(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】車載表示装置、および、通信接続方法
(51)【国際特許分類】
B60R 11/02 20060101AFI20240419BHJP
【FI】
B60R11/02 C
(21)【出願番号】P 2022555040
(86)(22)【出願日】2020-10-07
(86)【国際出願番号】 JP2020038044
(87)【国際公開番号】W WO2022074775
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鍜治本 晋明
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-527391(JP,A)
【文献】特開2009-026049(JP,A)
【文献】特開平09-026834(JP,A)
【文献】実開平06-027362(JP,U)
【文献】国際公開第2005/016697(WO,A1)
【文献】特開平06-230852(JP,A)
【文献】特開2012-194266(JP,A)
【文献】特開2008-164800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される表示装置であって、
前記車両の所定箇所に設置されるベース部と、
前記ベース部に
ヒンジ軸を中心とした回転により開閉可能に支持される表示部と、
前記ベース部に
固定される第1基板と、
前記表示部に設けられる第2基板と、
前記表示部が開かれた場合に、
前記第2基板を前記第1基板
に接近させて非接触通信を可能とする移動機構と、
を備え
、
前記移動機構は、前記ヒンジ軸と交わる方向に延び、前記ベース部に固定される棒状部材を備え、
前記第2基板は、前記表示部が前記棒状部材に沿って当該棒状部材が延びる方向へスライドすることで前記第1基板へ接近する、車載表示装置。
【請求項2】
前記第1基板は、第1伝送線路を有し、
前記第2基板は、前記第1伝送線路と対になって伝送線路結合器を形成する第2伝送線路を有する、請求項1に記載の車載表示装置。
【請求項3】
前記移動機構は、
前記ベース部に設けられる第1磁石と、
前記表示部に設けられ、前記第1磁石と対になって前記第1基板と前記第2基板とを接近させる力を発生させる第2磁石と
、
を備える、請求項
1又は2に記載の車載表示装置。
【請求項4】
前記第1磁石は、前記第1基板から離れて前記ベース部に配置され、
前記第2磁石は、前記第2基板に配置される、請求項
3に記載の車載表示装置。
【請求項5】
前記ベース部に配置される制御部を更に備え、
前記制御部は、前記非接触通信が可能となったと判定した場合に、前記表示部における画像の表示を開始させる、請求項1から
4のいずれか1項に記載の車載表示装置。
【請求項6】
ベース部に対して表示部が
ヒンジ軸を中心とする回転により開閉可能に設けられる車載表示装置における基板間の通信接続方法であって、
前記表示部を開く回転動作に起因して、
前記ベース部に前記ヒンジ軸と交わる方向に延びて設けられる棒状部材に沿って前記表示部を前記棒状部材が延びる方向へスライドさせることで、前記ベース部が有する第1基板
に前記表示部が有する第2基
板を自動的に接近させて非接触通信可能な距離とする、通信接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載表示装置、および、通信接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テレビモニタ等の表示装置を車両の天井に格納可能に搭載する技術が知られる(例えば特許文献1参照)。従来の装置は、車両の天井に設けられたベース部の凹部にテレビ本体を格納する。テレビ本体の一端に設けられた回動軸を介してテレビ本体を回動することにより、テレビ本体をベース部の凹部に格納する。回動軸の反対側端部を凹部の内側に係止することにより、テレビ本体の格納状態を固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
表示部(例えばテレビ本体)がベース部に対して回動して開閉する構成の場合、ベース部と表示部との間の通信接続のためにフレキシブルプリント基板を利用することができる。ただし、フレキシブルプリント基板を使用する場合には、耐久性の不足が生じることが懸念される。このため、従来においては、フレキシブルプリント基板の替わりに、細線同軸ケーブルやディスクリート線を引き回して、ベース部と表示部との間の通信接続を行うことがあった。
【0005】
しかし、ベース部と表示部との通信接続に細線同軸ケーブル等が利用される構成とする場合、細線同軸ケーブル等の長さが長くなりやすい。細線同軸ケーブル等の長さが長くなると、映像信号等の信号波形の品質の低下や、EMC(Electro-Magnetic Compatibility;電磁両立性)性能の不足が生じることが懸念される。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑み、ベース部に対して表示部が開閉可能に設けられる車載表示装置において、耐久性の低下を抑制しつつ、ベース部と表示部との間の通信品質を向上できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の例示的な車載表示装置は、車両に搭載される表示装置であって、前記車両の所定箇所に設置されるベース部と、前記ベース部に開閉可能に支持される表示部と、前記ベース部に設けられる第1基板と、前記表示部に設けられる第2基板と、前記表示部が開かれた場合に、前記第1基板と前記第2基板とを接近させて非接触通信を可能とする移動機構と、を備える。
【0008】
また、本発明の例示的な通信接続方法は、ベース部に対して表示部が開閉可能に設けられる車載表示装置における基板間の通信接続方法であって、前記表示部を開く回転動作に起因して、前記ベース部が有する第1基板と、前記表示部が有する第2基板とを自動的に接近させて非接触通信可能な距離とする。
【発明の効果】
【0009】
例示的な本発明によれば、ベース部に対して表示部が開閉可能に設けられる車載表示装置において、耐久性の低下を抑制しつつ、ベース部と表示部との間の通信品質を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図1に示す車載表示装置の表示部が開いた状態を示す図
【
図3】車載表示装置の電気的な構成を説明するためのブロック図
【
図6】棒状部材とヒンジ軸との関係を示す概略断面図
【
図7】車載表示装置における基板間の通信接続動作の流れを示すフローチャート
【
図10】基板間の非接触通信が可能となった状態を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下、車載表示装置の説明においては、車載表示装置を搭載する車両を基準とした方向の表現を用いる。すなわち、車両の直進進行方向であって、運転席からハンドルに向かう方向を「前方向」とする。また、車両の直進進行方向であって、ハンドルから運転席に向かう方向を「後方向」とする。また、車両の直進進行方向及び鉛直線に垂直な方向であって、前方向を向いている運転者の右側から左側に向かう方向を「左方向」とする。また、車両の直進進行方向及び鉛直線に垂直な方向であって、前方向を向いている運転者の左側から右側に向かう方向を「右方向」とする。なお、これらの方向は、単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係及び方向を限定する趣旨ではない。
【0012】
また、本明細書において、2つの方向が「平行」とは、両者がどこまで延長しても全く交わらない状態のみならず、実質的に平行である状態を含む。また、2つの方向が「直交」とは、両者が互いに90度で交わる状態のみならず、実質的に90度で交わる状態を含む。つまり、「平行」および「直交」はそれぞれ、両者の位置関係に本発明の主旨を逸脱しない程度の角度ずれがある状態を含む。
【0013】
<1.車載表示装置の概要>
図1は、本発明の実施形態に係る車載表示装置100の概略斜視図である。車載表示装置100は、車両に搭載される表示装置である。詳細には、車載表示装置100は、車室の天井に配置される。
図1は、車室の天井に配置された車載表示装置100を右後方斜め下から見た図である。
【0014】
車載表示装置100は、詳細には、車両の車室の後席でテレビやDVD映像等楽しむための装置であり、いわゆる、リアシートエンターテイメント(RSE:Rear Seat Entertainment)システム用の装置である。車載表示装置100は、例えば、ナビゲーション装置またはディスプレイオーディオ等として構成されるヘッドユニット(不図示)とワイヤーハーネスにより接続される。車載表示装置100は、ヘッドユニットから電力や映像信号等を供給される。ヘッドユニットは、例えば、車両の前方のインストルメントパネルに配置される。なお、車載表示装置100は、必ずしもRSEシステム用の装置である必要はなく、単独で使用される装置であってもよい。
【0015】
図1に示すように、車載表示装置100は、ベース部1と表示部2とを備える。ベース部1は、車両の所定箇所に設置される。本実施形態では、車両の所定箇所は車室の天井である。ただし、ベース部1は、車室の天井以外の場所に配置されてもよい。ベース部1が車室の天井以外の場所に配置された場合には、車載表示装置の配置場所も、車室の天井以外になる。
【0016】
表示部2は、例えば、有機ELパネル又は液晶パネル等の表示パネル21(例えば
図3参照)を含んで構成され、画像を表示する。表示部2は、ベース部1に開閉可能に支持される。詳細には、表示部2は、ベース部1にヒンジ部3(例えば
図5等参照)を介して開閉可能に支持される。
図1は、表示部2が閉じた状態を示す。
図2は、
図1に示す車載表示装置100の表示部2が開いた状態を示す図である。
【0017】
図1および
図2に示すように、ベース部1は、下方からの平面視において矩形状の筐体である。
図2に示すように、ベース部1は、上方に向けて凹むベース凹部1aを下面に有する。ベース凹部1aは、下方からの平面視において矩形状である。表示部2は、閉じた状態において、ベース凹部1a内に収容される。表示部2は、直方体状であり、閉じた状態においてベース部1の下面と面一になる。
【0018】
ベース部1の前方側には、左右方向に延び、ヒンジ部3を構成するヒンジ軸31(例えば
図4参照)が配置される。表示部2は、ヒンジ軸31を中心として回転可能に設けられる。表示部2は、
図1に示す閉じた状態から、ヒンジ軸31を中心として下方に向けて回転することにより、
図2に示す開いた状態となる。表示部2は、開いた状態において、画像を表示する画面2aを外部に露出する。画面2aは、表示部2が開いた状態において、前方を向く車両の乗員と向かい合う面に配置される。表示部2が完全に開いた状態において、画面2aは上下方向と平行となる。表示部2が閉じた状態において、画面2aは、上方に向き、ベース部1内に隠れる。
【0019】
図3は、車載表示装置100の電気的な構成を説明するためのブロック図である。
図3に示すように、ベース部1は、電源部11と、制御部12と、映像処理部13と、開閉モータ14と、を備える。なお、開閉モータ14は、表示部2をベース部1に対して回転するための駆動源となるモータである。車載表示装置100は、開閉モータ14と、開閉モータ14の動力を表示部2に伝達する動力伝達機構(不図示)とを備えることにより、表示部2をベース部1に対して回転可能となっている。なお、動力伝達機構には、歯車等が含まれる。
【0020】
電源部11は、車載表示装置100が備える各種の電気部品に電力を供給する電源回路である。電源部11は、例えば、ヘッドユニットから供給される電源電圧の変更を行う回路を含む。制御部12は、車載表示装置100の全体を制御するマイクロコントローラである。制御部12は、例えば、CPU(Central Processing Unit)およびメモリを含んで構成される。制御部12は、表示部2における画像の表示を制御する。映像処理部13は、集積回路により構成され、ヘッドユニットから入力される映像信号に対して各種の処理を行い、処理を行った映像信号を表示部2に出力する。
【0021】
表示部2は、上述のように表示パネル21を備える。表示パネル21は、制御部12の制御のもと、映像処理部13から送信される映像信号にしたがって映像(画像)の表示を行う。
【0022】
電源部11、制御部12、および、映像処理部13は、ベース部1に設けられる基板上に配置される。当該基板から、表示部2(表示パネル21)に、例えば、電力、制御信号、および、映像信号が送られる。本実施形態では、電力については、ディスクリート線等のケーブルを用いて基板から表示部2に供給される。制御信号および映像信号については、ケーブルを用いない非接触通信を利用して、基板から表示部2に送信される。以下、非接触通信を可能とする通信接続構造について説明する。なお、表示部2が音声を出力するスピーカを有する場合には、音声信号およびスピーカを制御する信号も、ベース部1の基板から表示部2に送信されてよい。
【0023】
<2.通信接続構造>
図4は、車載表示装置100の構成を模式的に示す図である。
図4は、車載表示装置100を右方から見た側面図で、ベース部1の右側面が透明であると仮定して描いた模式図である。また、
図4は、表示部2が閉じた状態である場合を示す。なお、
図4においては、表示部2に含まれる表示パネル21も、右側方からは本来見えないので、破線で示している。
図5は、
図4のA-A位置における概略断面図である。なお、
図5には、切断面より上方にある一部の部品について、位置関係の理解を容易とするために破線で示している。
【0024】
図4に示すように、車載表示装置100は、第1基板10と、第2基板20と、移動機構4と、を備える。
【0025】
第1基板10は、ベース部1に設けられる。第1基板10は、回路基板である。詳細には、第1基板10は、ベース部1の内部に配置される。第1基板10は、ベース部1に固定される。すなわち、第1基板10は、ベース部1の内部で動くことはない。第1基板10のベース部1に対する固定手法は、例えば螺子止めや接着等であってよい。
【0026】
詳細には、第1基板10は、上下方向と直交する方向(水平方向)に広がる。第1基板10の上下方向と直交する面に、
図4においては図示を省略するが、上述した電源部11、制御部12、および、映像処理部13が配置される。また、第1基板10は、第1伝送線路51を有する。本実施形態では、第1伝送線路51は、好ましい形態として、第1基板10の下面に形成される。第1伝送線路51の詳細については後述する。
【0027】
第2基板20は、表示部2に設けられる。第2基板20は、回路基板である。
図4に示すように、表示部2が閉じた状態において、第2基板20は、前後方向と直交する方向に広がる。なお、表示部2が有する表示パネル21は、表示部2が閉じた状態において、上下方向と直交する方向に広がる。すなわち、表示部2が閉じた状態において、第2基板20が広がる方向と、表示パネル21が広がる方向とは直交する。第2基板20は、表示パネル21に直接固定されてもよいが、他の部材を介して表示パネル21に固定されてもよい。第2基板20は、表示パネル21と電気的に接続される。表示部2が閉じた状態において、第2基板20は、表示部2の前方に配置され、上方に延びる。なお、表示パネル21と第1基板10とは上下方向に対向する位置関係となっている。
【0028】
第2基板20は、第2伝送線路52を有する。第2伝送線路52は、第1伝送線路51と対になって伝送線路結合器5を形成する。本実施形態では、第2伝送線路52は、表示部2が閉じた状態において、第2基板20の前面に配置される。伝送線路結合器(TLC;Transmission Line Coupler)は、互いに近接配置された伝送線路間の容量結合および誘導結合により、無線でデータの通信を行うことを可能とする非接触コネクタである。伝送線路結合器は、公知の技術であり、本実施形態において、第1伝送線路51および第2伝送線路52は公知の構成であってよい。
【0029】
本実施形態では、伝送線路結合器5は、第1基板10と第2基板20とが特定の状態になった場合に、その機能を発揮して第1基板10と第2基板20との間のデータ通信を可能とする。特定の状態については後述する。本実施形態では、非接触通信に伝送線路結合器を利用する構成であるために、例えば、非接触通信の信頼性を向上することができる。なお、表示部2が閉じた状態において、第1伝送線路51と第2伝送線路52とは、互いに直交する関係で離れており、伝送線路結合器5を形成していない。すなわち、表示部2が閉じた状態においては、第1基板10と第2基板20との間で非接触通信を行うことができない。表示部2が閉じた状態は、上述の特定の状態に該当しない。
【0030】
上述のように、表示部2は、ヒンジ部3を利用して開いた状態となる。ここで、ヒンジ部3の構成について詳細に説明しておく。
図5に示すように、ヒンジ部3は、ヒンジ軸31と、軸受け32とで構成される。ヒンジ軸31は、左右方向に延びる円柱状或いは円筒状である。本実施形態では、ヒンジ軸31は、表示部2に固定される。すなわち、ヒンジ軸31は、表示部2と一体である。詳細には、ヒンジ軸31は、表示部2の前方の端部に固定される。
【0031】
軸受け32は、
図5に示すように、ベース部1に設けられる。詳細には、ベース部1は、内部に枠状の支持部1bを有する。軸受け32は、支持部1bの上面から下方に向けて凹む一対の凹部により構成される。一対の凹部は、左右対称に配置される。一対の凹部のうち、左側の凹部は右端が開口し、右側の凹部は左端が開口する。ヒンジ軸31の左右の端部を、一対の凹部にそれぞれに上方から嵌めることにより、ヒンジ軸31が軸受け32により回転可能に支持されることになる。
【0032】
なお、本実施形態では、軸受け32がベース部1に設けられる構成としたが、軸受けが表示部2に設けられる構成としてもよい。この場合、例えば、、軸受けは、左右方向に延びる円筒状で、表示部2の前端部に設けられる構成としてよい。ヒンジ軸は、円筒状の軸受けに通される。ヒンジ軸は、ベース部1に対して回転不能に配置され、軸受けを有する表示部2がヒンジ軸を中心として回転することになる。ただし、当該変形例の構成の場合と、本実施形態の構成の場合とのいずれの場合においても、ヒンジ軸は、ベース部1に対して上下方向に移動可能にベース部1に支持される。この点の詳細は後述する。
【0033】
移動機構4は、表示部2が開かれた場合に、第1基板10と第2基板20とを接近させて非接触通信を可能とする。これによれば、ベース部1に対して表示部2が開閉可能に設けられる車載表示装置100において、細線同軸ケーブルやディスクリート線等の電気ケーブルを用いることなく、ベース部1と表示部2との間でデータの通信を行うことを可能にできる。このために、表示部2の開閉に伴って信号線が断線するという事態の発生を避けることができ、車載表示装置100の耐久性を向上することができる。また、非接触通信を利用できるために、データ通信用のケーブルを引き回す構成の場合に懸念された信号波形品質の低下やEMC性能の不足を避けて、通信品質やEMC性能を向上することができる。また、データ通信用のケーブルをベース部1から表示部2へと引き回さなくてもよいために、従来のように、多数の通信用のケーブルをヒンジ部の内部に通す必要がなく、ヒンジ部のサイズが大きくなることを避けることができる。
【0034】
本実施形態では、移動機構4は、第2基板20を移動可能に設けられる。移動機構4は、第2基板20を第1基板10に接近させる。移動機構は、第1基板10と第2基板20とを接近させることができればよいので、第1基板10を第2基板20に接近させる構成であってもよい。ただし、本実施形態のように、移動機構4が第2基板20を移動する構成とすることにより、可動部の増加を抑制でき、車載表示装置100の構造が複雑になることを避けられる。
【0035】
詳細には、移動機構4は、表示部2をスライドさせて、第2基板20を第1基板10に接近させる。このように構成することにより、第2基板20を表示部2に対して分離可能とする必要がなく、構造の複雑化を避けることができる。より詳細には、移動機構4は、第1磁石41と、第2磁石42と、棒状部材43と、を備える。
【0036】
第1磁石41は、ベース部1に設けられる。詳細には、第1磁石41は、第1基板10から離れてベース部1に配置される。すなわち、第1磁石41は、ベース部1を構成する、第1基板10以外の部材に配置される。第1磁石41は、第1基板10に配置されてもよい。ただし、本実施形態のように第1基板10から離れて第1磁石41を配置することにより、第1基板10に配置される電子部品が磁力による影響を受け難くすることができる。
【0037】
本実施形態においては、第1磁石41の数は2つである。2つの第1磁石41は、第1基板10を左右方向に挟んで配置される。2つの第1磁石41は、第1基板10を挟んで左右対称に配置される。ただし、第1磁石41の数や配置は適宜変更されてよい。第1磁石41は、単数や、3つ以上の複数であってもよい。
【0038】
第2磁石42は、表示部2に設けられる。第2磁石42は、第1磁石41と対になって第1基板10と第2基板20とを接近させる力を発生させる。第2磁石42は、第1磁石41と対になって使用されるために、本実施形態では、第2磁石42の数は、第1磁石41と同じ2つである。また、第2磁石42は、第1磁石41と対になって第1基板10と第2基板20とを接近させることができる位置に配置される。
【0039】
詳細には、第2磁石42は、第2基板20に配置される。このように構成することにより、表示部2の回転動作に連動して、第1磁石41と第2磁石42との吸引力により2つの基板10、20を接近させる構成を簡単な構造で形成することができる。ただし、第2磁石42は、表示部2の、第2基板20以外の部分に配置してもよい。
【0040】
第1磁石41と第2磁石42とのうち、少なくとも一方は、電磁石であることが好ましい。このように構成することにより、表示部2を閉じる動作を簡単に行うことができる。また、好ましい形態として、第1磁石41が電磁石であり、第2磁石42は永久磁石である構成としてもよい。これにより、可動体である表示部2の重量が増すことを抑制することができる。
【0041】
棒状部材43は、ベース部1に固定される。棒状部材43は、表示部2をスライドさせる。本実施形態のように、磁石と棒状部材とを用いて表示部2を移動させる構成とすると、第1基板10と第2基板20とを接近させることができる移動機構の複雑化を抑制することができる。
【0042】
詳細には、棒状部材43は、上下方向に延びる。すなわち、表示部2は、棒状部材43に沿って上下方向にスライド可能に設けられる。棒状部材43は、例えば円柱状又は円筒状である。本実施形態では、棒状部材43は、軸受け32を構成する一対の凹部のそれぞれの上方に配置される。すなわち、移動機構4は、左右対称に配置される一対の棒状部材43を備える。ただし、棒状部材の数や配置は、適宜変更されてよい。
【0043】
図6は、棒状部材43とヒンジ軸31との関係を示す概略断面図である。
図6は、表示部2が閉じた状態を想定した図である。
図6に示すように、棒状部材43は、詳細には、軸受け32に配置されるヒンジ軸31の上に配置される。棒状部材43の下端と、軸受け32に配置されるヒンジ軸31の上端とは、接触しても、僅かな隙間をあけて配置されてもよい。棒状部材43とヒンジ軸31とが接触する場合には、棒状部材43の下端は、ヒンジ軸31の側面に沿った凹面、或いは、凸面であることが好ましい。
【0044】
ヒンジ軸31には、貫通孔31aが設けられる。貫通孔31aは、棒状部材43の数に合わせて2つ設けられる。表示部2が閉じた状態において、貫通孔31aは、前後方向に貫通する。表示部2が閉じた状態から開いた状態へと変わる際には、ヒンジ軸31が回転する。表示部2が完全に開いた状態となると、貫通孔31aは上下方向に貫通する。すなわち、表示部2が完全に開いた状態となると、上下に延びる棒状部材43が貫通孔31aを挿通可能となる。表示部2が完全に開いた状態において、貫通孔31aは、上下方向から平面視して、棒状部材43と重なるとともに、棒状部材43よりも面積が大きい。この貫通孔31aと棒状部材43との関係により、表示部2が完全に開いた状態となると、磁石41、42の吸引力により、表示部2は棒状部材43に沿って上方にスライドする。
【0045】
なお、軸受けが表示部2に設けられる構成(上述した変形例のヒンジ部)の場合には、例えば、左右一対の棒状部材43がヒンジ軸を上下方向に貫き、ヒンジ軸がベース部1に回転不能に支持される構成としてよい。この場合でも、ヒンジ軸が棒状部材43に沿って上下方向にスライド可能な構成とできる。すなわち、第1基板10と第2基板20とを接近させることができる。なお、この構成の場合には、表示部2は、開き動作(回転動作)をしながら、磁石41、42の吸引力によって上方にスライドすることになる。
【0046】
<3.通信接続動作>
以下、車載表示装置100における基板間の通信接続動作について説明する。
図7は、車載表示装置100における基板間の通信接続動作の流れを示すフローチャートである。なお、
図7のフローの開始前は、表示部2は閉じた状態であり、第1基板10と第2基板20との間で非接触通信を行うことはできない。
【0047】
例えば、車載表示装置100の使用指令がヘッドユニットに入力されると、車載表示装置100は、表示部2を開くための回転を開始する(ステップS1)。この回転は、開閉モータ14を駆動源として行われる。
図4に示す状態から、表示部2は、ヒンジ軸31を中心として下方に向けて回転を開始する。
【0048】
図8は、表示部2の開く動作の途中段階を示す模式図である。
図8に示すように、表示部2が開くために回転を開始すると、第1磁石41と第2磁石42との互いに異なる磁極が接近し、両者が引き合うようになる。ただし、表示部2が完全に開く前の段階では、棒状部材43がヒンジ軸31に接触するために、ヒンジ軸31は上方に移動できない。
【0049】
図9は、表示部2が完全に開いた状態を示す模式図である。
図9に示すように、表示部2が完全に開くと、貫通孔31aに棒状部材43が挿通可能となる。更に、第1磁石41のN極と、第2磁石42のS極とが上下方向に対向し、互いに引き合う状態となっている。このために、表示部2が棒状部材43に沿って上方に向けてスライドを開始する。すなわち、第1基板10と第2基板20との接近が開始される(ステップS2)。なお、第1磁石41および第2磁石42の磁極の向きは、本実施形態の構成と反対であっても勿論よい。
【0050】
表示部2の上昇により、互いに平行に配置される状態となった第1基板10と第2基板20とが接近する。第1基板10と第2基板20との上下方向間の距離が所定の距離となると、表示部2の上昇が止まる。
図10は、この状態を示す。所定の距離は、第1伝送線路51と第2伝送線路52とが伝送線路結合器5を構成し、基板間の非接触通信が可能となる距離である。当該距離となった段階で、表示部2の上昇が止まるストッパーをベース部1に設けることが好ましい。ただし、第1磁石41と第2磁石42との接触により、表示部2の上昇が止まる構成としてもよい。
【0051】
本実施形態では、好ましい形態として、制御部12が、非接触通信が可能となったか否かを監視する(ステップS3)。非接触通信が可能となったか否かは、公知のハンドシェイク通信の技術を利用して判定すればよい。例えば、非接触通信が可能となると、第2基板20は、第1基板10から出力されるHigh信号を検出し、当該検出により第1基板10に出力する信号をHighからLowへと切り替える。当該信号の切り替わりを検出することにより、制御部12は、非接触通信が可能となったと判定する。
【0052】
非接触通信が可能となったと判定した場合(ステップS3でYes)、制御部12は、表示部2による画像の表示を許可する。これにより、表示部2における画像表示が開始される(ステップS4)。すなわち、本実施形態では、車載表示装置100は、ベース部1に配置される制御部12を備える。制御部12は、非接触通信が可能となったと判定した場合に、表示部2における画像の表示を開始させる。このような構成とすることにより、ベース部1から表示部2に適切に映像信号が送信されていない状態で画像の表示を開始するといった事態を避けることができ、ユーザに適切な画像を見せることができる。
【0053】
なお、表示部2が閉じられる際には、例えば、電磁石として構成される第1磁石41がオフされる。これにより、表示部2が下降して、ヒンジ軸31が軸受け32に嵌り、回転可能な状態になる。この状態で、表示部2がヒンジ軸31を中心として上方に回転することで、表示部2は閉じた状態となる。
【0054】
また、
図7に示す例では、非接触通信が可能となったと判定されるまで、いつまでも表示部2における画像の表示が開始されない。この構成に替えて、例えば表示部2が開き出してから一定期間を経過しても画像の表示が開始されない場合に、エラーを報知する構成としてよい。エラーの報知は、エラー音を鳴らす構成であったり、ヘッドユニットの画面を利用したエラーメッセージの表示であったりしてよい。また、エラーを報知する替わりに、表示部2の開閉動作をやり直す構成としてもよい。
【0055】
<4.まとめ>
以上のように、本発明の例示的な車載表示装置100は、車両に搭載される表示装置であって、車両の所定箇所に設置されるベース部1と、ベース部1に開閉可能に支持される表示部2と、ベース部1に設けられる第1基板10と、表示部2に設けられる第2基板20と、表示部2が開かれた場合に、第1基板10と第2基板20とを接近させて非接触通信を可能とする移動機構4と、を備える構成になっている。
【0056】
上記構成の車載表示装置100において、第1基板10は、第1伝送線路51を有し、第2基板20は、第1伝送線路51と対になって伝送線路結合器5を形成する第2伝送線路52を有する構成であることが好ましい。
【0057】
上記構成の車載表示装置100において、第1基板10は、ベース部1に固定され、移動機構4は、第2基板20を第1基板10に接近させる構成であることが好ましい。
【0058】
上記構成の車載表示装置100において、移動機構4は、表示部2をスライドさせて、第2基板20を第1基板10に接近させる構成であることが好ましい。
【0059】
上記構成の車載表示装置100において、移動機構4は、ベース部1に設けられる第1磁石41と、表示部2に設けられ、第1磁石41と対になって第1基板10と第2基板20とを接近させる力を発生させる第2磁石42と、ベース部1に固定され、表示部2をスライドさせる棒状部材43と、を備える構成であることが好ましい。
【0060】
上記構成の車載表示装置100において、第1磁石41は、第1基板10から離れてベース部1に配置され、第2磁石42は、第2基板20に配置される構成であってよい。
【0061】
上記構成の車載表示装置100は、ベース部1に配置される制御部12を更に備え、制御部12は、非接触通信が可能となったと判定した場合に、表示部2における画像の表示を開始させる構成であってよい。
【0062】
また、本発明の例示的な通信接続方法は、ベース部1に対して表示部2が開閉可能に設けられる車載表示装置100における基板間の通信接続方法であって、表示部2を開く回転動作に起因して、ベース部1が有する第1基板10と、表示部2が有する第2基板20とを自動的に接近させて非接触通信可能な距離とする構成となっている。
【0063】
なお、以上の説明においては、第1基板10と第2基板20とを接近には、磁石41、42の吸引力が使用される構成とした。第1基板10と第2基板20との接近に、磁石の吸引力以外が利用されてもよい。例えば、モータの力を利用して第1基板10と第2基板20とを接近させる構成としてもよい。
【0064】
<5.留意事項>
本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態および変形例のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態および変形例は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態および変形例の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。また、本明細書中に示される複数の実施形態及び変形例は可能な範囲で適宜組み合わせて実施されてよい。
【符号の説明】
【0065】
1・・・ベース部
2・・・表示部
4・・・移動機構
5・・・伝送線路結合器
10・・・第1基板
12・・・制御部
20・・・第2基板
41・・・第1磁石
42・・・第2磁石
43・・・棒状部材
51・・・第1伝送線路
52・・・第2伝送線路
100・・・車載表示装置