(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】生分解性不織布及び成型体の製造方法
(51)【国際特許分類】
D04H 3/14 20120101AFI20240419BHJP
D04H 3/147 20120101ALI20240419BHJP
D04H 3/16 20060101ALI20240419BHJP
D04H 3/011 20120101ALI20240419BHJP
D01F 6/60 20060101ALI20240419BHJP
D01F 6/62 20060101ALI20240419BHJP
D01F 8/14 20060101ALI20240419BHJP
【FI】
D04H3/14
D04H3/147
D04H3/16
D04H3/011
D01F6/60
D01F6/62
D01F8/14 B
(21)【出願番号】P 2023500778
(86)(22)【出願日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 JP2022005162
(87)【国際公開番号】W WO2022176741
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-04-04
(31)【優先権主張番号】P 2021023167
(32)【優先日】2021-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】523419521
【氏名又は名称】エム・エーライフマテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】藤本 裕也
(72)【発明者】
【氏名】小松 隆志
(72)【発明者】
【氏名】塩田 英治
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-104153(JP,A)
【文献】国際公開第2018/070490(WO,A1)
【文献】特開2003-326594(JP,A)
【文献】特開2011-157660(JP,A)
【文献】特開2018-204168(JP,A)
【文献】特開2019-071962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00- 18/04
C08L 101/00-101/16
D01F 1/00- 8/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性熱可塑性樹脂を含む繊維から構成される
スパンボンド不織布であって、目付が10g/m
2以上450g/m
2以下であり、
かつ、該不織布の融点と結晶化開始温度との差が91℃以上
159℃以下であり、かつ、該不織布の冷結晶エンタルピー熱量ΔHが1.0J/g以上
20.0J/g以下であり
、かつ、該生分解性熱可塑性樹脂を含む繊維が、該生分解性熱可塑性樹脂であるポリ乳酸(PLA)、ナイロン4(PA4)、又はポリグリコール酸(PGA)を単成分で含有するか、あるいは、該生分解性熱可塑性樹脂を、主成分として、70重量%超99.5重量%未満で含有し、かつ、該主成分とは異なる、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリヒドロキシブチレートヘキサノエート(PHBH)、及びエチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)からなる群より選択される1以上のモノマーの単独重合体若しくは共重合体のいずれかを、副成分として、0.5重量%以上30重量%以下で含有し、かつ、該生分解性熱可塑性樹脂を含む繊維が、該副成分を含有する場合、該主成分が海、該副成分が島となる海島繊維であり、かつ、該不織布の圧着面積率が8%以上
40%以下であり、かつ、熱機械分析による80℃~140℃におけるMD方向の寸法変化率が、
-20.1以上-4.0%未満である
ことを特徴とする生分解性
スパンボンド不織布。
【請求項2】
請求項
1に記載の生分解性不織布を熱成形する工程を含む、成型体の製造方法。
【請求項3】
前記熱成形における変形速度が32mm/秒以上320mm/秒以下である、請求項
2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記熱成形における変形速度が105mm/秒以上140mm/秒以下である、請求項
3に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生分解性不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生分解性不織布を熱成形して得られる成型体が知られており、各種分野に使用され、広く用途が展開されている。しかし、生分解性不織布の熱成型において、破れが無く、延伸斑が少なく、成型金型の形に沿った形のきれいな成型体を得ること、さらには成型体として良好な寸法安定性を得ることは難しい。
【0003】
以下の引用文献1と引用文献2には、ポリ乳酸又はポリブチレンサクシネートからなる生分解性成型用不織布が開示されている。
【0004】
また、以下の特許文献3には、ポリ乳酸系重合体と脂肪族ポリエステル共重合体から成る生分解性長繊維不織布が開示されている。特許文献3では、ポリ乳酸系重合体が海部を、脂肪族ポリエステル共重合体が島部を形成する海島型複合長繊維を構成し、島部を形成する脂肪族ポリエステル共重合体を繊維表面に露出させることにより、熱接着性を向上させ、成型性のある不織布を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-95848号公報
【文献】特開2000-136478号公報
【文献】国際公開2018/070490号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2に記載された生分解性成型用不織布は、構成繊維同士が部分的に熱圧着されて形成されていることから、繊維同士の結着が強すぎて、破袋せずに熱成形することが難しく、また、そもそも成型深さが深い成型体を得ることが難しい。
また、特許文献3に記載された不織布は、熱成型において破れが無く、延伸斑が少なく、成型金型の形に沿った形のきれいな成型体をより短時間で得られるが、特定の用途においては、より高い成型体の寸法安定性が求められている。
かかる従来技術の問題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、生分解性を有するとともに、均一成型性、及び、成形性(破れ・毛羽・延伸斑が少なく、形のきれいな成型体をより短時間で得ること)に優れ、また、成型後の寸法安定性が良好となる生分解不織布、及び成型体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討し実験を重ねた結果、成型前の不織布の特性に注目し、生分解性熱可塑性樹脂を含む繊維から構成され、不織布の目付を10g/m2以上450g/m2以下の範囲にし、不織布の主成融点と結晶化開始温度との差を91℃以上とし、かつ、不織布の冷結晶エンタルピー熱量ΔHを1.0J/g以上とすることによって、均一成型性、及び、成形性に優れ、さらに成型後の寸法安定性が良好となることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
[1]生分解性熱可塑性樹脂を含む繊維から構成される不織布であって、目付が10g/m2以上450g/m2以下であり、該不織布の融点と結晶化開始温度との差が91℃以上であり、かつ、該不織布の冷結晶エンタルピー熱量ΔHが1.0J/g以上であることを特徴とする、生分解性不織布。
[2]前記不織布の融点と結晶化開始温度との差が159℃以下である、前記[1]に記載の生分解性不織布。
[3]前記冷結晶エンタルピー熱量ΔHが20.0J/g以下である、前記[1]又は[2]に記載の生分解性不織布。
[4]前記生分解性熱可塑性樹脂を含む繊維が、該生分解性熱可塑性樹脂を主成分として70重量%超99.5重量%未満で含有し、かつ、該主成分とは異なる熱可塑性樹脂を副成分として0.5重量%以上30重量%以下で含有する、前記[1]~[3]のいずれかに記載の生分解性不織布。
[5]前記副成分が、脂肪族エステル、芳香族エステル、又は、(メタ)アクリル酸系モノマー、オレフィン、カプロラクトン、ヒドロキシアルカノエート、アルキレングリコール、二塩基酸、及びジアルコールからなる群より選択される1以上のモノマーの単独重合体若しくは共重合体のいずれかである、前記[4]に記載の生分解性不織布。
[6]前記副成分が、脂肪族エステル、又は、芳香族エステルである、前記[5]に記載の生分解性不織布。
[7]前記副成分が、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、又は、ポリブチレンサクシネートアジペートのいずれか1つを含む、前記[6]に記載の生分解性不織布。
[8]前記生分解性熱可塑性樹脂を含む繊維が、前記主成分が海、前記副成分が島となる海島繊維である、前記[4]~[7]のいずれかに記載の生分解性不織布。
[9]前記不織布の圧着面積率が8%以上である、前記[1]~[8]のいずれかに記載の生分解性不織布。
[10]熱機械分析による80℃~140℃におけるMD方向の寸法変化率が、-4.0%未満である、前記[1]~[9]のいずれかに記載の生分解性不織布。
[11]スパンボンド不織布である、前記[1]~[10]のいずれかに記載の生分解性不織布。
[12]前記[1]~[11]のいずれかに記載の生分解性不織布を熱成形する工程を含む、成型体の製造方法。
[13]前記熱成形における変形速度が32mm/秒以上320mm/秒以下である、前記[12]に記載の製造方法。
[14]前記熱成形における変形速度が105mm/秒以上140mm/秒以下である、前記[12]に記載の製造方法。
[15]前記不織布が、前記不織布の融点と結晶化開始温度との差が159℃以下であり、前記冷結晶エンタルピー熱量ΔHが20.0J/g以下であり、かつ、前記熱機械分析による80℃~140℃におけるMD方向の寸法変化率が-4.0%未満であるスパンボンド不織布である、前記[12]又は[14]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の生分解性不織布は、生分解性を有するとともに、均一成型性、及び、成形性(破れ・毛羽・延伸斑が少なく、形のきれいな成型体をより短時間で得ること)に優れ、さらに成型体の寸法安定性が極めて良好である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態の生分解性不織布は、生分解性熱可塑性樹脂を含む繊維から構成される不織布であって、目付が10g/m2以上450g/m2以下であり、該不織布の融点と結晶化開始温度との差が91℃以上であり、かつ、該不織布の冷結晶エンタルピー熱量ΔHが1.0J/g以上であることを特徴とする。
【0011】
本実施形態の生分解性不織布は、生分解性熱可塑性樹脂(以下、「主成分の樹脂」ともいう。)を含む繊維から構成される。生分解性熱可塑性樹脂としては、ポリ乳酸(PLA)系重合体、ポリヒドロキシアルカン酸、ポリヒドロキシブチレートバリレート、ポリヒドロキシブチレートヘキサノエート、ナイロン4、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンテレフタレートサクシネート、ポリブチレンサクシネートカーボネート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレートサクシネート、ポリグリコール酸、及びポリビニルアルコールが挙げられる。紡糸性、成型加工性の観点からポリ乳酸系重合体が望ましい。
【0012】
ポリ乳酸系重合体(以下、「PLA」ともいう。)としては、D-乳酸の重合体、L-乳酸の重合体、D-乳酸とL-乳酸との共重合体、D-乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、L-乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、及びD-乳酸とL-乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体からなる群から選ばれる重合体、又は該重合体の2種以上のブレンド体が挙げられる。ポリ乳酸重合体のD/L比は、紡糸性、不織布特性を阻害しない範囲で設定できるが、全ポリ乳酸重量中のD体比率は、好ましくは0~15%、より好ましくは0.1~10%、さらに好ましくは0.1~6%である。D体比率がこれらの範囲内であると、紡糸性がよく、安定して不織布を得ることができ、また、融点、結晶性等が適当な範囲となり、所望の特性の不織布を得やすい。
【0013】
ポリ乳酸系重合体のメルトフローレート(MFR)は、210℃で20~120g/10分であることが好ましく、より好ましくは30~70g/10分である。210℃でのMFRが20g/10分以上であれば、溶融粘性が適切であり、紡糸工程において繊維の細化が起こり易いため紡糸性が良好となる。他方、210℃でのMFRが120g/10分以下であると、溶融粘性が適切なため、紡糸工程において単糸切れが発生することが少なく、紡糸性が良好となる。
【0014】
本実施形態の生分解性不織布の製造方法は限定されないが、公知のスパンボンド法、メルトブロー法、エアレイド法、カード法、抄造法などを採用することができる。本実施形態の生分解性不織布は接着により一体化されていることが好ましく、接着方法としては、エンボス加工、サーマルボンド、柱状流交絡、機械交絡、ニードルパンチ等を用いることができる。効率よく生産でき、成型した後の毛羽立ち等も抑制できることから、長繊維不織布が好ましく、更にはスパンボンド法にて製造することが好ましい。
【0015】
スパンボンド法を用いる場合、樹脂を加熱溶融して紡糸口金から吐出させ、得られた紡出糸条を公知の冷却装置を用いて冷却し、エアーサッカー等の吸引装置にて牽引細化する。引き続き、吸引装置から排出された糸条群を開繊させた後、コンベア上に堆積させてウェブとする。次いで、このコンベア上に形成されたウェブに加熱されたエンボスロール等の部分熱圧着装置を用いて部分的に熱圧着を施すことにより、スパンボンド不織布が得られる。スパンボンド法で得られる不織布は、布強度が強く、かつ、ボンディング部の破損による短繊維の脱落がない等の物性上の特徴を有しており、また、低コストで生産性が高い。
【0016】
本実施形態の生分解性不織布は、他の不織布が積層されていてもよく、例えば、SS、SMS、SMMS、SMSMなどの多層積層不織布の内の一層であってもよい。ここで、Sは、スパンボンド法の長繊維不織布、Mは、メルトブロウン法の極細不織布を意味する。また、生分解性不織布を基材として、短繊維不織布層を積層してもよい。
【0017】
本実施形態の生分解性不織布を構成する繊維の形状は、特に限定しないが、丸型、扁平型、C型、Y型、V型などの異形断面などが用いられ、好ましくは丸型断面であり、さらに、海島構造や芯鞘構造、割繊構造であってもよい。
【0018】
本実施形態の生分解性不織布を構成する繊維は、目的に応じて、他の樹脂、脂肪族ポリエステル共重合体以外の共重合体、難燃剤、無機充填剤、柔軟剤、可塑剤、顔料、耐電防止剤などを、さらに1種又は2種以上含有してもよい。
【0019】
本実施形態の生分解性不織布の目付は10g/m2以上450g/m2以下であり、好ましくは20~400g/m2であり、より好ましくは20~250g/m2である。目付が10g/m2以上であれば、強度が十分となり、他方、450g/m2以下であれば、成型加工時に不織布に十分に熱が伝わり、寸法安定性の高い成型体が得られやすい。
【0020】
本実施形態の生分解性不織布は、前記不織布の融点と、前記不織布の結晶化開始温度との差が91℃以上である。前記不織布の融点と、前記不織布の結晶化開始温度との差は、好ましくは95℃以上であり、さらに好ましくは103℃以上であり、また、好ましくは160℃以下である。この温度差が91℃未満であると、成型加工時の温度を上げても充分に結晶化が進まず、寸法安定性の高い成型体を得られない。
【0021】
本実施形態の生分解性不織布の冷結晶エンタルピー熱量ΔHは1.0J/g以上であり、好ましくは1.2J/g以上であり、より好ましくは3.3J/g以上であり、さらに好ましくは8.6J/gである。冷結晶エンタルピー熱量ΔHが1.0J/g以上であると、成形プロセスにおいて充分に結晶化が進行し、寸法安定性の高い成形体が得られやすい。また、成型後の非晶部を少なくして寸法安定性の高い成型体を得るという観点から、冷結晶エンタルピー熱量は20.0J/g以下が好ましく、より好ましくは17.5J/g以下であり、さらに好ましくは15.0以下である。
【0022】
前記不織布の融点と結晶化開始温度との差を91℃以上にする具体的な方法としては、例えば、生分解性熱可塑性樹脂の種類、副成分の熱可塑性樹脂の混合(副成分の熱可塑性樹脂の種類、主成分の樹脂との混合比率、等)、紡糸条件(樹脂温度、吐出量、糸条の牽引力、冷却等)、熱圧着条件(ロール温度、圧力、速度、エンボス柄等)、定長熱セット条件、エージングの条件(保管条件等)を調整することが挙げられる。以下、上記各種条件の詳細を説明する。尚、前記不織布の冷結晶ピークのエンタルピー熱量ΔHを1.0J/g以上にする方法についても同様である。
【0023】
本実施形態の生分解性不織布は、熱機械分析による80℃~140℃におけるMD方向の寸法変化率が、好ましくは-4.0%未満、より好ましくは-4.5%以下、さらに好ましくは-5.0%以下である。不織布の前記寸法変化率が小さい、即ち不織布が収縮しやすいことは、充分な非晶部を有していることを意味しており、前記寸法変化率が-4.0%未満であれば、熱成形における熱と延伸によって結晶化を促進することで成型性及び成形体の寸法安定性を高くすることができる。
【0024】
[副成分の熱可塑性樹脂の混合]
本実施形態の生分解性不織布を構成する繊維は、前記生分解性熱可塑性樹脂に加え、副成分の熱可塑性樹脂(以下、「副成分の樹脂」ともいう。)を含んでもよい。前記副成分の樹脂の含有量は、樹脂の総量を100重量%としたとき、好ましくは0重量%超30重量%以下であり、より好ましくは0.5~30重量%であり、さらに好ましくは3~27重量%、最も好ましくは5~25重量%である。添加量が0.5重量%以上であれば、不織布の結晶化開始温度を下げることができ、成型時により低温で結晶化を促進することができる。他方、添加量が30重量%以下であれば、結晶化が抑制されず、成型時に十分に結晶化が進行する。
【0025】
副成分の樹脂としては、脂肪族エステル、芳香族エステル、又は、(メタ)アクリル酸系モノマー、オレフィン、カプロラクトン、ヒドロキシアルカノエート、アルキレングリコール、二塩基酸、及び、ジアルコールからなる群より選択される1以上のモノマーの単独重合体又は共重合体が挙げられる。さらに、これらの生分解性を有する個々の重合体を複数種選択し、これらをブレンドしたものが挙げられる。生分解性熱可塑性樹脂との相溶性、紡糸性の観点から、脂肪族エステル、芳香族エステルが好ましく、具体的にはポリブチレンサクシネートやポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネートアジペートが好ましい。
【0026】
副成分の樹脂のMFRは、紡糸工程の延伸性が良好となる100g/10分以下であることが好ましく、より好ましくは20~80g/10分、さらに好ましくは30~70g/10分である。また、主成分の樹脂と副成分の樹脂との溶融流量比は、好ましくは0.2≦[副成分の樹脂の溶融流量/主成分の樹脂の溶融流量]≦1.5であり、より好ましくは0.3~1.4である。溶融流量比がこれらの範囲内であると紡糸性が良好であり、かつ、副成分の樹脂の分散性が良好となるために安定した熱接着性が得られる。
本実施形態の生分解性不織布を構成する繊維は、主成分の樹脂を海、副成分の樹脂を島とする海島繊維であると、結晶化開始温度を下げる効果が大きいため、好ましい。
【0027】
[紡糸時の糸条の牽引力]
スパンボンド法では、エアジェットによる高速気流牽引装置を用いることが一般的であり、牽引装置に導入するエアー量により牽引力を調整できる。この牽引力は、牽引装置の全長と同じ長さの直径0.235mmのテグス(釣り糸)(本明細書内では、東レ社製 ナイロンテグス 「銀鱗(2号/ナチュラル/50m巻 単体)」を用いた。)2本を牽引装置内に投入し、テグスに連結したバネ測りによって応力を測定し、投入したテグス長で割り返すことで牽引力(mN/m)を計測した。牽引力は、好ましくは82~125mN/mであり、より好ましくは82~105mN/m、最も好ましくは、87~100mN/mである。牽引力を適切な範囲で制御することによって、結晶化開始温度と冷結晶ピーク量を適切な範囲としやすく、さらに、成型時の予熱で収縮しにくくなり、また、充分な延伸性を発現させることができる。
【0028】
[熱圧着条件]
本実施形態の生分解性不織布の製造において熱圧着を行う場合、少なくとも一方の表面に凹凸模様を有する一対のエンボスロールを用いて、ロール温度は好ましくは25~85℃、より好ましくは40~70℃にて、線圧は好ましくは5~100N/mm、より好ましくは20~70N/mmにて、圧着面積率は好ましくは4~50%、より好ましくは8~40%にて、熱圧着することができる。適切な範囲で熱圧着を行うことで、成型時に接着が外れることなく、短時間の加熱で充分に結晶化を進めて寸法安定性の良好な成型体を得られるような不織布となる。
【0029】
[定長熱セット条件]
本実施形態の生分解性不織布の製造において、エンボス加工後に定長熱セットを行ってもよい。紡糸直後の不織布ウェブは、熱圧着の後、張力を加えた状態で熱を加えることで、不織布の表面性が良く、熱伸長性のある不織布を得て、成型加工時も破れ、形がきれいな成型体を得るために好ましい。定長熱セットを行う方法としては、一般的な方法を用いてよく、熱風乾燥、ピンテンター乾燥、熱板、カレンダー加工、フェルトカレンダー加工、エアスルー加工、熱プレス等を用いてよい。定長熱セットを行う温度範囲としては、不織布を構成する樹脂が装置に付着することなく、不織布の繊維が適度に接着された状態を得られる温度であれば、特に限定しないが、好ましくは50℃~95℃、より好ましくは70℃~90℃、さらに好ましくは70℃~80℃である。定長熱セットを行う温度が95℃以下であれば、不織布の配向結晶化が適度に抑えられ、結晶化開始温度を低くすることができ、また冷結晶ピークのエンタルピー熱量ΔHを大きくすることができる。また、定長熱セットを行う温度が50℃以上であれば、上述の定長熱セットによる効果が十分に得られる。
【0030】
[エージング]
本実施形態の生分解性不織布は、特定のエージング条件により、結晶化開始温度を低くすることができ、また、成型加工時(特に予熱工程時)の熱収縮を抑制することが可能である。具体的なエージング条件としては、40℃雰囲気下で10日間以上保管すれば、前記した効果を得やすい。
【0031】
以下、本実施形態の生分解性不織布を熱成形して成る成型体について説明する。
本実施形態の生分解性不織布は、熱成型で加工して、成型体とすることができる。成型体の形状について特に制限はなく、半円形、円柱形、楕円、三角形、四角形など使用目的に応じて選択することができる成型前の不織布の面積に対し、より面積(表面積)の大きな成型体を得たい場合、成型前後の不織布の面積がより大きくなるような成型金型を適宜選定すればよい。
【0032】
本実施形態の生分解性不織布の成型方法は、熱成型工程を含んでいれば、その方法は特に限定はされないが、熱成型前に予熱工程や、熱成型後に容量を維持する保形工程を含んでいてもよい。
予熱工程を熱成型前に含むことで、成型直前の不織布の温度を制御することができ、貯蔵弾性率など不織布の特性値を成型に適した値とすることができる。成型直前の不織布の温度の範囲は、好ましくは30~70℃、より好ましくは40~60℃、さらに好ましくは40~50℃である。成型直前の不織布温度は30℃以上であると、不織布が十分に柔らかくなり成型時に成型型に対する追従性が良好となるため、破袋や成型斑等、成型不良が発生しにくい。また、成型直前の温度が70℃以下であれば、不織布が熱収縮せず、成型加工しやすい。
【0033】
本実施形態の生分解性不織布がポリ乳酸系重合体を含む場合、結晶化速度が非常に遅いため、成型時に不織布を延伸した際の残留応力による成型体の収縮が不織布の結晶化よりも先に起こり、容量の小さい成型体となりやすい。このため、成型体を急冷固化させ、保形する効果を得るため、成型後に保形工程を含ませることで容量の大きい成型体を得ることができる。
【0034】
本実施形態の生分解性不織布の成型の程度は、成型指数で表される。成型指数とは、成型体の表面積を、成型体に用いられた成型前の平面状の不織布の面積(容器形状の場合は開口部面積)で割って求められる次式(1):
成型指数=(成型体の表面積(cm2))/(成型前の不織布の面積(cm2))
で定義される値である。
本実施形態の生分解性不織布の成形における成型指数は、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.1以上20以下、さらに好ましくは1.5~10、最も好ましくは2.5~6である。成型指数が大きい場合、不織布が大きく伸ばされていることを示す。他方、成型指数が小さい場合、不織布の伸びが少ないことを示す。実施形態の生分解性不織布は、不織布が高伸度を有するため、高伸度成型指数の大きな成型品を作製することができる。他方、成型指数が20以下であれば、破袋することなく成型でき、成型指数が1.1以上であれば、容器に内容物を充填する際に適度な大きさを有することができる。
【0035】
本実施形態の生分解性不織布を成形する際、成型体の寸法安定性の向上と生産性の両立という観点から、変形速度は好ましくは32mm/秒以上、より好ましくは40mm/秒以上、さらに好ましくは50mm/秒以上、最も好ましくは105mm/秒以上であり、また、好ましくは320mm/秒以下、より好ましくは140mm/秒以下である。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
まず、実施例、比較例で用いた測定法、評価法等を説明する。
(生分解性不織布の特性評価)
(1)目付(g/m2)
JIS L-1913に従って、総面積が1500cm2(例えば、幅20cmx長さ25cm 3枚)となるように不織布試料を切り取り、単位当たりの質量に換算して求めた。
【0037】
(2)嵩密度(g/cm3)
Mitsutoyo社製の厚み計を用いて、不織布試料の100g荷重時の厚み(mm)を測定し、以下の式:
嵩密度(g/cm3)=目付(g/m2)/厚み(mm)/1000
で計算した。
【0038】
(3)融点(℃)
PerkinElmer社製の示差走査熱量計DSC6000を用い、10℃/minで不織布試料の融点を超える温度まで昇温した。得られたチャートの融解ピークに相当するピークの頂点を融点とした。尚、ポリ乳酸のD体比率、もしくは副成分樹脂のブレンドによっては融解ピークが複数見られることがあるが、ここでいう融点とは、主成分樹脂に対応するピークの低温側のピークに関して、その頂点を融点とする。
【0039】
(4)結晶化開始温度(℃)
時分割透過型広角X線散乱(WAXS)測定にて、不織布試料の結晶化度の変化を20秒間隔で測定し、室温時の結晶化度に対して3%以上結晶化度が増加した時(例えば、室温時の結晶化度が20.0%の場合、結晶化度が20.6%となった時)の温度を結晶化開始温度とした。副成分樹脂をブレンドし、結晶化の増加が2段階に分かれる場合は、主成分樹脂由来の温度を採用する。尚、測定装置・条件については以下の通りとした。
装置:(株)リガク製 NANOPIX
X線波長:0.154nm
光学系:ポイントコリメーション(1st:1.40mmφ、2nd:open、guard:0.85mmφ)
検出器:HyPix-6000(2次元半導体検出器)
カメラ長:122.2mm
露光時間/測定周期:10秒/20秒
試料セル周りの環境:真空
サンプル(不織布試料)加熱条件:室温から炉内の加温をスタートし、セル内温度を安定させるため30℃で5分間保温後、1℃/minで昇温させた(最大温度150℃)。
【0040】
測定の流れとしては、セルにセットした不織布試料を炉内に挿入後、昇温を開始し、その直後から時分割測定を開始した。データ処理としては2次元検出器により測定された散乱パターンI(2θ,φ)に対し、以下の式:
【数1】
{式中、θ:ブラッグ角、φ:方位角、P:偏光因子。}
により円環平均することで、1次元散乱プロフィールI(2θ)を得た。
【0041】
本測定では、温度変化に伴う結晶化度の変化を確実に捉え、測定周期を短くするために、サンプルの透過率測定を実施していない。そのため、空セル散乱補正は行わなかった。セル内の温度履歴については空セルと熱電対を使用して事前に測定しており、1℃/minで昇温させた場合、セル内の温度変化は炉内の設定値と差異はないことを確認した。各サンプルに対して、温度変化に伴う生分解性熱可塑性樹脂の結晶化度の変化を算出した。結晶化度Xは、1次元散乱プロフィールを結晶ピークとアモルファスハローにピーク分離し、以下の式:
【数2】
{式中、I
ci:i番目の結晶ピークの面積、I
ai:アモルファスハローの面積。}により算出した。
ピーク分離は、各ピークが十分に分離される条件を採用すればよい。PLAの場合、ピーク分離条件として、アモルファスピークはベースラインを2θ=5°から2θ=28°を結ぶように引き、フィッティング範囲を5°<2θ<28°とした。結晶ピークは、温度変化に伴い観測されたPLAの結晶由来の回折ピークを用いた。(110)/(200),(203)面由来の回折ピーク2つ、いずれもガウス関数でフィッティングし、束縛条件としてアモルファスピーク位置を2θ=16.9°、半値全幅を9.5°で固定してフィッティングを行った。
【0042】
(5)冷結晶エンタルピー熱量ΔH(J/g)
PerkinElmer社製の示差走査熱量計DSC6000を用い、10℃/minで不織布試料の融点を超える温度まで昇温した。得られたチャートの結晶化由来の発熱ピークに対して、微分曲線から熱量変化のある領域でピーク面積を測定した。
【0043】
(6)機械熱分析による80℃~140℃におけるMD方向の寸法変化率(%)
試料の両端5cmを除き、(1)で測定した目付が±10%となるような幅2mm、長さ25mmの試料を切り出し、ティ・エイ・インスツルメント社製TMAQ400を用いて、クランプ上部にフィルム/ファイバー用クランプ、下部にティ・エイ・インスルメント製アルミボールを使用し、初期荷重0.005N、30℃~160℃ まで、昇温速度10℃/分、把握長15mmにて測定を行った。80℃~140℃において、下記式:
寸法変化率(%)=寸法変化(μm)/{把握長(mm)×1000}×100
により、寸法変化率(%)を求めた。N=3測定し、その平均値を算出した。
【0044】
(7)生分解性(産業用コンポスト)
ISO 16929(JIS K 6952)パイロットスケール好気性崩壊度測定にて、不織布試料の最大12週間のコンポスト化を行い、最後に目開き2mmのフルイに通し、フルイを通す前の重量に対するフルイ残りの重量の割合によって以下評価基準で評価した。
[評価基準]
◎:フルイ残り5%以下
○:フルイ残り5%超10%以下
×:フルイ残り10%超。
【0045】
(8)均一成型性(R/Ave)
幅方向10列の成型金型を有する成型機に不織布試料をセットし、熱風で不織布温度を50℃として、120℃の円筒成型金型(直径4.4cm、高さ3.2cm)を用いて、金型が不織布に接触してから所定の深さに到達するまでの時間を1.0秒に設定してプレス成型を実施し、PLAシートを蓋材としてヒートシールして封止し、成型体を100個作製した。
得られた成型体の底部を1cm各に切り抜き、重量測定した。
R/Aveの値は次式:
R(100枚の重量の最大値-最小値の値)/Ave(100枚の重量の平均値)
で定義される値である。
【0046】
(9)成型性
直径4.4cm、高さ1.3cm(13mm)、及び、直径4.4cm、高さ3.2cm(32mm)の2種類の円筒成型金属を用いて、(7)と同様の方法でプレス成型を実施した時の成型体の様子を観察し、以下の評価基準で評価した。尚、成型指数は、成型体の表面積を成型体に用いられた成型前の平面状の不織布の面積(容器形状の場合は開口部の面積)で割って求められる次式:
成型指数=(成型体の表面積(cm2))/(成型前の不織布の面積(cm2))
で定義される値である。
(評価基準)
尚、表面毛羽の個数として、成型体の表面の毛羽本数を計測し、N=10の平均値を求めた。
◎:高さ1.3cmの金型において成型指数1.9以上、高さ3.2cmの金型において成型指数3.4以上の成型体が得られた。さらに、成型体100個中、破袋数が1個以下であり、表面毛羽は3個以下である。
○:高さ1.3cmの金型において成型指数1.9以上、高さ3.2cmの金型において成型指数3.4以上の成型体が得られた。但し、成型体100個中、破袋数が2個以上5個以下であり、又は表面毛羽は4個以上9個以下である。
△:高さ1.3cmの金型において成型指数1.9以上、高さ3.2cmの金型において成型指数3.4以上の成型体が得られた。但し、成型体の表面に斑がある、延伸斑がある、表面毛羽が10個以上のうちいずれか一つ以上の問題がある。
×:破れて成型体が得られなかった。
【0047】
(10)成型体の寸法安定性(沸水浸漬時の容量変化)
前記(8)の方法で作製した成型体を沸水に1分間浸漬後、風乾させ、沸水浸漬前後の容量変化を求め、N=5個の平均値を求めた。容量変化率によって、以下の評価基準に従って判定した。
◎:成型体の容量変化が±5%以内
○:成型体の容量変化が±10%以内
△:成型体の容量変化が±20%以内
×:成型体の容量変化が±20%超え。
【0048】
[実施例1]
温度210℃のMFR値が15g/10分のポリ乳酸(浙江海正生物社製 REVODE)に、ポリブチレンサクシネート(融点110℃)を10重量%添加し、単軸押出機にて溶融、混練させ、スパンボンド法により、吐出量0.9g/分・Hole、紡糸温度230℃、牽引力93mN/mで、フィラメント群を移動捕集面に向けて押し出し、生分解性長繊維ウェブ(円形断面)を調製した。
次いで、一方のロール表面に凹凸模様を有する一対のエンボスロールを用いて、圧着面積率が14%、上・下ロールとも温度55℃、ロール線圧40N/mmの条件で熱圧着し、目付100g/m2の生分解性不織布を得た。
【0049】
[実施例2]
ポリ乳酸を温度210℃のMFR値が15g/10分のポリ乳酸(Nature Works社製 Ingeo)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、生分解性不織布を製造した。
【0050】
[実施例3~7]
以下の表1に記載の目付となるよう、吐出量、エンボス圧力、ライン速度を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、生分解性不織布を製造した。
【0051】
[実施例8~12]
牽引力、圧着面積率(エンボス率)を変更したこと以外は、実施例5と同様にして、生分解性不織布を製造した。
【0052】
[実施例13~15]
熱圧着時のロール温度(エンボス温度)を40、70、85℃としたこと以外は、実施例5と同様にして、生分解性不織布を製造した。
【0053】
[実施例16~21]
ポリブチレンサクシネート(PBS)添加率を1、3、5、15、20、30wt%としたこと以外は、実施例5と同様にして、生分解性不織布を製造した。
【0054】
[実施例22]
副成分の樹脂をポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)としたこと以外は、実施例5と同様にして、生分解性不織布を製造した。
【0055】
[実施例23]
副成分の樹脂をポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)としたこと以外は、実施例5と同様にして、生分解性不織布を製造した。
【0056】
[実施例24]
副成分の樹脂をポリカプロラクトン(PCL)としたこと以外は、実施例5と同様にして、生分解性不織布を製造した。
【0057】
[実施例25]
副成分の樹脂をポリヒドロキシブチレートヘキサノエート(PHBH)としたこと以外は、実施例5と同様にして、生分解性不織布を製造した。
【0058】
[実施例26]
副成分の樹脂をエチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)としたこと以外は、実施例5と同様にして、生分解性不織布を製造した。
【0059】
[実施例27~30]
熱圧着時の熱圧着面積率(エンボス率)を4、8、10、40%としたこと以外は、実施例5と同様にして、生分解性不織布を製造した。
【0060】
[実施例31~33]
熱圧着時のエンボス柄をピン、オーバル、フラット柄としたこと以外は、実施例5と同様にして、生分解性長繊維不織布を製造した。
【0061】
[実施例34~36]
PBS添加率を0%とし、牽引力を変更したこと以外は、実施例5と同様にして、生分解性不織布を製造した。
【0062】
[実施例37]
主成分の樹脂を温度210℃のMFR値が25g/10分のナイロン4(PA4)とし、エンボス温度を63℃に変更したこと以外は、実施例5と同様にして、生分解性不織布を製造した。
【0063】
[実施例38]
主成分の樹脂を温度210℃のMFR値が20g/10分のポリグリコール酸(PGA)とし、紡糸温度を260℃に、エンボス温度を48℃に変更したこと以外は、実施例5と同様にして、生分解性不織布を製造した。
【0064】
[実施例39]
ポリ乳酸とポリブチレンサクシネートをそれぞれ別の押出機にて溶融、混錬させ、紡糸口金として鞘芯型紡糸口金を用い、芯成分をポリ乳酸、鞘成分をポリブチレンサクシネートとしたこと以外は、実施例5と同様にして、生分解性不織布を製造した。
【0065】
[実施例40~43]
短時間で熱成形を行った時の成形性等を確認するため、実施例5の生分解性不織布を用いて、成型時のプレス温度をそれぞれ120℃、120℃、140℃、140℃、プレス時間をそれぞれ0.8秒、0.6秒、0.3秒、0.1秒として成型体を作製し、各種評価を行った。
【0066】
[実施例44]
短繊維として、単繊維繊維径が30μmの、ポリブチレンサクシネートが10wt%含まれるポリ乳酸の原綿を用い、これをカード機に通して目付150g/m2の不織クロスウェブを作製した。次いで作製したウェブを100メッシュの金網上に載置し、孔径0.08mmの噴射孔が孔感覚0.7mmで配置された高圧液体流処理設備を用いて高圧液体流処理を行い、ウェブを一体化した。液体流の噴射条件は、60kg/cm2の水圧で1回、120kg/cm2の水圧で1回とした。また反対側より120kg/cm2の水圧で1回とした。その後、得られたウェブの過剰な水分の除去のため、熱風乾燥機によって100℃で乾燥処理を行い、生分解不織布を得た。
【0067】
[実施例45]
実施例44で得られた不織布に対して、一方のロール表面に凹凸模様を有する一対のエンボスロールを用いて、圧着面積率が14%、上・下ロールとも温度55℃、ロール線圧40N/mmの条件で熱圧着し、目付150g/m2の生分解性不織布を得た。
【0068】
[実施例46]
実施例44で得られた不織布に対して、刺針密度300本/cm2のニードルパンチ加工を行い、繊維ウェブを交絡させることで、目付150g/m2の生分解性不織布を得た。
【0069】
[比較例1、2]
目付がそれぞれ5、500g/m2となるようライン速度を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、生分解性不織布を製造した。
【0070】
[比較例3、4]
牽引力を79、137mN/mとしたこと以外は、実施例5と同様にして、生分解性長繊維不織布を製造した。尚、比較例3では牽引装置に糸条が詰まり紡糸が不可能であった。
【0071】
[比較例5]
熱圧着時のロール温度を90℃としたこと以外は、実施例5と同様にして、生分解性不織布を製造しようとしたが、熱圧着時に不織布が激しく収縮して、不織布の製造が不可能であった。
【0072】
[比較例6]
生分解性長繊維不織布製造時のPBS添加率を35wt%としたこと以外は、実施例5と同様にして、生分解性不織布を製造しようとしたが、糸切れが頻発して紡糸が不可能であった。
【0073】
[比較例7]
温度210℃のMFR値が15g/10分のポリ乳酸(浙江海正生物社製 REVODE)に、ポリブチレンサクシネート(融点110℃)を10重量%添加し、単軸押出機にて溶融、混練させ、スパンボンド法により、吐出量0.9g/分・Hole、紡糸温度230℃、牽引力87/mで、フィラメント群を移動捕集面に向けて押し出し、生分解性長繊維ウェブ(円形断面)を調製した。
次いで、一方のロール表面に凹凸模様を有する一対のエンボスロールを用いて、圧着面積率が14%、上・下ロール温度とも45℃、ロール線圧30N/mmで熱圧着した。
次いで、この仮圧着ウェブを、30℃で72時間保管後、フェルトカレンダー(ドラム直径2,500mm、温度100℃、加工速度10m/分)で熱処理を行い、生分解性不織布を得た(目付150g/m2、繊維径30μm)。
【0074】
[比較例8]
フェルトカレンダーの温度を135℃としたこと以外は、比較例7と同様にして、生分解性不織布を製造した。
【0075】
[比較例9]
温度210℃のMFR値が30g/10分のポリブチレンサクシネートを単軸押出機にて溶融、混練させ、スパンボンド法により、吐出量0.9g/分・Hole、紡糸温度220℃、牽引力93mN/mで、フィラメント群を移動捕集面に向けて押し出し、生分解性長繊維ウェブ(円形断面)を調製した。
次いで、一方のロール表面に凹凸模様を有する一対のエンボスロールを用いて、圧着面積率が12%、上・下ロールとも温度90℃、ロール線圧40N/mmの条件で熱圧着して、生分解性不織布を製造した。
【0076】
実施例1~46、比較例1~9の結果を、以下の表1~5に示す。
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の生分解性不織布は、生分解性と共に、優れた成形均一性、成型性を有するため、生活資材向け容器や工業資材向け容器、車両内装材・外装材、防音材、吸音材、部品搬送トレイ、青果物トレイ、食品容器、育苗ポッド、フィルター用途などの幅広い分野に好適に利用可能である。また、本発明の生分解性不織布は、高伸度であり、複雑な形状の容器を形成することができる。さらに成型品の熱収縮を抑制できるため、容器としての意匠性が要求される分野においても好適に利用可能である。