IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リンナイ株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社コロナの特許一覧

<>
  • 特許-流体循環式加熱システム 図1
  • 特許-流体循環式加熱システム 図2
  • 特許-流体循環式加熱システム 図3
  • 特許-流体循環式加熱システム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】流体循環式加熱システム
(51)【国際特許分類】
   F24D 3/00 20220101AFI20240419BHJP
   F24D 3/18 20060101ALI20240419BHJP
   F24H 1/22 20220101ALI20240419BHJP
   F24H 4/02 20220101ALI20240419BHJP
   F24H 15/136 20220101ALI20240419BHJP
   F24H 15/215 20220101ALI20240419BHJP
   F24H 15/219 20220101ALI20240419BHJP
   F24H 15/258 20220101ALI20240419BHJP
   F24H 15/335 20220101ALI20240419BHJP
   F24H 15/36 20220101ALI20240419BHJP
   F24H 15/375 20220101ALI20240419BHJP
【FI】
F24D3/00 X
F24D3/00 K
F24D3/18
F24H1/22
F24H4/02 Z
F24H15/136
F24H15/215
F24H15/219
F24H15/258
F24H15/335
F24H15/36
F24H15/375
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021033415
(22)【出願日】2021-03-03
(65)【公開番号】P2022134348
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】本島 駿
(72)【発明者】
【氏名】眞柄 隆志
(72)【発明者】
【氏名】富澤 祥伍
(72)【発明者】
【氏名】上田 真典
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-159663(JP,A)
【文献】特開2014-016105(JP,A)
【文献】特開平03-156216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 1/00-19/10
F24H 1/00-15/493
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ポンプを有し、該第1ポンプの作動により第1流体を循環させる第1循環回路と、該第1循環回路で循環する第1流体を加熱し得るように該第1循環回路に接続されたヒートポンプと、第2ポンプを有し、該第2ポンプの作動により第2流体を循環させる第2循環回路と、該第2循環回路で循環する第2流体を加熱し得るように該第2循環回路に接続された燃焼式加熱装置と、前記第1循環回路で循環する第1体と前記第2循環回路で循環する第2流体との間の熱交換を行い得るように該第1循環回路及び該第2循環回路に接続された熱交換器とを備える流体循環式加熱システムであって、
外気温度を検出する第1温度センサと
前記第1流体の温度を検出する第2温度センサと、
前記第1温度センサによる前記外気温度の検出値が所定の第1閾値温度以下であるという条件を少なくとも含む所定の第1条件が成立する場合に、前記第1循環回路の第1流体の凍結を防止するための運転制御である凍結防止運転制御を実行する機能を有する制御装置とを備えており、
前記制御装置は、前記凍結防止運転制御として、前記第2ポンプ及び前記燃焼式加熱装置の運転を停止させた状態で、前記第1ポンプ及び前記ヒートポンプの運転を行わせる第1運転制御と、前記ヒートポンプの運転を停止させた状態で、前記第1ポンプ、前記第2ポンプ及び前記燃焼式加熱装置の運転を行わせる第2運転制御と、前記ヒートポンプ、前記燃焼式加熱装置及び前記第2ポンプの運転を停止させた状態で、前記第1ポンプの運転を行わせる第3運転制御とを選択的に実行し得るように構成されていると共に、前記第1条件が成立することに応じて前記凍結防止運転制御を開始するとき、前記第3運転制御を開始し、その後、前記外気温度の検出値が前記第1閾値温度よりも低い所定の第2閾値温度以上であり、且つ、前記第2温度センサによる第1流体の温度が所定の第3閾値温度よりも低いという条件を必要条件として、前記第1運転制御を実行し、前記外気温度の検出値が前記第2閾値温度以下であり、且つ、前記第2温度センサによる第1流体の温度が前記第3閾値温度よりも低いという条件を必要条件として、前記第2運転制御を実行するように構成されており、
さらに、前記第1循環回路は、該第1循環回路で循環させる第1流体を流す流路を有する暖房装置であって、該流路の少なくとも一部が屋外に配置される暖房装置である特定暖房装置を接続可能な循環回路であり、
前記第3閾値温度は、前記第1循環回路に前記特定暖房装置が接続されている場合に、該特定暖房装置が接続されていない場合よりも高い温度に設定されることを特徴とする流体循環式加熱システム。
【請求項2】
請求項1記載の流体循環式加熱システムにおいて、
前記第1流体の温度を検出する第3温度センサをさらに備えており、
前記制御装置は、前記第1運転制御又は前記第2運転制御の開始後、前記第3温度センサによる前記第1流体の温度の検出値が所定の第4閾値温度以上の温度になったとき、該第1運転制御又は該第2運転制御を停止するように構成されていることを特徴とする流体循環式加熱システム。
【請求項3】
請求項2記載の流体循環式加熱システムにおいて、
前記制御装置は、前記第1運転制御又は該第2運転制御を停止したとき、前記第3運転制御を実行するように構成されていることを特徴とする流体循環式加熱システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体循環式加熱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
温水式暖房システム等の流体循環式加熱システムでは、例えば、特許文献1に見られる如く、ヒートポンプ及び暖房装置が接続された第1循環回路と、ガス加熱器が接続された第2循環回路と、第1循環回路及び第2循環回路のそれぞれでポンプの作動により循環する流体の間の熱交換を行う熱交換器とを備えるシステムが知られている。
【0003】
このシステムでは、第1循環回路側で暖房装置を経由して流れる流体を、ヒートポンプの運転によって加熱することが可能であると共に、ガス加熱器の運転によって加熱した第2循環回路側の流体から第1循環回路側の流体への熱交換(伝熱)を上記熱交換器を介して行うことで、第1循環回路側で暖房装置を経由して流れる流体を、ガス加熱器の運転によって加熱することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-159663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に見られる如き、流体循環式加熱システムにおいて、ヒートポンプに接続された第1循環回路は、ヒートポンプの本体部である室外機を経由する部分等が屋外に配設されるため、冬季等では、第1循環回路内の水等の循環液の凍結を防止する必要がある。
【0006】
この場合、凍結防止の手法としては、例えば、第1循環回路での流体の循環を行いながら、ヒートポンプの運転を行うことで、該第1循環回路側の流体を加熱する手法(第1の手法)、あるいは、第1循環回路及び第2循環回路での流体の循環を行いながら、ガス加熱器等の燃焼式加熱装置の運転を行うことで、第1循環回路側の流体を第2循環回路側の流体を介して加熱する手法(第2の手法)を採用し得る。
【0007】
しかしながら、上記第1の手法では、外気温が非常に低い状況では、第1循環回路側の流体をヒートポンプの運転によって十分に加熱することは困難である。また、上記第2手法では、凍結防止のためのエネルギーコストが高価なものとなりやすい。
【0008】
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、ヒートポンプが接続された第1循環回路と燃焼式加熱装置が接続された第2循環回路とを備える流体循環式加熱システムにおいて、ヒートポンプ及び燃焼式加熱装置の選択的な運転を適切に行うことで、第1循環回路側の凍結を防止することができる流体循環式加熱システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の流体循環式加熱システムは、上記の目的を達成するために、第1ポンプを有し、該第1ポンプの作動により第1流体を循環させる第1循環回路と、該第1循環回路で循環する第1流体を加熱し得るように該第1循環回路に接続されたヒートポンプと、第2ポンプを有し、該第2ポンプの作動により第2流体を循環させる第2循環回路と、該第2循環回路で循環する第2流体を加熱し得るように該第2循環回路に接続された燃焼式加熱装置と、前記第1循環回路で循環する第1流体と前記第2循環回路で循環する第2流体との間の熱交換を行い得るように該第1循環回路及び該第2循環回路に接続された熱交換器とを備える流体循環式加熱システムであって、
外気温度を検出する第1温度センサと、
該第1温度センサによる前記外気温度の検出値が所定の第1閾値温度以下であるという条件を少なくとも含む所定の第1条件が成立する場合に、前記第1循環回路の第1流体の凍結を防止するための運転制御である凍結防止運転制御を実行する機能を有する制御装置とを備えており、
前記制御装置は、前記凍結防止運転制御として、前記第2ポンプ及び前記燃焼式加熱装置の運転を停止させた状態で、前記第1ポンプ及び前記ヒートポンプの運転を行わせる第1運転制御と、前記ヒートポンプの運転を停止させた状態で、前記第1ポンプ、前記第2ポンプ及び前記燃焼式加熱装置の運転を行わせる第2運転制御とを選択的に実行し得るように構成されていると共に、前記外気温度の検出値が前記第1閾値温度よりも低い所定の第2閾値温度以上であることを必要条件として、前記第1運転制御を実行し、該外気温度の検出値が前記所定の第2閾値温度以下であることを必要条件として、前記第2運転制御を実行するように構成されていることを基本構成とする(参考発明1)。
なお、本発明において、前記外気温度の検出値が前記第2閾値温度に一致する場合には、第1運転制御及び第2運転制御のいずれの運転制御が実行されてもよい。
【0010】
かかる参考発明1によれば、外気温度の検出値が前記第2閾値温度よりも低い状況では、凍結防止運転制御として、ヒートポンプの運転を行う第1運転制御は実行されず、燃焼式加熱装置の運転を行う第2運転制御が実行され得る。このため、外気温度が低いことに起因して、ヒートポンプが第1流体を加熱することが困難な状況では、燃焼式加熱装置の運転を行う第2運転制御を実行することで、第1循環回路の第1流体を適切に加熱できる。
【0011】
また、外気温度の検出値が前記第2閾値温度よりも高い状況では、凍結防止運転制御として、燃焼式加熱装置の運転を行う第2運転制御は実行されず、ヒートポンプの運転を行う第1運転制御が実行され得る。このため、外気温度がさほど低くなく、ヒートポンプが第1流体を加熱する熱を十分に発生し得る状況では、ヒートポンプの運転を行う第1運転制御を実行することで、第1循環回路の第1流体を適切に加熱できると共に、該第1流体の加熱のためのエネルギーコストを抑制できる。
【0012】
よって、参考発明1によれば、ヒートポンプ及び燃焼式加熱装置の選択的な運転を適切に行うことで、第1循環回路側の凍結を防止することができる。
【0013】
上記参考発明1では、前記制御装置は、前記凍結防止運転制御として、さらに、前記ヒートポンプ、前記燃焼式加熱装置及び前記第2ポンプの運転を停止させた状態で、前記第1ポンプの運転を行わせる第3運転制御を選択的に実行し得るように構成され得る。この場合、前記凍結防止運転制御を開始するとき、前記第3運転制御を開始し、その後、所定の第2条件が成立した場合に、前記第1運転制御又は前記第2運転制御を開始するように構成されていることが好ましい(参考発明2)。
【0014】
これによれば、凍結防止運転制御の開始後、前記所定の第2条件が成立するまでは(第1運転制御又は第2運転制御の実行が必要になる状況になるまでは)、燃焼式加熱装置及びヒートポンプの運転を行わずに、第1ポンプの運転を行わせる第3運転制御が実行されるので、第3運転制御によって第1流体の凍結を防止し得る状況では、凍結防止運転制御でのエネルギー消費を抑制できる。
【0015】
上記参考発明2では、前記第1流体の温度を検出する第2温度センサをさらに備えており、前記所定の第2条件は、該第2温度センサによる第1流体の温度が所定の第3閾値温度よりも低いという条件を少なくとも含むことが好ましい(参考発明3)。
これによれば、第3運転制御の実行中に、第1流体の凍結防止のための適切なタイミングで、第1運転制御又は第2運転制御を開始して、第1流体を加熱することが可能となる。
【0016】
上記参考発明1~3では、前記第1流体の温度を検出する第3温度センサをさらに備えており、前記制御装置は、前記第1運転制御又は前記第2運転制御の開始後、前記第3温度センサによる前記第1流体の温度の検出値が所定の第4閾値温度以上の温度になったとき、該第1運転制御又は該第2運転制御を停止するように構成されていることが好ましい(参考発明4)。なお、参考発明4参考発明3と組み合わせる場合、第3温度センサは、第2温度センサと同じ温度センサであってもよい。
【0017】
これによれば、第1流体が十分に昇温するまで、第1運転制御又は第2運転制御を実行できるので、第1流体の凍結防止のために、ヒートポンプの運転を行う第1運転制御や、燃焼式加熱装置の運転を行う第2運転制御を頻繁に繰り返して実行するような事態になるのを防止できる。ひいては、ヒートポンプや、燃焼式加熱装置の劣化の進行を抑制できる。
【0018】
上記参考発明4では、前記制御装置は、前記第1運転制御又は該第2運転制御を停止したとき、前記ヒートポンプ、前記燃焼式加熱装置及び前記第2ポンプの運転を停止させた状態で、前記第1ポンプの運転を行わせる第3運転制御を実行するように構成されていることが好ましい(参考発明5)。なお、参考発明5は、前記参考発明2と組み合わせることもでき、その場合、参考発明5における第3運転制御は、参考発明2における第3運転制御と同じ運転制御を意味する。
【0019】
これによれば、第1運転制御又は第2運転制御の停止後に、燃焼式加熱装置及びヒートポンプの運転を行わずに、第1ポンプの運転を行わせる第3運転制御が実行されるので、第1循環回路内の第1流体の全体がしばらくの間、予熱によって温められる。このため、第1流体の凍結防止のためのエネルギー消費を抑制できると共に、第1循環回路のうち、屋外側の流路の第1流体が、急激に冷やされて凍結しやすくなってしまうのを防止できる
以上を踏まえて、本発明のより具体的な流体循環式加熱システムは、第1ポンプを有し、該第1ポンプの作動により第1流体を循環させる第1循環回路と、該第1循環回路で循環する第1流体を加熱し得るように該第1循環回路に接続されたヒートポンプと、第2ポンプを有し、該第2ポンプの作動により第2流体を循環させる第2循環回路と、該第2循環回路で循環する第2流体を加熱し得るように該第2循環回路に接続された燃焼式加熱装置と、前記第1循環回路で循環する第1体と前記第2循環回路で循環する第2流体との間の熱交換を行い得るように該第1循環回路及び該第2循環回路に接続された熱交換器とを備える流体循環式加熱システムであって、
外気温度を検出する第1温度センサと、
前記第1流体の温度を検出する第2温度センサと、
前記第1温度センサによる前記外気温度の検出値が所定の第1閾値温度以下であるという条件を少なくとも含む所定の第1条件が成立する場合に、前記第1循環回路の第1流体の凍結を防止するための運転制御である凍結防止運転制御を実行する機能を有する制御装置とを備えており、
前記制御装置は、前記凍結防止運転制御として、前記第2ポンプ及び前記燃焼式加熱装置の運転を停止させた状態で、前記第1ポンプ及び前記ヒートポンプの運転を行わせる第1運転制御と、前記ヒートポンプの運転を停止させた状態で、前記第1ポンプ、前記第2ポンプ及び前記燃焼式加熱装置の運転を行わせる第2運転制御と、前記ヒートポンプ、前記燃焼式加熱装置及び前記第2ポンプの運転を停止させた状態で、前記第1ポンプの運転を行わせる第3運転制御とを選択的に実行し得るように構成されていると共に、前記第1条件が成立することに応じて前記凍結防止運転制御を開始するとき、前記第3運転制御を開始し、その後、前記外気温度の検出値が前記第1閾値温度よりも低い所定の第2閾値温度以上であり、且つ、前記第2温度センサによる第1流体の温度が所定の第3閾値温度よりも低いという条件を必要条件として、前記第1運転制御を実行し、前記外気温度の検出値が前記第2閾値温度以下であり、且つ、前記第2温度センサによる第1流体の温度が前記第3閾値温度よりも低いという条件を必要条件として、前記第2運転制御を実行するように構成されており、
さらに、前記第1循環回路は、該第1循環回路で循環させる第1流体を流す流路を有する暖房装置であって、該流路の少なくとも一部が屋外に配置される暖房装置である特定暖房装置を接続可能な循環回路であり、
前記第3閾値温度は、前記第1循環回路に前記特定暖房装置が接続されている場合に、該特定暖房装置が接続されていない場合よりも高い温度に設定されることを特徴とする(第1発明)。
上記第1発明では、前記第1流体の温度を検出する第3温度センサをさらに備えており、
前記制御装置は、前記第1運転制御又は前記第2運転制御の開始後、前記第3温度センサによる前記第1流体の温度の検出値が所定の第4閾値温度以上の温度になったとき、該第1運転制御又は該第2運転制御を停止するように構成されていることが好ましい(第2発明)。
上記第2発明では、前記制御装置は、前記第1運転制御又は該第2運転制御を停止したとき、前記第3運転制御を実行するように構成されていることが好ましい(第3発明)。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態の流体循環式加熱システムとしての暖房システムの全体構成を示す図。
図2】実施形態の暖房システムの制御に関する構成を示すブロック図。
図3図2に示す制御装置の処理を示すフローチャート。
図4図3のSTEP4の凍結防止運転制御の処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態を図1図4を参照して以下に説明する。図1に示すように、本実施形態の流体循環式加熱システム1は、屋内空間の暖房を行う暖房装置2を放熱装置として備えると共に、暖房装置2に流す流体を加熱するための複数の(2つの)熱源としての燃焼式加熱装置30及びヒートポンプ40が各々搭載された燃焼式熱源ユニット3及びヒートポンプユニット4を備える暖房システムである。以降、流体循環式加熱システム1を暖房システム1という。
【0022】
図示例の暖房システム1では、暖房装置2は、パネルラジエータ、床暖房機等の第1暖房装置2aと、ファンコイルユニット等の第2暖房装置2bとを含む。第1暖房装置2aは、それに備えられた暖房用の流体の流路(図示省略)が、屋内に配設される暖房装置である。また、第2暖房装置2bは、それに備えられた暖房用の流体の流路(図示省略)の少なくとも一部が屋外に配設される暖房装置である。
【0023】
ただし、暖房システム1は、第1暖房装置2a及び第2暖房装置2bのいずれか一方だけを備えていてもよい。また、第1暖房装置2a及び第2暖房装置2bのそれぞれは、1つの暖房装置に限らず、複数であってもよい。
【0024】
また、暖房システム1は、暖房装置2に流す流体(以降、第1流体という)を循環させる第1循環回路5と、該第1循環回路5とは独立した流路で第2流体を循環させる第2循環回路6とを備える。
【0025】
ここで、本実施形態では、ヒートポンプ40は、第1循環回路5で循環する第1流体の循環途中で、該第1流体を直接的に加熱することが可能な熱源である。一方、燃焼式加熱装置30は、第2循環回路6で循環する第2流体を加熱し、この第2流体と第1循環回路5で循環する第1流体との熱交換(第2流体から第1流体への伝熱)によって、第1流体を第2流体を介して間接的に加熱する熱源である。
【0026】
このため、暖房システム1は、さらに、第1流体と第2流体との間の熱交換を行う熱交換器70が搭載された熱交換器ユニット7を備えている。なお、第1流体及び第2流体としては、例えば水(暖房用水)、不凍液等の流体を使用し得る。また、本実施形態では、燃焼式熱源ユニット3及び熱交換器ユニット7は、屋内に設置されるユニット、ヒートポンプユニット4は、屋外に設置されるユニットである。
【0027】
ヒートポンプユニット4に搭載されたヒートポンプ40は、公知の構成のものであり、凝縮器41と、図示しない圧縮機、蒸発器、及び膨張機構を含む冷媒回路42とを備え、屋外の外気から冷媒に吸収した熱を凝縮器41で放熱し得るように構成されている。この場合、凝縮器41は、冷媒回路42から流入する冷媒を流す流路(図示省略)に加えて、第1流体を流す流路(図示省略)を備えており、それぞれの流路を流れる冷媒と第1流体との熱交換(冷媒から第1流体への伝熱)を行うことで、該第1流体を加熱することができるように構成されている。
【0028】
第1循環回路5は、第1流体を流動させる動力源としての電動式の第1ポンプ50を有すると共に、ヒートポンプ40の凝縮器41から流出する第1流体を、熱交換器ユニット7の熱交換器70と暖房装置2(第1暖房装置2a及び第2暖房装置2bのうちの1つ以上の暖房装置2)とを順に経由させた後に凝縮器41に還流させる流路と、凝縮器41から流出する第1流体を、熱交換器ユニット7の熱交換器70を経由させることなく(熱交換器70をバイパスさせて)、暖房装置2を経由させた後に凝縮器41に還流させる流路と、凝縮器41から流出する第1流体を、暖房装置2を経由させずに凝縮器41に還流させる流路とを備えるように構成されている。
【0029】
具体的には、第1循環回路5は、ヒートポンプ40の凝縮器41の第1流体用の流路(図示省略)の流出口から、熱交換器ユニット7の熱交換器70の第1流体用の流路70aの流入口に至るように配設された第1流路51と、熱交換器70の第1流体用の流路70aの流出口から、各暖房装置2に備えられた第1流体用の流路(図示省略)の流入口に至るように配設された第2流路52と、各暖房装置2の第1流体用の流路の流出口から、ヒートポンプ40の凝縮器41の第1流体用の流路の流入口に至るように配設された第3流路53と、第1流路51の途中部から分岐され、熱交換器70を経由せずに(熱交換器70をバイパスして)、第2流路52の途中部に合流するように配設された第1バイパス路54と、熱交換器70の流路70aを通る第1流体の流量と第1バイパス路54を通る第1流体の流量との比率を調整するためのバイパス比調整弁55と、第2流路52のうち、第1バイパス路54との接続部よりも下流側の流路から分岐され、暖房装置2を経由せずに第3流路53に合流するように配設された第2バイパス路56とを備える。
【0030】
この場合、各暖房装置2(第1暖房装置2a及び第2暖房装置2bのそれぞれ)は、第2流路52と第3流路53との間に並列に接続される。そして、第1~第3流路51~53のいずれかの流路、例えば、第1流路51と第1バイパス路54との接続部よりも上流側の第1流路51に第1ポンプ50が介装されている。なお、本実施形態では、第1ポンプ50は、ヒートポンプユニット4に搭載され、バイパス比調整弁55は、熱交換器ユニット7に搭載されている。
【0031】
バイパス比調整弁55は、本実施形態では、第1流路51と第1バイパス路54との接続部に介装された分配弁であり、第1流路51の上流側から流入する第1流体を熱交換器70と第1バイパス路54とに分配可能であると共に、その分配割合(熱交換器70に分配する第1流体の流量と、第1バイパス路54に分配する第1流体の流量との比率)を可変的に調整することが可能である。かかるバイパス比調整弁55(分配弁)は、例えば、電動式の三方弁等により構成される。
【0032】
第1循環回路5は、上記の如く第1ポンプ50、第1~第3流路51~53、第1バイパス路54、バイパス比調整弁55及び第2バイパス路56を備えている。従って、第1流体を、ヒートポンプ40の凝縮器41から、熱交換器ユニット7の熱交換器70と、暖房装置2とを順に経由させた後に凝縮器41に還流させる流路は、第1流路51と、熱交換器70の流路70aと、第2流路52と、暖房装置2(第1暖房装置2a及び第2暖房装置2bのうちの1つ以上の暖房装置2)の図示しない流路と、第3流路53とを備える流路として構成されている。
【0033】
また、第1流体を、ヒートポンプ40の凝縮器41から、熱交換器ユニット7の熱交換器70をバイパスさせて、暖房装置2を経由させた後に凝縮器41に還流させる流路は、バイパス比調整弁55よりも上流側の第1流路51と、第1バイパス路54と、第2流路52のうち、第1バイパス路54との接続部よりも下流側の流路と、暖房装置2(第1暖房装置2a及び第2暖房装置2bのうちの1つ以上の暖房装置2)の図示しない流路と、第3流路53とを備える流路として構成されている。
【0034】
そして、熱交換器70を経由する第1流体の流量と、第1バイパス路54を経由する第1流体の流量との比率は、バイパス比調整弁55の作動制御を通じて可変的に調整可能である。なお、各暖房装置2(第1暖房装置2a及び第2暖房装置2bのそれぞれ)は、その流路(第1流体用の流路)を開閉可能な図示しない熱動弁、電磁弁等の開閉弁(図示省略)を備えている。従って、各暖房装置2を経由する流路は、該開閉弁を開弁制御した状態で開通する流路である。
【0035】
また、第1流体を、ヒートポンプ40の凝縮器41から、暖房装置2を経由させずに凝縮器41に還流させる流路は、バイパス比調整弁55よりも上流側の第1流路51と、第1バイパス路54又は熱交換器70の流路70aと、第2流路52のうち、第1バイパス路54との接続部と第2バイパス路56との接続部との間の流路と、第2バイパス路56と、第3流路53とを備える流路として構成されている。
【0036】
補足すると、第1循環回路5は、例えば、第1バイパス路54及びバイパス比調整弁55を備えなくてもよい。また、例えば、第2バイパス路56を通る第1流体の流量を制御するための流量制御弁を第1循環回路5に備えてもよい。
【0037】
第1循環回路5には、第1流体の温度を検出するための温度センサ81,82が組付けられている。さらに、ヒートポンプユニット4には、外気温度(ヒートポンプ40の周辺の雰囲気温度)を検出するための温度センサ83が搭載されている。なお、温度センサ83は、ヒートポンプユニット4とは別体に備えられていてもよい。
【0038】
ここで、上記温度センサ81は、ヒートポンプ40の凝縮器41から流出する第1流体(凝縮器41で加熱された第1流体)の温度を検出するためのセンサであり、バイパス比調整弁55の上流側の第1流路51に組付けられている。以降、該温度センサ81により検出される第1流体の温度をHP流出側温度という。
【0039】
また、上記温度センサ82は、ヒートポンプ40の凝縮器41に流入する第1流体の温度を検出するためのセンサであり、第3流路53(各暖房装置2から流出する第1流体の合流箇所よりも下流側の第3流路53)に組付けられている。以降、該温度センサ82により検出される第1流体の温度をHP流入側温度という。
【0040】
燃焼式熱源ユニット3に搭載された燃焼式加熱装置30は、公知の構成のものであり、図示を省略する燃料供給装置から供給される燃料ガス(又は灯油等の液体燃料)を燃焼させるバーナ31と、該バーナ31の燃焼熱により加熱される熱交換器32とを備える。なお、バーナ31の燃焼排ガスは、図示しない排気路を介して屋外に排出される。
【0041】
熱交換器32は、第2流体を流す流路32aを有し、この流路32aが第2循環回路6を介して熱交換器ユニット7の熱交換器70に接続されている。この場合、第2循環回路6は、第2流体を流動させる動力源としての電動式の第2ポンプ60と、燃焼式加熱装置30の熱交換器32の流路32aの流出口から熱交換器ユニット7の熱交換器70の第2流体用の流路70bの流入口に至るように配設された第11流路61と、熱交換器ユニット7の熱交換器70の第2流体用の流路70bの流出口から燃焼式加熱装置30の熱交換器32の流路32aの流入口に至るように配設された第12流路62とを備え、該第11流路61及び第12流路62の一方の流路、例えば第12流路62に第2ポンプ60が介装されている。
【0042】
従って、第2ポンプ60を作動させつつ、バーナ31の燃焼運転を行うことで、第2流体が燃焼式加熱装置30の熱交換器32と、熱交換器ユニット7の熱交換器70との間で循環しつつ、熱交換器32で加熱され、その加熱された第2流体が熱交換器ユニット7の熱交換器70に供給される。
【0043】
なお、本実施形態では、第2ポンプ60は、燃焼式熱源ユニット3に搭載されている。また、熱交換器ユニット7には、熱交換器70の第2流体用の流路70bの上流側の第11流路61と、下流側の第12流路62とのうちの一方の流路、例えば、第12流路62を開閉可能な熱動弁、電磁弁等の開閉弁71が搭載されている。従って、熱交換器ユニット7の熱交換器70の第2流体用の流路70bを経由する流路は、該開閉弁71を開弁制御した状態で開通する流路である。
【0044】
補足すると、第2循環回路6の構成は上記の構成に限られない。例えば、熱交換器ユニット7の熱交換器70から燃焼式熱源ユニット3に戻る第2流体を第12流路62から燃焼式加熱装置30の熱交換器32をバイパスさせて第11流路61に流すバイパス路をさらに備えるように第2循環回路を構成してもよい。また、例えば、第2ポンプ60から吐出される第2流体を、燃焼式加熱装置30の熱交換器32と、熱交換器ユニット7の熱交換器70とに分配し、これらの熱交換器32,70から各々流出する第2流体を合流させた後に第2ポンプ60に還流させるように第2循環回路6を構成してもよい。
【0045】
また、本実施形態の暖房システム1では、燃焼式熱源ユニット3、ヒートポンプユニット4及び熱交換器ユニット7をそれぞれ各別のユニットとして備えたが、これらの2つ以上を単一のユニットとして構成してもよい。例えば熱交換器ユニット7は、燃焼式熱源ユニット3又はヒートポンプユニット4に組み込まれていてもよい。また、燃焼式熱源ユニット3は、例えば給湯装置としての機能等を含むように構成されていてもよい。
【0046】
次に、図2を参照して、暖房システム1は、さらに、該暖房システム1の運転制御を行う制御装置90と、暖房システム1の運転操作をユーザが行うためのリモコン100とを備えている。制御装置90は、例えば、図示しないマイクロコンピュータ等のプロセッサ、メモリ(RAM、ROM等)、インターフェース回路、通信回路等を含む1つ以上の電子回路ユニットにより構成される。例えば、制御装置90は、各暖房装置2(第1暖房装置2a及び第2暖房装置2bのそれぞれ)、燃焼式熱源ユニット3、ヒートポンプユニット4、及び熱交換器ユニット7に各々搭載され、且つ相互に通信を行いつつ協働して暖房システム1の運転制御を実行可能な複数の電子回路ユニットの集合体として構成され得る。この場合、いずれかの電子回路ユニットが暖房システム1の全体の作動を統括する上位の制御装置、他の電子回路ユニットが、各暖房装置2、燃焼式熱源ユニット3、ヒートポンプユニット4、及び熱交換器ユニット7のそれぞれの局所的な作動制御を行う制御装置として機能するように電子回路ユニットの集合体が構成されていてもよい。
【0047】
上記制御装置90には、暖房システム1に備えられた前記温度センサ81~83等の複数のセンサのそれぞれのセンシング信号(検出信号)が入力される。また、制御装置90は、リモコン100と有線又は無線による通信を行うことが可能である。その通信により、制御装置90は、暖房装置2の運転等に関する指令情報をリモコン100から受信したり、該リモコン100に様々な報知情報を送信して出力させることが可能である。なお、暖房システム1は、1つのリモコン100に限らず、複数のリモコンを備えていてもよい。
【0048】
そして、制御装置90は、実装されたハードウェア構成とプログラム(ソフトウェア構成)とにより実現される機能によって、各暖房装置2、燃焼式熱源ユニット3、ヒートポンプユニット4及び熱交換器ユニット7のそれぞれの制御対象要素の作動制御を行う。
【0049】
この場合、各暖房装置2の制御対象要素には、該暖房装置2の流路(第1流体を流す流路)を開閉する図示しない開閉弁が含まれる。また、燃焼式熱源ユニット3の制御対象要素には、バーナ31、及び第2ポンプ60が含まれる。なお、バーナ31の燃焼運転の制御は、図示しない点火装置、燃料供給装置、及び燃焼用空気の供給用の燃焼ファンの作動制御を通じて行われる。また、ヒートポンプユニット4の制御対象要素には、第1ポンプ50及び冷媒回路42の圧縮機(図示省略)が含まれる。また、熱交換器ユニット7の制御対象要素には、開閉弁71及びバイパス比調整弁55が含まれる。
【0050】
次に、本実施形態の暖房システム1の作動を説明する。本実施形態の暖房システム1では、制御装置90は、各暖房装置2の暖房運転時(放熱運転時)に、第1循環回路5で該暖房装置2に供給される第1流体の温度を、ユーザがリモコン100で設定した目標暖房温度に応じて決定される目標温度に一致もしくはほぼ一致させるように、ヒートポンプ40及び燃焼式加熱装置30の一方又は両方の運転制御を行いつつ、第1ポンプ50を作動させることで、第1流体を第1循環回路5で循環させる。
【0051】
この場合、燃焼式加熱装置30の運転(バーナ31の燃焼運転)を行う場合には、制御装置90は、第1ポンプ50を作動させることに加えて、熱交換器ユニット7の開閉弁71を開弁制御した状態で、第2ポンプ60を作動させることにより、第2循環回路6で第2流体を循環させると共に、熱交換器70の第1流体用の流路70aを上流側の第1流路51に対して開通させるようにバイパス比調整弁55を制御する。
【0052】
なお、この場合、第1循環回路5の第1バイパス路54を閉弁するようにバイパス比調整弁55を制御してもよいが、熱交換器70の流路70aと、第1バイパス路54との両方を上流側の第1流路51に対して開通させるようにバイパス比調整弁55を制御してもよい。
【0053】
また、制御装置90は、外気温度が低い状況では、暖房装置2の暖房運転の停止状態で、第1循環回路5内の第1流体(主に、第1循環回路5のうち、屋外に配設させる箇所の第1流体)が凍結するのを防止するための凍結防止運転制御の処理を実行する。
【0054】
具体的には、制御装置90は、暖房システム1の運転可能状態において、図3のフローチャートに示す処理を実行することによって、凍結防止運転制御を実行するか否かを逐次決定する。すなわち、制御装置90は、STEP1~3のそれぞれにおいて、暖房システム1の配管接続の確認結果を示すデータがメモリに入力済であるか否かを判断する処理(STEP1)と、全ての暖房装置2の暖房運転の停止中であるか否かを判断する処理(STEP2)と、前記温度センサ83による外気温度の検出値が所定の閾値温度T1aよりも低いか否かを判断する処理(STEP3)とを実行する。
【0055】
ここで、STEP1の判断処理に関し、暖房システム1の設置後の試運転等によって、暖房システム1の第1循環回路5及び第2循環回路6の配管接続が作業者等により確認され、該配管接続が適切になされている場合には、その確認結果を示すデータが制御装置90に記憶保持される。そして、配管接続が適切になされていることを示すデータが制御装置90に記憶保持されている場合に、STEP1の判定結果が肯定的になる。
【0056】
また、STEP3の判断処理における閾値温度T1aは、第1循環回路5内の第1流体の凍結が生じやすくなる外気温度としてあらかじめ設定された温度であり、例えば-10℃に設定され得る。
【0057】
そして、制御装置90は、STEP1~3の全ての判断結果が肯定的である場合に、凍結防止運転制御を実行すべき状況であると判定して、STEP4において、凍結防止運転制御を実行する。これにより、基本的には、暖房装置2の暖房運転の停止状態であり、且つ、外気温度(検出値)が閾値温度T1a(-10℃)よりも低いという条件が成立する状況で、凍結防止運転制御が制御装置90により実行される。
【0058】
また、制御装置90は、STEP1~3のいずれかの判断結果が否定的である場合には、凍結防止運転制御を実行すべき状況ではないと判定して、STEP5において、凍結防止運転制御を停止する。なお、図3のフローチャートに示す処理は、凍結防止運転制御を実行している状態でも、逐次行われる。
【0059】
補足すると、本実施形態では、STEP1~3の全ての判断結果が肯定的である場合が、本発明における所定の第1条件が成立する場合に相当する。また、温度センサ83が本発明における第1温度センサに相当し、STEP3の閾値温度T1aが本発明における第1閾値温度に相当する。ただし、例えばSTEP1の判断結果が肯定的になるという条件は省略してもよい。また、例えば外気温度の変化に関する条件や、第1循環回路5の第1流体の温度に関する条件等を第1条件に含めてもよい。
【0060】
本実施形態では、上記凍結防止運転制御は、その制御の態様として、第1運転制御、第2運転制御、及び第3運転制御の3種類の態様がある。ここで、第1運転制御は、燃焼式加熱装置30及び第2ポンプ60の運転を停止させた状態で、ヒートポンプ40及び第1ポンプ50の運転を行わせるという態様の制御である。該第1運転制御は、換言すれば、第1循環回路5で第1流体を循環させながら、該第1流体をヒートポンプ40の運転により加熱するという態様の運転制御である。
【0061】
また、第2運転制御は、ヒートポンプ40の運転を停止させた状態で、燃焼式加熱装置30、第2ポンプ60及び第1ポンプ50の運転を行わせるという態様の制御である。該第2運転制御は、換言すれば、第1循環回路5で第1流体を循環させると共に第2循環回路6で第2流体を循環させながら、燃焼式加熱装置30の運転により第2流体を加熱し、さらに、第2流体から第1流体への熱交換(伝熱)を熱交換器70で行うことによって、第1流体を加熱するという態様の運転制御である。
【0062】
また、第3運転制御は、ヒートポンプ40、燃焼式加熱装置30及び第2ポンプ60の運転を停止させた状態で、第1ポンプ50の運転を行わせるという態様の制御である。該第3運転制御は、換言すれば、第1循環回路5で第1流体を加熱せずに循環させるという態様の運転制御である。
【0063】
そして、制御装置90は、凍結防止運転制御の処理を図4のフローチャートに示す如く実行する。具体的には、制御装置90は、まず、STEP11において、第1ポンプ50の運転を行わせる(第1ポンプ50をONにする)。この場合、STEP11ではヒートポンプ40、燃焼式加熱装置30及び第2ポンプ60は運転停止状態に維持される。これにより、前記第3運転制御が、凍結防止運転制御として開始される。
【0064】
この第3運転制御では、暖房装置2に含まれる各第1暖房装置2aに備えられた第1流体用の流路の開閉弁(図示しない)は、閉弁状態に維持される一方、暖房装置2に含まれる各第2暖房装置2bに備えられた第1流体用の流路の開閉弁(図示しない)は、開弁制御される。また、バイパス比調整弁55は、熱交換器70の第1流体用の流路70aを、上流側の第1流路51に開通させると共に、第1バイパス路54を閉弁する動作位置(以降、熱交換器全開位置という)に制御される。このため、第1循環回路5では、ヒートポンプ40の凝縮器41から流出する第1流体が、第1流路51、熱交換器70の流路70a、第2流路52、第2バイパス路56又は第2暖房装置2bの流路、及び第3流路53を経由して凝縮器41に還流するように循環する。これにより、第1循環回路5での第1流体の凍結が予防される。
【0065】
次いで、STEP12において、制御装置90は、暖房装置2にファンコイルユニット等の第2暖房装置2bが含まれるか否かを判断する。このSTEP12の判断結果が肯定的である場合(暖房装置2に第2暖房装置2bが含まれる場合)には、制御装置90は、STEP13において、前記温度センサ81により検出された第1流体のHP流出側温度が所定の閾値温度T2aよりも低い温度に低下しているか否かを判断する処理を、その判断結果が肯定的になるまで逐次実行する。
【0066】
また、STEP12の判断結果が否定的である場合(暖房装置2に第2暖房装置2bが含まれない場合)には、制御装置90は、STEP14において、前記温度センサ81により検出された第1流体のHP流出側温度が所定の閾値温度T2bよりも低い温度に低下しているか否かを判断する処理を、その判断結果が肯定的になるまで逐次実行する。
【0067】
ここで、STEP13,14の判断処理は、凍結防止運転制御を第3 運転制御から第1運転制御又は第2運転制御に移行させるか否かを規定する判断処理である。そして、暖房装置2に第2暖房装置2bが含まれる場合には、第2暖房装置2bでの結露を防止するために、早めに第流体を加熱し始めることが好ましいことから、STEP13での閾値温度T2aは、比較的高めの温度、例えば12℃に設定されている。
【0068】
一方、暖房装置2に第2暖房装置2bが含まれない場合には、第2暖房装置2bが含まれる場合に比して、第流体の加熱を早期に開始する必要性が低いことから、STEP14での閾値温度T2bは、STEP13での閾値温度T2a(12℃)よりも低い温度、例えば-15℃に設定されている。
【0069】
補足すると、本実施形態では、温度センサ81が本発明における第2温度センサに相当する。そして、STEP13又は14における閾値温度T2a又はT2bが本発明における第3閾値温度に相当し、STEP13又は14の判断結果が肯定的になる場合が、本発明における所定の第2条件が成立する場合に相当する。なお、STEP13又は14では、第1流体のHP流出側温度の検出値を閾値温度T2a又はT2bと比較する代わりに、第1循環回路5の他の箇所の温度、例えば、前記第2流路52もしくは第3流路53での第1流体の温度の検出値が、所定の閾値温度よりも低いか否かを判断するようにしてもよい。また、第2条件は、第1流体の温度に関するSTEP13,14の条件の代わりに、もしくは、該条件に加えて、例えば、第1流体の温度変化、外気温度、該外気温度の変化、あるいは、第3運転制御の実行開始後の経過時間等に関する条件を含んでいてもよい。
【0070】
STEP13又は14の判断結果が肯定的になると(HP流出側温度が閾値温度T2a又はT2bよりも低い温度に低下すると)、制御装置90は、次に、凍結防止運転制御を、第3運転制御から、第1運転制御及び第2運転制御のどちらの運転制御に移行させるかを決定するために、STEP15において、温度センサ83による外気温度の検出値が、所定の閾値温度T1bよりも低い温度に低下しているか否かを判断する。このSTEP15における閾値温度T1bは、前記STEP3の閾値温度T1a(-10℃)よりも低い外気温度であると共に、ヒートポンプ40が第1流体を加熱し得る熱を生成可能な限界付近の外気温度であり、例えば-22℃である。なお、該閾値温度T1bは、本発明における第2閾値温度に相当する。
【0071】
そして、STEP15の判断結果が肯定的である場合(外気温度<T1b(-22℃)である場合)には、ヒートポンプ40の運転による第1流体の加熱が困難であることから、制御装置90は、STEP16において、燃焼式加熱装置30の運転(バーナ31の燃焼運転)と、第2ポンプ60の運転とを行わせる(燃焼式加熱装置30及び第2ポンプ60をONにする)。この場合、第1ポンプ50の運転は引き続き継続し、また、ヒートポンプ40は運転停止状態に維持される。また、熱交換器ユニット7の開閉弁71は開弁制御される。これにより、凍結運転制御が、第3運転制御から第2運転制御に移行される。
【0072】
この第2運転制御では、第3運転制御と同様に、暖房装置2に含まれる各第1暖房装置2aに備えられた第1流体用の流路の開閉弁(図示しない)は、閉弁状態に維持され、暖房装置2に含まれる各第2暖房装置2bに備えられた第1流体用の流路の開閉弁(図示しない)は、開弁状態に維持される。また、バイパス比調整弁55は、前記熱交換器全開位置に維持される。
【0073】
このため、第1循環回路5での第1流体の循環は、第3運転制御と同様に行われる。そして、該第1流体が、熱交換器70において、加熱された第2流体からの伝熱によって、加熱される。この場合、燃焼式加熱装置30のバーナ31の燃焼量は、例えば一定の燃焼量に制御される。このように第2運転制御が行われることによって、第1循環回路5内の第1流体が凍結するのが防止される。
【0074】
制御装置90は、上記の如く第2運転制御を実行しながら、STEP17において、前記温度センサ82により検出されるHP流入側温度が所定の閾値温度T3a以上の温度に昇温したか否かを判断する処理を、その判断結果が肯定的になるまで逐次実行する。該閾値温度T3aは、外気温度が比較的低くても、第1流体が該閾値温度T3aに一致する温度から凍結し始める温度に低下するまでに比較的時間がかることになる温度、例えば25℃に設定されている。
【0075】
そして、STEP17の判断結果が肯定的になると(HP流入側温度≧T3a(25℃)になると)、制御装置90は、STEP18において、燃焼式加熱装置30及び第2ポンプ60の運転を停止させる(燃焼式加熱装置30及び第2ポンプ60をOFFにする)。この場合、制御装置90は、第1ポンプ50の運転を引き続き継続したままでSTEP11からの処理を再び実行する。これにより、第2運転制御が終了すると共に、第3運転制御が再開される(凍結防止運転制御が、第2運転制御から第3運転制御に移行する)。
【0076】
前記STEP15の判断結果が否定的である場合(外気温度≧T1b(-22℃)である場合)には、ヒートポンプ40の運転による第1流体の加熱が可能であることから、制御装置90は、STEP19において、ヒートポンプ40の運転を行わせる(ヒートポンプ40をONにする)。この場合、第1ポンプ50の運転は引き続き継続され、また、燃焼式加熱装置30及び第2ポンプ60は、運転停止状態に維持される。これにより、凍結運転制御が、第3運転制御から第1運転制御に移行される。
【0077】
この第1運転制御では、第3運転制御と同様に、暖房装置2に含まれる各第1暖房装置2aに備えられた第1流体用の流路の開閉弁(図示しない)は、閉弁状態に維持され、暖房装置2に含まれる各第2暖房装置2bに備えられた第1流体用の流路の開閉弁(図示しない)は、開弁状態に維持される。また、バイパス比調整弁55は、例えば前記熱交換器全開位置に制御される。このため、第1循環回路5での第1流体の循環は、第3運転制御と同様に行われる。そして、該第1流体が、ヒートポンプ40の凝縮器41で加熱される.この場合、ヒートポンプ40は、例えば、その出力が一定に維持されるように、図示しない圧縮機の作動制御等が行われる。このように第1運転制御が行われることによって、第1循環回路5内の第1流体が凍結するのが防止される。
【0078】
なお、第1運転制御でのバイパス比調整弁55は、熱交換器70の流路70aと第1バイパス路54との両方、あるいは、第1バイパス路54のみを上流側の第1流路51に開通させるように制御されてもよい。
【0079】
制御装置90は、上記の如く第1運転制御を実行しながら、STEP20において、前記温度センサ83により検出される外気温度が前記STEP15と同じ閾値温度T1b(-22℃)以上の温度に維持されているか否かを判断する。そして、このSTEP20の判断結果が否定的になった場合には、制御装置90は、前記STEP16からの処理を実行する。従って、第1運転制御の実行中に、外気温度の検出値が、閾値温度T1b(-22℃)よりも低い温度に低下した場合には、第2運転制御が開始される(凍結防止運転制御が、第1運転制御から第2運転制御に移行する)。
【0080】
また、STEP20の判定結果が肯定的である場合(外気温度≧T1b(-22℃)である場合)には、制御装置90は、第1運転制御を継続しながら、STEP21において、前記温度センサ82により検出されるHP流入側温度が前記STEP17で示した閾値温度T3a以上の温度に昇温したか否かを判断し、その判断結果が否定的である場合には、STEP20からの処理を繰り返す。
【0081】
そして、STEP21の判断結果が肯定的になると(HP流入側温度≧T3a(25℃)になると)、制御装置90は、STEP22においてヒートポンプ40の運転を停止させる(ヒートポンプ40をOFFにする)。この場合、制御装置90は、第1ポンプ50の運転を引き続き継続したままでSTEP11からの処理を再び実行する。これにより、第1運転制御が終了すると共に、第3運転制御が再開される(凍結防止運転制御が、第1運転制御から第3運転制御に移行する)。
【0082】
補足すると、本実施形態では、温度センサ82が本発明における第3温度センサに相当し、閾値温度T3aが本発明における第4閾値温度に相当する。なお、STEP17,21では、第1流体のHP流入側温度の検出値を閾値温度T3aと比較する代わりに、第1循環回路5の他の箇所の温度、例えば、暖房装置2の流路の出口近辺での第1流体の温度の検出値が、所定の閾値温度以上であるか否かを判断するようにしてもよいし、温度センサ81で検出される第1流体のHP流出側温度が所定の閾値温度以上であるか否かを判断するようにしてもよい。
【0083】
本実施形態の暖房システム1では、以上説明した如く凍結防止運転制御が制御装置90により実行される。かかる実施形態によれば、STEP15で、外気温度の検出値が閾値温度T1b(-22℃)よりも低い場合には、ヒートポンプ40の運転を行う第1運転制御は実行されずに、燃焼式加熱装置30の運転を行う第2運転制御が実行されるので、ヒートポンプ40が第1流体を加熱することが困難なほど、外気温度が低い状況でも、第1流体を適切に加熱して、その凍結を防止できる。
【0084】
また、STEP15で、外気温度の検出値が閾値温度T1b(-22℃)よりも高い場合には、燃焼式加熱装置30の運転を行う第2運転制御は実行されずに、ヒートポンプ40の運転を行う第1運転制御が実行されるので、ヒートポンプ40が第1流体を十分に加熱し得る外気温度では、ヒートポンプ40の運転により第1流体を適切に加熱して、その凍結を防止できる。このため、第1流体の凍結防止のためのエネルギーコストを抑制できる。
【0085】
また、ヒートポンプ40、あるいは、燃焼式加熱装置30の運転による第1流体の加熱を行わずとも、第1流体の凍結を防止し得ると判断される状況では、ヒートポンプ40及び燃焼式加熱装置30の運転を行わずに、第1ポンプ50の運転を行う第3運転制御が実行されるので、第1流体の凍結防止のためのエネルギー消費量を極力抑制できる。
【0086】
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態を採用することもできる。例えば、前記実施形態では、凍結防止運転制御として、第3運転制御を備えたが、該第3運転制御を省略してもよい。この場合の凍結防止運転制御では、例えば、図4のSTEP11の処理を省略すると共に、STEP16,19で第1ポンプ50の運転を行せることを追加し、さらに、STEP18,22で第1ポンプ50の運転を停止することを追加するという実施形態を採用し得る。
【0087】
また、前記実施形態では、暖房装置2の上流側で、ヒートポンプ40の下流側に熱交換器70を備えたが、ヒートポンプ40の上流側に熱交換器70を備えてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1…暖房システム(流体循環式加熱システム)、5…第1循環回路、6…第2循環回路、30…燃焼式加熱装置、40…ヒートポンプ、50…第1ポンプ、60…第2ポンプ、70…熱交換器、90…制御装置、81…温度センサ(第2温度センサ)、82…温度センサ(第3温度センサ)、83…温度センサ(第1温度センサ)。
図1
図2
図3
図4