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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】展示用ボール什器
(51)【国際特許分類】
   A47F 7/00 20060101AFI20240422BHJP
   A47F 5/11 20060101ALI20240422BHJP
   B65D 25/04 20060101ALI20240422BHJP
   B65D 25/10 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
A47F7/00 T
A47F5/11
B65D25/04 Z
B65D25/10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019222543
(22)【出願日】2019-12-09
(65)【公開番号】P2021090578
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】519440065
【氏名又は名称】株式会社ヴォーズ
(73)【特許権者】
【識別番号】000138244
【氏名又は名称】株式会社モルテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂岸 隆史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 義則
(72)【発明者】
【氏名】中村 聡
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-016135(JP,A)
【文献】特開2002-238710(JP,A)
【文献】特開2012-218789(JP,A)
【文献】実開昭64-049135(JP,U)
【文献】実開昭52-105278(JP,U)
【文献】実開昭62-026308(JP,U)
【文献】特開平10-095420(JP,A)
【文献】特開2000-354529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47F 7/00
A47F 5/11
B65D 25/04
B65D 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個のボールを収納する箱状の展示用ボール什器であって、
内部に少なくとも2個のボールを前後方向に並べて収納可能であり、ボールの収納及び取り出し並びにボールの視認が前方側からできるように、前面が開放された什器本体と、
前記什器本体の一部を構成し、載置された前方側のボールが取り出された際に後方側のボールが重力の作用によって自動的に前方側の位置に転動するように、後方側から前方側に向かって下り傾斜を形成する床板と、
前記床板の前方端に設けられ、ボールの収納及び取り出し並びにボールの視認を前方側から行うにあたって妨げとならない範囲でボールの脱落を防止するストッパと、
前記什器本体を左右方向に複数列に仕切る仕切り板と、を備え、
前記仕切り板が、ボールの収納及び取り出し並びにボールの視認が容易となるように、側面視において上端が下端よりも前方側に位置するように傾斜する前辺を有し、
下段側の前記床板が上段側の前記床板よりも前方に延在しており、
ボールが前記ストッパを乗り越えることを防止するように、前記床板の前記前方側のボールと前記後方側のボールの間の位置に設けられた突出部を更に備える、ことを特徴とする展示用ボール什器。
【請求項2】
前記床板、前記什器本体の一部を構成する天板、及び前記什器本体の一部を構成する側板の少なくとも1つから延在するPOPを更に備える、ことを特徴とする請求項1に記載の展示用ボール什器。
【請求項3】
前記床板が、前記什器本体が上下方向に複数段となるように、前記上段側の前記床板及び前記下段側の前記床板を含む、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の展示用ボール什器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サッカーなどの球技用ボールを複数個収納し、店頭もしくは展示会等において見栄えよく展示し、かつ販売等において1個のボールが取り出されても元の展示状態が維持可能となる展示用ボール什器に関する。
【背景技術】
【0002】
サッカー、バスケット、ハンドボール等の球技用ボールを店頭などで展示する際、放置しておくと自在に転がるため、特に複数を扱う際には取り扱いに手間を要するものとなる。放置しておくと散乱して美観を損ねるものともなり得、このため販売等の場合には悪影響を及ぼす。ボールの転がりを防止し、見栄えよく展示するための手段は従来からも知られている。一例として、転がりが防止できる角張った収納ケースにボール1個ずつを入れ、これを並べるか重ねるかして組み合わせる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。その他にも展示床面に布材などを敷き、布の皺を利用してその上にボールを乗せすることで転がりを防ぐ方法も考えられた。
【0003】
また、ボールではないものの、やはり転がりやすい円筒状の商品を展示するにあたって、複数の当該商品を寝かせた状態で傾斜した床板に配列し、陳列される商品の見栄えを劣化させることなく、しかも、商品の陳列に手数の掛からない商品梱包箱が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実全平04-10023号公報
【文献】実用新案登録第3134735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような、これらの従来から見られる方法にはいまだ改善の余地があった。転がり防止用のケースに入れる方法によれば、いずれにせよケースのサイズ分だけのスペースを余分に取られるものとなり、限られた展示スペース内での使用には限界が見られた。また販売等によりその内の一つが抜けた場合に残りのものをどのようにレイアウトするかなどの配慮が改めて必要となった。布材などを敷く場合にはそれなりに展示スペースを占めるものとなり、かつボールを積み上げての展示ができないことから展示する数も限られるものとなり得た。
【0006】
結果としてこのような展示における課題は従来から余り顧みられることはなく、その間に大きな改善は見られなかったようである。競技の練習のため複数のボールを収納するネットや籠のようなものは多く見られたが、これらは商品としてのボールを見栄えよく展示できるような什器とは一線を画するものであり、こと展示用ボール什器に関してはいわば放置された状態にあったといえそうである。
【0007】
一方、特許文献2の商品梱包箱では、収納されている複数の円筒状商品を上面視するようになっており、円筒状商品の収納・取出しにあたっても、上下方向に移動させるようになっている。そして、円筒状商品を前方側に取り出すことが想定されていないため、前方側に設けられている商品ストッパは、円筒状商品が前方側に滑落しないように(取り出せないように)、円筒状商品の重心位置程度の高さまでに形成されている。そうすると、特許文献2の商品梱包箱では、円筒状商品を上下方向に多数展示するには不向きであり、また、商品梱包箱から円筒状商品を前方側に容易に取り出したり、前方側から補充したりすることはできないという課題があった。
【0008】
本発明ではこれらの点に着目し、従来技術にある課題を解消し、ボールの補充を前方側からすることできるとともに、ボールを展示する際に転がりを防止し、万一ボールが取り出された後においても展示状態に変化を与えることなく、展示スペースも取らず美的にも観者の関心を惹きうる展示用ボール什器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の構成によって把握される。
(1)本発明の第1の観点は、複数個のボールを収納する箱状の展示用ボール什器であって、内部に少なくとも2個のボールを前後方向に並べて収納可能であり、ボールの収納及び取り出し並びにボールの視認が前方側からできるように、前面が開放された什器本体と、前記什器本体の一部を構成し、載置された前方側のボールが取り出された際に後方側のボールが自動的に前方側の位置に転動するように、後方側から前方側に向かって下り傾斜を形成する床板と、前記床板の前方端に設けられ、ボールの収納及び取り出し並びにボールの視認を前方側から行うにあたって妨げとならない範囲でボールの脱落を防止するストッパと、を備える、ことを特徴とする。
【0010】
(2)上記(1)の構成において、前記什器本体を左右方向に複数列に仕切る仕切り板を更に備える。
【0011】
(3)上記(1)又は(2)の構成において、前記床板が、前記什器本体が上下方向に複数段となるように、上段側の床板及び下段側の床板を含む。
【0012】
(4)上記(3)の構成において、前記下段側の床板が前記上段側の床板よりも前方に延在している。
【0013】
(5)上記(1)から(4)のいずれか1つの構成において、前記床板並びに前記什器本体の一部を構成する天板及び側板の少なくとも1つから前方及び/又は側方に延在するPOPを更に備える。
【0014】
(6)上記(1)から(5)のいずれか1つの構成において、前記仕切り板が、ボールの収納及び取り出し並びにボールの視認が容易となるように、側面視において傾斜する前辺を有する。
【0015】
(7)上記(1)から(6)のいずれか1つの構成において、ボールが前記ストッパを乗り越えることを防止するように、前記床板の前記前方側のボールと前記後方側のボールの間の位置に設けられた突出部を更に備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る展示用ボール什器の使用により、ボールの補充を前方側からすることできるとともに、複数個のボールを整理整頓された状態でコンパクトに展示することができるようになり、販売等によって一つのボールが取り出された後にも後側のボールが自動的に前方へ移動して手を煩わせることなく元の展示状態が維持され、観者の注意を惹き易くするという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る展示用ボール什器の全体構造を示す斜視図である。
図2図1に示す展示用ボール什器の左右方向中央で切断したときの断面図である。
図3図1に示す展示用ボール什器の他の使用態様を示す斜視図である。
図4】展示用ボール什器の展開図である。
図5】展示用ボール什器の組立て手順(手順1)を示す斜視図である。
図6】展示用ボール什器の組立て手順(手順2)を示す斜視図である。
図7】展示用ボール什器の組立て手順(手順3)を示す斜視図である。
図8】展示用ボール什器の組立て手順(手順4)を示す斜視図である。
図9】展示用ボール什器の組立て手順(手順5)を示す斜視図である。
図10】展示用ボール什器の組立て手順(手順6)を示す斜視図である。
図11】展示用ボール什器の組立て手順(手順7)を示す斜視図である。
図12】展示用ボール什器の組立て手順(手順8)を示す斜視図である。
図13】展示用ボール什器の組立て手順(手順9)を示す斜視図である。
図14】展示用ボール什器の組立て手順(手順10)を示す斜視図である。
図15】展示用ボール什器の組立て手順(手順11)を示す斜視図である。
図16】展示用ボール什器の組立て手順(手順12)を示す斜視図である。
図17】1段2列の展示用ボール什器に係る6面図である。
図18】2段2列の展示用ボール什器に係る6面図である。
図19】1段3列の展示用ボール什器に係る6面図である。
図20】2段3列の展示用ボール什器に係る6面図である。
図21】1段2列の展示用ボール什器にボールを収納した状態を示す斜視図である。
図22】2段2列の展示用ボール什器にボールを収納した状態を示す斜視図である。
図23】1段3列の展示用ボール什器にボールを収納した状態を示す斜視図である。
図24】2段3列の展示用ボール什器にボールを収納した状態を示す斜視図である。
図25】1段の展示用ボール什器に係る断面図である。
図26図25において、突出部を設けた例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に係る展示用ボール什器1について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る展示用ボール什器1(以下、単に「什器」ともいう。)の全体概要を示しており、図示の座標軸においてX軸が前後方向、Y軸が左右方向もしくは横方向、Z軸が上下方向をそれぞれ示している。各矢印の向きは、X方向を前方、Y方向を右方、Z方向を上方とする。図において什器1は、天板11、左右一対の側板12、背面板13、床板14(14a,14b)、2枚の仕切り板15(15a,15b)、ストッパ16(16a,16b)から構成されている。
【0019】
図示の例ではボールを収納する部分は左右に3列、上下に2段に配置され、内部の各収納部分には前後に少なくとも2個のボールが収容可能で、全部で計12個のボールを収納するよう構成されている。ただし、この数は例示であって、展示用の許容スペースやボールの種類によって左右の列数、上下の段数、前後のボールの個数は任意に選択することができる。什器1は、ボールを収納して展示したときに前方側の各列、各段に位置する6個のボールが視認可能となるよう、図のように全体形状が箱状であり、その少なくとも前面を開放している。
【0020】
図2は、図1に示す什器1を左右方向中央でX軸に沿って切断した時の断面図を示している。破線で示すのは什器1内に収納されているボールB(B1~B4)である。什器1では、下の段に前方側のボールB1と後方側のボールB2の2個が収納され、同様に上の段にはボールB3とB4の2個が収納されている。什器1の例ではこのようなボール収納部分が図面に垂直な方向に3列並んでいるため、合計で12個のボールBが収納可能となる。なお、図の左側となる什器1の前面は上述したようにボールBの展示、出し入れのため開放されており、図の右側となる後方には背面板13で閉鎖されている。ただし、強度的な問題がなければ背面板13を廃止することも可能である。
【0021】
図において各ボールBは2つの床板14(14a、14b)の上に載置されているが、各床板14は後方側から前方側に向かって下り傾斜したスロープとなっている。これにより、各ボールBには重力の作用によって常に前方に向けて転がる力が作用するものとなる。一方、両床板14(14a,14b)の前方端には、上方へ向けて突出するストッパ16(16a,16b)が設けられており、これによって両床板14に傾斜があっても各ボールBが什器1から脱落することを防いでいる。ストッパ16は、本実施形態では図1にも示すように什器1の左右方向全幅にわたって設けられているが、ボールBの落下が防げるものであれば、例えば床板14の前方端に植え込まれた短い突起が延びるなど、他の方策が講じられてもよい。ストッパ16の高さは、ボールの収納及び取り出し並びにボールBの視認を前方側から行うにあたって妨げとならない範囲とすることが好ましい。
【0022】
本実施形態では1個が410~450gのサッカーボール用の什器1を想定しており、したがって計12個で合計約5kgの荷重を支えるよう什器1は段ボールを使用して造られている。具体的には、上述した各面の板をプレスで型抜きした段ボール粗材を曲げ、接着、はめ込みなどにより所望構造に形成するものとしている。各板は基本的に2重に折り畳むことで必要な強度を確保するようにしているが、これは一例であって、収納するボールBの大きさ、重量、収納個数、所望の使用形態などに応じて、例えば厚紙、プラスチック、木材、軽金属などの他の材料を利用して構成してもよい。
【0023】
図2において、本実施形態に係る上述の床板14のスロープの形成は、下段の床板14aにおいては段ボール板を二重(上げ底となっている上側の床板14a1、置き場所に接する下側の床板14a2)にして、その間に紙からなるくさび状の傾斜要素17を後側のみに差し込んで固定することにより行っている。上段の床板14bでは、傾斜を見込んだ所定の位置に取付け用スリットが空けられた一対の側板12に対し、床板14bの両脇から左右に延びる舌状部位をそのスリット内に差し込むことによって傾斜を設けている。同様な手段は下段の床板14aに適用することも可能であり、あるいは逆に下段の傾斜要素17を用いる手段を上段の床板14bに適用することもできる。さらには、両床板14a、14bとも傾斜を設けない普通の状態で固定し、下段の床板14aの下方後方が持ち上がるよう脚状の突起を後方にのみ突出させ、什器1全体を前方向に傾くよう傾斜させて用いられてもよい。本明細書における床板14が「傾斜を備える」ことには、これらの概念をも包含するものとする。
【0024】
同じく図2において、ボールBの脱落を防止するストッパ16は、段ボールを使用する図示の例では床板14の前方端を一旦上方に折り曲げて立ち上げ、その先端を床板面までさらに折り曲げるようにしてスロープ状となるストッパ16を形成している。段ボールの場合にはこれが簡便な方法となるが、これに限らず、使用される材料等の条件を勘案して他の手段が採られてもよい。また、図示の例では下段の床板14aの前方端を上段の床板14bよりも僅かに前方側に延ばすことにより側面から見て前面を傾斜させている。こうすることによって下段のボールB1の取り出し時に上段の床板14bが邪魔にならなくなる点で好ましい。
【0025】
直径が220mmであるサッカーボールの例では、図1、2に示す構造の什器1で全幅が約700mm、全高が約480mm、奥行きが約450mmの大きさとなる。また、床板14の傾斜は、この奥行きの間で後方端が前方端より18mm高くなるように設定してある。ただし、本発明の適用はサッカーボールに限定されず、この他にもバスケットボール、ハンドボール、水球ボールなどへの比較的大型のボールB、さらには野球ボール、テニスボールなどの比較的小型のボールBにも適用可能であり、極端には卓球ボール、ゴルフボールへの適用も可能である。適用されるこれらボールBの径によって当然ながら什器1の全体の寸法諸元は変化する。
【0026】
本実施形態に係るボール什器1の使用時の動作は単純である。什器1に設けられた3列2段の各収納部分にはそれぞれ2個ずつのボールBが開放された前面から押し込まれ、収納される。この内、開放された前面側に配置される6個のボールBは外部から視認可能となる。この6個のボールBは同一とすることも、メーカーやボール表面の意匠が異なる別のボールBを配置することも自在である。各ボールBが載置された床板14は前方に向けて傾斜したスロープとなっているが、床板14の前方端にストッパ16が配置されていることによってボールBが外部に脱落することはない。各収納部分はボールBが丁度入る大きさに寸法採りされ、仕切り板15で区画されていることから、見た目はすっきりした状態に置かれる。仕切り板15は、ボールBの収納及び取り出し並びにボールBの視認が容易となるように、側面視において傾斜する前辺を有する。図2では、前辺の上端が下端よりも前方側に位置している例を示しているが、下端が上端よりも前方側に位置するようにしてもよい。什器1が相対的に高い位置にある場合は前者の態様が、相対的に低い位置にある場合には後者の態様が、利用者にとって便宜となる。
【0027】
この状態で、1つのボール(例えば図2のB1)が商談等の対象となって什器1から取り出されると、空白となった前方側の位置には、その後ろに控えた次のボール(同、B2)が転がり出てストッパ16により静止し、前方側のボール位置を占める状態にとなる。転がり出る後方のボールB2がその勢いによってストッパ16を乗り越えることのないよう、床板14の傾斜角とストッパ16の高さが調整されている。すなわち、ボール1個を取り出しても、結果的に表面に配置された6個のボールBの展示状態はあたかも何らの変化もなかったように自動的に元の状態に保たれる。1つ欠けたボールが欠けたスペースには、後刻手が空いた時に新たなボールBを補充すればよい。補充は、什器1の背面板13が開閉式、あるいは背面板13がない場合には後方からでも行うことができるが、前方からその位置にあるボールBごと押し込むことでもよい。商談後にボールBを元に返すような場合においても同様である。
【0028】
図3は、本実施形態に係る展示用ボール什器1の他の態様を示している。図3において、什器1自身は図1、2に示すものと同一でよく、本態様では什器1に展示用のPOP20を取付けて使用する状態を示している。POP(Point of Purchase)20は、商品の紹介や宣伝を行う紙の広告媒体をいい、紙にメッセージを記載したり、カラフルな模様を施したりすることで客の関心を買うアイキャッチャーの役割を果たす簡便な宣伝手段である。ここではPOP20を白抜き矢印で示すように両床板14a、14bの上に被せるように差し込み、人目を惹く表示のあるPOP20の最重要部分を床板14の前方端から前側に垂れるように配置している。この際、床板14の先端にはストッパ16が設けられているため、これを乗り越えるようPOP20自身も折り曲げて突出部を設ける必要がある。このように什器1にPOP20を取り付けることで、什器1を整理整頓が目的の単なる什器としてだけでなく、宣伝もしくは装飾媒体としてより有効に利用することができるようになる。
【0029】
上述したPOP20の取付け方法、取付け箇所は例示であり、例えば天板11や床板14の下面に貼り付けて前方に装飾面を垂らす方法、左右の側板12のいずれか一方もしくは双方に貼り付けて装飾面を左右の側方に広げて前方から視認可能にする方法など、他の手段が採られてもよい。また、什器1自身の外周に装飾を施すことももちろん可能である。
【0030】
次に、図4から図16を参照して、什器1の組立の手順を説明する。ここでは、2段2列の場合を取り上げて説明するが、ここで説明する手順は一例であり、合理的な範囲で順序を変更したり、別体として構成されている部材を一体に構成したりするようにしてもよい。図4は、什器1を構成する部材の展開図である。ここでは、天板11と背面板13が一体に構成された例を示す一方、下段の床板14aについては、上側の床板14a1と下側の床板14a2が別体とされた例を示している。
【0031】
まず、手順1として、天板11と側板12を貼り合わせて、什器本体10の上部を作成する。具体的には、図5(a)に示すように、側板12を中央で折り曲げたうえで、天板11のアタリ(図中、破線で表示)に合わせ、各側板12の1か所を両面テープ(図中、★印)の剥離紙を剥がして天板11に貼る。そして、天板11の下部を図5(b)に示す矢印のように折り曲げ、図5(c)に示す什器本体10の上部を完成させる。
【0032】
次に、手順2として、傾斜要素17と床板14a1を貼り合わせて、什器本体10の底部を作成する。具体的には、図6(a)に示すように、床板14a1の1か所の両面テープ(図中、★印)の剥離紙を剥がし、アタリ(図中、破線で表示)に合わせて傾斜要素17の略半分を床板14a1に重ねて貼る。そして、図6(b)に示す矢印のように傾斜要素17を床板14a1の側に折り曲げ、図6(c)に示す什器本体10の底部を完成させる。
【0033】
次に、手順3として、上記した什器本体10の上部と底部及び下側の床板14a2を貼り合わせ、什器本体10を作成する。具体的には、図7(a)に示すように、什器本体10の上部の側板12を床板14a2のアタリ(図中、破線で表示)に合わせ、各側板12の1か所を両面テープ(図中、★印)の剥離紙を剥がして貼る。そして、図7(b)に示す矢印のように、傾斜要素17を下側に位置させたうえで什器本体10の底部を床板14a2のアタリに合わせて重ね、1か所を両面テープ(図中、★印)の剥離紙を剥がして貼り、図7(c)に示す什器本体10を完成させる。
【0034】
次に、手順4として、図8に示すように、傾斜要素17を立上げ、床板14a2に対して床板14a1が上げ底となるようにする。床板14a1の2カ所のフラップ(図中、★印)を傾斜要素17の対応する2か所のスリットに挿入して閉じる。
【0035】
次に、手順5として、上段の床板14bを準備する。具体的には、図9(a)に示すように、床板14bを略中央で折り曲げて(矢印(l))1か所で両面テープ(図中、★印)の剥離紙を剥がして貼り合わせる。そして、図9(b)に示すように、端部を内側に折り曲げて(矢印(m))ストッパ16(図1-3参照)を形成し、図9(c)に示す床板14bを作成する。
【0036】
次に、手順6として、図10に示すように、仕切り板15を準備する。具体的には、上段側の仕切り板15bを、両面テープを内側にして折り曲げ、上部のフラップを天板11のスリットに下側から差し込み、耳部の両面テープの剥離紙を剥がして天板11に貼る(図中の拡大図を参照)。同様に、下段側の仕切り板15aを、両面テープを内側にして折り曲げ、上部のフラップを床板14bのスリットに下側から差し込み、耳部の両面テープの剥離紙を剥がして床板14bに貼る(図中の拡大図を参照)。
【0037】
次に、手順7として、図11に示すように、4か所(図中、★印)で床板14bのフラップを左右の側板12のスリットに差し込む。そして、上段側の仕切り板15bの下部のフラップを床板14bのスリットに上側から差し込み、耳部の両面テープの剥離紙を剥がして床板14bに貼る(図中の拡大図を参照)。同様に、下段側の仕切り板15aの下部のフラップを床板14a1のスリットに上側から差し込み、耳部の両面テープの剥離紙を剥がして床板14a1に貼る(図中の拡大図を参照)。
【0038】
次に、手順8として、図12に示すように、下段の床板14a(14a1)の先端部を図中の矢印のように丸めるように折り曲げて貼り合わせ、ストッパ16aを形成する。その際、ストッパ16aの端部は、床板14a1において側板12の内側に位置する部分(図中、●印を付したハッチングした領域)に貼り付ける。
【0039】
次に、手順9として、図13に示すように、上段の床板14bの左右のフラップ(図中の拡大図を参照)の両面テープの剥離紙を剥がし、側板12に貼る。なお、図13では、床板14bのストッパ16bは床板14bの先端部を上方向に折り曲げて設けた態様を示しているが、下段の床板14aのストッパ16aと同様に丸めるように折り曲げて貼り合わせてもよい。
【0040】
次に、手順10として、図14に示すように、什器本体10の背面側において、側板12及び仕切り板15のフラップを図中の矢印のように折り曲げて両面テープが貼られた面を露出させる。なお、この際、各側板12の中央及び下段の仕切り板15aの中央寄りの端部の4か所(図中、●印)は、内側に凹ませておく。
【0041】
次に、手順11として、図15に示すように、側板12及び仕切り板15の両面テープの剥離紙を剥がしたうえで、背面板13を図中の矢印のように背面側に折り曲げ、背面板13の周囲に設けられている6カ所のフラップ(図中、★印)を側板12及び仕切り板15の対応するスリットに差し込みつつ、背面板13を貼り付ける。
【0042】
最後に、所望に応じ、手順12として、図16に示すように、上段側のPOP20bを床板14bに、下段側のPOP20aを床板14a1に、それぞれ差し込む。POP20a,20bは、6カ所(図中、★印)で、着脱可能に係合される。
【0043】
以上、什器1の構成については図1から図3を用いて2段3列の場合を、組立ての手順については図4から図16を用いて2段2列の場合をそれぞれ説明したが、前述したとおり、このほかにも、什器1は、それ以外の段数・列数の組合せをもって構成してもよい。また、本実施形態に係る什器1は、美観にも優れることから、あらためて、1段2列の什器1に係る6面図(正面図、平面図、底面図、左側面図、右側面図、背面図。以下同様)を図17に、2段2列の什器1に係る6面図を図18に、1段3列の展示用ボール什器1に係る6面図を図19に、2段3列の展示用ボール什器1に係る6面図を図20に、それぞれ示す。また、1段2列の展示用ボール什器にボールを収納した状態を示す斜視図を図21に、2段2列の展示用ボール什器にボールを収納した状態を示す斜視図を図22に、1段3列の展示用ボール什器にボールを収納した状態を示す斜視図を図23に、2段3列の展示用ボール什器にボールを収納した状態を示す斜視図を図24に、それぞれ示す。また、1段の展示用ボール什器1に係る断面図を図25に示す(2段の什器1に係る断面図については、図2を参照)。
【0044】
本実施形態は、発明の要旨の範囲内で上記したもの以外にも変形が可能であるが、例えば、同じ段に収納するボールBが重量のある場合や、前後方向に3個以上のボールBを並べて収納したような場合、ストッパ16に加えて、図26に示すように、ボールB1とボールB2の間の床板14に突出部18を設けるようにしてもよい。これにより、最も手前のボールB1を取り出した際に、後方側のボールB2がストッパ16で止まり切れず、乗り越えてしまうことを防止することができる。なお、図26は、1段の場合を例に図示しているが、図2に示した2段の場合でも同様である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係る展示用ボール什器は、ボールを製造し、展示・販売する産業分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1…什器
10…什器本体
11…天板
12…側板
13…背面板
14(14a、14b)…床板
15…仕切り板
16…ストッパ
17…傾斜要素
18…突出部
20…POP
B(B1~B4)…ボール
図1
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