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特許7475376MRIのストレイン測定値による心機能の迅速な定量評価
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】MRIのストレイン測定値による心機能の迅速な定量評価
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20240419BHJP
【FI】
A61B5/055 380
A61B5/055 311
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022007137
(22)【出願日】2022-01-20
(62)【分割の表示】P 2019508156の分割
【原出願日】2017-04-26
(65)【公開番号】P2022050665
(43)【公開日】2022-03-30
【審査請求日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】62/328,374
(32)【優先日】2016-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/415,767
(32)【優先日】2016-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518380849
【氏名又は名称】マイオカーディアル ソリューションズ インク.
【氏名又は名称原語表記】MYOCARDIAL SOLUTIONS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】オスマン,ネール,エフ.
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-541385(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0281415(US,A1)
【文献】PAN Li, et al.,Real-Time Imaging of Regional Myocardial Function Using Fast-SENC,Magnetic Resonance in Medicine,米国,John Wiley & Sons, Ltd,2006年01月26日,Volume 55, Issue 2,p386-395,https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/mrm.20770
【文献】NEIZEL Mirja, et al.,Strain-Encoded MRI for Evaluation of Left Ventricular Function and Transmurality in Acute Myocardial Infarction,Circulation: Cardiovascular Imaging,米国,Lippincott Williams & Wilkins,2009年01月26日,Volume 2, Issue 2,p116-122,https://ahajournals.org/doi/full/10.1161/CIRCIMAGING.108.789032
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MRIイメージから筋収縮性を定量化する方法であって、
MRIスキャナ内の患者にストレインエンコーデッド(SENC)パルスシーケンスを電子的に送信するステップと、
前記送信されたSENCパルスシーケンスに応答して、前記患者の心臓の複数のビューのローSENC MRIイメージを捕捉するステップであって、各ビューの前記SENC MRIイメージは、それぞれの単一心拍以内で捕捉され、前記ローSENC MRIイメージは、自由に呼吸しているMRIイメージであり、これによって呼吸を止めての信号捕捉を必要とせず、心臓ゲーティングなしで捕捉される、ステップと、その後、
前記心臓の前記複数のビューの前記SENC MRIイメージから複数のストレイン動画を電子的に生成するステップと、
前記複数のストレイン動画から、各ストレイン動画内での心筋の個別区分におけるストレイン値を電子的に計算するステップと、
筋収縮状態を示すために、前記複数のストレイン動画での前記心臓の少なくとも1つのモデルにおける前記計算された複数のストレイン値を色分けするステップであって、前記計算された複数のストレイン値は最大収縮におけるストレイン値に基づいており、ストレイン動画での心臓組織の個別区分における色は、心周期全体にわたるストレイン変形の量の前記計算されたストレイン値に基づいて時間の経過とともに変化する、ステップと、を含み、
前記複数のストレイン値の事前に定義された複数のカットオフ閾値が、前記色分けを定義する、
方法。
【請求項2】
前記事前に定義されたカットオフ閾値の2つが、-17%のストレイン値と-10%のストレイン値を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記心筋は、収縮を含み、最大収縮において-17%以下であるストレイン値は、正常収縮を含み、このストレイン値の範囲を有する前記収縮の個別区分は、前記収縮の他の個別区分の他の色とは異なる第1の色で表示される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記心筋は、収縮を含み、最大収縮において-10%から-17%の間であるストレイン値は、異常ではあるが可逆性の心筋損傷に関するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記心筋は、収縮を含み、最大収縮において-10%より大きなストレイン値は、心筋損傷を特定し、このストレイン値の範囲を有する前記収縮の個別区分は、前記収縮の他の個別区分の他の色とは異なる色で表示される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
イメージ処理回路を有する、MRIシステム用のイメージ処理システムであって、
各患者の心臓の複数のビューのストレインエンコーデッド(SENC)ローMRI心臓イメージの系列を集めて、心筋イメージの複数のストレインシーケンス、心周期にわたる各ビューに対して心筋イメージの1つのストレインシーケンスを生成し、
前記心筋の様々な区分のストレインの計算に基づいて、心筋イメージの各ストレインシーケンス内の前記心筋の様々な区分を色分けして、前記心筋の前記色分けされた区分を含む対応するストレイン動画を生成し、前記ストレイン動画内の前記心筋の様々な区分は、前記心周期全体にわたるストレイン変形に対応する前記ストレインの計算に基づいて時間の経過とともに変化し、
前記ストレインの計算は、ストレイン値として、最大収縮におけるストレイン、ストレインレート、ストレイン平均値、又はストレイン代表値のうちの少なくとも1つを含み、複数のストレイン値の事前に定義されたカットオフ閾値が前記色分けを定義し、
前記SENCローMRI心臓イメージの系列は、前記心臓の長軸プレーン及び短軸プレーンからなる6つの別々のプレーンから心臓ゲートを必要とせずに取得された自由呼吸イメージである、
システム。
【請求項7】
正常、異常だが可逆的な損傷、異常で不可逆的な損傷を表すように色分けされた複数のストレイン値で心臓モデルを色分けすることをさらに含み、
前記複数のストレインシーケンスの前記色分けは、前記心臓モデルの複数のストレイン値の前記色分けと同じである、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記事前に定義されたカットオフ閾値の2つが、-17%と-10%を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
最大収縮において-17%以下であるストレイン値は、正常収縮を特定する、請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
最大収縮において-10%から-17%の間であるストレイン値は、異常ではあるが可逆性の心筋損傷を特定する、請求項6に記載のシステム。
【請求項11】
最大収縮において-10%より大きなストレイン値は、心筋損傷を特定する、請求項6に記載のシステム。
【請求項12】
MRIシステムに少なくとも部分的に搭載され、またはMRIシステムと通信し、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサを備えるシステム。
【請求項13】
前記心筋は、収縮を含み、前記複数のストレインシーケンス内で前記色分けされた区分は、
正常収縮を特定するための、最大収縮においてストレイン値が-17%以下である心臓区分の第1の色と、
異常であるが可逆的に損傷した収縮を特定するための、最大収縮においてストレイン値が-10%~-17%である心臓区分の第2の色と、
不可逆的に損傷した収縮を特定するための、最大収縮においてストレイン値が-10%を超える心臓区分の第3の色と、を含む、
請求項6に記載のシステム。
【請求項14】
MRスキャナのボア内での前記患者の前記心臓の向きを決定するために、横断プレーン、矢状プレーン、及び冠状プレーンからストレインエンコーデッド(SENC) MRIイメージのプランニングビューを電子的に取得するステップと、
前記取得された前記SENCイメージのプランニングビューから疑似2チャンバ又は疑似4チャンバのイメージングプレーンを電子的に特定するステップと、
単一心拍にわたって前記疑似2チャンバ又は前記疑似4チャンバのイメージングプレーンからMRIイメージ系列を電子的に取得するステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
横断プレーン、矢状プレーン、及び冠状プレーンからストレインエンコーデッド(SENC) MRIプランニングイメージを電子的に取得し、前記心臓の疑似2チャンバビューを生成し、MRスキャナのボア内での前記患者の前記心臓の向きを決定するステップと、
前記取得されたMRIイメージから疑似2チャンバプレーン又は疑似4チャンバプレーンを電子的に特定するステップと、
単一心拍にわたって前記疑似2チャンバプレーン又は前記疑似4チャンバプレーンからMRIイメージ系列を電子的に取得するステップと、
前記取得された前記MRIイメージ系列を電子的に精査して、前記心周期の収縮末期区分を表す、トータル強度信号が最大となる時点のMRIイメージを特定するステップと、
前記特定されたMRIイメージの左心室を分割する3本の線を予測して、3つの短軸イメージングプレーンを特定するステップと、
前記特定されたMRIイメージを通る分割線を予測して、3つの長軸イメージングプレーンを特定するステップと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
MRIスキャナで患者の心臓の迅速なMRIイメージングを行う方法であって、
前記心臓のカットの単一ビューからのSENCパルスシーケンスを電子的に送信するステップと、その後、
前記心臓の対応する追加カットの複数の追加ビューから提供するステップを15分以内で連続的に繰り返し、それによって前記心臓を迅速にイメージングするステップと、
前記心臓のビューの捕捉されたMRIイメージデータに基づいてストレイン動画を生成するステップであって、各ストレイン動画は、前記心臓の対応するカットの各単一ビューからのものであり、各ストレイン動画は、各単一心拍以内で捕捉されたMRIイメージデータに基づくものである、ステップと、
MRスキャナのボア内での前記患者の前記心臓の向きを決定するために、横断プレーン、矢状プレーン、及び冠状プレーンからストレインエンコーデッド(SENC) MRIイメージのプランニングビューを電子的に取得するステップと、
前記取得された前記SENCイメージのプランニングビューから疑似2チャンバ又は疑似4チャンバのイメージングプレーンを電子的に特定するステップと、
単一心拍にわたって前記疑似2チャンバ又は前記疑似4チャンバのイメージングプレーンからMRIイメージ系列を電子的に取得するステップと、を含み、
各ストレイン動画は、計算されたストレイン値に基づいて前記心臓の心筋の色分けされた区分を含み、それにより、前記ストレイン動画内の心筋の前記区分の色は、心周期全体にわたるストレイン変形に基づいて時間の経過とともに変化し、
ストレイン値の事前に定義された複数のカットオフ閾値は、前記計算されたストレイン値に基づいて前記色分けされた区分を提供するために使用される、
方法。
【請求項17】
MRIスキャナで患者の心臓の迅速なMRIイメージングを行う方法であって、
前記心臓のカットの単一ビューからのSENCパルスシーケンスを電子的に送信するステップと、その後、
前記心臓の対応する追加カットの複数の追加ビューから提供するステップを15分以内で連続的に繰り返し、それによって前記心臓を迅速にイメージングするステップと、
前記心臓のビューの捕捉されたMRIイメージデータに基づいてストレイン動画を生成するステップであって、各ストレイン動画は、前記心臓の対応するカットの各単一ビューからのものであり、各ストレイン動画は、各単一心拍以内で捕捉されたMRIイメージデータに基づくものである、ステップと、
横断プレーン、矢状プレーン、及び冠状プレーンからストレインエンコーデッド(SENC) MRIプランニングイメージを電子的に取得し、前記心臓の疑似2チャンバビューを生成し、MRスキャナのボア内での前記患者の前記心臓の向きを決定するステップと、
前記取得されたMRIイメージから疑似2チャンバプレーン又は疑似4チャンバプレーンを電子的に特定するステップと、
単一心拍にわたって前記疑似2チャンバプレーン又は前記疑似4チャンバプレーンからMRIイメージ系列を電子的に取得するステップと、
前記取得された前記MRIイメージ系列を電子的に精査して、前記心周期の収縮末期区分を表す、トータル強度信号が最大となる時点のMRIイメージを特定するステップと、
前記特定されたMRIイメージの左心室を分割する3本の線を予測して、3つの短軸イメージングプレーンを特定するステップと、
前記特定されたMRIイメージを通る分割線を予測して、3つの長軸イメージングプレーンを特定するステップと、を含み、
各ストレイン動画は、計算されたストレイン値に基づいて前記心臓の心筋の色分けされた区分を含み、それにより、前記ストレイン動画内の心筋の前記区分の色は、心周期全体にわたるストレイン変形に基づいて時間の経過とともに変化し、
ストレイン値の事前に定義された複数のカットオフ閾値は、前記計算されたストレイン値に基づいて前記色分けされた区分を提供するために使用される、
方法。
【請求項18】
前記疑似2チャンバプレーン、及び/又は前記疑似2チャンバプレーンからの前記MRIイメージの系列から生成された疑似2チャンバストレインエンコーデッド動画のうちの、前記最大トータル強度信号を有するMRIイメージスライスを特定する為に使用される前記MRIイメージ系列は、高チューニングローストレインエンコーデッド動画である、請求項15又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記疑似4チャンバプレーン、及び/又は前記疑似4チャンバプレーンからの前記MRIイメージ系列から生成された疑似4チャンバストレインエンコーデッド動画のうちの、前記最大トータル強度信号を有するMRIイメージスライスを識別する為に使用される前記MRIイメージ系列は、高チューニングローストレインエンコーデッド動画である、請求項15又は17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年4月27日に出願された米国特許仮出願第62/328,374号、並びに2016年11月1日に出願された米国特許仮出願第62/415,767号の優先権を主張するものであり、これらの内容は、参照によって、全内容が本明細書に記載されているかのように本明細書に組み込まれている。
【0002】
著作権表示
本特許文書の開示の一部は、著作権保護の対象となる内容を含む。著作権所有者のマイオカーディアルソリューションズインコーポレイテッド(MyoCardial Solutions, Inc.)は、特許商標庁の特許ファイル又は記録に現れる限り、特許文書又は特許開示の何人による複製にも異議を唱えないが、それ以外では、全ての著作権を留保する。
【0003】
本発明は、磁気共鳴イメージング(MRI)の分野に関する。
【背景技術】
【0004】
MRI、CT、超音波などの医療イメージング技術の進歩により、体内の解剖学的特徴を、構造と動きの両方を示すようにイメージングすることが可能になっている。一般に、心疾患などの特定の病状をよりよく診断する為には、素早い捕捉が可能であって、解剖学的構造と機能の両方に関する情報を提供するイメージが必要である。そこで、心臓などの器官のような様々な組織領域について、読影医の主観、並びに読影医の経験への依存を減らす定量的なイメージングを行うことが引き続き必要とされている。
【0005】
磁気共鳴イメージング(MRI)は、非侵襲的な診断の為のイメージングの主要な手段になっている。電磁スペクトルのうちの、組織に対して無害である領域で動作することにより、患者を危険にさらすことなく、MRIイメージを繰り返し捕捉することが可能である。本明細書で使用する「イメージ」という用語は、単一イメージを指す場合と、複数イメージを指す場合とがある。
【0006】
MRI以外の医療イメージング技術は、一般に、観察者に依存しないイメージングにはあまり向いていない。それらの技術(例えば、超音波)は、イメージングされる組織の近傍の患者の身体に圧力をかけうる侵襲的な器具又は皮膚プローブを必要とする場合がある。従って、これらのイメージング技術は、特定の器官の機能を妨げる可能性がある。それは、圧力をかけることによって、イメージングされる組織の動き及び機能を妨げうる組織変形が引き起こされる為である。
【0007】
既存のMRIの一連の手順は時間がかかり(少なくとも20分)、少なくともこの継続時間にわたって患者を磁石のボアの内側に配置することを必要とする。これには幾つかの不利点がある。閉じたボア磁石の内側に患者を配置することは、心臓をイメージングすることに関しては最良の品質が得られるが、患者にとっては大変不自由であり、患者のちょっとした動きにも非常に敏感である。長時間にわたって動かずにいるという制約に応じ続けることは患者にとって大変困難であり、結果として捕捉される心臓イメージは残念なことにしばしば低画質になる。更に、磁石内部に長時間いることは、様々なレベルの閉所恐怖症を抱える多くの患者にとっては全く厄介なことであり、これによって、更なる動きが引き起こされて画質が損なわれる可能性があり、又、イメージングが途中で中断又は中止されて診断情報が使い物にならなくなる可能性がある。
【0008】
様々なイメージの捕捉を実施する為には、患者は、磁石内部に長時間いるだけでなく、スキャンの間、呼吸も含めて動きを止めていなければならない。この場合、患者は約10秒間、呼吸を止めなければならず、これを、磁石ボア内で動かずにいる間に何度も繰り返さなければならない。
【0009】
このように患者が非常に従順でなければならないイメージングの煩雑さにより、結果として得られる心臓イメージの画質が著しく損なわれ、その結果、イメージに含まれる診断情報を主観的に評価する読影医の間に大きなばらつきが発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来の技術の課題を解決するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態は、心臓に対して高速、定量的、且つ包括的な評価を行う為のシステム、回路、及び方法に関し、この評価は、壁筋の区分収縮性を非侵襲的に測定することにより、且つ、任意選択でグローバル機能を測定することにより、行われる。本方法は、迅速に実施することが可能であり、例えば、全ての測定値を生成する為に患者がMRI磁石内にある最小限の時間で実施可能であり、この時間は5分以下であり、典型的には5分より短く、更にはわずか15秒である。本方法は、心筋の客観的評価及び弱化の指標を示すストレイン測定値を生成し、弱化が可逆的かどうかを示すことが可能である。
【0012】
本発明の実施形態は、安静時又はストレス下の心臓のイメージングを行うことが可能であり、冠動脈狭窄に起因する虚血を評価する場合のストレス下のイメージングは、(例えば、冠動脈疾患の患者を診断する為に)心臓の機能又は損傷又は疾患を評価する為に行われる。
【0013】
本発明の実施形態は、心筋機能性、及び弱化の指標、並びに心筋の弱化が可逆的かどうかについての客観的評価を与える、心筋変形の定量的ストレイン測定値を生成する方法、システム、及び回路に関する。本方法、システム、及び回路は、安静時及び/又はストレス下の心臓のイメージングを行うことが可能であり、ストレス下のイメージングは、冠動脈疾患の患者を診断する為に、冠動脈狭窄に起因する虚血を評価する。
【0014】
本発明の実施形態は、MRIを使用して、高精度で、患者がボア内にいる時間を短くして(MRI磁石ボア内にいる時間が典型的には2分未満で、例えば、30秒から2分の間で)心筋機能性の高速評価を行う方法、システム、及び回路を提供する。この期間は、心筋機能性の包括的な評価を提供できるストレイン測定値を計算する為に必要な情報を捕捉するのに十分である。
【0015】
本発明の実施形態は、ストレインエンコーデッドイメージング(SENC)を用いるストレインベースのイメージング技術を含む、迅速且つ定量的な心臓評価に関し、SENCは、心筋などの組織の局所変形のイメージングを行う為のMRI技術である。複数の捕捉プレーンに沿って複数のストレインシーケンスを生成することにより、心筋の収縮及び機能と相互に関連する円周方向及び長軸方向のストレインのグローバル且つ/又は局所的な評価が可能になる。本発明は、壁筋のグローバル機能及び区分収縮性を非侵襲的に測定することにより、心臓の高速、定量的、且つ包括的な評価を行うシステム、方法、及び回路を含む。
【0016】
本方法、システム、及び回路は、高速ストレインエンコーディング(SENC)パルスシーケンスを用いて、心周期の間の、且つ心臓の1つのスライス(プレーン)内の心筋機能性のイメージのシーケンスを単一心拍の間に捕捉することが可能である。この、SENCローイメージの系列を集めることにより、そのスライスにおける心筋の解剖学的シーケンス及びストレインシーケンスを取得することが可能である。高チューニングのSENCローシーケンスは、収縮末期の心臓の組織を明るく示し、対照的に、肺組織及び血液を、明るい組織より暗く示し、典型的には格段に暗く示す。この対照により、心筋を身体の他の組織と切り離す高速区分化(即ち、各イメージに分離すること)が可能になる。解剖学的シーケンスは、心臓の組織を、身体のそれ以外の組織と同じくらい明るく示し、心臓腔内の血液の信号を抑圧する(これは、ブラック血液イメージング(black blood imaging)と呼ばれる)。ストレインシーケンスは、心周期の間の心筋の収縮及び弛緩の測定値を示しており、これによって、心筋の収縮性の測定値が得られる。例示的なSENCパルスシーケンス及びプロトコルの詳細については、米国特許第6,597,935号「高調波位相磁気共鳴イメージングの方法(Method for harmonic phase magnetic resonance imaging)」、米国特許第7,741,845号「ストレインエンコーデッドMRIによる組織変形のイメージング(Imaging tissue deformation using strain encoded MRI)」、及び米国特許第7,495,438号「単一イメージプレーン上での3次元磁気共鳴運動の推定(Three dimensional magnetic resonance motion estimation on a single image plane)」のうちの1つ以上を参照されたい。これら3件の文書の内容は、参照によって、全内容が本明細書に記載されているかのように本明細書に組み込まれている。
【0017】
本発明の実施形態は、患者がMRI磁石のボア内にいる時間を最小限に抑えて実施可能である。全ての定量的測定値を生成する為のデータを生成するスキャンシーケンスは、自由に呼吸したままで5分未満で実施可能であり、15~90秒の短さで実施可能である。例えば、スキャンシーケンス全体は、異なる6つのプレーンからの6つのストレインシーケンスにより捕捉可能であり、これによって、グローバル機能及び区分収縮性の完全な評価が6心拍以内に得られる。
【0018】
(ピーク収縮に関連付けられた筋肉の最大短縮を示す)最小ストレインは、筋肉の健康状態について、正常か弱化しているか、並びにその弱化が一時的(可逆的)か永続的(不可逆的)かの定量評価を提供する。心臓をカバーする多種多様なプレーンに対して多種多様なストレインシーケンスを捕捉することにより、心臓全体のグローバル機能及び局所機能が計算される。例えば、心臓の3つの短軸ビュー及び3つの長軸ビューがあれば、心室の収縮性の包括的な理解には十分でありうる。
【0019】
本発明の実施形態は、心筋の客観的評価、及び弱化の指標、並びに弱化が可逆的かどうかを示すストレイン測定値を用いる。心筋が「正常」かどうか、「異常」かどうか、「可逆的」かどうか、「不可逆的」かどうかを示すユニバーサルストレイン値が、男性及び女性、並びに全ての年齢層に対して妥当性検証されてきた。ストレイン値が-17%未満であることは、心筋が正常であることを示し、ストレイン値が-17%と-10%の間であることは、心筋が異常であるものの可逆的であることを示し、ストレイン値が-10%を超えることは、心筋が異常であって不可逆的であることを示す。
【0020】
本発明の実施形態では、SENCを利用して、ストレインを測定して、収縮期の心筋の収縮性を評価するが、拡張期の心筋の弛緩を評価する為には別の尺度が用いられてよい。本発明の実施形態では又、ストレイン値の計算に使用された区分と同じ区分において心臓の弛緩フェーズの間のストレインレートを測定する。これらの測定値は心筋の別の特性を示し、これは、拡張期の心臓の問題に関連しうるスティフネスである。拡張期のストレインレートを測定することにより、弛緩と相互に関連しうる、筋肉の空間変形が直接測定される。最小拡張期ストレインレートが-31秒-1未満である患者を識別することによって、拡張期心不全のリスクがある、心筋機能障害を有する患者が識別される。
【0021】
本発明の実施形態では又、心臓の様々なチャンバの間の、又は1つの心臓チャンバでのストレイン及び/又はストレインレートの時間的な差を測定することにより、非同期性を識別し、心筋機能の向上に対する様々な管理アルゴリズムの影響を予測する。収縮期の組織変形に関連するピークストレインの間の時間差を評価すること、或いは、左脚ブロックがある患者、及び/又は貫壁性梗塞がある患者について、以前から知られていて公開されている円周方向均整度推定[CURE]インデックス値を計算することにより、再同期化療法又は他の、心筋収縮の遅延に対処するインターベンションの恩恵を得られそうな心不全を特定することが可能である。心周期全体にわたってストレインを測定すること、並びに、様々なチャンバの収縮タイミング及び/又は各チャンバごとの収縮タイミングを変えて、予測される駆出率の改善を最適化することにより、様々なモダリティを利用して、レスポンダを識別し、且つ/又は鉛などの刺激モダリティの配置ストラテジを方向づけ、心臓の同期性及び収縮を最適化することにより、処置の成功の可能性を推定することが可能である。
【0022】
本発明の実施形態はストレス検査を含み、このストレス検査は、冠動脈疾患の虚血特性を検出する為に、心臓の複数の高速スキャンを使用して、少なくとも1回は安静時に、少なくとも1回は別のストレスレベルで実施されてよい。ストレスは、非薬理学的又は薬理学的なストレス機構によるストレス検査により行われてよい。高感度のSENCストレインイメージングは、さほどストレスをかけずに虚血性心筋を正確に識別する為、捕捉時間が短縮され、患者がさらされるストレスのレベルが格段に低くなり、ストレス反応を引き出すリスクが低減される。これにより、格段に少ない用量の薬理学的薬剤の投与、引き起こされるストレス反応が小さい低リスクの薬剤の利用、及び/又は非薬理学的機構(例えば、トレッドミル、バルサルバ法、患者がテーブル上で臥位のままでの上半身又は下半身の最小限の運動)の組み込みを通して虚血の識別が可能になって、SENCイメージングが促進されることが可能になる。
【0023】
ストレインイメージングは、心臓の評価に加えて、イメージングを準備すべき心臓の位置についてのプランニングに使用可能である。いかなる心臓MRIにおいても、心臓の位置を識別し、心臓の主軸に沿うイメージングプレーンの正しい向きを決定することは、重要なフェーズである。半径方向のストレインエンコーディングパルスシーケンスを使用することにより、心臓の位置特定を自動化し、心臓のイメージングプレーンを決定することが可能である。この自動プランニングを用いることにより、どの心臓MRI検査にもある、時間のかかる、ユーザに依存する、重要な部分が省略される。この自動プランニングは、心機能性のSENCイメージングとともに利用されてよく、或いは、どの心臓MRI検査にも関連する時間を短縮する為に既存のMRI技術に組み込まれてよい。
【0024】
本発明の実施形態は更に、心臓チャンバ壁を画定する輪郭を手動で作成することを必要としないでグローバル機能及び区分収縮性の計算の速度を上げる為に、ストレインシーケンスの自動区分化を含んでよい。自動区分化は又、別のMRIイメージングモダリティの間にも、区分化の速度を上げ、信頼性を高め、標準化を進める為に利用されてよい。
【0025】
SENCを使用して心臓チャンバを区分化する、本発明の実施形態は更に、MRIを利用する従来の尺度(例えば、駆出率、チャンバ容積、1回拍出量、チャンバ重量など)の迅速な自動計算も可能にしうる。
【0026】
本発明の実施形態は、心臓MRI又は非心臓MRIの間のEKGモニタリングに対する追加又は代替として、心機能を評価するSENCイメージングを提供する。患者の特定のスキャンセッションの間にSENCにより心機能を定期的にイメージングすることにより、患者に対するストレッサの影響、長時間ボア内にいることへの患者の反応(例えば、閉所恐怖症など)、及び/又は疾患患者に起こりうる臨床事象(例えば、心筋梗塞)を、イメージング処置全体にわたってモニタリングすることが可能である。従って、本発明の実施形態は、SENCイメージングを使用して、磁石のボア内にいる間の心臓の状態又は有害事象の可能性をモニタリングし、変化を検出し、臨床者に対して安全プロトコルとしてのアラートを生成する自動モニタリングシステム又は方法を提供することが可能である。
【0027】
本発明の実施形態は、左心室及び右心室用に最適化されているが、左心室及び右心室だけでなく、左心房及び右心房を含む、心臓の全てのチャンバに当てはまる。これらの実施形態は、収縮期機能、拡張期機能、及び非同期性のSENCイメージングを含むが、心筋機能障害を明らかにするグローバルストレイン値及びストレインレート値は、心房に関しては異なる可能性がある。
【0028】
本発明の実施形態は、医療決定木と、標準SENCストレインレポートからの診断情報を利用する方法とを含む。本出願は、心筋の健康状態を最適化し、心不全の発症を防ぎ、且つ/又は心不全の進行を遅らせるか中断するように医療管理を方向づけることを含む。SENCイメージングは更に、心筋機能が高まるように処置の影響を予測すること、外科的又は経皮的なインターベンションを受けているか以前に受けていた患者における心不全の進行のリスクを識別すること、並びにストレス反応が引き起こされた後のストレインシーケンスを比較することにより、冠動脈疾患を示す虚血がある患者を識別することの為に使用されてよい。
【0029】
本発明の実施形態は医療用ワークステーションに関し、これは、少なくとも1つのディスプレイと、少なくとも一部がMRIスキャナのオンボードにあるかMRIスキャナと通信していて、少なくとも1つのディスプレイと通信している回路と、を含む。この回路は、少なくとも1つのプロセッサを含み、この回路は、患者の心臓の長軸プレーン及び短軸プレーンの複数のMRIイメージ系列を取得し、各MRIイメージ系列は、アクティブスキャン時間が5分以下であって患者がMRIスキャナのボア内にいるイメージセッションの間に、患者の心臓の別々の単一心拍にわたって取得され、この回路は、患者の心臓の複数のMRIイメージ系列に基づいて、患者の心臓の心筋心臓組織のストレインを測定し、この回路は、複数の隣り合う区画を有する長軸方向及び円周方向の心臓モデルを生成する。これらの区画は、測定されたストレインに基づいて色分けされている。
【0030】
少なくとも1つのプロセッサを有する回路は、MRIスキャナに対し、複数のMRIイメージ系列を、長軸プレーン及び短軸プレーンである、心臓の別々の6つのプレーンから、心臓ゲーティングを必要としない自由呼吸イメージとして捕捉するように指示することが可能である。
【0031】
少なくとも1つのプロセッサを有する回路は、別々の長軸プレーン及び短軸プレーンに対してMRIイメージ系列のそれぞれの動画を生成してよく、少なくとも1つのディスプレイにMRIイメージの動画を表示させ、任意選択で、MRIイメージの動画における心筋心臓組織は、心周期全体にわたるストレイン変形の量に基づいて、時間とともに変化する色を用いてストレイン測定値を示す。
【0032】
ストレイン測定値は、心臓モデルにおいて、心筋収縮性の5つの状態、即ち、過収縮、正常収縮、低収縮、無収縮、及び収縮不全を表すように色分けされてよい。
【0033】
少なくとも1つのプロセッサを有する回路は、少なくとも1つのディスプレイに、複数の心臓モデルをストレイン測定値とともに同時に表示させてよく、更に、可逆的心筋機能障害に対応する第1のユニバーサルストレイン値と、不可逆的心筋機能障害に対応する第2のユニバーサルストレイン値とを識別する視覚的参照バーを生成して、少なくとも1つのディスプレイに同時に表示させてよい。
【0034】
少なくとも1つのプロセッサを有する回路は、少なくとも1つのディスプレイに、生成された複数の心臓モデルを、測定されたストレインとともに同時に表示させてよく、同時に表示されてよい生成された心臓モデルは、円周方向ストレインに関して、3チャンバ心臓モデル、4チャンバ心臓モデル、及び2チャンバ心臓モデルを、測定されたストレインとともに含んでよい。
【0035】
3チャンバ心臓モデル、4チャンバ心臓モデル、及び2チャンバ心臓モデルは、心基部下外側区画、中央部下外側区画、心尖部側部区画、心基部前壁中隔区画、中央部前壁中隔区画、心尖部前部区画、及び心尖端に関連付けられた、隣り合う少なくとも7つの区画を示してよく、各区画は測定されるストレイン値が異なってよい。
【0036】
同時に表示される心臓モデルは、心基部領域、中央部領域、及び心尖部領域を有する長軸方向ストレイン区画モデルを含んでよい。心基部領域及び中央部領域は、それぞれが、前部区画、前壁中隔区画、下壁中隔区画、下部区画、下外側区画、及び前外側区画を含んでよい。心尖部領域は、前部区画、中隔区画、下部区画、及び側部区画を含んでよい。
【0037】
少なくとも1つのプロセッサを有する回路は、MRIスキャナに対し、患者の心臓の複数のMRIイメージ系列を取得する為のパルスシーケンスを生成して、以下のように定義されたエンコーディング出力(w_0)、低チューニング(w_L)、及び高チューニング(w_H)によりストレインを測定するように指示してよく、
w_0=(1+s_max)×(1+s_min)/(s_max-s_min)×1/H
w_L=(1+s_min)/(s_max-s_min)×1/H
w_H=(1+s_max)/(s_max-s_min)×1/H
条件としてs_max<1+2.s_minであり、Hはmm単位のスライス厚さである。
【0038】
少なくとも1つのプロセッサを有する回路は更に、横断プレーン、矢状プレーン、及び冠状プレーンから心臓のMRIイメージ系列を取得して、心臓の疑似2チャンバビューを生成して、MRスキャナのボア内にいる患者の心臓の向きを特定してよく、取得されたMRIイメージから疑似2チャンバプレーン又は疑似4チャンバプレーンを識別してよく、単一心拍にわたって疑似2チャンバプレーン又は疑似4チャンバプレーンからMRIイメージ系列を取得してよく、疑似2チャンバプレーンのMRIイメージ系列から疑似2チャンバストレインエンコーデッド動画を生成するか、疑似4チャンバプレーンのMRIイメージ系列から疑似4チャンバストレインエンコーデッド動画を生成してよく、そして、疑似2チャンバストレインエンコーデッド動画から疑似4チャンバプレーンを識別するか、疑似4チャンバストレインエンコーデッド動画から疑似2チャンバプレーンを識別してよく、疑似2チャンバストレインエンコーデッド動画からの3つの短軸イメージングプレーンを、計算されたストレイン測定値に対応する複数のMRIイメージ系列の短軸プレーンとして識別してよく、3つの識別された短軸プレーンのMRIイメージ系列から、短軸心基部(SAB)、短軸中央部(SAM)、及び短軸心尖部(SAA)のストレインエンコーデッド動画を生成してよく、疑似2チャンバストレインエンコーデッド動画からの3つの長軸イメージングプレーンを、ストレイン測定値に対応する複数のMRIイメージ系列の長軸方向プレーンとして識別してよい。
【0039】
少なくとも1つのプロセッサを有する回路は、疑似2チャンバプレーン及び/又は疑似2チャンバストレインエンコーデッド動画からMRIイメージ系列を検索して、トータル強度信号が最大となる時点のMRIイメージを識別して、心周期のうちの収縮末期に近い区分を識別してよく、疑似4チャンバプレーンの識別の為に左心室を分割する線を予測してよく、3つの短軸プレーンの識別の為に左心室を分割する3本の線を予測してよい。
【0040】
疑似2チャンバプレーン及び/又は疑似2チャンバストレインエンコーデッド動画のうちの、最大トータル強度信号を有するMRIイメージを識別することが可能なMRIイメージ系列は、高チューニングローストレインエンコーデッドMRIイメージである。
【0041】
少なくとも1つのプロセッサを有する回路は、患者の心臓の心筋領域のアクティブ形状モデル(ASM)を、形状と複数の節又は点により作成してよく、心筋マスクの作成を、心筋マスク及び血液プールマスクを含む2つのバイナリマスクを組み合わせて患者の心臓の心筋の場所を検出することによって行ってよく、収縮末期の心筋を表す蓄積(ACC)イメージを生成してよく、ACCイメージを心筋マスクと相互に関連付けて、心筋の場所を特定してよく、ASMを使用し、上記相関を、ASMが様々な長軸スライス及び短軸スライスのMRIイメージ系列を取得する為の初期化として、心周期にわたって心筋を追跡してよい。
【0042】
少なくとも1つのプロセッサを有する回路は、長軸プレーン及び短軸プレーンからのMRIイメージスライス系列を使用して、拡張期ストレインレートを、測定されたストレインから、又は測定されたストレインとして、計算してよい。
【0043】
少なくとも1つのプロセッサを有する回路は更に、心筋心臓組織の定義された区分のストレイン測定値を時間の関数として取得して、測定されたストレインとしてよく、ストレイン測定値の第1の導関数を時間の関数として計算してよく、計算された第1の導関数の正の最大値を拡張期ストレインとして特定してよい。
【0044】
測定されたストレインは、第1のストレイン測定値セットを含んでよく、生成された長軸方向及び円周方向の心臓モデルは、長軸方向及び円周方向の心臓モデルの第1のセットであってよい。少なくとも1つのプロセッサを有する回路は更に、物理的な、又は化学的に引き起こされたストレス課題の後の患者の心臓の長軸プレーン及び短軸プレーンの第2の複数のMRIイメージ系列を取得してよく、各MRIイメージ系列は、アクティブスキャン時間が5分以下であって患者がMRIスキャナのボア内にいるイメージセッションの間に、患者の心臓の別々の単一心拍にわたって取得され、少なくとも1つのプロセッサを有する回路は更に、患者の心臓の第2の複数のMRIイメージ系列に基づいて、患者の心臓の心筋心臓組織の局所ストレイン測定値及びグローバルストレイン測定値の第2のセットを取得してよく、少なくとも1つのプロセッサを有する回路は更に、複数の隣り合う区画を有する長軸方向及び円周方向の心臓モデルの課題後セットであって、これらの区画は、第2のMRIイメージスライス系列からのストレイン測定値に基づいて色分けされている、課題後セット、又は複数の隣り合う区画を有する長軸方向及び円周方向の心臓モデルの課題後セットであって、これらの区画は、第1のストレイン測定値のセットと第2のストレイン測定値のセットの間の差に基づいて色分けされている、課題後セットのうちの少なくとも一方を生成してよい。
【0045】
少なくとも1つのプロセッサを有する回路は、両方の長軸方向及び円周方向の心臓モデルの課題後セットを生成してよく、少なくとも1つのディスプレイに両方の課題後セットを、第1の心臓モデルセットとともに同時に表示させてよい。
【0046】
課題は、必要な心拍上昇が毎分10拍でしかない低ストレス課題であってよく、少なくとも1つのプロセッサを有する回路は、課題後に低ストレス課題に基づいて第1のストレイン測定値セットと第2のストレイン測定値セットとを比較してよい。
【0047】
少なくとも1つのプロセッサを有する回路は、心臓のチャンバ間の心臓収縮の非同期性、及び/又は患者の心臓の1つの心臓チャンバにおける心臓収縮の非同期性を、心周期全体にわたるストレインの空間的不均一性に基づいて評価してよい。
【0048】
少なくとも1つのプロセッサを有する回路は、心臓の様々な場所において、心周期中の様々な時点で取得されたストレイン測定値から、心周期中の時間に対するピーク短縮の分散に基づいて、心臓の区分及び/又はチャンバに関して計算された0と1の間の数値(「0」は完全非同期を表し、「1」は完全同期を表す)に基づいて非同期性を識別してよい。
【0049】
回路は、グローバルストレイン測定値を計算し、これを、正常組織と異常組織とを区別して、異常組織が可逆的か不可逆的かを明らかにする為に示されている所定のグローバル値と比較してよい。
【0050】
更に別の実施形態は、心機能を迅速に評価する方法に関する。本方法は、患者をMRIスキャナのボア内に配置するステップと、横断プレーン、矢状プレーン、及び冠状プレーンからストレインエンコーデッド(SENC)MRIイメージのプランニングビューを電子的に取得して、心臓の疑似2チャンバビューを生成して、MRスキャナのボア内にいる患者の心臓の向きを特定するステップと、SENCイメージの取得されたプランニングビューから疑似2チャンバ又は疑似4チャンバイメージングプレーンを識別するステップと、単一心拍にわたって疑似2チャンバイメージングプレーン又は疑似4チャンバイメージングプレーンからMRIイメージ系列を電子的に取得するステップと、単一心拍にわたる疑似2チャンバ又は疑似4チャンバイメージングプレーンからのMRIイメージ系列からの高チューニングローMRIイメージから、トータル強度信号が最大であるMRIイメージを、収縮末期(心臓の最大収縮)に関連付けられるMRIイメージスライスであるとして識別するステップと、収縮末期に関連付けられる識別されたMRIイメージに基づいて3つの短軸イメージングプレーンを識別するステップと、収縮末期に関連付けられる識別されたMRIイメージから3つの長軸イメージングプレーンを識別するステップと、3つの短軸イメージングプレーン及び3つの長軸イメージングプレーンのそれぞれについて第1のMRIイメージ系列を電子的に取得するステップであって、3つの短軸イメージングプレーン及び3つの長軸イメージングプレーンの第1のMRIイメージ系列のそれぞれは、イメージセッションの間に患者の心臓の別々の単一心拍にわたって取得され、イメージングプレーンのプランニングMRIイメージ及び第1のMRIイメージ系列は、5分未満のアクティブスキャン時間で、患者をMRIスキャナのボア内に5分以上は置かずに取得される、上記ステップと、患者の心臓の3つの短軸イメージングプレーン及び3つの長軸イメージングプレーンのそれぞれについての取得された第1のMRIイメージ系列に基づいて、患者の心臓の心筋心臓組織の局所ストレイン測定値及びグローバルストレイン測定値の第1のセットを生成するステップと、第1のストレイン測定値セットに基づいて色分けされている、複数の隣り合う区画を有する長軸方向及び円周方向の心臓モデルを、患者が磁石のボアから出ている15分以内に生成し、これによって心機能を迅速に評価するステップと、を含む。
【0051】
プランニングビュー及び取得された第1のMRIイメージングビュー系列は、自由に呼吸しているMRIイメージであってよく、従って、呼吸を止めての信号捕捉又は心臓ゲーティングが不要であり、第1のMRIイメージ系列は、患者が磁石のボア内に1~3分いれば取得される。
【0052】
本方法は更に、患者にストレス課題を提示するステップと、3つの短軸イメージングプレーン及び3つの長軸イメージングプレーンのそれぞれについて第2のMRIイメージ系列を取得するステップであって、3つの短軸イメージングプレーン及び3つの長軸イメージングプレーンの第2のMRIイメージ系列のそれぞれは、アクティブスキャン時間が5分未満であって患者がMRIスキャナのボア内にいるイメージセッションの間に、患者の心臓の別々の単一心拍の心周期にわたって取得される、上記ステップと、患者の心臓の3つの短軸イメージングプレーン及び3つの長軸イメージングプレーンのそれぞれについての取得された第2のMRIイメージ系列に基づいて、患者の心臓の心筋心臓組織の局所ストレイン測定値及びグローバルストレイン測定値の第2のセットを生成するステップと、第2のストレイン測定値セットに基づいて色分けされている、複数の隣り合う区画を有する長軸方向及び円周方向の心臓モデルを、患者が磁石のボアから出ている15分以内に生成するステップと、を含んでよい。
【0053】
本方法は更に、複数の隣り合う区画を有する長軸方向及び円周方向の心臓モデルの課題後セットであって、これらの区画は、第1のストレイン測定値のセットと第2のストレイン測定値のセットの間の差に基づいて色分けされてよい、課題後セットを生成するステップを含んでよい。
【0054】
本方法は、第1及び第2のストレイン測定値セットを有する心臓モデルと、心臓モデルの様々な区画のストレイン値の変化に基づく心臓モデルの課題後セットとを同時に表示するステップを含んでよい。
【0055】
ストレス課題は、必要な心拍上昇が毎分10拍でしかない低ストレス課題であってよい。
【0056】
本方法は、患者の、心臓のチャンバ間の心臓収縮の非同期性、及び/又は心臓の1つの心臓チャンバにおける心臓収縮の非同期性を、心周期全体にわたるストレインの空間的不均一性に基づいて電子的に評価するステップを含んでよい。
【0057】
本方法は、心臓の様々な場所において、心周期中の様々な時点で取得された第1のストレイン測定値セットから、心周期中の時間に対するピーク短縮の分散に基づいて、心周期の時間周期全体にわたって心臓モデルの全ての区分について非同期性を電子的に計算するステップを含んでよい。
【0058】
別の実施形態は、MRIスキャンセッションの間に患者の心臓をモニタリングする方法に関する。本方法は、単一心拍にわたるMRIスキャンセッションの間に患者のターゲット解剖学的構造のMRIイメージ系列を電子的に取得するステップと、MRIスキャンセッションの間に患者の心臓のストレインエンコーデッド(SENC)MRIイメージ系列を電子的に取得するステップと、スキャンセッションの間に患者の心臓の状態を電子的に自動的にモニタリングして、スキャンセッションの間に、取得されたSENC MRIイメージに基づいて潜在的有害心臓事象を検出するステップと、潜在的有害心臓事象が検出された場合にアラートを電子的に自動的に発生させるステップと、を含む。
【0059】
更に別の実施形態は、心臓の機能障害又は損傷を識別する方法に関する。本方法は、心臓の様々なチャンバ、又は心臓の様々な領域のストレイン測定値を(電子的に)比較して、心周期全体にわたるストレインの空間不均一性に基づいて非同期性を識別するステップを含む。
【0060】
別の実施形態は、長軸プレーン及び短軸プレーンからのMRIイメージスライスのストレインエンコーデッド(SENC)MRIイメージ系列を使用して、患者の心臓の拡張期ストレイン測定値を電子的に算出して、心臓の機能、障害、疾患、又は損傷のうちの少なくともいずれかを評価することによって、心臓の状態を評価する方法に関する。
【0061】
更に別の実施形態はワークステーションに関し、ワークステーションは、少なくとも1つのディスプレイと、少なくとも一部がMRIスキャナのオンボードにあるかMRIスキャナと通信していて、少なくとも1つのディスプレイと通信している回路と、を含む。回路は、少なくとも1つのプロセッサを含み、回路は、患者の心臓の長軸プレーン及び短軸プレーンの複数のMRIイメージ系列を取得し、各MRIイメージ系列は、アクティブスキャン時間が5分未満であって患者がMRIスキャナのボア内にいるイメージセッションの間に、患者の心臓の別々の単一心拍にわたって取得され、回路は、長軸プレーン及び短軸プレーンからのMRIイメージ系列を使用して、患者の心臓の収縮期及び拡張期のストレイン測定値を取得する。収縮期ストレイン測定値は負であり、拡張期ストレイン測定値は正であり、任意選択で、拡張期ストレイン測定は、時間の関数としての、ストレインの第1の導関数の計算を含む。
【0062】
少なくとも1つのプロセッサを有する回路は、心筋心臓組織の定義された区分のストレイン測定値を時間の関数として取得してよく、ストレイン測定値の第1の導関数を時間の関数として計算してよく、計算された第1の導関数の正の最大値を拡張期ストレインとして特定してよい。
【0063】
更に別の実施形態は、患者の心臓のスキャンプレーンのプランニングを行う方法に関する。本方法は、横断プレーン、矢状プレーン、及び冠状プレーンからストレインエンコーデッドMRIイメージを電子的に取得して、心臓の疑似2チャンバビューを生成して、MRスキャナのボア内にいる患者の心臓の向きを特定するステップと、取得されたMRIイメージから疑似2チャンバプレーン又は疑似4チャンバプレーンを電子的に識別するステップと、単一心拍にわたって疑似2チャンバプレーン又は疑似4チャンバプレーンからMRIイメージ系列を電子的に取得するステップと、取得されたMRIイメージ系列を電子的に精査して、心周期のうちの収縮末期区分を表す、トータル強度信号が最大となる時点のMRIイメージを識別するステップと、識別されたMRIイメージの左心室を分割する3本の線を予測して、3つの短軸イメージングプレーンを識別するステップと、識別されたMRIイメージを通る分割線を予測して、3つの長軸イメージングプレーンを識別するステップと、を含む。
【0064】
疑似2チャンバプレーン、及び/又は疑似2チャンバプレーンからのMRIイメージ系列から生成された疑似2チャンバストレインエンコーデッド動画のうちの、最大トータル強度信号を有するMRIイメージスライスを識別する為に使用されるMRIイメージ系列は、高チューニングローストレインエンコーデッド動画である。
【0065】
疑似4チャンバプレーン、及び/又は疑似4チャンバプレーンからのMRIイメージ系列から生成された疑似4チャンバストレインエンコーデッド動画のうちの、最大トータル強度信号を有するMRIイメージスライスを識別する為に使用されるMRIイメージ系列は、高チューニングローストレインエンコーデッド動画である。
【0066】
更に別の実施形態は、心臓の迅速なMRIイメージングを行う方法に関する。本方法は、ストレイン動画を捕捉する為の、心臓のカットの単一ビューからのSENCパルスシーケンスを電子的に提供し、その後、心臓のカットの多種多様なビューからの多種多様な動画を捕捉するステップを含む。各動画は単一心拍以内に捕捉される。
【0067】
更に別の実施形態は、MRIイメージから筋収縮性を定量化する方法に関し、本方法は、多種多様なSENCパルスシーケンスを電子的に送信するステップと、心臓の複数のビューのSENCパルスシーケンスからストレイン動画を電子的に捕捉するステップと、ストレイン動画から、心筋の個別区分におけるストレイン測定値を電子的に計算するステップと、計算されたストレイン測定値に関連付けられた収縮性の度合いに基づいて、心臓の少なくとも1つのモデルにおけるストレイン値を色分けするステップと、を含む。
【0068】
更なる実施形態は、患者の心臓の筋収縮性に対するストレスをMRIイメージから定量化する方法に関する。本方法は、心臓の複数のビューから多種多様なSENCパルスシーケンスを送信するステップと、心臓の複数のビューのSENCパルスシーケンスからストレイン動画を捕捉するステップと、ストレイン動画から、心筋の個別区分におけるストレイン値を電子的に自動的に計算するステップと、患者にストレスがかけられた際の、少なくとも1つの心臓モデルの各区画における収縮性の低減を色分けして、冠動脈疾患に関連する血液灌流の減少を示すステップと、を含む。
【0069】
更に別の実施形態はMRIシステムに関し、MRIシステムは、(ロー(RAW)且つ/又は着色された)SENCイメージを使用してイメージングビューのプランニングを自動的に行うことにより、適切なイメージングビューを人間が識別することを必要とせずに、イメージングビューに対する複数の長軸プランニングビュー及び短軸プランニングビューに基づいて適切なイメージングビューを提供するプロセッサを含む。
【0070】
更に別の実施形態は、少なくとも1つのプロセッサを有するMRIシステムに関し、このプロセッサは、自動的に、(ロー且つ/又は着色された)SENCイメージから、患者の心室の区分化を実施し、SENCイメージから患者の心室の寸法を測定する。
【0071】
更に別の実施形態は、解剖学的シーケンスと心筋のストレインシーケンスとを取得する為に集められるSENCロー心臓イメージの系列を生成する回路を有するMRIシステム用イメージング処理システムに関し、心臓イメージのストレインシーケンスは、ストレイン値の計算に対応する色分けされた周辺部又は区分を有する。ストレイン値は、ストレインレート、ストレイン平均値、又はストレイン代表値のうちの少なくとも1つを含む。
【0072】
この特許又は出願のファイルは、少なくとも1つの、カラーで制作された図面を含む。カラー図面含む、この特許又は特許出願公開のコピーは、要求と必要料金の支払いがあれば官庁から提供される。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1】一例示的MRIスキャナシステムの概略図である。
図2A】乃至
図2C】本発明の実施形態によるMRIイメージングシステムの様々な構成の概略図である。
図3A】乃至
図3C】本発明の実施形態による、磁石のボア内にいる継続時間を最小限に抑えて心臓イメージを取得する一連のステップの一例を示す概略図である。
図4】本発明の実施形態による、レポートを生成し、心臓の、標準の区分化された長軸モデル及び短軸モデルを定量的ストレイン値で埋めることが可能なイメージ分析回路の概略図である。
図5A】乃至
図5E】本出願の実施形態による、ディスプレイを有するワークステーションを有するMRIスキャナシステムの出力を、心臓モデルとともに例示的に示す図である。図5Aは、患者ストレインデータを適用する前の心臓ストレイン標準モデルを示す。図5Bは、ストレインシーケンスの捕捉が可能になるように患者が磁石ボア内に挿入される様子を示す図である。図5Cは、心臓をスキャンして複数の異なるビュー(図では6スライス)を取得し、各ビューごとの動いている心臓の動画を素早く(即ち、1分未満で)生成する心臓評価モジュールを示す。図5Dは、患者を磁石から退出させる間に、心臓モジュールが、レポートを生成する為にグローバルストレイン値及び区分ストレイン値を計算することが可能なように、1つのプレーンに沿ってストレインシーケンスの輪郭を描くことを示す。図5Eは、別のプレーンに沿う別のストレインシーケンスから生成された別の輪郭と、グローバルストレイン値及び区分ストレイン値のロー(ストレス前又は無ストレスの)データを有するレポートの表示と、隣接する、心臓イメージのウィンドウと、を示す。
図6】本発明の実施形態による、グローバル測定値と、計算されたストレイン値で埋められた短軸及び長軸の区分モデルとを有する一例示的結果レポートであり、これは、任意選択でグローバル測定値と他の測定値を含んでよい。
図7】本発明の実施形態による、心臓の状態/ステータスに対するストレイン値をグラフィカルに示す図である。
図8】本発明の実施形態による、MR SENCイメージの自動区分化を行う(即ち、少なくとも1つのデジタル信号プロセッサを使用する)回路によって実施されることが可能なアクションのフローチャートのブロック図である。
図9A】乃至
図9H】本発明の実施形態による、ACC(「累積」)イメージを構築するアクションのシーケンスを示す図である。
図10A】乃至
図10C】本発明の実施形態による、イメージングビューの高速自動プランニングに使用可能な、カット/スライスプレーンを有するSENCローイメージである。
図11A】本発明の実施形態による、MRIスキャナが、SENCストレインイメージを使用する心臓のイメージングの高速プランニングを行う為に実施されうる例示的ステップを有する方法を示す図である。
図11B】本発明の実施形態による、図11Aに示された高速プランニングステップの生成されたイメージを含む、一連のアクション及び結果をグラフィカルに示す図である。
図12】本発明の実施形態による、図11A及び11Bにおいて取得されたものと同じ6プレーンを見つける自動プランニング(指示)の為の例示的方法アクションをグラフィカルに示す図である。
図13A】本発明の実施形態によるストレス結果レポートを示す図であり、1行目には安静時の高速スキャンを示し、2行目にはストレス下の高速スキャンを示し、3行目には、潜在的虚血を示すことに特に有用でありうる、1行目と2行目の間でのストレイン値の変化で埋められた、区分化された心臓モデルを示す。
図13B】本発明の実施形態による、ストレス検査が、潜在的虚血を示す、安静状態とストレス下状態との間のストレインの変化を計算するだけでなく、心筋生育可能性を識別する、ストレス下でのストレインの改善(ストレイン値の減少)を含むように、別の色分けを有する、別のストレス結果レポートを示す図である。
図14】本発明の実施形態による、SENCイメージングにより取得されたストレイン測定値に基づいて様々な区分における拡張期ストレインレートを測定することによって拡張期機能障害を定量化する為の例示的ステップのブロック図である。
図15】本発明の実施形態による、SENCストレインマッピングを利用して、様々な場所において様々な時点で取得されたストレイン測定値から心臓の収縮の同期不全を測定する3つのアプローチを示すブロック図である。
図16】本発明の実施形態による、SENC検査を利用して、心不全のリスク因子がある患者のスクリーニング及び管理を行う為の一例示的決定木のブロック図である。
図17】本発明の実施形態による、定量化されたSENCストレイン値に基づいて患者の管理を適応させて、心不全の進行を防ぐか、遅らせるか、且つ/又は中断することに役立ちうる治療を決定する為の一例示的決定木のブロック図である。
図18】本発明の実施形態による、収縮期心不全を示す、駆出率が低下した心不全、並びに拡張期心不全を示す、駆出率が維持されている心不全の程度及びリスクを定量化する為にストレイン及びストレインレートの両方を測定するSENCイメージングの機能を説明する一例示的評価プロトコルのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0074】
以下では、本発明の例示的実施形態が示されている添付図面を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。類似の参照符号は類似の要素を参照し、様々な数のアポストロフィ記号を上付き指標として使用することにより(例えば、10、10’、10’’、10’’’)、類似要素の様々な実施形態を示す場合がある。本明細書及び図面では、「Fig.(図)」及び「FIG.(図)」という用語を、「Figure(図)」の略記として「Figure(図)」という語句と区別なく使用する場合がある。図では、特定の層、構成要素、又は特徴を明確さの為に誇張する場合があり、破線は、特に断らない限り、任意選択の特徴又は動作を示す。
【0075】
図面では、領域又は特徴の相対的なサイズを明確さの為に誇張する場合がある。しかしながら、本発明は、多様な形態で実施されてよく、本明細書において説明されている実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が十分なものであり、完結したものであるように、且つ、本発明の範囲を当業者に完全に伝達するものであるように提供されている。
【0076】
本明細書では、様々な要素、構成要素、領域、階層、及び/又は区画を説明する為に、第1の、第2の、などの用語を用いる場合があるが、当然のことながら、これらの要素、構成要素、領域、階層、及び/又は区画は、これらの語句によって限定されるものではない。これらの用語は、1つの要素、構成要素、領域、階層、又は区画を、別の領域、階層、又は区画と区別する為にのみ用いられる。従って、以下で論じられる第1の要素、構成要素、領域、階層、又は区画は、本発明概念の教示から逸脱しない限り、第2の要素、構成要素、領域、階層、又は区画と呼ばれてよい。
【0077】
「下に(beneath)」、「下方に(below)」、「下方の(lower)」、「上方の(above)」、「上方の(upper)」などのような空間的に相対的な語句は、本明細書では、図面に示されるような、1つの要素又は特徴と別の要素又は特徴との関係を説明する場合に説明を簡単にする為に使用されてよい。当然のことながら、この空間的に相対的な語句は、使用時又は動作時の器具の、図面で描かれる向きに加えて、それ以外の向きも包含するものとする。例えば、図面内の器具が反転された場合、別の要素又は特徴の「下に(below)」又は「真下に(beneath)」あると記載された要素は、その別の要素又は特徴の「上に(above)」方向づけられることになる。従って、例えば、「下に(below)」という語句は、「上に(above)」及び「下に(below)」の両方の向きを包含しうる。
【0078】
「約(about)」という語句は、記載された値の±20%の範囲にある数を意味する。
【0079】
本明細書において使用される単数形「a」、「an」、及び「the」は、明示的に別段の定めがある場合を除き、複数形も同様に包含するものとする。更に、当然のことながら、「includes(含む)」、「comprises(含む)」、「including(含む)」、及び/又は「comprising(含む)」という語は、本明細書で使用された際には、述べられた特徴、整数、手順、操作、要素、及び/又は構成要素の存在を明記するものであり、1つ以上の他の特徴、整数、手順、操作、要素、構成要素、及び/又はこれらの集まりの存在又は追加を排除するものではない。当然のことながら、ある要素が別の要素に「接続されている」又は「結合されている」と言及された場合、その要素は、直接その別の要素に接続されているか、結合されていてよく、或いは、介在要素が存在してもよい。本明細書では、「及び/又は(and/or)」という用語は、関連付けられて列挙されたアイテムのうちの1つ以上のアイテムのあらゆる組み合わせを包含する。
【0080】
特に定義されない限り、本明細書で使用されるあらゆる用語(技術用語及び科学用語を含む)の意味は、本発明が帰属する当該技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じである。更に当然のことながら、語句、例えば、一般的に利用されている辞書において定義されている語句は、本明細書及び関連技術分野の文脈におけるそれらの語句の意味と整合性がある意味を有するものとして解釈されるべきであり、本明細書において明示的にそのように定義されない限り、理想化された意味又は過度に形式的な意味として解釈されるべきではない。
【0081】
本発明の実施形態は、より迅速に定量化を行うようにMRIイメージングの機能を向上させ、且つ/又は、医師が患者の管理及び/又は処置を指示する為の、心臓の異常及び動向を識別する標準レポートを提供することを意図している。
【0082】
「回路」という用語は、全体がソフトウェアである実施形態、又はソフトウェアとハードウェアの態様、特徴、及び/又は構成要素を組み合わせた実施形態を意味する(これは、例えば、特定の記述されたアクション、動作、又は方法ステップをプログラムで指示及び/又は実施する為の、プロセッサと、プロセッサに関連付けられ、プロセッサに埋め込まれ、且つ/又はプロセッサによって実行可能なソフトウェアと、を含む)。
【0083】
「プログラムで」という用語は、動作又はステップがデジタル信号プロセッサ及び/又はコンピュータプログラムコードによって指示及び/又は実施されることが可能であることを意味している。同様に、「電子的に」という用語は、ステップ又は動作が、手動又は何らかの頭脳的な手順ではなく、電子部品により自動的に実施されることが可能であることを意味する。
【0084】
「MRIスキャナ」及び「MRスキャナ」という用語は、区別なく使用されて磁気共鳴イメージングシステムを意味し、高磁場磁石及び動作構成要素(例えば、RF増幅器、勾配増幅器、及び典型的にはパルスシーケンスを指示し、スキャンプレーンを選択するプロセッサ)を包含する。現行の市販スキャンの例として、GEヘルスケア(GE Healthcare)のSigna 1.5T/3.0T、フィリップスメディカルシステムズ(Philips Medical Systems)のAchieva 1.5T/3.0T、Integra 1.5T、ジーメンス(Siemens)のMAGNETOM Avanto、MAGNETOM Espree、MAGNETOM Symphony、MAGNETOM Trio、及びMAGNETOM Verioがある。垂直及び水平の両方向のボアMRIスキャナシステムが使用可能であると考えられている。
【0085】
よく知られているように、MRスキャナは、MR制御室にある1つ以上のキャビネットに収容される主操作/制御システムを含んでよく、一方、MRI磁石はMRスキャンスイートにある。制御室及びスキャン室は、MRスイートと呼ばれてよく、これら2つの部屋は、RF遮蔽壁によって隔てられてよい。「高磁場」という用語は、0.5Tを上回る磁場強度を意味し、典型的には1.0Tを上回る磁場強度を意味し、より典型的には約1.5Tと約10Tの間の磁場強度を意味する。本発明の実施形態は、1.5Tシステム及び3.0Tシステム、或いは、将来的に想定される、4.0T、5.0T、6.0T、7T、8T、9Tなどにおけるシステムのような高磁場システムに特に好適であることが可能である。本発明の実施形態は、低磁場の可搬型MRIスキャナシステムにも有用であることが可能である。
【0086】
本発明の方法及びシステムは、動物用MRIスキャナで捕捉される動物のMRIデータにも適用可能であるが、人間の患者に特に好適であることが可能である。
【0087】
「患者」という用語は、人間と動物を指す。本発明の実施形態は、人間の患者に特に好適であることが可能である。
【0088】
「自動的に」という用語は、操作が、ほぼ(典型的には、完全に)手動入力なしで実施されることが可能であり、典型的にはプログラムで指示及び/又は実施されることを意味する。接続に関する「電子的に」という用語は、構成要素間の無線接続及び有線接続の両方を包含する。
【0089】
「臨床者」という用語は、医師、放射線専門医、心臓専門医、物理士、技師、看護師、医師助手、又は他の、患者の医療データを精査する必要がある医療要員を意味する。
【0090】
「ワークステーション」という用語は、MRスキャナに関連付けられたディスプレイ及び/又はコンピュータを意味する。少なくとも1つのプロセッサを有するワークステーション及び/又はコンピュータ又は回路は、MRスキャナと通信してよく、一部又は全体がMRスキャナのオンボードにあってよく、臨床者がアクセスするようにMRスキャナから離れていてよい。
【0091】
本発明の実施形態は、全体がソフトウェアである実施形態、或いはソフトウェアとハードウェアを組み合わせた実施形態の形をとってよく、本明細書ではこれらを総称して「回路」又は「モジュール」と呼ぶ。更に、本発明は、コンピュータで使用可能な記憶媒体において、コンピュータで使用可能なプログラムコードが実施されている、その媒体上のコンピュータプログラム製品の形をとってよい。ハードディスク、CD-ROM、光記憶装置、インターネット又はイントラネットをサポートしているような伝送媒体、又は磁気記憶装置を含む任意の好適なコンピュータ可読媒体が利用されてよい。幾つかの回路、モジュール、又はルーチンは、パフォーマンス及び/又はメモリ使用を強化する為に、アセンブリ言語、更にはマイクロコードで書かれてよい。更に当然のことながら、いずれか又は全てのプログラムモジュールの機能性は、ディスクリートハードウェア部品、1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)、又はプログラムされたデジタル信号プロセッサ又はマイクロコントローラを使用して実施されてもよい。本発明の実施形態は、特定のプログラミング言語に限定されない。
【0092】
本発明の動作を実施するコンピュータプログラムコードは、オブジェクト指向プログラミング言語で書かれてよく、例えば、Java(R)(登録商標)、Smalltalk、又はC++で書かれてよい。しかしながら、本発明の動作を実施する為のコンピュータプログラムコードは、従来の手続き型プログラミング言語(例えば、「C」プログラミング言語)で書かれてもよい。プログラムコードは、全てがユーザのコンピュータで実行されてよく、或いは一部がユーザのコンピュータでスタンドアロンソフトウェアパッケージとして実行されてよく、或いは一部がユーザのコンピュータで実行され、一部が別のコンピュータでローカル且つ/又はリモートで実行されてよく、或いは全てがその別のローカル又はリモートのコンピュータで実行されてよい。後のほうのシナリオでは、その別のローカル又はリモートのコンピュータは、ローカルエリアネットワーク(LAN)又はワイドエリアネットワーク(WAN)を介してユーザのコンピュータと接続されてよく、或いは、この接続は(例えば、インターネットサービスプロバイダを使用してインターネットを介して)外部コンピュータに対して行われてよい。
【0093】
本発明の実施形態は、「クラウド」と総称されるクラウドコンピューティングサービス(又は複数のクラウドリソースの集合体)を使用して実施されてよい。クラウドストレージは、データが1つ以上の専用サーバでホストされるのではなく複数の仮想サーバに記憶される、ネットワーク接続されたコンピュータデータストレージのモデルを含んでよい。患者データの交換及び/又は分析を行う為に、ファイアウォール及び適切なセキュリティプロトコルが採用されてよい。
【0094】
従来のMRI技術に対して進歩したストレインイメージング技術としてSENC(ストレインエンコーデッドイメージング)があり、SENCは、心筋などの組織の局所変形をイメージングするMRI技術である。MRIの先行する関連技術開発では、組織変形の定量的な尺度を含む、組織の高画質イメージを提供することができなかった。SENCは、心外膜と心内膜との間の変化の計算に頼らずに心筋自体の動きを測定して、局所壁運動を推定することが可能である。SENCで心筋壁運動を直接測定することにより、これまでのMRI技術又は非MRI技術で心臓の機能性を評価する妨げになった、手動推定に由来する誤差が排除される。
【0095】
SENCを組み込んだMRIイメージングシステム
MRIシステム10(図1)は、高磁場磁石20m(1.5T、3T、更にはこれより強いか弱い磁場強度)を有するMRIスキャナ20を使用し、患者は、テーブル22によって保持される、平行移動可能なMRIテーブルトップ23の上に配置されてよい。テーブルトップ23は、摺動してMRI磁石ボア20bを出入りすることが可能である。この動きの制御は、MRI磁石室内から、又は磁石室外の(例えば、MRIスイートの制御室内の)コンソールから行われてよい。胸郭又は心臓をイメージングする為の、専用又は従来型の胸部コイル25が使用されてよい。イメージングの為の患者の姿勢は任意であってよいが、心臓病患者の場合の典型的な姿勢は、仰向けに横たわり、足からMRIに入るというものである。又、垂直方向のボアシステムも使用されてよい。
【0096】
図2A~2Cは、本発明の実施形態によるMRIイメージングシステム10の様々な構成の概略図である。MRIイメージングシステムは、ボア20bを有する高磁場磁石20mを有するMRスキャナ20を組み込んでおり、SENCパルスシーケンスとワークステーション60とを含む。ワークステーション60は心臓モジュール10Mと通信し、モジュール10Mに含まれるソフトウェアが、SENCパルスシーケンスを発生させ、ストレインシーケンスを生成し、結果をまとめて、心筋の収縮及び機能との相関がある円周方向及び長軸方向のストレインのグローバル値及び局所値の標準レポート及び/又は心臓モデルを作成することが可能である。ワークステーション60はディスプレイ60dを含んでよい。システム10は、取得されたMRIイメージをイメージング処理する少なくとも1つのプロセッサを有する回路10cを含んでよく、且つ/又は、SENCパルスシーケンス及び/又はストレインシーケンス、並びにワークステーションのオンボードにあるかワークステーションから離れている計算部の一方又は両方を含んでよく、又、モジュール10Mを含む。システム10は、胸部コイル25と通信することが可能なT/Rスイッチ35を含んでよい。
【0097】
図2Aは、システム10が、回路10c及び/又は心臓モジュール10Mにアクセスする為のポータルを有する少なくとも1つのワークステーション60を含んでよいことを示している。回路10cは、SENCパルスシーケンスの提供、ローSENCイメージの分析、及び/又はストレイン測定値の計算を行うように構成された少なくとも1つのプロセッサを含んでよい。モジュール10Mは、LAN、WAN、又はインターネットを介してアクセス可能なリモートサーバに保持されてよい。ワークステーション60は、MRスキャナ20及び胸部コイル25と通信することが可能である。MRスキャナ20は、典型的には、当業者にはよく知られているように、胸部コイル25及び少なくとも1つの送信/受信スイッチ35を使用して、パルスシーケンスの動作、並びにイメージの捕捉を指示する。胸部コイル25は、任意の適切な胸郭コイル又は胸部コイルであってよい。ワークステーション60は、GUI(グラフィックユーザ入力)を有するディスプレイ60dとアクセスポータル60pとを含んでよい。ワークステーション60は、(例えば、LANを使用する)比較的広帯域の高速接続を介してモジュール10Mにアクセスしてよく、或いはリモートであってよく、且つ/又は、狭帯域且つ/又は低速であってよく、そして、例えば、WAN及び/又はインターネットを介してデータセットにアクセスしてよい。セキュリティの為に必要に応じてファイアウォールが設けられてよい。
【0098】
図2Bは、ワークステーション60と通信することが可能なMRスキャナ20(即ち、制御コンソール又はコンピュータ)にモジュール10Mの一部又は全体が含まれてよいことを示している。モジュール10Mは、イメージ処理回路を有するMRスキャナの制御キャビネットに組み込まれてよい。ワークステーション60は、MRIスイートの磁石室及び/又は制御室にあってよく、或いはMRIスイートから離れていてよい。
【0099】
図2Cは、MRスキャナ20と通信している1つ以上のローカル又はリモートのワークステーション60にモジュール10Mが組み込まれてよいことを示している。図示していないが、モジュール10Mの一部が、スキャナ20と、リモート又はローカルであってよい1つ以上のワークステーション60の両方に保持されてよい。
【0100】
心臓モジュール10Mの一部又は全体が、1つ以上のスキャナ20と通信することが可能な少なくとも1つのサーバに保持されてよい。この少なくとも1つのサーバは、コンピュータネットワークを介して計算リソースをオンデマンドで提供することを含むクラウドコンピューティングにより提供されてよい。これらのリソースは、様々なインフラストラクチャサービス(例えば、計算、記憶など)、並びにアプリケーション、データベース、ファイルサービス、電子メールなどとして実施されてよい。従来のコンピューティングモデルでは、典型的には、データとソフトウェアの両方が完全にユーザのコンピュータに収容されていたが、クラウドコンピューティングでは、ユーザのコンピュータは、ソフトウェア又はデータをほとんど収容しなくてよく(おそらくオペレーティングシステム及び/又はウェブブラウザを収容すればよく)、外部コンピュータのネットワークで行われているプロセスを表示する端末以上の働きをほとんどしなくてよい。患者データの交換及び/又は分析を行う為に、ファイアウォール及び適切なセキュリティプロトコルが採用されてよい。
【0101】
単一心拍のSENC捕捉
SENC(ストレインエンコーデッドイメージング)は、心筋などの組織の局所変形をイメージングするMRI技術である。本発明の実施形態では、SENCパルスシーケンスを使用して、単一心拍の間のストレインの動画(連続するMRIイメージの系列)を、MRIによる心臓のそれぞれのカット/スライスの単一ビューとして捕捉する。そして、心臓の複数の所定のカット(本明細書では「カット」という語は「スライス」又は「プレーン」とも区別なく称される)から複数のストレインシーケンスが捕捉されると、心筋の収縮及び機能との相関がある円周方向及び長軸方向のストレインのグローバル値及び局所値の定量化が行われる。
【0102】
SENCパルスシーケンスの設定
典型的な実施形態では、心筋の収縮を測定する為のSENCパルスシーケンスのパラメータを設定する為に、以下の数式/公式が使用されてよい。
【0103】
「低チューニング及び高チューニング」のローSENCイメージ。ローSENCイメージは、SENCパルスシーケンスによって生成されるイメージである。ローイメージは、収縮に起因する強度変化からストレインを推定する為に使用される。それを行う為に、2種類のローSENCイメージが生成されてよい。1つは筋肉の収縮状態をキャプチャするもので「高チューニング」と呼ばれ、もう1つは筋肉の非収縮状態、更には伸展状態をキャプチャするもので、これは「低チューニング」イメージと呼ばれる。
【0104】
心臓内部のストレインを測定する為のパルスシーケンスを設計する公式は、最大ストレイン(s_max)と最小ストレイン(s_min)との間の範囲でストレインを測定し、エンコーディング周波数(w_0)、低チューニング(w_L)、及び高チューニング(w_H)を次のように定義する。
w_0=(1+s_max)×(1+s_min)/(s_max-s_min)×1/H
w_L=(1+s_min)/(s_max-s_min)×1/H
w_H=(1+s_max)/(s_max-s_min)×1/H
但し、
s_max<1+2.s_min
Hはスライスの厚さ(mm)である。
【0105】
例えば、最大収縮を、健康な心臓の収縮の上限である(そして超えられるはずがない)30%として、心臓心筋内のストレインをイメージングする場合は、s_min=-0.30である。負符号は、筋肉の収縮(短縮)を示している。この例では、ストレインの最大範囲は次のとおりである。
s_max<1+2×s_min(即ち、s_max<0.40)
これは、測定可能な最大ストレインが40%の伸展であることを意味する。
スライスの厚さが10mmであるとすると次のようになる。
w_0=(1+0.4)×(1-0.3)/(0.4-(-0.3))×1/10=0.14mm^{-1}
w_L=(1-0.3)/(0.4-(-0.3))×1/10=0.10mm^{-1}
w_H=(1+0.4)/(0.4-(-0.3))×1/10=0.2mm^{-1}
【0106】
パルスシーケンスパラメータを上述のように設定することにより、イメージングシーケンスはストレインを+40%と-30%の間で正確に測定する。スライスの厚さは、様々なスライスの間で同じであっても異なってもよいが、同じであることが好ましい。スライスの厚さは、任意の適切な厚さであってよく、典型的には1mmと10mmの間であり、より典型的には5~10mmである。
【0107】
SENCイメージングの詳細については、ナイゼル等(Neizel et al.)、「急性心筋梗塞における左心室の機能及び貫壁性の評価の為のストレインエンコーデッドMRI(Strain-Encoded MRI for Evaluation of Left Ventricular Function and Transmurality in Acute Myocardial Infarction)」、サーキュレーション・カーディオバスキュラー・イメージング(Circ. Cardiovasc Imaging)、2009年、2、116~122頁、並びにサンパス等(Sampath et al.)、「3次元ストレインの測定の為の高調波位相とストレインエンコーデッドパルスシーケンスとの組み合わせ(A combined harmonic phase and strain-encoded pulse sequence for measuring three dimensional strain)」、マグネティック・レゾナンス・イメージング(Magn Reson Imaging)、2009年、27(1)、55~61頁を参照されたい。これらの内容は、参照により、本明細書に完全に記載されているかのように本明細書に組み込まれている。
【0108】
SENCイメージングによる高速スキャン
本発明の方法、システム、及び回路は、迅速ストレインエンコーディング(SENC)パルスシーケンスを用いて、単一心拍の間に、心周期の間の、且つ、心臓の一スライス(プレーン)内の心筋機能性のイメージのシーケンスを捕捉する。このSENCローイメージ系列を集めることにより、そのスライスにおける心筋の解剖学的シーケンス及びストレインシーケンスが得られる。解剖学的シーケンスは、心臓の組織を明るく示し、対照的に肺組織及び血液を格段に暗く示す。この対照により、心筋を身体の他の組織と切り離す高速区分化(即ち、各イメージに分離すること)が可能になる。ストレインシーケンスは、心周期の間の心筋の収縮と弛緩の測定結果を示すことにより、心筋の収縮性の測定結果を提供する。
【0109】
解剖学的シーケンス及びストレインシーケンスは又、駆出率などのグローバル尺度の高速且つ繰り返し可能な計算を可能にする。心臓チャンバの高速区分化を可能にするSENCイメージング技術により、従来の尺度(例えば、心臓チャンバの駆出率、チャンバ容積、1回拍出量、チャンバ重量など)の迅速な自動計算も可能になる。従来の尺度を、MRIの特徴である高解像度イメージにより素早く評価できることにより、新たに心不全を発症したり、心不全を悪化させたりするリスクを抱える患者に対して診断及び処置を行う基になる重要情報を臨床者に提供する為にストレインマッピングを強化することが可能な標準メトリックが提供される。
【0110】
本発明の実施形態は、MRI磁石のボア内に患者がいる時間を最小限にして実施することが可能である。スキャンシーケンスは、全ての定量的測定値を生成するデータを発生させる為に自由に呼吸している間に実施されてよく、且つ、わずか5秒の間、より典型的には、2分と15秒未満の間に実施されてよい。例えば、全スキャンシーケンスは、4~6心拍以内でグローバル機能及び区分収縮性の完全な評価を与える4~6個の異なるイメージングプレーンから、わずか4~6ストレインシーケンスで捕捉可能である。従って、高速スキャンにより、心臓の多種多様なビュー又はカットから多種多様な動画が生成され、各動画は、単一心拍の速さで捕捉される。「動画」という用語は、心周期にわたって取得される一連のMRIイメージの時系列を意味し、例えば、「ロー」又は未強調であってよく、或いは、ストレイン測定値により色分けされていてよい。
【0111】
SENCイメージングによる高速スキャンには以下の利点がある。
スキャンシーケンス捕捉の為に磁石内にいる時間が最小限
・ストレインシーケンスが取得される基になる高速スキャン及び多種多様な動画の捕捉を完了する為に、患者が磁石のボア内にいなければならない時間が最小限である。
・ストレインシーケンスの数はプレーンの数で決まり、各ストレインシーケンスは単一心拍で捕捉可能である為、磁石内にいる時間の長さは、心拍数と相互に関連付けられるプレーンの数に依存する。
呼吸を止めなくてよい
・高速スキャンは、被験者が自由に呼吸している間に実施可能であり、従来の方法で必要だったように何度も呼吸を止めることは不要である。
・区分捕捉やイメージセット間の信号平均は不要であり、各ストレインシーケンスは1心拍で捕捉可能である為、患者は、スキャン処置中はずっと呼吸し続けることが可能である。
イメージングビューの高速プランニング
・高速プランニングにより、心臓の位置を厳密に示し、心臓の主軸を画定することにより、高速スキャンの準備をすることが可能である。
・高速プランニング捕捉に限定されないあらゆる心臓捕捉の準備が、単一心拍のSENC捕捉によって行われてよい。
・高速プランニングの為に、1心拍の動画から捕捉されたストレインシーケンスのローイメージを、そのロー形態で使用することが可能である。
・その1心拍の動画から捕捉されたストレインシーケンスイメージを、記録されたストレインレベルに基づいて色分けして高速プランニングに使用することが可能である。
カラーの(色分けされた)ストレイン動画
・様々な1心拍の動画から捕捉されたストレインイメージのそれぞれを、連続的又は同時に、色分けされた形態で、ストレインベースの迅速心臓評価モジュール/回路を有するワークステーションのディスプレイに提示することが可能である。
・色分けされたストレイン動画は、心周期全体にわたって定量化された変形量に基づいて色が変化する(瞬時)ストレイン値を示すことが可能である。
ストレインマッピング
・客観的筋収縮状態:ストレイン値を使用して従来の筋収縮状態(過収縮、正常収縮、低収縮、無収縮、収縮不全など)が示される。
・収縮状態の色分け:筋収縮状態を視覚的に識別する為に着色スケールを使用/提供することが可能である。
・スクリーニングの為のストレイン:心筋のストレイン値の偏りは、進行性心疾患の徴候である。心不全及び/又は心筋機能弱化は様々な疾患によって引き起こされる可能性があり、そのような疾患の例として、心臓毒性、腎疾患、高血圧、糖尿病、ウイルス感染、心筋梗塞、冠動脈疾患などがある。
標準ストレイン計算
・正常収縮カットオフ:所定のカットオフストレイン値(例えば、-17%)により、異常収縮が識別/検出される。心筋の収縮時の収縮ストレイン値が-17%より小さければ、正常収縮であると識別される。
・心筋損傷カットオフの可逆性:所定の低カットオフストレイン値(-10%)は、心筋の損傷が不可逆的か可逆的かを区別する弱い筋収縮性を示す。心筋の収縮の収縮ストレイン値が-10%より大きければ、不可逆的な心筋損傷であると識別される。
・心筋の収縮の収縮ストレイン値が、異常収縮カットオフである-17%と不可逆性損傷カットオフである-10%との間であれば、異常ではあるが可逆性の心筋損傷であると識別される。
・心筋損傷の規模及び程度を定量化できることにより、治療又は緩和の管理計画を方向づけることが可能である。
・心筋損傷の程度を継続的にモニタリングすることにより、発生する進行性リモデリングと処置モダリティの影響とを評価することが可能である。
・カットオフストレイン値が「正常」か「異常」か、並びに損傷ストレインカットオフ値が「可逆的」か「不可逆的」かは、収縮ストレインに関しては、男女の区別なく、且つ小児から老人までの様々な年齢層にわたって同じカットオフ値が臨床的に有効であるという「普遍的な」意味を持ちうる。
【0112】
高速スキャン捕捉
高速スキャンを捕捉する前に、患者の位置決め及び各プレーンの定義を含むプランニングが実施される。これは、従来のCMRと同様の既存の方法で行われてよく、或いは、後述のように自動化されてよい。イメージングプレーンは、心室の心基部、中央部、及び心尖部をカバーする少なくとも3つの短軸プレーンを含んでよい。イメージングプレーンは、少なくとも4プレーンの場合には更に、少なくとも1つの長軸プレーン(心臓の全区画を示す4チャンバビュー)を含んでよい。全部で6プレーンの場合には、典型的なケースでは3つの長軸ビューが定義され、4チャンバビューに2チャンバビュー及び3チャンバビューが追加される。イメージングプレーンは、単一プレーン上のイメージシーケンスごとに、高速ストレインエンコーデッドイメージングがその単一心拍捕捉とともに使用されている場合に非常に高速に識別可能である。
【0113】
スキャン継続時間は、定義された全てのプレーン(即ち、少なくとも4プレーン、つまり3つの短軸プレーンと1つの長軸プレーン)を捕捉する為に患者が磁石内にいる時間である。これに要する時間は、わずか4心拍であることが可能である。典型的なケースでは、後述のように、イメージプレーンは6プレーンを有することが可能であり、スキャンに要する時間は6心拍であることが可能である。捕捉は、操作者が開始することが可能であり、典型的には、「スキャン開始ボタン」を押してストレインエンコーディング捕捉を起動することによって開始することが可能である。口頭又は他の起動開始アクションが使用可能である。患者が磁石の外にいる場合、スキャン時間は、患者がMRI磁石を出入りする為の追加時間(例えば、約20秒)を含んでよく、これにより、患者が磁石のボアに入ることを含む全スキャン時間は、60秒から約30秒になる。医師、看護師、又は助手(「臨床者」)は、MRI室内にいて、患者が磁石を出入りする動きをモニタリング及び管理することが可能である。患者を移動させる一例示的シーケンスを図3A~3Cに示す。図3Aは、第1の時間帯T1の間に患者が磁石ボア20bの中に動かされる様子を示している。図3Bは、イメージ捕捉スキャン時間T2を示しており、図3Cは、第3の時間帯T3の間に患者が磁石ボア20bの外に動かされる様子を示している。T1+T2+T3は5分以下であり、典型的には25秒と90秒の間であり、例えば、約25秒、約30秒、約40秒、約50秒、約60秒、約70秒、約80秒、又は約90秒である。
【0114】
イメージ分析
高速スキャン検査では、図4に示すように、イメージが素早く(信号捕捉から数分以内に)ワークステーション60に送られて分析されることが可能である。これは、SENCローイメージからストレインイメージ及び解剖学的イメージを再構築し、解剖学的イメージに基づいて組織を区分化し、少なくとも1つのディスプレイ60d及び/又は電子レポート及び/又は紙のレポート100において、心臓カット/スライス110、120の標準図(区分化されたモデル)にストレイン値を表示することによって行われる。図4は、ビューア60vを有するディスプレイ60dを示しており、ディスプレイ60dは回路10cを有し、回路10cは、分析用としてSENCイメージを再構築し、レポート100のストレイン測定値を埋める為に使用される、心臓の様々なスライスの内側及び外側の輪郭を分析することが可能である。この図は、再構築されたイメージを表示するツールのレイアウトを示しており、そのビューでの区分化、及びレイアウトの右側の図を埋めることが示されている。
【0115】
図5A~Eは、MRIスキャナシステムを図解しており、ワークステーション60のディスプレイ60dが、患者レポート100を心臓モデル110、120とともに表示することが可能である。図5Aは、患者ストレインデータの捕捉前にスキャナテーブル22上の患者がMRIスキャナ20の外にいる様子を示している。図5Bは、患者が磁石のボア20b内で位置決めされて、データ捕捉の準備ができた様子を示している。図5Cは、心臓評価モジュール10M及び/又は回路10cが、スキャナ20に対し、心臓を通る個々のプレーンに沿って心臓をスキャンして複数のストレインシーケンスを取得することを指示している様子を示している。心臓をスキャンして、心臓のイメージングプレーンビュー(即ち、4~6ビュー)(それぞれが、動いている心臓の動画を生成する)を取得することは、迅速に実施されることが可能であり、典型的には20秒未満で実施され、より典型的には10秒以下で実施される。ストレインシーケンスが捕捉された後、スキャナのテーブル23が患者を運んで磁石20mからすべり出ることが可能であり、その間にレポート100が作成されることが可能である。図5Dは、プレーンの1つの輪郭を描くステップ(拡大イメージ102を有するウィンドウ60w)を示しており、これによって、ストレインシーケンスが生成されて、円周方向のストレインが手動又は自動で評価されて、心臓チャンバの外形が画定され、この外形からストレインを評価することが可能である。隣接するウィンドウ60wで、4~6プレーン(図では6)のより小さな動画105を提供することが可能である。図5Eは、手動又は自動でプレーンの輪郭が描かれて(拡大図102)、画定されたチャンバ外形内に長軸方向のストレインが生成される様子を示している。6つのストレインシーケンスの全てを最終的なグローバルストレイン値及び区分ストレイン値とともに示す最終的なストレインレポート100が、ほぼリアルタイムで生成されるように、患者からの最終イメージ信号捕捉結果が取得されてから2分未満で、典型的には90秒又は約60秒(即ち、約1分)で作成されることが可能である。
【0116】
「区分」という用語は、心臓壁の(即ち、例えば、心筋、心臓内、及び心外膜の)様々な領域を横断する様々な心臓組織タイプの様々なストレイン測定値を計算できることを意味する。従って、区分ストレイン測定値は、壁全体にわたる、様々な組織タイプ(即ち、心筋組織と、心臓内及び心外膜の一方又は両方の組織)に対する差分ストレイン測定値を提供することが可能である。
【0117】
SENC結果レポート
分析の結果として得られる測定値を有するレポート100が、収縮性の従来のグローバル測定値130及び局所測定値101を含めて、図6に示すように、色分けされたレポートにおいて提示されることが可能である。この図は典型的なレポートのレイアウトを示しており、グローバル測定値及び局所測定値の両方が示されており、異常なストレイン値が規定の色(典型的には赤のフォントタイプ)でマーキングされている。
【0118】
様々な組織状態に関する追加の色分けグラフ101gがレポート/ディスプレイ100上に示されてよく、これは、正常心筋収縮と異常心筋収縮、並びに可逆的筋弱化と不可逆的筋弱化が識別されるように、実際のストレイン値を心筋収縮のレベルでより厳密に示す。区分化された(110s、120s)長軸方向及び円周方向のストレイン値は、心筋機能の評価が比較的迅速且つ容易になるように、図式的に提示及び色分けされることも可能である。
【0119】
駆出率、左心室重量、左心室収縮末期容積、左心室拡張末期容積、及び左心室1回拍出量などの従来の尺度130が計算されてレポートに提示されることが可能である。別の測定値がSENCストロークイメージングから計算されてレポートに追加されることが可能である。
【0120】
アクション可能なストレイン測定値
色分けグラフ101gのストレイン測定値は、一般に、心筋の5つの状態(過収縮、正常収縮、低収縮、無収縮、及び収縮不全)を表す(図7に示された)色で提示されてよい。ストレイン測定値は負の数値として表されてよく、これは最大収縮時の壁筋の短縮を示している。
【0121】
「ストレイン測定値」及び「測定されたストレイン」という用語は、ストレインの任意の定量化可能な尺度を意味しており、これには、例えば、ストレインレート、代表値、及び平均のうちの1つ以上が含まれる。測定されたストレインは、区分ストレイン及び/又は局所ストレイン、或いは、区分ストレイン及び局所ストレインの両方であってよい。レポートは、次の少なくとも2つの重要なカットオフを識別することが可能である。
・弱化カットオフ:正常又は健康な筋肉と収縮が弱化している筋肉とを分別するカットオフである。図示されている提案された値は-17%である。
・可逆性カットオフ:特定の病状(例えば、心筋梗塞)において、弱化した筋肉の弱化が一時的であって回復可能なのか、永続的に損傷していて回復不能なのか(不可逆的弱化)を示すカットオフである。図示されている提案された値は-10%である。
【0122】
弱化カットオフ及び可逆性カットオフ100u、100uは、両方とも、男女の区別なく、且つ小児から老人までの様々な年齢層にわたって臨床的に有効である「普遍的な」カットオフ値でありうる。
【0123】
MR SENCイメージの全自動区分化
本発明の実施形態は、少なくとも1つのプロセッサを有する回路10cを使用してよく、このプロセッサは、(PCAに依存する)ASMを使用して、トレーニングデータ内で見つかる形状変化をエンコードすることにより、4チャンバLA SENC及びFast SENC(例えば、FSENC)イメージにおいて心筋の検出、区分化、及び追跡を行うように、プロトコル/メソッドとともに構成されている。図8は、心筋組織の検出、区分化、及び追跡のアクションのフローチャートの一例を示す。トレーニングデータ203を使用して、心筋モデル及び心筋マスク206を構築することが可能である。その後、全ての検査データ202について、回路10cは心筋を見つける(208)ことが可能であり、これは、SENCイメージ102及び/又は105を分析し、(強度及び/又はストレインで)「ACC」イメージ204を作成することによって行われ、最後に回路10cは、心周期全体にわたって(即ち、強度を使用して)心筋を追跡する(210)ことが可能である。
【0124】
図8が更に示すところによれば、回路10cは機械学習システム201を含んでよく、これにより、例えば、ACCイメージ204、モデル、及びマスク208があってもなくても心筋を識別する(208)ことが可能である。機械学習システム201は、トレーニングデータ203を使用するように構成されてよい。機械学習システムは、当業者にはよく知られている。例えば、H.イルシャド等(H. Irshad et al.)、「病理組織学における核の検出、区分化、及び分類:現状と将来の可能性の考察(Methods for nuclei detection, segmentation, and classification in histopathology: A review-current status and future potential)」、IEEEレビューオブバイオメディカルエンジニアリング(IEEE Rev. Biomed. Eng.)、7巻、97~114頁(2014)を参照されたい。この内容は、参照によって、全内容が本明細書に記載されているかのように本明細書に組み込まれている。
【0125】
図12、14、及び15の方法も、本発明の実施形態による機械学習システム(即ち、人工知能システム)を取り入れるか採用してよい。
【0126】
ACCイメージを構築する為の様々な例示的ステップを、図9A~HのA~Hのイメージ/イメージフレームに示す。図9Aは、典型的なSENC画像の4つのフレームである。図9Bは、再構築による開口の適用後のイメージである。図9Cは、閾値後のイメージである。図9Dは、ACCイメージである。図9Eのストレイン情報は胸壁の検出に使用される。図9Fは最終的なACCイメージである。図9Gは、マスクとACCの間の最大畳み込み値の算出後に心筋の場所に形状Xが重ね合わせられたことを意味している。図9Hは、形状Xがこの特定の患者の心筋形状に変形することを意味する。
【0127】
マスク、モデル、及びACCイメージによる自動区分化の例については、エル・ハロウニ、アーメド(El Harouni, Ahmed)、「胸部及び心臓のイメージングの為のストレインエンコーデッド(SENC)MRIの強化(Enhancing strain-encoded (SENC) MRI for breast and cardiac imaging)」、ジョン・ホプキンス大学(The Johns Hopkins University)、論文、2011、3463429(プロクエスト・ドキュメント・ビュー(Proquest Document View)http://gradworks.umi.com/34/63/3463429.html)を参照されたい。この内容は、参照によって本明細書に組み込まれている。しかしながら、当業者であれば理解されるように、ターゲット組織を識別することには他のアルゴリズム及び/又は機械学習システムも使用されてよい。
【0128】
イメージングビューの高速プランニング
図10A~Cは、SENCロー画像102rを、イメージングビューの高速自動プランニングの為の複数の(図では3つの)異なるカット又はプレーン102cとともに示す。心臓の、固定された短軸ビュー及び長軸ビューの高速スキャンの前に、準備として患者がテーブル上に配置されてよく、心臓及びイメージングビューの局在をこの最初の捕捉によって識別することが可能である。この捕捉時間を短縮して捕捉を非常に高速にする為に、SENCロー画像102rを使用してこれらのイメージングプレーンを決定することが可能である。有利なことに、このSENCロー画像の高速捕捉(シーケンス当たり単一心拍)では呼吸を止めなくてよい。心臓の最大収縮(収縮末期)に近いイメージを使用して、正しイメージングビューをプランニングすることが可能である。
【0129】
図11Aは、SENCストレインイメージを使用して心臓のイメージングの高速プランニングを行う為にMRIスキャナの操作者が実施するステップを示す。操作者は、それぞれにつき少なくとも数秒間呼吸を止める、複数の従来の心臓動画を、捕捉に単一心拍しか要しないSENC動画に置き換えることにより、時間と複雑さを大幅に減らすことが可能である。従って、指示する(プランニング)時間が大幅に短縮される。指示の最後には、4~6個(典型的には6個)のイメージング(ビュー)プレーンが定義される。これらは、左心室の心基部、中央部、及び心尖部における3つの短軸ビュー、並びに2チャンバプレーン、3チャンバプレーン、及び4チャンバプレーンの3つの長軸ビューである。横断プレーン、矢状プレーン、及び冠状プレーンのマルチプレーン捕捉結果が取得される(ブロック220)。横断イメージから疑似2チャンバプレーンが自動的に指示されてよい(ブロック222)。疑似2チャンバSENC動画が生成されてよい(ブロック224)。疑似2チャンバストレイン動画から疑似4チャンバプレーンが自動的に指示されてよい(ブロック226)。疑似4チャンバSENCストレイン動画が生成されてよい(ブロック228)。疑似2チャンバストレイン動画から3つの短軸プレーンが自動的に指示されてよい(ブロック230)。SAB(短軸心基部)、SAM(短軸中央部)、SAA(短軸心尖部)の各SENCストレイン動画が生成されてよい(ブロック232)。疑似2チャンバストレイン動画から3つの長軸プレーンが自動的に指示されてよい(ブロック234)。その後、2チャンバ、3チャンバ、及び4チャンバの各SENCストレイン動画が生成されてよい(ブロック236)。
【0130】
図11Bは、図11Aに記載されたステップをたどって生成されたイメージを示す。第1のイメージセット(ステップ1)は、心臓を見つけることに役立つ任意の心臓MRI検査で捕捉された標準イメージである。下部の着色イメージに強度対時間のグラフが付加されたものが、ステップ2(ブロック222)、ステップ4(ブロック228)、及びステップ6(ブロック232)で取得されたSENCストレイン画像である。指示プレーンPは、イメージ内で白い太線で定義されている。
【0131】
「疑似」という用語は、心臓MRIイメージングの場合には、心臓のビューが実際のビューの近似であることを意味する。この概念は、MRIを使用して心臓の標準ビュー(3チャンバ、4チャンバ、2チャンバ)に到達する為に、心臓のカットの動画として提示可能な幾つかの予備MRI画像を取得することによって、心臓の向きを特定することが可能であるというものである。心臓の第1の「近似」2チャンバビューは、あまり正確でなくてよいが(それが図11A及び11Bで疑似2チャンバと呼ばれる理由である)、磁石のボア内の各患者の「真の」2チャンバビューを見つける為の重要なビューであることが可能である。
【0132】
代替として、図11A及び11Bに関して説明された評価は、疑似4チャンバプレーン及びイメージから開始し、その後、疑似2チャンバプレーン及びイメージを取得することが可能である。一般に、心臓の位置及び向きを識別する為の現行の心臓MRIプランニングイメージを、従来の動画イメージを置き換えるSENCストレインイメージを使用するように修正することが可能である。
-「ACCイメージ」は累積イメージを意味する
-「ASM」はアクティブ形状モデルである
-「AAM」はアクティブ外観モデルである
-「SAB」は短軸心基部である
-「SAM」は短軸中央部である
-「SAA」は短軸心尖部である
【0133】
心臓MRIの全自動プランニング
SENC高速パルスシーケンスを使用して、あらゆる心臓MRI検査の中で最初のステップである、イメージングのプランニングフェーズを自動化することが可能である。SENCを使用するプランニングは2つのステップを有してよく、これらのステップは、1)心臓を見つけて、イメージング視野内で他の解剖学的構造に対する心臓の位置を厳密に示すステップと、2)心室の向きを特定して心臓の主軸を画定するステップである。
【0134】
単一心拍のSENC捕捉を用いることで、あらゆる心臓捕捉の準備を自動化することが可能であり、これによって、あらゆるSENC検査又は従来の心臓MRIの前に時間のかかるプレーンの手動プランニングを行うことが不要になり、イメージングの時間が短縮される。又、プランニングを自動化することで、スキャン区分を短縮することによってスキャンの合間に患者が動いて閉所恐怖症を回避することが可能になり、或いは、患者が動いて厳密なスポットに戻らない場合に全体イメージングが破綻するかもしれないと心配せずに、造影剤などの薬剤の注入のようなインターベンションが可能になり、或いは、患者が動いて収縮性及び/又は心拍が機械的に増大して、心臓にストレスがかかり、心臓の動きが変化することで、壁運動異常を識別することが可能になる。
【0135】
図12は、図11A及び11Bで取得されるものと同様の6プレーンを、手動の位置決め又は主軸画定を行わずに見つける自動プランニング(指示)の例示的ステップを示す。この自動プランニングでは、高チューニング(HT)イメージ中の心臓の明るさによって収縮中の心臓を素早く確実に識別するSENCイメージングの機能を活用する。これらのステップは、手動アプローチのステップを反映しながらも、物体認識アルゴリズムを使用して心臓を識別する。幾つかの実施形態で用いられてよい唯一の手動インタラクションは、マルチプレーン捕捉結果から心臓の最良の横断ビューを識別して自動プランニングステップを開始することであってよい。
【0136】
横断プレーン、矢状プレーン、及び冠状プレーンのマルチプレーン捕捉が実施される(ブロック270)。横断イメージから疑似2チャンバプレーンが自動的に指示されてよい(ブロック272)。疑似2チャンバSENCのHT動画が取得される(ブロック274)。収縮末期近くに関連付けられた動画のフレームにおいてトータル信号が最大になる時刻が識別される(ブロック276)。これは、中間に位置するフレームの縁部分の強調表示によって示されている。疑似4チャンバSENCのHTの、LVを分割する線が自動的に特定される(ブロック278)。疑似4チャンバSENCストレイン動画が取得される(ブロック280)。(収縮末期近くに関連付けられた)動画のフレームにおいてトータル信号が最大になる時刻が識別される(ブロック282)。短軸SENCのHTの、LVを分割する3つの線が自動的に特定される(ブロック284)。SAB、SAM、及びSAAのSENCストレイン動画が取得/生成される(ブロック286)。(収縮末期近くに関連付けられた)動画のフレームにおいてトータル信号が最大になる時刻が識別される(ブロック288)。疑似2チャンバ(又は4チャンバ)ストレイン動画から3つの長軸プレーンが自動的に特定される(ブロック290)。2チャンバ、3チャンバ、及び4チャンバのストレイン動画が生成される(ブロック292)。
【0137】
SENCストレインイメージング高速スキャンによるストレス検査
本発明の実施形態はストレス検査を含み、このストレス検査は、冠動脈疾患の虚血特性を検出する為に、心臓の複数の高速SENCストレインイメージングスキャンを使用して、少なくとも1回は安静時に、少なくとも1回は別のストレスレベルで実施されてよい。ストレス検査は、安静時に心筋収縮が弱化している患者の生育可能性を示す、ストレス下でのストレインの減少によって特徴づけられる、心筋機能の向上を示すことも可能である。
【0138】
SENCストレインイメージングを利用する高速スキャンは、冠動脈疾患を有する患者の局所貧血を、ストレス下と安静時のSENCストレインシーケンスを比較することによって評価することが可能である。高速スキャンは、安静時にSENCストレインシーケンスを捕捉して心臓の区分機能を測定することが可能であり、その後、この測定はストレス下の心臓に対して繰り返される。この検査のストレス成分は、局所貧血であれば壁運動異常を引き起こしうる任意の形態の運動を利用してよく、或いは同じ作用がある薬理学的薬剤(例えば、ドブタミン及びアデノシン)を利用してよい。
【0139】
ストレス検査は、任意の非薬理学的又は薬理学的なストレッサを利用してよい。高感度のSENCストレインイメージングは、さほどストレスをかけずに虚血性心筋を正確に識別する為、捕捉時間が短縮され、患者がさらされるストレスのレベルが格段に低くなり、ストレス反応を引き出すリスクが低減される。これにより、格段に少ない用量の薬理学的薬剤(例えば、ドブタミン、アデノシンなど)の投与、引き起こされるストレス反応が小さい低リスクの薬剤の利用、及び/又は非薬理学的機構(例えば、トレッドミル、バルサルバ法、患者がテーブル上で臥位のままでの上半身又は下半身の最小限の運動)の組み込みを通して虚血の識別が可能になって、SENCイメージングが促進される。
【0140】
安静からストレスへとSENCストレインを変化させることによって虚血作用を調べることができる収縮性の穏やかな増大を引き起こす為に、安静からストレスを少し高める様々なタイプの運動を利用することが可能である。例えば、患者は、テーブル上に寝そべったままで心臓の収縮性を増大させる運動を行えるように改造された階段ステッパ又は自転車を利用することが可能である。或いは、砂又は水が充填された細長いバルーンや、強く握ると張力が発生するハンドグリップなどの修正ウェートを、収縮性を増大させる運動として利用することが可能である。ストレスストレインシーケンスを捕捉すべきタイミングを識別する為に、収縮性の増大を心拍の増大と部分的に相互に関連付けることが可能である。例えば、心拍が10~20拍/分(bpm)増大することが、対応する収縮性の増大に関連付けられ、これに基づくSENCストレス検査で虚血反応を検出することが可能である。
【0141】
ストレス検査媒体のタイプを患者のニーズに合わせることとができることにより、薬理学的薬剤、立って歩いたり運動したりする能力、潜在的な共存症に起因する、運動におけるフレイル、又は他の、医師が特定のストレス媒体を選択することを可能にする条件に対する患者の耐性のばらつきが吸収される。
【0142】
ストレス結果レポート
図13A及びBに示すストレスレポート100は、安静時に高速スキャンにより取得されたストレイン測定値100a(1行目)、ストレス下で高速スキャンにより取得されたストレイン測定値100b(2行目)、及びストレイン測定値の変化100c(3行目)を示すことにより、心臓モデル110、120において潜在的虚血、冠状動脈狭窄の徴候がある領域を示すことが可能である。これら2つの典型的な例での色分けは、ストレイン測定値に基づいて心筋収縮をグラフィカルに描く為の様々な典型的な様式を示している。
【0143】
図13Aに示すストレスレポート100では、ストレイン安静(安静時のストレイン)からストレインストレス(ストレス下状態でのストレイン)を差し引くことにより、ストレインの絶対変化が算出され、これは、0%から10%の範囲で虚血を明らかにする。生育可能性を識別するモデルの変化セット100cにおけるモデル110、120のストレインの変化(この計算では負の数値)は、値が0%に設定されている関連付けられた区画110w、120wにおいて白で示されているように、明るい色であってよい。安静時165r及びストレス下165sにおける患者バイタル165(心拍及び血圧)が、それぞれの条件に対応する心臓モデル100a、100bの隣に示されてよい。
【0144】
図13Bでは計算を修正して、心筋の生育可能性を識別し、これを虚血と区別している。この実施形態では、ストレインストレスからストレイン安静を差し引くことによりストレインの絶対変化が計算されており、色分けの定義色(例えば、緑)の勾配の正の変化は、白は安静時からストレス下状態にかけてストレインが減少し、収縮が改善されたことによる心筋の生育可能性を描いており、色分けの赤の勾配の負の変化は、白は安静時からストレス下状態にかけてストレインが増大し、収縮が悪化したことによる心筋の虚血を描いており、白は安静時からストレス下状態にかけてストレインの変化がないことを示している。
【0145】
しかしながら、他の定義色も使用されてよく、限定ではなく例として、赤と緑ではなく赤と青が使用されてもよく、或いは、それぞれの色がストレインの弱化又は強化を表す他の色分けが使用されてもよい。
【0146】
ストレス検査での高速スキャンの利点
上述のように、安静時と様々なレベルのストレス下での複数の高速スキャンを比較することにより、虚血疾患及び/又は心筋生育可能性の改善によって引き起こされる収縮性の変化を識別することが可能である。ストレス検査の為のSENCストレインイメージングの利点を以下に挙げる。
非侵襲的なストレス検査
・ストレスは、収縮性を控えめに増大させる肉体運動を用いて行われてよい。
・SENCストレインイメージングでは、患者にストレスをかけて最小限のレベルの収縮性の変化を引き起こして虚血作用を検出することが可能であり、患者に薬剤を注射してストレス反応を人工的に引き起こすことは不要である。
・この非侵襲的なSENCストレス検査技術は、針及び/又はカテーテルの挿入及び抜去が不要である為に処置時間、患者の準備、及び患者の回復を短縮し、検査前、検査中、及び検査後に薬理学的薬剤の効果をモニタリングする必要がない。
・この非侵襲的なSENCストレス検査により、薬理学的薬剤を使用して収縮性の増大を引き起こすことのリスクが低減される。これは、薬剤に対する既知の拒絶反応を回避できる為である。
リスクが小さい薬理学的薬剤処方計画
・SENCストレス検査は、低用量の薬理学的薬剤、又は最小限のストレス反応を引き起こす薬剤を用いて誘導されることが可能である。
・虚血反応を識別することが可能な収縮性の増大を引き起こす為に必要な薬理学的用量を減らすことにより、患者がより楽になり、疾患がある患者に高用量の薬理学的薬剤を投与するリスクが低減され、処置後の生産性が向上して患者の回復が促進される。
低ストレス
・低ストレスの物理アクションを追加又は代替として用いてよく、従来のストレス検査と同レベルまで心拍速度を上げる必要がない。
誘発された壁運動異常を示す標準レポート
・着色方式により、冠動脈疾患に関連する血液灌流の不足を示す、ストレス下での一部の心筋の収縮性の低減が検出される。
・ストレインスキャンの変化を定量化する標準レポートにより、心筋の運動の微細な変化を目視で探す精査担当者の主観が排除される。
・心筋自体のストレインを直接測定することにより、心筋変形のよりよい指標が得られる。
・安静時とストレス下のストレインスキャンを比較できることにより、虚血心筋と生育不能な心筋梗塞とを区別することが可能になる。
【0147】
SENCイメージングによる拡張機能不全の定量化
ここまで、SENCを用いてストレインを測定することにより、収縮期の心筋の収縮性を評価する、本発明の実施形態について述べてきたが、別の尺度を用いて拡張期の心筋の弛緩を評価することが可能である。本発明の実施形態は又、収縮期のストレイン値の計算に使用された区分と同じ区分において心臓の弛緩段階のストレインレートを測定する。これらの測定は、心筋の別の特性を示し、それは、拡張期の心臓の問題に関連しうるスティフネスである。
【0148】
ストレインレート測定
図14は、様々な区分において、心周期の様々な時点で取得されたストレイン測定値から拡張期ストレインレートを測定する例示的ステップを示す。ストレインレートはストレイン曲線の時間導関数から取得され、正の最大ストレインレートを測定することにより、拡張期の心筋の伸展速度が算出される。ノイズの低減と曲線の当てはめの方法を用いて、導関数の測定に対するノイズの影響を低減することが可能である。
【0149】
一区分のストレイン測定値が、時間の関数E(tn)として取得される(ブロック300)。ストレインの第1の導関数が、時間の関数Er(tn)dE(tn)/dtとして測定される(ブロック302)。導関数の測定は、値の平滑化とノイズ低減アルゴリズムを含んでよい。Er(tn)の最大値が拡張期ストレインとして決定される。これは正の値でなければならない(ブロック305)。AHA(米国心臓協会(American Heart Association))の標準モデルに従って、心臓の全ての区分についてブロック300~305が繰り返されてよい(ブロック307)。
【0150】
取得されたストレイン動画を基に、心室充填中の心筋の急速な弛緩を、充填中の心筋の様々な区分において測定されたストレインの変化率から測定することが可能である。このような弛緩ストレインレートは、幾つかの心疾患に関連する心室のスティフネスを反映する。拡張期のストレインレートを測定することにより、弛緩と相互に関連しうる、筋肉の空間変形が直接測定される。最小拡張期ストレインレートが-31秒-1未満である患者を識別することによって、拡張期心不全のリスクがある、心筋機能障害を有する患者が識別される[ナイゼル M等(Neizel M, et al.)、「急性心筋梗塞後の患者における持続性の重篤な心筋機能障害を追跡調査で予測する為の、ストレインエンコーデッドイメージングによって評価される収縮期及び拡張期の変形インデックスの影響(Impact of Systolic and Diastolic Deformation Indexes Assessed by Strain-Encoded Imaging to Predict Persistent Severe Myocardial Dysfunction in Patients After Acute Myocardial Infarction at Follow-Up)」、ジャーナル・オブ・アメリカン・カレッジ・オブ・カージオロジー(J Am Coll Cardiol)、2010年、56号、1056~62頁]。この内容は、参照によって、全内容が本明細書に記載されているかのように本明細書に組み込まれている。
【0151】
SENCイメージングによる収縮の非同期性の評価
本発明の実施形態では又、心臓の様々なチャンバの間の、又は1つの心臓チャンバでのストレイン及び/又はストレインレートの時間的な差を測定することにより、非同期性を識別し、心筋機能の向上に対する様々な管理アルゴリズムの影響を予測する。収縮期の組織変形に関連するピークストレインの間の時間差を評価すること、或いは、左脚ブロックがある患者、及び/又は貫壁性梗塞がある患者について円周方向均整度推定[CURE]インデックス値を計算することにより、再同期化療法及び/又は他の、心筋収縮の遅延に対処するインターベンションの恩恵を得られそうな心不全を特定することが可能である。
【0152】
図15は、様々な場所において様々な時点で取得されたストレイン測定値から非同期性を測定する3つの例示的アプローチを示す。心周期全体にわたってストレインを測定すること、並びに、様々なチャンバの収縮タイミング及び/又は各チャンバごとの収縮タイミングを変えて、予測される駆出率の改善を最適化することにより、様々なモダリティを利用して、レスポンダを識別し、且つ/又は鉛などの刺激モダリティの配置ストラテジを方向づけ、心臓の同期性及び収縮を最適化することにより、処置の成功の可能性を推定することが可能である。
【0153】
全ての区分及び時点についてSENCイメージからストレイン測定値E(s,tn)が測定される(ブロック400)。
【0154】
非同期性は、ピーク短縮の分散として測定可能である。
【0155】
Dys1=var(Ts)。但し、Tsは任意の区分の最小ストレインの時刻である(ブロック402)。
【0156】
非同期性は、ストレインの空間的不均一性として測定可能である。
Dys2=A/(A+B)
A=tn{E(s,tn)の0次空間高調波}の平均
B=tn{E(s,tn)の1次空間高調波}の平均
1=完全同期
0=完全非同期
(ブロック404)
【0157】
非同期性は、改善の可能性としてであってよい。
Dys3=(tn{s{1+E(s,tn)の平均}}の最小値)/(s{1+tn{E(s,tn)}の最小値}の平均)(ブロック406)
【0158】
SENCイメージングアプリケーションと決定木
SENC検査の特徴的な要素として、磁気共鳴イメージングを用いてストレインを直接測定することにより心筋の変形を定量化するユニークな機能がある。この測定により、心筋収縮のレベルが識別され、心不全に先行する心筋弱化の徴候が得られる。
【0159】
収縮期心不全の為のSENCアプリケーション
図16は、SENC検査を利用して、収縮期心不全のリスク因子を有する患者の診断及び管理を行う為の決定木を示す。心不全に進行する状態に患者を追い込む心筋機能障害になりやすい患者を、SENC検査で評価することが可能である。
【0160】
心不全のリスク因子を有する患者が識別される(ブロック500)。
【0161】
心筋機能障害の疑い?(ブロック502)
【0162】
冠動脈疾患がない患者(ブロック504)
【0163】
冠動脈疾患の症状がある患者(ブロック505)
【0164】
SENCストレイン検査で心筋機能障害が検出された?(ブロック506)
【0165】
SENCストレス検査で心筋虚血が検出された?(ブロック507)
【0166】
心筋虚血を軽減する管理及び標的型処置(例えば、血管再生)(ブロック509)
【0167】
心筋機能を改善する管理及び標的型処置(ブロック510)
【0168】
SENCストレイン検査。心筋機能に対する管理及び/又は処置計画の影響を評価する(ブロック511)
【0169】
冠動脈疾患の症状又は徴候がある患者の検査は、安静時と、薬理学的薬剤、又は完全に非侵襲的な方法(例えば、運動、バルサルバなどの方法、又は他の、収縮性を上げる技術)によるストレス下でのSENCストレインイメージングにより、行われてよい。上述のように、安静時とストレス下でのストレイン測定値の差によって、心筋虚血及び/又は心筋生育可能性が識別される。心筋虚血の程度は、冠動脈狭窄と互いに関係があり、更なる評価の必要性、並びに経皮冠動脈インターベンション又は冠動脈バイパス術による血管再生の可能性を示す。弱化した心筋の、ストレス下でのストレインの改善(例えば、安静状態からストレス下状態にかけてのストレインの減少)は、安静時に心筋収縮の弱化が示されているにもかかわらず、ストレス下で心筋収縮が改善していることを特徴づけていることから、心筋に生育可能性があることを示している。
【0170】
SENCストレス検査では更に、ストレインマップが生成され、これは、以前の梗塞、又は他の、心筋の収縮性を低減させる共存症に起因すると考えられる心筋弱化を識別する心筋機能障害を明らかにする。ストレスマップ及びストレインマップは、虚血及び心筋機能障害の程度及び場所に基づいて、患者の管理又は標的型処置を方向づける。血管再生又は医療管理後にインターベンションが保証されていない場合には、心臓のリモデリング及び心筋収縮性の改善を確認する為に、心筋機能に対する処置の影響が、ストレインマッピングを繰り返すことによって評価される。
【0171】
冠動脈疾患の症状又は徴候、或いは虚血以外の症状又は徴候がない患者の心筋の潜在性機能障害がストレインマッピングにより評価される。心筋機能障害の程度により、管理及び適応処置が指示される。
【0172】
図17は、心不全の進行を防ぐか、遅らせるか、且つ/又は中断させる為に、定量化されたSENCストレイン値及びストレインマッピングに基づいて患者管理を適応させる為の決定木を示す。
【0173】
心不全のリスク因子(例えば、高血圧、冠動脈疾患、弁疾患、糖尿病など)を有する患者が評価対象として識別される(ブロック600)。
【0174】
心筋機能障害の疑い(例えば、症状、定期評価、投薬変更、診断など)(ブロック602)
【0175】
SENCストレイン検査。グローバルストレイン(GS)を測定して心筋機能障害を定量化する(ブロック604)
【0176】
GS<-17%(ブロック606)
【0177】
-17%<GS<-10%(ブロック607)
【0178】
-10%<GS(ブロック608)
【0179】
機能する心筋を維持する(ブロック610)
【0180】
心筋弱化を防ぐ(ブロック611)
【0181】
心不全の悪化を防ぐ(ブロック612)
【0182】
リスク因子の低減(例えば、患者教育、食事制限、減量、脂質異常症など)(ブロック613)
【0183】
医療管理(例えば、ACE阻害剤、ATブロッカー、βブロッカー、利尿薬、ジゴキシン、アルドステロン、拮抗薬など)(ブロック614)
【0184】
標的型処置(例えば、心臓の再同期化、弁、処置、血管再生、VAD、移植など)(ブロック615)
【0185】
標的型処置及びリスク因子低減は、最初のSENCストレイン検査(604)の後に更なるSENCストレイン検査を実施することによって再評価されることが可能である。
【0186】
グローバルストレイン値及び区分ストレイン値が-17%以下であることで示されるようにストレインが正常な患者は、良好な心筋機能を維持するように、且つ、リスク因子低減を進めて心筋弱化を防ぐように管理されることが可能である。
【0187】
ストレインが-10%と-17%の間である患者は、可逆的ではあるが放置されると心不全に進行しやすい心筋弱化によって特徴づけられる。可逆的な心筋弱化がある患者は、収縮性を増大させ、心筋機能の低下につながるリスク因子又は潜在的条件に対処するように、医療的に、又は標的型処置により管理される。リスク因子を予防的に低減し、心不全を防ぐことが示されている薬剤を処方し、且つ/又は、心機能障害を引き起こしたリスク因子又は疾患を緩和するインターベンションを照会することにより、損傷が永続化する前に逆リモデリングが促進される。例えば、50%を超える正常駆出率を有し、拡張機能が正常であっても、グローバルストレインが(-10%と-17%の間の)-12%であり、中度又は重度の逆流を伴う僧帽弁疾患の病歴がある患者は、心不全が発生したり損傷が永続化したりする前に、進行性機能障害を引き起こす潜在的条件に対処すべく、僧帽弁の修復又は置換の評価の為に専門機関を紹介されてよい。
【0188】
ストレイン検査を繰り返して、又は定期的に行うことにより、可逆的な心筋機能障害に対する医療管理又は標的型処置の影響を評価することが可能である。処方された薬剤及び/又は用量を滴定することにより、シーケンシャルストレインマップからの指針に沿って心筋機能の向上を最適化することが可能である。ストレイン値が下がっているか、異常範囲内で同じままである場合には、処方された薬剤、用量、又は組み合わせ薬剤療法の変更を利用して、心筋又は収縮性自体の弱化を引き起こした潜在的条件の逆リモデリング及び改善を促進することが可能である。
【0189】
心筋機能に対する標的型処置(例えば、カテーテル又は外科的インターベンション)の影響をストレインマップにより定量化することによって、潜在的疾患と、心筋弱化、又はインターベンションの質との関係を特定すること、並びにその後の医療管理又は標的型処置を決定することが可能である。
【0190】
標的型処置後の周術期の間(例えば、30日以内)にストレインマッピングを利用して、任意の処置に関連する有害事象を予測することも可能である。例えば、心膜滲出や胸膜滲出は、心臓の周囲の圧力を高めることにより心機能障害を引き起こす可能性がある。心筋機能障害の定量化によって、タンポン挿入様急性心臓圧迫が起こる前の進行作用の早期指標を示すことが可能であり、これによって早期の医療管理を行うことで、緊急排出を不要にしたり、結果として起こりうる有害な後遺症を回避したりできるようになる。
【0191】
グローバルストレインが-10%を超える患者は、心筋機能障害が不可逆的になるところまで進行する心不全を有している可能性がある。このような患者は、結果として全身作用が起こる前、且つ/又は合併症が発生する前に、心不全の悪化を遅らせるか中断して、より積極的なインターベンションの開始を導くように、医療的に、又は標的型処置により管理されることが可能である。
【0192】
心不全が既にあって何らかのタイプのインターベンションを受けている患者は、駆出率が低減されているかどうかにかかわらず、合併症のリスクが著しく高い。駆出率が正常であっても心筋機能が深刻に衰退していることを識別することにより、有害事象、又は心不全の悪化を防ぐように患者の管理を慎重に行う為の指標が得られる。術前期及び周術期のストレインマッピングに基づいて術中期及び周術期の管理を進めることにより、心筋機能障害を気づかずに悪化させる薬剤を投与することがなくなる。例えば、既にある心筋弱化に起因して心不全が発症するという患者の傾向を知ることにより、利尿薬を利用して体液過剰の作用を防ぐことが促進され、方向づけられる。体液過剰は、インデックス処置中に血圧を維持する為の体液の注入に関連し、腎機能障害を引き起こすか、腎機能障害によって引き起こされる可能性がある。
【0193】
先に進行性且つ継続的な、弱化した心筋の機能障害があって心不全が悪化した患者は、心室補助装置療法や心臓移植などの積極的なインターベンションの候補になりうる。深刻な心筋弱化の結果として起こる全身損傷の前に、ストレインマッピングを使用して、そのような処置モダリティの開始を導くことが可能である。積極的なインターベンションを正当化するストレイン尺度が得られることにより、定量化可能な診断情報に基づく処置が標準化され、心筋損傷の程度の主観的評価、或いは壁運動の主観的な描写によって得られる駆出率のような正確さに欠ける指標が最小限に抑えられる。
【0194】
収縮期心不全と拡張期心不全とを区別するSENCアプリケーション
SENCイメージングでは、収縮期機能障害(即ち、収縮の弱化)と拡張期機能障害(即ち、弛緩不足による心筋のこわばり)の両方を測定することが可能である。
【0195】
図18は、SENCイメージングを用いて、患者のストレイン及びストレインレートの両方を測定して、心筋の健康状態の悪化の原因に無関係に心不全の程度及びリスクを定量化することを示すブロック図である。これは、収縮期心不全を示す、駆出率が低下した心不全のリスクがある患者と、拡張期心不全を示す、駆出率が維持されている心不全のリスクがある患者とを含む。
【0196】
心不全のリスク因子を有する患者が評価対象として識別される(ブロック700)。
【0197】
心筋機能障害の疑い(例えば、症状、定期評価、投薬変更、診断など)(ブロック702)
【0198】
収縮期機能障害の疑い。駆出率が低下した心不全(ブロック704)。
【0199】
拡張期機能障害の疑い。駆出率が維持されている心不全(ブロック705)。
【0200】
SENCストレイン検査。グローバルストレイン(GS)を測定して収縮期の心筋収縮性を定量化する(ブロック706)
【0201】
SENCストレインレート検査。グローバルストレインレートを測定して拡張期の心筋弛緩を定量化する(ブロック707)
【0202】
収縮期機能障害の程度及び可逆性を評価する(ブロック708)
【0203】
新たな心不全又は心不全の悪化を防ぐように医療管理及び標的型処置を適応させる(ブロック710)
【0204】
心筋収縮を定量化するストレインと、心筋弛緩を定量化するストレインレートとを定量化して比較することが可能であることにより、心不全のタイプを明らかにして、リスク軽減、医療管理、及び/又は標的型処置の計画を方向づけることが可能になる。ストレイン及びストレインレートの両方を測定し、これを、正常組織と異常組織とを区別し、更に異常組織が可逆的か不可逆的かを明らかにする為に示されているグローバル値と比較することにより、いずれのタイプの心不全においても予後が芳しくない、駆出率の変化が識別される時点より前に適切な管理ストラテジを採用することが可能になる。
【0205】
本発明の実施形態
本明細書に記載の方法は、本件のシステム、プロセス、又は他の手段により実施されてよい。本方法は、適切なシステム又はプロセスを提供する行為を全て含んでよい。そのような提供は、エンドユーザによって実施されてよい。言い換えると、(例えば、「SENCイメージングシステム」を)「提供する」ことは、本件の方法に必要なシステムを提供する為の取得、アクセス、アプローチ、配置、セットアップ、活性化、電源投入、又は他の行為を行うことをエンドユーザに求めることに過ぎない。本明細書に記載の方法は、記載されたイベント順序で実施されるだけでなく、論理的に可能であれば記載のイベントが任意の順序で実施されてよい。更に、本発明の変形形態は、変形しやすいと考えられる他の軟組織、例えば、大動脈(上行大動脈又は下行大動脈)、肺組織、胸部組織、肝臓、胃腸系解剖学的構造、又は他の軟組織に対して、がん性腫瘍、解剖学的構造の断片の石灰化、又は他の、変形の差異を評価することによって識別可能な組織特性の変化を引き起こす変質を識別する為のイメージングを行うことに使用可能である。
【0206】
実施形態の変形形態
本発明の例示的変形形態が記載されている。これらの例の参照は限定ではない。本発明の適用可能な実施形態をより広義に例示する実施例を示されている。本発明の真の趣旨及び範囲から逸脱しない限り、記載された本発明が変更されてよく、等価物に置き換えられてよい。特定の状況、アルゴリズム、システム構成要素、プロセス、又はステップを本発明の目的、趣旨、又は範囲に適応させる修正が行われてよい。そのような修正は全て、本明細書において行われている特許請求の範囲に含まれるものとする。ここまで、本発明の例示的態様を、構成要素の選択、アルゴリズムの設計、及びシステムの構成に関する詳細とともに説明してきた。本発明の他の詳細に関しては、上記で参照した特許及び特許公開との関連で理解されるであろうし、当業者であれば一般的に知られているか、理解されるであろう。
【0207】
一般的又は論理的に用いられる追加動作に関する限り、同じことが、本発明の方法ベースの態様についても当てはまるであろう。更に、任意選択で様々な特徴を含んでいる幾つかの実施例に関して本発明を説明してきたが、本発明は、本発明の各変形形態に関して想定されているように説明又は提示されたものに限定されるものではない。本発明の真の趣旨及び範囲から逸脱しない限り、記載された本発明には様々な変更が施されてよく、(本明細書に記載されているか、何らかの簡潔さの為に含まれていないかにかかわらず)等価物に置き換えられてよい。更に、ある値の範囲が示されている場合は、その範囲の上限と下限との間にある全ての介在値、並びに、その述べられた範囲の他の任意の述べられた値又は介在値が本発明に包含されるものと理解されたい。
【0208】
更に、記載された本発明の変形形態の任意選択の特徴が、個別に、或いは、本明細書に記載の特徴のうちの任意の1つ以上の特徴との組み合わせで説明及び特許請求されてよいと考えられている。単数のアイテムへの参照は、同じアイテムが複数存在する可能性を包含する。より具体的には、本明細書、及び添付の特許請求の範囲において使用される単数形「a」、「an」、「said」、及び「the」は、特に別の意味で述べられない限り、複数の指示物を包含する。言い換えると、これらの冠詞の使用は、上述の明細書、並びに後述の特許請求の範囲において、対象アイテムのうちの「少なくとも1つ」を考慮に入れる。更に、特許請求の範囲が、任意選択の要素を全て除外するように書かれうることに注意されたい。従って、本明細書は、特許請求の範囲の構成要素の記述、又は「否定的」限定の使用に関連して「唯一(solely)」、「のみ(only)」などのような排他的術語を使用する為の先行詞として働くものとする。
【0209】
そのような排他的術語が使用されない場合、請求項における「含む(comprising)」という語は、与えられた数の要素が請求項において列挙されているかどうかにかかわらず、任意の追加要素を含むこと、又は、ある特徴の追加が、請求項に記載されている要素の性質を変えるものと見なされうることを考慮に入れるものとする。
〔付記1〕
医療用ワークステーションであって、
少なくとも1つのディスプレイと、
少なくとも一部がMRIスキャナのオンボードにあるか前記MRIスキャナと通信していて、前記少なくとも1つのディスプレイと通信している回路と、を含み、前記回路は少なくとも1つのプロセッサを含み、
前記回路は、患者の心臓の長軸プレーン及び短軸プレーンの複数のMRIイメージ系列を取得し、前記各MRIイメージ系列は、アクティブスキャン時間が5分以下であって前記患者が前記MRIスキャナのボア内にいるイメージセッションの間に、前記患者の前記心臓の別々の単一心拍にわたって取得され、
前記回路は、前記患者の前記心臓の前記複数のMRIイメージ系列に基づいて、前記患者の前記心臓の心筋心臓組織のストレインを測定し、
前記回路は、複数の隣り合う区画を有する長軸方向及び円周方向の心臓モデルを生成し、前記区画は前記測定されたストレインに基づいて色分けされている、
ワークステーション。
〔付記2〕
前記少なくとも1つのプロセッサを有する前記回路は、前記MRIスキャナに対し、前記複数のMRIイメージ系列を、前記長軸プレーン及び前記短軸プレーンである、前記心臓の別々の6つのプレーンから、心臓ゲーティングを必要としない自由呼吸イメージとして捕捉するように指示し、前記少なくとも1つのプロセッサを有する前記回路は、前記別々の長軸プレーン及び短軸プレーンに対して前記MRIイメージ系列のそれぞれの動画を生成し、前記少なくとも1つのディスプレイに前記MRIイメージの前記動画を表示させ、前記MRIイメージの前記動画における前記心筋心臓組織は、心周期全体にわたるストレイン変形の量に基づいて、時間とともに変化する色を用いてストレイン測定値を示す、付記1に記載のワークステーション。
〔付記3〕
前記ストレイン測定値は、前記心臓モデルにおいて、心筋収縮性の5つの状態、即ち、過収縮、正常収縮、低収縮、無収縮、及び収縮不全を表すように色分けされている、付記1に記載のワークステーション。
〔付記4〕
前記少なくとも1つのプロセッサを有する前記回路は、前記少なくとも1つのディスプレイに、前記複数の心臓モデルを前記ストレイン測定値とともに同時に表示させ、前記少なくとも1つのプロセッサを有する前記回路は更に、可逆的心筋機能障害に対応する第1のユニバーサルストレイン値と、不可逆的心筋機能障害に対応する第2のユニバーサルストレイン値とを識別する視覚的参照バーを生成して、前記少なくとも1つのディスプレイに同時に表示させる、付記1に記載のワークステーション。
〔付記5〕
前記少なくとも1つのプロセッサを有する前記回路は、前記少なくとも1つのディスプレイに、前記生成された複数の心臓モデルを、前記測定されたストレインとともに同時に表示させ、同時に表示される前記生成された心臓モデルは、円周方向ストレインに関して、3チャンバ心臓モデル、4チャンバ心臓モデル、及び2チャンバ心臓モデルを、前記測定されたストレインとともに含む、付記1に記載のワークステーション。
〔付記6〕
前記3チャンバ心臓モデル、前記4チャンバ心臓モデル、及び前記2チャンバ心臓モデルは、心基部下外側区画、中央部下外側区画、心尖部側部区画、心基部前壁中隔区画、中央部前壁中隔区画、心尖部前部区画、及び心尖端に関連付けられた、隣り合う少なくとも7つの区画を示し、各区画は測定されるストレイン値が異なってよい、付記5に記載のワークステーション。
〔付記7〕
前記同時に表示される心臓モデルは、心基部領域、中央部領域、及び心尖部領域を有する長軸方向ストレイン区画モデルを含み、前記心基部領域及び前記中央部領域は、それぞれが、前部区画、前壁中隔区画、下壁中隔区画、下部区画、下外側区画、及び前外側区画を含み、前記心尖部領域は、前部区画、中隔区画、下部区画、及び側部区画を含む、付記5に記載のワークステーション。
〔付記8〕
前記少なくとも1つのプロセッサを有する前記回路は、前記MRIスキャナに対し、前記患者の前記心臓の前記複数の前記MRIイメージ系列を取得する為のパルスシーケンスを生成して、以下のように定義されたエンコーディング出力(w_0)、低チューニング(w_L)、及び高チューニング(w_H)により前記ストレインを測定するように指示し、
w_0=(1+s_max)×(1+s_min)/(s_max-s_min)×1/H
w_L=(1+s_min)/(s_max-s_min)×1/H
w_H=(1+s_max)/(s_max-s_min)×1/H
条件としてs_max<1+2.s_minであり、Hはmm単位のスライス厚さである、付記1に記載のワークステーション。
〔付記9〕
前記少なくとも1つのプロセッサを有する前記回路は更に、
横断プレーン、矢状プレーン、及び冠状プレーンから前記心臓のMRIイメージ系列を取得して、前記心臓の疑似2チャンバビューを生成して、MRスキャナのボア内にいる前記患者の前記心臓の向きを特定し、
前記取得されたMRIイメージから疑似2チャンバプレーン又は疑似4チャンバプレーンを識別し、
単一心拍にわたって前記疑似2チャンバプレーン又は前記疑似4チャンバプレーンからMRIイメージ系列を取得し、
前記疑似2チャンバプレーンの前記MRIイメージ系列から疑似2チャンバストレインエンコーデッド動画を生成するか、前記疑似4チャンバプレーンの前記MRIイメージ系列から疑似4チャンバストレインエンコーデッド動画を生成し、そして、
前記疑似2チャンバストレインエンコーデッド動画から疑似4チャンバプレーンを識別するか、前記疑似4チャンバストレインエンコーデッド動画から疑似2チャンバプレーンを識別し、
前記疑似2チャンバストレインエンコーデッド動画からの3つの短軸イメージングプレーンを、前記計算されたストレイン測定値に対応する前記複数の前記MRIイメージ系列の前記短軸プレーンとして識別し、
前記3つの識別された短軸プレーンの前記MRIイメージ系列から、短軸心基部(SAB)、短軸中央部(SAM)、及び短軸心尖部(SAA)のストレインエンコーデッド動画を生成し、
前記疑似2チャンバストレインエンコーデッド動画からの3つの長軸イメージングプレーンを、前記ストレイン測定値に対応する前記複数のMRIイメージ系列の前記長軸方向プレーンとして識別する、
付記1に記載のワークステーション。
〔付記10〕
前記少なくとも1つのプロセッサを有する前記回路は、
前記疑似2チャンバプレーン及び/又は前記疑似2チャンバストレインエンコーデッド動画から前記MRIイメージ系列を検索して、トータル強度信号が最大となる時点のMRIイメージを識別して、前記心周期のうちの収縮末期に近い区分を識別し、
前記疑似4チャンバプレーンの識別の為に左心室を分割する線を予測し、
前記3つの短軸プレーンの識別の為に左心室を分割する3本の線を予測する、
付記9に記載のワークステーション。
〔付記11〕
前記疑似2チャンバプレーン及び/又は前記疑似2チャンバストレインエンコーデッド動画のうちの、前記最大トータル強度信号を有する前記MRIイメージを識別する為の前記MRIイメージ系列は、高チューニングローストレインエンコーデッドMRIイメージである、付記10に記載のワークステーション。
〔付記12〕
前記少なくとも1つのプロセッサを有する前記回路は、
前記患者の前記心臓の心筋領域のアクティブ形状モデル(ASM)を、形状と複数の節又は点により作成し、
心筋マスクの作成を、心筋マスク及び血液プールマスクを含む2つのバイナリマスクを組み合わせて前記患者の前記心臓の前記心筋の場所を検出することによって行い、
収縮末期の前記心筋を表す蓄積(ACC)イメージを生成し、
前記ACCイメージを前記心筋マスクと相互に関連付けて、前記心筋の場所を特定し、
前記ASMを使用し、前記相関を、前記ASMが様々な長軸スライス及び短軸スライスの前記MRIイメージ系列を取得する為の初期化として、前記心周期にわたって前記心筋を追跡する、
付記1に記載のワークステーション。
〔付記13〕
前記少なくとも1つのプロセッサを有する前記回路は、前記長軸プレーン及び短軸プレーンからの前記MRIイメージスライス系列を使用して、拡張期ストレインレートを、前記測定されたストレインから、又は前記測定されたストレインとして、計算する、付記1に記載のワークステーション。
〔付記14〕
前記少なくとも1つのプロセッサを有する前記回路は更に、
心筋心臓組織の定義された区分のストレイン測定値を時間の関数として取得して前記測定されたストレインとし、
前記ストレイン測定値の第1の導関数を時間の関数として計算し、
前記計算された第1の導関数の正の最大値を拡張期ストレインとして特定する、
付記1に記載のワークステーション。
〔付記15〕
前記測定されたストレインは、第1のストレイン測定値セットを含み、前記生成された長軸方向及び円周方向の心臓モデルは、前記長軸方向及び円周方向の心臓モデルの第1のセットであり、
前記少なくとも1つのプロセッサを有する前記回路は、物理的な、又は化学的に引き起こされたストレス課題の後の患者の心臓の長軸プレーン及び短軸プレーンの第2の複数のMRIイメージ系列を取得し、前記各MRIイメージ系列は、アクティブスキャン時間が5分以下であって前記患者が前記MRIスキャナのボア内にいるイメージセッションの間に、前記患者の前記心臓の別々の単一心拍にわたって取得され、
前記少なくとも1つのプロセッサを有する前記回路は、前記患者の前記心臓の前記第2の複数のMRIイメージ系列に基づいて、前記患者の前記心臓の心筋心臓組織の局所ストレイン測定値及びグローバルストレイン測定値の第2のセットを取得し、
前記少なくとも1つのプロセッサを有する前記回路は、
前記複数の隣り合う区画を有する前記長軸方向及び円周方向の心臓モデルの課題後セットであって、前記区画は、前記第2のMRIイメージスライス系列からの前記ストレイン測定値に基づいて色分けされている、前記課題後セット、又は
前記複数の隣り合う区画を有する前記長軸方向及び円周方向の心臓モデルの課題後セットであって、前記区画は、前記第1のストレイン測定値のセットと前記第2のストレイン測定値のセットの間の差に基づいて色分けされている、前記課題後セット
のうちの少なくとも一方を生成する、
付記1に記載のワークステーション。
〔付記16〕
前記少なくとも1つのプロセッサを有する前記回路は、両方の前記長軸方向及び円周方向の心臓モデルの前記課題後セットを生成し、前記少なくとも1つのディスプレイに両方の前記課題後セットを、前記第1の心臓モデルセットとともに同時に表示させる、付記15に記載のワークステーション。
〔付記17〕
前記課題は、必要な心拍上昇が毎分10拍でしかない低ストレス課題であり、前記少なくとも1つのプロセッサを有する前記回路は、前記課題後に低ストレス課題に基づいて前記第1のストレイン測定値セットと前記第2のストレイン測定値セットとを比較することが可能である、付記15に記載のワークステーション。
〔付記18〕
前記少なくとも1つのプロセッサを有する前記回路は、前記心臓のチャンバ間の心臓収縮の非同期性、及び/又は前記患者の前記心臓の1つの心臓チャンバにおける心臓収縮の非同期性を、心周期全体にわたるストレインの空間的不均一性に基づいて評価する、付記1に記載のワークステーション。
〔付記19〕
前記少なくとも1つのプロセッサを有する前記回路は、前記心臓の様々な場所において、前記心周期中の様々な時点で取得された前記ストレイン測定値から、前記心周期中の時間に対するピーク短縮の分散に基づいて、前記心臓の区分及び/又はチャンバに関して計算された0と1の間の数値(「0」は完全非同期を表し、「1」は完全同期を表す)に基づいて非同期性を識別する、付記18に記載のワークステーション。
〔付記20〕
前記回路は、グローバルストレイン測定値を計算し、これを、正常組織と異常組織とを区別して、異常組織が可逆的か不可逆的かを明らかにする為に示されている所定のグローバル値と比較する、付記1に記載のワークステーション。
〔付記21〕
心機能を迅速に評価する方法であって、
患者をMRIスキャナのボア内に配置するステップと、
横断プレーン、矢状プレーン、及び冠状プレーンからストレインエンコーデッド(SENC)MRIイメージのプランニングビューを電子的に取得して、前記心臓の疑似2チャンバビューを生成して、前記MRスキャナのボア内にいる前記患者の前記心臓の向きを特定するステップと、
前記SENCイメージの前記取得されたプランニングビューから疑似2チャンバ又は疑似4チャンバイメージングプレーンを電子的に識別するステップと、
単一心拍にわたって前記疑似2チャンバイメージングプレーン又は前記疑似4チャンバイメージングプレーンからMRIイメージ系列を電子的に取得するステップと、
前記単一心拍にわたる前記疑似2チャンバ又は前記疑似4チャンバイメージングプレーンからの前記MRIイメージ系列からの高チューニングローMRIイメージから、トータル強度信号が最大であるMRIイメージを、収縮末期(前記心臓の最大収縮)に関連付けられるMRIイメージスライスであるとして電子的に識別するステップと、
収縮末期に関連付けられる前記識別されたMRIイメージに基づいて3つの短軸イメージングプレーンを電子的に識別するステップと、
収縮末期に関連付けられる前記識別されたMRIイメージから3つの長軸イメージングプレーンを電子的に識別するステップと、
前記3つの短軸イメージングプレーン及び前記3つの長軸イメージングプレーンのそれぞれについて第1のMRIイメージ系列を電子的に取得するステップであって、前記3つの短軸イメージングプレーン及び前記3つの長軸イメージングプレーンの前記第1のMRIイメージ系列のそれぞれは、イメージセッションの間に前記患者の前記心臓の別々の単一心拍にわたって取得され、前記イメージングプレーンの前記プランニングMRIイメージ及び前記第1のMRIイメージ系列は、5分未満のアクティブスキャン時間で、前記患者を前記MRIスキャナの前記ボア内に5分以上は置かずに取得される、前記ステップと、
前記患者の前記心臓の前記3つの短軸イメージングプレーン及び前記3つの長軸イメージングプレーンのそれぞれについての前記取得された第1のMRIイメージ系列に基づいて、前記患者の前記心臓の心筋心臓組織の局所ストレイン測定値及びグローバルストレイン測定値の第1のセットを電子的に生成するステップと、
前記第1のストレイン測定値セットに基づいて色分けされている、複数の隣り合う区画を有する長軸方向及び円周方向の心臓モデルを、患者が前記磁石の前記ボアから出ている15分以内に電子的に生成し、これによって心機能を迅速に評価するステップと、
を含む方法。
〔付記22〕
前記プランニングビュー及び前記取得された第1のMRIイメージングビュー系列は、自由に呼吸しているMRIイメージであり、従って、呼吸を止めての信号捕捉又は心臓ゲーティングが不要であり、前記第1のMRIイメージ系列は、患者が前記磁石の前記ボア内に1~3分いれば取得される、付記21に記載の方法。
〔付記23〕
前記患者にストレス課題を提示するステップと、
前記3つの短軸イメージングプレーン及び前記3つの長軸イメージングプレーンのそれぞれについて第2のMRIイメージ系列を電子的に取得するステップであって、前記3つの短軸イメージングプレーン及び前記3つの長軸イメージングプレーンの前記第2のMRIイメージ系列のそれぞれは、アクティブスキャン時間が5分未満であって前記患者が前記MRIスキャナの前記ボア内にいるイメージセッションの間に、前記患者の前記心臓の別々の単一心拍の心周期にわたって取得される、前記ステップと、
前記患者の前記心臓の前記3つの短軸イメージングプレーン及び前記3つの長軸イメージングプレーンのそれぞれについての前記取得された第2のMRIイメージ系列に基づいて、前記患者の前記心臓の心筋心臓組織の局所ストレイン測定値及びグローバルストレイン測定値の第2のセットを電子的に生成するステップと、
前記第2のストレイン測定値セットに基づいて色分けされている、複数の隣り合う区画を有する長軸方向及び円周方向の心臓モデルを、患者が前記磁石の前記ボアから出ている15分以内に電子的に生成するステップと、
を更に含む、付記21に記載の方法。
〔付記24〕
前記複数の隣り合う区画を有する前記長軸方向及び円周方向の心臓モデルの課題後セットであって、前記区画は、前記第1のストレイン測定値のセットと前記第2のストレイン測定値のセットの間の差に基づいて色分けされている、前記課題後セットを電子的に生成するステップを更に含む、付記23に記載の方法。
〔付記25〕
前記第1及び第2のストレイン測定値セットを有する前記心臓モデルと、前記心臓モデルの前記様々な区画のストレイン値の変化に基づく心臓モデルの課題後セットとを同時に表示するステップを更に含む、付記24に記載の方法。
〔付記26〕
前記ストレス課題は、必要な心拍上昇が毎分10拍でしかない低ストレス課題である、付記23に記載の方法。
〔付記27〕
前記患者の、前記心臓のチャンバ間の心臓収縮の非同期性、及び/又は前記心臓の1つの心臓チャンバにおける心臓収縮の非同期性を、心周期全体にわたるストレインの空間的不均一性に基づいて電子的に評価するステップを更に含む、付記21に記載の方法。
〔付記28〕
前記心臓の様々な場所において、前記心周期中の様々な時点で取得された前記第1のストレイン測定値セットから、前記心周期中の時間に対するピーク短縮の分散に基づいて、前記心周期の時間周期全体にわたって前記心臓モデルの全ての区分について非同期性を電子的に計算するステップを更に含む、付記21に記載の方法。
〔付記29〕
MRIスキャンセッションの間に患者の心臓をモニタリングする方法であって、
単一心拍にわたるMRIスキャンセッションの間に患者のターゲット解剖学的構造のMRIイメージ系列を電子的に取得するステップと、
前記MRIスキャンセッションの間に前記患者の心臓のストレインエンコーデッド(SENC)MRIイメージ系列を電子的に取得するステップと、
前記スキャンセッションの間に前記患者の前記心臓の状態を電子的に自動的にモニタリングして、前記スキャンセッションの間に、前記取得されたSENC MRIイメージに基づいて潜在的有害心臓事象を検出するステップと、
潜在的有害心臓事象が検出された場合にアラートを電子的に自動的に発生させるステップと、
を含む方法。
〔付記30〕
心臓の機能障害又は損傷を識別する方法であって、
前記心臓の様々なチャンバ、又は前記心臓の様々な領域のストレイン測定値を比較して、心周期全体にわたるストレインの空間不均一性に基づいて非同期性を識別するステップ
を含む方法。
〔付記31〕
心臓の状態を評価する方法であって、
長軸プレーン及び短軸プレーンからの心臓のストレインエンコーデッド(SENC)MRIイメージ系列を使用して、前記患者の前記心臓の拡張期ストレイン測定値を電子的に算出して、心臓の機能、障害、疾患、又は損傷のうちの少なくともいずれかを評価するステップ
を含む方法。
〔付記32〕
ワークステーションであって、
少なくとも1つのディスプレイと、
少なくとも一部がMRIスキャナのオンボードにあるか前記MRIスキャナと通信していて、前記少なくとも1つのディスプレイと通信している回路と、を含み、前記回路は少なくとも1つのプロセッサを含み、前記少なくとも1つのプロセッサを有する前記回路は、
患者の心臓の長軸プレーン及び短軸プレーンの複数のMRIイメージ系列を取得し、前記各MRIイメージ系列は、アクティブスキャン時間が5分未満であって前記患者が前記MRIスキャナのボア内にいるイメージセッションの間に、前記患者の前記心臓の別々の単一心拍にわたって取得され、
前記長軸プレーン及び前記短軸プレーンからの前記MRIイメージ系列を使用して、前記患者の前記心臓の収縮期及び拡張期のストレイン測定値を取得し、前記収縮期ストレイン測定値は負であり、前記拡張期ストレイン測定値は正であり、任意選択で、前記拡張期ストレイン測定は、時間の関数としての、ストレインの第1の導関数の計算を含む、
ワークステーション。
〔付記33〕
前記少なくとも1つのプロセッサを有する前記回路は、
心筋心臓組織の定義された区分のストレイン測定値を時間の関数として取得し、
前記ストレイン測定値の第1の導関数を時間の関数として計算し、
前記計算された第1の導関数の正の最大値を拡張期ストレインとして特定する、
付記32に記載のワークステーション。
〔付記34〕
患者の心臓のスキャンプレーンのプランニングを行う方法であって、
横断プレーン、矢状プレーン、及び冠状プレーンからストレインエンコーデッドMRIイメージを電子的に取得して、前記心臓の疑似2チャンバビューを生成して、前記MRスキャナのボア内にいる前記患者の前記心臓の向きを特定するステップと、
前記取得されたMRIイメージから疑似2チャンバプレーン又は疑似4チャンバプレーンを電子的に識別するステップと、
単一心拍にわたって前記疑似2チャンバプレーン又は前記疑似4チャンバプレーンからMRIイメージ系列を電子的に取得するステップと、
前記取得されたMRIイメージ系列を電子的に精査して、前記心周期のうちの収縮末期区分を表す、トータル強度信号が最大となる時点のMRIイメージを識別するステップと、
前記識別されたMRIイメージの左心室を分割する3本の線を予測して、3つの短軸イメージングプレーンを識別するステップと、
前記識別されたMRIイメージを通る分割線を予測して、3つの長軸イメージングプレーンを識別するステップと、
を含む方法。
〔付記35〕
前記疑似2チャンバプレーン、及び/又は前記疑似2チャンバプレーンからの前記MRIイメージ系列から生成された疑似2チャンバストレインエンコーデッド動画のうちの、前記最大トータル強度信号を有する前記MRIイメージスライスを識別する為に使用される前記MRIイメージ系列は、高チューニングローストレインエンコーデッド動画である、付記34に記載の方法。
〔付記36〕
前記疑似4チャンバプレーン、及び/又は前記疑似4チャンバプレーンからの前記MRIイメージ系列から生成された疑似4チャンバストレインエンコーデッド動画のうちの、前記最大トータル強度信号を有する前記MRIイメージスライスを識別する為に使用される前記MRIイメージ系列は、高チューニングローストレインエンコーデッド動画である、付記34に記載の方法。
〔付記37〕
心臓の迅速なMRIイメージングを行う方法であって、
ストレイン動画を捕捉する為の、前記心臓のカットの単一ビューからのSENCパルスシーケンスを電子的に提供し、その後、前記心臓のカットの多種多様なビューからの多種多様な動画を捕捉するステップであって、各動画は単一心拍以内に捕捉される、前記ステップ
を含む方法。
〔付記38〕
MRIイメージから筋収縮性を定量化する方法であって、
多種多様なSENCパルスシーケンスを電子的に送信するステップと、
前記心臓の複数のビューの前記SENCパルスシーケンスからストレイン動画を電子的に捕捉するステップと、
前記ストレイン動画から、心筋の個別区分におけるストレイン測定値を電子的に計算するステップと、
前記計算されたストレイン測定値に関連付けられた収縮性の度合いに基づいて、前記心臓の少なくとも1つのモデルにおける前記ストレイン値を色分けするステップと、
を含む方法。
〔付記39〕
患者の心臓の筋収縮性に対するストレスをMRIイメージから定量化する方法であって、
前記心臓の複数のビューのイメージを取得する為の多種多様なSENCパルスシーケンスを送信するステップと、
前記心臓の前記複数のビューの前記SENCパルスシーケンスからストレイン動画を捕捉するステップと、
前記ストレイン動画から、心筋の個別区分におけるストレイン値を電子的に自動的に計算するステップと、
前記患者にストレスがかけられた際の、少なくとも1つの心臓モデルの各区画における収縮性の低減を電子的に色分けして、冠動脈疾患に関連する血液灌流の減少を示すステップと、
を含む方法。
〔付記40〕
(ロー且つ/又は着色された)SENCイメージを使用してイメージングビューのプランニングを自動的に行うことにより、適切なイメージングビューを人間が識別することを必要とせずに、前記イメージングビューに対する複数の長軸プランニングビュー及び短軸プランニングビューに基づいて適切なイメージングビューを提供するプロセッサ
を含むMRIシステム。
〔付記41〕
自動的に、(ロー且つ/又は着色された)SENCイメージから、患者の心室の区分化を実施し、前記SENCイメージから前記患者の前記心室の寸法を測定する、少なくとも1つのプロセッサを含むMRIシステム。
〔付記42〕
解剖学的シーケンスと心筋のストレインシーケンスとを取得する為に集められるSENCロー心臓イメージの系列を生成する回路を有するMRIシステム用イメージング処理システムであって、心臓イメージの前記ストレインシーケンスは、ストレイン値の計算に対応する色分けされた周辺部又は区分を有し、前記ストレイン値は、ストレインレート、ストレイン平均値、又はストレイン代表値のうちの少なくとも1つを含む、イメージング処理システム。
図1
図2
図3
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図5-1】
図5-2】
図5-3】
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図11-1】
図11-2】
図12
図13-1】
図13-2】
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