(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】養子療法のための抗原特異的T細胞を含む細胞組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/17 20150101AFI20240422BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240422BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240422BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240422BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20240422BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240422BHJP
A61P 33/00 20060101ALI20240422BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240422BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20240422BHJP
A61P 31/22 20060101ALI20240422BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20240422BHJP
A61K 39/002 20060101ALI20240422BHJP
A61K 39/02 20060101ALI20240422BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20240422BHJP
A61K 39/145 20060101ALI20240422BHJP
A61K 39/245 20060101ALI20240422BHJP
A61K 39/235 20060101ALI20240422BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240422BHJP
A61K 38/19 20060101ALI20240422BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20240422BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20240422BHJP
【FI】
A61K35/17
A61K39/00 B
A61P35/00
A61P31/04
A61P31/10
A61P31/12
A61P33/00
A61P43/00 121
A61P31/16
A61P31/22
A61P31/20
A61K39/00 H
A61K39/002
A61K39/02
A61K39/12
A61K39/00 K
A61K39/145
A61K39/245
A61K39/235
A61P35/02
A61K38/19
C12N5/0783 ZNA
C12N15/09 Z
(21)【出願番号】P 2020516552
(86)(22)【出願日】2018-09-20
(86)【国際出願番号】 US2018051971
(87)【国際公開番号】W WO2019060558
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-09-02
(32)【優先日】2018-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518329653
【氏名又は名称】ネクシミューン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オーケー マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ クリスティ
(72)【発明者】
【氏名】キム ソジョン
(72)【発明者】
【氏名】スアレス ローレン
(72)【発明者】
【氏名】カーター ケン
(72)【発明者】
【氏名】カーメル スコット
(72)【発明者】
【氏名】ベドナリック ダン
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0246277(US,A1)
【文献】特表2014-526244(JP,A)
【文献】国際公開第2016/105542(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/096903(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0299656(US,A1)
【文献】Clin Cancer Res,2011年,Vol.17, No.16,pp.5343-5352
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00 -35/768
A61K 39/00 -39/44
C12N 5/00 - 5/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
養子免疫療法に適した単離細胞組成物
を製造する方法であって、
前記単離細胞組成物が薬学的に許容される担体中に、1個以上の標的ペプチド抗原に特異的な少なくとも10
6個のCD8+T細胞を含み、前記単離細胞組成物中の少なくとも50%のT細胞がセントラルメモリー表現型またはエフェクターメモリー表現型を示し、前記単離細胞組成物がTメモリー幹細胞表現型を示すT細胞を更に含み、前記単離細胞組成物中の少なくとも10%のCD8+T細胞が標的ペプチド抗原に特異的であり、
前記方法が標的ペプチド抗原を提示するMHCクラスIリガンドとCD28に結合する共刺激リガンドとを有する人工抗原提示細胞(aAPC)による、末梢血由来の細胞源からの前記標的ペプチド抗原に特異的なCD8+T細胞の濃縮、その後の、前記aAPCの存在下、かつ、IL-2、IL-4、IL-6、INF-γ、及びIL-1βの存在下で
の前記標的ペプチド抗原に特異的なCD8+T細胞の拡大を含む、前記
方法。
【請求項2】
前記単離細胞組成物中の標的ペプチド抗原に向けられたT細胞特異度が、MHC多量体染色によって定義される、請求項1に記載の
方法。
【請求項3】
前記標的ペプチド抗原が腫瘍関連抗原である、請求項1
または2に記載の
方法。
【請求項4】
1個以上の標的ペプチド抗原が、腫瘍由来または腫瘍特異的新生抗原である、請求項1~
3のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項5】
1個以上の標的ペプチド抗原が、細菌、ウイルス、真菌、または寄生虫抗原である、請求項1
または2に記載の
方法。
【請求項6】
少なくとも1、2、3、4または5個の標的ペプチド抗原に特異的なCD8+T細胞を含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項7】
前記単離細胞組成物は少なくとも90%がT細胞である、請求項1~
6のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項8】
前記単離細胞組成物は少なくとも98%がT細胞である、請求項
7に記載の
方法。
【請求項9】
前記単離細胞組成物は少なくとも15%が前記標的ペプチド抗原に特異的なCD8+T細胞である、請求項1に記載の
方法。
【請求項10】
前記単離細胞組成物が、細菌、ウイルス及び/または真菌病原体に特異的なCD8+T細胞を更に含む、請求項
3または
4に記載の
方法。
【請求項11】
前記細菌、ウイルス、または真菌病原体に特異的なCD8+T細胞が、インフルエンザ、CMV、EBV及び/またはアデノウイルスの抗原に特異的なT細胞を含む、請求項
10に記載の
方法。
【請求項12】
前記T細胞は少なくとも70%がセントラルメモリーT細胞及びエフェクターメモリーT細胞である、請求項1~
11のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項13】
前記T細胞では少なくとも80%がセントラルメモリーT細胞及びエフェクターメモリーT細胞である、請求項
12に記載の
方法。
【請求項14】
前記1個以上の標的抗原に特異的なT細胞は少なくとも50%がセントラルメモリーT細胞及びエフェクターメモリーT細胞である、請求項
12または
13に記載の
方法。
【請求項15】
前記1個以上の標的抗原に特異的なT細胞は少なくとも60%がセントラルメモリーT細胞及びエフェクターメモリーT細胞である、請求項
14に記載の
方法。
【請求項16】
前記1個以上の標的抗原に特異的なT細胞は少なくとも70%がセントラルメモリーT細胞及びエフェクターメモリーT細胞である、請求項
14に記載の
方法。
【請求項17】
前記1個以上の標的抗原に特異的なT細胞は少なくとも80%がセントラルメモリーT細胞及びエフェクターメモリーT細胞である、請求項
14に記載の
方法。
【請求項18】
前記セントラル及びエフェクターメモリーT細胞が、10:90~90:10のセントラルメモリーT細胞対エフェクターメモリー細胞である、請求項1~
17のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項19】
前記セントラル及びエフェクターメモリーT細胞が、25:75~75:25のセントラルメモリーT細胞対エフェクターメモリー細胞である、請求項
18に記載の
方法。
【請求項20】
前記セントラル及びエフェクターメモリー細胞が、40:60~60:40のセントラルメモリーT細胞対エフェクターメモリーT細胞である、請求項
18に記載の
方法。
【請求項21】
前記T細胞は10%未満の末端分化がある、請求項
1~20のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項22】
前記T細胞は5%未満の末端分化がある、請求項
21に記載の
方法。
【請求項23】
前記単離細胞組成物が10%未満の未変性細胞を含む、請求項
1~22のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項24】
前記単離細胞組成物が5%未満の未変性細胞を含む、請求項
23に記載の
方法。
【請求項25】
前記単離細胞組成物が1.5%未満の未変性細胞を含む、請求項
23に記載の
方法。
【請求項26】
前記CD8+T細胞が、活性化されると多機能性表現型を表示する、請求項1~
25のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項27】
前記単離細胞組成物が10%未満のCD4+T細胞を含む、請求項1~
26のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項28】
前記単離細胞組成物は5%未満がCD4+T細胞である、請求項
27に記載の
方法。
【請求項29】
前記単離細胞組成物は1%未満がCD4+T細胞である、請求項
27に記載の
方法。
【請求項30】
前記単離細胞組成物が、キメラ抗原受容体または組み換えTCRを発現するT細胞を含まない、請求項1~
29のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項31】
細胞源が、患者からのもの、またはHLA適合ドナーからのものである、請求項
1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記ドナー細胞が白血球搬出法によって単離される、請求項
1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記細胞源が、濃縮の前または拡大の前にCD4+T細胞について枯渇している、請求項
1~
32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記細胞源ではCD8+が濃縮されている、請求項
1~
33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記細胞源ではNK細胞が枯渇されている、請求項
1~
34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記共刺激リガンドが、CD28のアゴニストであるモノクローナル抗体またはその一部分である、請求項
1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記濃縮が常磁性aAPCによる磁気濃縮であり、前記細胞及びaAPCが、磁場の存在下で少なくとも1分間にわたって任意選択でインキュベートされる、請求項
1~
36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記濃縮細胞が、培養により1~4週間にわたって拡大される、請求項
1~
36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
1個以上の標的ペプチド抗原が、サバイビン、WT-1、PRAME、サイクリンA1及びPR3のペプチドエピトープから選択される、請求項
1~
38のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、2017年9月20日出願の米国特許仮出願第62/561,044号の利益及び2018年4月12日出願の米国特許仮出願第62/656,679号の利益を主張し、それぞれ、その全体が参照として本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ドナーリンパ球注入などの養子免疫療法は、移植片対白血病(GVL)効果を高める、白血病再発後造血幹細胞移植(HSCT)の治療のために使用される。これらの手法は、効果を発揮するのに大抵数か月かかり、非常に大きな用量の細胞を必要とし、そのことが移植片対宿主病(GVHD)の実質的な危険性をもたらす。McLaughlin L,et al.,Adoptive T-cell therapies for refractory/relapsed leukemia and lymphoma;current strategies and recent advances.Ther.Adv.Hematol.2015 Vol.6(6)295-307を参照すること。
【0003】
現在の治療選択肢では、例えばHSCTの後に再発する白血病患者の転帰は暗いものである。養子細胞療法は、いくつかの利点を提供することができるが、提供され得る多数の標的特異的細胞は、しばしば不十分であり、非常にばらつきがあり、とりわけ、健常者の末梢血中においてしばしば極めて低く検出不能でもある癌特異的CTL前駆体に関して、エキソビボでドナーリンパ球から未変性T細胞集団を活性化及び拡大することは困難である。Quintarelli C,et al.,Cytotoxic T lymphocytes directed to the preferentially expressed antigens of melanoma(PRAME)target chronic myeloid leukemia.Blood 2008;112:1876-1885。更に、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞及びナチュラルキラー細胞療法などの細胞療法は、インビボにおいて十分に強固ではない及び/または限定された残留性を有する消耗した細胞表現型を誘導する傾向があり、オフターゲット組織毒性を示すことがある。Cruz and Bollard,T-cell and natural killer cell therapies for hematological malignancies after hematopoietic stem cell transplantation;enhancing the graft-versus-leukemia effect.Haematologica 2015;100(6)709-719を参照すること。更に、これらの療法は、改変単一標的のために、一般に限定された柔軟性を有する。
【0004】
細胞組成物には、より効果的かつ安全な養子免疫療法の選択肢を提供することが必要とされ、白血病またはリンパ腫(急性もしくは慢性白血病を含む)に罹患している患者、ならびに養子免疫療法から利益を得ることができる他の患者ためのものが挙げられる。様々な態様及び実施形態において、本発明はこれらの必要性に対処する。
【発明の概要】
【0005】
様々な態様及び実施形態において、本発明は、養子免疫療法に適した単離細胞組成物、ならびに細胞組成物の製造方法及び細胞組成物を用いた治療方法を提供する。組成物は、薬学的に許容される担体中に、標的ペプチド抗原(複数可)に特異的な少なくとも約106個のCD8+T細胞を含む。様々な実施形態において、組成物は、主にCD8+T細胞であり、組成物中の少なくとも約20%のT細胞は、セントラルメモリー表現型またはエフェクターメモリー表現型を示し、自然選択を受けている天然T細胞レパートリーから、強固で持続的(durable)な養子療法を提供する。細胞組成物は、キメラ抗原受容体または組み換えTCRを発現するT細胞を含まず、したがって、様々な実施形態において、より消耗したT細胞の表現型、より少ない持続的応答及びより大きな毒性をしばしば生じるこれらの技術に対して代替案を提供する。
【0006】
様々な実施形態において、細胞組成物は、標的ペプチド抗原に特異的な、少なくとも約107個のCD8+T細胞、または標的ペプチド抗原に特異的な少なくとも約108個、少なくとも約109個、もしくは少なくとも約1010個のCD8+T細胞を含み、インビボにおける標的細胞の強固な破壊及び長い残留性を提供する。例えば、急性骨髄性白血病(AML)または骨髄異形成症候群の治療のために、細胞組成物は、WT1、PRAME、サバイビン及びサイクリンA1ペプチド抗原に特異的なT細胞を含むことができる。
【0007】
様々な実施形態において、組成物中のT細胞(及び/または標的抗原に特異的なT細胞)は、少なくとも約50%がセントラルもしくはエフェクターメモリーT細胞、いくつかの実施形態では少なくとも約70%がセントラルもしくはエフェクターメモリーT細胞、または少なくとも約80%がセントラルもしくはエフェクターメモリーT細胞である。いくつかの実施形態において、メモリー細胞は、約25:75~約75:25のセントラルメモリー細胞対エフェクターメモリー細胞である。細胞組成物は、約20%未満の末端分化メモリーT細胞(例えば、Temra細胞)及び約20%以下の未変性細胞を含む。いくつかの実施形態において、細胞組成物は、約5~約25%のTメモリー幹細胞(TSCM)を含む。この細胞表現型は、常磁性人工抗原提示細胞(aAPC)及び組み換えT細胞増殖因子カクテルを用いる濃縮及び拡大プロセスの使用によって、作成及び/または制御され得る。
【0008】
様々な実施形態において、細胞組成物は、少なくとも90%がCD8+T細胞(例えば、CD3+ CD8+細胞)である。例えば、単離細胞組成物は、約10%未満または約5%未満のCD4+T細胞を有することによって特徴付けることができる。CD8+T細胞をエキソビボで拡大すると、CD4+細胞は、CD8+細胞を過剰増殖し、かつ増殖シグナルと競合する傾向を有し、強固で持続的なインビボ応答ために必要ではない。
【0009】
様々な実施形態において、抗原特異的T細胞は、活性化されると、多機能性表現型を表示する。例えば、活性化すると、T細胞は、IL-2、IFN-γ産生、TNF-α産生及びCD107Aに対する細胞内染色の2つ以上が陽性である。様々な実施形態において、少なくとも50%または少なくとも70%の抗原特異的T細胞は、これらのマーカーのうちの少なくとも2つを表示する。様々な実施形態において、少なくとも50%または少なくとも70%の抗原特異的T細胞は、これらのマーカーのうちの少なくとも3つ、いくつかの実施形態では、これらのマーカーのうちの4つ全てを表示する。
【0010】
様々な実施形態の細胞組成物は、濃縮及拡大プロセスによって調製することができる。いくつかの実施形態では、標的抗原(複数可)(例えば、腫瘍関連抗原またはウイルス関連抗原)に特異的なCD8+細胞が濃縮される。この細胞集団は、主にリンパ球源の未変性細胞であっても、培養で急速に拡大して、本明細書に記載されている細胞組成物にすることができる。濃縮は、陽性選択された細胞集団に対して常磁性ビーズを使用して行うことができ、T細胞表面受容体の強力な磁気クラスタリングによって、未変性細胞を活性化するという追加の利点を有することができる。例えば、常磁性ビーズまたはナノ粒子は、CD28のアゴニスト(例えば、CD28の抗体アゴニスト)などの、同じ、または異なる粒子に対する共刺激シグナルと共にペプチド抗原を提示する単量体または多量体(例えば、二量体)HLAリガンドを含有することができる。いくつかの実施形態において、CD28+細胞も濃縮され、これは抗原特異的濃縮と同時であり得る。
【0011】
様々な実施形態において、標的ペプチド抗原は腫瘍または癌関連抗原であり、腫瘍由来抗原、腫瘍特異的抗原及び新生抗原が挙げられる。腫瘍関連抗原に特異的なT細胞は、しばしば非常にまれであり、多くの場合、健常者の末梢血中において検出不能である。これは、ウイルス特異的及び腫瘍抗原特異的T細胞の間でしばしば観察される相違である。
【0012】
いくつかの実施形態において、標的ペプチド抗原には、ウイルス、細菌、真菌または寄生虫病原体などの病原体に関連または由来する少なくとも1個が挙げられる。例えば、少なくとも1個のペプチド抗原は、HIV、肝炎(例えば、B、C、またはD)CMV、Epstein-Barrウイルス(EBV)、インフルエンザ、ヘルペスウイルス(例えば、HSV1もしくはHSV2、または水痘帯状疱疹)及びアデノウイルスに関連し得る。CMVは、例えば、臓器移植患者に見られる最も一般的なウイルス病原体であり、骨髄または末梢血幹細胞移植を受けた患者における罹患率及び死亡率の主要な原因である。ウイルスの活性化は、癌生物学に関与することが知られている。
【0013】
さらに他の実施形態において、細胞組成物は、腫瘍関連抗原に特異的なT細胞を含み、病原体関連T細胞はバイスタンダー細胞として提供される。具体的には、HLAペプチドと抗CD28の両方の選択に基づいてCD8+T細胞を濃縮することにより、特に、これらの細胞のいくらかの非特異的拡大を抗原特異的活性化なしで誘導できるT細胞増殖因子カクテルを使用する場合、バイスタンダー細胞は濃縮及び拡大される。これらの実施形態において、組成物の大部分は標的ペプチドに特異的なT細胞(例えば、5%~75%)であり、残りのT細胞(約0.25%~約25%)は、一般的な病原体に対する免疫系にいくらかの再構成を提供し、このことは、特に、移植後に有益である、またはウイルス病因を有する癌に有益である。
【0014】
いくつかの実施形態は、拡大の際にT細胞増殖因子を用い、このことは、T細胞の増殖及び/または分化に影響を与える。特に有用なサイトカインには、MIP-1β、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-15、IL-21、IFN-γが挙げられる。これら、または他の実施形態において、細胞は、MIP-1β、IL-1β及びIL-6から選択される1、2または3個のサイトカインの存在下での培養で拡大される。いくつかの実施形態において、サイトカインには、IL-10が更に含まれる。細胞は、約10~約21日間などの1~4週間にわたる培養で拡大され得る。
【0015】
他の態様において、本発明は細胞組成物の製造方法を提供し、本明細書に記載されているaAPCによる濃縮及び拡大が挙げられる。具体的には、リンパ球源から(例えば、健康なドナーから)CD4+細胞を枯渇した後、抗原特異的CD8+T細胞では、標的ペプチド抗原に特異的なT細胞、ならびに、いくつかの実施形態においてCD28+細胞が濃縮される。標的細胞は、細胞表面受容体の磁場誘導クラスタリングによりT細胞をエキソビボで活性化する常磁性粒子などの、ナノ粒子または微小粒子aAPCを使用して濃縮され得る。ラテックスまたはその他のポリマー系粒子が挙げられる他の材料を使用して、細胞表面受容体を(磁気誘導クラスタリングを用いることなく)クラスター化することもできる。次いで、濃縮されたT細胞は、その後、エキソビボで急速に拡大され、再構成されたT細胞増殖因子(例えば、MIP-1β、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-15、IL-21、IFN-γから選択される因子を含む)の使用を挙げることができる。いくつかの実施形態において、細胞は、MIP-1β、IL-1β及びIL-6、ならびに任意選択でIL-10から選択される1、2または3個のサイトカインの存在下での培養で拡大される。いくつかの実施形態において、増殖因子は、IL-2、IL-4、IL-6、INF-γ及びIL-1βから構成される、または、から実質的になる。
【0016】
他の態様において、本発明は養子細胞療法の方法を提供し、癌を有する患者及び/または、同種幹細胞移植を受けた患者を、リンパ球欠失療法(lympho-deleting therapy)、細胞減少療法、免疫調節療法(細胞療法の投与前)を伴って、または伴うことなく治療する方法が挙げられる。更に細胞療法は、治療後サイトカイン支持を伴って、または伴うことなく提供されてもよい。いくつかの実施形態において、患者は血液癌を有し、いくつかの実施形態では、同種幹細胞移植の後に再発した血液癌を有する。いくつかの実施形態において、患者は、急性骨髄性白血病(AML)または骨髄異形成症候群を有する。例えば、いくつかの実施形態において、細胞組成物は、WT1、PRAME、サバイビン及びサイクリンAペプチド抗原に特異的なT細胞を含む。しかし、他の実施形態において、がんには、癌腫、肉腫及びリンパ腫を含む固形腫瘍の様々な種類が挙げられる。例示的な標的ペプチド抗原は、本明細書に記載されている。
【0017】
いくつかの実施形態において、患者は、感染症を有する、または感染症の危険性がある。例えば、HSCTを受けた患者は、免疫無防備状態を考慮すると、特に感染症の危険性がある。治療または予防され得る感染症には、細菌、ウイルス、プリオン、真菌、寄生虫、蠕虫等によって引き起こされるものが挙げられる。そのような疾患には、AIDS、B/C型肝炎、CMV感染症、Epstein-Barr ウイルス(EBV)感染症、インフルエンザ、ヘルペスウイルス感染症(帯状疱疹を含む)及びアデノウイルス感染症が挙げられる。
【0018】
他の態様および実施形態は、以下の詳細な説明によって明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】ドナーリンパ球からエキソビボで濃縮及び拡大されたMART-1特異的T細胞が、多機能性表現型を示し、IL-2(増殖及びメモリー)、IFN-γ(他のT細胞の活性化、メモリー、MHCの上方制御)、TNF-α(炎症促進性(pro-inflammatory))及びCD107A(グランザイムの放出、細胞傷害活性)の細胞内染色が挙げられることを示す。大多数のT細胞は、少なくとも3つの機能的表現型を示す。
【
図2】常磁性aAPCを使用してドナーリンパ球からエキソビボで濃縮及び拡大されたMART-1及びAML特異的T細胞が、主に、セントラルメモリー(T
cm)及びエフェクターメモリー(T
em)表現型であることを示す。
【
図3】抗原特異的T細胞が、バッチにより濃縮及び拡大され得ることを示す。この図は、Prame
100RHAMM、WT1及びサバイビン抗原ペプチドに特異的なT細胞のバッチ濃縮及び拡大も示す。
【
図4】個別の刺激及び拡大を伴う組成物が、AML抗原特異的T細胞の一貫性したレベルを有することを示す。個別の刺激及び拡大のプロセスは、一貫して約15%の抗原特異的T細胞を生成する。
【
図5】同時の刺激/拡大プロセスが、個別の刺激/拡大に匹敵するAML特異的T細胞頻度を生成することを示す。バッチ刺激/拡大プロセスにより調製されたことが示される組成物は、約47%の抗原特異的T細胞を有する。
【
図6】生成されたT細胞が、AML腫瘍細胞(THP-1細胞系)の抗原特異的死滅を実証することを示す。AML特異的T細胞は、WT-1、PRAME及びサバイビンにおける5個のエピトープに向けられる。
【
図7】エキソビボ拡大に使用されたサイトカインカクテルが、得られた細胞の数及び表現型に影響を与えることを示す。再構成されたT細胞増殖因子(TF)には、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-6、IL-21、IFN-γ及びMIP1βが挙げられる。
【
図8】MART-1特異的濃縮及び拡大の7日後の、ウイルス特異的バイスタンダーT細胞の存在を示す。
【
図9】MART-1特異的濃縮及び拡大の14日後の、ウイルス特異的バイスタンダーT細胞の存在を示す。
【
図10】AML特異的濃縮及び拡大の14日後の、ウイルス特異的バイスタンダーT細胞の存在を示す。これらの細胞は、体部分がメモリー表現型であった。
【
図11】MART-1特異的濃縮及び拡大プロセスの最中のCMV特異的バイスタンダーT細胞の検出を示す。ウイルス特異的バイスタンダー細胞の率は、14日目まで一定のままであるが、MART-1特異的T細胞の数及び率は劇的に上昇している。
【
図12】バイスタンダー細胞の拡大を改善する、組み換えT細胞増殖因子カクテル(IL-1β、IL-2、IL-4、IL-6、IL-21、IFN-γ及びMIP1-β)を使用したMART-1特異的濃縮及び拡大の後の、14日目のウイルス特異的バイスタンダー細胞の検出を示す。
【
図13】組み換えT細胞増殖因子カクテル(IL-2、IL-4、IL-6、IFN-γ及びIL1-β)を使用する濃縮プロセス及び拡大プロセスにより生成されたMART-1特異的T細胞の特異度及び表現型を示す、2つのパネル(
図13A及び
図13B)を有する。MART-1特異的T細胞(
図13A、右パネル)は、培養の約35%を構成し、セントラルメモリー(約89%)及びエフェクターメモリー(約9%)表現型を示した。全培養物は、約66%のセントラルメモリー表現型及び約32%のエフェクターメモリー表現型を示した。
【発明を実施するための形態】
【0020】
様々な態様及び実施形態において、本発明は、養子免疫療法に適した単離細胞組成物、ならびに細胞組成物の製造方法及び細胞組成物を用いた治療方法を提供する。組成物は、薬学的に許容される担体中に、標的ペプチド抗原(複数可)に特異的な少なくとも約106個のCD8+T細胞を含む。様々な実施形態において、組成物中の少なくとも約20%のT細胞は、セントラルメモリー表現型またはエフェクターメモリー表現型を示し、強固で持続的な養子療法を提供する。細胞組成物は、キメラ抗原受容体または組み換えTCRを発現するT細胞を含まず、したがって、様々な実施形態において、より消耗したT細胞の表現型及びより少ない持続的応答をしばしば生じるこれらの技術に対して代替案を提供する。
【0021】
本明細書で使用するとき、用語「標的ペプチド抗原(複数可)」または「標的抗原」は、所望のCD8+細胞集団を、例えば、人工抗原提示細胞(aAPC)またはプロフェッショナル抗原提示細胞(pAPC)プラットフォーム(例えば、樹状細胞)に関連して、濃縮及び/または拡大するためにエキソビボで用いられたペプチド抗原を指す。aAPCまたはpAPCは、ドナーまたは患者のリンパ球からのCTLを活性化及び拡大するために用いられる。いくつかの実施形態において、標的ペプチド抗原は、特異的CD8+T細胞のエキソビボでの濃縮及び拡大のために、aAPCにロードされたペプチドエピトープである。このように、用語「標的ペプチド抗原に特異的」とは、T細胞が、標的抗原を経験した抗原であることを意味する。
【0022】
様々な実施形態において、細胞組成物は、標的ペプチド抗原に特異的な少なくとも約107個のCD8+T細胞、または標的ペプチド抗原に特異的な少なくとも約108個、少なくとも約109個、もしくは少なくとも約1010個のCD8+T細胞を含み、標的細胞の強固な破壊を提供する。いくつかの実施形態において、細胞組成物は、標的抗原に特異的な1×107~1×109個のCD8+T細胞、またはいくつかの実施形態では、標的抗原に特異的な5×107~5×108個のCD8+T細胞を含有する。例えば、組成物は、50~200mlの体積で1mlあたり約5×105~約5×106個の細胞を含むことができる。特定の実施形態において、組成物の体積は≦100ml(例えば、50~100ml)である。様々な実施形態における組成物の細胞は、少なくとも70%が生存可能であり、滅菌媒体中に提供され、これは凍結保護培地(例えば、10%のDMSO)であってもよい。
【0023】
主にCD8+細胞傷害性リンパ球(CTL)である組成物の細胞は、また、実質的にセントラルメモリー表現型またはエフェクターメモリー表現型のものである。CTLには一般に以下の表現型集団が挙げられ、未変性Tメモリー幹細胞(Tscm)、セントラルメモリー、エフェクターメモリー細胞及び末端分化メモリー細胞である。本発明の実施形態によると、標的抗原に特異的なT細胞は、実質的にセントラルメモリー及びエフェクターメモリー表現型から構成される。いくつかの実施形態において、標的抗原に特異的なT細胞は、更にTメモリー幹細胞(TSCM)を含む。それによって細胞組成物は、持続的な応答を提供し、少なくとも約1か月間、または少なくとも約3か月間、または少なくとも約6か月間、または少なくとも約12か月間、または少なくとも約18か月間、またはいくつかの実施形態において少なくとも約2年間にわたる抗原特異的T細胞のインビボ残留性が挙げられる。
【0024】
未変性T細胞は、骨髄中で分化し、胸腺において中枢性選択の正の工程及び負の工程を正常に受けている。未変性T細胞は成熟していると考慮され、活性化またはメモリーT細胞とは異なり、その同族抗原に遭遇していない。未変性T細胞は、L-セレクチン(CD62L)の表面発現及び活性化マーカーの不在によって特徴付けることができる。未変性状態において、T細胞は、一般に、静止状態であり、非分裂性である。本開示によると、未変性T細胞は、CD62L+及びCD45RA+と定義される。
【0025】
メモリーT細胞には、Tメモリー幹細胞(Tscm)、セントラルメモリー及びエフェクターメモリーT細胞が挙げられる。メモリーT細胞は、これらの同族抗原に予め応答している。同族抗原を有する第2の遭遇では、メモリーT細胞は、より速く、より強力な免疫応答の開始を再現することができる。メモリーT細胞は、少なくともエフェクターメモリーのサブタイプ及びセントラルメモリーのサブタイプを含む。メモリーT細胞のサブタイプは、長寿命であり、これらの同族抗原に再暴露されると、多数のエフェクターT細胞を迅速に拡大することができる。
【0026】
Tメモリー幹細胞(Tscm)は、本明細書においてCD45RA+と定義され、CXCR3+、CD95+、CD11a+及びCD58+から選択される少なくとも2つのマーカー(または、いくつかの実施形態では少なくとも3つ、もしくは4つ全てのマーカー)を有すると定義される。このメモリー亜集団は、自己再生する幹細胞様能力、ならびにメモリー及びエフェクターT細胞の亜集団を再構成する多分化能力を有する。Tscm細胞は、循環Tリンパ球の小さな画分(例えば、>5%)を表すことができ、急速に増殖し、抗原への再暴露に応答して炎症性サイトカインを放出する能力を有することができる。したがって、Tscm細胞は、メモリーT細胞亜集団のサブセットである。Tscm細胞表現型は、本明細書に開示されているように、常磁性人工抗原提示細胞(aAPC)及び組み換えT細胞増殖因子カクテルを用いる濃縮及び拡大工程の使用によって、作成及び/または制御され得る。
【0027】
本開示によると、セントラルメモリーT細胞(Tcm細胞)は、CD62L+及びCD45RA-と定義される。このメモリー亜集団は、一般的にリンパ節及び末梢循環中に見出される。エフェクターメモリーT細胞(Tem細胞)はCD62L-及びCD45RA-と定義される。これらのメモリーT細胞は、リンパ節ホーミング受容体を欠いており、したがって末梢循環及び組織中に見出される。TEMRAは、CD45RAを再発現する末端分化エフェクターメモリー細胞の略語である。これらの細胞は分裂する能力を有さず、CD62L-及びCD45RA+である。
【0028】
Tcm細胞は、自己再生する能力を表示し、本発明の実施形態によると、長寿効果を得るために重要である。Tem細胞は、また、いくらかの自己再生能力を有し、細胞傷害性機能に必須の遺伝子を強力に発現する。Temra細胞は、強固な細胞傷害性機能も提供するが、自己再生能力は表示しない。
【0029】
様々な実施形態の組成物は、Tscm、Tcm及びTem細胞から実質的に構成されるCTLを含み、効果の持続時間と悪性腫瘍または他の標的細胞の強力な破壊とのバランスを保つ。
【0030】
様々な実施形態において、組成物中のT細胞は、少なくとも約30%がセントラルメモリー細胞及びエフェクターメモリー細胞、または少なくとも約40%がセントラルメモリー細胞もしくはエフェクターメモリー細胞、または少なくとも約50%がセントラルメモリー細胞もしくはエフェクターメモリーT細胞、またはいくつかの実施形態では少なくとも約70%がセントラルメモリー細胞もしくはエフェクターメモリーT細胞、または少なくとも約80%がセントラルメモリー細胞もしくはエフェクターメモリーT細胞である。いくつかの実施形態において、メモリー細胞は、約10:90~約90:10のセントラルメモリー細胞対エフェクターメモリー細胞である。いくつかの実施形態において、これらのT細胞は、約25:75~約75:25のセントラルメモリー細胞対エフェクターメモリー細胞である。いくつかの実施形態において、メモリーT細胞は、約40:60~約60:40のセントラルメモリー細胞対エフェクターメモリーT細胞である。細胞組成物は、約20%未満の末端分化メモリーT細胞(例えば、Temra細胞)、または約10%未満、約5%未満、もしくは、いくつかの実施形態では約4%未満の末端分化メモリーT細胞を含む。様々な実施形態において、CD8+T細胞は、約20%以下の未変性細胞、あるいはいくつかの実施形態では、約15%以下の未変性細胞、または約10%以下の未変性細胞、または約5%未満の未変性細胞、または約4%未満の未変性細胞、または約3%未満の未変性細胞、または約2%以下の未変性細胞、または約1.5%以下もしくは約1%以下の未変性細胞を含有する。様々な実施形態において、CD8+T細胞は、約5%~約25%のTscm細胞、またはいくつかの実施形態では、約5%~約20%のTscm細胞もしくは約5%~約15%のTscm細胞を含有する。
【0031】
様々な実施形態において、標的抗原に特異的なT細胞は、少なくとも約30%がセントラルメモリー細胞及びエフェクターメモリー細胞、または少なくとも約40%がセントラルメモリー細胞もしくはエフェクターメモリー細胞、または少なくとも約50%がセントラルメモリー細胞もしくはエフェクターメモリーT細胞、またはいくつかの実施形態では少なくとも約70%がセントラルメモリー細胞もしくはエフェクターメモリーT細胞、または少なくとも約80%がセントラルメモリー細胞もしくはエフェクターメモリーT細胞である。いくつかの実施形態において、これらのメモリー細胞は、約10:90~約90:10のセントラルメモリー細胞対エフェクターメモリー細胞である。いくつかの実施形態において、これらのT細胞は、約25:75~約75:25のセントラルメモリー細胞対エフェクターのメモリー細胞である。いくつかの実施形態において、メモリーT細胞は、約40:60~約60:40のセントラル対エフェクターメモリーT細胞である。標的抗原(複数可)に特異的なT細胞は、約20%未満が末端分化メモリーT細胞(例えば、TEMRA細胞)、または約10%未満、約5%未満、もしくは約4%未満が末端分化メモリーT細胞である。様々な実施形態において、標的抗原に特異的なT細胞は、約20%以下の未変性細胞、あるいはいくつかの実施形態では、約15%未満の未変性細胞、または約10%未満の未変性細胞、または約5%未満の未変性細胞、または約2%、1.5%もしくは1%以下の未変性細胞を含有する。様々な実施形態において、標的抗原に特異的なT細胞は、約5%~約25%のTscm細胞、またはいくつかの実施形態では、約5%~約20%のTscm細胞、もしくは約5%~約15%のTscm細胞を含有する。この表現型は、常磁性人工抗原提示細胞(aAPC)を用いる濃縮及び拡大工程によって作成され得る。
【0032】
様々な実施形態において、細胞組成物は、少なくとも90%がT細胞、または少なくとも95%がT細胞、または少なくとも98%もしくは少なくとも99%がT細胞である。本開示の目的のため、T細胞はCD3+細胞と特徴付けられる。T細胞は、一般にCD8+である。例えば、単離細胞組成物は、約10%未満もしくは約5%未満のCD4+T細胞、またはいくつかの実施形態において、約2%未満、約1.5%未満もしくは約1%未満のCD4+T細胞を有すると特徴付けることができる。CD8+T細胞をエキソビボで拡大すると、CD4+細胞は、CD8+細胞を過剰増殖し、かつ増殖シグナルと競合する傾向を有し、強固で持続的応答ために必要ではない。
【0033】
多機能性CD4+及びCD8+T細胞の存在は、ペプチド新性抗原を用いる癌ワクチン療法への応答と相関することが記載されている。Ott PA,et al.,An immunogenic personal neoantigen vaccine for patients with melanoma,Nature 547(7662):217-221(2017)。CD4+及びCD8+T細胞は、腫瘍細胞の破壊を媒介するために重要であることが更に記載されている。Science 344,641-645(2014);Sahin U,et al.,Personalized RNA mutanome vaccines mobilize poly-specific therapeutic immunity against cancer,Nature 547(7662):222-226(2017)を参照すること。本開示に関して、養子細胞組成物は、強固で持続的な応答のために相当数の抗体特異的CD8+T細胞を提供することのみを必要とし、特に、抗体特異的CD8+T細胞は十分な数で提供され、実質的にセントラルメモリー表現型及びエフェクターメモリー表現型であることが考えられる。様々な実施形態において、抗原特異的CD8+T細胞は、Tメモリー幹細胞を更に含む。
【0034】
様々な実施形態において、細胞組成物は実質的にCD28+である。
【0035】
様々な実施形態において、抗原特異的T細胞は、活性化されると、多機能性表現型を表示する。例えば、活性化すると、T細胞は、増殖及びメモリーのマーカーであるIL-2;他のT細胞を活性化し、メモリー及びMHC上方制御を誘導するIFN-γ産生;炎症促進性マーカーであるTNF-αの産生;ならびにグランザイム放出及び細胞傷害活性のマーカーであるCD107Aの細胞内染色のうちの2つ以上について陽性である。様々な実施形態において、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも80%の抗原特異的T細胞は、これらのマーカーのうちの少なくとも3つを表示する。様々な実施形態において、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも80%の抗原特異的T細胞は、これらのマーカーの4つ全てを表示する。いくつかの実施形態において、多機能性は標的死滅アッセイを使用して評価または定量化され、標的死滅アッセイは、MHCとの複合体においてペプチド抗原を提示する標的細胞を溶解する、CD8+細胞傷害性T細胞の能力を評価する。
【0036】
様々な実施形態による細胞組成物は、標的抗原(複数可)(例えば、腫瘍関連抗原またはウイルス関連抗原)に特異的なCD8+細胞の濃縮によって調製され得る。リンパ球源中の主に未変性細胞であっても、この細胞集団を培養で急速に拡大して、本明細書に記載されている細胞組成物にすることができる。CD4+細胞は、CD4+細胞枯渇マイクロビーズを用いてリンパ球から(抗原特異的濃縮の前または後に)枯渇させることができる。CD8+細胞の抗原特異濃縮は、陽性選択された細胞集団に対して常磁性ビーズを使用して行うことができ、T細胞表面受容体の強力な磁気クラスタリングによって、未変性細胞を活性化するという追加の利点を有することができる。例えば、常磁性ビーズまたはナノ粒子は、いくつかの実施形態において、CD28のアゴニスト(例えば、CD28の抗体アゴニスト)などの、共刺激シグナルと共にペプチド抗原を提示する単量体または多量体(例えば、二量体)HLAリガンドを含有することができる。これらの実施形態による例示的な方法は、WO2016/044530及びPCT/US2017/22663に記載されており、これらはその全体が参照として本明細書に組み込まれる。
【0037】
いくつかの実施形態において、CD28+細胞も濃縮され、これは抗原特異的濃縮と同時であり得る。CD28はT細胞において発現し、T細胞活性化及び生存のために必要な共刺激シグナルである。CD28は、未変性T細胞に構成的発現する唯一のB7受容体である。CD28による共刺激のない、未変性T細胞のTCRとMHC抗原複合体との関連は、アレルギー性のT細胞をもたらし得る。いくつかの実施形態において、CD28+細胞は濃縮されないが、CD28アゴニストは、濃縮工程中に可溶性形態で添加される、または非常磁性ビーズに抱合されて添加される。いくつかの実施形態において、CD28(抱合または非抱合形態)は、拡大期の細胞を活性化するため、抗原特異的濃縮の後に細胞に添加される。
【0038】
様々な実施形態において、標的抗原に(例えば、aAPCまたはpAPCにより表示されたペプチドによって)特異的なT細胞は、1~約100個の標的抗原、または1~約75個の標的抗原、または1~50個の標的抗原約、または1~約25の標的抗原、または1~約20個の標的抗原、または1~約15個の標的抗原、または1~10個の標的抗原、または1~5個の標的抗原に特異的である。様々な実施形態において、少なくとも3個、または少なくとも4個、または少なくとも5個の標的抗原が存在する。別個の標的抗原は、いくつかの実施形態において重複ペプチドエピトープを含むことができる。これらのペプチド抗原に特異的なT細胞をバッチで濃縮及び拡大することができ、細胞組成物の急速な並行産生を可能にする。いくつかの実施形態において、組成物は、5~15個または5~10個のペプチド抗原に特異的なT細胞を含有する。組成物中の標的ペプチド抗原に対するT細胞特異度は、当該分野に周知のMHC多量体染色(例えば、二量体または三量体染色)によって定義される。
【0039】
例えば、それぞれのaAPCが異なる別個の標的抗原を提示するナノaAPCのカクテルを使用して、多数の抗原に対してT細胞を同時に濃縮することができる。例えば、2~10個の抗原に特異的なT細胞を、リンパ球源から同時に濃縮することができる。この実施形態において、それぞれ異なるMHCペプチドを持つ、複数の異なるナノaAPCバッチは組み合わされ、目的の抗原に対する各T細胞を同時に濃縮することに使用される。得られたT細胞プールは、これらの抗原のそれぞれに対して活性化され、培養で一緒に拡大される。これらの抗原は、例えば、複数の抗原が単一の腫瘍または悪性細胞に存在する、単一治療介入に関連し得る。
【0040】
標的ペプチド抗原は、一般に、HLA-A、HLA-B、またはHLA-C分子複合体、いくつかの実施形態ではHLA-A2分子複合体による提示に適している。
【0041】
様々な実施形態において、標的ペプチド抗原は腫瘍または癌関連抗原であり、腫瘍由来抗原または腫瘍特異的抗原が挙げられる。腫瘍関連抗原に特異的なT細胞は、しばしば非常にまれであり、多くの場合、健常者の末梢血中において検出不能である。更に、細胞は、特にドナーTリンパ球を使用した場合、しばしば未変性表現型のものである。
Quintarelli et al.,Cytotoxic T lymphocytes directed to the preferentially expressed antigens of melanoma(PRAME)target chronic myeloid leukemia.Blood 2008;112:1876-1885を参照すること。これは、ウイルス特異的及び腫瘍抗原特異的T細胞の間でしばしば観察される相違である。
【0042】
「腫瘍関連抗原」または「癌特異的抗原」には、由来する腫瘍または悪性細胞によって排他的に発現される特有の腫瘍または癌抗原、多くの腫瘍で発現するが正常な成人組織では発現しない共通腫瘍抗原(癌胎児性抗原)及び腫瘍が生じる正常組織によっても発現される組織特異的抗原が挙げられる。腫瘍関連抗原は、例えば、胚性抗原、異常な翻訳後修飾を有する抗原、分化抗原、変異癌遺伝子もしくは腫瘍抑制因子の産物、融合タンパク質、またはオンコウイルスタンパク質であり得る。
【0043】
いくつかの実施形態において、標的ペプチド抗原には、白血病、リンパ腫、または骨髄腫などの血液癌に関連または由来する1個以上が挙げられる。例えば、血液悪性腫瘍は、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、小児急性白血病、非ホジキンリンパ腫、急性リンパ性白血病、慢性リンパ球性白血病、骨髄異形成症候群、悪性皮膚T細胞、菌状息肉症、非MF皮膚T細胞リンパ腫、リンパ腫様丘疹症及びT細胞リッチ皮膚リンパ過形成であり得る。他の実施形態において、標的ペプチド抗原には、黒色腫、結腸癌、十二指腸癌、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、腺管癌、肝癌、膵癌、腎癌、子宮内膜癌、精巣癌、胃癌、口腔粘膜異形成、ポリポーシス、頭頸部癌、浸潤性口腔癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、中皮腫、膀胱移行及び扁平上皮癌、脳癌、神経芽細胞腫、ならびに経膠腫を含む固形腫瘍に関連または由来する1個以上が挙げられる。
【0044】
様々な腫瘍関連抗原が当該技術に知られている。胎児性及び胚性抗原には、癌胎児抗原及びアルファ-フェトプロテイン(通常は発育中の胚で高度に発現するが、肝臓及び結腸の腫瘍においてそれぞれ頻繁に高度に発現する)、MAGE-1及びMAGE-3(黒色腫、乳癌及び神経膠腫に発現)、胎盤アルカリホスファターゼシアリルルイスX(腺癌に発現)、CA-125及びCA-19(胃腸管、肝臓及び婦人科の腫瘍に発現)、TAG-72(結腸直腸腫瘍に発現)、上皮糖タンパク質2(多くの癌腫に発現)、膵癌胎児性抗原、5T4(胃癌に発現)、アルファフェトプロテイン受容体(複数の腫瘍型、特に乳腺腫瘍に発現)、ならびにM2A(生殖細胞新生物に発現)が挙げられる。
【0045】
腫瘍関連分化抗原には、チロシナーゼ(黒色腫に発現)及び特定の表面免疫グロブリン(リンパ腫に発現)が挙げられる。
【0046】
変異癌遺伝子または腫瘍抑制遺伝子産物には、両方とも多くの腫瘍型で発現するRas及びp53、Her-2/neu(乳癌及び婦人科癌に発現)、EGF-R、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、網膜芽細胞腫遺伝子産物、myc(肺癌に関連)、ras、p53、乳房腫瘍に関連する非変異体、MAGE-1及びMAGE-3(黒色腫、肺癌及び他のがんに関連)が挙げられる。融合タンパク質にはBCR-ABLが挙げられ、これは慢性骨髄性白血病において発現する。オンコウイルスタンパク質には、HPVタイプ16、E6及びE7が挙げられ、子宮頸癌に見出される。
【0047】
組織特異的抗原には、メラノトランスフェリン及びMUC1(膵癌及び乳癌に発現);CD10(以前に共通急性リンパ芽球性白血病抗原もしくはCALLAとしても知られている)または表面免疫グロブリン(B細胞白血病及びリンパ腫に発現);IL-2受容体のα鎖、T細胞受容体、CD45R、CD4+/CD8+(T細胞白血病及びリンパ腫に発現);前立腺特異的抗原及び前立腺酸性ホスファターゼ(前立腺癌に発現);GP-100、MelanA/Mart-1、チロシナーゼ、gp75/brown、BAGE及びS-100(黒色腫に発現);サイトケラチン(様々な癌腫に発現);ならびにCD19、CD20及びCD37(リンパ腫に発現)が挙げられる。
【0048】
腫瘍関連抗原には、ノイラミン酸含有スフィンゴ糖脂質などの改変糖脂質及び糖タンパク質抗原(例えば、GM2及びGD2、黒色腫及びいくつかの脳腫瘍に発現);癌腫に異常に発現し得る血液型抗原、特にT及びシアリル化Tnの抗原;ならびにCA-125及びCA-19-9(卵巣癌に発現)または不十分にグリコシル化されたMUC-1(乳癌及び膵癌に発現)などのムチンも挙げられる。
【0049】
例えば、いくつかの実施形態において、1個以上の標的抗原は膀胱癌に関連し、例えば、NY-ESO-1、MAGE-A10及びMUC-1抗原のうちの1個以上である。いくつかの実施形態において、1個以上の標的抗原は脳癌に関連し、NY-ESO-1、サバイビン及びCMV抗原のうちの1個以上を挙げることができる。いくつかの実施形態において、1個以上の標的抗原は乳癌に関連し、MUC-1、サバイビン、WT-1、HER-2及びCEA抗原のうちの1個以上を挙げることができる。いくつかの実施形態において、1個以上の標的抗原は子宮頸癌に関連し、HPV抗原を挙げることができる。いくつかの実施形態において、1個以上の標的抗原は結腸直腸癌に関連し、NY-ESO-1、サバイビン、WT-1、MUC-1及びCEA抗原のうちの1個以上を挙げることができる。いくつかの実施形態において、1個以上の標的抗原は食道癌に関連し、NY-ESO-1抗原を挙げることができる。いくつかの実施形態において、1個以上の標的抗原は頭頸部癌に関連し、HPV抗原を挙げることができる。いくつかの実施形態において、標的抗原は腎癌または肝癌に関連し、NY-ESO-1抗原を挙げることができる。いくつかの実施形態において、標的抗原は肺癌に関連し、NY-ESO-1、サバイビン、WT-1、MAGE-A10及びMUC-1抗原のうちの1個以上を挙げることができる。いくつかの実施形態において、1個以上の標的抗原は黒色腫に関連し、NY-ESO-1、サバイビン、MAGE-A10、MART-1及びGP-100のうちの1個以上を挙げることができる。いくつかの実施形態において、1個以上のペプチド抗原は卵巣癌に関連し、NY-ESO-1、WT-1及びメソテリン抗原のうちの1個以上を挙げることができる。いくつかの実施形態において、1個以上の標的抗原は前立腺癌に関連し、サバイビン、hTERT、PSA、PAP及びPSMA抗原のうちの1個以上を挙げることができる。いくつかの実施形態において、標的抗原は肉腫に関連し、NY-ESO-1抗原を挙げることができる。いくつかの実施形態において、1個以上の標的抗原はリンパ腫に関連し、EBV抗原を挙げることができる。いくつかの実施形態において、1個以上の標的抗原は多発性骨髄腫に関連し、NY-ESO-1、WT-1及びSOX2抗原のうちの1個以上を挙げることができる。
【0050】
いくつかの実施形態において、1個以上の標的抗原は、急性骨髄性白血病または骨髄異形成症候群に関連し、サバイビン、WT-1、PRAME、RHAMM、PR3及びサイクリンA1抗原のうちの1個以上(1、2、3、4または5個を含む)を挙げることができる。いくつかの実施形態において、標的抗原には、下記の表1の標的抗原の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、または全てが挙げられる。
【表1】
【0051】
いくつかの実施形態において、1個以上の標的ペプチド抗原は新生新抗原である。例えば、いくつかの実施形態では、患者に特異的な新生抗原が同定され、aAPCにロードするために合成される。いくつかの実施形態において、3~10個の新生抗原が、患者の悪性腫瘍の遺伝学的解析(例えば、悪性細胞の核酸の配列決定により)、続いて予測バイオインフォマティクスによって同定される。いくつかの実施形態において、抗原は天然の非変異癌抗原であり、多くのものが知られている。
【0052】
様々な実施形態において、少なくとも1個の標的ペプチド抗原は、低頻度前駆T細胞により認識される。これらの実施形態によると、本発明は、これらの細胞を養子療法のために急速に活性化及び拡大することができる。
【0053】
いくつかの実施形態において、標的ペプチド抗原には、ウイルス、細菌、真菌または寄生虫病原体などの病原体に関連または由来する少なくとも1個が挙げられる。例えば、少なくとも1個のペプチド抗原は、HIV、肝炎(例えば、A、B、CまたはD)CMV、Epstein-Barrウイルス(EBV)、インフルエンザ、ヘルペスウイルス(例えば、HSV1もしくはHSV2、または水痘帯状疱疹)及びアデノウイルスに関連し得る。CMVは、例えば、臓器移植患者に見られる最も一般的なウイルス病原体であり、骨髄または末梢血幹細胞移植を受けた患者における罹患率及び死亡率の主要な原因である。このことは、これらの患者の免疫不全状態が原因であり、これらが血清陽性患者における潜伏ウイルスの再活性化及び血清陰性個人における日和見感染症を許容する。これらの実施形態において、患者は、病原体の抗原に特異的なT細胞を含む養子免疫療法を受けることができる。この方法は、患者由来または移植処置の開始前に適切なドナー由来のウイルス特異的CTLの生成を伴うことができる。
【0054】
いくつかの実施形態において、少なくとも1個の標的抗原は病原体関連抗原であり、原生動物、細菌、真菌(単細胞及び多細胞の両方)、ウイルス、プリオン、細胞内寄生虫、蠕虫及び他の感染因子に関連する抗原が挙げられる。
【0055】
細菌抗原には、Actinomycetaceae、Bacillaceae、Bartonellaceae、Bordetellae、Captophagaceae、Corynebacteriaceae、Enterobacteriaceae、Legionellaceae、Micrococcaceae、Mycobacteriaceae、Nocardiaceae、Pasteurellaceae、Pseudomonadaceae、Spirochaetaceae、Vibrionaceaeの科の生物、ならびにAcinetobacter、Brucella、Campylobacter、Erysipelothrix、Ewingella、Francisella、Gardnerella、Helicobacter、Levinea、Listeria、Streptobacillus及びTropherymaの属の生物などの、グラム陽性球菌、グラム陰性桿菌、グラム陰性細菌、嫌気性菌の抗原が挙げられる。
【0056】
原動物感染性因子の抗原には、マラリアプラスモジウム(malarial plasmodia)、Leishmania種、Trypanosoma種及びSchistosoma種の抗原が挙げられる。
【0057】
真菌抗原には、Aspergillus、Blastomyces、Candida、Coccidioides、Cryptococcus、Histoplasma、Paracoccicioides、Sporothrix、Mucorales目の生物、黒色真菌症及び菌腫を誘発する生物、ならびにTrichophyton、Microsporum、Epidermophyton及びMalassezia属の生物が挙げられる。
【0058】
ウイルスペプチド抗原には、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、パピローマウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ポックスウイルス、HIV、インフルエンザウイルス、EBV、肝炎及びCMVが挙げられるが、これらに限定されない。特に有用なウイルスペプチド抗原には、HIVタンパク質、例えば、HIV gagタンパク質(膜アンカー(MA)タンパク質、コアカプシド(CA)タンパク質及びヌクレオカプシド(NC)タンパク質が含まれるが、これらに限定されない)、HIVポリメラーゼ、インフルエンザウイルスマトリックス(M1)タンパク質及びインフルエンザウイルスヌクレオカプシド(NP)タンパク質、B型肝炎表面抗原(HBsAg)、B型肝炎コアタンパク質(HBcAg)、E型肝炎タンパク質(HBeAg)、B型肝炎DNAポリメラーゼ、C型肝炎抗原等が挙げられる。
【0059】
いくつかの実施形態において、標的ペプチド抗原には、抗腫瘍応答を提供し、同時に、HSCT後の回復を複雑にする一般的な病原体に対する保護を提供する、1個以上の腫瘍関連抗原及び1個以上のウイルス関連抗原(例えば、CMV、EBV、インフルエンザ、またはアデノウイルス)が挙げられる。
【0060】
HSCTを受けた患者は、免疫無防備状態を考慮すると、特に感染症の危険性がある。これらの患者の免疫不全状態は、血清陽性患者における潜伏ウイルスの再活性化または血清陰性個人における日和見感染症を許容する。例えば、移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)は、有意な割合の移植患者に発生し、Epstein-Barrウイルス(EBV)感染によってもたらされる。EBV感染は、米国の成人人口のおよそ90%に存在すると考えられる。能動的なウイルス複製及び感染は、免疫系によってチェックを受け続けているが、CMVの場合、移植療法により免疫無防備状態になった個人は、制御性T細胞集団を失い、ウイルスの再活性化を許容する。このことは、移植プロトコルに対して重大な障害となる。EBVは、様々な血液学的及び非血液学的癌の腫瘍促進に関与することもある。
【0061】
さらに他の実施形態において、細胞組成物は、腫瘍関連抗原に特異的なT細胞を含み、病原体関連T細胞はバイスタンダー細胞として提供される。具体的には、HLAペプチド複合体と抗CD28バイスタンダー細胞の両方の選択に基づいてCD8+T細胞を濃縮することにより、特に、これらの細胞のいくらかの非特異的拡大を抗原特異的活性化なしで誘導できるT細胞増殖因子カクテルを使用する場合、バイスタンダー細胞は濃縮及び拡大される。これらの実施形態において、組成物の大部分は標的ペプチドに特異的なT細胞(例えば、5%~75%または10%~50%)であり、残りのT細胞は、一般的な病原体に対する免疫系にいくらかの再構成を提供し、このことは、特に、移植後に有益である。例えば、組成物は、CMV、EBV、インフルエンザ及びアデノウイルスに特異的なT細胞を含むことができる。それぞれの場合に、病原体特異的T細胞は、組成物に0.1%~約4%で存在してもよい。
【0062】
様々な実施形態において、本発明は、抗原特異的CD8+T細胞の濃縮及び拡大により調製される組成物を伴う。前駆T細胞は、患者から、または適切なHLA適合ドナーから得ることができる。T細胞源は、新たな試料または凍結試料のいずれかであり得る。前駆T細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄、リンパ節組織、脾臓組織、バフィーコート画分及び腫瘍が挙げられるWBCを含む多数の源から得ることができる。いくつかの実施形態において、前駆T細胞は、当業者に既知の任意の数の技術を使用して対象から採取した血液のユニットから得られる。例えば、個人の循環血の前駆T細胞は、アフェレーシスまたは白血球搬出法によって得ることができる。アフェレーシス産物は、典型的には、T細胞及び前駆T細胞を含むリンパ球、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球、ならびに血小板を含有する。白血球搬出法は、白血球が血液試料から分離される検査手法である。
【0063】
アフェレーシスによって採取された細胞を洗浄して、血漿画分を除去し、細胞をその後の処理ステップに適切な緩衝液または培地中に置くことができる。洗浄ステップは、半自動「フロースルー」遠心分離機を使用するなど、当業者に既知の方法によって達成することができる。洗浄した後、細胞は、例えば、Ca無含有、Mg無含有PBSなどの様々な生体適合性緩衝液に再懸濁され得る。あるいは、アフェレーシス試料の望ましくない成分が除去され、細胞が培養培地に直接再懸濁され得る。
【0064】
望ましい場合、前駆T細胞は、赤血球を溶解し、例えば、PERCOLL(商標)勾配による遠心分離により単球を枯渇させることによって、末梢血リンパ球から単離され得る。
【0065】
特定の実施形態において、白血球は、白血球搬出法によって採取され、続いて、例えば、CD4+細胞の試料を枯渇させることにより及び/またはCD8+細胞を能動的濃縮することにより、CD8+T細胞を濃縮することができる。いくつかの実施形態では、NK細胞などの他の種類の細胞が枯渇される。次いで、CD8濃縮細胞を、抗原特異的T細胞について更に濃縮することができる。
【0066】
様々な実施形態では、免疫細胞(例えば、CD8+T細胞)を含む試料を、磁気特性を有する人工抗原提示細胞(aAPC)と接触させる。常磁性材料は、磁場に対して小さな正の磁化率を有する。これらの材料は磁場によって吸引され、外部磁界が取り除かれたとき、材料は磁気特性を保持しない。例示的な常磁性材料には、限定されることなく、マグネシウム、モリブデン、リチウム、タンタル及び酸化鉄が挙げられる。磁気濃縮に適した常磁性ビーズは市販されている(DYNABEAD(商標)、MACS MICROBEADS(商標)、Miltenyi Biotec)。いくつかの実施形態において、aAPC粒子は、鉄デキストランビーズ(例えば、デキストラン被覆酸化鉄ビーズ)である。
【0067】
抗原提示複合体は、抗原結合裂溝(antigen binding cleft)を含み、一般にMHCクラスIであり、連結または繋留されて、二量体または多量体MHCを提供することができる。いくつかの実施形態において、MHCは単量体であるが、ナノ粒子との密接な関連性が、結合活性及び活性化のために十分である。いくつかの実施形態において、MHCは二量体である。二量体MHCクラスIリガンドは、免疫グロブリン重鎖配列への融合によって構築され、次いで、1つ以上のジスルフィド結合を介して(関連する軽鎖を伴って、また伴うことなく)関連付けられる。MHC多量体は、ペプチドもしくは化学リンカーを介する直接的繋留によって作成され得る、またはビオチン部分を介するストレプトアビジンとの関連付けを介して多量体となり得る。いくつかの実施形態において、抗原提示複合体は、免疫グロブリン配列との融合体を含むMHCクラスI複合体である。
【0068】
免疫グロブリン配列を有するMHCクラスI分子複合体は米国特許第6,268,411号に記載されており、その全体が参照として本明細書に組み込まれる。これらのMHCクラスI分子複合体は、免疫グロブリン重鎖の末端に立体構造的に完全な様式で形成され得る。抗原ペプチドが結合しているMHCクラスI分子複合体を、抗原特異的リンパ球受容体(例えば、T細胞受容体)に安定して結合することができる。様々な実施形態において、免疫グロブリン重鎖配列は、完全長ではないが、Igのヒンジ領域を含み、CH1、CH2及び/またはCH3ドメインの1つ以上を含む。Igの配列は、可変領域を含んでも含まなくてもよいが、可変領域配列が存在する場合、可変領域は、完全または部分的であってもよい。複合体は、免疫グロブリン軽鎖を更に含むことができる。その全体が参照として本明細書に組み込まれる、WO2016/105542に記載されているように、可変鎖配列を欠いている(及び任意の軽鎖を欠いている)MHCクラスIリガンド(例えば、HLA-Ig)を粒子への部位特異的抱合に用いることができる。
【0069】
例示的なMHCクラスI分子複合体は、少なくとも2つの融合タンパク質を含む。第1の融合タンパク質は、第1のMHCクラスIα鎖及び第1の免疫グロブリン重鎖(または、そのヒンジ領域を含む部分)を含み、第2の融合タンパク質は、第2のMHCクラスIα鎖及び第2の免疫グロブリン重鎖(または、そのヒンジ領域を含む部分)を含む。第1及び第2の免疫グロブリン重鎖は関連して、2つのMHCクラスIペプチド結合裂溝を含むMHCクラスI分子複合体を形成する。免疫グロブリン重鎖は、IgM抗体、IgD、IgG1、IgG3、IgG2β、IgG2α、IgG4、IgE、またはIgAの重鎖であり得る。いくつかの実施形態において、IgG重鎖は、MHCクラスI分子複合体の形成に使用される。多価MHCクラスI分子複合体が望ましい場合、IgMまたはIgAの重鎖は、それぞれ、五価または四価分子を提供するために使用され得る。
【0070】
例示的なクラスI分子には、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-Eが挙げられ、これらを個別に、または任意の組み合わせで使用することができる。いくつかの実施形態において、抗原提示複合体はHLA-A2リガンドである。本明細書で使用される用語MHCは、それぞれの場合にHLAに置き換えることができる。
【0071】
免疫グロブリン配列は、いくつかの実施形態において、ヒト化モノクローナル抗体の配列である。
【0072】
aAPCは、抗CD28リガンドなどの「シグナル2」を含有してもよい。シグナル2は、一般に、T細胞影響分子、すなわち、前駆T細胞または抗原特異的T細胞に生物学的効果を有する分子である。特定の実施形態において、シグナル2はT細胞共刺激分子である。T細胞共刺激分子は、抗原特異的T細胞の活性化に寄与する。このような分子には、CD28(抗体を含む)、CD80(B7-1)、CD86(B7-2)、B7-H3、4-1BB、4-1BBL、CD27、CD30、CD134(OX-40L)、B7h(B7RP-1)、CD40、LIGHTに特異的に結合する分子、HVEMに特異的に結合する抗体、CD40Lに特異的に結合する抗体及びOX40に特異的に結合する抗体が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、共刺激分子(シグナル2)は、抗体(例えば、モノクローナル抗体)もしくはF(ab’)2、Fab、scFvなどのその一部、または一本鎖抗体、または他の抗原結合フラグメントである。いくつかの態様において、抗体は、ヒト化モノクローナル抗体もしくは抗原結合活性を有するその一部である、または完全ヒト抗体もしくは抗原結合活性を有するその一部である。
【0073】
用いることができる(同じ、または別個のナノ粒子に対して)共刺激リガンドの組み合わせには、抗CD28/抗CD27及び抗CD28/抗41BBが挙げられる。これらの共刺激リガンドの比は、拡大を実行するために変わり得る。
【0074】
例示的なシグナル1及びシグナル2リガンドは、WO2014/209868に記載されており、定常領域が、適切な化学機能性を有するナノ粒子支持体に結合され得るように遊離スルフヒドリル(例えば、不対システイン)を有するリガンドを記載している。
【0075】
ナノaAPCに有用な接着分子を使用して、T細胞またはT細胞前駆体へのナノaAPCの接着を媒介することができる。有用な接着分子には、例えば、ICAM-1及びLFA-3が挙げられる。
【0076】
いくつかの実施形態において、シグナル1はペプチドHLA-A2複合体によって提供され、シグナル2はB7.1-Igまたは抗CD28によって提供される。例示的な抗CD28モノクローナル抗体は、9.3mAbであり(Tan et al.,J.Exp.Med.1993177:165)、特定の実施形態において、ヒト化されてもよい及び/または完全に無傷の抗体もしくはその抗原結合フラグメントとしてビーズに抱合されてもよい。
【0077】
磁気活性化は、2分間~5時間または5分間~2時間にわたって実施され、続いて少なくとも5日間~2週間まで、またはいつかの実施形態では3週間まで培養で拡大され得る。いくつかの実施形態において、磁気活性化は、少なくとも2分間であるが、30分未満(例えば、約5または10分間)にわたって行われる。得られたCD8+T細胞は、Tメモリー幹細胞(Tscm)、ならびに多くのセントラル及びエフェクターメモリー表現型の存在の確認によって表現型的に特徴付けることができる。
【0078】
いくつかの実施形態は、拡大の際にT細胞増殖因子を用い、このことは、T細胞の増殖及び/または分化に影響を与える。T細胞増殖因子の例には、サイトカイン(例えば、インターロイキン、インターフェロン)及びスーパー抗原が挙げられる。望ましい場合、サイトカインは、融合タンパク質を含む分子複合体に存在することができる、またはaAPCによってカプセル化され得る、もしくは可溶性形態で提供され得る。特に有用なサイトカインには、MIP-1β、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-15、IL-21、IFN-γ及びCXCL10が挙げられる。いくつかの実施形態において、増殖因子には、MIP-1β、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-6、IL-7、IL-15、IL-21及びINF-γのうちの3、4、5または6個が挙げられる。これら、または他の実施形態において、細胞は、MIP-1β、IL-1β及びIL-6、ならびに任意選択でIL-10から選択される1,2、3個のサイトカインの存在下での培養で拡大される。いくつかの実施形態において、細胞は、IL-7、及び/またはIL-21、及び/またはIL-15の存在下で培養されない。細胞は、約2週間(約14日間)または約3週間など、1~4週間にわたる培養により拡大され得る。
【0079】
いくつかの実施形態において、細胞は、4~8個のサイトカインの存在下での培養で拡大されて、T細胞拡大(抗原特異的T細胞拡大を含む)、活性化及びメモリー表現型のバランスを達成する。いくつかの実施形態において、細胞は、IL-4の存在下で拡大される。いくつかの実施形態において、細胞は、IL-4及びIL-6の存在下で拡大される。いくつかの実施形態において、細胞は、IL-4及びIL-1βの存在下で拡大される。いくつかの実施形態において、細胞は、IL-4、IL-6及びIL-1βの存在下で拡大される。いくつかの実施形態において、細胞は、IL-2、IL-4及びIL-6の存在下で拡大される。いくつかの実施形態において、細胞は、IL-2、IL-4、IL-6、INF-γ及びIL-1βの存在下で拡大される。いくつかの実施形態において、細胞は、IL-10の存在下で拡大される。
【0080】
いくつかの実施形態において、増殖因子は、IL-2、IL-4、IL-6、INF-γ及びIL-1β、ならびに任意選択でIL-10から構成される、または実質的に構成される。
【0081】
いくつかの実施形態において、IL-2は、培養の開始時に1mlあたり10~200国際単位(IU)、例えば、約20~約100IU/mlまたは約20~約60IU/mlで存在する。いくつかの実施形態において、IL-2は、培養の開始時に約30~約50IU/ml(例えば、約40IU/ml)で存在する。IL-2のIU(86/500 NIBSC)は、増殖アッセイを使用して(例えば、CTLL-2細胞系を使用して)決定することができ、例えば、Gearing and Bird(1987)in Lymphokines and Interferons,A Practical Approach.Clemens,MJ et al.(eds):IRL Press.295に記載されている。いくつかの実施形態において、IL-2は、培養の開始時に約2~約25ng/ml、例えば、約5~約15ng/mlで存在する。
【0082】
これらの、または独立した実施形態において、IL-4は、培養の開始時に1mlあたり0.2~25国際単位(IU)、例えば、約0.5~約10IU/mlまたは約0.5~約5IU/mlで存在する。いくつかの実施形態において、IL-4は、培養の開始時に約1IU/mlで存在する。IL-4のIU(88/656 NIBSC)は、増殖アッセイを使用して(例えば、TF-1細胞系を使用して)決定することができ、例えば、Kitamura T.et al.,(1991)IL-1 up-regulates the expression of cytokine receptors on a factor-dependent human hemopoietic cell line,TF-1.Immunol.3:571-577に記載されている。いくつかの実施形態において、IL-4は、培養の開始時に約0.2~約2ng/ml、例えば、約0.2~約1ng/ml(例えば、約0.5ng/ml)で存在する。
【0083】
これらの、または独立した実施形態において、IL-6は、培養の開始時に1mlあたり10~200国際単位(IU)、例えば、約25~約100IU/ml、例えば、約25~75IU/mlで存在してもよい。いくつかの実施形態において、IL-6は、培養の開始時に約40~約60IU/ml(例えば、約50IU/ml)で存在する。IL-6のIU (89/548 NIBSC)は、増殖アッセイを使用して(例えば、B9細胞系を使用して)確定することができ、例えば、Gaines-Das RE and Poole S.(1993)The international standard for interleukin-6.Evaluation in an international collaborative study.J.Immunol.Methods 160:147-153に記載されている。いくつかの実施形態において、IL-6は、培養の開始時に約0.2~約10ng/ml、例えば、約0.2~約5ng/ml(例えば、約0.5~2ng/ml)で存在する。
【0084】
これらの、または独立した実施形態において、インターフェロンガンマ(INF-γ)は、培養の開始時に1mlあたり10~200国際単位(IU)、例えば、約20~約100IU/ml、例えば、約20~60IU/mlで存在する。いくつかの実施形態において、INF-γは、培養の開始時に約30~約50IU/ml(例えば、約40IU/ml)で存在する。INF-γのIU(87/586 NIBSC)は、抗ウイルスアッセイを使用して(例えば、EMCに感染したHela細胞を用いて)確定することができ、例えば、Meager A.(1987)in Lymphokines and interferons,a Practical Approach.Clemens,MJ,et al.(eds):IRL Press.129.に記載されている。いくつかの実施形態において、INF-γは、培養の開始時に約0.5~約20ng/ml、例えば、約1~約10ng/ml(例えば、1~5ng/ml)で存在する。
【0085】
IL-1βは、培養の開始時に1mlあたり5~100国際単位(IU)、例えば、約10~約50IU/ml、例えば、約10~約30IU/mlで存在してもよい。いくつかの実施形態において、IL-1βは、培養の開始時に約10~約20IU/ml(例えば、約15IU/ml)で存在する。IL-1βのIU(86/680 NIBSC)は、増殖アッセイを使用して(例えば、D.10.G4.1細胞を使用して)確定することができ、例えば、Poole,S.及びGaines-Das,RE(1991)The international standards for interleukin-1 alpha and interleukin-1 beta.Evaluation in an international collaborative study.J.Immunol.Methods 142:1-13に記載されている。いくつかの実施形態において、IL-1βは、培養の開始時に約0.2~約5ng/ml、例えば、約0.2~約2ng/mlまたは約0.2~約1ng/mlで存在する。
【0086】
様々な実施形態において、細胞は、IL-2、IL-4、IL-6、INF-γ及びIL-1βを含む、またはからなる増殖因子カクテルの存在下で培養される。いくつかの実施形態において、IL-2とINF-γの相対的活性(それぞれのIUによって定義される)は、約0.5:1~約1:0.5(例えば、約1:1)である。これらの、または独立した実施形態において、IL-2とIL-6の相対的活性(それぞれIUによって定義される)は、約0.5:1~1:0.5である。これらの、または独立した実施形態において、IL-1βと、IL-2、IL-6及び/またはIFN-γとの相対活性(それぞれのIUによって定義される)は、1:4~1:2(例えば、約1:3)である。これらの、または独立した実施形態において、IL-4と、IL-2、IL-6及び/またはIFN-γとの相対活性(それぞれのIUによって定義される)は、1:30~1:60である。これらの、または独立した実施形態において、IL-4とIL-1βの相対活性(それぞれのIUによって定義される)は、約1:5~約1:25、例えば、約1:10~約1:20である。
【0087】
いくつかの実施形態において、培養の開始時の各増殖因子(IL-2、IL-4、IL-6、INF-γ及びIL-1β)の特異的活性(IUで)は、培養物中の全ての増殖因子の合計のIUの合計が100%と考慮される率で示すことができる。例えば、いくつかの実施形態において、培養物中の各増殖因子の率を以下のようにすることができる。
20%~40%のIL-2(例えば、20~30%のIL-2);
0.5%~5%のIL-4(例えば、1~3%のIL-4);
25%~50%のIL-6(例えば、30~40%のIL-6);
20%~40%のIFN-γ(例えば、20~30%のIFN-γ);及び
5%~20%のIL-1β(例えば、5~15%のIL-1β)。
【0088】
aAPCナノ粒子は、任意の材料から作ることができ、材料は、所望の磁気特性によって適切に選択することができ、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、または希土類金属の合金などの金属を含むことができる。常磁性材料には、マグネシウム、モリブデン、リチウム、タンタル及び酸化鉄も挙げられる。材料(細胞を含む)の濃縮に適した常磁性ビーズは、市販されており、デキストラン被覆酸化鉄ビーズなどの鉄デキストランビーズが挙げられる。磁気特性が必要とされない本発明の態様において、ナノ粒子は、セルロース、セラミック、ガラス、ナイロン、ポリスチレン、ゴム、プラスチックまたはラテックスなどの非金属または有機(例えば、ポリマー)材料から作ることもできる。ナノ粒子を調製する例示的な材料には、ポリ(乳酸グリコール酸共重合体)(PLGA)またはPLA及びこれらのコポリマーがあり、これらの実施形態に関連して使用することができる。用いることができるポリマー及びコポリマーを含む他の材料には、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、PCT/US2014/25889に記載されているものが挙げられる。
【0089】
様々な実施形態において、粒子は、約10~約500nm以内、または約40~約400nm以内、または約100nm~400nm以内のサイズ(例えば、平均直径)を有する。磁気クラスタリングのために、いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、10~250nm、または20~100nmの範囲のサイズを有することが好ましい。細胞ナノ粒子界面での受容体リガンド相互作用は、よく理解されていない。しかし、ナノ粒子結合および細胞活性化は、T細胞活性化の際に特に重要である膜空間構成に敏感であり、磁場を使用して、クラスター結合ナノ粒子が活性化を増強するように操作することができる。例えば、T細胞活性化は、持続的に強化されたナノスケールTCRクラスタリングの状態を誘導し、ナノ粒子は、より大きい粒子では敏感ではないこのクラスタリングに対して敏感である。
【0090】
更に、ナノ粒子とTCRクラスターとの相互作用は、トリガー受容体を増強するために利用することができる。T細胞の活性化は、最初にT細胞APC接触部位の周囲に形成され、内側に移行する、数百ナノメートにわたる「シグナリングクラスター」を伴うシグナル伝達タンパク質の凝集によって媒介される。本明細書に記載されるように、外部磁場を使用して、抗原特異的T細胞(希少な未変性細胞を含む)を濃縮し、TCRに結合した磁気ナノaAPCの凝集を誘導して、TCRクラスターの凝集及び未変性T細胞の活性化の増強をもたらすことができる。磁場は、常磁性粒子に対して適切で強い力を発揮するが、それ以外は生物学的に不活性であり、粒子の挙動を制御するための強力なツールとなる。常磁性ナノaAPCに結合したT細胞は、外部適用された磁場の存在下で活性化される。ナノaAPCは、それ自体が磁化されており、磁界源及び磁界にあるナノ粒子の近接の両方に吸引され、ビーズを誘導し、したがってTCRの凝集を誘導して、aAPC媒介活性化を押し上げる。
【0091】
活性化化学を使用して、ナノ粒子の表面への分子の特異的で安定した結合を可能にすることができる。タンパク質を官能基に結合させることに使用できる、多くの方法が存在する。例えば、一般的な架橋グルタルアルデヒドを使用して、タンパク質アミン基をアミノ化ナノ粒子表面に2ステップ工程で結合させることができる。得られる連結は加水分解的に安定している。他の方法には、タンパク質のアミンと反応するn-ヒドロスクシンイミド(NHS)エステルを含有する架橋、アミン-、スルフヒドリル-またはヒスチジン含有タンパク質と反応する活性ハロゲンを含有する架橋、アミンまたはスルフヒドリル基と反応するエポキシドを含有する架橋、マレイミド基とスルフヒドリル基との抱合、及びペンダント糖部分の過ヨウ素酸酸化、続く還元性アミノ化によるタンパク質アルデヒド基の形成の使用が挙げられる。
【0092】
同じ、または異なる粒子に同時に使用される特定のリガンドの比を変化させて、抗原または共刺激リガンド提示におけるナノ粒子の有効性を高めることができる。例えば、ナノ粒子を、HLA-A2-Ig及び抗CD28(または、他のシグナル2リガンド)と、約30:1、約25:1、約20:1、約15:1、約10:1、約5:1、約3:1、約2:1、約1:1、約0.5:1、約0.3:1、約0.2:1、約 0.1:1、または約0.03:1などの多様な比で結合させることができる。いくつかの実施形態において、比は、2:1~1:2である。支持体に結合されたタンパク質の総量は、例えば、粒子の約250mg/ml、約200mg/ml、約150mg/ml、約100mg/ml、または約50mg/mlであってもよい。そのようなサイトカイン放出および増殖などのエフェクター機能は、T細胞活性化及び分化よりシグナル1対シグナル2における要件が異なることがあるため、これらの機能を別々に決定することができる。
【0093】
特定の実施形態において、aAPCは、50~150nmの範囲の常磁性粒子であり、PDI(サイズ分布)が0.2未満、いくつかの実施形態では0.1未満である。aAPCは、0~-10mV、例えば約-2~-6mVの表面電荷を有してもよい。aAPCは、粒子1個あたり10~120個のリガンド、例えば粒子1個あたり約25~約100個のリガンドを有してもよく、リガンドは、免疫グロブリン配列のFc領域に導入された遊離システインを介して粒子に抱合されている。粒子は、約1:1の比でHLA二量体:抗CD28を含有してもよく、これらは、粒子の同じ、または異なる集団に存在してもよい。ナノ粒子は、同族T細胞の強力な拡大を提供し、同時に、ペプチド抗原の受動的ローディングを伴っていても、非同族TCRの刺激を示さない。粒子は、少なくとも2年間または3年間の凍結乾燥形態で安定している。
【0094】
濃縮及び拡大した後、試料の抗原特異的T細胞成分は、少なくとも約5%、または少なくとも約10%、または少なくとも約15%、または少なくとも約20%、または少なくとも約25%が抗原特異的T細胞である。更に、これらのT細胞は、一般にメモリー表現型(セントラルメモリーとエフェクターメモリーの両方、ならびにTメモリー幹細胞を含む)を表示する。患者から分離された元の試料から、抗原特異的T細胞は、約100倍~約10,000倍、例えば、少なくとも約100倍または少なくとも約200倍に(約7日間で)拡大される。2週間後、抗原特異的T細胞は、様々な実施形態において、少なくとも約1000倍、または少なくとも約2000倍、少なくとも約3,000倍、少なくとも約4,000倍、または少なくとも約5,000倍に拡大される。いくつかの実施形態において、抗原特異的T細胞は、2週間後に5000倍を超えて、または10,000倍を超えて拡大される。拡大の1~2週間後に、少なくとも約106個、または少なくとも約107個、または少なくとも約108個、または少なくとも約109個の抗原特異的T細胞が得られる。
【0095】
適切なインキュベーション条件(培養培地、温度、等)には、T細胞またはT細胞前駆体の培養に使用されるもの、ならびにDCまたは人工抗原提示細胞を使用して抗原特異的T細胞の形成を誘導する当該技術に既知のものが挙げられる。
【0096】
細胞組成物は、静脈内注入、動脈内投与、リンパ管内投与及び腫瘍内投を含む任意の適切な経路によって患者に投与され得る。
【0097】
いくつかの実施形態において、患者は、養子移入によって細胞組成物を受容する前に(または任意選択で、受容した後に)、1つ以上のチェックポイント阻害剤で免疫療法を受ける。様々な実施形態において、チェックポイント阻害剤(複数可)は、1個以上のCTLA-4またはPD-1/PD-L1を標的にし、そのような標的に対して、モノクローナル抗体もしくはその一部、またはそのヒト化もしくは完全ヒトバージョンなどの抗体を含むことができる。いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤療法は、イピリムマブまたはKeytruda(ペンブロリズマブ)を含む。
【0098】
いくつかの実施形態において、患者は、1~5回(例えば、1、2、3、4、または5回)の養子免疫療法を受ける。いくつかの実施形態において、養子免疫療法のそれぞれの投与は、一連のチェックポイント阻害剤療法と、同時に、またはその後に(例えば、約1日~約1週間後に)実施される。いくつかの実施形態において、養子免疫療法は、チェックポイント阻害剤投与の約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、または約1週間後に提供される。いくつかの実施形態において、患者は、細胞組成物の単回投与のみを受ける。
【0099】
いくつかの態様において、本発明は、個別化癌免疫療法の方法を提供する。この方法は、aAPCを使用して、患者が応答する抗原を同定し、続いて、適切なペプチドロードsAPCを患者に投与すること、または抗原特異的T細胞をエキソビボで濃縮及び拡大することによって達成される。
【0100】
ゲノムワイド配列決定は、癌生物学に対する理解を劇的に変えた。がんの配列決定は、多くのヒト癌の発症に関与する分子過程に関する重要なデータを生じた。変異の推進力は、3つの主要な細胞過程(1)細胞の運命、(2)細胞生存及び(3)ゲノム維持の調節経路に関与する重要な遺伝子において同定されている。Vogelstein et al.,Science 339,1546-58(2013)。
【0101】
ゲノムワイド配列決定は、また、癌免疫療法の手法に革命をもたらす可能性を有する。配列決定データは、癌免疫療法のための共有標的と個別化標的の両方に関する情報を提供することができる。原則的に、変異タンパク質は、免疫系にとって異物であり、推定上の腫瘍特異的抗原である。事実、配列決定の努力は、何千ではなくとも何百もの潜在的に関連する免疫標的を確定している。限定された検査では、これらにネオエピトープに対するT細胞応答が、癌患者で見られること、または癌ワクチンにより誘導されることを示している。しかし、特定のがんに対する応答の頻度及び癌患者間で共有されるような応答の程度は、よく知られていない。腫瘍特異的免疫応答に関する限られた理解の主な理由の1つは、潜在的な免疫学的に関連する標的を検証する現在の手法は、煩雑で時間がかかることである。
【0102】
中枢性免疫寛容は、自己タンパク質に対するT細胞応答を抑止するが、発癌性変異は、T細胞応答を形成することができるネオエピトープを誘導する。全エクソーム配列に由来する変異カタログは、そのようなネオエピトープを同定する出発点を提供する。HLA結合予測アルゴリズム(Srivastava,PLoS One 4,e6094(2009))を使用して、それぞれのがんが7~10個までのネオエピトープを有し得ることが予測されている。同様の手法は、数百個の腫瘍ネオエピトープを推定した。しかし、そのようなアルゴリズムは、T細胞応答を予測する精度が低いことがあり、予測されたHLA結合エピトープの10%のみが、HLAの文脈において結合することが予測される(Lundegaard C,Immunology 130,309-18(2010))。このように、予測されたエピトープは、それらの潜在的なネオエピトープに対するT細胞応答の存在を検証しなければならない。
【0103】
特定の実施形態において、ナノaAPC系は、様々な癌または特定の患者のがんにおいてT細胞応答を誘導するネオエピトープをスクリーンするために使用される。がんは、例えば全エクソーム配列決定によって、遺伝的に分析されてもよい。
【0104】
候補ペプチドのリストは、変異タンパク質における9個のアミノ酸ウインドウの重複によって生成することができる。変異アミノ酸を含有する9個全てのAAウインドウ及びそれぞれのタンパク質における2個の非変異「対照」が選択される。これらの候補ペプチドは、Net MHC及び安定化マトリックス方法(SMM)を含むMHC予測アルゴリズのコンセンサスを使用して、MHC結合について計算評価する。ナノaAPC及びMHC結合アルゴリズムは、主にHLA-A2対立遺伝子のために開発されている。コンセンサス予測の感度カットオフは、ペプチドを含有する変異(約500)及び非変異対照ペプチド(約50)の扱いやすい数が同定されるまで調整することができる。
【0105】
例示的な実施形態において、細胞組成物は、薬学的に許容される担体中に、少なくとも90%のCD8+T細胞及び5%未満のCD4+T細胞;1~10個の腫瘍関連標的ペプチド抗原に特異的な少なくとも106個のCD8+T細胞、ならびに細菌、ウイルス及び/または真菌病原体に特異的なCD8+T細胞を含み、ここで、少なくとも30%のCD8+T細胞は比が27:75~75:25のセントラルメモリーT細胞及びエフェクターメモリーT細胞であり、10%未満のCD8+T細胞は末端分化T細胞である。いくつかの実施形態において、腫瘍関連標的ペプチド抗原に特異的な少なくとも50%のCD8+T細胞は、比が25:75~75:25のセントラルメモリー及びエフェクターメモリーT細胞であり、10%未満のCD8+T細胞は末端分化T細胞である。いくつかの実施形態において、細胞組成物は、約5%~約20%のTメモリー幹細胞(Tscm)または5%~約15%のTメモリー幹細胞を含む。
【0106】
細胞組成物は、静脈内注入に適切であり、凍結保護物質として適切であり得る薬学的に許容される担体を更に含む。例示的な担体は、DMSO(例えば、約10%)である。細胞組成物は、バイアルまたはバッグの単位で提供され、使用されるまで凍結保存され得る。単位用量は、50~200mlの体積で1mlあたり約5×105~約5×106個の細胞を含むことができる。特定の実施形態において、組成物の体積は≦100ml(例えば、50~100ml)である。
【0107】
いくつかの態様において、本発明は、がん有する患者の治療方法であって、必要とする患者に、本明細書に記載の細胞組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0108】
いくつかの実施形態において、患者は血液癌を有し、いくつかの実施形態では、同種幹細胞移植の後に再発した血液癌を有する。いくつかの実施形態において、患者は、急性骨髄性白血病(AML)または骨髄異形成症候群を有する。
【0109】
本開示により治療され得る他のがんには、歴史的に不十分な免疫応答を誘発する、または高い再発率を有する癌があげられる。例示的ながんには、癌腫、肉腫及びリンパ腫を含む固形腫瘍の様々な種類が挙げられる。様々な実施形態において、がんは、黒色腫(転移性黒色腫を含む)、結腸癌、十二指腸癌、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、腺管癌、肝癌、膵癌、腎癌、子宮内膜癌、精巣癌、胃癌、口腔粘膜異形成、ポリポーシス、頭頸部癌、浸潤性口腔癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、中皮腫、膀胱移行及び扁平上皮癌、脳癌、神経芽細胞腫、ならびに経膠腫である。様々な実施形態において、がんは、ステージI、ステージII、ステージIII、またはステージIVのものである。いくつかの実施形態において、がんは、転移性及び/もしくは再発性のもの、及び/または切除不能なものである。
【0110】
いくつかの実施形態において、患者は、化学療法及び/またはチェックポイント阻害剤療法に対して難治性である。
【0111】
いくつかの実施形態において、患者は、残留性及びインビボ応答を改善しうる低用量サイトカイン療法を更に受ける。
【0112】
いくつかの実施形態において、がんは、白血病、リンパ腫または骨髄腫を含む血液悪性腫瘍である。例えば、血液悪性腫瘍は、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、小児急性白血病、非ホジキンリンパ腫、急性リンパ性白血病、慢性リンパ球性白血病、骨髄異形成症候群、悪性皮膚T細胞、菌状息肉症、非MF皮膚T細胞リンパ腫、リンパ腫様丘疹症及びT細胞リッチ皮膚リンパ過形成であり得る。例示的な実施形態において、患者は、急性骨髄性白血病(AML)または骨髄異形成症候群などの血液癌を有し、くつかの実施形態では、患者は、同種幹細胞移植後に再発している。いくつかの実施形態において、療法はGVHDを誘導しない。
【0113】
いくつかの実施形態において、患者は、同種幹細胞移植に加えて、リンパ球欠失療法、細胞減少療法、または免疫調節療法(細胞療法の投与前)も受けている。いくつかの実施形態において、細胞療法は、更に、治療後サイトカイン支持を伴って、または伴うことなく提供されてもよい。
【0114】
いくつかの実施形態において、患者は、感染症を有する、または感染症の危険性がある。例えば、HSCTを受けた患者は、免疫無防備状態を考慮すると、特に感染症の危険性がある。治療または予防され得る感染症には、細菌、ウイルス、プリオン、真菌、寄生虫、蠕虫等によって引き起こされるものが挙げられる。そのような疾患には、AIDS、B/C型肝炎、CMV感染症、Epstein-Barrウイルス(EBV)感染症、インフルエンザ、ヘルペスウイルス感染症(帯状疱疹を含む)及びアデノウイルス感染症が挙げられる。CMVは、例えば、臓器移植患者に見られる最も一般的なウイルス病原体であり、骨髄または末梢血幹細胞移植を受けた患者における罹患率及び死亡率の主要な原因である。このことは、これらの患者の免疫不全状態が原因であり、これらが血清陽性患者における潜伏ウイルスの再活性化または血清陰性個人における日和見感染症を許容する。これらの実施形態において、患者は、病原体の抗原に特異的なT細胞を含む養子免疫療法を受けることができる。この方法は、患者由来または移植処置の開始前に適切なドナー由来のウイルス特異的CTLの生成を伴うことができる。
【0115】
PTLDは、有意な割合の移植患者に発生し、Epstein-Barrウイルス(EBV)感染によってもたらされる。EBV感染は、米国の成人人口のおよそ90%に存在すると考えられる。能動的なウイルス複製及び感染は、免疫系によってチェックを受け続けているが、CMVの場合、移植療法により免疫無防備状態になった個人は、制御性T細胞集団を失い、ウイルスの再活性化を許容する。このことは、移植プロトコルに対して重大な障害となる。EBVは、様々な血液学的及び非血液学的癌の腫瘍促進に関与することもある。
【0116】
本発明は、下記の態様を包含する。
[項1]
養子免疫療法に適した単離細胞組成物であって、薬学的に許容される担体中に、1個以上の標的ペプチド抗原に特異的な少なくとも10
6
個のCD8+T細胞を含み、組成物中の少なくとも20%のT細胞がセントラルメモリー表現型またはエフェクターメモリー表現型を示す、前記組成物。
[項2]
前記CD8+T細胞が、1~100個の標的ペプチド抗原に特異的である、項1に記載の単離細胞組成物。
[項3]
前記組成物中の標的ペプチド抗原に向けられたT細胞特異度が、MHC多量体染色によって定義される、項1に記載の単離細胞組成物。
[項4]
前記標的ペプチド抗原が腫瘍関連抗原である、項1~3のいずれか一項に記載の単離細胞組成物。
[項5]
1個以上の標的ペプチド抗原が、腫瘍由来または腫瘍特異的新生抗原である、項1~4のいずれか一項に記載の単離細胞組成物。
[項6]
1個以上の標的ペプチド抗原が、細菌、ウイルス、真菌、または寄生虫抗原である、項1~3のいずれかに一項に記載の単離細胞組成物。
[項7]
少なくとも1、2、3、4または5個の標的ペプチド抗原に特異的なCD8+T細胞を含む、項1~6のいずれか一項に記載の単離細胞組成物。
[項8]
前記標的ペプチド抗原のうちの少なくとも1個が低頻度前駆T細胞により認識される、項7に記載の単離細胞組成物。
[項9]
前記細胞組成物は少なくとも90%がT細胞である、項1~8のいずれか一項に記載の単離細胞組成物。
[項10]
前記細胞組成物は少なくとも98%がT細胞である、項9に記載の単離細胞組成物。
[項11]
前記細胞組成物は少なくとも5%が前記標的ペプチド抗原に特異的なCD8+T細胞である、項1~9のいずれか一項に記載の単離細胞組成物。
[項12]
前記細胞組成物は少なくとも10%が前記標的ペプチド抗原に特異的なCD8+T細胞である、項11に記載の単離細胞組成物。
[項13]
前記細胞組成物は少なくとも15%が前記標的ペプチド抗原に特異的なCD8+T細胞である、項12に記載の単離細胞組成物。
[項14]
前記細胞組成物が、細菌、ウイルス及び/または真菌病原体に特異的なCD8+T細胞を更に含む、項4または5のいずれか一項に記載の単離細胞組成物。
[項15]
前記細菌、ウイルス、または真菌病原体に特異的なCD8+T細胞が、インフルエンザ、CMV、EBV及び/またはアデノウイルスの抗原に特異的なT細胞を含む、項14に記載の単離細胞組成物。
[項16]
前記T細胞では少なくとも30%がセントラルメモリーT細胞及びエフェクターメモリーT細胞である、項1~15のいずれか一項に記載の単離細胞組成物。
[項17]
前記T細胞は少なくとも50%がセントラルメモリーT細胞及びエフェクターメモリーT細胞である、項16に記載の単離細胞組成物。
[項18]
前記T細胞は少なくとも70%がセントラルメモリーT細胞及びエフェクターメモリーT細胞である、項16に記載の単離細胞組成物。
[項19]
前記T細胞では少なくとも80%がセントラルメモリーT細胞及びエフェクターメモリーT細胞である、項16に記載の単離細胞組成物。
[項20]
前記1個以上の標的抗原に特異的なT細胞は少なくとも50%がセントラルメモリーT細胞及びエフェクターメモリーT細胞である、項16~19のいずれか一項に記載の単離細胞組成物。
[項21]
前記1個以上の標的抗原に特異的なT細胞は少なくとも60%がセントラルメモリーT細胞及びエフェクターメモリーT細胞である、項20に記載の単離細胞組成物。
[項22]
前記1個以上の標的抗原に特異的なT細胞は少なくとも70%がセントラルメモリーT細胞及びエフェクターメモリーT細胞である、項20に記載の単離細胞組成物。
[項23]
前記1個以上の標的抗原に特異的なT細胞は少なくとも80%がセントラルメモリーT細胞及びエフェクターメモリーT細胞である、項20に記載の単離細胞組成物。
[項24]
前記セントラル及びエフェクターメモリーT細胞が、10:90~90:10のセントラルメモリーT細胞対エフェクターのメモリー細胞である、項1~23のいずれか一項に記載の単離細胞組成物。
[項25]
前記セントラル及びエフェクターメモリーT細胞が、25:75~75:25のセントラルメモリーT細胞対エフェクターのメモリー細胞である、項24に記載の単離細胞組成物。
[項26]
前記セントラル及びエフェクターメモリー細胞が、40:60~60:40のセントラルメモリーT細胞対エフェクターのメモリーT細胞である、項24に記載の単離細胞組成物。
[項27]
前記T細胞では20%未満の末端分化がある、項1~26のいずれか一項に記載の単離細胞組成物。
[項28]
前記T細胞は10%未満の末端分化がある、項27に記載の単離細胞組成物。
[項29]
前記T細胞は10%未満の末端分化がある、項27に記載の単離細胞組成物。
[項30]
前記組成物が20%未満の未変性細胞を含む、項1~29のいずれか一項に記載の単離細胞組成物。
[項31]
前記組成物が10%未満の未変性細胞を含む、項30に記載の単離組成物。
[項32]
前記組成物が5%未満の未変性細胞を含む、項30に記載の単離組成物。
[項33]
前記組成物が1.5%未満の未変性細胞を含む、項30に記載の単離組成物。
[項34]
Tメモリー幹細胞を更に含む、項1~33のいずれか一項に記載の単離組成物。
[項35]
約5%~約25%のTメモリー幹細胞を含む、項34に記載の単離組成物。
[項36]
前記CD8+T細胞が、活性化されると多機能性表現型を表示する、項1~35のいずれか一項に記載の単離細胞組成物。
[項37]
前記細胞組成物が10%未満のCD4+T細胞を含む、項1~36のいずれか一項に記載の単離細胞組成物。
[項38]
前記細胞組成物は5%未満がCD4+T細胞である、項37に記載の単離細胞組成物。
[項39]
前記細胞組成物は2%未満がCD4+T細胞である、項37に記載の単離細胞組成物。
[項40]
前記細胞組成物は1.5%未満がCD4+T細胞である、項37に記載の単離細胞組成物。
[項41]
前記細胞組成物は1%未満がCD4+T細胞である、項37に記載の単離細胞組成物。
[項42]
前記組成物が、キメラ抗原受容体または組み換えTCRを発現するT細胞を含まない、項1~41のいずれか一項に記載の細胞組成物。
[項43]
前記組成物が、細胞源の標的ペプチド抗原に特異的なCD8+T細胞の濃縮によって及び/または細胞源の標的ペプチド抗原に特異的なCD8+T細胞の拡大によって産生される、項1~42のいずれか一項に記載の細胞組成物。
[項44]
細胞源が、患者からのもの、またはHLA適合ドナーからのものである、項43に記載の細胞組成物。
[項45]
前記ドナー細胞が白血球搬出法によって単離される、項43に記載の細胞組成物。
[項46]
前記細胞源が患者の腫瘍から単離されたものである、項43に記載の細胞組成物。
[項47]
前記細胞源がバフィーコート画分である、項43に記載の細胞組成物。
[項48]
前記細胞源が、濃縮の前または拡大の前にCD4+T細胞について枯渇している、項43~47のいずれか一項に記載の単離細胞組成物。
[項49]
前記細胞源ではCD8+が濃縮されている、項43~48のいずれか一項に記載の単離細胞組成物。
[項50]
前記細胞源ではNK細胞が枯渇されている、項43~49のいずれか一項に記載の単離細胞組成物。
[項51]
前記抗原特異的T細胞が、MHCクラスIリガンド及び任意選択で共刺激リガンドを有するaAPCによって濃縮される、項43~50のいずれか一項に記載の単離細胞組成物。
[項52]
前記aAPCが、CD28に結合するリガンドである共刺激リガンドを含む、項51に記載の単離細胞組成物。
[項53]
前記共刺激リガンドが、CD28のアゴニストであるモノクローナル抗体またはその一部分である、項52に記載の単離細胞組成物。
[項54]
前記濃縮が常磁性aAPCによる磁気濃縮であり、前記細胞及びaAPCが、磁場の存在下で少なくとも1分間にわたって任意選択でインキュベートされる、項1~53のいずれか一項に記載の単離細胞組成物。
[項55]
前記濃縮が常磁性aAPCによる磁気濃縮であり、前記細胞及びaAPCが、磁場の存在下で少なくとも5時間または培養の持続する間にわたって任意選択でインキュベートされる、項1~53のいずれか一項に記載の単離細胞組成物。
[項56]
前記細胞及びaAPCが、磁場の存在下で約5時間以下にわたってインキュベートされる、項1~55のいずれか一項に記載の単離細胞組成物。
[項57]
前記抗体特異的T細胞が、磁場を使用することなく濃縮及び/または拡大される、項1~53のいずれか一項に記載の単離細胞組成物。
[項58]
前記濃縮細胞が、培養により1~4週間にわたって拡大される、項43~53のいずれか一項に記載の単離細胞組成物。
[項59]
前記細胞が、MIP-1β、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-6、IL-7、IL-15、IL-21及びINF-γ、ならびに任意選択でIL-10のうちの1個以上の存在下での培養で拡大される、項58に記載の単離細胞組成物。
[項60]
前記細胞が、MIP-1β、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-6、IL-7、IL-15、IL-21及びINF-γ、ならびに任意選択でIL-10のうちの2または3個の存在下での培養で拡大される、項58に記載の単離細胞組成物。
[項61]
前記細胞が、MIP-1β、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-6、IL-21及びINF-γ、ならびに任意選択でIL-10うちの1、2、3、4または5個の存在下での培養で拡大される、請求項60に記載の単離細胞組成物。
[項62]
前記細胞が、MIP-1β、IL-1β及びIL-6、ならびに任意選択でIL-10から選択される少なくとも1個のサイトカインの存在下での培養で拡大される、項60に記載の単離細胞組成物。
[項63]
前記細胞が、IL-4の存在下で拡大される、項60に記載の単離細胞組成物。
[項64]
前記細胞が、IL-4及びIL-6の存在下で拡大される、項60に記載の単離細胞組成物。
[項65]
前記細胞が、IL-4及びIL-1βの存在下で拡大される、項60に記載の単離細胞組成物。
[項66]
前記細胞が、IL-4、IL-6及びIL-1βの存在下で拡大される、項60に記載の単離細胞組成物。
[項67]
前記細胞が、IL-2、IL-4及びIL-6の存在下で拡大される、項60に記載の単離細胞組成物。
[項68]
前記細胞が、IL-2、IL-4、IL-6、INF-γ及びIL-1β、ならびに任意選でIL-10の存在下で拡大される、請求項60に記載の単離細胞組成物。
[項69]
機能的aAPCが前記組成物中で検出不可能である、または前記組成物が1%未満のaAPC物質を含む、項1~68のいずれか一項に記載の単離細胞組成物。
[項70]
1個以上の標的ペプチド抗原が、サバイビン、WT-1、PRAME、サイクリンA1及びPR3のペプチドエピトープから選択される、請求項1~69のいずれか一項に記載の単離細胞組成物。
[項71]
養子免疫療法に適した単離細胞組成物であって、薬学的に許容される担体中に、
少なくとも90%のCD8+T細胞及び5%未満のCD4+T細胞を含み、
CD8+細胞が、1~10個の標的ペプチド抗原に特異的な少なくとも10
6
個のCD8+T細胞、ならびに細菌、ウイルス、真菌及び/または寄生性病原体に特異的なCD8+T細胞から構成され、
少なくとも30%の前記CD8+T細胞が、比が25:75~75:25のセントラルメモリーT細胞及びエフェクターメモリーT細胞であり、10%未満の前記CD8+T細胞が末端分化T細胞であり、10%未満の前記CD8+細胞が未変性細胞であり、
前記標的ペプチド抗原に特異的な前記CD8+T細胞の少なくとも50%が、比が25:75~75:25のセントラルメモリーT細胞及びエフェクターメモリーT細胞であり、10%未満が、末端分化T細胞であり、10%未満が未変性細胞である、前記組成物。
[項72]
少なくとも95%のCD8+T細胞及び2%未満のCD4+T細胞を含む、項71に記載の単離細胞組成物。
[項73]
前記標的ペプチド抗原に特異的な、少なくとも10
7
個または10
8
個のCD8+T細胞を含む、項71または72に記載の単離細胞組成物。
[項74]
5%未満の末端分化T細胞及び/または5%未満の未変性細胞を含む、項71~73のいずれか一項に記載の単離細胞組成物。
[項75]
5%~約20%のTメモリー幹細胞を更に含む、項71~73のいずれか一項に記載の単離細胞組成物。
[項76]
前記標的ペプチド抗原が腫瘍関連抗原であり、任意選択で血液悪性腫瘍に関連する、項71~75のいずれか一項に記載の単離細胞組成物。
[項77]
1個以上の標的ペプチド抗原が、サバイビン、WT-1、PRAME、サイクリンA1及びPR3のペプチドエピトープから選択される、項71~76のいずれか一項に記載の単離細胞組成物。
[項78]
がんを有する患者の治療方法であって、必要とする患者に項1~77のいずれか一項に記載の細胞組成物を投与することを含む、方法。
[項79]
前記患者が血液癌を有する、項78に記載の方法。
[項80]
前記血液癌が、同種幹細胞移植後に再発している、請求項79に記載の方法。
[項81]
前記患者が、急性骨髄性白血病(AML)または骨髄異形成症候群を有する、項79または80に記載の方法。
[項82]
前記患者が、リンパ球欠失療法、または細胞減少療法、または細胞療法投与前の免疫調節療法も受けている、項78~81のいずれか一項に記載の方法。
[項83]
前記細胞療法が、治療後サイトカイン支持を伴って、または伴うことなく更に提供され得る、項78~82のいずれか一項に記載の方法。
本発明の他の態様及び実施形態は当業者に明白である。
【実施例】
【0117】
抗原特異的T細胞を、白血球搬出によって単離されたドナー細胞から濃縮及び拡大した。細胞では、CD4マイクロビーズを用いた陰性選択によってCD4+細胞を枯渇した。得られた細胞を常磁性ナノ粒子(デキストラン被覆酸化鉄ナノ粒子、直径約80~200nm)とインキュベートして、抗原特異的T細胞を濃縮した。ナノ粒子は、表面(標的ペプチド抗原を提示している)と、アゴニスト抗CD28モノクローナル抗体に抱合した二量体HLAリガンドを有する。二量体HLAリガンドは、それぞれIgヒンジ領域のアームに融合された、ペプチド結合裂溝を含む2つのHLA-A2ドメインを含有する。二量体HLA-Igは、β2ミクログロブリンと同時発現する。リガンドとaAPCの構築物はWO2016/044530及びWO2016/105542に記載されており、これらは全体が参考により本明細書に組み込まれる。
【0118】
細胞を常磁性aAPCの存在下、次いで磁場の存在下で約5分間インキュベートした。粒子に関連する細胞を回収し、様々な時間(一般に、1~2週間)にわたってエキソビボで拡大させた。拡大は、増殖因子の存在下で実施した。2週間の培養期間に、増殖因子を1日目及び7日目に加えた。細胞を7日目にaAPCで再刺激した。
【0119】
抗原特異的T細胞も、バッチで濃縮及び拡大した。例えば、
図3は、AML特異的ペプチドのPrame100 RHAMM、WT1及びサバイビンのバッチ濃縮及び拡大を示す。7日目に、細胞は、Pramaに対して1.4%の特性、RHAMMに対して1.8%の特性、WT1に対して7.0%の特異性及びサバイビンに対して2.3%の特性を含む。合計の抗原特異的T細胞成分は、この実施形態では12.5%である。T細胞を四量体染色によって特徴付けた。
【0120】
図4は、2週間にわたる個別の刺激及び拡大を伴う組成物が、AML抗原特異的T細胞の一貫性したレベルを有することを示す。個別の刺激及び拡大のプロセスは、一貫して約15%の抗原特異的T細胞を生成する。
【0121】
図5は、同時の刺激/拡大プロセスが、個別の刺激/拡大に匹敵するAML特異的T細胞頻度を生成することを示す。バッチ刺激/拡大プロセスにより調製されたことが示される組成物は、約47%の抗原特異的T細胞を有する。
【0122】
図6は、生成されたT細胞が、AML腫瘍細胞(THP-1細胞系)の抗原特異的死滅を実証することを示す。AML特異的T細胞は、WT-1、PRAME及びサバイビンにおける5個のエピトープに向けられる。1対100(標的対エフェクター比)では、約40%の標的細胞が死滅した。
【0123】
図7に示されているように、エキソビボ拡大に使用されたサイトカインカクテルは、得られた細胞の数及び表現型に影響を与えることができる。
【0124】
細胞は、いずれかの未変性(CD62L+、CD45RA+)、セントラルメモリー(CD62L+、CD45RA-)、エフェクターメモリー(CD62L-、CD45RA-)及び末端分化メモリー(CD62L-、CD45RA+)のこれらの表現型について更に特徴付けた。ドナーリンパ球からエキソビボで濃縮及び拡大されたMART-1及びAML特異的T細胞は、主に、セントラルメモリー表現型及びエフェクターメモリー表現型である。
図2を参照すること。特にAMLのペプチドについて、3つの代表的な実験において、未変性細胞は、3.82%、14.2%及び14.8%で存在した。末端分化メモリー細胞は、3.82%、3%及び6.7%で存在した。一方、抗原特異的細胞のセントラルメモリー成分及びエフェクターメモリー成分は、92.3%、82.8%及び78.52%で存在した。
【0125】
細胞は、活性化表現型によって、すなわち、IL-2(増殖及びメモリー)、IFN-γ(他のT細胞の活性化、メモリー、MHCの上方制御)、TNF-α(炎症促進性)及びCD107a(グランザイムの放出、細胞傷害活性)を染色することによって特徴付けた。
図1を参照すること、示されるように、大部分の細胞が3つ、またはさらに4つの機能を有する。例えば、32.5%の細胞は、活性化されるとIL-2とIFN-γの両方を産生し、94.2%の細胞は、活性化されるとTNF-α及びCD107aを産生する。
【0126】
ウイルス抗原に特異的なバイスタンダー細胞を、四量体染色によって更に定量化した。
図8は、MART-1特異的濃縮及び拡大の7日後の、ウイルス特異的バイスタンダーT細胞の存在を示す。
図9は、MART-1特異的濃縮及び拡大の14日後の、ウイルス特異的バイスタンダーT細胞の存在を示す。これらの細胞は、また、大部分が主にセントラルメモリー表現型及びエフェクターメモリー表現型である。
図10は、AML特異的濃縮及び拡大の14日後の、ウイルス特異的バイスタンダーT細胞の存在を示す。
図11は、MART-1特異的濃縮及び拡大プロセスの最中のCMV特異的バイスタンダーT細胞の検出を示す。ウイルス特異的バイスタンダー細胞の率は、14日目まで一定のまま(0.5~1%)であるが、MART-1特異的T細胞の数及び率は劇的に上昇している。
【0127】
図12は、組み換えT細胞増殖因子カクテル(IL-1β、IL-2、IL-4、IL-6、IL-21、IFN-γ及びMIP1-β)を使用したMART-1特異的濃縮及び拡大の後の、14日目のウイルス特異的バイスタンダー細胞の検出が、アデノウイルス、CMV、EBV及びインフルエンザにおける多数のエピトープに向けられたウイルス特異的T細胞の維持及びバイスタンダー拡大を実証することを示す。
【0128】
図13A及び
図13Bに示されるように、Mart-1特異的T細胞は、拡大時の以下のIL-2、IL-4、IL-6、IFN-γ及びIL1-βのサイトカインの存在下での濃縮及び拡大過程によって生成した。このサイトカインカクテルの組成を表1に示す。
【表2】
【0129】
この実験では、健康なドナーからの6.74×10
9個のCD8+リンパ球を上記のように濃縮した。濃縮した後、細胞の合計は2.81×10
8個であった。拡大の14日目には、細胞の合計が5.28×10
8個であり、全細胞の1.88倍の拡大を示した。これらの14日目に拡大された細胞は、MART-1に対して約35%の特異性があり、約94%が生存可能であった(
図13B)。MART-1特異的細胞は、約2776倍に拡大され、10
5個の前駆細胞あたり約1個がMART-1特異的であると推定された。
【0130】
全培養物を評価すると、T細胞は、約66%がセントラルメモリー表現型及び約32%がエフェクターメモリー表現型を有した。2%未満の細胞が未変性であり、TEMRA細胞はごくわずかであった。更に、MART-1特異的細胞は、約89%がセントラルメモリー及び約9%がエフェクターであり、2%未満が未変性であり、TEMRA細胞の数はごくわずかであった。
【配列表】