(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】慢性炎症およびウイルス感染の診断と治療
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240419BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240419BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20240419BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20240419BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240419BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240419BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240419BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240419BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20240419BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20240419BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240419BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
A61K45/00
C12N15/13 ZNA
C12N15/113 Z
C07K16/18
A61P43/00 111
A61K39/395 N
A61P25/00
A61P25/28
A61K31/713
A61K31/7105
G01N33/53 D
G01N33/68
(21)【出願番号】P 2021560209
(86)(22)【出願日】2020-03-31
(86)【国際出願番号】 CN2020082296
(87)【国際公開番号】W WO2020200186
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-06-22
(31)【優先権主張番号】201910256220.3
(32)【優先日】2019-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010122554.4
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522391497
【氏名又は名称】広州恩邁生物科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Guanzhou Enmai Biotechnology Co., Ltd
【住所又は居所原語表記】Room 201 (site 207), Building B, 2 Ruitai Road, Huangpu District, Guangzhou, Guangdong, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】梁 ▲歡▼▲歡▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 迎芳
(72)【発明者】
【氏名】于 ▲楊▼
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第99/028460(WO,A1)
【文献】特表2017-528129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00
A61K 39/00-39/44
C12N 15/13
C12N 15/113
C07K 16/18
A61K 31/713
A61K 31/7105
G01N 33/53
G01N 33/68
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多発性硬化症を治療または緩和するための組成物であって、
IFP35および/またはNMIに特異的に結合し、かつIFP35および/またはNMIを阻害する抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、組成物。
【請求項2】
前記抗体は、軽鎖可変領域および重鎖可変領域を有し、
i)前記重鎖可変領域に含まれるCDR1、CDR2およびCDR3の配列は、それぞれSEQ ID NO:13、14、15であり、前記軽鎖可変領域に含まれるCDR1、CDR2およびCDR3の配列は、それぞれSEQ ID NO:16、17、18である、または
ii)前記抗体の前記重鎖可変領域におけるCDR1、CDR2およびCDR3の配列は、それぞれSEQ ID NO:19、14、15であり、前記軽鎖可変領域におけるCDR1、CDR2およびCDR3の配列は、それぞれSEQ ID NO:16、17、18である、または
iii)前記重鎖可変領域に含まれるCDR1、CDR2およびCDR3の配列は、それぞれSEQ ID NO:13、14、15であり、前記軽鎖可変領域に含まれるCDR1、CDR2およびCDR3の配列は、それぞれSEQ ID NO:16、17、20である、または
iv)前記重鎖可変領域に含まれるCDR1、CDR2およびCDR3の配列は、それぞれSEQ ID NO:13、14、15であり、前記軽鎖可変領域に含まれるCDR1、CDR2およびCDR3の配列は、それぞれSEQ ID NO:16、17、21である、または
v)前記重鎖可変領域に含まれるCDR1、CDR2およびCDR3の配列は、それぞれSEQ ID NO:13、14、15であり、前記軽鎖可変領域に含まれるCDR1、CDR2およびCDR3の配列は、それぞれSEQ ID NO:16、17、22である、または
vi)前記重鎖可変領域に含まれるCDR1、CDR2およびCDR3の配列は、それぞれSEQ ID NO:13、14、15であり、前記軽鎖可変領域に含まれるCDR1、CDR2およびCDR3の配列は、それぞれSEQ ID NO:16、17、23であることを特徴とする、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記抗体の重鎖可変領域の配列は、SEQ ID NO:9であり、前記抗体の軽鎖可変領域の配列は、SEQ ID NO:10であることを特徴とする、
請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
i)前記抗体の重鎖定常領域の配列は、SEQ ID NO:25であり、前記抗体の軽鎖定常領域の配列は、SEQ ID NO:24である、または
ii)前記抗体の重鎖定常領域の配列は、SEQ ID NO:1であり、前記抗体の軽鎖定常領域の配列は、SEQ ID NO:3である、または
iii)前記抗体の重鎖定常領域の配列は、SEQ ID NO:5であり、前記抗体の軽鎖定常領域の配列は、SEQ ID NO:7である、または
iv)前記抗体の重鎖定常領域の配列は、SEQ ID NO:11であり、前記抗体の軽鎖定常領域の配列は、SEQ ID NO:12であることを特徴とする、
請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)は、分泌されたIFP35/NMI炎症因子の異常量によって作用が発揮されることを特徴とする、
請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
多発性硬化症を診断するためのキットであって、
個体から得られた生体試料中のインターフェロン誘導タンパク質35kD(IFP35)および/またはN-Myc相互作用タンパク質(NMI)の量を測定するための試薬を含むことを特徴とする、キット。
【請求項7】
多発性硬化症を診断することが、前記個体から得られた生体試料中のインターフェロン誘導タンパク質35kD(IFP35)および/またはN-Myc相互作用タンパク質(NMI)の量を測定するステップを含む、請求項6に記載のキット。
【請求項8】
前記診断は、早期診断、病態診断および予後判定であることを特徴とする、
請求項6または7に記載のキット。
【請求項9】
生体試料中のIFP35および/またはNMIの量を測定することは、生体試料中のIFP35および/またはNMIのタンパク質含有量を測定することであるか、または生体試料中のIFP35および/またはNMIの核酸の発現レベル、例えばmRNA含有量を測定することであり、ならびに/あるいは
前記生体試料は、血液、血漿、血清、脳脊髄液または肺胞洗浄液であることを特徴とする、
請求項7または8に記載のキット。
【請求項10】
IFP35および/またはNMIに特異的に結合し、かつIFP35および/またはNMIを阻害する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
前記抗体は、軽鎖可変領域および重鎖可変領域を有し、
i)前記抗体の前記重鎖可変領域におけるCDR1、CDR2およびCDR3の配列は、それぞれSEQ ID NO:19、14、15であり、前記軽鎖可変領域におけるCDR1、CDR2およびCDR3の配列は、それぞれSEQ ID NO:16、17、18である、または
ii)前記重鎖可変領域に含まれるCDR1、CDR2およびCDR3の配列は、それぞれSEQ ID NO:13、14、15であり、前記軽鎖可変領域に含まれるCDR1、CDR2およびCDR3の配列は、それぞれSEQ ID NO:16、17、20である、または
iii)前記重鎖可変領域に含まれるCDR1、CDR2およびCDR3の配列は、それぞれSEQ ID NO:13、14、15であり、前記軽鎖可変領域に含まれるCDR1、CDR2およびCDR3の配列は、それぞれSEQ ID NO:16、17、21である、または
iv)前記重鎖可変領域に含まれるCDR1、CDR2およびCDR3の配列は、それぞれSEQ ID NO:13、14、15であり、前記軽鎖可変領域に含まれるCDR1、CDR2およびCDR3の配列は、それぞれSEQ ID NO:16、17、22である、または
v)前記重鎖可変領域に含まれるCDR1、CDR2およびCDR3の配列は、それぞれSEQ ID NO:13、14、15であり、前記軽鎖可変領域に含まれるCDR1、CDR2およびCDR3の配列は、それぞれSEQ ID NO:16、17、23であることを特徴とする、
抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項11】
i)前記抗体の重鎖定常領域の配列は、SEQ ID NO:25であり、前記抗体の軽鎖定常領域の配列は、SEQ ID NO:24である、または
ii)前記抗体の重鎖定常領域の配列は、SEQ ID NO:1であり、前記抗体の軽鎖定常領域の配列は、SEQ ID NO:3である、または
iii)前記抗体の重鎖定常領域の配列は、SEQ ID NO:5であり、前記抗体の軽鎖定常領域の配列は、SEQ ID NO:7である、または
iv)前記抗体の重鎖定常領域の配列は、SEQ ID NO:11であり、前記抗体の軽鎖定常領域の配列は、SEQ ID NO:12であることを特徴とする、
請求項10に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2019年4月1日に出願された中国特許出願第201910256220.3号および2020年2月27日に出願された中国特許出願第202010122554.4号の優先権を主張し、この二つの特許出願の内容は、参照により、本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、生物医学の分野に関し、具体的には、慢性炎症およびウイルスの診断と治療のための方法と製品に関する。
【背景技術】
【0003】
生体が微生物に感染された後または組織の損傷などを受けた場合、TNF、IL-6、IL-8、IL-12、IFN-γおよびMCP-1等の様々なサイトカインは、体液中に急速かつ大量に生成され、サイトカインストームおよび急性呼吸窮迫症候群、多臓器不全等の様々な深刻な臨床疾患を引き起こすことさえある。炎症因子(inflammatory factor:炎症性因子ともいう)は、様々な急性および慢性の炎症性疾患に密接に関連している。これまでに、これらの疾患の臨床的に有効な治療方法はない。
【0004】
生存ストレスがある細胞は、内因性サイトカインを放出し、免疫応答反応を開始し、損傷または感染された細胞を効果的に排除する役割を果たす。組織が感染または損傷される場合、損傷関連分子パターン(DAMPs)と呼ばれる種類のサイトカインが放出され、かつ隣接する食細胞を活性化し、最終的には、正常な機能を失った細胞を排除する。DAMPは、自然な免疫応答を開始し、かつ炎症反応を悪化させ、それによって感染および細胞損傷と戦うことができる。従って、DAMPの鑑定およびその機能の開示は、非常に重要である。過去に、本発明の発明者は、DAMPsとして作用することができる二つのタンパク質、即ち、N-mycおよびSTAT相互作用タンパク質(NMI)およびインターフェロン誘導タンパク質35(IFP35)を発見した。研究によると、IFP35およびNMIは、LPSまたはインターフェロンによって活性化されてから1時間内に、単球およびマクロファージによって細胞外に分泌されることができ、リポ多糖誘導性敗血症モデルまたはアセトアミノフェン誘導性肝障害モデルにおいて、活性化されたマクロファージは、放出される。細胞外NMIおよびIFP35は、Toll様受容体4(TLR4)を介してNF-κBを活性化することにより、マクロファージを活性化し、かつ炎症性サイトカインを放出する。さらに、重度の炎症で死亡した患者の血清において、NMIのレベルは、有意に上昇する。NMIの喪失は、炎症反応を軽減し、かつ敗血症モデルおよび肝障害モデルでマウスの死亡率を低下させることができる。IFP35に対する抗体は、炎症因子の発現レベルを低下させることにより、敗血症マウスの生存率を効果的に向上させることができる。
【0005】
多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)を例として取り上げる。多発性硬化症は、慢性炎症性疾患の一つである。MSは、患者に感覚、精神、運動、身体活動および認知機能障害を引き起こすことができ、若年および中年の人々の障害の主な原因の一つである。
【0006】
IFP35タンパク質ファミリーは、N-mycとSTATとの相互作用タンパク質(NMI)およびインターフェロン誘導タンパク質35(IFP35)の二つの相同タンパク質を含み、すべてインターフェロン誘導遺伝子(ISGs)であり、ヒトの体および免疫細胞がインターフェロンによって誘導された後、細胞内の発現量は、増加する。さらに、それらは、損傷関連分子パターン(DAMP)でもあり、感染または臓器損傷において、NMIおよびIFP35は、活性化されたマクロファージによって放出され、TLR4受容体信号伝達経路を介してNF-κBを活性化し、マクロファージからの炎症性サイトカインの放出を促進し、NMIおよびIFP35のノックアウトは、細菌またはウイルス感染によって引き起こされた敗血症および肝障害モデルのマウスの死亡率を低下させることができる。LPS、サルモネラ菌等の病菌、ウイルス等によって誘導されるマウス敗血症マウスモデル、および毒性物質(アセトアミノフェンAPAP等)がインビボに侵入するマウス動物モデルにおいて、NMIおよびIFP35は、細胞内から血清等の体液にすばやく放出される。IFP35保護性抗体の注射は、LPS、サルモネラ菌、およびAPAPによって引き起こされる損傷からマウスを保護することができる。
【0007】
長い間、ウイルス感染性疾患は、中国および人間社会全体に大きな脅威をもたらしてきた。効果的な特異的抗ウイルス薬を開発することが難しい状況下で、ウイルス感染患者インビボの過剰な炎症反応を阻害することは、生体の炎症性損傷を減少させ、死亡率を減少させるために特に重要である。炎症因子のストームを引き起こす主要なサイトカインを見つけ、突然のウイルス性疾患に対処するための新型診断薬および治療薬を開発する十分な必要がある。
【0008】
SARSウイルス、インフルエンザウイルスおよび他の呼吸器ウイルスと同様に、COVID-19ウイルス感染の標的臓器は、肺であり、感染された患者に肺不全を引き起こし、かつ急性呼吸窮迫症候群を引き起こすことができる。ウイルスが宿主に感染された後、しばしば患者の体に強いまたは無秩序な炎症反応を引き起こす。無秩序な炎症および過度の炎症は、SARS等のウイルスによる重要な死因と考えられ、これもCOVID-19ウイルス感染による重要な死因であると推測される。従って、ウイルス感染疾患は、一つは、直接的な抗ウイルス薬の治療であり、もう一つは、生体の免疫反応のバランスを取り、過剰な免疫を阻害する二つの側面から治療する必要がある。標的となる抗ウイルス薬がない場合、生体の炎症反応を調節することは、疾患の損傷程度を減少させ、死亡率を減少させるために特に重要であり、臨床上でも炎症反応を正確に調節する薬物を緊急に開発する必要性がある。
【0009】
炎症反応は、様々な免疫細胞および大量の炎症関連サイトカインの関与に伴い、正確に調節されたプロセスである。炎症反応は、諸刃の剣である。一方で、それは、生体の免疫防御が感染を排除するための重要な経路である。もう一方で、無秩序な炎症は、敗血症、慢性炎症性疾患および自己免疫性疾患等の多くの疾患の重要な原因である。病原体感染の場合、宿主の免疫系は、内因性の損傷関連分子パターン(Damage Associated Molecular Pattern、DAMP)を生成する。現在、HMGB1、IL1b、IL33、S100Aなどを含む、いくつかのDAMP炎症因子が生体で発見された。炎症因子としてのDAMPは、細胞パターン識別受容体(例えば、TLR4等)によってさらに識別され、天然免疫細胞の下流信号伝達経路(JAK-STAT経路などを含む)を活性化し、NF-κBおよびIRF3/7等の細胞の炎症に関連する転写因子を活性化し、大量の炎症関連遺伝子の転写および発現を誘導し、免疫反応を活性化する。従って、DAMP炎症因子は、免疫系における非常に重要なタイプの炎症反応分子である。これらのDAMP炎症因子は、臨床検出および抗体、小分子化学薬等の医薬品開発の標的として広く使用される。
【0010】
現在、COVID-19ウイルス感染の発生対して、臨床的に決定された効果的なワクチンおよび抗ウイルス薬は、まだ不足している。報告によると、ロピナビル、レムデシビル(Remdesivir)等のいくつかの抗HIVおよびSARS/MERS薬は、COVID-19ウイルス感染の場合に治療效果がある可能性がある。臨床的には、SARSおよび現在のCOVID-19ウイルス感染症の重篤な患者の治療で使用される措置は、過剰な炎症を阻害するための高用量ホルモン薬の使用を含む。しかし、大量のホルモンの使用は、しばしば深刻な副作用をもたらし、過度の免疫阻害は、生体がウイルスを排除するのに役立たない。従って、炎症反応を調節する重要なサイトカインを見つけ、宿主の過剰な炎症反応を効果的に阻害できるサイトカイン薬をスクリーニングすることは、新規、突然の感染症の効果的な治療法であり、臨床および予後の正確な介入治療に使用されることができる。これは、現在のCOVID-19ウイルスの予防および治療にとって非常に重要であるだけでなく、将来的に標的薬が不足している様々な突然の感染症に対応するための普遍的な意味も有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】中国特許出願第201910256220.3号
【文献】中国特許出願第202010122554.4号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明で解決されるべき課題の一つは、慢性炎症性疾患の予防および/または治療方法と製品および関連抗体、ならびに慢性炎症性疾患を診断するための方法と製品および関連抗体を提供することである。
【0013】
本発明は、慢性炎症性疾患の予防および/または治療のための製品の製造における試薬の使用のための技術案を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
当該技術案は、次のとおりである。
慢性炎症性疾患の予防および/または治療のための薬物の製造における試薬の使用であって、
前記試薬は、
(1)炎症因子として細胞外に分泌される異常量(異常な含有量)のIFP35および/またはNMIの活性を阻害する物質、
(2)炎症因子として細胞外に分泌されるIFP35および/またはNMIの量および/または活性を阻害する物質、
(3)IFP35および/またはNMIの炎症因子としての細胞外への分泌を阻害する物質、
(4)IFP35および/またはNMIの量および/または活性の異常な増加を阻害する物質、
(5)IFP35および/またはNMIの細胞外への分泌を阻害する物質、
(6)炎症因子として慢性炎症性疾患を引き起こすIFP35および/またはNMIを阻害する物質、あるいはDAMPsとして慢性炎症性疾患を引き起こすIFP35および/またはNMIを阻害する物質、
(7)IFP35および/またはNMIがインターフェロン、TNF、IL1および/またはIL6である一部の炎症因子の発現および分泌を上方制御することを阻害する物質、
(8)IFP35および/またはNMIがTLR4と相互作用し、TLR4/MD2を介してNF-κBを活性化することを阻害する物質のうちの少なくとも一つである。
【0015】
本発明は、慢性炎症性疾患の予防および/または治療方法を提供する。
【0016】
本発明に係る慢性炎症性疾患の予防および/または治療の方法は、慢性炎症性疾患の予防および/または治療の目的を達成するために、有効量の以下の試薬を生体に投与するステップを含み、
前記試薬は、
(1)炎症因子として細胞外に分泌される異常量のIFP35および/またはNMIの活性を阻害する物質、
(2)炎症因子として細胞外に分泌されるIFP35および/またはNMIの量および/または活性を阻害する物質、
(3)IFP35および/またはNMIの炎症因子としての細胞外への分泌を阻害する物質、
(4)IFP35および/またはNMIの量および/または活性の異常な増加を阻害する物質、
(5)IFP35および/またはNMIの細胞外への分泌を阻害する物質、
(6)炎症因子として慢性炎症性疾患を引き起こすIFP35および/またはNMIを阻害する物質、あるいはDAMPsとして慢性炎症性疾患を引き起こすIFP35および/またはNMIを阻害する物質、
(7)IFP35および/またはNMIがインターフェロン、TNF、IL1および/またはIL6である一部の炎症因子の発現および分泌を上方制御することを阻害する物質、および
(8)IFP35および/またはNMIがTLR4と相互作用し、TLR4/MD2を介してNF-κBを活性化することを阻害する物質からなる群より選ばれる少なくとも一つである。
【0017】
慢性炎症性疾患の予防および/または治療のための製品の製造において、上記の物質(1)~(8)のいずれか1項に記載の機能を達成できる先行技術における任意の試薬の使用は、本発明の保護範囲内に属する。
【0018】
上記(1)~(5)に記載の阻害は、例えば、IFP35および/またはNMIの量および/または活性の異常な増加を直接阻害するか、または炎症因子の異常量として細胞外に分泌されるIFP35および/またはNMIの活性を直接的に阻害し、例えば、IFP35および/またはNMIの炎症因子としての細胞外への分泌を直接的に阻害し、例えば、炎症因子として細胞外に分泌されるIFP35および/またはNMIの量および/または活性を阻害する等の、直接的に阻害することもでき、インターフェロンの発現および/または活性を阻害することにより、IFP35および/またはNMIを間接的に阻害することもできる。
【0019】
上記治療方法および治療使用において、前記試薬は、
IFP35および/またはNMIに特異的に結合し、上記の物質(1)~(8)のうちの少なくとも一つの機能を有する、抗体またはポリペプチドまたは抗原結合フラグメント、
上記の物質の(1)~(8)のうちの少なくとも一つの機能を有する、小分子化合物、および
上記の物質の(1)~(8)のうちの少なくとも一つの機能を有する、核酸試薬からなる群より選ばれる少なくとも一つである。
【0020】
核酸分子は、IFP35および/またはNMIをコードする遺伝子を標的とすることができるsiRNA、shRNA、またはmiRNAであってもよい。
【0021】
小分子化合物は、IFP35および/またはNMIの分泌、発現および/または活性を阻害する小分子化合物であってもよい。
【0022】
前記抗体またはポリペプチドまたは抗原結合フラグメントは、(1)配列がSEQ ID NO:2の81位~170位、177位~268位、または136位~216位のアミノ酸内に位置するエピトープ、(2)配列がSEQ ID NO:4の81位~168位、175位~266位、または134位~214位のアミノ酸内に位置するエピトープ、(3)配列がSEQ ID NO:6の104~193、202-293位、または151位~250位のアミノ酸内に位置するエピトープ、(4)配列がSEQ ID NO:8の103位~192位、201位~292位、または151位~240位のアミノ酸に位置するエピトープから選ばれる抗原エピトープに特異的に結合する抗体であってもよい。
【0023】
上記治療方法および治療使用において、前記抗体は、以下のAまたはBまたはCまたはDの抗体であってもよく、
A.IFP35/NMIの抗原エピトープに特異的に結合する抗体、ポリペプチドまたは抗原結合フラグメントであって、前記抗原エピトープは、以下の(1)または(2)であり、(1)前記抗原エピトープは、IFP35(SEQ ID NO:2)のArg163、Asn164、Arg191、Gln194、Ile195、Gln197、Phe198、Thr199、Pro201、Gln206、Pro208、Arg210のアミノ酸部位を含み、(2)前記抗原エピトープは、NMI(SEQ ID NO:8)のArg185、Asn186、Lys215、Lys218、Lys219、Glu221、Tyr222、Pro223、Tyr225、Cys230、Arg232、Thr234のアミノ酸部位を含む、抗体、ポリペプチドまたは抗原結合フラグメント、
B.任意の上記(1)の抗原エピトープの少なくとも一つのアミノ酸残基に結合し、かつIFP35の活性を阻害することができる、抗体または小分子またはポリペプチド物質、
C、任意の上記(2)の抗原エピトープの少なくとも一つのアミノ酸残基に結合し、かつNMIの活性を阻害することができる、抗体または小分子またはポリペプチド物質、
D、軽鎖可変領域および重鎖可変領域を有する35NIDmAb抗体であって、重鎖可変領域は、CDR1、CDR2およびCDR3を含み、CDR1の配列は、SEQ ID NO:9(GYTFTNYG(SEQ ID NO:13))の25位~32位のアミノ酸であり、CDR2の配列は、SEQ ID NO:9(INTYTGEP(SEQ ID NO:14))の50位~57位のアミノ酸であり、CDR3の配列は、SEQ ID NO:9(YGYSWAMDY(SEQ ID NO:15))の98位~106位のアミノ酸であり、軽鎖可変領域は、CDR1、CDR2およびCDR3を含み、CDR1の配列は、SEQ ID NO:10(SSSVSY(SEQ ID NO:16))の26位~31位のアミノ酸であり、CDR2の配列は、SEQ ID NO:10(DTS(SEQ ID NO:17))の49位~51位のアミノ酸であり、CDR3の配列は、SEQ ID NO:10(WSSNPPI(SEQ ID NO:18))の90位~96位のアミノ酸である、抗体。
【0024】
上記抗体、ポリペプチドまたは抗原結合フラグメントにおいて、かかる抗体は、CDRを除く35NIDmAbの残りの位置のアミノ酸を突然変異させて得られる抗体であり、あるいは、かかる抗体は、35NIDmAbをヒト化して得られる抗体である。
【0025】
当業者は、当技術分野の一般的な知識及び一般的な方法に従って、CDR配列を除いて、上記のいずれか一つの抗体の他のアミノ酸を修飾および突然変異させて得られた抗体も、本発明の保護範囲に属する。
【0026】
前記ヒト化抗体は、AE001-H1+L1、AE001-H2+L2またはAE001-H3+L3の少なくとも一つである。これらの三つの抗体は、すべて軽鎖可変領域および重鎖可変領域を有し、重鎖可変領域は、CDR1、CDR2およびCDR3を含み、CDR1の配列は、SEQ ID NO:9(GYTFTNYG)の25位~32位のアミノ酸であり、CDR2の配列は、SEQ ID NO:9(INTYTGEP)の50位~57位のアミノ酸であり、CDR3の配列は、SEQ ID NO:9(YGYSWAMDY)の98位~106位のアミノ酸であり、軽鎖可変領域は、CDR1、CDR2およびCDR3を含み、CDR1の配列は、SEQ ID NO:10(SSSVSY)の26位~31位のアミノ酸であり、CDR2の配列は、SEQ ID NO:10(DTS)の49位~51位のアミノ酸であり、CDR3の配列は、SEQ ID NO:10(WSSNPPI)の90位~96位のアミノ酸である。
【0027】
AE001-H1+L1の重鎖定常領域の配列は、AE001H1(SEQ ID NO:1)であり、軽鎖定常領域の配列は、AE001L1(SEQ ID NO:3)である。
【0028】
AE001-H2+L2の重鎖定常領域の配列は、AE001H2(SEQ ID NO:5)であり、軽鎖定常領域の配列は、AE001L2(SEQ ID NO:7)である。
【0029】
AE001-H3+L3の重鎖定常領域の配列は、AE001H3(SEQ ID NO:11)であり、軽鎖定常領域の配列は、AE001L3(SEQ ID NO:12)である。
【0030】
上記の抗体、ポリペプチドまたは抗原結合フラグメントにおいて、前記抗体は、35NIDmAbまたはそのヒト化抗体における少なくとも一つのCDRのアミノ酸残基を突然変異させることによって得られる抗体である。
【0031】
上記の抗体、ポリペプチドまたは抗原結合フラグメントにおいて、前記35NIDmAbまたはそのヒト化抗体における少なくとも一つのCDRの突然変異は、
35NIDmAbの重鎖可変領域のCDR1の25、26、27、28、29および/または32位のアミノ酸残基での突然変異、即ち、(25 GYTFTNYG 32)において、NY以外のアミノ酸位置での突然変異、
35NIDmAbの重鎖可変領域のCDR2の50、52、55、56および/または57位のアミノ酸残基での突然変異、即ち、(50 INTYTGEP 57)において、下線付きアミノ酸以外のアミノ酸位置での突然変異、
35NIDmAbの重鎖可変領域のCDR3の98、99、101、103、104、105および/または106位のアミノ酸残基での突然変異、即ち、(98 YGYSWAMDY 106)において、下線付きアミノ酸以外のアミノ酸位置での突然変異、
35NIDmAbの軽鎖可変領域のCDR1の26、27、28および/または29位のアミノ酸残基での突然変異、即ち、(26 SSSVSY 31)において、下線付きアミノ酸以外のアミノ酸位置での突然変異、
35NIDmAbの軽鎖可変領域のCDR3の90、91、94、95および/または96位のアミノ酸残基での突然変異、即ち、(90 WSSNPPI 96)において、下線付きアミノ酸以外のアミノ酸位置での突然変異のうちの少なくとも一つの突然変異を行うことを含む。
【0032】
35NIDmAbの抗体重鎖可変領域のCDR1配列(25 GYTFTNYG 32)において、抗原に結合する二つのアミノ酸は、主にAsn30およびTyr31であり、抗体の重鎖可変領域のCDR2配列(50 INTYTGEP 57)において、抗原に結合する三つのアミノ酸は、主にAsn51、Tyr53およびThr54であり、抗体の重鎖可変領域のCDR3配列(98 YGYSWAMDY 106)において、抗原に結合する二つのアミノ酸は、主にTyr100およびTrp102である。上記の残基は、抗体の重鎖と抗原との間の相互作用残基と呼ぶことができる。他のCDR残基は、抗原IFP35に結合しないか、またはほとんど結合しないため、抗体活性に大きな影響を与えない抗体を取得するために変更を加える方が簡単である。従って、抗原と相互作用しない上記の前記CDRの残基のいずれかを変更しても、IFP35またはNMIの抗原-抗体複合体構造の対応するエピトープアミノ酸との結合を維持することができ、本発明の保護範囲内に属するべきである。
【0033】
抗体の軽鎖可変領域のCDR1配列(26 SSSVSY 31)において、抗原に結合する主なアミノ酸は、Ser30およびTyr31であり、抗体の軽鎖可変領域のCDR2配列(49 DTS 51)において、抗原に結合する主なアミノ酸は、Asp49であり、抗体の軽鎖可変領域のCDR3配列(90 WSSNPPI 96)において、抗原に結合する主なアミノ酸は、Ser92およびAsn93である。上記の残基は、抗体の重鎖と抗原との間の相互作用残基と呼ぶことができる。他のCDR残基は、抗原IFP35に結合しないか、またはほとんど結合しないため、抗体活性に大きな影響を与えない抗体を取得するために変更を加える方が簡単である。従って、抗原と相互作用しない上記の前記CDRの残基のいずれかを変更しても、IFP35またはNMIの抗原-抗体複合体構造の対応するエピトープアミノ酸との結合を維持することができ、本発明の保護範囲内に属するべきである。
【0034】
上記抗体、ポリペプチドまたは抗原結合フラグメントにおいて、前記35NIDmAbまたはそのヒト化抗体における少なくとも一つのCDRの突然変異は、
35NIDmAbの重鎖可変領域のCDR1の30および/または31位のアミノ酸残基での突然変異、
35NIDmAbの重鎖可変領域のCDR2の51、53および/または54位のアミノ酸残基での突然変異、
35NIDmAbの重鎖可変領域のCDR3の100および/または102位のアミノ酸残基での突然変異、
35NIDmAbの軽鎖可変領域のCDR1の30および/または31位のアミノ酸残基での突然変異、
35NIDmAbの軽鎖可変領域のCDR3の92および/または93位のアミノ酸残基での突然変異のうちの少なくとも一つの突然変異を行うことを含む。
【0035】
前記抗体または抗原結合フラグメントは、抗原IFP35およびNMIの識別に関与する、35NIDmAbまたはそのヒト化抗体における重鎖のAsn30、Tyr31、Asn51、Tyr53、Thr54、Tyr100およびTrp102位のアミノ酸残基のうちの2つ以上のアミノ酸残基を識別することができる抗体または抗原結合フラグメントである。
【0036】
前記抗体または抗原結合フラグメントは、抗原IFP35およびNMIの識別に関与する、35NIDmAbまたはそのヒト化抗体における軽鎖のSer30、Tyr31、Asp49、Ser92およびAsn93位のアミノ酸残基のうちの2つ以上のアミノ酸残基を識別することができる抗体または抗原結合フラグメントである。
【0037】
抗体の重鎖可変領域のCDR1配列(25 GYTFTNYG 32)において、抗原に結合する二つのアミノ酸は、主にAsn30およびTyr31であり、抗体の重鎖可変領域のCDR2配列(50 INTYTGEP 57)において、抗原に結合する三つのアミノ酸は、主にAsn51、Tyr53およびThr54であり、抗体の重鎖可変領域のCDR3配列(98 YGYSWAMDY 106)において、抗原に結合する二つのアミノ酸は、主にTyr100およびTrp102である。従って、いくつかのアミノ酸を変更することは、抗原―抗体の結合能に有益である可能性がある。上記の残基は、抗体の重鎖と抗原との間の相互作用残基と呼ぶことができる。抗原と相互作用するこれらの残基のいずれか一つまたは二つまたは三つを変更しても、IFP35またはNMIの抗原-抗体複合体構造の対応するエピトープアミノ酸との結合を維持し、本発明の保護範囲内に属するべきである。
【0038】
抗体の軽鎖可変領域のCDR1配列(26 SSSVSY 31)において、抗原に結合する主なアミノ酸は、Ser30およびTyr31であり、抗体の軽鎖可変領域のCDR2配列(49 DTS 51)において、抗原に結合する主なアミノ酸は、Asp49であり、抗体の軽鎖可変領域のCDR3配列(90 WSSNPPI 96)において、抗原に結合する主なアミノ酸は、Ser92およびAsn93である。従って、これらのアミノ酸の変化のいくつかは、抗原―抗体の結合能に有益である可能性がある。上記の残基は、抗体の軽鎖と抗原との間の相互作用残基と呼ぶことができる。抗原と相互作用するこれらの残基のいずれか一つまたは二つまたは三つを変更しても、IFP35またはNMIの抗原-抗体複合体構造の対応するエピトープアミノ酸との結合を維持し、本発明の保護範囲内に属するべきである。
【0039】
上記抗体、ポリペプチドまたは抗原結合フラグメントにおいて、前記35NIDmAbまたはそのヒト化抗体における少なくとも一つのCDRを突然変異させて得られる抗体は、AE001-5、AE001-6、AE001-7、AE001-8、AE001-9のうちの少なくとも一つである。
【0040】
AE001-5、AE001-6、AE001-7、AE001-8、AE001-9の重鎖可変領域のCDRおよび軽鎖可変領域のCDRは、以下の表に示される。
【0041】
【0042】
【0043】
AE001-5、AE001-6、AE001-7、AE001-8、AE001-9の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDRを除く配列は、当業者がその所望に応じて改変(遺伝子操作)することができる。具体的な例として、AE001-5、AE001-6、AE001-7、AE001-8、AE001-9の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDRを除く配列はまた35NIDmAb抗体の対応する配列と同じであってもよい。
【0044】
AE001-5、AE001-6、AE001-7、AE001-8、AE001-9の定常領域の配列は、当業者がその所望に応じて改変することができる。具体的な例として、AE001-5、AE001-6、AE001-7、AE001-8、AE001-9の定常領域の配列は、上記AE001-H1+L1、AE001-H2+L2またはAE001-H3+L3の定常領域の配列と同じであってもよい。
【0045】
上記治療方法および治療使用において、前記慢性炎症性疾患は、多発性硬化症、関節炎、関節リウマチ、乾癬(鱗屑癬)、各種腸炎(IBDなど)、喘息、慢性閉塞性肺および全身性紅斑性狼瘡、慢性肝炎、慢性腎炎、慢性膵炎、脳炎、悪性腫瘍、白血病、アルツハイマー病、パーキンソン症候群などからなる群より選ばれる。
【0046】
上記治療方法および治療使用において、関節リウマチ(Rheumatoid arthritis:RA)、変形性関節症(OSTEOARTHRITIS:OA)、多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)、アテローム性動脈硬化症(atherosclerosis)、心筋梗塞(Myocardial Infarction)、慢性閉塞性肺(COPD)、慢性腎炎、慢性肝炎、慢性膵炎、2型糖尿病(type 2 diabetes)、全身性紅斑性狼瘡(Systemic lupus erythematosus:SLE)、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease)、パーキンソン病(Parkinson’s disease:PD)悪性腫瘍、喘息(asthma)、アレルギー性疾患(Allergic diseases)、心血管疾患(Cardiovascular diseases)、筋骨格疾患(Musculoskeletal diseases)、炎症性腸炎(IBD)、肥満と糖尿病(Obesity and diabetes)、網膜炎症性疾患(AMD)、歯周炎(Periodontitis)、ブドウ膜炎(Uveitis)などを含む前記慢性炎症性疾患は、分泌されたIFP35/NMI炎症因子の異常量によって作用が発揮される。
【0047】
慢性炎症性疾患の病理学的過程には、多くの炎症因子が関与している。免疫細胞等によって細胞外マトリックス(血液、体液等)に分泌されて炎症反応作用を促進する炎症因子として、IFP35および/またはNMIは、細胞によって細胞外マトリックス(血液、体液等)に分泌され、炎症反応を活性化作用を発揮することもできる。本発明で例示される多発性硬化症は、慢性炎症性疾患の典型的な代表例である。多発性硬化症の発生は、ミクログリアと密接に関連している。ミクログリアは、神経系の免疫細胞(マクロファージ)の一部の役割を果たし、炎症因子を放出し、炎症反応の発生を促進することができる。この現象は、インビボの他の組織および臓器が炎症反応を起こしている際にマクロファージ等の免疫細胞によって引き起こされる炎症反応に相当する。本発明の発明者らは、LPS等の誘導状況下で、ミクログリアが細胞培地にIFP35/NMIを分泌し、多発性硬化症を罹患した動物の血清中のIFP35/NMI含有量も増加することを見出した。IFP35/NMIが多発性硬化症に関連していることを示す。全体的には、マクロファージ、ミクログリア等の免疫細胞は、炎症因子を放出して炎症反応を引き起こし、IFP35/NMIがそのうちの炎症因子として、様々な慢性炎症性疾患を引き起こすことができる。本発明は、以下の技術案A、B、CまたはDに記載のような慢性炎症性疾患を診断ための方法および使用を提供しており、
【0048】
技術案Aは、IFP35および/またはNMIを検出する物質の、慢性炎症性疾患を診断するための製品の製造における使用であり、
前記IFP35および/またはNMIを検出する物質は、
(1)生体脊髄組織におけるIFP35/NMIの発現量が有意に上昇しているかどうかを検出する物質、
(2)IFP35/NMIが生体の血液または体液(例えば、脳脊髄液)に分泌されているかどうかを検出する物質、
(3)生体の血液または体液(例えば、脳脊髄液)にIFP35/NMIが含まれているかどうかを検出し、ならびに/あるいは生体の血液または体液(例えば、脳脊髄液)中のIFP35/NMIの量を検出する物質、
(4)臨床上の炎症性疾患の医学的診断を補助するために、生体の血液または体液(例えば、脳脊髄液)に分泌されるIFP35/NMIの量を検出する物質、および
(5)分泌されたIFP35/NMIと生体の他の炎症因子(例えば、TNF、IL1、IL6)およびバイオマーカー(プロカルシトニン(PCT)、C反応性タンパク質(CRP))の発現増加と血液中への分泌量増加(分泌される含有量の増加)との間の差異および相関関係を検出する物質からなる群より選ばれる少なくとも一つである。
【0049】
技術案Bは、疾患(病態)診断使用の臨床検出製品が血清および体液に分泌されるIFP35および/またはNMIを検出することであり、
前記血清および体液に分泌されるIFP35および/またはNMIを検出するための臨床使用製品は、蛍光発光臨床検出試薬(キット)、化学発光臨床検出試薬(キット)、Elisa検出試薬(キット)、PCR臨床検出試薬(キット)のうちの少なくとも一つを含む。
分泌されたIFP35/NMIと、生体の他の炎症因子(例えば、TNF、IL1、IL6)およびバイオマーカー(プロカルシトニン(PCT)、C反応性タンパク質(CRP))の発現増加および血液中への分泌量増加との間の差異および相関関係を検出する。
【0050】
技術案Cは、慢性炎症性疾患の診断使用のための臨床検出製品が血清および体液に分泌されるIFP35および/またはNMIを検出することであり、
前記血清および体液に分泌されるIFP35および/またはNMIを検出するための臨床使用製品は、蛍光発光臨床検出試薬(キット)、化学発光臨床検出試薬(キット)、Elisa検出試薬(キット)、PCR臨床検出試薬(キット)のうちの少なくとも一つを含む。
分泌されたIFP35/NMIと、生体の他の炎症因子(例えば、TNF、IL1、IL6)およびバイオマーカー(プロカルシトニン(PCT)、C反応性タンパク質(CRP))の発現増加および血液中への分泌量増加との間の差異および相関関係を検出する。
【0051】
技術案Dは、被験生体が慢性炎症性疾患を罹患しているかどうかを診断する方法であり、
(1)生体組織(例えば脊髄組織など)におけるIFP35/NMIの発現量が有意に上昇しているかどうかを検出するステップ、
(2)IFP35/NMIが生体の血液または体液(例えば、脳脊髄液)に分泌されているかどうかを検出するステップ、
(3)生体の血液または体液(例えば、脳脊髄液)にIFP35/NMIが含まれているかどうかを検出し、ならびに/あるいは生体の血液または体液(例えば、脳脊髄液)中のIFP35/NMIの量を検出するステップ、
(4)臨床上の炎症性疾患の医学的診断を補助するために、生体の血液または体液(例えば、脳脊髄液)に分泌されるIFP35/NMIの量を検出するステップ、および
(5)分泌されたIFP35/NMIと、生体の他の炎症因子(例えば、TNF、IL1、IL6)およびバイオマーカー(プロカルシトニン(PCT)、C反応性タンパク質(CRP))の発現増加および血液中への分泌量増加との間の差異および相関関係を検出するステップからなる群より選ばれる少なくとも一つのステップを含む。
【0052】
上記の診断方法および使用において、被験生体が慢性炎症性疾患を罹患しているかどうかという診断は、
(1)被験生体組織(例えば脊髄組織など)におけるIFP35/NMIの発現量が有意に上昇していると、被験生体が慢性炎症性疾患を罹患していると判断し、
(2)IFP35/NMIが生体の血液または体液(例えば、脳脊髄液)に分泌されていることが検出されると、被験生体が慢性炎症性疾患を罹患していると判断し、
(3)生体の血液または体液(例えば、脳脊髄液)にIFP35/NMIが含有されることが検出されると、被験生体が慢性炎症性疾患を罹患していると判断し、
(4)IFP35/NMI発現の増加が、生体の他の炎症因子(インターフェロン、TNF、IL1、IL6等)の発現および血液または体液への分泌と一致するか、または臨床的に特性の特徴があると、被験生体が慢性炎症性疾患を罹患していると判断する判断標準の少なくとも一つに従って診断することができる。
【0053】
上記の診断方法および使用において、前記血清および体液に分泌されるIFP35および/またはNMIを検出するための臨床使用製品は、蛍光発光臨床検出試薬(キット)、化学発光臨床検出試薬(キット)、Elisa検出試薬(キット)、PCR臨床検出試薬(キット)のうちの少なくとも一つを含む。
【0054】
上記の診断方法および使用において、IFP35および/またはNMIの量および/または活性の検出は、DNA、RNAまたはタンパク質レベルから検出することができる。
【0055】
上記の診断方法および使用において、DNAおよび/またはRNAレベルの検出は、特異的核酸プローブを使用することができ、PCRプライマーまたはチップなどを使用することもできる。
【0056】
上記の診断方法および使用において、タンパク質レベルの検出は抗体を使用する。
【0057】
上記の診断方法および使用において、現在、臨床上に一般的に使用される炎症性疾患の検出指標は、プロカルシトニン(PCT)、C反応性タンパク質(CRP)、TNFおよびIL6などを含む。しかし、これらの検出指標には制限がある。例えば、PCTを使用してウイルスによる感染を示すことはできない。さらに、様々な疾患について、多種類の炎症因子は、様々な患者での表現が異なる。従って、一方で、他の適切な検出指標を開発必要があり、もう一方で、既知の炎症因子を一般的にテストする必要がある。慢性炎症性疾患の場合、IFP35およびNMIを臨床的に検出して、他の指標と比較することができる。
【0058】
上記の診断方法および使用において、マウスの脊髄組織におけるIFP35/NMIの発現量が有意に上昇しているかどうかを検出するか、またはIFP35/NMIがマウスの血液または体液(例えば、脳脊髄液)に分泌されているかどうかを検出するか、またはIFP35/NMIとマウスにおける他の炎症因子(例えば、TNF、IL1、IL6)の発現増加および血液への分泌含有量の増加との間の相関関係を検出することにより、マウスにMSが罹患しているかどうかを診断するのに役立てることができる。マウス組織におけるIFP35/NMIの発現量異常に増加し、IFP35/NMIがマウスの血液または体液(例えば、脳脊髄液)に異常に分泌されるか、またはIFP35/NMIの発現増加が、マウスの他の炎症因子(インターフェロン、TNF、IL1、IL6等)の発現および血液に分泌されるのと一致して、マウスの歩行の変化、手足の麻痺等の明らかな外的症状を引き起こすと、基本的にマウスがMSを罹患していると診断することができる。
【0059】
上記の診断方法および使用において、前記検出物質は、以下のA、B、CまたはDに示す抗体、ポリペプチドまたは抗原結合フラグメントである。
【0060】
A.IFP35/NMIの抗原エピトープに特異的に結合する抗体、ポリペプチドまたは抗原結合フラグメントであって、前記抗原エピトープは、以下の(1)または(2)であり、(1)前記抗原エピトープは、IFP35のArg163、Asn164、Arg191、Gln194、Ile195、Gln197、Phe198、Thr199、Pro201、Gln206、Pro208、Arg210のアミノ酸部位を含み、(2)前記抗原エピトープは、NMIのArg185、Asn186、Lys215、Lys218、Lys219、Glu221、Tyr222、Pro223、Tyr225、Cys230、Arg232、Thr234等のアミノ酸部位を含む、抗体、ポリペプチドまたは抗原結合フラグメント。
【0061】
B.任意の上記(1)の抗原エピトープの少なくとも一つのアミノ酸残基に結合し、かつIFP35の活性を阻害することができる、抗体または小分子またはポリペプチド物質。
【0062】
C.任意の上記(2)の抗原エピトープの少なくとも一つのアミノ酸残基に結合し、かつNMIの活性を阻害することができる、抗体または小分子またはポリペプチド物質。
【0063】
D.以下の35NIDmAb抗体であって、軽鎖可変領域および重鎖可変領域を有し、重鎖可変領域は、CDR1、CDR2およびCDR3を含み、CDR1の配列は、SEQ ID NO:9(GYTFTNYG)の25位~32位のアミノ酸であり、CDR2の配列は、SEQ ID NO:9(INTYTGEP)の50位~57位のアミノ酸であり、CDR3の配列は、SEQ ID NO:9(YGYSWAMDY)の98位~106位のアミノ酸であり、軽鎖可変領域は、CDR1、CDR2およびCDR3を含み、CDR1の配列は、SEQ ID NO:10(SSSVSY)の26位~31位のアミノ酸であり、CDR2の配列は、SEQ ID NO:10(DTS)の49位~51位のアミノ酸であり、CDR3の配列は、SEQ ID NO:10(WSSNPPI)の90位~96位のアミノ酸である、抗体。
【0064】
上記の診断における抗体、ポリペプチドまたは抗原結合フラグメントは、CDRを除く35NIDmAbの残りの位置のアミノ酸を突然変異させることによって得られる抗体であるか、あるいは、前記抗体は、35NIDmAbをヒト化することによって得られる抗体である。
【0065】
当業者は、当技術の一般的な知識及び一般的な方法に従って、上記抗体のいずれか一つのCDR配列を除く他のアミノ酸を修飾および突然変異させて得られた抗体も、本発明の保護範囲に属する。
【0066】
前記ヒト化抗体は、AE001-H1+L1、AE001-H2+L2またはAE001-H3+L3の少なくとも一つである。これらの三つの抗体は、すべて軽鎖可変領域および重鎖可変領域を有し、重鎖可変領域は、CDR1、CDR2およびCDR3を含み、CDR1の配列は、SEQ ID NO:9(GYTFTNYG)の25位~32位のアミノ酸であり、CDR2の配列は、SEQ ID NO:9(INTYTGEP)の50位~57位のアミノ酸であり、CDR3の配列は、SEQ ID NO:9(YGYSWAMDY)の98位~106位のアミノ酸であり、軽鎖可変領域は、CDR1、CDR2およびCDR3を含み、CDR1の配列は、SEQ ID NO:10(SSSVSY)の26位~31位のアミノ酸であり、CDR2の配列は、SEQ ID NO:10(DTS)の49位~51位のアミノ酸であり、CDR3の配列は、SEQ ID NO:10(WSSNPPI)の90位~96位のアミノ酸である。
【0067】
AE001-H1+L1の重鎖定常領域の配列は、AE001H1(SEQ ID NO:1)であり、軽鎖定常領域の配列は、AE001L1(SEQ ID NO:3)である。
【0068】
AE001-H2+L2の重鎖定常領域の配列は、AE001H2(SEQ ID NO:5)であり、軽鎖定常領域の配列は、AE001L2(SEQ ID NO:7)である。
【0069】
AE001-H3+L3の重鎖定常領域の配列は、AE001H3(SEQ ID NO:11)であり、軽鎖定常領域の配列は、AE001L3(SEQ ID NO:12)である。
【0070】
上記の診断における抗体、ポリペプチドまたは抗原結合フラグメントにおいて、前記抗体は、35NIDmAbまたはそのヒト化抗体における少なくとも一つのCDRのアミノ酸残基を突然変異させることによって得られる抗体である。
【0071】
上記の診断における抗体、ポリペプチドまたは抗原結合フラグメントにおいて、前記35NIDmAbまたはそのヒト化抗体における少なくとも一つのCDRの突然変異は、
35NIDmAbの重鎖可変領域のCDR1の25、26、27、28、29および/または32位のアミノ酸残基での突然変異、即ち、(25 GYTFTNYG 32)において、NY以外のアミノ酸位置での突然変異、
35NIDmAbの重鎖可変領域のCDR2の50、52、55、56および/または57位のアミノ酸残基での突然変異、即ち、(50 INTYTGEP 57において)、下線付きアミノ酸以外のアミノ酸位置での突然変異、
35NIDmAbの重鎖可変領域のCDR3の98、99、101、103、104、105および/または106位のアミノ酸残基での突然変異、即ち、(98 YGYSWAMDY 106)において、下線付きアミノ酸以外のアミノ酸位置での突然変異、
35NIDmAbの軽鎖可変領域のCDR1の26、27、28および/または29位のアミノ酸残基での突然変異、即ち、(26 SSSVSY 31)において、下線付きアミノ酸以外のアミノ酸位置での突然変異、
35NIDmAbの軽鎖可変領域のCDR3の90、91、94、95および/または96位のアミノ酸残基での突然変異、即ち、(90 WSSNPPI 96)において下線付きアミノ酸以外のアミノ酸位置での突然変異のうちの少なくとも一つの突然変異を行うことを含む。
【0072】
35NIDmAbの抗体重鎖可変領域のCDR1配列(25 GYTFTNYG 32)において、抗原に結合する二つのアミノ酸は、主にAsn30およびTyr31であり、抗体の重鎖可変領域のCDR2配列(50 INTYTGEP 57)において、抗原に結合する三つのアミノ酸は、主にAsn51、Tyr53およびThr54であり、抗体の重鎖可変領域のCDR3配列(98 YGYSWAMDY 106)において、抗原に結合する二つのアミノ酸は、主にTyr100およびTrp102である。上記の残基は、抗体の重鎖と抗原との間の相互作用残基と呼ぶことができる。他のCDR残基は、抗原IFP35に結合しないか、またはほとんど結合しないため、抗体活性に大きな影響を与えない抗体を取得するために変更を加える方が簡単である。従って、抗原と相互作用しない上記の前記CDRの残基のいずれかを変更しても、IFP35またはNMIの抗原-抗体複合体構造の対応するエピトープアミノ酸との結合を維持することができ、本発明の保護範囲内に属するべきである。
【0073】
抗体の軽鎖可変領域のCDR1配列(26 SSSVSY 31)において、抗原に結合する主なアミノ酸は、Ser30およびTyr31であり、抗体の軽鎖可変領域のCDR2配列(49 DTS 51)において、抗原に結合する主なアミノ酸は、Asp49であり、抗体の軽鎖可変領域のCDR3配列(90 WSSNPPI 96)において、抗原に結合する主なアミノ酸は、Ser92およびAsn93である。上記の残基は、抗体の重鎖と抗原との間の相互作用残基と呼ぶことができる。他のCDR残基は、抗原IFP35に結合しないか、またはほとんど結合しないため、抗体活性に大きな影響を与えない抗体を取得するために変更を加える方が簡単である。従って、抗原と相互作用しない上記の前記CDRの残基のいずれかを変更しても、IFP35またはNMIの抗原-抗体複合体構造の対応するエピトープアミノ酸との結合を維持することができ、本発明の保護範囲内に属するべきである。
【0074】
上記の診断における抗体、ポリペプチドまたは抗原結合フラグメントにおいて、前記35NIDmAbまたはそのヒト化抗体における少なくとも一つのCDRの突然変異は、
35NIDmAbの重鎖可変領域のCDR1の30および/または31位のアミノ酸残基での突然変異、
35NIDmAbの重鎖可変領域のCDR2の51、53および/または54位のアミノ酸残基での突然変異、
35NIDmAbの重鎖可変領域のCDR3の100および/または102位のアミノ酸残基での突然変異、
35NIDmAbの軽鎖可変領域のCDR1の30および/または31位のアミノ酸残基での突然変異、
35NIDmAbの軽鎖可変領域のCDR3の92および/または93位のアミノ酸残基での突然変異のうちの少なくとも一つの突然変異を行うことを含む。
【0075】
上記の診断における抗体、ポリペプチドまたは抗原結合フラグメントにおいて、前記抗体または抗原結合フラグメントは、抗原IFP35およびNMIの識別に関与する、35NIDmAbまたはそのヒト化抗体における重鎖のAsn30、Tyr31、Asn51、Tyr53、Thr54、Tyr100およびTrp102の位置のアミノ酸残基のうちの2つ以上のアミノ酸残基を識別することができる抗体または抗原結合フラグメントである。
【0076】
上記の診断における抗体、ポリペプチドまたは抗原結合フラグメント,抗体または抗原結合フラグメントは、抗原IFP35およびNMIの識別に関与する、35NIDmAbまたはそのヒト化抗体における軽鎖のSer30、Tyr31、Asp49、Ser92およびAsn93位のアミノ酸残基のうちの2つ以上のアミノ酸残基を識別することができる抗体または抗原結合フラグメントである。
【0077】
抗体の重鎖可変領域のCDR1配列(25 GYTFTNYG 32)において、抗原に結合する二つのアミノ酸は、主にAsn30およびTyr31であり、抗体の重鎖可変領域のCDR2配列(50 INTYTGEP 57)において、抗原に結合する三つのアミノ酸は、主にAsn51、Tyr53およびThr54であり、抗体の重鎖可変領域のCDR3配列(98 YGYSWAMDY 106)において、抗原に結合する二つのアミノ酸は、主にTyr100およびTrp102である。従って、いくつかのアミノ酸を変更することは、抗原―抗体の結合能に有益である可能性がある。上記の残基は、抗体の重鎖と抗原との間の相互作用残基と呼ぶことができる。抗原と相互作用するこれらの残基のいずれか一つまたは二つまたは三つを変更しても、IFP35またはNMIの抗原-抗体複合体構造の対応するエピトープアミノ酸との結合を維持し、本発明の保護範囲内に属するべきである。
【0078】
抗体の軽鎖可変領域のCDR1配列(26 SSSVSY 31)において、抗原に結合する主なアミノ酸は、Ser30およびTyr31であり、抗体の軽鎖可変領域のCDR2配列(49 DTS 51)において、抗原に結合する主なアミノ酸は、Asp49であり、抗体の軽鎖可変領域のCDR3配列(90 WSSNPPI 96)において、抗原に結合する主なアミノ酸は、Ser92およびAsn93である。従って、これらのアミノ酸の変化のいくつかは、抗原―抗体の結合能に有益である可能性がある。上記の残基は、抗体の軽鎖と抗原との間の相互作用残基と呼ぶことができる。抗原と相互作用するこれらの残基のいずれか一つまたは二つまたは三つを変更しても、IFP35またはNMIの抗原-抗体複合体構造の対応するエピトープアミノ酸との結合を維持し、本発明の保護範囲内に属するべきである。
【0079】
上記の診断における抗体、ポリペプチドまたは抗原結合フラグメントにおいて、前記35NIDmAbまたはそのヒト化抗体における少なくとも一つのCDRを突然変異させて得られる抗体は、AE001-5、AE001-6、AE001-7、AE001-8、AE001-9のうちの少なくとも一つである。
【0080】
AE001-5、AE001-6、AE001-7、AE001-8、AE001-9の重鎖可変領域のCDRおよび軽鎖可変領域のCDRは、以下の表に示される。
【0081】
【0082】
【0083】
AE001-5、AE001-6、AE001-7、AE001-8、AE001-9の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDRを除く配列は、当業者がその所望に応じて改変することができる。具体的な例として、AE001-5、AE001-6、AE001-7、AE001-8、AE001-9の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDRを除く配列はまた35NIDmAb抗体の対応する配列と同じであってもよい。
【0084】
AE001-5、AE001-6、AE001-7、AE001-8、AE001-9の定常領域の配列は、当業者がその所望に応じて改変することができる。具体的な例として、AE001-5、AE001-6、AE001-7、AE001-8、AE001-9の定常領域の配列は、上記AE001-H1+L1、AE001-H2+L2またはAE001-H3+L3の定常領域の配列と同じであってもよい。
【0085】
上記の診断方法および使用において、前記慢性炎症性疾患は、IFP35/NMIの血液または体液への異常分泌によって引き起こされる炎症反応の増加に関連しているものであり、かつ、関節炎、関節リウマチ、乾癬(鱗屑癬)、各種腸炎(IBDなど)、多発性硬化症、喘息、慢性閉塞性肺、全身性紅斑性狼瘡、慢性肝炎、慢性腎炎、慢性膵炎、脳炎、悪性腫瘍、白血病、アルツハイマー病、パーキンソン症候群、アレルギー性疾患、心血管疾患、筋骨格疾患、炎症性腸炎、肥満と糖尿病、網膜炎症性疾患、歯周炎、ブドウ膜炎などを含む。
【0086】
上記の診断方法および使用において、前記慢性炎症性疾患は、IFP35/NMIの血液または体液への異常分泌によって引き起こされる炎症反応の増加に関連しているものであり、かつ、関節炎、関節リウマチ、乾癬(鱗屑癬)、各種腸炎(IBDなど)、多発性硬化症、喘息、慢性閉塞性肺、全身性紅斑性狼瘡、慢性肝炎、慢性腎炎、慢性膵炎、脳炎、悪性腫瘍、白血病、アルツハイマー病、パーキンソン症候群、アレルギー性疾患、炎症性腸炎などを含む。前記慢性炎症は、多種類の炎症因子に関連していることがすでに繰り返して証明された。
【0087】
上記の診断方法および使用において、前記診断は、早期診断、病態診断および予後判定である。
【0088】
本発明は、IFP35の抗原エピトープをさらに提供する。IFP35の抗原エピトープは、IFP35のArg163、Asn164、Arg191、Gln194、Ile195、Gln197、Phe198、Thr199、Pro201、Gln206、Pro208、Arg210のうちの少なくとも一つのアミノ酸残基である。
【0089】
本発明は、NMIの抗原エピトープをさらに提供する。NMIの抗原エピトープは、NMIのArg185、Asn186、Lys215、Lys218、Lys219、Glu221、Tyr222、Pro223、Tyr225、Cys230、Arg232、Thr234のうちの少なくとも一つのアミノ酸残基である。
【0090】
本発明は、上記エピトープに基づいて抗体を製造するための方法をさらに提供する。
【0091】
本発明でさらに提供されるIFP35またはNMIの抗体を製造するための方法は、特許請求の範囲に記載の抗原エピトープ情報のいずれかを使用することによって、IFP35またはNMIの抗体を製造することである。
【0092】
上記IFP35またはNMIの抗体を製造するための方法は、以下の35NIDmAb抗体-IFP35/NMI抗原複合体の構造情報および配列情報に基づいて、抗体配列を改変して、製造して改変されたIFP35またはNMIの抗体を得ることである。
【0093】
前記35NIDmAb抗体-IFP35/NMI抗原複合体の構造情報は、次のとおりである。
【0094】
抗体35NIDmAbの重鎖可変領域のCDR1配列(25 GYTFTNYG 32)において、抗原に結合する二つのアミノ酸は、主にAsn30およびTyr31であり、抗体の重鎖可変領域のCDR2配列(50 INTYTGEP 57)において、抗原に結合する三つのアミノ酸は、主にAsn51、Tyr53およびThr54であり、抗体の重鎖可変領域のCDR3配列(98 YGYSWAMDY 106)において、抗原に結合する二つのアミノ酸は、主にTyr100およびTrp102である。
【0095】
抗体35NIDmAbの軽鎖可変領域のCDR1配列(26 SSSVSY 31)において、抗原に結合する主なアミノ酸は、Ser30およびTyr31であり、抗体の軽鎖可変領域のCDR2配列(49 DTS 51)において、抗原に結合する主なアミノ酸は、Asp49であり、抗体の軽鎖可変領域のCDR3配列(90 WSSNPPI 96)において、抗原に結合する主なアミノ酸は、Ser92およびAsn93である。
【0096】
当業者は、特定の抗原エピトープ構造に従って、既存の元の抗体を設計および改変するのと助けることができることを一般的に知っている。元の抗体は、一般的に様々なスクリーニング技術によって得られる。エピトープ(抗原决定基)を知ることは、このフラグメントを直接使用して抗体をスクリーニングすることもできる。
【0097】
上記の抗体-抗原複合体の構造情報および配列比較情報において、(1)抗原の表面にあるアミノ酸残基を直感的にみることができ、ほとんどの抗原决定基が抗原の表面に分布しているため、これらの表面残基は、抗原决定基を見つけるのに役立ち、(2)抗原と抗体との相互作用の残基を確認できるため、抗原と抗体アミノ酸残基との間の相互作用の特徴を分析し、特徴的なアミノ酸残基を改変、設計し、抗体を最適化するのに役たち、(3)抗体の改変を導くことにより、他の相同タンパク質抗原に対する新しい抗体を得ることができる。
【0098】
抗体の遺伝子改変法(遺伝子組換法)は、一般的な遺伝子指向性突然変異技術に関し、改変された抗体遺伝子または抗体遺伝子フラグメント(抗体可変領域等)は、真核細胞(哺乳類細胞等)または原核細胞によって発現、精製されて、改変された精製モノクローナル抗体を得ることができる。
【0099】
上記の方法のいずれかによって製造された抗体も、本発明の保護範囲に属する。
【0100】
本明細書に記載の35NIDmAb抗体は、軽鎖可変領域および重鎖可変領域を有し、重鎖可変領域は、CDR1、CDR2およびCDR3を含み、CDR1の配列は、SEQ ID NO:9(GYTFTNYG)の25位~32位のアミノ酸であり、CDR2の配列は、SEQ ID NO:9(INTYTGEP)の50位~57位のアミノ酸であり、CDR3の配列は、SEQ ID NO:9(YGYSWAMDY)の98位~106位のアミノ酸であり、軽鎖可変領域は、CDR1、CDR2およびCDR3を含み、CDR1の配列は、SEQ ID NO:10(SSSVSY)の26位~31位のアミノ酸であり、CDR2の配列は、SEQ ID NO:10(DTS)の49位~51位のアミノ酸であり、CDR3の配列は、SEQ ID NO:10(WSSNPPI)の90位~96位のアミノ酸である。
【0101】
本明細書に記載の35NIDmAb抗体において、軽鎖可変領域の配列は、SEQ ID NO:10であり、重鎖可変領域の配列は、SEQ ID NO:9である。
【0102】
ヒトIFP35のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:2である。
マウスIFP35のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:4である。
マウスNMIのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:6である。
ヒトNMIのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:8である。
【0103】
本発明において、本発明の発明者らは、炎症性疾患のいくつかのマウスモデルを構築し、かつこれらの炎症性疾患動物の血清中のIFP35およびNMIの量を検出して、IFP35/NMIに関連する炎症性疾患を見つける。本発明の発明者らによって発見されたIFP35およびNMIは、多発性硬化症等のいくつかの慢性炎症性疾患と密接に関連しており、その高い血清含有量は、多発性硬化症の発症と密接に関連しており、IFP35/NMI遺伝子ノックアウトまたはIFP35/NMIに対する中和抗体の使用は、多発性硬化症の症状を軽減することができる。従って、本発明の発明者らは、IFP35またはNMIの活性を阻害することが、多発性硬化症等の慢性疾患を治療するために使用されると考えられる。血清または体液(例えば、脳脊髄液)中のIFP35およびNMIの量の検出は、慢性炎症性疾患の診断に使用されることができる。
【0104】
これに基づいて、本発明の発明者らは、IFP35を阻害することができる中和抗体を開発し、抗体の阻害メカニズムをより明確に開示するために、本発明の発明者らは、当該中和抗体と抗原IFP35の一つのNIDドメインとの複合体の三次元結晶構造をさらに分析した。この複合体の構造を通じて、本発明の発明者らは、抗体の構造、抗原構造および抗体識別エピトープ、抗原-抗体結合モードおよび重要な相互作用残基などを開示することができ、この構造を使用して、抗体の最適化改変を導いて、結合能および増強識別の特異性を向上させ、抗体の中和性活性を向上させることができる。さらに、IFP35およびNMI配列での高度な相同性により、これに基づいて、NMIタンパク質を識別する能力を向上させる抗体を設計および改変することにより、NMIに対する特異的抗体および同時にIFP35とNMIとに対する二重特異的抗体を開発することができる。
【0105】
慢性炎症部分:本発明の発明者らは、いくつかの炎症性疾患においてIFP35またはNMIの発現が増加するどうかを検出した。本発明の発明者らは、多発性硬化症(Multiple sclerosis:MS)疾患のマウスモデルにおいて、血清中のNMIの量が有意に上昇したことを発見した。IFP35およびNMIを遺伝子ノックアウトした後、多発性硬化症(Multiple Sclerosis)疾患のマウスの症状は、大幅に軽減された。IFP35に対する中和抗体の使用は、MSの症状を緩和し、疾患の治療または改善の目的を達成することができる。
【0106】
本発明の別の部分の内容において、本発明の発明者らは、インフルエンザウイルスおよび宿主免疫メカニズムを研究している間に、人体において新しいタイプのDAMP様炎症因子IFP35ファミリータンパク質(IFP35およびNMIを含む)を発見した。このようなタイプの因子は、正常なヒトおよびマウスの血清では非常に低いか、または検出可能なレベル(検出線より下のレベル)より低く、病原感染の場合、免疫細胞(マクロファージ)から血液に急速に放出されることができ、免疫細胞を迅速に促進して、TNF、IL6等の炎症因子を分泌し、生体の炎症反応を活性化することができ、血清中の含有量が炎症反応の程度と正の相関があり、敗血症の患者からのサンプル(試料)を検出する場合、血液中のIFP35およびNMIの量がより高いレベルに達した場合(例えば、IFPが数百pg/mLに達した場合)、患者の死亡率がより高いことが分かった。
【0107】
本発明の発明者らは、インフルエンザウイルスをモデルとして使用して、そのような炎症因子とウイルス感染との間の関係を研究し、野生型マウスと比較して、IFP35および/またはNMIファミリータンパク質遺伝子ノックアウトマウスの体重減少の状況は、大幅に緩和され、臨床症状は、有意に軽減され、インフルエンザウイルス感染による肺損傷は、有意に軽減され、生存率は、有意に向上される。IFP35および/またはNMIを使用した中和抗体の治療は、遺伝子ノックアウトと同等の効果を達成し、罹患したマウスの症状を大幅に軽減し、インフルエンザウイルス感染による死亡率を大幅に低下させることができる。
【0108】
上記の研究結果に基づいて、中国および世界が新しい新型コロナウイルス肺炎(COVID-19)との戦いを探索している一般的な状況下で、本発明の発明者らは、この炎症因子がCOVID-19感染の血液検出マーカーとして使用され、医療スタッフが患者の疾患の重症度と予後を判断するのに役立つことを探索し、過剰な炎症反応を阻害するための標的として、ウイルスによって引き起こされる過剰な炎症反応(または敗血症と呼ぶ)の治療に使用されることができ、かつこれにより本発明の一つまたは複数の発明を構築した。
【0109】
研究結果によると、新型コロナウイルスCOVID-19に感染された重症/重篤の患者の血清中のIFP35およびNMIのレベルが有意に上昇していることを示し、IFP35およびNMIが重症/重篤の患者の診断または診断補助指標として使用されて、医療スタッフを支援するための警告を提供することができる。さらに、IFP35およびNMIを標的とするインフルエンザウイルス研究結果に組み合わせて、IFP35およびNMIの阻害剤薬物(例えば、抗体薬物)は、COVID-19によって引き起こされる過剰な炎症反応疾患の治療に使用されることが期待される。インフルエンザウイルスであろうと新型コロナウイルスCOVID-19であろうと、人体に感染された後、IFP35およびNMIが血液および体液に分泌される。この二つの炎症因子IFP35およびNMIのいずれかの遺伝子がノックアウトされるか、または中和抗体によって遺伝子の一つが阻害された後、感染された体の炎症反応が軽減され、死亡率が低下し、これらの結果は、分泌されたIFP35およびNMIがウイルス(インフルエンザウイルスおよび新型コロナウイルスCOVID-19を例として)感染の重症度に牽連しており、これらのウイルスによって引き起こされる体の炎症反応の指標として、抗体薬物、ポリペプチド薬物または化学薬物等の阻害剤の治療標的となることができる。
【0110】
定義
別に定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で引用されるすべての特許、特許出願(公開または未公開)および他の刊行物は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。この部分に説明される定義が本明細書の特許、出願、公開された出願および他の刊行物に組み込まれる定義と反対または一致しない場合、この部分に説明される定義を基準とする。
【0111】
本明細書でのウイルスは、感染された体の炎症反応、特に、過度/重度の炎症反応(炎症因子ストーム)を引き起こすことができるウイルスを含み、コロナウイルス科(例えば、COVID-19、SARS、MERSウイルスを含むコロナウイルス等)、オルトミクソウイルス科(例えば、A型インフルエンザウイルス等のインフルエンザウイルス)、マイナス鎖RNAウイルスオーダーの他のウイルス(エボラウイルス、ラッサウイルス、マールブルグウイルス、クリミアコンゴ出血熱ウイルス等)、レトロウイルス科(例えば、HIV-1(HTLV-III、LAVまたはHTLV-III/LAVまたはHIV-IIIとも呼ばれる)ヒト免疫不全ウイルス等)、ならびに例えば、HIV-LP、ピコルナウイルス科(ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス、エンテロウイルス、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス等)、カリシウイルス科(Calciviridae)(胃腸炎を引き起こす細菌株等)、トガウイルス科(ウマ脳炎ウイルス、風疹ウイルス等)、フラビウイルス科ウイルス(ジカウイルス、ウエストナイルウイルス、デング熱ウイルス、ハンタウイルス等)、ラブドウイルス科(水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス等)、フィロウイルス科(エボラウイルス等)、パラミクソウイルス科(パラインフルエンザウイルス、おたふく風邪ウイルス、はしかウイルス、呼吸器合胞体ウイルス)、二本鎖RNAウイルス科(ブンガ(bunga)ウイルス、静脈炎ウイルスおよびナイロ(Nairo)ウイルス等)、腎炎ウイルス科(出血熱ウイルス等)、レオウイルス科ロタウイルス)、二重抗体ウイルス科肝炎ウイルス科(B型肝炎ウイルス等)、パルボウイルス科(パルボウイルス等)、パピローマウイルス科(パピローマウイルス、ポリオーマウイルス等)、アデノウイルス科(ほとんどのアデノウイルス)、ヘルペスウイルス科(単純ヘルペスウイルス(HSV)1および2、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスウイルス等)、ポックスウイルス(天然痘ウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス等)および虹色ウイルス(アフリカのブタ熱ウイルス等)、C型肝炎ウイルスおよび未分類のウイルス(例えば、δ型肝炎(B型肝炎ウイルスの欠陥衛星と見なされる)、ノーウォークと関連ウイルス、およびアストロウイルス等)等の他の分離株を含むが、これらに限定されない。
【0112】
本明細書における「生体試料」とは、血液、血漿、血清、脳脊髄液、肺胞洗浄液、尿、汗、糞便などを含むがこれらに限定されない、ウイルスに感染された個体から得られた細胞分泌物を含むサンプルを指す。
【0113】
本明細書における「個体」は、特定の種またはサンプルタイプに限定されない。例えば、「個体」という用語は、患者、通常は人間の患者を指すことができる。しかしながら、当該用語は、ヒトに限定されないため、ヒト以外の様々な動物または哺乳類種を含む。「哺乳類」とは、哺乳類(哺乳動物)種の任意の種を指す。通常,本明細書で使用される「哺乳類」という用語は、ヒト、ヒト被験者またはヒト患者を指す。「哺乳類」とは、実験的、伴侶的または経済的な非ヒト哺乳類等の非ヒト哺乳類種の任意の種を指す。例示的な非ヒト哺乳類は、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、サル、ゴリラおよびチンパンジーを含む。
【0114】
本明細書における「治療有効量」または「有効量」とは、細胞、組織または被験者に単独で、または他の治療薬と組み合わせて投与して、被験者の異常に高いレベルのIFP35および/またはNMIに関連する疾患または不快感を予防または改善する場合に有効な治療薬の量を指す。治療有効用量とは、関連する医学的不快感の治療、治癒、予防または緩和、またはこのような病況の治療、治癒、予防または緩和の速度の増加などの症状の改善を引き起こすのに十分な治療薬の量を指す。単独で投与される単一の有効成分に適用される場合、治療有効量とは、当該成分のみを指す。組み合わせに適用される場合、治療有効量とは、組み合わせて、連続して、または同時に投与されるかどうかにかかわらず、治療効果をもたらす有効成分の組み合わせ量を指す。いくつかの実施形態において、「特定の疾患を治療するための化合物の有効量」は、疾患に関連する症状を軽減するか、または何らかの方法で軽減するのに十分な量である。そのような量は、単回投与として投与することができるか、または効果的であるようなスケジュールに従って投与することができる。前記量は、疾患を治癒することができるが、通常は、疾患の症状を改善するために投与される。望ましい症状の緩和を達成するために、反復投与が必要になる場合がある。
【0115】
本明細書における「薬学的に許容される担体」という用語は、薬物投与と適合性のあるすべての溶媒、分散媒体、コーティング、等張剤および吸収遅延剤を含むことを指す。薬物活性物質のためのこれらの媒体および試薬の使用は、当技術分野でよく知られている。例えば、Remingtonら、The Science and Practice of Pharmacy、第20版、(Lippincott、Williams&Wilkins2003)を参照する。従来の媒体または試薬が活性化合物と適合しない場合を除くと、組成物におけるそのような使用を考慮する。
【0116】
本明細書で使用される「阻害剤」という用語は、例えば、IFP35および/またはNMIと別の分子(例えば、その基質)との相互作用を妨害するか、またはIFP35および/またはNMIをコードする遺伝子の発現を低下させる等のIFP35および/またはNMIのタンパク質レベルを低下させることにより、IFP35および/またはNMIの生物学効果に悪影響を及ぼすことができる任意の分子を指す。阻害剤は、IFP35および/またはNMIまたはIFP35および/またはNMIをコードする核酸と相互作用する「直接的阻害剤」であってもよいか、またはIFP35および/またはNMIまたはIFP35および/またはNMIをコードする核酸と相互作用しないが、調節経路においてIFP35および/またはNMIの上流または下流と相互作用する「間接的阻害剤」であってもよい。阻害剤は、特異的阻害剤であってもよい。当業者は、特異的阻害剤の使用が理想的であるが、具体的な状況に応じて、多機能または普遍的なタンパク質阻害剤の使用も選択可能であるということを理解することができる。上記のように、阻害剤は、発現阻害剤、機能阻害剤、または発現と機能とを同時に阻害することができる阻害剤であってもよい。いくつかの実施形態において、阻害剤は、IFP35および/またはNMIの転写および/または翻訳レベルに作用して、生成される機能的IFP35および/またはNMIの量を減少させることができる阻害剤である。いくつかの関連する実施形態において、阻害剤は、dsRNA、microRNA、siRNA、shRNA、アンチセンスRNAまたはリボザイムを含むが、これらに限定されない。標的タンパク質の発現レベルを低下させるためのRNA干渉/サイレンシング技術、アンチセンス核酸技術またはリボザイム技術の使用は、当業者によく知られており、標的タンパク質(例えば、IFP35および/またはNMI)の配列構造に従って適切なdsRNA、microRNA、siRNA、shRNA、アンチセンスRNAまたはリボザイム分子を設計すること、ならびに対応する製造および試験も、当業者によって容易に達成される。いくつかの実施形態において、阻害剤は、IFP35および/またはNMIの機能/活性を阻害することができる阻害剤である。いくつかの関連する実施形態において、阻害剤は、IFP35および/またはNMIに対する抗体またはその抗原結合フラグメント、小分子化合物を含むが、これらに限定されない。本発明で使用されることができる抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を含み得る。さらに、抗体は、天然の供給源または組換えの供給源に由来する免疫グロブリン全体であってもよい。抗体は、例えば、抗体全体として、または抗体フラグメントとして、または相補性決定領域等の他の免疫学的活性フラグメントとして、様々な形態で存在することができる。同様に、抗体は、機能的な抗原結合ドメイン、即ち、重鎖および軽鎖可変ドメインを有する抗体フラグメントとして存在することができる。同様に、抗体フラグメントは、Fv、Fab、F(ab)2、scFv(単鎖Fv)、dAb(単一ドメイン抗体)、二重特異的抗体、二本鎖抗体および三本鎖抗体等から選択されることができるが、これらに限定されない。
【0117】
一方で、本発明は、ウイルスに感染された個体の炎症反応の程度を診断または評価する方法を提供し、前記個体から得られた生体試料中のインターフェロン誘導タンパク質35kD(IFP35)および/またはN-Myc相互作用タンパク質(NMI)の量を測定するステップを含む。
【0118】
いくつかの実施形態において、前記方法は、重症または重篤の罹患個体を診断または診断補助ために使用される。
【0119】
いくつかの実施形態において、前記ウイルスは、コロナウイルス科のウイルス、例えば新型コロナウイルス(COVID-19)、SARSウイルス、MERSウイルスであるか、またはオルトミクソウイルス科のウイルス、例えばインフルエンザウイルス(例えばA型インフルエンザウイルス)である。
【0120】
いくつかの実施形態において、生体試料中のIFP35および/またはNMIの量を測定することは、生体試料中のIFP35および/またはNMIのタンパク質含有量を測定することであるか、またはmRNA含有量等の生体試料中のIFP35および/またはNMIの核酸レベルの発現量を測定することである。
【0121】
いくつかの実施形態において、個体は哺乳類、例えばヒトである。
いくつかの実施形態において、生体試料は、血液、血漿、血清、脳脊髄液または肺胞洗浄液である。
【0122】
一方で、本発明は、ウイルスに感染された個体の炎症反応の程度を診断または評価するためのキットを提供し、前記個体から得られた生体試料中のインターフェロン誘導タンパク質35kD(IFP35)および/またはN-Myc相互作用タンパク質(NMI)の量を測定するための試薬を含む。
【0123】
いくつかの実施形態において、キットは、重症または重篤の罹患個体を診断または診断補助するために使用される。
いくつかの実施形態において、前記ウイルスは、コロナウイルス科のウイルス、例えば新型コロナウイルス(COVID-19)、SARSウイルス、MERSウイルスであるか、またはオルトミクソウイルス科のウイルス、例えばインフルエンザウイルス(例えばA型インフルエンザウイルス)である。
【0124】
いくつかの実施形態において、生体試料中のIFP35および/またはNMIの量を測定することは、生体試料中のIFP35および/またはNMIのタンパク質含有量を測定することであり、前記試薬は、例えばIFP35および/またはNMIに特異的に結合する抗体を含む。
【0125】
いくつかの実施形態において、生体試料中のIFP35および/またはNMIの量を測定することは、生体試料中のIFP35および/またはNMIの核酸の発現レベル、例えばmRNA含有量を測定することであり、前記試薬は、例えばIFP35および/またはNMIのcDNA配列に対して設計された特異的増幅プライマーを含む。
【0126】
いくつかの実施形態において、個体は哺乳類、例えばヒトである。
いくつかの実施形態において、前記試薬は、前記生体試料を処理してタンパク質または核酸物質を抽出するための試薬を含み、前記生体試料は、例えば、血液、血漿、血清、脳脊髄液または肺胞洗浄液である。
【0127】
一方で、本発明は、ウイルスに感染された個体の炎症反応を治療または緩和するための方法を提供し、治療有効量のインターフェロン誘導タンパク質35kD(IFP35)および/またはN-Myc相互作用タンパク質(NMI)の阻害剤を前記個体に投与するステップを含む。
【0128】
いくつかの実施形態において、前記個体は、重症または重篤の罹患個体である。
いくつかの実施形態において、前記ウイルスは、コロナウイルス科のウイルス、例えば新型コロナウイルス(COVID-19)、SARSウイルス、MERSウイルスであるか、またはオルトミクソウイルス科のウイルス、例えばインフルエンザウイルス(例えばA型インフルエンザウイルス)である。
【0129】
いくつかの実施形態において、前記IFP35および/またはNMIの阻害剤は、IFP35および/またはNMIの機能阻害剤または発現阻害剤である。
【0130】
いくつかの実施形態において、前記IFP35および/またはNMIの機能阻害剤は、IFP35および/またはNMIの抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または小分子化合物である。
【0131】
いくつかの実施形態において、前記IFP35および/またはNMIの発現阻害剤は、IFP35および/またはNMIの転写および/または翻訳レベルに作用することにより、生成された機能的IFP35および/またはNMIの量を減少させることができる阻害剤、例えばdsRNA、microRNA、siRNA、shRNA、アンチセンスRNAまたはリボザイムである。
【0132】
いくつかの実施形態において、前記個体は哺乳類、例えばヒトである。
一方で、本発明は、治療有効量のインターフェロン誘導タンパク質35kD(IFP35)および/またはN-Myc相互作用タンパク質(NMI)の阻害剤と、薬学的に許容される担体とを含む、ウイルスに感染された個体の炎症反応を治療または緩和するための医薬組成物を提供する。
【0133】
いくつかの実施形態において、前記個体は、重症または重篤の罹患個体である。
いくつかの実施形態において、前記ウイルスは、コロナウイルス科のウイルス、例えば新型コロナウイルス(COVID-19)、SARSウイルス、MERSウイルスであるか、またはオルトミクソウイルス科のウイルス、例えばインフルエンザウイルス(例えばA型インフルエンザウイルス)である。
【0134】
いくつかの実施形態において、前記IFP35および/またはNMIの阻害剤は、IFP35および/またはNMIの機能阻害剤または発現阻害剤である。
【0135】
いくつかの実施形態において、前記IFP35および/またはNMIの機能阻害剤は、IFP35および/またはNMIの抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または小分子化合物である。
【0136】
いくつかの実施形態において、前記IFP35および/またはNMIの発現阻害剤は、IFP35および/またはNMIの転写および/または翻訳レベルに作用することにより、生成された機能的IFP35および/またはNMIの量を減少させることができる阻害剤、例えばdsRNA、microRNA、siRNA、shRNA、アンチセンスRNAまたはリボザイムである。
【0137】
いくつかの実施形態において、前記個体は哺乳類、例えばヒトである。
【発明の効果】
【0138】
上記の詳細な説明は、当業者が本発明の内容をより明確に理解できるようにするためだけのものであり、いかなる側面においてもそれを制限することを意図するものではないことを理解されたい。当業者は、記載された実施形態に様々な修正および変更を加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【
図1】MOGおよびH37RaがマウスマクロファージからのNMI放出を誘導する図である。MOG
35-55およびH37Raを検出してインビトロでマクロファージ(BMDM、Raw264.7およびThp1の三つのマクロファージ細胞株)を刺激し、細胞濃度を1mLあたり10
6細胞に調節し、MOG 50ng/mLおよび/またはH37Ra 100ng/mLを8時間インキュベートし、細胞上清からのNMI分泌を検出する。この図は、MOG
35-55とH37Raとの組み合わせがマウスマクロファージからのNMIの分泌を誘導することができ、H37Raが主な役割を果たしていることを示す。
【
図2】LPSがミクログリアBV2からのNMI放出を誘導する図である。(a)100ng/mLのLPSとBV2細胞とを共培養し、0、2、4、6、8時間でのNMIの分泌発現を検出し、(b)0、10、20、50、100ng/mLのLPSを検出してBV2細胞を8時間刺激し、上清のNMI発現を検出する。この図は、中枢神経系が炎症を起こし、ミクログリアが活性化されると、NMIを分泌されることもできる。
【
図3】mNMIタンパク質がマウスミクログリアのM1型分極を誘導する図である。(a)ミクログリアM1型マーカー分子であるTNF、iNOS、IL1βのmRNAの発現は、LPSおよびNMIの刺激下で増加し、(b)ミクログリアM2型マーカー分子であるArg1、IL10、TGF-β、CD206のmRNAは、LPSおよびNMI刺激にほとんど変化が大きくなく、この図は、mNMIがミクログリアを炎症誘導性M1型に向かって分極させることができることを示す。
【
図4】EAEモデリング後の様々な時点でのマウスにおけるNMI分泌発現を示す図である。偽処置マウスおよびEAEマウスにおいて、発症前期間(7日)、初期発症期間(12日)、発症ピーク期間(20日)、疾患緩和期間(30日)におけるNMIの発現を検出する。この図は、マウスのMS発症の各期間におけるNMIの発現量がMSの発症程度と密接に関連していることを示す。
【
図5】EAEモデリング後のマウス脊髄組織におけるNMIおよび他の炎症因子の発現を示す図である。EAEモデリング後の様々な時点で、マウス脊髄組織内におけるNMIおよび主な炎症因子であるiNOS、COX2、HMGB1の発現を検出する。正常なマウスの脊髄ではiNOSをほとんど検出せず、MSがピーク期間に入ると、iNOS発現量は、最高レベルに達し、COX2およびHMGB1は、MSの発症とともに増加し、NMIの正常な発現量はより低く、MSが発症し始めると発現量が最も高くなる。この図は、MSの発生とともにNMIおよび他の炎症因子の発現が増加することができ、NMIは比較的早い時期で上方制御される因子の一つである。
【
図6】NMIノックアウトがマウスのMSの臨床症状を軽減する図である。(a)NMIノックアウトは、マウスのMSの臨床スコアを低下させ、(b)NMIノックアウトは、脊髄の炎症性細胞浸潤を減少させ、(c)NMIノックアウトは、マウスの脊髄脱髄症状を軽減し、NMIノックアウトは、マウスの脊髄の白質(d)および灰白質(e)内側のアストロサイトおよびミクログリアの活性化状況を減少させる。この図は、NMIが神経炎症を促進し、MSの臨床症状を悪化させ、NMIをノックアウトした後マウスのMSの症状を軽減することを示す。
【
図7】IFP35抗体がマウスのMSの症状を軽減できることを示す図である。(a)精製されたIFP35抗体において、55kDの位置は、抗体の重鎖であり、25kDの位置は、抗体の軽鎖である。(b)IFP35抗体に100μg(5mg/kg)を10日間(12~22日)静脈内注射マウスのMSの症状を緩和する。
【
図8】NMIノックアウトは、MSマウスの脊髄白血球の浸潤および炎症を軽減することができる。(a)NMIノックアウトは、脊髄炎症におけるCD45陽性白血球の浸潤を減少させ、(b)NMIノックアウトは、脊髄炎症因子iNOSおよびCOX2の発現を低下させる。
【
図9】LPS誘導性炎症のマウスにおけるNMIとPCTとの比較を示す図である。LPS(i.p.、10mg/kg)でLPS誘導性炎症モデルを構築した後、NMI(a)およびPCT(b)は時間に伴って変化し、CLPがマウス炎症モデルを構築した16時間後のNMI(c)およびPCT(d)の含有量。この図は、PCTに比較して、NMIが炎症の発生を早期(1~2時間)に検出でき、NMIのバックグラウンド発現がPCTよりも少ないことを示し、NMIがPCTよりも優れた臨床リスク指数検出指標として使用されることができることを示す。
【
図10】インフルエンザウイルスA/プエルトリコ(Puerto Rico)/8/1934(H1N1)毒株がマウスを感染した後マウス血清中の分泌されたNMI/IFP35の存在を検出する図である。
図AおよびBに示されるように、血清中のIFP35(IFI35とも呼ばれる)およびNMIのタンパク質レベルは、ウイルス感染後の三日目に有意に上昇し、インフルエンザウイルス感染が野生型マウスに炎症反応を引き起こす可能性があることを示す。NMIまたはIFP35遺伝子ノックアウトマウスの血清中のIFP35(IFI35とも呼ばれる)およびNMIのタンパク質レベルは、有意に上昇していない。同時に、IFI35
-/-遺伝子ノックアウトマウスの血清中のNMIのタンパク質レベルもWTマウスよりも有意に低いことが分かり、NMI
-/-遺伝子ノックアウトマウスの血清中のIFI35のタンパク質レベルもWTマウスよりも兼チョン低い(
図Aおよび
図B)。IFI35とNMIとの間の分泌が相互に関連し、相互作用していることを示す。同時に、本発明の発明者らは、インフルエンザウイルス感染が血清中のIL-6およびTNF-αの分泌レベルを増加させることができることを発見し(
図Cおよび
図D)、NMIまたはIFP35遺伝子ノックアウトマウスの血清中のIL-6およびTNF-αのタンパク質レベルは、野生型マウスよりも有意に低い。
【
図11】開始マウス抗体AE001-VH+VL(35NIDmAb)およびヒト化抗体(ヒト化改変された抗体)AE001-H1+L1、AE001-H2+L2、AE001-H3+L3の抗原結合能試験を示す図である。
【
図12】様々な改変後の抗体の発現および精製の結果を示す図である。。
【
図13】様々な改変後の抗体の抗原結合能試験を示す図である。
【
図14】抗原IFP35 NIDおよび中和抗体35NIDmAbのFab複合体の構造図である。
【
図15】健康な人(健常者)および新型コロナウイルス(COVID-19)感染が確認された患者の血清中のIFP35およびNMI含有量の測定のドットブロットを示す図である。ここで、各ドットは健康な人または患者の血清サンプルを示す。
【
図16】インフルエンザウイルスがインビボおよびインビトロでNMI生成を引き起こすことの検証を示す図である。(A)インフルエンザウイルスに感染された患者の血清中のNMI含有量、(B)インフルエンザウイルスによって刺激されたTHP1細胞の上清液中のNMI含有量、(C)インフルエンザウイルスによって刺激されたA549細胞の上清液中のNMI含有量、(D)インフルエンザウイルス毒株PR8またはMockに感染されたC57BL/6野生型マウスの血清NMI含有量、(E)インフルエンザウイルスによって刺激されたRAW264.7細胞の上清液中のNMI含有量、(F)インフルエンザウイルス毒株PR8またはMockに感染されたA549細胞中のNMI/IFP35のタンパク質発現レベルを示す。(*はP<0.05を表し、**はP<0.01を表し、***はP<0.001を表す)
【
図17】インフルエンザウイルスがインビボおよびインビトロでIFP35生成を引き起こすことの検証を示す図である。(A)インフルエンザウイルスによって刺激されたRAW264.7細胞の上清液中のIFP35含有量、(B)インフルエンザウイルスに感染された患者の血清中のIFP35含有量、(C)PR8またはMockに感染されたC57BL/6野生型マウスの血清IFP35含有量を示す。*はP<0.05を表し、**はP<0.01を表し、***はP<0.001を表す。
【
図18】16人のインフルエンザ患者および10人の健康な人の血清中のNMIおよびIFP35含有量を示す図である。集中治療室(ICU)で重度の肺炎に発展した患者は、塗りつぶされた四角でマークされる。
【
図19】インフルエンザウイルス毒株PR8に感染された後のNMI遺伝子ノックアウトマウスおよび野生型マウスの様々な指標を示すずである。(A)体重変化(%)、(B)臨床スコア、ここで、マウスの倦怠感、忍び寄り、しわの寄った毛皮、腰下ろし、急速な浅い呼吸、聞こえるラ音、(健康)0≦スコア≦5(死にかけ)、(C)肺組織のH&E染色、スケールは、100μmであり、(D)生存率(%)。2×10
6pfuのPR8ウイルスでマウスを感染させることを示す。ログランク検定(log-rank test)を使用して、異なる処理におけるマウスの生存率に有意な差があるかどうかを分析する。**はP<0.01を表す。
【
図20】インフルエンザウイルス毒株PR8に感染された後のIFP35遺伝子ノックアウトマウスおよび野生型マウスの様々な指標を示す図である。(A)体重変化(%)、(B)肺組織のH&E染色、スケールは、100μmであり、(C)生存率(%)を示す。2×10
6pfuのPR8ウイルスでマウスを感染させる。ログランク検定を使用して、異なる処理におけるマウスの生存率に有意な差があるかどうかを分析する。*はP<0.05を表す。
【
図21】IFP35中和抗体の治療效果を示す図である。(A)実験プロトコル、(B)体重変化(%)、(C)臨床スコア、(D)生存率(%)を示す。2×10
6pfuのPR8ウイルスでマウスを感染させる。ログランク検定を使用して、異なる処理におけるマウスの生存率に有意な差があるかどうかを分析する。**はP<0.01を表す。
【発明を実施するための形態】
【0140】
実施例
以下の実施例は、本発明のいくつかの実施形態を説明するためにのみ提供されており、制限的な目的または性質はない。
【0141】
実施例1:マウスのMSを治療するための抗体の使用
マウスのMSモデルを構築し、IFP35抗体で治療する。結果は、
図7に示される。IFP35抗体の治療により、マウスのMSの症状は、有意に軽減される。
【0142】
実施例2:核酸薬物によるマウスのMSの治療
マウスのNMI遺伝子をノックアウトする。NMIノックアウトマウスのMSの症状を観察する。結果は、
図6および
図8に示される。NMIをノックアウトした後、マウスのMSの症状は軽減される。
【0143】
実施例3:MSマウスを検出するための血清または体液(例えば、脳脊髄液)マーカーとするIFP35/NMIの使用
細胞実験によると、LPS、MOGおよびH37Raによって誘導されるマクロファージ(MS動物モデルと同様)と比較して、正常細胞が誘導された後、マクロファージにおけるIFP35/NMI発現量は、有意に上昇し、細胞外に分泌されるため、血清中でIFP35/NMI含有量の増加を検出することができることを示す。同時に、LPSおよびNMIの刺激下でのミクログリアM1型マーカー分子TNF、iNOS、IL1βのmRNAの発現等、他のいくつかの炎症サイトカインの発現および血清での含有量も増加していることが分かり、iNOS、HMGB1、TNF、iNOS、IL1βなどが
図1、
図2および
図3に示される。
【0144】
MSの動物モデル実験によると(実験方法を参照する)、正常マウスは、MSマウスモデルと比較して、MSマウスモデルにおけるIFP35/NMIの発現量は、有意に上昇し、血清に分泌され、炎症因子としてのIFP35/NMIは、MSマウスモデルにおける他のMS特徴的な炎症因子TNF、iNOS、IL1βの高発現および放出と一致する。IFP35/NMIが血清中または体液中のMSの特徴的なバイオマーカーおよび検出指標として使用されることができる(
図4、
図5に示される)。この結果は、LPS誘導性動物モデルおよびインフルエンザウイルス誘導性ウイルス動物モデルの結果と一致し、これらの急性および慢性炎症性疾患は、すべてIFP35およびNMIの分泌を引き起こす(
図9、
図10に示される)。しかしながら、PCTはこの点で異なり、一般にウイルス感染の状況下で血清含有量を増加させない。
【0145】
従って、マウスの脊髄組織におけるIFP35/NMIの発現量が有意に上昇しているかどうかを検出するか、またはIFP35/NMIがマウスの血液中または体液中に分泌されるかどうか(例えば、脳脊髄液)、および血液または体液への分泌と含有量の増加との間の相関関係を検出することにより、マウスがMSおよび疾患を引き起こす炎症因子を有するかどうかを診断するのに役立てることができる。マウス組織におけるIFP35/NMIの発現量が異常に増加し、IFP35/NMIがマウスの血液中または体液中に分泌されると(例えば、脳脊髄液)、またはIFP35/NMI発現の増加が、マウスにおける他の炎症因子(インターフェロン、TNF、IL1、IL6等)の発現および血液に分泌されるのと一致して、マウスの歩行の変化、手足の麻痺等の明らかな外的症状を引き起こす場合、基本的にマウスがMSを罹患していることを診断することができる。
【0146】
実験方法:
BMDM培養:
頚椎脱臼法によりマウスを犠牲死させ、マウスの二つの後肢を取り、70%アルコールに1分間浸し、后骨の筋肉を極力除去し、注射器で二重抗体(ペニシリン)を含むPBSを吸い込み、骨髓腔を洗浄する。400gで10分間遠心分離し、上清を捨て、赤血球溶解液1mLで赤血球を30秒溶解し、次にPBS 10mLを加えて赤血球溶解液を中和する。400gで10分間遠心分離し、10%のFBS(Gibco)、1%のペニシリン、1%のL-グルタミンのDMEM(Gibico)完全培地を加え、最終濃度が20ng/mLであるMCSF(peprotech)を加え、37℃、5%CO2のインキュベーターで培養する。
【0147】
Raw264.7細胞培養:
10%のFBS(Gibco)、1%のペニシリン、1%のL-グルタミンのDMEM(Gibico)の完全培地、37℃、5%CO2のインキュベーターで培養する。
【0148】
Thp1細胞培養:
10%のFBS(Gibco)、1%のペニシリン、1%のL-グルタミンの1640(Gibico)の完全培地、37℃、5%CO2のインキュベーターで培養する。
【0149】
BV2細胞培養:
10%のFBS(Gibco)、1%のペニシリン、1%のL-グルタミンのDMEM(Gibico)の完全培地、37℃、5%CO2のインキュベーターで培養する。
【0150】
MOGおよびH37Raの細胞刺激:
MOGおよびH37Raを最終濃度が100ng/mLである上記細胞に加えて8時間刺激する。
【0151】
mNMIのBV2細胞刺激:
マウス組換えタンパク質mNMIを発現させ、インビトロでマウス初代ミクログリアを刺激し、細胞濃度を2×106に調節し、5μg/mLのmNMIで6時間インキュベートし、QPCRでマクロファージの分極マーカーを検出する。
【0152】
細胞からのトータル(Total)RNA抽出:
BMDM細胞のトータルRNA抽出は、康為世紀生物公司のRNA抽出キットカタログ番号CW0597 BV2細胞のトータルRNA抽出用Trizol(invitrogen)を使用する。
【0153】
mRNAのcDNAへの逆転写:
PrimeScript(登録商標) II 1st Strand cDNA Synthesis Kit カタログ番号6210AおよびSYBR(登録商標) Premix Ex Taq(登録商標)(Tli RNaseH Plus)、ROX plus Q-PCRキットのカタログ番号RR42LRは、すべてTAKARA社製である。
【0154】
MSマウスモデル(EAE)の構築:
実験で選択されたマウスは、バイタルリバー実験動物技術(Vital River Laboratory Animal Technology)社から購入した、8~12週齢のC57BL/6バックグラウンドの雌マウスである。オリゴデンドロサイトタンパク質MOG35-55およびフロイント完全アジュバントCFAで乳化し、各マウスに0.2mgのMOG35-55および0.2mgのCFAを皮下注射し、百日咳毒素PTXと組み合わせ、各マウスの腹腔内に500ngを注射し、48時間目でPTXを1回注射する。偽処置グループは、MOG35-55の代わりにPBSを投与し、残りは、同量のCFAおよびPTXで処理し、マウスの発症情况および生活状態を毎日観察し、記録する。マウスの発症後に、マウスの発症に対して採点し、採点基準は、次のとおりである。0:臨床症状なし、1:マウスの尾の麻痺、2:マウスの片方の後肢の麻痺または両後肢の衰弱、3:マウスの両後肢の麻痺、4:マウスの両後肢の麻痺かつ前肢が影響を受けること、5:マウスの死にかけることである。採点基準に従って、発症マウスに対して採点して評価した。
【0155】
マウス脊髄組織からの全タンパク質の抽出:
灌流および脱血されたマウス脊髄組織100mgを取り、RIPA(Proteinase inhibitor cocktail、Roche)を氷上で30分間加え、12000rpm、4℃で10分間遠心分離し、5X SDS-PAGEローディング緩衝液(loading buffer)で95℃、5分間行う。
【0156】
インフルエンザウイルスがマウスを感染した後、マウス血清の分泌されたNMI/IFP35の存在の検出
C57BL/6 WT、IFI35-/-およびNMI-/-は、チャレンジ実験グループとして300pfuの用量でA/PR8毒株に感染し、同時に、C57BL/6野生型マウスに陰性対照グループとして同量のPBSを接種する。マウスの血清中のIFP35およびNMIのタンパク質レベルがウイルス感染後三日目に変化するかどうかを検出し、同時に、血清中のTNFおよびIL6の含有量を検出する。
【0157】
IFP35中和抗体の製造:
マウスにIFP35モノクローナルハイブリドーマ細胞を腹腔内注射し、7~10日後、マウスの腹水を採取し、次のようにプロティンGアグロスビーズ(Protein G Agrose beads)(GE)で腹水の抗体を精製する。
(1)プロティンGアグロスビーズスラリー(slurry)1mLを、タンパク質精製充填カラムに加え、
(2)リン酸塩緩衝液10mLで精製カラムのマトリックスを洗浄し、
(3)腹水1mLをリン酸塩緩衝液5mLに加え、精製カラムに加え、4℃で2時間インキュベートし、
(4)洗浄:20mLのリン酸塩緩衝液でカラムを洗浄し、
(5)溶出:適切な量の0.1Mグリシン(Glycine)(PH=2.5~3.0)緩衝液で抗体を溶出し、ここで溶出チューブに1M PH=10.0のTris-HCl緩衝液を事前に加え、溶出液を中和し、
限外ろ過チューブで抗体を濃縮し、かつ抗体濃度を測定する。
【0158】
MSマウスのIFP35抗体治療:
マウスEAEモデルを構築し、IFP35抗体治療グループおよびIgG対照グループに分け、12日目に抗体の投与を開始し、各マウスに毎日100μg(5mg/kg)の抗体を10日間連続的に静脈内注射し、マウスの二つのグループの臨床症状を比較する。
【0159】
Elisa実験:
(1)Elisaプレートを取り出し、室温に戻せ、希釈された標準品およびサンプルをウェルあたり100mL、室温下で2時間加える。標準品およびサンプルは、1%BSAのPBST(0.05%のTween-20)で希釈する。
【0160】
(2)洗浄:PBST(0.05%のTween-20)で3回洗浄し、脱イオン水で2回洗浄する。
【0161】
(3)検出用抗体の追加:ウェルあたり100mL、室温下で2時間加える。1%BSAのPBST(0.05%のTween-20)で希釈する。
【0162】
(4)発色用基質の追加:ウェルあたり100mLのTMBを加え、光を避け、シェーカーで10~20分間脱色する
(5)終了:ウェルあたり2Mol/LのH2SO4を50mL加える。
ELISAプレート、450nmのスキャンでOD値を得る。
【0163】
遺伝子ノックアウトマウスの作製方法:C57BL/6マウスを使用する。8~12週齢。使用されるすべてのマウスは、頸椎脱臼により殺される。C57BL/6野生型マウス(000664)は、バイタルリバー実験動物技術有限公司から購入される。CRISPR-Cas9を使用して、NMIおよびIfp35ノックアウトマウス技術を生成する。過排卵する卵管から受精卵を収集し、雌のC57BL/6マウスを雄のC57BL/6マウスと交配させる。Cas9 mRNA(150ngml-1)は、転写によって生成されたsgRNA(100ngml-1)と混合され、細胞にマイクロインジェクションされる。レシピエント卵の細胞質は、M2培地で認識された前核を有する(Sigma、M7167-100ML)。NMIのsgRNA配列は、5’-AAAACAAAGAACTAGACGAGG-3’であり、IFP35のsgRNA配列は、5’-CAGCTCAAAAGGGAGCGCACAGG-3’である。CRISPR技術によって生成されたNMIおよびIfp35遺伝子のフレームシフト突然変異により、NMIおよびIFP35の生成に失敗する。対応する各sgRNAに約100~250個の受精卵を注入し、次に代理ICR雌マウスの子宮に移して、F1世代のマウスを得る。
【0164】
結果:
1.MOGおよびH37Raによる、マウスマクロファージからのNMI放出の誘導。
【0165】
図1の方法:BMDM、RAW267.4およびThp1細胞の濃度を1mLあたり10
6細胞に調節し、MOG
35-55(50ng/mL)およびH37Ra(100ng/mL)を使用して、マウスマクロファージを誘導し、8時間インキュベートした後、細胞上清に分泌されたNMIの量を検出する。図のエラーバーは、三つの繰り返し実験±s.e.mを表し、有意差は、マッチングしないt検定によって検出され、*P<0.05、**P<0.01。
【0166】
図1の結果:MOG
35-55およびH37Raは、マウスでMSを誘導するために使用される主な試薬であり、MOG
35-55は、オリゴデンドロサイトの表面にある糖タンパク質であり、免疫細胞に自己抗原を攻撃させるために使用され、H37Raは、免疫反応の拡大を活性化するために使用される不活化された結核菌である。MOG
35-55およびH37Raを組み合わせてマウス末梢マクロファージを刺激すると、NMIが大量に分泌されていることが検出でき、ここで、主な役割は、H37Raの成分である。H37Raの誘導効果は、MOG
35-55の誘導効果よりもはるかに大きく、H37Raがマクロファージを活性化し、炎症発生の主な促進因子であることを示し、MOG
35-55は、マクロファージの活性化を誘導する点でH37Raほど強力ではなく、二つの刺激効果は、一つの刺激効果よりも高くなる。マウスでMSの発症を誘導する試薬がマクロファージから細胞外へのNMIの放出を誘導できることを示す。当該実験は、誘導されたマクロファージ活性化モデルにおいて、NMI発現量が増加し、細胞外に放出されることを証明することができる。
【0167】
2.LPSによる、ミクログリアBV2からのNMI放出の誘導
図2の方法:a、100ng/mLのLPSを使用してミクログリアBV2を誘導し、0、2、4、6、8時間で細胞から上清に分泌されるNMIの量を検出し、b、異なる濃度のLPS(0、10、20、50、100ng/mL)を使用してBV2細胞を8時間刺激し、上清中のNMIの量を検出する。図のエラーバーは、三つの繰り返し実験±s.e.mを表し、有意差は、マッチングしないt検定によって検出され、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【0168】
図2の結果:ミクログリアは、中枢神経系の主要な免疫細胞であり、MSの発生および発展の過程を含む、中枢神経の炎症性疾患に関与する。LPS(リポ多糖またはエンドトキシン)は、ミクログリアの活性化を誘導することができる。実験結果によると、LPSによって誘導されたミクログリアが活性化された後、大量のNMI分泌があることを示し、分泌量は、LPS刺激の時間と強度と正の相関があり、NMIがMSの発症における一つのDAMPの発揮作用であり、中枢マクロファージの活性化がNMIの放出につながることを示す。
【0169】
3.mNMIタンパク質による、マウスミクログリアのM1型分極の誘導
図3の方法:精製されたマウスNMI(mNMI)タンパク質(5μg/mL)を使用して、マウスミクログリアを6時間誘導し、LPSまたはNMIの刺激下で、ミクログリアのM1型マーカー分子であるTNF、iNOS、IL1β(a)およびM2型マーカー分子であるArg1、IL10、TGF-β、CD206(b)mRNAの変化を検出し、図のエラーバーは、三つの繰り返し実験±s.e.mを表し、有意差は、マッチングしないt検定によって検出され、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【0170】
図3の結果:マクロファージの一つとして、ミクログリアは、M1型およびM2型に分極される。ここで、M1型ミクログリアは、主に炎症誘導性反応に関与し、食作用、炎症因子の分泌および組織損傷を媒介し、M1型ミクログリアは、MS発症における疾患の発症を促進する役割を果たす。M2型ミクログリアは、抗炎症反応を媒介し、組織修復過程に参加する。
図3の実験結果によると、mNMIがミクログリアを誘導して炎症誘導性M1型に向かって分極させ、MSの炎症反応を促進することができることを示す。
【0171】
4.EAEモデリング後の異なる時点でのマウスにおけるNMI分泌および発現
図4によると、EAEモデリング後、異なる時点でのマウスのNMI分泌および発現は、偽処置対照実験グループマウスおよびEAEマウスの発症前期間(7日)、初期発症期間(12日)、発症ピーク期間(20日)、疾患緩和期間(30日)のNMI発現を検出すことを示す。結果によると、マウスにおけるMSの発症の様々な期間でのNMIの発現量がMSの発症と密接に関連していることを示す。
【0172】
5.EAEモデリング後のマウス脊髄組織におけるNMIおよび他の炎症因子の発現
図5によると、EAEモデリング後、異なる時点でのマウス脊髄組織内におけるNMIおよび主な炎症因子iNOS、COX2、HMGB1の発現を検出し、正常なマウスの脊髄ではiNOSがほとんど検出されないことが分かり、MSがピーク期間に入ると、iNOSの発現量が最高レベルに達し、COX2およびHMGB1は、MSの発症とともに増加し、NMIの正常な発現量は低く、MSが発症し始めると発現量が最も高いことを示す。NMIおよび他の炎症因子の発現は、MSの発生とともに増加することができ、NMIは比較的早い時期で上方制御される因子の一つであることを示す。マウスの脳脊髄液は入手が難しいため、ここで検出されたのは脊髄組織である。
【0173】
図4および
図5の結果のむすび:血液中の炎症因子の増加は、免疫性炎症性疾患の特徴の一つであり、NMIがMSのbiomarkerとして使用できるかどうか、およびbiomarkerとしての潜在的な機能を検出するために、本発明の発明者らは、MSマウスモデルの血液(a)および脊髄組織内部における(b)NMIの発現状況を検出する。結果によると、MSマウスの発症の各期間におけるNMIの発現量は、MSの発症程度と密接に関連しており、MSの発症がピーク期間(20日目)に達すると、NMIの発現量は、最高レベルに達する。脊髄組織において、正常なマウスの脊髄ではiNOSはほとんど検出されなく、MSがピーク期間に入ると、iNOSの発現量は、最高レベルに達し、COX2およびHMGB1は、MSの発症とともに増加し、正常な脊髄組織におけるNMIの発現量は低く、MSが発症し始める際に発現量が最も高く、疾患の緩和期間にダウンレギュレーションされ、NMIおよび他の炎症因子の発現がすべてMSの発症とともに増加することができることを示し、NMIは比較的早い時期で上方制御される炎症因子の一つである。
【0174】
この実験は、MS疾患の動物モデルにおいれ、NMIの発現量が増加し、血液に放出されることを証明できるが、NMIおよび他の炎症因子iNOS、COX2、HMGB1が一緒に検出され、先後の印加関係がないため、NMIが他の炎症因子の放出を促進すると言えない。
【0175】
6.NMIノックアウトによる、マウスのMSの臨床症状の軽減
図6の方法:a、NMIノックアウトマウス(NMI
-/-)および野生型マウス(WT)のMS動物モデルを構築し、それらの臨床症状を比較する。採点基準は、次のとおりである。0:臨床症状なし、1:マウスの尾の麻痺、2:マウスの片方の後肢の麻痺または両後肢の衰弱、3:マウスの両後肢の麻痺、4:マウスの両後肢の麻痺かつ前肢が影響を受け、5:マウスの死にかけることである。採点基準に従って、発症マウスに対して採点して評価した。b、NMI
-/-およびWTマウスの脊髄組織のHE病理学的切片。c、NMI
-/-およびWTマウスの脊髄組織のLFB病理学的切片、IF実験において、GFAPでアストロサイトを標識し、IBA1でミクログリアを標識し、NMI
-/-およびWTマウスの脊髄組織の白質(d)および灰白質(e)内側におけるアストロサイトおよびミクログリアの活性化状況を比較する。
【0176】
図6の結果:NMIノックアウトマウスを使用してMSの動物モデルを構築し、野生型マウスから製造されたMSモデルとその臨床症状を比較する。a図によると、NMI
-/-マウスおよびWTマウスのMSへの侵入時間は基本的に同じであるが、NMI
-/-マウスのMSの症状は、その後の野生型マウスよりも軽いことを示す。b図は、脊髄組織切片のHE染色を使用して、NMI
-/-マウスおよびWTマウスの脊髄における炎症性細胞の浸潤状況を観察し、NMIノックアウトが、MSマウスの脊髄における炎症性細胞の浸潤を減少させることが分かる。c図は、脊髄組織切片のLFB染色分析によって、NMI
-/-マウスの脊髄脱髄症状が軽減されることを示す。IF実験において、NMI
-/-マウスの脊髄の白質(d図)および灰白質(e図)内側のアストロサイトおよびミクログリアの活性化が減少される。上記の結果を要約すると、NMIは神経炎症を促進し、MSの臨床症状を悪化させ、NMIがノックアウトされたマウスのMSの症状を軽減することができる。
【0177】
7.IFP35抗体による、マウスのMSの症状の軽減可能
図7によると、遺伝子ノックアウトがMSマウスの症状を有意に改善することができるため、本発明の発明者らは、IFP35の中和抗体を使用して、MSマウスの症状を軽減できるかどうかを観察することを示す。a図は、精製された本発明に記載のIFP35中和抗体を使用して、SDS-PAGE検出することを表し、ここで、55kD位置は、抗体重鎖であり、25kD位置は、抗体軽鎖であることが分かる。抗体が十分に精製されていることを示す。b図は、当該精製されたIFP35抗体に100μg(5mg/kg)の抗体を10日間(12~22日)静脈内注射して、MSマウスの症状を観察および採点することを示す、当該抗体は、マウスMSの症状を有意に緩和できることが分かる。この結果によると、IFP35ファミリータンパク質を阻害モノクローナル抗体は、多発性硬化症(MS)の治療に使用できることを示す。マウスMSモデリングは、公認された評価基準を最小氏、採点基準は、次のとおりである。0:臨床症状なし、1:マウスの尾の麻痺、2:マウスの片方の後肢の麻痺または両後肢の衰弱、3:マウスの両後肢の麻痺、4:マウスの両後肢の麻痺かつ前肢が影響を受け、5:マウスの死にかけることである。採点基準に従って、発症マウスに対して採点して評価した。
【0178】
この実験における対応する抗体は、35NIDmAbであり、軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:10であり、重鎖可変領域は、SEQ ID NO:9である。
【0179】
重鎖可変領域は、CDR1、CDR2およびCDR3を含み、CDR1の配列は、SEQ ID NO:9(GYTFTNYG)の25位~32位のアミノ酸であり、CDR2の配列は、SEQ ID NO:9(INTYTGEP)の50位~57位のアミノ酸であり、CDR3の配列は、SEQ ID NO:9(YGYSWAMDY)の98位~106位のアミノ酸である。
【0180】
軽鎖可変領域は、CDR1、CDR2およびCDR3を含み、CDR1の配列は、SEQ ID NO:10(SSSVSY)の26位~31位のアミノ酸であり、CDR2の配列は、SEQ ID NO:10(DTS)の49位~51位のアミノ酸であり、CDR3の配列は、SEQ ID NO:10(WSSNPPI)の90位~96位のアミノ酸であり、命名システムは、Kabatである。
【0181】
本実験でNMI/IFP35がMS動物モデルおよびMSを誘導する試薬MOG等によって誘導されたマクロファージ実験にあることが分かり、IFP35/NMIが血清中に放出されることが分かり、従って、本プロジェクトは、放出されたIFP35/NMIと疾患との関係を研究することである。IFP35/NMIは、本発明の発明者らによって、一度血清中に放出されるとDAMPsの役割を果たすことが以前に証明されているので、従って、本研究は、実際に、疾患における血清中に放出されるIFP35/NMIの役割、即ちDAMPの機能に関する。
【0182】
8.NMIノックアウトによる、MSマウスの脊髄白血球の浸潤および炎症の軽減可能
結果は
図8に示される。a図.NMIノックアウトは、脊髄炎症におけるCD45陽性白血球の浸潤を減少させ、b図.NMIノックアウトは、脊髄炎症因子iNOSおよびCOX2の発現を減少させる。
【0183】
9.LPS誘導性炎症のあるマウスの血清中のNMIとPCTとの比較
結果は
図9に示される。LPS(i.p.、10mg/kg)でLPS誘導性炎症モデルを構築した後、時間とともにNMI(a図)およびPCT(b図)を変化させ、同様に、腸結紮CLPは、マウス炎症モデル16時間後、NMI(c図)およびPCT(d図)の含有量を構築する。この図によると、PCTと比較して、NMIは、炎症の発生を早期(1~2時間)に検出でき、NMIのバックグラウンド発現は、PCTよりも少なく、NMIがPCTよりも優れた臨床リスク指数検出指標として使用できることを示す。
【0184】
10.インフルエンザウイルスA/プエルトリコ/8/1934(PR8)毒株がマウスに感染された後、マウス血清中の分泌されるNMI/IFP35の存在を検出する。
【0185】
対照として、本発明の発明者らは、ウイルス感染の状況下でIFP35およびNMIが分泌されるかどうかを同時に比較した。研究方法:300pfuの用量でPR8毒株にC57BL/6WT、IFI35
-/-およびNMI
-/-をチャレンジ実験グループとして感染させ、同時に同量のPBSをC57BL/6野生型マウスに陰性対照グループとして接種した。
図10のAおよびBに示されるように、ウイルスに感染された三日目に、血清中のIFP35(IFI35とも呼ぶ)およびNMIのタンパク質レベルは、有意に上昇し、インフルエンザウイルス感染が野生型マウスに炎症反応を引き起こすことができることを示す。NMIまたはIFP35遺伝子ノックアウトマウスの血清中のIFP35(IFI35とも呼ぶ)およびNMIのタンパク質レベルは、有意に上昇しない。同時に、IFI35
-/-遺伝子ノックアウトマウスの血清中のNMIのタンパク質レベルもWTマウスよりも有意に低く、NMI
-/-遺伝子ノックアウトマウスの血清中のIFI35のタンパク質レベルも、WTマウスよりも有意に低いことが分かった(
図Aおよび
図B)。IFI35とNMIとの間の分泌は、相互に牽連し、相互作用していることを示す。同時に、本発明の発明者らは、インフルエンザウイルス感染が血清中のIL-6およびTNF-αの分泌レベルを増加させることができ(
図Cおよび
図D)、NMIまたはIFP35遺伝子ノックアウトマウスの血清中のIL-6およびTNF-αタンパク質レベルは、野生型マウスよりも有意に低いことを示す。さらに、炎症反応および感染が、NMIおよびIFP35の分泌につながることができ、IFP35またはNMIを阻害(遺伝子ノックアウト)すると、炎症反応を軽減することができる。この結果は、ウイルス感染の状況下で血清中の含有量が一般に増加しないPCTとは異なる。上記の結果は、ウイルス、細菌、または慢性炎症性疾患のいずれかであっても、IFP35およびNMIが体液(血液を含む)に分泌されることができることを示唆する。従って、慢性炎症性疾患等の検出指標として使用されることができる。
【0186】
実施例4:抗体の改善
一.抗体のヒト化:
1.実験方法:PCR部位特異的突然変異誘発方法を介してマウス抗体の特定のアミノ酸残基位置のDNA配列に突然変異を導入して、マウス抗体のいくつかのアミノ酸を変化させて、ヒト抗体配列に変換することにより、抗体のヒト化改変を実現する。次に、配列が改変された抗体遺伝子をpCDNA3.1、pCDNA3.4等の対応する抗体発現ベクターにクローニングする。ヒト腎臓細胞株eExpi293FまたはHEK293T細胞に形質転換して発現し、次に、細胞外に分泌される発現抗体を精製する。発現および精製の改変後の抗体と抗原IFP35との結合能を検出する。使用される機器は、BiACoまたはITC等である。Elisa法を使用して抗原に対するヒト化改変後の抗体との結合能を検出することができる。抗原は、ヒトIFP35タンパク質である。
【0187】
改変前のマウス抗体(35NIDmAb)配列および改変後の抗体配列は、次のとおりである。
【0188】
AE001VL(改変前のマウス抗体(35NIDmAb)の軽鎖定常領域の配列は、SEQ ID NO:24であり、ヒト化改変後のマウス軽鎖定常領域の配列AE001L1は、SEQ ID NO:3であり、AE001L2は、SEQ ID NO:7であり、AE001L3は、SEQ ID NO:12である。
【0189】
AE001VH(改変前のマウス抗体(35NIDmAb)の重鎖定常領域の配列は、SEQ ID NO:25であり、ヒト化改変後のマウス重鎖定常領域の配列AE001H1は、SEQ ID NO:1であり、AE001H2は、SEQ ID NO:5であり、AE001H3は、SEQ ID NO:11である。
【0190】
実験結果は
図11に示される。AE001-VH+VL(35NIDmAb)は、開始マウス抗体である。AE001-H1+L1、AE001-H2+L2およびAE001-H3+L3は、それぞれ三つのグループのヒト化抗体(ヒト化改変された抗体)であり、これから、ヒト化抗体は、すべて抗原に結合できることが分かる。AE001-H3+L3がヒト抗体に最も近いため、このグループの抗体を選択して、以下の抗体親和性成熟度の改変を行う、結果によると、マウス抗体のアミノ酸配列がヒト化程度を向上させて、抗体をヒト化にもっとも近い抗体配列にすることを示す。本実験においても、マウス抗体とヒト抗体との差異に基づいて、抗体のさらなるヒト化改変を達成できることを示す。しかし、抗体の可変領域の配列等の抗体によって識別されるバックボーン配列は、抗原を識別する主要なフラグメントである。より重要な領域は、抗体可変領域のCDR領域であり、抗原識別にとってより重要である。これらの配列のコア領域は、抗原識別の特異性を决定する。
【0191】
二.抗体の親和性成熟の改変
1.実験方法:実験は、一般的な突然変異プラスミド構築方法およびタンパク質抗体発現方法を採用する。まず、PCRランダム突然変異方法により、ヒト化改変後の一つの抗体の組み合わせAE001-H3+L3のCDR領域のDNA配列にランダムに突然変異を導入することにより、ヒト化抗体のCDR配列を改変する。次に、改変後の抗体配列は、pCDNA3.1またはpCDNA3.4等の対応する抗体発現ベクターにクローンされる。ランダム突然変異抗体ライブラリーを構築する。ライブラリープラスミドをヒト腎臓細胞株293TまたはExpi293F細胞に移して発現し、次に細胞外に分泌される発現抗体を精製する。改変後の抗体およびインビトロで精製された抗原IFP35またはNMIまたはIFP35/NMI複合体の発現および精製を使用して、結合力を検出する。使用される機器は、BiACoまたはITC等である。Elisa法を使用して、CDR領域が改変された後、抗原に対する抗体の結合能を検出する。
【0192】
2.結果
1)Elisa法によるランダム突然変異抗体親和性検出の予備スクリーニング結果:
【0193】
【0194】
上記の結果から、結合能の高い五つのグループの抗体(上記の下線付き抗体)を選択し、それぞれの番号は、AE001-5、AE001-6、AE001-7、AE001-8、AE001-9である。情况リストは、次のとおりである。
【0195】
2)予備スクリーニングされた突然変異抗体の重鎖および軽鎖のペアリング状況:
【0196】
【0197】
3)抗体の発現および精製の状況は、
図12に示される。
4)改変後の抗体の抗原への結合能力の検出: 抗原はIFP35であり、結果は
図13に示される。
【0198】
5)抗体および抗原との親和性測定データの五つのグループを取得する。
【0199】
【0200】
結論:得られた五つの好ましい抗体(番号は5~9である)は、すべて異なる程度の親和性の改善があり、親和性動態測定(fortebio)後、各抗体の親和性は、2.5~4.6倍向上し、ここで、親和性の向上は、主にKoffの大幅な改善によるものであり、AE001-6HC+8LC(AE001-8の抗体)クローンは、親和性の改善が最も優れている。
【0201】
【0202】
軽鎖配列の改変:
【表9】
図示の説明:cyanで標識された残基は、抗原結合残基である。
【0203】
結論:最初にスクリーニングされた抗体に基づいて、CDR配列のアミノ酸残基の一部を改変することにより、最適化された抗原-抗体結合能を有する抗体を得ることができ、さらに活性がより良い中和抗体を得ることができる。上記のリストから、発明者らは、元の抗体に基づいて、CDR配列の一部を改変することにより、抗原IFP35に結合できるいくつかの抗体をスクリーニングして取得することが分かる。結論は、上記のCDRの一部のアミノ酸配列を改変すると、より優れた活性を有する抗体を得るのに役立つ。CDR配列の一部を改変することは、より最適化された抗体を得るために国際的に一般的に使用される重要な方法である。従って、本発明に開示された抗体の前記CDR配列の相同性(同じCDR位置、同じ配列番号位置にある同じアミノ酸)は、50%以上に達し、IFP35に結合する抗体は、本発明の保護範囲内に属するべきである。
【0204】
実施例5:中和抗体および抗原IFP35の複合体の微細な三次元結晶構造は、抗体が抗原を識別するための重要な残基およびIFP35エピトープのアミノ酸残基の特徴を開示する
IFP35のNIDドメイン(アミノ酸124-220のフラグメント)を免疫原として使用して、マウスを免疫し、マウス脾臓からIFP35に対するモノクローナル抗体をスクリーニングして製造し、35NIDmAbとして記録する。
【0205】
当該モノクローナル抗体35NIDmAbは、中和活性を有するIFP35 NID(フラグメント124~220)を標的とするモノクローナル抗体である。IFP35 NIDを標的とする35NIDmAbは、IFP35 NIDに強く結合する(Kd=28-10-9M)。インビトロ精製実験は、35NIDmAbとIFP35 NIDとを混合してから、ゲルろ過クロマトグラフィーによって精製され、二つが依然として結合していない。これらの結果は、IFP35 NIDを標的とする35NIDmAbがIFP35 NIDに強く結合できることを示し、実験により、当該抗体は、中和活性を有することを示す。前述の実験において、当該モノクローナル抗体は、多発性硬化症(MS)の症状からマウスを保護できることを証明した。
【0206】
IFP35 NIDに対する35NIDmAbの中和活性の構造的基礎を明らかにするために、35NIDmAbおよびIFP35 NIDの高親和性結合に基づいて、本発明の発明者らは、2.9オングストロームの解像度で35NIDmAb FabおよびIFP35 NID複合体の結晶構造およびIFP35 NIDの構造を分析した。35NIDmAb Fab-IFP35 NIDの構造において、IFP35は、モノマーとして存在しないが、IFP35 NIDのみの構造において、IFP35 NIDは、ダイマーとして存在する。さらに、これらの二つの構造の単一のIFP35 NIDの構造は、類似している。35NIDmAb Fab-IFP35 NID構造において、非対称ユニットに四つの35NIDmAb Fab-IFP35 NID複合体がある。各35NIDmAb Fabは、それぞれ重鎖(Ab_VH)および軽鎖(Ab_VL)で構成され、一つのIFP35 NIDと相互作用する。35NIDmAb Fabは、主にIFP35 NIDのc-末端を識別して結合する。当該相互作用インターフェースにおいて、関与するIFP35 NIDの主なアミノ酸残基は、Arg163、Asn164、Arg191、Gln194、Ile195、Gln197、Phe198、Thr199、Pro201、Gln206、Pro208、Arg210を有する。
【0207】
さらに、本発明の発明者らは、構造を介して抗原と相互作用する重要な抗体アミノ酸を明らかにすることができる。これらのアミノ酸は、次のとおりである。
【0208】
抗体の重鎖可変領域のCDR1配列(25 GYTFTNYG 32)において、抗原に結合する二つのアミノ酸は、主にAsn30およびTyr31であり、抗体の重鎖可変領域のCDR2配列(50 INTYTGEP 57)において、抗原に結合する三つのアミノ酸は、主にAsn51、Tyr53およびThr54であり、抗体の重鎖可変領域のCDR3配列(98 YGYSWAMDY 106)において、抗原に結合する二つのアミノ酸は、主にTyr100およびTrp102である。
【0209】
抗体の軽鎖可変領域のCDR1配列(26 SSSVSY 31)において、抗原に結合する主なアミノ酸は、Ser30およびTyr31であり、抗体の軽鎖可変領域のCDR2配列(49 DTS 51)において、抗原に結合する主なアミノ酸は、Asp49であり、抗体の軽鎖可変領域のCDR3配列(90 WSSNPPI 96)において、抗原に結合する主なアミノ酸は、Ser92およびAsn93である。
【0210】
図14に示されるように、抗原IFP35 NIDおよび中和抗体35NIDmAb Fabの複合体の構造図である。A図は、抗体および抗原の構造の全体像であり、抗体重鎖(Ab-VH)は水色であり、抗体軽鎖(Ab-VL)は緑色であり、抗原(IFP35 NID)は紫色である。B図は、二つの角度から見た抗体自体の構造図であり、ここで抗原と相互作用する残基が短い棒(stick)で表され、重要な残基は図にマークされており、抗体重鎖(Ab-VH)は水色であり、抗体軽鎖(Ab-VL)は緑色である。
図Cは、抗体重鎖と抗原との間の相互作用の図であり、重要な残基は短い棒(stick)で表される。
図Dは抗体軽鎖と抗原との間の相互作用の図であり、重要な残基は短い棒(stick)で表される。
【0211】
NMI NIDの構造
IFP35 NIDの構造ならびに35NIDmAb FabおよびIFP35 NIDの複合体の構造に加えて、本発明の発明者らは、NMI NIDの構造を分析した。NMI NIDの全体的な構造は、IFP35 NIDの構造と非常によく似ている。IFP35 NIDの35NIDmAb Fabの相互作用に関与するアミノ酸と比較して、NMI NIDの対応する位置のアミノ酸は、IFP35 NIDとは異なり(以下の配列の比較図を参照)、対応する残基は、それぞれArg185、Asn186、Lys215、Lys218、Lys219、Glu221、Tyr222、Pro223、Tyr225、Cys230、Arg232、Thr234である。これらのアミノ酸は、NMI NIDと35NIDmAbとの相互作用に影響を与えることができる。しかし、これらのNMIアミノ酸残基は、NMI上の抗体結合エピトープを表しており、スクリーニングして中和抗体を取得するのに役立つ。
【0212】
IFP35上の抗体結合部位配列とNMI相同フラグメントの配列との比較:
IFP35_ヒト156 EIFFGKTRNGGGDVDVREL--LPGSVMLGFARDGVAQRLCQIGQFTVPLGGQQVPLRV 211
NMI__ヒト 178 ELSFSKSRNGGGEVDRVDYDRQSGSAVITFVEIGVADKILKKKEYPLYINQTCHRVTV 235
【0213】
実験方法:
(1)IFP35 NIDおよびNMI NIDの発現および精製
IFP35 NIDをコードする遺伝子フラグメント(残基124~220)をpGEX-6p-1にクローニングし、大腸菌で発現させる。IFP35 NIDのプラスミドをBL21(DE3)に形質転換する。LB培地に100mg/Lのアンピシリンを加え、37℃で細菌を培養する。OD600が0.8~1.0に達する場合、最終濃度が0.5mMであるイソプロピル(isopropyl)-β-D-チオグラクトシダーゼ(thioglactosidase)を使用して16℃で20時間誘導する。その後、4000rpmで15分間遠心分離して細菌を収集する。溶解緩衝液(20Mm Tris at pH8.0、400mMのNaCl、5%のグリセロール(Glycerol))で細菌を再懸濁し、超音波ディスラプターで細菌を破壊し、その後、16000rpmで30分間高速で遠心分離する。遠心分離された上清液をGSTアフィニティーカラムと1時間結合させた後、GSTアフィニティーカラムを洗浄する。溶出緩衝液(20mMのTris at Ph8.0、150mMのNaCl、30mMのグルタチオン(Glutathione))で組換えタンパク質を溶出し、溶出されたタンパク質をPPase酵素で消化し、イオン交換カラム(高塩緩衝液:20mMのTris at Ph8.0、1MのNaCl、5%のグリセロール、低塩緩衝液:20mMのTris at Ph8.0、100mMのNaCl、5%のグリセロール)およびゲルろ過クロマトグラフィーカラムSuperdex200(緩衝液:20mMのTris at Ph8.0、150mMのNaCl)でさらに精製する。SDS-PAGEタンパク質接着剤およびクマシーブリリアントブルー染色を使用して、組換えタンパク質の純度および完全性を検証する。
【0214】
NMI NID(155~240)遺伝子フラグメントの発現および精製の方法は、IFP35 NIDと同じである。
【0215】
(2)35NIDmAb Fabの生成および精製
文献で報告された方法を使用して、35NIDmAbハイブリッド腫瘍細胞を作成し、35NIDmAb抗体を生成する。35NIDmAbを取得した後、PBSに1mMのEDTAおよび1mMのを加え、この緩衝液を使用してパパイン(papain)を溶解する。精製された35nidmabをパパインで溶解し、100:1(35nidmab:パパイン)の質量比で37℃で6~8時間反応させて、35NIDmAb Fabを取得する。
【0216】
(3)結晶および構造の解析
結晶化プロセスにおいて、35NIDmAb FabおよびIFP35 NIDを1:1の比率で混合し、superdex200を使用して、ゲルろ過クロマトグラフィーによって分離および精製する。結晶スクリーニングは、ハンギングドロップ法を使用し、16℃で0.2μLのタンパク質(10mg/mL)+0.2μLのプール液の混合物でスポットする。35NIDmAb FabおよびIFP35 NIDの結晶は、0.1MのTris(pH8.5)、0.2MのMgCl2、18%のPEG3350を含むプール液で成長する。結晶液に15%のDMSOを加えて低温で結晶を保護し、上海シンクロトロン放射装置のビームライン(beamline)BL17UおよびBL18Uで結晶を回折する。HKL3000で回折データを処理する。
【0217】
単一波長異常分散法によって、IFP35 NIDおよびNMI NIDの構造を分析する。SHELX C/D、Phenix.AutosolおよびPhenix.Autobuildを使用して、両方の初期構造モデルを取得する。cootおよびphenixを使用して構造を修正する。HIV中和モノクローナル抗体YZ23(PDBコード3CLF)およびIFP35NIDの構造をモデルとして、分子置換法により35NIDmAb Fab -IFP35 NIDの複合体の構造を分析する。当該構造の初期モデルは、Phenix.Autobuildを使用して構築された。cootおよびphenixを使用して構造を修正する。
【0218】
以下は、COVID-19およびインフルエンザウイルス感染に関する研究である。
【0219】
材料および方法
人体(患者または健常者)の血清中のIFP35および/またはNMIの検出方法
(1)サンプル採取:4mLの静脈血を空腹時に採取し、抗凝固剤を含まない使い捨ての真空採血管に入れ、3000r/minで15分間遠心分離し、血清を分離した後、血清サンプルチューブを56℃の水浴に30分間以上入れてウイルスを不活化する。その後、サンプルチューブはテストのために-20℃または-80℃の冷蔵庫に保管され、凍結と解凍の繰り返しを回避する。
(2)サンプルの検出:
酵素免疫測定法(ELISA)を使用して、血清中のIFP35および/またはNMIの濃度を検出し、検出ステップは、次のとおりである。
2.1 試薬、サンプル、標準品の製造:
サンプルおよび試薬を徐々に室温(18~25℃)まで溶解する。標準品を5000pg/mL、2500pg/mL、1250pg/mL、625pg/mL、312pg/mL、156pg/mL、78pg/mLの順に希釈する。標準品の希釈液(0pg/mL)は、空白ウェルとして直接使用される。検出結果の妥当性を確保するために、各検出の対照品は、すぐに使用できるように調整する必要がある。
2.2 検出:
基準ウェル、試験サンプルウェル、空白ウェルをそれぞれ設定する。ELISAプレートを覆い、37℃で2時間インキュベートする。液体を廃棄し、スピンドライし、試験作業溶液Aを追加し、ELISAプレートを覆い、37℃で1時間インキュベートする。ウェル内の液体を廃棄し、スピンドライし、プレートを5回洗浄する。試験作業溶液Bを加え、37℃で1時間インキュベートし、ウェル内の液体を廃棄し、スピンドライし、プレートを5回洗浄する。各ウェルに90μLの基質溶液を加え、ELISAプレートを覆い、暗所で37℃で発色し(反応時間は、15~25分間に制御し、基準ウェルの最初3~4ウェルに明確な青色の勾配がある場合、最後の3~4ウェルの勾配が明らかでない場合、終了することができる)、各ウェルに50μLの停止溶液加えて、反応を停止し、停止溶液の追加順は、基質溶液と同じであり、色が不均一な場合、ELISAプレートを静かに振って、溶液ができるだけ均一になるようにしてください。ELISAプレートの底に水滴がなく、ウェルに気泡がないことを確認した後、マイクロプレートリーダーを使用して各ウェルの光学密度を測定する。
2.3 結果の処理:
標準曲線から血清中のIFP35および/またはNMIの濃度を計算し、SPSS統計ソフトウェアを使用してデータを処理し、平均値±標準差を使用して、サンプルグループおよび対照グループのデータに対するt検定を表し、P<0.05は、差が統計学的に意味を有することを示す。
【0220】
細胞株およびウイルス株
HEK293T(ATCC、CRL-11268)、A549(ATCC、CRM-CRL-185)およびMDCK(NBL-2)(ATCC CCL-34TM)細胞株をDMEM培地で培養し、10%のウシ胎児血清(Gibco)を追加する。THP1(ATCC、TIB-202TM)およびRAW264.7細胞(ATCCTIB-71TM)をRPMI1640培地(Gibco、C1875500BT)で培養する。9日齢のSPFニワトリ胚は、広東大華農生物技術有限公司から購入した。A型インフルエンザウイルスA/プエルトリコ/8/1934(H1N1)(PR8)毒株をSPFニワトリ胚で増殖させ、ショ糖密度勾配遠心分離で精製した後、MOCK細胞でウイルス力価を測定する。
【0221】
抗体および試薬
IFP35モノクローナル抗体(H00003430-M01)は、Abnova会社から購入した。NMI抗体(ab183724)は、abcamから購入した。A型インフルエンザウイルスNS1抗体(sc-130568)は、Santa Cruzから購入した。抗A型インフルエンザウイルス核タンパク質抗体は、abcam(ab128193)から購入した。E6446(二塩酸塩)(HY-12756A)(TLR7/9阻害剤)およびCU-CPT-9b(HY-112051)(TLR8阻害剤)は、Med ChemExpress(MCE、米国)から購入した。TLR3 dsRNA阻害剤(614310)は、Milliporeから購入した。Resatorvid(TAK-242)は、Selleck(米国)から購入した。
【0222】
マウス
C57BL/6(B6)野生型マウスは、広東省医学実験動物センター(GDMLAC)から購入した。公表された文献報告によると、C57BL/6マウスモデルを使用して、NMI-/-またはIFP35-/-純合子ホモ接合型遺伝子ノックアウトマウスを構築する。実験で使用されるすべてのマウスは、8~12週齢であり、性別が一致している。マウスは、SPF環境で飼育され、飼育条件は、中山大学動物福祉使用委員会の基準を満たす。
【0223】
プラスミドの構築およびトランスフェクション
すべてのベクターは、シーケンシングによって検証され、一過性発現のためにExFect2000トランスフェクション試薬(Vazyme、T202-1)で細胞をトランスフェクトする。簡単に説明すると、ウイルス感染の24時間前に、293T細胞に各プラスミドを一過性にトランスフェクトし、次に5MOI PR8ウイルスを6ウェルプレートの細胞に接種する。細胞を1時間インキュベートした後、PBSで1回洗浄してから、FBSを含まない正常なDMEM培地と交換する。次に、上清液を収集して、ウイルス力価を測定し、異なる時点でのサンプルを収集し、Westernブロット電気泳動によって分析する。
【0224】
リアルタイム-蛍光定量PCR
TRIzol LS試薬(米国)を使用して、細胞または肺組織からトータルRNAを抽出する。次に、特異的プライマーU12A:AGCAAAAGAGGレトロウイルスゲノムRNA(1μg)を使用し、PrimeScript II第一の鎖cDNA合成キット(Takara)を使用して逆転写システムを構成する。ウイルスmRNAは、最初にmRNA分離キット(中国葉森生物技術有限公司)で精製し、次にオリゴ(oligo)(dT)18をプライマーとして逆転写反応する。cDNA産物をテンプレートとして使用し、SYBR Green Mix(Applied Biosystems)を使用してqPCR増幅を行う。Quant Studio5(Applied Biosystems、Thermo Fisher Scientific)を使用して、定量的PCR反応を実行する。標準曲線法を使用してデータを分析する。
【0225】
ELISA
マウスmIFP35(E10460m)ELISAキットは、EIAab社から購入した。ヒトIFP35 ELISAキット(OKEH02088)は、AVIVA SYSTEM BIOLOGYから購入した。ヒトhNMI(CSB-EL015 893HU)、マウスmNMI(CSB-EL015893MO)ELISAキットは、すべてCUSABIO社から購入した。取扱説明書に従ってELISA実験を行う。簡単な説明は次のとおりである。100μLの多重希釈の標準品、検出サンプル、陰性および空白対照をそれぞれ対応する検出ELISAプレートに追加し、サンプルごとに二つの複製(二重)を設定する。メンブレンを覆った後、37℃で2時間インキュベートする。メンブレンをはがし、ウェル中の液体を捨て、紙タオルの上にバックオフするように逆様にして置き、軽く叩いて残りの液体を捨てる。各ウェルに100μLのビオチン標識(1×)の検出用抗体を加え、メンブレンを覆い、37℃で1時間インキュベートする。メンブレンをはがし、ウェル中の液体を捨て、紙タオルの上にバックオフするように逆様にして置き、軽く叩いて残りの液体を捨てる。1×洗浄緩衝液でプレートを3回洗浄する。各ウェルに100μLのHRP標識の検出二次抗体を加えた後、メンブレンを覆い、37℃で1時間インキュベートする。メンブレンをはがし、ウェル中の液体を捨て、紙タオルの上にバックオフするように逆様にして置き、軽く叩いて残りの液体を捨てる。1×洗浄緩衝液でプレートを5回洗浄する。各ウェルに90μlのTMB基質を加え、暗所で37℃で15~30分間インキュベートする。各ウェルに50μlの停止溶液を加え、ELISAプレートリーダーでOD450吸光度値を読み取る。
【0226】
肺の組織病理学
すべてのマウス肺組織を4%のパラホルムアルデヒドで固定し、パラフィンに包埋し、4μmのスライスに切断する。次に、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)ですべての切片を染色し、顕微鏡下で組織の損傷、壊死および炎症性細胞の浸潤状況を確認し、様々な領域をランダムに選択して写真を撮る。
【0227】
患者の血清サンプル
インフルエンザウイルスの研究での患者の血液および正常なボランティア対照サンプルは、中山大学医学部、中山大学第6付属病院、中山大学第1付属病院、広州医科大学第1附属病院、広東省の婦人や子供などからのものである。血清を分離した後、-80℃で保存する。血清サンプルの検出は、すべての参加者のインフォームドコンセントを得た上で関連病院の人体実験論理委員会によって承認された(201701093)。
【0228】
論理的説明
中華人民共和国国務院が承認した「実験動物管理規則」に従って動物実験を行う。当該動物実験は、中山大学動物福祉使用委員会(IACUC)によって承認され、ライセンス番号は、SYXK2016-0112である。インフルエンザウイルスに関連するすべてのの操作は、第3レベルのバイオセーフティラボで完了した。
【0229】
データ分析
定量的データは、平均値±SDで示し、ペアリングしない学生のt検定を使用して、グループ間の差が統計学的意味を有するかどうかを判断する。ログランク検定を使用して、異なる治療を受けたマウスの生存率に有意差があるかどうかを分析する。P値が0.05未満である場合、統計学的意味を有すると見なされ、P値が0.001未満である場合、有意差があると見なされ、P>0.05、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【0230】
実施例6:新型コロナウイルス肺炎(COVID-19)の血清学的指標としてのIFP35および/またはNMIの同定
本発明の発明者らは、指定された病院によって新型コロナウイルス肺炎について収集された新型コロナウイルス感染症の5人の重症/重篤の患者の血漿サンプルを検出し、すべての患者のIFP35およびNMIレベルが有意に上昇したことを発見した。同様に、より多くの(数十の)患者血清サンプルを使用してさらに分析すると、同じ結果が得られる。さらに注目すべきは、患者の臨床症状と予後を合わせて見ると、IFP35およびNMIのレベルには高い相関関係があり、即ち、IFP35およびNMIのレベルが高いほど、患者の臨床症状は重症になり、予後は悪化する(本研究でIFP35およびNMIのレベルが最も高い患者は、最終的に死亡する)。
図15は、5人の患者の血清IFP35およびNMIの結果を示し、一部のサンプル中のIFP35の含有量は、500~700pg/mLのレベルに達し、これは、本発明の発明者らによって以前に発見された敗血症患者の致死レベル(約700pg/mL)に近いレベルに達し、これは、IFP35および/またはNMIが、特に重症/重篤の患者において、新型コロナウイルス感染の炎症反応に関連していることを示すため、COVID-19に感染された患者の血液検出マーカーとして使用して、医療スタッフが患者の炎症性疾患の重症度および予後を判断するのに役立てることができる。
【0231】
本発明の発明者らの他の研究によると(例えば、以下のインフルエンザウイルス研究を参照)、血清におけるこれらの炎症因子の増加は炎症反応を活性化し、過剰な炎症反応を引き起こすので、これらの炎症因子を阻害し、炎症反応の程度を減少させ、ウイルス感染によって引き起こされる病気および脂肪の程度を減少させることができることを証明した。これから、血液中のIFP35および/またはNMIを阻害するための薬物(抗体薬物または化学薬物)の使用は、新型コロナウイルスCOVID-19感染によって引き起こされる過度の炎症反応の発生を阻害できると推測することができる。
【0232】
実施例7:インフルエンザウイルス感染の血清学的指標としてのIFP35および/またはNMIの同定
本発明の発明者らの予備研究(早時研究)は、LPS刺激がマクロファージにNMIを発現および放出させることを誘導できることを示すため、本研究では、陽性対照として使用し、PBSを陰性対照として使用する。
【0233】
NMIの場合、A型インフルエンザウイルスに感染された患者の血清NMIは、健康なドナーの血清NMIよりも高く(
図16のA図)、インフルエンザウイルスPR8は、ヒト単球(THP1)、上皮細胞(A549)を刺激して、RAW264.7細胞は、細胞が培地にNmiを放出させることができ(
図16のB、C、E図)、PR8に感染されたC57BL/6マウスにおいて、血清NMIは、対照グループよりも有意に高く(
図16のD図)、細胞NMIおよびIFP35は、PR8感染後の徐々に増加し、A549細胞で異なる存在量を示す(
図16のF図)。
【0234】
IFP35で観察された結果は、NMIと同様であり、A型インフルエンザウイルスに感染された患者の血清NMIは、健康なドナーの血清NMIよりも高く(
図17のB図)、インフルエンザウイルスPR8は、RAW264.7細胞を刺激して、細胞が培地にNmiを放出させることができ(
図17のA図)、PR8に感染されたC57BL/6マウスにおいて、血清IFP35は、対照グループよりも有意に高い(
図17のC図)。
【0235】
図18は、16人のインフルエンザ患者および10人の健康な人の血清中のNMIおよびIFP35の含有量を示し、ここで、インフルエンザ患者の血清中のNMIおよびIFP35の含有量は、健康な人の含有量よりもはるかに高く、集中治療室(ICU)で重度の肺炎を発症する患者(黒四角でマーク)の含有量は、特に高い。
【0236】
これらのすべての結果は、インフルエンザウイルス感染がインビトロおよびインビボでNMI/IFP35の生成につながることができることを示す。
【0237】
実施例8:インフルエンザウイルス感染に対するNMIおよびIFP35欠失の保護効果の検証
C57BL/6マウスモデルでNMI
-/-ノックアウトマウスを構築する。一つのグループのC57BL/6野生型またはNMI
-/-ノックアウトマウスをそれぞれ2×10
6pfuのPR8ウイルスで試験し、感染されたマウスの90%を殺すことができる。すべてのマウスを毎日監視して、生きているかどうか、体重が減っているかどうか、および病気の臨床症状があるかどうかを判断する(例えば、無気力、脱毛、しわの寄った毛皮、腰下ろしの姿勢、急速な浅い呼吸、聞こえるラ音)。各マウスの毎日の臨床スコアは、0(無症状)~5(死にかけ)等である。
図19のA図およびB図に示されるように、NNMI
-/-マウスは、軽度の臨床症状を示し、体重が減少する(%)。対照的に、野生型マウスの臨床スコアははるかに高く、体重は、30%近く減少する。H&E染色の結果(
図19のC図):PR8に感染された野生型マウスの肺組織が損傷され、炎症性滲出液およびうっ血が肺泡空間および肺泡間隔を満たす。NMI
-/-マウスの肺組織は、PBSに感染された対象マウスと同様に、明らかな病変がなく、基本的に無傷のままである。実験が終わる際に、野生型マウスと比較して、NNMI
-/-マウスは、致死的なPR8感染(LD
90)から大きい程度で保護される(
図19のD図)。
【0238】
相同タンパク質IFP35を研究するために、CRISPR Cas9技術を使用してC57BL/6マウスのIFP35遺伝子をノックアウトする。それぞれLD
90用量のPR8ウイルスを使用してC57BL/6野生型またはIFP35
-/-遺伝子ノックアウトマウスを感染して、試験を行う。
図20に示されるように、IFP35
-/-ノックアウトマウスは、明らかな肺損傷(B図)がなく、野生型マウスと比較して、生存率(%)はわずかに増加し(C図)、興味深いことは、体重変化(%)は対照グループと有意差がない(A図)。
【0239】
上記の証拠は、NMIおよび/またはIFP35のインビボレベルを低下させることが、インフルエンザウイルス感染に対する保護効果を有することを示す。
【0240】
実施例9:インフルエンザウイルス感染に対する外因性阻害剤の保護効果の検証
IFP35の外因性阻害が同様の保護効果を達成できるかどうかを検証するために、薬物としてIFP35中和抗体を使用して、ウイルス感染の1日前に12匹のC57BL/6野生型マウスを治療し、同時に、陰性対照として同量のマウスIgGを摂取して、C57BL/6野生型マウスの別のグループを治療し、各マウスに200μgの抗体を5日間連続して静脈内注射し、次に、すべてのマウスは、0日目にLD
90のPR8ウイルスを接種する。各マウスに対して体重を測定し、しわの寄った毛皮、無気力、忍び寄り、腰下ろし、息切れ、聞こえるラ音などを監視し、毎日臨床症状に対して採点し、2週間持続する。実験プロトコルの概略図は、
図21のA図を参照する。
【0241】
結果は、IFP35中和抗体で治療されたマウスが致死的なPR8感染(LD
90用量)からそれらを有意に保護できる一方、mIgGを投与したマウスのほとんどが死亡し(
図21のD図)、臨床スコアが生存率と一致し(
図21のC図)、しかしながら、体重変化に有意差がない(
図21のA図)とを示し、これは、
図20のA図の結果と一致しており、さらに研究してそのメカニズムを決定する必要がある。一般に、IFP35中和抗体は、臨床症状を軽減し、致死的なインフルエンザウイルス感染からマウスを保護する。
【0242】
パンデミックH1N1、高病原性H5N1および新型組換えH7N9のようなインフルエンザウイルスは、ヒトに直接感染し、重度の急性肺損傷、急性呼吸窮迫症候群、そして最終的に呼吸不全を引き起こすことができる。これは、通常、二次的な細菌感染を引き起こし、様々な感染性肺炎、脳炎、心筋炎,そして最終的に多臓器不全を引き起こす。
【0243】
本発明のインフルエンザウイルスの研究は、次の結論を支持する。インフルエンザウイルス感染は、個体の血液中のIFP35および/またはNMIの量の増加につながることができ、この結果は、臨床検出でインフルエンザウイルス感染を検出するための特徴的な指標として使用されることができる。同時に、IFP35および/またはNMIを阻害するための抗体薬物、化学薬物等の外因性投与方法の使用は、インフルエンザウイルスの治療に使用されることができる。
【0244】
本発明の開示の精神および範囲から逸脱することない限り、本発明に開示される様々な実施形態に対して様々な変更および同等の置換を行うことができる。文脈に別の説明がない限り、本開示の実施形態の任意の特徴、手順(ステップ)または実施形態を、他の任意の特徴、手順または実施形態と組み合わせて使用することができる。
【配列表】