(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】保護材
(51)【国際特許分類】
E04B 1/98 20060101AFI20240422BHJP
【FI】
E04B1/98 V
E04B1/98 Y
(21)【出願番号】P 2019219267
(22)【出願日】2019-12-04
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000106955
【氏名又は名称】シバタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101409
【氏名又は名称】葛西 泰二
(74)【代理人】
【氏名又は名称】葛西 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100175662
【氏名又は名称】山本 英明
(72)【発明者】
【氏名】西村 佳樹
(72)【発明者】
【氏名】織田 朋哉
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-351323(JP,A)
【文献】特開2017-179723(JP,A)
【文献】特開平05-125820(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0057871(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の上面に設置されて、重量物が載置される保護材であって、
金属板より成
り、上面に前記重量物が載置される第1層と、前記第1層の下側に配置され
、下面が前記構造物に接触する弾性材から成る第2層とを有
し、前記第1層が前記重量物の荷重を受け、分散させた分散力として前記第2層に伝達し、
前記第1層は、前記第1層及び前記第2層を貫通して下方へ突出するアンカー突起を更に有し、
前記アンカー突起は、前記構造物の上面から下方へ向けて形成された取付穴に挿入可能であり、
前記アンカー突起の突出長さは、前記取付穴の深さ未満であり、前記保護材に前記重量物の荷重が加わったときに、前記第2層が弾性的に圧縮変形して前記第1層が降下するのに支障を与えない長さである、保護材。
【請求項2】
構造物の上面に設置されて、重量物が載置される保護材であって、
金属板より成り、上面に前記重量物が載置される第1層と、前記第1層の下側に配置され、下面が前記構造物に接触する弾性材から成る第2層とを有し、前記第1層が前記重量物の荷重を受け、分散させた分散力として前記第2層に伝達し、
前記第1層及び前記第2層は、前記構造物の上面に突出するように設けられた係止突起を挿入させるための貫通孔を更に有し、
前記貫通孔の軸方向の長さは、前記係止突起における前記構造物の上面からの突出長さよりも長く、前記保護材に前記重量物の荷重が加わって、前記第1層が降下したときに、前記係止突起が前記第1層の上面に突出するのが防止される長さである、保護材。
【請求項3】
前記第1層の曲げ強さが400N/mm
2以上である、請求項
1又は請求項2記載の保護材。
【請求項4】
前記第1層の上面は平坦面である、請求項1から請求項3のいずれかに記載の保護材
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貨物コンテナ等の重量物が載置される構造物の上面に設置して、重量物による衝撃や荷重から構造物を保護するための保護材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
岸壁の上面に設けられるコンテナヤードでは、貨物コンテナの積み下ろしが頻繁に行われ、又、状況により同一箇所に貨物コンテナが長期間放置されることがある。貨物コンテナは重量物であるため、これをコンテナヤードに載置する際、降下による衝撃を岸壁の上面が受ける。又、貨物コンテナを同一箇所に長時間放置した場合は、岸壁の上面に荷重が継続的に作用する。このため、貨物コンテナ等の重量物を岸壁へ直に載置すると、岸壁の上面がひび割れたり欠損したりする等の損傷を受けるおそれがある。
【0003】
そこで従来、衝撃や荷重で岸壁が損傷を受けるのを防止するため、岸壁の上面と重量物との間に保護材を配置することが行われている。
【0004】
図4は従来の保護材の設置状況を示す斜視図であり、
図5は従来の保護材の一部の断面図である。
【0005】
図4に示すように、重量物Wが貨物コンテナのような脚部を有するものの場合、通常、保護材Qは岸壁等の構造物Rの上面に脚部の配置に合わせて設置される。
【0006】
重量物からの衝撃や荷重を支承する部材としては、特許文献1に記載の支承ブロックや、特許文献2に記載の支承材等のように、弾性材を主体とし、内部に布や不織布等の繊維質の補強材を埋設した構成のものが知られている。
【0007】
コンテナヤードに設置される貨物コンテナ用の保護材Qとしては、上記のものや鋼板等の金属板のみからなるものの外、
図5に示すような、弾性材から成る板状体11における下面寄りに、鋼板等の金属板12を埋設した構造のものが使用されることがある。このような構造の保護材Qは一般に、構造物Rへの取り付け用として、凹部13とこの凹部13の底部を貫通する貫通孔14とが形成される。この保護材Qの取り付けは、構造物Rに埋設したアンカーボルト21を貫通孔14に挿通させ、凹部13内へ突出させたアンカーボルト21の頭部にナット22を螺合させて締め付けるという構造が採用される。尚、この取付構造は、弾性材の内部に繊維質の補強材を埋設した構造の保護材にも適用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】実公平3-28994号公報
【文献】特開平10-140524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図6は、従来の保護材の問題点を説明する断面図である。
【0010】
例えば、重量物と岸壁との間に設置する保護材が金属板のみから成る場合、重量物を載置したときの衝撃は金属板によって或る程度分散するものの緩和されることがないので、衝撃が岸壁へ直接的に伝達され、岸壁の上面が損傷を受ける可能性が高い。又、アンカーボルトを使用して金属板を構造物へ取り付ける構造の場合、金属板の表面にアンカーボルトの頭部が突出することになるため、重量物を載置する際、アンカーボルトの頭部の位置を避けなくてはならず、重量物の設置作業が制限を受けるという問題がある。
【0011】
保護材が、
図5に示すような、弾性材より成る板状体11の内部に金属板12を埋設した構造の場合は、重量物を載置したときの衝撃は弾性材がこれを吸収して緩和することができる。しかし、
図6に示すように、重量物を載置したままの状態で長期間放置した場合は、重量物の荷重Fにより板状体11が局所的に弾性圧縮される状態が長時間継続することになる。その結果、板状体11に、荷重Fで拘束される部位と、荷重Fの影響をあまり受けず変位可能な部位とが生じ、この変位可能な部位が圧縮による応力によって変形する。特に板状体11の辺縁部は動きの自由度が大きいので、
図6に仮想線で示すように、金属板12と共に、構造物Rから浮き上がる方向に湾曲するという問題を生じさせる。この問題に対処するため、従来の金属板を埋設した構造の保護材Qでは、アンカーボルトに対する固定強度を高める必要があった。又、
図5に示す保護材Qのようにアンカーボルト21とナット22とで固定する構造のものでは、アンカーボルト21の頭部及びナット22を収納するための凹部13を板状体11に形成する必要があり、板状体11の上面を均一な平坦面にできないという問題がある。凹部13をゴム材や合成樹脂で充填することもできるが、この場合は施工作業の工数が増えるという問題、及び、保護材の交換時に充填したゴム材や合成樹脂を除去する作業が必要になるという問題がある。
【0012】
繊維質の補強材を埋設した構造の保護材は、上記の保護材より剛性が低いから、重量物を載置したときに板状体の辺縁部が浮き上がる問題がより顕著に生じる。又、固定のためにアンカーボルト及びナットを用いることによる上記と同様の問題を有している。
【0013】
本発明の目的は、重量物を載置したときの衝撃から構造物を確実に保護できると共に、長期間荷重が作用しても変形を生じさせることのない保護材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、構造物の上面に設置されて、重量物が載置される保護材であって、金属板より成り、上面に重量物が載置される第1層と、第1層の下側に配置され、下面が構造物に接触する弾性材から成る第2層とを有し、第1層が重量物の荷重を受け、分散させた分散力として第2層に伝達し、第1層は、第1層及び第2層を貫通して下方へ突出するアンカー突起を更に有し、アンカー突起は、構造物の上面から下方へ向けて形成された取付穴に挿入可能であり、アンカー突起の突出長さは、取付穴の深さ未満であり、保護材に重量物の荷重が加わったときに、第2層が弾性的に圧縮変形して第1層が降下するのに支障を与えない長さであるものである。
【0015】
このように構成すると、岸壁等の構造物の上面に保護材を設置し、その上に貨物コンテナ等の重量物を載置したとき、金属板の第1層が荷重を受け、これを分散させて弾性材から成る第2層に伝達し、第2層が弾性変形する。重量物を保護材に載置したときに加わる衝撃は、第2層が弾性変形することで吸収し、構造物への伝達を緩和する。又、保護材の下面から突出するアンカー突起を、構造物に形成した取付穴内に挿入することにより、保護材が構造物の上面に位置移動しないよう設置される。アンカー突起の突出長さは取付穴の深さ未満であるから、保護材に重量物の荷重が加わったときに、第2層が弾性的に圧縮変形して第1層が降下するのに支障を与えない。
請求項2記載の発明は、構造物の上面に設置されて、重量物が載置される保護材であって、金属板より成り、上面に重量物が載置される第1層と、第1層の下側に配置され、下面が構造物に接触する弾性材から成る第2層とを有し、第1層が重量物の荷重を受け、分散させた分散力として第2層に伝達し、第1層及び第2層は、構造物の上面に突出するように設けられた係止突起を挿入させるための貫通孔を更に有し、貫通孔の軸方向の長さは、係止突起における構造物の上面からの突出長さよりも長く、保護材に重量物の荷重が加わって、第1層が降下したときに、係止突起が第1層の上面に突出するのが防止される長さであるものである。
このように構成すると、岸壁等の構造物の上面に保護材を設置し、その上に貨物コンテナ等の重量物を載置したとき、金属板の第1層が荷重を受け、これを分散させて弾性材から成る第2層に伝達し、第2層が弾性変形する。重量物を保護材に載置したときに加わる衝撃は、第2層が弾性変形することで吸収し、構造物への伝達を緩和する。又、貫通孔に係止突起を挿入させることで、保護材が構造物の上面に位置移動しないように設置される。貫通孔の軸方向の長さは係止突起の突出長さより大きいから、保護材に重量物の荷重が加わって、第2層が弾性的に圧縮変形して第1層が降下したときに、係止突起が第1層の上面に突出するのが防止される。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の構成において、第1層の曲げ強さが400N/mm2以上であるものである。
【0017】
このように構成すると、第1層は400N/mm2以上の曲げ強さを備えるので、コンテナ等の重量物を載置したとき、及び載置状態が継続したときに、変形を生じない。曲げ強さが400N/mm2未満であると、重量物を載置したときに、第2層の弾性変形に合わせて、変形する可能性が有る。
【0020】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明の構成において、第1層の上面は平坦面であるものである。
【0021】
このように構成すると、保護材の上面が凹凸の無い平坦面に形成される。
【発明の効果】
【0024】
請求項1記載の発明によれば、コンテナ等の重量物を載置したときの衝撃を第2層が弾性変形することにより吸収するから、岸壁等の構造物を傷つけたり破損したりすることがない。重量物が接触する第1層は金属板から成るので、耐摩耗性、耐衝撃性に優れる。又、第1層が重量物の荷重を分散させ、第2層を均等に弾性変形させるため、局所的な変形が生じにくいので、保護材の長期使用が可能である。又、取付穴にアンカー突起を挿入させるだけで保護材を構造物に設置できるので、施工が容易である。
請求項2記載の発明によれば、コンテナ等の重量物を載置したときの衝撃を第2層が弾性変形することにより吸収するから、岸壁等の構造物を傷つけたり破損したりすることがない。重量物が接触する第1層は金属板から成るので、耐摩耗性、耐衝撃性に優れる。又、第1層が重量物の荷重を分散させ、第2層を均等に弾性変形させるため、局所的な変形が生じにくいので、保護材の長期使用が可能である。又、貫通孔に係止突起を挿入させるだけで保護材を設置できるので、施工が容易である。
【0025】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加えて、第1層がコンテナ等の重量物を載置したときに変形しないので、岸壁等の構造物の損傷を確実に防止できる。
【0027】
請求項4記載の発明によれば、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、保護材の上面が平坦なので、重量物を保護材の上面の任意の位置に支障なく載置することができるから、作業性が良い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1A】本発明の第1の実施の形態による保護材の施工手順を示すものであって、保護材にアンカー突起を取り付ける要領を示す斜視図である。
【
図1B】本発明の第1の実施の形態による保護材の施工手順を示すものであって、保護材に取り付けたアンカー突起を、構造物に形成した取付穴に挿入する要領を示す斜視図である。
【
図1C】本発明の第1の実施の形態による保護材の設置状況を示す斜視図である。
【
図2A】本発明の第2の実施の形態による保護材の施工手順を示すものであって、構造物に係止突起を埋設する要領を示す斜視図である。
【
図2B】本発明の第2の実施の形態による保護材の施工手順を示すものであって、構造物の上面から突出する係止突起を、保護材に形成した貫通孔に挿入させる要領を示す斜視図である。
【
図2C】本発明の第2の実施の形態による保護材の設置状況を示す斜視図である。
【
図3】本発明の他の実施形態による保護材の設置状況を示す斜視図である。
【
図4】従来の保護材の設置状況を示す斜視図である。
【
図6】従来の保護材の問題点を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[第1の実施の形態]
図1Aは本発明の第1の実施の形態による保護材の施工手順を示すものであって、保護材にアンカー突起を取り付ける要領を示す斜視図であり、
図1Bは本発明の第1の実施の形態による保護材の施工手順を示すものであって、保護材に取り付けたアンカー突起を、構造物に形成した取付穴に挿入する要領を示す斜視図であり、
図1Cは本発明の第1の実施の形態による保護材の設置状況を示す斜視図であり、
図1Dは
図1Cに示す保護材の一部の断面図である。
【0031】
本例の保護材P1は、岸壁の上面に設けられたコンテナヤードに設置することを想定しているが、重量物が載置されるものであれば、対象とする構造物の種類は特に限定されない。又、本例では、
図4に示すように、保護材P1の設置状況として、重量物の底面の4隅に配置される場合を想定している。
【0032】
保護材P1は、金属板より成る第1層1と、第1層1の下側に配置される弾性材から成る第2層2とを有する。更に、第1層1に取り付けられ、第2層2を貫通して下方へ突出するアンカー突起3を有する。
【0033】
第1層1を構成する金属板は、ステンレス鋼板(例えばSS400)や鉄板等を使用できる。
【0034】
又、第1層1の曲げ強さは400N/mm2以上であることが望ましい。曲げ強さをこのように設定することにより、貨物コンテナ等の重量物を載置したとき、及び載置状態が継続したときに、第1層に変形を生じさせず、岸壁等の構造物の損傷を確実に防止することができる。曲げ強さが400N/mm2未満であると、重量物を載置したときに、第2層2の弾性変形に合わせて、第1層1が湾曲等の変形を生じさせる可能性が有る。
【0035】
第2層2は、弾性材から成り、ゴムや、ポリウレタン、ポリエチレン等の合成樹脂が使用される。第2層の望ましい物性は、引っ張り強さが16MPa以上、伸びが350%以上を有することである。
【0036】
尚、保護材全体の厚みは20~30mm、第1層の厚みは10~15mm、第2層の厚みは10~20mmの範囲に設定するのが好ましい。
【0037】
アンカー突起3は、第1層1と同種又は異なる種類の金属棒、或いは合成樹脂性の棒体が使用される。アンカー突起3を第1層1に固定する手段は、本例では
図1Dに示すように、第1層1の適所にネジ孔1aを形成すると共に、第2層2にネジ孔1aに連通する貫通孔2aを形成し、ネジ孔1aにアンカー突起3の頭部に形成した雄ネジ部3aを螺合させる構造が採用される。或いは、アンカー突起3を溶接や接着剤で第1層1に固定することも可能である。このとき、アンカー突起3の頭部は、第1層1の上面と面一であるか、又は、少なくとも突出しないことが望ましい。第1層の上面が突出部を持たないか又は平坦面に形成されることにより、重量物を保護材P1の上面の任意の位置に支障なく載置することが可能となる。更に、第1層の上面を凹凸の無い平坦面とすれば、ゴミ等が溜まるのを防止できる。
【0038】
アンカー突起3は、
図1Dに示すように、構造物Rの上面から下方へ向けて形成された取付穴4に挿入可能であり、第2層2の下面からの突出長さは、取付穴4の深さ未満に設定される。これは、保護材P1に重量物の荷重が加わったときに、第2層2が弾性的に圧縮変形して第1層1が降下するのを許容するためである。
【0039】
次に、本例の保護材P1の施工手順を説明する。まず始めに、構造物Rの上面における保護材P1の設置予定箇所に墨出し作業を行う。これは、アンカー突起3を取り付ける前の保護材P1を設置予定箇所に仮置きし、ネジ孔1a及び貫通孔2aを通じて塗料等を構造物Rの上面に塗布することにより、取付穴4を形成する位置をマーキングすることで実行される。続いて、構造物Rの上面におけるマーキングした位置に、ドリル等で穿孔して取付穴4を形成する。他方、保護材P1のネジ孔1aにアンカー突起3の雄ネジ部3aを螺合させて、アンカー突起3を取り付ける(
図1A参照)。引き続き、アンカー突起3を構造物Rに形成した取付穴4に挿入する(
図1B参照)ことで、所定箇所に保護材P1が設置される(
図1C参照)。
【0040】
このようにして設置される保護材P1は、取付穴4にアンカー突起3を挿入させるだけで構造物Rに設置できるので施工が非常に容易であり、交換や補修等の必要に応じて取り外すのも簡単である。アンカー突起3を取付穴4内に挿入することにより、構造物Rの上面に対し位置移動するのが阻止される。又、
図1Dに示すように、アンカー突起3の突出長さは取付穴4の深さ未満に設定されているので、保護材P1に重量物の荷重が加わったときに、第2層2が弾性的に圧縮変形して第1層が降下するのに支障を与えない。従って、保護材P1に貨物コンテナ等の重量物を載置したときに加わる衝撃を、第2層2が弾性変形することで確実に吸収し、構造物Rへの伝達を緩和する。
【0041】
又、保護材P1の上に重量物を載置した状態が継続した場合に、保護材P1に作用する荷重Fは、先ず金属板の第1層1が受け、これをほぼ均一に分散させた分散力fとして弾性材から成る第2層2に伝達し、第2層をほぼ均等に弾性変形させる。従って、第2層の局所的な変形が生じにくいので、辺縁部における浮き上がり等や湾曲等の変形が生じにくく、長期的な使用が可能である。
【0042】
重量物が接触する第1層は、剛性が高い金属板から成るので、耐摩耗性、耐衝撃性に優れると共に、弾性材から成る第2層を保護するので、長期にわたる使用が可能である。
【0043】
構造物に接触する第2層は弾性体から成るので、構造物上面の摩耗を防止することができる。
【0044】
このように本例の保護材P1は、重量物を載置したときの衝撃や荷重を緩和して、岸壁等の構造物が損傷するのを確実に防止する。
【0045】
[第2の実施の形態]
図2Aは本発明の第2の実施の形態による保護材の施工手順を示すものであって、構造物に係止突起を埋設する要領を示す斜視図であり、
図2Bは本発明の第2の実施の形態による保護材の施工手順を示すものであって、構造物の上面から突出する係止突起を、保護材に形成した貫通孔に挿入させる要領を示す斜視図であり、
図2Cは本発明の第2の実施の形態による保護材の設置状況を示す斜視図であり、
図2Dは
図2Cに示す保護材の一部の断面図である。
【0046】
本例の保護材P2の第1層1及び第2層2の材質等は、第1の実施の形態と共通である。本例では、第1層1及び第2層2に貫通孔7を形成し、これに構造物の上面に突出するように設けた係止突起5を挿入させる構成としたところを特色とする。
【0047】
係止突起5は、第1層1と同種又は異なる種類の金属棒、或いは合成樹脂性の棒体が使用される。或いは例えばアンカーボルトが使用され、その一部が上面から突出するように構造体Rに埋設される。具体的には、構造体Rの施工時に係止突起5を埋設してもよく、既設の構造体Rに取付穴を穿設して埋設してもよい。
【0048】
本例の保護材はP2は、第1層1及び第2層2を貫通させて形成した貫通孔7に、構造物Rにその一部が上面から突出するように埋設した係止突起5を挿通させることで、構造物Rに対して位置移動が生じないように設置される。又、保護材P2に重量物の荷重が加わったときに、第2層2が弾性的に圧縮変形して第1層1が降下するのが許容される。
【0049】
尚、
図2Dに示すように、貫通孔7の軸方向の長さは、係止突起5における構造物Rの上面からの突出長さよりも長く設定される。これにより、保護材P2に重量物の荷重が加わって第1層1が降下したときに、係止突起5が第1層1の上面に突出するのが防止される。
【0050】
次に、本例の保護材P2の施工手順を説明する。係止突起を既設の構造物に後から埋設する場合は、まず始めに、構造物Rの上面における保護材P2の設置予定箇所に墨出し作業を行う。これは、保護材P2を設置予定箇所に仮置きし、貫通孔7を通じて塗料等を構造物Rの上面に塗布することにより、取付穴6を形成する位置をマーキングすることで実行される。続いて、構造物Rの上面におけるマーキングした位置に、ドリル等で穿孔して取付穴6を形成する(
図2A参照)。そして、この取付孔6に係止突起5を、その一部が構造物Rの上面から突出するように、構造物Rに埋設する(
図2B参照)。引き続き、保護材P2の貫通孔7に係止突起5を挿入させることで、所定箇所に保護材P2が設置される(
図2C参照)。
【0051】
このようにして設置される保護材P2は、貫通孔7に係止突起5を挿入させるだけで構造物Rに設置できるので施工が非常に容易であり、交換や補修等の必要に応じ取り外すのも簡単である。係止突起5が貫通孔7内に挿入されることにより、保護材P2が構造物Rの上面に対し位置移動するのが阻止される。又、
図2Dに示すように、係止突起5の突出長さは貫通孔7の軸方向長さ未満に設定されているので、第1層1の表面に突出部分が形成されないから、重量物を保護材P2の任意の位置に載置することが可能である。係止突起5は貫通孔7内を自由に軸方向移動できるので、保護材P2に重量物の荷重が加わったときに、第2層2が弾性的に圧縮変形して第1層1が降下するのに支障を与えない。従って、保護材P2に貨物コンテナ等の重量物を載置したときに加わる衝撃を、第2層2が弾性変形することで確実に吸収し、構造物Rへの伝達を緩和する。
【0052】
又、保護材P2の上に重量物を載置した状態が継続した場合に、保護材P2に作用する荷重は、先ず金属板の第1層1が受け、これをほぼ均一に分散させた分散力として弾性材から成る第2層2に伝達され、第2層2をほぼ均等に弾性変形させる。従って、第2層2の局所的な変形が生じにくいので、辺縁部における浮き上がり等や湾曲等の変形が生じにくく、長期的な使用が可能である。
【0053】
重量物が接触する第1層は、剛性が高い金属板から成るので、耐摩耗性、耐衝撃性に優れると共に、弾性材から成る第2層を保護するので、長期にわたる使用が可能である。
【0054】
構造物に接触する第2層は弾性体から成るので、構造物上面の摩耗を防止することができる。
【0055】
このように本例の保護材P2は、重量物を載置したときの衝撃や荷重を緩和して、岸壁等の構造物が損傷するのを確実に防止する。
【0056】
[その他の実施の形態]
図3は、本発明の他の実施形態による保護材の設置状況を示す斜視図である。
【0057】
保護材の寸法等は、実施の状況に応じ適宜変更できる。例えば
図3の(A)に示すように、貨物コンテナ等の重量物Wに対し、両端の2箇所に配置する態様の保護材P3とすることが考えられる。更に、
図3の(B)に示すように、重量物Wの底面全体の面積に対応し得る大きさの保護材P4とすることもできる。
【0058】
更に、重量物1個当たりの保護材の使用個数は、例えばより大型の重量物の場合、
図4に示す4個に限定されるものではなく、6個、又は8個以上を使用することもできる。
【0059】
更に、保護材の平面形状は、図面に例示した矩形以外に、円形や、六角形等の多角形状とすることもできる。円形の場合、保護材の中心部の一箇所のみを、アンカー突起又は係止突起で取り付けることが考えられる。
【符号の説明】
【0060】
P1…保護材
P2…保護材
P3…保護材
P4…保護材
Q…保護材(従来)
R…構造物
W…重量物
1…第1層
1a…ネジ孔
2…第2層
2a…貫通孔
3…アンカー突起
3a…雄ネジ部
4…取付穴
5…係止突起
6…取付穴
7…貫通孔
11…板状体
12…金属板
13…凹部
14…貫通孔
21…アンカーボルト
22…ナット
F…荷重
f…分散力
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。