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特許7475336トリプルネガティブ乳癌のための診断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】トリプルネガティブ乳癌のための診断方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/574 20060101AFI20240419BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240419BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240419BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
G01N33/574 A
A61K39/395 D ZNA
A61K39/395 N
A61K31/337
A61P35/00
A61P35/04
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021513826
(86)(22)【出願日】2019-09-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 US2019051984
(87)【国際公開番号】W WO2020061349
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-09-20
(31)【優先権主張番号】62/848,163
(32)【優先日】2019-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/837,507
(32)【優先日】2019-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/734,677
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】モリネロ, ルシアナ ロレーナ
(72)【発明者】
【氏名】チュイ, スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】フンケ, ロエル
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-530691(JP,A)
【文献】特表2018-522851(JP,A)
【文献】Phase III IMpassion 130 study showed Roche's Tecentriq plus Abraxane significantly reduced the risk of deisease worsening or death in people with metastatic triple negative breast cancer,Media Release(Roche),2018年07月02日,1-3
【文献】Long-term Clinical Outcomes and Biomarker Analyses of Atezolizumab Therapy for Patients With Metastatic Triple-Negative Breast Cancer,JAMAOncology,2018年09月13日,2019;5(1),74-82
【文献】Abstract CT028: Atezolizumab (atezo) + nab-paclitaxel (nab-pac) in metastatic triple-negative breast cancer (mTNBC): 2-year update from a ph Ib trial,Cancer Res,(2018) 78 (13_Supplement): CT028,2018年07月01日,1-3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 -33/98
A61K 31/337-39/395
A61P 35/00 -35/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)アテゾリズマブと、(ii)nab-パクリタキセルと、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、局所進行性または転移性TNBCに罹患している患者を特定するための方法であって、前記方法は、前記患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することを含み、前記患者は、これまでに前記TNBCの治療を受けたことがなく、前記腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルにより、前記患者が前記抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される、前記方法。
【請求項2】
局所進行性または転移性TNBCに罹患している患者のための抗がん療法を選択するための方法であって、
前記方法は、
(a)これまでに前記TNBCの治療を受けたことがない前記患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することと、
(b)前記腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、(i)アテゾリズマブと、(ii)nab-パクリタキセルとを含む前記患者のための抗がん療法を選択することと、を含む、前記方法。
【請求項3】
前記患者から得られた腫瘍サンプルが、(i)前記腫瘍サンプルの約5%以上または(ii)前記腫瘍サンプルの約10%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞において検出可能なPD-L1の発現レベルを有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記患者が、手術不能の局所進行性または転移性TNBCに対する化学療法または全身標的療法を以前に受けていない、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記局所進行性TNBCが、切除不能である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記腫瘍サンプルが、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍サンプル、保管用腫瘍サンプル、新鮮腫瘍サンプル、または凍結腫瘍サンプルである、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記PD-L1の発現レベルが、タンパク質発現レベルである、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記PD-L1のタンパク質発現レベルが、免疫組織化学(IHC)、免疫蛍光法、フローサイトメトリー、またはウェスタンブロットを使用して決定される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記PD-L1のタンパク質発現レベルが、IHCを使用して決定される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記PD-L1のタンパク質発現レベルが、抗PD-L1抗体を使用して検出される、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記抗PD-L1抗体が、SP142である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記患者が前記抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかが、無増悪生存期間の観点から決定される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記患者が前記抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかが、全生存期間の観点から決定される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
アテゾリズマブを含む、局所進行性または転移性TNBCと診断された患者の治療に使用するための医薬組成物であって、前記治療は、nab-パクリタキセルと組み合わせた前記アテゾリズマブの投与を含み、前記患者は、これまでに前記TNBCの治療を受けたことがなく、前記患者から得られた腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、前記アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている、前記医薬組成物。
【請求項15】
(a)前記患者から得られた腫瘍サンプルは、(i)腫瘍サンプルの約5%以上、または(ii)腫瘍サンプルの約10%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルを有する;
(b)前記患者が、手術不能の局所進行性または転移性TNBCに対する化学療法または全身標的療法を以前に受けていない;
(c)前記局所進行性TNBCが、切除不能である;
(d)前記腫瘍サンプルは、FFPE腫瘍サンプル、保管用腫瘍サンプル、新鮮腫瘍サンプル、または凍結腫瘍サンプルである;
(e)前記PD-L1の発現レベルは、タンパク質発現レベルであり、PD-L1のタンパク質発現レベルは、IHC、免疫蛍光法、フローサイトメトリー、またはウェスタンブロットを用いて決定されてもよく、PD-L1のタンパク質発現レベルは、IHCを用いて決定されてもよく、さらに、PD-L1のタンパク質発現レベルは、抗PD-L1抗体を用いて検出されてもよく、さらに、抗PD-L1抗体はSP142であってもよい;
(f)前記患者が前記抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかが、無増悪生存期間の観点から決定される;および/または
(g)前記患者が前記抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかが、全生存期間の観点から決定される、
請求項14に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願は、電子的に提出されたASCII形式の配列表を含み、その全体は、参照により本明細書に援用される。当該ASCIIの複製は、2019年9月19日に作成され、名称は、51177-023WO4_Sequence_Listing_9.19.19_ST25であり、サイズは、23,454バイトである。
【0002】
本発明は、乳癌(例えば、局所進行性または転移性トリプルネガティブ乳癌(TNBC))を、例えば、本発明のバイオマーカーの存在及び/または発現に基づいて応答する可能性が高いと特定された患者に、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブ)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)を投与することによって、診断及び治療する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
がんは、依然として、人間の健康に対し、最も致命的な脅威の1つである。がん、または悪性腫瘍は、転移し、無秩序に急速に成長するため、適時に検出し、治療を行うことが極めて難しい。米国において、がんは、毎年130万人に近い新規患者を出しており、死亡のおよそ4件に1件を占め、心臓疾患に次ぐ2番目の死因となっている。そのような死の大半は、固形腫瘍が占めている。女性のなかで最も多いがんは、乳癌である。乳癌のおよそ10~15%は、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、及びHER2受容体の発現が3つとも陰性であり、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)とも呼ばれる。TNBCは、通常、エストロゲン受容体陽性乳癌及びHER2陽性乳癌よりも侵襲性が高く、治療が困難な場合がある。
【0004】
プログラム死リガンド1(PD-L1)は、がん、慢性感染症、妊娠中、組織同種移植、及び自己免疫疾患における免疫系応答の抑制に関係があるとされているタンパク質である。PD-L1は、T細胞、B細胞、及び単球の表面上に発現される、プログラム死1(PD-1)とも呼ばれる抑制性受容体に結合することによって、免疫応答を制御する。PD-L1は、別の受容体であるB7-1との相互作用によっても、T細胞の機能を負に制御する。PD-L1/PD-1及びPD-L1/B7-1の複合体が形成されると、T細胞受容体のシグナル伝達が負に制御され、その結果、T細胞活性化の下方制御及び抗腫瘍免疫活性の抑制が生じる。
【0005】
がん(例えば、乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC))の治療において、大きな進歩があるにも関わらず、治療法及び診断方法の改善がいまだ求められている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、とりわけ、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)を含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、局所進行性または転移性TNBCに罹患している患者を特定するための方法;局所進行性または転移性TNBCに罹患している患者のための治療法を選択する方法;局所進行性または転移性TNBCに罹患している患者を治療する方法;ならびに局所進行性または転移性TNBCに罹患している患者の治療に使用するための医薬組成物に関する。
【0007】
一態様において、本発明は、(i)抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニストと、(ii)タキサンと、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、局所進行性または転移性TNBCに罹患している患者を特定するための方法を特徴とし、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中のPD-L1の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでにTNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプル中の検出可能なPD-L1の発現レベルにより、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される。
【0008】
別の態様において、本発明は、(i)抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニストと、(ii)タキサンと、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、局所進行性または転移性TNBCに罹患している患者を特定するための方法を特徴とし、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでにTNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルにより、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される。
【0009】
別の態様において、本発明は、局所進行性または転移性TNBCに罹患している患者のための抗がん療法を選択するための方法を特徴とし、当該方法は、(a)これまでにTNBCの治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中のPD-L1の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプル中の検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、(i)抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニストと、(ii)タキサンと、を含む、患者のための抗がん療法を選択することと、を含む。
【0010】
別の態様において、本発明は、局所進行性または転移性TNBCに罹患している患者のための抗がん療法を選択するための方法を特徴とし、当該方法は、(a)これまでにTNBCの治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、(i)抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニストと、(ii)タキサンと、を含む、患者のための抗がん療法を選択することと、を含む。
【0011】
別の態様において、本発明は、局所進行性または転移性TNBCに罹患している患者を治療する方法を特徴とし、当該方法は、(i)抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニストと、(ii)タキサンと、を含む、抗がん療法の有効量を患者に投与することを含み、患者は、これまでにTNBCの治療を受けたことがなく、患者は、患者から得られた腫瘍サンプル中の検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。
【0012】
別の態様において、本発明は、局所進行性または転移性TNBCに罹患している患者を治療する方法を特徴とし、当該方法は、(i)抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニストと、(ii)タキサンと、を含む、抗がん療法の有効量を患者に投与することを含み、患者は、これまでにTNBCの治療を受けたことがなく、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。いくつかの実施形態において、ヒトPD-1軸結合アンタゴニストは、アテゾリズマブである。
【0013】
別の態様において、本発明は、局所進行性または転移性TNBCに罹患している患者を治療するための方法を特徴とし、当該方法は、(a)これまでにTNBCの治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中のPD-L1の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプル中の検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、(i)抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニストと、(ii)タキサンと、を含む、抗がん療法の有効量を患者に投与することと、を含む。
【0014】
別の態様において、本発明は、局所進行性または転移性TNBCに罹患している患者を治療するための方法を特徴とし、当該方法は、(a)これまでにTNBCの治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、(i)抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニストと、(ii)タキサンと、を含む、抗がん療法の有効量を患者に投与することと、を含む。
【0015】
別の態様において、本発明は、局所進行性または転移性TNBCと診断された患者の治療に使用するための、抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニストを含む医薬組成物を特徴とし、治療は、タキサンと組み合わせたヒトPD-1軸結合アンタゴニストの投与を含み、患者は、患者から得られた腫瘍サンプル中の検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、ヒトPD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンを含む抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。
【0016】
別の態様において、本発明は、局所進行性または転移性TNBCと診断された患者の治療に使用するための、抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニストを含む医薬組成物を特徴とし、治療は、タキサンと組み合わせたヒトPD-1軸結合アンタゴニストの投与を含み、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、ヒトPD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンを含む抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。いくつかの実施形態において、ヒトPD-1軸結合アンタゴニストは、アテゾリズマブである。
【0017】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、(i)腫瘍サンプルの約5%以上または(ii)または腫瘍サンプルの約10%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞において検出可能なPD-L1の発現レベルを有する。
【0018】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、患者は、手術不能の局所進行性または転移性TNBCに対する化学療法または全身標的療法の治療歴がない。
【0019】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、局所進行性TNBCは、切除不能である。
【0020】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、腫瘍サンプルは、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍サンプル、保管用腫瘍サンプル、新鮮腫瘍サンプル、または凍結腫瘍サンプルである。
【0021】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、PD-L1の発現レベルは、タンパク質発現レベルである。いくつかの実施形態において、PD-L1のタンパク質発現レベルは、免疫組織化学(IHC)、免疫蛍光法、フローサイトメトリー、またはウェスタンブロットを使用して決定される。いくつかの実施形態において、PD-L1のタンパク質発現レベルは、IHCを使用して決定される。いくつかの実施形態において、PD-L1のタンパク質発現レベルは、抗PD-L1抗体を使用して決定される。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、SP142である。
【0022】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は、抗がん療法の有効量を患者に投与することを更に含む。
【0023】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、ヒトPD-1軸結合アンタゴニストは、アテゾリズマブである。
【0024】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、タキサンは、nab-パクリタキセルである。
【0025】
前述の態様のいずれかの他の実施形態において、タキサンは、パクリタキセルである。
【0026】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかは、無増悪生存期間の観点から決定される。
【0027】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかは、全生存期間の観点から決定される。
【0028】
本明細書に記載される種々の実施形態の1つ、複数、または全ては、本発明の他の実施形態を形成するために組み合わせられ得ることを理解されたい。本発明のこれらの態様及び他の態様は、当業者に明らかとなるであろう。本発明のこれらの実施形態及び他の実施形態は、以下の詳細な説明によって更に詳述される。
【発明を実施するための形態】
【0029】
I.序文
本発明は、これまでにがんの治療を受けていない患者のがんを含む、がん、例えば、乳癌(例えば、局所進行性または転移性トリプルネガティブ乳癌(TNBC))のための診断及び治療方法ならびに組成物を提供する。本発明は、少なくとも部分的には、がんに罹患している患者の診断において、がんを有する患者がPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)を含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかを決定することについて、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)を含む抗がん療法の治療有効性を最適化することについて、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)を含む抗がん療法のための患者選択について、及び/またはPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)を含む抗がん療法によるがんに罹患している患者の治療について、患者から得られたサンプル(例えば、腫瘍サンプル)中の本発明のバイオマーカー、例えば、PD-L1、CD8、及び/または間質腫瘍浸潤リンパ球(sTIL)の存在及び/または発現レベル(複数可)の決定が有用であるという発見に基づく。例えば、いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性である。いくつかの実施形態において、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかは、無増悪生存期間の観点から決定される。他の実施形態において、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかは、全生存期間の観点から決定される。
【0030】
II.定義
本発明を詳述する前に、本発明は、特定の組成物または生物系に限定されず、当然のことながら、変わり得ることを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記載する目的でのみ使用され、限定を意図するものではないことを理解されたい。
【0031】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈により別途明示される場合を除き、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「分子(a molecule)」への言及は、任意選択により、2つ以上のかかる分子の組み合わせなどを含む。
【0032】
本明細書で使用される「約」という用語は、本技術分野の当業者であれば容易に理解する、それぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書における「約」を付した値またはパラメーターへの言及は、その値またはパラメーター自体を対象とする実施形態を含む(及び記載する)。
【0033】
本明細書に記載される本発明の態様及び実施形態は、態様及び実施形態を「含む」こと、態様及び実施形態「からなる」こと、ならびに態様及び実施形態「から本質的になる」ことを含むことを理解されたい。
【0034】
「プログラム死リガンド1」及び「PD-L1」という用語は、本明細書において、天然配列のPD-L1ポリペプチド、ポリペプチドバリアント、ならびに天然配列のポリペプチド及びポリペプチドバリアントのフラグメントを指す(本明細書で更に定義される)。本明細書に記載されるPD-L1ポリペプチドは、様々な供給源、例えば、ヒト組織種または別の供給源から単離されたものであってもよいし、組み換え法または合成法によって調製されたものであってもよい。
【0035】
「天然配列のPD-L1ポリペプチド」は、自然界に由来する対応するPD-L1ポリペプチドと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0036】
「PD-L1ポリペプチドバリアント」、またはその変化形は、本明細書で開示される天然配列のPD-L1ポリペプチド配列のいずれかと少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有する、本明細書で定義されるPD-L1ポリペプチド、一般に活性PD-L1ポリペプチドを意味する。そのようなPD-L1ポリペプチドバリアントには、例えば、天然アミノ酸配列のN末端またはC末端に1つ以上のアミノ酸残基の付加または欠失があるPD-L1ポリペプチドが含まれる。通常、PD-L1ポリペプチドバリアントは、本明細書で開示される天然配列のPD-L1ポリペプチド配列に対して、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸配列同一性を有する。通常、PD-L1バリアントポリペプチドは、少なくとも約10アミノ酸長、あるいは少なくとも約20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、281、282、283、284、285、286、287、288、もしくは289アミノ酸長、またはそれ以上のアミノ酸長である。通常、PD-L1バリアントポリペプチドは、天然のPD-L1ポリペプチド配列と比較して、1を超えない保存的アミノ酸置換を有し、あるいは、天然のPD-L1ポリペプチド配列と比較して、2、3、4、5、6、7、8、9、または10を超えない保存的アミノ酸置換を有する。
【0037】
「CD8」または「分化抗原群8」という用語は、T細胞受容体(TCR)の共受容体として作用する膜貫通糖タンパク質を指し、特に指定のない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源に由来する任意の天然CD8を指す。この用語は、プロセシングを受けていない「全長」CD8及び細胞内のプロセシングから生じるCD8の任意の形態を包含する。CD8にはCD8A及びCD8Bの2つのアイソフォームがあり、異なる遺伝子にそれぞれコードされている。本明細書で使用されるとき、CD8は、CD8A及びCD8Bを包含する。いくつかの実施形態において、CD8は、ヒトCD8である。
【0038】
本明細書で使用される「CD8A」という用語は、特に指定のない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源に由来する任意の天然CD8Aを指す。CD8Aは、CD8アルファとしても知られている。この用語は、プロセシングを受けていない「全長」CD8A及び細胞内のプロセシングから生じるCD8Aの任意の形態を包含する。この用語はまた、CD8Aの天然バリアント、例えば、スプライスバリアントまたはアレルバリアントも包含する。例示的なヒトCD8Aのアミノ酸配列は、UniProtKBアクセッション番号P01732に見出すことができる。
【0039】
本明細書で使用される「CD8B」という用語は、特に指定のない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源に由来する任意の天然CD8Bを指す。CD8Bは、CD8ベータとしても知られている。この用語は、プロセシングを受けていない「全長」CD8B及び細胞内のプロセシングから生じるCD8Bの任意の形態を包含する。この用語はまた、CD8Bの天然バリアント、例えば、スプライスバリアントまたはアレルバリアントも包含する。例示的なヒトCD8Bのアミノ酸配列は、UniProtKBアクセッション番号P10966に見出すことができる。
【0040】
本明細書で区別なく使用される「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドの重合体を指し、DNA及びRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドもしくは塩基、及び/またはそれらの類似体、あるいはDNAもしくはRNAポリメラーゼにより、または合成反応により重合体中に組み込まれ得る任意の基質であり得る。したがって、例えば、本明細書で定義されるポリヌクレオチドには、限定するものではないが、一本鎖及び二本鎖DNA、一本鎖及び二本鎖領域を含むDNA、一本鎖及び二本鎖RNA、ならびに一本鎖及び二本鎖領域を含むRNA、一本鎖もしくはより典型的には二本鎖であり得るか、または一本鎖及び二本鎖領域を含み得るDNA及びRNAを含むハイブリッド分子が含まれる。加えて、本明細書で使用される「ポリヌクレオチド」という用語は、RNAもしくはDNAまたはRNAとDNAの両方を含む、三本鎖領域を指す。そのような領域内の鎖は、同じ分子に由来してもよいし、異なる分子に由来してもよい。これらの領域は、これらの分子のうちの1つ以上の全てを含み得るが、より典型的には、これらの分子のうちのいくつかの領域のみを含む。三重螺旋領域の分子のうちの1つは、多くの場合、オリゴヌクレオチドである。「ポリヌクレオチド」という用語は、具体的には、cDNAを含む。
【0041】
「オリゴヌクレオチド」は、本明細書で使用されるとき、一般に、短い一本鎖のポリヌクレオチドを指し、必ずしもそうであるとは限らないが、約250ヌクレオチド長未満である。オリゴヌクレオチドは、合成であってもよい。「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、相互排他的ではない。ポリヌクレオチドに関する上記の説明は、等しくかつ完全にオリゴヌクレオチドに適用可能である。
【0042】
「プライマー」という用語は、核酸にハイブリダイズし、相補的核酸の重合を、一般に、遊離3’-OH基を提供することによって可能にすることができる、一本鎖ポリヌクレオチドを指す。
【0043】
「検出」という用語は、直接的及び間接的検出を含む、任意の検出手段を含む。
【0044】
本明細書で使用される「バイオマーカー」という用語は、サンプルで検出され得る指標、例えば、予測、診断、及び/または予後の指標、例えば、PD-L1、CD8、及び/またはsTILを指す。バイオマーカーは、ある特定の分子学的、病理学的、組織学的、及び/または臨床的特徴を特徴とする疾患または障害(例えば、がん)の特定のサブタイプの指標として機能し得る。いくつかの実施形態において、バイオマーカーは、遺伝子である。バイオマーカーには、ポリヌクレオチド(例えば、DNA及び/またはRNA)、ポリヌクレオチドのコピー数変化(例えば、DNAのコピー数)、ポリペプチド、ポリペプチド及びポリヌクレオチドの修飾(例えば、翻訳後修飾)、炭水化物、及び/または糖脂質系分子マーカーが含まれるが、これらに限定されない。
【0045】
個体に対する臨床上の利益の増加に関連するバイオマーカーの「量」または「レベル」は、生体サンプルにおいて検出可能であるレベルである。これらは、当業者に知られている方法及びによって測定することができ、本明細書にも開示されている。評価がなされたバイオマーカーの発現レベルまたは量は、治療に対する応答を決定するために使用することができる。
【0046】
「発現のレベル」または「発現レベル」という用語は、一般的に区別なく使用され、一般に生体サンプル中のバイオマーカーの量を指す。「発現」は、一般に、情報(例えば、遺伝子コード情報及び/またはエピジェネティック情報)が、細胞内で存在して作用する構造に変換されるプロセスを指す。したがって、本明細書で使用されるとき、「発現」は、ポリヌクレオチドへの転写、ポリペプチドへの翻訳、または更にポリヌクレオチド及び/またはポリペプチドの修飾(例えば、ポリペプチドの翻訳後修飾)を指し得る。転写されたポリヌクレオチド、翻訳されたポリペプチド、またはポリヌクレオチド及び/またはポリペプチドの修飾(例えば、ポリペプチドの翻訳後修飾)のフラグメントもまた、それらが、選択的スプライシングによって生成された転写物もしくは分解された転写物、またはポリペプチドの翻訳後プロセシング(例えば、タンパク質分解によるもの)から生じたかどうかに関わらず、発現されたものとみなされる。「発現遺伝子」には、mRNAとしてポリヌクレオチドに転写され、次いで、ポリペプチドに翻訳されるもの、及びRNAに転写されるが、ポリペプチドには翻訳されないもの(例えば、トランスファーRNA及びリボソームRNA)も含まれる。
【0047】
「発現の増加」、「発現レベルの増加」、「レベルの増加」、「発現の上昇」、「発現レベルの上昇」、または「レベルの上昇」は、疾患または障害(例えば、がん)に罹患していない個体もしくは複数の個体などの対照または内部対照(例えば、ハウスキーピングバイオマーカー)と比較した、個体におけるバイオマーカーの発現の増加またはレベルの増加を指す。
【0048】
「発現の減少」、「発現レベルの減少」、「レベルの減少」、「発現の低下」、「発現レベルの低下」、または「レベルの低下」は、疾患または障害(例えば、がん)に罹患していない個体もしくは複数の個体などの対照または内部対照(例えば、ハウスキーピングバイオマーカー)と比較した、個体におけるバイオマーカーの発現の減少またはレベルの減少を指す。いくつかの実施形態において、発現の低下は、ほとんど発現していないか、まったく発現していない。
【0049】
「ハウスキーピングバイオマーカー」という用語は、全ての細胞種に典型的に同様に存在するバイオマーカーまたはバイオマーカー群(例えば、ポリヌクレオチド及び/またはポリペプチド)を指す。いくつかの実施形態において、ハウスキーピングバイオマーカーは、「ハウスキーピング遺伝子」である。「ハウスキーピング遺伝子」は、本明細書において、細胞機能の維持に不可欠な働きを持つタンパク質をコードし、全ての細胞種に典型的に同様に存在する、遺伝子または遺伝子群を指す。
【0050】
本明細書で使用される「PD-L1陽性」という用語は、検出可能なレベルのPD-L1を発現しているサンプル(例えば、腫瘍サンプル)、またはPD-L1陽性サンプルが得られた対象を指す。PD-L1は、任意の好適なアプローチ、例えば、免疫組織化学(IHC)を使用して、直接的または間接的に検出され得る。
【0051】
「増幅」は、本明細書で使用されるとき、一般に、所望の配列の複数のコピーを生成するプロセスを指す。「複数のコピー」は、少なくとも2コピーを意味する。「コピー」は、必ずしも、完全な配列相補性または鋳型配列との同一性を意味するものではない。例えば、コピーは、デオキシイノシンなどのヌクレオチド類似体、意図的な配列改変(鋳型にハイブリダイズするが相補的ではない配列を含むプライマーを介して導入される配列改変など)、及び/または増幅中に生じる配列エラーを含み得る。
【0052】
「多重PCR」という用語は、1回の反応で2つ以上のDNA配列を増幅する目的で、1を超えるプライマーセットを使用して単一の供給源(例えば、個体)から得られた核酸上で実施される単一のPCR反応を指す。
【0053】
本明細書で使用される「ポリメラーゼ連鎖反応」または「PCR」の技術は、一般に、例えば、米国特許第4,683,195号に記載されるように、核酸、RNA及び/またはDNAの微量の特定の小片を増幅させる手順を指す。一般に、目的の領域の末端またはそれ以降の配列情報を、オリゴヌクレオチドプライマーが設計できるように、入手する必要があり、これらのプライマーは、増幅される鋳型の逆鎖の配列と同一または同様である。これらの2つのプライマーの5’末端ヌクレオチドは、増幅される材料の末端と一致し得る。PCRを使用して、特定のRNA配列、全ゲノムDNA由来の特定のDNA配列、及び全細胞RNAから転写されたcDNA、バクテリオファージ、またはプラスミド配列などを増幅することができる。一般に、Mullis et al.,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.51:263(1987)及びErlich,ed.,PCR Technology,(Stockton Press,NY,1989)を参照されたい。本明細書で使用されるとき、PCRは、唯一の例ではないが、既知の核酸(DNAまたはRNA)をプライマーとして使用することを含む核酸試験サンプルを増幅する核酸ポリメラーゼ反応法の一例とみなされ、核酸ポリメラーゼを利用して、核酸の特定の小片を増幅もしくは生成するか、または特定の核酸に相補的な核酸の特定の小片を増幅もしくは生成する。
【0054】
「定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応」または「qRT-PCR」とは、PCR産物の量がPCR反応の各ステップで測定される、PCRの形態を指す。この技術は、例えば、Cronin et al.,Am.J.Pathol.164(1):35-42(2004)及びMa et al.,Cancer Cell 5:607-616(2004)を含む様々な公開物で記載されている。
【0055】
「マイクロアレイ」という用語は、ハイブリダイズ可能なアレイ要素、好ましくは、ポリヌクレオチドプローブが基板上に規則的に配列されたものを指す。
【0056】
「診断」という用語は、本明細書中、分子または病態、疾患もしくは状態(例えば、がん(例えば、乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)))の識別または分類を指すために使用される。例えば、「診断」とは、がんの特定のタイプを識別することを指し得る。「診断」はまた、例えば、組織病理学的基準、または分子的特徴による、がんの特定のサブタイプ(例えば、バイオマーカー(例えば、特定の遺伝子または当該遺伝子によってコードされるタンパク質)のうちの1つまたはその組み合わせの発現を特徴とするサブタイプ)の分類も指し得る。
【0057】
「サンプル」という用語は、本明細書で使用されるとき、目的の対象及び/または個体から得られるか、またはそれらに由来する組成物であって、例えば、物理学的、生化学的、化学的、及び/または生理学的特徴に基づいて、特徴付け及び/または特定される細胞実体及び/または他の分子実体を含有する組成物を指す。例えば、「疾患サンプル」という文言及びその変化形は、特徴付けされる細胞実体及び/または分子実体を含有することが予想されるか、または含有することが判明している、目的の対象から得られる任意のサンプルを指す。サンプルには、組織サンプル、初代または培養した細胞または細胞株、細胞上清、細胞溶解物、血小板、血清、血漿、硝子体液、リンパ液、滑液、濾胞液、精液、羊水、乳汁、全血、血液由来細胞、尿、脳脊髄液、唾液、痰、涙、汗、粘液、腫瘍溶解物、及び組織培養培地、ホモジナイズした組織などの組織抽出物、腫瘍組織、細胞抽出物、ならびにこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0058】
「組織サンプル」または「細胞サンプル」とは、対象または個体の組織から得られた同様の細胞の集合を意味する。組織または細胞サンプルの供給源は、新鮮、凍結及び/または保存された器官、組織サンプル、生検、及び/または穿刺液に由来する固形組織;血液または血漿などの任意の血液成分;脳脊髄液、羊水、腹腔液、または間質液などの体液;対象の胎内期間または発達中の任意の時点の細胞であり得る。組織サンプルはまた、初代または培養された細胞または細胞株であってもよい。任意選択により、組織または細胞サンプルは、疾患組織/器官から得られる。例えば、「腫瘍サンプル」は、腫瘍または他のがん性組織から得られた組織サンプルである。組織サンプルは、細胞種の混合集団(例えば、腫瘍細胞及び非腫瘍細胞、がん性細胞及び非がん性細胞)を含有し得る。組織サンプルは、自然界では組織と天然に混合しない、防腐剤、抗凝固薬、緩衝液、固定液、栄養素、抗生物質などの化合物を含有し得る。
【0059】
「腫瘍浸潤免疫細胞」は、本明細書で使用されるとき、腫瘍またはそのサンプル中に存在する任意の免疫細胞を指す。腫瘍浸潤免疫細胞には、腫瘍内免疫細胞、腫瘍周囲免疫細胞、他の腫瘍間質細胞(例えば、線維芽細胞)、またはこれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。そのような腫瘍浸潤免疫細胞は、例えば、Tリンパ球(CD8+Tリンパ球及び/またはCD4+Tリンパ球など)、Bリンパ球、または顆粒球(例えば、好中球、好酸球、及び好塩基球)、単球、マクロファージ、樹状細胞(例えば、指状嵌入樹状細胞)、組織球、及びナチュラルキラー細胞を含む他の骨髄系細胞であり得る。
【0060】
本明細書で使用される「腫瘍細胞」は、腫瘍またはそのサンプル中に存在する任意の腫瘍細胞を指す。腫瘍細胞は、当該技術分野において知られている及び/または本明細書に記載される方法を使用して、腫瘍サンプル中に存在し得る他の細胞、例えば、間質細胞及び腫瘍浸潤免疫細胞とは区別され得る。
【0061】
「参照サンプル」、「参照細胞」、「参照組織」、「対照サンプル」、「対照細胞」、または「対照組織」は、本明細書で使用されるとき、比較目的のために使用されるサンプル、細胞、組織、標準、またはレベルを指す。一実施形態において、参照サンプル、参照細胞、参照組織、対照サンプル、対照細胞、または対照組織は、同じ対象または個体の身体の健康な部分及び/または罹患していない部分(例えば、組織または細胞)から得られる。例えば、参照サンプル、参照細胞、参照組織、対照サンプル、対照細胞、または対照組織は、罹患した細胞または組織に隣接する健康な細胞もしくは組織及び/または罹患していない細胞もしくは組織(例えば、腫瘍に隣接する細胞または組織)であり得る。別の実施形態において、参照サンプルは、同じ対象または個体の身体の未治療の組織及び/または細胞から得られる。更に別の実施形態において、参照サンプル、参照細胞、参照組織、対照サンプル、対照細胞、または対照組織は、対象または個体ではない個体の身体の健康な部分及び/または罹患していない部分(例えば、組織または細胞)から得られる。更に別の実施形態において、参照サンプル、参照細胞、参照組織、対照サンプル、対照細胞、または対照組織は、対象または個体ではない個体の身体の未治療の組織及び/または細胞から得られる。
【0062】
本発明の目的上、組織サンプルの「切片」とは、組織サンプルの単一の部分または小片、例えば、組織サンプル(例えば、腫瘍サンプル)から切り出された組織または細胞の薄切片を意味する。組織サンプルの複数の切片が取得され分析に供され得ることが理解されるが、組織サンプルの同じ切片が形態的レベル及び分子レベルの両方で分析されてもよいし、ポリペプチド(例えば、免疫組織化学による)及び/またはポリヌクレオチド(例えば、in situハイブリダイゼーションによる)に関して分析されてもよいことも理解される。
【0063】
「相関する」または「相関すること」とは、何らかの方法で、第1の分析またはプロトコルの実施及び/または結果を第2の分析またはプロトコルの実施及び/または結果と比較することを意味する。例えば、第2のプロトコルを実施する際に第1の分析もしくはプロトコルの結果を使用することができ、及び/または第1の分析もしくはプロトコルの結果を使用して第2の分析もしくはプロトコルを実施すべきかどうかを決定することができる。ポリペプチドの分析またはプロトコルの実施形態に関して、ポリペプチドの発現分析またはプロトコルの結果を使用して、特定の治療レジメンが実施されるべきかどうかを決めることができる。ポリヌクレオチドの分析またはプロトコルの実施形態に関して、ポリヌクレオチドの発現分析またはプロトコルの結果を使用して、特定の治療レジメンが実施されるべきかどうかを決めることができる。
【0064】
本明細書で使用される場合の「~に基づく」という文言は、1つ以上のバイオマーカーについての情報が、治療の決定、添付文書に記載される情報、またはマーケティング/プロモーションガイダンスなどの情報提供のために使用されることを意味する。
【0065】
本明細書で使用される場合の「標識」という言葉は、ポリヌクレオチドプローブまたは抗体などの試薬に直接的または間接的にコンジュゲートまたは融合され、そのコンジュゲートまたは融合している試薬の検出を容易にする、化合物または組成物を指す。標識は、それ自体が検出可能である場合もあれば(例えば、放射性同位体標識または蛍光標識)、酵素標識の場合では、検出可能な基質化合物または組成物の化学変化を触媒する場合もある。この用語は、検出可能な物質をプローブまたは抗体にカップリングすること(すなわち、物理的連結)によるプローブまたは抗体の直接的標識、及び直接的に標識されている別の試薬との反応によるプローブまたは抗体の間接的標識を包含することが意図される。間接的標識の例には、蛍光標識された二次抗体を使用して一次抗体を検出すること、及び蛍光標識されたストレプトアビジンで検出することができるようにDNAプローブをビオチンで末端標識することが含まれる。
【0066】
「PD-1軸結合アンタゴニスト」という用語は、PD-1シグナル伝達軸上のシグナル伝達に起因するT細胞機能不全を排除するように、ある1つのPD-1軸結合パートナーとその結合パートナーのいずれか1つ以上との相互作用を阻害し、その結果、T細胞機能(例えば、増殖、サイトカイン産生、及び/または標的細胞殺傷)を回復または増強させる、分子を指す。本明細書で使用されるとき、PD-1軸結合アンタゴニストには、PD-L1結合アンタゴニスト、PD-1結合アンタゴニスト、及びPD-L2結合アンタゴニストが含まれる。
【0067】
「PD-L1結合アンタゴニスト」という用語は、PD-L1とその結合パートナーのいずれか1つ以上、例えば、PD-1及び/またはB7-1との相互作用に起因するシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化、または妨害する、分子を指す。いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1がその結合パートナーに結合するのを阻害する分子である。具体的な態様において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1がPD-1及び/またはB7-1に結合するのを阻害する。いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストには、PD-L1とその結合パートナーのうちの1つ以上、例えば、PD-1及び/またはB7-1との相互作用に起因するシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化、または妨害する、抗PD-L1抗体、その抗原結合フラグメント、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド及び他の分子が含まれる。一実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、Tリンパ球上に発現される細胞表面タンパク質によってまたは当該タンパク質を介して媒介され、PD-L1を介したシグナル伝達で媒介される、負の共刺激シグナルを低下させ、これにより、機能不全T細胞の機能不全状態を軽減する(例えば、抗原認識に対するエフェクター応答の増強)。いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。具体的な態様において、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載されるTECENTRIQ(商標)として上市されているアテゾリズマブである(WHO Drug Information(International Nonproprietary Names for Pharmaceutical Substances),Recommended INN:List 74,Vol.29,No.3,2015(387頁参照))。別の具体的な態様において、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載されるMDX-1105である。また別の具体的な態様において、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載されるYW243.55.S70である。また別の具体的な態様において、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載されるMEDI4736(デュルバルマブ)である。また別の具体的な態様において、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載されるMSB0010718C(アベルマブ)である。
【0068】
「PD-1結合アンタゴニスト」という用語は、PD-1とその結合パートナーのうちの1つ以上、例えば、PD-L1及び/またはPD-L2との相互作用に起因するシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化、または妨害する、分子を指す。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1がその結合パートナーのうちの1つ以上に結合するのを阻害する分子である。具体的な態様において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1がPD-L1及び/またはPD-L2に結合するのを阻害する。例えば、PD-1結合アンタゴニストには、PD-1とPD-L1及び/またはPD-L2との相互作用に起因するシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化、または妨害する、抗PD-1抗体、その抗原結合フラグメント、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、及び他の分子が含まれる。一実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、Tリンパ球上に発現される細胞表面タンパク質によってまたは当該タンパク質を介して媒介され、PD-1を介したシグナル伝達で媒介される、負の共刺激シグナルを低下させ、これにより、機能不全T細胞の機能不全状態を軽減する(例えば、抗原認識に対するエフェクター応答の増強)。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体である。具体的な態様において、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載されるMDX-1106(ニボルマブ)である。別の具体的な態様において、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載されるMK-3475(ペンブロリズマブ)である。別の具体的な態様において、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載されるMEDI-0680(AMP-514)である。別の具体的な態様において、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載されるPDR001である。別の具体的な態様において、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載されるREGN2810である。別の具体的な態様において、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載されるBGB-108である。
【0069】
「PD-L2結合アンタゴニスト」という用語は、PD-L2とその結合パートナーのいずれか1つ以上、例えば、PD-1との相互作用に起因するシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化、または妨害する、分子を指す。いくつかの実施形態において、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2がその結合パートナーのうちの1つ以上に結合するのを阻害する分子である。具体的な態様において、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2がPD-1に結合するのを阻害する。いくつかの実施形態において、PD-L2アンタゴニストには、PD-L2とその結合パートナーのいずれか1つ以上、例えば、PD-1との相互作用に起因するシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化、または妨害する、抗PD-L2抗体、その抗原結合フラグメント、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド及び他の分子が含まれる。一実施形態において、PD-L2結合アンタゴニストは、Tリンパ球上に発現される細胞表面タンパク質によってまたは当該タンパク質を介して媒介され、PD-L2を介したシグナル伝達で媒介される、負の共刺激シグナルを低下させ、これにより、機能不全T細胞の機能不全状態を軽減する(例えば、抗原認識に対するエフェクター応答の増強)。いくつかの実施形態において、PD-L2結合アンタゴニストは、イムノアドヘシンである。
【0070】
本明細書で使用される「タキサン」は、チューブリンに結合し、微小管の重合及び安定化を促進し、及び/または微小管の脱重合を阻害することができる、ジテルペンである。本明細書に含まれるタキサンには、10-デアセチルバッカチンIIIタキソイド及び/またはその誘導体が含まれる。例示的なタキサンには、パクリタキセル(すなわち、TAXOL(登録商標)、CAS#33069-62-4)、ドセタキセル(すなわち、TAXOTERE(登録商標)、CAS#114977-28-5)、ラロタキセル、カバジタキセル、ミラタキセル、テセタキセル、及び/またはオラタキセルが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、タキサンは、アルブミンがコーティングされたナノ粒子(例えば、ナノアルブミンが結合された(nab)-パクリタキセル、すなわち、ABRAXANE(登録商標)及び/またはnab-ドセタキセル、ABI-008)である。いくつかの実施形態において、タキサンは、nab-パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))である。いくつかの実施形態において、タキサンは、CREMAPHOR(登録商標)中に製剤化(例えば、TAXOL(登録商標))され、及び/またはポリソルベート80などのTWEEN(登録商標)中に製剤化(例えば、TAXOTERE(登録商標))される。いくつかの実施形態において、タキサンは、リポソームに封入されたタキサンである。いくつかの実施形態において、タキサンは、タキサンのプロドラッグ形態及び/またはコンジュゲート形態(例えば、パクリタキセルに共有結合的にコンジュゲートされたDHA、パクリタキセルポリグルメックス、及び/またはリノレイルカーボネートパクリタキセル)である。いくつかの実施形態において、パクリタキセルは、実質的に界面活性剤を含まずに製剤化される(例えば、TOCOSOL(登録商標)パクリタキセルなどのCREMAPHOR(登録商標)及び/またはTWEEN(登録商標)のないもの)。
【0071】
免疫機能不全との関係における「機能不全」という用語は、抗原刺激に対する免疫応答性が低下した状態を指す。この用語には、抗原認識は生じ得るが、その後の免疫応答が感染症または腫瘍成長の制御に効果がない、「疲弊」及び/または「アネルギー」の両方に共通する要素が含まれる。
【0072】
「機能障害」という用語には、本明細書で使用されるとき、抗原認識に対して無反応または不応答であること、具体的には、抗原認識を下流のT細胞エフェクター機能、例えば、増殖、サイトカイン産生(例えば、IL-2)及び/または標的細胞殺傷に変換する能力が機能しないことも含まれる。
【0073】
「アネルギー」という用語は、抗原刺激に対して無応答である状態を指し、T細胞受容体を介して送達されるシグナルが不完全または不十分であることに起因する(例えば、ras活性化がない状態での細胞内Ca+2の増加)。T細胞アネルギーはまた、共刺激がない状態での抗原による刺激に際しても生じることがあり、その結果、細胞は、共刺激との関係においても、抗原によるその後の活性化に無反応になる。不応答状態は、多くの場合、インターロイキン-2の存在によって覆され得る。アネルギー性T細胞は、クローン増殖せず、及び/またはエフェクター機能を獲得しない。
【0074】
「疲弊」という用語は、多くの慢性感染症及びがんの発症中に生じる持続的TCRシグナル伝達に起因するT細胞の機能障害状態である、T細胞の疲弊を指す。これは、不完全または不十分なシグナル伝達によるものではなく、持続的なシグナル伝達から生じるという点で、アネルギーとは区別され、不十分なエフェクター機能、抑制性受容体の持続的発現及び機能的なエフェクターT細胞またはメモリーT細胞とは異なる転写状態によって定義される。疲弊は、感染症及び腫瘍の最適な制御を妨げる。疲弊は、外因性の負の制御経路(例えば、免疫制御性サイトカイン)及び細胞内因性の負の制御(共刺激)経路(PD-1、B7-H3、B7-H4など)の両方から生じ得る。
【0075】
「腫瘍免疫」とは、腫瘍が免疫認識及びクリアランスを回避するプロセスを指す。したがって、治療的な概念として、腫瘍免疫は、そのような回避が軽減し、腫瘍が免疫系によって認識及び攻撃されるとき、「治療」される。腫瘍認識の例には、腫瘍結合、腫瘍縮小及び腫瘍クリアランスが挙げられる。
【0076】
「免疫原性」は、免疫応答を惹起する特定の物質の能力を指す。腫瘍は免疫原性であり、腫瘍免疫原性が高まると、免疫応答による腫瘍細胞のクリアランスが促進される。腫瘍免疫原性を高める例には、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンによる治療が含まれる。
【0077】
本発明の文脈における「~に応答する」または「~に応答性」という用語は、がん(例えば、乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC))に罹患している患者、罹患が疑われる患者、または罹患しやすい患者が、療法、例えば、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)を含む抗がん療法に対して応答を示すことを示している。当業者であれば、本発明の方法に従ったPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)を含む抗がん療法で治療される人が応答を示すかどうかを容易に決定できるであろう。例えば、応答は、腫瘍成長の減少及び/または停止、腫瘍サイズの縮小、及び/またはがんの1つ以上の症状の軽減などのがんの苦痛の低減によって反映され得る。好ましくは、応答は、がんの転移性転換の指標またはがんの指標の低減または減少、例えば、転移の形成防止または転移の数もしくはサイズの減少によって反映され得る。応答は、例えば、完全奏効、部分奏効、無増悪生存期間の改善、全生存期間の改善、または持続的応答であり得る。いくつかの実施形態において、応答は、無増悪生存期間の改善である。他の実施形態において、応答は、全生存期間の改善である。
【0078】
「持続的応答」とは、治療の終了後における腫瘍成長低下の持続的効果を指す。例えば、腫瘍サイズは、投与段階の開始時におけるサイズと比較して、同じままであるか、またはより小さくなり得る。いくつかの実施形態において、持続的応答は、治療期間と少なくとも同じ期間、治療期間の少なくとも1.5倍、2.0倍、2.5倍、または3.0倍の長さである。
【0079】
本明細書で使用されるとき、「がんの再発を減少または阻害すること」とは、腫瘍もしくはがんの再発または腫瘍もしくはがんの進行を減少または阻害することを意味する。本明細書で開示されるとき、がんの再発及び/またはがんの進行には、限定するものではないが、がん転移が含まれる。
【0080】
本明細書で使用されるとき、「完全奏効」または「CR」とは、全ての標的病変の消失を指す。
【0081】
本明細書で使用されるとき、「部分奏効」または「PR」とは、ベースラインSLDを参照として、標的病変の最長径の和(SLD)が少なくとも30%減少することを指す。
【0082】
本明細書で使用されるとき、「安定」または「SD」とは、治療開始以降の最小SLDを参照として、PRの要件を満たす標的病変の十分な縮小も、PDの要件を満たす十分な増加もないことを示す。
【0083】
本明細書で使用されるとき、「進行」または「PD」とは、治療開始以降に記録された最小SLDを参照として、標的病変のSLDが少なくとも20%増加すること、または1つ以上の新しい病変の存在を指す。
【0084】
本明細書で使用されるとき、「無増悪生存期間」(PFS)は、治療中及び治療後の、治療されている疾患(例えば、がん)が悪化しない期間の時間の長さを指す。無増悪生存期間は、患者が完全奏効または部分奏効を経験した時間量、及び患者が安定を経験した時間量を含み得る。
【0085】
本明細書で使用されるとき、「全奏効率」または「客観的奏効率」(ORR)は、完全奏効(CR)率と部分奏効(PR)率の合計を指す。
【0086】
本明細書で使用されるとき、「全生存期間」(OS)は、特定の期間後に生存している可能性が高い個体の群における割合を指す。
【0087】
「医薬製剤」という用語は、その有効成分の生物活性が有効になるような形態であり、かつ当該製剤が投与される対象にとって許容できないほど毒性がある追加の成分を何ら含有しない調製物を指す。そのような製剤は、無菌である。「薬学的に許容される」賦形剤(ビヒクル、添加剤)は、対象の哺乳動物に無理なく投与することができ、採用される有効成分の有効用量を提供するものである。
【0088】
本明細書で使用されるとき、「治療」という用語は、臨床病理の過程において、治療される個体または細胞の自然経過を変化させるように設計された臨床的介入を指す。治療の望ましい効果には、疾患の進行速度の低減、病状の軽減または緩和、及び寛解または予後の改善が含まれる。例えば、個体は、限定するものではないが、がん性細胞の増殖の減少(または破壊)、疾患に起因する症状の軽減、疾患に罹患している人の生活の質の向上、疾患の治療に必要な他の薬の用量の低減、及び/または個体の生存期間の延長を含む、がんに関連する1つ以上の症状が緩和または排除された場合、「治療」に成功する。
【0089】
本明細書で使用されるとき、疾患の「進行を遅延させる」とは、疾患(がんなど)の発達を延期させること、阻害すること、緩やかにすること、遅らせること、安定化させること、及び/または先延ばしすることを意味する。この遅延は、病歴及び/または治療される個体に応じて、様々な時間の長さになり得る。当業者には明らかであるように、十分なまたは大きな遅延は、事実上、個体が疾患を発症しないという点で予防も包含する。例えば、転移の発生などの末期がんが遅延され得る。
【0090】
本明細書で区別なく使用される「有効量」または「治療上有効な量」は、少なくとも、特定の障害に対して測定可能な改善または予防をもたらすのに必要な最小量である。本明細書における有効量は、患者の病状、年齢、性別及び体重、ならびに個体において所望の応答を引き起こす薬剤の能力などの因子によって変動し得る。有効量はまた、治療のあらゆる毒性または有害な影響よりも治療上有益な効果が勝るものでもある。予防的使用に関して、有益な結果または望ましい結果には、疾患のリスクの排除もしくは低下、重症度の軽減、または疾患(疾患の生化学的、組織学的及び/または行動学的症状、その合併症、ならびに疾患の発症中に呈示される中間的な病理学的表現型を含む)の開始の遅延などの結果が含まれる。治療的使用に関して、有益な結果または望ましい結果には、疾患に起因する1つ以上の症状の軽減、疾患に罹患している人の生活の質の向上、疾患の治療に必要な他の薬の用量の低減、及び標的化などを介した別の薬の効果の増大、疾患進行の遅延、及び/または生存期間の延長などの臨床的結果が含まれる。がんまたは腫瘍の場合、有効量の薬物は、がん細胞数の減少;腫瘍サイズの縮小;がん細胞の周辺器官への浸潤の阻害(すなわち、ある程度の鈍化または望ましくは停止);腫瘍転移の阻害(すなわち、ある程度の鈍化及び望ましくは停止);腫瘍成長のある程度の阻害;及び/または障害に関連する症状のうちの1つ以上のある程度の緩和に効果を有し得る。有効量は、1回以上の投与で投与され得る。本発明の目的上、薬物、化合物または医薬組成物の有効量は、直接的または間接的に、予防的処置または治療的処置を実施するのに十分な量である。臨床的状況において理解されるように、薬物、化合物または医薬組成物の有効量は、別の薬物、化合物または医薬組成物と併せて達成されてもよいし、そうでなくてもよい。したがって、「有効量」は、1つ以上の治療用薬剤を投与する状況で考慮され得、単一の薬剤は、それが1つ以上の他の薬剤と併せて望ましい結果を達成し得、または達成するのであれば、有効量で投与されたとみなされ得る。
【0091】
本明細書で使用されるとき、「~と組み合わせて」または「~と併せて」とは、1つの治療法が別の治療法に加えて施行されることを指す。したがって、「~と併せて」とは、1つの治療法を、個体に他の治療方法を施行する前、その間、またはその後に、施行することを指す。
【0092】
「障害」とは、治療から利益を得るであろう任意の状態であり、これらには、限定するものではないが、当該障害に哺乳動物を罹患しやすくする病態を含む、慢性及び急性の障害または疾患が含まれる。
【0093】
「細胞増殖性障害」及び「増殖性障害」という用語は、ある程度の異常な細胞増殖に関連する障害を指す。一実施形態において、細胞増殖性障害は、がんである。一実施形態において、細胞増殖性障害は、腫瘍である。
【0094】
「腫瘍」という用語は、本明細書で使用されるとき、悪性または良性に関わらず、全ての新生物性細胞の成長及び増殖、ならびに全ての前がん性及びがん性の細胞及び組織を指す。「がん」、「がん性」、「細胞増殖性障害」、「増殖性障害」、及び「腫瘍」という用語は、本明細書で言及されるとき、相互排他的ではない。
【0095】
「がん」及び「がん性」という用語は、無秩序な細胞成長を典型的に特徴とする、哺乳動物における生理学的状態を指すか、または当該状態を記述するものである。「乳癌」という用語は、限定するものではないが、HER2+乳癌及びトリプルネガティブ乳癌(TNBC)を含み、TNBCは、エストロゲン受容体(ER-)、プロゲステロン受容体(PR-)、及びHER2(HER2-)についてネガティブである乳癌の一種であり、かつ、局所進行性、切除不能、及び/または転移性(例えば、転移性トリプルネガティブ乳癌(mTNBC))であり得る。本明細書に記載される方法は、局所進行性及び/または転移性であるがんを含む様々なステージのがんの治療に好適である。がんの病期分類において、局所進行性は、一般に、局所的領域から隣接する組織及び/またはリンパ節に広がったがんとして定義される。ローマ数字による病期分類では、局所進行性は、通常、ステージIIまたはIIIに分類される。転移性であるがんは、がんが遠隔の組織及び器官まで全身に広がっている段階である(ステージIV)。
【0096】
本明細書で使用される「細胞傷害性薬剤」という用語は、細胞に有害である(例えば、細胞死を引き起こす、増殖を阻害する、または細胞機能を阻害する)任意の薬剤を指す。細胞傷害性薬剤には、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212及びLuの放射性同位体);化学療法剤;成長阻害剤;核酸分解酵素などの酵素及びそのフラグメント;ならびに細菌、真菌、植物または動物起源の低分子毒素または酵素活性毒素などの毒素(そのフラグメント及び/またはバリアントを含む)が含まれるが、これらに限定されない。例示的な細胞傷害性薬剤は、抗微小管剤、白金配位錯体、アルキル化剤、抗生物質製剤、トポイソメラーゼII阻害剤、代謝拮抗物質、トポイソメラーゼI阻害剤、ホルモン及びホルモン類似体、シグナル伝達経路阻害剤、非受容体チロシンキナーゼ血管新生阻害剤、免疫治療薬、アポトーシス誘導剤、LDH-Aの阻害剤、脂肪酸生合成の阻害剤、細胞周期シグナル伝達阻害剤、HDAC阻害剤、プロテアソーム阻害剤、ならびにがん代謝の阻害剤から選択することができる。一実施形態において、細胞傷害性薬剤は、白金系化学療法剤である。一実施形態において、細胞傷害性薬剤は、EGFRのアンタゴニストである。一実施形態において、細胞傷害性薬剤は、N-(3-エチニルフェニル)-6,7-ビス(2-メトキシエトキシ)キナゾリン-4-アミン(例えば、エルロチニブ、TARCEVA(商標))である。一実施形態において、細胞傷害性薬剤は、RAF阻害剤である。一実施形態において、RAF阻害剤は、BRAF及び/またはCRAF阻害剤である。一実施形態において、RAF阻害剤は、ベムラフェニブである。一実施形態において、細胞傷害性薬剤は、PI3K阻害剤である。
【0097】
本明細書で使用されるとき、「化学療法剤」という用語は、mTNBCなどのがんの治療において有用な化合物を含む。化学療法剤の例には、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標)、Genentech/OSI Pharm.)、ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標)、Millennium Pharm.)、ジスルフィラム、没食子酸エピガロカテキン、サリノスポラミドA、カルフィルゾミブ、17-AAG(ゲルダナマイシン)、ラディシコール、乳酸脱水素酵素A(LDH-A)、フルベストラント(FASLODEX(登録商標)、AstraZeneca)、スニチブ(SUTENT(登録商標)、Pfizer/Sugen)、レトロゾール(FEMARA(登録商標)、Novartis)、イマチニブメシル酸塩(GLEEVEC(登録商標)、Novartis)、フィナスネート(VATALANIB(登録商標)、Novartis)、オキサリプラチン(ELOXATIN(登録商標)、Sanofi)、5-FU(5-フルオロウラシル)、ロイコボリン、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標)、Wyeth)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、GSK572016、Glaxo Smith Kline)、ロナファミブ(SCH 66336)、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標)、Bayer Labs)、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標)、AstraZeneca)、AG1478、チオテパ及びCYTOXAN(登録商標)シクロホスファミドなどのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンなどのスルホン酸アルキル;ベンゾドパ、カルボクオン、メツレドパ、及びウレドパなどのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド及びトリメチロメラミンを含むエチレンイミン及びメチラメラミン;アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(トポテカン及びイリノテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);副腎皮質ステロイド(プレドニゾン及びプレドニゾロンを含む);酢酸シプロテロン;フィナステリド及びデュタステリドを含む5α-還元酵素);ボリノスタット、ロミデプシン、パノビノスタット、バルプロ酸、モセチノスタットドラスタチン;アルデスロイキン、タルクデュオカルマイシン(合成類似体、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンギスタチン;クロラムブシル、クロマファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノブエンビキン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチンなどのニトロソ尿素;エンジイン抗生物質(例えば、カリケアミシン、特にカリケアミシンγ1I及びカリケアミシンω1I(Angew Chem.Intl.Ed.Engl.33:183-186(1994))などの抗生物質;ダイネミシンAを含む、ダイネミシン;クロドロネートなどのビスホスホネート;エスペラミシン;ならびにネオカルジノスタチン発色団及び関連色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アウスラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)(ドキソルビシン)、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗薬;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎剤;フロリン酸などの葉酸補助剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビスアントレン;エダトラキサート;デホファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルホミチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン;マイタンシン及びアンサマイトシンなどのメイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダムノール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products,Eugene,Oreg.);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2毒素、ベラクリンA、ロリジンA及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキサン;クロラムブシル;GEMZAR(登録商標)(ゲムシタビン);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;ビンブラスチン;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;NAVELBINE(登録商標)(ビノレルビン);ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;カペシタビン(XELODA(登録商標));イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、及び誘導体が挙げられる。
【0098】
化学療法剤にはまた、分子の一構成部分として白金を含有する有機化合物を含む、「白金系」化学療法剤も含まれる。典型的に、白金系化学療法剤は、白金の配位錯体である。白金系化学療法剤は、当該技術分野において「プラチン」と呼ばれることもある。白金系化学療法剤の例には、カルボプラチン、シスプラチン、及びオキサリプラチンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
化学療法剤にはまた、(i)腫瘍に対するホルモン作用を制御または阻害するように作用する抗ホルモン剤、例えば、抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体調節剤(SERM)、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標);タモキシフェンクエン酸塩を含む)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、ヨードキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びFARESTON(登録商標)(トレミフェンクエン酸塩)など;(ii)副腎におけるエストロゲン産生を制御するアロマターゼ酵素を阻害するアロマターゼ阻害剤、例えば、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)(酢酸メゲストロール)、AROMASIN(登録商標)(エキセメスタン;Pfizer)、ホルメスタイン、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)(ボロゾール)、FEMARA(登録商標)(レトロゾール;Novartis)、及びARIMIDEX(登録商標)(アナストロゾール;AstraZeneca)など;(iii)抗アンドロゲン剤、例えば、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド及びゴセレリン;ブセレリン、トリプテレリン、メドロキシプロゲステロン酢酸エステル、ジエチルスチルベストロール、プレマリン、フルオキシメステロン、all-trans-レチノイン酸、フェンレチニド、ならびにトロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体)など;(iv)プロテインキナーゼ阻害剤;(v)脂質キナーゼ阻害剤;(vi)アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、異常な細胞増殖に関係があるとされるシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの、例えば、PKC-アルファ、Ralf及びH-Rasなど;(vii)リボザイム、例えば、VEGF発現阻害剤(例えば、ANGIOZYME(登録商標))及びHER2発現阻害剤など;(viii)遺伝子療法ワクチンなどのワクチン、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)、LEUVECTIN(登録商標)、及びVAXID(登録商標);PROLEUKIN(登録商標)、rIL-2;LURTOTECAN(登録商標)などのトポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIX(登録商標)rmRH;ならびに(ix)上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、及び誘導体も含まれる。
【0100】
化学療法剤にはまた、抗体、例えば、アレムツズマブ(Campath)、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標)、Genentech);セツキシマブ(ERBITUX(登録商標)、Imclone);パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標)、Amgen)、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標)、Genentech/Biogen Idec)、ペルツズマブ(OMNITARG(登録商標)、2C4、Genentech)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標)、Genentech)、トシツモマブ(Bexxar,Corixia)、及び抗体薬物コンジュゲートであるゲムツズマブオゾガマイシン(MYLOTARG(登録商標)、Wyeth)も含まれる。本発明の化合物との組み合わせで薬剤として治療可能性のある更なるヒト化モノクローナル抗体には、アポリズマブ、アセリズマブ、アトリズマブ、バピネオズマブ、ビバツズマブメルタンシン、カンツズマブメルタンシン、セデリズマブ、セルトリズマブペゴル、シドフシツズマブ、シドツズマブ、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、エプラツズマブ、エルリズマブ、フェルビズマブ、フォントリズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、ラベツズマブ、リンツズマブ、マツズマブ、メポリズマブ、モタビズマブ、モトビズマブ、ナタリズマブ、ニモツズマブ、ノロビズマブ、ヌマビズマブ、オクレリズマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パスコリズマブ、ペクフシツズマブ、ペクツズマブ、ペキセリズマブ、ラリビズマブ、ラニビズマブ、レスリビズマブ、レスリズマブ、レシビズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、シブロツズマブ、シプリズマブ、ソンツズマブ、タカツズマブテトラキセタン、タドシズマブ、タリズマブ、テフィバズマブ、トシリズマブ、トラリズマブ、ツコツズマブセルモロイキン、ツクシツズマブ、ウマビズマブ、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、ビシリズマブ、及びインターロイキン-12 p40タンパク質を認識するように遺伝子改変されたヒト配列のみの組み換え全長IgGλ抗体である抗インターロイキン-12(ABT-874/J695、Wyeth Research and Abbott Laboratories)が含まれる。
【0101】
化学療法剤にはまた「EGFR阻害剤」も含まれ、当該阻害剤は、EGFRに結合するか、または別の方法でEGFRと直接相互作用し、そのシグナル伝達活性を阻止または低減する化合物を指し、「EGFRアンタゴニスト」とも呼ばれる。そのような薬剤の例には、EGFRに結合する抗体及び低分子が挙げられる。EGFRに結合する抗体の例には、MAb 579(ATCC CRL HB 8506)、MAb 455(ATCC CRL HB8507)、MAb 225(ATCC CRL 8508)、MAb 528(ATCC CRL 8509)(米国特許第4,943,533号参照)及びそのバリアント、例えば、キメラ化された225(C225またはセツキシマブ;ERBUTIX(登録商標))及び再形成されたヒト225(H225)(例えば、WO96/40210、Imclone Systems Inc.参照);IMC-11F8、完全ヒト、EGFR標的抗体(Imclone);II型変異EGFRに結合する抗体(米国特許第5,212,290号);米国特許第5,891,996号に記載されている、EGFRに結合するヒト化及びキメラ抗体;ならびにEGFRに結合するヒト抗体、例えば、ABX-EGFまたはパニツムマブ(WO98/50433参照、Abgenix/Amgen);EMD 55900(Stragliotto et al.,Eur.J.Cancer 32A:636-640(1996));EGFR結合に対してEGFとTGF-アルファの両方と競合する、EGFRに対するヒト化EGFR抗体EMD7200(マツズマブ)(EMD/Merck);ヒトEGFR抗体、HuMax-EGFR(GenMab);E1.1、E2.4、E2.5、E6.2、E6.4、E2.11、E6.3及びE7.6.3として知られるUS6,235,883に記載の完全ヒト抗体;MDX-447(Medarex Inc);ならびにmAb 806またはヒト化されたmAb 806(Johns et al.,J.Biol.Chem.279(29):30375-30384(2004))が挙げられる。抗EGFR抗体は、細胞傷害性薬剤にコンジュゲートされ得、それにより、免疫コンジュゲートが生成され得る(例えば、EP659439A2、Merck Patent GmbH参照)。EGFRアンタゴニストには、米国特許第5,616,582号、同第5,457,105号、同第5,475,001号、同第5,654,307号、同第5,679,683号、同第6,084,095号、同第6,265,410号、同第6,455,534号、同第6,521,620号、同第6,596,726号、同第6,713,484号、同第5,770,599号、同第6,140,332号、同第5,866,572号、同第6,399,602号、同第6,344,459号、同第6,602,863号、同第6,391,874号、同第6,344,455号、同第5,760,041号、同第6,002,008号、及び同第5,747,498号、ならびに次のPCT公開:WO98/14451、WO98/50038、WO99/09016、及びWO99/24037に記載されている化合物などの低分子が含まれる。具体的な低分子EGFRアンタゴニストには、OSI-774(CP-358774、エルロチニブ、TARCEVA(登録商標)Genentech/OSI Pharmaceuticals);PD 183805(CI 1033、2-プロペンアミド、N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-[3-(4-モルホリニル)プロポキシ]-6-キナゾリニル]-,ジヒドロクロリド、Pfizer Inc.);ZD1839、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標))4-(3’-クロロ-4’-フルオロアニリノ)-7-メトキシ-6-(3-モルホリノプロポキシ)キナゾリン、AstraZeneca);ZM 105180((6-アミノ-4-(3-メチルフェニル-アミノ)-キナゾリン、Zeneca);BIBX-1382(N8-(3-クロロ-4-フルオロ-フェニル)-N2-(1-メチル-ピペリジン-4-イル)-ピリミド[5,4-d]ピリミジン-2,8-ジアミン、Boehringer Ingelheim);PKI-166((R)-4-[4-[(1-フェニルエチル)アミノ]-1H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-イル]-フェノール);(R)-6-(4-ヒドロキシフェニル)-4-[(1-フェニルエチル)アミノ]-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン);CL-387785(N-[4-[(3-ブロモフェニル)アミノ]-6-キナゾリニル]-2-ブチンアミド);EKB-569(N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-3-シアノ-7-エトキシ-6-キノリニル]-4-(ジメチルアミノ)-2-ブテンアミド)(Wyeth);AG1478(Pfizer);AG1571(SU 5271;Pfizer);ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、GSK572016またはN-[3-クロロ-4-[(3フルオロフェニル)メトキシ]フェニル]-6[5[[[2メチルスルホニル)エチル]アミノ]メチル]-2-フラニル]-4-キナゾリンアミン)などの二重EGFR/HER2チロシンキナーゼ阻害剤が含まれる。
【0102】
化学療法剤にはまた「チロシンキナーゼ阻害剤」が含まれ、これらには、前段落に記載のEGFR標的薬物;Takedaから入手可能なTAK165などの低分子HER2チロシンキナーゼ阻害剤;ErbB2受容体チロシンキナーゼの経口選択的阻害剤CP-724,714(Pfizer及びOSI);EGFRに優先的に結合するが、HER2及びEGFR過剰発現細胞の両方を阻害するEKB-569(Wyethから入手可能)などの二重HER阻害剤;経口のHER2及びEGFRチロシンキナーゼ阻害剤であるラパチニブ(GSK572016;Glaxo-SmithKlineから入手可能);PKI-166(Novartisから入手可能);カネルチニブ(CI-1033;Pharmacia)などのpan-HER阻害剤;Raf-1シグナル伝達を阻害する、ISIS Pharmaceuticalsから入手可能なアンチセンス剤ISIS-5132などのRaf-1阻害剤;イマチニブメシル酸塩(GLEEVEC(登録商標)、Glaxo SmithKlineから入手可能)などの非HER標的チロシンキナーゼ阻害剤;スニチニブ(SUTENT(登録商標)、Pfizerから入手可能)などの多標的チロシンキナーゼ阻害剤;バタラニブ(PTK787/ZK222584、Novartis/Schering AGから入手可能)などのVEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤;MAPK細胞外制御キナーゼI阻害剤CI-1040(Pharmaciaから入手可能);PD 153035、4-(3-クロロアニリノ)キナゾリンなどのキナゾリン;ピリドピリミジン;ピリミドピリミジン;CGP59326、CGP60261及びCGP62706などのピロロピリミジン;ピラゾロピリミジン、4-(フェニルアミノ)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン;クルクミン(ジフェルロイルメタン、4,5-ビス(4-フルオロアニリノ)フタルイミド);ニトロチオフェン部分を含有するチルホスチン;PD-0183805(Warner-Lamber);アンチセンス分子(例えば、HERコード核酸に結合するもの);キノキサリン(米国特許第5,804,396号);トリホスチン(米国特許第5,804,396号);ZD6474(Astra Zeneca);PTK-787(Novartis/Schering AG);CI-1033(Pfizer)などのpan-HER阻害剤;Affinitac(ISIS 3521;Isis/Lilly);イマチニブメシル酸塩(GLEEVEC(登録商標));PKI 166(Novartis);GW2016(Glaxo SmithKline);CI-1033(Pfizer);EKB-569(Wyeth);Semaxinib(Pfizer);ZD6474(AstraZeneca);PTK-787(Novartis/Schering AG);INC-1C11(Imclone)、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標));または次の特許公開のいずれかに記載のもの:米国特許第5,804,396号;WO1999/09016(American Cyanamid);WO1998/43960(American Cyanamid);WO1997/38983(Warner Lambert);WO1999/06378(Warner Lambert);WO1999/06396(Warner Lambert);WO1996/30347(Pfizer,Inc);WO1996/33978(Zeneca);WO1996/3397(Zeneca)及びWO1996/33980(Zeneca)が含まれる。
【0103】
化学療法剤にはまた、デキサメタゾン、インターフェロン、コルヒチン、メトプリン、シクロスポリン、アムホテリシン、メトロニダゾール、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アミホスチン、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、BCG生、ベバクジマブ、ベキサロテン、クラドリビン、クロファラビン、ダルベポエチンアルファ、デニロイキン、デクスラゾキサン、エポエチンアルファ、エロチニブ、フィルグラスチム、酢酸ヒストレリン、イブリツモマブ、インターフェロンアルファ-2a、インターフェロンアルファ-2b、レナリドミド、レバミゾール、メスナ、メトキサレン、ナンドロロン、ネララビン、ノフェツモマブ、オプレルベキン、パリフェルミン、パミドロン酸、ペガデマーゼ、ペグアスパラガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペメトレキセド二ナトリウム、プリカマイシン、ポルフィマーナトリウム、キナクリン、ラスブリカーゼ、サルグラモスチム、テモゾロミド、VM-26、6-TG、トレミフェン、トレチノイン、ATRA、バルルビシン、ゾレドロネート、及びゾレドロン酸、ならびにこれらの薬学的に許容される塩が含まれる。
【0104】
化学療法剤にはまた、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、チキソコルトールピバラート、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンアルコール、モメタゾン、アムシノニド、ブデソニド、デソニド、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、ベタメタゾン、ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム、デキサメタゾン、デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム、フルオコルトロン、ヒドロコルチゾン-17-ブチラート、ヒドロコルチゾン-17-バレラート、アクロメタゾンジプロピオン酸エステル、ベタメタゾン吉草酸エステル、ベタメタゾンジプロピオン酸エステル、プレドニカルバート、クロベタゾン-17-ブチラート、クロベタゾール-17-プロピオナート、カプロン酸フルオコルトロン、ピバル酸フルオコルトロン及び酢酸フルプレドニデン;フェニルアラニン-グルタミン-グリシン(FEG)及びそのD-異性体(feG)などの免疫選択的抗炎症ペプチド(ImSAID)(IMULAN BioTherapeutics,LLC);抗リウマチ薬物、例えば、アザチオプリン、シクロスポリン(シクロスポリンA)、D-ペニシラミン、金塩、ヒドロキシクロロキン、レフルノミドミノサイクリン、スルファサラジン、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)遮断剤、例えば、エタネルセプト(Enbrel)、インフリキシマブ(Remicade)、アダリムマブ(Humira)、セルトリズマブペゴル(Cimzia)、ゴリムマブ(Simponi)、インターロイキン1(IL-1)遮断剤、例えば、アナキンラ(Kineret)、T細胞共刺激遮断剤、例えば、アバタセプト(Orencia)、インターロイキン6(IL-6)遮断剤、例えば、トシリズマブ(ACTEMERA(登録商標));レブリキズマブなどのインターロイキン13(IL-13)遮断剤;ロンタリズマブなどのインターフェロンアルファ(IFN)遮断剤;rhuMAb Beta7などのベータ7インテグリン遮断剤;抗M1プライムなどのIgE経路遮断剤;抗リンホトキシンアルファ(LTa)などの分泌型ホモ三量体LTa3及び膜結合ヘテロ三量体LTa1/β2遮断剤;放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212及びLuの放射性同位体);チオプラチン、PS-341、フェニル酪酸、ET-18-OCH、またはファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(L-739749、L-744832)などの種々の治験薬;ケルセチン、レスベラトロール、ピセアタンノール、没食子酸エピガロカテキン、テアフラビン、フラバノール、プロシアニジン、ベツリン酸及びその誘導体などのポリフェノール;クロロキンなどのオートファジー阻害剤;デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));ベータ-ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;アセチルカンプトテシン、スコポレクチン、及び9-アミノカンプトセシン);ポドフィロトキシン;テガフール(UFTORAL(登録商標));ベキサロテン(TARGRETIN(登録商標));クロドロネート(例えば、BONEFOS(登録商標)またはOSTAC(登録商標))、エチドロネート(DIDROCAL(登録商標))、NE-58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA(登録商標))、アレンドロネート(FOSAMAX(登録商標))、パミドロネート(AREDIA(登録商標))、チルドロネート(SKELID(登録商標))、またはリセドロネート(ACTONEL(登録商標))などのビスホスホネート;及び上皮成長因子受容体(EGF-R);THERATOPE(登録商標)ワクチンなどのワクチン;ペリフォシン、COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブまたはエトリコキシブ)、プロテオソーム阻害剤(例えば、PS341);CCI-779;ティピファルニブ(R11577);オラフェニブ、ABT510;オブリメルセンナトリウム(GENASENSE(登録商標))などのBcl-2阻害剤;ピキサントロン;ロナファルニブ(SCH 6636、SARASAR(商標))などのファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤;ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体;ならびに上記のうちの2つ以上の組み合わせ、例えば、CHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニゾロンの併用療法の略語);及びFOLFOX(5-FUとロイコボリンと組み合わせたオキサリプラチン(ELOXATIN(商標))による治療レジメンの略語)も含まれる。
【0105】
化学療法剤にはまた、鎮痛作用、解熱作用及び抗炎症作用のある非ステロイド性抗炎症薬も含まれる。NSAIDには、シクロオキシゲナーゼ酵素の非選択的阻害剤が含まれる。NSAIDの具体例には、アスピリン、プロピオン酸誘導体、例えば、イブプロフェン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン及びナプロキセン、酢酸誘導体、例えば、インドメタシン、スリンダク、エトドラク、ジクロフェナク、エノール酸誘導体、例えば、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム及びイソキシカム、フェナム酸誘導体、例えば、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸、ならびにCOX-2阻害剤、例えば、セレコキシブ、エトリコキシブ、ルミラコキシブ、パレコキシブ、ロフェコキシブ、ロフェコキシブ、及びバルデコキシブが挙げられる。NSAIDは、リウマチ様関節炎、変形性関節症、炎症性関節症、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、ライター症候群、急性痛風、月経困難症、転移性骨痛、頭痛及び偏頭痛、術後痛、炎症及び組織損傷による軽度から中程度の痛み、発熱、腸閉塞、ならびに腎仙痛などの状態の症状緩和に適応があり得る。
【0106】
本明細書で使用される場合の「成長阻害剤」とは、in vitroまたはin vivoのいずれかで細胞の成長を阻害する化合物または組成物を指す。一実施形態において、成長阻害剤は、抗体が結合する抗原を発現する細胞の増殖を防止または低減する、成長阻害抗体である。別の実施形態において、成長阻害剤は、S期の細胞の割合を大幅に低減するものであり得る。成長阻害剤の例には、細胞周期の進行(S期以外の場所)を遮断する薬剤、例えば、G1停止及びM期停止を誘導する薬剤が挙げられる。古典的なM期遮断剤には、ビンカ(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキサン、ならびにドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンなどのトポイソメラーゼII阻害剤が含まれる。G1を停止させる薬剤、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、及びara-CなどのDNAアルキル化剤は、S期停止にも波及する。更なる情報は、Mendelsohn and Israel,eds.,The Molecular Basis of Cancer,Chapter 1,entitled “Cell cycle regulation,oncogenes,and antineoplastic drugs” by Murakami et al.(W.B.Saunders,Philadelphia,1995)、例えば13頁に見出すことができる。
【0107】
本明細書で使用される「プロドラッグ」という用語は、親薬物と比較して腫瘍細胞への細胞傷害性が低く、より活性な親形態へ酵素的に活性化されるか、変換され得る、薬学的に活性な物質の前駆体または誘導体形態を指す。例えば、Wilman,“Prodrugs in Cancer Chemotherapy” Biochemical Society Transactions,14,pp.375-382,615th Meeting Belfast(1986)及びStella et al.,“Prodrugs:A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery,” Directed Drug Delivery,Borchardt et al.,(ed.),pp.247-267,Humana Press(1985)を参照されたい。本発明のプロドラッグには、ホスフェート含有プロドラッグ、チオホスフェート含有プロドラッグ、スルフェート含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D-アミノ酸修飾プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、β-ラクタム含有プロドラッグ、任意選択により置換されたフェノキシアセトアミド含有プロドラッグまたは任意選択により置換されたフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、5-フルオロシトシン及び他の5-フルオロウリジンプロドラッグが含まれるが、これらに限定されず、これらは、より活性な細胞傷害性遊離薬物に変換され得る。本発明において使用するためのプロドラッグ形態へ誘導体化することができる細胞傷害性薬物の例には、上記の化学療法剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
「放射線療法」とは、細胞に十分なダメージを誘発して、正常に機能する能力を制限するか、または細胞を完全に破壊するために、指向性ガンマ線またはベータ線を使用することを意味する。線量及び治療期間の決定には、当該技術分野において知られている方法が多数あることが理解される。典型的な治療は、1回の照射として施行され、典型的な線量範囲は10~200単位(グレイ)/日である。
【0109】
「抗血管新生剤」または「血管新生阻害剤」とは、血管新生、脈管形成、または望ましくない血管透過性を直接的または間接的に阻害する、低分子量物質、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、単離されたタンパク質、組み換えタンパク質、抗体、またはそのコンジュゲートもしくは融合タンパク質を指す。抗血管新生剤には、血管新生因子またはその受容体に結合して、その血管新生活性を遮断する剤が含まれることを理解されたい。例えば、抗血管新生剤は、上に定義される血管新生剤に対する抗体または他のアンタゴニスト、例えば、VEGF-AまたはVEGF-A受容体(例えば、KDR受容体またはFlt-1受容体)に対する抗体、GLEEVEC(商標)(イマチニブメシル酸塩)などの抗PDGFR阻害剤である。抗血管新生剤にはまた、天然の血管新生阻害剤、例えば、アンギオスタチン、エンドスタチンなどが含まれる。例えば、Klagsbrun and D’Amore,Annu.Rev.Physiol.,53:217-39(1991);Streit and Detmar,Oncogene,22:3172-3179(2003)(例えば、悪性黒色腫の抗血管新生療法を一覧にした表3);Ferrara & Alitalo,Nature Medicine 5(12):1359-1364(1999);Tonini et al.,Oncogene,22:6549-6556(2003)及びSato Int.J.Clin.Oncol.,8:200-206(2003)を参照されたい。
【0110】
本明細書で区別なく使用される、治療目的のための「個体」、「対象」、または「患者」という用語は、ヒト、飼育動物及び家畜、ならびに動物園の動物、競技用の動物、または愛玩動物、例えば、イヌ、ウマ、ネコ、ウシなどを含む哺乳動物に分類される任意の動物を指す。好ましくは、哺乳動物は、ヒトである。
【0111】
本明細書における「抗体」という用語は、その最も広い意味で使用され、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体フラグメント(所望の生物活性を呈する場合に限る)を具体的に包含する。
【0112】
「単離された」抗体は、その自然環境の成分から特定ならびに分離及び/または回収された抗体である。その自然環境の夾雑成分は、抗体の研究上、診断上または治療上での使用を妨げる物質であり、これらには、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性または非タンパク質性の溶質が含まれ得る。いくつかの実施形態において、抗体は、(1)抗体が、例えば、ローリー法によって決定したときに、95重量%を超えるまで、いくつかの実施形態では99重量%を超えるまで、(2)例えば、スピニングカップ配列決定装置の使用により、少なくとも15個のN末端もしくは内部アミノ酸配列の残基を得るのに十分な程度になるまで、または(3)例えば、クマシーブルー染色もしくはシルバー染色を使用して、還元条件もしくは非還元条件下でのSDS-PAGEによって均質性が得られるまで、精製される。単離された抗体には、組み換え細胞内でのin situ抗体が含まれるが、これは、抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないためである。しかしながら、通常、単離された抗体は、少なくとも1つの精製ステップによって調製される。
【0113】
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽鎖(L)及び2つの同一の重鎖(H)から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は、1つのジスルフィド共有結合により重鎖に結合しているが、ジスルフィド結合の数は、種々の免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で異なる。各重鎖及び軽鎖は、規則的な間隔を置いた鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、一端に可変ドメイン(V)を有し、これにいくつかの定常ドメインが続く。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(V)を有し、他端に定常ドメインを有し、軽鎖の定常ドメインは重鎖の第1の定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列する。特定のアミノ酸残基が軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間に界面を形成すると考えられている。
【0114】
「定常ドメイン」という用語は、免疫グロブリンの他の部分である、抗原結合部位を含有する可変ドメインと比べて、より保存されたアミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子の部分を指す。定常ドメインは、重鎖のC1、C2及びC3ドメイン(総称して、CH)及び軽鎖のCHL(またはCL)ドメインを含有する。
【0115】
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」とは、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖の可変ドメインは、「V」と呼ばれることもある。軽鎖の可変ドメインは、「V」と呼ばれることもある。これらのドメインは、一般に、可変性が最も高い抗体部分であり、抗原結合部位を含有する。
【0116】
「可変」という用語は、可変ドメインのある特定の部分の配列が抗体間で大きく異なり、その部分がそれぞれの特定の抗体の特定の抗原に対する結合及び特異性に使用されるという事実を指す。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメイン全体にわたって均等に分布しているわけではない。可変性は、軽鎖及び重鎖の両方の可変ドメイン中の超可変領域(HVR)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのうち、より高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインはそれぞれ、ベータシート立体配置を主として採用する4つのFR領域を含み、これらの領域は3つのHVRによって連結され、これらのHVRは、ベータシート構造に連結するループを形成し、場合により、ベータシート構造の一部を形成するループを形成する。各鎖中のHVRは、FR領域によって極めて近接して一緒に保持され、他方の鎖のHVRとともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,National Institute of Health,Bethesda,Md.(1991)参照)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与しないが、抗体依存性細胞傷害性における抗体の関与などの様々なエフェクター機能を呈する。
【0117】
任意の哺乳動物種に由来する抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(「κ」)及びラムダ(「λ」)と呼ばれる2つの明確に異なる種類のうちの1つに割り当てられ得る。
【0118】
本明細書で使用されるIgG「アイソタイプ」または「サブクラス」という用語は、その定常領域の化学的及び抗原的特徴によって定義される免疫グロブリンのサブクラスのいずれかを意味する。
【0119】
抗体(免疫グロブリン)は、その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンには、5つの主要クラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、これらのクラスのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgA、及びIgAに更に分類され得る。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、γ、ε、γ、及びμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元立体構造は、よく知られており、例えば、Abbas et al.Cellular and Mol.Immunology,4th ed.(W.B.Saunders,Co.,2000)に概説されている。抗体は、抗体と1つ以上の他のタンパク質またはペプチドとの共有結合性または非共有結合性会合によって形成されるより大きな融合分子の一部であり得る。
【0120】
「全長抗体」、「インタクト抗体」、及び「全抗体」という用語は、本明細書で区別なく使用され、以下に定義される抗体フラグメントではなく、その実質的にインタクトな形態にある抗体を指す。これらの用語は、特に、Fc領域を含有する重鎖を含む抗体を指す。
【0121】
「ネイキッド抗体」は、本発明の目的上、細胞傷害性部分または放射性標識にコンジュゲートされていない抗体である。
【0122】
「抗体フラグメント」は、インタクト抗体の一部分を含み、好ましくは、その抗原結合領域を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される抗体フラグメントは、抗原結合フラグメントである。抗体フラグメントの例には、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFvフラグメント;ダイアボディ;直鎖抗体;一本鎖抗体分子;ならびに抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が挙げられる。
【0123】
抗体をパパイン消化すると、各々が単一の抗原結合部位を含む「Fab」フラグメントと呼ばれる2つの同一の抗原結合フラグメントと、残りの「Fc」フラグメントとが生成され、Fcという名称は、容易に結晶化する能力を反映している。ペプシン処理では、2つの抗原結合部位を有し、抗原に依然として架橋することができる、F(ab’)フラグメントが得られる。
【0124】
「Fv」は、完全な抗原結合部位を含有する最小の抗体フラグメントである。一実施形態において、二本鎖Fv種は、1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインの二量体から構成され、非共有結合的にしっかり会合している。一本鎖Fv(scFv)種の場合、1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインをフレキシブルペプチドリンカーにより共有結合することができ、それにより、軽鎖及び重鎖が二本鎖Fv種の構造に類似した「二量体」構造で会合できるようにする。この立体配置において、各可変ドメインの3つのHVRが相互作用して、VH-VL二量体の表面上に抗原結合部位を画定する。全体として、6つのHVRが、抗体に抗原結合特異性を付与する。しかしながら、単一可変ドメイン(または抗原に特異的なHVRを3つしか含まないFvの半分)であっても、全結合部位よりも低い親和性であるが、抗原を認識し結合する能力を有する。
【0125】
Fabフラグメントは、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含有し、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)も含有する。Fab’フラグメントは、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に、抗体ヒンジ領域に由来するシステインを1つ以上含む数個の残基が付加されている点でFabフラグメントとは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を持つFab’についての本明細書中の表記である。F(ab’)抗体フラグメントは、元来、フラグメントの間にヒンジシステインを有する、Fab’フラグメントの対として作製された。抗体フラグメントの他の化学的カップリングも知られている。
【0126】
「一本鎖Fv」または「scFv」抗体フラグメントは、抗体のVHドメイン及びVLドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖中に存在する。一般に、scFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーを更に含み、これにより、scFvが抗原結合に望ましい構造を形成することが可能になる。scFvの概説については、例えば、Pluckthun,The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag,New York,1994),pp.269-315を参照されたい。
【0127】
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を含む抗体フラグメントであって、軽鎖可変ドメイン(VL)に連結された重鎖可変ドメイン(VH)を同じポリペプチド鎖(VH-VL)中に含むフラグメントを指す。同じ鎖上の2つのドメイン間で対合が起こらないような短いリンカーを使用することにより、これらのドメインを別の鎖の相補的ドメインと対合させ、2つの抗原結合部位を形成させる。ダイアボディは、二価または二重特異性であり得る。ダイアボディは、例えば、EP404,097;WO1993/01161;Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003);及びHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993)において、より完全に記載されている。トリアボディ及びテトラボディについても、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003)に記載されている。
【0128】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均質な抗体の集団から得られた抗体を指し、例えば、その集団に含まれる個々の抗体は、微量に存在し得る可能性のある変異、例えば、自然に発生する変異を除いて、同一である。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、別個の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示す。特定の実施形態において、そのようなモノクローナル抗体は、典型的に、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、標的結合ポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列から単一の標的結合ポリペプチド配列の選択を含むプロセスによって得られたものである。例えば、この選択プロセスは、ハイブリドーマクローン、ファージクローン、または組み換えDNAクローンのプールなどの複数のクローンからユニークなクローンを選択することであり得る。選択された標的結合配列を更に改変して、例えば、標的に対する親和性を改善すること、標的結合配列をヒト化すること、細胞培養における産生を改善すること、in vivoでの免疫原性を下げること、多重特異性抗体を作製することなどが可能であり、改変された標的結合配列を含む抗体もまた本発明のモノクローナル抗体であることが理解されるべきである。異なる決定基(エピトープ)を対象とする種々の抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基を対象とする。その特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、他の免疫グロブリンで汚染されていないという点で有利である。
【0129】
「モノクローナル」という修飾語句は、実質的に均質な抗体集団から得られるという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、様々な技術によって作製することができ、これらには、例えば、ハイブリドーマ法(例えば、Kohler and Milstein,Nature,256:495-97(1975)、Hongo et al.,Hybridoma,14(3):253-260(1995)、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988)、Hammerling et al.,Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681(Elsevier,N.Y.,1981))、組み換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号参照)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clackson et al.,Nature,352:624-628(1991)、Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1992)、Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299-310(2004)、Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073-1093(2004)、Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467-12472(2004)、及びLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1-2):119-132(2004)参照)、及びヒト免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子座または遺伝子の一部または全てを有する動物におけるヒト抗体またはヒト様抗体の産生技術(例えば、WO1998/24893、WO1996/34096、WO1996/33735、WO1991/10741、Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551(1993)、Jakobovits et al.,Nature 362:255-258(1993)、Bruggemann et al.,Year in Immunol.7:33(1993)、米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号及び同第5,661,016号、Marks et al.,Bio/Technology 10:779-783(1992)、Lonberg et al.,Nature 368:856-859(1994)、Morrison,Nature 368:812-813(1994)、Fishwild et al.,Nature Biotechnol.14:845-851(1996)、Neuberger,Nature Biotechnol.14:826(1996)、ならびにLonberg et al.,Intern.Rev.Immunol.13:65-93(1995)参照)が挙げられる。
【0130】
本明細書におけるモノクローナル抗体には、具体的に、重鎖及び/または軽鎖の一部分が、特定の種に由来する抗体または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または同種であるのに対して、鎖(複数可)の残り部分は、別の種に由来する抗体または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または同種である「キメラ」抗体、ならびにそのような抗体のフラグメント(所望の生物活性を呈する場合に限る)が含まれる(例えば、米国特許第4,816,567号;及びMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855(1984)参照)。キメラ抗体には、PRIMATIZED(登録商標)抗体が含まれ、この抗体の抗原結合領域は、例えば、マカクザルを目的の抗原で免疫化することによって産生された抗体に由来する。
【0131】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含有するキメラ抗体である。一実施形態において、ヒト化抗体は、レシピエントのHVRに由来する残基が、所望される特異性、親和性及び/または能力を有するマウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)のHVRに由来する残基で置き換えられている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの実施形態において、ヒト免疫グロブリンのFR残基は、対応する非ヒト残基で置き換えられる。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にもみられない残基を含み得る。これらの修飾は、抗体性能を更に改良するために行われ得る。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、ここで、超可変ループの全てまたは実質的に全ては、非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FRの全てまたは実質的に全ては、ヒト免疫グロブリン配列のFRである。ヒト化抗体はまた、任意選択により、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的にはヒト免疫グロブリンの少なくとも一部分を含む。更なる詳細については、例えば、Jones et al.,Nature 321:522-525(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988);及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(1992)を参照されたい。また、例えば、Vaswani and Hamilton,Ann.Allergy,Asthma & Immunol.1:105-115(1998);Harris,Biochem.Soc.Transactions 23:1035-1038(1995);Hurle and Gross,Curr.Op.Biotech.5:428-433(1994);ならびに米国特許第6,982,321号及び同第7,087,409号を参照されたい。
【0132】
「ヒト抗体」は、ヒトによって産生される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体、及び/または本明細書で開示されるヒト抗体作製技術のいずれかを使用して作製された抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を具体的に除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリーを含む、当該技術分野において知られている様々な技術を使用して作製することができる。Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581(1991).ヒトモノクローナル抗体の調製には、Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985);Boerner et al.,J.Immunol.,147(1):86-95(1991)に記載されている方法も利用可能である。van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.,5:368-74(2001)も参照されたい。ヒト抗体は、抗原刺激に応答してかかる抗体を産生するよう改変されているが、その内因性遺伝子座は無効化されているトランスジェニック動物、例えば、免疫化異種マウスに抗原を投与することによって、調製することができる(XENOMOUSE(商標)技術に関しては、例えば、米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号参照)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術によって生成されるヒト抗体については、例えば、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3562(2006)も参照されたい。
【0133】
「種依存性抗体」は、第1の哺乳動物種に由来する抗原に対する結合親和性が、第2の哺乳動物種に由来する抗原のホモログに対する結合親和性よりも強い抗体である。通常、種依存性抗体は、ヒト抗原に「特異的に結合する」(例えば、約1×10-7M以下、好ましくは、約1×10-8M以下及び好ましくは、約1×10-9M以下の結合親和性(Kd)値を有する)が、第2の非ヒト哺乳動物種に由来する抗原のホモログに対する結合親和性は、ヒト抗原に対するその結合親和性よりも少なくとも約50倍、または少なくとも約500倍、または少なくとも約1000倍弱い結合親和性を有する。種依存性抗体は、上に定義される様々な種類の抗体のいずれかであり得るが、好ましくは、ヒト化またはヒト抗体である。
【0134】
「超可変領域」、「HVR」、または「HV」という用語は、本明細書で使用されるとき、配列が超可変であり、及び/または構造的に定義されたループを形成する、抗体可変ドメインの領域を指す。一般に、抗体は、6つのHVRを含み、3つがVH(H1、H2、H3)にあり、3つがVL(L1、L2、L3)にある。天然抗体において、H3及びL3が6つのHVRのうちで最も高い多様性を呈し、特にH3が抗体に優れた特異性を与える上で特有の役割を果たすと考えられる。例えば、Xu et al.,Immunity 13:37-45(2000);Johnson and Wu,Methods in Molecular Biology 248:1-25(Lo,ed.,Human Press,Totowa,N.J.,2003)を参照されたい。事実、重鎖のみからなる天然ラクダ抗体は、軽鎖がない状態で、機能的であり、安定している。例えば、Hamers-Casterman et al.,Nature 363:446-448(1993);Sheriff et al.,Nature Struct.Biol.3:733-736(1996)を参照されたい。
【0135】
多くのHVR記述が本明細書で使用され、本明細書に包含される。Kabat相補性決定領域(CDR)は、配列可変性に基づくものであり、最も一般的に使用されている(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。Chothiaは、むしろ、構造的ループの位置に言及するものである(Chothia and Lesk J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。AbM HVRは、KabatのHVRとChothiaの構造的ループとの間の折衷案を示すものであり、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアで使用されている。「接触」HVRは、利用可能な複合体結晶構造の分析に基づくものである。これらのHVRの各々の残基を、以下に示す。
【0136】
HVRは、次の「伸長HVR」を含み得る:VL中、24~36または24~34(L1)、46~56または50~56(L2)及び89~97または89~96(L3)ならびにVH中、26~35(H1)、50~65または49~65(H2)及び93~102、94~102、または95~102(H3)。可変ドメイン残基は、これらの定義の各々に対して、Kabat et al.(上掲)に従ってナンバリングされる。
【0137】
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書で定義されるHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0138】
「Kabatにおける可変ドメイン残基ナンバリング」または「Kabatにおけるアミノ酸位置ナンバリング」という用語及びその変形は、Kabat et al.(上掲)において、抗体の編成について重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに使用されるナンバリングシステムを指す。このナンバリングシステムを使用する場合、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRまたはHVRの短縮に応じてアミノ酸がより少ないこともあれば、FRまたはHVRへの挿入に応じて追加のアミノ酸を含有することもある。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に1つのアミノ酸挿入(Kabatに従うと残基52a)を含み得、重鎖FR残基82の後に複数の挿入された残基(例えば、Kabatに従うと残基82a、82b及び82cなど)を含み得る。所与の抗体に対する残基のKabatナンバリングは、抗体の配列と「標準的な」Kabatナンバリング配列との相同領域でのアラインメントによって決定され得る。
【0139】
Kabatナンバリングシステムは、一般に、可変ドメイン中の残基(概ね、軽鎖の残基1~107及び重鎖の残基1~113)について言及する際に使用される(例えば、Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest.5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。「EUナンバリングシステム」または「EUインデックス」は、一般に、免疫グロブリン重鎖定常領域中の残基について言及する際に使用される(例えば、Kabat et al.(上掲)で報告されるEUインデックス)。「Kabatに従うEUインデックス」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基ナンバリングを指す。
【0140】
「直鎖抗体」という表現は、Zapata et al.(1995 Protein Eng,8(10):1057-1062)に記載されている抗体を指す。簡潔に述べると、これらの抗体は、相補的な軽鎖ポリペプチドとともに一対の抗原結合領域を形成する、一対のタンデムFdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む。直鎖抗体は、二重特異性または単一特異性であり得る。
【0141】
明細書で使用されるとき、「結合する」、「~に特異的に結合する」、または「~に特異的である」という用語は、標的と抗体との間の結合などの測定可能かつ再現可能な相互作用を指し、生物学的分子を含む不均質な分子集団の存在下において標的の存在を決定付ける。例えば、標的(エピトープであり得る)に結合するまたは特異的に結合する抗体は、他の標的に結合する場合よりも大きな親和性、アビディティで、より容易に、及び/またはより長い時間、この標的に結合する抗体である。一実施形態において、抗体が無関係の標的に結合する程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)で測定される場合、抗体の標的への結合の約10%未満である。特定の実施形態において、標的に特異的に結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、または≦0.1nMの解離定数(Kd)を有する。特定の実施形態において、抗体は、異なる種に由来するタンパク質のなかで保存されているタンパク質上のエピトープに特異的に結合する。別の実施形態において、特異的結合は、排他的結合を含み得るが、これを必要とするものではない。
【0142】
本明細書で特定されるポリペプチド配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、配列を整列させ、必要に応じて最大配列同一性パーセントを達成するためにギャップを導入した後、あらゆる保存的置換を配列同一性の一部として考慮せずに、候補配列中のアミノ酸残基が、比較されるポリペプチド内のアミノ酸残基と同一である割合として定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するためのアライメントは、当該技術分野の技術範囲内の様々な方法、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの一般に利用可能なコンピューターソフトウェアを使用して達成することができる。当業者であれば、比較される配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アライメントを評価するための適切なパラメーターを決定することができる。しかしながら、本発明の目的上、アミノ酸配列同一性%の値は、配列比較コンピュータープログラムALIGN-2を使用して生成される。ALIGN-2配列比較コンピュータープログラムは、Genentech,Inc.が作成したものであり、そのソースコードは、ユーザードキュメンテーションとともに米国著作権局(Washington D.C.,20559)に申請されており、米国著作権登録第TXU510087号として登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech,Inc.(South San Francisco,California)を通じて公表されている。ALIGN-2プログラムは、UNIXオペレーティングシステム、好ましくは、デジタルUNIX V4.0D上で使用するためにコンパイルする必要がある。全ての配列比較パラメーターは、ALIGN-2プログラムによって設定されており、変化しない。
【0143】
アミノ酸配列比較にALIGN-2が採用される場合、所与のアミノ酸配列Bへの、当該配列Bとの、または当該配列Bに対する、所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(所与のアミノ酸配列Bへ、当該配列Bと、または当該配列Bに対して、ある特定のアミノ酸配列同一性%を有するまたは含む所与のアミノ酸配列Aと表現することもできる)は、以下のように計算される。
100×分数X/Y
式中、Xは、配列アライメントプログラムALIGN-2によって、AとBのプログラムのアライメントで完全な一致としてスコアリングされたアミノ酸残基の数であり、Yは、Bのアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、Bに対するAのアミノ酸配列同一性%は、Aに対するBのアミノ酸配列同一性%と等しくないことが理解される。特に明記しない限り、本明細書で使用される全てのアミノ酸配列同一性%の値は、直前の段落に記載されるように、ALIGN-2コンピュータープログラムを使用して得られる。
【0144】
本明細書に記載されるアミノ酸配列は、特に指定されない限り、連続するアミノ酸配列である。
【0145】
「添付文書」という用語は、治療用製品の商業包装に通常含まれる説明書を指すために使用され、かかる治療用製品の適応症、用法、投薬量、投与、併用療法、禁忌及び/または使用に関する警告についての情報が含まれる。
【0146】
「医薬製剤」及び「医薬組成物」という用語は、本明細書で区別なく使用され、含有される有効成分の生物活性が有効になるような形態であり、かつ当該製剤が投与される対象にとって許容できないほど毒性がある追加の成分を何ら含有しない調製物を指す。そのような製剤は、無菌である。好ましい実施形態において、医薬組成物または医薬製剤は、ヒト対象に投与される。
【0147】
「無菌」医薬製剤は、無菌であるか、または全ての生きている微生物及びその胞子を実質的に含まない。
【0148】
「薬学的に許容される担体」は、対象にとって無毒である、有効成分以外の医薬製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体には、緩衝液、賦形剤、安定剤、または防腐剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0149】
本明細書で使用されるとき、「投与すること」は、化合物(例えば、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及び/またはタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル))または組成物(例えば、医薬組成物、例えば、PD-1軸結合アンタゴニスト及び/またはタキサンを含む医薬組成物、任意選択により、追加の治療薬も含む)の投薬量を対象に与える方法を意味する。本明細書に記載の方法において活用される組成物は、例えば、硝子体内、筋肉内、静脈内、皮内、経皮、動脈内、腹腔内、病巣内、頭蓋内、関節内、前立腺内、胸膜内、気管内、髄腔内、鼻腔内、膣内、直腸内、局所、腫瘍内、腹膜内、皮下、結膜下、小嚢内、粘膜、心膜内、臍帯内、眼内、眼窩内、経口、局所、経皮、眼周囲、結膜、テノン嚢下、前房内、網膜下、眼球後、小管内、吸入、注射、埋め込み、注入、持続注入、標的細胞を直接的に浸す局所灌流、カテーテル、洗浄、クリーム中、または脂質組成物中で投与することができる。本明細書に記載の方法で利用される組成物はまた、全身または局所に投与することができる。投与方法は、様々な要因(例えば、投与される化合物または組成物及び治療される状態、疾患または障害の重症度)に応じて変わり得る。
【0150】
III.診断方法
本明細書で提供されるのは、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)を含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、がん(例えば、乳癌)に罹患している患者を特定するための診断方法である。本明細書で提供されるのはまた、がん(例えば、乳癌)に罹患している患者が、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)を含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかを予測する方法である。更に、本明細書で提供されるのは、がん(例えば、乳癌)に罹患している患者のための抗がん療法を選択する方法である。いくつかの実施形態において、方法は、本発明の少なくとも1つのバイオマーカー、例えば、PD-L1(例えば、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞(IC)におけるPD-L1発現及び/または患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞(TC)におけるPD-L1発現)、CD8(例えば、患者から得られた腫瘍サンプル中のCD8発現)の存在もしくはレベル、及び/または間質TIL(sTIL)の存在、例えば、患者から得られた腫瘍サンプル中の存在を決定することを含む。例えば、いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性である。いくつかの実施形態において、患者は、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)に罹患している。いくつかの実施形態において、患者は、これまでに局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)の治療を受けたことがない。言い換えれば、本明細書で提供される方法は、未治療患者のために、例えば、患者のための一次選択療法を選択するために使用され得る。いくつかの実施形態において、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかは、無増悪生存期間の観点から決定される。他の実施形態において、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかは、全生存期間の観点から決定される。
【0151】
例えば、本明細書で提供されるのは、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)に罹患している患者を特定するための方法であり、当該方法は、患者から得られたサンプル(例えば、腫瘍サンプル)中のPD-L1の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)の治療を受けたことがなく、サンプル中の検出可能なPD-L1の発現レベルにより、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される。
【0152】
別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)に罹患している患者が、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかを予測するための方法であり、当該方法は、患者から得られたサンプル(例えば、腫瘍サンプル)中のPD-L1の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)の治療を受けたことがなく、サンプル中の検出可能なPD-L1の発現レベルは、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0153】
更なる例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)に罹患している患者のための抗がん療法を選択するための方法であり、当該方法は、(a)これまでに乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)の治療を受けたことがない患者から得られたサンプル(例えば、腫瘍サンプル)中のPD-L1の発現レベルを決定することと、(b)サンプル中の検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、患者のための抗がん療法を選択することと、を含む。
【0154】
任意の好適なサンプルが使用され得る。例えば、サンプルは、腫瘍サンプルであり得る。
【0155】
別の例において、本明細書で提供されるのは、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)に罹患している患者を特定するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)の治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルにより、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される。
【0156】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)に罹患している患者が、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかを予測するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)の治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルは、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0157】
また更なる例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)に罹患している患者のための抗がん療法を選択するための方法であり、当該方法は、(a)これまでに乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)の治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、患者のための抗がん療法を選択することと、を含む。
【0158】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、局所進行性または転移性乳癌は、局所進行性または転移性TNBCである。
【0159】
一例において、本明細書で提供されるのは、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、局所進行性TNBCに罹患している患者を特定するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルにより、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される。
【0160】
別の例において、本明細書で提供されるのは、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、転移性TNBCに罹患している患者を特定するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルにより、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される。
【0161】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者が、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかを予測するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルは、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0162】
更なる例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者が、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかを予測するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルは、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0163】
また更なる例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者のための抗がん療法を選択するための方法であり、当該方法は、(a)これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、患者のための抗がん療法を選択することと、を含む。
【0164】
また更なる例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者のための抗がん療法を選択するための方法であり、当該方法は、(a)これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、患者のための抗がん療法を選択することと、を含む。
【0165】
一例において、本明細書で提供されるのは、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、局所進行性TNBCに罹患している患者を特定するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルにより、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される。
【0166】
別の例において、本明細書で提供されるのは、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、転移性TNBCに罹患している患者を特定するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルにより、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される。
【0167】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者が、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかを予測するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルは、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0168】
更なる例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者が、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかを予測するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルは、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0169】
また更なる例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者のための抗がん療法を選択するための方法であり、当該方法は、(a)これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、患者のための抗がん療法を選択することと、を含む。
【0170】
また更なる例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者のための抗がん療法を選択するための方法であり、当該方法は、(a)これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、患者のための抗がん療法を選択することと、を含む。
【0171】
一例において、本明細書で提供されるのは、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、局所進行性TNBCに罹患している患者を特定するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルにより、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される。
【0172】
別の例において、本明細書で提供されるのは、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む抗がん療法を含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、転移性TNBCに罹患している患者を特定するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルにより、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される。
【0173】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者が、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかを予測するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルは、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0174】
更なる例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者が、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかを予測するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルは、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0175】
また更なる例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者のための抗がん療法を選択するための方法であり、当該方法は、(a)これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む、患者のための抗がん療法を選択することと、を含む。
【0176】
また更なる例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者のための抗がん療法を選択するための方法であり、当該方法は、(a)これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む、患者のための抗がん療法を選択することと、を含む。
【0177】
一例において、本明細書で提供されるのは、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、局所進行性TNBCに罹患している患者を特定するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルにより、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される。
【0178】
別の例において、本明細書で提供されるのは、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む抗がん療法を含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、転移性TNBCに罹患している患者を特定するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルにより、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される。
【0179】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者が、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかを予測するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルは、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0180】
更なる例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者が、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかを予測するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルは、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0181】
また更なる例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者のための抗がん療法を選択するための方法であり、当該方法は、(a)これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む、患者のための抗がん療法を選択することと、を含む。
【0182】
また更なる例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者のための抗がん療法を選択するための方法であり、当該方法は、(a)これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む、患者のための抗がん療法を選択することと、を含む。
【0183】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプルの約1%以上(例えば、約1%以上、2%以上、3%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、11%以上、12%以上、13%以上、14%以上、15%以上、16%以上、17%以上,18%以上、19%以上、20%以上、21%以上、22%以上、23%以上、24%以上、25%以上、26%以上、27%以上、28%以上、29%以上、30%以上、31%以上、32%以上、33%以上、34%以上、35%以上、36%以上、37%以上、38%以上、39%以上、40%以上、41%以上、42%以上、43%以上、44%以上、45%以上、46%以上、47%以上、48%以上、49%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上、約99%以上、または100%)を占める腫瘍浸潤免疫細胞において、検出可能なPD-L1の発現レベルを有することが決定されている。例えば、いくつかの実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプルの約1%~約5%未満(例えば、1%~4.9%、1%~4.5%、1%~4%、1%~3.5%、1%~3%、1%~2.5%、または1%~2%)を占める腫瘍浸潤免疫細胞において、検出可能なPD-L1の発現レベルを有することが決定されている。
【0184】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞の約1%以上(例えば、約1%以上、2%以上、3%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、11%以上、12%以上、13%以上、14%以上、15%以上、16%以上、17%以上,18%以上、19%以上、20%以上、21%以上、22%以上、23%以上、24%以上、25%以上、26%以上、27%以上、28%以上、29%以上、30%以上、31%以上、32%以上、33%以上、34%以上、35%以上、36%以上、37%以上、38%以上、39%以上、40%以上、41%以上、42%以上、43%以上、44%以上、45%以上、46%以上、47%以上、48%以上、49%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上、約99%以上、または100%)において、検出可能なPD-L1の発現レベルを有することが決定されている。例えば、いくつかの実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞の約1%~約5%未満(例えば、1%~4.9%、1%~4.5%、1%~4%、1%~3.5%、1%~3%、1%~2.5%、または1%~2%)において、検出可能なPD-L1の発現レベルを有することが決定されている。
【0185】
他の実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプルの約5%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞において、検出可能なPD-L1の発現レベルを有することが決定されている。例えば、いくつかの実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプルの約5%~約10%未満(例えば、5%~9.5%、5%~9%、5%~8.5%、5%~8%、5%~7.5%、5%~7%、5%~6.5%、5%~6%、5%~5.5%、6%~9.5%、6%~9%、6%~8.5%、6%~8%、6%~7.5%、6%~7%、6%~6.5%、7%~9.5%、7%~9%、7%~7.5%、8%~9.5%、8%~9%、または8%~8.5%)を占める腫瘍浸潤免疫細胞において、検出可能なPD-L1の発現レベルを有することが決定されている。
【0186】
更に他の実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞の約5%以上において、検出可能なPD-L1の発現レベルを有することが決定されている。例えば、いくつかの実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞の約5%~約10%未満(例えば、5%~9.5%、5%~9%、5%~8.5%、5%~8%、5%~7.5%、5%~7%、5%~6.5%、5%~6%、5%~5.5%、6%~9.5%、6%~9%、6%~8.5%、6%~8%、6%~7.5%、6%~7%、6%~6.5%、7%~9.5%、7%~9%、7%~7.5%、8%~9.5%、8%~9%、または8%~8.5%)において、検出可能なPD-L1の発現レベルを有することが決定されている。
【0187】
また更なる実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプルの約10%以上(例えば、10%以上、11%以上、12%以上、13%以上、14%以上、15%以上、16%以上、17%以上,18%以上、19%以上、20%以上、21%以上、22%以上、23%以上、24%以上、25%以上、26%以上、27%以上、28%以上、29%以上、30%以上、31%以上、32%以上、33%以上、34%以上、35%以上、36%以上、37%以上、38%以上、39%以上、40%以上、41%以上、42%以上、43%以上、44%以上、45%以上、46%以上、47%以上、48%以上、49%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、または100%)を占める腫瘍浸潤免疫細胞において、検出可能なPD-L1の発現レベルを有することが決定されている。
【0188】
また更なる実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞の約10%以上(例えば、10%以上、11%以上、12%以上、13%以上、14%以上、15%以上、16%以上、17%以上、18%以上、19%以上、20%以上、21%以上、22%以上、23%以上、24%以上、25%以上、26%以上、27%以上、28%以上、29%以上、30%以上、31%以上、32%以上、33%以上、34%以上、35%以上、36%以上、37%以上、38%以上、39%以上、40%以上、41%以上、42%以上、43%以上、44%以上、45%以上、46%以上、47%以上、48%以上、49%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、または100%)において、検出可能なPD-L1の発現レベルを有することが決定されている。
【0189】
更に他の実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約50%以上(例えば、約50%以上、51%以上、52%以上、53%以上、54%以上、55%以上、56%以上、57%以上、58%以上、59%以上、60%以上、61%以上、62%以上、63%以上、64%以上、65%以上、66%以上、67%以上、68%以上、69%以上、70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上)において、検出可能なPD-L1の発現レベルを有すること、及び/または腫瘍サンプルの約10%以上(例えば、10%以上、11%以上、12%以上、13%以上、14%以上、15%以上、16%以上、17%以上,18%以上、19%以上、20%以上、21%以上、22%以上、23%以上、24%以上、25%以上、26%以上、27%以上、28%以上、29%以上、30%以上、31%以上、32%以上、33%以上、34%以上、35%以上、36%以上、37%以上、38%以上、39%以上、40%以上、41%以上、42%以上、43%以上、44%以上、45%以上、46%以上、47%以上、48%以上、49%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、または100%)を占める腫瘍浸潤免疫細胞において、検出可能なPD-L1の発現レベルを有することが決定されている。
【0190】
前述の方法のいずれにおいても、腫瘍浸潤免疫細胞で占められる腫瘍サンプルの割合は、患者から得られた腫瘍サンプルの切片中で、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、SP142抗体)を使用するIHCによって評価される、腫瘍浸潤免疫細胞により占められる腫瘍領域の割合に基づき得ることを理解されたい。例えば、実施例3(例えば、表5)を参照されたい。
【0191】
別の例において、本明細書で提供されるのは、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)に罹患している患者を特定するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)の治療を受けたことがなく、腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルにより、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される。
【0192】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)に罹患している患者が、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかを予測するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)の治療を受けたことがなく、腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルは、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0193】
更なる例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)に罹患している患者のための抗がん療法を選択するための方法であり、当該方法は、(a)これまでに乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)の治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、患者のための抗がん療法を選択することと、を含む。
【0194】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、局所進行性または転移性乳癌は、局所進行性または転移性TNBCである。
【0195】
一例において、本明細書で提供されるのは、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、局所進行性TNBCに罹患している患者を特定するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルにより、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される。
【0196】
別の例において、本明細書で提供されるのは、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、転移性TNBCに罹患している患者を特定するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルにより、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される。
【0197】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者が、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかを予測するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルは、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0198】
更なる例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者が、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかを予測するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルは、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0199】
また更なる例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者のための抗がん療法を選択するための方法であり、当該方法は、(a)これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、患者のための抗がん療法を選択することと、を含む。
【0200】
また更なる例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者のための抗がん療法を選択するための方法であり、当該方法は、(a)これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、患者のための抗がん療法を選択することと、を含む。
【0201】
一例において、本明細書で提供されるのは、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、局所進行性TNBCに罹患している患者を特定するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルにより、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される。
【0202】
別の例において、本明細書で提供されるのは、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、転移性TNBCに罹患している患者を特定するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルにより、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される。
【0203】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者が、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかを予測するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルは、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0204】
更なる例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者が、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかを予測するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルは、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0205】
また更なる例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者のための抗がん療法を選択するための方法であり、当該方法は、(a)これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む、患者のための抗がん療法を選択することと、を含む。
【0206】
また更なる例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者のための抗がん療法を選択するための方法であり、当該方法は、(a)これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む、患者のための抗がん療法を選択することと、を含む。
【0207】
一例において、本明細書で提供されるのは、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、局所進行性TNBCに罹患している患者を特定するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルにより、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される。
【0208】
別の例において、本明細書で提供されるのは、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、転移性TNBCに罹患している患者を特定するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルにより、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される。
【0209】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者が、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかを予測するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルは、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0210】
更なる例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者が、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかを予測するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルは、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0211】
また更なる例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者のための抗がん療法を選択するための方法であり、当該方法は、(a)これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む、患者のための抗がん療法を選択することと、を含む。
【0212】
また更なる例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者のための抗がん療法を選択するための方法であり、当該方法は、(a)これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む、患者のための抗がん療法を選択することと、を含む。
【0213】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上(例えば、約1%以上、2%以上、3%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、11%以上、12%以上、13%以上、14%以上、15%以上、16%以上、17%以上,18%以上、19%以上、20%以上、21%以上、22%以上、23%以上、24%以上、25%以上、26%以上、27%以上、28%以上、29%以上、30%以上、31%以上、32%以上、33%以上、34%以上、35%以上、36%以上、37%以上、38%以上、39%以上、40%以上、41%以上、42%以上、43%以上、44%以上、45%以上、46%以上、47%以上、48%以上、49%以上、50%以上、51%以上、52%以上、53%以上、54%以上、55%以上、56%以上、57%以上、58%以上、59%以上、60%以上、61%以上、62%以上、63%以上、64%以上、65%以上、66%以上、67%以上、68%以上、69%以上、70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上)において、検出可能なPD-L1の発現レベルを有することが決定されている。例えば、いくつかの実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%~約5%未満(例えば、1%~4.9%、1%~4.5%、1%~4%、1%~3.5%、1%~3%、1%~2.5%、または1%~2%)において、検出可能なPD-L1の発現レベルを有することが決定されている。他の実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%未満において、検出可能なPD-L1の発現レベルを有することが決定されている。
【0214】
他の実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約5%以上において、検出可能なPD-L1の発現レベルを有することが決定されている。例えば、いくつかの実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約5%~50%未満(例えば、5%~49.5%、5%~45%、5%~40%、5%~35%、5%~30%、5%~25%、5%~20%、5%~15%、5%~10%、5%~9%、5%~8%、5%~7%、5%~6%、10%~49.5%、10%~40%、10%~35%、10%~30%、10%~25%、10%~20%、10%~15%、15%~49.5%、15%~45%、15%~40%、15%~35%、15%~30%、15%~30%、15%~25%、15%~20%、20%~49.5%、20%~45%、20%~40%、20%~35%、20%~30%、20%~25%、25%~49.5%、25%~45%、25%~40%、25%~35%、25%~30%、30%~49.5%、30%~45%、30%~40%、30%~35%、35%~49.5%、35%~45%、35%~40%、40%~49.5%、40%~45%、または45%~49.5%)において、検出可能なPD-L1の発現レベルを有することが決定されている。
【0215】
更に他の実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約50%以上(例えば、約50%以上、51%以上、52%以上、53%以上、54%以上、55%以上、56%以上、57%以上、58%以上、59%以上、60%以上、61%以上、62%以上、63%以上、64%以上、65%以上、66%以上、67%以上、68%以上、69%以上、70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上)において、検出可能なPD-L1の発現レベルを有することが決定されている。いくつかの実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約50%~約99%(例えば、50%~99%、50%~95%、50%~90%、50%~85%、50%~80%、50%~75%、50%~70%、50%~65%、50%~60%、50%~55%、55%~99%、55%~95%、55%~90%、55%~85%、55%~80%、55%~75%、55%~70%、55%~65%、55%~60%、60%~99%、60%~95%、60%~90%、60%~85%、60%~80%、60%~75%、60%~70%、60%~65%、65%~99%、65%~95%、65%~90%、65%~85%、65%~80%、65%~75%、65%~70%、70%~99%、70%~95%、70%~90%、70%~85%、70%~80%、70%~75%、75%~99%、75%~95%、75%~90%、75%~85%、75%~80%、80%~99%、80%~95%、80%~90%、80%~85%、85%~99%、85%~95%、85%~90%、90%~99%、または90%~95%)において、検出可能なPD-L1の発現レベルを有することが決定されている。
【0216】
別の例において、本明細書で提供されるのは、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)に罹患している患者を特定するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるCD8の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)の治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルにより、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される。
【0217】
別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)に罹患している患者が、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかを予測するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるCD8の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)の治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルは、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0218】
更なる例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)に罹患している患者のための抗がん療法を選択するための方法であり、当該方法は、(a)これまでに乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)の治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるCD8の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルに基づいて、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、患者のための抗がん療法を選択することと、を含む。
【0219】
本明細書に記載される方法のいずれも、PD-L1、CD8、及びsTILのうちの2つ以上の存在及び/または発現レベルを決定することを含み得る。例えば、いくつかの実施形態において、方法は、PD-L1及びCD8の存在及び/または発現レベルを決定することを含む。別の実施形態において、方法は、PD-L1及びsTILの存在及び/または発現レベルを決定することを含む。別の実施形態において、方法は、CD8及びsTILの存在及び/または発現レベルを決定することを含む。別の実施形態において、方法は、PD-L1、CD8、及びsTILの存在及び/または発現レベルを決定することを含む。
【0220】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、局所進行性または転移性乳癌は、局所進行性または転移性TNBCである。
【0221】
一例において、本明細書で提供されるのは、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、局所進行性TNBCに罹患している患者を特定するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるCD8の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルにより、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される。
【0222】
別の例において、本明細書で提供されるのは、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、転移性TNBCに罹患している患者を特定するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるCD8の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルにより、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される。
【0223】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者が、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかを予測するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるCD8の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルは、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0224】
更なる例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者が、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかを予測するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるCD8の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルは、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0225】
また更なる例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者のための抗がん療法を選択するための方法であり、当該方法は、(a)これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるCD8の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルに基づいて、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、患者のための抗がん療法を選択することと、を含む。
【0226】
また更なる例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者のための抗がん療法を選択するための方法であり、当該方法は、(a)これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるCD8の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルに基づいて、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、患者のための抗がん療法を選択することと、を含む。
【0227】
一例において、本明細書で提供されるのは、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、局所進行性TNBCに罹患している患者を特定するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるCD8の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルにより、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される。
【0228】
別の例において、本明細書で提供されるのは、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、転移性TNBCに罹患している患者を特定するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるCD8の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルにより、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される。
【0229】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者が、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかを予測するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるCD8の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルは、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0230】
更なる例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者が、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかを予測するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるCD8の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルは、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0231】
また更なる例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者のための抗がん療法を選択するための方法であり、当該方法は、(a)これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるCD8の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルに基づいて、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む、患者のための抗がん療法を選択することと、を含む。
【0232】
また更なる例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者のための抗がん療法を選択するための方法であり、当該方法は、(a)これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるCD8の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルに基づいて、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む、患者のための抗がん療法を選択することと、を含む。
【0233】
一例において、本明細書で提供されるのは、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、局所進行性TNBCに罹患している患者を特定するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるCD8の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルにより、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される。
【0234】
別の例において、本明細書で提供されるのは、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、転移性TNBCに罹患している患者を特定するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるCD8の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルにより、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される。
【0235】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者が、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかを予測するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるCD8の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルは、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0236】
更なる例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者が、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかを予測するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるCD8の発現レベルを決定することを含み、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルは、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0237】
また更なる例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者のための抗がん療法を選択するための方法であり、当該方法は、(a)これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるCD8の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルに基づいて、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む、患者のための抗がん療法を選択することと、を含む。
【0238】
また更なる例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者のための抗がん療法を選択するための方法であり、当該方法は、(a)これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるCD8の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルに基づいて、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む、患者のための抗がん療法を選択することと、を含む。
【0239】
例えば、いくつかの実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプルの約0.5%以上、約0.55%以上、約0.6%以上、約0.65%以上、約0.7%以上、約0.75%以上、約0.8%以上、約0.85%以上、約0.9%以上、約0.95%以上、約1%以上、約1.05%以上、約1.1%以上、約1.2%以上、約1.25%以上、約1.3%以上、約1.35%以上、約1.4%以上、約1.45%以上、約1.5%以上、約1.55%以上、約1.6%以上、約1.65%以上、約1.7%以上、約1.75%以上、約1.8%以上、約1.85%以上、約1.9%以上、約1.95%以上、約2%以上、約2.1%以上、約2.2%以上、約2.3%以上、約2.4%以上、約2.5%以上、約2.6%以上、約2.7%以上、約2.8%以上、約2.9%以上、約3%以上、約3.1%以上、約3.2%以上、約3.3%以上、約3.4%以上、約3.5%以上、約3.6%以上、約3.7%以上、約3.8%以上、約3.9%以上、約4%以上、約4.1%以上、約4.2%以上、約4.3%以上、約4.4%以上、約4.5%以上、約4.6%以上、約4.7%以上、約4.8%以上、約4.9%以上、約5%以上、約5.5%以上、約6%以上、約6.5%以上、約7%以上、約7.5%以上、約8%以上、約8.5%以上、約9%以上、約9.5%以上、約10%以上、約10.5%以上、約11%以上、約11.5%以上、約12%以上、約12.5%以上、約13%以上、約13.5%以上、約14%以上、約14.5%以上、約15%以上、約15.5%以上、約16%以上、約16.5%以上、約17%以上、約17.5%以上、約18%以上、約18.5%以上、約19%以上、約19.5%以上、約20%以上、約21%、約22%以上、約23%以上、約24%以上、約25%以上、約26%以上、約27%以上、約28%以上、約29%以上、約30%以上、約31%以上、約32%以上、約33%以上、約34%以上、約35%以上、約36%以上、約37%以上、約38%以上、約39%以上、約40%以上、約41%以上、約42%以上、約43%以上、約44%以上、約45%以上、約46%以上、約47%以上、約48%以上、約49%以上、約50%以上、約51%以上、約52%以上、約53%以上、約54%以上、約55%以上、約56%以上、約57%以上、約58%以上、約59%以上、約60%以上、約61%以上、約62%以上、約63%以上、約64%以上、約65%以上、約66%以上、約67%以上、約68%以上、約69%以上、約70%以上、約71%以上、約72%以上、約73%以上、約74%以上、約75%以上、約76%以上、約77%以上、約78%以上、約79%以上、約80%以上、約81%以上、約82%以上、約83%以上、約84%以上、約85%以上、約86%以上、約87%以上、約88%以上、約89%以上、約90%以上、約91%以上、約92%以上、約93%以上、約94%以上、約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上、または約99%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞において、検出可能なCD8の発現レベルを有することが決定されている。
【0240】
例えば、いくつかの実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプルの約0.5%~50%、0.5%~45%、0.5%~40%、0.5%~35%、0.5%~30%、0.5%~25%、0.5%~20%、0.5%~15%、0.5%~10%、0.5%~9%、0.5%~8%、0.5%~7%、0.5%~6%、0.5%~5%、0.5%~4%、0.5%~3%、0.5%~2%、0.5%~1%、1%~50%、1%~40%、1%~35%、1%~30%、1%~25%、1%~20%、1%~15%、1%~10%、1%~9%、1%~8%、1%~7%、1%~6%、1%~5%、1%~4%、1%~3%、1%~2%、1.35%~50%、1.35%~45%、1.35%~40%、1.35%~35%、1.35%~30%、1.35%~30%、1.35%~25%、1.35%~20%、1.35%~15%、1.35%~10%、1.35%~9%、1.35%~8%、1.35%~7%、1.35%~6%、1.35%~5%、1.35%~4%、1.35%~3%、1.35%~2%、1.5%~50%、1.5%~45%、1.5%~40%、1.5%~35%、1.5%~30%、1.5%~30%、1.5%~25%、1.5%~20%、1.5%~15%、1.5%~10%、1.5%~9%、1.5%~8%、1.5%~7%、1.5%~6%、1.5%~5%、1.5%~4%、1.5%~3%、1.5%~2%、2%~50%、2%~45%、2%~40%、2%~35%、2%~30%、2%~25%、2%~20%、2%~15%、2%~10%、2%~9%、2%~8%、2%~7%、2%~6%、2%~5%、2%~4%、2%~3%、3%~50%、3%~45%、3%~40%、3%~35%、3%~30%、3%~25%、3%~20%、3%~15%、3%~10%、3%~9%、3%~8%、3%~7%、3%~6%、3%~5%、3%~4%、4%~50%、4%~45%、4%~40%、4%~35%、4%~30%、4%~25%、4%~20%、4%~15%、4%~10%、4%~9%、4%~8%、4%~7%、4%~6%、4%~5%、5%~50%、5%~45%、5%~40%、5%~35%、5%~30%、5%~25%、5%~20%、5%~15%、5%~10%、5%~9%、5%~8%、5%~7%、5%~6%、6%~50%、6%~45%、6%~40%、6%~35%、6%~30%、6%~25%、6%~20%、6%~15%、6%~10%、6%~9%、6%~8%、6%~7%、7%~50%、7%~45%、7%~40%、7%~35%、7%~30%、7%~25%、7%~20%、7%~15%、7%~10%、7%~9%、7%~8%、8%~50%、8%~45%、8%~40%、8%~35%、8%~30%、8%~25%、8%~20%、8%~15%、8%~10%、8%~9%、9%~50%、9%~45%、9%~40%、9%~35%、9%~30%、9%~25%、9%~20%、9%~15%、9%~10%、10%~50%、10%~45%、10%~40%、10%~35%、10%~30%、10%~25%、10%~20%、または10%~15%を占める腫瘍浸潤免疫細胞において、検出可能なCD8の発現レベルを有することが決定されている。
【0241】
前述の方法のいずれにおいても、腫瘍浸潤免疫細胞で占められる腫瘍サンプルの割合は、腫瘍サンプルの切片中で、CD8を発現する腫瘍浸潤免疫細胞(例えば、T細胞)により占められる腫瘍領域の割合に基づき得ることを理解されたい。他の実施形態において、腫瘍浸潤免疫細胞の全体数に対するCD8を発現する腫瘍浸潤免疫細胞(例えば、T細胞)の割合は、バイオマーカーとして使用することができる。
【0242】
例えば、本明細書で提供されるのは、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)に罹患している患者を特定するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中のsTILの割合を決定することを含み、患者は、これまでに乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)の治療を受けたことがなく、約5%以上(例えば、約5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、50%以上、60%以上 70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%)のsTILの割合により、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される。
【0243】
別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)に罹患している患者が、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかを予測するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中のsTILの割合を決定することを含み、患者は、これまでに乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)の治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約5%以上(例えば、約5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、50%以上、60%以上 70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%)のsTILの割合は、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0244】
更なる例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)に罹患している患者のための抗がん療法を選択するための方法であり、当該方法は、(a)これまでに乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)の治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中のsTILの割合を決定することと、(b)腫瘍サンプルの約5%以上(例えば、約5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、50%以上、60%以上 70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%)のsTILの割合に基づいて、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、患者のための抗がん療法を選択することと、を含む。
【0245】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、局所進行性または転移性乳癌は、局所進行性または転移性TNBCである。
【0246】
一例において、本明細書で提供されるのは、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、局所進行性TNBCに罹患している患者を特定するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中のsTILの割合を決定することを含み、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約5%以上(例えば、約5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、50%以上、60%以上 70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%)のsTILの割合により、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される。
【0247】
別の例において、本明細書で提供されるのは、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、転移性TNBCに罹患している患者を特定するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中のsTILの割合を決定することを含み、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約5%以上(例えば、約5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、50%以上、60%以上 70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%)のsTILの割合により、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される。
【0248】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者が、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかを予測するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中のsTILの割合を決定することを含み、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約5%以上(例えば、約5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、50%以上、60%以上 70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%)のsTILの割合は、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0249】
更なる例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者が、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかを予測するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中のsTILの割合を決定することを含み、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約5%以上(例えば、約5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、50%以上、60%以上 70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%)のsTILの割合は、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0250】
また更なる例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者のための抗がん療法を選択するための方法であり、当該方法は、(a)これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中のsTILの割合を決定することと、(b)腫瘍サンプルの約5%以上(例えば、約5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、50%以上、60%以上 70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%)のsTILの割合に基づいて、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、患者のための抗がん療法を選択することと、を含む。
【0251】
また更なる例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者のための抗がん療法を選択するための方法であり、当該方法は、(a)これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中のsTILの割合を決定すると、(b)腫瘍サンプルの約5%以上(例えば、約5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、50%以上、60%以上 70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%)のsTILの割合に基づいて、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、患者のための抗がん療法を選択することと、を含む。
【0252】
一例において、本明細書で提供されるのは、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、局所進行性TNBCに罹患している患者を特定するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中のsTILの割合を決定することを含み、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約5%以上(例えば、約5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、50%以上、60%以上 70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%)のsTILの割合により、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される。
【0253】
別の例において、本明細書で提供されるのは、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、転移性TNBCに罹患している患者を特定するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中のsTILの割合を決定することを含み、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約5%以上(例えば、約5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、50%以上、60%以上 70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%)のsTILの割合により、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される。
【0254】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者が、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかを予測するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中のsTILの割合を決定することを含み、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約5%以上(例えば、約5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、50%以上、60%以上 70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%)のsTILの割合は、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0255】
更なる例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者が、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかを予測するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中のsTILの割合を決定することを含み、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約5%以上(例えば、約5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、50%以上、60%以上 70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%)のsTILの割合は、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0256】
また更なる例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者のための抗がん療法を選択するための方法であり、当該方法は、(a)これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中のsTILの割合を決定することと、(b)腫瘍サンプルの約5%以上(例えば、約5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、50%以上、60%以上 70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%)のsTILの割合に基づいて、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む、患者のための抗がん療法を選択することと、を含む。
【0257】
また更なる例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者のための抗がん療法を選択するための方法であり、当該方法は、(a)これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中のsTILの割合を決定することと、(b)腫瘍サンプルの約5%以上(例えば、約5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、50%以上、60%以上 70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%)のsTILの割合に基づいて、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む、患者のための抗がん療法を選択することと、を含む。
【0258】
一例において、本明細書で提供されるのは、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、局所進行性TNBCに罹患している患者を特定するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中のsTILの割合を決定することを含み、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約5%以上(例えば、約5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、50%以上、60%以上 70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%)のsTILの割合により、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される。
【0259】
別の例において、本明細書で提供されるのは、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、転移性TNBCに罹患している患者を特定するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中のsTILの割合を決定することを含み、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約5%以上(例えば、約5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、50%以上、60%以上 70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%)のsTILの割合により、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される。
【0260】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者が、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかを予測するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中のsTILの割合を決定することを含み、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約5%以上(例えば、約5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、50%以上、60%以上 70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%)のsTILの割合は、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0261】
更なる例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者が、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかを予測するための方法であり、当該方法は、患者から得られた腫瘍サンプル中のsTILの割合を決定することを含み、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約5%以上(例えば、約5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、50%以上、60%以上 70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%)のsTILの割合は、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0262】
また更なる例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者のための抗がん療法を選択するための方法であり、当該方法は、(a)これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中のsTILの割合を決定することと、(b)腫瘍サンプルの約5%以上(例えば、約5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、50%以上、60%以上 70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%)のsTILの割合に基づいて、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む、患者のための抗がん療法を選択することと、を含む。
【0263】
また更なる例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者のための抗がん療法を選択するための方法であり、当該方法は、(a)これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中のsTILの割合を決定することと、(b)腫瘍サンプルの約5%以上(例えば、約5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、50%以上、60%以上 70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%)のsTILの割合に基づいて、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む、患者のための抗がん療法を選択することと、を含む。
【0264】
例えば、いくつかの実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプルの約5%以上、約5.5%以上、約6%以上、約6.5%以上、約7%以上、約7.5%以上、約8%以上、約8.5%以上、約9%以上、約9.5%以上、約10%以上、約10.5%以上、約11%以上、約11.5%以上、約12%以上、約12.5%以上、約13%以上、約13.5%以上、約14%以上、約14.5%以上、約15%以上、約15.5%以上、約16%以上、約16.5%以上、約17%以上、約17.5%以上、約18%以上、約18.5%以上、約19%以上、約19.5%以上、約20%以上、約21%、約22%以上、約23%以上、約24%以上、約25%以上、約26%以上、約27%以上、約28%以上、約29%以上、約30%以上、約31%以上、約32%以上、約33%以上、約34%以上、約35%以上、約36%以上、約37%以上、約38%以上、約39%以上、約40%以上、約41%以上、約42%以上、約43%以上、約44%以上、約45%以上、約46%以上、約47%以上、約48%以上、約49%以上、約50%以上、約51%以上、約52%以上、約53%以上、約54%以上、約55%以上、約56%以上、約57%以上、約58%以上、約59%以上、約60%以上、約61%以上、約62%以上、約63%以上、約64%以上、約65%以上、約66%以上、約67%以上、約68%以上、約69%以上、約70%以上、約71%以上、約72%以上、約73%以上、約74%以上、約75%以上、約76%以上、約77%以上、約78%以上、約79%以上、約80%以上、約81%以上、約82%以上、約83%以上、約84%以上、約85%以上、約86%以上、約87%以上、約88%以上、約89%以上、約90%以上、約91%以上、約92%以上、約93%以上、約94%以上、約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上、または約99%以上)のsTILの割合を有することが決定されている。
【0265】
例えば、いくつかの実施形態において、sTILの割合は、腫瘍サンプルの約5%~50%、5%~45%、5%~40%、5%~35%、5%~30%、5%~25%、5%~20%、5%~15%、5%~10%、5%~9%、5%~8%、5%~7%、5%~6%、6%~50%、6%~45%、6%~40%、6%~35%、6%~30%、6%~25%、6%~20%、6%~15%、6%~10%、6%~9%、6%~8%、6%~7%、7%~50%、7%~45%、7%~40%、7%~35%、7%~30%、7%~25%、7%~20%、7%~15%、7%~10%、7%~9%、7%~8%、8%~50%、8%~45%、8%~40%、8%~35%、8%~30%、8%~25%、8%~20%、8%~15%、8%~10%、8%~9%、9%~50%、9%~45%、9%~40%、9%~35%、9%~30%、9%~25%、9%~20%、9%~15%、9%~10%、10%~50%、10%~45%、10%~40%、10%~35%、10%~30%、10%~25%、10%~20%、または10%~15%である。
【0266】
前述の方法のいずれにおいても、腫瘍サンプルのsTILの割合は、腫瘍内間質領域全体に対する、炎症性単核細胞により占められる領域であり得ることを理解されたい。sTILの割合は、当該技術分野において知られている任意の好適なアプローチ、例えば、Salgado et al.Annals of Oncology 26:259-271,2015に記載されているアプローチを使用して評価され得る。
【0267】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、患者は、局所進行性または転移性乳癌に対する化学療法または全身標的療法の治療歴がない。例えば、いくつかの実施形態において、患者は、手術不能の局所進行性または転移性TNBCに対する化学療法または全身標的療法の治療歴がない。いくつかの実施形態において、患者は、手術不能の局所進行性TNBCに対する化学療法または全身標的療法の治療歴がない。他の実施形態において、患者は、手術不能の転移性TNBCに対する化学療法または全身標的療法の治療歴がない。
【0268】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、局所進行性TNBCは、切除不能である。
【0269】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、腫瘍サンプルは、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍サンプル、保管用腫瘍サンプル、新鮮腫瘍サンプル、または凍結腫瘍サンプルである。
【0270】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、ヒトPD-1結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体である。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、アテゾリズマブである。
【0271】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、タキサンは、nab-パクリタキセルである。
【0272】
前述の態様のいずれかの他の実施形態において、タキサンは、パクリタキセルである。
【0273】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかは、無増悪生存期間の観点から決定される。例えば、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療は、タキサンを含むがPD-1軸結合アンタゴニストを含まない抗がん療法による治療と比較して、患者の無増悪生存期間を約1ヶ月、約2ヶ月、約2.5ヶ月、約3ヶ月、約3.5ヶ月、約4ヶ月、約4.5ヶ月、約5ヶ月、約5.5ヶ月、約6ヶ月、約6.5ヶ月、約7ヶ月、またはそれ以上延長し得る。一実施形態において、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療は、タキサンを含むがPD-1軸結合アンタゴニストを含まない抗がん療法による治療と比較して、患者の無増悪生存期間を約2.5ヶ月延長し得る。
【0274】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかは、全生存期間の観点から決定される。例えば、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療は、タキサンを含むがPD-1軸結合アンタゴニストを含まない抗がん療法による治療と比較して、患者の全生存期間を約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、約6ヶ月、約7ヶ月、約8ヶ月、約9ヶ月、約10ヶ月、約11ヶ月、約12ヶ月、約13ヶ月、約14ヶ月、またはそれ以上延長し得る。一実施形態において、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療は、タキサンを含むがPD-1軸結合アンタゴニストを含まない抗がん療法による治療と比較して、患者の全生存期間を約7ヶ月延長し得る。
【0275】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかは、全奏効率の観点から決定される。
【0276】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかは、完全奏効率の観点から決定される。
【0277】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかは、部分奏効率の観点から決定される。
【0278】
上記バイオマーカーのいずれかの存在及び/または発現レベル(PD-L1(例えば、PD-L1発現、例えば、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞(IC)におけるPD-L1発現及び/または患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞(TC)におけるPD-L1発現)、CD8(例えば、患者から得られた腫瘍サンプル中のCD8発現)、及び/または間質TIL(sTIL)、例えば、患者から得られた腫瘍サンプル中のその存在を含む)は、限定するものではないが、DNA、mRNA、cDNA、タンパク質、タンパク質フラグメント、及び/または遺伝子コピー数を含む、当該技術分野において知られている任意の好適な基準に基づいて、定性的及び/または定量的に評価され得る。そのようなバイオマーカーを測定するための方法は、当該技術分野において知られており、当業者に理解されているが、これらには、限定するものではないが、IHC、ウェスタンブロット分析、免疫沈降、分子結合アッセイ、ELISA、ELIFA、蛍光標識細胞分取(「FACS」)、MassARRAY、プロテオミクス、定量的血液ベースアッセイ(例えば、Serum ELISA)、生化学的酵素活性アッセイ、in situハイブリダイゼーション(ISH)、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、サザン分析、ノーザン分析、全ゲノムシーケンス解析、定量リアルタイムPCR(qRT-PCR)を含むポリメラーゼ連鎖反応(PCR)及び他の増幅型検出法、例えば、分岐DNA、SISBA、TMAなど、RNASeq、マイクロアレイ分析、遺伝子発現プロファイリング、全ゲノムシーケンス解析(WGS)、及び/または遺伝子発現連続解析(「SAGE」)、ならびにタンパク質、遺伝子、及び/または組織のアレイ分析によって実施することができる多種多様なアッセイのいずれか1つが含まれる。遺伝子及び遺伝子産物の状態を評価するための典型的なプロトコルは、例えば、Ausubel et al.eds.(Current Protocols In Molecular Biology,1995)の単元2(ノーザンブロッティング)、単元4(サザンブロッティング)、単元15(免疫ブロット法)及び単元18(PCR解析)に見出せる。Rules Based Medicine or Meso Scale Discovery(「MSD」)から入手可能なアッセイなどの多重化イムノアッセイも使用され得る。
【0279】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、バイオマーカーの発現レベルは、タンパク質発現レベルであり得る。特定の実施形態において、方法は、バイオマーカーの結合が許容される条件下で、サンプルを、本明細書に記載されるバイオマーカーに特異的に結合する抗体に接触させることと、抗体とバイオマーカーとの間で複合体が形成されるかどうかを検出することと、を含む。そのような方法は、in vitro法であってもよいし、in vivo法であってもよい。いくつかの実施形態において、抗体は、PD-1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体、例えば、個体を選択するためのバイオマーカーを含む抗がん療法による治療に適格な患者を選択するために使用される。
【0280】
当該技術分野において知られているまたは本明細書で提供されるタンパク質発現レベルを測定する任意の方法が使用され得る。例えば、いくつかの実施形態において、バイオマーカーのタンパク質発現レベルは、免疫組織化学(IHC)、フローサイトメトリー(例えば、蛍光標識細胞分取(FACS(商標)))、ウェスタンブロット、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、免疫沈降、免疫蛍光法、ラジオイムノアッセイ、ドットブロット法、免疫検出法、HPLC、表面プラズモン共鳴、光学分光法、質量分析法、及びHPLCからなる群から選択される方法を使用して決定される。
【0281】
いくつかの実施形態において、バイオマーカーのタンパク質発現レベルは、腫瘍浸潤免疫細胞で決定される。いくつかの実施形態において、バイオマーカーのタンパク質発現レベルは、腫瘍細胞で決定される。いくつかの実施形態において、バイオマーカーのタンパク質発現レベルは、腫瘍浸潤免疫細胞及び/または腫瘍細胞で決定される。いくつかの実施形態において、バイオマーカーのタンパク質発現レベルは、末梢血単核細胞(PBMC)で決定される。
【0282】
特定の実施形態において、サンプル中のバイオマーカータンパク質の存在及び/または発現レベル/量は、IHC及び染色プロトコルを使用して検査される。組織切片のIHC染色は、サンプル中のタンパク質の存在を決定または検出するのに信頼性の高い方法であることが示されている。方法、アッセイ及び/またはキットのいずれかのいくつかの実施形態において、バイオマーカーは、PD-L1またはCD8のタンパク質発現産物のうちの1つ以上である。一実施形態において、バイオマーカーの発現レベルは、(a)抗体を用いてサンプル(患者から得られた腫瘍サンプルなど)のIHC分析を実施することと、(b)サンプル中のバイオマーカーの発現レベルを決定することと、を含む、方法を使用して決定される。いくつかの実施形態において、IHC染色強度は、参照を基準に決定される。いくつかの実施形態において、参照は、参照値である。いくつかの実施形態において、参照は、参照サンプル(例えば、対照細胞株染色サンプル、非がん性患者由来の組織サンプル、または目的のバイオマーカーについて陰性であることが決定されている腫瘍サンプル)である。
【0283】
例えば、いくつかの実施形態において、PD-L1のタンパク質発現レベルは、IHCを使用して決定される。いくつかの実施形態において、PD-L1のタンパク質発現レベルは、抗PD-L1抗体を使用して決定される。任意の好適な抗PD-L1抗体が使用され得る。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、SP142である。
【0284】
別の例において、いくつかの実施形態において、CD8のタンパク質発現レベルは、IHCを使用して決定される。いくつかの実施形態において、CD8のタンパク質発現レベルは、抗CD8抗体を使用して検出される。任意の好適な抗CD8抗体が使用され得る。
【0285】
IHCは、形態的染色及び/またはin situハイブリダイゼーション(例えば、ISH)などの更なる技術との組み合わせで実施され得る。IHCには2つの一般的な方法、直接アッセイ及び間接アッセイが利用可能である。第1のアッセイに従って、標的抗原に対する抗体の結合が直接決定される。この直接アッセイは、更なる抗体の相互作用なく可視化され得る、蛍光タグまたは酵素標識一次抗体などの標識試薬を使用する。典型的な間接アッセイでは、コンジュゲートされていない一次抗体が抗原に結合し、次いで、標識された二次抗体が一次抗体に結合する。二次抗体が酵素標識にコンジュゲートされている場合、発色性基質または蛍光性基質を添加することで、抗原の可視化がもたらされる。いくつかの二次抗体は、一次抗体上の異なるエピトープと反応し得るため、シグナル増幅が生じる。
【0286】
IHCに使用される一次抗体及び/または二次抗体は、典型的に、検出可能な部分で標識される。多数の標識が利用可能であり、これらは、一般に以下の分類に分けることができる:(a)35S、14C、1251、H、及び131Iなどの放射性同位体;(b)コロイド金粒子;(c)蛍光標識、例えば、限定するものではないが、希土類キレート(ユウロピウムキレート)、Texas Red、ローダミン、フルオレセイン、ダンシル、リサミン、ウンベリフェロン、フィコエリスリン、フィコシアニン、またはSPECTRUM ORANGE7及びSPECTRUM GREEN7などの市販のフルオロフォア及び/または上記のいずれか1つ以上の誘導体;(d)様々な酵素基質標識が利用可能であり、米国特許第4,275,149号は、そのいくつかの概説を提供している。酵素標識の例には、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ;例えば、米国特許第4,737,456号参照)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸脱水素酵素、ウレアーゼ、ペルオキシダーゼ、例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRPO)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖オキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環式オキシダーゼ(ウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼなど)、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼなどが挙げられる。
【0287】
酵素と基質の組み合わせの例には、例えば、水素ペルオキシダーゼを基質とするセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRPO);リン酸para-ニトロフェニルを発色性基質とするアルカリホスファターゼ(AP);及び発色性基質(例えば、p-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシダーゼ)または蛍光性基質(例えば、4-メチルウンベリフェリル-β-D-ガラクトシダーゼ)とのβ-D-ガラクトシダーゼ(β-D-Gal)が挙げられる。これらの一般的な概要については、例えば、米国特許第4,275,149号及び同第4,318,980号を参照されたい。
【0288】
標本は、例えば、手動で、または自動染色機器(例えば、Ventana BenchMark XTまたはBenchmark ULTRA機器)を使用して、調製され得る。このようにして調製された標本は、包埋し、カバーガラスで覆うことができる。次いで、スライド評価は、例えば、顕微鏡を使用して決定され、当該技術分野において日常的に使用されている染色強度基準が採用され得る。一実施形態において、腫瘍由来の細胞及び/または組織をIHCの使用により検査する場合、染色は、(サンプル中に存在し得る間質または周辺組織に対して)腫瘍細胞(複数可)及び/または腫瘍組織において決定または評価され得ることが理解される。他の実施形態において、染色は、サンプル中に存在し得る間質または周辺組織において決定または評価され得る。いくつかの実施形態において、腫瘍由来の細胞及び/または組織をIHCの使用により検査する場合、染色は、腫瘍内免疫細胞または腫瘍周囲免疫細胞を含む腫瘍浸潤免疫細胞において決定または評価されることを含むことが理解される。いくつかの実施形態において、バイオマーカーの存在は、IHCにより、サンプルの0%超、サンプルの少なくとも1%、サンプルの少なくとも5%、サンプルの少なくとも10%、サンプルの少なくとも15%、サンプルの少なくとも15%、サンプルの少なくとも20%、サンプルの少なくとも25%、サンプルの少なくとも30%、サンプルの少なくとも35%、サンプルの少なくとも40%、サンプルの少なくとも45%、サンプルの少なくとも50%、サンプルの少なくとも55%、サンプルの少なくとも60%、サンプルの少なくとも65%、サンプルの少なくとも70%、サンプルの少なくとも75%、サンプルの少なくとも80%、サンプルの少なくとも85%、サンプルの少なくとも90%、サンプルの少なくとも95%、またはそれ以上で検出される。サンプルは、当該技術分野において知られている任意の方法を使用して、例えば、病理学者または自動画像解析によって、スコアリングされ得る。
【0289】
方法のいずれかのいくつかの実施形態において、バイオマーカーは、診断用抗体(すなわち、一次抗体)を使用する免疫組織化学によって検出される。いくつかの実施形態において、診断用抗体は、ヒト抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、診断用抗体は、非ヒト抗体である。いくつかの実施形態において、診断用抗体は、ラット、マウス、またはウサギ抗体である。いくつかの実施形態において、診断用抗体は、ウサギ抗体である。いくつかの実施形態において、診断用抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態において、診断用抗体は、直接標識される。他の実施形態において、診断用抗体は、間接的に標識される(例えば、二次抗体)。
【0290】
前述の方法のいずれかの他の実施形態において、バイオマーカーの発現レベルは、核酸発現レベル(例えば、DNA発現レベルまたはRNA発現レベル(例えば、mRNA発現レベル))であり得る。核酸発現レベルを決定する任意の好適な方法が使用され得る。いくつかの実施形態において、核酸発現レベルは、RNAseq、RT-qPCR、qPCR、多重qPCRもしくはRT-qPCR、マイクロアレイ分析、SAGE、MassARRAY技術、ISH、またはこれらの組み合わせを使用して決定される。
【0291】
細胞中のmRNAの評価方法は、よく知られており、これらには、例えば、遺伝子発現連続解析(SAGE)、全ゲノムシーケンス解析(WGS)、相補的DNAプローブを使用するハイブリダイゼーションアッセイ(遺伝子のうちの1つ以上に特異的な標識リボプローブを使用するin situハイブリダイゼーション、ノーザンブロット及び関連技術など)及び様々な核酸増幅アッセイ(遺伝子のうちの1つ以上に特異的な相補的プライマーを使用するRT-PCR(例えば、qRT-PCR)など、及び他の増幅型検出法、例えば、分岐DNA、SISBA、TMAなど)が含まれる。加えて、そのような方法は、生体サンプル中の標的mRNAのレベルを決定することを可能にする1つ以上のステップを含み得る(例えば、アクチンファミリーメンバーなどの「ハウスキーピング」遺伝子の比較対照mRNA配列のレベルを同時に検査すること)。任意選択により、増幅された標的cDNAの配列が決定され得る。任意選択の方法には、マイクロアレイ技術によって、組織または細胞サンプル中の標的mRNAなどのmRNAを検査または検出するプロトコルを含む。核酸マイクロアレイを使用して、試験組織サンプル及び対照組織サンプルの試験mRNAサンプル及び対照mRNAサンプルを逆転写し、標識して、cDNAプローブを生成する。次いで、そのプローブを、固体支持体に固定化された核酸アレイにハイブリダイズさせる。アレイは、アレイの各メンバーの配列及び位置が分かるように構成される。例えば、その発現が免疫療法及び抑制性間質アンタゴニストを含む治療の臨床上の利益の増減と相関する一連の遺伝子が固体支持体上に配置され得る。標識されたプローブと特定のアレイメンバーとのハイブリダイゼーションは、プローブが由来するサンプルが当該遺伝子を発現していることを示す。
【0292】
前述の実施形態のいずれかのいくつかの実施形態において、サンプルは、抗がん療法の実施前(例えば、数分、数時間、数日、数週間(例えば、1、2、3、4、5、6、または7週間)、数ヶ月、または数年前)に、個体から取得される。前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、個体由来のサンプルは、抗がん療法の施行から約2~約10週間(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10週間)後に取得される。いくつかの実施形態において、個体由来のサンプルは、抗がん療法の施行から約4~約6週間後に取得される。
【0293】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、バイオマーカーの発現レベルまたは数は、組織サンプル、初代もしくは培養した細胞もしくは細胞株、細胞上清、細胞溶解物、血小板、血清、血漿、硝子体液、リンパ液、滑液、濾胞液、精液、羊水、乳汁、全血、血液由来細胞、尿、脳脊髄液、唾液、痰、涙、汗、粘液、腫瘍溶解物、及び組織培養培地、ホモジナイズした組織などの組織抽出物、腫瘍組織、細胞抽出物、またはこれらの任意の組み合わせにおいて検出される。いくつかの実施形態において、サンプルは、組織サンプル(例えば、腫瘍組織サンプル)、細胞サンプル、全血サンプル、血漿サンプル、血清サンプル、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、腫瘍組織サンプル、腫瘍組織サンプルには、腫瘍細胞、腫瘍浸潤免疫細胞、間質細胞、またはこれらの組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態において、腫瘍組織サンプルは、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)サンプル、保管用サンプル、新鮮サンプル、または凍結サンプルである。
【0294】
例えば、前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、バイオマーカーの発現レベルは、既知の技術(例えば、IHC、免疫蛍光顕微鏡検査法、またはフローサイトメトリー)を使用して、腫瘍浸潤免疫細胞、腫瘍細胞、PBMC、またはこれらの組み合わせにおいて検出される。腫瘍浸潤免疫細胞には、腫瘍内免疫細胞、腫瘍周囲免疫細胞またはこれらの任意の組み合わせ、及び他の腫瘍間質細胞(例えば、線維芽細胞)が含まれるが、これらに限定されない。そのような腫瘍浸潤免疫細胞は、Tリンパ球(CD8Tリンパ球(例えば、CD8Tエフェクター(Teff)細胞など)及び/またはCD4Tリンパ球(例えば、CD4Teff細胞)、Bリンパ球、または顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)、単球、マクロファージ、樹状細胞(例えば、指状嵌入樹状細胞)、組織球、及びナチュラルキラー(NK)細胞を含む他の骨髄系細胞であり得る。いくつかの実施形態において、バイオマーカーの染色は、細胞膜染色、細胞質染色、またはこれらの組み合わせで検出される。他の実施形態において、バイオマーカーの不在は、参照サンプルを基準として、サンプル中に染色が存在しないこと、または染色がないことで検出される。
【0295】
前述の方法のいずれかの特定の実施形態において、バイオマーカーの発現レベルは、がん細胞を含有するサンプルまたはがん細胞を含有することが疑われるサンプルで評価される。サンプルは、例えば、がん(例えば、乳癌(例えば、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)))に罹患している患者、がんの罹患が疑われる患者、またはがんと診断された患者から得られた、組織生検または転移性病変であり得る。いくつかの実施形態において、サンプルは、乳房組織のサンプル、乳房腫瘍の生検、判明しているもしくは疑われている転移性乳癌の病変もしくは切片、または血液サンプル、例えば、循環がん細胞、例えば、乳癌細胞を含むことが判明しているもしくは疑われている末梢血サンプルである。サンプルは、がん細胞、すなわち、腫瘍細胞と非がん性細胞(例えば、T細胞またはNK細胞などのリンパ球)の両方を含み得、特定の実施形態において、がん性及び非がん性の両方の細胞を含む。がん/腫瘍細胞を含む、組織切除物、生検物、及び体液、例えば、血液サンプルを含む、生体サンプルを取得する方法は、当該技術分野においてよく知られている。
【0296】
患者は、進行性、難治性、再発性、化学療法抵抗性、及び/または白金抵抗性形態のがんを有し得る。
【0297】
特定の実施形態において、第1のサンプル中のバイオマーカーの存在及び/または発現レベル/量は、第2のサンプル中の存在/不在及び/または発現レベル/量と比較して、増加または上昇している。特定の実施形態において、第1のサンプル中のバイオマーカーの存在/不在及び/または発現レベル/量は、第2のサンプル中の存在及び/または発現レベル/量と比較して、減少または低下している。特定の実施形態において、第2のサンプルは、参照サンプル、参照細胞、参照組織、対照サンプル、対照細胞、または対照組織である。
【0298】
特定の実施形態において、参照サンプル、参照細胞、参照組織、対照サンプル、対照細胞、または対照組織は、試験サンプルが取得された時点とは異なる1つ以上の時点で取得された、同じ患者または個体に由来する単一のサンプルまたは複数のサンプルの組み合わせである。例えば、参照サンプル、参照細胞、参照組織、対照サンプル、対照細胞、または対照組織は、試験サンプルが取得される時点よりも早い時点で、同じ患者または個体から取得される。そのような参照サンプル、参照細胞、参照組織、対照サンプル、対照細胞、または対照組織は、参照サンプルががんの初期診断中に取得され、かつ、後にがんが転移性になったときに試験サンプルが取得される場合に、有用であり得る。
【0299】
特定の実施形態において、参照サンプル、参照細胞、参照組織、対照サンプル、対照細胞、または対照組織は、患者ではない1以上の健康な個体に由来する複数のサンプルの組み合わせである。特定の実施形態において、参照サンプル、参照細胞、参照組織、対照サンプル、対照細胞、または対照組織は、患者または個体ではない、疾患または障害(例えば、がん)を有する1以上の個体に由来する複数のサンプルの組み合わせである。特定の実施形態において、参照サンプル、参照細胞、参照組織、対照サンプル、対照細胞、または対照組織は、正常組織に由来するプールされたRNAサンプル、または患者ではない1以上の個体に由来するプールされた血漿もしくは血清サンプルである。特定の実施形態において、参照サンプル、参照細胞、参照組織、対照サンプル、対照細胞、または対照組織は、腫瘍組織に由来するプールされたRNAサンプル、または患者ではない、疾患もしくは障害(例えば、がん)を有する1以上の個体に由来するプールされた血漿または血清サンプルである。
【0300】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は、抗がん療法の有効量を患者に投与することを更に含む。方法は、セクションIVにおいて後述される方法のいずれかを更に含み得る。
【0301】
IV.治療の方法
本明細書で提供されるのは、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)の有効量を個体に投与することを含む、個体における局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)を治療するまたはその進行を遅延させるための方法である。いくつかの実施形態において、治療は、治療後、個体に応答をもたらす。いくつかの実施形態において、応答は、部分奏効である。いくつかの実施形態において、応答は、完全奏効である。いくつかの実施形態において、治療は、治療の終了後、個体に持続的な応答(例えば、持続的な部分奏効または完全奏効)をもたらす。例えば、いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性である。本明細書に記載される方法は、がんの治療のための腫瘍免疫原性の増加などの免疫原性の向上が望ましい状態を治療することに用途が見出され得る。本明細書で提供されるのはまた、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)の有効量を個体に投与することを含む、局所進行性または転移性乳癌を有する個体の免疫機能を向上させる方法である。これらの方法には、当該技術分野において知られているまたは本明細書に記載されているPD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンのいずれかを使用することができる。
【0302】
例えば、本明細書で提供されるのは、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)に罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法の有効量を患者に投与することを含み、患者は、これまでに乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)の治療を受けたことがなく、患者は、患者から得られたサンプル(例えば、腫瘍サンプル)中の検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。
【0303】
別の態様において、本発明は、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)に罹患している患者を治療する方法を特徴とし、当該方法は、(a)これまでに乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)の治療を受けていない患者から得られたサンプル(例えば、腫瘍サンプル)中のPD-L1の発現レベルを決定することと、(b)サンプル中の検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法の治療上有効な量を患者に投与することと、を含む。
【0304】
更なる態様において、本発明は、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)と診断された患者の治療に使用するための、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)を含む医薬組成物を特徴とし、治療は、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と組み合わせたヒトPD-1軸結合アンタゴニストの投与を含み、患者は、患者から得られたサンプル(例えば、腫瘍サンプル)中の検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、ヒトPD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンを含む抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。いくつかの実施形態において、患者は、これまでに乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)の治療を受けていない。
【0305】
任意の好適なサンプルが使用され得る。例えば、サンプルは、腫瘍サンプルであり得る。
【0306】
別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)に罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法の有効量を患者に投与することを含み、患者は、これまでに乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)の治療を受けたことがなく、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。
【0307】
更なる別の態様において、本発明は、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)に罹患している患者を治療する方法を特徴とし、当該方法は、(a)これまでに乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)の治療を受けていない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法の治療上有効な量を患者に投与することと、を含む。
【0308】
別の態様において、本発明は、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)と診断された患者の治療に使用するための、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)を含む医薬組成物を特徴とし、治療は、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と組み合わせたヒトPD-1軸結合アンタゴニストの投与を含み、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、ヒトPD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンを含む抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。いくつかの実施形態において、患者は、これまでに乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)の治療を受けていない。
【0309】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、局所進行性または転移性乳癌は、局所進行性または転移性TNBCである。
【0310】
例えば、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法の有効量を患者に投与することを含み、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがなく、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。
【0311】
別の例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法の有効量を患者に投与することを含み、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがなく、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。
【0312】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、(a)これまでに局所進行性TNBCの治療を受けていない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法の治療上有効な量を患者に投与することと、を含む。
【0313】
更なる例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、(a)これまでに転移性TNBCの治療を受けていない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法の治療上有効な量を患者に投与することと、を含む。
【0314】
別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCと診断された患者の治療に使用するための、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)を含む医薬組成物であり、治療は、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と組み合わせたPD-1軸結合アンタゴニストの投与を含み、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、ヒトPD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンを含む抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。いくつかの実施形態において、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けていない。
【0315】
別の例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCと診断された患者の治療に使用するための、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)を含む医薬組成物であり、治療は、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と組み合わせたPD-1軸結合アンタゴニストの投与を含み、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、ヒトPD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンを含む抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。いくつかの実施形態において、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けていない。
【0316】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む、抗がん療法の有効量を患者に投与することを含み、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがなく、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。
【0317】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む、抗がん療法の有効量を患者に投与することを含み、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがなく、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。
【0318】
更なる例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、(a)これまでに局所進行性TNBCの治療を受けていない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む抗がん療法の治療上有効な量を患者に投与することと、を含む。
【0319】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、(a)これまでに転移性TNBCの治療を受けていない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む抗がん療法の治療上有効な量を患者に投与することと、を含む。
【0320】
別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCと診断された患者の治療に使用するための、アテゾリズマブを含む医薬組成物であり、治療は、nab-パクリタキセルと組み合わせたアテゾリズマブの投与を含み、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。いくつかの実施形態において、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けていない。
【0321】
別の例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCと診断された患者の治療に使用するための、アテゾリズマブを含む医薬組成物であり、治療は、nab-パクリタキセルと組み合わせたアテゾリズマブの投与を含み、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。いくつかの実施形態において、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けていない。
【0322】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む、抗がん療法の有効量を患者に投与することを含み、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがなく、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。
【0323】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む、抗がん療法の有効量を患者に投与することを含み、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがなく、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。
【0324】
更なる例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、(a)これまでに局所進行性TNBCの治療を受けていない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む、抗がん療法の治療上有効な量を患者に投与することと、を含む。
【0325】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、(a)これまでに転移性TNBCの治療を受けていない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む、抗がん療法の治療上有効な量を患者に投与することと、を含む。
【0326】
別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCと診断された患者の治療に使用するための、アテゾリズマブを含む医薬組成物であり、治療は、パクリタキセルと組み合わせたアテゾリズマブの投与を含み、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。いくつかの実施形態において、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けていない。
【0327】
別の例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCと診断された患者の治療に使用するための、アテゾリズマブを含む医薬組成物であり、治療は、パクリタキセルと組み合わせたアテゾリズマブの投与を含み、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。いくつかの実施形態において、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けていない。
【0328】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプルの約1%以上(例えば、約1%以上、2%以上、3%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、11%以上、12%以上、13%以上、14%以上、15%以上、16%以上、17%以上,18%以上、19%以上、20%以上、21%以上、22%以上、23%以上、24%以上、25%以上、26%以上、27%以上、28%以上、29%以上、30%以上、31%以上、32%以上、33%以上、34%以上、35%以上、36%以上、37%以上、38%以上、39%以上、40%以上、41%以上、42%以上、43%以上、44%以上、45%以上、46%以上、47%以上、48%以上、49%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上、約99%以上、または100%)を占める腫瘍浸潤免疫細胞において、検出可能なPD-L1の発現レベルを有することが決定されている。例えば、いくつかの実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプルの約1%~約5%未満(例えば、1%~4.9%、1%~4.5%、1%~4%、1%~3.5%、1%~3%、1%~2.5%、または1%~2%)を占める腫瘍浸潤免疫細胞において、検出可能なPD-L1の発現レベルを有することが決定されている。
【0329】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞の約1%以上(例えば、約1%以上、2%以上、3%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、11%以上、12%以上、13%以上、14%以上、15%以上、16%以上、17%以上,18%以上、19%以上、20%以上、21%以上、22%以上、23%以上、24%以上、25%以上、26%以上、27%以上、28%以上、29%以上、30%以上、31%以上、32%以上、33%以上、34%以上、35%以上、36%以上、37%以上、38%以上、39%以上、40%以上、41%以上、42%以上、43%以上、44%以上、45%以上、46%以上、47%以上、48%以上、49%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上、約99%以上、または100%)において、検出可能なPD-L1の発現レベルを有することが決定されている。例えば、いくつかの実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞の約1%~約5%未満(例えば、1%~4.9%、1%~4.5%、1%~4%、1%~3.5%、1%~3%、1%~2.5%、または1%~2%)において、検出可能なPD-L1の発現レベルを有することが決定されている。
【0330】
他の実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプルの約5%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞において、検出可能なPD-L1の発現レベルを有することが決定されている。例えば、いくつかの実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプルの約5%~約10%未満(例えば、5%~9.5%、5%~9%、5%~8.5%、5%~8%、5%~7.5%、5%~7%、5%~6.5%、5%~6%、5%~5.5%、6%~9.5%、6%~9%、6%~8.5%、6%~8%、6%~7.5%、6%~7%、6%~6.5%、7%~9.5%、7%~9%、7%~7.5%、8%~9.5%、8%~9%、または8%~8.5%)を占める腫瘍浸潤免疫細胞において、検出可能なPD-L1の発現レベルを有することが決定されている。
【0331】
更に他の実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞の約5%以上において、検出可能なPD-L1の発現レベルを有することが決定されている。例えば、いくつかの実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞の約5%~約10%未満(例えば、5%~9.5%、5%~9%、5%~8.5%、5%~8%、5%~7.5%、5%~7%、5%~6.5%、5%~6%、5%~5.5%、6%~9.5%、6%~9%、6%~8.5%、6%~8%、6%~7.5%、6%~7%、6%~6.5%、7%~9.5%、7%~9%、7%~7.5%、8%~9.5%、8%~9%、または8%~8.5%)において、検出可能なPD-L1の発現レベルを有することが決定されている。
【0332】
また更なる実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプルの約10%以上(例えば、10%以上、11%以上、12%以上、13%以上、14%以上、15%以上、16%以上、17%以上,18%以上、19%以上、20%以上、21%以上、22%以上、23%以上、24%以上、25%以上、26%以上、27%以上、28%以上、29%以上、30%以上、31%以上、32%以上、33%以上、34%以上、35%以上、36%以上、37%以上、38%以上、39%以上、40%以上、41%以上、42%以上、43%以上、44%以上、45%以上、46%以上、47%以上、48%以上、49%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、または100%)を占める腫瘍浸潤免疫細胞において、検出可能なPD-L1の発現レベルを有することが決定されている。
【0333】
また更なる実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞の約10%以上(例えば、10%以上、11%以上、12%以上、13%以上、14%以上、15%以上、16%以上、17%以上、18%以上、19%以上、20%以上、21%以上、22%以上、23%以上、24%以上、25%以上、26%以上、27%以上、28%以上、29%以上、30%以上、31%以上、32%以上、33%以上、34%以上、35%以上、36%以上、37%以上、38%以上、39%以上、40%以上、41%以上、42%以上、43%以上、44%以上、45%以上、46%以上、47%以上、48%以上、49%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、または100%)において、検出可能なPD-L1の発現レベルを有することが決定されている。
【0334】
更に他の実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約50%以上(例えば、約50%以上、51%以上、52%以上、53%以上、54%以上、55%以上、56%以上、57%以上、58%以上、59%以上、60%以上、61%以上、62%以上、63%以上、64%以上、65%以上、66%以上、67%以上、68%以上、69%以上、70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上)において、検出可能なPD-L1の発現レベル、及び/または腫瘍サンプルの約10%以上(例えば、10%以上、11%以上、12%以上、13%以上、14%以上、15%以上、16%以上、17%以上,18%以上、19%以上、20%以上、21%以上、22%以上、23%以上、24%以上、25%以上、26%以上、27%以上、28%以上、29%以上、30%以上、31%以上、32%以上、33%以上、34%以上、35%以上、36%以上、37%以上、38%以上、39%以上、40%以上、41%以上、42%以上、43%以上、44%以上、45%以上、46%以上、47%以上、48%以上、49%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、または100%)を占める腫瘍浸潤免疫細胞において、検出可能なPD-L1の発現レベルを有することが決定されている。
【0335】
前述の方法のいずれにおいても、腫瘍浸潤免疫細胞で占められる腫瘍サンプルの割合は、患者から得られた腫瘍サンプルの切片中で、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、SP142抗体)を使用するIHCによって評価される、腫瘍浸潤免疫細胞により占められる腫瘍領域の割合に基づき得ることを理解されたい。例えば、実施例3(例えば、表5)を参照されたい。
【0336】
別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)に罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法の有効量を患者に投与することを含み、患者は、これまでに乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)の治療を受けたことがなく、患者は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。
【0337】
別の態様において、本発明は、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)に罹患している患者を治療する方法を特徴とし、当該方法は、(a)これまでに乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)の治療を受けていない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法の治療上有効な量を患者に投与することと、を含む。
【0338】
別の態様において、本発明は、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)と診断された患者の治療に使用するための、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)を含む医薬組成物を特徴とし、治療は、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と組み合わせたヒトPD-1軸結合アンタゴニストの投与を含み、患者は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、ヒトPD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンを含む抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。いくつかの実施形態において、患者は、これまでに乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)の治療を受けていない。
【0339】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、局所進行性または転移性乳癌は、局所進行性または転移性TNBCである。
【0340】
例えば、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法の有効量を患者に投与することを含み、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがなく、患者は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。
【0341】
別の例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法の有効量を患者に投与することを含み、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがなく、患者は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。
【0342】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、(a)これまでに局所進行性TNBCの治療を受けていない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法の治療上有効な量を患者に投与することと、を含む。
【0343】
更なる例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、(a)これまでに転移性TNBCの治療を受けていない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法の治療上有効な量を患者に投与することと、を含む。
【0344】
別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCと診断された患者の治療に使用するための、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)を含む医薬組成物であり、治療は、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と組み合わせたPD-1軸結合アンタゴニストの投与を含み、患者は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、ヒトPD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンを含む抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。いくつかの実施形態において、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けていない。
【0345】
別の例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCと診断された患者の治療に使用するための、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)を含む医薬組成物であり、治療は、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と組み合わせたPD-1軸結合アンタゴニストの投与を含み、患者は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、ヒトPD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンを含む抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。いくつかの実施形態において、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けていない。
【0346】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む、抗がん療法の有効量を患者に投与することを含み、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがなく、患者は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。
【0347】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む、抗がん療法の有効量を患者に投与することを含み、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがなく、患者は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。
【0348】
更なる例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、(a)これまでに局所進行性TNBCの治療を受けていない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む、抗がん療法の治療上有効な量を患者に投与することと、を含む。
【0349】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、(a)これまでに転移性TNBCの治療を受けていない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む、抗がん療法の治療上有効な量を患者に投与することと、を含む。
【0350】
別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCと診断された患者の治療に使用するための、アテゾリズマブを含む医薬組成物であり、治療は、nab-パクリタキセルと組み合わせたアテゾリズマブの投与を含み、患者は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。いくつかの実施形態において、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けていない。
【0351】
別の例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCと診断された患者の治療に使用するための、アテゾリズマブを含む医薬組成物であり、治療は、nab-パクリタキセルと組み合わせたアテゾリズマブの投与を含み、患者は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。いくつかの実施形態において、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けていない。
【0352】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む、抗がん療法の有効量を患者に投与することを含み、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがなく、患者は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。
【0353】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む、抗がん療法の有効量を患者に投与することを含み、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがなく、患者は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。
【0354】
更なる例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、(a)これまでに局所進行性TNBCの治療を受けていない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む、抗がん療法の治療上有効な量を患者に投与することと、を含む。
【0355】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、(a)これまでに転移性TNBCの治療を受けていない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む、抗がん療法の治療上有効な量を患者に投与することと、を含む。
【0356】
別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCと診断された患者の治療に使用するための、アテゾリズマブを含む医薬組成物であり、治療は、パクリタキセルと組み合わせたアテゾリズマブの投与を含み、患者は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。いくつかの実施形態において、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けていない。
【0357】
別の例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCと診断された患者の治療に使用するための、アテゾリズマブを含む医薬組成物であり、治療は、パクリタキセルと組み合わせたアテゾリズマブの投与を含み、患者は、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。いくつかの実施形態において、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けていない。
【0358】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上(例えば、約1%以上、2%以上、3%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、11%以上、12%以上、13%以上、14%以上、15%以上、16%以上、17%以上,18%以上、19%以上、20%以上、21%以上、22%以上、23%以上、24%以上、25%以上、26%以上、27%以上、28%以上、29%以上、30%以上、31%以上、32%以上、33%以上、34%以上、35%以上、36%以上、37%以上、38%以上、39%以上、40%以上、41%以上、42%以上、43%以上、44%以上、45%以上、46%以上、47%以上、48%以上、49%以上、50%以上、51%以上、52%以上、53%以上、54%以上、55%以上、56%以上、57%以上、58%以上、59%以上、60%以上、61%以上、62%以上、63%以上、64%以上、65%以上、66%以上、67%以上、68%以上、69%以上、70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上)において、検出可能なPD-L1の発現レベルを有することが決定されている。例えば、いくつかの実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%~約5%未満(例えば、1%~4.9%、1%~4.5%、1%~4%、1%~3.5%、1%~3%、1%~2.5%、または1%~2%)において、検出可能なPD-L1の発現レベルを有することが決定されている。他の実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%未満において、検出可能なPD-L1の発現レベルを有することが決定されている。
【0359】
他の実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約5%以上において、検出可能なPD-L1の発現レベルを有することが決定されている。例えば、いくつかの実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約5%~50%未満(例えば、5%~49.5%、5%~45%、5%~40%、5%~35%、5%~30%、5%~25%、5%~20%、5%~15%、5%~10%、5%~9%、5%~8%、5%~7%、5%~6%、10%~49.5%、10%~40%、10%~35%、10%~30%、10%~25%、10%~20%、10%~15%、15%~49.5%、15%~45%、15%~40%、15%~35%、15%~30%、15%~30%、15%~25%、15%~20%、20%~49.5%、20%~45%、20%~40%、20%~35%、20%~30%、20%~25%、25%~49.5%、25%~45%、25%~40%、25%~35%、25%~30%、30%~49.5%、30%~45%、30%~40%、30%~35%、35%~49.5%、35%~45%、35%~40%、40%~49.5%、40%~45%、または45%~49.5%)において、検出可能なPD-L1の発現レベルを有することが決定されている。
【0360】
更に他の実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約50%以上(例えば、約50%以上、51%以上、52%以上、53%以上、54%以上、55%以上、56%以上、57%以上、58%以上、59%以上、60%以上、61%以上、62%以上、63%以上、64%以上、65%以上、66%以上、67%以上、68%以上、69%以上、70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上)において、検出可能なPD-L1の発現レベルを有することが決定されている。いくつかの実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約50%~約99%(例えば、50%~99%、50%~95%、50%~90%、50%~85%、50%~80%、50%~75%、50%~70%、50%~65%、50%~60%、50%~55%、55%~99%、55%~95%、55%~90%、55%~85%、55%~80%、55%~75%、55%~70%、55%~65%、55%~60%、60%~99%、60%~95%、60%~90%、60%~85%、60%~80%、60%~75%、60%~70%、60%~65%、65%~99%、65%~95%、65%~90%、65%~85%、65%~80%、65%~75%、65%~70%、70%~99%、70%~95%、70%~90%、70%~85%、70%~80%、70%~75%、75%~99%、75%~95%、75%~90%、75%~85%、75%~80%、80%~99%、80%~95%、80%~90%、80%~85%、85%~99%、85%~95%、85%~90%、90%~99%、または90%~95%)において、検出可能なPD-L1の発現レベルを有することが決定されている。
【0361】
別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)に罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法の有効量を患者に投与することを含み、患者は、これまでに乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)の治療を受けたことがなく、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルに基づいて、抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。
【0362】
別の態様において、本発明は、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)に罹患している患者を治療する方法を特徴とし、当該方法は、(a)これまでに乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)の治療を受けていない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるCD8の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルに基づいて、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法の治療上有効な量を患者に投与することと、を含む。
【0363】
別の態様において、本発明は、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)と診断された患者の治療に使用するための、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)を含む医薬組成物を特徴とし、治療は、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と組み合わせたヒトPD-1軸結合アンタゴニストの投与を含み、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルに基づいて、ヒトPD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンを含む抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。いくつかの実施形態において、患者は、これまでに乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)の治療を受けていない。
【0364】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、局所進行性または転移性乳癌は、局所進行性または転移性TNBCである。
【0365】
例えば、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法の有効量を患者に投与することを含み、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがなく、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルに基づいて、抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。
【0366】
別の例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法の有効量を患者に投与することを含み、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがなく、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルに基づいて、抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。
【0367】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、(a)これまでに局所進行性TNBCの治療を受けていない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるCD8の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルに基づいて、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法の治療上有効な量を患者に投与することと、を含む。
【0368】
更なる例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、(a)これまでに転移性TNBCの治療を受けていない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるCD8の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルに基づいて、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法の治療上有効な量を患者に投与することと、を含む。
【0369】
別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCと診断された患者の治療に使用するための、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)を含む医薬組成物であり、治療は、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と組み合わせたPD-1軸結合アンタゴニストの投与を含み、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルに基づいて、ヒトPD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンを含む抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。いくつかの実施形態において、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けていない。
【0370】
別の例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCと診断された患者の治療に使用するための、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)を含む医薬組成物であり、治療は、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と組み合わせたPD-1軸結合アンタゴニストの投与を含み、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルに基づいて、ヒトPD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンを含む抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。いくつかの実施形態において、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けていない。
【0371】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む、抗がん療法の有効量を患者に投与することを含み、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがなく、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルに基づいて、抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。
【0372】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む、抗がん療法の有効量を患者に投与することを含み、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがなく、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルに基づいて、抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。
【0373】
更なる例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、(a)これまでに局所進行性TNBCの治療を受けていない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるCD8の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルに基づいて、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む、抗がん療法の治療上有効な量を患者に投与することと、を含む。
【0374】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、(a)これまでに転移性TNBCの治療を受けていない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるCD8の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルに基づいて、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む、抗がん療法の治療上有効な量を患者に投与することと、を含む。
【0375】
別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCと診断された患者の治療に使用するための、アテゾリズマブを含む医薬組成物であり、治療は、nab-パクリタキセルと組み合わせたアテゾリズマブの投与を含み、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルに基づいて、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。いくつかの実施形態において、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けていない。
【0376】
別の例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCと診断された患者の治療に使用するための、アテゾリズマブを含む医薬組成物であり、治療は、nab-パクリタキセルと組み合わせたアテゾリズマブの投与を含み、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルに基づいて、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。いくつかの実施形態において、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けていない。
【0377】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む、抗がん療法の有効量を患者に投与することを含み、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがなく、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルに基づいて、抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。
【0378】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む、抗がん療法の有効量を患者に投与することを含み、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがなく、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルに基づいて、抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。
【0379】
更なる例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、(a)これまでに局所進行性TNBCの治療を受けていない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるCD8の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルに基づいて、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む、抗がん療法の治療上有効な量を患者に投与することと、を含む。
【0380】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、(a)これまでに転移性TNBCの治療を受けていない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるCD8の発現レベルを決定することと、(b)腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルに基づいて、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む、抗がん療法の治療上有効な量を患者に投与することと、を含む。
【0381】
別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCと診断された患者の治療に使用するための、アテゾリズマブを含む医薬組成物であり、治療は、パクリタキセルと組み合わせたアテゾリズマブの投与を含み、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルに基づいて、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。いくつかの実施形態において、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けていない。
【0382】
別の例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCと診断された患者の治療に使用するための、アテゾリズマブを含む医薬組成物であり、治療は、パクリタキセルと組み合わせたアテゾリズマブの投与を含み、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約0.5%以上(例えば、約0.5%以上、約0.75%以上、約1%以上、約1.25%以上、約1.35%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.25%以上、約2.5%以上、約2.75%以上、約3%以上、約3.25%以上、約3.5%以上、約3.75%以上、約4%以上、約4.25%以上、約4.5%以上、約4.75%以上、または約5%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルに基づいて、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。いくつかの実施形態において、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けていない。
【0383】
例えば、いくつかの実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプルの約0.5%以上、約0.55%以上、約0.6%以上、約0.65%以上、約0.7%以上、約0.75%以上、約0.8%以上、約0.85%以上、約0.9%以上、約0.95%以上、約1%以上、約1.05%以上、約1.1%以上、約1.2%以上、約1.25%以上、約1.3%以上、約1.35%以上、約1.4%以上、約1.45%以上、約1.5%以上、約1.55%以上、約1.6%以上、約1.65%以上、約1.7%以上、約1.75%以上、約1.8%以上、約1.85%以上、約1.9%以上、約1.95%以上、約2%以上、約2.1%以上、約2.2%以上、約2.3%以上、約2.4%以上、約2.5%以上、約2.6%以上、約2.7%以上、約2.8%以上、約2.9%以上、約3%以上、約3.1%以上、約3.2%以上、約3.3%以上、約3.4%以上、約3.5%以上、約3.6%以上、約3.7%以上、約3.8%以上、約3.9%以上、約4%以上、約4.1%以上、約4.2%以上、約4.3%以上、約4.4%以上、約4.5%以上、約4.6%以上、約4.7%以上、約4.8%以上、約4.9%以上、約5%以上、約5.5%以上、約6%以上、約6.5%以上、約7%以上、約7.5%以上、約8%以上、約8.5%以上、約9%以上、約9.5%以上、約10%以上、約10.5%以上、約11%以上、約11.5%以上、約12%以上、約12.5%以上、約13%以上、約13.5%以上、約14%以上、約14.5%以上、約15%以上、約15.5%以上、約16%以上、約16.5%以上、約17%以上、約17.5%以上、約18%以上、約18.5%以上、約19%以上、約19.5%以上、約20%以上、約21%、約22%以上、約23%以上、約24%以上、約25%以上、約26%以上、約27%以上、約28%以上、約29%以上、約30%以上、約31%以上、約32%以上、約33%以上、約34%以上、約35%以上、約36%以上、約37%以上、約38%以上、約39%以上、約40%以上、約41%以上、約42%以上、約43%以上、約44%以上、約45%以上、約46%以上、約47%以上、約48%以上、約49%以上、約50%以上、約51%以上、約52%以上、約53%以上、約54%以上、約55%以上、約56%以上、約57%以上、約58%以上、約59%以上、約60%以上、約61%以上、約62%以上、約63%以上、約64%以上、約65%以上、約66%以上、約67%以上、約68%以上、約69%以上、約70%以上、約71%以上、約72%以上、約73%以上、約74%以上、約75%以上、約76%以上、約77%以上、約78%以上、約79%以上、約80%以上、約81%以上、約82%以上、約83%以上、約84%以上、約85%以上、約86%以上、約87%以上、約88%以上、約89%以上、約90%以上、約91%以上、約92%以上、約93%以上、約94%以上、約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上、または約99%以上)を占める腫瘍浸潤免疫細胞において、検出可能なCD8の発現レベルを有することが決定されている。
【0384】
例えば、いくつかの実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプルの約0.5%~50%、0.5%~45%、0.5%~40%、0.5%~35%、0.5%~30%、0.5%~25%、0.5%~20%、0.5%~15%、0.5%~10%、0.5%~9%、0.5%~8%、0.5%~7%、0.5%~6%、0.5%~5%、0.5%~4%、0.5%~3%、0.5%~2%、0.5%~1%、1%~50%、1%~40%、1%~35%、1%~30%、1%~25%、1%~20%、1%~15%、1%~10%、1%~9%、1%~8%、1%~7%、1%~6%、1%~5%、1%~4%、1%~3%、1%~2%、1.35%~50%、1.35%~45%、1.35%~40%、1.35%~35%、1.35%~30%、1.35%~30%、1.35%~25%、1.35%~20%、1.35%~15%、1.35%~10%、1.35%~9%、1.35%~8%、1.35%~7%、1.35%~6%、1.35%~5%、1.35%~4%、1.35%~3%、1.35%~2%、1.5%~50%、1.5%~45%、1.5%~40%、1.5%~35%、1.5%~30%、1.5%~30%、1.5%~25%、1.5%~20%、1.5%~15%、1.5%~10%、1.5%~9%、1.5%~8%、1.5%~7%、1.5%~6%、1.5%~5%、1.5%~4%、1.5%~3%、1.5%~2%、2%~50%、2%~45%、2%~40%、2%~35%、2%~30%、2%~25%、2%~20%、2%~15%、2%~10%、2%~9%、2%~8%、2%~7%、2%~6%、2%~5%、2%~4%、2%~3%、3%~50%、3%~45%、3%~40%、3%~35%、3%~30%、3%~25%、3%~20%、3%~15%、3%~10%、3%~9%、3%~8%、3%~7%、3%~6%、3%~5%、3%~4%、4%~50%、4%~45%、4%~40%、4%~35%、4%~30%、4%~25%、4%~20%、4%~15%、4%~10%、4%~9%、4%~8%、4%~7%、4%~6%、4%~5%、5%~50%、5%~45%、5%~40%、5%~35%、5%~30%、5%~25%、5%~20%、5%~15%、5%~10%、5%~9%、5%~8%、5%~7%、5%~6%、6%~50%、6%~45%、6%~40%、6%~35%、6%~30%、6%~25%、6%~20%、6%~15%、6%~10%、6%~9%、6%~8%、6%~7%、7%~50%、7%~45%、7%~40%、7%~35%、7%~30%、7%~25%、7%~20%、7%~15%、7%~10%、7%~9%、7%~8%、8%~50%、8%~45%、8%~40%、8%~35%、8%~30%、8%~25%、8%~20%、8%~15%、8%~10%、8%~9%、9%~50%、9%~45%、9%~40%、9%~35%、9%~30%、9%~25%、9%~20%、9%~15%、9%~10%、10%~50%、10%~45%、10%~40%、10%~35%、10%~30%、10%~25%、10%~20%、または10%~15%を占める腫瘍浸潤免疫細胞において、検出可能なCD8の発現レベルを有することが決定されている。
【0385】
前述の方法のいずれにおいても、腫瘍浸潤免疫細胞で占められる腫瘍サンプルの割合は、腫瘍サンプルの切片中で、CD8を発現する腫瘍浸潤免疫細胞(例えば、T細胞)により占められる腫瘍領域の割合に基づき得ることを理解されたい。他の実施形態において、腫瘍浸潤免疫細胞の全体数に対するCD8を発現する腫瘍浸潤免疫細胞(例えば、T細胞)の割合は、バイオマーカーとして使用することができる。
【0386】
別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)に罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法の有効量を患者に投与することを含み、患者は、これまでに乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)の治療を受けたことがなく、患者は、患者から得られた腫瘍サンプル中の約5%以上のsTILの割合に基づいて、抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。
【0387】
別の態様において、本発明は、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)に罹患している患者を治療する方法を特徴とし、当該方法は、(a)これまでに乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)の治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中のsTILの割合を決定することと、(b)腫瘍サンプルの約5%以上のsTILの割合に基づいて、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法の治療上有効な量を患者に投与することと、を含む。
【0388】
別の態様において、本発明は、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)と診断された患者の治療に使用するための、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)を含む医薬組成物を特徴とし、治療は、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と組み合わせたヒトPD-1軸結合アンタゴニストの投与を含み、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約5%以上のsTILの割合に基づいて、ヒトPD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンを含む抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。いくつかの実施形態において、患者は、これまでに乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)の治療を受けていない。
【0389】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、局所進行性または転移性乳癌は、局所進行性または転移性TNBCである。
【0390】
例えば、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法の有効量を患者に投与することを含み、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがなく、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約5%以上(例えば、約5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、50%以上、60%以上 70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%)のsTILの割合に基づいて、抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。
【0391】
別の例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法の有効量を患者に投与することを含み、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがなく、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約5%以上(例えば、約5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、50%以上、60%以上 70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%)のsTILの割合に基づいて、抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。
【0392】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、(a)これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中のsTILの割合を決定することと、(b)腫瘍サンプルの約5%以上(例えば、約5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、50%以上、60%以上 70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%)のsTILの割合に基づいて、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法の治療上有効な量を患者に投与することと、を含む。
【0393】
更なる例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、(a)これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中のsTILの割合を決定することと、(b)腫瘍サンプルの約5%以上(例えば、約5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、50%以上、60%以上 70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%)のsTILの割合に基づいて、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法の治療上有効な量を患者に投与することと、を含む。
【0394】
別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCと診断された患者の治療に使用するための、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)を含む医薬組成物であり、治療は、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と組み合わせたPD-1軸結合アンタゴニストの投与を含み、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約5%以上(例えば、約5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、50%以上、60%以上 70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%)のsTILの割合に基づいて、ヒトPD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンを含む抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。いくつかの実施形態において、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けていない。
【0395】
別の例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCと診断された患者の治療に使用するための、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)を含む医薬組成物であり、治療は、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と組み合わせたPD-1軸結合アンタゴニストの投与を含み、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約5%以上(例えば、約5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、50%以上、60%以上 70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%)のsTILの割合に基づいて、ヒトPD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンを含む抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。いくつかの実施形態において、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けていない。
【0396】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む、抗がん療法の有効量を患者に投与することを含み、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがなく、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約5%以上(例えば、約5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、50%以上、60%以上 70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%)のsTILの割合に基づいて、抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。
【0397】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む抗がん療法の有効量を患者に投与することを含み、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがなく、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約5%以上(例えば、約5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、50%以上、60%以上 70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%)のsTILの割合に基づいて、抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。
【0398】
更なる例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、(a)これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中のsTILの割合を決定することと、(b)腫瘍サンプルの約5%以上(例えば、約5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、50%以上、60%以上 70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%)のsTILの割合に基づいて、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む、抗がん療法の治療上有効な量を患者に投与することと、を含む。
【0399】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、(a)これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中のsTILの割合を決定することと、(b)腫瘍サンプルの約5%以上(例えば、約5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、50%以上、60%以上 70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%)のsTILの割合に基づいて、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む、抗がん療法の治療上有効な量を患者に投与することと、を含む。
【0400】
別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCと診断された患者の治療に使用するための、アテゾリズマブを含む医薬組成物であり、治療は、nab-パクリタキセルと組み合わせたアテゾリズマブの投与を含み、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約5%以上(例えば、約5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、50%以上、60%以上 70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%)のsTILの割合に基づいて、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。いくつかの実施形態において、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けていない。
【0401】
別の例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCと診断された患者の治療に使用するための、アテゾリズマブを含む医薬組成物であり、治療は、nab-パクリタキセルと組み合わせたアテゾリズマブの投与を含み、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約5%以上(例えば、約5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、50%以上、60%以上 70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%)のsTILの割合に基づいて、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルを含む抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。いくつかの実施形態において、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けていない。
【0402】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む、抗がん療法の有効量を患者に投与することを含み、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがなく、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約5%以上(例えば、約5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、50%以上、60%以上 70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%)のsTILの割合に基づいて、抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。
【0403】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む、抗がん療法の有効量を患者に投与することを含み、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがなく、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約5%以上(例えば、約5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、50%以上、60%以上 70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%)のsTILの割合に基づいて、抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。
【0404】
更なる例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、(a)これまでに局所進行性TNBCの治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中のsTILの割合を決定することと、(b)腫瘍サンプルの約5%以上(例えば、約5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、50%以上、60%以上 70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%)のsTILの割合に基づいて、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む、抗がん療法の治療上有効な量を患者に投与することと、を含む。
【0405】
更に別の例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCに罹患している患者を治療する方法であり、当該方法は、(a)これまでに転移性TNBCの治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中のsTILの割合を決定することと、(b)腫瘍サンプルの約5%以上(例えば、約5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、50%以上、60%以上 70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%)のsTILの割合に基づいて、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む、抗がん療法の治療上有効な量を患者に投与することと、を含む。
【0406】
別の例において、本明細書で提供されるのは、局所進行性TNBCと診断された患者の治療に使用するための、アテゾリズマブを含む医薬組成物であり、治療は、パクリタキセルと組み合わせたアテゾリズマブの投与を含み、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約5%以上(例えば、約5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、50%以上、60%以上 70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%)のsTILの割合に基づいて、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。いくつかの実施形態において、患者は、これまでに局所進行性TNBCの治療を受けていない。
【0407】
別の例において、本明細書で提供されるのは、転移性TNBCと診断された患者の治療に使用するための、アテゾリズマブを含む医薬組成物であり、治療は、パクリタキセルと組み合わせたアテゾリズマブの投与を含み、患者は、患者から得られた腫瘍サンプルの約5%以上(例えば、約5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、50%以上、60%以上 70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%)のsTILの割合に基づいて、アテゾリズマブ及びパクリタキセルを含む抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている。いくつかの実施形態において、患者は、これまでに転移性TNBCの治療を受けていない。
【0408】
例えば、いくつかの実施形態において、患者から得られた腫瘍サンプルは、腫瘍サンプルの約5%以上、約5.5%以上、約6%以上、約6.5%以上、約7%以上、約7.5%以上、約8%以上、約8.5%以上、約9%以上、約9.5%以上、約10%以上、約10.5%以上、約11%以上、約11.5%以上、約12%以上、約12.5%以上、約13%以上、約13.5%以上、約14%以上、約14.5%以上、約15%以上、約15.5%以上、約16%以上、約16.5%以上、約17%以上、約17.5%以上、約18%以上、約18.5%以上、約19%以上、約19.5%以上、約20%以上、約21%、約22%以上、約23%以上、約24%以上、約25%以上、約26%以上、約27%以上、約28%以上、約29%以上、約30%以上、約31%以上、約32%以上、約33%以上、約34%以上、約35%以上、約36%以上、約37%以上、約38%以上、約39%以上、約40%以上、約41%以上、約42%以上、約43%以上、約44%以上、約45%以上、約46%以上、約47%以上、約48%以上、約49%以上、約50%以上、約51%以上、約52%以上、約53%以上、約54%以上、約55%以上、約56%以上、約57%以上、約58%以上、約59%以上、約60%以上、約61%以上、約62%以上、約63%以上、約64%以上、約65%以上、約66%以上、約67%以上、約68%以上、約69%以上、約70%以上、約71%以上、約72%以上、約73%以上、約74%以上、約75%以上、約76%以上、約77%以上、約78%以上、約79%以上、約80%以上、約81%以上、約82%以上、約83%以上、約84%以上、約85%以上、約86%以上、約87%以上、約88%以上、約89%以上、約90%以上、約91%以上、約92%以上、約93%以上、約94%以上、約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上、または約99%以上)のsTILの割合を有することが決定されている。
【0409】
例えば、いくつかの実施形態において、sTILの割合は、腫瘍サンプルの約5%~50%、5%~45%、5%~40%、5%~35%、5%~30%、5%~25%、5%~20%、5%~15%、5%~10%、5%~9%、5%~8%、5%~7%、5%~6%、6%~50%、6%~45%、6%~40%、6%~35%、6%~30%、6%~25%、6%~20%、6%~15%、6%~10%、6%~9%、6%~8%、6%~7%、7%~50%、7%~45%、7%~40%、7%~35%、7%~30%、7%~25%、7%~20%、7%~15%、7%~10%、7%~9%、7%~8%、8%~50%、8%~45%、8%~40%、8%~35%、8%~30%、8%~25%、8%~20%、8%~15%、8%~10%、8%~9%、9%~50%、9%~45%、9%~40%、9%~35%、9%~30%、9%~25%、9%~20%、9%~15%、9%~10%、10%~50%、10%~45%、10%~40%、10%~35%、10%~30%、10%~25%、10%~20%、または10%~15%である。
【0410】
前述の方法のいずれにおいても、腫瘍サンプルのsTILの割合は、腫瘍内間質領域全体に対する、炎症性単核細胞により占められる領域であり得ることを理解されたい。sTILの割合は、当該技術分野において知られている任意の好適なアプローチ、例えば、Salgado et al.Annals of Oncology 26:259-271,2015に記載されているアプローチを使用して評価され得る。
【0411】
本明細書に記載される方法のいずれも、PD-L1、CD8、及びsTILのうちの2つ以上の存在及び/または発現レベルを決定することを含み得る。例えば、いくつかの実施形態において、方法は、PD-L1及びCD8の存在及び/または発現レベルを決定することを含む。別の実施形態において、方法は、PD-L1及びsTILの存在及び/または発現レベルを決定することを含む。別の実施形態において、方法は、CD8及びsTILの存在及び/または発現レベルを決定することを含む。別の実施形態において、方法は、PD-L1、CD8、及びsTILの存在及び/または発現レベルを決定することを含む。
【0412】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、局所進行性TNBCは、切除不能である。
【0413】
いくつかの実施形態において、患者は、ヒトである。いくつかの実施形態において、患者は、局所進行性または転移性乳癌(例えば、TNBC)に罹患している。いくつかの実施形態において、患者は、局所進行性TNBC(例えば、切除不能局所進行性TNBC)に罹患している。いくつかの実施形態において、転移性乳癌は、mTNBCである。いくつかの実施形態において、患者は、局所進行性または転移性乳癌に対する細胞傷害性治療レジメンの治療歴が2以下である。いくつかの実施形態において、患者は、局所進行性または転移性乳癌に対する全身標的治療の治療歴がまったくない。したがって、特定の実施形態において、個体における局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)を治療するもしくはその進行を遅延させるための方法、または局所進行性または転移性乳癌を有する個体の免疫機能を向上させるための方法は、個体にとって、一次選択療法となり得る。
【0414】
いくつかの実施形態において、個体は、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)による併用治療の前に、がん療法による治療を受けたことがある。いくつかの実施形態において、個体は、1つ以上のがん療法に耐性のあるがんを有する。いくつかの実施形態において、がん療法への耐性には、がんの再発または難治性がんが含まれる。再発は、治療後、元の部位または新たな部位にがんが再び発現することを指し得る。いくつかの実施形態において、がん療法への耐性には、抗がん療法による治療中のがんの進行が含まれる。いくつかの実施形態において、療法への耐性には、治療に応答しないがんが含まれる。がんは、治療開始時に耐性を示す場合もあれば、治療中に耐性を示す場合もある。いくつかの実施形態において、がんは、早期または末期である。
【0415】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、腫瘍サンプルは、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍サンプル、保管用腫瘍サンプル、新鮮腫瘍サンプル、または凍結腫瘍サンプルである。
【0416】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、ヒトPD-1結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体である。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、アテゾリズマブである。
【0417】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、タキサンは、nab-パクリタキセルである。
【0418】
前述の態様のいずれかの他の実施形態において、タキサンは、パクリタキセルである。
【0419】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかは、無増悪生存期間の観点から決定される。例えば、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療は、タキサンを含むがPD-1軸結合アンタゴニストを含まない抗がん療法による治療と比較して、患者の無増悪生存期間を約1ヶ月、約2ヶ月、約2.5ヶ月、約3ヶ月、約3.5ヶ月、約4ヶ月、約4.5ヶ月、約5ヶ月、約5.5ヶ月、約6ヶ月、約6.5ヶ月、約7ヶ月、またはそれ以上延長し得る。一実施形態において、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療は、タキサンを含むがPD-1軸結合アンタゴニストを含まない抗がん療法による治療と比較して、患者の無増悪生存期間を約2.5ヶ月延長し得る。
【0420】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかは、全生存期間の観点から決定される。例えば、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療は、タキサンを含むがPD-1軸結合アンタゴニストを含まない抗がん療法による治療と比較して、患者の全生存期間を約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、約6ヶ月、約7ヶ月、約8ヶ月、約9ヶ月、約10ヶ月、約11ヶ月、約12ヶ月、約13ヶ月、約14ヶ月、またはそれ以上延長し得る。一実施形態において、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)及び抗PD-1抗体から選択されるPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療は、タキサンを含むがPD-1軸結合アンタゴニストを含まない抗がん療法による治療と比較して、患者の全生存期間を約7ヶ月延長し得る。
【0421】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかは、全奏効率の観点から決定される。
【0422】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかは、完全奏効率の観点から決定される。
【0423】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかは、部分奏効率の観点から決定される。
【0424】
上記バイオマーカー(例えば、PD-L1、CD8、及び/またはsTIL)のいずれかの存在及び/または発現レベルは、本明細書に記載される任意の方法(例えば、上のセクションIII)を使用して、または当該技術分野において知られているアプローチを使用して、決定することができる。
【0425】
前述の方法及び使用のいずれかのいくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法は、PD-L1結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体)及びPD-1結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-1抗体)から選択されるPD-1軸結合アンタゴニストの有効量の投与を含む。いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のPD-1及びB7.1への結合を阻害することが可能であるが、PD-1のPD-L2への結合を阻害しない抗体などの抗体である。いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニスト抗体は、アテゾリズマブであり、2週間ごとに約700mg~約900mg(例えば、2週間ごとに約750mg~約900mg、例えば、2週間ごとに約800mg~約850mg)の用量で投与され得る。いくつかの実施形態において、アテゾリズマブは、2週間ごとに約840mgの用量で投与される。
【0426】
一般的な提案として、ヒトに投与され得るPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)の治療上有効な量は、1回またはそれ以上の投与に関係なく、患者の体重1kg当たり約0.01~約50mg/kgの範囲であり得る。いくつかの実施形態において、例えば、アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)は、例えば、約0.01~約45mg/kg、約0.01~約40mg/kg、約0.01~約35mg/kg、約0.01~約30mg/kg、約0.01~約25mg/kg、約0.01~約20mg/kg、約0.01~約15mg/kg、約0.01~約10mg/kg、約0.01~約5mg/kg、または約0.01~約1mg/kgの投与量で毎日投与される。いくつかの実施形態において、アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)は、15mg/kgで投与される。しかしながら、他の投薬レジメンが有用な場合もある。一実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)は、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、約1400mg、または約1500mgの用量でヒトに投与される。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)は、2週間ごとに約800mg~約850mgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)は、2週間ごとに約840mgの用量で投与される。当該用量は、単回投与または反復投与(例えば、2または3回用量)として、注入などで投与され得る。併用治療で投与される抗体の用量は、単一治療と比較して、減らすことができる。いくつかの実施形態において、例えば、個体における局所進行性または転移性乳癌を治療するまたはその進行を遅延させるための方法は、複数の治療サイクルを含む投薬レジメンを含み、個体は、各サイクルの1日目及び15日目に、ヒトPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)が約840mgの用量で投与され、各サイクルは、28日である(すなわち、各サイクルは、28日ごとに繰り返される)。本療法の経過は、従来の技術によって容易にモニタリングされる。
【0427】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法は、有効量のタキサン(例えば、nab-パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))、パクリタキセル、またはドセタキセル)の投与を含む。一般的な提案として、ヒトに投与されるタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)の治療上有効な量は、1回またはそれ以上の投与に関係なく、約25~約300mg/m(例えば、約25mg/m、約50mg/m、約75mg/m、約100mg/m、約125mg/m、約150mg/m、約175mg/m、約200mg/m、約225mg/m、約250mg/m、約275mg/m、または約300mg/m)の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、タキサンは、nab-パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))である。いくつかの実施形態において、nab-パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))は、毎週、約100mg/m~約125mg/mの用量で個体に投与される。いくつかの実施形態において、nab-パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))は、毎週、約100mg/mの用量で個体に投与される。例えば、いくつかの実施形態において、約100mg/mのnab-パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))が投与される。いくつかの実施形態において、nab-パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))は、100mg/mで週1回投与される。いくつかの実施形態において、約125mg/mのパクリタキセルが投与される。他の実施形態において、タキサンは、パクリタキセルである。いくつかの実施形態において、パクリタキセルは、毎週、約75mg/m~約125mg/mの用量で個体に投与される。いくつかの実施形態において、パクリタキセルは、毎週、約90mg/mの用量で個体に投与される。いくつかの実施形態において、パクリタキセルは、200mg/mで3週間ごとに投与される。いくつかの実施形態において、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)は、毎週、2週間ごと、3週間ごと、4週間ごと、各21日サイクルの1、8及び15日目、または各28日サイクルの1、8、及び15日目に投与され得る。例えば、いくつかの実施形態において、nan-パクリタキセルは、各28日サイクルの1、8、及び15日目に個体に投与される。別の例において、いくつかの実施形態において、パクリタキセルは、各28日サイクルの1、8、及び15日目に個体に投与される。
【0428】
いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)は、単一の投薬レジメンで投与される。これらの薬剤の投与は、投薬レジメンの文脈中、同時であってもよいし、別々であってもよい。例えば、いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法は、複数の治療サイクルを含む投薬レジメンを含み、個体は、各サイクルの1日目及び15日目にヒトPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)が約840mgの用量で投与され、各サイクルの1、8、及び15日目にタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)が約80mg/m~約100mg/mの用量で投与され、各サイクルは28日ごとに繰り返される。例えば、いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法は、複数の治療サイクルを含む投薬レジメンを含み、個体は、各サイクルの1日目及び15日目にアテゾリズマブが約840mgの用量で投与され、各サイクルの1、8、及び15日目にnab-パクリタキセルが約100mg/mの用量で投与され、各サイクルは、28日ごとに繰り返される。別の例において、いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法は、複数の治療サイクルを含む投薬レジメンを含み、個体は、各サイクルの1日目及び15日目にアテゾリズマブが約840mgの用量で投与され、各サイクルの1、8、及び15日目にパクリタキセルが約90mg/mの用量で投与され、各サイクルは、28日ごとに繰り返される。
【0429】
いくつかの実施形態において、方法は、有効量の化学療法剤を投与することを更に含む。いくつかの実施形態において、化学療法剤は、カルボプラチンなどの白金系化学療法剤である。
【0430】
いくつかの実施形態において、本発明の併用療法は、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)の投与を含む。PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)は、当該技術分野において知られている任意の好適な様式で投与され得る。例えば、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)は、順次(異なる時間)または同時(同じ時間)に投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)は、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)とは別個の組成物中にある。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)は、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と同じ組成物中にある。
【0431】
PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)は、同じ投与経路または異なる投与経路によって投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及び/またはタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)は、静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、経皮、腹腔内、眼窩内、埋め込み、吸入、髄腔内、脳室内、または鼻腔内に投与される。いくつかの実施形態において、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)は、静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、経皮、腹腔内、眼窩内、埋め込み、吸入、髄腔内、脳室内、または鼻腔内に投与される。有効量のPD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)は、疾患の予防または治療のために投与され得る。PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及び/またはタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)の適切な投薬量は、治療される疾患の種類、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンの種類、疾患の重症度及び経過、個体の臨床状態、個体の既往歴及び治療に対する応答、ならびに主治医の判断に基づいて決定され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及び/またはタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)は、静脈内注入により投与される。
【0432】
いくつかの実施形態において、方法は、追加療法を更に含み得る。追加療法は、放射線療法、手術(例えば、乳腺腫瘤摘出及び乳房切除)、化学療法、遺伝子療法、DNA療法、ウイルス療法、RNA療法、免疫療法、骨髄移植、ナノ療法、モノクローナル抗体療法、または前述の組み合わせであり得る。追加療法は、アジュバント療法またはネオアジュバント療法の形態であり得る。いくつかの実施形態において、追加療法は、低分子酵素阻害剤または抗転移剤の投与である。いくつかの実施形態において、追加療法は、副作用抑止剤(例えば、治療の副作用の発生及び/または重症度を軽減することを目的とした薬剤、例えば、制嘔吐剤など)の投与である。いくつかの実施形態において、追加療法は、放射線療法である。いくつかの実施形態において、追加療法は、手術である。いくつかの実施形態において、追加療法は、放射線療法と手術の組み合わせである。いくつかの実施形態において、追加療法は、ガンマ線照射である。いくつかの実施形態において、追加療法は、PI3K/AKT/mTOR経路を標的にする療法、HSP90阻害剤、チューブリン阻害剤、アポトーシス阻害剤、及び/または化学予防剤である。追加療法は、本明細書に記載される化学療法剤のうちの1つ以上であり得る。
【0433】
いくつかの実施形態において、方法は、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)とともに、白金系化学療法剤を投与することを更に含む。いくつかの実施形態において、白金系化学療法剤は、カルボプラチンである。カルボプラチンの投薬量及び投与は、当該技術分野において知られている。カルボプラチンの例示的な投薬量は、6mg/mlの曲線下面積(AUC)で投与される。いくつかの実施形態において、カルボプラチンは、3週間ごとに静脈内投与される。
【0434】
いくつかの実施形態において、方法は、4週間(28日)治療サイクルの文脈中、2週間ごと(q2w)に800mgで静脈内投与される抗PD-L1抗体アテゾリズマブを、3週間毎週(q1w)125mg/mで静脈内投与されるnab-パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))とともに投与することによって、mTNBCに罹患している個体を治療することを含み、このサイクルは、臨床上の利益、完全奏効、寛解、またはその他がなくなるまで、主治医の判断で繰り返され得る。
【0435】
V.他の併用療法
本明細書で提供されるのはまた、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)を別の抗がん剤またはがん療法とともに個体に投与することを含む、個体における乳癌(例えば、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC))を治療するまたはその進行を遅延させるための方法である。いくつかの実施形態において、方法は、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)、タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)、及び追加の治療薬を個体に投与することを含む。
【0436】
いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)は、化学療法または化学療法剤と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)は、放射線療法または放射線治療薬と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)は、標的療法または標的治療薬と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)は、免疫療法または免疫治療薬、例えば、モノクローナル抗体と併せて投与され得る。
【0437】
理論に束縛されることを望むものではないが、活性化共刺激分子を促進することによって、または負の共刺激分子を阻害することによってT細胞の刺激を増強することは、腫瘍細胞死を促進し得、それにより、がんの進行を治療するまたはその進行を遅延させると考えられる。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)は、活性化共刺激分子に対するアゴニストと併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、活性化共刺激分子には、CD40、CD226、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、HVEM、またはCD127が含まれ得る。いくつかの実施形態において、活性化共刺激分子に対するアゴニストは、CD40、CD226、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、HVEM、またはCD127に結合するアゴニスト抗体である。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)は、阻害性共刺激分子に対するアンタゴニストと併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、阻害性共刺激分子には、CTLA-4(別名CD152)、PD-1、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7-H3、B7-H4、IDO、TIGIT、MICA/B、またはアルギナーゼが含まれ得る。いくつかの実施形態において、阻害性共刺激分子に対するアンタゴニストは、CTLA-4、PD-1、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7-H3、B7-H4、IDO、TIGIT、MICA/B、またはアルギナーゼに結合するアンタゴニスト抗体である。
【0438】
いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)は、CTLA-4(別名CD152)に対するアンタゴニスト、例えば、遮断抗体と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)は、イピリムマブ(別名MDX-010、MDX-101、またはYERVOY(登録商標))と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)は、トレメリムマブ(別名チシリムマブまたはCP-675,206)と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)は、B7-H3(別名CD276)に対するアンタゴニスト、例えば、遮断抗体と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)は、MGA271と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)は、TGFベータに対するアンタゴニスト、例えば、メテリムマブ(別名CAT-192)、フレソリムマブ(別名GC1008)、またはLY2157299と併せて投与され得る。
【0439】
いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞(例えば、細胞傷害性T細胞またはCTL)の養子移入を含む治療と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)は、ドミナントネガティブTGFベータ受容体、例えば、ドミナントネガティブTGFベータタイプII受容体を含むT細胞の養子移入を含む治療と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)は、HERCREEMプロトコル(例えば、ClinicalTrials.gov Identifier NCT00889954)を含む治療と併せて投与され得る。
【0440】
いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、CD137(別名TNFRSF9、4-1BB、またはILA)に対するアゴニスト、例えば、活性化抗体と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、ウレルマブ(別名BMS-663513)と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、CD40に対するアゴニスト、例えば、活性化抗体と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、CP-870893と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、OX40(別名CD134)に対するアゴニスト、例えば、活性化抗体と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、抗OX40抗体(例えば、AgonOX)と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、CD27に対するアゴニスト、例えば、活性化抗体と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、CDX-1127と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)に対するアンタゴニストと併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、IDOアンタゴニストは、1-メチル-D-トリプトファン(別名1-D-MT)である。
【0441】
いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、抗体薬物コンジュゲートと併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、抗体薬物コンジュゲートは、メルタンシンまたはモノメチルアウリスタチンE(MMAE)を含む。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、抗NaPi2b抗体-MMAEコンジュゲート(別名DNIB0600AまたはRG7599)と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、トラスツズマブエムタンシン(別名T-DM1、アド-トラスツズマブエムタンシン、またはKADCYLA(登録商標)(Genentech))と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、DMUC5754Aと併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、エンドセリンB受容体(EDNBR)を標的とする抗体薬物コンジュゲート、例えば、MMAEがコンジュゲートされたEDNBRに対する抗体と併せて投与され得る。
【0442】
いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、血管新生阻害剤と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、VEGF、例えば、VEGF-Aに対する抗体と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、MPDL3280A)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)は、ベバシズマブ(別名AVASTIN(登録商標)(Genentech))と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、アンジオポエチン2(別名Ang2)に対する抗体と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、MEDI3617と併せて投与され得る。
【0443】
いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、抗腫瘍薬と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、CSF-1R(別名M-CSFRまたはCD115)を標的とする薬剤と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、抗CSF-1R(別名IMC-CS4)と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、インターフェロン、例えば、インターフェロンアルファまたはインターフェロンガンマと併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、ロフェロン-A(別名組み換えインターフェロンアルファ-2a)と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、GM-CSF(別名組み換えヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、rhu GM-CSF、サルグラモスチム、またはLEUKINE(登録商標))と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、IL-2(別名アルデスロイキンまたはPROLEUKIN(登録商標))と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、IL-12と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、CD20を標的とする抗体と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、CD20を標的とする抗体は、オビヌツズマブ(別名GA101またはGAZYVA(登録商標))またはリツキシマブである。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、GITRを標的とする抗体と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、GITRを標的とする抗体は、TRX518である。
【0444】
いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、がんワクチンと併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、がんワクチンは、ペプチドがんワクチンであり、いくつかの実施形態において、個別化ペプチドワクチンである。いくつかの実施形態において、ペプチドがんワクチンは、多価長鎖ペプチド、マルチペプチド、ペプチドカクテル、ハイブリッドペプチド、またはペプチドパルス樹状細胞ワクチンである(例えば、Yamada et al.,Cancer Sci,104:14-21,2013参照)。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、アジュバントと併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、TLRアゴニスト、例えば、ポリ-ICLC(別名HILTONOL(登録商標))、LPS、MPL、またはCpG ODNを含む治療薬と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、腫瘍壊死因子(TNF)アルファと併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、IL-1と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、HMGB1と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、IL-10アンタゴニストと併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、IL-4アンタゴニストと併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、IL-13アンタゴニストと併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、HVEMアンタゴニストと併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、ICOSアゴニストと併せて、例えば、ICOS-L、またはICOSに対するアゴニスト抗体の投与によって、投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、CX3CL1を標的とする治療薬と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、CXCL9を標的とする治療薬と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、CXCL10を標的とする治療薬と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、CCL5を標的とする治療薬と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、LFA-1またはICAM1アゴニストと併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、セレクチンアゴニストと併せて投与され得る。
【0445】
いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、標的療法と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、B-Rafの阻害剤と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、ベムラフェニブ(別名ZELBORAF(登録商標))と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、ダブラフェニブ(別名TAFINLAR(登録商標))と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、エルロチニブ(別名TARCEVA(登録商標))と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、MEK1(別名MAP2K1)またはMEK2(別名MAP2K2)などのMEKの阻害剤と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、コビメチニブ(別名GDC-0973またはXL-518)と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、トラメチニブ(別名MEKINIST(登録商標))と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、K-Rasの阻害剤と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、c-Metの阻害剤と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、オナルツズマブ(別名MetMAb)と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、Alkの阻害剤と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、AF802(別名CH5424802またはアレクチニブ)と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)の阻害剤と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、BKM120と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、イデラリシブ(別名GS-1101またはCAL-101)と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、ペリフォシン(別名KRX-0401)と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、Aktの阻害剤と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストは、MK2206と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、GSK690693と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、GDC-0941と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、mTORの阻害剤と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、シロリムス(別名ラパマイシン)と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、テムシロリムス(別名CCI-779またはTORISEL(登録商標))と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、エベロリムス(別名RAD001)と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、リダホロリムス(別名AP-23573、MK-8669、またはデフォロリムス)と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、OSI-027と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、AZD8055と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、INK128と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、デュアルPI3K/mTOR阻害剤と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、XL765と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、GDC-0980と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、BEZ235(別名NVP-BEZ235)と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、BGT226と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、GSK2126458と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、PF-04691502と併せて投与され得る。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、PF-05212384(別名PKI-587)と併せて投与され得る。
【0446】
前述の実施形態のいずれにおいても、PD-1軸結合アンタゴニストは、ヒトPD-1軸結合アンタゴニストであり得る。
【0447】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体である。
【0448】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、タキサンは、nab-パクリタキセルである。
【0449】
前述の態様のいずれかの他の実施形態において、タキサンは、パクリタキセルである。
【0450】
VI.PD-1軸結合アンタゴニスト
本明細書で提供されるのは、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)を含む抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者を特定する方法である。提供されるのはまた、乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)に罹患している患者のための療法、例えば、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)を含む抗がん療法を選択する方法である。本明細書で提供されるのは更に、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)の有効量を個体に投与することを含む、個体における乳癌(例えば、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC))を治療するまたはその進行を遅延させるための方法である。例えば、いくつかの実施形態において、患者は、PD-L1陽性である。本明細書で提供されるのはまた、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)の有効量を個体に投与することを含む、乳癌(例えば、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC))を有する個体の免疫機能を向上させる方法である。本明細書に記載される方法のいずれも、後述のPD-1軸結合アンタゴニストのいずれかを含み得る。
【0451】
例えば、PD-1軸結合アンタゴニストには、PD-L1結合アンタゴニスト、PD-1結合アンタゴニスト、及びPD-L2結合アンタゴニストが含まれる。PD-L1(プログラム死リガンド1)はまた、当該技術分野において、「プログラム細胞死1リガンド1」、「PDCD1LG1」、「CD274」、「B7-H」、及び「PDL1」とも呼ばれる。例示的なヒトPD-L1は、UniProtKB/Swiss-Protアクセッション番号Q9NZQ7.1に示されている。PD-1(プログラム死1)はまた、当該技術分野において、「プログラム細胞死1」、「PDCD1」、「CD279」、及び「SLEB2」とも呼ばれる。例示的なヒトPD-1は、UniProtKB/Swiss-Protアクセッション番号Q15116に示されている。PD-L2(プログラム死リガンド2)はまた、当該技術分野において、「プログラム細胞死1リガンド2」、「PDCD1LG2」、「CD273」、「B7-DC」、「Btdc」、及び「PDL2」とも呼ばれる。例示的なヒトPD-L2は、UniProtKB/Swiss-Protアクセッション番号Q9BQ51に示されている。いくつかの実施形態において、PD-L1、PD-1、及びPD-L2は、ヒトPD-L1、PD-1、及びPD-L2である。
【0452】
いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブ、YW243.55.S70、MDX-1105、MEDI4736(デュルバルマブ)、及びMSB0010718C(アベルマブ)からなる群から選択される。抗体YW243.55.S70は、WO2010/077634に記載されている抗PD-L1抗体である。BMS-936559としても知られている、MDX-1105は、WO2007/005874に記載されている抗PD-L1抗体である。MEDI4736は、WO2011/066389及びUS2013/034559に記載されている抗PD-L1モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、PD-L1とPD-1の間及び/またはPD-L1とB7-1の間の結合を阻害することが可能である。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、及び(Fab’)フラグメントからなる群から選択される抗体フラグメントである。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、ヒト化抗体である。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、ヒト抗体である。
【0453】
本発明の方法に有用な抗PD-L1抗体及びその作製方法の例は、PCT特許出願第WO2010/077634号、同第WO2007/005874号、同第WO2011/066389号、及びUS2013/034559に記載されており、これらは、参照により本明細書に援用される。そのような抗体を含有する組成物を含む、本発明で有用な抗PD-L1抗体は、がんを治療するために、タキサンと組み合わせて使用され得る。
【0454】
いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1がそのリガンド結合パートナーに結合するのを阻害する分子である。具体的な態様において、PD-1リガンド結合パートナーは、PD-L1及び/またはPD-L2である。別の実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1がその結合パートナーに結合するのを阻害する分子である。具体的な態様において、PD-L1結合パートナーは、PD-1及び/またはB7-1である。別の実施形態において、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2がその結合パートナーに結合するのを阻害する分子である。具体的な態様において、PD-L2結合パートナーは、PD-1である。アンタゴニストは、抗体、その抗原結合フラグメント、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドであり得る。
【0455】
いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)である。いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、MDX1106(ニボルマブ)、MK-3475(ペンブロリズマブ)、MEDI-0680(AMP-514)、PDR001、REGN2810、及びBGB-108からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、イムノアドヘシン(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)に融合された、PD-L1またはPD-L2の細胞外部分またはPD-1結合部分を含むイムノアドヘシン)である。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、AMP-224である。いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。MDX-1106は、MDX-1106-04、ONO-4538、BMS-936558、またはニボルマブとしても知られており、WO2006/121168に記載されている抗PD-1抗体である。MK-3475は、ランブロリズマブとしても知られており、WO2009/114335に記載されている抗PD-1抗体である。AMP-224は、B7-DCIgとしても知られており、WO2010/027827及びWO2011/066342に記載されているPD-L2-Fc融合可溶性受容体である。
【0456】
抗PD-L1抗体
いくつかの実施形態において、製剤中の抗体は、重鎖及び/または軽鎖配列中に、少なくとも1つのトリプトファン(例えば、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つ)を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸トリプトファンは、抗体のHVR領域、フレームワーク領域及び/または定常領域にある。いくつかの実施形態において、抗体は、HVR領域に、2つまたは3つのトリプトファン残基を含む。いくつかの実施形態において、製剤中の抗体は、抗PD-L1抗体である。PDL1、B7-H1、B7-4、CD274、及びB7-Hとしても知られているPD-L1(プログラム死リガンド1)は、膜貫通タンパク質であり、PD-1とのその相互作用は、T細胞活性化及びサイトカイン産生を阻害する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される抗PD-L1抗体は、ヒトPD-L1に結合する。本明細書に記載される方法において使用することができる抗PD-L1抗体の例は、PCT特許出願第WO2010/077634A1号及び米国特許第8,217,149号に記載されており、その全体は、参照により本明細書に援用される。
【0457】
いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、PD-L1とPD-1の間及び/またはPD-L1とB7-1の間の結合を阻害することが可能である。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、及び(Fab’)フラグメントからなる群から選択される抗体フラグメントである。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、ヒト化抗体である。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、ヒト抗体である。
【0458】
WO2010/077634A1及びUS8,217,149に記載されている抗PD-L1抗体が、本明細書に記載される方法において使用され得る。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、配列番号3の重鎖可変領域配列及び/または配列番号4の軽鎖可変領域配列を含む。また更なる実施形態において、提供されるのは、重鎖可変領域及び/または軽鎖可変領域配列を含む、単離された抗PD-L1抗体であり、
(a)重鎖配列は、重鎖配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSA(配列番号3)
に対して、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有し、
(b)軽鎖配列は、軽鎖配列:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号4)
に対して、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する。
【0459】
一実施形態において、抗PD-L1抗体は、HVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3配列を含む重鎖可変領域を含み、
(a)HVR-H1配列は、GFTFSXSWIH(配列番号5)であり、
(b)HVR-H2配列は、AWIXPYGGSXYYADSVKG(配列番号6)であり、
(c)HVR-H3配列は、RHWPGGFDY(配列番号7)であり、
更に、式中、Xは、DまたはGであり、Xは、SまたはLであり、Xは、TまたはSである。具体的な一態様において、Xは、Dであり、Xは、Sであり、Xは、Tである。
【0460】
別の態様において、ポリペプチドは、HVRの間に並んで配置された可変領域重鎖フレームワーク配列を更に含み、次式:(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)に従う。更なる別の態様において、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。更なる態様において、フレームワーク配列は、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様において、フレームワーク配列のうちの少なくとも1つは、以下のものである:
HC-FR1は、EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(配列番号8)であり、
HC-FR2は、WVRQAPGKGLEWV(配列番号9)であり、
HC-FR3は、RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号10)であり、
HC-FR4は、WGQGTLVTVSA(配列番号11)である。
【0461】
また更なる態様において、重鎖ポリペプチドは、HVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3を含む可変領域軽鎖と更に組み合わされ、
(a)HVR-L1配列は、RASQXTXA(配列番号12)であり、
(b)HVR-L2配列は、SASXLX10S(配列番号13)であり、
(c)HVR-L3配列は、QQX11121314PX15T(配列番号14)であり、
式中、Xは、DまたはVであり、Xは、VまたはIであり、Xは、SまたはNであり、Xは、AまたはFであり、Xは、VまたはLであり、Xは、FまたはTであり、X10は、YまたはAであり、X11は、Y、G、F、またはSであり、X12は、L、Y、FまたはWであり、X13は、Y、N、A、T、G、FまたはIであり、X14は、H、V、P、TまたはIであり、X15は、A、W、R、PまたはTである。また更なる態様において、Xは、Dであり、Xは、Vであり、Xは、Sであり、Xは、Aであり、Xは、Vであり、Xは、Fであり、X10は、Yであり、X11は、Yであり、X12は、Lであり、X13は、Yであり、X14は、Hであり、X15は、Aである。
【0462】
また更なる態様において、軽鎖は、HVRの間に並んで配置された可変領域軽鎖フレームワーク配列を更に含み、次式:(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)に従う。また更なる態様において、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。また更なる態様において、フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様において、フレームワーク配列のうちの少なくとも1つは、以下のものである:
LC-FR1は、DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号15)であり、
LC-FR2は、WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号16)であり、
LC-FR3は、GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号17)であり、
LC-FR4は、FGQGTKVEIKR(配列番号18)である。
【0463】
別の実施形態において、提供されるのは、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む、単離された抗PD-L1抗体または抗原結合フラグメントである。
【0464】
(a)重鎖は、HVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3を含み、更に、
(i)HVR-H1配列は、GFTFSXSWIH(配列番号5)であり、
(ii)HVR-H2配列は、AWIXPYGGSXYYADSVKG(配列番号6)であり、
(iii)HVR-H3配列は、RHWPGGFDY(配列番号7)であり、
(b)軽鎖は、HVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3を含み、更に、
(i)HVR-L1配列は、RASQXTXA(配列番号12)であり、
(ii)HVR-L2配列は、SASXLX10S(配列番号13)であり、
(iii)HVR-L3配は、QQX11121314PX15T(配列番号14)であり、
式中、Xは、DまたはGであり、Xは、SまたはLであり、Xは、TまたはSであり、Xは、DまたはVであり、Xは、VまたはIであり、Xは、SまたはNであり、Xは、AまたはFであり、Xは、VまたはLであり、Xは、FまたはTであり、X10は、YまたはAであり、X11は、Y、G、F、またはSであり、X12は、L、Y、FまたはWであり、X13は、Y、N、A、T、G、FまたはIであり、X14は、H、V、P、TまたはIであり、X15は、A、W、R、PまたはTである。具体的な態様において、Xは、Dであり、Xは、Sであり、Xは、Tである。別の態様において、Xは、Dであり、Xは、Vであり、Xは、Sであり、Xは、Aであり、Xは、Vであり、Xは、Fであり、X10は、Yであり、X11は、Yであり、X12は、Lであり、X13は、Yであり、X14は、Hであり、X15は、Aである。更なる別の態様において、Xは、Dであり、Xは、Sであり、Xは、Tであり、Xは、Dであり、Xは、Vであり、Xは、Sであり、Xは、Aであり、Xは、Vであり、Xは、Fであり、X10は、Yであり、X11は、Yであり、X12は、Lであり、X13は、Yであり、X14は、Hであり、X15は、Aである。
【0465】
更なる態様において、重鎖可変領域は、(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)のように、HVRの間に並んで配置された1つ以上のフレームワーク配列を含み、軽鎖可変領域は、(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)のように、HVRの間に並んで配置された1つ以上のフレームワーク配列を含む。また更なる態様において、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。また更なる態様において、重鎖フレームワーク配列は、KabatサブグループI、II、またはIII配列に由来する。また更なる態様において、重鎖フレームワーク配列は、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様において、重鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号8、9、10及び11に記載される。また更なる態様において、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、IIまたはIVサブグループ配列に由来する。また更なる態様において、軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様において、軽鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号15、16、17及び18に記載される。
【0466】
また更なる具体的な態様において、抗体は、ヒトまたはマウス定常領域を更に含む。また更なる態様において、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、及びIgG4からなる群から選択される。また更なる具体的な態様において、ヒト定常領域は、IgG1である。また更なる態様において、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、及びIgG3からなる群から選択される。また更なる態様において、マウス定常領域は、IgG2Aである。また更なる具体的な態様において、抗体は、低減されたまたは最小のエフェクター機能を有する。また更なる具体的な態様において、最小のエフェクター機能は、「エフェクター低減Fc変異」または非グリコシル化から得られる。また更なる実施形態において、エフェクター低減Fc変異は、定常領域のN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0467】
更に別の実施形態において、提供されるのは、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む抗PD-L1抗体であり、
(a)重鎖は、GFTFSDSWIH(配列番号19)、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号20)及びRHWPGGFDY(配列番号21)に対して少なくとも85%の配列同一性をそれぞれ有するHVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3配列を更に含み、または
(b)軽鎖は、RASQDVSTAVA(配列番号22)、SASFLYS(配列番号23)及びQQYLYHPAT(配列番号24)に対して少なくとも85%の配列同一性をそれぞれ有するHVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3配列を更に含む。
【0468】
具体的な態様において、配列同一性は、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%である。
【0469】
別の態様において、重鎖可変領域は、(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)のように、HVRの間に並んで配置された1つ以上のフレームワーク配列を含み、軽鎖可変領域は、(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)のように、HVRの間に並んで配置された1つ以上のフレームワーク配列を含む。更なる別の態様において、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。また更なる態様において、重鎖フレームワーク配列は、KabatサブグループI、II、またはIII配列に由来する。また更なる態様において、重鎖フレームワーク配列は、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様において、重鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号8、9、10及び11に記載される。また更なる態様において、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、IIまたはIVサブグループ配列に由来する。また更なる態様において、軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様において、軽鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号15、16、17及び18に記載される。
【0470】
また更なる具体的な態様において、抗体は、ヒトまたはマウス定常領域を更に含む。また更なる態様において、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。また更なる具体的な態様において、ヒト定常領域は、IgG1である。また更なる態様において、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。また更なる態様において、マウス定常領域は、IgG2Aである。また更なる具体的な態様において、抗体は、低減されたまたは最小のエフェクター機能を有する。また更なる具体的な態様において、最小のエフェクター機能は、「エフェクター低減Fc変異」または非グリコシル化から得られる。また更なる実施形態において、エフェクター低減Fc変異は、定常領域のN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0471】
別の更なる実施形態において、提供されるのは、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む、単離された抗PD-L1抗体であり、
(a)重鎖配列は、重鎖配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSS(配列番号25)、
に対して、少なくとも85%の配列同一性を有し、及び/または
(b)軽鎖配列は、軽鎖配列:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号4)
に対して、少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0472】
具体的な態様において、配列同一性は、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%である。別の態様において、重鎖可変領域は、(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)のように、HVRの間に並んで配置された1つ以上のフレームワーク配列を含み、軽鎖可変領域は、(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)のように、HVRの間に並んで配置された1つ以上のフレームワーク配列を含む。更なる別の態様において、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。更なる態様において、重鎖フレームワーク配列は、KabatサブグループI、II、またはIII配列に由来する。また更なる態様において、重鎖フレームワーク配列は、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様において、重鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号8、9、10及びWGQGTLVTVSS(配列番号27)に記載される。
【0473】
また更なる態様において、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、IIまたはIVサブグループ配列に由来する。また更なる態様において、軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様において、軽鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号15、16、17及び18に記載される。
【0474】
また更なる具体的な態様において、抗体は、ヒトまたはマウス定常領域を更に含む。また更なる態様において、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。また更なる具体的な態様において、ヒト定常領域は、IgG1である。また更なる態様において、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。また更なる態様において、マウス定常領域は、IgG2Aである。また更なる具体的な態様において、抗体は、低減されたまたは最小のエフェクター機能を有する。また更なる具体的な態様において、最小のエフェクター機能は、原核細胞内での産生から得られる。また更なる具体的な態様において、最小のエフェクター機能は、「エフェクター低減Fc変異」または非グリコシル化から得られる。また更なる実施形態において、エフェクター低減Fc変異は、定常領域のN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0475】
更なる態様において、重鎖可変領域は、(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)のように、HVRの間に並んで配置された1つ以上のフレームワーク配列を含み、軽鎖可変領域は、(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)のように、HVRの間に並んで配置された1つ以上のフレームワーク配列を含む。また更なる態様において、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。また更なる態様において、重鎖フレームワーク配列は、KabatサブグループI、II、またはIII配列に由来する。また更なる態様において、重鎖フレームワーク配列は、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様において、重鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、以下のものである:
HC-FR1 EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFS(配列番号29)
HC-FR2 WVRQAPGKGLEWVA(配列番号30)
HC-FR3 RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号10)
HC-FR4 WGQGTLVTVSS(配列番号27)。
【0476】
また更なる態様において、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、IIまたはIVサブグループ配列に由来する。また更なる態様において、軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様において、軽鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、以下のものである:
LC-FR1 DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号15)
LC-FR2 WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号16)
LC-FR3 GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号17)
LC-FR4 FGQGTKVEIK(配列番号28)。
【0477】
また更なる具体的な態様において、抗体は、ヒトまたはマウス定常領域を更に含む。また更なる態様において、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。また更なる具体的な態様において、ヒト定常領域は、IgG1である。また更なる態様において、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。また更なる態様において、マウス定常領域は、IgG2Aである。また更なる具体的な態様において、抗体は、低減されたまたは最小のエフェクター機能を有する。また更なる具体的な態様において、最小のエフェクター機能は、「エフェクター低減Fc変異」または非グリコシル化から得られる。また更なる実施形態において、エフェクター低減Fc変異は、定常領域のN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0478】
更に別の実施形態において、提供されるのは、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む抗PD-L1抗体であり、
(c)重鎖は、GFTFSDSWIH(配列番号19)、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号20)及びRHWPGGFDY(配列番号21)に対して少なくとも85%の配列同一性をそれぞれ有するHVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3配列を更に含み、及び/または
(d)軽鎖は、RASQDVSTAVA(配列番号22)、SASFLYS(配列番号23)及びQQYLYHPAT(配列番号24)に対して少なくとも85%の配列同一性をそれぞれ有するHVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3配列を更に含む。
【0479】
具体的な態様において、配列同一性は、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%である。
【0480】
別の態様において、重鎖可変領域は、(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)のように、HVRの間に並んで配置された1つ以上のフレームワーク配列を含み、軽鎖可変領域は、(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)のように、HVRの間に並んで配置された1つ以上のフレームワーク配列を含む。更なる別の態様において、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。また更なる態様において、重鎖フレームワーク配列は、KabatサブグループI、II、またはIII配列に由来する。また更なる態様において、重鎖フレームワーク配列は、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様において、重鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号8、9、10及びWGQGTLVTVSSASTK(配列番号31)に記載される。
【0481】
また更なる態様において、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、IIまたはIVサブグループ配列に由来する。また更なる態様において、軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。また更なる態様において、軽鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号15、16、17及び18に記載される。また更なる具体的な態様において、抗体は、ヒトまたはマウス定常領域を更に含む。また更なる態様において、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。また更なる具体的な態様において、ヒト定常領域は、IgG1である。また更なる態様において、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。また更なる態様において、マウス定常領域は、IgG2Aである。また更なる具体的な態様において、抗体は、低減されたまたは最小のエフェクター機能を有する。また更なる具体的な態様において、最小のエフェクター機能は、「エフェクター低減Fc変異」または非グリコシル化から得られる。また更なる実施形態において、エフェクター低減Fc変異は、定常領域のN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0482】
また更なる実施形態において、提供されるのは、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む、単離された抗PD-L1抗体であり、
(a)重鎖配列は、重鎖配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSSASTK(配列番号26)
に対して、少なくとも85%の配列同一性を有し、または
(b)軽鎖配列は、軽鎖配列:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号4)
に対して、少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0483】
いくつかの実施形態において、提供されるのは、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む、単離された抗PD-L1抗体であり、軽鎖可変領域配列は、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態において、提供されるのは、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む、単離された抗PD-L1抗体であり、重鎖可変領域配列は、配列番号26のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態において、提供されるのは、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む、単離された抗PD-L1抗体であり、軽鎖可変領域配列は、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%。または100%の配列同一性を有し、重鎖可変領域配列は、配列番号26のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態において、重鎖及び/または軽鎖のN末端における1、2、3、4または5つのアミノ酸残基は、欠失、置換または修飾され得る。
【0484】
また更なる実施形態において、提供されるのは、重鎖及び軽鎖配列を含む、単離された抗PD-L1抗体であり、
(a)重鎖配列は、重鎖配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号32)
に対して、少なくとも85%の配列同一性を有し、及び/または
(b)軽鎖配列は、軽鎖配列:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号33)
に対して、少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0485】
いくつかの実施形態において、提供されるのは、重鎖及び軽鎖配列を含む、単離された抗PD-L1抗体であり、軽鎖配列は、配列番号33のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態において、提供されるのは、重鎖及び軽鎖配列を含む、単離された抗PD-L1抗体であり、重鎖配列は、配列番号32のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態において、提供されるのは、重鎖及び軽鎖配列を含む、単離された抗PD-L1抗体であり、軽鎖配列は、配列番号33のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有し、重鎖配列は、配列番号32のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0486】
いくつかの実施形態において、単離された抗PD-L1抗体は、非グリコシル化される。抗体のグリコシル化は、典型的に、N結合型またはO結合型のいずれかである。N結合型とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を指す。トリペプチド配列であるアスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-トレオニン(式中、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)は、炭水化物部分がアスパラギン側鎖へ酵素結合するための認識配列である。したがって、ポリペプチド中にこれらのトリペプチド配列のいずれかが存在すると、潜在的なグリコシル化部位が生じる。O結合型グリコシル化とは、糖類であるN-アセイルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースのうちの1つの、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはトレオニンへの結合を指すが、5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリシンも使用され得る。抗体からのグリコシル化部位の除去は、上記のトリペプチド配列(N結合型グリコシル化部位の場合)のうちの1つが除去されるように、アミノ酸配列を改変することによって、簡便に達成される。この改変は、グリコシル化部位内のアスパラギン、セリンまたはトレオニン残基を別のアミノ酸残基(例えば、グリシン、アラニンまたは保存的置換)で置換することによってなされ得る。
【0487】
本明細書中の実施形態のいずれにおいても、単離された抗PD-L1抗体は、ヒトPD-L1、例えば、UniProtKB/Swiss-Protアクセッション番号Q9NZQ7.1に示されるヒトPD-L1、またはそのバリアントに結合することができる。
【0488】
抗PD-1抗体
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、MDX-1106である。「MDX-1106」の代替名には、MDX-1106-04、ONO-4538、BMS-936558、またはニボルマブが含まれる。いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、ニボルマブ(CAS登録番号:946414-94-4)である。また更なる実施形態において、提供されるのは、配列番号1に由来する重鎖可変領域アミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び/または配列番号2に由来する軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、単離された抗PD-1抗体である。また更なる実施形態において、提供されるのは、重鎖及び/または軽鎖配列を含む、単離された抗PD-1抗体であり、
(a)重鎖配列は、重鎖配列:QVQLVESGGGVVQPGRSLRLDCKASGITFSNSGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWYDGSKRYYADSVKGRFTISRDNSKNTLFLQMNSLRAEDTAVYYCATNDDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号1)、に対して、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有し、(b)軽鎖配列は、軽鎖配列:EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQSSNWPRTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号2)に対して、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する。
【0489】
核酸、宿主細胞、及びベクター
また更なる実施形態において、提供されるのは、本明細書に記載される抗体のいずれかをコードする、単離された核酸である。いくつかの実施形態において、核酸は、前述の抗PD-L1抗体のいずれかをコードする核酸の発現に好適なベクターを更に含む。また更なる具体的な態様において、ベクターは、核酸の発現に好適な宿主細胞である。また更なる具体的な態様において、宿主細胞は、真核細胞または原核細胞である。また更なる具体的な態様において、真核細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの哺乳動物細胞である。
【0490】
抗体またはその抗原結合フラグメントは、当該技術分野において知られている方法を使用して、例えば、前述の抗PD-L1抗体または抗原結合フラグメントのいずれかをコードする核酸を含有する、発現に好適な形態の宿主細胞を、かかる抗体もしくはフラグメントの産生に好適な条件下で培養することと、これらの抗体もしくはフラグメントを回収することと、を含むプロセスによって、またはセクションVIIにおいて後述される任意の方法に従って、作製され得る。
【0491】
VII.抗体の調製
本明細書に記載される抗体は、抗体を生成するための当該技術分野において利用可能な技術を使用して調製することができ、例示的な方法は以下のセクションにおいて詳述される。
【0492】
抗体は、目的の抗原(例えば、PD-L1(ヒトPD-L1など)、PD1(ヒトPD-L1など)、PD-L2(ヒトPD-L2など)など)を対象とする。好ましくは、抗原は、生物学的に重要なポリペプチドであり、障害に罹患している哺乳動物に抗体を投与することは、その哺乳動物に治療上の利益をもたらすことができる。
【0493】
特定の実施形態において、本明細書で提供される抗体は、≦1μM、≦150nM、≦100nM、≦50nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。
【0494】
一実施形態において、Kdは、以下のアッセイに記載されるように、目的の抗体のFab型及びその抗原を用いて実施される放射性標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される。抗原に対するFabの溶液結合親和性は、標識されていない抗原の滴定系列の存在下で、最小濃度の(125I)標識抗原とFabとを平衡化させ、次いで、結合した抗原を、抗Fab抗体でコーティングしたプレートで捕捉することによって、測定される(例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865-881(1999)参照)。アッセイの条件を確立するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を、50mM炭酸ナトリウム(pH9.6)中、5μg/mlの捕捉抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩コーティングし、その後、2%(w/v)ウシ血清アルブミンのPBSで2~5時間、室温(およそ23℃)でブロッキングする。非吸着プレート(Nunc#269620)で、100pMまたは26pMの[125I]-抗原を、連続希釈した目的のFabと混合する。次いで、目的のFabを一晩インキュベートする。ただし、インキュベーションは、確実に平衡に達するように、より長い時間(例えば、約65時間)継続させてもよい。その後、混合物を捕捉プレートに移し、室温でインキュベーションする(例えば、1時間)。次いで、溶液を除去し、プレートを0.1%ポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))のPBS中で8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μl/ウェルのシンチレーション液(MICROSCINT-20(商標);Packard)を加え、プレートをTOPCOUNT(商標)ガンマカウンター(Packard)で10分間計数する。最大結合の20%以下を与える濃度の各Fabを選択し、競合結合アッセイに使用する。
【0495】
別の実施形態によれば、Kdは、BIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を、およそ10レスポンスユニット(RU)で固定化した抗原CM5チップを25℃で使用する表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定される。簡潔に述べると、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIACORE,Inc.)を、供給元の説明書に従って、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)により活性化させる。抗原を10mM酢酸ナトリウム(pH4.8)で5μg/ml(およそ0.2μM)に希釈した後、結合タンパク質のレスポンスユニット(RU)がおよそ10に達成するまで5μl/分の流速で注入する。抗原注入後、1Mエタノールアミンを注入して未反応基をブロックする。カイネティクス測定のために、2倍連続希釈したFab(0.78nM~500nM)を、0.05%ポリソルベート20(TWEEN-20(商標))界面活性剤(PBST)を含むPBS中、25℃で、およそ25μl/分の流速で注入する。会合速度(kon)及び解離速度(koff)を、単純な1:1 Langmuir結合モデル(BIACORE(登録商標)Evaluation Softwareバージョン3.2)を使用して、会合と解離のセンサーグラムを同時にフィッティングすることによって、計算する。平衡解離定数(Kd)は、koff/konの比として計算される。例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865-881(1999)を参照されたい。上記の表面プラズモン共鳴アッセイによる会合速度が10-1-1を超える場合、会合速度は、漸増濃度の抗原の存在下、PBS(pH7.2)中20nM抗抗原抗体(Fab型)の25℃における蛍光発光強度(励起=295nm;発光=340nm、バンドパス16nm)の増減を測定する、蛍光消光技術を使用することによって決定することができ、これは、ストップフローを備えた分光光度計(Aviv Instruments)または攪拌キュベットを備えた8000シリーズのSLM-AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)などの分光計で測定される。
【0496】
(i)抗原の調製
任意選択により他の分子にコンジュゲートされた、可溶性抗原またはそのフラグメントは、抗体を生成するための免疫原として使用することができる。受容体などの膜貫通分子の場合、これらのフラグメント(例えば、受容体の細胞外ドメイン)を免疫原として使用することができる。あるいは、膜貫通分子を発現する細胞を免疫原として使用することができる。そのような細胞は、天然源(例えば、がん細胞株)から得ることもできるし、組み換え技術によって膜貫通分子を発現するように形質転換された細胞であってもよい。抗体を調製するのに有用な他の抗原及びその型は、当業者には明らかであろう。
【0497】
(ii)特定の抗体をベースにした方法
ポリクローナル抗体は、好ましくは、関連抗原及びアジュバントの複数回の皮下(s.c.)注入または腹腔内(i.p.)注入によって動物で産生される。関連抗原は、免疫する種において免疫原性であるタンパク質、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリンまたはダイズトリプシン阻害剤に、二官能性剤または誘導化剤、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介したコンジュゲート)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リシン残基を介する)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl、またはRN=C=NR(式中、R及びRは、異なるアルキル基である)を使用して、コンジュゲートすることが有用であり得る。
【0498】
抗原、免疫原性コンジュゲート、または誘導体に対する動物の免疫化は、例えば、100μgまたは5μgのタンパク質またはコンジュゲート(それぞれ、ウサギまたはマウスの場合)を3倍量のフロイント完全アジュバントと合わせ、この溶液を複数部位に皮内注射することによってなされる。1ヶ月後、フロイント完全アジュバント中のペプチドまたはコンジュゲートの元の量の1/5~1/10を複数部位に皮下注射することによって動物に追加免疫を行う。7~14日後、動物から採血し、血清の抗体力価をアッセイする。力価が安定状態に達するまで、動物に追加免疫を行う。好ましくは、同じ抗原のコンジュゲートで動物に追加免疫が行われるが、異なるタンパク質とのコンジュゲート及び/または異なる架橋試薬を介したコンジュゲートでもよい。コンジュゲートはまた、組み換え細胞培養でタンパク質融合体として作製することができる。また、ミョウバンなどの凝集剤も免疫応答を高めるために好適に使用される。
【0499】
本発明のモノクローナル抗体は、Kohler et al.,Nature,256:495(1975)によって最初に記載され、更に、例えば、Hongo et al.,Hybridoma,14(3):253-260(1995),Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988);Hammerling et al.,in:Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681(Elsevier,N.Y.,1981)、及びヒト-ヒトハイブリドーマに関するNi,Xiandai Mianyixue,26(4):265-268(2006)に記載されている、ハイブリドーマ法を使用して作製することができる。更なる方法には、例えば、ハイブリドーマ細胞株由来のモノクローナルヒト天然IgM抗体の産生に関する米国特許第7,189,826号に記載のものが含まれる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)は、Vollmers and Brandlein,Histology and Histopathology,20(3):927-937(2005)及びVollmers and Brandlein,Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185-91(2005)に記載されている。
【0500】
他の様々なハイブリドーマ技術については、例えば、米国特許出願公開第2006/258841号;同第2006/183887号(完全ヒト抗体)、同第2006/059575号;同第2005/287149号;同第2005/100546号;及び同第2005/026229号;ならびに米国特許第7,078,492号及び同第7,153,507号を参照されたい。ハイブリドーマ法を使用してモノクローナル抗体を生産するための例示的なプロトコルは、以下に記載される。一実施形態において、マウス、またはハムスターなどの他の適切な宿主動物を免疫化すると、免疫化に使用されたタンパク質に特異的に結合する抗体を産生するか、または産生することが可能なリンパ球が誘発される。抗体は、本発明のポリペプチドまたはそのフラグメント、及びモノホスホリルリピドA(MPL)/トレハロースジクリノミコレート(TDM)(Ribi Immunochem.Research,Inc.,Hamilton,MT)などのアジュバントの皮下(SC)または腹腔内(IP)注射を複数回行うことによって、動物内で産生される。本発明のポリペプチド(例えば、抗原)またはそのフラグメントは、組み換え法などの当該技術分野においてよく知られている方法を使用して調製され得、そのいくつかについては、本明細書に更に記載される。免疫化した動物の血清を抗抗原抗体についてアッセイし、任意選択により、追加免疫が行われる。抗抗原抗体を産生する動物のリンパ球を単離する。あるいは、in vitroでリンパ球を免疫化してもよい。
【0501】
次いで、ポリエチレングリコールなどの好適な融合剤を使用して、リンパ球を骨髄腫細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する。例えば、Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59-103(Academic Press,1986)を参照されたい。効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による安定した高レベルの抗体産生を支援し、HAT培地などの培地に感受性を示す骨髄腫細胞が使用され得る。例示的な骨髄腫細胞には、マウス骨髄腫株、例えば、Salk Institute Cell Distribution Center(San Diego,Calif.USA)から入手可能なMOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍に由来するもの、ならびにAmerican Type Culture Collection(Rockville,Md.USA)から入手可能なSP-2またはX63-Ag8-653細胞が含まれるが、これらに限定されない。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株についても記載されている(Kozbor,J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987))。
【0502】
このように調製されたハイブリドーマ細胞は、好適な培養培地、例えば、融合していない親骨髄腫細胞の成長または生存を阻害する1つ以上の物質を含有する培地中に播種され、成長させる。例えば、親骨髄腫細胞がヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ酵素(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマ用の培養培地は、典型的に、HGPRT欠損細胞の成長を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジン(HAT培地)を含む。好ましくは、ウシ胎児血清などの動物由来血清の使用を減らすために、例えば、Even et al.,Trends in Biotechnology,24(3),105-108(2006)に記載されるように、無血清ハイブリドーマ細胞培養法が使用される。
【0503】
Franek,Trends in Monoclonal Antibody Research,111-122(2005)には、ハイブリドーマ細胞培養の生産性を改善するためのツールとしてのオリゴペプチドが記載されている。具体的には、標準培地に特定のアミノ酸(アラニン、セリン、アスパラギン、プロリン)、またはタンパク質加水分解物画分を加えると、3~6個のアミノ酸残基から構成される合成オリゴペプチドによって、アポトーシスが大幅に抑制され得る。ペプチドは、ミリモルまたはそれより高い濃度で存在する。
【0504】
ハイブリドーマ細胞が成長している培養培地は、本発明の抗体に結合するモノクローナル抗体の産生についてアッセイされ得る。ハイブリドーマ細胞によって産生されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降によって、またはラジオイムノアッセイ(RIA)もしくは酵素結合免疫吸着法(ELISA)などのin vitro結合アッセイによって決定され得る。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、スキャッチャード分析によって決定することができる。例えば、Munson et al.,Anal.Biochem.,107:220(1980)を参照されたい。
【0505】
所望の特異性、親和性及び/または活性を有する抗体を産生するハイブリドーマ細胞を特定した後、クローンを限界希釈法によってサブクローニングし、標準的な方法によって成長させることができる。例えば、Goding(上掲)を参照されたい。この目的に好適な培養培地には、例えば、D-MEM培地またはRPMI-1640培地が含まれる。加えて、ハイブリドーマ細胞は、動物中で腹水腫瘍としてin vivoで成長させてもよい。サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体は、従来の免疫グロブリン精製手順、例えば、プロテインA-セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、親和性クロマトグラフィーなどによって、培養培地、腹水または血清から好適に分離される。ハイブリドーマ細胞からタンパク質を単離するための1つの手順は、US2005/176122及び米国特許第6,919,436号に記載されている。この方法は、結合プロセスにおいてリオトロピック塩などの最小の塩を使用することを含み、好ましくは、溶出プロセスにおいて少量の有機溶媒を使用することも含む。
【0506】
(iii)ライブラリー由来抗体
本発明の抗体は、所望の活性(複数可)を有する抗体のコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって単離され得る。例えば、ファージディスプレイライブラリーを生成し、所望の結合特徴を持つ抗体について当該ライブラリーをスクリーニングする方法は、様々なものが当該技術分野において知られている。更なる方法は、例えば、Hoogenboom et al.,Methods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2001)に概説されており、更に、例えば、McCafferty et al.,Nature 348:552-554;Clackson et al.,Nature 352:624-628(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1992);Marks and Bradbury,in Methods in Molecular Biology 248:161-175(Lo,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2003);Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299-310(2004);Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073-1093(2004);Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467-12472(2004);及びLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1-2):119-132(2004)に記載されている。
【0507】
特定のファージディスプレイ法において、Winter et al.,Ann.Rev.Immunol.,12:433-455(1994)に記載されているように、VH及びVL遺伝子のレパートリーをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって別個にクローニングし、ファージライブラリーでランダムに組み換え、次いで、それらを抗原結合ファージについてスクリーニングすることができる。ファージは、典型的に、一本鎖Fv(scFv)フラグメントまたはFabフラグメントのいずれかとして、抗体フラグメントを提示する。免疫源に由来するライブラリーは、ハイブリドーマの構築を必要とすることなく、免疫原に対して親和性の高い抗体を提供する。あるいは、Griffiths et al.,EMBO J,12:725-734(1993)に記載されるように、ナイーブレパートリー(例えば、ヒト由来)をクローニングすることで、いかなる免疫化も行うことなく、広範囲の非自己抗原及び自己抗原に対する単一の抗体源を得ることができる。最後に、Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381-388(1992)に記載されるように、幹細胞に由来する再構成されていないV遺伝子断片をクローニングし、ランダム配列を含有するPCRプライマーを使用して高度に可変のCDR3領域をコードし、in vitroで再構成を達成することによって、ナイーブライブラリーを合成的に作製することもできる。ヒト抗体ファージライブラリーについて記載している特許公報には、例えば、米国特許第5,750,373号、ならびに米国特許出願公開第2005/0079574号、同第2005/0119455号、同第2005/0266000号、同第2007/0117126号、同第2007/0160598号、同第2007/0237764号、同第2007/0292936号及び同第2009/0002360号が含まれる。
【0508】
ヒト抗体ライブラリーから単離された抗体または抗体フラグメントは、本明細書中、ヒト抗体またはヒト抗体フラグメントとみなされる。
【0509】
(iv)キメラ抗体、ヒト化抗体及びヒト抗体
特定の実施形態において、本明細書で提供される抗体は、キメラ抗体である。特定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号;及びMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984)に記載されている。一例において、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、またはサルなどの非ヒト霊長類に由来する可変領域)及びヒト定常領域を含む。更なる例において、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが親抗体のクラスまたはサブクラスから変更されている「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体には、その抗原結合フラグメントが含まれる。
【0510】
特定の実施形態において、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。典型的に、非ヒト抗体は、親の非ヒト抗体の特異性及び親和性を保持しつつ、ヒトへの免疫原性が低下するようにヒト化される。一般に、ヒト化抗体は、1つ以上の可変ドメインを含み、HVR、例えば、CDR(またはその一部分)は、非ヒト抗体に由来し、FR(またはその一部分)は、ヒト抗体配列に由来する。ヒト化抗体はまた、任意選択により、少なくともヒト定常領域の一部分を含む。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体中のいくつかのFR残基は、例えば、抗体の特異性または親和性を回復または改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基の由来となる抗体)の対応する残基に置換される。
【0511】
ヒト化抗体及びその作製方法は、例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)に概説されており、更に、例えば、Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988);Queen et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 86:10029-10033(1989);米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号、及び同第7,087,409号;Kashmiri et al.,Methods 36:25-34(2005)(SDR(a-CDR)グラフティングについて記載);Padlan,Mol.Immunol.28:489-498(1991)(「リサーフェーシング」について記載);Dall’Acqua et al.,Methods 36:43-60(2005)(「FRシャッフリング」について記載);ならびにOsbourn et al.,Methods 36:61-68(2005)及びKlimka et al.,Br.J.Cancer,83:252-260(2000)(FRシャフリングに対する「ガイド選択」について記載)に記載されている。
【0512】
ヒト化に使用され得るヒトフレームワーク領域には、「ベストフィット」法を使用して選択されるフレームワーク領域(例えば、Sims et al.J.Immunol.151:2296(1993)参照);軽鎖可変領域または重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992);及びPresta et al.J.Immunol.,151:2623(1993)参照);ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域またはヒト生殖系列フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)参照);及びFRライブラリーのスクリーニングから得られるフレームワーク領域(例えば、Baca et al.,J.Biol.Chem.272:10678-10684(1997)及びRosok et al.,J.Biol.Chem.271:22611-22618(1996)参照)が含まれるが、これらに限定されない。
【0513】
特定の実施形態において、本明細書で提供される抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野において知られている様々な技術を使用して作製することができる。ヒト抗体は、van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.5:368-74(2001)及びLonberg,Curr.Opin.Immunol.20:450-459(2008)に概説されている。
【0514】
ヒト抗体は、抗原刺激に応答して、インタクトヒト抗体またはヒト可変領域を含むインタクト抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物に免疫原を投与することによって、調製され得る。そのような動物は、典型的に、内因性免疫グロブリン遺伝子座に置き換わるか、または染色体外に存在するか、もしくは動物の染色体にランダムに統合される、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全てまたは一部分を含有する。そのようなトランスジェニックマウスにおいて、内因性免疫グロブリン遺伝子座は、一般に不活性化されている。ヒト抗体をトランスジェニック動物から得るための方法の概説については、Lonberg,Nat.Biotech.23:1117-1125(2005)を参照されたい。また、例えば、XENOMOUSE(商標)技術について記載する米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号;HUMAB(登録商標)技術について記載する米国特許第5,770,429号;K-MMOUSE(登録商標)技術について記載する米国特許第7,041,870号、ならびにVELOCIMOUSE(登録商標)技術)について記載する米国特許出願公開第US2007/0061900号も参照されたい。そのような動物によって生成されるインタクト抗体由来のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによって、更に改変され得る。
【0515】
ヒト抗体はまた、ハイブリドーマベースの方法によって作製することもできる。ヒトモノクローナル抗体産生のためのヒト骨髄腫細胞株及びマウスヒトヘテロ骨髄腫細胞株についても記載されている。(例えば、Kozbor J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987);及びBoerner et al.,J.Immunol.,147:86(1991)参照)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されるヒト抗体については、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3562(2006)にも記載されている。更なる方法には、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の産生について記載)及びNi,Xiandai Mianyixue,26(4):265-268(2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマについて記載)のものが含まれる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)は、Vollmers and Brandlein,Histology and Histopathology,20(3):927-937(2005)及びVollmers and Brandlein,Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185-91(2005)にも記載されている。
【0516】
ヒト抗体はまた、ヒト由来ファージディスプレイライブラリーから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによって生成され得る。次いで、そのような可変ドメイン配列を所望のヒト定常ドメインと組み合わせることができる。抗体ライブラリーからヒト抗体を選択するための技術は、以下に記載される。
【0517】
(v)抗体フラグメント
抗体フラグメントは、酵素消化などの従来法、または組み換え技術によって生成され得る。特定の状況では、全抗体ではなく、抗体フラグメントを使用する利点がある。フラグメントのサイズがより小さくなることにより、迅速なクリアランスが可能になり、固形腫瘍へのアクセスの改善がもたらされ得る。特定の抗体フラグメントの概説については、Hudson et al.(2003)Nat.Med.9:129-134を参照されたい。
【0518】
抗体フラグメントの産生については、様々な技術が開発されている。従来、これらのフラグメントは、インタクト抗体のタンパク質分解消化によって得られていた(例えば、Morimoto et al.,Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117(1992);及びBrennan et al.,Science,229:81(1985)参照)。しかしながら、現在、これらのフラグメントは、組み換え宿主細胞によって直接産生することができる。Fab、Fv及びscFv抗体フラグメントは全て、E.coli中で発現され、E.coliから分泌され得るため、これらのフラグメントを容易に大量産生することができる。抗体フラグメントは、上に考察される抗体ファージライブラリーから単離することができる。あるいは、Fab’-SHフラグメントは、E.coliから直接回収し、化学的に結合させて、F(ab’)フラグメントを形成することができる(Carter et al.,Bio/Technology 10:163-167(1992))。別のアプローチでは、F(ab’)フラグメントは、組み換え宿主細胞の培養物から直接単離することができる。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含む、in vivo半減期が延長されたFab及びF(ab’)フラグメントについては、米国特許第5,869,046号に記載されている。抗体フラグメントを産生するための他の技術は、技能のある専門家には明らかであろう。特定の実施形態において、抗体は、一本鎖Fvフラグメント(scFv)である。例えば、WO93/16185;米国特許第5,571,894号;及び同第5,587,458号を参照されたい。Fv及びscFvは、定常領域を欠くインタクトな結合部位を有する唯一の種であり、そのため、in vivo使用中の非特異的結合を減らすのに好適であり得る。scFv融合タンパク質は、scFvのアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかでエフェクタータンパク質の融合を生じるように構築され得る。Antibody Engineering,ed.Borrebaeck(上掲)を参照されたい。例えば、抗体フラグメントはまた、例えば、米国特許第5,641,870号に記載されているものなどの「直鎖抗体」であり得る。そのような直鎖抗体は、単一特異性または二重特異性であり得る。
【0519】
(vi)多重特異性抗体
多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対して結合特異性を有し、エピトープは、通常、異なる抗原に由来する。そのような分子は、通常、2つの異なるエピトープにのみ結合するが(すなわち、二重特異性抗体、BsAb)、本明細書で使用される場合、三重特異性抗体などの更なる特異性を有する抗体もこの発現に包含される。二重特異性抗体は、全長抗体または抗体フラグメント(例えば、F(ab’)二重特異性抗体)として調製することができる。
【0520】
二重特異性抗体の作製方法は、当該技術分野において知られている。全長二重特異性抗体の従来の産生は、2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の共発現に基づき、これらの2本の鎖は異なる特異性を有する(例えば、Millstein et al.,Nature,305:537-539(1983)参照)。免疫グロブリンの重鎖と軽鎖は、ランダムな組み合わせであるため、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10種の異なる抗体分子の混合物を産生する可能性があり、正しい二重特異性構造を有するのは、これらのうちの1つのみである。正しい分子の精製は、通常、アフィニティークロマトグラフィーステップにより行われるが、かなり煩雑であり、生成物の収率は低い。同様の手順がWO93/08829及びTraunecker et al.,EMBO J.,10:3655-3659(1991)に開示されている。
【0521】
当該技術分野において知られている、二重特異性抗体を作製するためのアプローチの1つは、「ノブ・イントゥ・ホール」または「空隙への突起(protuberance-into-cavity)」法である(例えば、米国特許第5,731,168号参照)。このアプローチにおいて、2つの免疫グロブリンポリペプチド(例えば、重鎖ポリペプチド)は、それぞれ界面を含む。一方の免疫グロブリンポリペプチドの界面は、もう一方の免疫グロブリンポリペプチド上の対応する界面と相互作用し、それにより、2つの免疫グロブリンポリペプチドの会合が可能となる。これらの界面は、一方の免疫グロブリンポリペプチドの界面に位置する「ノブ」または「突起」(これらの用語は本明細書で区別なく使用され得る)が、もう一方の免疫グロブリンポリペプチドの界面に位置する「ホール」または「空隙」(これらの用語は本明細書で区別なく使用され得る)に対応するように操作され得る。いくつかの実施形態において、ホールは、ノブと同一または類似のサイズであり、2つの界面が相互作用するときに、一方の界面のノブがもう一方の界面の対応するホールに配置可能なように好適に配置される。理論に束縛されることを望むものではないが、これにより、ヘテロ多量体が安定化し、他の種、例えば、ホモ多量体よりもヘテロ多量体の形成が優先されると考えられる。いくつかの実施形態において、このアプローチは、2つの異なる免疫グロブリンポリペプチドのヘテロ多量体化を促進し、異なるエピトープに対する結合特異性を有する2つの免疫グロブリンポリペプチドを含む二重特異性抗体を作製するために使用され得る。
【0522】
いくつかの実施形態において、ノブは、小さなアミノ酸側鎖を、より大きな側鎖で置き換えることによって、構築され得る。いくつかの実施形態において、ホールは、大きなアミノ酸側鎖を、より小さな側鎖で置き換えることによって、構築され得る。ノブまたはホールは、元々の界面に存在してもよいし、合成的に導入されてもよい。例えば、ノブまたはホールは、少なくとも1つの「元の」アミノ酸残基を少なくとも1つの「移入」アミノ酸残基に置き換えるように、界面をコードする核酸配列を変更することによって、合成的に導入され得る。核酸配列を変更するための方法には、当該技術分野においてよく知られている標準的な分子生物学技術が含まれ得る。様々なアミノ酸残基の側鎖体積を以下の表に示す。いくつかの実施形態において、元の残基は、小さな側鎖体積(例えば、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グリシン、セリン、トレオニン、またはバリン)を有し、ノブ形成のための移入残基は、天然アミノ酸であり、アルギニン、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンを含み得る。いくつかの実施形態において、元の残基は、大きな側鎖体積(例えば、アルギニン、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン)を有し、ホール形成のための移入残基は、天然アミノ酸であり、アラニン、セリン、トレオニン、及びバリンを含み得る。
【0523】
いくつかの実施形態において、ノブまたはホール形成のための元の残基は、ヘテロ多量体の三次元構造体に基づいて特定される。当該技術分野において知られている、三次元構造を取得するための技術には、X線結晶学及びNMRが含まれ得る。いくつかの実施形態において、界面は、免疫グロブリン定常ドメインのCH3ドメインである。これらの実施形態において、ヒトIgGのCH3/CH3界面は、4つの逆平行βストランド上に位置する各ドメイン上の16の残基を伴う。理論に束縛されることを望むものではないが、ノブがパートナーのCH3ドメインの相補的ホールではなく周囲溶媒に受け入れられるリスクを最小限に抑えるために、変異残基が、好ましくは、中央の2つの逆平行βストランド上に位置される。いくつかの実施形態において、対応するノブとホールを形成する2つの免疫グロブリンポリペプチドの変異は、以下の表に記載される1つ以上の対に対応する。
変異は、元の残基、次いでKabatナンバリングシステムを使用した位置、続いて移入残基によって示される(残基は全て一文字のアミノ酸コードで示される)。複数の変異は、コロンで分けられている。
【0524】
いくつかの実施形態において、免疫グロブリンポリペプチドは、上の表2に列挙される1つ以上のアミノ酸置換を含むCH3ドメインを含む。いくつかの実施形態において、二重特異性抗体は、表2の左カラムに列挙される1つ以上のアミノ酸置換を含むCH3ドメインを含む第1の免疫グロブリンポリペプチドと、表2の右カラムに列挙される1つ以上の対応するアミノ酸置換を含むCH3ドメインを含む第2の免疫グロブリンポリペプチドと、を含む。
【0525】
上で考察したDNAの変異に続いて、対応するノブまたはホール形成変異を1つ以上有する改変された免疫グロブリンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、当該技術分野において知られている標準的な組み換え技術及び細胞系を使用して発現及び精製することができる。例えば、米国特許第5,731,168号、同第5,807,706号、同第5,821,333号、同第7,642,228号、同第7,695,936号、同第8,216,805号、米国特許出願公開第2013/0089553号、及びSpiess et al.,Nature Biotechnology 31:753-758,2013を参照されたい。改変された免疫グロブリンポリペプチドは、E.coliなどの原核生物の宿主細胞、またはCHO細胞などの真核生物の宿主細胞を使用して産生され得る。対応するノブ及びホールを有する免疫グロブリンポリペプチドは、宿主細胞中で共培養で発現させ、ヘテロ多量体として一緒に精製されてもよいし、単一培養で発現させ、別個に精製し、in vitroで組み立ててもよい。いくつかの実施形態において、2つの細菌宿主細胞株(一方はノブを有する免疫グロブリンポリペプチドを発現し、他方はホールを有する免疫グロブリンポリペプチドを発現する)が、当該技術分野において知られている標準的な細菌培養技法を使用して、共培養される。いくつかの実施形態において、2つの株は、例えば、培養における発現レベルが等しくなるように、特定の比率で混合され得る。いくつかの実施形態において、2つの株は、50:50、60:40、または70:30の比率で混合され得る。ポリペプチドの発現後、細胞は、共に溶解され得、タンパク質が抽出され得る。ホモ多量体種対ヘテロ多量体種の存在量の測定を可能にする、当該技術分野において知られている標準的な技術には、サイズ排除クロマトグラフィーが含まれ得る。いくつかの実施形態において、改変された免疫グロブリンポリペプチドのそれぞれは、標準的な組み換え技術を使用して別個に発現され、in vitroで一緒に組み立てられ得る。組み立ては、例えば、改変された免疫グロブリンポリペプチドをそれぞれ精製し、それらを同量で一緒に混合及びインキュベートし、ジスルフィドを還元し(例えば、ジチオスレイトールによる処理)、濃縮し、ポリペプチドを再酸化することによって、達成され得る。形成された二重特異性抗体は、カチオン交換クロマトグラフィーを含む標準的な技術を使用して精製され、サイズ排除クロマトグラフィーを含む標準的な技術を使用して測定され得る。これらの方法のより詳細な説明については、Speiss et al.,Nat.Biotechnol 31:753-8,2013を参照されたい。いくつかの実施形態において、改変された免疫グロブリンポリペプチドは、上記の方法を使用して、CHO細胞で別個に発現され、in vitroで組み立てられ得る。
【0526】
異なるアプローチでは、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体-抗原結合部位)が免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合される。融合は、好ましくは、ヒンジ、CH2、及びCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの融合である。軽鎖結合に必要な部位を含有する第1の重鎖定常領域(CH1)が、融合体のうちの少なくとも1つに存在するのが典型的である。免疫グロブリン重鎖融合体と、所望により、免疫グロブリン軽鎖とをコードするDNAを別個の発現ベクターに挿入し、好適な宿主生物にコトランスフェクトする。これにより、構築に使用される3つのポリペプチド鎖の割合が異なるときに最適な収率が生じる実施形態において、3つのポリペプチドフラグメントの相互比率を調節する上で、優れた柔軟性がもたらされる。しかしながら、少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現が同じ割合であるときに高収率が生じる場合、または割合に特定の重要性がない場合には、2つまたは3つ全てのポリペプチド鎖をコードする配列を1つの発現ベクターに挿入することが可能である。
【0527】
このアプローチの一実施形態において、二重特異性抗体は、第1の結合特異性を有する一方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖と、他方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(第2の結合特異性を提供する)からなる。この非対称構造は、免疫グロブリン軽鎖が二重特異性分子の半分にのみで存在することにより容易な分離方法が提供されるため、望ましくない免疫グロブリン鎖の組み合わせから所望の二重特異性化合物を分離するのが簡便になることが見出された。このアプローチは、WO94/04690に開示されている。二重特異性抗体の生成に関する更なる詳細については、例えば、Suresh et al.,Methods in Enzymology,121:210(1986)を参照されたい。
【0528】
WO96/27011に記載の別のアプローチでは、一対の抗体分子間の界面を操作して、組み換え細胞培養物から回収されるヘテロ二量体の割合を最大にすることができる。一方の界面は、抗体定常ドメインのC3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1の抗体分子の界面の1つ以上の小さいアミノ酸側鎖を、より大きい側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)に置き換える。この大きい側鎖(複数可)と同一または同様の大きさの補償「空隙」を、第2の抗体分子の界面上に、大きいアミノ酸側鎖をより小さいアミノ酸側鎖(例えば、アラニンまたはトレオニン)に置き換えることによって作製する。これにより、ホモ二量体などの他の望ましくない最終産物よりもヘテロ二量体の収率が増加する機構が提供される。
【0529】
二重特異性抗体には、架橋されたまたは「ヘテロコンジュゲートされた」抗体が含まれる。例えば、ヘテロコンジュゲート中の抗体の一方がアビジンにカップリングし、他方がビオチンにカップリングされ得る。そのような抗体は、例えば、免疫系細胞を望ましくない細胞へ標的化するために(米国特許第4,676,980号)、またHIV感染症の治療のために提案されている(WO91/00360、WO92/200373、及びEP03089)。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の簡便な架橋方法を使用して作製することができる。好適な架橋剤は、当該技術分野においてよく知られており、いくつかの架橋技術とともに、米国特許第4,676,980号に開示されている。
【0530】
抗体フラグメントから二重特異性抗体を生成するための技術は、文献にも記載されている。例えば、二重特異性抗体は、化学結合を使用して調製することができる。Brennan et al.,Science,229:81(1985)は、インタクト抗体をタンパク質分解的に切断して、F(ab’)フラグメントを生成する手段を記載している。これらのフラグメントを、ジチオール錯化剤である亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元して、隣接するジチオールを安定させ、分子間ジスルフィド形成を阻止する。次いで、生成されたFab’フラグメントを、チオニトロ安息香酸(TNB)誘導体に変換する。次いで、Fab’-TNB誘導体の一方を、メルカプトエチルアミンを用いる還元によってFab’-チオールに再変換し、等モル量のもう一方のFab’-TNB誘導体と混合して、二重特異性抗体を形成する。生成された二重特異性抗体は、酵素の選択的固定化のための剤として使用することができる。
【0531】
最近の進歩により、E.coliからのFab’-SHフラグメントの直接的な回収が容易になっており、当該フラグメントを化学的にカップリングさせて二重特異性抗体を形成することができる。Shalaby et al.,J.Exp.Med.,175:217-225(1992)は、完全ヒト化二重特異性抗体F(ab’)分子の産生について記載している。各Fab’フラグメントをE.coliから別々に分泌させ、in vitroで指向性化学的カップリングに供することで、二重特異性抗体が形成された。
【0532】
組み換え細胞培養から直接的に二重特異性抗体フラグメントを作製及び単離するための技術についても、様々なものが記載されている。例えば、ロイシンジッパーを使用した二重特異性抗体が生成されている。Kostelny et al.,J.Immunol.,148(5):1547-1553(1992).Fos及びJunタンパク質に由来するロイシンジッパーペプチドを、遺伝子融合によって、2つの異なる抗体のFab’部分に結合し、この抗体ホモ二量体をヒンジ領域で還元して単量体を得、次いで、これを再び酸化することで、抗体ヘテロ二量体が形成された。この方法は、抗体ホモ二量体の生成にも利用することができる。Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444-6448(1993)によって記載されている「ダイアボディ」技術は、二重特異性抗体フラグメントを作製するための代替的機構を提供している。当該フラグメントは、同じ鎖上の2つのドメイン間で対合が形成されないような短いリンカーによって軽鎖可変ドメイン(V)に連結された重鎖可変ドメイン(V)を含む。したがって、1つのフラグメントのVドメイン及びVドメインは、もう1つのフラグメントの相補的なVドメイン及びVドメインと対合させられ、それにより、2つの抗原結合部位が形成される。一本鎖Fv(sFv)二量体の使用によって二重特異性抗体フラグメントを作製するための別の技法も報告されている。Gruber et al,J.Immunol,152:5368(1994)を参照されたい。
【0533】
二重特異性抗体フラグメントを作製するための別の技術は、「二重特異性T細胞エンゲージャー」またはBiTE(登録商標)アプローチである(例えば、WO2004/106381、WO2005/061547、WO2007/042261、及びWO2008/119567参照)。このアプローチは、単一のポリペプチド上に配列された2つの抗体可変ドメインを利用する。例えば、単一ポリペプチド鎖は、2つの一本鎖Fv(scFv)フラグメントを含み、そのそれぞれは、2つのドメイン間の分子内会合を可能にするのに十分な長さのポリペプチドリンカーによって分離された可変重鎖(V)及び可変軽鎖(V)ドメインを有する。この単一ポリペプチドは、2つのscFvフラグメント間にポリペプチドスペーサー配列を更に含む。各scFvは、異なるエピトープを認識し、これらのエピトープは、異なる細胞種に特異的であり得、それにより、各scFvがその同種エピトープと結合すると、2つの異なる細胞種の細胞が極めて近接するか、またはつながれる。このアプローチの具体的な一実施形態は、免疫細胞によって発現される細胞表面抗原、例えば、T細胞上のCD3ポリペプチドを認識するscFvを、悪性細胞または腫瘍細胞などの標的細胞によって発現される細胞表面抗原を認識するもう1つのscFvに結合させることを含む。
【0534】
二重特異性T細胞エンゲージャーは、単一ポリペプチドであるので、当該技術分野において知られている任意の原核生物または真核細胞の発現系、例えば、CHO細胞株を使用して発現され得る。しかしながら、意図された単量体の活性以外の生物活性を有し得る他の多量体種から、単量体の二重特異性T細胞エンゲージャーを分離するために、特定の精製技術(例えば、EP1691833参照)が必要な場合がある。ある1つの例示的な精製スキームでは、まず、分泌されたポリペプチドを含有する溶液を金属アフィニティークロマトグラフィーに供し、ポリペプチドをイミダゾールの濃度勾配で溶出する。この溶出液を陰イオン交換クロマトグラフィーを使用して更に精製し、ポリペプチドを塩化ナトリウムの濃度勾配を使用して溶出する。最後に、この溶出液をサイズ排除クロマトグラフィーに供すると、多量体種から単量体が分離される。
【0535】
2価を超える抗体が企図される。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。例えば、Tuft et al.J.Immunol.147:60(1991)を参照されたい。
【0536】
(vii)単一ドメイン抗体
いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、単一ドメイン抗体である。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てもしくは一部分、または軽鎖可変ドメインの全てもしくは一部分を含む、単一ポリペプチド鎖である。特定の実施形態において、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,Mass.;例えば、米国特許第6,248,516B1号参照)。一実施形態において、単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てまたは一部分から構成される。
【0537】
(viii)抗体バリアント
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される抗体のアミノ酸配列修飾(複数可)が企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/または他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列バリアントは、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な変更を導入することによって、またはペプチド合成によって、調製され得る。そのような修飾には、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基の欠失、及び/または挿入、及び/または置換が含まれる。欠失、挿入、及び置換は、最終的なコンストラクトに到達するように、任意の組み合わせがなされるが、最終的なコンストラクトが所望の特徴を持つことを条件とする。アミノ酸の改変は、配列が作製されるときに、対象の抗体アミノ酸配列に導入され得る。
【0538】
(ix)置換、挿入、及び欠失バリアント
特定の実施形態において、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体バリアントが提供される。置換型変異導入に関する目的部位には、HVR及びFRが含まれる。保存的置換は、表3中、「保存的置換」という見出しで示される。より実質的な変化は、表3中の「例示的な置換」という見出しで示され、アミノ酸側鎖クラスに関しては、以下に更に記載される。アミノ酸置換は、目的の抗体に導入され、その産物は、所望の活性、例えば、抗原結合の保持/改善、免疫原性の減少、またはADCCもしくはCDCの改善についてスクリーニングされ得る。
【0539】
アミノ酸は、共通の側鎖特性に従って分類され得る:
a.疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
b.中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
c.酸性:Asp、Glu;
d.塩基性:His、Lys、Arg;
e.鎖配向に影響する残基:Gly、Pro;
f.芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0540】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスに交換することを伴う。
【0541】
置換バリアントの1つの種類は、親抗体(例えば、ヒト化またはヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基を置換することを伴う。一般に、得られたバリアント(複数可)のうち、親抗体と比べて特定の生物学的特性が変更(例えば、改善)(例えば、親和性の増加、免疫原性の低下)され、及び/または親抗体の特定の生物学的特性が実質的保持されているバリアントが更なる研究のために選択される。例示的な置換バリアントは、親和性成熟抗体であり、例えば、本明細書に記載されるようなファージディスプレイベースの親和性成熟技術を使用して、簡便に作製され得る。簡潔に述べると、1つ以上のHVR残基を変異させ、バリアント抗体をファージ上に提示させ、特定の生物活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングする。
【0542】
改変(例えば、置換)は、例えば、抗体親和性を改善するために、HVR中になされ得る。そのような改変は、HVRの「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセス中に高頻度で変異を受けるコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury,Methods Mol.Biol.207:179-196(2008)参照)、及び/またはSDR(a-CDR)になされ得、結果として生じるバリアントVHまたはVLを結合親和性について試験する。二次ライブラリーを構築し、二次ライブラリーから再選択することによる親和性成熟は、例えば、Hoogenboom et al.,Methods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,(2001))に記載されている。親和性成熟のいくつかの実施形態において、様々な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリング、またはオリゴヌクレオチド指向性変異導入)のいずれかによって、成熟について選択された可変遺伝子に多様性が導入される。次いで、二次ライブラリーが作製される。次いで、このライブラリーをスクリーニングして、所望の親和性を有する任意の抗体バリアントを特定する。多様性を導入する別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4~6個の残基)を無作為に割り付けるHVR指向性アプローチを伴う。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異導入法またはモデリングを使用して、特異的に特定され得る。多くの場合、特に、CDR-H3及びCDR-L3が対象にされる。
【0543】
特定の実施形態において、置換、挿入、または欠失は、そのような改変が抗体の抗原結合能力を実質的に低減させない限り、1つ以上のHVR内に生じ得る。例えば、結合親和性を実質的に低減させない保存的改変(例えば、本明細書で提供される保存的置換)がHVR中になされ得る。そのような改変は、HVRの「ホットスポット」またはSDRの外部にあってもよい。上に提供されるバリアントVH及びVL配列の特定の実施形態において、各HVRは、改変されていないか、または1つ、2つもしくは3つを超えないアミノ酸置換を含有し得る。
【0544】
変異導入の対象となり得る抗体の残基または領域の特定に有用な方法は、「アラニンスキャニング変異導入法」と呼ばれ、Cunningham and Wells(1989)Science,244:1081-1085によって記載されている。この方法では、標的残基のうちのある残基または群(例えば、Arg、Asp、His、Lys、及びGluなどの荷電残基)を特定し、これを中性または負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)で置き換え、抗体と抗原の相互作用に影響があるかどうかを決定する。最初の置換に対して機能感受性を示すアミノ酸位置に更なる置換が導入され得る。代替的にまたは追加的に、抗原-抗体複合体の結晶構造から、抗体と抗原との間の接触点を特定する。そのような接触残基及び隣接残基は、置換の候補として、標的にされるか、または排除され得る。バリアントは、スクリーニングにより、所望の特性を含有するかどうか決定され得る。
【0545】
アミノ酸配列の挿入には、1残基から100以上の残基を含有するポリペプチドまでの長さに及ぶアミノ末端及び/またはカルボキシル末端の融合、ならびに1つまたは複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を含む抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入バリアントには、酵素(例えば、ADEPTの場合)または抗体の血清中半減期を延長させるポリペプチドを抗体のN末端またはC末端に融合することが含まれる。
【0546】
(x)グリコシル化バリアント
特定の実施形態において、本明細書で提供される抗体は、抗体のグリコシル化の程度が増加または減少するように改変される。抗体に対するグリコシル化部位の付加または除去は、1つ以上のグリコシル化部位が創出または除去されるようにアミノ酸配列を改変することによって、簡便に達成され得る。
【0547】
抗体がFc領域を含む場合、Fc領域に結合している炭水化物が改変され得る。哺乳動物細胞によって産生される天然抗体は、典型的に、分岐した二分岐型オリゴ糖を含み、これは、一般に、Fc領域のCH2ドメインのAsn297にN-結合により結合している。例えば、Wright et al.TIBTECH 15:26-32(1997)を参照されたい。オリゴ糖は、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース及びシアル酸、ならびに二分岐型オリゴ糖構造の「幹」中のGlcNAcに結合したフコースを含み得る。いくつかの実施形態において、本発明の抗体中のオリゴ糖の修飾は、特定の改善された特性を有する抗体バリアントを作製するために行われ得る。
【0548】
一実施形態において、Fc領域に結合している炭水化物構造のフコースが減少しているか、フコースを欠いている、Fc領域を含む抗体バリアントが提供される。これにより、ADCC機能が改善され得る。具体的に、野生型CHO細胞内で産生される同じ抗体のフコースの量と比べて、フコースが減少している抗体が本明細書で企図される。すなわち、当該抗体は、天然CHO細胞(例えば、天然グリコシル化パターンをもたらすCHO細胞、例えば、天然FUT8遺伝子を含有するCHO細胞)によって産生される場合よりも、フコースの量が少ないことを特徴とする。特定の実施形態において、抗体は、抗体上のN-結合型グリカンの約50%、40%、30%、20%、10%、または5%未満がフコースを含むものである。例えば、そのような抗体のフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%または20%~40%であり得る。特定の実施形態において、抗体は、抗体上のN-結合型グリカンのいずれもがフコースを含まないものであり、すなわち、抗体は、完全にフコースを含まないか、またはフコースを有さないか、または、アフコシル化されている。フコースの量は、例えば、WO2008/077546に記載されているようなMALDI-TOF質量分析によって測定されるように、Asn297に結合している全ての糖構造の合計(例えば、複合型、混合型及び高マンノース型構造)に対する、Asn297の糖鎖内にあるフコースの平均量を算出することによって決定される。Asn297は、Fc領域内の位置297付近(Fc領域残基のEUナンバリング)に位置するアスパラギン残基を指すが、Asn297は、抗体の軽微な配列変化に起因して、位置297から上流または下流の約±3アミノ酸、すなわち、位置294~300の間に位置する場合もある。そのようなフコシル化バリアントは、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許出願公開第US2003/0157108号(Presta,L.);US2004/0093621(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)を参照されたい。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体バリアントに関連する公開物の例には、US2003/0157108;WO2000/61739;WO2001/29246;US2003/0115614;US2002/0164328;US2004/0093621;US2004/0132140;US2004/0110704;US2004/0110282;US2004/0109865;WO2003/085119;WO2003/084570;WO2005/035586;WO2005/035778;WO2005/053742;WO2002/031140;Okazaki et al.J.Mol.Biol.336:1239-1249(2004);Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)が挙げられる。脱フコシル化抗体を産生することが可能な細胞株の例には、タンパク質のフコシル化が欠損しているLec13 CHO細胞(Ripka et al.,Arch.Biochem.Biophys.249:533-545(1986);米国特許出願第US2003/0157108A1号;及びWO2004/056312A1、特に、実施例11)、ならびにアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子FUT8をノックアウトしたCHO細胞などのノックアウト細胞株(例えば、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004);Kanda,Y.et al.,Biotechnol.Bioeng.,94(4):680-688(2006);及びWO2003/085107参照)が挙げられる。
【0549】
更に、二分されたオリゴ糖を有する抗体バリアント、例えば、抗体のFc領域に結合している二分岐型オリゴ糖がGlcNAcによって二分されている抗体バリアントが提供される。そのような抗体バリアントは、フコシル化の減少及び/または改善されたADCC機能を有し得る。そのような抗体バリアントの例は、例えば、WO2003/011878;米国特許第6,602,684号;US2005/0123546、及びFerrara et al.,Biotechnology and Bioengineering,93(5):851-861(2006)に記載される。Fc領域に結合しているオリゴ糖内に少なくとも1つのガラクトース残基を含む抗体バリアントも提供される。そのような抗体バリアントは、改善されたCDC機能を有し得る。そのような抗体バリアントは、例えば、WO1997/30087;WO1998/58964;及びWO1999/22764に記載されている。
【0550】
特定の実施形態において、本明細書に記載されるFc領域を含む抗体バリアントは、FcγRIIIに結合することが可能である。特定の実施形態において、本明細書に記載されるFc領域を含む抗体バリアントは、ヒトエフェクター細胞の存在下でADCC活性を有するか、またはヒトエフェクター細胞の存在下で、ヒト野生型IgG1Fc領域を含む別の同じ抗体と比較して、ADCC活性が増加する。
【0551】
(xi)Fc領域バリアント
特定の実施形態において、1つ以上のアミノ酸修飾が本明細書で提供される抗体のFc領域に導入され得、それにより、Fc領域バリアントが生成される。Fc領域バリアントは、アミノ酸修飾(例えば、置換)を1つ以上のアミノ酸位置に含む、ヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4 Fc領域)を含み得る。
【0552】
特定の実施形態において、本発明は、全てではないがいくつかのエフェクター機能を有する抗体バリアントを企図し、それにより、当該抗体は、抗体のin vivo半減期が重要ではあるが、特定のエフェクター機能(補体及びADCCなど)が不必要または有害である用途に対して、所望の候補となる。in vitro及び/またはin vivo細胞傷害アッセイを実施して、CDC活性及び/またはADCC活性の低下/枯渇を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイは、抗体がFcγR結合を欠く(したがって、ADCC活性を欠く可能性が高い)が、FcRn結合能力を保持していることを確実にするために実施することができる。ADCCを媒介する主な細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現するのに対し、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞におけるFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-492(1991)の464頁の表3に要約されている。目的の分子のADCC活性を評価するためのin vitroアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 83:7059-7063(1986)参照)及びHellstrom,I et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 82:1499-1502(1985);5,821,337(Bruggemann et al.,J.Exp.Med.166:1351-1361(1987)参照)に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ法が採用され得る(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞傷害アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA;及びCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害アッセイ(Promega,Madison,WI)参照)。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。代替的にまたは追加的に、目的分子のADCC活性は、in vivoで、例えば、Clynes et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 95:652-656(1998)に開示されているような動物モデルで評価され得る。また、C1q結合アッセイを実施して、抗体がC1qに結合することができず、それにより、CDC活性を欠くことを確認することもできる。例えば、WO2006/029879及びWO2005/100402のC1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを実施してもよい(例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996);Cragg et al.,Blood 101:1045-1052(2003);及びCragg et al,Blood 103:2738-2743(2004)参照)。FcRn結合及びin vivoクリアランス/半減期の決定は、当該技術分野において知られている方法を使用して実施することもできる(例えば、Petkova et al.,Int’l.Immunol.18(12):1759-1769(2006)参照)。
【0553】
低減されたエフェクター機能を有する抗体には、Fc領域の残基238、265、269、270、297、327及び329のうちの1つ以上に置換を含む抗体が含まれる(米国特許第6,737,056号)。そのようなFc変異体には、アミノ酸位置265、269、270、297及び327のうちの2つ以上に置換を含むFc変異体、例えば、残基265及び297をアラニンに置換したいわゆる「DANA」Fc変異体(米国特許第7,332,581号)が含まれる。
【0554】
FcRへの結合が改善されたまたは低減した特定の抗体バリアントについても記載されている(例えば、米国特許第6,737,056号;WO2004/056312、及びShields et al.,J.Biol.Chem.9(2):6591-6604(2001)参照)。
【0555】
特定の実施形態において、抗体バリアントは、ADCCを改善するアミノ酸置換、例えば、Fc領域の位置298、333、及び/または334(残基のEUナンバリング)における置換を1つ以上含むFc領域を含む。例示的な実施形態において、抗体は、そのFc領域に次のアミノ酸置換を含む:S298A、E333A、及びK334A。
【0556】
いくつかの実施形態において、例えば、米国特許第6,194,551号、WO99/51642、及びIdusogie et al.J.Immunol.164:4178-4184(2000)に記載されているように、C1q結合及び/または補体依存性細胞傷害(CDC)に変更(すなわち、改善または減少のいずれか)をもたらす改変がFc領域になされる。
【0557】
半減期が長く、母胎IgGの胎児への輸送を担う胎児性Fc受容体(FcRn)への結合が改善された抗体(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)及びKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))については、US2005/0014934A1(Hinton et al.))に記載されている。これらの抗体は、Fc領域のFcRnへの結合を改善する置換を1つ以上含むFc領域を含む。そのようなFcバリアントには、Fc領域の残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424または434のうちの1つ以上に置換を含むもの、例えば、Fc領域の残基434に置換を含むもの(米国特許第7,371,826号)が含まれる。Fc領域バリアントの他の例に関しては、Duncan&Winter,Nature 322:738-40(1988);米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号;及びWO94/29351も参照されたい。
【0558】
(xii)抗体誘導体
本発明の抗体は、当該技術分野で知られており、容易に入手可能な追加の非タンパク質性部分を含有するように、更に修飾され得る。特定の実施形態において、抗体の誘導体化に好適な部分は、水溶性ポリマーである。水溶性ポリマーの非限定的な例には、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコールホモポリマー、プロリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性により、製造における利点を有し得る。ポリマーは、任意の分子量のものであってもよく、分岐でも非分岐でもよい。抗体に結合されるポリマーの数は様々であり得、1つを超えるポリマーが結合される場合、それらは同じ分子であっても異なる分子であってもよい。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/または種類は、限定するものではないが、改善される抗体の特定の特性または機能、抗体誘導体が規定の条件下における療法で使用されるのかどうかなどの考慮に基づいて、決定することができる。
【0559】
(xiii)ベクター、宿主細胞、及び組み換え方法
抗体はまた、組み換え法を使用して産生することができる。抗抗原抗体の組み換え産生には、抗体をコードする核酸が単離され、更なるクローニング(DNAの増幅)または発現のために複製可能なベクター中に挿入される。抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することが可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)、容易に単離され、配列決定することができる。多数のベクターが利用可能である。ベクター構成要素には、一般に、次の要素:シグナル配列、複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサー要素、プロモーター及び転写終結配列のうちの1つ以上が含まれるが、これらに限定されない。
【0560】
(a)シグナル配列構成要素
本発明の抗体は、直接的だけでなく、異種ポリペプチドとの融合ポリペプチドとしても組み換え的に産生され得、好ましくは、異種ポリペプチドは、成熟タンパク質もしくはポリペプチドのN末端に特異的な切断部位を有するシグナル配列または他のポリペプチドである。選択される異種シグナル配列は、好ましくは、宿主細胞によって認識され、プロセシングされる(例えば、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものであり得る。天然抗体のシグナル配列を認識せず、プロセシングしない原核生物の宿主細胞の場合、当該シグナル配列は、例えば、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ippまたは熱安定性エンテロトキシンIIリーダーの群から選択される原核生物のシグナル配列に置き換えられる。酵母での分泌では、天然シグナル配列は、例えば、酵母インベルターゼリーダー、因子リーダー(Saccharomyces及びKluyveromyces α因子リーダーを含む)、もしくは酸性ホスファターゼリーダー、C.albicansグルコアミラーゼリーダー、またはWO90/13646に記載されるシグナルに置き換えることができる。哺乳動物細胞の発現では、哺乳動物のシグナル配列及びウイルス分泌リーダー、例えば、単純ヘルペスgDシグナルが利用可能である。
【0561】
(b)複製起点
発現及びクローニングベクターの両方は、1つ以上の選択された宿主細胞においてベクターの複製を可能にする核酸配列を含有する。一般に、クローニングベクターにおいて、この配列は、宿主染色体DNAとは関係なくベクターの複製を可能にし、複製起点または自己複製配列を含むものである。そのような配列は、様々な細菌、酵母及びウイルスのものがよく知られている。大部分のグラム陰性菌には、プラスミドpBR322由来の複製起点が好適であり、酵母には、2μプラスミド起点が好適であり、哺乳動物細胞でのクローニングベクターには、様々なウイルス起点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSVまたはBPV)が有用である。一般に、哺乳動物発現ベクターには、複製起点構成要素は必要でない(SV40起点は、典型的に、初期プロモーターを含有するという理由でのみ、使用され得る。
【0562】
(c)選択遺伝子構成要素
発現及びクローニングベクターは、選択マーカーとも呼ばれる選択遺伝子を含有し得る。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質もしくは他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサートもしくはテトラサイクリンに対する耐性を付与するタンパク質、(b)栄養要求性欠損を補うタンパク質、または(c)複合培地から得られない重要な栄養素を供給するタンパク質をコードし、例えば、BacilliのD-アラニンラセマーゼをコードする遺伝子である。
【0563】
選択スキームの一例は、宿主細胞の成長を停止するための薬物を利用する。異種遺伝子での形質転換に成功した細胞は、薬剤耐性を付与するタンパク質を産生するため、選択レジメンを生き延びる。そのような優性選択の例は、ネオマイシン、ミコフェノール酸及びハイグロマイシンの薬物を使用する。
【0564】
哺乳動物細胞に好適な選択マーカーの別の例は、抗体をコードする核酸を取り込む細胞成分の特定を可能にするものであり、例えば、DHFR、グルタミンシンテターゼ(GS)、チミジンキナーゼ、メタロチオネインI及びII、好ましくは、霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチン脱炭酸酵素などである。
【0565】
例えば、DHFR遺伝子で形質転換された細胞は、その形質転換体を、DHFRの競合的アンタゴニストであるメトトレキサート(Mtx)を含有する培養培地中で培養することによって特定される。これらの条件下で、DHFR遺伝子は、任意の他の同時形質転換された核酸とともに増幅される。内因性DHFR活性が欠損しているチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株(例えば、ATCC CRL-9096)が使用され得る。
【0566】
あるいは、GS遺伝子で形質転換された細胞は、その形質転換体を、GSの阻害剤であるL-メチオニンスルホキシイミン(Msx)を含有する培養培地中で培養することによって特定される。これらの条件下で、GS遺伝子は、任意の他の同時形質転換された核酸とともに増幅される。GS選択/増幅系は、上記のDHFR選択/増幅系と組み合わせて使用され得る。
【0567】
あるいは、目的の抗体をコードするDNA配列、野生型DHFR遺伝子、及びアミノグリコシド3’-ホスホトランスフェラーゼ(APH)などの別の選択マーカーで形質転換または同時形質転換された宿主細胞(特に、内因性DHFRを含有する野生型宿主)は、アミノグリコシド系抗生物質(例えば、カナマイシン、ネオマイシンまたはG418)などの選択マーカーに適した選択剤を含有する培地中で細胞を成長させることによって選択することができる。米国特許第4,965,199号を参照されたい。
【0568】
酵母に使用するのに好適な選択遺伝子は、酵母菌プラスミドYRp7中に存在するtrp1遺伝子である(Stinchcomb et al.,Nature,282:39(1979))。trp1遺伝子は、トリプトファン中で成長能力のない酵母変異株(例えば、ATCCNo.44076またはPEP4-1)に対する選択マーカーを提供する。Jones,Genetics,85:12(1977).そのため、酵母宿主細胞のゲノム中にtrp1欠損が存在することで、トリプトファンの不在下での成長から形質転換を検出する効果的な環境が提供される。同様に、Leu2欠損酵母株(ATCC20,622または38,626)は、Leu2遺伝子を持つ既知のプラスミドによって相補される。
【0569】
加えて、1.6μm環状プラスミドpKD1に由来するベクターをKluyveromyces酵母の形質転換に使用することができる。あるいは、組み換え子牛キモシンを大規模製造するK.lactis発現系が報告されている。例えば、Van den Berg,Bio/Technology,8:135(1990)を参照されたい。また、Kluyveromycesの産業用株によって成熟組み換えヒト血清アルブミンを分泌させる安定的なマルチコピー発現ベクターについても開示されている。Fleer et al.,Bio/Technology,9:968-975(1991).
【0570】
(d)プロモーター構成要素
発現ベクター及びクローニングベクターは、一般に、宿主生物によって認識され、抗体をコードする核酸に機能的に連結されたプロモーターを含有する。原核生物宿主での使用に好適なプロモーターには、phoAプロモーター、β-ラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼプロモーター、トリプトファン(trp)プロモーター系、ならびにtacプロモーターなどのハイブリッドプロモーターが含まれる。しかしながら、他の既知の細菌プロモーターも好適である。細菌系に使用されるプロモーターは、抗体をコードするDNAに機能的に連結されたシャイン-ダルガルノ(S.D.)配列も含有する。
【0571】
真核生物のプロモーター配列は、知られている。実質上、全ての真核細胞遺伝子は、転写が開始される部位からおよそ25~30塩基上流に位置するATリッチ領域を有する。多くの遺伝子の転写開始から70~80塩基上流にみられる別の配列は、CNCAAT領域であり、Nは、任意のヌクレオチドであり得る。ほとんどの真核細胞遺伝子の3’末端にはAATAAA配列があり、これは、コード配列の3’末端にポリAテールを付加するためのシグナルであり得る。これらの配列は全て、真核生物の発現ベクター中に適切に挿入される。
【0572】
酵母宿主との使用に好適なプロモーター配列の例には、3-ホスホグリセリン酸キナーゼまたは他の解糖系酵素、例えば、エノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、及びグルコキナーゼに対するプロモーターが挙げられる。
【0573】
成長条件によって転写が制御されるという更なる利点を有する誘導性プロモーターである他の酵母プロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロームC、酸性ホスファターゼ、窒素代謝に関連する分解酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ならびにマルトース及びガラクトースの利用に関与する酵素のプロモーター領域である。酵母発現での使用に好適なベクター及びプロモーターは、EP73,657に更に記載されている。酵母エンハンサーはまた、酵母プロモーターとともに有利に使用される。
【0574】
哺乳動物の宿主細胞におけるベクターからの抗体転写は、例えば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(アデノウイルス2など)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、シミアンウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから得られるプロモーター、または異種哺乳動物のプロモーター、例えば、アクチンプロモーターまたは免疫グロブリンプロモーターから得られるプロモーター、ヒートショックプロモーターから得られるプロモーターによって制御することができるが、そのようなプロモーターが宿主細胞系に適合することを条件とする。
【0575】
SV40ウイルスの初期及び後期プロモーターは、SV40ウイルス複製起点も含有するSV40制限フラグメントとして簡便に得られる。ヒトサイトメガロウイルス最初期プロモーターは、HindIII E制限フラグメントとして簡便に得られる。ウシパピローマウイルスをベクターとして使用して哺乳動物の宿主においてDNAを発現させる系は、米国特許第4,419,446号に開示されている。この系の改変は、米国特許第4,601,978号に記載されている。また、単純ヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼプロモーター制御下でのマウス細胞におけるヒトβ-インターフェロンcDNAの発現に関しては、Reyes et al.,Nature 297:598-601(1982)を参照されたい。あるいは、ラウス肉腫ウイルスの長末端反復をプロモーターとして使用することができる。
【0576】
(e)エンハンサー要素構成要素
高等真核細胞による、本発明の抗体をコードするDNAの転写は、多くの場合、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによって増加する。現在、哺乳動物遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン及びインスリン)に由来する多くのエンハンサー配列が知られている。しかしながら、典型的に、真核細胞ウイルス由来のエンハンサーが使用される。例には、複製起点の後期側のSV40エンハンサー(bp100~270)、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー、及びアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。また、真核生物プロモーターを活性化するための要素の増大については、Yaniv,Nature 297:17-18(1982)を参照されたい。エンハンサーは、抗体コード配列に対して5’側または3’側の位置でベクターにスプライシングされ得るが、好ましくは、プロモーターから5’側の位置に置かれる。
【0577】
(f)転写終結構成要素
真核生物の宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒトまたは他の多細胞生物に由来する有核細胞)に使用される発現ベクターはまた、転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列を含有する。そのような配列は、真核生物またはウイルスのDNAまたはcDNAの5’非翻訳領域、場合により3’非翻訳領域から一般に入手可能である。これらの領域は、抗体をコードするmRNAの非翻訳部分にポリアデニル化フラグメントとして転写されるヌクレオチドセグメントを含有する。1つの有用な転写終結構成要素は、ウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。WO94/11026及び開示の発現ベクターを参照されたい。
【0578】
(g)宿主細胞の選択及び形質転換
本明細書におけるベクターのDNAクローニングまたはDNA発現に好適な宿主細胞は、上記の原核生物、酵母または高等真核細胞である。この目的に好適な原核生物には、グラム陰性またはグラム陽性微生物などの真正細菌、例えば、EscherichiaなどのEnterobacteriaceae、例えば、E.coli、Enterobacter、Erwinia、Klebsiella、Proteus、Salmonella、例えば、Salmonella typhimurium、Serratia、例えば、Serratia marcescans、及びShigella、ならびにB.subtilis及びB.licheniformisなどのBacilli(例えば、1989年4月12日公開のDD266,710に開示されているB.licheniformis 41P)、P.aeruginosaなどのPseudomonas、ならびにStreptomycesが含まれる。1つの好ましいE.coliクローニング宿主は、E.coli294(ATCC 31,446)であるが、E.coliB、E.coli X1776(ATCC 31,537)、及びE.coli W3110(ATCC 27,325)などの他の株も好適である。これらの例は、限定的なものではなく、例示的なものである。
【0579】
全長抗体、抗体融合タンパク質、及び抗体フラグメントは、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能が必要とされない場合、例えば、治療用抗体が、腫瘍細胞の破壊にそれ自体が効果を示す細胞傷害性薬剤(例えば、毒素)にコンジュゲートされる場合、細菌中で産生することができる。全長抗体は、より長い血中半減期を有する。E.coliでの産生は、より早く、より費用効果が高い。細菌中での抗体フラグメント及びポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5,648,237号(Carter et al.)、米国特許第5,789,199号(Joly et al.)、米国特許第5,840,523号(Simmons et al.)(発現及び分泌を最適化するための翻訳開始領域(TIR)及びシグナル配列について記載)を参照されたい。E.coli.での抗体フラグメントの発現について記載しているCharlton,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,N.J.,2003),pp.245-254も参照されたい。発現後、抗体は、可溶性画分中のE.coli細胞ペーストから単離され得、例えば、アイソタイプに応じたプロテインAまたはGカラムを介して精製することができる。最終精製は、例えば、CHO細胞で発現された抗体を精製するためのプロセスと同様に実施することができる。
【0580】
原核生物に加えて、糸状菌または酵母などの真核微生物も、抗体をコードするベクターに好適なクローニング宿主または発現宿主である。Saccharomyces cerevisiaeまたは一般的にパン酵母菌は、下等真核生物の宿主微生物のなかでは最も一般的に使用されている。しかしながら、多数の他の属、種及び系統、Schizosaccharomyces pombe;例えば、K.lactis、K.fragilis(ATCC 12,424)、K.bulgaricus(ATCC 16,045)、K.wickeramii(ATCC 24,178)、K.waltii(ATCC 56,500)、K.drosophilarum(ATCC 36,906)、K.thermotolerans、及びK.marxianusなどのKluyveromyces宿主;yarrowia(EP 402,226);Pichia pastoris(EP 183,070);Candida;Trichoderma reesia(EP 244,234);Neurospora crassa;Schwanniomyces occidentalisなどのSchwanniomyces;ならびに糸状菌、例えば、Neurospora、Penicillium、Tolypocladium、及びA.nidulans及びA.nigerなどのAspergillus宿主なども一般に利用可能であり、本明細書にて有用である。治療用タンパク質の産生のための酵母及び糸状菌の使用について考察されている概説については、例えば、Gerngross,Nat.Biotech.22:1409-1414(2004)を参照されたい。
【0581】
グリコシル化経路が「ヒト化」されており、部分的または完全なヒトグリコシル化パターンを有する抗体の産生をもたらす、特定の真菌株及び酵母株が選択され得る。例えば、Li et al.,Nat.Biotech.24:210-215(2006)(Pichia pastorisにおけるグリコシル化経路のヒト化について記載);及びGerngross et al.(上掲)を参照されたい。
【0582】
グリコシル化抗体の発現に好適な宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)からも得られる。無脊椎動物細胞の例には、植物細胞及び昆虫細胞が挙げられる。多数のバキュロウイルス株及びバリアントと、Spodoptera frugiperda(幼虫)、Aedes aegypti(蚊)、Aedes albopictus(蚊)、Drosophila melanogaster(ショウジョウバエ)及びBombyx moriなどの宿主に由来する、対応する許容可能な昆虫宿主細胞が特定されている。トランスフェクション用の各種ウイルス株は、一般に入手可能であり、例えば、Autographa californica NPVのL-1バリアント及びBombyx mori NPVのBm-5株があり、そのようなウイルスは、本発明にかかる本明細書のウイルスとして、特に、Spodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために、使用することができる。
【0583】
綿、トウモロコシ、ジャガイモ、ダイズ、ペチュニア、トマト、ウキクサ(Leninaceae)、アルファルファ(M.truncatula)及びタバコの植物細胞培養物も宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、同第6,040,498号、同第6,420,548号、同第7,125,978号、及び同第6,417,429号(トランスジェニック植物中で抗体を産生するためのPLANTIBODIES(商標)技術を記載)を参照されたい。
【0584】
脊椎動物細胞を宿主として使用してもよく、培養(組織培養)における脊椎動物細胞の増殖は、日常的手順になっている。有用な哺乳動物の宿主細胞株の例は、SV40により形質転換したサル腎臓CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651);ヒト胎児腎臓株(293細胞または浮遊培養での成長のためにサブクローニングされた293細胞(Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);マウスセルトリ細胞(TM4、Mather,Biol.Reprod.23:243-251(1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳腺癌(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68(1982));MRC 5細胞;FS4細胞;及びヒトヘパトーマ株(Hep G2)である。他の有用な哺乳動物の宿主細胞株には、DHFR-CHO細胞(Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980))を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞;ならびにNS0及びSp2/0などの骨髄腫細胞株が含まれる。抗体産生に好適な特定の哺乳動物の宿主細胞株に関する概説については、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,N.J.2003),pp.255-268を参照されたい。
【0585】
宿主細胞は、抗体産生のための上記の発現ベクターまたはクローニングベクターで形質転換され、プロモーターの誘導、形質転換体の選択または所望の配列をコードする遺伝子の増幅に適切に改変された従来の栄養培地中で培養される。
【0586】
(h)宿主細胞の培養
本発明の抗体を産生するために使用される宿主細胞は、様々な培地中で培養され得る。ハムF10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、(Sigma)、RPMI-1640(Sigma)、及びダルベッコ改変イーグル培地((DMEM)、Sigma)などの市販の培地が、宿主細胞の培養に好適である。加えて、Ham et al.,Meth.Enz.58:44(1979)、Barnes et al.,Anal.Biochem.102:255(1980)、米国特許第4,767,704号;同第4,657,866号;同第4,927,762号;同第4,560,655号;もしくは同第5,122,469号;WO90/03430;WO87/00195;または米国再発行特許第30,985号に記載されている培地のいずれかを宿主細胞の培養培地として使用してもよい。これらの培地のいずれも、必要に応じて、ホルモン及び/または他の成長因子(インスリン、トランスフェリンまたは上皮成長因子など)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸塩など)、緩衝剤(HEPESなど)、ヌクレオチド(アデノシン及びチミジンなど)、抗生物質(GENTAMYCIN(商標)剤など)、微量元素(マイクロモル範囲の最終濃度で通常存在する無機化合物として定義される)ならびにグルコースまたは同等のエネルギー源が添加され得る。任意の他の必要な添加物も、当業者に知られているであろう適切な濃度で含めることができる。温度、pHなどの培養条件は、発現用に選択された宿主細胞で以前から使用されているものであり、当業者に明らかであろう。
【0587】
(xiv)抗体の精製
組み換え技術を使用する場合、抗体は、ペリプラズム中に細胞内産生され得るか、培地中に直接分泌され得る。抗体が細胞内で産生される場合、第1ステップとして、宿主細胞または溶解フラグメントのいずれかである粒子状デブリが、例えば、遠心分離または限外濾過によって除去される。Carter et al,Bio/Technology 10:163-167(1992)は、E.coliのペリプラズムに分泌される抗体を単離するための手順について記載している。簡潔に述べると、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、及びフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)の存在下で、細胞ペーストを約30分間かけて解凍する。細胞デブリは、遠心分離によって除去することができる。抗体が培地中に分泌される場合、一般に、かかる発現系の上清を、まず、市販のタンパク質濃度フィルター、例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニットを使用して濃縮する。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤を前述のステップのいずれかで含めてタンパク質分解を阻害してもよく、抗生物質を含めて偶発的な混入物質の成長を防いでもよい。
【0588】
細胞から調製された抗体組成物は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析及び親和性クロマトグラフィーを使用して精製することができ、親和性クロマトグラフィーは、典型的に好ましい精製ステップのうちの1つである。親和性リガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体中に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種及びアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトγ1、γ2、またはγ4重鎖をベースにする抗体を精製するために使用することができる(Lindmark et al.,J.Immunol.Meth.62:1-13(1983))。プロテインGは、マウスの全てのアイソタイプ及びヒトγ3に推奨される(Guss et al.,EMBO J.5:15671575(1986))。親和性リガンドが結合するマトリックスは、アガロースであることが最も多いが、他のマトリックスも利用可能である。制御された多孔質ガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなどの物理的に安定したマトリックスでは、アガロースにより達成できる場合よりも、流速を速くし、かつ処理時間を短くすることができる。抗体がC3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T.Baker、Phillipsburg、N.J.)が精製に有用である。タンパク質精製のための他の技術、例えば、イオン交換カラム上での分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上でのクロマトグラフィー、ヘパリン上でのクロマトグラフィー 陰イオンまたは陽イオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラムなど)上でのSEPHAROSE(商標)クロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿もまた、回収される抗体に応じて利用可能である。
【0589】
一般に、研究、試験、及び臨床で使用する抗体を調製するための様々な方法は、当該技術分野において十分確立されており、上記方法と一致し、及び/または当業者によって目的の特定の抗体について適切であるとみなされる。
【0590】
(xv)生物活性のある抗体の選択
上記のように産生された抗体は、治療の観点から有益な特性を有する抗体を選択するために、または抗体の生物活性を保持する製剤及び条件を選択するために、1つ以上の「生物活性」アッセイに供され得る。抗体は、当該抗体が産生された抗原に結合する能力について試験され得る。例えば、当該技術分野において知られている方法(ELISA、ウェスタンブロットなど)が使用され得る。
【0591】
例えば、抗PD-L1抗体の場合、抗体の抗原結合特性は、PD-L1に結合する能力を検出するアッセイで評価することができる。いくつかの実施形態において、抗体の結合は、例えば、飽和結合;ELISA;及び/または競合アッセイ(例えば、RIA)によって決定され得る。また、抗体は、例えば、治療薬としての有効性を評価するために、他の生物活性アッセイに供され得る。そのようなアッセイは、当該技術分野において知られており、抗体の標的抗原及び使用目的に依存する。例えば、抗体によるPD-L1遮断の生物学的効果は、CD8+T細胞、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)マウスモデル及び/または同種移植腫瘍モデル、例えば、米国特許第8,217,149号に記載されるもので評価することができる。
【0592】
目的の抗原上の特定のエピトープに結合する抗体(例えば、実施例の抗PD-L1抗体のPD-L1への結合を遮断するもの)をスクリーニングするために、Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Ed Harlow and David Lane(1988)に記載のものなどの常法のクロスブロッキングアッセイを実施することができる。あるいは、エピトープマッピング、例えば、Champe et al.,J.Biol.Chem.270:1388-1394(1995)に記載のものを実施して、抗体が目的のエピトープに結合するかどうかを決定することができる。
【0593】
VIII.医薬組成物及び製剤
本明細書で提供されるのはまた、本明細書に記載されるPD-1軸結合アンタゴニスト及び/または抗体(抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体など)と、任意選択により、薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物及び製剤である。本発明はまた、タキサン、例えば、nab-パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))、パクリタキセル、またはドセタキセルを含む、医薬組成物及び製剤も提供する。
【0594】
本明細書に記載される医薬組成物及び製剤は、所望の純度を有する有効成分(例えば、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及び/またはタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)を、1つ以上の任意選択の薬学的に許容される担体(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))と混合することによって、凍結乾燥製剤または水性液剤の形態で調製することができる。薬学的に許容される担体は、一般に、採用される用量及び濃度で、レシピエントにとって無毒であり、これらには、リン酸、クエン酸及び他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコールまたはベンジルアルコール;メチルパラベンまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリシンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む単糖、二糖及び他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩生成対イオン;金属複合体(例えば、Zn-タンパク質複合体);及び/またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が含まれるが、これらに限定されない。本明細書における例示的な薬学的に許容される担体には、間質薬物分散剤、例えば、可溶性中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)などのヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質が更に含まれる。rHuPH20を含む、特定の例示的なsHASEGP及び使用方法は、米国特許出願公開第2005/0260186号及び同第2006/0104968号に記載されている。一態様において、sHASEGPは、コンドロイチナーゼなどの1つ以上の追加のグリコサミノグリカナーゼと混合される。
【0595】
例示的な凍結乾燥抗体製剤は、米国特許第6,267,958号に記載されている。水性抗体製剤には、米国特許第6,171,586号及びWO2006/044908に記載されているものが含まれ、後者の製剤は、ヒスチジン酢酸緩衝液を含む。
【0596】
本明細書の組成物及び製剤はまた、治療される特定の適応症に必要であれば、1を超える有効成分、好ましくは、互いに悪影響を与えない補完的な活性を有する成分を含有し得る。そのような有効成分は、意図された目的に対して有効な量の組み合わせで適切に存在する。
【0597】
有効成分は、例えば、コアセルベーション技術もしくは界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチンのマイクロカプセル及びポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中、コロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)中、またはマクロエマルション中に閉じ込めてもよい。そのような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0598】
徐放性調製物が調製されてもよい。徐放性調製物の好適な例には、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは、成形物品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態である。in vivo投与に使用される製剤は、一般に無菌である。無菌性は、無菌濾過膜を通す濾過によって、容易に達成され得る。
【0599】
IX.製造品またはキット
本発明の別の実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及び/またはタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)を含む製造物品またはキットが提供される。いくつかの実施形態において、製造物品またはキットは、個体における局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)を治療するもしくはその進行を遅延させるために、または局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)を有する個体の免疫機能を向上させるために、タキサンと併せてPD-1軸結合アンタゴニストを使用するための説明書を含む、添付文書を更に含む。本明細書に記載されるPD-1軸結合アンタゴニスト及び/またはタキサンのいずれかは、製造物品またはキット内に含まれ得る。
【0600】
いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ)または抗PD-1抗体)及びタキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)は、同じ容器または別個の容器内にある。好適な容器には、、例えば、ボトル、バイアル、バッグ及びシリンジが含まれる。容器は、ガラス、プラスチック(ポリ塩化ビニルまたはポリオレフィンなど)、または合金(ステンレス鋼またはハステロイなど)などの様々な材料から形成され得る。いくつかの実施形態において、容器は、製剤を保持し、容器の上または容器に付随してラベルがあり、容器は、使用方法を提示し得る。製造物品またはキットは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及び使用説明書付きの添付文書を含む、商業的観点及び使用者の観点から望ましい他の材料を更に含み得る。いくつかの実施形態において、製造物品は、別の薬剤(例えば、化学療法剤、及び抗新生物薬)のうちの1つ以上を更に含む。1つ以上の薬剤に好適な容器には、例えば、ボトル、バイアル、バッグ及びシリンジが含まれる。
【0601】
例えば、本発明は、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)に罹患している患者を特定するためのキットを提供し、当該キットは、患者から得られたサンプル(例えば、腫瘍サンプル)中のPD-L1の発現レベルを決定するための1つ以上の試薬を含み、患者は、これまでにTNBCの治療を受けたことがなく、サンプル中の検出可能なPD-L1の発現レベルにより、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される。いくつかの実施形態において、キットは、PD-1軸結合アンタゴニスト及び/またはタキサンを更に含む。
【0602】
別の例において、本発明は、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)に罹患している患者を治療するためのキットを提供し、当該キットは、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)及び(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)のうちの1つ以上と、患者から得られたサンプル(例えば、腫瘍サンプル)中の検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、患者に抗がん療法を施行するための説明書と、を含む。いくつかの実施形態において、キットは、PD-L1、CD8、またはsTILのうちの1つ以上の存在または発現レベルを決定するための試薬を含む。
【0603】
更に別の例において、本発明は、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)に罹患している患者を特定するためのキットを提供し、当該キットは、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定するための1つ以上の試薬を含み、患者は、これまでにTNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルにより、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される。いくつかの実施形態において、キットは、PD-1軸結合アンタゴニスト及び/またはタキサンを更に含む。
【0604】
別の例において、本発明は、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)に罹患している患者を治療するためのキットを提供し、当該キットは、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)及び(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)のうちの1つ以上と、患者から得られた腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、患者に抗がん療法を施行するための説明書と、を含む。いくつかの実施形態において、キットは、PD-L1、CD8、またはsTILのうちの1つ以上の存在または発現レベルを決定するための試薬を含む。
【0605】
更なる例において、本発明は、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)に罹患している患者を特定するためのキットを提供し、当該キットは、患者から得られた腫瘍サンプル中の細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定するための1つ以上の試薬を含み、患者は、これまでにTNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルにより、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される。いくつかの実施形態において、キットは、PD-1軸結合アンタゴニスト及び/またはタキサンを更に含む。
【0606】
別の例において、本発明は、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)に罹患している患者を治療するためのキットを提供し、当該キットは、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)及び(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)のうちの1つ以上と、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍細胞の約1%以上における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、患者に抗がん療法を施行するための説明書と、を含む。いくつかの実施形態において、キットは、PD-L1、CD8、またはsTILのうちの1つ以上の存在または発現レベルを決定するための試薬を含む。
【0607】
また更なる例において、本発明は、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)に罹患している患者を特定するためのキットを提供し、当該キットは、患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるCD8の発現レベルを決定するための1つ以上の試薬を含み、患者は、これまでにTNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約0.5%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルにより、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される。いくつかの実施形態において、キットは、PD-1軸結合アンタゴニスト及び/またはタキサンを更に含む。
【0608】
別の例において、本発明は、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)に罹患している患者を治療するためのキットを提供し、当該キットは、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)及び(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)のうちの1つ以上と、患者から得られた腫瘍サンプルの約0.5%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なCD8の発現レベルに基づいて、患者に抗がん療法を施行するための説明書と、を含む。いくつかの実施形態において、キットは、PD-L1、CD8、またはsTILのうちの1つ以上の存在または発現レベルを決定するための試薬を含む。
【0609】
更なる例において、本発明は、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)に罹患している患者を特定するためのキットを提供し、当該キットは、患者から得られた腫瘍サンプル中のsTILの割合を決定するための1つ以上の試薬を含み、患者は、これまでにTNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約5%以上のsTILの割合により、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される。いくつかの実施形態において、キットは、PD-1軸結合アンタゴニスト及び/またはタキサンを更に含む。
【0610】
更に別の例において、本発明は、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)と、(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)と、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、局所進行性または転移性乳癌(例えば、局所進行性または転移性TNBC)に罹患している患者を治療するためのキットを提供し、当該キットは、(i)PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニスト)及び(ii)タキサン(例えば、nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)のうちの1つ以上と、患者から得られた腫瘍サンプルの約5%以上のsTILの割合に基づいて、患者に抗がん療法を施行するための説明書と、を含む。いくつかの実施形態において、キットは、PD-L1、CD8、またはsTILのうちの1つ以上の存在または発現レベルを決定するための試薬を含む。
【0611】
前述のキットのいずれかにおいて、抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブであり得る。
【0612】
前述のキットのいずれかにおいて、タキサンは、nab-パクリタキセルであり得る。
【0613】
前述のキットのいずれかにおいて、タキサンは、パクリタキセルであり得る。
【0614】
前述のキットのいずれかのいくつかの実施形態において、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかは、無増悪生存期間の観点から決定される。
【0615】
前述のキットのいずれかの他の実施形態において、患者が抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかは、全生存期間の観点から決定される。
【0616】
本明細書は、当業者が本発明を実施することを可能にするのに十分であるとみなされる。本明細書中で示され記載されたものに加えて、本発明の様々な変更は、前述の記載から当業者には明らかであり、添付する特許請求の範囲内である。
【実施例
【0617】
本発明は、以下の実施例を参照することによって、より完全に理解されるであろう。しかしながら、これらは、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書に記載される実施例及び実施形態は、例示のみを目的になされるものであり、それらを考慮した様々な変形または変更が当業者に想起され、本出願の趣旨及び範囲ならびに添付の特許請求の範囲内に含まれることを理解されたい。
【0618】
実施例1:抗PD-L1抗体及びnab-パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))の併用治療は、転移性トリプルネガティブ乳癌(mTNBC)の患者に対する第Ib相臨床試験において奏効を達成した。
転移性トリプルネガティブ乳癌(mTNBC)は、予後不良に関連し、変異率の高さ、腫瘍浸潤リンパ球レベルの増加、及びPD-L1発現レベルの高さを特徴とする。MPDL3280Aは、PD-L1のPD-1への結合を阻害することによって腫瘍特異的T細胞の免疫性を回復させることができるヒト化モノクローナル抗体であり、mTNBCの単独療法として持続的奏効を示している。本試験は、mTNBCの患者におけるチェックポイント阻害剤と化学療法の初めての併用試験である。
【0619】
方法
多施設多群第Ib相試験の本群では、mTNBCの患者における週1回のnab-パクリタキセルと組み合わせたMPDL3280Aを評価した。主要評価項目は、安全性及び忍容性、副次的評価項目は、PK及び臨床効果であった。主な適格基準には、測定可能病変;米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)パフォーマンスステータス0または1;及び細胞傷害性レジメンの2以下が含まれた。患者は、アテゾリズマブ800mgを2週間に1回(1日目及び15日目)と、nab-パクリタキセル125mg/mを週1回3週間(1、8、及び15日目)、4週間サイクルで投与され、臨床上の利益がなくなるまで継続した。nab-パクリタキセルが毒性により中止となった場合、MPDL3280Aは、単独療法として継続できるものとした。ORRは、固形がんの効果判定基準(RECIST)v1.1によって評価された。PD-L1発現は、免疫組織化学(IHC)アッセイにおける腫瘍細胞及び腫瘍浸潤免疫細胞のPD-L1染色に基づいて、4つの診断レベルでスコア付けされた。
【0620】
結果
11名の患者で、安全性の評価が可能であった。患者は全て女性であり、年齢中央値は58歳(年齢範囲:32~75歳)であった。予期しない毒性または用量制限毒性は、観察されなかった。安全性追跡調査の期間中央値は、88日(範囲:27~182日)であった。有効性評価可能集団は、5名の患者から構成され、1回以上のスキャン及び3ヶ月以上の追跡調査を受けた。患者5名のうち4名の患者が部分奏効(PR)を示し、1名の患者が安定(SD)を示した。観察された結果は、MPDL3280A及びnab-パクリタキセルの組み合わせが、mTNBCの患者に安全かつ有効であることを示している。
実施例2:mTNBCの患者に対する一次選択療法としての抗PD-L1抗体及びnab-パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))の併用治療レジメン
【0621】
別の方法として、MPDL3280A及びnab-パクリタキセルの併用治療レジメンは、mTNBCの患者に対する一次選択療法となり得る。
【0622】
患者は、組織学的に確認された局所進行性または転移性TNBCを有し、進行性TNBCに対する全身療法の治療歴がなく、ECOGパフォーマンスステータスが0または1であり、RECISTv1.1に基づく評価可能病変を有する患者であり、1日目及び15日目にMPDL3280A(840mg)と、1、8、及び15日目にnab-パクリタキセル(100mg/m)が投与され得る。治療は全て28日サイクルで施行される。患者は、肝転移の存在、タキサン療法の治療歴、及びIHCによって中央評価され得る腫瘍浸潤免疫細胞のPD-L1の状態(IC0対IC1/2/3)によって層化され得る。MPDL3280Aに対する偽増悪及び応答遅延を捕捉するために、放射線学的増悪のある患者は、許容できない毒性が生じるか、または臨床上の利益がなくなるまで、オープンラベルのMPDL3280Aを単独で、またはnab-パクリタキセルと組み合わせて、投与が継続され得る。
【0623】
実施例3:腫瘍浸潤免疫細胞(IC)におけるPD-L1発現は、局所進行性または転移性TNBCの患者に対する一次選択療法としての抗PD-L1抗体アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))の併用治療の有効性を予測する。
第III相IMpassion130試験(NCT02425891)では、局所進行性または転移性TNBCの患者に対する一次選択治療として、アテゾリズマブ(抗PD-L1)+nab-パクリタキセル(nabPx)をプラセボ+nabPxと比較して評価した。本試験では、治療企図(ITT)患者及び腫瘍浸潤免疫細胞の1%以上がPD-L1を有する(IC+)患者において、そのPFSコプライマリー評価項目を満たした。臨床的に意味のあるOSの利益は、OS中間解析において、とりわけ、PD-L1 IC+腫瘍の患者で認められた(表4)。本実施例は、免疫学的及び臨床的に関係のあるバイオマーカーで定義されたサブグループにおける有効性データを記述する。
【0624】
方法
患者は、組織学的に確認された転移性または切除不能局所進行性TNBC(米国臨床腫瘍学会/米国病理学会(ASCO-CAP)に基づいて地域評価したもの)を有した。患者は、1:1に無作為に割り付けられ、増悪または毒性が認められるまで、nabPx 100mg/m IV(28日サイクルの1、8及び15日目)+アテゾリズマブ840mg IV(A-nabPx)(2週に1回)またはプラセボ(P-nabPx)が投与された。以下のバイオマーカーを中央評価した:VENTANA SP142 IHCアッセイ使用による腫瘍浸潤免疫細胞(IC)及び腫瘍細胞(TC)上のPD-L1、IHCによる腫瘍内CD8、間質腫瘍浸潤リンパ球(sTIL)、ならびにER/PR/HER2の状態。VENTANA SP142 IHCアッセイは、製造元の説明書に従って実施した。IC及びTCのIHC診断基準は、それぞれ表4及び5に記載されている。国際特許出願公開第WO2016/183326号及び同第WO2016/196298号、例えば、実施例1も参照されたい。CD8 IHCは、腫瘍領域の中心部に広がるCD8免疫染色の割合として評価された(例えば、Emens et al.JAMA Oncology doi:10.1001/jamaoncol.2018.4224,2018参照)。sTILは、Salgado et al.Annals of Oncology,26(2):259-271,2015に従って、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色された腫瘍スライドで、Histogenexにおいて評価された。
【0625】
結果
PD-L1 ICは、A-nabPxの有効性を強く予測した(表6)。PD-L1 TC+である腫瘍の大部分もPD-L1 IC+であった。腫瘍内CD8はPD-L1 ICと高い相関性を示したが、sTILはそうではなかった。したがって、CD8は、A-nabPxの有効性をPFS/OSに関して予測したが、sTILはPFSの利益のみを予測した。地域によるTNBC評価と中央によるTNBC評価を比べると、ほとんどの患者で一致した。地域ラボと中央ラボで定義されたTNBC集団を比べると、A-nabPxで同様の利益がみられた。PD-L1 ICの予測性は、PD-L1の状態のPFS評価及びOS評価の両方についての相互作用解析における統計的有意性(p<0.05)によって示される(表7)。表7において、Cox回帰モデルは、次のように使用した:イベントまでの時間(INV-PFSまたはOS)=治療(アテゾリズマブ対プラセボ)+PD-L1の状態(IC0対IC1/2/3)+相互作用(治療×PD-L1の状態)。
【0626】
結論
これらのデータは、アテゾリズマブ及びnab-パクリタキセルの併用から利益を受ける、これまで未治療の局所進行性または転移性TNBC患者を選択するために評価されたもののなかで、PD-L1 ICの状態が最も頑健な予測バイオマーカーであることを示している。PD-L1 ICの状態を使用して、抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニストと、nab-パクリタキセルと、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者を特定することができる。IMpassion130の探索的有効性解析はまた、地域と中央のER/PR/HER2検査間の一貫性を示唆している。
【0627】
実施例4:IMpassion130:これまで未治療の局所進行性または転移性トリプルネガティブ乳癌(mTNBC)におけるアテゾリズマブ+nab-パクリタキセルの無作為化二重盲検プラセボ対照国際第III相試験から得られた最新の全生存期間(OS)
実施例3に記載されるように、IMpassion130では、一次選択mTNBCにおける、抗PD-L1抗体アテゾリズマブ(アテゾ)+nab-パクリタキセル(nP)をプラセボ+nPと比較して評価した。PFS一次解析では、アテゾ+nPが、プラセボ+nPと比較して、治療企図(ITT)患者及びPD-L1+患者におけるPFSを有意に改善し、PD-L1+集団により有効性が導かれることが分かった。この際に、初回のOS中間解析を実施した。本実施例においては、2回目のOS中間解析を報告する。
【0628】
方法
実施例3に記載されるように、適格患者は、組織学的に確認されたmTNBC、ECOG PS0~1及びPD-L1検査のための腫瘍組織を有した。患者は、1:1に無作為に割り付けられ、進行が認められるまで、それぞれ28日サイクルの1日目及び15日目でのIVアテゾ840mgまたはプラセボ+1、8、及び15日目でのnP 100mg/mが投与された(層化因子:先のタキサン、肝転移、腫瘍浸潤免疫細胞のPD-L1[IC])。RECIST1.1 PFS(ITT及びPD-L1+患者)及びOS(ITTと、顕著であれば、PD-L1+患者での検定)がコプライマリー評価項目であった。
【0629】
結果
OSデータを表8に示す。データカットオフ日(2019年1月2日)の時点で、アテゾ+nP群の患者の9%及びプラセボ+nP群の3%がまだ治療中であった。アテゾ+nP(25.0ヶ月)のPD-L1+患者では、プラセボ+nP(18.0ヶ月)と比較して、OS中央値で7.0ヶ月の延長が観察された(HR:0.71[95%CI:0.54、0.94])。4.5ヶ月の安全性最新情報は、安全性プロファイルが許容範囲内であることを示した。
HRは、層化したCoxモデルに基づいて推定した。 有意性なし。 ICでPD-L1 1%以上(VENTANA SP142 アッセイ)。
【0630】
PD-L1+集団及びPD-L1-集団における全生存期間の比較を表9に示す。
【0631】
結論
IMpassion130における2回目のOS中間解析は、初回の解析と一致しており、これまで未治療のPD-L1+mTNBCにおけるアテゾリズマブ+nPの臨床的に意味のあるOSの利益が確認された。
【0632】
PD-L1 ICの状態は、アテゾリズマブ+nab-パクリタキセルによる臨床上の利益を予測する。
【0633】
実施例5:IMpassion131:手術不能の局所進行性/転移性トリプルネガティブ乳癌(mTNBC)の一次選択療法としてのパクリタキセル±アテゾリズマブに関する二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験
無作為化第III相IMpassion130試験において、mTNBCに対して、アテゾリズマブと一次選択のnab-パクリタキセルを併用すると、無増悪生存期間(PFS)が顕著に改善された。PD-L1陽性腫瘍の患者において、より顕著なPFSの改善と、全生存期間(OS;コプライマリー評価項目)に対する臨床的に意味のある効果があった。IMpassion131試験(NCT03125902)では、mTNBCに対する、一次選択のアテゾリズマブとパクリタキセルの併用を評価した。
【0634】
方法
この二重盲検プラセボ対照無作為化国際第III相試験において、適格患者は、中央で確認された手術不能の測定可能な局所進行性/転移性TNBCを有し、タキサン単独療法に適格であり、mTNBCに対する化学療法または全身標的療法の治療歴がない者であった。先の(ネオ)アジュバント化学療法については、無作為化の12ヶ月以上前に完了している場合、認められた。患者は、28サイクルの1日目及び15日目でのアテゾリズマブ840mgまたはプラセボに2:1に無作為に割り付けられ、病勢進行または許容できない毒性が認められるまで、いずれにも28サイクルの1、8、及び15日目にパクリタキセル90mg/mが投与された。全ての患者は、パクリタキセルの前に、標準的なコルチコステロイド前投薬を受けた。層化因子は、腫瘍のPD-L1の状態(VENTANA SP142アッセイで中央で試験及び盲検化したIC0[免疫細胞での発現が1%未満]対IC1/2/3[1%以上の発現])、先のタキサン療法、肝転移の存在、及び地理的地域であった。主要評価項目は、PD-L1+集団(IC1/2/3)及び治療企図(ITT)集団における、階層的に検定した治験責任医師の評価によるPFSであった。解析計画は、IMpassion130治験の所見から得たものであり、PFS一次解析については、event-driven試験である。副次的評価項目には、OS、全般的な健康状態/健康関連の生活の質が悪化するまでの時間、12ヶ月のPFS率、客観的奏効率、奏効持続期間、臨床的有効率、及び安全性が含まれる。
【0635】
他の実施形態
本明細書に記載される技術のいくつかの実施形態は、番号を付した以下の実施形態のいずれかに従って定義され得る。
【0636】
1.(i)抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニストと、(ii)nab-パクリタキセルと、を含む、抗がん療法による治療に応答する可能性が高い、局所進行性または転移性トリプルネガティブ乳癌(TNBC)に罹患している患者を特定するための方法であって、当該方法は、前記患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することを含み、前記患者は、これまでにTNBCの治療を受けたことがなく、腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルにより、前記患者が前記抗がん療法による治療に応答する可能性が高い患者であると特定される、前記方法。
【0637】
2.局所進行性または転移性TNBCに罹患している患者のための抗がん療法を選択するための方法であって、
(a)これまでにTNBCの治療を受けたことがない患者から得られた腫瘍サンプル中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを決定することでと、
(b)腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、(i)抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニストと、(ii)nab-パクリタキセルと、を含む、前記患者のための抗がん療法を選択することと、を含む、前記方法。
【0638】
3.前記患者から得られた腫瘍サンプルが、(i)前記腫瘍サンプルの約5%以上または(ii)または前記腫瘍サンプルの約10%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞において検出可能なPD-L1の発現レベルを有する、実施形態1または2に記載の方法。
【0639】
4.前記患者が、手術不能の局所進行性または転移性TNBCに対する化学療法または全身標的療法の治療歴がない、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0640】
5.局所進行性TNBCが、切除不能である、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0641】
6.前記腫瘍サンプルが、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍サンプル、保管用腫瘍サンプル、新鮮腫瘍サンプル、または凍結腫瘍サンプルである、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0642】
7.PD-L1の発現レベルが、タンパク質発現レベルである、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0643】
8.PD-L1のタンパク質発現レベルが、免疫組織化学(IHC)、免疫蛍光法、フローサイトメトリー、またはウェスタンブロットを使用して決定される、実施形態7に記載の方法。
【0644】
9.PD-L1のタンパク質発現レベルが、IHCを使用して決定される、実施形態8に記載の方法。
【0645】
10.PD-L1のタンパク質発現レベルが、抗PD-L1抗体を使用して検出される、実施形態8または9に記載の方法。
【0646】
11.前記抗PD-L1抗体が、SP142である、実施形態10に記載の方法。
【0647】
12.前記抗がん療法の有効量を前記患者に投与することを更に含む、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0648】
13.前記ヒトPD-1軸結合アンタゴニストが、アテゾリズマブである、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0649】
14.前記患者が前記抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかが、無増悪生存期間の観点から決定される、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0650】
15.前記患者が前記抗がん療法による治療に応答する可能性が高いかどうかが、全生存期間の観点から決定される、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0651】
16.局所進行性または転移性TNBCに罹患している患者を治療する方法であって、当該方法は、(i)抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニストと、(ii)nab-パクリタキセルと、を含む、抗がん療法の有効量を前記患者に投与することを含み、前記患者は、これまでにTNBCの治療を受けたことがなく、前記患者は、前記患者から得られた腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、前記抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている、前記方法。
【0652】
17.前記ヒトPD-1軸結合アンタゴニストが、アテゾリズマブである、実施形態16に記載の方法。
【0653】
18.局所進行性または転移性TNBCと診断された患者の治療に使用するための、抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体から選択されるヒトPD-1軸結合アンタゴニストを含む医薬組成物であって、前記治療は、nab-パクリタキセルと組み合わせたヒトPD-1軸結合アンタゴニストの投与を含み、前記患者は、前記患者から得られた腫瘍サンプルの約1%以上を占める腫瘍浸潤免疫細胞における検出可能なPD-L1の発現レベルに基づいて、ヒトPD-1軸結合アンタゴニスト及びnab-パクリタキセルを含む抗がん療法に応答する可能性が高いと特定されている、医薬組成物。
【0654】
19.前記ヒトPD-1軸結合アンタゴニストが、アテゾリズマブである、実施形態18に記載の医薬組成物。
【0655】
理解を明確にするために、上記の発明について、例示及び実施例によって、ある程度詳細に説明してきたが、その説明及び実施例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書に引用される全ての特許及び科学参考文献の開示は、その全体が参照により明示的に援用される。
【配列表】
0007475336000001.app