IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 浙江大学の特許一覧

特許7475614ポリオレフィン系廃プラスチックの低温分解による水素リッチ合成ガスの製造方法
<>
  • 特許-ポリオレフィン系廃プラスチックの低温分解による水素リッチ合成ガスの製造方法 図1
  • 特許-ポリオレフィン系廃プラスチックの低温分解による水素リッチ合成ガスの製造方法 図2
  • 特許-ポリオレフィン系廃プラスチックの低温分解による水素リッチ合成ガスの製造方法 図3
  • 特許-ポリオレフィン系廃プラスチックの低温分解による水素リッチ合成ガスの製造方法 図4
  • 特許-ポリオレフィン系廃プラスチックの低温分解による水素リッチ合成ガスの製造方法 図5
  • 特許-ポリオレフィン系廃プラスチックの低温分解による水素リッチ合成ガスの製造方法 図6
  • 特許-ポリオレフィン系廃プラスチックの低温分解による水素リッチ合成ガスの製造方法 図7
  • 特許-ポリオレフィン系廃プラスチックの低温分解による水素リッチ合成ガスの製造方法 図8
  • 特許-ポリオレフィン系廃プラスチックの低温分解による水素リッチ合成ガスの製造方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】ポリオレフィン系廃プラスチックの低温分解による水素リッチ合成ガスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/02 20060101AFI20240422BHJP
   B01J 23/46 20060101ALI20240422BHJP
   B01J 23/755 20060101ALI20240422BHJP
   B01J 23/89 20060101ALI20240422BHJP
   C08J 11/22 20060101ALI20240422BHJP
   C01B 3/40 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
C01B3/02 Z
B01J23/46 301M
B01J23/755 M ZAB
B01J23/89 M
C08J11/22
C01B3/40
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022554225
(86)(22)【出願日】2021-06-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-26
(86)【国際出願番号】 CN2021098607
(87)【国際公開番号】W WO2022252244
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2022-09-07
(31)【優先権主張番号】202110618861.6
(32)【優先日】2021-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】王 樹栄
(72)【発明者】
【氏名】蘇 紅才
(72)【発明者】
【氏名】李 天
(72)【発明者】
【氏名】朱 玲君
(72)【発明者】
【氏名】李 允超
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109096535(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110819372(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109054079(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106423199(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0262997(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00-3/58
C08J 11/00-11/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系プラスチック1重量部と、Hを0.25%~6%の濃度で含有する過酸化水素水3重量部以上とを秤量する、ステップ(1)と、
秤量したポリオレフィン系プラスチックと過酸化水素水を水熱反応器に投入して、酸化前処理反応を反応温度150~230℃で行い、反応が終了すると、液相生成物と気相生成物を得るステップ(2)と、
別の水熱反応器にメソポーラスカーボン担持金属系触媒を投入して、ステップ(2)で得られた液相生成物を水熱反応器に入れて、改質反応を行い、水素リッチ合成ガス生成物を得るステップ(3)とを含み、
前記ステップ(2)で得られた液相生成物の主成分は酢酸であり、気相生成物は酸素ガスと二酸化炭素である、
ことを特徴とするポリオレフィン系廃プラスチックの低温分解による水素リッチ合成ガスの製造方法。
【請求項2】
前記ステップ(1)では、過酸化水素水中のHの含有量が0.5~2%である、ことを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン系廃プラスチックの低温分解による水素リッチ合成ガスの製造方法。
【請求項3】
前記ステップ(1)では、過酸化水素水は3~80重量部である、ことを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン系廃プラスチックの低温分解による水素リッチ合成ガスの製造方法。
【請求項4】
前記ステップ(1)では、過酸化水素水は5~10重量部であり、ステップ(2)では、反応圧力は0.5~2MPa、反応時間は30~90minである、ことを特徴とする請求項3に記載のポリオレフィン系廃プラスチックの低温分解による水素リッチ合成ガスの製造方法。
【請求項5】
前記ステップ(2)では、反応温度は190~200℃、反応圧力は1MPa、反応時間は30~60minである、ことを特徴とする請求項4に記載のポリオレフィン系廃プラスチックの低温分解による水素リッチ合成ガスの製造方法。
【請求項6】
前記ステップ(3)では、改質反応は、反応温度200~240℃、反応圧力2~4MPa、反応時間120~180minである、ことを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン系廃プラスチックの低温分解による水素リッチ合成ガスの製造方法。
【請求項7】
前記ステップ(3)では、メソポーラスカーボン担持金属系触媒はメソポーラスカーボン担持Ruシングルメタル、メソポーラスカーボン担持Niシングルメタル、メソポーラスカーボン担持Ptシングルメタル、及びメソポーラスカーボン担持Ru-Niバイメタルのうちの1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン系廃プラスチックの低温分解による水素リッチ合成ガスの製造方法。
【請求項8】
前記ステップ(3)では、メソポーラスカーボン担持金属系触媒は、RuとNiとの担持質量比を4:1、1:1又は1:4とするメソポーラスカーボン担持Ru-Niバイメタル触媒である、ことを特徴とする請求項に記載のポリオレフィン系廃プラスチックの低温分解による水素リッチ合成ガスの製造方法。
【請求項9】
前記ポリオレフィン系プラスチックはポリプロピレン、低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンから選ばれる1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン系廃プラスチックの低温分解による水素リッチ合成ガスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック分解の技術分野に関し、特にポリオレフィン系廃プラスチックの低温分解による水素リッチ合成ガスの製造の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
主要な合成材料の一つであるプラスチックは材料分野でとても重要なものである。中国は世界一のプラスチック生産国であり、毎年膨大な量のプラスチックごみが発生しており、一部の難分解性プラスチックは陸地の自然環境や海洋に入り、生態環境に大きな影響を与えている。現在、典型的な廃プラスチックはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン及びアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンプラスチックなどを含む。これらのうち、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系プラスチックは用途が最も広く、かつ廃プラスチック全体に占める割合が最も大きい。また、医療用マスクの主要な材質であるポリプロピレン原材料及びその廃棄物の発生量はCOVID-19の間に急激に増加したが、現在一般的に使われている生活プラスチックごみの主な処理方法は埋め立てや焼却などであり、この2つの処理方法は二次汚染や資源の浪費を大きく引き起こしている。そのため、プラスチックを効率よく水素エネルギーなどのクリーンエネルギーに変換することが注目を集めている。
【0003】
液相改質は低温低圧水素製造技術の1種であり、200~260℃、1.5~4MPaの水熱条件下で、触媒の触媒作用を利用して酸素含有の液体有機物を水素ガスに転化することができ、廃ポリオレフィン系プラスチックは固形廃棄物の1種であり、しかも酸素原子を含まないため、液相改質を直接行って水素を製造することができない。
【0004】
現在、廃プラスチックから水素ガスを製造する方法は主に高温熱分解ガス化(500~800℃)であり、コークスやタールなどの副生成物の発生も伴い、高い反応温度も高いコストの投入をもたらしている。また、研究(Waste management 2020,102,520-7,Energy 2020,191,116527)では、超臨界水ガス化(T>374℃、P>22.1MPa)を利用してプラスチックを水素ガスに転化することが提案されており、超臨界水ガス化の運転は設備への要求が高いため、工業応用には制限性があり、また、現在、超臨界水ガス化を用いてポリエチレンやポリプロピレンから水素を製造することで得られる合成ガス中の水素ガスの収率(2~5mol/kgプラスチック)や水素ガスの濃度(10~40%)は不十分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来技術の問題を解決するために、酸化前処理と改質反応とを組み合わせた2段法が使用され、第1段階では、希H溶液を用いて250℃未満の反応温度でポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系廃プラスチックを酸化前処理し、第2段階では、前処理による液相については高性能炭素系触媒による触媒の下で低温改質を行って水素を製造し、これにより、温和な条件でポリオレフィン系プラスチックから水素を効率的に製造することを図る、ポリオレフィン系廃プラスチックの低温分解による水素リッチ合成ガスの製造方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成させるために、本発明は、酸化前処理と改質反応とを組み合わせた2段法が使用され、以下のステップを含むポリオレフィン系廃プラスチックの低温分解による水素リッチ合成ガスの製造方法を提案している。
【0007】
(1)ポリオレフィン系プラスチック1重量部と、Hを0.25%~6%の濃度で含有する過酸化水素水3重量部以上とを秤量する。
【0008】
(2)秤量したポリオレフィン系プラスチックと過酸化水素水を水熱反応器に投入して、酸化前処理反応を反応温度150~230℃で行い、反応が終了すると、液相生成物及び気相生成物を得る。
反応液中のHは完全に分解されており、検出した結果、生成物にはHが含有されておらず、このため、Hの残留によって第2段階の改質反応の触媒が悪影響を受けることはない。
【0009】
(3)別の水熱反応器にメソポーラスカーボン担持金属系触媒を投入して、ステップ(2)で得られた液相生成物を水熱反応器に入れて、改質反応を行い、水素リッチ合成ガス生成物を得る。ステップ(1)、ステップ(2)は酸化前処理段階であり、ステップ(3)は改質反応段階である。
【0010】
好ましくは、前記ステップ(1)では、過酸化水素水中のHの含有量が0.5~2%であり、
強酸化剤である高濃度HはC-C結合を酸化分解する過酷な条件を引き起こしやすく、一方、H濃度が低すぎると酸化が不十分になり、このため、Hを0.25%~6%含有する過酸化水素水は低温の条件でポリオレフィン系プラスチックを酸化前処理することができ、かつHの含有量が0.5~2%である場合、第2段階の改質反応により得られた水素ガスの収率や濃度は最も好適である。
【0011】
好ましくは、前記ステップ(1)では、過酸化水素水は3~80重量部である。
【0012】
好ましくは、前記ステップ(1)では、過酸化水素水は5~10重量部である。
【0013】
酸化前処理において残留された過酸化水素は第2段階の改質反応における金属触媒に酸化などの悪影響を与え、H-ポリオレフィン系プラスチックの重量比が高い場合、改質反応プロセスにおいてCOがより多く発生し、その結果として、ガス生成物中のHのモル数が低下し、過酸化水素水が5~10重量部である場合は最も好ましい。
【0014】
好ましくは、前記ステップ(2)では、反応圧力は0.5~2MPa、反応時間は30~90minである。
【0015】
好ましくは、前記ステップ(2)では、反応温度は190~200℃、反応圧力は1MPa、反応時間は30~60minである。
【0016】
好ましくは、前記ステップ(2)では、反応温度は200℃、反応時間は60minであり、
温度が低すぎると、ポリオレフィン系プラスチックの酸化反応が弱まり、温度が高すぎると、有機物の脱炭酸反応、即ち、長鎖カルボン酸の熱分解が起こることがあり、酸化時間が長くなると、ポリオレフィン系プラスチックの酸化反応にも改質反応にも不利である。
【0017】
好ましくは、前記ステップ(2)で得られた液相生成物の主成分は酢酸であり、気相生成物は酸素ガスと二酸化炭素であり、
液相生成物は主として酢酸であり、ギ酸、プロピオン酸など他の短鎖小分子酸の含有量が極めて低く、改質反応の触媒の活性に悪影響を及ぼすことがない。
【0018】
好ましくは、前記ステップ(3)では、改質反応は、反応温度200~240℃、反応圧力2~4MPa、反応時間120~180minである。
【0019】
好ましくは、前記ステップ(3)では、メソポーラスカーボン担持金属系触媒はメソポーラスカーボン担持Ruシングルメタル、メソポーラスカーボン担持Niシングルメタル、メソポーラスカーボン担持Ptシングルメタル、及びメソポーラスカーボン担持Ru-Niバイメタルのうちの1種又は複数種であり、
使用されるメソポーラスカーボンの比表面積が1400~1500m/gであるため、より多くの活性部材が提供される。
【0020】
好ましくは、前記ステップ(3)では、メソポーラスカーボン担持金属系触媒は、RuとNiとの担持質量比を4:1、1:1又は1:4とするメソポーラスカーボン担持Ru-Niバイメタル触媒であり、
メソポーラスカーボン担持Ruシングルメタル触媒は、ポリオレフィンの酸化前処理に対して最も高いH選択性を示し、しかも、メソポーラスカーボン担持Ruシングルメタル触媒で触媒する場合水素ガスの収率や水素ガスの濃度は最も高いが、Ru金属が高価であり、水熱環境ではシングルメタル触媒は安定性が低く、不活化しやすいことを考慮して、担持金属の全量を変化させることなく活性金属Ruの一部の代わりとして非貴金属を添加することによって、触媒のコストを効果的に削減できる。また、本発明で提供されるメソポーラスカーボン担持Ru-Niバイメタル触媒の場合は、水素ガスの収率が数倍増加し、製造中にRuNi合金が形成され、触媒の安定性が大幅に向上する。
【0021】
好ましくは、前記ポリオレフィン系プラスチックはポリプロピレン、低密度ポリエチレン、及び高密度ポリエチレンから選ばれる1種又は複数種である。
【0022】
好ましくは、前記メソポーラスカーボン担持金属系触媒の製造ステップは以下のとおりである。まず、メソポーラスカーボンを120~150メッシュとなるまで篩にかけて、金属の全担持量を5wt%として、所定量のメソポーラスカーボン及び可溶性金属前駆物を脱イオン水に加え、室温で均一に撹拌して12時間浸漬後、80℃で全部の水分が蒸発されるまで撹拌し続け、得たサンプルを105℃のオーブンにて12時間乾燥させ、最後に、550℃、10%H~90%Arで4時間還元する。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、酸化前処理と改質反応とを組み合わせた2段法が使用され、低温条件でポリオレフィンを分解し、水素を効率的に製造することが図られ、2つの段階の相乗作用により、以下のような有益な効果が得られる。
【0024】
(1)本発明では、2段法を用いて水素を製造することによって、250℃未満の温度でポリオレフィン系廃プラスチックを用いて水素を効率的に生産することを可能とし、水素ガスの収率を約11mol/kgプラスチックとし、エネルギー消費や運行のコストを削減させる一方、ポリオレフィン系廃プラスチックが効率的に分解され、ポリオレフィン系プラスチックゴムの処置においては利用価値が期待できる。
【0025】
(2)酸化前処理段階では、強酸化剤であるHの濃度が高い場合(6~8%)、原料は必要以上酸化され、C-C結合が酸化分解し、その結果として副生物の二酸化炭素の収率が高くなり、Hの濃度が0.25%~6%に制御されると、二酸化炭素の収率が明らかに低下し、酸化前処理段階で生じるカルボン酸の過酸化が効果的に低減し、これによって、2段水素製造においてより多くのカルボン酸が反応に関与し、水素ガスの発生が促進される。
【0026】
(3)過酸化水素水とポリオレフィンとの重量部比を5:1~10:1とすることによって、酸化前処理段階で生じた生成物は過酸化水素を含まず、過酸化水素の残留によって第2段階の改質反応における金属触媒が酸化などの悪影響を受けることはない。
【0027】
(4)反応液中の低濃度過酸化水素は低温水熱環境ではポリオレフィン系プラスチック中の炭素炭素結合を選択的に酸化して破断し、アルデヒド類などの小分子中間生成物を生成し、効率よく酸化して酢酸などの有機酸とし、このように、低温条件下でポリオレフィン系プラスチックを分解することを可能とする。
【0028】
(5)本発明では、第1段階の酸化前処理反応において、酢酸を主成分とする生成物が得られ、ギ酸、プロピオン酸など他の短鎖小分子酸の含有量が極めて低く、酢酸の収率は1.5~2mol/kgプラスチックであり、酢酸はギ酸よりも反応活性が低いので、炭素系触媒の活性に悪影響を与えることがなく、第2段階の改質反応による水素製造に有利である。
【0029】
(6)本発明で使用されるメソポーラスカーボン担持Ru-Niバイメタル触媒は水素ガスの収率を数倍増加させ、しかも、製造中にRuNi合金が形成され、触媒の安定性が大幅に向上する。
【0030】
(7)ポリオレフィン系プラスチックを超臨界水でガス化することにより水素を製造する場合に加えて、本発明は、反応温度や圧力を大幅に下げて、ポリオレフィンを用いて温和な水熱条件下で水素を製造するに加えて、得た水素ガスの収率や水素ガスの濃度も極めて高い。
【0031】
(8)メソポーラスカーボン担持Ruシングルメタル触媒は、ポリオレフィンの酸化前処理に対して最も高いH選択性を示し、しかも、メソポーラスカーボン担持Ruシングルメタル触媒で触媒する場合水素ガスの収率や水素ガスの濃度が最も高いが、Ru金属が高価であり、水熱環境ではシングルメタル触媒は安定性が低く、不活化しやすいことを考慮して、担持金属の全量を変化させることなく活性金属Ruの一部の代わりとして非貴金属を添加することによって、触媒のコストを効果的に削減できる。また、本発明で提供されるメソポーラスカーボン担持Ru-Niバイメタル触媒の場合は、水素ガスの収率が数倍増加し、製造中にRuNi合金が形成され、触媒の安定性が大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明のH濃度及び各生成物の収量の変化を示す図である。
図2】本発明のH濃度及び合成ガス生成物中のガス組成を示す図である。
図3】本発明のH濃度と水素ガスの選択性との関係を示す図である。
図4】本発明の過酸化水素-ポリオレフィン質量比と合成ガスの収率との関係を示す図である。
図5】本発明のH濃度と酸化前処理による二酸化炭素との関係を示す図である。
図6】本発明で合成されたばかりの触媒の窒素吸着-脱着等温線である。
図7】本発明で合成されたばかりの触媒の孔径分布の概略図である。
図8】本発明で合成されたばかりの触媒のXRD概略図である。
図9】本発明のメソポーラスカーボン担持触媒のTEM像及び粒径分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
実施例1
ステップ1:脱イオン水で商用30% 過酸化水素水を希釈し、6%H の水溶液80mlを製造し、低密度ポリエチレン0.16g及び製造された希過酸化水素水を水熱反応器に投入して、Hとプラスチックとの比を10:1とし、反応条件として反応温度200℃、反応時間60min、反応圧力0.5MPaで酸化前処理を行い、主要な液相生成物として酢酸、気相生成物として二酸化炭素及び酸素ガスを得た。
【0034】
ステップ2:メソポーラスカーボン担持Ruシングルメタル触媒が充填された反応器に第1段階の酸化前処理による液相生成物を投入した。反応条件として、反応温度240℃、反応時間120min、反応圧力4MPaとした。
【0035】
メソポーラスカーボン担持Ruシングルメタル触媒の製造方法は以下のとおりであった。メソポーラスカーボンを120~150メッシュとなるまで篩にかけて、金属の全担持量を5wt%として、所定量のメソポーラスカーボン及び塩化ルテニウムを脱イオン水に加え、室温で均一に撹拌して12時間浸漬後、80℃で全部の水分が蒸発されるまで撹拌し続け、得たサンプルを105℃のオーブンにて12時間乾燥させ、550℃、10%H~90%Arで4時間還元した。
【0036】
実施例2
ステップ1:脱イオン水で商用30% 過酸化水素水を希釈し、4% 過酸化水素水80mlを製造し、低密度ポリエチレン0.16g及び製造された希過酸化水素水を水熱反応器に投入して、Hとプラスチックとの比を10:1とし、反応条件として反応温度200℃、反応時間60min、反応圧力0.5MPaで酸化前処理を行い、主要な液相生成物として酢酸、気相生成物として二酸化炭素及び酸素ガスを得た。
【0037】
ステップ2は実施例1のステップ2と同様であり、触媒の製造方法は実施例1と同様であった。
【0038】
実施例3
ステップ1:脱イオン水で商用30% 過酸化水素水を希釈し、2% 過酸化水素水80mlを製造し、低密度ポリエチレン0.16g及び製造された希過酸化水素を水熱反応器に投入して、Hとプラスチックとの比を10:1とし、反応条件として反応温度200℃、反応時間60min、反応圧力0.5MPaで酸化前処理を行い、主要な液相生成物として酢酸、気相生成物として二酸化炭素及び酸素ガスを得た。
【0039】
ステップ2は実施例1のステップ2と同様であり、触媒の製造方法は実施例1と同様であった。
【0040】
実施例4
ステップ1:脱イオン水で希釈商用30% 過酸化水素水、製造80ml 1% 過酸化水素水、低密度ポリエチレン0.16g及び製造された希過酸化水素水を水熱反応器に投入して、Hとプラスチックとの比を10:1とし、反応条件として反応温度200℃、反応時間60min、反応圧力0.5MPaで酸化前処理を行い、主要な液相生成物として酢酸、気相生成物として二酸化炭素及び酸素ガスを得た。
ステップ2は実施例1のステップ2と同様であり、触媒の製造方法は実施例1と同様であった。
【0041】
実施例5
ステップ1:脱イオン水で商用30% 過酸化水素水を希釈し、0.5% 過酸化水素水80mlを製造し、低密度ポリエチレン0.16g及び製造された希過酸化水素水を水熱反応器に投入して、Hとプラスチックとの比を10:1とし、反応条件として反応温度200℃、反応時間60min、反応圧力0.5MPaで酸化前処理を行い、主要な液相生成物として酢酸、気相生成物として二酸化炭素及び酸素ガスを得た。
ステップ2は実施例1のステップ2と同様であり、触媒の製造方法は実施例1と同様であった。
【0042】
実施例6
ステップ1:脱イオン水で商用30% 過酸化水素水を希釈し、0.25%過酸化水素水80mlを製造し、低密度ポリエチレン0.16g及び製造された希過酸化水素水を水熱反応器に投入して、Hとプラスチックとの比を10:1とし、反応条件として反応温度200℃、反応時間60min、反応圧力0.5MPaで酸化前処理を行い、主要な液相生成物として酢酸、気相生成物として二酸化炭素及び酸素ガスを得た。
ステップ2は実施例1のステップ2と同様であり、触媒の製造方法は実施例1と同様であった。
【0043】
実施例7
ステップ1:脱イオン水で商用30% 過酸化水素水を希釈し、0.5% 過酸化水素水80mlを製造し、低密度ポリエチレン0.16g及び製造された希過酸化水素水を水熱反応器に投入して、Hとプラスチックとの比を3:1とし、反応条件として反応温度200℃、反応時間60min、反応圧力0.5MPaで酸化前処理を行い、主要な液相生成物として酢酸、気相生成物として二酸化炭素及び酸素ガスを得た。
ステップ2は実施例1のステップ2と同様であり、触媒の製造方法は実施例1と同様であった。
【0044】
実施例8
ステップ1:脱イオン水で商用30% 過酸化水素水を希釈し、0.5% 過酸化水素水80mlを製造し、低密度ポリエチレン0.16g及び製造された希過酸化水素を水熱反応器に投入して、Hとプラスチックとの比を5:1とし、反応条件として反応温度200℃、反応時間60min、反応圧力0.5MPaで酸化前処理を行い、主要な液相生成物として酢酸、気相生成物として二酸化炭素及び酸素ガスを得た。
ステップ2は実施例1のステップ2と同様であり、触媒の製造方法は実施例1と同様であった。
【0045】
実施例9
ステップ1:脱イオン水で商用30% 過酸化水素水を希釈し、0.5% 過酸化水素水80mlを製造し、低密度ポリエチレン0.16g及び製造された希過酸化水素を水熱反応器に投入して、Hとプラスチックとの比を20:1とし、反応条件として反応温度200℃、反応時間60min、反応圧力0.5MPaで酸化前処理を行い、主要な液相生成物として酢酸、気相生成物として二酸化炭素及び酸素ガスを得た。
ステップ2は実施例1のステップ2と同様であり、触媒の製造方法は実施例1と同様であった。
【0046】
実施例10
ステップ1:脱イオン水で商用30% 過酸化水素水を希釈し、0.5% 過酸化水素水80mlを製造し、低密度ポリエチレン0.16g及び製造された希過酸化水素を水熱反応器に投入して、Hとプラスチックとの比を40:1とし、反応条件として反応温度200℃、反応時間60min、反応圧力0.5MPaで酸化前処理を行い、主要な液相生成物として酢酸、気相生成物として二酸化炭素及び酸素ガスを得た。
ステップ2は実施例1のステップ2と同様であり、触媒の製造方法は実施例1と同様であった。
【0047】
実施例11
ステップ1:脱イオン水で商用30% 過酸化水素水を希釈し、0.5% 過酸化水素水80mlを製造し、低密度ポリエチレン0.16g及び製造された希過酸化水素水を水熱反応器に投入して、Hとプラスチックとの比を80:1とし、反応条件として反応温度200℃、反応時間60min、反応圧力0.5MPaで酸化前処理を行い、主要な液相生成物として酢酸、気相生成物として二酸化炭素及び酸素ガスを得た。
ステップ2は実施例1のステップ2と同様であり、触媒の製造方法は実施例1と同様であった。
【0048】
実施例12
ステップ1:脱イオン水で商用30% 過酸化水素水を希釈し、0.5% 過酸化水素水を製造し、低密度ポリエチレン0.16g及び製造された希過酸化水素を水熱反応器に投入して、Hとプラスチックとの比を10:1とし、反応条件として反応温度180℃、反応時間60min、反応圧力0.5MPaで酸化前処理を行い、主要な液相生成物として酢酸、気相生成物として二酸化炭素及び酸素ガスを得た。
ステップ2は実施例1のステップ2と同様であり、触媒の製造方法は実施例1と同様であった。
【0049】
実施例13
ステップ1:脱イオン水で商用30% 過酸化水素水を希釈し、0.5% 過酸化水素水80mlを製造し、低密度ポリエチレン0.16g及び製造された希過酸化水素を水熱反応器に投入して、Hとプラスチックとの比を10:1とし、反応条件として反応温度190℃、反応時間60min、反応圧力0.5MPaで酸化前処理を行い、主要な液相生成物として酢酸、気相生成物として二酸化炭素及び酸素ガスを得た。
ステップ2は実施例1のステップ2と同様であり、触媒の製造方法は実施例1と同様であった。
【0050】
実施例14
ステップ1:脱イオン水で商用30% 過酸化水素水を希釈し、0.5% 過酸化水素水80mlを製造し、低密度ポリエチレン0.16g及び製造された希過酸化水素を水熱反応器に投入して、Hとプラスチックとの比を10:1とし、反応条件として反応温度210℃、反応時間60min、反応圧力2MPaで酸化前処理を行い、主要な液相生成物として酢酸、気相生成物として二酸化炭素及び酸素ガスを得た。
ステップ2は実施例1のステップ2と同様であり、触媒の製造方法は実施例1と同様であった。
【0051】
実施例15
ステップ1は実施例1のステップ1と同様であった。
ステップ2:メソポーラスカーボン担持Niシングルメタル触媒が充填された反応器に第1段階の酸化前処理による液相生成物を投入した。反応条件として、反応温度240℃、反応時間120min、反応圧力4MPaとした。
メソポーラスカーボン担持Niシングルメタル触媒の製造方法は以下のとおりであった。メソポーラスカーボンを120~150メッシュとなるまで篩にかけて、金属の全担持量を5wt%として、所定量のメソポーラスカーボン及び塩化ニッケル六水和物を脱イオン水に加え、室温で均一に撹拌して12時間浸漬後、80℃で全部の水分が蒸発されるまで撹拌し続け、得たサンプルを105℃のオーブンにて12時間乾燥させ、550℃、10%H~90%Arで4時間還元した。
【0052】
実施例16
ステップ1は実施例1のステップ1と同様であった。
ステップ2:メソポーラスカーボン担持Ptシングルメタル触媒が充填された反応器に第1段階の酸化前処理による液相生成物を投入した。反応条件として、反応温度240℃、反応時間120min、反応圧力4MPaとした。
メソポーラスカーボン担持Ptシングルメタル触媒の製造方法は以下のとおりであった。メソポーラスカーボンを120~150メッシュとなるまで篩にかけて、金属の全担持量を5wt%として、所定量のメソポーラスカーボン及び塩化白金酸を脱イオン水に加え、室温で均一に撹拌して12時間浸漬後、80℃で全部の水分が蒸発されるまで撹拌し続け、得たサンプルを105℃のオーブンにて12時間乾燥させ、550℃、10%H~90%Arで4時間還元した。
【0053】
実施例17
ステップ1は実施例1のステップ1と同様であった。
ステップ2:RuとNiとの担持質量比を4:1とするメソポーラスカーボン担持Ru-Niバイメタル触媒が充填された反応器に第1段階の酸化前処理による液相生成物を投入した。反応条件として、反応温度240℃、反応時間120min、反応圧力4MPaとした。
前記メソポーラスカーボン担持Ru-Niバイメタル触媒の製造方法は以下のとおりであった。メソポーラスカーボンを120~150メッシュとなるまで篩にかけて、金属の全担持量を5wt%として、所定量のメソポーラスカーボン、塩化ニッケル六水和物及び塩化ルテニウムを所定の割合で脱イオン水に加え、室温で均一に撹拌して12時間浸漬後、80℃で全部の水分が蒸発されるまで撹拌し続け、得たサンプルを105℃のオーブンにて12時間乾燥させ、550℃、10%H~90%Arで4時間還元した。
【0054】
実施例18
ステップ1は実施例1のステップ1と同様であった。
ステップ2:RuとNiとの担持質量比を1:1とするメソポーラスカーボン担持Ru-Niバイメタル触媒が充填された反応器に第1段階の酸化前処理による液相生成物を投入した。反応条件として、反応温度240℃、反応時間120min、反応圧力4MPaとした。
前記メソポーラスカーボン担持Ru-Niバイメタル触媒の製造方法は以下のとおりであった。メソポーラスカーボンを120~150メッシュとなるまで篩にかけて、金属の全担持量を5wt%として、所定量のメソポーラスカーボン及びソポーラスカーボン、塩化ニッケル六水和物、及び塩化ルテニウムを所定の割合で脱イオン水に加え、室温で均一に撹拌して12時間浸漬後、80℃で全部の水分が蒸発されるまで撹拌し続け、得たサンプルを105℃のオーブンにて12時間乾燥させ、550℃、10%H~90%Arで4時間還元した。
【0055】
実施例19
ステップ1は実施例1のステップ1と同様であった。
ステップ2:RuとNiとの担持質量比を1:4とするメソポーラスカーボン担持Ru-Niバイメタル触媒が充填された反応器に第1段階の酸化前処理による液相生成物を投入した。反応条件として、反応温度240℃、反応時間120min、反応圧力4MPaとした。
前記メソポーラスカーボン担持Ru-Niバイメタル触媒の製造方法は以下のとおりであった。メソポーラスカーボンを120~150メッシュとなるまで篩にかけて、金属の全担持量を5wt%として、所定量のメソポーラスカーボン及びソポーラスカーボン、塩化ニッケル六水和物、及び塩化ルテニウムを所定の割合で脱イオン水に加え、室温で均一に撹拌して12時間浸漬後、80℃で全部の水分が蒸発されるまで撹拌し続け、得たサンプルを105℃のオーブンにて12時間乾燥させ、550℃下、10%H~90%Arで4時間還元した。
【0056】
実施例20
ステップ1は実施例1のステップ1と同様であった。
ステップ2:実施例17で使用されした後に回収されたメソポーラスカーボン担持Ru-Niバイメタル触媒であるメソポーラスカーボン担持Ru-Niバイメタル触媒が充填された反応器に第1段階の酸化前処理による液相生成物を投入した。反応条件として、反応温度240℃、反応時間120min、反応圧力4MPaとした。
【0057】
実施例21
ステップ1は実施例1のステップ1と同様であった。
ステップ2:実施例20で使用された後に回収したメソポーラスカーボン担持Ru-Niバイメタル触媒であるメソポーラスカーボン担持Ru-Niバイメタル触媒が充填された反応器に第1段階の酸化前処理による液相生成物を投入した。反応条件として、反応温度240℃、反応時間120min、反応圧力4MPaとした。
【0058】
実施例22
ステップ1は実施例1のステップ1と同様であった。
ステップ2:実施例21で使用された後に回収したメソポーラスカーボン担持Ru-Niバイメタル触媒であるメソポーラスカーボン担持Ru-Niバイメタル触媒が充填された反応器に第1段階の酸化前処理による液相生成物を投入した。反応条件として、反応温度240℃、反応時間120min、反応圧力4MPaとした。
【0059】
実施例23
ステップ1は実施例1のステップ1と同様であった。
ステップ2:実施例5で回収されたRuシングルメタル触媒であるメソポーラスカーボン担持Ruシングルメタル触媒が充填された反応器に第1段階の酸化前処理による液相生成物を投入した。反応条件として、反応温度240℃、反応時間120min、反応圧力4MPaとした。
【0060】
実施例24
ステップ1は実施例1のステップ1と同様であった。
ステップ2:実施例23で使用された後に回収したメソポーラスカーボン担持Ru-Niバイメタル触媒であるメソポーラスカーボン担持Ru-Niバイメタル触媒が充填された反応器に第1段階の酸化前処理による液相生成物を投入した。反応条件として、反応温度240℃、反応時間120min、反応圧力4MPaとした。
【0061】
実施例25
ステップ1は実施例1のステップ1と同様であった。
ステップ2:実施例24で使用された後に回収したメソポーラスカーボン担持Ru-Niバイメタル触媒であるメソポーラスカーボン担持Ru-Niバイメタル触媒が充填された反応器に第1段階の酸化前処理による液相生成物を投入した。反応条件として、反応温度240℃、反応時間120min、反応圧力4MPaとした。
【0062】
実施例26
ステップ1:脱イオン水で商用30% 過酸化水素水を希釈し、0.5% 過酸化水素水80mlを製造し、高密度ポリエチレン0.16g及び製造された希過酸化水素を水熱反応器に投入して、Hとプラスチックとの比を10:1とし、反応条件として反応温度200℃、反応時間60min、反応圧力0.5MPaで酸化前処理を行い、主要な液相生成物として酢酸、気相生成物として二酸化炭素及び酸素ガスを得た。
ステップ2は実施例17のステップ2と同様であり、触媒の製造方法は実施例17と同様であった。
【0063】
実施例27
ステップ1:脱イオン水で商用30% 過酸化水素水を希釈し、2% 過酸化水素水80mlを製造し、ポリプロピレン0.16g及び製造された希過酸化水素を水熱反応器に投入して、Hとプラスチックとの比を10:1とし、反応条件として反応温度200℃、反応時間60min、反応圧力0.5MPaで酸化前処理を行い、主要な液相生成物として酢酸、気相生成物として二酸化炭素及び酸素ガスを得た。
ステップ2は実施例1のステップ2と同様であり、触媒の製造方法は実施例1と同様であった。
【0064】
実施例28
ステップ1:脱イオン水で商用30% 過酸化水素水を希釈し、1% 過酸化水素水80mlを製造し、ポリプロピレン0.16g及び製造された希過酸化水素を水熱反応器に投入して、Hとプラスチックとの比を10:1とし、反応条件として反応温度200℃、反応時間60min、反応圧力0.5MPaで酸化前処理を行い、主要な液相生成物として酢酸、気相生成物として二酸化炭素及び酸素ガスを得た。
ステップ2は実施例1のステップ2と同様であり、触媒の製造方法は実施例1と同様であった。
【0065】
実施例29
ステップ1:脱イオン水で商用30% 過酸化水素水を希釈し、0.5% 過酸化水素水80mlを製造し、高密度ポリエチレン0.16g及び製造された希過酸化水素水を水熱反応器に投入して、Hとプラスチックとの比を10:1とし、反応条件として反応温度200℃、反応時間30min、反応圧力1MPaで酸化前処理を行い、主要な液相生成物として酢酸、気相生成物として二酸化炭素及び酸素ガスを得た。
【0066】
ステップ2:RuとNiとの担持質量比を4:1とするメソポーラスカーボン担持Ru-Niバイメタル触媒が充填された反応器に第1段階の酸化前処理による液相生成物を投入した。反応条件として、反応温度200℃、反応時間180min、反応圧力2MPaとした。
触媒の製造方法は実施例16と同様であった。
【0067】
実施例30
ステップ1:脱イオン水で商用30% 過酸化水素水を希釈し、0.5% 過酸化水素水を製造し、高密度ポリエチレン0.16g及び製造された希過酸化水素水を水熱反応器に投入して、Hとプラスチックとの比を10:1とし、反応条件として反応温度200℃、反応時間90min、反応圧力1MPaで酸化前処理を行い、主要な液相生成物として酢酸、気相生成物として二酸化炭素及び酸素ガスを得た。
ステップ2は実施例29のステップ2と同様であり、触媒の製造方法は実施例17と同様であった。
【0068】
実施例31
ステップ1:脱イオン水で商用30% 過酸化水素水を希釈し、0.5% 過酸化水素水80mlを製造し、低密度ポリエチレン0.16g及び製造された希過酸化水素水を水熱反応器に投入して、Hとプラスチックとの比を10:1とし、反応条件として反応温度150℃、反応時間60min、反応圧力2MPaで酸化前処理を行い、主要な液相生成物として酢酸、気相生成物として二酸化炭素及び酸素ガスを得た。
ステップ2は実施例1のステップ2と同様であり、触媒の製造方法は実施例1と同様であった。
【0069】
実施例32
ステップ1:脱イオン水で商用30% 過酸化水素水を希釈し、0.5% 過酸化水素水80mlを製造し、低密度ポリエチレン0.16g及び製造された希過酸化水素水を水熱反応器に投入して、Hとプラスチックとの比を10:1とし、反応条件として反応温度220℃、反応時間60min、反応圧力2MPaで酸化前処理を行い、主要な液相生成物として酢酸、気相生成物として二酸化炭素及び酸素ガスを得た。
ステップ2は実施例1のステップ2と同様であり、触媒の製造方法は実施例1と同様であった。
【0070】
実施例33
ステップ1:脱イオン水で商用30% 過酸化水素水を希釈し、0.5% 過酸化水素水80mlを製造し、低密度ポリエチレン0.16g及び製造された希過酸化水素水を水熱反応器に投入して、Hとプラスチックとの比を10:1とし、反応条件として反応温度230℃、反応時間60min、反応圧力2MPaで酸化前処理を行い、主要な液相生成物として酢酸、気相生成物として二酸化炭素及び酸素ガスを得た。
【0071】
ステップ2は実施例1のステップ2と同様であり、触媒の製造方法は実施例1と同様であった。
実施例1~33において触媒改質を行って得た気相生成物についてガスクロマトグラフィーにより試験し、関連指標を算出し、実験データを表1に示す。
【0072】
表1
注:
MEC:メソポーラスカーボン
Ru/MEC:メソポーラスカーボン担持Ruシングルメタル触媒
Ni/MEC:メソポーラスカーボン担持Niシングルメタル触媒
Pt/MEC:メソポーラスカーボン担持Ptシングルメタル触媒
4Ru-1Ni/MEC:RuとNiとの担持質量比を4:1とするメソポーラスカーボン担持Ru-Niバイメタル触媒
1Ru-1Ni/MEC:RuとNiとの担持質量比を1:1とするメソポーラスカーボン担持Ru-Niバイメタル触媒
1Ru-4Ni/MEC:RuとNiとの担持質量比を1:4とするメソポーラスカーボン担持Ru-Niバイメタル触媒
-プラスチック比:H-ポリオレフィンの質量比である。
【0073】
実施例1~6から分かるように、第1段階の反応における過酸化水素水中のHの濃度が0.25~1%である場合、第2段階で得られた水素ガスの収率及び濃度は高く、しかも、Hの濃度が0.5%である場合、水素を製造する効果は最も好適である。
【0074】
実施例1~6に基づいてHの濃度と各生成物の収量との変化の関係を検討し、結果を図1に示し、図においては、横座標はHの濃度(単位wt%)、縦座標は各生成物の収量(単位mol/kg)、C-CはC-Cアルカンとアルケン、COは一酸化炭素、COは二酸化炭素、Hは水素ガスを表す。図1から分かるように、H濃度が8%(H収量3.05 mol/kg)から0.5%(H収量10.83 mol/kg)に低下するに伴い、H収量は明らかに増加する傾向を示す。ただし、H濃度がさらに0.25%に低下した場合、H収量は10.83mol/kgから10.34mol/kgに低下し、4.5%低下しており、これは、H濃度が低いことにより酸化が不足するからである。H濃度が0.25%である場合、CO収量は3.65mol/kgである。これは、酸化前処理においてCOがカルボン酸の過酸化だけではなく、C-C結合の酸化分解において直接形成される。酸化前処理において生じた高濃度二酸化炭素は、さらに炭素の捕獲、利用や貯蔵にも有用である。
【0075】
実施例1~6に基づいてHの濃度と合成ガス生成物中のガス成分の組成との関係を検討し、結果を図2に示し、図においては、横座標は各ガス成分のモル百分率を表し、縦座標はHの濃度(単位wt%)を表し、改質反応では、生成物である合成ガス中、Hのモル百分率は40%よりも大きく、全てのH濃度のうち、H濃度が0.5%では、Hのモル百分率は最大値(51.52%)になる。
【0076】
強酸化剤であるHは、高濃度(6~8%)では、原料を必要以上酸化し、C-C結合を酸化分解し、副生成物である二酸化炭素の収率が高くなり、H濃度を下げると、二酸化炭素の収率は明らかに低下し、酸化前処理段階で生じたカルボン酸の過酸化が効果的に低減し、これによって、第2段階における水素製造においてより多くのカルボン酸は反応に関与し、水素ガスの製造が促進される。
【0077】
実施例1~6に基づいてH濃度と水素ガスの選択性との関係を検討し、結果を図3に示し、図においては、横座標はH濃度(単位wt%)、縦座標は合成ガス中の二酸化炭素のモル百分率及び水素ガスの選択性を表し、図3から分かるように、改質反応において、H濃度が低下するに伴い、COへの炭素の転化が増加する。
【0078】
実施例5及び実施例7~11に基づいて過酸化水素-ポリオレフィンの割合による合成ガスの収率への影響を検討し、結果を図4に示し、図においては、横座標は過酸化水素-ポリオレフィンの質量比を表し、縦座標は合成ガスの収量、合成ガス中の水素ガスのモル百分率、及び合成ガス中の二酸化炭素のモル百分率を表す。図4から分かるように、過酸化水素-ポリオレフィンの質量比が10:1である場合、第2段階において得られた合成ガス中の水素ガス濃度及び合成ガスの収量は最も好適である。
【0079】
実施例1~6に基づいてH濃度が酸化前処理により生成された二酸化炭素に及ぼす影響を検討し、結果を図5に示し、図においては、左側の横座標はH濃度(単位wt%)、右側の横座標は過酸化水素-ポリオレフィンの質量比、縦座標は二酸化炭素の収量(単位mol/kg)を表す。図5から分かるように、酸化前処理において生成されたCOの量はプラスチック量の減少に伴い増加する。これは、C-C結合の分解においてより多くのHにより、過度の酸化の代わりにCOを生成するからであると考えられる。しかし、過酸化水素-ポリオレフィンの質量比が高い場合、改質反応プロセスにおいてより多くのCOが生成され、ガス生成物中のHのモル百分率の低下を招く。
以上の通り、第1段階の反応における過酸化水素水中のH濃度が0.25~1%である場合、2段階において得られた水素ガスの収率及び濃度は高く、しかも、Hの濃度が0.5%である場合、水素を製造する効果は最も好適である。
【0080】
実施例5及び実施例12~14から分かるように、第1段階において前処理温度が200℃である場合、第2段階において得られた合成ガス中の水素ガスの収率及び濃度は最も高い。
【0081】
実施例5及び実施例15~19から分かるように、メソポーラスカーボン担持Ru、Ni、Ptシングルメタル触媒及びRu-Niバイメタル触媒は、本発明に係る第2段階における触媒性能が、Ru/MEC>4Ru-1Ni/MEC>1Ru-1Ni/MEC>Pt/MEC>1Ru-4Ni/MEC>Ni/MECであり、実施例5及び実施例14~17における新しい触媒の細孔構造を表し、その結果を表2に示す。
【0082】
表2
【0083】
実施例5及び実施例15~19で合成された新しい触媒の窒素ガス吸着-脱着等温線は図6に示され、図6においては、横座標は相対圧力P/P、Pはガスの吸着温度での飽和蒸気圧、Pは吸着平衡における気相の圧力、縦座標は標準状態で測定された吸着量(単位:cm/g)を表し、新しい触媒の孔径分布は図7に示され、図7においては、横座標は孔径(単位:nm)、縦座標は細孔容積(cm/g)を表す。図6及び図7から分かるように、全ての触媒はIV型等温線を有し、孔径分布が狭く、中心が5nm近くにあり、これは、これらの触媒が発達しているメソポーラス構造、1000~1400m/gの比表面積を有するからであり、メソポーラスカーボンと比較すると、全てのメソポーラスカーボン担持金属系触媒は、比表面積及び細孔容積がより低くなり、これは、メソポーラスカーボンの細孔に金属粒子が導入されて、比表面積及び細孔体積を減少させるためであり、Ru/MECと比較すると、4Ru-1Ni/MECは比表面積及び細孔容積がより高く、一方、1Ru-1Ni/MEC及び1Ru-4Ni/MECは、比表面積及び細孔容積がより低い。これらの結果から明らかなように、第2金属が少量で添加されることにより、シングルメタル触媒のテクスチャ特性が改善される。
【0084】
さまざまなモル比のNi/MEC、Ru/MEC、及びバイメタル触媒のXRDスペクトルは図8に示される。Ni/MECでは、44.5°及び51.5°に大きなピークがあり、それぞれNi(111)面及び(200)面に対応する。Ru/MEC、及びRu系バイメタル触媒のXRDスペクトルにおいて、38.5°及び42.3°にそれぞれに2つの弱いピークがあり、この2つの弱いピークはそれぞれRu種の100及び002結晶面を表す。Ru/MEC及びRu-Niバイメタル触媒では、金属Ruの弱い回折ピークから明らかなように、Ruナノ粒子は体積が小さく、MECの表面[38、45、49、50]に高度で分散しており、これは走査型電子顕微鏡の走査結果と一致し、小さなナノ粒子はより多くの表面原子を提供し、その触媒活性を向上させる。
実施例5、実施例17及び実施例20~25から分かるように、メソポーラスカーボン担持Ru-Niバイメタル触媒は、本発明の運行条件では、Ruシングルメタルよりも高い安定性を示す。
【0085】
シングルメタル及びバイメタルが炭素に担持された触媒のTEM像及び金属の粒径分布は図9に示され、図9においては、aはNi/MECのTEM及び粒径分布画像であり、bはRu/MECのTEM及び粒径分布画像であり、cは4Ru-1Ni/MECのTEM及び粒径分布画像であり、Ru-Niの平均粒径は14.1nmであり、シングルメタルRu/MEC(平均粒径7.2 nm)のそれよりも大きい。RuとNiとの相乗作用によると考えられる。観察した結果、Ru及びNi原子はほぼ同一位置にあり、画像領域にわたって原子はそれぞれ分離しておらず、このことから、均一なRu-Ni合金構造が形成されることが明らかになる。
【0086】
酸化前処理反応の操作参数が第1段階の酸化前処理及び第2段階の改質反応の性能に与える影響を検討した実験結果を表3に示す。
【0087】
表3
【0088】
表3から分かるように、低い水熱温度では、ポリオレフィンの酸化反応が弱まり、220℃以上の水熱環境では、有機物は脱炭酸反応が起こり、即ち、長鎖カルボン酸が熱分解する可能性があり、このため、酸化前処理反応の時間が長すぎて、改質反応に悪影響を与えてしまう。酸化前処理の時間が60min、温度が200℃である場合、酢酸の収量は最高であり、後の改質反応に対しても最も有利である。
【0089】
新しいバイメタル4Ru-1Ni/MEC触媒は、水素を製造する触媒活性がシングルメタルRu触媒に最も類似しており、このため、安定性試験及び比較には、4Ru-1Ni/MEC及びRu/MEC触媒が使用される。触媒は、使用されるたびに、回収されて105℃のオーブンにて一晩乾燥される。1回目の運行の場合と比較すると、2回目の運行では、H収率及びHモル百分率は明らかに低下し、3回目及び4回目の運行では、変化は安定的になる。触媒性能の低下は炭素蓄積及び活性金属の焼結により触媒が不活性化することによる。
【0090】
実施例20~25の結果から明らかなに、4Ru-1Ni/MEC及びRu/MEC触媒は、使用された後、比表面積が全て低下し、2種の触媒の平均孔径が使用により減少したものの、触媒の孔径分布がまだ狭く、中心位置が5nm程度にある。さらに、メソポーラスカーボン担持Ru-Niバイメタル触媒のXRDスペクトルにおいては、NiOピークが認められず、これは、金属RuのNi酸化への抑制作用が原因であると考えられる。2回目の運行の場合と比較すると、3回目及び4回目の次運では、水素の収量には変化が少なく、ただし、Hモル百分率は低下し続ける傾向を示す。メソポーラスカーボン担持Ru-Niバイメタル触媒の改質反応プロセスでは、H収率及びHモル百分率はいずれもメソポーラスカーボン担持Ruシングルメタル触媒の場合よりも高い。このことから、2種の金属の相互作用によって、Ru-Niバイメタル触媒はシングルメタルRu触媒よりも高安定性であることが示されている。
【0091】
上記の実施例は本発明を説明するものであり、本発明を限定するものではなく、本発明について簡単な変換を行った形態は全て本発明の特許範囲に属する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9