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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】滑り支承装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20240419BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
F16F15/02 E
F16F15/02 M
E04H9/02 331E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021027031
(22)【出願日】2021-02-24
(65)【公開番号】P2022128679
(43)【公開日】2022-09-05
【審査請求日】2023-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】林 哲也
(72)【発明者】
【氏名】松井 伸仁
(72)【発明者】
【氏名】間鍋 崇之
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-049028(JP,A)
【文献】特開昭61-070241(JP,A)
【文献】特開2010-276186(JP,A)
【文献】特開平09-158531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/02
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1構造物及び第2構造物におけるそれぞれの対向部分に配設した第1沓及び第2沓で構成され、前記第1沓及び前記第2沓との対向部分における摺動面同士が摺動する滑り支承装置であって、
前記第1沓及び前記第2沓のそれぞれは、
前記摺動面を構成する滑り部材と、該滑り部材を保持する保持基部とが設けられ、
前記第1沓及び前記第2沓の少なくとも一方は、
前記滑り部材と前記保持基部との間に、支承方向において前記滑り部材と前記保持基部とを離間する向きで付勢する付勢手段が設けられるとともに、
該付勢手段における前記滑り部材の側の端部に滑り材が設けられ
前記付勢手段の周囲に、前記付勢手段の短縮方向を規制する規制体が設けられ、
支持状態の前記付勢手段の前記支承方向の長さより、前記規制体の前記支承方向の長さが短く、
前記規制体における前記滑り部材の側の端部に前記滑り材が設けられた
滑り支承装置。
【請求項2】
前記滑り部材における前記付勢手段が設けられた側に、前記滑り材と摺動する第2滑り部材が設けられた
請求項1に記載の滑り支承装置。
【請求項3】
前記規制体は、円柱状に形成されるとともに、前記付勢手段の周囲に複数配置された
請求項又は請求項に記載の滑り支承装置。
【請求項4】
前記付勢手段は、コイルスプリングであるとともに、複数設けられた
請求項1乃至請求項のうちいずれかに記載の滑り支承装置。
【請求項5】
前記第1沓と前記第2沓との間に中間沓が設けられ、
前記摺動面は、
前記第1沓と前記中間沓との間に第1摺動面と、
前記中間沓と前記第2沓との間に第2摺動面とがあり、
前記第1摺動面と前記第2摺動面とのうち一方が断面円弧状の摺動面である
請求項1乃至請求項のうちいずれかに記載の滑り支承装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、鉄骨同士の間など、相対移動する箇所に設ける滑り支承装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、ビルなどの鉄骨構造物における梁と柱との間や、支持構造における下部建造物と上部建造物との間などの相対移動する箇所に配置し、摺動を可能にするために滑り支承装置が用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1に示すような支承装置は、建物等の被支持建造物と、基礎等の支持建造物との間に配設され、被支持建造物に固定された上沓と、支持建造物に固定された下沓との境界面、つまり摺動面が摺動することで、境界面における面内方向に変位可能に支持することができる。
このような支承装置において、支承方向に大きな荷重が作用すると、摺動面が損傷し、摺動性能が低下するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-165237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明では、支承方向に大きな荷重が作用しても十分な摺動性能を確保できる滑り支承装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、第1構造物及び第2構造物におけるそれぞれの対向部分に配設した第1沓及び第2沓で構成され、前記第1沓及び前記第2沓との対向部分における摺動面同士が摺動する滑り支承装置であって、前記第1沓及び前記第2沓のそれぞれは、前記摺動面を構成する滑り部材と、該滑り部材を保持する保持基部とが設けられ、前記第1沓及び前記第2沓の少なくとも一方は、前記滑り部材と前記保持基部との間に、支承方向において前記滑り部材と前記保持基部とを離間する向きで付勢する付勢手段が設けられるとともに、該付勢手段における前記滑り部材の側の端部に滑り材が設けられ、前記付勢手段の周囲に、前記付勢手段の短縮方向を規制する規制体が設けられ、支持状態の前記付勢手段の前記支承方向の長さより、前記規制体の前記支承方向の長さが短く、前記規制体における前記滑り部材の側の端部に前記滑り材が設けられたことを特徴とする。
【0007】
上述の前記第1沓及び前記第2沓との対向部分における摺動面同士が摺動するとは、前記第1沓の摺動面と前記第2沓の摺動面とが直接摺動してもよいし、摺動面を有する第3の沓を介して間接的に摺動してもよい。
【0008】
前記支承方向は、前記第1沓と前記第2沓の一方から他方に対して荷重(負荷)が作用する方向であり、前記第1沓と前記第2沓とが対向する方向と略一致する方向である。
また、離間する向きは、支承方向と逆向きの方向である。
【0009】
この発明により、支承方向に大きな荷重が作用しても十分な摺動性能を確保することができる。
詳述すると、前記摺動面を構成する滑り部材と、該滑り部材を保持する保持基部とが設けられた前記第1沓及び前記第2沓の少なくとも一方において、前記滑り部材と前記保持基部との間に付勢手段が設けられているため、付勢力に抗して付勢手段が縮むことで、支承方向に作用する大きな荷重を吸収できるため、摺動面を構成する滑り部材が損傷して摺動性能が低下することを防止できる。
【0010】
また、前記付勢手段における前記滑り部材の側の端部に滑り材が設けられているため、前記滑り部材と前記付勢手段との間にも摺動面を構成することができ、いわゆる多面滑りとなり、摺動性を向上することができる。
【0011】
この発明の態様として、前記滑り部材における前記付勢手段が設けられた側に、前記滑り材と摺動する第2滑り部材が設けられてもよい。
この発明により、多面滑り状態における摺動性を更に向上することができる。
【0012】
詳しくは、前記付勢手段の先端に設けた滑り材が摺動する摺動対象が、前記滑り部材における前記付勢手段が設けられた側に設けた第2滑り部材となるため、多面滑り状態における摺動性を更に向上することができる。
【0013】
またこの発明の態様として、前記付勢手段の周囲に、前記付勢手段の短縮方向を規制する規制体が設けられ、支持状態の前記付勢手段の前記支承方向の長さより、前記規制体の前記支承方向の長さが短くてもよい。
【0014】
上述の前記付勢手段の短縮方向を規制するとは、支承方向の荷重が付勢手段に作用すると、付勢力に抗して付勢手段は支承方向に縮まるが、偏心方向に荷重が作用し、付勢手段が支承方向から曲がって縮むことによる支承方向の支持力が十分に発揮できなくなることを防止し、偏心方向の荷重が作用しても支承方向に縮み、支承方向の支持力が十分に発揮できるように、付勢手段が支承方向から曲がって縮むことを規制することをいう。
【0015】
上述の支持状態の前記付勢手段の前記支承方向の長さとは、前記第1構造物及び前記第2構造物の間の所定箇所に滑り支承装置を設置し、前記第1構造物及び前記第2構造物とが相互にあるいは一方が他方を支持する状態における長さである。そのため、支持状態によっては、付勢手段の自然長であったり、支持荷重と釣り合った長さとなる。
【0016】
この発明により、大きな荷重に対して付勢手段を支承方向に縮ませて十分な支持力を発揮させることができる。また、支持状態の前記付勢手段の前記支承方向の長さより、前記規制体の前記支承方向の長さが短いため、規制体を設けたことで付勢手段の短縮を防止でき、付勢手段で支承方向に作用する大きな荷重を吸収して、摺動面を構成する滑り部材が損傷して摺動性能が低下することを防止できる。
【0017】
またこの発明の態様として、前記規制体における前記滑り部材の側の端部に前記滑り材が設けられてもよい。
この発明により、支承方向の大きな荷重によって、滑り部材が規制体に当接する程度に付勢手段が縮んだ場合であっても、前記規制体における前記滑り部材の側の端部に設けた前記滑り材によって摺動性が低下することを防止できる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記規制体は、円柱状に形成されるとともに、前記付勢手段の周囲に複数配置されてもよい。
この発明により、周囲に複数配置された規制体によって付勢手段の短縮方向を確実に規制することができる。
【0019】
またこの発明の態様として、前記付勢手段は、コイルスプリングであるとともに、複数設けられてもよい。
この発明により、所定の支持荷重を複数のコイルスプリングで支持することができる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記第1沓と前記第2沓との間に中間沓が設けられ、前記摺動面は、前記第1沓と前記中間沓との間に第1摺動面と、前記中間沓と前記第2沓との間に第2摺動面とがあり、前記第1摺動面と前記第2摺動面とのうち一方が断面円弧状の摺動面であってもよい。
上述の前記断面円弧状の摺動面は、断面かまぼこ状の摺動面や球面状の摺動面が含まれる。
【0021】
この発明により、前記第1構造物と前記第2構造物が互いに傾斜した場合であっても、円弧状に形成された摺動面同士が傾斜に追従し、他の摺動面同士は所定の摺動方向に確実に摺動させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、支承方向に大きな荷重が作用しても十分な摺動性能を確保できる滑り支承装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】滑り支承装置の断面図。
図2】滑り支承装置の斜視図。
図3】滑り支承装置の上面側からの分解斜視図による説明図。
図4】滑り支承装置の図1におけるA-A矢視図。
図5】第1沓が傾斜した状態の滑り支承装置の断面図。
図6】第1沓が第1摺動方向に移動した状態の滑り支承装置の断面図。
図7】支承方向の荷重が作用した状態の滑り支承装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
図1は滑り支承装置1の断面図を示し、図2は滑り支承装置1の斜視図を示し、図3は滑り支承装置1の上面側からの分解斜視図による説明図を示している。図3(a)は滑り支承装置1の分解斜視図を示し、図3(b)は第2沓20を組み付けた状態の滑り支承装置1の分解斜視図を示している。
【0025】
また、図4は滑り支承装置1の図1におけるA-A矢視図を示し、図5は第1沓が傾斜した状態の滑り支承装置1の断面図を示し、図6は第1沓10が第2摺動方向Ssに移動した状態の滑り支承装置1の断面図を示し、図7は支承方向の荷重が作用した状態の滑り支承装置1の断面図を示している。
【0026】
なお、図2及び図3において手前側の一部を切り欠いて図示している。また、図1における左右方向を支承方向Hとし、上下方向且つ紙面奥行き方向で構成する面に沿う方向を第2摺動方向Ssとし、ピストン30における球状突出部32に沿って摺動する方向を第1摺動方向Sfとする。
【0027】
以下の説明において、「支承」とは、上部構造と下部構造の間に設けられ、上部構造を支持する部分(狭義の支承)に限られず、あらゆる方向の対向する部材間に設けられ、該部材のいずれか又は両方から荷重が作用する部分(広義の支承)を含む概念である。
【0028】
滑り支承装置1は、鉄骨構造物2における水平部材である梁などの第1部材2aに取付けられる第1沓10と、鉛直部材である柱などの第2部材2bに取付けられる第2沓20と、第1沓10と第2沓20との間に配置されるピストン30とで構成している。
【0029】
第1沓10は、第1部材2aの端面に取付けられる第1ベースプレート11と、第1ベースプレート11に取付けられるベースポット12とで構成されている。
第1ベースプレート11は所定の厚みの鋼材で構成された板状である。
【0030】
ベースポット12は、支承方向Hから視て正方形状であり、支承方向Hの長さが短い直方体状であり、第2沓20の側の中心には、第2沓20から離れる側に凹状となる球状凹部13が形成され、その内面に凹状滑り部材14が設けられている。
凹状滑り部材14は、表面に平滑処理が施された鋼製の球面プレートで構成されており、後述するピストン30の球状突出部32の表面と略同じ曲率で形成されている。
【0031】
第2沓20は、第2部材2bの側面に取付けられる第2ベースプレート21と、第2ベースプレート21と支承方向Hに所定の間隔を隔てて配置されるソールプレート22と、第2ベースプレート21とソールプレート22との間に配置されたコイルスプリング23及びスプリングホルダ24とで構成されている。
【0032】
第2ベースプレート21は所定の厚みの鋼材で構成された略長方形状の板状であり、第2ベースプレート21は後述するソールプレート22より支承方向Hから視て大きく形成している。また、ソールプレート22の四隅に対応する四箇所にスタッドボルト25を設けている。
【0033】
ソールプレート22は所定の厚みの鋼材で構成された略正方形状の板状であり、四隅にスタッドボルト25が挿通されるボルト孔26が形成されている。ボルト孔26は、スタッドボルト25より大径に形成されている。
ソールプレート22の第1沓10の側には、第1スライドプレート27が設けられるとともに、ソールプレート22の第2ベースプレート21の側にも第2スライドプレート28が設けられている。
【0034】
第1スライドプレート27及び第2スライドプレート28は、表面に平滑処理が施された鋼製のプレートで構成されている。第1スライドプレート27は後述のピストン30の平面状滑り部材34より大きな平面状に形成され、第2スライドプレート28は第2ベースプレート21と同程度の大きさで形成されている。
【0035】
続いて、第2ベースプレート21とソールプレート22との間に配置されたコイルスプリング23及びスプリングホルダ24について説明する。
コイルスプリング23は所定のバネ係数を有するコイル状のスプリングであり、先端に先端滑り材23aを備えている。
【0036】
スプリングホルダ24は、所定の径の円柱状に形成された鋼製部材であり、先端に先端滑り材24aを備えている。
先端滑り材24aを先端に備えたスプリングホルダ24は、コイルスプリング23より高さが低く形成されている。
【0037】
先端滑り材23a,24aは、ポリアミド樹脂(PA)やポリ四フッ化エチレン樹脂(PTFE)等の滑り性の高い樹脂製であるが、その他の樹脂や、金属、グラファイト、セラミックス等の樹脂以外の材質であってもよい。
【0038】
このように構成されたコイルスプリング23とスプリングホルダ24とは、第2ベースプレート21においてソールプレート22に対応する正方形状の範囲に配置されている。
詳しくは、コイルスプリング23は、図4に示すように、長方形状に形成された第2ベースプレート21の長辺方向と短辺方向とに所定間隔を隔てて複数が格子状に配置されている。なお、本実施形態においては、3行3列の格子状に配置されているが、これに限定されず適宜の配置で配置することができる。
【0039】
スプリングホルダ24は、ひとつのコイルスプリング23に対してわずかな間隔を隔てて、長辺方向と短辺方向の両側、つまりコイルスプリング23に対して長辺方向と短辺方向に沿って四方向に配置されている。
全体としては、所定間隔を隔てて長辺方向と短辺方向に沿って格子状に配置されたコイルスプリング23同士の間及び長辺方向あるいは短辺方向の外側にスプリングホルダ24が配置されている。
なお、スプリングホルダ24は、上記配置のみならず、コイルスプリング23に対し、全周を囲うように配置してもよい。
【0040】
このように、周囲の四方向にわずかな間隔を設けてスプリングホルダ24が配置されたコイルスプリング23は、支承方向Hの負荷によって付勢力に抗して縮む際に、第2摺動方向Ssに変形することをスプリングホルダ24が規制し、支承方向Hに縮むことができる。
【0041】
上述のように構成要素が構成された第2沓20は、図3(b)に示すように、コイルスプリング23及びスプリングホルダ24が配置された第2ベースプレート21に対して、スタッドボルト25をボルト孔26に挿通し、ナット29で固定して、ソールプレート22を組み付けることができる。
【0042】
このように組み付けられた第2沓20は、ナット29によってソールプレート22が第2ベースプレート21に対して離間する方向に移動することを規制されている。これに対し、第2ベースプレート21とソールプレート22との間にコイルスプリング23及びスプリングホルダ24が配置されているため、支承方向Hの外力が作用すると、先端滑り材23aを介して当接するコイルスプリング23が付勢力に抗して近接することができる。
なお、スプリングホルダ24がコイルスプリング23より低く形成されているため、ソールプレート22がスプリングホルダ24に当接するまでコイルスプリング23が縮まることができる。
【0043】
また、ボルト孔26は内部を挿通するスタッドボルト25より大径に形成されているため、第2ベースプレート21に対してソールプレート22は第2摺動方向Ssに移動することができる。このとき、コイルスプリング23の先端滑り材23aと、ソールプレート22に設けた第2スライドプレート28とが当接しているため、第2ベースプレート21に対してソールプレート22はスムーズに第2摺動方向Ssに移動することができる。
【0044】
ピストン30は、円盤状のベース31と、第1沓10の側に向かって略球状にベース31より突出する球状突出部32とが一体構成され、球状突出部32の表面に球面状スライドプレート33を設けている。
また、ベース31における第2沓20の側の端面には平面状滑り部材34を備えている。
【0045】
凹状滑り部材14及び平面状滑り部材34は、先端滑り材23a,24aと同様に、ポリアミド樹脂(PA)やポリ四フッ化エチレン樹脂(PTFE)等の滑り性の高い樹脂製であるが、その他の樹脂や、金属、グラファイト、セラミックス等の樹脂以外の材質であってもよい。
【0046】
上述のように各構成要素が構成された滑り支承装置1は、まず第2沓20のソールプレート22の第1スライドプレート27とピストン30の平面状滑り部材34とが対面するように第2沓20とピストン30とを配置する。そして、ピストン30の球面状スライドプレート33と、第1沓10の球状凹部13の凹状滑り部材14とが対面するようにピストン30に対して第1沓10を配置して滑り支承装置1は組み付けられる。
【0047】
なお、ピストン30の球面状スライドプレート33と第1沓10の球状凹部13の凹状滑り部材14とが対面する面を第1摺動方向Sfにスライド可能な第1摺動面Ffとする。また、第2沓20の第1スライドプレート27とピストン30の平面状滑り部材34とが対面する面を第2摺動方向Ssにスライド可能な第2摺動面Fsとする。さらに、第2沓20において少なくともコイルスプリング23の先端滑り材23aとソールプレート22の第2スライドプレート28とが対面する面を第2摺動方向Ssにスライド可能な第3摺動面Ftとする。
【0048】
このように組み付けられた滑り支承装置1は、図5に示すように、第2部材2bに対して第1摺動方向Sfに第1部材2aが傾斜しても、第1摺動面Ffによりスムーズにスライドすることができる。もちろん、球面状スライドプレート33及び凹状滑り部材14は略球面状であるため、図5における左下方向に第1部材2aが傾斜しても、紙面の手前側や奥側に傾斜しても同様にスムーズにスライドすることができる。
【0049】
また、図6に示すように、第2部材2bに対して第1部材2aが第2摺動方向Ssに移動しても、第2摺動面Fs及び第3摺動面Ftによりスムーズにスライドすることができる。もちろん、図5における上方向に第1部材2aが移動しても、紙面の手前側や奥側に移動しても同様にスムーズにスライドすることができる。
【0050】
さらに、第2部材2bに対して第1部材2aが近接する支承方向Hの外力が作用すると、図7に示すように、コイルスプリング23が付勢力に抗して縮むため、外力を吸収することができる。このように、コイルスプリング23が縮んだ状態でも上述したような第2摺動面Fsや第3摺動面Ftによる第2摺動方向Ssのスライドや第1摺動面Ffによる第1摺動方向Sfのスライドもスムーズに行うことができる。
【0051】
さらに、支承方向Hの外力が大きく、コイルスプリング23がさらに縮んでスプリングホルダ24にソールプレート22が当接しても、スプリングホルダ24の先端滑り材24aが第2スライドプレート28に当接するため、第2摺動方向Ssのスライド性が低下することなく、スムーズに第2摺動方向Ssにスライドすることができる。
【0052】
上述したように、滑り支承装置1は、第1部材2a及び第2部材2bにおけるそれぞれの対向部分に配設した第1沓10及び第2沓20で構成され、第1沓10及び第2沓20との対向部分における摺動面がピストン30を介して摺動するように構成されている。そして、第2沓20は、第2摺動面Fsを構成する第1スライドプレート27(ソールプレート22)と、第1スライドプレート27(ソールプレート22)を保持する第2ベースプレート21とが設けられている。
【0053】
さらに、第2沓20において第2スライドプレート28(ソールプレート22)と第2ベースプレート21との間に、支承方向Hにおいて第1スライドプレート27(ソールプレート22)と第2ベースプレート21とを離間する向きで付勢するコイルスプリング23が設けられている。さらに、コイルスプリング23における第2スライドプレート28(ソールプレート22)の側の端部に先端滑り材23aが設けられている。そのため、支承方向Hに大きな荷重が作用しても十分な摺動性能を確保することができる。
【0054】
詳述すると、第2摺動面Fsを構成する第1スライドプレート27と、ソールプレート22を保持する第2ベースプレート21とが設けられた第2沓20において、ソールプレート22と第2ベースプレート21との間にコイルスプリング23が設けられている。
【0055】
そのため、付勢力に抗してコイルスプリング23が縮むことで、支承方向Hに作用する大きな荷重を吸収できるため、第2摺動面Fsを構成する第1スライドプレート27が損傷して摺動性能が低下することを防止できる。
【0056】
また、コイルスプリング23におけるソールプレート22の側の端部に先端滑り材23aが設けられているため、ソールプレート22とコイルスプリング23との間にも第3摺動面Ftを構成することができ、いわゆる多面滑りとなり、摺動性を向上することができる。
【0057】
また、ソールプレート22におけるコイルスプリング23が設けられた側に、先端滑り材23aと摺動する第2スライドプレート28が設けられているため、多面滑り状態における摺動性を更に向上することができる。
【0058】
詳しくは、コイルスプリング23の先端に設けた先端滑り材23aが摺動する摺動対象が、ソールプレート22に設けられた第2スライドプレート28となるため、多面滑り状態における摺動性を更に向上することができる。
【0059】
また、コイルスプリング23の周囲に、コイルスプリング23の短縮方向を規制するスプリングホルダ24が設けられ、支持状態のコイルスプリング23の支承方向Hの長さより、スプリングホルダ24の支承方向Hの長さを短く形成している。
【0060】
そのため、大きな荷重に対してコイルスプリング23を支承方向Hに縮ませて十分な支持力を発揮させることができる。
また、スプリングホルダ24が、支持状態のコイルスプリング23の支承方向Hの長さより、支承方向Hの長さが短いため、スプリングホルダ24を設けたことでコイルスプリング23の短縮を防止できる。したがって、コイルスプリング23で支承方向Hに作用する大きな荷重を吸収して、第2摺動面Fsを構成する第1スライドプレート27が損傷して摺動性能が低下することを防止できる。
【0061】
また、スプリングホルダ24における第2スライドプレート28(ソールプレート22)の側の端部に先端滑り材24aが設けられている。そのため、支承方向Hの大きな荷重によって、ソールプレート22がスプリングホルダ24に当接する程度にコイルスプリング23が縮んだ場合であっても、スプリングホルダ24における第2スライドプレート28(ソールプレート22)の側の端部に設けた先端滑り材24aによって摺動性が低下することを防止できる。
【0062】
また、スプリングホルダ24は、円柱状に形成されるとともに、コイルスプリング23の周囲に複数配置されているため、周囲に複数配置されたスプリングホルダ24によってコイルスプリング23の短縮方向を確実に規制することができる。
また、コイルスプリング23は、複数設けられているため、所定の支持荷重を複数のコイルスプリングで支持することができる。
【0063】
また、第1沓10と第2沓20との間にピストン30が設けられ、第1沓10とピストン30との間に第1摺動面Ffと、ピストン30と第2沓20との間に第2摺動面Fsとが構成され、第1摺動面Ffが断面円弧状の摺動面である。
【0064】
そのため、第1部材2aと第2部材2bが互いに傾斜した場合であっても、円弧状に形成された第1摺動面Ffが傾斜に追従し、他の第2摺動面Fs及び第3摺動面Ftは第2摺動方向Ssに確実に摺動させることができる。
【0065】
なお、上述の説明では、ピストン30における少なくとも球状突出部32を、球面状スライドプレート33と同素材で構成し、球面状スライドプレート33をピストン30に設けずに、球状突出部32を球面状スライドプレートと機能させてもよい。
【0066】
以上、本発明の構成と、前述の実施態様との対応において、本実施形態の第1構造物は第1部材2aに対応し、
以下同様に、
第2構造物は第2部材2bに対応し、
第1沓は第1沓10に対応し、
第2沓は第2沓20に対応し、
摺動面は第2摺動面Fs,第1摺動面Ff,第3摺動面Ftに対応し、
滑り支承装置は滑り支承装置1に対応し、
滑り部材は第1スライドプレート27,球状突出部32又は球面状スライドプレート33に対応し、
保持基部は第2ベースプレート21又はベースポット12に対応し、
支承方向は支承方向Hに対応し、
付勢手段はコイルスプリング23に対応し、
滑り材は先端滑り材23a,24aに対応し、
第2滑り部材は第2スライドプレート28に対応し、
規制体はスプリングホルダ24に対応し、
中間沓はピストン30に対応し、
第2摺動面は第2摺動面Fsに対応し、
第1摺動面は第1摺動面Ffに対応するも、上記実施形態に限定するものではない。
【0067】
例えば、上述の説明においては、第2沓20にコイルスプリング23及びスプリングホルダ24を設けたが、第2沓20に加えて、あるいは第2沓20の代わりに、第1沓10やピストン30にコイルスプリング及びスプリングホルダを設けてもよい。
【0068】
また、ピストン30を設けず、第1沓10と第2沓20とが直接摺動するように構成されてもよい。
さらに、ボルト孔26はスタッドボルト25より大径に形成されたが、一方向に長い長孔で形成し、第3摺動面Ftで一方向に摺動するように構成してもよい。
【0069】
また、鉛直方向に延びる第2部材2bの側面に第2沓20が設けられ、水平な第1部材2aの端面に第1沓10を設けて、支承方向Hが水平方向となる滑り支承装置1を構成したが、第1沓10と第2沓20の一方を上沓とし、他方を下沓として支承方向Hが鉛直方向となる滑り支承装置1を構成してもよい。
【0070】
第1沓10における球状凹部13とピストン30の球状突出部32とを球面状に形成したが、かまぼこ状に形成してもよい。
また、第2ベースプレート21とソールプレート22との間にコイルスプリング23を設けて、第2ベースプレート21とソールプレート22とが離間する方向に付勢したが、コイルスプリングだけでなく、円柱状のゴム体や皿ばねなどの弾性体で構成してもよい。
【符号の説明】
【0071】
1…滑り支承装置
2a…第1部材
2b…第2部材
10…第1沓
12…ベースポット
14…凹状滑り部材
20…第2沓
21…第2ベースプレート
23…コイルスプリング
23a,24a…先端滑り材
24…スプリングホルダ
27…第1スライドプレート
28…第2スライドプレート
30…ピストン
32…球状突出部
33…球面状スライドプレート
Ff…第1摺動面
Fs…第2摺動面
Ft…第3摺動面
H…支承方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7