(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】音響処理を含む逆推力装置カスケード
(51)【国際特許分類】
F02K 1/72 20060101AFI20240419BHJP
F02K 1/44 20060101ALI20240419BHJP
F02C 7/24 20060101ALI20240419BHJP
B64D 27/10 20060101ALI20240419BHJP
B64D 29/06 20060101ALI20240419BHJP
B64D 33/00 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
F02K1/72
F02K1/44
F02C7/24 C
B64D27/10
B64D29/06
B64D33/00 A
B64D33/00 B
(21)【出願番号】P 2021564989
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(86)【国際出願番号】 EP2020059560
(87)【国際公開番号】W WO2020224887
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-03-24
(32)【優先日】2019-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョデ,ノルマン・ブリュノ・アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ゴンザレス,ジェレミー・ポール・フランシスコ
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-506185(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0266423(US,A1)
【文献】特開2009-062977(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0370325(US,A1)
【文献】仏国特許出願公開第2947869(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 27/10
B64D 29/06
B64D 33/00
F01D 25/00
F02C 7/24
F02K 1/44
F02K 1/72
G10K 11/172
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機のターボ機械に取り付けられることが意図された逆推力装置用のカスケード(80)であって、カスケード(80)は、第1の方向(D
A)に延びる第1の仕切(82)と、第1の方向(D
A)に直交する第2の方向(D
C)に延びる第2の固定仕切(83)と、第1および第2の仕切(82、83)が内部に延びるフレーム(81)であって、第1の方向(D
A)に従って延びる少なくとも2つの固定壁(810、815)を具備するフレーム(81)と、第1および第2の方向(D
A、D
C)を含む平面内の2つの第2の仕切り(83)の間に延びる各第1の仕切(82)の少なくとも一部と、を備え、
少なくとも1つの第1の仕切(82)は、第1の位置であって、前記少なくとも1つの第1の仕切り(82)がフレーム(81)の前記固定壁(810、815)から第2の方向(D
C)に離れて、第1の仕切(83)および/またはフレーム(81)の固定壁(810、815)と複数の共振空洞(84)を形成する第1の位置と、第2の位置であって、前記少なくとも1つの第1の仕切(82)が、フレーム(81)の固定壁(810、815)または別の第1の仕切(82)と接触している第2の位置との間で、第2の方向(D
C)に従って移動可能であることを特徴とする、カスケード(80)。
【請求項2】
各第1の可動仕切(82)は、第2の仕切(83)を収容し、かつ前記第1の仕切(82)が第2の仕切(83)に沿って移動できるように構成されたノッチ(820)を備え、各ノッチ(820)は、ノッチ(820)をシールするためのシール(825)を備える、請求項1に記載のカスケード(80)。
【請求項3】
ノッチ(820)のシール(825)はブラシシールまたはタングシールである、請求項2に記載のカスケード(80)。
【請求項4】
少なくとも2つの第1の可動仕切(82)と、アクチュエータ(94)、ならびに第1および第2の端部(920、925)を具備する、少なくとも2つのタイロッド(92)を含む、第1の仕切(82)の少なくとも1つの並進システム(90)と、をさらに備え、この並進システム(90)のタイロッド(92)の第2の端部(925)は、アクチュエータ(94)に接続された少なくとも1つの共通のピボットリンク(930)を介して互いに接続され、この並進システム(90)の各タイロッド(92)の第1の端部(920)は、第1の可動仕切(82)へのピボットリンクとして固定されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のカスケード(80)。
【請求項5】
第1の仕切(82)の並進システム(90)の少なくとも1つの対をさらに備え、システムの同じ対の並進システム(90)は、同じ第1の可動仕切(82)に接続されている、請求項4に記載のカスケード(80)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第1の可動仕切(2)は、第1の方向(D
A)に従って、第1および第2の端部(820、825)を備え、一対の並進システムの第1の並進システム(90)のタイロッド(92)の第1の端部(920)は、第1の可動仕切(82)の第1の端部(820)へのピボットリンクとして固定され、同じ一対の並進システムの第2の並進システム(90)のタイロッド(92)の第1の端部(920)は、この第1の可動仕切(82)の第2の端部(825)へのピボットリンクとして固定されている、請求項5に記載のカスケード(80)。
【請求項7】
同じ一対の並進システムの並進システム(90)のアクチュエータ(94)は機械的に一緒に接続されている、請求項5または6のいずれか一項に記載のカスケード(80)。
【請求項8】
第2の方向(D
C)に連続して配置された2つの固定壁(810、815)の間に配置された第1の仕切(82)に接続されたタイロッド(92)は、前記2つの連続する固定壁(810、815)を隔てる距離の半分と全長との間の長さを有する、請求項4~7のいずれか一項に記載のカスケード(80)。
【請求項9】
2つ以上の第1の可動仕切(82)が、第2の方向(D
C)に連続して配置された2つの固定壁(810、815)の間に配置され、前記2つの連続する固定壁(810、815)の間に配置された第1の仕切(82)に接続されたタイロッド(92)は、互いに異なる長さを有する、請求項4~8のいずれか一項に記載のカスケード(80)。
【請求項10】
少なくとも1つの並進システム(90)のアクチュエータ(94)は、第1の可動仕切(82)を第1の位置まで互いに遠くに遠ざけるように、またはそれらを第2の位置まで互いにより接近させるように構成された空気圧または電気アクチュエータである、請求項4~9のいずれか一項に記載のカスケード。
【請求項11】
第1の仕切(82)の厚さは0.5mm~4mmの間であり、第1の仕切(82)の厚さは、第2の方向(D
C)に従って測定される、請求項1~10のいずれか一項に記載のカスケード(80)。
【請求項12】
第1の位置で第1の可動仕切(82)の並進を停止するためにカスケード(80)上に配置された停止部をさらに備える、請求項1~11のいずれか一項に記載のカスケード。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の少なくとも1つのカスケード(80)を含むことを特徴とする、航空機のターボ機械用のカスケード逆推力装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つの並進システム(90)のアクチュエータ(94)は、第1の可動仕切(82)を第1の位置まで互いに遠ざけるように、または逆推力装置のトリガと同期してそれらを第2の位置まで互いにより接近させるように構成される、請求項
4~7のいずれか一項に記載の
、航空機のターボ機械用のカスケード逆推力装置。
【請求項15】
航空機に取り付けられることを目的としたターボ機械(1)であって、ターボ機械(1)は、軸線方向(D
A)および半径方向(D
R)を画定する回転対称のナセル(2)を備え、ナセル(2)は、半径方向(D
R)に従った厚さと、逆推力カスケード装置のカスケード(80)を受け入れるためにその厚さで軸線方向(D
A)に従って延びるハウジング(25)と、を備え、
請求項13に記載の逆推力カスケード装置を備え、逆推力が必要とされない場合、ターボ機械(1)のナセル(2)の対応するハウジング(25)内にカスケード(80)が配置され、第1の仕切(82)は、軸線方向(D
A)および半径方向(D
R)に従って延び、第2の仕切(83)は、半径方向(D
R)に従って、ならびに軸線方向(D
A)および半径方向(D
R)に直交する方向に従って延び、第1の方向は軸線方向(D
A)に対応することを特徴とする、ターボ機械(1)。
【請求項16】
ナセル(1)は、ハウジング(25)の半径方向内壁を形成する孔空き壁(254)と、ハウジング(25)の半径方向外壁を形成する反射壁(256)とを備える、請求項15に記載のターボ機械(1)。
【請求項17】
請求項15または16のいずれか一項に記載の少なくとも1つのターボ機械(1)を備える航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機のターボ機械によって放出される音波の音響処理、より具体的には、ターボ機械の逆推力装置の領域における音波の処理に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ機械が動作しているとき、流れとターボ機械の固体部分との間の相互作用は、ターボ機械の両側に伝播する騒音を発生させる原因となる。
【0003】
この音響放射を減衰させる手段の1つは、音波と接触する表面の領域に音響処理手段を統合することである。
【0004】
従来の用語では、ターボジェットの音響処理、より正確にはロータとその周囲環境との相互作用によって放射される騒音の音響処理は、音波が広がる導管の濡れ面の領域に配置された吸収パネルによって実行される。濡れ面は、流体の流れと接触している表面である。これらのパネルは一般に、ハニカム吸音成形セルを囲むサンドイッチタイプの複合材料である。
【0005】
たとえば、従来技術は、ターボ機械のナセルの壁を裏打ちする音響処理パネルの典型的なハニカム構造を提示する、一つの自由度、SDOFを有する音響パネルを開示している。
【0006】
共振空洞を使用する音響処理パネル技術の動作原理として、音響処理パネルの半径方向の嵩、すなわち半径方向の厚さは、音響減衰に関して最大の効率を得るための処理の特定の周波数に依存する。
【0007】
しかしながら、エンジンアーキテクチャでは、インペラの回転速度はますます遅くなり、インペラのベーンの数はますます少なくなっているので、ファンおよびステータステージを構成するモジュール、すなわち「アウトレットガイドベーン」の「OGVファン」モジュールに関連する騒音の主要周波数は低くなっている。このため、音響パネルの最適な厚さとナセルで利用可能なバルクとの間の適切性は現在満たされていない。
【0008】
ターボ機械は一般に、航空機の減速させるための逆推力装置を備える。カスケードの作用に基づく、2つの主要な逆推力装置技術がある。2種類のカスケード逆推力装置は、固定カスケード逆推力装置とスライドリンクカスケード逆推力装置として区別される。
【0009】
図1Aおよび
図1Bは、それぞれ、非作動時の逆推力位置および作動時の逆推力位置における、先行技術から知られている第1の実施形態によるターボ機械1の長手方向平面における概略断面図を示す。
【0010】
ターボ機械1は、軸線方向DA、半径方向DRおよび円周方向DCを定義する軸線Xの周りの回転対称のナセル2と、ファン3と、一次流4と、二次流と、一次ステータステージ5と、二次ステータステージ6と、カスケード8を含むカスケード逆推力装置7と、を備える。
【0011】
固定カスケード逆推力装置を備えたターボ機械を表す
図1Aおよび
図1Bに示されるように、固定カスケード逆推力装置では、カスケード8は、ナセル2の上流部分21に包囲され、すなわち取り付けられ、ナセル2の下流部分22とスライドリンクされ、上流および下流部分は、ターボ機械1内のガス流Fの流れの方向に対して定義される。下流方向に移動するとき、ナセル2の下流部分22は、ナセル2の内部の流れとターボ機械1が展開する周囲環境との間の唯一のインターフェースとなるカスケード8を見出す。
【0012】
図2Aおよび
図2Bは、それぞれ、非作動時の逆推力位置および作動時の逆推力位置における、先行技術から知られている第2の実施形態によるターボ機械1の長手方向平面における概略断面図を示す。
【0013】
スライドリンクカスケード逆推力装置が取り付けられたターボ機械1を示す
図2Aおよび
図2Bに示すように、固定カスケード逆推力装置では、カスケード8は、ナセル2の上流部分21に対してスライドリンクされ、ナセル2の下流部分22に埋め込み式に取り付けられている。それが下流に移動すると、ナセル2の下流部分22は、カスケード8をナセル2から引き出し、ナセル2の内部の流れと周囲環境との間の境界部にそれを配置する。
【0014】
逆推力装置は全体として、着陸段階の目的でのみ使用されるものであるが、推進システムの性能にとって非常に有害なコスト、質量、およびバルクを表す。それらがナセルで占めるボリュームは、従来技術では、ターボ機械によって放出される音波の音響処理に特に使用することはできない。
【0015】
二次流れの内側に展開してナセルの外側の上流の流れを偏向させるドアを備えた逆推力装置を使用する推進システムアーキテクチャでは、典型的な音響処理の統合として知られる手法は、音響パネルをリバーサドアの空洞に組み込むことで構成される。この方法は、ファンケーシングの場合と同様に、利用可能なボリュームに典型的な吸収パネルを組み込むことだけで構成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、カスケードがターボ機械の逆推力装置に取り付けられたときに、空気流をターボ機械の上流方向にナセルの外側に再配向することと、カスケードによる負荷損失を最小限に抑え、吸音効率を最大化することの両方を行うカスケード逆推力装置のカスケードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の目的は、航空機のターボ機械に取り付けられることが意図された逆推力装置用のカスケードを提案するものであり、カスケードは、第1の方向に延びる第1の仕切と、第1の方向に直交する第2の方向に延びる第2の固定仕切と、第1および第2の仕切が内部に延びるフレームであって、第1の方向に従って延びる少なくとも2つの固定壁と、第1および第2の方向を含む平面内の2つの第2の仕切の間に延びる各第1の仕切の少なくとも一部と、を具備するフレームと、を備える。
【0018】
本発明の一般的な特徴によれば、少なくとも1つの第1の仕切は、前記少なくとも1つの第1の仕切がフレームの前記固定壁から第2の方向に離れて、第1の仕切およびフレームの固定壁と複数の共振空洞を形成する第1の位置と、前記少なくとも1つの第1の仕切が固定壁または別の第1の仕切と接触している第2の位置との間で、第2の方向に従って移動可能である。
【0019】
一般に、従来技術では、セルの数は、リバーサカスケードと音響パネルとの間でかなり異なる。この違いは、同じではない推奨プロパティによるものである。
【0020】
逆推力カスケードは通常、逆推力フェーズで受ける空気力学的負荷を保持するようにサイズ設定された金属構造を特徴とする。この構造は、負荷損失も発生させる。セルは、流体が循環できる4つの壁で構成されるボリュームである。セル密度が高すぎると、空気の通過に対する抵抗が大きすぎるため、逆推力装置の効率が低下する可能性がある。
【0021】
一方、吸音パネル構造は空気力の影響を受けない。それらを構成する仕切は非常に細かく、ボリュームが小さいため、パネルのチューニング周波数、つまり最大減衰周波数が最適化される。
【0022】
したがって、逆推力と音響処理の2つの機能は、非常に異なるセル構造を必要とする。
【0023】
第2の仕切は、そのようなカスケードが取り付けられた逆推力装置を備えるターボ機械内のガス流の流れの方向に直交する方向に従って配向されることが意図されている。カスケードがターボ機械の逆推力装置に取り付けられている場合、逆推力の機能を確保するには、ターボ機械の方位角方向または半径方向に従って配向された第2の仕切が不可欠である。実際、これらの第2の仕切のために、逆推力装置が取り付けられているナセル内の流れ内を循環する空気流は捕捉されて、ナセルの内側の流れの方向に対して、ターボ機械の上流に向けてナセルの外側に再配向されることができる。
【0024】
第1の仕切は、そのようなカスケードが取り付けられた逆推力装置を備えるターボ機械内のガス流の方向に従って配向されることが意図されている。カスケードがターボ機械の逆推力装置に取り付けられている場合、ターボ機械の軸線方向に従って配向された第1の仕切は、逆推力の機能に不可欠ではない。しかしながら、それらはターボ機械によって生成された音波を減衰させるための共振空洞の形成を可能にする。
【0025】
本発明によるカスケードの少なくとも1つの第1の仕切の第2の方向に従う移動度は、たとえば、2つの第2の仕切間または第2の仕切とフレームとの間の第1の方向の同じ所与の体積について単一の大きなセルを持つために、カスケードの動作モードに応じて、または少なくとも2つの小さなセルを持つために、第2の可動仕切の数に応じて、カスケードのセルの数を変更する可能性を提供する。言い換えると、少なくとも1つの第1の仕切の移動度では、セルの数が変化して、「逆推力」モードでこの数を制限し、「音響処理」モードでこの数を増やす。
【0026】
カスケードの第1の態様では、各第1の可動仕切は、第2の仕切を収容し、かつ前記第1の仕切が第2の仕切に沿って移動できるように構成されたノッチを備えることができ、各ノッチは、ノッチをシールするためのシールを備えることができる。
【0027】
この形態は、セル間の音響漏れを制限することにより、カスケードが音響処理モードで動作しているときの共振空洞内のセルの形成を改善する。
【0028】
カスケードの第2の態様では、ノッチのシールは、ブラシシールまたはタングシールとすることができる。
【0029】
カスケードの第3の態様では、カスケードは、少なくとも2つの第1の可動仕切と、アクチュエータならびに第1および第2の端部を具備する少なくとも2つのタイロッドを備える、第1の仕切の少なくとも1つの並進システムと、を備えることができ、この並進システムのタイロッドの第2の端部は、互いに接続されてアクチュエータに接続された共通のピボットリンクを形成し、この並進システムの各タイロッドの第1の端部は、第1の可動仕切へのピボットリンクとして固定されている。
【0030】
このアクチュエータを使用すると、推奨機能を実行するために必要なアクチュエータの数を最小限に抑えることができる。
【0031】
カスケードの第4の態様では、カスケードは、第1の仕切の並進システムの少なくとも1つの対を備えることができ、システムの同じ対の並進システムは、同じ第1の可動仕切に接続されている。
【0032】
2つの並進システムを使用してこの第1の可動仕切(複数可)をシフトすると、第1の可動仕切に2つの固定ポイントが可能になり、この固定ポイントにかかる機械的ストレスが軽減され、並進中の第1の可動仕切の変形が軽減される。
【0033】
カスケードの第5の態様では、前記少なくとも1つの第1の可動仕切は、第1の方向に従って、第1および第2の端部を備えることができ、一対のシステムの第1のシステムのタイロッドの第1の端部は、第1の可動仕切の第1の端部へのピボットリンクとして固定され、この一対のシステムの第2のシステムのタイロッドの第1の端部は、この第1の可動仕切の第2の端部へのピボットリンクとして固定されている。
【0034】
この一対のシステムの並進システムをカスケードの第1の可動仕切の両端に接続すると、可動仕切内の曲げ応力が最小限に抑えられ、並進が容易になる。
【0035】
カスケードの第6の態様では、この一対の並進システムの並進システムのアクチュエータは機械的に一緒に接続されることができる。
【0036】
この一対の並進システムの並進システムのアクチュエータを接続すると、第1の可動仕切内の曲げ応力と摩擦力が正確に同期される。
【0037】
カスケードの第7の態様では、第2の方向に連続して配置された2つの固定壁の間に配置された第1の仕切に接続されたタイロッドは、前記2つの連続する固定壁を隔てる距離の半分と全長との間の長さを有する。
【0038】
カスケードの第8の態様では、2つ以上の第1の可動仕切が、第2の方向に連続して配置された2つの固定壁の間に配置され、前記2つの連続する固定壁の間に配置された第1の仕切に接続されたタイロッドは、互いに異なる長さを有する。
【0039】
カスケードの第9の態様では、少なくとも1つの並進システムのアクチュエータは、第1の可動仕切を第1の位置まで互いに遠ざけるように、またはそれらを第2の位置まで互いにより接近させるように構成された空気圧または電気アクチュエータとすることができる。
【0040】
カスケードの第10の態様では、カスケードにおける質量および負荷損失を最小限に抑えるために、第1の仕切の厚さを0.5mmから4mmの間で可能な限り細かくすることができる。第1の仕切の厚さは、第2の方向に従って測定される。
【0041】
カスケードの第11の態様では、カスケードは、正確な位置決めを生成するために、第1の位置で第1の可動仕切の並進を停止するためにカスケード上に配置された停止部を備えることができる。
【0042】
本発明の別の目的において、航空機のターボ機械用の逆推力カスケード装置が提案され、それは、上で定義されたような少なくとも1つのカスケードを備えることを特徴とする。
【0043】
逆推力装置の第1の態様では、前記少なくとも1つの並進システムのアクチュエータは、第1の可動仕切を第1の位置まで互いに遠ざけるように、または逆推力装置のトリガと同期してそれらを第2の位置まで互いにより接近させるように構成される。
【0044】
アクチュエータを逆推力装置のトリガと同期させると、逆推力装置の動作モードに応じて、可動仕切構造を展開または折り畳むためのすべてのリンクポイントに並進力が作用し、逆推力装置は、非作動時すなわち音響処理モード、または作動時すなわち逆推力モードとすることができる。
【0045】
本発明のさらに別の目的では、航空機に取り付けることが意図されたターボ機械が提案され、ターボ機械は、軸線方向および半径方向を定義する回転対称のナセルを備え、ナセルは、半径方向に応じた厚さと、逆推力カスケード装置のカスケードを受け入れるためのその厚さの軸線方向に応じて延びるハウジングとを備える。
【0046】
本発明の本目的の一般的特徴によれば、ターボ機械は、上で定義されたような逆推力カスケード装置を備えることができ、逆推力が必要とされない場合、カスケードは、ターボ機械のナセルの対応するハウジング内に配置され、第1の仕切は軸線方向および半径方向に従って延び、第2の仕切は半径方向、ならびに軸線方向および半径方向に直交する方向に従って延び、第1の方向は軸線方向に対応する。
【0047】
ターボ機械の一実施形態では、ナセルは、ハウジングの半径方向内壁を形成する孔空き壁と、ハウジングの半径方向外壁を形成する反射壁とを備えることができる。
【0048】
本発明の別の目的では、上で定義されたような少なくとも1つのターボ機械を備える航空機が提案される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1A】すでに説明した
図1Aは、それぞれ、非作動時逆推力位置および作動時の逆推力位置における、先行技術から知られている第1の実施形態によるターボ機械の長手方向平面における概略断面図を示す。
【
図1B】すでに説明した
図1Bは、それぞれ、非作動時の逆推力位置および作動時の逆推力位置における、先行技術から知られている第1の実施形態によるターボ機械の長手方向平面における概略断面図を示す。
【
図2A】すでに説明した
図2Aは、それぞれ、非作動時の逆推力位置および作動時の逆推力位置における、先行技術から知られている第2の実施形態によるターボ機械の長手方向平面における概略断面図を示す。
【
図2B】すでに説明した
図2Bは、それぞれ、非作動時の逆推力位置および作動時の逆推力位置における、先行技術から知られている第2の実施形態によるターボ機械の長手方向平面における概略断面図を示す。
【
図3A】
図3Aは、非作動時の逆推力位置および作動時の逆推力位置における本発明の第1の実施形態によるターボ機械の逆推力装置の、カスケードの軸線方向を含み、かつ半径方向に直交する平面による概略断面図を示す。
【
図3B】
図3Bは、非作動時の逆推力位置および作動時の逆推力位置における本発明の第1の実施形態によるターボ機械の逆推力装置の、カスケードの軸線方向を含み、かつ半径方向に直交する平面による概略断面図を示す。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態によるターボ機械用の逆推力装置の、カスケードの軸線方向および半径方向を含む平面による概略断面図を示す。
【
図5A】
図5Aは、非作動時の逆推力位置および作動時の逆推力位置における本発明の第2の実施形態によるターボ機械の逆推力装置の、カスケードの軸線方向を含み、かつ半径方向に直交する平面による概略断面図を示す。
【
図5B】
図5Bは、非作動時の逆推力位置および作動時の逆推力位置における本発明の第2の実施形態によるターボ機械の逆推力装置の、カスケードの軸線方向を含み、かつ半径方向に直交する平面による概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図3Aおよび
図3Bは、非作動時の逆推力位置および作動時の逆推力位置における本発明の実施形態によるターボ機械の逆推力装置の、カスケードの軸線方向を含み、かつ半径方向に直交する平面による概略断面図を示す。
【0051】
ターボ機械は、
図1Aおよび
図1Bに記載の動作に従って、または
図2Aおよび
図2Bに記載の動作に従って動作することができる逆推力装置を備える。
【0052】
逆推力装置は、格子状のクラウンを形成するように組み立てられた複数のカスケード80を備える。各カスケード80は、その内部で第1の仕切82が第1の方向に延び、第2の仕切83が第1の方向に直交する第2の方向に延びるフレーム81を備える。
【0053】
また、第1の方向の
図3Aおよび
図3Bに示されるように、フレームは、2つの固定側壁810および固定中央壁815を備え、カスケードを、フレーム81の長さの半分に等しい長さを有する第2の方向の2つの長方形ゾーン800に分割する。
【0054】
図3Aおよび
図3Bのカスケード80の第1および第2の方向に直交する第1の方向および第3の方向を含む平面による、概略断面図を示す
図4に示されるように、フレーム81ならびに第1および第2の仕切82および83は、第1および第2の方向に直交する第3の方向に延びる。第1の仕切82は、10mm~300mmの間の高さHを有する。
【0055】
図4にも示されているように、第1の仕切82のそれぞれは、第2の仕切83のうちの1つを収容するように構成されたノッチ820を備える。ノッチ820のそれぞれにおいて、第1の仕切82はまた、第1の仕切82に取り付けられたブラシシール825またはタングシールを備える。
【0056】
第1の仕切83の厚さは、カスケードにおける質量および負荷損失を最小限に抑えるように可能な限り細かくするために、0.5mm~4mmの間である。
【0057】
逆推力装置が
図1A、
図1B、
図2A、
図2Bに示すようなターボ機械に取り付けられている場合、第1の方向はターボ機械1の軸線方向D
Aに対応し、第2の方向はターボ機械1の円周方向D
Cに対応し、第3の方向は、ターボ機械1の半径方向D
Rに対応する。
【0058】
第2の仕切83は、逆推力装置が作動するときの逆推力のために、ガス流Fをナセル2の外側およびターボ機械1の上流に向けることを目的とした方位角仕切である。第1の仕切82は、逆推力装置が非作動のときにターボ機械によって生成される音波を吸収するための共振空洞84を、第2の仕切83と共に定義することが意図された軸線方向仕切である。
【0059】
図3Aおよび
図3Bに示されるように、第1の仕切82は、第2の仕切83に沿って、すなわち第2の方向D
Cに従って、第2の仕切83が、第2の方向D
Cに従って互いに均一に間隔を置いて配置されて複数の共振空洞84を形成する、
図3Aに示される第1の位置と、第1の仕切82が、それらの長方形ゾーン800の固定壁810および815に対してグループとして等しく折り返され、2つの第2の仕切83の間で、または第2の仕切83とフレーム81との間で第1の方向D
Aに延びる単一のセルのみを有する、
図3Bに示される第2の位置との間で移動することができる。
【0060】
図3Aおよび
図3Bに示される例では、第2の位置で、各長方形ゾーン800において、2つの第1の可動仕切82が固定側壁810に対して配置され、2つの第1の可動仕切82が固定中央壁815に対して配置される。第1の位置では、各長方形ゾーン800において、4つの第1の可動仕切82が、第2の方向に均一に間隔を置いて配置され、第2の仕切83と同一の共振空洞84を形成する。
【0061】
図3Bは、逆推力装置の作動位置、すなわち、逆推力装置が非作動のときにカスケード80がカスケード80を受け入れるためにナセル2の厚さで提供されるハウジング25を出た位置にあるカスケード80を示す。ハウジング25は、軸線方向D
Aに従ってハウジング25にカスケード80を挿入することを可能にする開口部250と、開口部250の反対側の半径方向D
Rに延びる後壁252と、互いに平行であり軸線方向D
Aおよび円周方向D
Cに延びる孔空き壁および反射壁とを備える。孔空き壁および反射壁は、これらの図が断面図であるため、
図3Aおよび
図3Bには示されていない。孔空き壁は、反射壁の半径方向内側にある。カスケードがハウジングに挿入されると、孔空き壁と反射壁は、孔空き壁の各開口部によって形成される容積およびネックを備えたヘルムホルツ共鳴器タイプの共振空洞を形成する。
【0062】
図5Aおよび
図5Bは、非作動時の逆推力位置および作動時の逆推力位置における本発明の第2の実施形態によるターボ機械の逆推力装置のカスケードの軸線方向を備え、かつ半径方向に直交する平面による概略断面図を示す。
【0063】
この実施形態では、各長方形ゾーン800は、2つの第1の可動仕切82を含む。長方形ゾーン800は、より多くの偶数の第1の可動仕切82を含むことができる。
【0064】
図5Aおよび
図5Bに示される第2の実施形態では、カスケード80は、2つの第1の可動仕切82の第2の方向D
Cへの移動を制御する第1および第2の並進システム90を素姉る。2つの並進システム90は、同期された方法で一緒に作動されるように一緒に結合される。それらはまた、逆推力装置と同期して、逆推力装置が非作動モード、すなわちターボ機械によって放出される音波の音響処理に固有の動作モードに切り替わるときに第1の位置に、または、逆推力装置が作動モード、すなわち逆推力の動作モードに切り替わるときに第2の位置に、第1の可動仕切82をシフトする。
【0065】
各並進システム90は、タイロッド92およびアクチュエータ94を備える。各タイロッド92は、第1の可動仕切82の第1の方向DAに従って、一端でピボットリンクとして結合された第1の端部920を備える。第1の方向DAでは、各第1の仕切82は、第1の端部820および第2の端部825を備える。第1の並進システム90のタイロッド92の第1の端部920は、第1の可動仕切82の第1の端部820にピボットリンクとして接続され、第2の並進システム90のタイロッド92の第1の端部920は、第1の可動仕切82の第2の端部825へのピボットリンクとして接続される。
【0066】
各タイロッド92は、第1の端部920の反対側に第2の端部925を備える。並進システム90の各タイロッド92の第2の端部925は、それらをアクチュエータ94に接続するために互いに機械的に接続されている。
【0067】
図5Aおよび
図5Bに示される例では、各並進システム90は、2つの第1および2つの第2のタイロッド92を備える。2つの第1のタイロッド92の第2の端部925は、第1の共通のピボットリンク930で一緒に接続され、2つの第2のタイロッド92の第2の端部925は、第2の共通のピボットリンク930で一緒に接続されている。2つの共通のピボットリンク930は、リンクバー928を介してアクチュエータ94に結合されている。
【0068】
第1の並進システム90のアクチュエータ94と第2の並進システム90のアクチュエータ94は互いに結合されているので、アクチュエータ94が作動すると、逆推力への切り替え要求に続いて、各アクチュエータ94は、リンクバー928をカスケード80のフレーム81に向かって押す。言い換えれば、2つの並進システム90のアクチュエータ94は、2つのリンクバー928を互いに向かって押す。
【0069】
この動作は、タイロッド92の展開を開始する、すなわち、タイロッドの第1の端部920を互いに離れるように移動させ、それらの第2の端部925を同じ共通のピボットリンク930内で一緒に接続する。タイロッド92のこの展開により、2つの第1の可動仕切82のそれぞれは、固定壁810または815に向かって移動する。
【0070】
アクチュエータ94が非作動のとき、逆推力への切り替え要求に続いて、各アクチュエータ94は、リンクバー928をカスケード80のフレーム81と反対の方向に引き戻す。言い換えれば、2つの並進システム90のアクチュエータ94は、2つのリンクバー928を互いに離れるように動かす。
【0071】
この動作により、タイロッド92の収縮が起こる。すなわち、タイロッドの第1の端部920が互いにより接近するように移動し、それらの第2の端部925が同じ共通のピボットリンク930内で互いに接続される。タイロッド92のこの一緒の移動は、固定壁810または815の2つの第1の可動仕切82のそれぞれを、第2の仕切83と同じ容積の共振空洞を形成する点まで離れるように移動させる。
【0072】
本発明は、カスケードがターボ機械の逆推力装置に取り付けられたときに、空気流をターボ機械の上流方向にナセルの外側に再配向することと、カスケードによる負荷損失を最小限に抑え、吸音効率を最大化することの両方を行うカスケード逆推力装置のカスケードを提供する。