IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイキン工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-熱交換ユニット 図1
  • 特許-熱交換ユニット 図2
  • 特許-熱交換ユニット 図3
  • 特許-熱交換ユニット 図4
  • 特許-熱交換ユニット 図5
  • 特許-熱交換ユニット 図6
  • 特許-熱交換ユニット 図7
  • 特許-熱交換ユニット 図8
  • 特許-熱交換ユニット 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】熱交換ユニット
(51)【国際特許分類】
   F25B 39/00 20060101AFI20240419BHJP
   F25B 13/00 20060101ALI20240419BHJP
   F28F 9/02 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
F25B39/00 M
F25B13/00 N
F28F9/02 301F
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021033433
(22)【出願日】2021-03-03
(65)【公開番号】P2022134359
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2022-03-01
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】加治 隆平
(72)【発明者】
【氏名】藤野 宏和
(72)【発明者】
【氏名】前田 尚志
【合議体】
【審判長】水野 治彦
【審判官】岩▲崎▼ 則昌
【審判官】間中 耕治
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-247582(JP,A)
【文献】特開2009-133624(JP,A)
【文献】特開2006-308151(JP,A)
【文献】特開平10-258508(JP,A)
【文献】特開平5-71807(JP,A)
【文献】実開昭60-55956(JP,U)
【文献】特開2015-114047(JP,A)
【文献】特開2006-153141(JP,A)
【文献】特開2004-324904(JP,A)
【文献】特開2013-122357(JP,A)
【文献】特開2004-108763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 39/00
F25B 13/00
F28F 9/02
F16K 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍サイクル装置(1)の熱交換ユニットであって、
冷媒が流れる複数の冷媒流路(120)と、
少なくとも1つの前記冷媒流路に設けられ、前記冷媒流路を流れる冷媒の流量を調整する流量調整部(140)と、
を備え、
前記流量調整部が冷媒を減圧する圧力範囲は、前記冷凍サイクル装置の動作中に生じる冷媒の高圧及び低圧の差の最大値である最大差圧値の1/20以下の範囲内である、
熱交換ユニット(100)。
【請求項2】
前記流量調整部が冷媒を減圧する圧力範囲は、前記最大差圧値の1/30以下の範囲内である、
請求項1に記載の熱交換ユニット。
【請求項3】
前記流量調整部は、最小開度時に、上流側及び下流側を連通させる細路を含む、
請求項1または2に記載の熱交換ユニット。
【請求項4】
前記流量調整部に所定値以上の差圧がかかると、前記流量調整部をバイパスするバイパス部(150)をさらに備える、
請求項1~3のいずれか1項に記載の熱交換ユニット。
【請求項5】
前記流量調整部は、印加電圧により作動し、
前記印加電圧をオン状態にする時間と、オフ状態にする時間と、を変えるように制御する制御部(28)をさらに備える、
請求項1~4のいずれか1項に記載の熱交換ユニット。
【請求項6】
前記流量調整部は、印加電圧により作動し、
前記印加電圧を増減させるように制御する制御部(28)をさらに備える、
請求項1~4のいずれか1項に記載の熱交換ユニット。
【請求項7】
前記流量調整部は、
冷媒の流入口(141a)と、冷媒の流出口(141b)と、前記流入口と前記流出口とを連通する流路(141c)と、を有する本体部(141)と、
印加電圧により変形する圧電性を有する材料で構成された圧電体(142b)と、前記圧電体と積層され、金属材料で構成された金属体(142a)と、を有する板状部材(142)と、
を含み、
前記本体部には、前記板状部材と対向する弁座(141d)が設けられ、
前記流路は、前記弁座と前記板状部材とで区画される調整流路(141c1)を有し、
印加電圧により前記圧電体に生じる変位により、前記調整流路の下流側の断面積を変える、
請求項1~6のいずれか1項に記載の熱交換ユニット。
【請求項8】
前記圧電体が変位する方向と、前記流入口における前記流路の延びる方向とは、交差する、
請求項7に記載の熱交換ユニット。
【請求項9】
前記流量調整部は、
前記圧電体と接続される電極(143)と、
前記電極と前記本体部とを絶縁する絶縁材料で構成された絶縁部材(144)と、
をさらに含み、
前記電極の一部は、前記本体部から大気中に突出する、
請求項7または8に記載の熱交換ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
熱交換ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特許5197819号)には、複数の冷媒流路を流れる冷媒を均等に分配する分配管を備える冷凍サイクル装置が開示されている。特許文献1の冷凍サイクル装置の分配器は、冷媒が流入する鉛直管と、この鉛直管に上下方向に並べて略水平に接続される複数の分岐管と、流量制御ユニットと、を備える。流量制御ユニットは、複数の分配管毎に設けられるキャピラリーチューブ及び流路制御弁を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の流路制御弁は、冷媒流路を開閉させている。このため、全閉時の圧力差が大きい場合に作動させるためには、流路制御弁は大型になってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点に係る熱交換ユニットは、冷凍サイクル装置の熱交換ユニットであって、複数の冷媒流路と、流量調整部と、を備える。複数の冷媒流路には、冷媒が流れる。流量調整部は、少なくとも1つの冷媒流路に設けられ、冷媒流路を流れる冷媒の流量を調整する。流量調整部は、冷凍サイクル装置の動作中に生じる冷媒の高圧及び低圧の差の最大値である最大差圧値の1/20以下の圧力範囲でのみ冷媒を減圧する。
【0005】
本発明者が大型化を抑制するために鋭意検討した結果、特許文献1の流路制御弁のように圧力差が大きい場合ではなく、圧力差が小さい場合に作動させる流量調整部を用いることに着眼して本開示を完成させた。第1観点に係る熱交換ユニットは、最大差圧値の1/20以下の圧力範囲でのみ冷媒を減圧する流量調整部を備える。このため、最大差圧値の1/20以下の圧力範囲でのみ冷媒を減圧する流量調整部を用いればよいので、流量調整部の大型化を抑制できる。したがって、熱交換ユニットの大型化を抑制できる。
【0006】
第2観点に係る熱交換ユニットは、第1観点の熱交換ユニットであって、流量調整部は、最大差圧値の1/30以下の圧力範囲でのみ冷媒を減圧する。
【0007】
第2観点に係る熱交換ユニットでは、最大差圧値の1/30以下の圧力範囲でのみ冷媒を減圧する流量調整部を用いればよいので、流量調整部の大型化をより抑制できる。
【0008】
第3観点に係る熱交換ユニットは、第1観点または第2観点の熱交換ユニットであって、流量調整部は、最小開度時に、上流側及び下流側を連通させる細路を含む。
【0009】
第3観点に係る熱交換ユニットでは、最小開度時にも冷媒を連通させることができるので、流量調整部における圧力差を低減できる。このため、流量調整部に求められる発生力を低減できる。したがって、流量調整部の大型化をより抑制できる。
【0010】
第4観点に係る熱交換ユニットは、第1観点から第3観点の熱交換ユニットであって、流量調整部に所定値以上の差圧がかかると、流量調整部をバイパスするバイパス部をさらに備える。
【0011】
第4観点に係る熱交換ユニットでは、所定値以上の差圧が流量調整部にかかると、冷媒をバイパス部に流すことができる。
【0012】
第5観点に係る熱交換ユニットは、第1観点から第4観点の熱交換ユニットであって、流量調整部は、印加電圧により作動する。熱交換ユニットは、印加電圧をオン状態にする時間と、オフ状態にする時間と、を変えるように制御する制御部をさらに備える。
【0013】
第5観点に係る熱交換ユニットでは、流量調整部を作動させる印加電圧のオン状態の時間とオフ状態の時間と、を変えるように制御することによって、冷媒の流量を調整することができる。
【0014】
第6観点に係る熱交換ユニットは、第1観点から第4観点の熱交換ユニットであって、流量調整部は、印加電圧により作動する。熱交換ユニットは、印加電圧を増減させるように制御する制御部をさらに備える。
【0015】
第6観点に係る熱交換ユニットでは、流量調整部を作動させる印加電圧を増減させるように制御することによって、冷媒の流量を調整することができる。
【0016】
第7観点に係る熱交換ユニットは、第1観点から第6観点の熱交換ユニットであって、流量調整部は、本体部と、板状部材と、を含む。本体部は、冷媒の流入口と、冷媒の流出口と、流入口と流出口とを連通する流路と、を有する。板状部材は、圧電体と、金属体と、を有する。圧電体は、印加電圧により変形する圧電性を有する材料で構成される。金属体は、圧電体と積層され、金属材料で構成される。本体部には、板状部材と対向する弁座が設けられる。流路は、弁座と板状部材とで区画される調整流路を有する。印加電圧により圧電体に生じる変位により、調整流路の下流側の断面積を変える。
【0017】
第7観点に係る熱交換ユニットでは、圧電体に電圧が印加されることで生じる変位により、調整流路の断面積を増やすことと、減らすことと、ができる。このため、所定の圧力範囲内において、冷媒の流量を容易に調整できる。
【0018】
第8観点に係る熱交換ユニットは、第7観点の熱交換ユニットであって、圧電体が変位する方向と、流入口における流路の延びる方向とは、交差する。
【0019】
第8観点に係る熱交換ユニットでは、圧電体に加えられる力を減らすことができるので、流量を調整できる範囲を広くすることができる。
【0020】
第9観点に係る熱交換ユニットは、第7観点または第8観点の熱交換ユニットであって、流量調整部は、電極と、絶縁部材と、をさらに含む。電極は、圧電体と接続される。絶縁部材は、電極と本体部とを絶縁する絶縁材料で構成される。電極の一部は、本体部から大気中に突出する。
【0021】
第9観点に係る熱交換ユニットでは、電極から圧電体に電圧を印加する構造を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態に係る熱交換ユニットを備える冷凍サイクル装置を示す概略構成図である。
図2】実施形態に係る熱交換ユニットの概略構成図である。
図3】実施形態に係る流量調整部を概略的に示す断面図である。
図4】実施形態に係る板状部材及び電極を概略構成図である。
図5】実施形態に係る板状部材及び電極を概略構成図である。
図6】実施形態に係る板状部材及び電極を概略構成図である。
図7】実施形態に係る制御を説明するための図である。
図8】変形例に係る流量調整部を概略的に示す断面図である。
図9】変形例に係る流量調整部を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示の一実施形態に係る熱交換ユニット、及び、熱交換ユニットを備える冷凍サイクル装置について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
(1)冷凍サイクル装置
(1-1)全体構成
図1に示すように、冷凍サイクル装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うことによって、建物等の室内の冷房及び暖房を行うことが可能な装置である。冷凍サイクル装置1は、主として、室外ユニット2と、室内ユニット3と、液冷媒連絡管4と、ガス冷媒連絡管5と、を備える。液冷媒連絡管4及びガス冷媒連絡管5は、室外ユニット2と室内ユニット3とを接続する。そして、冷凍サイクル装置1の蒸気圧縮式の冷媒回路6は、室外ユニット2と、室内ユニット3とが冷媒連絡管4、5を介して接続されることによって構成されている。
【0025】
(1-2)詳細構成
(1-2-1)室内ユニット
室内ユニット3は、室内(居室や天井裏空間等)に設置されており、冷媒回路6の一部を構成している。室内ユニット3は、主として、室内熱交換器31を有している。室内熱交換器31は、冷房運転時には冷媒の蒸発器として機能して室内空気を冷却し、暖房運転時には冷媒の放熱器として機能して室内空気を加熱する熱交換器である。室内熱交換器31の液側は液冷媒連絡管4に接続されており、室内熱交換器31のガス側はガス冷媒連絡管5に接続されている。
【0026】
(1-2-2)室外ユニット
室外ユニット2は、室外(建物の屋上や建物の壁面近傍等)に設置されており、冷媒回路6の一部を構成している。室外ユニット2は、主として、圧縮機21と、四路切換弁22と、室外熱交換器23と、室外膨張弁24と、アキュムレータ25と、液閉鎖弁26と、ガス閉鎖弁27と、を有している。
【0027】
圧縮機21は、低圧の冷媒を高圧になるまで圧縮する機器である。ここでは、圧縮機21として、ロータリ式やスクロール式等の容積式の圧縮要素(図示せず)が圧縮機用モータによって回転駆動される密閉式構造の圧縮機が使用されている。
【0028】
四路切換弁22は、室外ユニット2の内部配管の接続状態を切り替える。冷凍サイクル装置1が冷房運転を行う場合、四路切換弁22は、図1の破線で示される接続状態を実現する。冷凍サイクル装置1が暖房運転を行う場合、四路切換弁22は、図1の実線で示される接続状態を実現する。
【0029】
室外熱交換器23は、冷媒回路6を循環する冷媒と、室外空気との熱交換を行う。室外熱交換器23は、冷房運転時には冷媒の放熱器として機能し、暖房運転時には冷媒の蒸発器として機能する。
【0030】
図2に示すように、本実施形態の室外熱交換器23は、複数の熱交換部23a~23iを含む。熱交換部23a~23iは、冷媒と室外空気とが、熱交換を行う部分である。図2では、9つの熱交換部23a~23iが下から順に配置されている。熱交換部23a~23iは、冷媒が流れる冷媒流路と、室外空気と接する伝熱フィンと、を有する。各熱交換部23a~23iは、伝熱フィンを共有する。
【0031】
図1に戻り、室外膨張弁24は、開度調整が可能な電動弁または電磁弁である。室外膨張弁24は、室外ユニット2の内部配管を流れる冷媒を減圧させる。室外膨張弁24は、室外ユニット2の内部配管を流れる冷媒の流量を制御する。
【0032】
アキュムレータ25は、圧縮機21の吸入側の配管に設置される。アキュムレータ25は、冷媒回路6を流れる気液混合冷媒を、ガス冷媒と液冷媒とに分離して、液冷媒を貯留する。アキュムレータ25で分離されたガス冷媒は、圧縮機21の吸入ポートに送られる。
【0033】
液閉鎖弁26及びガス閉鎖弁27は、冷媒流路を遮断することが可能な弁である。液閉鎖弁26は、室内熱交換器31と室外膨張弁24との間に設置される。ガス閉鎖弁27は、室内熱交換器31と四路切換弁22との間に設置される。液閉鎖弁26及びガス閉鎖弁27は、例えば、冷凍サイクル装置1の設置時等において、作業者によって開閉される。
【0034】
制御部28は、熱交換ユニット100を含む室外ユニット2の構成機器を制御する。制御部28は、コンピュータにより実現されるものである。制御部28は、制御演算装置と記憶装置とを備える。制御演算装置には、CPUまたはGPUといったプロセッサを使用できる。制御演算装置は、記憶装置に記憶されているプログラムを読み出し、このプログラムに従って所定の画像処理や演算処理を行う。さらに、制御演算装置は、プログラムに従って、演算結果を記憶装置に書き込んだり、記憶装置に記憶されている情報を読み出したりすることができる。
【0035】
(1-2-3)冷媒連絡管
液冷媒連絡管4及びガス冷媒連絡管5は、冷媒回路6を備える冷凍サイクル装置1をビル等の設置場所に設置する際に、現地にて施工される冷媒管であり、設置場所や室外ユニット2と室内ユニット3との組み合わせ等の設置条件に応じて種々の長さや管径を有するものが使用される。
【0036】
なお、液冷媒連絡管4に流れる冷媒は、液体であってもよく、気液二相であってもよい。
【0037】
(1-3)動作
図1を参照して、冷凍サイクル装置1の動作について説明する。冷凍サイクル装置1では、冷房運転と、暖房運転と、が行われる。
【0038】
(1-3-1)暖房運転
冷凍サイクル装置1が暖房運転を行う場合、四路切換弁22が室外蒸発状態(図1の実線で示される状態)に切り換えられる。冷媒回路6において、冷凍サイクルの低圧のガス冷媒は、圧縮機21に吸入され、冷凍サイクルの高圧になるまで圧縮された後に吐出される。圧縮機21から吐出された高圧のガス冷媒は、四路切換弁22、ガス閉鎖弁27及びガス冷媒連絡管5を通じて、室内熱交換器31に送られる。室内熱交換器31に送られた高圧のガス冷媒は、室内熱交換器31において、室内空気と熱交換を行って放熱して、高圧の液冷媒になる。これにより、室内空気は加熱される。室内熱交換器31で放熱した液冷媒は、液冷媒連絡管4及び液閉鎖弁26を通じて、室外膨張弁24に送られる。室外膨張弁24に送られた冷媒は、室外膨張弁24によって冷凍サイクルの低圧まで減圧でされる。室外膨張弁で減圧された低圧の冷媒は、室外熱交換器23に送られる。室外熱交換器23に送られた低圧の冷媒は、冷媒の蒸発器として機能する室外熱交換器23において、室外空気と熱交換を行って蒸発して、低圧のガス冷媒となる。室外熱交換器23で蒸発した低圧の冷媒は、四路切換弁22及びアキュムレータ25を通じて、再び、圧縮機に吸入される。
【0039】
(1-3-2)冷房運転
冷凍サイクル装置1が冷房運転を行う場合、四路切換弁22が室外放熱状態(図1の破線で示される状態)に切り換えられる。冷媒回路6において、冷凍サイクルの低圧のガス冷媒は、圧縮機21に吸入され、冷凍サイクルの高圧になるまで圧縮された後に吐出される。圧縮機21から吐出された高圧のガス冷媒は、四路切換弁22を通じて、室外熱交換器23に送られる。室外熱交換器23に送られた高圧のガス冷媒は、冷媒の放熱器として機能する室外熱交換器23において、室外空気と熱交換を行って放熱して、高圧の液冷媒となる。この高圧の液冷媒は、室外膨張弁24、液閉鎖弁26及び液冷媒連絡管4を通じて、室内熱交換器31に送られる。室内熱交換器31に送られた冷媒は、冷媒の蒸発器として機能する室内熱交換器31において、室内空気と熱交換を行って蒸発して、低圧のガス冷媒になる。これにより、室内空気は冷却される。室内熱交換器31において蒸発したガス冷媒は、ガス冷媒連絡管5、ガス閉鎖弁27、四路切換弁22及びアキュムレータ25を通じて、再び、圧縮機21に吸入される。
【0040】
(2)熱交換ユニット
(2-1)全体構成
熱交換ユニット100は、上述した冷凍サイクル装置1に含まれる。本実施形態の熱交換ユニット100は、室外ユニット2に設けられる。このため、熱交換ユニット100は、室外熱交換器23を含む。
【0041】
図1及び図2に示すように、熱交換ユニット100は、主に、分流器110と、冷媒流路120と、ヘッダ130と、流量調整部140と、制御部28と、を備える。
【0042】
(2-2)詳細構成
(2-2-1)分流器
分流器110は、室外膨張弁24と室外熱交換器23との間に設けられる。図2では、分流器110は、熱交換部23a~23iの一端側(図2における左側)に配置されている。なお、図2では、分流器110は、熱交換部23a~23iの下方に図示されているが、熱交換部23a~23iの側方に配置されてもよい。
【0043】
分流器110は、暖房運転時に、冷媒回路6において室外熱交換器23に向かう冷媒を、図2の矢印に示すように、複数の冷媒流路120のそれぞれに分岐させる。この場合、分流器110には、液冷媒が流入する。図2では、分流器110により、9本の冷媒流路120a~120iに分岐されている。なお、分岐される冷媒流路の数は、特に限定されない。
【0044】
(2-2-2)冷媒流路
分流器110により分岐された複数の冷媒流路120a~120iには、冷媒が流れる。冷媒流路120は、内部に冷媒が流れる配管である。この配管の内径は、例えば10mm以下であり、好ましくは7mm以下である。各冷媒流路120a~120iの一端部は、分流器110に接続され、各冷媒流路120a~120iの他端部は、ヘッダ130に接続されている。
【0045】
図2に示す各冷媒流路120a~120iは、上下方向に延びる部分と、左右方向に延びる部分と、を有する。上下に延びる部分は、分流器110から上方に延びる。左右に延びる部分は、室外熱交換器23の熱交換部23a~23iの一部を構成する。言い換えると、室外熱交換器23の各熱交換部23a~23iは、各冷媒流路120a~120iを含む。ここでは、各熱交換部23a~23iには、上下に並ぶ3本の冷媒流路120a~120iがそれぞれ配置される。3本の冷媒流路120a~120iは、1つの冷媒流路が2回折り返されてなる。そして、複数の冷媒流路120a~120iには、共通の複数の伝熱フィンが配置される。
【0046】
(2-2-3)ヘッダ
ヘッダ130は、複数の冷媒流路120a~120iと接続される。ここでは、ヘッダ130は、熱交換部23a~23iの他端側(図2における右側)に立設されている。ヘッダ130は、筒状の部材である。
【0047】
ヘッダ130は、暖房運転時に、複数の冷媒流路120a~120iを流れる冷媒を合流させる。この場合、ヘッダ130には、ガス冷媒が流入する。このガス冷媒は、冷媒回路6において四路切換弁22に送られる。
【0048】
(2-2-4)流量調整部
流量調整部140は、少なくとも1つの冷媒流路120に設けられる。図2では、複数の冷媒流路120a~120iのそれぞれに、1つの流量調整部140a~140iが設けられている。言い換えると、流量調整部140の数は、複数の冷媒流路120の数と同じである。流量調整部140は、冷媒流路120である配管に取り付けられる。
【0049】
流量調整部140は、室外膨張弁24と室外熱交換器23との間に設けられる。具体的には、複数の流量調整部140a~140iは、分流器110と熱交換部23a~23iとの間に設けられる。この場合、偏流を防止できる。
【0050】
流量調整部140は、冷媒流路120を流れる冷媒の流量を調整する。言い換えると、流量調整部140は、開度に応じて、冷媒流路120を流れる冷媒の流量を増減させる。流量調整部140は、冷凍サイクル装置1の動作中に生じる冷媒の高圧及び低圧の差の最大値である最大差圧値の1/20以下の圧力範囲でのみ冷媒を減圧する。流量調整部140は、最大差圧値の1/30以下の圧力範囲でのみ冷媒を減圧することが好ましく、最大差圧値の1/40以下の圧力範囲でのみ冷媒を減圧することがより好ましい。なお、流量調整部140が冷媒を減圧する圧力範囲は、大型化を抑制する観点から、最大差圧値の1/20以下の範囲内で低いことが好ましいが、下限値は、例えば最大差圧値の1/200である。
【0051】
ここで、「最大差圧値」は、冷凍サイクル装置1の動作中に生じ得る冷媒の最も高い圧力と最も低い圧力との差である。具体的には、冷凍サイクル装置1の動作中に生じ得る最も高い圧力は、「使用する冷媒の設計圧力」である。冷凍サイクル装置1の動作中に生じ得る最も低い圧力は、「使用する環境下で発生する最低圧力」である。より具体的には、「最大差圧値」は、例えば0.1MPa以上4.3MPa以下である。
【0052】
流量調整部140は、流量調整部140が減圧できる最大圧力以下の圧力範囲において、流量を細かく調整できる。
【0053】
図3に示すように、流量調整部140は、主に、本体部141と、板状部材142と、電極143と、絶縁部材144と、側壁145と、を含む。本実施形態の流量調整部140は、室外膨張弁24に用いられる電磁弁または電動弁と異なり、圧電素子を用いている。このため、流量調整部140は、印加電圧により作動する。ここでは、流量調整部140は、電磁弁に使用される電磁コイルよりも小さい発生力のバイモルフ型圧電素子を用いている。
【0054】
本体部141は、冷媒流路120と連結されている。本体部141は、上本体部及び下本体部で構成される。上本体部及び下本体部は、1つの部材で構成されてもよいが、ここでは別部材で構成される。本体部141には、空間が形成されている。空間の一部は、冷媒が通る流路である。
【0055】
本体部141は、冷媒の流入口141aと、冷媒の流出口141bと、冷媒の流路141cと、弁座141dと、を有する。なお、以下の説明では、図3の矢印に示す暖房運転時の冷媒の流れを基準に、流入及び流出としている。
【0056】
本実施形態では、流入口141aは、一方端部(図3における右端部)に設けられ、流出口141bは、他方端部(図3における左端部)に設けられる。流入口141a及び流出口141bのそれぞれは、冷媒流路120と連通する。図3では、流入口141aの径は、冷媒流路120の径と同じである。また流出口141bの径は、冷媒流路120の径よりも小さい。
【0057】
流路141cは、流入口141aと流出口141bとを連通する。図3では、流路141cは、概ね右方向に延びる。流路141cは、調整流路141c1と、入口流路141c2と、出口流路141c3と、を有する。
【0058】
調整流路141cは、冷媒の流量を調整するために、断面積が変化する部分である。調整流路141c1は、弁座141dと板状部材142とで区画される。言い換えると、調整流路141c1は、弁座141dと板状部材142との間に設けられる隙間である。印加電圧により後述する圧電体142bに生じる変位により、調整流路141c1の下流側の断面積を変える。ここでは、印加電圧により板状部材142が変位することにより、調整流路141c1の下流側の断面積が変化する。
【0059】
調整流路141c1は、最小開度時に、上流側及び下流側を連通させる細路である。言い換えると、最小開度時でも、調整流路141c1には冷媒が流れる。
【0060】
入口流路141c2は、流入口141aと弁座141dとの間に形成される。図3では、入口流路141c2は、左側に向かって上方に傾斜する流路と、左右方向に延びる流路と、を有する。
【0061】
出口流路141c3は、弁座141dと流出口141bとの間に形成される。図3では、出口流路141c3は、流出口141bに向けて断面積が大きくなる。
【0062】
弁座141dは、弁体としての板状部材142と対向する。弁座141dは、冷媒の流量を調整するために上下に移動する板状部材142を受ける。
【0063】
弁体としての板状部材142は、弁座141dに近接する。板状部材142は、本体部141の空間に配置され、図3では左右方向に延びる。板状部材142は、一端部(図3における右端部)が支持されて、他端部(図3における左端部)が支持されていない、片持ちの構造を有する。具体的には、板状部材142の一端部は絶縁部材144に取り付けられた電極143に固定されている。板状部材142の他端部は、自由端を含み、弁座141dと対向する。
【0064】
板状部材142及び電極143は、圧電素子を構成する。図4図6に示すように、板状部材142は、金属体142aと、圧電体142bと、を有する。ここでは、板状部材142は、第1の圧電体142bと、第1の圧電体142b上に形成された金属体142aと、金属体142a上に形成された第2の圧電体142bと、を有する。
【0065】
金属体142aは、金属材料で構成されている。圧電体142bは、金属体142aと積層されている。また圧電体142bは、印加電圧により変形する圧電性を有する材料(圧電材料)で構成されている。長手方向において、金属体142aは、圧電体142bよりも長い。ここでは、金属体142a及び圧電体142bの他端(図4図6における左端)は揃っている。金属体142aの一端部(図4~6における右端部)は、圧電体142bの一端(図4~6における右端)から突出している。金属体142aは、プラスまたはマイナスの接点142a1を有する。
【0066】
なお、図3では、金属体142aの長手方向と、流入口141aが形成された冷媒流路120及び流出口141bが形成された冷媒流路120とは、互いに平行である。
【0067】
圧電体142bは、電圧が印加されると、圧電体142bの長手方向と交差する方向に変位する。具体的には、圧電体142bの自由端側の他端部は、図3図6における上下方向に変位する。具体的には、圧電体142bは、図4に示すように、左右方向にまっすぐに延びる状態と、図5に示すように、他端部が下方に移動した状態と、図6に示すように、他端部が上方に移動した状態と、になり得る。
【0068】
圧電体142bが変位する方向は、流入口141aにおける流路141cの延びる方向と交差する。図3では、流入口141aにおける流路141cの延びる方向は、左右方向(水平方向)に対して45度である。圧電体142bの変位する方向は、左右方向(水平方向)に対して180度である。
【0069】
また、板状部材142の積層方向と冷媒の流れ方向とは、交差する。ここでは、板状部材142の積層方向と冷媒の流れ方向とは、直交する。板状部材142の積層方向は、上下方向であるので、左右方向に対して180度である。冷媒の流れ方向は、圧電体142bの変位する他方端部(調整流路141c1)において冷媒が流れる方向であるので、左右方向に対して0度である。
【0070】
電極143は、圧電体142bと接続される。図4図6では、電極143は、圧電体142b及び金属体142aと接続される。具体的には、電極143は、第1接点143aと、第2接点143bと、を有する。第1接点143aは、上側の圧電体142bに接続されるプラスの接点である。第2接点143bは、下側の圧電体142bに接続されるマイナスの接点である。第1接点143a及び第2接点143bは、金属体142aの接点142a1と接続可能に構成されている。
【0071】
図4に示すように、金属体142aの接点142a1が第1接点143a及び第2接点143bに接続されていない場合には、圧電体142bに電圧が印加されない。この時には、圧電体142bは、左右方向にまっすぐ延びる。図5に示すように、接点142a1が第1接点143aに接続される場合には、第1接点143aと接続される圧電体142bにプラスの電圧が印加される。このオフ状態では、圧電体142bの他端部は下方に変位する。図6に示すように、接点142a1が第2接点143bに接続される場合には、第2接点143bと接続される圧電体142bにマイナスの電圧が印加される。このオン状態では、圧電体142bの他端部は上方に変位する。
【0072】
このように、圧電体142bを有する板状部材142は、印加電圧によって、図3において上下方向に変位する。これにより、板状部材142と弁座141dとで区画される調整流路141c1の断面積が変化する。言い換えると、板状部材142を変形させて、板状部材142と弁座141dとの隙間を変えることで、調整流路141c1の断面積を増減させる。具体的には、板状部材142が図4から図5に示すように下方に変位すると、調整流路141c1の断面積は減少するので、冷媒の流量を減らすことができる。板状部材142が図4から図6に示すように上方に変位すると、調整流路141c1の断面積は増加するので、冷媒の流量を増やすことができる。ここでは、板状部材142が最も下方に変位する最小開度時に、調整流路141c1は上流及び下流を連通させる。
【0073】
ここで、調整流路141c1の断面積は、例えば、1mm以上5mm以下である。板状部材142と弁座141dとの隙間の高さt(上下方向の距離)は、例えば、0mm以上1mm以下である。
【0074】
電極143は、導電性材料で構成される。また、電極143は、流量調整部140の動作圧力に耐えることができる。
【0075】
図3に示すように、電極143の一部は、本体部141から大気中に突出する。電極143の残部は、本体部141の内部に位置する。ここでは、電極143の一端部は、本体部141から大気中に露出している。電極143の他端部は、本体部141の内部に収容され、板状部材142に接続されている。
【0076】
絶縁部材144は、電極143と本体部141とを絶縁する。絶縁部材144は、絶縁材料で構成される。図3では、本体部141の右端の中央部の空間を閉じるように、絶縁部材144が配置されている。絶縁部材144により、気密性を保つことができる。
【0077】
側壁145は、絶縁部材144の上下のそれぞれに設けられる。側壁145は、金属で構成される。図3では、本体部141の左端の上部及び下部にも、側壁145が配置されている。
【0078】
(2-2-5)制御部
図1に示す制御部28は、熱交換ユニット100の流量調整部140を制御する。本実施形態では、制御部28は、図7に示すように、印加電圧をオン状態にする時間t1と、オフ状態にする時間t2と、を変えるように制御する。ここでは、流量調整部140へ入力する電気信号は、制御部28からのパルス信号であり、パルスの周期に対してオンの幅とオフの幅とを変更することで、印加電圧のオン時間t1及びオフ時間t2を変えている。
【0079】
具体的には、制御部28は、流量を減らす場合には、図5に示すように、接点142a1を第1接点143aに接続してオフ状態にするように、流量調整部140にパルス信号を送信する。制御部28は、オフ状態にする時間t2を制御する。また制御部28は、流量を増やす場合には、図6に示すように、第3接点142a1を第2接点143bに接続してオン状態にするように、流量調整部140にパルス信号を送信する。制御部28は、オン状態にする時間t1を制御する。
【0080】
制御部28は、冷媒流路120を流れる冷媒の温度を取得して、その温度から流量調整部140における冷媒の流量を増加させるか減少させるかを判断し、その判断に基づいて流量調整部140の開度を制御する。ここでは、制御部28は、暖房運転時における熱交換部23a~23iの冷媒流路120の出口近傍の冷媒の温度を取得する。具体的には、本実施形態では、制御部28は、熱交換部23a~23iの冷媒流路120の出口近傍に設けられた温度センサ、冷媒流路120を形成する配管の表面温度を非接触で検出するアレイセンサなどから、冷媒の温度を取得する。そして、制御部28は、複数の冷媒流路120a~120iの中で、相対的に温度が高い冷媒流路を流れる冷媒の量を増加するように、及び/又は、相対的に温度が低い冷媒流路を流れる冷媒の量を減少させるように、各流量調整部140a~140bの開度を制御する。
【0081】
(2-3)動作
次に、熱交換ユニット100における冷媒の流れについて説明する。
【0082】
(2-3-1)暖房運転
冷凍サイクル装置1が暖房運転を行う場合、室外膨張弁24で減圧された低圧の液冷媒は、図2に示す分流器110に流入する。分流器110に流入した液冷媒は、複数の冷媒流路120a~120iに分岐され、各流量調整部140a~140iに流入する。
【0083】
図3に示すように、各流量調整部140の流入口141aに流入した液冷媒は、入口流路141c2を通り、調整流路141c1に流入する。冷媒の流量を減らす場合には、制御部28により、図5に示すように、板状部材142の圧電体142bに印加電圧を加えて、板状部材142の他方端部を下方に変位させることにより、調整流路141c1の下流側の断面積を減らす。これにより、冷媒の流量を減らすことができる。また、冷媒の流量を増やす場合には、制御部28により、図6に示すように、板状部材142の圧電体142bに印加電圧を加えて、板状部材142の他方端部を上方に変位させることにより、調整流路141c1の下流側の断面積を増やす。これにより、冷媒の流量を増やすことができる。流量が調整された冷媒は、出口流路141c3を通り、流出口141bから冷媒流路120に流れる。冷媒流路120を流れる冷媒は、図2に示す各熱交換部23a~23iに流入する。
【0084】
各熱交換部23a~23iに流入した液冷媒は、各熱交換部23a~23iにおいて、室外空気と熱交換を行って蒸発してガス冷媒となり、ヘッダ130流入する。各熱交換部23a~23iを通った各冷媒流路120a~120iを流れる冷媒は、ヘッダ130で合流する。ヘッダ130で合流したガス冷媒は、四路切換弁22に向けて流れる。
【0085】
(2-3-2)冷房運転
冷凍サイクル装置1が冷房運転を行う場合、圧縮機21から吐出された高圧のガス冷媒は、四路切換弁22を通じて、図2に示すヘッダ130に流入する。ヘッダ130に流入したガス冷媒は、複数の冷媒流路120a~120iに分岐され、各熱交換部23a~23iに流入する。各熱交換部23a~23iに流入したガス冷媒は、熱交換部23a~23iにおいて、室外空気と熱交換を行って放熱して液冷媒となり、流量調整部140a~140iに流入する。
【0086】
図3に示すように、各流量調整部140の流出口141bに流入した液冷媒は、調整流路141c1に流入する。冷媒の流量を減らす場合には、制御部28により、図5に示すように、板状部材142の圧電体142bに印加電圧を加えて、板状部材142の他方端部を下方に変位させることにより、調整流路141c1の上流側(暖房運転時の下流側)の断面積を減らす。これにより、冷媒の流量を減らすことができる。また、冷媒の流量を増やす場合には、制御部28により、図6に示すように、板状部材142の圧電体142bに印加電圧を加えて、板状部材142の他方端部を上方に変位させることにより、調整流路141c1の上流側(暖房運転時の下流側)の断面積を増やす。これにより、冷媒の流量を増やすことができる。流量が調整された冷媒は、入口流路141c2を通り、流入口141aから冷媒流路120に流れる。図2に示す各冷媒流路120a~120iを流れ、冷媒流路120a~120iから流出した液冷媒は、分流器110に流入する。分流器110で合流した液冷媒は、室外膨張弁24に向けて流れる。
【0087】
(3)特徴
(3-1)
本実施形態に係る熱交換ユニット100は、冷凍サイクル装置1の熱交換ユニットであって、複数の冷媒流路120、120a~120iと、流量調整部140、140a~140iと、を備える。複数の冷媒流路120、120a~120iには、冷媒が流れる。流量調整部140、140a~140iは、少なくとも1つの冷媒流路120、120a~120iに設けられ、冷媒流路120、120a~120iを流れる冷媒の流量を調整する。流量調整部140、140a~140iは、冷凍サイクル装置1の動作中に生じる冷媒の高圧及び低圧の差の最大値である最大差圧値の1/20以下の圧力範囲でのみ冷媒を減圧する。
【0088】
本実施形態に係る熱交換ユニット100は、最大差圧値の1/20以下の圧力範囲でのみ冷媒を減圧する流量調整部140、140a~140iを備える。これにより、熱交換ユニット100の流量調整部140、140a~140iは、最大差圧値の1/20を超える圧力の大きな範囲で冷媒を減圧する必要がない。このように、最大差圧値の1/20以下の圧力の小さな範囲でのみ冷媒を減圧する流量調整部140、140a~140iを用いればよいので、流量調整部140、140a~140iの大型化を抑制できる。したがって、熱交換ユニット100の大型化を抑制できる。
【0089】
また、流量調整部140、140a~140iは、最大差圧値の1/20以下の圧力の小さな範囲でのみ冷媒を減圧するので、流量調整部140、140a~140iの簡素化を図ることができる。また、流量調整部140、140a~140iは、圧力が小さく、かつ狭い範囲でのみ冷媒を減圧するので、流量調整部140、140a~140iのコストを低減することができる。
【0090】
(3-2)
本実施形態では、流量調整部140、140a~140iは、最大差圧値の1/30以下の圧力範囲でのみ冷媒を減圧する。これにより、流量調整部140、140a~140iの大型化をより抑制できる。
【0091】
(3-3)
本実施形態では、流量調整部140、140a~140iは、最小開度時に、上流側及び下流側を連通させる細路を含む。ここでは、最小開度時にも冷媒を連通させることができるので、流量調整部140、140a~140iにおける圧力差を低減できる。このため、流量調整部140、140a~140iに求められる発生力を低減できる。したがって、流量調整部140、140a~140iの大型化をより抑制できる。
【0092】
(3-4)
本実施形態では、流量調整部140、140a~140iは、印加電圧により作動する。熱交換ユニット100は、印加電圧をオン状態にする時間t1と、オフ状態にする時間t2と、を変えるように制御する制御部28をさらに備える。これにより、冷媒の流量を容易に調整することができる。
【0093】
(3-5)
本実施形態では、流量調整部140、140a~140iは、本体部141と、板状部材142と、を含む。本体部141は、冷媒の流入口141aと、冷媒の流出口141bと、流入口141aと流出口141bとを連通する流路141cと、を有する。板状部材142は、圧電体142bと、金属体142aと、を有する。圧電体142bは、印加電圧により変形する圧電性を有する材料で構成される。金属体142aは、圧電体142bと積層され、金属材料で構成される。本体部141には、板状部材142と対向する弁座141dが設けられる。流路141cは、弁座141dと板状部材142とで区画される調整流路141c1を有する。印加電圧により圧電体142bに生じる変位により、調整流路141c1の下流側の断面積を変える。
【0094】
これにより、圧電体142bに電圧が印加されることで生じる変位により、調整流路141c1の断面積を増やすことと、減らすことと、ができる。このため、最大差圧値の1/20以下の圧力範囲内において、冷媒の流量を容易に調整できる。
【0095】
なお、圧電体142bの変位は、電磁コイルに比べて小さいが、本実施形態のように、流量の調整には適用できる。
【0096】
また、印加電圧を制御することにより、最大差圧値の1/20以下の範囲内において、圧電体142bを細かく変位させることができる。このため、流量調整部140、140a~140iは、流量調整部140が減圧できる最大圧力以下の圧力範囲において、冷媒の流量を細かく調整できる。
【0097】
(3-6)
本実施形態では、圧電体142bが変位する方向と、流入口141aにおける流路141cの延びる方向とは、交差する。これにより、圧電体142bに加えられる力を減らすことができるので、流量を調整できる範囲を広くすることができる。
【0098】
この観点から、板状部材142の変位する方向と、冷媒の流れ方向とが、直交することが好ましい。言い換えると、圧電体142bの長手方向と、入口流路141c2とが、平行であることが好ましい。さらに言い換えると、板状部材142の長手方向と水平な方向に流入口141aが位置することが好ましい。この場合、板状部材142の延びる方向に主に力が加えられるので、板状部材142に加えられる力を大幅に減らすことができる。
【0099】
なお、本発明者は、圧電体142bが変位する方向と、流入口141aにおける流路141cの延びる方向とが直交する板状部材142は、圧電体142bが変位する方向と、流入口141aにおける流路141cの延びる方向とが平行の板状部材142に比べて、流量調整範囲を約3倍広くすることができるという知見を有している。
【0100】
(3-7)
本実施形態では、流量調整部140、140a~140iは、電極143と、絶縁部材144と、をさらに含む。電極143は、圧電体142bと接続される。絶縁部材144は、電極143と本体部141とを絶縁する絶縁材料で構成される。電極143の一部は、本体部141から大気中に突出する。これにより、電極143から圧電体142bに電圧を印加する構造を実現できる。
【0101】
(4)変形例
(4-1)変形例A
上述した実施形態では、圧電体142bの変位する方向と、冷媒の流れ方向とが、交差する流量調整部140を例に挙げて説明したが、これに限定されない。本変形例の流量調整部140では、図8に示すように、圧電体142bの変位する方向と、冷媒の流れ方向とは、平行である。
【0102】
具体的には、本体部141に形成される調整流路141c1は、実施形態と同様に左右方向に延びる。入口流路141c2は、左右方向に延びる部分と、上下方向に延びる部分と、を有する。出口流路141c3は、上下方向に延びる部分と、左右方向に延びる部分と、を有する。このため、暖房運転時の流れを示す図8の矢印のように、流入口141aに流入した冷媒は、入口流路141c2において、左に向かって流れた後に、上に向かって流れ、調整流路141c1において左に向かって流れ、出口流路141c3において、下に向かって流れた後に、左に向かって流れる。このため、本変形例では、圧電体142bが変位する方向と、流入口141aにおける流路141cの延びる方向とは、平行である。
【0103】
(4-2)変形例B
(4-2-1)構成
図9に示す変形例Bの熱交換ユニットは、図8に示す変形例Aの熱交換ユニットと基本的には同様の構成を備えるが、バイパス部150をさらに備えている点において異なる。
【0104】
具体的にはバイパス部150は、流量調整部140に所定値以上の差圧がかかると、流量調整部140をバイパスする。本変形例のバイパス部150は、逆止弁であり、暖房運転時に機能し、冷房運転時に機能しない。
【0105】
バイパス部150は、本体部141の入口流路141c2と出口流路141c3とを仕切る突出部分に設けられる。バイパス部150は、入口流路141c2及び出口流路141c3の左右に延びる部分を連結する。
【0106】
バイパス部150は、冷媒が流れる流路部151と、流路部を遮断する遮断部152と、を有する。流路部151は、左右方向に延びる。遮断部152は、流路部151の内部に配置される。遮断部152は、ボール部材及び弾性部材を有する。ボール部材は、弾性部材と接続されている。流量調整部140に所定値未満の差圧がかかる時には、ボール部材が弾性部材で押さえられていて、流路部151をボール部材で遮断している。このため、冷媒は、流路部151に流れず、入口流路141c2、調整流路141c1及び出口流路141c3を流れる。一方、流量調整部140に所定値以上の圧力がかかると、ボール部材が移動して、流路部151が開放される。このため、流路部151は、入口流路141c2及び出口流路141c3と連通するので、流路部151に冷媒が流れる。
【0107】
なお、所定値は、最大差圧値の1/20以下であり、ここでは、流量調整部140が減圧できる最大圧力以下である。
【0108】
(4-2-2)特徴
本変形例では、流量調整部140、140a~140iに所定値以上の差圧がかかると、流量調整部140、140a~140iをバイパスするバイパス部150をさらに備える。これにより、所定値以上の差圧が流量調整部140、140a~140iにかかると、冷媒をバイパス部150に流すことができる。このため、熱交換ユニットの安全性を向上することができる。
【0109】
(4-3)変形例C
上述した実施形態では、制御部28は、流量調整部140を作動させる印加電圧のオン状態の時間とオフ状態の時間とを変えるように制御しているが、これに限定されない。本変形例では、制御部28は、印加電圧を増減させるように制御する。具体的には、流量調整部140へ入力する電気信号は、制御部28からの電圧を増減させる信号である。制御部28が電圧を増減させる信号を流量調整部140へ送ることで、流量調整部140の電極143に印加される電圧を増減させる。このような制御では、オン状態にかける電圧を変えることで、圧電体142bの変位を増減させることによって、冷媒の流量を調整することができる。
【0110】
(4-4)変形例D
上述した実施形態では、流量調整部140は圧電素子により冷媒の流量を調整しているが、これに限定されない。流量調整部140は、例えば、静電容量式の構造を有することにより、冷媒の流量を調整してもよい。
【0111】
(4-5)変形例E
上述した実施形態では、熱交換ユニット100は、室外ユニット2に設けられているが、これに限定されず、室内ユニット3に設けられてもよい。
【0112】
(4-6)変形例F
上述した実施形態では、流量調整部140a~140iは、分流器110と熱交換部23a~23iとの間に配置されているが、これに限定されない。例えば、流量調整部140a~140iは、熱交換部23a~23iとヘッダ130との間に配置されてもよい。
【0113】
(4-7)変形例G
上述した実施形態では、流量調整部140の数は、複数の冷媒流路120の数と同じであるが、これに限定されない。流量調整部140は、複数の冷媒流路120のうちの少なくとも1つに配置されていればよい。ただし、流量調整部140の数をxとし、複数の冷媒流路の数をyとすると、xは、yと同じ、または、y-1であることが好ましい。y-1の場合、1つの冷媒流路には、流量調整部140が配置されておらず、残部の冷媒流路には、1つの流量調整部140が配置される。
【0114】
(4-8)変形例H
上述した実施形態では、室外熱交換器23の熱交換部23a~23iは、フィンを共有しているが、これに限定されない。本変形例では、熱交換部23a~23iの下方に位置する熱交換部23a、23bが共有するフィンと、中央及び上方に位置する熱交換部23c~23hが共有するフィンとは、分離している。
【0115】
(4-9)変形例I
上述した実施形態では、冷凍サイクル装置1の室内ユニット3は1つの室内熱交換器31を含んでいるが、これに限定されない。本変形例の室内ユニット3は、複数の室内熱交換器を含む。
【0116】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0117】
1 :冷凍サイクル装置
2 :室外ユニット
3 :室内ユニット
28 :制御部
100 :熱交換ユニット
110 :分流器
120,120a,120b,120c,120d,120e,120f,120g,120h,120i :冷媒流路
140,140a,140b,140c,140d,140e,140f,140g,140h,140i :流量調整部
141 :本体部
141a :流入口
141b :流出口
141c :流路
141c1 :調整流路
141d :弁座
142 :板状部材
142a :金属体
142b :圧電体
143 :電極
144 :絶縁部材
145 :側壁
150 :バイパス部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0118】
【文献】特許5197819号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9