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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】堆積物の平滑化
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/12 20060101AFI20240419BHJP
   B41F 15/08 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
H05K3/12 610N
B41F15/08 303E
H05K3/12 610P
H05K3/12 610Q
H05K3/12 610Z
H05K3/12 610J
H05K3/12 610D
H05K3/12 610K
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022178910
(22)【出願日】2022-11-08
(65)【公開番号】P2023071174
(43)【公開日】2023-05-22
【審査請求日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】2116126.0
(32)【優先日】2021-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】514153171
【氏名又は名称】エーエスエムピーティー・エスエムティー・シンガポール・ピーティーイー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マーク・アルフレッド・ウイットモア
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・デイヴィッド・シェイク
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-251498(JP,A)
【文献】特開2020-131463(JP,A)
【文献】特開2005-167100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/12
B41F 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に平坦なフィーチャを生成するための方法であって、
i)印刷媒体の堆積物を前記基板上に印刷するステップであって、印刷された前記堆積物が上面を含むステップ、
ii)印刷された前記堆積物の前記上面を改質するステップ、及び
iii)改質された前記堆積物を平滑化して平坦なフィーチャを形成するステップ、を含み、
ステップiii)が、平滑化操作を実行することを含み、この平滑化操作において、平滑化スキージが、平滑化ステンシルを横切って移動されて、印刷された前記堆積物の改質された上面に接触する、方法。
【請求項2】
ステップii)が、印刷された前記堆積物を部分的に乾燥させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップii)が、前記堆積物を50℃から200℃の範囲、任意選択で100℃から200℃の範囲、任意選択で125℃から175℃の範囲、任意選択で140℃から160℃の範囲、任意選択で150℃付近の温度に加熱することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップii)が、前記堆積物を30秒から10分の範囲の時間、任意選択で1分から5分の範囲の時間、任意選択で約2分の時間加熱することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
ステップii)が、対流加熱または空気衝突プロセスを使用した加熱を使用して、赤外線照射を前記堆積物に適用することによって前記堆積物を加熱することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
ステップii)が、印刷された前記堆積物を空気衝突プロセスまたは光化学処理プロセスを用いて処理することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ステップi)が、厚さt1及び少なくとも1つの印刷開口部を有する印刷ステンシルを基板上に配置するステップと、前記印刷媒体を前記印刷ステンシル上に配置するステップと、前記少なくとも1つの印刷開口部を通して前記印刷媒体を押し込むために、スキージブレードを、前記印刷ステンシルを横切って移動させるステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ステップiii)において前記平滑化スキージが、前記平滑化ステンシルを横切って移動されて、部分的に乾燥された前記堆積物の上面に接触する、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記平滑化ステンシルは、t1より小さい厚さt2を有することを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記平滑化スキージは、湾曲した輪郭のエッジを含み、任意選択で前記平滑化スキージは、回転可能に取り付けられたバーを含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
次のステップを含む、請求項1に記載の方法:
iv)平坦なフィーチャを乾燥させるために焼成するステップ。
【請求項12】
ステップiv)が、前記平坦なフィーチャを100℃から200℃の範囲、任意選択で125℃から175℃の範囲、任意選択で140℃から160℃の範囲、任意選択で約150℃の温度に加熱することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップiv)が、4分~15分の範囲の時間、任意選択的に6分~10分の範囲の時間、任意選択的に約8分の時間、前記平坦なフィーチャを加熱することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記印刷媒体が銀焼結ペーストを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法を実施するための装置。
【請求項16】
表面改質モジュールを含む複数の操作モジュールと、少なくとも1つの印刷機とを含む生産ラインであって、前記生産ラインは、前記操作モジュール間でワークピースを搬送する搬送機構を更に含み、前記生産ラインは、印刷機により印刷されたワークピースが、前記搬送機構により前記印刷機から前記表面改質モジュールに搬送されて表面改質プロセスが行われた後、前記表面改質モジュールから前記印刷機に搬送されて平滑化処理が行われるように構成されており、この平滑化処理において、平滑化スキージが、平滑化ステンシルを横切って移動されて、前記ワークピースの改質された上面に接触していることを特徴とする生産ライン。
【請求項17】
前記表面改質モジュールがオーブンを含む、請求項16に記載の生産ライン。
【請求項18】
印刷処理中にワークピース上に印刷媒体を印刷するための印刷機であって、印刷された前記印刷媒体を少なくとも部分的に乾燥させるためのヒータを備え
前記ワークピース上に印刷媒体の堆積物を生成するために、前記印刷処理中にステンシル内の少なくとも1つの開口部を通して前記印刷媒体を押し込むように動作するスキージブレードと、前記堆積物の上面を平坦化するように動作する平滑化スキージとを備える、印刷機。
【請求項19】
前記ヒータが、赤外線ヒータを含むことを特徴とする請求項18に記載の印刷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に平坦なフィーチャ(feature)を製造するための方法、そのような方法を実行するための装置、製造ライン及び印刷機に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体用途においてダイを基板に取り付けるための様々な技術が存在する。例えば、専用の装置を用いて基板上にダイフィルムをスタンプすることが知られている。このようなスタンピングプロセスは高品質の結果を生成することができるが、装置コストが高い。半導体産業内では、より安価な装置を使用する代替技術を提供する必要がある。そのような代替手段の1つは、スタンピングの代わりに、印刷機を使用してAg(銀)堆積物(deposit)を基板上に印刷することである。より詳細には、このような公知のプロセスは、典型的には以下の段階を含む。
i)堆積物を正確に位置決めするためにパターン化されたステンシルを使用して、銀堆積物を基板上に印刷するために印刷機が使用される。
ii)印刷された堆積物は、酸化を防止するために、有利にはN(窒素)環境において、乾燥プロセスに付される。典型的には、基板は、N環境を提供することができるスマートオーブン内に置かれ、約120℃に加熱され、約20~30分間この温度付近に維持される。
iii)約250℃の結合温度(bonding temperature)を使用して、「ホットダイ配置(hot die placement)」プロセスを使用して、乾燥した堆積物上にダイを配置する。このステップには、専用機(dedicated machine)を使用する。
iv)基板は、いわゆる「圧力焼結(pressure sintering)」プロセスにおいて、通常は上昇した圧力で行われる焼結プロセスに付される。典型的には、300℃までの温度で約30MPaの最大圧力が使用される。この焼結ステップは、典型的には、酸化を防止するために、真空またはN環境のいずれかで行われる。このステップは通常、ASMアセンブリシステムによって作成されたSilverSAM等の専用機内で実行される。
【0003】
このようなプロセスは、最初の印刷ステップを比較的安価な印刷機によって行うことができるので、典型的にはスタンピングプロセスよりも安価である。しかしながら、印刷プロセスは実行が困難であり、全ての用途に適しているわけではないことが認識されている。当該技術分野においてそれ自体良く知られているように、印刷プロセスは、パターン化されたステンシルを基板上に配置し、印刷媒体(この場合、銀焼結ペースト)をステンシル上に配置し、次に、ステンシルの上部を横切って傾斜したスキージブレードを擦ることによって、ステンシルの孔を通して印刷媒体を押し出すことを含む。次に、ステンシルが基板から持ち上げられ、ステンシルの開口部に対応する堆積物中に印刷媒体が基板上に残される。しかしながら、図1に模式的に示すように、銀焼結ペーストの堆積物1は、ここでは下にある基板2との断面で示されているが、印刷方向、すなわちスキージの移動方向におけるその水平範囲に亘って平坦性が不均一となるという問題を伴う。図示されるように、堆積物の中央範囲(点Y2とY3との間)は、一定の上面高さZ1で平坦であるが、堆積物1の前縁(点Y1とY2との間)は、Z1よりも低く、堆積物1の後縁(点Y2とY3との間)は、Z1よりも著しく高く、この特徴的な隆起したフィーチャは、「犬の尾」または「ドッグイア」3として知られている。平坦でない表面上にダイを取り付けること、特に犬の耳のように持ち上げられた表面上にダイを取り付けることは、ダイに亀裂を生じさせる可能性があり、これは明らかに望ましくない。理想的には、クラックを防止するために、ダイは、高さの偏差が表面に亘って最小化されるような平坦性プロファイル(flatness profile)を有する表面に取り付けられるべきである。現在の目標は、表面に亘って10μm以下の高さ偏差を有する平坦性プロファイルを達成することである。このようにして、図に示すような印刷された堆積物が、最大水平範囲Y3-Y2のダイのベースとして、通常の公差内でのみ安全に使用できる。これは、堆積物がダイよりも水平範囲において約25%大きいことを意味する。これは、印刷媒体を浪費すると共に、共通基板上の隣接するダイの最小水平分離に制限を課す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、これらの問題を克服しようとするものであり、印刷された堆積物のフィーチャを製造する方法及び装置であって、その水平範囲に亘って平坦性が改善され、特に、ダイをそれに安全に取り付けることができるように十分に平坦なフィーチャを製造する方法及び装置である。
【0005】
本発明によれば、この目的は、中間表面改質ステップ(intermediate surface modification step)を含む3ステップのプロセスを使用することによって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、基板上に平坦なフィーチャを生成する方法が提供され、この方法は
i)印刷媒体の堆積物を基板上に印刷するステップであって、印刷された堆積物が上面を含むステップ、
ii)印刷された堆積物の上面を改質するステップ、及び
iii)改質された堆積物を平滑化(levelling)して平坦なフィーチャを形成するステップ、を含んでいる。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様の方法を実施するための装置が提供される。
【0008】
本発明の第3の態様によれば、複数の操作モジュールを含む生産ラインであって、前記操作モジュールは、表面改質モジュールと、少なくとも1つの印刷機とを含み、前記生産ラインは、前記操作モジュール間でワークピースを搬送する搬送機構を更に含み、前記生産ラインは、印刷機によって印刷されたワークピースが、前記搬送機構によって前記印刷機から前記表面改質モジュールに搬送されて表面改質プロセスが行われ、その後、前記表面改質モジュールから前記印刷機に搬送されて平滑化処理が行われるように構成されている。
【0009】
本発明の第4の態様によれば、印刷処理中にワークピース上に印刷媒体を印刷するための印刷機であって、印刷された印刷媒体を少なくとも部分的に乾燥させるためのヒータを備える印刷機が提供される。
【0010】
本発明の他の特定の態様及び特徴は、添付の特許請求の範囲に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】従来の印刷プロセスで基板上に印刷された銀焼結ペーストの堆積物の断面側面図を概略的に示す。
図2】本発明の実施形態による平坦なフィーチャを生成するためのプロセスを示すフローチャートである。
図3】堆積物を印刷する直前の最初の印刷プロセスを模式的に示す側面図である。
図4図3に類するもので、堆積物の印刷直後の最初の印刷プロセスを示す。
図5】断面側面図において、堆積物がオーブンモジュール内で部分的に乾燥されていることを概略的に示す。
図6】堆積物の平滑化の直前の平滑化プロセスを断面側面図で概略的に示す。
図7】堆積物の平滑化の直後の平滑化プロセスを断面側面図で概略的に示す。
図8】本発明の方法を実施するのに適した生産ラインのセットアップを概略的に示す。
図9】本発明の方法を実施するのに適した生産ラインのセットアップを概略的に示す。
図10】本発明の方法を実施するのに適した生産ラインのセットアップを概略的に示す。
図11】本発明の方法を実施するのに適した生産ラインのセットアップを概略的に示す。
図12】最初の印刷ステップi)、部分乾燥ステップii)及び平滑化ステップiii)の両方を行うことができる印刷機の内部詳細を断面側面図で概略的に示す。
図13】最初の印刷ステップi)、部分乾燥ステップii)及び平滑化ステップiii)の両方を行うことができる印刷機の内部詳細を断面側面図で概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面(正確な縮尺ではない)を参照して本発明を説明する。
【0013】
本発明の実施形態による平坦なフィーチャを生成するための基本的なプロセスを示すフローチャートを図2に示す。本発明によれば、3つの主なステップがある:
i)最初に、印刷媒体の堆積物が基板上に印刷される。
ii)印刷された堆積物の上面が、例えば図2の実施形態に示されるように部分的に乾燥されることによって改質され、及び
iii)改質された堆積物が平滑化されて平坦なフィーチャを生成する。
【0014】
図2は4番目のステップも示している。
iv)平坦なフィーチャが乾燥される。
【0015】
この第4のステップは多くの用途に不可欠であるが、上記第3のステップの最後によって生成された平坦なフィーチャが、乾燥ステップを経ることなく実用的に有用であることも予想される。更に、堆積物/フィーチャの完全な乾燥は、背景技術のセクションで説明した公知のプロセスで既に実施されており、これを達成することができる様々な方法がある。従って、本発明は、主に最初の3つのステップに関係し、4番目のステップは任意であるが通常の後続プロセスであると考えられる。
【0016】
図3は、銀焼結ペーストの堆積物11を印刷する直前の第1のステップの初期印刷工程を模式的に断面側面図で示したものである。図4図3と同様であるが、堆積物11の印刷直後のプロセスを示す。
【0017】
図3において、実質的に平坦な基板12が印刷機内に配置されている状態が示されている。図3では見えないが、当該技術分野で良く知られているように、基板12は、可能な限り平坦に維持されると共に、その上面が可能な限り水平X-Y平面に平行に維持されるように、印刷機内に配置されたツーリングによって下方から支持されている。印刷処理の開始時に、基板12は、ステンレス鋼またはニッケルのような金属シート、あるいは織られた金属フィラメントのメッシュを含むことができる印刷ステンシル13と接触するように上方に移動される。印刷ステンシル13は、基板12上に形成しようとするフィーチャの形状及び位置に対応する少なくとも1つの開口部14を含むようにパターン化されるが、より詳細に以下に説明するように、形成しようとするフィーチャよりもわずかに小さい水平寸法とされている。多くの(mass of)印刷媒体、この場合の銀焼結ペーストは、印刷ステンシル13の上面に供給され、次に、図示のY軸に平行な印刷方向Pに移動する傾斜したスキージブレード15によってその表面の上に押し込まれる。それ自体良く知られているように、スキージブレード15は、印刷機内のガントリー(図示せず)から移動可能に吊り下げられた印刷キャリッジ(図示せず)によって運ばれても良い。印刷媒体は、スキージブレード15の前縁で材料のロール16を形成する傾向にある。スキージブレード15は、典型的には、印刷ステンシル13に対して角度が付けられており、例えば、50°と70°との間の角度が付けられているので、スキージブレード15の印刷方向Pへの移動は、ロール16に水平力と下向きの力の両方を与え、その結果、スキージブレード15がその上を通過するときに、印刷媒体が開口部14内に押し込まれ、基板12上に押し込まれる。図4に示すように、印刷媒体の堆積物11は、図1に示すものと同様のプロファイルを有しており、その後縁(trailing edge)に特徴的なドッグイア17を含む。より詳細には、印刷ステンシル13が図示されるような厚さt1を有する場合、堆積物11の大部分はt1またはそれよりわずかに低い厚さを有するが、より大きな厚さ(>t1)のドッグイア17を有し、従って、開口部14の頂部を越えて突出し、更に、堆積物11の前縁は、図示されるようなt1よりもいくらか低い厚さであり得る。厚さt1が100μm~200μm、任意選択で125μm~175μm、任意選択で約150μmである印刷ステンシルを使用すると、最適な結果が得られることが実験的に判明している。
【0018】
この印刷処理に続いて、基板12は、印刷ステンシル13から離れて下降され、基板12の上に堆積物11を残す。
【0019】
第2のステップでは、印刷された堆積物11の上面を改質してその粘着性を減少させるが、本実施形態では、これは、焼成プロセス(baking process)で堆積物11を部分的に乾燥させることによって達成される。これは、以下に更に概説するように、様々な方法で達成することができる。しかしながら、一実施形態では、図5に概略的に示されているように、堆積物11を有する基板12は、製造ラインのモジュール間でワークピースを搬送するために典型的に使用される1つまたは複数のコンベヤ等の搬送機構(図5には示されていない)を介して、印刷機から、印刷機と同じ製造ライン内の別のオーブンモジュール17に搬送される。図5に示すオーブンモジュール17は、赤外線照明を堆積物11に適用し、従ってその温度を上昇させるように動作する多数(ここでは3つ)の赤外線ランプ18を含む。ステップii)の目的は、堆積物11を部分的に乾燥させること、すなわち、堆積物11の内部を柔らかくしたまま、堆積物11の外表面を乾燥させることである。実験的に、これは、堆積物を50℃から200℃の範囲、任意選択で100℃から200℃の範囲、任意選択で125℃から175℃の範囲、任意選択で140℃から160℃の範囲、任意選択で150℃付近の温度に加熱することによって達成され得ることが解った。堆積物は、30秒から10分の範囲の時間、任意選択で1分から5分の範囲の時間、任意選択で約2分の時間加熱され得る。
【0020】
図5においては、オーブンモジュール17は加熱要素として赤外線ランプ18を使用しているが、堆積物11の加熱は、もちろん、種々の方法で実施することができる。例えば、当該技術分野において知られているように、放射加熱ではなく対流加熱を使用して、加熱されたガスジェット(必ずしも空気ではなく、窒素のような実質的に不活性なガスも使用することができる)が堆積物11に向けられる空気衝突プロセスを含む。実際、空気衝突プロセスの場合には、印刷された堆積物の上面を乾燥させて、加熱されていないガスジェットを適用することによってその粘着性を十分に減少させることができる。
【0021】
ステップiii)において、改質された、すなわちこの実施形態では部分的に乾燥された堆積物は、平滑化されて平坦なフィーチャを生成する。これを達成するために、部分的に乾燥した堆積物21を有する基板12は、搬送機構を介して、オーブンモジュール17から、オーブンモジュールと同じ製造ライン内の印刷機に搬送される。以下により詳細に説明するように、これは、平滑化動作を実行する専用の別個の印刷機であっても良く、あるいは、印刷機が印刷動作と平滑化動作の両方を実行するように構成されている場合は、ステップi)を実行した同じ印刷機であっても良い。平滑化動作は図6及び図7に概略的に示されており、図6は、平滑化直前の部分乾燥堆積物21を示す図であり、図7は、平滑化直後の部分的に乾燥した堆積物21を示す。ステップi)の場合と同様に、基板12は、平坦性及び水平X-Y平面との平行性を維持するために、ツーリング(図示せず)によって印刷機内に支持されている。基板12は上に移動されて、平滑化ステンシル22と接触しており、平滑化ステンシル22は、図3に関して前述した印刷ステンシル13とほぼ同様の構成であっても良い。ただし、図3に示すように、平滑化ステンシル22の厚さt2は、印刷ステンシル13の厚さt1よりも薄くされている(t2<t1)。厚さt2が50μm~150μm、任意選択で70μm~100μm、任意選択で約80μmの平滑化ステンシルを使用すると、満足な結果が得られることが実験的に見出されている。平滑化ステンシル22は、意図されたフィーチャ25の最終的な形状、寸法及び位置に対応する少なくとも1つの開口部24でパターン化されている(図7参照)。図6から解るように、平滑化ステンシル22の開口部24は、印刷ステンシル13の開口部14よりも水平方向にわずかに大きく、部分的に乾燥した堆積物21の周囲に空隙を形成する。平滑化を行うために、印刷キャリッジ(図示せず)に適切に取り付けられ得る平滑化スキージ23が、平滑化ステンシル22の上面を横切って平滑化方向Lに移動され、部分的に乾燥された堆積物21の上面に接触する。部分乾燥ステップii)による事前の表面改質により、上面の粘着性が低減されているので、堆積材料が平滑化スキージ23に付着することが無い。図示のように、平滑化方向Lは印刷方向Pと反対方向であり、この配置は最適な平滑化をもたらすことが分かっている。しかし、これは必須ではなく、LとPが同じ方向を有するプロセスを使用して、満足のいく平滑化を得ることができる。平滑化スキージ23は、湾曲した輪郭のエッジを有する回転可能に取り付けられたバーの形態で示されており、バーは、X軸に平行な水平回転軸26を中心に回転し、従ってロールすることができるので、部分的に乾燥した堆積物21を、台所のローリングピンと同様の方法で平坦化することができる。平滑化スキージとして回転可能に取り付けられたバーを使用することは必須ではなく、実際に、ASMによって製造された「ロールバースキージ」のような湾曲した輪郭のエッジを有する非回転バーを使用して、高い水準の平滑化が実験的に達成されていることを理解されたい。上述したように、部分的に乾燥した堆積物21は乾燥した外表面を有するので、印刷媒体が平滑化スキージ23に付着することが防止され、一方、部分的に乾燥した堆積物21の柔らかい内部は、亀裂または他の損傷無しに変形及び平坦化されることを可能にする。図7から解るように、形成されたフィーチャ25は、実質的に平坦であり、開口部24を満たすように広げられる。印刷開口部14と平滑化開口部24との相対的な大きさに応じて、フィーチャ25は、図7に示すように、平滑化ステンシル22で、または平滑化ステンシル22の上面からわずかに突出したところで上面を有することができる。平滑化に続いて、基板12は、平滑化ステンシル22から離れるように下降され、基板12上にフィーチャ25を残す。次に、基板12は、特定の用途に必要な場所に搬送または輸送することができる。
【0022】
殆どの場合、基板12及びそのフィーチャ25は、フィーチャ25を焼成して完全に乾燥させる最終ステップiv)に進むことが想定される。このステップは、従来の製造ラインのオーブンモジュールにおいて、任意には図5に示すのと同じオーブンモジュール17において、例えば、赤外線ランプを用いた放射加熱技術または対流加熱システムを使用して好適に実施することができる。100℃から200℃の範囲、任意選択で125℃から175℃の範囲、任意選択で140℃から160℃の範囲、任意選択で約150℃の範囲の温度にフィーチャを加熱すると、満足な結果が得られることが実験的に見出された。更に、平坦なフィーチャを4分~15分の範囲の時間、任意選択的に6分~10分の範囲の時間、任意選択的に約8分の時間加熱すると、満足な結果が得られることが解った。このようにして得られた十分に乾燥したフィーチャは、その後、特定の用途に必要とされるように使用することができる。例えば、ダイをフィーチャに取り付けてから、加圧焼結ステップを実行することができるが、このステップ自体は当該技術分野で公知である。
【0023】
図8図11は、本発明の方法を実施するのに適した例示的な生産ラインセットアップを概略的に示す。これらの図において、各矩形ブロックは、製造ラインの異なるモジュールを表し、矢印は、製造ラインを通るワークピース(すなわち、基板、その上に堆積物が印刷された基板、またはその上にフィーチャが形成された基板)の搬送を示す。
【0024】
図8は、簡易な線形生産ラインのセットアップを示す。モジュール30は、最初の印刷ステップi)を実行するための印刷機セットアップである。モジュール31は表面改質モジュールであり、この実施形態では、部分乾燥ステップii)によって表面改質を行うように適合されたオーブンモジュールである。モジュール32は、平滑化ステップiii)を実行するための印刷機セットアップである。最後に、モジュール33は、完全乾燥ステップiv)を実施するように構成されたオーブンモジュールである。
【0025】
図9は、設置面積(footprint)を縮小したセットアップを示している。モジュール34は、最初の印刷ステップi)と平滑化ステップiii)の両方を実行することができる印刷機である。モジュール35は、部分乾燥ステップii)による表面改質と完全乾燥ステップiv)との両方を行うように作動するオーブンモジュールである。実際には、ワークピースは、これらのモジュール間でシャトルされて(shuttled)、全てのステップを実行する。すなわち、堆積物がモジュール34内に印刷され、部分乾燥のためにモジュール35に搬送され、次に平滑化のためにモジュール34に戻され、その後、完全乾燥のためにモジュール35に最終的に搬送される。
【0026】
図10は、図9に示されたものと比較して、設置面積が小さく、シャトリングが低減された構成を示す。モジュール36は、印刷ユニット38とオーブンユニット39とを有する、プリントとオーブンとを組み合わせたモジュールである。印刷ユニット38は、最初の印刷ステップi)を実行するように構成され、一方、オーブンユニット39は、部分乾燥ステップii)によって表面改質を実行するように構成されている。これは、例えば、少なくとも1つの赤外線ランプを既存の印刷機に後付けすることによって実現することができ、この赤外線ランプは、基板がツーリング上に支持されたままの状態で、印刷ステップi)が完了するとすぐに、基板を加熱するために点灯することができる。モジュール37は、平滑化ステップiii)を実行するように構成された印刷機である。モジュール40は、完全乾燥ステップiv)を実施するように構成されたオーブンモジュールである。
【0027】
図11は、最初の印刷ステップi)を実行するように構成された印刷ユニット42と、部分乾燥ステップii)を介して表面改質を実行するためのオーブンユニット43と、平滑化ステップiii)を実行するように動作する平滑化ユニット44とを有する、印刷とオーブンモジュールとを組み合わせたモジュール41を備えたセットアップを示す。モジュール41は、図12に関して以下により詳細に説明される。モジュール45は、完全乾燥ステップiv)を実施するように構成されたオーブンモジュールである。
【0028】
図12は、最初の印刷ステップi)、部分乾燥ステップii)による表面改質及び平滑化ステップiii)の全てを行うように設定された印刷機の内部詳細を断面側面図で概略的に示す。図示されているように、印刷機は、2つの別個の印刷領域を収容することができるように、大きな内部を有しており、事実上、2つの別個の印刷機の内部機構は、単一の印刷機フレームに結合されている。図示された左側には、ステップi)を実行するための印刷セットアップがある。基板12は、ツーリング50上に支持され、ツール50は、当該技術分野でそれ自体良く知られているように、基板12を印刷ステンシル13に近づけたり遠ざけたりするために垂直に移動することができる上昇テーブル(図示せず)上に支持されている。印刷ステンシル13は、例えば周知のVectorGuard(登録商標)テンションフレーム等のテンションフレーム51内に緊張状態で保持されている。スキージブレード15は、印刷キャリッジ52と共に移動するように印刷キャリッジ52に取り付けられている。印刷ステンシル13の下には、スイッチオフされた状態で示されている赤外線ランプ53が配置されている。図示されている右側には、ステップiii)を実行するための平滑化のセットアップがある。基板12’はツーリング50’上に支持され、工具50’はまた上昇テーブル(図示せず)上に支持されている。平滑化ステンシル22は、テンションフレーム51’内に緊張状態で保持されている。平滑化スキージ23は、印刷キャリッジ52’と共に移動するように印刷キャリッジ52’に取り付けられている。
【0029】
図13は、部分乾燥ステップii)による表面改質の間の図12の印刷機を模式的に示す図である。ツーリング50及び基板12は、印刷ステンシル13から離れるように下降される。この動作により、新たに印刷された堆積物11は、図示されているオンに切り替えられた赤外線ランプ53によって視線に入る。堆積物11の部分的乾燥は、その場で行うことができる。
【0030】
部分的乾燥ステップii)の完了に続いて、フィーチャ25を有する基板12’が一旦ツーリング50’から搬送されると、部分的に乾燥した堆積物を有する基板12は、コンベヤ(図示せず)上でツーリング50’に搬送することができ、このコンベヤは好適には、印刷機へのワークピースの入出を行うために当該技術分野で一般的に使用されるものと構造的に類似していても良い。
【0031】
もちろん、そのような印刷機を実現する様々な方法があり、例えば、赤外線ランプを様々な位置に配置することができる。特に、それらは平滑化のセットアップと関連して配置されても良く、その場合、堆積物11を有する新たに印刷された基板12は、ステップi)の完了後にツーリング51’に搬送され、次いで、部分乾燥ステップii)による表面改質が、基板が平滑化の前にツーリング51’によって支持されている間に行われても良い。更に別の可能性では、オーブンモジュールを印刷セットアップと平滑化のセットアップとの間に設けて、2つの別々の印刷機の内部動作とオーブンモジュールとを単一の印刷機フレームに効果的に結合することができる。対流加熱手段のような、ヒータの他のタイプまたは構成も可能である。
【0032】
同様に、図10に示すように、組み合わされたプリント/オーブンモジュール36も、図12及び図13の左側に示されるように、一体化された加熱要素を有する印刷セットアップを含むことができる一方で、右側に示された平滑化のセットアップは、別個の印刷モジュール37内に配置することができる。
【0033】
もちろん、図12に示したものと同様の印刷機モジュールを提供することも可能であるが、加熱要素は省略している。この場合、ワークピースは、最初の印刷ステップi)の後に別のオーブンモジュールに搬送され、部分的な乾燥ステップii)を通して表面改質が行われ、次に印刷機モジュールの平滑化のセットアップに搬送されて平滑化のステップiii)が行われる。
【0034】
上述の実施形態は単なる例示であり、本発明の範囲内の他の可能性及び代替案は当業者には明らかであろう。例えば、上述の実施形態は、空気乾燥による印刷された堆積物の表面改質に焦点を当ててきたが、他の技術を使用して表面を改質し、その粘着性を低減することができる。例えば、光化学処理プロセスを印刷された堆積物に適用して、表面の化学的性質を変化させ、粘着性を低減することができる。前述の表面改質プロセスを組み合わせることも可能であり、例えば、赤外線加熱、対流加熱、空気衝突及び光化学処理プロセスの2つ以上の組み合わせをステップii)で使用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 銀焼結ペーストの堆積物
2 基板
3 ドッグイア
11 堆積物
12,12’ 基板
13 印刷ステンシル
14 開口部
15 スキージブレード
16 ロール
17 オーブンモジュール
18 赤外線ランプ
21 部分的に乾燥した堆積物
22 平滑化ステンシル
23 平滑化スキージ
24 開口部
25 フィーチャ
26 回転軸
30、32、34、37 印刷モジュール
31、33、35、40、45 オーブンモジュール
36、41 プリントモジュールとオーブンモジュールの組み合わせ
38、42 印刷ユニット
39、43 オーブンユニット
44 平滑化ユニット
50、50’ ツーリング
51,51’ テンションフレーム
52、52’ 印刷キャリッジ
53 赤外線ランプ
P 印刷方向
L 平滑化方向
t1 印刷ステンシルの厚さ
t2 平滑化ステンシルの厚さ
図1
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