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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】錠剤切断用鋏
(51)【国際特許分類】
   B26B 17/00 20060101AFI20240422BHJP
【FI】
B26B17/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020132308
(22)【出願日】2020-08-04
(65)【公開番号】P2022029135
(43)【公開日】2022-02-17
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】593230109
【氏名又は名称】大同化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】荒木 明
(72)【発明者】
【氏名】井上 正
(72)【発明者】
【氏名】長井 幸一
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2010-0106900(KR,A)
【文献】登録実用新案第3165560(JP,U)
【文献】特表2017-513628(JP,A)
【文献】特開2018-114099(JP,A)
【文献】特開2005-312522(JP,A)
【文献】特開2004-291133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B 13/00 - 17/02
A61J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠剤を保持する保持部と、前記保持部に保持された錠剤を切断する鋏本体とを備え、
前記鋏本体は、揺動軸心周りに互いに揺動可能に連結された一対の鋏部を備え、
前記一対の鋏部の夫々は、前記揺動軸心に対して一方側の部分に操作用の柄部を備えるとともに、前記揺動軸心に対して他方側の部分に互いに接近することで間に位置する錠剤を切断する切断部を備え、
前記保持部は、保持した錠剤が位置する錠剤保持領域を備えるとともに、前記錠剤保持領域が一対の前記切断部の間に位置するように前記一対の切断部のうちの一方に固定され
前記保持部は、前記錠剤保持領域にある錠剤を前記錠剤保持領域から押し出す押出操作部を備えている錠剤切断用鋏。
【請求項2】
錠剤を保持する保持部と、前記保持部に保持された錠剤を切断する鋏本体とを備え、
前記鋏本体は、揺動軸心周りに互いに揺動可能に連結された一対の鋏部を備え、
前記一対の鋏部の夫々は、前記揺動軸心に対して一方側の部分に操作用の柄部を備えるとともに、前記揺動軸心に対して他方側の部分に互いに接近することで間に位置する錠剤を切断する切断部を備え、
前記保持部は、保持した錠剤が位置する錠剤保持領域を備えるとともに、前記錠剤保持領域が一対の前記切断部の間に位置するように前記一対の切断部のうちの一方に固定され
前記保持部は、軟質な材質で構成されて前記錠剤保持領域が形成された形成部と、前記形成部より硬質の材質で構成されて前記形成部を収容するケース部とを備え、
前記形成部には、前記錠剤保持領域の形状が異なる複数の種類があり、
前記形成部は、前記ケース部に対して着脱可能に構成されている錠剤切断用鋏。
【請求項3】
前記保持部は、前記錠剤保持領域にある錠剤を前記錠剤保持領域から押し出す押出操作部を備えている請求項に記載の錠剤切断用鋏。
【請求項4】
前記一対の切断部の夫々に対して前記錠剤保持領域が存在する側を内側として、
前記一対の切断部の夫々の前記内側の端部が、刃の厚み方向において同じ位置にある請求項1から3の何れか一項に記載の錠剤切断用鋏。
【請求項5】
前記一対の切断部の夫々が、両刃に構成されている請求項に記載の錠剤切断用鋏。
【請求項6】
前記保持部は、形状が異なる錠剤保持領域を複数備えている請求項1からの何れか一項に記載の錠剤切断用鋏。
【請求項7】
前記保持部が、前記一対の切断部のうちの一方に着脱可能に固定されている請求項1からの何れか一項に記載の錠剤切断用鋏。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤を切断する錠剤切断用鋏に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、錠剤を切断するための錠剤切断用鋏が示されている。このような錠剤切断用鋏では、一方の手で薬剤を保持した状態で他方の手で錠剤切断用鋏を操作して錠剤を切断するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3165560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の錠剤切断用鋏では、一方の手で薬剤を保持しつつ他方の手で錠剤切断用鋏を操作する必要があるため、薬剤を切断し難い場合があった。特に、錠剤が、表面を糖衣で覆った糖衣錠である場合は、錠剤を切断する際に錠剤切断用鋏が錠剤の表面を滑り易くなり、一方の手で錠剤を保持するために必要な力が大きくなるため、錠剤を切断し難かった。
【0005】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、薬剤を切断し易い錠剤切断用鋏を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、錠剤を保持する保持部と、前記保持部に保持された錠剤を切断する鋏本体とを備え、前記鋏本体は、揺動軸心周りに互いに揺動可能に連結された一対の鋏部を備え、前記一対の鋏部の夫々は、前記揺動軸心に対して一方側の部分に操作用の柄部を備えるとともに、前記揺動軸心に対して他方側の部分に互いに接近することで間に位置する錠剤を切断する切断部を備え、前記保持部は、保持した錠剤が位置する錠剤保持領域を備えるとともに、前記錠剤保持領域が一対の前記切断部の間に位置するように前記一対の切断部のうちの一方に固定されている点にある。
【0007】
本構成によれば、一対の柄部を操作して一対の鋏部を互いに近づけることで、保持部の錠剤保持領域に保持されている錠剤を一対の切断部によって切断することができる。そして、このように切断する錠剤は保持部によって保持されており、一対の柄部を操作する手とは反対側の手で錠剤を保持する必要がないため、錠剤を切断し易い。
【0008】
本発明の第2特徴構成は、前記一対の切断部の夫々に対して前記錠剤保持領域が存在する側を内側として、前記一対の切断部の夫々の前記内側の端部が、刃の厚み方向において同じ位置にある点にある。
【0009】
本構成によれば、一対の切断部の内側の端部の位置を刃の厚み方向で同じ位置にしており、一対の切断部の一方で切断する面と他方で切断する面とが刃の厚み方向で同じ位置となるため、錠剤を綺麗に切断できる。
【0010】
本発明の第3特徴構成は、前記一対の切断部の夫々が、両刃に構成されている点にある。
【0011】
本構成によれば、一対の切断部の夫々が両刃に構成されており、切断部における刃の厚み方向の中央部で錠剤を切断することになるため、一対の切断部の夫々が片刃に構成されている場合に比べて、刃の厚み方向にバランスが良い状態で錠剤を切断することができる。
【0012】
本発明の第4特徴構成は、前記保持部は、前記錠剤保持領域にある錠剤を前記錠剤保持領域から押し出す押出操作部を備えている点にある。
【0013】
本構成によれば、切断した錠剤を押出操作部によって錠剤保持領域から押し出すことで、切断した錠剤を錠剤保持領域から容易に取り出すことができる。
【0014】
本発明の第5特徴構成は、前記保持部は、軟質な材質で構成されて前記錠剤保持領域が形成された形成部と、前記形成部より硬質の材質で構成されて前記形成部を収容するケース部とを備えている点にある。
【0015】
本構成によれば、錠剤が切断された場合、その切断された錠剤の間に切断部が挿入されるため錠剤がずれるが、錠剤保持領域を形成する形成部が軟質な材質で構成されており変形可能であるため、切断する前の錠剤の側周囲に形成部が接触するようにして錠剤を保持しつつ、変形した形成部によって切断した後の錠剤の側周囲にも接触するようにして錠剤を保持することができる。このように錠剤を保持できるため、切断する前と後との両方において保持部による錠剤の保持を適切に行うことができる。そして、形成部を比較的硬質なケース部に収容し、このケース部を一対の切断部のうちの一方に固定することで、保持部の切断部への固定を強固にできる。
【0016】
本発明の第6特徴構成は、前記形成部には、前記錠剤保持領域の形状が異なる複数の種類があり、前記形成部は、前記ケース部に対して着脱可能に構成されている点にある。
【0017】
本構成によれば、複数種類の形成部のうち、切断しようとする錠剤の形状に適した錠剤保持領域を有する形成部を選択してケース部に装着することで、保持部によって錠剤を適切に保持することができる。また、このように形状の異なる錠剤に対応するために錠剤保持領域の形状を複数用意しながら、1つの形成部に形成する錠剤保持領域を1つだけとしてもよいため、形成部の小型化、ひいては、この形成部を備えた保持部の小型化を図ることができる。
【0018】
本発明の第7特徴構成は、前記保持部は、形状が異なる錠剤保持領域を複数備えている点にある。
【0019】
本構成によれば、錠剤の形状に適した錠剤保持領域を選択して錠剤を保持することで、保持部によって錠剤を適切に保持することができる。また、このように1つの保持部に複数の錠剤保持領域を備えることで、保持部の全体、又は保持部における錠剤保持領域を形成する部分を着脱する必要がないため、形状が異なる複数種の錠剤を切断する場合の手間を抑えることができる。
【0020】
本発明の第8特徴構成は、前記保持部が、前記一対の切断部のうちの一方に着脱可能に固定されている点にある。
【0021】
本構成によれば、例えば、保持部の一部が破損する等によって錠剤を適切に保持できなくなった場合でも、切断部に装着されている保持部を新たな保持部に交換することで、錠剤を適切に保持できる状態に復帰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】錠剤切断用鋏の斜視図
図2】一対の鋏部の分解斜視図
図3】一対の切断部が離間状態の錠剤切断用鋏の側面図
図4】一対の切断部が切断状態の錠剤切断用鋏の側面図
図5】一対の切断部が切断状態の錠剤切断用鋏の正面図
図6】保持部の平面図
図7】保持部の縦断側面図
図8】保持部の分解斜視図
図9】別の種類の保持部の斜視図
図10】別実施形態(1)における一対の切断部が切断状態の錠剤切断用鋏の正面図
図11】別実施形態(3)の保持部の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る薬剤切断用鋏の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1から図4に示すように、薬剤切断用鋏1は、錠剤2を保持する保持部3と、保持部3に保持された錠剤2を切断する鋏本体4とを備えている。鋏本体4は、揺動軸心P周りに互いに揺動可能に交差状態で連結された一対の鋏部6を備えている。そして、一対の鋏部6の夫々における揺動軸心Pに対して一方側(基端側X2)の部分に、操作用の柄部7を備えている。また、一対の鋏部6における揺動軸心Pに対して他方側(先端側X1)の部分に、互いに接近することで間に位置する錠剤2を切断する切断部8を備えている。
【0024】
以下、薬剤切断用鋏1について説明を加えるが、一対の切断部8のうちの一方を第1切断部8aとし、一対の切断部8のうちの他方を第2切断部8bとして説明する。また、図3に示すように、第1切断部8aの刃が延びる方向を長さ方向Xとし、長さ方向Xにおける揺動軸心Pに対して第1切断部8aが存在する側を先端側X1とし、その反対側を基端側X2として説明する。また、第1切断部8aの刃の厚み方向を幅方向Yとし、幅方向Yの一方側を幅方向第1側Y1とし、その反対側を幅方向第2側Y2として説明する。更に、長さ方向X及び幅方向Yに対して直交する方向を上下方向Zとし、上下方向Zにおける第1切断部8aに対して第2切断部8bが存在する側を上方側Z1とし、その反対側を下方側Z2として説明する。
【0025】
〔鋏本体〕
鋏本体4は、図4に示すように、一対の柄部7を互いに近づけることで、一対の切断部8を互いに最も近づけた切断状態となり、図3に示すように、一対の柄部7を互いに遠ざけることで、一対の切断部8を切断状態から互いに遠ざけた離間状態となるように構成されている。ちなみに、図4に示すように、切断状態では、一対の切断部8の上下方向Zの間隔が錠剤2の上下方向Zの幅より小さくなっており、一対の切断部8が錠剤2を切断可能な距離まで接近している状態となっている。
【0026】
図1から図4に示すように、鋏本体4には、一対の柄部7を互いに遠ざけるように付勢する付勢部材9が備えられている。つまり、鋏本体4は、付勢部材9の付勢力に抗して一対の柄部7を互いに近づけるように操作することで一対の切断部8の状態を切断状態(図4参照)に切り替えることができ、一対の切断部8が切断状態にある状態で一対の柄部7に対する操作力を弱めることで、付勢部材9の付勢力によって一対の柄部7が互いに離れて一対の切断部8の状態を切断状態から離間状態(図1及び図3参照)に切り替えることができるように構成されている。本実施形態では、付勢部材9は、付勢部材9は一対の柄部7の間に圧縮状態で設置されたコイルスプリングによって構成されている。
【0027】
図3及び図4に示すように、一対の切断部8の夫々は、内側の端部に刃を備えた刃部11と、刃部11と揺動軸心Pがある揺動部12との間に位置して刃を備えていない接続部13とを備えている。刃部11は、切断部8における接続部13より先端側X1に備えられており、切断部8の先端側X1の端部まで備えられている。そして、一対の切断部8の刃部11の夫々が、図1及び図5に示すように、幅方向Yを向く両側の面が上下方向Zに対して傾斜させた両刃となっている。このように、一対の切断部8の夫々が、両刃に構成されている。
【0028】
図1に示すように、一対の鋏部6の夫々に備えられている揺動部12は、揺動軸心P周りに互いに揺動可能に嵌合されており、幅方向Yにおいて同じ位置にある。次に、一対の鋏部6の揺動部12について説明を加えるが、一対の鋏部6のうちの幅方向第1側Y1にある鋏部6を第1鋏部6aと称し、一対の鋏部6のうちの幅方向第2側Y2にある鋏部6を第2鋏部6bと称して説明する。
【0029】
図2に示すように、第1鋏部6aの揺動部12に、幅方向Yに貫通する第1貫通孔19aが形成されていると共に、第1鋏部6aの柄部7や接続部13に対して幅方向第1側Y1に凹入する第1凹部20aが形成されている。また、第2鋏部6bの揺動部12に、幅方向Yに貫通する第2貫通孔19bが形成されていると共に、第2鋏部6bの柄部7や接続部13に対して幅方向第2側Y2に凹入する第2凹部20bが形成されている。
【0030】
図1に示すように、第1鋏部6aの第1凹部20aと第2鋏部6bの第2凹部20bとは、互いに揺動軸心P周りに揺動可能に嵌合されている。また、第2鋏部6bの第2貫通孔19bには軸部14が幅方向第2側Y2から挿入されて第1鋏部6aの第1貫通孔19aに圧入されている。軸部14は、一対の鋏部6が互いに揺動することで、第1鋏部6aと一体的に揺動軸心P周りに回転すると共に第2鋏部6bに対して相対的に回転する。また、軸部14の幅方向第2側Y2の端部が大径に形成されており、第2鋏部6bは、軸部14によって第1鋏部6aに対して幅方向第2側Y2に移動することが規制されている。
【0031】
第1鋏部6aの揺動部12の幅方向Yの中央は、第2鋏部6bの揺動部12の幅方向Yの幅内に位置し、第2鋏部6bの揺動部12の幅方向Yの中央は、第1鋏部6aの揺動部12の幅方向Yの幅内に位置している。本実施形態では、第1鋏部6aの揺動部12の幅方向Yの中央と第2鋏部6bの揺動部12の幅方向Yの中央とは幅方向Yにおいて同じ位置に位置している。
【0032】
また、一対の切断部8を切断状態とした状態では、第1鋏部6aの第1接触部15aと第2鋏部6bの第2接触部15bとが接触しており、一対の切断部8は互いに接触している又は互いに離間しているものの設定距離まで近づいた状態となっている。本実施形態では、図4に示すように、一対の切断部8を切断状態とした状態では、一対の切断部8は互いに離間しているものの設定距離まで近づいた状態となっている。尚、設定距離とは、錠剤2の上下方向Zの厚みより小さい距離であり、一対の切断部8が互いに設定距離まで近づくことで錠剤2を切断可能な距離としている。このように、切断状態において第1接触部15aと第2接触部15bとを接触させることで、錠剤2を切断するべく一対の切断部8を切断状態に切り替えた場合に一対の刃部11に負荷が集中することを回避している。尚、本実施形態では、第1鋏部6aの接続部13が第1接触部15aとして機能し、第2鋏部6bの接続部13が第2接触部15bとして機能している。
【0033】
また、図5に示すように、一対の切断部8の夫々の内側の端部が、幅方向Y(刃の厚み方向)において同じ位置にある。一対の切断部8の夫々に対して錠剤保持領域Aが存在する側を内側としており、図5に示すように、第1切断部8aの内側は上方側Z1となり、第2切断部8bの内側は下方側Z2となっている。そして、第1切断部8aの上方側Z1の端部と第2切断部8bの下方側Z2の端部とが、幅方向Yにおいて同じ位置となっている。そのため、一対の切断部8が切断位置にある状態では、第1切断部8aと第2切断部8bとは上下方向Zに並んでおり、一般的な鋏のように幅方向Yには並んでいない。
【0034】
〔保持部〕
図1及び図7に示すように、保持部3は、保持した錠剤2が位置する錠剤保持領域Aを備えるとともに、錠剤保持領域Aが一対の切断部8の間に位置するように一対の切断部8のうちの一方(第1切断部8a)に固定されている。そして、図7及び図8に示すように、保持部3は、軟質な材質で構成されて錠剤保持領域Aが形成された形成部16と、形成部16より硬質の材質で構成されて形成部16を収容するケース部17と、錠剤保持領域Aにある錠剤2を錠剤保持領域Aから押し出す押出操作部18を備えている。
【0035】
形成部16は、錠剤保持領域Aに位置する錠剤2の幅方向Yや長さ方向Xの移動をある程度の力で規制できる硬さ、具体的には消しゴム程度の硬さの材質であればよく、例えば、シリコンゴムを用いて構成されている。また、ケース部17は、切断部8に固定することができるとともに形成部16の形状を維持可能な硬さであればよく、ポリプロピレン等のプラスチックやアルミニウム等の金属で構成されている。
【0036】
〔ケース部〕
図6から図8に示すように、ケース部17は、矩形状の底部21とその底部21の周縁部から立設された4つの壁部22とを備えて上方側Z1に向けて開口する箱状に形成されている。そして、ケース部17内には、このケース部17に対して上方側Z1から嵌合された形成部16が収容されている。
【0037】
また、ケース部17における先端側X1の壁部22に先端側挿通部23が形成され、形成部16における基端側X2の壁部22に基端側挿通部24が形成されている。ケース部17には、先端側挿通部23及び基端側挿通部24に第1切断部8aを挿通した状態で第1切断部8aが固定される。
【0038】
基端側挿通部24には、第1切断部8aの接続部13が挿通されている。この基端側挿通部24は孔状に形成されており、第1切断部8aと第2切断部8bとの間には、基端側挿通部24の一部が存在している。しかし、第2切断部8bには、この基端側挿通部24の一部が入り込むための切欠き部25が形成されている。また、先端側挿通部23には、第1切断部8aの刃部11が挿通されている。この先端側挿通部23は、壁部22の上端から下方側Z2に凹入する形状に形成されており、第1切断部8aと第2切断部8bとの間には先端側挿通部23は存在していない。これらのように、第2切断部8bに切欠き部25を形成することや先端側挿通部23を下方側Z2に凹入する形状に形成することで、第1切断部8aと第2切断部8bとが、図4に示すように切断状態となるまで互いに接近可能となっている。
【0039】
ケース部17は、第1切断部8aの接続部13を基端側挿通部24に圧入することで第1切断部8aに固定されている。また、このケース部17の第1切断部8aの固定は、第1切断部8aの接続部13を基端側挿通部24から引き抜くことが可能な程度で第1切断部8aの接続部13を基端側挿通部24に圧入されており、第1切断部8aから取り外すことが可能となっている。つまり、ケース部17は、第1切断部8a(一対の切断部8のうちの一方)に着脱可能に固定されている。尚、例えば、ケース部17を第1切断部8aに接着剤で接着する等によって、ケース部17を第1切断部8aから取り外すことが不可能な構成としてもよい。
【0040】
〔形成部〕
図8に示すように、形成部16は、錠剤保持領域Aを形成する凹部26と、切断部8を挿通させる挿通部27と、押出操作部18が設置される領域を形成する設置部28と、を備えている。
【0041】
形成部16は、錠剤保持領域Aを形成する凹部26を備えている。凹部26は、錠剤保持領域Aに保持すると想定される錠剤2の形状に応じた形状に形成されている。説明を加えると、図7に示す錠剤保持領域Aが保持する錠剤2として、上半分が上方側Z1に向けて円弧状に突出し且つ下半分が下方側Z2に向けて円弧状に突出する円盤形状の錠剤2が想定されている。そして、凹部26の底面部は、錠剤2の下面に沿った形状となっており、下方側Z2に向けて皿形状に凹入する形状となっている。また、凹部26の側面部は、錠剤2の直径より小さい直径の円柱形状(図7において一部を点線で示した形状)に形成されている。
【0042】
錠剤2は、上方側Z1から押し込むようにして錠剤保持領域Aに設置して、保持部3に保持させる。これにより、錠剤2は、凹部26の底面部によって下方から支持されるとともに、錠剤2の形状に沿って変形した凹部26の側面部によって長さ方向Xや幅方向Yの移動が規制される。このように形成された形成部16の錠剤保持領域Aに錠剤2に保持させることで、一対の柄部7を操作して一対の鋏部6を互いに近づけることで錠剤2を容易に切断することができる。
【0043】
また、形成部16は、切断部8を挿通させる挿通部27を備えている。この挿通部27には、第1切断部8aが挿通されているとともに、第2切断部8bが上方側Z1から進入可能なようにスリット状に形成されている。そのため、第2切断部8bは、接近状態まで第1切断部8aに接近可能となっている。
【0044】
形成部16は、ケース部17に接着剤等によって接着されておらず、形成部16をケース部17から上方側Z1に向けて引き抜くようにしてケース部17から取り出し可能となっている。このように、形成部16は、ケース部17に対して着脱可能に構成されている。ただし、第1切断部8aがケース部17に固定されている状態では、形成部16の上方側Z1への移動が第1切断部8aによって規制されるため、形成部16をケース部17から取り出しできない構成となっている。そのため、形成部16のケース部17からの取り外しは、第1切断部8aをケース部17から取り外した状態で可能となる。
【0045】
〔押出操作部〕
図7及び図8に示すように、押出操作部18は、ケース部17に上下移動自在に支持されており、ケース部17の外部から上下方向Zに沿って操作可能な操作部31と、操作部31に連動して上下方向Zに移動する押出部32と、押出部32を下方側Z2に付勢する付勢部33と、を備えている。操作部31は、ケース部17の底部21から下方側Z2に突出する状態でケース部17に支持されている。図6に示すように、押出部32は、上下方向視で錠剤保持領域Aと重なる位置にあり、幅方向Yにおいて第1切断部8aの一方側にある第1部分32aと第1切断部8aの他方側にある第2部分32bとを備えている。
【0046】
押出部32は、退避位置(図7に示す位置)にある状態では、錠剤保持領域Aに対して下方側Z2にあり、このように押出部32が退避位置にある状態から操作部31を付勢部33の付勢力に抗して上方側Z1に押し操作することで、押出部32が上方側Z1に移動して錠剤保持領域Aに下方側Z2から侵入する。このとき、錠剤保持領域Aに錠剤2が保持されている場合は、この錠剤2は押出部32によって上方側Z1に押されて錠剤保持領域Aから取り出される。説明を加えると、錠剤保持領域Aに保持された錠剤2が鋏本体4に切断されている場合、錠剤2は、幅方向Yにおいて第1切断部8aの両側に分割された状態で存在する。そして、このような状態で操作部31を押し操作することで、2つに分割されている錠剤2が、押出部32の第1部分32aと第2部分32bとによって上方側Z1に押されて錠剤保持領域Aから取り出される。そして、押出操作部18は、押出部32に対する押し操作を解除することで、付勢部33の付勢力によって操作部31及び押出部32が下方側Z2に移動して退避位置に復帰するように構成されている。
【0047】
〔保持部のバリエーション〕
そして、形成部16には、錠剤保持領域Aの形状が異なる複数の種類がある。形成部16として、図8に示すように平面視で円形状の錠剤保持領域Aを備えた形成部16の他、例えば、図9に示すように平面視で長円形状の錠剤保持領域Aを備えた形成部16等がある。この他、図示は省略するが、図8に示す形成部16より錠剤保持領域Aの直径が小さい又は大きい形成部16や、図9に示す形成部16より錠剤保持領域Aの長さが短い又は長い形成部16等、形成部16に、錠剤保持領域Aの大きさが異なる種類があってもよい。
【0048】
このように、形成部16として複数の種類を備えることで、錠剤2を切断する場合に、その錠剤2の形状に応じた錠剤保持領域Aを有する形成部16をケース部17に装着して錠剤2の切断を行うことで、形成部16によって錠剤2を適切に保持した状態で錠剤2の切断を行うことができる。
【0049】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0050】
(1)上記実施形態では、一対の切断部8の夫々を両刃とする構成を例として説明した。しかし、このような構成に限定されない。例えば、図10にしめすように、一対の切断部8の夫々を片刃とする構成としてもよい。
【0051】
(2)上記実施形態では、一対の切断部8の夫々の内側の端部を、幅方向Yにおいて同じ位置とする構成を例として説明した。しかし、このような構成に限定されない。例えば、一対の切断部8の夫々の内側の端部を、幅方向Yにおいて異なる位置とし、一対の切断部8が切断状態において幅方向Yに並ぶようにしてもよい。
【0052】
(3)上記実施形態では、保持部3に錠剤保持領域Aを1つのみ備えた構成を例として説明した。しかし、このような構成に限定されない。例えば、保持部3に錠剤保持領域Aを2つ以上備えた構成としてもよい。具体的には、図11に示すように、保持部3が、円盤形状の錠剤2を保持する錠剤保持領域Aと平面視で長円形状の錠剤2を保持する錠剤保持領域Aとの2つの錠剤保持領域Aを備える構成としてもよい。また、同じ形状の錠剤2を複数纏めて切断できるように、保持部3が、同じ形状の錠剤保持領域Aを複数備える構成としてもよい。尚、錠剤保持領域Aを2つ以上備えた保持部3が複数種類あってもよい。
【0053】
(4)上記実施形態では、形成部16をケース部17に対して着脱可能としたが、形成部16をケース部17に接着剤によって接着したりする等によって、着脱不可能な構成としてもよい。
【0054】
(5)上記実施形態では、ケース部17と形成部16との材質を異ならせて別体とする構成を例として説明した。しかし、このような構成に限定されない。例えば、ケース部17と形成部16とを同じ材質で一体形成する構成としてもよい。
【0055】
(6)上記実施形態では、保持部3に押出操作部18を備える構成を例として説明した。しかし、このような構成に限定されない。例えば、保持部3に押出操作部18を備えない構成としてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 薬剤切断用鋏
2 錠剤
3 保持部
4 鋏本体
6 鋏部
7 柄部
8 切断部
16 形成部
17 ケース部
18 押出操作部
A 錠剤保持領域
P 揺動軸心


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11