(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】消泡剤組成物
(51)【国際特許分類】
B01D 19/04 20060101AFI20240422BHJP
C08G 77/46 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
B01D19/04 A
C08G77/46
(21)【出願番号】P 2020131401
(22)【出願日】2020-08-03
【審査請求日】2023-05-16
(31)【優先権主張番号】P 2019143506
(32)【優先日】2019-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】藤井 基隆
(72)【発明者】
【氏名】村岡 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】原 優介
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-094436(JP,A)
【文献】特開平05-117352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 19/00-19/04
C08G 77/00-77/62
C08G 18/00-18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリオキシアルキレン変性シリコーンおよび(B)25℃における粘度が10~100,000mm
2/sのシリコーンオイルを含有し、(A)ポリオキシアルキレン変性シリコーンと(B)シリコーンオイルの質量比((A)/(B))が10/90~90/10であることを特徴とする、消泡剤組成物。
(A) 式(1)で表されるシリコーン変性剤Xおよび式(3)で表されるシリコーン変性剤Yと式(5)で表されるハイドロジェンオルガノポリシロキサンの反応物からなり、式(1)で表されるシリコーン変性剤Xのゲル浸透クロマトグラフィー測定により求められるクロマトグラムから算出されるM
HとM
Lとが式(2)の関係を満足し、式(3)で表されるシリコーン変性剤Yのゲル浸透クロマトグラフィー測定により求められるクロマトグラムから算出されるM
HとM
Lとが式(4)の関係を満足する、ポリオキシアルキレン変性シリコーン
R
1O-(AO
1)
a-[(AO
2)
b/(EO)
c]-R
2・・・(1)
(式(1)中、
R
1は炭素数2~8のアルケニル基を示し、
AO
1およびAO
2はそれぞれ炭素数3のオキシアルキレン基を示し、
EOはオキシエチレン基を示し、
AO
1の平均付加モル数aは
1~60であり、
AO
2の平均付加モル数bおよびEOの平均付加モル数cは0以上であり、
a、bおよびcの和は10~100であり、
bとcとの和は5~60であり,
AO
2の平均付加モル数bおよびEOの平均付加モル数cがそれぞれ0より大きい場合、(AO
2)
b/(EO)
cは、前記炭素数3のオキシアルキレン基AO
2および前記オキシエチレン基EOがランダム付加していることを示し、
R
2は水素原子または炭素数1~4のアルキル基である。)
0.20≦ M
L/M
H ≦0.60 ・・・(2)
(前記クロマトグラム上の屈折率強度が最大となる極大点KからベースラインBへの垂線の長さをLとし、屈折率強度がL/20となるクロマトグラム上の2点のうち溶出時間が早いほうを点Oとし、溶出時間が遅いほうを点Qとし、点Oと点Qを結ぶ直線Gと前記極大点Kから前記ベースラインBへ引いた垂線との交点をPとしたとき、点Oと交点Pの距離をM
Hとし、点Qと交点Pの距離をM
Lとする。)
R
3O-(AO
3)
d-R
4 ・・・(3)
(式(3)中、
R
3は炭素数2~8のアルケニル基を示し、
AO
3は炭素数2~
3のオキシアルキレン基を示し、
AO
3の平均付加モル数dは10~
60であり、
R
4は水素原子または炭素数1~4のアルキル基である。)
0.80≦ M
L/M
H ≦1.20 ・・・(4)
【化1】
(式(5)中、
eは1~200、fは0~100であり、f/eは0~1であり、
R
5は、炭素数1~8の炭化水素基であり、
R
6およびR
7は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~8の炭化水素基であり、f=0のときにはR
6とR
7との少なくとも一つは水素原子である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオキシアルキレン変性シリコーンとシリコーンオイルとを含有する消泡剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン系消泡剤は、優れた消泡性を有することから、食品製造における発酵、パルプ・製紙、塗料、インキ・印刷および排水等幅広い分野に使用されている。一般に、シリコーン系消泡剤は、シリコーンオイルを界面活性剤で乳化・分散させた組成物であるが、乳化分散能の高さや消泡性への影響のなさの観点から、界面活性剤として、ポリオキシアルキレン変性シリコーンが使用されている。
【0003】
ポリオキシアルキレン変性シリコーンは、ジメチルポリシロキサンを基本骨格とし、メチル基の一部にポリオキシアルキレン構造を導入したシリコーンであり、ポリエーテル部分においても親水性・疎水性のバランスにより、水や油剤との相溶性をコントロールし易いことから、好適に使用されている。
例えば、消泡性能を高めた組成物として、ポリエーテル変性シリコーンとシリコーンオイルを含有する消泡剤組成物(特許文献1)が提案されている。
【0004】
しかしながら、消泡剤は疎水性が高いために、水系用途において配合量を増加させたりすると、染料等の水性成分が配合された系では、ハジキやオイルスポットが生じる場合があった。このハジキに対しては、特定構造のポリオキシアルキレン鎖を有するポリオキシアルキレン変性シリコーンとシリコーンオイルを含有する消泡剤が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-117352号公報
【文献】特開2004-181415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、アクリルエマルション等の水性塗料においては、樹脂分を長期間安定に乳化させるために、多くの界面活性剤が配合されており、消泡性が十分に得られない場合があった。また、意匠性の観点から、塗膜の見え方に対する要求も厳しくなっており、特に平滑な表面に形成した薄い塗膜において、斜めから見た場合でも色ムラを生じないレベルでの外観の良好さが求められている。
そのため、優れた消泡性と斜めから見た際の仕上がり外観のいずれの性能にも優れるシリコーン消泡剤が要望されている。
【0007】
本発明の課題は、優れた消泡性および斜めから見た際の仕上がり外観が良好であるシリコーン系消泡剤の提供を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題に鑑みて鋭意検討を重ねた結果、ハイドロジェンポリシロキサンと分子量分布に特定の偏りのあるポリオキシアルキレン鎖およびアルケニル基を有するポリオキシアルキレン誘導体変性シリコーンは、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
本発明は以下
のものである。
(1) (A)ポリオキシアルキレン変性シリコーンおよび(B)25℃における粘度が10~100,000mm
2/sのシリコーンオイルを含有し、(A)ポリオキシアルキレン変性シリコーンと(B)シリコーンオイルの質量比((A)/(B))が10/90~90/10であることを特徴とする、消泡剤組成物。
(A) 式(1)で表されるシリコーン変性剤Xおよび式(3)で表されるシリコーン変性剤Yと式(5)で表されるハイドロジェンオルガノポリシロキサンの反応物からなり、式(1)で表されるシリコーン変性剤Xのゲル浸透クロマトグラフィー測定により求められるクロマトグラムから算出されるM
HとM
Lとが式(2)の関係を満足し、式(3)で表されるシリコーン変性剤Yのゲル浸透クロマトグラフィー測定により求められるクロマトグラムから算出されるM
HとM
Lとが式(4)の関係を満足する、ポリオキシアルキレン変性シリコーン
R
1O-(AO
1)
a-[(AO
2)
b/(EO)
c]-R
2・・・(1)
(式(1)中、
R
1は炭素数2~8のアルケニル基を示し、
AO
1およびAO
2はそれぞれ炭素数3のオキシアルキレン基を示し、
EOはオキシエチレン基を示し、
AO
1の平均付加モル数aは
1~60であり、
AO
2の平均付加モル数bおよびEOの平均付加モル数cは0以上であり、
a、bおよびcの和は10~100であり、
bとcとの和は5~60であり,
AO
2の平均付加モル数bおよびEOの平均付加モル数cがそれぞれ0より大きい場合、(AO
2)
b/(EO)
cは、前記炭素数3のオキシアルキレン基AO
2および前記オキシエチレン基EOがランダム付加していることを示し、
R
2は水素原子または炭素数1~4のアルキル基である。)
0.20≦ M
L/M
H ≦0.60 ・・・(2)
(前記クロマトグラム上の屈折率強度が最大となる極大点KからベースラインBへの垂線の長さをLとし、屈折率強度がL/20となるクロマトグラム上の2点のうち溶出時間が早いほうを点Oとし、溶出時間が遅いほうを点Qとし、点Oと点Qを結ぶ直線Gと前記極大点Kから前記ベースラインBへ引いた垂線との交点をPとしたとき、点Oと交点Pの距離をM
Hとし、点Qと交点Pの距離をM
Lとする。)
R
3O-(AO
3)
d-R
4 ・・・(3)
(式(3)中、
R
3は炭素数2~8のアルケニル基を示し、
AO
3は炭素数2~
3のオキシアルキレン基を示し、
AO
3の平均付加モル数dは10~
60であり、
R
4は水素原子または炭素数1~4のアルキル基である。)
0.80≦ M
L/M
H ≦1.20 ・・・(4)
【化1】
(式(5)中、
eは1~200、fは0~100であり、f/eは0~1であり、
R
5は、炭素数1~8の炭化水素基であり、
R
6およびR
7は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~8の炭化水素基であり、f=0のときにはR
6とR
7との少なくとも一つは水素原子である。)
【発明の効果】
【0010】
本発明の消泡剤組成物によれば、水性塗料においても優れた消泡性を有しており、さらに、斜めから見ても優れた仕上がり外観を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は本発明にて定義されるM
LとM
Hを説明するためのモデルクロマトグラム図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(シリコーン変性剤X)
本発明に係るシリコーン変性剤Xは、下記の式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物からなるものである。
R1O-(AO1)a-[(AO2)b/(EO)c]-R2 ・・・(1)
【0013】
式(1)において、a(>0)は、炭素数3のオキシアルキレン基AO1の平均付加モル数を示し、b(≧0)は、炭素数3のオキシアルキレン基AO2の平均付加モル数を示し、c(≧0)は、オキシエチレン基EOの平均付加モル数を示す。a、bおよびcの和が10未満になると、消泡性および斜めから見た際の仕上がり外観の低下を引き起こすため10以上とするが、15以上が更に好ましい。また、a、bおよびcの和が100を超えると粘性が高まり、ポリオキシアルキレン変性シリコーン製造の際に悪影響を及ぼすため好ましくないため100以下とするが、80以下が好ましく、60以下がさらに好ましい。
【0014】
また、aは、1以上であることが好ましく、3以上であることが更に好ましい。また、aは60以下であることが更に好ましい。
また、b+cは、5以上であることが好ましく、10以上であることが更に好ましい。b+cは60以下であることが更に好ましい。bとcの比率については、特に限定はされないが、b/c=1/9~9/1が好ましく、2/8~7/3がより好ましく、6/4~4/6がさらに好ましい。
【0015】
式(1)において、R1は炭素数2~8のアルケニル基であり、シリコーン変性剤の生産性の観点から、炭素数3~5のものが好ましく、アリル基およびメタリル基がより好ましく、アリル基がさらに好ましい。
【0016】
式(1)において、R2は水素原子または炭素数1~4のアルキル基であり、シリコーン変性剤の生産性の観点から、水素原子およびメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0017】
本発明のシリコーン変性剤Xは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)において、示差屈折率計を用いて得られたクロマトグラムによって規定される。このクロマトグラムとは、屈折率強度と溶出時間との関係を表すグラフである。本発明のシリコーン変性剤Xでは、クロマトグラムが左右非対称であり、式(2)の関係を満たす。なお、ML/M
Hが1に近い値となるほど、クロマトグラムの形状は左右対称となる。
0.20≦ ML/MH ≦0.60 ・・・・(2)
【0018】
ここで、
図1は、シリコーン変性剤Xのゲル浸透クロマトグラフィーにより得られるクロマトグラムのモデル図であり、横軸は溶出時間を、縦軸は示差屈折率計を用いて得られた屈折率強度を示す。
【0019】
ゲル浸透クロマトグラフに試料溶液を注入して展開すると、最も分子量の高い分子から溶出が始まり、屈折率強度の増加に伴い、溶出曲線が上昇していく。その後、屈折率強度が最大となる極大点Kを過ぎると、溶出曲線は下降していく。
【0020】
また、本発明のシリコーン変性剤Xのゲル浸透クロマトグラフィーにおいて、クロマトグラムの屈折率強度の極大点が複数ある場合は、それらのうち屈折率強度が最も大きい点を極大点Kとする。さらに同じ屈折率強度の極大点が複数ある場合は、溶出時間の遅いほうを屈折率強度の極大点Kとする。この際、ゲル浸透クロマトグラフィーに使用した展開溶媒などに起因するピークや、使用したカラムや装置に起因するベースラインの揺らぎによる疑似ピークは除く。
【0021】
ML/MHは、それぞれ、以下のようにしてクロマトグラムから算出する。
(1) クロマトグラム上の屈折率強度の極大点KからベースラインBへ垂線を引き、垂線の長さをLとする。
(2) 屈折率強度がL/20となるクロマトグラム上の2点のうち、溶出時間が早いほうを点Oとし、溶出時間が遅いほうを点Qとする。
(3) 点Oと点Qを結んだ直線Gと、屈折率強度の極大点KからベースラインBへ引いた垂線との交点をPとする。
(4) 点Oと交点Pの距離をMH、交点Pと点Qの距離をMLとする。
【0022】
本発明のシリコーン変性剤Xは、ML/MHが0.20≦ML/MH≦0.60を満たすものである。ML/MHが0.60より大きくなると、ポリオキシアルキレン変性シリコーンのポリオキシアルキレン鎖の構造の分布が小さくなり、消泡性および良好な斜めから見た際の仕上がり外観とならない。この観点から、ML/MHを0.60以下とするが、0.50以下とすることが更に好ましい。
【0023】
また、ML/MHが小さくなるほど、分子量分布における高分子量側の偏りが大きくなり、それに由来する粘度の上昇などが見られる。ML/MHが0.20より小さくなると、粘度が高くなりすぎ、ポリオキシアルキレン変性シリコーンの製造に悪影響となり好ましくない。この観点からは、ML/MHを0.20以上とするが、0.30以上とすることが更に好ましい。
【0024】
本発明において、MLおよびMHを求めるためのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)は、システムとしてSHODEX(登録商標) GPC101GPC専用システム、示差屈折率計としてSHODEX RI-71s、ガードカラムとしてSHODEX
KF-G、カラムとしてHODEX KF804Lを3本連続装着し、カラム温度40℃、展開溶剤としてテトラヒドロフランを1ml/分の流速で流し、得られた反応物の0.1重量%テトラヒドロフラン溶液0.1mlを注入し、BORWIN GPC計算プログラムを用いて、屈折率強度と溶出時間で表されるクロマトグラムを得る。
【0025】
本発明のシリコーン変性剤Xは、複合金属シアン化物触媒(以下、DMC触媒と略記する)の存在下で、炭素数3~4のアルキレンオキサイドを開環付加させること、またはその後炭素数3~4のアルキレンオキサイドおよびエチレンオキサイドをさらに開環付加させることにより製造される。
【0026】
シリコーン変性剤Xの製造において、好ましくは、反応容器内に、分子中に炭素数2~8のアルケニル基および1個の水酸基を有する開始剤とDMC触媒を加え、不活性ガス雰囲気の攪拌下、炭素数3~4のアルキレンオキサイドを連続もしくは断続的に添加し付加重合する。炭素数3~4のアルキレンオキサイドは加圧して添加しても良く、大気圧下で添加しても良い。
【0027】
この時、アルキレンオキサイドの平均供給速度に制限はないが、アルキレンオキサイドの仕込み量によって変化させることが望ましい。具体的にはアルキレンオキサイドの全供給量の5~20wt%を供給する間の速度(単位時間あたりの供給量)をV1、アルキレンオキサイドの全供給量の20~50wt%を供給する間の速度をV2、アルキレンオキサイドの全供給量の50~100wt%を供給する間の速度をV3としたとき、V1/V2=1.1~2.0、V2/V3=1.1~1.5となるようにアルキレンオキサイドの平均供給速度を制御することが好ましい。
【0028】
また、反応温度は、50℃~150℃が好ましく、80℃~120℃がより好ましい。反応温度が150℃より高いと、触媒が失活するおそれがある。反応温度が50℃より低いと、反応速度が遅く生産性に劣る。
【0029】
開始剤およびアルキレンオキサイドに含まれる微量の水分量については特に制限はないが、開始剤に含まれる水分量については、0.5wt%以下、アルキレンオキサイドについては0.01wt%以下であることが望ましい。
【0030】
DMC触媒の使用量は、特に制限されるものではないが、生成するシリコーン変性剤に対して、0.0001~0.1wt%が好ましく、0.001~0.05wt%がより好ましい。DMC触媒の反応系への投入は初めに一括して導入してもよいし、順次分割して導入してもよい。重合反応終了後、複合金属錯体触媒の除去を行う。触媒の除去は、ろ別や遠心分離、合成吸着剤による処理など公知の方法により行うことが出来る。
【0031】
本発明に用いるDMC触媒は公知のものを用いることができるが、たとえば、式(6)で表わすことができる。
Mg[M’x(CN)y]h(H2O)i・(R8)j
・・・(6)
式(6)中、MおよびM’は金属、R8は有機配位子、g、h、xおよびyは金属の原子価と配位数により変わる正の整数であり、iおよびjは、金属の配位数により変わる正の整数である。
【0032】
金属Mとしては、Zn(II)、Fe(II)、Fe(III)、Co(II)、Ni(II)、Al(III)、Sr(II)、Mn(II)、Cr(III)、Cu(II)、Sn(II)、Pb(II)、Mo(IV)、Mo(VI)、W(IV)、W(VI)などがあげられ、なかでもZn(II)が好ましく用いられる。
【0033】
金属M’としては、Fe(II)、Fe(III)、Co(II)、Co(III)、Cr(II)、Cr(III)、Mn(II)、Mn(III)、Ni(II)、V(IV)、V(V)などがあげられ、なかでもFe(II)、Fe(III)、Co(II)、Co(III)が好ましく用いられる。
【0034】
有機配位子R8としてはアルコール、エーテル、ケトン、エステルなどが使用でき、アルコールがより好ましい。好ましい有機配位子は水溶性のものであり、具体例としては、tert-ブチルアルコール、n-ブチルアルコール、iso-ブチルアルコール、N,N-ジメチルアセトアミド、エチレングリコールジメチルエーテル(グライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)などが挙げられる。特に好ましくはtert-ブチルアルコールが配位したZn3[Co(CN)6]2である。
【0035】
DMC触媒を使用して製造したシリコーン変性剤は、塩基存在下、有機ハロゲン化物とのWilliamsonエーテル化反応により式(1)で表される末端に炭素数1~4のアルキル基を有するシリコーン変性剤の製造に用いることができる。エーテル化反応に用いられる塩基の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。有機ハロゲン化物としては、炭素数1~4のアルキル基とハロゲン原子が結合した化合物である。具体例としては、塩化メチル、塩化ブチルがある。
【0036】
また、シリコーン変性剤の製造において、はじめに分子中に炭素数1~4のアルキル基および1個の水酸基を有する開始剤とDMC触媒を使用してアルキレンオキサイドの付加重合する場合がある。その場合、アルキレンオキサイドの付加重合後、塩基存在下、炭素数3~5のアルケニル基とハロゲン原子が結合した化合物とのWilliamsonエーテル化反応により式(1)で表される末端に炭素数1~4のアルキル基を有するシリコーン変性剤の製造することができる。有機ハロゲン化物の具体例としては、塩化アリル、ヨウ化アリル、塩化メタリル、臭化アリル等がある。
【0037】
(シリコーン変性剤Y)
本発明に係るシリコーン変性剤Yは、下記の式(3)で表されるポリオキシアルキレン化合物からなるものである。
R3O-(AO3)d-R4 ・・・(3)
【0038】
式(3)において、dは、炭素数2~3のオキシアルキレン基AO3の平均付加モル数を示す。dが10未満になると、消泡性が低下するため10以上とするが、15以上が更に好ましい。また、dが60を超えると粘性が高まり、ポリオキシアルキレン変性シリコーン製造の際に悪影響を及ぼすため好ましくないため60以下が好ましい。
【0039】
式(3)において、R3は炭素数2~8のアルケニル基であり、シリコーン変性剤の生産性の観点から、アリル基およびメタリル基が好ましい。
【0040】
式(3)において、R4は水素原子または炭素数1~4のアルキル基であり、シリコーン変性剤の生産性の観点から、水素原子が好ましい。
【0041】
本発明のシリコーン変性剤Yは、ML/MHが0.80≦ML/MH≦1.20を満たすものであり、0.85≦ML/MH≦1.15が好ましく、0.90≦ML/MH≦1.15が更に好ましく、0.90≦ML/MH≦1.10が特に好ましい。
【0042】
(ポリオキシアルキレン変性シリコーン)
本発明のポリオキシアルキレン変性シリコーンは、式(1)で表されるシリコーン変性剤Xおよび式(3)で表されるシリコーン変性剤Yと式(5)で表されるハイドロジェンオルガノポリシロキサンの反応物からなる。
シリコーン変性剤Xとシリコーン変性剤Yとの混合比は、特に限定を受けないが、XとYの質量比(X/Y)が20/80~100/0が好ましく、25/75~90/10がより好ましく、30/70~80/20がさらに好ましく、40/60~60/40が特に好ましい。
【0043】
(ハイドロジェンオルガノポリシロキサン)
式(5)において、eは1~200、fは0~100である。eは、消泡性および斜めから見た際の仕上がり外観の観点からは、200以下とするが、150以下が好ましく、100以下が更に好ましい。また、eは1以上とするが、1以上が好ましく、2以上が更に好ましい。また、fは、消泡性および斜めから見た際の仕上がり外観の観点からは、100以下とするが、50以下が好ましく、20以下が更に好ましい。f/eは、消泡性および斜めから見た際の仕上がり外観の観点からは、1以下とするが、0.4以下が好ましく、0.2以下がさらに好ましい。
【0044】
R5は、炭素数1~8の炭化水素基を示す。こうした炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基があげられるが、アルキル基が好ましい。具体的化合物名としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、オクチル基等があげられ、特に好ましくはメチル基である。
【0045】
R6およびR7は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~8の炭化水素基を示し、好ましくは炭素数1~8の炭化水素基である。こうした炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基があげられるが、アルキル基が好ましい。具体的化合物名としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、オクチル基等があげられ、好ましくはメチル基である。f=0のとき、R6またはR7の少なくとも一つは水素原子である。
【0046】
(シリコーンオイル)
本発明のシリコーンオイルは、直鎖状および分岐状のいずれでも良く、25℃における粘度が10~100,000mm2/sであり、消泡性や作業性の観点から50~50,000mm2/sであることが好ましい。また、2種以上を混合して使用することができる。
【0047】
本発明の消泡剤組成物は、ハンドリング性や添加し易くするために、水やアセトン等の溶剤で希釈して使用しても良い。
【0048】
本発明の消泡剤組成物には、本発明の効果を妨げない範囲において、ソルビタン脂肪酸エステルやポリオキシエチレン硬化ひまし油等の非イオン界面活性剤やシリカ等の粉体といったその他の成分をさらに含有しても良い。
【0049】
これらの中でも、消泡性の観点から、(C)成分として粉体をさらに配合することが好ましい。粉体としては有機および無機粉体のいずれでもよいが、例えば、親水性シリカ、疎水性シリカ、天然ワックス、合成ワックス、脂肪酸アマイド、金属石鹸、二酸化チタン、酸化アルミニウム、石英粉および樹脂粉末等である。好ましくは、シリカ天然ワックス、合成ワックス、脂肪酸アマイドおよび金属石鹸であり、更に好ましくは、親水性シリカおよび疎水性シリカである。
【0050】
親水性シリカは、湿式シリカおよび乾式シリカのいずれでもよく、沈降シリカ、シリカキセロゲル、ヒュームドシリカを未処理のまま使用することができる。疎水性シリカは、従来から公知の方法で、オルガノポリシロキサン等の有機ケイ素化合物を用いて前記親水性シリカを疎水化処理したものを使用することができる。またBET法による比表面積が100m2/g以上のものが好ましい。
【0051】
これらの粉体の配合量は、特に限定されないが、本発明の(A成分)と(B成分)の合計100質量部に対して、0.1~50質量部が好ましく、0.2~10質量部がより好ましく、0.5~5質量部がさらに好ましい。
これらの粉体はシリコーンオイルで予め処理したオイルコンパウンドの形態で使用しても良い。
【実施例】
【0052】
以下に実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明の技術的範囲がこれらに限定されるものではない。なお、合成品の分析は下記に示す方法で行った。
【0053】
(分析方法)
不飽和度: JIS K 1557-3に準拠した方法で分析を行った。
動粘度: JIS K 2283に準拠した方法で分析を行った。
ゲル浸透クロマトグラフィー:
システムとしてSHODEX GPC101GPC専用システム、示差屈折率計としてSHODEX
RI-71S、ガードカラムとしてSHODEX KF-GS、カラムとしてHODEX KF804Lを3本連続装着し、カラム温度40℃、展開溶剤としてテトラヒドロフランを1ml/分の流速で流し、得られた反応物の0.1重量%テトラヒドロフラン溶液0.1mlを注入し、BORWIN GPC計算プログラムを用いて、屈折率強度と溶出時間で表されるクロマトグラムを得ることで分析を行なった。
【0054】
(合成例1:複合金属シアン化物錯体(DMC)触媒の合成)
塩化亜鉛2.1gを含む2.0mlの水溶液中に、カリウムヘキサシアノコバルテートK3Co(CN)6を0.84g含む15mlの水溶液を、40℃にて攪拌しながら15分間かけて滴下した。滴下終了後、水16ml、tert-ブチルアルコール16gを加え、70℃に昇温し、1時間攪拌した。室温まで冷却後、濾過操作(1回目濾過)を行い、固体を得た。この固体に、水14ml、tert-ブチルアルコール8.0gを加え、30分間攪拌したのち濾過操作(2回目濾過)を行い、固体を得た。
【0055】
さらに再度、この固体にtert-ブチルアルコール18.6g、メタノール1.2gを加え、30分間攪拌したのち濾過操作(3回目濾過)を行い、得られた固体を40℃、減圧下で3時間乾燥し、DMC触媒0.7gを得た。
【0056】
(合成例2:シリコーン変性剤X-1の合成)
撹拌装置、窒素導入管、および熱電対を取り付けた5リットル容量のオートクレーブにアリルアルコール(昭和電工製)を700g、ナトリウムメチラート(日本曹達製)7gを仕込んだ。窒素置換後、100℃へと昇温し、0.5MPa以下の条件で、プロピレンオキサイド(住友化学製)2,150gを20時間かけて仕込んだ。75~85℃、―0.097MPa(ゲージ圧)で1時間減圧処理を行い残存したプロピレンオキサイドを除去した。塩酸にて中和した後、80℃、窒素バブリング中で水分の除去を行ない、キョーワード#300および#700(協和化学工業製)を各14gずつ添加後、80℃、-0.097MPa(ゲージ圧力)以下、窒素バブリング中で1時間吸着処理を行ない、ろ過により、トリプロピレングリコールアリルエーテル(不飽和度:4.11meq/g、Mn:240)を2,360g得た。
【0057】
続いて撹拌装置、窒素導入管、および熱電対を取り付けた5リットル容量のオートクレーブにトリプロピレングリコールアリルエーテル400g、上記合成例1で得たDMC触媒0.05gを仕込んだ。窒素置換後、120℃へと昇温し、0.3MPa以下の条件で、プロピレンオキサイド50gを1時間かけて仕込んだ。この際、反応槽内の圧力と温度の経時的変化を測定した。5時間後、反応槽内の圧力が急激に減少した。その後、反応槽内を120℃に保ちながら、0.6MPa以下の条件で、徐々にプロピレンオキサイドを投入し、全量で2,050gのプロピレンオキサイドを撹拌下に連続的に加圧添加した。このとき、プロピレンオキサイドを2,050g導入するまでの時間は10時間であった。75~85℃、―0.097MPa(ゲージ圧)で1時間減圧処理後、ろ過を行ってシリコーン変性剤X-1を2,400g得た。得られた変性剤の不飽和度は0.65meq/g、Mn:1,440であった。またゲル浸透クロマトグラフィーの測定により得られるクロマトグラムからML/MHを求めると、0.42であった。
【0058】
(合成例3:シリコーン変性剤Y-1の合成)
撹拌装置、窒素導入管、および熱電対を取り付けた5リットル容量のオートクレーブにアリルアルコールを80g、ナトリウムメチラート4gを仕込んだ。窒素置換後、100℃へと昇温し、0.5MPa以下の条件で、プロピレンオキサイド2,050gおよびエチレンオキサイド1,500gを50時間かけて仕込んだ。75~85℃、―0.097MPa(ゲージ圧)で1時間減圧処理を行い残存したプロピレンオキサイドおよびエチレンオキサイドを除去した。塩酸にて中和した後、80℃、窒素バブリング中で水分の除去を行ない、キョーワード#300および#700を各3.6gずつ添加後、80℃、-0.097MPa(ゲージ圧力)以下、窒素バブリング中で2時間吸着処理を行ない、ろ過により、シリコーン変性剤Y-1(不飽和度:0.44meq/g、Mn:2,100)を3,450g得た。またゲル浸透クロマトグラフィーの測定により得られるクロマトグラムからML/MHを求めると1.06であった。
【0059】
(合成例4:シリコーン変性剤Y-2の合成)
撹拌装置、窒素導入管、および熱電対を取り付けた5リットル容量のオートクレーブにアリルアルコールを100g、ナトリウムメチラート5gを仕込んだ。窒素置換後、100℃へと昇温し、0.5MPa以下の条件で、プロピレンオキサイド3,300gを50時間かけて仕込んだ。75~85℃、―0.097MPa(ゲージ圧)で1時間減圧処理を行い残存したプロピレンオキサイドを除去した。塩酸にて中和した後、80℃、窒素バブリング中で水分の除去を行ない、キョーワード#300および#700を各3.3gずつ添加後、80℃、-0.097MPa(ゲージ圧力)以下、窒素バブリング中で1時間吸着処理を行ない、ろ過により、シリコーン変性剤Y-2(不飽和度:0.64meq/g、Mn:1,460)を3,150g得た。またゲル浸透クロマトグラフィーの測定により得られるクロマトグラムからML/MHを求めると1.15であった。
【0060】
(合成例5:ポリオキシアルキレン変性シリコーンA-1の合成)
撹拌装置、窒素吹き込み管、熱電対および冷却管を取り付けた300ミリリットル容四ツ口フラスコに、ハイドロジェンジメチルポリシロキサン(HMS-082(Gelest社製)、1g当たりのSiH当量=1.08meq/g、e=75、f=6.5)65質量部と、合成例2で合成したシリコーン変性剤X-1(75質量部、不飽和当量;0.65meq/g)および合成例3で合成したシリコーン変性剤Y-1(112質量部、不飽和当量;0.44meq/g)を仕込み、触媒として塩化白金酸六水和物のイソプロピルアルコール溶液(1×10-3モル/リットル)を白金換算で50ppmとなるように仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら、90℃で反応を行った。サンプリングを行い、N/10水酸化カリウムのイソプロピルアルコール溶液を加えて水素ガスが発生しなくなるまで反応を継続し、FT-IR測定により、SiH基に由来する2100~2300cm-1の吸収が消失したことを確認し、100℃動粘度168Pa・sであるポリオキシアルキレン変性シリコーンA-1を得た。
【0061】
(合成例6:ポリオキシアルキレン変性シリコーンA’-1の合成)
シリコーン変性剤X-1にかえて、合成例4で合成したシリコーン変性剤Y-2(77質量部、不飽和当量;0.64meq/g)を使用した以外は、合成例5と同様に操作を行い、100℃動粘度170Pa・sであるポリオキシアルキレン変性シリコーンA’-1を得た。
【0062】
(合成例7:シリコーン変性剤X-2の合成)
撹拌装置、窒素導入管、および熱電対を取り付けた5リットル容量のオートクレーブにトリプロピレングリコールアリルエーテル400g、上記合成例1で得た複合金属シアン化物錯体触媒0.05gを仕込んだ。窒素置換後、120℃へと昇温し、0.3MPa以下の条件で、プロピレンオキサイド50gを1時間かけて仕込んだ。この際、反応槽内の圧力と温度の経時的変化を測定した。5時間後、反応槽内の圧力が急激に減少した。その後、反応槽内を120℃に保ちながら、0.6MPa以下の条件で、徐々にプロピレンオキサイド1,650gおよびエチレンオキサイド1,500を投入し、撹拌下で13時間かけて連続的に加圧添加した。75~85℃、―0.097MPa(ゲージ圧)で1時間減圧処理後、ろ過を行ってシリコーン変性剤X-2を3,480g得た。得られた変性剤の不飽和度は0.44meq/g、Mn:2,080であった。
またゲル浸透クロマトグラフィーの測定により得られるクロマトグラムからML/MHを求めると、0.38であった。
【0063】
(合成例8:ポリオキシアルキレン変性シリコーンA-2の合成)
シリコーン変性剤X-1にかえて、合成例7で合成したシリコーン変性剤X-2(112質量部、不飽和当量;0.44meq/g)、シリコーン変性剤Y-1にかえて、合成例4で合成したシリコーン変性剤Y-2(77質量部、不飽和当量;0.64meq/g)を使用した以外は、合成例6と同様に操作を行い、100℃動粘度175Pa・sであるポリオキシアルキレン変性シリコーンA-2を得た。
【0064】
(消泡剤組成物の調製:実施例1)
(A)成分のポリオキシアルキレン変性シリコーンA-1を100重量部、(B)成分の粘度が1,000mm2/sのシリコーンオイルを50重量部量りとり、均一に混合することで実施例1の消泡剤組成物を得た。
【0065】
(消泡剤組成物の調製:実施例2)
(B)成分の粘度が1,000mm2/sのシリコーンオイルの代わりに、オイルコンパウンドを使用した以外は実施例1と同様に調整し、実施例2の消泡剤組成物を得た。オイルコンパウンドの調整は、粘度が1,000mm2/sのシリコーンオイル50重量部と(C)成分の湿式シリカ2重量部を用いて、窒素ガス雰囲気下、150℃で3時間混合することで得た。
【0066】
(消泡剤組成物の調製:比較例1)
(A)成分のポリオキシアルキレン変性シリコーンA-1の代わりに、ポリオキシアルキレン変性シリコーンA’-1を使用した以外は実施例1と同様に調整し、比較例1の消泡剤組成物を得た。
【0067】
(消泡剤組成物の調製:実施例3)
(A)成分のポリオキシアルキレン変性シリコーンA-1の代わりに、ポリオキシアルキレン変性シリコーンA-2を使用した以外は実施例1と同様に調整し、実施例3の消泡剤組成物を得た。
【0068】
(消泡剤組成物の調製:実施例4)
(B)成分の粘度が1,000mm2/sのシリコーンオイルの代わりに、オイルコンパウンドを使用した以外は実施例3と同様に調整し、実施例4の消泡剤組成物を得た。オイルコンパウンドの調整は、実施例2と同様に行った。
・A成分:各種ポリオキシアルキレン変性シリコーン
・B成分:粘度が1,000mm2/sのシリコーンオイル(KF-96-1000cs、信越化学工業製)
・C成分:湿式シリカ(カープレックス#80、EVONIK製)
【0069】
(消泡剤組成物の消泡性の評価)
60質量%アクリル樹脂系エマルジョン(アロンAN1417、東亞合成製)100重量部を300mLのガラス透明容器に入れ、そこに各消泡剤組成物の10wt%アセトン溶液を0.1重量部滴下後、10分間ホモミキサーで攪拌(3000rpm)を継続した。攪拌前後の液面を比較することで、消泡性を評価した。
「◎」: 攪拌前後の液面の差が2cm未満
「○」: 攪拌前後の液面の差が2cm以上、2.5cm未満
「△」: 攪拌前後の液面の差が2.5cm以上、4cm未満
【0070】
(塗膜の仕上がり外観の評価)
消泡性評価で使用したサンプルを1時間放置後、ほぼ泡が消失したことを確認し、仕上がり外観の評価に使用した。ハケを用いて、溶剤で洗浄および乾燥したガラス板上に上記サンプルを薄く塗布し、乾燥後にガラス板に対して90°および45°の角度から目視による塗膜のムラの有無を確認した。
「○」: 90°および45°からの目視にて、ともにムラなし。
「△」: 90°からの目視ではムラがないが、45°からの目視ではムラあり。
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
実施例1~4と比較例1を比べると、実施例1~4は、攪拌前後の液面の差が小さく、消泡性が優れる。なお、消泡性無添加の対照例では、攪拌前後の液面の差は4cmであった。
【0075】
また、実施例1~4と比較例1を比べると、比較例1は45°からの目視でムラが見られ、仕上がり外観が劣る。