(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】地盤補強構造及び地盤補強工法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/28 20060101AFI20240419BHJP
E02D 5/80 20060101ALI20240419BHJP
E02D 17/18 20060101ALI20240419BHJP
E02D 17/20 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
E02D27/28
E02D5/80 Z
E02D17/18 Z
E02D17/20 103Z
(21)【出願番号】P 2021113483
(22)【出願日】2021-07-08
【審査請求日】2023-03-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ウェブサイトにて掲載(令和3年6月30日)https://confit.atlas.jp/guide/event/jgs56/subject/13-7-4-01/advanced
(73)【特許権者】
【識別番号】517419445
【氏名又は名称】ヒロセ補強土株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】疋田 信晴
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-209334(JP,A)
【文献】特開2001-146743(JP,A)
【文献】特開2003-268767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/28
E02D 5/80
E02D 17/18
E02D 17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の下部の地盤を補強する地盤補強構造であって、
地盤中に貫入し周囲を充填材によって固化した補強芯材と、前記補強芯材の上部に連結する受圧体と、からなる補強材を複数有し、
前記構造物の底面の直下に、砂質土、砕石、改良土、軽量盛土材等の粒状の埋め戻し材からなる応力伝達層を有し、
前記応力伝達層内に、前記受圧体を配置
し、
前記補強芯材の上部は前記受圧体を貫通し、
貫通した前記補強芯材には、前記受圧体の上下において締結部材を固定し、
前記締結部材と前記受圧体との間に、前記受圧体側の面が球面状である球面座金を設け、
前記球面座金と前記締結部材との間に、可撓性を有する可撓座金を設けることを特徴とする、
地盤補強構造。
【請求項2】
前記補強芯材の上部は前記受圧体を貫通し、
貫通した前記補強芯材には、前記受圧体の上下において締結部材を固定し、
前記締結部材と前記受圧体との間に、可撓性を有する可撓座金を設けることを特徴とする、
請求項1に記載の地盤補強構造。
【請求項3】
地盤の地表面を掘削する工程と、
前記地盤中に小径の補強芯材を貫入してその周囲を充填材により固化し、前記補強芯材の上部に受圧体を連結する、補強材配置工程と、
掘削した前記地盤の上面に、砂質土、砕石、改良土、軽量盛土材等の粒状の埋め戻し材を埋め戻して受圧体を埋設
して応力伝達層を構築する、応力伝達層構築工程と、から
なり、
前記補強芯材の上部は前記受圧体を貫通し、
貫通した前記補強芯材には、前記受圧体の上下において締結部材を固定し、
前記締結部材と前記受圧体との間に、前記受圧体側の面が球面状である球面座金を設け、
前記球面座金と前記締結部材との間に、可撓性を有する可撓座金を設ける、
地盤補強工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物を支持する地盤を補強する、地盤補強構造及び地盤補強工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物や、橋梁橋台・橋脚、擁壁、えん堤等の構造物を支持する地盤の強度が不足する場合の対策として、以下の二つが主に行われている。
(1)地盤中に杭を配置し、杭により構造物を支持する杭基礎工
(2)改良材を用いて地盤の強度を高めて構造物を支持する地盤改良工
この二つはともに大型の機械が必要であり、山間地の斜面や、谷間、都市部の狭小な現場での施工は困難である。また、これらの工法を適用できない地盤もある。
【0003】
ところで、切土のり面や地山、盛土等を補強して安定化する方法の一つとして、地盤に削孔した孔に充填材を充填し、その孔に補強材を挿入し、充填材を固化して杭を形成する、ルートパイル工法が広く知られている。
ルートパイル工法は、小型のボーリングマシンにより極小径(φ200mm以下)の補強材を打設するものであり、特に、狭小な現場での施工に用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のルートパイル工法による補強工法の場合、
図5のように杭頭部に定着部材を設けて構造物に埋設することが一般的である。
ルートパイル工法による構造物の地盤補強工法には、以下のような制限がある。
(1)杭基礎は構造物の作用力全てを伝達されて負担するものであるが、φ200以下の極小径の補強材は曲げ剛性が低く、杭基礎としては成立しない。
(2)杭頭部と構造物が剛接合であり補強材に曲げモーメントが作用するが、補強材は曲げ剛性が低いため、変形や破断が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、補強材による構造物の支持負担を軽減しつつ、高い支持性能が得られる、地盤構造及び地盤補強工法を提供することを目的とする。
さらに本発明は、小型の機械で施工が可能な小径杭により補強を行うことができる、地盤補強構造及び地盤補強工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた本願発明は、構造物の下部の地盤を補強する地盤補強構造であって、地盤中に貫入し周囲を充填材によって固化した補強芯材と、前記補強芯材の上部に連結する受圧体と、からなる補強材を複数有し、前記構造物の底面の直下に、砂質土、砕石、改良土、軽量盛土材等の粒状の埋め戻し材からなる応力伝達層を有し、前記応力伝達層内に、前記受圧体を配置し、前記補強芯材の上部は前記受圧体を貫通し、貫通した前記補強芯材には、前記受圧体の上下において締結部材を固定し、前記締結部材と前記受圧体との間に、前記受圧体側の面が球面状である球面座金を設け、前記球面座金と前記締結部材との間に、可撓性を有する可撓座金を設けることを特徴とする。
【0007】
また、本願発明の地盤補強工法は、地盤の地表面を掘削する工程と、前記地盤中に小径の補強芯材を貫入してその周囲を充填材により固化し、前記補強芯材の上部に受圧体を連結する、補強材配置工程と、掘削した前記地盤の上面に、砂質土、砕石、改良土、軽量盛土材等の粒状の埋め戻し材を埋め戻して受圧体を埋設して応力伝達層を構築する、応力伝達層構築工程と、からなり、前記補強芯材の上部は前記受圧体を貫通し、貫通した前記補強芯材には、前記受圧体の上下において締結部材を固定し、前記締結部材と前記受圧体との間に、前記受圧体側の面が球面状である球面座金を設け、前記球面座金と前記締結部材との間に、可撓性を有する可撓座金を設ける。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、上記した課題を解決するための手段により、次のような効果の少なくとも一つを得ることができる。
(1)構造物の荷重を応力伝達層によって補強材と下部の地盤に伝達し、補強材と下部の地盤で分担して構造物を支持するため、大きな構造物であっても支持することができる。
(2)補強材は杭基礎工や地盤改良工に用いられる機械よりも小型の機械で施工できるため、山間地の斜面や、谷間、都市部の狭小な現場での施工が可能である。
(3)杭基礎工や地盤改良工を適用できない地盤であっても、構造物を支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
[1]地盤補強構造
<1>全体構成
本発明の地盤補強構造は、構造物1を支持する地盤を補強して構造物1を安定支持するものである。
本発明の地盤補強構造は、構造物1の下部に複数の補強材2を配置する。また、構造物1の下部のうち補強材2を配置する底面11の下部には、応力伝達層3を有する(
図1)。
本実施例においては、構造物1として砂防えん堤を対象としているが本発明の地盤補強構造はそれに限定されず、建築物や、橋梁橋台・橋脚、擁壁等の種々の構造物に適用できる。
【0012】
<2>補強材
補強材2は、地盤にボーリングマシンにより削孔した孔内に補強芯材21を挿入して配置し、孔内に充填材を充填して硬化して構成する。ボーリングマシンは杭基礎工や地盤改良工に用いられる機械よりも小型であり、山間地の斜面や、谷間、都市部の狭小な現場での施工が可能である。
補強芯材21は、異形棒鋼やPC鋼棒、中空パイプ等の棒材の外周面を雄ネジ状に形成し、1本又は複数本を接合して長尺とすることができるものである。中空パイプの接合の場合は、カップラーを用いた嵌め込み方式を使用することもできる。また、補強芯材21の外周面は、雄ネジ状の他、充填材との付着力を高めるための連続した突起や独立した窪み・突起を有してもよい。
補強芯材21の上部には、受圧体22を設ける。
充填材は、孔内に充填して硬化することにより、補強芯材21と周囲の地盤とを一体とするものである。充填材は、セメントミルク、モルタル等の固化剤であり、膨張材を混和したものであり、硬化時に孔内で膨張するように構成するものがより好ましい。
補強芯材21は地盤下の支持層まで到達させ、充填材を介した周面摩擦で定着する。なお、周面摩擦で定着できる場合には支持層まで到達させないこともある。
【0013】
<3>受圧体
受圧体22は板状の部材であり、作用する力を補強芯材21に伝達する部材である(
図2)。本実施例においては、外周が八角形の板体で内部に格子を形成したが、形状はこれに限定されず、円形、四角形その他多角形等のプレート状、コマ状、円錐・角錐状であり、で形状の違いにより作用する応力に合わせて選定する。また、受圧体22の材質は、コンクリー卜製や、鋼製、樹脂製、木質材料等、作用する応力や、施工条件により選定する。
受圧体22に寸法は、0.3m~1.5mを標準とする。
補強材2は複数配置するが、隣り合う補強材2の受圧体22が接しないよう配置し、0.5~2.0mの間隔をとるのが好ましい。
【0014】
受圧体22は、中央に貫通孔を設け、貫通孔に補強芯材21の上部を貫通する(
図3)。
補強芯材21には、受圧体22の上下に締結部材221a、bを固定する。締結部材221a、bは、補強芯材21の外周面の雄ネジに螺合する。また、補強芯材21が中空パイプの場合には、アタッチメントを雄ネジに取り付けて、該アタッチメントにより受圧体22を固定・挟持する。
締結部材221a、bと受圧体22との間には、球面座金222a、bと可撓座金223a、bをそれぞれ設けて、受圧体22を上下から挟持することで、受圧体22を補強芯材21に連結する。
球面座金222a、bは受圧体22と接する面が球面状の座金である。
受圧体22の貫通孔と補強芯材21との間に隙間があり、受圧体22に接する球面座金222a、bが球面状のため、受圧体22に補強芯材21の軸方向以外の力が作用した場合、球面座金222a、bと可撓座金223a、bがヒンジの作用をし、受圧体22が補強芯材21に対して傾斜し、補強芯材21には軸応力のみが伝わる。
なお、球面座金222a、bを用いず、可撓座金223a、bにより受圧体22を上下から挟持し、可撓座金223a、bの可撓性により受圧体22が補強芯材21に対して傾斜可能な構成としてもよい。
【0015】
<4>応力伝達層
補強芯材21に連結した受圧体22の上には、埋め戻し材を埋め戻して応力伝達層3を形成する。応力伝達層3の上に構造物1を構築するため、構造物1の底面11と受圧体22および補強芯材21を貫入した地盤の間に応力伝達層3が位置する(
図4)。
応力伝達層3を形成する埋め戻し材は砕石や砂質土、改良土、軽量盛土材等の粒状材料で、補強材2周辺の地盤より十分に高いせん断強度を有する材料であり、受圧体22が補強芯材21に対して傾斜することを妨げない。
応力伝達層3は構造物1から作用する応力を補強芯材21や地盤に伝達するものであり、埋め戻し材の材質や応力伝達層3の厚さは、構造物1の仕様や、許容変位量、施工条件により使い分け、作用する応力の伝達効率を制御する。
【0016】
補強材2は応力伝達層3内の受圧体22により伝達された作用力を地盤下の支持層へ伝達する。このとき、受圧体22が補強芯材21に対して傾斜し、補強芯材21には軸方向の力のみが伝わるため、φ200以下の極小径の補強材2であっても、曲げにより破損することがない。
また、補強材2だけでなく、応力伝達層3が下部の地盤にも力を伝達し、補強材2と下部の地盤で分担して構造物1を支持するため、大きな構造物1であっても支持することができる。
杭基礎工や地盤改良工を適用できない地盤であっても、構造物を支持することができる。
【符号の説明】
【0017】
1 構造物、11 底面
2 補強材、21 補強芯材、22 受圧体、221 締結部材、222 球面座金、223 可撓座金
3 応力伝達層