(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】過熱水蒸気と調理用熱源を用いて食材を加熱調理する調理装置
(51)【国際特許分類】
F24C 1/00 20060101AFI20240422BHJP
【FI】
F24C1/00 310B
F24C1/00 320A
F24C1/00 320B
(21)【出願番号】P 2020134741
(22)【出願日】2020-08-07
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】505035116
【氏名又は名称】株式会社ティーオー食研
(74)【代理人】
【識別番号】110002136
【氏名又は名称】弁理士法人たかはし国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇佐 崇志
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-063871(JP,A)
【文献】特開2015-117864(JP,A)
【文献】登録実用新案第3182088(JP,U)
【文献】特開平11-332754(JP,A)
【文献】特開2007-147268(JP,A)
【文献】特開2000-135167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 1/00
A47J 27/00-27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過熱水蒸気と調理用熱源とを併用して、調理室内の食材を加熱調理する調理装置であって、
霧用の水を加熱するための熱源を有さずに霧を発生させる霧化装置、
該霧化装置で発生した霧を輸送し、該霧がその内部で加熱されて発生した過熱水蒸気を該調理室まで輸送して該調理室に導入する加熱輸送管、及び、
該調理室内の食材を加熱すると共に、該加熱輸送管及び該加熱輸送管内の霧を加熱して過熱水蒸気を発生させる調理用熱源、を具備することを特徴とする調理装置。
【請求項2】
過熱水蒸気を発生させる熱源としては、前記食材を加熱する調理用熱源のみを具備する請求項1に記載の調理装置。
【請求項3】
前記調理用熱源、前記加熱輸送管、及び、前記調理室を、下からこの順番の位置関係で具備する請求項1又は請求項2に記載の調理装置。
【請求項4】
前記加熱輸送管が、前記調理用熱源で加熱されるように、前記調理室の底面及び/又は側面に固定されている請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載の調理装置。
【請求項5】
前記調理室内には、気体循環手段も送風手段も設けられておらず、食材を加熱している時間は、前記調理室が実質的に過熱水蒸気のみで満たされるようになっている請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載の調理装置。
【請求項6】
前記調理用熱源を利用した加熱が、ガス火加熱、セラミックヒーター加熱、又は、電気抵抗加熱である請求項1ないし請求項5の何れかの請求項に記載の調理装置。
【請求項7】
前記霧化装置が超音波霧化装置である請求項1ないし請求項6の何れかの請求項に記載の調理装置。
【請求項8】
前記調理室内に導入されるときの過熱水蒸気の温度が、110℃以上600℃以下となるように、前記霧化装置、前記調理用熱源、及び、前記加熱輸送管が設計されて配置されている請求項1ないし請求項7の何れかの請求項に記載の調理装置。
【請求項9】
前記食材が固体食材と液体食材とを含有する食材である請求項1ないし請求項8の何れかの請求項に記載の調理装置。
【請求項10】
前記液体食材が水又は食用油である請求項9に記載の調理装置。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10の何れかの請求項に記載の調理装置を使用する食材の調理方法であって、
以下の工程(1)から(5)の全ての工程を有することを特徴とする食材の調理方法。
(1)霧化装置を用いて常温の霧を発生させる工程
(2)工程(1)で発生させた霧を、該霧化装置と前記調理室との間に位置する前記加熱輸送管の内部を通過させる工程
(3)工程(2)において該加熱輸送管の内部を通過している霧を、食材を加熱して調理するための前記調理用熱源を用いて加熱することによって過熱水蒸気を生成させる工程
(4)工程(3)で生成させた過熱水蒸気を、該加熱輸送管の出口から該調理室の内部に導入する工程
(5)工程(4)で導入された過熱水蒸気で満たした状態で、該調理用熱源を用いて、該食材を加熱調理する工程
【請求項12】
食材が固体食材と水とを含有する食材であって、
請求項1ないし請求項10の何れかの請求項に記載の調理装置を使用して、該調理室の内部を過熱水蒸気で満たした状態で該食材を加熱することによって、該水の表面におけるアクの発生を抑制しつつ該食材を加熱調理することを特徴とするアクの発生を抑制する調理方法。
【請求項13】
前記固体食材が、動物の肉、骨、内臓又は皮であり、前記水が、純水、出汁又は調味料含有水である請求項12に記載のアクの発生を抑制する調理方法。
【請求項14】
食材が固体食材と食用油とを含有する食材であって、
請求項1ないし請求項10の何れかの請求項に記載の調理装置を使用して、該調理室の内部を過熱水蒸気で満たした状態で該食材を加熱することによって、カラッと該固体食材を揚げることを特徴とする固体食材をカラッと揚げる調理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過熱水蒸気と調理用熱源とを併用して、調理室内の食材を加熱調理する調理装置に関するものであり、更に詳しくは、該調理用熱源で霧を加熱して過熱水蒸気を生成させ、生成した過熱水蒸気を該調理室内に導入して、該過熱水蒸気の存在下で食材を加熱する調理装置に関するものである。また、該調理装置を使用する食材の調理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
過熱水蒸気とは、100℃より高い温度の水蒸気のことを言い、通常は、ボイラー等を使用して常温の水を100℃に加熱し、更に沸騰させて100℃の水蒸気を得て、該100℃の水蒸気を、専用のヒーター内蔵の過熱水蒸気発生装置を用い、更に加熱して、100℃より高い温度の過熱水蒸気を得る。
【0003】
該過熱水蒸気は、熱容量が高いので対象物を急速に加熱することが可能であり、低酸素状態なので対象物を酸化させることが少なく、対象物の乾燥(対象物中の水分の除去)等が可能である。そして、それらの性質を利用して、殺菌・殺ウイルス、加熱・調理、乾燥、焼成・焼物、洗浄、炭化等に利用されている。
【0004】
そのうち、調理に限定しても、過熱水蒸気を利用したオーブンレンジが知られている。
しかし、公知(市販)の過熱水蒸気を利用した調理装置は、過熱水蒸気を「専用ヒーターを内蔵した調理室や調理装置」で発生させるものであったり、調理室外に別途設けられた過熱水蒸気発生装置内のカップ、タンク、皿等に水を入れて、その水を専用のヒーターで加熱して過熱水蒸気を生成させて、それをオーブン(調理室)内に導入するものであったりした。
【0005】
特許文献1には、調理部と、該調理部に蒸気を供給する蒸気発生部とからなり、前記調理部に、庫内加熱手段と過熱蒸気を庫内に循環させる送風手段とを有し、該蒸気発生部の蓋を開閉可能とした過熱蒸気調理装置が記載されている(特許文献1の請求項1)。
該過熱蒸気調理装置では、蒸気発生部で発生した蒸気はダクトから調理庫内に導かれ、送風空気によって調理庫内を循環して調理物を加熱する(特許文献1の[0014])。
【0006】
しかしながら、特許文献1において、蒸気発生部から供給するものは100℃の水蒸気である(特許文献1の[0020])。特許文献1の
図1には、上記発生部に存在する水を100℃まで加熱するヒーターが設置され、100℃の蒸気が調理庫内に導入される構造となっている。また、該調理庫内の加熱手段は、食材を加熱するものではなく、100℃の蒸気又は霧を更に加熱するものである。
【0007】
特許文献2には、蒸気流路に透磁体を配設し、該透磁体を専用の加熱コイルで誘導加熱し、該透磁体に水を供給することで発生する過熱蒸気を調理室内に導入する蒸気調理装置が記載されている(特許文献2の請求項1)。
【0008】
特許文献3には、気液混合部により混合された水蒸気及びミストを、専用の発熱体により加熱して過熱水蒸気を生成させ、該過熱水蒸気を加熱室に供給して被加熱物を調理する加熱調理装置が記載されている(特許文献3の請求項1)。
【0009】
特許文献4には、調理庫内に向けて過熱蒸気を供給する過熱蒸気発生手段と過熱ヒーターを備え、調理庫内に向けて水を噴霧する水噴霧手段を有している調理装置が記載されており(特許文献4の請求項1)、該水として、0.5ppm以上の水素を含有する水を用いることで、水素が含まれた過熱蒸気を発生させて調理庫内を還元雰囲気にすることが可能であるとされている(特許文献4の請求項3)。
【0010】
しかしながら、特許文献2、3、4では、過熱水蒸気生成用の専用の加熱装置(IH等)で生成させた過熱水蒸気を、調理室(調理庫)内に導入するものであり、装置全体として複雑なものであった。すなわち、熱源(ヒーター)として、食材の加熱用と過熱水蒸気生成用の2個(2種類)が必要であった。
また、過熱水蒸気を調理室(調理庫)内で循環させることに注力した装置であり、その点でも調理装置として複雑化していた。
【0011】
過熱水蒸気を使用した調理装置は、一般に後述するような大きな利点があるが、一方、後述するような欠点もあった。
そのため、過熱水蒸気を調理に使用することによる利点を生かしつつ、特に過熱水蒸気を生成する段階(方法)が簡便であり、調理装置全体としても過度に複雑ではなく、より使用し易い調理装置が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2001-263666号公報
【文献】特開2008-002764号公報
【文献】特開2008-298408号公報
【文献】特開2014-228202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、高い熱容量の過熱水蒸気を用いて食材を調理することによる従来の長所を維持しつつ、熱源に関して単純化でき、省エネルギーで故障も少なく、安全性が高く、調理開始と調理終了の時間が短縮され、比較的安価で使い易い調理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、霧化装置で発生させた常温の霧を加熱輸送管の内部を通し、該加熱輸送管内の霧を、「食材を加熱するための調理用熱源」で加熱すれば、極めて効率的に霧を過熱水蒸気に変換できることを見出した。
そして、その方法を用いることで、食材の加熱調理と過熱水蒸気の生成とを同一の熱源(調理用熱源)で同時にできることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、過熱水蒸気と調理用熱源とを併用して、調理室内の食材を加熱調理する調理装置であって、
霧用の水を加熱するための熱源を有さずに霧を発生させる霧化装置、
該霧化装置で発生した霧を輸送し、該霧がその内部で加熱されて発生した過熱水蒸気を該調理室まで輸送して該調理室に導入する加熱輸送管、及び、
該調理室内の食材を加熱すると共に、該加熱輸送管及び該加熱輸送管内の霧を加熱して過熱水蒸気を発生させる調理用熱源、を具備することを特徴とする調理装置を提供するものである。
【0016】
また、本発明は、過熱水蒸気を発生させる熱源としては、前記食材を加熱する調理用熱源のみを具備する前記の調理装置を提供するものである。
【0017】
また、本発明は、前記加熱輸送管が、前記調理用熱源で加熱されるように、前記調理室の底面及び/又は側面に固定されている前記の調理装置を提供するものである。
【0018】
また、本発明は、前記食材が固体食材と液体食材とを含有する食材である前記の調理装置を提供するものである。
【0019】
また、本発明は、前記の調理装置を使用する食材の調理方法であって、
以下の工程(1)から(5)の全ての工程を有することを特徴とする食材の調理方法を提供するものである。
(1)霧化装置を用いて常温の霧を発生させる工程
(2)工程(1)で発生させた霧を、該霧化装置と前記調理室との間に位置する前記加熱輸送管の内部を通過させる工程
(3)工程(2)において該加熱輸送管の内部を通過している霧を、食材を加熱して調理するための前記調理用熱源を用いて加熱することによって過熱水蒸気を生成させる工程
(4)工程(3)で生成させた過熱水蒸気を、該加熱輸送管の出口から該調理室の内部に導入する工程
(5)工程(4)で導入された過熱水蒸気で満たした状態で、該調理用熱源を用いて、該食材を加熱調理する工程
【0020】
また、本発明は、前記食材が固体食材と水とを含有する食材であって、
前記の調理装置を使用して、該調理室の内部を過熱水蒸気で満たした状態で該食材を加熱することによって、該水の表面におけるアクの発生を抑制しつつ該食材を加熱調理することを特徴とするアクの発生を抑制する調理方法を提供するものである。
【0021】
また、本発明は、前記食材が固体食材と食用油とを含有する食材であって、
前記の調理装置を使用して、該調理室の内部を過熱水蒸気で満たした状態で該食材を加熱することによって、カラッと該固体食材を揚げることを特徴とする固体食材をカラッと揚げる調理方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、前記問題点と課題を解決し、過熱水蒸気を用いた従来の調理の長所を維持しつつ、従来のものに比べて、最もエネルギー(電力等)を消費する熱源(ヒーター)の数を少なくでき、使用に際して危険性が少なく、故障も少なく、調理開始と調理終了の時間が短縮され、従来品と比較して小型で単純化・簡素化され、安価で使い易い調理装置を提供することができる。
【0023】
上記「過熱水蒸気を用いた調理の長所」とは、気体であるため熱量が大きい(調理のパワーが大きい)、食材中の塩分を100℃付近の水に溶解させて除去できるので減塩効果がある、食材中の油分を100℃付近の水に溶解・分散させて除去できる等が挙げられる。これらの長所は、本願発明においても、全て完全に維持できる。
【0024】
上記した一般的長所のみならず、本発明の調理装置においては、具体的には、過熱水蒸気を発生させるためだけの熱源(ヒーター)が必要ないので、省電力化、省スペース、二酸化炭素排出抑制、熱源製作コスト及び取り付け工数を大幅に削減できる。
また、調理装置では、熱源(ヒーター)用に最も大きな電流(電力)を必要とするところ、熱源(ヒーター)の数を減らせるため、省エネルギーが達成できると共に、電流値のデマンドを抑えることができる。実際、従来の過熱水蒸気を利用する調理装置に比較して、75%にまで電気エネルギーを節約できることが確かめられている。
【0025】
調理室外に設置されたボイラーや水蒸気発生装置等によって、水を沸騰させて水蒸気を発生させ、該100℃の水蒸気を、更に過熱水蒸気にするための熱源まで輸送するとなると、その過程で熱損失が生じてしまう。
すなわち、従来のように、調理室の外部で過熱水蒸気を生成させると、調理室に該過熱水蒸気を導入(放出)するまでに温度が下がってしまうところ、本発明の調理装置のように霧化装置を用いて常温の霧を発生させると、該霧を該霧化装置から輸送させる間の(輸送中の)熱損失がない。
【0026】
従来のように、100℃の水蒸気や過熱水蒸気を調理室に輸送するためには、輸送管を過度の断熱配管にしなくてはならず、ボイラーを用いる場合は、耐圧断熱配管にしなくてはならなかった。
しかし、本発明によれば、輸送される霧は、最初はほぼ常温であるので、小型化、コストダウン、メンテナンス量(箇所)の削減、危険性(事故)の減少等が可能となる。
【0027】
別途、ボイラーや水蒸気発生装置等を設置して、そこで水を沸騰させ蒸気を発生させる場合は、100℃の水蒸気を得るまでに(水を沸騰させるまでに)長時間がかかる。
しかし、本発明の調理装置を用いれば、常温の水から霧を発生させ(好ましくは常温の霧を発生させ)、調理用熱源で該霧を加熱するので、調理開始時点で、瞬時に過熱水蒸気を発生させることができ、かつ、調理終了時点で、過熱水蒸気の発生を止める場合も、調理室とは別途存在するボイラーや水蒸気発生装置等の(水等の)温度を下げる必要がなく、瞬時に止めることができる。そのため、調理装置としての応答性が高く、調理開始時点と調理終了時点で無駄な時間を生じさせない。
【0028】
従来法では、過熱水蒸気の輸送管を断熱配管にしたとしても、該輸送管における排熱量が多いが(排熱量を抑制できないが)、本発明によれば、加熱輸送管で輸送する霧は、最初はほぼ常温であるため、断熱配管にする必要がない。
最後は(調理室への導入時には)高温ではあるものの、むしろ該加熱輸送管を調理室の底や周囲に這わせることによって加熱するので、該輸送管を断熱配管にしなくてもよい(むしろ断熱配管にしてはならない)。
【0029】
また、本発明によれば、ボイラーを必要としないため、ボイラー技士が不要である。
従来、ボイラーを使用せず、調理室外に専用の過熱水蒸気生成装置を設ける場合であっても、調理室外の高熱部に危険性があり、本来簡単に使用できなくてはならないはずの調理装置の使用にあっては、安全性に問題があった。しかし、本発明の調理装置によれば、使用に際して危険性が少ない。
また、本発明によれば、高温の気体の存在量を減らせることができるので、専用の排気設備が不要であるか又は極めて簡易的にできる。
【0030】
本発明においては、水を沸騰させて一旦100℃の水蒸気を生成させる装置や工程がないため、及び/又は、霧(水)を1つの熱源である調理用熱源で加熱・過熱して過熱水蒸気を得るため、短時間で高効率に高温の過熱水蒸気を生成できる。
しかも、霧を加熱して過熱水蒸気を得る場所が、コンパクトな加熱輸送管の中であり、専用の過熱蒸気発生装置の中ではないため、高効率であると共に放熱ロスもない。
また、調理室の中に既に充満している100℃以下の水蒸気を、「調理室の外部に該調理室に接触するような形で設置されている専用熱源」で加熱・過熱して、該調理室の中で過熱水蒸気を発生させる訳でもないので、熱源に関して単純化でき、製造コスト・運転コストも掛からない。
【0031】
従来の装置では、温度低下に時間がかかり、なかなか調理装置全体を完全に停止させることができなかった。しかし、本発明の調理装置においては、調理用熱源1種であるため、該熱源を切れば、調理室内の温度が下がると共に、過熱水蒸気の発生を停止させることができる。
【0032】
水を沸騰させ100℃の蒸気や過熱水蒸気を発生させる従来の装置では、(タンク内の)水がなくなった場合、熱源とその周囲が温度上昇し、空焚きによる火災や故障の危険がある。しかし、本発明の調理装置においては、別途熱源を使用することによって100℃の蒸気も過熱水蒸気も生成させないため、過度の加熱、空焚き等による危険(事故の可能性)がない。
【0033】
過熱水蒸気の発生量を、従来のように熱源(ヒーター、ボイラー)で調整しようとすると、該熱源の出力と過熱水蒸気量が線形に変化せず、従って、過熱水蒸気の量を精密に調整し難く、調理が思い通りにでき難かった。
しかし、本発明の調理装置のように、専用の霧化装置を用いると、過熱水蒸気の量と霧化装置の出力が線形に変化するため、発生する霧及び過熱水蒸気の量を調整し易く、かつ瞬時に調整ができて、調理室内の過熱水蒸気量をこまめに変更できる。そのため、調理が思い通りにできるようになる。
【0034】
調理終了後、常温又は低温の霧や水蒸気を、加熱輸送管を通じて調理室内に輸送・導入でき、調理室内の冷却にも、その常温又は低温の霧や水蒸気を利用できるため、調理終了後、素早く片付けることが可能である。
【0035】
本発明によれば、調理室と加熱輸送管とが別々に存在する場合でも、その両者を容易に組み合わせることができて1つの調理装置とすることができる。加熱輸送管は、鍋やフライヤー等の加熱容器に、後付けで設置することが可能である。すなわち、調理室、調理用熱源、加熱輸送管等の「本発明の調理装置の各パーツ」は、それぞれ融通が利き、後付けが可能であり、利用(適用)範囲が広い。
【0036】
例えば、調理室と加熱輸送管を別々に入手して、該加熱輸送管を後付けで該調理室に固定すれば、本発明の調理装置を完成させることができる。限定はされないが、具体的には、
図2に示したような調理室(寸胴鍋)を既に有している人が、後から
図2に示したような(螺旋状の)加熱輸送管を入手して、後付けでその螺旋の中に調理室(寸胴鍋)を挿入することで、本発明の調理装置が得られる。
【0037】
本発明によれば、調理用熱源が別に存在する場合でも、それらを容易に組み合わせることができて1つの調理装置とすることができる。すなわち、本発明における調理用熱源は専用のものでなくてもよいので、本発明の調理装置は、容易に各要素を組み合わせて製造することができる。
言い換えれば、調理用熱源は別途用意して加熱輸送管を加熱できるようにしてもよい。すなわち、該調理用熱源は、既存のものであっても、それを活用して本発明の調理装置を得ることができる。
【0038】
本発明の調理装置における霧化装置や加熱輸送管は、分解が可能であり、組み立ても容易であるため、従来品と比較して単純化され、安価で使い易い調理装置を提供することができる。
【0039】
更に、本発明の調理装置を用いれば、「固体食材」と、「水又は食用油と言った液体食材」とを含有する食材の加熱調理に特に好適である。
すなわち、固体食材と水を含有する例えば煮物やスープ等の場合には、水(湯)の表面に発生するアクを抑制できる。
また、固体食材と食用油を含有する例えば揚げ物等の場合には、該揚げ物をカラッと揚げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明の調理装置(調理室が寸胴鍋である場合)であって、加熱輸送管が調理室の底面に固定されているものの一例を示す概略斜視図である。
【
図2】本発明の調理装置(調理室が寸胴鍋である場合)であって、加熱輸送管が調理室の側面に固定されているものの一例を示す概略斜視図である。
【
図3】本発明の調理装置(調理室が寸胴鍋である場合)であって、加熱輸送管が調理室の底面と側面の両方に固定されているものの一例を示す概略斜視図である。
【
図4】本発明の調理装置(調理室が寸胴鍋である場合)であって、加熱輸送管が調理室の外部のみならず、内部にも存在して加熱されるようになっているものの一例を示す概略斜視図である。
【
図5】本発明の調理装置の一例(調理室が連続運転用の調理室である場合)を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明について説明するが、本発明は、以下の具体的態様に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
【0042】
本発明の調理装置は、過熱水蒸気と調理用熱源とを併用して、調理室内の食材を加熱調理する調理装置であって、
霧用の水を加熱するための熱源を有さずに霧を発生させる霧化装置、
該霧化装置で発生した霧を輸送し、該霧がその内部で加熱されて発生した過熱水蒸気を該調理室まで輸送して該調理室に導入する加熱輸送管、及び、
該調理室内の食材を加熱すると共に、該加熱輸送管及び該加熱輸送管内の霧を加熱して過熱水蒸気を発生させる調理用熱源、を具備することを特徴とする。
【0043】
また、本発明の「食材の調理方法」は、上記の調理装置を使用する食材の調理方法であって、
以下の工程(1)から(5)の全ての工程を有することを特徴とする。
(1)霧化装置を用いて常温の霧を発生させる工程
(2)工程(1)で発生させた霧を、該霧化装置と前記調理室との間に位置する前記加熱輸送管の内部を通過させる工程
(3)工程(2)において該加熱輸送管の内部を通過している霧を、食材を加熱して調理するための前記調理用熱源を用いて加熱することによって過熱水蒸気を生成させる工程
(4)工程(3)で生成させた過熱水蒸気を、該加熱輸送管の出口から該調理室の内部に導入する工程
(5)工程(4)で導入された過熱水蒸気で満たした状態で、該調理用熱源を用いて、該食材を加熱調理する工程
【0044】
<霧化装置>
本発明の調理装置1は、霧用の水(霧Mの原料となる水)を加熱するための専用熱源を有さずに、霧M(好ましくは常温の霧)を発生させる霧化装置2を具備する。該霧化装置2は、
図1~5に概略を示したように、後述する調理室4と共に本発明の調理装置1に具備され、該霧化装置2から発生した霧Mは、後述する加熱輸送管3を通じて調理室4に導入されるようになっている。
【0045】
ここで、「霧」とは、過熱輸送管を通じて輸送され得る程度に微小な水の集合体を言う。少なくとも霧Mが過熱輸送管の内部を輸送されることが必須であって、他に、空気、窒素、室温付近の水蒸気等が、該霧Mに混合されていてもよいし、「霧」とは言えない程に大きい水滴が該霧Mに混合されていてもよい。
【0046】
本発明における霧化装置2は、霧用の水を加熱するための熱源を有さないものであれば、特に限定はないが、超音波を利用して霧Mを発生させる超音波霧化装置が特に好ましい。該超音波霧化装置としては、公知のものや汎用品も使用できる。
霧化装置2には送風機(ファン)等の送風機能はあってもなくてもよい。また、霧の流れができるまでは送風して霧を送れるようになっていることも好ましい。
【0047】
本発明における霧化装置2は、タンク等に貯水した水を加熱する必要がないので、空焚きの恐れがなく調理装置1として安全性が高い。また、本発明における霧化装置2の貯水槽は、例えば耐熱性60℃以下の樹脂容器を使用することもできるので、該樹脂容器を用いれば、更なる軽量・安価が達成できる。
【0048】
前記霧化装置2と後述する調理室4とは、後述する加熱輸送管3で結合している。
該霧化装置2と該調理室4との設置場所に関する位置関係は、特に限定はないが、該霧化装置2は大型である場合があるためや、下記するような上昇気流を利用して霧M等を輸送するため等から、該霧化装置2は該調理室4より下に位置させることが好ましい。
該加熱輸送管3は、該霧化装置2に、ワンタッチ継手、ねじ込み継手等の着脱可能な結合手段で接続・結合できるようになっていることが好ましい。
【0049】
調理室1個に対する霧化装置2の個数は、特に限定はないが、回分式(バッチ式)の場合には1個が好ましい(
図1~4参照)。ただし、
図5に示すような連続的な調理装置1の場合には、1個の調理室が通常は横長なので、調理室1mあたり、0.2~4個/mが好ましく、0.5~2個/mが特に好ましい(
図5参照)。
【0050】
<調理室>
本発明における調理装置1に具備されている調理室4は、その内部に過熱水蒸気Sを充満させて、その内部で食材Fを加熱調理できるようになっている。
該調理室4は、少なくとも「食材加熱用の調理用熱源5」によって加熱されるようになっている。
【0051】
上記調理室4は、例えば
図1~4に示したように、回分式(バッチ式)のものであってもよく、例えば
図5に示したように連続式のものであってもよい。
回分式(バッチ式)の調理室4の形状は、特に限定はなく、
図1~4に示すような(底面が円形の)寸胴鍋、底面が略長方形の鍋、底面が楕円形の鍋、側面に加熱輸送管3が沿い易いように側面がカーブしている鍋、中華鍋、天婦羅鍋、やかん状の形状のもの等が挙げられる。
【0052】
また、連続式の調理室4の形態も、特に限定はないが、
図5に示すように、食材Fを移動できるように横長になっているもの等が好ましいものとして挙げられる。該食材Fが液体食材F2を含有するときには、該食材が容器に入れられて、該食材が横長の調理室4内を連続的に横に移動できるようになっていることが好ましい。食材Fが入った容器をコンベア6に乗せて移動させる構造であってもよい。
【0053】
加熱輸送管3内で発生した過熱水蒸気Sは、調理室4の内に導入されるが、その際、空気Aや「空気に含有される酸素」を追い出して、調理室4の内部を高温低酸素にすることができる。必須ではないが、調理室4には、空気(酸素)を該調理室4の外に追い出すための排気口(図示せず)が設けられていることも好ましい。
【0054】
前記調理室4内には、気体循環手段も送風手段も設けられておらず、食材Fを加熱している時間は、前記調理室4が実質的に過熱水蒸気Sのみで満たされるようになっていることが好ましい。
本発明によれば、調理室内に、気体循環手段や送風手段がなくても、該調理室内を過熱水蒸気Sのみで満たすことができる。
それによって、従来の調理室内に気体循環手段又は送風手段が設けられている調理装置に比べると、構成的に極めて簡単な調理装置1を提供できる。
【0055】
本発明の調理装置1においては、食材Fを加熱中の調理室4の温度が、150℃以上500℃以下となるように、後述する調理用熱源5と後述する加熱輸送管3が設計されていることが好ましい。
食材Fを加熱中の調理室内の温度は、165℃以上400℃以下がより好ましく、180℃以上250℃以下が特に好ましい。
限定される訳ではないが、調理室4の側面を保護材で覆って、安全性を高めることが、省エネルギー、安全性等の点からは好ましい。ただし、例えば
図2、3のように、調理室4の側面に加熱輸送管3が固定されている場合は、該保護材は加熱輸送管3の外側を覆うことが好ましい。
【0056】
上記調理室4の上部の形状は、特に限定はなく、単に乗せるだけの蓋状になっていても、上部の覆いが鍋に固定できるようになっていてもよい。
後述する加熱輸送管3の出口(末端)は、
図1~3、5に示すように、調理室4の上部(蓋等)に接続されていてもよく、
図4に示すように調理室4の内部に入り込んでいてもよく、調理室4の側面に接続(図示せず)されていてもよい。側面に接続されている場合は、食材Fを収納するスペースを考慮して、調理室4の頂上から、好ましくは1/2の位置より上に、より好ましくは1/3の位置より上に、特に好ましくは1/5の位置より上に接続されていることが望ましい。
【0057】
<調理用熱源>
本発明の調理装置1には、調理室内の食材Fを加熱すると共に、後述する加熱輸送管3及び「該加熱輸送管内の霧M」を加熱して過熱水蒸気Sを発生させる調理用熱源5が具備されていることが必須である。
本発明の調理装置1においては、過熱水蒸気Sを発生させる熱源としては、食材Fを加熱する調理用熱源5のみを具備することが好ましい。過熱水蒸気Sを発生させるための専用熱源を使用すると(具備すると)、装置が複雑になるだけではなく、前記した種々の問題点が生じる。
本発明は、調理用熱源5で霧Mを加熱すれば、過熱水蒸気発生専用熱源を使用しなくても、十分に好適に過熱水蒸気を発生させられると共に(発生可能であると共に)、調理用熱源5で加熱した方が、前記した問題点が生じない点でむしろ優れていることを見出してなされたものである。
【0058】
本発明における調理用熱源5としては、調理室4とその内部の食材F、及び、加熱輸送管3とその内部の霧Mや水蒸気を十分に加熱できれば、その種類は特に限定はないが、ニクロム線等の電気抵抗を有する電熱線に電流を通すことで発熱させる電熱方式(シーズヒーター等の電気抵抗加熱)、電磁誘導を利用した誘導加熱(induction heating)(IH)方式(IHヒーター等)、ガス火によって加熱されたセラミックヒーター加熱方式(
図2参照)、ガス火(炎)加熱等の直火加熱方式(
図1、3~5参照)等、何れも使用可能であり、それらの併用も可能であるが、上記電熱方式(電気抵抗加熱方式)、上記セラミックヒーター加熱方式、又は、上記直火加熱方式(ガス火加熱)が、熱の伝導効率等の点から好ましい。前記ガス火(炎)のガスは、ガス管5aを通して供給される。
【0059】
本発明の調理装置1では、加熱輸送管3から調理室内に導入されるときの過熱水蒸気Sの温度が、110℃以上600℃以下となるように、前記霧化装置2、前記調理用熱源5、及び、後述する加熱輸送管3が設計されて配置されていることが好ましい。
更に、該調理室内に導入されるときの過熱水蒸気Sの温度は、120℃以上450℃以下がより好ましく、130℃以上300℃以下が特に好ましい。
【0060】
<加熱輸送管>
図1~5に概略を示したように、上記霧化装置2で発生した霧M(好ましくは常温の霧)は、加熱輸送管3に引き込まれ輸送される。「加熱輸送管」とは、霧M、水蒸気、過熱水蒸気等を輸送でき、熱源によって加熱させられるものを言う。
該加熱輸送管3は、該霧化装置2で発生した霧Mを輸送し、「該霧が加熱輸送管の内部で加熱されて発生した過熱水蒸気」を、調理室4まで輸送して該調理室4に導入するようになっている。
【0061】
図1~5に概略を示したように、加熱輸送管3、及び、該加熱輸送管3の内部の「霧Mや100℃以下の水蒸気」は、唯一の熱源である前記した「食材加熱用の調理用熱源5」で加熱されて、該加熱輸送管3の内部で過熱水蒸気Sを発生させる。ここで、「唯一の熱源」とは、霧Mを過熱水蒸気Sにするためだけの専用熱源が具備されていないことを意味し、「食材加熱用の調理用熱源5」が複数個具備されている態様を排除するものではない(複数個が具備されている態様も含まれる)。
【0062】
また、
図4に示したように、加熱輸送管3は、調理室4の内部にまで伸びて入り込み(内部にも設置され)、調理室内でも加熱(過熱)されて、過熱水蒸気Sが調理室内に充満されるようになっていてもよい。
特に、液体食材F2が食用油のときは、液体食材F2の温度は通常100℃より高くなっているので、調理室内でも加熱(過熱)され、過熱水蒸気Sが生成され得る(
図4参照)。なお、過熱水蒸気Sの出口は、食材Fより上にあることが好ましい。
【0063】
また、特に食材Fが液体食材F2を有する場合には、液体食材F2の液中に過熱水蒸気Sの出口が存在しないようにすればよいので、一旦、加熱輸送管3が調理室4の内部の液体食材F2が存在する場所にまで下降して、その後、上昇して、過熱水蒸気Sの出口が液体食材F2の液面より上に出るような形態でもよい。すなわち、加熱輸送管3が液体食材F2に浸漬されるような構成でもよい。
特に、液体食材F2が食用油のときは、液体食材F2の温度は通常100℃より高くなっているので、調理室内の液体食材F2を熱源として加熱(過熱)できて、過熱水蒸気Sを(更に)生成させることもできる。
【0064】
霧化装置2の霧Mの出口、加熱輸送管3の途中、調理室4の直前等には、輸送手段(図示せず)が具備されていて、霧Mや水蒸気や過熱水蒸気Sを一方向に輸送できるようになっていてもよく、単に、霧化装置2からの霧の押出圧力、加熱による上昇気流、逆流防止弁等によって、一方向に、加熱輸送管3の中を通って調理室4に輸送できるようになっていてもよい。
霧Mを一方向に輸送する該輸送手段としては、ファン(送風機)等が使用できる。ファン(送風機)を有する場合は、該ファン(送風機)は該加熱輸送管3の途中の好適な場所に設置される。また、霧の流れができるまでは送風して霧を送れるようになっていることも好ましい。
【0065】
また、上記加熱輸送管3が調理用熱源5で加熱されることによって、及び/又は、上記加熱輸送管3が調理室4の底面及び/又は側面に接触設置されて加熱されることによって、煙突効果(上昇気流)で、霧Mや水蒸気や過熱水蒸気Sを一方向(例えば上方向)に輸送できるようになっていてもよい。
また、バルブ等(図示せず)を該加熱輸送管3に設置して、該バルブ等を利用して物理的に輸送を調整することも好ましい。
【0066】
加熱輸送管3の材質としては、少なくとも前記調理用熱源5から前記調理室4までは、調理用熱源5による加熱に耐える、熱を加熱輸送管3内部の霧Mや水蒸気や過熱水蒸気Sに伝える(熱伝導が良い)、煙突効果(上昇気流)を得る、機械的強度が高い、等の点から金属管が好ましい。該金属管としては、限定はされないが、ステンレス、銅、鉄、真鍮等の金属で構成されている金属管が好ましい。
【0067】
また、加熱輸送管3は、前記霧化装置2から前記調理用熱源5までは、従来の「過熱水蒸気利用調理装置」における輸送管のように、100℃の水蒸気や過熱水蒸気を輸送している訳ではないので、樹脂管等の耐熱性の低い管であっても使用できる。
該加熱輸送管3の一部に樹脂管を使用すれば、軽量化(小型化)、低コスト化、フレキシブルなので設置(レイアウト)の容易化(自由度大)等が実現できる。また、高温ではないため安全であり、断熱材等を巻き付ける必要がないため、小型化(設置の簡素化と省スペース)と低コスト化が実現できる。
【0068】
上記加熱輸送管3の直径は、特に限定はないが、内径と外径の何れでも、4mm以上70mm以下が好ましく、7mm以上50mm以下がより好ましく、10mm以上30mm以下が特に好ましい。また、上記輸送管3の断面積は、50mm2以上15000mm2以下が好ましく、100mm2以上10000mm2以下がより好ましく、300mm2以上3000mm2以下が特に好ましい。
上記下限以上であれば、十分な量の霧Mや過熱水蒸気Sが輸送でき、上記上限以下であれば、大きさ的に(スペースが)無駄にならない。
【0069】
加熱輸送管3は、前記調理用熱源5で加熱されるように、前記調理室4の底面及び/又は側面に固定されていることが好ましい。
加熱輸送管3が調理室4の底面に固定されている態様を
図1と
図4と
図5に示し、加熱輸送管3が調理室4の側面に固定されている態様を
図2に示し、加熱輸送管3が調理室4の底面と側面の両方に固定されている態様を
図3に示す。
【0070】
「固定」は、加熱輸送管3を調理室4に、接触固定してもよく(這わせるだけでもよく)、溶接、ロウ付け、ハンダ付け等によって接着固定してもよく、ネジ止め等で固定してもよく、加熱輸送管3を調理室4に埋め込み一体化して固定してもよい。
また、
図2に示したような螺旋状の加熱輸送管3の螺旋の中に、寸胴鍋等の調理室4を、後付けで挿入することで両者を接触・固定してもよい。
【0071】
加熱輸送管3が底面に固定されている場合は、該底面を横断するだけでもよいし、該底面を何重にも往復して(該底面にジグザグ状に配置させて)、熱の吸収効率を上げることもできる。
加熱輸送管3が側面に固定されている場合は、側面を縦に這わせるだけから、側面を例えば好ましくは半周~20周の範囲で、特に好ましくは1周~10周の範囲で巻き付けることもできる。例えば、
図2では、該加熱輸送管3は、該調理室4の側面に1.5周巻き付けられており、
図3では、該加熱輸送管3は、該調理室4の側面に2周巻き付けられている。
なお、該加熱輸送管3が側面に固定されている場合(
図2等)であっても、該加熱輸送管3は、その下等に設置された調理用熱源5で加熱されるようになっている。
【0072】
前記した調理用熱源5は、調理室4の下に設けることが好ましいので、該調理用熱源5の熱を効率的に加熱輸送管3に伝達させるためには、加熱輸送管3が調理室4の少なくとも底面には固定されていることが好ましい(
図1、3~5参照)。加熱輸送管3の一部が、調理室4の少なくとも底面に固定されていれば、調理用熱源5の熱が調理室4に伝導又は放射(輻射)によって伝わる途中に加熱輸送管3が位置していることになるので、熱が効率的に加熱輸送管3及びその内部の霧Mや水蒸気に伝わる。
本発明の調理装置1は、前記調理用熱源5、前記加熱輸送管3、及び、前記調理室4を、下からこの順番の位置関係で具備していることが、加熱輸送管3の加熱効率、加熱輸送管内部の霧や水蒸気の加熱効率、過熱水蒸気の生成効率等の点から好ましい(
図1、3~5参照)。
【0073】
また、本明細書では、「加熱輸送管」と表現したが、必ずしも管である必要はなく、板金部品であってもよい。言い換えれば、板金部品であっても、霧M、水蒸気、過熱水蒸気S等を輸送できれば、本発明における「加熱輸送管」に含まれる。
【0074】
加熱輸送管3の内部では、入口(霧化装置)から、出口(調理室)に向かって、「霧(水)」⇒「霧(水)と100℃の水蒸気との混合物」⇒「100℃の水蒸気」⇒「100℃以上の過熱水蒸気」、と言うように状態変化している。
なお、空気Aの存在は排除されない(空気が混合していてもよい)。また、最初の「霧(水)」には、通常は、常温における(飽和水蒸気圧の)水蒸気が混合している。
【0075】
<調理方法及び食材>
本発明の調理装置での調理方法としては、特に限定はなく、具体的には、例えば、液体食材F2の中で固体食材F1を煮たり茹でたり;食用油等の液体食材F2の存在下に固体食材F1を炒めたり揚げたり;固体食材F1を焼いたり;過熱水蒸気により食材Fを加熱したり乾燥させたり;等が可能である。
【0076】
何れの調理方法においても、本発明は、前記の調理装置1を使用する食材の調理方法であって、以下の工程(1)から(5)の全ての工程を有することを特徴とする食材の調理方法でもある。
(1)霧化装置2を用いて常温の霧Mを発生させる工程
(2)工程(1)で発生させた霧Mを、該霧化装置2と前記調理室4との間に位置する前記加熱輸送管3の内部を通過させる工程
(3)工程(2)において該加熱輸送管3の内部を通過している霧Mを、食材Fを加熱して調理するための前記調理用熱源5を用いて加熱することによって過熱水蒸気Sを生成させる工程
(4)工程(3)で生成させた過熱水蒸気Sを、該加熱輸送管3の出口から該調理室4の内部に導入する工程
(5)工程(4)で導入された過熱水蒸気Sで満たした状態で、該調理用熱源5を用いて、該食材Fを加熱調理する工程
【0077】
本発明の調理装置1や調理方法の対象となる固体食材F1としては、特に限定はないが、例えば、動物の肉、骨、内臓、皮等;植物の葉、茎、花、根、実、種等;が挙げられ、また、液体食材F2としては、「水」又は「食用油」が挙げられ、ここで「水」としては、特に限定はないが、例えば、純水、出汁、調味料含有水等が挙げられる。
【0078】
本発明の調理装置1や調理方法の対象となる食材Fとしては、特に限定はないが、固体食材F1と液体食材F2とを含有する食材Fであることが、本発明の効果を特に得易いために好ましい。
言い換えると、本発明は、食材Fが固体食材F1と液体食材F2とを含有する食材Fである前記した調理装置1でもあり、前記液体食材F2が水又は食用油である前記した調理装置1でもある。
【0079】
<アクの発生の抑制>
本発明の調理装置1や調理方法を用い、純水、出汁、調味料含有水等の液体食材F2の中で固体食材F1を煮たり茹でたりすると、該液体食材F2の表面にアクが生じるのを抑制することができる。ここで、「アク」とは、固体食材F1の加熱によって液体食材F2の表面に浮いてくる薄茶色から濃茶色の食用には適さないものを言う。
従って、本発明は、食材Fが固体食材F1と水とを含有する食材Fであって、前記の調理装置1を使用して、該調理室4の内部を過熱水蒸気Sで満たした状態で該食材Fを加熱することによって、該水の表面におけるアクの発生を抑制しつつ該食材Fを加熱調理することを特徴とするアクの発生を抑制する調理方法でもある。
【0080】
この場合、前記固体食材F1が、動物の肉、骨、内臓又は皮であり、前記水が、純水、出汁又は調味料含有水であるときに、特に「アク発生抑制」の効果を得易いので好ましい。
【0081】
本発明の調理装置1や調理方法を用いると、別途アク取り工程を有さずに調理・食品製造ができるので、本発明の好ましい態様としては、特に限定はされないが、前記「アクの発生を抑制する調理方法」を使用し、別途アク取り工程を有さずに製造し、収納容器に収納したものであることを特徴とする収納容器入り煮物又はスープが挙げられる。
ここで「煮物」としては、所謂煮物に加え、ポトフ、カレー、シチュー、おでん、ボルシチ、煮豆等が含まれる。また、ここで「スープ」としては、所謂スープに加え、味噌汁、出汁、チャウダー、ミネストローネ、ポタージュ等が含まれる。
【0082】
本発明の調理装置1は、家庭内で使用することも、レストラン、食堂、外食店等の厨房で使用することも、食品メーカーの食品製造所・工場等で使用することもできる。
食品メーカーの食品製造所・工場等で使用されたときは、「アク取り工程なし」による省工程化が図れる。
【0083】
本発明によって、アクの発生が抑制される作用・原理は明らかではないが、また、本発明の範囲は、以下の作用・原理に起因する範囲に限定される訳ではないが、液体食材F2の表面が100℃より高いので、表面に発生したアクが、高温により、溶解若しくは消滅(分解、泡破裂等)したことが考えられる。
【0084】
<揚げ物>
本発明の調理装置1や調理方法を用い、食用油と言った液体食材F2の中で固体食材F1を揚げると、該固体食材F1をカラッと揚げることができる。
従って、本発明は、前記食材Fが固体食材F1と食用油とを含有する食材Fであって、前記の調理装置1を使用して、該調理室4の内部を過熱水蒸気Sで満たした状態で該食材Fを加熱することによって、カラッと該固体食材F1を揚げることを特徴とする固体食材F1をカラッと揚げる調理方法でもある。
また、本発明は、このような「固体食材をカラッと揚げる調理方法」を使用して製造したものであることを特徴とする揚げ物でもある。
【0085】
本発明によって、揚げ物がカラッと揚がる作用・原理は明らかではないが、また、本発明の範囲は、以下の作用・原理に起因する範囲に限定される訳ではないが、過熱水蒸気Sが液体食材F2である食用油に一部溶解若しくは乳化分散したため、固体食材F1がカラッと揚がったことが考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の調理装置は、高い熱容量の過熱水蒸気Sを用いて食材を調理することによる従来の「過熱水蒸気を利用した調理」の長所をほぼ全て維持しつつ、更に前記したような顕著な効果を奏するので、本発明は、調理装置の製造販売分野、業務用の調理装置の使用分野等において、広く利用されるものである。
【符号の説明】
【0087】
1 調理装置
2 霧化装置
3 加熱輸送管
4 調理室
5 調理用熱源
5a ガス管
6 コンベア
M 霧
S 過熱水蒸気
A 空気
F 食材
F1 固体食材
F2 液体食材