(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】時計を設定するシステム
(51)【国際特許分類】
G04R 20/26 20130101AFI20240419BHJP
G04G 21/04 20130101ALI20240419BHJP
G04G 17/08 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
G04R20/26
G04G21/04
G04G17/08
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022080685
(22)【出願日】2022-05-17
【審査請求日】2022-05-17
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】パスカル・ラゴルゲット
(72)【発明者】
【氏名】グザヴィエ・ステーラン
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107219756(CN,A)
【文献】国際公開第2018/181467(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04R 20/00-60/14
G04G 3/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子時計(2)であって、前記電子時計(2)は、少なくとも1対のホーン(5)を備えるケース(4)と、測時器ムーブメント(6)と、前記時計(2)が実施する少なくとも1つの機能の設定への関与が可能な近距離通信モジュール(7)とを備え、前記通信モジュール(7)は、前記少なくとも1対のホーン(5)のホーンの間に配置することによって前記ムーブメント(6)に接続し、前記通信モジュール(7)は、支持要素(15)を備え、前記支持要素(15)は、チップ(17)と、少なくとも1つのアンテナ(18)と、前記測時器ムーブメント(6)のマイクロコントローラ(8)に電気的に接続することを意図する接続器(19)とを含む、電子時計(2)。
【請求項2】
電子時計(2)であって、前記電子時計(2)は、少なくとも1対のホーン(5)を備えるケース(4)と、測時器ムーブメント(6)と、前記時計(2)が実施する少なくとも1つの機能の設定への関与が可能な近距離通信モジュール(7)とを備え、前記通信モジュール(7)は、前記少なくとも1対のホーン(5)のホーンの間に配置することによって前記
測時器ムーブメント(6)に接続し、前記通信モジュール(7)は、支持要素(15)の内面(21a)に取り付けられる基板(16)を備え、前記基板(16)は、チップ(17)と、少なくとも1つのアンテナ(18)と、
前記通信モジュール(7)を前記測時器ムーブメント(6)のマイクロコントローラ(8)に電気的に接続することを意図する接続器(19)とを備える、電子時計(2)。
【請求項3】
前記ケース(4)は、中間部品(14)を備え、前記中間部品(14)は、前記少なくとも1対のホーン(5)のホーンの間に含まれる貫通開口(23)を備え、前記開口(23)は、前記通信モジュール(7)の全て又は一部を受け入れるように構成することを特徴とする、請求項1または2に記載の電子時計(2)。
【請求項4】
前記通信モジュール(7)は、前記開口(23)の閉鎖が可能な前記支持要素(15)を備えることを特徴とする、請求項3に記載の電子時計(2)。
【請求項5】
前記支持要素(15)は、少なくとも1つの誘電材料及び/又は非導電材料から作製することを特徴とする、請求項1または2に記載の電子時計(2)。
【請求項6】
前記マイクロコントローラ(8)は、前記通信モジュール(7)と電気信号を交換することによって、前記時計の前記少なくとも1つの機能を設定するように構成することを特徴とする、請求項1または2に記載の電子時計(2)。
【請求項7】
前記時計の前記少なくとも1つの機能は、クロック機能であることを特徴とする、請求項6に記載の電子時計(2)。
【請求項8】
前記通信モジュール(7)は、前記測時器ムーブメント(6)に取外し可能に接続することを特徴とする、請求項1または2に記載の電子時計(2)。
【請求項9】
電子時計(2)を設定するシステム(1)であって、前記システム(1)は、近距離通信デバイス(12)を備える可搬の電子機器(3)と、前記デバイス(12)を制御するように構成したマイクロコントローラ(11)とを備え、前記時計(2)は、
測時器ムーブメント(6)と、近距離通信モジュール(7)と、前記モジュール(7)と電気信号を交換するように構成したマイクロコントローラ(8)とを備え、前記通信モジュール(7)は、支持要素(15)を備え、前記支持要素(15)は、チップ(17)と、少なくとも1つのアンテナ(18)と、前記測時器ムーブメント(6)のマイクロコントローラ(8)に電気的に接続することを意図する接続器(19)とを含み、前記時計(2)及び前記電子機器(3)は、前記時計(2)の設定動作を実行するため、近距離で互いに接続されるように構成され、前記システム(1)は、
-前記電子機器(3)と前記時計(2)との間で近距離接続を確立するステップ(30)であって、前記電子機器(3)は、近距離通信デバイス(12)と、前記デバイス(12)を制御するように構成したマイクロコントローラ(11)とを備える、ステップと、
-前記電子機器(3)の前記マイクロコントローラ(11)によって、前記時計(2)のクロック状態を指示するデータの正確さを確認するステップ(33)と、
-前記クロック状態データが不正確である場合、前記電子機器(3)の前記マイクロコントローラ(11)によって送信するように命令された際、前記近距離通信デバイス(12)によって前記時計(2)の少なくとも1つの設定命令を前記時計(2)の前記近距離通信モジュール(7)に送信するステップ(35)と、
-前記時計(2)を設定するパラメータを生成するため、前記時計(2)の前記マイクロコントローラ(8)により受信した前記少なくとも1つの命令を処理するステップ(39)と、
-前記時計(2)の前記マイクロコントローラ(8)によって構成するように命令された際、前記生成した設定パラメータに従って前記時計(2)を構成するステップ(40)と
を実施する、
前記システム(1)。
【請求項10】
電子時計(2)を設定するシステム(1)であって、前記システム(1)は、近距離通信デバイス(12)を備える可搬の電子機器(3)と、前記デバイス(12)を制御するように構成したマイクロコントローラ(11)とを備え、前記時計(2)は、近距離通信モジュール(7)と、前記モジュール(7)と電気信号を交換するように構成したマイクロコントローラ(8)とを備え、前記通信モジュール(7)は、支持要素(15)の内面(21a)に取り付けられる基板(16)を備え、前記基板(16)は、チップ(17)と、少なくとも1つのアンテナ(18)と、
前記通信モジュール(7)を前記電気信号を交換するように構成した前記マイクロコントローラ(8)に電気的に接続することを意図する接続器(19)とを備え、前記時計(2)及び前記電子機器(3)は、前記時計(2)の設定動作を実行するため、近距離で互いに接続されるように構成され、前記システム(1)は、
-前記電子機器(3)と前記時計(2)との間で近距離接続を確立するステップ(30)であって、前記電子機器(3)は、近距離通信デバイス(12)と、前記デバイス(12)を制御するように構成したマイクロコントローラ(11)とを備える、ステップと、
-前記電子機器(3)の前記マイクロコントローラ(11)によって、前記時計(2)のクロック状態を指示するデータの正確さを確認するステップ(33)と、
-前記クロック状態データが不正確である場合、前記電子機器(3)の前記マイクロコントローラ(11)によって送信するように命令された際、前記近距離通信デバイス(12)によって前記時計(2)の少なくとも1つの設定命令を前記時計(2)の前記近距離通信モジュール(7)に送信するステップ(35)と、
-前記時計(2)を設定するパラメータを生成するため、前記時計(2)の前記マイクロコントローラ(8)により受信した前記少なくとも1つの命令を処理するステップ(39)と、
-前記時計(2)の前記マイクロコントローラ(8)によって構成するように命令された際、前記生成した設定パラメータに従って前記時計(2)を構成するステップ(40)と
を実施する、
前記システム(1)。
【請求項11】
接続を確立する前記ステップ(30)は、前記時計が前記電子機器(3)に対して接続の確立を可能にする距離で位置する際、前記時計と前記電子機器(3)との間で接続を開始するサブステップ(31)を含む、請求項9または10に記載のシステム(1)。
【請求項12】
前記接続は自動接続であることを特徴とする、請求項11に記載のシステム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近距離通信モジュールを備える時計、特に電子時計を設定するシステムに関し、近距離通信モジュールは、この時計によって実施される少なくとも1つの機能の設定に寄与する。
【0002】
本発明は、この電子時計を設定する方法に更に関する。
【背景技術】
【0003】
いわゆる「スマート」時計等の電子時計は、近年、時計製造分野に出現している。そのような時計は、従来、特に押しボタン、りゅうず及び/又は触覚キーを起動させることによって手動で設定されるものであり、設定動作を担うユーザ又はアフターサービスの者にとって比較的不便である。例えば、時計が万年暦機構を有する場合、万年暦機構のアナログ表示要素の位置、より詳細には万年暦機構は、時計のりゅうずを引っ張る及び/若しくは回転させる、並びに/又は時計の1つ又は複数の押しボタンを押すことによって設定し得る。したがって、ある種類の年(例えば、閏年)を選択し、様々な表示要素、より詳細には万年暦機構の要素の全てを正確に配置させる。この方法は、設定動作の全てを正確に思い出し、次々に実行する必要があるユーザにとって冗長であるだけでなく、更に、エラー及び不具合の危険性をもたらすものである。
【0004】
特に、従来技術の欠点を克服する解決策を発見する必要性があることは理解されよう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、電子時計の万年暦機能等のクロック機能を実行する機構を設定する方法及びシステムを提案することによって、これらの欠点を克服することであり、この方法は、単純で、強固で、確実である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的で、本発明は、電子時計に関し、電子時計は、少なくとも1対のホーンを備えるケースと、測時器ムーブメントと、前記時計によって実施される少なくとも1つの機能の設定への関与が可能な近距離通信モジュールとを備え、前記通信モジュールは、前記少なくとも1対のホーン5のホーンの間に配置することによってムーブメント6に接続される。
【0007】
他の実施形態によれば、
-ケースは、中間部品を備え、中間部品は、前記少なくとも1対のホーンのホーンの間に含まれる貫通開口を備え、前記開口は、通信モジュールの全て又は一部を受け入れるように構成される、
-通信モジュールは、前記開口の閉鎖が可能な支持要素を備える、
-通信モジュールは、支持要素を備え、支持要素は、チップと、少なくとも1つのアンテナと、測時器ムーブメントのマイクロコントローラに電気的に接続することを意図する接続器とを有する、
-通信モジュールは、支持要素の内面に取り付けられる基板を備え、前記基板は、チップと、少なくとも1つのアンテナと、接続器とを備える、
-支持要素は、少なくとも1つの誘電材料及び/又は非導電材料から作製される、
-前記測時器ムーブメントは、マイクロコントローラを備え、マイクロコントローラは、前記通信モジュールと電気信号を交換することによって、時計の前記少なくとも1つの機能、特にクロック機能を設定するように構成される、
-前記通信モジュールは、前記測時器ムーブメントに取外し可能に接続される。
【0008】
本発明の別の態様は、そのような電子時計を設定する方法に関し、時計は、近距離通信モジュールと、このモジュールと電気信号を交換するように構成したマイクロコントローラとを備え、方法は、
-電子機器と時計との間で近距離接続を確立するステップであって、可搬電子機器は、近距離通信デバイスと、前記デバイスを制御するように構成したマイクロコントローラとを備える、ステップと、
-電子機器のマイクロコントローラによって、時計のクロック状態を指示するデータの正確さを確認するステップと、
-クロック状態データが不正確である場合、電子機器のマイクロコントローラによって送信するように命令された際に、近距離通信デバイスによって少なくとも1つの時計設定命令を時計の近距離通信モジュールに送信するステップと、
-時計設定パラメータを生成するため、時計のマイクロコントローラにより受信した前記少なくとも1つの命令を処理するステップと、
-時計のマイクロコントローラによって時計を構成するように命令された際、生成した設定パラメータに従って時計を構成するステップと
を含む。
【0009】
有利には、本方法では、接続を確立するステップは、時計が電子機器に対して接続の確立を可能にする距離で位置する際、この時計と電子機器との間で接続、特に自動接続を開始するサブステップを含む。
【0010】
本発明の別の態様は、この方法を実施するそのような電子機器を設定するシステムに関し、システムは、近距離通信デバイスを備える可搬電子機器と、前記デバイスを制御するように構成したマイクロコントローラとを備え、時計は、近距離通信モジュールと、このモジュールと電気信号を交換するように構成したマイクロコントローラとを備え、前記時計及び前記機器は、時計の設定動作を実行するため、近距離で互いに接続されるように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態による、2対のホーンを備えるケースを備える電子時計の斜視図であって、前記ケースは、2対のホーンの一方のホーンの間に配置される近距離通信モジュールを備える。
【
図2】本発明の実施形態による、時計によって実施される機能の設定に関与が可能な近距離通信モジュールの概略図である。
【
図3】ケースの一部分がある角度から提示される、
図1に示す軸III-IIIに沿った部分断面図であり、通信モジュールは、本発明の一実施形態に従ってケース内に配置される。
【
図4】ケースの一部分がある角度から提示される、
図1に示す軸III-IIIに沿った部分断面図であり、通信モジュールは、本発明の一実施形態に従ってケース内に配置される。
【
図5】本発明の実施形態による、電子時計を設定するシステムの概略図である。
【
図6】本発明の実施形態による、電子時計を設定する方法に関するフロー・チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1から
図6において、ケース4を備える、水晶時計等の電子時計2を示す。そのような電子時計2は、以下に記載する設定方法の間、特に可搬又は携帯電子機器3を使用して構成されることを意図する。この方法は、この時計2によって実施される少なくとも1つの機能を実行する機構の設定が可能である。この機能は、水晶時計2の万年暦等のクロック機能とし得る。このクロック機能は、現在の日付、曜日、月、又は年、又は現在の月相等を更に含み得る。代替的に、これらのクロック機能は、この時計2によって実行可能なあらゆる他の機能とし得ることを留意されたい。
【0013】
上述の方法は、時計2を設定するシステム1によって実施される。したがって、このシステム1は、前記時計2に加えて可搬電子機器3を備え、時計2及び可搬電子機器3の両方は、近距離通信技術の実施によって互いの間でデータ交換13を実行することが可能である。
【0014】
したがって、この背景において、時計2は、非限定的、非網羅的な様式で、
-少なくとも1対のホーン5を備えるケース4と、
-近距離通信(NFC)モジュール7と、
-近距離通信モジュール7と電気信号を交換するように構成したマイクロコントローラ8を備える、電子ムーブメント等の測時器ムーブメント6と、
-マイクロコントローラ8に時間基準をもたらし、また、1つ又は複数のステッピング・モータを作動させて時間表示針、及び万年暦等の時計2のクロック機能の機構のアナログ表示要素を回転させる、水晶発振器等の調整部材と、
-ケース4上に組み付けられるバンドと、
-針、特に、それぞれが時、分及び秒を表示する3つの表示針を備えるアナログ及び/又はデジタル表示器と、
-万年暦機構等、クロック機能を実施する機構と、
-タッチ・スクリーン又は更には押しボタン、りゅうず等の入力インターフェースと、
-測時器ムーブメント6、特に、通信モジュール7に接続したマイクロコントローラ8に電力を供給する、電池又は蓄電器等の電源ユニットと
を備える。
【0015】
図1において、ケース4は、中間部品14を含み、中間部品14は、金属材料(例えば、鉄鋼、好ましくはステンレス鋼)、合成材料(例えば、繊維、典型的には炭素繊維を充填したポリマー・マトリックスを含む複合材料)、又はセラミック材料から作製し得る。ケース4は、中間部品14と共に、このケース4の筐体の形成に関与する裏蓋とガラスとを更に備える。そのような筐体は、特に、マイクロコントローラ8と近距離通信モジュール7とを備える測時器ムーブメント6を収容するように構成される。
図1において、この中間部品14は、2対のホーン5を備え、バンドは、時計2を手首に着用するためにホーン5に固着することを意図する。
【0016】
そのようなバンドは、好ましくは、少なくとも1つの誘電材料及び/又は非導電材料、例えば、合成材料(例えば、繊維、典型的には炭素繊維を充填したポリマー・マトリックスを含む複合材料)、又はセラミック材料若しくは高性能プラスチック等の他のプラスチック材料から作製する。バンドが鎖状の環から形成される場合、対のホーン5に直接取り付けられる鎖部分は、少なくとも1つの誘電材料及び/又は非導電材料から作製される一方で、他の鎖部分は、他の様々な異なる材料から作製し得ることに留意されたい。本実施形態では、対のホーン5は、エラストマ・バンドに接続され、エラストマ・バンドは、後述する通信モジュール7の支持要素15の外面21bを完全に隠すように中間部品14の形状に厳密に合う。
【0017】
中間部品14は、2対のホーン5の一方のホーンの間に配置される貫通開口23を更に備える。したがって、この開口23は、時計2の6時の位置に位置する対のホーン5内に画定されるホーン間の空間25内に位置するが、12時の位置に位置する対のホーン5のホーン間の空間25内に配置することもできる。この開口23は、通信モジュール7の支持要素15の本体の全て又は一部が中を通過するように構成される。更に、対のホーン5を無視した場合、中間部品14は、ケース4の中心軸A回りに全体的に回転対称を有することに留意されたい。
【0018】
一例として取ったクロック機能が万年暦に関連する本実施形態では、クロック機能を実施する機構は、日付表示要素、曜日表示要素及び月表示要素を含め、一組の要素を備えることを理解されよう。表示要素は、好ましくは、アナログ表示要素であり、例えば、曜日及び月を指示する2つの針と、日付を指示する円板とを備える。したがって、これらの表示要素は、日付、曜日、月及び任意で月相を指示可能である一方で、異なる長さの月及び閏年を自動的に考慮することを理解されたい。より詳細には、針等の表示要素は、時計2の文字板上に刻まれた日付、曜日、月若しくは月相の指示、又は日付、曜日、月、又は月相の指示が上に刻まれた円板等の表示要素を指すのに使用され、これらの指示の1つは、文字板内の開口に面して配置される。
【0019】
測時器ムーブメント6において、この時計2のマイクロコントローラ8は、クロック機能を実施する機構、特に、万年暦機構の要素、特に表示要素を配置させる手段を制御可能である。万年暦機構の要素を配置させる手段は、有利には、1つ又は複数のステッピング・モータを備える。マイクロコントローラ8は、制御手段又は入力インターフェースに更に接続され、制御手段又は入力インターフェースは、りゅうず、プッシュピース又は触覚領域とすることができ、時計2の着用者が直接作動させることができる。
【0020】
この時計2のケース4において、近距離通信モジュール7は、前記少なくとも1対のホーン5のホーンの間に配置されることによってムーブメント6に接続される。そのような通信モジュール7は、前記時計2が、可搬又は携帯電子機器3と双方向通信を確立することを可能にする。
【0021】
より詳細には、この通信モジュール7は、このムーブメント6のマイクロコントローラ8に接続される。この構成では、近距離通信モジュール7は、マイクロコントローラ8に取外し可能に接続/連結される。
【0022】
そのような近距離通信モジュール7は、例えば、NFC(近距離通信)型のワイヤレス近距離高周波通信技術を実装する。この通信モジュール7は、RFID及びBluetoothとは異なる技術を使用して動作する。この通信モジュール7は、例えば、高周波数HFでの周波数帯域、例えば、13.56MHzで動作し得る。
【0023】
したがって、通信モジュール7は、時計2及び電子機器3が互いに近距離にある場合のデータの交換13を可能にする。そのような距離は、約0から10cmの間、好ましくは0から5cmの間に含まれ得る。時計2の通信モジュール7は、電子機器3の通信デバイス12によって送信される無線周波によって電力が時計2に供給される受動型とし得る。代替的に、時計2の通信モジュール7は、時計2の電源ユニットから電力を受ける能動型とし得る。
【0024】
より詳細には、
図2を参照すると、近距離通信モジュール7は、電子チップ7と、少なくとも1つのアンテナ18と、前記モジュール7をマイクロコントローラ8に接続する接続器19とを備える。前記少なくとも1つのアンテナ18に接続されるチップ17は、ハードウェア要素とソフトウェア要素とを備える。この背景において、チップ17のハードウェア要素及び/又はソフトウェア要素は、メモリ要素と協働する少なくとも1つのマイクロプロセッサを含む。通信モジュール7は、有利には印刷回路板の形態で作製される基板16を更に備える。「支持体」又は「板」とも呼ばれるそのような基板16は、好ましくは、高性能プラスチック材料又は積層複合材料から作製される。このプラスチック材料は、商品名カプトン(商標)として公知のポリイミド、又はポリエステル等のポリマーとし得る。チップ17及び少なくとも1つのアンテナ18並びに接続器19は、例えば、接着によってこの基板16上に取り付けられる。
【0025】
この通信モジュール7の内部において、基板16は、上述した支持要素15の内面21aに取り付けられる。言い換えれば、この支持要素15は、基板16と、当然、通信モジュール7を形成する全ての他の構成要素とを備える。この支持要素15は、中間部品14内に含まれる開口23の形状とかなり同様の形状、又はこの開口23の形状と厳密に同様の形状を有する。したがって、そのような要素15は、内面21aと外面21bとを備え、これら内面21a及び外面21bの2つは、外周壁22によって接続される。そのような外周壁22は、この壁22の全長に沿って延在する空洞を備え、この支持要素15の外形を画定するのを助ける。この壁22は、前記空洞内に配置されるOリング等、中間部品14に対する封止要素20を更に備え、液体が進入しないようにする。したがって、支持要素15は、中間部品内のこの開口23を閉鎖し、したがって、「閉鎖要素」と呼び得る。
【0026】
この支持要素15は、この外周壁22の高さ又は幅に対応する厚さeを有する。この厚さeは、前記開口23を備える中間部品14の部分の厚さと実質的に同様であるか又は厳密に同様である。言い換えれば、開口23は、この開口23の境界を定める/この開口23の形状を画定する内壁を備え、内壁の厚さは、支持要素15の外周壁22の厚さeに実質的に同様であるか又は厳密に同様である。
【0027】
この支持要素15は、好ましくは、少なくとも1つの誘電材料及び/又は非導電材料から作製される。支持要素15は、合成材料(例えば、繊維、典型的には炭素繊維を充填したポリマー・マトリックスを含む複合材料)、又はセラミック材料、又は高性能プラスチック等のプラスチック材料であってもよい。この支持要素15の外面21bは、中間部品14の外面24と同じ色であってよく、この外面24に実質的に同様又は厳密に同様のテクスチャを更に有してもよいことに留意されたい。
【0028】
更に、ここで説明する、時計2の1対のホーン5の2つのホーンの間に通信モジュール7を配置することは、このモジュール7による受信又は送信が可能な双指向性近距離通信信号の質の向上に寄与することに留意されたい。
【0029】
更に、一実施形態では、時計2の通信モジュール7は、このモジュール7のチップ17及び前記少なくとも1つのアンテナ18と、時計2のムーブメント6との間に磁気遮蔽要素(図示せず)を備え得る。この磁気遮蔽要素は、通信モジュール7のアンテナ18を、アンテナ18の極近傍に位置する時計2の金属構成要素から分離することによって、アンテナ18を介する無線信号の送受信の効率及び感度を向上させる。言い換えれば、この磁気遮蔽要素は、通信モジュール7が発する又は受ける磁界の修正を防止する。この磁界の修正は、通信モジュール7の極近傍に位置する時計2の様々な金属構成要素の存在によるものである。更に、これらの金属構成要素が通信モジュール7の性能レベルに与え得る悪影響を低減することが可能である。この悪影響は、この通信モジュール7が生成する又は受ける磁界が減衰することにある。
【0030】
図5に示す制御システム1において、ユーザ端末とも呼ばれる可搬電子機器3は、ユーザが持ち運び可能な機器である。この可搬電子機器3は、例えば、スマートフォン、ファブレット又はタブレットに当てはまる。主電源を必要とする機器、例えば、デスクトップ・コンピュータは、この定義の範囲内にないことは言うまでもない。例えば、センサがワイヤレス・リンク又は有線リンクによって接続されている可搬コンピュータ等の機器も、この定義の範囲内にない。この電子機器3は、時計2に設定パラメータを送信するために使用される。この電子機器3は、電子回路10が中に配置されるケース9を備える。この電子回路10は、マイクロコントローラ11と、近距離通信デバイス12とを含み、マイクロコントローラ11及び近距離通信デバイス12の両方は、電池によって電力供給される。電子機器3は、カメラと、タッチ・スクリーン又は更にはボタン等の入力インターフェースとを更に備え得る。更に、マイクロコントローラ11は、そのメモリ要素内に、光学認識アルゴリズムを含み得、光学認識アルゴリズムは、特に、カメラからもたらされたデータを処理する動作から、時計2の文字板上に表示される情報を検出するのに寄与する。この機器3の通信デバイス12は、時計2の近距離通信モジュール7とデータを接続、交換する13ように構成されることに留意されたい。
【0031】
図6を参照すると、本発明は、時計2を設定する方法に更に関する。そのような方法は、特に電子機器3と時計2とを備える設定システム1によって実施される。方法は、クロック機能等の時計2の少なくとも1つの機能の設定を可能にし、クロック機能は、例えば万年暦機構等、この時計2のそのような機能を実施する機構によって実行される。この万年暦機構は、とりわけ、万年暦機構を構成する表示要素の配置を可能にする。この万年暦機構の設定の状況において、このことを水晶時計2の万年暦機構を設定する方法と呼び得る。
【0032】
この方法は、電子機器3と時計2との間に近距離接続を確立するステップ30を含む。本明細書の用語「近距離」とは、電子機器3を時計2から隔てる距離が0から10cmの間、好ましくは0から5cmの間に含まれる限り、接続がNFC(近距離通信)技術を使用して行われることを意味すると理解されたい。
【0033】
次に、この接続を確立するステップ30は、時計2が電子機器3に対して近距離接続の確立を可能にする距離で位置する際、この時計2と電子機器3との間の接続、特に自動接続を開始するサブステップ31を含む。言い換えれば、そのようなサブステップ31は、手動又は自動で開始し得る。
【0034】
このサブステップ31を手動で開始する場合、時計2が電子機器3に対して近距離接続の確立を可能にする距離で位置する際にこの時計2と電子機器3との間で手動接続を開始するサブステップ32aと呼ぶ。この状況において、時計2及び電子機器3は、互いに対して近距離接続の確立を可能にする距離で配置される。次に、場合に応じて、ユーザと時計2の入力インターフェースとの間の対話の後、又はユーザと電子機器3の入力インターフェースとの間の対話の後、時計2の通信モジュール7は、電子機器3の通信デバイス12との接続工程を開始するか、又は電子機器3の通信デバイス12は、時計2の通信モジュール7との接続工程を開始する。
【0035】
このサブステップ31が自動的に実行される場合、時計2を電子機器3に対して近距離接続の確立を可能にする距離で配置するだけで、時計2の通信モジュール7と電子機器3の通信デバイス12との間の接続工程を開始するのに十分である。この状況において、時計2が電子機器3に対して接続の確立を可能にする距離で位置する際、この時計2と電子機器3との間の接続を自動的に開始するサブステップ32bと呼ぶ。したがって、この構成において、このサブステップ32bは、この時計2のクロック機能を、前記時計2のユーザに透過的、自動的に設定することに加えて、この時計2と電子機器3との間の自動接続を確立することに寄与し、ユーザが時計2又は電子機器3に対して動作を実施する必要はない。このサブステップ32bは、通信デバイス12とモジュールとの間で行われる認証段階を含むことができ、この認証段階は、ユーザに透過的であることを留意されたい。言い換えれば、そのような認証段階は、ユーザが動作を実施する必要が一切ない。この状況において、認証要素は、通信デバイス12及びモジュールのメモリ要素内に含まれる。
【0036】
接続が時計2と電子機器3との間に確立されると、方法は、電子機器3のマイクロコントローラ11によって、時計2のクロック状態を指示するデータの正確さを確認するステップ33を含む。そのようなクロック状態のデータは、時計2の少なくとも部分的な設定状態を表すデータである。データは、例えば、時計2上で設定される時間帯、国名コード、アラーム、地理的場所、日付、潮の干満、太陽相及び/又は月相、UTC時間等とし得る。方法が前記万年暦機構を設定することを目的とするケースでは、状態データは、現在の日付、曜日、月又は年(又は更には万年暦機構が月相を表示する要素、例えば、地理的場所、半球、国名コード等に関するデータを含む場合、現在の月相)に関連することができ、前記状態データは、万年暦機構の現在の設定状態、例えば、前記機構の表示要素の位置を表す。
【0037】
そのような確認ステップ33は、近距離通信デバイス12を制御する電子機器3のマイクロコントローラ11によって、時計2の通信モジュール7に送信するように命令された場合、前記通信デバイス12によって、時計2のクロック状態を指示するデータを抽出する命令を時計2の通信モジュール7に送信するサブステップ34を含む。したがって、このサブステップ34の間、前記命令に関する信号は、マイクロコントローラ11によって、この通信デバイス12に送信するように生成される。次に、通信デバイス12は、この命令を時計2の通信モジュール7に送信する。
【0038】
次に、確認ステップ33は、時計2がこの命令を受信した後、時計2のマイクロコントローラ8によって送信するように命令されると、近距離通信モジュール7によってクロック状態データを電子機器3に送信するサブステップ35を含み、クロック状態データは、時計2の現在の設定パラメータに対応する、この時計2の現在の設定を特徴とする。このサブステップ35の間、マイクロコントローラ8は、万年暦等のクロック機能に関連する機構の現在の設定を特徴とするクロック状態を決定する。万年暦の状況において、状態データは、現在の日付、曜日、月及び年(及び任意で、万年暦機構が月相を表示する要素、例えば、地理的場所、半球又は国名コード等に関するデータを含む場合、現在の月相)に関連する。この状態データは、万年暦機構の現在の設定状態、特に、前記機構の表示要素の位置を表すのに十分である。次に、マイクロコントローラ8は、このクロック状態データを含む信号を生成し、このクロック状態データは、通信モジュール7に送信される。次に、時計2の通信モジュール7は、前記状態データを通信デバイス12に送信する。
【0039】
この送信サブステップ34及び送信サブステップ35の代替実施形態では、確認ステップ33は、時計2の文字板の読出しを伴う工程からクロック状態データを決定するサブステップ36をもたらすことができ、この工程は、カメラを備える電子機器3、及び電子機器3のマイクロコントローラ11によって実行される光学認識アルゴリズムによって実行される。したがって、そのようなサブステップ36は、時計2の文字板及び電子機器3のカメラを互いに面して置くように設計される段階を含む。用語「互いに面する」とは、文字板及びカメラが、互いに対して、時間表示器の針がカメラの画像捕捉野内にあるような互いからの距離で配置されることを意味すると理解されたい。次に、このサブステップ36は、時計2の現在の設定を特徴とする情報を検出する段階を含み、情報は、電子機器3のカメラ及び光学認識アルゴリズムにより、時計2の文字板上に表示される。次に、このサブステップ36は、検出した情報に基づき、クロック状態データを推定する段階を含む。この状態データは、この場合、万年暦機構の現在の設定を更に特徴とする。
【0040】
次に、確認ステップ33は、万年暦機構の設定が正確であることを確認するため、状態データを設定パラメータと比較するサブステップ37を含む。これらの設定パラメータは、例えば、インターネット・ネットワーク上で、電子機器3から規則的に又は要求に応じて抽出される。用語「設定パラメータ」とは、時計2を少なくとも部分的に設定可能であるあらゆるパラメータを意味すると理解されたい。設定パラメータは、例えば、図示のような日付に関する情報であり得るが、時間帯、国名コード、アラーム、地理的場所、日付、潮の干満、太陽相及び/又は月相、UTC時間等に関する情報であってもよい。設定パラメータが万年暦機構の設定である場合、現在の日付、曜日、月及び年(及び任意で、万年暦機構が月相を表示する要素を含む場合、現在の月相。したがって、このデータは、例えば、地理的場所、半球、又は国名コード等である)に関する情報を意味すると理解され、この情報は、時計2の万年暦機構、特に、この機構の表示要素の位置を正確に設定するのに十分であることを留意されたい。
【0041】
次に、方法は、時計2の近距離通信モジュール7に少なくとも1つの設定命令を送信するステップ38を含む。この設定命令は、クロック状態データが不正確であると識別/推定されるとすぐに、電子機器3のマイクロコントローラ11によって送信するように命令された場合、近距離通信デバイス12によって送信される。このサブステップ38の間、前記設定命令に関する制御信号は、マイクロコントローラ11によって生成され、次に、電子機器3の通信デバイス12に送信される。この制御信号は、万年暦機構の設定パラメータのコード、即ち、現在の日付、曜日、月及び年(及び更に、適切な場合、月相)に対するデータ・セットのコードに対応するようなものである。上述のように、そのような設定パラメータは、例えば、インターネット・ネットワーク上で、電子機器3から規則的に又は要求に応じて抽出される。コードを実施するには、電子機器3上にインストールされた専用アプリケーションが有利に使用されることを留意されたい。電子機器3がスマートフォン又はタブレットである場合、このアプリケーションは、有利には、電子機器3がもたらす日付、曜日、月、年及び地理的場所からコードを生成することが可能である。次に、この設定命令は、通信デバイス12によって時計2の通信モジュール7に送信される。
【0042】
次に、方法は、時計2のための設定パラメータを生成するため、時計2のマイクロコントローラ8により受信した前記少なくとも1つの命令を処理するステップ39を含む。このステップ39の間、マイクロコントローラ8は、現在の万年暦の日付を得るように前記命令を処理する。
【0043】
次に、方法は、時計2のマイクロコントローラ8によって時計2を構成するように命令された際、生成した設定パラメータに従って時計2を構成するステップ40を含む。このステップ40は、万年暦機構の要素を配置する手段を作動させるサブステップを含み、前記要素が、処理ステップ39の間に得られた設定パラメータに対応する適切な場所に置かれるようにする。
【0044】
当業者に明らかである様々な修正及び/又は改良及び/又は組合せは、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に依然としてある間に、上記に示した本発明の実施形態に対して行い得ることは理解されよう。例えば、確認ステップ33は、ユーザが時間表示針の位置を使用可能なデータに変換することで、省いてよい。
【0045】
更に、本明細書は、万年暦機構の設定及び設定の確認を記載しているが、代替的に、他の設定、例えば、時間帯、時刻、又は潮の干満等の設定を実行し得る。更に、この設定情報は、時計2上に必ずしもアナログで(特に針又は円板によって)表示されるものではなく、文字板上にデジタルで表示し得る。したがって、構成ステップ40は、アナログ表示要素を変位させる手段を起動することを必ずしも含まない。
【符号の説明】
【0046】
2 時計
3 電子機器
4 ケース
5 ホーン
6 測時器ムーブメント
7 近距離通信モジュール
8 マイクロコントローラ
11 マイクロコントローラ
12 近距離通信デバイス
14 中間部品
15 支持要素
16 基板
17 チップ
18 アンテナ
19 接続器
21a 内面
23 貫通開口