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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】透明液状化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20240419BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20240419BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20240419BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/60
A61K8/44
A61Q19/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022097419
(22)【出願日】2022-06-16
(65)【公開番号】P2023183746
(43)【公開日】2023-12-28
【審査請求日】2022-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】595048544
【氏名又は名称】ちふれホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 敏明
(72)【発明者】
【氏名】川名 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】武智 貴之
(72)【発明者】
【氏名】階堂 睦子
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-158398(JP,A)
【文献】特開2019-019077(JP,A)
【文献】Shiseido,All In One Lotion, DATABASE GNPD [ONLINE], MINTEL, 2021年9月, [令和5年11月16日検索], ID 9014544, インターネット<http://www.gnpd.com>
【文献】Chifure,Moisturizing Lotion deep Moist, DATABASE GNPD [ONLINE], MINTEL, 2022年8月, [令和5年11月16日検索], ID 9804304, インターネット<http://www.gnpd.com>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/73
A61K 8/60
A61K 8/44
A61Q 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ヒアルロン酸ナトリウムと、
(B)トレハロースと、
(C)ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)と
を含み、かつ20℃での波長660nmの透過率が97.0%以上である、透明液状化粧料であって、
前記成分(C)の含有量は0.01質量%~0.6質量%であり、及び
前記成分(A)~(C)を、質量比([(A)+(B)]/[(C)])が0.10~3.00になるように含む、前記透明液状化粧料
【請求項2】
前記透明液状化粧料は、測定条件を20℃、30rpm及び1分間とする粘度が90mPa・s以下である、請求項1に記載の透明液状化粧料。
【請求項3】
前記透明液状化粧料は、前記成分(A)の含有量は0.0005質量%~0.5質量%であり、及び/又は前記成分(B)の含有量は0.0005質量%~0.5質量%であ、請求項1~のいずれか1項に記載の透明液状化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明な液状の化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
表皮の最外層に位置する角層は、水分保持機能と、水分蒸散をコントロールするバリア機能という2種類の保湿に関わる機能を有している。角層内の水分状態は、角層から蒸散して失われる水分(蒸散水分)、皮膚内部から角層に供給される水分(内部供給水分)及び外部から角層に供給される水分(外部供給水分)のバランスで決まる。
【0003】
しかし、冬期などの大気が乾燥して湿度が低下する環境下では、蒸散水分の量が内部供給水分及び外部供給水分の量を上回り、角層の水分が低下した状態になりやすくなる。そこで、蒸散水分の量を低減し、外部供給水分及び/又は内部供給水分の量を増やすように、角層の保湿機能を高めて、角層の水分量を維持することが求められる。
【0004】
角層の水分量を維持する目的では、液状化粧料がよく用いられている。外部供給水分として、及び/又は外部供給水分を外部環境から取得する役割を担い、角層内の水分を保持するように作用する保湿成分と、角層からの水分の蒸散を抑制するように作用する、及び/又は角層上部の水分を閉塞するように作用する油性エモリエント成分を含む液状化粧料により、角層の水分量を維持することが期待される。
【0005】
一方、我が国では、保湿機能を有する液状化粧料として、化粧水などの透明液状化粧料及び乳白色液状の乳液(クリーム)が主として用いられている。例えば、顔に適用する場合は、透明液状化粧料は洗顔後の肌にうるおいを与えるために用いられ、透明液状化粧料を使用した後、さらに肌を油分による人工膜で保護するために乳液が用いられる。このように、乳液と比べると、透明液状化粧料は、肌へのうるおいの付与を期待して、よりみずみずしい水に近い感触のものであることが求められる。また、みずみずしさやうるおいを視覚的に感じられる効果を期待して、澄明なものであることが好まれる。
【0006】
本願出願人は、これまでに数多くの液状化粧料を上市している。そのうちの一つとして、ヒアルロン酸ナトリウム、トレハロース及びラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)を含む液状化粧料である「ちふれ 化粧水 ノンアルコールタイプ」を販売している(非特許文献1を参照)。また、ヒアルロン酸ナトリウム、トレハロース及びラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)を含むものとして、非特許文献2に記載の化粧料がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】インターネット<URL:https://www.chifure.co.jp/products/skinlotion/2446>、2022年4月20日検索
【文献】インターネット<https://www.cosmetic-info.jp/prod/detail.php?id=65158>、2022年5月31日検索
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献1に記載の液状化粧料は、保湿成分としてヒアルロン酸ナトリウム及びトレハロースを含むことにより、肌をみずみずしく、しっとりと保つことができる。しかし、本発明者らが調べたところによれば、非特許文献1に記載の液状化粧料は、透過率(波長660nm)が95.9%であり、やや白味がかっている。
【0009】
非特許文献2に記載の化粧料は、非特許文献1に記載の液状化粧料と比べると透過率がやや大きいが、それでも96.7%であり十分ではない。また、非特許文献2に記載の化粧料は、粘度が高く、わずかに曵糸性を有し、水に近い感触を有するものではない。
【0010】
そこで、本発明は、水に近似するほどに透過率が大きく、かつ優れた保湿機能を有する透明液状化粧料を提供することを、発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために、数百種類はあるとされている保湿成分について、個別に、又は組み合わせて、これらの保湿機能を検討した。そして、試行錯誤を繰り返したところ、ヒアルロン酸ナトリウム、トレハロース及びラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)の3成分の組み合わせは、優れた保湿機能を発揮することを見出した。
【0012】
驚くべきことに、上記3成分の組み合わせの保湿機能は、個々の成分の保湿機能と比べた場合、各成分の保湿機能の効果を足し合わせた相加効果というよりも、相乗効果であることがわかった。さらに驚くべきことに、このようにして調製される化粧料は、透過率が97.0%以上あり、粘度を低く設定することができることから、水に近い外観及び感触を有するものであった。
【0013】
本発明者らは、上記の知見を基に、本発明の課題を解決するものとして、ヒアルロン酸ナトリウムと、トレハロースと、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)とを含み、透過率が所定の透明液状化粧料を創作することに成功した。本発明は、これらの知見及び成功例に基づき完成された発明である。
【0014】
したがって、本発明の一側面として、以下の各態様の化粧料が提供される。
[1](A)ヒアルロン酸ナトリウムと、
(B)トレハロースと、
(C)ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)と
を含み、かつ20℃での波長660nmの透過率が97.0%以上である、透明液状化粧料。
[2]前記透明液状化粧料は、前記成分(A)~(C)を、質量比([(A)+(B)]/[(C)])が0.10~3.00になるように含む、[1]に記載の透明液状化粧料。
[3]前記透明液状化粧料は、測定条件を20℃、30rpm及び1分間とする粘度が90mPa・s以下である、[1]に記載の透明液状化粧料。
[4]前記透明液状化粧料は、前記成分(A)の含有量は0.0005質量%~0.5質量%であり、前記成分(B)の含有量は0.0005質量%~0.5質量%であり、及び/又は前記成分(C)の含有量は0.01質量%~1.0質量%である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の透明液状化粧料。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様の透明液状化粧料は、透過率が大きく、優れた透明性を有しながらも、持続した保湿機能を発揮し、肌をみずみずしく、しっとりと保つことができることから、例えば、毎回の洗顔後に日常的に使用することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施例に記載されているとおりの、被験試料1~3の閉塞性の評価結果を示した図である。
図2図2は、実施例に記載されているとおりの、被験試料1及び3の抱水性の評価結果を示した図である。
図3図3は、実施例に記載されているとおりの、被験試料1~3の保水性の評価結果を示した図である。
図4図4は、実施例に記載されているとおりの、実施例1及び比較例1~3の被験化粧料について、短期角層水分量の経時変化を示した図である。
図5図5は、実施例に記載されているとおりの、実施例1及び比較例1~3の被験化粧料について、塗布後10分、70分及び120分の短期角層水分量の変化量を示した図である。
図6図6は、実施例に記載されているとおりの、実施例2~4、比較例1~3、参考例1~2の被験化粧料について、閉塞性の評価結果を示した図である。
図7図7は、実施例に記載されているとおりの、実施例5~6の被験化粧料及び精製水について、短期角層水分量の経時変化を示した図である。
図8図8は、実施例に記載されているとおりの、実施例5及び比較例4の被験化粧料について、長期角層水分量を測定した結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一態様である化粧料の詳細について説明するが、本発明はその目的を達成する限りにおいて種々の態様をとり得る。
【0018】
本明細書における各用語は、別段の定めがない限り、化粧品分野における当業者により通常用いられている意味で使用され、不当に限定的な意味を有するものとして解釈されるべきではない。また、本明細書においてなされている理論や推測は、本発明者らのこれまでの知見や経験によってなされたものであることから、本発明の技術的範囲はこのような理論や推測のみによって拘泥されるものではない。
【0019】
「及び/又は」は、列記した複数の関連項目のいずれか1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせ若しくは全ての組み合わせを意味する。
「約」は、その用語に続く数量の±10%以内の量を意味する。例えば、「約100」は、100±10%、すなわち、90~110を意味する。
「含有量」は、濃度と同義であり、化粧料の全体量に対する成分の量の割合を意味する。ただし、各成分の含有量の総量は、100%を越えることはない。本明細書では、別段の定めがない限り、含有量の単位は「質量%(wt%)」を意味する。なお、成分の含有量は、市販品を用いる場合は、市販品に含まれる成分の量であることが好ましいが、市販品自体の量であってもよい。
「含む」は、含まれるものとして明示されている要素以外の要素を付加できることを意味する(「少なくとも含む」と同義である)が、「からなる」及び「から本質的になる」を包含する。すなわち、「含む」は、明示されている要素及び任意の1種若しくは2種以上の要素を含み、明示されている要素からなり、又は明示されている要素から本質的になることを意味し得る。要素としては、成分、工程、条件、パラメーターなどの制限事項などが挙げられる。
整数値の桁数と有効数字の桁数とは一致する。例えば、1の有効数字は1桁であり、10の有効数字は2桁である。また、小数値は小数点以降の桁数と有効数字の桁数とは一致する。例えば、0.1の有効数字は1桁であり、0.10の有効数字は2桁である。
【0020】
本発明の一態様の透明液状化粧料は、ヒアルロン酸ナトリウム(以下、成分(A)ともよぶ)と、トレハロース(以下、成分(B)ともよぶ)と、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)(以下、成分(C)ともよぶ)とを含む。さらに、本発明の一態様の透明液状化粧料は、これらの成分(A)~(C)を含みつつも、20℃での波長660nmの透過率が97.0%以上であることを特徴とする。
【0021】
成分(A)であるヒアルロン酸ナトリウムは、水溶性ムコ多糖類の一種であり、保湿剤などとして化粧料に用いられる。ヒアルロン酸ナトリウムは、その分子量が化粧料の粘度に与える可能性がある。すなわち、分子量が大きいヒアルロン酸ナトリウムを含む化粧料は、閉塞性が高くなり、皮膚表面に留まる傾向にあるが、粘度が大きくなる傾向にある。そこで、ヒアルロン酸ナトリウムの分子量(GPC)の上限は、約300万ダルトンであることが好ましく、200万ダルトンであることがより好ましい。ヒアルロン酸ナトリウムの分子量(GPC)の下限は、典型的には0.5万ダルトンである。なお、ヒアルロン酸ナトリウムの分子量は、本発明の一態様の透明液状化粧料に付与する粘度、ヒアルロン酸ナトリウムの含有量などによって適宜設定することができる。
【0022】
ヒアルロン酸ナトリウムの取得方法は特に限定されず、例えば、鶏冠、皮膚、軟骨組織といった動物組織から常法により抽出及び精製する方法、微生物醗酵によって取得する方法、市販品を購入する方法などが挙げられる。ヒアルロン酸ナトリウムの市販品としては、例えば、「BIO-SODIUM HYALURONATE POWDER」シリーズのグレード「HMW」、「MMW」、「LMW」、「VLMW」(いずれもHYUNDAI BIOLAND社製)、ヒアルロン酸「FCH-200」、「FCH-150」、「FCH-120」、「FCH-80」、「FCH-60」、「FCH-SU」(キッコーマンバイオケミファ社製)、「ヒアルロンサンHA-LQ」、「ヒアルロンサンHA-LQH」、「HAbooster(登録商標)」(キユーピー社製)、「PrimalHyaltm(登録商標) Ultrafiller」「ヒアルロン酸ナトリウム末」(ホルス社製)などが挙げられる。ヒアルロン酸ナトリウムは、加水分解したヒアルロン酸ナトリウムや、一部の置換基がアセチル化したヒアルロン酸ナトリウムであってもよい。ヒアルロン酸ナトリウムは上記したものの1種を単独で、又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0023】
成分(B)であるトレハロースは、グルコースが1,1-グリコシド結合してなる二糖である。トレハロースの取得方法は特に限定されず、例えば、酵母発酵によって取得する方法、でん粉などの植物材料から取得する方法、化学的に合成する方法、市販品を購入する方法などが挙げられる。トレハロースの市販品としては、例えば、「トレハロース(化粧品用)」(林原社製)などが挙げられる。
【0024】
成分(C)であるラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)は、L-グルタミン酸、ラウリン酸、高級アルコール及びフィトステロールからなるアミノ酸系油剤である。ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)の取得方法は特に限定されず、例えば、化学的に合成する方法、市販品を購入する方法などが挙げられる。ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)の市販品としては、例えば、「エルデュウ(登録商標)PS-203」(味の素社製)、「Plandool(登録商標)-LG2」(日本精化社製)などが挙げられる。
【0025】
本発明の一態様の透明液状化粧料は、成分(A)~(C)を含むことにより、持続した保湿機能を発揮することができる。さらに、本発明の一態様の透明液状化粧料は、成分(A)~(C)の含有量が所定の関係にあることにより、より優れた閉塞性を示し得る。この観点から、本発明の一態様の透明液状化粧料は、成分(A)~(C)を、質量比([(A)+(B)]/[(C)])が0.10~3.00になるように含むことが好ましく、0.20~2.60になるように含むことがより好ましく、0.30~1.75になるように含むことがなおさらに好ましい。
【0026】
成分(A)、成分(B)及び成分(C)のそれぞれの含有量は、上記質量比になるような量にすることが好ましい。例えば、本発明の一態様の透明液状化粧料の透明性、粘度、安定性などを考慮すれば、成分(A)の含有量は、0.0005質量%~0.5質量%であることが好ましく、0.001質量%~0.5質量%であることがより好ましく、0.01質量%~0.1質量%であることがさらに好ましく;成分(B)の含有量は、0.0005質量%~0.5質量%であることが好ましく、0.001質量%~0.5質量%であることがより好ましく、0.01質量%~0.3質量%であることがさらに好ましく;成分(C)の含有量は、0.01質量%~1.0質量%であることが好ましく、0.02質量%~0.8質量%であることがより好ましく、0.03質量%~0.6質量%であることがさらに好ましい。
【0027】
本発明の一態様の透明液状化粧料は、成分(A)~(C)を含みつつも、優れた透明性を有する。本発明の一態様の透明液状化粧料の透明性は、20℃での波長660nmの透過率が97.0%以上である透明性であればよいが、より透明性のあるものとするために、上記透過率は好ましくは98.0%以上であり、より好ましくは99.0%以上である。本発明の一態様の透明液状化粧料は、含有する成分によって色づけされてもよいが、無色又は微白色であることが好ましい。
【0028】
本発明の一態様の透明液状化粧料は、水のような感触を有するものとするためには、粘度が低いことが好ましい。このような場合、本発明の一態様の透明液状化粧料は、測定条件を20℃、30rpm及び1分間として測定される粘度が90mPa・s以下であることが好ましく、50mPa・s以下であることがより好ましく、20mPa・s以下であることがさらに好ましく、10mPa・s以下又は5.0mPa・s以下であることがなおさらに好ましい。なお、上記粘度の下限は、典型的には0.1mPa・sである。
【0029】
本発明の一態様の透明液状化粧料の透過率及び粘度は、後述する実施例に記載されている方法によって測定して得られる値である。
【0030】
本発明の一態様の透明液状化粧料は、優れた透明性を有し、かつ優れた保湿機能を発揮するものである限り、成分(A)~(C)に加えて、その他の成分を含んでもよい。
【0031】
その他の成分は特に限定されず、例えば、通常の液状化粧料に用いられる成分などが挙げられ、より具体的には水、油剤、保湿剤、防腐剤、pH調整剤、乳化剤、酸化防止剤、清涼剤、キレート剤、美容成分、その他各種薬効成分、粉体、香料、色材などが挙げられる。その他の成分の含有量は、本発明の課題解決を妨げない限り、当業者により適宜設定し得る。その他の成分の幾つかについて以下に列挙するが、これらはあくまでも例示であり、限定されるものではない。
【0032】
水は、化粧料の製造に際して使用される水であればよく、精製水、イオン交換水、水道水などが挙げられる。水の含有量は、70質量%~90質量%であることが好ましく、80質量%~90質量%であることがより好ましい。
【0033】
油剤としては、例えば、油性エモリエント成分などが挙げられ、具体的にはトリエチルヘキサノイン、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、パルミチン酸エチルヘキシル、エチルヘキサン酸セチル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)、ステアリルアルコール、セテアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ジメチコン、シクロペンタシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、スクワラン、ミネラルオイル、水添ポリ(C6-12オレフィン)、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、オリーブ果実油、ホホバ種子油、ラベンダー油、月見草油、アボガド油、ツバキ種子油、マカデミア種子油などが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。油剤の含有量は、0質量%~1.5質量%であることが好ましく、0質量%~0.6質量%であることがより好ましい。
【0034】
保湿剤としては、例えば、グリセリン、ブチレングリコール(BG)、プロピレングリコール(PG)、ジグリセリン、ジプロピレングリコール(DPG)、メチルグルセス-10、メチルグルセス-20、PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン、キシリトール、マルチトール、マルトース、ソルビトール、イノシトール、エリスリトール、ブドウ糖、果糖、加水分解エラスチン、乳酸ナトリウム、シクロデキストリン、ピロリドンカルボン酸、尿素などが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。保湿剤の含有量は、0質量%~30質量%であることが好ましいが、本発明の一態様の透明液状化粧料により優れた保湿機能を付与するためには、5質量%~25質量%であることがより好ましく、10質量%~20質量%であることがさらに好ましい。
【0035】
防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル(メチルパラベン、プロピルパラベンなど)及びそのナトリウム塩、フェノキシエタノール、安息香酸、安息香酸塩類、サリチル酸、サリチル酸塩類、ソルビン酸及びその塩類、クロルフェネシン、ヒノキチオール、イソプロピルメチルフェノール、パラクロルフェノール、塩化ベンザルコニウム、塩酸クロルヘキシジン、トリクロロカルバニリド、感光素などが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。防腐剤の含有量は、0質量%~1質量%であることが好ましい。
【0036】
pH調整剤としては、例えば、乳酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、リンゴ酸ナトリウム、エチドロン酸、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルギニン、トリエタノールアミン、モノエタノールアミンなどが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。pH調整剤の含有量は、0質量%~1質量%であることが好ましい。pH調整剤は中和剤ともよぶ。
【0037】
乳化剤としては、例えば、親油性乳化剤、親水性乳化剤などが挙げられ、具体的には、ステアリン酸グリセリル(SE)などのグリセリン脂肪酸エステル;ラウリン酸ポリグリセリル-6、ミリスチン酸ポリグリセリル-10、ステアリン酸ポリグリセリル-10、イソステアリン酸ポリグリセリル-10などのポリグリセリン脂肪酸エステル;ステアリン酸PEG-5グリセリル、ステアリン酸PEG-15グリセリル、イソステアリン酸PEG-15グリセリル、トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル、オレイン酸PEG-5グリセリルなどのポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;ヤシ脂肪酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、パルミチン酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステル;ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、イソステアリン酸PEG-20ソルビタンなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ラウリン酸ソルベス-6、テトラオレイン酸ソルベス-6、テトラオレイン酸ソルベス-30、テトラオレイン酸ソルベス-60などのポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル;PEG-20水添ヒマシ油、PEG-30水添ヒマシ油、PEG-60水添ヒマシ油、トリイソステアリン酸PEG-50水添ヒマシ油などのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;ポリオキシエチレンセチルエーテル(セテス-20)、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル;PPG-4セテス-1、PPG-8セテス-20、PPG-6デシルテトラデセス-12、PPG-6デシルテトラデセス-20などのポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル;ラウリン酸PEG-10、ステアリン酸PEG-10、ステアリン酸PEG-25、ステアリン酸PEG-40、ステアリン酸PEG-45、ステアリン酸PEG-55、オレイン酸PEG-10、ジステアリン酸PEG-150、ジイソステアリン酸PEG-8などのポリエチレングリコール脂肪酸エステル;水添レシチン、水添リゾレシチンなどのレシチン誘導体などが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。乳化剤の含有量は、0質量%~5質量%であることが好ましい。
【0038】
酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、トコフェロールなどのビタミンE及びその誘導体;チオタウリン、メマツヨイグサ抽出液、βカロチン、カテキン化合物、フラボノイド化合物、ポリフェノール化合物、ピロ亜硫酸ナトリウムなどが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。酸化防止剤の含有量は、0質量%~1質量%であることが好ましい。
【0039】
キレート剤としては、例えば、アラニン、エデト酸2ナトリウム(EDTA-2Na)、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、フィチン酸ナトリウム、リン酸3ナトリウム、グルコン酸ナトリウムなどが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。キレート剤の含有量は、0質量%~0.1質量%程度が好ましい。
【0040】
美容成分としては、例えば、リンゴタンニン(リンゴ果実エキス)、カンゾウ根エキス、レスベラトロール、チューベロース多糖体、異性化糖、ヤエヤマアオキ果汁、チンピエキス、グリチルリチン酸ジカリウムなどが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。美容成分の含有量は、0質量%~5質量%であることが好ましい。
【0041】
薬効成分としては、例えば、アスコルビン酸とその塩及び誘導体、アラントイン、ニコチン酸アミド、ハイドロキノンとその配糖体、トラネキサム酸、コウジ酸、並びに「いわゆる薬用化粧品中の有効成分リスト」に記載されたものなどが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。薬効成分の含有量は、0質量%~5質量%であることが好ましい。
【0042】
本発明の一態様の透明液状化粧料は、化粧料として用いられる限りにおいて、その機能及び/又は効果については特に限定されない。本発明の一態様の透明液状化粧料は、優れた保湿機能を発揮する。本発明の一態様の透明液状化粧料の保湿機能は、例えば、後述する実施例に記載の閉塞性、抱水性、保水性及び角層水分量により評価することができる。
【0043】
本発明の一態様の透明液状化粧料は、成分(A)及び成分(B)を含み、成分(C)を含まず、かつその他の成分はほぼ同様である透明液状化粧料に比べて、又は成分(C)を含み、成分(A)及び成分(B)を含まず、かつその他の成分はほぼ同様である透明液状化粧料に比べて、閉塞性及び/又は角層水分量が優れている。
【0044】
本発明の一態様の透明液状化粧料の製造方法は特に限定されず、水溶性の成分と水とを混合して水相を形成し、親油性の成分を混合して油相を形成し、次いで水相を撹拌しながら油相を徐々に加えて、全体的に均質になるように混合することなどにより製造することができる。これらの工程において、適宜加温してもよい。加温する際の温度は特に限定されないが、例えば、65℃~85℃である。
【0045】
本発明の一態様の透明液状化粧料は、その使用態様や剤形については特に限定されず、例えば、化粧水、美容液といったスキンケア化粧料などに適用可能である。また、本発明の一態様の透明液状化粧料は、シートなどに含浸すること、噴射することなどが可能である。そこで、本発明の一態様の透明液状化粧料は、含浸シート、含浸マスク、ポンプなどのスプレーといった剤形とすることが期待される。
【0046】
本発明の一態様の透明液状化粧料は、水のような感触でありながら、皮膚に塗布することで、角層の水分量を向上し、及び/又は皮膚からの水分の蒸散を抑制して、持続した優れた保湿機能を発揮し、肌をみずみずしく、しっとりと保つことができる。
【0047】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の課題を解決し得る限り、本発明は種々の態様をとることができる。
【実施例
【0048】
<例1 3成分の保湿性評価>
[1-1 被験試料の調製]
ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)として、「エルデュウ(登録商標)PS-203」(味の素社製)を用いた。ヒアルロン酸ナトリウムとして、「BIO-SODIUM HYALURONATE POWDER(MMW)」(HYUNDAI BIOLAND社製)(分子量が1.5MDa(GPC))を用いた。トレハロースとして、「トレハロース(化粧品用)」(林原社製)を用いた。
【0049】
ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)のみを被験試料1とした。2質量%ヒアルロン酸ナトリウム及び20質量%トレハロースの水溶液を被験試料2として用いた。
【0050】
ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、ヒアルロン酸ナトリウム及びトレハロースを、市販品として10:1:3の質量比で混合したものを被験試料3として用いた。
【0051】
[1-2 評価方法]
(1-2-1)閉塞性
被験試料 50mgを均一に塗布したろ紙を、精製水 15gが入った規格ビン(PS-7K)の口に載せて、室温で静置した。ろ紙を取り除いた状態で、試験前及び24時間経過後のビンの重量を測定した。コントロールとして、被験試料を塗布していないろ紙を用いて、同様に測定した。以下の式により各被験試料の蒸散抑制率を求め、閉塞性を評価した(繰り返し数は3)。
被験試料の蒸散抑制率(%)=[T-T24]/[t-t24]×100
:被験試料を用いた場合の、試験前のビンの重量
24:被験試料を用いた場合の、24時間経過後のビンの重量
:コントロールを用いた場合の、試験前のビンの重量
24:コントロール用いた場合の、24時間経過後のビンの重量
【0052】
(1-2-2)抱水性
被験試料1及び3について、乳鉢に被験試料 10gを量り取り、精製水 0.4gを滴下しながら乳棒を用いて手動で撹拌して、被験試料と精製水とをよく混じり合わせた。均一に混合後、さらに精製水 0.4gを滴下して同様に撹拌及び混合した。これを繰り返して、被験試料と精製水とが混じり合わなくなり、目視で水が分離するようになった時点を終点とした。以下の式により、抱水率を求め、抱水性を評価した(繰り返し数は3)。
抱水率(%)=[終点前までの滴下した精製水の総量]/[被験試料の量]×100
【0053】
(1-2-3)保水性
被験試料1及び3については、抱水性を試験したときに得られた終点における被験試料及び精製水の混合液(最大量抱水している状態)をサンプルとして用いた。被験試料2は、それ自体をサンプルとして用いた。
【0054】
サンプルを改めてよく混合した後、2gを規格ビン(PS-7K)に量り取り、蓋をせずに、シリカゲルが入ったデシケーター内で24時間静置した。試験前及び24時間経過後のビンの重量を測定して、試験前のビンの重量に対する24時間経過後のビンの重量を百分率で示すことにより保水率(水分変化率)を求め、保水性を評価した。
【0055】
[1-3 評価結果]
被験試料1~3について、閉塞性、抱水性及び保水性を評価した結果を図1~3に示す。
【0056】
図1が示すとおり、被験試料3は、被験試料1よりもラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)の含有量が少なく、さらに閉塞性が認められなかったヒアルロン酸ナトリウム及びトレハロースを含むものでありながら、閉塞性は被験試料1と同程度であった。そして、抱水性については、被験試料1よりもむしろ、被験試料3の方が良好であった。保水性についても、被験試料3と被験試料1との間に大きな差異は認められなかった。
【0057】
以上の結果から、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、ヒアルロン酸ナトリウム及びトレハロースの3成分の組み合わせにより、相乗的な効果として閉塞性、抱水性及び保水性が発揮されたことがわかった。
【0058】
ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)は油分であるため、水に溶け難く、水に混ぜるときは撹拌しながらゆっくりと添加する。しかし、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)に加えて、水溶性であるヒアルロン酸ナトリウム及びトレハロースを用いることにより、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)の含有量を低減しながらも、同等又はそれ以上の閉塞性、抱水性及び保水性を化粧料に付与することができれば、水性の化粧料の製造工程において、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)を可溶化し易くなり、分離の懸念が少なくなって、化粧料の製造効率が向上するという利点がある。
【0059】
<例2 透明液状化粧料の短期保湿性評価(1)>
[2-1 被験化粧料の調製]
表1に示した処方に従い、以下の手順により、透明液状化粧料として各種被験化粧料を調製した。なお、表中の数値「%」は、質量%(wt%)を表わす。
【0060】
ヒアルロン酸ナトリウム、トレハロース、メチルパラベン及び水を混合したもの(水相)を、メチルパラベンが均一溶解するように75℃まで加温した。また、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)とPPG-8セテス-20とを均一に混合したもの(油相)を、水相との温度差をなくすために75℃まで加温した。パドルを用いて緩やかに水相を撹拌(回転数180rpm)しながら、油相を加えていき、均一に混合した。攪拌を続けながら30℃まで徐冷することにより、実施例1の被験化粧料を得た。なお、比較例1~3の被験化粧料は、ヒアルロン酸ナトリウム、トレハロース及び/又はラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)を配合せずに、同様の方法により調製した。
【0061】
【表1】
【0062】
[2-2 評価方法]
(2-2-1)角層水分量(短期)
無作為に選んだパネラー12名を対象として、温度22℃、湿度50%に温湿度を設定した肌測定室内にて、20分間馴化(待機)した後、塗布量が1mg/cmになるように被験化粧料(実施例1、比較例1~3)を直接的に前腕内側部の皮膚へ塗布した。各塗布部位について、皮膚計測器「Corneometer CM825」(COURAGE-KHAZAKA electronic GmbH社製)を用いて、角層水分量を塗布前と、塗布後10分ごとに2時間測定した。ひとつの被験化粧料塗布部について、4箇所測定した。塗布前(0分:無塗布)における角層水分量に対する、一定時間経過時の角層水分量との差を、変化量(ΔAU)としてそれぞれ求めた。プラトー時(塗布後、測定値の減少程度が落ち着いた時間)における測定結果について、対応のあるt検定にて統計解析を行った。
【0063】
[2-3 評価結果]
(2-3-1)角層水分量(短期)
実施例1及び比較例1~3の被験化粧料について、短期角層水分量の経時変化を示したグラフを図4に示し、塗布後10分、70分及び120分の短期角層水分量の変化量を示したグラフを図5に示す。
【0064】
図4及び図5が示すとおり、実施例1の被験化粧料は、比較例1~3の被験化粧料に対して、いずれの時間においても角層水分量が高かった。また、実施例1の被験化粧料について、塗布後70分及び120分の間ではほとんど差異がみられなかった。これは比較例2の被験化粧料(エルデュウのみ含有)についても同様であった。しかし、比較例3の被験化粧料(ヒアルロン酸ナトリウム及びトレハロースを含有)は塗布後120分の角層水分量は塗布後70分の角層水分量よりも少なかった。
【0065】
実施例1の被験化粧料は、ヒアルロン酸ナトリウム及びトレハロースを含有しているのにもかかわらず、塗布後70分及び120分の角層水分量にほとんど差異がみられなかったという結果は、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、ヒアルロン酸ナトリウム及びトレハロースの3成分の組み合わせによる角層の水分保持効果は、各成分による相加的な効果というよりも、相乗的な効果であることがわかった。
【0066】
また、比較例2及び比較例3の被験化粧料を比較すると、塗布後10分では比較例3の被験化粧料の方が角層水分量は多く、塗布後70分では比較例2の被験化粧料の方が角層水分量は多かった。この結果から、塗布後比較的短期間では、ヒアルロン酸ナトリウム及びトレハロースの有する抱水性がラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)の有する抱水性及び閉塞性を上回り、ヒアルロン酸ナトリウム及びトレハロースによる保湿機能が発揮されることがわかった。また、塗布後時間が経つにつれて、ヒアルロン酸ナトリウム及びトレハロースの有する抱水性よりも、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)の有する閉塞性により角層水分量の減少が抑制されることがわかった。そして、3成分が組み合わさることにより、ヒアルロン酸ナトリウム及びトレハロースの有する抱水性、並びにラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)の有する抱水性及び閉塞性が相乗的に発揮して、長期間の角層水分量の保持が達成されると推測される。
【0067】
<例3 透明液状化粧料の閉塞性評価>
[3-1 被験化粧料の調製]
表2に示した処方に従い、上記2-1と同様の手順により、透明液状化粧料として各種被験化粧料を調製した。なお、表中の数値「%」は、質量%(wt%)を表わす。
【0068】
【表2】
【0069】
[3-2 評価方法]
(3-2-1)閉塞性
上記1-2-1と同様にして、閉塞性を評価した(繰り返し数は3)。ただし、求めた被験化粧料の蒸散抑制率について、比較例1とその他の被験化粧料との比較をわかりやすくするために、各被験化粧料の蒸散抑制率から比較例1の蒸散抑制率を差し引いた値を求めた。
【0070】
[3-3 評価結果]
(3-3-1)閉塞性
実施例2~4、比較例1~3、参考例1~2の被験化粧料について、閉塞性の評価結果を図6に示す。なお、3成分比とは、[ヒアルロン酸ナトリウム及びトレハロースの総含有量]/[ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)の含有量]を示す。
【0071】
図1~3の結果から、油剤であるラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)の含有量が多い(3成分比が小さい)ほど、閉塞性が高くなると推測していた。しかし、実際には、図6が示すとおり、3成分比の順番で参考例1、実施例2~4及び参考例2の結果を並べた場合、実施例3(3成分比 1.00)を最大値とする正規分布様になることがわかった。
【0072】
以上の結果から、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)とヒアルロン酸ナトリウム及びトレハロースとを、特定の割合で配合することによって、閉塞性(水分蒸散抑制効果)が向上することがわかった。
【0073】
<例4 透明液状化粧料の短期保湿性評価(2)>
[4-1 被験化粧料の調製]
表3に示した処方に従い、以下の手順により、透明液状化粧料として各種被験化粧料を調製した。なお、表中の数値「%」は、質量%(wt%)を表わす。
【0074】
成分(1)、(2)、(4)~(7)、(13)、(14)及び(16)を均一混合したもの(水相)を、メチルパラベンが均一溶解するように75℃まで加温した。また、成分(3)、(8)~(12)及び(15)を均一に混合したもの(油相)を、水相との温度差をなくすために75℃まで加温した。パドルを用いて緩やかに水相を撹拌(回転数180rpm)しながら、油相を加えていき、均一になるまで混合した。攪拌を続けながら30℃まで徐冷することにより、各被験化粧料を得た。
【0075】
【表3】
【0076】
[4-2 評価方法]
(4-2-1)角層水分量(短期)
無作為に選んだパネラー7名を対象として、被験化粧料(実施例5~6)及び水(精製水)を用い、上記2-2-1と同様に角層水分量の変化量(ΔAU)を求めた。
【0077】
[4-3 評価結果]
(4-3-1)角層水分量(短期)
実施例5~6の被験化粧料及び精製水について、短期角層水分量の経時変化を示したグラフを図7に示す。
【0078】
図7が示すとおり、実施例5~6の被験化粧料は、図4に示す実施例1の被験化粧料と同様に、角層水分保持作用を有することがわかった。
【0079】
<例5 透明液状化粧料の長期保湿性評価>
[5-1 評価方法]
(5-1-1)角層水分量(長期)
無作為に選んだパネラー21名(30代~50代、女性)を対象として、1日2回、2週間、半顔に実施例5の被験化粧料を塗布させ、もう一方の半顔には比較例4の被験化粧料を塗布させた。なお、パネラーには化粧料がいずれのものであるのかは知らせなかった(ブラインドテスト)。塗布前及び塗布後2週間の両側の頬について、上記2-2-1 と同様に角層水分量を測定した。それぞれの被験化粧料における塗布後2週間の角層水分量について、塗布前の角層水分量を100%としたときの相対値を求めた。
【0080】
[5-2 評価結果]
(5-2-1)角層水分量(長期)
実施例5及び比較例4の被験化粧料について、角層水分量(長期)を測定した結果を図8に示す。
【0081】
図8に示すとおり、実施例5の被験化粧料の相対値は約102%であり、ほとんど変化しなかった比較例4の被験化粧料よりも大きかった。これにより、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、ヒアルロン酸ナトリウム及びトレハロースの3成分を含む化粧料は、2週間塗布し続けた場合にでも、優れた保湿機能を発揮することがわかった。なお、実施例5の被験化粧料は、塗布後4週間でも角層の水分量保持効果が維持された。
【0082】
<例6 透明液状化粧料の透過率及び粘度評価>
[6-1 評価方法]
(6-1-1)透過率
第十八改正日本薬局方の「一般試験法 2.61 濁度試験法」に準じて、紫外線可視分光光度計(「UV-1900」;島津製作所社製)を用いて、20℃の被験化粧料について、波長660nmの透過率を測定した(繰り返し回数は3回)。セルは、「アズラボ標準石英セル Q-244」(アズワン社製)を用いた。
【0083】
(6-1-2)粘度
B型粘度計(「VISCOMETER TVB-25L」;東機産業社製)及びロータ(「L/Adp」;東機産業社製)を使用した。測定条件は、20℃の被験化粧料について、30rpm、1分間とした。
【0084】
[6-2 評価結果]
実施例5~6の被験化粧料、参考例3の被験化粧料(非特許文献1に記載の「ちふれ 化粧水 ノンアルコールタイプ」)及び参考例4の被験化粧料(非特許文献2に記載の「ドクターシーラボ VC100エッセンスローションEXスペシャル」)について、透過率及び粘度を測定した結果を表4に示す。
【0085】
透過率について、表4に示すとおり、実施例5~6の被験化粧料は、透過率が99%以上であり、無色澄明な液体であった。それに対して、参考例3及び4の被験化粧料は、透過率が97%以下であった。また、実施例5~6の被験化粧料について、参考例4の被験化粧料に対して対応のないt検定にて統計解析したところ、いずれもp<0.001となり、有意差が認められた。
【0086】
粘度について、表4に示すとおり、実施例5~6及び参考例3の被験化粧料は、粘度が5mPa・s以下であった。それに対して、参考例4の被験化粧料の粘度は約100mPa・sであり、比較的粘性の感じられるものであった。なお、参考例4の被験化粧料は、回転数により粘度が異なる値となり、非ニュートン流体であると考えられた。
【0087】
【表4】
【0088】
以上の結果より、実施例5~6の被験化粧料は、透過率が99%以上であることから澄明であり、さらに粘度が5mPa・s以下であることから水に近い感触のする透明液状化粧料であることがわかった。
【0089】
また、例1~例6の結果から、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、ヒアルロン酸ナトリウム及びトレハロースの3成分を所定の割合で含む透明液状化粧料は、澄明かつ水に近い感触でありながら、優れた保湿機能を発揮するものであることがわかった。
【0090】
実施例5~6の被験化粧料と同様にして、表5~7に示す実施例7~9の被験化粧料を製造した。実施例7~9の被験化粧料は、実施例5~6の被験化粧料と同程度の透過率及び粘度を有するものであった。
【0091】
【表5】
【0092】
【表6】
【0093】
【表7】
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の一態様の透明液状化粧料は、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、ヒアルロン酸ナトリウム及びトレハロースの3成分による相乗的な閉塞性、抱水性及び保水性を発揮して、優れた保湿効果を奏しつつも、水に近似するような透明性及び感触を呈し得ることから、化粧水、含浸シート、含浸マスク、スプレーなどのスキンケア化粧品などとして利用することができる。使用者は、本発明の一態様の透明液状化粧料を使用することにより、日常的に快適に、肌の乾燥を低減又は防止することが期待できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8