(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】分散型光ファイバセンサの配置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/353 20060101AFI20240419BHJP
H04B 10/03 20130101ALI20240419BHJP
【FI】
G01D5/353 A
H04B10/03
(21)【出願番号】P 2022578603
(86)(22)【出願日】2021-10-08
(86)【国際出願番号】 US2021054213
(87)【国際公開番号】W WO2022076845
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-02-08
(32)【優先日】2020-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504080663
【氏名又は名称】エヌイーシー ラボラトリーズ アメリカ インク
【氏名又は名称原語表記】NEC Laboratories America, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ジ、 フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ワン、 ティン
(72)【発明者】
【氏名】イェ、 ジロン
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-24263(JP,A)
【文献】国際公開第2005/027427(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/098028(WO,A1)
【文献】特開2005-12267(JP,A)
【文献】国際公開第2015/129194(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/26-5/38
G02B 6/00
G01M 11/00-11/02
H04B 10/00-10/90
H04L 12/42-12/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光リンクによって光学的に接続された複数のノードを有する分散型光ファイバセンシング(DFOS)ネットワークのための方法であって、前記ネットワークは、Vがエンドノードの集合であり、Eが前記エンドノードを接続する光ファイバリンクの集合であるG(V,E)により定義され、Gが単一リンク障害を受け、プライマリセンサとバックセンサとの両方の割り当てを提供する方法であって、前記方法は、
距離経路リソース共有を示
すことと、
可能なプライマリDFOS割り当てをprimary_setとして決定することと、
すべてのバックアップDFOS割り当てをbackup_setとして決定することと、
前記primary_setと前記backup_setとから、単一リンク障害に対する共有保護を提供する最小限の集合を選択することとを含む方法。
【請求項2】
分散型光ファイバセンサの配置方法であって、
Gを光ファイバネットワーク、Vをノードの集合、Eをリンクの集合としたとき、G(V,E)で定義されるノードの集合と光ファイバリンクの集合とを含む前記光ファイバネットワークを提供することと、
G(V,E)の各ノードについて、距離限定された経路探索手順を実行して前記ネットワークGの各ノードnにおけるすべての可能なセンサ配置とルーティングおよびセンシング割り当てを含む集合Sを生成することと、
前記距離制限された経路探索により生成された配置位置にセンサを配置することとを含む分散型光ファイバセンサの配置方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、
前記光ファイバネットワーク内の各ノードに対して、可能な全てのセンシング経路の集合(all_route_set)を決定することをさらに含む方法。
【請求項4】
請求項3記載の方法において、
前記光ファイバネットワークの全てのリンクを完全にカバーする最小のセンシング経路の集合を決定することをさらに含む方法。
【請求項5】
請求項3記載の方法において、
所定のノードに定義された既存のセンシング経路がない場合に、前記光ファイバネットワーク内の当該所定のノードに対して可能なセンシング経路の集合を決定することをさらに含む方法。
【請求項6】
請求項5記載の方法において、
所定のノードに定義された既存のセンシング経路が存在する場合に、前記光ファイバネットワーク内の当該所定のノードに対して可能なセンシング経路の集合を決定することをさらに含む方法。
【請求項7】
請求項5記載の方法において、
経路がループを含まず、前記経路の距離が配置される前記センサのセンシング範囲制限よりも短い場合にのみ、前記経路がall_route_setに追加される方法。
【請求項8】
請求項4記載の方法において、
センサの配置は、所定の光ファイバネットワークの全てのリンクをカバーするall_route_setに含まれる最小集合カバー内にあるセンシング経路の2つの端部のうちのいずれか一方に配置される方法。
【請求項9】
請求項8記載の方法において、
前記光ファイバネットワークが、当該方法を実行するように構成されたネットワークコントローラと、センサをノードに光学的に接続するユーザ構成可能な光ファイバコネクタスイッチとを含む方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法において、
前記ネットワークコントローラは、前記光ファイバネットワークに含まれる前記ノードにネットワーク構成指示を伝達する方法。
【請求項11】
請求項10記載の方法において、
前記ノードは、前記ネットワーク構成指示を受信し、これに応答して、センサの配置および/または前記光ファイバコネクタスイッチを介した光ファイバリンクを含むローカルな構成を行う方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法において、
前記センサがネットワーク構成情報を受信し、それぞれのセンシング設定およびデータ報告を構成する方法。
【請求項13】
請求項2記載の方法において、
配備されたセンサの数は、ネットワークインフラG(V,E)について
【数1】
によって定義され、Vは前記ノードの集合、Eは前記リンクの集合、Rは所定のセンサのセンシング範囲の限界値であり、d
ijはリンク(i,j)の距離であり、w
ijはd
ij/Rで求められるリンク(i,j)の重みの距離であり、
θ
s,dは、センサがノードsに配置され、s,d∈Vであり、ノードdを終点とする場合1であり、それ以外は0であり、
r
s,d,i,jは、r
s,d,i,j∈Vであり、sとdとの間のセンシングファイバ経路がリンク(i,j)を通過する場合1であり、それ以外は0である、
プール変数が定義され、
【数2】
の制約が考慮される方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、光ファイバ通信ネットワークおよび分散型光ファイバセンシング(DFOS)システム、方法、および構造に関するものである。具体的には、DFOSセンサの効率的な配置により、信頼性の高いサービスとリンク障害に対する耐性/免疫を実現することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光ファイバセンシング技術の急速な進歩により、ネットワークキャリアは、通信サービスの提供に加え、センシングアプリケーションおよびサービス(例えば、交通、道路状況などの監視)でネットワークインフラをアップグレードすることができ、これにより、「インフラとしてのセンサ」(IaaSr)として当技術分野で知られているパラダイムを実現することができる。
【0003】
このようなセンサのアップグレードとその結果として生じるサービスは広く適用されているが、ネットワークインフラは、ファイバの切断に起因するリンク障害を含む様々な障害に対して脆弱なままである。そのため、IaaSrサービスプロバイダにとって重要な課題は、IaaSrサービスの信頼性レベルを達成し提供するために、故障に耐性がある、または故障に免疫があるDFOSセンサをいかに効率的に配置するかということである。
【発明の概要】
【0004】
当技術分野の進歩は、DFOSネットワークにおけるセンサの適切な配置/割り当てを有利に提供し、ファイバ障害に耐える高信頼性、フォールトトレラント動作を提供するDFOSシステム、方法、および構造に向けられた本開示の側面に従ってなされたものである。
【0005】
第1の側面から見ると、本発明の手順は、単一のリンク障害に耐性があり、信頼性がありかつコスト効率の良いIaaSrサービスまたはDFOS割り当てを提供する。本手法により、バックアップ用DFOSを複数のプライマリDFOSで共有することが可能となり、高信頼なIaaSrサービスを低コストで提供することができる。さらに、プライマリDFOSとバックアップDFOSの割り当てを同等に扱い、ワンステップの全体にわたる最適化処理を用いて決定することで、DFOSセンサの使用数を最適に近づけることに成功した。
【0006】
別の側面から見ると、我々の発明手順は、3つのサブ手順を含む。まず、各ノードで可能なすべてのファイバセンシング経路(センシング範囲の制限によって制約される)を特定し、プライマリDFOS割り当ての候補として考慮する。次に、各ノードで可能なすべてのファイバセンシング経路ツリー(センシング範囲の制限によって制約される)をバックアップDFOS割り当ての候補として考慮し特定する。最後に、すべてのプライマリDFOS候補とバックアップDFOS候補と同等に考慮し、各リンクが各方向から少なくとも1回は感知(またはカバー)されるように、プライマリ候補とバックアップ候補とからDFOS割り当ての最小集合を選択する貪欲アルゴリズムが採用されている。また、複数のプライマリファイバセンシング経路が共有する特定のリンクにおいて、バックアップファイバセンシングサービスの数がプライマリファイバセンシングサービスの数以上となるようにし、単一リンク障害が発生した場合に、各プライマリファイバセンシングサービスに少なくとも1つのバックアップファイバセンシングサービスが存在するようにすることも本発明の手順である。
【0007】
要約すると、本開示の態様に従った我々の発明の手順は、単一リンク障害に対する信頼性の高いIaaSrサービスを提供する効率的な共有保護方法を通じて、使用されるセンサの数の点で最適に近い結果を達成し、ワンステップの全体にわたる最適化方法でプライマリDFOSおよびバックアップDFOSの割り当てを決定する新規のアプローチであり、既存の電気通信ネットワークインフラで完全にIaaSrサービス範囲を達成するためにプライマリDFOSセンサをどこに配置すべきかを決定し、各展開されたプライマリDFOSセンサのためのプライマリファイバセンシング経路(ルーティングとセンシング範囲の割り当てを含む)を決定し、単一リンク障害に対するIaaSrサービスの保護を達成するためにバックアップDFOSセンサの配置を決定し、各展開されたバックアップDFOSセンサのためのバックアップファイバセンシング経路ツリー(ルーティングとセンシング範囲の割り当てを含む)を決定し、リンク障害発生時に利用されたバックアップDFOSセンサ用のバックアップファイバセンシングルーティング(ルーティングとセンシング範囲の割り当てを含む)を決定することである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示のより完全な理解は、その中の添付図面を参照することによって実現され得る。
【0009】
【
図1(A)】先行技術のシングルエンドDOFSシステムのファイバの保護と切断点を示す模式図である。
【
図1(B)】先行技術のシングルエンドDOFSシステムのファイバの保護と切断点を示す模式図である。
【
図1(C)】先行技術のシングルエンドDOFSシステムのファイバの保護と切断点を示す模式図である。
【0010】
【
図2】本開示の態様による光ネットワークにおける信頼性の高いDFOSの配置を示す模式図である。
【0011】
【
図3】本開示の態様に従った配置手順の概要を示すフロー図である。
【0012】
【
図4】本開示の態様による
図3の第1のサブ手順の全体動作を示す一連のフロー図である。
【
図4(A)】本開示の態様による
図3の第1のサブ手順の全体動作を示す一連のフロー図である。
【
図4(B)】本開示の態様による
図3の第1のサブ手順の全体動作を示す一連のフロー図である。
【
図4(C)】本開示の態様による
図3の第1のサブ手順の全体動作を示す一連のフロー図である。
【0013】
【
図5】本開示の態様による
図3の第2のサブ手順の全体動作を示すフロー図である。
【0014】
【
図6】本開示の態様による
図3の第3のサブ手順の全体動作を示す一連のフロー図である。
【
図6(A)】本開示の態様による
図3の第3のサブ手順の全体動作を示す一連のフロー図である。
【
図6(B)】本開示の態様による
図3の第3のサブ手順の全体動作を示す一連のフロー図である。
【
図6(C)】本開示の態様による
図3の第3のサブ手順の全体動作を示す一連のフロー図である。
【0015】
【
図7】本開示の態様による光ファイバセンシングネットワークにおける共有保護による信頼性の高いDFOS配置の適用を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下は、単に本開示の原理を説明するものである。したがって、当業者は、本明細書に明示的に記載または示されていないが、本開示の原理を具現化し、その精神および範囲に含まれる様々な配置を考案することができることを理解されよう。
【0017】
さらに、本明細書に記載されたすべての例および条件文は、本開示の原理および技術を促進するために発明者が貢献した概念の読者の理解を助けるための教育的目的だけのものであり、かかる具体的に記載された例および条件に限定されないものとして解釈されることを意図している。
【0018】
さらに、本開示の原理、態様、および実施形態、ならびにその具体例を説明する本明細書のすべての記述は、その構造的および機能的等価物の両方を包含することを意図している。さらに、このような同等物には、現在知られている同等物と、将来開発される同等物の両方、すなわち、構造に関係なく同じ機能を果たすあらゆる要素が開発されることが意図されている。
【0019】
従って、例えば、本明細書における任意のブロック図は、本開示の原理を具現化する例示的な回路の概念図を表すことが、当業者には理解されよう。
【0020】
本明細書で明示的に指定しない限り、図面を構成する図は縮尺通りに描かれてはいない。
【0021】
いくつかの追加の背景によって我々は、DFOSセンサ(分散型音響センサ(DAS)、分散型振動センサ(DVS)、分散型温度センサ(DTS)、分散型歪みセンサ(DSS)など)が、全体のDFOSセンサのハードウェア(すなわち、インタロゲータ)の一部として含まれる光源によって生成/出力される光パルスの後方散乱信号(レイリー後方散乱、ラマン後方散乱、ブリリアン後方散乱など)を検出するため(すなわち、DFS)、それは通常、シングルエンドシステムとして当技術分野で知られているものであることに我々は注目することで始める。つまり、送信機と受信機がセンシングファイバの同じ端に配置されている。
【0022】
図1(A)、
図1(B)および
図1(C)は、先行技術のシングルエンドDOFSシステムのファイバの保護と切断点を示す模式図である。それらの図を同時に参照しながら、
図1(A)は、ノードAに配置されたDFOSセンサインタロゲータがノードAとノードBとの間のリンクABのセンシング機能を実行する構成を示す。ノードAとノードBとの間に位置する切断点(CP)でセンシングファイバ/ケーブルに切断があった場合、
図1(B)に例示するように、ノードAとCPとの間は検出可能であるが、CPとノードBとの間は検出できない。したがって、理解・納得されるように、このような不連続性(ファイバ切断)が発生したときにCP-B部を検出できるような保護機構が必要である。
【0023】
現代の光ファイバネットワーク保護構成では、2つのノード間で1つのリンクに障害が発生した場合(ケーブル切断の経験など)、2つのノード間の通信を維持するために、障害リンクを含まない代替ルートが選択、構成され、動作可能になる。つまり、送信元ノードと送信先ノードの間に少なくとも1本の運用可能なリンクがあれば、どのような経路であっても、正確な経路配置は重要ではない。
【0024】
しかし、残念ながら、IaaSrファイバセンシングネットワークでは、そのようなことはない。このようなセンシングネットワークでは、特定のファイバがセンシングメディアとなり、その特定の位置(経路)がセンシングを行う場所を決定するため、特定の経路が重要である。したがって、IaaSrの保護ソリューションは、損傷したリンクを破棄し、別のファイバ経路(リンク)に置き換えるという単純なものではない。
【0025】
しかし、そのような保護は、代わりに、故障したリンク(経路)の対向側の端からセンシング機能を追加することによって提供することができる。
図1(C)に示すように、CP地点でリンクABが切断された後、ノードBに2台目のセンサインタロゲータを設置し(あるいは既存の冗長システムを稼働させ)、B-CP区間のセンシング機能を提供する。したがって、ノードAに位置するインタロゲータによって得られるA-CP区間の情報と、ノードBに位置するインタロゲータによって得られるB-CP区間の情報とを用いて、リンクAB全体の監視が可能であることに変わりはない。有利なことに、ネットワークオペレータは、これら2つのセンサからのデータを「縫い合わせる」またはその他の方法で(物理的および/または論理的に)組み合わせて、リンク全体(ファイバ切断位置のごく小さな区間を除く)の全体的なセンシング結果を生成することができる。
【0026】
この議論から、IaaSrネットワークリンク保護を達成するための比較的簡単な解決策は、すべてのセンシング経路(複数のリンクにわたる経路であり得る)の対向側の端にバックアップDFOSインタロゲータを専用化することであることが当業者には明らかであろう。残念ながら、この方法は費用対効果に優れているとは言えない。なぜなら、システムで使用するセンサインタロゲータの数が2倍になる可能性があり、しかもそのうちの半分はバックアップとして使用され、通常の運用時には使用されないからである。
【0027】
より経済的なアプローチは、バックアップDFOSインタロゲータを全ての経路で共有することである。これにより、リンク障害を回避しつつ、必要なDFOSインタロゲータ(プライマリ動作用とバックアップ用)の数を最小限に抑えることができ、ハードウェアコスト(設備投資)を抑えることができる。このような共有配置は、「共有保護方式」として当技術分野で知られているが、今までこのような共有保護方式に対してDFOS配置を最適化する方法は知られていない。
【0028】
そのようなDFOS配置は、有利には、単一リンク障害に耐性がある/単一リンク障害に免疫があるようなDFOS配置を定義する本開示の態様によれば、次に説明される。
【0029】
単一リンク障害に対する信頼性の高いDFOS配置の問題は、以下のように定義することができる。ここで、ネットワークインフラG(V,E)が与えられ、Vはエンドノードの集合、Eはそれらのエンドノードを接続する光ファイバリンクの集合である。Gは、ファイバ切断などの単一リンク障害の影響を受ける。信頼性の高いDFOS配置問題とは、単一リンク障害に対して生き残り、IaaSrサービスを中断なく提供し続けるためのプライマリおよびバックアップDFOS両方の割り当て(プライマリおよびバックアップDFOS両方のセンサ配置およびファイバセンシング経路を含む)を、センサ数の消費を最小限にする目的で見つけ出すことである。
【0030】
図2は、本開示の態様による光ネットワークにおける信頼性の高いDFOSの配置を示す模式図である。
図2に示すように、ノードA,B,E(ノードEには2つのセンサがあることに注意)に4つのDFOSセンサがプライマリセンサとして配備されている。対応するプライマリファイバセンシング経路は、{A:A-G-H}、{B:B-A-D-G}、{E1:E-F-H-E}、{E2:E-D-B-C-F}である。この図から、すべてのリンクがこのプライマリDFOS割り当てによって感知(またはカバー)されていることがわかる。
【0031】
ここで、図に例示的に示す光ネットワークインフラ配置が、単一のリンク障害、例えば、ノードGとHとの間の切断点(CP)の影響を受けると仮定する。信頼性の高いIaaSrサービスを提供するために、ノードFとGとに2つのバックアップDFOSセンサを配置する。バックアップ保護の目的のため、対応するバックアップファイバセンシング経路は、直線的な経路ではなく、ツリー状の構造(トポロジー)となっている。
【0032】
このように、バックアップセンシング経路ツリーは、いくつかのプライマリファイバセンシング経路にバックアップ保護を提供することができる。つまり、共有保護方式であり、使用するセンサの数でより効率的なリソース消費をもたらす可能性がある。
【0033】
引き続き
図2を参照すると、バックアップファイバセンシングツリーは{G:GAB-GDA-GDE}と{F:FCBD-FEHF-FEHG}であることに注意する。単一リンク障害(例えば、ファイバ切断)の場合、元のプライマリセンサはその割り当てられたリンクを可能な限り感知し続け、バックアップセンサと対応するバックアップファイバセンシングツリーのブランチは、プライマリセンシング経路と比較して対向する方向から壊れたリンクの残りのセグメントに対するセンシングサービスを回復するために使用されるだろう。
【0034】
例えば、
図2に例示的に示す構成において、リンクG-Hでリンク障害(例えば、CPで示されるファイバ切断点)が発生した場合、ノードAのプライマリセンサはパスA-G-CPのセンシングを継続し、バックアップセンサFはパスF-E-H-CPのバックアップセンシングサービスに使用され、したがって、任意のIaaSrサービスはネットワークインフラ上のすべてのリンク(壊れたリンクG-H含む)で機能を継続できるようになる。この例では、ノードEのプライマリセンサとノードFのバックアップセンサとによって、リンクE-FとE-Hとが反対方向に感知される。有利なことに、これによってデータの混乱や衝突が発生することはない。
【0035】
本開示の態様による我々の発明の方法および結果として生じるDFOS構成は、単一リンク障害に対して、信頼性が高くかつコスト効率の良いIaaSrサービスまたはDFOS割り当てを有利に提供する。特に、バックアップDFOSを複数のプライマリDFOSで共有することで、コスト効率よく信頼性が高いIaaSrサービスを提供することを実現する。さらに、本手法では、プライマリDFOSとバックアップDFOSの割り当てを同等に扱い、ワンステップの全体最適として割り当てることで、DFOSセンサの使用数を最適に近い状態にすることを実現した。
【0036】
本開示の態様による我々の発明の方法および手順は、一般に、3つのサブ手順を含む。まず、本開示の態様による本発明の方法は、各ノード上のすべての可能なファイバセンシング経路(センシング範囲の限界によって制約される)を特定し、それらをプライマリDFOS割り当ての候補として考慮する。第2に、本開示の態様による本発明の方法は、各ノード上のすべての可能なファイバセンシング経路ツリー(センシング範囲の限界によっても制約される)を特定し、それらをバックアップDFOS割り当ての候補として考慮する。最後に、本開示の態様による我々の発明の方法は、プライマリDFOS候補とバックアップDFOS候補とを同等に考慮し、各リンクが各方向から少なくとも1回は感知(またはカバー)されるように、DFOS割り当ての最小集合をプライマリ候補とバックアップ候補とから選択するように貪欲アルゴリズムを適用する。
【0037】
一方、本開示の態様による我々の発明の方法は、複数のプライマリファイバセンシング経路が共有する特定のリンクにおいて、バックアップファイバセンシングサービスの数がプライマリファイバセンシングサービスの数以上であり、単一リンク障害が生じた場合に各プライマリファイバセンシングサービスが少なくとも1つのバックアップファイバセンシングサービスを有するように、保証する。
【0038】
図3は、本開示の態様に従った配置手順の概要を示すフロー図である。その図を参照すると、我々の発明の方法/手順は、
図3に示すように、ステップ100、200および300として例示的に示される3つのサブ手順に一般化され得ることが観察され得る。
【0039】
ステップ100、第1のサブ手順は、すべての可能なプライマリDFOS割り当てを探査し、それらをprimary_candidatesという集合に格納し、これはステップ300における第3のサブ手順のための1つの入力として使用されることになる。
【0040】
ステップ200、第2のサブ手順は、すべての可能なバックアップDFOS割り当てを探査し、それらをbackup_candidatesと呼ばれる集合に格納し、これはステップ300での第3のサブ手順のための別の入力として使用されることになる。
【0041】
ステップ300、第3のサブ手順は、ステップ100およびステップ200からの出力を取り、貪欲アルゴリズムを適用して、リンクの各方向から少なくとも1回各リンクをカバーする、primary_candidatesおよびbackup_candidatesから最小集合を選択し、これにより、単一リンク障害に対する信頼性のあるIaaSrサービスの保護を提供する。
【0042】
第1のサブ手順(すなわち、ステップ100)は、以下のような16のステップを含み、そのフローチャートは
図4、
図4(A)、
図4(B)および
図4(C)に示されている。
【0043】
ステップ101は、深度限定経路探索のサブ手順の初期化ステップである。3つのデータ構造体が作成され、初期化される。まず、与えられたノードnに対して訪問する必要があるすべてのノードの識別子を格納するスタックsが作成される。スタックは、与えられたノードnで初期化され、追加されたノードが一定の条件を満たしたときに追加される(ステップ106と108、およびステップ112と114を参照)。
【0044】
次に、深度制限された経路探索処理中に訪問されたノードを追跡するために、visitedと呼ばれるリストが初期化される。これにより、最終的なDFOSの割り当てにおいて、重複するセンシング経路が存在しないことを保証する。
【0045】
リストは、与えられたノードnを含むように初期化される。最後に、route_setと呼ばれる集合が空として初期化され、与えられたノードnのセンサが配置された場合に可能なすべてのファイバセンシング経路(線形経路)を含む。
【0046】
ステップ102は、whileループの入力点である。スタックsが空かどうかのチェックを行う。スタックが空でない場合、制御はwhileループに入り、ステップ103に進む。スタックが空の場合、whileループを強制終了し、ステップ116に制御を移し、与えられたノードnのroute_setを返す。ここで、スタックが空の場合、それは与えられたノードnのセンシング限界内にあるすべての隣接ノードをチェックしたことを意味するため、route_setは与えられたノードnのセンシング可能なすべての経路を含む。
【0047】
ステップ103は、スタックsから最後に入ったノードをポップし、それをノードcurrentとする。このcurrentノードは、現在の探査がどこに位置しているかを示す。以下のステップでは、currentとその隣接をroute_setにセンシング可能な経路として追加するかどうかを決定する。
【0048】
ステップ104は、route_setの集合が空であるか否かをチェックする。空であれば、ノードcurrentはセンシング経路のオリジナルノードであり、動作はステップ105のように、さらに他の可能なセンシング経路を探索することになる。route_setが空でない場合、動作は、先行者が現在であるroute_setからの経路をチェックし、さらに他の可能なセンシング経路を探索し、動作はステップ110に進む。
【0049】
ステップ105は、for-loopのエントリポイントである。currentの各隣接ノードnnをチェックし、currentからnnまでの経路rを生成する必要がある。この経路は、ステップ106でチェックされ、route_setに追加されるかどうかが決定される。
【0050】
ステップ106は、currentからnnまで延長された経路rの条件をチェックする。条件としては、経路rがループを含まない線形経路であること、その間にrの移動距離がセンシング範囲の限界以下であることが必要である。経路rが上記の条件を満たす場合、以下のステップ107に示すようにrをroute_setに追加することになる。条件を満たさない場合は、ステップ105に戻り、次の隣接ノードとそれに対応する新たに生成された経路をチェックする。
【0051】
ステップ107は、経路rをroute_setの集合に追加する。
【0052】
ステップ108は、隣接ノードnnが訪問済みであるか否かをチェックする。nnが以前に訪問したことがある場合、制御はステップ105に戻り、次の隣接ノードをチェックする。nnが訪問されていない場合は、ステップ109で制御を継続する。
【0053】
ステップ109は、隣接ノードnnをスタックsに追加し、このノードから延びる他の可能なセンシング経路のさらなる探索を可能にする。このステップでは、訪問ノードリストにnnが追加される。
【0054】
ステップ110は、ステップ104の条件を満たさない場合に実行される。2重のfor-loopの外側ループのエントリポイントである。ここで、route_setの組に含まれる既存のセンシング経路rをそれぞれチェックし、ノードcurrentを起点とするものから進めていく必要がある。
【0055】
ステップ111は、二重のfor-loopの内側ループのエントリポイントである。この時点で、currentの各隣接ノードnnをチェックし、既存のセンシング経路rにノードnnを追加して構築される新しい経路r_newを生成する必要がある。
【0056】
ステップ112、このステップでは、経路r_newがループのない線形経路であるかどうかをチェックし、その間にr_newの移動距離がセンシング限界以下であることをチェックする。上記条件が成立する場合、制御はステップ113に進み、r_newがroute_setに追加される。条件を満たさない場合は、ステップ111に戻り、次の隣接ノードとそれに対応する新しく生成された経路をチェックする。
【0057】
ステップ113は、経路r_newをroute_setの組に追加する。
【0058】
ステップ114は、近隣ノードnnが訪問済みであるか否かをチェックする。nnが以前に訪問したことがある場合、制御はステップ111に戻り、次の隣接ノードをチェックする。nnが訪問されていない場合、制御はステップ115に進む。
【0059】
ステップ115は、隣接ノードnnをスタックsに追加し、このノードから拡張された他の可能なセンシング経路のさらなる探査を可能にする。このステップでは、訪問者リストにnnが追加される。
【0060】
ステップ116は、ステップ102の条件が真である場合に実行される。ステップ100の最初のサブ手順で手順が呼び出された場所にroute_setを返す。
【0061】
第2のサブ手順(すなわち、ステップ200)は、以下のようないくつかのステップを含み、そのフローチャートは、
図5に示されている。
【0062】
ステップ201は、第2のサブ手順の初期化ステップである。backup_treeと呼ばれる集合は、与えられたノードnにバックアップセンサが配置されている場合、バックアップファイバセンシング経路ツリーを格納するために作成される。
【0063】
ステップ202は、与えられたノードnに対して可能なすべてのファイバセンシング経路を促進するために、第1のサブ手順を呼び出す。その結果をroute_setと表記する。
【0064】
ステップ203は、外側のfor-loopのエントリポイントである。route_setの各経路をチェックし、ステップ204からステップ206を繰り返す。route_setの経路項目をすべてチェックした場合は、ステップ207へ進む。
【0065】
ステップ204は、内側のfor-loopのエントリポイントである。選択された経路が通過した各リンクをチェックし、ステップ204とステップ205とを繰り返す。経路上の全てのリンク項目をチェックした場合、制御はステップ203に戻る。
【0066】
ステップ205は、選択されたリンクがまだbackup_treeに存在しないかどうかをチェックする。backup_treeにリンクがまだ存在しない場合は、制御がステップ206に移行し、そうでない場合は、制御がステップ204に移行する。
【0067】
ステップ206は、選択されたリンクをbackup_treeに追加する。
【0068】
ステップ207は、backup_treeを、第2のサブ手順が呼び出される場所に戻す。
【0069】
本発明の方法の第3のサブ手順(すなわち、ステップ300)は、以下のような18のステップを含み、そのフローチャートは
図6,
図6(A)、
図6(B)および
図6(C)に示されている。
【0070】
ステップ301は、第3のサブ手順の初期化ステップである。3つのデータ構造体が作成され、初期化される。まず、与えられたネットワークGのすべてのリンク(両方向)を含むuniverseという集合を作成し、初期化する。次に、primary_candidatesと呼ばれる集合が空で初期化され、可能な限りのプライマリDFOS割り当てが格納される。第3に、backup_candidatesと呼ばれる集合を空で初期化し、可能な限りのバックアップDFOSの割り当てを保存する。最後に、dfos_protectionと呼ばれる集合が空で初期化され、単一リンク障害に対する共有保護を提供する信頼性の高いDFOS割り当て(プライマリおよびバックアップDFOS割り当ての両方を含む)が格納されることになる。
【0071】
ステップ302では、ネットワークG(V,E)内の各ノードに対して第1のサブ手順を呼び出し、返された結果をprimary_candidatesに追加する。
【0072】
ステップ303では、ネットワークG(V,E)内の各ノードに対して第2のサブ手順を呼び出し、返された結果をbackup_candidatesに追加する。
【0073】
ステップ304は、whileループのエントリポイントである。universeが空の場合、制御はステップ318に移行し、そうでない場合はステップ305からステップ317を繰り返す。
【0074】
ステップ305では、primary_candidatesとbackup_candidatesから各候補を調べ、universeと最大の重複リンクを持つDFOS割り当てdfos_maxを選択する。
【0075】
ステップ306は、上記選択されたdfos_maxを最終的な信頼性のあるDFOS割り当て結果dfos_protectionに追加する。このdfos_maxは、プライマリDFOS割り当てまたはバックアップDFOS割り当てのいずれかになることに注意すべきである。つまり、提案する手順は、バックアップDFOS割り当てよりもプライマリDFOS割り当てを優先させずにそれらを等しく扱う。その結果、ワンステップでプライマリDFOSとバックアップDFOSとの割り当てとを大域的に最適化することができ、プライマリDFOSの割り当て後にバックアップDFOSを割り当てる2ステップのアプローチやその逆のアプローチよりも効率的であることがわかった。
【0076】
ステップ307は、上記選択されたdfos_maxがprimary_candidatesまたはbackup_candidatesからであるかどうかをチェックする。primary_candidatesからのものであればステップ308に進み、そうでなければステップ313に進む。
【0077】
ステップ308は、for-loopのエントリポイントである。dfos_maxの各リンクをチェックし、ステップ309からステップ312まで繰り返す。
【0078】
ステップ309は、backup_setにリンクが存在しないかどうかをチェックする。backup_setにリンクが存在しない場合は、ステップ310に制御を移し、それ以外の場合は、ステップ311に制御を移す。
【0079】
ステップ310は、与えられたリンクをprimary_setに追加する。
【0080】
ステップ311は、リンク(例えば、(i,j)、iとjはネットワークノード)がuniverseに存在し、その間に対向する方向のリンクopposite_link(例えば、(j,i))がprimary_setに存在しないかどうかをチェックする。真の場合、手順はステップ312に制御を移し、そうでない場合、手順はステップ308に戻る。
【0081】
ステップ312は、universeからリンクを削除する。
【0082】
ステップ313は、for-loopのエントリポイントである。dfos_maxの各リンクをチェックし、ステップ314からステップ317まで繰り返す。
【0083】
ステップ314は、リンクがprimary_setに存在しないかどうかをチェックする。primary_setにリンクが存在しない場合は、ステップ315に制御を移し、それ以外の場合は、ステップ316に制御を移す。
【0084】
ステップ315は、与えられたリンクをbackup_setに追加する。
【0085】
ステップ316は、リンク(例えば、(i,j)、iとjはネットワークノード)がuniverseに存在し、その間に対向する方向のリンクopposite_link(例えば、(j,i))がbackup_setに存在しないかどうかをチェックする。もし真なら、手順はステップ317に続き、そうでなければ、手順はステップ313に移行する。
【0086】
ステップ317では、universeからリンクを削除する。
【0087】
ステップ318は、dfos_protectionにおける結果を返し、手順は終了する。
【0088】
共有保護によるワンステップDFOS配置の適用
図7は、提案された共有保護によるワンステップDFOS配置の手順の適用を示す。
【0089】
光ファイバネットワークには複数のノードがあり、ノードの組の間には複数の光ファイバリンクが存在する。黄色の光ファイバリンクは、DFOSセンサ(ネットワーク内のすべての光ファイバリンクを含む可能性がある)で監視(感知)する必要があるリンクである。
【0090】
これらの光ノードは、ネットワークコントローラによって制御され、ノードの1つに配置されることもあれば、遠隔地や複数の場所に配置されることもあり得る。ネットワークのトポロジー、各ノードの情報、各リンクの情報(両端ノード、リンク距離、このリンクでセンシングが必要かどうかなど)などを含むネットワークの情報をネットワークコントローラが収集する。この情報に基づいて、ネットワークコントローラは、共有保護付きワンステップDFOS配置手順を使用して、センシング目的のネットワーク構成を決定する。そして、構成設定は個々のノードに送信される。
【0091】
光ノードがそれぞれのネットワーク構成命令を受信すると、その命令を実行するが、これには、ノードに1つ以上のDFOSセンサハードウェアを配置してそれぞれのファイバに接続すること、および/または2つのリンクから2つのファイバを一緒に接続して通過経路を形成すること(これはファイバパッチパネルまたは光スイッチを介して行われることができる)、および/またはファイバを終端して終端点の端面における大きな反射を防止することが含まれる可能性がある。
【0092】
また、配置された各DFOSセンサは、ネットワークコントローラからの命令を使用して、感知距離および任意の関連パラメータを構成し、その後、進行中の測定を開始する。センサの感知範囲が複数のホップにまたがる場合、収集されたデータは個々のリンクに分離される。各ファイバリンクの測定データは、ローカルに保存・処理することも、リモートまたは中央のプロセッサに送信して分析・保存することも可能である。
【0093】
ケーブルの障害(違法・不正工事による埋設ケーブル切断、地震による埋設ケーブル切断、倒木による架空ケーブル切断、交通事故によるケーブル支持電柱の破損など)が発生すると、後方散乱信号や異常センサーデータの喪失があるため、その障害はこの経路を監視する該当DFOSセンサによって直ちに検出される。後方散乱法DFOSの動作原理は、飛行時間計算により信号の位置を明確に識別するため、ケーブルの故障箇所を容易に特定することができる。この情報は、ネットワークコントローラへ送信される。
【0094】
提案された共有保護手順によって提供される事前に決定されたバックアップ経路割り当て計画に基づいて、ネットワークコントローラは、バックアップDFOSセンサと対応するバックアップ経路とを割り当て、その情報をそれぞれのノードへ送信する。その後、バックアップ用DFOSを動作させ、中間ノードの光スイッチを介して対応する経路が構成される。そして、センシングネットワークは、切断された経路の残りの部分を含むバックアップ経路でセンシングサービスを提供することができる。
【0095】
ネットワークコントローラはまた、影響を受ける経路の異なる部分にて対向する方向から操作するプライマリセンサとバックアップセンサとの間のデータ処理を調整し、2つのセンサからのセンシングデータを一緒に縫合し、ユーザがこの経路について依然として滑らかでほとんど継ぎ目のないセンシング結果を受け取ることができるようにする。
【0096】
空間領域(ファイバ経路沿い)でのシームレスなデータ以外に、自動制御によりバックアップ経路選択時間や構築時間が非常に短いため、時間領域でのデータもほぼシームレスになる。そのため、ユーザは継続的で中断のないセンシングサービスを受けることができ、ネットワーク上のイベントを見逃すことはない。
【0097】
同時に、ネットワークコントローラは、ネットワークオペレータにケーブル切断について詳細な位置情報とともに通知し、ネットワークオペレータが修復を行うための行動をとることができるようにする。
【0098】
保護されたDFOS配置手順のリソース最適化の利点により、ネットワーク内のプライマリDFSOセンサとバックアップDFOSセンサとの合計数を少なく保つことができ、ハードウェア費用を節約することができる。この自動化された手順は非常に効率的で、特に手動で計画する場合と比較して、ネットワーク計画時間を大幅に短縮することができる。そのため、運用コストを有利に削減することができる。
【0099】
ネットワーク内のすべての必要なリンクが継続的にセンシング機能を実行しているため、ケーブル障害後でさえ、IaaSr(NaaSr)機能が達成・維持され、ネットワーク運用効率(ケーブル損傷の可能性の早期警告、ケーブル正常性の監視、運用環境の監視など)が向上し、ネットワーク所有者に新しいサービスと収益をもたらす(自治体への交通情報提供、高速道路事業者への道路状況監視、公共事業者への電柱の正常性の監視、事故検出用の市騒音モニターなど)。
【0100】
問題提起と整数線形計画法の定式化
【0101】
単一リンク障害に対する生存可能なDFOS配置の問題は、以下のように定義することができる。ここで、ネットワークインフラG(V,E)が与えられ、Vはエンドノードの集合、Eはそれらのエンドノードを接続する光ファイバリンクの集合である。Gは、ファイバカットなどの単一リンク障害に影響される。生存可能なDFOS配置の問題は、使用するセンサの数を最小にすることを目的に、(1)プライマリDFOSセンサとバックアップDFOSセンサとの両方の配置、(2)プライマリファイバセンシングチャネルとバックアップファイバセンシングツリーチャネルとの経路を見つけ出すことである。その際、各センサが感知できる範囲は80kmと限られており、単一方向のデータしか感知できないという意味での感知範囲制約を考慮する必要がある。
【0102】
ここでは、最適な共有保護ソリューションを促進するために、整数線形計画法(ILP)を使用して、生存可能なDFOS配置の問題を定式化する。以下のパラメータが与えられている。
【0103】
G(V,E):ネットワークインフラで、Vはノードの集合、Eはリンクの集合である。
【0104】
R:センシング範囲の限界値。
【0105】
di,j:リンク(i,j)の距離。
【0106】
これらのパラメータからdi,j/Rを計算することで、リンク(i,j)の重みを表すwi,jを得ることができる。また、各ノードのセンシング範囲制限R内にある最短経路を事前に計算し、リンク(i,j)がノードsのセンシング範囲内にある場合は1、それ以外は0と定義している。
【0107】
以下のブーリアン変数が決定される。
【0108】
ps,d:ノードsにプライマリセンサが配置され、センシングチャネルが宛先dに到達している場合は1、そうでない場合は0。
【0109】
bs:ノードsにバックアップセンサが配置されている場合は1、そうでない場合は0。
【0110】
rs,d,i,j:sとdとの間のプライマリファイバセンシングチャネル経路がリンク(i,j)を通る場合は1、それ以外の場合は0。
【0111】
【0112】
目的は、使用するセンサの数を最小にすることであり、式(1)で定義される。また、式(2)は、任意のセンシングファイバ経路の距離がセンシング範囲制限R未満でなければならないというセンシング範囲制限制約を表す。式(3)は、各リンク(i,j)がどちらの方向からも少なくとも一度は感知できることを保証する。式4は、各センシングファイバの経路が直線的なルートであることを確認する。式(5)は、各リンクが少なくとも1つのバックアップセンシングツリーをカバーすることを保証している。式(6)は、Eの各リンクについて、バックアップセンシングの数がプライマリセンシングの数以上であることを保証し、単一リンク障害からリンクが保護されるようにする。
【0113】
発見的方法アルゴリズム-専用保護と共有保護
【0114】
専用保護
【0115】
前に述べたように、IaaSrネットワークリンク保護を達成するための簡単な解決策は、すべてのセンシング経路(複数のリンク上のルートであり得る)の対向側にバックアップDFOSインタロゲータを専用にすることである。例えば、専用保護のアプローチとして、[2]のソリューションを使用してファイバセンシング経路を提供し、この経路の両端にプライマリとバックアップDFOSセンサとを割り当てて、生存可能なDFOS配置を提供することが可能である。しかし、これではシステム内のセンサインタロゲータの数が2倍になる一方で、半分はバックアップとして機能し、通常の動作時間には使用されないため、費用対効果の高いソリューションとは言えない。より経済的な方法は、バックアップDFOSインタロゲータを全経路で共有することである。このように、必要なDFOSインタロゲータ(プライマリ動作用とバックアップ用)の数を最小限に抑えることで、ハードウェアコスト(設備投資)を抑えつつ、リンク障害を解決することができる。
【0116】
共有保護
【0117】
前述のように、共有保護方式は、
図8に示されている。IaaSrサービスを提供するために、ノードA,B,E(Eには2つのセンサがあることに注意)の4つのDFOSセンサをプライマリセンサとして配置する。対応するプライマリファイバセンシングチャネルの経路は、A:A-G-H,B:B-A-D-G,E:E-F-H-E,E:E-D-B-C-Fとなる。すべてのリンクがこのプライマリDFOS割り当てによって感知されている(またはカバーされている)ことがわかる。実際には、ネットワークインフラは、ファイバ切断(例えば、ノードGとHとの間の切断点(CP))による単一リンク障害など、様々なハードウェアおよび/またはソフトウェアの障害に影響を受ける。リンクG-Hに単一リンク障害が発生した場合、既存のプライマリセンサはA-G-CPからセンシングデータを収集し続けることができるが、バックアップセンサと対応するバックアップファイバーセンシングチャネル経路はH-CPからセンシングデータを収集する必要があり、リンクG-Hは依然として2つの対向する方向から完全にセンシング(またはカバー)されることになる。このような生存可能なIaaSrサービスを提供するために、ノードFとGとに2つのバックアップDFOSセンサが配置される。対応するバックアップファイバのセンシングチャンネルは、直線的なルートではなく、ツリー状の構造になっている。
【0118】
例えば、
図8において、バックアップファイバセンシングツリーは、G:GAB-GDA-GDEおよびF:FCBD-FEHF-FEHGである。このように、バックアップセンシングリソースを複数のプライマリDFOS割り当てで共有することで、使用するセンサ数の観点から、より効率的なリソース消費を実現できる可能性がある。
図8では、リンクG-Hに単一リンク障害(例えば、切断点(CP))が発生した場合、ノードAのプライマリセンサは、チャネルA-G-CPを感知し続け、ノードFのバックアップセンサは、チャネルF-E-H-CPのバックアップセンシングサービスを提供し、IaaSrサービスがリンクG-Hで継続できるようにする。上記の例からわかるように、生存可能なDFOS配置を実現するためには、実際にはリンク保護の問題がある。なぜなら、単一リンク障害に対して生き残るためには、各ネットワークリンクが異なる方向から少なくとも一度は感知されるようにする必要があるからである。以下のパートでは、共有保護に関連する3つの効率的な発見的方法を提案する。
【0119】
ランダムバックアップによる共有保護。これは2段階の共有保護方式である。まず、[2]の解決策を適用して、primary_candidatesで示されるプライマリDFOS割り当てを提供することができる。次に、バックアップDFOSセンサを配置するノードをランダムに選択することができる。したがって、選択したノードのセンシング限界範囲内にあるすべてのリンクを見つけ出し、バックアップセンシングツリーを形成することができる。第2のステップは、すべての物理リンクが一方向の少なくとも1つのプライマリファイバセンシング経路によって感知され、対向する方向のバックアップセンシングファイバツリーの少なくとも1つの枝によってカバーされることができるまで繰り返される。したがって、リンクが切断点に遭遇した場合、プライマリとバックアップとの2方向からDFOSセンサで感知することができる。
【0120】
最小集合カバーによる共有保護。これも2段階の共有保護方式である。最初のステップは、ランダムバックアップによる共有保護と同じである。2番目のステップは、[3]をカバーする最小集合の貪欲アルゴリズムを用いて最適化される。具体的には、ネットワーク上の各ノードのバックアップセンシングツリーを見つけ出し、backup_candidatesの集合を形成することができる。次に、最小集合カバー貪欲アルゴリズムを用いて、backup_candidatesから、primary_candidatesで規定されたのと対向する方向のネットワーク内のすべてのリンクをカバーできる最小集合を見つけ出す。
【0121】
ワンステップ最適化による共有保護。上記2つのアプローチでは、2つのステップでプライマリDFOS割り当てとバックアップDFOS割り当てを規定している。その結果、全体最適の結果にはならない。そこで、大域的な最適化を実現するために、プライマリとバックアップのDFOSの割り当てをワンステップで最適化できる別の発見的方法を提案する。具体的には、リンクがuniverseに格納されている対象グラフに対して、共有保護ワンステップソリューションが機能する。この保護は、プライマリファイバセンシング経路の各リンクが、バックアップセンサとそれに対応するバックアップファイバセンシングツリーのブランチの1つによって保護されるという意味で、リンク保護の観点からのものである。まず、[2]の解法を適用して、すべてのプライマリDFOSの割り当てを見つける。実際に提供するのではなく、まずこれらの割り当てをprimary_candidatesに格納する。次に、上記2つのアプローチと同様に、バックアップDFOS割り当て(バックアップセンサ配置とバックアップファイバセンシングツリー経路を含む)の可能性をすべて見つけ出し、backup_candidatesと表記する。最後に、修正最小集合カバー貪欲アルゴリズムを用いて、primary_candidatesとbackup_candidatesとの組み合わせから、ネットワーク内のすべてのリンクを双方向でカバーできる最小集合を見つけ出す。修正最小集合カバー貪欲アルゴリズムは、[3]と比較して、(1)最大重複集合の選択過程と(2)対象集合の更新過程という2つの区別されたステップを有する。まず、最大重複集合を求める際に、primary_candidatesからの候補であれば、universeと重複しているが、primary_dfosからのファイバセンシング経路の対向する方向とは重複していない候補が何回あるかをカウントすることになる。したがって、backup_candidatesからの候補であれば、backup_dfosからのファイバセンシング経路の対向する方向と重ならず、ユニバースと重なる回数を数えることになる。上記のステップでは、与えられたリンクが両方向の2つのプライマリ(または2つのバックアップ)センシングファイバツリーによってカバーされていないことを確認し、異なる方向からのプライマリとバックアップセンシングルートによってカバーされていることを確認することになる。次に、universeを更新する際に、各リンクの方向について、プライマリDFOSとバックアップDFOSのどちらでカバーされているかをマークする必要があるため、これらを追跡するために2つの集合primary_dfosおよびbackup_dfosを作成する。提案するワンステップの発見的方法アルゴリズムにおける共有保護の詳細な手順は、以下の疑似コードで確認できる。
【0122】
数値計算結果
【0123】
提案した解決策を検証するために、包括的なシミュレーションを行う。光ファイバセンシングの限界距離は、既存の光ファイバセンシング技術から、80kmと設定されている。この制約のため、ネットワークインフラは、実世界のデータセットを用いて地域やメトロの光ファイバネットワークを選択した。主なネットワークパラメータを表1に示す。なお、センシング範囲の上限を超えるリンクは、DFOSセンサでもカバーできるように、80kmに切り取る前処理を行った。
【0124】
提案するILP解と効率的な発見的方法の解とを、使用するセンサの数で評価する。その結果を表2に示す。ILP解は下界を提供するが、ネットワーク規模が大きくなると、合理的な時間で結果を得ることができないことがわかる。すべての発見的方法のアルゴリズムの中で、共有保護ソリューションが専用保護ソリューションより優れていることが観察される。特にShared-Oneは、ILP解が設定する下限に近い性能を達成することができる。さらに、Shared-Oneは専用保護、Shared-Random、Shared-MSCをそれぞれ平均27%、20%、16%向上させ、上回っている。これは、Shared-OneがプライマリDFOSとバックアップDFOSとの割り当てをワンステップで決定し、全体最適を実現するためである。
【数2】
【表1】
【表2】
【0125】
この時点で、いくつかの具体例を用いて本開示を示したが、当業者は、我々の教示がそれほど限定的でないことを認識するであろう。具体的には、生存可能なDFOS配置問題を定義・定式化し、使用するセンサ数の観点から最適な性能を有利に実現できるILP解を開示した。さらに、専用保護アプローチと共有保護アプローチの両方を含む、いくつかの効率的な発見的方法のアルゴリズムを開示している。本共有保護アルゴリズムは、プライマリDFOSとバックアップDFOSとの配置を同等に扱い、これらの割り当てをワンステップの全体にわたる最適化で最適化することで、ILPで得られる最適解に近い性能を達成した。我々は包括的なシミュレーションを実施し、我々の発見的方法のアルゴリズムの有効性を実証した。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきものである。