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特許7475338ガス状ヨウ素の吸着及び捕獲のための微粒子リン酸銀系多孔質無機材料、その調製方法、並びにその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】ガス状ヨウ素の吸着及び捕獲のための微粒子リン酸銀系多孔質無機材料、その調製方法、並びにその使用
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/02 20060101AFI20240419BHJP
   B01J 20/02 20060101ALI20240419BHJP
   B01J 20/32 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
G21F9/02 511S
G21F9/02 511C
B01J20/02 C
B01J20/32 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021516732
(86)(22)【出願日】2019-09-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 FR2019052216
(87)【国際公開番号】W WO2020065186
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-07-04
(31)【優先権主張番号】1858832
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】リオネル・カムパヨ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルジニー・ルメートル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレリー・デボノ
【審査官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-214095(JP,A)
【文献】特開2015-045588(JP,A)
【文献】特開平11-337689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/02
B01J 20/02
B01J 20/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機材料を調製する方法であって、
前記無機材料が、粒子によって形成され、各粒子が固相を含み、前記固相が、
リンに結合している酸化状態にある銀と、
相互接続している開細孔であって、それらの表面が、金属状態にある銀を含む細孔と
を含み、前記固相が無機骨格を構成しており、
前記方法が、
a)アルギン酸のアルカリ金属塩、及びリン酸銀を含む無機材料を含む水性溶液A1を調製する工程と、
b)水性溶液A1を、分離された形態で、アルカリ土類金属塩を含む水性溶液A2中に押し出し、それによって、リン酸銀及びアルギン酸のアルカリ塩を含むヒドロゲルによって形成されるビーズが得られる工程と、
c)ビーズを乾燥する工程と、
d)乾燥したビーズをか焼する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記固相が、モリブデン、ホウ素、バナジウム、クロム、及びタングステンから選択される1種若しくは複数のカチオンに結合している酸化状態にある銀、並びに/又は1種若しくは複数の金属酸化物を更に含み、
前記水性溶液A1が、モリブデン、ホウ素、バナジウム、クロム、及びタングステンから選択されるカチオンに結合している1種若しくは複数の酸化された銀の化合物、及び/又は1種若しくは複数の金属酸化物をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項3】
工程b)と工程c)の間に、ヒドロゲル中の水の全部又は一部を標準沸点100℃未満の有機溶媒で置き換える工程を更に含む、請求項又はに記載の方法。
【請求項4】
水性溶液A1が、0.5質量%~3質量%のアルギン酸アルカリ金属塩及び5質量%~10質量%の無機材料を含み、質量百分率は水性溶液A1の質量に基づく、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
アルカリ土類金属塩が、カルシウム又はバリウム塩である、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ビーズが、300℃~600℃の温度で1~5時間か焼される、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ヨウ素を含むガス状流出物を処理する方法であって、
i)ガス状流出物を請求項1からのいずれか一項に記載の方法によって得られた材料と接触させることによってヨウ素を捕獲し、それによってヨウ化銀を含む材料が得られる工程と、次いで
ii)ヨウ化銀を含む材料を加熱処理し、それによってヨウ化銀を含む材料が、ヨウ化銀を閉じ込めるガラス質又はガラスセラミック質マトリックスに変換される工程と
を含む処理方法。
【請求項8】
工程ii)が、材料を400℃~650℃の温度に加熱する工程を含む、請求項に記載の処理方法。
【請求項9】
ガス状流出物中に存在するヨウ素が放射性ヨウ素である、請求項又はに記載の処理方法。
【請求項10】
放射性ヨウ素がヨウ素-129である、請求項に記載の処理方法。
【請求項11】
ヨウ素ガスをガラス質又はガラスセラミック質マトリックスに封入する方法であって、請求項又はに記載のヨウ素を含むガス状流出物を処理する方法を実施する工程を含む方法。
【請求項12】
ガス状流出物中に存在するヨウ素が放射性ヨウ素である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
放射性ヨウ素がヨウ素-129である、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヨウ素、特に放射性ヨウ素を含有するガス状流出物の処理の分野に関する。
【0002】
更に詳細には、本発明は、ガス状態のヨウ素と接触させるとこのヨウ素を吸着及び保持する強力な能力を有し、一旦ヨウ素が充填されると、簡単な熱処理により、ヨウ素を閉じ込めるガラス質又はガラスセラミック質マトリックスに変化させることができる微粒子多孔質無機材料に関する。
【0003】
本発明は、こうした材料を調製する方法、及びその使用、特にヨウ素ガスをガラス質又はガラスセラミック質マトリックスに封入するための使用にも関する。
【0004】
本発明は、特に使用済み核燃料の処理の分野に適用され、この処理時に生成されるガス状流出物中に存在する放射性ヨウ素、特にヨウ素-129をマトリックスに封入し、貯蔵するために、例えばこうしたヨウ素の海洋性ヨウ素での同位体希釈による管理が可能でない場合使用される可能性が高い。
【背景技術】
【0005】
ヨウ素-129は、原子力発電プラントにおけるウラン及びプルトニウムの核分裂反応時に生じ、したがって使用済み核燃料中に存在する、長寿命の中活性核分裂生成物(半減期1570万年)である。
【0006】
仏国では、ヨウ素-129の管理は、海洋性ヨウ素での同位体希釈、すなわち海洋における処分に本質的に基づいている。
【0007】
海洋への接近の可能性がない使用済み核燃料処理プラントの開発、又はヨウ素-129の海洋における処分による管理を禁止することになる規制の改正を目的として、ヨウ素-129を管理する代替方法、特に深い地層中におけるヨウ素-129の貯蔵を目的として水等の担体による拡散に対して抵抗性である安定な耐久性のあるマトリックスにヨウ素-129を封入する方法に関する研究が行われつつある。
【0008】
ヨウ素ガスを典型的にアルミナ、シリカ又はアルミノシリケート(ゼオライト)をベースにし、硝酸銀を含浸させた固体吸着剤(又はフィルター)に捕捉することが知られている。分子の形のヨウ素、すなわち二ヨウ素Iは硝酸銀と反応して、ヨウ化銀AgIを形成し、この形で固体吸着剤に保持される。このタイプの吸着剤は、使用済み核燃料処理プラントからのガス状流出物中に存在するヨウ素を捕獲するために現在使用されている。
【0009】
更に、セメント質、セラミック質(特にアパタイト)又はガラス質マトリックスへの組み込みによるヨウ素の封入により、多数の研究が生じた。特に、カルコゲニド、ボーレート、ケイ酸鉛又はリン酸塩(リン酸銅及びリン酸銀)のガラス質マトリックスにヨウ素を封入する可能性が研究された。
【0010】
最近、多くの著者が、ガス状態のヨウ素を吸着することができ、一旦ヨウ素が充填されると、封入マトリックスに直接統合することができる材料の開発に関心を示している。
【0011】
したがって、例えば、金属状態の銀によって官能化されたシリカエアロゲル及びそれらのシリカマトリックスへの3つのタイプの熱処理:一軸ホットプレス(又はHUP)、熱間静水圧プレス(又はHIP)及び放電プラズマ焼結(又はSPS)による統合に関連するJ. Matyas及びR. K. Englerの研究(FCRD-SWF-2013-000589-PNLL-22874、2013年9月、以降、参考文献[1])を述べることができる。
【0012】
この参考文献で報告されている統合試験において、エアロゲルにヨウ素が充填されていないという事実に加えて、それらのエアロゲルを、熱処理にかかわらず、1200℃の温度、並びにHUP処理では29MPa、HIP処理では207MPa及びSPS処理では70MPaである圧力にかけるが、ヨウ素-129がそのような温度で揮発することを考えればヨウ素-129を封入するのに不適でありうる。
【0013】
Sn又はSb13.5Sn20カルコゲル及びそれらのガラス質マトリックスへの熱処理による統合に関連するB. J. Rileyらの研究(FCRD-SWF-2013-000249-PNLL-22678、2013年8月28日、以降、参考文献[2])も挙げることができる。この参考文献において、カルコゲルによるヨウ素ガス吸着試験は真空下で実施され、ヨウ素充填カルコゲルの熱処理は、密封石英管中400℃~600℃の温度で真空下に実施される。
【0014】
ヨウ素を含むカルコゲルに関する統合試験の結果は満足できるものではないので、参考文献[2]の著者は、今後の研究において700℃を超える統合温度を使用しなければならないが、これも、揮発という理由でヨウ素-129の封入に不適であると結論づけている。
【0015】
参考文献[1]及び[2]は、とりわけガス状態であるときヨウ素-129を極めて効率的に吸着することができ、次いで熱処理によって封入マトリックスに直接統合することができる材料を開発するために存在する必要性を示すが、難しさも示す例であり、
一方では、ヨウ素-129の揮発リスクを最小限度に抑える温度であり、典型的に650℃を超えない温度、及び周囲圧力で実施することができ、
他方では、特に参考文献[2]において使用される封管等の工業的使用によく又はまったく適合されない装備の使用を必要としないので、実施するのが簡単でありうる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【文献】J. Matyas及びR. K. Engler、FCRD-SWF-2013-000589-PNLL-22874、2013年9月
【文献】B. J. Rileyら、FCRD-SWF-2013-000249-PNLL-22678、2013年8月28日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明はまさに、第1に、ガス状態のヨウ素と接触させるとこのヨウ素ガスを吸着する強力な能力が付与され、一旦ヨウ素が充填されると、簡単な熱処理により、ヨウ素を閉じ込めるガラス質又はガラスセラミック質マトリックスに変化させることができる、微粒子多孔質無機材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この材料は、粒子によって形成され、各粒子は固相を含み、固相は、リンに結合している酸化状態にある銀及び相互接続している開細孔を含み、それらの開細孔の表面が金属状態の銀を含み、その銀は、ヨウ素と反応して、ヨウ化銀AgIを形成することができる。
【0019】
上記及び下記において、
無機材料とは、炭素又は水素を含まない材料を意味すること、
相互接続している開細孔とは、固相の表面、したがって粒子の表面に開口しているだけでなく、したがって粒子の外側と連通するだけでなく、粒子の外側と連通することができる又はできない他の細孔とも連通する、細孔を意味すること、
酸化状態の銀とは、Agと表される酸化状態+1の銀を意味すること、
金属状態の銀とは、Agと表される酸化状態0の銀を意味すること
が理解されている。
【0020】
更に、ガラス質マトリックスは、いかなる結晶相もないガラスからなるマトリックスであると理解され、一方ガラスセラミック質マトリックスは、1つ又は複数の結晶相を含むガラスからなるマトリックスであると理解される。
【0021】
本発明によれば、粒子の固相は、モリブデン、ホウ素、バナジウム、クロム、及びタングステンから選択される1種若しくは複数のカチオンに結合している酸化状態にある銀、並びに/又はAl、Bi、Ga、Nb、ZnO等の1種若しくは複数の金属酸化物を更に含むことができる。
【0022】
好ましくは、材料を形成する粒子は、(例えば、レーザー粒径分布により決定して)300μm~3000μmの大きさを有する。
【0023】
本発明の材料は、特に
a)アルギン酸のアルカリ金属塩、並びにリン酸銀と、場合によってはモリブデン、ホウ素、バナジウム、クロム、及びタングステンから選択されるカチオンに結合している酸化された銀の1種若しくは複数の化合物、及び/又は1種若しくは複数の金属酸化物とを含む無機材料を含む水性溶液A1を調製する工程と、
b)水性溶液A1を分離された形でアルカリ土類金属塩を含む水性溶液A2中に押し出し、それによって、リン酸銀及びアルギン酸のアルカリ塩を含むヒドロゲルによって形成されるビーズが得られる工程と、
c)ビーズを乾燥する工程と、
d)乾燥したビーズをか焼する工程と
を含む方法によって調製することができる。
【0024】
したがって、本発明の1つの目的は、この調製方法でもある。
【0025】
水性溶液A1中に存在する可能性が高い銀化合物は、リン酸銀以外に、特にモリブデン酸銀AgMoO、ホウ酸銀AgBO、AgB、AgBO及びAg、バナジン酸銀AgVO、AgVO及びAg、クロム酸銀AgCrO及びAgCrO、並びにタングステン酸銀AgWO及びAgWOから選択することができる。
【0026】
水性溶液A1中に存在することができる金属酸化物について、上記の酸化物のうちの1種又は複数とすることができる。
【0027】
アルギン酸アルカリ金属塩は、アルギン酸ナトリウム又はアルギン酸カリウムであることが有利であり、好ましくはアルギン酸ナトリウムである。
【0028】
このアルギン酸ナトリウムは、例えばSigma-Aldrich社から「アルギン酸ナトリウム塩」として入手可能なCAS番号9005-38-3のアルギン酸塩である。この塩は、20℃において水中1%質量濃度で15~25cPの動的粘度を有する。
【0029】
本発明によれば、水性溶液A1は、好ましくは5~10質量%の無機物質を含み、質量百分率は水性溶液A1の質量に基づく。したがって、
水性溶液A1中に存在する無機物質がリン酸銀のみを含む場合、リン酸銀は、好ましくは水性溶液A1の5質量%~10質量%を占める、一方
水性溶液A1中に存在する無機物質が、リン酸銀以外に、Mo、B、V、Cr及びWから選択されるカチオンに結合している酸化された銀の1種若しくは複数の化合物、並びに/又は1種若しくは複数の金属酸化物を含む場合、それは、好ましくは水性溶液A1の5質量%~10質量%を占める有機物質の成分の質量の総和であり、その場合、リン酸銀は、水性溶液A1の2.5質量%~5質量%を占めることが有利である。
【0030】
どんな場合でも、アルギン酸アルカリ金属塩自体、優先的に水性溶液A1の0.5質量%~3質量%を占める。
【0031】
好ましくは、水性溶液A2のアルカリ土類金属塩は、カルシウム又はバリウム塩であり、対イオンは硝酸イオンである。
【0032】
押出は、針又は導管を備え、導管の一端に針を備え、他端がポンプ、例えば蠕動ポンプに接続されている注射器等、水性溶液A1を分離された形、特に液滴の形で水性溶液A2中に送達することを可能にするいかなるデバイスによっても実施することができる。
【0033】
本発明によれば、調製方法は、工程b)と工程c)の間に、工程c)におけるビーズの乾燥を促進するために、ヒドロゲル中の水の全部又は一部を、水の標準沸点より低い、又は言い換えれば100℃より低い標準沸点(すなわち、1013.25hPaの圧力における沸点)を有する有機溶媒で置き換える工程を更に含むことが有利である。
【0034】
有機溶媒は、例えばメタノール又はエタノール等のアルコールであり、好ましくはエタノールである。
【0035】
ヒドロゲル中の水の全部又は一部を有機溶媒で置き換える工程について、これは、工程b)において得られたビーズを排出し、それらを水ですすぎ、次いで有機溶媒のみ又は有機溶媒の体積濃度が増加していく水/有機溶媒混合物を含む一連の浴に浸漬することによって行うことができる。
【0036】
工程b)において、又はヒドロゲル中の水の全部若しくは一部を有機溶媒で置き換えた後に得られるビーズの乾燥は、例えばこれらのビーズを例えば60℃の温度に設定された加熱炉に数時間入れることによって実施される。
【0037】
こうして乾燥したビーズのか焼について、好ましくはビーズを、昇温勾配5℃/分で300℃~600℃、はるかによりよくは400℃~500℃の温度に到達させる炉に1~5時間入れることによって実施される。
【0038】
本発明のもう1つの目的は、先に定義した材料の、この材料をヨウ素ガスと接触させることによってヨウ素ガスを吸着するための使用である。
【0039】
本発明の別の目的は、先に定義した材料の、この材料をガス状流出物と接触させることによってガス状流出物中に存在するヨウ素を捕獲するための使用である。
【0040】
本発明の更にもう1つの目的は、ヨウ素を含むガス状流出物を処理する方法であって、
i)ガス状流出物を先に定義した材料と接触させることによってヨウ素を捕獲し、それによってヨウ化銀を含む材料が得られる工程と、次いで
ii)ヨウ化銀を含む材料を加熱処理し、それによってヨウ化銀を含む材料が、ヨウ化銀を閉じ込めるガラス質又はガラスセラミック質マトリックスに変換される工程と
を含む方法である。
【0041】
ガラス質マトリックス又はガラスセラミック質マトリックスのガラス質部分を構成するガラスは、リン酸銀ベースのガラスである。
【0042】
本発明によれば、工程(ii)は、好ましくは材料を400℃~650℃の温度に30分間~2時間加熱する工程を含む。
【0043】
最後に、本発明の1つの目的は、ヨウ素ガスをガラス質又はガラスセラミック質マトリックスに封入する方法であって、先に定義したヨウ素を含むガス状流出物を処理するプロセスを実施する工程を含む方法である。
【0044】
本発明によれば、ガス状流出物中に存在するヨウ素は、好ましくは放射性ヨウ素、特にヨウ素-129である。
【0045】
本発明の材料の調製例に関する後続の追加の説明を読めば、発明のさらなる特徴及び効果が見えてくる。
【0046】
この追加の説明は、本発明の目的の実例として記載されているにすぎず、決してその目的に限定するものでないことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1A】二ヨウ素蒸気に曝露する前の本発明の第1の材料の粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像であり、2次電子モード、倍率146倍で撮影された画像である。
図1B】二ヨウ素蒸気に曝露する前の本発明の第1の材料の粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像であり、後方散乱電子モード、倍率146倍で撮影された画像である。
図1C】二ヨウ素蒸気に曝露する前の本発明の第1の材料の粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像であり、後方散乱電子モード、倍率5000倍で撮影された画像である。
図2A】二ヨウ素蒸気に曝露する前の本発明の第2の材料の粒子のSEM画像であり、倍率90倍の2次電子モード画像である。
図2B】二ヨウ素蒸気に曝露する前の本発明の第2の材料の粒子のSEM画像であり、倍率90倍の後方散乱電子モード画像である。
図2C】二ヨウ素蒸気に曝露する前の本発明の第2の材料の粒子のSEM画像であり、倍率2331倍の後方散乱電子モード画像である。
図3A】二ヨウ素蒸気に曝露した後の本発明の第1の材料の粒子のSEM画像であり、倍率116倍の2次電子モード画像である。
図3B】二ヨウ素蒸気に曝露した後の本発明の第1の材料の粒子のSEM画像であり、倍率1346倍の後方散乱電子モード画像である。
図4A】二ヨウ素蒸気に曝露した後の本発明の第2の材料の粒子の2次電子モード、倍率100倍のSEM画像である。
図4B】二ヨウ素蒸気に曝露した後の本発明の第2の材料の粒子の2次電子モード、倍率562倍のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0048】
I-本発明の材料の調製:
本発明の2つの材料(以降、材料1及び材料2)は、以下の操作プロトコルに従って調製される。
1)アルギン酸ナトリウム(Sigma-Aldrich社)を、磁気撹拌下でリン酸銀AgPOの水性溶液に添加し、7.5質量%のリン酸銀及び1質量%のアルギン酸ナトリウム(すなわち水100ml当たり7.5gのリン酸銀及び1gのアルギン酸ナトリウム)を含む、A1として表わされる水性溶液を得、それを低磁気撹拌下で4時間維持する工程、
2)水性溶液A1を液滴として、磁気撹拌下で、材料1では0.27mol/Lの硝酸カルシウムCa(NO及び材料2では0.27mol/Lの硝酸バリウムBa(NOを含む、A2として表わされる水性溶液に押し出し、この押出が、一端に針を備え、他端が蠕動ポンプに接続されている導管に水性溶液A1を循環させ、水性溶液A1を、針先端の開口部を経由して水性溶液A2に滴り落とすことで構成され、それによって典型的に0.5mm~10mmの大きさのゼラチン質ビーズが得られ、これらのビーズが、材料1ではリン酸銀及びアルギン酸カルシウムによって、材料2ではリン酸銀及びアルギン酸バリウムによって形成され、2価のカルシウム及びバリウムイオンが、実際には押出時にアルギン酸塩の1価のナトリウムイオンに置き換わる工程、
3)工程2)の終わりに得られたゼラチン質ビーズを、水/エタノール交換にかけ、それらのビーズを構成するヒドロゲルがアルコールゲルに変化させることを可能にし、これを行うために、ビーズを排出し、水ですすぎ、エタノール浴に10分浸漬し、この浸漬を3回繰り返す工程、
4)工程3)の終わりに得られたアルコールゲルビーズを60℃で16時間乾燥する工程、次いで
5)乾燥したアルコールゲルビーズを、空気下500℃で3時間か焼する(昇温勾配5℃/分)工程。
【0049】
このか焼時に、アルコールゲルビーズ中に存在するアルギン酸塩は分解し、これらのビーズは、典型的に300μm~3000μmの大きさの粒子に変化し、リン酸銀及び金属Agの形をした銀からなる無機骨格を含む。アルギン酸塩によって表される有機物がビーズ中に初期に存在することによって、多孔となり、且つリン酸銀中に存在するAgイオンの一部分がAgに還元する。
【0050】
この還元の結果として、Agの「小塊」が形成され、その後のヨウ素ガス吸着の反応部位、及び金属状態の銀が分子の形のヨウ素と反応して、ヨウ化銀AgIを形成するとき結合するための反応部位になる。非金属性部分のAgO/Pのモル比も低下し(<3)、最後に均質なガラス質マトリックスを得るのにより好ましい。
【0051】
AgイオンからAgへの還元率は、か焼が実施される温度が高いほど、か焼時間が長いほど一層高くなることに留意するべきである。したがって、この率は、か焼が実施される温度及び時間条件を選択することによって調節することができる。
【0052】
材料1及び材料2は、使用済み核燃料処理プラントにおけるガス状流出物中に存在するヨウ素を捕獲するために現在使用されている固体吸着剤によって示される吸着及び結合容量の上限容量であるヨウ素ガス吸着及び結合容量が材料1g当たり207mg~400mgに及ぶ。
【0053】
材料1及び材料2の粒子を走査型電子顕微鏡分析にかける。
【0054】
図1A図1B及び図1Cは、材料1の粒子について得られる画像に対応し(図1A及び図1Bでは倍率146倍、図1Cでは倍率5000倍)、図2A図2B及び図2Cは、材料2の粒子について得られる画像に対応する(図2A及び図2Bでは倍率90倍、図2Cでは倍率2331倍)。
【0055】
図1Cにおいて、
(1)を付した矢印は、材料1の粒子が、銀、酸素及びリンが豊富で、微量のカルシウムのマトリックスを含むことを示す。
(2)を付した矢印は、マトリックスにおける酸素、銀、リン及びカルシウムが豊富な黒色結晶粒の存在を示す。一方、
(3)を付した矢印は、マトリックスにおけるAgからなる白色結晶粒の存在を示す。
【0056】
図2Cにおいて、
(1)を付した矢印は、材料2の粒子が、銀、酸素及びリンが豊富で、バリウムが微量のマトリックスを含むことを示す。
(2)を付した矢印は、マトリックスにおける酸素、リン及びバリウムが豊富な黒色結晶粒の存在を示す。
(3)を付した矢印は、マトリックスにおけるAgからなる白色結晶粒の存在を示す。一方
(4)を付した矢印は、マトリックスにおける銀、酸素及びリンが豊富な灰色結晶の存在を示す。
【0057】
II-本発明の材料のヨウ素ガスへの曝露:
上記のポイントIにおいて得られた材料1及び材料2を、二ヨウ素I蒸気に110℃で18時間曝露する。
【0058】
この曝露の終わりに、材料1及び材料2の粒子を再び走査型電子顕微鏡分析にかける。
【0059】
図3A及び図3Bは、材料1の粒子について得られる画像に対応し(図3Aでは倍率116倍、図3Bでは倍率1346倍)、図4A及び図4Bは、材料2の粒子について得られる画像に対応する(図4Aでは倍率100倍、図4Bでは倍率562倍)。
【0060】
これらの図に示すように、粒子の表面は、Ag小塊と二ヨウ素蒸気との反応の結果としてAgIシェルを示す。AgIのモル体積が小塊中の金属銀と比べて高いために、ヨウ化銀は、最終的に粒子の表面を完全に覆うことができる。
【0061】
III-本発明の材料の封入マトリックスへの変化:
上記のポイントIIにおいて得られた、ヨウ素が充填された材料1及び材料2を、事前に650℃の温度に至らしめたマッフル炉での熱処理に1時間かけ、次いで炉から取り出して、空気中でクエンチする。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B