(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】耐力柱ユニット及び当該耐力柱ユニットを組み込んだ改良型木造躯体構造、並びにその建築工法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/26 20060101AFI20240422BHJP
E04C 3/12 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
E04B1/26 E
E04C3/12
(21)【出願番号】P 2020134767
(22)【出願日】2020-08-07
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】520279661
【氏名又は名称】株式会社アディックス都市建築設計事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100098936
【氏名又は名称】吉川 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100098888
【氏名又は名称】吉川 明子
(72)【発明者】
【氏名】城内 栄作
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-303660(JP,A)
【文献】特開2005-155120(JP,A)
【文献】特開平11-200498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00 - 1/36
E04C 3/00 - 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向から見て三角形の二辺挟角に位置する挟角垂直材と、前記二辺の方向をそれぞれ画定する一辺当たり1または2以上の辺垂直材とでなる柱材と、水平材でなり前記二辺位置に上側で渡設された基本梁材と下側で渡設された基本梁材または基本土台材と、前記上側で渡設された基本梁材に対して残りの一辺位置で三角枠状に渡設された火打ち梁材とで構成された骨組み構造を、
構造用合板で包んで耐力化すると共に、前記火打ち梁材を含めて包むことで形成されたコーナー棚部の上面が梁載置面として利用されることを特徴とする耐力柱ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の耐力柱ユニットにおいて、
基本梁材は上側では二段以上渡設され、最上段以外で渡設された基本梁材に対して火打ち梁部材が渡設されており、
最上段の基本梁材を含めて包むことで梁載置面の縁が立ち上がって係止枠が形成されていることを特徴とする耐力柱ユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載の耐力柱ユニットにおいて、
下側で渡設された基本土台材に対して残りの一辺位置で渡設された火打ち土台材を含めて構成された骨組み構造を、
構造用合板で包んで耐力化したことを特徴とする耐力柱ユニット。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の耐力柱ユニットにおいて、
骨組み構造の外側に水平材が組み付けられて延出部分が形成されており、
前記延出部分を含めて構造用合板で包んで耐力化したことを特徴とする耐力柱ユニット。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の耐力柱ユニットにおいて、
外装仕上げ材が施された面を外壁として利用することを特徴とする耐力柱ユニット。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の耐力柱ユニットを組み込んだ改良型木造躯体構造において、
梁が上側から落とし込まれて耐力柱ユニットの梁載置面に載置され緊結されることを特徴とする構造。
【請求項7】
請求項6に記載の改良型木造躯体構造において、
梁にサービスバルコニーが連設されており、前記梁が上側から落とし込まれて耐力柱ユニットの梁載置面に載置されると、前記サービスバルコニーが外方に延出することを特徴とする構造。
【請求項8】
請求項6または7に記載の改良型木造躯体構造において、
柱及び/または梁は複数の軸材を束ねて構成されて軸方向端面及び/または側面に凹凸当接面が作られており、耐力柱ユニットと前記柱に対して前記梁が凹凸当接することを特徴とする構造。
【請求項9】
請求項6から8のいずれかに記載の改良型木造躯体構造を利用した木造建築工法において、
耐力柱ユニット、柱、梁を上側から落とし込んで積み上げていくことを特徴とする工法。
【請求項10】
請求項9に記載の木造建築工法において、
外壁を構成する躯体構造の隙間に、水平材及び垂直材を備えた枠部と、前記枠部の室外側に寄せて固定された壁体及び/またはサッシとでなる外壁パネルユニットが室内側から嵌め込まれて一体化されることを特徴とする工法。
【請求項11】
請求項10に記載の木造建築工法において、
躯体構造に嵌め込まれた外壁パネルユニットの水平材と垂直材は室内側では露出して露出面が形成されており、その露出面を室内側から通された金具の取付面として利用して前記躯体構造に対して緊結することを特徴とする工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建築物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木造建築工法には、「在来軸組工法」と、「枠組壁工法」があり、前者は、柱や梁などの軸材を組んで骨組みを構成することで建物を支えているのに対して、後者は、構造用製材で作った枠組みに構造用合板を張り付けたパネルを六面体状に組み合わせて建物を支えている。
前者は後者よりも設計の自由度が高い一方で、横の揺れ等に対しては後者に劣ると言われている。また、前者は柱と梁の接合は凹凸の差込みを利用しており、施工現場で高精度な凹凸を形成するので、職人に相応の熟練度が要求されている。
【0003】
これに対して、両工法の良いとこ取り工法として、特許文献1に記載のように、垂直材どうしの間に耐力壁の役割を果たす板材を落とし込んで固定することが提案されている。
しかしながら、この工法では、垂直材の側面に形成された落とし込み溝に板材を落とし込んで固定することで当該板材を耐力壁にしており、垂直材側の加工に精度が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、柱側に耐力壁としての機能を備えさせてユニット化することにより、設計の自由度を確保しつつ、強度の担保を可能にし、更には、ユニット化の利点を生かして外装仕上げ材まで工場生産を可能とすることで、現場での作業を単純化できる、新規且つ有用な耐力柱ユニットを提供することを、その目的とする。
また、本発明は、上記耐力柱ユニットとその接合相手側の部材の当接形状の双方に工夫を凝らすことで、現場での作業を単純化できる改良型木造躯体構造、並びにその建築工法を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための、[1]の発明は、上下方向から見て三角形の二辺挟角に位置する挟角垂直材と、前記二辺の方向をそれぞれ画定する一辺当たり1または2以上の辺垂直材とでなる柱材と、水平材でなり前記二辺位置に上側で渡設された基本梁材と下側で渡設された基本梁材または基本土台材と、前記上側で渡設された基本梁材に対して残りの一辺位置で三角枠状に渡設された火打ち梁材とで構成された骨組み構造を、構造用合板で包んで耐力化すると共に、前記火打ち梁材を含めて包むことで形成されたコーナー棚部の上面が梁載置面として利用されることを特徴とする耐力柱ユニットである。
【0007】
[2]の発明は、[1]に記載の耐力柱ユニットにおいて、基本梁材は上側では二段以上渡設され、最上段以外で渡設された基本梁材に対して火打ち梁部材が渡設されており、最上段の基本梁材を含めて包むことで梁載置面の縁が立ち上がって係止枠が形成されていることを特徴とする耐力柱ユニットである。
【0008】
[3]の発明は、[1]または[2]に記載の耐力柱ユニットにおいて、下側で渡設された基本土台材に対して残りの一辺位置で渡設された火打ち土台材を含めて構成された骨組み構造を、構造用合板で包んで耐力化したことを特徴とする耐力柱ユニットである。
【0009】
[4]の発明は、[1]から[3]のいずれかに記載の耐力柱ユニットにおいて、骨組み構造の外側に水平材が組み付けられて延出部分が形成されており、前記延出部分を含めて構造用合板で包んで耐力化したことを特徴とする耐力柱ユニットである。
【0010】
[5]の発明は、[1]から[4]のいずれかに記載の耐力柱ユニットにおいて、外装仕上げ材が施された面を外壁として利用することを特徴とする耐力柱ユニットである。
【0011】
[6]の発明は、[1]から[5]のいずれかに記載の耐力柱ユニットを組み込んだ改良型木造躯体構造において、梁が上側から落とし込まれて耐力柱ユニットの梁載置面に載置され緊結されることを特徴とする構造である。
【0012】
[7]の発明は、[6]に記載の改良型木造躯体構造において、梁にサービスバルコニーが連設されており、前記梁が上側から落とし込まれて耐力柱ユニットの梁載置面に載置されると、前記サービスバルコニーが外方に延出することを特徴とする構造である。
【0013】
[8]の発明は、[6]または[7]に記載の改良型木造躯体構造において、柱及び/または梁は複数の軸材を束ねて構成されて軸方向端面及び/または側面に凹凸当接面が作られており、耐力柱ユニットと前記柱に対して前記梁が凹凸当接することを特徴とする構造である。
【0014】
[9]の発明は、[6]から[8]のいずれかに記載の改良型木造躯体構造を利用した木造建築工法において、耐力柱ユニット、柱、梁を上側から落とし込んで積み上げていくことを特徴とする工法である。
【0015】
[10]の発明は、[9]に記載の木造建築工法において、外壁を構成する躯体構造の隙間に、水平材及び垂直材を備えた枠部と、前記枠部の室外側に寄せて固定された壁体及び/またはサッシとでなる外壁パネルユニットが室内側から嵌め込まれて一体化されることを特徴とする工法である。
[11]の発明は、[10]に記載の木造建築工法において、躯体構造に嵌め込まれた外壁パネルユニットの水平材と垂直材は室内側では露出して露出面が形成されており、その露出面を室内側から通された金具の取付面として利用して前記躯体構造に対して緊結することを特徴とする工法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の耐力柱ユニットによれば、柱側に耐力壁としての機能を備えてユニット化されており、設計の自由度を確保しつつ、強度の担保を可能にし、更には、ユニット化の利点を生かして外装仕上げ材まで工場生産を可能とすることで、現場での作業を単純化できる。
また、本発明の改良型木造躯体構造、及びその建築工法によれば、上記耐力柱ユニットと共に特徴的な形状の梁や柱を併用することで、上側から落とし込んで順次積み上げ、更には緊結箇所を確保することが可能となり、作業の単純化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】第1例の耐力柱ユニットの骨組み構造の斜視図である。
【
図5】第2例の耐力柱ユニットの骨組み構造の斜視図である。
【
図8】第1例と第2例の耐力柱ユニットと、柱と、土台を基礎の上に積み上げた状態を示す斜視図である。
【
図9】
図8の状態に、全ての梁を載置した状態を示す斜視図である。
【
図10】
図8に含まれる、第1例と第2例の耐力柱ユニットの間に渡設される梁の斜視図である。
【
図11】
図8に含まれる、第1例の耐力柱ユニットと外柱の間に渡設される梁の斜視図である。
【
図14】全ての耐力柱ユニットを利用して構築された2階建て躯体構造の斜視図である。
【
図15】
図14の躯体構造で構築された木造建築物の斜視図である。
【
図16】
図15に含まれる、第1例の壁パネルユニットの取付け説明図である。
【
図17】
図15に含まれる、第2例の壁パネルユニットの取付け説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
先ず、本発明の実施の形態に係る耐力柱ユニットについて説明する。
図1、
図2に示すように、第1例の耐力柱ユニット1では、3本の柱材として垂直材3、3、3が並列されている。各垂直材3の軸方向に垂直な断面がほぼ正方形になっており、軸方向両側の端面は水平面になっている。上下方向から見ると、垂直材3a、3b、3cのそれぞれの中心がほぼ直角二等辺三角形の頂角をなす位置にくるように配列されており、垂直材3bが二辺挟角に位置する挟角垂直材に相当し、垂直材3a、3cがそれぞれ二辺の方向を画定する辺垂直材に相当する。
【0019】
下側では、基本土台材として、二辺位置に相当する垂直材3aと垂直材3bとの間と、垂直材3bと垂直材3cとの間に水平材5、5がそれぞれ渡設され接合されている。各水平材5の軸方向垂直断面のサイズは垂直材3の軸方向垂直断面のサイズと同じに構成され、軸方向両側の端面は垂直材3に全面にわたって当接している。
また、残りの辺に当たる垂直材3aと垂直材3cとの間には火打ち土台材として水平材7が斜め方向に渡設され接合されている。水平材7は水平材5と同じ軸方向垂直断面サイズで構成されている。軸方向両側の端面は45°傾斜面になっており、水平材5、5に全面にわたって当接している。
水平材5、5、7は同じ高さで渡設されて、垂直材3bと共に、三角枠が形成されている。
【0020】
上側でも同様に、基本梁材、火打ち梁材として、水平材5、5、7が同じ高さで渡設されて、三角枠が形成されている。
但し、下側では、三角枠の下面が垂直材3a、3b、3cの下側の端面とほぼ面一になっているのに対して、上側では、三角枠の上面は垂直材3a、3b、3cの上側の端面よりも一段下がっている。そして、垂直材3aと垂直材3bとの凹状の隙間と、垂直材3cと垂直材3bとの間の凹状の隙間には、それぞれ別の水平材5、5が渡設され接合されている。従って、垂直材3aと垂直材3bとの間と、垂直材3cと垂直材3bとの間には、それぞれ水平材5、5が上下に二段並列した状態になっており、上段の水平材5、5の上面は垂直材3a、3b、3cの上側の端面と面一になっている。
【0021】
水平材7は水平材5に当接しているので、垂直材3a、3cは三角枠の外方に延出した状態になっている。この垂直材3a、3cのそれぞれの側面3ax、3cxは耐力柱ユニット1として他の部材との水平方向における当接面側に位置しており、当接面積を稼ぐために、別の水平材9が組み付けられている。水平材9は、水平材5、7と同じ軸方向垂直断面サイズで構成されており、軸方向一方の端面が45°傾斜面、他方の端面9xが垂直面になっている。この水平材9が垂直材3aと水平材7との間の凹角面に当接して、端面9xが垂直材3aの側面3axと面一に揃えられた状態で接合されている。水平材9は垂直材3cの側面3cx側でも同様に接合されている。
上記したように、立体的な骨組み構造は、垂直材3、水平材5、7、9によって構成されており、適宜な接着剤による固着及び/または金具による緊結により接合されている。
【0022】
図3に示すように、この骨組み構造が構造用合板11で包まれている。垂直材3aと垂直材3bの間、垂直材3bと垂直材3cの間はそれぞれ中空になっているが、そこにはグラスウール等の断熱材13が充填されている。木造建築物の角隅部に設置することが想定されており、室外を向く凸面側の構造用合板11の外面には防水シート15が貼着され、更に外壁を担う外面に外装仕上げ材17が貼着されて複層構造になっている。なお、外装仕上げ材17には金属系、木質系、窯業系があり、いずれでも利用可能であり、仕上げ材の種類に応じて、下地材を追加することも可能である。
【0023】
この耐力柱ユニット1は、上記のように構成されており、垂直材3aと垂直材3bとの間で構造用合板11が張られ、それぞれに対して釘で打ち付けられて一体化することで耐力化された壁が形成されている。垂直材3bと垂直材3cとの間でも同様に耐力化された壁が形成されている。これらの壁はそれぞれ建築基準法を満たす耐力壁にはならなくとも、交差関係にあるので、垂直材3aと垂直材3bとの間、または垂直材3cと垂直材3bとの間で距離が取れなくても、全体の耐力柱ユニット1として十分な耐力を得ることができる。
【0024】
また、水平材9の組付けにより土台との当接面(
図1中〇で囲んだ部分)の面積が2倍に広がっており、十分な当接面積が確保されている。
耐力柱ユニット1の上側では、構造用合板11が水平材5、7を含めて包んでおり、その部分がコーナー棚部1aになっている。このコーナー棚部1aの上面はL形係止枠1bと載置面1cになっており、後述の梁31等と上下方向で当接する面が確保されている。これは、後で詳述するが、現場作業の単純化につながる。
更に、耐力柱ユニット1は、外装仕上げ材17を含めて工場生産が可能で安価で提供できる。
【0025】
耐力柱ユニット1と同様な構成の耐力柱ユニットは更に以下のものがあり、異なる点のみ説明する。
図4、
図5に示すように、第2例の耐力柱ユニット19は2種類あり、耐力柱ユニット19A、19Bは線対称な関係にある。それぞれの下側の三角枠の垂直材3a側には水平材9が組み付けられていない。一方で、上側の三角枠の垂直材3a側には極短の水平材21が組み付けられている。この水平材21は水平材5と同じ軸方向垂直断面サイズで構成され、軸方向両側の端面が垂直面になっている。水平材21は、上下で二段に並んだ水平材5のうちの下段側の水平材5の垂直材3aを挟んだ延長上に位置する。従って、コーナー棚部19a側には、L形係止枠19b、載置面19cと共に、この水平材21の上面を利用した延出載置面19dが形成されている。
【0026】
耐力柱ユニット19A、19Bは、それぞれの垂直材3a、3b、水平材21側が相対するように組み合わせて設置することが想定されており、この組み合わせにより高い壁倍率を得ることができる。
また、下側では、水平材9が組み付けられていない箇所では垂直材3a、3aが並列しているので、土台との当接面(
図4中〇で囲んだ部分)は全て面積が垂直材3の一本分の幅サイズよりも広がっており、十分な当接面積が確保されている。
【0027】
図6に示すように、第3例の耐力柱ユニット23では、耐力柱ユニット1と異なり、下側には水平材7、9が組み付けられておらず、それに対応した外形になっている。
図7に示すように、第4例の耐力柱ユニット25では、耐力柱ユニット19と異なり、下側には水平材7、9が組み付けられておらず、それに対応した外形になっている。
ユニット内での骨組み構造としての保形性を確保するには、水平材7を上側または下側のいずれか一方で組み付ければ足りるので、設置個所に応じてこのような構造のものが使用される。
耐力柱ユニット1、耐力柱ユニット19は1階部分に利用され、耐力柱ユニット23、耐力柱ユニット25は2階部分に利用される。
【0028】
耐力柱ユニット1、19、23、25はそれぞれコーナー棚部1a、19a、23a、25aを有しており、これに対応した特有の形状の梁を利用することで梁を上側から落とし込んで積み上げていき、適宜な箇所を緊結により接合することが可能になっている。
この説明のために必要な柱27、29について先ず説明する。
外柱27は外壁側に設置するものであり、複数の小柱を角柱状に束ねて一体化されており、それぞれの小柱の長さを異ならせて、下面側に当接段差27aが形成されている。耐力柱ユニット1と同様に外面には外装仕上げ材17が施されている。内柱29は内部に設置するものであり、同様に複数の小柱を角柱状に束ねて一体化されている。
図8に示すように、耐力柱ユニット1、19、柱27、29が設置される。
【0029】
図9に示すように、耐力柱ユニット1と耐力柱ユニット19の間には、梁31が渡設される。
図10で示すように、この梁31は3つの水平材が適宜な接着剤による固着及び/または金具による緊結により相互に移動不能に接合されて一体化されており、渡設されたときに上側にくる上面31aは面一の平面になっている。梁本体33は軸方向垂直断面が縦長の長方形(ほぼ正方形×2)の水平材で構成されている。この梁本体33の軸方向両側の端面は垂直面になっており、梁本体33の軸長は、耐力柱ユニット1と耐力柱ユニット19の間の隙間より僅かに小さく設定されている。
【0030】
梁本体33の室内側の面に支持材35が接合されている。この支持材35は軸方向垂直断面がほぼ正方形の水平材で構成されている。支持材35は軸方向両端側が梁本体33よりもそれぞれ延長されており、軸方向両側は一方が45°傾斜端面35a、他方が垂直端面35bになっている。
図9に示すように、耐力柱ユニット1、1の間に耐力柱ユニット19A、19Bが設置されているので、梁31には2種類あり、耐力柱ユニット1に載置される側が室外側から見て左方にくる、すなわち傾斜端面35aが左方にくるものが、梁31A、他方が梁31Bになっている。
図10では梁31Aが示されている。
梁本体33の室外側の面に足場兼サービスバルコニー37が接合されている。このサービスバルコニー37は軸方向垂直断面が横長の長方形の水平材で構成されている。梁本体33と同じ軸長になっており、上方から見ると梁本体33と共に1つの長方形をなしている。
梁31は上側から落とし込まれるだけで耐力柱ユニット1と耐力柱ユニット19の間で渡設されて組立て状態となる。
【0031】
耐力柱ユニット1と外柱27の間には、梁39が渡設される。この梁39は梁31とは外柱27側に支持される部位の構成が異なっているが、同様に上側から落とし込まれるだけで組立て状態となる。
具体的には
図11に示すように、外柱27に支持される側では、梁本体41が支持部43の端面よりも突出している。そして、この突出部41aの端面は垂直面になっている。また、支持部43の軸方向一方の端面も垂直面になっている。
図9に示すように、耐力柱ユニット1、1の間に外柱27が設置されているので、梁39には2種類あり、耐力柱ユニット1に載置される側が室外側から見て左方にくる、すなわち傾斜端面43aが左方にくるものが梁39A、他方が梁39Bになっている。
図11では梁39Aが示されている。
【0032】
この梁31、39は、耐力柱ユニット1と耐力柱ユニット19の間に、上側から落とし込まれるだけで組立て状態となる。
図12、
図13に示すように、梁31Aの梁本体33が対向する耐力柱ユニット1、19のそれぞれの垂直材3a、3cの間に差し込まれ、支持材35の軸方向両端部が載置面1c、19cに両持ち状態で載置され、両端面35a、35bがL形係止枠1b、19bの内面に当接して係止される。サービスバルコニー37は室外側に延出する。梁31B側でも同様に組立てられる。
また、
図13に示すように、梁39Bの梁本体41が対向する耐力柱ユニット1の垂直柱3cと外柱27の間に差し込まれ、支持部43の傾斜端面43aが載置面1cに載置され、L形係止枠1bの内面に当接して係止される。このとき、梁31A側の傾斜端面35aと突き合わせ状態になる。また、梁本体41側の突出部41aが外柱27の上面に載置される。これにより、梁39Bは両持ち状態で支持される。梁39A側でも同様に組立てられる。
【0033】
梁31は、耐力柱ユニット1、19の火打ち梁材を構成する水平材7に対して緊結される。
図2の耐力柱ユニット1では点線の〇で示した箇所が金具の取付位置になっている。また、梁39は耐力柱ユニット1側では同様の位置で緊結され、外柱27側では突出部41aで緊結される。
上記の緊結位置での緊結により十分な緊結強度が確保される。
【0034】
上記のように、外柱27、梁31、39は複数の軸材を束ねて一体化することで、その軸方向端面だけでなく、側面でも自在に凹凸当接面が作り出されており、耐力柱ユニット1、19、柱27、29に対して、梁31、39を上側から凹凸当接する所定の位置に落とし込んで積み重ねていくだけで位置決めしながら組立てられ、且つ、その組立状態で適当な緊結箇所も確保される。
図14に示すように、2階でも耐力柱ユニット23、25が同様に設置される。渡設される梁45は、梁31とはサービスバルコニー37が無いことが異なる。また、梁47は外柱49側ではその段差上面に載置される。
【0035】
上記の特徴を生かした一例としての2階建て木造建築物の建て方を、
図9、
図14に従って説明する。
先ず、基礎51の上に、耐力柱ユニット1、19が設置され、更に、その間の隙間を含めて土台53が設置される。金具は土台53側と当接面(
図1、
図4中〇で囲んだ部分)を跨ぐように緊結される。
次に、柱27、29が設置され、更に、床パネル55が敷設される。
その次に、上記のように梁31、39が渡設され、外枠が形成されると共に、内柱29側との間に同様に別の梁57、59が渡設される。梁57は、耐力柱ユニット19の延出載置面19bを一方の載置面としている。梁57、59とも梁31と同様のアイデアに基づいて複数の軸材で構成されている。
【0036】
その次に、床パネル61が敷設され、床パネル61の外側に1階部分と同じ方法で、2階部分についても、耐力柱ユニット23、25、外柱49、内柱29が所定の位置で設置され、梁45、47、更には梁63、65が渡設される。
このように耐力柱ユニット1、……、柱27、……、梁31、……が順次上側から落とし込まれて積み上げられ、緊結されることで木造建築物の躯体構造が完成する。
【0037】
躯体構造の隙間を埋める非耐力壁は、
図15に示すように、壁パネルユニット67、75で構成されており、室内側からの取付作業が可能となっている。
図16に示すように、第1例の壁パネルユニット67では、四角枠69が水平材と垂直材で構成され、外装仕上げ材17(図示省略)が施されている。その四角枠69の内側にサッシ71が嵌め込まれて一体化されている。
図16に示すように、四角枠69の厚さ寸法は、サッシ71の厚さ寸法よりも大きくなっており、サッシ71が四角枠69の室外側に偏倚した位置で固定されているので、室内側には露出面69aが形成されている。
床パネル61が敷設された状態で、室内側からの作業で、躯体構造の隙間、例えば、梁39と梁47の間に、壁パネルユニット67が嵌め込まれ、更に、室内側からボルト73が通され、露出面69aを取付面として打ち込まれて緊結されることで固定される。また、垂直材(図示省略)側でも同様に緊結される。
【0038】
図17に示すように、第2例の壁パネルユニット75では、穴開き壁体77が取り付けられ、その穴に小サッシ79が嵌め込まれて一体化されている。壁体77は垂直材と水平材77aを骨組みとして構造用合板77bで包まれて一体化されており、室外を向く面には外装仕上げ材17(図示省略)が施されている。壁体77の厚さ寸法は四角枠69の厚さ寸法とほぼ同じになっており、室内側の合板には作業穴(図示省略、施工後埋込パネル取付)が設けられている。
壁パネルユニット75は四角枠69とは別体になっており、床パネル61が敷設された状態で、室内側からの作業で四角枠69を先ず躯体構造側に取り付け、更に、その隙間、例えば梁31と梁45の間に、壁パネルユニット75が嵌め込まれ、更に、室内側から作業穴を介して長ビス81が通され、水平材77aの露出面を取付面として打ち込まれて緊結されることで固定される。また、垂直材(図示省略)側でも同様に緊結される。
【0039】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
例えば、耐力柱ユニット1、19、23、25は3本の垂直材3で構成されているが、4本以上で構成することも、また、垂直材3bを挟んで一方の辺側に1本の垂直材を、他方の辺側に2本の垂直材を並べるなど両辺側の本数を違えることも可能である。
また、垂直材3bをその他の垂直材よりも太くするなど、太さを違えることも可能である。
更に、三角形は、直角二等辺三角形に限定されない。
更に、
図5の骨組み構造を、上側では、垂直材3a、3b、3cを用いずに、
図18に示すように、水平材5と軸方向垂直断面のサイズが同じで軸長が異なる水平材91、93、95の組み合わせで構成してもよい。
図5では、水平材21を組み付けているが、この場合には水平材95の外方延出部分が水平材21の元の位置を占めることになる。このように、骨組み構造は外形が同じであれば、垂直材と水平材の当接部分は変更可能であり、商品化に際しては製造効率等の事情を勘案して最適な組み合わせが選択されることになる。
更に、
図2の耐力柱ユニット1における金具の取付位置は、梁31の載置部分のサイズや形状を考慮した最適な位置として示したものであり、梁31の載置部分のサイズや形状が変更することで、その取付位置も多少なりも変更する可能性がある。
【0040】
耐力柱ユニット1、……の水平材7の端面等、傾斜面になっているものがあり、この傾斜角度はいずれも45°になっているが、その角度は当接相手の部材の表面状態や当接方向を考慮して当接面積を最大化するために設定されて、たまたま45°になったものであり、例えば、三角形の挟角が鋭角または鈍角になれば、この傾斜角度も変わるように、45°に限定されない。
また、柱27、29、……、梁31、39、……の当接面については、所定の位置での載置状態や緊結部位が確保されることが必要最小限の要求になっており、梁31、39の先端がL形係止枠1b、19bに沿って突き合わせて隙間を作らないことまではその要求には含まれていない。
更に、各部材を構成する素材の種類や金具の種類は現在使用され、または将来案出されるものを使用できる。例えば、壁パネルユニット67、75の固定では、具体的な金具、すなわちボルト73や長ビス81を使用することが記載されているが、緊結としての目的を達成できるのであれば特に限定されない。
更に、梁31、39は上側から落とし込まれて耐力柱ユニット1の載置面1cに載置されるが、ボルト等の金物の通し方向は上側からには限定されない。例えば、梁31が載置面1cの側面に被さる部分を有していれば横側から通すこともあり得る。
【符号の説明】
【0041】
1…耐力柱ユニット 1a…コーナー棚部 1b…L形係止枠
1c…載置面 3a、3b、3c…垂直材 3ax、3cx…側面
5…水平材 7…水平材 9…水平材 9x…端面
11…構造用合板 13…断熱材 15…防水シート 17…外装仕上げ材
19A、19B…耐力柱ユニット 19a…コーナー棚部 19b…L形係止枠
19c…載置面 19d…延出載置面 21…水平材 23…耐力柱ユニット
23a…コーナー棚部 25…耐力柱ユニット 25a…コーナー棚部
27…外柱 27a…(下面)当接段差 29…内柱 31…梁
31a…上面 33…梁本体 35…支持材 35a…傾斜端面
35b…垂直端面 35c…鋭角部 37…サービスバルコニー
39…梁 41…梁本体 41a…突出部 43…支持部
43a…傾斜端面 45…梁 47…梁 49…外柱 51…基礎
53…土台 55…床パネル 57…梁 59…梁 61…床パネル
63…梁 65…梁 67…壁パネルユニット 69…四角枠
69a…露出面 71…サッシ 73…ボルト 75…壁パネルユニット
77…穴開き壁体 77a…水平材 77b…構造用合板 79…小サッシ
81…長ビス