IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 藤田 博紀の特許一覧 ▶ 藤田 春香の特許一覧

<>
  • 特許-目薬のキャップ用仮置き材 図1
  • 特許-目薬のキャップ用仮置き材 図2
  • 特許-目薬のキャップ用仮置き材 図3
  • 特許-目薬のキャップ用仮置き材 図4
  • 特許-目薬のキャップ用仮置き材 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】目薬のキャップ用仮置き材
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/05 20060101AFI20240422BHJP
【FI】
A61J1/05 313H
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023159329
(22)【出願日】2023-09-25
【審査請求日】2024-02-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504357945
【氏名又は名称】藤田 博紀
(73)【特許権者】
【識別番号】513269310
【氏名又は名称】藤田 春香
(74)【代理人】
【識別番号】100124316
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】藤田 博紀
(72)【発明者】
【氏名】藤田 春香
【審査官】岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-215343(JP,A)
【文献】登録実用新案第3124898(JP,U)
【文献】登録実用新案第3140911(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体容器とこの本体容器に着脱自在に接続されるキャップを備える目薬の前記キャップを前記本体容器の使用時に、一時的に仮置きするための仮置き材であり、
上面が凹面状をし、前記キャップが載置される受け部と、この受け部の軸方向に連続し、前記キャップの軸方向の閉鎖側先端部が対向し、この閉鎖側先端部が接触し得る被係止部を備え、
前記受け部の前記上面は、前記被係止部より遠い側から前記被係止部側へかけて下方へ傾斜しながら、幅方向中心が最も低く、この中心から幅方向両側にかけて次第に上向きに傾斜し、前記キャップの軸方向両端面以外の外周面に、その表面の開放側端面から前記閉鎖側先端部に向かう線に沿った方向に線接触、または面接触して前記キャップを支持することを特徴とする目薬のキャップ用仮置き材。
【請求項2】
前記受け部の前記上面は、前記キャップの前記軸方向両端面以外の外周面にその表面の前記開放側端面から前記閉鎖側先端部に向かう線に沿った方向の少なくとも2本の線で線接触して前記キャップを支持することを特徴とする請求項1に記載の目薬のキャップ用仮置き材。
【請求項3】
前記受け部の前記被係止部寄りの位置から前記受け部の軸方向に距離を置いた部分に、前記受け部の幅方向に連続し、上面が前記受け部の前記上面に連続した面を持つ翼部が形成されていることを特徴とする請求項1、もしくは請求項2に記載の目薬のキャップ用仮置き材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は目薬の分離自在なキャップを一時的に仮置きするために使用される目薬のキャップ用仮置き材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
目薬(点眼薬)の使用時に、本体容器に着脱自在に接続されるキャップを手で持っていられない場合、キャップは清潔な場所に置かれるべきとされている。しかしながら、キャップを手放す場合、キャップを一時的に仮置きするための手頃な場所がなければ、キャップは床やテーブル等の水平面上等に無造作に置かれることになる。
【0003】
但し、キャップの閉鎖側先端部は水平面上に立てて置ける形状をしていないことが多いため、開放側端面が水平面上に直接、置かれ易くなる。このとき、水平面が清潔に保たれていなければ、開放側端面に雑菌が付着する可能性が高い。キャップの開放側端面に雑菌が付着すれば、本体容器に接続した(戻した)ときに、本体容器の接続部分の表面に雑菌が付着し、キャップの着脱を繰り返す内に本体容器の接続部分の先端にまで拡散する可能性がある。
【0004】
キャップを本体容器から分離自在にせず、本体容器の支持軸回りに回転自在に接続するか、スライド自在に接続する構造の点眼容器がある(特許文献1参照)。但し、これは特殊な構造を持った点眼容器の例であり、キャップが本体容器から分離自在な形態である場合の解決策を提示することにはならない。
【0005】
この他、キャップを軸方向に長めに設定することで、キャップの着脱操作性を高める構造(特許文献2参照)、キャップを本体容器に接続したままの状態で、点眼を可能する構造(特許文献3、4参照)、キャップ(アダプタ)を本来の接続状態とは逆向きに接続し直す構造(特許文献5参照)があるが、いずれも特許文献1と同様、キャップが本体容器から分離自在な形態の解決策を提示していない。
【0006】
目薬以外の分野では、キャップ付きの筆記具のキャップの表面に溝を形成しておくことで、筆記具本体の使用中、仮置きの必要が生じたときに、キャップの溝上に筆記具本体を仮置きする形態があるが(特許文献6参照)、筆記具本体から分離したキャップを仮置きすることには対応できない。
【0007】
他に、長さ方向両側に形成された仕切り板の内、一方の仕切り板にキャップが嵌合し得る大きさの溝を形成した箱状の仮置き台があるが(特許文献7参照)、筆記具本体から分離したキャップを仮置きすることには応用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2005-144123号公報(段落0010~0018、図1図7
【文献】特開昭64-58671号公報(公報第1頁右欄第6行~第2頁左欄第10行、第1図、第2図)
【文献】実開平5-20738号公報(段落0015~0018、図1図5
【文献】実開平7-5644号公報(段落0009~0015、図1図6
【文献】特開2001-129054号公報(請求項1、段落0018~0034、図1図8
【文献】実開昭63-100287号公報(明細書第2頁第16行~第3頁第9行、第1図~第5図)
【文献】実開平4-69192号公報(明細書第3頁第20行~第5頁第20行、第1図~第8図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のようにキャップ付き目薬の先行文献にも、キャップ付き筆記具の先行文献にも、本体容器から分離したキャップを仮置きする上で、キャップの開放側端面に雑菌が付着することを確実に防止可能な従来例は見当たらない。
【0010】
本発明は上記背景より、本体容器から分離したキャップの開放側端面に雑菌が付着することを確実に防止し得る機能を持つ目薬のキャップ用仮置き材を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明の目薬のキャップ用仮置き材は、本体容器とこの本体容器に着脱自在に接続されるキャップを備える目薬の前記キャップを前記本体容器の使用時に、一時的に仮置きするための仮置き材であり、
上面が凹面状をし、前記キャップが載置される受け部と、この受け部の軸方向に連続し、前記キャップの軸方向の閉鎖側先端部が対向し、この閉鎖側先端部が接触し得る被係止部を備え、
前記受け部の前記上面が、前記被係止部より遠い側から前記被係止部側へかけて下方へ傾斜しながら、幅方向中心が最も低く、この中心から幅方向両側にかけて次第に上向きに傾斜し、前記キャップの軸方向両端面以外の外周面に、その表面の開放側端面から閉鎖側先端部に向かう線に沿った方向に線接触、または面接触して前記キャップを支持することを構成要件とする。
【0012】
「上面が凹面状をする受け部」とは、図3-(a)~(c)に示すように受け部2の上面21が上に凹の曲面状、または上に凹の多面体形状の一部をなしていることを言う。「受け部の軸方向に連続し、キャップの軸方向の閉鎖側先端部が対向し、閉鎖側先端部が接触し得る被係止部」とは、図1図4に示すように受け部2の軸方向(長さ方向)の片側に被係止部3が連続して形成され、受け部2上にキャップ5が載ったときに、被係止部3のキャップ5側の側面31にキャップ5の閉鎖側先端部51が対向する状態になることを言う。受け部2と被係止部3は一体の場合と、互いに別体でありながら、連結されて一体化される場合がある。
【0013】
キャップ5は主に軸(中心)の回りに直線か曲線が回転して形成される回転体形状、またはそれに近い多角錐台形状をしていることから、「キャップの軸方向」は回転体等の軸の方向を指し、長さ方向とも言える。キャップ5の軸方向の一方側は閉鎖し、他方側は開放するため、「軸方向の閉鎖側先端部51」とは、キャップ5の閉鎖している側の端部を指す。反対側の端部の面はキャップ5の開放側端面52になる。
【0014】
「受け部の上面は、被係止部より遠い側から被係止部側へかけて下方へ傾斜し」とは、受け部2の上面21が全体として、被係止部3より遠い側(開放側端面52側)から被係止部3側(閉鎖側先端部51側)へかけて下向きに傾斜していることを言う。受け部2の上面21上にキャップ5が載置されたときに、受け部2の軸方向にキャップ5に滑りが生じようとすれば、キャップ5が被係止部3側へ向かうように傾斜していることを言う。受け部2の上面21は平面の場合と曲面の場合と、両者が混在する場合がある。
【0015】
受け部2の上面21が、キャップ5が被係止部3側へ向かうように下向きに傾斜することで、受け部2上に載置されたキャップ5が傾斜面21b、21bに沿い、被係止部3の反対側に移動し、受け部2の端部から離脱することは生じにくくなる。この結果、キャップ5の開放側端面52が、仮置き材1が設置されている床面等上に落下することは回避され易くなり、キャップ5の開放側端面52に雑菌が付着することは防止され易くなる。
【0016】
「受け部の上面は、幅方向中心が最も低く、この中心から幅方向両側にかけて次第に上向きに傾斜し、」とは、受け部2を軸方向に直交する断面で見たとき(軸方向に見たとき)、図3-(a)~(c)に示すように仮置き材1の設置状態で受け部上面21の幅方向の中心21が最も低い位置にあり、中心21から幅方向両側にかけて上向きに傾斜した傾斜面21b、21bを上面21が持つことを言う。「幅方向に傾斜した傾斜面21b、21b」は平面と曲面がある。
【0017】
「キャップの軸方向両端面以外の外周面」とは、キャップ5の上記閉鎖側先端部51と開放側端面52を除く区間の外周面53を指す。「閉鎖側先端部51」は図1図2に二点鎖線で示すキャップ5の例で言えば、閉鎖側の外周面53以外の径が小さい摘み状の部分を指す。「閉鎖側先端部が接触し得る被係止部」とは、閉鎖側先端部51の軸方向の端面51aが被係止部3に接触し得ることを言う。
【0018】
「キャップの軸方向両端面以外の外周面の開放側端面から閉鎖側先端部に向かう線」とは、キャップ5が回転体形状、またはそれに近い多角錐台形状をしているとした場合の母線、または母線に相当する線を指す。キャップ5が回転体形状等でない場合には、開放側端面52から閉鎖側先端部51に向かう、軸線に沿った最短の線、特に直線を指す。
【0019】
「受け部の上面は、キャップの軸方向両端面以外の外周面に、その表面の開放側端面から閉鎖側先端部に向かう線に沿った方向に線接触、または面接触してキャップを支持する」とは、以下のことを言う。
【0020】
すなわち、キャップ5の閉鎖側先端部51と開放側端面52を除く区間の外周面53が、キャップ5の軸方向に沿った母線等の線で受け部2の上面21に接触する、または外周面53の周方向に幅を持つ、母線に沿った帯状の曲面で接触することで、受け部2がキャップ5を支持することを言う。「線接触」は受け部2の軸方向に連続した線である必要はなく、断続した線である場合もあり、「面接触」も断続的である場合がある。
【0021】
受け部上面21の幅方向中心21aが最も低く、中心21aから幅方向両側にかけて次第に上向きに傾斜することと、受け部2の上面21がキャップ5の軸方向両端面以外の外周面53に線接触、または面接触することで、次のことが言える。
【0022】
例えば図3-(a)に示すように受け部2の上面21がキャップ5を支持した状態での、キャップ5を軸方向に見たときの外周面53の最下点、または最下点を含む周方向の線が受け部上面21に接触したとき、外周面53の最下点、または最下点を含む線が受け部上面21に接触した状態で安定しようとする。キャップ5は周方向に振動し(転がり)得る状態にはあるものの、最終的には最下点かそれを含む線が受け部上面21に接触した状態で安定しようとするため、キャップ5に外力が作用しない限り、キャップ5の安定性は確保される。
【0023】
キャップ5の周方向の振動(転がり)による受け部2からの落下の可能性が低下することで、キャップ5が受け部2に支持された状態での振動に起因する落下による床面等との接触も生じにくくなるため、落下に起因する、キャップ5の開放側端面52への雑菌の付着も回避され易くなる。
【0024】
特に受け部2の上面21がキャップ5の軸方向両端面以外の外周面53の、母線に沿った少なくとも2本の線で線接触する場合には(請求項2)、面接触する場合と1本の線で線接触する場合との対比では、キャップ5を支持した状態でのキャップ5の周方向への転がりに対する安定性が向上する。「2本の線」は図3-(b)、(c)に示すように例えば受け部上面21の幅方向中心21aの両側でキャップ5に接触する2本の線を指し、キャップ5を軸方向に見たとき、幅方向中心21の両側に位置する2点(2箇所の接点)でキャップ5が受け部上面21に接触した状態にあることを言う。
【0025】
キャップ5が図3-(a)に示すように1本の線で上面21に線接触する場合、または曲面で接触する場合には、キャップ5が周方向に転がろうとするときに、受け部2の上面21に転がりを阻止する力が生じないため、キャップ5は触れられた(力を受けた)ときに転がり易い状態になる。
【0026】
図3-(a)の例のようにキャップ5を軸方向に見たとき、受け部上面21がキャップ5の外周面53の曲率より小さい曲率の曲面をなす場合、受け部上面21からの鉛直方向上向きの反力Pの作用方向はキャップ5の曲面の受け部上面21への接触点における接線に垂直な方向(法線方向)であるため、曲面の接線方向には分力が生じない。すなわち、受け部上面21からの反力にはキャップ5を受け部2の半径方向中心側へ向かわせる成分がないため、キャップ5を受け部上面21の中心21a側へ向かわせる力は生じない。
【0027】
これに対し、図3-(b)、(c)に示すように受け部上面21が中心21aより両側寄りの2本の線で線接触する場合には、キャップ5が周方向に転がろうとするときに、転がりを阻止する力が生じるため、キャップ5は転がりにくい状態に置かれる。言い換えれば、キャップ5は軸方向に直交する断面上、中心21aの両側に位置する2点で周方向に挟み込まれるように受け部2に支持された状態になる。
【0028】
受け部2の上面21がキャップ5の外周面53の少なくとも2本の線で線接触する状態は、主に図3-(b)に示すように上面21の中心21aから両側にかけて次第に上向きに傾斜する傾斜面21b、21bを有する形をする場合と、(c)に示すようにキャップ5を軸方向に見たとき、上面21がキャップ5の外周面53より曲率の大きい曲面をなす場合がある。
【0029】
図3-(b)は具体的には上面21の中心21aに凹の稜線(谷)が、受け部2の軸方向に連続的に形成され、この凹の稜線(中心21a)から幅方向両側にかけて次第に上向きに傾斜する少なくとも1面(単数と複数)の傾斜面(平面と曲面)21b、21bが形成されている例を示す。図3-(c)は上面21の中心21aが最も低く、傾斜面21b、21bがこの中心21aから幅方向両側にかけて次第に上向きに傾斜し、キャップ5の外周面53より曲率が大きい曲面をなしている。
【0030】
図3-(b)、(c)のいずれの場合も、キャップ5の上面21との接触点における接線方向は水平面に対して傾斜し、接触点は上面21の中心21aより幅方向両側寄りに位置するため、上面21からの鉛直方向上向きの反力によりキャップ5には断面上の曲線の接線方向に垂直な成分P1が生じる。
【0031】
上面21(傾斜面21b)が中心21aから両側へかけて上向きに傾斜する平面である図3-(b)に示す例の場合、断面上、中心21aの片側の各傾斜面21bに作用するキャップ5の荷重がWであり(2面で2W)、上面21(傾斜面21b)の水平面に対する傾斜角度がαであるとすれば、キャップ5に作用する受け部上面21からの反力の上面21に垂直な成分P1はP1=Wcosαである。この力P1はキャップ5の断面上の中心を向くため、上面21の中心21a側を向く水平成分Wcosα・sinαを持つ。
【0032】
上面21(傾斜面21b)がキャップ5の外周面53より曲率が大きい曲面をなす図3-(c)に示す例の場合、断面上、キャップ5と上面21との接触点における水平面に対する傾斜角度がβであるとすれば、キャップ5に作用する受け部上面21からの反力の上面21に垂直な成分P2はP2=Wcosβである。この力P2もキャップ5の断面上の中心を向くため、上面21の中心21a側を向く水平成分Wcosβ・sinβを持つ。
【0033】
このように受け部2の上面21が凹面状(上に凹)であることで、上面21からの反力の接線方向に垂直な成分が断面上、中心21aの鉛直線上の点、または外周面53が描く曲線の曲率中心を向くため、断面で見たとき、上面21の両側の接触点に受ける反力の接線方向に垂直な成分に水平成分が含まれる。この水平成分は上面21の中心21a側を向くため、各接触点からキャップ5は上面21の中心21a側へ押される力を受ける。この中心側を向く力が上面21の中心21aに関して両側から作用するため、キャップ5は中心21a側から外れる向きの移動に対して拘束され、安定し易くなる。
【0034】
受け部2上に置かれたキャップ5の落下に対する安定性は、図4に示すように受け部2の被係止部3寄りの位置から受け部2の軸方向に距離を置いた部分に、受け部2の幅方向両側に連続し(延び)、上面41が受け部2の上面21に連続した面(傾斜面41b、41b)を持つ翼部4、4が形成されることで(請求項3)、より向上する。「上面が受け部の上面に連続した面」とは、翼部4の上面41が受け部2の上面21に連続した面(傾斜面41b)をなすことを言う。面には平面と曲面がある。
【0035】
「受け部の軸方向に距離を置いた部分」は受け部2の軸方向端部とは限られず、翼部4、4は受け部2の軸方向の中間部に形成されることもある。翼部4の形成位置に拘わらず、上面41が受け部2の上面21に連続した凹面状をなす傾斜面41b、41bを持つことで、翼部4はキャップ5が周方向に転がろうとするときに、キャップ5の転がりとそれによる落下を阻止する能力を持つため、キャップ5の転がりによる落下に対する安全性が向上する。
【発明の効果】
【0036】
上面が凹面状の受け部と、受け部の軸方向に連続し、キャップの軸方向の閉鎖側先端部が対向する被係止部を持ち、受け部の上面を、被係止部より遠い側から被係止部側へかけて下方へ傾斜させているため、受け部上に載置されたキャップが傾斜面に沿って受け部から、仮置き材が設置されている床面上に落下することが生じにくくなり、キャップの開放側端面に雑菌が付着することを回避することができる。
【0037】
また受け部はキャップの軸方向両端面以外の外周面に、その表面の開放側端面から閉鎖側先端部に向かう線に沿った方向に線接触、または面接触してキャップを支持するため、キャップの最下点が受け部上面に接触する状態で安定させることができる結果、落下による床面との接触も生じにくくなり、落下に起因する、キャップの開放側端面への雑菌の付着も回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1受け部のキャップ開放側端面側の上面の曲率がキャップ外周面の曲率と等しい場合の基本的な仮置き材の製作例を示した斜視図である。
図2】(a)は受け部のキャップ開放側端面側の上面の曲率がキャップ外周面の曲率より小さい場合の図1の側面図、(b)は(a)の平面図、(c)は(b)のx-x線矢視図、(d)は(b)のy-y線矢視図である。
図3】(a)は受け部上面がキャップの外周面より小さい曲率の曲面をなす場合にキャップに作用する反力を示した概要端面図、(b)は受け部上面の幅方向中心から両側にかけて上向きに傾斜する傾斜面が形成された場合にキャップに作用する反力の法線方向の成分を示した概要端面図、(c)は受け部上面がキャップの外周面より大きい曲率の曲面をなしている場合にキャップに作用する反力の法線方向の成分を示した概要端面図である。
図4】受け部の被係止部寄りの位置から受け部の軸方向に距離を置いた部分に翼部を形成した仮置き材の製作例を示した斜視図である。
図5】(a)は図4の側面図、(b)は図4の平面図、(c)は(b)のx-x線矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1図2は本体容器と本体容器に着脱自在に接続されるキャップ5を備える目薬のキャップ5を本体容器の使用時に、一時的に仮置きするために使用される仮置き材1の製作例を示す。仮置き材1は例えば合成樹脂、合成ゴム、木材、金属、ガラス等で製作されるが、特に材料は問われない。
【0040】
仮置き材1は上面21が凹面状をし、キャップ5が載置される受け部2と、受け部2の軸方向に連続し、キャップ5の軸方向の閉鎖側先端部51が対向し、閉鎖側先端部51が接触し得る被係止部3の少なくとも2部分を備える。図面では本体容器を示していない。「少なくとも2部分」とは、受け部2と被係止部3の2部分以外に、後述の「翼部4」を有することがある、の意味である。
【0041】
受け部2の上面21は、被係止部3より遠い側から被係止部3側へかけて下方へ全体的に傾斜しながら、幅方向の中心21aが最も低く、中心21aから幅方向両側にかけて次第に上向きに傾斜した傾斜面21b、21bを有する。言い換えれば、傾斜面21b、21bは全体として被係止部3側からその反対側へかけて上向きに傾斜すると同時に、中心21aから幅方向の両側へかけても上向きに傾斜する。傾斜面21bは平面の場合と曲面の場合、あるいは曲面を含む場合がある。
【0042】
図1図2は中心21aの幅方向両側の傾斜面21b、21bと中心21aとに境界線がなく、中心21aを含む両傾斜面21b、21bが一定の曲率の曲面をなす場合の例を示している。図1は受け部2におけるキャップ5の開放側端面52側の上面21の曲率がキャップ5の外周面53の曲率と等しい場合、図2は受け部2におけるキャップ5の開放側端面52側の上面21の曲率がキャップ5の外周面53の曲率より小さい場合の例を示す。これらの場合、中心21aは明確な凹の稜線としては表れない。ここではキャップ5の軸方向両端面以外の外周面53が回転体形状、特に円錐台形状の例を示しているが、図2では(c)に示すようにキャップ5、または受け部2を軸方向に見たときの外周面53の曲率が傾斜面21b、21bの曲率より大きい場合の例も示している。受け部2の軸方向は平面で見たときの中心21aの方向でもある。
【0043】
図面では被係止部3の受け部2(キャップ5)側の側面31が、受け部2の上面21上にキャップ5が載置されたときに、閉鎖側先端部51の軸方向の端面51aを面で受けられるよう、端面51aと平行な面をなしているが、必ずしもその必要はない。側面31が端面51aと平行な場合には、キャップ51の端面51aが側面31に接触したときに、キャップ5の軸方向の移動に対する安定性が確保される利点がある。
【0044】
図1図2ではまた、受け部2の、被係止部3の反対側の端部が、キャップ5の開放側端面52の位置になるような軸方向の長さを持つ場合の例を示しているが、受け部2上にキャップ5を載置した状態から取り上げるときの取り扱い易さからは、図4図5に示すようにキャップ5の開放側端面52が受け部2からはみ出す程度の長さである方がよい。キャップ5の開放側の端部は本体容器のキャップ5側の端部に螺合等により接続される。
【0045】
図4図5は受け部2の被係止部3寄りの位置から受け部2の軸方向に距離を置いた部分に、受け部2の幅方向両側に連続し(延び)、上面41が受け部2の上面21に連続した面を持つ翼部4、4が形成された場合の仮置き材1の製作例を示す。ここに示す例では傾斜面21b、21bが中心21aから幅方向両側にかけて上向きに傾斜する平面で、中心21aが凹の稜線(谷)として明確に表れる場合の例を示している。傾斜面21bは曲面の場合、または曲面を含む場合もある。
【0046】
図4図5は翼部4、4が受け部2の、被係止部3の反対側の端部に形成された場合の例を示しているが、翼部4、4は受け部2の軸方向の中間部に形成される場合もある。その場合も、上面41は受け部2の上面21に連続した面をなす。
【0047】
翼部4の上面41は受け部2の上面21に連続した面をなすため、図示するように上面21が中心21aから幅方向両側にかけて上向きに傾斜した平面の傾斜面21b、21bである場合、上面41も中心21aに連続した直線を描く中心41aと、傾斜面21b、21bに連続した平面等の傾斜面41b、41bを持つ。傾斜面41bも曲面を含む場合がある。傾斜面21b、21bが曲面であれば、傾斜面41b、41bも傾斜面21bに連続した曲面になる。
【0048】
図3-(a)は図1図2に示す仮置き材1の受け部2の上面21上にキャップ5が載置されたときに、キャップ5の外周面53の、上面21との接触面に作用する、キャップ5の自重による上面21からの反力Pの様子を示す。「キャップ5の自重」はキャップ5、または受け部2を軸方向に見たとき(受け部2の軸方向に直交する断面で見たとき)の、ある任意の断面上に作用するキャップ5の荷重を言う。
【0049】
この場合、キャップ5は外周面53の最も低い位置で上面21に接触するため、キャップ5の軸方向、または受け部2の軸方向に見たとき、外周面53は上面21の中心21aに接触する。受け部2からの反力Pはキャップ5の外周面53の上面21(中心21a)との接触面(接触点)における接線方向に垂直な方向(法線方向)に作用するため、鉛直方向上向きに作用し、水平成分を持たない。断面上、キャップ5から受け部上面21に作用するキャップ5の鉛直下向きの荷重が2Wであるとすれば、反力PはP=2Wである。
【0050】
図3-(b)は図4図5に示す仮置き材1の、翼部4、4を除いた形態の受け部2の上面21上にキャップ5が載置され、キャップ5の外周面53が傾斜面21b、21bのそれぞれに線接触したときに、受け部2の軸方向に見たとき、接触点に作用する、キャップ5の自重による各傾斜面21b、21bからの反力P1の様子を示す。「線接触」は断続的であることもある。
【0051】
この場合も、受け部2からの反力P1はキャップ5の外周面53の、傾斜面21bとの接触点における接線に垂直な方向(法線方向)に作用するため、受け部2の軸方向に見たとき、外周面53の曲率中心を向く。断面上、各傾斜面21bに作用するキャップ5の鉛直下向きの荷重がWであるとすれば、鉛直方向上向きの反力がWであるから、反力P1はP1=Wcosαである。従って反力P1は水平方向には上面21の中心21a側を向く水平成分Wcosα・sinαを持ち、この水平成分がキャップ5を中心21a側へ押す作用をする。
【0052】
図3-(c)は(a)の例とは逆に、キャップ5を軸方向に見たときの外周面53の曲率より、受け部2を軸方向に見たときの上面21の曲率が大きい場合の、キャップ5の自重による上面21からの反力P2の様子を示す。この場合、上面21は幅方向両端部分の2点でキャップ5の外周面53に接触するため、この2点からキャップ5の外周面53に反力P2が作用する。
【0053】
この場合も、受け部2からの反力P2はキャップ5の外周面53の、傾斜面21bとの接触点における接線に垂直な方向に作用するため、受け部2の軸方向に見たとき、外周面53の曲率中心を向く。断面上、各傾斜面21bの幅方向(周方向)の端部に作用するキャップ5の鉛直下向きの荷重がWであるとすれば、反力P2はP2=Wcosβである。従ってこの反力P2も水平方向には上面21の中心21a側を向く水平成分Wcosβ・sinβを持ち、この水平成分がキャップ5を中心21a側へ押す作用をする。
【符号の説明】
【0054】
1……仮置き材、
2……受け部、21……上面、21a……(幅方向)中心、21b……傾斜面、
3……被係止部、31……側面、
4……翼部、41……上面、41a……(幅方向)中心、41b……傾斜面、
5……キャップ、51……閉鎖側先端部、51a……端面、52……開放側端面、53……外周面。
【要約】
【課題】目薬の分離自在なキャップを一時的に仮置きする上で、本体容器から分離したキャップ5の開放側端面52に雑菌が付着することを確実に防止する。
【解決手段】上面21が凹面状をし、キャップ5が載置される受け部2と、受け部2の軸方向に連続し、キャップ5の軸方向の閉鎖側先端部51が接触し得る被係止部3の2部分から仮置き材1を構成し、受け部2の上面21を、被係止部3より遠い側から被係止部3側へかけて下方へ傾斜させながら、幅方向中心21aを最も低くし、この中心21aから幅方向両側にかけて次第に上向きに傾斜させ、キャップ5の軸方向両端面以外の外周面53に、その表面の開放側端面52から閉鎖側先端部51に向かう線(母線)に沿った方向に線接触、または面接触させてキャップ5を支持させる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5