(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】CAR-T細胞及び自己免疫疾患
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20240422BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240422BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240422BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20240422BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20240422BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240422BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240422BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240422BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240422BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20240422BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20240422BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240422BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240422BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240422BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N15/12 ZNA
C12N15/13
C12N15/85 Z
C12N5/0783
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K14/705
C07K16/18
C07K19/00
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P29/00 101
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2020542604
(86)(22)【出願日】2019-02-11
(86)【国際出願番号】 US2019017532
(87)【国際公開番号】W WO2019157461
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2022-02-10
(32)【優先日】2018-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー エー.ブルーストーン
(72)【発明者】
【氏名】キャロライン ラフィン
【審査官】松村 真里
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/100428(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0159922(US,A1)
【文献】Journal of Immunology,2016年,196 (1_Suppl),210.19.
【文献】Arthritis and Rheumatology,2014年,66,1712-1722
【文献】Expert Opinion on Biological Therapy,2017年,17,961-978
【文献】frontiers in Oncology,2014年,4,Article 209
【文献】Nature Reviews Rheumatology,2017年,13,525-537
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
A61K
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原特異的結合ドメイン、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン及びCD3ζシグナル伝達ドメインを含み、前記抗原特異的結合ドメインが、配列番号21又は22に対して少なくとも95%の配列同一性を有するシトルリン化されたビメンチン(CV)ポリペプチド又はそのペプチドを含む抗原に特異的に結合する、
配列番号15のアミノ酸配列を有するCAR一本鎖可変フラグメント(scFv)である、キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項2】
前記ビメンチンポリペプチド又はそのペプチドが翻訳後に修飾され、シトルリン化されたビメンチン(CV)ポリペプチド又はそのペプチドを含む、請求項1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項3】
前記共刺激ドメインが、CD28又は41BBポリペプチドを含む、請求項1又は
2のいずれかに記載のキメラ抗原受容体。
【請求項4】
a)前記ヒンジドメインが、配列番号8に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされ;
b)前記膜貫通ドメインが、配列番号9に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされ;
c)前記CD3ζシグナル伝達ドメインが、配列番号10に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされ;そして/又は
d)前記CD28共刺激ドメインが、配列番号11に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる、請求項1~
3のいずれか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項5】
a)前記ヒンジドメインが、配列番号8の核酸配列によりコードされ;
b)前記膜貫通ドメインが、配列番号9の核酸配列によりコードされ;
c)前記CD3ζシグナル伝達ドメインが、配列番号10の核酸配列によりコードされ、そして/又は
d)前記CD28共刺激ドメインが、配列番号11の核酸配列によりコードされる、
請求項1~
3のいずれか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項6】
a)前記ヒンジドメインが、配列番号8に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされ;
b)前記膜貫通ドメインが、配列番号9に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされ;
c)前記CD3ζシグナル伝達ドメインが、配列番号10に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされ;そして/又は
d)前記41BB共刺激ドメインが、配列番号12に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる、請求項1~
3のいずれか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項7】
a)前記ヒンジドメインが、配列番号8の核酸配列によりコードされ;
b)前記膜貫通ドメインが、配列番号9の核酸配列によりコードされ;
c)前記CD3ζシグナル伝達ドメインが、配列番号10の核酸配列によりコードされ、そして/又は
d)前記41BB共刺激ドメインが、配列番号12の核酸配列によりコードされる、
請求項1~
3のいずれか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項8】
前記CV-CARが、配列番号21又は22に対して少なくとも95%の配列同一性を有するCVペプチドに特異的に結合する、請求項1~
7のいずれか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項9】
前記CV-CARが、配列番号21又は22を含むCVペプチドに特異的に結合する、請求項1~
7のいずれか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項10】
少なくとも1つの共刺激ドメインに結合される抗原結合ドメイン、及びCD3ζシグナル伝達ドメインを含み、前記抗原結合ドメインが、配列番号21又は22に対して少なくとも95%の配列同一性を有するシトルリン化されたビメンチン(CV)ポリペプチド又はそのペプチドを含む抗原に特異的に結合する、
配列番号15のアミノ酸配列を有するCAR一本鎖可変フラグメント(scFv)
である、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するよう修飾された単離されたT細胞。
【請求項11】
前記共刺激ドメインが、CD28又は41BBポリペプチドを含む、請求項
10に記載の単離されたT細胞。
【請求項12】
a)前記CARが、配列番号8に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされるヒンジドメインを含み;
b)前記CARが、配列番号9に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる膜貫通ドメインを含み;
c)前記CD3ζシグナル伝達ドメインが、配列番号10に対して少なくとも95%は配列同一性を有する核酸配列によりコードされ;そして/又は
d)前記CD28共刺激ドメインが、配列番号11に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる、請求項
10に記載の単離されたT細胞。
【請求項13】
a)前記CARが、配列番号8の核酸配列によりコードされるヒンジドメインを含み;
b)前記CARが、配列番号9の核酸配列によりコードされる膜貫通ドメインを含み;
c)前記CD3ζシグナル伝達ドメインが、配列番号10の核酸配列によりコードされ;そして/又は
d)前記CD28共刺激ドメインが、配列番号11の核酸配列によりコードされる、請求項
10又は11に記載の単離されたT細胞。
【請求項14】
a)前記CARが、配列番号8に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされるヒンジドメインを含み;
b)前記CARが、配列番号9に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる膜貫通ドメインを含み;
c)前記CD3ζシグナル伝達ドメインが、配列番号10に対して少なくとも95%は配列同一性を有する核酸配列によりコードされ;そして/又は
d)前記41BB共刺激ドメインが、配列番号12に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる、請求項
10に記載の単離されたT細胞。
【請求項15】
a)前記CARが、配列番号8の核酸配列によりコードされるヒンジドメインを含み;
b)前記CARが、配列番号9の核酸配列によりコードされる膜貫通ドメインを含み;
c)前記CD3ζシグナル伝達ドメインが、配列番号10の核酸配列によりコードされ;そして/又は
d)前記41BB共刺激ドメインが、配列番号12の核酸配列によりコードされる、請求項
10に記載の単離されたT細胞。
【請求項16】
前記T細胞が哺乳類調節T細胞(Treg)である、請求項
10~15のいずれか1項に記載の単離されたT細胞。
【請求項17】
前記T細胞がCD4
+CD25
+ CD127
- FOXP3
+である、請求項
16に記載の単離されたT細胞。
【請求項18】
請求項1~
9のいずれか1項に記載のキメラ抗原受容体(CAR)をコードする発現ベクター。
【請求項19】
請求項
18に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項20】
抗原特異的結合ドメイン、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン及びCD3ζシグナル伝達ドメインを含み、前記抗原特異的結合ドメインが、配列番号21又は22に対して少なくとも95%の配列同一性を有するシトルリン化されたビメンチン(CV)ポリペプチド又はそのペプチドを含む抗原に特異的に結合する抗体又は抗体フラグメントを含み、ここで当該抗体フラグメントが、翻訳後修飾された抗原に特異的に結合する、
配列番号15のアミノ酸配列を有するCAR一本鎖可変フラグメント(scFv)である、キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項21】
前記共刺激ドメインが、CD28又は41BBポリペプチドを含む、請求項
20に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項22】
請求項1~
9及び請求項2
0及び2
1のいずれか1項に記載されるキメラ抗原受容体(CAR)、請求項
10~17のいずれか1項に記載の単離されたT細胞、請求項
18に記載の発現ベクター、又は請求項
19に記載の宿主細胞を含む医薬組成物。
【請求項23】
関節リウマチと診断された対象を治療するための医薬の製造のための、請求項1
0~1
7のいずれか1項に記載の単離されたT細胞の使用。
【請求項24】
更に、1つ以上の抗炎症剤及び/又は治療剤を含有し、当該抗炎症剤が、前炎症性サイトカインに特異的に結合する1つ以上の抗体を含む、請求項
23に記載の単離されたT細胞の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年2月11日に出願された米国仮特許出願第26/629,103号に対する米国特許法第119条(e)に基づく優先権の利益を主張し、その内容全体は参照により本明細書に組込まれる。
【0002】
本発明の実施形態は、キメラ抗原受容体(CAR)、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)、及び自己免疫疾患などの疾患の治療への使用に関する。
【背景技術】
【0003】
伝統的に、抗原特異的T細胞は、標的抗原に対して本来的に特異的な未梢血T細胞の選択的増殖により生成されて来た。しかしながら、ほとんどの癌及び自己抗原に対して特異的な多数のT細胞を選択し、そして増殖することは困難であり、多くの場合、不可能である。統合型ベクターによる遺伝子療法は、キメラ抗原受容体(CAR)のトランスジェニック発現が、未梢血T細胞の多量集団のエクスビボウィルスベクター形質導入により、任意の表面抗原に特異的な多数のT細胞の生成を可能にするので、この問題の解決作を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、部分的に、自己免疫疾患に関連する抗原を特異的に認識するキメラ抗原受容体(CAR)に関する。特に、CARは翻訳後修飾された抗原に対して特異的である。CARは、自己免疫応答又は細胞毒性T細胞を抑制する調節T細胞などのT細胞に形質導入される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、本発明の1つの側面によれば、抗原特異的結合ドメイン、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン及びCD3ζシグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)が提供され、ここで前記抗原特異的ドメインは、シトルリン化タンパク質、例えばシトルリン化細胞外マトリックスタンパク質、及びシトルリン化細胞表面タンパク質を含む、修飾されたポリペプチド又はそのペプチドに特異的に結合する。
【0006】
本発明の第2の側面によれば、抗原特異的結合ドメイン、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン及びCD3ζシグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)が提供され、ここで前記抗原特異的結合ドメインはシトルリン化ビメンチン(CV)ポリペプチド又はそのペプチドに特異的に結合する。
【0007】
第3の側面によれば、本発明は、少なくとも1つの共刺激ドメインに結合される抗原結合ドメイン、及びCD3ζシグナル伝達ドメインを含み、前記抗原結合ドメインがシトルリン化ビメンチン(CV)に特異的に結合する一本鎖可変フラグメント(scFv)を含む、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するよう修飾された単離されたT細胞を提供する。特定の実施形態によれば、抗原結合ドメインは、抗体、抗体フラグメント、ラクダ科なのボディ又はアプタマーを含む。
【0008】
特定の実施形態によれば、前記ヒンジドメインが、配列番号8に対して少なくとも50%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされ;前記膜貫通ドメインが、配列番号9に対して少なくとも50%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされ;前記CD3ζシグナル伝達ドメインが、配列番号10に対して少なくとも50%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされ;そして/又は前記CD28共刺激ドメインが、配列番号11に対して少なくとも50%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる。
【0009】
特定の実施形態によれば、前記ヒンジドメインが、配列番号8に対して少なくとも75%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされ;前記膜貫通ドメインが、配列番号9に対して少なくとも75%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされ;前記CD3ζシグナル伝達ドメインが、配列番号10に対して少なくとも75%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされ;そして/又は前記CD28共刺激ドメインが、配列番号11に対して少なくとも75%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる。
【0010】
特定の実施形態によれば、前記ヒンジドメインが、配列番号8に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされ;前記膜貫通ドメインが、配列番号9に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされ;前記CD3ζシグナル伝達ドメインが、配列番号10に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされ;そして/又は前記CD28共刺激ドメインが、配列番号11に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる。
【0011】
特定の実施形態によれば、前記ヒンジドメインが、配列番号8の核酸配列によりコードされ;前記膜貫通ドメインが、配列番号9の核酸配列によりコードされ;前記CD3ζシグナル伝達ドメインが、配列番号10の核酸配列によりコードされ、そして/又は前記CD28共刺激ドメインが、配列番号11の核酸配列によりコードされる。
【0012】
特定の実施形態によれば、前記ヒンジドメインが、配列番号8に対して少なくとも50%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされ;前記膜貫通ドメインが、配列番号9に対して少なくとも50%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされ;前記CD3ζシグナル伝達ドメインが、配列番号10に対して少なくとも50%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされ;そして/又は前記41BB共刺激ドメインが、配列番号12に対して少なくとも50%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる。
【0013】
特定の実施形態によれば、前記ヒンジドメインが、配列番号8に対して少なくとも75%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされ;前記膜貫通ドメインが、配列番号9に対して少なくとも75%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされ;前記CD3ζシグナル伝達ドメインが、配列番号10に対して少なくとも75%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされ;そして/又は前記41BB共刺激ドメインが、配列番号12に対して少なくとも75%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる。
【0014】
特定の実施形態によれば、前記ヒンジドメインが、配列番号8に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされ;前記膜貫通ドメインが、配列番号9に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされ;前記CD3ζシグナル伝達ドメインが、配列番号10に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされ;そして/又は前記41BB共刺激ドメインが、配列番号12に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる。
【0015】
特定の実施形態によれば、前記ヒンジドメインが、配列番号8の核酸配列によりコードされ;前記膜貫通ドメインが、配列番号9の核酸配列によりコードされ;前記CD3ζシグナル伝達ドメインが、配列番号10の核酸配列によりコードされ、そして/又は前記41BB共刺激ドメインが、配列番号12の核酸配列によりコードされる。
【0016】
特定の実施形態によれば、前記CV-CARは、配列番号3又は4に対して少なくとも50%の配列同一性を有するCVペプチドに特異的に結合する。特定の実施形態によれば、前記CV-CARは、配列番号3又は4に対して少なくとも75%の配列同一性を有するCVペプチドに特異的に結合する。
【0017】
特定の実施形態によれば、前記CV-CARは、配列番号3又は4に対して少なくとも95%の配列同一性を有するCVペプチドに特異的に結合する。
【0018】
特定の実施形態によれば、前記CV-CARは、配列番号3又は4を含むCVペプチドに特異的に結合する。
【0019】
特定の実施形態によれば、前記CV-CARは、配列番号21又は22に対して少なくとも50%の配列同一性を有するCVペプチドに特異的に結合する。特定の実施形態によれば、前記CV-CARは、配列番号21又は22に対して少なくとも75%の配列同一性を有するCVペプチドに特異的に結合する。
【0020】
特定の実施形態によれば、前記CV-CARは、配列番号21又は22に対して少なくとも95%の配列同一性を有するCVペプチドに特異的に結合する。
【0021】
特定の実施形態によれば、前記CV-CARは、配列番号21又は22を含むCVペプチドに特異的に結合する。
【0022】
第4の側面によれば、本発明は、少なくとも1つの共刺激ドメインに結合される抗原結合ドメイン、及びCD3ζシグナル伝達ドメインを含み、前記抗原結合ドメインがシトルリン化ビメンチン(CV)に特異的に結合する一本鎖可変フラグメント(scFv)を含む、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するよう修飾された単離されたT細胞を提供する。特定の実施形態によれば、共刺激ドメインは、CD28又は41BBポリペプチドを含む。特定の実施形態によれば、前記CARが、配列番号8に対して少なくとも50%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされるヒンジドメインを含み;前記CARが、配列番号9に対して少なくとも50%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる膜貫通ドメインを含み;前記CD3ζシグナル伝達ドメインが、配列番号10に対して少なくとも50%は配列同一性を有する核酸配列によりコードされ;そして/又は前記CD28共刺激ドメインが、配列番号11に対して少なくとも50%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる。特定の実施形態によれば、前記CARが、配列番号8に対して少なくとも75%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされるヒンジドメインを含み;前記CARが、配列番号9に対して少なくとも75%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる膜貫通ドメインを含み;前記CD3ζシグナル伝達ドメインが、配列番号10に対して少なくとも75%は配列同一性を有する核酸配列によりコードされ;そして/又は前記CD28共刺激ドメインが、配列番号11に対して少なくとも75%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる。特定の実施形態によれば、前記CARが、配列番号8に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされるヒンジドメインを含み;前記CARが、配列番号9に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる膜貫通ドメインを含み;前記CD3ζシグナル伝達ドメインが、配列番号10に対して少なくとも95%は配列同一性を有する核酸配列によりコードされ;そして/又は前記CD28共刺激ドメインが、配列番号11に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる。特定の実施形態によれば、前記CARが、配列番号8の核酸配列によりコードされるヒンジドメインを含み;前記CARが、配列番号9の核酸配列によりコードされる膜貫通ドメインを含み;前記CD3ζシグナル伝達ドメインが、配列番号10の核酸配列によりコードされ;そして/又は前記CD28共刺激ドメインが、配列番号11の核酸配列によりコードされる。特定の実施形態によれば、前記CARが、配列番号8に対して少なくとも50%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされるヒンジドメインを含み;前記CARが、配列番号9に対して少なくとも50%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる膜貫通ドメインを含み;前記CD3ζシグナル伝達ドメインが、配列番号10に対して少なくとも50%は配列同一性を有する核酸配列によりコードされ;そして/又は前記41BB共刺激ドメインが、配列番号12に対して少なくとも50%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる。特定の実施形態によれば、前記CARが、配列番号8に対して少なくとも75%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされるヒンジドメインを含み;前記CARが、配列番号9に対して少なくとも75%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる膜貫通ドメインを含み;前記CD3ζシグナル伝達ドメインが、配列番号10に対して少なくとも75%は配列同一性を有する核酸配列によりコードされ;そして/又は前記41BB共刺激ドメインが、配列番号12に対して少なくとも75%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる。特定の実施形態によれば、前記CARが、配列番号8に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされるヒンジドメインを含み;前記CARが、配列番号9に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる膜貫通ドメインを含み;前記CD3ζシグナル伝達ドメインが、配列番号10に対して少なくとも95%は配列同一性を有する核酸配列によりコードされ;そして/又は前記41BB共刺激ドメインが、配列番号12に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる。特定の実施形態によれば、前記CARが、配列番号8の核酸配列によりコードされるヒンジドメインを含み;前記CARが、配列番号9の核酸配列によりコードされる膜貫通ドメインを含み;前記CD3ζシグナル伝達ドメインが、配列番号10の核酸配列によりコードされ;そして/又は前記41BB共刺激ドメインが、配列番号12の核酸配列によりコードされる。
【0023】
特定の実施形態によれば、前記T細胞は哺乳類調節T細胞(Treg)である。特定の実施形態によれば、前記T細胞はCD4+CD25+ CD127- FOXP3+である。
【0024】
特定の実施形態によれば、発現ベクターは、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする。
【0025】
第5の側面によれば、本発明は、キメラ抗原受容体(CAR)、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする発現ベクター、又はキメラ抗原受容体(CAR)を発現するよう修飾されている単離されたT細胞を含む医薬組成物を提供する。
【0026】
第6の側面によれば、本発明は、シトルリン化ビメンチン(CV)抗原に特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)を発現するよう修飾されている単離されたT細胞を投与することを含む、関節リウマチと診断された対象を治療するための方法を提供する。特定の実施形態によれば、抗炎症剤及び/又は治療剤がまた、対象に投与される。特定の実施形態によれば、関節リウマチと診断された対象を治療するための方法は、対象から得られた生物学的サンプルからTリンパ球を単離し;CD4+T細胞(Treg)を、従来のT細胞(Tconv)から分離し、ここで前記Treg細胞はCD4+CD25+ CD127-であり、そして前記TconvはCD4+CD25―CD127+であり;シトルリン化ビメンチン(CV)抗原に特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)をコードする発現ベクターによりTreg細胞を形質導入し;前記形質導入されたTregを、抗-CD3/CD28ビーズで少なくとも一度エクスビボで拡大し、CV抗原に対して特異的な拡大されたTreg細胞を得;そしてTregを対象に再注入し、それにより対象を治療することを含んで成る。特定の実施形態によれば、前記CARが、少なくとも1つの共刺激ドメインに結合される抗原結合ドメイン、及びCD3ζシグナル伝達ドメインを含み、ここで前記抗原結合ドメインがシトルリン化ビメンチン(CV)に特異的に結合する一本鎖可変フラグメント(scFv)を含む。特定の実施形態によれば、共刺激ドメインは、CD28又は41BBポリペプチドである。特定の実施形態によれば、前記CARが、配列番号8に対して少なくとも50%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされるヒンジドメインを含み;前記CARが、配列番号9に対して少なくとも50%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる膜貫通ドメインを含み;前記CD3ζシグナル伝達ドメインが、配列番号10に対して少なくとも50%は配列同一性を有する核酸配列によりコードされ;そして/又は前記CD28共刺激ドメインが、配列番号11に対して少なくとも50%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる。特定の実施形態によれば、前記CARが、配列番号8に対して少なくとも50%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされるヒンジドメインを含み;前記CARが、配列番号9に対して少なくとも50%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる膜貫通ドメインを含み;前記CD3ζシグナル伝達ドメインが、配列番号10に対して少なくとも50%は配列同一性を有する核酸配列によりコードされ;そして/又は前記41BB共刺激ドメインが、配列番号12に対して少なくとも50%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる。
【0027】
第7の側面によれば、本発明は、T細胞、例えば調節T細胞(Treg)、細胞毒性T細胞(CTL)、従来のT細胞(Tconv)を含む種々のタイプの細胞;免疫系の他のタイプの細胞、例えばナチュラルキラー細胞(NK);幹細胞、細胞系などに形質導入されるキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。CARは、特定の疾患標的抗原、例えば細胞外抗原、細胞表面抗原、ウィルス抗原、翻訳後修飾された抗原などに対して生成された抗原結合ドメインを含む。
【0028】
他の側面は、以下に記載される。
定義
【0029】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。さらに、一般的に使用される辞書で定義されているような用語は、関連する技術の文脈での意味と一致する意味を持つものとして解釈されるべきであり、そして本明細書で明示的にそのように定義されない限り、理想的又は過度に正式な意味で解釈されないことが理解されるであろう。
【0030】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数形も含むことが意図されている。さらに、「含む(including)」、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「と共に(with)」、又はそれらの変形が、詳細な説明及び/又は特許請求の範囲で使用される範囲で、そのような用語は、「含む(comprising)」という用語と同様に包括的である。
【0031】
用語「約(about)」又は「およそ(approximately)」は、当業者によって決定される特定の値の許容可能な誤差範囲内を意味し、これは、値がどのように測定又は決定されるか、すなわち、 測定システムの限界に部分的に依存する。例えば、「約」は、当技術分野の慣行に従って、1以内又は1を超える標準偏差を意味することができる。あるいは、「約」は、所定の値又は範囲の最大20%、最大10%、最大5%、又は最大1%の範囲を意味することができる。あるいは、特に生物学的システム又はプロセスに関して、この用語は、値の5倍以内、および2倍以内の大きさの範囲内を意味することができる。特定の値が本出願及び特許請求の範囲に記載されている場合、特にことわらない限り、用語「約」は、特定の値の許容可能な誤差範囲内を意味すると想定されるべきである。
【0032】
本明細書で使用される場合、「親和性」という用語は、結合強度の尺度として意味される。 理論に縛られることなく、親和性は、抗体結合部位と抗原決定基との間の立体化学的適合の近さ、それらの間の接触領域のサイズ、及び荷電基と疎水基の分布に依存する。親和性はまた、「アビディティ」という用語も含み、これは、可逆的複合体の形成後の抗原-抗体結合の強度を指す。抗原に対する抗体の親和性を計算する方法は、親和性を計算するための結合実験の使用を含めて、当技術分野で知られている。機能的アッセイ(フローサイトメトリーアッセイなど)での抗体活性も、抗体親和性を反映している。抗体及び親和性は表現型で特徴付けられ、機能敵アッセイ(フローサイトメトリーアッセイなど)を使用して比較できる。
【0033】
本明細書で使用される場合、「剤」という用語は、疾患又は他の病状を予防、改善、又は治療することができる任意の分子、化学物質、組成物、薬物、治療剤、化学療法剤、又は生物学的薬剤を包含することを意味する。この用語には、小分子化合物、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA試薬、抗体、エピトープ認識部位を担持する、抗体フラグメント、例えばFab、Fab '、F(ab')2フラグメント、Fvフラグメント、一本鎖抗体、抗体模倣物(例えば、DARPins、アフィボディ分子、アフィリン、アフィチン、アンチカリン、アビマー、ファイノマー、クニッツドメインペプチド及びモノボディ)、ペプトイド、アプタマー; 酵素、ペプチド有機又は無機分子、天然又は合成化合物などを含む。薬剤は、臨床試験中、試験前試験中、又はFDA承認後の任意の段階で、本発明の方法に従ってアッセイすることができる。
【0034】
「改善する」とは、疾患の発症又は進行を減少、抑制、減弱、減少、停止、又は安定化させることを意味する。
【0035】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、無傷の抗体分子だけでなく、免疫原結合能力を保持する抗体分子のフラグメントも意味する。そのようなフラグメントはまた、当該分野で周知であり、そしてインビトロ及びインビボの両方で定期的に使用される。従って、本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、無傷の免疫グロブリン分子だけでなく、周知の活性フラグメントF(ab ')2及びFabも意味する。F(ab ')2、及び無傷の抗体のFcフラグメントを欠くFabフラグメントは、循環からより迅速に除去され、無傷の抗体の非特異的組織結合が少ない可能性がある(Wahl et al., J. Nucl. Med. 24:316-325 (1983)。本発明の抗体は、天然抗体全体、二重特異性抗体; キメラ抗体; Fab、Fab '、一本鎖V領域フラグメント(scFv)、融合ポリペプチド、及び従来にない抗体を含む。
【0036】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、用語「又は」は、内容が明確に他のことを指示しない限り、「及び/又は」を含むその意味で一般に使用される。
【0037】
用語「キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor)」又は「CAR」とは、本明細書で使用される場合、免疫細胞を活性化するか又は刺激できる細胞内シグナル伝達ドメインに融合される抗原結合ドメインを意味し、そして特定の実施形態によれば、CARはまた、膜貫通ドメインも含む。特定の実施形態によれば、CAR細胞外抗原結合ドメインは、ネズミ又はヒト化モノクローナル抗体の可変H及びL鎖領域の融合に由来する一本鎖可変フラグメント(scFv)から構成される。他方では、Fab(例えば、Fabライブラリーから得られた抗体からではなく)から誘導されたscFvが使用される。種々の実施形態によれば、scFvは、膜貫通ドメインに、及び次に、細胞内シグナル伝達ドメインに融合される。「第1世代」のCARは、抗原結合に基づいてCD3ζシグナルのみを提供するそれらのCARを含み、「第2世代」のCARは、共刺激(例えば、CD28又はCD137)及び活性化(CD3ζ)の両者を提供するそれらのCARを含む。「第3世代」のCARは、複数の共刺激(例えば、CD28及びCD137)及び活性化(CD3ζ)を提供するそれらのCARを含む。CAR T細胞が、CARコンストラクトを含むベクターがサイトカインカセットを有するサイトカイン殺害(TRUCKS)をリダイレクトした、第4世代のCARが記載されている。CARが連結される場合、CAR T細胞は前炎症性サイトカインを腫瘍病変中に沈着させる。CAR-T細胞は、キメラ抗原受容体を発現するT細胞である。本明細書で使用され、そして当業界において一般的に使用される「キメラ抗原受容体(CAR)」という語句は、細胞外ドメインへの抗原の結合に基づいて、特別な機能を実行するよう細胞を指示する細胞内ドメインに結合された抗原特異的細胞外ドメインを有する組換え融合タンパク質を言及する。用語「人工T細胞受容体」、「キメラT細胞受容体」及び「キメラ免疫受容体」とは、本明細書においてそれぞれ、用語「キメラ抗原受容体」と互換的に使用され得る。
【0038】
本明細書において使用される場合、アイテム、組成物、装置、方法、プロセス、システムなどの定義又は説明された要素に関して、用語「含む(comprising)」、「含む(comprise)」又は「含まれる(comprised)」、及びそれらの変形は、包括的又はオープンエンドであることを意味し、追加の要素を許可し、それにより、定義又は説明されるアイテム、組成物、装置、方法、プロセス、システムなどは、それらの指定された要素、又は必要に応じて、それらの同等物を含み、そして他の要素が含まれ得、そしてさらに、定義されたアイテム、組成物、装置、方法、プロセス、システムなどの範囲/定義内に含まれることを示唆する。
【0039】
「診断」又は「診断された」とは、病的状態の存在又は性質を同定することを意味する。診断方法は、それらの感度及び特異性において異なる。診断アッセイの「感度」は、検査で陽性となった罹患者の割合(「真の陽性」の割合)である。アッセイにより検出されなかった罹患者は、「偽陰性」である。罹患しておらず、そしてアッセイで陰性と判断された対象は、「真の陰性」と呼ばれる。診断アッセイの「特異性」は、1-偽陽性率であり、ここで「偽陽性」率は、疾患を持たずに陽性となるヒトの割合として定義される。特定の診断方法は状態の確定診断を提供できない場合があるが、その方法が診断に役立つ肯定的な指標を提供する場合はそれで十分である。
【0040】
「疾患」は、動物がホメオスタシスを維持することができず、そして疾患が改善されない場合、動物の健康は悪化し続ける、動物健康の状態である。疾患の例は、関節リウマチ(RA)、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病(CD)、強直性脊椎炎(AS)などの自己免疫疾患を含む。
【0041】
用語「ヒンジ」又は「ヒンジ領域」とは、柔軟なコネクター領域、例えば天然又は合成のポリペプチド、又は隣接するポリペプチド領域に構造的柔軟性及び間隔を提供する、任意の他のタイプの分子を言及する。
【0042】
「レンチウィルス」とは、本明細書で使用される場合、レトロウィルス科の属を指す。レンチウィルスは、非分裂細胞に感染することができることにおいて、レトロウィルス間でユニークであり;それらは、大量の遺伝子情報を宿主細胞のDNAに送達できるので、それらは遺伝子送達ベクターの最も効率的な方法の1つである。HIV、SIV及びFIVはすべてレンチウィルスの例である。
【0043】
本明細書で使用される場合、「スペーサー」又は「スペーサードメイン」としても言及される「リンカー」という用語は、本発明の融合タンパク質における2つのアミノ酸配列の間に任意に配置されるアミノ酸又はアミノ酸の配列を言及する。
【0044】
免疫原性組成物の「非経口」投与は、例えば皮下(s.c.)、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)、又は胸骨内注射、又は注入技術を含む。
【0045】
用語「患者」又は「個体」又は「対象」とは、本明細書では互換的に使用され、そして治療される哺乳類対象を言及し、そしてヒト患者が好ましい。場合によっては、本発明の方法は、実験動物に、獣医学的適用に、並びにマウス、ラット及びハムスターを含む齧歯動物、及び霊長類を含む、疾患についての動物モデルの開発に用途を見出している。
【0046】
本明細書で使用される場合、用語「一本鎖可変フラグメント」又は「scFv」とは、免疫グロブリンのH鎖(VH)及びL鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質である。H鎖(VH)及びL鎖(VL)は、直接結合されるか、又はVHのN末端とVLのC末端とを連結するか、又はVHのC末端とVLのN末端とを連結する、ペプチドコードのリンカー(例えば、10、15、20、25個のアミノ酸)により連結される。リンカーは通常、柔軟性のためにグリシンに富んでおり、そして溶解性のためにセリン又はトレオニンに富んでいる。定常領域の除去、及びリンカーの導入にもかかわらず、scFvタンパク質は、元の免疫グロブリンの特異性を保持している。単鎖Fvポリペプチド抗体は、Huston, et al. (Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 85:5879-5883, 1988)により記載されるように、VH及びVLをコードする配列を含む核酸から発現され得る。また、米国特許第5,091,513号、第5,132,405号及び 第4,956,778号;及び米国特許公開番号第20050196754号及び第20050196754号も参照のこと。阻害活性を有する拮抗性scFvが記載されている(例えば、Zhao et al., Hyrbidoma (Larchmt) 2008 27(6):455-51; Peter et al., J Cachexia Sarcopenia Muscle 2012 August 12; Shieh et al., J Imunol 2009 183(4):2277-85; Giomarelli et al., Thromb Haemost 2007 97(6):955-63; Fife et al., J Clin Invst 2006 116(8):2252-61; Brocks et al., Immunotechnology 1997 3(3): 173-84; Moosmayer et al., Ther Immunol 1995 2(10:31-40)を参照のこと)。刺激活性を有するアゴニストのscFvが記載されている(例えばPeter et al., J Bioi Chem 2003 25278(38):36740-7; Xie et al., Nat Biotech 1997 15(8):768-71; Ledbetter et al., Crit Rev Immunol l997 17(5-6):427-55; Ho et al., BioChim Biophys Acta 2003 1638(3):257-66を参照のこと)。
【0047】
本明細書で使用される場合、「治療する(treat)」、「治療する(treating)」、「治療(treatmento)」などの用語は、それに関連する障害及び/又は症状を軽減又は改善することを指す。除外されていないが、障害又は状態を治療することは、それに関連する障害、状態又は症状が完全に排除されることを必要としないことが理解されるであろう。
【0048】
「ベクター」は、単離された核酸を含み、そして単離された核酸を細胞の内部に送達するために使用され得る物質の組成物である。ベクターの例は、以下を含むが、但しそれらだけには限定されない:線状ポリヌクレオチド、イオン性又は両親媒性化合物に関連するポリヌクレオチド、プラスミド、及びウイルス。従って、用語「ベクター」とは、自律的に複製するプラスミド又はウィルスを含む。この用語はまた、例えばポリリジン化合物、リポソームなどのような、細胞への核酸の移入を促進する非プラスミド及び非ウィルス化合物を含むと解釈される。ウィルスベクターの例は、以下を含むことが、但しそれらだけには限定されない:アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクターなど。
【0049】
本明細書に開示される全ての遺伝子、遺伝子名、及び遺伝子産物は、本明細書に開示される組成物及び方法が適用できる任意の種からのホモログに対応することが意図される。従って、それらの用語は、ヒト及びマウスからの遺伝子及び遺伝子産物を含むが、但しそれらだけには限定されない。特定の種からの遺伝子又は遺伝子産物が開示される場合、この開示は例示のみを意図しており、そして明らかに現れる文脈が明確に示さない限り、限定として解釈されるべきではないことが理解される。従って、例えば、本明細書に開示される遺伝子又は遺伝子産物については、いくつかの実施形態によれば、哺乳類の核酸及びアミノ酸配列に関連し、限定されないが、他の哺乳類、魚類、両生類、爬虫類及び鳥類を含む他の動物からの相同及び/又はオーソロガス遺伝子及び遺伝子産物を包含することが意図される。好ましい実施形態によれば、遺伝子、核酸配列、アミノ酸配列、ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質はヒトのものである。用語「遺伝子」はまた、変異体を含むことも意図される。
【0050】
本明細書で提供される範囲は、範囲内の全ての値の省略表現であると理解される。例えば、1~50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、 26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50から成る群からの任意の数、数の組合せ、又は部分範囲を含むと理解される。
【0051】
本発明の実施は、特に断らない限り、化学、分子生物学、微生物学、組換えDNA、遺伝学、免疫学、細胞生物学、細胞培養及びトランスジェニック生物の従来の技法を使用し、それらは当業者の範囲内である。例えば、以下を参照のこと:Maniatis et al., 1982, Molecular Cloning (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.); Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning, 2nd Ed. (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.); Sambrook and Russell, 2001, Molecular Cloning, 3rd Ed. (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.); Ausubel et al., 1992), Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley & Sons, including periodic updates); Glover, 1985, DNA Cloning (IRL Press, Oxford); Anand, 1992; Guthrie and Fink, 1991; Harlow and Lane, 1988, Antibodies, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.); Jakoby and Pastan, 1979; Nucleic Acid Hybridization (B. D. Hames & S. J. Higgins eds. 1984); Transcription And Translation (B. D. Hames & S. J. Higgins eds. 1984); Culture Of Animal Cells (R. I. Freshney, Alan R. Liss, Inc., 1987); Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press, 1986); B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning (1984); the treatise, Methods In Enzymology (Academic Press, Inc., N.Y.); Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells (J. H. Miller and M. P. Calos eds., 1987, Cold Spring Harbor Laboratory); Methods In Enzymology, Vols. 154 and 155 (Wu et al. eds.), Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (Mayer and Walker, eds., Academic Press, London, 1987); Handbook Of Experimental Immunology, Volumes I-IV (D. M. Weir and C. C. Blackwell, eds., 1986); Riott, Essential Immunology, 6th Edition, Blackwell Scientific Publications, Oxford, 1988; Hogan et al., Manipulating the Mouse Embryo, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1986); Westerfield, M., The zebrafish book. A guide for the laboratory use of zebrafish (Danio rerio), (4th Ed., Univ. of Oregon Press, Eugene, 2000)。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】
図1は、いくつかの実施形態に従って実施されるプロセスを示す概略図である。
【0053】
【
図2】
図2は、(CV)-CAR Tregを生成するために、いくつかの実施形態に従って実施されるプロセスを示す概略図である。
【0054】
【
図3】
図3は、患者における抗原を標的とするCV-CAR Tregを示す概略図である。
【0055】
【
図4】
図4は、BVCA1抗体から合成された一本鎖可変フラグメント(scFv)のCVに対する特異性及び親和性の評価を示す。ヒト及びネズミのサンプルが評価された。酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)が使用された。結果は、BVCA1抗体(
図7に記載される)と同様に、BVCA1 scFvがシトルリン化ビメンチンに対して特異的であることを示す。
【0056】
【
図5A】
図5A、5Bは、BVCA1抗体から合成された一本鎖可変フラグメント(scFv)のCVに対する特異性及び親和性の評価を示す。解離定数(K
D)は、プラスモン共鳴(Biacore system)を用いて測定された。結果は、(
図5A)BVCA1完全ヒトIgGとヒトCVペプチドとの間のK
Dが10nMであり、そして(
図5B)BVCA1 scfとヒトCVペプチドとの間のK
Dが198nMであることを示す。結果は、BVCA1抗体のように、BVCA1 scFvがシトルリン化ビメンチンに対して特異的であることを示す。
【
図5B】
図5A、5Bは、BVCA1抗体から合成された一本鎖可変フラグメント(scFv)のCVに対する特異性及び親和性の評価を示す。解離定数(K
D)は、プラスモン共鳴(Biacore system)を用いて測定された。結果は、(
図5A)BVCA1完全ヒトIgGとヒトCVペプチドとの間のK
Dが10nMであり、そして(
図5B)BVCA1 scfとヒトCVペプチドとの間のK
Dが198nMであることを示す。結果は、BVCA1抗体のように、BVCA1 scFvがシトルリン化ビメンチンに対して特異的であることを示す。
【0057】
【
図6】
図6は、配列が非常に類似しており、そしてシトルリン化後にシトルリンに修飾される3つのアルギニンアミノ酸(Rと省略される)が両方の種において同一の位置にあることを示す、ヒト及びネズミビメンチンペプチド60-75の配列の比較を示す。
【0058】
【
図7】
図7は、BVCA1抗体によるCVについての特異性及び親和性の評価を示す。酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)が使用された。結果は、ヒト及びネズミの両方のBVCA1抗体が、ヒト及びネズミの両方のシトルリン化ビメンチンに対して特異的であることを示す。
【0059】
【
図8A】
図8Aは、CV-CARのドメインを示す、CV-CARの概略図を示す。
【0060】
【
図8B】
図8Bは、いくつかの実施形態に従って創造されたCV-CARの特定のドメインの1つの例の概略図を示す。CA-CARは、αCVscFv、ヒンジ領域及び膜貫通モチーフ(TM)、共刺激ドメイン(CD28(CV.28z-CAR)または41BB(CV.41BBz-CAR)のいずれか)、CD3ζを含む。CD28の天然TM部分が使用され;上皮成長因子受容体(EGFRt)の切断されたバージョンは、レポーターとして使用されるべきC末端にあり、そしてEGFRtレポーターの切断を可能にするT2AペプチドによりCAR配列から分離される。
【0061】
【
図9】
図9は、Tregに導入されたCV特異的CARのインビトロ生成、拡張及び評価についてのタイムラインの例を示す。
【0062】
【
図10A】
図10A、10Bは、CARコンストラクトの異なった長さのヒンジの分析を示す。形質導入後5日目に、CV-CAR
+Tregsが、EGFRtの発現に基づいてフローサイトメトリーにより分類された。次の分類されたCV-CAR Tregsが、抗-CDB/CD28ビーズ又はCV-ペプチド/ストレプトアビジン(CV-pep-SA)ビーズの存在又は非存在下で再刺激された。
図10A:再刺激後の3日目での活性化マーカーCD71及びCD25の発現の分析。
図10B:再刺激後の5日目での細胞拡張の分析。
【
図10B】
図10A、10Bは、CARコンストラクトの異なった長さのヒンジの分析を示す。形質導入後5日目に、CV-CAR
+Tregsが、EGFRtの発現に基づいてフローサイトメトリーにより分類された。次の分類されたCV-CAR Tregsが、抗-CDB/CD28ビーズ又はCV-ペプチド/ストレプトアビジン(CV-pep-SA)ビーズの存在又は非存在下で再刺激された。
図10A:再刺激後の3日目での活性化マーカーCD71及びCD25の発現の分析。
図10B:再刺激後の5日目での細胞拡張の分析。
【0063】
【
図11A】
図11A-11Dは、異なるバージョンのBVCA1 scFvを用いてのCV-CARコンストラクトの比較分析を示す。Tconv及びTreg細胞は、刺激誤の2日目で異なるバージョンのCV-CARコンストラクトにより形質導入された。形質導入効率がフローサイトメトリーにより評価された。細胞表面でCAR-レポーター遺伝子(
図11A)及びCV-CAR(
図11B)を発現する細胞の割合が示される。異なる刺激条件(IL-2のみ、抗-CD3/CD28ビーズ及びCA-SAビーズ)の存在下で2回目の刺激後2日で、活性化マーカーCD69及びCD71の発現が、フローサイトメトリーにより分析された(
図11C及び11D)。
【
図11B】
図11A-11Dは、異なるバージョンのBVCA1 scFvを用いてのCV-CARコンストラクトの比較分析を示す。Tconv及びTreg細胞は、刺激誤の2日目で異なるバージョンのCV-CARコンストラクトにより形質導入された。形質導入効率がフローサイトメトリーにより評価された。細胞表面でCAR-レポーター遺伝子(
図11A)及びCV-CAR(
図11B)を発現する細胞の割合が示される。異なる刺激条件(IL-2のみ、抗-CD3/CD28ビーズ及びCA-SAビーズ)の存在下で2回目の刺激後2日で、活性化マーカーCD69及びCD71の発現が、フローサイトメトリーにより分析された(
図11C及び11D)。
【
図11C】
図11A-11Dは、異なるバージョンのBVCA1 scFvを用いてのCV-CARコンストラクトの比較分析を示す。Tconv及びTreg細胞は、刺激誤の2日目で異なるバージョンのCV-CARコンストラクトにより形質導入された。形質導入効率がフローサイトメトリーにより評価された。細胞表面でCAR-レポーター遺伝子(
図11A)及びCV-CAR(
図11B)を発現する細胞の割合が示される。異なる刺激条件(IL-2のみ、抗-CD3/CD28ビーズ及びCA-SAビーズ)の存在下で2回目の刺激後2日で、活性化マーカーCD69及びCD71の発現が、フローサイトメトリーにより分析された(
図11C及び11D)。
【
図11D】
図11A-11Dは、異なるバージョンのBVCA1 scFvを用いてのCV-CARコンストラクトの比較分析を示す。Tconv及びTreg細胞は、刺激誤の2日目で異なるバージョンのCV-CARコンストラクトにより形質導入された。形質導入効率がフローサイトメトリーにより評価された。細胞表面でCAR-レポーター遺伝子(
図11A)及びCV-CAR(
図11B)を発現する細胞の割合が示される。異なる刺激条件(IL-2のみ、抗-CD3/CD28ビーズ及びCA-SAビーズ)の存在下で2回目の刺激後2日で、活性化マーカーCD69及びCD71の発現が、フローサイトメトリーにより分析された(
図11C及び11D)。
【0064】
【
図12A】
図12A-12Cは、Treg及びTconvにおけるレポーターEGFRtの表面発現の評価を示す。
図12A:異なるCARコンストラクトによる形質導入の後4日目でのフローサイトメトリーによる、Treg及びTconvにおけるレポーターEGFRtの表面発現の評価。全てのドナー(n=4)のデータの要約。
図12B:異なるCARコンストラクトによる形質導入の後4日目でのフローサイトメトリーによる、Treg及びTconvにおけるレポーターEGFRtの表面発現の代表的ドットプロット。
図12C:ビオチン化-CVペプチド(pep)/SA-FITC複合体の略図。
図12D:TregにおけるレポーターEGFRt及びCV-CARの表面発現の評価。Treg細胞が、形質導入の後5日目でFITC(CVpep-SA-FITC)及びEGFRt抗体により結合されたビオチン化CV-ペプチド/ストレプトアビジンテトラマーを用いて、CV-CARに対して染色された。ドットプロットは、4つの独立した実験の代表である。
【
図12B】
図12A-12Cは、Treg及びTconvにおけるレポーターEGFRtの表面発現の評価を示す。
図12A:異なるCARコンストラクトによる形質導入の後4日目でのフローサイトメトリーによる、Treg及びTconvにおけるレポーターEGFRtの表面発現の評価。全てのドナー(n=4)のデータの要約。
図12B:異なるCARコンストラクトによる形質導入の後4日目でのフローサイトメトリーによる、Treg及びTconvにおけるレポーターEGFRtの表面発現の代表的ドットプロット。
図12C:ビオチン化-CVペプチド(pep)/SA-FITC複合体の略図。
図12D:TregにおけるレポーターEGFRt及びCV-CARの表面発現の評価。Treg細胞が、形質導入の後5日目でFITC(CVpep-SA-FITC)及びEGFRt抗体により結合されたビオチン化CV-ペプチド/ストレプトアビジンテトラマーを用いて、CV-CARに対して染色された。ドットプロットは、4つの独立した実験の代表である。
【
図12C】
図12A-12Cは、Treg及びTconvにおけるレポーターEGFRtの表面発現の評価を示す。
図12A:異なるCARコンストラクトによる形質導入の後4日目でのフローサイトメトリーによる、Treg及びTconvにおけるレポーターEGFRtの表面発現の評価。全てのドナー(n=4)のデータの要約。
図12B:異なるCARコンストラクトによる形質導入の後4日目でのフローサイトメトリーによる、Treg及びTconvにおけるレポーターEGFRtの表面発現の代表的ドットプロット。
図12C:ビオチン化-CVペプチド(pep)/SA-FITC複合体の略図。
図12D:TregにおけるレポーターEGFRt及びCV-CARの表面発現の評価。Treg細胞が、形質導入の後5日目でFITC(CVpep-SA-FITC)及びEGFRt抗体により結合されたビオチン化CV-ペプチド/ストレプトアビジンテトラマーを用いて、CV-CARに対して染色された。ドットプロットは、4つの独立した実験の代表である。
【0065】
【
図13】
図13は、ビオチン化CVペプチドにより被覆されたSA DYNABEAD(登録商標)から形成されたビオチン化CV-pep-SAビーズの略図である。
【0066】
【
図14A】
図14A-14Cは、生成されたCV-CAR Tregsを活性化するCV-CARを介したシグナルの能力の評価を示す。フローサイトメトリーによるCV特異的CAR
+Tregsの富化の後、細胞は、抗-CD3/CD28ビーズ又はビオチン化CV(CV-pep-SA)ビーズの存在又は非存在下で再刺激された。
図14A:1日目でのクラスター化する細胞の評価。
図14B:3日目での活性化マーカーCD71及びCD25の発現の評価。
図14C:再刺激の5日目で測定された全ての条件での異なるCAR Treg集団の拡大倍率の評価。
【
図14B】
図14A-14Cは、生成されたCV-CAR Tregsを活性化するCV-CARを介したシグナルの能力の評価を示す。フローサイトメトリーによるCV特異的CAR
+Tregsの富化の後、細胞は、抗-CD3/CD28ビーズ又はビオチン化CV(CV-pep-SA)ビーズの存在又は非存在下で再刺激された。
図14A:1日目でのクラスター化する細胞の評価。
図14B:3日目での活性化マーカーCD71及びCD25の発現の評価。
図14C:再刺激の5日目で測定された全ての条件での異なるCAR Treg集団の拡大倍率の評価。
【
図14C】
図14A-14Cは、生成されたCV-CAR Tregsを活性化するCV-CARを介したシグナルの能力の評価を示す。フローサイトメトリーによるCV特異的CAR
+Tregsの富化の後、細胞は、抗-CD3/CD28ビーズ又はビオチン化CV(CV-pep-SA)ビーズの存在又は非存在下で再刺激された。
図14A:1日目でのクラスター化する細胞の評価。
図14B:3日目での活性化マーカーCD71及びCD25の発現の評価。
図14C:再刺激の5日目で測定された全ての条件での異なるCAR Treg集団の拡大倍率の評価。
【0067】
【
図15A】
図15A-15Cは、インビトロ拡張後のCV-CAR Tregsの表現型及び安定性の評価を示す。非形質導入Tregs及びCV-CAR Tregsは2回の刺激を受け、そして2回目の活性化は、抗―CD3/CD28ビーズ又はCV-SAビーズのいずれかによるものであった。
図15A:18日目でのCD25及びCD127表面発現についてのフローサイトメトリーによる細胞の評価。
図15B:18日目のFOXP3及びHelios核内発現についてのフローサイトメトリーによる細胞の評価。
図15C:細胞がPMA/イオノマイシンにより4時間、最後の2時間はブレフェルジンAの存在下で刺激された後、拡張されたTregsのサイトカイン産生の評価。次に、細胞が固定され、そしてIFN-g、IL-2、IL-10及びIL-17を標的とする抗体により染色された。
【
図15B】
図15A-15Cは、インビトロ拡張後のCV-CAR Tregsの表現型及び安定性の評価を示す。非形質導入Tregs及びCV-CAR Tregsは2回の刺激を受け、そして2回目の活性化は、抗―CD3/CD28ビーズ又はCV-SAビーズのいずれかによるものであった。
図15A:18日目でのCD25及びCD127表面発現についてのフローサイトメトリーによる細胞の評価。
図15B:18日目のFOXP3及びHelios核内発現についてのフローサイトメトリーによる細胞の評価。
図15C:細胞がPMA/イオノマイシンにより4時間、最後の2時間はブレフェルジンAの存在下で刺激された後、拡張されたTregsのサイトカイン産生の評価。次に、細胞が固定され、そしてIFN-g、IL-2、IL-10及びIL-17を標的とする抗体により染色された。
【
図15C】
図15A-15Cは、インビトロ拡張後のCV-CAR Tregsの表現型及び安定性の評価を示す。非形質導入Tregs及びCV-CAR Tregsは2回の刺激を受け、そして2回目の活性化は、抗―CD3/CD28ビーズ又はCV-SAビーズのいずれかによるものであった。
図15A:18日目でのCD25及びCD127表面発現についてのフローサイトメトリーによる細胞の評価。
図15B:18日目のFOXP3及びHelios核内発現についてのフローサイトメトリーによる細胞の評価。
図15C:細胞がPMA/イオノマイシンにより4時間、最後の2時間はブレフェルジンAの存在下で刺激された後、拡張されたTregsのサイトカイン産生の評価。次に、細胞が固定され、そしてIFN-g、IL-2、IL-10及びIL-17を標的とする抗体により染色された。
【0068】
【
図16A】
図16A、16Bは、関節リウマチ(RA)患者の関節から採取された滑液の存在下で活性化されるCV-CAR T細胞の能力の評価を示す。種々のCARコンストラクトを発現する拡張されたTregs、及び非形質導入Tregsが、CV-SAビーズ又はRA患者からの滑液と共に又はそれを伴わないで、IL-2の存在下で培養された。CD71の発現が、3.5日間の培養の後、フローサイトメトリーにより評価された。
図16A:CD71及びEGFRtの発現の評価(ドットプロット)。赤の数字(各グラフの右上隅)は、EGFRt
+画分中のCD71
+細胞の割合を表す。
図16B:異なるCAR Treg集団におけるEGFRt
-及びEGFRt
+画分中のCD71
+細胞の割合。
【
図16B】
図16A、16Bは、関節リウマチ(RA)患者の関節から採取された滑液の存在下で活性化されるCV-CAR T細胞の能力の評価を示す。種々のCARコンストラクトを発現する拡張されたTregs、及び非形質導入Tregsが、CV-SAビーズ又はRA患者からの滑液と共に又はそれを伴わないで、IL-2の存在下で培養された。CD71の発現が、3.5日間の培養の後、フローサイトメトリーにより評価された。
図16A:CD71及びEGFRtの発現の評価(ドットプロット)。赤の数字(各グラフの右上隅)は、EGFRt
+画分中のCD71
+細胞の割合を表す。
図16B:異なるCAR Treg集団におけるEGFRt
-及びEGFRt
+画分中のCD71
+細胞の割合。
【0069】
【
図17A】
図17A、17Bは、レンチウィルス形質導入の後のTregsの表面で発現されるCV-特異的CARの能力の評価を示す。CAR(抗ヒトIgG(H+L)抗体を使用する)及び上皮成長因子受容体(EGFRt)の両方が、フローサイトメトリーにより検出された。
図17A:非形質導入Treg、CV /CD28ζCAR
+ Treg、及びCV /41BBζCAR
+ Tregの表面でのCAR及びEGFRtの発現の評価。
図17B:種々の実験におけるCAR+細胞の割合。
【
図17B】
図17A、17Bは、レンチウィルス形質導入の後のTregsの表面で発現されるCV-特異的CARの能力の評価を示す。CAR(抗ヒトIgG(H+L)抗体を使用する)及び上皮成長因子受容体(EGFRt)の両方が、フローサイトメトリーにより検出された。
図17A:非形質導入Treg、CV /CD28ζCAR
+ Treg、及びCV /41BBζCAR
+ Tregの表面でのCAR及びEGFRtの発現の評価。
図17B:種々の実験におけるCAR+細胞の割合。
【0070】
【
図18A】
図18A-18Cは、関節リウマチ(RA)患者の関節から採取された滑液の存在下で活性化されるCV-CAR T細胞の能力の評価を示す。種々のCARコンストラクト(19.28ζ-CAR Tregs、19.41BBζ-CAR Tregs、CV.28ζ-CAR Tregs及び19.41BBζ-CAR Tregs)を発現する拡張されたTregs、及び非形質導入(UTD)Tregsが、CV-SAビーズ、又は3人の異なるRA患者からの滑液(SF)、又は対照の痛風患者からのSFと共に、又はそれらを伴わないで、IL-2の存在下で培養された。活性化マーカーCD71の発現が、培養の3.5日後にフローサイトメトリーにより評価された。
図18A:種々の条件下での共培養の後、CV.28ζ-CAR Treg集団におけるCD71及びEGFRtの発現。
図18B:痛風陰性対照患者又はRA SFからのSFの存在下での19.28ζ-CAR Tregs及びCV.28ζ-CAR TregsにおけるEGFRtに対するCD71の発現を示す代表的なドットプロット。
図18C:RA患者からのSFの存在下での共培養の後、異なるCAR Treg集団におけるEGFRt
-及びEGFRt
+画分の間のCD71
+細胞の割合の要約(n=4)。
【
図18B】
図18A-18Cは、関節リウマチ(RA)患者の関節から採取された滑液の存在下で活性化されるCV-CAR T細胞の能力の評価を示す。種々のCARコンストラクト(19.28ζ-CAR Tregs、19.41BBζ-CAR Tregs、CV.28ζ-CAR Tregs及び19.41BBζ-CAR Tregs)を発現する拡張されたTregs、及び非形質導入(UTD)Tregsが、CV-SAビーズ、又は3人の異なるRA患者からの滑液(SF)、又は対照の痛風患者からのSFと共に、又はそれらを伴わないで、IL-2の存在下で培養された。活性化マーカーCD71の発現が、培養の3.5日後にフローサイトメトリーにより評価された。
図18A:種々の条件下での共培養の後、CV.28ζ-CAR Treg集団におけるCD71及びEGFRtの発現。
図18B:痛風陰性対照患者又はRA SFからのSFの存在下での19.28ζ-CAR Tregs及びCV.28ζ-CAR TregsにおけるEGFRtに対するCD71の発現を示す代表的なドットプロット。
図18C:RA患者からのSFの存在下での共培養の後、異なるCAR Treg集団におけるEGFRt
-及びEGFRt
+画分の間のCD71
+細胞の割合の要約(n=4)。
【
図18C】
図18A-18Cは、関節リウマチ(RA)患者の関節から採取された滑液の存在下で活性化されるCV-CAR T細胞の能力の評価を示す。種々のCARコンストラクト(19.28ζ-CAR Tregs、19.41BBζ-CAR Tregs、CV.28ζ-CAR Tregs及び19.41BBζ-CAR Tregs)を発現する拡張されたTregs、及び非形質導入(UTD)Tregsが、CV-SAビーズ、又は3人の異なるRA患者からの滑液(SF)、又は対照の痛風患者からのSFと共に、又はそれらを伴わないで、IL-2の存在下で培養された。活性化マーカーCD71の発現が、培養の3.5日後にフローサイトメトリーにより評価された。
図18A:種々の条件下での共培養の後、CV.28ζ-CAR Treg集団におけるCD71及びEGFRtの発現。
図18B:痛風陰性対照患者又はRA SFからのSFの存在下での19.28ζ-CAR Tregs及びCV.28ζ-CAR TregsにおけるEGFRtに対するCD71の発現を示す代表的なドットプロット。
図18C:RA患者からのSFの存在下での共培養の後、異なるCAR Treg集団におけるEGFRt
-及びEGFRt
+画分の間のCD71
+細胞の割合の要約(n=4)。
【0071】
【
図19】
図19は、形質導入後3日でのフローサイトメトリーによるHEK293T細胞におけるEGFRtの発現の評価を示す。CV-CARコンストラクトは、形質導入の後、HEK293T細胞の細胞表面で効率的に発現される。
【0072】
【
図20A】
図20A、20Bは、PAD2-GFRレンチウィルスプラスミドによる形質導入の後、SKNBE2c腫瘍細胞系におけるシトルリン化ビメンチンの発現の評価を示す。ヒト酵素ペプチジルアルギニンデアミナーゼ(PAD2)の遺伝子が、GFPレポーターと共にレンチウィルスベクター中に挿入され、そして次に、細胞表面でビメンチンタンパク質を発現することが知られている腫瘍細胞系であるSKNBE2c細胞に形質導入された。
図20A:形質導入の3日後、SKNBE2c細胞におけるGFP発現がフローサイトメトリーにより評価された。
図20B:野生型(WT)及びPAD2-GFPにより形質導入されたSKNBE2c細胞におけるシトルリン化ビメンチンの存在が、免疫蛍光染色により評価された。
【
図20B】
図20A、20Bは、PAD2-GFRレンチウィルスプラスミドによる形質導入の後、SKNBE2c腫瘍細胞系におけるシトルリン化ビメンチンの発現の評価を示す。ヒト酵素ペプチジルアルギニンデアミナーゼ(PAD2)の遺伝子が、GFPレポーターと共にレンチウィルスベクター中に挿入され、そして次に、細胞表面でビメンチンタンパク質を発現することが知られている腫瘍細胞系であるSKNBE2c細胞に形質導入された。
図20A:形質導入の3日後、SKNBE2c細胞におけるGFP発現がフローサイトメトリーにより評価された。
図20B:野生型(WT)及びPAD2-GFPにより形質導入されたSKNBE2c細胞におけるシトルリン化ビメンチンの存在が、免疫蛍光染色により評価された。
【0073】
【
図21】
図2は、直接ELISAによる滑液中のシトルリン化ビメンチンの検出を示す。シトルリン化ビメンチンの存在が、RA及び陰性対照の痛風患者からの滑液中においてELISAにより評価された。シトルリン化及び非シトルリン化ビメンチンタンパク質が、陽性及び陰性対照として、それぞれ使用された。
【0074】
【
図22A】
図22A、22Bは、RA患者からの無細胞滑液の存在下でのCV特異的CAR TregsにおけるCAR介在性刺激の評価を示す。
図22A:RA患者からの全又は無細胞滑液上清の存在下での3日間の培養の後のEGFRtに対するCD71の発現を示す代表的なドットプロット。
図22B:RA患者からの全又は無細胞滑液との共培養後のCV.28z-CAR TregsにおけるEGFRt
-及びEGFRt
+画分間のCD71
+細胞の割合。
【
図22B】
図22A、22Bは、RA患者からの無細胞滑液の存在下でのCV特異的CAR TregsにおけるCAR介在性刺激の評価を示す。
図22A:RA患者からの全又は無細胞滑液上清の存在下での3日間の培養の後のEGFRtに対するCD71の発現を示す代表的なドットプロット。
図22B:RA患者からの全又は無細胞滑液との共培養後のCV.28z-CAR TregsにおけるEGFRt
-及びEGFRt
+画分間のCD71
+細胞の割合。
【0075】
【
図23A】
図23A、23Bは、TCR
KO CV.28z-CAR
+ Treg細胞の生成を示す。
図23A:TCR
KO CV.28z-CAR
+ Tregを生成するためのプロトコルの概略図。
図23B:9日目でのフローサイトメトリーによる富化後のCV.28z-CAR
+Treg細胞の純度。上のドットプロットは、0日目でのCRISPR/Cas9 TCRノックアウトを受けなかった細胞を示し、ところが下のドットプロットはそれを受けた細胞を示す。
【
図23B】
図23A、23Bは、TCR
KO CV.28z-CAR
+ Treg細胞の生成を示す。
図23A:TCR
KO CV.28z-CAR
+ Tregを生成するためのプロトコルの概略図。
図23B:9日目でのフローサイトメトリーによる富化後のCV.28z-CAR
+Treg細胞の純度。上のドットプロットは、0日目でのCRISPR/Cas9 TCRノックアウトを受けなかった細胞を示し、ところが下のドットプロットはそれを受けた細胞を示す。
【0076】
【
図24A】
図24A、24Bは、CAR介在性刺激後のCV-CAR Tregsの抑制機能の評価を示す。
図24A:TCR
KO CV.28z-CAR
+ Tregは、プレート結合の抗-CD3及びCV-pep-SAビーズ(CVb)の存在下で、示されるレスポンダー対サプレッサー細胞比率でレスポンダーCD4
+T細胞と共培養された。3H-チミジンが3日目で添加された。結果は、レスポンダー及びTreg細胞の共培養において、及び条件レスポンダーのみにおいて得られた3Hチミジンの取り込みにより測定された、1分当たりの平均(CPM)に基づいて計算された抑制の割合として示される(実験は重複して実施された)。
図21B:TCR
KO CV.28z-CAR
+ Tregは、プレート結合抗-CD3抗体及びCVb又はビメンチンビーズの存在下で、2:1の比率(レスポンダー:Tregs)でのレスポンダーCD4
+T細胞であった。19.28z-CAR
+Tregsは、プレート結合抗-CD3抗体及びCVbの存在下で2:1の比率(レスポンダー:Tregs)で、CFSE標識されたレスポンダーCD4
+T細胞と共に共培養された。データは
図2におけるようにして分析された。
【
図24B】
図24A、24Bは、CAR介在性刺激後のCV-CAR Tregsの抑制機能の評価を示す。
図24A:TCR
KO CV.28z-CAR
+ Tregは、プレート結合の抗-CD3及びCV-pep-SAビーズ(CVb)の存在下で、示されるレスポンダー対サプレッサー細胞比率でレスポンダーCD4
+T細胞と共培養された。3H-チミジンが3日目で添加された。結果は、レスポンダー及びTreg細胞の共培養において、及び条件レスポンダーのみにおいて得られた3Hチミジンの取り込みにより測定された、1分当たりの平均(CPM)に基づいて計算された抑制の割合として示される(実験は重複して実施された)。
図21B:TCR
KO CV.28z-CAR
+ Tregは、プレート結合抗-CD3抗体及びCVb又はビメンチンビーズの存在下で、2:1の比率(レスポンダー:Tregs)でのレスポンダーCD4
+T細胞であった。19.28z-CAR
+Tregsは、プレート結合抗-CD3抗体及びCVbの存在下で2:1の比率(レスポンダー:Tregs)で、CFSE標識されたレスポンダーCD4
+T細胞と共に共培養された。データは
図2におけるようにして分析された。
【発明を実施するための形態】
【0077】
自己免疫疾患の治療法を提供するという満たされていない必要性がある。例えば、関節リウマチを治療する治療法はまだ発見されていない。RA患者は生涯にわたる治療を受け、それに関連する全ての費用がかかり、副作用及び不便の可能性がある。この最初の満たされていない必要性は、適切な免疫寛容を回復することによりRA患者を治癒するために、本明細書で具体化される発明により対処される。より一般的には、癌におけるCAR T細胞の使用は集中的に研究されており、そして臨床試験において非常に有望な結果を示しているが、CAR T細胞の使用は、自己免疫疾患において、シトルリン化ビメンチン(CV)が役割を果たす腫瘍及び慢性閉塞性肺疾患(CDPD)などの他の疾患状態においては、まだ試験されていない。従って、本明細書において具体化される本発明により対処される第2の満たされていない必要性は、Tエフェクター細胞の代わりにTregsを用いることにより自己免疫疾患の治療のためにCAR T細胞療法を適用することである。
【0078】
従って、以下の実施例のセクションに詳細に説明されるように、キメラ抗原受容体(CAR)が、関節リウマチ(RA)患者における疾患性関節の細胞外マトリックスにおいて、及び一部の腫瘍細胞上で発現されるシトルリン化ビメンチン(CV)という翻訳後修飾されたタンパク質を特異的に標的とするよう構築された。CV-CARの一本鎖フラグメント可変(scFv)部分が、RA患者の末梢血から単離されたCVタンパク質に対して高い特異性を有する抗体から得られた。CV特異的scFv鎖が、レンチウィルスベクターにおいてクローン化された第2世代CARコンストラクトに挿入された。このCARコンストラクトは、Tエフェクター細胞及び調節T細胞の両者に導入された。CV-CAR Tregsは、CVペプチドテトラマーの存在下で、及びRA患者からの滑液と共に共培養される場合、それらの標的抗原を特異的に認識できた。抗原の認識の後、CAR-CV Tregsが活性化され、そしてTreg表現型を維持しながら、拡張された。
キメラ抗原受容体及びT細胞
【0079】
キメラ抗原受容体(CAR)は、抗原特異性をT細胞に割り当てるよう企画された、設計された膜貫通キメラタンパク質である。それらは、抗原結合領域、膜貫通領域及び細胞内シグナル伝達領域を含む組換え受容体である。
【0080】
一般的に、CV-CAR Tregsは、RA患者のための細胞療法の開発に使用するために生成された。例えば、
図2を参照のこと。取られる治療アプローチは、血液サンプルから細胞を単離することにより、患者(自己)のTregsを用いることである。次に、単離されたTregsは、CV-CARトランスジーンを担持するレンチウィルスベクターを用いて遺伝子操作される。CV-CAR Tregsは、インビトロで2回の拡張を受け、そして次に、抗TNF治療と組合して、又は組合さないで、患者に注入され、患者の部位でのTregsの効率が最適化される。例えば、
図1を参照のこと。
【0081】
CV―CARにより標的化された抗原は、翻訳後に修飾された抗原であり、そしてタンパク質のシトルリン化バージョンに結合するが、しかしその天然型には結合しない。CV-CARは、シトルリン化抗原の標的化するよう開発された最初のCARである。実施例セクションに記載される結果は、翻訳後修飾された抗原を標的化するCARはそれらの標的を正常に認識し、そして細胞を活性化できることを示しており、前記翻訳後修飾された抗原は自己免疫疾患及び一部、癌においてさえ、新規の治療戦略の開発における非常に興味ある治療ツールを表すという証拠を提供する。さらに、このCARは、CARの新規使用法を表す可能性がある多量体複合体に、いくつかの細胞により分泌される細胞外マトリックスタンパク質を標的にする。シトルリン化ビメンチン(CV)は、関節リュウマチ(RA)患者の炎症性関節の細胞外マトリックスに存在し、そしていくつかの腫瘍細胞上に発現される。ビメンチンは、タイプIIIの中間フィラメントタンパク質であり、そしてそのシトルリン化形は、関節の微小環境に多く存在する。CVの発現は、健康なヒトにおいては、脾臓、胎盤に限られる。RA患者の50%は、滑膜組織に非常に多く存在するCVを有する。例えば、
図3を参照のこと。
【0082】
従って、特定の実施形態によれば、キメラ抗原受容体(CAR)は、抗原特異的結合ドメイン、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン及びCD3ζシグナル伝達ドメインを含み、ここで前記抗原特異的結合ドメインは、シトルリン化ビメンチン(CV)ポリペプチド又はそのペプチドに対して特異的に結合する。CVポリペプチド又はそのペプチドは、翻訳後修飾される。特定の実施形態によれば、共刺激ドメインは、CD28又は41BBポリペプチドを含む。特定の実施形態によれば、抗原特異的結合ドメインは、抗体、抗体フラグメント又はアプタマーを含む。特定の実施形態によれば、抗体フラグメントは、一本鎖フラグメントである。例えば、一本鎖フラグメントは、一本鎖可変フラグメント(scFv)である。
【0083】
特定の実施形態によれば、シトルリン化ビメンチン(CV)ポリペプチド又はペプチドに対して特異的なキメラ抗原受容体は、配列番号1又は2を含む。
【0084】
特定の実施形態によれば、CD28共刺激ドメインを含むキメラ抗原受容体は、配列番号1として示される核酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる。特定の実施形態によれば、CD28共刺激ドメインを含むキメラ抗原受容体は、配列番号1として示される核酸配列に対して少なくとも75%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる。特定の実施形態によれば、CD28共刺激ドメインを含むキメラ抗原受容体は、配列番号1として示される核酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる。特定の実施形態によれば、CD28共刺激ドメインを含むキメラ抗原受容体は配列番号1を含む核酸配列によりコードされる。
【0085】
いくつかの実施形態によれば、CD28共刺激ドメインを含むキメラ抗原受容体は、配列番号1に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94% 、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有する配列を有する。
【0086】
特定の実施形態によれば、41BB共刺激ドメインを含むキメラ抗原受容体は、配列番号2として示される核酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる。特定の実施形態によれば、41BB共刺激ドメインを含むキメラ抗原受容体は、配列番号2として示される核酸配列に対して少なくとも75%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる。特定の実施形態によれば、41BB共刺激ドメインを含むキメラ抗原受容体は、配列番号2として示される核酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる。特定の実施形態によれば、41BB共刺激ドメインを含むキメラ抗原受容体は配列番号2を含む核酸配列によりコードされる。
【0087】
いくつかの実施形態によれば、41BB共刺激ドメインを含むキメラ抗原受容体は、配列番号2に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94% 、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有する配列を有する。
【0088】
特定の実施形態によれば、シトルリン化ビメンチン(CV)ポリペプチド又はペプチドに対して特異的なキメラ抗原受容体は、配列番号1又は2、又はそれに対して少なくとも70%(例えば、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%以上)の配列同一性を有するその変異体によりコードされる1又は2以上のキメラ抗原受容体成分(例えば、CV特異的結合ドメイン、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、及び/又はCD3ζシグナル伝達ドメイン)を含む。例えば、いくつかの実施形態によれば、キメラ抗原受容体は、配列番号1又は2によりコードされる抗-CV ScFv、例えば配列番号7の核酸配列又はそれに対して少なくとも約70%(例えば、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%以上)の配列同一性を有するその変異体によりコードされるscFvを含む。いくつかの実施形態によれば、キメラ抗原受容体は、配列番号1又は2によりコードされるヒトCD28スペーサードメイン、例えば配列番号8の核酸配列又はそれに対して少なくとも約70%(例えば、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%以上)の配列同一性を有するその変異体によりコードされるヒトCD28スペーサードメインを含む。いくつかの実施形態によれば、キメラ抗原受容体は、配列番号1又は2によりコードされるCD28膜貫通ドメイン、例えば配列番号9の核酸配列又はそれに対して少なくとも約70%(例えば、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%以上)の配列同一性を有するその変異体によりコードされるCD28膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態によれば、キメラ抗原受容体は、配列番号1又は2によりコードされるCD3ζシグナル伝達ドメイン、例えば配列番号10の核酸配列又はそれに対して少なくとも約70%(例えば、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%以上)の配列同一性を有するその変異体によりコードされるCD3ζシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態によれば、キメラ抗原受容体は、配列番号1又は2によりコードされる共刺激ドメイン、例えば配列番号11又は12の核酸配列又はそれに対して少なくとも約70%(例えば、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%以上)の配列同一性を有するその変異体によりコードされる共刺激ドメインを含む。
【0089】
特定の実施形態によれば、CD28共刺激ドメインを含むキメラ抗原受容体は、配列番号1で示される核酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有する核酸配列、例えば配列番号5の核酸配列によりコードされる。従って、いくつかの実施形態によれば、キメラ抗原受容体は、配列番号5に対して少なくとも50%(例えば、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%以上)の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる。特定の実施形態によれば、CD28共刺激ドメインを含むキメラ抗原受容体は、配列番号5として示される核酸配列に対して少なくとも75%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる。特定の実施形態によれば、CD28共刺激ドメインを含むキメラ抗原受容体は、配列番号5として示される核酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる。特定の実施形態によれば、CD28共刺激ドメインを含むキメラ抗原受容体は、配列番号5を含む核酸配列によりコードされる。
【0090】
いくつかの実施形態によれば、CD28共刺激ドメインを含むキメラ抗原受容体は、配列番号5に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94% 、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる。
【0091】
特定の実施形態によれば、CD28共刺激ドメインを含むキメラ抗原受容体は、配列番号13に対して少なくとも約70%(例えば、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%以上)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、キメラ抗原受容体は、配列番号13に対して少なくとも約80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、キメラ抗原受容体は、配列番号13に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、キメラ抗原受容体は、配列番号13に対して少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、キメラ抗原受容体は、配列番号13のアミノ酸配列を含む。
【0092】
特定の実施形態によれば、41BB共刺激ドメインを含むキメラ抗原受容体は、配列番号2で示される核酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有する核酸配列、例えば配列番号6の核酸配列によりコードされる。従って、いくつかの実施形態によれば、キメラ抗原受容体は、配列番号6に対して少なくとも50%(例えば、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%以上)の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる。特定の実施形態によれば、41BB共刺激ドメインを含むキメラ抗原受容体は、配列番号6として示される核酸配列に対して少なくとも75%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる。特定の実施形態によれば、41BB共刺激ドメインを含むキメラ抗原受容体は、配列番号6として示される核酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる。特定の実施形態によれば、41BB共刺激ドメインを含むキメラ抗原受容体は、配列番号6を含む核酸配列によりコードされる。
【0093】
いくつかの実施形態によれば、41BB共刺激ドメインを含むキメラ抗原受容体は、配列番号6に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94% 、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる。
【0094】
特定の実施形態によれば、41BB共刺激ドメインを含むキメラ抗原受容体は、配列番号14に対して少なくとも約70%(例えば、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%以上)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、キメラ抗原受容体は、配列番号14に対して少なくとも約80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、キメラ抗原受容体は、配列番号14に対して少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、キメラ抗原受容体は、配列番号14に対して少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、キメラ抗原受容体は、配列番号14のアミノ酸配列を含む。
【0095】
特定の実施形態によれば、CARは、CD28、ICOS、OX-40又は41BBを含む1又は2以上の共刺激ドメインを含む。本発明のGAR又は細胞の細胞内シグナル伝達領域は、本明細書で特定された他の領域に加えて、それらのタンパク質の1、2、3、4又は5つの全てからのシグナル伝達領域を含むことができる。いくつかの実施形態によれば、CD28共刺激ドメインは、配列番号11の核酸配列又は配列番号11に対して少なくとも約50%(例えば、少なくとも約55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95% 、96%、97%、98%、99%以上)の配列同一性を有するその変異体によりコードされる。いくつかの実施形態によれば、CD28共刺激ドメインは、配列番号19のアミノ酸配列又は配列番号19に対して少なくとも約70%(例えば、少なくとも約75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95% 、96%、97%、98%、99%以上)の配列同一性を有するその変異体によりコードされる。いくつかの実施形態によれば、41BB共刺激ドメインは、配列番号12の核酸配列又は配列番号12に対して少なくとも約50%(例えば、少なくとも約55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95% 、96%、97%、98%、99%以上)の配列同一性を有するその変異体によりコードされる。いくつかの実施形態によれば、41BB共刺激ドメインは、配列番号20のアミノ酸配列又は配列番号20に対して少なくとも約70%(例えば、少なくとも約75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95% 、96%、97%、98%、99%以上)の配列同一性を有するその変異体によりコードされる。
【0096】
本発明のCAR又は細胞の共刺激ドメインは、41BB及びCD28の両方からの共刺激ドメインを含むことができる。41BB共刺激ドメインは、CD28共刺激ドメインの下流に存在することができる。
【0097】
特定の実施形態によれば、CARは、CD3ζシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態によれば、CD3ζシグナル伝達ドメインは、配列番号10の核酸配列、又は配列番号10に対して少なくとも約50%(例えば、少なくとも約55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95% 、96%、97%、98%、99%以上)の配列同一性を有するその変異体によりコードされる。いくつかの実施形態によれば、CD3ζシグナル伝達ドメインは、配列番号18のアミノ酸配列、又は配列番号18に対して少なくとも約70%(例えば、少なくとも約75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95% 、96%、97%、98%、99%以上)の配列同一性を有するその変異体によりコードされる。
【0098】
特定の実施形態によれば、CARは、CD28からの膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態によれば、CD28膜貫通ドメインは、配列番号9の核酸配列、又は配列番号9に対して少なくとも約50%(例えば、少なくとも約55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95% 、96%、97%、98%、99%以上)の配列同一性を有するその変異体によりコードされる。いくつかの実施形態によれば、CD28膜貫通ドメインは、配列番号17のアミノ酸配列、又は配列番号17に対して少なくとも約70%(例えば、少なくとも約75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95% 、96%、97%、98%、99%以上)の配列同一性を有するその変異体によりコードされる。
【0099】
CARはまた、抗原結合領域とT細胞原形質膜との間に位置するスペーサー又はヒンジ領域も含むことができる。通常、スペーサー又はヒンジは、IgGサブクラスIgG1、IgG4、IgD又はCD8に由来する配列である。特定の実施形態によれば、ヒンジ領域は、CD28モチーフを含む。ヒンジ領域の長さは任意である。いくつかの実施形態によれば、ヒンジ領域は、1個のアミノ酸又は10個のアミノ酸又は20個のアミノ酸又は50個のアミノ酸又は60個のアミノ酸又は70個のアミノ酸又は80個のアミノ酸又は100個のアミノ酸又は120個のアミノ酸又は140個のアミノ酸又は160個のアミノ酸又は180個のアミノ酸又は200個のアミノ 酸又は250個のアミノ酸又は300個のアミノ酸又はそれらの間の任意の数のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態によれば、スペーサーは、配列番号8の核酸配列、又は配列番号8に対して少なくとも約50%(例えば、少なくとも約55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95% 、96%、97%、98%、99%以上)の配列同一性を有するその変異体によりコードされる。いくつかの実施形態によれば、スペーサーは、配列番号16のアミノ酸配列、又は配列番号16に対して少なくとも約70%(例えば、少なくとも約75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95% 、96%、97%、98%、99%以上)の配列同一性を有するその変異体によりコードされる。
【0100】
CARはさらに、リンカー領域を含むことができる。これは、柔軟性のためにグリシンに富んでいる。リンカー領域は、溶解性のためにセリン及びトレオニンに富んでいる。リンカー領域は、可変H(VH)鎖のN末端に可変L(VL)鎖のC末端を連結することができ、又はその逆もまた同様である。
抗原結合ドメイン
【0101】
特定の実施形態によれば、抗原結合ドメインは、抗体又は抗体フラグメントであるか、又はそれを含む。特定の実施形態によれば、抗体は、標的分子を結合することが知られているものを含む、ヒト抗体である。本明細書において、用語「抗体」とは、最も広い意味で使用され、そして損なわれていない抗体及び機能的(抗原結合)抗体を含む、ポリクローナル及びモノクローナル抗体を含み、それらのフラグメントは、以下も含む:フラグメント抗原結合(Fab)フラグメント、F(ab ')2フラグメント、Fab'フラグメント、Fvフラグメント、組換えIgG(rlgG)フラグメント、抗原に特異的に結合できる可変H鎖(VH)領域、一本鎖抗体フラグメント、 一本鎖可変フラグメント(scFv)、及び単一ドメイン抗体(例えば、sdAb、sdFv、ナノボディ、ラクダ科ナノボディ)又はフラグメント。この用語は、免疫グロブリンの遺伝子操作された及び/又は他方では、修飾された形、例えば、イントラボディ、ペプチボディ、キメラ抗体、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、及びヘテロコンジュゲート抗体、多重特異性、例えば、二重特異性、抗体、ダイアボディ、トリアボディ、およびテトラボディ、タンデムジ-scFv、タンデムトリ-scFvを包含する。特にことわらない限り、用語「抗体」とは、その機能的抗体フラグメントを包含すると理解されるべきである。その用語はまた、IgG及びそのサブクラス、IgM、IgE、IgA及びIgDを含む任意のクラス又はサブクラスの抗体を含む、損なわれていないか、又は完全長の抗体も包含する。
【0102】
いくつかの実施形態によれば、抗原結合ドメインは、ヒト化抗体又はそのフラグメントである。「ヒト化抗体」とは、全ての又は実質的に全てのCDRアミノ酸残基が非ヒトCDRに由来し、そして全ての又は実質的に全てのFRアミノ酸残基に基いたヒトFRに由来する抗体である。ヒト化抗体は、任意には、ヒト抗体由来の抗体定常領域の少なくとも一部を含むことができる。非ヒト抗体の「ヒト化形」は、親の非ヒト抗体の特異性及び親和性を保持しながら、典型的にはヒトに対する免疫原性を低めるためにヒト化を受けた非ヒト抗体の変異体を指す。いくつかの実施形態によれば、ヒト化抗体におけるいくつかのFR残基は、例えば抗体の特異性又は親和性を回復又は改善するために、非ヒト抗体(例えば、CDR残基が由来する抗体)からの対応する残基により置換される。
【0103】
いくつかの実施形態によれば、抗体のH鎖及びL鎖は、完全長であっても、又は抗原結合部分(Fab、F(ab ')2、Fv又は一本鎖Fvフラグメント(scFv))であっても良い。他の実施形態によれば、抗体H鎖定常領域は、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD、及びIgEから選択され、特に例えばIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4、より特定には、IgG1(例えば、ヒトIgG1)から選択される。別の実施形態によれば、抗体L鎖定常領域は、例えばカッパ又はラムダ、特にカッパから選択される。
【0104】
提供される抗体の中には、抗体フラグメントがある。「抗体フラグメント」とは、損なわれていない抗体が結合する抗原を結合する損なわれていない抗体の一部を含む損なわれていない抗体以外の分子を指す。抗体フラグメントの例は、以下を含むが、但しそれらだけには限定されない:Fv、Fab、Fab '、Fab'-SH、F(ab')2; ダイアボディ; 線形抗体; 可変H(VH)領域、scFvなどの単鎖抗体分子、及び単一ドメインVH単一抗体; 及び抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体。特定の実施形態によれば、抗体は、可変H鎖領域及び/又は可変L鎖領域を含む一本鎖抗体フラグメント、例えばscFvである。
【0105】
用語「可変領域」又は「可変ドメイン」とは、抗体、例えば抗体フラグメントに関して使用される場合、抗体の抗原への結合に関与する抗体H鎖又はL鎖のドメインを指す。天然抗体のH鎖及びL鎖(それぞれ、VH及びVL)の可変ドメインは一般的に類似する構造を有し、ここで各ドメインは4つの保存されたフレームワーク領域(FR)及び3つのCDRを含む(例えば、Kindt et al. Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., page 91 (2007)を参照のこと)。単一のVH又はVLドメインは、抗原結合特異性を付与するのに十分であり得る。さらに、特定の抗原を結合する抗体は、それぞれ、相補的VL又はVHドメインのライブラリーをスクリーニングするために、抗原を結合する抗体からのVH又はVLを用いて単離され得る。例えば、Portolano et al., J. Immunol. 150:880-887 (1993); Clarkson et al., Nature 352:624-628 (1991)を参照のこと。
【0106】
単一ドメイン抗体は、抗体のH鎖可変ドメインの一部、又はL領域ドメインの全て又は一部を含む抗体フラグメントである。
【0107】
抗体フラグメントは、損なわれていない抗体のタンパク質分解消化及び組換え宿主細胞による産生を含む種々の技法により製造され得る。いくつかの実施形態によれば、抗体は、組換えにより生成されたフラグメント、例えば天然に存在しない配置を含むフラグメント、例えば合成リンカー、例えばペプチドリンカーにより連結される複数の抗体領域又は鎖を有するそれらのフラグメント、及び/又は天然に存在する損なわれていない抗体の酵素消化により生成され得ないそれらのフラグメントである。いくつかの側面によれば、抗体フラグメントはscFvである。
【0108】
特定の実施形態によれば、CARの抗体又は抗体フラグメントは、特異的標的抗原又は翻訳後に修飾された標的抗原に対して高い結合親和性を有する。特定の実施形態によれば、高められた結合親和性は、参照抗原によって影響されるよりも大きい。
【0109】
特定の実施形態によれば、キメラ抗原は、配列番号3又は4に対して少なくとも50%の配列同一性を有するCVペプチドに対して特異的に結合する。特定の実施形態によれば、キメラ抗原は、配列番号3又は4に対して少なくとも75%の配列同一性を有するCVペプチドに対して特異的に結合する。特定の実施形態によれば、キメラ抗原は、配列番号3又は4に対して少なくとも95%の配列同一性を有するCVペプチドに対して特異的に結合する
【0110】
特定の実施形態によれば、キメラ抗原は、配列番号21又は22に対して少なくとも50%の配列同一性を有するCVペプチドに対して特異的に結合する。特定の実施形態によれば、キメラ抗原は、配列番号21又は22に対して少なくとも75%の配列同一性を有するCVペプチドに対して特異的に結合する。特定の実施形態によれば、キメラ抗原は、配列番号21又は22に対して少なくとも95%の配列同一性を有するCVペプチドに対して特異的に結合する。
【0111】
特定の実施形態によれば、キメラ抗原は、CVペプチドに対して特異的に結合する。
【0112】
T細胞:調節T細胞(Treg)は、Treg集団の遺伝的又は物理的切除の壊滅的な結果により証明されるように、免疫細胞の恒常性の維持に重要である。特に、Treg細胞は、他の免疫細胞に支配的な負の規制を強制することにより、免疫システムの秩序を維持する。天然又は適応(誘導)Tregに広く分類される;天然のTregは、免疫恒常性においてそれらの役割を実施するために、胸腺から発生し、そして移住するCD4+CD25+T細胞である。適応Tregは、胸腺の外でCD25(IL-2Rα)発現を獲得する非調節CD4+T細胞であり、そして炎症及び疾患プロセス、例えば自己免疫及び癌により典型的には、誘発される。
【0113】
Tregが、免疫抑制可溶性因子、例えばIL-9、IL-10及びTGFβの分泌、高親和性TCR及び他の共刺激分子、例えばGTLA-4、GITRを介した細胞接触介在性調節、及び細胞溶解活性を含む無数のメカニズムを通してそれらの機能を発揮するという証拠が増えている。TGFβの影響下で、適応Treg細胞は、CD4+Treg前駆体から、粘膜関連リンパ組織(MALT)を含む末梢部位で成熟し、ここでそれらは、CD25、CTLA4及びGITR/AITRを含むTregの典型的なマーカーの発現を獲得する。転写因子Foxp3のアップレギュレーション時に、Treg細胞はそれらの抑制効果を開始する。これは、エフェクターT細胞周期の停止又はアポトーシスを誘発することができるIL-10及びTGFβを含むサイトカインの分泌、及び樹状細胞の共刺激及び成熟の遮断を含む。
生存Treg細胞の単離
【0114】
Treg細胞を単離するために使用される手順は、以下の実施例セクションに詳細に提供される。
【0115】
一般的に、T調節細胞は、当初、免疫応答を抑制する能力を有するCD4+CD25+T細胞集団として同定された。Tregの「マスターレギュレーション」としてのFoxp3の同定は、Tregを異なるT細胞系統として定義する上で主要な工程であった。Tregの表面上の追加の抗原マーカーの同定は、生存Tregの同定及びFACSソーティングをより高い純度で可能にし、より高く富化された抑制Treg集団をもたらした。CD4及びCD25に加えて、マウス及びヒトの両方のTregは、GITR/AITR、CTLA-4を発現するが、しかし低レベルのCD127(IL-7Ra)のみを発現することが現在知られている。さらに、Tregは、表面マーカーの発現に基づいて同定され得る異なる状態で存在することができる。CD4+胸腺細胞から胸腺において発生するTregは、「天然」Tregとして知られているが、しかしながら、Tregはまた、低用量のTCR、TGFβ及びIL-2に応答してナイーブCD4+T細胞から末梢において誘発され得る。それらの「誘発された」Tregは、免疫抑制サイトカインIL-10を分泌する。Tregの表現型は、それらが活性化すると、再び変化し、そしてマウス及びヒトにおけるGARPを含むマーカー、及びマウスにおけるCD103は、活性化されたTregの同定のために有用であることが知られている。CD45RO及びCD45RAは、ヒトCD4細胞の異なるサブセットにより独占的に発現され、そしてヒトCD4+FoxP3+T細胞を以下の3つの表現型的に及び機能的に異なるサブ集団に分割するために使用され得る:CD45RA + CD25 + FoxP3low休止Treg細胞及びCD45RO + CD25highFoxP3high活性化Treg細胞(どちらもインビトロで抑制的であった)、及び炎症性サイトカイン産生CD45RO + CD25 + FoxP3low非抑制エフェクターT細胞(Teffs)。
【0116】
従って、特定の実施形態によれば、単離されたT細胞は、少なくとも1つの共刺激ドメインに結合される抗原結合ドメイン、及びCD3ζシグナル伝達ドメインを含み、前記抗原結合ドメインがシトルリン化ビメンチン(CV)に特異的に結合する一本鎖可変フラグメント(scFv)を含む、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するよう修飾される。特定の実施形態によれば、共刺激ドメインは、CD28又は41BBポリペプチドを含む。特定の実施形態によれば、CD28共刺激ドメインを含むキメラ抗原受容体は、配列番号1に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94% 、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有する配列を有する。いくつかの実施形態によれば、41BB共刺激ドメインを含むキメラ抗原受容体は、配列番号2に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94% 、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有する配列を有する。特定の実施形態によれば、CD28共刺激ドメインを含むキメラ抗原受容体は、配列番号5に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94% 、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる1又は2以上のCAR成分(例えば、CV特異的結合ドメイン、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン及び/又はCD3ζシグナル伝達ドメイン)を含む。特定の実施形態によれば、CD28共刺激ドメインを含むキメラ抗原受容体は、配列番号13に対して少なくとも70%(例えば、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上)の配列同一性を有するアミノ酸から選択された1又は2以上のCAR成分(例えば、CV特異的結合ドメイン、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン及び/又はCD3ζシグナル伝達ドメイン)を含む。いくつかの実施形態によれば、41BB共刺激ドメインを含むキメラ抗原受容体は、配列番号6に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94% 、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる1又は2以上のCAR成分(例えば、CV特異的結合ドメイン、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン及び/又はCD3ζシグナル伝達ドメイン)を含む。いくつかの実施形態によれば、41BB共刺激ドメインを含むキメラ抗原受容体は、配列番号14に対して少なくとも70%(例えば、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上)の配列同一性を有するアミノ酸から選択された1又は2以上のCAR成分(例えば、CV特異的結合ドメイン、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン及び/又はCD3ζシグナル伝達ドメイン)を含む。特定の実施形態によれば、CD28共刺激ドメインを含むキメラ抗原受容体は、配列番号5に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94% 、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる。特定の実施形態によれば、CD28共刺激ドメインを含むキメラ抗原受容体は、配列番号13に対して少なくとも70%(例えば、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上)の配列同一性を有するアミノ酸を含む。いくつかの実施形態によれば、41BB共刺激ドメインを含むキメラ抗原受容体は、配列番号6に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94% 、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有する核酸配列によりコードされる。いくつかの実施形態によれば、41BB共刺激ドメインを含むキメラ抗原受容体は、配列番号14に対して少なくとも70%(例えば、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上)の配列同一性を有するアミノ酸を含む。
【0117】
特定の実施形態によれば、T細胞は、哺乳類調節T細胞(Treg)であり、ここでTreg細胞は、CD4 +、CD25 +、CD127-、FOXP3 +及び/又はHelios +/-である。他の実施形態によれば、T細胞は、哺乳類調節T細胞(Treg)であり、ここでTreg細胞は、CD4 +、CD25 +、CD127-、及び/又はFOXP3 +である。
細胞の単離方法
【0118】
当業界において知られている任意の数の方法が、細胞、例えばTreg、又は対象の治療の実施に使用され得る任意の他の細胞型を単離するために使用され得る。従って、キメラ抗原受容体、例えばCARを発現する、種々の他の遺伝子操作された細胞も提供される。細胞は一般的に、真核細胞、例えば哺乳類細胞であり、そして典型的には、ヒト細胞である。いくつかの実施形態によれば、細胞は、血液、骨髄、リンパ、又はリンパ系器官に由来し、免疫系の細胞、例えば自然又は適応免疫系の細胞、例えばリンパ球を含む骨髄系又はリンパ系細胞、典型的にはT細胞及び/又はNK細胞である。他の例示的な細胞は、幹細胞、例えば人工多能性幹細胞(iPSC)を含む、多能性及び多能性幹細胞を含む。細胞は典型的には、初代細胞、例えば対象から直接単離された及び/又は対象から単離され、そして凍結されたそれらの細胞である。いくつかの実施形態によれば、細胞は、T細胞又は他の細胞型の1又は2以上のサブセット、例えば全細胞集団、CD4+細胞、CD8+細胞、及びそれらの亜集団、例えば機能、活性化状態、成熟度、分化の可能性、拡大、再循環、局在、および/または持続能力、抗原特異性、抗原受容体のタイプ、特定の臓器またはコンパートメント内の存在、マーカーまたはサイトカイン分泌プロファイル、及び/又は分化の程度により定義されるそれらの細胞を含む。治療される対象に関して、細胞は同種異系及び/又は自己由来であり得る。方法には、既知の方法が含まれる。いくつかの側面によれば、例えば、既知技法によれば、細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)などの多能性幹細胞である。いくつかの実施形態によれば、方法は、本明細書に記載されるように、対象から細胞を単離し、それらを調製し、処理し、培養し、そして/又は操作し、そして凍結保存の前又は後、それらを同じ患者に再導入することを含む。
【0119】
T細胞及び/又はCD4+及び/又はCD8+T細胞のサブタイプ及び亜集団は、以下である:ナイーブT(TN)細胞、エフェクターT細胞(TEFF)、メモリーT細胞、及びそれらのサブタイプ、例えば幹細胞記憶T(TSCMX)、中央記憶T(TCM)、エフェクター記憶T(TEM)、又は最終分化エフェクター記憶T細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、未成熟T細胞、成熟T細胞、ヘルパーT細胞、細胞障害性T細胞、粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞、天然に存在しそして適応性のある調節性T(Treg)細胞、ヘルパーT細胞、例えばTH1細胞、TH2細胞、TH3細胞、TH17細胞、TH9細胞、TH22細胞、濾胞ヘルパーT細胞、α/βT細胞、及びδ/γT細胞。
【0120】
いくつかの実施形態によれば、細胞はナチュラルキラー(NK)細胞である。いくつかの実施形態によれば、細胞は、単球又は顆粒球、例えば骨髄細胞、マクロファージ、好中球、樹状細胞、肥満細胞、好酸球及び/又は好塩基球である。
【0121】
いくつかの実施形態によれば、細胞は、遺伝子工学を介して導入された1又は2以上の核酸を含み、そしてそれにより、そのような核酸の組換え産物又は遺伝子操作された産物を発現する。いくつかの実施形態によれば、核酸は異種性であり、すなわち通常、細胞又は細胞から得られたサンプル、例えば別の生物又は細胞から得られたサンプルには存在せず、そのサンプルは通常、操作されている細胞及び/又はそのような細胞が由来する生物には見出されない。いくつかの実施形態によれば、核酸は、複数の異なる細胞からの種々のドメインをコードする核酸のキメラ組合せを含む、天然には存在せず、例えば天然は見出されない核酸である。
【0122】
細胞を単離し、そしてそれらの細胞をCARにより操作する例示的な方法は、以下の実施例セクションに記載されている。
【0123】
いくつかの実施形態によれば、操作された細胞の調製は、1又は2以上の培養及び/又は調製工程を含む。CARの導入のための細胞は、サンプル、例えば生物学的サンプル、例えば対象から得られるか、又は対象に由来するサンプルであり得る。いくつかの実施形態によれば、細胞が単離される対象は、疾患又は状態を有するか、又は細胞療法の必要性があるか、又は細胞療法が行われる対象である。対象は、いくつかの実施形態によれば、細胞が単離され、処理され、そして/又は操作される養子細胞療法などの特定の治療的介入を必要とするヒトである。
【0124】
従って、細胞は、いくつかの実施形態によれば、初代細胞、例えば初代ヒト細胞である。サンプルは、対象から直接的に採取された組織、体液及び他のサンプル、並びに、1又は2以上の処理工程、例えば分離、遠心分離、遺伝子工学(例えば、ウィルスベクターによる形質導入)、洗浄及び/又はインキュベーションから得られたサンプルである。生物学的サンプルは、生物学的供給源から直接的に得られたサンプル、又は処理されるサンプルであり得る。生物学的サンプルは、以下を含むが、但しそれらだけには限定されない:体液、例えば血液、血漿、血清、脳脊髄液、滑液、尿及び汗、組織、及びそれらに由来する処理済みサンプルを含む器官サンプル。
【0125】
いくつかの側面によれば、細胞が由来されるか又は単離されるサンプルは、血液又は血液由来のサンプルであるか、又はアフェレーシス又は白血球アフェレーシス産物であるか、又はそれに由来する。例示的なサンプルは、以下を含む:全血、末梢血単核細胞(PBMC)、白血球、骨髄、胸腺、組織生検、腫瘍、白血病、リンパ腫、リンパ節、腸関連リンパ組織、粘膜関連リンパ組織、脾臓、他のリンパ組織、肝臓、肺、胃、腸、結腸、腎臓、膵臓、乳房、骨、前立腺、子宮頸部、精巣、卵巣、扁桃腺、または他の器官、及び/又はそれらに由来する細胞。サンプルは、細胞療法、例えば養子細胞療法に関連して、自己及び同種異系の源からのサンプルを含む。
【0126】
いくつかの実施形態によれば、細胞は、細胞系、例えばT細胞系に由来する。細胞は、いくつかの実施形態によれば、異種起源、例えばマウス、ラット、非ヒト霊長類、又はブタから得られる。
【0127】
いくつかの実施形態によれば、細胞の単離は、1又は2以上の調製及び/又は非親和性に基づく細胞分離工程を含む。いくつかの例によれば、例えば不要な成分を除去し、所望の成分を富化し、溶解し、又は特定の試薬に対して感受性のある細胞を除去するために、細胞が洗浄され、遠心分離され、そして/又は1又は2以上の試薬の存在下でインキュベートされる。いくつかの例によれば、細胞は、1又は2以上の特性、例えば密度、付着特性、サイズ、感度、及び/又は特定の成分に対する耐性に基いて分離される。
【0128】
いくつかの例によれば、対象の循環血液からの細胞が、アフェレーシス又は白血球アフェレーシスにより得られる。サンプルは、いくつかの側面によれば、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球細胞、赤血球細胞及び/又は血小板を含むリンパ球を含み、そしていくつかの側面によれば、赤血球細胞及び血小板以外の細胞を含む。
【0129】
いくつかの実施形態によれば、対象から採取された血液細胞は、例えば血漿画分を除去するために、及びその後の処理工程のために適切な緩衝液又は培地に細胞を入れるために洗浄される。いくつかの実施形態によれば、細胞はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)により洗浄される。いくつかの実施形態によれば、洗浄溶液は、カルシウム及び/又はマグネシウム、及び/又は多くの又は全てのニ価カチオンを欠いている。いくつかの側面によれば、洗浄工程は、半自動「フロースルー」遠心分離機(例えば、the Cobe 2991 cell processor, Baxter)により、その製造業者の説明書に従って達成される。いくつかの側面によれば、洗浄工程は、接線流濾過(TFF)により、その製造業者の説明書に従って達成される。いくつかの実施形態によれば、細胞は、洗浄の後、種々の生体適合性緩衝液、例えばCa++/Mg++を含まないPBSに再懸濁される。特定の実施形態によれば、血液細胞サンプル中の成分は除去され、そして細胞は培養培地に再懸濁される。
【0130】
いくつかの実施形態によれば、この方法は、密度に基づく細胞分離法、例えば赤血球細胞を溶解することによる末梢血液からの白血球の分離及びパーコール又はフィコール勾配を通しての遠心分離を含む。
【0131】
いくつかの実施形態によれば、単離方法は、1又は2以上の特定分子、例えば表面マーカー、例えば表面タンパク質、細胞内マーカー、又は核酸の細胞における発現又は存在に基づいての異なる細胞型の分離を含む。いくつかの実施形態によれば、分離は、親和性-又は免疫親和性に基づく分離である。例えば、単離は、いくつかの側面によれば、例えば、マーカーを特異的に結合する抗体又は結合パートナーとのインキュベーション、続いて一般的には、洗浄工程、及び抗体又は結合パートナーに結合しているそれらの細胞から、抗体又は結合パートナーを結合している細胞の分離による、1又は2以上のマーかー、典型的には細胞表面マーカーの細胞発現又は発現レベルに基づいての細胞及び細胞集団の分離を含む。
【0132】
そのような分離工程は、試薬を結合した細胞がさらなる使用のために保持される正の選択、及び/又は抗体又は結合パートナーに結合していない細胞が保持されている負の選択に基づかれ得る。いくつかの例によれば、両画分がさらなる使用のために保持される。いくつかの側面によれば、負の選択は、異種集団における細胞型を特異的に固定する抗体が利用できない場合、特に有用であり、分離は所望の集団以外の細胞により発現されたマーカーに基づいて最良に実行される。
【0133】
分離は、特定の細胞集団、又は特定のマーカーを発現する細胞の100%富化又は除去をもたらす必要はない。例えば、マーカーを発現する細胞などの特定型の細胞の正の選択又は富化は、そのような細胞の数又は割合を高めることを指すが、しかしマーカーを発現しない細胞の完全な不在をもたらす必要はない。同様に、特定の細胞、例えばマーカーを発現する細胞の負の選択、除去又は枯渇は、そのような細胞の数又は割合を低めることを指すが、しかしそのような全ての細胞の完全な除去をもたらす必要はない。
【0134】
いくつかの例によれば、複数回の分離工程が実施され、ここで1つの工程からの正の又は負の選択された画分が、別の分離工程、例えば続く正の又は負の選択にゆだねられる。いくつかの例によれば、1回の分離工程は、複数のマーカーを同時に発現する細胞を、負の選択のための標的となるマーカーに対してそれぞれ特異的な、複数の抗体又は結合パートナーと共に細胞をインキュベートすることにより、枯渇することができる。同様に、複数の細胞型は、種々の細胞型で発現される複数の抗体又は結合パートナーと共に細胞をインキュベートすることにより、同時に確実に選択され得る。例えば、いくつかの側面によれば、T細胞の特定の亜集団、例えば陽性細胞、又は1又は2以上のマーカーを発現する細胞、例えばCD4 +、CD25 +、CD127-、FOXP3 +、及び/又はHelios +が存在する。
【0135】
T細胞は、正の又は負の選択技法により単離される。例えば、CD3+、CD28+T細胞は、抗-CD3/抗-CD28接合の磁気ビーズ(例えば、DYNABEADS(登録商標)M-450 CD3 / CD28 T細胞エキスパンダー)を用いて確実に選択され得る。
【0136】
いくつかの実施形態によれば、単離は、正の選択による特定の細胞集団の富化、又は負の選択による特定の細胞集団の枯渇により実施される。いくつかの実施形態によれば、正の又は負の選択は、それぞれ、正に又は負に選択された細胞上で発現されるか、又は比較的高レベル(マーカー〔1〕high)で発現された1又は2以上の表面マーカー(マーカー〔1〕)に対して特異的に接合する1又は2以上の抗体又は他の結合剤と共に細胞をインキュベートすることにより達成される。
【0137】
いくつかの実施形態によれば、T細胞は、非T細胞、例えばB細胞、単球、又はCD14などの他の白血球細胞上で発現されるマーカーの負の選択により、PBMCサンプルから分離される。いくつかの側面によれば、CD4+又はCD8+選択工程が、CD4+ヘルパー及びCD8+細胞毒性T細胞を分離するために使用される。そのようなCD4+及びCD8+集団はさらに、1又は2以上のナイーブ、記憶及び/又はエフェクターT細胞亜集団上で発現されるか、又は比較的高度に発現されるマーカーの正の又は負の選択により、亜集団に分類される。
【0138】
いくつかの実施形態によれば、CD8+細胞はさらに、ナイーブ、中央記憶、エフェクター記憶及び/又は中央記憶幹細胞について、例えばそれぞれの亜集団に関連する表面抗原に基いての正の又は負の選択により、富化されるか、又は枯渇される。いくつかの実施形態によれば、中央記憶T(TCM)細胞の富化は、効能を高めるために、例えば投与の後、長期生存、拡張及び/又は正着を改善するために実施され、これは、いくつかの側面によれば、そのような亜集団において、特に強い。Terakura et al. (2012) Blood.1:72-82; Wang et al. (2012) J Immunother. 35(9):689-701を参照のこと。いくつかの実施形態によれば、TCM富化されたCD8+T細胞及びCD4+T細胞を組み合わせると、さらに効能が増強する。
【0139】
いくつかの実施形態によれば、中央記憶T(TCM)細胞の富化は、CD45RO、CD62L、CCR7、CD28、CD3、及び/又はCD127の正の又は高い表面発現に基かれ;いくつかの側面によれば、それはCD45RA及び/又はグランザイムBを発現するか又は高く発現する細胞についての負の選択にも基づかれる。
【0140】
いくつかの側面によれば、CD4発現に基づく選択工程は、CD4+細胞集団又は亜集団を生成するために使用され、これにより、CD4に基づく分離からの正の及び負の画分の両方が保持され、そして方法の続く工程に、任意には、1又は2以上のさらなる正の又は負の選択工程に続いて使用される。
【0141】
1つの例においては、PBMCのサンプル、又は他の白血球細胞サンプルは、CD4+細胞の選択にゆだねられ、ここで負の及び正の画分の両方が保持される。次に、負の画分は例えば、CD14及びCD45RAの発現に基く負の選択、及び中央記憶T細胞、例えばCD62L又はCCR7に特徴的なマーカーに基く正の選択にゆだねられ、ここで正及び負の選択は何れの順序でも実施される。
【0142】
CD4+Tヘルパー細胞は、細胞表面抗原を有する細胞集団を同定することにより、ナイーブ、中央記憶及びエフェクター細胞に分離される。CD4+リンパ球は、標準方法により得られる。いくつかの実施形態によれば、ナイーブCD4+Tリンパ球は、CD62L+及びCD45RO+である。
【0143】
1つの例によれば、負の選択によりCD4+細胞を富化するためには、モノクローナル抗体カクテルは典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、及びCD8に対する抗体を含む。いくつかの実施形態によれば、抗体又は結合パートナーは、正の及び/又は負の選択のための細胞の分離を可能にするために、固体支持体又はマトリックス、例えば磁気ビーズ又は常磁性ビーズに結合される。例えば、いくつかの実施形態によれば、細胞及び細胞集団は、免疫磁気(又は親和性磁気)分離技法を用いて分離又は単離される(Methods in Molecular Medicine, vol. 58: Metastasis Research Protocols, Vol. 2: Cell Behavior In Vitro and In Vivo, p 17-25 Edited by: S. A. Brooks and U. Schumacher(著作権)Humana Press Inc., Totowa, NJに再考される)。
【0144】
いくつかの側面によれば、分離される細胞のサンプル又は組成物は、小さな、磁化可能な又は磁気応答性材料、例えば磁気応答性粒子又は微粒子、例えば常磁性ビーズ(例えばDynabeads又は MACSビーズ)と共にインキュベートされる。磁気応答性材料、例えば粒子は一般的に、結合パートナー、例えば分子、例えば分離することが所望される、例えば負に又は正に選択されることが所望される、細胞、複数の細胞又は細胞集団上に存在する表面マーカーに対して特異的に結合する抗体に対して、直接的に又は間接的に結合される。
【0145】
いくつかの実施形態によれば、磁気粒子又はビーズは、特異的結合メンバー、例えば抗体又は他の結合パートナーに結合される磁気応答性材料を含む。それらは、磁気分離法に使用される多くの既知の磁気応答性材料がある。適切な磁気粒子は、米国特許第4,452,773号(Molday)及び欧州特許明細書EP452342Bに記載されるそれらであり、前記特許は引用により本明細書に組込まれる。コロイドサイズの粒子、例えば米国特許第4,795,698号、及び米国特許第5,200,084号(Libertiなど)に記載されるそれらは、他の例である。
【0146】
インキュベーションは、一般的に、抗体又は結合パートナー、又は分子、例えば磁気粒子又はビーズに結合される、そのような抗体又は結合パートナーに特異的に結合する、二次抗体又は他の試薬が、サンプル内の細胞上に存在する場合、細胞表面分子に特異的に結合する、条件下で実施される。
【0147】
いくつかの側面によれば、サンプルは磁場に置かれ、そしてそれらに結合される磁気応答性又は磁化可能な粒子を有するそれらの細胞が磁石に引き付けられ、そして非標識細胞から分離される。正の選択の場合、磁石に引き付けられる細胞が保持され;負の選択の場合、引き付けられない細胞(非標識細胞)が保持される。いくつかの側面によれば、正の及び負の選択の組合せが、同じ選択工程の間、実施され、ここで正の及び負の画分が保持され、そしてさらに、処理されるか、又はさらなる分離工程の対象となる。
【0148】
特定の実施形態によれば、磁気応答性粒子は、一次抗体又は他の結合パートナー、二次抗体、レクチン、酵素又はストレプトアビジンで被覆される。特定の実施形態によれば、磁気粒子は、1又は2以上のマーカーに対して特異的な一次抗体の被覆を介して細胞に結合される。特定の実施形態によれば、ビーズよりもむしろ細胞が、一次抗体又は結合パートーにより標識され、そして次に、細胞型特異的二次抗体又は他の結合パートナー(例えば、ストレプトアビジン)により被覆された磁気粒子が添加される。特定の実施形態によれば、ストレプトアビジン被覆の磁気粒子が、ビオチン化された-次又は二次抗体、又はビオチン化されたペプチドと共に使用される。
【0149】
いくつかの実施形態によれば、磁気応答性粒子は、続いてインキュベートされ、培養され、そして/又は操作されるべき細胞に結合されたままであり;いくつかの側面によれば、粒子は、患者への投与のために細胞に結合されたままである。いくつかの実施形態によれば、磁化可能又は磁気応答性粒子は、細胞から除去される。磁化可能粒子を細胞から除去する方法は知られており、そして例えば、競合する非標識抗体、磁化可能粒子、又は切断可能リンカーに結合された抗体などの使用を包含する。いくつかの実施形態によれば、磁化可能粒子は生分解性である。
【0150】
いくつかの実施形態によれば、親和性に基く選択は、磁気活性化細胞分類(MACS)(Miltenyi Biotec, Auburn, CA)による。磁気活性化細胞分類(MACS)システムは、それに結合された磁化粒子を有する細胞を高純度で選択できる。特定の実施形態によれば、MACSは、外部磁場の適用後に、非標的及び標的種が連続的に溶出されるモードで作動する。すなわち、磁化粒子に結合される粒子は、非結合種が溶出される間、適所に保持される。次に、この最初の溶出工程が完結された後、磁場に閉じ込められ、そして溶出を妨げられた種は、それらが溶出され、そして回収されるよう、何らかの方法で開放される。特定の実施形態によれば、非標的細胞は、標識され、そして異種細胞集団から除去される。
【0151】
特定の実施形態によれば、単離又は分離は、方法の1又は2以上の単離、細胞調製、分離、処理、インキュベーション、培養及び/又は製剤化工程を実施するシステム、デバイス又は装置を用いて実行される。いくつかの側面によれば、このシステムは、閉鎖又は無菌環境でそれらの工程の個々を実行するために、例えば誤差、使用者の操作及び/又は汚染を最小限にするために使用される。1つの例によれば、システムは、国際特許出願公開番号WO2009/072003号、又はUS20110003380A1に記載されるようなシステムである。
【0152】
いくつかの実施形態によれば、システム又は装置は、統合された又は自己完結型システム及び/又は自動化された又はプログラム可能な方法における単離、処理、操作及び製剤化工程の1又は2以上、例えば全てを実行する。いくつかの側面によれば、システム又は装置は、システム又は装置と通信するコンピューター及び/又はコンピュータープログラムを含み、これにより、使用者は、処理、単離、操作及び製剤化工程の種々の側面のプログラム、制御、結果の評価、そして/又は調製することが可能である。
【0153】
いくつかの側面によれば、分離及び/又は他の工程は、例えば閉鎖された及び無菌システムにおいて臨床規模のレベルで細胞を自動分離するために、CliniMACSシステム(Miltenyi Biotec)を用いて実施される。構成要素は、統合されたマイクロコンピューター、磁気分離ユニット、蠕動ポンプ及び種々のピンチバルブを含むことができる。いくつかの側面によれば、統合されたコンピューターは、装置の全ての構成要素を制御し、そして標準化された順序で反復手順を実行するようシステムに指示する。磁気分離ユニットは、いくつかの側面によれば、可動永久磁石及び選択カラムのホルダーを含む。蠕動ポンプは、チューブセット全体の流量を制御し、そしてピンチバルブと共に、システムを通して緩衝液の流れの制御及び細胞の継続的な懸濁を確保する。
【0154】
CliniMACSシステムは、いくつかの側面によれば、無菌の非発熱性溶液で供給される抗体結合の磁化可能粒子を使用する。いくつかの実施形態によれば、磁気粒子による細胞の標識の後、細胞は洗浄され、過剰の粒子が除去される。次に、細胞調製バッグがチューブセットに連結され、次にチューブセットは、緩衝液を含むバッグ及び細胞収集バッグに連結される。チューブセットは、プレカラム及び分離カラムを含む、事前に組立てられた無菌チューブから成り、そして1回のみ使用のためである。分離プログラムの開始後、システムは、自動的に細胞サンプルを、分離カラム上に適用する。標識された細胞はカラム内に保持されるが、ところが非標識細胞は、一連の洗浄工程により除去される。いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載される方法での使用のための細胞集団は、標識されておらず、そしてカラム保持されていない。いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載される方法での使用のための細胞集団は、標識され、そしてカラム保持されている。いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載される方法での使用のための細胞集団は、磁場の除去後にカラムから溶出され、そして細胞収集バッグ内に収集される。
【0155】
特定の実施形態によれば、分離及び/又は他の工程は、CliniMACS Prodigy システム (Miltenyi Biotec)を用いて実行される。CliniMACS Prodigy システムは、いくつかの側面によれば、遠心分離による細胞の自動洗浄及び分画を可能にする細胞処理ユニティが装備される。CliniMACS Prodigy システムはまた、オンボードカメラ、及びソース細胞製品の肉眼で見える層を見分けることにより、最適な細胞分画エンドポイントを決定する画像認識ソフトウェアを含むことができる。例えば、末梢血液は自動的に、赤血球、白血球及び血漿層に分離され得る。CliniMACS Prodigy システムはまた、細胞培養プロトコル、例えば細胞分化及び増殖、抗原負荷、及び長期細胞培養を実現する、統合された細胞培養チャンバーを含むことができる。入力ポートは、培地の無菌除去及び補充を可能にし、そして細胞は、統合された顕微鏡を用いてモニターされ得る。例えば、Klebanoff et al. (2012) J Immunother. 35(9): 651-660, Terakura et al. (2012) Blood. 1:72-82, 及びWang et al. (2012) Immunother. 35(9):689-701を参照のこと。
【0156】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載される細胞集団は、フローサイトメトリーを介して収集され、そして富化され(又は枯渇され)、ここで細胞表面マーカーについて染色される細胞が流体の流れ下で運ばれる。いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載される細胞集団は、分取スケール(FACS)分類を介して収集され、そして富化される(又は枯渇される)。特定の実施形態によれば、本明細書に記載される細胞集団は、FACSに基づく検出システムと組合して微小電気機械システム(MEMS)チップの使用により収集され、そして富化される(又は枯渇される)(例えば、国際公開第 2010/033140号, Cho et al. (2010) Lab Chip 10, 1567-1573; 及び Godin et al. (2008) J Biophoton. 1(5):355-376を参照のこと)。両方の場合、細胞は、複数のマーカーにより標識され、明確なT細胞サブセットの高純度での単離を可能にする。
【0157】
いくつかの実施形態によれば、抗体又は結合パートナーは、正の及び/又は負の選択のための分離を提供するために、1又は2以上の検出可能マーカーにより標識される。例えば、分離は、蛍光標識された抗体への結合に基づかれ得る。いくつかの例によれば、1又は2以上の細胞表面マーカーに対して特異的な抗体又は他の結合パートナーの結合に基づく細胞の分離は、例えばフローサイトメトリー検出システムと組合して、分取スケール(FACS)及び/又は微小電気機器システムを含む蛍光活性化細胞分類(MEM)チップにより、液体の流れにおいて行われる。そのような方法は、同時に複数のマーカーに基づく正の及び負の選択を可能にする。
【0158】
いくつかの実施形態によれば、調製方法は、単離、インキュベーション、及び/又は操作の前又は後のいずれかに、細胞を凍結、例えば凍結保存するための工程を含む。いくつかの実施形態によれば、凍結及び続く解凍工程は、細胞集団内の顆粒球及びある程度は、単球を除去する。いくつかの実施形態によれば、例えば、血漿及び血小板を除去するための洗浄工程に続いて、凍結溶液に懸濁される。いくつかの側面によれば、種々の既知の凍結溶液及びパラメーターが使用される。1つの例は、20%のMSO及び8%のヒト血清アルブミン(HSA)を含むPBS、又は他の適切な細胞凍結培地の使用を含む。次に、これは、培地で1:1に希釈され、結果的に、DMS及びHSAの最終濃度は、それぞれ、10%及び4%である。次に、細胞は、毎分1°の速度で-80℃に凍結され、そして液体窒素貯蔵タンクの気相に貯蔵される。
【0159】
いくつかの実施形態によれば、提供される方法は、培養、インキュベーション、及び/又は遺伝子工学の工程を含む。例えば、いくつかの実施形態によれば、枯渇された細胞集団及び培養開始組成物もインキュベート及び/又は操作するための方法が提供される。
【0160】
従って、いくつかの実施形態によれば、細胞集団は、培養開始組成物においてインキュベートされる。インキュベーション及び/又は操作は、培養容器、例えばユニット、チャンバー、ウェル、カラム、管、チューブセット、バルブ、バイアル、培養皿、バッグ、又は培養又は細胞を培養するための他の容器において実施され得る。
【0161】
いくつかの実施形態によれば、細胞は、遺伝子操作の前又はそれに関連して、インキュベートされ、そして/又は培養される。インキュベーション工程は、培養、刺激、活性化、及び/又は増殖を含むことができる。いくつかの実施形態によれば、組成物又は細胞は、刺激条件又は刺激剤の存在下でインキュベートされる。そのような条件は、集団内の細胞の増殖、拡張、活性化及び/又は生存を誘導し、抗原暴露を模倣し、そして/又は遺伝子操作、例えば組換え抗原受容体の導入のために細胞を準備するよう企画されたそれらの条件を含む。
【0162】
条件は、特定の培地、温度、酸素含有量、二酸化炭素含有量、時間、剤、例えば栄養素、アミノ酸、抗生物質、イオン及び/又は刺激因子、例えばサイトカイン、ケモカイン、抗原、結合パートナー、融合タンパク質、組換え可溶性受容体、及び細胞を活性化するように企画されたいずれかの他の剤の1つ又は複数を含むことができる。
【0163】
いくつかの実施形態によれば、刺激条件又は剤は、TCR複合体の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化できる1又は2以上の剤、例えばリガンドを含む。いくつかの側面によれば、剤は、T細胞においてTCR/CD3細胞内シグナル伝達カスケードをオンにするか又は開始する。そのような剤は、抗体、例えばTCRに対して特異的なそれら、例えば抗-CD3を含むことができる。いくつかの実施形態によれば、刺激条件は、共刺激受容体を刺激できる1又は2以上の剤、例えばリガンド、例えば抗-CD28を含む。いくつかの実施形態によれば、そのような剤及び/又はリガンドは、固体支持体、例えばビーズ、及び/又は1又は2以上のサイトカインに結合され得る。任意には、拡張方法は、さらに、抗-CD3及び/又は抗-CD28抗体を培養培地に添加する工程(例えば、少なくとも約0.5ng/mlの濃度で)を含むことができる。いくつかの実施形態によれば、刺激剤は、IL-2、IL-15及び/又はIL-7を含む。いくつかの側面によれば、IL-2濃度は、少なくとも約10単位/mlである。
【0164】
いくつかの側面によれば、インキュベーションは、米国特許第6,040,177号(Riddellなど);Klebanoff et al. (2012) J Immunother. 35(9): 651-660, Terakura et al. (2012) Blood. 1:72-82, 及び/又は Wang et al. (2012) J Immunother. 35(9):689-701に記載されるそれらの技法に従って実施される。
【0165】
いくつかの実施形態によれば、T細胞は、培養開始組成物にフィーダー細胞、例えば非分裂末梢血単核細胞(PBMC)を添加し(例えば、結果として得られる細胞集団は、拡張される初期集団における各Tリンパ球に対して少なくとも5、10、20又は40又はそれ以上のPBMCフィーダー細胞を含む);そしてその培養物をインキュベートすることにより(例えば、T細胞の数を拡張するのに十分な時間)、拡張される。いくつかの側面によれば、非分裂フィーダー細胞は、γ線を照射されたPBMCフィーダー細胞を含むことができる。いくつかの実施形態によれば、PBMCは、細胞分裂を防ぐために、約3000~3600ラドの範囲のγ線により照射される。いくつかの側面によれば、フィーダー細胞は、T細胞集団の添加の前、培養培地に添加される。
【0166】
いくつかの実施形態によれば、刺激条件は、ヒトTリンパ球の増殖のために適切な温度、例えば少なくとも約25℃、一般的には、少なくとも約30℃、及び一般的には、約37℃を含む。任意には、インキュベーションはさらに、非分裂EBV形質転換リンパ芽球様細胞(LCL)を、フィーダー細胞として添加することを含む。LCLは、約6000~10,000ラドの範囲でのγ線により照射され得る。LCLフィーダー細胞は、いくつかの側面によれば、適切な量、例えば少なくとも約10:1の比率のLCLフィーダー細胞:初期Tリンパ球の量で提供される。
治療方法
【0167】
特定の実施形態によれば、関節リウマチと診断された対象を治療する方法は、対象から得られた生物学的サンプルからTリンパ球を単離し;従来のT細部(Tconv)
からCD4+T調節細胞(Treg)を分離し、ここでTreg細胞はCD4+C225+CD127-であり、そしてTconvはCD4+CD25-CD127+であり;シトルリン化ビメンチン(CV)抗原に対して特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)をコードする発現ベクターによりTreg細胞を形質導入し;CV抗原に対して特異的なTreg細胞を得るために、少なくとも1回、エクスビボでCV抗原により、形質導入されたTregを刺激し;そしてTregを対象に再注入し、それにより、対象を治療することを含む。特定の実施形態によれば、Treg細胞は自己細胞である。CAR-T細胞は、それだけには限定されないが、対象から収集されたT細胞などの当業界において知られているT細胞のいずれかの源から生成され得る。対象は、CAR-T細胞療法を必要とする関節リウマチなどの自己免疫疾患を有する患者、又はCAR-T細胞療法を必要とする自己免疫疾患を有する対象と同じ種の対象であり得る。収集されたT細胞は、CAR-T細胞を生成するために、CARによる形質導入の前、当業界においては一般的である方法を用いてエクスビボで拡張され得る。
【0168】
シトルリン化ビメンチン(CV)抗原はまた、腫瘍及びCOPDに関連し、従って、特定の実施形態によれば、腫瘍又は慢性閉塞性肺疾患(COPD)を治療する方法は、対象から得られた生物学的サンプルからTリンパ球を単離し;従来のT細部(Tconv)からCD4+T調節細胞(Treg)を分離し、ここでTreg細胞はCD4+C225+CD127-であり、そしてTconvはCD4+CD25-CD127+であり;シトルリン化ビメンチン(CV)抗原に対して特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)をコードする発現ベクターによりTreg細胞を形質導入し;CV抗原に対して特異的なTreg細胞を得るために、少なくとも1回、エクスビボでCV抗原により、形質導入されたTregを刺激し;そしてTregを対象に再注入し、それにより、対象を治療することを含む。特定の実施形態によれば、Treg細胞は自己細胞である。CAR-T細胞は、それだけには限定されないが、対象から収集されたT細胞などの当業界において知られているT細胞のいずれかの源から生成され得る。
【0169】
T細胞におけるCAR企画、送達及び発現のための方法、及び臨床グレードのCAR-T細胞集団の製造は、当業界において知られている。例えば、Lee et al., Clin. Cancer Res. 2012, 18(10): 2780-90(その全体が引用により本明細書に組込まれている)を参照のこと。たとえば、操作されたCARは、キメラ抗原受容体をコードする核酸配列を、標的細胞ゲノム中に効果的に及び安定して組込む、レトロウィルスを用いてT細胞中に導入され得る。レンチウィルスベクターを用いる例示的な方法は、以下の実施例セクションに記載されている。
【0170】
CARは、ベクターによりコードされ得、そして/又は以下に詳細に記載されるように、1又は2以上の送達ビークル及び製剤中に包含され得る。
【0171】
当業界において知られている他の方法は、レンチウィルス形質導入、トランスポゾンに基づくシステム、直接的RNAトランスフェクション、CRISPR/Casシステム(例えば、適切なCasタンパク質、例えばCas3、Cas4、Cas5、Cas5e(又はCasD)、Cas6、Cas6e、Cas6f、Cas7、Cas8a1、Cas8a2、Cas8b、Cas8c、Cas9、Cas10、Casl Od、CasF、CasG、CasH、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1(又は CasA)、Cse2(又はCasB)、Cse3(又はCasE)、Cse4(又はCasC)、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr5、Cm5 、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csz1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、及びCu1966などを用いてのI型、II型又はIII型システム)を含むが、但しそれらだけには限定されない。
【0172】
ベクターは例えば、複製起点、足場付着領域(SAR)及び/又はマーカーを含むことができる。マーカー遺伝子は、宿主細胞に選択可能な表現型を付与することができる。例えば、マーカーは、殺生物剤耐性、例えば抗生物質(例えば、カナマイシン、G418、ブレオマイシン又はハイグロマイシン)に対する耐性を付与することができる。発現ベクターは、発現されたポリペプチドの操作又は検出(例えば、精製又は局在化)を促進するよう企画されたタグ配列を含むことができる。タグ配列、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、ポリヒスチジン、c-myc、ヘマグルチニン又はFLAG(登録商標)タグ(Kodak、New Haven、CT)配列は典型的には、コードされたポリペプチドとの融合体として発現される。そのようなタグは、カルボキシル又はアミノ末端のいずれかを含む、ポリペプチド内のどこにでも挿入され得る。別の例は、EGFRtレポーター、及びEGFRtタンパク質を欠くCARを生成するために切断される自己切断可能なT2A配列である。いくつかの実施形態によれば、EGFRtは必要とされない。
【0173】
追加の発現ベクターはまた、例えば染色体、非染色体及び合成DNA配列のセグメントを含むことができる。適切なベクターは、以下を含む:SV40の誘導体及び既知の細菌プラスミド、例えばE.コリプラスミドcol El、pCR1、pBR322、pMal-C2、pET、pGEX、pMB9及びそれらの誘導体、プラスミド、例えばRP4;ファージDNA、例えばファージ1の多くの誘導体、例えばNM989、及び他のファージDNA、例えばM13及び糸状一本鎖ファージDNA;酵母プラスミド、例えば2μプラスミド又はその誘導体、真核細胞において有用なベクター、例えば昆虫又は哺乳類細胞において有用なベクター;プラスミド及びファージDNA、例えばファージDNA又は他の表現制御配列を使用するよう修飾されたプラスミドの組合せに由来するベクター。
【0174】
いくつかの送達方法は、インビトロ(細胞培養)及びインビボ(動物及び患者)システムのために、単離された核酸配列と共に利用され得る。いくつかの実施形態によれば、レンチウィルス遺伝子送達システムが利用され得る。そのようなシステムは、大きなDNA挿入体のための広い向性及び能力を備え、分裂及び非分裂細胞における遺伝子の安定した長期存在を提供する(Dull et al, J Virol, 72:8463-8471 1998)。1つの実施形態によれば、アデノ随伴ウィルス(AAV)は、送達方法として利用され得る。AAVは、インビトロ及びインビボシステムにおいて治療遺伝子を送達するために近年積極的に使用されて来た、非病原性の一本鎖DNAウィルスである(Choi et al, Curr Gene Ther, 5:299-310, 2005)。AAVは、血清型1~9を含む。非ウィルス送達方法の例は、ナノ粒子技法を利用することができる。このプラットフォームは、インビボで医薬品としての有用性を実施している。ナノ技法は、固い上皮及び内皮バリアを通過する薬物のトランスサイトーシスを改善した。それは、特定の方法で細胞及び組織への標的化されたペイロードを提供する(Allen and Cullis, Science, 303:1818-1822, 1998)。
【0175】
ベクターはまた、調節領域を含むことができる。用語「調節領域」とは、転写又は翻訳開始及び速度、及び転写又は翻訳生成物の安定性及び/又は移動性に影響及ぼすヌクレオチドを指す。調節領域は、以下を含むが、それらだけには限定されない:プロモーター配列、エンハンサー配列、応答要素、タンパク質認識部位、誘導要素、タンパク質結合配列、5 '及び3'非翻訳領域(UTR)、転写開始部位、終結配列、ポリアデニル化配列、核局在化シグナル、及びイントロン。
【0176】
用語「操作可能的に連結される」とは、そのような配列の転写又は翻訳に影響を及ぼすために、核酸における転写される調節領域及び配列の配置を指す。例えば、プロモーターの制御下にコード配列を置くために、ポリペプチドの翻訳リーディングフレームの翻訳開始部位は、プロモーターの下流の1~約50個のヌクレオチド間に、典型的には配置される。しかしながら、プロモーターは、翻訳開始部位の約5,000ヌクレオチド上流、又は転写開始部位の下流の約2,000ヌクレオチド上流に配置され得る。プロモーターは典型的には、少なくともコア(基礎)プロモーターを含む。プロモーターはまた、少なくとも1つの制御要素、例えばエンハンサー配列、下流要素又は上流活性化領域(UAR)を含むこともできる。含まれるべきプロモーターの選択は、効率、選択性、誘導性、所望する発現レベル及び細胞又は組織選択的発現を含む(但し、それらだけには限定されない)いくつかの要因に依存する。コード配列に関するプロモーター及び他の調節領域を適切に選択し、そして配置することにより、コード配列の発現を調節することは、当業者にとって日常的なことである。
【0177】
ベクターは例えば、ウィルスベクター(例えば、アデノウィルスAd、AAV、レンチウィルス及び水疱性口内炎ウィルス(VSV)及びレトロウィルス)、リポソーム及び他の脂質含有複合体、及び宿主細胞へのポリヌクレオチドの送達を媒介することができる他の高分子複合体を含む。ベクターはまた、遺伝子送達及び/又は遺伝子発現をさらに調節するか、又は標的細胞に有益な特性を提供する他の成分又は機能性も含むことができる。以下により詳細に説明及び図示されるように、そのような他の成分は、例えば細胞への結合又は標的化に影響を及ぼす成分(細胞型又は組織特異的結合を媒介する成分を含む);細胞によるベクター核酸の取り込みに影響を及ぼす成分;取り込み後、細胞内のポリヌクレオチドの局在化に影響を及ぼす成分(例えば、核局在を媒介する剤);及びポリヌクレオチドの発現に影響を及ぼす成分を含む。そのような分はまた、マーカー、例えばベクターにより送達された核酸を取り込み、そして発現する細胞を検出するか又は選択するために使用され得る検出可能及び/又は選択可能マーカーも含む。そのような成分は、ベクターの天然の特徴として提供され得(例えば、結合及び取り込みを媒介する成分又は機能を有する特定のウィルスベクターの使用)、又はベクターはそのような機能を提供するよう修飾され得る。他のベクターは、Chen et al; BioTechniques, 34: 167-171 (2003)により記載されたそれらのものを含む。多くの種類のそのようなベクターが当業界において知られており、そして一般的に入手可能である。「組換えウィルスバクター」とは、1又は2以上の異種遺伝子産物又は配列を含むウィルスベクターを指す。多くのウィルスベクターはパッケージングに関連するサイズ制約を示すので、異種遺伝子産物又は配列は、典型的には、ウィルスゲノムの1又は2以上の部分を置換することにより導入される。そのようなウィルスは複製欠陥による可能性があり、ウィルス複製/又はキャプシド化の間、トランスで提供されるべき欠失された機能を必要とする(例えば、ヘルパーウィルス、又は複製及び/又はキャプシド化のために必要な遺伝子産物を担持するパッケージング細胞系を用いることによる)。送達されるポリヌクレオチドがウィルス粒子の外側に運ばれる修飾されたウィルスベクターもまた記載されている(例えば、Curiel, D T, et al. PNAS 88: 8850-8854, 1991を参照のこと)。
【0178】
追加のベクターは、ウィルスベクター、融合タンパク質及び化学的接合体を含む。レトロウィルスベクターは、モロニーマウス白血病ウィルス及びHIVに基づくウィルスを含む。1つのHIVに基づくウィルスベクターは、少なくとも2つのベクターを含み、ここでgag及びpol遺伝子はHIVゲノムからであり、そしてenv遺伝子は別のウィルスからである。DNAウィルスベクターは、ポックスベクター、例えばオルソポックス又はアビポックスベクター、ヘルペスウィルスベクター、例えば単離ヘルペスウィルス(HSV)ベクター(Geller, A.I. et al., J. Neurochem, 64: 487 (1995); Lim, F., et al., in DNA Cloning: Mammalian Systems, D. Glover, Ed. (Oxford Univ. Press, Oxford England) (1995); Geller, A.I. et al., Proc Natl. Acad. Sci.: U.S.A.:90 7603 (1993); Geller, A.I., et al., Proc Natl. Acad. Sci USA: 87:1149 (1990)], Adenovirus Vectors [LeGal LaSalle et al., Science, 259:988 (1993); Davidson, et al., Nat. Genet. 3: 219 (1993); Yang, et al., J. Virol. 69: 2004 (1995))、及びアデノ随伴ウィルスベクター(Kaplitt, M.G., et al., Nat. Genet. 8:148 (1994))を含む。
【0179】
本明細書において具体化されるポリヌクレオチドは、微小送達ビークル、例えばカチオン性リボソーム及びアデノウィルスベクターと共に使用され得る。リポソーム調製、標的化、及び内容物の送達の手順の再考のためには、Mannino and Gould-Fogerite, BioTechniques, 6:682 (1988)を参照のこと。また、Felgner and Holm, Bethesda Res. Lab. Focus, 11(2):21 (1989) 及びMaurer, R.A., Bethesda Res. Lab. Focus, 11(2):25 (1989)も参照のこと。
【0180】
複製欠損組換えアデノウィルスベクターは、既知技法に従って生成され得る。Quantin, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:2581-2584 (1992); Stratford-Perricadet, et al., J. Clin. Invest., 90:626-630 (1992); 及びRosenfeld, et al., Cell, 68:143-155 (1992)を参照のこと。
【0181】
別の方法は、細胞内で発現産物を産生できる一本鎖DNA生成ベクターを使用することである。例えば、Chen et al, BioTechniques, 34: 167-171 (2003)を参照のこと(その全体は、参照により本明細書に組込まれる)。
【0182】
本発明の核酸配列は、対象の適切な細胞に送達され得る。これは、例えば、食細胞、例えばマクロファージによる食作用を最適化するようにサイズ設定された、ポリマーの生分解性微粒子、又はマイクロカプセル送達ビークルの使用により達成され得る。例えば、直接約1~10μmのPLGA(ポリ-ラクト-コ-グリコリド)微粒子が使用され得る。ポリヌクレオチドは、マイクロファージにより取り込まれ、そして細胞内で徐々に生分解されるそれらの微粒子にカプセル化され、それによりポリヌクレオチドが放出される。放出されると、DNAは細胞内で発現される。2番目のタイプの微粒子は、細胞により直接取り込まれるのではなく、しかしむしろ、生分解による微粒子からの放出後のみ細胞により取り込まれる核酸の徐放性貯蔵体として主に機能することを目的としている。従って、それらのポリマー粒子は、食作用を排除するのに十分な大きさでなければならない(すなわち、5μmより大きく、そして好ましくは、20μmより大きい)。核酸の取り込みを達成する別の方法は、標準方法により調製されたリポソームを使用することである。核酸は、それらの送達ビークルに単独で組込まれるか、又はTreg細胞に対して、又は標的としての腫瘍細胞への送達に対して特異的な細胞又は組織特異的抗体と共に同時組込まれ得る。他方では、静電力又は共有結合力によりポリ-L-リシンに結合されるプラスミド又は他のベクターから構成される分子複合体が調製され得る。ポリ-L-リシンは、標的細胞上の受容体に結合できるリガンドに結合する。筋肉内、皮内又は皮下部位への「裸のDNA」(すなわち、送達ビークルなしの)の送達は、インビボ発現を達成するための別の手段である。関連するポリヌクレオチド(例えば、発現ベクター)においては、上記のように、CARをコードする配列を含む単離された核酸配列コードする核酸配列が存在する。
【0183】
いくつかの実施形態によれば、本発明の組成物は、ナノ粒子、例えばDNAと複合体化された高分子量線状ポリエチレンイミン(LPEI)のコアから成り、ポリエチレングリコール修飾(PEG化)低分子量LPEIのシエルで囲まれたナノ粒子として製剤化され得る。核酸分子及びベクターはまた、装置(例えば、カテーテル)の表面に適用され得るか、又はポンプ、パッチ、又は他の薬物送達装置内に含まれ得る。本明細書に開示される核酸及びベクターは、薬学的に許容される賦形剤又は担体(例えば生理食塩水)の存在下で、単独で、又は混合物で投与され得る。賦形剤又は担体は、投与の様式及び経路に基づいて選択される。適切な医薬品担体、及び医薬製剤への使用に必要な医薬品は、この分野で良く知られている参考文献であるRemington's Pharmaceutical Sciences (E. W. Martin)、及びUSP/NF (United States Pharmacopeia and the National Formulary)に記載されている。
【0184】
いくつかの実施形態によれば、組成物は、本明細書で具体化される組成物をカプセル化するナノ粒子として配合され得る。
【0185】
組成物が核酸として投与されるか、又はポリペプチドとして投与されるかにかかわらず、それらは、哺乳類細胞による取り込みを促進するような手段で配合される。有用なベクターシステム及び製剤は、上に記載される。いくつかの実施形態によれば、ベクターは、組成物を特定の細胞型に送達することができる。しかしながら、本発明はそのように限定されず、そして例えばリン酸カルシウム、DEAEデキストラン、リポソーム、リポフレックス、界面活性剤及びペルフルオロ化学液体を用いるDNA送達、例えば化学的トランスフェクションの他方法もまた、物理的送達方法、例えばエレクトロポレーション、マイクロインジェクション、弾道粒子、及び「遺伝子銃」システムと同様に、企画される。
【0186】
いくつかの実施形態によれば、組成物は、1又は2以上のCARをコードする1又は2以上のベクター又は核酸により形質転換又はトランスフェクトされた細胞を含む。いくつかの実施形態によれば、本発明の方法は、エクスビボで適用され得る。すなわち、対象の細胞が身体から取り出され、そして所望する標的抗原を有する培養中の組成物により形質導入され、標的抗原特異的T細胞が拡張され、そして拡張された細胞が対象の体に戻される。細胞は、対象の細胞であり、又はそれらはハプロタイプが一致するか、又は細胞系であり得る。細胞は、複製を防ぐために照射され得る。いくつかの実施形態によれば、細胞は、ヒト白血球抗原(HLA)が一致した自己細胞系、又はそれらの組合せである。他の実施形態によれば、細胞は幹細胞であり得る。例えば、胚性幹細胞又は人工多能性幹細胞(誘発された多能性幹細胞(iPS細胞))である。胚性幹細胞(ES細胞)及び人工多能性幹細胞(誘発された多能性幹細胞、iPS細胞)は、ヒトを含む多くの動物種から確立された。それらのタイプの多能性幹細胞は、それらの多能性を維持しながら活発に分裂する能力を維持しながら、適切なそれらの分化誘導によりほとんど全ての器官に分化できるので、再生医療のための最も有用な細胞源となる。iPS細胞は特に、自己由来の体細胞から確立され得、従って、胚の破壊により生成されるES細胞と比較して、倫理的、及び社会的な問題を引起しにくい。さらに、自己由来の細胞であるiPS細胞は、再生医療又は移植療法の最大の障害である拒絶反応の回避を可能にする。
【0187】
CARは、当業界において知られている方法、例えばsiRNAを送達する方法により対象に容易に送達され得る。従って、CAR分子は、現在の遺伝子治療で採用されているアプローチに類似して、臨床学的に使用され得る。特に、細胞移植療法及びワクチン接種のためのCAR安定発現幹細胞又はiPSの細胞は、対象への使用のために開発され得る。
【0188】
CAR-T細胞は、それらがエクスビボで拡張されたら、治療的有効量で対象に再注入され得る。1つの実施形態によれば、CAR-T細胞は、それらのインビトロ拡張のために抗-CD3/CD28ビーズを用いて刺激される。CAR-T細胞は、自己免疫疾患抗原(例えば、シトルリン化ビメンチン(CV))に応答して使用され得る。用語「治療的有効量」とは、本明細書で使用される場合、そのような治療を必要とする哺乳類、特にヒトに投与される場合のCAR T細胞の量が、自己免疫疾患、例えば関節リウマチを治療するのに十分であることを意味する。
【0189】
投与されるCAR T細胞の正確な量は、対象の年齢、体重、疾患の程度及び状態における個人差を考慮して、医師により決定され得る。
【0190】
典型的には、T細胞治療薬の投与は、体重1kg当たりの細胞の数により定義される。しかしながら、T細胞は、移植後、複製し、そして増殖するので、投与される細胞量は、最終的な定常状態の細胞数とは異なるであろう。
【0191】
1つの実施形態によれば、本発明のCAR T細胞を含む医薬組成物は、104~109個の細胞/kg体重の用量で投与され得る。別の実施形態によれば、本発明のCAR T細胞を含む医薬組成物は、105~106個の細胞/kg体重の用量で、それらの範囲内のすべての整数値を含めて投与され得る。
【0192】
本発明のCAR T細胞を含む組成物はまた、それらの投与量で複数回投与され得る。細胞は、当業界に知られている注入技法を用いることにより投与され得る(例えば、Rosenberg et al., 1988, New England Journal of Medicine, 319: 1676を参照のこと)。特定の対象に対する最適な投与量及び治療計画は、疾患の徴候について患者をモニターし、そしてそれに応じて、治療を調整することにより、当業者により容易に決定され得る。
【0193】
特定の実施形態によれば、本明細書において具体化される組成物、例えば自己免疫疾患の治療のためのCV-CAR T細胞のいずれかの投与は、他の細胞に基づく治療薬、例えば幹細胞、抗原提示細胞などと組合わされ得る。
【0194】
本発明の組成物は、当業界において知られている方法で調製され得、そして1又は2以上の医薬的に許容できる担体又は希釈剤と共に、治療的に有効量の組成物のみを含む、哺乳類、特にヒトへの非経口投与のために適切なそれらである。
【0195】
用語「医薬的に許容できる担体」とは、本明細書に使用される場合、任意の適切な担体、希釈剤又は賦形剤を意味する。それらは、意図される受容者の血液と組成物とを等張にする、抗酸化剤、緩衝液、溶質を含むことができる全ての水性及び非水性等張滅菌注射液;緩衝剤、及び増粘剤、分散媒体、抗真菌及び抗菌剤、等張剤及び吸収剤を含む水性及び非水性滅菌懸濁液などを含む。本発明の組成物はまた、他の補足的な生物活性剤も含むことができことが理解されるであろう。
【0196】
担体は、組成物中の他の成分と適合でき、そして対象に害を及ぼさないという意味で、医薬的に「許容できる」ものでなければならない。組成物は、皮下、筋肉内、関節内、静脈内及び皮内投与を含む非経口投与のために適切なそれらを含む。組成物は、好都合には、単位剤形で提供されてもよく、そして製薬業界で周知の任意の方法により調製されてもよい。そのような方法は、CAR細胞との会合のための担体を調製することを含む。一般的に、組成物は、任意の活性成分と液体担体とを、均一且つ密接に会合させることにより調製される。
【0197】
1つの実施形態によれば、組成物は、非経口投与のために適切である。別の実施形態によれば、組成物は、静脈内投与のために適切である。別の実施形態によれば、組成物は、関節内投与のために適切である。
【0198】
非経口投与に適した組成物は、意図した受容者の血液と組成物とを等張する、抗酸化剤、緩衝液、殺菌剤及び溶質を含む水性及び非水性等張滅菌注射溶液;及び懸濁剤及び増粘剤を含むことができる水性及び非水性滅菌懸濁液を含む。
【0199】
本発明はまた、本発明の組成物と、他の薬物及び/又はさらに、他の治療レジメ又はモダリティ、例えば手術との組合せも企画する。本発明の組成物が既知の治療剤と組合して使用される場合、組成物は、順次(連続的に、又は治療のない期間によって分割されて)、又は同時に、又は混合物として投与され得る。自己免疫疾患、例えば関節リウマチの場合、治療は、本明細書で具体化された組成物、例えばシトルリン化ビメンチン(CV)に対して特異的なCARにより形質導入された自己T細胞、及び1又は2以上の抗炎症剤及び/又は治療剤を対象に投与することを含む。抗炎症剤は、炎症性サイトカイン、例えばIL-1、TNF、IL-6、GM-CSF及びIFN-γなどの炎症性サイトカインに対して特異的に結合する1又は2以上の抗体を含む。特定の実施形態によれば、抗体は、抗-TNFα、抗-IL-6又はそれらの組合せである。特定の実施形態によれば、炎症性サイトカインを低める、抗体以外の1又は2以上の剤、例えば非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)が投与され得る。炎症性サイトカインを低める、抗体及び1又は2以上の剤の任意の組合せが投与され得る。
【0200】
組合せでの治療はまた、例えば維持療法として、本発明の組成物とその後の既知の治療による治療、又は既知の剤による治療、続く本発明の組成物による治療を包含すると考えられる。例えば、自己免疫疾患の治療においては、免疫細胞、例えばT細胞及びBリンパ球の過剰かつ長期の活性化、及びマスター炎症性サイトカイン腫瘍壊死因子α(TNF)の過剰発現が、他のメディエーター、例えばインターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-1(IL-1)及びインターフェロンγ(IFN-γ)と一緒に、関節リウマチ(RA)、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病(CD)及び強直性脊椎炎(AS)における自己免疫性炎症反応の病因に中心的な役割を果たす。
【0201】
非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、グルココルチコイド、疾患修飾抗リウマチ薬(DMARD)は、伝統的に自己免疫炎症性疾患の治療に使用される。NSAID及びグルココルチコイドは、痛みの緩和及び炎症の抑制に効果的であるが、DMARDは、炎症応答により引起される組織及び器官の損傷を軽減する能力を有する。最近では、RA及び他の自己免疫疾患の治療は、TNFが疾患の進行において決定的に重要であるという発見により革命をもたらされて来た。抗TNF生物製剤(例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ、エタネルセプト、ゴリムマブ、及びセルトリズマブペポール)は、自己免疫性炎症性疾患の管理結果を著しく改善した。
【0202】
非ステロイド性抗炎症薬は、関節炎及び頭痛のような状態の治療のために頻繁に使用される鎮痛、解熱及び抗炎症効果を有する。NSAIDは、は、シクロオキシゲナーゼ(COX)酵素をブロックすることで痛みを緩和する。COXは、炎症及び痛みを引起すメディエーターのプロスタグランジンの生成を促進する。NSAIDは、異なる化学構造を有するが、それらの全ては、類似する治療効果、例えば自己免疫性炎症性応答の抑制効果を有する。一般的に、NSAIDは以下の2つの広いカテゴリーに分けられ得る:従来の非選択的NSAID及び選択的シクロオキシゲナーゼ2(COX-2)阻害剤(再考のためには、P. Li et al. Front Pharmacol. 2017; 8: 460を参照のこと)。
【0203】
抗TNF剤に加えて、他の炎症性サイトカイン又は免疫適格分子を標的とする生物製剤もまた、広範囲に研究され、そして活発に開発されて来た。CTLA-4の細胞外ドメイン及びIgG1のFc画分の完全にヒト化された融合タンパク質であるアバタセプトは、抗TNF治療に対する不十分な応答のRA患者に承認されている。アバタセプトの主な免疫学的メカニズムは、共刺激経路(CD80及びCD86)の選択的阻害及びT細胞の活性化である。ヒト化抗IL-6受容体モノクローナル抗体であるトシリズマブは、DMARD及び/又は抗TNF生物製剤に対して耐性のないRA患者に対して承認された。この治療用mAbは、IL-6受容体の可溶型及び膜型との結合を介して、IL-6の膜貫通シグナル伝達を遮断する。IL-1(アナキンラ)、Th1免疫応答(IL-12 / IL-23、ウステキヌマブ)、Th17免疫応答(IL-17、セクキヌマブ)及びCD20(リツキシマブ)を標的とする生物学的薬物もまた、自己免疫疾患の治療に承認されている(再考のためには、P. Li et al. Front Pharmacol. 2017; 8: 460を参照のこと)。
【0204】
本明細書に記載のものと同様又は同等の方法及び材料を本発明の実施又は試験に使用することができるが、適切な方法及び材料を以下に記載する。本明細書で言及されるすべての出版物、特許出願、特許、及びその他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。 矛盾する場合、定義を含む本明細書が支配する。さらに、材料、方法、及び例は、単なる例示であり、限定を意図するものではない。
【実施例】
【0205】
実施例1:CV-CARを発現するレンチウィルスベクターの生成:
CARの有効性において重要な役割を果たす異なる要素を評価した。従って、いくつかの実施形態によれば、scFvの3つの異なるバージョンを比較し、ヒンジの2つの長さを評価し、そして2つの異なる共刺激ドメインを分析した。それらの各工程で、最良なT細胞活性化プロファイルを提供するCV-CAR候補体の1つを選択した。
【0206】
CV特異的scFvの生成:BVCA1抗体のH鎖及びL鎖の可変領域を配列決定し、そしてVH-リンカー-VLフォーマットでCV特異的scFv遺伝子を生成するために使用した。scFvタンパク質を、前記配列をpSYNプラスミド中に挿入することにより生成し、そしてDH5-αE.コリ コンピテント細胞中に接種した。単一のコロニーを、2%グルコース及び100μg/mlのアンピシリンにより補充された2YT培地5mlにおいて、シェーカー内で30℃で一晩、増殖した。5mlのO/N培養液を、50mlの新鮮な2YT培地(0.1%グルコース及び100μg/mlのアンピシリンを含む)に接種し、そしてOD600=0.9になるまで、37℃で2.5時間インキュベートした。scFvの発現を、250μlのイソプロピル-β-d-チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加することにより、誘発し、そして次に、振盪しながら、30℃で4時間インキュベートした。5000rpmでの20分間の遠心分離の後、細菌ペレットを、12.5mlの氷冷却ペリプラズの抽出緩衝液(PPB、200g/lのスクロース、30mMのトリス-HCl、pH8.0)により再懸濁し、そして氷O/N上で維持した。次の日、細菌を、10,000rpmで30分間、遠心分離し、上清液を保持し、そしてペレットを、12.5mlの5mMの氷冷却Mg2SO4により再懸濁し、そして氷上で30分間、保持し、浸透圧ショックを誘発した。溶解された細菌を、10,000rpmで30分間、遠心分離し、そして上清液を前のものと組合した。次に、CV特異的scFvを、Ni-NTAクロマトグラフィーにより精製した。
【0207】
CVペプチドに対するBVCA1抗体及びscFvの結合特異性及び親和性の評価:BVCA1 IgG及びscFvの結合特異性を、ELISAにより評価した。96ウェルELISAプレートを、10μg/mlのストレプトアビジン50μlにより、4℃でO/N被覆した。ウェルを3度、洗浄し、そして200μlの1×PbS 1%BSAによりRTで1時間、ブロックし、そして再び洗浄した。PBS 1%BSAで希釈された10μg/mlでのビオチン化ペプチド100μlを添加し、そしてRTで1時間インキュベートした。次に、ウィルを3度、洗浄した。100μlのBVCA1 IgG又はscFv又はアイソタイプ対照を、種々の濃度で添加した(連続希釈)。RTでの1.5時間のインキュベーションの後、ウェルを3度、洗浄し、そしてアルカリホスファターゼ(AP)に結合された適切な二次抗体をウェルに添加した:完全ヒトBVCA1 IgGの場合、ヤギ抗-ヒトIgG Ab-AP(Life Technologies # 62-8422)を、1/5000希釈度で使用し、マウスIgG2a CH2及びCH3ドメインを含むキメラバージョンのBVCA1 Abに関しては、ヤギ抗-マウスIgG(分子全体)Ab-AP(Sigma番号A3562)を、1/10,000希釈度で使用し、BVCA1のscFvに関連しては、抗-c-Myc Ab(クローン9E10、マウスIgG1;Santa Cruz Biotech,sc-40)を、1/200の希釈度で使用し、続いて抗-マウスIgG-Ab(Sigma、A3562)を、1/10000希釈度で使用した。ウェルを3度、洗浄し、そして100μlのStep pNPP基質溶液を添加した。反応を、15~30分後、50μlの3MのNaOHにより停止し、そして吸光度を、405nmでマイクロプレートリーダーで読み取った。CVペプチドに対するBVCA1 Ig及びscFvの反応速度及び親和性を、Biacore T100(GE healthcare)を用いての表面プラズモン共鳴により分析した。ビオチン化CVペプチドを、ストレプトアビジン被覆されたセンサーチップ(CM5)上に固定した。種々の濃度の抗体を、30μl/分の流速で挿入した。
【0208】
CV特異的CARコンストラクトの生成:(Gibson アセンブリー法(Gibson Assembly Master Mix、BioLabs、製造業者の説明書による)を使用することにより、抗CD19 scFv配列を、むしろCD28z又は41BBz細胞内ドメイン、続いてCD3ζドメイン、及び受容体として使用され、そしてT2AドメインによりCAR(CARコンストラクトは、Juno Therapeuticsにより提供された)から分離された切断バージョンを有するp10001レンチウィルスプラスミドにクローン化された既存の19-CARコンストラクト中にCV特異的scFv配列により置換した。それらのCARコンストラクトは、両者とも、短いヒンジ(IgG4-36bp)を有し、従ってGibsonアセンブリー法を再び使用し、短いヒンジを、長いヒンジ(ヒトCD28配列の細胞外ドメインの117bp)により置換した。従って、短い又は長いヒンジ、及び41BB又はCD28共刺激ドメインを有する複数のCV特異的CARコンストラクトを生成した。
【0209】
HEK 293T細胞トランスフェクション及びレンチウィルス粒子滴定:HEK 293細胞を、10%FBS(抗生物を含まない)により補充された2mlのDMEM高グルコース培地を含む6ウェルプレートに、プレート当たり800,000個の細胞でプレートし、そして37℃で5%CO2下に一晩置いた。ウェル内の集密性が80%になる場合、1.5μgのCV-CAR p10001と1.33μgのパッケージングベクターp8.91、0.168μgのVSVエンペロープベクターpMD2.G及び9μgのFuGENE HD Transfection Reagent(Promega)との混合物を、各ウェルに一滴ずつゆっくり添加した。ウィルス粒子産生の効率を改善するために、培地を、14時間後、ViralBoost 試薬(1/500で希釈された; VC-100, Alstem)を補充された新鮮な10%FBS-DMEM高グルコース培地により交換した。ウィルス上清液を、2日後に収穫し、そしてレンチウィルス沈殿溶液(VP100、Alstem、製造業者の指示に従った)を用いて、100倍に濃縮した。HEK 293T細胞のトランスフェクション効果を、抗-EGFRt Ab(Erbitux, Juno Therapeutics)を用いて、フローサイトメトリーにより評価した。レンチウィルス粒子を力価測定するために、Jurkat細胞(96ウェルプレートにおいて各ウェル当たり10,000)を、4日間、ウィルスの連続希釈下で培養し、次に抗EGFRt Abにより染色し、そしてフローサイトメトリー(LSR II;BD Biosciences)により分析した。1%~20%の陽性細胞を生成する希釈溶液を用いて、次の等式によりウィルス力価を決定した:〔標的細胞の数×(EGFRt+細胞の%/100)〕/上清液の体積(ml)。
【0210】
図19は、トランスフェクションの3日後、HEK 293T細胞の細胞表面でのCV特異的CAR発現の評価を示す。HEK 293T細胞のトランスフェクション及びレンチウィルス粒子の滴定に使用された技法は、上に記載されている。
【0211】
実施例2:CV-CARを発現するレンチウィルスベクターの生成:
CV-CARコンストラクトの生成:レンチウィルスベクターで発現されたCV-CARコンストラクトを生成するために、レンチウィルスバックボーンプラスミドp1001(Juno Therapeutics、Inc.から入手できる)に存在するCD19-CARコンストラクトの一本鎖可変フラグメント(scFv)を、Gibsonアセンブリー法を用いて、BVCA1 scFvにより置換した(
図8A及び8B)。ヒト及びマウスビメンチンのアミノ酸配列間に、わずかな異なりが観察されないので、抗CV抗体は、ヒト及びマウスの両方のペプチドに対して高い特異性を示す。これは、インビトロでのヒトサンプル及びインビボでのRAマウスモデルの両方の評価の実行を可能にする。ヒトビメンチンペプチド及びマウスビメンチンペプチドの一部のアラインメントを示す
図6は、BVDA1モノクローナル抗体がヒト及びマウスの両方のシトルリン化ビメンチンに対して特異的である理由を説明する。
図7は、BVCA1抗体から合成された一本鎖可変フラグメント(scFv)のCVに対する特異性及び親和性の評価を示す。
図5は、BVCA1完全ヒトIgGとヒトCVペプチドとの間の解離定数が約10nMであり(
図5A)、そしてBVCA1 scFvとヒトCVペプチドとの間のKDが約198nMである(
図5B)ことを示す。この結果は、BVCA1抗体として、BVCA1 scFvがシトルリン化ビメンチンに対して特異的であることを示す。
【0212】
図8Bに示されるように、CV特異的CARの2つのバージョンが創造され、個々はCD3ζとCD28 (CV.28z-CAR) 又は 41BB (CV.41BBz-CAR)共刺激ドメインのいずれかを含む。記載される実施形態にしたがってのCV-CARコンストラクトは、任意の適切なタイプの共刺激ドメインを有することができる。TRAペプチドによりCARから分離されたEGFR遺伝子の切断バージョンを、レポーター遺伝子として使用した。レンチウィルス粒子を、HEK 293T細胞をトランスフェクトすることにより生成した。上清液を3日後、収集し、そしてウィルス粒子を、沈殿させ、富化した。
【0213】
図9は、CV-CARコンストラクトの生成及び生成されたコンストラクトの続く評価のタイムラインの例を示す。コンストラクトの生成及び評価の種々の工程の詳細及び例がこの開示全体で記載されている。
【0214】
異なる長さのCV-CARコンストラクトヒンジの評価:2つの異なる長さのヒンジを有するコンストラクトを比較した:(1)IgG4モチーフ由来の短いヒンジ、及び(2)ヒトCD28の細胞外ドメインの一部である長いヒンジ。CV.28z-CAR 及びCV.41BBz-CARの両方に関して、長いヒンジの存在がCV-CAR T細胞のより効率的な活性化を誘発したことが観察された。CARコンストラクトの標的抗原に依存して、ヒンジの最適な長さを決定し、適切な抗原結合を可能にすることができる。ヒンジの長さがCV特異的CAR Treg活性化のために最適であることを評価するために、以下の2つの異なるヒンジを比較した:短いヒンジのIgG4(36bp)及びヒトCD28の細胞外ドメインの一部を用いて創造された長いヒンジ(117bp)。CD28z細胞内ドメインを有するCV-CAR、及び41BBz細胞内ドメインを有するCV-CARの両者における異なるヒンジを研究するために、CV-CARコンストラクトの以下の4つのバージョンを生成した:短いヒンジを有する2つ(CV-IgG4-28z 及び CV-IgG4-41BBz)及び長いヒンジを有する2つの(CV-CD28-28z 及びCV-CD28-41BBz)。それらの異なるCV-CARコンストラクトのTregへの発現を、レンチウィルス形質導入により誘発し、そしてCV- SAビーズの存在下で再刺激された後、CV-CAR Tregの活性化プロファイルを分析した。
図10Aに示されるように、3日目で、より高い割合の細胞が、短いヒンジを有するCARコンストラクトに比較して、長いヒンジを有するCARコンストラクトを発現するCV-CAR Treg集団において活性化マーカーCD71を発現した。3日目でCD25平均蛍光強度(MFI)を評価する場合、同じ観察が行われた。さらに、長いヒンジを有するCV-CAR Tregは、短いヒンジを有するそれらよりも効率的に拡張した(
図10B)。
【0215】
scFvの異なるバージョンの評価:本発明者は、シトルリン化ビメンチンタンパク質を特異的に結合する新規scFv、BVCA1を開発した。RA患者に見出されるシトルリン化タンパク質を標的とする抗体のほとんどは、特異性が低く、そして多数のシトルリン化タンパク質と交差反応する。従って、さらなる分析は、BVCA.1を使用した。しかしながら、この単一のIgGから、以下の3つのバージョンのscFvを生成した。:(1)1つは、24個のアミノ酸リンカーと共に起源のヌクレオチド配列を有するVL及びVH鎖を有する(scFv#1)、(2)2番目は、起源のヌクレオチド配列及び(GGGGS)3リンカーを有する(scFv#2)、及び(3)3番目は、VL及びVH鎖のコドン最適化配列及び(GGGGS)3リンカーを有する(scFv#3)。
【0216】
図11A-11Dに示されるように、scFv#1を有するCV-CARのみが、形質導入の3日後で、Treg及びTcanvの細胞表面で効率的に発現されたが、ところがレポーター遺伝子の発現は、3つの異なるCARコンストラクト間で同等の形質導入効果を示唆した(
図11A及び11B)。CV-pep-SAビーズ(CVビーズ)の存在下での再刺激後2日目で、以前にCV-CAR scFv#1により形質導入されたTreg集団において活性化マーカーCD71及びCD69を発現する細胞の割合の上昇が、CV-CAR Tregの2つの他のグループに比較して、観察された(
図11C及び11D)。それらの結果に基づいて、scFv#1を有するCV―CARコンストラクトを選択し、CV-CARコンストラクトの開発を続けた。
【0217】
実施例3:CV-CAR形質導入ヒトTreg及びTconvの生成:
サンプル、細胞選別及びインビトロ刺激:新鮮な全血ユニットは、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の一般集団から採用された健康なドナーから入手されるか、又はStem Cell Technologiesにより提供された。PBMCを、Ficoll Paque培地(GE healthcare)を用いて、密度勾配沈降により単離した。CD4+T細胞を、磁気細胞選別(Miltenyi Biotec)により、PBMCからの陽性選択により富化した。次に、CD4+T細胞を、CD4、CD25及びCD127に対して特異的な蛍光標識されたmAbにより染色し、そしてフローサイトメトリー(FACSAria; BD Biosciences)により、以下の2つのサブセットに、97%よりも高い純度で分離した:CD4 + CD25 + CD127-(CD4 +調節性T細胞; Treg)及びCD4 + CD25-CD127 +(CD4 + T従来型細胞; Tconv)。次に、選別された細胞集団を、T細胞培地において、インターロイキン-2(IL-2; Prometheus Laboratories; Tconvは100U / ml、Tregは300U / ml)の存在下で、抗CD3 /抗CD28被覆Dynabeads(ThermoFisher Scientific)により、Tconvの場合、1:1の比率で及びTregの場合、2ビーズに対して1細胞の比率で刺激した:ここで前記細胞培地は、5mMのHEPES、2mMの L-グルタミン、各50mg/mlのペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen、Carlsbad、CA)、5mMの非必須アミノ酸、5 mMのピルビン酸ナトリウム(Mediatech)、及び10%FBS(Invitrogen)により補充されたRPMI1640培地である。IL-2を含む新鮮な培地を、2日ごとに添加し、そして細胞を、必要に応じて、分けた。
【0218】
Tconv及びTreg集団のレンチウィルス形質導入及び形質導入効率評価:選別されたCD4+集団の刺激後2日で、細胞を計数し、そして24ウェルプレート中にウェル当たり250,000~500,000個の細胞で播種し、そしてインキュベーターに37℃で少なくとも1時間、置いた。次に、ウィルス粒子及び硫酸プロタミン(100μg/ml)の混合物を、ウェルに添加し、細胞当たり1粒子の感染多重度(MOI)に到達させた。次に、細胞を、1200xgで30分間、32℃でスピノキュレートした。次に、プレートを37℃で90分間戻した。細胞を5分間、回転させ、そして接種培地を、IL-2を含む新鮮なものと交換した。3日後、形質導入の効率を、抗-EGFRt Abを用いてフローサイトメトリーにより測定した。EGFRt+細胞の割合がそれらの細胞の細胞表面でのCARの発現を表すものであることを確認するために、細胞を、APC又はPEと結合したEGFRt Ab及びCV-ストレプトアビジン(SA)-AF488テトラマーにより共染色し、そして攪拌下で4℃で2時間インキュベートし、そして形質導入の4日後、フローサイトメトリーにより分析した。CV-SA-AF488複合体を、ビオチン化CVペプチド(Innovagen)とSA-AF488接合体(Life Technologies)とを、4つのビオチン化ペプチドに対して1つのSAタンパク質の比率で、攪拌下で、4℃で15分間、共にインキュベートし、そして菅を高14000×gで15分間、回転沈降することにより、細胞染色の直前に製造した。
【0219】
結果:
CV-CARレンチウィルスベクターを用いて、ヒトT CD4+調節細胞(Treg)及び従来の細胞(Tconv)を、1細胞に対して1つのウィルスの比率で形質導入した。それらの細胞を、健康なドナー(HD)の末梢血液から単離し、CD4、CD25及びCD127(Treg:CD4 + CD25 + CD127-、Tconv:CD4 + CD25-CD127 +)の発現に基づいて、フローサイトメトリーにより選別し、そして形質導入の前、抗-CD3/CD28ビーズにより2日間、刺激した。細胞をまた、対照として使用されるCD19.28z-CAR及びCD19.41BBz-CARにより形質導入した。
【0220】
形質導入の4日後、EGFRt
+細胞の割合を、抗-EGFRt抗体を用いて決定した。データは、CV-CAR及びCD19-CARによる形質導入が、Treg間、及びTconv集団間で類似する割合のEGFRt
+をもたらしたことを示した(
図12A)。さらに、TregがTconvよりも効率的に形質導入されたことが、試験された全てのCARで観察された。従って、1つの実験においては、約70%~約80%のTregが、Tconv集団の約53%~約59%に比較して、CARコンストラクトに依存してEGFRt
+であった(
図12A)。
図12Bの例に示されるように、平均蛍光強度(MFI)はまた、EGFRt
+Tconvに比較して、EGFRt
+Tregにおいてより高かった。
【0221】
EGFRt発現が細胞表面でCAR発現を表すことを検証し、そしてCV-CARコンストラクトがそれらの標的抗原に結合する能力を評価するために、細胞を、
図12Cに示されるFITC(CVpep-SA-FITC)により結合されるビオチン化CV-ペプチド/ストレプトアビジンテトラマー及びEGFRt抗体により染色した。データは、EGFRt発現がTregの全ての表面でCV-CAR発現と相関することを確認し、そしてBVCA1 scFvのCVに結合する能力が、CV-CARコンストラクトにおける挿入後に保存されたことを証明した(
図12D)。類似する結果が、Tconv細胞によって得られた。結果は、Tregの表面で発現されたCV特異的CARがCVペプチドを特異的に結合することを実証する。
【0222】
実施例4:インビトロでのTreg活性化及び拡張に対するCV-CARシグナル伝達の効果の分析:
2回目の刺激に対する細胞の調製:抗-CD3/抗-CD28被覆のDynabeadの存在による細胞の残存活性化を回避するために、それらのビーズを、磁石(ThermoFisher Scientific、製造業者の説明書に従って)を用いて、7日目で細胞培養物から除いた。さらに、示されている場合、CAR+Treg及びTconv集団を、7日目でフローサイトメトリーによりEGFRtの発現に基づいて選別した。
【0223】
CV―CAR T細胞の再刺激:最初の刺激の後、9又は10日目で、CAR+T細胞を再刺激した。刺激の異なる条件を用いて、CAR又はそれらの内因性TCRを介して刺激される場合、CV-CAR T細胞の活性化プロファイルを比較した。CVペプチドを提示するビーズを、ビオチン化CVペプチド(Innovagen)と、CV-SAビーズと呼ばれるDynabeads M-280 ストレプトアビジン(Invitrogen、製造業者の説明書に従って)とをカップリングすることにより生成した。細胞を、1つの細胞に対して、抗CD3 /抗CD28被覆Dynabeadsが1:1の比率で、又はCV-SAビーズが2の比率で存在するか、又は存在しない場合、IL-2(Tconvの場合、100U/ml及びTregの場合、300U/ml)の存在下で再刺激した。IL-2を含む新鮮な培地を2日ごとに添加し、そして細胞、必要とされる場合、分割した。
【0224】
2回目の刺激の後、CV-CAR細胞の活性化プロファイル及び拡張の研究:細胞の再刺激後1日目で、細胞クラスターを、明視野顕微鏡を用いて可視化した。2及び3日目、各刺激条件からの細胞の小画分を収穫し、そしてCD4、CD25、CD69、CD71、EGFRt及びLIVE / DEAD固定可能な青い染色(Invitrogen)に対する抗体により染色し、そして4℃で20分間インキュベートした。細胞を、LIVE CD4+細胞上にゲーティングすることにより、フローサイトメトリーにより分析した。再刺激後のCV-CAR Tregの拡張倍率を測定するために、CV-CAR+細胞を、2日目の刺激の前(最初の刺激後7日目で)、フローサイトメトリーにより富化した。それらの選別されたCV-CAR+Tregを再刺激後5日目で計数し、そして拡張倍率を計算した(5日目の細胞数/0日目での細胞数)。
【0225】
生成されたCV-CAR TregのCARを介して媒介されるシグナルの細胞を活性化する能力を評価した。抗CD3/CD28ビーズを、形質導入後5日で除き、そして形質導入されたTregを、IL-2のみの存在下で2日間、培養し、それらを休止させ、そしてしたがって、活性化の残りの兆候を回避した。次に、CAR-Tregの異なる集団を、IL-2のみ(負の対照)、又は抗CD3/CD28ビーズ(正の対照)又はビオチン化CVペプチドにより被覆されたSA Dynabead(登録商標)のいずれかと組合わされたIL-2の存在下で再刺激した(CV-SAビーズ、
図13)。
【0226】
再刺激後1日で、ウェル中のクラスターの存在を、細胞とビーズとの間の相互作用の指標として、評価した。
図Aに示されるように、クラスターは、IL-2のみの状態(ビーズなし)では、形質導入されたCARの特異性に関係なく、全てのウェルに不在であった。また
図14Aにも示されるように、抗CD3/CD28ビーズ状態においては、クラスターを、全てのTreg集団に観察した。この例においては、細胞がCV-SAビーズの存在下で培養される場合、CV-CAR Tregウェルにおいてのみ目に見え、これは、CV-SAビーズと特異的に相互作用したことを示している可能性がある。
【0227】
3日目での細胞の細胞表面での活性化マーカーCD71及びCD25の発現を、フローサイトメトリーにより評価した。IL-2のみの条件下で、細胞はCD71を発現しておらず、そしてCD25 MFIは低かったのに対して、抗CD3/CD28ビーズによる刺激は、大多数のCAR Treg(CD19及びCV特異的)でCD71発現、及びCD25 MFIの強い上昇を誘発した(
図14B)。CD71発現の誘発は、CV-SAビーズ条件下においてのみ、CV-CAR Tregで観察された。CD71
+細胞の割合は、特にCV.41BBz-CAR Tregsにおいて、抗CD3/CD28ビーズで観察されるものよりも低かった。同様に、CD25 MFIは、CV-CAR Tregにおいてのみ、CV-SA状態において上昇し、そしてCV.41BBz-CAR Tregsにおいてわずかに高いMFIを有した(
図14C)。
【0228】
図14A-14Cは、CV特異的CARを発現するTregのみが、CV-SAビーズの存在下で刺激される場合、活性化の徴候を示したことを示している。
【0229】
次に、CV-SAビーズの存在下で誘発されたCV特異的CAR媒介刺激が細胞の拡張を誘発するのに十分であったかどうかを評価した。全ての条件下で異なるCAR Treg集団の拡張倍率を、再刺激の5日後に測定した(
図14C)。得られるデータは、CV-SAビーズにより誘発された拡張倍率が、抗CD3/CD38ビーズの存在下で観察された倍率よりも低い場合でされ、CV-CAR Tregは、CV特異的CARを介在して媒介された刺激の後、効率的に増殖したことを示した。
図14Bに示されるデータと一致して、CV.41BBz-CAR Tregは、CV.28z-CAR Tregよりも効率的に拡張しないようであり、このことは、CV.28-CARシグナル伝達が細胞の活性化においてより強力であり得ることを示唆している。それらの実験はまた、Tconv細胞に対しても行われ、そして類似する結果を得た。
【0230】
さらに、CV-SAビーズを用いて誘発された活性化がCV60-75ペプチドの存在によるものであることを検証するために、アルギニン-ビメンチン60-75(ArgVim)ペプチド-SAビーズ及びシトルリン化-フィブリノーゲンβ鎖36-52(CitFib)ペプチド-SAビーズをまた生成した。CV-CAR Tregが被覆されていないSAビーズ、ArgVim SAビーズ又はCitFib SAビーズの存在下で共培養される場合、活性化の兆候は観察されなかった。
【0231】
実施例5:インビトロ拡張後のCV-CAr Tregの表現型及び安定性の評価:
拡張されたCV-CAR Tregにおけるサイトカイン産生の表現型分析及び評価:18日目、2回の刺激の最後で、異なるTreg集団の画分を、CD4、CD127、EGFRt及びLIVE / DEAD固定可能ブルーに対して特定的な蛍光標識されたAbにより、4℃で20分間、表面染色した。並行して、細胞の別のサンプルを、CD4、CD127、EGFRt及びLIVE / DEAD固定可能ブルーにより染色し、続いて、製造業者の説明書に従って、Foxp3染色緩衝液セット(eBioscience)を用いて、POXP3及びHeliesの核内染色を行った。サイトカイン産生の評価のために、細胞を、PMA(100ng/ml)及びイノマイシン(1μg/ml)により4時間、刺激し、そしてインキュベーションの開始の2時間後、ベルフェルディンA(1X、Invitrogen)を添加した。次に、細胞を、LIVE / DEAD修正可能ブルー及び抗CD4、-CD127、-EGFRt Absにより染色し、1×PBS中、1%パラホルムアルデヒド(PFA)及び2%D-グルコースにより固定し、PBS5%FBS中、0.1%サポニンにより透過処理し、そしてIFN-γ、IL-2、IL-17及びIL-10に対して特異的なAbにより染色した。細胞を、フローサイトメトリー(LSR II;BD Biosciences)により分析した。
【0232】
2回の拡張後のCV-CAR Tregの表現型安定性を評価するために、主要なTreg表面マーカー(CD25、CD127)及び転写因子(FOXP3及びHelios)の発現プロファイル、並びに18日目でのサイトカイン産生を試験した。非形質導入及びCV-CAR Tregは2回の刺激を受け、2回目の活性化は、抗-CD3/CD28ビーズ又はCV-SAビーズのいずれかによるものであった。18日目で、細胞を、CD25及びCD127表面発現(
図15A)及びFOXP3及びHelies核内発現(
図15B)についてフローサイトメトリーにより評価した。
図17A及び15Bに示されるように、CV-CAR Tregは、インビトロでの2回の刺激の後、Treg表現型を維持する。
【0233】
それらの拡張されたTregのサイトカイン産生プロファイルを評価するために、細胞を、PMA/イノマイシンにより4時間刺激し、最後の2時間は、ブレフェルジンAの存在下で刺激した。次に、細胞を固定し、そしてIFN-g、IL-2、IL-10 及び IL-17を標的とする抗体により染色した(
図15C)。
【0234】
3つのサブセット:
図15A及び15Bに示されるような、非形質導入Tregs、CV.28z-CAR Tregs及びCV.41BBz-CAR Tregsは、Treg表現型(すなわち、CD25
+ CD127
-、FOXP3
+)を維持した。何れのTregも、拡張の後、IL-2又は炎症性サイトカインINF-g及びIL-17を発現しなかったことが観察された(
図15C)。非形質導入TregとCV-CAR Tregとの間の差異は観察されなかった。再刺激の以下の2つの条件を、2回目で評価した:抗CD3/CD28ビーズ又はCV-SAビーズ。類似するプロファイルが、Tregが、CV-CARを介した活性化の後、それらの表現型を維持するという概念を支持する両条件下で得られた。
【0235】
実施例6:RAにおけるCV-CAR Tregの治療効果を評価するためのインビトロアッセイの開発:
RA患者からの滑液とのCV-CAr Tregの共培養:Jonathan Grafにより提供されたRA患者からの滑液(SF)サンプルを用いて、シトルリン化ビメンチンのより疾患に関連する情報源を用いることにより、CARを介して活性化されるCV-CAR Tregの能力を評価した。最初の刺激の後9日目で、滑液サンプル(新鮮な又は解凍された)を、1:8、1:16又は1:32(SF:細胞培地)の比率でIL-2を補充されたT細胞培地と共に混合した。CAR T細胞を、96ウェルプレートにウェルあたり50,000個の細胞で播種し、そしてSF及びT細胞培養培地の混合物200μlを、各ウェルに添加した。3日後、細胞を、前に記載されたように、CD4、CD71、CD25及びLIVE / DEADの修正可能な青い染色に対して特異的な抗体により染色した。CD71を発現する細胞の割合及びCD25のMFIを、LIVE CD4+集団をゲーティングすることにより、フローサイトメトリーにより得た。
【0236】
シトルリン化ビメンチンを発現する腫瘍細胞系の生成及び特徴付け:SKNBE2cは、細胞表面でビメンチンを発現することが知られている神経芽細胞腫瘍細胞系である。SKNBE2c細胞(ATCCから)を解凍し、そしてGlutamaz、10%FBS、HEPES及びP/Sを有するRPMIにおいて培養した。Gibson アセンブリー法 (Gibson Assembly Master Mix、BioLabs)を用いることにより、ヒト酵素ペプチジルアルギニンデイミナーゼ2(PAD2)の遺伝子を、pCDH-EF1-T2A-GFPレンチウィルスベクター(Addgene)中に挿入した。ウィルス粒子を、HEK 293T細胞をトランスフェクトすることにより生成し、そしてSKNBE2cを、細胞あたり1粒子のMOIで形質導入した。トランスフェクション及び形質導入効率を、GFPの発現をフローサイトメトリーにより検出することにより評価した。シトルリン化工程に関与する酵素PAD2の発現の人工誘発がSKNBE2Cにおけるシトルリン化ビメンチンタンパク質の産生を誘発したかどうかを決定するために、免疫蛍光染色を行った。簡単に言えば、野生型(WT)及びPAD-GFPにより形質導入されたSKNBE2C細胞系の両方を、8ウェルチャンバーのホウケイ酸カバーガラス(Lab-Tek)に播種した。集密性に達した場合、細胞を、冷1×PBS中、2%PFAにより20分間、固定し、1×PBS中、2%BSAによりRTで30分間、ブロックし、一次抗体(マウスIgG2aを含むキメラBVCA1 Ab又はアイソタイプ対照)と共に4℃で一晩インキュベートした。次に、二次抗体を、暗闇の中で1時間、添加し、そして細胞をDAPIにより10分間、対比染色した。細胞を、蛍光顕微鏡(BZ-X700 シリーズ、 Keyence)を用いて可視化した。結果は、
図20A及び20Bに示される。
【0237】
CV-CAR TregとPAD2-GFP SKNBE2C細胞系との共培養:WT及びPAD2-GFP SKNBE2C細胞を、平底96ウェルプレートに播種した。集密性に達したら、最初の刺激の10日目での非形質導入Treg、CD19-CAR Treg及びCV-CAR Tregを、300U/mlでのIL-2により補充されたT細胞培地の存在下でウェルに添加した。共培養の3日後、細胞を収穫し、そして前述のようにして、CD4、CD71、CD25及びLIVE / DEADの修正可能な青い染色に対して特異的な抗体により染色した。CD71を発現する細胞の割合、及びCD25のMFIを、LIVE CD4+集団をゲーティングすることにより、フローサイトメトリーにより測定した。
【0238】
いくつかのインビトロアプローチを使用して、シトルリン化ビメンチンのより疾患関連の供給源を用いて活性化されるCD-CAR T細胞の能力を実証した。CV源としてRA患者又はCV発現腫瘍細胞系からの滑液を用いて得られるデータは、CV.41BBz-CAR形質導入Tregがそれらの条件では活性化されなかったが、ところがCV.28z-CAR形質導入Tregは効率的に活性化されたことを示した。これは、両方のCV-CARコンストラクトがCV-SAビーズ(標的抗原の人工提示)の存在下でCAR発現T細胞に効率的な活性化シグナルを誘発する場合でさえ、CV.28z-CARのみがより生理学的状況下で細胞を活性化することを実証する。
【0239】
インビトロアプローチの1つは、RAにおけるシトルリン化ビメンチンの主要源の1つである、好中球及び好中球細胞外トラップ(NET)においいて富化されることが知られているRA患者の関節から収穫された滑液の存在下でCV-CAR Tregを共培養することである。種々のCARコンストラクトを発現する拡張されたTreg及び非形質導入Tregを、CV-SAビーズ又はRA患者からの滑液の有無下で、IL-2の存在下で培養した。CD71の発現を、培養の3.5日後、フローサイトメトリーにより評価した(
図16A)。
図16Bは、異なるCAR Treg集団におけるEGFRt
-及びEGFRt
+画分の間のCD71
+細胞の割合を示す。
【0240】
RA滑液の存在下で3.5日後、CD71により細胞を染色することにより、CV.28z-CAR TregのEGFRt
+画分のみがCD71活性化マーカーを、高い割合で発現したことが観察された(
図16A及び16B)。
図16Bは、4人の異なる患者からのSFにより得られたデータの要約であり、非形質導入Treg、CD19.28z-CAR Treg及びCD19.4BBzは滑液の存在下で活性化のいずれの徴候も示さなかった。この実験はまた、Tconv細胞に対しても行われ、そして類似する結果が得られた(データは示されていない)。異なる患者からの3つの滑液サンプルを試験し、そしてそれらの全てがEGFRt
+ CV.28z-CAR Tregs(
図18A)及びTconv(データは示されていない)においてCD71発現を特異的に誘発した。それらのデータは、インビトロ滑液媒介活性化がCV-CAR依存性であることを示唆する。重要なことには、CD71の弱い発現のみが、3.5日でEGFRt
+ CV.41BBz-CARの表面で誘発された(
図16B)。この観察は、CV.41BBz-CAR媒介シグナルが、
図14A-14Cに示されるように、CV.28z-CARを介して誘発されたシグナルよりも細胞を活性化する能力が低いという事実と関連している可能性がある。
【0241】
実施例7:RAにおけるCV-CAR Tregによるヒト対象の治療:
図1に戻ると、CV-CAR Tregは、関節リウマチを有する患者のための細胞療法の開発に使用されるべき記載の技法に従って生成された。この治療アプローチは、患者の血液サンプルから細胞を単離することにより、患者白体(自己)のTregを使用することを包含する。単離されたTregは、CV-CARトランスジーンを担持するレンチウィルスベクターを用いて遺伝子組み換えされる。CV-CAR Tregは、インビトロで2回の拡張を受け、そして次に、患者に注入される。これは、抗TNF治療と組合して行うことができ、疾患の部位でのTregの効率を最適にする。
【0242】
従って、いくつかの実施形態によれば、関節リウマチと診断された対象の治療方法が提供され、この方法は、対象から得られた生物学的サンプルからTリンパ球を単離し、CD4+T細胞(Treg)を、従来のT細胞(Tconv)から分離し、ここで前記Treg細胞はCD4+CD25+ CD127-であり、そして前記TconvはCD4+CD25―CD127+であり、シトルリン化ビメンチン(CV)抗原に特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)をコードする発現ベクターによりTreg細胞を形質導入し、CV抗体に対して特異的な十分な数のTreg細胞を得るために、少なくとも1度、エクスビボで、形質導入されたTreg細胞を、抗CD3/抗CD28ビーズにより刺激し、そしてTregを対象に再注入し、それにより対象を治療することを含む。
【0243】
実施例8:CV-CARの表面発現:
いくつかの実施形態によれば、Tregの表面で拡張されるCV特異的CARの能力を、抗ヒトIgG(H+L)Abを用いることにより、
図17A-17Bに示されるようにして評価した。これは、レンチウィルス発現の後に行われた。CAR及び上皮成長因子受容体(CGFRt)の両方を、フローサイトメトリーにより検出した。
図17Aは、形質導入Treg、CV /CD28ζCAR
+ Tregs、及びCV /41BBζCAR
+ Tregsの表面でのCAR及びEGFRtの発現の評価を示す。
図17Bは、種々の実験におけるCAR
+細胞の割合を示す。
【0244】
実施例9:CV.28z-CAR Tregは、RA患者からの滑液の存在下で活性化される:
シトルリン化ビメンチンのより臨床的に適切な供給源の存在下で認識及びシグナル伝達するCV-CAR発現Tregの能力を実証するために、RAにおけるCVの主要生産体の1つである、好中球及び好中球細胞外トラップ(NGT)において富化されることが知られているRA患者の関節から収積された滑液の存在下でCV-CAR Tregを共培養した。RA又は痛風の患者からの滑液との共培養後3日目、最近のものは陰性対照として使用され、CD71の発現が、Treg細胞間で分析された。痛風患者からの滑液の存在下で、CD71発現の誘導は、Tregサブセットの何れにおいても観察されなかった(
図18B)。しかしながら、RA患者からの滑液との共培養の後、CV.28z-CAR EGFRt
+ Tregsは高い割合の活性化マーカーCD71を発現したが、同じウェルに存在しているEGFRt
-Treg、又はCD19.28z-CAR Tregs及び CD19.41BBz-CAR Tregsは、活性化のいずれの兆候も示さなかった(
図18B及び
図18C)。それらのデータと一致して、シトルリン化ビメンチンは、RA患者からの滑液に検出されたが、痛風の患者からの滑液では検出されなかった(
図21)。
【0245】
実施例10:CV.28z-CAR Tregは、RA患者からの無細胞滑液の存在下で活性化される:
シトルリン化ビメンチンは、炎症性関節における細胞外マトリックスに主に存在することが記載されており、このことは、CV.28z-CAR Tregがそれらの標的抗原を効率的に結合できるためには、細胞間相互作用が必要とされないことを示唆している。その仮説を検証するために、密度勾配遠心分離の後に得た上層を用いることにより、RA患者からの全滑液又は無細胞滑液の存在下での共培養の後、CV.28z-CAR Tregの活性化プロファイルを比較した。我々のデータは、滑液中の細胞の存在又は非存在下で、RA患者からの滑液との共培養に応答して、類似する割合のCV.28z-CAR TregがCD71を発現していることを明らかにした(
図22A及び
図22B)。総合する、それらのデータは、CV.28z-CARを発現するTregが、RA患者の炎症性関節に位置する細胞マトリックスにおけるそれらの標的抗原を結合できるという概念を強く支持する。
【0246】
実施例11:CAR媒介刺激後のCV.28z-CAR Treg細胞抑制機能:
CAR媒介刺激後のCV.28z-CAR Treg細胞の抑制能力を評価するために、CRISPR/Cas9技法を使用して、Tregにおける内因性TCRをノックアウトし、TCR
KO CV.28z-CAR
+ Tregsを生成した(
図23A及び
図23B)。抑制アッセイを、レスポンダーとしてプレート結合抗-CD3抗体により刺激されたCD4
+T細胞を用いて行った。CV-pep-SAビーズ(CVb)(
図24A及び24B)又はビメンチンビーズ(
図24B)の存在下でそれらのTCR刺激レスポンダーがT細胞を抑制するTCR
KO CV.28z-CAR
+ Tregsの能力を、異なるレスポンダー:サプレッサー細胞比率で評価した。我々のデータは、TCR
KO CV.28z-CAR
+ Tregsが、CV-SAビーズの存在下でCAR媒介刺激の後、抑制的であるが、ここらがTCR
KO CD19.28z-CAR
+ Tregsは、CV-SAビーズの存在下で抑制的ではなかったことを示す
【0247】
実施例12:材料及び方法:
RA患者からの滑液とCV-CAR Tregとの共培養:Jonathan Grafから提供されたRA患者又は負の対照の痛風患者からの滑液(SF)サンプルを使用して、シトルリン化ビメンチンのより疾患関連性の供給源を用いることにより、CARを介して活性化されるCV-CAR Tregの能力を評価した。滑液サンプルが十分な量で存在する場合、その液体の一部を1×PBSにより希釈し、そして密度勾配遠心分離により処理した。上層(無細胞)を、遠心分離の後に収集し、そして-80℃で貯蔵した。最初の刺激後9日目で、全滑液サンプル及び無細胞滑液サンプルを解凍し、そしてIL-2を異なる比率で補充したT細胞培地と共に混合した。CAR T細胞をウェル当たり50,000個の細胞で96ウェルプレートに播種し、そしてSF及びT細胞培養物の混合物200μlを、各ウェルに添加した。3日後、細胞を、前に記載されたようにして、CD4、CD71、CD25及びLIVE / DEADの修正可能な青い染色に対して特異的な抗体により染色した。CD71を発現する細胞の割合及びCD25のMFIを、LIVE CD4+集団をゲーティングすることにより、フローサイトメトリーにより得た。
【0248】
直接的EKISAによる滑液中のシトルリン化ビメンチンの存在の検出:96ウェルELISAプレートを、10μg/mlでニワトリ抗-ビメンチンAbで4℃でO/N被覆した。ウェルを3回、洗浄し、そして200μlの1×PBS 1%BSAによりRTで1時間ブロックし、そして再び洗浄した。PBS 1%BSA 0.1%Tween20に希釈された滑液上清液の異なるサンプルを添加し、そしてRTで1.5時間インキュベートした。いくつかの他のウェルにおいては、滑液の代わりにビメンチンタンパク質及びシトルリン化ビメンチンタンパク質を添加し、それぞれ陰性及び陽性対照として使用した。ウェルを3回、洗浄した。10μg/mlでのマウスキメラBVCA1 IgG(マウスCH2及びCH3ドメインを含む)100μl又はアイソタイプ対照を添加した。RTでの1時間のインキュベーションの後、ウェルを3度、洗浄し、そして接合されたヤギ抗-マウスIgG2aニ次Ab―AP(Abcam、ab98695)を、1/1000希釈度でウェル添加した。ウェルを3度、洗浄し、そして100μlのStep PNPP基質溶液を添加した。45分後、50μlの3MのNaOHにより反応を停止し、そして吸光度を、405nmでマイクロプレートリーダーにより読み取った。
【0249】
CRISPR/Cas9技法を用いてのTCRノックアウトCV-CAR+Treg細胞の生成:Treg細胞を、実施例3に記載されるように、フローサイトメトリーにより新鮮なPBMCから単離し、90gで10分間、遠心分離し、そして100万個の細胞当たり20μlの緩衝液を用いて、Lonzaエレクトロポレーション緩衝液P3に再懸濁した。次に、Treg細胞を、Lonza 40 96ウェルエレクトロポレーションシステム及びパルスコードEH115を用いて、CRISPR-Cas9リボ核タンパク質(RNP)複合体でエレクトロポレーション処理した。エレクトロポレーションの直後、80μlの予熱した培地を各ウェルに添加し、そして細胞を37℃で15分間、静置した。次に、実施例3に詳細されるように、1ml当たり300UIのIL-2の存在下で、1:1の比で、Treg細胞を、抗CD3/CD28ビーズにより刺激した。選別及びエレクトロポレーションの2日後、Treg細胞を、実施例3に記載されるようにして、異なるCARコンストラクトにより形質導入した。7日後、細胞を、EGFRt及びCD3の発現に基いて、TCRKOCA+又はTCR+CAR+集団に選別した。次に、細胞を、抗CD3/CD28ビーズにより、1ml当たり300UIのIL-2の存在下で1:1の比で5~6日間、再刺激した。
【0250】
TCRKOCAR+Tregによる抑制アッセイ:Treg抑制を、〔3H〕チミジン取り込みに基づいて増殖を測定することにより評価した。拡張の12日後、抗CD3/CD28ビーズを、TCRKO CV.28z-CAR+ Treg 及び TCRKO 19.28z-CAR+ Treg培養物から除去した。細胞は、抑制アッセイの前、2日間休止された。アッセイの前日、CD4+Tエフェクター細胞(レスポンダー細胞)を解凍し、そして30UI/mlのIL-2の存在下で、37℃で5%CO2下で一晩、保持した。丸底96ウェルプレートを5mg/mlでの抗CD3抗体により一晩、被覆し、そして1×PBSにより洗浄した。アッセイの日、TCRKOCAR+Treg集団及びレスポンダー細胞を2度洗浄し、残留IL-2を培地から除いた。次に、細胞を、ウェル当たり50,000のレスポンダー細胞で、抗CD3 Ab被覆のウェルにプレートし、そしてTCRKOCAR+Tregをビメンチン-SA-ビーズ、CV-SA-ビーズ、CD19-ビーズの存在下で、又はビーズなしで、異なるレスポンダー:Treg比(2:1~64:1)で添加した。3日後、20μlの〔3H〕地地味(1μCi)を各ウェルに添加した。16時間後、プレートを、-20℃で凍結した。プレートを、Packard FilterMate Harvester上に収穫し、そして各ウェルについてのカウント/分(CPM)をPackard TopCountシンチレーション及びルミネセンスカウンター(パーキンエルマー、マサチューセッツ州ウォルサム)上で読み取った。両アッセイに関して、抑制率を以下のようにして計算した:抑制率=1-〔平均CPM(Treg+レスポンダー)/平均CPM(レスポンダーのみ)〕×100%。
【配列表】