(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】精製リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LIFSI)生成物、粗LIFSIの精製方法、および精製LIFSI生成物の使用
(51)【国際特許分類】
C01B 21/086 20060101AFI20240419BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20240419BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20240419BHJP
H01G 11/62 20130101ALI20240419BHJP
【FI】
C01B21/086
H01M10/0568
H01G11/84
H01G11/62
(21)【出願番号】P 2021526417
(86)(22)【出願日】2019-11-15
(86)【国際出願番号】 IB2019059851
(87)【国際公開番号】W WO2020100114
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-11-02
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521203773
【氏名又は名称】エスイーエス ホールディングス プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シン、ラジェンドラ ピー.
(72)【発明者】
【氏名】フー、キーチャオ
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/204303(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/090877(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B
B01D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LiFSIおよび1種または複数の標的不純物を含有する粗リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)から前記1種または複数の標的不純物を除去して精製LiFSI生成物を生成する方法であって、前記方法は、
不活性条件下で、前記粗LiFSIを少なくとも1種の第1の無水有機溶媒と接触させて、LiFSIおよび前記1種または複数の標的不純物を含有する溶液を生成することであって、
前記少なくとも1種の第1の無水有機溶媒が、ジメチルカルボナート(DMC)、ジエチルカルボナート(DEC)、エチルメチルカルボナート(EMC)、プロピルメチルカルボナート(PMC)、エチレンカルボナート(EC)、フルオロエチレンカルボナート(FEC)、トランスブチレンカルボナート、アセトニトリル、マロノニトリル、アジポニトリル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒を含むことと、
少なくとも1種の第2の無水有機溶媒を前記溶液に添加して、前記少なくとも1種の標的不純物を沈殿させることであって、
前記少なくとも1種の第2の無水有機溶媒が、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカンからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒を含むことと、
前記1種または複数の標的不純物の各々の不溶性部分を前記溶液から濾過して、濾液を生成することと、
前記濾液から溶媒を除去して、固体塊を得ることと、
前記固体塊を
、少なくとも1種の第3の無水有機溶媒と接触させること
であって、前記少なくとも1種の第3の無水有機溶媒が、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカンからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒を含むことと、
前記少なくとも1種の第3の無水有機溶媒から前記LiFSIを単離して、前記精製LiFSIを得ることとを含む、方法。
【請求項2】
前記粗LiFSIが、前記少なくとも1種の第1の無水有機溶媒に対して室温で少なくと
も50%の溶解度を有し、前記1種または複数の標的不純物の各々が、前記少なくとも1種の第1の無水有機溶媒に対して室温
で20パーツ・パー・ミリオン(ppm)以下である溶解度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粗LiFSIを少なくとも1種の第1の無水有機溶媒と接触させることが、前記粗LiFSIを最小量の前記少なくとも1種の第1の無水有機溶媒と接触させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記最小量の少なくとも1種の第1の無水有機溶媒が、溶液
の40重量%
~75重量%である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記溶液に少なくとも1種の第2の無水有機溶媒を添加することが、前記少なくとも1種の第2の無水有機溶媒を前記溶液
の10重量%以下の量で添加することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記粗LiFSIと前記少なくとも1種の第1の無水有機溶媒との前記接触が
、25℃未満の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記粗LiFSIと少なくとも1種の第1の無水有機溶媒との接触中に溶液の温度を制御して、温度を目標温度
の2℃以内に維持することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記濾過が、不活性雰囲気中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記不活性雰囲気が、アルゴンガスを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
溶媒を除去することが、真空中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
溶媒を除去することが
、0.1Torr以下の圧力で行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
溶媒を除去することが
、40℃未満の温度で行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記LiFSIを単離することが、前記少なくとも1種の第3の無水有機溶媒から固体形態の前記LiFSIを濾過することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記LiFSIを単離することが、前記固体LiFSIを真空中で乾燥させることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記固体LiFSIを真空中で乾燥させることが
、0.1Torr以下の圧力で前記固体LiFSIを乾燥させることを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記1種または複数の標的不純物が、塩化リチウム(LiCl)、フッ化リチウム(LiF)、硫酸リチウム(Li
2SO
4)、フルオロ硫酸リチウム(FSO
3Li)、フッ化水素(HF)、およびフルオロスルホン酸(FSO
3H)からなる群からの1種または複数の標的不純物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記1種または複数の標的不純物が、硫酸リチウム(Li
2SO
4)を含み、
前記1種または複数の標的不純物の各々の不溶性部分を濾過することが、前記Li
2SO
4の不溶性部分を同時に濾過することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記粗LiFSIを少なくとも1種の第1の無水有機溶媒と接触させることが、前記粗LiFSIを、前記溶液に対して50重量%~75重量%である量の前記少なくとも1種の第1の無水有機溶媒と接触させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記溶液に少なくとも1種の第2の無水有機溶媒を添加することが、前記少なくとも1種の第2の無水有機溶媒を前記溶液の10重量%以下の量で添加することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記溶液に少なくとも1種の第2の無水有機溶媒を添加することが、前記少なくとも1種の第2の無水有機溶媒を前記溶液の10重量%以下の量で添加することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
遊離フッ素と実質的に反応しない容器内の乾燥雰囲気中に前記精製LiFSIを配置することと、前記容器を25℃未満の温度で保存することとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記1種または複数の標的不純物が、前記粗LiFSI中の前記LiFSIを合成するプロセスの副生成物である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記精製LiFSI生成物が、10パーツ・パー・ミリオン(ppm)以下のLiClを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記精製LiFSI生成物が、1ppm未満のLiClを含有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記精製LiFSI生成物が、500パーツ・パー・ミリオン(ppm)以下のFSO
3
Li、100ppm以下のLiCl、および150ppm以下のLiFを含有する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願データ
本出願は、2018年11月16日に出願された「PROCESS FOR THE PURIFICATION OF LITHIUM BIS(FLUOROSULFONYL)IMIDE(LiFSI)(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)の精製のためのプロセス)」と題された米国仮特許出願第62/768,447号の優先権の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般に、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)の分野に関する。特に、本発明は、精製LiFSI生成物、粗LiFSIを精製する方法、および精製LiFSI生成物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)は、その望ましい物理化学的および電気化学的特性のために、リチウム系電池の伝導性塩として報告されている。LiFSIは、融点が131℃であり、200℃まで熱的に安定である。LiFSIは、リチウムイオン電池の電解質に一般的に使用される塩である六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)と比較して、加水分解に対してはるかに優れた安定性を示す。LiFSIは、優れた溶解性、LiPF6系電解質に匹敵するイオン伝導度、費用対効果、環境への優しさ、および良好な固体電解質界面(SEI)形成特性などの固有の特性のために、リチウムイオン電池の電解質/添加剤として大きな関心を集めている。電池電解質に使用されるLiFSIの純度レベルは、LiFSI系電解質を使用する電池の動作およびサイクル寿命にとって重要である可能性がある。しかし、LiFSIを合成するための多くの商業的プロセスは、合成プロセスによって生成される粗LiFSI中に残留する副生成物を生成する。LiFSIの主な不純物は、フッ化リチウム(LiF)、塩化リチウム(LiCl)、硫酸リチウム(Li2SO4)、フルオロスルホン酸リチウム(LiFSO3)、および酸型不純物、例えばフッ化水素(HF)である。これらの不純物は、電池にLiFSI塩を使用する前に、除去するか、または様々な許容レベルに低減しなければならない。しかし、それらを除去することは困難である可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
一実施態様では、本開示は、LiFSIおよび1種または標的不純物を含有する粗リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)(crude lithium bis(fluorosulfonyl)-imide (LiFSI))から1種または複数の標的不純物(target impurities)を除去して、精製LiFSI生成物を生成する方法に関する。本方法は、不活性条件下で粗LiFSIを少なくとも1種の第1の無水有機溶媒と接触させて、LiFSIおよび1種または複数の標的不純物を含有する溶液を生成することであって、室温で少なくとも1種の第1の無水有機溶媒に対して、LiFSIが可溶性であり、1種または複数の標的不純物の各々が実質的に不溶性であること、少なくとも1種の第2の無水有機溶媒を溶液に添加して、少なくとも1種の標的不純物を沈殿させることであって、LiFSIおよび1種または複数の標的不純物の各々が少なくとも1種の第2の無水有機溶媒に実質的に不溶性であること、1種または複数の標的不純物の各々の不溶性部分を溶液から濾過して、濾液を生成すること、濾液から溶媒を除去して、固体塊(solid mass)を得ること、固体塊を、LiFSIが実質的に不溶性である少なくとも1種の第3の無水有機溶媒と接触させること、および少なくとも1種の第3の無水有機溶媒からLiFSIを単離して、精製LiFSIを得ることを含む。
【0005】
本発明を説明する目的で、図面は、本発明の1つまたは複数の実施形態の態様を示す。しかし、本発明は、図面に示された正確な配置および手段に限定されないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本開示の態様によるリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)を精製するマルチパス方法を示す流れ図である。
【0007】
【
図2】本開示の態様により作製された電気化学デバイスを示す高レベル図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
いくつかの態様では、本開示は、粗リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)から様々な不純物のいずれか1種または複数を除去するために、粗LiFSIを精製する方法に関する。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、「粗LiFSI」という用語および同様の用語は、少なくともLiFSIと、LiFSIの合成から生じる不純物などの1種または複数の不純物とを含む合成生成物を示す。以下および添付の特許請求の範囲では、この種の不純物は、「合成不純物」と呼ばれる。開示された方法を使用してある程度または別の程度まで除去される標的となる不純物の各々は、本明細書および添付の特許請求の範囲において「標的不純物」と呼ばれる。一例では、標的不純物は、上記のようにLiFSIの合成の副生成物である合成不純物である可能性がある。
【0009】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、「無水」という用語は、約1重量%以下の水、典型的には約0.5重量%以下の水、しばしば約0.1重量%以下の水、より頻繁には約0.01重量%以下の水、最も頻繁には約0.001重量%以下の水を有することを指す。この定義内で、「実質的に無水」という用語は、約0.1重量%以下の水、典型的には約0.01重量%以下の水、しばしば約0.001重量%以下の水を有することを指す。
【0010】
本開示を通して、「約」という用語は、対応する数値と共に使用される場合、数値の±20%、典型的には数値の±10%、しばしば数値の±5%、最も頻繁には数値の±2%を指す。いくつかの実施形態では、「約」という用語は、数値自体を意味することができる。
【0011】
本明細書に記載されるおよび/または添付の特許請求の範囲で対処される合成および精製反応のいずれかなどの化学反応を説明する場合、「処理する」、「接触させる」、および「反応させる」という用語は互換的に使用され、示されたおよび/または(1種または複数の)所望の生成物を生成するのに十分な条件下で2種以上の試薬を添加または混合することを指す。示されたおよび/または所望の生成物を生成する反応は、必ずしも最初に添加された(1種または複数の)試薬の組み合わせから直接生じるとは限らないことを理解されたい。すなわち、混合物中で生成され、最終的に、示されたおよび/または所望の生成物の形成をもたらす1種または複数の中間体が存在し得る。
【0012】
商業規模では、粗LiFSIは、通常、フッ化水素(HF)、フルオロ硫酸(FSO
3H)、塩化水素(HCl)、および硫酸(H
2SO
4)などの様々な濃度の合成不純物を含む水素ビス(フルオロスルホニル)イミド(HFSI)を、炭酸リチウム(Li
2CO
3)または水酸化リチウム(LiOH)で中和することによって得られる。一例として、LiOHベースの合成を使用すると、粗LiFSIを生成するこのプロセス中に、以下のスキームによって、HFSIおよびHF、FSO
3H、HCl、およびH
2SO
4などの不純物が対応するLi塩に変換されて、LiFSI、Li
2SO
4、FSO
3Li、LiF、およびLiClがそれぞれ生成される。
【化1】
この例では、Li
2SO
4、FSO
3Li、LiF、およびLiClは、粗LiFSIから除去されることが望ましい標的不純物(ここでは、合成不純物)である。いくつかの実施形態では、本開示の精製方法は、Li
2SO
4、FSO
3Li、LiF、およびLiClのうちの1種または複数などの1種または複数の合成不純物、および/または開示された方法による除去に適した分子構造および特性を有する任意の他の不純物を除去し、その各々は本開示の用語では「標的不純物」である。
【0013】
別の態様では、本開示は、LiFSIと、比較的低レベルの1種または複数の標的不純物、例えば1つまたは複数の合成不純物、例えば上述のLi2SO4、FSO3Li、LiF、およびLiClとを含有する精製LiFSI生成物に関する。以下でより詳細に説明するように、そのような精製LiFSI生成物は、開示された基本プロセスのうちの1種の単回パススルー、あるいは開示された基本プロセスのうちの1種または複数の複数回パススルーにおいて精製LiFSI生成物を生成することができる本開示の精製方法を使用して生成することができる。
【0014】
なおさらなる態様では、本開示は、本開示のLiFSI塩生成物の使用に関する。例えば、本開示のLiFSI塩生成物を使用して、電池またはスーパーキャパシタなどの任意の適切な電気化学デバイスで使用することができる電解質を生成することができる。
【0015】
本開示の前述および他の態様の詳細を以下に説明する。
【0016】
粗LiFSIを精製する例示的な方法
【0017】
LiFSIを生成するためのいくつかのプロセスが知られているが、商業規模でLiFSIを合成するための既知の方法の各々は、合成不純物などの様々なレベルの不純物を含有する粗LiFSIを生成する。例えば、上記のように、LiFSIは、Li2CO3またはLiOHと反応する粗HFSIを使用して商業的に生成されることが多く、粗HFSIは、そのように合成された粗LiFSI中に不純物を生じる様々な合成不純物を含有する。
【0018】
例えば、HFSIを合成する1つの方法は、尿素(NH2CONH2)およびフルオロスルホン酸(FSO3H)を使用する。このプロセスの欠点は、HFSIの収率が低いこと、および不純物として大過剰のフルオロスルホン酸を有する単離されたHFSIである。フルオロスルホン酸の沸点(b.p.)(b.p.165.5℃)およびHFSIのb.p.(b.p.170℃)は互いに非常に近く、単純な分別蒸留によってそれらを互いに分離することは非常に困難である[1]。HFSIとフルオロスルホン酸の混合物を塩化ナトリウムで処理することによってフルオロスルホン酸を除去する試みがなされている。この場合、塩化ナトリウムがフルオロスルホン酸と選択的に反応してナトリウム塩およびHCl副生成物を生成する。このプロセスには、精製HFSIの収率が低く、また、HFSI生成物が不純物としていくらかの塩化物不純物(HClおよびNaCl)で汚染されるという難点がある。
【0019】
LiFSI合成に使用するためのHFSIを合成する別の方法は、三フッ化ヒ素(AsF3)でビス(クロロスルホニル)イミド(HCSI)をフッ素化することを含む。この反応では、HCSIをAsF3で処理する。三フッ化ヒ素は有毒であり、蒸気圧が高いため、工業的規模での取り扱いが特に困難である。典型的な反応は、HCSI対AsF3が1:8.6の比を使用する。本方法によって生成されたHFSIはまた、AsF3およびAsCl3合成不純物で汚染されていることが分かり、これらは塩化物およびフッ化物不純物の良好な供給源であることが分かった[2]。
【0020】
LiFSI合成に使用するためのHFSIは、三フッ化アンチモン(SbF3)でHCSIをフッ素化することによって調製することもできる。この反応の三塩化アンチモン副生成物は、HFSIに高い溶解度を有し、本質的に昇華可能であり、所望の生成物から分離することは非常に困難である。この反応の生成物は、典型的には、塩化物不純物の良好な供給源である三塩化アンチモンで汚染されている[3]。
【0021】
LiFSI合成に使用するためのHFSIを生成するためのさらに別の方法は、高温でHCSIを過剰の無水HFと反応させることを含む[4]。この反応の収率は最大で60%であり、生成物はHCSIの分解から生成されるフルオロスルホン酸で汚染されている。沸点はHFSIの沸点に近いため、この副生成物は除去することが困難である。無水HFを使用してHSCIをフッ素化するこの反応は、95%超の収率[5]を達成したが、それでも生成物は合成不純物としてフルオロスルホン酸、フッ化水素、塩化水素、および硫酸で汚染されている。
【0022】
HCSIを三フッ化ビスマス(BiF3)と反応させると、より清浄な反応生成物中にHFSIが生じることが報告されている。この反応では、BiCl3は昇華性ではないため、形成されたBiCl3副生成物を分別蒸留によってHFSIから容易に分離することができる[6]。しかし、生成物は、合成不純物としていくらかの塩化物、フッ化物、およびフルオロスルホン酸を有する。
【0023】
HFSIを合成する別の方法では、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(KFSI)を過塩素酸と反応させる[7]。このプロセスでは、副生成物の過塩素酸カリウムは爆発性であると考えられる。また、単離されたHFSIは、KFSI中に存在する高レベルのカリウムカチオンおよびいくらかの塩化物不純物で汚染されている。
【0024】
式FSO2NH-O2Fを有するイミドビス(硫酸)ジフルオリドとしても知られる水素ビス(フルオロスルホン酸)は、融点(m.p.)が17℃であり、b.p.が170℃であり、密度が1.892g/cm3である無色の液体である。これは、水および多数の有機溶媒に非常によく溶解する。水中での加水分解は比較的遅く、HF、H2SO4、およびアミド硫酸(H3NSO3)の形成をもたらす。HFSIは強酸であり、pKaは1.28である[8]。
【0025】
本開示の精製方法を使用して、粗LiFSI中に存在する合成不純物および/または他の不純物などの標的不純物、例えば、前述の合成方法のうちのいずれか1つまたは複数を使用して生成された粗HFSIを使用して合成された粗LiFSIを除去することができる。いくつかの実施形態では、精製方法は、不活性条件下で粗LiFSIを少なくとも1種の第1の無水有機溶媒と接触させて、粗LiFSIおよび1種または複数の標的不純物を含有する溶液を生成することを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1種の第1の無水有機溶媒中のLiFSIの溶解度は、室温で少なくとも約60%、典型的には約60%~約90%の範囲であり、1種または複数の標的不純物の各々の溶解度は、典型的には室温で約20パーツ・パー・ミリオン(ppm)以下、多くの場合、例えば約13ppm未満である。いくつかの実施形態では、粗LiFSIと少なくとも1種の第1の無水有機溶媒との接触は、最小量の少なくとも1種の第1の無水有機溶媒を使用して行われる。少なくとも1種の第1の無水有機溶媒の文脈における「最小量」とは、少なくとも1種の第1の無水有機溶媒が、実質的に、LiFSIがもはや溶解し続けない量で提供されることを意味する。いくつかの実施形態では、最小量の少なくとも1種の無水有機溶媒は、溶液の約50重量%~約75重量%の範囲にある。
【0026】
いくつかの実施形態では、粗LiFSIと少なくとも1種の第1の無水有機溶媒との接触は、約15℃~約25℃の範囲内の温度よりも低い温度で行われる。粗LiFSIの少なくとも1つの第1の無水有機溶媒への溶解は発熱反応である。その結果、いくつかの実施形態では、冷却器、サーモスタット、サーキュレータなどの任意の適切な温度制御装置を使用して溶液の温度を制御することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1種の無水有機溶媒を粗LiFSIと接触させる際に、溶液の温度を約25℃未満に維持するように溶液の温度を制御する。最小量の少なくとも1種の第1の無水有機溶媒を達成するために、および/または少なくとも1種の第1の無水有機溶媒による粗LiFSIの接触中に溶液の温度を制御するために、少なくとも1種の無水有機溶媒を、適切な供給装置または投入装置を使用して、正確に制御された速度で、または正確に制御された量で連続的または継続的に添加することができる。
【0027】
LiFSIと少なくとも1種の第1の無水有機溶媒との接触中の不活性条件は、とりわけ、アルゴンガスおよび/または窒素ガス、および/または他の不活性乾燥(すなわち、無水)ガスを使用するなど、任意の適切な技術を使用して生成することができる。精製方法は、1気圧など、任意の適切な圧力で実施することができる。
【0028】
少なくとも1種の第1の無水有機溶媒の各々が選択され得る無水有機溶媒の例としては、ジメチルカルボナート(DMC)、ジエチルカルボナート(DEC)、エチルメチルカルボナート(EMC)、プロピルメチルカルボナート(PMC)、エチレンカルボナート(EC)、フルオロエチレンカルボナート(FEC)、トランスブチレンカルボナート、アセトニトリル、マロノニトリル、アジポニトリル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、メタノール、エタノール、プロパノールおよびイソプロパノールが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0029】
粗LiFSIを少なくとも1種の第1の無水有機溶媒と接触させた後、少なくとも1種の第2の無水有機溶媒を溶液に添加して、その少なくとも1種の標的不純物を沈殿させる。少なくとも1種の第2の無水有機溶媒は、LiFSIおよび1種または複数の標的不純物が、少なくとも1種の第2の無水有機溶媒に実質的に不溶性(上記のように、標的不純物は20ppmを超えて可溶性であるべきではないことが一般に望ましい)であるように選択される。いくつかの実施形態では、少なくとも1種の第2の無水有機溶媒を最小量で添加する。少なくとも1種の第2の無水有機溶媒の文脈における「最小量」とは、少なくとも1種の第2の無水有機溶媒が、実質的に、1種または複数の標的不純物がもはや溶液から析出し続けない量で提供されることを意味する。いくつかの実施形態において、最小量の少なくとも1種の無水有機溶媒は、溶液の0重量%超~10重量%以下の範囲にある。少なくとも1種の第2の無水有機溶媒は、粗LiFSIと少なくとも1種の第1の無水有機溶媒との接触中に存在するのと同じ温度、圧力および不活性条件下で添加することができる。
【0030】
少なくとも1種の第2の無水有機溶媒の各々が選択され得る無水有機溶媒の例としては、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカンが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0031】
少なくとも1種の第2の無水有機溶媒を添加した後、1種または複数の標的不純物の各々の不溶性部分を、例えば濾過またはカニューレ挿入して溶液から分離し、溶液中にLiFSIを含有する濾液を生成する。濾過は、1種または複数の濾過材、遠心分離、重力分離、ハイドロサイクロンなどを使用するなど、任意の適切な方法を使用して実施することができる。当業者は、本開示の精製方法の任意の特定の具体化に使用するための適切な濾過技術(1種または複数)を理解するであろう。
【0032】
濾液を濾過から得た後、濾液中の溶媒を除去して、主にLiFSIおよびいくらか減少した量の1種または複数の標的不純物からなる固体塊を得る。除去される溶媒は、典型的には、前の処理からの1種または複数の第1の無水有機溶媒および1種または複数の第2の無水有機溶媒の各々である。溶媒は、任意の適切な技術を使用して、例えば適切な温度および減圧条件下で除去することができる。例えば、溶媒を除去することは、約0.5Torr以下または約0.1Torr以下の圧力で行ってもよい。除去時の温度は、例えば、約25℃~約40℃以下であってもよい。
【0033】
固体塊を得た後、固体塊を、LiFSIが実質的に不溶性である少なくとも1種の第3の無水有機溶媒と接触させて、第3の溶媒と溶媒和する1種または複数の標的不純物によって、より多くの1種または複数の標的不純物をさらに除去することができる。別の利点は、特に減圧および室温よりわずかに高い温度で溶媒を吸引することによって、プロセス中に形成された任意のppmレベルのHFを除去することである。いくつかの実施形態では、固体塊と接触するために使用される少なくとも1種の第3の無水有機溶媒の量は、固体塊の質量の少なくとも50重量%であってもよい。少なくとも1種の第3の無水有機溶媒の各々が選択され得る無水有機溶媒の例としては、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカンが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0034】
固体塊を少なくとも1種の第3の無水有機溶媒と接触させた後、LiFSIを少なくとも1種の第3の無水有機溶媒から単離して、低減された量の1種または複数の標的不純物の各々を含有する精製LiFSI生成物を得る。少なくとも1種の第3の無水有機溶媒からのLiFSIの単離は、固体形態のLiFSIの濾過および/または真空中などでの固体LiFSIの乾燥などの任意の1つまたは複数の適切な技術を使用して行うことができる。いくつかの実施形態では、真空中の圧力は、約0.1Torr未満または約0.01Torr未満である。得られた精製LiFSI生成物は、典型的には、白色の自由流動性粉末である。
【0035】
乾燥した精製LiFSI生成物は、保管中のLiFSIの分解を抑制するために、乾燥ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)容器または遊離フッ化物に対して不活性なニッケル合金などの乾燥不活性容器に、約25℃以下などの低温で、アルゴンなどの不活性ガス内で保管することができる。
【0036】
以下の表は、本開示のLiFSI精製方法のための第1、第2および第3の無水有機溶媒の各々の選択例を示す。表に見られるように、選択された第1の無水有機溶媒はジメチルカルボナートであり、選択された第2および第3の無水有機溶媒はジクロロメタンである。
【表1】
【0037】
上記の表に基づくと、ジメチルカルボナート中のLiFSIの溶解度は90%超であり、ジクロロメタンには不溶性である。一方、この例におけるLiF、LiClおよびLi2SO4などの標的不純物の溶解度は、無水条件下でジメチルカルボナート中13ppm未満である。したがって、粗LiFSIを精製するこの例では、無水ジメチルカルボナートおよび無水ジクロロメタン溶媒を選択し、本開示による精製LiFSI生成物を得た。上記の方法の態様によれば、上記の表に報告された不純物を含有する粗LiFSIをジメチルカルボナート中で約40%~約75%の濃度で約25℃で混合し、室温で撹拌し、続いて約2%~約10%のジクロロメタンを添加して標的不純物を沈殿させることができる。次いで、標的不純物を例えば濾過によって除去し、濾液を濃縮乾固することができる。次いで、得られた固体を無水ジクロロメタンで処理して、ジクロロメタンに可溶性の任意の標的HF不純物を除去することができる。しかし、LiFSIはジクロロメタンに不溶である。
【0038】
精製LiFSIを濾過によって回収し、最後に減圧下(一例では、約0.1Torr未満)および約40℃未満で乾燥させて、白色の自由流動性粉末を得ることができる。この例では、白色粉末をPTFE容器内のアルゴン雰囲気下で保存した。
【0039】
上記の方法のいずれか1つを使用して精製される粗LiFSI中の標的不純物(1種または複数)の濃度および所望の精製LiFSI生成物中の標的不純物のうちの1種または複数の所望の最大濃度に応じて、各パスで1種または複数の標的不純物の量を順次減少させるためにマルチパス法を実施する必要があり得る。そのようなマルチパス方法は、最初に粗LiFSI中にあり、その後、得られた精製LiFSI生成物中に依然として残留している可能性のある、1種または複数の標的不純物の各々のレベルを連続的に低下させるために、前述の方法のいずれかのうちの1つまたは複数を連続的に利用することができる。本開示の例示的なマルチパス精製方法100を
図1に示す。
【0040】
図1を参照すると、ブロック105において、特定のレベル(1または複数)で存在する1種または複数の標的不純物を含有する粗LiFSIが提供される。ブロック110において、粗LiFSIを上記の方法のいずれか1つを用いて精製する。ブロック110における精製の最終成果は、各標的不純物のレベルが低減された精製LiFSI生成物である。任意選択のブロック115において、精製LiFSI生成物中の標的不純物のうちの1種または複数の各々のレベルを、適切な測定手順を用いて測定する。任意選択のブロック120において、測定されたレベルの各々は、精製LiFSI生成物中に存在することが許容される対応する標的不純物の最大所望レベルと比較される。任意選択のブロック125において、測定されたレベルのうちの1または複数が、対応する所望の最大レベルを超えるかどうかが判定される。超えていない場合、すなわち、各測定されたレベルが対応する所望の最大レベルを下回る場合、精製LiFSI生成物は、所望の不純物レベルの仕様を満たし、さらなる精製を必要としない。したがって、マルチパス精製方法100はブロック130で終了することができる。
【0041】
しかし、ブロック125において、測定されたレベルのいずれかのうちの1または複数が対応する所望の最大レベル(1または複数)を超える場合、ブロック110における前のパススルー精製で精製された精製LiFSI生成物は、ブロック110においてループ135を介して精製することができる。ブロック110におけるこのパススルー精製では、溶液の生成および/または結晶化LiFSIの洗浄に使用される無水有機溶媒(1種または複数)は、ブロック110における前のパススルー精製で使用されたものと同じであっても異なっていてもよい。ブロック110における精製の最後に、任意選択のブロック115および120において、標的不純物レベル(1または複数)の1回または複数の測定、および測定されたレベル(1または複数)と1または複数の対応する所望の最大レベルとの1つまたは複数の比較を行って、方法100がブロック130で終了することができるかどうか、または最新のパスの精製LiFSI生成物中のLiFSIがループ135を介して再び精製に供されるべきかどうかを決定することができる。
【0042】
マルチパス精製方法が有用であり得る非限定的であるが例示的な例は、リチウム系電池用のLiFSIなどのリチウム系電解質である。粗LiFSIは、典型的には、塩化物不純物、例えば、LiFSIを生成するために使用される粗HFSI中のHCl合成不純物からのLiClを150ppm以上程度有する。しかし、そのような塩化物レベルは、リチウム金属電池に対して腐食性である。その結果、リチウム金属電池用のLiFSI系電解質中の塩化物レベルを低く、例えば約10ppm未満または1ppm未満に保つことが望ましい。電解質に使用されるLiFSI塩を合成するために使用される粗LiFSIについて、
図1に示すマルチパス精製方法100などの本開示のマルチパス精製方法を使用することは、そのような低い塩化物レベルを達成する有用な方法であり得る。
【0043】
非限定的であるが例示的な例として、マルチパス精製方法100を使用して、合成不純物として200ppmのLiClを含有する粗LiFSIから出発して、LiFSI生成物中の(標的不純物LiClの形態の)塩素含有量を1ppm未満に低下させることができる。ブロック105において、所望の量の粗HFSIが提供される。ブロック110において、粗LiFSIを、上記または下記に例示される精製方法のいずれかを用いて精製する。
【0044】
任意選択のブロック115において、精製LiFSI生成物中のLiCl(または塩化物)のレベルは、100ppmであると測定される。任意選択のブロック120において、100ppmの測定されたレベルを、1ppm未満の必要条件と比較する。任意選択のブロック125では、100ppmが1ppm未満の必要条件よりも大きいので、精製LiFSI生成物は、ブロック110において、ループ135を介して、最初の粗LiFSIを精製するために使用されたものと同じまたは異なる精製プロセスを使用して処理される。この第2のパスでは、出発標的不純物レベルは100ppmであり、2回精製LiFSI生成物中の最終不純物レベルは、任意選択のブロック115で測定して、ここでは20ppmである。この20ppmレベルを任意選択のブロック120において1ppm未満の必要条件と比較した後、任意選択のブロック125において、2回精製LiFSI生成物は、ブロック110において、ループ135を介して、前の2回パスのいずれかで使用された同じまたは異なる精製方法で再度精製される必要があると決定される。
【0045】
この第3のパスでは、出発標的不純物レベルは20ppmであり、3回精製LiFSI生成物の最終不純物レベルは、任意選択のブロック115で測定して、ここでは1ppm未満である。この1ppm未満のレベルを任意選択のブロック120で1ppm未満の必要条件と比較した後、任意選択のブロック125において、3回精製LiFSI生成物は、マルチパス精製方法100がブロック130で終了することができるような必要条件を満たすと判定される。
【0046】
例
【0047】
上記の方法は、以下の例によってさらに説明されるが、これらの例は単に例示の目的で含まれており、本開示の範囲を限定することを意図しないことが理解されよう。特に明記しない限り、これらの例で使用したすべての化学物質は高純度であり、信頼できる商業的供給源から得た。プロセスから水分を排除するために厳しい予防措置を講じ、十分に換気されたフードを使用して反応を行った。
【0048】
例1
【0049】
ジメチルカルボナート(DMC)およびジクロロメタンを使用するLiFSIの精製:500mL乾燥フラスコ中で、様々なレベルの不純物、ここでは、FSO3
-=400ppm、Cl-=50ppm、F-=200ppm、SO4
2-=200ppm、および水=200ppmを含有する粗LiFSI(250g)を窒素雰囲気下で採取し、水浴を用いて10℃に冷却した。無水DMC(250g(50重量%))を撹拌しながらフラスコに少しずつ添加し、続いて無水ジクロロメタン20g(4重量%)を添加した。混合物を室温で1時間撹拌した。不溶性不純物を濾過によって混合物から除去した。濾液を減圧下で濃縮して固体を得て、次いで、これをアルゴン下で無水ジクロロメタン(200g)で処理した。混合物を室温で1時間撹拌し、所望の不溶性LiFSI生成物を濾過によって単離し、最後に真空中(0.1Torr未満)で35℃で乾燥させて、精製LiFSI生成物を収率95%で得た。この例では、精製LiFSI生成物は以下の不純物、FSO3
-=100ppm、Cl-=10ppm、F-=50ppm、SO4
2-=60ppm、および水=50ppmを有していた。
【0050】
例2
【0051】
エチルメチルカルボナート(EMC)およびジクロロメタンを使用するLiFSIの精製:500mL乾燥フラスコ中で、様々なレベルの不純物、ここでは、FSO3
-=200ppm、Cl-=10ppm、F-=100ppm、SO4
2-=100ppm、および水=100ppmを含む粗LiFSI(250g)を窒素雰囲気下で採取し、水浴を用いて10℃に冷却した。無水EMC(200g(約44重量%))を撹拌しながらフラスコに少しずつ添加し、続いて無水ジクロロメタン25g(約5.6重量%)を添加した。混合物を室温で1時間撹拌した。不溶性不純物を濾過によって除去した。濾液を減圧下で濃縮して固体を得て、次いで、これをアルゴン下で無水ジクロロメタン(250g)で処理した。混合物を室温で1時間撹拌し、所望の不溶性LiFSI生成物を濾過によって単離し、最後に真空中(0.1Torr未満)で35℃で乾燥させて、精製LiFSI生成物を収率92%で得た。この例では、精製LiFSIは以下の不純物、FSO3
-=40ppm、Cl-=1ppm、F-=10ppm、SO4
2-=20ppm、および水=30ppmを有していた。
【0052】
例3
【0053】
ジエチルカルボナート(DEC)およびジクロロメタンを使用したLiFSIの精製:500mL乾燥フラスコ中で、様々なレベルの不純物、ここでは、FSO3
-=400ppm、Cl-=50ppm、F-=200ppm、SO4
2-=200ppm、および水=200ppmを含有する粗LiFSI(250g)を窒素雰囲気下で採取し、水浴を用いて10℃に冷却した。無水DEC(250g(50重量%))を撹拌しながらフラスコに少しずつ添加し、続いて無水ジクロロメタン20g(4重量%)を添加した。混合物を室温で1時間撹拌した。不溶性不純物を濾過によって混合物から除去した。濾液を減圧下で濃縮して固体を得て、次いで、これをアルゴン下で無水ジクロロメタン(200g)で処理した。混合物を室温で1時間撹拌し、所望の不溶性LiFSI生成物を濾過によって単離し、最後に真空中(0.1Torr未満)で35℃で乾燥させて、精製LiFSI生成物を収率90%で得た。この例では、精製LiFSI生成物は以下の不純物、FSO3
-=80ppm、Cl-=5ppm、F-=30ppm、SO4
2-=50ppm、および水=45ppmを有する。
【0054】
例4
【0055】
ジプロピルカルボナート(DPC)およびジクロロメタンを使用するLiFSIの精製:500mL乾燥フラスコ中で、様々なレベルの不純物、ここでは、FSO3
-=200ppm、Cl-=10ppm、F-=100ppm、SO4
2-=100ppm、および水=100ppmを含有する粗LiFSI(250g)を窒素雰囲気下で採取し、水浴を用いて10℃に冷却した。無水ジプロピルカルボナート(200g(約44重量%))を撹拌しながらフラスコに少しずつ添加し、続いて無水ジクロロメタン20g(約4.4重量%)を添加した。混合物を室温で1時間撹拌した。不溶性不純物を濾過によって混合物から除去した。濾液を減圧下で濃縮して固体を得て、これをアルゴン下で無水ジクロロメタン(250g)で処理した。混合物を室温で1時間撹拌し、所望の不溶性LiFSI生成物を濾過によって単離し、最後に真空中(0.1Torr未満)で35℃で乾燥させて、精製LiFSI生成物を収率90%で得た。この例では、精製LiFSI生成物は以下の不純物、FSO3
-=30ppm、Cl-=1ppm、F-=11ppm、SO4
2-=15ppm、および水=30ppmを有していた。
【0056】
例5
【0057】
メチルプロピルカルボナート(MPC)およびジクロロメタンを使用するLiFSIの精製:500mL乾燥フラスコ中で、様々なレベルの不純物、ここでは、FSO3
-=200ppm、Cl-=10ppm、F-=100ppm、SO4
2-=100ppm、および水=100ppmを含有する粗LiFSI(250g)を窒素雰囲気下で採取し、水浴を用いて10℃に冷却した。無水メチルプロピルカルボナート(MPC)(200g(約44.4重量%))を撹拌しながらフラスコに少しずつ添加し、続いて無水ジクロロメタン20g(約4.4重量%)を添加した。混合物を室温で1時間撹拌した。不溶性不純物を濾過によって除去した。濾液を減圧下で濃縮して固体を得て、これをアルゴン下で無水ジクロロメタン(250g)で処理した。混合物を室温で1時間撹拌し、所望の不溶性LiFSI生成物を濾過によって単離し、最後に真空中(0.1Torr未満)で35℃で乾燥させて、精製LiFSI生成物を収率91%で得た。この例では、精製LiFSI生成物は以下の不純物、FSO3
-=32ppm、Cl-=2ppm、F-=12ppm、SO4
2-=22ppm、および水=35ppmを有していた。
【0058】
例6
【0059】
酢酸エチルおよびクロロホルムを使用するLiFSIの精製:500mL乾燥フラスコ中で、様々なレベルの不純物、ここでは、FSO3
-=200ppm、Cl-=10ppm、F-=100ppm、SO4
2-=100ppm、および水=100ppmを含有する粗LiFSI(250g)を窒素雰囲気下で採取し、水浴を用いて10℃に冷却した。無水酢酸エチル(150g(37.5重量%))を撹拌しながらフラスコに少しずつ添加し、続いて無水クロロホルム20g(5重量%)を添加する。混合物を室温で1時間撹拌した。不溶性不純物を濾過によって除去した。濾液を減圧下で濃縮して固体を得て、これをアルゴン下で無水クロロホルム(250g)で処理した。混合物を室温で1時間撹拌し、所望の不溶性LiFSI生成物を濾過によって単離し、最後に真空中(0.1Torr未満)で35℃で乾燥させて、精製LiFSI生成物を収率88%で得た。この例では、精製LiFSIは以下の不純物、FSO3
-=40ppm、Cl-=2ppm、F-=15ppm、SO4
2-=20ppm、および水=40ppmを有していた。
【0060】
例7
【0061】
酢酸ブチルおよびジクロロメタンを使用したLiFSIの精製:500mL乾燥フラスコ中で、様々なレベルの不純物、ここでは、FSO3
-=200ppm、Cl-=10ppm、F-=100ppm、SO4
2-=100ppm、および水=100ppmを含有する粗LiFSI(200g)を窒素雰囲気下で採取し、水浴を用いて10℃に冷却した。無水酢酸ブチル(150g(約43重量%))を撹拌しながらフラスコに少しずつ添加し、続いて無水ジクロロメタン30g(約8.6重量%)を添加した。混合物を室温で1時間撹拌した。不溶性不純物を濾過によって除去した。濾液を減圧下で濃縮して固体を得て、これをアルゴン下で無水ジクロロメタン(250g)で処理した。混合物を室温で1時間撹拌し、所望の不溶性LiFSI生成物を濾過によって単離し、最後に真空中(0.1Torr未満)で35℃で乾燥させて、精製LiFSI生成物を収率89%で得た。この例では、精製されたLiFSI生成物は以下の不純物、FSO3
-=38ppm、Cl-=1ppm、F-=15ppm、SO4
2-=22ppm、および水=40ppmを有していた。
【0062】
例8
【0063】
アセトニトリルおよびジクロロメタンを使用したLiFSIの精製:500mL乾燥フラスコ中で、様々なレベルの不純物、ここでは、FSO3
-=200ppm、Cl-=10ppm、F-=100ppm、SO4
2-=100ppm、および水=100ppmを含有する粗LiFSI(200g)を窒素雰囲気下で採取し、水浴で10℃に冷却した。無水酢酸ブチル(150g(約43重量%))を撹拌しながら少しずつ添加し、続いて無水ジクロロメタン30g(約8.6重量%)を添加した。混合物を室温で1時間撹拌した。不溶性不純物を濾過によって除去した。濾液を減圧下で濃縮して固体を得て、これをアルゴン下で無水ジクロロメタン(250g)で処理した。混合物を室温で1時間撹拌し、所望の不溶性LiFSI生成物を濾過によって単離し、最後に真空中(0.1Torr未満)で35℃で乾燥させて、精製LiFSI生成物を収率90%で得た。この例では、精製LiFSIは以下の不純物、FSO3
-=50ppm、Cl-=5ppm、F-=20ppm、SO4
2-=22ppm、および水=38ppmを有していた。
【0064】
例示的な精製LiFSI生成物
【0065】
上記に開示されたシングルパス精製方法または
図1のマルチパス方法100のいずれかなどの前述の精製方法のいずれかを使用して、得られた精製LiFSI生成物は、精製方法によって除去された例外的に低レベルの標的不純物を有することができる。例えば、標的不純物の少なくとも1種がLiClである本開示の精製LiFSI生成物は、10ppm以下または1ppm未満のLiCl(Cl
-)レベルを有することができる。別の例として、標的不純物の少なくとも1種がLiF(F
-)、FSO
3Li(FSO
3
-)、およびLiCl(Cl
-)を含む本開示の精製LiFSI生成物は、約80ppm以下のF
-、約100ppm以下のFSO
3
-、および約100ppm未満のCl
-、約40ppm以下のF
-、約250ppm以下のFSO
3
-、および約20ppm以下のCl
-、または約200ppm以下のF
-、約100ppm以下のFSO
3
-、および約30ppm以下のCl
-を有することができる。別の例では、約200ppm以上のF
-、約200ppm以上のFSO
3
-、および/または約200ppm以上のCl
-を有する粗LiFSIから出発して、前述のレベルの不純物およびそれらの組み合わせの各々を達成することができる。さらに別の例では、標的不純物の少なくとも1種がSO
4
2-である本開示の精製LiFSI生成物は、約280ppm以下、または約100ppm以下のSO
4
2-レベルを有することができる。さらなる例では、前述のSO
4
2-レベルの各々は、約500ppm以上のSO
4
2-を有する粗LiFSIから開始して達成することができる。本開示の精製方法の有用な特徴は、本方法の各(または唯一の)パススルーにおいて互いに異なる種類の標的不純物を同時に除去する能力である。
【0066】
精製LiFSI生成物の例示的な使用
【0067】
上述のように、精製LiFSI生成物を使用して、とりわけ、電気化学デバイス用の精製LiFSI系電解質を生成することができる。ここで、精製電解質の純度は、精製LiFSI生成物が本明細書に開示される方法のいずれかのうちの1つまたは複数により精製されたという事実からもたらされる。そのような精製電解質は、本開示の精製LiFSI生成物(塩)を1種または複数の溶媒、1種または複数の希釈剤、および/または1種または複数の添加剤と混合することなど、様々な方法のいずれかを使用して生成することができ、溶媒、希釈剤、および添加剤は当技術分野で公知であってもよい。
【0068】
図2は、本開示の態様により作製された電気化学デバイス200を示す。当業者は、電気化学デバイス200が、例えば、電池またはスーパーキャパシタであってもよいことを容易に理解するであろう。さらに、当業者は、
図2は電気化学デバイス200のいくつかの基本的な機能的構成要素のみを示すものであり、二次電池またはスーパーキャパシタなどの電気化学デバイスの実際の具体化が、典型的には、巻回構造または積層構造のいずれかを使用して具体化されることを容易に理解するであろう。さらに、当業者は、電気化学デバイス200が、例示を容易にするために
図2には示されていない、とりわけ、電気端子、シール(1種または複数)、熱遮断層(1種または複数)、および/または通気口(1種または複数)などの他の構成要素を含むことを理解するであろう。
【0069】
この例では、電気化学デバイス200は、間隔を置いて配置された正極および負極204、208、ならびにそれぞれ対応する一対の集電体204A、208Aを含む。多孔質誘電体セパレータ212は、正極および負極204、208の間に配置され、正極および負極を電気的に分離するが、本開示により生成された精製LiFSI系電解質216のイオンがそこを流れることを可能にする。多孔質誘電体セパレータ212および/または正極および負極204、208の一方、他方、または両方は、多孔質であるか否かに応じて、精製LiFSI系電解質216が含浸されている。
図2では、正極および負極204、208の両方は、精製LiFSI系電解質216が内部に延在するように示されていることにより、多孔質であるように示されている。上述したように、精製LiFSI系電解質216に本開示の精製LiFSI系電解質を使用する利点は、合成不純物などのLiFSI系電解質中に存在し得る不純物を、電気化学デバイス200での使用に許容可能なレベル(例えば、1種または複数の不純物レベル仕様を満たす)まで低減できることである。精製LiFSI生成物(塩)の例および精製LiFSI系電解質216を生成するために使用することができる低レベルのそれらの様々な不純物の例は、上述されている。電気化学デバイス200は、集電体204A、208A、正極および負極204、208、多孔質誘電体セパレータ212、ならびに精製LiFSI系電解質216を収容する容器220を含む。
【0070】
当業者には理解されるように、電気化学デバイスの種類および設計に応じて、正極および負極204、208の各々は、精製LiFSI系電解質216中のアルカリ金属イオンおよび他の成分と適合する適切な材料を含む。集電体204A、208Aの各々は、銅またはアルミニウムあるいはそれらの任意の組み合わせなどの任意の適切な導電性材料で作成することができる。多孔質誘電体セパレータ212は、とりわけ、多孔質ポリマーなどの任意の適切な多孔質誘電材料で作成することができる。
図2の電気化学デバイス200を構築するために使用することができる様々な電池およびスーパーキャパシタ構造が当技術分野で知られている。そのような既知の構造のいずれかが使用される場合、電気化学デバイス200の新規性は、LiFSI塩および対応する電解質を生成する従来の方法では達成されなかった高純度の精製LiFSI系電解質216にある。
【0071】
一例では、電気化学デバイス200は、以下のように作製され得る。精製LiFSI系電解質216は、粗LiFSIから出発して生成することができ、次いで、これを本明細書に記載の精製方法のいずれか1つまたは複数を使用して精製して、適切な低レベルの1つまたは複数の標的不純物を有する精製LiFSI生成物を生成する。別の例では、粗HFSIを最初に、例えば上記の合成方法のいずれかによって合成することができ、この粗HFSIを使用して粗LiFSIを合成することができる。この粗LiFSIを、本明細書に記載の精製方法のいずれかのうちの1つまたは複数を使用して精製して、精製LiFSI生成物(塩)を生成することができる。次いで、この精製LiFSI生成物を使用して、例えば、電気化学デバイス200の性能を向上させる1種または複数の溶媒、1種または複数の希釈剤、および/または1種または複数の添加剤を添加することによって、精製LiFSI系電解質216を生成することができる。次いで、精製LiFSI系電解質216を電気化学デバイス200に添加することができ、その後、容器220を密封することができる。
【0072】
いくつかの態様では、本開示は、LiFSIおよび1種または標的不純物を含有する粗リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)から1種または複数の標的不純物を除去して、精製LiFSI生成物を生成する方法に関する。本方法は、不活性条件下で粗LiFSIを少なくとも1種の第1の無水有機溶媒と接触させて、LiFSIおよび1種または複数の標的不純物を含有する溶液を生成することであって、室温で少なくとも1種の第1の無水有機溶媒に対して、LiFSIが可溶性であり、1種または複数の標的不純物の各々が実質的に不溶性であること、少なくとも1種の第2の無水有機溶媒を溶液に添加して、少なくとも1種の標的不純物を沈殿させることであって、LiFSIおよび1種または複数の標的不純物の各々が少なくとも1種の第2の無水有機溶媒に実質的に不溶性であること、1種または複数の標的不純物の各々の不溶性部分を溶液から濾過して、濾液を生成すること、濾液から溶媒を除去して、固体塊を得ること、固体塊を、LiFSIが実質的に不溶性である少なくとも1種の第3の無水有機溶媒と接触させること、および少なくとも1種の第3の無水有機溶媒からLiFSIを単離して、精製LiFSIを得ることを含む。
【0073】
1つまたは複数の実施形態では、粗LiFSIから1種または複数の標的不純物を除去する方法は、A)精製LiFSI生成物中の1種または複数の不純物の少なくとも1種の濃度を測定すること、B)1種または複数の不純物の少なくとも1種の濃度が所望の濃度限界を満たすかどうかを決定すること、C)濃度が所望の濃度限界を満たさない場合、精製LiFSI生成物を使用して上記の方法を実施することをさらに含むことができる。
【0074】
1つまたは複数の実施形態では、上記の方法は、濃度が所望の濃度限界を満たすまでA、BおよびCを繰り返すことをさらに含むことができる。
【0075】
上記の方法の1つまたは複数の実施形態では、Aは、LiClの濃度を測定することを含み、Bは、濃度が約100パーツ・パー・ミリオン(ppm)未満であるかどうかを判定することを含む。
【0076】
上記の方法の1つまたは複数の実施形態では、Bは、濃度が1ppm未満であるかどうかを判定することを含む。
【0077】
いくつかの態様では、本開示は、電気化学デバイスを作製する方法に関し、本明細書に開示される粗LiFSIから1種または複数の標的不純物を除去して精製LiFSI塩を生成する方法のいずれか1つを使用してリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)塩を精製すること、精製LiFSI塩を使用して電解質を配合すること、正極、正極から離間した負極、および正極と負極との間に延在するボリュームを含む電気化学デバイス構造を提供し、電解質が存在する場合は、電解質中のイオンが正極と負極との間を移動することを可能にすること、およびボリュームに電解質を添加することを含む。
【0078】
上記の方法の1つまたは複数の実施形態では、電気化学デバイスは、電気化学電池であり、電気化学デバイス構造は、ボリューム内に配置されたセパレータをさらに含む。
【0079】
上記の方法の1つまたは複数の実施形態では、電気化学電池は、リチウムイオン電池である。
【0080】
上記の方法の1つまたは複数の実施形態では、電気化学電池は、リチウム金属電池である。
【0081】
上記の方法の1つまたは複数の実施形態では、電気化学電池は、スーパーキャパシタである。
【0082】
いくつかの態様では、本開示は、精製プロセスによって作製された精製リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)生成物に関し、精製LiFSI生成物は、LiFSI、合成プロセスの副生成物である1種または複数の不純物を含み、1種または複数の不純物は、精製LiFSI生成物に対して約100パーツ・パー・ミリオン(ppm)未満の量で存在するLiCl、精製LiFSI生成物に対して約500ppm未満の量で存在するLiSO3H、および精製LiFSI生成物に対して約150ppm未満の量で存在するLiFを含む。
【0083】
LiFSI生成物の1つまたは複数の実施形態では、LiClは、精製HFSI生成物に対して約10ppm未満の量で存在する。
【0084】
LiFSI生成物の1つまたは複数の実施形態では、LiClは、精製LiFSI生成物に対して1ppm未満の量で存在する。
【0085】
いくつかの態様では、本開示は、正極、正極から離間した負極、正極と負極との間に位置する多孔質誘電体セパレータ、および少なくとも多孔質誘電体セパレータ内に含まれる電解質を含み、電解質が本明細書に先に開示された精製LiFSI生成物を使用して生成される、電気化学デバイスに関する。
【0086】
1つまたは複数の実施形態では、電気化学デバイスは、リチウム電池である。
【0087】
1つまたは複数の実施形態では、電気化学デバイスは、リチウム金属二次電池である。
【0088】
1つまたは複数の実施形態では、電気化学デバイスは、スーパーキャパシタである。
【0089】
上記は、本発明の例示的な実施形態の詳細な説明である。本明細書および本明細書に添付された特許請求の範囲において、特に明記または他に示されない限り、語句「X、YおよびZの少なくとも1つ」および「X、Y、およびZのうちの1つまたは複数」で使用されるような連言語は、連言リスト内の各項目が、リスト内の他のすべての項目を除く任意の数で、あるいは連言リスト内の任意のまたはすべての他の項目と組み合わせて任意の数で存在することができ、その各々が任意の数で存在してもよいことを意味すると解釈されることに留意されたい。この一般規則を適用して、連言リストがX、Y、およびZからなる前述の例における連言句は、Xのうちの1つまたは複数、Yのうちの1つまたは複数、Zのうちの1つまたは複数、Xのうちの1つまたは複数およびYのうちの1つまたは複数、Yのうちの1つまたは複数およびZのうちの1つまたは複数、Xのうちの1つまたは複数およびZのうちの1つまたは複数、ならびにXのうちの1つまたは複数、Yのうちの1つまたは複数およびZのうちの1つまたは複数を各々包含するものとする。
【0090】
本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な修正および追加を行うことができる。上述した様々な実施形態の各々の特徴は、関連する新規の実施形態において多数の特徴の組み合わせを提供するために、必要に応じて他の記載された実施形態の特徴と組み合わせることができる。さらに、上記はいくつかの別個の実施形態を説明しているが、本明細書に記載されているものは、本発明の原理の適用の単なる例示である。さらに、本明細書の特定の方法は、特定の順序で実行されるものとして図示および/または説明することができるが、順序は、本開示の態様を達成するために当業者内で高度に多様である。したがって、この説明は、例としてのみ解釈されることを意図しており、本発明の範囲を限定するものではない。
【0091】
例示的な実施形態が上に開示され、添付の図面に示されている。当業者であれば、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に具体的に開示されているものに対して様々な変更、省略、および追加を行うことができることを理解するであろう。
【0092】
引用文献
【0093】
以下の参考文献の各々は、対応する引用の本明細書の場所から決定されるように教示される関連する主題について、参照により組み込まれる。
【0094】
[1]Rolf Appel、Gerhard Eisenhauer、Chemische Berichte、1962、246~248。
【0095】
[2]Inorganic Syntheses、1967、11、138~143。
【0096】
[3]Ref.B.Krumm、A.Vij、R.L.Kirchmeier、J.M.Shreeve、Inorganic Chemistry、1998、37、6295~6303。
【0097】
[4]Christophe Michot名義で2011年4月5日に交付され、「SULPHONYL-1,2,4-TRIAZOLE SALTS」と題された米国特許第7,919,629号。
【0098】
[5]Joseph C.Poshuta、Jerry L.Martin、およびRajendra P.Singh名義で2014年5月13日に交付され、「SYNTHESIS OF HYDROGEN BIS(FLUORO-SULFONYL)IMIDE」と題された米国特許第8,722,005号。
【0099】
[6]Rajendra P.Singh、Joseph C.Poshusta、およびJerry L.Martin名義で2013年2月19日に交付され、「SYNTHESIS OF BIS(FLUORO-SULFONYL)IMIDE」と題された米国特許第8,377,406号。
【0100】
[7]Martin Beran、Jiri Prihoda、Zdirad Zak、Milos Cernik、Polyhedron、2006、25、1292-1298。
【0101】
[8]Z.Anorg.Allg.Chem.2005、631、55~59。
する電気化学デバイスも開示される。