(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】ポリエステル樹脂及びポリエステル樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 63/183 20060101AFI20240419BHJP
C08G 63/18 20060101ALI20240419BHJP
C08G 63/78 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
C08G63/183
C08G63/18
C08G63/78
(21)【出願番号】P 2022561889
(86)(22)【出願日】2021-11-08
(86)【国際出願番号】 JP2021040911
(87)【国際公開番号】W WO2022102553
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-04-19
【審判番号】
【審判請求日】2023-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2020188436
(32)【優先日】2020-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】篠原 克巳
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和歩
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 大貴
【合議体】
【審判長】藤原 浩子
【審判官】細井 龍史
【審判官】海老原 えい子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004‐143353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G63/00-63/91
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるスピログリコールに由来する単位a1とエチレングリコールに由来する単位a2とを含むジオール構成単位と、
テレフタル酸及び/又はそのエステルに由来する単位bを含むジカルボン酸構成単位と、
を含む、ポリエステル樹脂であって、
前記単位a1及び単位a2の合計量を基準として、前記単位a1の含有量が5~60モル%であり、かつ、前記単位a2の含有量が
40~95モル%であり、
前記ジカルボン酸構成単位の全量を基準として、前記単位bの含有量が80~100モル%であり、
下記の条件(1)ないし(3)を満たす、ポリエステル樹脂。
(1)フェノールと1,1,2,2-テトラクロロエタンとの重量比が6:4の混合溶媒を用いて25℃で測定される、前記ポリエステル樹脂の極限粘度V1が0.45~0.85dl/gである。
(2)前記ポリエステル樹脂を240℃下で5分間保持した後に剪断速度122(1/s)で押し出す操作を実施するとき、当該操作の前後における極限粘度低下率が、(V1-V2)/V1として、3%以下である(ここで、V2は当該操作後に前記(1)に基づいて測定される極限粘度を示す。)。
(3)示差走査型熱量計で測定される、前記ポリエステル樹脂のガラス転移温度が90℃以上であり、かつ、降温時結晶化発熱ピークの熱量が5J/g以下である。
【化1】
【請求項2】
前記単位bの含有量が95~100モル%である、請求項1に記載のポリエステル樹脂。
【請求項3】
前記単位a1及び単位a2の合計量を基準として、前記単位a1の含有量が15~60モル%であり、かつ、前記単位a2の含有量が40~85モル%である、請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂の製造方法であって、
前記エチレングリコールと前記テレフタル酸及び/又はそのエステルとを反応させ、前駆体エステルを得るエステル化反応工程と、
前記前駆体エステルに前記スピログリコールを添加する添加工程と、
を含み、
前記添加工程において、攪拌翼を備える攪拌手段を用い、以下の式(A)及び(B)で表される条件下で攪拌を行う、ポリエステル樹脂の製造方法。
0.7011×Log(スピログリコール添加速度(kg/hr))+1.339+0.5≧攪拌翼先端速度(m/s)≧0.7011×Log(スピログリコール添加速度(kg/hr))+1.339-0.5…式(A)
0.5≦攪拌翼先端速度(m/s)…式(B)
【請求項5】
前記添加工程における前記前駆体エステルの温度が195℃以下である、請求項4に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記スピログリコールの貯蔵、移送及び添加を不活性ガス雰囲気下で行う、請求項4又は5に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記スピログリコールの水分率が0.1質量%以下である、請求項4~6のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂及びポリエステル樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
汎用ポリエステルであるポリエチレンテレフタレート(PET)は抗張力、伸度、ヤング率、弾性回復率等の機械的性質、耐熱性、寸法安定性等の物理的性質、耐薬品性、耐水性等の化学的性質が優れ、安価であるために工業的に大きな価値を有していることは良く知られており、例えば、繊維、タイヤコード、ボトル、フィルム等で多く用いられている。しかしながら、透明性が要求されるシート分野では、結晶化速度が速く、二次加工時に結晶化により白化しやすいため、シクロヘキサンジメタノール等で変性したPETが用いられている。また、ボトル分野では、結晶化速度を遅くするために、高価なゲルマニウム化合物を触媒として使用したり、イソフタル酸やシクロヘキサンジメタノールをPETの変性成分として共重合した変性PETが用いられている。
【0003】
一方、上記の変性PET等は耐熱性に劣るために、耐熱性が要求される分野、例えば電照板、カーポート、耐熱食品容器等の分野では使用が制限される傾向にある。この点を考慮し、ジオール成分として、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン(以下、「スピログリコール」や「SPG」ともいう。)を共重合させたポリエステル樹脂が提案されている。具体的には、例えば、特許文献1~3において、SPG由来の構成単位を有するポリエステル樹脂ないしその製造方法について提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-260963号公報
【文献】特開2005-314643号公報
【文献】特開2003-212981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~3に記載のポリエステル樹脂について、本発明者らが検討を重ねたところ、典型的な条件にて剪断をかけた場合にポリエステル樹脂の極限粘度(IV)が低下する傾向にあり、結果として成形体とした際に物性が損なわれる傾向があることを見出している。
【0006】
本発明は、上記の従来技術が有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、溶融滞留時/溶融押出時に極限粘度の低下が少ないポリエステル樹脂及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特に所定の溶融滞留/溶融押出操作の前後における極限粘度の低下率を指標としてポリエステル樹脂の物性を調整することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
[1]
下記式(1)で表されるスピログリコールに由来する単位a1とエチレングリコールに由来する単位a2とを含むジオール構成単位と、
テレフタル酸及び/又はそのエステルに由来する単位bを含むジカルボン酸構成単位と、
を含む、ポリエステル樹脂であって、
前記単位a1及び単位a2の合計量を基準として、前記単位a1の含有量が5~60モル%であり、かつ、前記単位a2の含有量が30~95モル%であり、
前記ジカルボン酸構成単位の全量を基準として、前記単位bの含有量が80~100モル%であり、
下記の条件(1)ないし(3)を満たす、ポリエステル樹脂。
(1)フェノールと1,1,2,2-テトラクロロエタンとの重量比が6:4の混合溶媒を用いて25℃で測定される、前記ポリエステル樹脂の極限粘度V1が0.45~0.85dl/gである。
(2)前記ポリエステル樹脂を240℃下で5分間保持した後に剪断速度122(1/s)で押し出す操作を実施するとき、当該操作の前後における極限粘度低下率が、(V1-V2)/V1として、3%以下である(ここで、V2は当該操作後に前記(1)に基づいて測定される極限粘度を示す。)。
(3)示差走査型熱量計で測定される、前記ポリエステル樹脂のガラス転移温度が90℃以上であり、かつ、降温時結晶化発熱ピークの熱量が5J/g以下である。
【化1】
[2]
前記単位bの含有量が95~100モル%である、[1]に記載のポリエステル樹脂。
[3]
前記単位a1及び単位a2の合計量を基準として、前記単位a1の含有量が15~60モル%であり、かつ、前記単位a2の含有量が40~85モル%である、[1]又は[2]に記載のポリエステル樹脂。
[4]
[1]~[3]のいずれかに記載のポリエステル樹脂の製造方法であって、
前記エチレングリコールと前記テレフタル酸及び/又はそのエステルとを反応させ、前駆体エステルを得るエステル化反応工程と、
前記前駆体エステルに前記スピログリコールを添加する添加工程と、
を含み、
前記添加工程において、攪拌翼を備える攪拌手段を用い、以下の式(A)及び(B)で表される条件下で攪拌を行う、ポリエステル樹脂の製造方法。
0.7011×Log(スピログリコール添加速度(kg/hr))+1.339+0.5≧攪拌翼先端速度(m/s)≧0.7011×Log(スピログリコール添加速度(kg/hr))+1.339-0.5…式(A)
0.5≦攪拌翼先端速度(m/s)…式(B)
[5]
前記添加工程における前記前駆体エステルの温度が195℃以下である、[4]に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
[6]
前記スピログリコールの貯蔵、移送及び添加を不活性ガス雰囲気下で行う、[4]又は[5]に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
[7]
前記スピログリコールの水分率が0.1質量%以下である、[4]~[6]のいずれかに記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、溶融滞留時/溶融押出時に極限粘度の低下が少ないポリエステル樹脂及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。なお、本明細書における「~」とは、特に断りがない場合、その両端の数値を上限値、及び下限値として含む意味である。
【0011】
<ポリエステル樹脂>
本実施形態のポリエステル樹脂は、下記式(1)で表されるスピログリコール(以下、単に「スピログリコール」又は「SPG」と称する場合がある。)に由来する単位a1とエチレングリコールに由来する単位a2とを含むジオール構成単位と、テレフタル酸及び/又はそのエステルに由来する単位bを含むジカルボン酸構成単位と、を含む、ポリエステル樹脂であって、前記単位a1及び単位a2の合計量を基準として、前記単位a1の含有量が5~60モル%であり、かつ、前記単位a2の含有量が30~95モル%であり、前記ジカルボン酸構成単位の全量を基準として、前記単位bの含有量が80~100モル%であり、下記の条件(1)ないし(3)を満たす。
(1)フェノールと1,1,2,2-テトラクロロエタンとの重量比が6:4の混合溶媒を用いて25℃で測定される、前記ポリエステル樹脂の極限粘度V1が0.45~0.85dl/gである。
(2)前記ポリエステル樹脂を240℃下で5分間保持した後に剪断速度122(1/s)で押し出す操作を実施するとき、当該操作の前後における極限粘度低下率が、(V1-V2)/V1として、3%以下である(ここで、V2は当該操作後に前記(1)に基づいて測定される極限粘度を示す。)。
(3)示差走査型熱量計で測定される、前記ポリエステル樹脂のガラス転移温度が90℃以上であり、かつ、降温時結晶化発熱ピークの熱量が5J/g以下である。
【化2】
【0012】
本実施形態のポリエステル樹脂は、上記のように構成されているため、溶融滞留時/溶融押出時に極限粘度の低下が少ないものとなる。より詳細には、例えば、成形のため溶融させる際に、押出機の押出圧の制御が難しくなること(特にロットが変わるときに顕著になる)を防止することができる。
【0013】
(ジオール構成単位)
本実施形態のポリエステル樹脂は、ジオール構成単位として、上記式(1)で表されるスピログリコールに由来する単位a1とエチレングリコールに由来する単位a2とを含み、前記単位a1及び単位a2の合計量を基準として、前記単位a1の含有量が5~60モル%であり、かつ、前記単位a2の含有量が30~95モル%である。このように単位a1及び単位a2を含むことにより、本実施形態のポリエステル樹脂は、耐熱性、透明性、成形性、機械的性能のバランスが良好となる傾向にある。
上記同様の観点から、単位a1の含有量は15~60モル%であることが好ましく、より好ましくは20~45モル%である。同様に、単位a2の含有量は40~85モル%であることが好ましく、より好ましくは50~80モル%である。
さらに上記同様の観点から、単位a1及び単位a2の合計量は、ジオール構成単位の全量を基準として、47モル%以上とすることができ、好ましくは57モル%以上であり、より好ましくは72モル%以上である。上記単位a1及び単位a2の合計量は、100モル%とすることもできる。
【0014】
本実施形態のポリエステル樹脂は、ジオール構成単位として、スピログリコール及びエチレングリコール以外のジオールに由来する単位a3を含んでいてもよく、かかる単位a3の具体例としては、以下に限定されないが、トリメチレングリコール、2-メチルプロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテル化合物類;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3価以上の多価アルコール類;1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-デカヒドロナフタレンジメタノール、1,3-デカヒドロナフタレンジメタノール、1,4-デカヒドロナフタレンジメタノール、1,5-デカヒドロナフタレンジメタノール、1,6-デカヒドロナフタレンジメタノール、2,7-デカヒドロナフタレンジメタノール、テトラリンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、5-メチロール-5-エチル-2-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-1,3-ジオキサン、ペンタシクロドデカンジメタノール等の脂環族ジオール類;4,4’-(1-メチルエチリデン)ビスフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、4,4’-シクロヘキシリデンビスフェノール(ビスフェノールZ)、4,4’-スルホニルビスフェノール(ビスフェノールS)等のビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物;ヒドロキノン、レゾルシン、4,4’―ジヒドロキシビフェニル、4,4’―ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’―ジヒドロキシジフェニルベンゾフェノン等の芳香族ジヒドロキシ化合物のアルキレンオキシド付加物等に由来する単位が挙げられる。
単位a3の含有量は、ジオール構成単位の全量を基準として、53モル%以下とすることができ、好ましくは43モル%以下であり、より好ましくは28モル%以下である。上記単位a3の含有量は、0モル%とすることもできる。
【0015】
(ジカルボン酸構成単位)
本実施形態のポリエステル樹脂は、ジカルボン酸構成単位として、テレフタル酸及び/又はそのエステルに由来する単位bを含み、前記ジカルボン酸構成単位の全量を基準として、前記単位bの含有量が80~100モル%である。このように単位bを含むことにより、本実施形態のポリエステル樹脂は、耐熱性、透明性、成形性、機械的性能のバランスが良好となる傾向にある。
上記同様の観点から、単位bの含有量は95~100モル%であることが好ましい。
【0016】
本実施形態のポリエステル樹脂は、ジカルボン酸構成単位として、テレフタル酸及びそのエステル以外のジカルボン酸及び/又はそのエステルに由来する単位b’を含んでいてもよく、かかる単位b’の具体例としては、以下に限定されないが、イソフタル酸、フタル酸、2-メチルテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸、ペンタシクロドデカンジカルボン酸、イソホロンジカルボン酸、3,9-ビス(2-カルボキシエチル)2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリカルバリル酸及びそれらのエステル化物等に由来する単位が挙げられる。
【0017】
(ポリエステル樹脂の物性)
本実施形態のポリエステル樹脂は、次の条件(1)を満たすものである。
(1)フェノールと1,1,2,2-テトラクロロエタンとの重量比が6:4の混合溶媒を用いて25℃で測定される、前記ポリエステル樹脂の極限粘度V1が0.45~0.85dl/gである。
上記極限粘度V1が0.45dl/g未満ではポリエステル樹脂の扱いが難しくなるため好ましくない。具体的には溶融状態での粘度が低すぎること、機械物性が低く脆いことから、例えばポリエステル樹脂の製造装置から取り出してペレット化することが難しくなる。また、上記極限粘度V1が0.85dl/gを超えると、ポリエステル樹脂を加工する際の溶融粘度が過剰に大きくなり、流動性が損なわれたり、流動性を得るために過度の加熱が必要になったりすることがあり、好ましくない。
上記同様の観点から、上記極限粘度V1は、0.47~0.79dl/gであることが好ましく、より好ましくは0.51~0.74dl/gである。
上記極限粘度V1は、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
上記極限粘度V1は、例えば、ポリエステル樹脂の原料モノマーの共重合比率を適宜調整すること等により上述した範囲に調整することができる。
【0018】
本実施形態のポリエステル樹脂は、次の条件(2)を満たすものである。
(2)前記ポリエステル樹脂を240℃下で5分間保持した後に剪断速度122(1/s)で押し出す操作を実施するとき、当該操作の前後における極限粘度低下率が、(V1-V2)/V1として、3%以下である(ここで、V2は当該操作後に前記(1)に基づいて測定される極限粘度を示す。)。
上記極限粘度低下率が3%を超えると、成形体として加工する場合、原料となるポリエステル樹脂が潜在的に発揮し得る性能を発揮できなくなり、結果として成形体の機械物性等が損なわれる。
上記同様の観点から、上記極限粘度低下率は、2.5%以下であることが好ましく、より好ましくは2%以下である。上記極限粘度低下率の下限値としては特に限定されず、0%であってもよい。
上記極限粘度低下率は、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
上記極限粘度低下率は、例えば、後述する好ましい製造方法を採用する、あるいは、ポリエステル樹脂の製造過程で生じ得る未反応SPGの熱変性物を除去する等により、上述した範囲に調整することができる。
【0019】
本実施形態のポリエステル樹脂は、次の条件(3)を満たすものである。
(3)示差走査型熱量計で測定される、前記ポリエステル樹脂のガラス転移温度が90℃以上であり、かつ、降温時結晶化発熱ピークの熱量が5J/g以下である。
ガラス転移温度が上記範囲である場合、実用上有効な耐熱性を有し、降温時結晶化発熱ピークの熱量が上記範囲である場合、透明性、成形性、二次加工性に優れる。
上記同様の観点から、上記ガラス転移温度は、好ましくは97℃以上であり、さらに好ましくは105℃以上である。また、上記降温時結晶化発熱ピークの熱量が3J/g以下であることが好ましく、より好ましくは1J/g以下であり、さらに好ましくは0.1J/g以下である。
上記ガラス転移温度及び降温時結晶化発熱ピークの熱量は、具体的には後述する実施例に記載の方法により測定することができ、例えば、ポリエステル樹脂の原料モノマーの共重合比率を適宜調整すること等により上述した範囲に調整することができる。
【0020】
<ポリエステル樹脂の製造方法>
本実施形態のポリエステル樹脂は、前述した構成が得られる限り、その製法としては特に限定されない。本実施形態においては、より極限粘度低下率の低いポリエステル樹脂を効率的に製造する観点から、次の製造方法を採用することが好ましい。すなわち、本実施形態の好適なポリエステル樹脂の製造方法(以下、「本実施形態の製法」ともいう。)は、前記エチレングリコールと前記テレフタル酸及び/又はそのエステルとを反応させ、前駆体エステルを得るエステル化反応工程と、前記前駆体エステルに前記スピログリコールを添加する添加工程と、を含み、前記添加工程において、攪拌翼を備える攪拌手段を用い、以下の式(A)及び(B)で表される条件下で攪拌を行う。
0.7011×Log(スピログリコール添加速度(kg/hr))+1.339+0.5≧攪拌翼先端速度(m/s)≧0.7011×Log(スピログリコール添加速度(kg/hr))+1.339-0.5…式(A)
0.5≦攪拌翼先端速度(m/s)…式(B)
本実施形態の製法は、上記のように構成されているため、溶融滞留時/溶融押出時に極限粘度の低下が少ないポリエステル樹脂を効率的に得ることができる。
【0021】
(エステル化反応工程)
エステル化反応工程では、前記エチレングリコールと前記テレフタル酸及び/又はそのエステルとを反応させ、前駆体エステルを得る。本実施形態において、エステル化反応は、従来のポリエステル樹脂の製造方法におけるエステル化工程と同様に行うことができ、従来既知の条件、触媒を適用することができる。具体的にはジカルボン酸とジオールを直接エステル化反応する製造方法、種オリゴマーにジカルボン酸とジオールを添加しエステル化反応する製造方法が挙げられる。
【0022】
(添加工程)
添加工程では、前記前駆体エステルに前記スピログリコールを添加するに際して、攪拌翼を備える攪拌手段を用い、以下の式(A)及び(B)で表される条件下で攪拌を行う。
0.7011×Log(スピログリコール添加速度(kg/hr))+1.339+0.5≧攪拌翼先端速度(m/s)≧0.7011×Log(スピログリコール添加速度(kg/hr))+1.339-0.5…式(A)
0.5≦攪拌翼先端速度(m/s)…式(B)
式(A)及び(B)で表される条件下で攪拌を行う場合、SPGの反応器気相部への付着を防ぎつつ効率よくポリエステル樹脂を合成することができる。更には、SPGの反応器気相部への付着が少ないことにより、未反応SPG由来の不純物(未反応SPGが熱変性した堆積物)のポリエステル樹脂への混入を少なくすることができ、これによって上記極限粘度低下率を有意に低下させることができる。
【0023】
攪拌手段としては種々公知の攪拌装置を使用することができる。その具体例としては、以下に限定されないが、アンカー型の攪拌翼を備える攪拌装置が挙げられる。
【0024】
本実施形態の製法において、前記添加工程における前記前駆体エステルの温度は特に限定されないが、SPG分解抑制の観点から、195℃以下であることが好ましい。
【0025】
本実施形態の製法において、前記スピログリコールの貯蔵、移送及び添加を行う雰囲気としては特に限定されないが、酸素の混入による樹脂の着色及び粉じん爆発防止の観点から、これらを不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0026】
本実施形態の製法において、前記スピログリコールの水分率としては特に限定されないが、反応器投入時のSPG分解抑制の観点から、0.1質量%以下であることが好ましい。
上記水分率は、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
上記水分率は、例えば、大気圧露点-50℃以下の窒素ガスで置換すること等により上述した範囲に調整することができる。
【実施例】
【0027】
以下に、実施例を挙げて本実施形態を更に詳しく説明するが、本実施形態はこれらの実施例によりその範囲を限定されるものではない。
【0028】
〔評価方法〕
本実施例中のポリエステル樹脂の評価方法は以下のとおりとした。
(1)ポリエステル樹脂の組成
SPGの共重合率
SPGの共重合率とは、ポリエステル樹脂中のジカルボン酸構成単位量に対するSPGの構成単位量の割合(SPG共重合率)である。ポリエステル樹脂中のジオール単位及びジカルボン酸単位の割合は、1H-NMR測定にて算出した。測定装置は日本電子製、ECA500 500MHzで測定した。溶媒には重クロロホルムを用い、ポリエステル樹脂50mgを2gの溶媒に溶解して測定した。
(2)ガラス転移温度及び降温時結晶化発熱ピーク
ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、(株)島津製作所製、示査走査型熱量計(型式:DSC/TA-60A)を使用し、試料約10mgをアルミニウム製非密封容器に入れ、窒素ガス(50mL/min)気流中昇温速度20℃/minで測定し、DSC曲線の転移前後における基線の差の1/2だけ変化した温度をガラス転移温度とした。降温時結晶化発熱ピークは上記ガラス転移温度を測定後、280℃で1分間保持した後、10℃/分間の降温速度で降温した際に現れる発熱ピークの面積から測定した。
(3)極限粘度(IV)
ポリエステル樹脂をフェノール/1,1,2,2,-テトラクロロエタンの混合溶媒(質量比=6:4)に90℃で加熱溶解させ、0.2、0.4、0.6g/dlの溶液を調製した。その後、25℃まで冷却して測定用サンプルを調製した。装置はViscotek社製の相対粘度計Y501を用い、温度25℃で測定を行った。
(4)SPG水分率(重量%)
SPGの水分率の測定は、三菱化学社製カールフィッシャー微量水分測定装置(CA-200型)および気化装置(VA-236S型)を用い、160℃で20分の気化条件で水分量を定量し、水分率を求めた。
【0029】
〔実施例1〕
径100mmのアンカー翼、充填塔式精留塔、コールドトラップ、加熱装置、窒素導入管、スピログリコール(3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン;SPG)添加用ホッパーを備えた1Lの反応槽にテレフタル酸(TPA)275.7gと、エチレングリコール(EG)128.8gを仕込み、常法にてエステル化反応を行い、前駆体エステルを得た。得られた前駆体エステルに、EG77.3g及び二酸化ゲルマニウム43mgを更に加え、225℃、常圧で解重合を行った。生成する水を反応物から留去しつつ更に1.5時間反応を行った。その後、225℃、常圧にて、テトラ-n-ブチルチタネート34mg、酢酸カリウム31mg、リン酸トリエチル63mgを反応物に添加した。続いて、225℃、13.3kPaで1時間加熱処理することで、反応物から未反応EGを留去した。190℃まで降温後、窒素にて常圧に戻し、SPG236.4gを1時間かけ、23.64gずつ10回に分けて添加した。SPG添加の際には、毎回、所定量のSPGを添加用ホッパーに入れた後、大気圧露点-50℃以下の窒素ガスにて酸素濃度1%になるまで置換を行った後、反応槽に添加した。添加時の反応槽における攪拌速度は、150rpmであり、攪拌翼先端速度は0.8m/sであった。13.3kPaまで減圧後、1時間反応を行った後、反応物を徐々に加熱、減圧していき、最終的に280℃、高真空下(300Pa以下)の条件下で重縮合反応を行った。その間、280℃における溶融粘度見合いで、攪拌速度を下げて行き、25rpmで所定の攪拌トルクとなったところで反応を終了し、ポリエステル樹脂を得た。この操作を、反応槽を洗浄することなく3回行い、実施例1のポリエステル樹脂を得た。このポリエステル樹脂を上記(3)の測定に供し、得られた極限粘度V1は0.68であった。別途、得られたポリエステル樹脂を240℃で5分間保持した後、剪断速度122(1/s)で押し出す操作を実施した後のポリエステル樹脂についても上記(3)の測定に供し、得られた極限粘度V2は0.67であった。したがって、当該操作の前後における極限粘度低下率は1.5%であった。
なお、実施例1の攪拌条件については、下記の式(A)及び(B)の双方を満たすものであった。
0.7011×Log(スピログリコール添加速度(kg/hr))+1.339+0.5≧攪拌翼先端速度(m/s)≧0.7011×Log(スピログリコール添加速度(kg/hr))+1.339-0.5…式(A)
0.5≦攪拌翼先端速度(m/s)…式(B)
また、実施例1で使用したSPGは、添加時のみならず、反応系における貯蔵及び移送の際も不活性ガス雰囲気下で行うこととし、カールフィッシャー法でSPGの水分率を測定したところ、0.1質量%以下であった。
【0030】
〔実施例2〕
径100mmのアンカー翼、充填塔式精留塔、コールドトラップ、加熱装置、窒素導入管、SPG添加用ホッパーを備えた1Lの反応槽にTPA275.7gと、EG118.5gを仕込み、常法にてエステル化反応を行い、前駆体エステルを得た。得られた前駆体エステルに、EG87.6g及び二酸化ゲルマニウム43mgを更に加え、225℃、常圧で解重合を行った。生成する水を反応物から留去しつつ更に1.5時間反応を行った。その後、225℃、常圧にて、テトラ-n-ブチルチタネート34mg、酢酸カリウム31mg、リン酸トリエチル133mgを反応物に添加した。続いて、225℃、13.3kPaで1時間加熱処理することで、反応物から未反応EGを留去した。190℃まで降温後、窒素にて常圧に戻し、SPG161.6gを1時間かけ、16.16gずつ10回に分けて添加した。SPG添加の際には、毎回、所定量のSPGを添加用ホッパーに入れた後、大気圧露点-50℃以下の窒素ガスにて酸素濃度1%になるまで置換を行った後、反応槽に添加した。添加時の反応槽における攪拌速度は、150rpmであり、攪拌翼先端速度は0.8m/sであった。13.3kPaまで減圧後、1時間反応を行った後、反応物を徐々に加熱、減圧していき、最終的に280℃、高真空下(300Pa以下)の条件下で重縮合反応を行った。その間、280℃における溶融粘度見合いで、攪拌速度を下げて行き、25rpmで所定の攪拌トルクとなったところで反応を終了し、ポリエステル樹脂を得た。この操作を、反応槽を洗浄することなく3回行い、実施例2のポリエステル樹脂を得た。このポリエステル樹脂について、実施例1と同様に極限粘度を測定したところ、極限粘度V1は0.54であり、極限粘度V2は0.53であり、極限粘度低下率は1.9%であった。
なお、実施例2の攪拌条件については、上記の式(A)及び(B)の双方を満たすものであった。
また、実施例2で使用したSPGは、添加時のみならず、反応系における貯蔵及び移送の際も不活性ガス雰囲気下で行うこととし、カールフィッシャー法でSPGの水分率を測定したところ、0.1質量%以下であった。
【0031】
〔実施例3〕
径330mmのダブルヘリカル翼、充填塔式精留塔、コールドトラップ、加熱装置、窒素導入管、SPG添加口を備えた50Lの反応槽にTPA13.79kgと、EG6.44kgを仕込み、常法にてエステル化反応を行い、前駆体エステルを得た。得られた前駆体エステルに、EG3.87kg及び二酸化ゲルマニウム2.15gを更に加え、225℃、常圧で解重合を行った。生成する水を反応物から留去しつつ更に1.5時間反応を行った。その後、225℃、常圧にて、テトラ-n-ブチルチタネート1.70g、酢酸カリウム1.55g、リン酸トリエチル7.580gを反応物に添加した。続いて、225℃、13.3kPaで1時間加熱処理することで、反応物から未反応EGを留去した。190℃まで降温後、窒素にて常圧に戻し、SPG11.82kgを1時間かけ、1.182kgずつ10回に分けて添加した。SPG添加の際には、毎回、所定量のSPGを添加用ホッパーに入れた後、大気圧露点-50℃以下の窒素ガスにて酸素濃度1%になるまで置換を行った後、反応槽に添加した。添加時の反応槽における攪拌速度は、110rpmであり、攪拌翼先端速度は1.9m/sであった。13.3kPaまで減圧後、1時間反応を行った後、反応物を徐々に加熱、減圧していき、最終的に280℃、高真空下(300Pa以下)の条件下で重縮合反応を行った。その間、280℃における溶融粘度見合いで、攪拌速度を下げて行き、25rpmで所定の攪拌トルクとなったところで反応を終了し、ポリエステル樹脂を得た。この操作を、反応槽を洗浄することなく2回行い、実施例3のポリエステル樹脂を得た。このポリエステル樹脂について、実施例1と同様に極限粘度を測定したところ、極限粘度V1は0.68であり、極限粘度V2は0.67であり、極限粘度低下率は1.5%であった。
なお、実施例3の攪拌条件については、上記の式(A)及び(B)の双方を満たすものであった。
また、実施例3で使用したSPGは、添加時のみならず、反応系における貯蔵及び移送の際も不活性ガス雰囲気下で行うこととし、カールフィッシャー法でSPGの水分率を測定したところ、0.1質量%以下であった。
【0032】
〔実施例4〕
SPG添加時の反応槽における攪拌速度を140rpm、攪拌翼先端速度2.4m/sとした以外は、実施例3と同様にして実施例4のポリエステル樹脂を得た。このポリエステル樹脂について、実施例1と同様に極限粘度を測定したところ、極限粘度V1は0.69であり、極限粘度V2は0.69であり、極限粘度低下率は0%であった。
なお、実施例4の攪拌条件については、上記の式(A)及び(B)の双方を満たすものであった。
【0033】
〔実施例5〕
SPG11.82kgを1.5時間かけ、0.788kgずつ15回に分けて添加した以外は、実施例3と同様に行った結果、実施例5のポリエステル樹脂を得た。このポリエステル樹脂について、実施例1と同様に極限粘度を測定したところ、極限粘度V1は0.68であり、極限粘度V2は0.67であり、極限粘度低下率は1.5%であった。
なお、実施例5の攪拌条件については、上記の式(A)及び(B)の双方を満たすものであった。
【0034】
[比較例1]
SPGを一度に加えた(236.4gを6分で添加)こと以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂の製造を行ったところ、前駆体エステル溶液の液面にSPGが凝集し、SPGが溶液に取り込まれず、ポリエステル樹脂を合成できなかった。なお、比較例1の攪拌条件については、上記式(A)を満たさないものであった。
【0035】
[比較例2]
回転数を75rpmとして攪拌翼先端速度を0.4m/sとした以外は、実施例1と同様にして比較例2のポリエステル樹脂を得た。このポリエステル樹脂について実施例1と同様に極限粘度を測定したところ、極限粘度V1は0.68であり、極限粘度V2は0.65であり、極限粘度低下率は4.4%であった。なお、比較例2の攪拌条件については、上記式(B)を満たさないものであった。
【0036】
[比較例3]
回転数を75rpmとして攪拌翼先端速度を0.4m/sとした以外は、実施例2と同様にして比較例3のポリエステル樹脂を得た。このポリエステル樹脂について実施例1と同様に極限粘度を測定したところ、極限粘度V1は0.54であり、極限粘度V2は0.51であり、極限粘度低下率は5.6%であった。なお、比較例3の攪拌条件については、上記式(B)を満たさないものであった。
【0037】
[比較例4]
SPG11.82kgを15分かけ、3.94kgずつ3回に分けて添加した以外は、実施例3と同様にして比較例4のポリエステル樹脂を得た。このポリエステル樹脂について実施例1と同様に極限粘度を測定したところ、極限粘度V1は0.67であり、極限粘度V2は0.64であり、極限粘度低下率は4.5%であった。なお、比較例4の攪拌条件については、上記式(A)及び(B)の双方を満たさないものであった。
【0038】
[比較例5]
回転数を70rpmとして攪拌翼先端速度を1.2m/sとした以外は、実施例3と同様にして比較例5のポリエステル樹脂を得た。このポリエステル樹脂について実施例1と同様に極限粘度を測定したところ、極限粘度V1は0.68であり、極限粘度V2は0.64であり、極限粘度低下率は5.9%であった。なお、比較例5の攪拌条件については、上記式(A)及び(B)の双方を満たさないものであった。
【0039】
[比較例6]
カールフィッシャー法でのSPG水分率を0.5質量%に調湿したSPGを使用した以外は、実施例1と同様にして比較例6のポリエステル樹脂を得た。このポリエステル樹脂について実施例1と同様に極限粘度を測定したところ、極限粘度V1は0.69であり、極限粘度V2は0.66であり、極限粘度低下率は4.3%であった。なお、比較例6の攪拌条件については、上記式(A)及び(B)の双方を満たすものであった。
【0040】
[比較例7]
225℃、13.3kPaで1時間加熱処理することで、反応物から未反応EGを留去した後、190℃まで降温せずに、窒素にて常圧に戻し、225℃のままSPGを添加した以外は、実施例1と同様にして比較例7のポリエステル樹脂を得た。このポリエステル樹脂について実施例1と同様に極限粘度を測定したところ、極限粘度V1は0.68であり、極限粘度V2は0.65であり、極限粘度低下率は4.4%であった。なお、比較例7の攪拌条件については、上記式(A)及び(B)の双方を満たすものであった。
【0041】
実施例1~5及び比較例2~7のポリエステル樹脂について、上記(1)~(3)の測定を行った結果を表1に併せて示す。
【0042】
【0043】
本出願は、2020年11月12日出願の日本特許出願(特願2020-188436号)に基づくものであり、それらの内容はここに参照として取り込まれる。