(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】大型ターボ過給式2ストロークユニフロークロスヘッド内燃機関及びその動作方法
(51)【国際特許分類】
F02M 37/00 20060101AFI20240419BHJP
F02B 37/00 20060101ALI20240419BHJP
F02B 39/00 20060101ALI20240419BHJP
F02M 37/12 20060101ALI20240419BHJP
F02M 37/18 20060101ALI20240419BHJP
F02M 37/08 20060101ALI20240419BHJP
F02M 37/06 20060101ALI20240419BHJP
F02M 43/02 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
F02M37/00 341
F02B37/00 302Z
F02B39/00 Z
F02M37/12 D
F02M37/18
F02M37/08
F02M37/06
F02M43/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023183615
(22)【出願日】2023-10-26
【審査請求日】2023-10-26
(32)【優先日】2022-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597061332
【氏名又は名称】エムエーエヌ・エナジー・ソリューションズ・フィリアル・アフ・エムエーエヌ・エナジー・ソリューションズ・エスイー・ティスクランド
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】ソンダースコヴ クリント カスペル
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特許第6650003(JP,B2)
【文献】特開2012-215128(JP,A)
【文献】特開2016-196870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/00
F02B 39/00
F02B 43/00
F02D 19/00
F02M 21/00
F02M 37/00
F02M 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア、メタノール、エタノール、DME、メタン、エタン、LPGのいずれかである代替燃料を主燃料とする少なくとも1つの運転モードを有する大型ターボ過給式2ストロークユニフロークロスヘッド内燃機関であって、前記機関は、
シリンダライナと、前記シリンダライナ内の往復ピストンと、自身をカバーするシリンダカバーとを有する少なくとも1つのシリンダと、
前記シリンダ内の前記往復ピストンと前記シリンダカバーとの間に形成される燃焼室と、
前記シリンダ内に代替燃料を導入するために前記シリンダカバー又は前記シリンダライナ内に配される少なくとも1つの燃料弁に加圧された代替燃料を供給するように構成され、複数の油圧式燃料ポンプを有する代替燃料システムと、
前記機関が従来型燃料で運転されるときに使用される従来型燃料システムであって、電気式及び/又は油圧式の複数の燃料ポンプを具備する従来型燃料システムと、
前記燃焼室から排気ガスを排出する排気弁を有する排気システムと、
タービンとシャフトを有するターボ過給機であって、前記タービンが排気ガスによって駆動され、前記シャフトを介して掃気用のコンプレッサを駆動するターボ過給機と、
を備えると共に、
前記ターボ過給機の前記シャフトに連結される油圧ポンプであって、前記機関が代替燃料を主燃料として運転されるときに、前記代替燃料システムの前記油圧式燃料ポンプの少なくとも一部に油圧を供給する油圧ポンプを備え、
前記複数の油圧式燃料ポンプは少なくとも第1の油圧式燃料ポンプ及び第2の油圧式燃料ポンプを含み、前記第1の油圧式燃料ポンプは、代替燃料貯蔵タンクに貯蔵されている代替燃料を前記第2の油圧式燃料ポンプへと圧送するように構成され、前記第2の油圧式燃料ポンプは前記第1の油圧式燃料ポンプから圧送された代替燃料を前記少なくとも1つの燃料弁に圧送するように構成され、
前記第1の油圧式燃料ポンプ及び前記第2の油圧式燃料ポンプは前記油圧ポンプから油圧の供給を受けるように構成され
、
前記少なくとも1つの燃料弁は、前記油圧ポンプから油圧の供給を受けるように構成される第3の油圧式燃料ポンプを備える、
ことを特徴とする、機関。
【請求項2】
前記代替燃料システムは、電気式及び/又は油圧式の複数の追加燃料ポンプを更に有する、請求項1に記載の機関。
【請求項3】
機関が代替燃料で運転されるときに使用されるパイロット燃料システムを備え、前記パイロット燃料システムは、電気式及び/又は油圧式で作動する複数の燃料ポンプを具備する、請求項1に記載の機関。
【請求項4】
複数の追加油圧ポンプを具備する請求項1に記載の機関であって、
前記油圧ポンプは、前記機関から取り出した動力によって駆動される、機関。
【請求項5】
前記動力は、前記油圧ポンプを機関のクランクシャフトに接続するチェーンドライブ又はギアドライブを通じて取り出される、請求項4に記載の機関。
【請求項6】
請求項1に記載の機関であって、前記機関のすべての油圧式燃料ポンプ、すなわち代替燃料ポンプ、パイロット燃料ポンプ、及び従来型燃料ポンプは、ターボ過給機のシャフトに連結された油圧ポンプによって駆動される、機関。
【請求項7】
アンモニア、メタノール、エタノール、DME、メタン、エタン、LPGのいずれかである代替燃料を主燃料とする少なくとも1つの運転モードを有する大型ターボ過給式2ストロークユニフロークロスヘッド内燃機関であって、前記機関は、
シリンダライナと、前記シリンダライナ内の往復ピストンと、自身をカバーするシリンダカバーとを有する少なくとも1つのシリンダと、
前記シリンダ内の前記往復ピストンと前記シリンダカバーとの間に形成される燃焼室と、
前記シリンダ内に代替燃料を導入するために前記シリンダカバー又は前記シリンダライナ内に配される少なくとも1つの燃料弁に加圧された代替燃料を供給するように構成され、複数の油圧式燃料ポンプを有する代替燃料システムと、
前記機関が従来型燃料で運転されるときに使用される従来型燃料システムであって、電気式及び/又は油圧式の複数の燃料ポンプを具備する従来型燃料システムと、
前記燃焼室から排気ガスを排出する排気弁を有する排気システムと、
タービンとシャフトを有するターボ過給機であって、前記タービンが排気ガスによって駆動され、前記シャフトを介して掃気用のコンプレッサを駆動するターボ過給機と、
を備えると共に、
前記ターボ過給機の前記シャフトに連結される油圧ポンプであって、前記機関が代替燃料を主燃料として運転されるときに、前記代替燃料システムの前記油圧式燃料ポンプの少なくとも一部に油圧を供給する油圧ポンプを備え、
前記複数の油圧式燃料ポンプは少なくとも第1の油圧式燃料ポンプ及び第2の油圧式燃料ポンプを含み、前記第1の油圧式燃料ポンプは、代替燃料貯蔵タンクに貯蔵されている代替燃料を前記第2の油圧式燃料ポンプへと圧送するように構成され、前記第2の油圧式燃料ポンプは前記第1の油圧式燃料ポンプから圧送された代替燃料を前記少なくとも1つの燃料弁に圧送するように構成され、
前記第1の油圧式燃料ポンプ及び前記第2の油圧式燃料ポンプは前記油圧ポンプから油圧の供給を受けるように構成され、
前記油圧式燃料ポンプは、前記シリンダ内に代替燃料を導入するための少なくとも1つの燃料弁であって、前記シリンダカバー内又は前記シリンダライナ内に配置される燃料弁の中に配される
、
機関。
【請求項8】
前記代替燃料システムは油圧駆動式高圧燃料ポンプを備える、請求項1に記載の機関。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれかに記載の機関を動作させる方法であって、
前記機関は、アンモニア、メタノール、エタノール、DME、メタン、エタン、LPGのいずれかである代替燃料を主燃料とする少なくとも1つの運転モードを有すると共に、
シリンダライナと、前記シリンダライナ内の往復ピストンと、自身をカバーするシリンダカバーとを有する少なくとも1つのシリンダと、
前記シリンダ内の前記往復ピストンと前記シリンダカバーとの間に形成される燃焼室と、
前記シリンダ内に代替燃料を導入するために前記シリンダカバー又は前記シリンダライナ内に配される少なくとも1つの燃料弁に加圧された代替燃料を供給するように構成され、複数の油圧式燃料ポンプを有する代替燃料システムと、
前記燃焼室から排気ガスを排出する排気弁を有する排気システムと、
タービンとシャフトを有するターボ過給機であって、前記タービンが排気ガスによって駆動され、前記シャフトを介して掃気用のコンプレッサを駆動するターボ過給機と、
を備え、
前記機関が代替燃料を主燃料として運転されるときに、前記ターボ過給機の前記シャフトに連結される油圧ポンプから、前記代替燃料システムの前記油圧式燃料ポンプに、油圧が供給されることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニア、メタノール、エタノール、DME、メタン、エタンまたはLPGなどの代替燃料を主燃料とする少なくとも1つの運転モードを有する大型ターボ過給式2ストロークユニフロークロスヘッド内燃機関に関する。この機関は、シリンダライナと、前記シリンダライナ内の往復ピストンと、自身をカバーするシリンダカバーとを有する少なくとも1つのシリンダと、前記シリンダ内の前記往復ピストンと前記シリンダカバーとの間に形成される燃焼室と、前記シリンダ内に代替燃料を導入するために前記シリンダカバー又は前記シリンダライナ内に配される少なくとも1つの燃料弁に加圧された代替燃料を供給するように構成され、複数の油圧式燃料ポンプを有する代替燃料システムと、前記燃焼室から排気ガスを排出する排気弁を有する排気システムと、タービンとシャフトを有するターボ過給機であって、前記タービンが排気ガスによって駆動され、前記シャフトを介して掃気用のコンプレッサを駆動するターボ過給機とを備える。
【発明の背景】
【0002】
大型ターボ過給式2ストロークユニフロークロスヘッド内燃機関は、通常、コンテナ船などの大型外航船や発電所の原動機として使用される。このタイプのエンジンは、重油や、ディーゼルのような燃料油で運転されることが非常に多い。
【0003】
近年、大型2ストロークディーゼル機関において、アンモニア、メタノール、エタノール、LPG、メタン、エタン、DMEなどの、別の種類の燃料を扱えるようにすることが求められてきている。燃料油のみで運転する燃料油モードと、代替燃料とパイロット燃料油で運転する代替燃料モードの両方で運転可能な機関は、しばしば二元燃料機関と呼ばれる。二元燃料機関は、例えば重油やディーゼルなどの従来型燃料と、前述の代替燃料のうち環境に優しい可能性のある燃料の両方で運転できることが要求される。そのため、使用する燃料の種類ごとに専用の燃料供給・噴射システムが必要となる。この2つの燃料供給・噴射システムの要件は、機関製造のための初期コストを大幅に増加させ、機関の複雑さと維持コストを増大させる。しかし、油圧ポンプのような装置の一部は、燃料を加圧する燃料ポンプに油圧を供給するために、燃料供給システムと噴射システムの両方に関連して使用することができる。
【0004】
主燃料が代替燃料である少なくとも1つの運転モードを有する二元燃料機関は全て、これらの代替燃料のための独立した燃料システムを有している。これらの代替燃料の発熱量は、重油や軽油のような従来型燃料に比べてはるかに低い。そのため、代替燃料で運転する場合に同じ機関出力を得るためには、従来型燃料で運転する場合よりも大量の燃料を代替燃料システムを通して汲み上げ、機関のシリンダに噴射しなければならない。そのため、このような二元燃料機関には、油圧パワーサプライ(Hydraulic Power Supply,HPS)の容量を増やす需要がある。このような二元燃料機関のHPS容量の増大は、既存のHPSチェーンドライブでは対応できないほどのポンプ数とサイズの増大を要求することになる。必要な容量が増えると、HPSに供給されるパワーも大きくなり、代替燃料運転時のSFOC(Specific Fuel Oil Consumption,比燃料油消費量)が増加する。
【0005】
本発明はまた、上に記載され、また添付の特許請求の範囲に記載されるような、大型ターボ過給式2ストロークユニフロークロスヘッド内燃機関を運転する方法に関する。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、冒頭で述べた種類の大型ターボ過給式2ストロークユニフロークロスヘッド内燃機関であって、油圧供給能力の増大要求に関する上述の課題を少なくとも大幅に低減する内燃機関を提供することである。
【0007】
上述の課題やその他の課題が、独立請求項に記載の特徴により解決される。より具体的な実装形態は、従属請求項や明細書、図面から明らかになるだろう。
【0008】
第1の捉え方によれば、アンモニア、メタノール、エタノール、DME、メタン、エタンまたはLPGなどの代替燃料を主燃料とする少なくとも1つの運転モードを有する大型ターボ過給式2ストロークユニフロークロスヘッド内燃機関が提供される。この機関は、
シリンダライナと、前記シリンダライナ内の往復ピストンと、自身をカバーするシリンダカバーとを有する少なくとも1つのシリンダと、
前記シリンダ内の前記往復ピストンと前記シリンダカバーとの間に形成される燃焼室と、
前記シリンダ内に代替燃料を導入するために前記シリンダカバー又は前記シリンダライナ内に配される少なくとも1つの燃料弁に加圧された代替燃料を供給するように構成され、複数の油圧式燃料ポンプを有する代替燃料システムと、
前記燃焼室から排気ガスを排出する排気弁を有する排気システムと、
タービンとシャフトを有するターボ過給機であって、前記タービンが排気ガスによって駆動され、前記シャフトを介して掃気用のコンプレッサを駆動するターボ過給機と、
を備えると共に、前記ターボ過給機の前記シャフトに連結される油圧ポンプであって、前記機関が代替燃料を主燃料として運転されるときに、前記代替燃料システムの前記油圧式燃料ポンプの少なくとも一部に油圧を供給する油圧ポンプを備えることを特徴とする。
【0009】
従って、代替燃料での運転に必要なHPS容量は、SFOCを増加させることなく、又はSFOCの増加を最小限に抑えて、達成することができる。これは、ターボ過給機によって駆動される油圧ポンプによって、排気ガス中のエネルギーの一部を回収して油圧に変換することで、追加的に必要な油圧を得ることができるからである。
【0010】
代替燃料システムはさらに、電気式及び/又は油圧式の複数の追加燃料ポンプを有してもよい。
【0011】
前記機関は、該機関が代替燃料で運転されるときに使用されるパイロット燃料システムを備えてもよい。このパイロット燃料システムは、電気式及び/又は油圧式で作動する複数の燃料ポンプを具備してもよい。
【0012】
前記機関は更に、該機関が従来型燃料で運転されるときに使用される従来型燃料システムを備えていてもよい。この従来型燃料システムは、電気式及び/又は油圧式の複数の燃料ポンプを具備してもよい。
【0013】
前記機関は、複数の追加油圧ポンプを具備してもよい。これらの油圧ポンプは、機関から取り出した動力によって、例えば、これらの油圧ポンプを機関のクランクシャフトに接続するチェーンドライブ又はギアドライブによって、駆動される。
【0014】
前記機関のすべての油圧式燃料ポンプ、すなわち代替燃料ポンプ、パイロット燃料ポンプ、及び従来型燃料ポンプは、ターボ過給機のシャフトに連結された油圧ポンプによって駆動されてもよい。
【0015】
本発明の好ましい実施形態において、油圧式燃料ポンプは、シリンダ内に代替燃料を導入するための少なくとも1つの燃料弁内に配置されてもよい。この燃料弁はシリンダカバー内又はシリンダライナ内に配置される。
【0016】
前記機関は、前記排気弁を作動させるために、油圧駆動型の排気弁作動システムを備えてもよい。このシステムは、機関が従来型燃料で運転されているときと、代替燃料で運転されているときの両方で作動する。前記ターボ過給機の前記シャフトに連結されている前記油圧ポンプは、前記排気弁作動システムに油圧を供給するように構成される。
【0017】
前記機関は、従来型燃料供給システム、代替燃料供給システム、排気弁作動システム、及び油圧ポンプの動作を制御するように構成される電子制御ユニットを備えてもよい。この電子制御ユニットは、従来型燃料から代替燃料への運転切り替えの指示を受けて、従来型燃料供給システムを徐々に停止し、代替燃料供給システムを始動させ、油圧ポンプによって供給される油圧の一部を、従来型燃料供給システムから代替燃料供給システムに振り向けるように構成される。
【0018】
更に電子制御ユニットは、代替燃料から従来燃料への運転切り替えの指示を受けると、従来燃料供給システムを始動し、代替燃料供給システムを徐々に停止し、油圧ポンプによって供給される油圧の一部を代替燃料供給システムから従来燃料供給システムに振り向けるように構成される。
【0019】
前記代替燃料供給システムは、油圧駆動式高圧燃料ポンプを備えてもよい。
【0020】
第2の捉え方によれば、アンモニア、メタノール、エタノール、DME、メタン、エタンまたはLPGなどの代替燃料を主燃料とする少なくとも1つの運転モードを有する大型ターボ過給式2ストロークユニフロークロスヘッド内燃機関を動作させる方法が提供される。ここで前記機関は、
シリンダライナと、前記シリンダライナ内の往復ピストンと、自身をカバーするシリンダカバーとを有する少なくとも1つのシリンダと、
前記シリンダ内の前記往復ピストンと前記シリンダカバーとの間に形成される燃焼室と、
前記シリンダ内に代替燃料を導入するために前記シリンダカバー又は前記シリンダライナ内に配される少なくとも1つの燃料弁に加圧された代替燃料を供給するように構成され、油圧式燃料ポンプを有する代替燃料システムと、
前記燃焼室から排気ガスを排出する排気弁を有する排気システムと、
タービンとシャフトを有するターボ過給機であって、前記タービンが排気ガスによって駆動され、前記シャフトを介して掃気用のコンプレッサを駆動するターボ過給機と、
を備え、前記機関が代替燃料を主燃料として運転されるときに、前記ターボ過給機の前記シャフトに連結される油圧ポンプから、前記代替燃料システムの前記油圧式燃料ポンプに、油圧が供給されることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
以下、図面に示される例示的な実施形態を参照しつつ、本発明をより詳細に説明する。
【
図1】ある例示的実施形態に従う大型2ストロークディーゼル機関を正面方向から見た概観を示す図である。
【
図2】
図1の大型2ストローク機関を背面方向から見た概観を示す。
【
図3】
図1の大型2ストローク機関の略図表現である。
【
図4】
図3に示した代替燃料システムを模式的に示している。
【詳細説明】
【0022】
以下の詳細説明において、大型ターボ過給式2ストローククロスヘッド内燃機関について本発明を説明する。ただし実施形態によっては、内燃機関は別のタイプの機関で有り得ることに注意されたい。大型ターボ過給式2ストロークユニフロークロスヘッド内燃機関は、高圧タイプであってもよく、また低圧タイプであってもよい。高圧タイプの場合、燃料がピストンの上死点又は上死点近傍で噴射され、圧縮着火される。ただし典型的には、確実な点火を保証するために、点火液、例えば燃料油を用いたパイロット点火も用いられる。低圧タイプの場合、ピストンが上死点に向かう途中で比較的低い圧力で燃料が導入される。
【0023】
図1-
図3は、ターボ過給式大型低速2ストロークディーゼル機関を描いている。このエンジンは、クランクシャフト8及びクロスヘッド9を有する。
図3は、ターボ過給式大型低速2ストロークディーゼル機関を、その吸気システム及び排気システムと共に略図により表現したものである。この実施例において、機関は直列に6本のシリンダを有する。ターボ過給式大型低速2ストロークディーゼル機関は通常、直列に配される4から14のシリンダを有する。これらのシリンダはシリンダフレーム23に担持される。シリンダフレーム23は機関フレーム11に担持される。またこのような機関は、例えば、船舶の主機関や、発電所において発電機を動かすための据え付け型の機関として用いられることができる。機関の全出力は、例えば1、000-110、000kWの範囲でありうる。
【0024】
この実施形態の機関は2ストロークユニフロー式圧縮着火型二元エンジンである。各シリンダライナ1には、その下部領域に掃気ポート18が設けられ、その頂部中央には排気弁が配される。この機関は、アンモニア、メタノール、エタノール、DME、メタン、エタン又はLPGなどの代替燃料で運転される少なくとも1つの代替燃料モードと、燃料油(船舶用ディーゼル)又は重油などの従来型燃料で運転される少なくとも1つの従来型燃料モードとを有する。
【0025】
掃気空気は、掃気受け2から、各シリンダ1の掃気ポート18に送られる。ピストン10は、シリンダライナ1中で下死点(BDC)と上死点(TDC)の間を往復し、掃気空気を圧縮する。図示される実施形態では、代替燃料モードにおいて、アンモニア、メタノール、エタノール、DME、メタン、エタン又はLPGなどの代替燃料の形態の燃料が、代替燃料供給システム30から、シリンダカバー22に配置された高圧燃料弁50を通って、TDC又はその近傍でシリンダライナ1内の燃焼室に噴射される。別の実施形態では、代替燃料は、掃気ポート18とTDCの間のどこかで、シリンダライナに配置された燃料弁50'を通して導入されてもよい。燃焼が生じ、排気ガスが生成される。各シリンダカバー22には2つ以上の燃料弁50が設けられる。燃料弁50は、特定の1つのタイプの燃料(例えばアンモニア)のみを噴射するように構成されてもよい。その場合、燃焼室内に従来燃料を噴射するための燃料弁50も1つ以上設けられるだろう。従って、機関は2つ又はそれ以上の燃料弁を有するだろう。燃料弁50がアンモニア等の代替燃料と従来燃料の両方を噴射しうるように構成されている場合、各シリンダに設けられる燃料弁50の数は1つ以上でありうる。燃料弁50は、シリンダカバー22において、シリンダカバー22の中央部に配される排気弁4の周囲に配される。図示されていないが、実施例によっては、代替燃料を確実に点火するために点火液を噴射するように構成される、追加の(通常は小さな)燃料弁がシリンダカバーに配されてもよい。点火液は通常のディーゼル燃料であるが、ジメチルエーテル(DME)や水素のような、他の形の点火促進剤であってもよい。機関は二元燃料機関であるため、燃料弁50に従来型燃料を供給するための従来型燃料供給システム80も備えている。実施形態によっては、アンモニア燃料の点火を確実にするという目的のために、この従来型燃料噴射システム80を使用することもできる。
【0026】
排気弁4が開くと、排気は、シリンダ1に設けられる排気ダクトを通って排気受け3へと流れ、さらに選択触媒還元リアクター(SCRリアクター)28を通って第1の排気管19を通り、ターボ過給器5のタービン6へと進む。そこから排気は、第2の排気管25を通ってエコノマイザ20へ流れ、さらに出口21から大気中へと放出される。SCRリアクターは排気中の排出物、特にNOxの排出量を低減する。
【0027】
タービン6は、シャフト24を介してコンプレッサ7を駆動する。コンプレッサ9には、空気取り入れ口12を通じて外気が供給される。コンプレッサ7は、圧縮された掃気空気を、掃気受け2に繋がる掃気管13へと送り込む。掃気管13の掃気は、掃気を冷却するためのインタークーラー14を通過する。
【0028】
冷却された掃気は、電気モーター17により駆動される補助ブロワ16を通る。補助ブロワ16は、ターボ過給機5のコンプレッサ7が掃気受け2のために十分な圧力を提供できない場合、すなわち機関が低負荷又は部分負荷である場合に、掃気流を圧縮する。機関の負荷が高い場合は、ターボ過給機のコンプレッサ7が、十分に圧縮された掃気を供給することができるので、補助ブロワ16は逆止め弁15によってバイパスされ、電気モーター17は停止される。
【0029】
代替燃料供給システムを
図4に示す。従来型燃料供給システム80についてはよく知られているので、図示されておらず、また詳細な説明もなされない。代替燃料システム30は、中程度の供給圧力(例えば、30-80barの圧力)で、液相の代替燃料を燃料弁50に供給する。機関は圧縮着火式であり、燃料弁50は、油圧式燃料ポンプ61の形態の昇圧装置を備えている。油圧式燃料ポンプ61は燃料弁50内に配置される。油圧式燃料ポンプ61は、代替燃料の圧力を中圧から高圧へと大幅に上昇させ、機関の圧縮圧力を十分に上回る圧力で代替燃料を噴射できるようにする。通常、圧縮着火型機関の噴射圧力は300barより高い。
【0030】
代替燃料システム30は
図4に更に詳細に開示されている。代替燃料は、適切な圧力(アンモニアの場合は17bar)で加圧貯蔵タンク31に液相で貯蔵される。アンモニアは、外気温20℃において8.6bar以上であればアンモニア貯蔵タンク31に液相で貯蔵することができる。しかし、外気温が上昇しても液相を保たせるためには、17bar以上でアンモニアを貯蔵することが好ましい。
【0031】
低圧代替燃料供給ライン32が、代替燃料貯蔵タンク31の出口と中圧供給ポンプ35の入口を繋いでいる。低圧供給ポンプ33は、タンク31からの液相代替燃料がフィルタ装置34を通って中圧供給ポンプ35の入口に達するように圧力をかける。中圧供給ポンプ35は、中圧代替燃料供給ライン36から燃料弁50へと液相代替燃料を圧送する。燃料弁50へと供給される液相代替燃料の一部は機関の燃焼室に噴射されるが、別の部分は代替燃料戻しラインライン38に戻される。代替燃料戻しライン38は、燃料弁50の戻しポートを低圧供給ライン32に繋いでいる。従って、液相代替燃料の一部は中圧供給ポンプ35の入口へと再循環される。
【0032】
例えば代替燃料システム30の故障や、従来型燃料に切り替えるための別の理由によって代替燃料での運転が中止されると、代替燃料システム30は、システムから代替燃料を除去するために、例えばパージバルブ88を通じて、貯蔵タンク89からの窒素によってパージされる。パージシステムはよく知られており、ここでは詳しく説明しない。
【0033】
好適な実施形態において、低圧代替燃料供給ライン32、中圧代替燃料供給ライン36、代替燃料戻しライン38は、完全に又は部分的に、内側パイプと外側パイプの間に空間を有する二重壁パイプとして構成される。そして好ましくは、内側チューブと外側チューブの間の空間における代替燃料の存在を検出する検出システムが設けられる。そして、当該空間内で代替燃料が検出されたときは、機関の代替燃料による運転を停止するようにすることを可能にし、続いて代替燃料システムをパージする。代替燃料がアンモニアの場合、残留アンモニアを図示されないアンモニア吸収システムにより吸収してもよい。
【0034】
本発明によれば、機関は、ターボ過給機5のシャフト24に連結される油圧ポンプ62を備える。油圧ポンプ62は、機関が代替燃料を主燃料として運転されるときに、代替燃料システム30の油圧式燃料ポンプの少なくとも一部に、油圧管60を通じて油圧を供給する。
【0035】
このように、ターボ過給機によって駆動される油圧ポンプによって、排気ガス中のエネルギーの一部を回収して油圧に変換することで、必要な油圧を得ることができる。
【0036】
図示される好適な実施形態において、油圧式燃料ポンプ61は、シリンダ内に代替燃料を導入するための燃料弁50の中に配される。燃料弁50は、シリンダカバー22又はシリンダライナ1に配置されている。
【0037】
それに加えて、又はその代わりに、代替燃料システム30の低圧供給ポンプ33と中圧供給ポンプ35は、油圧管60を経由して油圧ポンプ62から供給される油圧によって油圧駆動されてもよい。
【0038】
多くの場合、機関は、代替燃料で運転するときに使用する、パイロット燃料システムを備えている。(これは図示されていない。)このようなパイロット燃料システムは多数の燃料ポンプを有してもよい。これらの燃料ポンプは、油圧管60を経由して油圧ポンプ62から供給される油圧によって油圧駆動されてもよい。
【0039】
さらに、機関が従来の燃料で運転される場合に使用される従来型燃料システム80も、図示されていない多数の燃料ポンプを備えてもよく、これらの燃料ポンプも、油圧管60を経由して油圧ポンプ62から供給される油圧によって油圧駆動されてもよい。
【0040】
前記機関は、複数の追加の油圧ポンプを具備してもよい。(これらは図示されていない。)これらの油圧ポンプは、機関から取り出した動力によって、例えば、これらの油圧ポンプを機関のクランクシャフトに接続するチェーンドライブ又はギアドライブによって、駆動される。
【0041】
このため、機関のすべての油圧式燃料ポンプ、すなわち代替燃料ポンプ、パイロット燃料ポンプ、及び従来型燃料ポンプは、ターボ過給機のシャフトに連結された油圧ポンプによって駆動されてもよい。
【0042】
前記機関は、排気弁4を作動させるために、油圧駆動型の排気弁作動システムを備えてもよい。(これは図示されていない。)このシステムは、機関が従来型燃料で運転されているときと、代替燃料で運転されているときの両方で作動する。ターボ過給機5のシャフト24に連結されている油圧ポンプ62は、排気弁作動システムに油圧を供給するように構成される。
【0043】
前記機関は、従来型燃料供給システム80、代替燃料供給システム30、排気弁作動システム、及び油圧ポンプ62の動作を制御するように構成される電子制御ユニットを備えてもよい。この電子制御ユニットは、従来型燃料から代替燃料への運転切り替えの指示を受けて、従来型燃料供給システムを徐々に停止し、代替燃料供給システムを始動させ、油圧ポンプ62によって供給される油圧の一部を、従来型燃料供給システム80から代替燃料供給システム30に振り向けるように構成される。
【0044】
燃料システム30や従来型燃料システム80のポンプやバルブ、またアンモニア吸収システムが搭載されている場合はそのポンプやバルブには、図示されない電子制御ユニットが、有線又は無線で接続されている。電子制御ユニットは、例えばポンプのスピードを調節したりバルブの開閉を制御したりすることにより、これらの要素を制御するように構成される。そうして、燃料システムやパージシステム、アンモニア吸収システムが、上述のように動作することを可能とする。
【要約】 (修正有)
【課題】アンモニア、メタノール、エタノール、DME、メタン、エタン、LPGなどの代替燃料を主燃料とする大型ターボ過給式2ストロークユニフロークロスヘッド内燃機関において、代替燃料での運転に必要なHPS容量を、SFOCを増加させることなく、最小限に抑える。
【解決手段】この機関は、燃料弁に加圧された代替燃料を供給するように構成され、複数の油圧式燃料ポンプ33,35を有する代替燃料システム30と、ターボ過給機のシャフトに連結される油圧ポンプであって、代替燃料を主燃料として運転されるときに、油圧式燃料ポンプに油圧を供給する油圧ポンプ62とを備える。この油圧ポンプは、排気ガス中のエネルギーの一部を回収して油圧に変換し、追加的に必要な油圧を得ることができる。
【選択図】
図4