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特許7475651鉄道車両の監視システム、鉄道車両、監視装置、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】鉄道車両の監視システム、鉄道車両、監視装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B61L 25/02 20060101AFI20240422BHJP
   B61D 37/00 20060101ALI20240422BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20240422BHJP
   B60L 15/40 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
B61L25/02 Z
B61D37/00 Z
B60L3/00 N
B60L15/40 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020095055
(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公開番号】P2021187321
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】592066860
【氏名又は名称】八幡電気産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 充男
(72)【発明者】
【氏名】山本 聡
(72)【発明者】
【氏名】平塚 友久
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-018679(JP,A)
【文献】特開2009-018770(JP,A)
【文献】特開2018-078411(JP,A)
【文献】特開2003-118577(JP,A)
【文献】特開2010-288324(JP,A)
【文献】特開2018-100010(JP,A)
【文献】特開2005-028945(JP,A)
【文献】特開平04-067235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 1/00 - 99/00
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
B61D 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両と、前記鉄道車両と無線通信する監視装置とを含み、
前記鉄道車両は、故障が検出された機器の状態を示す情報と、前記機器の前記鉄道車両における設置箇所に関する設置箇所関連情報とを含む第1の情報を、前記鉄道車両の運転中に、前記監視装置に送信する送信部を含み、
前記監視装置は、前記第1の情報の受信装置と、前記第1の情報を報知する処理を行う処理部と、前記第1の情報の受信後に、前記故障が検出された機器の状態を示す情報の送信要求を前記鉄道車両に送信する送信装置とを含み、
前記受信装置は、前記送信要求において指定された時間に対応するログ中の状態情報と、当該ログ中の状態情報に対応する設置箇所関連情報を含む第2の情報を受信し、
前記処理部は、前記第2の情報を報知する処理を行う
鉄道車両の監視システム。
【請求項2】
前記設置箇所関連情報は、前記鉄道車両をなす2以上の車両のうち、前記故障が検出された機器のある車両を示す情報を含む
請求項1に記載の鉄道車両の監視システム。
【請求項3】
前記設置箇所関連情報は、前記故障が検出された車両における前記機器の位置を示す情報を含む
請求項1又は2に記載の鉄道車両の監視システム。
【請求項4】
監視装置と無線通信する鉄道車両であって、
前記鉄道車両に備えられた機器の状態を監視する監視部と、
前記機器の故障を検出した場合に、前記機器の状態を示す情報と、前記機器の前記鉄道車両における設置箇所に関する設置箇所関連情報とを含む第1の情報を、前記鉄道車両の運転中に、前記監視装置に送信する送信部と
を含み、
前記送信部は、前記第1の情報の送信後に前記監視装置から前記故障が検出された機器の状態を示す情報の送信要求が受信された場合に、前記送信要求において指定された時間に対応するログ中の状態情報と、当該ログ中の状態情報に対応する設置箇所関連情報を含む第2の情報を送信する、
鉄道車両。
【請求項5】
鉄道車両と無線通信する監視装置であって、
前記鉄道車両の運転中に送信された、前記鉄道車両中の、故障が検出された機器の状態を示す情報と、前記機器の前記鉄道車両における設置箇所に関する設置箇所関連情報とを含む第1の情報を受信する受信装置と、
前記第1の情報を報知する処理を行う処理部と
前記第1の情報の受信後に、前記故障が検出された機器の状態を示す情報の送信要求を前記鉄道車両に送信する送信装置と、
を含み、
前記受信装置は、前記送信要求において指定された時間に対応するログ中の状態情報と、当該ログ中の状態情報に対応する設置箇所関連情報を含む第2の情報を受信し、
前記処理部は、前記第2の情報を報知する処理を行う
監視装置。
【請求項6】
監視装置と無線通信する鉄道車両のコンピュータに、
前記鉄道車両に備えられた機器の状態を監視する処理と、
前記機器の故障を検出した場合に、前記機器の状態を示す情報と、前記機器の前記鉄道車両における設置箇所に関する設置箇所関連情報とを含む第1の情報を、前記鉄道車両の運転中に、前記監視装置に送信する処理と、
前記第1の情報の送信後に前記監視装置から前記故障が検出された機器の状態を示す情報の送信要求が受信された場合に、前記送信要求において指定された時間に対応するログ中の状態情報と、当該ログ中の状態情報に対応する設置箇所関連情報を含む第2の情報を送信する処理と、
を実行させるプログラム。
【請求項7】
鉄道車両と無線通信する監視装置のコンピュータに、
前記鉄道車両の運転中に送信された、前記鉄道車両中の、故障が検出された機器の状態を示す情報と、前記機器の前記鉄道車両における設置箇所に関する設置箇所関連情報とを含む第1の情報を受信する処理と、
前記第1の情報を報知する処理と
前記第1の情報の受信後に、前記故障が検出された機器の状態を示す情報の送信要求を前記鉄道車両に送信する処理と、
前記送信要求において指定された時間に対応するログ中の状態情報と、当該ログ中の状態情報に対応する設置箇所関連情報を含む第2の情報を受信する処理と、
前記第2の情報を報知する処理と
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の監視システム、鉄道車両、監視装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両において、駅からの出発、到着、扉が開く側、乗り換え等の案内放送を自動的に放送する自動放送装置が搭載されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、自動放送用データを記憶する記憶部と、記憶部に記憶された自動放送用データを変更するための変更データを、無線通信を介して取得するデータ取得部と、データ取得部により取得された変更データに基づいて、記憶部に記憶された自動放送用データを変更する制御部とを備え、記憶部は自動放送用データのうち書き換えが必要なデータを格納する書き換え可能領域と、書き換えが不要なデータを格納する書き換え不要領域とを有し、データ取得部は、既に書き換え可能領域に格納されているデータを含む変更データを取得するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-216709号公報
【文献】特開2018-137598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、鉄道車両内にある放送設備を構成する各機器には寿命があり、定期的に鉄道車両を点検所に停車させて、点検、交換などの保守作業を行っていた。また、故障が発生した場合には、故障した機器を具備する車両、又はその車両を含む編成が基地に戻り、症状の確認と故障箇所の診断、特定をしていた。このため、故障箇所が特定できた後に、部品手配又はユニット交換、修理着手をしていた。部品やユニットのストック状況によっては、入手までに物理的な時間が必要な場合があった。
【0005】
本発明は、鉄道車両が具備する機器の故障箇所を鉄道車両の運転中に特定し得る鉄道車両の監視システム、鉄道車両、監視装置、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、鉄道車両と、前記鉄道車両と無線通信する監視装置とを含み、前記鉄道車両は、故障が検出された機器の状態を示す情報と、前記機器の前記鉄道車両における設置箇所に関する設置箇所関連情報とを含む第1の情報を、前記鉄道車両の運転中に、前記監視装置に送信する送信部を含み、前記監視装置は、前記第1の情報の受信装置と、前記第1の情報を報知する報知部とを含む、鉄道車両の監視システムである。
【0007】
監視システムにおいて、前記設置箇所関連情報は、前記鉄道車両をなす2以上の車両のうち、前記故障が検出された機器のある車両を示す情報を含んでもよい。また、前記設置箇所関連情報は、前記故障が検出された車両における前記機器の位置を示す情報を含んでもよい。
【0008】
監視システムにおいて、前記監視装置は、前記第1の情報の受信後に、前記故障が検出された機器の状態を示す情報の送信要求を前記鉄道車両に送信する送信装置をさらに含み、前記受信装置は、前記送信要求に応じて前記鉄道車両から送信された、前記故障が検出された機器の状態を示す情報を含む第2の情報を受信し、前記報知部は、前記第2の情報
を報知する、構成を採用してもよい。
【0009】
本発明の他の態様は、監視装置と無線通信する鉄道車両であって、前記鉄道車両に備えられた機器の状態を監視する監視部と、前記機器の故障を検出した場合に、前記機器の状態を示す情報と、前記機器の前記鉄道車両における設置箇所に関する設置箇所関連情報とを含む第1の情報を、前記鉄道車両の運転中に、前記監視装置に送信する送信部とを含む鉄道車両である。
【0010】
本発明の他の態様は、鉄道車両と無線通信する監視装置であって、前記鉄道車両の運転中に送信された、前記鉄道車両中の、故障が検出された機器の状態を示す情報と、前記機器の前記鉄道車両における設置箇所に関する設置箇所関連情報とを含む第1の情報を受信する受信装置と、前記第1の情報を報知する報知部とを含む監視装置である。
【0011】
本発明の他の態様は、監視装置と無線通信する鉄道車両のコンピュータに、前記鉄道車両に備えられた機器の状態を監視する処理と、前記機器の故障を検出した場合に、前記機器の状態を示す情報と、前記機器の前記鉄道車両における設置箇所に関する設置箇所関連情報とを含む第1の情報を、前記鉄道車両の運転中に、前記監視装置に送信する処理と、を実行させるプログラムである。
【0012】
本発明の他の態様は、鉄道車両と無線通信する監視装置のコンピュータに、前記鉄道車両の運転中に送信された、前記鉄道車両中の、故障が検出された機器の状態を示す情報と、前記機器の前記鉄道車両における設置箇所に関する設置箇所関連情報とを含む第1の情報を受信する処理と、前記第1の情報を報知する処理とを実行させるプログラムである。その他、本発明の態様は、監視システム、鉄道車両、監視装置と同様の特徴を有する方法の発明を含むことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、鉄道車両が具備する機器の故障箇所を鉄道車両の運転中に特定し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、鉄道車両の監視システムの一例を示す。
図2図2は、サーバ及び端末の構成例を示す。
図3図3は、鉄道車両における処理例を示すフローチャートである。
図4図4は、サーバにおける処理例を示すフローチャートである。
図5図5は、端末における処理例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、実施形態に係る鉄道車両の監視システム、鉄道車両、監視装置、及びプログラムについて説明する。実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成に限定されない。図1は、鉄道車両の監視システムの一例を示す。図1において、監視システムは、監視対象の鉄道車両10と、鉄道車両10と無線通信可能なサーバ2と、サーバ2と接続された端末3とを含む。サーバ2及び端末3が「監視装置」を構成する。
【0016】
鉄道車両10は、車両10a、10b、10c、及び10dからなる4両編成(N+1=4)である。但し、編成を構成する車両の数は問わない。鉄道車両10は、様々な設備を搭載している.例えば、車内に音声を放送する車内放送システム、乗客が乗務員に非常
事態を知らせる非常通報システム、車内の様子をカメラで撮影するセキュリティカメラシステムなどである。
【0017】
図1に示す例では、車内放送システムが設備の一例として例示されている。車内放送システムは、車両10aに設置された、自動放送装置100と、CPU(Central Processing Unit)102と、記憶装置102A、制御増幅器(C.AMP)103と、出力増幅器(パワーアンプ:P.AMP)104と、車内スピーカ105とを含む。車両10b、10c及び
10dの夫々にも、出力増幅器104と車内スピーカ105が設けられている。
【0018】
記憶装置102Aは、ROM、RAM、ハードディスク、SSD(Solid State Drive
)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only
Memory)などであり、CPU102によって実行されるプログラムやデータを記憶する
【0019】
CPU102は、記憶装置102Aに記憶されたプログラムに従って、自動放送装置100の動作を制御する。CPU102は、列車情報管理システム(INTEROS(INtegrated Train ommunication networks for Evolvable Railway Operation System)、TIMS(Train Information Management System)又はMONなど)から列車の運行に関する情報を取
得し、その情報に基づく所定のタイミングで、自動放送プログラムの実行を開始する。
【0020】
自動放送プログラムの実行によって、例えば、CPU102は、記憶装置102Aから、予め記憶された自動放送用の音声データを読み出し、アナログの音声信号に変換して車両10aの制御増幅器103に接続する。制御増幅器103は音声信号を増幅して出力増幅器104に接続する。出力増幅器104は音声信号を増幅し、増幅された音声信号に基づく放送音声が車内スピーカ105から放音される。また、音声データは、車内ネットワーク107を介して車両10a以外の車両10b、10c、10dに伝達され、アナログ信号に変換されて、車両10b、10c、10dの夫々の出力増幅器104に接続される。そして、車両10b、10c、10dの夫々の車内スピーカ105から、車両10aで放送される音声と同じ音声が放音される。このようにして、車両10a、10b、10c、10dのすべてにおいて同内容の放送を行うことができる。
【0021】
なお、音声データは、記憶装置102Aに予め記憶されたものの他、自動放送装置100がテキストデータの生成及び編集を行い、さらに編集後のテキストデータの音声合成を行うことでリアルタイムに生成される音声データであってもよい。
【0022】
また、CPU102は、鉄道車両10内における、複数の機器の状態を監視する監視部として動作する。CPU102は、複数の機器について、定期的に、状態(動作)を示す情報(状態情報という)を、車内ネットワーク107(有線LAN、或いは無線LANなど)を介して収集する。
【0023】
本実施形態では、複数の機器の一例として、複数の出力増幅器104(#1,…, #N,#N+1)を例示する。但し、機器は、出力増幅器104以外でもよい。複数の機器は、同種類
の機器であっても異種類の機器であってもよい。また、機器が各車両に設置されていることは必須要件ではない。1つの車両に2以上設置される場合や、一部の車両に設置され、或る車両には設置されていない場合なども含む。機器は、機械、設備、などと呼ばれることもある。
【0024】
CPU102は、記録部として動作し、車両10a~10dから収集した複数の機器の夫々の状態を示す情報を、時系列のログとして記憶装置102Aに記憶する。CPU102は、状態情報を、機器の設置箇所関連情報と関連付けて記憶する。設置箇所関連情報は、例えば、鉄道車両10の列車番号、出力増幅器104が設置されている車両を特定する情報(例えば号車番号)、車両内における機器の設置位置又は設置場所を示す情報、機器の種別、機器の固有情報(識別子)などである。設置箇所関連情報は、設置箇所の特定に
寄与する限り、どのような情報でもよい。
【0025】
また、車両10aには、車内サーバ106が設けられている。車内サーバ106は、乗客に対するサービス提供のために設けられている。車内サーバ106は、例えば、複数の言語の放送データが車内ネットワーク107を介して車両10a、10b、10c、10dの夫々にいる乗客の端末(スマートフォンやタブレット端末など)に配信され、乗客が複数の言語から選択した希望言語の放送データを用いて放送内容を聴取したり視認したりするサービス提供に使用される。
【0026】
また、CPU102は、鉄道車両10に設けれた通信インタフェース(通信IF)101を用いて、サーバ2と通信することができる。通信IF101は、所定の無線通信規格(LTE、5G、無線LAN(WiFi)、BLEなど)に適合または準拠し、サーバ2とデータのやりとり(送受信)を行う。
【0027】
CPU102は、鉄道車両10の営業運行中(運転中)に、上記した状態情報の収集及び記録を行い、状態情報に基づいて機器の故障(障害)の有無の判定を行う。運転中は、鉄道車両10が駅間を走行している状態と、駅や駅間で一時的に停車している状態、駅と基地又は車庫との間を走行している状態を含む。
【0028】
CPU102は、機器が故障していると判定した場合(機器の故障を検出した場合)には、故障が検出された機器の状態情報と、この状態情報に関連する設置場所関連情報を、通信IF101を用いてサーバ2に送信する処理を行う。また、CPU102は、サーバ2から状態情報の送信要求を受信した場合には、要求に応じた状態情報のログを記憶装置102Aから読み出して、サーバ2へ送信する処理を行う。
【0029】
図2は、サーバ2及び端末3の構成例を示す。図2において、サーバ2は、サーバマシン、パーソナルコンピュータ(PC)、ワークステーション(WS)などの、専用又は汎用の情報処理装置(コンピュータ)を用いて構成される。サーバ2は、バス26を介して相互に接続された、処理部又は制御部(コントローラ)としてのプロセッサ21と、記憶装置22と、通信インタフェース(通信IF)23と、入力装置24と、ディスプレイ25とを含む。サーバ2は、1台の情報処理装置(コンピュータ)から構成されていても、2以上の情報処理装置の集合(クラウド)であってもよい。
【0030】
記憶装置22は、記憶装置102Aと同様のものを適用することができ、プログラム及びデータの記憶領域、プログラムの展開領域、プログラムの作業領域、及び通信データのバッファ領域などとして使用される。
【0031】
通信IF23は、通信処理を行う回路であり、鉄道車両10の通信IF101及び端末3との通信を司る。通信IF23は、「送信装置」及び「受信装置」として動作する。通信IF23は、通信IF101について説明した所定の無線通信規格に適合または準拠する通信回路である。なお、サーバ2は端末3と有線の通信回線を用いて通信してもよい。
【0032】
入力装置24は、例えば、キー、ボタン、ポインティングデバイス、タッチパネル等の少なくとも一つを含み、情報の入力に使用される。ディスプレイ25は例えば液晶ディスプレイなどであり、情報及びデータを表示する。プロセッサ21は、例えばCPUなどである。プロセッサ21は、記憶装置22に記憶された各種のプログラムを実行することによって、サーバが監視装置として動作するための様々な処理を行う。
【0033】
例えば、プロセッサ21は、端末3からの指示(設定)に従って、状態情報の送信要求を鉄道車両10(通信IF101)に送信する。また、プロセッサ21は、通信IF10
1から故障連絡が受信された場合に、所定フォーマットのレポートを生成し、端末3へ送信する処理を行う。故障連絡は、故障が検出された鉄道車両10中の機器の状態情報と、当該機器の設置箇所関連情報とを含む。故障連絡は、「第1の情報」の一例である。
【0034】
端末3は、サーバ2の操作用の端末である。端末3は、例えば、スマートデバイス(スマートフォン及びタブレット端末など)、ラップトップ型のパーソナルコンピュータ(PC)、Personal Digital Assistant(PDA)、ウェアラブルコンピュータ等の携帯端末(可搬性を有する通信端末)である。もっとも、端末3は固定端末であってもよい。端末3は、汎用の端末でも専用の端末でもよい。
【0035】
端末3は、バス36を介して相互に接続された、プロセッサ31と、記憶装置32と、通信インタフェース(通信IF)33と、入力装置34と、ディスプレイ35と、スピーカ36とを含む。プロセッサ31、記憶装置32、通信IF33、入力装置34、及びディスプレイ35の夫々は、プロセッサ21、記憶装置22、通信IF23、入力装置24、及びディスプレイ25について説明したものと同様のものを適用可能である。但し、用途及び使用目的等の違いに応じて、サーバ2に適用されるものと性能の異なるものが適用される。
【0036】
プロセッサ31は、記憶装置32に記憶された各種のプログラムを実行することによって、「監視装置」として動作するための様々な処理を行う。プロセッサ31は、「処理部」の一例である。また、通信IF33は、「受信部」及び「送信部」の一例である。
【0037】
例えば、プロセッサ31は、端末3のオペレータが入力装置34を用いて入力する、状態情報の送信についての設定情報を受け付ける。設定情報は、定期的に、又はスポット的に状態情報を受け取る設定を含む。定期的に状態情報を受け取る設定では、サーバ2は定期的に状態情報の送信要求を送信する。スポット的に状態情報を受け取る設定では、サーバ2は、1回だけ、状態情報の送信要求を送信する。設定情報の入力は、例えば、列車番号、号車番号、機器の識別子を特定して行う。
【0038】
図3は、鉄道車両10におけるCPU102の処理例を示すフローチャートである。図3の処理は、周期的に行われる。但し、実行の指示を受けて、開始するようにしてもよい。また、図3に示す処理は、1つの機器に対する処理を示しており、複数の機器の夫々について、図3の処理が実行される。ステップS01において、CPU102は、監視対象の各機器の状態情報を取得し、状態情報を設置場所関連情報と関連付けて記憶装置102Aのログに記憶する。
【0039】
ステップS02では、CPU102は、状態情報から、機器の状態(動作)をチェックし、ステップS03では、CPU102は、機器に故障があるか否かを判定する。現在の状態が、通常とりえない状態である場合や、状態や動作に係る数値が正常の範囲から外れている場合等に、CPU102は故障(障害)ありと判定する。
【0040】
ステップS03において、故障ありと判定された場合(故障が検出された場合)には、処理がステップS05に進み、そうでない(正常である)と判定された場合には、処理がS04に進む。ステップS04では、CPU102は、サーバ2からの、状態情報の送信要求が届いているかを判定する。送信要求が届いている場合には、処理がステップS05に進み、そうでない場合には、処理がステップS01に戻る。
【0041】
ステップS05では、CPU102は、状態情報をサーバに送信する処理を行う。CPU102は、故障ありとの判定に応じてS05の処理を行う場合には、そのときの状態情報と、状態情報に対応する設置箇所関連情報を記憶装置102Aから読み出し、これらの
情報を故障連絡として通信IF101に送る。通信IF101は、故障連絡をサーバ2へ送る。
【0042】
CPU102は、送信要求に応じてS05の処理を行う場合には、送信要求において指定された時間に対応するログ中の状態情報と、状態情報に対応する設置箇所関連情報を記憶装置102Aから読み出し、状態通知として、通信IF101に送る。通信IF101は、サーバ2へ、状態通知を送る。ステップS05が終了すると、処理がステップS01に戻る。状態通知は、「第2の情報」の一例である。
【0043】
図4は、サーバ2のプロセッサ21の処理例を示すフローチャートである。ステップS101において、プロセッサ21は、鉄道車両10の通信IF101から送信された故障連絡が受信されているか否かを判定する。故障連絡が受信されていると判定される場合には、処理がステップS105に進み、そうでない場合には、処理がステップS102に進む。
【0044】
ステップS102では、プロセッサ21は、端末3からの、状態情報(ログ)を取得する設定があるか(そのような設定情報が設定されているか)を判定する。設定があると判定される場合には、処理がS103に進み、そうでない場合には、処理がステップS101に戻る。
【0045】
ステップS103では、プロセッサ21は、状態情報の送信要求を鉄道車両10へ送信する処理を行う。状態情報の送信要求は、列車番号、号車番号、機器識別子などの、ログの取得を所望する機器を特定するための情報と、所望するログ(状態情報)を特定する情報(記録時間など)とを含む。これらの情報は、CPU102が対応するログを取得するのに利用される。状態情報の送信要求は、通信IF23から送信され、鉄道車両10の通信IF101で受信される。その後、処理がステップS104に進む。
【0046】
ステップS104では、プロセッサ21は、鉄道車両10からの状態通知が受信されているか否かを判定する。状態通知が受信されていると判定される場合、処理がステップS105に進み、そうでないと判定される場合には、ステップS104の処理がループする。
【0047】
ステップS105では、プロセッサ21は、故障連絡、或いは状態通知に含まれる情報を、記憶装置22に記憶する。ステップS106では、プロセッサ21は、故障連絡又は状態通知に含まれる情報を所定フォーマットに記載(展開)したレポートを生成し、端末3へ送信する処理を行う。端末3は、ネットワーク4を介してサーバ2からのレポートを受信することができる。このように、プロセッサ21は、故障連絡や状態通知を報知するための処理を行う処理部として動作する。
【0048】
図5は、端末3のプロセッサ31の処理例を示すフローチャートである。ステップS201において、プロセッサ31は、サーバ2からのレポートが受信されているかを判定する。レポートが受信されていると判定される場合、処理がS202に進み、そうでない場合、S201の処理がループする。
【0049】
ステップS202では、プロセッサ31は、レポートをディスプレイ35に表示する。これによって、故障連絡や状態通知の内容、すなわち、列車番号、号車番号、車両内における機器の位置、機器の識別子などの設置箇所関連情報と、機器の状態(動作)を示す状態情報とが、端末3のユーザ(鉄道車両10の点検等を行う鉄道車両10の管理者など)に報知される。
【0050】
ステップS203では、プロセッサ31は、状態情報の送信要求に係る設定を要するか否かを判定する。例えば、ディスプレイ35に、設定の要否を問い合わせる情報を表示し、ユーザの入力装置34を用いた回答入力を待つ。設定要との回答入力があった場合、設定要と判定され、処理がステップS204に進む。設定不要との回答入力があった場合、設定不要と判定され、処理がステップS201に戻る。
【0051】
ステップS204では、プロセッサ31は、状態情報の送信要求に係る設定(列車番号、号車番号、機器の識別子、定期の送信、スポットの送信など)の設定情報を端末3のユーザ(鉄道車両10の管理者など)から受け付ける。設定情報は、通信IF33からネットワーク4を介してサーバ2に送信され、サーバ2は、設定情報に従った、状態情報の送信要求に係る処理(設定情報に従った頻度やタイミングで送信要求を送信する処理)を行う。なお、本実施形態では、故障連絡は、サーバ2からの問い合わせが無くても、鉄道車両10から送信される例を示した。これに対し、サーバ2からの問い合わせに応じて鉄道車両10から故障連絡が送信されるようにしてもよい。
【0052】
実施形態に係る鉄道車両10によると、鉄道車両10のCPU102は、複数の出力増幅器104の動作を監視する。例えば、鉄道車両10の営業運行中に、N=3番目の車両10cに設けられた出力増幅器104(P.AMP#N)が故障した場合、CPU102は、鉄道車両10の列車番号(例えば列車番号“ABC”)、故障した出力増幅器104を具備する車両の特定情報(号車番号N=3)、故障した出力増幅器104の識別子を含む設置箇所関連情報と、故障した出力増幅器104の状態情報とを含む故障連絡をサーバ2に送信する処理を行う。そして、サーバ2は、故障連絡を受信し、故障連絡を報知するための処理として、故障連絡に含まれる情報を端末3に送り、端末3は、故障連絡の内容を示す情報をディスプレイ35に表示する。
【0053】
このような、状態情報及び設置箇所関連情報の報知によって、営業運行中(運転中)の鉄道車両10に関する、故障の発生した列車(編成)、故障した機器のある車両、車両内における位置、故障した機器などを、遠隔地から特定することができる。さらに、状態情報に基づいて、直ちに営業運転を中止する必要があるのか、当日は営業運転を行い、その終了後に修理を行うかをユーザが判断することができる。また、故障連絡後に、状態情報の送信要求を定期的に送信する設定を行うことで、状態通知を定期的に受け取り、状態情報の時間的変化によって、故障の程度や別の箇所の故障を判断することができる。また、故障の箇所の特定ができることで、修理の準備や、部品の手配などを効率的に実施することができる。これによって、修理の作業時間短縮及び効率化を図ることができる。
【0054】
なお、状態情報として、鉄道車両10に対する通算営業時間(通電時間から算出できる)を監視して、部品の故障が発生する前に保守・点検、部品交換を行うことで、故障を未然に防ぐことも可能となる。また、本実施形態では、状態情報として、故障に係る情報をサーバ2に送っているが、鉄道車両10内で放送された音声の情報や、セキュリティカメラシステムのカメラで撮像された車内外の画像がサーバ2に送られ、端末3で聴取及び視認できるようにしてもよい。以上説明した実施形態の構成は、本発明の目的を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0055】
2・・・サーバ
3・・・端末
10・・・鉄道車両
100・・・自動放送装置
102・・・CPU
104・・・出力増幅器
105・・・車内スピーカ
107・・・車内ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5