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特許7475359燃料噴射弁及び燃料噴射弁を備える内燃機関
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】燃料噴射弁及び燃料噴射弁を備える内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F02M 61/18 20060101AFI20240419BHJP
【FI】
F02M61/18 320C
F02M61/18 330Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021548416
(86)(22)【出願日】2020-08-06
(86)【国際出願番号】 JP2020030280
(87)【国際公開番号】W WO2021059773
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2019174626
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(73)【特許権者】
【識別番号】000003333
【氏名又は名称】ボッシュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(72)【発明者】
【氏名】後藤 悠一郎
(72)【発明者】
【氏名】ニューベルト ヴィンセンス
(72)【発明者】
【氏名】楊 菁
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-310628(JP,A)
【文献】特開2017-172492(JP,A)
【文献】特開2006-348841(JP,A)
【文献】特開2007-231852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 39/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の噴射孔(31a~31f)から内燃機関(10)に燃料を噴射する燃料噴射弁(30)において、
前記複数の噴射孔(31a~31f)は、
第1半径(R1)の第1円上と、前記第1半径(R1)よりも大きい第2半径(R2)の第2円上とに、それぞれ複数設けられており、
前記第1円上に開口の中心が設けられた第1噴射孔(31a)と、前記第1噴射孔(31a)の開口の中心を通る前記第1円の接線(F-F)に対して前記燃料噴射弁(30)の中心軸(CF1)と反対側における前記第2円上に開口の中心が設けられた第2噴射孔(31c)と、を含み、
前記第1円と前記第2円は、同心円であり、かつ前記第1円の中心と前記第2円の中心は、前記燃料噴射弁(30)の中心軸上にあり、
前記第1噴射孔(31a)の中心軸線(CF2)及び前記第2噴射孔(31c)の中心軸線(CF3)は、それぞれ前記第1噴射孔(31a)の開口の中心と前記第2噴射孔(31c)の開口の中心とを結ぶ最短線(B-B)を含み前記燃料噴射弁(30)の中心軸線(CF1)と平行な面上にはなく、
前記第1噴射孔(31a)の中心軸線(CF2)と前記燃料噴射弁(30)の中心軸線(CF1)とが成す第1角度(θ1)は、前記第2噴射孔(31c)の中心軸線(CF3)と前記燃料噴射弁(30)の中心軸線(CF1)とが成す第2角度(θ2)よりも大きく、
前記第1噴射孔(31a)の開口の中心と前記第2噴射孔(31c)の開口の中心とを結ぶ最短線(B-B)を含み前記燃料噴射弁(30)の中心軸線(CF1)と平行な面上で断面視した場合に、前記第1噴射孔(31a)の噴射上流側のエッジのうち前記第2噴射孔(31c)の噴射上流側のエッジと対向しない側のエッジ(32a)と、前記第2噴射孔(31c)の噴射上流側のエッジのうち前記第1噴射孔(31a)の噴射上流側のエッジと対向しない側のエッジ(32d)とは、共に鈍角をなし、
前記第1噴射孔(31a)及び前記第2噴射孔(31c)のうち、一方から前記燃料が噴射される時、他方からも前記燃料が噴射される、
燃料噴射弁。
【請求項2】
複数の噴射孔(31a~31f)から内燃機関(10)に燃料を噴射する燃料噴射弁(30)において、
前記複数の噴射孔(31a~31f)は、
第1半径(R1)の第1円上と、該第1半径(R1)よりも大きい第2半径(R2)の第2円上とに、それぞれ複数設けられており、
前記第1円上に開口の中心が設けられた第1噴射孔(31a)と、前記第1噴射孔(31a)の開口の中心を通る前記第1円の接線(F-F)に対して前記燃料噴射弁(30)の中心軸(CF1)と反対側における前記第2円上に開口の中心が設けられた第2噴射孔(31c)と、を含み、
前記第1噴射孔(31a)の中心軸線(CF2)及び前記第2噴射孔(31c)の中心軸線(CF3)は、それぞれ前記第1噴射孔(31a)の開口の中心と前記第2噴射孔(31c)の開口の中心とを結ぶ最短線(B-B)を含み前記燃料噴射弁(30)の中心軸線(CF1)と平行な面上にはなく、
前記第1噴射孔(31a)の開口の中心と前記第2噴射孔(31c)の開口の中心とを結ぶ最短線(B-B)を含み前記燃料噴射弁(30)の中心軸線(CF1)と平行な面上で断面視した場合に、前記第1噴射孔(31a)の噴射上流側のエッジのうち前記第2噴射孔(31c)の噴射上流側のエッジと対向しない側のエッジ(32a)と、前記第2噴射孔(31c)の噴射上流側のエッジのうち前記第1噴射孔(31a)の噴射上流側のエッジと対向しない側のエッジ(32d)とは、共に鈍角をなし、
前記第1噴射孔(31a)及び前記第2噴射孔(31c)のうち、一方から前記燃料が噴射される時、他方からも前記燃料が噴射される、
燃料噴射弁。
【請求項3】
前記第1円と前記第2円は、同心円である
請求項2に記載の燃料噴射弁
【請求項4】
前記第1円の中心と前記第2円の中心は、前記燃料噴射弁(30)の中心軸(CF1)上にある
請求項2または3に記載の燃料噴射弁。
【請求項5】
前記第1噴射孔(31a)及び前記第2噴射孔(31c)の長さ(l)に対する当該噴射孔(31a、31c)の直径(d)の比率(α)が、3以下である
請求項1~4のいずれか一項に記載の燃料噴射弁(30)。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の燃料噴射弁(30)を備える内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に燃料を噴射する燃料噴射弁、及び該燃料噴射弁を備える内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料噴射弁として、燃料を噴射するための複数の噴射孔が該燃料噴射弁の先端部に設けられており、該燃料噴射弁の内部に設けられた弁体と弁座面が互いに当接することで噴射孔から内燃機関の燃焼室への燃料の噴射を遮断し、弁体と弁座面が離れることによって噴射孔から燃焼室へ燃料を噴射する構成のものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-1660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1等に記載の燃料噴射弁では、燃料が噴射孔から噴射される際に噴射孔の側壁(内壁面)で燃料流れの剥離が生じることにより、噴射孔から噴射される燃料の一部が該噴射孔の周囲に飛散されて液滴となり該燃料噴射弁の先端の外周壁面に付着する虞がある。燃料噴射弁の先端に燃料が液滴となり付着すると、不完全燃焼が生じて未燃粒子状物質の発生要因となる。
【0005】
本発明は、上述の課題を背景としてなされたものであり、燃料の噴射中における噴射孔内での燃料流れの剥離を低減することができる燃料噴射弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る燃料噴射弁は、複数の噴射孔(31a~31f)から内燃機関(10)に燃料を噴射する燃料噴射弁(30)において、前記複数の噴射孔(31a~31f)は、第1半径(R1)の第1円上と、前記第1半径(R1)よりも大きい第2半径(R2)の第2円上とに、それぞれ複数設けられており、前記第1円上に開口の中心が設けられた第1噴射孔(31a)と、前記第1噴射孔(31a)の開口の中心を通る前記第1円の接線(F-F)に関して前記燃料噴射弁(30)の中心軸(CF1)と反対側における前記第2円上に開口の中心が設けられた第2噴射孔(31c)と、を含み、前記第1円と前記第2円は、同心円であり、かつ前記第1円の中心と前記第2円の中心は、前記燃料噴射弁(30)の中心軸上にあり、前記第1噴射孔(31a)の中心軸線(CF2)と前記燃料噴射弁(30)の中心軸線(CF1)とが成す第1角度(θ1)は、前記第2噴射孔(31c)の中心軸線(CF3)と前記燃料噴射弁(30)の中心軸線(CF1)とが成す第2角度(θ2)よりも大きい構成である。
【0007】
このような構成によれば、複数の噴射孔(31a~31f)のうち、第1円上に開口の中心が設けられた第1噴射孔(31a)と、該第1噴射孔(31a)の開口の中心を通る第1円の接線(F-F)に関して燃料噴射弁30の中心軸(CF1)と反対側における第2円上に開口の中心が設けられた第2噴射孔(31c)について、第1噴射孔(31a)の中心と第2噴射孔(31c)の中心とを結ぶ最短線上で断面視した場合に、第1噴射孔(31a)の中心軸線(CF2)と燃料噴射弁(30)の中心軸線(CF1)とが成す第1角度(θ1)を、第2噴射孔(31c)の中心軸線(CF3)と燃料噴射弁(30)の中心軸線(CF1)とが成す第2角度(θ2)よりも大きい構成とすることで、少なくとも、第1噴射孔(31a)の噴射上流側のエッジのうち第2噴射孔(31c)の噴射上流側のエッジと対向しない側のエッジ(32a)が鈍角をなす構成とすることができ、第1噴射孔(31a)について第2噴射孔(31c)と対向しない側のエッジ(32a)から当該第1噴射孔(31a)に流入する燃料の流束を当該第1噴射孔の内壁面から剥離しにくくすることができる。また、第1円の接線(F-F)に関して燃料噴射弁(30)の中心軸(CF1)と反対側における第2円上に第2噴射孔(31c)が設けられている構成とすることで、第1噴射孔(31a)及び第2噴射孔(31c)の間にある燃料を各噴射孔(31a、31c)に流入させて、第1噴射孔(31a)の噴射上流側のエッジ(32a)から当該第1噴射孔へ流入する燃料の流速を低減することができ、第1噴射孔(31a)について第2噴射孔(31c)と対向する側のエッジ(32b)から当該第1噴射孔(31a)に流入する燃料の流束を当該第1噴射孔の内壁面から剥離しにくくすることができる。これらにより、第1噴射孔(31a)による燃料の流れに対して第2噴射孔(31c)による燃料の流れを作用させて、第1噴射孔(31a)について第2噴射孔(31c)と対向しない側から流入する燃料の流れと当該第2噴射孔(31c)と対向する側から流入する燃料の流れとを良好にバランスさせて、第1噴射孔(31a)の噴射孔内での燃料流れの剥離を低減することができる。
【0008】
尚、本発明に係る燃料噴射弁において、第1角度(θ1)とは、第1噴射孔(31a)の中心軸線(CF2)と燃料噴射弁(30)の中心軸線(CF1)とが成す角のうち鋭角の側の各の角度である。また、第2角度(θ2)とは、第2噴射孔(31c)の中心軸線(CF3)と燃料噴射弁(30)の中心軸線(CF1)とが成す角のうち鋭角の側の各の角度である。
【0009】
本発明に係る燃料噴射弁は、複数の噴射孔(31a~31f)から内燃機関(10)に燃料を噴射する燃料噴射弁(30)において、前記複数の噴射孔(31a~31f)は、第1半径(R1)の第1円上と、該第1半径(R1)よりも大きい第2半径(R2)の第2円上とに、それぞれ複数設けられており、前記第1円上に開口の中心が設けられた第1噴射孔(31a)と、前記第1噴射孔(31a)の開口の中心を通る前記第1円の接線に関して前記燃料噴射(30)の中心軸と反対側における前記第2円上に開口の中心が設けられた第2噴射孔(31c)と、を含み、前記第1噴射孔(31a)の中心と前記第2噴射孔(31c)の中心とを結ぶ最短線上で断面視した場合に、少なくとも、前記第1噴射孔(31a)の噴射上流側のエッジのうち第2噴射孔(31c)の噴射上流側のエッジ(32d)と対向しない側のエッジ(32a)は、鈍角をなす構成である。
【0010】
このような構成によれば、複数の噴射孔(31a~31f)のうち、第1円上に開口の中心が設けられた第1噴射孔(31a)と、該第1噴射孔(31a)の開口の中心を通る第1円の接線(F-F)に関して燃料噴射(30)の中心軸(CF1)と反対側における第2円上に開口の中心が設けられた第2噴射孔(31c)について、第1噴射孔(31a)の中心と第2噴射孔(31c)の中心とを結ぶ最短線上で断面視した場合に、少なくとも、第1噴射孔(31a)の噴射上流側のエッジのうちと第2噴射孔(31c)の噴射上流側のエッジに対向しない側のエッジ(32a)が鈍角をなす構成であるので、第1噴射孔(31a)について互いに対向しない側のエッジ(32a)から当該第1噴射孔(31a)に流入する燃料の流束を当該第1噴射孔の内壁面から剥離しにくくすることができる。また、第1円の接線(F-F)に関して燃料噴射弁(30)の中心軸(CF1)と反対側における第2円上に第2噴射孔(31c)が設けられている構成とすることで、第1噴射孔(31a)及び第2噴射孔(31c)の間にある燃料を各噴射孔(31a、31c)に流入させて、当該第1噴射孔の噴射上流側のエッジ(32b)から第1噴射孔へ流入する燃料の流速を低減することができ、第1噴射孔(31a)について第2噴射孔(31c)と対向する側のエッジ(32b)から当該第1噴射孔(31a)に流入する燃料の流束を当該第1噴射孔の内壁面から剥離しにくくすることができる。これらにより、第1噴射孔(31a)による燃料の流れに対して第2噴射孔(31c)による燃料の流れを作用させて、第1噴射孔(31a)について第2噴射孔(32c)と対向しない側から流入する燃料の流れと当該第2噴射孔(32c)と対向する側から流入する燃料の流れとを良好にバランスさせて、第1噴射孔(31a)の噴射孔内での燃料流れの剥離を低減することができる。
【0011】
本発明に係る内燃機関(10)は、上述の燃料噴射弁(30)を備える構成である。このような構成によれば、内燃機関(10)は、上述の燃料噴射弁(30)を備えることにより、少なくとも燃料の噴射中における第1噴射孔(31a)内での燃料流れの剥離を低減することができ、不完全燃焼によってデポジットが発生する原因となる燃料噴射弁(30)の先端等への燃料の付着を低減することができる。
【0012】
尚、本発明は、本発明の請求項に記載された発明特定事項のみを有するものであって良いし、本発明の請求項に記載された発明特定事項とともに該発明特定事項以外の構成を有するものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る燃料噴射弁を備える内燃機関について説明するための図である。
図2】燃料噴射弁の側面図である。
図3】燃料噴射弁に設けられる噴射孔について説明するための図である。
図4図3における枠C内の拡大図である。
図5図3におけるB-B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る燃料噴射弁及び該燃料噴射弁を備える内燃機関の実施形態の例について図面を用いて説明する。尚、以下で説明する実施形態の構成、動作等は、一例であり、本発明は、そのような構成、動作等である場合に限定されない。また、以下では、同一の又は類似する説明を、適宜簡略化又は省略している。また、各図において、同一の又は類似する部材又は部分については、符号を付することを省略しているか、又は同一の符号を付している。また、細かい構造については、図示を適宜簡略化又は省略している。
【0015】
本実施形態に係る燃料噴射弁は、内燃機関(例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等)において燃料を噴射する燃料噴射弁として適用することができる。また、本発明に係る燃料噴射弁を備える内燃機関、例えば、ガソリンを燃料とする内燃機関は、車両用や発電装置用等の内燃機関として適用することができる。本実施形態では、内燃機関として車両用のガソリン内燃機関を例に説明するが、本発明が特にこれに限定されるものではない。
【0016】
<実施形態>
[内燃機関について]
本実施形態に係る内燃機関10の構成について、図1に基づいて説明する。図1に示すように、内燃機関10は、燃焼室21を形成する機関本体20、燃焼室21の内部に燃料を噴射する燃料噴射弁30、燃焼室21に火花放電する点火プラグ40、燃焼室21を吸気通路24に対して開閉する吸気弁50、燃焼室21を排気通路25に対して開閉する排気弁60、燃焼室21での燃料及び空気の混合気の燃焼に伴って直線運転するピストン70、及び該ピストン70の直線運転を回転運動に変換するコネクティングロッド80及びクランクシャフト(図示略)、燃料が貯留される燃料タンク(図示略)から燃料噴射弁30へ燃料を供給する燃料供給装置(図示略)等を備える。
【0017】
機関本体20は、シリンダヘッド22、シリンダブロック23を備え、当該シリンダヘッド22、シリンダブロック23により燃焼室21が形成される。シリンダヘッド22における該シリンダヘッド22と吸気通路24との結合部付近には、該シリンダヘッド22の外側から燃焼室21に連通する第1の取付け穴26が形成され、該第1の取付け穴26に燃料噴射弁30が挿入される。また、シリンダヘッド22における吸気弁50の取付け位置と排気弁60の取付け位置の間には、該シリンダヘッド22の外側から燃焼室21に連通する第2の取付け穴27が形成され、該第2の取付け穴27に点火プラグ40が挿入される。
【0018】
燃料噴射弁30は、燃料を噴射する複数の噴射孔31a~31fが設けられる弁座プレート36が燃焼室21に臨むように第1の取付け穴26に挿入され、燃焼室21に燃料を直接噴射する。また、燃料噴射弁30の先端部分の外周部には、シール部38が設けられており、燃料噴射弁30と第1の取付け穴26との間隙を塞いで、燃焼室21からの燃焼ガスをシールするように構成されている。
【0019】
燃料噴射弁30が第1の取付け穴26に挿入されることで、当該燃料噴射弁30の先端は、燃焼室21の内部に臨むように構成されている。これにより、燃料噴射弁30は、燃焼室21の内部に燃料噴霧を直接噴射することができるようになっている。
【0020】
尚、本実施形態では、第1の取付け穴26は、シリンダヘッド22における該シリンダヘッド22と吸気通路24との結合部付近に設けられる構成であるが、第1の取付け穴26は、シリンダヘッド22において吸気弁50の取付け位置と排気弁60の取付け位置との間に設けられる構成でも良い。このような構成でも、燃料噴射弁30が第1の取付け穴26に挿入されることで、当該燃料噴射弁30の先端は、燃焼室21の内部に臨む構成となり、燃料噴射弁30は、燃焼室21の内部に燃料噴霧を直接噴射することができる。
【0021】
また、尚、燃料噴射弁30は、その先端が燃焼室21に臨むように配置される構成であるが、燃料噴射弁30は、その先端が吸気通路24に臨むように配置される構成でも良い。
【0022】
[燃料噴射弁について]
本実施形態に係る燃料噴射弁30について、図1図5に基づいて説明する。図1に示すように、燃料噴射弁30は、該燃料噴射弁30の中心軸線CF1が燃焼室21内でやや下向き(ピストン70側の向き)となり、該燃料噴射弁30の先端部分に設けられている噴射孔31a~31fが燃焼室21内に臨むように、シリンダヘッド22と吸気通路24との結合部付近に取り付けられる。
【0023】
図2に示すように、燃料噴射弁30は、複数の噴射孔31a~31fが形成されるとともに弁座部36aが形成された弁座プレート36、弁座部36aと当接することで噴射孔31a~31fへの燃料供給を遮断可能な弁体35、該弁体35を弁座部36aに当接する位置と当接しない位置とに移動させることが可能なソレノイドコイル33と、弁体35を付勢するスプリング34等を備える。
【0024】
弁座プレート36の内側は、弁体35の先端部35aのボール形状に対応するドーム形状に形成されている。弁座プレート36の内側において弁体35の先端部35aが当接する部分に弁座部36aが形成され、該先端部35aと弁座部36aとが接するときシールを形成するようになっている。そして、弁座プレート36における弁座部36aよりも内側(燃料噴射弁30の中心軸線CF1側)には、弁座プレート36の内部から外部に連通する複数の噴射孔31a~31fが形成されている。
【0025】
燃料噴射弁30は、ソレノイドコイル33に所定電圧が印加されていない非通電状態において噴射孔31a~31fから燃料が噴射されない閉状態となるNC(Normal Close)式の電磁弁であり、ソレノイドコイル33が非通電状態であるときには、スプリング34によって付勢された弁体35のボール形状の先端部35aと弁座プレート36の弁座部36aとが密着されることにより、燃料供給口37から供給される燃料が噴射孔31a~31fから漏出されない閉状態となるようになっている。一方、ソレノイドコイル33に所定電圧が印加されている通電状態であるときには、弁体35が弁座プレート36の弁座部36aから離れる位置に移動して該弁体35と弁座部36aとの間に間隙が生じた状態となることにより、燃料供給口37から供給される燃料が、当該弁体42と弁座部36aとの間隙を通り、噴射孔31a~31fから噴霧状に噴射される開状態となるようになっている。
【0026】
尚、本実施形態では、燃料噴射弁30は、ソレノイドコイルにより開状態と閉状態とが切り替えられる構成であるが、燃料噴射弁30は、例えば、ピエゾ素子等により開状態と閉状態とに切り替えられる構成でも良い。
【0027】
燃料供給口37から燃料噴射弁30内へ供給された燃料は、燃料噴射弁30の内部に設けられた流路を通って(図示略)、弁座プレート36の弁座部36aに至る。そして、燃料噴射弁30が開状態であるときには、燃料は、弁座部36aに至った後、弁体35の先端部35aと弁座部36aとの間の狭窄部を通過し、燃料噴射弁30の中心軸線CF1の方向へ流れて噴射孔31a~31fに至る。そして、噴射孔31a~31fを通過して燃焼室21内に噴射される(図5参照)。一方、燃料噴射弁30が閉状態であるときには、弁体35の先端部35aと弁座部36aとの間が閉塞されることで、燃焼室21内への燃料の噴射が遮断される。
【0028】
[噴射孔について]
本実施形態に係る燃料噴射弁30の噴射孔31a~31fについて、図3図5に基づいて説明する。図3は、燃料噴射弁30の中心軸線CF1(図2における矢印A方向)から見た弁座プレート36を示す図である。図4は、図3における枠C内の拡大図であり、図5は、図4における後述の第1噴射孔31aの中心と第2噴射孔31cの中心とを結ぶ最短線であるB-B線上で断面視した燃料噴射弁30の先端部分の断面図である。
【0029】
図3及び図4に示すように、燃料噴射弁30の弁座プレート36には、内部から外部へ連通する複数の噴射孔31a~31fが穿孔されてり、該噴射孔31a~31fには、後述の第1噴射孔31a及び第2噴射孔31cが含まれる。第1噴射孔31aは、燃料噴射弁30の中心軸線CF1から第1半径R1の第1円上に該噴射孔の開口の中心が位置するように穿孔されている。第2噴射孔31cは、燃料噴射弁30の中心軸線CF1から第1半径R1よりも大きい第2半径R2の第2円上であり、かつ第1噴射孔31aの開口の中心を通る該第1円の接線F-Fに関して燃料噴射弁30の中心軸線CF1と反対側(接線F-Fと第2円の交点を通る該第2円の円弧のうち短い方の円弧α上)に該噴射孔31cの開口の中心が位置するように穿孔されている。また、噴射孔31cは、当該噴射孔31cの開口の中心が、噴射孔31aを通る接線F-Fに対する垂線D-Dから約30°となる第2円上に位置するように穿孔されている。
【0030】
尚、噴射孔31bは、第1円上の所定位置に開口の中心が位置し、噴射孔31d~31fは、第2円上の所定位置に開口の中心が位置するように穿孔されている。また、噴射孔31bと噴射孔31dの位置関係は、噴射孔31aと噴射孔31cの位置関係と同様であり、噴射孔31dは、燃料噴射弁30の中心軸線CF1から第2半径R2の第2円上であり、かつ噴射孔31bの開口の中心を通る該第1円の接線に関して燃料噴射弁30の中心軸線CF1と反対側に噴射孔31dの開口の中心が位置するように穿孔されている。
【0031】
図5に示すように、第1噴射孔31aの中心と第2噴射孔31cの中心とを結ぶ最短線であるB-B線を含み燃料噴射弁30の中心軸線CF1と平行な面上で断面視した場合に、当該断面に投射される投射角であり、第1噴射孔31aの中心軸線CF2と燃料噴射弁30の中心軸線CF1とが成す投射角の角度を第1角度θ1とする。また、同様に当該断面に投射される投射角であり、第2噴射孔31cの中心軸線CF3と燃料噴射弁30の中心軸線CF1とが成す投射角の角度を第2角度θ2とする。この場合に、第1噴射孔31a及び第2噴射孔31cは、第1角度θ1が第2角度θ2に比較して大きくなるようにそれぞれ穿孔されている。
【0032】
尚、図5に示すように、第1角度θ1は、第1噴射孔31aの中心軸線CF2と燃料噴射弁30の中心軸線CF1とが成す投射角のうち鋭角の側の各の角度である。また、第2角度θ2は、第2噴射孔31cの中心軸線CF3と燃料噴射弁30の中心軸線CF1とが成す投射角のうち鋭角の側の各の角度である。
【0033】
そして、第1噴射孔31a及び第2噴射孔31cの噴射上流側(弁座プレート36の内周面側)の各開口部のエッジ32a~32dについて、互いに対向しない側の第1噴射孔31aのエッジ32a(第1噴射孔31aの中心を通る第1円の接線に関して燃料噴射弁30の中心軸線CF1側のエッジ32a)と第2噴射孔31cのエッジ32d(第2噴射孔31cの中心を通る第2円の接線に関して燃料噴射弁30の中心軸線CF1側と反対側のエッジ32d)は、ともに鈍角を成し、互いに対向する側の第1噴射孔31aのエッジ32b(第1噴射孔31aの中心を通る第1円の接線に関して燃料噴射弁30の中心軸線CF1側と反対側のエッジ32b)と第2噴射孔31cのエッジ32c(第1噴射孔31aの中心を通る第2円の接線に関して燃料噴射弁30の中心軸線CF1側のエッジ32c)は、ともに鋭角を成すように、第1噴射孔31a及び第2噴射孔31cはそれぞれ穿孔されている。
【0034】
また、噴射孔31a~31fには、上流側(弁座プレート36の内側)に形成された小径のガイド領域Lと、下流側(燃焼室21側)に形成されガイド領域Lより大径の座繰りで形成される拡散領域Mとが形成されている。拡散領域Mの底面は、例えば、ガイド領域Lの中心軸に対して直角な段状に形成されている。ガイド領域Lから拡散領域Mを介して燃焼室21に噴射される燃料は、噴霧となって拡散されるようになっている。尚、前述の第1噴射孔31aの中心軸線CF2、第2噴射孔31cの中心軸線CF3は、それぞれの噴射孔におけるガイド領域Lの中心軸と一致する。また、各噴射孔31a~31fのガイド領域Lの深さlに対する噴射孔の直径dの比率ε(ε=l/d)は、約1である。尚、燃料噴射圧力が比較的低い内燃機関(例えば、ガソリンエンジン)に燃料噴射弁30が適用される場合には、燃料噴射圧力が比較的高い内燃機関(例えば、ディーゼルエンジン)に燃料噴射弁30が適用される場合に比較して、当該燃料噴射弁の先端部の肉厚が薄く設計され、燃料噴射弁の噴射孔におけるガイド領域Lの深さlに対する噴射孔の直径dの比率εは、小さくなる傾向がある。例えば、ガソリンエンジンにおける燃料噴射弁では、比率εは、1~3程度であり、ディーゼルエンジンにおける燃料噴射弁では、比率εは、5~10程度であり、ガソリンエンジンにおける燃料噴射弁の噴射孔のガイド領域は、ディーゼルエンジンにおける燃料噴射弁に比較して短く、ガソリンエンジンの燃料噴射弁では、ディーゼルエンジンの燃料噴射弁に比較して、噴射孔の内壁面において燃料の流れの剥離が生じやすい傾向がある。
【0035】
このように、本実施形態に係る燃料噴射弁30は、内燃機関10に燃料を噴射する複数の噴射孔31a~31fを備え、噴射孔31a~31fは、第1半径R1の第1円上と該第1半径R1よりも大きい第2半径R2の第2円上とそれぞれ複数設けられている。
【0036】
また、本実施形態に係る燃料噴射弁30では、複数の噴射孔31a~31fは、第1噴射孔31a及び第2噴射孔31cを含み、第1噴射孔31aは、第1円上に開口の中心が設けられ、第2噴射孔31cは、第2円上であり、かつ第1噴射孔31aの開口の中心を通る第1円の接線F-Fに関して燃料噴射弁30の中心軸線CF1と反対側における第2円上に開口の中心が設けられている。また、第1噴射孔31aが設けられる第1円と、第2噴射孔31cが設けられる第2円は、燃料噴射弁30の中心軸線CF1上に中心が設定されている同心円である。
【0037】
また、本実施形態に係る燃料噴射弁30では、第1噴射孔31aの中心と第2噴射孔31cの中心とを結ぶ最短線であるB-B線上で断面視した場合に、第1噴射孔31aの中心軸線CF2と燃料噴射弁30の中心軸線CF1とが成す第1角度θ1は、第2噴射孔31cの中心軸線CF3と燃料噴射弁30の中心軸線CF1とが成す第2角度θ2よりも大きくなるように構成されている。
【0038】
また、本実施形態に係る燃料噴射弁30では、第1噴射孔31a及び第2噴射孔31cは、互いに対向しない側の第1噴射孔31aの噴射上流側のエッジと第2噴射孔31cの噴射上流側のエッジがともに鈍角を成し、互いに対向する側の第1噴射孔31aの噴射上流側のエッジと第2噴射孔31cの噴射上流側のエッジがともに鋭角を成すように構成されている。 また、第1噴射孔31a及び第2噴射孔31cは、互いに対向する側の第1噴射孔31aの噴射上流側のエッジと第2噴射孔31cの噴射上流側のエッジがともに鋭角を成すが、第1噴射孔31aの開口の中心を通る第1円の接線F-Fに関して燃料噴射弁の中心軸線CF1と反対側における第2円上に第2噴射孔が設けられている。
【0039】
尚、燃料噴射弁30において穿孔される噴射孔の個数、各噴射孔の配置や口径の大きさ、噴射孔の軸線と燃料噴射弁30の中心軸線CF1とが成す角度、座繰りの形状等は、当該燃料噴射弁30が取り付けられる内燃機関10の設計に応じて設計され得る。
【0040】
また、尚、本実施形態では、噴射孔31cは、当該噴射孔31cの開口の中心が、第1噴射孔31aを通る接線F-Fに対する垂線D-Dから30°となる第2円上に位置するように穿孔されている構成であるが、第2噴射孔31cは、少なくとも、接線F-Fに関して燃料噴射弁30の中心軸線CF1と反対側の第2円の円弧上に位置する構成、すなわち噴射孔31cの開口の中心が、第1噴射孔31aを通る接線F-Fに対する垂線D-Dから±90°の範囲内の第2円上に位置するように穿孔されている構成でも良い。噴射孔31cの開口の中心が、第1噴射孔31aを通る接線F-Fに対する垂線D-Dから±90°の範囲内の第2円上に位置するように穿孔されている構成では、第1噴射孔31aによる燃料の流れへの影響と、第2噴射孔31cによる燃料の流れへの影響とを相互作用させて、各噴射孔の内壁面からの燃料の流れの剥離を低減することができる。第2噴射孔31cは、垂線D-Dにより近い第2円上の円弧上に位置するほど、第1噴射孔31aに流れ込む燃料の流れに対して大きな影響を与えることができ、噴射孔31cの開口の中心が、第1噴射孔31aを通る接線F-Fに対する垂線D-Dから±45°の範囲内の第2円上の円弧上に位置する構成がより好ましい。噴射孔31cの開口の中心が、第1噴射孔31aを通る接線F-Fに対する垂線D-Dから±45°の範囲内の第2円上の円弧上に位置する構成では、噴射孔31cの開口の中心が、第1噴射孔31aを通る接線F-Fに対する垂線D-Dから±45°~90°の範囲内の第2円上の円弧上に位置する構成に比較して、より顕著に、第1噴射孔31aによる燃料の流れへの影響と、第2噴射孔31cによる燃料の流れへの影響とを相互作用させることができる。
【0041】
[作用効果について]
一般に、燃料噴射弁の噴射孔における噴射上流側のエッジ付近では、エッジの角度が急峻な部分ほど他の部分に比較して噴射孔の内壁面から燃料の流れが剥離しやすくなり、また、流速が速いほど噴射孔の内壁面から燃料の流れが剥離しやすくなる傾向がある。また、噴射孔に形成されたガイド領域Lの深さlに対する当該噴射孔の直径dとの比率ε(ε=l/d)が小さいほど、すなわちガイド領域Lが短いほど、噴射孔内を流れる燃料の流れは、下流側の出口から噴射されるまでに乱流状態から整流化されにくく、当該噴射孔の内壁面から燃料の流れが剥離しやすくなる傾向がある。特に、当該比率εが概ね3を下回る場合に、燃料の流れの剥離のしやすさは、当該比率が3を超える場合に比較して顕著に高まる傾向がある。そして、燃料の流れに剥離が生じると、流れ場の乱れが生じ、噴射孔から噴射される燃料の噴霧が該噴射孔の周囲に飛散して液滴となり、該燃料噴射弁の先端の外周壁面等に付着する虞がある。燃料噴射弁30の先端部が燃焼室21内に臨むよう配置される内燃機関10では、当該燃料噴射弁30の先端等に燃料が付着し、付着した燃料が不完全燃焼することで未燃粒子状物質の発生要因となる。
【0042】
本実施形態の燃料噴射弁30は、複数の噴射孔31a~31fから内燃機関10に燃料を噴射する燃料噴射弁30であり、第1半径R1の第1円上と、該第1半径R1よりも大きい第2半径R2の第2円上とに複数の噴射孔31a~31fが設けられており、各噴射孔31a~31fに形成されたガイド領域Lの深さlに対する当該噴射孔の直径dとの比率εが約1であり、各噴射孔内を流れる燃料の流れは、下流側の出口から噴射されるまでに整流化されにくい傾向がある。
【0043】
これに対して、燃料噴射弁30では、複数の噴射孔31a~31fは、第1円上に開口の中心が設けられた第1噴射孔31aと、第1噴射孔31aの開口の中心を通る前記第1円の接線に関して燃料噴射30の中心軸線CF1と反対側における前記第2円上に開口の中心が設けられた第2噴射孔31cと、を含む。そして、第1噴射孔31a及び第2噴射孔31cは、当該第1噴射孔31aの中心と第2噴射孔31cの中心とを結ぶ最短線であるB-B線上で断面視した場合に、第1噴射孔31aの中心軸線CF2と燃料噴射弁30の中心軸線CF1とが成す第1角度θ1が、第2噴射孔31cの中心軸線CF3と燃料噴射弁30の中心軸線CF1とが成す第2角度θ2よりも大きい構成である。
【0044】
このような構成によれば、第1噴射孔31aと第2噴射孔31cについて、当該第1噴射孔31aの中心と第2噴射孔31cの中心とを結ぶ最短線上で断面視した場合に、少なくとも、第1噴射孔31aの噴射上流側のエッジのうち第2噴射孔31cの噴射上流側のエッジ32dと対向しない側のエッジ32aを、鈍角をなす構成とすることができ、当該第1噴射孔31aについて、第2噴射孔31cと対向しない側のエッジ32aから当該第1噴射孔31aに流入する燃料の流束を当該第1噴射孔の内壁面から剥離しにくくすることができる。また、第1円の接線F-Fに関して燃料噴射弁30の中心軸線CF1と反対側における第2円上に第2噴射孔31cが設けられている構成とすることで、第1噴射孔31a及び第2噴射孔31cの間にある燃料を各噴射孔31a、31cに流入させて、当該第1噴射孔31aの噴射上流側のエッジのうち第2噴射孔31cと対向する側のエッジ32bから第1噴射孔31aへ流入する燃料の流速を低減することができ、当該第1噴射孔31aについて第2噴射孔31cと対向する側のエッジ32bから第1噴射孔31aに流入する燃料の流束を当該第1噴射孔の内壁面から剥離しにくくすることができる。これらにより、第1噴射孔31aによる燃料の流れに対して第2噴射孔31cによる燃料の流れの影響を作用させて、第1噴射孔31aについて第2噴射孔31cと対向しない側から流入する燃料の流れと、当該第2噴射孔31cと対向する側から流入する燃料の流れとを良好にバランスさせて、第1噴射孔31aの噴射孔内で内壁面からの燃料流れの剥離を低減することができる。
【0045】
また、第1噴射孔31aに関する第1角度θ1が第2噴射孔31cに関する第2角度θ2よりも大きい構成によれば、第1噴射孔31a及び第2噴射孔31cについて、互いに対向しない側の第1噴射孔31aの噴射上流側のエッジ32aと第2噴射孔31cの噴射上流側のエッジ32dを、ともに鈍角をなす構成とすることができ、第1噴射孔31a及び第2噴射孔31cについて互いに対向しない側のエッジ32a、32dから各噴射孔31a、31cに流入する燃料の流束を各噴射孔の内壁面から剥離しにくくすることができるとともに、第1噴射孔31aの開口の中心を通る第1円の接線F-Fに関して燃料噴射弁の中心軸線CF1と反対側における第2円上に第2噴射孔が設けられていることにより、第1噴射孔31a及び第2噴射孔31cの間にある燃料を各噴射孔31a、31cに流入させて、該各噴射孔の噴射上流側のエッジ32b、32cから各噴射孔へ流入する燃料の流速を低減することができ、第1噴射孔31a及び第2噴射孔31cについて互いに対向する側のエッジ32b、32cから各噴射孔31a、31cに流入する燃料の流束を各噴射孔の内壁面から剥離しにくくすることができる。これらにより、第1噴射孔31aによる燃料の流れへの影響と、第2噴射孔31cによる燃料の流れへの影響とを相互作用させて、第1噴射孔31a及び第2噴射孔31cについて互いに対向しない側から流入する燃料の流れと互いに対向する側から流入する燃料の流れとを良好にバランスさせて、第1噴射孔31a及び第2噴射孔31cのそれぞれの噴射孔内での燃料流れの剥離を低減することができる。
【0046】
本実施形態の燃料噴射弁30では、複数の噴射孔31a~31fから内燃機関10に燃料を噴射する燃料噴射弁30において、複数の噴射孔31a~31fは、第1半径R1の第1円上と、該第1半径R1よりも大きい第2半径R2の第2円上とに、それぞれ複数設けられており、第1円上に開口の中心が設けられた第1噴射孔31aと、第1噴射孔31aの開口の中心を通る前記第1円の接線に関して燃料噴射30の中心軸線CF1と反対側における前記第2円上に開口の中心が設けられた第2噴射孔31cと、を含み、第1噴射孔31aの中心と第2噴射孔31cの中心とを結ぶ最短線上で断面視した場合に、少なくとも、第1噴射孔31aの上流側のエッジのうち第2噴射孔31cと対向しない側のエッジ32aは、鈍角をなす構成である。
【0047】
このような構成によれば、第1噴射孔31aについて、第1噴射孔31aの中心と第2噴射孔31cの中心とを結ぶ最短線上で断面視した場合に、第1噴射孔31aの噴射上流側のエッジのうち第2噴射孔31cと対向しない側のエッジ32aを、鈍角をなす構成により、第1噴射孔31aについて第2噴射孔31cと対向しない側のエッジ32aから当該第1噴射孔31aに流入する燃料の流束を当該第1噴射孔の内壁面から剥離しにくくすることができる。また、第1円の接線F-Fに関して燃料噴射弁30の中心軸線CF1と反対側における第2円上に第2噴射孔31cが設けられている構成であるので、第1噴射孔31a及び第2噴射孔31cの間にある燃料を各噴射孔31a、31cに流入させて、第1噴射孔31aの噴射上流側のエッジのうち第2噴射孔31cと対向する側のエッジ32bから当該第1噴射孔31aへ流入する燃料の流速を低減することができ、当該第1噴射孔31aについて第2噴射孔31cと対向する側のエッジ32bから当該第1噴射孔31aに流入する燃料の流束を当該第1噴射孔31aの内壁面から剥離しにくくすることができる。これらにより、第1噴射孔31aによる燃料の流れに対して第2噴射孔31cによる燃料の流れの影響を作用させて、第1噴射孔31aについて第2噴射孔31cと対向しない側から流入する燃料の流れと、当該第2噴射孔31cと対向する側から流入する燃料の流れとを良好にバランスさせて、第1噴射孔31aの噴射孔内で内壁面からの燃料流れの剥離を低減することができる。
【0048】
本実施形態の燃料噴射弁30は、複数の噴射孔31a~31fから内燃機関10に燃料を噴射する燃料噴射弁30において、複数の噴射孔31a~31fは、第1半径R1の第1円上と、該第1半径R1よりも大きい第2半径R2の第2円上とに、それぞれ複数設けられており、第1円上に開口の中心が設けられた第1噴射孔31aと、第1噴射孔31aの開口の中心を通る前記第1円の接線に関して燃料噴射30の中心軸線CF1と反対側における前記第2円上に開口の中心が設けられた第2噴射孔31cと、を含み、第1噴射孔31aの中心と第2噴射孔31cの中心とを結ぶ最短線上で断面視した場合に、互いに対向しない側の第1噴射孔31aの噴射上流側のエッジ32aと第2噴射孔31cの噴射上流側のエッジ32dが、ともに鈍角をなす構成である。
【0049】
このような構成によれば、複数の噴射孔31a~31fのうち、第1円上に開口の中心が設けられた第1噴射孔31aと、該第1噴射孔31aの開口の中心を通る第1円の接線F-Fに関して燃料噴射30の中心軸線CF1と反対側における第2円上に開口の中心が設けられた第2噴射孔31cについて、第1噴射孔31aの中心と第2噴射孔31cの中心とを結ぶ最短線上で断面視した場合に、互いに対向しない側の第1噴射孔31aの噴射上流側のエッジ32aと第2噴射孔31cの噴射上流側のエッジ32dをともに鈍角をなすように構成することで、第1噴射孔31a及び第2噴射孔31cについて互いに対向しない側のエッジ32a、32dから各噴射孔31a、31cに流入する燃料の流束を各噴射孔の内壁面から剥離しにくくすることができる。また、第1円の接線F-Fに関して燃料噴射弁30の中心軸線CF1と反対側における第2円上に第2噴射孔31cが設けられている構成であるので、第1噴射孔31a及び第2噴射孔31cの間にある燃料を各噴射孔31a、31cに流入させて、該各噴射孔の噴射上流側のエッジ32a、32dから各噴射孔へ流入する燃料の流速を低減することができ、第1噴射孔31a及び第2噴射孔31cについて互いに対向する側のエッジ32b、32cから各噴射孔31a、31cに流入する燃料の流束を各噴射孔の内壁面から剥離しにくくすることができる。これらにより、第1噴射孔31aによる燃料の流れへの影響と、第2噴射孔31cによる燃料の流れへの影響とを相互作用させて、第1噴射孔31a及び第2噴射孔31cについて互いに対向しない側から流入する燃料の流れと互いに対向する側から流入する燃料の流れとを良好にバランスさせて、第1噴射孔31a及び第2噴射孔31cのそれぞれの噴射孔内での燃料流れの剥離を低減することができる。
【0050】
本実施形態に係る燃料噴射弁30は、第1噴射孔31a及び第2噴射孔31cの長さlに対する当該噴射孔の直径dの比率εが、3以下である構成である。このような構成では、噴射孔内を流れる燃料の流れは、下流側の出口から噴射されるまでに乱流状態から整流化されにくく、当該噴射孔の内壁面から燃料の流れが剥離しやすくなる傾向があるが、第2噴射孔31cが該第1噴射孔31aの開口の中心を通る第1円の接線F-Fに関して燃料噴射弁の中心軸線CF1と反対側における第2円上に設けられる構成であり、かつ第1噴射孔31aの中心軸線CF2と燃料噴射弁30の中心軸線CF1とが成す第1角度θ1を、第2噴射孔31cの中心軸線CF3と燃料噴射弁30の中心軸線CF1とが成す第2角度θ2よりも大きい構成であることにより、第1噴射孔31a及び第2噴射孔31cのそれぞれの噴射孔内での燃料流れの剥離を低減することができる。
【0051】
また、本実施形態に係る燃料噴射弁30は、第1噴射孔31a及び第2噴射孔31cの長さlに対する当該噴射孔の直径dの比率εが、3以下である構成である。このような構成では、噴射孔内を流れる燃料の流れは、下流側の出口から噴射されるまでに乱流状態から整流化されにくく、当該噴射孔の内壁面から燃料の流れが剥離しやすくなる傾向があるが、第2噴射孔31cが該第1噴射孔31aの開口の中心を通る第1円の接線F-Fに関して燃料噴射弁の中心軸線CF1と反対側における第2円上に設けられる構成であり、かつ互いに対向しない側の第1噴射孔31aの噴射上流側のエッジ32aと第2噴射孔31cの噴射上流側のエッジ32dは、ともに鈍角をなす構成であることにより、第1噴射孔31a及び第2噴射孔31cのそれぞれの噴射孔内での燃料流れの剥離を低減することができる。
【0052】
尚、噴射孔の長さlとは、上流側に形成された小径のガイド領域Lと、下流側に形成されガイド領域Lより大径の座繰りで形成される拡散領域Mとが当該噴射孔に形成されている場合には、拡散領域Mを含まないガイド領域Lのみの長さである。
【0053】
本実施形態に係る内燃機関10は、上述の燃料噴射弁30を備える構成である。このような構成によれば、内燃機関10は、上述の燃料噴射弁30を備えるので、燃料の噴射中における第1噴射孔31a及び第2噴射孔31c内での燃料流れの剥離を低減することができ、不完全燃焼によってデポジットが発生する原因となる燃料噴射弁30の先端等への燃料の付着を低減することができる。
【0054】
尚、本実施形態では、第1噴射孔31a及び第2噴射孔31cは、各噴射孔31a、31cに形成されたガイド領域Lの深さlに対する当該噴射孔の直径dとの比率εが約1である構成であるが、各噴射孔のガイド領域Lの深さlに対する当該噴射孔の直径dとの比率εは、1に限定されず、1未満である構成、1を越える構成でも、本実施形態と同様の効果を奏する。
【0055】
以上、本発明の実施形態の例を説明してきたが、本発明はこの実施形態の例に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0056】
10 内燃機関
21 燃焼室
22 シリンダヘッド
30 燃料噴射弁
31a~31f 噴射孔

図1
図2
図3
図4
図5