(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/444 20060101AFI20240419BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240419BHJP
A61K 9/22 20060101ALI20240419BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240419BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240419BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240419BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240419BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240419BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
A61K31/444
A61K9/08
A61K9/22
A61K47/26
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/36
A61K47/38
A61P9/04
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021210184
(22)【出願日】2021-12-24
(62)【分割の表示】P 2017534610の分割
【原出願日】2015-12-21
【審査請求日】2022-01-19
(32)【優先日】2014-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】310021674
【氏名又は名称】ベイカー ハート アンド ダイアベーツ インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケイ,デビッド
【審査官】新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-521727(JP,A)
【文献】Chinese Journal of Current Clinical Medicine,2011年,Vol.9, No.3,pp.148-150
【文献】Journal of the American College of Cardiology,2013年,Vol.62,No.16,pp.e147-e239
【文献】循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2010年度合同研究班報告),急性心不全治療ガイドライン(2011改訂版),2013年09月20日,pp.1-81
【文献】Circ Heart Fail,2010年,Vol.3,pp.588-595
【文献】European Heart Journal,2014年08月,Vol.35,pp.3103-3112
【文献】Heart Failure Clin.,2014年07月,Vol.10, Issue 3,pp.407-418
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運動時に測定された肺動脈圧が41mmHg~49mmHgを示し、または、運動時に測定された肺毛細血管楔入圧が30mmHg~33mmHgを示す患者が有する駆出率が保持された心不全(HFpEF)の治療薬であって、1,2-ジヒドロ-3-シアノ-6-メチル-5-(4-ピリジニル)-2(1H)-ピリジノン(ミルリノン)またはその薬学的に許容可能な塩を含み、
前記治療薬が、HFpEFの症状を緩和するために有効な定常状態における血漿中レベルを達成する量でミルリノンを送達可能な持続性送達製剤であり、
前記持続性送達製剤が経口制御放出製剤であり、
毎分0.1μg/体重kgから毎分20μg/体重kgの間の範囲で前記ミルリノンが送達される治療薬。
【請求項2】
前記送達により100~400ng/mLの範囲の前記ミルリノンの血漿中濃度が達成される、請求項1記載の治療薬。
【請求項3】
前記経口制御放出製剤が
(i)前記ミルリノンと1種類以上の重合体と1種類以上の賦形剤を含むコア、および
(ii)徐放性被覆材
を含む、請求項1または2に記載の治療薬。
【請求項4】
前記製剤が、ミルリノン、
80000~120000cpsの粘度を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロース、
約50cpsの粘度を有するヒドロキシプロピルメチルセルロース、および
少なくとも1種類の薬学的に許容可能な賦形剤を含み、
前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロース(80000~120000)と、前記ヒドロキシプロピルメチルセルロース(約50cps)との比率が2:1~1:2であり、
ミルリノンと、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの総計またはヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースとの比率が1:2~1:6である、請求項3に記載の治療薬。
【請求項5】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロース(80000~120000)と、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(50cps)との比率が約1:1である、請求項4に記載の治療薬。
【請求項6】
前記ミルリノンが前記コアの10~30(重量/重量)%の量で存在する、請求項4又は5に記載の治療薬。
【請求項7】
前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロース(80000~120000)が前記コアの20~40(重量/重量)%の量で存在する、請求項4から6のいずれか一項に記載の治療薬。
【請求項8】
前記ヒドロキシプロピルメチルセルロース(約50cps)が前記コアの20~40(重量/重量)%の量で存在する、請求項4から7のいずれか一項に記載の治療薬。
【請求項9】
前記コアが、ミルリノン、
少なくとも2種類の天然ガム類および少なくとも1種類の薬学的に許容可能な賦形剤を含む親水性マトリックスを含み、
前記少なくとも2種類の天然ガム類が、グアーガム、アカシアガム、トラガカントガム、キサンタンガム、カラゲナン、リンガム、アルギン酸塩、スクレログルカン、デキストラン、キタン(chitan)、キトサン、ペクチン、およびガラクトマンナンからなる群から選択され、
前記2種類の天然ガム類の比率が2:1~1:2であり、且つ
前記ミルリノンと前記親水性マトリックスとの比率が1:1~1:2.5である、請求項3に記載の治療薬。
【請求項10】
前記ガラクトマンナンがローカストビーンガムである、請求項9に記載の治療薬。
【請求項11】
前記親水性マトリックスがキサンタンガム、ローカストビーンガムまたはそれらの混合物を含む、請求項9
又は10に記載の治療薬。
【請求項12】
前記コアが
(i)ミルリノン、1種類以上の重合体、および1種類以上の賦形剤を含む被覆組成物、および
(ii)不活性球形粒子
を含み、
前記球形粒子の表面上に前記被覆組成物が被覆されており、
ミルリノンと前記球形粒子との比率が約1:5~1:25であり、且つ、前記被覆粒子がシール性被覆材をさらに含む、請求項3に記載の治療薬。
【請求項13】
前記徐放性被覆材がセルロース誘導体、またはアクリル酸、メタクリル酸および/もしくはそれらのエステルの共重合体を含
み、前記セルロース誘導体がヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、およびそれら組み合わせからなる群から選択される、請求項3から
12のいずれか一項に記載の治療薬。
【請求項14】
前記セルロース誘導体がエチルセルロースである、請求項
13に記載の治療薬。
【請求項15】
前記徐放性被覆材が低粘度HPMCをさらに含む、請求項
13に記載の治療薬。
【請求項16】
前記徐放性被覆材が、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステルまたはそれらの混合物の共重合体であって、所望によりメタクリル酸エステルが第四級アンモニウム基を有していてもよい前記共重合体を含む、請求項3から
15のいずれか一項に記載の治療薬。
【請求項17】
前記製剤が1よりも多くの徐放性被覆材を含む、請求項3から
16のいずれか一項に記載の治療薬。
【請求項18】
前記製剤がシール性被覆材、緩衝性被覆材および腸溶放出性被覆材のうちの1つ以上をさらに含む、請求項3から
16のいずれか一項に記載の治療薬。
【請求項19】
前記製剤により約0.375μg/kg体重/分から約0.75μg/kg体重/分までの速度で
ミルリノンが血流に送達される、請求項1から
18のいずれか一項に記載の治療薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、参照により全体が本明細書に援用される2014年12月22日に出願されたオーストラリア仮特許出願番号第2014905194号の利益を主張する。
【0002】
本発明の分野
本発明は駆出率が保持された心不全(HFpEF)を有する対象を強心剤である5-(ピリジニル)-2(1H)-ピリジノン化合物の持続送達性製剤で治療する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
この明細書において参照される文献の書誌事項が本明細書の最後にアルファベット順で集められている。
【0004】
本明細書内でのどの先行文献(またはその先行文献に由来する情報)またはどの公知の事への言及も本明細書が関連する努力傾注分野の共通一般知識の一部がその先行文献(またはその先行文献に由来する情報)またはその公知の事によって形成されると認めた、またはそのことを受け入れた、またはいかなる形でもそのことを示唆したと理解されことはなく、且つ、そのように理解されるべきではない。
【0005】
心不全(HF)は心臓がその静脈還流量に対処するために充分にポンプ作用を行うことができないこと、および/または体の代謝要求を満たすために充分な心拍出量を送ることができないことによって広く規定される複合病状態である。重症の心不全は増々一般的になっている生命に関わる心血管障害であり、明白な能力障害、高頻度の入院、および高死亡率を特徴とする。HFは老人になるほど増えており(最大で人口の10%)、65歳を超える人々の間で最も一般的な入院の原因になっている。HFは入院する主要な原因または一助であるため、医療支出の大きな一因として持ち上がっている。HFの特定の臨床症状はその心不全の根本原因によって決定される。
【0006】
心不全(HF)という用語は(例えば、運動中または重症の場合では休息時の)代謝要求を満たすために、または静脈還流量に対処するために心機能が充分な血液を送ることができない病態生理学的障害に大まかに当てはまる。そこで一連のさらに下位の分類を適用することができるが、最も一般的な臨床パラダイムではHFは易疲労性および臓器(例えば腎臓)機能不全につながる減少した心拍出量の症状、および(息切れの原因となる)肺または(下肢および腹部の膨腫につながる)末梢のどちらかでのうっ血に関連する症状に応じて検討される。HFは最も一般的な慢性心血管障害である。米国ではおよそ5000000人の患者が心不全を有しており、これらの患者のうちの最大で15~20%が最も進行した形の心不全を有する。心不全は老人の間で特に一般的(70歳を超える一般人口のうちの最大で10%)であり、65歳を超える人々の入院の最大の原因になっている。再入院が頻繁にあり、患者の25%が入院から1か月以内に再入院し、50%超が6か月以内に再入院する。米国でのHFによる入院の平均的な費用は20000ドルを超え、平均的な入院期間は4日から5日である。
【0007】
HFを患う多くの患者が左心室(LV)心筋機能不全を有している。しかしながら、多様なLV機能不全とHFが関係している場合がある。これらの患者には正常なLVサイズと保持された駆出率を有する患者から重度のLVの拡大および/または顕著な駆出率の低下を有する患者までが含まれる (Yancy et al)。
【0008】
駆出率(EF)は心不全患者の間での患者の人口統計、併存疾患、予後および治療応答のために重要な分類と考えられており、治験の患者はEFに基づいて選択されることが多い (Yancy et al)。
【0009】
EFが低下したHF(HFrEF)は40%以下のEFを有する。無作為化比較対照治験は主にHFrEFの患者を参加登録しており、これらの患者だけが今日までに有効な治療法を有している(Yancy et al)。
【0010】
EFが保持されたHF(HFpEF)は40%を超えるEFを有する患者に当てはまり、40~49%までのEFを有する患者は境界型HFpEFと見なされる。HFpEFを定義または診断するために幾つかの基準が提唱されており、それらには次のものが含まれる。
(i)HFの臨床徴候および症状、
(ii)保持された、または正常なLVEFの証拠、および
(iii)ドップラー心エコー検査または心カテーテル法によって判定され得るLV拡張機能不全の証拠。
【0011】
現在、HFrEFとは対照的にHFpEFには有効な治療法が無い (Yancy et al, Loffredo et al)。
【0012】
入院を必要とする進行したHFrEFを有する患者にとって心収縮を刺激するために静脈内投与用ドブタミンおよびミルリノンなどの陽性変力薬を使用することが一般的である。近年、そのような患者の治療用の経口制御放出製剤が開発された(国際公開第2013/023250号パンフレット)。さらに、「選択肢が無い」患者、すなわち、心臓移植または人工心臓移植がふさわしい患者への長期変力薬支援の使用が、近年、HFrEFの治療についてのアメリカ心臓協会ガイドラインによって推奨されている。
【0013】
β遮断薬とカルシウムチャネル遮断薬、ACE阻害薬およびアンギオテンシン受容体遮断薬およびジゴキシンをはじめとするHFpEF用の多数の治療法が提唱されている(Kamajda and Lam, Sharma and Kass) が、どれも決定的な利益がほとんど無く、または全く無い。アルドステロン受容体遮断薬であるスピロノラクトンを使用する最近の研究 (Edelmann et al) は左心室拡張機能を改善したが、HFpEF患者の最大運動能力、患者症状、またはクオリティ・オブ・ライフに影響することが無かった。ホスホジエステラーゼ-5阻害薬であるシルデナフィルを使用する別の最近の研究(RELAX研究)はHFpEF患者の運動能力または臨床状態を改善することが無かった (Redfield et al)。遅発性ナトリウム電流の選択的阻害薬であるラノラジンを使用する治験もHFpEF患者の心エコー検査パラメーターまたは運動パフォーマンスを変化させることが無かった (Komajda and Lam)。ネプライシン阻害薬、可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬および後期糖化生成物を含む幾つかの新しいアプローチによって臨床前研究または初期臨床研究において幾つかの有望な効果が得られているが、それらのアプローチはまだ完全には研究されていない。
【0014】
HFpEF患者では収縮機能は正常である、またはわずかに低下しただけであると一般的に考えられているので変力薬はそれらの患者では検討されていない。したがって、心不全患者を治療する医師は現在の文献に基づいてHFpEF患者の治療のためにミルリノンなどの薬品の使用を推奨することはないだろう。
【0015】
HFpEFの臨床症状のうちの1つ以上を改善する治療法が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】国際公開第2013/023250号パンフレット
【非特許文献】
【0017】
【文献】Edelmann F., et al., Effect of Spironolactone on Diastolic Function and Exercise Capacity in Patients with Heart Failure with Preserved Ejection Fraction; JAMA, 2013, 309(8):781-791.
【文献】Komajda M. and Lam C.S.P., Heart Failure with Preserved Ejection Fraction: a Clinical Dilemma; European Heart Journal, 2014, 35:1022-1032.
【文献】Loffredo F.S., et al., Heart Failure with Preserved Ejection Fraction, Molecular Pathways of the Aging Myocardium; Circulation Research, 2014, 115:97-107.
【文献】Redfield M.M., et al., Effect of Phosphodiesterase-5 Inhibition on Exercise Capacity and Clinical Status in Heart Failure with Preserved Ejection Fraction; JAMA, 2013, 309(12): 1268-1277.
【文献】Sharma K. and Kass D.A., Heart Failure with Preserved Ejection Fraction, Mechanisms, Clinical Features, and Therapies; Circulation Research, 2014, 115:79-96.
【文献】Yancy C.W. et al., 2013 ACCF/AHA Guideline for the Management of Heart Failure, A Report of the American College of Cardiology Foundation/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines, Circulation, 2013, 128: e240-e327.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は制御放出性ミルリノンがHFpEFを有する患者の臨床症状の改善に有効であるという発見に少なくとも部分的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1の態様では、駆出率が保持された心不全(HFpEF)を有する患者を治療する方法であって、式(I)
【0020】
【化1】
(I)
式中、R
1が水素、-C
1~C
6アルキル、または-C
1~C
6アルキル-OHであり、
R
2が-C
1~C
6アルキルであり、
R
3が水素、-NH
2、-CN、-C(O)NH
2、ハロ、-NH(C
1~C
6アルキル)、-N(C
1~C
6アルキル)
2、-NH(COC
1~C
6アルキル)、-CO
2H、または-CO
2C
1~C
6アルキルであり、且つ
PYが1個または2個のC
1~C
6アルキル基で置換されていてもよい4-、3-または2-ピリジニルである;
の5-(ピリジニル)-2(1H)-ピリジノン化合物またはその薬学的に許容可能な塩の持続性送達製剤を前記患者に投与することを含み、
前記製剤によりHFpEFの症状を緩和するために有効な定常状態における血漿中レベルを達成する量で式(I)の前記化合物の送達が可能になり、毎分0.1μg/体重kgから毎分20μg/体重kgの間の範囲で式(I)の前記化合物が送達される前記方法が提供される。
【0021】
別の態様では本発明は、式(I)
【0022】
【化2】
(I)
式中、R
1が水素、-C
1~C
6アルキル、または-C
1~C
6アルキル-OHであり、
R
2が-C
1~C
6アルキルであり、
R
3が水素、-NH
2、-CN、-C(O)NH
2、ハロ、-NH(C
1~C
6アルキル)、-N(C
1~C
6アルキル)
2、-NH(COC
1~C
6アルキル)、-CO
2H、または-CO
2C
1~C
6アルキルであり、且つ
PYが1個または2個のC
1~C
6アルキル基で置換されていてもよい4-、3-または2-ピリジニルである;
の5-(ピリジニル)-2(1H)-ピリジノン化合物またはその薬学的に許容可能な塩の持続性送達製剤であり、
前記製剤により、HFpEFの症状を緩和するために有効な定常状態における血漿中レベルを達成する量で式(I)の前記化合物の送達が可能になり、毎分0.1μg/体重kgから毎分20μg/体重kgの間の範囲で式(I)の前記化合物が送達される、駆出率が保持された心不全(HFpEF)の治療に使用するための前記持続性送達製剤をさらに提供する。
【0023】
その他の態様では、本発明は、式(I)
【0024】
【化3】
(I)
式中、R
1が水素、-C
1~C
6アルキル、または-C
1~C
6アルキル-OHであり、
R
2が-C
1~C
6アルキルであり、
R
3が水素、-NH
2、-CN、-C(O)NH
2、ハロ、-NH(C
1~C
6アルキル)、-N(C
1~C
6アルキル)
2、-NH(COC
1~C
6アルキル)、-CO
2H、または-CO
2C
1~C
6アルキルであり、且つ
PYが1個または2個のC
1~C
6アルキル基で置換されていてもよい4-、3-または2-ピリジニルである;
の5-(ピリジニル)-2(1H)-ピリジノン化合物またはその薬学的に許容可能な塩の持続性送達製剤であって、
前記製剤により、HFpEFの症状を緩和するために有効な定常状態における血漿中レベルを達成する量で式(I)の前記化合物の送達が可能になり、毎分0.1μg/体重kgから毎分20μg/体重kgの間の範囲で式(I)の前記化合物が送達される前記持続性送達製剤の、駆出率が保持された心不全(HFpEF)の治療に使用される医薬品の製造における使用も提供する。
【0025】
さらにその他の態様では、本発明は、式(I)
【0026】
【化4】
(I)
式中、R
1が水素、-C
1~C
6アルキル、または-C
1~C
6アルキル-OHであり、
R
2が-C
1~C
6アルキルであり、
R
3が水素、-NH
2、-CN、-C(O)NH
2、ハロ、-NH(C
1~C
6アルキル)、-N(C
1~C
6アルキル)
2、-NH(COC
1~C
6アルキル)、-CO
2H、または-CO
2C
1~C
6アルキルであり、且つ
PYが1個または2個のC
1~C
6アルキル基で置換されていてもよい4-、3-または2-ピリジニルである;
の5-(ピリジニル)-2(1H)-ピリジノン化合物またはその薬学的に許容可能な塩の持続性送達製剤であって、
前記製剤によりHFpEFの症状を緩和するために有効な定常状態における血漿中レベルを達成する量で式(I)の前記化合物の送達が可能になり、毎分0.1μg/体重kgから毎分20μg/体重kgの間の範囲で式(I)の前記化合物が送達される前記持続性送達製剤の、駆出率が保持された心不全(HFpEF)の治療における使用をさらに提供する。
【0027】
さらに別の態様では、本発明は、式(I)
【0028】
【化5】
(I)
式中、R
1が水素、-C
1~C
6アルキル、または-C
1~C
6アルキル-OHであり、
R
2が-C
1~C
6アルキルであり、
R
3が水素、-NH
2、-CN、-C(O)NH
2、ハロ、-NH(C
1~C
6アルキル)、-N(C
1~C
6アルキル)
2、-NH(COC
1~C
6アルキル)、-CO
2H、または-CO
2C
1~C
6アルキルであり、且つ
PYが1個または2個のC
1~C
6アルキル基で置換されていてもよい4-、3-または2-ピリジニルである;
の5-(ピリジニル)-2(1H)-ピリジノン化合物またはその薬学的に許容可能な塩の持続性送達製剤であって、
前記製剤によりHFpEFの症状を緩和するために有効な定常状態における血漿中レベルを達成する量で式(I)の前記化合物の送達が可能になり、毎分0.1μg/体重kgから毎分20μg/体重kgの間の範囲で式(I)の前記化合物が送達される、駆出率が保持された心不全(HFpEF)の治療のための前記持続性送達製剤の調製方法であり、
本明細書においてこれまでに規定されたような式(I)の5-(ピリジニル)-2(1H)-ピリジノン化合物を1種類以上の重合体と共に製剤して徐放性マトリックス製剤を提供すること、および
前記製剤が式(I)の前記化合物について所望の放出プロファイルを提供することを検査して確認すること、
を含む前記調製方法をさらに提供する。
【0029】
幾つかの実施形態では、前記持続性送達製剤は静脈内投与に適切な製剤である。他の実施形態では前記持続性送達製剤は経口制御放出製剤である。
【0030】
幾つかの実施形態では前記患者は50%を超える駆出率を有する。
【0031】
本発明の1つの実施形態では、式(I)の前記化合物は1,2-ジヒドロ-3-シアノ-6-メチル-5-(4-ピリジニル)-2(1H)-ピリジノン(ミルリノン)である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
1.定義
別途定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語と科学用語は本発明が属する技術の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載される方法と材料と類似の、またはそれらと同等のあらゆる方法と材料を本発明の実施または検討に使用することができるが、好ましい方法と材料を説明する。本発明の目的のために次の用語を以下で定義する。
【0033】
冠詞「a」および「an」は1つまたは1つよりも多くの(すなわち、少なくとも1つの)その物品の文法上の客体を表すために本明細書において使用される。例として、「要素(an element)」は1つの要素または1つより多くの要素を意味する。
【0034】
この明細書を通して、別途文脈により要求されない限り、「含む(comprise)」という単語、または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変形は、述べられた要素または完全体または(複数の)要素もしくは(複数の)完全体からなる群の包含を意味するが、いかなる他の要素または完全体または(複数の)要素もしくは(複数の)完全体からなる群の除外も意味することがないと理解される。
【0035】
本明細書において使用される「持続性送達製剤」という用語は長期間にわたって式(I)の前記化合物を患者に送達することができる製剤を指す。その製剤は数時間、数日、または数週間の期間にわたって式(I)の前記化合物が送達される静脈内送達向けの製剤であり得る。その持続性送達製剤は「制御放出製剤」製剤であり得る。
【0036】
「制御放出製剤」という用語は式(I)の前記化合物がボーラス投与量として投与される製剤であるが、制御された形でその薬品が放出される前記製剤を指す。制御放出製剤の目的はゼロ次薬品送達カイネティクス(すなわち、時間に関しての線形送達)を提供することである。剤形からの薬品の制御放出は2つの過程、すなわち溶解と放出に左右される。
【0037】
本明細書において使用される場合、「駆出率が保持された心不全」(HFpEF)という用語は駆出率(EF)が40%以上である心不全を指し、40~49%までのEFを有する心不全は境界型HFpEFと見なされる。
【0038】
本明細書において使用される場合、「駆出率が低下した心不全」(HFrEF)という用語は駆出率(EF)が40%以下である心不全を指す。
【0039】
本明細書において使用される場合、「アルキル」という用語は、1~6個の炭素原子を有する直鎖飽和炭化水素基または分岐飽和炭化水素基を指す。適切な場合、そのアルキル基は特定の数の炭素原子を有してよく、例えば、1個、2個、3個、4個、5個または6個の炭素原子を直鎖状配置または分岐状配置で有するアルキル基を含むC1~6アルキルを有してよい。適切なアルキル基の例にはメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、4-メチルブチル、n-ヘキシル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、5-メチルペンチル、2-エチルブチルおよび3-エチルブチルが挙げられるがこれらに限定されない。
【0040】
本明細書において使用される場合、「ハロゲン」または「ハロ」という用語はフッ素(フルオロ)、塩素(クロロ)、臭素(ブロモ)およびヨウ素(ヨード)を指す。
【0041】
本明細書において使用される場合、「ピリジン」または「ピリジニル」という用語は次の式:を有する環に1個の窒素原子を有する6員の芳香族環基を指す。
【0042】
【0043】
ピリジン環は式(I)の構造に結合することができ、式(I)では、2位、3位または4位の炭素原子のうちのいずれかの位置におけるPYで示されている。
【0044】
式(I)の化合物は薬学的に許容可能な塩の形態であり得る。薬学的に許容可能な適切な塩には、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、ホウ酸、スルファミン酸、および臭化水素酸などの薬学的に許容可能な無機酸の塩;または酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、酒石酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フマル酸、クエン酸、乳酸、ムチン酸、グルコン酸、安息香酸、コハク酸、シュウ酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、サリチル酸、スルファニル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、エデト酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パントテン酸、タンニン酸、アスコルビン酸および吉草酸などの薬学的に許容可能な有機酸の塩が含まれるがこれらに限定されない。
【0045】
塩基性塩には薬学的に許容可能な陽イオン、例えばナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウムおよびアルキルアンモニウムと共に形成される塩が含まれるがこれらに限定されない。
【0046】
塩基性窒素含有基は、例えばメチル、エチル、プロピルおよびブチルクロリド、ブロミドおよびヨーダイドなどの低級アルキルハライド、ジメチル硫酸およびジエチル硫酸のようなジアルキル硫酸、およびその他のような薬剤を用いて四級化され得る。
【0047】
「対象」という用語は一般にヒトを意味する。しかしながら、本発明は非ヒト霊長類ならびにブタ、ヒツジ、イヌおよびウマを含む動物モデル系の治療にまで及ぶ。非ヒト動物への商業的応用には、ウマ、イヌおよびラクダなどの競技用動物、ならびにウマおよびイヌなどの作業動物の治療が含まれる。「ヒト」は、幼児、小児、青年、10代の若者、若年の成人、成人、中年および老人からのあらゆる年齢の人を意味する。本明細書は1日齢から120歳までの年齢の範囲を企図している。極度の緊急事態では胎児の子宮内治療を検討することができ、そして、それは本発明によって包含される。
2.本発明の方法
【0048】
本発明は、式(I)の化合物でHFpEFを有する患者を治療する方法に関する。1つの態様では本発明は、式(I)の化合物の持続性送達製剤であって、前記製剤によりHFpEFの症状を緩和するために有効な定常状態における血漿中レベルを達成する量で式(I)の前記化合物の送達が可能になり、毎分0.1μg/体重kgから毎分20μg/体重kgの間の範囲で式(I)の前記化合物が送達される前記持続性送達製剤でHFpEFを有する患者を治療する方法に関する。
【0049】
幾つかの実施形態では前記のHFpEFを有する患者は境界型HFpEF(40%を超える駆出率と49%の駆出率との間の駆出率)を有する患者である。他の実施形態では前記のHFpEFを有する患者は50%以上の駆出率を有する患者である。
【0050】
投与は、あまり有毒ではなく、且つ、HFpEFの症状を緩和するために有効な式(I)の前記化合物のレベルを達成するために充分な条件下で行われることが一般的である。毎分0.1μg/体重kgから約毎分20μg/体重kgの間の速度で化合物の血流への送達を可能にするように式(I)の前記化合物が製剤されることが好都合である。この範囲は0.1μg/kg体重/分、0.2μg/kg体重/分、0.3μg/kg体重/分、04μg/kg体重/分、0.5μg/kg体重/分、0.6μg/kg体重/分、0.7μg/kg体重/分、0.8μg/kg体重/分、0.9μg/kg体重/分、1μg/kg体重/分、2μg/kg体重/分、3μg/kg体重/分、4μg/kg体重/分、5μg/kg体重/分、6μg/kg体重/分、7μg/kg体重/分、8μg/kg体重/分、9μg/kg体重/分、10μg/kg体重/分、11μg/kg体重/分、12μg/kg体重/分、13μg/kg体重/分、14μg/kg体重/分、15μg/kg体重/分、16μg/kg体重/分、17μg/kg体重/分、18μg/kg体重/分、19μg/kg体重/分および20μg/kg体重/分、ならびにそれらの間にある端数を包含する。特定の実施形態では式(I)の前記化合物は約0.37~0.75μg/kg体重/分までの速度を含む約0.3~1μg/kg体重/分の速度で送達される。
【0051】
投与される式(I)の化合物の量は治療を受ける対象、それらの健康状態、それらの体重、および使用される製剤に左右される。適切な経口投与量は5mgから75mgの範囲、特に10~50mgまたは10~40mgの範囲内にある。適切な静脈内投与には連続点滴としての0.1~0.75μg/kg/分の範囲での投与が含まれる。
【0052】
経口制御放出剤形の形態である場合、投与量は一日当たりの単回用量、例えば、30~40mgからなる1用量として提供されてよく、または分割投与量、例えば、一日当たり2回、3回、または4回に分割された投与量で提供されてよい。12時間毎の15~30mgまたは15~20mgという量は本発明に従う有用な治療量であり、12時間毎の投与または1日2回の投与を可能にする。8時間毎の10~15mgという量は1日3回の投与を可能にし、6時間毎の7.5~10mgという量は1日4回の投与を可能にする。特定の実施形態では投与は1日に2回である。
【0053】
ミルリノンなどの式(I)の化合物の最適な血漿中レベルは100ng/mL~400ng/mLの範囲内にあり、特に100ng/mL~300ng/mLの範囲内にある。式(I)の前記化合物の血漿クリアランスは腎臓疾患または心血管疾患のどちらかの存在によって影響を受ける。式(I)の持続性送達化合物の最適な用量は、要求される定常状態レベルが達成されるまで患者の式(I)の化合物の血漿中レベルを定期的にモニターすると共に用量を段階的に漸増することにより、個々の患者について決定される必要があり得る。幾つかの実施形態では本方法は式(I)の前記化合物の血漿中濃度をモニターするステップ、および必要であれば100~400ng/mLの範囲の血漿中濃度を達成するように投与量を調節するステップをさらに含む。
【0054】
幾つかの実施形態では式(I)の前記化合物において次のうちの少なくとも1つが当てはまる。すなわち、
R1が水素、-C1~C3アルキルまたは-C1~C3アルキルOH、特に水素、-CH3または-CH2OH、より特別には水素から選択され、
R2が-C1~C3アルキル、特にメチルまたはエチル、より特別にはメチルから選択され、
R3が-CN(シアノ)、-NH2、ハロ、-NH(C1~C3アルキル)、-N(C1~C3アルキル)2、-CO2Hまたは-CO2C1~3アルキル、特に-CN、-NH2、-CO2Hおよび-CO2CH3、より特別には-CNから選択され、そして
PYが非置換型4-、3-または2-ピリジニル、特に非置換型4-ピリジニルである。
【0055】
特定の実施形態では、式(I)の前記化合物は1,2-ジヒドロ-3-シアノ-6-メチル-5-(4-ピリジニル)-2(1H)-ピリジノンである。この化合物は2-メチル-6-オキソ-ジヒドロ-3,4’-ビピリジン-5-カルボニトリルおよびミルリノンとしても知られる。
【0056】
ミルリノンを含む式(I)の化合物を作製する方法が当技術分野において知られており、例えば、英国特許第2065642号明細書および米国特許第4313951号明細書に見ることができる。
【0057】
幾つかの実施形態では前記静脈内投与は1~48時間の期間にわたって投与される連続静脈内点滴であってよいが、この期間に限定されない。
【0058】
他の実施形態では前記持続性送達製剤は経口制御放出製剤である。幾つかの実施形態では前記経口制御放出製剤は、
(i)式(I)の前記化合物と1種類以上の重合体と1種類以上の賦形剤を含むコア、および
(ii)徐放性被覆材
を含む。
【0059】
式(I)の前記化合物は、(小さな、または大きい)粒子に形成されるか、または前記製剤のコアを形成する不活性粒子に被覆されるマトリックスを提供するために1種類以上の重合体と混合され得る。そのコアの重合体は親水性重合体、疎水性重合体、またはプラスチック重合体から選択される。親水性重合体は溶解および膨潤するので、水に溶解し、且つ、水と接触して水和してヒドロゲルを形成する。疎水性重合体は溶解しないがそのマトリックスが可溶性成分を放出するので浸食しやすい場合がある。プラスチック重合体は不溶性マトリックスまたは骨格マトリックスを形成し、浸食されない。胃、小腸および大腸中の体液に曝露されると親水性重合体は水和し、薬品の放出に対する拡散障壁として作用するヒドロゲルを形成し、疎水性重合体は細孔および浸食部分を介して拡散により薬品を放出する。プラスチックマトリックスからの薬品の放出は液体の浸透率によって制御され、チャンネル形成剤、すなわち、薬品の他に添加される可溶性成分の存在によって促進される。
【0060】
幾つかの重合体の挙動はpHに依存する。これは、pHがイオン化状態に影響するので、その重合体が酸性部分または塩基性部分を含有している場合に特に当てはまる。イオン化によって重合体を疎水性から親水性へ変換することができ、付随して放出特性の変換が生じる。
【0061】
溶解した式(I)の化合物の例えば胃腸(GI)管への放出は前記粒子上の被覆材によっても制御され得る。この被覆材は腸の中で出会う状況に対して相対的に安定である重合体または重合体の混合物であることが典型的である。多くの場合、その被覆材は、腸の中で体液に接触して膨潤し、均一であり、且つ、下層のマトリックスに対して起こり得る変化に対して安定であるヒドロゲル障壁を形成する少なくとも1種類の親水性重合体を含む。そのヒドロゲルは溶解した式(I)の化合物の徐放も支援する。その表面被覆材の特質は、その重合体成分中の酸性部分または塩基性部分の存在次第でpH依存性であり得る。
【0062】
幾つかの制御放出製剤の特有の不利な点は、その剤形が溶解液と接触した直後に起こる薬品のバースト放出の可能性である。水和後に急速にヒドロゲルを形成する親水性重合体をフィルム被覆材中またはマトリックス中に使用することによりバースト放出現象の発生率を著しく低下させることができる。
【0063】
制御放出経口用製剤には1種類以上の薬品‐重合体マトリックスが前記コアや微粒子を提供する一体化錠剤剤形、または薬品で被覆された不活性粒子が前記コアを提供するビーズ剤形が含まれる。これらの種類の製剤は薬品の放出をさらに制御するためのオプションの表面フィルム被覆材を含んでよい。微粒子剤形は錠剤に形成されるか、またはカプセルに充填されてよい。これは、崩壊し、即時に溶解し、そして、ボーラス用量の薬品を放出するように設計されている即放性(IR)製剤とは異なる。
【0064】
式(I)の前記化合物を含有するコアマトリックスは造粒または直接打錠によって形成されてよく、多孔性を提供するために不均質であってよい。
【0065】
特に、適切な放出プロファイルを達成するためにコアマトリックスは親水性重合体と疎水性重合体のどちらか、またはそれらの両方を含んでよい。さらに、これもまたpH依存性であり得る様式で前記の重合体のうちの1つ以上が水和すると膨潤して粘性が有り、ゼラチン状であり、したがって薬品の放出に対する障壁を提供するヒドロゲルを形成することができる。ヒドロゲルの組成がその特質を決定するので、適切な薬品の放出カイネティクスを達成するためにその組成を操作することがあり得る。
【0066】
透過性が重合体の膨潤およびヒドロゲル動態の組込みにつながる水和と直接的に関連することが多い拡散放出機構がオプションの表面フィルム被覆材によって提供される。
【0067】
GI管の通過中に出会う様々な環境にわたって所望の放出プロファイルを達成するため、以下の説明において提供されるマトリックスとオプションの表面フィルム被覆材の少なくとも1つの組合せを本発明の製剤に使用することができる。
【0068】
GI管の通過中に出会う様々な環境にわたって所望の放出プロファイルを達成する式(I)の化合物の持続放出製剤、特にミルリノンの持続放出製剤が国際公開第2013/023250(A1)号として公開されたPCT出願PCT/AU2012/000967号明細書の中で説明されている。式(I)の化合物の持続放出製剤の放出プロファイルは国際公開第2013/023250(A1)号パンフレットの中で説明される溶解試験方法に従って、且つ、下の実施例において説明されるように決定され得る。式(I)の化合物の持続放出製剤によってゼロ次薬品送達カイネティクス(すなわち、時間に関しての線形送達)が提供されることが好ましい。
【0069】
本発明は、本明細書においてこれまでに規定されたような式(I)の5-(ピリジニル)-2(1H)-ピリジノン化合物またはその薬学的に許容可能な塩の持続性送達製剤であって、前記製剤によりHFpEFの症状を緩和するために有効な定常状態における血漿中レベルを達成する量で式(I)の前記化合物の送達が可能になり、毎分0.1μg/体重kgから毎分20μg/体重kgの間の範囲で式(I)の前記化合物が送達される、駆出率が保持された心不全(HFpEF)の治療のための前記持続性送達製剤の調製方法であり、
本明細書においてこれまでに規定されたような式(I)の5-(ピリジニル)-2(1H)-ピリジノン化合物を1種類以上の重合体と共に製剤して徐放性マトリックス製剤を提供するステップ、および
前記製剤が式(I)の前記化合物について所望の放出プロファイルを提供することを検査して確認するステップ
を含む前記調製方法をさらに提供する。
【0070】
幾つかの実施形態では前記持続性送達製剤は経口投与用である。幾つかの実施形態では式(I)の前記化合物は1種類以上の製薬用賦形剤と共に製剤される。幾つかの実施形態では式(I)の前記化合物は、式(I)の前記化合物および1種類以上の重合体および1種類以上の薬学的に許容可能な賦形剤および徐放性被覆材を含むコアとして製剤される。幾つかの実施形態ではその製剤に1種類以上のシール性被覆材が加えられる。幾つかの実施形態ではその製剤に1種類以上の腸溶性被覆材が加えられる。幾つかの実施形態では式(I)の前記化合物は単位剤形、例えばミニ錠剤またはビーズとして製剤される。幾つかの実施形態ではその持続性送達製剤は本明細書において規定されるような組成物である。幾つかの実施形態ではその持続性送達製剤は
(iii)式(I)の前記化合物と1種類以上の重合体と1種類以上の賦形剤を含むコア、および
(iv)徐放性被覆材
を含む。
【0071】
特定の実施形態では前記持続性送達製剤は重合体マトリックスに式(I)の化合物を含み、その重合体マトリックスと式(I)の化合物の混合物がシール性被覆材を有する。その式(I)のシール被覆重合体マトリックス化合物は徐放性被覆材を有し、その製剤は腸溶放出性被覆材をさらに含む。所望により徐放性被覆材と腸溶放出性被覆材の間に緩衝性被覆材が存在してもよい。
【0072】
前記製剤が式(I)の前記化合物の所望の放出プロファイルを提供することを検査して確認する方法が当技術分野において知られており、それらの方法には本明細書に記載される試験などの溶解試験または放出試験が含まれ得る。前記持続性送達製剤によってゼロ次薬品送達カイネティクス(すなわち、時間に関しての線形送達)が提供されることが好ましい。
【0073】
コア薬品‐重合体マトリックスの製剤において使用される重合体は次の通りである。
・ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)およびヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ならびにN‐イソプロピルアクリルアミドを含むアクリル重合体およびメタクリル重合体;
・ポリエチレングリコール(PEG)としても知られるポリエチレンオキシド(PEO)およびポリプロピレンオキシド(PPO)、ならびにPEOおよびPPOのブロック共重合体(Pluronic(登録商標)としても知られる);
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)を含むセルロースエーテル;
・ポリ乳酸(PLA)、ポリグルコリド(polyglucolide)(PGA)、様々な比率でのポリ乳酸とポリグルコリド(polyglucolide)の共重合体(PLGA);
・ポリ(スクロースアクリレート);
・ポリリシン、ポリビニルアミン、ポリエチルイミン(PEI)、ポリグルタミン酸、ポリビニルアルコール(PVA);エチレンとビニルアセテートの共重合体(pEVA);
・ポリエチレングリコールテレフタラート、ポリブチレンテレフタラートおよびそれらの共重合体(Locteron(登録商標)としても知られる);Re-Gel(登録商標)としても知られるPEGとPLGAの共重合体;Chronomer(登録商標)としても知られるポリオルトエステル;ポリ酸無水物;Eudragit(登録商標)、特にRL30D、RLPO、RL100、RS30D、RSPO、RS100、NE30D、NM30D、NE40D、L100としても知られる様々な分子量および比率のアクリル酸とエステルの共重合体、またはメタクリル酸とエステルの共重合体;CAP(登録商標)としても知られるフタル酸セルロースとフタル酸エステルセルロースの共重合体;
・Kollidon(登録商標)としても知られるポリビニルピロリドンおよびKollidon SR(登録商標)としても知られるポリビニルアセテートとのその共重合体;
・部分的加水分解および/またはカルボキシレートもしくは長鎖脂肪酸(C8~C16)などの修飾物の結合により化学的に修飾されていてもよい、非イオン性多糖、アミノ多糖、カルボキシル化多糖および硫酸化多糖を包含する天然起源の重合体であって、
グアーガム、アカシアガム、トラガカントガム、キサンタンガム、カラゲナン(イオタとラムダの両方)、リン(Linn)ガム、アルギン酸塩、スクレログルカン、デキストラン、キチンおよびキトサン、ペクチン、ローカストビーンガムを含むガラクトマンナンを含む天然起源の重合体。
【0074】
さらに、ポリマーブレンド、例えば、親水性特質と疎水性特質を有する重合体を混合しているポリマーブレンドは制御放出製剤に適切な放出プロファイルを生じさせるために特に有用であることが頻繁に見られ、そのようなポリマーブレンドには次のものが含まれることになる。
・デンプンまたはセルロース重合体とのメチルメタクリレート重合体;
・ポリアクリル酸‐プルロニック‐ポリアクリル酸ブロック共重合体;
・971NFを含むCarbopol、カラゲナン、キサンタンガム、アルギン酸塩、ヒアルロン酸、L100を含むEudragit(登録商標)およびカルボキシメチルセルロースから選択される陰イオン性重合体と共にキトサン、ポリリシン、ポリアリルアミン、またはポリビニルアミンから選択される陽イオン性重合体を使用する高分子電解質積層膜;
・HPMC、NaCMC、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガムまたはMethocel(登録商標)などの親水性重合体と混合されることが多いエチルセルロースまたはコンプリトール888 ATOなどの疎水性セルロース重合体;
・Eudragit(登録商標)L100‐55などのpH依存性重合体と混合されているHPMCなどの親水性膨潤重合体;
・共有結合により架橋されるか、または特に天然起源の重合体についてはホウ酸、カルシウム、マグネシウムおよび亜鉛を含む多価陽イオンの付加により架橋され得るポリマーブレンド;
・ポリマーブレンドにおいて使用されることが多い天然のガム類、特にセルロースエーテルとカラゲナン、ローカストビーンガムとキサンタンガム。
【0075】
三成分ブレンドはあまり一般的ではないが、一つの例は、膨潤可能な高分子量架橋アクリルポリマーCarbopolとラクトースとの非イオン性水溶性重合体ポリオックスのブレンドである。
【0076】
フィルム被覆材が一体化錠剤以外に多ユニット型剤形と使用するために検討されている。重合体、溶媒および可塑剤、特にクエン酸トリエチル、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジエチルまたはプロピレングリコールを含む被覆材が選択される。ポリ(ジメチルシロキサン)または他のシランエラストマーが使用されるとき、可塑剤は必要ない場合があり得る。
【0077】
水和してヒドロゲル障壁を提供することができる表面被覆材の特定の例には、セルロース重合体、Eudragit(登録商標)重合体、ならびにKollicoat(登録商標)、例えば、Kollicoat(登録商標)SRおよびKollicoat(登録商標)IRとしても知られ、可塑剤としてのプロピレングリコールと共に使用されるポリビニルアセテート、ポリビニルアルコールおよびPEGのグラフト共重合体が挙げられる。この被覆材の特質はpHと無関係である。
【0078】
高分子電解質積層膜(PEM)は、
・正に帯電した多価電解質と負に帯電した多価電解質の選択、
・積層される層の数、
・フィルムを形成するために使用される多価電解質の分子量
を含む可変項目の組合せにより適切な速度の薬品の放出を生じさせることができるフィルム被覆材の1つの特定の例である。
【0079】
PEMの膜透過性は刺激に反応することがあり得、それによりpH、イオン強度または温度の変化が特定の溶質に対する膜透過性を変化させる可能性を有する。
【0080】
多層錠剤製剤は非常に溶けやすい薬品に特に有用である。そのような剤形は、フィルムまたは圧着障壁として実装され得る1種類または2種類の半透過性被覆材を有する親水性マトリックスコアを含む。典型的な重合体にはセルロース誘導体、特にHPMC、NaCMC、HPC、EC、もしくはMC、または天然ガム類、特にトラガカントまたはグアーガムが含まれる。
【0081】
1つの実施形態では前記コアは式(I)の化合物、
80000~120000cpsの粘度を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロース、
約50cpsの粘度を有するヒドロキシプロピルメチルセルロース、
および少なくとも1種類の薬学的に許容可能な賦形剤を含み、
そのヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロース(80000~120000cps)とそのヒドロキシプロピルメチルセルロース(50cps)の比率が2:1~1:2であり、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの総計またはヒドロキシプロピルメチルセルロースとヒドロキシプロピルセルロースに対する式(I)の化合物の比率が1:2~1:6である。
【0082】
ヒプロメロースまたはHPMCとしても知られるヒドロキシプロピルメチルセルロースは様々な粘度のものが利用可能である。本発明においてヒドロキシプロピルメチルセルロースは80000~120000cpsおよび約50cpsという2つの粘度で存在する。80000~120000の粘度を有する適切なHPMCは、グルコースのC2、C3およびC6ヒドロキシル部分に19~24%のメトキシエーテル置換および7~12%のヒドロキシプロピルオキシエーテル置換を含み、且つ、約100000cpsの粘度を有するヒプロメロース2208 USPである。粘度は2%の濃度で20℃の水中において測定される。適切なHPMC(80000~120000)はHPMC K100Mである。約50cpsの粘度を有する適切なHPMCはHPMC E50 LVである。
【0083】
幾つかの実施形態では前記HPMC(80000~120000)は80000~120000cpsの粘度を有するヒドロキシプロピルセルロース(HPC)によって置き換えられてよい。
【0084】
幾つかの実施形態ではそのHPMCまたはHPC(80000~120000)はHPMC(80000~120000)、特にHPMC K100Mである。
【0085】
幾つかの実施形態では前記HPMC(約50cps)はHPMC E50 LVである。
【0086】
幾つかの実施形態ではHPMCまたはHPC(80000~120000)のHPMC(約50cps)に対する比率は1.5:1~1:1.5の範囲内にあり、特に約1:1である。
【0087】
幾つかの実施形態では式(I)の化合物の全HPMCまたはHPMCもしくはHPC(80000~120000)とHPMC(約50cps)に対する比率は1:2~1:6、特に約1:3~1:5、より特別には約1:3である。
【0088】
幾つかの実施形態では式(I)の前記化合物は前記コアの10~30(重量/重量)%、特に前記コアの15~25(重量/重量)%、より特別には前記コアの約20(重量/重量)%の量で存在する。
【0089】
幾つかの実施形態では前記HPMCまたはHPC(80000~120000)は前記コアの20~40(重量/重量)%、特に前記コアの25~35(重量/重量)%、より特別には前記コアの約30(重量/重量)%の量で存在する。
【0090】
幾つかの実施形態では前記HPMC(約50cps)は前記コアの10~40(重量/重量)%、特に20~35(重量/重量)%または前記コアの25~35(重量/重量)%、より特別には前記コアの約30(重量/重量)%の量で存在する。
【0091】
幾つかの実施形態では前記コアは結合剤や潤滑剤などの薬学的に許容可能な賦形剤も含む。適切な結合剤にはショ糖およびラクトースなどの二糖類、デンプンおよびセルロース誘導体、例えば微結晶性セルロース、セルロースエーテルおよびヒドロキシプロピルセルロース(HPC)などの多糖類、キシリトール、ソルビトールまたはマルチトールなどの糖アルコール、ゼラチンなどのタンパク質、ならびにポリビニルピロリドン(PVP)およびポリエチレングリコール(PEG)などの合成重合体が含まれる。特定の実施形態ではその結合剤はミクロクリスタリンセルロースである。
【0092】
幾つかの実施形態では前記結合剤は前記コアの10~30(重量/重量)%、特に前記コアの約15~25(重量/重量)%、より特別には前記コアの約18(重量/重量)%の量で存在する。幾つかの実施形態ではミルリノンなどの式(I)の前記化合物およびミクロクリスタリンセルロースなどの前記結合剤は約30~50%、特に前記コアの約40(重量/重量)%の割合で前記コアの中に一緒に存在する。幾つかの実施形態では式(I)の化合物の結合剤に対する比率は1:2~2:1、特に約1:1である。
【0093】
適切な潤滑剤にはステアリン酸マグネシウム、植物性ステアリンおよびステアリン酸などの脂肪、タルク、またはシリカが含まれる。特定の実施形態ではその潤滑剤はステアリン酸マグネシウムである。
【0094】
幾つかの実施形態では前記潤滑剤は前記コアの0.5~5(重量/重量)%、特に前記コアの約1~3(重量/重量)%、特に前記コアの約2(重量/重量)%の量で存在する。
【0095】
別の実施形態では前記コアは式(I)の化合物、
少なくとも2種類の天然ガム類および少なくとも1種類の薬学的に許容可能な賦形剤を含む親水性マトリックス
を含み、前記2種類の天然ガム類の比率が2:1~1:2であり、且つ
式(I)の前記化合物の前記親水性マトリックスに対する比率が1:1~1:2.5である。
【0096】
適切な天然ガム類にはグアーガム、アカシアガム、トラガカントガム、キサンタンガム、カラゲナン(イオタとラムダの両方)、リン(Linn)ガム、アルギン酸塩、スクレログルカン、デキストラン、キタン(chitan)およびキトサン、ペクチン、およびローカストビーンガムを含むガラクトマンナンが含まれる。幾つかの実施形態では前記親水性マトリックスにはキサンタンガムまたはローカストビーンガムが含まれる。特定の実施形態では前記親水性マトリックスにはキサンタンガムおよびローカストビーンガムが含まれる。
【0097】
幾つかの実施形態ではキサンタンガムのローカストビーンガムに対する比率は約1.5:1~1:1.5、特に約1:1である。
【0098】
幾つかの実施形態では式(I)の化合物の親水性マトリックスに対する比率は1:1~1:2、特に約1:1.5である。
【0099】
幾つかの実施形態では式(I)の前記化合物は前記コアの15~25(重量/重量)%、特に前記コアの18~22(重量/重量)%、より特別には前記コアの約20(重量/重量)%の量で存在する。
【0100】
幾つかの実施形態では前記親水性マトリックスは前記コアの20~40(重量/重量)%、特に前記コアの25~35(重量/重量)%、より特別には前記コアの約30(重量/重量)%の量で存在する。キサンタンガムのローカストビーンガムに対する1:1という比率について、それぞれのガムの量はコアの約15(重量/重量)%である。
【0101】
幾つかの実施形態では前記賦形剤は結合剤、充填剤、滑剤、潤滑剤およびそれらの混合物から選択される。
【0102】
適切な結合剤にはショ糖およびラクトースなどの二糖類、デンプンおよびセルロース誘導体、例えばミクロクリスタリンセルロース、セルロースエーテルおよびヒドロキシプロピルセルロース(HPC)などの多糖類、キシリトール、ソルビトールまたはマルチトールなどの糖アルコール、ゼラチンなどのタンパク質、ならびにポリビニルピロリドン(PVP)およびポリエチレングリコール(PEG)などの合成重合体が含まれる。特定の実施形態では前記結合剤はミクロクリスタリンセルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)またはミクロクリスタリンセルロースとPVPの混合物である。
【0103】
幾つかの実施形態では前記結合剤は前記コアの17~30(重量/重量)%、より特別には前記コアの約23.5(重量/重量)%の量で存在する。幾つかの実施形態では前記結合剤は約20(重量/重量)%のミクロクリスタリンセルロースと約3.5(重量/重量)%のPVPを含む。
【0104】
適切な充填剤または増量剤にはラクトース、ショ糖、グルコース、マンニトール、ソルビトール、炭酸カルシウムおよびリン酸二カルシウムが含まれる。特定の実施形態ではその充填剤はラクトースである。
【0105】
幾つかの実施形態では前記充填剤は前記コアの20(重量/重量)%、特に前記コアの約25(重量/重量)%の量で前記コア内に存在する。
【0106】
適切な滑剤にはヒュームドシリカ、タルクおよび炭酸マグネシウムが含まれる。特定の実施形態ではその滑剤はヒュームドシリカである。
【0107】
幾つかの実施形態では前記滑剤は前記コアの約0.5~1.5(重量/重量)%、特に前記コアの約1(重量/重量)%の量で存在する。
【0108】
適切な潤滑剤にはステアリン酸マグネシウム、植物性ステアリンおよびステアリン酸などの脂肪、タルク、またはシリカが含まれる。特定の実施形態ではその潤滑剤はステアリン酸マグネシウムである。
【0109】
幾つかの実施形態では前記潤滑剤は前記コアの0.25~1(重量/重量)%、特に前記コアの約0.5(重量/重量)%の量で存在する。
【0110】
さらに別の実施形態では前記コアは
(i)式(I)の化合物、1種類以上の重合体、および1種類以上の賦形剤を含む被覆組成物、および
(ii)不活性球形粒子
を含み、前記球形粒子の表面上に前記被覆組成物が被覆されており、
式(I)の化合物の前記球形粒子に対する比率が約1:5~1:25であり、且つ
前記被覆粒子がシール性被覆材をさらに含む。
【0111】
前記不活性球形粒子は微小粒子系において一般的に使用されるあらゆる不活性球形粒子であり得る。前記不活性球形粒子は0.06~2mmの直径を有していることが典型的である。適切な不活性球形粒子は糖球形粒子および/またはデンプン球形粒子である。そのような粒子はカプセルまたは錠剤への製剤に適切である。微小粒子投薬系は徐放性製剤に次の利益を提供することができる。すなわち、
・胃排出にあまり依存せず、結果として個体内/個体間の胃内通過時間の変動が少なくなる(2mm未満の大きさは、幽門が閉じているときでも絶えず胃から抜け出すことができる)、
・粒子がより良好に分布し、粒子が局在化して刺激を与える可能性を避ける、
・損傷を受けた場合に性能障害を起こす余地が少ないので放出調節製剤について薬品の安全性が改善される、
・多粒子製剤は、大腸が唯一の吸収ウィンドウであるとき、大腸への選択的送達にとって一般的であり、それらは連続的なGI吸収にも使用され得る。
さらに、異なる放出プロファイルを有する粒子を混合して腸の様々な領域で曝露を最適化することが可能である。
【0112】
幾つかの実施形態では式(I)の化合物は被覆重合体と結合剤などの賦形剤を含む被覆組成物に調製される。次にその被覆組成物が球形粒子に被覆される。
【0113】
適切な被覆組成物は式(I)の化合物に加えて重合体、可塑剤および結合剤を含む。必要であればその被覆組成物を塗布のために適切な溶媒、例えば水に溶解または懸濁してよい。適切な重合体にはポリビニルアルコール(PVA)、またはHPMC、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)などのセルロース重合体が含まれる。適切な可塑剤にはプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)、セバシン酸ジブチル、グリセリン、クエン酸トリエチルおよびフタル酸ジエチルが含まれる。1つの特定の実施形態ではその重合体はHPMCであり、その可塑剤はPEGであり、例えば、その被覆組成物がOPADRYクリア(登録商標)の商標で販売されている。別の特定の実施形態ではその重合体はPVAであり、その可塑剤はPEGおよび/またはグリセリンであり、例えば、その被覆組成物がOPADRY II(登録商標)の商標で販売されている。
【0114】
前記被覆組成物は結合剤を含んでもよい。適切な結合剤にはショ糖およびラクトースなどの二糖類、デンプンおよびセルロース誘導体、例えばミクロクリスタリンセルロース、セルロースエーテルおよびヒドロキシプロピルセルロース(HPC)などの多糖類、キシリトール、ソルビトールまたはマルチトールなどの糖アルコール、ゼラチンなどのタンパク質、ならびにポリビニルピロリドン(PVP)およびポリエチレングリコール(PEG)などの合成重合体が含まれる。特定の実施形態ではその結合剤はPVPである。
【0115】
幾つかの実施形態では式(I)の化合物の前記重合体/可塑剤混合物に対する比率は約1.5:1~2:1、特に約1.6:1~1.8:1である。
【0116】
幾つかの実施形態では式(I)の化合物の結合剤に対する比率は8:1~12:1の範囲内にあり、特に約11:1である。
【0117】
幾つかの実施形態では式(I)の化合物の球形粒子に対する比率は約1:10~1:25、特に約1:15~1:20である。
シール性被覆材/緩衝性被覆材
【0118】
幾つかの実施形態では本発明の製剤はシール性被覆材を含んでよい。そのシール性被覆材をコアに、例えば、前記球形粒子の薬品被覆層に重ねて塗布してよく、またはコアの打錠により形成された錠剤上の被覆材として使用してよく、例えば、コアと徐放性被覆材の間(シール被覆)の被覆材、または徐放性被覆材と腸溶放出性被覆材の間(緩衝性被覆)の被覆材などの製剤の層と層の間の被覆材として使用してもよい。そのシール性被覆材または緩衝性被覆材は重合体と可塑剤を含んでよい。適切な重合体にはPVA、ならびにHPMC、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)などのセルロース重合体が含まれる。適切な可塑剤にはプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)、セバシン酸ジブチル、グリセリン、クエン酸トリエチルおよびフタル酸ジエチルが含まれる。特定の実施形態ではその重合体はHPMCであり、その可塑剤はPEGであり、例えば、その被覆組成物がOPADRYクリア(登録商標)の商標で販売されている。別の特定の実施形態ではその重合体はPVAであり、その可塑剤はPEGおよび/またはグリセリンであり、例えば、その被覆組成物がOPADRY II(登録商標)の商標で販売されている。そのシール性被覆材または緩衝性被覆材は所望の色を生じさせるための色素、例えば、白色を生じさせる二酸化チタンを含んでもよい。そのシール性被覆材または緩衝性被覆材は前記製剤の3~15(重量/重量)%、特に5~12(重量/重量)%、より特別には5~10(重量/重量)%の量で存在し得る。
徐放性被覆材
【0119】
上記の製剤は徐放性被覆材を含む。適切な徐放性被覆材にはHPMC、HPC、HEC、EC、MCおよびCMCなどのセルロース誘導体被覆材、または、アクリル酸およびそれらのエステルまたはメタクリル酸もしくはそれらのエステルの共重合体、例えば、RL30D、RLPO、RL100、RS30D、RSPO、RS100、NE30D、NE4ODおよびL100を含むEudragit(登録商標)の商標で販売されている被覆材が含まれる。特定の実施形態ではその徐放性被覆材は水に不溶性であるエチルセルロース(EC)を含んでよく、その場合にその徐放性被覆材は所望により少量の低粘度HPMC(例えば、6cps)などの水溶性重合体、例えば、Opadryクリア(商標)を含んでもよい。他の実施形態ではその徐放性被覆材はアクリル酸、アクリルエステル、メタクリル酸、またはメタクリルエステルを含んでよく、所望により第四級アンモニウム基を有する少量のメタクリル酸エステル(トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロリド)共重合体を含んでよい。この徐放性被覆は、エチルアクリレート(A)、メチルメタクリレート(B)および第四級アンモニウム基を有する少量のメタクリル酸エステル(トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロリド)(C)からなる1種類以上の共重合体から構成され得る。この実施形態の重合性材料について、単量体A:Bのモル比は1:1~1:3の範囲内にあり、好ましくは1:2であり、単量体A:Cのモル比は1:0.01~1:0.5の範囲内にあり、好ましくは0.05~0.25の範囲内にある。前記の層のうちの1つ以上が2種類の共重合体の混合物を含むとき、それらの共重合体のうちの第1の共重合体における単量体A:B:Cのモル比は約1:2:0.2であり、およびそれらの共重合体のうちの第2の共重合体における単量体A:B:Cのモル比は1:2:0.1であり、第1と第2の共重合体の比率は1:5~1:15の範囲にあり、特に約1:9である。
【0120】
前記徐放性被覆材は潤滑剤を含んでもよい。前記徐放性被覆材は可塑剤を含んでもよい。前記徐放性被覆材は付着防止剤を含んでもよい。
【0121】
特定の実施形態では前記徐放性被覆材はアクアコートECD 30のようなエチルセルロースとOpadryクリアのようなHPMC 6cpsを含み、その中でECとHPMCの比率が19:1~4:1の範囲内にあり、特に約9:1である。
【0122】
特定の実施形態では前記徐放性被覆材はアクアコートECD 30のようなエチルセルロースとOpadryクリアのようなHPMC 6cpsおよび可塑剤を含み、その中でECとHPMCの比率が19:1~4:1の範囲内にあり、特に約9:1であり、ECの可塑剤に対する比率が9:1~2:1の範囲内にあり、特に約3:1である。
【0123】
特定の実施形態では前記徐放性被覆材はアクアコートECD 30のようなエチルセルロースとOpadryクリアのようなHPMC 6cpsを含み、タルクおよび可塑剤をさらに含み、その中でECとHPMCの比率が19:1~4:1の範囲内にあり、特に約9:1であり、ECのタルクに対する比率が19:1~4:1の範囲内にあり、特に約9:1であり、そして、ECの可塑剤に対する比率が9:1~2:1の範囲内にあり、特に約3:1である。
【0124】
特定の実施形態では前記徐放性被覆材はEudragit RS30D、Eudragit RL30Dまたはそれらの混合物を含み、その中で第1と第2の共重合体の比率が1:5~1:15の範囲内にあり、特に約1:9である。
【0125】
前記徐放性被覆材は錠剤状の製剤に、または薬品被覆球形粒子に塗布され得る。
【0126】
幾つかの実施形態では前記製剤は1種類より多くの徐放性被覆材を含んでよい。幾つかの実施形態では第1の徐放性被覆材は第2の徐放性被覆材の下に存在してよい。第1と第2の徐放性被覆材は同一でも異なっていてもよい。例えば、第1の被覆材がエチルセルロース被覆材であってよく、且つ、第2の被覆材がEudragit RS30DとEudragit RL30Dの混合物などのEudragit被覆材であってよく、または第1の被覆材がEudragit RS30DとEudragit RL30Dの混合物であってよく、且つ、第2の被覆材がEudragit RS30Dであってよい。
【0127】
通常、前記徐放性被覆材は前記徐放性被覆製剤の1~40(重量/重量)%、特に3~30%、より特別には5~25%の量で存在する。1つの実施形態ではエチルセルロース被覆材は前記徐放性被覆製剤の3~15(重量/重量)%、特に5~10%、例えば、約7.5%の量で存在してよく、または前記徐放性被覆製剤の約5(重量/重量)%の量で存在してよい。別の実施形態ではエチルセルロース被覆材は前記徐放性被覆製剤の約10(重量/重量)%の量で存在してよい。さらに別の実施形態ではEudragit RL30DとEudragit RS30Dからなる徐放性被覆材は前記徐放性被覆製剤の約25(重量/重量)%の量で存在してよく、前記徐放性被覆製剤の約15(重量/重量)%の量で存在し得るEudragit RS30Dからなる徐放性被覆材をさらに含んでよい。
腸溶放出性被覆
【0128】
所望により上記の製剤のうちのいずれも腸溶放出性被覆材を含んでもよい。適切な腸溶放出性被覆材には酢酸フタル酸セルロース重合体またはフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース重合体などのセルロース被覆材、またはアクリル酸およびそれらのエステルまたはメタクリル酸もしくはそれらのエステルの共重合体、例えばL100、L100‐55およびS100を含むEudragit(登録商標)の商標で販売されている被覆材が含まれる。特定の実施形態ではその腸溶放出性被覆材はポリ(メタクリル酸-エチルアクリレート)1:1共重合体(Eudragit L100‐55)、ポリ(メタクリル酸-エチルアクリレート)1:1共重合体(Eudragit L100)およびメタクリル酸-メチルメタクリレート共重合体(1:2)(Eudragit S100)を含んでよい。好ましい実施形態ではその腸溶放出性被覆材はポリ(メタクリル酸-エチルアクリレート)1:1共重合体(Eudragit L100‐55)またはその水性分散体(Eudragit L30D‐55)である。
【0129】
前記腸溶放出性被覆材は潤滑剤を含んでもよい。前記腸溶放出性被覆材は可塑剤を含んでもよい。前記腸溶放出性被覆材は付着防止剤を含んでもよい。
【0130】
特定の実施形態では前記腸溶放出性被覆材はEudragit L100‐55を含む。
【0131】
特定の実施形態では前記腸溶放出性被覆材はEudragit L100‐55と可塑剤を含み、その中で重合体と可塑剤の比率が19:1~4:1の範囲内にあり、特に約9:1である。
【0132】
特定の実施形態では前記腸溶放出性被覆材はEudragit L100‐55、可塑剤および付着防止剤を含み、その中で重合体および可塑剤の比率が19:1~4:1の範囲内にあり、特に約9:1であり、重合体の付着防止剤に対する比率は4:1~1:4の範囲内にあり、好ましくは3:1~1:3の範囲内にあり、より好ましくは3:2~2:3の範囲内にあり、例えば、3:2または1:1である。
通常、前記腸溶放出性被覆材は前記腸溶放出性被覆製剤の20~60(重量/重量)%、例えば、20~50(重量/重量)%、特に25~40(重量/重量)%の量、例えば、前記腸溶放出性被覆製剤の約40(重量/重量)%または30(重量/重量)%の量で存在する。1つの実施形態ではポリ(メタクリル酸-エチルアクリレート)1:1共重合体(Eudragit L100‐55)からなる被覆材は前記腸溶放出性被覆製剤の約30(重量/重量)%の量で存在してよい。
製剤
【0133】
幾つかの実施形態では本発明の製剤は分散剤、溶媒、保存剤、着香剤、微生物抑制剤などのような賦形剤をさらに含んでよい。分散剤の例には植物油、脂肪族炭化水素または芳香族炭化水素(例えば、n‐デカン、n‐ヘキサンなど)、脂肪族エステルまたは芳香族エステル(例えば、オクタノエート)およびケトンが挙げられる。水との混和性が弱い溶媒、例えばジクロロメタン、クロロホルムおよびフッ素化炭化水素も分散剤の例である。分散剤はマトリックスを形成する過程において、および/または本発明の調製後だが投与前に製剤から除去され得る。適切な保存剤および抗菌材には、例えば、EDTA、ベンジルアルコール、重亜硫酸塩、ラウリル酸のモノグリセリルエステル(モノラウリン)、カプリン酸および/またはその可溶性アルカリ塩またはそのモノグリセリルエステル(モノカプリン)、エデト酸およびカプリン酸および/またはその可溶性アルカリ塩またはそのモノグリセリルエステル(モノカプリン)およびエデンテート(edentate)が含まれる。
【0134】
本発明の方法において使用される医薬組成物は当技術分野において知られている方法を用いて製剤および投与され得る。製剤および投与の技術を、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Loyd V. Allen, Jr (編)、The Pharmaceutical Press、ロンドン、第22版、2012年9月、Martindale: The Complete Drug Reference, Alison Brayfield (編)、Pharmaceutical press、ロンドン、第38版、2014年に、製剤方法と試薬についてHandbook of Pharmaceutical Excipients, Raymond C. Rowe ら(編)、Pharmaceutical Press、ロンドン、第7版、2012年に見ることができる。
【0135】
静脈内使用に適切な医薬剤形には無菌注射溶液または無菌注射分散剤、および無菌注射溶液の即時調製用の無菌粉剤が含まれる。それらの医薬剤形は製造条件および貯蔵条件下で安定である必要があり、還元または酸化、および細菌または真菌などの微生物の混入活動に対処して保存されてもよい。
【0136】
その静脈内液剤または静脈内分散剤向けの溶媒または分散媒は前記化合物に適した従来の溶媒系または担体系のうちのいずれかを含んでよく、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、適切なそれらの混合物、および植物油を含んでよい。例えば、レシチンなどの被覆材を使用することにより、分散剤の場合は要求される粒径を保持することにより、および界面活性剤を使用することにより適正な流動性を維持することができる。必要な場合には様々な抗細菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどを含むことにより微生物の活動を防ぐことができる。モル浸透圧濃度を調節するための薬剤、例えば糖類または塩化ナトリウムを含むことが多くの場合に好ましい。前記注射用製剤は血液と等張になることが好ましい。前記静脈内組成物の中に吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを使用することによりそれらの組成物の長期吸収が可能になる。
【0137】
無菌静脈内液剤は適切な溶媒の中に必要に応じて上で述べた成分のような他の様々な成分と共に必要な量の活性化合物を組み入れ、その後でフィルター滅菌することにより調製される。一般的に、分散剤は基本分散媒と上で列挙した成分のうちの必要な他の成分を含む無菌ベヒクルに様々な滅菌済み活性成分を組み入れることにより調製される。無菌静脈内液剤の調製用の無菌粉剤の場合、活性成分とあらゆる所望の追加成分の事前にフィルター滅菌した溶液を真空乾燥または凍結乾燥することが好ましい調製方法である。
【0138】
前記経口製剤はあらゆる種類の固形経口剤形、例えば、錠剤、ミニ錠剤、またはカプセル剤であり得る。例えば、本発明の製剤は錠剤型に打錠されてよいし、または前記被覆粒子はカプセルに充填されてよい。固形経口剤形の製剤技術は当技術分野において公知である。
【0139】
本発明の特定の実施形態では重合性マトリックス中に式(I)の化合物を含む製剤であって、その重合性マトリックスと式(I)の化合物の混合物がシール性被覆材を有する前記製剤が提供される。その式(I)のシール被覆重合体マトリックス化合物は徐放性被覆材を有し、その製剤は腸溶放出性被覆材をさらに含む。所望によりその徐放性被覆材とその腸溶放出性被覆材の間に緩衝性被覆材が存在してもよい。
【0140】
幾つかの実施形態では式(I)の前記化合物はミルリノンである。幾つかの実施形態では前記コアの重合体マトリックスは2:1~1:2、特に1.5:1~1:1.5、より特別には約1:1の比率のHPMCまたはHPC(80000~120000)とHPMC(50cps)である。幾つかの実施形態では前記シール性被覆材はHMPCまたはPVAから選択される重合体とPEGおよび/またはグリセリンから選択される可塑剤を含む。幾つかの実施形態では前記緩衝性被覆材はHMPCまたはPVAから選択される重合体とPEGおよび/またはグリセリンから選択される可塑剤を含む。幾つかの実施形態では前記徐放性被覆材はエチルセルロースを含む。幾つかの実施形態では前記腸溶放出性被覆材は酢酸フタル酸セルロース重合体、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース重合体、またはアクリル酸およびそれらのエステルまたはメタクリル酸およびそれらのエステルの共重合体を含む。
【0141】
幾つかの実施形態では前記製剤は他の医薬品を含んでよいし、または他の医薬品と共に連続して、および/または別々に投与されてもよい。そのような医薬品には、限定されないが、エナラプリルおよびラミプリルなどのアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬;限定されないが、イルベサルタンおよびカンデサルタンなどのアンギオテンシン受容体遮断薬;限定されないが、ニフェジピンおよびジルチアゼムなどのカルシウムチャネル遮断薬;限定されないが、メトプロロールおよびカルベジロールなどのβ遮断薬;限定されないが、フルセミド、ヒドロクロロチアジドおよびスピロノラクトンなどの利尿薬;および、限定されないが、硝酸塩およびヒドララジンなどの血管拡張薬が含まれる。
【0142】
本発明を容易に理解し、且つ、実際に実行することができるようにこれより以下の非限定的な実施例によって特定の好ましい実施形態を説明する。
【実施例】
【0143】
GI管の通過中に出会う様々な環境にわたって所望の放出プロファイルを達成する式(I)の化合物の本発明に準拠する持続放出製剤、特にミルリノンの持続放出製剤が国際公開第2013/023250(A1)号として公開されたPCT出願PCT/AU2012/000967号明細書の中で説明されている。所望の放出プロファイルを達成する製剤の例を以下に説明する。式(I)の化合物の持続放出製剤の放出プロファイルは国際公開第2013/023250(A1)号パンフレットの中で説明される溶解試験方法に従って決定され得る。
【0144】
実施例1:ヒドロキシプロピルメチルセルロースマトリックスを含むミニ錠剤製剤
【0145】
【0146】
ステップ1:計量
全ての成分を別々に二重のポリ袋および/またはバターペーパーに入れて計量した。
【0147】
ステップ2:ふるい分け
1. HPMC 50cps、ミルリノン、HPMC K100MおよびアビセルPH102をASTM40メッシュに通してふるい分けした。
【0148】
ステップ3:造粒
1. 上でふるいにかけた成分(粒内)を急速混合造粒機に加えた。
2. 乾式混合を150rpmのインペラ速度で5分間にわたって行った。
3. 次に420gの精製水を2分以内にゆっくりと添加し、1500rpmで回転するチョッパーを使用して湿式マッシングを150rpmで2分間にわたって行った。
4. 最後に湿った顆粒をボウルから取り出した。
【0149】
ステップ 4: 乾燥
1. 急速乾燥機内で湿った塊を50℃の製品温度で45分間にわたり、水分の重量%が3~4(重量/重量)%に低下するまで乾燥させた。
2. 顆粒をASTM30メッシュに通してふるい分けした。
【0150】
ステップ5:製粉(顆粒)
1. コミルを使用して1016番(1mm)のふるいにより顆粒を製粉した。
2. ステップ4および5の顆粒をまとめて混合した。
【0151】
ステップ6:ふるい分け
1. 粒外アビセルをASTM40メッシュに通してふるい分けした。
2. ステアリン酸マグネシウムをASTM60メッシュに通してふるい分けした。
【0152】
ステップ7:混合(粒外)
1. 顆粒と粒外アビセルを一緒にダブルコーンブレンダーに入れて15rpmで5分間にわたって混合した。
2. 顆粒とステアリン酸マグネシウムを一緒にダブルコーンブレンダーに入れて15rpmで15分間にわたって混合した。
3. 潤滑剤を添加した顆粒をダブルコーンブレンダーから取り出し、いつでも打錠可能にした。
【0153】
ステップ8:打錠
1. 1セットの多重「D」形先端金型パンチセットをCadmach CU20打錠機に取り付けた。
a.上部パンチ:2mmの円形、標準的な凹面(12個の先端部)
b.下部パンチ:2mmの円形、標準的な凹面(12個の先端部)
【0154】
【0155】
ステップ10:被覆(シール被覆)
1. フィルム被覆の10(重量/重量)%の重量増になる割合でOpadryホワイトを使用してミニ錠剤をシール被覆した。
2. 次の機器パラメーターでボトム・スプレーコンテナ(2.4リットル)を使用して被覆を行った。:
【0156】
【0157】
【0158】
ステップ12:徐放性被覆
1. クエン酸トリエチルを可塑剤として使用し、アクアコートECD 30(エチルセルロース分散体)を使用してミニ錠剤の7.5(重量/重量)%の徐放性被覆を行った。
【0159】
【0160】
2. 次の機器パラメーターでWursterコーティング機(2.4リットルのボトム・スプレーコンテナ)により被覆を行った。
【0161】
【0162】
3. 被覆後、熱風炉内で硬化を約60℃の製品温度で2時間にわたって行った。
【0163】
【0164】
ステップ14:緩衝性被覆
1. Opadryホワイトを使用して5(重量/重量)%の重量増になる割合で緩衝性被覆を行った。
2. 次の機器パラメーターでボトム・スプレーコンテナ(2.4リットル)を使用して被覆を行った。:
【0165】
【0166】
ステップ15:腸溶性被覆
1. タルクを付着防止剤として使用し、且つ、クエン酸トリエチルを可塑剤として使用し、Eudragit L30 D55重合体を30(重量/重量)%の重量増になる割合で使用することにより緩衝性被覆ミニ錠剤の腸溶性被覆を行った。
【0167】
【0168】
2. 次の機器パラメーターでボトム・スプレーコンテナ(2.4L)を使用して被覆を行った。
【0169】
【0170】
3. 被覆後、熱風炉内でミニ錠剤の硬化を40℃の製品温度で2時間にわたって行った。
【0171】
【0172】
実施例2:天然ガム類からなる親水性マトリックスを含むミニ錠剤製剤
【0173】
【0174】
ステップ1:計量分配
全ての成分を別々に二重のポリ袋に入れて計量した。ミルリノンの量を次の計算に基づいて計量した。
ミルリノンの評価分析=99.70%(そのまま)
ミルリノンの錠剤当たりのミリグラム数=ミルリノンの理論量(mg/錠剤)×100/ミルリノンの評価分析=2.00×100/99.7=2.01mg
ミクロクリスタリンセルロースを使用してAPI(活性医薬成分)の量を調節した。
【0175】
ステップ2:ふるい分け
1. ステアリン酸マグネシウムを除く全ての成分をASTM40メッシュに通してふるい分けした。
2. ステアリン酸マグネシウムをASTM60メッシュに通してふるい分けした。
【0176】
ステップ3:混合
1. 上記の表の成分1~3を0.5LのTurbulaシェーカー・ミキサーコンテナに移し、混合を49rpmで10分間にわたって行った。
2. 次に成分4~7を添加し、さらに混合を49rpmで10分間にわたって行った。
3. 次に成分8を添加し、潤滑剤供給を49rpmで5分間にわたって行った。
4. 最後に混合物を二重のポリ袋に収集した。
【0177】
ステップ4:打錠
1. 1セットの多重「D」形先端金型パンチセットをCadmach CU20打錠機に取り付けた。
a.上部パンチ:2mmの円形、標準的な凹面(12個の先端部)
b.下部パンチ:2mmの円形、標準的な凹面(12個の先端部)
2. Cadmach CU20打錠機を使用して錠剤を打錠した。ハンドル車を回転させて手動で打錠を行って充分な硬度と厚みを得た。
【0178】
【0179】
ステップ5:シール性被覆
1. フィルム被覆剤としてOpadryホワイトを使用してミニ錠剤のシール被覆を3(重量/重量)%の重量増になる割合で行った。Opadryフィルム被覆システムの粉末を水に添加し、プロペラ撹拌を用いて45分間にわたって混合した。製造業者の指示に従って被覆懸濁液を調製することができる。
2. 次のパラメーターでGansonsコーティング機(GAC‐275)を使用することにより被覆を行った。
【0180】
【0181】
【0182】
ステップ7:ミニ錠剤の徐放性(SR)被覆
1. クエン酸トリエチルを可塑剤として使用し、エチルセルロース分散体(アクアコートECD30D)による、5(重量/重量)%の重量増になるSR被覆をミニ錠剤に行った。
【0183】
【0184】
2. 次のパラメーターでGansonsコーティング機(GAC‐275)を使用することにより被覆を行った。
【0185】
【0186】
3. 真空オーブン内で(真空にせずに)ミニ錠剤の硬化を60℃で2時間にわたって行った。
【0187】
【0188】
ステップ9:緩衝性被覆
1. バッチ028のステップ5において記載されているように、Opadryホワイトをフィルム被覆剤として使用して5(重量/重量)%の重量増になる割合でミニ錠剤のシール被覆を行った。
2. 次のパラメーターで2.4LのWursterコーティングコンテナ(GPCG1.1)により被覆を行った。
【0189】
【0190】
【0191】
ステップ11:腸溶性被覆
1. 可塑剤としてのクエン酸トリエチルおよび付着防止剤としてのタルクと共に腸溶性重合体としてのEudragit L30D55により緩衝性被覆ミニ錠剤の腸溶性被覆を行った。
【0192】
【0193】
2. 次のパラメーターで2.4LのWursterコーティングコンテナ(GPCG1.1)により被覆を行い、40(重量/重量)%の腸溶性被覆を生じさせた。
【0194】
【0195】
【0196】
実施例3:ミルリノンビーズの製剤
【0197】
【0198】
【0199】
ステップ1:薬物重層
1. 薬物分散体の調製手順
a. ミルリノン、コリドン30およびOpadryホワイトをASTM30メッシュに通してふるい分けした。全ての成分を1つのポリ袋に集めた。
b. 精製水をビーカーに入れて計量し、プロペラミキサーに入れて激しい渦を巻き起こした。
c. 渦が持続している水にステップ(a)の成分をゆっくりと添加した。添加の完了後にプロペラミキサー速度を低下させて渦が起こることを避けた。混合を30分間にわたって行った。
2. Wursterコーティング機による薬物重層
a. Wursterコーティング機に次の付属品を装備した。
i) 2.4Lのボトム・スプレーコンテナ
ii) 20mm高のWursterカラム
iii) 1.2mmの液体ノズルインサート
b. 350.0gの粒状糖(30/35#)(Werner社、ドイツ)を前記コンテナに入れた。
c. 粒状糖を40℃の製品温度に達するように加熱した。
d. 255分の被覆時間の期間にわたって記録された次のパラメーターで粒状糖に薬物分散体をスプレーした。
【0200】
【0201】
e. 被覆後、ペリスタポンプを停止し、製品温度を44℃にし、その後で被覆工程を停止した。
f. 総収量は390.43gであった。
【0202】
ビーズのスプレー被覆の間の(重量/重量)%単位の重量増を決定する2つの方法ある。
【0203】
方法A:
被覆工程の完了後でしか重量増は計算できず、その時に次の式を用いて重量増を調査することができる:
生じた実際の(重量/重量)%単位の重量増=最終的な重量-最初の重量/最初の重量×100。
【0204】
方法B:
40(重量/重量)%の腸溶性被覆に製造ロスを補うための10%余分な溶液を使用することを除き、記載されたとおりに被覆用分散体/溶液が調製されるものとする。40(重量/重量)%に相当する溶液の分量がビーズに完全にスプレーされるので、生じる最終的な重量増は40(重量/重量)%であると考えらえる。
【0205】
ステップ2:薬物重層ビーズのシール被覆(10(重量/重量)%)
1. GPCG1.1に次の付属品を装着した。
a. 2.4Lのボトム・スプレーコンテナ
b. 20mm高のWursterカラム
c. 1.2mmの液体ノズルインサート
2.被覆溶液の調製
【0206】
【0207】
a. 計量した量の水に激しい渦を起こし、それにゆっくりとOpadryホワイトを添加した。添加の完了後に速度を低下させて渦が起こるのを避けた。混合を45分間にわたって行った。
b. 260分の被覆時間の期間にわたって記録された次のパラメーターで390.0gの薬物重層球体に被覆溶液をスプレーした。
【0208】
【0209】
c. 被覆後、温度を45℃にし、その後で被覆工程を停止した。
【0210】
総収量は412.0gであることがわかった。
【0211】
ステップ3A:10(重量/重量)%の被覆材を有するビーズを調製するための(9:1の比率のEudragit RS30DとEudragit RL30Dを使用する)シール被覆ビーズの第一層徐放性(SR)被覆
1. 被覆用分散体の調製
【0212】
【0213】
a. Eudragit RL30DとEudragit RS30Dを一緒にビーカーに入れて混合した。
b. 4500rpmのホモジェナイザーで回転する精製水の中でタルクとクエン酸トリエチルを4500rpmで10分間にわたってホモジェナイズした。
c. 次にステップaの重合体分散体をステップbの賦形剤分散体に添加し、プロペラミキサーを使用して混合を380rpmで30分間にわたって行った。
【0214】
2. 412.0gのビーズをGPCG1.1の2.4Lのボトム・スプレーコンテナに移し、28℃に達するように加熱した。
【0215】
3. 303分の被覆工程の期間にわたって記録された次のパラメーターでビーズに被覆を行って10(重量/重量)%の第一層SR被覆を達成した。
【0216】
【0217】
4. 総収量は451.0gであった。分析(溶解試験)のために真空を用いずに真空オーブン内で21.00gのビーズを50℃で30分間にわたって硬化した。
【0218】
ステップ3B:15(重量/重量)%の被覆材を有するビーズを調製するための(9:1の比率のEudragit RS30DとEudragit RL30Dを使用する)シール被覆ビーズの第一層徐放性(SR)被覆
ステップ2に従って調製されたビーズをステップ3Aにおいて説明された9:1の比率のEudragit RS30DとEudragit RL30Dの徐放性被覆分散体でステップ3Aに記載される方法に従って被覆したが、それはビーズに対して15(重量/重量)%の徐放性被覆を達成するために充分な期間にわたって行われた。
【0219】
ステップ3C:(重量/重量)%の被覆材を有するビーズを調製するための(9:1の比率のEudragit RS30DとEudragit RL30Dを使用する)シール被覆ビーズ20の第一層徐放性(SR)被覆
ステップ2に従って調製されたビーズをステップ3Aにおいて説明された9:1の比率のEudragit RS30DとEudragit RL30Dの徐放性被覆分散体でステップ3Aに記載される方法に従って被覆したが、それはビーズに対して20(重量/重量)%の徐放性被覆を達成するために充分な期間にわたって行われた。
【0220】
ステップ3D:25(重量/重量)%の被覆材を有するビーズを調製するための(9:1の比率のEudragit RS30DとEudragit RL30Dを使用する)シール被覆ビーズの第一層徐放性(SR)被覆
ステップ2に従って調製されたビーズをステップ3Aにおいて説明された9:1の比率のEudragit RS30DとEudragit RL30Dの徐放性被覆分散体でステップ3Aに記載される方法に従って被覆したが、それはビーズに対して25(重量/重量)%の徐放性被覆を達成するために充分な期間にわたって行われた。
【0221】
ステップ3E:総計で30(重量/重量)%のSR被覆材を有するビーズを調製するためのEudragit RS30Dを使用する第一層SRビーズの第二層徐放性(SR)被覆
1. 被覆用分散体の調製
【0222】
【0223】
a. Eudragit RS30Dをビーカーに入れた。
b. 4500rpmのホモジェナイザーで回転する精製水の中でタルクとクエン酸トリエチルを4500rpmで10分間にわたってホモジェナイズした。
c. 次にステップaの重合体をステップbの賦形剤分散体に添加し、プロペラミキサーを使用して混合を380rpmで30分間にわたって行った。
【0224】
2. ステップ3D由来の単層SRビーズをGPCG1.1の2.4Lのボトム・スプレーコンテナに移し、28℃に達するように加熱した。
3. 被覆工程の充分な期間にわたって記録された次のパラメーターでビーズに被覆を行って5(重量/重量)%の第二層SR被覆と30%の総SR被覆を達成した。
【0225】
【0226】
4. 分析(溶解試験)のために真空を用いずに真空オーブン内でビーズの総収量を50℃で30分間にわたって硬化した。
【0227】
ステップ3F:総計で40(重量/重量)%のSR被覆材を有するビーズを調製するためのEudragit RS30Dを使用する第一層SRビーズの第二層徐放性(SR)被覆
ステップ3Dに従って調製されたビーズをステップ3Eにおいて説明されたEudragit RS30Dの徐放性被覆分散体でステップ3Eに記載される方法に従って被覆したが、それは15(重量/重量)%の第二層徐放性被覆および40(重量/重量)%の総SR被覆を達成するために充分な期間にわたって行われた。
【0228】
ステップ4:(Opadryホワイトを使用する10(重量/重量)%の重量増の割合での)SR被覆ビーズの緩衝性被覆
1. 被覆溶液の調製
【0229】
【0230】
調製手順は上記のステップ2(2)の手順と同一であった。
2. 180分の被覆工程の期間にわたって記録された次のパラメーターでGPCG1.1ボトム・スプレーアッセンブリーを使用してビーズに被覆を行った。
【0231】
【0232】
ステップ5:40(重量/重量)%の腸溶性の重量増の割合でEudragit L30D55を使用する腸溶性被覆
1. 被覆溶液の調製
【0233】
【0234】
2. 水中でタルクとクエン酸トリエチルを10分間にわたってホモジェナイズした。次にこの賦形剤分散体をEudragit L30D55分散体に250rpmでゆっくりと撹拌しながらゆっくりと注いだ。最終的に速度を200rpmにまで減速し、混合を30分間にわたって行った。
3. 最初にビーズを28℃の製品温度に達するように加熱し、次に765分間継続する被覆を開始した。記録されたパラメーターを下に提示する。
【0235】
【0236】
3. 最後に前記装置内で40~43℃の間の温度で硬化を2時間にわたって行った。総収量は工程の最後で543.00gであった。
【0237】
実施例4:即放性ミルリノン製剤
【0238】
【0239】
手順:
1. 計量:
記載されている全ての成分を二重底のポリ袋に入れて正確に計量し、ラベルとタグを付けた。
2. ふるい分け:
ステアリン酸マグネシウムを除く全ての賦形剤とミルリノンをASTM40メッシュに通してふるい分けした。
ステアリン酸マグネシウムをASTM60メッシュに通してふるい分けした。
3. 混合:
ミルリノン、およびステアリン酸マグネシウムを除く他の賦形剤をTurbulaシェーカー・ミキサーに入れ、15分間にわたって混合した。ステアリン酸マグネシウムをその混合物に添加し、5分間にわたって混合した。
4. 打錠:
2mmの先端を有する円形B形パンチを使用して潤滑剤を添加した混合物を打錠した。
【0240】
工程中のチェック:
錠剤の重量:10mg
硬度:30N~40N
厚み:2.4mm~2.5mm
摩損度:0.486%
崩壊試験:4~5分
【0241】
実施例5:ミルリノンのpH溶解性試験
目的:様々な緩衝液におけるミルリノンの飽和溶解度を実施すること。
緩衝液:
1. pH1.2の塩酸緩衝液
2. pH4.5の酢酸緩衝液
3. pH6.8のリン酸緩衝液
4. pH7.4のリン酸緩衝液
【0242】
手順:
1. 2mLの緩衝溶液を8mLのUSPタイプI透明ガラスバイアル(スクリューキャップおよびPTFE隔壁付き)に入れる。
2. 10mgのミルリノンを各バイアルに加え、そのバイアルを振ってその化合物を溶かす。
3. 飽和溶液が形成されるまでミルリノンの添加を続ける。
4. ミルリノンの添加後にその飽和溶液のpHを測定する。
5. 最初のpHと比較して、どのようなものであれ0.1単位よりも大きいpHの差でも観察される場合、そのpHを最初のpHに戻すためにそれぞれ酸または塩基を使用してpHを調節した。
6. バイアルをスクリューキャップで閉じ、回転チューブ振盪機を使用して24時間にわたって混合し続ける。
【0243】
注記:バイアルを頻繁に観察し、溶液が透明である場合、追加の量のミルリノンを添加して飽和溶液を作製する。
【0244】
結果:
【0245】
【0246】
結論:ミルリノンは酸性pHにおいて溶解性が高く、その溶解性はpHの上昇とともに徐々に低下することが溶解度の結果より示されている。したがって、ミルリノン錠剤向けの特徴的な溶解媒体はpH6.8または7.4であるべきである。
【0247】
実施例6:製剤の溶解プロファイル
次の手順を使用して式(I)の化合物の持続放出製剤がGI管の通過中に出会う様々な環境にわたって所望の放出プロファイルを達成するか決定した。その所望の持続放出製剤はゼロ次薬品送達カイネティクス(すなわち、時間に関しての線形送達)を提供する。その剤形からの薬品の制御放出は2つの過程、すなわち溶解と放出に左右される。
【0248】
試薬
1. オルトリン酸二水素カリウム(ARグレード)
2. 塩酸(ARグレード)
3. 水酸化ナトリウム(ARグレード)
4. メタノール(HPLCグレード)
5. 水(HPLCグレード)
【0249】
溶解パラメーター(酸ステージ用)
媒体:0.1N塩酸、900mL
温度:37.0±0.5℃
装置:USP装置II(パドル)
回転速度:50rpm
サンプリング時間:2時間
【0250】
0.1N塩酸、pH1の希釈液および溶解緩衝液の調製
1000mLの水に8.5mLの濃塩酸を入れ、よく混合する。
【0251】
pH6.8の希釈液の調製
1000mLの水に6.8gのオルトリン酸二水素カリウムと0.9gの水酸化ナトリウムを溶解し、水酸化ナトリウム溶液またはオルトリン酸を使用してpHを6.8に調節する。
【0252】
ミルリノンのpH1での分析のための標準溶液の調製
約55mgのミルリノン標準試薬を正確に計量し、100mLの容積のフラスコに移す。約10mLのメタノールを添加し、超音波処理して溶解し、次に0.1N塩酸をフラスコの印まで満たす。5mLの上記の溶液を0.1N塩酸で100mLまで希釈する。5mLの上記の溶液を0.1N塩酸で100mLまでさらに希釈する。
【0253】
試料溶液の調製
1つのカプセルの内容物を6個の溶解容器のそれぞれに移し、0.1N塩酸溶解緩衝液における溶解試験を開始する。特定の時間に各溶解容器から約10mLのアリコットを取り出す。4mLの上記の溶液を0.1N塩酸希釈液で10mLまでさらに希釈する。
【0254】
溶解パラメーター(0.1N塩酸緩衝液ステージ用)
媒体:0.1N塩酸緩衝液、900mL
温度:37.0±0.5℃
装置:USP装置II(パドル)
回転速度:50rpm
サンプリング時間:1時間、2時間
【0255】
試験物品が0.1N塩酸溶解緩衝液に2時間にわたって曝露し、次にpH6.8緩衝液に12時間にわたって曝露する予定である場合、その試験物品を溶解容器から取り出し、水で簡単に洗浄し、そしてpH6.8緩衝液を含有する必要な溶解容器に直ちに投入する。
【0256】
手順
溶解媒体をブランクとして使用し、265nmでの標準溶液(二組)と試料溶液の吸光度を測定する。
計算
【0257】
【0258】
式中、
AT=試料溶液の吸光度
AS=標準溶液の平均吸光度
DS=標準溶液の希釈係数
DT=試料溶液の希釈係数
P=現状のままに基づくミルリノン標準試薬の効力の割合(%)
C=カプセル当たりのミルリノンのラベル表記(mg単位)
【0259】
溶解パラメーター(緩衝液ステージ用)
媒体:pH6.8緩衝液、900mL
温度:37.0±0.5℃
装置:USP装置II(パドル)
回転速度:50rpm
サンプリング時間:1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、および12時間
【0260】
pH6.8溶解緩衝液および希釈液の調製
1000mLの水に6.8gのオルトリン酸二水素カリウムと0.9gの水酸化ナトリウムを溶解し、水酸化ナトリウム溶液またはオルトリン酸を使用してpHを6.8に調節する。
【0261】
標準溶液の調製
約55mgのミルリノン標準試薬を正確に計量し、100mLの容積のフラスコに移す。約10mLのメタノールを添加し、超音波処理して溶解し、次にpH6.8希釈液をフラスコの印まで満たす。5mLの上記の溶液を希釈液で200mLまで希釈する。
【0262】
試料溶液の調製
1つのカプセルの内容物を6個の溶解容器のそれぞれに移し、pH6.8溶解緩衝液における溶解試験を開始する。特定の時間に各溶解容器から約10mLのアリコットを取り出す。4mLの上記の溶液を希釈液で10mLまでさらに希釈する。
【0263】
手順
溶解媒体をブランクとして使用し、265nmでの標準溶液(二組)と試料溶液の吸光度を測定する。
計算
【0264】
【0265】
式中、
AT=試料溶液の吸光度
AS=標準溶液の平均吸光度
DS=標準溶液の希釈係数
DT=試料溶液の希釈係数
P=現状のままに基づくミルリノン標準試薬の効力の割合(%)
C=カプセル当たりのミルリノンのラベル表記(mg単位)
【0266】
実施例6の表1:0.1N塩酸とそれに続くpH6.8リン酸緩衝液の中での実施例1の腸溶性被覆ミニ錠剤の溶解プロファイル
【0267】
【0268】
結論:実施例1の製剤はゼロ次放出プロファイルを示し、且つ、最大で105%(このバッチの評価分析は105%である)までの最大放出を示した。その30%の腸溶性被覆は胃における薬物の放出を防ぐために充分であった。
【0269】
本発明の製剤からの12時間にわたるミルリノンのインビトロゼロ次放出、および静脈内投与されたミルリノンと一致する持続性放出プロファイルが溶解プロファイルデータから示されている。特に、pH6.8での活性医薬成分の約100%の放出をもたらす約12時間にわたるミルリノンのゼロ次放出(すなわち、R2>0.9)が溶解プロファイルから示されている。この持続性放出プロファイルはミルリノンの静脈内製剤を使用する投与方式によって達成されるものと類似する患者における血漿曝露と一致する。
【0270】
実施例7:イヌにおけるIRミルリノン製剤(実施例4)に対するHPMC ERミルリノン製剤(実施例1)の薬物動態試験
実験
【0271】
材料
ペンタガストリンおよびギ酸アンモニウムをSigma社(ミズーリ州、セントルイス)より購入した。アムリノンをLKTラボ社(ミネソタ州、セントポール)から購入した。実施例1のミルリノン製剤(ERミルリノン)と実施例4のミルリノン製剤(IRミルリノン)を記載の通りに調製した。ゼラチンカプセルをTorpac社(ニュージャージー州、フェアフィールド)から受領した。ジクロロメタンと高速液体クロマトグラフィー(HPLC)グレードのアセトニトリルをハネウェル社(ミシガン州、マスキーゴン)から購入した。ミリポアシステム(マサチューセッツ州、ビレリカ)を使用して水を得た。アメリカ化学会グレードのギ酸をアクロス・オーガニクス社(ニュージャージー州)から受領した。
【0272】
動物
8kgと11kgの間の体重の研究用に繁殖させた雌ビーグル犬(マーシャル・ファームス社、ニューヨーク州、ノースローズ)を国際実験動物管理公認協会(AAALAC)ガイドラインに従って拘束せずに飼育した。
【0273】
試験日ではない日に21%がタンパク質である300gのイヌ用飼料2021番(ハーラン・テクラド(Harlan Teklad)社、ウィスコンシン州、マジソン)を一日一回与えてイヌを飼育した。各試験の前に一晩にわたってイヌを絶食させた。全ての試験を実験動物の管理と使用に関する指針(National Research Council,1996)に従って実施した。
【0274】
胃酸pH改変処置および投薬
ペンタガストリンを生理食塩水に溶解し(0.024mL/kg)、試験物品の投与30分前に筋肉内(IM)注射により動物の右または左の後肢に投与した(6ug/kg)。用量投与の後にその領域を優しくマッサージした。
【0275】
サイズ3のゼラチンカプセルにミニ錠剤を入れて計量することにより(複数の)用量の経口用ミルリノンを調製した。1個または2個のミルリノンが充填されたカプセルを各イヌに経口投与し、続いて嚥下を助けるために水(10mL)を経口投与した。3匹ずつのイヌからなる2つの群において実験を実施した。
【0276】
pH依存性吸収の評価
処置と処置の間に少なくとも1週間の休薬期間を有する非ランダム化クロスオーバー計画の中でビーグル犬(n=3)に投薬した。用量投与の前日に全ての動物にそれらの通常の1日量の餌を与えた。IR用量投与の前日の17時40分およびER用量投与の前日の18時22分から全ての動物を絶食させた。3時間毎の採取の後に全ての動物に餌を与えた。ペンタガストリンで前処置した動物にIRミルリノン製剤とERミルリノン製剤を経口投与した(ゼラチンカプセル中の5mg/kg)。投与前、ならびに投与から0.5時間、1時間、1.5時間、3時間、6時間、9時間、11時間、12時間、14時間、18時間、24時間、30時間、36時間、42時間、および48時間後に連続血液試料(2mL)を頸静脈からエチレンジアミンテトラ酢酸カリウムチューブに採取した。血漿を得るために処理するまで血液試料を氷上に保持した。血液試料を約5℃で10分間にわたって3200RPMで遠心分離した。血漿試料を96ウェルプレートチューブ(1.1mL)に直接移した。それらのチューブに栓をした。液体クロマトグラフィー‐タンデムマススペクトロメトリー(LC/MS/MS)により分析するまで血漿試料を-20±5℃で保存した。
【0277】
試料分析
ジクロロメタンタンパク質沈殿を用いてミルリノンをイヌの血漿から抽出した。市販のビーグル犬の血漿に0.5~500ng/mLの分析範囲にわたって個々の試験化合物を添加したものを使用して検量線を作成した。50マイクロリットルの各血漿試料と内部標準(アムリノン、2ng)を微量遠心チューブに加えた。1体積(1.0mL)のジクロロメタンを各チューブに加え、ラックを約6分間にわたってボルテックスにかけて沈殿形成を助けた。それらのチューブを室温で6分間にわたって13000rpmで遠心分離した。上清(800uL)を清浄な培養チューブに移し、Turbovapを使用して室温で乾燥した。それらの乾燥したチューブに再構成溶液(150uLの移動相A)を添加し、LC/MS/MS分析にかけた。AB Sciex API‐4000三重四極質量分析機への20uLの試料の注入により試料分析を実施した。Betasil C8(100×2.1mm)5μ(サーモ・エレクトロン社)を使用して分析物を分離した。
【0278】
クロマトグラフィー条件は0.3ml/分の流速で10%移動相A(1/9のアセトニトリル/10mMアンモニウムギ酸エステル、pH3.0)と90%移動相B(アセトニトリル中の0.1%ギ酸)から1.5分間での80%移動相(MP)Aへの上昇、次に2分間での90%MP‐Aへの上昇であった。システムを10秒間で初期状態に戻し、カラムを1.4分間にわたって初期条件で再平衡化した。ミルリノンの多重反応モニタリング(MRM)遷移(m/z212→140)および内部標準の多重反応モニタリング(MRM)遷移(アムリノン、m/z188→133)を使用してLC/MS/MS分析を正イオンモードで実施した。データ分析は1/x2加重線形フィッティングを用いた。全ての分析の結果は、品質管理試料の実績、再現性、直線性、真度、および精度を含む、許容可能な仕様の範囲内にあった。定量下限は、再現性、真度、および精度に関して前もって規定された基準を用いて0.5ng/mLの濃度において確立された。
【0279】
薬物動態分析
IRミルリノンおよびERミルリノンの経口投与後に得られた時間対血漿中濃度プロファイルを、非コンパートメント分析(WinNonlin(登録商標)プロフェッショナル、バージョン5.2ソフトウェア;ファーサイト(Pharsight)社、カリフォルニア州、マウンテンビュー)を用いて分析した。Cmaxは観察された最も高い血漿中濃度と定義され、TmaxはCmaxが生じる時間であった。線形アップ/対数ダウン法を用いてゼロ時点から定量可能な最終時点までの濃度‐時間曲線下面積(AUC0‐t)を算出した。AUC0‐tを無限大時間にまで外挿し、AUC0‐∞として報告した。
【0280】
結果
胃酸pHに対する様々な処置の効果
表1および
図5は3匹のイヌからなる群におけるIRミルリノン製剤投与およびERミルリノン製剤投与の薬物動態値を提示している。このデータは、ERミルリノンがIRミルリノンと比較して減少したCmaxを達成したこと(650ng/mL対3180ng/mL)、ERミルリノンがIRミルリノンと比較してAUCによって評価される同様の全体的曝露量を達成したこと(6751ng・時間/mL対9478ng・時間/mL)、およびERミルリノンが12時間の期間にわたって安定的なミルリノン血漿中濃度を保持したことを示している。
【0281】
【0282】
PKパラメーターの説明
Cmax:最大観察濃度
tmax:Cmaxの時点
AUC(0-t):最終非ゼロ濃度までのAUC(tは対応する時間である)
AUC(0-∞):AUC(0-∞)=AUC(0-t)+AUC(t-∞)
t1/2:半減期;薬品血漿中濃度が2分の1に低下するためにかかった時間
Vz_obs:観察された分布容積
Cl_obs:観察されたクリアランス
【0283】
【0284】
【0285】
上のインビボ薬物動態データは5mg/kgの投与量でのミルリノンの投与後の血漿レベルを示している。即放性(IR)ミルリノンおよび徐放性(ER)ミルリノン(すなわち、本発明の組成物)の経口投与後に得られたそれらの時間対血漿中濃度プロファイルを分析した。表1はそのIRミルリノン製剤投与とERミルリノン製剤投与についての薬物動態データを示している。これらのデータは、ERミルリノンがIRミルリノンと比較して減少したCmaxを達成したこと、およびERミルリノンが12時間の期間にわたって安定的なミルリノン血漿中濃度を保持したことを示している。
【0286】
このインビボデータは実施例6において先に得られたインビトロ放出データを実証し、且つ、本発明の製剤が所望の放出プロファイルの要求事項を満たしていることを確認する。
【0287】
実施例8:
HFpEFを有する患者におけるミルリノンの治療上の有用性を例示するために次の試験を実施した。HFpEFを有する患者が休息条件下、および症候限界性仰臥位サイクリング時にスワン・ガンツカテーテル法による侵襲性中心血行動態評価を受けた。特に肺動脈楔入圧および肺毛細血管楔入圧を測定した。HFpEFを有する患者は左心室拡張機能不全のために肺動脈楔入圧および肺毛細血管楔入圧の急激、且つ、過剰な上昇を示すことがよく知られている。この測定の後に10分間にわたる50μg/kgのミルリノンの静脈内ボーラスまたは生理食塩水の点滴を受けるように患者を無作為に割り当てた。この点滴の最後に前記測定を繰り返した。
下の表に結果が示されている。
【0288】
【0289】
これらのデータはミルリノンによってHFpEFを有する患者における運動時の血行動態応答が改善されることを示しており、この効果がこれらの患者において有益であると予期されることになる。
【0290】
本明細書において引用された全ての特許、特許出願、および刊行物の開示の全体が参照により本明細書に援用される。
【0291】
本明細書におけるあらゆる参照文献の引用は、そのような参照文献が本出願の「先行技術」として利用可能であることを認めることとして解釈されるべきではない。
【0292】
本明細書を通して、本発明をいずれか1つの実施形態または特定の特徴の組合せに限定せずに本発明の好ましい実施形態を説明することが目的であった。したがって、当業者は本開示を参照して本発明の範囲から逸脱することなく特定の実施形態において様々な改変と変更を行うことができることを理解する。全てのそのような改変と変更は添付されている特許請求の範囲の範囲内に含まれるものとする。