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特許7475431粉末コーティング組成物およびそれから形成されたコーティング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】粉末コーティング組成物およびそれから形成されたコーティング
(51)【国際特許分類】
   C09D 167/00 20060101AFI20240419BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240419BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240419BHJP
   C09D 5/03 20060101ALI20240419BHJP
   C09D 171/00 20060101ALI20240419BHJP
   C09D 127/16 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
C09D167/00
B32B27/36
B32B27/30 D
C09D5/03
C09D171/00
C09D127/16
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2022509058
(86)(22)【出願日】2020-08-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-19
(86)【国際出願番号】 US2020046316
(87)【国際公開番号】W WO2021030664
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-04-13
(31)【優先権主張番号】16/541,850
(32)【優先日】2019-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】399074983
【氏名又は名称】ピーピージー・インダストリーズ・オハイオ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PPG Industries Ohio,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ブッシュ, トラヴィス オーウェン
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドリー, ポール ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】モンロイ, ヴィクター エー.
(72)【発明者】
【氏名】ライジング, ジョン シー.
(72)【発明者】
【氏名】デン, ラン
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-068432(JP,A)
【文献】特開平03-095276(JP,A)
【文献】特開2003-183573(JP,A)
【文献】特開2006-070082(JP,A)
【文献】特表2018-524443(JP,A)
【文献】特開2015-129267(JP,A)
【文献】特開2006-037015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 167/00
B32B 27/36
B32B 27/30
C09D 5/03
C09D 171/00
C09D 127/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末コーティング組成物であって、
カルボン酸官能基を含み、かつ少なくとも15mg KOH/gかつ最大70mg KOH/gの酸価を有するポリエステルポリマーと、
前記ポリエステルポリマーの前記カルボン酸官能基と反応性の第1の架橋剤であって、ここで、前記第1の架橋剤が、ヒドロキシルアルキルアミド化合物またはトリグリシジルイソシアヌレートを含む、第1の架橋剤と、
前記ポリエステルポリマーおよび第1の架橋剤と非反応性のフルオロポリマーであって、ここで、前記フルオロポリマーが、フルオロポリエーテルポリマー含む、フルオロポリマーと、を含み、
前記ポリエステルポリマー対前記フルオロポリマーの重量比が、80:20~60:40であり、
硬化すると、前記粉末コーティング組成物が、前記ポリエステルポリマーおよび前記フルオロポリマーを含む単一コーティング層を形成する、粉末コーティング組成物。
【請求項2】
前記ポリエステルポリマーが、前記粉末コーティング組成物の総固体重量に基づき、少なくとも20重量%を構成する、請求項1に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項3】
前記フルオロポリマーが、前記粉末コーティング組成物の総固体重量に基づき、40重量%もしくは40重量%未満を構成する、請求項1に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項4】
前記ポリエステルポリマーが、20~70mg KOH/gの範囲内の酸価を有する、請求項1に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項5】
前記ポリエステルポリマーが、10~100℃の範囲内のガラス転移温度を有する、請求項1に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項6】
前記ポリエステルポリマーが、165℃でASTM D 4287に従ってコーンプレート粘度計によって測定して5~100Pa・sの範囲内の溶融粘度を有する、請求項1に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項7】
前記フルオロポリエーテルポリマーが、フルオロエチレンビニルエーテルコポリマーである、請求項に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項8】
前記フルオロポリマーが、10~100℃の範囲内のガラス転移温度を有する、請求項1に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項9】
前記第1の架橋剤が、ヒドロキシルアルキルアミド化合物およびエポキシ官能化合物の組み合わせを含む、請求項1に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項10】
前記第1の架橋剤が、ヒドロキシルアルキルアミド化合物およびエポキシ官能(メタ)アクリル化合物の両方を含む、請求項1に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項11】
前記ヒドロキシルアルキルアミド化合物が、ベータ-ヒドロキシルアルキルアミド化合物である、請求項1に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項12】
前記粉末コーティング組成物中の前記エポキシ官能(メタ)アクリル化合物の量が、前記ヒドロキシルアルキルアミド化合物の量よりも多く、前記量が、前記粉末コーティング組成物の総固体重量に基づく、請求項1に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項13】
前記粉末コーティング組成物が、顔料をさらに含む、請求項1に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項14】
前記粉末コーティング組成物が、イプシロン-カプロラクタムおよび/またはトリグリシジルイソシアヌレートを実質的に含まない、請求項1に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項15】
前記粉末コーティング組成物が、有機紫外線吸収剤を実質的に含まない、請求項1に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項16】
前記粉末コーティング組成物が、イソシアネート官能架橋剤を実質的に含まない、請求項1に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項17】
前記粉末コーティング組成物が、前記フルオロポリマーと反応性の1~10重量%の第2の架橋剤をさらに含み、前記第2の架橋剤が、イソシアネート官能架橋剤を含む、請求項1に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項18】
前記粉末コーティング組成物が、前記フルオロポリマーと反応性の第2の架橋剤を含み、総イソシアネート当量対総ヒドロキシル基当量の比が0.65:1~2:1であるように、前記第2の架橋剤が、イソシアネート基を含み、かつ前記フルオロポリマーが、ヒドロキシル基を含む、請求項1に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項19】
前記第1の架橋剤が、トリグリシジルイソシアヌレートを含み、前記粉末コーティング組成物が、前記フルオロポリマーと反応性の第2の架橋剤をさらに含み、前記第2の架橋剤が、イソシアネート官能架橋剤を含む、請求項1に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項20】
前記ポリエステルポリマーが、10mg KOH/g未満のヒドロキシル価を有する、請求項1に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項21】
請求項1に記載の粉末コーティング組成物から形成されたコーティングで少なくとも部分的にコーティングされた、基材。
【請求項22】
前記粉末コーティング組成物から形成された前記コーティングが、前記基材の表面を直接覆って形成された単一コーティング層を含む、請求項2に記載の基材。
【請求項23】
前記ポリエステルポリマーおよび前記フルオロポリマーの両方が、前記基材と直接接触する、請求項2に記載の基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルポリマーとフルオロポリマーとを含有する粉末コーティング組成物、粉末コーティング組成物から形成されたコーティング、およびそのようなコーティングで少なくとも部分的にコーティングされた基材に関する。
【背景技術】
【0002】
粉末コーティング組成物は、保護特性、装飾特性などを含む多数の特性を提供するために基材に塗布される。例えば、フルオロポリマー系の粉末コーティング組成物は、良好な耐候性を提供するために、一般に、金属基材などの基材に塗布される。フルオロポリマー系の粉末コーティング組成物は良好な耐候性を提供するが、これらの組成物は典型的には、大量のフルオロポリマー成分を必要とする。結果として、これらの組成物は典型的には、フルオロポリマー原材料の高いコストのため高価になる。したがって、フルオロポリマーの量を低減させ、依然として良好な耐候性および耐食性などの良好な物理的特性を提供する他の成分を利用するフルオロポリマー系の粉末コーティング組成物を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、カルボン酸官能基を有し、かつ少なくとも15mg KOH/gの酸値を有するポリエステルポリマーと、ポリエステルポリマーのカルボン酸官能基と反応性の第1の架橋剤と、ポリエステルポリマーおよび第1の架橋剤と非反応性のフルオロポリマーとを含む、粉末コーティング組成物を対象とする。粉末コーティング組成物中のポリエステルポリマー対フルオロポリマーの重量比は、80:20~60:40である。硬化すると、粉末コーティング組成物は、ポリエステルポリマーおよびフルオロポリマーを含む単一コーティング層を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】本発明の硬化した粉末コーティング組成物(実施例2)の走査型電子顕微鏡(SEM)画像であり、(A)上面図および(B)断面図を示す。
図2】本発明の硬化した粉末コーティング組成物(実施例2)のSEM/エネルギー分散X線分光法(EDX)画像である。矢印はポケットに見出されるフッ素および塩素を示す。
図3】本発明の硬化した粉末コーティング組成物(実施例7)のSEM画像であり、(A)上面図および(B)断面図を示す。
図4】本発明の硬化した粉末コーティング組成物(実施例7)のSEM/EDX画像である。矢印はポケットに見出されるフッ素および塩素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0005】
以下の詳細な説明の目的のために、本発明は、明示的に反対の定めがある場合を除き、様々な代替の変形およびステップの順序をとり得ることが理解されるべきである。さらに、任意の動作の実施例以外で、または別段の指示がない限り、例えば、本明細書および特許請求の範囲で使用される成分の量を表すすべての数は、「約」という用語によっていかなる場合も修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、反対の指示がない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明によって得られる所望の特性に応じて変動し得る近似値である。少なくとも、かつ均等論の適用を特許請求の範囲に限定しようとするものではなく、各数値パラメータは、少なくとも報告された有効数字の桁数を考慮し、かつ通常の四捨五入技法を適用することによって解釈されるべきである。
【0006】
本発明の広い範囲を記載する数値範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の実施例において記載される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、任意の数値は、それらのそれぞれの試験測定値に見出される標準偏差に必然的に起因する、特定の誤差を本質的に含む。
【0007】
また、当然のことながら、本明細書に記載される任意の数値範囲は、その中に包含されるすべての副範囲を含むことが意図されている。例えば、「1~10」の範囲は、記載される最小値である1と記載される最大値である10との間(およびこれらを含む)、すなわち、1または1より大きい最小値、および10または10より小さい最大値を有する、すべての副範囲を含むことを意図している。
【0008】
本出願では、別段の明記がない限り、単数形の使用は複数形を含み、複数形は単数形を包含する。加えて、本出願では、「および/または」がある特定の場合において明示的に使用され得るが、別段の明記がない限り、「または」の使用は、「および/または」を意味する。さらに、本出願では、「a」または「an」の使用は、別段の明記がない限り、「少なくとも1つの」を意味する。例えば、「a」フルオロポリマー、「a」ポリエステルポリマー、「a」架橋剤などは、これらの項目のうちのいずれかの1つまたは1より多くを指す。
【0009】
示されるように、本発明は、カルボン酸官能基を有するポリエステルポリマーと、ポリエステルポリマーのカルボン酸官能基と反応性の第1の架橋剤と、ポリエステルポリマーおよび第1の架橋剤と非反応性のフルオロポリマーとを含む、粉末コーティング組成物であって、ポリエステルポリマー対フルオロポリマーの重量比は、80:20~60:40であり、硬化すると、粉末コーティング組成物が、ポリエステルポリマーおよびフルオロポリマーを含む単一コーティング層を形成する、粉末コーティング組成物を対象とする
【0010】
本明細書で使用される場合、「粉末コーティング組成物」は、液体形態とは対照的に、固体粒子形態で具体化されたコーティング組成物を指す。したがって、粉末コーティング組成物を形成する成分を、硬化性固体粒子粉末コーティング組成物を形成するために組み合わせることができる。例えば、ポリエステルポリマー、フルオロポリマー、第1の架橋剤、および必要に応じた追加の成分を、自由に流動する硬化性固体粒子粉末コーティング組成物を形成するために組み合わせることができる。本明細書で使用される場合、本発明の硬化性固体粒子粉末コーティング組成物に関して「自由に流動する」という用語は、個々の粒子間の最小限の凝集または集合を有する硬化性固体粒子粉末組成物を指す。粉末コーティングの噴霧適合性係数Rは、試験方法ISO/DIS 8130-05またはAS 100流動性ユーザーマニュアルに従って、Sames AS 100 Fluidity Indicatorで測定され得る。本発明の粉末コーティング組成物は、140(非常に良好な評価)を超える、または120(良好な評価)を超える噴霧適合性係数Rを有し得る。
【0011】
示されるように、本発明の粉末コーティング組成物は、ポリエステルポリマーを含む。本明細書で使用される場合、「ポリエステルポリマー」は、モノマー単位を連結するための1つまたは1つより多くのエステル官能基を含むポリマーを指す。本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、オリゴマーおよびホモポリマー(例えば、単一のモノマー種から調製される)、コポリマー(例えば、少なくとも2つのモノマー種から調製される)、およびグラフトポリマーを指す。「樹脂」という用語は、「ポリマー」と交換可能に使用される。
【0012】
本発明の粉末コーティング組成物に使用することができる好適なポリエステルポリマーの非限定的な例としては、脂環式ポリオールを含む脂肪族ポリオールと、脂肪族および/または芳香族ポリカルボン酸ならびに無水物との縮合反応に基づくポリエステルポリマーが挙げられる。「脂肪族」という用語は、飽和炭素結合を含有する非芳香族直鎖、分枝鎖、または環状炭化水素構造を指す。脂肪族構造の飽和炭素鎖(複数可)はまた、酸素、窒素、カルボニル基、およびこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、他の元素も含むことができ、またこれらによって中断することもできる。したがって、脂肪族構造の飽和炭素鎖は、エーテル基、エステル基、およびこれらの組み合わせを含むことができるが、これらに限定されない。さらに、「芳香族」という用語は、仮説的局在化構造の場合よりも著しく大きい安定性を持つ(電子の非局在化に起因する)環状共役炭化水素を指す。
【0013】
本明細書で使用される場合、「ポリオール」は、2つまたは2つより多くのヒドロキシル基を含む化合物を指す。本発明の粉末コーティング組成物に有用なポリエステルポリマーを調製するために使用することができる脂肪族ポリオールは、例えば、2~12個の炭素原子を含むことができる。好適な脂肪族ポリオールの非限定的な例としては、1,2-エタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
【0014】
「ポリカルボン酸」は、2つまたは2つより多くのカルボン酸基、または酸の無水物を有する有機化合物を指す。ポリカルボン酸または無水物は、芳香族および/もしくは環状ポリカルボン酸またはこれらの無水物であってもよい。本明細書で使用される場合、「環状ポリカルボン酸」は、2つまたは2つより多くのカルボン酸基または酸の無水物を有する、炭素環(例えば、芳香環構造)などの、少なくとも1つの閉環構造を含む成分を指す。環状ポリカルボン酸(典型的には環状二酸)としては、芳香族環状ポリカルボン酸、脂肪族環状ポリカルボン酸、およびこれらの組み合わせを挙げることができる。芳香族環状ポリカルボン酸、またはその無水物の非限定的な例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、無水フタル酸、トリメリット酸、トリメリット酸無水物、およびこれらの組み合わせが挙げられる。脂肪族非芳香族環状ポリカルボン酸、またはその無水物の非限定的な例としては、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、デカヒドロナフタレンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,1-シクロプロパンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、およびこれらの組み合わせが挙げられる。他の好適なポリカルボン酸および無水物としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの直鎖脂肪族ポリカルボン酸、およびこのような酸の無水物が挙げられる。ポリオールおよびポリカルボン酸は、カルボン酸官能性を有するポリエステルを形成するように、ポリオールに対してモル過剰のポリカルボン酸と反応し得る。好適なポリエステルポリマーはまた、商品名REAFREE(登録商標)としてArkemaから、および商品名URALAC(登録商標)としてRoyal DSMから市販されている。
【0015】
粉末コーティング組成物とともに使用されるポリエステルポリマーは、熱硬化性ポリマーである。「熱硬化性ポリマー」とは、それら自体および/または架橋剤と反応性である官能基を有するポリマーを意味し、このような反応(硬化と称される)により、ポリマーは、不可逆的な共有結合を形成する。硬化または架橋すると、熱硬化性ポリマーは、熱の適用時に溶融せず、また溶媒に不溶である。
【0016】
「硬化可能な」、「硬化する」などの用語は、コーティング組成物と関連して使用される場合、コーティング組成物を構成する成分の少なくとも一部が重合可能であり、かつ/または架橋可能であることを意味する。本発明のコーティング組成物は、周囲条件において、熱を用いて、または化学線などの他の手段を用いて硬化されることができる。「化学線」という用語は、化学反応を開始することができる電磁放射線を指す。化学線としては、可視光、紫外線(UV)光、X線、およびガンマ線が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、「周囲条件」は、周囲環境の条件(例えば、基材が位置する部屋または屋外環境の温度、湿度、および圧力、例えば、23℃の温度および35%~75%の空気中の相対湿度など)を指す。
【0017】
本発明の粉末コーティング組成物とともに使用されるポリエステルポリマーは、第1の架橋剤と反応性であるカルボン酸官能基を含み、これは本明細書にさらに詳細に記載される。本発明の粉末コーティング組成物とともに使用されるポリエステルポリマーはまた、例えば、エポキシド基、ヒドロキシル基、アミン基、アルコキシ基、チオール基、カルバメート基、アミド基、尿素基、およびこれらの組み合わせなどの追加の官能基も含むことができる。本発明とともに使用されるポリエステルポリマーはまた、前述の追加の官能基のいずれの1つも含まないこともできる。
【0018】
本発明の粉末コーティング組成物とともに使用されるポリエステルポリマーは、粉末コーティング組成物の総固体重量に基づき、少なくとも1重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、30重量%、少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、または少なくとも60重量%を構成することができる。本発明のコーティング組成物とともに使用されるポリエステルポリマーは、コーティング組成物の総固体重量に基づき、最大95重量%、最大90重量%、最大80重量%、または最大70重量%を構成することができる。ポリエステルポリマーはまた、コーティング組成物の総固体重量に基づき、1~95重量%、5~95重量%、10~90重量%、20~80重量%、30~80重量%、40~80重量%、または60~80重量%などの範囲を構成することもできる。
【0019】
ポリエステルポリマーは、少なくとも10mg KOH/g、少なくとも15mg KOH/g、少なくとも20mg KOH/g、または少なくとも30mg KOH/gの酸価を有することができる。ポリエステルは、最大70mg KOH/g、最大60mg KOH/g、または最大50mg KOH/gの酸価を有することができる。ポリエステルは、10~70mg KOH/g、20~70mg KOH/g、または20~50mg KOH/gなどの範囲の酸価を有することができる。酸価は固体上で表される。
【0020】
ポリエステルポリマーの酸価は、任意の好適な方法によって測定することができる。酸価を測定する方法は、当業者に周知であろう。好適なことに、酸価は、0.1Mメタノール性水酸化カリウム(KOH)溶液を用いた滴定によって決定される。固体ポリエステルの試料(典型的には、0.1~3g)をコニカルフラスコの中へと正確に秤量し、軽い加熱および撹拌を適宜に使用し、フェノールフタレイン指示薬を含有する25mlのジメチルホルムアミド中に溶解させる。次いで、溶液を室温に冷却し、そして0.1Mメタノール性水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。得られた酸数は、mg KOH/gの単位で表され、以下の式を使用して計算される。
【数1】
【0021】
本発明の粉末コーティング組成物とともに使用されるポリエステルポリマーは、20mg KOH/g未満、14mg KOH/g未満、10mg KOH/g未満、7mg KOH/g未満、または5mg KOH/g未満のヒドロキシル価を有することができる。ポリエステルポリマーは、0~20mg KOH/g、0~10mg KOH/g、0~5mg KOH/g、0~2mg KOH/g、2~10mg KOH/g、または3~7mg KOH/gの範囲内のヒドロキシル価を有することができる。
【0022】
本発明に従って使用されるポリエステルポリマーは、少なくとも10℃、少なくとも25℃、または少なくとも45℃のガラス転移温度(「Tg」)を有することができる。ポリエステルポリマーは、最高100℃、最高85℃、または最高70℃のTgを有することができる。ポリエステルポリマーは、10~100℃、25~85℃、または45~70℃などの範囲のTgを有することができる。本明細書で報告される場合、ガラス転移温度(「Tg」)は、別段の指示がない限り、ASTM D3418-15に従って示差走査熱量測定によって測定した。
【0023】
ポリエステルポリマーは、165℃で少なくとも5Pa・s、少なくとも7Pa・s、または少なくとも9Pa・sの溶融粘度を有することができる。ポリエステルポリマーは、165℃で最大100Pa・s、最大85Pa・s、または最大70Pa・sの溶融粘度を有することができる。ポリエステルポリマーは、165℃で5~100Pa・s、7~85Pa・s、または9~70Pa・sなどの範囲内の溶融粘度を有することができる。本明細書で使用される場合、溶融粘度は、Research Equipment(London)Ltdによって製造されたコーンプレート粘度計(Cone and Plate Viscometer)によって測定される。ASTM D 4287を参照してもよい。
【0024】
ポリエステルポリマーは、少なくとも1,000g/mol、少なくとも3,000g/mol、または少なくとも6,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有することができる。ポリエステルポリマーは、最大50,000g/mol、最大30,000g/mol、最大18,000g/mol、または最大10,000g/molのMwを有することができる。ポリエステルポリマーは、1,000~50,000g/mol、3,000~30,000g/mol、1,000~10,000g/mol、または6,000~18,000g/molなどの範囲内のMwを有することができる。本明細書で使用される場合、別段の指示がない限り、Mwは、ASTM D6579-11に従ってポリスチレン標準物を使用してゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される(Waters 2414示差屈折計(RI検出器)を備えたWaters 2695分離モジュールを使用して実施し、テトラヒドロフラン(THF)を1ml/分の流量で溶離液として使用し、そして2つのPLgel Mixed-C(300×7.5mm)カラムを、室温での分離のために使用し、ポリマー試料の重量および数平均分子量は、800~900,000Daの直鎖ポリスチレン標準物に対してゲル浸透クロマトグラフィーによって測定することができる)。
【0025】
本発明の粉末コーティング組成物はまた、フルオロポリマーも含む。フルオロポリマーは、熱可塑性ポリマーであってもよい。「熱可塑性ポリマー」は、加熱して柔軟にすることができるか、または成形可能とすることができ、また冷却時に再び固化することができるポリマーを指す。フルオロポリマーは、ポリエステルポリマーとも第1の架橋剤とも反応しないことが理解される。さらに、フルオロポリマーは、粉末コーティング組成物中のいかなる他の任意の成分とも反応しない場合があり、そのためフルオロポリマーは、そのような成分と化学的に結合しない。したがって、フルオロポリマーは、不活性成分であり得る。
【0026】
本発明の粉末コーティング組成物の1つの非限定的な実施形態では、フルオロポリマーが少なくとも部分的に架橋するように、フルオロポリマーは、第2の架橋剤と反応し得る。
【0027】
本明細書で使用される場合、「フルオロポリマー」は、少なくとも1つのペンダントフッ素置換基を有するモノマーのうちの少なくとも1つを有する、1つまたは1つより多くのモノマーに由来するポリマーを指す。例えば、フルオロポリマーは、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)、ペルフルオロ(エチルビニルエーテル)、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、およびこれらの組み合わせから選択される1つまたは1つより多くのモノマー繰り返し単位(複数可)を有するポリマーを含むことができる。フルオロポリマーはまた、テトラフルオロエチレンオキシド、ヘキサフルオロプロピレンオキシド、およびこれらの組み合わせから選択されるモノマー繰り返し単位を有するポリマーも含むことができる。
【0028】
本発明のコーティング組成物とともに使用することができる好適なフルオロポリマーの非限定的な例としては、フルオロポリエーテル、ペルフルオロポリエーテル、クロロトリフルオロエチレンポリマー、ポリフッ化ビニリデンポリマー、テトラフルオロエチレンポリマー、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ならびにこれらのコポリマーおよび/または組み合わせが挙げられる。好適なフルオロポリエーテルポリマーとしては、限定されないが、フルオロエチレンビニルエーテルコポリマーが挙げられる。好適なフルオロポリマーはまた、商品名LUMIFLON(登録商標)としてAsahi Glass Co.から、および商品名KYNAR(登録商標)としてArkemaから市販されている。
【0029】
さらに、前述のように、フルオロポリマーは、ポリエステルポリマーおよび第1の架橋剤と非反応性である。したがって、フルオロポリマーは、ポリエステルポリマーまたは第1の架橋剤の官能基と反応性であり、化学的に結合することができる官能基を含まない。フルオロポリマーは、反応性官能基がポリエステルポリマーまたは第1の架橋剤と反応および結合しないことを条件として、反応性官能基を有することができることが理解される。フルオロポリマーは、第2の架橋剤と反応性である官能基を含んでもよく、第2の架橋剤は、第1の架橋剤とは異なる。反応性官能基の非限定的な例としては、ヒドロキシル基、チオール基、(メタ)アクリレート基、アミン基、カルバメート基、アミド基、尿素基、およびこれらの組み合わせが挙げられる。本明細書で使用される場合、「(メタ)アクリレート」という用語は、メタクリレートおよびアクリレートの両方を指す。フルオロポリマーはまた、前述の反応性官能基のいずれか1つを含まなくてもよい。
【0030】
本発明のコーティング組成物とともに使用されるフルオロポリマーは、粉末コーティング組成物の総固体重量に基づき、少なくとも1重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、または少なくとも60重量%を構成することができる。本発明のコーティング組成物とともに使用されるフルオロポリマーは、コーティング組成物の総固体重量に基づき、最大95重量%、最大90重量%、最大80重量%、最大70重量%、最大60重量%、最大50重量%、最大40重量%、最大30重量%、または最大25重量%を構成することができる。フルオロポリマーはまた、コーティング組成物の総固体重量に基づき、1~95重量%、5~95重量%、10~90重量%、15~80重量%、15~50重量%、または20~40重量%などの範囲を構成することもできる。
【0031】
フルオロポリマーは、少なくとも10℃、少なくとも25℃、または少なくとも34℃のガラス転移温度(Tg)を有することができる。フルオロポリマーは、最高100℃、最高85℃、または最高70℃のTgを有することができる。フルオロポリマーは、10~100℃、25~85℃、または34~70℃などの範囲のTgを有することができる。
【0032】
フルオロポリマーは、少なくとも1,000g/mol、少なくとも5,000g/mol、または少なくとも7,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有することができる。フルオロポリマーは、最大75,000g/mol、最大50,000g/mol、最大40,000g/molのMwを有することができる。フルオロポリマーは、1,000~75,000g/mol、5,000~50,000g/mol、または7,000~40,000g/molなどの範囲内のMwを有することができる。
【0033】
粉末コーティング組成物中のポリエステルポリマーの量は、粉末コーティング組成物の総樹脂固体重量に基づき、フルオロポリマーの量より多くてもよい。粉末コーティング組成物は、94:6~20:80、例えば、85:15~35:65、80:20~60:40、80:20~55:45、または76:24~65:35のポリエステルポリマー対フルオロポリマーの重量比を有してもよい。
【0034】
本発明の粉末コーティング組成物は、硬化してコーティングを形成すると、ポリエステルポリマーおよびフルオロポリマーを含む単一コーティング層を形成し得ることが見出された。フルオロポリマーおよびポリエステルポリマーは、走査型電子顕微鏡法によって観察されるように、別個の層が形成されないように、単層コーティング全体にわたって分散される。ポリエステルポリマーおよびフルオロポリマーを含む単一コーティング層は、フルオロポリマーを含む相およびポリエステルポリマーを含む相が単層全体にわたって分布することを条件として、相分離を含み得る。例えば、単一コーティング層は、ポリエステルポリマーを含む相全体にわたって分散したフルオロポリマーを含む相のポケットを含み得る。単一コーティング層は、不均質コーティング層であり得る。本発明の粉末コーティング組成物は、硬化すると、ポリエステルポリマーおよびフルオロポリマーの両方が基材と直接接触するように、基材に塗布され得る。本発明の粉末コーティング組成物は、硬化したときに層分離されず、かつ二層構造を有する硬化したフィルムを提供しないように、基材に塗布され得る。
【0035】
示されるように、コーティング組成物はまた、ポリエステルポリマーのカルボン酸官能基と反応性である第1の架橋剤も含む。本明細書で使用される場合、「架橋剤」は、他の官能基と反応性であり、かつ化学結合を介して2つまたは2つより多くのモノマーまたはポリマー分子を連結することができる2つまたは2つより多くの官能基を含む分子を指す。本発明のポリエステルポリマーは、ポリエステルポリマーのカルボン酸官能基と、第1の架橋剤の官能基との間の反応を通して硬化することができることが理解されるであろう。
【0036】
好適な第1の架橋剤の非限定的な例としては、フェノール化合物、エポキシ化合物、トリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)、(メタ)アクリル化合物、ヒドロキシアルキルアミド化合物、アルキル化カルバメート樹脂、ポリ酸、無水物、有機金属酸官能性材料、ポリアミン、ポリアミド、アミノプラスト、およびこれらの混合物が挙げられる。したがって、第1の架橋剤は、エポキシド基、酸基、無水物基、ヒドロキシル基、一級および二級アミノ基などのアミノ基、アミド基、アミノプラスト系化合物、ならびにこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない化合物を含むことができる。
【0037】
(メタ)アクリル架橋剤の非限定的な例としては、グリシジル官能(メタ)アクリル化合物などのエポキシ官能(メタ)アクリル化合物、またはポリエステルポリマーのカルボン酸と反応性の官能基を有する他の(メタ)アクリル化合物が挙げられる。本明細書で使用される場合、「(メタ)アクリル」という用語は、メタクリルおよびアクリルの両方を指す。好適なエポキシ官能(メタ)アクリル化合物の例は、Estron Chemicalから市販されているISOCRYL EP-575(登録商標)である。
【0038】
ヒドロキシルアルキルアミド架橋剤の非限定的な例としては、ベータ-ヒドロキシエチルアミド化合物などのベータ-ヒドロキシルアルキルアミド化合物が挙げられる。好適なヒドロキシルアルキルアミド化合物の例は、DKSHから市販されているLUNAMER 552(登録商標)である。
【0039】
第1の架橋剤は、ポリエステルポリマーのカルボン酸基と反応性である、1つのみの架橋剤、2つの架橋剤、または2つより多くの架橋剤を含むことができる。例えば、本発明による粉末コーティング組成物は、ヒドロキシルアルキルアミド化合物、エポキシ官能(メタ)アクリル化合物などのエポキシ官能化合物、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。例えば、粉末コーティング組成物は、第1の架橋剤として、ヒドロキシルアルキルアミド化合物と、エポキシ官能(メタ)アクリル化合物などの官能(メタ)アクリル化合物との両方を含んでもよい。粉末コーティング組成物中の官能(メタ)アクリル化合物の量は、粉末コーティング組成物の総固体重量に基づき、ヒドロキシルアルキルアミド化合物の量より多くてもよい。粉末コーティング組成物中のヒドロキシルアルキルアミド架橋剤対官能(メタ)アクリル架橋剤の比は、1:14~6:1、1:10~5:1、1:7~4:1、1:14~1:1、1:10~1:1、1:7~1:1、または1:5~1:3であり得る。官能(メタ)アクリル架橋剤は、架橋剤、および得られるコーティングの光沢を低減させるためのマット剤の両方として粉末コーティング組成物とともに使用され得る。
【0040】
第1の架橋剤(複数可)は、コーティング組成物の総固体重量に基づき、粉末コーティング組成物の少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、または少なくとも5重量%を構成することができる。第1の架橋剤(複数可)は、コーティング組成物の総固体重量に基づき、コーティング組成物の最大30重量%、最大20重量%、または最大15重量%、最大10重量%、または最大7重量%を構成することができる。第1の架橋剤(複数可)はまた、コーティング組成物の総固体重量に基づき、コーティング組成物の1~30重量%、1~20重量%、または2~15重量%、2~10重量%、または2~7重量%などの範囲内の量を構成することもできる。
【0041】
さらに、第1の架橋剤を、第1の架橋剤上の反応性官能基対ポリエステルポリマー上の反応性官能基の当量比が、0.75:1~1.5:1、0.90:1~1.4:1、または1.05:1~1.25:1であるように、コーティング組成物に加えることもできる。例えば、総ヒドロキシル当量対総カルボン酸当量の比が、0.75:1~1.5:1、0.90:1~1.4:1、または1.05:1~1.25:1であるように、第1の架橋剤は、ヒドロキシル基を含むことができ、またポリエステルポリマーは、カルボン酸基を含むことができる。
【0042】
本発明の粉末コーティング組成物は、フルオロポリマーと反応性である第2の架橋剤をさらに含んでもよい。第2の架橋剤の使用の結果として、粉末コーティング組成物は、増強された溶媒耐性を示す場合がある。第2の架橋剤は、ブロックイソシアネートなどのイソシアネート官能架橋剤であってもよい。イソシアネート官能架橋剤は、コーティング組成物の総固体重量に基づき、粉末コーティング組成物の少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、少なくとも4重量%、または少なくとも4.5重量%を構成することができる。イソシアネート官能架橋剤は、コーティング組成物の総固体重量に基づき、コーティング組成物の最大10重量%、最大7重量%、または最大5重量%を構成することができる。イソシアネート官能架橋剤は、コーティング組成物の総固体重量に基づき、コーティング組成物の1~10重量%、2~5重量%、4~5重量%、または4.5~5重量%などの範囲内の量を構成することができる。
【0043】
任意の第2の架橋剤は、ヒドロキシル基などのフルオロポリマーの官能基と、第2の架橋剤の官能基との間の反応を通してフルオロポリマーと反応性であってもよい。本発明の粉末コーティング組成物の1つの非限定的な実施形態では、フルオロポリマーおよび第2の架橋剤の官能基の化学量論によって決定されるように、フルオロポリマーが完全には架橋されないように、第2の架橋剤は、フルオロポリマーの官能基の一部のみと反応し得る。第2の架橋剤上の反応性官能基対フルオロポリマー上の反応性官能基の当量比が、2未満:1、1.5未満:1、1.4未満:1、1未満:1、0.95未満:1、0.9未満:1、0.85未満:1、0.8未満:1、または0.75未満:1であるように、第2の架橋剤をコーティング組成物に加えることができる。第2の架橋剤上の反応性官能基対フルオロポリマー上の反応性官能基の当量比が、少なくとも0.5:1、少なくとも0.6:1、少なくとも0.65:1、少なくとも0.7:1、少なくとも0.75:1、または少なくとも1:1であるように、第2の架橋剤をコーティング組成物に加えることができる。例えば、総イソシアネート当量対総ヒドロキシル基当量の比が、0.5:1~2:1、0.6:1~1.5:1、0.65:1~1.4:1、0.65:1~1:1、または0.65:1~0.9:1であるように、第2の架橋剤は、イソシアネート基を含むことができ、フルオロポリマーは、ヒドロキシル基を含むことができる。
【0044】
粉末コーティング組成物は、第2の架橋剤を含まなくてもよい。本発明の粉末コーティング組成物は、イソシアネート官能架橋剤を実質的に含まなくてもよい、本質的に含まなくてもよい、または完全に含まなくてもよい。この文脈で使用される場合、「実質的に含まない」という用語は、粉末コーティング組成物が、コーティング組成物の総固体重量に基づき、1000パーツ・パー・ミリオン(ppm)未満のイソシアネート官能架橋剤を含有することを意味し、「本質的に含まない」は、コーティング組成物の総固体重量に基づき、100ppm未満のイソシアネート官能架橋剤を意味し、「完全に含まない」は、コーティング組成物の総固体重量に基づき、20パーツ・パー・ビリオン(ppb)未満のイソシアネート官能架橋剤を意味する。
【0045】
本発明のコーティング組成物はまた、マット剤も含むことができる。本明細書で使用される場合、「マット剤」という用語は、組成物から形成されたコーティングの光沢を減少させるためにコーティング組成物に加えられる材料を指す。「マット剤」という用語は、「艶消し剤」という用語と交換可能である。マット剤はまた、最終コーティングにおいて他の特性も提供することができる。例えば、マット剤はまた、最終コーティングにおける耐摩耗性、耐摩擦性、および/もしくは耐引っかき性を改善し、粘度を制御し、かつ/またはソフトタッチ特性を増強することもできる。好適なマット剤の非限定的な例としては、金属水酸化物、金属酸化物、シリカ、焼成シリカ、ワックス処理シリカ、微粒子化ワックス、ポリエーテル縮合物、ポリアミドマイクロビーズ、ポリウレタンマイクロビーズ、シリコーンマイクロビーズ、(メタ)アクリル化合物、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0046】
本発明とともに使用される第1の架橋剤はまた、マット剤としても機能し得る。例えば、コーティング組成物は、マット剤としても機能する、エポキシ官能(メタ)アクリル化合物などの官能(メタ)アクリル化合物を利用することができる。官能(メタ)アクリル化合物は、ポリエステルポリマーのカルボン酸基と架橋または反応しない他のマット剤と比較して、耐候性性能を含むが、これらに限定されない、マット剤として、より優れた性能を提供することが見出されている。
【0047】
本発明のコーティング組成物はまた、他の任意の材料も含むことができる。例えば、コーティング組成物はまた、着色剤を含むこともできる。本明細書で使用される場合、「着色剤」は、組成物に色および/または他の不透明度および/または他の視覚効果を付与する任意の物質を指す。着色剤は、個別の粒子、分散体、溶液、および/または薄片などの任意の好適な形態でコーティングに加えることができる。単一の着色剤または2つもしくは2つより多くの着色剤の混合物を、本発明のコーティングに使用することができる。
【0048】
着色剤の例としては、塗料工業で使用されているもの、および/またはDry Color Manufacturers Association(DCMA)に列挙されているものなどの、顔料(有機または無機)、染料、およびティント、ならびに特殊効果組成物が挙げられる。着色剤は、例えば、使用条件下で、不溶性であるが、湿潤可能である、細かく分割された固体粉末を含み得る。着色剤は有機または無機とすることができる、また凝集されていたもの、または凝集されていないものとすることができる。着色剤は、アクリル粉砕ビヒクルなどの粉砕ビヒクルの使用によってコーティングに組み込むことができ、その使用は、当業者によく知られているであろう。
【0049】
例示的な顔料および/または顔料組成物としては、カルバゾールジオキサジン粗顔料、アゾ、モノアゾ、ジアゾ、ナフトールAS、塩型(薄片)、ベンゾイミダゾロン、イソインドリノン、イソインドリンおよび多環式フタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ペリノン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、アントラキノン、インダントロン、アントラピリミジン、フラバントロン、ピラントロン、アンサントロン、ジオキサジン、トリアリールカルボニウム、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロールレッド(「DPPBOレッド」)、二酸化チタン、カーボンブラック、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。「顔料」および「着色充填剤」という用語は、交換可能に使用することができる。
【0050】
顔料の他の例としては、フタログリーンまたはブルー、酸化鉄、バナジン酸ビスマス、アントラキノン、ならびにペリレンおよびキナクリドンなどの溶媒ベースおよび/または水性ベースのものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
ティントの例としては、Degussa,Inc.から市販されているAQUA-CHEM 896、Accurate Dispersions Division of Eastman Chemical,Inc.から市販されているCHARISMA COLORANTSおよびMAXITONER INDUSTRIAL COLORANTSなどの水ベースまたは水混和性担体中に分散している顔料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
粉末コーティング組成物とともに使用される着色剤を、特定の領域において特定の基材とともに使用するために選択することができることが理解される。例えば、着色剤は、当業者によって決定されるように、建築系の基材とともに使用するために選択することができる。建築産業で使用され得る着色剤の非限定的な例としては、カーボンブラック、C.I.Pigment Black 28、C.I.Pigment Red 101、C.I.Pigment Brown 24、二酸化チタン、雲母系顔料、硫酸バリウム、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0053】
着色剤(複数可)は、コーティング組成物の総固体重量に基づき、粉末コーティング組成物の少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、または少なくとも3重量%を構成することができる。着色剤(複数可)は、コーティング組成物の総固体重量に基づき、コーティング組成物の最大50重量%、最大40重量%、または最大30重量%を構成することができる。着色剤(複数可)はまた、コーティング組成物の総固体重量に基づき、コーティング組成物の1~50重量%、2~40重量%、または3~30重量%などの範囲内の量を構成することもできる。
【0054】
粉末コーティング組成物は、様々な他の添加剤を含んでもよい。本発明の粉末コーティング組成物とともに使用することができる材料の非限定的な例としては、可塑剤、酸化防止剤、ワックス(例えば、アミドワックス)などの流れおよび表面制御剤、アクリルおよび/またはシリカ剤などの流れおよびレベリング制御剤、チキソトロープ剤、スリップ助剤、金属触媒(例えば、スズ触媒)などの触媒、ベンゾインなどの脱ガス剤、反応阻害剤、テクスチャライザー、および他の慣習的な補助剤が挙げられる。
【0055】
本発明による粉末コーティング組成物および/またはコーティング系はまた、トリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)を実質的に含まなくてもよい、本質的に含まなくてもよい、または完全に含まなくてもよい。この文脈で使用される場合、「実質的に含まない」という用語は、粉末コーティング組成物が、コーティング組成物の総固体重量に基づき、1000パーツ・パー・ミリオン(ppm)未満の成分を含有することを意味し、「本質的に含まない」は、コーティング組成物の総固体重量に基づき、100ppm未満の成分を意味し、「完全に含まない」は、コーティング組成物の総固体重量に基づき、20パーツ・パー・ビリオン(ppb)未満の成分を意味する。さらに、粉末コーティング組成物は、イプシロン-カプロラクタムを実質的に含まなくてもよい、本質的に含まなくてもよい、または完全に含まなくてもよい。なおさらに、粉末コーティング組成物は、有機紫外線吸収剤を実質的に含まなくてもよい、本質的に含まなくてもよい、または完全に含まなくてもよい(上記に定義されるように)。本明細書で使用される場合、「紫外線吸収剤」は、紫外線放射を吸収して材料の紫外線分解を低減する化合物を指す。有機紫外線吸収剤の非限定的な例としては、サリチレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、またはシアノアクリレート化合物が挙げられる。粉末コーティング組成物は、無機紫外線吸収剤を実質的に含まなくてもよい、本質的に含まなくてもよい、または完全に含まなくてもよい(上記に定義されるように)。無機紫外線吸収剤の非限定的な例としては、酸化セリウムおよび酸化亜鉛が挙げられる。粉末コーティング組成物は、ヒンダードアミン光安定剤を実質的に含まなくてもよい、本質的に含まなくてもよい、または完全に含まなくてもよい(上記に定義されるように)。
【0056】
本発明の粉末コーティング組成物は、前述のポリエステルポリマー、フルオロポリマー、第1の架橋剤、および使用される場合、任意の追加の成分を混合することによって調製することができる。成分は、例えば、Prism高速ミキサーなどの当該技術分野で認識されている技法および機器を使用して混合することができる。固体コーティング組成物が形成されると、次に混合物は溶融され、さらに混合される。混合物は、二軸スクリュー押出機または当該技術分野において公知の類似の装置を用いて溶融することができる。溶融プロセス中、温度は、混合物を硬化させることなく固体混合物を溶融混合するように選択される。混合物は、50℃~100℃、または約75℃の温度など、40℃~125℃に設定されたゾーンで二軸スクリュー押出機内で溶融混合することができる。融解混合後、混合物は冷却され、再固化される。次いで、再固化された混合物は、ミリングプロセスなどで粉砕されて、固体粒子硬化性粉末コーティング組成物を形成する。
【0057】
再固化された混合物は、任意の所望の粒径に粉砕することができる。例えば、再固化された混合物は、Malvern Mastersizer 3000マニュアルに記載されている取扱説明に従って、Malvern Mastersizer 3000レーザー回折粒径分析器を用いて決定された場合、少なくとも10ミクロンまたは少なくとも20ミクロン、および最大100ミクロンの平均粒径に粉砕することができる。粉末は、20~50ミクロン、25~40ミクロン、30~45ミクロン、30~40ミクロン、または35~40ミクロンなど、15~150ミクロンの平均粒径を有してもよい。さらに、平均粒径を決定するために使用される試料中の粒子の総量の粒径範囲は、1ミクロン~200ミクロン、または5ミクロン~180ミクロン、または10ミクロン~150ミクロンの範囲を含むことができ、これもまた、Malvern Mastersizer 3000マニュアルに記載されている取扱説明に従って、Malvern Mastersizer 3000レーザー回折粒径分析器を用いて決定される。
【0058】
本発明のコーティング組成物を形成した後、組成物を、コーティング業界において公知の広範囲の基材に塗布することができる。例えば、本発明のコーティング組成物を、自動車基材および構成要素(例えば、乗用車、バス、トラック、トレーラーなどを含むが、これらに限定されない自動車車両)、工業用基材、航空機および航空機構成要素、船、船舶、ならびにオンショアおよびオフショア設備などの海洋基材および構成要素、貯蔵タンク、風車、原子力発電所、重機(例えば、重機械、大型トラック、建設機器、大型車両、大型油圧機器など)、包装基材、木質フローリングおよび家具、衣類、筐体および回路基板を含む電子機器、ガラスおよびスライド、ゴルフボールを含むスポーツ用品、スタジアム、建物、橋などに塗布することができる。これらの基材は、例えば、金属性または非金属性とすることができる。
【0059】
金属基材としては、スズ、鋼(中でも、電気亜鉛めっき鋼、冷間圧延鋼、溶融亜鉛めっき鋼、合金鋼、またはブラスト/プロファイル鋼を含む)、アルミニウム、アルミニウム合金、亜鉛-アルミニウム合金、亜鉛-アルミニウム合金でコーティングされた鋼、およびアルミニウムめっき鋼が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、ブラストまたはプロファイル鋼は、研磨剤ブラスト加工に供されており、圧縮空気を使用して、または遠心インペラによって高速で研磨粒子を鋼基材に連続的に衝突させることによって機械的洗浄を伴っている鋼を指す。研磨材は、典型的には、再利用/再生された材料であり、プロセスは、ミルスケールおよび錆を効率的に除去することができる。研磨剤ブラスト洗浄のための標準的な洗浄のグレードは、BS EN ISO 8501-1に従って行われる。
【0060】
さらに、非金属性基材としては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、セルロース、ポリスチレン、ポリアクリル系、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、EVOH、ポリ乳酸、他の「環境に優しい(green)」ポリマー基材、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリカーボネート、ポリカーボネートアクリロブタジエンスチレン(PC/ABS)、ポリアミド、木、ベニア、木質複合材、パーティクルボード、中密度ファイバーボード、セメント、石、ガラス、紙、厚紙、織物、皮革、合成物および天然物の両方などを含むポリマーおよびプラスチック基材が挙げられる。コーティング組成物は、前述の基材のいずれかの様々な領域に塗布されて、基材の本体および縁を覆ってなどの連続した固体コーティングを形成し、本明細書に記載される優れた特性を提供することができることが理解される。
【0061】
本発明のコーティングは、建築用途に適用される場合、特に有用である。例えば、本発明のコーティングは、窓、屋根、壁板、ドアフレーム、手すりなどの基材に塗布することができる。
【0062】
本発明のコーティング組成物は、噴霧、静電噴霧などの当該技術分野において標準的な任意の手段によって塗布することができる。コーティング組成物が基材に塗布された後、組成物は、周囲条件において、熱を用いて、または化学線などの他の手段を用いて硬化されて、単一コーティング層などのコーティングを形成することができる。
【0063】
本発明のコーティング組成物から形成されるコーティングは、8mil未満、6mil未満、5mil未満、4mil未満、または3mil未満(2.5milなど)の乾燥フィルム厚さに塗布することができる。
【0064】
コーティング組成物を基材に塗布して、モノコートを形成することができる。本明細書で使用される場合、「モノコート」は、追加のコーティング層を含まない単層コーティング系を指す。したがって、コーティング組成物は、いかなる中間コーティング層も有しないで基材に直接塗布され、そして硬化されて、単層コーティング、すなわちモノコートを形成することができる。
【0065】
あるいは、コーティング組成物は、第2のコーティング層などの追加のコーティング層とともに第1のコーティング層として基材に塗布されて、多層コーティング系を形成することができる。多層コーティングは、3層もしくは3層より多く、または4層もしくは4層より多く、または5層もしくは5層より多くのコーティング層などの複数のコーティング層を含むことができることが理解される。例えば、本発明の前述のコーティング組成物を、プライマー層として基材に塗布することができ、そして第2および第3のコーティング層、ならびに任意で追加のコーティング層を、ベースコートおよび/またはトップコートとしてプライマー層を覆って塗布することができる。本明細書で使用される場合、「プライマー」は、保護または装飾コーティング系の塗布のための表面を準備するために、アンダーコーティングがこの組成物によって基材上に堆積され得るコーティング組成物を指す。「ベースコート」は、コーティングがこの組成物によってプライマー上に、および/または基材上に直接堆積されるコーティング組成物を指し、任意で色に影響を及ぼし、かつ/または他の視覚的な影響を提供し、そして保護および装飾トップコートでオーバーコーティングされ得る成分(顔料など)を含む。あるいは、本発明のコーティング組成物は、プライマー層を覆ってベースコートおよび/またはトップコートとして塗布され得る。本発明のコーティング組成物は、コーティング系の耐候性を増強し得る別のコーティング系を覆って塗布され得る。
【0066】
本発明の粉末コーティング組成物を、利用可能な広い光沢範囲を有するコーティングを有するように基材に塗布し、そして硬化することができる。例えば、本明細書に記載される粉末コーティング組成物から形成されたコーティングは、BYK Gardnerマイクロ-TRI-光沢計を使用してASTM D523-14試験方法によって測定した場合、40未満、30未満、20未満、または10未満などの低い60度の光沢値を示すことができる。しかしながら、本明細書に記載される粉末コーティング組成物から形成されたコーティングはまた、少なくとも70、または少なくとも80などの高い60度の光沢値も示す場合がある。本発明のコーティング組成物は、マット剤の存在の有無にかかわらず良好な耐久性を維持して、硬化したコーティングにおける多種多様な光沢を可能にするように製剤化される。
【0067】
本発明の粉末コーティング組成物は、良好な接着性、耐衝撃性、耐食性、および耐湿性によって示されるような耐久性コーティングを提供するために基材に塗布することができる。例えば、本明細書に記載される粉末コーティング組成物から形成されたコーティングは、以下のうちの1つもしくは1つより多く、またはすべてを示すことが見出された:乾燥接着試験において、ASTM D3359-09試験方法Bによって測定した場合、0%の除去された面積などの、5%未満の除去された面積;沸騰接着試験において、ASTM AAMA 2605-17Aセクション8.4.1.2およびASTM D3359-09試験方法Bによって測定した場合、10%未満の除去された面積、例えば0%の除去された面積などの、15%未満の除去された面積;前方耐衝撃性試験において、AAMA 2605-17Aセクション8.5によって測定した場合の合格;後方衝撃試験において、衝撃がコーティングの反対側に印加され、前処理していない0.025×3×6インチのアルミニウムパネルが使用される場合に、AAMA 2605-17Aセクション8.5によって測定した場合、例えば5%未満の除去された面積などの、10%未満の除去された面積;サイクル耐食性試験において、AAMA 2605-17Aセクション8.8.2およびASTM G85、Annex A5およびASTM D 1654によって測定した場合、0.5mm未満などの、1mm未満の平均スクライブクリーページ;250時間の銅加速酢酸塩水噴霧腐食試験において、ASTM B368およびASTM D 1654によって測定した場合、0.5mm未満などの、1mm未満の平均スクライブクリーページ;ならびに耐湿性試験において、AAMA 2605-17Aセクション8.8.1およびASTM D4585-13によって測定した場合、ブリスタの観察なし。
【0068】
したがって、本明細書に記載される粉末コーティング組成物は、良好な耐候性および耐食性、ならびにコーティングにおいて望まれる他の特性を有するコーティングを形成するために基材に塗布することができる。さらに、コーティング組成物は、ポリエステルポリマーを利用して架橋コーティングを形成し、それによってコーティング組成物に必要なフルオロポリマーの量を低下させ、また必要な原材料のコストを低減する。
【0069】
以上を考慮して、本発明は、とりわけ、以下の条項を対象とするが、それらに限定されるものではない。
【0070】
条項1:粉末コーティング組成物であって、カルボン酸官能基を含み、かつ少なくとも15mg/KOHの酸価を有するポリエステルポリマーと、ポリエステルポリマーのカルボン酸官能基と反応性の第1の架橋剤と、ポリエステルポリマーおよび第1の架橋剤と非反応性のフルオロポリマーと、を含み、ポリエステルポリマー対フルオロポリマーの重量比が、80:20~60:40であり、硬化すると、粉末コーティング組成物が、ポリエステルポリマーおよびフルオロポリマーを含む単一コーティング層を形成する、粉末コーティング組成物。
条項2:ポリエステルポリマーが、粉末コーティング組成物の総固体重量に基づき、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、または少なくとも60重量%を構成する、条項1に記載の粉末コーティング組成物。
条項3:フルオロポリマーが、粉末コーティング組成物の総固体重量に基づき、40重量%もしくは40重量%未満、30重量%もしくは30重量%未満、または25重量%もしくは25重量%未満を構成する、条項1または2に記載の粉末コーティング組成物。
条項4:粉末コーティング組成物の総固体重量に基づき、1~30重量%、1~20重量%、または2~15重量%の量で第1の架橋剤を含む、条項1~3のいずれかに記載の粉末コーティング組成物。
条項5:ポリエステルポリマーが、少なくとも20で、かつ最大50mg KOH/gなどの、少なくとも20で、かつ最大70mg KOH/gの範囲内の酸価を有する、条項1~4のいずれかに記載の粉末コーティング組成物。
条項6:ポリエステルポリマーが、10~100℃、25~85℃、または45~70℃の範囲内のガラス転移温度を有する、条項1~5のいずれかに記載の粉末コーティング組成物。
条項7:ポリエステルポリマーが、165℃において、5~100Pa・s、7~85Pa・s、または9~70Pa・sの範囲内の溶融粘度を有する、条項1~6のいずれかに記載の粉末コーティング組成物。
条項8:フルオロポリマーが、フルオロポリエーテルポリマー、ポリフッ化ビニリデンポリマー、またはこれらの組み合わせを含む、条項1~7のいずれかに記載の粉末コーティング組成物。
条項9:フルオロポリマーが、フルオロエチレンビニルエーテルコポリマーなどのフルオロポリエーテルポリマーを含む、条項8に記載の粉末コーティング組成物。
条項10:フルオロポリマーが、ポリフッ化ビニリデンポリマーを含む、条項8に記載の粉末コーティング組成物。
条項11:フルオロポリマーが、10~100℃、25~85℃、または34~70℃の範囲内のガラス転移温度を有する、条項1~10のいずれかに記載の粉末コーティング組成物。
条項12:粉末コーティング組成物中のポリエステルポリマーの量が、フルオロポリマーの量よりも多く、その量が、粉末コーティング組成物の総固体重量に基づく、条項1~11のいずれかに記載の粉末コーティング組成物。
条項13:ポリエステルポリマー対フルオロポリマーの重量比が、80:20~55:45、または76:24~65:35である、条項12に記載の粉末コーティング組成物。
条項14:第1の架橋剤が、ヒドロキシルアルキルアミド化合物、エポキシ官能化合物、またはこれらの組み合わせを含む、条項1~13のいずれかに記載の粉末コーティング組成物。
条項15:第1の架橋剤が、ヒドロキシルアルキルアミド化合物およびエポキシ官能(メタ)アクリル化合物の両方を含む、条項14に記載の粉末コーティング組成物。
条項16:粉末コーティング組成物中のエポキシ官能(メタ)アクリル化合物の量が、ヒドロキシルアルキルアミド化合物の量よりも多く、その量が、粉末コーティング組成物の総固体重量に基づく、条項15に記載の粉末コーティング組成物。
条項17:ヒドロキシルアルキルアミド化合物対エポキシ官能アクリル化合物の重量比が、1:14~6:1、1:10~5:1、1:7~4:1、1:14~1:1、1:10~1:1、1:7~1:1、または5:1~3:1である、条項15に記載の粉末コーティング組成物。
条項18:粉末コーティング組成物が、顔料をさらに含む、条項1~17のいずれかに記載の粉末コーティング組成物。
条項19:粉末コーティング組成物が、イプシロン-カプロラクタムおよび/またはトリシグリシジルイソシアヌレートを実質的に含まない、本質的に含まない、または完全に含まない、条項1~18のいずれかに記載の粉末コーティング組成物。
条項20:粉末コーティング組成物が、有機紫外線吸収剤を実質的に含まない、本質的に含まない、または完全に含まない、条項1~19のいずれかに記載の粉末コーティング組成物。
条項21:ポリエステルポリマーが、脂肪族ポリオールとポリカルボン酸または無水物との反応から誘導される、条項1~20のいずれかに記載の粉末コーティング組成物。
条項22:ポリカルボン酸が、環状ポリカルボン酸である、条項21に記載の粉末コーティング組成物。
条項23:ポリカルボン酸が、芳香族ポリカルボン酸である、条項21または22のいずれかに記載の粉末コーティング組成物。
条項24:ポリカルボン酸が二酸である、条項21~23のいずれかに記載の粉末コーティング組成物。
条項25:ポリカルボン酸が、イソフタル酸である、条項21~24のいずれかに記載の粉末コーティング組成物。
条項26:脂肪族ポリオールが、2~12個の炭素原子を含み、例えば、1,2-エタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、または上記のいずれかの組み合わせから選択される、条項21~25のいずれかに記載の粉末コーティング組成物。
条項27:粉末コーティング組成物が、マット剤を含む、条項1~26のいずれか1つに記載の粉末コーティング組成物。
条項28:第1の架橋剤が、トリグリシジルイソシアヌレートを含む、条項1~27のいずれか1つに記載の粉末コーティング組成物。
条項29:単一コーティング層が、ポリエステルポリマーを含む相全体に分散したフルオロポリマーを含む相のポケットを含む、条項1~28のいずれか1つに記載の粉末コーティング組成物。
条項30:粉末コーティング組成物が、イソシアネート官能架橋剤を実質的に含まない、本質的に含まない、または完全に含まない、条項1~29のいずれか1つに記載の粉末コーティング組成物。
条項31:フルオロポリマーが、熱可塑性ポリマーである、条項1~30のいずれか1つに記載の粉末コーティング組成物。
条項32:粉末コーティング組成物が、フルオロポリマーと反応性の第2の架橋剤をさらに含む、条項1~31のいずれか1つに記載の粉末コーティング組成物。
条項33:粉末コーティング組成物中の第2の架橋剤の量が、コーティング組成物の総固体重量に基づき、コーティング組成物の1~10重量%、2~5重量%、4~5重量%、または4.5~5重量%の範囲内である、条項32に記載の粉末コーティング組成物。
条項34:第2の架橋剤が、イソシアネート官能架橋剤を含む、条項32または33に記載の粉末コーティング組成物。
条項35:総イソシアネート当量対総ヒドロキシル基当量の比が、0.65:1~2:1、0.5:1~2:1、0.6:1~1.5:1、0.65:1~1.4:1、0.65:1~1:1、または0.65:1~0.9:1であるように、第2の架橋剤が、イソシアネート基を含み、フルオロポリマーが、ヒドロキシル基を含む、条項32~34のいずれか1つに記載の粉末コーティング組成物。
条項36:第1の架橋剤が、トリグリシジルイソシアヌレートを含み、粉末コーティング組成物が、フルオロポリマーと反応性の第2の架橋剤をさらに含み、第2の架橋剤が、イソシアネート官能架橋剤を含む、条項1~35のいずれか1つに記載の粉末コーティング組成物。
条項37:ポリエステルポリマーが、20mg KOH/g未満、14mg KOH/g未満、10mg KOH/g未満、7mg KOH/g未満、または5mg KOH/g未満のヒドロキシル価を有する、条項1~36のいずれか1つに記載の粉末コーティング組成物。
条項38:条項1~37のいずれかに記載の粉末コーティング組成物から形成されたコーティングで少なくとも部分的にコーティングされた、基材。
条項39:条項1~37のいずれか1つに記載の粉末コーティング組成物から形成されたコーティングが、例えば、基材の表面を直接覆って形成され得る単一コーティング層を含む、条項38に記載の基材。
条項40:ポリエステルポリマーおよびフルオロポリマーの両方が、基材と直接接触する、条項38または39に記載の基材。
条項41:条項1~37のいずれかに記載のコーティング組成物を基材に塗布することと、コーティング組成物を硬化させることとを含む、基材をコーティングするための方法。
【実施例
【0071】
以下の実施例は、本発明の一般原則を実証するために提示される。本発明は、提示される特定の実施例に限定されるとみなされるべきではない。実施例におけるすべての部およびパーセンテージは、別段の指示がない限り、重量によるものである。
【0072】
実施例1~7
硬化性コーティング組成物の調製
7つの硬化性コーティング組成物を、表1に列挙した成分から調製した。
【表1】
Arkema S.A.(Colombes,France)から市販されている、約32~38の酸価を有するイソフタル酸に基づくポリエステル樹脂。
DKSH(Zurich,Switzerland)から市販されている、ヒドロキシアルキルアミド架橋剤。
Estron Chemical,Inc.(Calvert City,KY)から市販されている、マットエポキシ官能アクリル架橋剤。
AGC Chemicals Americas,Inc.(Exton,PA)から市販されている、フルオロエチレンビニルエーテル樹脂。
Evonik Industries AG(Essen,Germany)から市販されている、ε-カプロラクタムでブロックされたイソシアネート架橋剤。
Changzhou Niutang Chemical Plant Co.,Ltd.(Changzhou,China)から市販されている、トリグリシジルイソシアヌレート架橋剤。
Estron Chemical,Inc.(Calvert City,KY)から市販されている、アクリル/シリカ流れおよびレベリング制御剤。
Allnex(Frankfurt,Germany)から市販されている、アクリル/シリカ流れおよびレベリング制御剤。
Troy Corporation(Florham Park,NJ)から市販されている、脱気/脱泡剤。
10Mitsubishi Chemical Corporation(Tokyo,Japan)から市販されている、脱気/脱泡剤。
11Aal Chem(Grand Rapids,MI)から市販されている、抗酸化添加剤。
12The Shepherd Color Company(Cincinnati,OH)から市販されている、C.I.Pigment Black 28。
13Dequing Tongcheng Co.,Ltd.(Deqing,China)から市販されている、C.I.Pigment Red 101。
14The Shepherd Color Company(Cincinnati,OH)から市販されている、C.I.Pigment Brown 24。
15Tronox(Stamford,CT)から市販されている、二酸化チタン顔料。
16Cristal Global(Jeddah,Saudi Arabia)から市販されている、二酸化チタン顔料。
17Excalibar Minerals,LLC(Katy,TX)から市販されている、4ミクロンの中央粒径を有する白色硫酸バリウム。
18BASF SE(Ludwigshafen,Germany)から市販されている、18.2~21.1ミクロン範囲の質量中央粒径を有する、二酸化チタン、酸化第二スズ、および水酸化クロムでコーティングされた雲母。
19BASF SE(Ludwigshafen,Germany)から市販されている、32~46ミクロン範囲の質量中央粒径を有する、二酸化チタン、酸化第二スズ、および水酸化クロムでコーティングされた雲母。
【0073】
実施例1~5および7について、表1に列挙した成分の各々をプラスチックバッグ中で秤量し、バッグ中で30秒間激しく振とうすることによって混合して、乾燥した均質な混合物を形成した。実施例6について、表1に列挙した最初の11の成分を使用して、中間固体粒子粉末コーティング組成物を形成した。この中間固体粒子粉末コーティング組成物を、表1の最後の2つの成分とともにプラスチックバッグ中に秤量し、バッグ中で30秒間激しく振とうすることによって混合して、自由に流動する最終的な固体粒子粉末コーティング組成物を得た。
【0074】
各混合物を、中程度に強いスクリュー構成を有するTheysohnの30mmの2軸スクリュー押出機内で、かつ500RPMの速度で溶融混合した。第1の押出機ゾーンを50℃に設定し、第2のゾーンを100℃に設定した。機器において30~35%のトルクが観察されるような供給速度であった。混合物を一組の冷却ロール上に滴下して、混合物を冷却し、固体チップに再固化した。チップをコーヒーグラインダーを使用して粉砕し、104ミクロンのスクリーンを通してふるい分けして、35~40ミクロンの質量中央粒径を得た。実施例1~7の各々に対して得られたコーティング組成物は、自由に流動する固体粒子粉末コーティング組成物であった。
【0075】
実施例1~7からのすべての粉末コーティング組成物を、表1に示したフィルム厚さで、いくつかのクロメート前処理した0.025インチ×3インチ×6インチのアルミニウムパネルを覆って塗布し、そして400°Fで15分間加熱した。硬化したコーティングの様々な特性を、これらのコーティングされたパネルで実施した試験によって決定し、表2に示す。
【表2】
20Elcometer 415 Model B Dual FNFゲージを使用したASTM D7091-13試験方法に従う。
21BYK Gardnerマイクロ-TRI-グロスを使用したASTM D523-14試験方法に従う。
22ASTM D3359-09試験方法Bに従う。
23AAMA 2605-17Aセクション8.5に従う。
24AAMA 2605-17Aセクション8.8.2およびサイクル腐食試験を行うためのASTM G85、Annex A5および平均スクライブクリーページを測定するためのASTM D 1654に従う。
25AAMA 2605-17Aセクション8.8.1およびASTM D4585-13に従う。
【0076】
表2に示すように、本発明の実施例1~7のコーティング組成物から調製されたコーティングは、広範な光沢範囲、良好な接着性、耐衝撃性、耐食性、および耐湿性を示す。
【0077】
図1および3は、それぞれ実施例2および7の硬化したコーティングの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。画像に示すように、硬化したコーティングは、ポリエステルポリマーおよびフルオロポリマーを含む単一コーティング層を形成する。単一コーティング層は、相分離を有して不均質である。
【0078】
2つの1インチ×1インチの正方形の切片を切り出し、そしてコーティングされたパネルから取り出した。試料を炭素テープを用いてSEMスタブ上に配置し、Au/Pdで約15秒間スパッタコーティングすることによって、トップダウンSEM/エネルギー分散型X線分光法(EDX)分析のために切片を準備した。また、試料をエポキシ中にマウントして一晩硬化させ、マウントした試料に紙やすりをかけ、かつ研磨し、そしてAu/Pdで約15秒間スパッタコーティングすることによって、断面SEM/EDX分析のために切片を準備した。
【0079】
図2および4は、それぞれ、実施例2および7のコーティング組成物の断面SEM/EDX画像を示す。元素マッピングを、炭素(C)、酸素(O)、フッ素(F)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、塩素(Cl)、チタン(Ti)、およびマンガン(Mn)について示す。アルミニウムおよびマンガンは基材からの寄与である。フッ素および塩素をポケット内に見出すことができ、フルオロポリマーとポリエステルポリマーとの間に相分離があることを示す。元素マッピングにより、図1Bおよび3Bのより暗い色の相がフルオロポリマーを含有し、より明るい色の相がポリエステルポリマーを含有することが示される。フルオロポリマーを含有するポケットは、ポリエステルポリマーを含有する相全体に分散して単一コーティング層を形成し、層分離をもたらさない。フルオロポリマーおよびポリエステルポリマーの両方は基材と直接接触している。
【0080】
実施例8~11
硬化性コーティング組成物の調製
4つの硬化性コーティング組成物を、表3に列挙した成分から調製した。
【表3】
26Arkema S.A.(Colombes,France)から市販されている、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)/Kynar 500グレードのフルオロポリマー。
27DSM Coating Resins B.V.(Zwolle,the Netherlands)から市販されている、約18~22の酸価を有するイソフタル酸に基づくポリエステル樹脂。
28DSM Coating Resins B.V.(Zwolle,the Netherlands)から市販されている、約49~54の酸価を有するイソフタル酸に基づくポリエステル樹脂。
29DSM Coating Resins B.V.(Zwolle,the Netherlands)から市販されている、約33~37の酸価を有するイソフタル酸に基づくポリエステル樹脂。
30Troy Corporation(Florham Park,NJ)から市販されている、アクリル流れおよびレベリング制御剤。
31Cabot Corporation(Boston,MA)から市販されている、カーボンブラック。
【0081】
実施例8~11について表3に列挙した成分の各々をプラスチックバッグ中に秤量し、バッグ中で30秒間激しく振とうすることによって混合して、乾燥した均質な混合物を形成した。混合物を、中程度に強いスクリュー構成を有するWerner & Pfleidererの30mmの2軸スクリュー押出機において、かつ450RPMの速度で溶融混合した。第1の押出機ゾーンを75℃に設定し、第2のゾーンを75℃に設定した。機器において30~35%のトルクが観察されるような供給速度であった。混合物を一組の冷却ロール上に滴下して、混合物を冷却し、そして固体チップに再固化した。チップをコーヒーグラインダーを使用して粉砕し、104ミクロンのスクリーンを通してふるい分けして、35~40ミクロンの質量中央粒径を得た。実施例8~11の各々に対して得られたコーティング組成物は、自由に流動する固体粒子粉末コーティング組成物であった。
【0082】
実施例8~11の各粉末コーティング組成物を、表1に示したフィルム厚さで、いくつかのクロメート前処理した0.025インチ×3インチ×6インチのアルミニウムパネルを覆って塗布し、425°Fで15分間加熱した。硬化したコーティングの様々な特性を、これらのコーティングされたパネルで実施した試験によって決定し、表4に示す。
【表4】
32AAMA 2605-17Aセクション8.4.1.2およびASTM D3359-09試験方法Bに従う。
33以下の例外を除き、AAMA 2605-17Aセクション8.5に従う:衝撃は、コーティングの反対側に与えられた。衝撃領域のテープ引っ張り後に除去されたコーティングの割合を推定した。クロメート前処理済パネルの代わりに、前処理していない0.025インチ×3インチ×6インチのアルミニウムパネルを使用してこの試験を完了した。
34銅加速酢酸塩水噴霧腐食試験を行うためのASTM B368および平均スクライブクリーページを測定するためのASTM D 1654に従う。
【0083】
表4に示すように、実施例8~11の組成物から形成されたコーティングはすべて、良好な接着性、耐衝撃性、耐食性、および耐湿性を示した。
【0084】
本発明の特定の実施形態は、例示の目的のために上述されているが、添付の特許請求の範囲に定義される本発明から逸脱することなく、本発明の詳細について多数の変形が行われ得ることは当業者に明らかであろう。
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
粉末コーティング組成物であって、
カルボン酸官能基を含み、かつ少なくとも15mg KOH/gの酸価を有するポリエステルポリマーと、
前記ポリエステルポリマーの前記カルボン酸官能基と反応性の第1の架橋剤と、
前記ポリエステルポリマーおよび第1の架橋剤と非反応性のフルオロポリマーと、を含み、
前記ポリエステルポリマー対前記フルオロポリマーの重量比が、80:20~60:40であり、
硬化すると、前記粉末コーティング組成物が、前記ポリエステルポリマーおよび前記フルオロポリマーを含む単一コーティング層を形成する、粉末コーティング組成物。
(項2)
前記ポリエステルポリマーが、前記粉末コーティング組成物の総固体重量に基づき、少なくとも20重量%を構成する、上記項1に記載の粉末コーティング組成物。
(項3)
前記フルオロポリマーが、前記粉末コーティング組成物の総固体重量に基づき、40重量%もしくは40重量%未満を構成する、上記項1に記載の粉末コーティング組成物。
(項4)
前記ポリエステルポリマーが、20~70mg KOH/gの範囲内の酸価を有する、上記項1に記載の粉末コーティング組成物。
(項5)
前記ポリエステルポリマーが、10~100℃の範囲内のガラス転移温度を有する、上記項1に記載の粉末コーティング組成物。
(項6)
前記ポリエステルポリマーが、165℃でASTM D 4287に従ってコーンプレート粘度計によって測定して5~100Pa・sの範囲内の溶融粘度を有する、上記項1に記載の粉末コーティング組成物。
(項7)
前記フルオロポリマーが、フルオロポリエーテルポリマー、ポリフッ化ビニリデンポリマー、またはこれらの組み合わせを含む、上記項1に記載の粉末コーティング組成物。
(項8)
前記フルオロポリマーが、フルオロポリエーテルポリマーを含む、上記項7に記載の粉末コーティング組成物。
(項9)
前記フルオロポリエーテルポリマーが、フルオロエチレンビニルエーテルコポリマーである、上記項8に記載の粉末コーティング組成物。
(項10)
前記フルオロポリマーが、ポリフッ化ビニリデンポリマーを含む、上記項7に記載の粉末コーティング組成物。
(項11)
前記フルオロポリマーが、10~100℃の範囲内のガラス転移温度を有する、上記項1に記載の粉末コーティング組成物。
(項12)
前記第1の架橋剤が、ヒドロキシルアルキルアミド化合物、エポキシ官能化合物、またはこれらの組み合わせを含む、上記項1に記載の粉末コーティング組成物。
(項13)
前記第1の架橋剤が、ヒドロキシルアルキルアミド化合物およびエポキシ官能(メタ)アクリル化合物の両方を含む、上記項13に記載の粉末コーティング組成物。
(項14)
前記粉末コーティング組成物中の前記エポキシ官能(メタ)アクリル化合物の量が、前記ヒドロキシルアルキルアミド化合物の量よりも多く、前記量が、前記粉末コーティング組成物の総固体重量に基づく、上記項14に記載の粉末コーティング組成物。
(項15)
前記粉末コーティング組成物が、顔料をさらに含む、上記項1に記載の粉末コーティング組成物。
(項16)
前記粉末コーティング組成物が、イプシロン-カプロラクタムおよび/またはトリグリシジルイソシアヌレートを実質的に含まない、上記項1に記載の粉末コーティング組成物。
(項17)
前記粉末コーティング組成物が、有機紫外線吸収剤を実質的に含まない、上記項1に記載の粉末コーティング組成物。
(項18)
前記粉末コーティング組成物が、イソシアネート官能架橋剤を実質的に含まない、上記項1に記載の粉末コーティング組成物。
(項19)
前記粉末コーティング組成物が、前記フルオロポリマーと反応性の1~10重量%の第2の架橋剤をさらに含み、前記第2の架橋剤が、イソシアネート官能架橋剤を含む、上記項1に記載の粉末コーティング組成物。
(項20)
前記粉末コーティング組成物が、前記フルオロポリマーと反応性の第2の架橋剤を含み、総イソシアネート当量対総ヒドロキシル基当量の比が0.65:1~2:1であるように、前記第2の架橋剤が、イソシアネート基を含み、かつ前記フルオロポリマーが、ヒドロキシル基を含む、上記項1に記載の粉末コーティング組成物。
(項21)
前記第1の架橋剤が、トリグリシジルイソシアヌレートを含み、前記粉末コーティング組成物が、前記フルオロポリマーと反応性の第2の架橋剤をさらに含み、前記第2の架橋剤が、イソシアネート官能架橋剤を含む、上記項1に記載の粉末コーティング組成物。
(項22)
前記ポリエステルポリマーが、10mg KOH/g未満のヒドロキシル価を有する、上記項1に記載の粉末コーティング組成物。
(項23)
上記項1に記載の粉末コーティング組成物から形成されたコーティングで少なくとも部分的にコーティングされた、基材。
(項24)
前記粉末コーティング組成物から形成された前記コーティングが、前記基材の表面を直接覆って形成された単一コーティング層を含む、上記項23に記載の基材。
(項25)
前記ポリエステルポリマーおよび前記フルオロポリマーの両方が、前記基材と直接接触する、上記項24に記載の基材。
図1
図2
図3
図4