(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】可撓部に基づく線形案内機構を伴う円筒型アクチュエータ部分組立体
(51)【国際特許分類】
G02B 7/04 20210101AFI20240419BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20240419BHJP
H04N 23/50 20230101ALI20240419BHJP
【FI】
G02B7/04 E
G02B7/02 Z
G02B7/04 D
H04N23/50
(21)【出願番号】P 2022515739
(86)(22)【出願日】2020-10-01
(86)【国際出願番号】 EP2020077604
(87)【国際公開番号】W WO2021064149
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-08-09
(31)【優先権主張番号】102019000017843
(32)【優先日】2019-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517067202
【氏名又は名称】アクチュエーター・ソリュ―ションズ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ネーフェン・ボビッチ
(72)【発明者】
【氏名】トビアス・シュム
【審査官】東松 修太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-522256(JP,A)
【文献】特表2017-506366(JP,A)
【文献】特表2017-516147(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0173445(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0208369(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0031088(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108088359(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/04
G02B 7/02
H04N 23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向
中心軸(A)を有し、
-前記長手方向
中心軸(A)に沿って移動可能な移動可能要素(14;24;34)と、
-前記移動可能要素(14;24;34)の変位をもたらすのに適した少なくとも1つの作動部材と、
-他のどんな種類の移動をも最小限にしつつ、前記長手方向
中心軸(A)に沿った変位において前記移動可能要素(14;24;34)を案内するのに適した案内機構と、
を備える円筒型アクチュエータ部分組立体(100;200;300)であって、
前記案内機構は、
-互いに平行であり、周辺に沿う対応する固定軸支位置に固定的に軸支される第1のリング形レバー(11;21;31)および第2のリング形レバー(11’;21’;31’)と、
-前記長手方向
中心軸(A)と実質的に平行であり、前記第1のリング形レバー(11;21;31)と前記第2のリング形レバー(11’;21’;31’)とをそれらの相対する周辺位置において連結する少なくとも2つの直線状軸方向可撓部(12、12’;22、22’;32、32’)であって、第1の直線状軸方向可撓部(12;22;32)は、事実上の回転点
(C1、C2、C3、C4)である角部において柔軟な事実上の平行四辺形を形成するように、前記リング形レバー(11、11’;21、21’;31、31’)の前記固定軸支位置と相対する位置に配置され、前記事実上の回転点のうちの2つの回転点(C1、C3)は固定され、前記事実上の回転点のうちの2つの回転点(C2、C4)は前記長手方向
中心軸(A)の方向に沿って移動可能である、少なくとも2つの直線状軸方向可撓部(12、12’;22、22’;32、32’)と、
-前記長手方向
中心軸(A)に対して傾斜させ
ることが可能であるように構成され、前記事実上の回転点(C1、C2、C3、C4)のうちの2つの間で延びる少なくとも2つの
傾斜可撓部(16、16’;27、27’;36、36’)と、
-少なくとも2つの基部(13、13’;23、23’;33、33’)であって、第1の前記基部(13;23;33)は前記移動可能要素(14;24;34)を担持し、前記第1の直線状軸方向可撓部(12;22;32)に直接的または間接的のいずれかで搭載される、少なくとも2つの基部(13、13’;23、23’;33、33’)と、
を備え、
前記事実上の回転点(C1、C2、C3、C4)における、少なくとも2つの前記直線状軸方向可撓部(12、12’;22、22’;32、32’)と少なくとも2つの前記傾斜可撓部(16、16’;27、27’;36、36’)との
間の径方向距離が、
ゼロ以上かつ少なくとも2つの前記直線状軸方向可撓部(12、12’;22、22’;32、32’)と前記長手方向
中心軸(A)との間の径方向距離
の半分以下であり、
少なくとも1つの前記作動部材は、前記第1のリング形レバー(11;21;31)および前記第2のリング形レバー(11’;21’;31’)
のうちの一方の前記固定軸支位置の実質的に近傍にある位置において、前記長手方向
中心軸(A)と平行な方向に力を発揮するように、固定位置と前記第1のリング形レバー(11;21;31)
および前記第2のリング形レバー(11’;21’;31’)
のうちの前記一方との間に固定され、前記力は、前記長手方向
中心軸(A)の方向に沿って移動可能な前記2つの回転点(C2、C4)の移動と、前記長手方向
中心軸(A)に対する少なくとも2つの前記傾斜可撓部(16、16’;27、27’;36、36’)の傾斜の変化と、をもた
らすこと、
を特徴とする円筒型アクチュエータ部分組立体(100;200;300)。
【請求項2】
前記第1のリング形レバー(11;21;31)と前記第2のリング形レバー(11’;21’;31’)との間で延び、少なくとも2つの前記直線状軸方向可撓部(12、12’;22、22’;32、32’)に対して径方向内側の位置において、少なくとも2つの前記基部(13、13’;23、23’;33、33’)に、または、少なくとも2つの前記直線状軸方向可撓部(12、12’;22、22’;32、32’)に固定される少なくとも2つの軸方向部材(15、15’;35、35’)をさらに備える、請求項1に記載の円筒型アクチュエータ部分組立体(100;200;300)。
【請求項3】
前記傾斜可撓部(16、16’;27、27’;36、36’)の形が、円形、線形、多角形、楕円形、
一対の半楕円形、または
一対の半円形から選択される、請求項1または2に記載の円筒型アクチュエータ部分組立体(100;200;300)。
【請求項4】
前記力の無負荷時において、少なくとも2つの前記傾斜可撓部(16、16’;36、36’)は、前記長手方向
中心軸(A)に対して垂直であり、前記第1のリング形レバー(11;31)または前記第2のリング形レバー(11’;31’)の相対する中間部分に形成される2つの保持体(11a、11a’;31a、31a’)を通じて、前記第1のリング形レバー(11;31)または前記第2のリング形レバー(11’;31’)に連結される、請求項1から3のいずれか一項に記載の円筒型アクチュエータ部分組立体(100;200;300)。
【請求項5】
前記力の無負荷時において、少なくとも2つの前記傾斜可撓部(27、27’)は、少なくとも2つの前記直線状軸方向可撓部(22、22’)と約45°の角度を形成する、請求項1から3のいずれか一項に記載の円筒型アクチュエータ部分組立体(100;200;300)。
【請求項6】
少なくとも2つの前記基部(23、23’)は、ほとんど半円の形まで周方向に延び、少なくとも2つの前記傾斜可撓部(27、27’)は、それらの端部分において前記基部(23、23’)と係合する、請求項5に記載の円筒型アクチュエータ部分組立体(100;200;300)。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の円筒型アクチュエータ部分組立体(100;200;300)を備える光学系。
【請求項8】
請求項7に記載の光学系を組み込んだ、カメラモジュー
ルまた
は医療診断機器。
【請求項9】
内視鏡である、請求項8に記載の医療診断機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本質的には、特定の良好に定められた軸に沿って移動させられる要素があるときに具体的には有利な用途を見出せる、可撓部に基づく線形案内機構を伴う円筒型アクチュエータ部分組立体にある。より詳細には、アクチュエータは、シリンダの軸に沿って移動させられる要素によって占められるより小さい円筒形の空間を除いて、円筒形の空間を占める。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータは、典型的には、(例えば、内視鏡器具または自動焦点モジュールにおいて)光学レンズを移動させるように意図されているが、円筒型アクチュエータが必要とされる任意の用途について使用されてもよい。少なくとも1つの作動部材(例えば、形状記憶合金ワイヤ)が、アクチュエータの被駆動側において移動のゲインを提供するレバーに取り付けられるが、案内機構がレンズを適切で正確な手法で移動させるためにも必要とされる。実際、レバーは、前記移動の第1の並進成分がレンズをシリンダ軸に沿って移動させるために使用されるように、その固定された端の周りに回転移動を提供するが、回転移動は、シリンダ軸に対して垂直な方向において第2の並進成分ももたらし、これは案内機構によってできるだけ制限されなければならない。
【0003】
アクチュエータのための、適切に設計および最適化された可撓部に基づく案内機構は、大きな剛性および負荷能力を達成するが、同時に、面外の運動、傾きの誤差、および相互干渉などの寄生的な誤差を本質的に無効にして、それらを最小の度合いにする。上記の特徴のうち、系(system)の性能および信頼性に影響を与えないような方法での寄生的な誤差の最小化は、自動焦点カメラモジュール、内視鏡器具における光学レンズ移動、注射器アクチュエータ、円筒形の弁のアクチュエータなどの用途において極めて重要なものである。
【0004】
アクチュエータおよびマイクロアクチュエータにおける可撓部の最も一般的な使用は、単に、作動部材によって付与される移動に抗する復元力として、または、付勢手段として、である。この挙動を利用する最近の分野のうちの1つは、特許文献1、特許文献2、特許文献3、および特許文献4において例示されているようなカメラモジュール制御であり、特許文献4は本出願者の名前においてである。すでに言及されているように、すべてのこれらの文献において、可撓部の役目は受動的であり、つまり、可撓部は、移動可能要素(レンズ担持体)の移動を引き起こさないが、移動に反応する。
【0005】
可撓部に基づく線形案内機構が、アクチュエータ板の線形変位を達成するために4つの可撓部のセットの使用を記載している特許文献5に記載されており、各々の可撓部は、一体に結合され、伸長したときの長さのために、ひだまたは円弧が設けられる2つの平行な可撓部要素から成る。可撓部の第1の対が伸長し、両方ともL字形である、基礎板と、重なり合うアクチュエータ板と、の間で第1の方向に連結され、一方、可撓部の第2の対が伸長し、基礎板とアクチュエータ板との間で第2の方向に連結され、前記第2の方向は前記第1の方向に対して垂直である。このような案内機構は、作動部材として電気モータも含み、結果として平行六面体の装置をもたらすため、非常に嵩張る。
【0006】
可撓部に基づくアクチュエータも特許文献6から知られており、対とされた可撓部のための2つの別々のアクチュエータユニットに依存する光学系における作動のための構成を記載しており、これは、本発明と異なり、特定の軸に沿った線形変位ではなく、光学要素の傾きを提供することを目的としている。
【0007】
特許文献7は、x-y平面位置決め調整のためのアクチュエータによって係合させられるマルチバーリンク機構の形態での折り畳み可能な可撓部の使用を記載しており、一方、平行四辺形の構成での平坦な圧電可撓部の使用が特許文献8に記載されている。
【0008】
非特許文献1は、高精度の用途(MEMS)のための静電気、圧電、およびSMAアクチュエータと併せた複雑な形の可撓部の使用を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2007/113478号
【文献】国際公開第2009/056822号
【文献】国際公開第2010/012991号
【文献】国際公開第2019/008522号
【文献】米国特許出願公開第2018/0031088号明細書
【文献】米国特許第9651772号明細書
【文献】米国特許第7239107号明細書
【文献】独国特許発明第4405501号明細書
【非特許文献】
【0010】
【文献】Kotaら、「Tailoring Unconventional Actuators Using Compliant Transmissions:Design Methods and Applications」、「IEEE/ASME TRANSACTIONS ON MECHATRONICS、VOL.4、NO.4」、1999年12月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、単純な構造を有し、いずれの他の方向にも疑似的または二次的な移動を本質的に伴わずに所定の軸に沿ってのみの変位をもたらすことができる可撓部を使用することで、可撓部に基づく線形案内機構を伴う円筒型アクチュエータ部分組立体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、主クレームによる部分組立体によって達成され、他の有利な特徴は従属クレームにおいて提唱されている。
【0013】
本発明は、以下の非限定的な図面を用いて説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】移動可能要素を線形に移動させるための案内機構と一体化された一般的な二重レバー系の概略図である。
【
図2】
図1に示された種類の系に適用される案内機構の第1の実施形態の概略図である。
【
図3A】3つの異なる作動状態における、
図2に示された種類の機構の斜視図である。
【
図3B】3つの異なる作動状態における、
図2に示された種類の機構の斜視図である。
【
図3C】3つの異なる作動状態における、
図2に示された種類の機構の斜視図である。
【
図4】
図1に示された種類の系に適用される案内機構の第2の実施形態の概略図である。
【
図5A】3つの異なる作動状態における、
図4に示された種類の機構の斜視図である。
【
図5B】3つの異なる作動状態における、
図4に示された種類の機構の斜視図である。
【
図5C】3つの異なる作動状態における、
図4に示された種類の機構の斜視図である。
【
図6】
図3A~
図3Cに示された種類の機構を組み込んでいる、自動焦点カメラモジュールのためのアクチュエータ部分組立体の側面図である。
【
図7】
図6のアクチュエータ部分組立体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上記の図において、描写された要素の寸法は、例示の目的だけのためであり、ある場合には、図の可読性を向上させるために変えられている可能性がある。また、例えば作動要素など、本発明を理解するために必要でない補助的/付属的な要素は、簡潔性のために図では省略されている。
【0016】
最初に
図1の概略図を参照すると、系が、円筒型アクチュエータ部分組立体の長手方向軸Aに対して(無負荷位置において)垂直に延びる第1のレバーアーム1および第2のレバーアーム1’を備えることが見られる。前記レバー1、1’は、第1の端において固定的に軸支されており、第2の端において軸方向案内部材2によって相互に連結されており、軸方向案内部材2には、移動可能要素4(ランナ)が前記長手方向軸Aに沿った線形運動のために搭載されている横方向基礎部材3が設けられている。
【0017】
しかしながら、先に言及されているように、レバー1、1’の回転は、図示されている例ではレバーが左端において軸支されているため、左の方となる横方向にランナ4を移動させようともする。2つの横方向レバーアーム1、1’は、軸方向案内部材2と事実上の平行四辺形を形成し、前記平行四辺形は、事実上の回転点(黒点)を表すその角C1~C4において柔軟であり、そのうちの点C1およびC3は固定されており、点C2およびC4は、平行四辺形の移動可能な辺と共に移動可能である。
【0018】
駆動力が、案内部材2の増幅したストロークを生成するように、固定位置とレバー1、1’の一方との間に固定される少なくとも1つの作動部材(図示されていない)によって提供される。構造上の難しいところは、非常に小さい空間に回転点を作り出すことであり、本発明で提供される解決策は、少なくとも4つの可撓部を含む可撓部系の使用であり、各々の可撓部は、0°~180°の範囲にある角度を形成することで回転点を達成するために、他の可撓部および/またはレバーと組み合わされる。
【0019】
具体的には、案内機構の垂直方向の剛性(つまり、ランナ4の軸方向の移動の方向に対して垂直な方向における抵抗)は、0°/180°の角度については最小であり、これは横方向におけるレバーの移動も可能であることを意味し、90°の角度については最大であり、これは横方向におけるレバーの移動がほとんど可能ではないことを意味し、45°/135°などの間にある任意の角度の値については、言うまでもなく中間のレベルにある。実際、系は、2つの軸方向の可撓部と、2つの傾斜可撓部、つまり、すなわち、90°に実質的に等しい角度における2つの横方向可撓部、または、90°と実質的に異なる角度における2つの対角方向可撓部と、を好ましくは備える。
【0020】
図2の概略図は、第2のレバー1’への力Fの適用が、軸Aに対して垂直な方向において無視できる横方向成分を伴う実質的に軸方向のみである移動可能要素4の移動Mをもたらすように、最大の剛性について可撓部(無負荷にある)同士の間に90°の角度を伴う案内機構の第1の実施形態を示している。
図1に示されている要素に加えて、
図2の概略図は、案内部材2が第2の案内部材2’と同じ可撓部であること、および、無負荷位置にあるときに軸方向可撓部2、2’と90°の角度を形成する2つの横方向可撓部6、6’も示している。
【0021】
より明確には、2つの軸方向可撓部2、2’は、2つのレバー1、1’を、それらの向かい合う側におけるそれらの端部分において連結し、前記可撓部2、2’は、ランナ4を担持する基部3と、対応する基礎部材3’と、がそれぞれ設けられてもいる。前記基部3、3’は、それらの径方向遠位端において、移動可能軸方向部材5と固定軸方向部材5’とにそれぞれ連結されている。2つの横方向可撓部6、6’は、2つの軸方向部材5、5’を、それらの向かい合う側におけるそれらの端部分において連結し、前記可撓部6、6’は、第1のレバー1の中間部分に形成された保持体1a、および、第2のレバー1’の対応する保持体1a’をそれぞれ通過してもいる。事実上の回転点C1~C4は、可撓部が細長くされるとき、つまり、無負荷位置において、可撓部2、2’の可撓部6、6’との事実上の交差の点におおよそ位置付けられる。
【0022】
レバーの平行四辺形の案内機構が、
図1および
図2を参照して二次元の方法で先に説明されているが、円筒型アクチュエータにおける利用可能な空間は円筒形を有しており、それによって、前記図に示されているような直線状レバーおよび直線状横方向可撓部はほとんど不可能である一方で、軸方向の可撓部は直線状のままと成る可能性があり、そのため、前記レバーおよび横方向可撓部は、リング形を取るように変更させることができる。
【0023】
このような三次元の配置は、本発明の第1の実施形態による円筒型アクチュエータ部分組立体100の
図3Aの斜視図で示されており、これは、軸方向部材およびレバーに対する可撓部の反対の位置決めと、その後に続く可撓部の大きさの適合と、を除いて、
図2の二次元の概略図に実質的に対応している。実際、第1のリング形レバー11と第2のリング形レバー11’とは、内径を有し、レバー11、11’によって定められる内部の円筒形の空間の中に2つの軸方向部材15、15’が含まれるように、軸方向に離間されている。
【0024】
この方法では、2つの軸方向可撓部12、12’は、それらの向かい合う側におけるそれらの相対する周辺部分において、2つのリング形レバー11、11’に連結しており、前記軸方向可撓部12、12’には、前記軸方向部材15、15’が軸方向可撓部12、12’に対して径方向内部の位置に固定されるのに通る基部13、13’がそれぞれ設けられてもよい。移動可能要素14が基部13によって担持されており、2つのリング形レバー11、11’と平行に延びる2つのリング形横方向可撓部16、16’が、端部分において2つの軸方向部材15、15’に連結している。前記横方向可撓部16、16’は、第1のレバー11の相対する中間部分に形成された2つの保持体11a、および、第2のレバー11’の2つの対応する保持体11a’をそれぞれ通過してもおり、中間部分は、軸方向可撓部12、12’から等しく離間されているものとして定められている。
【0025】
点線円C1~C4が、(円筒型アクチュエータ部分組立体の軸Aと平行な)直線状軸方向可撓部12、12’と、(
図3Aの無負荷位置において前記軸Aに対して90°の角度にある)円形の横方向可撓部16、16’と、の間に定められる事実上の回転点を描写している。この場合、軸方向の傾斜可撓部は互いと接触しないが、どのような方法でも、レバー平行四辺形の角を形成するように「結合」されていることを強調することは重要であり、ここで、「結合」は、直線状軸方向可撓部と円形横方向可撓部との間の最大径方向距離が、最大でも軸方向可撓部とシリンダ軸Aとの間の径方向距離の半分以下(つまり、円筒型アクチュエータ部分組立体100の半径の実質的に半分)であることを意味する。軸方向可撓部と傾斜可撓部との間に、最小距離、つまり、実際の接触が可能でないことを、留意されたい。
【0026】
実際、「結合」の点C1~C4は、異なる作動状態における系を示す対応する
図3Bおよび
図3Cにおける矢印によって示されているように、作動部材がリング形レバーのうちの一方の回転をもたらすとき、可撓部の曲げ(直線状可撓部12、12’)または傾斜(円形の可撓部16、16’)のおかげで、移動可能要素14を実質的に軸方向の変位へと案内する「事実上の平行四辺形」を定める。より明確には、1つまたは複数の作動部材(図示されていない)が第1のリング形レバー11または第2のリング形レバー11’に作用したとき、可撓部は移動可能要素14を軸方向において上向き(
図3B)または下向き(
図3C)の変位へとそれぞれ案内する。
【0027】
すべての可撓部12、12’、16、および16’が移動可能要素14を案内するために協働して同時に動作することと、
図3Aに示された移動可能要素14の中央の無負荷位置が本当に好ましい構成であるが、位置決めが強制的ではないことと、を述べておくことは重要である。
【0028】
図4の概略図は、(無負荷において)可撓部同士の間に45°の角度を伴う案内機構の第2の実施形態を示しており、すべての4つの案内機構が、この場合、2つのレバー1、1’の間で延びており、
図2の概略図に対してはるかにより大きな径方向の延在を有する基部3、3’によって係合させられている。より明確には、2つの軸方向可撓部2、2’は、
図2において先に記載されている第1の実施形態と同じ手法で2つのレバー1、1’に連結しており、一方、2つの対角方向可撓部7、7’は、軸方向可撓部2、2’と同じ点において2つのレバー1、1’に連結しているが、シリンダ軸Aの近傍にある基部3、3’の径方向内側端において基部3、3’に係合している。そのため、対角方向可撓部7、7’は、先の実施形態の円形の横方向可撓部16、16’と同じ役目を有し、可撓部2、2’および可撓部7、7’がレバー1、1’の端と連結する可撓部2、2’の可撓部7、7’との交差の点に位置付けられる事実上の回転点C1~C4を達成するために、同じ「結合」の距離の制約を受ける。
【0029】
本発明の第2の実施形態による円筒型アクチュエータ部分組立体200の
図5Aの斜視図に示された三次元の配置は、軸方向部材のないことを除いて、
図4の二次元図に実質的に対応する。実際、第1のリング形レバー21と第2のリング形レバー21’とは、内径を有し、レバー21、21’によって定められる内部の円筒形の空間の中に移動可能要素24が含まれるように、軸方向に離間されている。この移動可能要素24は、機構の相対する側における対応する基部23’と同じほとんど半円の形へと周方向に延びることによって担持され、前記基部23、23’は、
図3Aに示されている第1の実施形態と同様に、2つのリング形レバー21、21’に、それらの向かい合う側におけるそれらの相対する周辺部分において連結する2つの相対する軸方向可撓部22、22’から対称に延びる。
【0030】
2つの楕円の対角方向可撓部27、27’も同じ部分においてリング形レバー21、21’に連結しており、前記対角方向可撓部27、27’は、軸方向可撓部22、22’が位置付けられるその中間部分においてではなく端部分において、基部23、23’によってそれぞれ係合させられてもいる可撓部。結果として、対角方向可撓部27、27’の2つの半体は、軸方向可撓部22、22’と約45°の角度を形成するが、対角方向可撓部27、27’が基部23、23’によって係合させられる位置を適切に変えることで、より小さい角度が形成されてもよい。
【0031】
傾斜可撓部の形が、好ましくは、円形、線形、多角形、楕円形、または、対にされた半楕円形から選択されることが指摘され、つまり、対にされた半楕円形は、閉じた楕円ではなく、レバーとベースとの間で個別に延びる2つの半分の楕円によって作られ得る。
【0032】
図3Aと同様に、
図5Aでも、移動可能要素24は、強制ではないが好ましくは正中位置において示され、この場合でもまた、結合の点C1~C4は、異なる作動状態における系を示す対応する
図5Bおよび
図5Cにおける矢印によって示されているように、作動部材がリング形レバーのうちの一方の回転をもたらすとき、可撓部の曲げ(直線状可撓部22、22’)または曲げ/傾斜(楕円の可撓部27、27’)のおかげで、移動可能要素24を実質的に軸方向の変位へと案内する「事実上の平行四辺形」を定める。より明確には、1つまたは複数の作動部材(図示されていない)が第1のリング形レバー21または第2のリング形レバー21’に作用したとき、可撓部は移動可能要素24を軸方向において上向き(
図5B)または下向き(
図5C)の変位へとそれぞれ案内する。
【0033】
要するに、本発明による円筒型アクチュエータ部分組立体は、以下の特徴を伴う線形案内機構を組み込む。
・互いと平行であり、対応する位置に固定的に軸支される第1のリング形レバーおよび第2のリング形レバー、
・シリンダ軸と実質的に平行である少なくとも2つの直線状軸方向可撓部、
・少なくとも2つの傾斜可撓部、
・1つが移動可能要素を担持し、少なくとも2つの直線状軸方向可撓部の1つに直接的または間接的に搭載される少なくとも2つの基部。
【0034】
本発明の状況における「実質的に平行」という用語は、実際の環境の意味において解釈され、平行の理想的な定義から無視可能な変化を伴う要素、つまり、±5°の角度を形成する要素も網羅する。
【0035】
先に記載されているように、好ましい実施形態は、両方ともシリンダ軸と実質的に平行な相対する軸方向の直線状可撓部と、円形(
図3A)で横方向に、または、楕円形(
図5A)で45°で対角方向に延びる2つの傾斜可撓部と、を備える。しかしながら、すでに言及されているように、楕円可撓部27、27’の一方または両方は、レバー21、21’と基部23、23’との間で個別に延びる2つの半分の楕円によって置き換えられてもよい。同様に、円形可撓部16、16’の一方または両方が、軸方向部材15、15’と保持体11a、11a’との間で個別に延びる2つの半分の円によって置き換えられてもよく、それによって、可撓部の全体の数は、任意の種類の傾斜可撓部によって、5個または6個まで増加してもよい。
【0036】
このような変更は、レバー11、11’または21、21’と基部13、13’または23、23’との間で個別に延びる2つの半分の可撓部によって置き換えることができる軸方向の直線状可撓部12、12’または22、22’の一方または両方に適用されてもよい。結果として、これらの可能な変更の組み合わせは、可撓部の全体の数を5つから8つの間の任意の数まで増加させ得る。
【0037】
反対に、先に記載されている4個の可撓部は、可撓部の数をさらに1つだけの可撓部まで理論的に少なくするより複雑な形で、より少ない数の可撓部へと組み合わされてもよく、それによって、案内機構は1つから8つの可撓部を備えてもよい。そのため、本発明の本質的な特徴は、可撓部要素に対応する各々の可撓部を伴う別々の可撓部として作られ得る、または、複数の可撓部要素に対応する1つまたは複数の可撓部を伴うより少ない数の可撓部へと組み合わされ得る、2つの剛体の部品の間で延びる柔軟な要素として定められる少なくとも8つの可撓部要素の存在である。
【0038】
その定義における明確性のために、本発明は、少なくとも4つの可撓部を備える好ましい実施形態を参照して記載および請求されており、4つは、可撓部を製造および組み立てするときのコストと複雑さとの間の良好なバランスを取る正しい数と考えられる。しかしながら、可撓部の数への先に言及された変更のいずれか、および、さらなる可撓部要素の追加が、本発明の範囲内にあることは明らかである。
【0039】
図6および
図7は、本発明の第1の実施形態によるレンズ焦点調整のためのアクチュエータ部分組立体300の側面図および斜視図をそれぞれ示しており、つまり、2つの軸方向部材35、35’がレバー31、31’によって定められる内部の円筒形の空間の中に含まれるように、内径を有し、軸方向に離間されている第1のリング形レバー31および第2のリング形レバー31’を備える。この場合、固定軸方向部材35’は、
図3A~
図3Cに示されている固定軸方向部材15’と異なり、第1のレバー31を越えて軸方向に延びており、シリンダ軸Aまで部分的な側壁で周方向にも延びているが、さらなる実施形態では、移動可能な軸方向部材35まで連続的な側壁を備えてもよい。
【0040】
2つの軸方向可撓部32、32’は、それらの周囲側におけるそれらの相対する周囲部分において2つのリング形レバー31、31’に連結しており、前記軸方向可撓部32、32’は、それらの径方向遠位部分において、軸方向部材35、35’にそれぞれ連結されてもいる。2つの移動可能要素を作る2つのレンズ34が、この場合には移動可能な軸方向部材35に搭載されるそれぞれの基部33によって担持されており、固定軸方向部材35’はこの場合には基部を有さない。2つのリング形レバー31、31’と平行に延びる2つのリング形横方向可撓部36、36’は、それらの端部分において2つの軸方向部材35、35’に連結しており、第1のレバー31の相対する中間部分に形成される2つの保持体31aと、第2のレバー31’の2つの対応する保持体31a’と、をそれぞれ通過してもいる。
【0041】
これらの図に示されている実施形態では、作動部材は、第1のレバー31と、固定軸方向部材35において外部に搭載されるクリンプ38と、の間に固定される形状記憶合金(SMA)ワイヤ37から成る。作動部材としてのSMAワイヤの使用は好ましい解決策であるが、本発明はそれに限定されないことは強調され、他の適切な手段には、圧電アクチュエータおよびボイスコイルモータ(VCM)があることが理解されるべきである。レバーを駆動するための代替の適切な手段としてのSMAワイヤ、圧電アクチュエータ、およびVCMの使用は、当業者には知られており、本出願においてすでに参照された非特許文献1によって証明されているように、さらなる説明を必要としない。
【0042】
同様に、アクチュエータ部分組立体が、好ましくはバランスされた作動のための拮抗した構成において、異なる位置に複数の作動部材を備えることができることは明らかである。
【0043】
本発明は特定の可撓部の材料に限定されないが、好ましい材料は、アルミニウム、調和した鋼鉄、超弾性ニチノール、および、銅、チタン-銅合金、および柔軟なプラスチック材料のうちの1つまたは複数を含むNi-Tiに基づく超弾性合金である。
【符号の説明】
【0044】
1 第1のレバーアーム
1’ 第2のレバーアーム
1a、1a’ 保持体
2、2’ 軸方向案内部材、軸方向可撓部
3、3’ 横方向基礎部材、基部
4 移動可能要素、ランナ
5 移動可能軸方向部材
5’ 固定軸方向部材
6、6’ 横方向可撓部
7、7’ 対角方向可撓部
11 第1のリング形レバー
11’ 第2のリング形レバー
11a、11a’ 保持体
12、12’ 軸方向可撓部
13、13’ 基部
15、15’ 軸方向部材
16、16’ リング形横方向可撓部
21 第1のリング形レバー
21’ 第2のリング形レバー
22、22’ 軸方向可撓部
23、23’ 基部
24 移動可能要素
27、27’ 対角方向可撓部
31 第1のリング形レバー
31’ 第2のリング形レバー
31a、31a’ 保持体
34 レンズ
35、35’ 軸方向部材
36、36’ リング形横方向可撓部
37 形状記憶合金(SMA)ワイヤ
38 クリンプ
100 円筒型アクチュエータ部分組立体
200 円筒型アクチュエータ部分組立体
300 アクチュエータ部分組立体
A 長手方向軸
C1、C2、C3、C4 回転点、角
F 第2のレバー1’への力
M 移動可能要素4の移動