(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】パネル部材
(51)【国際特許分類】
G01M 9/08 20060101AFI20240419BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20240419BHJP
【FI】
G01M9/08
B33Y80/00
(21)【出願番号】P 2023116854
(22)【出願日】2023-07-18
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】523033279
【氏名又は名称】パーソルクロステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英之
【審査官】瓦井 秀憲
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-227500(JP,A)
【文献】中国特許第111946650(CN,B)
【文献】特開2019-178870(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2023/0192274(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0283896(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0092401(US,A1)
【文献】中国実用新案第213331583(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 9/00-10/00
B33Y 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風洞試験に用いられるモデルにおける外面を構成する部材であって、3Dプリンタにより形成された部材であるパネル部材であって、
前記モデルの前記外面を形成する第1面と、
前記第1面の反対側に位置する第2面と、
前記風洞試験に用いられる部分であって、前記第1面から前記第2面に向けて前記パネル部材を貫通する部分である貫通孔と、
前記風洞試験のため、前記貫通孔に対応して設けられた構造部と、
を備え、
前記貫通孔及び前記構造部は、3Dプリンタにより前記パネル部材と一体に形成され
ており、
前記構造部は、前記第2面から突出した状態で前記貫通孔に挿入された管状部材を保持するよう構成されており、前記管状部材は、その両端から離れた位置に、外周面から突出する突出部を有しており、
前記構造部は、
前記貫通孔の内周面における陥没した部分であって、前記貫通孔の前記第2面における開口に隣接し、前記貫通孔に挿入された前記管状部材の前記突出部を収容するよう構成された収容部と、
前記貫通孔における前記第2面の前記開口を囲む縁部から、前記貫通孔の伸長方向に沿って突出し、前記貫通孔に挿入された前記管状部材に当接するよう構成される爪部と、
を備え、
前記爪部は、前記貫通孔に挿入された前記管状部材に対面する内側面における前記第2面の周辺に位置する部分に、前記貫通孔に挿入された前記管状部材の前記突出部を収容するための凹部が形成されている
パネル部材。
【請求項2】
請求項1に記載のパネル部材であって、
前記突出部は、前記管状部材の前記外周面を周回するように設けられており、
前記収容部は、前記貫通孔の前記内周面を周回するように形成され、
前記構造部は、前記貫通孔の前記第2面における前記開口を囲むように並んで設けられた複数の前記爪部を備える
パネル部材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のパネル部材であって、
2色成型により前記パネル部材を形成することで、前記爪部と、前記パネル部材における前記爪部の周辺部分とは、異なる樹脂で構成されている
パネル部材。
【請求項4】
風洞試験に用いられる
車両のモデルにおける外面を構成する部材であって、3Dプリンタにより形成された部材であるパネル部材であって、
前記モデルの前記外面を形成する第1面と、
前記第1面の反対側に位置する第2面と、
前記風洞試験に用いられる部分であって、前記第1面から前記第2面に向けて前記パネル部材を貫通する部分である貫通孔と、
前記風洞試験のため、前記貫通孔に対応して設けられた
接続部と、
を備え、
前記モデルの内側には、風洞試験を行うための装置を配置可能な空間が形成されており、
前記パネル部材は、前記モデルにおける車体の一部を構成し、前記第2面は、前記空間に対面し、
前記貫通孔及び前記
接続部は、3Dプリンタにより前記パネル部材と一体に形成さ
れ、
前記接続部は、前記第2面から突出するように設けられた部分であって、前記貫通孔に連通する開口が設けられ、前記風洞試験に用いられる試験用チューブが接続されるよう構成された部分である
パネル部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、風洞試験に用いられるモデルに用いられるパネル部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2に記載されているように、飛行機等の移動体の風洞試験を行うため、3Dプリンタにより移動体のモデルを形成する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4310043号公報
【文献】特許第4446608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような風洞試験では、移動体のモデルに形成された貫通孔を用いて、一例として風圧の測定が行われる場合がある。しかし、従来は、モデルの貫通孔をドリル等で形成していたため、作業負荷が大きく、さらに、貫通孔の位置に誤差が生じ、その結果、風洞試験の精度が低下する恐れがあった。
【0005】
本開示の一態様では、風洞試験を行う際の作業負荷を低減しつつ、風洞試験の精度を向上させるのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、風洞試験に用いられるモデルにおける外面を構成する部材であって、3Dプリンタにより形成された部材であるパネル部材に関する。パネル部材は、第1面と、第2面と、貫通孔と、構造部と、を備える。第1面は、モデルの外面を形成する。第2面は、第1面の反対側に位置する。貫通孔は、風洞試験に用いられる部分であって、第1面から第2面に向けてパネル部材を貫通する部分である。構造部は、風洞試験のため、貫通孔に対応して設けられる。貫通孔及び構造部は、3Dプリンタによりパネル部材と一体に形成される。
【0007】
上記構成によれば、貫通孔及び構造部が3Dプリンタによりパネル部材と一体に形成される。このため、風洞試験を行う際の作業負荷を低減しつつ、風洞試験の精度を向上させることができる。
【0008】
本開示の一態様では、構造部は、第2面から突出した状態で貫通孔に挿入された管状部材を保持するよう構成されており、管状部材は、その両端から離れた位置に、外周面から突出する突出部を有していてもよい。また、構造部は、収容部と、爪部と、を備えてもよい。収容部は、貫通孔の内周面における陥没した部分であって、貫通孔の第2面における開口に隣接し、貫通孔に挿入された管状部材の突出部を収容するよう構成される。爪部は、貫通孔における第2面の開口を囲む縁部から、貫通孔の伸長方向に沿って突出し、貫通孔に挿入された管状部材に当接するよう構成される。また、爪部は、貫通孔に挿入された管状部材に対面する内側面における第2面の周辺に位置する部分に、貫通孔に挿入された管状部材の突出部を収容するための凹部が形成されていてもよい。
【0009】
上記構成によれば、管状部材を貫通孔に容易に挿入することや、貫通孔に挿入された管状部材を良好に保持することができる。このため、風洞試験を行う際の作業負荷を低減できる。
【0010】
本開示の一態様では、突出部は、管状部材の外周面を周回するように設けられていてもよい。収容部は、貫通孔の内周面を周回するように形成されてもよい。構造部は、貫通孔の第2面における開口を囲むように並んで設けられた複数の爪部を備えてもよい。
【0011】
上記構成によれば、管状部材を貫通孔に容易に挿入することや、貫通孔に挿入された管状部材を良好に保持することができる。このため、風洞試験を行う際の作業負荷を低減できる。
【0012】
本開示の一態様では、2色成型によりパネル部材を形成することで、爪部と、パネル部材における爪部の周辺部分とは、異なる樹脂で構成されていてもよい。
上記構成によれば、複数の爪部を構成する樹脂を適宜選択することで、管状部材を貫通孔に挿入する際の容易性や、貫通孔に挿入された管状部材を保持するように作用する力の強さを、適宜調整できる。
【0013】
本開示の一態様では、構造部は、第2面から突出するように設けられた部分であって、貫通孔に連通する開口が設けられ、風洞試験に用いられる試験用チューブが接続されるよう構成された部分である接続部を備えてもよい。
【0014】
上記構成によれば、試験用チューブの接続が容易になるため、風洞試験を行う際の作業負荷を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態の車両のモデルの説明図である。
【
図2】第1実施形態における貫通孔に挿入されたベンチュリ管、及び複数の爪部の斜視図である。
【
図3】第1実施形態における貫通孔、貫通孔に挿入されたベンチュリ管、及び複数の爪部の、貫通孔及びベンチュリ管の軸線を含む断面図である。
【
図4】第2実施形態における接続部の斜視図である。
【
図5】第2実施形態における貫通孔及び接続部の、貫通孔の軸線を含む断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本開示の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0017】
[1.第1実施形態]
[(1)概要]
第1実施形態の4輪の自動車のモデル1は、風洞試験に用いられ、複数のパネル部材10と、骨格部14とを備える(
図1参照)。なお、モデル1は、実際の自動車と同じ大きさであっても良いし、該自動車を縮小又は拡大したものであってもよい。
【0018】
パネル部材10は、モデル1の外面を形成する樹脂製の部材であり、3Dプリンタにより形成される。具体的には、各パネル部材10は、例えば、自動車におけるボンネット、ガラス、フロントグリル、タイヤ、ドア、バンパー等といった自動車の外面を構成する部分に対応して設けられており、対応する部分の形状を有している。
【0019】
骨格部14は、モデル1の内部に配置されたフレーム状の部分である。骨格部14に各パネル部材10を取り付けることで、モデル1が構成される。モデル1におけるパネル部材10の内側には、空間が形成されている。また、骨格部14の内側には、図示しない台座が設けられており、該台座には、風洞試験を行うための測定機器等が配置される。
【0020】
[(2)パネル部材]
複数のパネル部材10のうちの少なくとも1つには、風洞試験のための圧力測定を行うため、少なくとも1つの貫通孔2が設けられている(
図2,3参照)。また、該パネル部材10には、風洞試験のための圧力測定を行うため、各貫通孔2に対応して構造部3が設けられている。第1実施形態では、一例として、ボンネットを形成するパネル部材10に、自動車の前後方向に沿って所定の間隔を空けて並ぶように、複数の貫通孔2と、各貫通孔2に対応する複数の構造部3とが設けられる。
【0021】
また、これらの貫通孔2及び構造部3は、3Dプリンタによりパネル部材10が形成される際に形成される。つまり、複数の貫通孔2及び複数の構造部3は、3Dプリンタにより形成されたパネル部材10を加工することで形成されるのではなく、3Dプリンタによりパネル部材10と一体に形成される。
【0022】
[(3)貫通孔]
貫通孔2が設けられたパネル部材10は、板状の部分である板状部11が設けられている(
図2,3参照)。板状部11は、厚さ方向に対面する第1及び第2面12,13を有する。第1面12は、モデル1の外面を形成し、第2面13は、モデルの内側に位置する(
図1参照)。そして、板状部11には、第1面12から第2面13に向けて板状部11を貫通するように、複数の貫通孔2が形成されている。各貫通孔2は、板状部11の厚さ方向に沿って直線状に延び、その伸長方向(換言すれば、軸線A0)に直交する断面(以後、単に断面と記載)は円形となっている。なお、軸線A0とは、貫通孔2の断面の中心を通過する仮想的な直線である。
【0023】
[(4)管状部材]
各貫通孔2には、管状部材4を挿入可能となっている(
図2,3参照)。管状部材4は、円筒形状であり、軸線A1に沿って真っ直ぐに伸びる。なお、軸線A1とは、管状部材4における伸長方向に直交する断面(以後、単に断面と記載)の中心を通過する仮想的な直線である。
【0024】
管状部材4は、第1端部が第1面12と面一となり、且つ、第2端部が第2面13から突出した状態となるように、貫通孔2に挿入される。また、管状部材4は、その両端から離れた位置に、外周面40から突出する湾曲した形状の突出部41を備える。一例として、突出部41は、球状であり、軸線A1(換言すれば、外周面40)を周回するように設けられる。つまり、突出部41の断面は、軸線A1が中心を通過する円形である。また、突出部41は、側面視すると円形であり、軸線A1は、該円の中心を通過する。
【0025】
[(5)構造部]
構造部3は、収容部30と、複数の爪部31とを備える(
図2,3参照)。
収容部30は、貫通孔2の内周面20における陥没した部分であり、貫通孔2が板状部11の第2面13に形成する開口21に隣接して設けられており、貫通孔2に挿入された管状部材4の突出部41を収容する。一例として、収容部30は、半球状であり、軸線A0(換言すれば、内周面20)を周回するように設けられる。つまり、収容部30の断面は、軸線A0が中心を通過する円形であり、該断面の径は、開口21に向かうに従い拡大する。また、収容部30における軸線A0を含む断面は、円弧状となっている。
【0026】
複数の爪部31は、第2面13における貫通孔2の開口21を囲む縁部から、貫通孔2の伸長方向(換言すれば、軸線A0の方向)に沿って突出し、貫通孔2に挿入された管状部材4の外周面40に当接するよう構成される。一例として、第1実施形態では、4個の爪部31が、開口21を囲むように所定の間隔を空けて並んで設けられる。
【0027】
また、各爪部31は、貫通孔2に挿入された管状部材4の外周面40に対面する内側面32を有する。内側面32における第2面13の周辺には、貫通孔2に挿入された管状部材4の突出部41を収容するための凹部33が形成されている。凹部33は、収容部30に隣接していると共に、内側面32における円弧状に湾曲した部分であり、内側面32における爪部31の根元に位置する部分に窪みを形成する。凹部33は、貫通孔2に挿入された管状部材4の突出部41を収容するよう構成されている。
【0028】
つまり、各爪部31の凹部33と、収容部30とにより、略球状の空間が形成され、該空間に、貫通孔2に挿入された管状部材4の突出部41が収容される。
また、各爪部31における凹部33を形成する部分は、軸線A0側に傾斜するように第2面13から突出し、先端に向かうに従い幅が狭くなっている。また、各爪部31における凹部33よりも先端側の部分は、幅が略一定であり、軸線A0に沿って延びる。また、各爪部31の間には、スリットが形成されている。
【0029】
さらに、一例として、2色成型により、各貫通孔2に対応する複数の爪部31と、パネル部材10における該複数の爪部31の周辺部分とは、異なる樹脂により構成される。なお、周辺部分とは、例えば、複数の爪部31に対応する収容部30及び貫通孔2を形成する部分であってもよい。具体的には、例えば、複数の爪部31は、周辺部分に比べ、柔軟性及び弾力性が高い樹脂により構成されていてもよい。また、例えば、周辺部分に限らず、2色成型により、各貫通孔2に対応する複数の爪部31と、パネル部材10におけるこれらの爪部31以外の部分とは、異なる樹脂により構成されていてもよい。
【0030】
そして、管状部材4は、第2面13側から貫通孔2に挿入される。この時、複数の爪部31の各々が外側に傾くように弾性変形することで、管状部材4の突出部41が収容部30に到達可能となる。また、突出部41が収容部30に到達すると、複数の爪部31は、挿入前の初期形状に戻るように変形する。この時、収容部30と、各爪部31の凹部33とは、突出部41に当接する。また、各爪部31の内側面32における凹部33よりも先端側の部分は、管状部材4における突出部41よりも先端側の部分の外周面40に当接する。そして、これらの当接が生じた際には、各爪部31は弾性変形が生じた状態となっており、初期形状に戻ろうとする各爪部31の弾性力により、管状部材4が保持される。
【0031】
[(6)風洞試験について]
第1実施形態の風洞試験では、一例として、モデル1の外面に配置されたベンチュリ管を用いた風圧や風速等の測定を簡略化した測定が行われる。すなわち、試験用チューブ5により、モデル1の内部に配置された測定機器と、貫通孔2に挿入された管状部材4とが接続される(
図2参照)。そして、測定機器により管状部材4内に生じた圧力を測定することで、モデル1の外面における貫通孔2の周辺の風圧や風速等が測定される。
【0032】
このような圧力測定では、パネル部材10に設けられた全部又は一部の貫通孔2が用いられる。なお、圧力測定に用いられない貫通孔2は、閉塞部材(図示無し)により閉塞されてもよい。また、閉塞部材とは、管状部材4と同様の形状を有する部材であってもよい。つまり、閉塞部材とは、円柱状の部材であり、管状部材4と同様の突出部が外周面に形成されていてもよい。そして、閉塞部材が貫通孔2に挿入された際には、閉塞部材の第1端部がパネル部材10の第1面12と面一になると共に、管状部材4と同様、突出部は、各爪部31の凹部33と収容部30とに収容され、閉塞部材は、複数の爪部31により保持されてもよい。
【0033】
そして、貫通孔2に挿入されている管状部材4における第2面13から突出する第2端部は、試験用チューブ5の第1端部に挿入され、試験用チューブ5の第2端部は、モデル1の内部に配置された測定機器に接続される。これにより、管状部材4が測定機器に連通し、測定機器は、管状部材4の内部の圧力を測定可能となる。
【0034】
無論、これに限らず、風洞試験では、貫通孔2、貫通孔2に挿入されている管状部材4、及び/又は構造部3を用いて、圧力測定以外の測定が行われてもよい。
[2.第2実施形態]
第2実施形態の自動車のモデル1は、パネル部材10における構造部3の構成において、第1実施形態と相違する(
図4,5参照)。なお、第2実施形態においても、第1実施形態と同様、複数の貫通孔2及び複数の構造部3は、3Dプリンタによりパネル部材10と一体に形成される。
【0035】
すなわち、構造部3は、貫通孔2の軸線A0に沿って第2面13から真っ直ぐに突出する接続部34を備える。なお、第2実施形態では、構造部3は貫通孔2の内周面20に設けられておらず、貫通孔2の断面の形状は一定となっている。
【0036】
接続部34は、円柱状の基部35及び挿入部36を有する。基部35は、第2面13から突出する。一方、挿入部36は、基部35よりも断面が小さく、基部35の先端に位置する端面の中央から突出する。貫通孔2は、板状部11と、基部35及び挿入部36とを貫通すると共に、貫通孔2の軸線A0は、挿入部36の断面の中心と、挿入部36の断面の中心とを通過し、貫通孔2の開口21は、挿入部36の先端に形成される。また、挿入部36の外周面には、挿入部36の先端の周辺に、外側に突出する複数の突起部(図示無し)が形成されている。
【0037】
そして、構造部3の挿入部36は、試験用チューブ5の第1端部に挿入され、これにより、貫通孔2が測定機器に連通し、測定機器は、貫通孔2の内部の圧力を測定可能となる。
【0038】
なお、第2実施形態においては、構造部3とパネル部材10における構造部3の周辺部分とは、同一の樹脂により構成されてもよい。
また、第2実施形態においても、風洞試験では、貫通孔2及び/又は構造部3を用いて、圧力測定以外の測定が行われてもよい。
【0039】
[3.効果]
(1)上記実施形態によれば、貫通孔2及び構造部3が3Dプリンタによりパネル部材10と一体に形成される。このため、3Dプリンタにより形成されたパネル部材10に対し、例えば、後からドリル等により貫通孔を形成したり、構造部3を取り付けたりする必要が無くなる。その結果、作業負荷が低減すると共に、貫通孔2や構造部3の位置を精度良く定めることができる。したがって、風洞試験を行う際の作業負荷を低減しつつ、風洞試験の精度を向上させることができる。
【0040】
(2)また、第1実施形態によれば、構造部3の収容部30と複数の爪部31とにより、貫通孔2への管状部材4の挿入や、貫通孔2に挿入された管状部材4の保持が実現される。このため、管状部材4を貫通孔2に容易に挿入することや、挿入された管状部材4を良好に保持することができる。したがって、風洞試験を行う際の作業負荷を低減できる。
【0041】
(3)また、第1実施形態によれば、2色成型によりパネル部材10を形成することで、複数の爪部31と、パネル部材10における複数の爪部31の周辺部分とは、異なる樹脂で構成される。このため、複数の爪部31を構成する樹脂を適宜選択することで、管状部材4を貫通孔2に挿入する際の容易性や、貫通孔2に挿入された管状部材4を保持するように作用する力の強さを、適宜調整できる。
【0042】
(4)また、第2実施形態によれば、試験用チューブ5と貫通孔2との接続が容易になる。このため、風洞試験を行う際の作業負荷を低減できる。
[4.他の実施形態]
(1)上記実施形態の風洞試験を行うためのモデル1は、4輪の自動車のモデルとなっている。しかし、これに限らず、4輪の自動車以外の車両(例えば、オートバイ等)について、同様にして風洞試験用のモデルを構成してもよい。また、これに限らず、例えば、鉄道車両、航空機、船舶、ドローン等といった移動体について、同様にして風洞試験用のモデルを構成してもよい。さらに、移動体以外の物体(例えば、建築物)についても、同様にして風洞試験用のモデルを構成してもよい。
【0043】
(2)上記実施形態における貫通孔2は、パネル部材10を厚さ方向に沿って真っ直ぐに延びる。しかし、これに限らず、貫通孔2は、厚さ方向に対し傾斜していてもよいし、曲がっていても良い。このような場合であっても、貫通孔2の向きや形状に応じて、構造部3の向きや形状を適宜調整することで、同様の効果が得られる。
【0044】
(3)第1実施形態において、構造部3における爪部31の数は、4個に限らず、2~3個、又は5個以上であってもよい。また、爪部31の数は、1個であってもよい。
また、突出部41は球状となっているが、これに限らず、突出部41は、球状以外の様々な形状を有し得る。また、管状部材4の突出部41は、軸線A1を周回するように設けられている。しかし、突出部41は、軸線A1を周回しない形状であってもよい。つまり、突出部41は、外周面40における軸線A1を周回しない領域に設けられていてもよい。
【0045】
なお、この場合、構造部3の収容部30と、1つ又は複数の爪部31における凹部33とは、突出部41に応じた形状を有する。これにより、管状部材4が貫通孔2に挿入され、突出部41が収容部30に到達した際に、収容部30及び爪部31の凹部33は、突出部41に当接し、第1実施形態と同様にして、挿入された管状部材4が保持される。
【0046】
(4)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…モデル、10…パネル部材、11…板状部、12…第1面、13…第2面、14…骨格部、2…貫通孔、20…内周面、21…開口、3…構造部、30…収容部、31…爪部、32…内側面、33…凹部、34…接続部、35…基部、36…挿入部、4…管状部材、40…外周面、41…突出部、5…試験用チューブ。
【要約】
【課題】風洞試験を行う際の作業負荷を低減しつつ、風洞試験の精度を向上させる。
【解決手段】パネル部材は、3Dプリンタにより形成され、風洞試験に用いられるモデルにおける外面を構成する。パネル部材は、第1面と、第2面と、貫通孔と、構造部と、を備える。第1面は、モデルの外面を形成する。第2面は、第1面の反対側に位置する。貫通孔は、風洞試験に用いられる部分であって、第1面から第2面に向けてパネル部材を貫通する部分である。構造部は、風洞試験のため、貫通孔に対応して設けられる。貫通孔及び構造部は、3Dプリンタによりパネル部材と一体に形成される。
【選択図】
図3