(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】モバイルマニピュレータ及びその制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B25J 5/00 20060101AFI20240422BHJP
【FI】
B25J5/00 A
(21)【出願番号】P 2020122033
(22)【出願日】2020-07-16
【審査請求日】2023-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】315014671
【氏名又は名称】東京ロボティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098899
【氏名又は名称】飯塚 信市
(74)【代理人】
【識別番号】100163865
【氏名又は名称】飯塚 健
(72)【発明者】
【氏名】岡 弘之
(72)【発明者】
【氏名】坂本 義弘
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 高志
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 史朗
(72)【発明者】
【氏名】松尾 雄希
【審査官】仁木 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-158391(JP,A)
【文献】特開2010-162635(JP,A)
【文献】特開平05-338713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ー 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置体近傍へと移動して、前記載置体上の目標物体へとリーチングする、モバイルマニピュレータであって、
前記載置体近傍の台車目標停止位置及び台車目標停止姿勢を目指して移動する移動手段を備えた、台車部と、
先端又は先端近傍に手先カメラを備えた、マニピュレータと、
停止後に前記手先カメラの前記載置体に対する相対距離及び相対姿勢を認識する、相対関係認識部と、
停止後に前記手先カメラの視野内に配置される物体を認識する、物体認識部と、
認識された前記物体が前記目標物体を含む場合、前記相対距離及び前記相対姿勢に基づいて前記目標物体に対する前記マニピュレータのリーチング動作制御を行い、認識された前記物体が前記目標物体を含まない場合、認識された前記物体の位置情報を取得し、前記位置情報に基づいて前記マニピュレータの手先位置を移動させた後、前記目標物体に対する前記マニピュレータのリーチング動作制御を行う、リーチング制御部と、
を備えた、モバイルマニピュレータ。
【請求項2】
前記手先カメラと前記載置体との間の前記相対距離及び前記相対姿勢に基づいて、前記マニピュレータをリーチング準備距離及びリーチング準備姿勢となるよう制御する、リーチング準備動作制御部をさらに備える、請求項1に記載のモバイルマニピュレータ。
【請求項3】
前記台車目標停止位置及び前記台車目標停止姿勢は、前記リーチング準備距離及び前記リーチング準備姿勢に基づいて生成される、請求項2に記載のモバイルマニピュレータ。
【請求項4】
前記リーチング準備距離及び前記リーチング準備姿勢は、前記目標物体の位置と、事前に設定された前記載置体と前記手先
カメラの相対的関係性に基づいて生成される、請求項3に記載のモバイルマニピュレータ。
【請求項5】
前記手先カメラによる前記目標物体の認識は、前記リーチング準備距離及び前記リーチング準備姿勢において行われる、請求項2に記載のモバイルマニピュレータ。
【請求項6】
環境認識手段により自己位置推定処理を行う、自己位置推定部を備え、
前記自己位置推定処理の結果に基づいて前記移動手段は制御される、請求項1に記載のモバイルマニピュレータ。
【請求項7】
前記環境認識手段は、ライダーである、請求項6に記載のモバイルマニピュレータ。
【請求項8】
前記手先カメラは、単眼カメラである、請求項1に記載のモバイルマニピュレータ。
【請求項9】
前記リーチング動作制御の後に前記目標物体の把持制御を行う、把持制御部をさらに備える、請求項1に記載のモバイルマニピュレータ。
【請求項10】
前記把持制御部は、さらに、
前記手先カメラにより取得された画像に基づいて前記目標物体の把持位置を決定する、把持位置決定部を備える、請求項9に記載のモバイルマニピュレータ。
【請求項11】
前記把持位置決定部は、さらに、
前記手先カメラにより取得された画像に基づいて前記目標物体の把持位置を推測するよう機械学習された学習済モデルを含む、把持位置推測部を備える、請求項10に記載のモバイルマニピュレータ。
【請求項12】
前記マニピュレータの手先位置の移動は、前記載置体に対して平行に行われる、請求項1に記載のモバイルマニピュレータ。
【請求項13】
前記マニピュレータの手先位置の移動のため前記台車部を移動させる、台車移動制御部を備える、請求項1に記載のモバイルマニピュレータ。
【請求項14】
前記相対関係認識部は、さらに、
前記目標物体又は前記載置体に備えられた第1のマーカーを含む画像情報に基づいて、前記手先カメラと前記載置体の間の相対距離及び相対姿勢を認識する、マーカー認識部を備える、請求項1に記載のモバイルマニピュレータ。
【請求項15】
前記第1のマーカーは、前記目標物体又は前記載置体上に複数個配置される、請求項14に記載のモバイルマニピュレータ。
【請求項16】
複数の前記第1のマーカーに関する情報と、前記載置体の形状に基づく拘束条件に基づいて、前記相対距離及び前記相対姿勢を認識する、請求項15に記載のモバイルマニピュレータ。
【請求項17】
前記第1のマーカーを含む画像情報は、前記手先カメラにより撮像される、請求項14に記載のモバイルマニピュレータ。
【請求項18】
複数の前記第1のマーカーを含む画像情報は、複数の前記第1のマーカーをその視野内におさめるように、複数の前記第1のマーカーに対して前記手先カメラを斜めに向けて撮像することにより得られたものである、請求項15に記載のマニピュレータ。
【請求項19】
前記モバイルマニピュレータは、さらに、前記マニピュレータ上に前記手先カメラより広い視野を有するよう配置された、カメラを備え、
前記第1のマーカーを含む画像情報は、前記カメラにより撮像される、請求項14に記載のモバイルマニピュレータ。
【請求項20】
前記モバイルマニピュレータは、さらに、頭部を備え、
前記カメラは前記頭部に備えられる、請求項19に記載のモバイルマニピュレータ。
【請求項21】
前記台車部は、全方位移動台車である、請求項1に記載のモバイルマニピュレータ。
【請求項22】
前記マニピュレータは、多関節アームであり、
前記多関節アームは、その先端、その関節又はその根元に1又は複数の力センサを備え、
前記リーチン
グ制御部は、さらに、
前記力センサで一定以上の値を検出した場合に、前記リーチング動作を停止するよう制御する、リーチング停止制御部を備える、請求項1に記載のモバイルマニピュレータ。
【請求項23】
前記マニピュレータは、多関節アームと、前記多関節アームの先端に備えられたエンドエフェクタを備え、
前記エンドエフェクタは、前記物体との接触面に力センサ及び/又は接触センサを備え、
前記リーチン
グ制御部は、
前記力センサ及び/又は前記接触センサで一定以上の値を検出した場合に、前記リーチング動作を停止するよう制御する、エフェクタ用リーチング停止制御部を備える、請求項1に記載のモバイルマニピュレータ。
【請求項24】
前記マニピュレータは、腕部と、前記腕部の付け根に備えられた上下動機構とを備えている、請求項1に記載のモバイルマニピュレータ。
【請求項25】
前記物体認識部における物体の認識は、前記物体に備えられた2次元コード情報を撮像することにより行われる、請求項1に記載のモバイルマニピュレータ。
【請求項26】
前記リーチン
グ制御部は、さらに、
認識された前記物体の識別情報をネットワークを介して所定のデータサーバへと送信する、送信部と、
前記データサーバから前記識別情報と対応する位置情報を受信する、受信部と、を備える、請求項1に記載のモバイルマニピュレータ。
【請求項27】
載置体近傍へと移動して、前記載置体上の目標物体へとリーチングする、モバイルマニピュレータの制御方法であって、
前記マニピュレータは、
前記載置体近傍の台車目標停止位置及び台車目標停止姿勢を目指して移動する移動手段を備えた、台車部と、
先端又は先端近傍に手先カメラを備えた、マニピュレータと、を備え、
前記制御方法は、
停止後に前記手先カメラの前記載置体に対する相対距離及び相対姿勢を認識する、相対関係認識ステップと、
停止後に前記手先カメラの視野内に配置される物体を認識する、物体認識ステップと、
認識された前記物体が前記目標物体を含む場合、前記相対距離及び前記相対姿勢に基づいて前記目標物体に対する前記マニピュレータのリーチング動作制御を行い、認識された前記物体が前記目標物体を含まない場合、認識された前記物体の位置情報を取得し、前記位置情報に基づいて前記マニピュレータの手先位置を移動させた後、前記目標物体に対する前記マニピュレータのリーチング動作制御を行う、リーチング制御ステップと、
を備えた、モバイルマニピュレータの制御方法。
【請求項28】
載置体近傍へと移動して、前記載置体上の目標物体へとリーチングする、モバイルマニピュレータの制御プログラムであって、
前記マニピュレータは、
前記載置体近傍の台車目標停止位置及び台車目標停止姿勢を目指して移動する移動手段を備えた、台車部と、
先端又は先端近傍に手先カメラを備えた、マニピュレータと、を備え、
前記制御プログラムは、
停止後に前記手先カメラの前記載置体に対する相対距離及び相対姿勢を認識する、相対関係認識ステップと、
停止後に前記手先カメラの視野内に配置される物体を認識する、物体認識ステップと、
認識された前記物体が前記目標物体を含む場合、前記相対距離及び前記相対姿勢に基づいて前記目標物体に対する前記マニピュレータのリーチング動作制御を行い、認識された前記物体が前記目標物体を含まない場合、認識された前記物体の位置情報を取得し、前記位置情報に基づいて前記マニピュレータの手先位置を移動させた後、前記目標物体に対する前記マニピュレータのリーチング動作制御を行う、リーチング制御ステップと、
を備えた、モバイルマニピュレータの制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マニピュレータを備えて自律移動する移動体、例えば、モバイルマニピュレータ等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工場や倉庫等において物品の運搬等を目的として、自律的に移動するモバイルマニピュレータが注目されつつある。マニピュレータを備えた移動ロボットの例として、特許文献1には、物品収納機器から取得した物品を運搬する移動ロボットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、物体を所定の目的地へと運搬するためには、モバイルマニピュレータは、例えば、自己位置推定等を行いつつ、目標物体を載置している棚等の近傍まで移動して目標物体を把持する等して取得し、それを保持したまま再度次の目的地へと移動し、目標物体を載置する必要がある。
【0005】
しかしながら、工場や倉庫等の比較的に大きな空間において自己位置推定等を行いつつ自律移動を行うモバイルマニピュレータにおいては、自己位置推定の誤差や、移動に利用される台車の制御誤差等が発生することがある。これらの誤差により、棚等の近傍においてモバイルマニピュレータの目標停止位置・姿勢と実際の停止位置・姿勢との間には誤差が生じ、その結果、その後に行われるリーチングや把持等の動作に失敗してしまうおそれがあった。
【0006】
本発明は、上述の技術的課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、移動後の停止位置・姿勢に誤差が生じても、リーチング等のその後の動作を確実に達成することができるモバイルマニピュレータ等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の技術的課題は、以下の構成を有するモバイルマニピュレータ等により解決することができる。
【0008】
すなわち、本発明に係るモバイルマニピュレータは、載置体近傍へと移動して、前記載置体上の目標物体へとリーチングする、モバイルマニピュレータであって、前記載置体近傍の台車目標停止位置及び台車目標停止姿勢を目指して移動する移動手段を備えた、台車部と、先端又は先端近傍に手先カメラを備えた、マニピュレータと、停止後に前記手先カメラの前記載置体に対する相対距離及び相対姿勢を認識する、相対関係認識部と、停止後に前記手先カメラの視野内に配置される物体を認識する、物体認識部と、認識された前記物体が前記目標物体を含む場合、前記相対距離及び前記相対姿勢に基づいて前記目標物体に対する前記マニピュレータのリーチング動作制御を行い、認識された前記物体が前記目標物体を含まない場合、認識された前記物体の位置情報を取得し、前記位置情報に基づいて前記マニピュレータの手先位置を移動させた後、前記相対距離及び前記相対姿勢に基づいて前記目標物体に対する前記マニピュレータのリーチング動作制御を行う、リーチング制御部と、を備えている。
【0009】
このような構成によれば、移動後の停止位置・姿勢に誤差が生じても、リーチング等のその後の動作を確実に達成することができるモバイルマニピュレータ等を提供することができる。
【0010】
前記手先カメラと前記載置体との間の前記相対距離及び前記相対姿勢に基づいて、前記マニピュレータをリーチング準備距離及びリーチング準備姿勢となるよう制御する、リーチング準備動作制御部をさらに備える、ものであってもよい。
【0011】
このような構成によれば、常にリーチング準備距離及びリーチング準備姿勢を起点としてその後の種々の動作を行うことができる。
【0012】
前記台車目標停止位置及び前記台車目標停止姿勢は、前記リーチング準備距離及び前記リーチング準備姿勢に基づいて生成される、ものであってもよい。
【0013】
このような構成によれば、リーチングに好適な位置及び姿勢から逆算的に台車の停止位置及び姿勢が生成されるので、移動後に安定したリーチングや把持等を実現することができる。
【0014】
前記リーチング準備距離及び前記リーチング準備姿勢は、前記目標物体の位置と、事前に設定された前記載置体と前記手先の相対的関係性に基づいて生成される、ものであってもよい。
【0015】
このような構成によれば、目標物体の位置からリーチングに最適な準備距離及び準備姿勢が生成されるので、安定したリーチングや把持等を実現することができる。
【0016】
前記手先カメラによる前記目標物体の認識は、前記リーチング準備距離及び前記リーチング準備姿勢において行われる、ものであってもよい。
【0017】
このような構成によれば、常に一定の位置関係の下に、対象物体の認識を行うことが出来るので、物体の認識精度を向上させることができる。
【0018】
環境認識手段により自己位置推定処理を行う、自己位置推定部を備え、前記自己位置推定処理の結果に基づいて前記移動手段は制御される、ものであってもよい。
【0019】
このような構成によれば、自己位置推定の誤差等により停止位置や姿勢に多少の誤差が生じても、リーチング等のその後の動作を確実に達成することができるモバイルマニピュレータ等を提供することができる。
【0020】
前記環境認識手段は、ライダーであってもよい。
【0021】
このような構成によれば、カメラシステム等を組み込むより簡易に高精度で自己位置推定を行うことができる。
【0022】
前記手先カメラは、単眼カメラであってもよい。
【0023】
このような構成によれば、低コストに手先カメラを実現することができる。
【0024】
前記リーチング動作制御の後に前記目標物体の把持制御を行う、把持制御部をさらに備える、ものであってもよい。
【0025】
このような構成によれば、目標物体の把持を行うことができるので運搬等を行うことができる。
【0026】
前記把持制御部は、さらに、前記手先カメラにより取得された画像に基づいて前記目標物体の把持位置を決定する、把持位置決定部を備える、ものであってもよ。
【0027】
このような構成によれば、目標物体の把持位置を適切に決定することができるので把持の失敗の可能性を低減させることができる。
【0028】
前記把持位置決定部は、さらに、前記手先カメラにより取得された画像に基づいて前記目標物体の把持位置を推測するよう機械学習された学習済モデルを含む、把持位置推測部を備える、ものであってもよい。
【0029】
このような構成によれば、機械学習による作用により目標物体の把持位置を適応的に決定することができるので把持の失敗の可能性を低減することができる。
【0030】
前記マニピュレータの手先位置の移動は、前記載置体に対して平行に行われるものであってもよい。
【0031】
このような構成によれば、手先と載置体との間の相対的関係性を変化させることがないので、その後のリーチング動作に好適な態様で手先を移動させることができる。
【0032】
前記マニピュレータの手先位置の移動のため前記台車部を移動させる、台車移動制御部を備える、ものであってもよい。
【0033】
このような構成によれば、目標物体がマニピュレータのリーチ外にある場合でもリーチング等を実現することができる。
【0034】
前記相対関係認識部は、さらに、前記目標物体又は前記載置体に備えられた第1のマーカーを含む画像情報に基づいて、前記手先カメラと前記載置体の間の相対距離及び相対姿勢を認識する、マーカー認識部を備える、ものであってもよい。
【0035】
このような構成によれば、マーカーを利用して高精度に手先カメラと載置体の間の相対距離及び相対姿勢を認識することができる。
【0036】
前記第1のマーカーは、前記目標物体又は前記載置体上に複数個配置される、ものであってもよい。
【0037】
このような構成によれば、複数のマーカーを利用してより高精度に相対的関係を認識することができる。
【0038】
複数の前記第1のマーカーに関する情報と、前記載置体の形状に基づく拘束条件に基づいて、前記相対距離及び前記相対姿勢を認識する、ものであってもよい。
【0039】
このような構成によれば、例えば棚の前面にマーカーが備えられている場合にマーカーが床面と垂直な平面上に存在するといった拘束条件を加えることで、前記手先カメラと前記載置体の間の相対距離及び相対姿勢の認識がより高精度となる。
【0040】
前記第1のマーカーを含む画像情報は、前記手先カメラにより撮像される、ものであってもよい。
【0041】
このような構成によれば、第1のマーカーを撮像するための他のカメラ等を設ける必要がなくなるためコストの削減等を行うことができる。
【0042】
複数の前記第1のマーカーを含む画像情報は、複数の前記第1のマーカーをその視野内におさめるように、複数の前記第1のマーカーに対して前記手先カメラを斜めに向けて撮像することにより得られたものであってもよい。
【0043】
このような構成によれば、手先カメラを複数の第1のマーカーに対して斜めに向けて撮像することにより、視野の狭い手先カメラを利用する場合であっても効率的に撮像することができる。
【0044】
前記モバイルマニピュレータは、さらに、前記マニピュレータ上に前記手先カメラより広い視野を有するよう配置された、カメラを備え、前記第1のマーカーを含む画像情報は、前記カメラにより撮像される、ものであってもよい。
【0045】
このような構成によれば、広い視野で容易に複数の第1のマーカーを撮像することができるので迅速な撮像を行うことができる。
【0046】
前記モバイルマニピュレータは、さらに、頭部を備え、前記カメラは前記頭部に備えられる、ものであってもよい。
【0047】
このような構成によれば、頭部から広い視野で撮像できるカメラを利用して容易に複数の第1のマーカーを撮像することができる。
【0048】
前記台車部は、全方位移動台車であってもよい。
【0049】
このような構成によれば、狭い場所での移動や棚に対する平行移動等が容易となる。
【0050】
前記マニピュレータは、多関節アームであり、前記多関節アームは、その先端、その関節又はその根元に1又は複数の力センサを備え、前記リーチング動作制御部は、さらに、前記力センサで一定以上の値を検出した場合に、前記リーチング動作を停止するよう制御する、リーチング停止制御部を備える、ものであってもよい。
【0051】
このような構成によれば、目標物体へと当接するまでリーチング動作を行うことから、確実にその後の目標物体の把持等を実現することができる。
【0052】
前記マニピュレータは、多関節アームと、前記多関節アームの先端に備えられたエンドエフェクタを備え、前記エンドエフェクタは、前記物体との接触面に力センサ及び/又は接触センサを備え、前記リーチング動作制御部は、前記力センサ及び/又は前記接触センサで一定以上の値を検出した場合に、前記リーチング動作を停止するよう制御する、エフェクタ用リーチング停止制御部を備える、ものであってもよい。
【0053】
このような構成によれば、目標物体へと当接するまで把持動作を行うことから、確実に目標物体の把持等を実現することができる。
【0054】
前記マニピュレータは、腕部と、前記腕部の付け根に備えられた上下動機構とを備えている、ものであってもよい。
【0055】
このような構成によれば、上下動も含めたマニピュレータの移動が出来ることから平行移動等が容易となり、その結果、より目標物体へのリーチング動作等が容易となる。
【0056】
前記物体認識部における物体の認識は、前記物体に備えられた2次元コード情報を撮像することにより行われる、ものであってもよい。
【0057】
このような構成によれば、2次元コードに基づいて物体の認識を確実に行うことができる。
【0058】
前記リーチング動作制御部は、さらに、認識された前記物体の識別情報をネットワークを介して所定のデータサーバへと送信する、送信部と、前記データサーバから前記識別情報と対応する位置情報を受信する、受信部と、を備える、ものであってもよい。
【0059】
このような構成によれば、物体の位置情報を一元的に管理しているデータサーバを利用して正確に目標物体までの制御情報を生成することができる。
【0060】
また、本発明は、方法としても観念することができる。すなわち、本発明に係る方法は、載置体近傍へと移動して、前記載置体上の目標物体へとリーチングする、モバイルマニピュレータの制御方法であって、前記マニピュレータは、前記載置体近傍の台車目標停止位置及び台車目標停止姿勢を目指して移動する移動手段を備えた、台車部と、先端又は先端近傍に手先カメラを備えた、マニピュレータと、を備え、前記制御方法は、停止後に前記手先カメラの前記載置体に対する相対距離及び相対姿勢を認識する、相対関係認識ステップと、停止後に前記手先カメラの視野内に配置される物体を認識する、物体認識ステップと、認識された前記物体が前記目標物体を含む場合、前記相対距離及び前記相対姿勢に基づいて前記目標物体に対する前記マニピュレータのリーチング動作制御を行い、認識された前記物体が前記目標物体を含まない場合、認識された前記物体の位置情報を取得し、前記位置情報に基づいて前記マニピュレータの手先位置を移動させた後、前記相対距離及び前記相対姿勢に基づいて前記目標物体に対する前記マニピュレータのリーチング動作制御を行う、リーチング制御ステップと、を備えている。
【0061】
さらに、本発明は、プログラムとしても観念することができる。すなわち、本発明に係るプログラムは、載置体近傍へと移動して、前記載置体上の目標物体へとリーチングする、モバイルマニピュレータの制御プログラムであって、前記マニピュレータは、前記載置体近傍の台車目標停止位置及び台車目標停止姿勢を目指して移動する移動手段を備えた、台車部と、先端又は先端近傍に手先カメラを備えた、マニピュレータと、を備え、前記制御プログラムは、停止後に前記手先カメラの前記載置体に対する相対距離及び相対姿勢を認識する、相対関係認識ステップと、停止後に前記手先カメラの視野内に配置される物体を認識する、物体認識ステップと、認識された前記物体が前記目標物体を含む場合、前記相対距離及び前記相対姿勢に基づいて前記目標物体に対する前記マニピュレータのリーチング動作制御を行い、認識された前記物体が前記目標物体を含まない場合、認識された前記物体の位置情報を取得し、前記位置情報に基づいて前記マニピュレータの手先位置を移動させた後、前記相対距離及び前記相対姿勢に基づいて前記目標物体に対する前記マニピュレータのリーチング動作制御を行う、リーチング制御ステップと、を備えている。
【発明の効果】
【0062】
本発明によれば、移動後の停止位置・姿勢に誤差が生じても、リーチング等のその後の動作を確実に達成することができるモバイルマニピュレータ等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図2】
図2は、モバイルマニピュレータの外観斜視図である。
【
図3】
図3は、自律移動するモバイルマニピュレータの機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、腕部制御するモバイルマニピュレータの機能ブロック図である。
【
図5】
図5は、工場内のレイアウトに関する説明図である。
【
図6】
図6は、モバイルマニピュレータの動作に関するゼネラルフローチャートである。
【
図7】
図7は、目標設定処理の詳細フローチャートである。
【
図8】
図8は、手先カメラの目標位置と目標姿勢に関する説明図である。
【
図9】
図9は、移動処理の詳細フローチャートである。
【
図10】
図10は、台車目標位置及び姿勢に至ったと判定されたときのモバイルマニピュレータの状態について示す説明図である。
【
図11】
図11は、ピッキング処理の詳細フローチャートである。
【
図12】
図12は、移動処理後のモバイルマニピュレータと棚の斜視図である。
【
図13】
図13は、棚に対する手先カメラの相対距離及び姿勢を算出する過程に関する概念図である。
【
図14】
図14は、手先カメラの制御処理後のモバイルマニピュレータの状態について示す説明図である。
【
図15】
図15は、手先カメラを目標位置及び姿勢へと移動させた後の状態について示す説明図である。
【
図16】
図16は、手先カメラの平行移動動作を行うモバイルマニピュレータの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下、本発明の好適な実施の形態について添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0065】
(1.第1の実施形態)
第1の実施形態として、本発明を工場内を自律移動して作業を行うモバイルマニピュレータへと適用した例について説明する。なお、本発明はこのような装置に限定されるものではなく、工場以外の様々な環境にも適用可能である。
【0066】
(1.1 構成)
図1~
図4を参照しつつ、本実施形態に係るシステム500の構成について説明する。
【0067】
図1は、システム500の全体構成図である。同図から明らかな通り、システム500は、モバイルマニピュレータ100、データサーバ200及びクライアント装置300が、互いに工場内のLANを経由して接続されることにより構成されている。なお、同図においては各1つずつ記載されているもののこのような例に限定されず、各装置を複数設けてもよい。
【0068】
データサーバ200は、情報処理装置から成り、後述の各種の情報を蓄積し、モバイルマニピュレータ100やクライアント装置300からの要求に応じて提供を行う。例えば、後述の物体運搬指令や設定情報、書籍IDと書籍位置情報等を管理しており、モバイルマニピュレータ100等からのリクエストに応じて対応する情報を提供する。
【0069】
なお、データサーバ200は、各種プログラムを実行するCPU等から成る制御部、実行されるプログラムや各種のデータを記憶するROM、RAM又はフラッシュメモリ等から成る記憶部、外部装置との間の通信を行う通信ユニット、キーボードやマウス等からの入力を処理するための入力部、各種の画像表示を行う表示部等を備え、それらがバスを介して互いに接続されて構成されている。
【0070】
クライアント装置300は、情報処理装置から成り、データサーバ200と連携してシステム管理者等に対してシステム500に関する管理情報を提供すると共に、後述するように、ユーザに対してモバイルマニピュレータ100に関する各種の設定入力を行うことを可能とする。
【0071】
なお、クライアント装置300は、各種プログラムを実行するCPU等から成る制御部、実行されるプログラムや各種のデータを記憶するROM、RAM又はフラッシュメモリ等から成る記憶部、外部装置との間の通信を行う通信ユニット、キーボードやマウス等からの入力を処理するための入力部、各種の画像表示を行う表示部等を備え、それらがバスを介して互いに接続されて構成されている。
【0072】
図2は、モバイルマニピュレータ100の外観斜視図である。同図から明らかな通り、本実施形態のモバイルマニピュレータ100は、略人型の形状を有しており、ロボット本体部10と、ロボット本体部10を支持する移動台車20と、ロボット本体部10の上端に設けられた頭部30と、ロボット本体部10の前面から延びる腕部40とから構成されている。
【0073】
ロボット本体部10を支持する移動台車20は、モバイルマニピュレータ100が置かれた面(床面)の上を移動する機能を有する全方位移動台車である。全方位移動台車とは、駆動輪として例えば複数のオムニホイールを備え、全方向に移動することができるように構成された台車である。全方位移動台車は、全方位台車、全方向移動台車、または全方向台車と称されてもよい。また、全方位移動台車は、360度の全方向への移動が可能であり狭い通路等でも自在に移動できる。本実施形態の移動台車20は、図示するように、外観に表されるスカート21の内側に、三つの駆動輪22と、駆動輪22をベルト等を介して駆動するための移動機構駆動手段2とから構成されてよい。本実施形態の移動機構駆動手段2は一または複数のモータから構成されるものとし、以下では、移動機構駆動手段2をモータ2とも称する。
【0074】
頭部30は、略人型のモバイルマニピュレータ100において、人の頭(首より上の部分)に相当する構成としてロボット本体部10の上端に設けられてよい。頭部30は、人が見た際にその正面を顔として認識できるように構成されている。頭部30は、正面が向く方向を制御可能に構成される。具体的には、本実施形態のモバイルマニピュレータ100は、一又は複数の頭部駆動手段3(アクチュエータ3)を備え、頭部駆動手段3を介して頭部を動かすことによりその正面の向きを制御できるように構成される。なお、以下では、頭部30の正面を顔部31と称する。
【0075】
顔部31の上部には頭部カメラ35が備えられている。この頭部カメラ35によれば、その配置により、後述する手先カメラ42に比べてより広い視野で撮像を行うことができる。
【0076】
本実施形態のモバイルマニピュレータ100は、頭部30を床面に対して水平方向(左右方向)に回転させる鉛直方向の回転軸を有し頭部30の左右方向への回転駆動を可能とする頭部駆動手段3(サーボモータ3a)を有する。これにより、モバイルマニピュレータ100は、頭部30のみを鉛直方向に対して左右へ回転駆動させることができる。ただし、サーボモータ3aの配置は、図示する配置に制限されず、顔部31の向きを左右方向に動かすことができる限り適宜変更されてよい。例えば、サーボモータ3aは、ロボット本体部10を移動台車20に対して左右へ回転駆動させるように設けられてもよい。この場合、サーボモータ3aは、頭部30をロボット本体部10とともに垂直方向に対して左右へ回転駆動させることにより顔部31の向きを変えることができる。
【0077】
また、モバイルマニピュレータ100は、頭部30を床面に対して上下方向に駆動させる水平方向の回転軸を有し頭部30の上下を仰ぎ見る動作を可能とする頭部駆動手段3(サーボモータ3b)を有してもよい。これにより、モバイルマニピュレータ100は、顔部31の向きを上下方向にも動かすことができる。
【0078】
移動台車20の前面上縁部の突部内には、環境認識手段32が設けられている。本実施形態において、環境認識手段32は、レーザー光を用いて対象物までの距離や方向を計測するライダー(LiDAR:Light Detection And Ranging)ユニットである。ただし、環境認識手段32は、ライダーユニットに限定されず他の種々のセンサ等を採用することができる。例えば、撮像素子を設けて画像処理により環境認識を行ってもよいし、レーダーやマイクロフォンアレイ等を用いてもよい。
【0079】
モバイルマニピュレータ100はロボット本体部10の前面に腕部40を備える。腕部40は、マニピュレータ機構を備え、運搬する物品等を把持するための把持機構41、本実施形態においてはグリッパが自由端に相当する先端に設けられている。また、把持機構41の付け根付近には単眼の手先カメラ42が設けられている。この手先カメラ42により把持機構41と対向する把持対象物等を正面から撮像することができる。
【0080】
ただし、腕部40の形状、数、および配置は図示する態様に制限されず目的に応じて適宜変更されてよい。例えば、モバイルマニピュレータ100は、ロボット本体部10の両側面に腕部40を備える双腕ロボットとして構成されてもよい。
【0081】
以上が、本実施形態のモバイルマニピュレータ100の構成例である。なお、
図2では省略されているが、モバイルマニピュレータ100は、モバイルマニピュレータ100の動作を制御するのに必要となる他の構成、例えば、腕部40等を駆動する他のアクチュエータや、電力源となるバッテリ等を備えてもよい。
【0082】
図3は、自律移動するモバイルマニピュレータ100の機能ブロック図である。同図から明らかな通り、ライダーで構成される環境認識部32から得られた環境情報は、環境情報取得部101により取得されて移動台車制御部102へと提供される。また、移動台車20には、図示しない各駆動輪22の回転を検出するエンコーダが備えられており、このエンコーダからの値はエンコーダ情報取得部106により読み出されて、移動台車制御部102へと提供される。
【0083】
移動台車制御部102は、環境情報とエンコーダ情報に基づいて後述の様々な処理を行って移動台車20に対する制御情報を生成し、移動機構駆動手段2を制御する。
【0084】
図4は、腕部40の制御を行う際のモバイルマニピュレータ100の機能ブロック図である。同図から明らかな通り、マニピュレータ制御部113は、腕部40の動作を制御するサーボモータ等で成る1又は複数のアクチュエータ118を制御する。また、腕部40には、各アームの動作をセンシングする図示しないエンコーダやトルクセンサ等で成るセンサ116が備えられており、センサ116からの情報は、センサ情報取得部117により取得され、マニピュレータ制御部113へと提供される。
【0085】
手先カメラ情報取得部110は、手先カメラ42からの画像情報を取得して、マニピュレータ制御部113へと提供する。また、頭部カメラ情報取得部111は、頭部カメラ35からの画像情報を取得して、マニピュレータ制御部113へと提供する。すなわち、マニピュレータ制御部113は、各カメラ(35、42)から取得される画像情報に基づいて腕部40の制御を行うことができる。
【0086】
(1.2 動作)
【0087】
次に、本実施形態に係るシステム500の動作について説明する。
【0088】
図5は、モバイルマニピュレータ100が動作する工場800内のレイアウトに関する説明図である。同図を利用しつつ、まず、本実施形態に係る動作の概要について説明する。
【0089】
初期状態において、モバイルマニピュレータ100は、同図左下の位置に存在する。この状態において、モバイルマニピュレータ100は、本実施形態において目標物体となる本601aの運搬指令を受領すると、移動を開始し、同図右上に配置されている棚600の前にて停止する。なお、本601aの運搬指令は、クライアント装置300により設定されてデータサーバ200に記憶されていたものである。
【0090】
モバイルマニピュレータ100は、停止後に、後述のピッキング動作を行って本601aを取得する。本601aを把持したモバイルマニピュレータ100は、その後、同図右下に配置される作業台700の前へと移動して停止し、本601aを作業台上へとリリースする動作を行う。これにより、一連の動作は終了する。なお、本実施形態において目標物体として本を例示するが、本発明はこのような構成に限定されない。従って、例えば工場の例にあっては、目標物体は製造に用いられる材料や作業工具等であってもよい。
【0091】
図6は、モバイルマニピュレータ100の動作に関するゼネラルフローチャートである。同図から明らかな通り、処理が開始すると、モバイルマニピュレータ100は、工場800内のLANを経由してデータサーバ200へと設定情報のリクエスト処理を行い設定情報を取得する処理を行う(S1)。ここで、本実施形態において、設定情報は、手先カメラ42と棚600との相対的関係情報と目標物体情報を含む。
【0092】
相対的関係情報は、棚600の前への移動後、リーチング動作前の手先カメラ42と棚600との関係性に関する情報、すなわち、手先カメラ42と棚600との間の相対距離と相対姿勢に関する情報を含む。例えば、相対距離200mm、相対姿勢180°といった情報である。なお、相対姿勢180°とは、棚600に対して手先が正対する又は対向する状態を意味している。
【0093】
目標物体情報は、モバイルマニピュレータ100の把持する又は運搬する物体に関する情報、すなわち、本実施形態においては書籍の識別情報である書籍IDと、書籍の工場800内における位置を示す書籍位置情報を含んでいる。
【0094】
なお、本実施形態においては、設定情報をデータサーバ200から取得する構成としたが、本発明はこのような構成に限定されず、例えば、モバイルマニピュレータ100に予め設定情報を記憶させていてもよい。
【0095】
設定情報を受信するまで待機状態(S2NO)にあったモバイルマニピュレータ100は、データサーバ200から設定情報を受信すると(S2YES)、目標設定処理を行う(S3)。
【0096】
図7は、目標設定処理の詳細フローチャートである。同図から明らかな通り、処理が開始すると、設定情報から目標物体である本の書籍IDと、書籍位置情報を読み出す処理を行う(S31)。
【0097】
その後、書籍位置情報に基づいて、リーチング動作前の手先カメラ42の目標位置と目標姿勢を算出する処理が行われる(S32)。すなわち、目標物体である本からの相対距離が200mm、相対姿勢が180°となる場合の手先カメラ42の位置及び姿勢が算出される。
【0098】
この手先カメラ42の目標位置と目標姿勢が算出されると、当該目標位置と目標姿勢から逆算するように移動台車20の目標位置と目標姿勢が算出される(S34)。このとき、モバイルマニピュレータ100には所定の基準姿勢が予め設定されている。この基準姿勢は、本実施形態においては、移動の安全も考慮して腕部40を一定程度折りたたんだ所定の姿勢に設定されている。
【0099】
その後、算出結果を記憶部へと記憶する処理が行われ、目標設定処理は終了する(S36)。
【0100】
図8は、手先カメラ42の目標位置と目標姿勢に関する説明図である。同図左下には初期状態にあるモバイルマニピュレータ100が描かれており、同図右上には棚600と棚600上に配置されている目標物体の本601aが描かれている。また、同図において、手先カメラ42の初期位置及び初期姿勢は、2つの直行する矢印C1にて示されており、移動台車20の初期位置及び初期姿勢も同様に2つの直行する矢印C2により示されている。
【0101】
また、算出された手先カメラ42の目標位置と目標姿勢は、棚600の前において2つの直行する矢印C3にて示されており、さらに、移動台車20の目標位置と目標姿勢は2つの直行する矢印C4にて示されている。後述するように、モバイルマニピュレータ100は、移動台車20の目標位置と目標姿勢を目指して自律移動することとなる。
【0102】
図6に戻り、目標設定処理(S3)が完了すると、次にモバイルマニピュレータ100の移動処理が行われる(S4)。
【0103】
図9は、移動処理(S4)の詳細フローチャートである。同図から明らかな通り、処理が開始すると、環境情報取得部101は、環境認識手段32を用いて環境情報を取得して移動台車制御部102へと提供する処理を行う(S41)。
【0104】
環境情報を取得すると、移動台車制御部102は、次に、当該環境情報に基づいて自身の周囲のローカル環境の認識処理を行い、予め工場800に対して生成されたグローバル環境地図における自己位置推定処理を行う(S43)。なお、この自己位置推定処理として、当業者に知られる種々の手法を適用可能である。
【0105】
この自己位置推定処理が行われた後、移動台車制御部102は、移動経路を計画する処理(パスプランニング)を行う(S44)。本実施形態においては、環境情報からグローバル地図及びモバイルマニピュレータ100の周辺のローカル地図を生成し、推定自己位置から終点までの経路を生成する。より詳細には、壁からの距離等で定義されるコストが所定の閾値以下であって、かつ、終点までの到達時間が最小となる経路を計画する。ただし、経路計画手法はこのような手法に限定されず、当業者に知られるいずれの手法を利用してもよい。
【0106】
経路計画処理の完了後、移動台車制御部102は、移動制御処理(SS46)、すなわち、経路計画処理(S44)にて計画された経路に沿って移動するよう移動機構駆動手段2を制御する処理を行う。
【0107】
その後、移動制御処理が完了すると、移動台車20が目標位置及び姿勢に至ったか否かの判定処理が行われる(S47)。すなわち、自己位置推定処理を行い、移動台車20の目標位置及び姿勢に一致するか又は十分に近づいたか否かの判定処理が行われ、未だ十分に近づいていない場合には(S47NO)、再び一連の処理(S41~S47)が繰り返される。一方、移動台車20の目標位置及び姿勢に一致するか又は十分に近づいたと判定された場合(S47YES)、経路移動処理は終了して停止する。
【0108】
図10は、移動台車20が目標位置及び姿勢に至ったと判定されたときのモバイルマニピュレータ100の状態について示す説明図である。同図から明らかな通り、モバイルマニピュレータ100は、自己位置推定に基づき移動台車20の目標位置及び姿勢に至ったと判定しているものの、実際には移動台車20の位置及び姿勢、並びに、手先カメラ42の位置及び姿勢は、それぞれ目標位置及び姿勢とずれている。
【0109】
すなわち、同図中でC1で示される手先カメラ42の実際の位置及び姿勢は、C3で示される手先カメラ42の目標位置及び姿勢とずれている。また、同図中でC2で示される移動台車20の実際の位置及び姿勢は、C4で示される移動台車20の目標位置及び姿勢とずれている。例えば、この状態において本601aへとピッキング処理等を行えば失敗するおそれがある。
【0110】
図6に戻り、移動処理が完了すると、次にピッキング処理(S6)が行われる。
【0111】
図11は、ピッキング処理の詳細フローチャートである。同図から明らかな通り、処理が開始すると、まず、モバイルマニピュレータ100と棚600との相対的関係を認識する処理が行われる(S61)。
【0112】
図12は、移動処理後のモバイルマニピュレータ100と棚600の斜視図である。同図から明らかな通り、本実施形態においては、棚600の棚板のモバイルマニピュレータ100との対向面には所定間隔でARマーカー603が配置されている。同図中の拡大図から明らかな通り、ARマーカー603は2次元のコード情報である。また、棚に配置された本の背表紙601xの下部にはそれぞれ2次元ドットパターンから成るQRコード604が配置されている。
【0113】
相対的関係を認識するため、モバイルマニピュレータ100は、頭部カメラ35を用いて複数のARマーカー603を視野内に収めて撮像する。これにより、視野内の複数のARマーカー603の大きさや角度に基づいて頭部カメラ35と棚600との相対的な距離及び姿勢を取得することができる。
【0114】
図13は、複数のARマーカー603に基づいて棚600に対する手先カメラ42の相対距離及び姿勢を算出する過程に関する概念図である。複数のARマーカー603を利用することにより、1つのARマーカーを利用するより算出精度を向上させることができる。
【0115】
まず、同図左側の図にある通り、マニピュレータ制御部113は、頭部カメラ35により取得された6つのARマーカー603の位置及び姿勢に基づき、床面に垂直な平面方程式を設定する。このように平面方程式を設定したのは、棚600の前面が床面に垂直な平面であるとの仮定に基づくものである。その後、右側の図にあるように、設定した平面に対する手先カメラ42の相対距離及び相対姿勢を幾何学的に算出する。このようにして、棚600に対する手先カメラ42の実際の位置関係を把握することができる。なお、相対的関係の算出は本実施形態の手法に限定されず、種々の公知の手法を採用することができる。
【0116】
図11に戻り、棚600との相対的関係の認識処理が完了すると、マニピュレータ制御部113は、移動台車20を移動させることなく、腕部40を制御して手先カメラ42を、設定情報で指定される相対距離及び相対姿勢、すなわち、手先カメラ42を棚600から200mmの位置で正対させる処理が行われる(S62)。
【0117】
この手先カメラ42の制御後、手先カメラ42の視野内であって正面又はその近傍に存在する本を認識する処理、すなわち、棚600の棚板上に配置された本の背表紙に配置されたQRコード604を認識して書籍IDを検出する処理が行われる(S63)。
【0118】
マニピュレータ制御部113は、この認識処理の結果をデータサーバ200へと照会することによりデータサーバ200から現在視野内にある本の位置情報を受信する(S65)。
【0119】
その後、マニピュレータ制御部113は、手先カメラ42の正面又はその近傍に存在する本が目標とする本であるか否かを判定する処理を行う(S66)。この判定処理の結果、手先カメラ42の正面又はその近傍に存在する本が目標とする本601aである場合(S66YES)、後述の把持位置の特定処理(S74)が行われる。
【0120】
判定処理の結果、手先カメラ42の正面又はその近傍に存在する本が目標とする本601aでない場合(S66NO)、データサーバ200から取得した位置情報に基づき、手先を棚600の前面に沿って目標とする本601aに向けて平行移動させる処理が行われる(S68)。この所定の平行移動の後、再度手先カメラ42の視野内の本をQRコード604により認識する処理を行い(S69)、認識結果をデータサーバ200へと照会する処理を行う(S70)。
【0121】
その後、再び、手先カメラ42の正面又はその近傍に存在する本が目標とする本601aであるか否かを判定する処理が行われる(S72)。この判定処理の結果、手先カメラ42の正面又はその近傍に存在する本が目標とする本601aである場合(S72YES)、後述する把持位置の特定処理(S74)が行われる。一方、判定処理の結果、手先カメラ42の正面又はその近傍に存在する本が目標とする本601aでない場合(S72NO)、再び一連の処理(S68~S70)が行われる。
【0122】
図14は、手先カメラの制御処理(S62)後のモバイルマニピュレータ100の状態の一例について示す説明図である。同図の例にあっては、手先カメラ42の正面又はその近傍には、目標とする本601aではない本601bが配置されている。
【0123】
この場合、モバイルマニピュレータ100は、視野内の物体の認識処理(S63)により手先カメラ42の正面又はその近傍に存在する本が目標とする本601aでないと判定するので(S66NO)、データサーバ200への照会処理(S65)により得られた視野内の物体から目標とする本601aまでの相対的位置関係に基づいて、目標とする本601aに向けて手先の平行移動を行う(S68)。この平行移動処理は、目標物体である本601aが正面又はその近傍に配置するまで行われる(S69~S72YES)。すなわち、C1で示される手先カメラ42の位置と姿勢を、C3で示される手先カメラ42の目標位置及び姿勢へと向けて移動させる処理が行われる。
【0124】
図15は、手先カメラ42を目標位置及び姿勢へと平行移動させた後の状態について示す説明図である。同図から明らかな通り、距離dだけ手先カメラ42を平行移動させたことにより、C1で示される手先カメラ42の位置と姿勢は、C3で示される手先カメラ42の目標位置及び姿勢と一致している。
【0125】
このような構成によれば、自己位置推定誤差等により移動台車20の位置及び姿勢が目標位置及び姿勢とずれている場合であっても、手先カメラ42位置を確実に目標位置及び姿勢へと一致させることができるので、後述のリーチング動作等(S74、S75)の失敗の可能性を大幅に低減させることができる。
【0126】
図16は、手先カメラ42の平行移動動作を行うモバイルマニピュレータ100の一例に関する斜視図である。同図において左側の図は、手先カメラ42の平行移動動作(S68)前の状態を示しており、右側の図は、手先カメラ42の平行移動動作(S68)後の状態を示している。
【0127】
左側の図から明らかな通り、平行移動動作(S68)前の状態においては手先カメラ42の正面又はその近傍には、目標とする本601aではない本601bが配置されている。モバイルマニピュレータ100は、手先カメラ42の正面又はその近傍に存在する本が目標とする本601aでないと判定した場合には、データサーバ200から視野内の物体の位置情報を取得して目標とする本601aに向けて平行移動を開始する(S68~S72)。
【0128】
平行移動動作(S72YES)後の右側の図から明らかな通り、平行移動動作後の状態においては手先カメラ42の正面又はその近傍に、目標とする本601aが配置されている。この状態において、後述のリーチング動作等(S74、S75)を行うことにより、確実に目標とする本601aの把持等を行うことができる。
【0129】
なお、上述の手先又は手先カメラ42の平行移動処理は、棚600の前面に沿って平面的に行われたが、本発明はこのような構成に限定されない。従って、例えば、棚等の載置体又は格納体の形状に対応する曲面又は段差を含む面に沿って一定の距離及び姿勢を保って移動させてもよい。
【0130】
図11に戻り、目標となる物体である本601aの正面(180°)に相対距離200mmで手先カメラ42を配置させた後、当該目標物体、すなわち、本601aの把持位置を特定する処理が行われる(S73)。
【0131】
把持位置の特定処理は、手先カメラ42から得られた画像から把持対象物の輪郭線を検出し、検出した輪郭線に関する情報を入力として学習済モデルを利用して行われる。この学習済モデルは、把持対象物の輪郭線上において人間によりアノテーションされた正解把持位置を含むトレーニングデータに基づいて機械学習を行って生成されたものである。
【0132】
このような学習済モデルを用いた把持位置特定処理によれば、把持成功の可能性が高い把持位置を的確に特定することができる。
【0133】
なお、機械学習手法は本実施形態においてはニューラルネットワーク、特に深層学習を利用して得られたものであるが、このような機械学習手法に限定されず、他の公知の手法を利用してもよい。
【0134】
この把持位置特定処理の後、マニピュレータ制御部113は、把持位置へと向けて腕部40の各関節を伸展又は屈曲させるリーチング動作の制御を行う(S74)。このリーチング動作は腕部40の関節トルクセンサを含むセンサ116において一定の反力が検出されるまで、すなわち、腕部40が本601aへと当接するまで行われる。
【0135】
このリーチング動作の後、マニピュレータ制御部113は、グリッパである把持機構41を用いて目標物体である本601aを把持する動作の制御を行う(S75)。この把持動作は、グリッパの電流値等を計測することで、一定の反力が検出されるまで行われる。
【0136】
把持処理の後、モバイルマニピュレータ100は、本601aを把持した状態で腕部40の各関節を屈曲させることにより腕部40を折りたたむ処理を行う(S77)。これによりピッキング処理は終了する(S6)。
【0137】
図6に戻り、ピッキング処理が終了すると、モバイルマニピュレータ100は、再び移動処理を行う(S8)。すなわち、モバイルマニピュレータ100は、データサーバ200から作業台700上の目標載置位置701を読み出して、手先カメラ42の目標位置及び姿勢を算出する。この後、手先カメラ42の目標位置及び姿勢から移動台車20の目標停止位置及び姿勢を算出し、当該目標位置及び姿勢へと向けて自己位置推定を行いつつ本601aを把持したまま移動する処理を行う。自己位置推定に基づく移動処理の詳細は、
図9に示したものと略同一であるので説明は省略する。
【0138】
モバイルマニピュレータ100は、作業台700近傍の移動台車20の目標停止位置及び姿勢に到達すると、作業台700上の所定の載置位置701へと本601aを載置によりリリースする処理を行う(S9)。これにより一連の運搬処理は終了する。
【0139】
このような構成によれば、自己位置推定誤差等により移動後の停止位置・姿勢に誤差が生じても、リーチング等のその後の動作を確実に達成することができるモバイルマニピュレータ100等を提供することができる。
【0140】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。また、上記の実施形態は、矛盾が生じない範囲で適宜組み合わせ可能である。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明は、少なくともモバイルマニピュレータ等の自律移動体を製造する産業において利用可能である。
【符号の説明】
【0142】
10 ロボット本体部
2 移動機構駆動手段
20 移動台車
21 スカート
22 駆動輪
3 頭部駆動手段
30 頭部
31 顔部
32 環境認識手段
35 頭部カメラ
40 腕部
41 把持機構
42 手先カメラ
100 モバイルマニピュレータ
200 データサーバ
300 クライアント装置
500 システム
800 工場