(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】パレット
(51)【国際特許分類】
B65D 19/38 20060101AFI20240422BHJP
【FI】
B65D19/38 Z
(21)【出願番号】P 2020149811
(22)【出願日】2020-09-07
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】591006944
【氏名又は名称】三甲株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】隅田 晃雄
(72)【発明者】
【氏名】高橋 侑也
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-156445(JP,A)
【文献】特開2009-078827(JP,A)
【文献】国際公開第2013/099647(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 19/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の柱部と、
前記複数の柱部の上端部間を連結するデッキ部と、
所定の前記柱部に設けられ、IDタグを収容するタグ収容部とを備えるパレットにおいて、
前記タグ収容部は、
前記タグ収容部を上方に開口させ、前記IDタグの挿入を許容する挿入開口部と、
前記挿入開口部に対して下方に離間した位置において、前記タグ収容部に収容された前記IDタグの外周面を囲うようにして設けられ、前記タグ収容部に収容された前記IDタグを保持する保持部と、
前記挿入開口部を介して挿入された前記IDタグを前記保持部に案内する傾斜部とを備え、
前記保持部は、
前記IDタグの側面と当接し、前記IDタグを前記保持部に圧入状態とする圧入部と、
前記保持部の上端部から下方に向けて延在し、前記保持部の上端部を含む部位を分断する切欠き部とを備えていることを特徴とするパレット。
【請求項2】
前記圧入部は、前記保持部のうち、当該保持部の周方向において前記切欠き部の側縁部と面一となる位置、又は、前記切欠き部の近傍位置から、前記保持部の内方側に突出して設けられていることを特徴とする請求項1に記載のパレット。
【請求項3】
前記保持部は、前記IDタグの前記保持部への一定量以上の挿入を規制する規制部を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のパレット。
【請求項4】
前記傾斜部は、上方傾斜部と、下方傾斜部とを備え、
前記上方傾斜部は、前記保持部の外方側、かつ、上方に設けられ、前記保持部に向けて下方傾斜し、
前記下方傾斜部は、前記保持部の上端部に設けられ、前記保持部の内方側に向けて下方傾斜し、
前記上方傾斜部と、前記下方傾斜部とは、少なくとも一部において連続して設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のパレット。
【請求項5】
前記保持部は、一対の前記切欠き部を備えることにより、水平断面形状が、開口側が互いに向かい合う一対の略コ字状となるように分割され、
前記上方傾斜部は、前記下
方傾斜部と連続して設けられる連続傾斜部と、一対の前記切欠き部に対応する位置に設けられる切欠き対応傾斜部とを備えていることを特徴とする請求項4に記載のパレット。
【請求項6】
前記挿入開口部に対応してキャップ部材を取付可能に構成され、
前記タグ収容部は、前記IDタグを前記デッキ部に対して垂直となる方向に対して傾斜した姿勢で仮収容状態とすることが可能に構成され、
前記キャップ部材が前記挿入開口部に対応して取付けられることにより、前記仮収容状態の前記IDタグが、前記デッキ部に対して垂直となる方向に延びる姿勢とされ、かつ、前記保持部に保持される正規の収容状態とされ、
前記挿入開口部の周縁部から下方に延びる補助壁部は、前記正規の収容状態、及び、前記仮収容状態にある前記IDタグの上端部よりも下方にまで延在していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のパレット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の運搬等に使用されるパレットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、物品の運搬等に使用されるパレットは、複数の支柱部と、当該複数の支柱部の上端部間、及び、下端部間を連結する上デッキ部、及び、下デッキ部とを備え、支柱部間においてフォークリフトのフォークを差込み可能なフォーク差込み部を有している。また、パレットに対し、パレットに載置される物品に関する情報等を有するIDタグを収容可能とするタグ収容部を設けることが知られている(例えば、特許文献1等参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、タグ収容部は、当該タグ収容部に収容されたIDタグのガタツキを抑止するべく、IDタグが保持されるようにIDタグの形状に合わせて形成されることが望ましい。しかしながら、IDタグやパレットに製造誤差等が生じてしまった場合には、IDタグをタグ収容部に収容することが困難、又は、不可能になってしまうことが懸念される。
【0005】
また、例えば、タグ収容部を上方に開口させてIDタグをタグ収容部へ挿入可能とする挿入開口部を介して視認可能なタグ収容部の底壁部に設けられ、IDタグを仮保持状態とすることのできる台座と、挿入開口部に対応して取付けられるグロメットとにより、タグ収容部に収容されたIDタグを挟持固定するといった構成を採用する場合には、IDタグの取付作業に際し、台座に位置を合わせるようにしてIDタグをタグ収容部に挿入させる必要がある。しかしながら、タグ収容部の内側に設けられた台座部は比較的視認し難く、IDタグの取付作業性の低下を招くことが懸念される。
【0006】
本発明は、上記例示した問題点等を解決するためになされたものであって、その目的は、不良品となるリスクを抑制しつつ、IDタグの取付作業性の向上を図ることのできるパレットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0008】
手段1.複数の柱部と、
前記複数の柱部の上端部間を連結するデッキ部と、
所定の前記柱部に設けられ、IDタグを収容するタグ収容部とを備えるパレットにおいて、
前記タグ収容部は、
前記タグ収容部を上方に開口させ、前記IDタグの挿入を許容する挿入開口部と、
前記挿入開口部に対して下方に離間した位置において、前記タグ収容部に収容された前記IDタグの外周面を囲うようにして設けられ、前記タグ収容部に収容された前記IDタグを保持する保持部と、
前記挿入開口部を介して挿入された前記IDタグを前記保持部に案内する傾斜部とを備え、
前記保持部は、
前記IDタグの側面と当接し、前記IDタグを前記保持部に圧入状態とする圧入部と、
前記保持部の上端部から下方に向けて延在し、前記保持部の上端部を含む部位を分断する切欠き部とを備えていることを特徴とするパレット。
【0009】
手段1によれば、保持部に設けられた圧入部により、タグ収容部に収容されたIDタグの変位を防止する(保持する)ことができる。また、保持部に切欠き部が設けられることにより、例えば、保持部がIDタグを囲むようにして切れ目なく設けられる場合に比べ、保持部の内外方向において保持部を比較的変形し易くすることができる。これにより、保持部によりIDタグを安定して保持しつつ、IDタグを保持部に挿入(圧入)することに応じて、保持部を追従的に(保持部の外方側に向けて)変形可能とすることができる。従って、IDタグの保持部への挿入長が短いときには挿入し易く、ある程度挿入長が確保されることでIDタグが保持部に確実に保持されるように構成することができ、IDタグの保持部への取付作業性の向上を図ることができる。さらに、IDタグやパレットに若干の成型誤差(IDタグの高さの寸法、IDタグの外周の寸法、パレットを上構成部と下構成部とを溶着することで構成する場合の溶着量に応じたパレットの高さの寸法等の誤差)が生じた場合でも、保持部の追従変形可能な構成により、当該成型誤差によるバラツキを吸収することができる。結果として、僅かな成型誤差に起因してIDタグがパレットに取付けられないといった事態の発生を防止することができ、パレットやIDタグが不良品となるリスクを抑制するとともに、IDタグをパレットに取付けられないといった事態が発生することによる作業性の低下を抑止することができる。さらに、タグ収容部に傾斜部が設けられることにより、保持部の位置を確認しながらIDタグをピンポイントで保持部に合わせるといった精密な作業を必要とすることなく、IDタグを保持部に挿入させることが可能となる。従って、IDタグの取付作業性の向上等を図ることができる。
【0010】
尚、切欠き部の形成箇所については特に限定されるものではなく、1箇所でもよいし、2箇所以上でもよい。また、例えば、切欠き部の形成箇所を2箇所以上とする場合には、「前記保持部の上端部を含む部位をそれぞれに前記圧入部が備えられるようにして複数に分割する切欠き部を備えていること」としてもよい。このように、保持部(保持部のうち少なくとも上端部を含む部位)が複数に分割されることで、IDタグの保持部への取付け易さをより一層向上させつつ、複数に分割された保持部のそれぞれに圧入部が設けられることにより、保持部によりIDタグを安定して保持するといった作用効果がより確実に奏される。
【0011】
手段2.前記圧入部は、前記保持部のうち、当該保持部の周方向において前記切欠き部の側縁部と面一となる位置、又は、前記切欠き部の近傍位置から、前記保持部の内方側に突出して設けられていることを特徴とする手段1に記載のパレット。
【0012】
手段2によれば、保持部のうち切欠き部に隣接、又は、近接した比較的変形し易い位置に圧入部が設けられていることから、IDタグの保持部への取付作業性の向上を図るとともに、IDタグやパレットの成型誤差によるバラツキを吸収するといった作用効果がより一層奏される。
【0013】
手段3.前記保持部は、前記IDタグの前記保持部への一定量以上の挿入を規制する規制部を備えていることを特徴とする手段1又は2に記載のパレット。
【0014】
手段3によれば、IDタグの外寸に対して保持部の内寸が広くなるようなIDタグやパレットの成型誤差が発生した場合を考慮して、保持部に対するIDタグの挿入長を調整可能な構成とする場合に、IDタグやパレットの成型誤差が発生していない場合等において、保持部に対するIDタグの挿入長が長くなり過ぎること(IDタグを必要以上の深く押し込んでしまうこと)を防止することができる。従って、保持部に対するIDタグの圧入の程度、すなわち、保持部への負担が大きくなり過ぎることを防止することができ、保持部が破損等してしまうといった事態を回避することができる。
【0015】
手段4.前記傾斜部は、上方傾斜部と、下方傾斜部とを備え、
前記上方傾斜部は、前記保持部の外方側、かつ、上方に設けられ、前記保持部に向けて下方傾斜し、
前記下方傾斜部は、前記保持部の上端部に設けられ、前記保持部の内方側に向けて下方傾斜し、
前記上方傾斜部と、前記下方傾斜部とは、少なくとも一部において連続して設けられていることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載のパレット。
【0016】
手段4によれば、挿入開口部を介してタグ収容部に挿入されたIDタグの下部を、上方傾斜部によって保持部側に案内し、上方傾斜部によって保持部の上端部にまで案内されたIDタグの下部を、下方傾斜部によって、適宜、保持部に挿入可能な姿勢に矯正しつつ、保持部の内側に案内することができる。特に、上方傾斜部と下方傾斜部とが一部において連続して設けられていることから、上方傾斜部によるIDタグの案内状態から、下方傾斜部によるIDタグの案内状態にスムースに移行させることができる。従って、IDタグの取付作業性の向上をより一層図ることができる。尚、「前記下方傾斜部は、前記保持部の上端部の全域に設けられていること」としてもよい。この場合、上方傾斜部により保持部の上端部にまで案内されてきたIDタグの下部を下方傾斜部によって保持部に挿入可能となる向き(姿勢)に矯正する(上下方向を軸線方向として回転する向きにずれている場合には回動させる)といった作用効果がより顕著に奏される。
【0017】
手段5.前記保持部は、一対の前記切欠き部を備えることにより、水平断面形状が、開口側が互いに向かい合う一対の略コ字状となるように分割され、
前記上方傾斜部は、前記下方傾斜部と連続して設けられる連続傾斜部と、一対の前記切欠き部に対応する位置に設けられる切欠き対応傾斜部とを備えていることを特徴とする手段4に記載のパレット。
【0018】
手段5によれば、保持部を一対の断面略コ字状部分に分割することにより、IDタグの保持部への取付け易さの向上を図りつつ、IDタグを安定して保持するといった作用効果がより確実に奏される。また、上方傾斜部が連続傾斜部と切欠き対応傾斜部とを備えることによって、挿入開口部を介して挿入されるIDタグをより好適に保持部側に案内することができる。
【0019】
手段6.前記挿入開口部に対応してキャップ部材を取付可能に構成され、
前記タグ収容部は、前記IDタグを前記デッキ部に対して垂直となる方向に対して傾斜した姿勢で仮収容状態とすることが可能に構成され、
前記キャップ部材が前記挿入開口部に対応して取付けられることにより、前記仮収容状態の前記IDタグが、前記デッキ部に対して垂直となる方向に延びる姿勢とされ、かつ、前記保持部に保持される正規の収容状態とされ、
前記挿入開口部の周縁部から下方に延びる補助壁部は、前記正規の収容状態、及び、前記仮収容状態にある前記IDタグの上端部よりも下方にまで延在していることを特徴とする手段1乃至5のいずれかに記載のパレット。
【0020】
手段6によれば、補助壁部の下縁部が、正規の収容状態、及び、仮収容状態にあるIDタグの上端部よりも下方に位置するため、IDタグをタグ収容部に収容させる際に、IDタグの下部が保持部から側方に脱落してしまうといった事態を抑止することができる上、IDタグの上部が挿入開口部の周縁部よりも外周側にはみ出してしまうことを回避することができる。従って、仮収容状態のIDタグの姿勢を、キャップ部材を取付けるだけで、正規の収容状態とすることのできる姿勢の範囲内に収めておくことができる。これにより、例えば、作業者が挿入開口部に指先を差し入れてIDタグを正規の収容状態とするといった作業を行わなくても済む。結果として、キャップ部材によりIDタグの取付状態の安定化等をより一層図るとともに、IDタグの取付作業性の向上等をより一層図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図3】中央柱部(タグ収容部)の一部断面を含む部分拡大斜視図である。
【
図7】保持部にIDタグを挿入した状態の下収容部を示す部分拡大斜視図である。
【
図8】下収容部(保持部)を示す部分拡大斜視図である。
【
図9】保持部にIDタグを挿入した状態の下収容部を示す部分拡大断面図である。
【
図12】IDタグが仮収容状態にあるタグ収容部を示す部分拡大断面図である。
【
図13】IDタグをタグ収容部に収容させる過程のIDタグ、及び、下収容部を示す部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、一実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、パレット1は、平面視略矩形状をなしている。また、パレット1は、パレット1の4隅に設けられる4本の隅柱部2、パレット1の各側辺部に沿って並ぶ一対の隅柱部2の中間部位に設けられる中間柱部3、及び、パレット1の中央部に設けられる中央柱部4と、隅柱部2、中間柱部3、及び、中央柱部4の上端部間を連結するデッキ部としての上デッキ部5と、隅柱部2、中間柱部3、及び、中央柱部4の下端部間を連結する下デッキ部6とを備えている。各隅柱部2と中間柱部3との間には、フォークリフト等のフォークを差込み可能なフォーク差込み部7が形成されている。本実施形態では、パレット1の外周面を構成する4つの側面からフォークを差込み可能な4方差しタイプのパレットとなっている。
【0023】
また、本実施形態では、隅柱部2、中間柱部3、中央柱部4、及び、上デッキ部5の上面によって物品を載置可能な「載置面8」が構成されている。さらに、隅柱部2、中間柱部3、中央柱部4、及び、下デッキ部6の下面によって、パレット1が設置される床面等の設置面に接地する「接地面9」が構成されている。
【0024】
また、パレット1は、隅柱部2、中間柱部3、及び、中央柱部4の上側部分と、上デッキ部5とを具備する上構成部11と、隅柱部2、中間柱部3、及び、中央柱部4の下側部分と、下デッキ部6とを具備する下構成部12とを備えている。上構成部11、及び、下構成部12は、それぞれポリプロピレンにより一体的に形成されている。そして、上構成部11の隅柱部2、中間柱部3、及び、中央柱部4の下縁部と、下構成部12の隅柱部2、中間柱部3、及び、中央柱部4の上縁部とが溶着(例えば、熱溶着)されることにより、上構成部11と下構成部12とが一体化され、これにより本実施形態のパレット1が構成されている。
【0025】
加えて、
図1、
図4等に示すように、上デッキ部5の下面側、及び、下デッキ部6の上面側(本例では、下デッキ部6の各側辺部に沿った方向において柱部2、3、4間を連結するようにして延びる部位については下面側)には、補強リブ13が格子状に設けられている。また、
図1、
図3等に示すように、各隅柱部2、各中間柱部3、及び、中央柱部4は、それぞれの外周面を構成する略長方形筒状の周壁部14と、周壁部14の内側において格子状に設けられ、周壁部14と連結されている内壁部15とを備えている。
【0026】
加えて、
図3に示すように、上構成部11に設けられる内壁部15は、基本的に、隅柱部2、中間柱部3、及び、中央柱部4の上面(載置面8)を構成する壁部の下面から下方に向けて、上構成部11(周壁部14)の下端部と同じ高さ位置となるまで延びており、適宜、内壁部15同士の交差部位が、その上側部位を残すようにして切り欠かれたような形状をなしている。また、下構成部12に設けられる内壁部15についても、基本的に、隅柱部2、中間柱部3、及び、中央柱部4の下面(接地面9)を構成する壁部の上面から上方に向けて、下構成部12(周壁部14)の上端部と同じ高さ位置となるまで延びており、適宜、内壁部15同士の交差部位が、その下側部位を残すようにして切り欠かれたような形状をなしている。そして、上構成部11と、下構成部12とが溶着されることで、上構成部11、及び、下構成部12の周壁部14同士が溶着されるだけでなく、内壁部15同士も溶着されるようになっている。
【0027】
さて、
図1、
図3、
図4等に示すように、中央柱部4には、平面視でパレット1の中央部、すなわち、中央柱部4の内壁部15で区画された領域の1つにおいて、パレット1に載置される物品に関する情報等が記憶されたIDタグ21(RFIDタグ、ICタグ、電子タグ、非接触タグ等と呼ばれる場合もある)を収容するタグ収容部22が設けられている。本実施形態のIDタグ21は、電池を内蔵したアクティブ型IDタグにより構成されている。また、
図2、
図3、
図10等に示すように、IDタグ21は、略直方体形状をなし、その長手方向が上下方向(略鉛直方向)となるようにして、タグ収容部22に収容される。特に、本実施形態では、IDタグ21の上面、及び、下面が略正方形状となっている。さらに、IDタグ21のうち、面同士の境界となる部位はR面取り形状とされている。
【0028】
また、
図3、
図4、
図10等に示すように、タグ収容部22は、上構成部11により構成される部位であって、IDタグ21の上部を収容する上収容部23と、下構成部12により構成される部位であって、IDタグ21の下部を収容する下収容部24とを備えている。
【0029】
上収容部23には、タグ収容部22を上方に開口させ、載置面8側からIDタグ21のタグ収容部22への挿入を許容する平面視略正方形状の挿入開口部25が設けられている。また、上収容部23は、挿入開口部25の周縁部から下方に延びる略四角筒状の補助壁部26を備えている。補助壁部26は、上構成部11(周壁部14、及び、内壁部15)の下端部よりも上方に位置しており、下構成部12とは溶着されないようになっている。さらに、補助壁部26を構成する各壁部から補助壁部26の内方側に突出する被係止部27が設けられている。被係止部27は、補助壁部26を構成する各壁部を補助壁部26の内方側から見て右側の位置にそれぞれ設けられるとともに、上面が補助壁部26の内方側に向けて下方傾斜し、下面が略水平方向に延びる縦断面略三角形状をなしている。
【0030】
図3、
図7、
図8等に示すように、下収容部24は、挿入開口部25に対して下方に離間した位置において、タグ収容部22に収容されたIDタグ21の下部と当接してIDタグ21を保持する保持部31を備えている。保持部31は、中央柱部4の下面(接地面9)を構成する壁部から上方に突出する略四角筒状の保持部本体31aを備え、保持部本体31aは、タグ収容部22に収容されたIDタグ21の下部の外周面を囲うようにして設けられている。
図10等に示すように、保持部31(保持部本体31a)の上端部は、下構成部12(周壁部14、及び、内壁部15)の上端部よりも下方に位置しており、上構成部11とは溶着されないようになっている(保持部31の上端部はその他の部位と連結されないようになっている)。さらに、本実施形態では、IDタグ21の上下幅がパレット1の上下幅の約1/2強とされており、保持部本体31aは、下構成部12の上下幅方向中央部よりも上方位置まで延在している。
【0031】
また、
図3、
図8等に示すように、保持部31には、保持部本体31aの上端部を含む部位を2つに分割する切欠き部32が設けられている。本実施形態の切欠き部32は、保持部本体31aを構成する壁部のうち相対する一対の壁部において、当該壁部の横幅方向中央部を含むようにして、保持部本体31aの上端部から下端部(中央柱部4の下面を構成する壁部の上面)にかけて設けられている。このように切欠き部32が設けられることにより、保持部31(保持部本体31a)は、水平断面形状が、開口側が互いに向かい合う一対の略コ字状となるように分割されている(
図9参照)。
【0032】
さらに、
図3、
図8、
図9等に示すように、本実施形態の保持部31は、IDタグ21の側面と当接し、IDタグ21を保持部31に圧入状態とする圧入部33を備えている。圧入部33は、保持部本体31aのうち当該保持部本体31aの周方向において各切欠き部32の両側縁部とそれぞれ面一となる位置から、保持部本体31aの内方側に突出して設けられている。これにより、断面略コ字状に分割された保持部31(保持部本体31a)のそれぞれには、一対の圧入部33が備えられるようになっている。さらに、保持部本体31aを構成する壁部のうち圧入部33が設けられた壁部に垂直な方向(圧入部33の突出方向)において、相対する圧入部33間の距離が、IDタグ21の厚みと同じ、又は、若干短く構成されている。また、
図8、
図10に示すように、圧入部33は、保持部本体31aの上端部から下端部にかけて設けられているが、本実施形態では、圧入部33の保持部本体31aを構成する壁部からの突出長は、上側となるにつれて次第に短くなるように構成されている。
【0033】
尚、
図9、
図11に示すように、本実施形態では、保持部本体31aを構成する壁部のうち圧入部33が設けられていない壁部に対してIDタグ21を接触させることなくIDタグ21をタグ収容部22に収容可能に構成されている。但し、保持部本体31aの内側の寸法は、挿入開口部25の寸法(開口面積)よりも小さく構成されている。特に、本実施形態では、保持部31の外側の寸法よりも、挿入開口部25の寸法が大きく構成されており、挿入開口部25(保持部31)の内外方向において、保持部31の外面と、挿入開口部25の開口縁(補助壁部26の内面)との間には、所定距離が隔てられるようになっている。
【0034】
また、
図8等に示すように、下収容部24は、挿入開口部25を介して挿入されたIDタグ21を保持部31に案内する上方傾斜部34、及び、下方傾斜部35を備えている。下方傾斜部35は、保持部31(保持部本体31a)の上端部の全域を保持部本体31aの内方側に向けて下方傾斜させることで構成される。本実施形態では、圧入部33の上端部についても、下方傾斜部35と連続するようにして、保持部本体31aの内方側に向けて下方傾斜している。
【0035】
上方傾斜部34は、保持部31(保持部本体31a)の外方側、かつ、上方に設けられ、保持部本体31aに向けて下方傾斜している。より具体的に、保持部本体31aを構成する各壁部の横幅方向中央部と、保持部31(保持部本体31a)を囲う略四角筒状の内壁部15とを連結するようにして下連結壁部36が4箇所に設けられている。
図3、
図10等に示すように、下連結壁部36が連結される内壁部15の上縁部は、下構成部12の上端部と同じ高さとされ、上構成部11の補助壁部26を囲う略四角筒状の内壁部15の下縁部と溶着されている。下連結壁部36の上縁部は、内壁部15の上縁部から保持部31の上端部にかけて延在しており、少なくとも保持部31側の部位が保持部31側に向けて下方傾斜している。本実施形態では、下連結壁部36の上縁部により上方傾斜部34が構成されている。
【0036】
但し、上記のように、本実施形態では、保持部本体31aを構成する壁部のうち相対する一対の壁部の横幅方向中央部を含む範囲に切欠き部32が設けられており、
図8等に示すように、保持部本体31aを構成する壁部のうち切欠き部32が設けられた壁部に対応して設けられる一対の下連結壁部36については、保持部本体31aに連結されず、当該一対の下連結壁部36同士が連結されるようになっている。下連結壁部36のうち保持部本体31aと連結される下連結壁部36の上方傾斜部34(以下、「連続傾斜部37」とも称する)については、下方傾斜部35と連続して設けられている。本実施形態では、連続傾斜部37(上方傾斜部34)と下方傾斜部35との連続部分において、連続傾斜部37、及び、下方傾斜部35の傾きが同じとなっている。
【0037】
その一方で、一対の切欠き部32に対応して設けられる下連結壁部36の上方傾斜部34(以下、「切欠き対応傾斜部38」とも称する)は、保持部本体31aの内外方向において、内壁部15の上縁部との連結部から、切欠き部32が設けられた壁部の外面と内面との間の位置にかけて設けられており、連続傾斜部37、及び、下方傾斜部35と同様に傾斜している(
図10参照)。
【0038】
加えて、
図8等に示すように、保持部31は、IDタグ21の保持部31への一定量以上の挿入を規制する規制部39を備えている。本実施形態では、切欠き対応傾斜部38を具備する一対の下連結壁部36間を連結する壁部の上縁部によって規制部39が構成されている。本実施形態では、IDタグ21やパレット1に成型誤差がない場合、
図10、
図11に示すように、タグ収容部22に収容されたIDタグ21の下面と、規制部39とが上下に離間する設計となっている。
【0039】
また、
図3、
図10等に示すように、本実施形態のパレット1は、挿入開口部25に対応してタグ収容部22に収容されたIDタグ21の脱落を防止するキャップ部材41を取付可能に構成されている。
図5、
図6、
図10等に示すように、キャップ部材41は、挿入開口部25を塞ぐようにして設けられる略正方形板状のベース部42と、ベース部42の下面の各側辺部に沿って下方に延出する側壁部43と、パレット1の被係止部27に係止状態とされる係止部44とを備えている。本実施形態のキャップ部材41は、ポリプロピレンにより一体的に形成されている。
【0040】
図6、
図10等に示すように、ベース部42の外周縁は、下方に向けてベース部42の内周側に傾斜している。
図3、
図10等に示すように、本実施形態の挿入開口部25の開口縁は、載置面8との境界部がR面取り形状とされており、これに対応して、ベース部42の外周縁についても若干湾曲している。当該構成により、ベース部42を載置面8から上方に突出させることなくキャップ部材41を取付可能となっている。
【0041】
図5、
図6等に示すように、側壁部43は、ベース部42の下面の各側辺部のうち、当該各側辺部をベース部42の外周側から見て右側の部位からそれぞれ下方に延出する略矩形板状をなしている。
図10等に示すように、キャップ部材41の取付状態においては、側壁部43の外面が、補助壁部26の内面に対して略当接状態とされる。
【0042】
図5、
図6等に示すように、係止部44は、ベース部42の下面の各側辺部のうち、当該各側辺部をベース部42の外周側から見て左側の部位に対して若干ベース部42の内周側に変位した位置からそれぞれ下方に延出する係止片45と、各係止片45の下端部からベース部42の外周側に突出する係止突部46とを備えている。
図5、
図11等に示すように、4つの係止部44のうちベース部42の相対する一対の側辺部に対応して設けられた係止部44に関し、係止突部46の上面側には、略水平方向に延び、被係止部27の下面に係止状態とされる部位が設けられ、係止突部46の下面は、ベース部42の内周側に向けて下方傾斜している。尚、本実施形態では、他の係止部44については、係止突部46の上面がベース部42の外周側に向けて若干下方傾斜するようになっている。
【0043】
さらに、
図5、
図10に示すように、係止片45には、係止突部46の上方位置において貫通孔47が設けられている。加えて、係止片45のうち貫通孔47の両側方位置からベース部42の外周側に突出する支持突部48が設けられている。ベース部42の内外方向において、各係止部44の係止突部46、及び、支持突部48の係止片45からの突出方向先端部は、側壁部43の外面とほぼ同じ位置とされている。
【0044】
また、
図5、
図10に示すように、係止部44の下端部は、側壁部43の下縁部よりも上方に位置している。さらに、
図6に示すように、4つずつ設けられた側壁部43、及び、係止部44は、ベース部42の中央部を中心とした回転対称位置に配置されている。
【0045】
図6、
図10に示すように、ベース部42の下面側には、側壁部43の下縁部よりも上方において、IDタグ21の上面と対向し、IDタグ21の上方向の変位を規制する上規制部49が設けられている。本実施形態の上規制部49は、ベース部42の下面から下方に延出する複数のリブ50の下縁部により構成されている。当該リブ50は、所定の側壁部43のうちベース部42の内周側の面(内面)から当該側壁部43に対して直交する方向に延出して、延出方向先端縁が別のリブ50と連結されるとともに、ベース部42からの延出方向中間位置において、さらに別のリブ50の延出方向先端縁と連結されている(4本のリブ50を風車状に設けることで上規制部49を構成している)。本実施形態では、係止部44は、上規制部49よりも上方に位置している。
【0046】
加えて、キャップ部材41は、タグ収容部22に収容されたIDタグ21の側面と対向し、IDタグ21の水平方向の変位を規制する水平規制部51を備えている。本実施形態では、水平規制部51についても、前記リブ50により構成されている。つまり、リブ50のうちベース部42の中央部側であって、IDタグ21の上面と対向する範囲については、ベース部42から下方への突出長が比較的短く構成される。これに対し、リブ50のうち側壁部43との連接部側であって、IDタグ21の上面と対向しない範囲については、ベース部42から下方への突出長が比較的長く構成され、当該突出長が長く構成された範囲のうちベース部42の内周側の縁部により水平規制部51が構成されている。
【0047】
また、水平規制部51は、側壁部43の下縁部よりも上方に設けられている。さらに、水平規制部51は、水平規制部51の上側部位であって、略鉛直方向に延びる鉛直部52と、水平規制部51の下側部位であって、下方に向けてベース部42の外周側に傾斜して延びる傾斜部53とを備えている。
【0048】
IDタグ21をパレット1に取付ける場合には、
図3に示すように、IDタグ21の長手方向が上下方向となるようにしてIDタグ21を挿入開口部25に挿入させる。このとき、IDタグ21の下面が上方傾斜部34に接触した場合には、当該上方傾斜部34によりIDタグ21の下部が保持部31側に案内される。さらに、IDタグ21の下面が保持部31にまで案内された場合には、
図13に示すように、保持部本体31aを構成する各壁部と、IDタグ21の各側面とが交差するように相対配置されていても、保持部31(保持部本体31a)の上端部に設けられた下方傾斜部35により、IDタグ21が保持部本体31aに挿入可能な姿勢となるように(保持部本体31aを構成する各壁部と、IDタグ21の各側面とが略平行となるように)矯正される。下方傾斜部35により姿勢が矯正されたIDタグ21に対し下方への力を加えることで、IDタグ21を保持部本体31aに挿入(圧入)させること(上デッキ部5に対して略垂直となる方向に延びる姿勢となり、
図7のように保持部31に保持される正規の収容状態とすること)が可能であるが、下方への力を加えない場合には、
図12に示すように、IDタグ21は上デッキ部5(載置面8)に対して垂直となる方向(略鉛直方向)に対して傾斜した姿勢となる仮収容状態とされる。本実施形態では、
図10、
図12に示すように、正規の収容状態、及び、仮収容状態にあるIDタグ21の上端部よりも、補助壁部26の下縁部の方が下方に位置している。このため、仮収容状態にあるIDタグ21が所定量以上傾いた場合には、IDタグ21の上部(上面と側面との境界部であって、R面取り形状とされている)が補助壁部26に当接し、それ以上傾かないようになっている。また、本実施形態では、仮収容状態にあるIDタグ21は、当該IDタグ21の下部が保持部31に臨み(若干の挿入状態とされ)、IDタグ21の上面と側面との境界部が、挿入開口部25を介してタグ収容部22に挿入されるキャップ部材41の下面側に設けられたIDタグ21の姿勢を矯正する手段(側壁部43の下部、及び、水平規制部51)に対して接触し得る姿勢となっている。
【0049】
図12に示すように、IDタグ21が仮収容状態にある場合に、キャップ部材41の側壁部43等を挿入開口部25に挿入させることで、IDタグ21の上面の側辺部と、補助壁部26との間に対して、キャップ部材41の側壁部43の下端部が進入し、続いて、水平規制部51の傾斜部53が進入する。これにより、IDタグ21の傾きが略鉛直方向となるように矯正され、水平規制部51によりIDタグ21の水平方向への変位が規制された状態とされる。さらに、
図10等に示すように、係止部44を被係止部27に係止状態として、キャップ部材41が挿入開口部25に対応して取付けられることにより、IDタグ21が上規制部49により下方に押圧されて保持部31に保持(圧入)され、正規の収容状態とされるようになっている。尚、キャップ部材41の取付状態では、ベース部42の外周縁と、挿入開口部25の開口縁とが上下に略当接するとともに、各係止部44の支持突部48の下面と、各被係止部27の上面とが略当接することで、たとえIDタグ21がタグ収容部22に収容されていなくても、キャップ部材41がタグ収容部22の内側に没入するといった事態が防止されるようになっている。
【0050】
また、
図5、
図10等に示すように、ベース部42には、各係止部44に対してベース部42の内周側に隣接、又は、近接した位置において、工具(例えば、マイナスドライバー等)を挿入可能とする操作開口部54が設けられている。操作開口部54を介して工具の先端部を係止部44の貫通孔47、さらには、係止突部46と被係止部27との間に挿入し、係止突部46を補助壁部26の内周側に変位させるようにして係止部44を弾性変形させることで、係止部44と被係止部27との係止状態を解除して、キャップ部材41をパレット1から取外すことが可能となっている。尚、本実施形態の載置面8、及び、接地面9は、基本的には無孔状に構成されているものの、
図10に示すように、タグ収容部22を介して挿入開口部25と連通する部位に対しては、水抜き等のための孔部55が設けられている。
【0051】
以上詳述したように、本実施形態によれば、保持部31に設けられた圧入部33により、タグ収容部22に収容されたIDタグ21の変位を防止する(保持する)ことができる。また、保持部31(保持部本体31a)に切欠き部32が設けられることにより、保持部本体31aの内外方向において保持部本体31aを比較的変形し易くすることができる。これにより、保持部31によりIDタグ21を安定して保持しつつ、IDタグ21を保持部31に挿入(圧入)することに応じて、保持部31を追従的に(保持部31の外方側に向けて)変形可能とすることができる。
【0052】
特に、本実施形態の保持部本体31aは、IDタグ21の下部を囲うように構成されつつも、一対の切欠き部32を備えることにより、水平断面形状が、開口側が互いに向かい合う一対の略コ字状となるように分割されており、より柔軟に追従変形可能となっている。さらに、複数に分割された保持部本体31aのそれぞれに圧入部33が設けられている。従って、IDタグ21の保持部31への挿入長が短いとき(挿入し始めのとき)には挿入し易く、ある程度挿入長が確保されることでIDタグ21が保持部31に確実に保持されるように構成することができ、IDタグ21の保持部31への取付作業性の向上を図ることができる。さらに、IDタグ21やパレット1に若干の成型誤差(IDタグ21の高さの寸法、IDタグ21の外周の寸法、パレット1を上構成部11と下構成部12とを溶着することで構成する場合の溶着量に応じたパレット1の高さの寸法等の誤差)が生じた場合でも、保持部31(保持部本体31a)の追従変形可能な構成により、当該成型誤差によるバラツキを吸収することができる。結果として、僅かな成型誤差に起因してIDタグ21がパレット1に取付けられないといった事態の発生を防止することができ、パレット1やIDタグ21が不良品となるリスクを抑制するとともに、IDタグ21をパレット1に取付けられないといった事態が発生することによる作業性の低下を抑止することができる。
【0053】
さらに、タグ収容部22に上方傾斜部34、及び、下方傾斜部35が設けられることにより、保持部31の位置を確認しながらIDタグ21をピンポイントで保持部31に合わせるといった精密な作業を必要とすることなく、IDタグ21を保持部31に挿入させることが可能となる。従って、IDタグ21の取付作業性の向上等を図ることができる。
【0054】
また、圧入部33は、保持部本体31aのうち、当該保持部本体31aの周方向において各切欠き部32の両側縁部とそれぞれ面一となる位置から、保持部本体31aの内方側に突出して設けられている。つまり、保持部本体31aのうち切欠き部32に隣接した比較的変形し易い位置に圧入部33が設けられていることから、IDタグ21の保持部31への取付作業性の向上を図るとともに、IDタグ21やパレット1の成型誤差によるバラツキを吸収するといった作用効果がより一層奏される。
【0055】
さらに、保持部31は、IDタグ21の保持部31への一定量以上の挿入を規制する規制部39を備えている。このため、IDタグ21の外寸に対して保持部31の内寸が広くなるようなIDタグ21やパレット1の成型誤差が発生した場合を考慮して、保持部31に対するIDタグ21の挿入長を調整可能な構成とする場合に、IDタグ21やパレット1の成型誤差が発生していない場合等において、保持部31に対するIDタグ21の挿入長が長くなり過ぎること(IDタグ21を必要以上の深く押し込んでしまうこと)を防止することができる。従って、保持部31に対するIDタグ21の圧入の程度、すなわち、保持部31への負担が大きくなり過ぎることを防止することができ、保持部31(保持部本体31a)が破損等してしまうといった事態を回避することができる。
【0056】
加えて、挿入開口部25を介してタグ収容部22に挿入されたIDタグ21の下部を、上方傾斜部34によって保持部31(保持部本体31a)側に案内し、上方傾斜部34によって保持部31の上端部にまで案内されたIDタグ21の下部を、下方傾斜部35によって、適宜、保持部31に挿入可能な姿勢に矯正しつつ、保持部31の内側に案内することができる。特に、上方傾斜部34と下方傾斜部35とが一部において連続して設けられていることから、上方傾斜部34によるIDタグ21の案内状態から、下方傾斜部35によるIDタグ21の案内状態にスムースに移行させることができる。従って、IDタグ21の取付作業性の向上をより一層図ることができる。さらに、上方傾斜部34が連続傾斜部37と切欠き対応傾斜部38とを備えることによって、挿入開口部25を介して挿入されるIDタグ21をより好適に保持部31側に案内することができる。
【0057】
また、補助壁部26の下縁部が、正規の収容状態、及び、仮収容状態にあるIDタグ21の上端部よりも下方に位置するため、IDタグ21をタグ収容部22に収容させる際に、IDタグ21の下部が保持部31(保持部本体31a)から側方に脱落してしまうといった事態を抑止することができる上、IDタグ21の上部が挿入開口部25の周縁部よりも外周側にはみ出してしまうことを回避することができる。従って、仮収容状態のIDタグ21の姿勢を、キャップ部材41を取付けるだけで、正規の収容状態とすることのできる姿勢の範囲に収めておくことができる。これにより、例えば、作業者が挿入開口部25に指先を差し入れてIDタグ21を正規の収容状態とするといった作業を行わなくても済む。結果として、キャップ部材41によりIDタグ21の取付状態の安定化等をより一層図るとともに、IDタグ21の取付作業性の向上等をより一層図ることができる。
【0058】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0059】
(a)上記実施形態において切欠き部32の形成箇所等については特に限定されるものではなく、適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、保持部本体31aにおいて2箇所に切欠き部32が設けられているが、切欠き部32の形成箇所を1箇所としてもよいし、3箇所以上としてもよい。また、例えば、保持部本体31aの全体としての断面形状についても、IDタグ21の形状に応じて適宜変更可能であり、例えば、断面略円環状、断面略三角形の環状等としてもよい。
【0060】
さらに、上記実施形態では、切欠き部32は、保持部本体31aの上端部から保持部31の下端部(中央柱部4の下面を構成する壁部の上面)にまで形成されているが、切欠き部32の下端部が保持部本体31aの下縁部よりも上方に位置するように構成してもよい。当該構成を採用する場合にも、切欠き部32が設けられない構成に比べ、IDタグ21を保持部31に挿入する(保持させる)作業性の向上を図りつつ、IDタグ21やパレット1の成型誤差に起因してIDタグ21を保持部31に保持させる(挿入させる)ことが不可能となるといった事態を抑止することができる。
【0061】
(b)上記実施形態では、圧入部33が切欠き部32の側縁部に隣接して設けられているが、切欠き部32から離間した位置に設けられることとしてもよい。但し、圧入部33を保持部本体31aのうち比較的変形し易い位置に設けることで、IDタグ21の挿入し易さの向上等を図るべく、極力、切欠き部32に近接した位置に設けることが望ましい。また、上記実施形態では、圧入部33が突条部により構成されているが、例えば、当該突条部を省略し、保持部本体31aを構成する壁部の内面によりIDタグ21を圧入状態とする(圧入部を構成する)ような構成としてもよい。尚、IDタグ21を保持する保持部31の機能を確実に発揮させるべく、切欠き部32により複数に分割される保持部31のそれぞれに圧入部33が設けられることが望ましい。
【0062】
(c)上記実施形態において、規制部39は、切欠き部32に対応して設けられた一対の下連結壁部36間を連結する壁部の上縁部により構成されているが、例えば、保持部本体31aを構成する壁部の内面間を連結する壁部を設け、その上縁部により規制部を構成することとしてもよい。また、規制部39を省略することも可能である。但し、パレット1の上下幅に比べてIDタグ21の上下幅がかなり短い場合には、保持部31の上下幅を短くすると、IDタグ21を保持部31に設置し難くなったり、キャップ部材41の上下幅が長くなり過ぎてしまったりすることが懸念される。これに対し、保持部31(保持部本体31a)の上下幅を長くした場合、IDタグ21を保持部31に対して無理やり深く挿入してしまうと保持部31やIDタグ21が損傷することが懸念される。この点、規制部39を設けることによって、かかる懸念を払拭することができる。
【0063】
また、上記実施形態では、上方傾斜部34、及び、下方傾斜部35が設けられているが、どちらか一方のみを設けることとしてもよいし、両方を省略することも可能である。さらに、下方傾斜部35は、保持部本体31aの上端部の全域ではなく、一部に設けられることとしてもよい。加えて、上方傾斜部34の形成位置や数等は特に限定されるものではなく、例えば、連続傾斜部37、及び、切欠き対応傾斜部38のうち一方を省略することも可能である。
【0064】
(d)上記実施形態において、キャップ部材41の構成は特に限定されるものではなく、適宜変更可能である。尚、キャップ部材41を省略することも可能である。また、上記実施形態において、IDタグ21の外形状は特に限定されるものではなく、例えば、略円柱状に構成されていてもよいし、角部を面取り形状としなくてもよい。さらに、IDタグ21は、アクティブ型のICタグに限定されるものではなく、パッシブ型やセミアクティブ型のIDタグであってもよい。加えて、IDタグ21(タグ収容部22)の配置については特に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0065】
(e)上記実施形態では、上構成部11、下構成部12、及び、キャップ部材41はポリプロピレンにより構成されているが、ポリエチレン、PET、ポリアミド等その他の樹脂材料により構成されることとしてもよい。また、上記実施形態では、4方差しタイプのパレット1に具体化されているが、2方差しのパレットに適用することも可能である。
【0066】
さらに、例えば、下デッキ部6において、ハンドリフトのフォークの下面側に取付けられたキャスターを接地可能とするキャスター用開口部等の開口部が設けられるようなパレット(片面仕様タイプのパレット)に具体化してもよい。加えて、上記実施形態では、上構成部11と、下構成部12とが別々に形成された後、互いに溶着されることでパレット1が構成されているが、全体が一体的に構成されるパレット(例えば、下デッキ部6が省略されたようなパレット)に具体化することも可能である。また、例えば、上デッキ部5、及び、下デッキ部6において、補強リブ13で囲まれた部位のそれぞれに水抜き孔を設けることとしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1…パレット、2…隅柱部、3…中間柱部、4…中央柱部、5…上デッキ部、21…IDタグ、22…タグ収容部、23…上収容部、24…下収容部、25…挿入開口部、26…補助壁部、27…被係止部、31…保持部、31a…保持部本体、32…切欠き部、33…圧入部、34…上方傾斜部、35…下方傾斜部、37…連続傾斜部、38…切欠き対応傾斜部、39…規制部、41…キャップ部材、42…ベース部、43…側壁部、44…係止部。