(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】低誘電率膜及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/30 20060101AFI20240419BHJP
C23C 16/50 20060101ALI20240419BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
C23C16/30
C23C16/50
H01L21/316 X
(21)【出願番号】P 2021568365
(86)(22)【出願日】2020-05-14
(86)【国際出願番号】 CN2020090119
(87)【国際公開番号】W WO2020233480
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-11-12
(31)【優先権主張番号】201910413247.9
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521497279
【氏名又は名称】チャンスー フェイヴァード ナノテクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100228005
【氏名又は名称】澤田 英之
(72)【発明者】
【氏名】ゾン ジアン
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-252228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/30
C23C 16/50
H01L 21/316
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質層
及び防食層を含み、前記多孔質層が、化合物Cと化合物Eとのプラズマ強化化学気相成長法により形成され、前記化合物Cがオルガノシリコン化合物を含み、前記化合物Eがアルカン化合物及びベンゼン化合物の1種又は複数種を含
み、前記防食層が、不飽和二重結合を含むエポキシ化合物Aと、不飽和二重結合を含むシロキサン及び不飽和二重結合を含むシランからなる群より選ばれる1種又は複数種の化合物Bとのプラズマ強化化学気相成長法により基体の表面に形成され、前記多孔質層が前記防食層上に形成された、低誘電率膜。
【請求項2】
前記化合物Cが、オルガノシラン及びオルガノシロキサンの1種又は複数種を含む、請求項1に記載の低誘電率膜。
【請求項3】
多孔質層及びフッ素含有層を含み、前記多孔質層が、化合物Cと化合物Eとのプラズマ強化化学気相成長法により形成され、前記化合物Cがオルガノシリコン化合物を含み、前記化合物Eがアルカン化合物及びベンゼン化合物の1種又は複数種を含み、前記フッ素含有層がアリールフルオロシランDのプラズマ強化化学気相成長法により形成された
、低誘電率膜。
【請求項4】
多孔質層及び防食層を含み、前記多孔質層が、化合物Cと化合物Eとのプラズマ強化化学気相成長法により形成され、前記化合物Cがオルガノシリコン化合物を含み、前記化合物Eがアルカン化合物及びベンゼン化合物の1種又は複数種を含み、前記防食層がビニルエポキシ化合物とビニルオルガノシリコン化合物とのプラズマ強化化学気相成長法により基体の表面に形成された
、低誘電率膜。
【請求項5】
前記化合物Aが、ビニルオキシラン、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、2,3-エポキシプロピルジメチルビニルシラン、2,3-エポキシプロピルジクロロビニルシランからなる群より選ばれる1種又は複数種を含む、請求項
1に記載の低誘電率膜。
【請求項6】
前記化合物Bが、アリルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、トリメチルビニルシラン、3-ブテニルトリメチルシラン、ビニルトリブチルケトキシムシラン、テトラメチルジビニルジシロキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、1,2,2-トリフルオロビニルトリフェニルシラン、ジメチルメトキシビニルシラン、4-スチリル(トリメトキシ)シランからなる群より選ばれる1種又は複数種を含む、請求項
1に記載の低誘電率膜。
【請求項7】
前記化合物Cが、γ-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン;D4Hシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、トリス-(トリメトキシシリル)フェニルシラン、tert-ブチルジメチルクロロシラン、フェニルエチニルトリメチルシラン、ビフェニルビニルトリメチルシラン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン、トリフェニルヒドロキシシラン、トリフルオロプロピルメチルシクロトリシロキサン、2,2,4,4-テトラメチル-6,6,8,8-テトラフェニルシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、3-グリシジルエーテルオキシプロピルトリエトキシシラン、テトラメチルジビニルジシロキサン、テトラエチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、トリス(トリメチルシロキシ)フェニルシラン、トリメチルフェニルシラン、ヘキサメチルジシラザン、アリルトリフェニルシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリフルオロシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、1,3-ジクロロテトラフェニルジシロキサン、フェニルビニルトリメチルシラン、ナフチルビニルトリメチルシラン、ジフェニルジヒドロキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサフェニルシクロトリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、フェニルトリクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン、フェニルジメチルクロロシラン、メチルフェニルシクロトリシロキサン、トリメトキシメチルシラン、トリフルオロプロピルメチルシクロトリシロキサン、トリス-(トリエトキシシリル)フェニルシラン、パーフルオロオクチルエチルペンタフルオロフェニルジメトキシシラン、トリス-(トリエチルシリル)フェニルシランからなる群より選ばれる1種又は複数種を含む、請求項1又は
2に記載の低誘電率膜。
【請求項8】
前記化合物Eが、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、パラキシレンからなる群より選ばれる1種又は複数種を含む、請求項1又は
2に記載の低誘電率膜。
【請求項9】
前記化合物Dが、ペンタフルオロフェニルトリエトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリクロロシラン、ペンタフルオロフェニルジメチルクロロシラン、パーフルオロオクチルエチルペンタフルオロフェニルジクロロシラン、ペンタフルオロジクロロフェニルパーフルオロヘキシルエチルシラン、パーフルオロオクチルジクロロフェニルシラン、パーフルオロオクチルジエトキシフェニルシラン、パーフルオロオクチルエチルペンタフルオロフェニルジメトキシシラン、パーフルオロブチルエチルペンタフルオロフェニルジクロロシラン、パーフルオロブチルエチルペンタフルオロフェニルジメトキシシランからなる群より選ばれる1種又は複数種を含む、請求項
3に記載の低誘電率膜。
【請求項10】
前記防食層のプラズマ強化化学気相成長過程でHe、Arからなる群より選ばれる1種又は複数種を含む補助ガスを導入して反応させる、請求項1
、2及び4~8のいずれか1項に記載の低誘電率膜。
【請求項11】
前記多孔質層のプラズマ強化化学気相成長過程で窒素ガスと水素ガスとの組み合わせ、アンモニアガス、酸素ガス、及び炭化水素有機化合物からなる群より選ばれる1種又は複数種とを含む補助ガスを導入して反応させる、請求項1
~10のいずれか1項に記載の低誘電率膜。
【請求項12】
前記低誘電率膜の誘電率値の範囲が、2.1~2.2、2.2~2.3、2.4~2.5、2.5~2.6又は2.6~2.7である、請求項1~
11のいずれか1項に記載の低誘電率膜。
【請求項13】
前記低誘電率膜のヤング率の範囲が、10~11GPa、11~12GPa、12~13GPa、23~24GPa、26~27GPa、27~28GPa、29~30GPa、31~32GPa又は33~34GPaである、請求項1~
11のいずれか1項に記載の低誘電率膜。
【請求項14】
前記低誘電率膜の静的接触角の範囲が、110°~115°、115°~120°、120°~125°、125°~130°、130°~135°、135°~140°、140°~145°、145°~150°又は150°~155°である、請求項1~
11のいずれか1項に記載の低誘電率膜。
【請求項15】
前記低誘電率膜の厚さの範囲が10~2000nmである、請求項1~
11のいずれか1項に記載の低誘電率膜。
【請求項16】
多孔質層及びフッ素含有層を含み、前記多孔質層が、化合物Cと化合物Eとのプラズマ強化化学気相成長法により形成され、前記化合物Cがオルガノシリコン化合物を含み、前記化合物Eがアルカン化合物及びベンゼン化合物の1種又は複数種を含み、前記多孔質層が基体の表面に直接成長され、前記フッ素含有層が前記多孔質層表面に成長された、
低誘電率膜。
【請求項17】
フッ素含有層が前記多孔質層表面に成長された、請求項
1に記載の低誘電率膜。
【請求項18】
(A)基体の表面に防食層を気相成長させるステップを含み、(B)多孔質層を気相成長させるステップを含む低誘電率膜の製造方法であって、
前記ステップ(B)が、(B1)化合物Cと、化合物Eとを供給することを含み、前記化合物Cがオルガノシリコン化合物を含み、前記化合物Eがアルカン化合物及びベンゼン化合物の1種又は複数種を含
み、前記アルカン化合物がシクロブタン、シクロペンタン、及びシクロヘキサンからなる群より選ばれ、前記ステップ(A)が、
(A1)不飽和二重結合を含むエポキシ化合物と不飽和二重結合を含むオルガノシリコン化合物とを反応装置のチャンバーに供給することと、
(A2)不活性ガスを反応装置のチャンバーに導入することと、
(A3)所定の電力で、前記不飽和二重結合を含むエポキシ化合物と前記不飽和二重結合を含むオルガノシリコン化合物とを前記基体の前記表面に反応させて成長させることにより前記防食層を形成することと、を含み、前記多孔質層が前記防食層上に形成された、製造方法。
【請求項19】
前記ステップ(B)が、
(B2)窒素ガスと水素ガスとの組み合わせ及びアンモニアガスからなる群より選ばれる1種又は複数種を含むガスを導入することと、
(B3)酸素ガスを導入することと、
(B4)所定の電力で、前記化合物Cと前記化合物Eとの気相成長反応により前記多孔質層を形成することと、を含む、請求項
18に記載の製造方法。
【請求項20】
前記化合物Cがオルガノシロキサン、オルガノシランの1種又は複数種を含む、請求項
18に記載の製造方法。
【請求項21】
低誘電率膜の製造方法であって、
(B)多孔質層を気相成長させるステップであって、前記ステップ(B)が、(B1)化合物Cと、化合物Eとを供給することを含み、前記化合物Cがオルガノシリコン化合物を含み、前記化合物Eがアルカン化合物及びベンゼン化合物の1種又は複数種を含み、前記アルカン化合物がシクロブタン、シクロペンタン、及びシクロヘキサンからなる群より選ばれ、
(C)フッ素含有層を前記多孔質層上に気相成長させるステップ
であって、
前記ステップ(C)が、
(C1)不活性ガスを導入することと、
(C2)アリールフルオロシランDを供給することと、
(C3)所定の電力で、アリールフルオロシランDの気相成長反応により前記フッ素含有層を形成することを含む、製造方法。
【請求項22】
前記基体をチャンバーで移動するように操作するステップをさらに含む、請求項
18~20のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項23】
前記不飽和二重結合を含むエポキシ化合物が、ビニルオキシラン、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、2,3-エポキシプロピルジメチルビニルシラン、2,3-エポキシプロピルジクロロビニルシランからなる群より選ばれる1種又は複数種を含む、請求項
18に記載の製造方法。
【請求項24】
前記不飽和二重結合を含むオルガノシリコン化合物が、アリルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、トリメチルビニルシラン、3-ブテニルトリメチルシラン、ビニルトリブチルケトキシムシラン、テトラメチルジビニルジシロキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、1,2,2-トリフルオロビニルトリフェニルシラン、ジメチルメトキシビニルシラン、4-スチリル(トリメトキシ)シランからなる群より選ばれる1種又は複数種を含む、請求項
18に記載の製造方法。
【請求項25】
前記化合物Cが、γ-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン;D4Hシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、トリス-(トリメトキシシリル)フェニルシラン、tert-ブチルジメチルクロロシラン、フェニルエチニルトリメチルシラン、ビフェニルビニルトリメチルシラン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン、トリフェニルヒドロキシシラン、トリフルオロプロピルメチルシクロトリシロキサン、2,2,4,4-テトラメチル-6,6,8,8-テトラフェニルシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、3-グリシジルエーテルオキシプロピルトリエトキシシラン、テトラメチルジビニルジシロキサン、テトラエチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、トリス(トリメチルシロキシ)フェニルシラン、トリメチルフェニルシラン、ヘキサメチルジシラザン、アリルトリフェニルシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリフルオロシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、1,3-ジクロロテトラフェニルジシロキサン、フェニルビニルトリメチルシラン、ナフチルビニルトリメチルシラン、ジフェニルジヒドロキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサフェニルシクロトリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、フェニルトリクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン、フェニルジメチルクロロシラン、メチルフェニルシクロトリシロキサン、トリメトキシメチルシラン、トリフルオロプロピルメチルシクロトリシロキサン、トリス-(トリエトキシシリル)フェニルシラン、パーフルオロオクチルエチルペンタフルオロフェニルジメトキシシラン、トリス-(トリエチルシリル)フェニルシランからなる群より選ばれる1種又は複数種を含む、請求項
18に記載の製造方法。
【請求項26】
前記化合物Eが、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、パラキシレンからなる群より選ばれる1種又は複数種を含む、請求項
18に記載の製造方法。
【請求項27】
前記化合物Dが、ペンタフルオロフェニルトリエトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリクロロシラン、ペンタフルオロフェニルジメチルクロロシラン、パーフルオロオクチルエチルペンタフルオロフェニルジクロロシラン、ペンタフルオロジクロロフェニルパーフルオロヘキシルエチルシラン、パーフルオロオクチルジクロロフェニルシラン、パーフルオロオクチルジエトキシフェニルシラン、パーフルオロオクチルエチルペンタフルオロフェニルジメトキシシラン、パーフルオロブチルエチルペンタフルオロフェニルジクロロシラン、パーフルオロブチルエチルペンタフルオロフェニルジメトキシシランからなる群より選ばれる1種又は複数種を含む、請求項
21に記載の製造方法。
【請求項28】
前記低誘電率膜の誘電率値の範囲が、2.1~2.2、2.2~2.3、2.4~2.5、2.5~2.6又は2.6~2.7である、請求項
18~27のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項29】
前記低誘電率膜のヤング率の範囲が、10~11GPa、11~12GPa、12~13GPa、23~24GPa、26~27GPa、27~28GPa、29~30GPa、31~32GPa又は33~34GPaである、請求項
18~28のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項30】
前記低誘電率膜の静的接触角の範囲が、110°~115°、115°~120°、120°~125°、125°~130°、130°~135°、135°~140°、140°~145°、145°~150°又は150°~155°である、請求項
18~29のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項31】
前記低誘電率膜の厚さの範囲が10~2000nmである、請求項
18~30のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超大規模集積回路の製造分野に関し、詳しくは、低誘電率膜及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
全世界の統一した5G標準の登場につれて、無線又はマイクロエレクトロニクスの分野の発展はますます速くなり、電子チップの性能要求は急速に高まり、集積回路のサイズが縮小し続け、つまり、チップに集積されるデバイスの数が多くなり、集積度に対する要求が高くなる。
【0003】
大規模集積回路の集積度がますます高くなり、デバイスフィーチャサイズが徐々に減少されているため、ワイヤ抵抗、及びワイヤ間や層間容量が増加し、抵抗-容量(RC)遅延の上昇を引き起こすので、信号伝送の遅延、ノイズ干渉の増強及び電力損失の増大などの一連の問題が発生してしまい、これは、デバイスの高速性能を大幅に制限している。これらの問題を軽減する重要な方法の一つは、誘電体材料の誘電率(k)を低減することである。
【0004】
無線通信技術の分野では、特にGHz範囲の通信技術において、低誘電率を有する低損失材料が注目されている。
【0005】
一般的には、材料のk値を低減するための方法は、二つがある。一方は、分子の分極率を低減すること、即ち、低分極能力の材料を選択するか、又は研究開発することであり、例えば、材料に低分極率の結合(例えば、Si-C、Si-F、C-Hなど)を形成することである;他方は、単位体積あたりの分極分子数Nを減少することであり、これは材料にナノサイズを有する細孔を材料に導入することにより達成することができ、細孔率の増加に伴い、誘電率が迅速に低減してしまう。現在、先行技術では、上記二つの方面にともに幾つかの研究がある。
【0006】
従来の幾つかの研究では、プラズマ強化化学気相成長(PECVD)の技術を採用して低誘電率のナノ薄膜を製造している。例えば、1種又は複数種のオルガノシリコン化合物をプラズマ強化化学気相成長用チャンバーに導入しながら、細孔形成剤を導入し、一定の高周波電力の条件で上記1種又は複数種のオルガノシリコン化合物を該細孔形成剤と反応させ、低誘電率膜をこのチャンバーでの基板上に成長させ、さらに、該低誘電率膜に後処理を施し、該低誘電率膜での細孔形成剤を基本的に除去していることになる。
【0007】
幾つかの低誘電率を有するシリコーン膜は、研究開発されているるが、これらの低誘電率膜には満足されていないところがある。発明者は、先行の手段において幾つかの改善すべく点があることを発見した。
【0008】
一方、これらの材料には細孔形成剤を添加して細孔を形成する必要があり、細孔を形成する後に、さらに上記細孔形成剤を除去するが、一般的に細孔形成剤が完全に除去されることができず、多く残った場合がある。
【0009】
他方、これらの材料は基板に細孔付き薄膜層を直接に形成するが、細孔の形成により薄膜層と基板との結合強度を低減させるか、又は基板への薄膜層の付着力が低いと言われ、しかも高い細孔率により誘電率をより低くするが、結合強度も低くしてしまい、即ち、これらの二つの側面で矛盾がある。
【0010】
他方、これらの材料は、機械的強度が劣り、耐食性が劣り、後の半導体処理でナノ薄膜層が損傷されやすくなる。
【0011】
他方、薄膜層は、PECVDの技術によりチャンバーで細孔形成剤と反応して基板に付着されるが、形成される際に、基板の異なる領域での薄膜層の均一性にいずれの制御もな く、チャンバー中の異なる領域での濃度が異なるため、基板への薄膜層の不均一な分布を引き起こしやすくなる。
【0012】
他方、従来の低誘電率ナノ薄膜は、疎水性が劣り、基体の表面に成長される際に、塩水噴霧試験で、基体の表面が腐食されやすくなるため、製品の長期間使用に不利であり、使用環境に対する要求も高い。
【0013】
ここでの説明は、本発明に関連する背景情報のみを提供し、必ずしも先行技術を構成するものではない。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、少なくとも二層構造を含み、多層構造の配合により上記低誘電率膜のk値を調整し、かつ、上記低誘電率膜の結合力及び/又は機械的な性質を改善する低誘電率膜及びその製造方法を提供することを優位点とする。
【0015】
本発明は、一実施態様において、プラズマ強化化学気相成長(PECVD)法により防食層と多孔質層を形成し、上記防食層が基体に付着され、基体と強い結合力を有する低誘電率(k)膜が形成され、かつ良好な耐食性を有する低誘電率膜及びその製造方法を提供することを優位点とする。
【0016】
本発明は、不活性ガス雰囲気下で、ビニルシリコーン単量体とビニルエポキシ単量体とをPECVDにより成長させることにより防食層を形成する低誘電率膜及びその製造方法を提供することを優位点とする。
【0017】
本発明は、一実施態様において、上記防食層が不飽和炭素-炭素二重結合を含むエポキシアルカンと、不飽和二重結合を含むシロキサン又はシランとの反応により得られる複合体である低誘電率膜及びその製造方法を提供することを優位点とする。
【0018】
本発明は、上記多孔質層の隙間率が上記低誘電率膜と基体との結合力に影響を与えないかあるいは小さく与え、かつ細孔率の向上によりk値をより小さくすることができるように、防食層を多孔質層と基体との間に介在させる低誘電率膜及びその製造方法を提供することを優位点とする。
【0019】
本発明は、動的蒸着方法を用いて、上記低誘電率膜を基体により均一に付着させ、基体の異なる位置での蒸着膜の違いが減少され、基体の異なる領域での被蒸着物の濃度の違いによる厚さの不均一である問題が解決される低誘電率膜及びその製造方法を提供することを優位点とする。
【0020】
本発明は、酸素ガス、窒素ガス/水素ガスの単一雰囲気又は混合雰囲気下で、オルガノシラン、オルガノシロキサンの単一雰囲気又は混合雰囲気をPECVD法で施すことにより多孔質層を得る低誘電率膜及びその製造方法を提供することを優位点とする。
【0021】
本発明は、表層にフルオロシリコーンポリマーが形成され、上記低誘電率膜のk値がさらに低減される低誘電率膜及びその製造方法を提供することを優位点とする。
【0022】
本発明は、表層に芳香族基を含むオルガノフルオロシリコーンを形成し、芳香族基の剛直な構造により、上記低誘電率膜の機械的な性質を高める低誘電率膜及びその製造方法を提供することを優位点とする。
【0023】
本発明は、表面に表面エネルギーの低いフルオロシリコーンポリマーを有し、超疎水特性を有し、水がその表面にある場合の静的接触角が大くなる低誘電率膜及びその製造方法を提供することを優位点とする。
【0024】
本発明は、上記低誘電率膜を形成する際に、シリコーンナノ薄膜と上記シリコーン/酸素ガスの成長を交互に行い、シリコーン層を形成する後に酸素ガスを導入し、シリコーン層の炭化水素部分が酸素ガスと反応し不規則な粗面を形成し、そして表面にSiOCNHを成長させ、高い比表面積を有する大きな細孔の形成に寄与し、交互構造が上記低誘電率膜と基体との付着力の増強に寄与する低誘電率膜及びその製造方法を提供することを優位点とする。
【0025】
本発明は、フッ素含有芳香族基の含有量を調整することにより上記低誘電率膜の誘電特性と機械的な性質を調整することができる低誘電率膜及びその製造方法を提供することを優位点とする。
【0026】
本発明は、一実施態様において、PECVD法により多孔質層とフッ素含有層からなる二層構造を形成し、k値を低減させるとともに、上記低誘電率膜の疎水性能を高め、成長された基体の耐食性を改善する低誘電率膜及びその製造方法を提供することを優位点とする。
【0027】
本発明は、一実施態様において、PECVD法により防食層と多孔質層からなる二層構造を形成し、k値を低減するとともに、上記低誘電率膜と基体との間の結合力及び粘着性を増強させる低誘電率膜及びその製造方法を提供することを優位点とする。
【0028】
本発明は、一実施態様において、PECVD法で防食層と多孔質層とフッ素含有層からなる三層構造を形成し,異なる層の交互配置により、上記低誘電率膜の誘電特性、機械的な性質及び疎水性を全体的に改善し、しかも交互配置といった形態が細孔容積の大きな多孔質層の形成に有利である低誘電率膜及びその製造方法を提供することを優位点とする。
【0029】
本発明は、細孔形成剤で細孔構造を形成する必要がないため、細孔形成剤を除去するように高温焼鈍処理を必要としない低誘電率膜及びその製造方法を提供することを優位点とする。
【0030】
本発明の目的の少なくとも一つを達成するために、本発明の一側面は、エポキシアルカン、オルガノシリコン化合物及びフッ素含有シロキサン化合物を原材料として、プラズマ強化化学気相成長法により基体の表面に形成された低誘電率膜を提供する。
【0031】
本発明の少なくとも一つの実施態様に記載の低誘電率膜において、不飽和二重結合を含むエポキシアルカン化合物Aと不飽和二重結合を含むシロキサン又はシラン化合物Bとを基体の表面にプラズマ強化化学気相成長させて形成された防食層を含む低誘電率膜。
【0032】
本発明の少なくとも一つの実施態様に記載の低誘電率膜において、オルガノシラン及び/又はオルガノシロキサン化合物Cとアルカン化合物及び/又はベンゼン化合物Eとのプラズマ強化化学気相成長法により形成された多孔質層を含む低誘電率膜。
【0033】
本発明の少なくとも一つの実施態様に記載の低誘電率膜において、オルガノシリコン化合物を含む化合物Cと、アルカン化合物及びベンゼン化合物を含む化合物Eとのプラズマ強化化学気相成長法により形成された多孔質層を含む低誘電率膜。
【0034】
本発明の少なくとも一つの実施態様に記載の低誘電率膜において、オルガノシリコン化合物を含む化合物Cとアルカン化合物を含む化合物Eとのプラズマ強化化学気相成長法により形成された多孔質層を含む低誘電率膜。
【0035】
本発明の少なくとも一つの実施態様に記載の低誘電率膜において、オルガノシリコン化合物を含む化合物Cとベンゼン化合物を含む化合物Eとのプラズマ強化化学気相成長法により形成された多孔質層を含む低誘電率膜。
【0036】
本発明の少なくとも一つの実施態様に記載の低誘電率膜において、アリールフルオロシランDのプラズマ強化化学気相成長法により形成されたフッ素含有層を含む低誘電率膜。
【0037】
本発明の少なくとも一つの実施態様に記載の低誘電率膜において、下地層が基体の表面にビニルエポキシ化合物とビニルオルガノシリコン化合物とをプラズマ強化化学気相成長法により形成される低誘電率膜。
【0038】
本発明の少なくとも一つの実施態様に記載の低誘電率膜において、上記化合物Aが、ビニルオキシラン、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、2,3-エポキシプロピルジメチルビニルシラン、2,3-エポキシプロピルジクロロビニルシランからなる群より選ばれる1種又は複数種の混合物である低誘電率膜。
【0039】
本発明の少なくとも一つの実施態様に記載の低誘電率膜において、上記化合物Bが、アリルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、トリメチルビニルシラン、3-ブテニルトリメチルシラン、ビニルトリブチルケトキシムシラン、テトラメチルジビニルジシロキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、1,2,2-トリフルオロビニルトリフェニルシラン、ジメチルメトキシビニルシラン、4-スチリル(トリメトキシシロキシ)シランからなる群より選ばれる1種又は複数種の混合物である低誘電率膜。
【0040】
本発明の少なくとも一つの実施態様において、上記化合物Cがオルガノシロキサンである。
【0041】
本発明の少なくとも一つの実施態様において、上記化合物Cがオルガノシランである。
【0042】
本発明の少なくとも一つの実施態様に記載の低誘電率膜において、上記化合物Cが、γ-グリシジルエーテルオキシプロピルトリメトキシシラン;D4Hシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、トリス-(トリメトキシシリル)フェニルシラン、tert-ブチルジメチルクロロシラン、フェニルエチニルトリメチルシラン、ビフェニルビニルトリメチルシラン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン、トリフェニルヒドロキシシラン、トリフルオロプロピルメチルシクロトリシロキサン、2,2,4,4-テトラメチル-6,6,8,8-テトラフェニルシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、3-グリシジルエーテルオキシプロピルトリエトキシシラン、テトラメチルジビニルジシロキサン、テトラエチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、トリス(トリメチルシロキシ)フェニルシラン、トリメチルフェニルシラン、ヘキサメチルジシラザン、アリルトリフェニルシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリフルオロシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメチルオキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、1,3-ジクロロテトラフェニルジシロキサン、フェニルビニルトリメチルシラン、ナフチルビニルトリメチルシラン、ジフェニルジヒドロキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサフェニルシクロトリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、フェニルトリクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン、フェニルジメチルクロロシラン、メチルフェニルシクロトリシロキサン、トリメトキシメチルシラン、トリフルオロプロピルメチルシクロトリシロキサン、トリス-(トリエトキシシリル)フェニルシラン、パーフルオロオクチルエチルペンタフルオロフェニルジメトキシシラン、トリス-(トリエチルシリル)フェニルシランからなる群より選ばれる低誘電率膜。
【0043】
本発明の少なくとも一つの実施態様に記載の低誘電率膜において、上記化合物Eが、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、パラキシレンからなる群より選ばれる1種又は複数種の混合物である低誘電率膜。
【0044】
本発明の少なくとも一つの実施態様に記載の低誘電率膜において、上記化合物Dが、ペンタフルオロフェニルトリエトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリクロロシラン、ペンタフルオロフェニルジメチルクロロシラン、パーフルオロオクチルエチルペンタフルオロフェニルジクロロシラン、ペンタフルオロジクロロフェニルパーフルオロヘキシルエチルシラン、パーフルオロオクチルジクロロフェニルシラン、パーフルオロオクチルジエトキシフェニルシラン、パーフルオロオクチルエチルペンタフルオロフェニルジメトキシシラン、パーフルオロブチルエチルペンタフルオロフェニルジクロロシラン、パーフルオロブチルエチルペンタフルオロフェニルジメトキシシランからなる群より選ばれる1種又は複数種の混合物である低誘電率膜。
【0045】
本発明の少なくとも一つの実施態様に記載の低誘電率膜において、気相成長過程でHe、Arから選ばれる1種又は複数種の混合物である補助ガスを導入して反応させる低誘電率膜。
【0046】
本発明の少なくとも一つの実施態様に記載の低誘電率膜において、気相成長過程で窒素ガスと、水素ガス、アンモニアガス、酸素ガス、炭化水素有機化合物から選ばれる1種又は複数種との混合物である補助ガスを導入して反応させる低誘電率膜。
【0047】
本発明の少なくとも一つの実施態様に記載の低誘電率膜において、上記低誘電率膜の誘電率値の範囲が、2.1~2.2、2.2~2.3、2.4~2.5、2.5~2.6又は2.6~2.7から選ばれる低誘電率膜。
【0048】
本発明の少なくとも一つの実施態様に記載の低誘電率膜において、上記低誘電率膜のヤング率の範囲が、10~11GPa、11~12GPa、12~13GPa、23~24GPa、26~27GPa、27~28GPa、29~30GPa、31~32GPa又は33~34GPaである低誘電率膜。
【0049】
本発明の少なくとも一つの実施態様に記載の低誘電率膜において、上記低誘電率膜の静的接触角の範囲が、110°~115°、115°~120°、120°~125°、125°~130°、130°~135°、135°~140°、140°~145°、145°~150°又は150°~155°である低誘電率膜。
【0050】
本発明の少なくとも一つの実施態様に記載の低誘電率膜において、上記低誘電率膜の厚さの範囲が10~2000nmである低誘電率膜。
【0051】
本発明は、他の側面で、
オルガノシラン及び/又はオルガノシロキサン化合物Cとアルカン化合物及び/又はベンゼン化合物Eとのプラズマ強化化学気相成長により形成された多孔質層と、
アリールフルオロシランDのプラズマ強化化学気相成長により形成されたフッ素含有層と、を含む低誘電率膜を提供する。
【0052】
本発明の少なくとも一実施態様に記載の低誘電率膜において、上記多孔質層が基体の表面に直接成長され、上記フッ素含有層が多孔質層の表面に成長される低誘電率膜。
【0053】
本発明の少なくとも一つの実施態様に記載の低誘電率膜において、不飽和二重結合を含むエポキシアルカン化合物Aと不飽和二重結合を含むシロキサン又はシラン化合物Bとを基体の表面にプラズマ強化化学気相成長することにより形成された防食層を含み、上記多孔質層が上記防食層に成長される低誘電率膜。
【0054】
本発明は、他の側面で、
(A)基体の表面に防食層を気相成長させるステップと、
(B)多孔質層を気相成長させるステップと、を含む低誘電率膜の製造方法を提供する。
【0055】
本発明の少なくとも一つの実施態様に記載の低誘電率膜の製造方法において、上記ステップ(A)は
(A1)ビニルエポキシアルカン化合物Aとビニルオルガノシリコン化合物Bとを反応装置のチャンバーに導入することと、
(A2)不活性ガスを反応装置のチャンバーに導入することと、
(A3)所定の電力で、上記化合物Aと化合物Bを反応させて上記基体の表面に成長させることにより上記防食層を形成することと、を含む低誘電率膜の製造方法。
【0056】
本発明の少なくとも一つの実施態様に記載の低誘電率膜の製造方法において、上記ステップ(B)は
(B1)オルガノシリコン化合物を含む化合物Cと、アルカン化合物及びベンゼン化合物を含む化合物Eとを導入することと、
(B2)窒素ガスと、水素ガス及びアンモニアガスからなる群より選ばれる1種又は複数種との組み合わせであるガスを導入することと、
(B3)酸素ガスを導入することと、
(B4)所定の電力で、上記化合物Cと上記化合物Eとの気相成長反応により上記多孔質層を形成することと、を含む低誘電率膜の製造方法。
【0057】
本発明の少なくとも一つの実施態様に記載の低誘電率膜の製造方法において、上記ステップ(B)は
(B1)オルガノシリコン化合物を含む化合物Cとアルカン化合物を含む化合物Eとを供給することと、
(B2)窒素ガスと、水素ガス及びアンモニアガスからなる群より選ばれる1種又は複数種との組み合わせであるガスを導入することと、
(B3)酸素ガスを導入すること、
(B4)所定の電力で、上記化合物Cと上記化合物Eとの気相成長反応により上記多孔質層を形成することと、を含む低誘電率膜の製造方法。
【0058】
本発明の少なくとも一つの実施態様に記載の低誘電率膜の製造方法において、上記ステップ(B)は
(B1)オルガノシリコン化合物を含む化合物Cとベンゼン化合物を含む化合物Eとを導入することと、
(B2)窒素ガスと、水素ガス及びアンモニアガスからなる群より選ばれる1種又は複数種との組み合わせであるガスを導入することと、
(B3)酸素ガスを導入することと、
(B4)所定の電力で、上記化合物Cと上記化合物Eとの気相成長反応により上記多孔質層を形成することと、を含む低誘電率膜の製造方法。
【0059】
本発明の少なくとも一つの実施態様に記載の低誘電率膜製造方法において、酸素ガスを導入する手段がパッチ式導入である低誘電率膜製造方法。
【0060】
本発明の少なくとも一つの実施態様に記載の低誘電率膜製造方法において、フッ素含有層を上記多孔質層に気相成長させるステップ(C)をさらに含む低誘電率膜製造方法。
【0061】
本発明の少なくとも一つの実施態様に記載の低誘電率膜製造方法において、上記ステップ(C)は
(C1)不活性ガスを導入することと、
(C2)アリールフルオロシランDを導入することと、
(C3)所定の電力で、アリールフルオロシランDを気相成長反応させて上記フッ素含有層を形成することと、を含む低誘電率膜製造方法。
【0062】
本発明の少なくとも一つの実施態様に記載の低誘電率膜の製造方法において、上記基体の表面を洗浄処理するステップをさらに含む低誘電率膜の製造方法。
【0063】
本発明の少なくとも一実施態様に記載の低誘電率膜の製造方法において、上記基体をチャンバーで移動するように操作するステップをさらに含む低誘電率膜の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】
図1は本発明のある実施態様による低誘電率膜の製造手順を示すフローチャートである。
【
図2】
図2は本発明のある実施態様による低誘電率膜の防食層の形成過程を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は本発明のある実施態様による低誘電率膜の多孔質層の形成過程を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は本発明のある実施態様による低誘電率膜のフッ素含有層の形成過程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下の説明は、本発明を当業者が達成できるように開示するためのものである。以下の説明での好ましい実施例は例示のみであり、当業者によって他の明らかな変更が容易に想到できるものである。以下の説明で定義された本発明の基本的な原理は、他の実施形態、変更形態、改良形態、同等形態、並びに、本発明の精神及び範囲を逸脱しない他の技術形態に適用できる。
【0066】
当業者は、本発明の記載において、「縦」、「横」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」という用語など指示される方位又は位置関係が図面に示される方位又は位置関係に基づいて、本発明を簡便に説明しやすくなるためのみであり、指示される装置又は部品が必ず特定の方位を有し、かつ特定の方位で構成したり操作しなければならないことを指示するか、又は示唆することではなく、そのため、上記用語が本発明への制限として理解できないことを理解すべきである。
【0067】
「一つ」が「少なくとも一つ」又は「一つ又は複数」という用語とは、ある実施例において一つの部品の数が一つであってもよいが、他の実施例でこの部品の数は複数であってもよいことを理解すべきであり、「一つ」という用語は、数への制限として理解できない。
【0068】
本発明は低誘電率膜及びその製造方法を提供する。上記低誘電率膜は、ケイ素、酸素及び炭素を含む。好ましくは、上記低誘電率膜は、ケイ素、酸素、炭素及びフッ素を含む。上記低誘電率膜は、ナノサイズの細孔を有する。
【0069】
上記低誘電率は、良好な誘電特性を有する。上記低誘電率膜のk値は、2.8未満であり、例えば、好ましくは、上記低誘電率膜のk値の範囲は、1.9~2.7であり、例えば、上記低誘電率膜のk値の範囲は、2.0~2.7である。例えば、上記低誘電率膜のk値の範囲は、2.1~2.2、2.2~2.3、2.4~2.5、2.5~2.6又は2.6~2.7である。
【0070】
上記低誘電率膜は、良好な機械的な性質を有し、上記低誘電率膜のヤング率は10GPaを超え、好ましくは、上記低誘電率膜のヤング率の範囲は10~41GPaであり、例えば、ヤング率の範囲は、10~11GPa、11~12GPa、12~13GPa、23~24GPa、26~27GPa、27~28GPa、29~30GPa、31~32GPa又は33~34GPaである。上記低誘電率膜の硬さは1.5GPaを超え、好ましくは、上記低誘電率膜の硬さ範囲は1.6~2.9GPaであり、例えば、硬さの範囲は1.62~2.79GPaである。
【0071】
上記低誘電率膜は、良好な疎水性能を有し、水が上記低誘電率膜に付着された静的接触角は、110°を超え、例えば、静的接触角は120°を超え、例えば、静的接触角は140°を超え、例えば、静的接触角の範囲は、110°~115°、115°~120°、120°~125°、125°~130°、130°~135°、135°~140°、140°~145°、145°~150°又は150°~155°又は155°~160°であることにより、上記低誘電率膜は良好な耐食性を有する。例えば、上記低誘電率膜が金属鉄の表面に成長され90時間の塩水噴霧試験を経た後に、鉄片が腐食されていないか、又は少量の腐食点しかがない。好ましくは、幾つかの実施例において、上記低誘電率膜が金属鉄の表面に成長され96時間の塩水噴霧試験を経た後に、鉄片が腐食されていない。
【0072】
上記低誘電率膜は、ナノ薄膜であり、その厚さの範囲としては、例えば、10~2000nmが挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
本発明の一実施態様において、上記低誘電率膜は、プラズマ強化化学気相成長(PECVD)法によって基体の表面に形成される。つまり、上記低誘電率膜を構成する原料は、PECVDプロセスにより基体の表面に成長し、基体の表面に上記低誘電率膜を形成される。例えば、上記低誘電率膜を大規模集積回路の回路基板表面に成長させることにより、上記大規模集積回路のRC遅延現象が改善されるが、これに限定されない。
【0074】
上記プラズマ強化化学気相成長(PECVD)法は、グロー放電によりプラズマを生成し、放電方法には、マイクロ放電、高周波放電、紫外線、電気火花放電を含む。
【0075】
例えば、上記低誘電率膜は、エポキシアルカン、オルガノシリコン化合物及びフッ素含有シロキサン化合物を原材料として、プラズマ強化化学気相成長法により基体の表面に形成される。
【0076】
上記低誘電率膜は多層構造を有し、例えば、上記低誘電率膜は防食層、多孔質層及びフッ素含有層を含む。上記防食層、多孔質層及びフッ素含有層は、PECVD法により基体の表面に形成される。
【0077】
本発明の一実施態様において、上記防食層は、シリコーンポリマーからなり、さらに、上記防食層は、ナノレベルのシリコーンポリマーからなる。例えば、シリコーンポリマー又はシリコーンポリマーを形成する原材料はPECVD法により基体の表面に成長されることにより、上記低誘電率膜の防食層である上記低誘電率膜の第1の層が形成される。
【0078】
例えば、上記防食層は、不飽和炭素-炭素二重結合を含むエポキシアルカン化合物Aと不飽和二重結合を含むシロキサン又はシラン化合物Bとの反応により得られた複合体である。
【0079】
例えば、上記防食層は、ビニルエポキシアルカンとビニルシリコーンシラン又はビニルオルガノシロキサンとを、反応装置の所定電力及び所定温度の条件で、PECVD法により、基体の表面に成長反応させて得られたものである。ビニルエポキシアルカンは、エポキシ基と炭素-炭素二重結合を含む有機化合物であり、常圧で沸点が400℃以下である。ビニルシラン又はビニルシロキサンは、炭素-炭素不飽和二重結合を含む直鎖、環状シラン、シロキサンを含み、かつ常圧で沸点が300℃以下である。
【0080】
例えば、上記化合物Aは、ビニルオキシラン、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、2,3-エポキシプロピルジメチルビニルシラン、2,3-エポキシプロピルジクロロビニルシランからなる群より選ばれる1種又は複数種の混合物。
【0081】
例えば,上記化合物Bは、アリルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、トリメチルビニルシラン、3-ブテニルトリメチルシラン、ビニルトリブチルケトキシムシラン、テトラメチルジビニルジシロキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、1,2,2-トリフルオロビニルトリフェニルシラン、ジメチルメトキシビニルシラン、4-スチリル(トリメトキシシロキシ)シランからなる群より選ばれる1種又は複数種の混合物。
【0082】
例えば、上記防食層の製造中に、補助ガスを導入して気相成長する必要があり、上記補助ガスは、例えば、不活性ガスHe、Ar、又はHeとArとの混合ガスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
一実施態様においては、上記防食層は、エポキシ樹脂とシリコーンとの複合体から形成され、例えば、エポキシ樹脂材料とシリコーン材料とがPECVD法により基体の表面に成長されて耐食性能を有するポリマー層が形成される。例えば、ビニルアルキレンオキサイド、ビニルシロキサン、ビニルシランの単一雰囲気又は混合雰囲気を反応源として、低温低圧プラズマ環境中で気相成長させてシリコーンポリマー複合化ナノ薄膜層が得られ、即ち、上記防食層が得られる。
【0084】
一実施態様において、上記多孔質層は、複数の細孔を有するシリコーンであり、しかも上記多孔質層の細孔率により上記低誘電率膜のk値を調整する。例えば、シリコーン材料はPECVD法により基体の表面に成長されて多孔質構造を有するシリコーンナノ層が形成されることにより、上記低誘電率ナノ薄膜の多孔質層である上記低誘電率膜の第2の層が形成される。例えば、上記多孔質層の製造中に、補助ガスを導入して上記多孔質層を形成する必要があり、例えば、窒素ガス/水素ガス、アンモニアガス、酸素ガス、炭化水素有機化合物の単一雰囲気又は混合雰囲気下で、シリコーン、オルガノシロキサンの単一又は混合雰囲気を気相成長させて多孔質のSiOCNHナノ薄膜層が得られ、つまり、上記低誘電率膜の多孔質層が得られる。より具体的には、上記補助ガス中の炭化水素有機化合物は、主に炭素数が12以下である分岐鎖アルカン、シクロアルカン、芳香族炭化水素である。
【0085】
一実施態様においては、上記多孔質層は、化合物Cと化合物Eとを反応させて生成したものであってもよく、上記化合物Cは、オルガノシリコン化合物であり、例えば、オルガノシロキサンでもオルガノシランであってもよい。上記化合物Eは、アルカン化合物でもベンゼン化合物であってもよい。
【0086】
一実施態様においては、上記多孔質層は、オルガノシラン及び/又はオルガノシロキサン化合物Cとアルカン化合物及び/又はベンゼン化合物Eとを反応装置の所定電力及び所定温度の条件でPECVD法により、防食層表面に成長反応させて得られることができる。オルガノシリコン化合物Cは、分岐鎖、環状シラン又はシロキサンを含み、常圧で沸点が350℃未満である液体又はガスである。
【0087】
例えば、化合物Cは、γ-グリシジルエーテルオキシプロピルトリメトキシシラン;D4Hシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、トリス-(トリメトキシシリル)フェニルシラン、tert-ブチルジメチルクロロシラン、フェニルエチニルトリメチルシラン、ビフェニルビニルトリメチルシラン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン、トリフェニルヒドロキシシラン、トリフルオロプロピルメチルシクロトリシロキサン、2,2,4,4-テトラメチル-6,6,8,8-テトラフェニルシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、3-グリシジルエーテルオキシプロピルトリエトキシシラン、テトラメチルジビニルジシロキサン、テトラエチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、トリス(トリメチルシロキシ)フェニルシラン、トリメチルフェニルシラン、ヘキサメチルジシラザン、アリルトリフェニルシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリフルオロシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメチルオキシシラン、メチルフェニル ジメトキシシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、1,3-ジクロロテトラフェニルジシロキサン、フェニルビニルトリメチルシラン、ナフチルビニルトリメチルシラン、ジフェニルジヒドロキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサフェニルシクロトリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、フェニルトリクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン、フェニルジメチルクロロシラン、メチルフェニルシクロトリシロキサン、トリメトキシメチルシラン、トリフルオロプロピルメチルシクロトリシロキサン、トリス-(トリエトキシシリル)フェニルシラン、パーフルオロオクチルエチルペンタフルオロフェニルジメトキシシラン、トリス-(トリエチルシリル)フェニルシランからなる群より選ばれる。
【0088】
例えば、化合物Eは、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、パラキシレンからなる群より選ばれる1種又は複数種の混合物である。
【0089】
一実施態様においては、上記低誘電率膜を製造する際に、基体にPECVD法で上記防食層を成長させた後、次いで、同一の反応チャンバーでPECVD法により上記多孔質層を成長させる。
【0090】
一実施態様においては、上記低誘電率膜を製造する際に、上記防食層を形成した後、窒素ガス/水素ガス及び/又はアンモニアガス雰囲気下で、酸素ガスを所定の頻度でパッチ式導入し、化合物Cと化合物Eの成長反応により上記多孔質層を得る。
【0091】
特に、本発明の一実施態様において、上記多孔質層の隙間率が上記低誘電率膜と基体との結合力に影響を与えないか又は僅かに与え、しかも細孔率の向上によりk値をより小さくすることができるように、防食層を多孔質層と基体との間に介在させる。
【0092】
一実施態様においては、上記フッ素含有層はフルオロシリコーンポリマーであり、さらに、上記フッ素含有層は低誘電率の芳香族基を含むオルガノフルオロシリコーンであり、芳香族基の剛直な構造により、上記フッ素含有層の機械的な性質を高める。例えば、一実施態様においては、上記フッ素含有層は、フェニル基を含むオルガノフルオロシリコーンである。ベンゼン環の空間立体障害が大きく、上記低誘電率膜の粗さを調整できる。
【0093】
上記低誘電率膜の製造中に、フッ素含有芳香族基オルガノシランとシクロシロキサンとのモル量の割合を変えることにより、上記低誘電率膜におけるフッ素含有フェニル基の含有量を変えることができ、フッ素含有芳香族基の含有量を調整することにより、上記低誘電率膜の電気的な性質及び機械的な性質を調整し、さらに上記低誘電率膜のk値を低減させることができる。
【0094】
一実施態様においては、不活性ガス雰囲気下で、上記多孔質層の表面に芳香環構造を含むフルオロシリコーン層である上記低誘電率膜の第3の層を成長させる。
【0095】
実施態様においては、上記フッ素含有層は、アリールフルオロシランDをPECVD法により多孔質層の表面に成長反応させることにより得られる。上記フッ素含有層は、表面エネルギーが低く、良好な疎水性能を有し、水のその表面での静的接触角が大きくなる。上記低誘電率膜は、表層に芳香族基を含むオルガノフルオロシリコーンが形成され、芳香族基の剛直な構造により、上記低誘電率膜の機械的な性質を高める。
【0096】
例えば、化合物Dは、ペンタフルオロフェニルトリエトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリクロロシラン、ペンタフルオロフェニルジメチルクロロシラン、パーフルオロオクチルエチルペンタフルオロフェニルジクロロシラン、ペンタフルオロジクロロフェニルパーフルオロヘキシルエチルシラン、パーフルオロオクチルジクロロフェニルシラン、パーフルオロオクチルジエトキシフェニルシラン、パーフルオロオクチルエチルペンタフルオロフェニルジメトキシシラン、パーフルオロブチルエチルペンタフルオロフェニルジクロロシラン、パーフルオロブチルエチルペンタフルオロフェニルジメトキシシランからなる群より選ばれる1種又は複数種の混合物である。
【0097】
上記低誘電率膜を製造する際に、上記多孔質層を形成した後、所定の電力で、同一の反応チャンバーに気体状の化合物Dを導入し続け、所定の時間成長させ、上記低誘電率膜の表層を得る。
【0098】
一実施態様においては、上記低誘電率膜の表面にプラズマ強化化学気相成長法により、フッ素含有芳香族基置換シランを多孔質三次元シリコーンコート層のホール及び表面に成長させる。フッ素含有芳香族基置換シランは、低誘電率を有し、ベンゼン環の空間立体障害が大きく、ナノコート層の粗さを調整できるため、低誘電率材料薄膜の製造中に、フッ素含有芳香族基置換シリコーン単量体とシクロシロキサンのモル量の割合を変えることにより化合物中のフッ素含有フェニル基の含有量を変えることができ、化合物中のフッ素含有芳香族基の含有量を調整することにより低誘電率材料薄膜の電気的及び他の側面の性能を調整することができる。
【0099】
特に、本発明に係る低誘電率膜は、多層構造で構成されており、例えば、二層、三層又は多層であり、本発明の実施態様では、上記低誘電率膜は二層構造で構成されている。例えば、一実施態様においては、上記低誘電率膜は、上記防食層と上記多孔質層で構成され、二層構造が形成され、製造する際に、まず、基体の表面に化合物Aと化合物Bとを化学気相成長させて上記防食層を形成して、次いで、化合物C及び化合物Eを化学気相成長し続けて、上記多孔質層を形成することができ、上記防食層は、下地層であり、上記多孔質層は、表層である。上記防食層と上記多孔質層で構成される二層構造である上記低誘電率膜は、k値を低減させるとともに、上記低誘電率膜と基体との間の結合力及び粘着性を増加させる。
【0100】
例えば、一実施態様においては、上記低誘電率膜は、上記多孔質層と上記フッ素含有層で構成され、二層構造が形成され、製造する際に、まず、基体の表面に化合物Cと化合物Eとを化学気相成長させて上記多孔質層を形成し、次いで、化合物Dを化学気相成長し続けて、上記フッ素含有層を形成することができ、上記多孔質層は、下地層であり、上記フッ素含有層は、表層である。上記多孔質層と上記フッ素含有層で構成される二層構造である上記低誘電率膜は、k値を低減させるとともに、上記低誘電率膜の疎水性能を高め、成長された基体の耐食性を改善する。
【0101】
例えば、一実施態様においては、上記低誘電率膜は、上記防食層、上記多孔質層及び上記フッ素含有層で構成され、三層構造が形成されており、製造する際に、まず、基体の表面に化合物Aと化合物Bとを化学気相成長させて上記防食層を形成し、次いで、化合物Cと化合物Eとを化学気相成長し続け、上記多孔質層を形成し、上記多孔質層に化合物Dを化学気相成長し続け、上記フッ素含有層を形成することができ、上記防食層は、下地層であり、上記多孔質層は、中間層であり、上記フッ素含有層は、表層である。上記防食層、上記多孔質層及び上記フッ素含有層で構成される三層構造である上記低誘電率膜は、異なる層の交互配置により、上記低誘電率膜の誘電特性、機械的な性質及び疎水性を全体的に改善し、しかも、交互配置の形態は、細孔容積の大きな多孔質層の形成に有利である。
【0102】
特に、低誘電率ナノ薄膜での細孔構造は、誘電率の低減に影響を大きく与えるとともに、機械的な性質及び疎水性にも影響を与え、例えば、細孔率が増加すると、k値は顕著に減少されることができるが、細孔率の増加では、機械的な性質の低減、及び基体の表面との結合力の低減にも影響を与えてしまい、しかも、表面の細孔が多くなる場合には、疎水性も低下してしまう。ナノ薄膜の誘電率の減少は、多孔質材料が組み込まれた後の空気全体の体積に依存しており、ここで、該空気全体の体積には、(1)多孔質SiOCNHの細孔通路の不十分な充填による空体積、(2)フルオロシリコーン鎖のランダムな配列による隙間、(3)多孔質SiOCNHの添加による自由体積、といった三つの側面を含む。本発明に係る実施態様によれば、上記低誘電率膜は、上記防食層、上記多孔質層及び/又は上記フッ素含有層で構成される二層又は三層構造により、誘電率の低減と機械的な性質と疎水性とのバランスをとる。
【0103】
本発明の少なくとも一つ実施態様において、上記低誘電率膜を形成する際に、シリコーンナノ薄膜と上記シリコーン/酸素ガスの成長を交互に行い、シリコーン層を形成した後に酸素ガスを導入し、シリコーン層の炭化水素部分が酸素ガスと反応して不規則粗面を形成し、次いで表面にSiOCNHを成長させ、高い比表面積を有する大細孔の形成に寄与し、しかも、交互構造は、上記低誘電率膜と基体との付着力の増強に寄与する。
【0104】
複数回のプラズマ強化化学気相成長により得られた上記低誘電率膜は、三次元網状構造が形成され、細孔形成剤を介して細孔を形成する必要がなく、高温焼鈍処理する必要がない。本発明の一実施態様では、環状シリコーン単量体と大体積の大きい空間立体障害を有する単量体との共重合を採用しているが、このような共重合は、酸素プラズマ雰囲気で行い、酸素量の制御によりSi-O結合と炭化水素化合物との結合を確保するため、三次元構造を有する低誘電率シリコーンナノコート層を制御可能に作製することができる。
【0105】
図1~4を参照して、
図1は本発明の一実施態様による低誘電率膜の製造手順を示すフローチャートである。
図2は本発明の一実施態様による低誘電率膜の防食層の形成過程を示すフローチャートである。
図3は本発明の一実施態様による低誘電率膜の多孔質層の形成過程を示すフローチャートである。
図4は本発明の一実施態様による低誘電率膜のフッ素含有層の形成過程を示すフローチャートである。上記低誘電率は、プラズマ強化化学気相成長反応装置にてPECVD反応を複数回行うことにより得られる。
【0106】
本発明の一実施態様において、低誘電率膜の製造方法であって、
101:基体の表面に防食層を気相成長させるステップと、
102:多孔質層を気相成長させるステップと、
103:フッ素含有層を気相成長させるステップと、を含む方法であり、
ここで、上記ステップ101で、ビニルエポキシ化合物Aとビニルオルガノシリコン化合物Bとを供給して気相成長させることにより上記防食層を形成することを必要として、具体的に、上記防食層の形成過程は、
1011:エポキシアルカン化合物Aとシロキサン又はシラン化合物Bとを反応装置のチャンバー内に供給するステップと、
1012:不活性ガスを反応装置のチャンバーに導入するステップと、
1013:上記基体を操作するステップと、
1014:所定の電力で、上記化合物Aと化合物Bとを反応させて上記基体の表面に成長させることにより上記防食層を形成するステップを、含む製造方法。
【0107】
上記ステップ101の前に、さらに上記基体に前処理を行ってもよく、例えば、基体の表面を洗浄し、具体的に、上記基体への前処理は、
(1001)基体への超音波洗浄:基体を脱イオン水が入れた容器に投入し、超音洗浄し、洗浄時間は10~30分間であり、その後、取り出してオーブンに入れて乾燥するステップと、
(1002)アセトンによる基材表面への洗浄:きれいなガーゼでアセトンを含浸させて部品の表面に3回拭いて、オーブンに入れて乾燥するステップと、を含む。
【0108】
洗浄過程では、上記手段のうちの1種又は複数種を選択して前処理することができ、本発明はこの点に限定されない。
【0109】
例えば、上記ステップ101の過程は、表面がきれいな基体をプラズマ強化化学気相成長反応装置の反応チャンバーに置いて、反応チャンバー内の真空度が10~200torrになるように反応チャンバーを連続的に排気し、不活性ガスHe、Ar、又はHeとArとの混合ガスを導入し、運動機構を運転し、基材を反応チャンバーで運動させ、圧力、温度が設定値に達した後にビニルエポキシ化合物Aとビニルオルガノシリコン化合物Bとを供給し、プラズマの電力を30~500Wに調整し、チャンバー温度を10~100℃に調整し、プラズマ強化化学気相成長を行い、反応終了後、反応物の供給を停止し、チャンバー圧力を常圧に上昇させることができる。上記ステップ101は、防腐処理ステップと称されてもよく、この過程では、上記低誘電率膜を上記基体により緻密に結合させるため、上記基体が腐食されることを防止する。
【0110】
特に、本発明の実施態様によれば、上記低誘電率膜の形成過程では、動的蒸着方法を採用して、上記低誘電率膜を基体により均一に付着させ、基体の異なる位置での蒸着膜の違いが減少され、基体の異なる領域での被蒸着物の濃度の違いによる厚さの不均一である問題が解決される。例えば、ステップ1013では、上記基体の異なる位置のいずれもに上記防食層が均一に付着されることができるように、上記基体を反応チャンバー内で運動させる防食層。上記基体の操作形態は、複数の形態を含んでもよく、例えば、上記基体は、反応チャンバーの中心点を基準点又は所定の軸のまわりを公転し、上記基体の中心軸又は所定の軸のまわりを自転するか、或いは、上記基体はそれぞれ横縦の両方の軸のまわりを各々に回転する。
【0111】
上記ステップ102では、オルガノシラン及び/又はオルガノシロキサン化合物Cとアルカン化合物及び/又はベンゼン化合物Eとの気相成長により上記多孔質層を形成する必要がある。
【0112】
特に、一実施態様においては、ステップ101の後に上記ステップ102を行い、つまり、上記防食層を形成した後に、上記防食層に上記多孔質層を形成しているが、他の実施態様では、ステップ102を直接進行してもよく、つまり、上記防食層を形成せず、まず上記基体の表面に上記多孔質層を直接に形成する。具体的に、上記多孔質層の形成過程は、
1021:オルガノシラン及び/又はオルガノシロキサン化合物Cとアルカン化合物及び/又はベンゼン化合物Eとを供給するステップと、
1022:窒素ガス/水素ガス及び/又はアンモニアガスを導入するステップと、
1023:酸素ガスを間欠的に導入するステップと、
1024:所定の電力で、オルガノシラン及び/又はオルガノシロキサン化合物Cとアルカン化合物及び/又はベンゼン化合物Eとの気相成長反応により上記多孔質層を形成するステップと、を含む。
【0113】
例えば、上記ステップ102で上記多孔質層の形成過程は、防腐処理した後、化合物Cと化合物Eとを供給し続けながら、窒素ガス/水素ガス及び/又はアンモニアガスを導入しながら、酸素ガスを導入し、酸素ガスは、頻度10~600sで間欠的に導入され、つまり、10~600sおきに酸素ガスを一回導入し、酸素ガスの反応時間は10~600sであり、反応終了後、化合物Cと化合物Eとの供給を停止し、上記多孔質層を形成することができる。
【0114】
特に、上記ステップ102では、ステップ1013である上記基体を上記反応チャンバー内で運動し続けることを含んでもよい。つまり、動的条件下で上記多孔質層を形成する。
【0115】
特に、反応性ガスである窒素ガス/水素ガス及び/又はアンモニアガスは、窒素含有ナノコート層を成長させるために添加されるものであり、ナノコート層の窒素含有量は、混合単量体の窒素含有量と混合ガスの窒素ガス/水素ガス及び/又はアンモニアガスの窒素含有量とにより確認される。O2の流量はナノコート層の酸素含有量に影響する要因の一つである。
【0116】
上記低誘電率膜を形成する際に、シリコーンナノ薄膜と上記シリコーン/酸素ガスの成長を交互に行い、シリコーン層を形成した後に、酸素ガスを間欠的に導入し、シリコーン層の炭化水素部分が酸素ガスと反応して不規則粗面を形成し、次いで表面にSiOCNHを成長し、高い比表面積を有する大細孔の形成に寄与し、しかも、交互構造は、上記低誘電率膜と基体との付着力の増強を寄与する。
【0117】
上記ステップ103では、アリールフルオロシランDの気相成長により上記フッ素含有層が形成される。基本的に、上記ステップ103の上記フッ素含有層の形成過程は、
1031:不活性ガスを導入するステップと、
1032:アリールフルオロシランDを供給するステップと
1033:所定の電力で、アリールフルオロシランDの気相成長反応により上記フッ素含有層を形成するステップと、を含む。
【0118】
例えば、上記ステップ103での上記フッ素含有層の形成過程は、上記多孔質層を形成した後に、不活性ガスを導入し、窒素ガス/水素ガス及び/又はアンモニアガスの導入を停止し、同時に化合物Dを供給し、プラズマの電力を30~150Wに調整し、プラズマ重合反応を続け、10~60min気相成長した後にサンプルを取り出し、目的の多機能ナノコート層である上記低誘電率膜が得られることができる。
【0119】
特に、上記ステップ103では、上記ステップ102の後に、つまり、上記多孔質層を形成した後に、上記フッ素含有層が形成され、言いかえれば、上記フッ素含有層を上記多孔質層の表面に付着させることにより、上記低誘電率膜の疎水性が大幅に増強される。
【0120】
特に、上記ステップ103では、ステップ1013である上記基体を上記反応チャンバー内で運動し続けることを含んでもよい。つまり、動的条件下で上記フッ素含有層を形成する。
【0121】
上記ステップ103の後に、高温焼鈍ステップを含んでもよい。特に、本発明のある実施態様では、細孔構造を形成する際に、ノルボルナジエン又はα-テルピネンなどの細孔形成剤を使用するので後に細孔形成剤を除去する操作が必要ではないため、必ずしも高温焼鈍処理をする必要があるのではない。
【0122】
さらに、本発明の幾つかの実施態様では、上記反応チャンバーである蒸着チャンバーの体積は、10L~2000Lであり、蒸着膜への要求、蒸着チャンバーの体積の大きさ、プロセスパラメーターにより調整できる。プラズマによる蒸着の電力の範囲は0.01W~500Wであり、蒸着時間は30s~7200sであり、気化温度は30℃~100℃であり、チャンバー温度は20℃~100℃であり、各単量体の流量は、ぞれぞれ、0~1000sccmを選択できる。酸素ガス及び/又はN2/H2、NH3、炭化水素有機化合物の流量は1~200sccmに設定し、供給する頻度の選択可能な範囲は、10秒1回~500秒1回である。
【実施例】
【0123】
以下、具体的な実施例を例示して説明する。
【0124】
実施例1
きれいなPCB基板1枚を採用し、プラズマ強化化学気相成長反応装置であるプラズマ蒸着装置の冶具に置いて、プログラムにより各パラメーターを設定し、電力100W、蒸着時間1800s、気化温度95℃、チャンバー温度は室温であり、He雰囲気下、He流量は10sccmであり、反応ガスA及びBを導入し、反応ガスA及びBは、それぞれビニルオキシラン及びトリメチルビニルシランであり、流量がそれぞれ100sccm及び100sccmである。下地層の成長が完了した後、単量体であるビニルオキシラン及びトリメチルビニルシランの供給を停止し、Heを導入し続けながら、N2を流量5sccmで導入し、反応物C及びEを供給し、反応物C及びEは、それぞれヘキサメチルジシロキサン及び単量体であるシクロヘキサンであり、流量がぞれぞれ100sccm及び100sccmである。O2を導入頻度300秒1回で間欠的に導入し、電力は50Wに改変され、蒸着時間は3600sであり、気化温度は110℃であり、チャンバー温度は25℃であり、O2の流量は10sccmであり、蒸着終了後、O2、N2
の導入を停止し、反応物Dであるパーフルオロオクチルジクロロフェニルシランを供給し、他のパラメーターは改変されなく、蒸着完了後、気体の圧力を常圧に上昇させ、サンプルを取り出して、本発明に係る多孔質構造を有する低誘電率ナノコート層が得られ、つまり、基体に上記低誘電率膜を形成すした。
【0125】
実施例2
きれいなPCB基板1枚を採用し、プラズマ蒸着装置の冶具に置いて、プログラムにより各パラメーターを設定し、電力100W、蒸着時間1800s、気化温度95℃、チャンバー温度は室温であり、He雰囲気下、He流量は10sccmであり、反応物A及びBを導入し、反応物A及びBは、それぞれビニルオキシラン及びトリメトキシビニルシランであり、流量がぞれぞれ100sccm及び100sccmである。下地層の成長が完了した後、反応物であるビニルオキシラン及びトリメトキシビニルシランの供給を停止し、Heを導入し続けながら、N2を導入し、N2の流量は5sccmであり、反応物C及びEを導入し、反応物C及びEはそれぞれトリス-(トリメトキシシリル)フェニルシラン及びシクロブタンであり、流量がそれぞれ100sccm及び100sccmである。O2を導入頻度300秒1回で間欠的に導入し、電力は50Wに改変され、蒸着時間は3600sであり、気化温度は110℃であり、チャンバー温度は25℃であり、O2の流量は10sccmであり、蒸着終了後、O2、N2の導入を停止し、反応物Dであるパーフルオロオクチルジエトキシフェニルシランを供給し、他のパラメーターは改変されなく、蒸着が完了した後、気体圧力を常圧に上昇させ、サンプルを取り出し、本発明に係る多孔質構造を有する低誘電率ナノコート層が得られた。
【0126】
実施例3
きれいなPCB1枚を採用し、プラズマ蒸着装置の冶具に置いて、プログラムにより各パラメーターを設定し、電力100W、蒸着時間1800s、気化温度95℃、チャンバー温度は室温であり、He雰囲気下、He流量10sccm、反応物A及びBを供給し、反応物A及びBは、それぞれアリルグリシジルエーテル及びトリメチルビニルシランであり、流量がそれぞれ100sccm及び100sccmである。下地層の成長が完了した後、反応物アリルグリシジルエーテル及びトリメチルビニルシランの供給を停止し、Heを導入し続けながら、NH3を導入し、NH3の流量は100sccmであり、反応物C及びEを供給し、反応物C及びEは、それぞれトリス-(トリエトキシシリル)フェニルシラン及びトルエンであり、流量がそれぞれ100sccm及び100sccmである。O2を導入頻度150秒1回で間欠的に導入し、電力は50Wに改変され、蒸着時間は3600sであり、気化温度は110℃であり、チャンバー温度は25℃であり、蒸着終了後、O2及びNH3の導入を停止し、反応物Dであるパーフルオロオクチルエチルペンタフルオロフェニルジクロロシランを供給し、電力は50Wに改変され、蒸着時間は1800sに改変され、圧力は100mTorrであり、気化温度は110℃であり、チャンバー温度は30℃であり、O2の流量は50sccmであり、蒸着が完了した後、気体圧力を常圧に上昇させ、サンプルを取り出し、本発明に係る多孔質構造を有する低誘電率ナノコート層が得られた。
【0127】
実施例4
きれいなPCB1枚を採用し、プラズマ蒸着装置の冶具に置いて、プログラムにより各パラメーターを設定し、電力100W、蒸着時間1800s、圧力80mTorr、気化温度95℃で、チャンバー温度は室温であり、Ar雰囲気下、Ar流量10sccmで、反応物A及びBを供給し、反応物A及びBは、それぞれ2,3-エポキシプロピルジメチルビニルシラン及びジメチルメトキシビニルシランであり、流量がそれぞれ80sccm及び120sccmである。下地層の成長が完了した後に、反応物2,3-エポキシプロピルジメチルビニルシランおよびジメチルメトキシビニルシランの導入を停止し、Arを導入し続けながら、反応物CおよびEを導入し、反応物CおよびEは、それぞれトリス-(トリエチルシリル)フェニルシラン及びシクロヘキサンであり、流量がそれぞれ20sccm及び180sccmである。O2を導入頻度150秒1回で間欠的に導入し、電力は50Wに改変され、蒸着時間は3600sであり、気化温度は110℃であり、チャンバー温度は25℃であり、O2の流量は30sccmであり、蒸着終了後、O2の導入を停止し、反応物Dであるパーフルオロオクチルエチルペンタフルオロフェニルジメトキシシランを供給し、電力は50Wに改変され、蒸着時間は1800sに改変され、圧力は120mTorrであり、気化温度は110℃であり、チャンバー温度は30℃であり、蒸着が終了した後、気体圧力を常圧に上昇させ、サンプルを取り出し、本発明に係る多孔質構造を有する低誘電率ナノコート層が得られた。
【0128】
実施例5
きれいなPCB1枚を採用し、プラズマ蒸着装置の冶具に置いて、プログラムにより各パラメーターを設定し、電力80W、蒸着時間3600s、圧力80mTorr、気化温度95℃で、チャンバー温度は室温であり、Ar雰囲気下、Arの流量20sccmで、反応物A及びBを導入し、反応物A及びBは、それぞれ2,3-エポキシプロピルジメチルビニルシラン及びトリメチルビニルシランであり、流量がそれぞれ80sccm及び120sccmである。下地層の成長が完了した後、反応物である2,3-エポキシプロピルジメチルビニルシラン及びトリメチルビニルシランの供給を停止し、Arを導入し続けながら、N2、H2を導入し、N2及びH2の流量はそれぞれ30sccm及び90sccmであり、反応物C及びEを供給し、反応物C及びEは、それぞれトリス-(トリエチルシリル)フェニルシラン及びパラキシレンであり、流量がそれぞれ20sccm及び180sccmである。O2を導入頻度120秒1回で間欠的に導入、電力は90Wに改変され、蒸着時間は3600sであり、気化温度は110℃であり、チャンバー温度は50℃であり、O2の流量は80sccmであり、蒸着終了後、O2、N2及びH2の導入を停止し、反応物Dであるパーフルオロオクチルエチルペンタフルオロフェニルジメトキシシランを供給し、電力は80Wに改変され、蒸着時間は1800sに改変され、圧力は120mTorrであり、気化温度は110℃であり、チャンバー温度は30℃であり、蒸着が完了した後、気体圧力を常圧に上昇させ、サンプルを取り出し、本発明に係る多孔質構造を有する低誘電率ナノコート層が得られた。
【0129】
実施例6
きれいなPCB1枚を採用し、プラズマ蒸着装置の冶具に置いて、プログラムにより各パラメーターを設定し、電力80W、蒸着時間3600s、圧力80mTorr、気化温度95℃、チャンバー温度は室温であり、Ar雰囲気下、Ar流量20sccmで、反応物A及びBを供給し、反応物A及びBはそれぞれ2,3-エポキシプロピルジメチルビニルシラン及び4-スチリル(トリメトキシシロキシ)シランであり、流量がそれぞれ80sccm及び120sccmである。下地層の成長が完了した後、反応物である2,3-エポキシプロピルジメチルビニルシラン及び4-スチリル(トリメトキシシロキシ)シランの供給を停止し、Arを導入し続けながら、N2、H2を導入し、N2及びH2の流量はそれぞれ30sccm及び90sccmであり、反応物C及びEを導入し、反応物C及びEはそれぞれトリス-(トリエチルシリル)フェニルシラン及びシクロペンタンであり、流量がそれぞれ20sccm及び180sccmである。O2を導入頻度100秒1回で間欠的に導入し、電力は90Wに改変され、蒸着時間は3600sであり、気化温度は110℃であり、チャンバー温度は50℃であり、O2の流量は20sccmであり、蒸着時間が完了した後、O2、N2及びH2の導入を停止し、反応物Dであるパーフルオロブチルエチルペンタフルオロフェニルジクロロシランを供給し、電力は80Wに改変され、蒸着時間は1800sに改変され、圧力は120mTorrであり、気化温度は110℃であり、チャンバー温度は30℃であり、蒸着が完了した後、気体圧力を常圧に上昇させ、サンプルを取り出し、本発明に係る多孔質構造を有する低誘電率ナノコート層が得られた。
【0130】
実施例7
きれいなPCB1枚を採用し、プラズマ蒸着装置の冶具に置いて、プログラムにより各パラメーターを設定し、電力80W、蒸着時間3600s、圧力80mTorr、気化温度95℃、チャンバー温度は室温であり、Ar雰囲気、Ar流量20sccmで、反応物A及びBを供給し、反応物A及びBはそれぞれ2,3-エポキシプロピルジクロロビニルシラン及びテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンであり、流量がそれぞれ150sccm及び50sccmである。下地層の成長が完了した後、反応物である2,3-エポキシプロピルジクロロビニルシラン及びテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンの供給を停止し、Arを導入し続けながら、N2、H2を導入し、N2及びH2の流量はそれぞれ30sccm及び90sccmであり、反応物C及びEを導入し、反応物C及びEはそれぞれトリフルオロプロピルメチルシクロトリシロキサン及びベンゼンであり、流量がそれぞれ50sccm及び150sccmである。O2を導入頻度600秒1回で間欠的に導入し、電力は90Wに改変され、蒸着時間は3600sであり、気化温度は110℃であり、チャンバー温度は50℃であり、O2の流量は60sccmであり、蒸着時間が完了した後、O2、N2及びH2の導入を停止し、反応物Dであるパーフルオロブチルエチルペンタフルオロフェニルジメトキシシランを供給し、電力は80Wに改変され、蒸着時間は3600sに改変され、圧力は100mTorrであり、気化温度は110℃であり、チャンバー温度は30℃であり、蒸着が完了した後、気体圧力を常圧に上昇させ、サンプルを取り出し、本発明に係る多孔質構造を有する低誘電率ナノコート層が得られた。
【0131】
実施例8
きれいなPCB1枚を採用し、プラズマ蒸着装置の冶具に置いて、プログラムにより各パラメーターを設定し、電力80W、蒸着時間3600s、圧力80mTorr、気化温度95℃、チャンバー温度は室温であり、Ar雰囲気下、Ar流量20sccmで、反応物A及びBを供給し、反応物A及びBはそれぞれ2,3-エポキシプロピルジクロロビニルシラン及びテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンであり、流量がそれぞれ150sccm及び50sccmである。下地層の成長が完了した後、反応物である2,3-エポキシプロピルジクロロビニルシランとテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンの供給を停止し、Arを導入し続けながら、N2、H2を導入し、N2及びH2の流量はそれぞれ30sccm及び90sccmであり、反応物C及びEを導入し、反応物C及びEは、それぞれトリス-(トリエチルシリル)フェニルシラン及びシクロヘキサンであり、流量がそれぞれ20sccm及び180sccmである。O2を導入頻度180秒1回で間欠的に導入し、電力は90Wに改変され、蒸着時間は3600sであり、気化温度は110℃であり、チャンバー温度は50℃であり、O2の流量は30sccmであり、蒸着時間が完了した後、O2、N2及びH2の導入を停止し、反応物Dであるパーフルオロオクチルエチルペンタフルオロフェニルジメトキシシランを供給し、電力は80Wに改変され、蒸着時間は1800sに改変され、圧力は120mTorrであり、気化温度は110℃であり、チャンバー温度は30℃であり、蒸着が完了した後、気体圧力を常圧に上昇させ、サンプルを取り出し、最後に、450℃で90min焼鈍処理し、本発明に係る多孔質構造を有する低誘電率ナノコート層が得られた。
【0132】
実施例9
きれいなPCB1枚を採用し、プラズマ蒸着装置の冶具に置いて、プログラムにより各パラメーターを設定し、電力80W、蒸着時間3600s、圧力80mTorr、気化温度95℃、チャンバー温度は室温であり、Ar雰囲気下、Ar流量20sccmで、反応物A及びBを供給し、反応物A及びBは、それぞれ2,3-エポキシプロピルジクロロビニルシラン及びテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンであり、流量がそれぞれ150sccm及び50sccmである。下地層の成長が完了した後、反応物である2,3-エポキシプロピルジクロロビニルシラン及びテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンの供給を停止し、Arを導入し続けながら、反応物C及びEを供給し、反応物C及びEは、それぞれヘキサメチルジシラザン及びとシクロペンタンであり、流量がそれぞれ50sccm及び150sccmである。O2を導入頻度150秒1回で間欠的に導入し、電力は90Wに改変され、蒸着時間は3600sであり、O2の流量は20sccmであり、気化温度は110℃であり、チャンバー温度は50℃であり、蒸着終了後、O2の導入を停止し、反応物Dであるパーフルオロオクチルエチルペンタフルオロフェニルジメトキシシランを供給し、電力は80Wに改変され、蒸着時間は1800sに改変され、圧力は100mTorrであり、気化温度は110℃であり、チャンバー温度は30℃であり、蒸着が完了した後、気体圧力を常圧に上昇させ、サンプルを取り出し、本発明に係る多孔質構造を有する低誘電率ナノコート層が得られた。
【0133】
実施例10
実施例9と比較しては、上記防食層を作製していない。きれいなPCB1枚を採用し、プラズマ蒸着装置の冶具に置いて、Arを導入し、反応物C及びEを直接供給し、反応物C及びEは、それぞれヘキサメチルジシラザン及びシクロペンタンであり、流量がそれぞれ100sccm及び150sccmである。O2を導入頻度150秒1回で間欠的に導入し、電力は90Wに改変され、蒸着時間は3600sであり、O2の流量は20sccmであり、気化温度は110℃であり、チャンバー温度は50℃であり、蒸着終了後、O2の導入を停止し、反応物Dであるパーフルオロオクチルエチルペンタフルオロフェニルジメトキシシランを供給し、電力は80Wに改変され、蒸着時間は1800sに改変され、圧力は100mTorrであり、気化温度は110℃であり、チャンバー温度は30℃であり、蒸着が完了した後、気体圧力を常圧に上昇させ、サンプルを取り出し、本発明に係る多孔質構造を有する低誘電率ナノコート層が得られた。
【0134】
さらに、上記実施例でのパラメーターを検出した。
【0135】
ナノコート層の厚さは、米国Filmetrics F20-UV-膜厚計を使用して検出した。ナノコート層の水接触角は、GB/T 30447-2013規格に従って測定された。
【0136】
誘電率は、GB/T 1409-2006で電気絶縁材料が電力周波数、可聴周波数、高周波数(ミリ波長を含む。)で誘電率及び誘電損失係数を測定するための推奨方法に従って検出された。
【0137】
耐塩水噴霧性は、GB/T 2423.18-2000に記載の電気電子製品環境試験方法に従って測定された。
【0138】
ナノコート層のヤング率は、JB/T 12721-2016に記載の固体材料のin situナノデンテーション/スクラッチテスターの技術仕様にしたがって測定された。
【0139】
図面:実施例1~10の各性能パラメーター
表一
実施例10、腐食点が出た
【0140】
当業者は、上記説明及び図面に示される本発明の実施例は単なる例であり、本発明を限定するものではないことを理解すべきである。本発明の目的は、既に完全かつ効果的に達成された。本発明の機能及び構造原理も実施例に示され、説明されており、上記原理から逸脱することなく、本発明の実施形態には任意の変更又は修正があることができる。