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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20240419BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20240419BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240419BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20240419BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20240419BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240419BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20240419BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20240419BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/02 Z
H01M4/36 D
H01M4/587
H01M10/04 W
H01M10/052
H01M10/0566
H01M10/0587
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022038501
(22)【出願日】2022-03-11
(65)【公開番号】P2023132913
(43)【公開日】2023-09-22
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】松尾 雄太
(72)【発明者】
【氏名】林 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】寺内 真澄
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-055801(JP,A)
【文献】国際公開第2019/225161(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/089701(WO,A1)
【文献】特許第5190562(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13
H01M 4/02
H01M 4/36
H01M 4/587
H01M 10/04
H01M 10/052
H01M 10/0566
H01M 10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極及び負極を含む電極体と、
非水電解液と、
前記電極体および前記非水電解液を収容する電池ケースと、を備え、
前記負極は、負極芯体と、前記負極芯体の上に形成され、負極活物質を含む負極活物質層と、を含み、
前記負極活物質層は、水銀圧入法により得られるLog微分細孔容積分布において、細孔直径が0.50μm以上6.00μm以下の範囲に、第1ピークと、前記第1ピークよりも細孔直径が大きい第2ピークと、を有し、
前記第1ピークに相当する細孔の細孔容量が、6mL/g以上である、
二次電池。
【請求項2】
前記電極体は、帯状の前記正極と、帯状の前記負極とを、帯状のセパレータを介して捲回してなる扁平形状の捲回電極体であり、
前記正極の捲回軸方向の幅が、20cm以上である、
請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記第1ピークの強度Aと、前記第2ピークの強度Bとが、次の関係:
A/B=0.5~1.5;を満たす、
請求項1または2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記第2ピークの強度Bは、前記第1ピークの強度Aよりも大きい、
請求項1から3のいずれか1つに記載の二次電池。
【請求項5】
前記負極活物質層は、水銀圧入法により得られるLog微分細孔容積分布において、細孔直径が0.10μm以上0.50μm以下の範囲に、第3ピークをさらに有し、
前記第3ピークは、前記第1ピークよりも細孔直径が小さい、
請求項1から4のいずれか1つに記載の二次電池。
【請求項6】
前記負極活物質層は、水銀圧入法により得られるLog微分細孔容積分布において、細孔直径が0.50μm以上6.00μm以下の範囲に、前記第2ピークよりも細孔直径が大きい第4ピークをさらに有する、
請求項1から5のいずれか1つに記載の二次電池。
【請求項7】
前記負極活物質層は、前記負極芯体に近い負極下層と、前記負極下層よりも前記負極芯体から離れた負極上層と、を備え、
前記第1ピークに相当する細孔が、前記負極下層に存在し、
前記第2ピークに相当する細孔が、前記負極上層に存在する、
請求項1から6のいずれか1つに記載の二次電池。
【請求項8】
前記負極下層の充填密度は、前記負極上層の充填密度よりも大きい、
請求項7に記載の二次電池。
【請求項9】
前記負極上層の厚みに対する前記負極下層の厚みの比は、1.09~1.18である、
請求項7または8に記載の二次電池。
【請求項10】
前記負極下層は、前記負極活物質として第1黒鉛粒子を含み、
前記負極下層に含まれる前記負極活物質の総質量に対する、前記第1黒鉛粒子の質量が、80質量%以上であり、
前記負極上層は、前記第1黒鉛粒子および第2黒鉛粒子を含み、
前記負極上層に含まれる前記第1黒鉛粒子と前記第2黒鉛粒子との混合割合は、質量比で、8:2~6:4であり、
前記第2黒鉛粒子の平均粒子径(D50)は、前記第1黒鉛粒子の平均粒子径(D50)よりも大きい、
請求項7から9のいずれか1つに記載の二次電池。
【請求項11】
前記第1黒鉛粒子のタップ密度は、前記第2黒鉛粒子のタップ密度より大きい、
請求項10に記載の二次電池。
【請求項12】
前記第1黒鉛粒子の粒度分布幅は、前記第2黒鉛粒子の粒度分布幅よりも大きい、
ここで、粒度分布幅とは、次の式:(D90-D10)/D50(ただし、D10、D50、D90は、個数基準の粒子径分布において、積算値が、10%、50%、90%に相当する粒子径である。);で表される値をいう、
請求項10または11に記載の二次電池。
【請求項13】
前記第1黒鉛粒子のタップ密度は、1.10g/cm以上1.20g/cm以下であり、
前記第1黒鉛粒子の粒度分布幅は、3.73~4.87である、
ここで、粒度分布幅とは、次の式:(D90-D10)/D50(ただし、D10、D50、D90は、個数基準の粒子径分布において、積算値が、10%、50%、90%に相当する粒子径である。);で表される値をいう、
請求項10から12のいずれか1つに記載の二次電池。
【請求項14】
前記第2黒鉛粒子のタップ密度は、0.93cm以上1.09g/cm以下であり、
前記第2黒鉛粒子の粒度分布幅は、0.90~3.59である、
ここで、粒度分布幅とは、次の式:(D90-D10)/D50(ただし、D10、D50、D90は、個数基準の粒子径分布において、積算値が、10%、50%、90%に相当する粒子径である。);で表される値をいう、
請求項10から13のいずれか1つに記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解質二次電池等の二次電池はその普及に伴い、さらなる性能の向上が求められている。近年、エネルギー密度を向上する観点から、負極を高密度化することが検討されている。しかし、負極を高密度化すると、負極活物質粒子が潰れて粒子間の隙間が少なくなり、電解液の液回りが低下する。これに関連して、例えば特許文献1では、負極中の細孔分布を規定することで、高密度化された負極の吸液性の改良を図っている。また、負極に関連する従来技術文献として、特許文献2~6が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開2021/044482号
【文献】特開2016-009651号公報
【文献】特許第5246747号公報
【文献】特許第5673690号公報
【文献】特許第5787196号公報
【文献】特許第6120382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本発明者らの検討によれば、上記技術をもってしても負極設計時の性能指標の1つである高エネルギー密度化と電池生産時の生産性とを高水準で両立させることは難しかった。すなわち、高密度化された負極は、電池生産時の注液工程において、依然として含浸時間が長くかかり、注液タクトタイムが長くなるという課題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、非水電解液の含浸性に優れる負極を有する二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により、正極及び負極を含む電極体と、非水電解液と、上記電極体および上記非水電解液を収容する電池ケースと、を備える二次電池が開示される。上記負極は、負極芯体と、上記負極芯体の上に形成され、負極活物質を含む負極活物質層と、を含む。上記負極活物質層は、水銀圧入法により得られるLog微分細孔容積分布において、細孔直径が0.50μm以上6.00μm以下の範囲に、第1ピークと、上記第1ピークよりも直径が大きい側に位置する第2ピークと、を有し、上記第1ピークに相当する細孔の細孔容量が、6mL/g以上である。
【0007】
本発明では、細孔直径が0.50~6.00μmの範囲に第1ピークを有し、かつ、その細孔容量を所定以上とすることで、毛細管現象を利用して、負極活物質層の内部、特には表面から遠い深部にまで、非水電解液を素早く行き渡らせることができる。また、細孔直径が0.50~6.00μmの範囲に細孔直径が相対的に大きい第2ピークを有することで、負極活物質層内の空隙量を増やして、非水電解液に対する接触角を小さくし、濡れ性を向上することができる。したがって、上記2つのピークを有することで、非水電解液の吸液速度を良化し、負極活物質層への非水電解液の含浸性を向上できる。これにより、注液タクトタイムを短くして、電池の生産性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る電池を模式的に示す斜視図である。
図2図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。
図3】封口板に取り付けられた電極体群を模式的に示す斜視図である。
図4】1つの電極体を模式的に示す斜視図である。
図5】電極体の構成を示す模式図である。
図6】負極の構造を模式的に示す断面図である。
図7】水銀圧入法により得られるLog微分細孔容積分布の一例である。
図8】実施例1~3、比較例1,4のLog微分細孔容積分布である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、ここで開示される技術のいくつかの好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けない電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、本明細書において範囲を示す「A~B」の表記は、A以上B以下の意と共に、「好ましくはAより大きい」および「好ましくはBより小さい」の意を包含するものとする。
【0010】
なお、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等のいわゆる蓄電池と、電気二重層キャパシタ等のキャパシタと、を包含する概念である。
【0011】
<二次電池100>
図1は、二次電池100の斜視図である。図2は、図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。なお、以下の説明において、図面中の符号L、R、F、Rr、U、Dは、左、右、前、後、上、下を表し、図面中の符号X、Y、Zは、二次電池100の短辺方向、短辺方向と直交する長辺方向、上下方向を、それぞれ表すものとする。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、二次電池100の設置形態を何ら限定するものではない。
【0012】
図2に示すように、二次電池100は、電池ケース10と、電極体群20と、正極端子30と、負極端子40と、正極集電部50と、負極集電部60と、非水電解液(図示せず)と、を備えている。二次電池100は、ここではリチウムイオン二次電池である。
【0013】
電池ケース10は、電極体群20および非水電解液を収容する筐体である。電池ケース10は、ここでは扁平かつ有底の直方体形状(角形)の外形を有する。ただし、電池ケース10は、円筒形状や袋状等であってもよい。電池ケース10の材質は、従来から使用されているものと同じでよく、特に制限はない。電池ケース10は、金属製であることが好ましく、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等からなることがより好ましい。電池ケース10は、アルミニウムを含む金属層と、樹脂を含む融着層と、を有するアルミラミネートフィルムであってもよい。図2に示すように、電池ケース10は、開口12hを有する外装体12と、開口12hを封口する封口板(蓋体)14と、を備えている。電池ケース10は、本実施形態のように、開口12hを有する外装体12と、開口12hを封口する封口板14と、を備えることが好ましい。
【0014】
外装体12は、図1に示すように、底壁12aと、底壁12aから延び相互に対向する一対の長側壁12bと、底壁12aから延び相互に対向する一対の短側壁12cと、を備えている。底壁12aは、略矩形状である。底壁12aは、開口12hと対向している。短側壁12cの面積は、長側壁12bの面積よりも小さい。封口板14は、外装体12の開口12hを塞ぐように外装体12に取り付けられている。封口板14は、外装体12の底壁12aと対向している。封口板14は、平面視において略矩形状である。電池ケース10は、外装体12の開口12hの周縁に封口板14が接合(例えば溶接接合)されることによって、一体化されている。電池ケース10は、気密に封止(密閉)されている。
【0015】
図2に示すように、封口板14には、注液孔15と、排出弁17と、2つの端子引出孔18、19と、が設けられている。注液孔15は、外装体12に封口板14を組み付けた後、非水電解液を注液するためのものである。注液孔15は、封止部材16により封止されている。排出弁17は、電池ケース10内の圧力が所定値以上になったときに破断して、電池ケース10内のガスを外部に排出するように構成されている。端子引出孔18、19は、封口板14の長辺方向Yの両端部にそれぞれ形成されている。端子引出孔18、19は、封口板14を上下方向Zに貫通している。端子引出孔18、19は、それぞれ、封口板14に取り付けられる前の(かしめ加工前の)の正極端子30および負極端子40を挿通可能な大きさの内径を有する。
【0016】
非水電解液は従来と同様でよく、特に制限はない。非水電解液は、非水溶媒と支持塩(電解質塩)とを含有する。非水電解液は、必要に応じてさらに添加剤を含んでもよい。非水溶媒は、例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート類を含む。非水溶媒は、カーボネート類を含むことが好ましい。特に、環状カーボネートおよび鎖状カーボネートを含むことが好ましい。支持塩は、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)等のフッ素含有リチウム塩である。
【0017】
正極端子30は、封口板14の長辺方向Yの一方側の端部(図1図2の左端部)に配置されている。負極端子40は、封口板14の長辺方向Yの他方側の端部(図1図2の右端部)に配置されている。図2に示すように、正極端子30および負極端子40は、端子引出孔18、19を挿通して封口板14の内部から外部へと延びている。正極端子30および負極端子40は、封口板14に固定されている。正極端子30および負極端子40は、ここでは、かしめ加工により、封口板14の端子引出孔18、19を囲む周縁部分に、かしめられている。正極端子30および負極端子40の外装体12の側の端部(図2の下端部)には、かしめ部30c、40cが形成されている。
【0018】
図2に示すように、正極端子30は、外装体12の内部で、正極集電部50を介して電極体群20の正極22(図5参照)と電気的に接続されている。負極端子40は、外装体12の内部で、負極集電部60を介して電極体群20の負極24(図5参照)と電気的に接続されている。正極端子30は、内部絶縁部材80およびガスケット90によって封口板14と絶縁されている。負極端子40は、内部絶縁部材80およびガスケット90によって封口板14と絶縁されている。
【0019】
封口板14の外側の面には、板状の正極外部導電部材32および負極外部導電部材42が取り付けられている。正極外部導電部材32は、正極端子30と電気的に接続されている。負極外部導電部材42は、負極端子40と電気的に接続されている。正極外部導電部材32および負極外部導電部材42は、複数の二次電池100を相互に電気的に接続する際に、バスバーが付設される部材である。正極外部導電部材32および負極外部導電部材42は、外部絶縁部材92によって封口板14と絶縁されている。
【0020】
図3は、封口板14に取り付けられた電極体群20を模式的に示す斜視図である。電極体群20は、複数の電極体を有する。電極体群20は、ここでは3つの電極体20a、20b、20cを有する。ただし、1つの外装体12の内部に配置される電極体の数は特に限定されず、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。電極体20a、20b、20cは、ここでは並列に電気的に接続されている。電極体20a、20b、20cは、短辺方向Xに並んで配置されている。電極体20a、20b、20cは、それぞれ外形が扁平形状である。ただし、他の実施形態において、電極体20a、20b、20cは、外形が円筒形状等であってもよい。電極体20a、20b、20cは、ここでは、それぞれ捲回電極体である。電極体20a、20b、20cは、それぞれ捲回軸WL(図5参照)が長辺方向Yと略平行になる向きで、電池ケース10の内部に配置されている。電極体20aの捲回軸WLと直交する端面(言い換えれば、正極22と負極24とが積層された積層面)は、短側壁12cと対向している。
【0021】
図4は、電極体20bを模式的に示す斜視図である。なお、以下では電極体20bを例として詳しく説明するが、電極体20a、20cについても同様の構成とすることができる。電極体20bは、一対の湾曲部(R部)20rと、一対の湾曲部20rを連結する平坦部20fと、を有している。一方(図4の上側)の湾曲部20rは、封口板14と対向し、他方(図4の下側)の湾曲部20rは、外装体12の底壁12aと対向している。平坦部20fは、外装体12の長側壁12bと対向している。短辺方向Xに隣り合う電極体20a、20b、20cでは、平坦部20f同士が対向している。
【0022】
図5は、電極体20bの構成を示す模式図である。電極体20bは、正極22と、負極24と、セパレータ26と、を有する。電極体20bは、ここでは、帯状の正極22と、帯状の負極24とが、帯状のセパレータ26を介して積層され、捲回軸WLを中心として捲回されて構成されている。なお、捲回軸WL方向は、長辺方向Yと略平行の向きである。ただし、他の実施形態において、電極体20bは、複数枚の方形状(典型的には矩形状)の正極と、複数枚の方形状(典型的には矩形状)の負極とが、絶縁された状態で積み重ねられてなる積層型電極体であってもよい。
【0023】
正極22は従来と同様でよく、特に制限はない。正極22は、図5に示すように、正極芯体22cと、正極芯体22cの少なくとも一方の表面上に固着された正極活物質層22aおよび正極保護層22pと、を有する。ただし、正極保護層22pは必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。正極芯体22cは、帯状である。正極芯体22cは、金属製であることが好ましく、金属箔からなることがより好ましい。正極芯体22cは、ここではアルミニウム箔である。
【0024】
正極芯体22cの長辺方向Yの一方の端部(図5の左端部)には、複数の正極タブ22tが設けられている。複数の正極タブ22tは、長辺方向Yの一方側(図5の左側)に向かって突出している。複数の正極タブ22tは、セパレータ26よりも長辺方向Yに突出している。正極タブ22tは、ここでは正極芯体22cの一部であり、金属箔(アルミニウム箔)からなっている。正極タブ22tは、正極芯体22cの正極活物質層22aおよび正極保護層22pが形成されていない部分(芯体露出部)を有する。図2図4に示すように、複数の正極タブ22tは長辺方向Yの一方の端部(図2図4の左端部)で積層され、正極タブ群23を構成している。正極タブ群23は、正極集電部50を介して正極端子30と電気的に接続されている。正極タブ群23には、後述する正極第2集電部52が付設されている。
【0025】
正極活物質層22aは、図5に示すように、正極芯体22cの長手方向に沿って、帯状に設けられている。正極活物質層22aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な正極活物質を含んでいる。正極活物質としては、リチウム遷移金属複合酸化物を含むことが好ましい。具体例として、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、リチウムニッケルマンガン複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等が挙げられる。正極活物質層22aは、正極活物質以外の任意成分、例えば、バインダ、導電材、各種添加成分等を含んでいてもよい。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を使用し得る。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等の炭素材料を使用し得る。
【0026】
正極保護層22pは、図5に示すように、長辺方向Yにおいて正極芯体22cと正極活物質層22aとの境界部分に設けられている。正極保護層22pは、正極活物質層22aに沿って、帯状に設けられている。正極保護層22pは、無機フィラー(例えば、アルミナ)を含んでいる。正極保護層22pは、無機フィラー以外の任意成分、例えば、導電材、バインダ、各種添加成分等を含んでいてもよい。導電材およびバインダは、正極活物質層22aに含み得るとして例示したものと同じであってもよい。
【0027】
特に限定されるものではないが、車載用等として用いられるような高容量タイプの電池において、正極活物質層22aの長辺方向Yの長さ(平均長さ)La(図4も参照)は、20cm以上が好ましく、25cm以上がさらに好ましい。また、長辺方向Yの長さLaは、50cm以下が好ましく、40cm以下がより好ましい。通常、長辺方向Yの長さLaが長くなるほど、電極体20bの内部、特には長辺方向Yの中央部に、非水電解液が浸透しにくい。したがって、ここに開示される技術を適用することが殊に効果的である。
【0028】
負極24は、図5に示すように、負極芯体24cと、負極芯体24cの少なくとも一方の表面上に固着された負極活物質層24aと、を有する。負極芯体24cは、帯状である。負極芯体24cは、金属製であることが好ましく、金属箔からなることがより好ましい。負極芯体24cは、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、又はステンレスからなることが好ましく、銅又は銅合金からなることがより好ましい。負極芯体24cは、ここでは銅箔である。
【0029】
負極芯体24cの長辺方向Yの一方の端部(図5の右端部)には、複数の負極タブ24tが設けられている。複数の負極タブ24tは、長辺方向Yの一方側(図5の右側)に向かって突出している。複数の負極タブ24tは、セパレータ26よりも長辺方向Yに突出している。複数の負極タブ24tは、セパレータ26よりも長辺方向Yに突出している。負極タブ24tは、ここでは負極芯体24cの一部であり、金属箔(銅箔)からなっている。負極タブ24tは、ここでは、負極芯体24cの負極活物質層24aが形成されていない部分(芯体露出部)を有する。図2図4に示すように、複数の負極タブ24tは長辺方向Yの一方の端部(図2図4の右端部)で積層され、負極タブ群25を構成している。負極タブ群25は、長辺方向Yにおいて正極タブ群23と対称的な位置に設けられている。負極タブ群25は、負極集電部60を介して負極端子40と電気的に接続されている。負極タブ群25には、後述する負極第2集電部62が付設されている。
【0030】
負極活物質層24aは、図5に示すように、負極芯体24cの長手方向に沿って、帯状に設けられている。負極活物質層24aの長辺方向Yの長さLnは、正極活物質層22aの長辺方向Yの長さLaと同じかそれよりも長い。負極活物質層24aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な負極活物質を含んでいる。負極活物質は、粒子状である。負極活物質は、典型的には一次粒子が凝集してなる二次粒子(凝集粒子)であり、その内部に空隙を有している。負極活物質としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、非晶質炭素等の炭素材料や、シリコン系材料、およびそれらの混合体が挙げられる。負極活物質は、黒鉛を含むことが好ましい。
【0031】
負極活物質層24aは、負極活物質以外の任意成分、例えば、バインダ、増粘剤、分散剤、導電材、各種添加成分等を含んでいてもよい。負極活物質層24aは、バインダを含むことが好ましい。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム類や、ポリアクリル酸(PAA)等のアクリル系樹脂、カルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロール類を使用し得る。なお、CMCは、増粘剤や分散剤等としても使用し得る。
【0032】
図6は、負極24の構造を模式的に示す断面図である。図6に示すように、負極活物質層24aは、ここでは複層構造を有している。具体的には、負極活物質層24aは、負極芯体24cに近い負極下層L1と、負極下層L1よりも負極芯体24cから離れた負極上層L2と、を備える2層構造である。負極上層L2は、負極下層L1よりも表面側に位置し、ここでは負極活物質層24aの最表層を構成している。
【0033】
負極下層L1は、ここでは負極上層L2に比べて相対的に充填密度が高く、電池の高エネルギー密度化に寄与する部位である。負極下層L1内には、後述する第1ピークP1に相当する細孔が存在している。負極下層L1の充填密度は、典型的には負極上層L2の充填密度よりも大きく、高エネルギー密度化の観点から、1.51g/cm以上が好ましく、1.54g/cm以上がより好ましく、1.58g/cm以上がさらに好ましい。なお、本明細書において「充填密度」とは、次の式:充填密度(g/cm)=層の質量/層の体積;で表され、空隙部分を含めた層の単位体積あたりに含まれる構成成分(例えば負極活物質とバインダ等の任意成分との合計)の質量のことを指す(以下同じ)。負極下層L1の厚み(平均厚み)t1は、39.1μm以下が好ましく、38.2μm以下がより好ましく、37.4μm以下がさらに好ましい。
【0034】
負極下層L1は、負極活物質として第1黒鉛粒子G1を含むことが好ましい。第1黒鉛粒子G1は、天然黒鉛(例えば高球形化天然黒鉛)であることが好ましい。天然黒鉛は、充填しやすいため、高充填時でも潰れにくく、負極下層L1に内部空隙を好適に担保できる。第1黒鉛粒子G1は、表面に非晶質炭素からなるコート層を有していてもよい。負極下層L1において、負極活物質の総質量に対する、第1黒鉛粒子G1の質量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。負極下層L1は、後述する第2黒鉛粒子G2を含まないか、または負極活物質の総質量に対する、第2黒鉛粒子G2の質量が、5質量%未満であることが好ましい。
【0035】
第1黒鉛粒子G1の平均粒子径(D50)は、後述する第2黒鉛粒子G2の平均粒子径(D50)よりも小さいことが好ましい。第1黒鉛粒子G1の平均粒子径(D50)は、概ね1~10μm、典型的には2~5μmであり、例えば2.18~2.63μmが好ましい。第1黒鉛粒子G1の粒度分布幅は、第2黒鉛粒子G2の粒度分布幅よりも大きいことが好ましい。第1黒鉛粒子G1は、粒度分布幅が、3.73~4.87であることが好ましい。なお、本明細書において、「粒度分布幅」とは、次の式:(D90-D10)/D50(ただし、D10、D50、D90は、レーザ回折・光散乱式の粒度分布計での測定に基づく個数基準の粒子径分布において、積算値が、各々、10%、50%、90%に相当する粒子径である。);で求められる値をいう(以下同じ)。
【0036】
第1黒鉛粒子G1のタップ密度は、後述する第2黒鉛粒子G2のタップ密度より大きいことが好ましい。第1黒鉛粒子G1のタップ密度は、1.10~1.20g/cmが好ましい。なお、本明細書において、「タップ密度」とは、メスシリンダーに試料(粉体)を50g投入し、1000回タッピングして密充填したときの見かけ容積から求められる見かけかさ密度をいう。
【0037】
負極上層L2は、ここでは負極下層L1に比べて相対的に充填密度が低く、非水電解液の含浸性に優れる部位である。負極上層L2は、相対的に非水電解液に対する濡れ性が高い部位である。負極上層L2内には、後述する第2ピークP2に相当する細孔が存在している。負極上層L2の充填密度は、典型的には負極下層L1の充填密度よりも小さく、非水電解液の含浸性を向上する観点から、1.39g/cm以下が好ましく、1.36g/cm以下がより好ましく、1.33g/cm以下がさらに好ましい。負極上層L2の充填密度に対する負極下層L1の充填密度の比は、1.09以上が好ましく、1.13以上がより好ましく、1.18以上がさらに好ましい。
【0038】
負極上層L2は、負極下層L1に比べて相対的に細孔が多い、および/または、細孔直径(粒子間の間隙)が大きい部位であり得る。負極上層L2の厚み(平均厚み)t2は、42.4μm以上が好ましく、43.3μm以上がより好ましく、44.1μm以上がさらに好ましい。負極上層L2の厚みt2に対する負極下層L1の厚みt1の比(t1/t2)は、1.09~1.18が好ましく、1.13~1.18がより好ましい。
【0039】
負極上層L2は、負極活物質として、上記した第1黒鉛粒子G1に加えて第2黒鉛粒子G2を含むことが好ましい。第2黒鉛粒子G2は、種類および性状(例えば、形状、平均粒子径、タップ密度等)のうちの少なくとも一方が、上記した第1黒鉛粒子G1と異なっている。第2黒鉛粒子G2は、人造黒鉛であることが好ましい。第2黒鉛粒子G2は、表面に非晶質炭素からなるコート層を有していてもよい。負極上層L2において、第1黒鉛粒子G1と第2黒鉛粒子G2との混合割合は、質量比で、8:2~6:4が好ましく、7:3~6:4がより好ましい。
【0040】
第2黒鉛粒子G2の平均粒子径(D50)は、第1黒鉛粒子G1の平均粒子径(D50)よりも大きいことが好ましい。第2黒鉛粒子G2の平均粒子径(D50)は、概ね2~20μm、典型的には5~15μm、例えば8.85~10.68μmが好ましい。第2黒鉛粒子G2の粒度分布幅は、第1黒鉛粒子G1の粒度分布幅よりも小さいことが好ましい。第2黒鉛粒子G2の粒度分布幅は、0.90~3.59が好ましい。第2黒鉛粒子G2のタップ密度は、第1黒鉛粒子G1のタップ密度より小さいことが好ましい。第2黒鉛粒子G2のタップ密度は、0.93~1.09g/cmが好ましい。上記した平均粒子径、粒度分布幅およびタップ密度のうちの少なくとも1つを満たすことで、負極上層L2の充填密度を負極下層L1よりも小さく調整して、負極活物質層24a内で充電密度に好適な偏りをもたせることができる。その結果、非水電解液の含浸性を的確に向上できる。
【0041】
図7は、負極活物質層24aの水銀圧入法により得られるLog微分細孔容積分布の一例である。Log微分細孔容積分布は、横軸を細孔直径(μm)とし、縦軸をLog微分細孔容積(mL/g)として、細孔径分布を表すグラフである。図7に示すように、負極活物質層24aは、細孔直径が0.50~6.00μmの範囲PA(図7の破線の範囲)に、第1ピークP1と、第1ピークP1よりも細孔直径が大きい側に位置する第2ピークP2と、を有する。なお、ピークの位置は、ピークトップの位置で判断する。範囲PAに出現するピークは、主に負極活物質層24a内の粒子間の間隙に対応している。Log微分細孔容積分布において、第1ピークP1と第2ピークP2との間には、値が一旦小さくなる谷部が介在している。ただし、第1ピークP1と第2ピークP2とは、完全に分離されていなくてもよい。第1ピークP1および第2ピークP2は、細孔直径が細孔直径0.45~3.00μmの範囲に存在することがより好ましい。また、後述するように、範囲PAには3つ以上のピークを有してもよい。
【0042】
第1ピークP1は、ここでは負極下層L1の粒子間の間隙に由来するピークである。第1ピークP1(すなわち、負極下層L1の粒子間の間隙の平均直径)は、1.31μm以下が好ましく、1.21μm以下がより好ましい。第1ピークP1に相当する細孔の細孔容量V1は、ここでは負極下層L1内の粒子間の間隙の細孔容量に相当する。本実施形態において、細孔容量V1は、6mL/g以上である。これにより、毛細管現象を利用して、非水電解液を負極下層L1に素早く行き渡らせることができる。したがって、負極活物質層24aへの非水電解液の含浸性を向上できる。細孔容量V1は、6.5mL/g以上がより好ましい。細孔容量V1は、8.71mL/g以下が好ましく、7.8mL/g以下がより好ましく、6.68mL/g以下がさらに好ましい。
【0043】
第2ピークP2は、ここでは負極上層L2の粒子間の間隙に由来するピークである。第2ピークP2(すなわち、負極上層L2の粒子間の間隙の平均直径)は、第1ピークP1よりも大きく、1.74μm以上が好ましく、1.81μm以上がより好ましい。これにより、非水電解液に対する接触角を小さくし、負極上層L2の濡れ性を向上することができる。したがって、負極活物質層24aへの非水電解液の含浸性を向上できる。第2ピークP2に相当する細孔の細孔容量V2は、ここでは負極上層L2の粒子間の間隙の細孔容量に相当する。細孔容量V1は、2mL/g以上であることが好ましい。細孔容量V2は、濡れ性を向上する観点から、2.51mL/g以上が好ましく、4.31mL/g以上がより好ましく、5.47mL/g以上がさらに好ましい。
【0044】
第1ピークP1の強度Aと、第2ピークP2の強度Bとは、次の関係:A/B=0.5~1.5;を満たすことが好ましい。第2ピークP2の強度Bは、第1ピークP1の強度Aよりも大きいこと(すなわち、A<B)が好ましい。これにより、負極下層L1と負極上層L2とのバランスをとり、ここに開示される技術の効果をより高いレベルで発揮できる。
【0045】
図7に示すように、本実施形態では、負極活物質層24aは、Log微分細孔容積分布において、細孔直径が0.10~0.50μmの範囲PBに、さらに第3ピークP3を有する。第3ピークP3は、第1ピークP1よりも直径が小さい側に位置している。範囲PBに出現するピークは、主に負極活物質粒子(二次粒子)内の間隙に対応している。第3ピークP3は、例えば黒鉛粒子内の細孔に由来するピークである。第3ピークP3の強度Cは、第1ピークP1の強度Aおよび第2ピークP2の強度Bよりも小さい。第1ピークP1の強度Aと、第3ピークP3の強度Cとは、次の関係:A/C=3.0~3.3;を満たすことが好ましい。これにより、負極活物質層24aの含浸性をより向上できる。
【0046】
また、本実施形態では、負極活物質層24aは、Log微分細孔容積分布において、範囲PAに、第2ピークP2よりも細孔直径が大きい側に位置している第4ピークP4をさらに有する。第4ピークP4は、ここでは負極上層L2に含まれる第2黒鉛粒子G2(例えば人造黒鉛)に由来するピークである。
【0047】
図5に戻り、セパレータ26は、正極22と負極24との間に配置されている。セパレータ26は、正極22の正極活物質層22aと、負極24の負極活物質層24aと、を絶縁する部材である。セパレータ26の長辺方向Yの長さLsは、負極活物質層24aの長辺方向Yの長さLnと同じかそれよりも長い。セパレータ26としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂からなる樹脂製の多孔性シートが好適である。セパレータ26は、樹脂製の多孔性シートからなる基材層と、基材層の少なくとも一方の表面上に形成され、バインダを含む接着層と、を有していてもよい。この場合、セパレータ26は、接着層を介して正極22および負極24の少なくとも一方と接着されていることが好ましい。
【0048】
図2に示すように、正極集電部50は、複数の正極タブ22tからなる正極タブ群23と、正極端子30とを電気的に接続する導通経路を構成している。正極集電部50は、正極第1集電部51と、正極第2集電部52と、を備えている。正極第1集電部51および正極第2集電部52は、正極芯体22cと同じ金属種、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっていてもよい。
【0049】
正極第1集電部51は、封口板14の内側の面に取り付けられている。正極第1集電部51は、ここでは、かしめ加工によって封口板14に固定されている。正極第1集電部51は、封口板14の内側の表面に沿って水平に広がる第1領域と、第1領域の長辺方向Yの一方の端(図2の左端)から外装体12の短側壁12cに向かって延びる第2領域と、を有する。第1領域において、封口板14の端子引出孔18に対応する位置には、上下方向Zに貫通した貫通孔(図示せず)が形成されている。第1領域は、かしめ加工により、正極端子30と電気的に接続されている。第1領域は、内部絶縁部材80によって封口板14と絶縁されている。第2領域は、上下方向Zに沿って延びている。
【0050】
正極第2集電部52は、外装体12の短側壁12cに沿って延びている。図3および図4に示すように、正極第2集電部52は、電極体20bに付設されている。正極第2集電部52は、正極第1集電部51の第2領域と電気的に接続される集電板接続部52aと、正極タブ群23に付設され、複数の正極タブ22tと電気的に接続されるタブ接合部52cと、集電板接続部52aとタブ接合部52cとを連結する連結部52bと、を有する。
【0051】
集電板接続部52aは、上下方向Zに沿って延びている。集電板接続部52aには、その周囲よりも厚みが薄い凹部52dが設けられている。凹部52dには、短辺方向Xに貫通した貫通孔52eが設けられている。貫通孔52eには、正極第1集電部51との接合部が形成されている。接合部は、例えば、超音波溶接、抵抗溶接、レーザ溶接等の溶接によって形成された溶接接合部である。タブ接合部52cは、上下方向Zに沿って延びている。タブ接合部52cには、正極タブ群23との接合部が形成されている。接合部は、例えば、複数の正極タブ22tを重ねた状態で、超音波溶接、抵抗溶接、レーザ溶接等の溶接によって形成された溶接接合部である。
【0052】
図2に示すように、負極集電部60は、複数の負極タブ24tからなる負極タブ群25と、負極端子40と、を電気的に接続する導通経路を構成している。負極集電部60は、負極第1集電部61と、負極第2集電部62と、を備えている。負極第1集電部61および負極第2集電部62は、負極芯体24cと同じ金属種、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっていてもよい。負極第1集電部61および負極第2集電部62の構成は、正極集電部50の正極第1集電部51および正極第2集電部52と同等であってよい。
【0053】
負極第2集電部62は、図4に示すように、負極第1集電部61と電気的に接続される集電板接続部62aと、負極タブ群25に付設され、複数の負極タブ24tと電気的に接続されるタブ接合部62cと、集電板接続部62aとタブ接合部62cとを連結する連結部62bと、を有する。集電板接続部62aは、タブ接合部62cと連結される凹部62dを有する。凹部62dには、短辺方向Xに貫通した貫通孔62eが設けられている。
【0054】
二次電池100は各種用途に利用可能であるが、例えば、乗用車、トラック等の車両に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV;Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(BEV;Battery Electric Vehicle)等が挙げられる。
【0055】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に限定することを意図したものではない。
【0056】
[負極の作製]
(実施例1) まず、次の2種類の負極活物質(第1黒鉛粒子および第2黒鉛粒子)を用意した。第1黒鉛粒子は、天然黒鉛であり、タップ密度が、1.11g/cm、平均粒子径(D50)が、2.38μm、粒度分布幅(D90-D10)/D50が、3.94である。第2黒鉛粒子は、人造黒鉛であり、タップ密度が、1.04g/cm、平均粒子径(D50)が、9.68μm、粒度分布幅(D90-D10)/D50が、1.13である。次に、第1黒鉛粒子を98.5質量部と、CMC(ナトリウム塩)を0.5質量部と、SBRを1質量部とを混合し、水を適量加えて、負極下層形成用の第1スラリーを調製した。次に、第1黒鉛粒子と第2黒鉛粒子とを、6:4の質量比で混合し、混合活物質を作製した。次に、混合活物質を98.5質量部と、CMC(ナトリウム塩)を0.5質量部と、SBRを1質量部とを混合し、水を適量加えて、負極上層形成用の第2スラリーを調製した。
【0057】
次に、銅箔からなる負極芯体の両面に、リードが接続される部分(タブ)を残して第1スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させて、負極芯体の両面に第1層(負極下層)を形成した。次に、第1層が形成された負極芯体の両面に、第2スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させて、第2層(負極上層)を形成した。なお、完成した負極活物質層の負極下層と負極上層の重量比は、1:1とした。そして、ローラーを用いて、電極密度が1.45g/cmとなるように負極活物質層の圧縮した後、所定の電極サイズに切断し、負極芯体の両面に負極下層と負極上層を備えた負極活物質層が形成された負極を作製した。各層の充填密度と厚みを、表1に示す。
【0058】
(実施例2) 第2スラリーの調製において、第1黒鉛粒子と第2黒鉛粒子とを、7:3の質量比で混合した混合活物質を使用したこと以外は、実施例1と同様にして負極を作製した。各層の充填密度と厚みを、表1に示す。
【0059】
(実施例3) 第2スラリーの調製において、第1黒鉛粒子と第2黒鉛粒子とを、8:2の質量比で混合した混合活物質を使用したこと以外は、実施例1と同様にして負極を作製した。各層の充填密度と厚みを、表1に示す。
【0060】
(比較例1) 第1スラリーのみを用いて、負極芯体の両面に単層構造の負極活物質層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして負極を作製した。層の充填密度と厚みを、表1に示す。
【0061】
(比較例2) 第2スラリーのみを用いて、負極芯体の両面に単層構造の負極活物質層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして負極を作製した。層の充填密度と厚みを、表1に示す。
【0062】
(比較例3) 実施例1とは逆に、第2スラリーを用いて負極下層を形成し、第1スラリーを用いて負極上層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして負極を作製した。各層の充填密度と厚みを、表1に示す。
【0063】
(比較例4) 第2スラリーの調製において、第1黒鉛粒子と第2黒鉛粒子とを、5:5の質量比で混合した混合活物質を使用したこと以外は、実施例1と同様にして負極を作製した。各層の充填密度と厚みを、表1に示す。
【0064】
[細孔分布の測定・解析]
上記作成した負極(実施例1~3、比較例1~4)の細孔分布を測定した。具体的には、細孔分布測定装置として、AutoPore IV 9500(Micromeritics製)を使用し、水銀圧入法により細孔分布を測定した。なお、水銀パラメーターは、水銀接触角を、140.0°、水銀表面張力を、480.0dynes/cmに設定した。そして、測定装置に付属のソフトを用いて、Log微分細孔容積分布を得た。代表例として、実施例1~3、比較例1,4のLog微分細孔容積分布を図8に示す。
【0065】
次に、各Log微分細孔容積分布について、細孔直径が0.50~6.00μmの範囲に、上記した第1ピークP1、第2ピークP2、および第4ピークP4が出現しているか否かを確認した。なお、第1ピークP1は、負極下層の粒子間の間隙に由来するピークである。第2ピークP2は、負極上層の粒子間の間隙に由来するピークである。第4ピークP4は、負極上層に含まれる人造黒鉛に由来するピークである。そして、第1ピークP1および第2ピークP2の横軸の値、すなわち粒子間の間隙の平均直径を読み取り、表1の各層における「直径」の欄に示す。また、第1ピークP1および第2ピークP2の細孔の細孔容量を算出し、表1の各層における粒子間隙の細孔容量として示す。また、第1ピークP1および第2ピークP2の縦軸の値、すなわち上記各層の細孔容量の最頻値をピーク強度として、第1ピークP1の強度Aに対する第2ピークP2の強度Bの比(強度比)を算出した。結果を表1に示す。
また、細孔直径が0.10~0.50μmの範囲に、上記した第3ピークP3が出現しているか否かを確認した。なお、第3ピークP3は、負極活物質粒子内の細孔に由来するピークである。結果を表1に示す。
【0066】
[含浸性の測定]
上記作成した負極(実施例1~3、比較例1~4)を円形に打ち抜き、サンプルを作成した。次に、マイクロシリンジを用いて、サンプル上の中心に非水電解液を模した液体、ここではPC(ポリカーボネート)を1μL注液し、サンプルの内部へ浸透するまでの時間を計測した。そして、PCの注液量をサンプルの内部へ浸透するまでの時間で割ることにより、吸液速度(μL/s)を算出した。結果を表1に示す。また、表1の評価の欄には、吸液速度が0.05μL/s以上の場合に「〇」を付し、0.05μL/s未満の場合に「×」を付している。

【0067】
【表1】
【0068】
表1に示すように、Log微分細孔容積分布において、細孔直径が0.50~6.00μmの範囲に、第1ピークP1と、第1ピークP1よりも直径が大きい側に位置する第2ピークP2と、を有し、第1ピークP1に相当する細孔の細孔容量が、6mL/g以上である実施例1~3では、比較例1~4に比べて吸液速度が速く、非水電解液の含浸性に優れていることがわかった。また、比較例2から、単純に第1負極活物質と第2負極活物質とを混ぜるだけでは、上記したような細孔分布を実現することができず、例えば、実施例1~3のように、負極活物質層を複層構造として、負極下層が第1黒鉛粒子のみを含み、かつ、負極上層が第1黒鉛粒子と第2黒鉛粒子とを含み、かつ各層の性状を適切に調整することにより、上記したような細孔分布を好適に実現できることがわかった。
【0069】
なお、特に限定されるものではないが、上記実施例1~3で吸液速度が良化した理由として、本発明者らは、以下のようなメカニズムを考えている。すなわち、本発明者らの検討によれば、毛細管現象を利用して非水電解液を負極活物質層に含浸させる場合、細孔径が小さいほど、非水電解液が早く遠くへと届く。一方で、負極活物質層内の空隙量が少なくなりすぎると、接触角が大きくなり、塗れ性が落ちて非水電解液が含浸しにくくなる。
【0070】
そこで、本実施形態では、負極下層の充填密度を高くして細孔径を小さくする一方、負極上層は充填密度を低くして細孔径を大きくしている。これにより、Log微分細孔容積分布において、主に負極活物質層内の粒子間の間隙に対応する範囲、すなわち細孔直径が0.50~6.00μmの範囲に、サイズの異なる2つのピーク(具体的には、負極下層の粒子間の間隙に由来する第1ピークP1と、負極上層の粒子間の間隙に由来する第2ピークP2)を好適に具備することができる。その結果、負極下層では、毛細管現象を利用して、負極活物質層の内部にまで非水電解液を素早く行き渡らせることができる。また、負極上層では、空隙量を増やして非水電解液に対する接触角を小さくし、濡れ性を向上することができる。したがって、非水電解液の吸液速度を良化し、負極活物質層への非水電解液の含浸性を向上できる。さらに、詳しい説明は省略するが、非水電解液との馴染みが良くなることで、負極活物質の表面に質の高い被膜を形成でき、電池特性(例えば、サイクル特性、保存特性、耐久性のうちの少なくとも1つ)をも向上し得る。
【0071】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本発明は、他にも種々の形態にて実施することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形例に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形例を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【符号の説明】
【0072】
20 電極体群
20a、20b、20c 電極体
22 正極
22a 正極活物質層
22c 正極芯体
24 負極
24a 負極活物質層
L1 負極下層
L2 負極上層
24c 負極芯体
100 二次電池
図1
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図8