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特許7475332垂直マイクロ流体デバイスと自動化されたアクチュエーション機構を含むサンプルツーアンサー方式マイクロ流体システム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】垂直マイクロ流体デバイスと自動化されたアクチュエーション機構を含むサンプルツーアンサー方式マイクロ流体システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20240419BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20240419BHJP
   C12M 1/32 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
G01N35/00 Z
G01N37/00 101
C12M1/32
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021511594
(86)(22)【出願日】2019-08-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 US2019048418
(87)【国際公開番号】W WO2020047000
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-03-02
(31)【優先権主張番号】62/723,474
(32)【優先日】2018-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518026017
【氏名又は名称】ノベル マイクロデバイシズ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】パイス,アンドレア マリア,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】パイス,ロハン ジョセフ,アレキサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ワトキンス,ニコラス
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/102783(WO,A1)
【文献】特開2014-097080(JP,A)
【文献】特表2016-524145(JP,A)
【文献】特開2008-061649(JP,A)
【文献】特表2018-521334(JP,A)
【文献】特表2015-534808(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0186935(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00- 37/00
C12M 1/00- 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流体カートリッジであって、XZ平面内に配向された一次チャネルと、前記一次チャネルによって相互接続された複数のウェルと、前記一次チャネルと同一面内にあり、且つ前記一次チャネルに流体的に接続される非混和性試薬容器であり、当該非混和性試薬容器は、当該マイクロ流体カートリッジ内への非混和性試薬の流れを駆動してその中に非混和性試薬相を形成する圧力ヘッドを生成するのに十分なZ軸に沿った高さに配置される非混和性試薬容器と、前記一次チャネルを通って移送され、操作の様々な段階で前記複数のウェルに順次再懸濁される磁気ビーズとを含む、マイクロ流体カートリッジ。
【請求項2】
前記非混和性試薬容器は、前記非混和性試薬容器の内容物を前記マイクロ流体カートリッジのウェル内に駆動する為の圧力ヘッドを発生させることができるように、前記ウェルに対してより高い位置に配置されている、請求項1に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項3】
前記非混和性試薬容器及び圧力ヘッドの位置が前記カートリッジのY軸方向の寸法を増加させないように構成され、前記Y軸は前記XZ平面に実質的に垂直であると画定される、請求項1又は2に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項4】
前記非混和性試薬容器は、1つ以上の通気口に接続されており、前記圧力ヘッド及び前記1つ以上の通気口は、前記試薬容器に圧力を加えることなく前記試薬容器から前記非混和性試薬を駆動し、且つ通気により前記非混和性試薬中の残留気泡を除去することにより、実質的に気泡のない非混和性試薬相を生成する、請求項1乃至3の何れか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項5】
前記マイクロ流体カートリッジは、前記XZ平面内に1つ以上のアクチュエータプレートに隣接して実質的に平行に配置され、前記1つ以上のアクチュエータプレートが前記マイクロ流体カートリッジと相互作用するように構成される、請求項1乃至4の何れか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項6】
前記1つ以上のアクチュエータプレートが、空間的に配向され、ウェルの底部の試薬に磁気ビーズを再懸濁させ、前記ウェルの上部の非混和性試薬を介して、又、前記一次チャネルを介して前記磁気ビーズを移送できるように構成された複数の磁石を含む、請求項5に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項7】
サンプルツーアンサー核酸増幅検査(NAAT)を実施するように構成された、請求項1乃至6の何れか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項8】
オンチップ磁気ビーズベースのサンプル処理が、単回回転中に前記磁気ビーズの捕捉、再懸濁、及び移送が行われる単回回転動作を用いて行われるように構成されている、請求項7に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項9】
前記一次チャネルは、外縁と、内部空間と、前記磁気ビーズを所望の位置に拘束し、磁場に向かって移動するのを防ぐ物理的障壁として機能するように構成された1つ以上のバッフルとを備えている、請求項1に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項10】
前記1つ以上のバッフルは、移送用磁石の作用により、前記一次チャネルを介して1つのウェルから次のウェルへ前記磁気ビーズがさらに移動することを一時的に抑制する、前記一次チャネルの前記内部空間に延びる突起物を備える、請求項9に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか一項に記載のマイクロ流体カートリッジを受容するように構成されたマイクロ流体装置。
【請求項12】
前記装置を開閉するように構成されたレバーアームとクラッシュプレートとをさらに備え、前記レバーアームが前記装置を閉じている時に、前記クラッシュプレートは、前記マイクロ流体カートリッジ上に配置された1つ以上の試薬パウチに向けて前進する、請求項11に記載のマイクロ流体装置。
【請求項13】
内面を含む開きドアを備え、前記内面は、前記ドアが閉じられた時に、前記装置に挿入された前記マイクロ流体カートリッジ上の試薬パウチを物理的に係合して粉砕する突起物をさらに含む、請求項11に記載のマイクロ流体装置。
【請求項14】
前記マイクロ流体カートリッジが前記装置に挿入され、前記装置が閉じられた後で、空間的に配向された磁石及び/又は機械的要素を備えた1つ以上のアクチュエータプレートが回転して、一連のサンプル処理ステップを正確な順序で完了するように構成されている、請求項11乃至13の何れか一項に記載のマイクロ流体装置。
【請求項15】
ウィックと、前記ウィックが配置される流体チャネルとを含むウィックバルブをさらに備え、前記ウィックが、移送液が前記流体チャネルを介して流れるときに前記移送液を吸収し、前記ウィックバルブが、分注/移送される液体のデッドボリューム/損失をゼロにして、前記マイクロ流体カートリッジ内に液体を分注/移送するように構成されている、請求項1乃至10の何れか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項16】
前記複数の磁石は、前記ウェルの上部の非混和性試薬及び前記一次チャネルを介して前記磁気ビーズを移送するように構成された1つ以上の移送磁石と、前記磁気ビーズを前記ウェルに引き込んでそのウェルの試薬に懸濁させるように構成された1つ以上の試薬捕捉/懸濁磁石と、を含む、請求項6に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項17】
前記1つ以上のアクチュエータプレートが単一のアクチュエータプレートである、請求項6及び16の何れか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項18】
前記複数の移送磁石及び前記複数の試薬捕捉/再懸濁磁石は、2つの移送磁石が互いに隣接せず、また2つの試薬捕捉/再懸濁磁石が互いに隣接しないように、千鳥状に順次配置される、請求項16及び17の何れか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項19】
非混和性試薬は、オイルである、請求項1から10、及び16から18の何れか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本開示は、2018年8月27日に出願された「機械的及び磁気的アクチュエーションを用いた垂直チップサンプルツーアンサー方式マイクロ流体デバイス(Vertical Chip Sample-To-Answer Microfluidic Device Using Mechanical and Magnetic Actuation)」という名称の米国仮特許出願62/723,474号に関連しており、この仮特許出願の開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書で開示する主題は、一般に、アッセイを処理するシステム及び方法に関し、より詳細には、垂直マイクロ流体デバイス及び限定はしないが、自動化された機械的及び/又は磁気的アクチュエーション等の、自動化されたアクチュエーション機構を含む、サンプルツーアンサー方式マイクロ流体システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
マイクロ流体システムは、例えば、生体材料の処理に使用されるマイクロ流体デバイス及び/又はカートリッジを含み得る。幾つかのケースでは、マイクロ流体デバイスは、オイル/非混和相を含む一次流体チャネルを含んでもよく、チャネルはXY平面内に位置する。一次チャネルは、流体回路の流体ウェル(又はリザーバ)を接続し、例えば、磁気ビーズをウェル間で移送して再懸濁させる導管でもある。即ち、マイクロ流体デバイスは、例えば、試薬パウチ、試薬ウェル、サンプル入力ポート、サンプルウェル、廃液ウェル、検出ウェル、検出アレイ、検出スポット、ラテラルフローストリップ等と組み合わせて、1つ以上の反応(又はアッセイ)チャンバを含んでもよい。複数のこれらの要素の組み合わせが、一次流体チャネルを介して相互接続されてもよい。
【0004】
このようなマイクロ流体デバイスでは、一次チャネルを介してウェルからウェルへとオーバーフローするオイル/非混和性液体オーバーレイを円滑に気泡なく充填して流体回路を形成できるようにする為に、一次チャネルの高さよりも高い、又は一次チャネルの高さを上回る高さに位置するオイル試薬容器を採用して圧力ヘッドを発生させる。試薬容器から排出されたオイルは、圧力ヘッドによって駆動され、マイクロ流体デバイス上の各ウェルに適切な高さになるまで順次充填されていく。この圧力ヘッドは、ヘッドの高さ、ウェル及び一次チャネルの形状、及びマイクロ流体デバイスの壁上の疎水性コーティング層と相まって、一次チャネルへのオイル相互接続層の制御された気泡のない充填をもたらすように最適化され得る。
【0005】
一次チャネルがXY平面内に配向しているマイクロ流体デバイスは、マイクロ流体装置内に水平に(即ち、XY平面内に)挿入され、操作される。しかし、マイクロ流体デバイスにオイルを充填するのに必要な圧力ヘッドを発生させる為には、オイル試薬容器の高さが、流体チャネルの深さよりもZ平面(即ち、流体チャネルに垂直な方向)でかなり大きくなければならない。更に、容器の深さはZ軸に沿っており、試薬はウェルの底部に位置し、非混和性流体(試薬より軽い場合)は一次チャネルのウェルの上部に位置している為、最低でも2つのアクチュエータプレートが必要である(即ち、少なくとも上部と下部のアクチュエータプレートが必要)。即ち、例えば、磁気粒子がウェル底部の試薬に再懸濁され、ウェル上部の非混和性媒体を通り一次チャネルを通って移送され得るように、磁石を空間的に配向させる為には、2つのアクチュエータプレートが必要である。
【0006】
従って、現行のマイクロ流体デバイスは、油圧ヘッドの高さを増加させる為に、面外オイル試薬容器を必要とし、これによりマイクロ流体デバイスの全体的な高さを増加させる。この為、システムやデバイスに面外オイル試薬容器を実装する為に必要なコンポーネントや部品の数の増加により、組み立てや製造プロセスが複雑になる。従って、マイクロ流体システム及び/又はデバイスで生体材料を処理する為の新しいアプローチが必要である。
【発明の概要】
【0007】
この発明は、上記従来の技術における課題を解決するためになされたものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の特徴及び利点は、添付の図面と併せて以下の説明からより明確に理解され得るものであるが、図面は必ずしも縮尺通りに描かれている訳ではない。
図1】XY平面で操作する為の垂直配向マイクロ流体デバイス及びアクチュエータを含む、本開示のマイクロ流体システムの一例のブロック図である。
図2A】乃至
図3】自動アッセイシーケンスを実行する為の定置型マイクロ流体デバイスに関連する回転型アクチュエータの例の斜視図である。
図4】乃至
図6】本発明のマイクロ流体システムの一例及び、垂直配向マイクロ流体デバイスをマイクロ流体装置に装填するプロセスを示す斜視図である。
図7図4図5及び図6に示されたマイクロ流体装置の、ハウジングがない状態での詳細を示す等角図である。
図8】乃至
図15】本開示のマイクロ流体システムの、内部で垂直配向マイクロ流体デバイスを処理する為のマイクロ流体装置の別例の様々な図である。
図16】乃至
図21】XY平面での動作の為のマイクロ流体カートリッジの一例の様々な図である。
図22】乃至
図24】XZ平面での動作の為のマイクロ流体装置のアクチュエータプレートに関連するマイクロ流体カートリッジの更なる詳細を示す様々な図である。
図25】乃至
図34】垂直配向マイクロ流体カートリッジに関連してマイクロ流体装置の回転型アクチュエータプレートを使用するプロセスを示し、回転型アクチュエータプレートが、空間的に配向された磁石を含んでいる、平面図である。
図35】本開示のマイクロ流体システムを使用する方法の一例の流れ図である。
図36】オンチップサンプルツーアンサー方式NAAの動作原理を実証する為の例示的なマイクロ流体カートリッジの平面図である。
図37】マイクロ流体カートリッジ等のマイクロ流体デバイスにおけるウィックバルブの一例を示す平面断面図である。
図38図37に示されたウィックバルブのような、ウィックバルブを使用するマイクロ流体カートリッジの一例の平面図である。
図39】乃至
図51B】本開示のマイクロ流体装置の別例、及びマイクロ流体装置を、例えば、異なるタイプの垂直配向マイクロ流体カートリッジ及び/又は他のデバイスと組み合わせて使用する例を示す様々な図である。
図52】本開示のマイクロ流体装置を使用する方法の別の例の流れ図である。
図53】ループ介在等温増幅法(LAMP)の基本原理を示す反応ステップの一例を示す模式図である。
図54】トラコマチス及び淋菌の様々な量の初期DNAテンプレートのリアルタイムLAMP増幅曲線の第1のプロット及び第2のプロットを夫々示す図である。
図55】被検生物及びCT及びNGの検査ライン結果を示す、Novel Dx CT/NG LAMP Assayの分析特異性を示した表17を示す図である。
図56】特定のLAMP結果のプロットを示す図である。
図57】乃至
図58】核ラテラルフローアッセイに関する特定の検査結果を示す図である。
図59】CTの検出に関するオンチップサンプルツーアンサー方式Novel Dx CT/NG Assayの性能を示した表18を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の主題は、本開示の主題の全てではないが幾つかの実施形態が示されている添付の図面を参照して、以下により完全に説明される。同一の番号は、全体を通して同一の要素を示す。本開示の主題は、多くの異なる形態で具現化することができ、本明細書に記載された実施形態に限定して解釈されるべきではなく、寧ろ、これらの実施形態は、本開示が適用法的要件を満たすように提供されている。実際、本明細書に記載されている本開示の主題の多くの修正及び他の実施形態は、前述の説明及び関連する図面に提示された教示の恩恵があれば、本開示の主題が属する技術分野の当業者には思い浮かぶであろう。従って、本開示の主題は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、修正及び他の実施形態が添付の請求項の範囲内に含まれることが意図されていることを理解されたい。
【0010】
幾つかの実施形態では、本開示の主題は、垂直マイクロ流体デバイスと、自動化された機械的及び/又は磁気的な作動等の自動化されたアクチュエーション機構とを含む、サンプルツーアンサー方式マイクロ流体システム及び方法を提供するものである。
【0011】
本開示のサンプルツーアンサー方式マイクロ流体システムは、機械的及び磁気的アクチュエーションを使用するサンプルツーアンサー方式マイクロ流体デバイス及び/又はカートリッジを提供し、単一の回転運動を使用して、サンプルツーアンサー方式アッセイシーケンスを定義する複数のアクチュエーションステップを実行する。サンプルツーアンサー方式マイクロ流体システム及びマイクロ流体デバイスは、XZ平面で効率的に動作するように設計されている為、XY平面で動作している従来のマイクロ流体システム及び/又はデバイスと比較して、マイクロ流体カートリッジ及びアクチュエーション機器に必要なコンポーネント及び/又は組み立てステップの数を減らすことができる。
【0012】
マイクロ流体デバイスの幾つかの実施形態では、磁場の存在下で磁気粒子を特定のウェルに拘束する為に必要な一次チャネル及びバッフルはXZ平面に配向される。その為、マイクロ流体カートリッジは装置内で垂直に(即ち、XZ平面内に)装填され、操作される。ここで、マイクロ流体カートリッジへのオイルの流れを駆動する為に必要な圧力ヘッドを生成する為に、Z軸方向のオイル試薬容器の高さも用いられる。オイル圧力ヘッドの高さを上げる為に、平面外のオイル試薬容器が必要となり、マイクロ流体カートリッジの全体的な高さが増加していた従来のマイクロ流体カートリッジ及び/又はデバイスとは異なり、この独自の実施形態では、オイル試薬容器が主チャネルと同一面内にある為、Y軸方向のカートリッジの寸法を増やすことなく、圧力ヘッドの高さを容易に増加させる。これにより、従来のマイクロ流体カートリッジと比較して、マイクロ流体カートリッジの組み立て及び製造プロセスが大幅に簡素化される。更に、本実施形態では、ウェルの底部にある試薬中に磁気粒子を再懸濁させ、ウェルの上部に位置する非混和性媒体を介して、又、一次チャネルを介して移送することができるように、XZ平面上に磁石を空間的に配向させた、最低限の1つのアクチュエータプレートのみを必要とする。
【0013】
幾つかの実施形態では、本開示の主題は、ウェル内の流体の圧力ヘッド及び配向を維持する為に定置保持される垂直マイクロ流体デバイスを含む、サンプルツーアンサー方式マイクロ流体システム及び方法を提供する。
【0014】
更に、本開示の主題は、ループ介在等温増幅法(Loop Mediated Isothermal Amplification、LAMP)プライマーを設計する方法を提供し、より詳細には、クラミジア・トラコマチス(CT )/淋菌(NG)LAMPプライマー(又はCT/NG LAMPプライマー)を設計する方法を提供するものである。
【0015】
ここで図1を参照すると、自動化されたアクチュエーション機構に関連する垂直配向マイクロ流体デバイスを含む、本開示のマイクロ流体システム100の一例のブロック図である。マイクロ流体システム100は、例えば、ポイントオブケア(POC)、サンプルツーアンサー方式アプリケーション及び/又はデバイスをサポートするマイクロ流体システムであってもよい。
【0016】
例えば、マイクロ流体システム100は、随意で、ネットワークに接続され得るマイクロ流体装置110を含んでもよい。例えば、マイクロ流体装置110のコントローラ120は、ネットワーク192を介してネットワークコンピュータ190と通信してもよい。ネットワークコンピュータ190は、例えば、任意の集中型サーバ又はクラウドサーバであってもよい。ネットワーク192は、例えば、インターネットに接続する為のローカルエリアネットワーク(LAN)又はワイドエリアネットワーク(WAN)であってもよい。コントローラ120は、例えば、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、パーソナルコンピュータ、マイクロプロセッサ、又は他のプログラム可能なデータ処理装置であってもよい。コントローラ120は、ソフトウェア命令を格納、解釈、及び/又は実行する等の処理能力を提供すると共に、マイクロ流体システム100の全体的な動作を制御する役割を果たす。
【0017】
マイクロ流体システム100のマイクロ流体装置110は、垂直配向マイクロ流体デバイス及び/又はカートリッジを受容、保持、及び/又は処理するように設計されている。一例では、マイクロ流体装置110は、垂直マイクロ流体デバイス140を受容、保持、及び/又は処理する。従って、マイクロ流体装置110は、垂直マイクロ流体デバイス140を受容し保持する為の受容部130を含む。更に、マイクロ流体装置110は、垂直マイクロ流体デバイス140に関連する回転アクチュエータ112を含む。即ち、垂直マイクロ流体デバイス140は、XZ平面内に配向して動作するマイクロ流体デバイスを意味する。同様に、回転アクチュエータ112は、XZ平面内に、垂直マイクロ流体デバイス140に関連して配向される。
【0018】
回転アクチュエータ112は、1つ以上のアクチュエーション機構114及び/又は1つ以上の処理コンポーネント116を含んでもよい。アクチュエーション機構114は、磁気的及び/又は機械的アクチュエーション機構を含んでもよいが、これらに限定されない。処理コンポーネント116は、マイクロ流体システム100及び/又は垂直マイクロ流体デバイス140において生体材料を処理する為に必要な任意のコンポーネントであってよい。処理コンポーネント116は、例えば、加熱要素、ミキサー、振動要素等を含んでもよい。
【0019】
更に、マイクロ流体装置110は検出システム122を含んでもよい。検出システム122は、例えば、照明源、干渉フィルタや色ガラスフィルタ等の光学フィルタ、ビームスプリッタやダイクロイックミラー、及び光学測定デバイスを含んでもよい。照明源(図示せず)は、例えば、紫外(UV)から可視領域(200~800nm)の光源であってもよく、例えば、紫外光源、白色光源、その他の色の光源、又は、複数の光源の組み合わせであってもよいが、それらに限定されない。光学測定デバイス(図示せず)は、例えば、電荷結合素子(CCD)、光検出器、分光器、フォトダイオードアレイ、又はそれらの任意の組み合わせであってもよい。光学測定デバイスは、垂直マイクロ流体デバイス140の指定検出領域から光強度の測定値を得る為に使用されてもよい。
【0020】
コントローラ120は、アクチュエーション機構114及び処理コンポーネント116を伴う回転アクチュエータ112、検出システム122、及び/又は垂直マイクロ流体デバイス140等、マイクロ流体システム100の様々なコンポーネントに電気的に結合される。コントローラ120は、任意のデバイスのデータ及び/又は電力の側面を制御するように構成されプログラムされてもよい。
【0021】
マイクロ流体システム100及びマイクロ流体装置110において、主な特徴は、垂直マイクロ流体デバイス140が計測器内で垂直に(即ち、XZ平面内に)装填され、動作することである。従って、垂直マイクロ流体デバイス140の一次流体チャネル(図25図34参照)はXZ平面内に配向される。同様に、磁場の存在下で、例えば磁気粒子を特定のウェルに拘束する為に必要とされる垂直マイクロ流体デバイス140のバッフルは何れもXZ平面内に配向される。垂直マイクロ流体デバイス140では、マイクロ流体デバイスへのオイルの流れを駆動する為に必要な圧力ヘッドを生成する為に、オイル試薬容器のZ軸方向の高さも使用されている。しかし、オイル試薬容器(図25図34参照)が一次流体チャネルと同一面内にある為、マイクロ流体デバイスのY軸方向の寸法を増加させることなく圧力ヘッドの高さを増加させることが容易になる。XY平面内で配向され操作される従来のマイクロ流体デバイスと比較して、組み立て及び製造プロセスが大幅に簡素化される。
【0022】
更に、マイクロ流体装置110におけるこの垂直構成は、最小限の1つの回転アクチュエータ112のみを使用した動作を可能にし、1つの回転アクチュエータ112も、XZ平面内で、垂直マイクロ流体デバイス140に関連して配向される。一例では、回転アクチュエータ112は、オイル試薬容器又はウェルの底部の試薬に磁気粒子を再懸濁させ、それらを、ウェルの上部の非混和性媒体を介して、更に、一次チャネルを介して、マイクロ流体デバイスの後続のウェル及び反応チャンバに移送する為に使用され得る、その上に空間的に配向された磁石を含んでもよい(図25図34参照)。別の例では、回転アクチュエータ112は、アッセイの特定のステップで特定の流体を分注する為に、例えばブリスターパックやバルーンを粉砕する為に、その表面から突出する空間的に配向された機械的粉砕機能を含んでもよい。
【0023】
マイクロ流体システム100では、回転アクチュエータ112がマイクロ流体装置110に対して回転可能でありながら、垂直配向マイクロ流体装置110は、ウェル流体の圧力ヘッド及び流体の配向を維持するように定置保持されている。
【0024】
マイクロ流体システム100の回転アクチュエータ112及びマイクロ流体装置110の主な特徴は、回転運動を使用して、サンプルツーアンサー方式アッセイシーケンスを定義する複数のアクチュエーションステップを実行できることである。例えば、回転アクチュエータ112の単一の回転運動は、複数のアクチュエーションステップを実行する為に、空間的に配向された磁石を垂直マイクロ流体デバイス140に関連して操作する為に使用されてもよい。従って、XZ平面に配向されたアクチュエータ(例えば、回転アクチュエータ112)及びマイクロ流体デバイス(例えば、垂直マイクロ流体デバイス140)を含むマイクロ流体システム100の利点は、マイクロ流体デバイス及び/又はカートリッジ、並びにマイクロ流体装置を製造する為に必要とされるコンポーネント及び組立ステップの数が減少することであり得る。
【0025】
ここで図2A及び図2Bを参照すると、自動アッセイシーケンスを実行する為の定置型マイクロ流体デバイスに関連する回転型アクチュエータの例の斜視図である。一例として、図2Aは、シャフト212を駆動するDCモータ210を含むアクチュエータアセンブリ200を示す。アクチュエータアセンブリ200は、例えば、2つの回転型アクチュエータ214を含み、これらは、例えば、ディスク状のプレートであってもよい。更に、2つの回転型アクチュエータ214の間には、マイクロ流体デバイス216(例えば、マイクロ流体カートリッジ)が配置されており、マイクロ流体デバイス216もディスク状である。DCモータ210のシャフト212は、マイクロ流体デバイス216を2つの回転型アクチュエータ214に対して定置保持できるように、マイクロ流体デバイス216に接続せずに、マイクロ流体デバイス216を通過する。即ち、DCモータ210は、マイクロ流体デバイス216は回転させずに、回転型アクチュエータ214を回転させる為に使用され得る。特定のアクチュエーション機構218は、マイクロ流体デバイス216に最も近い回転型アクチュエータ214の表面又はその近くに空間的に配向される。アクチュエーション機構218は、受動アクチュエーション機構(例えば、磁石及び破砕機能)及び/又は能動アクチュエーション機構(例えば、抵抗加熱器)を含んでもよい。別の例では、図2Bのアクチュエータアセンブリ200は、正方形又は長方形の静止マイクロ流体デバイス216に関連してのみ回転可能な1つのアクチュエータ214を含む。
【0026】
何れの例においても、アクチュエータアセンブリ200は、水平方向(XY平面内)に配向しても、垂直方向(XZ平面内)に配向してもよい。更に、回転型アクチュエータ214に回転運動を加える代わりに、直線運動を加えて、任意の空間的に配向されたアクチュエーション機構218を移動させてもよい。何れにせよ、アクチュエータアセンブリ200は、単純な回転運動又はスライド運動を使用してアッセイシーケンスに対応する複数のアクチュエーションステップを完了する為に使用され得る小型化されたアッセイ自動化アクチュエータを提供する。例えば、回転型アクチュエータ214は、(1)溶解、サンプル処理、精製、フィルタリング、増幅及び検出、(2)チャンバ間での磁気ビーズの捕捉、移送、及び再懸濁、(3)混合及び洗浄、及び(4)サンプル加熱を含むがこれらに限定されない異なる操作を実行する為に、マイクロ流体デバイス216の周りで流体を移送する為のオンチップ流体ハンドリング/バルビングに使用され得る。
【0027】
別の例として、図3は、ドーナツ状の回転型アクチュエータ214と組み合わせてマイクロ流体デバイス216を含むアクチュエータアセンブリ200の例を示している。即ち、マイクロ流体デバイス216は、ドーナツ状の回転型アクチュエータ214の中心孔内に定置保持され、その一方で回転型アクチュエータ214は、マイクロ流体デバイス216の周りで回転することができる。
【0028】
図2A図2B、及び図3は、1つ以上の回転型アクチュエータ214と組み合わせたマイクロ流体デバイス216の例を示しているが、これらは例示に過ぎない。一方の要素が他方の要素に対して相対的に移動するXY平面内の任意の動きが可能である。即ち、マイクロ流体デバイス又はアクチュエータの何れかが可動部となり得る。例えば、任意の水平方向の構成において、マイクロ流体デバイス及びアクチュエータの何れか又は両方が可動であり得、運動は、回転運動及び/又は直線運動(図示せず)であり得る。更に、図3で使用されるようなマイクロ流体デバイスは、試薬パウチ等のデバイスの特定のコンポーネントがXY平面に配向され、ウェル及び一次チャネルがシリンダの周方向部分に沿って配向されるように構成されてもよい。
【0029】
ここで、図4図5、及び図6を参照すると、本開示のマイクロ流体システム100のマイクロ流体装置300の一例、及び垂直配向マイクロ流体カートリッジ400をそこに装填するプロセスの斜視図である。マイクロ流体装置300は、図1に示した本開示のマイクロ流体システム100のマイクロ流体装置110の一例である。この例では、マイクロ流体装置300は、ハウジング310(例えば、プラスチック製のツーピースハウジング)、デジタルディスプレイ312(例えば、LCDディスプレイ)と、マイクロ流体カートリッジ400を受容する為のものであり、マイクロ流体装置300にスライド可能に結合されている装填ステーション314と、マイクロ流体カートリッジ400を装填ステーション314に固定する為のロッキングヒンジ316と、マイクロ流体装置300の内部コンポーネントをマイクロ流体カートリッジ400に係合させる為のロッキングハンドル318と、ロッキングハンドル318を操作する為のハンドルシャフト及びヨークアセンブリ320とを含み、ロッキングハンドル318は、外向き及び内向きにスイングするベイルスタイルのハンドルである。ロッキングハンドル318は、マイクロ流体装置のロック/クランプ機構の一例である。ロッキング/クランピング機構の別の例は、図8から図15及び図39図51Bを参照して本明細書に図示され、説明される。
【0030】
装填ステーション314は、システムで使用されているカートリッジ又はカセットのタイプに合わせてカスタマイズされてもよい。一例では、装填ステーション314は、ラテラルフローイムノアッセイカセットが機器に挿入された時に、カートリッジに保持されたストリップの定性又は定量デジタル読み出しを実行して検査結果を画面に表示し、装置又はクラウドに保存できるように、光学検出システムの前に整列して配置されるようにカスタマイズされてもよい。別の例では、装填ステーション314は、ダイレクト増幅(Direct-to-Amplification)サンプルツーアンサー方式NAATカートリッジに適合するようにカスタマイズされてもよく、ダイレクト増幅サンプルツーアンサー方式NAATカートリッジではサンプル調製及び精製ステップが迂回されてもよく、粗製ライセート又は希釈ライセートは、増幅及びその後のラテラルフローストリップの増幅産物の検出の為に増幅ウェルに直接入るようにされてもよい。サンプルは、磁気ビーズに結合され、磁気ビーズが次に一次チャネルを通って増幅ウェルに移送されるか、又はサンプルウェルがオーバーフローするように充填され、それが増幅ウェル内へと計量され、そこで増幅ミックスの凍結乾燥ペレットを再水和させてもよい。更に別の例では、装填ステーション314は、イムノアッセイに基づくマイクロ流体カートリッジを投入するようにカスタマイズされてもよく、カートリッジは、サンプルをラテラルフローストリップに自動分注する前にサンプルを調整する為にサンプルに導入する必要があるバッファを収容した1つ以上の試薬パウチを含む。更に別の実施形態(図示せず)では、装填ステーション314は、異なるサイズのマイクロ流体カートリッジ又はカセットをスライド及びロックするように調整可能なスライダを含んでもよい。幾つかの実施形態では、装填ステーションは、そこに挿入されたカートリッジの種類を自動検出する為のセンサを含んでいてもよい。これは、カートリッジ上のRFIDもしくはNFCタグによるもの、又はカートリッジが装填ステーションに挿入された時に装填ステーションによって自動的に読み取られるバーコード又はQRコード(登録商標)の使用によるものであってもよい。装填ステーション314のこれらのカスタマイズ可能な機能により、本明細書に記載されたマイクロ流体アッセイ自動化システムは、包括的な検査メニューから多数の異なるタイプのラボ検査を実行することができるように、非常に多目的である。
【0031】
マイクロ流体カートリッジ400を垂直配向様式でマイクロ流体装置300に装填する第1のステップでは、マイクロ流体装置300が開かれ、マイクロ流体カートリッジ400がそこに装填される。例えば、図4は、ロックハンドル318がハウジング310から離れて外側に引き出され、装填ステーション314がハウジング310から完全にスライドしている状態を示している。更に、ロッキングヒンジ316は、完全に開いた状態又はラッチされていない状態である。マイクロ流体カートリッジ400は、装填ステーション314のレールに挿入する為に配置される。
【0032】
マイクロ流体カートリッジ400を垂直配向様式でマイクロ流体装置300に装填する次のステップで、サンプルがマイクロ流体カートリッジ400に装填される。例えば、図5は、マイクロ流体カートリッジ400が装填ステーション314のレールに取り付けられ、ロッキングヒンジ316がラッチされた状態で、マイクロ流体カートリッジ400と完全に係合している状態を示している。更に、シリンジ450は、マイクロ流体カートリッジ400の装填ポート422に挿入する為に配置されている。
【0033】
マイクロ流体カートリッジ400を垂直配向様式でマイクロ流体装置300に装填する次のステップで、マイクロ流体装置300が閉じられ、アッセイシーケンスが開始される。例えば、図6は、マイクロ流体カートリッジ400の装填ポート422に挿入され、流体結合されたシリンジ450の先端を示している。マイクロ流体カートリッジ400及びシリンジ450を保持している装填ステーション314は、内側にスライドしてハウジング310内に入る。装填ステーション314の完全な内側への移動に達すると、ロックハンドル318が内側に押し込まれてロックされる。このロックハンドル318、ハンドルシャフト及びヨークアセンブリ320の状態では、マイクロ流体装置300の特定の内部コンポーネントが、マイクロ流体カートリッジ400の特定の機能と係合する。マイクロ流体カートリッジ400はこの時点で、回転型アクチュエータプレート(図7図15参照)に対して垂直に保持されており、自動アッセイシーケンスがXZ平面内で発生し得る。マイクロ流体装置300の制御装置を使用して、ユーザは、この時アッセイシーケンスを開始することができる。マイクロ流体装置300のより詳細な情報は、図7図15を参照して以下に図示し説明する。
【0034】
ここで図7を参照すると、図4図5、及び図6に示されたマイクロ流体装置300の、ハウジング310が無い状態の、その詳細を示す等角図である。デジタルディスプレイ312、装填ステーション314、ロッキングヒンジ316、ロッキングハンドル318、ハンドルシャフト及びヨークアセンブリ320に加えて、マイクロ流体装置300は更に、下部ベースプレート322と、上部ベースプレート324と、例えば、DCモータ、ギアボックス、シャフト、及びモータプレート328に取り付けられた駆動ハブを含むモータアセンブリ326と、開口部332を有するアクチュエータプレート330と、バルーン及びブリスターパックを粉砕する為のクラッシャープレート334と、カムフォロア358と、シーケンシャルバーストプランジャ360とを含む。
【0035】
開口部332を有するアクチュエータプレート330は、図1に示した本開示のマイクロ流体システム100の回転アクチュエータ112の一例であり、開口部332は、アクチュエーションコンポーネント114及び/又は処理コンポーネント116を取り付ける為の位置である。
【0036】
マイクロ流体装置300の幾つかの他のコンポーネントは、図7には見えていない。主要なコンポーネントの幾つかは、LED光源、カメラ、加熱器、制御プリント回路基板(PCB)、シーケンシャルバーストカム等を含んでもよいが、これらに限定されない。一般に、マイクロ流体装置300は、ハンドル、プレート、パネル、バー、ロッド、シャフト、ブラケット、ブロック、スペーサ、ハブ、カラー、クランプ、ブッシング、ベアリング、ピン、ダボ、カム、アライナー、ネジ、ナット、ボルト、ワッシャー、スプリング、クリップ、任意のタイプの機械的コネクタ、任意のタイプの電気的コネクタ、センサ、アクチュエータ等の多種多様なコンポーネントを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0037】
次に図8図15を参照すると、内部で垂直配向したマイクロ流体デバイス(例えば、マイクロ流体カートリッジ400)を処理する為の、本開示のマイクロ流体システム100のマイクロ流体装置300の別例の様々な図である。図8から図15に示すマイクロ流体装置300は、他の幾つかの些細な差異の中でも取り分け、ハンドルとディスプレイの実装を除いて、図7に示したマイクロ流体装置300と実質的に同じである。
【0038】
マイクロ流体装置300のこの例の、図8は正面等角図、図9は背面等角図、図10は正面図、図11は背面図、図12は左側面図、図13は右側面図、図15は上面図、及び図15は底面図である。これらの図では幾つかの追加コンポーネントが見える。即ち、マイクロ流体装置300のこの例は、デジタルディスプレイ312、装填ステーション314、ロッキングヒンジ316、ロッキングハンドル318、ハンドルシャフト及びヨークアセンブリ320、下部ベースプレート322、上部ベースプレート324、モータアセンブリ326、モータプレート328、開口部332を有するアクチュエータプレート330、クラッシャープレート334、カムフォロワ358、シーケンシャルバーストプランジャ360、ノブ340を備えたブリスタークラッシュハンドル338、ハンドルラッチフック342、装填ステーションサポート344、LED光源346、カメラ348、加熱器センブリ350、制御PCB352、パワーマウントプレート354、及びシーケンシャルバーストカム356を含む。繰り返すと、マイクロ流体装置300は、ハンドル、プレート、パネル、バー、ロッド、シャフト、ブラケット、ブロック、スペーサ、ハブ、カラー、クランプ、ブッシング、ベアリング、ピン、ダボ、カム、アライナー、ネジ、ナット、ボルト、ワッシャー、スプリング、クリップ、任意のタイプの機械的コネクタ、任意のタイプの電気的コネクタ、センサ、アクチュエータ等の多種多様なコンポーネントを含み得るが、これらに限定されない。
【0039】
更に、この例では、ブリスタークラッシュハンドル338はクラッシャープレート334に結合されており、これは、マイクロ流体カートリッジ400に分注する液体(例えば、試薬溶液、バッファ、オイルフィラー液等)を保持しているマイクロ流体カートリッジ400上の、例えばブリスターパック及び/又はバルーンのフランジブルシールを破裂させる為に使用される。
【0040】
ここで図16から図21を参照すると、例えば図4図5、及び図6に示されているように、XZ平面における組み立て及び動作の為のマイクロ流体カートリッジ400の一例の様々な図である。マイクロ流体カートリッジ400は、図1に示す本開示のマイクロ流体システム100の垂直マイクロ流体デバイス140の一例である。一例では、マイクロ流体カートリッジ400は、NDx分子カートリッジであってもよい。具体的には、マイクロ流体カートリッジ400の本実施例の、図16は正面等角図、図17は背面等角図、図18は正面図、図19は背面図、図20は端面図、図21は上面図と底面図である。
【0041】
この例では、マイクロ流体カートリッジ400は、サンプルツーアンサー核酸増幅検査(NAAT)を行うように設計されており、フランジブルシールによってマイクロ流体カートリッジ400への入口から分離されている1つ以上の個別の試薬パウチ412、414、416及び他のパウチ417(例えば、洗浄バッファ)を含む1つ以上の試薬パウチパネル410と、ウェル418(例えば、結合ウェル、洗浄ウェル)と、ウェルを相互接続する一次チャネル420(図17参照)と、サンプル装填ポート422と、サンプルフィルタ及びハウジング424と、ラテラルフローストリップハウジング426と、試薬で満たされたことを検出する為のラテラルフローストリップ428を含む。幾つかの実施形態では、試薬パウチパネルは、1つ以上の「フロースルー試薬パウチ」414、即ち、1つ以上の入口ポート430及び1つ以上の出口ポート432を含み、それによって、マイクロ流体カートリッジ400と一体化しフランジブルシールを破裂させると、サンプルはマイクロ流体カートリッジ400内に分注されて、入口ポート430を通ってパウチ内に流れ、出口ポート432を通って外に出ることができる。或いは、マイクロ流体カートリッジ400と一体化すると、マイクロ流体デバイス上の別のパウチ又は別のリザーバ/ウェルからの試薬が、入口ポート430を通ってパウチ内に流れ、出口ポート432を通ってマイクロ流体デバイス上の別の地点に出ることができる。幾つかの実施形態では、フロースルー試薬パウチは試薬を収容していてもよく、それによって、入口ポートに流れる液体は、出口ポートを通ってマイクロ流体カートリッジ400上のマイクロ流体ウェルに流れる時に、フロースルー試薬パウチの内容物と混合し、それによって調整される。試薬パウチ414は、それを通って流れる試薬を混合/調整する為の試薬を含むフロースルー試薬パウチの一例である。フロースルーパウチに収容される試薬は、液体、気体、又は固体形態の試薬であってもよい。幾つかの実施形態では、フロースルー試薬パウチは、マイクロ流体カートリッジ400と一体化し、フランジブルシールを破裂させる際に、パウチがマイクロ流体カートリッジ400上の空気に開放された導管を介して通気され、その内容物がマイクロ流体カートリッジ400のウェルに通じる1つ以上の出口ポートを介してマイクロ流体カートリッジ400内に空けられ得るように設計されてもよい。
【0042】
幾つかの実施形態では、フロースルー試薬パウチの入口ポート430は、マイクロ流体カートリッジ400との一体化時に、空気口又は空気入口に接続されてもよく、その結果、空気を用いてフロースルー試薬パウチ内に収容された流体を変位させて、その内容物を、フランジブルシールが破裂した時に、出口ポート432を介してマイクロ流体カートリッジ内に空けることができる。幾つかの実施形態では、フロースルー試薬パウチは、オイル/非混和性試薬を含んでもよい。
【0043】
図16図21に示す例示的な実施形態では、オイル/非混和性試薬は、2つの位置「A」及び「B」に存在するフランジブルシール及びラプチャーボールを備えたフロースルー試薬パウチ、即ちオイル/非混和性試薬パウチ416に格納される。「A」はマイクロ流体カートリッジを介して通気口(図示せず)に接続され、アッセイのイベントシーケンスにおける所望の時間に開くように破裂させることができるように、フランジブルシールによって分離される。「B」はカートリッジの一次チャネル420に接続されており、「A」と「B」の両方のポイントでフランジブルシールが破裂すると、パウチが通気し、オイル/非混和性液体が一次チャネル420を通じてカートリッジ内に放出され、ウェル内の試薬の上にオーバーレイを形成し、一次チャネルを完全に満たすようになっている。オイル/非混和性試薬パウチ416は、パウチ内の圧力ヘッドが、出口Bからカートリッジの一次チャネル420に試薬を送り出す為に使用されるように設計されている。独自の実施形態では、オイル/非混和性試薬パウチ416のフロースルー態様及び圧力ヘッドは、1つ以上の試薬パウチから順次又は並行して、夫々の出口ポートを介してマイクロ流体カートリッジ400に流体を送り出す為に利用されてもよい。この独自の実施形態では、試薬をパウチから絞り出す為の機械的な圧縮力は必要ないことに留意することが重要である。寧ろ、流体自体の圧力ヘッドや、オイル/非混和性試薬の圧力ヘッドが、試薬をパウチからマイクロ流体カートリッジ400内へと変位させる為に使用される。
【0044】
マイクロ流体カートリッジ400において、オイル/非混和性試薬パウチ416は、オイル/非混和性試薬パウチの内容物をマイクロ流体カートリッジ400のウェルの中に押し出す為に圧力ヘッドが生成され得るように、ウェルに対してより高い位置に配置される。圧力ヘッドを使用して粘性の油相をマイクロ流体カートリッジ400に充填するこの方法は、マイクロ流体デバイスの性能に重要な、滑らかで気泡のない油オーバーレイ相をもたらす。プランジャを使ってパウチを物理的に変形させ、オイル/非混和性試薬の内容物をパウチから絞り出す等、パウチに他の形態の圧力を加えることもできるが、パウチを押し潰す為に物理的な圧力を加えるこれらの方法では、絞り出しの際のカートリッジ内の気泡の発生の排除に関しては信頼性が低いことが実証されていることに留意されたい。
【0045】
気泡は、マイクロ流体デバイスに壊滅的被害をもたらし、液体の計量量や流れに不整合が生じる等、精度や信頼性に問題を引き起こす可能性がある為、気泡の形成を最小限に抑える流体処理方法を使用することが有益である。本明細書で言及する実施形態の場合、気泡は、一次チャネルを通る磁気ビーズの経路に沿ってエアポケット/気泡が生じる為、サンプル処理中の磁気ビーズの移送及び回収に影響を与える可能性がある。3MリキセルMM(Liqui-Cel MM)シリーズメンブレンコンタクター(3M社製、インラインメンブレンデバブラー)等のデバブラーを使用することは可能であるが、これらはシステムの組み立てやコンポーネントの要件を複雑にする。更に、これらは、適切に動作する為には、真空又は圧力差によって駆動される必要がある。
【0046】
幾つかの実施形態では、フロースルー試薬パウチは、マイクロ流体カートリッジ400上の或る点から別の点への流体フローの再誘導を制御する為の単回使用バルブとして使用されてもよい。マイクロ流体カートリッジ400の流体処理にこのタイプのバルブシステムを使用する利点は、流体処理に一般的に使用される他のタイプのバルブと比較して、複雑さが極めて軽減されること、並びにフロースルー試薬パウチの組み立て及び製造にかかるコストの軽減である。図16図21に示す例示的な実施形態では、フロースルー試薬パウチバルブ434は、マイクロ流体デバイス上のウェルに接続され、フランジブルシールによって分離された、ラプチャーボールを有する入口ポート(図示せず)と、マイクロ流体デバイス上の通気口(図示せず)に接続された、ラプチャーボールを有する出口ポート(図示せず)とを含む。この実施形態では、最終ウェルからの試薬は、フロースルー試薬パウチバルブ434が入口ポート(図示せず)及び出口ポート(図示せず)で破裂した時に、マイクロ流体カートリッジ400上のラテラルフローストリップ上に流れるように向けられる。
【0047】
幾つかの実施形態では、フロースルー試薬パウチは、フロースルー試薬がそれに導入され得る別の試薬と混合された時に、又はフロースルー試薬パウチ内に収容された試薬がフランジブルシールによって開かれた通気口を介して空気に曝された時に引き起こされる発熱反応を含み、マイクロ流体デバイス上の所望の場所に電気を使わない加熱を提供するように設計されてもよい。幾つかの実施形態では、フロースルー試薬パウチのうち1つ以上は、気体放出化学物質を含むように設計されて、その結果、マイクロ流体カートリッジとの一体化及びフランジブルシールの破裂時に、気体の生成を用いて試薬パウチからマイクロ流体カートリッジ400内に試薬を押し出すようにしてもよい。
【0048】
ウェルの上及び一次チャネル内のオイルの層によって生成される圧力ヘッドの効果は、アッセイステップを実行する為に、マイクロ流体デバイス上の1つのポイントから別のポイントに試薬又は処理されたサンプルを効果的に移送する為にも使用され得る。例えば、マイクロ流体カートリッジ上の増幅ウェルは、フロースルー試薬パウチを介して、増幅産物の検出の為にラテラルフローストリップに接続されてもよく、フロースルー試薬パウチの一端は増幅ウェルに接続されてもよく、他端はラテラルフローストリップのサンプルパッドに接続されてもよい。フロースルー試薬パウチの2つの端部が破裂した場合、オイルの圧力ヘッドは、検出の為にフロースルー試薬パウチを介して増幅産物をラテラルフローストリップに押し出すことができる。水性試薬のみを選択的にラテラルフローストリップに進入させ、油がラテラルフローストリップに進入してアッセイ及びフロー特性に影響を与えるのをブロックすることが望ましい独自の実施形態では、親油性及び疎水性の吸収パッド及び/又はオイルと接触すると膨らむ材料が、流体経路に沿って、又はフロースルーパウチの内部に存在してもよい。これらのタイプの材料の幾つかの例は、シリコーン、エチレンプロピレンジエン変性(EPDM、EPM)、ブチル、天然ゴム等のエラストマー、及び疎水性親油性吸収パッド、吸着剤、ナノファー、シラン分子でコーティングされたポリウレタンスポンジ等のオイルウィッキングスポンジ、オイル吸収ゲル、ペトロゲル又はポリオレフィンベースの疎水性吸収剤等の選択的に吸収処理された材料を含み、これらに限定されない。エラストマー素材は耐薬品性が無い為に一般にオイルに侵されて膨らむが、吸収材は自重の何倍ものオイルを吸収し、その過程で膨張する。これにより、水性の液体が通ることを可能にしながらオイルを選択的に吸い上げる。この過程で材料が膨潤又は膨張することで、フロースルーパウチの入口及び出口ポートを塞ぎ、油がラテラルフローストリップのサンプルパッドに到達するのを防ぐ。
【0049】
ここで、図22図23、及び図24を参照すると、XZ平面での動作の為のマイクロ流体装置300のアクチュエータプレート330に関連するマイクロ流体カートリッジ400の更なる詳細を示す様々な図である。即ち、図22及び図23は斜視図であり、一方、図24は上から見た図又は図8図15に示したマイクロ流体装置300の一部である。モータアセンブリ326を使用することにより、アクチュエータプレート330は、マイクロ流体カートリッジ400に対して回転可能であり、マイクロ流体カートリッジ400は定置保持される。
【0050】
次に図25図34を参照すると、垂直配向マイクロ流体カートリッジに関連してマイクロ流体装置300の回転型アクチュエータプレート330を使用するプロセスを示す平面図であり、回転型アクチュエータプレート330は空間的に配向された磁石を含む。図25図34に示すプロセスは、磁気ビーズベースのサンプル処理の一例である。「磁気ビーズ」又は「ビーズ」は、磁気的に反応するビーズを意味する。このプロセスは、アクチュエータプレート330に関連してマイクロ流体カートリッジ500を使用し、マイクロ流体カートリッジ500とは、説明のみを目的としたマイクロ流体カートリッジの一般的な表現である。
【0051】
この例では、オンチップ磁気ビーズベースのサンプル処理は、磁気ビーズの捕捉、再浮遊、及び移送が行われる間、アクチュエータプレート330の単回の回転動作を使用して行われる。これは、図25~34に示すように、空間的に配向した磁石を含むアクチュエータプレート330を用いて達成される。即ち、アクチュエータプレート330は、磁石1、2、3、4、5、6及び7を含む。
【0052】
マイクロ流体カートリッジ500の一次チャネルは1つのウェルを別のウェルに接続する。この例では、一次チャネルは、その上にバッフルと呼ばれる機能を有しており、これは、磁気粒子を所望の位置に拘束し、磁場に向かって移動するのを防止する物理的障壁として作用する。これらのバッフルは、移送磁石(2、4、6)が磁気ビーズ粒子をウェルからウェルへ移動させる際に、磁気ビーズ粒子を捕捉する。試薬捕捉/再懸濁磁石(3、5、7)は、ビーズがそのウェル内の試薬に懸濁されるように、ビーズをウェル内に引き下げる。磁石1は、第1のウェル内でビーズを捕捉し、ウェル内の中間でビーズを収集して、ビーズが磁石2によって容易に捕捉され、一次チャネルを介してウェル2に移送され得るようにする為に使用される追加の磁石である。磁気ビーズと接触する一次チャネルとウェルの壁は、フルオロアクリルコポリマー等の疎水性コーティングでコーティングされている。これは、サイトニックス社(Cytonix LLC)(メリーランド州ベルツビル)によって製造された疎水性コーティングのフルオロペル(FluoroPel)(商標)ファミリーから選択されてもよい。このコーティングは、3Mノベック(3M Novec)ファミリーのフッ素系ポリマーコーティング、例えばノベック-1908クリアコーティング、又はエレクトロルーブ社(Electrolube)製のFPC等のフッ素系ポリマーコーティングであってもよい。
【0053】
図25図34は、反時計回りに回転している回転アクチュエータプレート(例えば、アクチュエータプレート330)を用いた磁気ビーズベースのサンプル処理のステップを以下のように示している。なお、アクチュエータプレート330を駆動しているモータ(図示せず)は、磁石を再利用する為に時計回りにも回転できる。
【0054】
ホームポジション又はニュートラルポジションにおいて、図25は、磁石1~7が、充填中の相互作用を避ける為に、マイクロ流体カートリッジ500の処理領域から離れて配置されていることを示している。
【0055】
次に、図26において、磁石1は、第1のウェル内のビーズを捕捉する。
【0056】
次に、図27において、磁石2は、第1のバッフルへの一次チャネルにビーズを引き込む。
【0057】
次に、図28において、磁石3はビーズを第2のウェルに引き込む。
【0058】
次に、図29において、磁石4はビーズを第2のバッフルへの一次チャネルに引き込む。
【0059】
次に、図30において、磁石5はビーズを第3のウェルに引き込む。
【0060】
次に、図31において、磁石6はビーズを一次チャネルに引き込む。
【0061】
次に、図32において、磁石6はビーズを一次チャネルを通して第3のバッフルに引き込む。
【0062】
次に、図33において、磁石7はビーズを第4のウェルに引き込む。
【0063】
次に、図34において、磁石はホームポジションに戻される。
【0064】
図35は、本開示のマイクロ流体システム100を使用する方法600の一例の流れ図を示す。方法600は、サンプルツーアンサー動作シーケンスの一例であり、試薬の分注は、ユーザによって完了したカートリッジプロセスの単純な装填の間に完了する。方法600は、試薬パウチを作動させる為に、ユーザがマイクロ流体カートリッジをマイクロ流体装置に装填することを利用する。方法600は、以下のステップを含み得るが、これらに限定されない。
【0065】
ステップ610で、サンプルがマイクロ流体デバイスに装填される。例えば、サンプル流体を収容したシリンジ450は、例えば、図5及び図6に示したように、マイクロ流体カートリッジ400の装填ポート422に結合される。次に、サンプルをマイクロ流体カートリッジ400に分注する。
【0066】
ステップ615で、マイクロ流体デバイスがマイクロ流体装置に挿入される。例えば、マイクロ流体カートリッジ400は、例えば、図4図5、及び図6に示すように、マイクロ流体装置300の装填ステーション314に挿入される。次いで、マイクロ流体装置300のロックハンドル318又はブリスタークラッシュハンドル338をクランプして閉じ、それによって、必要な試薬をカートリッジ上の夫々のウェルに粉砕して分注する。
【0067】
ステップ620で、アッセイサンプル調製プロセスが開始される。例えば、ユーザは、マイクロ流体装置300上のボタンを押すことによって「開始」コマンドを入力し、アッセイサンプル調製、増幅、及びラテラルフローベースの検出ステップを開始する。
【0068】
ステップ625で、アッセイサンプル調製プロセスは、両方ともXZ平面内で動作するマイクロ流体デバイス及び自動回転アクチュエータを用いて実行される。例えば、アッセイサンプル調製プロセスは、両方ともXZ平面内で動作するマイクロ流体装置300内のマイクロ流体カートリッジ400及び自動回転アクチュエータプレート330を用いて実行される。XZ平面で動作するシーケンスの一例は、図25図34を参照して本明細書で説明したプロセスステップである。
【0069】
ステップ630で、マイクロ流体装置(例えば、マイクロ流体装置300)は、処理が完了したことを示す。例えば、アッセイ結果の準備ができた時に、ユーザは可聴器又はモバイル通知によってアラートされる。結果は、携帯電話で、又は例えばマイクロ流体装置300のデジタルディスプレイ312上で直接、ユーザに表示されてもよい。
【0070】
オンチップサンプルツーアンサー方式NAATの動作原理
図36に示す例示的なマイクロ流体カートリッジ700を参照して、オンチップサンプルツーアンサー方式NAATの動作原理を以下のように説明することができる。
【0071】
磁気ビーズベースのサンプル調製試薬、増幅用再水和バッファ、磁気粒子及びオイル等のアッセイを行う為に必要な試薬は、夫々の単位用量試薬パウチに収納される。この例示的な実施形態で使用される磁気粒子はチャージスイッチ磁気ビーズ(カリフォルニア州カールスバッドのサーモフィッシャーサイエンティフィック(Thermofisher Scientific))である。本実施形態で使用する磁気粒子は、核酸の精製を容易にする為に、核酸に対する親和性がpHに依存する独自のイオン化官能基を有する。磁気ビーズはフロースルー試薬パウチに収納されており、容易な再懸濁と、結合バッファやサンプルとの混合を促進する。代わりに、核酸及びイムノアッセイ又はタンパク質抽出プロトコル両方に利用可能なダイナビーズを利用してもよい。
【0072】
例示的な実施形態において、図36に示すマイクロ流体カートリッジ700を続けて参照すると、アッセイは以下のように行われる。
【0073】
サンプルの導入:最初にサンプルライセートを、サンプル入口を介してサンプル移送シリンジを用いてカートリッジに導入する。シリンジのプランジャを押すと、サンプルはプレフィルタディスクを介して分注され、これによりサンプルから阻害物質がろ過され、ライセート中のDNAを通過させる。分注ステップ後、シリンジはカートリッジに接続されたままであることで、逆流を防ぐと共にサンプル入口ポートを閉状態に保つ。本実施形態では、500ulのサンプルライセートがカートリッジに導入される。
【0074】
試薬の分注/充填:カートリッジは、次に装置に挿入され、装置への挿入行為によって、フランジブルフォイルシールを破裂させるようにラプチャービーズにアクチュエーション力が加えられ、次に、試薬パウチを押し潰して、そこから液体を分注させる。図36に示すように、結合バッファ試薬の流体経路は、効果的に流れて磁気粒子と混合し、再懸濁させるように、磁気粒子のフロースルーパウチに接続されている。通常、20ul以下の磁気粒子が使用される為、デッドボリュームの制約により、ビーズを正確に分注し、十分に再懸濁させることが困難である。フロースルーパウチは、ビーズが流れて溶解/結合ウェル内のサンプルと混合する際に、ビーズを結合バッファに再懸濁させることで、これらの問題を解決する。同時に、洗浄、増幅、再水和バッファが夫々のウェルに分注され、オイル試薬が分注される。オイル試薬のパウチは、通気口に接続するラプチャービーズと、マイクロ流体カートリッジの一次チャネルへの流路に接続するラプチャービーズとを含むフロースルー試薬パウチである。オイルの流れは、一次チャネルの上にあるオイル試薬パウチの高さによる圧力ヘッドによって駆動される。オイルの粘度と流路の長さにより、オイルは他の試薬パウチが粉砕され分注された後に一次チャネルに入るように設計されている。オイルは一次側の流路を順次満たし、それによって各ウェルの上に均一な油相オーバーレイが形成され、各ウェルは非混和性油相によって他のウェルから分離される。増幅ウェルは、凍結乾燥した増幅マスターミックスをビーズの形で含み、それは、増幅ウェルの小バンプアウトキャビティに捕捉される。300μlの結合バッファ+20μlの磁気ビーズ、200μlの洗浄バッファ×2、及び50ulの分子グレードの水又は増幅バッファを、溶解/結合、洗浄1、洗浄2、及び増幅ウェルに夫々分注する。幾つかの実施形態では、結合バッファは、マイクロ流体デバイス上の乾燥フォーマットのチャンバ又はウェルに存在してもよく、サンプル又はライセートは、再水和してそれと混合するようにそれを介して流れてもよい。NAATのように正確なピペッティングを必要とするアッセイでは、50μlの再水和バッファ(分子グレードの水)を5%以下の誤差で正確に分注する必要がある。分注量の正確さを確保する為に、50μlのミネラルオイルを、50μlの分子グレードの水又は増幅バッファと一緒に再水和バッファのパウチに分注する。オイルは水の上に浮き、それによって水は再水和パウチの狭い出口からチップに押し出される。このようにして、オイルがパウチ内のデッドボリュームと増幅ウェルに至るチャネルを満たし、凍結乾燥した増幅マスターミックスペレットを正しく再水和させる為に必要な水を正確に計量することができる。
【0075】
磁気ビーズベースのサンプル調製図36に示すように、オンチップ磁気ビーズベースのサンプル処理は単一の回転動作を用いて行われ、その回転運動中に磁気ビーズの捕捉、再懸濁及び移送が行われる。磁気ビーズと結合バッファの混合物は、溶解/結合ウェルに入り、ウェルに分注された500μlのライセートと混合する。必須ではないが、サンプルと結合バッファの追加混合が望まれる場合、幾つかの実施形態では、前後の回転運動を用いてサンプルを撹拌してもよい。ビーズは、ウォッシュ1及びウォッシュ2のウェルで2回洗浄された後、増幅器ウェルで増幅ミックスに再懸濁され、そこでビーズは増幅ミックスに直接溶出される。核酸の増幅には、様々な増幅法が用いられる。等温増幅法は、結果が出るまでの時間が短く、阻害剤が存在しても安定しており、単一の低温要件故に全体的消費電力を低減する為、ポイントオブケア・アプリケーションとして非常に魅力的である。ループ介在等温線増幅法LAMPは、良く知られた等温線増幅法である。増幅ミックスのpHは8.8で、チャージスイッチ磁気ビーズを用いたDNAの溶出に適している。代替的に、PCR熱サイクルを利用して増幅することもできる。
【0076】
増幅:サンプル調製に続いて、増幅ウェルは、装置に存在する加熱器及び/又は増幅ウェルに近接する外熱/相変化化学反応を用いて、増幅に適した温度に加熱される。LAMP等の等温増幅法では、温度は~65℃まで上昇する。
【0077】
ラテラルフロー検出:密封されたハウジング内のラテラルフローストリップが、マイクロ流体カートリッジ上に存在する。増幅産物を検出する準備が整うと、「ラテラルフローストリップへのフロースルーパウチ」と「通気口へのフロースルーパウチ」を同時に破裂させ、ラテラルフローストリップを増幅ウェルに接続して通気させる。この場合、オイルの圧力ヘッドにより、増幅産物が増幅ウェルから、「ラテラルフローストリップへのフロースルーパウチ」を通してラテラルフローストリップのサンプルポートに押し出される。ラテラルフローストリップへのフロースルーパウチの出口は、ラテラルフローストリップのサンプルパッドのサンプル入口ポートに位置する。親油性で疎水性のウィッキングパッドが、増幅産物のラテラルフローストリップへの経路に沿って存在し、それが選択的に油を吸い上げ、増幅産物のみがラテラルフローストリップに入ることを可能にするようにする。幾つかの実施形態では、親油性ウィッキングパッドは、ラテラルフローストリップへのフロースルーパウチの内部に存在してもよい。幾つかの実施形態では、親油性ウィッキングパッドは、ラテラルフローストリップへのサンプルパッドの入口に存在してもよい。幾つかの実施形態では、密封されたラテラルフローストリップのハウジングは、直接通気されてもよいし、マイクロ流体デバイス上の通気口に接続されてもよい。通気口は、空気を選択的に通過させるが、液体が自己完結型マイクロ流体デバイスの外に出るのを阻止する半透膜フィルタ又は膜であってもよい。
【0078】
ここで図37を参照すると、マイクロ流体カートリッジ800等のマイクロ流体デバイスにおけるウィックバルブ800の一例を示す平面図及び断面図である。ウィックバルブ800は、例えば、マイクロ流体カートリッジ800等のマイクロ流体カートリッジにおいて、分注液のデッドボリューム/損失をゼロにして、液体を分注/移送する為に使用される。このアプリケーションは、バルブ内の液体の損失がないことにつながる、非常に少量の液体の分注に最適である。
【0079】
ウィックバルブ800の動作は、分注対象液体に非混和性移送流体を充填することに依存する。また、移送流体は、分注される流体よりも密度が低いことが必要である。そのような移送流体の例は、水性試薬と共に使用することができるミネラルオイルである。
【0080】
移送液は、分注液の上に浮き、その重さによって下向きの力を加えることになる。この下向きの力は、液体をバルブの中に移動させ、バルブを通過させるのに必要な正圧である。ウィックは、移送流体を吸収して膨張し、フロースルーチャネルを塞ぐことで、バルブを通過して移送流体が分注されることが無いようにする。吸油性、撥水性のウィックは、スポンジ、吸着剤、エラストマー、ゲル、又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0081】
引き続き図37を参照すると、ウィックバルブ800は、ウィック816(例えば、親油性/疎水性の吸収パッド)がそのフロースルーチャネル812に閉じ込められた「フロースルー」ブリスター810を含む。断面A-Aはブリスターの断面を示している。フロースルーブリスター上にフランジブルシール818を破裂させる為に使用されるラプチャービーズ814がある。断面は、フロースルーチャネルに閉じ込められたウィック816も示している。
【0082】
マイクロ流体カートリッジにウィックバルブ800を取り付けてもよい。カートリッジからの液体を分注する必要がある場合、ラプチャービーズをフランジブルシールに押し込む。これにより、フラジブルシールが破裂し、マイクロ流体カートリッジへのビアが開かれる。移送液の重量により、分注対象液体がカートリッジから押し出され、ウィックバルブ800に入る。
【0083】
ウィックバルブ800の内部では、水性の分注液がウィック816の周りの間質性空間を通って通過する。移送液は、密度が低く、分注液の上に浮いているので、分注液に追随する。移送液がウィック816に触れると直ちにウィックの内部に吸収され始める。この移送流体のウィッキングにより、カートリッジからウィックバルブ800に更に移送流体を引き込む別の引張力が生じる。移送液は、ウィック内の流体フロントとして移動し、分注液を前方に押し出し、ウィックバルブ800の出口に向かって押し出す。移送液は分注液と非混和性である為、分注液を全てウィックバルブ800から押し出すように働く。ウィックが移送液で飽和すると、飽和したウィックの膨張特性により、入口ポートと出口ポートは十分にブロックされる。この時点で、粘性の移送液は「フロースルー」ウィックバルブを流れることができず、それ以上の移送液はウィックバルブに引き込まれない。こうして分注液はカートリッジから完全に分注され、ウィックバルブ800を通過し、その一方で、移送液は選択的にウィックバルブ800から出されないことになる。
【0084】
次に図38を参照すると、ウィックバルブ800等のウィックバルブを使用するマイクロ流体カートリッジ900の一例の平面図である。即ち、ウィックバルブ現象の一例は、図38に示すノーベル(Novel)DXカートリッジ900において、カートリッジの増幅チャンバ912内にある増幅試薬産物910をラテラルフローストリップ上に分注する為に使用される。この例示的なラテラルフローストリップ914は、50μLの産物を必要とし、カートリッジの増幅チャンバ内の増幅試薬産物の体積は丁度50μLである。典型的なマイクロ流体カートリッジでは、カートリッジのチャネルで失われる少量のデッドボリュームがあり得るが、非常に低い体積では、その同じデッドボリュームが試薬産物の20~50%までを占める可能性がある。このような大量の体積損失は、ラテラルフローストリップの機能不全につながる。
【0085】
本実施形態では、移送液としてミネラルオイル916を用いる。ミネラルオイルは、増幅試薬産物に混和せず、また、試薬産物よりも軽いので浮く。増幅試薬産物の上にあるミネラルオイルの重量は、下向きの圧力を引き起こし、この圧力は、フランジブルシールが破られた時に、増幅試薬産物を増幅室からウィックバルブ800に移動させる。本実施形態のウィックバルブ800は、ウィック920として親油性のパッドを含む。このパッドは疎水性でもあるので、水性の増幅試薬産物を吸収することはない。増幅試薬産物は、ウィックとバルブの流路の間の間質空間を通過する。オイルは、より軽く、より粘性がある為、フロースルーチャネルを容易に流れることはないが、ウィックがオイルを吸収し始めると、より多くのオイルをウィックバルブ800内に効果的に引き込むことになる。オイルがウィック内を移動してウィックを飽和させると、増幅試薬産物がバルブの出口に向かって押し出される。バルブの出口は、ラテラルフローストリップのサンプルパッドの真上にある。この方法を用いて、50μLの増幅産物がカートリッジ内の増幅室からラテラルフローストリップに分注される。この方法の利点は、ラテラルフローストリップにミネラルオイルが流れ込まないことである。これは、ミネラルオイルがラテラルフローストリップの誤動作を引き起こす可能性がある為、重要である。
【0086】
更に、本開示のマイクロ流体装置(例えば、マイクロ流体装置300)は、異なるマイクロ流体カートリッジ設計を処理することができる。特に、装填ステーション314自体及び/又はロッキングヒンジ316のプレート部分は、特定のマイクロ流体カートリッジの機能に対応するようにカスタマイズされてもよい。更に、幾つかの実施形態では、装填ステーション314はロッキングヒンジ316を有していなくてもよい。例えば、マイクロ流体カートリッジは、マイクロ流体カートリッジが装填ステーション314から脱落しないようにロック/拘束するレール/スロット機能等、何らかの他の機能によって保持されてもよい。その例は、図39図51Bを参照して、本明細書に図示され説明される。即ち、図39図51Bは、本開示のマイクロ流体デバイスの他の例であるマイクロ流体装置305の様々な図を示している。即ち、マイクロ流体装置305は、図1に示すマイクロ流体システム100のマイクロ流体装置110の他の例である。図39図51Bでは、マイクロ流体装置305は、例えば、異なるマイクロ流体カートリッジ及び/又は他のデバイスと組み合わせて図示されている。
【0087】
ここで図39を参照すると、マイクロ流体装置305は、他の幾つかの些細な差異の中でもとりわけ、デジタルディスプレイ312の配置及びベースプレート324の機能を除いて、図8図15に示されるマイクロ流体装置300と実質的に同じである。例えば、マイクロ流体装置305では、装填ステーション314は、摺動プレート370の上に着座している。そして、摺動プレート370は、ベースプレート324の受容スロット325に摺動式に設置され得る。ここで、マイクロ流体装置305はロック解除状態で示されており、装填ステーション314は、マイクロ流体装置305の外側にある摺動プレート370の上に設置された状態である。更に、装填ステーション314のロッキングヒンジ316はロック解除状態で示されており、マイクロ流体カートリッジが存在していない。
【0088】
次に図40を参照すると、内部にマイクロ流体カートリッジ400が設置されロックされた状態の装填ステーション314の斜視図である。更に、シリンジ450は、マイクロ流体カートリッジ400に関連して示されている。従って、装填ステーション314、マイクロ流体カートリッジ400、及びシリンジ450は、マイクロ流体装置305への装填の為に準備される。次に、図41は、装填ステーション314、マイクロ流体カートリッジ400、シリンジ450が付随する摺動プレート370が、マイクロ流体装置305のベースプレート324の受容スロット325内に装填されるところを示している。次に、図42は、装填ステーション314、マイクロ流体カートリッジ400、及びシリンジ450が付随する摺動プレート370が、マイクロ流体装置305に完全に装填され、ブリスタークラッシュハンドル338がハンドルラッチフック342に係合した状態を示す。図42は、ラッチされた状態又はクランプされた状態のマイクロ流体装置305を示している。従って、マイクロ流体カートリッジ400の流体は、ブリスタークラッシュハンドル338の破砕作用によって展開される。図41及び図42は、その詳細を明らかにする為に、ハウジング310及びデジタルディスプレイ312が無い状態でマイクロ流体装置305を示している。
【0089】
更に例を挙げると、図43及び図44は夫々、マイクロ流体カートリッジ400が装填ステーション314に装填されている一例の斜視図及び平面図を示す。ロッキングヒンジ316は未だマイクロ流体カートリッジ400に対して閉じていない。ロッキングヒンジ316のプレート部分は、マイクロ流体カートリッジ400の機能(例えば、NDx分子カートリッジ)に対応するようにカスタマイズされている。更に、装填ステーション314の下部は、摺動プレート370の一対の対応する穴371に嵌め込む為の一対の取り付けペグ315を含む(図51A及び図51B参照)。マイクロ流体カートリッジ400は、マイクロ流体装置305に設置され処理され得るカートリッジの1つのタイプの一例である。
【0090】
更に、図45は、装填ステーション314に設置された2ウェルのマイクロ流体カートリッジ401の一例を示す斜視図を示している。この例では、ロッキングヒンジ316のプレート部分は、2ウェルマイクロ流体カートリッジ401の機能に対応するようにカスタマイズされている。2ウェルマイクロ流体カートリッジ401は、マイクロ流体装置305に設置され処理され得る別のタイプのカートリッジの一例である。
【0091】
更に、図46は、装填ステーション314に設置されたイムノアッセイマイクロ流体カートリッジ402の一例を示す斜視図を示す。この例では、ロッキングヒンジ316のプレート部分は、イムノアッセイマイクロ流体カートリッジ402の機能に対応するようにカスタマイズされている。イムノアッセイマイクロ流体カートリッジ402は、マイクロ流体装置305に設置され処理され得る更に別のタイプのカートリッジの一例である。
【0092】
更に、図47は、装填ステーション314に設置されたラテラルフローハウジング403及びスペーサプレート404の一例の斜視図を示す。この例では、ロッキングヒンジ316は存在しない。ラテラルフローハウジング403は、マイクロ流体装置305に設置され処理され得る、更に別のタイプのデバイスの一例である。
【0093】
図48A及び図48Bは、ハウジング310を備えたマイクロ流体装置305及びハウジング310を備えていないマイクロ流体装置305を示し、マイクロ流体装置305に装填されるラテラルフローハウジング403を伴う装填ステーション314の更なる詳細を示す。図49A及び図49Bは、ハウジング310を備えたマイクロ流体装置305及びハウジング310を備えていないマイクロ流体装置305を示し、マイクロ流体カートリッジ400がマイクロ流体装置305に装填されている装填ステーション314の詳細を示している。図50A及び図50Bは、ハウジング310を備えたマイクロ流体装置305及びハウジング310を備えていないマイクロ流体装置305を示し、マイクロ流体カートリッジ400がマイクロ流体装置305に完全に装填された状態の装填ステーション314の詳細を示す。図51A及び図51Bは、ハウジング310を備えたマイクロ流体装置305及びハウジング310を備えていないマイクロ流体装置305を示し、マイクロ流体カートリッジ400がマイクロ流体装置305からアンロードされている状態の装填ステーション314の詳細を示している。
【0094】
図52は、本開示のマイクロ流体システム100を使用する別の方法の一例である方法1000の流れ図を示す。方法1000は、以下のステップを含み得るが、これらに限定されない。
【0095】
ステップ1010で、マイクロ流体装置を電源投入する。例えば、図4乃至図6のマイクロ流体装置300、図8乃至図15のマイクロ流体装置300、又は図39乃至図51Bのマイクロ流体装置305を電源投入する。一例では、電源投入時に、アクチュエータプレート330は、ホームポジションの磁石が磁気リードスイッチに近接するまで、反時計回り方向に回転する。これがホームポジションである。
【0096】
ステップ1015で、マイクロ流体装置の装填シーケンスが開始される。例えば、ユーザは、患者IDをスキャン(例えば、バーコード又はRFID)するか、又は手動で入力する。次に、ユーザは、カートリッジIDをスキャンするか、又は手動で入力する。
【0097】
ステップ1020で、マイクロ流体カートリッジがマイクロ流体装置に設置される。例えば、ユーザは、装填ステーション314をマイクロ流体装置300、305からスライドさせ、ロッキングヒンジ316を開く(図39参照)。次に、ユーザは、マイクロ流体カートリッジ400等の特定のマイクロ流体カートリッジを装填ステーション314に装填し(図43参照)、ロッキングヒンジ316を閉じる(図49A及び図49B参照)。そうすることで、ブリスターの下にあるフランジブルシールが破れ、マイクロ流体カートリッジ400へと流体経路が開かれる。
【0098】
ステップ1025で、サンプルがマイクロ流体カートリッジに提供される。例えば、関与サンプルを保持するシリンジ450が、マイクロ流体カートリッジ400の装填ポート422に流体的に結合される(図40及び図41参照)。次に、ユーザは、マイクロ流体カートリッジ400にサンプルを注入する。そうすることで、サンプル流体は、磁気電荷スイッチ粒子を収容したパウチを通って流れ、マイクロ流体カートリッジ400の結合ウェルに入る。
【0099】
ステップ1030で、マイクロ流体カートリッジ及びサンプルを伴う装填ステーションをマイクロ流体装置にスライドさせる。例えば、ユーザは、マイクロ流体装置300の装填ステーション314をマイクロ流体カートリッジ400にスライドさせる(図6参照)。
【0100】
ステップ1035で、マイクロ流体装置をロック/クランプして閉じる。例えば、ユーザは、ハンドルラッチフック342がブリスタークラッシュハンドル338に係合するまで、ブリスタークラッシュハンドル338を押し下げる(図42図50A図50B参照)。そうすることで、ブリスタークラッシュハンドル338は、試薬分注プランジャを前方に移動させて試薬分注プランジャを試薬パウチに対して押し下げさせる。これにより、試薬パウチの内容物がマイクロ流体カートリッジ400のウェル内に絞り込まれる。また、これにより、パウチが押し潰された状態で保持され、逆流を防ぐ。
【0101】
ステップ1040で、マイクロ流体装置の検査シーケンスが開始され、実行される。例えば、マイクロ流体装置305及びマイクロ流体カートリッジ400の検査シーケンスが開始され、実行される。検査シーケンスが開始されると、サンプルが処理される。例えば、アクチュエータプレート330は、一定の時間(例えば、約3分)、マイクロ流体カートリッジ400に対して相対的に回転する。一例では、アクチュエータプレート330が回転すると、洗浄及び溶出の異なる段階の間で磁気粒子を捕捉し、再懸濁させ、移送する。次に、増幅プロセスが起こる。一例では、増幅プロセスの間、増幅ウェルと接触している抵抗加熱器がオンになる(例えば、約12~20分間)。
【0102】
ステップ1045で、テキストシーケンスの結果が読み取られ、処理される。例えば、マイクロ流体装置305のシーケンシャルバーストプランジャ360を使用して、マイクロ流体カートリッジ400上でフランジブルシールを破裂させることにより、増幅産物をラテラルフローストリップ428上に順次分注する。シーケンシャルバーストカム356が回転すると、シーケンシャルバーストプランジャ360をフロースルーブリスターに押し付け、フォイルシールを破裂させる。これにより、ラテラルフローストリップ428への流路が開かれる。次に、図1に示す検出システム122のような検出システムからの情報が処理される。検査結果は、マイクロ流体装置305のデジタルディスプレイ112に表示されてもよい。取り込まれ得る情報の諸例については、図53図59を参照して以下に示す。
【0103】
CT/NGループ介在等温線増幅(LAMP)プライマー
LAMPは、核酸等温線増幅技術である。通常、LAMPでは4~6種類のプライマーと高い鎖置換活性を備えたBstポリメラーゼを使用する。LAMP産物は、リアルタイム蛍光、リアルタイム濁度計を用いてリアルタイムで分析してもよいし、ゲル電気泳動、濁度、蛍光色素、比色法、電気化学法、ラテラルフローアッセイを用いてエンドポイント分析してもよい。図53は、LAMPの基本原理を示す反応ステップ1100の一例の模式図を示す。
【0104】
クラミジア・トラコマチス(CT)/淋菌(NG)LAMPプライマー(又はCT/NG LAMPプライマー)を設計する方法が提供される。即ち、CT/NG LAMPプライマーを設計する為の戦略の例は以下の通りである。
【0105】
(1)LAMPプライマーセットは、primerExplorer V5(栄研化学株式会社(Eiken Chemical Co.))を用いて設計した。
【0106】
(2)クラミジア・トラコマチス(CT)LAMPプライマーセットは、マルチコピーの潜在プラスミド(ジェンバンク(GenBank) J03321.1 pCHLl)の特定の配列を標的に設計した。
【0107】
(3)淋菌(NG)LAMPプライマーセットは、porA疑似遺伝子(ジェンバンクAJ223447.1株FA1090)及びmtrA遺伝子(ジェンバンクAF133676.1, 株 FA1090)に関して設計した。
【0108】
(4)各微生物について、設計されたLAMPプライマーは、フォワード内部プライマー(FIP)、バックワード内部プライマー(BIP)、フォワード外部プライマー(F3)、バックワード外部プライマー(B3)、フォワードループプライマー(LF)、バックワードループプライマー(LB)を含む。
【0109】
(5)生成したLAMPプライマーについて、更にオリゴアナライザーツール(Oligo Analyzer tool)(IDT社)を用いて、LAMP反応条件でTm、ヘアピン、Gカルテット、ΔG、自己ダイマーを解析した。
【0110】
(6)サーモマルチプルプライマー(Thermo Multiple Primer)で自己プライマーダイマーを評価した。
【0111】
(7)最後に、リアルタイムLAMP(Real-Time LAMP)でプライマーを評価し、結果が出るまでの時間(Time-To-Result)(TTR)/Δ(陽性TTR-陰性 TTR)の観点から最適なプライマーセットを選択し、最終的なアッセイ開発を行った。
【0112】
クラミジア・トラコマチス(CT)のLAMPプライマーセットの例を、表1~表5を参照して以下に示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0113】
淋菌(NG)のLAMPプライマーセットの例を、表6~表10を参照して以下に示す。
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【0114】
標準LAMP反応条件-1X等温増幅バッファII(NEB社)、6mM硫酸マグネシウム、DNAテンプレート、各dNTPを2.5mM、1.6μMのフォワード内部プライマー(FIP)、1.6μMのバックワード内部プライマー(BIP)、0.2μMのフォワード外部プライマー(F3)、0.2μMのバックワード外部プライマー(B3)、0.8μMのフォワードループプライマー(LF)、0.8μMのバックワードループプライマー(LB)、2μLの1:100のSyto 9色素及び24UのBst3.0DNAポリメラーゼを含むマスターミックスを合計50μLで、マルチプレックスLAMP反応を実行した。LAMP反応は65℃で25~45分インキュベートした。
【0115】
オンチップLAMP反応-増幅試薬は、乾燥及び液体フォーマットで存在し、マイクロ流体カートリッジ内に別々に保存される。凍結乾燥されたペレットは、BST3.0酵素、dNTP及びプライマーを含み、これは増幅ウェルに保存される。一方、等温増幅バッファ(50μL)は液体のフォーマットで増幅ウェルの上のブリスターパウチに収納されている。増幅バッファの上には50μLのオイルが浮いており、ブリスターパウチの狭い出口から増幅ウェルに押し出し、凍結乾燥したペレットを再水和させるのに役立つ。サンプル調製後、増幅用ミックスバッファpH8.8の存在下で磁気粒子からDNAを溶出させ、その後、12~20分間かけて温度を約65℃までに上げてLAMP反応を開始する。LAMPミックス及びアッセイの条件は、凍結乾燥及び保存中の酵素損失を補う為に凍結乾燥ペレット中のより高いBST酵素濃度を用いることを除いて、上記と同じである。
【0116】
ハプテン標識プライマー-マルチプレックスエンドポイントNALF分析の為に、プライマーをハプテンで標識して二重標識LAMP産物を製造する。1つのハプテンはニトロセルロース膜上の捕捉に使用され、2つ目のハプテンはレポーター分子の結合に使用される。LAMPプライマーは、ビオチン、フルオレセイン(FAM)、ジゴキシゲニン(DIG)、テキサスレッド(TEX)、及びジニトロフェノール(DNP)で標識されている。ラテラルフローストリップでのCTの検出には、FIP-FAM/LF-ビオチン、FIP-FAM/LB-ビオチン、又はLF-FAM/LB-ビオチンの何れかの標識プライマーの組み合わせを使用した。NG検出には、FIP-TEX/LF-ビオチン、FIP-TEX/LB-ビオチン、LF-TEX/LB-ビオチンの標識プライマーの組み合わせを使用した。内在性コントロール標的(ヒトβアクチン遺伝子)は、以下の標識プライマーの組み合わせを使用した;FIP-DNP/LF-ビオチン、FIP-DNP/LB-ビオチン、又は、抗DNPでの検査ライン上での検出にはLF-DNP/LB-ビオチン。
【0117】
テール付きプライマー-(マルチプレックス)エンドポイントNALFアッセイの為のハプテン標識LAMPプライマーの代替として、テール付きプライマーアプローチを使用することができる。テール付きプライマーは、活性プライマー配列の5’末端に追加オリゴヌクレオチド配列を加え、ポリメラーゼストッパーで分離することによって設計された。最も一般的な市販のポリメラーゼストッパーは、C3スペーサ、トリエチレングリコールスペーサ(スペーサ9)、ヘキサエチレングリコールスペーサ(スペーサ18)を含む。テール付き配列は、BLASTで確認して、他の一般的な病原体と配列の類似性が無いことを確認し、偽陽性を回避した。テール付きプライマーを使用することで、NALFにおけるハプテン/抗ハプテンアプローチの使用に比べて、高い多重性と低コストを実現している。更に、マルチプレックスNALFアッセイでは、ハプテン/抗ハプテンの親和性の違いによって検査ラインの強度が異なることがあるが、DNA-DNA結合親和性は通常高く、一貫した検査ラインの強度が得られる。テール付きプライマーペアを使用すると、アンプリコンの両端に2本の一本鎖DNAテールが付いたアンプリコンが生成される。一方のテールはニトロセルロース膜に固定化された相補的プローブに、もう一方のテールは金ナノ粒子で標識されたレポータープローブにハイブリダイズするのに使用できる。代替的に、単一のテールをビオチン又はハプテン標識オリゴと組み合わせて使用し、ビオチン/ハプテン末端がストレプトアビジン/抗ハプテン標識金ナノ粒子/着色粒子レポータープローブに結合し、テール末端が、ニトロセルロース膜上に固定化された相補的プローブにハイブリダイズすることもできる。FIP/LF、FIP/LB、LF/LBのテール付きプライマーを組み合わせて、検査ラインへの捕捉とレポーターDNAプローブとの結合を行うことができる。マルチプレックスNALF分析の為に、固有の配列を有する複数の異なるテールが設計され得る。
【0118】
核酸ラテラルフローアッセイ(NALF)-核酸ラテラルフロー(NALF)は、LAMP産物の、代替となる、単純で安価な、ポイントオブケアのエンドポイント検出システムを提供する。結果の分析には肉眼による視覚的な読み取りが使用できる為、ラテラルフローデバイスは安価であり且つ機器が要らない。このストリップには2本のコントロールラインがあり、LAMPアンプリコンの有無とは無関係に常に陽性結果を示す。第1コントロールはストリップのフローチェックコントロールであり、第2コントロールはLAMP反応の内部反応コントロールである。
【0119】
ハプテン-抗体ベースのNALFアッセイ-ラテラルフローアッセイストリップは、アビンドン・ヘルス社(Abingdon Health社)(英国)から供給された。このストリップは、フローコントロールライン用の抗ヤギ(Goat)抗体、内部反応コントロールライン(β-アクチン)としての抗DNP、CTの検出用の抗FITC検査ライン、及び(NG)標識LAMP産物の検出用の抗TEX検査ラインを有する。二重標識されたLAMPアンプリコンは、検査ラインに固定化された抗体によって捕捉され、ニュートラビジン結合カーボンナノ粒子又は抗ビオチン官能化金ナノ粒子との結合後に可視化される。2つの異なるストリップを検査した;(a)ニュートラビジン共役カーボンナノ粒子のストリップ、(b)抗ビオチンを結合した金ナノ粒子(AuNP)のストリップである。50μLのLAMP法増幅産物をラテラルフローストリップの装填ウェルに塗布し、2分後に標的DNAの有無を肉眼(定性)又はラテラルフローストリップリーダー(定性)で観察した。
【0120】
ダブルテール付きプライマーベースのNALFアッセイ-ラテラルフローストリップは、フローコントロールライン、内部反応コントロールライン(β-アクチン)、CT及びNG遺伝子標的を検出する為の2つの検査ラインで、インハウスで準備される。ビオチン標識オリゴヌクレオチドDNAプローブをニュートラビジンに結合させ、コントロールラインと検査ラインとしてニトロセルロース膜上に分注する。フローコントロールラインのプローブは、AuNPs標識されたDNAに相補的である。内部反応コントロールプローブは、ヒトβ-アクチンのテール付きLAMPアンプリコンに相補的である。検査ラインのプローブは、CTとNG標的遺伝子に対するテール付きLAMPアンプリコンに相補的である。ラテラルフローアッセイの安定性と感度を向上させる為に、DNAキャプチャプローブをキャリアタンパク質やマイクロビーズに共有結合させることが検討されてもよい。NHS/EDC化学、サクシニミジル-6-ヒドラジノニコチンアミド(S-HyNic)/4-ホルミルベンズアミド(4FB)化学、クリックケミストリー、マレイミド含有架橋剤、及びその他の関連する共役化学等、幾つかの共役化学が採用され得る。AuNPs標識DNAレポータープローブは、よく知られたチオール-金化学を用いて調製される。テール付きプライマーNALFアッセイは、増幅LAMP産物を、AuNPs-DNAプローブを含むサンプル/共役パッド上に導入することによって行うことができる。DNA標的の存在は、検査ゾーン上の着色されたラインとして可視化され、2~5分後に肉眼で、又はラテラルフローストリップリーダーを用いて読み取ることができる。
【表11】
【表12】
【表13】
【0121】
ハプテン/テール付きプライマーに基づくNALFアッセイ-テール付きプライマーアプローチの場合と同様に、ラテラルフローストリップを作製し、インハウスで準備する。このアッセイでは、1つのテール付きプライマーと1つのハプテン(ビオチン)標識プライマーを用いてLAMPを行う。2つの異なるNALFアッセイを使用する。LAMPプライマーFIPテール/LF-ビオチン又はLFビオチン/LBテールを使用した場合、アンプリコンはニュートラビジン-DNAプローブで捕捉され、ニュートラビジン機能化金ナノ粒子の結合で可視化される。FAM/LFテールを備えたLAMPアンプリコンは、ニトロセルロース膜に固定化された抗FAMでFAM標識LAMPを捕捉し、レポーターAuNPs-DNAとハイブリダイゼーションすることで、ラテラルフローアッセイで検出される。
【0122】
ハプテン/テール付きプライマーアプローチの為のプライマーセット
【表14】
【表15】
【表16】
【0123】
ランタノイド標識を用いたラテラルフローシグナルの増強-近年、ランタノイドキレートナノ粒子は、ラテラルフローアッセイにおける金ナノ粒子の代替レポーターとして浮上している。何千もの蛍光性ランタノイドキレートを含むシリカやポリスチレンのナノ粒子は、従来のコロイド状金ナノ粒子に比べて50~1100倍のシグナル増強効果があり、ラテラルフローアッセイのシグナルレポーターとして使用されている。ユーロピウム(Eu III)は最も一般的に使用されているランタノイドであり、粒子径やカルボン酸基、ストレプトアビジン等の官能基の異なるものが市販されている。Eu(III)キレートナノ粒子のラテラルフロー検査ラインへの結合は、低コストのLEDライト(波長330~365nm)で可視化され得る。本発明のNALFアッセイでは、ダブルテール付きプライマーアプローチの場合、片方のテール付きプライマーに相補的なレポータープローブをカルボキシル官能化したEu(III)キレートナノ粒子で共有結合させることができる。ハプテン/テール付きプライマーアプローチでは、ストレプトアビジン結合Eu(III)粒子を用いて標的DNAの存在を可視化する。信号強度の自動測定(定性及び/又は半定量性)の為に、本発明のデバイスには、カメラ付きのインハウスLEDシグナルリーダーが内蔵される。ラテラルフローストリップは、3本のコントロールラインと2本の検査ラインで調製されている。コントロールラインは、1)リーダーコントロールライン、2)フローコントロールライン、3)内在性コントロールライン(β-アクチン)である。検査ラインは、1)CTと2)NGの標的遺伝子を検出する為のものである。リーダーコントロールラインには、既知の量のEu III粒子が含まれており、NALFラインの位置を検出する為のリーダーのコントロールとして使用される。フローコントロールラインは、ストレプトアビジン蛍光共役を捕捉するように設計された抗ビオチン抗体でストライプされている。内部反応コントロールは、現在、β-アクチンアンプリコンを捕捉する為に相補的なニュートラビジン結合ビオチン化オリゴである。NGライン:NGアンプリコンを捕捉する為に相補的なニュートラビジン結合ビオチン化オリゴ。CTライン:CTアンプリコンを捕捉する為に相補的なニュートラビジンビオチン化オリゴ。
【0124】
サポートデータ例
クラミジア・トラコマチス、淋菌、及びヒトβ-アクチン(内部陽性コントロール)の標的遺伝子の配列をジェンバンク(GenBank)から入手した。LAMPプライマーは、Primer Explorerバージョン5オンラインソフトウェア(http://primerexplorer.jp/e/)を用いて設計した。プライマーは、インテグレーテッドDNAテクノロジーズ社(Integrated DNA Technologies)(米国、IA)により合成された。設計したLAMPプライマーは、フォワード内部プライマー(FIP)、バックワード内部プライマー(BIP)、フォワード外部プライマー(F3)、バックワード外部プライマー(B3)、フォワードループプライマー(LF)、バックワードループプライマー(LB)を含む。設計したLAMPプライマーは、オリゴアナライザーツール(Oligo Analyzer tool)(IDT)を用いて、LAMP反応条件を設定し、Tm、ヘアピン、Gカルテット、ΔG、自己二量体の解析を行った。サーモマルチプルプライマーアナライザー(Thermo Multiple Primer Analyzer)を用いて、セルフプライマーとクロスプライマーの二量体を評価した。最後に、リアルタイムLAMP(Real-Time LAMP)でプライマーを評価し、結果が出るまでの時間(Time-To-Result)(TTR) / Δ(陽性TTR-陰性TTR)の観点から最適なプライマーセットを選択し、最終的なアッセイの開発を行った。
【0125】
リアルタイムLAMP反応は、0.2mlマイクロ遠心チューブ内のオープンqPCRサーモサイクラー(カリフォルニア州サンタクララのチャイ・バイオ社(Chai Bio))を用いて、1X等温増幅バッファII(NEB)、6mM硫酸マグネシウム、DNAテンプレート、各dNTP2mM、1.6μM FIP/BIP、0.2μMのF3/B3、0.8μMのLF/LB、1:100に希釈したSyto9色素2μL、及び24UのBst3.0DNAポリメラーゼを含む総量50μLのマスターミックスを用いて実行された。LAMP反応は65℃で20分間インキュベートした。
【0126】
開発したLAMPアッセイをノーベル(Novel)Dxマイクロ流体カートリッジに実装し、増幅産物のオンチップ・ラテラルフロー読み出しを用いて、サンプルツーアンサーアッセイの性能を実証した。更に、バッファ、尿、スワブマトリックスにスパイクしたCT及びNG細胞のオンチップ実験を行い、開発した自動サンプルツーアンサー式のノーベルDxデバイスが30分以内にCT/NGの存在を検出できることを実証した。これは
、磁気ビーズを用いた3分間のサンプル調製ステップ、それに続いて20分間のLAMP増幅ステップ、及び3分間の自動検出とラテラルフロー検査結果の表示ステップで構成されている。
【0127】
リアルタイムLAMPを用いたLAMPアッセイの分析感度評価
図54は、クラミジア・トラコマチス及び淋菌の初期DNAテンプレートの様々な量のリアルタイムLAMP増幅曲線のプロット1200及びプロット1205を夫々示す。クラミジア・トラコマチスのDNA(ATCC(登録商標) VR-901BD(商標))と淋菌のDNA(ATCC FA1090)の希釈系列を用いて、リアルタイムLAMPアッセイの分析感度を評価した。DNAから10倍段階希釈が生成され、各希釈液から5μLをLAMP反応に使用した。図1の増幅曲線に示すように、本発明のLAMPアッセイは、クラミジア・トラコマチスについては5DNAコピー/検査、淋菌については25DNAコピー/検査を検出することができる。
【0128】
分析特異性の評価
本発明の開発LAMPアッセイの特異性を評価する為に、CT/NG株と、泌尿器系サンプルによく見られる非CT/NG株を含む32種類の微生物のゲノムDNAパネルを使用した。検査した生物と結果を表1にリストするが、表1は、我々のLAMP-NALFアッセイは、100%の感度と100%の特異性を有し、全てのCT血清株及びNG株を検出することができ、他の一般的な泌尿器系微生物については交差反応が見られないということを実証している(図55に示す表17)。表17は、CT及びNGの被検生物及び検査ラインの結果を示すノーベル(Novel)Dx CT/NG LAMPアッセイの分析特異性を示す。
【0129】
凍結乾燥LAMP試薬の評価
Bstポリメラーゼ及びdNTPsは、温度感受性が最も高いLAMP試薬である。低・中所得国で使用可能なポイントオブケアの分子検査を開発する為のものである。更に、LAMP試薬を凍結乾燥させることで、更なる利点が得られる。我々のLAMP試薬はBIOLYPH LLC(ミネソタ州チャスカ)によって凍結乾燥され、ジッパー付きのアルミホイルバッグの中で22℃及び37℃で保存され、リアルタイム及び加速保存期間での安定性を調査した。凍結乾燥した試薬を増幅バッファとプライマーで再構成し、500コピーのゲノムDNAの存在下で、12週間(加速)及び20週間(リアルタイム)、Real-Time LAMPで評価した。LAMPの結果(図56のプロット1400を参照)は、凍結乾燥されたLAMP試薬が、両方の保存条件で我々の研究期間中に安定しており、反応性を失うことなく新鮮なマスターミックスと同等であることを示している。
【0130】
核酸ラテラルフローアッセイの開発
マルチプレックスLAMP産物のNALF検出の為の我々の予備検査では、異なる抗ハプテン抗体の結合親和性のばらつきに関連する可能性のある検査ライン強度の不一致を示していた。代替案として、ビオチン化オリゴヌクレオチドDNAプローブを検査ラインとして用いるDNAベースのNALFアッセイを開発した。当初、検査ラインのシグナルレポーターとして金ナノ粒子を使用していたが、その後、低コストのUVLEDライト(365nm)で可視化できる蛍光ベースのレポーター粒子に切り替え、有望な結果を示した。開発したラテラルフローアッセイは、先ず合成短鎖DNAで検査して最適化し、最後にLAMP産物で検査した(図57参照)。図58は、ラテラルフローストリップの結果の解釈チャートを示す。現在のLFストリップは、CT/NG用の2つの検査ラインと、ヒトDNA用の内在性コントロールを含む3つのコントロールライン、ラテラルフローストリップのフローコントロールライン、及びリーダーコントロールラインの5つのラインを含む。ヒトDNAアクチンコントロールラインがない場合は、無効な検査結果となる。
【0131】
次に、図59に示す表18を参照すると、JHU Center for POC Tests for STDから提供された身元不明の凍結/保存された臨床サンプルを用いたノーベル(Novel)Dx CT/NG検査の臨床性能が示されている。CT陽性検体については、比較対象のゴールドスタンダードであるCT/NG用Aptima Combo2アッセイを用いて、尿と膣スワブの両方で100%の感度と100%の特異度を示している(左)。NG陽性臨床サンプルがNGの検出に関して我々のCT/NGアッセイの感度と特異性を実証することを待機中である。
【0132】
長年の特許法の慣例に従い、特許請求の範囲を含む本出願では、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」という用語は、「1つ以上」を意味する。従って、例えば、「対象(a subject)」への言及は、文脈上明らかに反対でない限り(例えば、複数の対象)、複数の対象を含む、等となる。
【0133】
本明細書及び特許請求の範囲を通して、用語「含む(include、includes、including)」は、文脈上そうでないことが要求される場合を除き、非排他的な意味で使用される。同様に、「含む(include)」という用語及びその文法上の変形は非限定的であることを意図しており、よって、リスト内のアイテムの列挙は、リストされたアイテムに代用又は追加できる他の同様のアイテムを除外するものではない。
【0134】
本明細書及び添付の特許請求の範囲の目的の為、別段の指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される量、サイズ、寸法、比率、形状、配合、パラメータ、パーセンテージ、量、特性、及びその他の数値を表す全ての数字は、「約(about)」という用語が値、量、又は範囲とともに明示的に現れていなくても、全ての場合において「約」という用語によって修正されていると理解されるものである。従って、反対の指示がない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載されている数値パラメータは、厳密ではなく、また厳密である必要もないが、本開示の主題によって得ることを目指した所望の特性に応じて、公差、変換係数、丸め、測定誤差等、当業者に知られている他の要因を反映して、近似値及び/又は所望の大きさ又は小ささであってもよい。例えば、値に言及する際の用語「約」は、開示された方法を実行する、又は開示されたコンポーネントを使用するのに適切なように、指定された量から、一部の実施形態では±100%、一部の実施形態では±50%、一部の実施形態では±20%、一部の実施形態では±10%、一部の実施形態では±5%、一部の実施形態では±1%、一部の実施形態では±0.5%、一部の実施形態では±0.1%の変動を包含することを意味し得る。
【0135】
更に、1つ以上の数値又は数値範囲に関連して使用される「約(about)」という用語は、範囲内の全ての数値を含み、設定された数値の上及び下に境界を拡張することによってその範囲を修正する、全てのそのような数値を指すと理解すべきである。端点による数値範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数値、例えば、その分数を含む整数(例えば、1~5の記載は、1、2、3、4、及び5、並びにその分数、例えば、1.5、2.25、3.75、4.1等を含む)、及びその範囲内の任意の範囲を含む。
【0136】
前述の主題を、理解を明確にする為に、例示と実施例を用いて或る程度詳細に説明してきたが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲内で特定の変更や修正を実施できることが理解されるであろう。
〔付記1〕
XZ平面内に位置するオイル/非混和性試薬相を収容する一次チャネルを含むマイクロ流体カートリッジであって、前記一次チャネルが前記マイクロ流体カートリッジ内のウェルを流体回路で接続し、磁気ビーズがウェル間で移送され再懸濁され得るように前記一次チャネルが構成されている、マイクロ流体カートリッジ。
〔付記2〕
オイル/非混和性試薬容器を更に備え、前記オイル/非混和性試薬容器が前記一次チャネルと同一面内にある、付記1に記載のマイクロ流体カートリッジ。
〔付記3〕
前記オイル/非混和性試薬容器のZ軸方向の高さが、前記マイクロ流体カートリッジ内へのオイルの流れを駆動するのに必要な圧力ヘッドを生成する為に用いられるように構成されている、付記2に記載のマイクロ流体カートリッジ。
〔付記4〕
前記オイル/非混和性試薬容器は、前記オイル/非混和性試薬容器の内容物を前記マイクロ流体カートリッジのウェル内に駆動する為の圧力ヘッドを発生させることができるように、前記ウェルに対してより高い位置に配置されている、付記3に記載のマイクロ流体カートリッジ。
〔付記5〕
前記圧力ヘッドの高さを増加させても、前記カートリッジのY軸方向の寸法が増加しないように構成されている、付記2乃至4の何れか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
〔付記6〕
前記オイル/非混和性試薬相は気泡がないように構成されている、付記2乃至5の何れか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
〔付記7〕
前記XZ平面内に1つ以上のアクチュエータプレートを更に備えた、付記1乃至6の何れか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
〔付記8〕
前記1つ以上のアクチュエータプレートが、空間的に配向され、ウェルの底部の試薬に磁気粒子を再懸濁させ、前記ウェルの上部のオイル/非混和性試薬を介して、又、一次チャネルを介して前記磁気粒子を移送できるように構成された磁石を含む、付記7に記載のマイクロ流体カートリッジ。
〔付記9〕
図1乃至図7の何れか1つ及び添付のテキストに実質的に示され記載されているようなマイクロ流体カートリッジ。
〔付記10〕
サンプルツーアンサー核酸増幅検査(NAAT)を実施するように構成された、付記1乃至9の何れか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
〔付記11〕
オンチップ磁気ビーズベースのサンプル処理が、単回回転中に磁気ビーズの捕捉、再懸濁、及び移送が行われる単回回転動作を用いて行われるように構成されている、付記10に記載のマイクロ流体カートリッジ。
〔付記12〕
一次チャネルは、磁気粒子を所望の位置に拘束し、磁場に向かって移動するのを防ぐ物理的障壁として機能するように構成されたバッフルを備えている、付記11に記載のマイクロ流体カートリッジ。
〔付記13〕
前記バッフルは、移送用磁石が磁気ビーズ粒子を1つのウェルから次のウェルに移動させる時に、前記磁気ビーズ粒子を捕捉するように構成されている、付記12に記載のマイクロ流体カートリッジ。
〔付記14〕
更に、試薬捕捉/再懸濁磁石は、前記ビーズを前記ウェル内に引き込んで、前記ビーズを前記ウェル内の試薬に懸濁させるようにする、付記13に記載のマイクロ流体カートリッジ。
〔付記15〕
付記1乃至14の何れか一項に記載のマイクロ流体カートリッジを受容するように構成された携帯装置。
〔付記16〕
前記装置を開閉するように構成されると共に、前記装置が閉じている時に前記マイクロ流体カートリッジ上の試薬パウチを粉砕するようにクラッシュプレートを前後に移動させるように構成されたレバーアームを更に備えた、付記15に記載の携帯装置。
〔付記17〕
前記ドアが閉じられた時に、前記マイクロ流体カートリッジ上の試薬パウチと接触してそれらを粉砕するように、内側に突起物を含むヒンジ式機構を更に含む、付記15に記載の携帯型装置。
〔付記18〕
前記マイクロ流体カートリッジが前記装置に挿入され、前記装置が閉じられた後で、前記空間的に配向された磁石及び/又は機械的要素を備えた1つ以上のアクチュエータプレートが回転して、一連のサンプル処理ステップを正確な順序で完了するように構成されている、付記16又は17に記載の携帯型装置。
〔付記19〕
前記マイクロ流体カートリッジ内の液体を、分注/移送された液体のデッドボリューム/損失をゼロにして分注/移送するように構成されたウィックバルブを更に備えた、付記1から14の何れか一項に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【符号の説明】
【0137】
100 マイクロ流体システム
110、300 マイクロ流体装置
120 コントローラ
130 受容部
140 垂直マイクロ流体デバイス
190 ネットワークコンピュータ
192 ネットワーク
200 アクチュエータアセンブリ
210 DCモータ
212 シャフト
214 アクチュエータ
216 マイクロ流体デバイス
218 アクチュエーション機構
305 マイクロ流体装置
310 ハウジング
312 デジタルディスプレイ
314 装填ステーション
316 ロッキングヒンジ
318 ロッキングハンドル
320 ハンドルシャフト及びヨークアセンブリ
324 ベースプレート
325 ベースプレート受容スロット
338 ブリスタークラッシュハンドル
342 ハンドルラッチフック
370 摺動プレート
400 垂直配向マイクロ流体カートリッジ
450 シリンジ
800 ウィックバルブ
810 フロースルーブリスター
812 フロースルーチャネル
814 ラプチャービーズ
816 ウィック
818 フランジブルシール
900 マイクロ流体カートリッジ
910 増幅試薬産物
912 増幅チャンバ
914 ラテラルフローストリップ
916 ミネラルオイル
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図11
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図15
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図48A
図48B
図49A
図49B
図50A
図50B
図51A
図51B
図52
図53
図54
図55
図56
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図58
図59