(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】打ち抜き装置
(51)【国際特許分類】
B26D 7/22 20060101AFI20240422BHJP
B26F 1/40 20060101ALI20240422BHJP
B21D 28/02 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
B26D7/22 B
B26F1/40 A
B21D28/02 A
(21)【出願番号】P 2019215696
(22)【出願日】2019-11-28
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000109727
【氏名又は名称】株式会社デュプロ
(72)【発明者】
【氏名】大木 豊
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-178731(JP,A)
【文献】特開2001-334493(JP,A)
【文献】特開平10-225732(JP,A)
【文献】特開平05-285890(JP,A)
【文献】特開2011-136394(JP,A)
【文献】特開平04-226900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 7/22
B26F 1/40
B21D 28/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に対向配置された移動定盤及び対向定盤と、
前記移動定盤を前記対向定盤に向けて上下動させる移動機構と、
前記移動機構を制御する制御手段と、を備え、
前記移動機構が、前記移動定盤を前記対向定盤に向けて加圧することで、前記移動定盤と前記対向定盤との少なくとも一方に取り付けられた抜型によって被加工物を所定の形状に打ち抜く打ち抜き装置において、
前記移動機構は、前記移動定盤における水平方向の位置が互いに異なる複数の加圧部を前記対向定盤に向けて加圧するものであり、
前記移動定盤と前記対向定盤との距離を測定する定盤間距離測定手段を
前記加圧部と同数以上備え、
前記制御部は、前記移動定盤を前記対向定盤に向けて加圧したときに前記定盤間距離測定手段
の一つが測定した距離が距離閾値以下となったことを検出すると、
当該定盤間距離測定手段に対する水平方向の距離が最も近い前記加圧部における加圧を停止するように前記移動機構を制御することを特徴とする打ち抜き装置
。
【請求項2】
請求項
1に記載の打ち抜き装置において、
前記加圧部が、前記移動定盤の範囲に含まれる長方形の各頂点に位置する配置であることを特徴とする打ち抜き装置。
【請求項3】
請求項
1または
2の打ち抜き装置において、
前記移動機構は、複数の前記加圧部をそれぞれ加圧する複数の加圧機構と、
複数の前記加圧機構をそれぞれ駆動する複数の駆動源と、を有することを特徴とする打ち抜き装置。
【請求項4】
請求項
3の打ち抜き装置において、
前記加圧機構は、前記駆動源の回転運動を偏心回転体によって前記移動定盤の上下運動に変換する偏心回転体駆動伝達機構であり、
前記加圧機構が前記移動定盤を前記対向定盤に向けて加圧する加圧動作では、
前記加圧部が、前記偏心回転体駆動伝達機構の死点に到達しない停止位置まで変位することを特徴とする打ち抜き装置。
【請求項5】
請求項
1乃至
4の何れか一項に記載の打抜装置において、
前記移動定盤を前記対向定盤に向けて加圧したときに変形する加圧時変形部材の変形量を測定する変形量測定手段と、
前記変形量測定手段が測定した測定変形量が変形閾値以上となったことを報知する報知手段と、を備えることを特徴とする打ち抜き装置。
【請求項6】
請求項
5の打ち抜き装置において、
前記加圧部と同数以上の前記変形量測定手段を備え、
前記制御手段は、前記変形量測定手段の一つが測定した前記変形量が前記変形閾値以上となったときに、当該変形量測定手段に対する水平方向の距離が最も近い前記加圧部における加圧を停止するように前記移動機構を制御することを特徴とする打ち抜き装置。
【請求項7】
請求項
5の打ち抜き装置において、
前記加圧部と同数以上の前記変形量測定手段を備え、
前記制御手段は、前記変形量測定手段の一つが測定した前記変形量が前記変形閾値以上となったときに、前記加圧部における加圧を停止するように前記移動機構を制御することを特徴とする打ち抜き装置。
【請求項8】
請求項
6または
7の打ち抜き装置において、
打ち抜き動作での前記加圧部のそれぞれの加圧量を調整する調整処理時に、前記移動定盤を前記対向定盤に向けて移動させる加圧を行いながら、前記変形量測定手段による前記変形量の測定と、前記定盤間距離測定手段による距離の測定とを行い、
前記定盤間距離測定手段が測定した測定距離が前記距離閾値以下となった場合は、加圧を停止して前記加圧部での加圧量に係る加圧情報を記憶し、
前記測定距離が前記距離閾値以下となる前に、前記測定変形量が前記変形閾値以上となった場合は、前記加圧部での加圧を停止し、停止した前記加圧部の加圧を再開するか否かを選択させる表示を行い、
加圧を再開する選択がされた場合は加圧を再開し、前記測定距離が前記距離閾値以下となったら加圧を停止して前記加圧情報を記憶し、前記測定距離が前記距離閾値以下となる前に前記測定変形量が前記変形閾値よりも大きな第二変形閾値以上となった場合は、加圧を停止して前記測定変形量が前記第二変形閾値以上となったことを報知することを特徴とする打ち抜き装置。
【請求項9】
請求項
8の打ち抜き装置において、
前記調整処理時に前記移動定盤の移動を開始後、前記変形量測定手段が前記加圧時変形部材の変形を検知すると、前記移動定盤の移動速度を遅くすることを特徴とする打ち抜き装置。
【請求項10】
請求項
8または
9の打ち抜き装置において、
前記調整処理時には、前記移動定盤と前記対向定盤との間に前記被加工物が位置する状態で、前記移動定盤を前記対向定盤に向けて移動させ、前記調整処理時の前記移動定盤の移動速度は、連続処理時の前記打ち抜き動作のときの前記移動定盤の移動速度よりも遅いことを特徴とする打ち抜き装置。
【請求項11】
請求項
8乃至
10の何れか一項に記載の打ち抜き装置において、
打ち抜き処理の回数を数え、所定の回数に到達したら報知する打ち抜き数到達報知手段を備え、
前記調整処理時に前記測定変形量が変形閾値以上となった加圧量で加圧する場合は、前記所定の回数を減ずる補正を行うことを特徴とする打ち抜き装置。
【請求項12】
上下方向に対向配置された移動定盤及び対向定盤と、
前記移動定盤を前記対向定盤に向けて上下動させる移動機構と、
前記移動機構を制御する制御手段と、を備え、
前記移動機構が、前記移動定盤を前記対向定盤に向けて加圧することで、前記移動定盤と前記対向定盤との少なくとも一方に取り付けられた抜型によって被加工物を所定の形状に打ち抜く打ち抜き装置において、
前記移動機構は、前記移動定盤における水平方向の位置が互いに異なる複数の加圧部を前記対向定盤に向けて加圧するものであり、
前記移動定盤を前記対向定盤に向けて加圧したときに変形する加圧時変形部材の変形量を測定する変形量測定手段と、
前記変形量測定手段が測定した測定変形量が変形閾値以上となったことを報知する報知手段と、を備えることを特徴とする打ち抜き装置。
【請求項13】
上下方向に対向配置された移動定盤及び対向定盤と、
前記移動定盤を前記対向定盤に向けて上下動させる移動機構と、
前記移動機構を制御する制御手段と、を備え、
前記移動機構が、前記移動定盤を前記対向定盤に向けて加圧することで、前記移動定盤と前記対向定盤との少なくとも一方に取り付けられた抜型によって被加工物を所定の形状に打ち抜く打ち抜き装置において、
前記移動機構は、前記移動定盤における水平方向の位置が互いに異なる複数の加圧部を前記対向定盤に向けて加圧するものであり、
前記移動定盤を前記対向定盤に向けて加圧したときに変形する加圧時変形部材の変形量を測定する変形量測定手段と、を備え、
前記制御手段は、前記変形量測定手段が測定した前記変形量が前記変形閾値以上となったときに、前記加圧部における加圧を停止するように前記移動機構を制御することを特徴とする打ち抜き装置。
【請求項14】
請求項
12または13の打ち抜き装置において
、
前記加圧部と同数以上の前記変形量測定手段を備え、
前記制御手段は、前記変形量測定手段の一つが測定した前記変形量が前記変形閾値以上となったときに、前記加圧部における加圧を停止するように前記移動機構を制御することを特徴とする打ち抜き装置。
【請求項15】
請求項
12乃至14
の何れか一項に記載の打ち抜き装置において、
前記移動定盤と前記対向定盤との距離を測定する定盤間距離測定手段を備え、
前記移動定盤を前記対向定盤に向けて加圧したときに前記定盤間距離測定手段が測定した距離が距離閾値以下となったことを検出すると、前記移動機構による前記移動定盤の加圧を停止することを特徴とする打ち抜き装置。
【請求項16】
請求項6乃至15の何れか一項に記載の打ち抜き装置において、
前記加圧時変形部材は、前記対向定盤を保持する対向定盤保持部材、または、前記移動定盤を保持する移動定盤保持部材であることを特徴とする打ち抜き装置。
【請求項17】
請求項1乃至16の何れか一項に記載の打ち抜き装置において、
前記移動定盤と前記対向定盤との間に対して前記被加工物を搬入及び搬出する搬送手段を備えることを特徴とする打ち抜き装置。
【請求項18】
請求項1乃至16の何れか一項に記載の打ち抜き装置において、
前記対向定盤は、前記移動定盤の上方であって装置の筐体に固定された上方固定定盤であることを特徴とする打ち抜き装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打ち抜き装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上下方向に対向配置された移動定盤及び対向定盤と、移動定盤を対向定盤に向けて上下動させる移動機構と、移動機構を制御する制御手段と、を備え、移動機構が、移動定盤を対向定盤に向けて加圧することで、移動定盤と対向定盤との一方に取り付けられた抜型によって被加工物を所定の形状に打ち抜く打ち抜き装置が知られている。
【0003】
この種の打ち抜き装置として、特許文献1には、移動機構がリンク機構を備え、リンク機構のクランク軸が回転駆動することで、リンク機構が下部可動定盤を押し上げ、上部固定定盤との間の被加工物を抜型によって打ち抜く打ち抜き装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
移動定盤を対向定盤に向けて移動する打ち抜き装置では、打ち抜き動作で、移動定盤を対向定盤に向けて加圧したときに、移動定盤を保持する移動定盤保持部材や対向定盤を保持する対向定盤保持部材が変形する。このような移動定盤を対向定盤に向けて加圧したときに変形する部材の変形量によっては、装置の破損や装置寿命の低下に繋がるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一つ目の態様は、上下方向に対向配置された移動定盤及び対向定盤と、前記移動定盤を前記対向定盤に向けて上下動させる移動機構と、前記移動機構を制御する制御手段と、を備え、前記移動機構が、前記移動定盤を前記対向定盤に向けて加圧することで、前記移動定盤と前記対向定盤との少なくとも一方に取り付けられた抜型によって被加工物を所定の形状に打ち抜く打ち抜き装置において、前記移動機構は、前記移動定盤における水平方向の位置が互いに異なる複数の加圧部を前記対向定盤に向けて加圧するものであり、前記移動定盤と前記対向定盤との距離を測定する定盤間距離測定手段を前記加圧部と同数以上備え、前記制御部は、前記移動定盤を前記対向定盤に向けて加圧したときに前記定盤間距離測定手段の一つが測定した距離が距離閾値以下となったことを検出すると、当該定盤間距離測定手段に対する水平方向の距離が最も近い前記加圧部における加圧を停止するように前記移動機構を制御することを特徴とするものである。
また、本発明の他の態様は、上下方向に対向配置された移動定盤及び対向定盤と、前記移動定盤を前記対向定盤に向けて上下動させる移動機構と、前記移動機構を制御する制御手段と、を備え、前記移動機構が、前記移動定盤を前記対向定盤に向けて加圧することで、前記移動定盤と前記対向定盤との少なくとも一方に取り付けられた抜型によって被加工物を所定の形状に打ち抜く打ち抜き装置において、前記移動機構は、前記移動定盤における水平方向の位置が互いに異なる複数の加圧部を前記対向定盤に向けて加圧するものであり、前記移動定盤を前記対向定盤に向けて加圧したときに変形する加圧時変形部材の変形量を測定する変形量測定手段と、前記変形量測定手段が測定した測定変形量が変形閾値以上となったことを報知する報知手段と、を備えることを特徴とする。
また、本発明のさらに他の態様は、上下方向に対向配置された移動定盤及び対向定盤と、前記移動定盤を前記対向定盤に向けて上下動させる移動機構と、前記移動機構を制御する制御手段と、を備え、前記移動機構が、前記移動定盤を前記対向定盤に向けて加圧することで、前記移動定盤と前記対向定盤との少なくとも一方に取り付けられた抜型によって被加工物を所定の形状に打ち抜く打ち抜き装置において、前記移動機構は、前記移動定盤における水平方向の位置が互いに異なる複数の加圧部を前記対向定盤に向けて加圧するものであり、前記移動定盤を前記対向定盤に向けて加圧したときに変形する加圧時変形部材の変形量を測定する変形量測定手段と、を備え、前記制御手段は、前記変形量測定手段が測定した前記変形量が前記変形閾値以上となったときに、前記加圧部における加圧を停止するように前記移動機構を制御することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、装置の破損や装置寿命の低下を抑制できる、という優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】手前フレームと奥フレームとを非表示としたダイカッターの正面図。
【
図6】手前フレームと奥フレームとを非表示としたダイカッターの背面図。
【
図7】手前フレームと奥フレームとを非表示としたダイカッターの斜視図。
【
図11】下死点から上死点まで昇降伝達機構を駆動させたときの昇降伝達ロッドと円柱部との変位を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0010】
以下、本発明に係る打ち抜き装置と、この打ち抜き装置を備えた打ち抜き処理システムとの一実施形態について説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る打ち抜き処理システムであるダイカットシステム500の概略斜視図である。
ダイカットシステム500は、被加工物であるシート材の搬送方向上流側からシートフィーダー200、レジスト装置300、ダイカッター100及び排出処理装置400を備える。
【0012】
ダイカットシステム500では、被加工物供給手段であるシートフィーダー200が、載置棚に載置されたシート材をレジスト装置300に向けて供給する。被加工物位置補正手段であるレジスト装置300は、シート材の搬送方向に平行な方向(図中のX軸方向)に対するシート材の傾きや、幅方向(図中のY軸方向)のシート材の位置を調整し、ダイカッター100に向けてシート材を搬送する。打ち抜き手段であるダイカッター100は、レジスト装置300から供給されたシート材を一旦停止し、詳細は後述する固定定盤と移動定盤とで挟むことでシート材を固定定盤に装着された抜型の形状に打ち抜く処理を行う。排出処理装置400は、ダイカッター100で打ち抜き処理が施されて排出されるシート材を受け取る排出ユニットと、打ち抜き処理が施されたシート材を成果物と余剰部とに分離するセパレーターと、分離された成果物を集積するスタッカーとを備える。
図1に示すように、ダイカッター100は、その上面に操作パネル101を備える。
【0013】
次に、ダイカッター100について説明する。
図2~
図7は、外装カバーを取り外した状態のダイカッター100の説明図である。
図2は、ダイカッター100の正面図である。
図3は、
図2中の右側から見たダイカッター100の上流側側面図、
図4は、
図2中の左側から見たダイカッター100の下流側側面図である。
図5は、
図2の正面図から手前フレーム5と奥フレーム6とを非表示としたダイカッター100の正面図であり、
図6は、
図5に示す状態の手前フレーム5と奥フレーム6とを非表示としたダイカッター100の背面図である。また、
図7は、手前フレーム5と奥フレーム6とを非表示としたダイカッター100の斜視図である。
図8は、
図3に示すダイカッター100の上流側側面図を模式的に示した説明図である。
【0014】
図2~
図7に示すように、ダイカッター100は、装置のフレーム(5,6,7等)に対して上下動可能な移動定盤1と、移動定盤1の上方に対向配置された装置のフレームに対して固定された固定定盤2と、を備える。
ダイカッター100は、金属製のフレーム構造として、架台フレーム7、手前フレーム5、奥フレーム6、上流ガイドフレーム21及び下流ガイドフレーム23を備える。架台フレーム7は、移動用のキャスターと、移動防止固定機構とを有する。手前フレーム5及び奥フレーム6は、板状部材であって、その下部が架台フレーム7に固定されている。上流ガイドフレーム21及び下流ガイドフレーム23は、装置の幅方向に延在し、その両端が手前フレーム5と奥フレーム6とに固定された角棒状の部材である。
固定定盤2は、手前フレーム5及び奥フレーム6の上部に固定されている。また、
図8に示すように、切断刃81を有する抜型8は、ステンレス板82を挟んで固定定盤2の下面に固定されている。一方、移動定盤1の上面には面板9が固定されている。
【0015】
ダイカッター100は移動定盤1を上下動させる移動機構として、四つの昇降伝達機構4(4a、4b、4c、4d)と、四つのプレスモータ3(3a、3b、3c、3d)と、を備える。移動定盤1は、その下部に、軸方向が搬送方向に平行な四つの円柱部10(10a、10b、10c、10d)が固定されている。昇降伝達機構4は、入力された回転運動を上下方向の往復運動に変換するクランク機構の構成を備え、プレスモータ3が回転駆動し、昇降伝達機構4が昇降運動を円柱部10に伝達することで、移動定盤1が上下方向に移動する。
図2~
図7は、四つ全ての円柱部10が昇降伝達機構4の下死点に位置する状態であり、移動定盤1の可動範囲で、移動定盤1が固定定盤2から最も離れた状態の説明図である。
図8は、移動定盤1が上部停止位置まで上昇し、抜型8の切断刃81によってシート材Sを打ち抜いた状態の説明図である。
【0016】
移動定盤1は、
図3に示すように、搬送方向上流側の面の幅方向の中央部に、図中のX軸に平行で搬送方向上流側に突き出した上流側被ガイド軸11を備える。また、移動定盤1は、
図4に示すように、搬送方向下流側の面の幅方向の中央部に、図中のX軸に平行で搬送方向下流側に突き出した下流側被ガイド軸12を備える。上流側被ガイド軸11及び下流側被ガイド軸12には上流側被ガイドベアリング11a及び下流側被ガイドベアリング12aが設けられている。
【0017】
図3に示すように、上流ガイドフレーム21の幅方向の中央部には、上流側ガイド部22を備える。上流側ガイド部22は、搬送方向下流側に突き出し、上下方向に延在する二本の上流側ガイドレール22aを備え、二本の上流側ガイドレール22aで上流側被ガイドベアリング11aを挟むように係合することで、上流側被ガイド軸11の幅方向の移動を規制する。
また、
図4に示すように、下流ガイドフレーム23の幅方向の中央部には、下流側ガイド部24を備える。下流側ガイド部24は、搬送方向上流側に突き出し、上下方向に延在する二本の下流側ガイドレール24aを備え、二本の下流側ガイドレール24aで下流側被ガイドベアリング12aを挟むように係合することで、下流側被ガイド軸12の幅方向の移動を規制する。
上流側ガイド部22及び下流側ガイド部24によって上流側被ガイド軸11及び下流側被ガイド軸12の幅方向の移動を規制することで、移動定盤1が上下動する際の移動定盤1の幅方向の変位を防止できる。
【0018】
ダイカッター100は、移動定盤1に対して幅方向の奥側にシート材Sを搬送する搬送ベルト対(14、15)を備える。また、この搬送ベルト対の駆動源であるベルト駆動モータ13と、駆動力を伝達するベルト駆動伝達機構16とを備える。ベルト駆動モータ13を駆動することで、搬送下ベルト14と搬送上ベルト15とが同じ表面移動速度で無端移動し、搬送下ベルト14と搬送上ベルト15とによってシート材Sの幅方向の一方の端部を挟んで搬送する。
【0019】
搬送下ベルト14と搬送上ベルト15とは、複数の張架ローラに張架される。この張架ローラのうちの一部が、搬送下ベルト14の上部張架面と搬送上ベルト15の下部張架面との間でシート材Sを挟む面を水平に形成するように、搬送下ベルト14と搬送上ベルト15との経路を規定する。このシート材Sを挟む面を形成する張架ローラは、上下動可能なローラ保持部材に支持されている。
打ち抜き処理を行う際には、移動定盤1と固定定盤2との間までシート材Sを搬送し、搬送下ベルト14と搬送上ベルト15を停止する。移動定盤1は、幅方向の奥側に突き出した不図示の突出部を備え、移動定盤1が上昇すると、突出部がローラ保持部材を押し上げて、ローラ保持部材が保持する張架ローラによって形成される張架面を移動定盤1とともに上昇させる構成となっている。これにより、移動定盤1の上昇に合わせて、加工対象のシート材Sを固定定盤2に向けて上昇させることができる。
【0020】
搬送ベルト対(14、15)で挟んだシート材Sを上下方向に移動させる構成としては、ベルト駆動機構(ベルト駆動モータ13、ベルト駆動伝達機構16)を含めて、搬送ベルト対(14、15)を上下方向に移動可能な保持ユニットに保持させてもよい。この場合、移動定盤1の突出部でベルト駆動機構を含めた搬送ベルト対を保持する保持ユニットを押し上げる構成となる。
【0021】
図9は、ダイカッター100のブロック図である。
ダイカッター100の制御部30は、操作パネル101や後端検知センサ25からの出力に基づいて、四つのプレスモータ3(3a~3d)とベルト駆動モータ13との駆動を制御する。本実施形態のダイカッター100では、制御部30が、四つのプレスモータ3(3a~3d)をそれぞれ独立して駆動制御可能となっている。
【0022】
次に、打ち抜き処理を行う際の準備作業について説明する。
シートフィーダー200では、打ち抜き加工を施すシート材Sの束を載置棚に載置する。
【0023】
ダイカッター100では、抜型8を固定定盤2にセットし、面板9を移動定盤1にセットする。抜型8や面板9をセットする際には、排出処理装置400の最もダイカッター100寄りの位置に設けられている排出ユニットを、手動または電動で下降させる。これにより、固定定盤2と移動定盤1との間のシート材Sを通過させる空間の出口側が開かれ、外部からのアクセスが可能となる。
【0024】
固定定盤2の下方には、抜型8を搬送方向に沿う方向にスライドさせることができる型スライドガイドを備える。抜型8を装置本体の搬送方向下流側から固定定盤2の下方の空間に挿入することで、抜型8が型スライドガイドに沿って搬送方向の上流側に向けてスライドする。抜型8の挿入方向の先端が型突き当て板19に突き当たるまで抜型8を挿入し、型固定レバー17を引き下げて
図2等に示す状態にすることで、型固定部材18が抜型8を型突き当て板19に突き当て、且つ、抜型8を固定定盤2の下面に突き当てた状態でロックされる。これにより、抜型8を固定定盤2に対して固定する。
【0025】
抜型8についての情報を呼び出すためのバーコード等の識別子が抜型8に付与されている場合は、ハンディースキャナ等の読み取り手段で識別子を読み取った後に抜型8を固定定盤2にセットする。
【0026】
抜型8と面板9とをセットした後は、排出ユニットを所定の位置まで手動または電動で上昇させる。
【0027】
次に、操作パネル101や外部入力装置を用いてジョブ設定を行う。設定内容としては、シート材Sのサイズ、抜型8の切断刃81の高さ、抜型8のシートの厚さ、打ち抜き回数、抜型基準位置及びシート基準位置等を挙げることができる。
ここで、抜型8のシートの厚さとは、抜型8の上面に固定されるステンレス板82と、このステンレス板82の上面に固定され、抜型8の切断刃81の配置が描かれた画像シートと、画像シートの上面を覆う保護シートと、の厚さの総和である。
抜型8は、その上面にステンレス板82、必要に応じシムテープが貼り付けられた画像シート、保護シートの順に積層した状態でダイカッター100に対して挿脱される。
【0028】
ステンレス板82は、抜型8の切断刃81が、面板9に押し上げられて抜型8の裏面(上面)から突き出すことを防止する部材である。画像シートは、抜型8の切断刃81の配置を確認できるものであり、切断刃81の配置から打ち抜き圧が不足する箇所が分かる場合に、ムラ取り用のシムテープを画像シートの上面に貼り付けておくことができる。保護シートは、ムラ取り用のシムテープを貼った画像シートの上面を覆って保護するため、抜型8をセットするためにスライドさせた際に、ムラ取り用のシムテープが固定定盤2の下面と擦れて剥がれることを防止できる。
【0029】
上述した抜型基準位置及びシート基準位置は、打ち抜き処理時のシート材Sの停止位置が、シート材S上の切断されるべき位置と抜型8の切断刃81の位置とが合致する停止位置となるようにするためにジョブ設定で入力する基準値である。
シート材Sは、搬送ベルト対(14、15)よりも上流側に配置された後端検知センサ25がシート材Sの後端を検知してから、所定の停止パルス数を取得した時点で停止し、その停止位置で打ち抜きが行われる。
ジョブ設定において、作業者は、抜型8の切断刃81のうちの任意の刃基準点を抽出し、その刃基準点から、抜型8の上流側端部までの距離である抜型基準位置を入力する。また、作業者は、打ち抜かれるシート材S上の切断されるべき位置のうち、上記の刃基準点に対応する被切断基準点を抽出し、その被切断基準点から、打抜かれるシート材Sの上流側端までの距離であるシート基準位置を入力する。
制御部30は、入力された抜型基準位置とシート基準位置とに基づいて、刃基準点と被切断基準点とが合致する停止位置でシート材Sが停止するように、上記の停止パルス数を算出し、設定する。この処理によって、打ち抜き処理時の、抜型8の切断刃81と、シート材S上の切断されるべき位置とを一致させることができる。
【0030】
ダイカッター100で実行させるジョブが、シート材Sに筋を付ける筋付け処理を含む場合には、面板9に筋付け対向凹部材を固定する作業を行う。この作業では、筋付け対向凹部材の下面に両面テープを貼り、抜型8に設けられた筋付け凸部に対して筋付け対向凹部材とクリップとを取り付ける。この状態で筋付け凹部転写ボタンが操作されると、移動定盤1が打ち抜き処理動作よりも少ない移動量で移動し、面板9が対向凹部材の下面に接触し、両面テープによって対向凹部材を面板9に貼り付ける。貼り付けた対向凹部材にはクリップが残っているので、移動定盤1から面板9を取り外し、不要部材であるクリップを除去し、面板9を移動定盤1に固定する。
【0031】
ダイカッター100では、上述した各種の設定の後、シート材Sを連続的に搬送して連続的に打ち抜き処理を行う量産処理の前に、適切な打ち抜きが行えるように調整処理を行う。
【0032】
調整処理では、シート材Sを一枚だけ給送し、打ち抜き処理を行うテスト給送を行う。テスト給送では、ダイカッター100による打ち抜き処理は行うが、セパレーターによる分離処理を行わず、打ち抜き処理の成果物と余剰部とが一分離されていない状態のものをスタッカーに排出する。
作業者が操作パネル101のテスト給送ボタンを押すことで、テスト給送を行い、テスト給送での成果物を作業者が見て各部の調整を行う。必要に応じて、テスト給送と調整操作とを繰り返す。
【0033】
調整操作は、操作パネル101で行うが、外部入力装置で行ってもよい。
調整する対象は、シート材Sの幅方向の位置、搬送方向に対するシート材Sの傾き(スキュー)、打ち抜き時に停止させたときのシート材Sの搬送方向の位置等である。また、本実施形態のダイカッター100は、詳細は後述するように、抜きムラを補正する調整も操作パネル101の操作で行うことができる。作業者は、このような調整操作を、テスト給送で得られたシート材Sを目視し、その抜きずれ、抜きムラに基づいて行う。
【0034】
調整処理後、作業者が操作パネル101で、処理枚数と処理速度を入力し、スタートボタンを押すことで、量産処理を実行する。量産処理は、入力された処理枚数の処理満了、エラーの検出または作業者によるストップボタンの操作によって停止する。
スタートボタン及びストップボタンを、操作パネル101だけでなく、シートフィーダー200の操作部にも設け、どちらからでも操作可能としてもよい。
【0035】
次に、ダイカッター100での打ち抜き処理の動作について説明する。
操作パネル101のスタートボタンが押されると、シートフィーダー200からシート材Sが送られ、レジスト装置300でシート材Sの傾きや幅方向の位置が補正され、ダイカッター100にシート材Sが供給される。ダイカッター100では、ベルト駆動モータ13が駆動し、搬送ベルト対の搬送下ベルト14及び搬送上ベルト15が無端移動を開始する。そして、レジスト装置300から供給されたシート材Sを搬送ベルト対で挟んで搬送する。搬送ベルト対の上流側に配置された後端検知センサ25でシート材Sの後端を検知してから所定のタイミング経過後にベルト駆動モータ13を停止する。これにより、搬送ベルト対で挟んだシート材Sを移動定盤1と固定定盤2との間の打ち抜き位置に停止させる。
【0036】
次に、四つのプレスモータ3を駆動し、移動定盤1を上昇させる。移動定盤1が上昇すると、移動定盤1の突出部が上述したローラ保持部材を押し上げ、搬送高さにあったシート材Sも上昇する。四つのプレスモータ3をそれぞれ所定の回転量だけ正転駆動して停止することで、移動定盤1が上部停止位置に到達し、シート材Sが抜型8の切断刃81の形状に打ち抜かれる。
【0037】
次に、四つのプレスモータ3が所定の回転量だけ逆転駆動して停止することで、移動定盤1が下降して下部停止位置に到達する。このとき、ローラ保持部材も移動定盤1とともに下降し、シート材Sが搬送高さまで下降する。この後、ベルト駆動モータ13の駆動を再開することで、打ち抜き処理を施したシート材Sを排出処理装置400に搬送するとともに、レジスト装置300から供給される後続のシート材Sを搬送ベルト対で挟んで打ち抜き位置まで搬送する。
量産処理の際には、これらの動作を繰り返す。
【0038】
上述した説明では、ベルト駆動モータ13が停止後にプレスモータ3を正転駆動させ、プレスモータ3の逆転駆動を停止後にベルト駆動モータ13の駆動を再開させているが、モータの駆動タイミングとしてはこれに限るものではない。詰まり等のシート材Sの搬送不良が生じない範囲で、ベルト駆動モータ13の停止前にプレスモータ3を正転駆動させてもよいし、プレスモータ3の逆転駆動の停止前にベルト駆動モータ13の駆動を再開させてもよい。ベルト駆動モータ13の駆動期間とプレスモータ3の駆動期間とが重なる期間を設けることで、処理速度の向上を図ることができる。
【0039】
次に、打ち抜き動作の際のプレスモータ3の動きについて説明する。
ベルト駆動モータ13の駆動時には、昇降伝達機構4が下部停止位置で待機するように、制御部30は、サーボモータであるプレスモータ3の回転位置が下部停止位置に対応した下基準回転位置となるように回転位置を制御する。
【0040】
後端検知センサ25でシート材Sの後端の通過を検知してから所定のタイミング経過後にベルト駆動モータ13を停止し、プレスモータ3の正回転を開始する。そして、昇降伝達機構4が上部停止位置となるように、プレスモータ3を上基準回転位置まで正回転させて停止する。
四つすべてのプレスモータ3の回転位置が上基準回転位置となり、正回転が停止すると、所定時間(20[msec(ミリ秒)])待機し、その後は、逆回転を開始する。四つプレスモータ3は下基準回転位置まで逆回転すると停止する。
このように四つのプレスモータ3が、下基準回転位置から上基準回転位置まで回転する正回転と、上基準回転位置から下基準回転位置まで回転する逆回転と、を繰り返すことで、打ち抜き処理を行う。
【0041】
図10は、四つの昇降伝達機構4のうちの一つの概略説明図である。
図10(a)は、X-Z平面の説明図、
図10(b)は、Y-Z平面の説明図、
図10(c)は、斜視図である。
図10に示すように、昇降伝達機構4は、回転出力ギヤ31と係合する回転入力ギヤ41と、回転入力ギヤ41ともに回転する偏心シャフト44と、架台フレーム7に固定され、偏心シャフト44の回転軸部441を回転可能に保持するシャフト保持部42と、を備える。さらに、昇降伝達機構4は、下部が偏心シャフト44の偏心軸部442と係合し、上部が移動定盤1の円柱部10と係合する昇降伝達ロッド43を備える。
【0042】
図11は、円柱部10が下死点から上死点まで移動するように、偏心シャフト44を回転軸部441の中心線周りで回転させたときの昇降伝達ロッド43と円柱部10との変位を示す説明図である。
図11(a)は、円柱部10が下死点に位置する状態の説明図、
図11(b)は、円柱部10が下死点と上死点との中間に位置する状態の説明図、
図11(c)は、円柱部10が上死点に位置する状態の説明図である。
【0043】
偏心シャフト44は、シャフト保持部42に係合する回転軸部441と、昇降伝達ロッド43に係合する偏心軸部442とで中心線の位置が異なる部材である。回転入力ギヤ41は、回転軸部441と中心線の位置が一致する。
【0044】
プレスモータ3が回転駆動して回転出力ギヤ31が回転すると、回転入力ギヤ41が回転し、回転入力ギヤ41が固定された偏心シャフト44は、回転軸部441の中心線周りで回転する。これにより、偏心軸部442が回転軸部441の中心軸周りを回転移動し、偏心軸部442に係合する昇降伝達ロッド43と、昇降伝達ロッド43に係合する円柱部10とが移動する。このとき、円柱部10を有する移動定盤1は、上流側ガイド部22及び下流側ガイド部24によって幅方向(
図11中の左右方向、Y軸に平行な方向)への移動が規制され、円柱部10も幅方向へは移動しない。このため、偏心シャフト44の回転によって偏心軸部442が上下方向及び幅方向に変位すると、
図11(b)に示すように、昇降伝達ロッド43が傾きつつ、円柱部10は上下方向のみに移動する。
【0045】
本実施形態の偏心シャフト44は、回転軸部441の中心軸と偏心軸部442の中心軸との偏心量が15[mm]である。このため、
図11(a)に示す下死点の状態から
図11(c)に示す上死点の状態まで偏心シャフト44を回転させたときの円柱部10の変位量である上下可動範囲Hは、30[mm]である。
【0046】
移動定盤1を移動させる移動機構は、複数の加圧部としての四箇所の円柱部10を、それぞれ独立して加圧する複数の加圧機構としての四つの昇降伝達機構4(4a~4d)と、これらをそれぞれ駆動する複数の駆動源としての四つのプレスモータ3(3a~3d)とを有する。
制御部30は、四つのプレスモータ3をそれぞれ独立して駆動を制御することができるため、上部停止位置に対応する上基準回転位置をプレスモータ3毎に変更することができる。これにより、上部停止位置のときの円柱部10の高さを個別に変更することができる。
【0047】
本実施形態のダイカッター100では、偏心シャフト44を一回転させるような制御を行わず、円柱部10が下死点と上死点との間に挟まれた範囲である下部停止位置と上部停止位置との間を行き来する制御を行う。
偏心シャフト44の回転角度θについて、円柱部10が下死点のときをθ=0[°]とすると、円柱部10が上死点のときはθ=180[°]となる。ここで、円柱部10が下部停止位置のときの偏心シャフト44の回転角度をθ1、円柱部10が上部停止位置のときの回転角度をθ2、とすると、以下の(1)式の関係が成り立つ。
0[°]≦θ1<θ2<180[°] ・・・・・・(1)
【0048】
このように、上部停止位置の回転角度を上死点の回転角度よりも小さくすることにより、円柱部10が上部停止位置のときの回転角度「θ2」の変更が可能となり、上部停止位置のときの円柱部10の位置を調整することが可能となる。
加圧する際には、昇降伝達機構4のホームポジションである円柱部10が下部停止位置に位置する状態に対応した下基準回転位置の状態の四つのプレスモータ3を同じ速度で正回転させる。そして、昇降伝達機構4の上部停止位置に対応した上基準回転位置まで回転したプレスモータ3から順次停止する。四つのプレスモータ3のθ2が互いに相違している場合は、下基準回転位置から上基準回転位置までの回転量が大きいプレスモータ3は他のプレスモータ3よりも停止タイミングが遅くなる。
これに対して、下基準回転位置から上基準回転位置までの回転量をそれぞれ算出し、回転量が大きいプレスモータ3ほど回転速度を速くして、全てのプレスモータ3について、下基準回転位置から上基準回転位置までの駆動時間が同じ時間なるように制御してもよい。
【0049】
上述したように、本実施形態のダイカッター100は、上部停止位置に対応する上基準回転位置をプレスモータ3毎に変更することができ、上部停止位置のときの円柱部10の高さを個別に変更することができる。
このような構成により、一つのプレスモータ3の上基準回転位置のときの回転量を大きくする変更を行うことで、上基準回転位置のときの偏心シャフト44の回転角度「θ2」の値が大きくなり、上部停止位置のときの円柱部10の位置が高くなる。これにより、上部停止位置のときの位置が高くなった円柱部10の鉛直上方において、打ち抜き処理時の面板9と抜型8との当接圧である打ち抜き圧を高くすることができる。
【0050】
このように、打ち抜き処理時の面板9と抜型8との当接圧を部分的に高くできる構成では、テスト給送の際に抜きムラが生じた箇所の下方の円柱部10の上部停止位置が高くなるように、プレスモータ3の上基準回転位置の回転量を大きくすることで、抜きムラを解消する補正が可能となる。
【0051】
すなわち、従来のダイカッターで、ムラ取り用のシムテープを抜型8の裏に貼って調整していた打ち抜き圧を、プレスモータ3の上基準回転位置の回転量を変更することで調整が可能となる。
例えば、テスト給送で出力したシート材Sの手前上流側に抜きムラが生じた場合、第一プレスモータ3aの上基準回転位置の回転量を大きくする設定を行う。これにより、第一昇降伝達機構4aの偏心シャフト44の回転角度「θ2」の値が大きくなり、上部停止位置のときの第一円柱部10aの位置を設定前よりも高くすることができる。そして、打ち抜き処理時のシート材Sの手前上流側の打ち抜き圧を上昇させることができ、抜きムラの解消を図ることができる。
【0052】
操作パネル101で抜きムラを補正する際には、操作パネル101上に四隅を示し、作業者が抜き圧を変更したい隅部を選択して、当該隅部の抜き圧を変更する画面を表示する。
図12は、操作パネル101で抜きムラの補正を行う「抜き高さ調整」の操作パネル101の表示画面(抜き高さ調整画面)の説明図である。
抜き高さ調整は、テスト給送を行った成果物に対して、抜きが不足している箇所の加圧量を大きくする調整の際に利用する。本実施形態では四つのプレスモータ3の回転量をそれぞれ調整可能であるため、四隅に抜き高さの可変値を持つ。
【0053】
図12に示す表示画面では、その中央部に抜き高さ分布表示部75がある。
抜き高さ分布表示部75の右下には、第一プレスモータ3aの調整値を示す右前抜き高さ調整値表示窓70があり、その上下に移動定盤1の右前の抜き高さ(上部停止位置)を上昇させる右前抜き高さ上昇ボタン71と、右前の抜き高さを下降させる右前抜き高さ下降ボタン72と、を有する。
抜き高さ分布表示部75の左下には、第二プレスモータ3bの調整値を示す左前抜き高さ調整値表示窓64があり、その上下に移動定盤1の左前の抜き高さを上昇させる左前抜き高さ上昇ボタン65と、左前の抜き高さを下降させる左前抜き高さ下降ボタ66と、を有する。
抜き高さ分布表示部75の右上には、第三プレスモータ3cの調整値を示す右奥抜き高さ調整値表示窓67があり、その上下に移動定盤1の右奥の抜き高さを上昇させる右奥抜き高さ上昇ボタン68と、右奥の抜き高さを下降させる右奥抜き高さ下降ボタン69と、を有する。
抜き高さ分布表示部75の左上には、第四プレスモータ3dの調整値を示す左奥抜き高さ調整値表示窓61があり、その上下に移動定盤1の左奥の抜き高さを上昇させる左奥抜き高さ上昇ボタン62と、左奥の抜き高さを下降させる左奥抜き高さ下降ボタ63と、を有する。
【0054】
さらに、抜き高さ分布表示部75の中央上方には、四箇所全ての抜き高さを上昇させる全体抜き高さ上昇ボタン73と、四箇所全ての抜き高さを下降させる全体抜き高さ下降ボタン74と、を備える。
本実施形態では、抜き高さの四隅の調整単位は「0.01[mm]」であり、調整範囲は「0.00~2.50[mm]」であるがこれに限るものではない。
本実施形態では、面板9が平面の状態を保つために、四隅のうちの抜き高さを調整する隅の対角の隅を支点とし、他の二つの隅を追従するように変化させる。
図12に示す例では、左奥の隅を「0.09」上昇させる調整をしている。この調整では、右前の隅は支点となるため調整値は変化せず、「0.00」のままである。一方、他の二つの隅(左前の隅、右奥の隅)は、左奥の隅の上昇に追従して上昇する。
【0055】
抜き高さ分布表示部75は、移動定盤1の上面の高さの分布の概略を示しており、移動定盤1の上面を16の領域に分け、四隅の調整値の値に基づいて算出された各領域の高さを表示している。
図12では、抜き高さ分布表示部75で抜き高さの分布を数値で示しているが、抜き高さの分布をカラー化して表示してもよい。
【0056】
図12に示す抜き高さ調整画面で、抜き圧を大きくする設定が入力された場合には、制御部30は、対応するプレスモータ3の上基準回転位置の回転量を大きくするように設定を変更する。また、抜き圧を小さくする設定が入力された場合には、制御部30は、対応するプレスモータ3の上基準回転位置の回転量を小さくするように設定を変更する。そして、打ち抜き処理の際に、制御部30は、プレスモータ3毎に設定した上基準回転位置まで正回転させる制御を行う。
【0057】
本実施形態のダイカッター100では、打ち抜き処理時に下方から上方に移動する移動定盤1の四隅のそれぞれを、独立したプレスモータ3及び昇降伝達機構4によって上下動させる構成を備え、これに加えて、それぞれのプレスモータ3は個別に回転量を調節可能に構成されているため、抜きムラに応じて四隅の上昇位置をそれぞれ調整し、抜きムラの改善を図ることができる。
【0058】
抜きムラは、抜型8の切断刃81の配置や抜型8の製造誤差によって生じるため、一度取り外した抜型8を、ダイカッター100に再び装着する場合には、前回装着時と同様のムラ取り処理を行うことがある。
本実施形態のダイカッター100では、抜型8毎の識別情報と制御情報とを紐づけて制御部30の記憶部に記憶する。このときの制御情報としては、抜型8の前回装着時の四つのプレスモータ3の上基準回転位置の情報を含む。これにより、抜型8を装着する際に識別情報が入力されることで、識別情報に紐づけられた制御情報を呼び出して四つのプレスモータ3の上基準回転位置を前回装着時の設定とすることができ、量産動作前の調整時の作業負担を軽減し、セットアップ時間の短縮を図ることができる。
【0059】
抜型8は、バーコードや管理番号等の識別情報表示部を備えていることが望ましい。そして、ダイカッター100に設けたバーコードリーダーによるバーコードの読み取りや、操作パネル101での管理番号を入力等により、装着する抜型8の識別情報をダイカッター100に入力することができる。
抜型8に応じた上基準回転位置を設定する構成としては、RFタグやICタグ等の読み取り可能な記憶素子を抜型8に設け、前回装着時の四つのプレスモータ3の上基準回転位置の情報を含む制御情報を抜型8の記憶素子に記憶させておき、装着時に読み取った抜型8の記憶素子の情報に基づいて上基準回転位置を設定する構成としてもよい。
【0060】
本実施形態のダイカッター100では、新規の抜型8の装着時には、操作パネル101上での操作によって四つプレスモータ3の上基準回転位置を設定でき、抜きムラを改善することができるため、ムラ取り用のシムテープの貼り付け作業の削減を図ることができる。さらに、装着回数が二回目以上の抜型8の装着時には、識別情報を入力することによって、前回装着時の制御情報を呼び出して設定することができるため、量産動作前の調整の半自動化と簡素化とを図ることができる。
【0061】
本実施形態のダイカッター100は、移動定盤1が上部停止位置に到達したときの移動定盤1の上面と、固定定盤2の下面とを平行な状態に近づける水平出し調整を行うことができる。
図13は、水平出し調整に用いる水平調整治具50の斜視説明図である。
図14は、水平調整治具50の説明図であって、
図14(a)は上面図、
図14(b)は正面図である。
水平調整治具50は、抜型8の代わりに固定定盤2に固定して使用するものであり、抜型8と同様の外形の治具本体板部51と、四つのスペーサー52とを備える。
【0062】
スペーサー52は、変形し難い高剛性の部材であり、四つのスペーサー52の高さ(図中のZ方向の長さ)が均一になるように高精度に作成されており、治具本体板部51に設けられた四つの孔をそれぞれ貫通した状態で固定されている。四つのスペーサー52の配置は、水平調整治具50を固定定盤2に固定したときに、長方形状の移動定盤1の上面の四隅近傍にそれぞれ対向する位置となっている。
【0063】
水平出し調整を行う際には、作業者は、抜型8の代わりに水平調整治具50を固定定盤2に固定してダイカッター100に装着し、操作パネル101で水平出し調整を実行させる操作を入力する。水平出し調整の操作が入力された制御部30は、四つの円柱部10が下死点に位置する状態から、四つのプレスモータ3を同時に正回転させる。移動定盤1が水平調整治具50に到達しない範囲で四つの昇降伝達機構4を予め設定された所定の回転量(一定パルス)だけ正回転させた後、四つのプレスモータ3の制御を、低トルクに設定されたトルク制限(設定されたトルクに到達したらプレスモータ3の回転を停止させる制御)に切り替える。ここでの低トルクは、移動定盤1を上昇させるために必要なトルクであって、移動定盤1が何かに突き当たると、それ以上に移動定盤1を移動させることができない程度のトルクである。移動定盤1が水平調整治具50のスペーサー52に接触したときに停止するように、少なくとも接触直前には極低トルクで回転させる。そして、停止した位置を水平基準位置として記憶する。
【0064】
水平出し調整では、四つの円柱部10が上死点となる回転位置を目標として対応する四つの昇降伝達機構4のそれぞれのプレスモータ3を回転駆動させる。
しかし、低トルクのトルク制限の制御では、移動定盤1の上面が水平調整治具50のスペーサー52に接触し、スペーサー52を介して固定定盤2の下面に突き当たると、円柱部10が上死点となる回転位置に到達していなくても、プレスモータ3の回転が停止して、位置偏差エラーとなる例えば、円柱部10が下死点から上死点まで移動するように昇降伝達機構4を駆動させたときのプレスモータ3の駆動パルスが1000パルスであった場合、制御部30は、1000パルスを目標としてプレスモータ3を駆動させるが、995パルス駆動時に移動定盤1が突き当たりトルク制限によってプレスモータ3が駆動できなくなると、位置偏差エラーとなる。
【0065】
四つのスペーサー52は高精度に高さが一致しているため、移動定盤1が四つのスペーサー52を介して固定定盤2に突き当たっている状態では、移動定盤1の上面と固定定盤2の下面とが平行な状態となる。このとき、四つのプレスモータ3の回転位置が、移動定盤1の上面と固定定盤2の下面とを平行にできる回転位置であるため、この回転位置を水平基準位置として制御部30の記憶部にそれぞれ記憶する。ここで記憶した水平基準位置に基づいて四つのプレスモータ3の上基準回転位置を設定することで、移動定盤1が上部停止位置に到達したときの移動定盤1の上面と、固定定盤2の下面とを平行な状態に近づけることができる。
【0066】
四つのプレスモータ3が位置偏差エラーで回転が停止し、そのときの回転位置を水平基準位置として記憶した後、少し逆回転させた後、低トルクのトルク制限の制御で、再び正回転させる制御を繰り返してもよい。そして、位置偏差エラーで回転が停止する水平基準位置の情報を四つのプレスモータ3のそれぞれについて複数回分記憶し、プレスモータ3毎に記憶した複数回分の水平基準位置の平均を算出して水平基準位置を設定することで、より適切な水平基準位置の情報を取得することができる。
【0067】
切断刃81を含めた抜型8の厚さがスペーサー52の高さよりも大きい場合には、その差分だけ上部停止位置が低くなるように上基準回転位置を設定する。また、切断刃81を含めた抜型8の厚さがスペーサー52の高さよりも小さい場合には、その差分だけ上部停止位置が高くなるように上基準回転位置を設定する。これにより、抜型8を装着して打ち抜き処理を施す際に、抜型8に対する面板9の圧力のバラつきが大きくなることを防止できる。何れの場合であっても、四つのプレスモータ3のそれぞれについて、差し引く、または、加える差分の値は同一である。
【0068】
従来のダイカッターでは、移動定盤と固定定盤との平行度を補正するような水平出しは行われていない。このため、ダイカッターの製造時の組付け誤差、部品誤差または継時使用によって移動定盤と固定定盤との平行度が悪化している場合は、平行度の悪化に起因する抜きムラを補正するようにムラ取り用のシムテープを貼り付ける作業を行うのみで、平行度そのものを改善することは行われていない。このような従来のダイカッターでは、悪化した平行度分も含めてシムテープで補正する必要があり、作業者の作業負担が大きくなるともに、作業者の能力によっては抜きムラを十分に解消できないおそれがある。さらに、悪化した平行度分も含めてシムテープで補正する場合には、毎回同じ位置に多めのシムテープを貼る必要があり、テスト給送の回数が増え、損紙が多くなる。
【0069】
これに対して、本実施形態のダイカッター100では、抜型8を装着する前に、水平出し調整を行うことで、抜型8を装着したテスト給送時に平行度の悪化に起因する抜きムラの発生を防止し、作業者による抜きムラを補正する作業負担の軽減を図ることができる。また、水平出し調整は、制御部30の制御によって行われるため、作業者の能力に寄らず、平行度の悪化に起因する抜きムラを解消できる。さらに、損紙の低減を図ることができる。
【0070】
水平調整治具50としては、抜型8の装着部に装着して移動定盤1の上面と固定定盤2の下面とを平行に調整できるものであればよく、上述した複数のスペーサー52を備える部材に限らず、厚さが均一の板材で形成されたものでもよい。
水平調整治具50を用いた水平出しは、まず、出荷時点で行うことが望ましい。このときの情報が制御部30の記憶部に記憶する。次に、移動中にダイカッター100の状態が変わる可能性があるので設置時に再び水平調整治具50を用いた水平出しを実施する。また、機械の状態は季節、温度によってわずかに変化するので、半年毎、毎月、毎週または毎日など、使用者の判断により必要に応じて水平出しを行う。
【0071】
ダイカッター100は、
図2に示すように手前フレーム5の搬送方向上流側と下流側とに、第一歪センサ26aと第二歪センサ26bとを備える。また、
図3及び
図4に示すように、奥フレーム6の搬送方向上流側と下流側とに、第三歪センサ26cと第四歪センサ26dとを備える。
四つの歪センサ26(26a、26b、26c、26d)は、ダイカッター100のフレームのうち固定定盤2を保持する保持部材である手前フレーム5及び奥フレーム6の上下方向の伸び量を測定する伸び量測定手段である。
測定箇所は、シート材Sの搬送路の両サイドのフレームである手前フレーム5及び奥フレーム6の各々に、搬送方向に離間した複数箇所(本実施形態では二箇所)としている。
【0072】
四つの歪センサ26は、手前フレーム5または奥フレーム6の上端部近傍に固定され、歪センサ26の下方にはそれぞれ歪検出棒27(27a、27b、27c、27d)が配置されている。四つの歪検出棒27の下端部は、手前フレーム5または奥フレーム6の下端近傍の検出棒固定部28(28a、28b、28c、28d)に固定されている。歪検出棒27は、下端部のみが手前フレーム5または奥フレーム6に固定されているため、その上端部の位置は、手前フレーム5や奥フレーム6の変形の影響を受けない。一方、歪センサ26は、手前フレーム5または奥フレーム6の上端部に配置されているため、手前フレーム5や奥フレーム6が伸びると上方に移動して対向する歪検出棒27の上面までの距離が離れ、伸びが解消されると歪センサ26から歪検出棒27の上面までの距離も元に戻る。よって、歪センサ26は、対向配置された歪検出棒27の上面までの距離の変化を測定することで、配置された位置における手前フレーム5や奥フレーム6の伸び量を検出することができる。
【0073】
四つの歪センサ26は、設置された位置における手前フレーム5や奥フレーム6の伸び量を電気信号として検出するものである。制御部30は、歪センサ26の測定結果に基づいて四つのプレスモータ3の駆動をそれぞれ制御可能となっている。
【0074】
ダイカッター100で、シート材Sを打ち抜く瞬間は、上下方向に大きな負荷がかかり、フレームに伸びが生じる。フレームが伸びると、移動定盤1を上部停止位置まで移動させたときの打ち抜き圧が低下し、抜きムラが生じるおそれがある。フレームの伸びはジョブ(抜型8とシート材Sとの組み合わせ等)や調整によって変わるため、調整処理の際に、それぞれの歪センサ26の測定結果に応じて、それぞれのプレスモータ3の上基準回転位置となる回転量を補正する。歪センサ26で測定された伸びが大きいほど、対応するプレスモータ3の上基準回転位置を、円柱部10が上死点となる回転位置に近づける補正を行う。これにより、四隅のうち、打ち抜き時にフレームの伸びが大きくなる箇所では、打ち抜き時の移動定盤1の上部停止位置を高くし、フレームの伸びに起因する打ち抜き圧の低下を予め補正することができる。このため、テスト給送での成果物を作業者が見て抜きムラの補正を行う作業負担を軽減でき、調整時間を短縮できる。
【0075】
伸び量測定手段である歪センサ26は、フレームの上端近傍に固定された歪センサ26と、フレームの下端近傍に固定された歪検出棒27との距離の変動を検出するものである。距離の変動を検出する構成としては、歪センサ26本体に対して回動可能で歪検出棒27の上面に接触する回動レバーを備え、歪センサ26の検出部で回動レバーの角度を検出し、検出角度に基づいて歪センサ26と歪検出棒27との距離の変動を検出する構成とすることができる。また、伸び量測定手段の他の構成としては、フレームの上端と下端近傍との一方に固定された反射型光学式距離センサから、フレームの上端と下端近傍との他方に固定された反射部までの距離を算出する構成としてもよい。さらに、フレームの伸びを測定する伸び量測定手段としては、歪センサ26のような距離センサを用いるものに限らず、フレームに歪ゲージを貼り付けて、フレームの伸びを測定するものでもよい。
【0076】
本実施形態のダイカッター100では、装置の破損や装置寿命の低下を抑制する構成として、制御部30が次のような制御を行う。
すなわち、プレスモータ3を正回転させているときに、歪センサ26が測定した伸び量が、予め設定された変形閾値である安全伸び量以上となったことを検出すると、報知手段として機能する操作パネル101にその旨を表示して報知する。
報知出段としては、操作パネル101に限らず報知用のランプを点灯させる構成としてもよい。また、報知手段としての制御部30が、パーソナルコンピューターやタブレット端末等の外部装置の表示部に表示させる構成としてもよい。
さらに、報知手段で報知するとともに、プレスモータ3の正回転を停止して移動機構による移動定盤1の加圧を停止する構成としてもよい。
【0077】
制御部30の記憶部には、歪センサ26が測定する伸び量の閾値として、「安全伸び量」及び「最大伸び量」(安全伸び量<最大伸び量)が予め設定され、記憶されている。「安全伸び量」は、この値を超える範囲の変形が繰り返されても、短期的な装置の破損や装置寿命の低下に繋がらない伸び量であるが、長期的には装置の破損や装置寿命の低下に繋がるおそれがある変形量である。また、「最大伸び量」は、この値を超える範囲の変形が繰り返されると、短期的に装置の破損が生じる恐れがある変形量である。
【0078】
このため、歪センサ26が測定する伸び量が安全伸び量未満となる範囲では、打ち抜き処理時の繰り返しの変形によって、予め想定された装置寿命に到達するにフレーム(5,6)が損傷することなく、使用を継続できる。また、伸び量が安全伸び量以上、且つ、最大伸び量未満の範囲では、打ち抜き処理時の繰り返しの変形によって、予め想定された装置寿命よりも前にフレーム(5,6)が損傷するおそれがあるものの、短期的には問題なく使用を継続できる。さらに、最大伸び量以上の範囲では、打ち抜き処理時の繰り返しの変形によって、短期的に装置の損傷が生じる恐れがあり、使用を停止する必要がある。
【0079】
制御部30は、伸び量が安全伸び量以上となったことを報知し、作業者に移動定盤1の加圧を停止させるように促す、または、自動的に加圧を停止することにより、装置の破損や装置寿命の低下を抑制できる。
伸び量が安全伸び量以上となったことを報知する制御としては、量産処理時に行ってもよいし、量産処理を実行する前の調整処理時に行ってもよい。
【0080】
さらに、本実施形態のダイカッター100は、調整処理時に歪センサ26の測定結果を用いて、抜きムラが生じにくい状態とする「プレス圧調整処理」を行うことができる。
図2~
図8に示すように、ダイカッター100は、移動定盤1と固定定盤2との距離を測定する定盤間距離測定手段として、固定定盤2の長方形の下面の四つの頂点の近傍に四つの定盤間距離センサ36(36a、36b、36c、36d)を備える。また、移動定盤1の長方形の上面の四つの頂点の近傍であって、四つの定盤間距離センサ36(36a、36b、36c、36d)と対向する位置に、四つの距離センサ反射材37(37a、37b、37c、37d)を備える。定盤間距離センサ36は、反射型の距離センサであり、対向配置された距離センサ反射材37との距離を測定するものである。
図3及び
図4では、定盤間距離センサ36から距離センサ反射材37に向けて照射される測距用のレーザー光を破線矢印で示す。
【0081】
固定定盤2に固定された定盤間距離センサ36から固定定盤2の下面までの距離は一定であり、移動定盤1に固定された距離センサ反射材37から移動定盤1の上面までの距離は一定であるため、四隅の定盤間距離センサ36と距離センサ反射材37との距離を測定することで、四隅の固定定盤2の下面と移動定盤1の上面との間の距離を算出できる。
【0082】
また、
図2~
図4に示すように、打ち抜き部を形成するプレス部フレームである手前フレーム5及び奥フレーム6の搬送方向の両端のそれぞれに位置するように、四つの歪センサ26(26a、26b、26c、26d)が配置されている。
そして、制御部30は、四つのプレスモータ3のそれぞれが加圧する円柱部10に対して、水平方向の距離が最も近い定盤間距離センサ36の検出結果が予め設定された規定距離以下となるか、水平方向の距離が最も近い歪センサ26の検出結果が予め設定された安全伸び量以上となった場合に、プレスモータ3の駆動を停止する制御を行う。
上記規定距離とは、固定定盤2に固定された抜型8の切断刃81がシート材Sを十分に打ち抜くことができる距離である。具体的には、固定定盤2の下面と移動定盤1の上面との距離が、上述した抜型8のシートの厚さと、切断刃81の高さと、面板9の厚さとを足した値と同じか、この値よりもわずかに短くなる距離である。
【0083】
調整処理のテスト給送の際に、シート材Sをプレス位置(移動定盤1と固定定盤2とに挟まれた位置)に停止させた後、量産処理時の打ち抜き動作よりも低速で移動定盤1を上昇させるように、四つのプレスモータ3を正転駆動させる。
【0084】
プレスモータ3の正転駆動開始後、四つの歪センサ26の何れかがフレームが伸び始めたことを検出した時点で、制御部30は、移動定盤1の移動速度がさらに低速となるように四つのプレスモータ3の回転速度をさらに低速に変更する。
低速に変更後も歪センサ26による伸び量の測定を継続し、歪センサ26が測定する伸び量が安全伸び量に到達する前に、定盤間距離センサ36が測定する距離が規定距離に到達した場合は、対応するプレスモータ3の駆動を停止する。第一定盤間距離センサ36aの測定値が規定距離に到達した場合は、第一プレスモータ3aの駆動を停止し、他の定盤間距離センサ36(36b、36c、36d)についても、測定値が規定距離に到達した場合は、対応するプレスモータ3(3b、3c、3d)の駆動を停止する。
【0085】
四つの歪センサ26の何れかの測定値が安全伸び量に到達する前に、四つの定盤間距離センサ36の測定値が規定距離に到達した場合は、移動定盤1の上昇を停止し、このときの四つのプレスモータ3のそれぞれの回転位置を上基準回転位置として記憶する。その後、移動定盤1を下降させ、プレス圧調整処理を終了とする。
【0086】
四つの定盤間距離センサ36の測定値が規定距離に到達する前に、四つの歪センサ26の何れかの測定値が安全伸び量に到達した場合は、操作パネル101に警告する表示を行い、移動定盤1の上昇を停止させる。操作パネル101に安全伸び量に到達した歪センサ26があることを表示した後、作業者によって確認がなされたことを入力されると、プレス圧調整処理を継続するか、プレス圧調整処理を中止するか、を作業者に選択させる画面表示を操作パネル101に表示する。
【0087】
プレス圧調整処理を中止する操作が行われた場合は、制御部30は、移動定盤1を下降し、シート材Sを排出する制御を行い、操作パネル101に正常な打ち抜きができなかったことを報知する画像(エラー表示画像)を表示する。
【0088】
プレス圧調整処理を継続する操作が行われた場合、定盤間距離センサ36の測定値が規定距離に到達していない部分に対応するプレスモータ3の正転駆動を再開して移動定盤1の上昇動作を再開し、歪センサ26による伸び量の測定を継続する。
駆動再開後、定盤間距離センサ36の測定値が規定距離に到達する前に、何れかの歪センサ26の測定値が最大伸び量に到達した場合は、全てのプレスモータ3の駆動を停止して移動定盤1の上昇を停止するともに、操作パネル101にエラー表示画像を表示する。
一方、駆動再開後、歪センサ26の測定値が最大伸び量に到達する前に、定盤間距離センサ36の測定値が規定距離に到達した場合は、対応するプレスモータ3の駆動を停止する。四つの歪センサ26の何れかの測定値が最大伸び量に到達する前に、四つの定盤間距離センサ36の測定値が規定距離に到達した場合は、移動定盤1の上昇を停止し、このときの四つのプレスモータ3のそれぞれの回転位置を上基準回転位置として記憶する。その後、移動定盤1を下降させ、プレス圧調整処理を終了とする。
【0089】
プレス圧調整処理を終了した後は、プレス圧調整処理で記憶された上基準回転位置の設定でテスト給送を行い、必要に応じて、上述した抜き高さ調整やシムテープによるムラ取りを行い、量産処理を実行する。
【0090】
プレス圧調整処理では、プレス部の四隅が切断刃81によってシート材Sを十分に打ち抜くことができる規定距離となるように、四つのプレスモータ3の上基準回転位置を設定できるため、抜き高さ調整やムラ取りは不要、または、大幅に削減することができる。
【0091】
プレス圧調整処理で、安全伸び量に到達した条件で量産処理を実行すると、安全伸び量に到達していない条件よりも、装置寿命が低下するおそれがある。このため、安全伸び量に到達した条件で量産処理を行う場合は、装置の点検等のメンテナンス頻度を高める構成とすることが望ましい。
一例としては、1万回の打ち抜き動作ごとにサービスマンの点検を促す表示を行う構成で、安全伸び量に到達した条件で量産処理を行うときには、一回の打ち抜き動作のカウント値を1.5回とするなど、点検を行うまでの打ち抜き回数を少なくする制御を行う。これにより、長期的には装置の破損や装置寿命の低下に繋がるおそれがある打ち抜き条件であっても、良好に使用を継続することが可能となる。
【0092】
プレス圧調整処理で、何れかの歪センサ26の測定値が安全伸び量に到達した場合に、プレス圧調整処理の中止を選択可能であることで、フレーム(5、6)の伸び量が安全伸び量以上となる打ち抜き動作が量産処理で実行されることを防止でき、装置の破損や装置寿命の低下を抑制できる。
また、プレス圧調整処理で、伸び量が安全伸び量以上となっても移動定盤1の上昇動作を継続することを選択可能であることで、多少の装置寿命の低下を伴っても、打ち抜き処理の実行を望む作業者の要望に応えることができる。
【0093】
プレス圧調整処理で、何れかの歪センサ26の測定値が最大伸び量に到達した場合に、移動定盤1の上昇を停止し、プレス圧調整処理を終了し、歪センサ26の測定値が最大伸び量に到達したことを報知するエラー表示画面を操作パネル101に表示する。これにより、フレーム(5,6)の伸び量が最大伸び量を超える条件で、打ち抜き処理が繰り返し実行されることを防止し、装置が破損することを防止できる。
【0094】
プレス圧調整処理の際には、操作パネル101に、四つの歪センサ26の測定値を表示してもよい。さらに、歪センサ26の測定値から算出できる四隅の加圧量(トン数)を操作パネル101に表示してもよい。
本実施形態では、加圧時変形部材である手前フレーム5及び奥フレーム6の二箇所ずつ、計四箇所に変形量測定手段である歪センサ26を設けている。変形量測定手段で加圧時変形部材の変形量を測定する箇所は、四箇所に限らず二箇所または三箇所、ないしは五箇所以上であってもよく、また、複数箇所に限らず一箇所でもよい。
変形量を測定する箇所が一箇所のみの場合、固定定盤2に対する移動定盤1の複数の加圧部の加圧量の合計に応じて変形量が変化する箇所の変形量を測定する構成が考えられる。この構成では、一部の加圧部の加圧量のみが大きくなって、全体の加圧量が閾値に達していない状態となる可能性があり、このような状態では測定箇所での変形量は小さくなって加圧を停止する制御が行われず、加圧量が大きくなった加圧部の影響を受け易いフレームが破損するおそれがある。
これに対して、本実施形態のように、複数箇所で加圧時変形部材の変形量を測定し、その何れかが安全伸び量以上となったことを報知することにより、複数の加圧部の加圧量の合計が大きくない状態であって、加圧部の一部の加圧量が大きくなっている場合に、装置の破損を防止できる。
【0095】
また、本実施形態では、移動定盤1と固定定盤2とに挟まれる長方形状の打ち抜き部の四つの頂点の近傍に、加圧部である円柱部10と、定盤間距離センサ36と、歪センサ26とをそれぞれ配置している。これにより、打ち抜き部の四隅の定盤間の距離を適切な距離に調整することができる。
また、打ち抜き処理の加圧時の装置への負荷を検出する構成として、プレスモータ3等の駆動源の駆動トルクを測定する構成が考えられる。しかしながら、駆動トルクでは装置の筐体(フレーム)に対する負荷を正確に検出できない恐れがある。これに対して、本実施形態のように、装置の筐体(フレーム)の伸びを測定して装置の負荷を検出する構成であれば、加圧時の装置の筐体(フレーム)に対する負荷を正確に検出できる。
【0096】
プレス圧調整処理で、フレーム(5、6)の変形が始まる前に、定盤間距離センサ36の測定値が規定距離に到達したら、操作パネル101に作業者に対して確認を促す表示をする。これは以下の理由による。
すなわち、加圧部である円柱部10の近傍に切断刃81が配置された条件で、歪センサ26が変形し始めを検出することなく、定盤間距離センサ36の測定値が規定距離に到達した場合は、切断刃81による切断が行われていないか、歪センサ26が故障している恐れがあるためである。
【0097】
プレス圧調整処理を行う構成では、抜型8の厚み(切断刃81の高さ)の測定を不要とする構成も実現可能である。これは以下の理由による。
すなわち、所定の範囲の厚さ(例えば、厚さ10[mm]~12[mm])の抜型8の厚みを測って、それに応じて上部停止位置を調整するのは、シート材Sの切断不良のない確実な切断と装置の損傷防止との両立を図るためである。これに対して、プレス圧調整処理で、フレーム(5,6)に伸びが生じているのは、切断刃81によって面板9が押圧されているためであり、シート材Sは切断不良なく切断されていると考えられる状態である。さらに、この伸びが安全伸び量や最大伸び量未満の範囲であるため、装置の損傷も防止できる。よって、プレス圧調整処理によって調整した状態であれば、抜型8の厚みを測定することなく、シート材Sの確実な切断と装置の損傷防止との両立を図る設定が可能となる。
【0098】
安全伸び量や規定距離について作業者がある範囲内で調整可能とすることで作業者の好み(調整時間の更なる短縮か、抜型8の長期使用か等)に応じた初期調整が可能となる。
【0099】
上述した構成では、プレス圧調整処理で、歪センサ26の測定値が安全伸び量となった場合に、移動定盤1の上昇を一旦停止して、プレス圧調整処理を中止するか、再開するかを選択できる構成について説明した。歪センサ26の測定値が安全伸び量となった場合に、移動定盤1の上昇を停止する構成に限らない。例えば、安全伸び量に到達したときに、操作パネル101の表示や警告ランプの点灯で警告しつつ、移動定盤1の上昇を継続し、四つの定盤間距離センサ36の測定値が規定距離に到達したとき、または、歪センサ26の何れかの測定値が最大伸び量に到達したときに、移動定盤1の上昇を停止する構成としてもよい。このような構成であれば、歪センサ26の測定値が安全伸び量に到達しただけでは装置を停止させないため、調整時間の短縮を図ることができる。
【0100】
板状の被加工物であるシート材Sとしては、普通紙、ボール紙、ラベル紙、厚紙及びコート紙等の紙媒体を挙げることができる。また、本発明に係る打ち抜き装置の加工対象である板状の被加工物としては、紙媒体の他に、OHPシート、フィルム、布帛、樹脂製シート、金属製シート、金属箔やメッキ処理等を施した電子回路基板材、特殊フィルム、プラスチックフィルム、プリプレグ、電子回路基板用シート等を含み、複数枚を重ねた束状でも単枚でも良い。
【0101】
移動定盤を下方に配置し、固定定盤を上方に配置する構成について説明したが、移動定盤を上方に配置し、固定定盤を下方に配置してもよい。さらに、上下に対向する二つの定盤の両方を上下に移動可能な移動定盤として、それぞれ複数(四つ)の昇降駆動源によって接離させる構成としてもよい。
本実施形態のように、移動定盤を下方に配置し、固定定盤を上方に配置する構成では、ある程度重さのある四つのプレスモータ3と、四つの昇降伝達機構4とを装置の低い位置に配置することができ、ダイカッター100の装置の重心を低くできる。
【0102】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
【0103】
〔態様1〕
上下方向に対向配置された移動定盤1等の移動定盤及び固定定盤2等の対向定盤と、移動定盤を対向定盤に向けて上下動させる移動機構と、移動機構を制御する制御部30等の制御手段と、を備え、移動機構が、移動定盤を対向定盤に向けて加圧することで、移動定盤と対向定盤との少なくとも一方に取り付けられた抜型8等の抜型によってシート材S等の被加工物を所定の形状に打ち抜くダイカッター100等の打ち抜き装置において、移動定盤を対向定盤に向けて加圧したときに変形する手前フレーム5及び奥フレーム6等の加圧時変形部材の変形量を測定する歪センサ26等の変形量測定手段と、変形量測定手段が測定した測定変形量が安全伸び量等の変形閾値以上となったことを報知する操作パネル101等の報知手段と、を備えることを特徴とするものである。
これによれば、加圧によって加圧時変形部材に変形閾値以上の変形が生じたことを、作業者に報知することが可能となり、この報知結果に基づいて、作業者が加圧を停止することで、装置の破損や装置寿命の低下を抑制できる。また、制御手段が加圧時変形部材に変形閾値以上の変形が生じたことを作業者に報知するとともに、制御部が加圧を停止する制御を行う構成では、加圧を停止することで装置の破損や装置寿命の低下を抑制できるとともに、停止した理由を作業者に報知することで、打ち抜き処理の条件の変更、または、変形閾値を超えた状態での打ち抜き処理の続行、といった判断を作業者が行うことができる。
【0104】
〔態様2〕
態様1の打ち抜き装置において、加圧時変形部材は、対向定盤を保持する手前フレーム5及び奥フレーム6等の対向定盤保持部材、または、移動定盤を保持するシャフト保持部42及び昇降伝達ロッド43等の移動定盤保持部材であることを特徴とするものである。
これによれば、移動定盤を対向定盤に向けて加圧することによって変形が生じ易い部材の変形を測定し、その損傷を抑制する構成を実現できる。上述した実施形態では、加圧時変形部材が、手前フレーム5及び奥フレーム6の場合について説明したが、これらに限るものではない。例えば、四つの昇降伝達機構4のそれぞれのシャフト保持部42または昇降伝達ロッド43の加圧時の縮み量を測定し、この縮み量が予め設定された変形閾値以上であれば報知手段で報知する構成としてもよい。さらに、加圧時のシャフト保持部42の縮み量と、手前フレーム5及び奥フレーム6の伸び量との両方を測定し、何れかの変形量が変形閾値以上であれば報知手段で報知する構成としてもよい。手前フレーム5及び奥フレーム6のように対向定盤を保持する対向定盤保持部材や、シャフト保持部42等の昇降伝達機構4を構成する部材のように移動定盤を保持する移動定盤保持部材は、加圧時に応力が作用し変形し得る部材である。また、これらの部材に限らず、加圧時に変形する部材であれば、その変形量を測定し、その変形量が変形閾値以上となったときに報知手段で報知する構成であれば、装置の破損や装置寿命の低下を抑制できる。
【0105】
〔態様3〕
態様1または2の打ち抜き装置において、移動機構は、移動定盤における水平方向の位置が互いに異なる四つ等の複数の円柱部10等の加圧部を対向定盤に向けて加圧するものであり、加圧部と同数以上(四つ等)の変形量測定手段を備え、制御手段は、変形量測定手段の一つ(第一歪センサ26a等)が測定した変形量が変形閾値以上となったときに、変形量測定手段に対する水平方向の距離が最も近い加圧部(第一円柱部10a等)における加圧を停止するように移動機構を制御する(第一プレスモータ3aの正転駆動を停止する等)ことを特徴とするものである。
これによれば、圧時の全体の荷重が閾値に到達していなくても、局所的に荷重が高くなっているときに、装置の破損を防止できる。
【0106】
〔態様4〕
態様1乃至3の何れかの打ち抜き装置において、移動定盤と対向定盤との距離を測定する定盤間距離センサ36等の定盤間距離測定手段を備え、移動定盤を対向定盤に向けて加圧したときに定盤間距離測定手段が測定した距離が規定距離等の距離閾値以下となったことを検出すると、移動機構による移動定盤の加圧を停止することを特徴とするものである。
これによれば、移動定盤と対向定盤と間が所望の距離となる状態で移動定盤を停止させることができ、切断不良のない確実な打ち抜きを行うことが可能となる。
上述した実施形態では、調整処理の中のプレス圧調整処理において、定盤間距離測定手段の測定結果に基づいて移動定盤の加圧を停止する構成について説明したが、量産処理時にも定盤間距離測定手段の測定結果に基づいて移動定盤の加圧を停止させてもよい。これにより、量産処理時の過剰な加圧を抑制することができ、装置の損傷や切断刃81の損傷を抑制することができる。
【0107】
〔態様5〕
態様3において、移動定盤と対向定盤との距離を測定する定盤間距離センサ36等の定盤間距離測定手段を加圧部と同数以上(四つ等)備え、制御手段は、定盤間距離測定手段の一つが測定した距離が距離閾値以下となったときに、定盤間距離測定手段に対する水平方向の距離が最も近い加圧部における加圧を停止するように移動機構を制御することを特徴とするものである。
これによれば、定盤間距離測定手段を配置したそれぞれの箇所について、移動定盤と対向定盤と間が所望の距離となる状態で移動定盤を停止させることができ、切断不良のない確実な打ち抜きを行うことが可能となる。
【0108】
〔態様6〕
態様5において、打ち抜き動作での加圧部のそれぞれの加圧量を調整するプレス圧調整処理等の調整処理時に、移動定盤を対向定盤に向けて移動させる加圧を行いながら、変形量測定手段による変形量の測定と、定盤間距離測定手段による距離の測定とを行い、定盤間距離測定手段が測定した測定距離が距離閾値以下となった場合は、加圧を停止して加圧部での加圧量に係る上基準回転位置等の加圧情報を記憶し、測定距離が距離閾値以下となる前に、測定変形量が変形閾値以上となった場合には、加圧部での加圧を停止し、停止した加圧部の加圧を再開するか否かを選択させる表示を行い、加圧を再開する選択がされた場合は加圧を再開し、測定距離が距離閾値以下となったら加圧情報を記憶し、測定距離が距離閾値以下となる前に測定変形量変形閾値よりも大きな最大伸び量等の第二変形閾値以上となった場合は、加圧を停止して前記変形量が第二変形閾値以上となったことを報知することを特徴とするものである。
これによれば、定盤間距離測定手段の測定距離が距離閾値以下となったときの加圧情報を記憶することで、次回の打ち抜き動作の際に記憶した加圧情報に基づいて、移動機構を制御することにより、適切な打ち抜きを行うことができる打ち抜き動作を繰り返し再現することができる。また、変形量が変形閾値以上となって加圧を停止した場合に、停止した加圧部の加圧を再開するか否かを選択可能であることで、多少の装置寿命の低下を伴っても、打ち抜き処理の実行を望む作業者の要望に応えることができる。さらに、変形量が第二変形閾値以上となった場合は、加圧を停止して変形量が第二変形閾値以上となったことを報知することで、装置が破損することを防止できる。
【0109】
〔態様7〕
態様6において、調整処理時に移動定盤の移動を開始後、変形量測定手段が加圧時変形部材の変形を検知すると、移動定盤の移動速度を遅くすることを特徴とするものである。
これによれば、変形量測定手段によって測定した変形量が、変形閾値や第二変形閾値に到達したときに、速やかに移動定盤を停止させることができ、変形閾値や第二変形閾値を超えてさらに変形することを防止でき、この変形に起因する装置の破損を防止できる。
【0110】
〔態様8〕
態様6または7の打ち抜き装置において、調整処理時には、移動定盤と対向定盤との間に被加工物が位置する状態で、移動定盤を前記対向定盤に向けて移動させ、調整処理時の移動定盤の移動速度は、量産処理時等の連続処理時の打ち抜き動作のときの移動定盤の移動速度よりも遅いことを特徴とするものである。
これによれば、連続処理時の生産性の向上を図りつつ、調整処理時には、速やかに移動定盤を停止させることができ、変形に起因する装置の破損を防止できる。
【0111】
〔態様9〕
態様6乃至8の何れかの打ち抜き装置において、打ち抜き処理の回数を数え、所定の回数に到達したら報知する打ち抜き数到達報知手段(制御部30及び操作パネル101等)を備え、調整処理時に測定変形量が変形閾値以上となった加圧量で加圧する場合は、所定の回数を減ずる(一回の打ち抜き動作のカウント値を1.5回とする等)補正を行うことを特徴とするものである。
これにより、長期的には装置の破損や装置寿命の低下に繋がるおそれがある打ち抜き条件であっても、良好に使用を継続することが可能となる。
【0112】
〔態様10〕
態様3、5乃至9の何れかの打ち抜き装置において、加圧部が、移動定盤の範囲に含まれる長方形の各頂点に位置する配置であることを特徴とするものである。
これによれば、圧時の全体の荷重が閾値に到達していなくても、長方形の四隅の何れかで局所的に荷重が高くなっているときに、装置の破損を防止できる。
【0113】
[態様11]
態様3、5乃至10の何れかの打ち抜き装置において、移動機構は、複数の加圧部をそれぞれ加圧する複数(四つ等)の昇降伝達機構4等の加圧機構と、複数の加圧機構をそれぞれ駆動する複数(四つ等)のプレスモータ3等の駆動源と、を有することを特徴とするものである。
これによれば、制御手段が複数の駆動源を独立して制御することで、複数の加圧部での加圧量をそれぞれ独立して調整可能となり、装置の破損や装置寿命の低下を抑制しつつ、切断不良のない確実な打ち抜きが行える打ち抜き圧の調整が可能となる。
【0114】
[態様12]
態様11の打ち抜き装置において、加圧機構は、駆動源の回転運動を偏心シャフト44等の偏心回転体によって移動定盤の上下運動に変換する偏心回転体駆動伝達機構であり、加圧機構が前記移動定盤を対向定盤に向けて加圧する加圧動作では、加圧部が、偏心回転体駆動伝達機構の死点に到達しない停止位置まで変位することを特徴とするものである。
本態様では、偏心回転体は一回転せず、加圧部は上死点と下死点とで挟まれた範囲で変位する。そして、上述した実施形態のように、上方に配置された対向定盤に向けて移動定盤を上昇させることで加圧する場合は、加圧部は上死点よりも低い位置に設定された上部停止位置まで変位する。また、上述した実施形態とは異なり、下方に配置された対向定盤に向けて移動定盤を下降させることで加圧する場合は、加圧部は下死点よりも高い位置に設定された下部停止位置まで変位する。加圧時の加圧部の停止位置を死点に到達しない位置に設定することで、加圧時の加圧部の停止位置を上下方向で調節することができ、複数の加圧機構のそれぞれについて加圧時の加圧部の停止位置を調節することで、装置の破損や装置寿命の低下を抑制しつつ、切断不良のない確実な打ち抜きが行える打ち抜き圧の調整が可能となる。
【0115】
[態様13]
態様1乃至12の何れかの打ち抜き装置において、移動定盤と対向定盤との間に対して被加工物を搬入及び搬出する搬送下ベルト14及び搬送上ベルト15等の搬送手段を備えることを特徴とするものである。
これによれば、打ち抜き装置への被加工物への搬入及び搬出を自動化した打ち抜き装置で、装置の破損や装置寿命の低下を抑制することができる。
【0116】
[態様14]
態様1乃至13の何れかの打ち抜き装置において、対向定盤は、移動定盤の上方であって装置の筐体に固定された上方固定定盤であることを特徴とするものである。
これによれば、移動定盤を下方に配置することで、移動機構を構成する加圧機構や駆動源を装置内の低い位置に配置することができ、装置の重心を低くできるため、打ち抜き装置の安定した設置が可能になる。
【符号の説明】
【0117】
1 :移動定盤
2 :固定定盤
3 :プレスモータ
3a :第一プレスモータ
4 :昇降伝達機構
4a :第一昇降伝達機構
5 :手前フレーム
6 :奥フレーム
7 :架台フレーム
8 :抜型
9 :面板
10 :円柱部
10a :第一円柱部
11 :上流側被ガイド軸
11a :被ガイドベアリング
12 :下流側被ガイド軸
12a :下流側被ガイドベアリング
13 :ベルト駆動モータ
14 :搬送下ベルト
15 :搬送上ベルト
16 :ベルト駆動伝達機構
17 :型固定レバー
18 :型固定部材
19 :型突き当て板
21 :上流ガイドフレーム
22 :上流側ガイド部
22a :上流側ガイドレール
23 :下流ガイドフレーム
24 :下流側ガイド部
24a :下流側ガイドレール
25 :後端検知センサ
26 :歪センサ
26a :第一歪センサ
26b :第二歪センサ
26c :第三歪センサ
26d :第四歪センサ
27 :歪検出棒
28 :検出棒固定部
30 :制御部
31 :回転出力ギヤ
36 :定盤間距離センサ
36a :第一定盤間距離センサ
37 :距離センサ反射材
41 :回転入力ギヤ
42 :シャフト保持部
43 :昇降伝達ロッド
44 :偏心シャフト
50 :水平調整治具
51 :治具本体板部
52 :スペーサー
81 :切断刃
82 :ステンレス板
83 :シムテープ
100 :ダイカッター
101 :操作パネル
200 :シートフィーダー
300 :レジスト装置
400 :排出処理装置
441 :回転軸部
442 :偏心軸部
500 :ダイカットシステム
H :上下可動範囲
S :シート材