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特許7475531半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルム
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  • 特許-半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240419BHJP
   C08L 35/02 20060101ALI20240419BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240419BHJP
   B29C 55/04 20060101ALI20240419BHJP
   B29C 55/12 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
C08J5/18 CES
C08J5/18 CET
C08J5/18 CEW
C08L35/02
C08L101/00
B29C55/04
B29C55/12
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023195237
(22)【出願日】2023-11-16
【審査請求日】2023-11-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100127247
【弁理士】
【氏名又は名称】赤堀 龍吾
(74)【代理人】
【識別番号】100152331
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 拓
(72)【発明者】
【氏名】和泉 英二
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕卓
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-171595(JP,A)
【文献】特開2023-034236(JP,A)
【文献】特許第7235936(JP,B1)
【文献】特開2013-189493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 55/00-55/30
C08J 5/18
H01L 23/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
180℃以上の融点を有する結晶性樹脂(A)と、
アクリル系共重合体(B)と、を含有し、
前記結晶性樹脂(A)が、シンジオタクチックポリスチレンを含む
半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルム。
【請求項2】
180℃以上の融点を有する結晶性樹脂(A)と、
アクリル系共重合体(B)と、を含有し、
前記結晶性樹脂(A)と前記アクリル系共重合体(B)との合計量を100質量部としたとき、
前記結晶性樹脂(A)の含有量が80~99質量部であり、
前記アクリル系共重合体(B)の含有量が1~20質量部であ
半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルム。
【請求項3】
180℃以上の融点を有する結晶性樹脂(A)と、
アクリル系共重合体(B)と、を含有し、
前記アクリル系共重合体(B)が、第1の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、それとは異なる構造の第2の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体であ
半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルム。
【請求項4】
180℃以上の融点を有する結晶性樹脂(A)と、
アクリル系共重合体(B)と、を含有し、
前記アクリル系共重合体(B)が、10万以上600万以下の重量平均分子量(Mw)を有する
半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルム。
【請求項5】
前記結晶性樹脂(A)が、結晶性フッ素樹脂、結晶性非環状オレフィン樹脂、及び結晶性ポリスチレン樹脂よりなる群から選択される1種以上を含む
請求項2~4のいずれか一項に記載の半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルム。
【請求項6】
前記結晶性樹脂(A)が、エチレン-テトラフルオロエチレン系共重合体(ETFE)、4-メチル-1-ペンテン(共)重合体(PMP)、及びシンジオタクチックポリスチレン(S-PS)よりなる群から選択される1種以上を含む
請求項2~4のいずれか一項に記載の半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルム。
【請求項7】
前記結晶性樹脂(A)が、シンジオタクチックポリスチレンを含む
請求項2~4のいずれか一項に記載の半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルム。
【請求項8】
前記結晶性樹脂(A)と前記アクリル系共重合体(B)との合計量を100質量部としたとき、
前記結晶性樹脂(A)の含有量が80~99質量部であり、
前記アクリル系共重合体(B)の含有量が1~20質量部である
請求項1、3及び4のいずれか一項に記載の半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルム。
【請求項9】
前記結晶性樹脂(A)は、3~20g/10分のメルトフローレート(MFR、JIS K7210:1999準拠、300℃、1.2kg荷重)及び200~275℃の融点を有する
請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルム。
【請求項10】
前記アクリル系共重合体(B)が、第1の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、それとは異なる構造の第2の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体である
請求項1、2及び4のいずれか一項に記載の半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルム。
【請求項11】
前記アクリル系共重合体(B)が、炭素原子数1~3の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと炭素原子数4以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体である
請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルム。
【請求項12】
前記アクリル系共重合体(B)が、メチルメタクリレート単位、n-ブチルメタクリレート単位、n-ブチルアクリレート単位及びイソブチルメタクリレート単位からなる群より選ばれる2種類以上の単位を有する共重合体である
請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルム。
【請求項13】
前記アクリル系共重合体(B)が、10万以上600万以下の重量平均分子量(Mw)を有する
請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルム。
【請求項14】
前記アクリル系共重合体(B)が、10万以上100万以下の重量平均分子量(Mw)を有する
請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルム。
【請求項15】
10μm以上300μm以下のフィルム厚みを有する
請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルム。
【請求項16】
一軸延伸フィルム又は二軸延伸フィルムである
請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルム。
【請求項17】
モールド成型用離型フィルムである
請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルム等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多層プリント配線板やフレキシブルプリント配線板等の各種パッケージ基板上の半導体素子の樹脂モールド工程時において、樹脂が硬化した後の封止樹脂と金型との離型性を得るために離型フィルムが一般的に用いられている(特許文献1及び2参照)。
【0003】
この種の離型フィルムとしては、比較的に耐熱性、離型性、及び金型追従性に優れるエチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂フィルム等が広く用いられている。また、その他には、ポリスチレン(PS)やポリメチルペンテン(PMP)等の非フッ素樹脂フィルム、又はシンジオタクチックポリスチレン系樹脂を含有するフィルム等の利用も検討されている。
【0004】
例えば特許文献3には、一層以上の基材層Cと、前記基材層Cを挟持し、4-メチル-1-ペンテン系重合体を主成分として含む一対の最外層Aと、前記基材層Cと前記最外層Aとを接着させる一対の接着層Bとを有する、半導体樹脂パッケージ製造用金型離型フィルムが開示されている。
【0005】
また、特許文献4には、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂を含有する二軸配向フィルムであって、少なくとも片面が転写面であり、前記転写面が、マット化されていることを特徴とする転写フィルムが開示されている。
【0006】
さらに、特許文献5には、パラフィン及び炭化水素樹脂、脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、脂肪アルコール、脂肪酸と多価アルコールの部分エステル、複合系滑剤等の滑剤とシンジオタクチックポリスチレン系樹脂とを含む組成物から形成された二軸配向フィルムであることを特徴とする離型フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2000-167841号公報
【文献】特開2001-250838号公報
【文献】国際公開第2010/023907号
【文献】特開2013-216779号公報
【文献】特許第5918604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献3に記載の4-メチル-1-ペンテン系重合体を用いた積層フィルムは、耐熱性及び離型性の改善が期待されたものの、実際には耐熱性が十分ではなく、転写フィルム自体が金型やロールに融着する、熱変形が大きく被成型材料の成型や薄膜層の積層工程或いは積層された薄膜層の熱処理工程で悪影響を及ぼす、等の問題があった。
【0009】
また、特許文献4に記載のシンジオタクチックポリスチレン樹脂系フィルムは、実際には、プレス条件や樹脂の種類や処方によっては、フィルムと被成型材料との間で十分な離型性が得られない場合があった。
【0010】
さらに、特許文献5に記載の離型フィルムでは、滑剤の配合によって金型追従性や離型性の改善が期待されたものの、実際には、この滑剤が離型フィルム表面にブリードアウトされやすく、樹脂モールド部の外観不良や金型汚染等を引き起こすといった、取り扱い上の新たな問題が生じた。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、封止樹脂と金型との離型性や金型追従性に優れるのみならず、樹脂モールド成型等の半導体封止プロセスの際に必要とされる耐熱性を有し、さらに取扱性(特に滑剤の離型フィルム表面へのブリードアウトされにくさに起因する。ブリード性ともいう。)に優れる、半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく各種離型フィルムを鋭意検討した結果、180℃以上の融点を有する結晶性樹脂(A)とアクリル系共重合体(B)とを含有する熱可塑性離型フィルムを新たに開発し、これを半導体封止プロセス用の離型フィルムとして用いることで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、以下に示す種々の具体的態様を提供する。
(1)180℃以上の融点を有する結晶性樹脂(A)と、
アクリル系共重合体(B)と、を含有する
半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルム。
【0014】
(2)前記結晶性樹脂(A)が、結晶性フッ素樹脂、結晶性非環状オレフィン樹脂、及び結晶性ポリスチレン樹脂よりなる群から選択される1種以上を含む
(1)に記載の半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルム。
【0015】
(3)前記結晶性樹脂(A)が、エチレン-テトラフルオロエチレン系共重合体(ETFE)、4-メチル-1-ペンテン(共)重合体(PMP)、及びシンジオタクチックポリスチレン(S-PS)よりなる群から選択される1種以上を含む
(1)又は(2)に記載の半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルム。
【0016】
(4)前記結晶性樹脂(A)が、シンジオタクチックポリスチレンを含む
(1)~(3)のいずれか一項に記載の半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルム。
【0017】
(5)前記結晶性樹脂(A)と前記アクリル系共重合体(B)との合計量を100質量部としたとき、
前記結晶性樹脂(A)の含有量が80~99質量部であり、
前記アクリル系共重合体(B)の含有量が1~20質量部である
(1)~(4)のいずれか一項に記載の半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルム。
【0018】
(6)前記結晶性樹脂(A)は、3~20g/10分のメルトフローレート(MFR、JIS K7210:1999準拠、300℃、1.2kg荷重)及び200~275℃の融点を有する
(1)~(5)のいずれか一項に記載の半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルム。
【0019】
(7)前記アクリル系共重合体(B)が、第1の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、それとは異なる構造の第2の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体である
(1)~(6)のいずれか一項に記載の半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルム。
【0020】
(8)前記アクリル系共重合体(B)が、炭素原子数1~3の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと炭素原子数4以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体である
(1)~(7)のいずれか一項に記載の半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルム。
【0021】
(9)前記アクリル系共重合体(B)が、メチルメタクリレート単位、n-ブチルメタクリレート単位、n-ブチルアクリレート単位及びイソブチルメタクリレート単位からなる群より選ばれる2種類以上の単位を有する共重合体である
(1)~(8)のいずれか一項に記載の半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルム。
【0022】
(10)前記アクリル系共重合体(B)が、10万以上600万以下の重量平均分子量(Mw)を有する
(1)~(9)のいずれか一項に記載の半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルム。
【0023】
(11)前記アクリル系共重合体(B)が、10万以上100万以下の重量平均分子量(Mw)を有する
(1)~(10)のいずれか一項に記載の半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルム。
【0024】
(12)10μm以上300μm以下のフィルム厚みを有する
(1)~(11)のいずれか一項に記載の半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルム。
【0025】
(13)一軸延伸フィルム又は二軸延伸フィルムである
(1)~(12)のいずれか一項に記載の半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルム。
【0026】
(14)モールド成型用離型フィルムである
(1)~(13)のいずれか一項に記載の半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルム。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一態様によれば、封止樹脂と金型との離型性や金型追従性に優れるのみならず、樹脂モールド成型等の半導体封止プロセスの際に必要とされる耐熱性を有し、さらに取扱性に優れる、半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルム等を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】一実施形態の熱可塑性離型フィルム100の使用例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。また、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。但し、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこれらに限定されるものではない。すなわち本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。なお、本明細書において、例えば「1~100」との数値範囲の表記は、その下限値「1」及び上限値「100」の双方を包含するものとする。また、他の数値範囲の表記も同様である。
【0030】
(熱可塑性離型フィルム)
本実施形態の熱可塑性離型フィルムは、180℃以上の融点を有する結晶性樹脂(A)とアクリル系共重合体(B)とを含有することを特徴とする。本実施形態の熱可塑性離型フィルムは、例えば、半導体封止プロセス用の離型フィルムとして、好適に用いることができる。本実施形態の熱可塑性離型フィルムは、半導体素子を樹脂モールド成型する際に金型と樹脂との間に介在させて、樹脂封止後の金型と樹脂との間における良好な離型性を得るために用いられる、モールド成型用離型フィルムとして、特に好適に用いることができる。
【0031】
〔結晶性樹脂(A)〕
結晶性樹脂(A)は、180℃以上の融点を有する結晶性樹脂である限り、公知のものの中から適宜選択して用いることができ、その種類は特に限定されない。このように融点が高い結晶性樹脂(A)を用いることで、熱可塑性離型フィルムに半導体封止プロセスの際に必要とされる耐熱性を付与でき、アクリル系共重合体(B)との併用により、離型性、金型追従性、取扱性のバランスに優れる熱可塑性離型フィルムを実現することができる。
【0032】
結晶性樹脂(A)としては、例えば結晶性フッ素樹脂、結晶性非環状オレフィン樹脂、及び結晶性ポリスチレン樹脂等が挙げられるが、これらに特に限定されない。結晶性樹脂(A)は、1種を単独で、又は2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0033】
結晶性フッ素樹脂の具体例としては、ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体(FEP)、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)-テトラフルオロエチレン共重合体(PFA)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体、ビニルフルオリド重合体(PVF)、ビニリデンフルオリド重合体(PVDF)、ビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-ビニリデンフルオリド共重合体、クロロトリフルオロエチレン重合体(PCTFE)、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)がより好ましい。結晶性フッ素樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。結晶性フッ素樹脂として、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)を用いることで、高い耐熱性と高い離型性を付与できる。
【0034】
結晶性非環状オレフィン樹脂の具体例としては、α-オレフィン(共)重合体等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも4-メチル-1-ペンテン(共)重合体がより好ましい。なお、4-メチル-1-ペンテン(共)重合体とは、4-メチル-1-ペンテン単量体の単独重合体、並びに、4-メチル-1-ペンテン単量体単位と4-メチル-1-ペンテン以外のα-オレフィン単量体単位とを含む共重合体を包含する用語である。ここで、4-メチル-1-ペンテン(共)重合体は、α-オレフィン以外の単量体単位をさらに含んでいてもよい。α-オレフィンの単量体としては、炭素原子数2~20の、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-へプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、2-エチル-1-ヘキセン、2,2,4-トリメチル-1-ペンテン等が挙げられるが、これらに特に限定されない。結晶性非環状オレフィン樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。結晶性非環状オレフィン樹脂として、4-メチル-1-ペンテン(共)重合体を用いることで、高い耐熱性と高い離型性を付与できる。
【0035】
結晶性ポリスチレン樹脂の具体例としては、シンジオタクチックポリスチレン(S-PS)等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でもシンジオタクチックポリスチレン(S-PS)がより好ましい。結晶性ポリスチレン樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。結晶性ポリスチレンとして、シンジオタクチックポリスチレン(S-PS)を用いることで、高い耐熱性と高い離型性を付与できる。ここで、シンジオタクチックポリスチレン(S-PS)とは、高度なシンジオタクチック構造を有するポリスチレンを意味する。本明細書において「シンジオタクチック」とは、隣り合うスチレン単位におけるフェニル環が、重合体ブロックの主鎖によって形成される平面に対して交互に配置されている割合(以下において、シンジオタクティシティと記載する)が高いことを意味する。タクティシティは、同位体炭素による核磁気共鳴法(13C-NMR法)により定量同定できる。13C-NMR法により、連続する複数の構成単位、例えば連続した2つのモノマーユニットをダイアッド、3つのモノマーユニットをトリアッド、5つのモノマーユニットをペンタッドとしてその存在割合を定量することができる。
【0036】
「高度なシンジオタクチック構造を有するポリスチレン」とは、ラセミダイアッド(r)で通常75モル%以上、好ましくは85モル%以上、又はラセミペンタッド(rrrr)で通常30モル%以上、好ましくは50モル%以上のシンジオタクティシティを有するポリスチレン、ポリ(炭化水素置換スチレン)、ポリ(ハロゲン化スチレン)、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)、ポリ(アルコキシスチレン)、ポリ(ビニル安息香酸エステル)、これらの水素化重合体もしくは混合物、又はこれらを主成分とする共重合体を意味する。
【0037】
ポリ(炭化水素置換スチレン)としては、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(エチルスチレン)、ポリ(イソプロピルスチレン)、ポリ(tert-ブチルスチレン)、ポリ(フェニル)スチレン、ポリ(ビニルナフタレン)及びポリ(ビニルスチレン)等を挙げることができる。ポリ(ハロゲン化スチレン)としては、ポリ(クロロスチレン)、ポリ(ブロモスチレン)及びポリ(フルオロスチレン)等が、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)としては、ポリ(クロロメチルスチレン)等を挙げることができる。ポリ(アルコキシスチレン)としては、ポリ(メトキシスチレン)及びポリ(エトキシスチレン)等を挙げることができる。
【0038】
上記スチレン系重合体のうち特に好ましいものとして、ポリスチレン、ポリ(p-メチルスチレン)、ポリ(m-メチルスチレン)、ポリ(p-tert-ブチルスチレン)、ポリ(p-クロロスチレン)、ポリ(m-クロロスチレン)、ポリ(p-フルオロスチレン)を挙げることができる。さらにはスチレンとp-メチルスチレンとの共重合体、スチレンとp-tert-ブチルスチレンとの共重合体、スチレンとジビニルベンゼンとの共重合体等を挙げることができる。
【0039】
シンジオタクチックポリスチレン(S-PS)の重量平均分子量(Mw)は、所望性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、好ましくは1万以上300万以下であり、より好ましくは3万以上150万以下であり、さらに好ましくは5万以上50万以下である。
【0040】
シンジオタクチックポリスチレン(S-PS)の市販品としては、例えば出光興産株式会社製のザレック(登録商標)142ZE、300ZC、130ZC、90ZC、S105、S107等が知られている。
【0041】
結晶性樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)は、所望性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、フィルム搬送性、離型性の向上、厚みムラや皺の発生抑制等の観点から、3g/10分以上であることが好ましく、より好ましくは5g/10分以上、さらに好ましくは7g/10分以上であり、20g/10分以下であることが好ましく、より好ましくは19g/10分以下、さらに好ましくは17g/10分以下、特に好ましくは16g/10分以下である。なお、本明細書において、結晶性樹脂(A)のメルトフローレートは、JIS K7210:1999「プラスチック-熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」のA法、条件M(300℃、1.2kg荷重)に準拠して測定した値を意味する。
【0042】
結晶性樹脂(A)の融点は、180℃以上であれば、特に限定されないが、より高い耐熱性や、アクリル系共重合体(B)との良好な相溶性ないしは分散性等を確保する等の観点から、200~275℃が好ましく、より好ましくは220~275℃、さらに好ましくは240~275℃である。なお、本明細書において、融点は、DSC vesta(リガク社製)を用いて、温度区間30~350℃で、20℃/分の昇温速度で加熱したときの示差走査熱量測定法(DSC)における融解ピーク温度を意味する。
【0043】
熱可塑性離型フィルム中の結晶性樹脂(A)の含有割合は、要求性能に応じて適宜設定でき、特に限定されない。耐熱性、離型性、金型追従性、取扱性等の観点から、熱可塑性離型フィルムに含まれる結晶性樹脂(A)とアクリル系共重合体(B)との合計量を100質量部としたとき、結晶性樹脂(A)の含有量は、80~99質量部が好ましく、より好ましくは85~99質量部、さらに好ましくは、88~99質量部、特に好ましくは90~99質量部、最も好ましくは92~98質量部である。
【0044】
〔アクリル系共重合体(B)〕
アクリル系共重合体(B)は、公知のものの中から適宜選択して用いることができ、その種類は特に限定されない。アクリル系共重合体(B)は、1種を単独で、又は2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。アクリル系共重合体(B)を用いることで、熱可塑性離型フィルムに良好な金型追従性や離型性を付与することができ、180℃以上の融点を有する結晶性樹脂(A)との併用により、半導体封止プロセスの際に必要とされる耐熱性や取扱性のバランスに優れる熱可塑性離型フィルムを実現することができる。
【0045】
アクリル系共重合体(B)としては、例えば1種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを、必要に応じて他の共重合成分とともに、共重合して得られる(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体等が挙げられる。ここで、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」及び「(メタ)アクリレート」は、それぞれアクリル酸及びメタクリル酸、並びにアクリレート及びメタクリレートの総称である。
【0046】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
アクリル系共重合体(B)は、特に限定されないが、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル2種以上の共重合体であることが好ましく、第1の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、それとは異なる構造の第2の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとのアクリル酸アルキルエステル共重合体であることがより好ましい。好ましい一態様としては、炭素原子数1~3の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと炭素原子数4以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体が挙げられる。ここで、炭素原子数1~3の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート及びプロピル(メタ)アクリレートが挙げられ、炭素原子数4以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば炭素原子数4のn-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレートが挙げられるが、これらに特に限定されない。好ましい別の態様としては、炭素原子数1の(メタ)アクリル酸アルキルエステルであるメチル(メタ)アクリレートと炭素原子数4の(メタ)アクリル酸アルキルエステルであるn-ブチル(メタ)アクリレート、又はイソブチル(メタ)アクリレートとの共重合体である。
【0048】
他の共重合成分としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他のビニル単量体が挙げられる。この場合、アクリル系共重合体(B)は、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステル50~100質量部と、これと共重合可能な他のビニル単量体を必要に応じて0~50質量部とを含む合計100質量部を共重合して得ることができる。
【0049】
他のビニル単量体としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デンシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン、p-フェニルスチレン、3,4-ジシクロスチレン等のスチレン系モノマー;不飽和ジカルボン酸ジエステル(具体的にはマレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル等)、不飽和モノカルボン酸(具体的には(メタ)アクリル酸、ケイヒ酸等)、不飽和ジカルボン酸(具体的にはマレイン酸、フマル酸、イタコン酸等)、不飽和ジカルボン酸モノエステル(具体的にはマレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル等)等のカルボン酸含有ビニル系モノマー;(メタ)アクリロニトリル;(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリロニトリル」はアクリロニトリル及びメタクリロニトリルの総称であり、「(メタ)アクリルアミド」はアクリルアミド及びメタクリルアミドの総称である。
【0050】
さらに、他のビニル単量体として、多官能性ビニル単量体を使用することもできる。多官能性ビニル単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、メタクリル酸アリル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
アクリル系共重合体(B)は、特に限定されないが、メチルメタクリレート単位、n-ブチルメタクリレート単位、n-ブチルアクリレート単位及びイソブチルメタクリレート単位からなる群より選ばれる2種以上の単位を有する共重合体B1であることが好ましく、より好ましくはメチルメタクリレート単位とn-ブチルメタクリレート単位とn-ブチルアクリレート単位とを有する共重合体B2である。
【0052】
共重合体B1,B2において、メチルメタクリレート単位の含有量は、特に限定されないが、共重合体を構成する全ての単量体単位の合計を100モル%としたときに、30~85モル%が好ましく、35~80モル%がより好ましく、40~80モル%がさらに好ましい。共重合体中のメチルメタクリレート単位の含有量が、30モル%以上であれば保存性が良好となり、85モル%以下であれば分散性と定着性の両立が可能になる。
【0053】
共重合体B1,B2において、n-ブチルメタクリレート単位の含有量は、特に限定されないが、共重合体を構成する全ての単量体単位の合計を100モル%としたときに、1~50モル%が好ましく、5~45モル%がより好ましく、5~40モル%がさらに好ましい。共重合体中のn-ブチルメタクリレート単位の含有量が、1モル%以上であれば材料分散性がより良好となり、50モル%以下であれば保存性が良好となる。
【0054】
共重合体B1,B2において、n-ブチルアクリレート単位の含有量は、特に限定されないが、共重合体を構成する全ての単量体単位の合計を100モル%としたときに、1~50モル%が好ましく、5~45モル%がより好ましく、5~40モル%がさらに好ましい。共重合体中のn-ブチルアクリレート単位の含有量が、1モル%以上であれば材料分散性がより良好となり、50モル%以下であれば保存性が良好となる。
【0055】
共重合体B1,B2において、イソブチルメタクリレート単位の含有量は、特に限定されないが、共重合体を構成する全ての単量体単位の合計を100モル%としたときに、1~99モル%が好ましく、10~99モル%がより好ましく、20~99モル%がさらに好ましい。共重合体中のイソブチルメタクリレート単位の含有量が上記範囲内であれば、材料分散性がより良好となる。
【0056】
共重合体B1,B2は、メチルメタクリレート単位とn-ブチルメタクリレート単位とn-ブチルアクリレート単位とイソブチルメタクリレート単位のうちの2種以上のみで構成されていてもよいし、その他の単量体単位を有していてもよい。その他の単量体単位を構成する、その他の単量体としては、例えば、メチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、i-ブチルアクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の直鎖アルキルアルコールの(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の環式アルキルアルコールの(メタ)アクリレート類;メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、メタクリル酸2-サクシノロイルオキシエチル-2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸、メタクリル酸2-マレイノロイルオキシエチル-2-メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、メタクリル酸2-フタロイルオキシエチル-2-メタクリロイルオキシエチルフタル酸、メタクリル酸2-ヘキサヒドロフタロイルオキシエチル-2-メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボキシ基含有モノマー;アリルスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;アセトアセトキエチル(メタ)アクリレート等のカルボニル基含有(メタ)アクリレート類;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート類;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート類;N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート類;(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;アクリルアミド及びその誘導体(例えばジアセトンアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-エトキシメチルアクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミド等);スチレン及びその誘導体;酢酸ビニル;ウレタン変性アクリレート類;エポキシ変性アクリレート類;シリコーン変性アクリレート類などが挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのうち、その他の単量体としては、メチルアクリレート、i-ブチルアクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0057】
その他の単量体単位の含有量は、共重合体B1,B2を構成する全ての単量体単位の合計100質量%中、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。なお、その他の単量体単位の含有量の下限値については、特に限定されず、共重合体B1,B2を構成する全ての単量体単位の合計100質量%中、20質量%であってよく、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上であってもよい。
【0058】
なお、アクリル系共重合体(B)は、その粒子中心部から表層部にかけて同心円状に2段階以上の組成の異なる重合体層を有するものであることが好ましい。組成の異なる重合体成分を用いて粒子の中心部から表層部にかけて同心円状に2段階以上の重合体層を有する粒子構造を形成することにより、貯蔵安定性や加熱成形性を高めることができる。このような粒子構造の具体例として、例えばコア重合体とシェル重合体の2層からなるコアシェル型や、3段階以上の層構造からなる多段階型、あるいはこれらの各層を非常に薄くして連続的に近い組成変化を有するグラディエント型などが挙げられる。中でも、重合体粒子の調製の容易さの点からコアシェル型の粒子構造が好ましいが、これに限定されるものではない。
【0059】
アクリル系共重合体(B)の市販品としては、例えば、三菱ケミカル株式会社製のメタブレン(登録商標)L-1000、P-700、P-710等が知られている。
【0060】
アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、金型追従性や離型性、取扱性(ブリード性)等の観点から、好ましくは10万以上600万以下であり、より好ましくは10万以上300万以下であり、さらに好ましくは10万以上100万以下であり、特に好ましくは10万以上50万以下である。なお、アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。例えば、テトラヒドロフランを溶離液とし、ポリスチレンを標準物質として求めることができる。
【0061】
熱可塑性離型フィルム中のアクリル系共重合体(B)の含有割合は、要求性能に応じて適宜設定でき、特に限定されない。耐熱性、離型性、金型追従性、取扱性等の観点から、熱可塑性離型フィルムに含まれる結晶性樹脂(A)とアクリル系共重合体(B)との合計量を100質量部としたとき、アクリル系共重合体(B)の含有量は、1~20質量部が好ましく、より好ましくは1~15質量部、さらに好ましくは、1~12質量部、特に好ましくは1~10質量部、最も好ましくは2~8質量部である。
【0062】
本実施形態の熱可塑性離型フィルムは、本発明の効果を過度に損なわない範囲で、上述した180℃以上の融点を有する結晶性樹脂(A)とアクリル系共重合体(B)以外に、例えばアセテート系重合体、ポリエーテルスルホン系重合体、ポリスルホン系重合体、ポリカーボネート系重合体、ポリアミド系重合体、ポリイミド系重合体、ポリオレフィン系重合体、ポリアリレート系重合体、ポリビニルアルコール系重合体等の、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等の他の樹脂成分を含有していてもよい。また、本実施形態の熱可塑性離型フィルムは、本発明の効果を過度に損なわない範囲で、当業界で公知の添加剤、例えば炭素原子数10~25の高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸金属塩、ポリシロキサン、フッ素樹脂等の離型改良剤;染料、顔料等の着色剤;有機充填剤;無機充填材;酸化防止剤;熱安定剤;光安定剤;紫外線吸収剤;難燃剤;帯電防止剤;界面活性剤;防錆剤;消泡剤;蛍光剤等を含んでいてもよい。他の樹脂成分や添加剤は、それぞれ1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。他の樹脂成分や添加剤は、例えば熱可塑性離型フィルムの製膜時に調製する樹脂組成物に含ませることができる。他の樹脂成分や添加剤の含有量は、特に限定されないが、成型加工性や熱安定等の観点から、熱可塑性離型フィルムの総量に対して、それぞれ0~10質量%が好ましく、より好ましくはそれぞれ0~7質量%、さらに好ましくはそれぞれ0~5質量%である。
【0063】
ここで、本実施形態の熱可塑性離型フィルムは、樹脂モールド部の外観不良の発生をより高次元に抑制し汎用性を高める観点から、また、除去や廃棄が容易で低コスト化を図る観点から、ハロゲン非含有又はハロゲン低含有であることが好ましい。かかる観点から、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)の含有割合が、3.0質量%未満であることが好ましく、より好ましくは1.0質量%未満、さらに好ましくは0.5質量%未満、特に好ましくは0.1質量%未満であり、下限側は特に限定されないが、0.0質量%であるか0.0質量%以上である。そのため、かかる観点から、結晶性樹脂(A)は、結晶性非環状オレフィン樹脂、又は、結晶性ポリスチレン樹脂であることが好ましい。
【0064】
本実施形態の熱可塑性離型フィルムの製膜方法としては、特に限定されないが、溶融押出法が好ましく用いられる。好ましい一態様としては、上述した各成分を含む樹脂組成物を、溶融押出製膜法によりフィルム状に押し出して製膜し、その後に必要に応じて溶融押出フィルムを加圧加熱処理して、溶融押出フィルムを得る方法が挙げられる。このとき、樹脂組成物の調製は、常法にしたがって行えばよく、特に限定されない。上述した各成分を、例えば混練、溶融混錬、造粒、押出成形、プレス又は射出成形等の公知の方法によって製造及び加工することができる。なお、溶融混練を行う際には、一般に使用されている一軸式又は二軸式の押出機や各種ニーダー等の混練装置を用いることができる。これらの溶融混練装置に各成分を供給するに際し、各成分を予めタンブラーやヘンシェルミキサー等の混合装置を用いてドライブレンドしてもよい。また、得られた溶融押出フィルムは、半導体封止プロセス用の未延伸の離型フィルムとしてそのまま用いることができるが、フィルム強度の向上、耐熱性の向上、フィルム結晶性の調整等の観点から、必要に応じて、フィルム面内方向に一軸又は二軸の加熱延伸処理を行ってもよく、また、延伸処理後に後加熱処理(アニーリング処理)を行ってもよい。フィルム搬送性、離型性の向上、厚みムラや皺の発生等を抑制等の観点から、本実施形態の熱可塑性離型フィルムは、一軸延伸フィルム又は二軸延伸フィルムであることが好ましく、二軸延伸フィルムであることがより好ましい。また、本実施形態の熱可塑性離型フィルムは、低コスト化、再利用ないしは再生利用等の観点から、単層フィルム(非積層フィルム)であることが好ましい。なお、未延伸の溶融押出フィルムの厚みは、要求性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、例えば5μm以上1500μm程度であってよい。好ましくは10μm以上1000μm以下であり、より好ましくは20μm以上800μm以下であり、さらに好ましくは30μm以上600μm以下である。なお、本明細書において、未延伸の溶融押出フィルムの厚みは、無作為に抽出した9箇所の平均値を意味する。
【0065】
溶融押出の際の設定条件は、使用する樹脂組成物の種類や組成、目的とする熱可塑性離型フィルムの所望性能等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。例えば、押出機のシリンダーの設定温度は、250~320℃が好ましく、より好ましくは260~310℃である。
【0066】
加熱延伸処理の際の設定条件は、使用する樹脂組成物の種類や組成、目的とする熱可塑性離型フィルムの所望性能等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。例えば、溶融押出フィルムを好ましくはMD方向(Machine Direction;長手方向)に70~180℃で1.1~6.0倍に延伸して一軸延伸フィルムとした後、さらにTD方向(Transverse Direction;横手方向)に90~180℃で1.1~6.0倍に延伸することができ、その後に例えば100~240℃で1~600秒間の熱処理(熱セット)を行うことが好ましい。このとき、逐次延伸ではなく同時二軸延伸をすることもできる。延伸倍率は、特に限定されないが、フィルム搬送性、離型性の向上、厚みムラや皺の発生等を抑制等の観点から、MD方向*TD方向の総延伸倍率(MD方向の延伸倍率をmとし、TD方向の延伸倍率をnとしたとき、m×nで表される延伸倍率)で2.00倍以上が好ましく、より好ましくは4.00倍以上、さらに好ましくは6.25倍以上である。なお、その上限は特に限定されないが、25倍が目安とされ、好ましくは20倍である。また、熱セットの際には、当業界で公知の方法、例えば接触式の熱処理、非接触性の熱処理等を行うことができ、その種類は特に限定されない。例えば非接触式ヒーター、オーブン、ブロー装置、熱ロール、冷却ロール、熱プレス機、ダブルベルト熱プレス機等の公知の機器を用いて熱セットすることができる。このとき、必要に応じて、延伸溶融押出フィルムの表面に、当業界で公知の剥離フィルムや多孔質フィルムを配して、熱圧処理を行うことができる。
【0067】
後加熱処理(アニーリング処理)の際の設定条件は、使用する樹脂組成物の種類や組成、目的とする熱可塑性離型フィルムの所望性能等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。例えば、溶融押出フィルム又は延伸溶融押出フィルムに、例えば100~240℃で1~600秒間の熱処理を行うことが好ましい。この後加熱処理は、当業界で公知の方法、例えば接触式の熱処理、非接触性の熱処理等を用いて行うことができ、その種類は特に限定されない。例えば非接触式ヒーター、オーブン、ブロー装置、熱ロール、冷却ロール、熱プレス機、ダブルベルト熱プレス機等の公知の機器を用いて後加熱処理を行うことができる。このとき、必要に応じて、溶融押出フィルム又は延伸溶融押出フィルムの表面に、当業界で公知の剥離フィルムや多孔質フィルムを配して、熱圧処理を行うことができる。
【0068】
本実施形態の熱可塑性離型フィルムの厚みは、要求性に応じて適宜設定でき、特に限定されない。本実施形態の熱可塑性離型フィルムの厚みは、取扱性や生産性等を考慮すると、10μm以上300μm以下が好ましく、より好ましくは10μm以上200μm以下、金型追従性も改善させる観点からさらに好ましくは20μm以上150μm以下、特に好ましくは30μm以上100μm以下である。なお、本明細書において、熱可塑性離型フィルムの厚みは、無作為に抽出した9箇所の平均値を意味する。なお、本実施形態の熱可塑性離型フィルムの表面の形状は、要求性に応じて適宜調整でき、片面、もしくは両面に凹凸のある形状であってもよい。本実施形態の熱可塑性離型フィルムの表面の形状を凹凸のある形状とする方法は、特に限定されないが、サンドブラストやエンボス加工等の一般的な方法を採用することができる。
【0069】
本実施形態の熱可塑性離型フィルムは、上述した構成を採用することで、封止樹脂と金型との離型性や金型追従性に優れているのみならず、樹脂モールド成型等の半導体封止プロセスの際に必要とされる耐熱性を有し、さらに取扱性においても優れている。そのため、本実施形態の熱可塑性離型フィルムは、エポキシ樹脂等の封止樹脂を用いた半導体素子の樹脂モールド工程時において、樹脂が硬化した後の封止樹脂と金型との離型性を得るための半導体封止プロセス用の離型フィルムとして好適に用いることができる。その上、本実施形態の熱可塑性離型フィルムは、皺の発生や樹脂モールド部の外観不良の発生や金型汚染の発生等をも抑制可能である。したがって、本実施形態の熱可塑性離型フィルムは、従来から汎用されているトランスファー成型法よりも精密な成型条件が求められるコンプレッション成型法(コンプレッションモールド成型法)の半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルムとして、要求性能を十分に満たすものとなる。
【0070】
本実施形態の熱可塑性離型フィルムは、半導体装置の製造における半導体素子の樹脂封止工程の離型フィルムとして好適に用いられる。本実施形態の熱可塑性離型フィルムを用いて半導体素子の樹脂封止を行う方法は特に限定されない。成形金型の内部で半導体素子を樹脂封止するときに、成形金型の内面に本実施形態の熱可塑性離型フィルムを配置すればよい。例えば、トランスファー成型法やコンプレッション成型法等の公知の樹脂モールド成型において好適に用いることができる。とりわけ、コンプレッション方式の樹脂封止法は、金型のキャビティ内に樹脂を入れ、樹脂を溶融した後に型締めして半導体素子と溶融樹脂とを密着させて樹脂封止する方法であり、樹脂の流動がほとんどなく、チップやワイヤへの影響を最小限に抑えることが可能であるためワイヤの細線化が可能で、近年のパッケージの最小化、薄型化、高集積化、高生産性、コスト低減を実現するプロセスニーズに適合するものとして、採用が広がっている。コンプレッション方式では、トランスファー方式におけるゲートやランナ等が不要になり、樹脂の使用効率もほぼ100%となるため、コスト削減や廃棄量の低減にもつながることにも起因する。
【0071】
したがって、本実施形態の熱可塑性離型フィルムは、コンプレッション方式の樹脂モールド成型において殊に有用なものとなる。その使用例の一例を挙げると、図1に示すように、上側金型D1及び下側金型D2を備える金型Dを用い、下側金型D2の内面側に熱可塑性離型フィルム100を介在させた状態で、必要に応じて真空引きして下側金型D2の内面或いはパーティング面に熱可塑性離型フィルム100を密着させ、下側金型D2のキャビティC内にモールド樹脂Mを投入し、必要に応じて加熱してモールド樹脂Mを溶融ないしは液状化させた後、上側金型D1及び下側金型D2を型締めして半導体素子を搭載した基板11をモールド樹脂Mに密着(ないしは圧着或いは圧縮)させて、必要に応じて加熱及び加圧して、半導体素子を樹脂封止する。なお、熱可塑性離型フィルム100は上側金型D1の内面又は下側金型D2の内面の少なくとも一方の側に介在させればよい。このときの成形条件は、常法にしたがって行えばよく特に限定されないが、金型温度(成形温度)は例えば160~190℃であり、成形圧力は例えば5~12MPaであり、成形時間は例えば1~600秒程度が目安とされる。このように樹脂モールド時に熱可塑性離型フィルム100を介在させることで、モールド樹脂Mと金型Dの内面との接触を回避でき、樹脂封止後の基板11を金型Dから離型することが容易になる。なお、ここで樹脂封止の対象とする基板11としては、例えば、多層プリント配線板、フレキシブルプリント配線板等が挙げられるが、その種類は特に限定されない。
【実施例
【0072】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらによりなんら限定されるものではない。すなわち、以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更することができる。また、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における好ましい上限値又は好ましい下限値としての意味をもつものであり、好ましい数値範囲は前記の上限値又は下限値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0073】
実施例及び比較例で用いた材料は、以下のとおりである。
(樹脂A)
(A-1)シンジオタクチックポリスチレン(出光興産株式会社製、ザレック(登録商標)、142ZE、融解温度:247℃、メルトフローレート:14g/10分(JIS K7210:1999準拠、300℃、1.2kg荷重))
(A-2)ポリスチレン(東洋スチレン株式会社製、トーヨースチロール(登録商標)、HRM61)
(A-3)ポリプロピレン(サンアロマー株式会社性、サンアロマー(登録商標)、VS200A)
(樹脂B)
(B-1)メタクリル酸アルキル・アクリル酸アルキル共重合体、三菱ケミカル株式会社製の商品名「メタブレン L-1000」)、メルトフローレート:2.4g/10分(JIS K7210:1999準拠、230℃、2.16kg荷重)
(B-2)流動パラフィン(MORESCO社製、セレンホワイト350)
【0074】
(実施例1)
80℃にて8時間以上乾燥させた樹脂Aと、樹脂Bとを、表1に記載の組成及び配合比でドライブレンドし、得られたブレンド物を280℃に加熱した同方向回転タイプのベント式二軸混練押出機にて溶融混練させ、得られたストランドをペレタイザーにてカットすることで、樹脂組成物(ブレンドチップ)を調製した。得られた樹脂組成物を、ホッパードライヤー等を用いて80℃にて8時間以上乾燥させ、280℃に加熱した押出機に備えられたホッパーに投入して溶融混練し、その押出機先端のTダイからフィルム状に押出し、冷却して、厚み450μmを有する未延伸の溶融押出フィルムを得た。得られた未延伸の溶融押出フィルムを、逐次二軸延伸機にて120℃でMD方向に3.0倍及びTD方向に3.0倍(総合倍率:9.0倍)に二軸延伸し、140℃で2分間熱セットすることで、平均厚み50μmの実施例1の熱可塑性離型フィルムを得た。
【0075】
(実施例2~5)
表1に記載の組成及び配合割合並びに熱可塑性離型フィルムの平均厚みにそれぞれ変更する以外は、実施例1と同様に行い、実施例2~5の熱可塑性離型フィルムをそれぞれ得た。
【0076】
(比較例1~4)
表1に記載の組成及び配合割合に変更する以外は、実施例1と同様に行い、平均厚み50μmの比較例1~4の熱可塑性離型フィルムを得た。
【0077】
得られた各熱可塑性離型フィルムの諸物性の測定条件は、以下のとおりである。
【0078】
〔フィルムの厚み〕
各熱可塑性離型フィルムにおいて、ランダムに9点の厚みをそれぞれ測定し、その平均値で表した。
【0079】
得られた各熱可塑性離型フィルムの性能評価を、以下のとおり行った。
(モールド試験)
図1に示すように、半導体封止用圧縮成形装置(TOWA株式会社製、PMC1040)の上側金型D1と下側金型D2との間に1MPaの張力を印加した状態でロール原反から熱可塑性離型フィルム100を引き出して配置した後、下側金型D2のパーティング面に熱可塑性離型フィルム100を真空吸着させ、一定長さに切断する。上側金型D1のパーティング面には半導体素子を搭載した基板11を配置する。次いで、パーティング面が熱可塑性離型フィルム100によって保護された下側金型D2のキャビティC内にモールド樹脂Mを投入し、金型温度を180℃まで加熱してモールド樹脂Mを溶融ないしは液状化させた後、上側金型D1と下側金型D2を型締めし、キャビティ周縁部の真空吸着孔から真空ポンプで空気を抜き、所定の最終深さ及びクランプ力で所定時間密着させて基板に固定された半導体素子のコンプレッション方式の樹脂封止(圧縮成型)を行い、樹脂封止された基板(半導体パッケージ)を金型D及び熱可塑性離型フィルム100から離型して取り出す。このときの各熱可塑性離型フィルム100の性能評価を、以下の基準で行った。
【0080】
<封止条件>
金型温度:175℃
キャビティ大きさ:220mm×55mm
キャビティの最終深さ:0.5mm
硬化性樹脂:スミコンEME G770H type F Ver.GR(住友ベークライト社製)
キャビティ面への追従時の真空度:-85kPa
硬化性樹脂気泡抜き時の真空度:-80kPa
硬化性樹脂気泡抜き時間:10秒
クランプ時間:120秒
成型圧力:8.0MPa
【0081】
(離型性)
Very Good(A):熱可塑性離型フィルムが半導体パッケージから容易に剥がれた
Good (B):熱可塑性離型フィルムが半導体パッケージから剥がれたが抵抗があった
Bad (C):熱可塑性離型フィルムが半導体パッケージから剥がれず付着した
【0082】
(耐熱性)
Very Good(A):熱可塑性離型フィルムを金型に吸着させた際に均一に吸着し、皺が生じなかった
Good (B):熱可塑性離型フィルムを金型に吸着させた際にわずかに皺が生じた
Bad (C):熱可塑性離型フィルムに多数の皺があるか、破れが生じた
【0083】
(金型追従性)
Very Good(A):半導体パッケージに樹脂欠けが全くない
Good (B):半導体パッケージに樹脂欠けが端部に一部あった
Bad (C):熱可塑性離型フィルムが金型に追従せず、真空吸着できなかった
【0084】
(ブリード性)
各試験フィルムを70℃のオーブン中に72時間放置し、フィルムの表面にブリードする成分を目視にて観察し、外観を次の評価基準で評価した。
Very Good(A):ブリードは全くなし
Good (B):ブリードが僅かにある
Bad (C):ブリードがある
【0085】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の熱可塑性離型フィルムは、封止樹脂と金型との離型性や金型追従性に優れるのみならず、樹脂モールド成型等の半導体封止プロセスの際に必要とされる耐熱性を有し、さらに取扱性に優れるため、半導体素子の樹脂モールド工程時において使用する、半導体封止プロセス用の離型フィルムとして広く且つ有効に利用可能であり、とりわけコンプレッションモールド成型時の半導体封止プロセス用の離型フィルムとして、殊に有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0087】
100 ・・・熱可塑性離型フィルム
11 ・・・半導体素子が搭載された基板
C ・・・キャビティ
D ・・・金型
D1・・・上側金型
D2・・・下側金型
M ・・・モールド樹脂
【要約】
【課題】封止樹脂と金型との離型性や金型追従性に優れるのみならず、樹脂モールド成型等の半導体封止プロセスの際に必要とされる耐熱性を有し、さらに取扱性に優れる、半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルム等を提供する。
【解決手段】180℃以上の融点を有する結晶性樹脂(A)と、アクリル系共重合体(B)と、を含有する半導体封止プロセス用熱可塑性離型フィルム。前記結晶性樹脂(A)は、結晶性フッ素樹脂、結晶性非環状オレフィン樹脂、及び結晶性ポリスチレン樹脂よりなる群から選択される1種以上を含むことが好ましい。
【選択図】図1
図1