘弾性体と重なる。このネジ穴に、第一取付板を貫通するネジ部材をねじ込むことにより、第一取付板とフランジとが接合される。そのため、本発明では、粘弾性体よりも外側へ延出するフランジの外周部の延出量を低減することができる。したがって、本発明では、粘弾性ダンパユニットの小型化を図ることができる。この結果、粘弾性ダンパの小型化を図ることができる。
【0015】
また、粘弾性ダンパユニットのフランジと第一取付板とをボルト接合する場合、第一取付板と一対の第二取付板との間にナットの設置スペースが必要になる。そのため、第一取付板と一対の第二取付板との間隔が広くなり易く、第一取付板の厚み方向に粘弾性ダンパが大型化する可能性がある。
【0016】
これに対して本発明では、ネジ部材をフランジのネジ穴にねじ込むため、ネジ部材に取り付けるナットが不要になる。そのため、本発明では、第一取付板と一対の第二取付板との間隔を狭くすることができる。したがって、本発明では、第一取付板の厚み方向に粘弾性ダンパを小型化することができる。
【0017】
請求項3に記載の粘弾性ダンパは、請求項1又は請求項2に記載の粘弾性ダンパにおいて、前記第一取付板の厚み方向から見て、前記第一取付板と一方の前記第二取付板との間に設けられる前記粘弾性ダンパユニットと、前記第一取付板と他方の前記第二取付板との間に設けられる前記粘弾性ダンパユニットとが、交互に配置される。
【0018】
請求項3に係る粘弾性ダンパによれば、第一取付板の厚み方向から見て、第一取付板と一方の第二取付板との間に設けられる粘弾性ダンパユニットと、第一取付板と他方の第二取付板との間に設けられる粘弾性ダンパユニットとが、交互に配置される。これにより、第一取付板に対する複数の粘弾性ダンパユニットの取付密度を高めることができる。したがって、粘弾性ダンパの小型化を図ることができる。
【0019】
また、第一取付板の両側に複数の粘弾性ダンパユニットをバランス良く配置することができるため、地震時に、粘弾性ダンパに発生する偏心曲げを低減することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、粘弾性ダンパの減衰力を調整可能とし、粘弾性ダンパの汎用性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一実施形態に係る粘弾性ダンパが適用された構造物を示す立面図である。
図2図1の2-2線断面図である。
図3図2に示される粘弾性ダンパを厚み方向から見た側面図である。
図4図2の4-4線断面図である。
図5図3の5-5線断面に対応する分解断面図である。
図6】粘弾性ダンパユニットを示す図5の一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係る粘弾性ダンパについて説明する。
【0023】
(構造物)
図1には、本実施形態に係る粘弾性ダンパ30が適用された構造物10が示されている。構造物10は、例えば、複数層からなる木造の建物とされている。この構造物10は、一対の柱12と、一対の柱12に架設された複数の梁20A,20B,20Cとを有している。なお、構造物10は、木造に限らず、鉄筋コンクリート造や鉄骨造等であっても良い。
【0024】
各梁20A,20B,20Cは、地震時に、相対移動する一対の梁部材22を有している。一対の梁部材22は、各々の端部(端面)を対向させた状態で配置されている。なお、一対の梁部材22は、一対の第一部材及び第二部材の一例である。
【0025】
複数の梁20A,20B,20Cのうち、下層階の複数(図1では2本)の梁20B,20Cでは、一対の梁部材22の端部同士が粘弾性ダンパ30によって連結されている。これにより、地震時に、一対の梁部材22の端部が上下方向(矢印Y方向)に相対移動すると、粘弾性ダンパ30が作動し、振動エネルギーが吸収される。この結果、構造物10の振動が低減される。
【0026】
一方、梁20B,20Cよりも上層階の梁20Aでは、一対の梁部材22の端部同士が粘弾性ダンパによって連結されていない。これにより、下層階の梁20B,20Cにおいて、地震時に、一対の梁部材22の端部間に発生する相対移動量が、所定値以上になるように調整されている。
【0027】
なお、粘弾性ダンパ30の配置や数は、適宜変更可能である。また、各図に適宜示される矢印Yは、第一取付板40と一対の第二取付板50との相対移動方向を示している。
【0028】
(粘弾性ダンパ)
図2に示されるように、粘弾性ダンパ30は、一方の梁部材22に取り付けられる第一取付板40と、他方の梁部材22に取り付けられる一対の第二取付板50と、第一取付板40と一対の第二取付板50とをそれぞれ連結する複数の粘弾性ダンパユニット60とを有している。
【0029】
第一取付板40は、鋼板等によって矩形の板状に形成されている。この第一取付板40の一端側は、例えば、一方の梁部材22の端部に形成された図示しないスリットに挿入されており、複数のドリフトピン48によって一方の梁部材22に固定されている。
【0030】
一対の第二取付板50は、鋼板等によって矩形の板状に形成されている。この一対の第二取付板50の一端側は、他方の梁部材22に形成された図示しないスリットに挿入されており、複数のドリフトピン58によって他方の梁部材22に固定されている。また、一対の第二取付板50の他端側は、第一取付板40の他端側を間において互いに対向している。
【0031】
図3及び図4に示されるように、第一取付板40の一端側には、ドリフトピン48(図2参照)が貫通される複数の貫通孔42が形成されている。これと同様に、第二取付板50の一端側には、ドリフトピン58(図2参照)が貫通される複数の貫通孔52が形成されている。なお、本実施形態では、ドリフトピン48,58によって、第一取付板40及び第二取付板50を梁部材22に固定したが、ドリフトピン48,58に限らず、例えば、ハイテンションボルトや中ボルト等によって、第一取付板40及び第二取付板50を梁部材22に固定しても良い。
【0032】
図5に示されるように、第一取付板40の他端側には、複数の第一取付孔44が形成されている。複数の第一取付孔44は、第一取付板40を厚み方向に貫通する円形状の貫通孔とされている。これらの第一取付孔44には、後述する第一タップネジ46が挿入可能とされている。
【0033】
一対の第二取付板50の他端側には、複数の第二取付孔54が形成されている。複数の第二取付孔54は、第二取付板50を厚み方向に貫通する円形状の貫通孔とされている。これらの第二取付孔54には、後述する第二タップネジ56が挿入可能とされている。
【0034】
図1に示されるように、地震時に、一対の梁部材22の端部が上下方向に相対移動すると、第一取付板40と一対の第二取付板50とが上下方向(矢印Y方向)に相対移動する。この第一取付板40と一対の第二取付板50との間には、複数の粘弾性ダンパユニット60が設けられている。
【0035】
なお、図3に示されるように、本実施形態では、第一取付板40の上下方向の幅W1が、一対の第二取付板50の上下方向の幅W2よりも広くされている。また、一対の第二取付板50は、第一取付板40の上下方向の中央部に配置されている。これにより、一対の第二取付板50の上下に、相対移動可能なスペースが形成されている。
【0036】
(粘弾性ダンパユニット)
図6に示されるように、粘弾性ダンパユニット60は、粘弾性体62と、一対のフランジ64とを有している。粘弾性体62は、矩形の板状に形成されている。この粘弾性体62の厚み方向両側の面には、一対のフランジ64が設けられている。
【0037】
一対のフランジ64は、鋼板等によって矩形の板状に形成されており、粘弾性体62を挟み込んだ状態で互いに対向している。この一対のフランジ64は、粘弾性体62の両側の面にそれぞれ重ねられた状態で、加硫接着等によって固定されている。
【0038】
一対のフランジ64の外形は、粘弾性体62の外形よりも僅かに大きくされており、各フランジ64の外周部が、粘弾性体62の外周部よりも外側へ僅かに突出している。
【0039】
なお、一対のフランジ64の外形は、粘弾性体62の外形と同じでも良い。また、本実施形態の一対のフランジ64は、一例として、一辺が40mmの正方形に形成されるが、一対のフランジ64の大きさ及び形状は、適宜変更可能である。また、一対のフランジ64の大きさ及び形状は、例えば、第一タップネジ46及び第二タップネジ56のせん断耐力等に応じて設定される。
【0040】
一対のフランジ64の外面64S(粘弾性体62と反対側の面)には、複数(本実施形態では、4つ)のネジ穴66が形成されている。ネジ穴66は、フランジ64の外面64Sの各角部に配置されている。また、ネジ穴66は、粘弾性体62を厚み方向から見て、粘弾性体62と重なる位置に配置されている。各ネジ穴66は、フランジ64を貫通しない有底のネジ穴とされており、その内周面に雌ネジが切られている。
【0041】
一対のフランジ64は、互い対向する第一取付板40及び第二取付板50の面40S,50Sにそれぞれ接合されている。具体的には、一対のフランジ64のうち一方のフランジ64の外面64Sは、第一取付板40の厚み方向(矢印T方向)一方側の面40Sに重ねられた状態で、複数の第一タップネジ46により固定されている。
【0042】
第一タップネジ46は、第一取付板40の厚み方向他方側の面40Sから第一取付孔44を介して、一方のフランジ64のネジ穴66にねじ込まれている。また、第一タップネジ46の頭部は、第一取付板40の他方側の面40Sに係合されている。これにより、第一タップネジ46によって、一方のフランジ64が第一取付板40の一方側の面40Sに固定されている。
【0043】
一対のフランジ64のうち他方のフランジ64の外面64Sは、第二取付板50の厚み方向一方側の面50Sに重ねられた状態で、複数の第二タップネジ56によって固定されている。第二タップネジ56は、第二取付板50の厚み方向他方側の面50Sから第二取付孔54を介して、他方のフランジ64のネジ穴66にねじ込まれている。また、第二タップネジ56の頭部は、第二取付板50の他方側の面50Sに係合されている。これにより、第二タップネジ56によって、他方のフランジ64が第二取付板50の一方側の面50Sに固定されている。
【0044】
なお、第一タップネジ46及び第二タップネジ56は、ネジ部材の一例である。
【0045】
ここで、図4には、第一取付板40と一方の第二取付板50との間に配置される粘弾性ダンパユニット60が示されている。なお、以下では、説明の便宜上、第一取付板40と一方の第二取付板50との間に配置される粘弾性ダンパユニット60を粘弾性ダンパユニット60Aとし、第一取付板40と他方の第二取付板50との間に配置される粘弾性ダンパユニット60を粘弾性ダンパユニット60Bとする。また、粘弾性ダンパユニット60A及び粘弾性ダンパユニット60Bの総称を粘弾性ダンパユニット60とする。
【0046】
図4に示されるように、複数の粘弾性ダンパユニット60Aは、千鳥状に配列されている。具体的には、複数の粘弾性ダンパユニット60Aは、第一取付板40及び一対の第二取付板50の相対移動方向(矢印Y方向)と直交する方向(矢印X方向)に二列で配列されている。
【0047】
各列の粘弾性ダンパユニット60Aは、相対移動方向に間隔を空けて配列されている。また、隣り合う列の粘弾性ダンパユニット60Aは、直交方向から見て、互いに重ならないように、相対移動方向に交互に配置されている。
【0048】
複数の粘弾性ダンパユニット60Bは、複数の粘弾性ダンパユニット60Aと同様に、千鳥状に配列されている。ただし、各列の複数の粘弾性ダンパユニット60A及び複数の粘弾性ダンパユニット60Bは、第一取付板40の厚み方向から見て、互いに重ならないように交互に配列されている。これにより、第一取付板40の両側の面40Sに、複数の粘弾性ダンパユニット60A及び粘弾性ダンパユニット60Bが取り付け可能になっている。
【0049】
なお、粘弾性ダンパユニット60Aと粘弾性ダンパユニット60Bとは、第一タップネジ46及び第二タップネジ56(図2参照)によって、第一取付板40の両側の面40Sにそれぞれ接合可能であれば良く、例えば、第一取付板40の厚み方向から見て、重なって配置されても良い。
【0050】
(作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0051】
図2に示されるように、本実施形態によれば、粘弾性ダンパ30は、第一取付板40と、一対の第二取付板50と、複数の粘弾性ダンパユニット60とを備えている。第一取付板40は、梁20B,20Cの一方の梁部材22の端部に取り付けられている。一方、一対の第二取付板50は、梁20B,20Cの他方の梁部材22の端部に取り付けられている。これにより、地震時に、一方の梁部材22の端部と他方の梁部材22の端部とが上下方向(図1において矢印Y方向)に相対移動すると、第一取付板40と一対の第二取付板50とが上下方向に相対移動する。
【0052】
また、一対の第二取付板50の他端側は、第一取付板40の他端側を間において互いに対向している。この第一取付板40の他端側と一対の第二取付板50の他端側との間には、複数の粘弾性ダンパユニット60がそれぞれ設けられる。
【0053】
図5及び図6に示されるように、粘弾性ダンパユニット60は、粘弾性体62と、粘弾性体62の両側に設けられる一対のフランジ64とを有し、第一取付板40と一対の第二取付板50とを連結している。これにより、第一取付板40と一対の第二取付板50とが上下方向に相対移動すると、複数の粘弾性ダンパユニット60の粘弾性体62が変形(せん断変形)し、振動エネルギーが吸収される。したがって、構造物10の振動が低減される。
【0054】
ここで、本実施形態では、第一取付板40と一対の第二取付板50との間にそれぞれ設ける粘弾性ダンパユニット60A,60Bの数を増減することにより、粘弾性ダンパ30の減衰力を調整することができる。したがって、粘弾性ダンパ30の汎用性を高めることができる。
【0055】
また、図5に示されるように、複数の粘弾性ダンパユニット60A,60Bは、ユニット化されている。そのため、例えば、粘弾性ダンパユニット60A,60Bの粘弾性体62の検査を工場等で予め実施しておけば、現場において、第一取付板40及び一対の第二取付板50に複数の粘弾性ダンパユニット60A,60Bを取り付け可能になる。つまり、粘弾性ダンパ30を現場で組み立て可能になるため、粘弾性ダンパ30の運搬性が向上するとともに、汎用性も高められる。
【0056】
さらに、第一取付板40及び一対の第二取付板50に第一取付孔44及び第二取付孔54の予備を形成しておくことにより、粘弾性ダンパユニット60A,60Bの数を容易に増やすことができる。したがって、粘弾性ダンパ30の汎用性がさらに高めることができる。
【0057】
また、図4に示されるように、複数の粘弾性ダンパユニット60A,60Bは、第一取付板40の厚み方向から見て、互いに重ならない位置に配置されている。より具体的には、第一取付板40と一方の第二取付板50との間に設けられた複数の粘弾性ダンパユニット60Aは、直交方向(矢印X方向)に二列で、かつ、千鳥状に配列されている。
【0058】
これと同様に、第一取付板40と他方の第二取付板50との間に設けられた複数の粘弾性ダンパユニット60Bは、直交方向に二列で、かつ、千鳥状に配列されている。各列の粘弾性ダンパユニット60A,60Bは、第一取付板40の厚み方向から見て、互いに重ならないように、相対移動方向(矢印Y方向)に交互に配置されている。
【0059】
これにより、図5に示されるように、第一取付板40の両側の面40Sに、第一タップネジ46によって粘弾性ダンパユニット60A,60Bのフランジ64をそれぞれ容易に接合することができる。
【0060】
また、第一タップネジ46がねじ込まれるフランジ64のネジ穴66は、第一取付板40を厚み方向から見て、粘弾性体62と重なる位置に配置されている。
【0061】
ここで、例えば、粘弾性ダンパユニット60のフランジ64と第一取付板40とをボルト接合することが考えられる。この場合、ボルトの頭部又はナットが粘弾性体62に干渉しないように、フランジ64の外周部を粘弾性体62の外周部よりも外側へ延出させる必要があるため、フランジ64が大型化する。
【0062】
これに対して本実施形態では、前述したように、第一取付板40を厚み方向から見て、フランジ64のネジ穴66が粘弾性体62と重なる位置に配置されている。このネジ穴66に、第一取付板40を貫通する第一タップネジ46をねじ込むことにより、第一取付板40とフランジ64とが接合されている。
【0063】
これにより、本実施形態では、粘弾性体62の外周部よりも外側へ延出する一方のフランジ64の外周部の延出量を低減することができる。したがって、本実施形態では、粘弾性ダンパユニット60の小型化を図ることができる結果、粘弾性ダンパ30の小型化を図ることができる。
【0064】
また、粘弾性ダンパユニット60のフランジ64と第一取付板40とをボルト接合する場合、第一取付板40と一対の第二取付板50との間にナットの設置スペースが必要になる。そのため、第一取付板40と一対の第二取付板50との間隔が広くなり易く、第一取付板の厚み方向に粘弾性ダンパ30が大型化する可能性がある。
【0065】
これに対して本実施形態では、第一タップネジ46を一方のフランジ64のネジ穴66にねじ込むため、第一タップネジ46に取り付けるナットが不要になる。これと同様に、第二タップネジ56を他方のフランジ64のネジ穴66にねじ込むため、第二タップネジ56に取り付けるナットが不要になる。
【0066】
これにより、本実施形態では、第一取付板40と一対の第二取付板50との間隔を狭くすることができる。したがって、本実施形態では、第一取付板40の厚み方向に粘弾性ダンパ30を小型化(薄型化)することができる。
【0067】
また、第一取付板40の厚み方向に粘弾性ダンパ30を小型化することにより、粘弾性ダンパ30を一対の梁部材22(図2参照)の内部に納めることができる。したがって、一対の梁部材22によって粘弾性ダンパ30を覆い隠すことができるため、意匠性を高めることができる。
【0068】
さらに、第一取付板40の厚み方向から見て、複数の粘弾性ダンパユニット60A,60Bを互いに重ならないように配置することにより、第一取付板40に対する複数の粘弾性ダンパユニット60の取付密度を高めることができる。したがって、粘弾性ダンパ30の小型化をさらに図ることができる。
【0069】
しかも、第一取付板40の厚み方向から見て、複数の粘弾性ダンパユニット60A,60Bを互いに重ならないように千鳥状に配列することにより、第一取付板40の両側の面40Sに複数の粘弾性ダンパユニット60A,60Bをバランス良く配列することができる。これにより、地震時に、粘弾性ダンパ30に発生する偏心曲げが低減される。したがって、粘弾性ダンパ30によって振動エネルギーを効率的に低減することができる。また、粘弾性ダンパ30の破損等を抑制することができる。
【0070】
(変形例)
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0071】
上記実施形態では、複数の粘弾性ダンパユニット60A,60Bが千鳥状に配列されている。しかし、複数の粘弾性ダンパユニット60A,60Bは、第一取付板40に取り付け可能であれば良く、その配置や数は適宜変更可能である。したがって、例えば、複数の粘弾性ダンパユニット60A,60Bを所定方向に一列に配列しても良いし、環状に配列しても良い。
【0072】
なお、粘弾性ダンパ30に発生する偏心曲げを抑制する観点からは、第一取付板40の両側の面40Sに複数の粘弾性ダンパユニット60A,60Bをバランス良く配置することが望ましい。
【0073】
また、上記実施形態では、第一タップネジ46及び第二タップネジ56の頭部が、なべ型とされている。しかし、第一タップネジ46及び第二タップネジ56の頭部は、なべ型に限らず、例えば、皿型等であっても良い。また、第一取付板40及び第二取付板50には、第一タップネジ46及び第二タップネジ56の頭部を収容するザグリを形成することも可能である。
【0074】
また、上記実施形態では、粘弾性ダンパユニット60の一対のフランジ64を、第一タップネジ46及び第二タップネジ56によって第一取付板40及び一対の第二取付板50に接合した。しかし、粘弾性ダンパユニット60の一対のフランジ64は、ボルト及びナットによって第一取付板40及び一対の第二取付板50に接合することも可能である。この場合、例えば、粘弾性体62の外周部よりも外側へ延出された一対のフランジ64の外周部に、ボルトが貫通される。
【0075】
また、上記実施形態の粘弾性ダンパ30は、第一取付板40、及び一対の第二取付板50の3枚の取付板を備えている。しかし、取付板は、3枚に限らず、例えば、4枚以上であっても良い。
【0076】
また、上記実施形態では、粘弾性ダンパ30が、梁20B,20Cの一対の梁部材22間に設置されている。しかし、粘弾性ダンパ30は、相対移動する第一部材と第二部材との間に設置可能である。したがって、例えば、上下に分割された制振間柱の間や、上下に分割された制振壁の間に粘弾性ダンパ30を設置しても良い。また、例えば、軸方向に分割されたブレース間に粘弾性ダンパ30を設置することも可能である。
【0077】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0078】
30 粘弾性ダンパ
40 第一取付板
46 第一タップネジ(ネジ部材)
50 第二取付板
60 粘弾性ダンパユニット
60A 粘弾性ダンパユニット
60B 粘弾性ダンパユニット
62 粘弾性体
64 フランジ
66 ネジ穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6