(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-18
(45)【発行日】2024-04-26
(54)【発明の名称】ソフトウェア更新システム、機械システム開発支援サービス方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H02P 29/00 20160101AFI20240419BHJP
【FI】
H02P29/00
(21)【出願番号】P 2023522043
(86)(22)【出願日】2021-05-18
(86)【国際出願番号】 JP2021018782
(87)【国際公開番号】W WO2022244100
(87)【国際公開日】2022-11-24
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】辻 裕司
(72)【発明者】
【氏名】上井 雄介
(72)【発明者】
【氏名】松本 豊
(72)【発明者】
【氏名】高野 裕理
(72)【発明者】
【氏名】梁田 哲男
(72)【発明者】
【氏名】高田 英人
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-068684(JP,A)
【文献】特開2001-268988(JP,A)
【文献】特開2020-099141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの運転ソフトウェアを記憶するストレージを有するインバータと通信可能に構成されており、
前記インバータが第1モータを運転したときの前記第1モータの運転状況を表す運転データを収集する収集装置と、
前記収集装置により収集された運転データに基づいて前記第1モータの運転状況を分析する分析装置と、
前記分析装置による分析の結果に基づいて、前記第1モータに対して少なくとも1つの特性に係る性能が下回る前記第1モータの下位互換品であるモータを、第2モータとして選定する選定装置と、
前記第1モータが前記第2モータの特性を模擬して動作するよう前記ストレージに記憶されている運転ソフトウェアを更新する更新装置と、を備えるソフトウェア更新システム。
【請求項2】
請求項1に記載のソフトウェア更新システムにおいて、
前記更新装置は、前記第2モータを動作させるための運転ソフトウェアを、前記第2モータが接続されるインバータのストレージに出力する、ソフトウェア更新システム。
【請求項3】
請求項1に記載のソフトウェア更新システムにおいて、
複数のモータについてモータの特性を表すモータ情報を記憶する記憶装置を備え、
前記選定装置は、
前記記憶装置に記憶されているモータ情報を参照して、前記複数のモータの中から1以上のモータ候補に絞り込む絞込装置と、
前記絞込装置により絞り込まれた1以上のモータ候補を提示する提示装置と、
操作者の操作に応じて前記提示された1以上のモータ候補の中から1つを前記第2モータとして選択する選択装置と、
モータの特性に係る絞込み条件の入力を受け付ける条件受付装置と、を備え、
前記絞込装置は、前記条件受付装置により受け付けた絞込み条件に基づいて前記1以上のモータ候補に絞り込む、ソフトウェア更新システム。
【請求項4】
請求項1に記載のソフトウェア更新システムにおいて、
前記第1モータの下位互換品は、モータの回転速度とトルクとの関係を表すN-T特性曲線グラフにおいて、前記下位互換品のN-T特性曲線が前記第1モータのN-T特性曲線より内側に位置するものである、ソフトウェア更新システム。
【請求項5】
請求項
3に記載のソフトウェア更新システムにおいて、
前記分析装置は、前記インバータが前記第1モータを運転したときの前記第1モータの回転速度とトルクとの関係の実績を特定し、
前記絞込装置は、N-T特性曲線グラフにおいてN-T特性曲線が前記実績に対応する位置を所定割合以上包含するようなモータ候補に絞り込む、ソフトウェア更新システム。
【請求項6】
請求項
3に記載のソフトウェア更新システムにおいて、
前記分析装置は、前記インバータが前記第1モータを運転したときの前記第1モータに加わる負荷特性を同定し、
前記絞込装置は、前記分析装置により同定された負荷特性に基づいて前記モータ候補を絞り込む、ソフトウェア更新システム。
【請求項7】
請求項6に記載のソフトウェア更新システムにおいて、
前記分析装置は、前記負荷特性と前記第2モータの特性情報とに基づいて前記第2モータの振動の有無を予測し、
前記振動が有ると予測されたときに、前記振動の低減または前記振動の再現を、前記運転ソフトウェアの編集に対して考慮対象とするか否かの設定を受け付ける振動設定装置を備え、
前記更新装置は、前記振動設定装置により受け付けた設定に基づいて前記運転ソフトウェアを編集する、ソフトウェア更新システム。
【請求項8】
請求項7に記載のソフトウェア更新システムにおいて、
前記振動設定装置は、互いに独立した2以上の振動周波数帯の各々について前記考慮対象にすることへの要否を受け付ける、ソフトウェア更新システム。
【請求項9】
請求項6に記載のソフトウェア更新システムにおいて、
前記記憶装置は、前記第1モータに対応するモータ情報を記憶し、
前記分析装置は、前記複数のモータのうち1つのモータと前記負荷特性とを結合することにより想定される機械システムの動作を、前記1つのモータに対応したモータ情報と前記負荷特性とに基づいてシミュレーションし、
前記第1モータと前記負荷特性との結合により想定される機械システムについての前記分析装置によるシミュレーションの結果と、前記第1モータとは異なるその他のモータと前記負荷特性との結合により想定される機械システムについての前記分析装置によるシミュレーションの結果とを比較可能に出力する出力装置を備える、ソフトウェア更新システム。
【請求項10】
請求項9に記載のソフトウェア更新システムにおいて、
前記分析装置は、前記シミュレーションの結果に評価関数を適用して評価値を算出し、前記評価値に基づいて前記シミュレーションの結果に順位付けをする、ソフトウェア更新システム。
【請求項11】
複数のモータに対応した複数のモータ情報をデータベースに格納するステップと、
第1モータと前記第1モータの運転ソフトウェアを記憶する第1インバータとを、モータおよびインバータを用いた機械システムの開発者に提供する手続きを処理するステップと、
前記第1インバータが前記第1モータを運転したときの前記第1モータの運転状況を表す運転データを収集するステップと、
前記収集された運転データと前記データベースに格納されているモータ情報とに基づいて、前記第1モータに対して少なくとも1つの特性に係る性能が下回る前記第1モータの下位互換品である第2モータを選定するステップと、
前記第1モータが前記第2モータの特性を模擬して動作するよう前記第1インバータに記憶されている運転ソフトウェアを更新するステップと、を備える機械システム開発支援サービス方法。
【請求項12】
請求項11に記載の機械システム開発支援サービス方法において、
前記第1モータと前記第2モータとの間における特性の差異が前記第2モータを用いた機器に及ぼす影響を評価するステップ、を備える機械システム開発支援サービス方法。
【請求項13】
請求項11に記載の機械システム開発支援サービス方法において、
前記開発者によって入力された前記第2モータの制御要件に基づいて、前記第1インバータに運転ソフトウェアを転送するステップ、を備える機械システム開発支援サービス方法。
【請求項14】
請求項11に記載の機械システム開発支援サービス方法において、
前記第2モータが選定されたことを前記第2モータの提供者に通知するステップ、を備える機械システム開発支援サービス方法。
【請求項15】
モータの運転ソフトウェアを記憶するストレージを有するインバータが第1モータを運転したときの前記第1モータの運転状況を表す運転データを収集する収集ステップと、
前記収集ステップにおいて収集された運転データに基づいて前記第1モータの運転状況を分析する分析ステップと、
前記分析ステップにおいて分析された結果に基づいて、前記第1モータに対して少なくとも1つの特性に係る性能が下回る前記第1モータの下位互換品であるモータを、第2モータとして選定する選定ステップと、
前記第1モータが前記選定ステップにおいて選定された第2モータの特性を模擬して動作するよう前記インバータの運転ソフトウェアを更新する更新ステップと、
コンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
モータおよびインバータを含む機械システムの開発に適したソフトウェア更新システム、機械システム開発支援サービス方法およびそのためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機械システムは省エネに配慮した電動化が進んでおり、その動力源にはモータおよびインバータが用いられている。このような背景のもと、モータは、用途あるいは出力容量帯などが多岐にわたり、様々な事業者による製造開発がなされている。
【0003】
一方、機械システムの開発におけるモータの選定は、省エネ性能に加え、小型、低騒音、高応答などの諸性能あるいは価格などによる総合的評価に基づいて行われる。この総合的評価は、複数種類のモータを実機にて試験的に運転して行われることが望ましい。
【0004】
しかしながら、実際には、機械システムの実機へモータを組み込む際に、モータの特性の違いあるいは構造の違い等に伴う個別の調整が必要になることがある。また、機械システムにおけるモータのビルトイン構造化によって、機械システム内部のモータの交換が困難であることも少なくない。そのため、実機によるモータの比較評価は、機械システムの開発効率を落とす要因となる場合が多い。それ故、機械システム開発者の側においては、使用するモータの候補を少ない種類に限定せざるを得なくなる。また、モータ供給者の側においては、新製品を含む多くのモータへの評価の機会が制限されることとなる。
【0005】
従来の技術として、特許文献1に記載された技術がある。この特許文献には、モータの製品型名(または型番)を入力すると、そのモータと代替可能なモータの製品群を紹介するとともに、元のモータと代替可能なモータとの差異を表示する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、単に代替可能な製品を紹介するだけである。それ故、機械システムを新規に開発する際には有用でなく、上記の課題は依然として解決されない。すなわち、機械システム開発者は、機械システム内のモータの交換が煩雑であり、使用するモータの候補を少ない種類に限定せざるを得ない。そのため、モータおよびインバータを含む機械システムの開発速度の向上を図ることが難しい。
【0008】
そこで、本発明は、モータを実際に交換することなく、モータの挙動を仮想的に試行し評価することができるシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0010】
本発明の代表的な実施の形態によるソフトウェア更新システムは、モータの運転ソフトウェアを記憶するストレージを有しているインバータと通信可能に構成されており、前記インバータが第1モータを運転したときの前記第1モータの運転状況を時系列的に表す運転データを収集する収集装置と、前記収集された運転データに基づいて前記第1モータの運転状況を分析する分析装置と、前記分析装置による分析の結果に基づいて、前記第1モータに対して少なくとも1つの特性に係る性能が下回る前記第1モータの下位互換品であるモータを第2モータとして選定する選定装置と、前記第1モータが前記第2モータの特性を模擬して動作するよう前記ストレージに記憶されている運転ソフトウェアを更新する更新装置と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0012】
本発明の代表的な実施の形態によれば、モータを実際に交換することなく、モータの挙動を仮想的に試行し評価することができる。
【0013】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の一実施形態であるモータ模擬システムの構成を示す図
【
図2】サーバを機能ブロックで表したモータ模擬システムを示す図
【
図3】機械システム開発支援サービスの利用形態を示すフロー図
【
図4】機器メーカが操作する操作端末の表示画面の一例を示す図
【
図7】シミュレーション結果表示画面の一例を示す図
【
図9】模擬モータ候補の絞込み・提案処理の例を示すフロー図
【
図10】運転ソフトウェアのチューニング処理の例を示すフロー図
【
図11】運転ソフトウェアの出力処理の例を示すフロー図
【
図12】インバータにおけるモータ制御系の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施の形態1)
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。以下で説明する実施の形態は、本発明を実現するための一例であり、本発明の技術範囲を限定するものではない。なお、本実施の形態において、同一の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は、特に必要な場合を除き省略する。
【0017】
本発明の実施の形態として、本開示のソフトウェア更新システムを含むモータ模擬システムと、当該システムを用いた機械システム開発支援サービスについて説明する。
【0018】
〈機械システム開発支援サービスの概要〉
【0019】
まず、機械システム開発支援サービスの概要について説明する。
【0020】
本サービスにおいて、サービス提供者は、高スペックであり複数の下位互換品が存在するモータ(以降、プローブモータという)と、これを駆動させるためのインバータとを、機械システムの開発者(以降、機器メーカという)に提供する。
【0021】
機器メーカは、これらのプローブモータおよびインバータを用いて、自身が開発する機械システムの試作機(以降、単に試作機という場合がある)を構築し、動作させる。
【0022】
モータ模擬システムは、試作機の動作中の状態を記録した時系列データである運転データを収集分析し、その分析結果を基にプローブモータの下位互換品であるモータ候補を1つ以上提案する。
【0023】
機器メーカは、提案されたモータ候補の中から所望のモータ候補を指定する。モータ模擬システムは、プローブモータが上記指定されたモータ候補を模擬するよう、すなわち、そのモータ候補に近い特性を持って動くよう、インバータに設定される運転ソフトウェアを更新する。機器メーカは、運転ソフトウェアが更新されたインバータを用いて試作機を動作させ評価する。機器メーカは、必要に応じて、モータ候補の再指定、運転ソフトウェアの更新、試作機の動作、を繰り返し、製品となる機械システムに採用するモータを決定する。
【0024】
これにより、機器メーカは、所望のモータ候補を、試作機に実際に搭載することなく、仮想的に搭載して試作機を動作させ評価することができ、機械システムの開発の質あるいは速度を向上させることができる。モータ供給者にとっては、新製品のモータを含む多数のモータについて使用を検討してもらう機会が得られるので、新規モータの購入検討の機会あるいは売り上げの向上を期待できる。
【0025】
サービス提供者にとっては、サービス利用によるサービス料あるいは手数料などを得る事業を営むことができ、さらに、その利便性から利用者の増大による売上げ増加も期待できる。
〈モータ模擬システムの構成〉
【0026】
本発明の一実施形態であるモータ模擬システムと、このシステムにアクセスして利用する者について説明する。
【0027】
図1は、本開示の一実施形態であるモータ模擬システムの構成を示す図である。なお、
図1には、便宜上、モータ模擬システムにアクセスする者も一緒に示している。
【0028】
モータ模擬システム100は、機器メーカ103、モータ供給者104、およびサービス提供者105によりアクセスされる。
【0029】
機器メーカ103は、モータおよびインバータを用いた機械システムを開発する事業主体である。機器メーカ103は、例えば、産業用の機械システムの設計、製造を請け負って販売するメーカである。また、機器メーカ103は、モータ模擬システム100を用いた機械システム開発支援サービスの利用者である。
【0030】
モータ供給者104は、機械システムに搭載可能なモータを提供する事業主体である。モータ供給者104は、例えば、モータの製造、販売あるいは貸出しをするモータメーカである。
【0031】
サービス提供者105は、モータ模擬システム100による機械システム開発支援サービスを運営、提供し、当該システムを管理する事業主体である。なお、サービス提供者105は、インバータを製造、販売あるいは貸出しをするインバータメーカが兼務してもよい。また、サービス提供者105は、モータ供給者104と同一の事業主体であってもよい。
【0032】
本実施の形態では、機器メーカ103とモータ供給者104とが、情報通信プラットフォームであるモータ模擬システム100を相互に活用することによって、機械システムの開発を加速させる。
【0033】
図1に示すように、モータ模擬システム100は、サーバ(ソフトウェア更新システム)1、インバータ(第1インバータ)2、プローブモータ(第1モータ)3、コントローラ4、操作端末6A,6B、およびネットワーク7を含む構成である。なお、操作端末6Aは、機器メーカ103側に設けられており、操作端末6Bは、モータ供給者104側に設けられている。
【0034】
サーバ1、コントローラ4、および操作端末6A,6Bは、ネットワーク7を介してそれぞれが交互にデータの送受信をできるよう通信可能に接続されている。例えば、操作端末6A,6Bを用いて、サーバ1およびコントローラ4の操作あるいは監視をしたり、コントローラ4からインバータ2の稼働状態をサーバ1あるいは操作端末6A,6Bに送信したりすることができる。
【0035】
ネットワーク7は、広域通信ネットワークであり、全体として有線、無線あるいはこれらの混合で実現される。ネットワーク7は、例えば、産業用ネットワーク、イーサネット、あるいはインターネットである。なお、ネットワーク7と無線により通信を行う場合には、Wi-FiあるいはBluetooth(登録商標)などの通信プロトコルに沿って設計されたアクセスポイント8を、ネットワーク7に接続させて設けるようにする。アクセスポイント8は、コントローラ4あるいは操作端末6A,6Bなど、接続する機器に適合するアンテナ回路あるいはドライバを搭載するようにしてもよい。
【0036】
なお、インバータ2は、コントローラ4を介さずに、ネットワーク7に直接的に接続される形態であってもよい。
【0037】
サーバ1は、本開示のソフトウェア更新システムの一例であり、例えば、コンピュータサーバで構成される。
【0038】
サーバ1は、プロセッサ11、メモリ12、ストレージ13、およびインタフェース14を備えている。サーバ1は、ストレージ13に記憶されている所定のプログラムを、プロセッサ11およびメモリ12を用いて実行することにより、種々の機能ブロックとして機能する。また、サーバ1は、インタフェース14を用いて外部の機器とデータの送受信を行う。ストレージ13は、例えば、ハードディスクなどの磁気記憶装置あるいは、半導体記憶装置である。サーバ1の機能の詳細については後述する。
【0039】
操作端末6A,6Bは、例えば、デスクトップパソコン、ノートパソコン、タブレット端末、スマートフォンなどの端末装置である。操作端末6A,6Bは、それぞれ、操作者による操作あるいは入力を受け付ける操作部と、種々の情報あるいは画像を表示する表示部とを有している。
【0040】
インバータ2は、コントローラ4から受信した任意の指令値にプローブモータ3のフィードバック状態量が一致するよう運転制御を行う。インバータ2は記憶部(ストレージ)2mを有しており、この記憶部2mにプローブモータ3を駆動させるための運転ソフトウェアを記憶している。
【0041】
また、インバータ2は、プローブモータ3から運転データを受信し、記憶部2mに格納する。インバータ2は、例えば、サーボアンプあるいはモータドライバである。
【0042】
運転ソフトウェアは、インバータに搭載された演算処理部が実行することにより、モータを運転する際の制御系を実現させるプログラムである。運転ソフトウェアは、例えば、コントローラ4からの指令信号を処理する演算制御回路に適用するパラメータあるいは演算フィルタ等である。なお、運転ソフトウェアの詳細については、
図12を参照してインバータ2内部の制御系を説明する際に、改めて説明する。
【0043】
プローブモータ3は、インバータ2が供給する交流電力によって動力を得て機械的な仕事をする。プローブモータ3は、例えば、サーボモータあるいはステップモータである。
【0044】
コントローラ4は、プローブモータ3に所望の動作をさせるべく指令信号をインバータ2に送信する。また、コントローラ4は、インバータ2の記憶部2mに運転ソフトウェアを書き込むときのインタフェースの役割も果たす。
【0045】
本実施の形態において、インバータ2、プローブモータ3、およびコントローラ4は、所望の目的を達成させる機械システム5を形成する。一般的に、機械システムを構成するモータには、機械動力を伝達する手段と動力を消費する負荷機器が接続されているが、ここでは図示を省略している。
【0046】
機械システム5は、例えば、製造工場において製品あるいは部品を製造、加工、運搬するシステム、商品管理倉庫において商品を移動させるシステム等である。機械システム5は、内部にプローブモータ3とインバータ2の組合せを1つ以上含んでいる。本実施の形態では、この組合せを複数備えた構成であり、プローブモータ群3Gおよびインバータ群2Gを備えた構成である。プローブモータ3とインバータ2の組合せが複数ある場合には、その組合せの数より少ない数のコントローラ4で統括管理するようにしてもよい。
【0047】
なお、本実施の形態において、プローブモータ3は、数あるモータの中でも非常に高スペックなモデルであり、例えば、モータ供給者104が提供する最上位モデルに位置するモータである。プローブモータ3は、例えば、最大回転速度あるいは最大トルクなどの出力容量が大きく、回転速度対トルク特性(以降、N-T特性ともいう)が優れており、静音性、応答性が高く、小型で省スペース化が成されたモデルである。ただし、プローブモータ3は、1種類だけでなく、複数種類用意されていてもよい。
〈サーバの機能〉
【0048】
次に、サーバ1の機能について説明する。
図2は、サーバ1を機能ブロックで表したモータ模擬システムを示す図である。サーバ1における各機能ブロックは、上述したように、サーバ1がストレージ13に記憶されている所定のプログラムを実行することにより実現される。
【0049】
図2に示すように、サーバ1は、機能ブロックとして、初期設定部10、運転データ収集部(収集装置)20、モータ分析部(分析装置)21、振動検知部(分析装置)22、モータデータベース(記憶装置)30、データベース更新部31、モータ候補抽出部(選定装置、絞込装置、提示装置、選択装置)40、チューニング部(更新装置)50、機構系モデリング部(分析装置)60、モータ模擬設定出力部(更新装置)70、および模擬運転設定部(選択装置、更新装置、条件受付装置、出力装置)80を備えている。
【0050】
初期設定部10は、機器メーカ103が評価に用いる機械システム5、この機械システム5に搭載されるインバータ2、プローブモータ3、およびコントローラ4の情報を、モータ模擬評価に先立って入力するインタフェース機能を果たすものである。当該情報としては、例えば、それぞれの機器の型式、年式、製造番号、プローブモータ3に繋がる機械の種別あるいは用途、それぞれの機器の接続形態などが考えられる。
【0051】
初期設定部10は、必要に応じて、コントローラ4とサーバ1との通信条件の詳細設定、モータ模擬システム100の実績情報をモータ供給者104へ開示するか否かなどのユーザ設定なども行うことができる。
【0052】
初期設定部10は、主に機器メーカ103が主体となって操作端末6Aを用いて情報を入力するものであるが、サービス提供者105が入力を補助する形態であってもよい。
【0053】
運転データ収集部20は、運転データ3dを収集する。本実施の形態において、運転データ3dとは、いわゆるログデータに相当するものである。運転データ3dは、例えば、機械システム5の内部で動作した各機器の運転情報、特にインバータ2とプローブモータ3の計測情報の時系列データを含んでいる。プローブモータ3の計測情報としては、例えば、プローブモータ3のモータ軸の回転角度、回転速度、モータ電圧、モータ電流、モータ出力トルク、モータ負荷量、モータ温度、エラー発生の有無等が考えられる。
【0054】
運転データ収集部20は、データベースを用いて構成されていてもよい。また、運転データ収集部20は、運転データ3dの収集を自動で行うものであってもよい。
【0055】
本実施の形態では、運転データ3dは、インバータ2の記憶部2mに一旦記録される。運転データ収集部20は、ネットワーク7およびコントローラ4を介してインバータ2の記憶部2mと接続し、記憶部2mに記録されている運転データ3dを受信する。なお、運転データ3dは、記憶部2mに記憶されず、運転データ収集部20によって直接収集されてもよい。
【0056】
モータデータベース30は、モータ供給者104によって提供される複数種類のモータについて、そのモータの諸元をモータ情報30mとして蓄積格納されたものである。
【0057】
モータデータベース30は、本実施の形態では、プローブモータ3とその下位互換品に相当するモータ群、プローブモータ3とは異なる他のプローブモータとその下位互換品に相当するモータ群を含む複数のモータについて、モータ情報30mを格納している。
【0058】
モータ情報30mは、モータ識別情報とモータ性能情報とが対応付けされた情報を含んでいる。モータ識別情報は、例えば、メーカ名、商品名、型式、型番、年式などである。モータ性能情報は、例えば、各種工業規格にて定義された、モータに係る公称値、連続定格、短時間定格、反復定格、瞬時最大値、最高値など実用条件を考慮したものである。具体的例としては、誘導あるいは同期といったモータの種別、スイッチング方式あるいはリニア方式といったインバータの対応種別、寸法・重量・外観画像、相数・極数・スロット数・分布・集中巻の種別、鉄心構造、電圧、電流、環境温度、出力・効率・すべり特性、回転速度、トルク定数・リラクタンス特性、巻線抵抗、インダクタンス、慣性モーメント、回転速度リップル特性、コギング特性、周囲温度減定格、設置条件減定格、準拠する国際標準、部品材料、耐用年数、機体寿命、真空・耐水・耐油・耐薬品対応、エンコーダ・軸受け・減速機・内蔵ブレーキの種別・型式、漏れ電流特性、減磁特性などが挙げられる。また、モータ性能情報には、例えば、上位互換品、下位互換品などの情報が含まれる。
【0059】
なお、モータ模擬システム100による機械システム開発支援サービスにおいては、モータデータベース30に登録されるモータ情報の信頼性が、サービスの品質に大きく影響を及ぼす。そのため、特に、モータ情報に対するセキュリティは、管理方針をしっかり定めて運用するとよい。
【0060】
また、モータ供給者104は、単一の事業主体であってもよいが、互いに異なる複数の事業主体であってもよい。モータ供給者104が多数の事業主体である場合には、モータデータベース30には、それぞれのモータメーカから提供されたモータ情報が大量に格納されることになる。
【0061】
データベース更新部31は、モータデータベース30をメンテナンスするためのインタフェース機能を果たすものである。
【0062】
データベース更新部31は、例えば、新規に提供するモータに対応したモータ情報30mを追加したり、廃止するモータに対応したモータ情報30mを削除したりすることができる。また、データベース更新部31は、モータ模擬の実績情報を受け取るか否かの設定などをすることができる。
【0063】
データベース更新部31では、主に、モータ供給者104が操作端末6Bを用いてモータ情報30mをモータデータベース30に入力する処理を管理するものである。ただし、サービス提供者105が、そのような入力を補助する形態であってもよい。また、モータ情報30mの更新は、データベース更新部31をWebアプリ等で実現し、自動で行うようにしてもよい。あるいは、サービス提供者105による任意の入力作業を介して行うようにしてもよい。
【0064】
なお、データベース更新部31は、モータの種々の情報が格納された他のデータベースを参照し、異動があれば、それに応じて自動でモータ情報を更新するものとしてもよい。
【0065】
モータ模擬設定出力部70は、インバータ2の記憶部2mに運転ソフトウェア2sを格納する、あるいは、既に格納されている運転ソフトウェア2sを更新する。すなわち、モータ模擬設定出力部70は、運転ソフトウェア2sをインバータ2の記憶部2mへ出力・設定(ローディング)するインタフェースである。
【0066】
本実施の形態では、モータ模擬設定出力部70は、機器メーカ103による実行指示に従い、指定するインバータ2へ所定の運転ソフトウェア2sの出力・設定を実行する。
【0067】
模擬運転設定部80は、モータ模擬システム100を用いて模擬するモータ候補の抽出条件の設定、模擬対象モータの選択、およびインバータ2の運転ソフトウェア2sのチューニング(編集)のための諸設定をするインタフェース機能を果たすものである。すなわち、模擬運転設定部80は、機器メーカ103が主体となって操作端末6Aから入力を行い、本開示の機械システム開発支援サービスを利用する上でのインタフェースとなる。
【0068】
また、模擬運転設定部80は、インバータ2の運転ソフトウェア2sをチューニングする際に、振動検知部22において機械システム5もしくはプローブモータ3の振動が検知された場合、その振動の低減、振動の再現またはこれら両方のうちいずれかを考慮するか否かの設定を受け付ける。これにより、有害な振動を除去する場合だけでなく、振動を利点として得る場合、振動が及ぼす影響を評価したい場合などに対応することができる。
【0069】
ここまで説明した機能ブロックは、サーバ1のうちネットワーク7に対するインタフェース機能ブロックであり、ネットワーク7との接続に関するものである。
【0070】
なお、本実施の形態では、
図1あるいは
図2に示すように、サーバ1とインバータ2との間のデータ送受信は、コントローラ4を中継する形態であるが、このような形態に限定されない。また、本実施の形態の場合、上記中継の前後のプロトコルは、任意のものでよい。また、コントローラ4は、送受信するデータに対し、任意のセキュリティ強化・圧縮・フィルタリング等のデータ加工を施してもよい。
【0071】
次に、サーバ1が内部で演算する機能ブロックについて説明する。
【0072】
モータ分析部21は、運転データ収集部20において収集し蓄積された、プローブモータ3の回転角度位置および回転速度の時系列データに基づき、プローブモータ3を運転したときの回転速度対トルクの関係の実績、温度上昇パターン等を特定する。
【0073】
振動検知部22は、運転データ収集部20に蓄積された、プローブモータ3の回転角度位置および回転速度の時系列データに基づき、運転中における機械システム5の振動の有無、振動の振幅、振動の周期などを検出し特定する。
【0074】
機構系モデリング部60は、運転データ収集部20に蓄積された運転データ、初期設定部10による設定情報(運転ソフトウェアを含む)、モータ分析部21、振動検知部22の検出結果などを用い、各モータに接続された機械システム5内の動力伝達手段あるいは負荷特性などの物理モデルを同定する。そして、同定した物理モデルを用いて、後述する「運転ソフトウェアのチューニング」に用いる数値解析モデルを生成する。これにより、分析によって導出された負荷特性を基に模擬対象となるモータの絞込みを進めることができ、より適当なモータ候補の選定が期待できる。
【0075】
機構系モデリング部60は、ここで生成した数値解析モデルに対して、モータの特性を表すモータ情報30mと、試作機の運転データ3dから得られる負荷パターンとを与えることにより、数値解析を行う。この数値解析すなわちシミュレーションの結果として、そのモータを機械システム5に適用した場合の機械システム5の挙動を予測することができる。この挙動としては、振動の有無あるいは振動の大きさの程度もしくは振幅、振動の周期、消費電力量の時間変化、モータもしくは機械システム5の温度の時間変化などが含まれる。なお、上記の数値解析に用いる負荷パターンは、運転データ収集部20に格納されている運転データ3dから抽出することができる。
【0076】
モータ候補抽出部40は、モータデータベース30に蓄積されたモータ情報群が表す複数のモータの中から、模擬運転設定部80に入力された絞込条件に適合するモータが残るよう絞り込むことにより、模擬対象となるモータ候補(第2モータ)を抽出する。モータ候補抽出部40は、抽出されたモータ候補の情報を模擬運転設定部80に送る。模擬運転設定部80は、そのインタフェース画面を機器メーカ103側にある操作端末6Aの表示部に表示させ、このインタフェース画面において操作者により選択されたモータを模擬対象モータとして認識する。
【0077】
また、モータ候補抽出部40は、抽出したモータ候補が操作端末6Aの表示部に表示されるよう模擬運転設定部80に信号を送る。機器メーカ103は、操作端末6Aの表示部に表示されたモータ候補を確認し、そのモータ候補の中から一つを模擬対象モータとして選択する。模擬運転設定部80は、その選択を認識する。
【0078】
チューニング部50は、モータデータベース30のうちモータ候補抽出部40で認識した模擬対象モータの情報を参照し、インバータ2とプローブモータ3を組み合わせた運転特性がインバータ2と模擬対象モータを組み合わせた運転特性へ近づくよう、運転ソフトウェア2sに含まれるアルゴリズムおよびパラメータの少なくとも一方を調整する。この調整にあたっては、模擬運転設定部80によって任意のチューニング条件を機器メーカ103が指定できるほか、機構系モデリング部60で構築した物理モデルを応用した数値解析シミュレーションの結果を参照する。
【0079】
具体的には、インバータ2のパラメータ各々の選択範囲あるいはシミュレーションの収束判定条件がチューニング条件として入力される。チューニング部50は、入力された範囲内の任意のパラメータセットで数値解析シミュレーションを実行する。チューニング部50は、入力された収束判定条件に該当するまでパラメータセットを走査しながら数値解析シミュレーションを繰り返す。
【0080】
また応用的にはチューニング条件として、モータ分析部21の分析結果および振動検知部22の検出結果に基づく情報を参照し、振動、モータ温度、あるいはN-T特性を過去データと一致させる、または所定の振動を低減するといった条件を設定してもよい。最終的に、収束判定が得られたパラメータセットを含む運転ソフトウェア2sは、モータ模擬設定出力部70を通じてインバータ2へ転送される。
【0081】
本サービスの一連の操作は、操作端末6A,6Bから実施するものとする。操作端末6A,6Bは、本サービスのユーザ数に応じて台数が増減するものだが、台数は本開示の本質に影響を及ぼすものではない。サーバ1は、例えば、複数拠点のクラウドサーバ上に各機能を集中または分散配置して構築してもよく、サーバ1およびネットワーク7はアクセス可能な最大端末数を想定して構築してもよい。
〈機械システム開発支援サービス〉
【0082】
次いで、モータ模擬システム100を用いた機械システム開発支援サービスについて説明する。
図3は、機械システム開発支援サービスの利用形態を示すフロー図である。
【0083】
本サービスは、主に、モータおよびインバータを用いた機械システムを開発製造する機器メーカ103と、モータを製造または販売もしくは貸出しするモータ供給者104を仲介する形態で成り立つ。サービスの利用は大きく4つのフェーズに分かれている。
【0084】
まず第1フェーズPH1は、モータ供給者104が、自身が供給するモータを本サービスのモータデータベース30に登録する機会である。すなわち、モータ供給者104が、商品として提供可能なモータの各々について、そのモータに対応したモータ情報30mを、モータデータベース30に格納する機会である。
【0085】
ここで、モータ供給者104は、データベース更新部31のインタフェース画面が表示された操作端末6Bを用いてモータ情報30mを入力する。
【0086】
なお、別のケースとして、モータ供給者104は、保有するモータの実物サンプルをサービス提供者105に提供し、サービス提供者105が実物サンプルを評価しながらモータ情報の各項目に相当する評価データを作成する形態であってもよい。また、モータ供給者104が操作端末6Bを操作してモータ情報を登録するのではなく、モータ供給者104は書面等でモータ情報をサービス提供者105へ通知し、サービス提供者105が書面に基づきモータデータベース30へモータ情報を電子化、登録する形態であってもよい。
【0087】
本サービスにおいて、モータ候補の抽出結果にモータ供給者104の名前およびモータ製品名が表示される等により、モータの機器メーカ103に対する広告効果が得られる。このことから、モータ供給者104が、サービス使用料あるいはサンプル評価手数料をサービス提供者105に支払うビジネスモデルが考えられる。
【0088】
次に第2フェーズPH2は、機器メーカ103が機械システム5の開発に着手する機会である。ここで、機器メーカ103は、機械システム5の試作機に搭載するモータおよびインバータを調達する。
【0089】
本サービスは、前述したように、インバータ2とサーバ1との連携で成り立つため、第2フェーズPH2で使用されるインバータ2は、サービス提供者105が認定したインタフェースを搭載する機種となる。
【0090】
このため、サービス提供者105が、第2フェーズPH2で使用するインバータ2の開発製造を監修または担う形態であってもよい。あるいは、所定の試験プロセスに合格したことが証明されているインバータあるいはモータを利用するといった形態であってもよい。さらに、第2フェーズPH2で提供されるモータは、予め性能が十分に特定された試験専用のモータ(本実施形態において、プローブモータという)とする。また、プローブモータ3は本サービスのモータ模擬にあたり機器メーカ103の要求する仕様を満たす複数のモータ群の性能・特性を模擬できる性能・特性を有するものとする。プローブモータ3は、同時に、機械システム試作機の寸法要求に応える必要があるため、一般的に出力密度が高まる材料を用いた高価なモータとなる。
【0091】
本サービスの利用を開始する際、機器メーカ103は、初期設定部10のインタフェース画面が表示された操作端末6Aを用いて、プローブモータ3の情報など必要な初期設定をサーバ1に対し入力する。この初期設定は、機器メーカ103ではなくサービス提供者105が代行する形態であってもよい。
【0092】
第2フェーズPH2では、機器メーカ103がインバータ2およびプローブモータ3を試作機用として調達する。ここで、機器メーカ103が本サービスの初期設定費用を含む使用料をインバータ2の調達時にサービス提供者105に支払うビジネスモデルが考えられる。
【0093】
また、インバータ2がサービス提供者105から提供される場合は、予めインバータ2の購入もしくは貸与の代金にサービス使用料が含まれていてもよい。
【0094】
また、第2フェーズPH2は、試験機用のインバータ2およびプローブモータ3の調達の機会でもある。プローブモータ3は、前述のとおり、高価になる傾向がある。そこで、インバータ2およびプローブモータ3の提供は、有期のレンタル・リース等の調達契約であってもよい。あるいは、当該提供は、運転実績としてのモータ回転数を課金指標とする実績報酬(サブスクリプション)契約などによるものであってもよい。
【0095】
次に、第3フェーズPH3は、機器メーカ103が、機械システム5の試作機を動作させながら本サービスを併用して、機械システム5の開発を実行する機会である。
【0096】
機器メーカ103は、模擬運転設定部80のインタフェース画面が表示されている操作端末6Aを用いて、必要なモータ模擬設定をサーバ1に対し入力する。機器メーカ103は、試作機に搭載されたプローブモータ3に所望するモータのモータ特性を模擬させて運転させ、試作機を動作させる。これにより、機器メーカ103は、所望するモータを試作機に実際に搭載することなく、所望するモータを試作機に仮想的に搭載して動作させることができる。すなわち、機器メーカ103は、プローブモータ3の模擬運転の結果を基に、機械システム5の開発を進め、製品化時に採用するモータ候補を選定することができる。
【0097】
なお、機器メーカ103は、製品化時に採用するモータ候補を選定した後、選定されたモータ候補と同種のモータを実際に調達し、これを試作機に組み込んで試作機を動作させ、改めて評価を行うようにしてもよい。この際、モータ模擬設定出力部70は、通常、当該モータが動作するよう、当該モータが接続されるインバータ2の記憶部2mに、模擬用とは異なる運転ソフトウェア2sを出力し設定する。一般的に、プローブモータ3に特定のモータを模擬させる場合の運転ソフトウェア2sと、当該特定のモータを実際に駆動する場合の運転ソフトウェア2sとは異なる場合が多いからである。
【0098】
ところで、前述のとおり、プローブモータ3は汎用性を追求した高価なものである。そのため、模擬対象となるモータを選択するということは、プローブモータ3に比べ性能が要求されない廉価な下位互換品であるモータへのダウングレード評価と言い換えることができる。
【0099】
ここで、下位互換品とは、モータの特性を表す性能の一部もしくは全部がプローブモータ3に対して下回っているものと定義することができる。例えば、下位互換品は、モータの回転出力端の回転速度―トルク定格あるいは各種減定格の範囲が、プローブモータ3の定格範囲より狭いものを考えることができる。また例えば、下位互換品は、プローブモータ3には付いている減速機構(ブレーキ)がないもの、あるいは減速機構の性能がプローブモータ3のものより低いものであってもよい。なお、下位互換品は、モータの外形寸法がプローブモータ3より小さいものであってもよい。ここでの外見寸法には、モータの主回転部の発熱を抑える放熱手段を含んだ寸法としてもよい。
【0100】
なお、この第3フェーズPH3において、機器メーカ103がプローブモータ3を用いて任意のモータ模擬を実行した場合、その模擬実績情報を当該モータのモータ供給者104へ通知してもよい。またこのとき、サブスクリプションとして、機器メーカ103からサービス提供者105へ使用料を支払ったり、モータ供給者104にはそのデータベース登録情報の使用料が還付されたりするビジネスモデルが考えられる。
【0101】
さらに、第3フェーズPH3においては、機器メーカ103の操作端末6A上に特定のモータ候補の模擬実行を誘引する効果を、画像または音声として表現してもよい。モータ供給者104が、これらの宣伝効果に対するインセンティブを、追加費用としてサービス提供者105へ支払うビジネスモデルも考えられる。
【0102】
第4フェーズPH4は、機器メーカ103が、機械システム5の開発完了後に、機械システムを製品化するプロセスの一環として、製品に採用するモータおよびインバータを調達する機会である。
【0103】
すなわち、機器メーカ103は、モータ模擬システム100を用いて、製品用モータ、製品用インバータ、およびこのインバータに適用する運転ソフトウェアを、サービス提供者105に発注する。
【0104】
サービス提供者105は、この注文に対して、製品用インバータを機器メーカ103に提供する。また、サービス提供者105は、製品用モータをモータ供給者104から購入して、それを機器メーカ103に提供する。もしくは、サービス提供者105は、機器メーカ103に代わって、モータ供給者104に製品用モータの発注手配を行う。この場合、製品用モータは、モータ供給者104から機器メーカ103に直接提供される。
【0105】
そして、サービス提供者105は、製品用インバータに適用する製品用運転ソフトウェアを機器メーカ103に提供する。提供の方法としては、例えば、モータ模擬設定出力部70が、製品用モータが接続される製品用インバータの記憶部に、製品用運転ソフトウェアを直接的に出力し設定する方法が考えられる。また例えば、機器メーカ103が、モータ模擬設定出力部70から操作端末6Aに製品用運転ソフトウェアを一旦ダウンロードし、それを製品用インバータの記憶部に出力し設定する方法が考えられる。あるいは、サービス提供者105が、製品用運転ソフトウェアが記録された記録媒体を機器メーカ103に郵送する方法も考えられる。
【0106】
このとき、機器メーカ103は、モータ模擬設定出力部70を利用した製品用運転ソフトウェアの製品用インバータへの出力・設定を、当該製品の製品化プロセスの一環として応用してもよい。この場合、機器メーカ103が、製品用運転ソフトウェアの設定手数料を、サービス提供者105へ支払うビジネスモデルが考えられる。
【0107】
また、サービス提供者105がいわゆる商社機能を有している場合、モータの調達の商流のなかで、サービス提供者105が仲介料金を得るといった形態を考えてもよい。
【0108】
なお、第2フェーズPH2の際に、機器メーカ103がプローブモータ3を買い取り以外の手段で調達した場合は、第3フェーズPH3と第4フェーズPH4の間でサービス提供者105へそのプローブモータ3の返却がなされる。ただし、機器メーカ103が第4フェーズPH4に入ってからプローブモータ3の買い取りを決定し、資産化するようにしてもよい。なお、機器メーカ103は、第4フェーズPH4以前にプローブモータ3を買い取りし、資産化してもよい。
〈操作端末の表示画面〉
【0109】
次いで、機器メーカ103が操作する操作端末6Aの表示部に表示される画面の例について説明する。
図4は、機器メーカ103が操作する操作端末6Aの表示画面の一例を示す図である。この表示画面は、主に、モータ模擬設定出力部70のインタフェース画面である。
【0110】
操作端末6Aの表示部は、パソコンのディスプレイモニタあるいはモバイル端末のタッチパネルが想定される。操作者による操作は、表示画面中の所定のX-Y座標をマウスでクリックまたは指で押下したり、テキストボックスへ文字入力したりすることにより可能となる。
【0111】
表示画面の上端にメニューバー61を設け、初期設定部10、運転データ収集部20、模擬運転設定部80、モータ模擬設定出力部70のそれぞれのインタフェースを項目として列挙し選択可能にする。メニューバー61以外の表示項目はメニューバー61の選択により切り替え可能としてもよい。以降は、
図4に示すメニューバー61において「模擬運転」を選択した例、すなわち模擬運転設定部80のインタフェース画面について詳細を述べる。
【0112】
表示画面の左端に機器構成ツリー62、表示画面の下端に操作ガイダンス64、表示画面の右中央に機器詳細表示エリア63、などを構成する。機器構成ツリー62には、機械システム5あるいはその試作機を構成するコントローラ、インバータ、およびモータ等の部品が列挙され、個別に部品を選択し、そのパラメータ等が編集可能となるようツリー状に表示される。
【0113】
図1でも示したように、機械システムは、一般的に、階層型の制御構成をとる。すなわち、最上位にコントローラ、中間位にインバータ、インバータに付随する機器としてモータといった階層型の制御構成をとる。そのため、ツリー状の表示でこれらの制御構成を示せば、全体的な構成の把握に優れた表示となる。
【0114】
機器詳細表示エリア63は、例えば、インバータ、モータの各項目を選択することによってそれらの詳細情報を表示する領域として利用される。当該詳細情報としては、例えば、インバータ、モータの型式、あるいは諸元表が含まれる。
【0115】
図4では、インバータ「Inv-1」、モータ「Motor-1A」が選択された場合の表示例を示している。
【0116】
図4に示すように、例えば、機械システム5の試作機に実際に搭載されたプローブモータ3の情報を示すプローブモータ情報画面65Aと、プローブモータ3が特性を模擬する対象となる模擬対象モータの情報を示す模擬対象モータ情報画面65Bとを表示する。模擬対象モータ情報画面65Bには、プローブモータ3と模擬対象モータの両者の特性を比較可能に表示するとよい。例えば、モータのN-T特性の2次元表示65Cを設け、プローブモータ3の特性と模擬対象モータの特性とを描画する。これにより、プローブモータ3の許容範囲に対する模擬対象モータの運転範囲の尤度が把握できるなど、選択したモータの模擬妥当性の把握が可能になる。
【0117】
その他、
図4に示す模擬対象モータ情報画面65Bには、模擬対象モータの候補を表示するプルダウンメニュー部65B1、および選択された模擬対象モータ候補の諸元表65B2、異なる模擬対象モータを選択した場合の変更/取消選択ボタン部65B3、モータ候補を絞り込む詳細条件を設定する画面へ遷移するための絞込ボタン部65B4、選択したモータ特性で運転を模擬した場合に想定される時系列挙動を上述の数値解析シミュレーションで検証するための履歴比較ボタン部65Dなどがある。
【0118】
ところで、モータデータベース30は膨大な種類のモータ候補が格納されている。そこで、本実施の形態では、諸条件により候補となる模擬対象モータを絞り込む手続きが可能となるインタフェースを設ける。これにより、機器メーカ103がモータ情報を逐一詳しく調べる必要がなくなり、機械システムの開発工数を低減することができる。
【0119】
ここで、模擬対象モータを絞り込む手続きを、モータ候補抽出部40とともに実現するインタフェースとしての模擬モータ絞込画面の例について説明する。
【0120】
図5は、模擬モータ絞込画面の例を示す図である。模擬モータ絞込画面66には、機構モデル絞込選択画面66A、パラメータ絞込設定画面66B、プローブモータ絞込画面66C、絞込結果表示画面66Dを設ける。
【0121】
機構モデル絞込選択画面66Aは、主にチェックボックス等で構成され、機構系モデリング部60によるシミュレーション結果を参照するか否かを選択することができる。ここでシミュレーション結果を参照するよう選択した場合には、より詳細な絞り込み条件として、回転速度―トルク特性(N-T特性)に適したもので絞り込むか否か、機械システム5に発生する振動を再現する必要があるか否か、プローブモータ3と比較してモータ消費電力の増加を許容するか否か、プローブモータ3と比較してモータ温度の増加を許容するか否か等、を設定することができる。機構系モデリング部60に基づく数値解析シミュレーションの結果によりモータを選別するか否かを選択できるよう構成してもよい。
【0122】
パラメータ絞込設定画面66Bは、モータデータベース30に格納されているモータ情報の詳細項目に対し数値範囲など制限を設けることによって絞込をするか否かを選択するチェックボックスのほか、各諸元と対応する上下限値を入力可能なテキストボックスの列または表入力部等により構成される。
【0123】
プローブモータ絞込画面66Cは、プローブモータ3の種別で模擬が可能なものだけを抽出するか否かを選択可能なチェックボックスと、プローブモータ3の型式を選択可能なプルダウンメニュー等により構成される。
【0124】
絞込結果表示画面66Dは、前述の絞込機能の条件に基づき絞り込んだモータ候補を表形式にてそれぞれのデータベース諸元とともに一覧表示する。なお、絞込みの結果、候補となったモータの候補総数を数値表示してもよいし、表形式の表示部には各諸元について順・逆順のソート機能を設けてもよい。また表の表示方法としては、絞込に漏れたモータを表示しない方法のほか、絞込まれた対象モータの行または列をハイライト表示する方法で操作者へ結果を通知してもよい。
【0125】
操作者は、絞込結果表示画面66Dにおいてマウス等でモータを選択することができ、選択したモータを模擬対象モータ情報画面65Bの内容として反映させることができる。また、候補が多い場合など操作者の選択が困難な場合などに備え、サーバ1が候補モータから自動選択する機能ボタンを設けてもよい。
【0126】
このとき、自動選択にあたっては、モータデータベース30の各項目に重みづけ係数を設けた評価関数の評価値の大小に基づいて、候補モータに順位付けするほか、前述のインセンティブによる宣伝を加味した優先順位を設定してもよい。あるいは、機構系モデリング部60によるシミュレーションの結果に所定の評価関数を適用して得られた評価値の大小に基づいて、候補モータに順位付けしてもよい。またこれらの自動選択によって決定された優先順位に特に影響を与えたパラメータを強調表示するなどの構成にすることで、例えば、サービス提供者105が機器メーカ103に対して任意のモータを紹介する際などに、その選定理由を説明するのに役立てることも可能となる。
【0127】
次に、運転ソフトウェア2sのチューニング処理の状況を表すチューニング画面について説明する。
図6は、チューニング画面の一例を示す図である。
【0128】
チューニング画面の上段には作業ステップ表示画面67Aを配置し、モータ模擬までの現在の進行状況を視認できるようになっている。例えば、図示の如く「モータ選択」「チューニング」「設定出力」といった文字表記を設け、それぞれ完了したステップを着色・ハイライト表示する。または、その文字間を接続する矢印状の表示を破線から実線に変化させる等で進行度を強調する。
【0129】
チューニング画面の中段にはチューニング条件設定画面67Bが表示されるようにしてもよい。一般的に、機械システムにおいて、パラメータおよびアルゴリズムを含む運転ソフトウェア2sのチューニングは、特に機械振動の調整に用いられることが多い。新たなモータを模擬する場合には、有害な振動を除去するケースだけでなく、振動を利点として得るため、あるいは振動が及ぼす影響を評価するために、あえて振動成分を残す場合も考えられる。そこで、チューニング条件設定画面67Bには複数のチェックボックス等を設け、振動を制限するかあるいは再現するか、その振動成分は低周波か高周波か、といった振動の条件を分けて設定できるとよい。
【0130】
なお、周波数の帯域を複数設ける理由としては、一般的に、機械システムの振動要因は制御の観点から2種類に分けられ、インバータ2のパラメータおよびアルゴリズムをそれぞれの周波数帯毎に分けて対応することが有効なためである。具体的には、ボールねじなど比較的剛性の高いもので振動する高周波数振動と、ベルトあるいは架台などの比較的剛性の低いもので残留する低周波振動とがある。一般的に、インバータ制御で高周波数の振動調整はノッチフィルタにより振動成分を除去し安定化する一方、低周波の振動は所定の制振制御演算パラメータにより調整が可能なことが知られている。なお、本チューニング画面は、上段の作業ステップ表示画面67Aの「チューニング」表示の近傍に設けたボタン操作によってポップアップされるよう構成してもよい。
【0131】
チューニング画面の下段にはチューニング進行度表示画面67Cを設ける。パラメータおよびアルゴリズムのチューニングには、数値解析シミュレーションを含む様々な演算プロセスがあり、その収束条件等によっては長時間を要する場合がある。そのため、例えばゲージ表示、完了予想時間の数値表示などによってその進行状況がモニタできるとよい。
【0132】
チューニング画面の最下段には、作業を中断するための中断ボタン67Dと、運転ソフトウェア2sの転送を実行するための転送実行ボタン67Eとを設ける。ここで、転送実行ボタン67Eは、所定のチューニング作業が完了した後に有効化されるように構成する。これにより、より確かにインバータ2の運転ソフトウェア2sを更新することができる。なお、過去の運転データ、あるいは数値解析シミュレーションの結果を所定のビューアで描画し、それらの結果を比較できるように構成してもよい。
【0133】
図7は、シミュレーション結果表示画面の一例を示す図である。シミュレーション結果表示画面の左上端には、過去にシミュレーションを行った運転データのリストを表示するリスト表示画面68Aが設けられている。運転データ3dは、例えば、バイナリ形式あるいはCSV形式などで記録されている。リスト表示画面68Aは、記録された運転データ3dの中から所望の運転データ3dを選択できるように構成する。残りの画面には、例えば、回転速度(毎分の回転数)―トルクのマッピング表示画面68B、時間トレンド表示画面68Cなどを設け、運転データ3dとシミュレーションの結果とを比較できるよう表示する。複数のデータ比較に備えて凡例を設けてもよい。
【0134】
〈モータ模擬システムを用いたモータ模擬のフロー〉
【0135】
続いて、上記第1フェーズPH1から第4フェーズPH4において、モータ模擬システム100を用いて行われるモータ模擬の流れについて説明する。
図8は、モータ模擬の流れを概略的に示すフロー図である。
【0136】
ステップS1では、モータの登録が行われる。具体的には、機械システム開発支援サービスの提供を開始する前に、モータ供給者104が操作端末6Bを用いてモータ情報30mを入力する操作を行う。モータ模擬システム100におけるデータベース更新部31は、その操作に応じて、入力されたモータ情報30mをモータデータベース30に格納する処理を行う。なお、モータの新規登録に伴うモータ情報30mの追加あるいは既存モータの廃止に伴うモータ情報30mの削除は逐次行われる。
【0137】
ステップS2では、モータおよびインバータの提供申請手続きが行われる。具体的には、機器メーカ103が、操作端末6Aを用いて、自身が開発する機械システム5の試作機に搭載したいプローブモータおよびインバータの提供を申請する操作を行う。模擬運転設定部80は、その操作に応じて、その申請情報をサービス提供者105側の操作端末に送信する。サービス提供者105は、その申請情報を受けて、プローブモータおよびインバータを機器メーカ103に提供する手配を行う。この提供は、譲渡であってもよいし、貸与であってもよい。
【0138】
なお、機器メーカ103は、インバータ2だけ既に提供を受けている場合に、プローブモータ3だけの提供申請を行うこともできるし、プローブモータ3だけ既に提供を受けている場合に、インバータ2だけの提供申請を行うこともできる。また、後述するように、機器メーカ103は、機械システム5の開発中において、試作機に搭載するプローブモータ3を別の種類のものに交換したい場合には、別のプローブモータの提供申請も行うことができる。
【0139】
ステップS3では、機器メーカ103が、ステップS2において提供申請したプローブモータおよびインバータを受け取り、機械システム5の試作機にこれらを組み込む。
【0140】
なお、機器メーカ103は、過去にサービスを利用した際に購入するなどして、プローブモータ3及びインバータ2を既に所有している場合には、ステップS2およびステップS3を省略することができる。
【0141】
ステップS4では、機械システム5の試作機の運転が行われる。具体的には、機器メーカ103は、プローブモータ3およびインバータ2が組み込まれた機械システム5の試作機を実際に運転する。本実施の形態においては、運転中の機械システム5あるいはプローブモータ3の状況を示す時系列データである運転データ3dは、インバータ2の記憶部2mに蓄積格納される。
【0142】
ステップS5では、運転データの収集が行われる。具体的には、運転データ収集部20は、インバータ2の記憶部2mに格納された運転データ3dを収集する処理を行う。なお、運転データ3dを収集する処理は、試作機の運転中に行われてもよい。
【0143】
ステップS6では、運転データの分析が行われる。具体的には、モータ分析部21、振動検知部22、および機構系モデリング部60が、収集された運転データ3dとモータデータベース30に格納されているモータ情報30mとに基づいて、上述した各種の分析処理あるいはシミュレーションを実行する。
【0144】
より詳しくは、モータ分析部21が、運転データ収集部20において収集し蓄積された、プローブモータ3の回転角度位置および回転速度の時系列データに基づき、プローブモータ3を運転したときの回転速度対トルクの関係の実績、温度上昇パターン等を特定する。
【0145】
振動検知部22は、運転データ収集部20に蓄積された、プローブモータ3の回転角度位置および回転速度の時系列データに基づき、運転中における機械システム5の振動の有無、振動の振幅、振動の周期などを検出し特定する。
【0146】
機構系モデリング部60は、運転データ収集部20に蓄積された運転データ、初期設定部10による設定情報および運転ソフトウェア、モータ分析部21、振動検知部22の検出結果などを用い、各モータに接続された機械システム5内の動力伝達手段あるいは負荷特性などの物理モデルを同定する。そして、同定した物理モデルを用いて数値解析モデルを生成する。
【0147】
さらに、機構系モデリング部60は、プローブモータ3の下記互換品であるモータの各々について、上記の数値解析モデルに対して、モータの特性を表すモータ情報30mと、試作機の運転データ3dから得られる負荷パターンとを与えることにより、数値解析を行う。この数値解析すなわちシミュレーションの結果として、プローブモータ3の下記互換品であるモータの各々について、そのモータを機械システム5に適用した場合の機械システム5の挙動を予測する。
【0148】
また、機構系モデリング部60は、ここで得られた各シミュレーション結果に所定の評価関数を適用し、評価値を算出する。そして、この評価値の大小に基づいて、シミュレーション結果に順位付けをする。例えば、評価値が大きいほど優先順位が高くなるような順位付けを行う。
【0149】
また、機構系モデリング部60は、プローブモータ3と模擬対象モータ候補との間における特性の差異が、その模擬対象モータ候補を用いた機械システム5あるいはその内部の機器に及ぼす影響を評価する。例えば、振動の有無、振動の大きさ、温度、消費電力、外形サイズなどの観点から影響を評価する。
【0150】
なお、本実施の形態においては、プローブモータ3の下記互換品であるモータの各々について、数値解析モデルを用いたシミュレーションを行っているが、下位互換品以外のモータについても同様のシミュレーションを行ってもよい。あるいは、ステップ7による模擬対象モータ候補の絞込みにより最終的に残った模擬対象モータ候補についてのみ、数値解析モデルを用いたシミュレーションを行ってもよい。
【0151】
ステップS7では、模擬対象モータ候補の絞込み・提案が行われる。具体的には、機器メーカ103は、操作端末6Aを用いて、プローブモータ3に模擬させる対象となるモータの候補である模擬対象モータ候補を絞り込むための絞込み条件を入力する操作を行う。模擬運転設定部80は、その操作に応じて、入力された絞込み条件と上記の分析の結果あるいはシミュレーションの結果とに基づいて、模擬対象モータ候補を絞り込む処理を行い提案する。すなわち、操作端末6Aを通じて、その絞込み結果を機器メーカ103に認識可能に出力する。なお、ステップS7における模擬対象モータ候補の絞込み処理の詳細については、後述する。
【0152】
ステップS8では、模擬対象モータの選択が行われる。具体的には、機器メーカ103は、操作端末6Aにおいて、絞り込まれた模擬対象モータ候補の中から所望のモータを選択する操作を行う。模擬運転設定部80は、その操作に応じて、プローブモータ3に模擬させる模擬対象モータを特定する処理を行う。また、模擬運転設定部80は、特定された模擬対象モータの供給元であるモータ供給者104に、この模擬対象モータが選択されたことを知らせる通知情報を送信する処理を行ってもよい。モータ供給者104は、この通知により、自身の供給するどのモータが機器メーカ103によって選択されたかを知ることができ、今後の販売戦略等に活かすことが期待できる。
【0153】
ステップS9では、運転ソフトウェアのチューニングが行われる。具体的には、チューニング部50は、上記特定された模擬対象モータのモータ情報30mと、模擬運転設定部80において入力されたチューニング条件とに基づいて、インバータ2に書き込む運転ソフトウェア2sをチューニングして生成する処理を行う。なお、ステップS9におけるチューニング処理の詳細については後述する。
【0154】
ステップS10では、運転ソフトウェアの更新が行われる。具体的には、モータ模擬設定出力部70は、プローブモータ3が上記特定された模擬対象モータを模擬するよう、インバータ2の記憶部2mに上記の如くチューニングし生成された運転ソフトウェア2sを出力する処理を行う。なお、ステップS10における運転ソフトウェアの出力処理の詳細については後述する。
【0155】
ステップS11では、模擬モータによる試作機の仮想的な運転が行われる。具体的には、機械メーカ103は、プローブモータ3が模擬対象モータを模擬している状態において、機械システム5の試作機の運転を行う。この際、運転データ収集部20は、その運転に係る運転データ3dをインバータ2の記憶部2mから収集する処理を行う。
【0156】
なお、このとき、模擬対象のモータを実際に購入するなどして入手し、機械システム5の試作機に組み込んで試作機を運転させて評価してもよい。この際、上述したように、モータ模擬設定出力部70は、当該モータをインバータ3で動作させるための運転ソフトウェアを、入手されたモータが接続されるインバータ2の記憶部2mに出力し設定する。この運転ソフトウェアは、模擬用の運転ソフトウェアとは異なり、新たにチューニングされた運転ソフトウェアである。プローブモータ3と入手されたモータとではハード面の特性が異なるため、そのハード面の特性を考慮して運転ソフトウェアをチューニングする必要があるためである。
【0157】
ステップS12では、機械システムの開発が完了したか否かの判定が行われる。具体的には、機器メーカ103は、開発が完了したか否かを判断する。機器メーカ103は、開発が完了したと判断した場合には(S12:Yes)、開発が完了したことを示す情報を、操作端末6Aを通じて入力する。そして、次のステップS13に進み、製品用のモータおよびインバータの発注を行う。一方、機器メーカ103は、開発が完了していないと判断した場合(S12:No)、例えば、機器メーカ103が満足な結果を得られなかった場合、あるいはプローブモータ3に別のモータを模擬させて試作機を運転し評価したいと考える場合には、次のいずれかを選択することになる。
【0158】
第1選択SL1は、模擬対象モータ候補の選択のやり直しを行うという選択である。模擬対象モータの選択をやり直す場合には、ステップS8に戻る。
【0159】
第2選択SL2は、モータ候補の絞込みのやり直しを行うという選択である。模擬対象モータの絞込みをやり直す場合には、ステップS7に戻る。
【0160】
第3選択SL3は、プローブモータ3を変更するという選択である。例えば、現行のプローブモータ3では、どこかの特性にカバーし切れない部分があるなど、機械システム5の試作機の評価を十分に行えないと判断される場合には、特性の異なる別のプローブモータを用いて試作機の運転を試みる。この場合には、ステップS2に戻り、別のプローブモータの提供申請を行う。モータ模擬システム100における模擬運転設定部80は、その提供申請操作に応じて、別のプローブモータを提供するための手続処理を行う。
【0161】
ステップS13では、製品用のモータおよびインバータの発注が行われる。具体的には、機器メーカ103は、プローブモータ3に模擬させたモータの中から、製品に採用する製品用モータを決定する。そして、機械メーカ103は、操作端末6Aを操作して、製品用モータおよび製品用インバータの発注を行う。このとき、機械システム5を量産する場合には、多数の製品用モータおよび製品用インバータが発注される。モータ模擬システム100における模擬運転設定部80は、その発注操作に応じて発注処理を行う。機器メーカ103は、その後、製品用モータおよび製品用インバータを受け取る運びとなる。
【0162】
ステップS14では、運転ソフトウェアの出力が行われる。具体的には、モータ模擬設定出力部70は、製品用インバータに製品用運転ソフトウェアを出力して書き込む処理を行う。
【0163】
なお、本実施の形態では、ステップS1~S14を上記の順序で行っているが、この例に限定されることはなく、多くの変形例が考えられる。例えば、いくつかのステップを並行に行ったり、ステップの順序を入れ替えて行ったりしてもよいし、途中で前のステップに戻ったり先のステップに進んだりしてもよい。
【0164】
〈模擬モータ候補の絞込み・提案処理〉
【0165】
ここで、ステップS7における模擬モータ候補の絞込み・提案処理の詳細について説明する。
図9は、模擬モータ候補の絞込み・提案処理(S7)の例を示すフロー図である。
【0166】
ステップS701では、プローブモータに基づいて模擬モータの候補を絞り込む処理が行われる。すなわち、模擬モータ候補を、プローブモータ3の下位互換品であるモータ機種に絞り込む。具体例としては、模擬運転設定部80が、
図4に示す設定画面内のプローブモータ情報画面65Aにおいて選択されているプローブモータ機種に基づき、プローブモータ3を特定する。そして、モータ候補抽出部40が、モータデータベース30に格納されているモータ情報30mを参照して、上記特定されたプローブモータ3の下位互換品に絞り込む。模擬運転設定部80は、絞込結果表示画面66Dにプローブモータ3の下位互換品となる模擬モータ候補を一覧表示させる。
【0167】
ステップS702では、機構モデルでの絞込みが絞込条件として設定されているか否かを判定する処理が行われる。具体例としては、模擬運転設定部80が、
図5に示す模擬モータ絞込画面66内の「機構モデルで絞込み」のチェックボックスにチェックが入っているか否かを判定する。この判定において肯定される場合には(S702:Yes)、ステップS703に進む。この判定において否定される場合には(S702:No)、ステップS711に進む。
【0168】
ステップS703では、N-T特性によって絞り込むことが絞込条件として設定されているか否かを判定する処理が行われる。具体例としては、模擬運転設定部80が、
図5に示す模擬モータ絞込画面66における「N-T特性で絞り込む」のチェックボックスにチェックが入っているか否かによって判定する。ここで、N-T特性による絞込みが絞込条件として設定されていると判定された場合には(S703:Yes)、ステップS704に進む。設定されていないと判定された場合には(S703:No)、ステップS705に進む。
【0169】
ステップS704では、模擬モータ候補をN-T特性に基づいて絞り込む処理が行われる。具体例としては、モータ分析部21が、収集された運転データに基づき、プローブモータの回転速度とトルクとの関係の実績を特定する。次に、モータ候補抽出部40が、N-T特性グラフ(2次元マップ)上で、上記特定された実績に対応する各位置をプロットする。次いで、現時点で絞り込まれた模擬モータ候補の各々について、N-T特性グラフ上で、模擬モータ候補のN-T特性曲線と上記プロットした各位置との比較を行う。そして、模擬モータ候補ごとに、模擬モータ候補のN-T特性曲線が、プロットした位置の所定割合以上(例えば80%以上、90%以上、100%など)を包含するか否かを判定する。この判定において肯定された模擬モータ候補のみを残すように絞込みを行う。そして、模擬運転設定部80が、操作端末6Aにおいて、絞込結果表示画面66Dに、絞り込まれた模擬モータ候補を強調表示させる。これにより、機械システム5に搭載するモータの候補として、より適当なものを残すよう絞り込むことができる。
【0170】
ステップS705では、機械システムの振動を再現させることが絞込条件として設定されているか否かを判定する処理が行われる。具体例としては、模擬運転設定部80が、
図5に示すモータ条件絞込画面における「振動を再現する」のチェックボックスにチェックが入っているか否かによって判定する。ここで、振動の再現が絞込条件として設定されていると判定された場合には(S705:Yes)、ステップS706に進む。設定されていないと判定された場合には(S705:No)、ステップS707に進む。
【0171】
ステップS706では、機械システムの振動が再現される模擬モータ候補に絞り込む処理が行われる。具体例としては、振動検知部22は、収集された運転データに基づいて、プローブモータ3を使用した機械システム5に振動が発生していたか否かを特定する。モータ候補抽出部40は、その特定情報に基づいて、振動が発生していたか否かを判定する。そして、振動が発生していなかったと判定された場合には、ステップS707に進む。一方、振動が発生していたと判定された場合には、機構系モデリング部60が、現時点で残っている模擬モータ候補の各々について、その模擬モータ候補を機械システム5に組み込んだ場合の機械システム5の挙動をシミュレーションする。そして、モータ候補抽出部40が、上記シミュレーションにおいて振動の発生が再現されるような模擬モータ候補のみを残すように絞り込みを行う。絞込み後は、模擬運転設定部80が、絞込結果表示画面66Dに、絞り込まれた模擬モータ候補を強調表示させる。
【0172】
ステップS707では、モータの消費電力の増加を許容しないことが絞込条件として設定されているか否かを判定する処理が行われる。具体例としては、模擬運転設定部80が、
図5に示すモータ条件絞込画面における「電力増を許容しない」のチェックボックスにチェックが入っているか否かによって判定する。ここで、消費電力の増加を許容しないことが絞込条件として設定されていると判定された場合には(S707:No)、ステップS708に進む。一方、消費電力の増加を許容しないことが絞込条件として設定されていないと判定された場合には(S707:Yes)、ステップS709に進む。
【0173】
ステップS708では、モータの消費電力量が増加しない模擬モータ候補を残す絞込み処理が行われる。具体例としては、モータ分析部21が、収集された運転データ3dに基づいて、プローブモータ3の消費電力量もしくはその変動パターンを特定する。機構系モデリング部60が、現時点で残っている模擬モータ候補の各々について、その模擬モータ候補を機械システム5に組み込んだ場合の機械システム5の挙動をシミュレーションする。そして、モータ候補抽出部40が、シミュレーションによって予測されたモータの消費電力量もしくはその変動パターンが、プローブモータ3を使用したときの消費電力量もしくはその変動パターンを下回るような模擬モータ候補のみを残すように絞り込みを行う。絞込み後は、模擬運転設定部80が、絞込結果表示画面部分66Dに、絞り込まれた模擬モータ候補を強調表示させる。
【0174】
ステップS709では、モータの温度の増加を許容しないことが絞込条件として設定されているか否かを判定する処理が行われる。具体例としては、模擬運転設定部80が、
図5に示すモータ条件絞込画面における「温度増を許容しない」のチェックボックスにチェックが入っているか否かによって判定する。ここで、温度の増加を許容しないことが絞込条件として設定されていると判定された場合には(S709:No)、ステップS710に進む。一方、温度の増加を許容しないことが絞込条件として設定されていないと判定された場合には(S709:Yes)、ステップS711に進む。
【0175】
ステップS710では、モータの温度が増加しない模擬モータ候補を残す絞込み処理が行われる。具体例としては、モータ分析部21が、収集された運転データに基づいて、プローブモータ3の温度もしくはその変動パターンを特定する。機構系モデリング部60が、現時点で残っている模擬モータ候補の各々について、その模擬モータ候補を機械システム5に組み込んだ場合の機械システム5の挙動をシミュレーションする。そして、モータ候補抽出部40が、シミュレーションにより予測されたモータの温度もしくはその変動パターンが、プローブモータ3を使用したときのモータの温度もしくはその変動パターンを下回るような模擬モータ候補のみを残すように絞り込みを行う。絞込み後は、模擬運転設定部80が、絞込結果表示画面部分66Dに、絞り込まれた模擬モータ候補を強調表示させる。
【0176】
ステップS711では、定格・仕様パラメータでの絞込みが絞込条件として設定されているか否かを判定する処理が行われる。具体例としては、模擬運転設定部80が、
図5に示すモータ条件絞込画面における「パラメータで絞込み」のチェックボックスにチェックが入っているか否かによって判定する。ここで、パラメータでの絞込みが絞込条件として設定されていると判定された場合には(S711:Yes)、ステップS712に進む。設定されていないと判定された場合には(S711:No)、ステップS713に進む。
【0177】
ステップS712では、定格・仕様パラメータに基づく絞込み処理が行われる。具体例としては、模擬運転設定部80が、
図5に示すパラメータ絞込設定画面66Bにおいてどのパラメータに許容範囲(最大値および最小値)が設定されているかを特定する。そして、モータ候補抽出部40が、現時点で残っている模擬モータ候補の各々について、模擬モータ候補のパラメータが、設定された許容範囲内であるか否かを判定する。許容範囲が設定されたすべての定格・仕様パラメータについて、そのパラメータが許容範囲内であるような模擬モータ候補を残すように絞込みを行う。なお、定格・仕様パラメータとしては、例えば、電圧、定格出力、最大トルク、最大電流、回転速度、慣性モーメントなどが考えられる。絞込み後は、模擬運転設定部80が、絞込結果表示画面66Dに、絞り込まれた模擬モータ候補を強調表示させる。
【0178】
ステップS713では、絞込結果表示画面66Dにおいて、ステップS601での絞込みにより除外されたモータ候補を非表示にすることへの設定が成されているか否かを判定する処理が行われる。すなわち、選択されているプローブモータの下位互換品に限定せずに表示するか否かの設定が成されているかを判定する。具体例としては、模擬運転設定部80が、
図5に示すモータ条件絞込画面におけるプローブモータ絞込画面66Cのチェックボックスにチェックが入っているか否かにより判定する。ここで、チェックが入っていない場合には、プローブモータ3の下位互換品のみ表示するような設定が成されていると判定し(S713:Yes)、模擬対象モータ候補の絞込み処理を終了する。一方、チェックが入っている場合には、プローブモータ3の下位互換品のみ表示するような設定が成されていると判定し(S711:No)、ステップS714に進む。
【0179】
ステップS714では、ステップS701の絞込みにより除外されたモータ候補を模擬対象として選択可能なモータ候補に追加した形態での表示処理が行われる。具体例としては、モータ候補抽出部40が、プローブモータに基づいて除外されたモータ候補、すなわち、プローブモータの非下位互換品であるモータ候補を、模擬対象モータ候補に追加する。そして、模擬運転設定部80が、絞込結果表示画面66Dにそれらのモータ候補を追加して表示させる。このとき、非下位互換品であるモータ候補は、グレーダウンして表示するなど、非下位互換品であることが分かる態様で表示させてもよい。
【0180】
以上の模擬モータ候補の絞込み・提案処理により、最終的に、絞込み条件を満たす模擬対象モータ候補のみが絞込結果表示画面66Dに表示される。
【0181】
このとき、機構系モデリング部60によって得られた評価の結果、すなわち、プローブモータ3と模擬対象モータ候補との間における特性の差異がその模擬対象モータ候補を用いた機械システム5あるいはその内部の機器に及ぼす影響の評価の結果を、その模擬対象モータ候補と対応付けて表示するようにしてもよい。これにより、機械システム5に用いるモータをプローブモータ3から模擬対象モータに換えた場合の影響を許容できるか否か、事前に把握することができ、製品用のモータを決定し採用した後で、予想外のことが発生するリスクを低減することが可能になる。
【0182】
また、絞り込んだ模擬対象モータ候補は、その模擬対象モータ候補に対応するシミュレーション結果の優先順位に応じて並び替えて表示させるようにしてもよい。これにより、シミュレーションの結果を比較参照したり、その優先順位を参照したりしながら、より適当な模擬モータ候補を選択できる可能性がある。
〈チューニング処理〉
【0183】
次に、ステップS9における運転ソフトウェアのチューニング処理の詳細について説明する。なお、このチューニング処理は、チューニング部50により実行される。
図10は、運転ソフトウェアのチューニング処理(S9)の例を示すフロー図である。
【0184】
ステップS91では、選択された模擬モータ候補が新規のモータ候補であるか否かを判定する処理が行われる。具体例としては、過去に実行したチューニング処理の履歴を参照し、判定する。ここで新規のモータ候補であると判定された場合には(S91:Yes)、ステップS92に進む。新規のモータ候補ではないと判定された場合には(S91:No)、初期値のセットは省略できるため、ステップS93に進む。なお、S91の判定において、新規のモータ候補ではないと判定された場合に、過去のチューニング結果をそのまま利用することができる場合には、チューニング処理を終了するようにしてもよい。
【0185】
ステップS92以降では、インバータ2に格納する運転ソフトウェアをチューニングする処理が行われる。運転ソフトウェア2sには、モータの特性を決定づけるパラメータおよびアルゴリズムなどの要素が含まれている。運転ソフトウェア2sには、例えば、モータの制御系を構成する1つ以上の演算ブロックのアルゴリズムのほか、1つ以上の微分回路の係数、1つ以上の積分回路の係数、1つ以上のアンプのゲインなど、各種パラメータが含まれている。したがって、運転ソフトウェア2sをチューニングするということは、これらのアルゴリズムおよびパラメータの少なくとも一方をチューニングすることを含んでいる。
【0186】
ステップS92では、各種アルゴリズムあるいは各種パラメータについて、所定の初期値をセットする処理が行われる。
【0187】
ステップS93では、各種アルゴリズムあるいは各種パラメータの調整が必要であるか否かを判定する処理が行われる。ここで、調整が必要であると判定された場合には(S93:Yes)、ステップS94に進む。調整が不要であると判定された場合には(S93:No)、S98に進む。
【0188】
ステップS94では、セットされている各種アルゴリズムあるいは各種パラメータを用いて、機構系モデリング部60が生成した数値解析モデルによる数値解析シミュレーションを実行する処理が行われる。
【0189】
ステップS95では、数値解析シミュレーションの結果が、所定の収束条件を満たしているか否かを判定する処理が行われる。収束条件を満たしていると判定された場合には(S95:Yes)、ステップS96に進む。収束条件を満たしていないと判定された場合には(S95:No)、ステップS97に進み、各種アルゴリズムあるいは各種パラメータを微小変更させた後、ステップS94に戻って数値解析シミュレーションを再度実行する。
【0190】
このように、数値解析シミュレーションの結果が所定の収束条件を満たすまで、各種アルゴリズムあるいは各種パラメータの変更と数値解析シミュレーションとを繰り返し実行する。
【0191】
なお、上記所定の収束条件は、予め設定されているものであってもよいし、機器メーカ103が入力したモータの制御要件を基に設定されるものであってもよい。機器メーカ103が制御要件を入力する場合には、運転ソフトウェア2sのチューニングを、所望の制御が反映されるように行うことができ、機器メーカ103にとってより好ましい運転ソフトウェア2sを生成することが可能になる。
【0192】
ステップS96では、収束後の各種アルゴリズムあるいは各種パラメータを保存する処理が行われる。その後、ステップS98に進む。
【0193】
ステップS98では、運転ソフトウェアの更新準備が完了したことを表す運転ソフトウェア更新準備完了フラグをセットする処理が行われる。
〈運転ソフトウェアの出力処理〉
【0194】
次いで、ステップS10における運転ソフトウェアの出力処理の詳細について説明する。なお、この運転ソフトウェアの出力処理は、モータ模擬設定出力部70により実行される。
図11は、運転ソフトウェアの出力処理(S10)の例を示すフロー図である。
【0195】
ステップS101では、前述のモータ更新準備完了フラグがセットされたか否かを判定する。ここで、完了フラグがセットされたと判定された場合には(S101:Yes)、ステップS102に進む。完了フラグがセットされていないと判定された場合には(S101:No)、運転ソフトウェアの更新準備ができていないと判断し、運転ソフトウェアの出力処理を終了する。あるいは、完了フラグがセットされたと判定されるまでステップS101を繰り返し実行するようにしてもよい。
【0196】
ステップS102では、インバータが停止しているか否かを判定する処理が行われる。インバータが停止していると判定された場合には(S102:Yes)、ステップS103に進む。インバータが停止していないと判定された場合には(S102:No)、ステップS104に進み、インバータの停止を促す情報を出力する。インバータ2が停止していない場合に運転ソフトウェアを転送すると、転送中にモータが予期せぬ挙動を取る可能性があるためである。例えば、「インバータを停止してください」などのメッセージを操作端末に表示させたり、音声または警告音を出力したりする。その後、運転ソフトウェアの出力処理を終了する。あるいは、インバータが停止していると判定されるまでステップS102を繰り返し実行するようにしてもよい。
【0197】
ステップS104では、S906において保存された運転ソフトウェアを転送する準備を完了させる処理が行われる。
【0198】
ステップS105では、チューニング画面において、前述の転送実行ボタン67Eを有効化する処理が行われる。
【0199】
ステップS106では、転送実行ボタン67E等が押下されたかを判定する処理が行われる。転送実行ボタン67Eが押下されたと判定された場合には(S106:「転送」押下)、ステップS107に進む。中断ボタン67Dが押下されたと判定された場合には(S106:「中断」押下)、運転ソフトウェアの出力処理を終了する。いずれのボタンも押下されていない、あるいは、これらのボタンとは異なる他のボタンが押下されていると判定された場合には(S106:他)、ステップS106に戻る。
【0200】
ステップS107では、準備された運転ソフトウェアをインバータの記憶部に転送する処理が行われる。転送が完了したら、運転ソフトウェアの出力処理を終了する。
【0201】
〈インバータにおけるモータ制御系の構成〉
【0202】
図12は、インバータ2におけるモータ制御系の構成を示す図である。なお、本実施の形態において、機械システム5は、サーボシステムを構成している。
【0203】
図12に示すように、インバータ2は、三相電源9からの入力電圧を整流回路2Bにて整流し、平滑回路2Cにて平滑化して直流電圧Vdcに変換する。この直流電圧Vdcは、スイッチング素子2Sにてスイッチングされプローブモータ3の3つの端子u,v,wに供給される。インバータ2における制御系CTRLには、整流後の直流電圧Vdc、インバータ温度センサ2Tによって検知されたインバータ温度Tinv、モータ温度センサ3Tにより検知されたモータ温度Tm、電流センサ2Jにより検知されたモータの各端子u,v,wに供給されるモータ電流Iu,Iv,Iw、電流センサ2Pにより検知された直流電流Idcなどの情報が送られる。
【0204】
次に、インバータにおける制御系の機能についてより詳しく説明する。
【0205】
機械システムのなかでも、特に位置決め性能に特徴のあるサーボシステムの場合、プローブモータ3は、その回転角度情報Pfbを回転軸に搭載したロータリエンコーダ3Bより検出し、Pfbで位置制御系、Pfbの時間微分を速度制御系のそれぞれの制御量としてインバータ2へフィードバックされる。
【0206】
インバータ2におけるモータの制御系CTRLは、大きく分けて3つあり、主に、位置制御系PC、速度制御系SC、およびトルク(電流)制御系TCで構成される。一般的に、位置制御系PCの出力を速度制御系SCの入力へ、速度制御系SCの出力をトルク制御系TCの入力へとカスケード接続した制御構成が用いられる。
【0207】
位置制御系PCには、コントローラ4から位置指令値P*が入力される。速度制御系SCには、コントローラ4から速度指令値S*が入力される。位置指令値P*が入力されている場合には、位置指令と速度指令とが競合しないよう、速度指令値S*は入力されないよう切り離される。
【0208】
それぞれの制御系は、例えば、図示のように、演算フィルタF、微分回路D、積分回路T、増幅回路A、加減演算子Hが接続された構成を有している。
【0209】
演算フィルタFは、1次遅れ、2次遅れ、移動平均などの演算ブロックのほか、外乱補償器あるいは遅延補償器などの複雑な演算ブロックなどを考えることができる。演算フィルタは、アルゴリズム「Fil」によって特徴づけられる。
【0210】
微分回路Dは、組み込みソフト上では、前回値差分で実現できる。微分回路Dは、パラメータ「s」によって特徴づけられる。
【0211】
積分回路Tは、組み込みソフト上では、累積値で実現できる。積分回路Tは、パラメータ「1/s」によって特徴づけられる。なお、積分回路Tによる積分の値は、オーバーフローするとシステムに悪影響を及ぼすので、積分値リセット機能と上下限リミッタも付帯するのが一般的である。すなわち、付帯パラメータとして、リセット初期値R、リミッタ閾値Lも存在する。
【0212】
増幅回路Aは、ゲインパラメータ「Kαβ」によって特徴づけられる。ここで、添字α:pは位置(position)、sは速度(speed)、iは電流を示す。添字β:fはフィードフォワード、pは比例(proportional)、iは積分(integral)を示す。
【0213】
なお、上記のアルゴリズム「Fil」、微分のパラメータ「s」、積分のパラメータ「1/s」、ゲインパラメータ「Kαβ」、リセット初期値R、リミッタ閾値Lは、図中にて同じ記号を用いているが、それぞれ独立している。
【0214】
これらのアルゴリズムおよびパラメータは、すべて細かく調整可能であり、本発明における運転ソフトウェアに含まれる。すなわち、これらは運転ソフトウェア2sを更新したり出力したりする際の対象に含まれる。
【0215】
それぞれの制御系には、指令値と制御フィードバックの差分をゼロに近づけるための比例・積分制御項あるいは、指令値追従性を高める意味で設けたフィードフォワード項が設けられる。それぞれの制御ゲイン・上下限リミッタ、1次遅れ時定数等のフィルタ定数が細かくパラメータとして調整可能に構成されている。また、機械システム5におけるプローブモータ3の動作をチューニングできるよう構成されている。
【0216】
また、モータトルクは、モータの電流とほぼ比例関係にあるため、トルク制御は、モータ電流制御で置き換えられる。インバータ2は、スイッチング素子2SのPWM(Pulse Width Modulation)制御のオンオフデューティを最終操作量として操作し、三相のモータ電流Iu、Iv、Iwを制御することにより、モータ制御の閉ループを構成する。
【0217】
ここで、モータの電流制御は、実際には回転磁界を直行するd軸q軸の2軸のベクトル成分に変換して制御演算し、再度逆変換する方式が一般的である。サーボシステムで用いられる一般の同期モータのトルクMTは、次式で与えられ、特にトルク制御では、これらの変数を加味した制御ゲインが設定される。
【0218】
MT=mp{ψaIq-(Lq-Ld)IdIq} …(数式1)
ここでm:相数、p:モータ極対数、ψa:誘起電圧定数、Id:d軸電流、Iq:q軸電流、Ld: d軸インダクタンス、Lq: q軸インダクタンスである。また、I=√(Id
2+Iq
2)である(√は平方根を意味する)。なおインバータ2にはモータ電流のほか直流電圧Vdc、直流電流Idc、インバータ温度Tinv、モータ温度Tmなど各種のセンサを接続してパラメータを監視することができる。
【0219】
また、
図12に示す制御ブロックは一例であり、ブロック図中の例えばフィルタ機能をいわゆる現代制御理論を適用したオブザーバ等で構成してもよい。これにより、制御系の外乱または遅延の悪影響を防止したり、あるいは所望の機械振動を低減したりすることが期待できる。
【0220】
本サービスの特徴は、複数のモータ候補を比較する際に全てのモータ候補を試験機に乗せ換えて都度評価するのではなく、1種類の代表プローブモータで複数のモータ候補を模擬させることにある。以下、モータの模擬について具体的に説明する。
【0221】
一般的に、機械システム(添字a)を接続したモータ軸(添字m)からみた運動方程式は次式で表すことができる。
【0222】
MT=(Jm+(Ja/n2))(d2Θ/d2t) + (Dm +(Da/n2)) (dΘ/dt) …(数式2)
ここで、Θ:モータ角度、J:慣性モーメント、D:粘性摩擦係数、nはギヤ比(機械歯/モータ歯)である。
【0223】
本サービスでは、まず第3フェーズPH3の初期段階でプローブモータ自体の運転定数を用いた試験運転を行い、モータの回転角度情報Pfbとモータ電流Iu、Iv、Iwの情報から、数式1および数式2に基づき機構系モデリング部60が速度慣性モーメントJa、粘性製摩擦係数Da、ギヤ比nなどの試験機側の機械的な定数を推定する。これら試験機側の機械系定数は、モータ以外の例えば動力伝達手段あるいは負荷による定数であるため、モータを変更した場合も不変と考えてよい。
【0224】
次にモータ模擬にあたっては、機構系モデリング部60の数値解析シミュレーションに対し、前段で求めた機械系定数と模擬候補であるモータの諸定数とを適用した機械システム5全体の運転を、数値解析シミュレーションで仮想的に実施する。そして、その結果の特徴量、特に振動の発生傾向を抽出する。なおこの際、模擬候補モータの種別によって、特に集中巻モータに関しては、コギングによるトルク脈動を反映するようシミュレーションを構築するとよい。具体的には、第1フェーズPH1におけるモータサンプルの情報入力または事前評価において、対象モータが発生し得るコギングトルクを定量化し、モータデ-タベース30に登録しておく。そして、当該モータが模擬対象として選定された場合に、この脈動をd軸またはq軸の変動成分として注入するとよい。
【0225】
次にモータパラメータのチューニングにあたっては、前段で得られた振動発生傾向に対し、これを低減するかまたは再現するかの条件に従って、プローブモータ3に対する制御パラメータを走査してチューニングを行う。具体的には、前段で得られた特徴的な振動周波数およびその振動強度スペクトルに、パラメータ調整後のシミュレーション結果が一致するよう、モータパラメータのチューニングを行う。例えば、前段で得られた特徴的な振動周波数およびその振動強度スペクトルと、パラメータ調整後のシミュレーション結果による振動周波数およびその振動強度スペクトルとを比較する。このとき、これら両者の誤差の2乗平均和を目的関数として、その関数値を算出する。そして、関数値が所定値以下になった場合に、収束したと判定する。
【0226】
以上の手続によれば、数値解析シミュレーションによって適当なモータ候補を抽出するとともに、プローブモータ3に任意のモータ適用時の挙動を模擬させることで、一切のモータ交換なしに複数種類のモータの実機評価が可能となる。
【0227】
図12のような構成のサーボシステムの場合であれば、機器メーカ103の側では試験モータの調達・交換・管理・調整工数を削減できる。加えて、モータ供給者104の側も試験モータのサンプル提供に関わる原価および管理工数を削減しつつ、機器メーカ103における認識、あるいは、仮想であれサンプル提供の機会増加が期待できる。
【0228】
その後、試作機においてプローブモータ3の模擬により仮想検証が済んだ末、最終製品に採用するモータの型式が確定される。
【0229】
第4フェーズPH4では、機構系モデリング部60の数値解析シミュレーションにおいて、再度、運転ソフトウェア2s(すなわちアルゴリズムおよびパラメータのうち少なくとも一方)のチューニングを行う。このフェーズは、プローブモータ3ではなく実機の採用モータを稼働するための運転ソフトウェア2sのチューニングであるため、上述の数式2に関わる定数だけでなく、数式1の定数変更を踏まえたパラメータ調整を含むことに注意が必要である。
【0230】
このように機構系モデリング部60による運転ソフトウェア2sのチューニングを活用すれば、模擬的にではなく実際にモータを実製品用に交換した際にも、調整なしに容易に運転が開始できる。また、それだけではなく、過去にプローブモータ3で蓄積された運転履歴の再現性に優れたシステムが得られる。
【0231】
さらに機構モデル絞込選択画面66Aあるいはチューニング条件設定画面67Bに設けた振動設定により機器システム5が振動を必要とするか否かを設定でき、さらにその振動が高出力帯か低出力帯かを指定できることによって、よりサービス利用者のニーズに応えたサービスが提供できるとともに、チューニングで調整すべきインバータ2のパラメータが具体化できる。
【0232】
さらにモータ候補から模擬対象モータを選定する際には、ユーザインターフェースにプローブモータ3とモータ候補または複数のモータ候補を同時に同じ数値表あるいは座標系へプロットするなど、並べて比較できるよう構成することで視認性が高まり、機器メーカが模擬対象モータを選定する際の納得感が高まるとともに、不注意による誤った模擬対象モータの選定を防ぐ効果が得られる。さらに一覧表表示においては各性能項目において大小比較によるソート機能をもたせ、各項目に設けた任意の評価関数によって優先順位設定が可能なように構成すると選定がより容易になる。
【0233】
さらに模擬対象モータが選定された場合にその情報が当該模擬対象モータのモータ提供者へ届くよう構成すれば、いち早くモータ供給者104の側と機器メーカ103の間で付加的な情報交換が開始できるなどさらに開発工数を削減できる。ただしここでは双方の機密あるいは個人情報が含まれる可能性があるため、それぞれの情報交換には可否を選択できるよう構成するとよい。
【0234】
さらに多数あるモータ情報を1種類のプローブモータ3で実現するのは現実的ではないため、モータ供給者104の側ではプローブモータ3を例えば数kW用、数十kW用、高出力低回転型、小出力高回転型、円筒型・平板型といった複数種類ラインナップし、機器メーカ103の要求に相応しいプローブモータ3を選定することになる。このとき選定されたプローブモータ3は、モータデータベース30に登録されているモータのうち一部しか模擬に対応できない可能性があるため、この場合、ステップS703の処理によりモータ候補の表示画面は機器メーカ103で使用するプローブモータ3で模擬できるものだけを表示する方が、検索効率が良くなる。一方、使用していたプローブモータ3では不満がありプローブモータ自体の交換を検討する場合などには、プローブモータ絞込画面66Cのチェックボックスの操作およびステップS714の処理によってプローブモータ3による表示制限を外した閲覧も可能なように構成するとよい。
【0235】
このような構成のモータ模擬システム100によれば、モータを実際に交換することなく、モータの挙動を仮想的に試行し評価することが可能になる。
【0236】
つまり、機器メーカ103は、機械システムに適用するモータの候補を少ない種類に限定しなくてもよくなる。その結果、最適なモータを効率よく特定することができ、モータおよびインバータを用いた機械システムの開発の質あるいは速度の向上を図ることができる。
【0237】
また、モータ供給者104は、新規のモータを含む多数のモータを検討してもらえる機会を得ることができる。その結果、モータの宣伝あるいは販売の機会を増やすことができる。
【0238】
また、サービス提供者105は、モータ供給者104からマージンを取得したり、機器メーカ103からモータのリースあるいは販売の手数料、システムの利用料を取得したりする事業を行うことができる。
【0239】
以上、本開示の代表的な実施形態の例について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。
〈付記〉
【0240】
以下、本発明の好ましい形態について付記する。
【0241】
上記ソフトウェア更新システムにおいて、モータデータベース30にモータ情報が格納されている複数のモータのうち、プローブモータ3の下位互換品とは異なるモータに対応するモータ情報の閲覧の可否選択を受け付ける閲覧可否受付部と、当該閲覧可否受付部における閲覧不可の選択に応じて、プローブモータ3の下位互換品に相当するモータのモータ情報のみを閲覧可能に表示制御する表示制御部と、を備える構成も、本開示による発明の実施の形態の一例である。
【0242】
また、上記機械システム開発支援サービス方法において、プローブモータまたはインバータを機器メーカ103に提供する手続きを、販売または貸与とする構成も、本開示による発明の実施の形態の一例である。
【0243】
また、コンピュータを、上記ソフトウェア更新システムとして機能させるためのプログラムも、本開示による発明の実施の形態の一例である。
【0244】
また、当該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本開示による発明の実施の形態の一例である。
【産業上の利用可能性】
【0245】
本発明は、モータおよびインバータを含む機械システムの開発に利用可能である。
【符号の説明】
【0246】
1…サーバ、11…プロセッサ、12…メモリ、13…ストレージ、14…インタフェース、2…インバータ、2m…記憶部、2s…運転ソフトウェア、2G…インバータ群、3…プローブモータ、3d…運転データ、3G…プローブモータ群、4…コントローラ、5…機械システム、6A…操作端末、6B…操作端末、7…ネットワーク、8…アクセスポイント、10…初期設定部、20…運転データ収集部、21…モータ分析部、22…振動検知部、30…モータデータベース、30m…モータ情報、40…モータ候補抽出部、50…チューニング部、60…機構系モデリング部、70…モータ模擬設定出力部、80…模擬運転設定部、100…モータ模擬システム、103…機器メーカ、104…モータ供給者、105…サービス提供者。