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特許7475468皮膜形成エアゾール組成物及びエアゾール型皮膜形成外用製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】皮膜形成エアゾール組成物及びエアゾール型皮膜形成外用製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/12 20060101AFI20240419BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240419BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240419BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240419BHJP
   A61K 47/08 20060101ALI20240419BHJP
   A61L 15/24 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
A61K9/12
A61K47/32
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/08
A61L15/24 100
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022550528
(86)(22)【出願日】2021-09-10
(86)【国際出願番号】 JP2021033345
(87)【国際公開番号】W WO2022059618
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】P 2020156947
(32)【優先日】2020-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000160522
【氏名又は名称】久光製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】弁理士法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒木 浩行
(72)【発明者】
【氏名】中西 利博
(72)【発明者】
【氏名】古瀬 靖久
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-016922(JP,A)
【文献】特開2003-012465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61L 15/00-15/64
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膜形成剤及び溶剤を含有する原液と、噴射剤とを含有する皮膜形成エアゾール組成物であって、
前記皮膜形成剤として、ガラス転移温度が20℃以下のアクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体のエマルション及びガラス転移温度が20℃以下のアクリル酸アルキル共重合体(アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体を除く)のエマルションが含有されており、かつ、
前記溶剤として、沸点が30~100℃の有機溶剤が含有されている、
皮膜形成エアゾール組成物。
【請求項2】
前記アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体と前記アクリル酸アルキル共重合体の含有比(アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体の質量:前記アクリル酸アルキル共重合体の質量)が不揮発分換算で1:0.5~1:9である、請求項に記載の皮膜形成エアゾール組成物。
【請求項3】
前記有機溶剤が、エタノール、酢酸エチル、アセトン及びジエチルエーテルからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の皮膜形成エアゾール組成物。
【請求項4】
前記有機溶剤が、エタノール、酢酸エチル及びアセトンからなる群から選択される少なくとも2種である、請求項1~のうちのいずれか一項に記載の皮膜形成エアゾール組成物。
【請求項5】
前記原液中の前記皮膜形成剤の含有量が、不揮発分換算で5~25質量%である、請求項1~のうちのいずれか一項に記載の皮膜形成エアゾール組成物。
【請求項6】
前記原液と前記噴射剤の配合比(原液の質量:噴射剤の質量)が5:95~25:75である、請求項1~のうちのいずれか一項に記載の皮膜形成エアゾール組成物。
【請求項7】
請求項1~のうちのいずれか一項に記載の皮膜形成エアゾール組成物に、薬効成分を配合してなる、エアゾ-ル型皮膜形成外用製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膜形成剤を含有する皮膜形成エアゾール組成物、並びにそれに薬効成分を配合したエアゾール型皮膜形成外用製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ヒトの皮膚トラブル(虫刺され、踵等のひび割れ、等)に対し、皮膚上に薄い皮膜をつくる透明ゲル剤や、コットンやガーゼに染み込ませたオリーブ油を皮膚に塗布するような組成物が存在するが、更に高い皮膚保護性(皮膜保護性)を有し、かつ、使用感に優れた組成物が望まれていた。
【0003】
このような観点から、皮膚上に薄い被膜を形成して保護するための皮膜形成エアゾール組成物を開発する試みがなされており、特開平8-291050号公報(特許文献1)には、アクリル系ポリマー、可塑剤、低級アルコール、水、界面活性剤、噴射剤及び多価アルコールを含有するエアゾール組成物が記載されている。また、特開平10-287529号公報(特許文献2)には、アクリル樹脂、可塑剤及びアルコールを含有した原液と噴射剤とからなるヒト皮膚用エアゾール組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-291050号公報
【文献】特開平10-287529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、このような皮膜形成エアゾール組成物に着目し詳細に検討したところ、前記従来のエアゾール組成物を用いて形成された皮膜においては、優れた皮膚保護性を備えているものの、一般的にはトレードオフの関係にある適用後の皮膜の除去性と汗等に対する皮膜の耐水性のうちの少なくとも一方が十分なものではなく、得られる皮膜の除去性と耐水性の両立という解決すべき課題を有していることを見出した。
【0006】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、優れた皮膚保護性を備えると共に、一般的にはトレードオフの関係にある適用後の皮膜の除去性と汗等に対する皮膜の耐水性の双方が優れた皮膜を皮膚上に形成することができる皮膜形成エアゾール組成物、並びにそれに薬効成分を配合したエアゾール型皮膜形成外用製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、皮膜形成剤を含有する原液と、噴射剤とを含有する皮膜形成エアゾール組成物において、前記皮膜形成剤としてアクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体を用い、かつ、前記原液に沸点が30~100℃の有機溶剤を配合することにより、優れた皮膚保護性を備えると共に、常温では汗等に対する耐水性に優れて皮膚から剥がれにくく、一方、約40℃程度のぬるま湯に浸けると軟化して容易かつ確実に皮膚から剥離することが可能な、一般的にはトレードオフの関係にある除去性と耐水性の双方が優れた皮膜を皮膚上に形成することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の皮膜形成エアゾール組成物は、皮膜形成剤及び溶剤を含有する原液と、噴射剤とを含有する皮膜形成エアゾール組成物であって、
前記皮膜形成剤として、ガラス転移温度が20℃以下のアクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体のエマルション及びガラス転移温度が20℃以下のアクリル酸アルキル共重合体(アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体を除く)のエマルションが含有されており、かつ、
前記溶剤として、沸点が30~100℃の有機溶剤が含有されているものである。
【0009】
また、本発明のエアゾール型皮膜形成外用製剤は、前記本発明の皮膜形成エアゾール組成物に、薬効成分を配合してなるものである。
【0011】
また、前記アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体と前記アクリル酸アルキル共重合体の含有比(アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体の質量:前記アクリル酸アルキル共重合体の質量)が不揮発分換算で1:0.5~1:9であることが好ましい。
【0012】
本発明の皮膜形成エアゾール組成物及びエアゾール型皮膜形成外用製剤においては、前記有機溶剤が、エタノール、酢酸エチル、アセトン及びジエチルエーテルからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、前記有機溶剤が、エタノール、酢酸エチル及びアセトンからなる群から選択される少なくとも2種であることがより好ましい。
【0013】
また、本発明の皮膜形成エアゾール組成物及びエアゾール型皮膜形成外用製剤においては、前記原液中の前記皮膜形成剤の含有量が、不揮発分換算で5~25質量%であることが好ましく、また、前記原液と前記噴射剤の配合比(原液の質量:噴射剤の質量)が5:95~25:75であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、優れた皮膚保護性を備えると共に、一般的にはトレードオフの関係にある適用後の皮膜の除去性と汗等に対する皮膜の耐水性の双方が優れた皮膜を皮膚上に形成することができる皮膜形成エアゾール組成物、並びにそれに薬効成分を配合したエアゾール型皮膜形成外用製剤を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0016】
本発明の皮膜形成エアゾール組成物は、皮膜形成剤及び溶剤を含有する原液と、噴射剤とを含有する皮膜形成エアゾール組成物であって、前記皮膜形成剤として、アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体を含有しており、かつ、前記溶剤として、沸点が30~100℃の有機溶剤を含有している。
【0017】
本発明においては、アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体と沸点が30~100℃の有機溶剤とを組合せて配合した原液を用いることにより、常温では汗等に対する耐水性に優れて皮膚から剥がれにくく、一方、約40℃程度のぬるま湯に浸けると軟化して容易かつ確実に皮膚から剥離することが可能な、一般的にはトレードオフの関係にある除去性と耐水性の双方が優れている皮膜が得られるようになる。
【0018】
前記アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体としては、アクリル酸アルキル及びメタクリル酸アルキルの中の1種以上と、酢酸ビニルとを主成分とする共重合体であり、それらのアルキル基としては炭素数1~12のアルキル基が一般的であり、係るアルキル基は1種でも2種以上であってもよい。前記アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体としては、溶剤との混和性に優れるという観点から、アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体の微小粒子が溶媒中に分散しているエマルションの形態を有するものが好ましく、アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体の水性エマルションがより好ましい。
【0019】
前記アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体エマルションとしては、米国PCPCによるINCI名(化粧品成分の国際共通表示名称)で「Acrylates/VA Copolymer」として収載されているものが好ましく、また、日本化粧品工業連合会による「医薬部外品の成分表示名称リスト」に収載の医薬部外品原料規格「アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体エマルション」に該当するものが好ましい。前記アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体エマルションの市販品としては、ビニゾール2140L、ビニゾール2140LH(大同化成工業株式会社製)等が好ましく例示され、中でも、得られる皮膜の除去性がより良好となるという観点から、ビニゾール2140Lが特に好ましい。
【0020】
本発明の皮膜形成エアゾール組成物において前記皮膜形成剤として用いるアクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体のガラス転移温度は、20℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましい。ガラス転移温度が20℃を超えているアクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体を用いると、得られる皮膜の除去性が低下する傾向にある。アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体のガラス転移温度の下限は特に限定されないが、-20℃以上のものが一般的である。
【0021】
本発明の皮膜形成エアゾール組成物においては、皮膜形成剤として前記アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体を単独で用いてもよいが、得られる皮膜のべたつきが低減され、接触する織布等への皮膜の移行が十分に抑制されるという観点から、アクリル酸アルキル共重合体と組み合わせて用いられることが好ましい。
【0022】
前記アクリル酸アルキル共重合体としては、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、アクリル酸及びメタクリル酸の中の2種以上を主成分とする共重合体であり、それらのアルキル基としては炭素数1~12のアルキル基が一般的であり、係るアルキル基は1種でも2種以上であってもよい。前記アクリル酸アルキル共重合体としては、溶剤との混和性に優れるという観点から、アクリル酸アルキル共重合体の微小粒子が溶媒中に分散しているエマルションの形態を有するものが好ましく、アクリル酸アルキル共重合体の水性エマルションがより好ましく、アクリル酸アルキル共重合体のアンモニウム塩エマルションが更により好ましく、アクリル酸アルキル共重合体のアンモニウム塩水性エマルションが特に好ましい。
【0023】
前記アクリル酸アルキル共重合体エマルションとしては、米国PCPCによるINCI名(化粧品成分の国際共通表示名称)で「Acrylates Copolymer、Ammonium Acrylates Copolymer」として収載されているものが好ましく、また、日本化粧品工業連合会による「医薬部外品の成分表示名称リスト」に収載の医薬部外品原料規格「アクリル酸アルキル共重合体エマルション(2)」に該当するものが好ましい。前記アクリル酸アルキル共重合体エマルションの市販品としては、ビニゾール1086WP、ビニゾール1089HT(大同化成工業株式会社製)等が好ましく例示され、中でも、得られる皮膜の除去性がより良好となるという観点から、ビニゾール1086WPが特に好ましい。
【0024】
本発明の皮膜形成エアゾール組成物において前記皮膜形成剤として用いるアクリル酸アルキル共重合体のガラス転移温度は、20℃以下であることが好ましく、15℃以下であることがより好ましい。ガラス転移温度が20℃を超えているアクリル酸アルキル共重合体を用いると、得られる皮膜の除去性が低下する傾向にある。アクリル酸アルキル共重合体のガラス転移温度の下限は特に限定されないが、0℃以上のものが一般的である。
【0025】
なお、本明細書においてガラス転移温度(Tg)とは、共重合体のガラス転移温度を意味し、下記計算式に示したFoxの式:
1/Tg=Σ(Wi/Tgi)
より求め、摂氏換算することができる。前記式中、Tgは求める共重合体のガラス転移温度(K)を示し、Wiは、各モノマーの質量分率を示し、Tgiは対応するモノマーの単独重合体のガラス転移温度(K)を示す。単独重合体のTgは、「POLYMER HANDBOOK」(第4版;John Wiley&Sons,Inc.発行)等の刊行物に記載されている数値を採用すればよい。
【0026】
本発明の皮膜形成エアゾール組成物において、前記皮膜形成剤として前記アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体と前記アクリル酸アルキル共重合体とを組み合わせて用いる場合、前記アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体と前記アクリル酸アルキル共重合体の含有比(アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体の質量:前記アクリル酸アルキル共重合体の質量)が不揮発分換算で1:0.5~1:9であることが好ましく、1:0.888~1:8であることがより好ましい。前記皮膜形成剤中の前記アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体の含有量が前記下限未満では、得られる皮膜の除去性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると得られる皮膜のべたつきが強くなる傾向にある。
【0027】
本発明の皮膜形成エアゾール組成物においては、前記皮膜形成剤が含有される原液に、沸点が30~100℃の有機溶剤が更に含有される。沸点が100℃を超えている有機溶剤を用いると、得られる皮膜の速乾性が不十分となり、他方、沸点が30℃未満の有機溶剤を用いると、製造中に揮発してしまい、平滑な皮膜が形成されにくくなる等の不具合が発生する。
【0028】
沸点が30~100℃の有機溶剤としては、エタノール(沸点78.3℃)、メタノール(沸点65℃)、2-ブタノール(沸点100℃)等のアルコール系溶剤、酢酸エチル(沸点77.1℃)、酢酸メチル(沸点56.9℃)等のエステル系溶剤、アセトン(沸点56.5℃)、メチルエチルケトン(沸点79.6℃)等のケトン系溶剤、ジエチルエーテル(沸点34.6℃)等のエーテル系溶剤等が挙げられ、中でも、得られる皮膜の速乾性がより高くなるという観点から、用いる有機溶剤の沸点の上限が、80℃であることがより好ましい。
【0029】
前記有機溶剤の中でも、化粧品や医薬品等で使用される頻度が比較的高く、また、水への溶解度が高く水性エマルションとの混和性に優れるという観点から、エタノール、酢酸エチル、アセトン及びジエチルエーテルからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0030】
また、本発明においては、皮膜形成剤の溶解性を高めるという観点から、前記有機溶剤として、エタノールと酢酸エチルとの混合溶剤、酢酸エチルとアセトンとの混合溶剤、エタノールとアセトンとの混合溶剤、エタノールと酢酸エチルとアセトンとの混合溶剤を用いることがより好ましく、中でも、製造時における揮発の影響が十分に抑制されるという観点から、酢酸エチルとエタノールとの混合溶剤が特に好ましい。このように2種の有機溶剤を組合せて用いる場合、それらの質量比が3:1~1:3であることが好ましい。
【0031】
本発明の皮膜形成エアゾール組成物においては、前記皮膜形成剤及び前記溶剤を含有する前記原液中の前記皮膜形成剤の含有量が、不揮発分換算で5~25質量%であることが好ましく、7.5~15質量%であることがより好ましい。前記原液中の前記皮膜形成剤の含有量が前記下限未満では得られる皮膜が薄くなり、皮膚保護性が低下すると共に、剥離が困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると前記共重合体が噴射剤及び溶剤に十分に溶解せず、得られる皮膜の平滑性が低下する傾向にある。
【0032】
本発明の皮膜形成エアゾ-ル組成物に配合される噴射剤は、前記皮膜形成剤としての前記共重合体が十分に溶解するという観点から、ジメチルエ-テル(DME、沸点-23.6℃)が好ましい。また、ジメチルエーテルは単独で用いてもよいが、他の噴射剤成分、例えば、液化天然ガス(LPG)と混合して用いてもよい。
【0033】
前記原液と前記噴射剤の配合比(原液の質量:噴射剤の質量)は、5:95~25:75であることが好ましく、10:90~20:80であることがより好ましい。前記噴射剤の配合量が前記下限未満では、得られる皮膜の速乾性が低下する傾向にあり、他方、前記噴射剤の配合量が前記上限を超えると、平滑な皮膜が形成されにくくなる傾向にある。
【0034】
以上、前記皮膜形成剤及び前記溶剤を含有する原液と、前記噴射剤とを含有する本発明の皮膜形成エアゾール組成物について説明したが、本発明の皮膜形成エアゾール組成物においては、可塑剤、保湿剤、水、界面活性剤等の添加成分が更に含有されていてもよく、さらに、香料、着色剤等の他の添加成分が更に含有されていてもよい。
【0035】
可塑剤としては、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、中鎖脂肪酸トリグリセリド、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル等の脂肪酸エステル類、薄荷油、クロタミトン、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、l-メントール等が挙げられる。また、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコールが可塑剤として含有されていてもよい。これらは、必要に応じて1種、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。可塑剤が配合される場合、その配合量は、特に制限されないが、皮膜形成エアゾール組成物の量に基づいて、0.001~2質量%程度が好ましい。
【0036】
また、保湿剤としては、分子内に水酸基を2個以上有するプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等の(ポリ)プロピレングリコール類、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール等のブチレングリコール類、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール等のペンタンジオール類、分子内に水酸基を3つ以上含むものとしてグリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン等の(ポリ)グリセリン類が挙げられる。また、糖系保湿剤としては、マルトース、マルチトール、ショ糖、フラクトース、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、マルトトリオース、スレイトオール、エリスリトール、ポリエチレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルグリコシド等のグルコース誘導体、スクワラン、オレイン酸、パルミチン酸、ミツロウ、コレステロール、セラミド等のオイル類、プラセンタエキス、アロエエキス、米糠エキス、ヨクイニンエキス、緑茶エキス等のエキス類、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸等のムコ多糖類、尿素、アミノ酸、水溶性コラーゲン等の天然保湿因子等、が挙げられる。これらは、必要に応じて1種、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。保湿剤が配合される場合、その配合量は、特に制限されないが、皮膜形成エアゾール組成物の量に基づいて、0.0001~2質量%程度が好ましい。
【0037】
また、水としては、特に制限されないが、精製水であることが好ましい。水が配合される場合、その配合量は、特に制限されないが、皮膜形成エアゾ-ル組成物の量に基づいて、0.001~2質量%程度が好ましい。
【0038】
さらに、界面活性剤としては、特に制限されないが、室温で液状又はペースト状のものが好ましく、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル等のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等が挙げられる。これらは、必要に応じて1種、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。界面活性剤が配合される場合、その配合量は、特に制限されないが、皮膜形成エアゾ-ル組成物の量に基づいて、0.001~2質量%程度が好ましい。
【0039】
次に、本発明のエアゾール型皮膜形成外用製剤について説明する。本発明のエアゾール型皮膜形成外用製剤は、前記本発明の皮膜形成エアゾール組成物に、薬効成分を配合してなるものである。
【0040】
本発明のエアゾール型皮膜形成外用製剤において使用される薬効成分としては、特に制限されないが、皮膚刺激剤、抗炎症剤、皮膚保護剤、殺菌消毒剤、局所麻酔剤、抗ヒスタミン剤、筋弛緩剤、化膿性疾患用剤、抗真菌剤、角化症治療剤、血流促進剤等の1種又は2種以上の組合せが挙げられる。
【0041】
皮膚刺激剤としては、通常、肩こりや筋肉痛の薬に配合される薬物、例えば、メントール、カンフル、チモール、カプサイシン、ノニル酸ワニリルアミド等が挙げられる。
【0042】
抗炎症剤としては、サリチル酸メチル、アセチルサリチル酸、サリチル酸グリコール、ケトプロフェン、インドメタシン、フルルビプロフェン、フェルビナク、ジクロフェナク、アセクロフェナク、ニメスリド、テニダップ、メロキシカム、ザルトプロフェン、モフェゾラク、ロルノキシカム、ケトロラク、ロキソプロフェン、ピロキシカム、テノキシカム、スプロフェン、オウバク、カミツレ、西洋トチノミエキス、グリチルレチン酸等の非ステロイド系のもの、並びに、アムシノニド、吉草酸プレドニゾロン、吉草酸ジフルコルトロン、吉草酸デキサメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、酢酸デキサメサゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、ハルシノニド、ジプロピオン酸ベタメタゾン、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、ブレドニゾロン、プロピオン酸デプロドン、プロピオン酸クロベタゾール、ベタメタゾン等のステロイド系のものが挙げられる。尚、これらの薬物は、医学的に許容される有機塩又は無機塩を含むものである。
【0043】
皮膚保護剤又は殺菌消毒剤としては、ペパリン類似物質、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、ポビドンヨード、アクリノール、酸化亜鉛、シュガー、アラントイン等が挙げられる。
【0044】
局所麻酔剤としては、リドカイン、塩酸リドカイン、ジブカイン、テトラカイン等が挙げられる。また、抗ヒスタミン剤としては、マレイン酸クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミン等が挙げられる。さらに、筋弛緩剤としては、プリジノール、チザニジン、エペリゾン等またはそれらの塩類が挙げられる。
【0045】
化膿性疾患用剤としては、塩酸テトラサイクリン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、硫酸フラジオマイシン、硫酸ポリミキシンB等が挙げられる。また、抗真菌剤としては、クロトリマゾール、塩酸クロコナゾール、硝酸イソコナゾール、硝酸エコナゾール、硝酸オキシコナゾール、硝酸スルコナゾール、硝酸ミコナゾール、チオコナゾール、ビフォナゾール、硝酸オモコナゾール、塩酸ブテナフィン、塩酸テルビナフィン、塩酸アモルフィン、ケトコナゾール、塩酸ネチコナゾール、ラノコナゾール等が挙げられる。
【0046】
角化症治療剤としては、尿素、ビタミンA誘導体等が挙げられる。
【0047】
血流促進剤としては、トコフェロール、ノニル酸ワニリルアミド、カプサイシン、dl-カンフル等が挙げられる。
【0048】
前記薬効成分の配合量は、特に制限されないが、エアゾール型皮膜形成外用製剤の重量に基づいて、0.0001~2質量%程度とすることが好ましい。
【0049】
本発明の皮膜形成エアゾール組成物及び本発明のエアゾール型皮膜形成外用製剤の製造方法は、特に制限されず、エアゾ-ル製品のいずれの慣用の製造方法によっても製造することができる。本発明の皮膜形成エアゾール組成物の製造方法としては、例えば、前記溶剤と前記皮膜形成剤(さらに、必要に応じて前記添加成分)を混合して原液を調製した後、得られた原液をエアゾール用耐圧容器内に充填し、エアゾール用バルブを取り付けた後、前記噴射剤を圧入し、アクチュエーターを取り付けて、本発明の皮膜形成エアゾール組成物が充填されたエアゾール製品を得ることができる。また、本発明のエアゾール型皮膜形成外用製剤の製造方法としては、例えば、前記薬効成分(さらに、必要に応じて前記添加成分)を前記溶剤に溶解し、その溶液に前記皮膜形成剤を加えて混合して原液を調製した後、得られた原液をエアゾール用耐圧容器内に充填し、エアゾール用バルブを取り付けた後、前記噴射剤を圧入し、アクチュエーターを取り付けて、本発明のエアゾール型皮膜形成外用製剤が充填されたエアゾール製品を得ることができる。
【実施例
【0050】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で用いた諸成分は以下の通りである。
【0051】
[皮膜形成剤]
(1)アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体1:商品名:ビニゾール2140L、大同化成工業株式会社製、医薬部外品原料規格:アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体エマルション、INCI名:Acrylates/VA Copolymer、不揮発分:45質量%、Tg:-9℃
(2)アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体2:商品名:ビニゾール2140LH、大同化成工業株式会社製、医薬部外品原料規格:アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体エマルション、INCI名:Acrylates/VA Copolymer、不揮発分:45質量%、Tg:26℃
(3)アクリル酸アルキル共重合体1:商品名:ビニゾール1086WP、大同化成工業株式会社製、医薬部外品原料規格:アクリル酸アルキル共重合体エマルション(2)、INCI名:Ammonium Acrylates Copolymer、不揮発分:40質量%、Tg:10℃
(4)アクリル酸アルキル共重合体2:商品名:ビニゾール1089HT、大同化成工業株式会社製、組成:アクリル酸アルキル共重合体エマルション、INCI名:Ammonium Acrylates Copolymer、不揮発分:35質量%、Tg:50℃
(5)酢酸ビニル樹脂:商品名:Kollicoat SR30D、BASFジャパン株式会社製、不揮発分:30質量%
(6)スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体:商品名:SIS5002、JSR株式会社製、不揮発分:100質量%
(7)シリコーン系粘着基剤:商品名:Bio-PSA 7-4102、デュポン・東レ・スペシャルティ・マテリアル株式会社製、不揮発分:60質量%
[溶剤]
(8)エタノール:沸点78.3℃
(9)酢酸エチル:沸点77.1℃
(10)アセトン:沸点56.5℃
(11)ジエチルエーテル:沸点34.6℃
[噴射剤]
(12)ジメチルエーテル:沸点-23.6℃。
【0052】
また、実施例及び比較例で用いた性能評価方法はそれぞれ以下の通りである。
【0053】
<皮膜の除去性>
試験者の前腕に皮膜形成エアゾール組成物を約1秒間噴霧し、乾燥して、乾燥後の厚みが約0.03mmの皮膜を形成した。その後、皮膜を形成した前腕を約40℃の水浴下に浸し、皮膜を指でこすり取ったときに、除去できるか否かを以下の評価基準に沿って評価した。
A:容易に除去できた
B:除去できたが時間がかかった
C:除去が困難で、一部残ってしまった。
【0054】
<皮膜の耐水性>
試験者の前腕に皮膜形成エアゾール組成物を約1秒間噴霧し、乾燥して、乾燥後の厚みが約0.03mmの皮膜を形成した。その後、皮膜を形成した前腕を常温の水浴下に浸し、皮膜を指でこすり取ったときに、皮膜が皮膚から剥がれるか否かを以下の評価基準に沿って評価した。
A:皮膜が皮膚から剥がれなかった
B:皮膜が皮膚から剥がれた。
【0055】
<べたつき>
予め重量を測定した約7cm×7cmの合皮(藤久株式会社製)上に皮膜形成エアゾール組成物を約1秒間噴霧し、乾燥して、乾燥後の厚みが約0.03mmの皮膜を形成し、形成した皮膜の重量を測定した。その後、皮膜の上に予め重量を測定した約7cm×7cmの織布(目付:約95g/m)を積層し、約80kgの荷重を約30秒間織布全体にかけた後、織布を剥離し、織布へ移行した皮膜の重量を測定した。得られた測定値から、織布へ移行した皮膜の割合[質量%]を算出した。
【0056】
<皮膜の速乾性>
プラスチックフィルム(藤森工業株式会社製)上に皮膜形成エアゾール組成物を約1秒間噴霧し、乾燥後の厚みが約0.03mmとなる皮膜を形成した後、10秒間隔で皮膜を指で触り、乾燥しているか否かを評価した。3人の試験者が同じ評価を行い、乾燥が確認できた時間(秒)の平均値を求めた。なお、皮膜の速乾性として好ましい結果(乾燥時間)は、60秒以内である。
【0057】
(実施例1及び比較例1~5)
表1に示す溶剤と皮膜形成剤を同表に示す組成となるように混合して原液を調製した後、得られた原液をエアゾール用耐圧容器内(容量:100ml)に充填し、エアゾール用バルブを取り付けた後、同表に示す噴射剤を同表に示す組成となるように圧入し、アクチュエーターを取り付けて、皮膜形成エアゾール組成物が充填されたエアゾール製品を得た。
【0058】
得られた皮膜形成エアゾール組成物について、皮膜の除去性及び皮膜の耐水性を評価し、実施例1の皮膜形成エアゾール組成物についてはべたつきも評価した。得られた結果を表1に示す。
【0059】
表1に示した結果から明らかなとおり、本発明の皮膜形成エアゾール組成物(実施例1)においては、べたつきはある程度あるものの、一般的にはトレードオフの関係にある皮膜の除去性と耐水性の双方が優れた皮膜が皮膚上に形成されていることが確認された。
【0060】
【表1】
【0061】
(実施例2~5)
溶剤、皮膜形成剤及び噴射剤の組成が表2に示す組成となるようにしたこと以外は実施例1と同様の方法で皮膜形成エアゾール組成物が充填されたエアゾール製品を得た。得られた皮膜形成エアゾール組成物について、皮膜の速乾性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0062】
表2に示した結果から明らかなとおり、皮膜の速乾性を向上させるためには、原液と噴射剤との配合比(質量比)が、1:9~2:8であることが好ましいことが確認された。
【0063】
【表2】
【0064】
(実施例6~9)
溶剤、皮膜形成剤及び噴射剤の組成が表3に示す組成となるようにしたこと以外は実施例1と同様の方法で皮膜形成エアゾール組成物が充填されたエアゾール製品を得た。得られた皮膜形成エアゾール組成物について、皮膜の速乾性を評価した。得られた結果を表3に示す。
【0065】
表3に示した結果から明らかなとおり、皮膜の速乾性に関してエタノールでも良好な結果であったが、速乾性をより向上させるためには、沸点がより低い溶剤を用いることが好ましいことが確認された。
【0066】
【表3】
【0067】
(実施例10~11及び参考例1~3)
溶剤、皮膜形成剤及び噴射剤の組成が表4に示す組成となるようにしたこと以外は実施例1と同様の方法で皮膜形成エアゾール組成物が充填されたエアゾール製品を得た。得られた皮膜形成エアゾール組成物について、皮膜の除去性及び皮膜の耐水性を評価し、実施例10~11の皮膜形成エアゾール組成物についてはべたつきも評価した。得られた結果を表4に示す。
【0068】
表4に示した結果から明らかなとおり、本発明の皮膜形成エアゾール組成物(実施例10~11)においては、一般的にはトレードオフの関係にある皮膜の除去性と耐水性の双方が優れた皮膜が皮膚上に形成されており、アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体とアクリル酸アルキル共重合体とを組合せて用いることによりべたつきが低減して皮膜の織布への移行が防止されていることも確認された。なお、アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体とアクリル酸アルキル共重合体とを組合せて用いた場合であっても、ガラス転移温度が20℃を超えているアクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体を用いた場合(参考例1~3)においては、耐水性が低下していることが確認された。
【0069】
【表4】
【0070】
(実施例12~16)
溶剤、皮膜形成剤及び噴射剤の組成が表5に示す組成となるようにしたこと以外は実施例1と同様の方法で皮膜形成エアゾール組成物が充填されたエアゾール製品を得た。得られた皮膜形成エアゾール組成物について、皮膜の除去性、皮膜の耐水性、べたつき、及び皮膜の速乾性を評価した。得られた結果を表5に示す。
【0071】
表5に示した結果から明らかなとおり、本発明の皮膜形成エアゾール組成物(実施例12~16)においては、一般的にはトレードオフの関係にある皮膜の除去性と耐水性の双方が優れた皮膜が皮膚上に形成されており、さらに、アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体とアクリル酸アルキル共重合体とを組合せて用いることによりべたつきが低減され、皮膜の速乾性も良好なものであることが確認された。また、実施例12~16の結果から、エタノール、酢酸エチル及びアセトンから選択される2種の溶剤を組合せて用いることにより、皮膜の速乾性が向上し、実施例13~15のように原液濃度を高くしても良好な速乾性が達成されることが確認された。
【0072】
【表5】
【0073】
(実施例17)
表6に示す溶剤と薬効成分とその他成分を同表に示す組成となるように混合し、得られた溶液に同表に示す皮膜形成剤を同表に示す組成となるように加えて混合して原液を調製した後、得られた原液をエアゾール用耐圧容器内(容量:100ml)に充填し、エアゾール用バルブを取り付けた後、同表に示す噴射剤を同表に示す組成となるように圧入し、アクチュエーターを取り付けて、エアゾ-ル型皮膜形成外用製剤が充填されたエアゾール製品を得た。得られたエアゾ-ル型皮膜形成外用製剤について、皮膜の除去性、皮膜の耐水性、べたつき、及び皮膜の速乾性を評価した。得られた結果を表6に示す。
【0074】
表6に示した結果から明らかなとおり、本発明のエアゾ-ル型皮膜形成外用製剤(実施例17)においては、一般的にはトレードオフの関係にある皮膜の除去性と耐水性の双方が優れた皮膜が皮膚上に形成されており、さらに、アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体とアクリル酸アルキル共重合体とを組合せて用いることによりべたつきが低減され、エタノールと酢酸エチルとを組合せて用いることにより皮膜の速乾性も良好なものであることが確認された。
【0075】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上説明したように、本発明の皮膜形成エアゾール組成物によれば、優れた皮膚保護性を備えると共に、一般的にはトレードオフの関係にある適用後の皮膜の除去性と汗等に対する皮膜の耐水性の双方が優れた皮膜を皮膚上に形成することが可能となる。したがって、本発明の皮膜形成エアゾール組成物は、虫刺され、踵等のひび割れ等の皮膚トラブルに適用する皮膚保護剤として有用であり、更に、各種の薬効成分を配合したエアゾール型皮膜形成外用製剤とすることにより、筋肉痛、関節痛、腰痛、真菌感染症等の治療剤、褥瘡、火傷等の各種皮膚疾患の治療剤、殺菌消毒剤等としても有用である。