(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】バルブ装置およびその制御装置を用いた制御方法、流体制御装置および半導体製造装置
(51)【国際特許分類】
F16K 31/02 20060101AFI20240422BHJP
F16K 37/00 20060101ALI20240422BHJP
G05D 7/06 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
F16K31/02 A
F16K37/00 D
G05D7/06 Z
(21)【出願番号】P 2019555258
(86)(22)【出願日】2018-11-12
(86)【国際出願番号】 JP2018041776
(87)【国際公開番号】W WO2019102882
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-10-18
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2017225586
(32)【優先日】2017-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】110002893
【氏名又は名称】弁理士法人KEN知財総合事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝本 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 俊英
(72)【発明者】
【氏名】近藤 研太
(72)【発明者】
【氏名】土肥 亮介
(72)【発明者】
【氏名】西野 功二
【合議体】
【審判長】窪田 治彦
【審判官】村上 聡
【審判官】西 秀隆
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-288782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流通する流路を開閉する弁体と、
前記弁体に前記流路を開放させる開位置及び前記弁体に前記流路を閉塞させる閉位置の間を移動可能に設けられ、前記弁体を開閉操作する操作部材と、
前記
操作部材を前記
閉位置の方向に付勢する付勢手段と、
操作ガスで駆動されるピストンを用いて前記
操作部材を前記付勢手段の付勢力に抗して
前記開位置の方向に移動させる主アクチュエータと、
前記操作部材を当接させて前記開位置を規制するアクチュエータ受けと、
圧電素子を伸縮させて前記アクチュエータ受けの位置を調整することにより、前記流路の開放時における開度を調整する調整機構と、を有し、
前記圧電素子は、
前記開度の調整前に前記主アクチュエータの駆動力
によって前記操作部材が前記アクチュエータ受けに当接すると、押圧力を受けて電圧を発生するように構成され、
前記圧電素子が発生する
前記電圧または当該電圧に基づく信号を出力可能に形成されている、バルブ装置。
【請求項2】
バルブ装置の制御装置であって、
前記バルブ装置は、
流体の流通する流路を開閉する弁体と、
前記弁体に前記流路を開放させる開位置及び前記弁体に前記流路を閉塞させる閉位置の間を移動可能に設けられ、前記弁体を開閉操作する操作部材と、
前記
操作部材を前記
閉位置の方向に付勢する付勢手段と、
操作ガスで駆動されるピストンを用いて前記
操作部材を前記付勢手段の付勢力に抗して
前記開位置の方向に移動させる主アクチュエータと、
前記操作部材を当接させて前記開位置を規制するアクチュエータ受けと、
圧電素子を伸縮させて前記アクチュエータ受けの位置を調整することにより、前記流路の開放時における開度を調整する調整機構と、を有し、
前記圧電素子は、
前記開度の調整前に前記主アクチュエータの駆動力
によって前記操作部材が前記アクチュエータ受けに当接すると、押圧力を受けて電圧を発生するように構成され、
前記制御装置は、
前記圧電素子が発生する
前記電圧に基づいて、前記流路の開閉状態を検出する検出部と、
前記検出部の検出信号を利用して前記バルブ装置を制御する制御部と、
を有する制御装置。
【請求項3】
バルブ装置の制御方法であって、
前記バルブ装置は、
流体の流通する流路を開閉する弁体と、
前記弁体に前記流路を開放させる開位置及び前記弁体に前記流路を閉塞させる閉位置の間を移動可能に設けられ、前記弁体を開閉操作する操作部材と、
前記
操作部材を前記
閉位置の方向に付勢する付勢手段と、
操作ガスで駆動されるピストンを用いて前記
操作部材を前記付勢手段の付勢力に抗して
前記開位置の方向に移動させる主アクチュエータと、
前記操作部材を当接させて前記開位置を規制するアクチュエータ受けと、
圧電素子を伸縮させて前記アクチュエータ受けの位置を調整することにより、前記流路の開放時における開度を調整する調整機構と、を有し、
前記圧電素子は、
前記開度の調整前に前記主アクチュエータの駆動力
によって前記操作部材が前記アクチュエータ受けに当接すると、押圧力を受けて電圧を発生するように構成され、
前記制御方法は、
前記圧電素子が発生する電圧に基づいて、前記流路の開閉状態を検出し、
検出した検出信号を利用して前記バルブ装置を制御する、バルブ装置の制御方法。
【請求項4】
請求項2の制御装置を用いて、流体の流量を制御する流量制御方法。
【請求項5】
複数の流体機器が配列された流体制御装置であって、
前記複数の流体機器は、請求項1に記載のバルブ装置を含む、流体制御装置。
【請求項6】
密閉されたチャンバ内においてプロセスガスによる処理工程を要する半導体装置の製造プロセスにおいて、前記プロセスガスの流量制御に請求項2の制御装置を用いる半導体製造方法。
【請求項7】
密閉されたチャンバ内においてプロセスガスによる処理工程を要する半導体装置の製造プロセスにおいて、前記プロセスガスの制御に請求項2の制御装置を用いる半導体製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ装置およびその制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスにおいては、正確に計量した処理ガスを処理チャンバに供給するために、開閉バルブ、レギュレータ、マスフローコントローラ等の各種の流体機器を集積化した集積化ガスシステムと呼ばれる流体制御装置が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-64333号公報
【文献】特開2011-154433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
各種製造プロセスにおけるプロセスガスの供給制御には、より高い応答性が求められており、流体制御装置をできるだけ小型化、集積化して、流体の供給先であるプロセスチャンバのより近くに設置する必要がある。
上記したような流体制御装置で使用されるバルブ装置は、特許文献2等に開示されているように、リミットスイッチを用いてバルブの開閉状態を検出していた。
リミットスイッチを用いて開閉状態を検出するバルブ装置を半導体製造装置に用いると、半導体製造装置の小型化が妨げられる。
【0005】
本発明の目的の一つは、リミットスイッチを使用せずにバルブの開閉状態を検出可能なバルブ装置およびその制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るバルブ装置は、流体の流通する流路を開閉する弁体と、
前記弁体を前記流路の閉鎖方向に付勢する付勢手段と、
前記弁体を前記付勢手段の付勢力に抗して移動させる主アクチュエータと、
前記弁体による前記流路の開度を調整するための圧電素子を利用した調整機構と、を有し、
前記圧電素子が発生する電圧または当該電圧に基づく信号を出力可能に形成されている。
【0007】
本発明の制御装置は、バルブ装置の制御装置であって、
前記バルブ装置は、
流体の流通する流路を開閉する弁体と、
前記弁体を前記流路の閉鎖方向に付勢する付勢手段と、
前記弁体を前記付勢手段の付勢力に抗して移動させるアクチュエータと、
前記弁体による前記流路の開度を調整するための圧電素子を利用した調整機構と、を有し、
前記圧電素子が発生する電圧に基づいて、前記流路の開閉状態を検出する検出部と、
前記検出部の検出信号を利用して前記バルブ装置を制御する制御部と、
を有する。
【0008】
本発明の制御方法は、バルブ装置の制御方法であって、
前記バルブ装置は、
流体の流通する流路を開閉する弁体と、
前記弁体を前記流路の閉鎖方向に付勢する付勢手段と、
前記弁体を前記付勢力に抗して駆動するアクチュエータと、
前記弁体による前記流路の開度を調整するための圧電素子を利用した調整機構と、を有し、
前記圧電素子が発生する電圧に基づいて、前記流路の開閉状態を検出し、
検出した検出信号を利用して前記バルブ装置を制御する。
【0009】
本発明の流量制御方法は、上記構成の制御装置を用いて、流体の流量を制御する。
【0010】
本発明の流体制御装置は、複数の流体機器が配列された流体制御装置であって、前記複数の流体機器は、上記構成のバルブ装置を用いる。
【0011】
本発明の半導体製造方法は、密閉されたチャンバ内においてプロセスガスによる処理工程を要する半導体装置の製造プロセスにおいて、前記プロセスガスの流量制御に上記構成の制御装置を用いる。
【0012】
本発明の半導体製造装置は、密閉されたチャンバ内においてプロセスガスによる処理工程を要する半導体装置の製造プロセスにおいて、前記プロセスガスの制御に上記構成の制御装置を用いる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、調整用アクチュエータの圧電素子は、主アクチュエータの駆動力が作用することで電圧を発生し、これを検出することで流路の開閉状態を判断し、バルブ装置を制御することが可能になる。すなわち、調整用アクチュエータを流路の開閉状態を検出する応答性の高い検出器として兼用でき、その結果、リミットスイッチが不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るバルブシステムの概略構成図。
【
図2】コントローラの処理の一例を示すフローチャート。
【
図3】コントローラによるバルブ開閉状態の検出タイミングを説明するためのタイミングチャート。
【
図4A】一定の周波数でバルブ装置1を開閉したとときの、圧電素子の発生電圧と比較例としてのリミットスイッチ信号を示すグラフ。
【
図4B】
図4Aのグラフの、圧電素子の発生電圧とリミットスイッチ信号の立ち上がりを拡大して示すグラフ。
【
図5】本発明が適用されるバルブ装置の一例の縦断面図。
【
図6】閉状態にある
図5のバルブ装置の要部の拡大断面図。
【
図10A】
図8のバルブ装置の流量調整時(流量減少時)の状態を説明するための要部の拡大断面図。
【
図10B】
図8のバルブ装置の流量調整時(流量増加時)の状態を説明するための要部の拡大断面図。
【
図11】本発明の一実施形態に係るバルブ装置の半導体製造プロセスへの適用例を示す概略図。
【
図12】本実施形態のバルブ装置を用いる流体制御装置の一例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書および図面においては、機能が実質的に同様の構成要素には、同じ符号を使用することにより重複した説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る制御装置としてのコントローラ200が適用されたバルブシステムの概略構成図である。
まず、このバルブシステムの説明をする前に、バルブシステムに使用されるバルブ装置1の一例を
図5~
図10Bを参照して説明する。
【0016】
図5は、本発明が適用されるバルブ装置の一例の構成を示す図であって、バルブが全閉時の状態を示しており、
図6は
図5の要部の拡大断面図、
図7は調整機構としての圧電アクチュエータの動作を説明するための図である。なお、以下の説明において上方向を開方向A1、下方向を閉方向A2とする。
図5において、10はバルブボディ、20は弁体としてのダイヤフラム、38はダイヤフラム押え、30はボンネット、40は操作部材、50はケーシング、60は主アクチュエータ、70は調整ボディ、80はアクチュエータ押え、90はコイルばね、100は調整用アクチュエータとしての圧電アクチュエータ、110はアクチュエータ受け、120は弾性部材としての皿ばね、ORはシール部材としてのOリングを示している。
【0017】
バルブボディ10は、ステンレス鋼により形成されており、ブロック状のバルブボディ本体10aと、バルブボディ本体10aの側方からそれぞれ突出する接続部10b、10cを有し、流路12,13を画定している。流路12、13の一端は、接続部10b、10cの端面でそれぞれ開口し、他端は上方が開放された凹状の弁室14に連通している。弁室14の底面には、流路12の他端側の開口周縁に設けられた装着溝に合成樹脂(PFA、PA、PI、PCTFE等)製の弁座15が嵌合固定されている。尚、本実施形態では、
図6から明らかなように、加締め加工により弁座15が装着溝内に固定されている。
【0018】
ダイヤフラム20は、バルブボディ10の流路12,13を開閉可能に設けられた弁体であり、弁座15の上方に配設されており、弁室14の気密を保持すると共に、その中央部が上下動して弁座15に当離座することにより、流路12、13を開閉する。本実施形態では、ダイヤフラム20は、特殊ステンレス鋼等の金属製薄板及びニッケル・コバルト合金薄板の中央部を上方へ膨出させることにより、上に凸の円弧状が自然状態の球殻状とされている。この特殊ステンレス鋼薄板3枚とニッケル・コバルト合金薄板1枚とが積層されてダイヤフラム20が構成されている。
ダイヤフラム20は、その周縁部が弁室14の内周面の突出部上に載置され、弁室14内へ挿入したボンネット30の下端部をバルブボディ10のねじ部16へねじ込むことにより、ステンレス合金製の押えアダプタ25を介してバルブボディ10の前記突出部側へ押圧され、気密状態で挾持固定されている。尚、ニッケル・コバルト合金薄膜は、接ガス側に配置されている。
なお、ダイヤフラムとしては、他の構成のものも使用可能である。
【0019】
操作部材40は、ダイヤフラム20に流路12、13を開閉させるようにダイヤフラム20を操作するための部材であり、略円筒状に形成され、下端側が閉塞部48により閉塞し、上端側が開口しており、ボンネット30の内周面とケーシング50内に形成された筒状部51の内周面に嵌合し、上下方向に移動自在に支持されている。なお、
図5および
図6に示すA1,A2は操作部材40の開閉方向であり、A1は開方向、A2は閉方向を示している。本実施形態では、バルブボディ10に対して上方向が開方向A1であり、下方向が閉方向A2であるが、本発明はこれに限定されるわけではない。
操作部材40の下端面にはダイヤフラム20の中央部上面に当接するポリイミド等の合成樹脂製のダイヤフラム押え38が装着されている。
操作部材40の外周面に形成された鍔部45の上面と、ケーシングの天井面との間には、コイルばね90が設けられ、操作部材40はコイルばね90により閉方向A2に向けて常時付勢されている。このため、
図6に示すように、主アクチュエータ60が作動していない状態では、ダイヤフラム20は弁座15に押し付けられ、流路12,13の間は閉じられた状態となっている。
なお、鍔部45は、操作部材40と一体であっても、別体であっても良い。
【0020】
コイルばね90は、ケーシング50の内周面と筒状部51との間に形成された保持部52に収容されている。本実施形態では、コイルばね90を使用しているが、これに限定されるわけではなく、皿ばねや板バネ等の他の種類のばねを使用できる。
ケーシング50は、その下端部内周がボンネット30の上端部外周に形成されたネジ部36にねじ込まれることで、ボンネット30に固定されている。なお、ボンネット30上端面とケーシング50との間には、環状のバルクヘッド63が固定されている。
操作部材40の外周面と、ケーシング50およびボンネット30との間には、バルクヘッド63によって上下に区画されたシリンダ室C1,C2が形成されている。
【0021】
上側のシリンダ室C1には、環状に形成されたピストン61が嵌合挿入され、下側のシリンダ室C2には、環状に形成されたピストン62が嵌合挿入されている。これらシリンダ室C1,C2およびピストン61,62は、操作部材40を開方向A1に移動させる主アクチュエータ60を構成している。主アクチュエータ60は、2つのピストン61,62を用いて圧力の作用面積を増加させることにより、操作ガスによる力を増力できるようになっている。
シリンダ室C1のピストン61の上側の空間は、通気路53により大気につながっている。シリンダ室C2のピストン62の上側の空間は、通気路h1により大気につながっている。
【0022】
シリンダ室C1,C2のピストン61,62の下側の空間は高圧の操作ガスが供給されるため、OリングORにより気密が保たれている。これらの空間は、操作部材40に形成された流通路41,42とそれぞれ連通している。流通路41,42は、操作部材40の内周面43と圧電アクチュエータ100のケース本体101の外周面との間に形成された流通路Chに連通し、この流通路Chは、操作部材40の上端面と、ケーシング50の筒状部51と調整ボディ70の下端面とで形成される空間SPと連通している。そして、環状のアクチュエータ押え80に形成された流通路81は、空間SPと調整ボディ70の中心部を貫通する流通路71とを接続している。調整ボディ70の流通路71は、管継手150を介して管160と連通している。
【0023】
圧電アクチュエータ100は、
図7に示す円筒状のケース本体101に図示しない積層された圧電素子(ピエゾ素子)を内蔵している。ケース本体101は、ステンレス合金等の金属製で、半球状の先端部102側の端面および基端部103側の端面が閉塞している。積層された圧電素子に電圧を印加して伸長させることで、ケース本体101の先端部102側の端面が弾性変形し、半球状の先端部102が長手方向において変位する。積層された圧電素子の最大ストロークを2dとすると、圧電アクチュエータ100の伸びがdとなる所定電圧V0を予めかけておくことで、圧電アクチュエータ100の全長はL0となる。そして、所定電圧V0よりも高い電圧をかけると、圧電アクチュエータ100の全長は最大でL0+dとなり、所定電圧V0よりも低い電圧(無電圧を含む)をかけると、圧電アクチュエータ100の全長は最小でL0-dとなる。したがって、開閉方向A1,A2において先端部102から基端部103までの全長を伸縮させることができる。なお、本実施形態では、圧電アクチュエータ100の先端部102を半球状としたが、これに限定されるわけではなく、先端部が平坦面であってもよい。
図5に示すように、圧電アクチュエータ100への給電は、配線105により行われる。配線105は、調整ボディ70の流通路71および管継手150を通じて管160に導かれており、管160の途中から外部に引き出されている。
【0024】
圧電アクチュエータ100の基端部103の開閉方向の位置は、アクチュエータ押え80を介して調整ボディ70の下端面により規定されている。調整ボディ70は、ケーシング50の上部に形成されたネジ孔56に調整ボディ70の外周面に設けられたネジ部がねじ込まれており、調整ボディ70の開閉方向A1,A2の位置を調整することで、圧電アクチュエータ100の開閉方向A1,A2の位置を調整できる。
圧電アクチュエータ100の先端部102は、
図6に示すように円盤状のアクチュエータ受け110の上面に形成された円錐面状の受け面110aに当接している。アクチュエータ受け110は、開閉方向A1,A2に移動可能となっている。
【0025】
アクチュエータ受け110の下面と操作部材40の閉塞部48の上面との間には、弾性部材としての皿ばね120が設けられている。
図6に示す状態において、皿ばね120は既にある程度圧縮されて弾性変形しており、この皿ばね120の復元力により、アクチュエータ受け110は開方向A1に向けて常時付勢されている。これにより、圧電アクチュエータ100も開方向A1に向けて常時付勢され、基端部103の上面がアクチュエータ押え80に押し付けられた状態となっている。これにより、圧電アクチュエータ100は、バルブボディ10に対して所定の位置に配置される。圧電アクチュエータ100は、いずれの部材にも連結されていないので、操作部材40に対して開閉方向A1,A2において相対的に移動可能である。
皿ばね120の個数や向きは条件に応じて適宜変更できる。また、皿ばね120以外にもコイルばね、板ばね等の他の弾性部材を使用できるが、皿ばねを使用すると、ばね剛性やストローク等を調整しやすいという利点がある。
【0026】
図6に示すように、ダイヤフラム20が弁座15に当接してバルブが閉じた状態では、アクチュエータ受け110の下面側の規制面110tと、操作部材40の閉塞部48の上面側の当接面40tとの間には隙間が形成されている。この隙間の距離がダイヤフラム20のリフト量Lfに相当する。リフト量Lfは、バルブの開度、すなわち、流量を規定する。リフト量Lfが、上記した調整ボディ70の開閉方向A1,A2の位置を調整することで変更できる。
図6に示す状態の操作部材40は、当接面40tを基準にすると、閉位置CPに位置する。この当接面40tが、アクチュエータ受け110の規制面110tに当接する位置、すなわち、開位置OPに移動すると、ダイヤフラム20が弁座15からリフト量Lf分だけ離れる。
【0027】
次に、上記構成のバルブ装置1の動作について
図8~
図10Bを参照して説明する。
図8に示すように、管160を通じて所定圧力の操作ガスGをバルブ装置1内に供給すると、操作ガスGは流通路71を通り、操作部材40の内周面43とケース本体101の外周面との間に形成された流通路Chを通り、流通路41,42を通って、シリンダ室C1,C2のピストン61,62の下側の空間に供給される。これにより、ピストン61,62から操作部材40へ開方向A1に押し上げる推力が作用する。操作ガスGの圧力は、操作部材40にコイルばね90および皿ばね120から作用する閉方向A2の付勢力に抗して操作部材40を開方向A1に移動させるのに十分な値に設定されている。このような操作ガスGが供給されると、
図9に示すように、操作部材40は皿ばね120をさらに圧縮しつつ開方向A1に移動し、アクチュエータ受け110の規制面110tに操作部材40の当接面40tが当接し、アクチュエータ受け110は操作部材40から開方向A1へ向かう力を受ける。この開方向A1へ向かう力は、圧電アクチュエータ100の先端部102を通じて、圧電アクチュエータ100を開方向A1に圧縮する力として作用するが、圧電アクチュエータ100はこの力に抗する十分な剛性を有する。したがって、操作部材40に作用する開方向A1の力は、圧電アクチュエータ100の先端部102で受け止められ、操作部材40のA1方向の移動は、開位置OPにおいて規制される。この状態において、ダイヤフラム20は、弁座15から上記したリフト量Lfだけ離隔する。
【0028】
図9に示す状態におけるバルブ装置1の流路13から出力し供給される流体の流量を調整したい場合には、圧電アクチュエータ100を作動させる。
図10Aおよび
図10Bの中心線Ctの左側は、
図9に示す状態を示しており、中心線Ctの右側は操作部材40の開閉方向A1,A2の位置を調整した後の状態を示している。
流体の流量を減少させる方向に調整する場合には、
図10Aに示すように、圧電アクチュエータ100を伸長させて、操作部材40を閉方向A2に移動させる。これにより、ダイヤフラム20と弁座15との距離である調整後のリフト量Lf-は、調整前のリフト量Lfよりも小さくなる。
流体の流量を増加させる方向に調整する場合には、
図10Bに示すように、圧電アクチュエータ100を短縮させて、操作部材40を開方向A1に移動させる。これにより、ダイヤフラム20と弁座15との距離である調整後のリフト量Lf+は、調整前のリフト量Lfよりも大きくなる。
【0029】
ダイヤフラム20のリフト量の最大値は100~200μm程度で、圧電アクチュエータ100による調整量は±20μm程度である。
すなわち、圧電アクチュエータ100のストロークでは、ダイヤフラム20のリフト量をカバーすることができないが、操作ガスGで動作する主アクチュエータ60と圧電アクチュエータ100を併用することで、相対的にストロークの長い主アクチュエータ60でバルブ装置1の供給する流量を確保しつつ、相対的にストロークの短い圧電アクチュエータ100で精密に流量調整することができる。
【0030】
図1において、コントローラ200は、複数のバルブ装置1と信号線や給電線からなる配線SLで電気的に接続されている。複数のバルブ装置1には、操作ガス(駆動エア)Gを供給する供給管FLが開閉バルブV1を介して接続されている。各供給管FLは、共通の駆動エア供給源250に接続されている。複数の開閉バルブV1は、例えば、電磁弁で構成され、コントローラ200と制御信号線CLとそれぞれ接続されている。
コントローラ200は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、入出力回路等のハードウエアと所要のソフトウエアで構成されている。コントローラ200は、開閉バルブV1を開閉制御するとともに、バルブ装置1に内蔵された圧電アクチュエータ100を駆動制御する。
加えて、コントローラ200は、圧電アクチュエータ100の圧電素子に外力が作用することにより生じる電圧を検出する機能を有する。
【0031】
圧電アクチュエータ100の圧電素子は、上記したように、電圧を印加することにより伸長する。一方で、圧電素子は、外力を受けるとひずみが生じ、これに応じた電圧を発生する。圧電素子に発生する電圧は、生じたひずみに比例するため、圧電素子の両端子電圧を測定することにより圧電素子の外力によるひずみを検知できる。すなわち、圧電アクチュエータ100を、外力を検知するセンサとしても使用できる。また、圧電素子に電圧を印加した状態であっても、印加電圧と外力により生じた電圧を分離する検出回路により圧電素子に外力が印加されたことを検出できる。
本実施形態では、圧電アクチュエータ100の圧電素子に外力、すなわち操作圧により生じた電圧を検出することで、ダイヤフラム20により開閉されるバルブ装置1の流路の開閉状態を検出する。
【0032】
図2のフローチャートを参照してコントローラ200による処理の一例を説明する。
まず、コントローラ200は、制御信号線CLを通じて駆動エア供給指令を開閉バルブV1に出力する(ステップS1)。
開閉バルブV1が開放されると、
図3の(1)に示すように、バルブ装置1における駆動エアによる操作圧が時間t0から上昇していく。これに伴って、
図3の(2)に示すように、バルブ装置1のピストン61,62が移動を開始し、操作部材40を開方向A1に移動させる。圧電アクチュエータ100は操作部材40から開方向A1の力を受け、
図3の(3)に示すように、圧電アクチュエータ100の圧電素子は電圧(ピエゾ電圧)を発生する。
【0033】
コントローラ200は、駆動エア供給指令を出力したのち、ピエゾ電圧が発しているかを判断する(ステップS2)。具体的には、コントローラ200は、例えば、ピエゾ電圧が所定電圧を超えるパルス状の電圧を発生すると、
図3の(4)に示すように、時間t1においてバルブ装置1の流路が開放されたと判断する(ステップS3)。
【0034】
次いで、コントローラ200は、上記したバルブ装置1の開度(流量)調整を実施する(ステップS4)。
その後、コントローラ200は、通常制御を開始する(ステップS5)。
【0035】
ここで、コントローラ200による通常制御の一例について説明する。
コントローラ200は、所定周期(例えば数ms)で開閉バルブV1に開閉指令を与えて、バルブ装置1の開閉制御を実行する。
図4Aに示すグラフ(1)は、バルブ装置1を所定周期で開閉制御した際の、圧電素子の電圧信号を示している。
図4Aに示すグラフ(2)は、比較例として、バルブ装置1の開閉の検出をリミットスイッチで検出したときの信号を示している。
圧電素子の信号およびリミットスイッチの信号の双方は、バルブ装置1の開閉に応答して周期的に変化している。
ここで重要な点は、
図4Bのグラフ(1)に示すように、圧電素子の信号の立ち上がりが、リミットスイッチの信号よりもはるかに速いことである。このことは、周期が数msの高い周波数でバルブ装置1を開閉制御した際に、圧電素子の信号を用いることによりバルブ装置1の開閉状態をリミットスイッチと比較して速やかに検出できることを意味している。
圧電アクチュエータ100の圧電素子の信号を使用してバルブ装置1の開閉状態を検出すると、リミットスイッチの信号を用いた場合と比べて、バルブ装置1の開閉制御をより高い周波数で実行することが可能となる。
【0036】
次に、
図11を参照して、上記したバルブ装置1およびコントローラ200の適用例について説明する。
図11に示す半導体製造装置1000は、ALD法による半導体製造プロセスを実行するためのシステムであり、300はプロセスガス供給源、400はガスボックス、500はタンク、700は処理チャンバ、800は排気ポンプを示している。
ALD法による半導体製造プロセスでは、処理ガスの流量を精密に調整する必要があるとともに、基板の大口径化により、処理ガスの流量をある程度確保する必要もある。
ガスボックス400は、正確に計量したプロセスガスを処理チャンバ700に供給するために、開閉バルブ、レギュレータ、マスフローコントローラ等の各種の流体制御機器を集積化してボックスに収容した集積化ガスシステム(流体制御装置)である。
タンク500は、ガスボックス400から供給される処理ガスを一時的に貯留するバッファとして機能する。
処理チャンバ700は、ALD法による基板への膜形成のための密閉処理空間を提供する。
排気ポンプ800は、処理チャンバ700内を真空引きする。
【0037】
上記のようなシステム構成によれば、コントローラ200から開閉バルブV1へ制御信号SG1を送ることにより、バルブ装置1を開放状態にすることができる。この状態は、上記したように、圧電アクチュエータ100の圧電素子の出力信号で検出できる。バルブ装置1に流量調整のための指令SG2を送れば、処理ガスの初期調整が可能になる。
また、コントローラ200からバルブ装置1を高い周波数で開閉制御する制御信号SG1を開閉バルブV1に出力することで、
図4Aを参照して説明したバルブ装置1の開閉制御を実行できる。
【0038】
上記実施形態では、圧電素子の検出信号を、開度(流量)調整作業を開始するためだけではなく、バルブ装置の周期的な開閉制御にも用いる場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。圧電素子の検出信号を、開度(流量)調整作業を開始するためだけに利用してもよい。
【0039】
図12を参照して、本発明のバルブ装置が適用可能な流体制御装置の一例を説明する。
図12に示す流体制御装置には、幅方向W1,W2に沿って配列され長手方向G1,G2に延びる金属製のベースプレートBSが設けられている。なお、W1は正面側、W2は背面側,G1は上流側、G2は下流側の方向を示している。ベースプレートBSには、複数の流路ブロック992を介して各種流体機器991A~991Eが設置され、複数の流路ブロック992によって、上流側G1から下流側G2に向かって流体が流通する図示しない流路がそれぞれ形成されている。
【0040】
ここで、「流体機器」とは、流体の流れを制御する流体制御装置に使用される機器であって、流体流路を画定するボディを備え、このボディの表面で開口する少なくとも2つの流路口を有する機器である。具体的には、開閉弁(2方弁)991A、レギュレータ991B、プレッシャーゲージ991C、開閉弁(3方弁)991D、マスフローコントローラ991E等が含まれるが、これらに限定されるわけではない。なお、導入管993は、上記した図示しない流路の上流側の流路口に接続されている。
【0041】
本発明は、上記した開閉弁991A、991D、レギュレータ991B等の種々のバルブ装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 :バルブ装置
10 :バルブボディ
10a :バルブボディ本体
10b,10c :接続部
12,13 :流路
14 :弁室
15 :弁座
16 :ねじ部
20 :ダイヤフラム
25 :押えアダプタ
30 :ボンネット
36 :ネジ部
38 :ダイヤフラム押え
40 :操作部材
40t :当接面
41,42 :流通路
42 :流通路
43 :内周面
45 :鍔部
48 :閉塞部
50 :ケーシング
51 :筒状部
52 :保持部
53 :通気路
56 :ネジ孔
60 :主アクチュエータ
61,62 :ピストン
63 :バルクヘッド
70 :調整ボディ
71,81 :流通路
80 :アクチュエータ押え
90 :コイルばね
100 :圧電アクチュエータ
101 :ケース本体
102 :先端部
103 :基端部
105 :配線
110 :アクチュエータ受け
110a :受け面
110t :規制面
120 :皿ばね
150 :管継手
160 :管
200 :コントローラ
250 :駆動エア供給源
300 :プロセスガス供給源
400 :ガスボックス
500 :タンク
700 :処理チャンバ
800 :排気ポンプ
991A :開閉弁(2方弁)
991B :レギュレータ
991C :プレッシャーゲージ
991D :開閉弁(3方弁)
991E :マスフローコントローラ
992 :流路ブロック
993 :導入管
1000 :半導体製造装置
A1 :開方向
A2 :閉方向
BS :ベースプレート
C1,C2 :シリンダ室
CL :制御信号線
CP :閉位置
Ch :流通路
Ct :中心線
FL :供給管
G :操作ガス(駆動エア)
G1 :長手方向(上流側)
G2 :長手方向(下流側)
Lf,Lf+,Lf- :リフト量
OP :開位置
OR :Oリング
SG1 :制御信号
SG2 :指令
SL :配線
SP :空間
V0 :所定電圧
V1 :開閉バルブ
W1,W2 :幅方向
h1 :通気路