(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】漏電検出方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/52 20200101AFI20240419BHJP
G01R 31/56 20200101ALI20240419BHJP
【FI】
G01R31/52
G01R31/56
(21)【出願番号】P 2021195289
(22)【出願日】2021-12-01
【審査請求日】2023-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】古川 公彦
(72)【発明者】
【氏名】矢野 準也
【審査官】小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-153301(JP,A)
【文献】特開2013-134120(JP,A)
【文献】特開2009-81964(JP,A)
【文献】特開2007-327856(JP,A)
【文献】特開2020-134295(JP,A)
【文献】特開2016-38357(JP,A)
【文献】特開2007-149561(JP,A)
【文献】特開2006-25502(JP,A)
【文献】特開2005-338010(JP,A)
【文献】特開平8-294225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/50-31/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電源が電気的に接続された電源ユニットにおける漏電箇所を検出する漏電検出方法であって、
前記電源ユニットの所定の位置に接続された基準端子と前記漏電箇所との電位差である漏電電圧V
Lを算出する漏電電圧測定工程と、
前記漏電電圧V
Lに基づいて前記漏電箇所を特定する漏電箇所特定工程と
を備え
ており、
前記電源ユニットの所定の位置に接続された第1端子と、前記第1端子とは電位の異なる箇所に接続された第2端子との電位差である基準電位差V
S
を取得する基準電位差取得工程をさらに備え、
前記漏電電圧測定工程は、前記基準端子として前記第1端子と前記第2端子の何れか一方を選択し、前記基準端子と前記漏電箇所との電位差である漏電電圧V
L
を算出し、
前記漏電箇所特定工程は、前記基準電位差V
S
に対する前記漏電電圧V
L
の比率(V
L
/V
S
)に基づいて前記漏電箇所を特定し、
前記第1端子と前記第2端子との間に接続され、前記基準電位差V
S
を検出する基準電位差検出部と、
前記第1端子と前記第2端子の各々に接続され、中間点においてグラウンドと接続されており、前記グラウンドを介した前記第1端子と前記漏電箇所との電位差に相当する第1グラウンド電圧V
g(t1)
と、前記グラウンドを介した前記第2端子と前記漏電箇所との電位差に相当する第2グラウンド電圧V
g(t2)
を検出する漏電電圧検出部と
を備えた漏電検出回路を用い、
前記漏電電圧検出部は、
前記第1端子側に接続された第1スイッチと、
前記第1スイッチと前記中間点との間に設けられた第1の電圧検出抵抗と、
前記第2端子側に接続された第2スイッチと、
前記第2スイッチと前記中間点との間に設けられた第2の電圧検出抵抗と
を備えており、
前記電源ユニットは、
外部機器と接続可能に開放された正極端子である総プラス端子と、
前記外部機器と接続可能に開放された負極端子である総マイナス端子と
を備えており、
前記総プラス端子に前記第1端子を接続し、前記総マイナス端子に前記第2端子を接続し、かつ、前記総プラス端子と前記総マイナス端子との電位差である前記電源ユニットの総電圧V
t
を前記基準電位差V
S
とし、
前記漏電電圧測定工程は、
前記第1スイッチをONにして前記第2スイッチをOFFにした状態の前記漏電電圧検出部において前記第1グラウンド電圧V
g(t1)
を検出すると共に、前記基準電位差検出部において第1総電圧V
t(t1)
を測定する第1測定工程と、
前記第1スイッチをOFFにして前記第2スイッチをONにした状態の前記漏電電圧検出部において前記第2グラウンド電圧V
g(t2)
を検出すると共に、前記基準電位差検出部において第2総電圧V
t(t2)
を測定する第2測定工程と、
前記第1グラウンド電圧V
g(t1)
と、前記第1総電圧V
t(t1)
と、前記第2グラウンド電圧V
g(t2)
と、前記第2総電圧V
t(t2)
とに基づいて前記漏電電圧V
L
を算出する漏電電圧算出工程と
を備えている、漏電検出方法。
【請求項2】
下記の式(1)および式(2)に基づいて、前記総マイナス端子を基準端子としたときの前記漏電電圧V
Lを算出する、
請求項1に記載の漏電検出方法。
【数1】
【数2】
【請求項3】
下記の式(1)’および式(2)に基づいて、前記総プラス端子を基準端子としたときの前記漏電電圧V
Lを算出する、
請求項1に記載の漏電検出方法。
【数3】
【数4】
【請求項4】
複数の電源が電気的に接続された電源ユニットにおける漏電箇所を検出する漏電検出方法であって、
前記電源ユニットの所定の位置に接続された基準端子と前記漏電箇所との電位差である漏電電圧V
L
を算出する漏電電圧測定工程と、
前記漏電電圧V
L
に基づいて前記漏電箇所を特定する漏電箇所特定工程と
を備えており、
前記電源ユニットの所定の位置に接続された第1端子と、前記第1端子とは電位の異なる箇所に接続された第2端子との電位差である基準電位差V
S
を取得する基準電位差取得工程をさらに備え、
前記漏電電圧測定工程は、前記基準端子として前記第1端子と前記第2端子の何れか一方を選択し、前記基準端子と前記漏電箇所との電位差である漏電電圧V
L
を算出し、
前記漏電箇所特定工程は、前記基準電位差V
S
に対する前記漏電電圧V
L
の比率(V
L
/V
S
)に基づいて前記漏電箇所を特定し、
前記第1端子と前記第2端子との間に接続され、前記基準電位差V
S
を検出する基準電位差検出部と、
前記第1端子と前記第2端子の各々に接続され、中間点においてグラウンドと接続されており、前記グラウンドを介した前記第1端子と前記漏電箇所との電位差に相当する第1グラウンド電圧V
g(t1)
と、前記グラウンドを介した前記第2端子と前記漏電箇所との電位差に相当する第2グラウンド電圧V
g(t2)
を検出する漏電電圧検出部と
を備えた漏電検出回路を用い、
前記漏電電圧検出部は、
前記第1端子側に接続された第1スイッチと、
前記第1スイッチと前記中間点との間に設けられた第1の電圧検出抵抗と、
前記第2端子側に接続された第2スイッチと、
前記第2スイッチと前記中間点との間に設けられた第2の電圧検出抵抗と
を備えており、
前記電源ユニットは、隣接した2つの前記電源を電気的に接続する接続部材を複数備えており、
複数の前記接続部材の一つに前記第1端子を接続し、前記第1端子が接続された接続部材とは異なる接続部材に前記第2端子を接続し、
下記の式(3)および式(4)に基づいて、前記第2端子を基準端子としたときの前記漏電電圧V
Lを算出する
、漏電検出方法。
【数5】
【数6】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏電検出方法に関する。詳しくは、複数の電源が電気的に接続された電源ユニットにおける漏電箇所を検出する漏電検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池や発電素子等の電源は、当該電源を複数接続した電源ユニットの形態で使用されることがある。この種の電源ユニットは、出力電圧が非常に高いため、安全性を考慮してグラウンドから絶縁される。しかしながら、使用状況によっては、電源の故障や異物(水分や金属片等)の混入などによってグラウンドと電源とが導通する漏電が生じることもあり得る。この場合には、漏電箇所を早期に特定して部品交換や異物の除去などの修理を行うことが求められる。このため、電源ユニットに対しては、絶縁部分の電気抵抗を測定して漏電を検出する漏電検出技術が用いられることがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、電動車両用の漏電検出回路が開示されている。この特許文献1では、複数の二次電池(電源)を備えた組電池(電源ユニット)を検査対象としている。そして、この漏電検出回路は、組電池の高電圧側に接続している第1の漏電検出スイッチと、低電圧側に接続している第2の漏電検出スイッチと、第1の漏電検出スイッチと第2の漏電検出スイッチを交互にオンオフに切り換える制御回路と、第1の漏電検出スイッチと第2の漏電検出スイッチを介して組電池に接続されて、中間点をグラウンドに接続している漏電検出抵抗と、この漏電検出抵抗のグラウンドよりも高電圧側と低電圧側の漏電電圧を検出する電圧検出回路と、電圧検出回路の出力を演算して漏電を検出する演算回路とを備えている。この漏電検出回路は、第1の漏電検出スイッチをオンとして第2の漏電検出スイッチをオフに制御する状態で第1の漏電電圧を検出すると共に、第1の漏電検出スイッチをオフとして第2の漏電検出スイッチをオンに制御する状態で第2の漏電電圧を検出する。そして、この漏電検出回路の演算回路は、第1の漏電電圧と第2の漏電電圧と組電池の総電圧とに基づいて漏電抵抗を検出している。
【0004】
また、特許文献2には、漏電検出回路の他の例が開示されている。この特許文献2においても組電池を検査対象としている。かかる漏電検出回路は、複数の電池ユニットの間の接続点に接続されて、測定抵抗とスイッチング素子の直列回路を介して接続点をグラウンドに接続する複数の回路ブロックと、回路ブロックの測定抵抗の電圧を検出する抵抗電圧検出回路と、各々の回路ブロックのスイッチング素子をコントロールする制御回路と、抵抗電圧検出回路の検出電圧から漏電を検出する漏電判別回路とを備えている。上記構成の漏電検出回路は、複数の回路ブロックのスイッチング素子のON/OFFを順次切り換え、抵抗電圧検出回路において測定抵抗の電圧が検出された回路ブロックを検出する。これによって、漏電が発生した電池ユニットを特定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-327856号公報
【文献】特開2007-149561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の漏電検出技術には改良の余地があり、漏電箇所の詳細な特定を低コストかつ簡便に行うことができる技術が求められていた。
【0007】
例えば、特許文献1に記載の技術は、使用する電圧検出回路が1組のみであるため、低コストかつ簡便に漏電の発生を検出できるといえる。しかし、特許文献1に記載の技術では、多数の二次電池(電源)のどの部分で漏電が生じているかを特定することが困難である。具体的には、特許文献1に記載の技術では、算出した漏電抵抗が所定の閾値よりも小さくなった場合に漏電が生じていると判定しているが、詳細な漏電箇所の特定を行っていない。このため、特許文献1に記載の技術のみでは、修理対象となる漏電箇所を特定することが難しく、詳細な漏電箇所を特定するために他の技術を併用する必要がある。
【0008】
一方、特許文献2に記載の技術では、複数の電池ユニットの各々の間に接続された回路ブロックのON/OFFを順次切り換えながら漏電の検出を行っている。これによって、電池ユニット(直列接続された複数個の電池)の単位で漏電箇所を特定できる。しかしながら、この種の漏電検出技術を利用して1個の電源レベルの詳細な漏電箇所の特定を行うには、多数(例えば100個前後)の電源の全てに漏電検出用の回路ブロックを取り付ける必要が生じるため、漏電検出回路の複雑化や高コスト化の原因となる。
【0009】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、漏電箇所の詳細な特定を低コストかつ簡便に行うことができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を実現するべく、ここに開示される漏電検出方法が提供される。
【0011】
ここに開示される漏電検出方法は、複数の電源が電気的に接続された電源ユニットにおける漏電箇所を検出する。かかる漏電検出方法は、電源ユニットの所定の位置に接続された基準端子と漏電箇所との電位差である漏電電圧VLを算出する漏電電圧測定工程と、漏電電圧VLに基づいて漏電箇所を特定する漏電箇所特定工程とを備えている。
【0012】
ここに開示される漏電検出方法は、電源ユニットの任意の位置に接続された基準端子と漏電箇所との電位差である漏電電圧VLに着目した方法である。具体的には、一般的な構成の電源ユニットでは、基準端子から遠い位置で漏電が生じている場合、基準端子と漏電箇所との間に存在する電源の数が多くなるため漏電電圧VLが高くなる。一方、基準端子から近い位置で漏電が生じている場合、基準端子と漏電箇所との間に存在する電源の数が少なくなるため漏電電圧VLが低くなる。このため、漏電電圧VLを算出することによって、基準端子と漏電箇所との間に存在する電源の数を推定して漏電箇所を容易に特定できる。そして、ここに開示される漏電検出方法は、基準端子と漏電箇所との電位差(漏電電圧VL)を検出するだけで漏電箇所を特定できるため、複数の電源の全てに漏電検出用の回路を設ける必要がない。以上のように、ここに開示される漏電検出方法によると、漏電箇所の詳細な特定を低コストかつ簡便に行うことができる。
【0013】
ここに開示される漏電検出方法の一態様では、電源ユニットの所定の位置に接続された第1端子と、第1端子とは電位の異なる箇所に接続された第2端子との電位差である基準電位差VSを取得する基準電位差取得工程をさらに備え、漏電電圧測定工程は、基準端子として第1端子と第2端子の何れか一方を選択し、基準端子と漏電箇所との電位差である漏電電圧VLを算出し、漏電箇所特定工程は、基準電位差VSに対する漏電電圧VLとの比率(VL/VS)に基づいて漏電箇所を特定する。本態様において接続した第1端子と第2端子との間に存在する電源の数は一定であるため、当該第1端子と第2端子との間の基準電位差VSは漏電や充電状況の影響を受けにくい。このため、漏電電圧VLと基準電位差VSとの比率(VL/VS)を算出することによって、基準端子と漏電箇所との間に存在する電源の数をより正確に特定できる。
【0014】
ここに開示される漏電検出方法の一態様では、第1端子と第2端子との間に接続され、基準電位差VSを検出する基準電位差検出部と、第1端子と第2端子の各々に接続され、中間点においてグラウンドと接続されており、グラウンドを介した第1端子と漏電箇所との電位差に相当する第1グラウンド電圧Vg(t1)と、グラウンドを介した第2端子と漏電箇所との電位差に相当する第2グラウンド電圧Vg(t2)を検出する漏電電圧検出部とを備えた漏電検出回路を用いる。上記構成の漏電検出回路を用いることによって、第1グラウンド電圧Vg(t1)と第2グラウンド電圧Vg(t2)と基準電位差VSとを正確に検出し、これらに基づいて漏電電圧VLを算出できる。
【0015】
ここに開示される漏電検出方法の一態様では、漏電電圧検出部は、第1端子側に接続された第1スイッチと、第1スイッチと中間点との間に設けられた第1の電圧検出抵抗と、第2端子側に接続された第2スイッチと、第2スイッチと中間点との間に設けられた第2の電圧検出抵抗とを備えている。かかる構成の漏電電圧検出部によると、第1グラウンド電圧Vg(t1)と第2グラウンド電圧Vg(t2)をさらに正確に検出することができる。
【0016】
ここに開示される漏電検出方法の一態様では、電源ユニットは、外部機器と接続可能に開放された正極端子である総プラス端子と、外部機器と接続可能に開放された負極端子である総マイナス端子とを備え、総プラス端子に第1端子を接続し、総マイナス端子に第2端子を接続し、かつ、総プラス端子と総マイナス端子との電位差である電源ユニットの総電圧Vtを基準電位差VSとする。これによって、漏電箇所をより容易に特定することができる。
【0017】
ここに開示される漏電検出方法の一態様では、漏電電圧測定工程は、第1スイッチをONにして第2スイッチをOFFにした状態の漏電電圧検出部において第1グラウンド電圧Vg(t1)を検出すると共に、基準電位差検出部において第1総電圧Vt(t1)を測定する第1測定工程と、第1スイッチをOFFにして第2スイッチをONにした状態の漏電電圧検出部において第2グラウンド電圧Vg(t2)を検出すると共に、基準電位差検出部において第2総電圧Vt(t2)を測定する第2測定工程と、第1グラウンド電圧Vg(t1)と第1総電圧Vt(t1)と第2グラウンド電圧Vg(t2)と第2総電圧Vt(t2)とに基づいて漏電電圧VLを算出する漏電電圧算出工程とを備えている。これによって、より正確な漏電電圧VLを得ることができる。
【0018】
ここに開示される漏電検出方法の一態様では、下記の式(1)および式(2)に基づいて、総マイナス端子を基準端子としたときの漏電電圧V
Lを算出する。下記式のように第1グラウンド電圧V
g(t1)と第2グラウンド電圧V
g(t2)を合成して漏電電圧V
Lを算出することによって、充放電に伴う総電圧の変化などに影響されずに、正確な漏電電圧V
Lを検出することができる。
【数1】
【数2】
【0019】
ここに開示される漏電検出方法の一態様では、下記の式(1)’および式(2)に基づいて、総プラス端子を基準端子としたときの漏電電圧V
Lを算出する。総プラス端子を基準端子とした場合には、下記の式(1)’および式(2)を用いることによって、充放電に伴う総電圧の変化などに影響されずに、正確な漏電電圧V
Lを検出することができる。
【数3】
【数4】
【0020】
ここに開示される漏電検出方法の一態様では、電源ユニットは、隣接した2つの電源を電気的に接続する接続部材を複数備えており、複数の接続部材の一つに第1端子を接続し、第1端子が接続された接続部材とは異なる接続部材に第2端子を接続する。本態様のような総プラス端子や総マイナス端子を利用しない態様においても、第1グラウンド電圧Vg(t1)と第2グラウンド電圧Vg(t2)と基準電位差VSを検出し、これらに基づいて漏電電圧VLを適切に算出することができる。
【0021】
ここに開示される漏電検出方法の一態様では、下記の式(3)および式(4)に基づいて、第2端子を基準端子としたときの漏電電圧V
Lを算出する。総プラス端子や総マイナス端子を利用しない態様では、下記式に基づいて正確な漏電電圧V
Lを算出できる。
【数5】
【数6】
【0022】
また、ここに開示される技術の他の側面として、複数の電源が電気的に接続された電源ユニットにおける漏電箇所を検出する漏電検出回路が提供される。ここに開示される漏電検出回路は、電源ユニットの所定の位置に接続された基準端子と、基準端子と漏電箇所との電位差である漏電電圧VLを算出する漏電電圧検出部と、漏電電圧VLに基づいて漏電箇所を特定する漏電箇所特定部とを備えている。かかる構成の漏電検出回路は、基準端子と漏電箇所との電位差(漏電電圧VL)を検出するだけで漏電箇所を特定できるため、複数の電源の全てに漏電検出用の回路を設ける必要がない。このため、ここに開示される漏電検出回路によると、漏電箇所の詳細な特定を低コストかつ簡便に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】組電池の構造の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図3】第1及び第2の実施形態に係る漏電検出方法を実施するための漏電検出回路を示す回路図である。
【
図4】第3の実施形態に係る漏電検出方法を実施するための漏電検出回路を示す回路図である。
【
図5】第4の実施形態に係る漏電検出方法を実施するための漏電検出回路を示す回路図である。
【
図6】
図5に示す漏電検出回路の第1のタイミングにおける導電経路を説明する模式図である。
【
図7】
図5に示す漏電検出回路の第2のタイミングにおける導電経路を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、ここで開示される技術の実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、ここで開示される技術の実施に必要な事柄(例えば、電源ユニットの詳細な構造や漏電検出回路の構築に使用する部品など)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施できる。なお、本明細書において範囲を示す「A~B」の表記は、A以上B以下の意と共に、「好ましくはAより大きい」および「好ましくはBより小さい」の意を包含するものとする。
【0025】
<第1の実施形態>
以下、ここに開示される漏電検出方法の第1の実施形態について説明する。
【0026】
1.電源ユニット
ここに開示される漏電検出方法は、複数の電源が電気的に接続された電源ユニットにおける漏電箇所を検出する。本明細書における「電源」とは、少なくとも外部への電力供給(放電)が可能なデバイスのことをいう。かかる電源の一例として、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池などの二次電池;マンガン乾電池、アルカリ乾電池などの一次電池;電気二重層キャパシタ等のキャパシタ;燃料電池、太陽電池等の発電素子;などが挙げられる。そして、本明細書では、これらの電源を複数接続したユニットを「電源ユニット」という。この電源ユニットの一例として、複数の二次電池を電気的に接続した組電池が挙げられる。また、本明細書では、組電池を構成する各々の二次電池のことを「単電池」と称する。
【0027】
以下、組電池を検査対象とした実施形態について説明するが、ここに開示される漏電検出方法の検査対象を組電池に限定することを意図したものではない。
図1は、組電池の構造の一例を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1中の単電池を模式的に示す斜視図である。なお、これらの図における符号Xは「(単電池の)幅方向」を示し、符号Yは「(単電池の)配列方向」を示し、符号Zは「(単電池の)高さ方向」を示す。また、配列方向YにおけるUは「上流側」を示し、Dは「下流側」を示す。但し、これらの方向は説明の便宜上の定めたものであり、ここに開示される技術を限定することを意図したものではない。
【0028】
図1に示す組電池(電源ユニット)1は、複数個(N個)の単電池(電源)10A~10Nを備えている。単電池10A~10Nの各々は、扁平な角型容器である電池ケース12を備えている(
図2参照)。かかる電池ケース12は、アルミニウムなどの所定の剛性を有する金属材料で形成されている。また、図示は省略するが、電池ケース12の内部には、充放電反応の場となる電極体と電解質が収容されている。そして、電池ケース12の上面12aには、正極端子14と負極端子16とが取り付けられている。図示は省略するが、正極端子14は、電池ケース12内部において電極体の正極と電気的に接続されており、上端部が電池ケース12外部に露出している。一方、負極端子16は、電池ケース12内部において電極体の負極と電気的に接続されており、上端部が電池ケース12外部に露出している。なお、単電池は、上記構成の角型電池に限定されない。すなわち、単電池は、円筒形の電池ケースを有する筒型電池でもよいし、樹脂製のラミネートフィルム内に電極体等が封入されたラミネート電池でもよい。
【0029】
図1に示すように、この組電池1では、所定の配列方向Yに沿って複数の単電池10A~10Nの各々が相互に隣接するように配列される。具体的には、各々の単電池10A~10Nは、電池ケース12の長側面12b(
図2参照)同士が対向するように配置されている。そして、これらの単電池10A~10Nは、配列方向Yに沿って拘束されている。具体的には、この組電池1では、配列方向Xの上流側Uの端部に拘束板13aが配置され、下流側Dの端部に拘束板13bが配置されている。そして、この一対の拘束板13a、13bは、架橋部材13cによって架橋されている。このため、拘束板13a、13bの間に配置された単電池10A~10Nは、配列方向Yに沿って所定の拘束圧で拘束される。なお、
図1に示す組電池1では、隣接した単電池の間に緩衝板17が挿入されている。これによって、電池ケース12の長側面12b(
図2参照)に加わる拘束圧を均一にすることができる。なお、単電池の拘束に関する構造は、ここに開示される技術を限定するものではなく、組電池の構造に応じて適宜変更することができる。
【0030】
また、
図1に示す組電池1は、隣接した2つの単電池を電気的に接続する接続部材15を複数備えている。具体的には、単電池10A~10Nは、隣接した2つの単電池の間で正極端子14と負極端子16とが近接するように交互に向きを入れ替えながら配置される。そして、一方の単電池の正極端子14と他方の単電池の負極端子16とが接続部材15によって電気的に接続される。これによって、組電池1を構成する各々の単電池10A~10Nを直列に接続することができる。ここで、配列方向Yの下流側Dの端部に配置されたn番目の単電池10Nの正極端子14は、隣接した単電池10N-1と接続されていない。かかるn番目の単電池10Nの正極端子14は、外部機器(車両等)と接続可能に開放された総プラス端子14aとなる。同様に、配列方向Yの上流側Uの端部に配置された1番目の単電池10Aの負極端子16は、隣接した単電池10Bと接続されていない。かかる1番目の単電池10Aの負極端子16は、外部機器と接続可能に開放された総マイナス端子16aとなる。
【0031】
なお、組電池を構成する単電池の個数は、特に限定されず、組電池に求められる性能(出力電圧や設置スペース等)に応じて適宜変更できる。詳しくは後述するが、ここに開示される技術によると、非常に多数の単電池(電源)を備えた組電池(電源ユニット)であっても、正確な漏電箇所を容易に特定することができる。このため、ここに開示される技術は、多数の単電池を備えた組電池の漏電箇所の特定に特に好適に使用できる。例えば、ここに開示される技術によると、50個以上(より好適には75個以上、さらに好適には90個以上、特に好適には100個以上)の単電池を備えた組電池であっても、複雑な漏電検出回路を設けることなく、正確な漏電箇所を特定できる。一方、組電池を構成する単電池の数の上限は、特に限定されず、200個以下であってもよく、150個以下であってもよい。
【0032】
2.漏電検出回路の構成
次に、第1の実施形態に係る漏電検出方法を実施するための漏電検出回路を説明する。
図3は、第1及び第2の実施形態に係る漏電検出方法を実施する漏電検出回路を示す回路図である。なお、説明の便宜上、
図3では、3番目の単電池10Cにおいて漏電が生じた状態(3番目の単電池10Cとグラウンドが導通した状態)を例示している。また、詳しくは後述するが、ここに開示される漏電検出方法では、電源ユニットの所定の位置に基準端子を接続することが求められる。本実施形態では、組電池1の総プラス端子14aに第1端子T
1を接続し、総マイナス端子16aに第2端子T
2を接続し、第2端子T
2を基準端子として選択している。
【0033】
図3に示す漏電検出回路100は、漏電電圧検出部20と、基準電位差検出部50を備えている。以下、各々について説明する。
【0034】
(1)漏電電圧検出部
漏電電圧検出部20は、基準端子と漏電箇所との間の電位差である漏電電圧V
Lを検出する。
図3に示す形態では、総マイナス端子16aに接続された第2端子T
2を基準端子としているため、当該総マイナス端子16aと3番目の単電池10Cとの間の電位差が漏電電圧V
Lとなる。かかる漏電電圧V
Lを検出する漏電電圧検出部20は、漏電検出抵抗30と、電圧検出部40を備えている。
【0035】
漏電検出抵抗30は、第1端子T1と第2端子T2の各々に接続され、中間点31においてグラウンドと接続されている。すなわち、漏電検出抵抗30の中間点31は、組電池1で漏電が生じた場合に、グラウンドを介して漏電箇所と導通する。そして、漏電電圧検出部20は、グラウンドを介した第1端子T1(総プラス端子14a)と漏電箇所との電位差である第1グラウンド電圧Vg(t1)と、グラウンドを介した第2端子T2(総マイナス端子16a)と漏電箇所との電位差である第2グラウンド電圧Vg(t2)を検出するように構成されている。具体的には、漏電電圧検出部20の漏電検出抵抗30には、第1スイッチ32と第2スイッチ33とからなる2つのスイッチング素子と、第1の電圧検出抵抗34と第2の電圧検出抵抗35と第1の分圧抵抗36と第2の分圧抵抗37からなる4つの抵抗とが設けられている。
【0036】
第1スイッチ32は、中間点31よりも第1端子T1側に接続されたスイッチング素子である。一方、第2スイッチ33は、中間点31よりも第2端子T2側に接続されたスイッチング素子である。これらのスイッチング素子の構造は、特に限定されず、トランジスタやFET等の半導体スイッチング素子や、リレー等の機械的なスイッチを用いることができる。図示は省略するが、第1スイッチ32と第2スイッチ33は、漏電検出回路100の動作を制御する制御部と接続されており、当該制御部からの信号によってON/OFFが切り替えられるように構成されている。詳しくは後述するが、この漏電検出回路100の制御部は、第1スイッチ32がONになった際に第2スイッチ33がOFFとなり、第2スイッチ33がONになった際に第1スイッチ32がOFFとなるように各々のスイッチング素子の動作を制御している。
【0037】
次に、漏電検出抵抗30に設けられた4つの抵抗について説明する。第1の電圧検出抵抗34は、第1スイッチ32と中間点31との間に設けられた抵抗である。また、第2の電圧検出抵抗35は、第2スイッチ33と中間点31との間に設けられた抵抗である。さらに、第1の分圧抵抗36は、第1端子T
1(総プラス端子14a)と第1スイッチ32との間に設けられた抵抗である。そして、第2の分圧抵抗37は、第2端子T
2(総マイナス端子16a)と第2スイッチ33との間に設けられた抵抗である。なお、
図3に示す漏電検出回路100では、第1の電圧検出抵抗34と第2の電圧検出抵抗35とが同じ電気抵抗Raに設定されている。また、第1の分圧抵抗36と第2の分圧抵抗37とが同じ電気抵抗Rbに設定されている。但し、上述した各々の抵抗は、異なった電気抵抗であってもよい。
【0038】
次に、電圧検出部40は、差動演算回路42を介して漏電検出抵抗30と接続されている。具体的には、電圧検出部40は、第1スイッチ32と第1の電圧検出抵抗34との間に設けられた第1接続点38と、第2スイッチ33と第2の電圧検出抵抗35との間に設けられた第2接続点39において漏電検出抵抗30と接続されている。そして、電圧検出部40は、漏電検出抵抗30から入力された電圧に基づいて、第1グラウンド電圧Vg(t1)と第2グラウンド電圧Vg(t2)を検出する。詳しくは後述するが、漏電検出抵抗30の第1スイッチ32と第2スイッチ33のON/OFFを切り替えることによって、グラウンドを介した第1端子T1(総プラス端子14a)と漏電箇所との電位差である第1グラウンド電圧Vg(t1)と、グラウンドを介した第2端子T2(総マイナス端子16a)と漏電箇所との電位差である第2グラウンド電圧Vg(t2)が検出される。そして、この第1グラウンド電圧Vg(t1)と第2グラウンド電圧Vg(t2)を利用して漏電電圧VLを算出することができる。
【0039】
なお、
図3に示す回路では、上記第1グラウンド電圧V
g(t1)は、第1の分圧抵抗36と第1の電圧検出抵抗34とによって分圧された状態で電圧検出部40に入力される。同様に、第2グラウンド電圧V
g(t2)は、第2の分圧抵抗37と第2の電圧検出抵抗35とによって分圧された状態で、差動演算回路42を介して電圧検出部40に入力される。このように分圧抵抗を設けることによって、電圧検出部40へ入力される電圧を調節できる。具体的には、分圧抵抗の電気抵抗を電圧検出抵抗の電気抵抗よりも大きくすることによって、電圧検出部40への入力電圧を小さくすることができる。これによって、電圧検出部40を構成する部品(アンプ等)への入力電圧を数Vまで低減し、組電池1からの数百Vという高電圧が直接入力されることを避けることができる。この結果、電圧検出部40の構成部品に一般的な信号処理用の部品を使用できるようになるため、漏電箇所の検出に要するコストをさらに低減できる。
【0040】
(2)基準電位差検出部
詳しくは後述するが、本実施形態に係る漏電検出方法は、基準電位差V
Sに対する漏電電圧V
Lの比率(V
L/V
S)に基づいて漏電箇所を特定する。このため、
図3に示す漏電検出回路100には、基準電位差V
Sを検出する基準電位差検出部50が設けられている。この基準電位差検出部50は、第1端子T
1と第2端子T
2との間に接続され、基準電位差V
Sを検出する回路である。
図3に示すように、第1の実施形態における基準電位差検出部50は、総プラス端子14aに接続された第1端子T
1と総マイナス端子16aに接続された第2端子T
2との間に接続されている。このため、基準電位差検出部50において検出される基準電位差V
Sは、単電池10A~10Nの各電圧の合計である「組電池1の総電圧V
t」となる。なお、基準電位差検出部50の具体的な構造は、特に限定されず、従来公知の電圧検出部を特に制限なく適用できる。さらに、基準電位差検出部50は、漏電電圧検出部20と同様に、制御部(図示省略)と接続されており、総電圧V
t(基準電位差V
S)を測定するタイミングが制御されていることが好ましい。
【0041】
(3)漏電箇所特定部
また、本実施形態に係る漏電検出回路100は、漏電電圧VLに基づいた漏電箇所の特定を行う漏電箇所特定部を備えている。なお、図示は省略するが、漏電箇所特定部は、上述した電圧検出部40や基準電位差検出部50と接続されており、これらから送信された情報(典型的には電圧)に基づいて、以下に記載する漏電検出方法を実施するように構成されている。
【0042】
3.漏電検出方法
以下、
図3に示す漏電検出回路100を参照しながら、ここに開示される漏電検出方法の一例を説明する。具体的には、ここに開示される漏電検出方法は、漏電電圧V
Lに基づいて漏電箇所の特定を行う。第1の実施形態に係る漏電検出方法は、漏電電圧V
Lに基づく漏電箇所の特定をより正確に行うために、基準電位差V
Sに対する漏電電圧V
Lとの比率(V
L/V
S)を算出し、当該比率(V
L/V
S)に基づいて漏電箇所を特定する。この第1の実施形態に係る漏電検出方法は、基準電位差取得工程と、漏電電圧測定工程と、漏電箇所特定工程とを備えている。以下、各工程について説明する。
【0043】
(1)基準電位差取得工程
第1の実施形態に係る漏電検出方法は、第1端子と第2端子T2との電位差である基準電位差VSを取得する基準電位差取得工程を備えている。上述の通り、本実施形態では、組電池1の総プラス端子14aに第1端子T1を接続し、総マイナス端子16aに第2端子T2を接続している。このため、基準電位差検出部50において測定された基準電位差VSは、組電池1の総電圧Vtとなる。なお、本実施形態に係る漏電検出方法では、後述の漏電電圧測定工程にて異なるタイミングt1,t2の各々で測定された第1総電圧Vt(t1)と第2総電圧Vt(t2)を用いる。総電圧の変動が小さい組電池1を測定対象としている場合には、第1総電圧Vt(t1)と第2総電圧Vt(t2)の何れか一方を「基準電位差VS」とみなしてもよい。また、第1総電圧Vt(t1)と第2総電圧Vt(t2)の平均値などを「基準電位差VS」とみなしてもよいし、第1総電圧Vt(t1)と第2総電圧Vt(t2)とは異なるタイミングで検出した総電圧を「基準電位差VS」とみなしてもよい。なお、詳しくは後述するが、基準電位差VSは、任意に設定した第1端子T1と第2端子T2との電位差であればよく、組電池の総電圧Vtに限定されるものではない。
【0044】
(2)漏電電圧測定工程
漏電電圧測定工程では、電源ユニットの所定の位置に接続された基準端子と漏電箇所との電位差である漏電電圧VLを算出する。本実施形態のように第1端子と第2端子T2を電源ユニット(組電池1)に接続する場合には、第1端子T1と第2端子T2の何れか一方を基準端子として選択することが好ましい。以下では、便宜上、総マイナス端子16aに接続された第2端子T2を基準端子とした場合を例に挙げて説明する。
【0045】
この漏電電圧測定工程では、漏電箇所から漏電抵抗R
Lを経由して発生する電圧を測定し、当該測定電圧に基づいて漏電電圧V
Lを算出する。例えば、
図3に示す漏電検出回路100では、漏電電圧検出部20で測定されるグラウンド電圧と、基準電位差検出部50で測定される基準電位差V
S(組電池の総電圧V
t)に基づいて漏電電圧V
Lが算出される。以下、漏電電圧測定工程における具体的な処理について説明する。
【0046】
この漏電電圧測定工程では、最初に、第1スイッチ32をONにして第2スイッチ33をOFFにした第1のタイミングt1で電圧検出部40に入力された電圧を測定する第1測定工程を実施する。このとき、組電池1に漏電箇所が存在していると、グラウンドと漏電抵抗RLを介して漏電箇所(3番目の単電池10C)と第1端子T1とが導通し、電圧検出部40で第1グラウンド電圧Vg(t1)が測定される。そして、本実施形態における第1測定工程では、第1グラウンド電圧Vg(t1)を測定したタイミングで、基準電位差検出部50が第1総電圧Vt(t1)を測定する。
【0047】
本工程では、次に、第1スイッチ32をOFFにして第2スイッチ33をONにした第2のタイミングt2で電圧検出部40に入力された電圧を測定する第2測定工程を実施する。このとき、組電池1に漏電箇所が存在していると、グラウンドと漏電抵抗RLを介して漏電箇所(3番目の単電池10C)と第2端子T2とが導通し、電圧検出部40で第2グラウンド電圧Vg(t2)が測定される。また、本実施形態における第2測定工程では、第2グラウンド電圧Vg(t2)を測定したタイミングで、基準電位差検出部50が第2総電圧Vt(t2)を測定する。
【0048】
そして、本実施形態における漏電電圧測定工程では、第1グラウンド電圧Vg(t1)と第1総電圧Vt(t1)と第2グラウンド電圧Vg(t2)と第2総電圧Vt(t2)とに基づいて漏電電圧VLを算出する漏電電圧算出工程を実施する。
【0049】
この漏電電圧算出工程では、最初に、下記の式(5)に基づいて漏電抵抗RLを算出してもよい。なお、式中の「Ra」は、第1の電圧検出抵抗34と第2の電圧検出抵抗35の電気抵抗であり、「Rb」は、第1の分圧抵抗36と第2の分圧抵抗37の電気抵抗である。
【0050】
【0051】
次に、本工程では、下記の式(1)および式(2)に基づいて漏電電圧VLを算出する。上述した通り、漏電電圧VLは、基準端子(総マイナス端子16aと接続された第2端子T2)と漏電箇所との間の電位差である。一方、本実施形態の基準電位差VSである総電圧Vtは、総プラス端子14aと総マイナス端子16aとの間の電位差である。このため、漏電電圧VLと総電圧Vtとの関係は、下記の式(1)のように表すことができる。なお、下記の式(1)中の「k」は、総電圧Vtに対する漏電電圧VLの比率(VL/Vt)を示しており、0以上1以下の範囲内の数値である。
【0052】
【0053】
そして、上述の式(1)中の「k」は、以下の式(2)によって算出できる。このとき、本実施形態では、第1端子T1を基準とする第1グラウンド電圧Vt(t1)と、第2端子T2を基準とする第2グラウンド電圧Vt(t2)を異なるタイミングで測定し、これらのグラウンド電圧を式(2)で合成している。これによって、充放電や漏電などによる総電圧Vtや漏電電圧VLの変動の影響を小さくし、総電圧Vtに対する漏電電圧VLの比率(k=VL/Vt)を正確に算出できる。
【0054】
【0055】
(3)漏電箇所特定工程
本工程では、漏電電圧VLに基づいて漏電箇所を特定する。なお、本実施形態における漏電箇所特定工程では、基準電位差VSに対する漏電電圧VLの比率(VL/VS)を算出し、当該比率(VL/VS)に基づいて漏電箇所の特定を行う。例えば、本実施形態では、組電池の総電圧Vtを基準電位差VSとしているため、上記式(2)によって、総電圧Vtに対する漏電電圧VLの比率k(=VL/Vt)を算出する。この総電圧Vtに対する漏電電圧VLの比率kに基づいて基準端子から漏電箇所までの電位を容易かつ正確に特定することができる。例えば、96個の3.7V電池を直列に接続した組電池(総電圧Vt:約355V)において、総マイナス端子を基準端子としたときの漏電電圧VLが100Vであった場合には、VL/VSが0.28となる。この場合、96個×(VL/VS)=27.04となる。かかる計算結果に基づいて、基準端子(第2端子T2)が接続された総マイナス端子から見て27番目の単電池の付近(例えば、単電池本体や接続部材等)に漏電が生じていると特定することができる。
【0056】
以上の通り、本実施形態に係る漏電検出方法では、漏電電圧VLに基づいて基準端子と漏電箇所との間に存在する単電池の数を推定して漏電箇所を特定する。そして、本実施形態に係る漏電検出方法は、第1グラウンド電圧Vt(t1)と、第2グラウンド電圧Vt(t2)を測定するだけで漏電箇所を特定できるため、複数の単電池10A~10Nの全てに漏電検出用の回路を設ける必要がない。以上のように、本実施形態に係る漏電検出方法によると、漏電箇所の詳細な特定を低コストかつ簡便に行うことができる。
【0057】
さらに、第1の実施形態では、基準電位差VSに対する漏電電圧VLの比率(VL/VS)に基づいて漏電箇所を特定する。この基準電位差VSの検出で使用する第1端子T1と第2端子T2との間に存在する電源10A~10Nの数は一定である。このため、基準電位差VSは、漏電箇所の影響を受けにくく、電源ユニット1の充放電状況を正確に反映できる。このため、基準電位差VSに対する漏電電圧VLの比率(VL/VS)を算出することによって、基準端子と漏電箇所との間に存在する電源の数をより正確に特定できる。
【0058】
<第2の実施形態>
以上、ここに開示される漏電検出方法の第1の実施形態について説明した。なお、上述した実施形態は、ここに開示される漏電検出方法を限定することを意図したものではなく、種々の点を変更することができる。
【0059】
例えば、上述した第1の実施形態では、総マイナス端子16aに接続された第2端子T
2を基準端子としている。しかしながら、基準端子は、第1端子と第2端子のいずれか一方を特に制限なく選択できる。すなわち、
図3に示す回路において、総プラス端子14aに接続された第1端子T
1を基準端子にした場合でも、漏電電圧V
Lと基準電位差V
Sとの比率(V
L/V
S)に基づいた漏電箇所の特定を行うことができる。但し、第1の実施形態で示した式(1)および式(2)は、総マイナス端子16aに接続された第2端子T
2を基準端子とした場合の算出式である。総プラス端子14aに接続された第1端子T
1を基準端子にする場合には、例えば、下記の式(1)’および式(2)を使用することが好ましい。これによって、正確な漏電電圧V
Lを算出し、漏電電圧V
Lと基準電位差V
Sとの比率(V
L/V
S)に基づいた漏電箇所の特定を行うことができる。
【0060】
【0061】
【0062】
<第3の実施形態>
また、上述した各実施形態では、総プラス端子に第1端子を接続し、総マイナス端子に第2端子を接続している。しかしながら、第1端子と第2端子は、電源ユニットの電位が異なる位置に接続されていれば特に限定されない。以下、総プラス端子・総マイナス端子とは異なる位置に、第1端子と第2端子を接続した形態について説明する。
図4は、第3の実施形態に係る漏電検出方法を実施するための漏電検出回路を示す回路図である。なお、
図4では、6個の単電池10A~10Fを備えた組電池1を検査対象とし、総プラス端子14aに漏電が生じた場合を例示している。
【0063】
図4に示す通り、第3の実施形態における第1端子T
1は、4番目の単電池10Dと5番目の単電池10Eとを接続する接続部材に接続されている。また、第2端子T
2は、2番目の単電池10Bと3番目の単電池10Cとを接続する接続部材に接続されている。すなわち、本実施形態では、第1端子T
1と第2端子T
2との間に、3番目の単電池10Cと4番目の単電池10Dの2つの単電池が配置される。この場合、基準電位差取得工程では、この2個の単電池10C、10Dの電圧の総和を基準電位差V
Sとして測定する。なお、図示は省略するが、第1端子T
1と第2端子T
2との間には、
図3の符号50と同等の構成の基準電位差検出部が接続されている。これによって、基準電位差V
S(単電池10C、10Dの電圧の総和)を測定できる。
【0064】
また、
図4に示す漏電電圧検出部20は、第1グラウンド電圧V
g(t1)を検出する第1端子回路60と、第2グラウンド電圧V
g(t2)を検出する第2端子回路70を備えている。第1端子回路60には、第1スイッチ64と、第1の電圧検出抵抗62と、第1の分圧抵抗66と、第1の電圧検出部68が設けられている。一方、第2端子回路70には、第2スイッチ72と、第1の電圧検出抵抗74と、第1の分圧抵抗76と、第2の電圧検出部78が設けられている。そして、第1端子回路60と第2端子回路70は、接続点80において接続されており、当該接続点80はグラウンドと接続されている。
【0065】
第3の実施形態における漏電電圧測定工程では、最初に、第1スイッチ64をON、第2スイッチ72をOFFとした第1のタイミングt1で第1の電圧検出部68に入力された電圧を測定する。このとき、組電池1に漏電箇所が存在していると、グラウンドと漏電抵抗RLを介して漏電箇所(総プラス端子14a)と第1端子T1とが導通して第1グラウンド電圧Vg(t1)が測定される。そして、本実施形態では、この第1のタイミングt1で第1端子T1と第2端子T2との間の基準電位差VSを測定し、これを第1基準電位差VS(t1)とする。
【0066】
次に、第1スイッチ64をOFF、第2スイッチ72をONとした第2のタイミングt2で第2の電圧検出部78に入力された電圧を測定する。このとき、組電池1に漏電箇所が存在していると、グラウンドと漏電抵抗RLを介して漏電箇所(総プラス端子14a)と第2端子T2とが導通して第2グラウンド電圧Vg(t2)が測定される。そして、本実施形態では、第2のタイミングt2で基準電位差VSを再度測定し、これを第2基準電位差VS(t2)とする。
【0067】
そして、第3の実施形態における漏電電圧測定工程では、以下の式(3)及び式(4)に基づいて漏電電圧V
Lを算出する。ここで、本実施形態では、第2の単電池10Bと第3の単電池10Cとの間に接続された第2端子T
2を基準端子としている。このため、漏電電圧V
Lは、第2端子T
2と漏電箇所(総プラス端子14a)との間の電位差となる。このとき、漏電電圧V
Lと基準電位差V
Sとの関係は、下記の式(3)のように表すことができる。なお、下記の式(3)中の「k」は、基準電位差V
Sに対する漏電電圧V
Lの比率(V
L/V
S)を示している。
【数12】
【数13】
【0068】
そして、本実施形態において算出される基準電位差VSに対する漏電電圧VLの比率(k=VL/VS)は、-1以上2以下の範囲内の数値となる。例えば、基準端子(第2端子T2)から見て総プラス端子14a側の位置で漏電が生じている場合には、上記「k」がプラスの値となる。一方、基準端子から見て総マイナス端子16a側の位置で漏電が生じている場合には、上記「k」がマイナスの値となる。このため、本実施形態においても、基準電位差VSに対する漏電電圧VLの比率(k=VL/VS)に基づいて基準端子から漏電箇所までの電位を特定できる。
【0069】
<第4の実施形態>
なお、ここに開示される漏電検出方法は、漏電電圧V
Lに基づいて漏電位置を特定することができればよく、特定の回路や計算式を使用する形態に限定されない。換言すると、
図3や
図4に示される漏電検出回路とは異なる構造の回路を用い、上記式(1)~(4)とは異なる式を用いた場合でも、漏電電圧V
Lを検出することができれば、ここに開示される漏電検出方法を実施することができる。以下、漏電電圧V
Lを検出できる漏電検出回路の他の例について
図5を参照しながら説明する。なお、
図5では、6個の単電池10A~10Fを備えた組電池1を検査対象とし、4番目の単電池10Dと5番目の単電池10Eとの間の接続部材に漏電が生じた場合を例示している。
【0070】
まず、第4の実施形態においても、基準電位差VSを検出し、基準電位差VSに対する漏電電圧VLの比率(VL/VS)を算出する。このため、第4の実施形態に係る漏電検出回路100Bでは、総プラス端子14aに第1端子T1を接続し、総マイナス端子16aに第2端子T2を接続している。そして、第1端子T1と第2端子T2との間に基準電位差検出部50を接続している。このため、本実施形態においても、基準電位差VSとして組電池の総電圧Vtが検出される。そして、本実施形態では、総マイナス端子16aに接続された第2端子T2を基準端子としている。
【0071】
第4の実施形態における漏電電圧検出部20は、疑似漏電回路90Aと、電圧検出回路90Bとを備えている。疑似漏電回路90Aは、第1端子T1とグラウンドを接続する回路である。この疑似漏電回路90Aには、試験抵抗91と、スイッチ92が設けられている。また、電圧検出回路90Bは、第2端子T2(基準端子)とグラウンドを接続する回路である。電圧検出回路90Bには、電圧検出抵抗93と、分圧抵抗94が設けられている。また、電圧検出回路90Bには、電圧検出抵抗93における電圧を検出する電圧検出部95も取り付けられている。上記構成の漏電電圧検出部20では、疑似漏電回路90Aと、電圧検出回路90Bと、漏電箇所(4番目の単電池10Dと5番目の単電池10Eとの間の接続部材)とがグラウンドを介して接続される。
【0072】
以下、上記構成の漏電検出回路100Bを用いた場合の漏電電圧測定工程について説明する。
【0073】
本実施形態における漏電電圧測定工程では、最初に、疑似漏電回路90Aのスイッチ92をOFFにする。この第1のタイミングt1における導電経路を
図6に示す。
図6に示すように、第1のタイミングt1において組電池1に漏電が生じていると、グラウンドと漏電抵抗を介して漏電箇所と第2端子T
2とが導通して第1グラウンド電圧V
g(t1)が測定される。そして、この第1のタイミングt1では、組電池1の総電圧V
t(基準電位差V
S)も測定し、これを第1総電圧V
t(t1)とする。そして、この第1のタイミングt1における漏電電圧V
L(t1)は、下記の式(6)で表される。この式(6)中の「k」は、上述した第1の実施形態と同様に、総電圧Vtに対する漏電電圧V
Lの比率(V
L/V
t)を示しており、0以上1以下の範囲内の数値となる。
【数14】
【0074】
また、第1のタイミングt1における漏電検出回路100Bは、
図6に示すように、1~4番目の単電池10A~10Dと、漏電抵抗R
Lと、電圧検出抵抗93と、分圧抵抗94を含む閉回路となる。このときの第1グラウンド電圧V
g(t1)は、以下の式(7)のように表される。なお、式(7)中のRaは、電圧検出抵抗93の抵抗値であり、Rbは分圧抵抗94の抵抗値であり、R
Lは漏電抵抗の抵抗値である。
【数15】
【0075】
本実施形態における漏電電圧測定工程では、次に、疑似漏電回路90Aのスイッチ92をONにする。この第2のタイミングt2における導電経路を
図7に示す。
図7に示すように、組電池1に漏電が生じている場合、この第2のタイミングt2においても、グラウンドと漏電抵抗を介して漏電箇所と第2端子T
2とが導通して第2グラウンド電圧V
g(t2)が測定される。また、この第2のタイミングt2においても、組電池の総電圧V
t(基準電位差V
S)も測定し、これを第2総電圧V
t(t2)とする。そして、第2のタイミングt2における漏電電圧V
L(t2)は、下記の式(8)で表される。
【数16】
【0076】
ここで、スイッチ92をONにした第2のタイミングt2では、総プラス端子14aから疑似漏電回路90Aの試験抵抗91を通過した電流i1と、漏電箇所から流れる電流i2とが、グラウンドを介して電圧検出回路90Bの電圧検出抵抗93に流れる。このため、第2のタイミングt2で測定される第2グラウンド電圧Vg(t2)は、上記第1グラウンド電圧Vg(t1)とは異なる手順で算出される。以下、第2グラウンド電圧Vg(t2)の算出手順について説明する。
【0077】
まず、第2のタイミングt2において、電圧検出抵抗93に流れる電流i
3は、下記の式(9)に示すように、試験抵抗91を通過した電流i
1と、漏電箇所から流れる電流i
2との合計電流となる。
【数17】
【0078】
また、第2のタイミングt2における組電池の総電圧V
t(t2)と漏電電圧V
L(t2)との差(V
t(t2)-V
L(t2))は、漏電抵抗の抵抗値R
Lと、漏電箇所から流れる電流i
2と、試験抵抗91の抵抗値Rtと、試験抵抗91を通過した電流i
1に基づいて算出される(下記式(10)参照)。
【数18】
【0079】
次に、第2のタイミングt2における漏電電圧V
L(t2)は、電圧検出抵抗93の抵抗値Raと、分圧抵抗94の抵抗値Rbと、電圧検出抵抗93に流れる電流i
3と、漏電抵抗の抵抗値R
Lと、漏電箇所から流れる電流i
2に基づいて算出される(下記式(11)参照)。
【数19】
【0080】
そして、第2のタイミングt2における第2グラウンド電圧V
g(t2)は、電圧検出抵抗93の抵抗値Raと、電圧検出抵抗93に流れる電流i
3に基づいて算出される(下記式(12)参照)。
【数20】
【0081】
ここで、式(9)~(11)の連立方程式によって導出した「電流i
3」を式(12)中の「i
3」に代入すると、以下の式(13)が得られる。この式(13)によって、第2グラウンド電圧V
g(t2)の値を算出することができる。
【数21】
【0082】
次に、本実施形態における基準電位差V
S(総電圧V
t)に対する漏電電圧V
Lの比率(V
L/V
t)を算出する手順について説明する。まず、上述した各々の式における「Ra+Rb」を「R」と表し、「Vg
(t1)/Vt
(t1)」を「V
1」と表した場合、上記式(6)と式(7)との連立方程式によって、第1のタイミングt1における比率k(=V
L/V
t)が以下の式(14)のように表される。
【数22】
【0083】
一方、各々の式中の「Ra+Rb」を「R」と表し、「Vg
(t2)/Vt
(t2)」を「V
2」と表した場合、上記式(8)と式(13)との連立方程式によって、第2のタイミングt2における比率k(=V
L/V
t)が以下の式(15)のように表される。
【数23】
【0084】
そして、上述の式(14)と式(15)を複合すると、下記の式(16)が得られる。この式(16)によって漏電抵抗R
Lを算出できる。
【数24】
【0085】
そして、上記式(16)に基づいて算出した漏電抵抗R
Lの値を式(14)に代入することによって、基準電位差V
S(総電圧Vt)に対する漏電電圧V
Lの比率k(=V
L/V
t)の実数を得ることができる。そして、上述した第1~第3の実施形態と同様に、基準電位差V
Sに対する漏電電圧V
Lの比率(V
L/V
S)の実数が判明すれば、基準端子(第2端子T
2)から漏電箇所までの電位を容易に特定することができる。以上の通り、
図5に示すような構成の漏電検出回路100Bを用いた場合でも、基準電位差V
Sに対する漏電電圧V
Lの比率V
L/V
Sを適切に算出し、漏電箇所を正確に特定することができる。
【0086】
<他の変更事項>
上述した第1~第4の実施形態では、検査対象である電源ユニットとして、組電池を例示としている。しかし、電源ユニットの構成は、ここに開示される漏電検出方法を限定するものではない。例えば、上述した通り、ここに開示される漏電検出方法は、発電素子(太陽電池等)を複数接続した電源ユニットなどに適用することもできる。また、上述した実施形態では、全ての電源(単電池)が直列に接続された電源ユニット(組電池)を検査対象としている。しかし、検査対象の電源ユニットを構成する全ての電源が直列接続されている必要はない。例えば、複数の電源が並列に接続された並列電源群を複数有し、当該並列電源群の各々が直列に接続された電源ユニットに対しても、ここに開示される漏電検出方法を使用できる。この場合には、どの並列電源群で漏電が生じているかを容易に特定することができる。具体例としては、ここに開示される漏電検出方法によると、複数(好適には30直以上、より好適には90直以上)の直列接続を含む電源ユニットの漏電箇所の特定に好適に使用できる。
【0087】
また、第1~第4の実施形態では、第1端子と第2端子との間の電位差である基準電位差VSを取得し、当該基準電位差VSに対する漏電電圧VLの比率(VL/VS)に基づいて漏電箇所を特定している。しかし、ここに開示される漏電検出方法は、漏電電圧VLに基づいて漏電箇所を特定できればよく、基準電位差VSを利用する形態に限定されない。具体的には、漏電電圧VLは、基準端子と漏電箇所との電位差であるため、基準電位差VSに対する比率(VL/VS)を求めなくても、基準端子と漏電箇所との間に存在する電源の数をある程度特定できる。一例として、電源ユニットにおける漏電発生時のSOCを元に電源の電圧を算出し、基準端子と漏電箇所との間に存在する電源の個数に換算することができる。また、高い精度での位置特定が必要ない場合には、電源ユニットの定格電圧と漏電電圧VLとの比率に基づいて漏電箇所を特定してもよい。
【0088】
以上、具体的な実施形態を挙げて、ここに開示される技術を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に記載した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0089】
1 組電池
10A~10N 単電池
12 電池ケース
13a、13b 拘束板
13c 架橋部材
14 正極端子
14a 総プラス端子
15 接続部材
16 負極端子
16a 総マイナス端子
17 緩衝板
20 漏電電圧検出部
30 漏電検出抵抗
31 中間点
32 第1スイッチ
33 第2スイッチ
34 第1の電圧検出抵抗
35 第2の電圧検出抵抗
36 第1の分圧抵抗
37 第2の分圧抵抗
40 電圧検出部
42 差動演算回路
50 基準電位差検出部
100 漏電検出回路